(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
シグレック−15結合分子が提供される。該分子は、典型的には、シグレック−15に免疫特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。シグレック−15リガンド結合分子も提供される。該分子は、典型的には、シグレック−15ポリペプチドまたは融合タンパク質である。シグレック−15に媒介される免疫抑制を低減させるために該分子を、それを必要とする対象において使用する方法も提供される。
SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、もしくは107、または
SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、もしくは107に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を含むそれらの変異体
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び/または
SEQ ID NO:13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、もしくは119、または
SEQ ID NO:13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、もしくは119に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を含むそれらの変異体
からなる群から選択されるアミノ酸配列ポリペプチドを含む重鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
免疫グロブリン定常領域(Fc)からの1つまたは複数の定常ドメインを含む、請求項1〜4または46〜55のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
前記ヒト定常ドメインが、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMドメインである、請求項6または46〜55のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒトIgG定常ドメインが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4ドメインである、請求項7または46〜55のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
検出可能に標識されるか、またはコンジュゲートされた毒素、薬物、受容体、酵素、受容体リガンドを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
前記抗体が、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または一本鎖抗体である、請求項1〜9または46〜55のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
分子がFc受容体(FcR)結合活性の低下を呈するかまたはFc受容体(FcR)結合活性を呈さないように、前記抗体が改変されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
強化された抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)活性を呈するように、前記抗体が改変されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜13または46〜53のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと、生理学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物であって、前記抗体が、シグレック−15のそのリガンドへの結合を低減させるもしくは防止する、及び/またはシグレック−15に媒介されるシグナル伝達を低減させるもしくは防止する、前記医薬組成物。
前記リガンドが、シアル酸付加された糖タンパク質、ロイシンリッチリピート含有タンパク質4C(LRRC4C)、シグレック−15対抗受容体、またはそれらの組み合わせである、請求項14に記載の組成物。
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、免疫応答を増大させる、腫瘍増殖を遅延させるもしくは防止する、腫瘍に媒介される免疫抑制を阻害する、腫瘍を排除する、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の活性を枯渇させるもしくはブロックしてその活性を変化させる、TAMに媒介される免疫抑制を減少させる、T細胞の抑制を低減もしくは逆転させる、またはそれらの組み合わせを行う、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、前記マクロファージによるTGF−βの発現及び/または分泌を低減させるのに有効な量で前記対象に投与される、請求項21に記載の方法。
(a)請求項1〜13または46〜53のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを使用して、対象の細胞中または組織試料中のシグレック−15の発現をアッセイすること、及び(b)前記シグレック−15のレベルを対照のレベルと比較することを含む、疾患、障害、または感染症を検出または診断する方法であって、
前記対照のレベルと比較した前記シグレック−15のアッセイレベルの増加が、前記疾患、障害、または感染症の指標である、前記方法。
(a)請求項1〜13または46〜55のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを使用して、最初の時点及びその後の時点で得られた対象の細胞中または組織試料中のシグレック−15の発現をアッセイすること;ならびに(b)前記最初の時点及びその後の時点での前記対象の前記細胞中または前記組織試料中の前記シグレック−15の発現のレベルを比較することを含む、疾患、障害、または感染症の進行をモニタリングするための方法であって、
前記最初の時点と比較した前記その後の時点での前記シグレック−15のアッセイレベルの増加が、前記疾患、障害、または感染症の進行の指標である、前記方法。
(a)請求項1〜13または46〜53のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを使用して、治療の前後での対象の細胞中または組織試料中のシグレック−15の発現をアッセイすること;及び(b)前記シグレック−15の経時的なレベルを比較することを含む、治療に対する応答をモニタリングするための方法であって、
それによる、前記治療前のシグレック−15のレベルと比較した前記治療後のシグレック−15のアッセイレベルの減少が、前記治療に対する好適な応答の指標である、前記方法。
T細胞の抑制の低減を、それを必要とする対象にもたらす方法であって、前記対象に有効量の請求項14〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
T細胞におけるサイトカイン産生の増大を、それを必要とする対象にもたらす方法であって、前記対象に有効量の請求項14〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
骨成長の増大または骨吸収の低減を、それを必要とする対象にもたらす方法であって、前記対象に有効量の請求項14〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
破骨細胞分化の低減を、それを必要とする対象にもたらす方法であって、前記対象に有効量の請求項14〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
請求項1〜13または46〜53のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと、生理学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物であって、前記抗体が、シグレック−15のそのリガンドへの結合を増大させる及び/またはシグレック−15に媒介されるシグナル伝達を増大もしくは強化する、前記医薬組成物。
免疫応答の低減、炎症の低減、炎症反応の低減、自己免疫疾患もしくは障害の治療、移植片もしくは移植拒絶反応の低減、または移植片対宿主病(GVHD)の治療を、それを必要とする前記対象にもたらす方法であって、前記対象に有効量の請求項32に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
前記シグレック−15ポリペプチドが、前記シグレック−15細胞外ドメインまたはそのフラグメントからなる、請求項34〜39のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
SEQ ID NO:193または194に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%の配列同一性を含む、融合タンパク質。
SEQ ID NO:195、197、199、201、または209のアミノ酸配列を有する1つまたは複数の可変軽鎖、ならびにSEQ ID NO:203、206、及び207のアミノ酸配列を有する1つまたは複数の可変重鎖を有する、ヒト化抗シグレック−15抗体。
SEQ ID NO:209、195、207、199、または201の軽鎖CDR、及びSEQ ID NO:203、206、または207の重鎖CDR、ならびにそれらの組み合わせを有する、抗体。
SEQ ID NO:209、210、または211の軽鎖アミノ酸配列、及びSEQ ID NO:212、213、215、または216の重鎖アミノ酸配列を有する、抗体。
破骨細胞形成を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項1〜13または46〜53のいずれか1項に記載の抗シグレック抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、前記方法。
破骨細胞形成を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む有効量の抗シグレック抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法であり、前記軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:226、227、及び228からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖可変領域が、SEQ ID NO:220、221、223、及び225からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記方法。
シグレック−15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを構成的または誘導的に発現する細胞であって、SEQ ID NO:120〜132のいずれか1つを含む軽鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:133〜145のいずれか1つからなる群から選択される重鎖可変ドメインをコードする配列を含む1種類または複数種類の核酸を含む、前記細胞。
シグレック−15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを構成的または誘導的に発現する細胞であって、請求項1〜13及び44〜53のいずれか1項に記載の抗体をコードする配列を含む1種類または複数種類の核酸を含む、前記細胞。
【発明を実施するための形態】
【0035】
I.定義
本明細書で使用される場合、ある分子が第2の分子に「免疫特異的に結合する」ことが可能であると言えるのは、かかる結合が、抗体の特異性及び親和性をその同種抗原に対して呈する場合である。抗体が抗原の標的領域または立体配座(「エピトープ」)に免疫特異的に結合する能力があると言えるのは、かかる結合が免疫グロブリン分子の抗原識別部に関与する場合である。特定の抗原に免疫特異的に結合する抗体は、他の抗原が、例えば、イムノアッセイ、BIACORE(登録商標)アッセイ、または当技術分野で公知の他のアッセイによって決定したときに抗原識別部によって認識されるある配列または立体構造的類似性を有するならば、より低い親和性で他の抗原に結合することがあるが、全く関係のない抗原とは結合しないはずである。しかし、抗体(及びそれらの抗原結合フラグメント)は、他の抗原と交差反応しないことが好ましい。抗体は、Fc領域などの抗原識別部位に関与しない分子の他の領域/ドメインにおける結合ドメインによって、例えばFcR受容体に結合するように、免疫特異的でない方法で他の分子に結合することもある。
【0036】
本明細書で使用される場合、ある分子が第2の分子に「物理特異的にに結合する」と言えるのは、かかる結合が、受容体の特異性及び親和性をその同種結合リガンドに対して呈する場合である。ある分子は、2つ以上の他の分子に物理特異的に結合する能力があり得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、「可変領域」である抗原識別部位を有する免疫グロブリン分子を意味することが意図される。「可変領域」という用語は、免疫グロブリンのかかるドメインを、抗体に広く共有されるドメイン(抗体Fcドメインなど)から区別することが意図される。可変領域は「超可変領域」を含み、その残基は抗原結合に関与する。超可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」のアミノ酸残基(すなわち、典型的には、軽鎖可変ドメイン中で、およそ残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、及び89〜93(L3)にあり、重鎖可変ドメイン中で、およそ残基27〜35(H1)、50〜65(H2)、及び95〜102(H3)にある;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))及び/または「超可変ループ」(すなわち、軽鎖可変ドメイン中で、残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、及び91〜96(L3)、重鎖可変ドメイン中で、26〜32(H1)、53〜55(H2)、及び96〜101(H3);Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−917)のそうした残基を含む。「フレームワーク領域」すなわち「FR」残基は、本明細書で定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。抗体という用語には、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、ラクダ化抗体(例えば、Muyldermans et al.,2001,Trends Biochem.Sci.26:230;Nuttall et al.,2000,Cur.Pharm.Biotech.1:253;Reichmann and Muyldermans,1999,J.Immunol.Meth.231:25;国際公開第WO94/04678号及び第WO94/25591号;米国特許第6,005,079号を参照されたい)、一本鎖Fv(scFv)(例えば、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、細胞内抗体、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗体に対する抗Id抗体及び抗−抗Id抗体が含まれる)が含まれる。特に、かかる抗体には、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、及びIgA
2)、またはサブクラスの免疫グロブリン分子が含まれる。
【0038】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、抗体の1つまたは複数の部分であって、抗体の相補性決定領域(「CDR」)及び任意で抗体の「可変領域」抗原識別部位を含むフレームワーク残基を含有し、抗原に対する免疫特異的な結合能を呈する、抗体の1つまたは複数の部分を指す。かかるフラグメントには、Fab’、F(ab’)
2、Fv、一本鎖(ScFv)、及びそれらの突然変異体、天然に存在する変異体、ならびに抗体の「可変領域」抗原識別部位と異種タンパク質(例えば、毒素、異なる抗原に対する抗原識別部位、酵素、受容体、または受容体リガンドなど)とを含む融合タンパク質が含まれる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「フラグメント」という用語は、少なくとも5個の連続するアミノ酸残基、少なくとも10個の連続するアミノ酸残基、少なくとも15個の連続するアミノ酸残基、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基、少なくとも25個の連続するアミノ酸残基、少なくとも40個の連続するアミノ酸残基、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基、少なくとも60個の連続するアミノ酸残基、少なくとも70個の連続するアミノ酸残基、少なくとも80個の連続するアミノ酸残基、少なくとも90個の連続するアミノ酸残基、少なくとも100個の連続するアミノ酸残基、少なくとも125個の連続するアミノ酸残基、少なくとも150個の連続するアミノ酸残基、少なくとも175個の連続するアミノ酸残基、少なくとも200個の連続するアミノ酸残基、または少なくとも250個の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、効果、結果、または活性(例えば、シグナル伝達)を変化させる能力に関する。かかる調節は、作動性または拮抗性であり得る。拮抗性調節は、部分的であることも(すなわち、減弱させるが消失させない)、またはかかる活性を完全に消失させることもある(例えば、中和させる)。調節は、抗体結合後の受容体の内在化または標的細胞上での受容体の発現の低減を含み得る。作動性調節は、活性(例えば、シグナル伝達)を強化することか、さもなければ増大させるまたは強化することであり得る。なおさらなる実施形態では、かかる調節は、誘発されるシグナル伝達の性質を変化させるように、リガンドとその同種受容体との間の相互作用の性質を変化させることができる。例えば、分子は、リガンドまたは受容体に結合することによって、他のリガンドまたは受容体に結合するかかる分子の能力を変化させ、それによってその活性全体を変化させることができる。かかる調節によって測定可能な免疫系の活性が少なくとも10%変化することが好ましく、かかる活性が少なくとも50%変化するか、または少なくとも2倍、5倍、10倍変化することがより好ましく、またはかかる活性が少なくとも100倍変化することがなおさらに好ましい。
【0041】
「実質的に」という用語は、結合または呈示された効果に関して使用される場合、観察された効果が生理学的にまたは治療的に意義があることを意味することが意図される。よって、例えば、ブロックの程度が生理学的にまたは治療的に意義があれば(例えば、かかる程度が、60%超完全、70%超完全、75%超完全、80%超完全、85%超完全、90%超完全、95%超完全、または97%超完全であれば)、分子は、リガンドまたは受容体の活性を実質的にブロックすることが可能である。同様に、ある分子が別の分子と実質的に同じ免疫特異性及び/または特性を有すると言えるのは、かかる免疫特異性及び特性が、60%超同一、70%超同一、75%超同一、80%超同一、85%超同一、90%超同一、95%超同一、または97%超同一である場合である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「共刺激」シグナルは、陽性共刺激シグナル(例えば、活性の強化をもたらすシグナル)及び陰性共刺激シグナル(例えば、活性の阻害をもたらすシグナル)を包含する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、親または参照抗体と同じ標的に免疫特異的に結合するが、親もしくは参照抗体またはそれらの抗原結合フラグメントに対して1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のアミノ酸置換、付加、欠失、または改変を含むことによって、親もしくは参照抗体またはそれらの抗原結合フラグメントとアミノ酸配列が異なる抗体またはその抗原結合フラグメントを指す。かかる誘導体は、親もしくは参照抗体またはそれらの抗原結合フラグメントと実質的に同じ免疫特異性及び/または特性、あるいは同じ免疫特異性及び特性を有することが好ましい。かかる誘導体のアミノ酸置換または付加は、天然に存在する(すなわち、DNAにコードされる)または天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる。「誘導体」という用語は、例えば、キメラまたはヒト化変異体、ならびに例えば強化されたまたは弱化されたエフェクターまたは結合特性を呈する変異Fc領域を有する抗体などを形成するように改変されたCH1、ヒンジ、CH2、CH3、またはCH4領域を有する変異体を包含する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」は、非ヒト抗体に由来する可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体など、抗体の異なる部分が異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒトフレームワーク領域及び非ヒト(通常、マウスまたはラット)免疫グロブリン由来の1つまたは複数のCDRを含む免疫グロブリンを指す。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。定常領域は必ずしも存在しなくてもよいが、存在するならば、それは、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85〜99%、好ましくは約95%以上同一でなければならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、おそらくCDR以外は、天然のヒト免疫グロブリン配列の相当する部分と実質的に同一である。ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖及びヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。例えば、ヒト化抗体は、キメラ抗体の可変領域全体が非ヒトであるなどの理由から、典型的なキメラ抗体を包含しないと考えられる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「内因性濃度」という用語は、細胞(この細胞は正常細胞、がん細胞、または感染細胞であり得る)によって分子が本来(すなわち、発現ベクターまたは組換えプロモーターの非存在下で)発現するレベルを指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、「治療」、及び「治療用途」という用語は、シグレック−15またはそのリガンドによって増悪する疾患または障害の1つまたは複数の症状の解消、低減、または改善を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「治療的有効量」は、かかる症状の臨床的に意義のある解消、低減、または改善を媒介するのに十分な治療用物質の量を指す。ある作用は、その規模がレシピエント対象の健康または予後に影響を及ぼすのに十分であれば、臨床的に意義がある。治療的有効量は、疾患の発症を遅延させるまたは最小限に抑えるのに十分な、例えば、がんの拡がりを遅延させるまたは最小限に抑えるのに十分な治療用物質の量を指すことがある。治療的有効量は、疾患の治療または管理に治療的利益をもたらす治療用物質の量を指すこともある。
【0049】
本明細書で使用される場合、「予防用物質」という用語は、障害または疾患の任意の症状が検出される前にかかる障害または疾患の予防に使用することができる作用物質を指す。「予防的有効」量は、かかる予防を媒介するのに十分な予防用物質の量である。予防的有効量は、疾患の予防に予防的利益をもたらす予防用物質の量を指すこともある。
【0050】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、制御されない異常な細胞増殖から生じる新生物または腫瘍を指す。本明細書で使用される場合、がんには、白血病及びリンパ腫が明示的に含まれる。「がん」という用語は、遠位部位に転移する潜在性を有し、かつ非がん細胞のものとは異なる表現型形質、例えば、軟寒天などの三次元基質中でのコロニー(複数可)の形成、または三次元の基底膜もしくは細胞外基質調製物中での管状ネットワークもしくは網状マトリックスの形成を呈する細胞に関与する疾患を指す。非がん細胞は、軟寒天中でコロニーを形成せず、三次元の基底膜または細胞外基質調製物中で明瞭な球状構造を形成する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は造血系起源の任意の細胞を指し、T細胞、B細胞、単球、樹状細胞、及びマクロファージが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される場合、「価数」は、分子当たりの利用可能な結合部位の数を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「免疫(immunologic)」応答、「免疫(immunological)」応答、または「免疫(immune)」応答という用語は、レシピエント患者内のあるペプチドに向けられる有益な体液性応答(抗体媒介性)及び/または細胞性応答(抗原特異的T細胞またはその分泌物によって媒介される)の発生である。かかる応答は、免疫原の投与によって誘導される能動的応答でも、または抗体もしくは初回刺激を受けたT細胞の投与によって誘導される受動的応答でもあり得る。細胞性免疫応答は、クラスIまたはクラスIIのMHC分子と会合したポリペプチドエピトープが提示されて抗原特異的CD4
+ヘルパーT細胞及び/またはCD8
+細胞傷害性T細胞が活性化することによって誘発される。この応答には、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好塩基球、樹状細胞、星状膠細胞、小膠細胞、好酸球の活性化、または好中球または先天免疫の他の構成要素の活性化または動員も関与することがある。細胞媒介性免疫応答の存在は、増殖アッセイ(CD4
+T細胞)またはCTL(細胞傷害性Tリンパ球)アッセイによって決定することができる。免疫原の防御効果または治療効果に対する体液性応答及び細胞性応答の相対的寄与は、免疫化された同系動物から抗体及びT細胞を別々に単離して、防御効果または治療効果を第2の対象で測定することによって区別することができる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「免疫原性作用物質」または「免疫原」は、任意でアジュバントと併せて哺乳動物に投与されたときに、それ自体に対する免疫応答を誘導する能力がある。
【0055】
本明細書で使用される場合、「個体」、「宿主」、「対象」、及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、ヒト、マウス及びラットなどの齧歯類、ならびに他の実験動物を含めた哺乳動物を指すが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、修飾(例えば、リン酸化またはグリコシル化)にかかわらず、任意の長さのアミノ酸の鎖を指す。ポリペプチドという用語には、タンパク質及びそのフラグメントが含まれる。ポリペプチドは、「外来性」であってもよく、これは、細菌細胞によって産生されるヒトポリペプチドなど、それらが利用される宿主細胞にとってそれらが「異種」、すなわち異物であることを意味している。ポリペプチドは、本明細書ではアミノ酸残基配列として開示される。これらの配列は、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に書かれる。標準的な命名法に従い、アミノ酸残基配列は、以下に示すような三文字または一文字コードのいずれかで呼ばれる:アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、及びバリン(Val、V)。
【0057】
本明細書で使用される場合、「変異体」という用語は、参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと異なるが、本質的な特性を保持しているポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。ポリペプチドの典型的な変異体は、別の参照ポリペプチドとアミノ酸配列が異なる。一般に、差異は、参照ポリペプチドと変異体の配列が全体的によく類似しているように、かつ多くの領域で同一であるように限定される。変異体及び参照ポリペプチドは、1つまたは複数の改変(例えば、置換、付加、及び/または欠失)によってアミノ酸配列が異なっていることがある。置換または挿入されるアミノ酸残基は、遺伝子コードでコードされるものであっても、そうでなくてもよい。ポリペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体などの天然に存在するものあっても、天然に存在しないことが知られている変異体であってもよい。
【0058】
本開示のポリペプチドの構造に改変及び変更を加え、それでもそのポリペプチドと同様の特性を有する分子を得ることができる(例えば、保存的アミノ酸置換)。例えば、あるアミノ酸は、活性をそれほど失うことなく配列中で他のアミノ酸に置換され得る。ポリペプチドの生物学的機能活性を定義するものは、そのポリペプチドの相互作用する能力及び性質であるために、あるアミノ酸配列置換をポリペプチド配列に加えても、同様の特性を有するポリペプチドを得ることができる。
【0059】
かかる変更を加える際に、アミノ酸の水治性指標を考慮することができる。相互作用的な生物学的機能をポリペプチドに付与する上での水治性アミノ酸指標の重要性は、当技術分野で一般に理解されている。あるアミノ酸を同様の水治性指標またはスコアを有する他のアミノ酸と置換しても、同様の生物活性を有するポリペプチドが得られることが公知である。各アミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づいて水治性指標が割り当てられている。これらの指標は、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタメート(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパルテート(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);及びアルギニン(−4.5)である。
【0060】
アミノ酸の相対的な水治性指標特性が、得られるポリペプチドの二次構造を決定し、ひいてはそれがポリペプチドと他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、抗体、抗原、及び補助因子との相互作用を定めると考えられている。アミノ酸を同様の水治性指標を有する別のアミノ酸で置換しても、機能的に同等のポリペプチドが得られることが当技術分野では公知である。かかる変更において、±2以内の水治性指標を有するアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものがなお一層特に好ましい。
【0061】
同様のアミノ酸の置換は、特に、それによって作られる生物学的機能的に同等なポリペプチドまたはペプチドが免疫学的実施形態で使用されることが意図される場合、親水性に基づいて行うこともできる。以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(−0.5±1);スレオニン(−0.4);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。アミノ酸を同様の親水性値を有する別のアミノ酸によって置換しても、生物学的に同等の、特に免疫学的に同等のポリペプチドが得られることが理解される。かかる変更において、±2以内の親水性値を有するアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものがなお一層特に好ましい。
【0062】
上に概説したように、アミノ酸置換は一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいている。様々な前述の特性を考慮に入れた代表的な置換は当業者には周知であり、以下が挙げられる(当初の残基:代表的な置換):(Ala:Gly、Ser)、(Arg:Lys)、(Asn:Gln、His)、(Asp:Glu、Cys、Ser)、(Gln:Asn)、(Glu:Asp)、(Gly:Ala)、(His:Asn、Gln)、(Ile:Leu、Val)、(Leu:Ile、Val)、(Lys:Arg)、(Met:Leu、Tyr)、(Ser:Thr)、(Thr:Ser)、(Tip:Tyr)、(Tyr:Trp、Phe)、及び(Val:Ile、Leu)。よって、この開示の実施形態は、上記の通りのポリペプチドの機能的または生物学的同等物が企図される。特に、ポリペプチドの実施形態には、関心対象のポリペプチドに対して約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する変異体が含まれ得る。
【0063】
「配列同一性の百分率(%)」という用語は、配列をアラインメントし、最大の百分率の配列同一性を実現するために必要であればギャップを導入した後に、参照核酸配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸と同一である候補配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の百分率として定義される。配列同一性の百分率を決定することを目的としたアラインメントは、当技術分野内の様々な方式で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、ALIGN−2、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して実現することができる。比較される配列の完全長にわたる最大のアラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含めた、アラインメントを測定するための適正なパラメータは、公知の方法によって決定することができる。
【0064】
ここでの目的のために、所与のヌクレオチドまたはアミノ酸配列Cの、所与の核酸配列Dに対する、該配列との、または該配列と対比した配列同一性(%)(あるいは、所与の配列Dに対して、該配列との、または該配列と対比してある%の配列同一性を有するまたは含む所与の配列Cと表現されることもある)は、以下のように算出される:
分数W/Zの100倍、
ここでは、Wは、配列アラインメントプログラムのCとDとのアラインメントにおいてそのプログラムによって完全な一致としてスコア化されたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Zは、D中のヌクレオチドまたはアミノ酸の総数である。配列Cの長さが配列Dの長さと等しくない場合、Dに対するCの配列同一性(%)がCに対するDの配列同一性(%)と等しくならないことは理解されるであろう。
【0065】
本明細書で使用される場合、「医薬として許容される担体」という用語は、標準的な医薬担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩液、水、及びエマルション、例えば、油/水または水/油エマルション、ならびに様々なタイプの湿潤剤のいずれかを包含する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「抗原決定基」及び「エピトープ」という用語は互換的に使用され、抗体に認識される構造を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「立体構造エピトープ」は、抗原のアミノ酸配列の不連続区間を含むエピトープである。抗体は、抗原の三次元の表面特徴、形状、または三次構造に基づいて立体構造エピトープに結合する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「線状エピトープ」は、抗原からの連続的なアミノ酸配列によって形成されるエピトープである。線状エピトープは、典型的には約5〜約10個の連続するアミノ酸残基を含む。抗体は、抗原の一次配列に基づいて線状エピトープに結合する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「パラトープ」は、「抗原結合部位」とも呼ばれ、抗原を認識し、抗原と結合する抗体の部分である。
【0070】
II.組成物
A.シグレック−15配列
シアル酸結合Ig様レクチン15(「シグレック−15」、CD33抗原様3、及びCD33L3とも呼ばれる)は、ヒトの脾臓及びリンパ節のマクロファージ及び/または樹状細胞に発現する1型膜貫通タンパク質である(Angata,et al.,Glycobiology,17(8):838−46(2007)(これは、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれている))。シグレック−15の細胞外ドメインは、シアル酸付加された糖タンパク質に結合し、Neu5Acα2−6GalNAcα構造を優先的に認識する。
【0071】
シグレック−15は、膜貫通ドメイン中のそのリジン残基(残基K274)を介して活性化アダプタータンパク質であるDNAX活性化タンパク質(DAP)12及びDAP10と会合し、それが活性化シグナル伝達分子として機能することを示している。シグレック−15の相同分子種は、哺乳動物だけでなく脊椎動物の他の分岐にも存在し、脊椎動物の免疫系において、保存された制御的役割を果たしていると考えられている。
【0072】
シグレック−15は、T細胞の増殖及び炎症誘発性サイトカインの産生を阻害することによってT細胞の機能を直接制御する。シグレック−15は、骨髄細胞を介してT細胞の機能に間接的に影響を及ぼす。腫瘍細胞またはM2マクロファージに発現するシグレック−15は、骨髄細胞上の結合パートナーと相互作用して生存及び分化のシグナルをもたらし、TNF−α、IL−6、及びIL−1βを産生する独特な骨髄細胞集団を生じる。分泌されたサイトカインは、腫瘍増殖をさらに促進する。骨髄細胞のこのサブセットは、T細胞におけるIFN−γの産生を低減させることによってT細胞の機能に影響を及ぼし得る。
【0073】
ヒトシグレック−15のアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、例えば以下が含まれる。
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:1)、UniProtKB−Q6ZMC9(SIG15_HUMAN)(これは、その全体が参照により明確に組み込まれている)。
【0074】
ヒトシグレック−15は、SEQ ID NO:1の1〜19番目のアミノ酸であるシグナルペプチド配列、SEQ ID NO:1の20〜263番目のアミノ酸である細胞外ドメイン(太字及び斜字体の文字で示す)、SEQ ID NO:1の264〜284番目のアミノ酸である膜貫通ドメイン、及びSEQ ID NO:1の285〜328番目のアミノ酸である細胞質ドメインを含む。Ig様V型ドメインはSEQ ID NO:1の40〜158番目のアミノ酸(一重下線で示す)と予測され、Ig様C2型ドメインはSEQ ID NO:1の168〜251番目のアミノ酸(二重下線で示す)と予測される。ジスルフィド結合は64〜142番目の残基、95〜104番目の残基、及び187〜237番目の残基に形成されると考えられており、グリコシル化は172番目の残基で行われると予測される。276〜279番目のアミノ酸は、ポリロイシンドメインと呼ばれている。公知の変異体は、F273L置換変異体である。
【0075】
マウスシグレック−15のアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、例えば以下が含まれる。
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:2)、UniProtKB−A7E1W8(A7E1W8_MOUSE)(これは、その全体が参照により明確に組み込まれている)。
【0076】
マウスシグレック−15は、SEQ ID NO:2の1〜23番目のアミノ酸であるシグナルペプチド配列、SEQ ID NO:2の24〜262番目のアミノ酸(太字及び斜字体の文字で示す)である細胞外ドメイン、SEQ ID NO:2の263〜283番目のアミノ酸である膜貫通ドメイン、及びSEQ ID NO:2の284〜342番目のアミノ酸である細胞質ドメインを含む。Ig様V型ドメインはSEQ ID NO:2の40〜145番目のアミノ酸(一重下線で示す)と予測され、Ig様C2型ドメインはSEQ ID NO:2の169〜250番目のアミノ酸(二重下線で示す)と予測される。
【0077】
B.シグレック−15結合分子
シグレック−15結合分子、例えば、抗体及びそれらの抗原結合フラグメント、ならびにシグレック−15に結合する他のポリペプチドが提供される。マウス抗シグレック−15抗体に由来する重鎖及び軽鎖可変領域ならびにそれらのCDRの配列が以降に提供される。以降の配列の1つまたは複数を含む、抗体、抗原結合フラグメント、及び他のポリペプチド、ならびにそれらの変異体が提供される。例えば、シグレック−15に結合する、抗シグレック−15抗体軽鎖可変領域の1つ、2つ、もしくは3つのCDR、及び/または抗シグレック−15抗体重鎖可変領域の1つ、2つ、もしくは3つのCDRを含む、抗体、抗原結合フラグメント、及びポリペプチドが提供される。幾つかの実施形態では、抗体、抗原結合フラグメント、及びポリペプチドは、抗シグレック−15抗体の軽鎖可変領域、抗シグレック−15の重鎖可変領域、またはそれらの組み合わせを含み、シグレック−15に結合することができる。
【0078】
例えば、開示される分子は、シグレック−15(例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2など)に免疫特異的に結合することができる。例えば、
(I)細胞(好ましくは生細胞)の表面上に配列される;
(II)細胞(好ましくは生細胞)の表面上に内因性濃度で配列される;
(III)生細胞の表面上に配列され、シグレック−15(例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2など)と、Neu5Acα2−6GalNAcα、LRRC4C、シグレック−15対抗受容体(S15−CR)、もしくはそれらの組み合わせとの結合を調節する;
(IV)生細胞の表面上に配列され、TGF−βの分泌を低減させる、防止する、または阻害する;
(V)骨髄細胞、例えば、マクロファージもしくは樹状細胞、またはがん細胞(例えば、脳癌細胞、腎細胞癌細胞(RCC)、ユーイング肉腫細胞、乳癌細胞、または卵巣癌細胞)である、生細胞の表面上に配列される;
(VI)それらの組み合わせを行う、
ヒトシグレック−15に免疫特異的に結合することができる分子が提供される。
【0079】
1. マウス抗ヒトシグレック−15抗体配列
以降の実施例に説明するように、シグレック−15ノックアウトマウス(n=2)を、CFA(フロインド完全アジュバント)で乳化したhS15.mIg(マウスIgG2aと融合させたヒトシグレック15細胞外ドメイン[ECD])で免疫化して、マウス抗ヒトシグレック−15 mAbのパネルを作製した。
【0080】
本明細書で以下のように呼ばれる、24種類のハイブリドーマによって生成されるモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖可変領域の配列を以降に示す:1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A(NC6及び6番とも呼ばれる)、28A(NC28及び28番とも呼ばれる)、63A(NC63及び63番とも呼ばれる)、71A(NC71及び71番とも呼ばれる)、77A(NC77及び77番とも呼ばれる)、80A(NC80及び80番とも呼ばれる)、82B(NC82及び82番とも呼ばれる)、83B(NC83及び83番とも呼ばれる)、92A(NC92及び92番とも呼ばれる)、93B(NC93及び93番とも呼ばれる)、99B(NC99及び99番とも呼ばれる)、104B(NC104及び104番とも呼ばれる)、及び105A(NC105及び105番とも呼ばれる)。軽鎖及び重鎖配列に関して、CDRは下線を付し、太字で示す。配列及びCDRは、
図2A〜3Cのアラインメントにも示される。
【0081】
a.1B2配列:
i.軽鎖
1B2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:3)であり、この配列は、
1B2軽鎖CDR1:RSSQSIVHSNGNTYLE(SEQ ID NO:24)
1B2軽鎖CDR2:KVSNRFS(SEQ ID NO:32)
1B2軽鎖CDR3:FQGSHVPWT(SEQ ID NO:39)
を有する。
【0082】
1B2の軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:74)である。
【0083】
ii.重鎖
1B2の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:13)であり、この配列は、
1B2重鎖CDR1:GFTFSDYGMH(SEQ ID NO:46)
1B2重鎖CDR2:YISSGSSIIYYADTVKG(SEQ ID NO:56)
1B2重鎖CDR3:DHYHGNGSDY(SEQ ID NO:67)
を有する。
【0084】
1B2の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:85)である。
【0085】
b.1C3配列
i.軽鎖
1C3の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:4)であり、この配列は、
1C3軽鎖CDR1:RSSKSLLHSNGNTYLY(SEQ ID NO::25)
1C3軽鎖CDR2:RMSNLAS(SEQ ID NO:33)
1C3軽鎖CDR3:MQHLEYPYT(SEQ ID NO:40)
を有する。
【0086】
1C3軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:75)である。
【0087】
ii.重鎖
1C3の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:14)であり、この配列は、
1C3重鎖CDR1:GYIFTDYYVN(SEQ ID NO:47)
1C3重鎖CDR2:KIGPGSVSIYYNEKFKG(SEQ ID NO:57)
1C3重鎖CDR3:YYYGFAY(SEQ ID NO:68)
を有する。
【0088】
1C3の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:86)である。
【0089】
c.1H3配列
i.軽鎖
1H3の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:5)であり、この配列は、
1H3軽鎖CDR1:KASDHINNWLA(SEQ ID NO:26)
1H3軽鎖CDR2:GATSLET(SEQ ID NO:34)
1H3軽鎖CDR3:QQYWSSPLT(SEQ ID NO:41)
を有する。
【0090】
1H3軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:76)である。
【0091】
ii.ヒト化軽鎖
一実施形態は、以下の可変軽鎖アミノ酸配列
[この文献は図面を表示できません]
を有するヒト化抗シグレック−15抗体を提供し、この配列は、
1H3軽鎖CDR1:KASDHINNWLA(SEQ ID NO:26)
1H3軽鎖CDR2:GATSLET(SEQ ID NO:34)
1H3軽鎖CDR3:QQYWSSPLT(SEQ ID NO:41)
を有する。下線を付したアミノ酸は、親配列に対して変更されている。
【0092】
別の実施形態は、以下の可変軽鎖アミノ酸配列
[この文献は図面を表示できません]
を有するヒト化抗シグレック−15抗体を提供し、この配列は、
1H3軽鎖CDR1:KASDHINNWLA(SEQ ID NO:26)
1H3軽鎖CDR2:GATSLET(SEQ ID NO:34)
1H3軽鎖CDR3:QQYWSSPLT(SEQ ID NO:41)
を有する。下線を付したアミノ酸は、親配列に対して変更されている。
【0093】
さらに別の実施形態は、以下の可変軽鎖アミノ酸配列
[この文献は図面を表示できません]
を有するヒト化抗シグレック−15抗体を提供し、この配列は、
1H3軽鎖CDR1:KASDHINNWLA(SEQ ID NO:26)
1H3軽鎖CDR2:GATSLET(SEQ ID NO:34)
1H3軽鎖CDR3:QQYWSSPLT(SEQ ID NO:41)
を有する。下線を付したアミノ酸は、親配列に対して変更されている。
【0094】
iii.重鎖
1H3の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:15)であり、この配列は、
1H3重鎖CDR1:NYGVH(SEQ ID NO:48)
1H3重鎖CDR2:LIWSDGSTTYNSALKS(SEQ ID NO:58)
1H3重鎖CDR3:HPYDDYSGYYYTMDY(SEQ ID NO:69)
を有する。
【0095】
1H3の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:87)である。
【0096】
iv.ヒト化重鎖
一実施形態は、以下の可変重鎖アミノ酸配列
[この文献は図面を表示できません]
を有するヒト化抗シグレック−15抗体を提供し、この配列は、
1H3重鎖CDR1:NYGVH(SEQ ID NO:48)
1H3重鎖CDR2:LIWSDGSTTYNSALKS(SEQ ID NO:58)
1H3重鎖CDR3:HPYDDYSGYYYTMDY(SEQ ID NO:69)
を有する。下線を付したアミノ酸は、親配列に対して変更されている。
【0097】
別の実施形態は、以下の可変重鎖アミノ酸配列
[この文献は図面を表示できません]
を有するヒト化抗シグレック−15抗体を提供し、この配列は、
1H3重鎖CDR1:NYGVH(SEQ ID NO:48)
1H3重鎖CDR2:LIWSDGSTTYASALKS(SEQ ID NO:214)
1H3重鎖CDR3:HPYDDYSGYYYTMDY(SEQ ID NO:69).
