(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-536719(P2019-536719A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】設計された応力プロファイルを有するガラス系物品および製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/23 20060101AFI20191122BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20191122BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20191122BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20191122BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20191122BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20191122BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
C03C17/23
C03C21/00 101
C03C17/34 Z
B32B17/06
B32B9/00 A
B32B9/04
G09F9/00 302
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-516441(P2019-516441)
(86)(22)【出願日】2017年9月25日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月27日
(86)【国際出願番号】US2017053198
(87)【国際公開番号】WO2018063966
(87)【国際公開日】20180405
(31)【優先権主張番号】62/400,228
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェイソン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアン,ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ウェイ
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
5G435
【Fターム(参考)】
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5G435AA06
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(57)【要約】
第1の外側領域圧縮応力およびその上に第1のコーティングを有する第一面を備えた強化ガラス系基板が開示されている。その第1のコーティングは、第1の外側領域圧縮応力の絶対値が第1のコーティングの圧力の絶対値よりも大きくなるような、第1のコーティングのヤング率値、第1のコーティングの厚さ、および中立または圧縮のいずれかの第1のコーティングの圧力を有するように選択された材料から作られている。ガラス系物品を製造する方法が提供され、ガラス系物品の異なる面に異なる強度値および/または信頼性を与えるコーティングを有するガラス系物品も開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス系物品において、
ガラス系基板であって、その上に第1のコーティングを有する第一面であり、該第1のコーティングと該ガラス系基板との間に第1の界面を提供する第一面、および該第一面と反対の第二面を有するガラス系基板、
を備え、前記第1のコーティングは、第1の表面から前記第1の界面まで延在する第1のコーティングの厚さを有し、前記ガラス系基板は、前記第1の界面から第2の表面まで延在する基板の厚さを有し、該ガラス系基板は、該第1の界面から圧縮深さ(DOC)まで延在する第1の外側領域を有し、該第1の外側領域は、第1の外側領域の圧縮応力を有し、前記第1のコーティングは、第1のコーティングのヤング率値、第1のコーティングの厚さ、および中性または圧縮いずれかの第1のコーティングの応力を有するように選択された材料から作られ、前記第1の外側領域の圧縮応力の絶対値は、前記第1のコーティングの応力の絶対値より大きい、ガラス系物品。
【請求項2】
前記第1のコーティングの応力の絶対値が、前記第1の外側領域の圧縮応力の絶対値より少なくとも約40%小さい、請求項1記載のガラス系物品。
【請求項3】
前記ガラス系基板が、前記第1のコーティングのヤング率値と異なる基板のヤング率値を有する、請求項1または2記載のガラス系物品。
【請求項4】
前記ガラス系基板が、前記第1のコーティングのヤング率値以下の基板のヤング率値を有する、請求項1から3いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項5】
前記第1のコーティングの厚さが、約5ナノメートルから約5マイクロメートルの範囲内にある、請求項1から4いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項6】
前記第1のコーティングが、シリカ、インジウムスズ酸化物、酸窒化アルミニウム、多孔質シリカ、ガラスセラミック、セラミックまたはその組合せからなる群より選択される、請求項1から5いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項7】
前記ガラス系物品が、積層ガラス基板、化学強化ガラス基板、熱的強化ガラス基板、およびその組合せからなる群より選択される強化ガラス系基板を備える、請求項1から6いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項8】
前記ガラス系基板が、厚さtを有する化学強化されたガラス系基板から作られ、前記第1の外側領域において前記第1の界面から約0.05tから約0.25tの範囲のDOCまでイオン交換されている、請求項1から7いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項9】
前記第1の外側領域が、約100MPaから約1100MPaの範囲の圧縮応力(CS)を有する、請求項8記載のガラス系物品。
【請求項10】
前記ガラス系基板が、引張応力を有する中央領域であって、前記DOCから延在する中央領域、および該中央領域から延在する第2の外側領域であって、圧縮応力を有する第2の外側領域をさらに有する、請求項1から9いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項11】
前記第2の外側領域上に第2のコーティングを、該第2の外側領域と該第2のコーティングとの間に第2の界面をさらに備え、該第2のコーティングは、第2のコーティングのヤング率値、第2のコーティングの厚さ、および中立または圧縮いずれかの第2のコーティングの応力を有する材料から作られ、前記第2の外側領域の圧縮応力の絶対値は、前記第2のコーティングの応力の絶対値より大きい、請求項10記載のガラス系物品。
【請求項12】
前記第2のコーティングの応力の絶対値が、前記第2の外側領域の圧縮応力の絶対値より少なくとも約40%小さい、請求項11記載のガラス系物品。
【請求項13】
家庭用電化製品において、
前面、背面および側面を有する筐体、
前記筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも、制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品、および
前記ディスプレイ上に配置されたカバーガラス、
を備え、
前記筐体の一部または前記そのカバーガラスの少なくとも一方が、請求項1から12いずれか1項記載のガラス系物品から作られている、家庭用電化製品。
【請求項14】
所望の強度を有するガラス系物品を形成する方法において、
コーティングの不在下で前記ガラス系物品における最大予測欠陥寸法を決定する工程、
前記ガラス系物品上にコーティングが配置されたときの、該ガラス系物品における最大予測欠陥寸法に対応するコーティングの厚さ値およびコーティングのヤング率値を決定する工程、
前記コーティングが施されたときに、前記ガラス系物品に前記所望の強度および所望の機械的信頼性を与えるヤング率値および厚さ値を有するコーティングを選択する工程、および
前記コーティングを前記ガラス系物品に施す工程、
を有してなる方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2016年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/400228号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施の形態は、広く、設計された応力プロファイルを有するガラス系物品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
強化ガラス系物品が、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ビデオプレーヤー、情報端末(IT)機器、ラップトップコンピュータ、ナビゲーションシステムなどの手持ち式または携帯型電子通信機器およびエンタテイメント装置用のカバープレートまたは窓として、電子機器に、並びに建築(例えば、窓、シャワーパネル、天板など)、輸送(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電化製品、または優れた破壊抵抗を要求するが、薄く軽量の物品を必要とする任意の用途に、広く使用されている。
【0004】
