特表2019-537506(P2019-537506A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人京都大学の特許一覧
特表2019-537506複合膜、及びこれを用いたガスを分離する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-537506(P2019-537506A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】複合膜、及びこれを用いたガスを分離する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/82 20060101AFI20191129BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20191129BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20191129BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20191129BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20191129BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20191129BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20191129BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20191129BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   B01D71/82
   B01D53/22
   B01D69/00
   B01D69/02
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D71/02 500
   B01D71/06
   B01D71/82 500
   C08J5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-522330(P2019-522330)
(86)(22)【出願日】2017年11月2日
(85)【翻訳文提出日】2019年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2017039815
(87)【国際公開番号】WO2018084264
(87)【国際公開日】20180511
(31)【優先権主張番号】特願2016-216547(P2016-216547)
(32)【優先日】2016年11月4日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行日 平成29年5月31日 刊行物 Journal of Membrane Science 539(2017)178−186,”Enhanced PIM−1 membrane gas separation selectivity through efficient dispersion of functionalized POSS fillers” ウェブサイトのアドレス(URL)http://dx.doi.org/10.1016/j.memsci.2017.05.072 〔刊行物等〕 発行日 平成29年6月5日 刊行物 Nature Energy 2 17086(2017)1−9,”Enhanced selectivity in mixed matrix membranes for CO2 capture through efficient dispersion of amine−functionalized MOF nanoparticles” ウェブサイトのアドレス(URL)https://doi.org/10.1038/nenergy.2017.86
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】シバニア イーサン
(72)【発明者】
【氏名】ガリ ベヘナム
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 研人
(72)【発明者】
【氏名】木下 陽介
(72)【発明者】
【氏名】北川 進
【テーマコード(参考)】
4D006
4F071
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA03
4D006MA06
4D006MA31
4D006MB03
4D006MB04
4D006MC03X
4D006MC05
4D006MC07X
4D006MC29
4D006MC45
4D006MC53
4D006MC54
4D006MC58
4D006MC72X
4D006MC75
4D006MC78
4D006NA03
4D006NA52
4D006NA64
4D006PA10
4D006PB62
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB66
4D006PB67
4D006PB68
4F071AA51
4F071AA67
4F071AB03
4F071AB26
4F071AF08Y
4F071AH19
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
ポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス中に分散したフィラーと、を含む混合マトリックス膜を備える、複合膜が開示される。ポリマーマトリックスは極性官能基を有するポリマーを含有する。ポリマーマトリックスの4bar、298KにおけるH透過係数が20Barrer以上である。フィラーは、ポリマーの極性官能基と水素結合を形成できるものであってもよい極性官能基を有し、平均粒径が100nm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性官能基を有するポリマーを含有し、4bar、298KにおけるH透過係数が20Barrer以上である、ポリマーマトリックスと、