を有する。下線を付したアミノ酸は、親配列に対して変更されている。
【0098】
さらに別の実施形態は、以下の可変重鎖アミノ酸配列
[この文献は図面を表示できません]
を有するヒト化抗シグレック−15抗体を提供し、この配列は、
1H3重鎖CDR1:NYGVH(SEQ ID NO:48)
1H3重鎖CDR2:LIWSDGSTTYNPSLKS(SEQ ID NO:224)
1H3重鎖CDR3:HPYDDYSGYYYTMDY(SEQ ID NO:69)
を有する。下線を付したアミノ酸は、親配列に対して変更されている。
【0099】
別の実施形態は、以下の可変重鎖アミノ酸配列
[この文献は図面を表示できません]
を有するヒト化抗シグレック−15抗体を提供し、この配列は、
1H3重鎖CDR1:NYGVH(SEQ ID NO:48)
1H3重鎖CDR2:LIWSEGSTTYASALKS(SEQ ID NO:217)
1H3重鎖CDR3:HPYDDYSGYYYTMDY(SEQ ID NO:69)
を有する。
【0100】
d.1C12配列:
i.軽鎖
1C12軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:3)であり、この配列は、
1C12軽鎖CDR1:RSSQSIVHSNGNTYLE(SEQ ID NO:24)
1C12軽鎖CDR2:KVSNRFS(SEQ ID NO:32)
1C12軽鎖CDR3:FQGSHVPWT(SEQ ID NO:39)
を有する。
【0101】
1C12軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:77)である。
【0102】
ii.重鎖
1C12の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:16)であり、この配列は、
1C12重鎖CDR1:GFSFSDYGMH(SEQ ID NO:49)
1C12重鎖CDR2:YISSGSSILYYADIVK(SEQ ID NO:59)
1C12重鎖CDR3:DHYHGNGSDY(SEQ ID NO:67)
を有する。
【0103】
1C12の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:88)である。
【0104】
e.3H10配列
i.軽鎖
3H10の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:6)であり、この配列は、
3H10軽鎖CDR1:SASSSTSFMH(SEQ ID NO:27)
3H10軽鎖CDR2:DTSKLA(SEQ ID NO:35)
3H10軽鎖CDR3:HQRSAYPWT(SEQ ID NO:42)
を有する。
【0105】
3H10の軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:78)である。
【0106】
ii.重鎖
3H10の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:17)であり、この配列は、
3H10重鎖CDR1:GFNIKDYYMH(SEQ ID NO:50)
3H10重鎖CDR2:RIDPEDGDIEYDPKFQG(SEQ ID NO:60)
3H10重鎖CDR3:DYDYDGGWFAY(SEQ ID NO:70)
を有する。
【0107】
3H10重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:89)である。
【0108】
f.5G12配列
i.軽鎖
5G12の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:7)であり、この配列は、
5G12軽鎖CDR1:KASQDINSYLS(SEQ ID NO:28)
5G12軽鎖CDR2:RANRLVD(SEQ ID NO:36)
5G12軽鎖CDR3:LQYDEFPYT(SEQ ID NO:43)
を有する。
【0109】
5G12軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:79)である。
【0110】
ii.重鎖
5G12の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:18)であり、この配列は、
5G12重鎖CDR1:GYTFTSYWIT(SEQ ID NO:51)
5G12重鎖CDR2:DIYCGSDTMHYNEKFKN(SEQ ID NO:61)
5G12重鎖CDR3:WWDYGSSYDYFDY(SEQ ID NO:71)
を有する。
【0111】
5G12の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:90)である。
【0112】
g.6F8配列
i.軽鎖
6F8の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:8)であり、この配列は、
6F8軽鎖CDR1:RSSKSLLHSNGNTYLY(SEQ ID NO:25)
6F8軽鎖CDR2:RMSNLAS(SEQ ID NO:33)
6F8軽鎖CDR3:MQHLEYPYT(SEQ ID NO:40)
を有する。
【0113】
6F8の軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:80)である。
【0114】
ii.重鎖
6F8の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:19)であり、この配列は、
6F8重鎖CDR1:GYTFTDYYVN(SEQ ID NO:52)
6F8重鎖CDR2:KIGPGSVSIYYNEKFKD(SEQ ID NO:62)
6F8重鎖CDR3:YYYGFAY(SEQ ID NO:68)
を有する。
【0115】
6F8の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:91)である。
【0116】
h.8C8配列
i.軽鎖
8C8軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:9)であり、この配列は、
8C8軽鎖CDR1:RSSKSLLHSNGNTYLY(SEQ ID NO:25)
8C8軽鎖CDR2:RMSNLAS(SEQ ID NO:33)
8C8軽鎖CDR3:MQHLEYPYT(SEQ ID NO:40)
を有する。
【0117】
8C8の軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:81)である。
【0118】
ii.重鎖
8C8の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:20)であり、この配列は、
8C8重鎖CDR1:GYTFTDYYVN(SEQ ID NO:52)
8C8重鎖CDR2:KIGPESVSIYYSEKFKA(SEQ ID NO:63)
8C8重鎖CDR3:YYYGFAY(SEQ ID NO:68)
を有する。
【0119】
8C8の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:92)である。
【0120】
i.8H8配列
i.軽鎖
8H8軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:10)であり、この配列は、
8H8軽鎖CDR1:RSSSGAVTTGNFAN(SEQ ID NO:29)
8H8軽鎖CDR2:GTNNRAP(SEQ ID NO:37)
8H8軽鎖CDR3:ALWYSNHWV(SEQ ID NO:44)
を有する。
【0121】
8H8の軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:82)である。
【0122】
ii.重鎖
8H8の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:21)であり、この配列は、
8H8重鎖CDR1:GFTFSGFWMS(SEQ ID NO:53)
8H8重鎖CDR2:DINSDGSAINYAPSIKD(SEQ ID NO:64)
8H8重鎖CDR3:YDDYGYFDV(SEQ ID NO:72)
を有する。
【0123】
8H8の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:93)である。
【0124】
j.9A5配列
i.軽鎖
9A5の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:11)であり、この配列は、
9A5軽鎖CDR1:KSSQSLLDSDGKTYLN(SEQ ID NO:30)
9A5軽鎖CDR2:LVSKLDS(SEQ ID NO:38)
9A5軽鎖CDR3:WQGTHFPFT(SEQ ID NO:45)
を有する。
【0125】
9A5の軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:83)である。
【0126】
ii.重鎖
9A5の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:22)であり、この配列は、
9A5重鎖CDR1:GYTFTSYGLI(SEQ ID NO:54)
9A5重鎖CDR2:EIYPRSGNTYYNEKFKG(SEQ ID NO:65)
9A5重鎖CDR3:SSPHGDY(SEQ ID NO:73)
を有する。
【0127】
9A5の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:94)である。
【0128】
k.10G9配列
i.軽鎖
10G9の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:12)であり、この配列は、
10G9軽鎖CDR1:RSSTGAVTTSNYAN(SEQ ID NO:31)
10G9軽鎖CDR2:GTNNRAP(SEQ ID NO:37)
10G9軽鎖CDR3:ALWYSNHWV(SEQ ID NO:44)
を有する。
【0129】
10G9の軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:84)である。
【0130】
ii.重鎖
10G9の重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:23)であり、この配列は、
10G9重鎖CDR1:GFTFSDFWMS(SEQ ID NO:55)
10G9重鎖CDR2:DINSDGSAVNYAPSIKD(SEQ ID NO:66)
10G9重鎖CDR3:YDDYGYFDV(SEQ ID NO:72)
を有する。
【0131】
10G9の重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:95)である。
【0132】
I.6A配列
i.軽鎖
6Aの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:96)であり、この配列は、
6A軽鎖CDR1:RSSQSIVHSNGNTYLE(SEQ ID NO:24)
6A軽鎖CDR2:KVSNRFS(SEQ ID NO:32)
6A軽鎖CDR3:FQGSHVPLT(SEQ ID NO:157)
を有する。
【0133】
6Aの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:120)である。
【0134】
ii.重鎖
6Aの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:108)であり、この配列は、
6A重鎖CDR1:DDYMH(SEQ ID NO:162)
6A重鎖CDR2:CIDPENGDTEYASKFQD(SEQ ID NO:170)
6A重鎖CDR3:YVGFAY(SEQ ID NO:182)
を有する。
【0135】
6Aの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:133)である。
【0136】
m.28A配列
i.軽鎖
28Aの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:97)であり、この配列は、
28A軽鎖CDR1:KSSQSLLDSDGKTYLN(SEQ ID NO:30)
28A軽鎖CDR2:LVSELDS(SEQ ID NO:153)
28A軽鎖CDR3:WQGTHFPFT(SEQ ID NO:45)
を有する。
【0137】
28Aの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:121)である。
【0138】
ii.重鎖
28Aの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:109)であり、この配列は、
28A重鎖CDR1:SYGIT(SEQ ID NO:163)
28A重鎖CDR2:EIHPRSGNTYYNENFKD(SEQ ID NO:171)
28A重鎖CDR3:GGPGDY(SEQ ID NO:183)
を有する。
【0139】
28Aの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:134)である。
【0140】
n.63A配列
i.軽鎖
63Aの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:98)であり、この配列は、
63A軽鎖CDR1:KSSQSLLDSDGKTYLN(SEQ ID NO:30)
63A軽鎖CDR2:LVSKLDS(SEQ ID NO:38)
63A軽鎖CDR3:WQGTHFPFT(SEQ ID NO:45)
を有する。
【0141】
63Aの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:122)である。
【0142】
ii.重鎖
63Aの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:110)であり、この配列は、
63A重鎖CDR1:SYGIS(SEQ ID NO:164)
63A重鎖CDR2:QIYPRSDNTYYNERFKGK(SEQ ID NO:172)
63A重鎖CDR3:EGGPDY(SEQ ID NO:184)
を有する。
【0143】
63Aの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:135)である。
【0144】
o.71A配列
i.軽鎖
71Aの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:99)であり、この配列は、
71A軽鎖CDR1:RSSQSIVHSNGNTYLE(SEQ ID NO:24)
71A軽鎖CDR2:KVSNRFS(SEQ ID NO:32)
71A軽鎖CDR3:FQGSHVPLT(SEQ ID NO:157)
を有する。
【0145】
71Aの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:123)である。
【0146】
ii.重鎖
71Aの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:111)であり、この配列は、
71A重鎖CDR1:DDYMH(SEQ ID NO:162)
71A重鎖CDR2:CIDPENGDIEYASRFQG(SEQ ID NO:173)
71A重鎖CDR3:YVGFGY(SEQ ID NO:185)
を有する。
【0147】
71Aの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:136)である。
【0148】
p.77A配列
i.軽鎖
77Aの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:100)であり、この配列は、
77A軽鎖CDR1:RSSQNIVHSNGNTYLE(SEQ ID NO:146)
77A軽鎖CDR2:KVSNRFS(SEQ ID NO:32)
77A軽鎖CDR3:FQGSHVPLT(SEQ ID NO:157)
を有する。
【0149】
77Aの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:124)である。
【0150】
ii.重鎖
77Aの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:112)であり、この配列は、
77A重鎖CDR1:DDYMH(SEQ ID NO:162)
77A重鎖CDR2:CIDPENGDTEYASKFQG(SEQ ID NO:174)
77A重鎖CDR3:YVGFGY(SEQ ID NO:185)
を有する。
【0151】
77Aの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:137)である。
【0152】
q.80A配列
i.軽鎖
80Aの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:101)であり、この配列は、
80A軽鎖CDR1:KSNQSLLNSGDQKNYLT(SEQ ID NO:147)
80A軽鎖CDR2:WASTRES(SEQ ID NO:154)
80A軽鎖CDR3:QNDYSYPLT(SEQ ID NO:158)
を有する。
【0153】
80Aの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:125)である。
【0154】
ii.重鎖
80Aの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:113)であり、この配列は、
80A重鎖CDR1:DFYIN(SEQ ID NO:165)
80A重鎖CDR2:RIYPGSDETYYNEKFKD(SEQ ID NO:175)
80A重鎖CDR3:WFFDV(SEQ ID NO:186)
を有する。
【0155】
80Aの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:138)である。
【0156】
r.82B配列
i.軽鎖
82Bの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:102)であり、この配列は、
82B軽鎖CDR1:KSSQSLLDSDGNTYLN(SEQ ID NO:148)
82B軽鎖CDR2:LVSELDS(SEQ ID NO:153)
82B軽鎖CDR3:WQGTHFPFT(SEQ ID NO:45)
を有する。
【0157】
82Bの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:126)である。
【0158】
ii.重鎖
82Bの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:114)であり、この配列は、
82B重鎖CDR1:SDGIT(SEQ ID NO:166)
82B重鎖CDR2:QIHPRSGNTYYNGKFKG(SEQ ID NO:176)
82B重鎖CDR3:TGTGDY(SEQ ID NO:187)
を有する。
【0159】
82Bの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:139)である。
【0160】
s.83B配列
i.軽鎖
83Bの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:103)であり、この配列は、
83B軽鎖CDR1:QATQDIVKNLN(SEQ ID NO:149)
83B軽鎖CDR2:YATELAE(SEQ ID NO:155)
83B軽鎖CDR3:LQFYEFPYT(SEQ ID NO:159)
を有する。
【0161】
83Bの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:127)である。
【0162】
ii.重鎖
83Bの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:115)であり、この配列は、
83B重鎖CDR1:DYNMH(SEQ ID NO:167)
83B重鎖CDR2:YINPNNGGTSYNQKFKD(SEQ ID NO:177)
83B重鎖CDR3:SDWEDC(SEQ ID NO:188)
を有する。
【0163】
83Bの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:140)である。
【0164】
t.92A配列
i.軽鎖
92Aの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:104)であり、この配列は、
92A軽鎖CDR1:SASSSVSYMH(SEQ ID NO:150)
92A軽鎖CDR2:RTSNLAS(SEQ ID NO:156)
92A軽鎖CDR3:HQWSSWT(SEQ ID NO:160)
を有する。
【0165】
92Aの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:128)である。
【0166】
ii.重鎖
92Aの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:116)であり、この配列は、
92A重鎖CDR1:SGYYWN(SEQ ID NO:168)
92A重鎖CDR2:YIRHDGSNNYNPSLKN(SEQ ID NO:178)
92A重鎖CDR3:EIYDGSSGYFDVWGT(SEQ ID NO:189)
を有する。
【0167】
92Aの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:141)である。
【0168】
u.93B配列
i.軽鎖
93Bの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:105)であり、この配列は、
93B軽鎖CDR1:KSSQSLLNSGNQKNYLT(SEQ ID NO:151)
93B軽鎖CDR2:WASTRES(SEQ ID NO:154)
93B軽鎖CDR3:QNDYSFPFT(SEQ ID NO:161)
を有する。
【0169】
93Bの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:129)である。
【0170】
ii.重鎖
93Bの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:117)であり、この配列は、
93B重鎖CDR1:DYYIN(SEQ ID NO:169)
93B重鎖CDR2:RIYPGNGNTDYNEKFKD(SEQ ID NO:179)
93B重鎖CDR3:WYFDV(SEQ ID NO:190)
を有する。
【0171】
93Bの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:142)である。
【0172】
v.99B配列
i.軽鎖
99Bの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:106)であり、この配列は、
99B軽鎖CDR1:KSSQSLLDSDGKTYLN(SEQ ID NO:30)
99B軽鎖CDR2:LVSKLDS(SEQ ID NO:38)
99B軽鎖CDR3:WQGTHFPFT(SEQ ID NO:45)
を有する。
【0173】
99Bの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:130)である。
【0174】
ii.重鎖
99Bの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:118)であり、この配列は、
99B重鎖CDR1:SDGIT(SEQ ID NO:166)
99B重鎖CDR2:QIHPRSGNTYYNEKFKG(SEQ ID NO:180)
99B重鎖CDR3:TGTGDY(SEQ ID NO:187)
を有する。
【0175】
99Bの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:143)である。
【0176】
w.104B配列
i.軽鎖
104Bの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:107)であり、この配列は、
104B軽鎖CDR1:KSSLSLLDSDGKTYLN(SEQ ID NO:152)
104B軽鎖CDR2:LVSKLDS(SEQ ID NO:38)
104B軽鎖CDR3:WQGTHFPFT(SEQ ID NO:45)
を有する。
【0177】
104Bの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:131)である。
【0178】
ii.重鎖
104Bの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:119)であり、この配列は、
104B重鎖CDR1:SYGIS(SEQ ID NO:164)
104B重鎖CDR2:QIHPRSGNTYYNENFKG(SEQ ID NO:181)
104B重鎖CDR3:EGGPDY(SEQ ID NO:184)
を有する。
【0179】
104Bの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:144)である。
【0180】
x.105A配列
i.軽鎖
105Aの軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:99)であり、この配列は、
105A軽鎖CDR1:RSSQSIVHSNGNTYLE(SEQ ID NO:24)
105A軽鎖CDR2:KVSNRFS(SEQ ID NO:32)
105A軽鎖CDR3:FQGSHVPLT(SEQ ID NO:157)
を有する。
【0181】
105Aの軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:132)である。
【0182】
ii.重鎖
105Aの重鎖可変領域アミノ酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:111)であり、この配列は、
105A重鎖CDR1:DDYMH(SEQ ID NO:162)
105A重鎖CDR2:CIDPENGDIEYASRFQG(SEQ ID NO:173)
105A重鎖CDR3:YVGFGY(SEQ ID NO:185)
を有する。
【0183】
105Aの重鎖可変領域をコードする核酸配列は、
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:145)である。
【0184】
2.抗シグレック−15抗体及びその抗原結合フラグメント
1つまたは複数のシグレック−15ポリペプチドもしくは融合タンパク質、またはそのフラグメントもしくは変異体に結合する、抗体及びその抗原結合フラグメントを含めたシグレック−15結合分子が開示される。本明細書に開示される抗体は、典型的には、シグレック−15ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは融合物に存在するエピトープに結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。幾つかの実施形態では、該抗体は立体構造エピトープに結合する。幾つかの実施形態では、該抗体は線状エピトープに結合する。線状エピトープは、4、5、6、7、8、9、10、11個、またはそれ以上の長さの連続するアミノ酸であり得る。エピトープは1つまたは複数の非アミノ酸エレメント、翻訳後修飾、またはそれらの組み合わせを含み得る。翻訳後修飾の例として、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、シトルリン化、及びユビキチン化が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、該抗体は、1つまたは複数の糖基によって少なくとも部分的に形成されるエピトープに結合することができる。
【0185】
該抗体またはその抗原結合フラグメントは、内因性シグレック−15ポリペプチド、もしくは組換えシグレック−15ポリペプチド、またはそれらの組み合わせに存在するエピトープに結合することができる。幾つかの実施形態では、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、シグレック−15の細胞外ドメインもしくはそのフラグメント、またはそれらから形成されるエピトープに結合する。幾つかの実施形態では、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、シグレック−15が1つまたは複数のそのリガンドに結合するのを低減させるもしくは防止する、シグレック−15によって調節される細胞内シグナル伝達を低減させる、またはそれらの組み合わせを行う機能阻止抗体である。
【0186】
上で考察したように、シグレック−15は、シアル酸付加された糖タンパク質に結合し、Neu5Acα2−6GalNAcα構造を優先的に認識する。以降に示す実施例は、シグレック−15がロイシンリッチリピート含有タンパク質4C(LRRC4C)(ネトリン−G1リガンド、及びNGL−1とも呼ばれる)(これは、Neu5Acα2−6GalNAcα構造に依存することも依存しないこともある)に結合することを例示している。LRRC4Cの核酸及びポリペプチド配列は当技術分野で公知であり、例えば、以下を含む:
[この文献は図面を表示できません]
(SEQ ID NO:192、UniProtKB−Q9HCJ2LRC4C_HUMAN(これは、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれている))。
【0187】
シグレック−15は、T細胞などの免疫細胞上の対抗受容体(S15−CR)に結合し得る。
【0188】
よって、幾つかの実施形態では、機能阻止(拮抗性)シグレック−15結合分子は、シグレック−15とそのリガンド、例えば、Neu5Acα2−6GalNAcα構造、LRRC4C、またはシグレック−15対抗受容体を有する糖タンパク質との間の相互作用を低減させる、阻止する、または防止する。
【0189】
幾つかの実施形態では、該抗体またはその抗原結合フラグメントがシグレック−15に結合すると、免疫活性化の増大、免疫抑制の低減、またはそれらの組み合わせが可能となる。例えば、特定の実施形態では、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、シグレック−15のIg様V型ドメインまたはIg様C2型ドメインに結合する。幾つかの実施形態では、エピトープは、シグレック−15のシアル酸結合部位を含む(例えば、エピトープは、SEQ ID NO:1の残基143を含む)。
【0190】
幾つかの実施形態では、該抗体は、モノクローナル抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、または105Aと同じエピトープの一部または全部に結合する。該エピトープは、線状エピトープまたは立体構造エピトープであり得る。幾つかの実施形態では、該抗体は、モノクローナル抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、または105Aと同じエピトープ特異性を有する。これは、モノクローナル抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、または105Aと同じパラトープを含有する組換え抗体を生成することによって実現することができる。幾つかの実施形態では、シグレック−15結合分子は、マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、または105Aのいずれかの軽鎖CDRの一部もしくは全部、軽鎖可変領域全体、重鎖CDRの一部もしくは全部、重鎖可変領域全体、またはそれらの組み合わせを含む。
【0191】
シグレック−15結合分子は、上に列挙したクローンのCDRのアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一なCDRを含むことができ、シグレック−15への免疫特異的な結合を呈する。
【0192】
例えば、開示される分子は、SEQ ID NO:24〜45及び146〜161のいずれかのアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つまたは複数を含むことができる。該分子は少なくとも、1つの軽鎖CDR1、1つの軽鎖CDR2、及び1つの軽鎖CDR3を含むことができる。例えば、該分子は、SEQ ID NO:24〜31及び146〜152からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1を含むことができる。該分子は、SEQ ID NO:32〜38及び153〜156からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2を含むことができる。該分子は、SEQ ID NO:39〜45及び157〜161からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含むことができる。
【0193】
特定の実施形態では、該分子は、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、及び軽鎖CDR3を含み、ここで、該軽鎖CDR1、該軽鎖CDR2、及び該軽鎖CDR3は、以下のアミノ酸配列を含む:
[この文献は図面を表示できません]
【0194】
開示される分子は、SEQ ID NO:46〜73及び162〜190のいずれかのアミノ酸配列を含む重鎖CDRの1つまたは複数を含むことができる。該分子は少なくとも、1つの重鎖CDR1、1つの重鎖CDR2、及び1つの重鎖CDR3を含むことができる。該分子は、SEQ ID NO:46〜55及び162〜169からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1を含むことができる。該分子は、SEQ ID NO:56〜66及び170〜181からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2を含むことができる。該分子は、SEQ ID NO:67〜73及び182〜190からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含むことができる。
【0195】
特定の実施形態では、該分子は、重鎖CDR1、重鎖CDR2、及び重鎖CDR3を含み、ここで、該重鎖CDR1、該重鎖CDR2、及び該重鎖CDR3は、以下のアミノ酸配列を含む:
[この文献は図面を表示できません]
【0196】
シグレック−15結合分子は、上のクローンのいずれかによって産生される抗体の可変重鎖及び/または軽鎖のアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一な可変重鎖及び/または可変軽鎖のアミノ酸配列を含むことができ、ヒトシグレック−15への免疫特異的な結合を呈する。
【0197】
例えば、開示されるシグレック−15結合分子は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、もしくは107のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、もしくは107に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を含むそれらの変異体を有する軽鎖可変領域を含むことができ、シグレック−15への免疫特異的な結合を呈する。
【0198】
追加的にまたは代替的に、開示されるシグレック−15結合分子は、SEQ ID NO:13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、もしくは119のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、もしくは119に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を含むそれらの変異体を有する重鎖可変領域を含むことができ、シグレック−15への免疫特異的な結合を呈する。
【0199】
シグレック−15結合分子は、1つ、2つ、または3つの軽鎖CDR、及び1つ、2つ、または3つの重鎖CDR(例えば、幾つかの実施形態では、3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDR)を含む免疫グロブリン分子(例えば、抗体、ダイアボディ、融合タンパク質など)であることができ、ここで、該軽鎖CDRには、以下が含まれる:
(1)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の軽鎖CDR1;
(2)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の軽鎖CDR2;
(3)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の軽鎖CDR3;
(4)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、軽鎖CDR1及び軽鎖CDR2;
(5)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、軽鎖CDR1及び軽鎖CDR3;
(6)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3;
あるいは
(7)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、及び軽鎖CDR3。
【0200】
該分子は、1つ、2つ、または3つの軽鎖CDR、及び1つ、2つ、または3つの重鎖CDR(例えば、幾つかの実施形態では、3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDR)を含む免疫グロブリン分子であることができ、ここで、該重鎖CDRには、以下が含まれる:
(1)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の重鎖CDR1;
(2)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の重鎖CDR2;
(3)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の重鎖CDR3;
(4)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、重鎖CDR1及び重鎖CDR2;
(5)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、重鎖CDR1及び重鎖CDR3;