化学強化されたガラス物品などの強化ガラス系物品において、圧縮応力は、ガラス表面で最高すなわちピークにあり、その表面から離れるとピーク値から減少し、ガラス物品内の応力が引張になる前の、ガラス物品のある内部位置で応力がゼロになる。そのような応力プロファイルを有するガラス物品について、二軸試験において破壊荷重の幅を示す特定のワイブル係数について、ワイブルプロットが得られる。ガラス物品の異なる試料の破壊荷重の幅がより狭くなり、それによって、製品の信頼性が増すので、より高いワイブル係数が一般に魅力的である。言い換えると、その製品は、取扱いからのものを含む、初期欠陥寸法分布の影響を受けにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラス系物品の応力プロファイルを変更して、初期欠陥個体数に対する感受性を減少させるために、イオン交換過程の改良を使用することができる。この目的にイオン交換過程の改良を使用することができるが、強化ガラスがますます使用されるにつれて、信頼性が改善された強化ガラス材料を提供するが、その強化ガラスの平均強度に著しくは影響しない他の方法を開発することが、より重要になってきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、ガラス系物品において、このガラス系物品は、ガラス系基板であって、その上に第1のコーティングを有する第一面、その第1のコーティングとそのガラス系基板との間の第1の界面、および第一面と反対の第二面を有するガラス系基板を備え、この第1のコーティングは、第1の表面から第1の界面まで延在する第1のコーティングの厚さを有し、そのガラス系基板は、その第1の界面から第2の表面まで延在する基板の厚さを有し、そのガラス系基板は、その第1の界面から圧縮深さ(以後、「DOC」)まで延在する第1の外側領域を有し、その第1の外側領域は、第1の外側領域の圧縮応力の絶対値を有し、その第1のコーティングは、第1のコーティングのヤング率値、および中性または圧縮いずれかの第1のコーティングの応力を有するように選択された材料から作られ、第1の外側領域の圧縮応力の絶対値は、第1のコーティングの応力の絶対値より大きい、ガラス系物品に関する。
【0007】
本開示の別の態様は、ガラス系物品において、基板のヤング率、第一面と第二面、および引張応力を有する中央領域を有するガラス系基板であって、第一面は、第1のDOCまで延在する圧縮応力を有する第一面の外側領域を有し、第二面は、第一面の外側領域と反対の第二面の外側領域を有し、その第二面の外側領域は、第2のDOCまで延在する圧縮応力を有する、ガラス系基板;第一面上の第1のコーティングであって、その第1のコーティングとガラス系基板との間に第1の界面があり、第一面が第一面の強度および第一面の機械的信頼性を有するように第1のコーティングの厚さおよび第1のコーティングのヤング率を有する第1のコーティング;および第二面上の第2のコーティングであって、その第2のコーティングとガラス系基板との間に第2の界面があり、第二面が第二面の強度および第二面の機械的信頼性を有するように第2のコーティングの厚さおよび第2のコーティングのヤング率を有する第2のコーティング;を備え、第一面の強度が第二面の強度と異なり、第一面の機械的信頼性が第二面の機械的信頼性と異なる、ガラス系物品に関する。
【0008】
本開示の別の態様は、ガラス系物品の機械的信頼性を変更する方法において、ガラス系基板の許容欠陥寸法を決定する工程であって、その許容欠陥寸法は、ガラス系基板の機械的信頼性および強度を決定し、そのガラス系基板は、基板のヤング率、基板の強度と基板の機械的信頼性、第1の表面、基板の厚さおよび第一面の表面から第1のDOCまで延在する圧縮応力を有する第一面の外側領域、引張応力を有する中央領域、および第二面の表面から第2のDOCまで延在する圧縮応力を有する第二面の外側領域を有する、工程;ガラス系基板のヤング率と異なる第1のコーティングのヤング率を有する第1のコーティング材料を選択する工程;第1のコーティングのヤング率およびガラス系基板のヤング率に基づいて、第一面上のガラス系基板の機械的信頼性または第一面上のガラス系基板の機械的強度の一方を増加させる第1のコーティングの計算厚さを決定する工程;およびその第1のコーティングの計算厚さで第1のコーティングを施して、第一面上のガラス系基板の機械的信頼性または第一面上のガラス系基板の機械的強度のいずれかを増加させる工程を有してなる方法に関する。
【0009】
本開示の別の態様は、所望の強度を有するガラス系物品を形成する方法において、コーティングの不在下でそのガラス系物品における最大予測欠陥寸法を決定する工程;ガラス系物品上にコーティングが配置されたときの、ガラス系物品における最大予測欠陥寸法に対応するコーティングの厚さ値およびコーティングのヤング率値を決定する工程;コーティングが施されたときに、ガラス系物品に所望の強度および所望の機械的信頼性を与えるヤング率値および厚さ値を有するコーティングを選択する工程;およびそのコーティングをガラス系物品に施す工程を有してなる方法に関する。
【0010】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、本開示の実施の形態を提示し、説明され、請求項に記載されたような実施の形態の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する目的であることが理解されよう。添付図面は、実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施の形態を示しており、説明と共に、その原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】複数の亀裂を有する表面を備えたガラス系基板の断面図
【
図2A】いくつかの実施の形態による、片面にコーティングを有する強化ガラス系基板の説明図
【
図2B】いくつかの実施の形態による、両面にコーティングを有する強化ガラス系基板の説明図
【
図3B】いくつかの実施の形態による、コーティングを有するガラス系基板の応力プロファイル
【
図4】いくつかの実施の形態による、未被覆と被覆されたガラス系基板のデータを示すワイブルプロット
【
図5】いくつかの実施の形態による、モデル化データに基づく欠陥寸法に対する残留強度をプロットしたグラフ
【
図6】基板の強度を測定するためのリング・オン・リング試験構成
【
図7A】ここに開示された強化物品のいずれかを組み込んだ例示の電子機器の上面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
いくつかの例示の実施の形態を説明する前に、本開示は、以下の開示に述べられた構成または工程段階の詳細に限定されないことを理解すべきである。ここに与えられた開示は、他の実施の形態も可能であり、様々な様式で実行または実施されることが可能である。以下の詳細な説明において、限定ではなく、説明目的のために、様々な原理および態様の完全な理解を与えるために、具体的な詳細を開示する例示の実施の形態が述べられている。しかしながら、請求項の主題は、ここに開示された具体的な詳細から逸脱する他の実施の形態で実施してもよいことが、本開示の恩恵を受けた当業者には、明白であろう。さらに、周知の装置、方法および材料の記載は、ここに述べられた様々な原理の記載を分かりにくくしないように、省略されることがある。最後に、適用できる限り、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0013】
ここに用いたような方向の用語−例えば、上、下、右、左、前、後ろ、頂部、底部−は、描かれた図面に関してのみ使用され、絶対的な向きを示唆する意図はない。
【0014】
本明細書に亘る「1つの実施の形態」、「特定の実施の形態」、「様々な実施の形態」、「1つ以上の実施の形態」または「ある実施の形態」への言及は、その実施の形態に関して記載された特定の性質、構造、材料、または特徴が、本開示の少なくとも1つの実施の形態に含まれることを意味する。それゆえ、本明細書に亘る様々な場所おける「1つ以上の実施の形態」、「特定の実施の形態」、「様々な実施の形態」、「1つの実施の形態」または「ある実施の形態」などの句の出現は、必ずしも、同じ実施の形態を称するものではない。さらに、その特定の性質、構造、材料、または特徴(異なる実施の形態に記載されたものを含む)は、1つ以上の実施の形態においてどの適切な様式で(任意のおよび全ての組合せを含む)組み合わされてもよい。
【0015】
本開示の1つ以上の実施の形態は、コーティングを備えた、設計された応力プロファイルを有するガラス系物品を提供する。1つ以上の実施の形態において、強化ガラス系基板の片面または両面に施されるコーティングは、強化ガラス系基板と同じ、それより低い、または高いヤング率を有する材料から作られる。1つ以上の実施の形態によれば、そのコーティングは、残留応力がないか、または圧縮残留応力を有する。コーティングに残留応力がない場合、コーティングを有するガラス系物品の全体の応力プロファイルは、ガラス系物品中に特定の距離だけイオン交換プロファイルをシフトさせることにより得られる、ガラス系物品の外側領域に圧縮がない応力プロファイルと似ている。モデル化およびいくつかの予備実験データによる、この構成は、元の化学強化されたガラス系基板がコーティングを有さず、ほぼ同じ平均強度を有する場合と比べて、初期ガラス欠陥を受けにくいであろう。
【0016】
1つ以上の実施の形態によれば、初期欠陥を受けにくい、化学強化されたガラス系物品が提供される。1つ以上の実施の形態において、ここに記載されたガラス系物品は、より高い信頼性およびより一貫した製品性能を有し、その上にコーティングを備えていない既存の製品と比べて、強度のばらつきが低くなる。
【0017】
1つ以上の実施の形態によれば、ガラス系基板または物品の片面または両面上のコーティングは、コーティングのパラメータを調節することによって、薄いガラス系物品(例えば、約1mm以下の厚さを有する)およびより厚いガラス系物品の信頼性を改善することができる。さらに、1つ以上の実施の形態によれば、厚さおよびヤング率などのコーティングの性質を調整して、欠陥を所定の長さまで成長させることができ、この所定の長さは、モデル化により決定することができ、このことは転じて、(i)初期欠陥個体数に対して低い感度を有する、(ii)高い信頼性を有する、(iii)一貫した製品性能を有する、および/または(iv)強度のばらつきが低い、ガラス系物品をもたらす、設計された応力プロファイルを有するガラス系物品を可能にする。ある実施の形態において、ガラス系物品の強度および信頼性は、コーティングのヤング率およびコーティングの厚さの選択によって、正確に調整することができる。1つ以上の実施の形態において、ガラス系物品の異なる面に異なるパラメータを有するようにコーティングのパラメータを選択することによって、ガラス系物品の互いに反対側に異なる信頼性を有するガラス系物品を提供することができる。1つの実施の形態において、ここに提供されるガラス系物品は、荷重下でガラス系物品が破損する前に、所定のおよび公知の観察できる欠陥を示す、一貫した性能を有するように製品が設計された、安全性用途に適している。