極性官能基を有し、平均粒径が100nm以下で、前記ポリマーマトリックス中に分散したフィラーと、
を含む混合マトリックス膜を備える、複合膜。
【請求項2】
前記フィラーの前記極性官能基が、前記ポリマーの前記極性官能基と水素結合を形成できる、請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
前記極性フィラーが、金属有機構造体粒子、ゼオライト粒子、及びシリカゲル粒子かららる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の複合膜。
【請求項4】
前記フィラーが、多面体オリゴマーシルセスキオキサン粒子を含む、請求項1又は2に記載の複合膜。
【請求項5】
前記フィラーが、有機又は無機ナノチューブ、有機又は無機ナノシート、及びナノダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の複合膜。
【請求項6】
前記フィラーの含有量が、前記混合マトリックス膜の全体質量に対して50質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項7】
前記フィラーの含有量が、前記混合マトリックス膜の全体質量に対して20質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックスの4bar、298KにおけるH透過係数が200Barrer以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項9】
前記ポリマーの前記極性官能基、又は前記フィラーの前記極性官能基のうち、一方がアミド基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種で、他方がアミド基、ニトリル基、エーテル基、カルボン酸エステル基、ケトン基、ニトロ基、及びハライド基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項10】
前記混合マトリックス膜の厚さが3.0μm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項11】
当該複合膜が多孔質基材を更に備え、前記多孔質基材上に前記混合マトリックス膜が積層されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項12】
混合ガス中の所定のガスに、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合膜を選択的に透過させることを含み、
前記所定のガスが、炭化水素、及び、水素原子、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を含む他のガスからなる群より選ばれる少なくとも1種である、混合ガスから所定のガスを分離する方法。
【請求項13】
前記所定のガスが、H、HS、CO、CO、アルカン、アルケン、N、及びOからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合膜、及び複合ガスを用いて混合ガスから所定のガスを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス分離のための混合マトリックス膜について検討されており、そこでは金属有機構造体(MOF)がポリマーマトリックスに加えられている(非特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Rezakazemi,M. et al., Progress in Polymer Science, 39, 817-861 (2014)
【非特許文献2】Seoane, B.et al., Chemical Society Reviews, 44, 2421-2454 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
混合ガスから例えばH、CO、及び/又はOのような所定のガスを分離するために用いることのできる、高い選択性を有する膜が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、混合マトリックス膜を備える複合膜を提供する。混合マトリックス膜は、極性官能基を有するポリマーを含有するポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス中に分散したフィラーとを含む。ポリマーマトリックスの4bar、298KにおけるH透過係数が20Barrer以上である。フィラーは、ポリマーの極性官能基と水素結合を形成できるものであってもよい極性官能基を有する。フィラーは100nm以下の平均粒径を有ていてもよい。ポリマーマトリックスとフィラーとの、例えば水素結合による比較的強い相互作用と、ナノサイズのフィラーとの組み合わせにより、ガス選択性を顕著に向上させることができる。
【発明の効果】
【0006】
高い選択性を有し、例えばH、CO、及びOから選ばれる少なくとも1種のガスを混合ガスから分離するために用いられ得る膜が提供される。例えば、N及び炭化水素のような他のガスを含む混合ガス中の所定のガスに膜を透過させることによって、ガスを分離することができる。所定のガスは、炭化水素、及び、水素原子、硫黄原子又は窒素原子のうち少なくともいずれか一つを含む他のガスからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。所定のガスは、H、CO及びOから選択してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】Zr−金属有機構造体粒子のFT−IRスペクトルを示す。
図2】Zr−金属有機構造体粒子のPXRDパターンを示す。