(6)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、重鎖CDR2及び重鎖CDR3;
あるいは
(7)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、重鎖CDR1、重鎖CDR2、及び重鎖CDR3。
【0201】
該分子は、1つ、2つ、または3つの軽鎖CDR、及び1つ、2つ、または3つの重鎖CDR(例えば、幾つかの実施形態では、3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDR)を含む免疫グロブリン分子であることができ、ここで、該軽鎖CDRには、以下が含まれ:
(1)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の軽鎖CDR1;
(2)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の軽鎖CDR2;
(3)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の軽鎖CDR3;
(4)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、軽鎖CDR1及び軽鎖CDR2;
(5)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、軽鎖CDR1及び軽鎖CDR3;
(6)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3;
あるいは
(7)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、及び軽鎖CDR3、
該重鎖CDRには、以下が含まれる:
(1)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の重鎖CDR1;
(2)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の重鎖CDR2;
(3)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の重鎖CDR3;
(4)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、重鎖CDR1及び重鎖CDR2;
(5)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、重鎖CDR1及び重鎖CDR3;
(6)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、重鎖CDR2及び重鎖CDR3;
あるいは
(7)マウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのヒト化変異体の、重鎖CDR1、重鎖CDR2、及び重鎖CDR3。
【0202】
例えば、抗体は、マウス1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105A、またはそれらのキメラ抗体、またはマウス抗ヒトシグレック−15抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、もしくは105AのCDR(複数可)に相当するCDR(複数可)を有するヒト化変異体のCDRのうちの1つまたは複数を有することができる。
【0203】
一実施形態は、SEQ ID NO:227、228、及び229からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、もしくは100%同一な可変軽鎖アミノ酸配列、及び/またはSEQ ID NO:230、231、233、及び235からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、もしくは100%同一な可変重鎖アミノ酸配列を有する、ヒト化モノクローナル抗体を提供する。
【0204】
3.抗体組成物
開示されるシグレック−15結合分子は、抗体またはその抗原結合フラグメントであり得る。開示される抗体及びその抗原結合フラグメントには、任意のクラスの免疫グロブリン全体(すなわち、インタクトな抗体)、そのフラグメント、及び抗体の少なくとも抗原結合可変ドメインを含有する合成タンパク質が含まれる。幾つかの実施形態では、開示される分子は、抗体の軽鎖と、抗体の重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含有する。他の実施形態では、かかる分子は、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCH4領域の1つまたは複数をさらに含むことができる(とりわけ、CH1及びヒンジ領域、またはCH1、ヒンジ、及びCH2領域、またはCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3領域)。抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含めた免疫グロブリンの任意のクラスから、ならびにIgG
1、IgG
2、IgG
3、及びIgG
4を含めた任意のアイソタイプから選択することができる。幾つかの実施形態では、定常ドメインは、抗体が細胞傷害活性を呈することが所望される場合、補体結合定常ドメインであり、クラスは典型的にはIgG
1である。他の実施形態では、かかる細胞傷害活性が望ましくない場合、定常ドメインは、IgG
2またはIgG
4クラスのものであり得る。抗体は、2つ以上のクラスまたはアイソタイプからの配列を含むことができ、特定の定常ドメインを選択して所望のエフェクター機能を最適化することは、当技術分野における通常技術の範囲内である。
【0205】
可変ドメインは抗体間で配列が異なり、特定の抗体毎の、その特定の抗原に対する結合及び特異性において使用される。しかし、可変性は、通常、抗体の可変ドメインにわたって均等に分布していない。それは、典型的には、軽鎖及び重鎖の両可変ドメイン中の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのうち、より高度に保存されている部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々4つのFR領域を含み、FR領域は大部分がβシート構造を取り、βシート構造は、ループを形成する3つのCDRによって接続され、ループは、βシート構造を接続し、ある場合にはβシート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRは、FR領域によって互いに近接して保持され、他の鎖からのCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。
【0206】
生物活性を有する抗体のフラグメントも開示される。該フラグメントは、他の配列に結合しているか否かにかかわらず、非改変抗体または抗体フラグメントと比較してフラグメントの活性が相当に変化するまたは弱化されることがない限り、特定の領域または特異的なアミノ酸残基の挿入、欠失、置換、または他の選択された改変を含む。
【0207】
本開示の抗原タンパク質に特異的な一本鎖抗体の生成に、複数の技法を適合させることもできる。一本鎖抗体を生成するための方法は、当業者には周知である。一本鎖抗体は、短いペプチドリンカーを使用して重鎖及び軽鎖の可変ドメインを共に融合し、それによって単一分子上に抗原結合部位を再構成することによって作ることができる。一方の可変ドメインのC末端が15〜25個のアミノ酸ペプチドまたはリンカーを介して他方の可変ドメインのN末端に繋がれた一本鎖抗体可変フラグメント(scFv)が、抗原結合または結合の特異性を相当に撹乱することなく開発されている。リンカーは、重鎖と軽鎖とがそれらの適正な立体構造的配向で共に結合できるように選択される。
【0208】
2つのscFvを連結することによって二価一本鎖可変フラグメント(di−scFv)を作り出すことができる。これは、2つのVH及び2つのVL領域を有する単一のペプチド鎖を生成し、タンデムscFvを得ることによって行うことができる。scFvは、2つの可変領域を共に折り畳むには短過ぎるリンカーペプチド(約5個のアミノ酸)を用いて、scFvを強制的に二量体化させるように設計することもできる。このタイプは、ダイアボディとして公知である。ダイアボディは、相当するscFvより最大40倍低い解離定数を有することが示されており、これは、ダイアボディはその標的に対してはるかに高い親和性を有することを意味している。さらに短いリンカー(1個または2個のアミノ酸)は、三量体(三重特異性抗体、または三特異性抗体)の形成をもたらす。四重特異性抗体も生成されている。これは、その標的に対してダイアボディよりさらに高い親和性を呈する。
【0209】
モノクローナル抗体は、抗体の実質的に均質な、すなわち、抗体分子の小さい部分集団に存在し得る天然に存在する可能な変異を除き、集団内の個々の抗体が同一である集団から得られる。モノクローナル抗体には、「キメラ」抗体(重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の相当する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残部が、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の相当する配列と同一または相同である)、ならびに所望の拮抗活性を呈する限り、かかる抗体のフラグメントが含まれる。
【0210】
a.キメラ及びヒト化抗体
開示される配列及びその機能的変異体の1つまたは複数を含む、キメラ抗体及びその抗原結合フラグメントも提供される。
【0211】
キメラ抗体を生成するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、Morrison,1985,Science 229:1202;Oi et al.,1986,BioTechniques 4:214;Gillies et al.,1989,J.Immunol.Methods 125:191−202;及び米国特許第6,311,415号、第5,807,715号、第4,816,567号、及び4,816,397号を参照されたい。非ヒト種由来の1つまたは複数のCDRとヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを含むキメラ抗体は、例えば、CDR移植(EP239,400;国際公開第WO91/09967号;及び米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、及び第5,585,089号)、ベニアリングまたは再表面形成(resurfacing)(EP592,106;EP519,596;Padlan,1991,Molecular Immunology 28(4/5):489−498;Studnicka et al.,1994,Protein Engineering 7:805;ならびにRoguska et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:969)、及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含めた、当技術分野で公知の種々の技法を使用して生成することができる。
【0212】
開示される分子は、ヒトもしくはヒト化抗体、またはその抗原結合フラグメントであり得る。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、またはウサギに由来するもの)がヒトにおいて天然に抗原性であり、よって、ヒトに投与されると望ましくない免疫応答を引き起こし得る。したがって、本方法におけるヒトまたはヒト化抗体の使用は、ヒトに投与された抗体が望ましくない免疫応答を誘起する確率を下げるのに役立つ。
【0213】
免疫化時に内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の全レパートリーを産生する能力があるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を用いることができる。例えば、キメラ及び生殖細胞系列変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(J(H))遺伝子のホモ接合型欠失によって、内因性抗体の産生が完全に阻害されることが記載されている。かかる生殖細胞系列変異マウスにヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイを移入すると、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生をもたらすこととなる。
【0214】
任意で、抗体は他の種で作製され、ヒトにおける投与のために「ヒト化」される。ヒト化形態の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)
2、または抗体の他の抗原結合配列など)である。ヒト化抗体には、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種、例えば、マウス、ラット、またはウサギ(ドナー抗体)のCDRの残基によって置き換えられているものが含まれる。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、相当する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されるCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基も含有してもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、可変ドメインにおいてCDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域、の少なくとも一部も含有する。
【0215】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、欧州特許第EP239,400号、第EP592,106号、及び第EP519,596号;国際公開第WO91/09967号及び第WO93/17105号;米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、第5,565,332号、第5,585,089号、第5,766,886号、及び第6,407,213号;ならびにPadlan,1991,Molecular Immunology 28(4/5):489−498;Studnicka et al.,1994,Protein Engineering 7(6):805−814;Roguska et al.,1994,PNAS 91:969−973;Tan et al.,2002,J.Immunol.169:1119−1125;Caldas et al.,2000,Protein Eng.13:353−360;Morea et al.,2000,Methods 20:267−79;Baca et al.,1997,J.Biol.Chem.272:10678−10684;Roguska et al.,1996,Protein Eng.9:895−904;Couto et al.,1995,Cancer Res.55(23 Supp):5973s−5977s;Couto et al.,1995,Cancer Res.55:1717−22;Sandhu,1994,Gene 150:409−10;Pedersen et al.,1994,J.Mol.Biol.235:959−973;Jones et al.,1986,Nature 321:522−525;Reichmann et al.,1988,Nature 332:323−329;及びPresta,1992,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596)を参照されたい。
【0216】
一般に、ヒト化抗体は、非ヒトの供給源からそこに導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は「移入」残基と呼ばれることが多く、これは、典型的には、「移入」可変ドメインから取られる。抗体ヒト化技法は一般に、組換えDNA技術を使用して、抗体分子の1つまたは複数のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作することを含む。ヒト化は、本質的に、齧歯類のCDRまたはCDR配列でヒト抗体の相当する配列を置換することによって実施することができる。したがって、ヒト化形態の非ヒト抗体(またはそのフラグメント)は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が非ヒト種由来の相当する配列によって置換されている、キメラ抗体またはフラグメントである。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基及びことによると一部のFR残基が、齧歯類の抗体中の類似部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体である。
【0217】
ヒト化抗体の作製に使用しようとするヒト可変ドメイン(軽鎖と重鎖の両方)の選択は、抗原性を低減させるために極めて重要であり得る。「最良適合」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列が、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。齧歯類のものに一番近いヒト配列が、ヒト化抗体用のヒトフレームワーク(FR)として認められる。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークが、幾つかの異なるヒト化抗体に使用されてもよい。
【0218】
抗体が抗原に対する高親和性及び他の好適な生物学的特性を保持しながらヒト化されることが、さらに重要である。この目標を達成するために、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用する、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによって、ヒト化抗体を調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者には熟知されている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体構造を図で表示することが可能なコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べれば、候補免疫グロブリン配列が機能する際に残基が果たすと考えられる役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原(複数可)に対する増大した親和性などの所望の抗体特性が実現されるように、FR残基をコンセンサス及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことにおいて、直接的に、また最も実質的に関与する。
【0219】
ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体誘導体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことができ、可変ドメインにおいてCDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものに相当し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。かかる抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域、の少なくとも一部分も含有する。かかる抗体の定常ドメインは、提示する抗体の機能、特に必要とされ得るエフェクター機能に関して選択することができる。幾つかの実施形態では、かかる抗体の定常ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMドメインであるか、またはそれらを含み得る。特定の実施形態では、ヒト化抗体誘導体が治療用途用であることが意図され、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性などの抗体エフェクター機能が必要とされるとき、ヒトIgG定常ドメイン、とりわけIgG1及びIgG3アイソタイプのヒトIgG定常ドメインが使用される。代替実施形態では、抗体が治療を目的とすることが意図され、抗体エフェクター機能が必要とされないとき、IgG2及びIgG4アイソタイプが使用される。抗体エフェクター機能を変化させる1つまたは複数のアミノ酸修飾を含むFc定常ドメイン、例えば米国特許出願公開第2005/0037000号及び第2005/0064514号に開示されるもの。
【0220】
ヒト化抗体のフレームワーク及びCDR領域は、親配列に正確に相当する必要はなく、例えば、ドナーCDRまたはコンセンサスフレームワークを少なくとも1つの残基の置換、挿入、もしくは欠失によって変異させて、その部位のCDRまたはフレームワーク残基がコンセンサスもしくはドナー抗体のいずれにも相当しないようにすることができる。幾つかの実施形態では、かかる変異は広範なものではない。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、より多くの場合90%、または95%超が、親フレームワーク領域(FR)及びCDR配列のものに相当する。ヒト化抗体は、当技術分野で公知の様々な技法を使用して生成することができ、そうした技法として、CDR移植(欧州特許第EP239,400号;国際公開第WO91/09967号;ならびに米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、及び第5,585,089号)、ベニアリングまたは再表面形成(欧州特許第EP592,106号及び第EP519,596号;Padlan,1991,Molecular Immunology 28(4/5):489−498;Studnicka et al.,1994,Protein Engineering 7(6):805−814;及びRoguska et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.91:969−973)、鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)、ならびに、例えば、米国特許第6,407,213号、第5,766,886号、第5,585,089号、国際公開第WO9317105号、Tan et al.,2002,J.Immunol.169:1119−25、Caldas et al.,2000,Protein Eng. 13:353−60、Morea et al.,2000,Methods 20:267−79、Baca et al.,1997,J.Biol.Chem.272:10678−84、Roguska et al.,1996,Protein Eng.9:895−904、Couto et al.,1995,Cancer Res.55(23 Supp):5973s−5977s、Couto et al.,1995,Cancer Res.55:1717−22、Sandhu,1994,Gene 150:409−10、Pedersen et al.,1994,J.Mol.Biol.235:959−73、Jones et al.,1986,Nature 321:522−525、Riechmann et al.,1988,Nature 332:323、及びPresta,1992,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596に開示される技法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0221】
多くの場合、フレームワーク領域中のフレームワーク残基は、抗原結合を変化させるように、例えば向上させるように、CDRドナー抗体からの対応する残基で置換される。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法によって特定され、例えば、CDRとフレームワーク残基との相互作用のモデリングを行って抗原結合に重要なフレームワーク残基を特定することによって、及び配列比較を行って特定の位置の特殊なフレームワーク残基を特定することによって特定される。(例えば、Queen et al.,米国特許第5,585,089号;米国特許出願公開第2004/0049014号及び第2003/0229208号;米国特許第6,350,861号;第6,180,370号;第5,693,762号;第5,693,761号;第5,585,089号;及び第5,530,101号、ならびにRiechmann et al.,1988,Nature 332:323を参照されたい)。
【0222】
開示されるマウス抗ヒトシグレック−15抗体のヒト、キメラ、またはヒト化誘導体は、ヒトにおけるインビボでの方法に使用することができる。マウス抗体または他の種の抗体は、有利なことに多くの用途に用いることができる(例えば、インビトロまたはインサイツでの検出アッセイ、急性インビボ用途など)。かかるヒトまたはヒト化抗体は、1つまたは複数の非ヒトCDR中にアミノ酸残基の置換、欠失、または付加を含み得る。ヒト化抗体誘導体は、非誘導体ヒト化抗体と比較したときに、実質的に同じ結合、より強い結合、またはより弱い結合を有し得る。特定の実施形態では、CDRの1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が置換、欠失、または付加されている(すなわち変異されている)。完全ヒト抗体は、ヒト対象の療法的治療に特に望ましい。
【0223】
かかるヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ法を含めた、当技術分野で公知の種々の方法によって作製することができる(米国特許第4,444,887号及び第4,716,111号;ならびに国際公開第WO98/46645号、第WO98/50433号、第WO98/24893号、第WO98/16654号、第WO96/34096号、第WO96/33735号、及び第WO91/10741号を参照されたい)。かかるヒト抗体は、機能性の内因性免疫グロブリンを発現する能力はないがヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して生成することができる。
【0224】
例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、マウス胚性幹細胞内にランダムにまたは相同組換えによって導入することができる。あるいは、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域をマウス胚性幹細胞内に導入することができる。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別に、または同時に非機能性にすることができる。特に、J
H領域のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生を防止する。改変された胚性幹細胞を増殖させ、胚盤胞内にマイクロインジェクションして、キメラマウスを生成する。次いでキメラマウスを交配して、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を生成する。このトランスジェニックマウスを、選択された抗原、例えば、ポリペプチドの全てまたは一部分を用いて、従来の手法を使用して免疫化する。抗原に対するモノクローナル抗体は、免疫化トランスジェニックマウスから、従来のハイブリドーマ技術を使用して得ることができる(例えば、米国特許第5,916,771号を参照されたい)。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子はB細胞分化の間に再配列し、続いてクラススイッチ及び体細胞突然変異を受ける。このように、かかる技法を使用して、治療的に有用なIgG、IgA、IgM、及びIgE抗体を生成することが可能である。ヒト抗体を生成するこの技術の概要については、Lonberg and Huszar(1995,Int.Rev.Immunol.13:65−93(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術ならびにかかる抗体を生成するためのプロトコルの詳細な考察については、例えば、国際公開第WO98/24893号、第WO96/34096号、及び第WO96/33735号;ならびに米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、及び第5,939,598号(これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)を参照されたい。加えて、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)及びMedarex(Princeton,NJ)などの会社と提携して、選択された抗原に対するヒト抗体を上記のものに類似した技術を使用して得ることができる。
【0225】
ヒトアクセプターフレームワーク配列をコードするDNA配列として、ヒト生殖系列VHセグメントVH1−18及びJH6ならびにヒト生殖系列VLセグメントVK−A26及びJK4からのFRセグメントが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、CDRの1つまたは複数が、慣例的な組換えDNA技法を使用してフレームワーク領域内に挿入される。該フレームワーク領域は、天然に存在するフレームワーク領域またはコンセンサスフレームワーク領域、及びヒトフレームワーク領域であり得る(ヒトフレームワーク領域の列挙については、例えば、Chothia et al.,1998,“Structural Determinants In The Sequences Of Immunoglobulin Variable Domain,”J.Mol.Biol.278:457−479を参照されたい)。
【0226】
i.ヒト化5G12
一実施形態は、ヒト化5G12抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0227】
b.一本鎖抗体
シグレック−15結合分子は、一本鎖抗体であり得る。一本鎖抗体を生成する方法は、当技術分野で周知である。一本鎖抗体は、短いペプチドリンカーを使用して重鎖及び軽鎖の可変ドメインを共に融合し、それによって単一分子上に抗原結合部位を再構成することによって作られる。一方の可変ドメインのC末端が15〜25個のアミノ酸のペプチドまたはリンカーを介して他方の可変ドメインのN末端に繋がれた一本鎖抗体可変フラグメント(scFv)が、抗原結合または結合の特異性を相当に撹乱することなく開発されている。リンカーは、重鎖と軽鎖とがそれらの適正な立体構造的配向で共に結合できるように選択される。これらのFvは、天然の抗体の重鎖及び軽鎖に存在する定常領域(Fc)を欠いている。
【0228】
c.一価抗体
インビトロでの方法は、一価抗体の調製にも適している。抗体を消化してそのフラグメント、特にFabフラグメントを生成することは、当技術分野で公知の慣例的技法を使用して遂行することができる。例えば、消化は、パパインを使用して実施することができる。抗体をパパイン消化すると、典型的には、単一の抗原結合部位を各々有するFabフラグメントと呼ばれる2つの同一な抗原結合フラグメントと、残りのFcフラグメントとが生成する。ペプシンで処置すると、F(ab’)
2フラグメントと呼ばれるフラグメントが得られ、これは2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原と架橋結合する能力がある。
【0229】
抗体消化において生成されたFabフラグメントは、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1定常ドメインも含有する。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含む数個の残基が重鎖ドメインのカルボキシ末端に付加されていることがFabフラグメントと異なる。F(ab’)
2フラグメントは、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab’フラグメントを含む、二価のフラグメントである。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’の本明細書における呼称である。抗体フラグメントは、元々ヒンジシステインを間に有するFab’フラグメントの対として生成された。抗体フラグメントの他の化学的結合も公知である。
【0230】
d.抗体フラグメントのコンジュゲートまたは融合物
抗体のターゲティング機能は、抗体またはそのフラグメントを治療用物質とカップリングすることによって治療的に使用することができる。抗体またはフラグメント(例えば、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分)と治療用物質とのかかるカップリングは、抗体または抗体フラグメントと治療用物質とを含む、免疫コンジュゲートを作製することによって、または融合タンパク質を作製することによって実現することができる。
【0231】
抗体またはフラグメントと治療用物質とのかかるカップリングは、抗体または抗体フラグメントと治療用物質とを含む、免疫コンジュゲートを作製することによって、または融合タンパク質を作製することによって、または抗体もしくはフラグメントをsiRNAなどの核酸と連結することによって実現することができる。
【0232】
幾つかの実施形態では、抗体は、その半減期が変化するように改変される。幾つかの実施形態では、循環中または治療部位により長い時間存在するように、抗体の半減期を増大することが望ましい。例えば、抗体の力価を循環中または治療すべき場所に長期間維持することが望ましいことがある。抗体は、半減期を延ばすFc変異体を用いて、例えば、Xtend(商標)抗体半減期延長技術(Xencor,Monrovia,CA)を使用して操作することができる。他の実施形態では、潜在的副作用を低減させるために抗DNA抗体の半減期が短縮される。開示されるコンジュゲートは、所与の生物学的応答の改変に使用することができる。薬物部分は、古典的な化学的治療用物質に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を保有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。かかるタンパク質として、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素などの毒素を挙げることができる。
【0233】
e.単一及び多重特異性抗体
幾つかの実施形態では、開示される抗体は単一特異性であり、シグレック−15にだけ結合する。かかる抗体の二重特異性誘導体、かかる抗体の三重特異性誘導体、またはそれ以上の多重特異性の誘導体抗体であって、ヒトシグレック−15に対するそれらの特異性に加えて、異なる免疫系標的に特異性を呈するものも提供される。例えば、かかる抗体は、ヒトシグレック−15と、抗体を特定の細胞型または組織に(例えば、治療されている腫瘍のがん抗原に関連する抗原に)ターゲティングさせるのに重要な抗原の両方に結合することができる。別の態様では、免疫調節作用を強化し、リガンドブロッキング、免疫細胞活性化、及び直接的な腫瘍ターゲティングなどの複数の作用機序を1分子に組み合わせるために、かかる多重特異性抗体は、代替的な免疫調節経路、例えば、B7−H1、PD−1、CTLA4、TIM3、TIM4、OX40、CD40、GITR、4−1−BB、LIGHT、またはLAG3に関与する分子(受容体またはリガンド)に結合する。
【0234】
f.誘導体
開示されるシグレック−15結合分子のいずれかの「誘導体」の生成及び使用も開示される。誘導体分子、例えば、抗体または抗体フラグメントは、当業者に公知の技法を使用する化学修飾によって改変することができる。こうした化学修飾として、特異的な化学的切断、アセチル化、製剤、ツニカマイシンの代謝合成などが挙げられるが、これらに限定されない。誘導体という用語は、非アミノ酸修飾を包含し、例えば、グリコシル化(例えば、マンノース、2−N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコース、グルコース、シアル酸、5−N−アセチルノイラミン酸、5−グリコールノイラミン酸などの含有量の変化を有する)、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との連結などが可能なアミノ酸が包含される。幾つかの実施形態では、炭水化物修飾の変化によって、抗体の可溶化、抗体の細胞内輸送及び分泌の亢進、抗体アセンブリの促進、立体構造の完全性、及び抗体媒介性エフェクター機能の1つまたは複数が調節される。
【0235】
特定の実施形態では、炭水化物修飾の変化によって、炭水化物修飾を欠く抗体と比べて抗体媒介性エフェクター機能が強化される。抗体媒介性エフェクター機能の変化をもたらす炭水化物修飾は、当技術分野で周知である(例えば、Shields,R.L.et al.(2002)“Lack Of Fucose On Human IgG N−Linked Oligosaccharide Improves Binding To Human Fcgamma RIII And Antibody−Dependent Cellular Toxicity.,”J.Biol.Chem.277(30):26733−26740;Davies J.et al.(2001)“Expression Of GnTIII In A Recombinant Anti−CD20 CHO Production Cell Line:Expression Of Antibodies With Altered Glycoforms Leads To An Increase In ADCC Through Higher Affinity For FC Gamma RIII,”Biotechnology&Bioengineering 74(4):288−294を参照されたい)。炭水化物含有量を変化させる方法は当業者に公知であり、例えば、Wallick,S.C.et al.(1988)“Glycosylation Of A VH Residue Of A Monoclonal Antibody Against Alpha(1−−−−6) Dextran Increases Its Affinity For Antigen,”J.Exp.Med.168(3):1099−1109;Tao,M.H.et al.(1989)“Studies Of Aglycosylated Chimeric Mouse−Human IgG.Role Of Carbohydrate In The Structure And Effector Functions Mediated By The Human IgG Constant Region,”J.Immunol.143(8):2595−2601;Routledge,E.G.et al.(1995)“The Effect Of Aglycosylation On The Immunogenicity Of A Humanized Therapeutic CD3 Monoclonal Antibody,”Transplantation 60(8):847−53;Elliott,S.et al.(2003)“Enhancement Of Therapeutic Protein In Vivo Activities Through Glycoengineering,”Nature Biotechnol.21:414−21;Shields,R.L.et al.(2002)“Lack Of Fucose On Human IgG N−Linked Oligosaccharide Improves Binding To Human Fcgamma RIII And Antibody−Dependent Cellular Toxicity.,”J.Biol.Chem.277(30):26733−26740)を参照されたい。