【0018】
図1は、表面下の損傷がどのように破損をもたらし得るかを示す、複数の亀裂を有する例示の強化ガラス系基板10を示している。ガラス系基板10の外面55からDOC62まで延在する圧縮応力領域60は、圧縮応力(CS)下にある。ガラスの中央張力領域80中まで延在しない、例示の強化ガラス系基板10の圧縮応力領域60内の亀裂50が、ガラスの中央張力領域80(引張応力または中央張力(CT)下にある領域)に入り込む亀裂90と共に示されている。ガラスの表面近くの領域にCSを含むと、亀裂の伝播およびガラス系基板の破損を防ぐことができるが、損傷がDOC62を超えて延在する場合、およびCTが十分に大きい大きさものである場合、欠陥は、材料の臨界応力強度レベル(破壊靭性)に到達するまで、時間の経過と共に伝播し、最終的にガラスを破損させてしまう。
【0019】
ここで
図2Aを参照すると、本開示の第1の実施の形態は、ガラス系物品100、例えば、第一面115、および第一面115と反対の第二面215を有するガラス系基板110を備えたガラス系物品に関する。第1のコーティング120が第一面115上に配置され、第1の界面125が第1のコーティングとガラス系基板110の第一面との間に配置されている。第1のコーティング120は、第1の表面130から第1の界面125まで延在する第1のコーティングの厚さt
1を有する。ガラス系基板110は、第1の界面125から第2の表面135まで延在する基板の厚さt
sを有し、第1の界面125からDOC142まで延在する第1の外側領域140を有する。第1の実施の形態によれば、第1の外側領域140は、第1の外側領域の圧縮応力の絶対値を有する。第1のコーティング120は、第1の外側領域の圧縮応力の絶対値が第1のコーティングの応力の絶対値より大きくなるような、第1のコーティングのヤング率値、第1のコーティングの厚さt
1および中立または圧縮いずれかの第1のコーティングの応力を有するように選択された材料からなる。中立応力は、ゼロ応力、すなわち、圧縮応力がなく、かつ引張応力がないことを称する。ガラス基板について、ヤング率は、典型的に、約60GPaから約80GPaの範囲にある。ガラスセラミック物品のヤング率は、典型的に、約60から約120GPaの範囲にあり、いくつかの実施の形態において、約120GPaより大きいことがある。
【0020】
第2の実施の形態において、第1の実施の形態は、第1のコーティングの応力の絶対値が、第1の外側領域の圧縮応力の絶対値より少なくとも約40%小さいように特徴付けられる。第3の実施の形態において、第1の実施の形態のガラス系物品は、第1のコーティングの応力の絶対値が、第1の外側領域の圧縮応力の絶対値より少なくとも約50%小さいようにさらに特徴付けられる。
【0021】
第4の実施の形態によれば、第1から第3の実施の形態のいずれかは、ガラス系基板が、第1のコーティングのヤング率値と異なる基板のヤング率値を有するという点でさらに特徴付けられる。第5の実施の形態によれば、第1から第3の実施の形態のいずれかは、ガラス系基板が、第1のコーティングのヤング率値以下の基板のヤング率値を有するという点でさらに特徴付けられる。
【0022】
第6の実施の形態によれば、第1から第5の実施の形態のいずれかは、第1のコーティングのヤング率値が、第1のコーティングによりガラス系物品の機械的信頼性が改善されるように選択されるという点でさらに特徴付けられる。第7の実施の形態によれば、第1から第6の実施の形態のいずれかは、第1のコーティングの厚さが、約5ナノメートルから約5マイクロメートル(以後、マイクロメートル、ミクロンまたはμm)の範囲にあるという点でさらに特徴付けられる。第8の実施の形態によれば、第1から第6の実施の形態のいずれかは、第1のコーティングの厚さが、約10ナノメートルから約2マイクロメートルの範囲にあるという点でさらに特徴付けられる。
【0023】
第9の実施の形態によれば、第1から第8の実施の形態のいずれかは、第1のコーティングが、シリカ、インジウムスズ酸化物、酸窒化アルミニウム、多孔質シリカ、ガラスセラミックまたはセラミックからなる群より選択されるという点でさらに特徴付けられる。第10の実施の形態によれば、第1から第9の実施の形態のいずれかは、ガラス系物品が、積層ガラス系基板、化学強化ガラス系基板、熱的強化ガラス系基板、およびその組合せからなる群より選択される強化ガラス系基板を備えるという点でさらに特徴付けられる。
【0024】
第11の実施の形態によれば、第1から第10の実施の形態のいずれかは、ガラス系基板が、イオン交換可能なアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物から作られるという点でさらに特徴付けられる。第12の実施の形態によれば、第1から第10の実施の形態のいずれかは、ガラス系基板が、イオン交換可能なアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラス組成物から作られるという点でさらに特徴付けられる。
【0025】
第13の実施の形態において、第1から第12の実施の形態のいずれかは、ガラス系基板が、厚さt
sを有する化学強化されたガラス系基板から作られ、第1の外側領域において第1の界面から約0.05t
sから約0.25t
sの範囲のDOCまでイオン交換されているという点でさらに特徴付けられる。第15の実施の形態において、第14の実施の形態は、第1の外側領域が、約100MPaから約1100MPaの範囲の圧縮応力(CS)の大きさを有するという点でさらに特徴付けられる。第15の実施の形態において、第14の実施の形態は、CSが約600MPaから約1000MPaの範囲にあるいう点でさらに特徴付けられる。
【0026】
ここで
図2Bを参照すると、第16の実施の形態において、第1から第15の実施の形態のいずれかは、ガラス系基板が中央領域150および第2の外側領域240を有するという点でさらに特徴付けることができる。中央領域150は、引張応力を有し、DOC142から第2の外側領域240まで延在する。第2の外側領域240は、中立または圧縮いずれかの応力を有する。第17の実施の形態において、第16の実施の形態のガラス系物品は、第2の外側領域240上に第2のコーティング220をさらに備えて、第2の外側領域240および第2のコーティング220の間に第2の界面225を提供する。第2のコーティング220は、第2のコーティングのヤング率値、第2のコーティングの厚さt
2、および中立または圧縮いずれかの第2のコーティングの応力を有する材料から作られる。第2の外側領域の圧縮応力の絶対値は、第2のコーティングの応力の絶対値より大きい。
【0027】
第18の実施の形態において、第17の実施の形態のガラス系物品は、第2のコーティングの応力の絶対値が、第2の外側領域の圧縮応力の絶対値より少なくとも約40%小さいという点で特徴付けられる。第19の実施の形態において、第17の実施の形態のガラス系物品は、第2のコーティングの応力の絶対値が、第2の外側領域の圧縮応力の絶対値より少なくとも約50%小さいという点でさらに特徴付けられる。
【0028】
第20の実施の形態において、第17から第19の実施の形態のいずれかのガラス系物品は、ガラス系基板が、第2のコーティングのヤング率値と異なる基板のヤング率値を有するようにさらに特徴付けられる。第21の実施の形態において、第17から第19の実施の形態のいずれかのガラス系物品は、ガラス系基板が、第2のコーティングのヤング率値未満の基板のヤング率値を有するようにさらに特徴付けられる。
【0029】
第22の実施の形態において、第17から第21の実施の形態のいずれかのガラス系物品は、第1のコーティングのヤング率値が、第1のコーティングにより第一面上のガラス系物品の機械的信頼性が改善されるように選択されるという点でさらに特徴付けられる。第23の実施の形態において、第17から第21の実施の形態のいずれかのガラス系物品は、ガラス系基板の第一面115および第二面215が、第1のコーティング120および第2のコーティング220によりもたらされる異なる強度値および信頼性値を有するという点でさらに特徴付けられる。
【0030】
第24の実施の形態において、第23の実施の形態は、第一面115が第二面215より高い強度を有し、第一面115が第二面215より低い機械的信頼性を有するという点でさらに特徴付けられる。第25の実施の形態において、第23の実施の形態は、第一面115が第二面215より低い強度を有し、第一面115が第二面215より高い機械的信頼性を有するという点でさらに特徴付けられる。
【0031】
第26の実施の形態は、基板のヤング率、第一面および第二面を有するガラス系基板を備えたガラス系物品に関する。この第一面は、第1のDOCまで延在する圧縮応力を有する第一面の外側領域を有する。中央領域は引張応力を有する。この第二面は、第一面の外側領域と反対の第二面の外側領域であって、第2のDOCまで延在する圧縮応力を有する第二面の外側領域を有する。第1のコーティングが、第一面上に配置され、この第1のコーティングとガラス系基板との間に第1の界面を提供する。この第1のコーティングは、第一面が第一面の強度および第一面の機械的信頼性を有するような第1のコーティングの厚さおよび第1のコーティングのヤング率を有する。第2のコーティングが、第二面上に配置され、この第2のコーティングとガラス系基板との間に第2の界面を提供する。この第2のコーティングは、第二面が第二面の強度および第二面の機械的信頼性を有するような第2のコーティングの厚さおよび第2のコーティングのヤング率を有する。この第一面の強度は第二面の強度と異なり、第一面の機械的信頼性は第二面の機械的信頼性と異なる。