図3】Zr−金属有機構造体粒子のTGAカーブを示す。
図4】Zr−金属有機構造体粒子のSEM像を示す。
図5】混合マトリックス膜のN吸着等温線を示す。
図6】混合マトリックス膜のFT−IRスペクトルを示す。
図7】混合マトリックス膜のPXRDパターンを示す。
図8】混合マトリックス膜のTGAカーブを示す。
図9】混合マトリックス膜のN及びCO吸着等温線を示す。
図10】混合マトリックス膜のSEM像を示す。
図11】混合マトリックス膜のSEM像を示す。
図12】混合マトリックス膜のSEM像を示す。
図13】混合マトリックス膜の単一ガスの輸送データセットを示す表である。
図14】混合マトリックス膜の透過性データを示す。
図15】混合マトリックス膜の透過性データを示す。
図16】混合マトリックス膜の透過性データを示す。
図17】混合マトリックス膜の透過性データを示す。
図18】混合マトリックス膜の透過性データを示す。
図19】混合マトリックス膜のSEM像を示す。
図20】混合マトリックス膜のガス選択性を示すグラフである。
図21】混合マトリックス膜のSEMである。
図22】混合マトリックスの元素マッピングを示す。
図23】CO透過係数と時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限られるものではない。
【0009】
一実施形態に係る複合膜は、混合マトリックス膜を備える。混合マトリックス膜は、ポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス中に分散したフィラーとを含む。
【0010】
混合マトリックス膜のポリマーマトリックスは、それ自体比較的高いガス透過性を有しており、それにより混合マトリックス膜は十分なガス透過性を有することができる。例えば、ポリマーマトリックスのH透過係数は、4bar(4×10Pa)及び298ケルビン(K)において20Barrer以上、50Barrer以上、200Barrer以上、又は500Barrer以上であってもよい。ポリマーマトリックスのH透過係数は100,000Barrer以下であってもよい。ポリマーマトリックスのH透過係数は、ポリマーマトリックスのみからなるポリマーマトリックス膜を評価することによって決定できる。H透過係数は、4bar及び298KのH単一ガスをフィードガスとして用いたガス透過試験によって測定される。
【0011】
ポリマーマトリックスを構成するポリマーは、極性官能基を有していてもよい。フィラーも極性官能基を有していてもよい。ポリマー及びフィラーの極性官能基は、フィラーの極性官能基がポリマーの極性官能基と水素結合を形成できるように、選択してもよい。
【0012】
ポリマー及びフィラーの極性官能基は、ポリマーマトリックスとフィラーとの間に水素結合が形成され得るように、選択することができる。互いに水素結合を形成できる極性官能基の組み合わせの例としては、アミド基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びアミノ基からなる第1の群より選ばれる極性官能基とアミド基、ニトリル基、エーテル基、カルボン酸エステル基、ニトロ基、及びハライド基からなる第2の群から選ばれる極性官能基との組み合わせが挙げられる。通常、第1の群は水素供与基として機能し、第2の群は水素受容基として機能する。ポリマーの極性官能基が第1の群から選択される場合、フィラーの極性官能基は第2の群から選択することができ、逆も同様である。ポリマーが第1及び第2の群の両方を有する場合、フィラーは第1及び第2の一方又は両方を含む官能基を有してもよく、逆も同様である。ここで、アミド基はカルボン酸アミド基、ウレタン基、及びイミド基を含む。エーテル基は、置換されていてもよい飽和又は不飽和炭化水素基に結合した、2価の酸素原子を意味する。ケトン基は、置換されていてもよい飽和又は不飽和炭化水素基に結合した、2価のカルボニル基を意味する。
【0013】
極性官能基を有し、ポリマーマトリックスが比較大きなガス透過係数を有することのできるポリマーの例としては、固有ミクロ多孔性重合体(polymers of intrinsic microporosity)が挙げられる。このタイプのポリマーは、下記式(I)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【化1】

式中、Rは水素原子、又は直鎖若しくは分岐のC−Cアルキル基で、Rは水素原子、直鎖若しくは分岐のC−Cアルキル基、又はシアノ基で、Rは水素原子、直鎖若しくは分岐のC−Cアルキル基、又はシアノ基である。同一分子中の複数のR、R、及びRは、それぞれ同一でも異なってもよい。式(I)の構成単位を有し、Rがメチル基で、Rがシアノ基で、Rが水素原子であるポリマーは、以下「PIM−1」という。
【0014】
ポリマーマトリックスが比較的高いガス透過係数を有することができるものであれば、その他のポリマーを用いることが出来る。ポリマーは熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーであってもよい。そのようなポリマーの例としては、ポリウレタン鎖、ポリアミド鎖、及びポリイミド鎖から選ばれる主鎖を有するポリマーが挙げられる。ポリマーは熱可塑性ポリウレタンエラストマー、又は、ハードセグメントのポリアミド鎖とポリエーテル鎖のようなソフトセグメントとを有する熱可塑性ポリアミドエラストマーであってもよい。
【0015】
ポリマーマトリックスにおけるポリマーの含有量は、100質量%であることができるが、ポリマーマトリックスの質量に対して90質量%以上、95質量%以上、又は80質量%以上であってもよい。
【0016】
フィラーは多孔質フィラーであってもよい。多孔質フィラーは、孔径2nm未満のミクロ孔、孔径2nm〜50nmのメソ孔、又は孔径50nm超のマクロ孔を有することができる。孔径は、N吸着等温線を用いて決定することができる。
【0017】
多孔質フィラーは、任意の多孔質粒子から構成されることができ、その例としては金属有機構造体(MOF)粒子、ゼオライト粒子、及びシリカゲル粒子が挙げられる。これらは、通常の方法により、容易に極性官能基によって官能化することができる。極性官能基は、多孔質フィラーの外表面に存在してもよい。