【0236】
開示される抗体は、組換え手段によって改変して、所望の機能の媒介における抗体の有効性を増大させることができる。よって、抗体は、組換え手段を使用する置換によって改変することができる。典型的には、この置換は保存的置換となる。例えば、抗体の定常領域中の少なくとも1つのアミノ酸を異なる残基で置き換えることができる。例えば、米国特許第5,624,821号、米国特許第6,194,551号、国際公開第WO9958572号;及びAngal,et al.,Mol.Immunol.30:105−08(1993)を参照されたい。アミノ酸における改変には、アミノ酸の欠失、付加、置換が含まれる。ある場合には、かかる変更は、望ましくない活性、例えば補体依存性細胞傷害を減少させるために行われる。多くの場合、抗体は、検出可能なシグナルをもたらす物質を、共有結合的に、または非共有結合的に接合することによって標識化される。広範な標識及びコンジュゲーション技法が公知であり、科学文献と特許文献の両方に広く報告されている。これらの抗体は、シグレック−15ポリペプチド、またはそれらのフラグメント、もしくは融合物についてスクリーニングすることができる。例えば、Antibody Engineering:A Practical Approach(Oxford University Press,1996)を参照されたい。
【0237】
幾つかの実施形態では、抗体誘導体は、親抗体と同様のまたは同一の機能を保有することとなる。別の実施形態では、抗体誘導体は、親抗体と比べて変化した活性を呈することとなる。例えば、誘導体抗体(またはそのフラグメント)は、親抗体より堅固にそのエピトープに結合することができるか、またはタンパク質分解に対して高い耐性を有することができる。誘導体化抗体における置換、付加、または欠失は、抗体のFc領域中であってもよく、それによって1つまたは複数のFcγRへの抗体の結合親和性を改変するように機能することができる。1つまたは複数のFcγRへの結合を改変することによって抗体を改変するための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、PCT公開第WO04/029207号、第WO04/029092号、第WO04/028564号、第WO99/58572号、第WO99/51642号、第WO98/23289号、第WO89/07142号、第WO88/07089号、ならびに米国特許第5,843,597号及び第5,642,821号を参照されたい。
【0238】
幾つかの実施形態では、抗体は、そのFc領域が欠失されている(例えば、FabまたはF(ab)2など)か、あるいは分子が低下したFc受容体(FcR)結合活性を呈するか、もしくはFc受容体(FcR)結合活性を呈さないように、または強化された抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)活性もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)活性を呈するように改変されている。幾つかの実施形態では、抗体は、活性化FcγR、例えばFcγRIIIAに対する変化した親和性を有する。かかる改変は、変化したFc媒介性エフェクター機能も有し得る。Fc媒介性エフェクター機能に影響を及ぼす改変は、当技術分野で周知である(米国特許第6,194,551号、及び第WO00/42072号を参照されたい)。特定の一実施形態では、Fc領域の改変は、抗体媒介性エフェクター機能の変化、他のFc受容体(例えば、Fc活性化受容体)への結合の変化、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)活性の変化、C1q結合活性の変化、補体依存性細胞傷害活性(CDC)、食作用活性の変化、またはそれらの組み合わせを抗体にもたらす。
【0239】
誘導体化抗体は、ヒトなどの哺乳動物において親抗体の半減期(例えば、血清中半減期)を変化させるために使用することができる。例えば、かかる変化によって、半減期を15日超、20日超、25日超、30日超、35日超、40日超、45日超、2か月超、3か月超、4か月超、または5か月超にすることができる。ヒトなどの哺乳動物においてヒト化抗体またはそのフラグメントの半減期が増大すると、哺乳動物における前記抗体または抗体フラグメントの血清中力価が高くなり、よって、投与しようとする上記抗体または抗体フラグメントの投与の回数及び/または上記抗体または抗体フラグメントの濃度が減少する。インビボ半減期が増大した抗体またはそのフラグメントは、当業者に公知の技法によって作製することができる。例えば、インビボ半減期が増大した抗体またはそのフラグメントは、FcドメインとFcRn受容体との間の相互作用に関与することが確認されているアミノ酸残基を改変する(例えば、置換、欠失、または付加する)ことによって作製することができる。ヒト化抗体は、生物学的半減期を増大させるように操作することができる(例えば米国特許第6,277,375号を参照されたい)。例えば、ヒト化抗体は、インビボまたは血清中半減期を増大させるように、Fc−ヒンジドメインで操作することができる。
【0240】
インビボ半減期が増大した抗体またはそのフラグメントは、上記抗体または抗体フラグメントに高分子量ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマー分子を結合させることによって作製することができる。PEGは、多官能リンカーを用いてまたは用いずに、上記抗体または抗体フラグメントのNもしくはC末端へのPEGの部位特異的コンジュゲーションを介して、またはリジン残基上に存在するイプシロン−アミノ基を介して、上記抗体または抗体フラグメントに結合することができる。生物活性の喪失が最低限となる直鎖または分枝ポリマー誘導体化が使用されると見込まれる。コンジュゲーションの度合いは、SDS−PAGE及び質量分析により詳細にモニタリングして、PEG分子の抗体への適正なコンジュゲーションが確実に行われるようにする。未反応のPEGは、例えば、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーによって、抗体−PEGコンジュゲートから分離することができる。
【0241】
免疫原性応答を実質的に伴わずに哺乳動物の循環系に注射することができる組成物を得るために、Davis et al.によって記載される方法及びカップリング剤によって抗体を改変することもできる(米国特許第4,179,337号を参照されたい)。
【0242】
ヒト化抗体のフレームワーク残基は、改変することができる。フレームワーク領域中の残基は、抗原結合を変化させるように、例えば向上させるように、CDRドナー抗体からの対応する残基で置換することができる。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法によって特定され、例えば、CDRとフレームワーク残基との相互作用のモデリングを行って抗原結合に重要なフレームワーク残基を特定することによって、及び配列比較を行って特定の位置の特殊なフレームワーク残基を特定することによって特定されることができる。(例えば、米国特許第5,585,089号;及びRiechmann,L.et al.(1988)“Reshaping Human Antibodies For Therapy,”Nature 332:323−327を参照されたい)。開示されるシグレック−15結合分子は、異種分子(すなわち無関係の分子)と組換えにより融合するか、または化学的にコンジュゲートすること(共有結合的及び非共有結合的コンジュゲーションの両方を含む)ができる。この融合は、必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介して行ってもよい。
【0243】
幾つかの実施形態では、かかる異種分子は、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、または少なくとも100個のアミノ酸を有するポリペプチドである。あるいは、かかる異種分子は、酵素、ホルモン、細胞表面受容体、薬物成分、例えば:マクロファージ特異的ターゲティング試薬(例えば、細胞内カルボキシエステラーゼ、hCE1(Needham,L.A.et al.(2011)“Drug Targeting To Monocytes And Macrophages Using Esterase−Sensitive Chemical Motif,”J.Pharmacol.Exp.Ther.DOI:10.1124/jpet.111.183640)、キチン及びキトサン(Muzzarelli,R.A.(2010)“Chitins And Chitosans As Immunoadjuvants And Non−Allergenic Drug Carriers,”Mar Drugs 8(2):292−312)、ガラクトシル化低密度リポタンパク質(Wu,F.et al.(009)“Galactosylated LDL Nanoparticles:A Novel Targeting Delivery System To Deliver Antigen To Macrophages And Enhance Antigen Specific T Cell Responses,”Molec.Pharm.6(5):1506−1517)、N−ホルミル−Met−Leu−Phe(fMLF)、マクロファージ特異的化学誘引物質(Wan,L.et al.(2008)“Optimizing Size And Copy Number For PEG−Fmlf(N−Formyl−Methionyl−Leucyl−Phenylalanine)Nanocarrier Uptake By Macrophages,”Bioconjug.Chem.19(1):28−38)、マレイル化もしくはマンノシル化タンパク質、例えば、マレイル化アルブミン(Anatelli,F.et al.(2006)“Macrophage−Targeted Photosensitizer Conjugate Delivered By Intratumoral Injection,”Mol Pharm.3(6):654−664;Bansal,P.et al.(1999)“MHC Class I−Restricted Presentation Of Maleylated Protein Binding To Scavenger Receptors,”J.Immunol.162(8):4430−4437);Mukhopadhyay,A.et al.(2003)“Intracellular Delivery Of Drugs To Macrophages,”Adv.Biochem.Eng.Biotechnol.84:183−209も参照されたい)、毒素(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素(すなわちPE−40)、ジフテリア毒素、リシン、ゲロニン、またはアメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質)、タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、インターフェロン(例えば、α−インターフェロン、β−インターフェロン)、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、またはアポトーシス性作用物質(例えば、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子−β))、生物学的応答調節物質(例えば、リンホカイン(例えば、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)など)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、もしくはマクロファージコロニー刺激因子(「M−CSF」)、または増殖因子(例えば、成長ホルモン(「GH」)))、細胞毒(例えば、細胞増殖阻害剤もしくは細胞破壊薬、例えば、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、ならびにそれらの類似体または同族体)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル ダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ クロラムブシル、メルファラン、BiCNU(登録商標)(カルムスチン;BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、ならびにcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)、及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、または有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)であり得る。
【0244】
別の実施形態では、Segalの米国特許第4,676,980号においてに記載されるように、分子を第2の抗体とコンジュゲートして抗体のヘテロコンジュゲートを形成する。かかるヘテロコンジュゲート抗体は、追加的に、ハプテン(例えば、フルオレセインなど)、または細胞マーカー(例えば、4−1−BB、B7−H1、PD−1、CD4、CD8、CD14、CD25、CD27、CD40、CD68、CD163、CTLA4、GITR、LAG−3、OX40、TIM3、TIM4、TLR2、LIGHTなど)、またはサイトカイン(例えば、IL−4、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IL−17、TGF−ベータ、IFNg、Flt3、BLy)、またはケモカイン(例えば、CCL21)などに結合することができる。
【0245】
融合タンパク質のFc部分は、例えば、エフェクター機能、半減期の制御、組織への到達性を向上させ、安定性などの生物物理学的特性を増強し、生産効率を向上させる(及びコストを下げる)ために、アイソタイプもしくはサブクラスが異なっていてもよく、キメラもしくはハイブリッドであってもよく、及び/または改変されていてもよい。開示される融合タンパク質の構築に有用な多くの改変及びそれらを作製するための方法は、当技術分野では公知であり、例えば、Mueller,J.P.et al.(1997)“Humanized Porcine VCAM−Specific Monoclonal Antibodies With Chimeric IgG2/G4 Constant Regions Block Human Leukocyte Binding To Porcine Endothelial Cells,”Mol.Immun.34(6):441−452、Swann,P.G.(2008)“Considerations For The Development Of Therapeutic Monoclonal Antibodies,”Curr.Opin.Immun.20:493−499(2008)、及びPresta,L.G.(2008)“Molecular Engineering And Design Of Therapeutic Antibodies,”Curr.Opin.Immun.20:460−470を参照されたい。幾つかの実施形態では、Fc領域は、天然のIgG1、IgG2、またはIgG4のFc領域である。幾つかの実施形態では、Fc領域はハイブリッドであり、例えば、IgG2/IgG4のFc定常領域からなるキメラである。Fc領域に対する改変として、Fcガンマ受容体及び補体に結合しないように改変されたIgG4、1つまたは複数のFcガンマ受容体への結合を向上させるように改変されたIgG1、エフェクター機能を最低限に抑えるように改変されたIgG1(アミノ酸変化)、グリカンが変化した/無いIgG1(典型的には発現宿主の変更による)、ならびにFcRnへのpH依存結合が変化したIgG1が挙げられるが、これらに限定されない。Fc領域は、ヒンジ領域全体、またはヒンジ領域全体より小さい領域を含むことができる。非ホジキンリンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症に対してリツキシマブ(CD20に対するキメラマウス/ヒトIgG1モノクローナル抗体)で治療した患者における治療転帰は、ヒトIgG1のFcドメインに対する固有の親和性が異なるFcγ受容体の対立遺伝子変異体の個体発現に相関した。特に、低親和性活性化Fc受容体CD16A(FcγRIIIA)の高親和性対立遺伝子を有する患者は、より高い奏効率を示し、非ホジキンリンパ腫の場合、無増悪生存期間が向上した。したがって、開示される抗体及びフラグメントのFcドメインは、低親和性抑制性Fc受容体CD32B(FcγRIIB)への結合を低減させ、低親和性活性化Fc受容体CD16A(FcγRIIIA)への結合を野生型レベルに保持するかまたは強化する1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有することができる。
【0246】
別の実施形態は、FcγRへの結合が低減したことによって半減期が増大した、IgG2−4ハイブリッド及びIgG4突然変異体を含む。代表的なIgG2−4ハイブリッド及びIgG4突然変異体は、Angal,S.et al.(1993)“A Single Amino Acid Substitution Abolishes The Heterogeneity Of Chimeric Mouse/Human (Igg4)Antibody,”Molec.Immunol.30(1):105−108;Mueller,J.P.et al.(1997)“Humanized Porcine VCAM−Specific Monoclonal Antibodies With Chimeric IgG2/G4 Constant Regions Block Human Leukocyte Binding To Porcine Endothelial Cells,”Mol.Immun.34(6):441−452;及び米国特許第6,982,323号に記載されている。幾つかの実施形態では、IgG1及び/またはIgG2ドメインが改変され、例えば、Angal,S.et al.(1993)は、セリン241がプロリンで置き換えられたIgG1及びIgG2変異体について記載している。
【0247】
幾つかの実施形態では、かかる分子のFcドメインは、CD16Aへの結合を強化するアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有する。CD16Aへの結合を増大させ、CD32Bへの結合を低減させる、ヒトIgG1のFcドメインにおける多数の置換が当技術分野で公知であり、Stavenhagen,J.B.et al.(2007)“Fc Optimization Of Therapeutic Antibodies Enhances Their Ability To Kill Tumor Cells In Vitro And Controls Tumor Expansion In Vivo Via Low−Affinity Activating Fcgamma Receptors,”Cancer Res.57(18):8882−8890に記載されている。CD32Bへの結合が低減し、及び/またはCD16Aへの結合が増大した、ヒトIgG1のFcドメインの代表的な変異体は、F243L、R929P、Y300L、V305I、またはP296L置換を含有する。これらのアミノ酸置換は、ヒトIgG1のFcドメイン中に任意の組み合わせで存在し得る。一態様では、ヒトIgG1のFcドメイン変異体は、F243L、R929P、及びY300L置換を含有する。別の態様では、ヒトIgG1のFcドメイン変異体は、F243L、R929P、Y300L、V305I、及びP296L置換を含有する。別の態様では、ヒトIgG1のFcドメイン変異体は、N297Q置換を含有する。何故なら、この変異はFcR結合を消失させるからである。
【0248】
抗体に治療部分をコンジュゲートするための技法は周知であり、例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),1985,pp.243−56,Alan R.Liss,Inc.);Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),1987,pp.623−53,Marcel Dekker,Inc.);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies ‘84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),1985,pp.475−506);“Analysis, Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),1985,pp.303−16,Academic Press;及びThorpe et al.(1982)“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates,”Immunol.Rev.62:119−158を参照されたい。
【0249】
開示される分子はいずれも、精製を容易にするために、ペプチドなどのマーカー配列に融合させることができる。幾つかの実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、ヘキサ−ヒスチジンペプチド、赤血球凝集素「HA」タグ(インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する)(Wilson,I.A.et al.(1984)“The Structure Of An Antigenic Determinant In A Protein,”Cell,37:767−778)及び「フラグ」タグ(Knappik,A.et al.(1994)“An Improved Affinity Tag Based On The FLAG Peptide For The Detection And Purification Of Recombinant Antibody Fragments,”Biotechniques 17(4):754−761)である。
【0250】
開示されるシグレック−15結合分子は、診断用もしくは治療用物質、または血清中半減期を増大させることが所望される別の分子とコンジュゲートすることができる。該抗体を診断に使用して(インビボ、インサイツ、またはインビトロで)、例えば、臨床試験手順の一部として疾患、障害、または感染症の発生または進行をモニタリングして、例えば、所与の治療レジメンの有効性を判断するか、または特定の療法に応答する可能性が高い患者を選択することができる(高レベルのシグレック−15を発現するものなど)。
【0251】
抗体またはその抗原結合フラグメントなどの分子を検出可能な物質にカップリングすることによって、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例として、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、陽電子放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質は、当技術分野で公知の技法を使用して、直接的にまたは中間体(例えば、当技術分野で公知のリンカーなど)を介して間接的に、抗体に連結またはコンジュゲートすることができる。例えば、診断薬として使用するために抗体とコンジュゲートすることができる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照されたい。かかる診断及び検出は、抗体を検出可能な物質にカップリングすることによって遂行することができ、そうした物質として、様々な酵素、酵素として、これらに限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;補欠分子族複合体、例えば、これらに限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチン;蛍光材料、例えば、これらに限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリン;発光材料、例えば、これらに限定されないが、ルミノール;生物発光材料、例えば、これらに限定されないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリン;放射性材料、例えば、これらに限定されないが、ビスマス(
213Bi)、炭素(
14C)、クロム(
51Cr)、コバルト(
57Co)、フッ素(
18F)、ガドリニウム(
153Gd、
159Gd)、ガリウム(
68Ga、
67Ga)、ゲルマニウム(
68Ge)、ホルミウム(
166Ho)、インジウム(
115In、
113In、
112In、
111In)、ヨウ素(
131I、
125I、
123I、
121I)、ランタン(
140La)、ルテチウム(
177Lu)、マンガン(
54Mn)、モリブデン(
99Mo)、パラジウム(
103Pd)、リン(
32P)、プラセオジム(
142Pr)、プロメチウム(
149Pm)、レニウム(
186Re、
188Re)、ロジウム(
105Rh)、ルテニウム(
97Ru)、サマリウム(
153Sm)、スカンジウム(
47Sc)、セレン(
75Se)、ストロンチウム(
85Sr)、イオウ(
35S)、テクネチウム(
99Tc)、タリウム(
201Ti)、スズ(
113Sn、
117Sn)、三重水素(
3H)、キセノン(
133Xe)、イッテルビウム(
169Yb、
175Yb)、イットリウム(
90Y)、亜鉛(
65Zn);様々な陽子射出断層撮影法を使用する陽電子放出金属、ならびに非放射性常磁性金属イオンが挙げられるが、これらに限定されない。開示される分子は、固体支持体に結合することができ、これは、標的抗原、または抗体もしくは抗原結合フラグメントへの結合を介して支持体に固定化された標的抗原に結合する能力のある他の分子のイムノアッセイまたは精製に特に有用である。かかる固体支持体として、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。任意のかかる抗体、融合タンパク質、またはフラグメントをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)、ならびにかかる核酸分子を伝達または複製する能力のあるベクター分子(プラスミドなど)も開示される。該核酸は、一本鎖、二本鎖であることができ、一本鎖部分と二本鎖部分の両方を含有することができる。
【0252】
3.作製方法
シグレック−15結合分子は、ポリペプチドの生成に有用な当技術分野で公知の任意の方法、例えば、インビトロ合成、組換えDNA生成などによって生成することができる。ヒト化抗体は、典型的には組換えDNA技術によって生成される。抗体は、組換え免疫グロブリン発現技術を使用して生成することができる。ヒト化抗体を含めた免疫グロブリン分子の組換え体の生成については、米国特許第4,816,397号(Boss et al.)、米国特許第6,331,415号及び第4,816,567号(両方ともCabilly et al.)、英国特許第GB2,188,638号(Winter etal.)、ならびに英国特許第GB2,209,757号に記載されている。ヒト化免疫グロブリンを含めた免疫グロブリンの組換え発現のための技法は、Goeddel et al.,Gene Expression Technology Methods in Enzymology Vol.185 Academic Press(1991)、及びBorreback,Antibody Engineering,W.H.Freeman(1992)にも見出すことができる。組換え抗体の作製、設計、及び発現に関する追加情報は、Mayforth,Designing Antibodies,Academic Press,San Diego(1993)に見出すことができる。
【0253】
組換えキメラ抗体を生成するための代表的な方法は、a)従来の分子生物学の方法によって、抗シグレック−15抗体のCDR及び可変領域がヒト免疫グロブリン由来のFc領域に融合された抗体重鎖をコード及び発現する発現ベクターを構築し、それによってキメラ抗体重鎖を発現するためのベクターを生成すること;b)従来の分子生物学の方法によって、マウス抗ヒトシグレック−15モノクローナル抗体の抗体軽鎖をコードし及び発現する発現ベクターを構築し、それによってキメラ抗体軽鎖を発現するためのベクターを生成すること;c)従来の分子生物学の方法によって、発現ベクターを宿主細胞に移送して、キメラ抗体を発現するためのトランスフェクトされた宿主細胞を生成すること;ならびにd)従来の細胞培養技法によって、キメラ抗体を産生するように、トランスフェクトされた細胞を培養すること、を含むことができる。
【0254】
組換えヒト化抗体を生成するための代表的なプロセスは、a)従来の分子生物学の方法によって、CDRと、ドナー抗体の結合特異性を保持するのに必要とされる可変領域フレームワークの最低限の部分とが抗ヒトシグレック−15抗体(複数可)のヒト化変異体に由来し、抗体の残部がヒト免疫グロブリンに由来する抗ヒトシグレック−15重鎖をコード及び発現する発現ベクターを構築し、それによってヒト化抗体重鎖を発現するためのベクターを生成すること;b)従来の分子生物学の方法によって、CDRと、ドナー抗体の結合特異性を保持するのに必要とされる可変領域フレームワークの最低限の部分とが、開示されるマウス抗ヒトシグレック−15抗体などの非ヒト免疫グロブリンに由来し、抗体の残部がヒト免疫グロブリンに由来する抗体軽鎖をコード及び発現する発現ベクターを構築し、それによってヒト化抗体軽鎖を発現するためのベクターを生成すること;c)従来の分子生物学の方法によって、発現ベクターを宿主細胞に移送して、ヒト化抗体を発現するためのトランスフェクトされた宿主細胞を生成すること;ならびにd)従来の細胞培養技法によって、ヒト化抗体を産生するように、トランスフェクトされた細胞を培養すること、を含むことができる。
【0255】
いずれの代表的方法に関しても、異なる選択マーカーを含有することができるが、重鎖及び軽鎖コード配列以外は同一であり得るような発現ベクターを用いて、宿主細胞に同時にトランスフェクトすることができる。この手順により、重鎖及び軽鎖ポリペプチドが同等に発現される。あるいは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターを使用することができる。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNAもしくはゲノムDNA、または両方を含むことができる。組換え抗体を発現するために使用される宿主細胞は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)などの細菌細胞、または真核細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはHEK−293細胞)のいずれかであり得る。発現ベクターの選択は、宿主細胞の選択に依存し、選択された宿主細胞において所望の発現及び調節的特性を有するように選択することができる。使用することができる他の細胞株として、CHO−K1、NSO、及びPER.C6(Crucell,Leiden,Netherlands)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0256】
開示される抗体のいずれも、当業者に周知の技法を使用して抗イディオタイプ抗体を作製するために使用することができる(例えば、Greenspan,N.S.et al.(1989)“Idiotypes:Structure And Immunogenicity,”FASEB J.7:437−444;及びNisinoff,A.(1991)“Idiotypes:Concepts And Applications,”J.Immunol.147(8):2429−2438を参照されたい)。
【0257】
C.シグレック−15リガンド結合分子
シグレック−15のリガンドに結合する分子、例えば、シグレック−15タンパク質、シグレック−15融合タンパク質、及びそれらのフラグメント及び変異体も提供される。シグレック−15リガンド結合分子は、シグレック−15のリガンド、例えば、シアル酸付加された糖タンパク質、LRRC4C、シグレック−15対抗受容体などに結合することができる。幾つかの実施形態では、シグレック−15リガンド結合分子は、シグレック−15のリガンドを介してシグナル伝達を誘導することができる。幾つかの実施形態では、シグレック−15リガンド結合分子は、シグレック−15またはそのリガンドを介するシグナル伝達を誘導することなく、シグレック−15とそのリガンドとの間の相互作用をブロックするか、さもなければ低減させる。以降でより詳細に考察し、実施例で例示する通りに、シグレック−15リガンド結合分子を使用して、シグレック−15の活性を調節することができ、また治療的に使用して、治療を必要とする対象を治療することができる。
【0258】
1.シグレック−15ポリペプチド
幾つかの実施形態では、シグレック−15リガンド結合分子は、シグレック−15、またはそのフラグメントもしくは変異体である。例えば、幾つかの実施形態では、シグレック−15リガンド結合分子には、SEQ ID NO:1もしくは2またはそのフラグメントと少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一なポリペプチド、例えば、細胞外ドメインまたはそのサブドメイン、例えば、IgVドメイン、IgCドメイン、またはそれらの組み合わせが含まれる。幾つかの実施形態では、シグレック−15ポリペプチドは、可溶性であるか、さもなければ無細胞である。例えば,幾つかの実施形態では、シグレック−15は、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、またはリーダー配列の1つまたは複数を欠いている。
【0259】
2.シグレック−15融合タンパク質
幾つかの実施形態では、シグレック−15リガンド結合分子は、シグレック−15融合タンパク質である。他のポリペプチドとカップリングして融合タンパク質を形成したシグレック−15ポリペプチドを含有する融合タンパク質が提供される。シグレック−15融合ポリペプチドは、(i)第2のポリペプチドと直接融合したか、または(ii)任意で第2のポリペプチドに融合したリンカーペプチド配列に融合した、シグレック−15タンパク質の全部または一部を含む、第1の融合パートナーを含むことができる。融合タンパク質は、任意で、2つ以上の融合タンパク質を二量体化または多量体化するように機能するドメインを含有する。幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、二量体化も多量体化もされておらず、それらでもない。ペプチド/ポリペプチドリンカードメインは、別々のドメインであってもよく、あるいは、融合タンパク質の他のドメイン(シグレック−15ポリペプチドまたは第2のポリペプチド)のうちの1つのドメインの中に含有されていてもよい。同様に、融合タンパク質を二量体化または多量体化するように機能するドメインは、別々のドメインであってもよく、あるいは、融合タンパク質の他のドメイン(シグレック−15ポリペプチド、第2のポリペプチド、またはペプチド/ポリペプチドリンカードメイン)のうちの1つのドメインの中に含有されていてもよい。幾つかの実施形態では、二量体化/多量体化ドメインとペプチド/ポリペプチドリンカードメインとは同じである。
【0260】
本明細書に開示される融合タンパク質は、式I:
N−R
1−R
2−R
3−C
のタンパク質であり、式中、「N」は融合タンパク質のN末端を表し、「C」は融合タンパク質のC末端を表し、「R
1」はシグレック−15ポリペプチド、「R
2」は任意でのペプチド/ポリペプチドリンカードメイン、「R
3」は第2のポリペプチドである。あるいは、R
3がシグレック−15ポリペプチドであってもよく、R
1が第2のポリペプチドであってもよい。
【0261】
融合タンパク質は、二量体化または多量体化することができる。二量体化または多量体化は、2つ以上の融合タンパク質の間でドメインの二量体化または多量体化を介して起こり得る。あるいは、融合タンパク質の二量体化または多量体化は、化学的架橋によって起こり得る。形成される二量体または多量体は、ホモ二量体/ホモ多量体またはヘテロ二量体/ヘテロ多量体であり得る。上で考察したように、幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、二量体化も多量体化もされておらず、それらでもない。
【0262】
幾つかの実施形態では、第2のポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖定常領域の1つまたは複数のドメイン、例えば、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、C
H2及び/またはC
H3領域、マウス免疫グロブリンCγ2a鎖のヒンジ、C
H2及び/またはC
H3領域、ヒト免疫グロブリンCγ1のC
H2及び/またはC
H3領域などに相当するアミノ酸配列を含有する。
【0263】
融合タンパク質のFc部分は、例えば、エフェクター機能、半減期の制御、組織への到達性を向上させ、安定性などの生物物理学的特性を増強し、生産効率を向上させる(及びコストを下げる)ために、アイソタイプもしくはサブクラスが異なっていてもよく、キメラもしくはハイブリッドであってもよく、及び/または改変されていてもよい。開示される融合タンパク質の構築に有用な多くの改変及びそれらを作製するための方法は、当技術分野では公知であり、例えば、Mueller,et al.Mol.Immun.,34(6):441−452(1997)、Swann,et al.,Cur.Opin.Immun.,20:493−499(2008)、及びPresta,Cur.Opin.Immun.20:460−470(2008)を参照されたい。幾つかの実施形態では、Fc領域は、天然のIgG1、IgG2、またはIgG4のFc領域である。幾つかの実施形態では、Fc領域はハイブリッドであり、例えば、IgG2/IgG4のFc定常領域からなるキメラである。Fc領域に対する改変として、Fcガンマ受容体及び補体に結合しないように改変されたIgG4、1つまたは複数のFcガンマ受容体への結合を向上させるように改変されたIgG1、エフェクター機能を最低限に抑えるように改変されたIgG1(アミノ酸変化)、グリカンが変化した/無いIgG1(典型的には発現宿主の変更による)、ならびにFcRnへのpH依存結合が変化したIgG1が挙げられるが、これらに限定されない。Fc領域は、ヒンジ領域全体を含んでも、またはヒンジ領域全体より小さい領域を含んでもよい。