【0032】
第27の実施の形態において、第26の実施の形態は、第一面の強度が第二面の強度以下であり、第一面の機械的信頼性が第二面の機械的信頼性より高いという点でさらに特徴付けられる。第28の実施の形態において、第26の実施の形態は、第一面の強度が第二面の強度より大きく、第一面の機械的信頼性が第二面の機械的信頼性より低いという点でさらに特徴付けられる。第29の実施の形態において、第26から第28の実施の形態のいずれかのガラス系物品は、第1のコーティングの厚さが約5ナノメートルから約5マイクロメートルの範囲内にあり、第2のコーティングの厚さが約5ナノメートルから約5マイクロメートルの範囲内にあるという点でさらに特徴付けることができる。第30の実施の形態において、第26から第28の実施の形態のいずれかは、第1のコーティングの厚さが約10ナノメートルから約2マイクロメートルの範囲内にあり、第2のコーティングの厚さが約10ナノメートルから約2マイクロメートルの範囲内にあるという点でさらに特徴付けることができる。
【0033】
第31の実施の形態において、第26から第30の実施の形態のいずれかは、第1のコーティングおよび第2のコーティングが、シリカ、インジウムスズ酸化物、酸窒化アルミニウム、多孔質シリカ、ガラスセラミック、セラミックまたはその組合せからなる群より選択されるという点でさらに特徴付けることができる。第32の実施の形態において、第26から第31の実施の形態のいずれかは、ガラス系物品が、積層ガラス基板、化学強化ガラス基板、熱的強化ガラス基板、およびその組合せからなる群より選択される強化ガラス系基板を備えるという点でさらに特徴付けることができる。第33の実施の形態において、第26から第31の実施の形態のいずれかは、ガラス系基板がイオン交換可能なアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物から作られているという点でさらに特徴付けることができる。第34の実施の形態において、第26から第31の実施の形態のいずれかは、ガラス系基板がイオン交換可能なアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラス組成物から作られているという点でさらに特徴付けることができる。
【0034】
第35の実施の形態において、第26から第31の実施の形態のいずれかは、ガラス系基板が、第一面の外側領域において、第1の界面から約10マイクロメートルから約90マイクロメートルの範囲の第1のDOCまでイオン交換された、化学強化ガラス基板から作られているという点でさらに特徴付けることができる。
【0035】
第36の実施の形態において、第35の実施の形態は、第一面の外側領域が、約100MPaから約1100MPaの範囲内の圧縮応力(CS)の大きさを有するという点でさらに特徴付けられる。第37の実施の形態において、第36の実施の形態は、そのCSが約600MPaから約1000MPaの範囲内にあるという点でさらに特徴付けられる。第38の実施の形態において、実施の形態1〜37のいずれかのガラス系物品が、表示画面を有する手持ち式携帯型電子機器、建築用ガラス基板、車両内装用ガラス基板、および電化製品用ガラス基板の内の1つに配置されている。
【0036】
第39の実施の形態は、ガラス系物品の機械的信頼性を変更する方法に関する。この方法は、ガラス系基板の許容欠陥寸法を決定する工程を有してなり、この許容欠陥寸法により、そのガラス系基板の機械的信頼性および強度が決まる。このガラス系基板は、基板のヤング率、基板の強度、基板の機械的信頼性、第1の表面、基板の厚さ、第一面の表面から第1のDOCまで延在する圧縮応力を有する第一面の外側領域、引張応力を有する中央領域、第二面の表面から第2のDOCまで延在する圧縮応力を有する第二面の外側領域を有する。この方法は、第1の表面上に第1のコーティングを配置する工程をさらに含む。この第1のコーティングの材料は、ガラス基板のヤング率と異なる第1のコーティングのヤング率を有する。第1のコーティングのヤング率およびガラス系基板のヤング率に基づいて、第一面上のガラス系基板の機械的信頼性または第一面上のガラス系基板の機械的強度の内の一方を増加させる第1のコーティングの計算厚さを決定する工程、およびその第1のコーティングの計算厚さで第1のコーティングを施して、第一面上のガラス系基板の機械的信頼性または第一面上のガラス系基板の機械的強度のいずれかを増加させる工程。
【0037】
第40の実施の形態において、第39の実施の形態の方法は、ガラス系基板のヤング率と異なる第2のコーティングのヤング率を有する第2のコーティングの材料を選択する工程;第2のコーティングのヤング率およびガラス系基板のヤング率に基づいて、第二面上のガラス系基板の機械的信頼性または第二面上のガラス系基板の機械的強度の内の一方を増加させる第2のコーティングの計算厚さを決定する工程;およびその第2のコーティングの計算厚さで第2のコーティングを施して、第二面上のガラス系基板の機械的信頼性または第二面上のガラス系基板の機械的強度のいずれかを増加させる工程をさらに含む。第41の実施の形態において、第40の実施の形態の方法は、第一面上のガラス系基板の機械的信頼性および第二面上のガラス系基板の機械的信頼性が異なるように、コーティングの材料および厚さを選択する工程をさらに含む。第42の実施の形態において、第40の実施の形態の方法は、第一面上のガラス系基板の強度および第二面上のガラス系基板の強度が異なるように、コーティングの材料および厚さを選択する工程をさらに含む。
【0038】
第43の実施の形態は、所望の強度を有するガラス系物品を形成する方法において、コーティングの不在下でそのガラス系物品における最大予測欠陥寸法を決定する工程;ガラス系物品上にコーティングが配置されたときの、ガラス系物品における最大予測欠陥寸法に対応するコーティングの厚さ値およびコーティングのヤング率値を決定する工程;コーティングが施されたときに、ガラス系物品に所望の強度および所望の機械的信頼性を与えるヤング率値および厚さ値を有するコーティングを選択する工程;およびそのコーティングをガラス系物品に施す工程を有してなる方法に関する。
【0039】
第44の実施の形態によれば、家庭用電化製品において、
前面、背面および側面を有する筐体、
その筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも、制御装置、メモリ、および筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品、および
そのディスプレイ上に配置されたカバーガラス、
を備え、
その筐体の一部またはそのカバーガラスの少なくとも一方が、実施の形態1〜37のいずれか1つのガラス系物品から作られている、家庭用電化製品が提供される。
【0040】
このように、1つ以上の実施の形態によれば、下にあるガラス系物品に関して目標とするヤング率および厚さを有するコーティングを選択し、施すことによって、ガラス系物品の強度および信頼性を正確に調整することができ、設計された予測できる損傷挙動を有するガラス系材料を提供できる。
図3Aは、圧縮応力下にある圧縮層または第1の領域、および表面からある深さにある、中央張力領域を有する、化学強化されたガラス系物品の応力プロファイルを示す。この応力プロファイルは、その物品が、物品の表面でピークすなわち最大残留応力を有することを示す。
図3Bは、物品の表面の残留応力がゼロである被覆区域を提供するコーティングが設けられた、1つ以上の実施の形態による設計された応力プロファイルを示している。
【0041】
図4は、シリカの層を有するイオン交換済みガラスに関する増加した信頼性(ワイブル係数)を示す実験データを示す。
図4は、化学強化ガラスの強度および信頼性に対するコーティングの施用の効果を示す。対照試料は、コーティングを有していない、厚さが0.7mmの化学強化されたガラス系基板であった(黒丸のデータ点)。次に、対照と同じガラスから製造されたガラス系基板に、厚さ10nm(正方形のデータ点)および30nm(薄い灰色の菱形のデータ点)のシリカコーティングを被覆した。
図4に示されるように、コーティングを有する試料は、未被覆の化学強化ガラス(未被覆試料について、約239Kgf(約2342N)のB10値を参照)とほぼ同じ強度(例えば、10nm厚のコーティングについて、約307Kgf(約3009N)、および30nmのコーティングについて、約318Kgf(約3116N)のB10値を参照)を有するが、ワイブルプロット上の急勾配およびより緻密な分布(境界線の間のより小さい値幅)からも明らかなように、ずっと高い信頼性を有する。例えば、
図4を見ると、B10線では、未被覆試料について、高低の境界線(実線)の間の値幅は、約175Kgf(約1715N)と約310Kgf(約3038N)にあり、約135Kgf(約1323N)の値幅を示す。他方で、B10線では、10nm厚のコーティングについ、高低の境界線(黒色の長い破線)の間の値幅は、約280Kgf(約2744N)および約325Kgf(約3185N)にあり、未被覆試料に関する約135Kgf(約1323N)の値幅より著しく小さい、約45Kgf(約441N)の値幅を示す。10nm厚のコーティングの場合と同様に、B10線での30nm厚のコーティングは、約290Kgf(約2842N)から約325Kgf(約3185N)の高低の境界線(灰色の短い破線)の値幅を有し、未被覆試料についての約135Kgf(約1323N)の値幅より著しく小さいが、10nm厚のコーティングの約45Kgf(約441N)の値幅と同様の、約35Kgf(約343N)の値幅を示す。先の10nm厚と30nm厚のシリカコーティングは、下にあるガラスのものと同様のヤング率を有した。他方で、高剛性コーティング(ヤング率、例えば、約130GPa)の追加により、強度が低下するが、信頼性は増加する。
【0042】