【0018】
MOFの一例は、ジルコニウムイオン又はジルコニウムクラスターと有機配位子とを有するジルコニウム−金属有機構造体(Zr−MOF)である。有機配位子は、複数のジルコニウムイオン又はジルコニウムクラスターを結合し、構造体を形成する有機リンカーとして機能する。有機配位子は、極性官能基を有することができ、これがポリマーマトリックス中のポリマーと水素結合を形成できるものであってもよい。有機配位子の例としては、テレフタル酸のような2以上のカルボキシ基を有する芳香族カルボン酸が挙げられ、これが極性官能基で官能化されていてもよい。
【0019】
フィラーは、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(polyhedraloligomeric silsesquioxane)粒子であってもよい。粒子を構成する多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)は、下記式(II)で表すことができる。
【化2】

式中、Rは極性官能基で置換されたアルキル基、又は極性官能基で置換されたアリール基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なってもよい。Rとしてのアルキル基の炭素数は1〜20、又は1〜10であってもよい。Rとしてのアリール基はフェニル基であってもよい。極性官能基は、ポリマーの極性官能基と水素結合を形成できるものであってもよい。極性官能基を有するRの例としては、アミノアルキル基、p−アミノフェニル基、及びp−ニトロフェニル基が挙げられる。POSSのRは通常の方法により極性官能基で官能化することができる。
【0020】
フィラーはナノサイズであってもよい。具体的には、フィラーの平均粒径が100nm以下、80nm以下、又は60nm以下であってもよい。ここで、フィラーの粒径は、粒子を顕微鏡で観察したときの粒子の最大幅を意味する。平均粒径は、適切な数の粒子、例えば10以上の粒子を評価することによって決定することができる。フィラーの平均粒径の下限は、特に制限されないが、0.5nm以上であってもよい。
【0021】
MOF粒子の粒径は、例えば、MOF粒子が合成される溶液に水を加えることにより、ナノサイズに調整することができる。MOF粒子を合成するための溶液は、スラリーであってもよく、前駆体金属化合物、有機配位子及び水を含有してもよい。溶液は前駆体金属化合物の金属原子に対して10〜100のモル比の水を含有してもよく、これにより適切にナノサイズとされたMOFを容易に得ることができる。
【0022】
POSSは一般にナノサイズである。POSS粒子の平均粒径は10nm以下、5nm以下、3nm以下、2nm以下であってもよく、0.5nm以上、又は1nm以上であってもよい。
【0023】
フィラーは、極性官能基で官能化されたその他のナノサイズの粒子であってもよい。そのようなナノサイズの粒子は、ポリマーマトリックスと比較的強い相互作用を有することができ、それがガス選択性の向上に寄与することができる。ナノサイズの例としては、有機又は無機ナノチューブ、有機又は無機ナノシート、及びナノダイヤモンドが挙げられる。
【0024】
混合マトリックス膜におけるフィラーの含有量は、混合マトリックス膜の全質量に対して50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。混合マトリックス膜におけるフィラーの含有量は、混合マトリックス膜の全質量に対して1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。フィラーの適切な含有量は、混合マトリックス膜の十分な機械特性及びガス選択性の向上に寄与し得る。
【0025】
混合マトリックス膜の厚さは、0.05μm以上、0.2μm以上、1μm以上、又は20μm以上であってもよい。混合マトリックス膜の厚さは、100μm以下であってもよい。いくつかの形態に係る混合マトリックス膜の厚さは、3.0μm以下、2.0μm以下、又は1.5μm以下であってもよく、0.03μm以上、又は0.2μm以上であってもよい。混合マトリックス膜が薄いと、複合膜が大きなガス透過性を有する傾向がある。薄い膜は、長時間の使用に対する耐性が低い傾向があるが、上述のフィラーは、複合膜の耐久性向上に顕著に寄与することができる。
【0026】
複合膜は、多孔質基材を更に備え、その上に混合マトリックス膜が積層されていてもよい。多孔質基材は、特に薄い混合マトリックス膜の支持体として機能することができる。多孔質基材は、薄い混合マトリックス膜の調製を容易にする。多孔質基材は、実質的に無選択にガスを透過させる多孔質材料から構成されることができる。多孔質基材の分画分子量(MWCO)は、1kDa以上であってもよい。多孔質基材のMWCOは、70kDa以下であってもよい。多孔質材料の例としては、ポリビニリデンジフフルオライド(PVDF)、及びアルミナ等のセラミックスが挙げられる。多孔質基材の厚さは、100μm〜200μmであってもよい。
【0027】
混合マトリックス膜は、溶液キャスト及び溶媒蒸発法等の通常の方法によって作製することができる。キャストされる溶液は、ポリマー、フィラー及び適切な溶媒を含有してもよい。
【0028】
複合膜は、混合ガスから所定のガスを分離するために用いることができ、その目的は例えば二酸化炭素貯留(CCS)又はサワーガススウィートニング(sour gas sweetening)である。ガスを分離する方法は、混合ガス中の所定のガスに複合膜を選択的に透過させることを含む。所定のガスは、炭化水素、及び、水素原子、硫黄原子又は窒素原子のうち少なくともいずれか一つを含む他のガスからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。炭化水素の例としては、CH等のアルカン、及びアルケンが挙げられる。炭化水素以外のガスの例としては、H、CO、CO、N、及びOが挙げられる。所定のガスは、H、CO又はOのうち少なくとも1つであってもよい。複合膜はこれらのガスに対して向上した選択性を有することができる。