【0264】
非ホジキンリンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症に対してリツキシマブ(CD20に対するキメラマウス/ヒトIgG1モノクローナル抗体)で治療した患者における治療転帰は、ヒトIgG1のFcドメインに対する固有の親和性が異なるFcγ受容体の対立遺伝子変異体の個体発現に相関した。特に、低親和性活性化Fc受容体CD16A(FcγRIIIA)の高親和性対立遺伝子を有する患者は、より高い奏効率を示し、非ホジキンリンパ腫の場合、無増悪生存期間が向上した。別の実施形態では、Fcドメインは、低親和性抑制性Fc受容体CD32B(FcγRIIB)への結合を低減させ、低親和性活性化Fc受容体CD16A(FcγRIIIA)への野生型レベルの結合を保持するまたはそれへの結合を強化する、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有してもよい。
【0265】
別の実施形態は、FcRへの結合が低減したことによって半減期が増大した、IgG2−4ハイブリッド及びIgG4突然変異体を含む。代表的なIgG2−4ハイブリッド及びIgG4突然変異体は、Angal,S.et al.,Molecular Immunology,30(1):105−108(1993);Mueller,J.et al.,Molecular Immonology,34(6):441−452(1997);及びWang et alによる米国特許第6,982,323号に記載されている。幾つかの実施形態では、IgG1及び/またはIgG2ドメインは欠失しており、例えば、Angal,S.et al.は、セリン241がプロリンで置き換えられたIgG1及びIgG2ドメインについて記載している。
【0266】
幾つかの実施形態では、Fcドメインは、CD16Aへの結合を強化するアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有する。CD16Aへの結合を増大させ、CD32Bへの結合を低減させる、ヒトIgG1のFcドメイン中の多数の置換が当技術分野で公知であり、Stavenhagen,et al.,Cancer Res.,57(18):8882−90(2007)に記載されている。CD32Bへの結合が低減し、及び/またはCD16Aへの結合が増大した、ヒトIgG1のFcドメインの代表的な変異体は、F243L、R929P、Y300L、V305I、またはP296L置換を含有する。これらのアミノ酸置換は、ヒトIgG1のFcドメイン中に任意の組み合わせで存在してもよい。一態様では、ヒトIgG1のFcドメイン変異体は、F243L、R929P、及びY300L置換を含有する。別の態様では、ヒトIgG1のFcドメイン変異体は、F243L、R929P、Y300L、V305I、及びP296L置換を含有する。別の態様では、ヒトIgG1のFcドメイン変異体は、N297Q置換を含有する。何故なら、この変異はFcR結合を消失させるからである。
【0267】
開示される融合タンパク質は、任意で、シグレック−15ポリペプチドを第2のポリペプチドから分離するペプチドまたはポリペプチドリンカードメインを含有する。幾つかの実施形態では、リンカードメインは、免疫グロブリンのヒンジ領域を含有する。好ましい実施形態では、ヒンジ領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。ヒンジが由来し得る適切なヒト免疫グロブリンとして、IgG、IgD、及びIgAが挙げられる。好ましい実施形態では、ヒンジ領域はヒトIgGに由来する。免疫グロブリンのヒンジ領域及び他のドメインのアミノ酸配列は、当技術分野で周知である。
【0268】
代表的な融合タンパク質は、シグレックl5 ECD−IgG1 Fc融合タンパク質である(L234F/L235E/P331S)。
[この文献は図面を表示できません]
【0269】
マウスのリーダー配列を下線で示す。シグレック−15細胞外ドメイン(ECD)は斜字体である。ヒンジ領域には二重下線を付す。残りの配列は、IgG1のFcに由来する。IgG1のFcドメイン中のL234F/L235E/P331S変異は、点線の下線を付した太字である。
【0270】
幾つかの実施形態では、リーダー配列は切断されるか、さもなければ融合タンパク質から欠落している。例えば、融合タンパク質は、以下の配列:
[この文献は図面を表示できません]
を有することができる。
【0271】
幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、SEQ ID NO:193または194と少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一である。
【0272】
幾つかの実施形態では、リーダー配列、リンカー(例えば、ヒンジ領域)、第2の融合パートナー(例えば、IgG1のFcドメイン)、またはそれらの組み合わせは、別の配列(複数可)(例えば、代替のリーダー配列、ヒンジ、Fcドメインなど)で置換されている。適切な置換は、当技術分野で周知である。例えば、米国特許第9,005,616号(これは、その全体が参照により明確に組み込まれている)を参照されたい。
【0273】
3.シグレック−15の核酸及び細胞
シグレック−15ポリペプチド、そのフラグメント及び融合物をコードするベクターも提供される。上記のもののような核酸をベクターに挿入して、細胞内で発現させることができる。よって、シグレック−15ポリペプチド、そのフラグメント及び融合物を含有し、発現する細胞も提供される。本明細書で使用される場合、「ベクター」とは、プラスミド、ファージ、ウイルス、またはコスミドなどのレプリコンであって、それに別のDNAセグメントを挿入すると、挿入されたセグメントを複製することができるようなレプリコンである。ベクターは、発現ベクターであり得る。「発現ベクター」とは、1つまたは複数の発現制御配列を含むベクターであり、「発現制御配列」とは、別のDNA配列の転写及び/または翻訳を制御及び調節するDNA配列である。
【0274】
ベクター中の核酸は、1つまたは複数の発現制御配列に機能的に連結させることができる。本明細書で使用される場合、「機能的に連結された」とは、発現制御配列が関心対象のコード配列の発現を有効に制御するように遺伝子構築物に組み込まれていることを意味する。発現制御配列の例として、プロモーター、エンハンサー、及び転写終結領域が挙げられる。プロモーターは、転写が開始する点(一般に、RNAポリメラーゼIIの開始部位付近)の上流100ヌクレオチド内のDNA分子の領域から構成される発現制御配列である。コード配列をプロモーターの制御下に置くために、ポリペプチドの翻訳読み枠の翻訳開始部位をプロモーターの1〜約50ヌクレオチド下流に位置付けることが必要である。エンハンサーは、時間、位置、及びレベルに関して発現特異性をもたらす。エンハンサーは、プロモーターとは異なり、転写部位から様々な距離に位置するときに機能し得る。エンハンサーは、転写開始部位から下流に位置することもできる。コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写することが可能であるとき、細胞内で「機能的に連結され」、発現制御配列の「制御下にあり」、次にこのmRNAを、コード配列によってコードされるタンパク質に翻訳することが可能である。
【0275】
適切な発現ベクターとして、限定されるものではないが、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、タバコモザイクウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスに由来するプラスミド及びウイルスベクターが挙げられる。多数のベクター及び発現系が、Novagen(Madison,WI)、Clontech(Palo Alto,CA)、Stratagene(La Jolla,CA)、及びInvitrogen Life Technologies(Carlsbad,CA)のような会社から市販されている。
【0276】
発現ベクターは、タグ配列を含み得る。タグ配列は、典型的には、コードされているポリペプチドとの融合物として発現される。かかるタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端を含めて、ポリペプチド中のいずれの位置にでも挿入することができる。有用なタグの例として、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c−myc、赤血球凝集素、Flag(商標)タグ(Kodak,New Haven,CT)、マルトースE結合タンパク質、及びタンパク質Aが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、シグレック−15融合ポリペプチドをコードする核酸分子は、Ig重鎖定常領域の1つまたは複数のドメイン、例えば、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、C
H2、及びC
H3領域に相当するアミノ酸配列、をコードする核酸を含有するベクター中に存在する。
【0277】
発現させようとする核酸を含有するベクターは、宿主細胞に移入することができる。「宿主細胞」という用語は、組換え発現ベクターを導入することができる原核及び真核細胞を含むことが意図される。本明細書で使用される場合、「形質転換される」及び「トランスフェクトされる」は、幾つもの技法の一つによって核酸分子(例えば、ベクター)が細胞に導入されることを包含する。特定の技法に限定するものではないが、これらの幾つもの技法が、当技術分野で十分に確立されている。原核細胞は、例えば、電気穿孔または塩化カルシウムに媒介される形質転換によって、核酸で形質転換することができる。核酸は、例えば、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE−デキストランに媒介されるトランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔、またはマイクロインジェクションを含めた技法によって、哺乳類細胞内にトランスフェクトすることができる。宿主細胞(例えば、原核細胞、またはCHO細胞などの真核細胞)を使用して、本明細書に記載のシグレック−15融合ポリペプチドを産生することができる。
【0278】
記載のベクターを使用して、細胞内でシグレック−15を発現させることができる。代表的なベクターとしてアデノウイルスベクターが挙げられるが、これに限定されない。一手法は、初代培養細胞に核酸を移入し、続いてエキソビボで形質転換された細胞を、宿主中に、全身的にまたは特定の器官もしくは組織中に自家移植することを含む。エキソビボでの方法は、例えば、対象から細胞を採取するステップ、細胞を培養するステップ、それらに発現ベクターで形質導入するステップ、及びコードされたポリペプチドの発現に適した条件下で細胞を維持するステップを含むことができる。これらの方法は、分子生物学の技術分野で公知である。形質導入ステップは、例えば、リン酸カルシウム、リポフェクション、電気穿孔、ウイルス感染症、及び遺伝子銃による遺伝子移入を含めたエキソビボでの遺伝子療法に使用される任意の標準的な手段によって遂行することができる。あるいは、リポソームまたはポリマー微粒子を使用することができる。成功裏に形質導入された細胞を、次に、例えば、コード配列の発現または薬物耐性遺伝子に関して選択することができる。次に、細胞に致死的放射線な照射することができ(所望であれば)、それを対象内に注射または移植することができる。一態様では、融合タンパク質をコードする核酸を含有する発現ベクターは、それを必要とする対象に投与される細胞内にトランスフェクトされる。
【0279】
インビボでの核酸療法は、機能的に活性なDNAを哺乳動物の体細胞組織または器官にインビボで直接移入することによって遂行することができる。例えば、本明細書に開示されるポリペプチドをコードする核酸は、リンパ組織または腫瘍に直接投与することができる。あるいは、リンパ組織特異的ターゲティングは、リンパ組織特異的転写制御因子(TRE)、例えば、Bリンパ球特異的TRE、Tリンパ球特異的TRE、または樹状細胞特異的TREを使用して実現することができる。リンパ組織特異的TREは、当技術分野で公知である。
【0280】
核酸はまた、インビボでウイルス手段によって投与されてもよい。融合タンパク質をコードする核酸分子は、当技術分野で周知のように、複製欠損レトロウイルスを産生するパッケージング細胞株を使用してレトロウイルスベクター内にパッケージングされてもよい。組換えアデノウイルス及びワクシニアウイルスを含めた、非複製性にすることができる他のウイルスベクターも使用されてもよい。裸のDNAもしくはRNA、またはウイルスベクターに加えて、操作された細菌がベクターとして使用されてもよい。
【0281】
核酸はまた、リポソーム、ポリマー微粒子及びポリマーナノ粒子、ならびにアシアロ糖タンパク質/ポリリジンなどのポリカチオンを含めた他の担体によって送達されてもよい。
【0282】
インビボでのウイルス及び担体に媒介される遺伝子移入に加えて、DNAを直接移入するために、プラスミドDNAの投与及び微粒子銃に媒介される遺伝子移入を含めた当技術分野で周知の物理的手段を使用することができる。
【0283】
D.医薬組成物
開示されるシグレック−15結合分子を含む医薬組成物が提供される。シグレック−15結合分子を含有する医薬組成物は、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)、または皮下注射)、経皮(受動的に、またはイオン導入もしくは電気穿孔を使用する)、もしくは経粘膜(経鼻、経膣、経直腸、または舌下)の投与経路によるか、または生体内分解性挿入物を使用することによる投与を目的とすることができ、各投与経路に適した剤形に製剤化することができる。
【0284】
幾つかのインビボでの手法では、本明細書に開示される組成物は、治療的有効量で対象に投与される。本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療的有効量」という用語は、治療している障害の1つもしくは複数の症状を治療する、阻害する、もしくは緩和するか、またはさもなければ所望の薬理学的及び/または生理学的効果をもたらすのに十分な投薬量を意味する。正確な投薬量は、対象に依存する変動要素(例えば、年齢、免疫系の健康など)、疾患、及び実施されている治療などの種々の因子によって変動する。
【0285】
開示されるシグレック−15結合分子については、さらなる研究が行われるにつれ、様々な患者における様々な状態の治療に適した投薬量レベルに関する情報が明らかになろう。当業者であれば、治療状況、レシピエントの年齢及び全身健康状態を考慮して、妥当な投薬を見極めることができるであろう。選択される投薬量は、所望の治療効果、投与経路、及び所望の治療期間に依存する。一般に、静脈注射または注入の場合、投薬量を下げることができる。
【0286】
患者に投与される投薬量は、典型的には、患者の体重当たり0.01mg/kg〜100mg/kgである。患者に投与される投薬量は、例えば、患者の体重当たり0.01mg/kg〜20mg/kg、0.01mg/kg〜10mg/kg、0.01mg/kg〜5mg/kg、0.01〜2mg/kg、0.01〜1mg/kg、0.01mg/kg〜0.75mg/kg、0.01mg/kg〜0.5mg/kg、0.01mg/kg〜0.25mg/kg、0.01〜0.15mg/kg、0.01〜0.10mg/kg、0.01〜0.05mg/kg、または0.01〜0.025mg/kgであり得る。代表的な特定の投薬量として、0.2mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、または10mg/kgが挙げられるが、これらに限定されない。適正な薬力学的効果を生じるために0.01mg/kg程の低い用量で十分であると考えられる。0.10〜1mg/kgの用量レベルが、最も適正であると予測される。用量が高くなっても(例えば、1〜30mg/kg)活性であることが期待される。
【0287】
一般に、ヒト抗体は、他の種に由来する抗体よりヒト体内で長い半減期を有し、それは外来性ポリペプチドに対する免疫応答に起因する。よって、ヒト抗体は、投薬量を少なくし、投与回数を減らすことが可能であることが多い。さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントの投薬量及び投与回数は、例えば脂質化などの修飾により抗体の取り込み及び組織浸透を強化することによって低減させることができる。
【0288】
ある特定の実施形態では、シグレック−15結合分子は、局所的に、例えば、治療しようとする部位に直接注射することによって投与される。典型的には、その注射によってシグレック−15結合分子組成物の局所濃度が増大し、その濃度は全身投与によって実現し得る濃度より高い。シグレック−15結合分子組成物を下記の通りのマトリックスと組み合わせることで、治療しようとする部位からのポリペプチドの受動拡散を低減させることによって、局所濃度の増加を生じる助けとすることができる。
【0289】
1.非経口投与用製剤
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、非経口注射または注入によって、水溶液の状態で投与される。製剤はまた、懸濁液または乳濁液の形態であってもよい。一般に、医薬組成物は、有効量のシグレック−15結合分子を含んで提供され、任意で、医薬として許容される希釈剤、防腐剤、溶解剤、乳化剤、アジュバント、及び/または担体を含む。かかる組成物は、任意で、以下に関して1つまたは複数を含む:希釈剤、滅菌水、様々な緩衝液内容物(例えば、トリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、及びイオン強度の緩衝生理食塩水;及び添加剤、例えば、界面活性剤及び可溶化剤(例えば、TWEEN20(ポリソルベート−20)、TWEEN80(ポリソルベート−80))、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム)、及び防腐剤(例えば、例えば、チメルソル(Thimersol)、ベンジルアルコール)及び充填物質(例えば、ラクトース、マンニトール)。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油及びトウモロコシ油、ゼラチン、ならびに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。製剤は、凍結乾燥され、使用する直前に再溶解/再懸濁されてもよい。製剤は、例えば、細菌保持フィルターによるろ過によって、組成物中に滅菌剤を組み込むことによって、組成物を照射することによって、または組成物を加熱することによって滅菌されてもよい。
【0290】
2.制御送達用ポリマーマトリックス
本明細書に開示されるシグレック−15結合分子は、放出制御製剤においても投与することができる。放出制御ポリマーデバイスは、ポリマーデバイス(ロッド、シリンダー、フィルム、ディスク)の埋め込みまたは注射(微小粒子)後に全身に長期放出させるために作製することができる。マトリックスは、ミクロスフェアなどの微小粒子の形態であってもよく、この場合、作用物質は固体ポリマーマトリックスまたはマイクロカプセルの内部に分散されており、そのコアはポリマーシェルとは異なる材料のものであり、ペプチドはコア(自然状態で液体であっても、または固体であってもよい)内に分散または懸濁されている。本明細書で特に定義しない限り、微小粒子、ミクロスフェア、及びマイクロカプセルは互換的に使用される。あるいは、ポリマーは、ナノメートルから4センチメートルの範囲の薄い平板もしくはフィルムとして注型されたもの、粉砕もしくは他の標準的な技法によって生成される粉末、またはさらにはヒドロゲルなどのゲルであってもよい。
【0291】
融合ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードする核酸の送達に、非生分解性または生分解性マトリックスのいずれも使用することができる。これらは、天然ポリマーであっても、または合成ポリマーであってもよい。合成ポリマーの方が、典型的には分解及び放出プロファイルの特性評価が良好である。ポリマーは、所望される放出期間に基づいて選択される。ある場合には線形放出が最も有用であり得るが、他の場合にはパルス放出または「バルク放出」の方が有効な結果をもたらすこともある。ポリマーは、ヒドロゲル(典型的には最大約90重量%の水を吸収している)の形態であってもよく、任意で多価イオンまたはポリマーと架橋されたものであり得る。
【0292】
マトリックスは、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出、及び当業者に公知の他の方法によって形成することができる。生体内分解性のミクロスフェアは、例えば、Mathiowitz and Langer,J.Controlled Release,5:13−22(1987);Mathiowitz,et al.,Reactive Polymers,6:275−283(1987);及びMathiowitz,et al.,J.Appl.Polymer Sci.,35:755−774(1988)によって記載されるような、薬物送達用のミクロスフェアを作製するために開発された方法のいずれかを使用して調製することができる。
【0293】
デバイスは、埋め込まれたもしくは注射された部分を治療するための局所放出用(これは典型的には全身を治療するための投薬量よりはるかに少ない投薬量を送達することとなる)または全身送達用に製剤化することができる。これらは、皮下、筋肉内、脂肪内に埋め込むもしくは注射するか、または嚥下することができる。
【0294】
III.使用方法
開示されるシグレック−15−結合分子及びシグレック−15リガンド結合分子を使用する方法も提供される。免疫応答を増大させる、腫瘍増殖を遅延させるもしくは防止する、腫瘍に媒介される免疫抑制を阻害する、腫瘍を排除する、及び/または腫瘍関連マクロファージ(TAM)の活性を枯渇させるもしくはブロックしてその活性を変化させる、TAMに媒介される免疫抑制を減少させる、T細胞の抑制を低減もしくは逆転させるための、かかる分子の使用が開示される。がん及び他の疾患の診断及び治療におけるかかる分子の使用も提供される。
【0295】
TAMによって、炎症とがんとが関連付けられる。マクロファージは、活性化された血中単球に由来する免疫系細胞である。それは、病原体、死細胞、細胞残屑、及び細胞外基質(ECM)の様々な構成成分を除去する(すなわち貪食する)ように作用することによって、病原体または組織損傷によって誘導された炎症反応に関与すると主に認識されている。マクロファージは、腫瘍微小環境内で重要な構成要素を構成し、腫瘍量の最大50%を占めることが見出されている。
【0296】
貪食を媒介することに加えて、マクロファージは、血管新生促進性増殖因子及び基質リモデリングプロテアーゼを分泌し、よって腫瘍の発達及び増殖に必要な血管の基盤(すなわち、血管新生)の発達に役割を担っている(Pollard,J.W.(2009),Nat.Rev.Immunol.9:259−270)。腫瘍内にマクロファージが存在すると、腫瘍の増殖が支援されると思われる。幾つもの研究から、腫瘍内の腫瘍関連マクロファージの存在が、生存の負の予後因子であるという証拠が得られている(Farinha,P.et al.(2005),Blood 106:2169−2174;Dave,S.S.et al.(2004),N.Engl.J.Med.351:2159−2169;Solinas,G.et al.(2009),J.Leukoc.Biol.86(5):1065−1073)。TAM、ならびに好中球、線維芽細胞、及び他の細胞は、腫瘍細胞に協力して、腫瘍における血管新生を促進する(Nucera,S.et al.(2011),Int.J.Dev.Biol,doi:10.1387/ijdb.103227sn;Zamarron,B.F.et al.(2011),Int.J.Biol.Sci.7(5):651−658;Liu,J.et al.(2011),PLoS One.6(4):e19495;Rigo,A.et al.(2010),Molec.Cancer 9(273):1−13;Lin,J.Y.et al.(2011),Chin.J.Cancer 30(4):280−286;Vergati,M.(2011),J.Biomed.Biotechnol.2011:182413)。
【0297】
研究から、シグレック−15はTAM上に誘導的に発現され、腫瘍細胞認識をDAP12−Sykシグナル伝達経路と結びつけることによってTGF−βの分泌を強化することが示されている(Takamiya,et al.,Glycobiology,23(2):178−87(2013)。Takamiyaによって提示された特定のモデルにおいて、腫瘍細胞によって分泌されたM−CSFは、マクロファージへの単球分化を誘導し、それに伴ってシグレック−15が発現する。シアリル−Tn抗原とシグレック−15との間の相互作用によって、DAP12−Syk経路を介してマクロファージからのTGF−βの産生が強化され、それによって腫瘍微小環境が免疫抑制の方向に傾くことにより、腫瘍が進行し、さらには転移が起こる。
【0298】
機能を阻止するまたは低減させる抗シグレック−15抗体をシグレック−15に結合させると、シグレック−15が1つまたは複数のそのリガンドに結合する能力を低減させる、ブロックする、拮抗する、減弱する、または不完全に消失させることができ、したがってシグレック−15によって媒介される抑制性免疫シグナル伝達(TGF−βの分泌が挙げられるが、これに限定されない)を減少させるまたは防止することができる。TGF−βの発現の増加は、多くのがんの悪性度及びTGF−βに応答する細胞増殖阻害の欠損と相関し、免疫抑制に基づく腫瘍形成に至ることが多い。シグレック−15に媒介されるTGF−βの分泌を減少させると、対象における免疫応答が全体的に増大し、腫瘍の進行が直接的にまたは間接的に減少する。
【0299】
以降の実施例は、末梢血単核球(PBMC)増殖アッセイにおいて、本明細書に開示されるものを含めた機能低減及び機能阻止抗シグレック−15抗体が、シグレック−15に媒介されるCD4+及びCD8+T細胞増殖の抑制を逆転させることができることを示している。
【0300】
よって、免疫抑制を低減させる及び/または免疫応答を増大させる方法であって、最も典型的にはそれを必要とする対象に有効量の抗シグレック−15機能阻止抗体を投与することによる方法が提供される。
【0301】
適切な抗体、ポリペプチド、及び融合タンパク質は本明細書に開示されており、限定されないが、増殖、遊走、接着、軟寒天増殖、血管新生、細胞−細胞伝達、アポトーシス、輸送、シグナル伝達を含めたインビトロでのアッセイ、及び腫瘍増殖の阻害などのインビトロでのアッセイによってさらに選択することができる。開示される抗体の機能を検査するための代表的なアッセイは、以降の実施例に示す。
【0302】
本明細書に提供される抗体は、診断及び調査用途にも有用であり得る。例えば、非中和抗体は、抗原の受容体結合または生物活性を阻害することなく特異的抗原に結合することができ、捕捉アッセイ及び他のプルダウン法(例えば、ELISA)に使用することができる。中和(例えば、機能阻止)抗体は、競合結合測定法に有用であり得る。
【0303】
抗体は、シグレック−15ポリペプチドまたはそのリガンドを定量化するために使用することができる。
【0304】
A.免疫応答増大分子
1.治療的及び予防的使用
ヒトシグレック−15及びシグレック−15リガンド結合分子に免疫特異的に結合し、かつシグレック−15とそのリガンド及び/または対抗受容体のうちの1つまたは複数との間の結合を低減させる能力のある分子(とりわけ、抗体またはその抗原結合フラグメント)の治療的及び/または予防的使用が提供される(例えば、アンタゴニスト分子)。
【0305】
幾つかの実施形態では、該分子は、シグレック−15とシアル酸付加された糖タンパク質リガンド、例えば、対象の細胞によって内因的に発現されるシアル酸付加された糖タンパク質との間の結合を低減させるまたは防止し、シグレック−15に媒介されるシグナル伝達を低減させるまたは防止する。追加的にまたは代替的に、該分子は、シグレック−15とその対抗受容体との間の結合を低減させるまたは防止することができ、シグレック−15に媒介されるシグナル伝達及び/または対抗受容体を介するシグナル伝達を低減させるまたは防止することができる。例えば、開示される分子は、シアル酸結合部位を破壊するシグレック−15上の1つまたは複数の部位(例えば、SEQ ID NO:1の残基143を含めたエピトープ)、及び/またはシグレック−15対抗受容体との結合に重要な結合部位で抗原と結合することができる。代表的な組成物は、以降の実施例に例示する。例えば,幾つかの実施形態では、5G12、6F8、8C8、1C3、1C12、3H10、及び1B2は(「強力なブロッカー」)であり、10G9、8H8、及び9A5は(「部分的なブロッカー」)である。したがって、幾つかの実施形態では、免疫応答の上方調節に使用される分子は、5G12、6F8、8C8、1C3、1C12、3H10、1B2、10G9、8H8、または9A5の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てのCDRを含む。幾つかの実施形態では、該分子は、5G12、6F8、8C8、1C3、1C12、3H10、1B2、10G9、8H8、もしくは9A5の軽鎖可変領域及び/または重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、該分子は、マウス抗ヒト5G12、6F8、8C8、1C3、1C12、3H10、1B2、10G9、8H8、もしくは9A5、またはそれらのキメラもしくはヒト化変異体である。
【0306】
上で考察したように、シグレック−15とシアル酸付加された糖タンパク質リガンド及び/またはシグレック−15対抗受容体との間の相互作用によって、T細胞の増殖が阻害され、TGF−βなどのサイトカインの産生が増大し得る。よって、幾つかの実施形態では、開示されるシグレック−15結合分子を対象に投与すると、シグレック−15リガンド及び/または対抗受容体の結合/相互作用がブロックされるか、さもなければ拮抗されることによって、対象の免疫系が上方調節される。別の態様では、抗シグレック−15抗体の結合活性及び/または親和性は、それが極めて高いレベルのシグレック−15を発現している細胞、例えば、腫瘍関連マクロファージ(TAM)またはがん細胞にのみ結合するようなものであり得、それによってこの細胞集団の特異的ターゲティングが可能になる。よって、幾つかの実施形態では、該分子は、例えば腫瘍微小環境におけるTGF−βの産生を低減させる。幾つかの実施形態では、シグレック−15を発現する細胞は、単球である。より特定の実施形態では、シグレック−15を発現する細胞は、マクロファージ、例えばTAMである。
【0307】
上に示したように、開示される抗体及び抗原結合フラグメントは、TAMの免疫抑制活性を調節するように、TAMに結合し、実質的にTAMをブロックすることができる。さらに、かかる抗体を使用して、腫瘍微小環境内のシグレック−15TAMを枯渇させるか、または末梢血中のTAMの濃度を枯渇させることができる。一態様では、かかる調節または枯渇化は、正常なシグレック−15の機能を弱化するまたは撹乱するように部位に結合するシグレック−15抗体を使用して遂行される。そのような撹乱の結果として、TAMの活性が減少し(調節され)、及び/または腫瘍中のマクロファージの実際のもしくは有効な(機能性)濃度が枯渇する。あるいは、かかる調節または枯渇化は、毒素にコンジュゲートされた抗シグレック−15抗体を使用して、それがTAMに結合するとマクロファージが死滅するようにして遂行される。
【0308】
加えて、開示されるアンタゴニスト分子を使用して、T細胞の増殖を誘導する、増大させる、または強化することができる。幾つかの実施形態では、T細胞応答は、シグレック−15がT細胞上の対抗受容体と結合するのを低減させるまたは防止することによって誘導される。免疫系の上方調節はがん及び慢性感染症の治療に特に望ましく、よって開示される組成物は、かかる障害の治療に使用することができる。
【0309】
2.治療される対象
a.がんの治療
開示される機能低減組成物及び方法を使用して、がんを治療することができる。概して、該方法は、ある量のシグレック−15結合物を対象に投与することによって、対象においてがんに対する免疫応答を刺激するもしくは強化すること、腫瘍の増殖もしくは進行を低減させるまたは防止すること、またはそれらの組み合わせを含む。該方法は、がんの症状の1つまたは複数を低減させることができる。
【0310】
がん細胞は、その発生の間に、様々な機序を介してではあるが、特徴的な一連の機能的能力を獲得する。かかる能力として、アポトーシスの回避、増殖シグナルの自己充足、抗増殖シグナルに対する非感受性、組織湿潤/転移、無限の複製能、及び持続的血管新生が挙げられる。「がん細胞」という用語は、前悪性がん細胞と悪性がん細胞を両方包含することを意味している。幾つかの実施形態では、がんは、局在したままの良性腫瘍を指す。他の実施形態では、がんは、隣接する身体構造を侵襲して破壊し、遠位部位に広がる悪性腫瘍を指す。さらに他の実施形態では、がんは、特異的がん抗原(例えば、全癌腫抗原(KS1/4)、卵巣癌抗原(CA125)、前立腺特異的抗原(PSA)、がん胎児抗原(CEA)、CD19、CD20、HER2/neuなど)に関連している。
【0311】
本明細書に開示される方法及び組成物は、種々のがんまたは他の異常な増殖性疾患の治療または防止に有用であり、これらとして、癌腫、例えば、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、頚部、甲状腺、及び皮膚の癌腫;例えば、扁平上皮細胞癌;リンパ系列の造血器腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫;骨髄細胞系列の造血器腫瘍、例えば、急性及び慢性骨髄性白血病、ならびに前骨髄球性白血病;間葉系由来の腫瘍、例えば、線維肉腫及び横紋筋肉腫;他の腫瘍、例えば、黒色腫、精上皮腫、奇形癌、神経芽細胞腫、及び神経膠腫;中央及び末梢神経系の腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、及び神経鞘腫;間葉系由来の腫瘍、例えば、線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫;ならびに他の腫瘍、例えば、黒色腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、及び奇形癌が挙げられる(これらに限定されない)。
【0312】
アポトーシスの異常によって引き起こされるがんも、開示される方法及び組成物によって治療することができる。かかるがんとして、濾胞性リンパ腫、p53変異を有する癌腫、乳房、前立腺、及び卵巣のホルモン依存性腫瘍、ならびに前癌病変、例えば、家族性大腸腺腫症、及び骨髄異形成症候群を挙げることができるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、卵巣、膀胱、乳房、結腸、肺、皮膚、膵臓、または子宮における悪性もしくは異常増殖性(dysproliferative)の変化(化生及び異形成など)、または過剰増殖性障害が、該方法及び組成物によって治療または防止される。他の特定の実施形態では、肉腫、黒色腫、または白血病が、該方法及び組成物によって治療または防止される。
【0313】
開示される組成物及び方法は、異常に高レベルのシグレック−15自体もしくはシグレック−15の糖タンパク質リガンドを発現する細胞に関連するがん、マクロファージに関連する多数の腫瘍を有するがん(特にマクロファージがシグレック−15を発現している場合)、及び/または別の細胞型(複数可)が高レベルのシグレック−15もしくはシグレック−15リガンドを発現している別のがんの治療に特に有用である。
【0314】