1つ以上の実施の形態において、ガラス系基板と同じ、より高い、またはより低いヤング率を有する材料から製造されたコーティングが、強化済みガラス系基板、例えば、イオン交換により強化された化学強化済みガラス系基板の片面または両面に配置されている。そのコーティングは、両面で同じであってもよいが、その必要はない。そのコーティングは、以下に限られないが、物理的気相成長法(PVD)、スパッタリング堆積法、物理化学的気相成長法(HPCVD)、イオンメッキ、化学的気相成長法(CVD)、プラズマCVD(PECVD)を含む様々な技術によって堆積させることができる。特定の方法について、堆積パラメータを変更することによって、ヤング率を含む様々な材料特性を達成できる。シリカコーティングは、ほとんどのガラス系基板と実質的に同じ弾性率を有し、したがって、シリカはコーティングの材料の良好な候補であるが、他のコーティングの材料も可能である。1つ以上の実施の形態において、コーティングの厚さは、約5nmから5マイクロメートル、例えば、10nmから2マイクロメートルの範囲内にある。そのガラス系基板がイオン交換済みガラスである場合、コーティングを施すための加工温度は、既存のイオン交換応力プロファイルが影響を受けないようなものであるべきである。それゆえ、被覆製品は、元のイオン交換されたガラス系基板とほぼ同じ平均強度を有しそうであるが、今ではより高いワイブル係数を有し、それによって、ガラスにおける初期欠陥個体数に対して低い感受性を示すであろう。
【0043】
1つ以上の実施の形態において、ガラス系物品、およびガラス系物品の平均強度を改善しつつ、より高いワイブル係数を達成も達成する圧縮残留応力をコーティングに生じる高低を含む方法が提供される。
【0044】
図5は、未被覆の化学強化ガラス(長い破線、500)と比べた、化学強化ガラス上の3つのコーティングの厚さに関する欠陥深さの関数(X軸に沿ってマイクロメートルまたはミクロンで表されている)としての複合系残留強度(Y軸に沿ってMPaで表されている)のモデル化されたR曲線を示す。
図5から分かるように、線500から、被覆試料において欠陥寸法が成長するにされた、残留強度が連続的に減少する。対称的に、
図5のモデル化データは、1つ以上の実施の形態による被覆基板に関する増加した信頼性を与える見掛けの上昇するR曲線挙動(すなわち、欠陥寸法が成長するにつれて、残留強度が、減少する前の地点まで上昇する)を示す。3つの異なるコーティングの厚さをシミュレーションして、所望の応答を生じるようにどのようにパラメータを調整できるかを示した。全てのコーティングは、応力がなく、ガラス系基板と同じヤング率を有すると仮定した。その上、3つの場合の全てについて、同じ残留強度プロファイルをシミュレーションした:深いDOCを達成するための二重イオン交換、これは、900MPaの表面での最大圧縮応力および約80μmのDOCを有した。選択したイオン交換応力プロファイルから観察された傾向は、他のプロファイルと矛盾しないであろうが、その結果は、直接的に転換できない。0.5マイクロメートル(黒い実線、502)、2マイクロメートル(点線、504)、および4マイクロメートル(破線、506)のコーティングの厚さは全て、見掛けの上昇するR曲線挙動を示す。例えば、最小のモデル化された欠陥寸法から約2マイクロメートルの欠陥寸法まで上昇する線502;約2.5マイクロメートルの欠陥寸法から約5マイクロメートルの欠陥寸法まで上昇する線504;および約4マイクロメートルの欠陥寸法から約10マイクロメートルの欠陥寸法まで上昇する線506を参照のこと。残留応力のないコーティングにおいて亀裂成長が始まった後、亀裂は、コーティングと基板(イオン交換済みガラス)との間の界面まで直ちに伝播する。表面亀裂が一旦イオン交換済みガラスに入ったら、亀裂を伝播させるのに要する応力が増加し、それゆえ、より高い歪み要件が満たされるまで、亀裂を留める。このようにして、ガラスは、最大安定欠陥寸法より小さい欠陥のために、破損できない。最大安定欠陥の寸法は、既定のイオン交換プロファイルについてコーティング特性(厚さおよびヤング率)の関数になる。したがって、信頼性および強度は、図面に示されるように、既定の用途に最適化することができる。厚さの小さいコーティングは、より小さい許容欠陥寸法を有するがより高い強度を有し、一方で、より厚いコーティングは、最大許容欠陥寸法を増加させるが、それは、強度を犠牲にして生じるであろう。選択されたコーティングのコーティングの厚さおよびヤング率を最適化することにより、ガラス系物品の様々な応力プロファイルおよび特性を設計し、製造することができる。
【0045】
1つ以上の実施の形態によれば、ガラス系基板の片面での強度の増減は、最新式リング・オン・リング(AROR)試験を用いて決定される。材料の強度は、破壊が起こる応力として定義される。このAROR試験は、平らなガラスサンプルを試験するための表面強度測定であり、「Standard Test Method for Monotonic Equibiaxial Flexural Strength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature」と題するASTM C1499−09(2013)が、ここに記載されたAROR試験方法論の土台として働く。ASTM C1499−09の内容が、ここに全て引用される。このガラスサンプルは、リング・オン・リング試験の前に、「Standard Test Methods for Strength of Glass by Flexure (Determination of Modulus of Rupture)」と題するASTM C158−02(2012)の「abrasion Procedures」と題するAnnex A2に記載された方法および装置を使用して、ガラス試料に送達される90グリットの炭化ケイ素(SiC)粒子で研磨される。ASTM C158−02の内容および特に、Annex 2の内容が、ここに全て引用される。
【0046】
リング・オン・リング試験の前に、ガラス系物品の表面を、ASTM C158−02の
図A2.1に示された装置を使用して、試料の表面欠陥条件を標準化および/または制御するために、ASTM C158−02、Annex 2に記載されたように研磨する。研磨材を、概して、304kPa(44psi)の空気圧を使用して、103kPa(15psi)の荷重でガラス系物品410の表面4130に吹き付ける。気流を確立した後、5cm
3の研磨材を漏斗に入れ、研磨材の導入後、5秒間に亘り試料を砂吹き機で磨く。
【0047】
AROR試験について、少なくとも1つの研磨面4130を有するガラス系物品410を、
図6に示されたように、異なるサイズの2つの同心のリングの間に配置して、等二軸曲げ強度(すなわち、2つの同心のリングの間の湾曲に曝されたときに材料が維持できる最大応力)を決定する。AROR構成400において、研磨されたガラス系物品410は、直径D
2を有する支持リング420により支持されている。ロードセル(図示せず)によって、直径D
1を有する荷重リング430に力Fを印加し、その結果、ガラス系物品410の表面4130に力が印加される。
【0048】
荷重リングと支持リングの直径比D
1/D
2は、約0.2から約0.5の範囲にあるであろう。いくつかの実施の形態において、D
1/D
2は約0.5である。荷重および支持リング430、420は、支持リングの直径D
2の0.5%以内に同心状に揃えるべきである。試験に使用されるロードセルは、選択された範囲内の任意の荷重で±1%以内まで正確であるべきである。試験は、23±2℃の温度および40±10%の相対湿度で行われる。
【0049】
器具の設計について、荷重リング430の突出面の半径rは、h/2≦r≦3h/2であり、式中、hはガラス系物品410の厚さである。荷重および支持リング430、420は、硬度HRc>40の硬化鋼から作られている。AROR器具は市販されている。
【0050】
AROR試験の目的の破壊メカニズムは、第1の表面4230と荷重リング430との間の接触区域430aから発生するガラス系物品410の割れを観察することである。荷重リング430と支持リング420との間の領域の外で生じる割れは、データ解析から除外する。しかしながら、ガラス系物品410の薄さと高強度のために、サンプルの厚さhの1/2を超える大きい撓みが観察されることがある。したがって、荷重リング430の下から生じる割れの百分率が高いと観察することは、珍しいことではない。リングの内側と下側の両方での応力の発生(歪みゲージ分析により収集)および各サンプルにおける破損の始点を知らずには、応力は正確に計算できない。したがって、AROR試験は、測定反応としての破損時の最大荷重に焦点を当てる。
【0051】
ガラス系物品の強度は、表面傷の存在に依存する。しかしながら、ガラスの強度は実際には統計に基づくので、存在する既定のサイズの傷の傾向は正確に予測できない。したがって、確率分布を、得られたデータの統計的表示として一般に使用することができる。
【0052】
基準に記載されたように破壊荷重を得た後、ワイブルプロットの形態で、荷重または等二軸曲げ強度をプロットする(詳しくは、http://www.itl.nist.gov/div898/handbook/eda/section3/weibplot.htmを参照のこと)。最尤推定量(MLE)法を使用して、ワイブル分布の2つのパラメータ:形状パラメータおよび尺度母数を決定する。統計モデルのパラメータのMLEは、パラメータに対する尤度、または同等に対数尤度を最大化する工程を含む。最大値が生じるパラメータ値は、モデルパラメータのMLEである。Sirvanci, M. and Yang, G. (1984), Estimation of the Weibull parameters under type I censoring, Journal of the American Statistical Association 79, 183-187を参照のこと。尤度は、パラメータとデータの関数である。形状パラメータが増加すると、ひいては、信頼性が、増加させられる(より緻密な強度分布)と言われている。尺度母数が増加すると、ひいては、強度が増加すると言われている。
【0053】