【実施例】
【0029】
1.PMI−1の合成
PIM−1を、5,5’,6,6’−テトラヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビスインダン(TTSBI)と4−ジシアノテトラフルオロベンゼン(DCTB)の間の下記縮合反応によって合成した。
【化3】
【0030】
10.2gの精製したTTSBI(Sigma-Aldrich)、6gの精製したDCTBの結晶(和光純薬)、8.3gの乾燥KCO(Sigma-Aldrich)、200mLのof 脱水ジメチルホルムアミド(DMF、和光純薬)を含む混合溶液を窒素雰囲気下、65℃で60時間攪拌した。その後溶液を冷却し、500mLの純水に注ぎ込んだ。析出した固形のポリマーを、クロロホルムへの溶解及びメタノールからの再沈殿によって精製し、濾別して真空オーブン中、110℃で乾燥した。精製したポリマーの分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したところ、数平均分子量Mnは110,000ダルトンで、分子量分散度(PDI)は2.1であった。
【0031】
2.多孔質フィラー(Zr−MOF粒子)
2−1. Zr−MOF粒子の合成
ジルコニウムクラスター(Zr(OH))及び有機配位子を含む、Zr−MOF粒子の種々の誘導体を、塩化ジルコニウム(IV)(ZrCl)とテレフタル酸、2−アミノ−1,4−ジカルボキシベンゼン又は2−ブロモ−1,4−ジカルボキシベンゼンとの混合物から調製した。
【0032】
【化4】
【0033】
2.3mmolのジルコニウム(IV)、2.3mmolの有機配位子、30mLのジメチルホルムアミド(DMF)を含む混合物を30分間攪拌し、得られたスラリーを100mLのテフロン(登録商標)加工された100mLのオートクレーブに導入した。
【0034】
得られる結晶のサイズを小さくしてナノサイズのZr−MOF粒子を得るために、113.5mmolの水をゆっくりとスラリーに加えた。その後、スラリーを10分間攪拌し、120℃で24時間加熱した。得られたZr−MOF粒子を遠心分離によって分離し、メタノールで2回洗浄して未反応の過剰の配位子を除去した。最終的なZr−MOF粒子を、クロロホルムを毎日入れ替えながら、3日かけてクロロホルムで洗浄した。得られたZr−MOF粒子を新鮮なクロロホルムに分散し、膜作製のために用いるコロイドを形成させた。ジルコニウムの理想的なモル転化率に基づくZr−MOF粒子の収率は45モル%であった。調製したZr−MOF粒子の一部を150℃で12時間真空乾燥し、更なる分析のために保存した。
【0035】
水で調節し、テレフタル酸、2−アミノ−1,4−ジカルボキシベンゼン及び2−ブロモ−1,4−ジカルボキシベンゼンを用いて得られたZr−MOF粒子を、それぞれ、UiO−66−H、UiO−66−NH、及びUiO−66−Brという。テレフタル酸を用い、水をスラリーに加えなかったこと以外は水で調節されたZr−MOF粒子と同じ方法で調製された、未調節のZr−MOF粒子は、UiO−66−refという。
【0036】
2−2.Zr−MOF粒子のFT−IR分析
得られたZr−MOF粒子を、減衰全反射(ATR)セルを装着したフーリエ変換赤外分光計スペクトル(FT−IR、島津製作所、IRTracer−100)により、4000〜500cm−1の範囲で評価した。全てのZr−MOF粒子が、脱プロトン化にともなって金属中心に配位したカルボキシレート基の対称伸縮(υ(COO))に相当する1550〜1650cm−1のピークを示した。1450〜1500cm−1の領域の弱いピークは、有機リンカーの芳香族化合物の環におけるC−Cの伸縮振動に伴うものである。1400cm−1付近を中心とする強いピークは、カルボン酸基中のC−O結合の対称伸縮に伴うものであった。UiO−66−BrのFT−IRスペクトルは、UiO−66−Hと同様の特徴を示した。芳香族ハロゲンに特有の炭素−ハロゲンの伸縮振動モードは無かったが、FT−IRスペクトル中に、ブロモ官能性に敏感なピーク(例えば680cm−1)の強度に変化がみられた。UiO−66−HのFT−IRスペクトルと比較すると、UiO−66−NH中のアミノ基の伸縮振動吸収が3000〜3500cm−1の高い周波数の領域に明確に観測された。1250cm−1を中心とするより低い周波数のピークは、N−H結合の変角振動に相当し、これは芳香族アミンのC−N伸縮に特徴的である。
【0037】
2−3.Zr−MOF粒子の粉末X線回析(PXRD)による分析
Zr−MOF粒子の結晶構造を、Cu−Kαアノードを備え40mA、40kVで動作するX線回析(PXRD、リガクRINT、日本)によってキャラクタライズした。合成したZr−MOF粒子を乳鉢ですり潰した。次いで少量のサンプルをサンプルホルダーに載せ、ガラス棒を用いて平坦化した。その後サンプルを5〜60°の2θの範囲にわたってスキャンした。
【0038】
図2は、UiO−66−ref、UiO−66−H、UiO−66−NH及びUiO−66−BrのPXRDパターンを示す。UiO−66−refのPXRDパターンは、[111]及び[200]の結晶面にそれぞれ対応する7.5°及び8.5°のピークを示し、これは文献値(Kang, I. J. et al.,Chemistry-A European Journal, 17, 6437-6442 (2011))とよく一致した。水で調節されたZr−MOF粒子のPXRDパターンも同様の特徴を示しており、同形のUiO−66空間的骨格構造が示唆された。
【0039】
2−3.Zr−MOF粒子の熱重量分析(TGA)
Zr−MOF粒子を、窒素気流下、10K/minの昇温速度の熱重量分析(TGA、リガクTG8120、日本)によって評価した。図3はUiO−66−H、UiO−66−NH及びUiO−66−BrのTGAカーブを示す。Zr−MOF粒子は、ゲスト分子(クロロホルム及び/又はHO)の脱離に対応する75〜100℃付近での5重量%の減少と、それに続く、Zr(OH)結合点におけるZrへの脱水による200℃付近での急な減少を示した。350〜500℃近辺の最終段階は有機配位子の分解に起因する。