本明細書に開示される方法及び組成物によって治療または防止される特定のがん及び関連障害として、これらに限定されないが、白血病、例えば、これらに限定されないが、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、例えば、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、及び骨髄異形成症候群、慢性白血病、例えば、これらに限定されないが、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病;真性多血症;リンパ腫、例えば、これらに限定されないが、ホジキン病または非ホジキン病リンパ腫(例えば、びまん性未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性、大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);びまん性未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性、大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性、ALK+未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、急性骨髄性リンパ腫(AML));多発性骨髄腫、例えば、これらに限定されないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫、及び髄外性形質細胞腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;重度未確定の単クローン性γグロブリン血症;良性単クローン性γグロブリン血症;重鎖病;骨及び結合組織の肉腫、例えば、これらに限定されないが、骨肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(血管内皮腫)、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫;脳腫瘍、例えば、これらに限定されないが、神経膠腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、脳室上衣腫、乏突起膠腫、非グリア性腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭管腫瘍、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫;乳癌、例えば、これらに限定されないが、腺癌、小葉癌(小細胞)癌、乳管癌、髄様乳癌、粘液性乳癌、管状乳癌、乳頭の乳癌、ページェット病、及び炎症性乳癌;副腎癌、例えば、これらに限定されないが、褐色細胞腫及び副腎皮質癌;甲状腺癌、例えば、これらに限定されないが、甲状腺乳頭癌または濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌、及び組織非形成性甲状腺癌;膵癌、例えば、これらに限定されないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、及びカルチノイドまたは島細胞腫瘍;下垂体癌、例えば、これらに限定されないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、及び尿崩症;眼癌、例えば、これらに限定されないが、眼内黒色腫、例えば、虹彩黒色腫、脈絡膜悪性黒色腫、及び毛様体黒色腫、及び網膜芽細胞腫;腟癌、例えば、これらに限定されないが、扁平上皮細胞癌、腺癌、及び黒色腫;外陰癌、例えば、これらに限定されないが、扁平上皮細胞癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、及びページェット病;子宮頚癌、例えば、これらに限定されないが、扁平上皮細胞癌、及び腺癌;子宮癌、例えば、これらに限定されないが、子宮内膜癌及び子宮肉腫;卵巣癌、例えば、これらに限定されないが、上皮性卵巣癌、境界型腫瘍、胚細胞腫瘍、及び間質性腫瘍;食道癌、例えば、これらに限定されないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、いぼ状癌、及び燕麦細胞(小細胞)癌;胃癌、例えば、これらに限定されないが、腺癌、菌状(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、及び癌肉腫;結腸癌;直腸癌;肝臓癌、例えば、これらに限定されないが、肝細胞癌及び肝芽腫、胆嚢癌、例えば、これらに限定されないが、腺癌;胆管癌、例えば、これらに限定されないが、乳頭状、結節性、及びびまん性;肺癌、例えば、これらに限定されないが、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞癌(類表皮癌腫)、腺癌、大細胞癌、及び小細胞肺癌;精巣癌、例えば、これらに限定されないが、胚の腫瘍、精上皮腫、未分化型、古典的(典型的)、精母細胞の、非セミノーム、胎児性癌、奇形腫癌、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)、前立腺癌、例えば、これらに限定されないが、腺癌、平滑筋肉腫、及び横紋筋肉腫;腎癌;口腔癌、例えば、これらに限定されないが、扁平上皮細胞癌;基底癌;唾液腺癌、例えば、これらに限定されないが、腺癌、粘表皮癌、及び腺様嚢胞癌;咽頭癌、例えば、これらに限定されないが、扁平上皮癌、及びいぼ状;皮膚癌、例えば、これらに限定されないが、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、及び黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、黒子悪性黒色腫、末端性黒子性黒色腫;腎臓癌、例えば、これらに限定されないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、線維肉腫、移行細胞癌(腎盂及び/または尿管);ウィルムス腫瘍;膀胱癌、例えば、これらに限定されないが、移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫が挙げられる。加えて、がんとして、粘液肉腫、骨肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌及び乳頭状腺癌が挙げられる(かかる障害の総説に関しては、Fishman et al.,1985,Medicine,2d Ed.,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia及びMurphy et al.,1997,Informed Decisions:The Complete Book of Cancer Diagnosis,Treatment,and Recovery,Viking Penguin,Penguin Books U.S.A.,Inc.,United States of Americaを参照されたい)。
【0315】
b.感染症の治療
開示される機能低減組成物及び方法を使用して、感染症及び感染性疾患を治療することができる。概して、該方法は、ある量のシグレック−15結合分子を対象に投与することによって、対象において感染原因物質に対する免疫応答を刺激するもしくは強化すること、感染性疾患の進行を低減させるまたは防止すること、またはそれらの組み合わせを含む。該方法は、感染症の1つまたは複数の症状を低減させることができる。
【0316】
感染症または疾患は、細胞内に入って攻撃される、すなわち細胞傷害性Tリンパ球によって攻撃される、細菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、または他の微生物病原体によって引き起こされ得る。
【0317】
感染症または疾患は、急性または慢性であり得る。急性感染症は、典型的には短期間の感染症である。急性微生物感染の間に、免疫細胞は、免疫調節性受容体を発現し始める。したがって、幾つかの実施形態では、該方法は、急性感染症に対する免疫刺激応答を増大させることを含む。
【0318】
感染症は、例えば、これらに限定されないが、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エシェリキア・コリ、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、またはマイコバクテリウム属(Mycobacterium)によって引き起こされ得る。
【0319】
幾つかの実施形態では、開示される組成物を使用して、慢性感染症、例えば、T細胞疲弊またはT細胞アネルギーが生じて感染が長時間宿主に存続するようになった感染症を治療する。
【0320】
治療しようとする代表的な感染症は、肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、またはヒトパピローマウイルスによって引き起こされる慢性感染症である。
【0321】
ウイルス感染は主にT細胞によって除去されるので、感染性ウイルス物質のより迅速なまたは完全なクリアランスが動物またはヒト対象に有益と思われる状況では、T細胞の活性を増大させれば治療的に有用であるはずである。よって、開示される組成物は、局所または全身のウイルス感染症を治療するために投与することができ、そうしたウイルス感染症として、免疫不全(例えば、HIV)、パピローマ(例えば、HPV)、ヘルペス(例えば、HSV)、脳炎、インフルエンザ(例えば、ヒトインフルエンザウイルスA)、及び感冒(例えば、ヒトライノウイルス)、ならびに他のウイルス感染症、例えば、HTLV、肝炎ウイルス、呼吸器系合胞体ウイルス、ワクシニアウイルス、及び狂犬病ウイルスによって引き起こされるものが挙げられるが、これらに限定されない。該分子を局所的に投与して、ウイルス性皮膚疾患、例えば、ヘルペスの病変部、または帯状疱疹、または性器疣贅を治療することができる。該分子を全身的に投与して、全身性ウイルス性疾患を治療することができ、そうした疾患として、AIDS、インフルエンザ、感冒、または脳炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0322】
治療することができる代表的な感染症として、これらに限定されないが、微小生物によって引き起こされる感染症が挙げられ、そうした微生物として、アクチノミセス属(Actinomyces)、アナベナ属(Anabaena)、バシラス属(Bacillus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ブデロビブリオ属(Bdellovibrio)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、カンピロバクター属(Campylobacter)、コーロバクター属(Caulobacter)、クラミジア属(Chlamydia)、クロロビウム属(Chlorobium)、クロマチウム属(Chromatium)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、サイトファーガ属(Cytophaga)、デイノコッカス属(Deinococcus)、エシェリキア属(Escherichia)、フランキセラ属(Francisella)、ハロバクテリウム属(Halobacterium)、ヘリオバクター属(Heliobacter)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Hemophilus influenza)B型(HIB)、ヒフォミクロビウム属(Hyphomicrobium)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピローシス(Leptspirosis)、リステリア属(Listeria)、髄膜炎菌(Meningococcus)A、B、及びC、メタノバクテリウム属(Methanobacterium)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ミオバクテリウム(Myobacterium)、マイコプラスマ属(Mycoplasma)、ミクソコッカス属(Myxococcus)、ナイセリア属(Neisseria)、ニトロバクター属(Nitrobacter)、オシラトリア属(Oscillatoria)、プロクロロン属(Prochloron)、プロテウス属(Proteus)、シュードモナス属、ホドスピリルム属(Phodospirillum)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、スピリルム属(Spirillum)、スピロヘータ属(Spirochaeta)、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、ストレプトミセス属(Streptomyces)、スルホロブス属(Sulfolobus)、サーモプラスマ属(Thermoplasma)、チオバチルス属(Thiobacillus)、及びトレポネーマ属(Treponema)、ビブリオ属(Vibrio)、エルシニア属(Yersinia)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia ricketsii)、リケッチア・チフィ(Rickettsia typhi)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、クラミジア・プシタッシ(Chlamydial psittaci)、クラミジア・トラコーマティス(Chlamydial trachomatis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、トリパノソーマ・ブルーセイ(Trypanosoma brucei)、エントアメーバ・ヒストリティカ(Entamoeba histolytica)、トキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii)、トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis)ならびにマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0323】
開示される組成物及び方法を使用して治療することができる他の微小生物として、細菌、例えば、クレブシエラ属(Klebsiella)、セラシア属(Serratia)、パスツレラ属(Pasteurella)の細菌;コレラ、破傷風、ボツリヌス中毒、炭疽、ペスト、及びライム病に関連する病原体;または真菌もしくは寄生性病原体、例えば、カンジダ属(アルビカンス、クルセイ(krusei)、グラブラータ(glabrata)、トロピカリスなど)、クリプトコックス属、アスペルギルス属(Aspergillus)(フミガーツス(fumigatus)、ニガー(niger)など)、ムコラーレス属(Genus Mucorales)(ムコール(mucor)、アブシヂア(absidia)、リゾフス(rhizophus))、スポロトリクス属(Sporothrix)(シェンキー(schenkii))、ブラストミセス属(Blastomyces)(デルマティティディス(dermatitidis))、パラコクシジオイデス属(Paracoccidioides)(ブラシリエンシス(brasiliensis))、コクシジオイデス属(Coccidioides)(immitis)及びヒストプラスマ属(capsulatuma)、エントアメーバ・ヒストリティカ、バランチジウム・コリ(Balantidium coli)、ネグレリア・フォウレリ(Naegleria fowleri)、アカンソアメーバ属の種(Acanthamoeba sp.)、ギアリダ・ランビア(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム属の種(Cryptosporidium sp.)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、プラスモディウム・ビバックス(Plasmodium vivax)、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルーセイ、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、トキソプラズマ・ゴンヂなど)、スポロトリクス属、ブラストミセス属、パラコクシジオイデス属、コクシジオイデス属、ヒストプラスマ属、エントアメーバ・ヒストリティカ、バランチジウム属、ネグレリア属、アカンソアメーバ属、ギアリダ属、クリプトスポリジウム属、ニューモシスチス属、プラスモディウム属、バベシア属、またはトリパノソーマ属などが挙げられる。
【0324】
B.免疫応答低減分子
1.治療的及び予防的使用
ヒトシグレック−15またはそのリガンドに結合し、かつシグレック−15とそのリガンド及び/または対抗受容体の1つまたは複数との結合を増大させるまたは強化する能力のある分子(とりわけ、抗体またはその抗原結合フラグメント)の治療的及び/または予防的使用が提供され(例えば、アゴニスト分子)、あるいはシグレック−15またはシグレック−15対抗受容体に媒介されるシグナル伝達を直接増大させるまたは強化する能力のある分子の治療的及び/または予防的使用も提供される。
【0325】
上で考察したように、シグレック−15とシアル酸付加された糖タンパク質リガンド及び/またはシグレック−15対抗受容体との間の相互作用は、T細胞の増殖を阻害し、TGF−βなどのサイトカインの産生を増大させることができる。よって、幾つかの実施形態では、機能活性化シグレック−15結合分子または機能活性化シグレック−15リガンド結合分子を対象に投与すると、シグレック−15−リガンド及び/または対抗受容体の結合/相互作用が誘導されるかさもなければアゴナイズされ、またはシグレック−15またはシグレック−15対抗受容体のシグナル伝達が直接刺激されることによって、対象の免疫系が下方調節される。幾つかの実施形態では、該分子は、例えばマクロファージなどの単球からの、TGF−βの産生及び/または分泌を増大させる。
【0326】
加えて、開示されるアゴニストシグレック−15結合及びシグレック−15リガンド結合分子を使用して、T細胞の増殖を低減または減少させることができる。幾つかの実施形態では、T細胞応答は、T細胞上の対抗受容体へのシグレック−15の結合を増大させるまたは強化することによって誘導される。免疫系の下方調節は、炎症性及び自己免疫性の疾患及び障害の治療に、また移植片拒絶反応及び/または移植片対宿主病を治療または防止するために特に望ましく、よって開示される組成物を使用して、かかる障害を治療することができる。
【0327】
a.炎症反応
幾つかの実施形態では、シグレック−15アゴニスト分子は、炎症、例えば、急性、慢性、または持続性炎症の1つまたは複数の症状を治療するまたは緩和するために使用される。
【0328】
炎症を含めた免疫応答は、対象、好ましくはヒトにおいて、免疫細胞(例えば、T細胞またはB細胞)の生物活性を阻害するもしくは低減させるか、または炎症部位における炎症誘発性分子の量を低減させるのに有効な量のシグレック−15結合分子を投与することによって、阻害するまたは低減させることができる。代表的な炎症誘発性分子として、IL−1β、TNF−α、IFN−γ、IL−18、IL−17、IL−6、IL−23、IL−22、IL−21、及びMMPが挙げられるが、これらに限定されない。
【0329】
b.過剰炎症反応
幾つかの実施形態では、シグレック−15結合分子は、免疫系を遅延させる。例えば、シグレック−15結合分子を使用して、過剰炎症反応を介して健常組織を損傷させる感染症に対する免疫刺激応答を制御することができる。したがって、幾つかの実施形態では、該作用物質は、過剰炎症反応も起こしている感染症を有する対象に投与される。かかる場合では、過剰な免疫応答を制御することは、対象に有益であり得る。
【0330】
c.炎症性及び自己免疫性疾患/障害
開示される組成物を使用して、炎症性または自己免疫性の疾患及び障害を治療することもできる。治療することができる代表的な炎症性または自己免疫疾患/障害として、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ球増殖性症候群(alps)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー−皮膚炎、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症−線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Iga腎症、インスリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndrome)、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ならびにウェゲナー肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0331】
幾つかの実施形態では、炎症または自己免疫疾患は、病原体によって引き起こされるか、または感染症の結果である。
【0332】
d.移植
シグレック−15結合分子を使用して、対象、好ましくはヒト対象において移植拒絶反応を低減させるまたは阻害することができる。移植拒絶反応は、対象において、免疫細胞の生物活性を阻害するもしくは低減させるために、または炎症誘発性サイトカインまたは関連するもしくは移植部位の炎症を促進する他の分子の量を低減させるために有効な量のアゴニストシグレック−15結合分子を投与することによって、阻害するまたは低減させることができる。
【0333】
移植される材料は、身体、好ましくはヒトの身体の細胞、組織、器官、手足、指、または一部分であり得る。移植片は、典型的には同種異系または異種である。アゴニストシグレック−15分子は、典型的には、移植拒絶反応を低減させるまたは阻害するのに有効な量で対象に投与される。該分子は、許容可能な投与経路によって全身的にまたは局所的に投与することができる。幾つかの実施形態では、該分子は、移植前、移植時、または移植後に移植部位に投与される。
【0334】
該分子は、移植しようとする細胞、組織、または器官にエキソビボで直接投与することができる。一態様では、移植材料を、移植前、移植後に、またはその両方でシグレック−15結合分子と接触させる。
【0335】
他の実施形態では、シグレック−15結合分子は、免疫組織または器官、例えば、リンパ節または脾臓に投与される。
【0336】
i.細胞
いずれのタイプの細胞の集団でも対象内に移植することができる。細胞は、同種であっても異種であってもよい。異種とは、細胞集団が2つ以上のタイプの細胞を含有することを意味する。代表的な細胞として、ドナーから採取して対象内に移植することができる、幹細胞及び多能性細胞などの前駆細胞が挙げられる。細胞は、任意で移植前にエキソビボで処置される。細胞は、自己細胞であっても異種細胞であってもよい。
【0337】
ii.組織
いずれの組織も移植片として使用することができる。代表的な組織として、皮膚組織、脂肪組織、心臓血管組織、例えば、静脈、動脈、毛細血管、弁;神経組織、骨髄組織、肺組織、眼組織、例えば、角膜及びレンズ、軟骨組織、骨組織、及び粘膜組織が挙げられる。組織は、上で考察したように修飾することができる。
【0338】
iii.器官
移植に使用することができる代表的な器官として、腎臓、肝臓、心臓、脾臓、膀胱、肺、胃、眼、舌、膵臓、腸などが挙げられるが、これらに限定されない。移植しようとする器官は、上で考察したように移植前に修飾することができる。
【0339】
一実施形態は、対象において、対照と比較して慢性の移植拒絶反応を阻害するまたは低減させるのに有効な量のシグレック−15結合分子を投与することによって、慢性の移植拒絶反応を阻害するまたは低減させる方法を提供する。
【0340】
e.移植片対宿主病(GVHD)
該分子を使用して、GVHDに関連する1つまたは複数の症状を緩和するのに有効な量のシグレック−15結合分子を投与することによって、移植片対宿主病(GVHD)を治療することもできる。GVHDは、同種異系の造血幹細胞移植に関連する主要な合併症であり、その移植において移植骨髄中の機能性免疫細胞がレシピエントを「異物」として認識して免疫攻撃を開始する。ある特定の状況下では、輸血においても起こり得る。GVDの症状として、発疹または皮膚の色もしくは質感の変化、下痢、嘔気、異常な肝機能、皮膚の黄変、易感染性の増大、ドライアイ、眼の刺激、及び口腔過敏またはドライマウスが挙げられる。
【0341】
f.糖尿病
アゴニストシグレック−15結合分子を使用して、糖尿病を治療することもできる。該方法は、インスリン産生細胞を対象内に移植すること、及び移植拒絶反応を低減させるまたは阻害するのに有効な量の分子を対象に投与することを含む。好ましくは、インスリン産生細胞は、ベータ細胞または島細胞である。ある特定の実施形態では、インスリン産生細胞は、インスリンを産生するように操作された組換え細胞である。
【0342】
インスリン産生細胞は、適切なポリマーを使用してポリマーマトリックスなどのマトリックス内に封入することができ、そうしたポリマーとして、アルギネート、アガロース、ヒアルロン酸、コラーゲン、合成モノマー、アルブミン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、デキストラン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、キチン、キトサン、ヘパラン、ヘパラン硫酸、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0343】
C.破骨細胞骨吸収の治療的阻害
研究から、シグレック−15の発現及び機能は破骨細胞形成に重要であることが示されている(Stuible,et al.,J.Biol Chem.,289(10):6498−6512(2014),Ishida−Kitagawa,J.Biol.Chem.,287,17493−17502(2012)、これらはそれぞれ、その全体が参照により明確に組み込まれている)。シグレック−15タンパク質は、破骨細胞分化の間に高度に上方制御されるが、このタンパク質は未分化細胞では検出不可能である。結果から、シグレック−15及びDAP12は、破骨細胞中で、内因性発現レベルで複合体を形成することが示されている。シグレック−15(−/−)ノックアウトマウスは、軽度に骨粗鬆症である。
【0344】
インビボでの研究から、シグレック−15抗体は生理的状況において破骨細胞の活性を阻害することができ、骨量減少を低減させるための治療方針を提供し得ることも示されている。細胞表面での受容体の活性化及びそれらのエンドサイトーシスによる下方制御は、シグナル伝達の強度及び継続時間を制限する手段として連動することが多いが、シグレック−15に関しては、シグナル伝達及びエンドサイトーシスは、抗体連結が受容体のクラスタ形成を誘導するのかまたは単に二量体化を誘導するのかに応じて、互いに排他的に起こると思われる。
【0345】
シグレック−15は、非常に限られた発現パターンを有する破骨細胞に固有の受容体であり、よってシグレック−15標的療法は選択的である。シグレック−15抗体は、比較的遅い段階で破骨細胞分化を阻害するために、破骨細胞と骨芽細胞との間に結ばれた情報伝達が保持され、既存の破骨細胞標的療法の合併症(破骨細胞の細胞死を誘導するか(ビスホスホネート)、または初期段階でそれらの分化を防止する(デノスマブ)ことによって、顎の骨壊死及び大腿骨の非定型骨折を含めた望ましくない副作用を生じることがある)が回避される。
【0346】
よって、幾つかの実施形態では、開示される分子(とりわけ、抗体またはその抗原結合フラグメント)であって、免疫特異的にヒトシグレック−15に免疫特異的に結合し、かつシグレック−15とそのリガンド及び/または対抗受容体(例えば、アゴニスト分子)の1つまたは複数との間の結合を低減させるまたはブロックする能力のある分子は、破骨細胞の分化、機能、またはそれらの組み合わせを低減させるまたは阻害するのに有効な量で、それを必要とする対象に投与することもできる。幾つかの実施形態では、該分子は、骨量減少を低減させる、骨形成を増大させる、骨塩量を増大させる、またはそれらの組み合わせを行うのに有効な量で投与される。
【0347】
D.ターゲティング及び検出
開示されるシグレック−15結合及びシグレック−15リガンド結合分子は、それらがシグレック−15の機能に及ぼす影響とは無関係に、治療カーゴを送達する及び/または細胞もしくは組織上のシグレック−15またはそのリガンドの存在をそれぞれ検出するために使用することができる。例えば、シグレック−15結合及びシグレック−15リガンド結合分子は、関心対象の生体分子とコンジュゲートして、コンジュゲートを形成することができる。薬理学的に活性な分子、例えば、無機及び有機分子、医薬品、薬物、ペプチド、タンパク質、遺伝子材料などを含むカーゴを、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子とコンジュゲートすることができ、それによって、次にカーゴを、シグレック−15またはそのリガンドを発現している細胞または組織にそれぞれターゲティングさせることができる。シグレック−15分子は、ペプチド結合によって、または化学的もしくはペプチドリンカー分子によって、化学的にポリペプチドに連結させることができる。薬物または他の小分子医薬品を抗体フラグメントに結合させるための方法は周知であり、二官能性の化学的リンカー、例えば、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート;スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート;4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−.A−inverted.−(2−ピリジルジチオ)トルエン;スルホスクシンイミジル−6−[.アルファ.−メチル−.A−inverted.−(ピリジルジチオール)−トルアミド]ヘキサノエート;N−スクシンイミジル−3−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオネート;スクシンイミジル−6−[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオンアミド]ヘキサノエート;スルホスクシンイミジル−6−[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート;3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、S−(2−チオピリジル)−L−システインなどが挙げられる。
【0348】
融合タンパク質を、抗体の重鎖または軽鎖のいずれかのアミノ末端またはカルボキシ末端に関心対象のタンパク質が配置されるように設計することができるが、重鎖全体が必要とされない場合もある。可能性のある構成として、結合したタンパク質の機能的完全性を維持するために必要に応じてスペーサー配列を含むまたは含まない重鎖及び軽鎖の切り取り部分の使用が挙げられる。
【0349】
あるいは、普遍的な担体システムを考案することができる。例えば、様々なタンパク質またはDNAを、通常の担体、例えば、プロテインA、ポリ−L−リジン、ヘキサヒスチジンなどにコンジュゲートすることができる。コンジュゲートした担体は、次いで、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子と複合体を形成することとなる。免疫グロブリンの結合に関与する担体分子の小部分を、担体として使用できると思われる。他の同様の構成として、抗体の重鎖または軽鎖中に操作されたタンパク質と相互作用する担体の設計が挙げられる。
【0350】
幾つかの実施形態では、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子をナノ担体上にまたはナノ担体中にコンジュゲートするかさもなければ組み込んで、ナノ担体をシグレック−15陽性細胞またはシグレック−15リガンド陽性細胞にターゲティングさせる。ナノ担体、例えば、マイクロまたはナノポリマー粒子、リポソーム、ナノチューブなどは、活性物質を含んで、シグレック−15陽性細胞またはシグレック−15リガンド陽性細胞またはそれらの微小環境に送達することができる。
【0351】
同様に、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子は、シグレック−15またはシグレック−15リガンドの発現をそれぞれインビトロまたはインビボで検出するために、検出可能なマーカーとコンジュゲートすることができ、またはコンジュゲートせずに二次試薬で検出することができる。よって、該分子は、推測、免疫組織化学、及び他のアッセイのために使用することができる。
【0352】
IV.併用療法
開示されるシグレック−15結合及びシグレック−15リガンド結合分子は、単独で、または1種類または複数種類の追加的な治療用物質と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することができる。幾つかの実施形態では、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子及び追加的治療用物質は、別々に、しかし同時に投与される。シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子及び追加的治療用物質は、同じ組成物の一部として投与することもできる。他の実施形態では、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子及び第2の治療用物質は、異なる時間に別々に投与されるが、同じ治療レジメンの一部として投与される。
【0353】
対象には、第1の治療用物質の投与後1、2、3、4、5、6時間もしくはそれ以上、または1、2、3、4、5、6、7日もしくはそれ以上してから第2の治療用物質を投与することができる。幾つかの実施形態では、対象には、1つまたは複数の用量の第1の作用物質を1、2、3、4、5、6、7、14、21、28、35、または48日毎に投与した後に、第2の作用物質を初回投与することができる。シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子は、第1または第2の治療用物質であり得る。幾つかの実施形態では、1種類または複数種類のシグレック−15結合分子及び1種類または複数種類のシグレック−15リガンド結合分子は、組み合わせて投与される。
【0354】
シグレック−15結合及び/またはシグレック−15リガンド結合分子及び追加的治療用物質は、治療レジメンの一部として投与することができる。例えば、第1の治療用物質を対象に4日毎に投与できるならば、第2の治療用物質は、1日目、2日目、3日目、もしくは4日目、またはそれらの組み合わせに投与することができる。第1の治療用物質または第2の治療用物質は、治療レジメン全体を通して繰返し投与されてもよい。
【0355】
代表的な分子として、サイトカイン、化学療法薬、放射性核種、他の免疫療法薬、酵素、抗生物質、抗ウイルス薬(とりわけ、HIVまたはB型もしくはC型肝炎を治療するためのプロテアーゼインヒビター単独またはヌクレオシドとの組み合わせ)、抗寄生虫薬(蠕虫、原虫)、増殖因子、増殖阻害剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、抗体及びその生体活性フラグメント(例えば、ヒト化、一本鎖、及びキメラ抗体)、抗原及びワクチン製剤(例えば、アジュバント)、ペプチド薬物、抗炎症薬、自然免疫系を活性化するためにToll様受容体に結合するリガンド(例えば、これらに限定されないが、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(polyI:C)及びCpGオリゴヌクレオチド)、適応免疫系を動員し、最適化する分子、細胞傷害性Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、及びヘルパーT細胞の作用を活性化または上方制御する他の分子、ならびに制御因子または制御性T細胞を不活性化または下方制御する他の分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0356】
追加的治療用物質は、治療しようとする状態、障害、または疾患に基づいて選択される。例えば、シグレック−15結合分子は、免疫応答を強化するもしくは促進するまたは免疫応答を低減させるもしくは阻害するように機能する1種類または複数種類の追加的作用物質と同時投与することができる。
【0357】
A.化学療法薬
シグレック−15結合及びシグレック−15リガンド結合分子は、1種類または複数種類の化学療法薬及びアポトーシス促進剤と組み合わせることができる。代表的な化学療法薬として、アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、リポソーマルドキソルビシン、リポソーマルダウノルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テガフール−ウラシル、テモゾロミド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアポトーシス促進剤として、フルダラビンタウロスポリン(fludarabinetaurosporine)、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ラクトシルセラミド、15d−PGJ(2)、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0358】
B.他の免疫調節薬
1.PD−1アンタゴニスト
幾つかの実施形態では、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子は、PD−1アンタゴニストと同時投与される。プログラム死−1(PD−1)は、T細胞上で誘導されると負の免疫応答を送達する受容体のCD28ファミリーのメンバーである。PD−1とそのリガンドの1つ(B7−H1またはB7−DC)との間の接触は、T細胞増殖及び/またはT細胞応答の強度及び/または継続時間を減少させる抑制応答を誘導する。適切なPD−1アンタゴニストは、米国特許第8,114,845号、第8,609,089号、及び第8,709,416号(これらは、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれている)に記載されており、これらとして、PD−1のリガンドと結合するか、もしくはそれをブロックして、リガンドのPD−1受容体への結合を干渉するもしくは阻害するか、またはPD−1受容体を介する抑制性シグナル伝達を誘導することなくPD−1受容体に直接結合し、それをブロックする化合物または作用物質が挙げられる。
【0359】
幾つかの実施形態では、PD−1受容体アンタゴニストは、抑制性シグナル伝達をトリガーすることなくPD−1受容体に直接結合し、PD−1受容体のリガンドにも結合して、リガンドがPD−1受容体を介するシグナル伝達をトリガーするのを低減させるまたは阻害する。PD−1受容体に結合して抑制性シグナルの伝達をトリガーするリガンドの数及び/または量を低減させることによって、PD−1シグナル伝達により送達される負のシグナルによって減弱される細胞を減らし、より強固な免疫応答を実現することができる。
【0360】
PD−1シグナル伝達は、主要組織適合抗原複合体(MHC)によって提示されるペプチド抗原に近接するPD−1リガンド(B7−H1またはB7−DCなど)に結合することによって促進されると考えられている(例えば、Freeman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,105:10275−10276(2008)を参照されたい)。したがって、PD−1とT細胞膜上のTCRとの共連結を防止するタンパク質、抗体、または小分子も有用なPD−1アンタゴニストである。
【0361】
幾つかの実施形態では、PD−1受容体アンタゴニストは、小分子アンタゴニストまたは抗体であって、PD−1のリガンドまたはPD−1自体と結合することによって(とりわけ、かかる結合後にPD−1とTCRとの共連結が起こらない場合)PD−1受容体のシグナル伝達を低減させるまたは干渉し、それによってPD−1受容体を介する抑制性シグナル伝達をトリガーしないようにするものである。本発明の方法によって企図される他のPD−1アンタゴニストとして、PD−1またはPD−1のリガンドに結合する抗体、及び他の抗体が挙げられる。
【0362】
適切な抗PD−1抗体として、米国特許第7332582号、第7488802号、第7521051号、第7524498号、第7563869号、第7981416号、第8088905号、第8287856号、第8580247号、第8728474号、第8779105号、第9067999号、第9073994号、第9084776号、第9205148号、第9358289号、第9387247号、第9492539号、第9492540号(これらのすべては、参照によりその全体が組み込まれている)に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0363】
Berger et al.,Clin.Cancer Res.,14:30443051(2008)もまた参照されたい。
【0364】
代表的な抗B7−H1(抗PD−L1とも呼ばれる)抗体として、米国特許第8383796号、第9102725号、第9273135号、第9393301号、及び第9580507号(これらのすべては、参照によりその全体が本明細書に明確に組み込まれている)に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0365】