ガラス系物品の各面が、その物品の他方の面と異なる強度および/または信頼性を有する、1つ以上の実施の形態により記載されたガラス系物品は、様々な最終用途を有し得る。1つ以上の実施の形態において、そのようなガラス系物品としては、建築用板ガラス、自動車のフロントガラスおよび板ガラスが挙げられ、ここで、チップおよび衝撃に抵抗するのにフロントガラスの外側に、より大きい強度が必要であろう。フロントガラスまたは自動車用板ガラスの内側では、ヒトがフロントガラスに衝突したときに、積層板が破壊することを保証するために、より高い信頼性(より緻密な強度分布)並びにより低い強度が必要であろう。1つ以上の実施の形態によれば、強度のより緻密な分布により、フロントガラスが割れるのにより大きい力を要し、それによって、自動車の乗員に対する怪我の機会を減少させる低確率が確実になる。1つ以上の実施の形態によれば、ガラス系物品の互いに反対の表面は、所望の強度および信頼性を有するように設計し、合わせることができる。同様の検討事項が、建築構造に使用される建築用板ガラスに当てはまる。
【0054】
欠陥寸法は、以下のようにフラクトグラフィーを使用して決定される。欠陥寸法は、4点曲げ試験(ASTM C1161:Standard Test Method for Flexural Strength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature)を使用して壊された試料またはリング・オン・リング試験(ASTM C1499−15)を使用して壊された試料について、欠陥寸法(原寸法)を決定するために、ASTM基準:C1322−15(Standard Practice for Fractography and Characterization of Fracture Origns in Advanced Ceramics)を使用することによって、フラクトグラフィーを用いて決定される。これにより、対象とする用途におけるガラスシートの欠陥寸法分布が確立される。破壊試験に使用される試料が多いほど、試験からの欠陥寸法分布データの信頼が良好になる。欠陥寸法は、強度試験および破壊機構解析を用いて決定される。強度データは、適切な強度試験(エッジ強度に関する4点曲げ試験および表面強度に関するリング・オン・リング試験)を使用して実行可能なだけ多くの試料を使用して得られる。適切な破壊解析モデル(解析または有限要素解析)を使用して、強度試験において試料の破損を生じたに違いない欠陥寸法を予測することができる。これにより、特定の欠陥寸法、形状、および位置が推測され、それゆえ、この手法は、フラクトグラフィー手法ほど正確ではないが、欠陥個体数を確立するのがより容易である。
【0055】
ここに用いられているように、「ガラス系物品」および「ガラス系基板」という用語は、全体がまたは部分的にガラスから製造された任意の物体を含むために最も広い意味で使用される。ガラス系物品は、ガラス材料と非ガラス材料の積層板、ガラス材料と結晶質材料の積層板、およびガラスセラミック(非晶相および結晶相を含む)を含む。特に明記のない限り、全ての組成は、モルパーセント(モル%)で表される。
【0056】
ここに開示されたガラス系物品は、ディスプレイを備えた物品(ディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む家庭用電化製品)、建築物品、輸送物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電化製品、またはある程度の透明性、耐引掻性、耐摩耗性またはその組合せを必要とする任意の物品などの別の物品に組み込まれることがある。ここに開示されたガラス系物品のいずれかを組み込んだ例示の物品が、
図7Aおよび7Bに示されている。詳しくは、
図7Aおよび7Bは、前面7104、背面7106、および側面7108を有する筐体7102;筐体内に少なくとも部分的に内部にあるまたは完全に中にある電気部品(図示せず)であって、少なくとも、制御装置、メモリ、および筐体の前面にまたはそれに隣接したディスプレイ7110を含む電気部品;およびディスプレイ上にあるように、筐体の前面またはその上にあるカバー基板7112を備えた家庭用電子機器7100を示している。いくつかの実施の形態において、カバー基板7112は、ここに開示された強化物品のいずれを含んでもよい。いくつかの実施の形態において、その筐体の一部またはカバーガラスの少なくとも一方は、ここに開示された強化物品を含む。
【0057】
「実質的に」および「約」という用語は、任意の量的比較、値、測定、または他の表現に帰することがある不確定性の固有の程度を表すためにここに使用してよいことに留意のこと。これらの用語は、量的表現が、問題となっている主題の基本機能を変化させずに、規定の基準から変動してもよい程度を表すためにもここに使用される。それゆえ、例えば、「MgOを実質的に含まない」ガラス系物品は、MgOが、ガラス系物品に能動的に加えられていないまたはバッチ配合されていないが、汚染物質として非常に少量で存在するかもしれないものである。
【0058】
ここに用いられているように、DOCは、ガラス系物品内の応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さを称する。DOCでは、応力は、負の(圧縮)応力から正の(引張)応力に交差し、それゆえ、ゼロの応力値を示す。当該技術分野に通常使用される慣例によれば、圧縮は、負の(<0)応力として表され、引張は、正の(>0)応力として表される。しかしながら、本記載中ずっと、CSは絶対値として表され−すなわち、ここに挙げたように、CS=|CS|−それゆえ、負の数で示されていない。圧縮応力(ガラスの表面での)は、有限会社折原製作所(日本国)により製造されているFSM−6000などの市販の計器を使用して表面応力計(FSM)により測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する。次に、SOCは、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題する、ASTM基準C770−16に記載された手順C(ガラスディスク法)にしたがって測定される。DOCは、イオン交換処理に応じて、FSMまたは散乱光偏光器(SCALP)により測定することができる。ガラス物品における応力が、ガラス物品中にカリウムイオンを交換することによって生じる場合、DOCを測定するために、FSMが使用される。応力が、ガラス物品中にナトリウムイオンを交換することによって生じる場合、DOCを測定するために、SCALPが使用される。ガラス物品における応力が、ガラス中にカリウムイオンとナトリウムイオンの両方を交換することによって生じる場合、DOCはSCALPにより測定される。何故ならば、ナトリウムの交換深さはDOCを表し、カリウムイオンの交換深さは、圧縮応力の大きさの変化(圧縮から引張への応力の変化ではない)を表すと考えられるからである;そのようなガラス物品におけるカリウムイオンの交換深さは、FSMにより測定される。
【0059】
ここに用いられているように、「化学的深さ」、「化学的DOC」、および「化学層の深さ」という用語は、交換可能に使用してよく、金属酸化物またはアルカリ金属酸化物のイオン(例えば、金属イオンまたはアルカリ金属イオン)がガラス系物品中に拡散する深さおよびそのイオンの濃度が、電子プローブマイクロアナリシス(EPMA)により測定して、最小値に到達する深さを称する。具体的には、Na
2O拡散またはNa
+イオン濃度の深さは、EPMAおよび表面応力計を使用して決定することができる。
【0060】
ここに記載された基板は、非晶質基板または結晶質基板であって差し支えない。1つ以上の実施の形態による非晶質基板は、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスから選択することができる。1つ以上の実施の形態において、その基板はガラスであり、そのガラスは、強化された、例えば、熱強化された、焼入れガラス(tempered glass)、または化学強化ガラスであり得る。1つ以上の実施の形態において、強化されたガラス系基板は圧縮応力(CS)層を有し、CSは、化学強化ガラス内で、その化学強化ガラスの表面から、少なくとも10μmから数十マイクロメートルの深さの圧縮応力DOCまで延在している。1つ以上の実施の形態において、そのガラス系基板は、Corning(登録商標)Gorilla(登録商標)ガラスなどの化学強化されたガラス系基板である。結晶質材料の例に、サファイアおよびスピネル(MgAl
2O
4)などのガラスセラミック基板がある。
【0061】
強化されたガラス系基板において、ガラスの表面に圧縮応力(CS)が、そして中央には引張応力(中央張力またはCT)がある応力プロファイルが存在する。1つ以上の実施の形態によれば、そのガラス系基板は、熱的に強化されても、化学強化されても、熱的強化と化学強化の組合せが施されても差し支えない。ここに用いられているように、「熱的に強化された」とは、基板の強度を改善するために、熱処理された基板を称し、「熱的に強化された」は、焼入れ基板および熱強化された基板、例えば、焼入れガラスおよび熱強化ガラスを含む。焼入れガラスは、加速冷却過程を含み、これにより、ガラスにより高い表面圧縮および/またはエッジ圧縮が生じる。表面圧縮の程度に影響する要因としては、空気クエンチ温度、体積、および少なくとも約68.9MPa(10,000ポンド毎平方インチ(psi))の表面圧縮を生じる他の変数が挙げられる。焼入れガラスは、典型的に、徐冷または未処理ガラスよりも4から5倍強力である。熱強化ガラスは、焼入れガラスよりも遅い冷却によって製造され、これにより、表面での圧縮強度が低くなる。熱強化ガラスは、徐冷または未処理ガラスの約2倍ほど強力である。
【0062】
強化されたガラス系基板は、様々な異なる過程を使用して提供することができる。例えば、例示のガラス系基板形成方法としては、フロートガラス法、フュージョンドロー法やスロットドロー法などのダウンドロー法、アップドロー法、および圧延法が挙げられる。フロートガラス法により調製されるガラス系基板は、滑らかな表面、並びに均一な厚さにより特徴付けられ、溶融金属、典型的に、スズの床上に溶融ガラスを浮かせることによって製造される。例示の過程において、溶融スズ床の表面上に供給された溶融ガラスが、浮遊するガラスリボンを形成する。そのガラスリボンがスズ浴に沿って流動するにつれて、ガラスリボンがスズからローラ上に持ち上げられる固体のガラス系基板に固化するまで、温度が徐々に低下する。一旦浴から離れたら、ガラス系基板は、さらに冷却し、徐冷して、内部応力を減少させることができる。
【0063】