【0040】
2−4.Zr−MOF粒子のSEM分析
合成した粒子表面のモルフォロジーを、FESEM(日立S−4800、日本)装置で観察した。図4はUiO−66−ref、UiO−66−H、UiO−66−NH及びUiO−66−BrのSEM像を示す。UiO−66−refでは、凝集した立方形の結晶がみられ、その粒径は約100〜200nmであった(図4(a))。UiO−66−H(図4(b))、UiO−66−Br(図4(c))及びUiO−66−NH図4(d))の粒子は、水による調節を適用して調製されたものであるが、100nmよりも明らかに低い20〜30nm程度の粒径を有していた。
【0041】
2−5.Zr−MOFのN吸着等温線及びBET比表面積
Zr−MOF粒子の窒素吸着等温線を、BELSORP−Max装置(日本ベル株式会社)を用いて75Kで測定し、Zr−MOF粒子の比表面積及び孔径(孔幅)を求めた。図5は、UiO−66−H、UiO−66−NH及びUiO−66−Brの77KにおけるN吸着等温線を示す。図5中の挿入図は、吸着等温線から求めた孔径分布を示す。全てのZr−MOF粒子が、構造体の構造による孔径2nm未満のミクロ孔と、凝集したナノ粒子間の空隙に由来する2〜50nmのメソ孔を示した。
【0042】
得られたN吸着等温線から、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)モデルに基づいて比表面積(SBET)を計算した。表1は、Zr−MOF粒子の比表面積を示す。UiO−66−HのBET比表面積は1115.4m/gで、これはUiO−66−ref粒子(1320m/g)よりもやや小さかった。これは、水による調節条件の影響で結晶度の程度に違いがあることに起因する可能性がある。官能化されたUiO−66−NH及びUiO−66−BrのBET比表面積は、それぞれ708.6及び585.4m/gに減少した。これは、嵩だかい−NH又は−Brがミクロ孔の空いたスペースに突き出すことによる。
【0043】
【表1】
【0044】
3.混合マトリックス膜(MMM)
3−1.混合マトリックス膜の作製
UiO−66−H、UiO−66−Br、又はUiO−66−NHのクロロホルム中のコロイド溶液を、粒子の凝集を防ぐために超音波処理した。乾燥したPIM−1をクロロホルムに濃度8質量%で溶解させた。PIM−1を、孔径0.45μmのPTFEシリンジフィルターでろ過しながら注いだ。得られたPIM−1/Zr−MOF溶液を一晩攪拌した。超音波で気泡を除去してから、PIM−1/Zr−MOF溶液を清浄なガラス基板上にキャストした。ガラス基板上の溶液をカバーし、グローブバッグ中に置き、環境温度下、2日の溶媒蒸発によって混合マトリックス膜を形成させた。得られた膜をガラス基板から除去し、ガス透過及び構造のキャラクタリゼーションの前に110℃で真空乾燥した。
【0045】
この方法で、Zr−MOF粒子の含有量が5質量%、10質量%、20質量%、30質量%、又は40質量%の種々のMMMを作製した。Zr−MOF粒子を含まないPIM−1溶液をガラス基板上にキャストしたこと以外は同様の方法で、未変性のPIM−1膜も作成した。
【0046】
得られたMMMの厚さをマイクロメーター(株式会社ミツトヨ、モデルS406、日本)で測定したところ、80〜100μmの範囲内であった。MMMがもろ過ぎて評価できないようになるまでに、多孔質フィラーの含有量をUiO−66−H、UiO−66−NH及びUiO−66−Brの場合は40質量%まで増やすことができ、多孔質フィラーの含有量をUiO−66−refの場合は20質量%で増やすことができた。UiO−66−H、UiO−66−NH及びUiO−66−Brナノサイズの多孔質フィラーは、UiO−66−Refよりも透明性の高いMMMを与えることが確認された。PIM−1及びUiO−66−NHを含有するMMMは、水素結合を形成できる極性官能基の組み合わせを含む。
【0047】
3−2.MMMのFT−IR分析
得られたMMMを、減衰全反射(ATR)セルを装着したフーリエ変換分光計(FT−IR、Shimaduzo, IRTracer−100)によって4000〜500cm−1の範囲で測定した。図6は、UiO−66−NHを含有するMMM、及び未変性のPIM−膜のFT−IRスペクトルを示す。未変性のPIM−1膜のスペクトルは、既知の文献値(Hao, L., et al., Journal of Materials Chemistry A, 3, 17273-17281(2015))とよく一致した。MMMのスペクトルにおいて、1650〜1710cm−1のC=Oバンドだけでなく3200〜3600cm−1のブロードなN−Hバンドが見られたことから、PIM−1のマトリックス内部にUiO−66−NH粒子が存在することが示唆された。これらのMMMでは、1300〜1100cm−1の間の吸収が減少しており、これはPIM−1の芳香族エーテル基とZr−MOFの外表面に突き出したアミノ基との間の水素結合に起因し得る。
【0048】
3−3.MMMのPXRD分析
図7は、UiO−66−NHのMMM及び未変性のPIM−1膜のPXRDパターンを示す。PXRDパターンから、Zr―MOF結晶がどの含有量であっても、PIM−1マトリックス中で欠陥の無い状態にあることが確認された。
【0049】
3−4.MMMの熱重量分析
MMMを、窒素気流下、10K/minの昇温速度の熱重量分析(TGA、リガクTG8120、日本)による熱重量分析によって評価した。図8は、UiO−66−NHのMMM及び未変性のPIM−1膜のTGAカーブを示す。熱分解が390℃付近から開始した。この温度以上では、継続的な重量減少が観測された。PIM−1マトリックスの熱安定性がUiO−66−NHの導入により改善され、MMM中のUiO−66−NHの増加にともなって重量減少の傾斜が減少した。
【0050】
3−5.MMMのガス吸着等温線