抗B7−DC(抗PD−L2とも呼ばれる)抗体については、米国特許第7,411,051号、第7,052,694号、第7,390,888号、第8188238号、及び9255147号(これらのすべては、参照によりその全体が本明細書に明確に組み込まれている)を参照されたい。
【0366】
他の代表的なPD−1受容体アンタゴニストとして、B7−DCポリペプチド(これらの同族体及び変異体が含まれる)、ならびに前述のいずれかの活性フラグメント、及びこれらのいずれかを組み込んだ融合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、融合タンパク質は、ヒトIgGなどの抗体のFc部分に連結されたB7−DCの可溶性部分を含み、ヒトB7−DCの膜貫通部分の全部または一部が組み込まれていない。
【0367】
PD−1アンタゴニストは、哺乳動物B7−H1のフラグメント、例えばマウスまたは霊長類、例えばヒトに由来するものであり得、ここでは、該フラグメントはPD−1に結合し、それをブロックするが、PD−1を介する抑制性シグナル伝達をもたらさない。該フラグメントは、融合タンパク質、例えばIg融合タンパク質の一部であることもできる。
【0368】
他の有用なポリペプチドのPD−1アンタゴニストとして、PD−1受容体のリガンドに結合するものが挙げられる。これらとして、PD−1のリガンド、例えば、B7−H1またはB7−DCに結合して内因性PD−1受容体との結合を防止し、それによって抑制性シグナル伝達を防止することができる、PD−1受容体タンパク質またはその可溶性フラグメントが挙げられる。B7−H1は、タンパク質B7.1に結合することも示されている(Butte et al.,Immunity,Vol.27,pp.111−122,(2007))。かかるフラグメントはまた、天然のリガンドとの結合を増大させるA99L変異などの変異を含む、PD−1タンパク質の可溶性ECD部分を含む(Molnar et al.,PNAS,105:10483−10488(2008))。B7−H1リガンドに結合して内因性PD−1受容体との結合を防止し、それによって抑制性シグナル伝達を防止する、B7−1またはその可溶性フラグメントも有用である。
【0369】
PD−1及びB7−H1のアンチセンス核酸(DNAとRNAの両方)ならびにsiRNA分子もPD−1アンタゴニストであり得る。かかるアンチセンス分子は、T細胞上でのPD−1の発現ならびにB7−H1、PD−L1及び/またはPD−L2などのT細胞リガンドの産生を防止する。例えば、ポリエチレンイミンなどの担体と複合化されたsiRNA(例えば、約21ヌクレオチド長のものであって、PD−1をコードするまたはPD−1リガンドをコードする遺伝子に特異的であり、そのオリゴヌクレオチドを商業的に容易に購入することができるもの)(Cubillos−Ruiz et al.,J.Clin.Invest.119(8):2231−2244(2009)を参照されたい)は、PD−1ならびにPD−1のリガンドを発現する細胞によって容易に取り込まれ、これらの受容体及びリガンドの発現を低減させてT細胞における抑制性シグナル伝達の減少を実現し、それによってT細胞を活性化する。
【0370】
2.CTLA4アンタゴニスト
免疫応答におけるT細胞の作用を媒介するのに有用な他の分子は、追加的な治療用物質としても企図される。幾つかの実施形態では、該分子はCTLA4のアンタゴニストであり、例えば拮抗的な抗CTLA4抗体である。本発明の方法に使用するために企図される抗CTLA4抗体の例として、PCT/US2006/043690(Fischkoff et al.,WO/2007/056539)に記載されるような抗体が挙げられる。
【0371】
抗PD−1、抗B7−H1、及び抗CTLA4抗体の投薬量は当技術分野で公知であり、例えば、0.1〜100mg/kgの範囲内、またはより狭い範囲の1〜50mg/kg、または10〜20mg/kgであり得る。ヒト対象に適した用量は、5〜15mg/kgであり得、10mg/kgの抗体(例えば、ヒト抗PD−1抗体)が具体的な実施形態であり得る。
【0372】
本発明の方法に有用な抗CTLA4抗体の具体例は、例えば約10mg/kgの用量で投与される、ヒト抗CTLA4抗体であるイピリムマブ、及び例えば約15mg/kgの用量で投与される、ヒト抗CTLA4抗体であるトレメリムマブである。2009年12月にオンライン公開されたSammartino,et al.,Clinical Kidney Journal,3(2):135−137(2010)も参照されたい。
【0373】
他の実施形態では、アンタゴニストは小分子である。一連の小有機化合物が、B7−1リガンドに結合してCTLA4との結合を防止することが示されている(Erbe et al.,J.Biol.Chem.,277:7363−7368(2002)を参照されたい)。かかる小有機物を単独でまたは抗CTLA4抗体と組み合わせて投与すれば、T細胞の抑制性シグナル伝達を低減させることができると思われる。
【0374】
3.増強剤
幾つかの実施形態では、追加的治療用物質には増強剤が含まれる。増強剤は、おそらく2つ以上の機序によって免疫応答の上方制御因子の有効性を増大させるように働くが、正確な作用機序は本発明の幅広い実践には不可欠ではない。
【0375】
幾つかの実施形態では、増強剤はシクロホスファミドである。シクロホスファミド(CTX、Cytoxan(登録商標)、またはNeosar(登録商標))は、オキサアザホスホリン薬及び類似体、例えば、イホスファミド(IFO、Ifex)、ペルホスファミド、トロホスファミド(トロホスファミド;Ixoten)、ならびにそれらの医薬として許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、及び代謝産物である(米国特許出願第20070202077号、これはその全体が組み込まれている)。イホスファミド(MITOXANA(登録商標))はシクロホスファミドの構造類似体であり、その作用機序は、シクロホスファミドのものと同一または実質的に同様であると考えられる。ペルホスファミド(4−ヒドロペルオキシシクロホスファミド)及びトロホスファミドもアルキル化剤であり、これらはシクロホスファミドに構造的に関係している。例えば、ペルホスファミドはDNAをアルキル化し、それによってDNA複製ならびにRNA及びタンパク質合成を阻害する。選択性及び応答を向上させながら宿主毒性を低減させようとして、新規なオキサアザホスホリン誘導体が設計され、評価されてきた(Liang J,Huang M,Duan W,Yu XQ,Zhou S.Design of new oxazaphosphorine anticancer drugs.Curr Pharm Des.2007;13(9):963−78.Review)。これらには、マホスファミド(NSC 345842)、グルホスファミド(D19575、ベータ−D−グルコシルイソホスホルアミドマスタード)、S−(−)−ブロモホスファミド(CBM−11)、NSC 612567(アルドホスファミドペルヒドロチアジン)、及びNSC 613060(アルドホスファミドチアゾリジン)が含まれる。マホスファミドは、4−ヒドロキシ−CPAの化学的に安定な4−チオエタンスルホン酸塩であるオキサアザホスホリン類似体である。グルホスファミドは、IFOのアルキル化代謝産物であるイソホスホルアミドマスタードがベータ−D−グルコース分子にグリコシド結合されたIFO誘導体である。さらなるシクロホスファミド類似体は、“Cyclophosphamide analogs useful as anti−tumor agents”と題された米国特許第5,190,929号に記載されている(これはその全体が参照により本明細書に組み込まれている)。
【0376】
CTX自体は非毒性であるが、その代謝産物の幾つかは、DNA架橋結合を誘導し、高用量で鎖を切断する、細胞傷害性アルキル化剤である。多くの細胞は、高レベルの解毒酵素アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)を発現するので、CTXに耐性を示す。リンパ球は低レベルしかALDHを発現せず(造血幹細胞はそうではないが)、周期細胞はDNAアルキル化剤に対して最も感受性が高いので、CTXは増殖中のリンパ球を標的にする。
【0377】
低用量のCTX(<200mg/kg)は、がんのヒト及びマウスモデルにおける抗腫瘍免疫応答の刺激を含めた、免疫刺激作用を有し得る(Brode&Cooke Crit Rev.Immunol.28:109−126(2008))。これらの低用量は治療に至らず、直接的な抗腫瘍活性を持たない。これに対して、高用量のCTXは抗腫瘍応答を阻害する。幾つかの機序によって抗腫瘍免疫応答の増強におけるCTXの役割を説明することができる。すなわち、(a)CD4+CD25+FoxP3+Tregの枯渇(具体的には増殖中のTregであり、これはとりわけ抑制性であり得る)、(b)Bリンパ球の枯渇;(c)一酸化窒素(NO)が誘導され、それにより腫瘍細胞増殖が抑制される;(d)CD11b+Gr−1+MDSCの動員及び増殖である。これらの一次作用は、数々の二次作用を有する。例えば、Tregの枯渇の後にマクロファージが産生するIFN−γは多くなり、IL−10は少なくなる。CTXは、I型IFNの発現を誘導し、リンパ球の恒常的増殖を促進することも示されている。
【0378】
Tregの枯渇は、CTXが抗腫瘍免疫応答を増強する機序として最もよく挙げられる。この結論は、養子移入実験の結果に部分的に基づいている。AB1−HA腫瘍モデルでは、9日目にCTX処置すると75%の治癒率が得られる。精製したTregを12日目に移入するとCTXの応答がほぼ完全に阻害された(van der Most et al.Cancer Immunol.Immunother.58:1219−1228(2009)。同様の結果がHHD2腫瘍モデルで観察され、CTXで前処置した後にCD4+CD25+Tregを養子移入すると、ワクチンに対する治療応答が排除された(Taieb,J.J.Immunol.176:2722−2729(2006))。
【0379】
数々のヒト臨床試験によって、低用量のCTXが安全であり、十分に許容性があり、抗腫瘍免疫応答を促進するのに有効な薬剤であることが実証されている(Bas,& Mastrangelo Cancer Immunol.Immunother.47:1−12(1998))。
【0380】
抗腫瘍免疫応答を増強するのに最適なCTXの用量は、Tregを通常範囲を下回るが治療に至らないレベルに下げることによってT細胞の総数を少なくするものである(Machiels et al.Cancer Res.61:3689−3697(2001)を参照されたい)。
【0381】
CTXを免疫増強剤として使用しているヒト臨床試験では、300mg/m
2の用量が通常使用されている。平均的な男性の場合(6フィート、170ポンド(78kg)、体表面積1.98m
2)、300mg/m
2は、8mg/kg、または総タンパク質624mgである。がんのマウスモデルでは、15〜150mg/kgの範囲の用量で有効性が見られており、これは30gのマウスでは0.45〜4.5mgの総タンパク質に相当する(Machiels et al.Cancer Res.61:3689−3697(2001),Hengst et al Cancer Res.41:2163−2167(1981),Hengst Cancer Res.40:2135−2141(1980))。
【0382】
大型の哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトの患者などの場合、かかるmg/m
2用量を使用してもよいが、有限の時間にわたり投与される単位用量も使用してもよい。かかる単位用量は、最大3日間、または最大5日間、または最大7日間、または最大10日間、または最大15日間、または最大20日間、または最大25日間(すべて本発明によって明確に企図される)などの有限期間の間、日単位で投与されてもよい。同じレジメンが、本明細書に挙げられている他の増強剤に適用されてもよい。
【0383】
他の実施形態では、増強剤は、制御性T細胞(T−reg)の活性及び/または数を減少させる薬剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、抗TGFβまたはイマチニブ(GLEEVAC(登録商標))である。挙げられている治療レジメンは、アジュバントを投与することも含んでもよい。
【0384】
有用な増強剤として、有糸分裂阻害剤、例えばパクリタキセル、アロマターゼ阻害剤(例えばレトロゾール)、及び血管新生阻害剤(VEGF阻害剤、例えば、アバスチン、VEGF−トラップ)(例えば、Li et al.,ClinCancer Res.2006 Nov 15;12(22):6808−16.を参照されたい)、アントラサイクリン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、TLR4アンタゴニスト、ならびにIL−18アンタゴニストも挙げられる。
【0385】
C.抗菌薬
一実施形態では、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子は、上で考察したような疾患の治療または防止における防止的または予防的役割に使用することができ、また大きな火傷、開放骨折、事故による切断、または他の創傷のような重度の外傷性傷害の状況にも使用することができる。したがって、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子は、抗菌薬、例えば、抗生物質、抗真菌薬性、抗ウイルス薬、駆虫薬、または精油と組み合わせて対象に投与することができる。
【0386】
幾つかの実施形態では、対象は、さらなる細菌、真菌、またはウイルスによる合併症を防止するために、入院時にシグレック−15結合分子及び/または抗菌薬を投与される。抗生物質は病原体を標的とし、シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子は免疫系を刺激して、さらなる感染症または疾患を治療または防止するために強化された応答をもたらすことができる。
【0387】
D.免疫抑制性作用物質
幾つかの実施形態では、シグレック−15結合分子またはリガンド結合分子と免疫抑制薬である第2の作用物質とを対象に投与することによって、免疫応答、または炎症性/自己免疫性の疾患/障害が治療される。免疫抑制性作用物質として、他のリンパ球表面マーカー(例えば、CD40、アルファ−4インテグリン)に対する抗体またはサイトカインに対する抗体)、融合タンパク質(例えば、CTLA−4−Ig(Orencia(登録商標))、TNFR−Ig(Enbrel(登録商標)))、TNF−αブロッカー、例えば、Enbrel、Remicade、Cimzia、及びHumira、シクロホスファミド(CTX)(すなわち、Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、メトトレキサート(MTX)(すなわち、Rheumatrex(登録商標)、Trexall(登録商標))、ベリムマブ(すなわち、Benlysta(登録商標))、または他の免疫抑制薬物(例えば、シクロスポリンA、FK506様化合物、ラパマイシン化合物、またはステロイド)、抗増殖薬、細胞傷害性作用物質、または免疫抑制を促進し得る他の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0388】
治療用物質は、CTLA−4−Ig(アバタセプト)などのCTLA−4融合タンパク質であり得る。CTLA−4−Ig融合タンパク質は、抗原提示細胞上のCD80/CD86(B7−1/B7−2)との結合に関してT細胞上の共刺激受容体CD28と競合し、よってT細胞の活性化を阻害するように機能する。別の実施形態では、治療用物質は、ベラタセプトとして公知のCTLA−4−Ig融合タンパク質である。ベラタセプトは、CD86への結合活性をインビボで著しく増大させる2つのアミノ酸置換(L104E及びA29Y)を含有する。別の態様では、治療用物質はMaxy−4である。
【0389】
別の態様では、治療用物質はシクロホスファミド(CTX)である。シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標)の一般名)は、シトホスファンとしても公知であり、オキサゾホリン群からのナイトロジェンマスタードアルキル化剤である。それは、様々なタイプのがん及び一部の自己免疫性障害を治療するために使用される。シクロホスファミド(CTX)は、ループス腎炎を有する患者におけるびまん性増殖性糸球体腎炎に使用される主要な薬物である。
【0390】
治療用物質は、抗二本鎖DNA(抗dsDNA)自己抗体の血中または血清レベルの低減及び/または蛋白尿の低減をそれを必要とする患者にもたらすのに有効な量で投与することができる。
【0391】
別の実施形態では、治療用物質は、血清中のアデノシンの量を増加させる(例えば、WO08/147482を参照されたい)。例えば、第2の治療用物質は、CD73−Ig、組換えCD73、またはCD73の発現を増加させる他の作用物質(例えば、サイトカインまたはモノクローナル抗体または小分子)であり得る(例えば、WO04/084933を参照されたい)。別の実施形態では、治療用物質はインターフェロン−ベータである。
【0392】
治療用物質は、タイサブリまたは他のMS用治療薬であり得る。別の実施形態では、第2の治療用物質は慢性炎症を優先的に治療し、それによって治療レジメンは急性炎症と慢性炎症の両方を標的とする。好ましい実施形態では、第2の治療薬はTNF−αブロッカーである。
【0393】
治療用物質は、Th1、Th17、Th22、及び/または炎症分子を分泌するもしくは他の細胞に分泌させる他の細胞(IL−1β、TNF−α、IFN−γ、IL−18、IL−17、IL−6、IL−23、IL−22、IL−21、及びMMPが挙げられるが、これらに限定されない)による分化、増殖、活性、及び/またはサイトカイン産生及び/または分泌を阻害するまたは低減させる小分子であり得る。別の実施形態では、治療用物質は、Tregと相互作用する、Tregの活性を強化する、TregによるIL−10の分泌を促進もしくは強化する、Tregの数を増加させる、Tregの抑制能力を増大させる、またはそれらの組み合わせを行う小分子である。
【0394】
幾つかの実施形態では、組成物は、Tregの活性または産生を増大させる。代表的なTreg増強剤として、糖質コルチコイドのフルチカゾン、サルメテロール;IL−12、IFN−γ、及びIL−4に対する抗体、ビタミンD3、及びデキサメタゾン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0395】
幾つかの実施形態では、治療用物質は、抗体、例えば、IL−6、IL−23、IL−22、またはIL−21などの炎症誘発性分子に対する機能阻止抗体である。
【0396】
本明細書で使用される場合、「ラパマイシン化合物」という用語には、中性三環式化合物ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、ラパマイシン類似体、及びラパマイシンと同じ作用機序(例えば、サイトカイン機能の阻害)を有すると思われる他のマクロライド化合物が含まれる。「ラパマイシン化合物」という言葉には、ラパマイシンと構造的類似性を有する化合物、例えば、同様の大環状構造を有する化合物であって、それらの治療有効性が強化されるように修飾されたものが含まれる。代表的なラパマイシン化合物は、当技術分野で公知である(例えば、WO95122972、WO95116691、WO95104738、米国特許第6,015,809号;第5,989,591号;米国特許第5,567,709号;第5,559,112号;第5,530,006号;第5,484,790号;第5,385,908号;第5,202,332号;第5,162,333号;第5,780,462号;第5,120,727号を参照されたい)。
【0397】
「FK506様化合物」という言葉には、FK506、ならびにFK506誘導体及び類似体、例えば、FK506と構造的類似性を有する化合物、例えば、同様の大環状構造を有する化合物であって、それらの治療有効性が強化されるように修飾されたものが含まれる。FK506様化合物の例として、例えば、WO00101385に記載されるものが挙げられる。好ましくは、「ラパマイシン化合物」という言葉には、本明細書で使用される場合、FK506様化合物は含まれない。
【0398】
E.抗炎症薬
他の適切な治療用物質として、抗炎症剤が挙げられるが、これらに限定されない。抗炎症剤は、非ステロイド系、ステロイド系、またはそれらの組み合わせであり得る。一実施形態は、約1%(w/w)〜約5%(w/w)、典型的には約2.5%(w/w)の抗炎症剤を含有する経口組成物を提供する。非ステロイド系抗炎症剤の代表的な例として、限定されるものではないが、オキシカム、例えば、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム;サリチレート、例えば、アスピリン、ジサルシド、ベノリラート、トリリサート、サファプリン(safapryn)、ソルプリン、ジフルニサル、及びフェンドサール;酢酸誘導体、例えば、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク(clindanac)、オキセピナク、フェルビナク、及びケトロラク;フェナム酸、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルミン酸、及びトルフェナム酸;プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、及びチアプロフェン酸;ピラゾール、例えば、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、及びトリメタゾンが挙げられる。これらの非ステロイド系抗炎症剤の混合物も使用してもよい。
【0399】
ステロイド系抗炎症剤の代表的な例として、限定されるものではないが、副腎皮質ステロイド、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシルトリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリソン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン吉草酸エステル、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルラドレノロン、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルロゾン、フルラドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン及びそのエステルの残部、クロロプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン(chlorprednisone acetate)、クロコルトロン、クレシノロン、ジクロリソン、ジフルプレドナート、フルクロニド、フルニソリド、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニソロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロピオネート、ハイドロコルタメート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0400】
V.診断法
シグレック−15結合分子、特に抗体及びその抗原結合フラグメントは、例えば、疾患、障害、もしくはシグレック−15の発現に関連する感染症を検出、診断、もしくはモニタリングするための、または適切な患者集団もしくはプロファイルの決定もしくは識別を決定もしくは支援するための診断目的に使用することができる。該方法のいずれも、対象を治療する方法、例えば、有効量の1種類または複数種類の治療的シグレック−15結合分子を対象に投与することによる方法と連結させることができる。
【0401】
がんを含めた(これに限定されない)疾患、障害、または感染症の検出または診断は、(a)対象の細胞、血清、血漿、血液、または組織試料(例えば、腫瘍試料)におけるシグレック−15またはその誘導体の発現を、かかる抗原に免疫特異的に結合する1種類または複数種類の抗体(またはそのフラグメント)を使用してアッセイすること;及び(b)該抗原のレベルを対照レベル、例えば、正常組織試料におけるレベルと比較し、それによって、抗原の対照レベルと比較したときの抗原のアッセイレベルの増加を、疾患、障害、または感染症の指標とすることを含むことができる。かかる抗体及びフラグメントは、イムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光標識細胞分取(FACS)に用いることができる。
【0402】
幾つかの実施形態では、該抗体またはフラグメントは、インビトロもしくはインサイツ組織試料の細胞におけるまたはインビボでのIHC分析に使用される。よって、該抗体及びフラグメントは、ヒトにおける疾患、障害、または感染症の検出及び診断に使用することができる。一実施形態では、かかる診断は、a)有効量のかかる標識抗体または抗原結合フラグメントを対象に投与すること(例えば、非経口的に、皮下に、または腹腔内に);b)投与後、対象内のシグレック−15が発現している部位に標識分子を優先的に集中させる(及び非結合標識分子をバックグラウンドレベルまで除去する)ことができる時間間隔を置くこと;c)バックグラウンドレベルを決定すること;ならびにd)バックグラウンドレベルを上回るまたは下回る標識抗体の局所的検出から、対象が疾患、障害、もしくは感染症を有していることが示唆されるように、及び/またはシグレック−15+組織の場所及び相対的発現レベルが示されるように、対象において標識抗体を検出することを含む。この実施形態によれば、該抗体は、当業者に公知の造影システムを使用してインビボで検出可能な造影成分で標識することができる。バックグラウンドレベルは、検出された標識分子の量を特定のシステムで予め決定された標準値と比較することを含めた様々な方法によって決定することができる。
【0403】
他の方法は、例えば、(a)最初の時点及びその後の時点で得られた対象の細胞中または組織試料中のシグレック−15の発現を、シグレック−15結合分子を使用してアッセイすること、ならびに(b)最初の時点及びその後の時点での対象の細胞中または組織試料中のシグレック−15の発現レベルを比較することによって、疾患、障害、または感染症の進行をモニタリングすることを含み、ここで、その後の時点でアッセイされたシグレック−15のレベルの、最初の時点と比較した増加が、疾患、障害、または感染症の進行の指標である。
【0404】
治療に対する応答をモニタリングするための方法は、(a)シグレック−15結合分子を使用して、治療の前後での対象の細胞中または組織試料中のシグレック−15の発現をアッセイすること;及び(b)シグレック−15の経時的なレベルを比較することを含むことができ、それによる、治療前のシグレック−15のレベルと比較した治療後のシグレック−15のアッセイレベルの減少が、治療に対する好適な応答の指標である。
【0405】
対象のサイズ及び使用される造影システムが、診断画像を生成するのに必要とされる造影成分の分量を決定することが、当技術分野において理解されよう。
【0406】
使用される標識のタイプ及び投与様式を含めた幾つかの変動要素に応じて、投与後の、対象内の部位に標識分子を優先的に集中させ、かつ非結合標識分子をバックグラウンドレベルまで除去することができる時間間隔は、6〜48時間、または6〜24時間、または6〜12時間である。別の態様では、投与後の時間間隔は、5〜20日間、または5〜10日間である。
【0407】
一実施形態では、疾患、障害、または感染症のモニタリングは、疾患、障害、または感染症を診断するための方法を、例えば、初期診断から1か月後、初期診断から6か月後、初期診断から1年後などに繰り返すことによって実施される。
【0408】
標識分子の存在は、インビボでの走査について当技術分野で公知の方法を使用して対象内で検出することができる。これらの方法は、使用される標識のタイプに依存する。当業者であれば、特定の標識を検出するための適正な方法を決定することができるであろう。診断法に使用することができる方法及びデバイスとして、コンピュータ断層撮影法(CT)、全身走査、例えば、ポジトロン断層撮影(PET)、核磁気共鳴画像法(MRI)、及び超音波検査が挙げられるが、これらに限定されない。
【0409】
特定の実施形態では、分子は放射性同位体で標識され、放射線に応答する外科用機器を使用して患者内で検出される(Thurston et al.,米国特許第5,441,050号)。別の実施形態では、分子は蛍光化合物で標識され、蛍光に応答する走査機器を使用して患者内で検出される。別の実施形態では、分子は陽電子放出金属で標識され、ポジトロン断層撮影を使用して患者内で検出される。さらに別の実施形態では、分子は常磁性標識で標識され、核磁気共鳴画像法(MRI)を使用して患者内で検出される。
【0410】
VI.キット
開示されるシグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子は、アンプルまたは小袋などの分量を示す密閉容器内に包装することができる。該分子は、乾いた滅菌凍結乾燥粉末または無水濃縮物として密閉容器内で供給することができ、例えば、水または生理食塩水で再構成して対象への投与に適正な濃度にすることができる。例えば、該分子は、乾いた滅菌凍結乾燥粉末として密封容器内に、少なくとも5mg、または少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、もしくは少なくとも75mgの単位投薬量で供給することできる。凍結乾燥分子は、その元々の容器内に2〜8℃で保存することができ、典型的には、再構成した後、12時間以内、または6時間以内、または5時間以内、または3時間以内、または1時間以内に投与される。
【0411】
代替実施形態では、分子は、分量及び濃度を示す密閉容器内に液体形態で供給される。幾つかの実施形態では、液体形態の分子は、少なくとも1mg/ml、または少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/mlの該分子を含む密閉容器内で供給される。
【0412】
シグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子が充填された1つまたは複数の容器を含む、医薬パック及びキットも提供される。加えて、疾患の治療に有用な1種類または複数種類の他の予防用または治療用物質を医薬パックまたはキットに含むこともできる。医薬パックまたはキットは、開示される医薬組成物の成分の1つまたは複数が充填された1つまたは複数の容器を含むこともできる。任意で、かかる容器(複数可)には、医薬品または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制する行政機関によって規定された形式で、ヒト投与に関する製造、使用、または販売についての行政機関による承認を反映した注意書きが添付されてもよい。
【0413】
上記の方法のために設計されたキットも提供される。実施形態は、典型的には、1種類または複数種類のシグレック−15結合分子またはシグレック−15リガンド結合分子を含む。特定の実施形態では、キットは、がんの治療に有用な1種類または複数種類の他の予防用または治療用物質も1つまたは複数の容器内に含む。
【実施例】
【0414】
実施例1:シグレック−15抗体、ならびにその重鎖及び軽鎖の配列
材料及び方法
マウス抗ヒトシグレック−15モノクローナル抗体
シグレック−15ノックアウトマウス(n=2)を、CFA(フロインド完全アジュバント)で乳化したhS15.mIg(マウスIgG2aと融合させたヒトシグレック15細胞外ドメイン[ECD])で免疫化した。マウスには、GM−CSF及び抗CD40も注射した。マウスに同じ免疫原を2週間後に抗原投与した。尾部採血から収集した血清を、hS15.hIg(ヒトIgG1と融合させたヒトシグレック15 ECD)でコーティングされたELISAプレート中で1:1000から最大1:100,000,000までの様々な希釈度で検査することによって、抗血清力価を評価した。
図1から、抗hS15抗体が>1:100,000の希釈度で検出されたことが示される。マウスは、2週間後に3度目の抗原投与を受けた。最終の追加免疫から3日後に、マウスの脾細胞を採取し、10%FBS及びグルタミンを補充したRPMIに再懸濁させ、その後融合してハイブリドーマを形成させた。
【0415】
シグレック−15ノックアウト(S15 KO)脾細胞の電気融合
融合細胞をメチルセルロースゲル/培地中に蒔いた。残った融合細胞は凍結保存し、それらは別の回のクローニングのために解凍することができる。単一のクローンを選択し、10×96ウェルプレート(960クローン)に入れた。上清を2週間後に収集した。
【0416】
RACE
重鎖及び軽鎖のRACE(cDNA末端の迅速増幅法)同定は、以下のプロトコルに従って実施した:(1)mRNA変性、(2)cDNA合成、(3)5’RACE反応、(4)PCRの結果を解析する(アガロースゲル上で行って増幅されたDNAフラグメントを可視化する−正しい抗体可変領域DNAフラグメントのサイズは500〜700塩基対であるはずである)、(5)PCR陽性バンドをTOPOでクローニングする、(6)TOPOクローンをPCR増幅し、その後ゲル電気泳動及びアガロースゲルから回収を行う、(7)合計218個のクローンを配列決定する、(8)配列決定データを使用してCDR解析を実施する(CDR領域は、vbase2.orgを通じて利用可能なVBASE2を使用して定めた)。
【0417】
結果
抗体は、RACE法を使用してクローニングした。218個のクローン化DNAフラグメントを配列決定した後、抗体配列解析によって、1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、6A、28A、63A、71A、77A、80A、82B、83B、92A、93B、99B、104B、及び105Aと本明細書で呼ばれる24個の抗体試料に、1本の重鎖及び1本の軽鎖が同定された。これらの配列は、下記または上記に示されている。重鎖及び軽鎖の配列及びCDRは、上記、下記、及び
図2A〜3Cに示されている。
【0418】
1B2配列:
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【0419】
1C3配列:
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【0420】
1H3配列
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【0421】
1C12配列:
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【0422】
3H10配列:
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【0423】
5G12配列:
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【0424】
6F8配列:
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【0425】
8C8配列:
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【0426】
8H8配列:
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【0427】
9A5配列:
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【0428】
10G9配列:
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【0429】
6A配列:
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【0430】
28A配列:
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【0431】
63A配列:
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【0432】
71A配列:
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【0433】
77A 配列:
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【0434】
80A配列:
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【0435】
82B配列:
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【0436】
83B配列:
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【0437】
92A配列:
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【0438】
93B配列:
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【0439】
99B配列:
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【0440】
104B配列:
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【0441】
105A配列:
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【0442】
実施例2:抗huS15抗体はヒトS15またはマウスS15を発現している細胞に結合する
材料及び方法
ヒト293T及びマウスCRC MC38腫瘍細胞株を、ヒトシグレック15またはマウスシグレック15を担持するレンチウイルスベクターで形質導入した。細胞を選別して、ヒトS15及びマウスS15安定細胞株を確立した。293T.hS15及びMC38.mS15安定細胞をFACS緩衝液に再懸濁させ、インキュベーション前にFc受容体を精製シグレック−15 mAbでブロックした。FACS緩衝液100μL中の1E05細胞を別々のチューブに分取し、1μgの精製mAbを添加した。細胞を4℃で30分間インキュベートし、次いで過剰なFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を100μLのFACS緩衝液に再懸濁させ、0.005μgの抗マウスIgG−PE二次抗体を試料に添加し、30分間インキュベートし、過剰なFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を固定用緩衝液中で固定し、その後フローサイトメトリーによって分析した。
【0443】
該アッセイを
図4Aに示す。
【0444】
結果
1B2、1C3、1C12、1H3、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9(
図4B)、及び6A(NC6)、28A(NC28)、63A(NC63)、71A(NC71)、NC74、77A(NC77)、80A(NC80)、82B(NC82)、83B(NC83)、NC87、92A(NC92)、93B(NC93)、99B(NC99)、104B(NC104)、105A(NC105)(