ダウンドロー法により、比較的無垢な表面を有する均一な厚さを持つガラス系基板が製造される。そのガラス系基板の平均曲げ強度は表面傷の量とサイズにより制御されるので、接触が最小であった無垢な表面は、より高い初期強度を有する。次いで、この高強度のガラス系基板をさらに強化(例えば、化学的に)すると、得られた強度は、フロートガラス基板に一般に行われるような、ラップ仕上げされ、研磨された表面を有するガラス系基板の強度よりも高くなり得る。ダウンドロー法により製造されたガラス系基板は、約2mm未満、例えば、約1.5mm、または約1mm、または約750マイクロメートル、または約500マイクロメートル、または約400マイクロメートル、または約300マイクロメートル、または約200マイクロメートル、または約150マイクロメートル、または約125マイクロメートル、または約100マイクロメートル、または約75マイクロメートル、または約50マイクロメートル、または約25マイクロメートルの厚さまで延伸されることがある。その上、ダウンドロー法により製造されたガラス系基板は、費用のかかる研削および研磨を使用せずに、最終用途に使用できる非常に平らで滑らかな表面を有する。
【0064】
フュージョンドロー法は、例えば、溶融ガラス原材料を受け容れるための通路を有する成形装置を使用する。この通路は、通路の両側で通路の長さに沿って上部で開いた堰を有する。この通路が溶融材料で満たされると、溶融ガラスは堰を溢れる。この溶融ガラスは、重力のために、2つの流動するガラス膜として、延伸槽の外面を流下する。この成形装置のこれらの外面は、成形装置の下のエッジで接合するように、下方かつ内方に延在する。2つの流動するガラス膜は、このエッジで接合して、融合し、1つの流動するガラス系基板を形成する。このフュージョンドロー法は、通路を越えて流れる2つのガラス膜が互いに融合するので、得られるガラス系基板の外面のいずれも、成形装置の外面とは接触しないという利点を提示する。それゆえ、フュージョンドロー法により製造されたガラス系基板の表面特性は、そのような接触によって影響を受けない。
【0065】
スロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法において、溶融原材料が延伸槽に供給される。この延伸槽の底部には、開いたスロットであって、そのスロットの長さに延在するノズルを有するスロットを有する。溶融ガラスが、スロット/ノズルを通って流れ、連続基板として、徐冷領域へと下方に延伸される。スロットドロー法により製造されたガラス系基板の表面は、スロット/ノズルと接触している。
【0066】
いくつかの実施の形態において、ガラス系基板に使用される組成物に、Na
2SO
4、NaCl、NaF、NaBr、K
2SO
4、KCl、KF、KBr、およびSnO
2を含む群から選択される少なくとも1種類の清澄剤が約0から約2モル%配合されることがある。
【0067】
ガラス系基板は、一旦形成されたら、強化して、強化されたガラス系基板を形成することができる。ガラスセラミック基板も、ガラス系基板と同様の様式で強化できることに留意のこと。そのガラス系基板は、例えば、ガラス系またはガラス基板の表面にあるより小さいイオンをより大きいイオンでイオン交換することによって、化学強化してもよい。しかしながら、先に述べたように、ガラス基板を強化するために、熱的焼入れまたは熱強化など、当該技術分野で公知の熱的強化方法も利用してよい。いくつかの実施の形態において、それらの基板は、化学強化過程および熱的強化過程の組合せを使用して強化されることがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基板は、コアガラスとクラッドガラスが異なる熱膨張係数を有する、コアガラスとクラッドガラスの積層板としてその基板を形成することによって、強化されることがある。そのコアガラスとクラッドガラスは、熱いときに一緒にされ、冷まされる。コアガラスとクラッドガラスが冷めるにつれて、熱膨張係数の差により、ガラス系基板中に圧縮応力と引張応力の領域が形成されて、強化されたガラス系基板が形成される。
【0068】
基板に使用してよいガラスの例としては、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物またはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラス組成物が挙げられるが、他のガラス組成物も考えられる。そのようなガラス組成物は、イオン交換可能であると特徴付けられる。ここに用いられているように、「イオン交換可能」とは、その組成物から作られた基板が、その基板の表面またはその近くに位置する陽イオンを、サイズがより大きいか小さい同じ価数の陽イオンと交換することができることを意味する。ガラス組成物の一例は、SiO
2、B
2O
3、およびNa
2Oを含み、ここで、(SiO
2+B
2O
3)≧約66モル%、およびNa
2O≧約9モル%である。適切なガラス組成物は、いくつかの実施の形態において、K
2O、MgO、およびCaOの内の少なくとも1つをさらに含む。いくつかの実施の形態において、基板に使用されるガラス組成物は、約61から約75モル%のSiO
2、約7から約15モル%のAl
2O
3、0から約12モル%のB
2O
3、約9から約21モル%のNa
2O、0から約4モル%のK
2O、0から約7モル%のMgO、および0から約3モル%のCaOを含み得る。
【0069】
前記基板に適した別の例示のガラス組成物は、約60から約70モル%のSiO
2、約6から約14モル%のAl
2O
3、0から約15モル%のB
2O
3、0から約15モル%のLi
2O、0から約20モル%のNa
2O、0から約10モル%のK
2O、0から約8モル%のMgO、0から約10モル%のCaO、0から約5モル%のZrO
2、0から約1モル%のSnO
2、0から約1モル%のCeO
2、約50ppm未満のAs
2O
3、および約50ppm未満のSb
2O
3を含み、ここで、約12モル%≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦約20モル%、および0モル%≦(MgO+CaO)≦約10モル%である。
【0070】
前記基板に適した別の例示のガラス組成物は、約63.5から約66.5モル%のSiO
2、約8から約12モル%のAl
2O
3、0から約3モル%のB
2O
3、0から約5モル%のLi
2O、約8から約18モル%のNa
2O、0から約5モル%のK
2O、約1から約7モル%のMgO、0から約2.5モル%のCaO、0から約3モル%のZrO
2、約0.05から約0.25モル%のSnO
2、約0.05から約0.5モル%のCeO
2、約50ppm未満のAs
2O
3、および約50ppm未満のSb
2O
3を含み、ここで、約14モル%≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦約18モル%、および約2モル%≦(MgO+CaO)≦約7モル%である。
【0071】
いくつかの実施の形態において、前記基板に適したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物は、アルミナ、少なくとも1種類のアルカリ金属およびいくつかの実施の形態において、約50モル%超のSiO
2、他の実施の形態において、少なくとも約58モル%のSiO
2、そしてさらに他の実施の形態において、少なくとも約60モル%のSiO
2を含み、比((Al
2O
3+B
2O
3)/Σ改質剤)>約1であり、この比において、成分はモル%で表され、改質剤はアルカリ金属酸化物である。このガラス組成物は、特定の実施の形態において、約58から約72モル%のSiO
2、約9から約17モル%のAl
2O
3、約2から約12モル%のB
2O
3、約8から約16モル%のNa
2O、および0から約4モル%のK
2Oを含み、比((Al
2O
3+B
2O
3)/Σ改質剤)>約1である。
【0072】
さらに他の実施の形態において、前記基板は、約64から約68モル%のSiO
2、約12から約16モル%のNa
2O、約8から約12モル%のAl
2O
3、0から約3モル%のB
2O
3、約2から約5モル%のK
2O、約4から約6モル%のMgO、および0から約5モル%のCaOを含み、約66モル%≦SiO
2+B
2O
3+CaO≦約69モル%、Na
2O+K
2O+B
2O
3+MgO+CaO+SrO>約10モル%、約5モル%≦MgO+CaO+SrO≦約8モル%、(Na
2O+B
2O
3)−Al
2O
3≦約2モル%、約2モル%≦Na
2O−Al
2O
3≦約6モル%、および約4モル%≦(Na
2O+K
2O)−Al
2O
3≦約10モル%である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物を含むことがある。
【0073】
いくつかの実施の形態において、前記基板は、約2モル%以上のAl
2O
3および/またはZrO
2、もしくは約4モル%以上のAl
2O
3および/またはZrO
2を含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物を含むことがある。
【0074】
ここに記載された強化基板は、イオン交換過程によって化学強化されることがある。イオン交換過程において、一般に、ガラスまたはガラスセラミック基板を所定の期間に亘り溶融塩浴中に浸漬することによって、ガラスまたはガラスセラミック基板の表面またはその近くにあるイオンが、その塩浴からのより大きい金属イオンと交換される。いくつかの実施の形態において、溶融塩浴の温度は約400から約430℃であり、その所定の期間は約4から約8時間である。より小さいイオンの代わりにより大きいイオンをそのガラスまたはガラスセラミック基板中に含ませると、その基板の表面に近い領域またはその表面の領域およびそれと隣接した領域に圧縮応力を生じることによって、基板が強化される。その圧縮応力と釣り合うために、基板の中央領域すなわちその表面からある距離にある領域内に、対応する引張応力が誘発される。この強化過程を利用したガラスまたはガラスセラミック基板は、化学強化またはイオン交換されたガラスまたはガラスセラミック基板とより詳しく記載されることがある。
【0075】