膜のガス吸着等温線をBELSORP−Max装置(日本ベル株式会社)を用いて77Kで測定して、膜中の自由体積の構造を分析した。真空下、100℃で24時間、サンプルから脱気した。図9は、UiO−66−ref又はUiO−66−NHと、未変性のPIM−1膜の195KにおけるN又はCO吸着等温線を示す。UiO−66−refのMMMは、低温での高いN吸着をともなう未変性のPIM−1膜と同様の挙動を示した。UiO−66−NHのMMMは、一般的に見られるゲートが開となる挙動を77Kで示し、これは拡散によって制限された吸着と、PIM−1マトリックスとZr−MOF粒子との相互作用によって生じた界面における高密度化を示唆しており、UiO−66−refのMMMでは見られなかったものである。UiO−66−NHのMMMは、UiO−66−refのMMMよりも高い吸着容量を示した。UiO−66−NHをPIM−1マトリックスに更に加えると、MOF/ポリマーの界面領域における強制的なポリマー鎖のパッキングにより、ガスの取り込み量が減少した。
【0051】
3−6.MMMのSEM分析
MMMの断面におけるモルフォロジーを、FESEM装置(日立S−4800、日本)によって観察した。膜の断面は、液体窒素中での粉砕と荷電を防ぐオスミウムのスパッタによって得た。図10、11及び12は、MMMのSEM像を示す。図10は、UiO−66−refを5質量%((a))、又は20質量%((b)及び(c))で含むMMMを示す。図11は、UiO−66−Hを5質量%((d))、又は20質量%((e)及び(f))で含むMMMを示す。図12は、UiO−66−NHを5質量%((g))、又は20質量%((h)及び(i))で含むMMMを示す。UiO−66−H又はUiO−66−NHを含むMMM中に大きな凝集体は見られなかった。−NH基の導入により、粒子/ポリマー界面の接着も顕著に改善された。
【0052】
3−7.ガス透過試験(単一ガス)
膜の単一ガスの透過性を、H、N、O、CH及びCOに関して、定圧・可変容積の方法で室温(25℃)で測定した。膜を、スチールメッシュの支持体とともにミリポアの市販フィルターホルダー中に保持し、透過チャンバー内に設置した。ガスの透過圧を圧力トランスミッタ(ケラーPAA 33X)によって記録した。
【0053】
吸着チャンバー内の圧力を、内圧が目標とする圧力の間隔(10Pa未満の差)の範囲内で平衡となるように調整した。平衡時間は、各点でのガスの種類及び圧力によって、数分から数時間まで変動した。各実験は、約1日かけて行った。
【0054】
ガス透過係数(P)を、以下の式によって計算した。
【数1】

式中、Pは膜のガス透過係数(Barrer、1Barrer=10−10cm(STP)cm cm−2−1 cmHg−1)、Vは透過体積(cm)、lは膜の厚さ(cm)、Aは膜の有効面積(cm)、pはフィード圧(cmHg)、pは標準状態の圧力(76cmHg)、Tは運転の絶対温度(K)、Tは標準状態の温度(273.15K)、(dp/dt)は擬平衡状態での透過体積に対する圧力増加の傾き(cmHg/s)である。
特定のガスの拡散係数(D)は、膜の厚さ及び時間差(θ)から導かれる:
【数2】

溶解度(S)は
【数3】

から導かれる。
ガスの組み合わせA、Bの理想的な選択性は、
【数4】

として定義される。式中、D/Dは拡散の選択性で、S/Sは溶解の選択性である。フィード側のガスの圧力は2〜8barとした。透過係数は、各膜について3回計算した。透過係数の絶対値の誤差は、ガスフラックス及び膜厚の特定における不確定性に起因して約±7%と見積もられる。しかし、再現性は±5%よりも良好であった。
【0055】
図13は、298K、4barにおいて測定された膜の単一ガス透過データを示す。図14は、UiO−66−NH及びUiO−66−refの透過性を示す。図14の(a)は、規格化されたガス透過係数とZr−MOF粒子の量との関係を示すグラフである。図4の(b)は選択性向上率とZr−MOF粒子の量との関係を示すグラフである。未変性のPIM−1膜のガス透過係数は、P(CO)>P(H)>P(O)>P(CH)>P(N)の順に従った。UiO−66−refの量が10質量%まで増加すると、ガスの透過係数は未変性のPIM−1膜と同様の選択性を維持しながら顕著に増加した。20質量%のようなより高い量では、透過係数が未変性のPIM−1膜の約2倍まで増加した。高い透過係数及び低い選択性は不自然なことではなく、SEM像で観察された「かごの中のふるい」(sieve-in-a-cage)のモルフォロジーにみられたような、Zr−MOF粒子とポリマーマトリックスの欠陥のある界面における非選択的な拡散に帰することができる。UiO−66−refとは対照的に、UiO−66−H、UiO−66−NH又はUiO−66−Br粒子を含むMMMの透過係数は、ガスの選択性が高い平坦部を維持しながら、高い含量において減少した。選択性の高い平坦部の傾向は、UiO−66−NHのMMMにおいて大きく改善された。
【0056】
膜中の拡散又は溶解のガス選択性を、透過データから計算した。ガス選択性の増加への主な寄与は、アミノ基の導入及びサイズの調整による溶解の選択性の増加にあることが確認された。ほとんどのガスの組み合わせにおける拡散の選択性は、いずれの要因によっても変化していない。この傾向は、ポリマーマトリックスのより大きな関与、又は、多孔質フィラーとポリマーマトリックスの間の強い相互作用によってZr−MOF粒子近傍における欠陥による空間の最小化を示唆する。
【0057】
圧力2〜32bar、運転温度25〜55℃の範囲における透過性及び選択性も評価した。これらの条件は、二酸化炭素貯留(CCS)、及びサワーガススウィートニングの実用的な運転のために必要とされる高圧且つ低温の条件を含む。図16は、透過係数又はガス選択性とフィード圧との関係を示す。図17は、透過係数又はガス選択性と温度との関係を示す。MMMは、フィード圧及び温度の広い範囲で一定の透過係数及び選択性の性能を示すことが確認された。
【0058】
3−8.ガス透過試験(混合ガス)
混合ガスの透過性を、定圧・可変容積の方法で測定した。膜を、保証されたCO/N又はCO/CHの混合ガス(50/50体積%、京都帝酸株式会社、日本)に、16barまでのフィード圧で室温(25℃)において触れさせた。フィード流量は、計量バルブで制御しながら、流量計(島津製作所株式会社)によって測定した。透過係数及び透過したガス混合物の組成を、熱伝導率検出器(TCD)を装着したインラインのガスクロマトグラフィー(島津製作所株式会社、モデル2014)によって、キャリアガスとしてのヘリウムの存在下で測定した。