図4C)を含めた抗huS15抗体を、ヒトS15またはマウスS15を発現する細胞との結合について試験した。その結果を
図4B〜4Cに示す。
【0445】
1B2、1C3、1C12、1H3、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、及び6A(NC6)、28A(NC28)、63A(NC63)、77A(NC77)、80A(NC80)、82B(NC82)、83B(NC83)、92A(NC92)、93B(NC93)、99B(NC99)、104B(NC104)、または105A(NC105)を含めた抗huS15抗体を、ホルマリン固定細胞との結合についても試験した。その結果を
図4Dに示す。
【0446】
実施例3:精製抗体はマウス及びヒトシグレック−15に結合する
材料及び方法
・ S15−TMを一過性にトランスフェクトした293T細胞(Operetta)
・ S15−TMを一過性にトランスフェクトしたK562細胞(FACS)
Lipofectamine系を使用して293T細胞にマウスシグレック−15プラスミドDNAを一過性にトランスフェクトし、電気穿孔法によってK562細胞にヒトシグレック−15プラスミドDNAをトランスフェクトした。FACS緩衝液(0.5%の血清を含有するPBS)100ul中の1e5トランスフェクト細胞を別々のチューブに分取し、1ugの精製mAbを添加した。細胞を4℃で30分間インキュベートし、次いで過剰なFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を100ulのFACS緩衝液に再懸濁させ、0.005ugの抗マウスIgG−PE二次抗体を試料に添加し、30分間インキュベートし、過剰なFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を固定用緩衝液(PBS中2%ホルムアルデヒド)中で固定し、その後フローサイトメトリーによって分析した。
【0447】
U87細胞をFACS緩衝液中に再懸濁させ、Fc受容体をインキュベーション前に精製シグレック−15 mAbでブロックした。FACS緩衝液100ul中の1e5細胞を別々のチューブに分取し、1ugの精製mAbを添加した。細胞を4℃で30分間インキュベートし、次いで過剰なFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を100ulのFACS緩衝液に再懸濁させ、0.005ugの抗マウスIgG−PE二次抗体を試料に添加し、30分間インキュベートし、過剰なFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を固定用緩衝液中で固定し、その後フローサイトメトリーによって分析した。
【0448】
結果
精製抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、及び10G9を、293T細胞(ヒト胎児腎細胞293の高度にトランスフェクト可能な誘導体)によって発現されるマウスシグレック−15(mS15)及びK−562細胞(終末期急性転化における慢性骨髄性白血病を有する53才女性の胸水)によって発現されるヒトシグレック−15(hS15)との結合について試験した。その結果を
図5A〜5Cに示す。
【0449】
精製抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、10G9、及び5F10を、ヒトシグレック−15(hS15)を内因的に発現するヒトU87神経膠腫細胞との結合についても試験した。その結果を
図6A〜6Cに示し、これらは、それぞれの抗体についてのhS15+細胞の百分率(
図6A及び6C)及び平均蛍光強度(MFI)(
図6B)をそれぞれ示す。
【0450】
実施例4:抗シグレック−15抗体はシグレック−15の機能をブロックすることができる
材料及び方法
hS15.hG1の製造
IgG骨格に融合された完全なS15細胞外ドメインを含む単量体S15融合タンパク質を調製して親和性及び競合分析を行った。トロンビン切断可能なhS15.hFc cDNAをpEE17.4にサブクローニングした。37℃では、断片化した融合タンパク質は一過性にトランスフェクトしたCHO細胞には見られるが、293細胞には見られない。インタクトな融合タンパク質は、31℃の方が効率的に発現する。
該融合タンパク質は、以下の配列を有する:
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【0451】
シグナル配列が切断された成熟融合タンパク質は以下の通りである:
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【0452】
マウスのリーダー配列を下線で示す。シグレック−15細胞外ドメイン(ECD))は斜字体である。ヒンジ領域には二重下線を引く。残りの配列はIgG1 Fcに由来する。IgG1 Fcドメイン中のL234F/L235E/P331S変異は、点線の下線を引いた太字である。
【0453】
ブロッキング分析
293T.LRRC4C細胞を2ラウンドのレンチ−LRRC4C形質導入によって確立した。
【0454】
293T.LRRC4C安定細胞をFACS緩衝液に再懸濁させ、インキュベーション前にFc受容体をブロックした。FACS緩衝液100μL中の1E05細胞を別々のチューブに分取し、2μgの精製mAbを最初に添加し、続いて0.2ugのhシグレック−15hFcを添加した。細胞を4℃で30分間インキュベートし、次いで過剰なFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞をFACS緩衝液100μLに再懸濁させ、0.005μgの抗ヒトIgG−PE二次抗体を試料に添加し、30分間インキュベートし、過剰なFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を固定用緩衝液で固定し、その後フローサイトメトリーによって分析して、シグレック−15のLRRC4Cへの結合を判定した。
【0455】
1μg/mLのhS15.hG1+100μLまたは33μg/mLのCl#3、#1の上清(sup)
【0456】
このアッセイを
図7Aに示す。
【0457】
結果
結果を
図7B〜7Eに示す。
・ S15/LRRC4C相互作用の完全なブロッカーとして、以下が挙げられる(これらに限定されない):
o 5G12、6F8、8C8、1C3、1C12、3H10、1B2
・ 部分的ブロッカーとして、以下が挙げられる(これらに限定されないが):
o 10G9、8H8、9A5
【0458】
実施例5:S15 mAbはhS15.hG1によって媒介されるヒトT細胞の抑制を逆転させる
材料及び方法
PBMC増殖アッセイ
・ 抗CD3 0.05μg/mLでコーティング
・ 全ヒトPBMC+/−5μg/mLのhS15.hFc及び12μg/mLのシグレック−15 mAb、または示した通りの対照
抗ヒトCD3(クローンOKT3)を、96ウェルの平底組織培養プレートのウェル当たり0.03μg/mL(100μLのPBS中)で、4℃で一晩コーティングした。PBS及び結合しなかったCD3を、アッセイ用成分を添加する直前に吸引した。健康なヒトドナーに由来する全PBMCを、37℃のRPMI−完全培地(10%FBSを含有する)中で10分間、5μMのCFSEで標識し、2回洗浄した後に、2.5E05細胞/ウェルの濃度でウェルに添加するために再懸濁させた。可溶性hシグレック−15hFcまたは対照を5μg/mlの最終濃度でウェルに添加しながら、精製シグレック−15 mAbまたは対照を12μg/mlの最終濃度でウェルに添加した。プレートを37℃のCO
2インキュベーターで72時間インキュベートした。少量の上清をサイトカイン分析用に取り出した後、細胞を丸底プレートに移し、Fc受容体をブロックし、細胞をCD4及びCD8蛍光mAbで30分間4℃で染色した。細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、続いてフローサイトメトリーによる分析のために固定した。馴化上清中のIFNガンマレベルをMSD ELISAキットによって評価した。
【0459】
このアッセイを
図8A及び9Aに示す。
【0460】
結果
精製抗体1B2、1C3、1H3、1C12、3H10、5G12、6F8、8C8、8H8、9A5、及び10G9(
図8B、8C、8D、及び8E)、ならびに6A(NC6)、28A(NC28)、63A(NC63)、77A(NC77)、80A(NC80)、82B(NC82)、83B(NC83)、92A(NC92)、93B(NC93)、99B(NC99)、104B(NC104)、105A(NC105)(
図8F及び8G)をPBMC増殖アッセイで試験した。CD4+及びCD8+T細胞をゲートし、細胞分裂(増殖)の尺度としてのCFSE希釈について分析した。希釈の増加によって、細胞増殖が増えたことが示された。その結果から、特定のS15 mAbはhS15.hG1に媒介されるヒトT細胞の抑制を逆転させることができることが示される。
【0461】
しかし、hS15とLRRC4Cとの相互作用のブロッキングは、T細胞機能の強化と相関しない。その結果を
図8H及び8Iに示す。
【0462】
S15 mAbは、hS15.hG1に媒介される、ヒトT細胞におけるIFNγ産生の減少を逆転させることが確認された。その結果を
図9Bに示す。
【0463】
実施例6:S15 mAbは破骨細胞形成をブロックすることができる
材料及び方法
新鮮なPBMCを単離し、単球を2通りの方法:MACSカラム選別(
図10、左側の図);または無血清培地でのプラスチックとの結合(
図10、右側の図)で富化した。
【0464】
細胞をM−CSF及びRANKLと共に8日間、25E9またはS15 mAbと共に培養し、TRAP(酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ)についてアッセイした。
【0465】
結果
図15に示す結果から、S15 mAbが破骨細胞形成をブロックすることができることが示される。
【0466】
実施例7:ヒト化5G12抗体
クローン5G12をヒト化すると、3つのヒト化重鎖及び5つのヒト化軽鎖が得られた(
図12A及び12B)。
5G12 hVLl
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5G12 hVL1のCDR1
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5G12 hVL1のCDR2
RANRLVD(SEQ ID NO:36)
5G12 hVL1のCDR3
LQYDEFPYT(SEQ ID NO:43)
5G12 hVL2
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5G12 hVL2のCDR1
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5G12 hVL2のCDR2
RANRLVD(SEQ ID NO:36)
5G12 hVL2のCDR3
LQYDEFPYT(SEQ ID NO:43)
5G12 hVL3
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5G12 hVL3のCDR1
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5G12 hVL3のCDR2
RANRLVD(SEQ ID NO:36)
5G12 hVL3のCDR3
LQYDEFPYT(SEQ ID NO:43)
5G12 hVL4
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5G12 hVL4のCDR1
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5G12 hVL4のCDR2
RANRLVD(SEQ ID NO:36)
5G12 hVL4のCDR3
LQYDEFPYT(SEQ ID NO:43)
5G12 hVL5
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5G12 hVL5のCDR1
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5G12 hVL5のCDR2
RANRLTS(SEQ ID NO:202)
5G12 hVL5のCDR3
LQYDEFPYT(SEQ ID NO:43)
5G12 hVH1
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5G12 hVH1のCDR1
SYWIT(SEQ ID NO:204)
5G12 hVH1のCDR2
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5G12 hVH1のCDR3
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5G12 hVH2
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hVH2のCDR1
SYWIT(SEQ ID NO:204)
hVH2のCDR2
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hVH2のCDR3
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5G12 hVH3
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5G12 hVH3のCDR1
SYWIS(SEQ ID NO:208)
5G12 hVH3のCDR2
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5G12 hVH3のCDR3
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【0467】
実施例8:膜結合S15は免疫抑制性である
材料及び方法
PMBCのT細胞の抑制をインビトロでアッセイする方法:
健康的なドナーのアフェレーシスに由来する多白血球製品(KeyBiologics,Memphis,TN)から、標準的なフィコール勾配操作によって末梢血単核球(PBMC)を採取し、その後凍結保存した。アッセイ当日に、凍結したPBMCを解凍し、RPMI完全培地(RPMI−C、RPMI[ThermoFisher]+10%FetalClone III血清[HyClone])で洗浄し、計数した。細胞をRPMI−C中5μMのCFSE(ThermoFisher)で10分間37℃で標識し、その後RPMI−Cで2回洗浄した。予め抗ヒトCD3(OKT3、50ng/mL;eBioScience)で一晩4℃でコーティングされた96ウェル平底Corning Costarプレート中に、全PMBC(3E05細胞/ウェル)を蒔いた。シグレック−15 hG1 Fc融合タンパク質を、示した通りの最終濃度でウェルに添加した。細胞を37℃で72時間培養した。72時間目に、サイトカインレベルの分析用に、50μLの上清をウェルから採取し、直ちに凍結させた。次いで細胞を各ウェルからピペット操作によって採取し、フローサイトメトリー染色及び分析用に丸底プレートに移した。Fc受容体をTruStain FcX(2μL/ウェル;Biolegend)でブロックし、続いてCD4に対する抗体(APC−eFluor 780(2μL/ウェル;ThermoFisher))及びCD8に対する抗体(eFluor 450(2μL/ウェル;ThermoFisher))で、4℃で1時間染色した。インキュベーション後に、プレートをFACS緩衝液(1%のFetalClone III血清を含有するPBS)で2回洗浄した。細胞を150μLの固定用緩衝液(PBS中3%ホルムアルデヒド)に再懸濁させ、YETIフローサイトメーター(Propel Labs)で分析した。データをFlowJoで分析した。データは、CFSE希釈に基づく分裂した細胞の、刺激されていないCD4
+及びCD8
+T細胞と比較した百分率として表示されている。上清を、U−PLEXキット(Meso Scale Diagnostics[MSD)])を用いて、使用説明書に従ってIFN−γ、TNF−α、及びIL−6について分析した。U−PLEXは、Meso QuickPlex SQ 120機器を使用して読み取った。
【0468】
結果
膜結合S15は免疫抑制性である。
図14Aは、ヒトS15 Fc(μg/mL)に対するT細胞の増殖(%)の線グラフであり、S15 Fcの濃度が増加するにつれてT細胞の増殖(%)が減少することを示している。ヒトPBMAは、CFSEで標識し、抗CD3(OKT3)でコーティングした96ウェルプレートに添加し、指定濃度でのヒトS15 Fc融合タンパク質と共に3日間培養した。
図14Bは、0または5μg/mLのS15 Fcで処置した細胞からの馴化上清中のIFN−γ(pg/ml)の棒グラフである。
図14Cは、0または5μg/mLのS15 Fcで処置した細胞からの馴化上清中のTNF−α(pg/ml)の棒グラフである。
図14Dは、0または5μg/mLのS15 Fcで処置した細胞からの馴化上清中のIL−6(pg/ml)の棒グラフである。
【0469】
実施例9:ハイブリドーマから精製されたs15 mAbの、ヒトS15またはマウスs15を発現する細胞への結合
材料及び方法
ヒトS15を安定に発現する293T細胞(293T.hS15)及びマウスS15を安定に発現するマウスMC38細胞(MC38.mS15)を組織培養物から採取した。PBSで1回洗浄した後、染色するために細胞を96ウェルU底プレートに播種した(5E04細胞/ウェル)。細胞を最初にマウスハイブリドーマから精製した1μgの指定抗体とFACS染色用緩衝液(1%のFetalClone III血清を含有するPBS)中で混合し、氷上で30分間インキュベートした。次いで細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、続いてPEコンジュゲート抗マウスIg抗体(eBioscience)と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、100μLのFACS緩衝液に再懸濁させた後、YETIフローサイトメーター(Propel Labs)で分析した。データをFlowJoで分析した。データは、前方散乱(FSC)及び側方散乱(SSC)によってゲートされた、全細胞集団中のPE陽性細胞の百分率として示される。
【0470】
結果
図15A及び15Bは、ハイブリドーマから精製されたS15 mAbの、ヒトS15またはマウスS15を発現する細胞への結合について、陽性細胞の百分率を示す。指定抗体とインキュベートし、続いてPEコンジュゲート抗マウスIg抗体とインキュベートした細胞をFACS分析により評価することによって、結合を評価した。細胞を、FACSを介してPE
+集団について分析した。
【0471】
実施例10:ハイブリドーマから精製されたS15 mAbは、膜結合S15に媒介される抑制を逆転させる
材料及び方法
全PBMCのT細胞増殖アッセイにおいて、シグレック−15 mAbでのシグレック−15 Fcに媒介される抑制の逆転を試験する方法:
上の
図14と同じだが、わずかな変更がある。
【0472】
健康的なドナーのアフェレーシスに由来する多白血球製品(KeyBiologics,Memphis,TN)から、標準的なフィコール勾配操作によって末梢血単核球(PBMC)を採取し、その後凍結保存した。アッセイ当日に、凍結したPBMCを解凍し、RPMI完全培地(RPMI−C、RPMI[ThermoFisher]+10%FetalClone III血清[HyClone])で洗浄し、計数した。細胞をRPMI−C中5μMのCFSE(ThermoFisher)で10分間37℃で標識し、その後RPMI−Cで2回洗浄した。予め抗ヒトCD3(OKT3、50ng/mL;eBioScience)で一晩4℃でコーティングされた96ウェル平底Corning Costarプレート中に、全PMBC(3E05細胞/ウェル)を蒔いた。シグレック−15 hG1融合タンパク質を、5μg/ml(最終濃度)でウェルに添加した。次いで指定のシグレック−15 mAbを指定のウェルに12μg/ml(最終濃度)で添加した。細胞を37℃で72時間培養した。72時間目に、サイトカインレベルの分析用に、50μLの上清をウェルから採取し、直ちに凍結させた。次いで細胞を各ウェルからピペット操作によって採取し、フローサイトメトリー染色及び分析用に丸底プレートに移した。Fc受容体をTruStain FcX(2μL/ウェル;Biolegend)でブロックし、続いてCD4に対する抗体(APC−eFluor 780(2μL/ウェル;ThermoFisher))及びCD8に対する抗体(eFluor 450(2μL/ウェル;ThermoFisher))で、4℃で1時間染色した。インキュベーション後に、プレートをFACS緩衝液(1%のFetalClone III血清を含有するPBS)で2回洗浄した。細胞を150μLの固定用緩衝液(PBS中3%ホルムアルデヒド)に再懸濁させ、YETIフローサイトメーター(Propel Labs)で分析した。データをFlowJoで分析した。データは、CFSE希釈に基づく分裂した細胞の、刺激されていないCD4
+及びCD8
+T細胞と比較した百分率として表示されている。上清を、U−PLEXキット(Meso Scale Diagnostics[MSD)])を用いて、使用説明書に従ってIFN−γ、TNF−α、及びIL−6について分析した。U−PLEXは、Meso QuickPlex SQ 120機器を使用して読み取った。
【0473】
結果
図16A及び16Bは、指定抗体で処置された、分裂したCD8+T細胞の百分率の棒グラフである。
図16C及び16Dは、指定抗体で処置された、分裂したCD4+T細胞の百分率の棒グラフである。
【0474】
実施例11:3種類の腫瘍モデルにおける精製5G12のインビボでの生物活性
材料及び方法
インビボでの腫瘍モデルのための方法
大腸腫瘍モデル
図17A:シグレック−15が過剰発現するように形質導入され、選別されたMC38腫瘍細胞(ATCC)を、C57BL/6Nマウス(Charles River)の剃毛した右脇腹に、100μL中2E05の細胞で皮下注射した。5匹のマウス/処置群に、腫瘍注射の6日後から始まる、200μgの対照IgG(Innovative Research)またはエンドトキシンフリーの精製抗シグレック−15クローン5G12の投与を行った。治療を4日毎に続け、合計4回投与した。腫瘍は、毎週3回測定した。腫瘍体積は、(長さ×幅^2)×0.5として算出した。腫瘍が2000mm
3に達したときに、マウスを安楽死させた。
【0475】
リンパ腫腫瘍モデル
図17B:EG7腫瘍細胞(ATCC)は、鶏卵オバルブミン(OVA)を発現するようにトランスフェクトされたEL4腫瘍細胞である。細胞を10日間培養した後に、2E05の腫瘍細胞をC57BL/6Nマウス(Charles River)の剃毛した右脇腹に皮下注射した。マウス10匹/処置群を、200μgの対照IgGまたはエンドトキシンフリーの精製抗シグレック−15クローン5G12で処置した。処置は、EG7の注射後8日目から始め、マウスを4日毎に合計4回投与して処置した。腫瘍体積は、(長さ×幅^2)×0.5として算出した。腫瘍が2000mm
3に達したか、または腫瘍が15cmの平均径に達したときに、マウスを安楽死させた。
【0476】
卵巣癌モデル
図17C:ID8−OVA腫瘍細胞は、鶏卵オバルブミン(OVA)を発現するように安定にトランスフェクトされたマウスID8卵巣癌細胞株である。細胞を10日間培養した後に、5E06の細胞を腹腔内注射した。3週間後に、マウスに、CD8
+T細胞ネガティブ選択によって単離された5E05のOT−I Tg/Rag2
−/−T細胞(Miltenyi Biotec)を腹腔内に注射することによって養子移入した。処置は1日後に開始した(22日目;n=10/群)。マウスに、4日毎に200μg、合計5回、対照IgGまたはエンドトキシンフリーの精製抗シグレック−15クローン5G12を投与した。マウスを腫瘍注射の30日後から計量し、腫瘍量を体重増加によって分析した。データは、初期重量からの、30日目のマウス一匹当たりの体重増加率(百分率)として表示する。体重が150%の体重増加に達したか、または30グラムより増えたときに、マウスを安楽死させた。
【0477】
結果
5G12は、大腸モデル(
図17A)及びリンパ腫モデル(
図17B)において生存率(百分率)の増加を示した。5G12は、腫瘍量の低減(
図17C)も示した。
図18は、ID8/OVA接種後の日数に対する生存率(百分率)を示す。
【0478】
実施例12:組換えmAbのS15単量体タンパク質に対する親和性評価
ForteBio Octet RED96機器で抗ヒトFc capture(AHC,18−5060;ForteBio)センサーを使用して、最適化したK
D実験を実施した。アッセイ用緩衝液は0.05%のTween−20を含有するPBSであり、再生用緩衝液は10mMグリシン(pH1.5)であった。抗体を最初に1μg/mLで600秒間ロードした。これに続いて、60秒のベースラインステップ、S15−細胞外ドメイン(ECD)単量体での300秒の会合ステップ、最後に1200秒の解離ステップを行った。単量体濃度は2倍希釈系列で100nM〜1.56nMの範囲であり、ブランクウェルも含まれていた。データは、ForteBioのData Analysis Software 7.0を使用して、グローバルフィットを使用すると共に参照ウェルを差し引いて処理した。報告する値は、少なくとも3回の独立したoctetランの平均である。結果は表1である。
【0479】
(表1)S15単量体タンパク質に対する組換えmAbの親和性評価(n=3〜6ラン)
[この文献は図面を表示できません]
【0480】
実施例13:S15 mAbのエピトープビニング
ForteBio Octet RED96機器でストレプトアビジン(SA,18−5019;ForteBio)センサーを使用して、エピトープビニング実験を実施した。30秒のベースラインステップ後、ビオチンで標識したS15−mG1融合タンパク質を、センサーに10μg/mLで600秒間ロードした。これに続いて、一次抗体(30μg/mL)での600秒の会合ステップ、30秒のベースライン、及び二次抗体(15μg/mL)での400秒の会合ステップを行った。アッセイ用緩衝液はPBSであり、再生用は10mMグリシン(pH3.0)であった。データは、ForteBioのData Analysis Software 7.0を使用して処理し、二次抗体曲線を競合的結合について個々に評価した。2回目の会合ステップ中の曲線が1回目の会合ステップとは別個であれば、未占有のエピトープと結合していることが示される。さらなる結合がなければ、エピトープがブロックされていることが示される。結果は表2である。
【0481】
(表2)S15エピトープビン
[この文献は図面を表示できません]
【0482】
実施例14:抗ヒトS15クローン1H3は、ヒト破骨細胞形成をインビトロで阻害する
材料及び方法
PBMCは、Key Biologics,LLCから購入したアフェレーシス由来の多白血球製品から単離した。多白血球製品をフィコールのクッション上に重層し、400RCFで30分間遠心分離した。フィコールの界面の細胞を取り出し、PBS中で3回洗浄し、次いで10%DMSOを有するFBS中で凍結させた。実験の当日に、凍結したPBMCのバイアルを液体窒素保管庫から取り出し、解凍した。MACS単球単離キット(130−096−537;Miltenyi Biotec)を使用して、製造業者の使用説明書に従って単球を単離した。単離した細胞は99%生存細胞であった。細胞を、3E05細胞/cm
2、ウェル当たりアッセイ培地100μL中1E05細胞の密度で96ウェル平底組織培養プレートに蒔いた。アッセイ培地は、10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム、25ng/mlのヒトマクロファージコロニー刺激因子(Miltenyi,103−096−491)、及び30ng/mlのヒトRANKL(Miltenyi,130−093−988)を補充したα−MEM培地(Gibco 32571−036)から成るものであった。細胞をプレートに3.5時間接着させた後、50μg/mLのS15抗体10μLを添加し、最終濃度を4.55μg/mLとした。三重のウェルを各抗体について評価した。3日間のインキュベーション後に、培地を交換し、新たな抗体を添加した。7日目に、上清を元のプレートから丸底96ウェルプレートに移し、遠心分離して細胞残屑を除去した。B−Bridge International,Inc.製のTRAP染色キット(PMC−AK04F−COS)を使用して、製造業者の使用説明書に従って単球/破骨細胞を染色し、Invitrogen EVOS FL Colorを使用して撮像した。上清中のTRAP(酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ)レベルを評価するために、TRAP染色キットの緩衝液50μLを9μLの上清を合わせ、37℃で3時間インキュベートした。各ウェルの540nMでの吸光度を記録した。残った上清を、後のサイトカイン分析用に−80℃で凍結させた。
【0483】
結果
図19Aは、ヒトCD14+単球がMitenyi単球磁気ビーズを使用してヒトPBMCから採取され、続いてヒトM−CSF及びヒトRANKLの存在下で指定抗体と共に96ウェルプレート中に播種されることを示す概略図である。
図19Bは、破骨細胞を示す顕微鏡写真である。
図19Cは、7日後に酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ分析用に収集された上清の吸光度(540nm)の棒グラフである。
【0484】
実施例15:1H3は、ヒト単球においてM−CSF及びRANKLによって媒介されるIL−6及びTNF−αの産生を低減させる
材料及び方法
上の実験からのRANKLなし(M−CSF単独)、対照mAB(M−SCF+RANKL+対照mAb)、及び1H3(M−CSF+RANKL+1H3)のウェルからの上清を収集し、サイトカインを分析するために試験した。
【0485】
結果
図20は、INF−γ、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−17A、及びTNF−αに関する、サイトカイン(pg/mL)を示す棒グラフである。
【0486】
実施例16:抗ヒトS15 mAb 1H3は、インビトロでのマウス破骨細胞形成を防止する
材料及び方法
マウスRAW 264.7マクロファージ細胞を、1.5E04細胞/cm
2、ウェル当たり培地90μL中4800細胞の密度で平底96ウェルプレートに播種した。培地は、10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム、及び50ng/mLのマウスRANKL(eBioscience,14−8612−80)を有するDMEMから成るものであった。細胞を2時間接着させた後、10μLの指定抗体(50μg/mL)をウェルに添加し、5μg/mLの最終濃度を得た。抗体を三連のウェルで評価した。細胞を5日間分化させ、その時点で細胞を染色し、上清を上記の通りのTRAP含有量について評価した。
【0487】
結果
図21は、RANKLの存在下で指定抗体と共に培養されたマウスRAW 264.7マクロファージ細胞の吸光度(540nm)の棒グラフである。
【0488】
実施例17:ヒトM2マクロファージにおいてシグレック−15の発現が上方制御される
材料及び方法
シグレック−15の発現
ヒトCD14+単球をヒトPBMCから磁性ビーズネガティブ選択キット(Miltenyi Biotec)を介して単離し、M−CSFで3日間処置し、次いで細胞をIL−10(M2マクロファージ分極)またはIFN−γ/LipiA(M1マクロファージ分極)の存在下でさらに3日間培養した。シグレック−15の細胞表面発現が、抗シグレック−15抗体染色とその後のFACS分析によって検出された。
【0489】
シグレック−15の発現の誘導
マウス骨髄細胞をBalb/Cマウスから採取した。接着細胞をプラスチック製培養皿に付着させることによって除去した。浮遊するマウス造血細胞を採取し、M−CSFで3日間処置し、続いてそのままM−CSFで、またはM−CSF+IL−10でさらに4日間処置した。処置した細胞を採取し、骨髄細胞マーカー(CD11b及びF4/80)及びPE標識抗S15で染色し、続いてFACS分析を行った。PEの平均蛍光強度を下側の図にグラフ化する。M−CSFはS15の発現を若干増大させた。
【0490】
結果
シグレック−15の発現がヒトM2マクロファージには観察されたが(
図25A)、ヒトM1マクロファージには観察されなかった(
図25B)。
M−CSF及びIL−10は、マウス骨髄由来骨髄細胞においてS15の発現を増大させる(
図25C〜25E)。
【0491】
実施例18:シグレック−15は、ヒト骨髄細胞の生存を促進し、炎症誘発性サイトカイン産生を増大させる
材料及び方法
最初にヒトCD14+単球をヒトPBMC(2人の健康なドナー由来)から磁性ビーズネガティブ選択キット(Miltenyi Biotec)を介して単離し、図に示す濃度で、シグレック−15融合タンパク質でコーティングした(シグレック−15コーティング)96ウェルプレート、またはコーティングしていないが培養液中のシグレック−15融合タンパク質を添加した(シグレック−15可溶性)96ウェルプレートに播種した。6日後に、MSDキットを介するサイトカイン分析用に、馴化上清を収集した。XTT(ThermoFisher)をプレートに添加することによって、細胞生存率を評価した。2時間培養した後、細胞の代謝/生存率を、450nmでの吸光度を読み取ることによって測定した。
【0492】
結果
プレートにコーティングしたシグレック−15 Fcおよび可溶性シグレック−15 Fcを有するウェルにおいて、吸光度が高くなったことが検出された。サイトカイン分析から、S15が、処置したウェルにおいてTNF−α、IL−6、及びIL−1βの産生を用量依存的に増大させたことが示された(ここでは可溶性S15ウェルからのデータを提示する)。
【0493】
実施例19:シグレック−15 Fcで処置したヒト骨髄細胞は、ヒトT細胞の機能に影響を及ぼす
材料及び方法
図27Aは、以下の実験の概略図である。ヒトCD14+単球をヒトPBMC(2人の健康なドナー由来)から磁性ビーズネガティブ選択キット(Miltenyi Biotec)を介して単離し、シグレック−15 Fcで上記の通りに6日間処置するか、またはM2もしくはM1マクロファージに分極させるか、またはGM−CSF及びIL−4で処置して細胞を未成熟樹状細胞(imDC)に分化させた。細胞を、培養皿から穏やかにこすり取ることによって採取した。細胞を、遠心分離した後に再懸濁させ、ネガティブ選択されたCFSE標識自己汎T細胞と、骨髄細胞1:T細胞2の細胞比で、抗CD3/CD28ビーズ(汎T細胞1:ビーズ2)と一緒に共培養した。5日後に、MSD製のMSDマルチプレックスキットを使用するサイトカイン分析用に馴化上清を収集した。細胞を採取し、抗CD4及び抗CD8抗体で染色した。FACS分析してCFSE希釈した細胞集団を測定することによって、T細胞増殖を分析した。
【0494】
結果
データから、シグレック−15 Fcで処置した骨髄細胞が、この特定のドナー(ドナー番号1707)に由来する細胞を使用する、抗CD3/CD28ビーズに媒介されるCD4及びCD8T細胞増殖を減少させること、抑制がM2マクロファージほど甚大ではない(
図27B〜27G)ことが示された。サイトカイン分析から、S15で処置した骨髄細胞が、抗CD3/CD28ビーズに媒介されるIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−10の産生を顕著に弱化させることが明らかとなった。試験した他のドナーからのデータから、S15で処置した細胞は、T細胞増殖に対する抑制は限定的だが、ほとんどの場合、サイトカイン産生に著しい抑制をもたらすことが示された。
【0495】
実施例20:シグレック−15 mAbは、ヒト骨髄細胞に及ぼすS15媒介性生存効果を用量依存的にブロックする
材料及び方法
ヒトCD14+単球をヒトPBMC(2人の健康なドナー由来)から磁性ビーズネガティブ選択キット(Miltenyi Biotec)を介して単離し、5μg/mLのS15 Fc融合タンパク質とシグレック−15のmAbと一緒に、20μg/mLから連続的に1:2で希釈して96ウェルプレートに播種した。細胞を7日間培養した。XTT(ThermoFisher)をプレートに添加することによって、細胞生存率/代謝を評価した。2時間培養した後、450nmでの吸光度を読み取ることによって細胞代謝/生存率を測定した。S15 Fc融合タンパク質を含み、いずれの抗体も含まない(mAbを含まない)ウェルにおいて高い吸光度が検出された。S15 Fc融合タンパク質を含まない(S15 Fcを含まない)ウェルにおいて低い吸光度が得られた。
【0496】
結果
シグレック−15 mAbは、吸光度を用量依存的に減少させた(一番下の線)。対照抗体(一番上の線)は、細胞生存及び代謝に何も作用を及ぼさなかった。
図28A(ドナー1709)及び28B(ドナー1713)から、抗S15 mAbが、ヒト骨髄細胞に及ぼすS15媒介性生存効果を用量依存的にブロックすることが示される。
【0497】
実施例21:シグレック−15は破骨細胞形成に重大な役割を果たす
骨芽細胞及び間質細胞上に発現するM−CSFは骨髄細胞上にシグレック−15の発現を誘導し、これはシスまたはトランスのいずれかでシグレック−15の結合パートナーと相互作用し、骨髄細胞を刺激して、TNF−α、IL−6、及びIL−1βなどの炎症誘発性サイトカインを産生し、α
vβ
3インテグリンの発現を上方制御する。RANKLシグナル伝達と共に、破骨細胞前駆細胞は融合し、多核破骨細胞を形成する(
図29)。
【0498】
実施例22:シグレック−15は、ヒトCD14
+単球におけるa
vβ3インテグリンの発現を誘導する
材料及び方法
ヒトCD14
+単球をヒトPBMCから磁性ビーズネガティブ選択キット(Miltenyi Biotec)を介して単離し、5μg/mLのS15 Fc融合タンパク質で6日間処置した。6日後に、S15 Fcで処置した骨髄細胞を採取し、抗α
vβ
3インテグリンで染色した(クローン23C6)。
【0499】
結果
アイソタイプ対照抗体の染色及びS15Fc処置前の細胞の0日目の染色と比較して、S15 Fcで処置した骨髄細胞ではa
vβ
3インテグリンの発現が上方制御制御された(
図30A及び30B)。
【0500】
特に定義しない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示される発明の属する分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に引用される文献及び引用される材料は、参照により明確に組み込まれている。
【0501】
当業者であれば、慣例的な実験だけを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識し、確認することができよう。かかる均等物は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。