いくつかの実施の形態において、強化されるガラスまたはガラスセラミック基板中のナトリウムイオンは、硝酸カリウム塩浴などの溶融浴からのカリウムイオンにより交換されるが、ルビジウムまたはセシウムなど、原子半径がより大きい他のアルカリ金属イオンが、ガラス中のより小さいアルカリ金属イオンを置換しても差し支えない。いくつかの実施の形態によれば、ガラスまたはガラスセラミック中のより小さいアルカリ金属イオンが、Ag
+イオンにより置換されて、抗菌効果を提供することができる。同様に、以下に限られないが、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物などの他のアルカリ金属塩をイオン交換過程に使用してもよい。
【0076】
いくつかの実施の形態において、前記強化基板は、約300MPa以上、例えば、約400MPa以上、約450MPa以上、約500MPa以上、約550MPa以上、約600MPa以上、約650MPa以上、約700MPa以上、約750MPa以上、または約800MPa以上の表面圧縮応力を有し得る。1つ以上の実施の形態において、第1の強化基板は、約300MPaから約1100MPaの範囲内、約500MPaから約1100MPaの範囲内、約600MPaから約1100MPaの範囲内、約400MPaから約1100MPaの範囲内、約450MPaから約850MPaの範囲内、約450MPaから約800MPaの範囲内、約450MPaから約750MPaの範囲内の圧縮応力値を有し得る。その強化されたガラス系またはガラスセラミック系基板は、約50μm以下、例えば、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下、約9μm以下、約8μm以下、約7μm以下、約6μm以下、約5μm以下、または約4μm以下の圧縮DOCを有することがある。圧縮深さの下限は、約0.5μm、または約1μm、または約2μmであり得、および/または中央領域は、0から約40MPa、例えば、約5から約20MPa、または約5から約15MPa、または約10から約20MPa、または約10から約15MPa、または約15から約20MPaの範囲内にあり得る。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基板は、約20MPaから約300MPaの範囲内の圧縮応力値、および約20μmから約100μmの範囲内のDOC値;約300MPaから約900MPaの範囲内の圧縮応力値、および約2μmから約20μmの範囲内のDOC値;または約500MPaから約900MPaの範囲内の圧縮応力値、および約2μmから約12μmの範囲内のDOC値を有する。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基板は、約400MPaから約800MPaの範囲内の圧縮応力値、約0.05mmから約0.7mm、例えば、約0.1mmから約0.6mmの範囲内の厚さ、約1μmから約20μm、例えば、約1μmから約15μm、約1μmから約14μm、約1μmから約13μm、約1μmから約12μm、約1μmから約11μm、約1μmから約10μm、約1μmから約9μm、約1μmから約8μm、約1μmから約7μm、約1μmから約6μm、および約1μmから約5μmの範囲内のDOC値、および約0から約20MPa、約1から約20MPa、約1から約19MPa、約1から約18MPa、約1から約17MPa、約1から約16MPa、約1から約15MPa、約1から約14MPa、約1から約13MPa、約1から約12MPa、約1から約11MPa、および約1から約10MPaの範囲内の中央張力値を有する。
【0077】
本開示の精神および範囲から逸脱せずに、本開示に様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。それゆえ、本発明は、本開示の改変および変更を、それらが、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入るという条件で、包含することが意図されている。
【0078】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0079】
実施形態1
ガラス系物品において、
ガラス系基板であって、その上に第1のコーティングを有する第一面であり、該第1のコーティングと該ガラス系基板との間に第1の界面を提供する第一面、および該第一面と反対の第二面を有するガラス系基板、
を備え、前記第1のコーティングは、第1の表面から前記第1の界面まで延在する第1のコーティングの厚さを有し、前記ガラス系基板は、前記第1の界面から第2の表面まで延在する基板の厚さを有し、該ガラス系基板は、該第1の界面から圧縮深さ(DOC)まで延在する第1の外側領域を有し、該第1の外側領域は、第1の外側領域の圧縮応力を有し、前記第1のコーティングは、第1のコーティングのヤング率値、第1のコーティングの厚さ、および中性または圧縮いずれかの第1のコーティングの応力を有するように選択された材料から作られ、前記第1の外側領域の圧縮応力の絶対値は、前記第1のコーティングの応力の絶対値より大きい、ガラス系物品。
【0080】
実施形態2
前記第1のコーティングの応力の絶対値が、前記第1の外側領域の圧縮応力の絶対値より少なくとも約40%小さい、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0081】
実施形態3
前記ガラス系基板が、前記第1のコーティングのヤング率値と異なる基板のヤング率値を有する、実施形態1または2に記載のガラス系物品。
【0082】
実施形態4
前記ガラス系基板が、前記第1のコーティングのヤング率値以下の基板のヤング率値を有する、実施形態1から3いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0083】
実施形態5
前記第1のコーティングの厚さが、約5ナノメートルから約5マイクロメートルの範囲内にある、実施形態1から4いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0084】
実施形態6
前記第1のコーティングが、シリカ、インジウムスズ酸化物、酸窒化アルミニウム、多孔質シリカ、ガラスセラミック、セラミックまたはその組合せからなる群より選択される、実施形態1から5いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0085】
実施形態7
前記ガラス系物品が、積層ガラス基板、化学強化ガラス基板、熱的強化ガラス基板、およびその組合せからなる群より選択される強化ガラス系基板を備える、実施形態1から6いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0086】
実施形態8
前記ガラス系基板が、厚さtを有する化学強化されたガラス系基板から作られ、前記第1の外側領域において前記第1の界面から約0.05tから約0.25tの範囲のDOCまでイオン交換されている、実施形態1から7いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0087】
実施形態9
前記第1の外側領域が、約100MPaから約1100MPaの範囲の圧縮応力(CS)を有する、実施形態8に記載のガラス系物品。
【0088】
実施形態10
前記ガラス系基板が、引張応力を有する中央領域であって、前記DOCから延在する中央領域、および該中央領域から延在する第2の外側領域であって、圧縮応力を有する第2の外側領域をさらに有する、実施形態1から9いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0089】
実施形態11
前記第2の外側領域上に第2のコーティングを、該第2の外側領域と該第2のコーティングとの間に第2の界面をさらに備え、該第2のコーティングは、第2のコーティングのヤング率値、第2のコーティングの厚さ、および中立または圧縮いずれかの第2のコーティングの応力を有する材料から作られ、前記第2の外側領域の圧縮応力の絶対値は、前記第2のコーティングの応力の絶対値より大きい、実施形態10に記載のガラス系物品。
【0090】
実施形態12
前記第2のコーティングの応力の絶対値が、前記第2の外側領域の圧縮応力の絶対値より少なくとも約40%小さい、実施形態11に記載のガラス系物品。
【0091】
実施形態13
家庭用電化製品において、
前面、背面および側面を有する筐体、
前記筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも、制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品、および
前記ディスプレイ上に配置されたカバーガラス、
を備え、
前記筐体の一部または前記そのカバーガラスの少なくとも一方が、実施形態1から12いずれか1つに記載のガラス系物品から作られている、家庭用電化製品。
【0092】
実施形態14
所望の強度を有するガラス系物品を形成する方法において、
コーティングの不在下で前記ガラス系物品における最大予測欠陥寸法を決定する工程、
前記ガラス系物品上にコーティングが配置されたときの、該ガラス系物品における前記最大予測欠陥寸法に対応するコーティングの厚さ値およびコーティングのヤング率値を決定する工程、
前記コーティングが施されたときに、前記ガラス系物品に前記所望の強度および所望の機械的信頼性を与えるヤング率値および厚さ値を有するコーティングを選択する工程、および
前記コーティングを前記ガラス系物品に施す工程、
を有してなる方法。
【符号の説明】
【0093】
10 ガラス系基板
50 圧縮応力領域内の亀裂
55 外面
60 圧縮応力領域
62 DOC
80 中央張力領域
90 中央張力領域に入り込む亀裂
100、410 ガラス系物品
115 第一面
120 第1のコーティング
125 第1の界面
130 第1の表面
135 第2の表面
140 第1の外側領域
150 中央領域
215 第二面
220 第2のコーティング
240 第2の外側領域
400 AROR構成
420 支持リング
430 荷重リング
430a 接触区域
4310 研磨面
7100 家庭用電子機器
7102 筐体
7104 前面
7106 背面
7108 側面
7110 ディスプレイ
7112 カバー基板
【国際調査報告】