【0059】
図18は、UiO−66−NHが10質量%のMMMによる単一及び混合ガスの透過係数又は選択性と、フィードガスの分圧との関係を示す。図18の(b)は、CO/N又はCO/CHの選択性と、CO分圧との関係を示す。複合膜は、わずかに低い透過係数ながら、単一ガス透過試験とほぼ同等の性能を示した。混合ガスの選択性も、高圧下で理想的な選択性と同等であった。
【0060】
3−9.薄いMMM
1μm厚の膜を、上記と同様の方法によりセラミック支持体上に作製した。表2は、得られた薄膜の25℃におけるガス透過性能を示す。薄い未変性のPIM−1膜のCO/N選択性は約9であり、これは厚い膜と比較してかなり低い。しかしながら、アミン官能化及びナノサイズ化されたUiO−66−NHを添加すると、1μm厚のMMMが高いガス選択性を維持することが確認された。
【0061】
【表2】
【0062】
3−10.他のポリマーを含むMMM
末端に1級ヒドロキシ基を有する2官能性のポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(「プルロリックL35」、BADF製)を、ジラウリン酸ジブチルすず(DBTDL)の存在下、窒素雰囲気中、75℃で過剰のイソホロンジイソシアネート(IPDI)と反応させ(プルロリックL35:IPDIのモル比は1:3)、高分子量のジイソシアネートプレポリマーを得た。
【化5】

2時間後、反応混合物に、鎖延長剤として1,8−オクタンジアミンをプルロニックl35:IPDI:1,8−オクタジアミンの比が1:3:2となるモル比で加えて、ポリウレタンを得た。ポリエーテルブロックを有する熱可塑性ポリアミドエラストマー(「ぺバックス2533」(商品名)、アルケマ株式会社製)も準備した。PIM−1をこれらの他のポリマーに置き換えたこと以外はPIM−1のMMMと同様の方法で、UiO−66−NHを含むMMMを作製した。未変性のポリウレタンの膜は、4bar、298Kにおいて35BarrerのH透過係数を有していた。未変性の熱可塑性ポリアミドの膜は、4bar、298Kにおいて22BarrerのH透過係数を有していた。ポリウレタン(PU)又はポリアミド(ぺバックス)を含むMMMは、アミノ基の導入及びサイズの調整によるガス選択性の向上を示した。
【0063】
3−10.POSS粒子を含むMMM
式(II)で表され、Rがフェニル基であるPOSSを含むphenyl−POSS粒子を準備した。POSSのフェニル基を発煙HNOでニトロ化して、NO-POSS粒子を得、その後ニトロ基をPd/C触媒で還元して、下記のようにRがp−アミノフェニル基であるPOSSを含むNH−POSS粒子とした。
【化6】

FT−IR及び1H NMRの分析により、phenyl−POSS粒子のフェニル基にニトロ基が導入され、その後アミノ基に転換されたことを確認した。
【0064】
膜作製1
phenyl−POSS粒子及びNH−POSS粒子を、それぞれクロロホルムに加えて、POSS分散液を得た。乾燥したPIM−1をクロロホルムに濃度8質量%で溶解させた。その後、PIM−1溶液を、孔径0.45μmのPTFEシリンジフィルターでろ過しながら分散液に注ぎ入れた。得られたPIM−1/POSS溶液を一晩攪拌した。超音波処理で脱気した後、PIM−1/POSS溶液を清浄なガラス基板上にキャストした。ガラス基板上の溶液をカバーし、グローブボックス内に置き、その後環境温度下、2日の溶媒蒸発によって透明なMMMを形成させた。得られた膜をガラス基板から除去し、110℃で真空乾燥した。
【0065】
この方法でNH−POSS粒子を5質量%、7.5質量%、10質量%又は20質量%の含有量で含むMMMを作製した。5質量%、10質量%、又は20質量%の未変性のphenyl−POSS粒子、及びPIM−1を含むMMMも作製した。
【0066】
得られたMMMの厚さを、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ、モデルS406、日本)で測定したところ、80〜100μmの範囲にあった。図21は、phenyl−POSS粒子(a)又はNH−POSS粒子(b)を5質量%で含むMMMのSEM像である。図22は、phenyl−POSS粒子(a)又はNH−POSS粒子(b)を5質量%で含むMMMの、元素分析機能を有するSEM装置で得られた元素マッピングを示す。極性官能基の導入により、POSS粒子がナノスケールで高度に分散することが確認された。未変性のphenyl−POSS粒子は、粒子の凝集に起因する欠陥を含む膜を与えた。
【0067】
POSS粒子のMMMのガス透過係数を、上記と同様の方法で評価した。表3は、MMMのCO透過係数及びCO/CH選択性を示す。これらMMMは、十分に高いCO2透過係数を有しながら、phenyl−POSS粒子よりも高いCO/CH選択性を示した。
【0068】
【表3】
【0069】
膜作製2
phenyl−POSS粒子、NO−POSS粒子及びNH−POSS粒子を、THF中で分散及び超音波処理し、2.5、5、7.5、10及び20質量%の種々の含有量で、PIM−1溶液(8質量%)に導入した。得られたPIM−1/POSS溶液を用いて、「膜作製1」と同様の方法でMMMを作製した。最終的なMMMの厚さを、イクロメーター(株式会社ミツトヨ、モデルS406、日本)で測定したところ、POSSの含有量に応じて70〜80μmの間にあった。
【0070】
POSS粒子で変性した得られたMMMのガス透過係数を、上記と同様の方法で評価した。表4及び5は、MMMの透過係数及び選択性の値を示す。
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
MMMの長期間の耐久性も評価した。作製したMMMを25℃の環境下、真空中に放置した。NO−POSS又はNH−POSS粒子を5質量%で含むMMMのCO透過係数を、膜作製直後から作製後90日後まで測定した。図23は、CO透過係数と継続時間との関係を示すグラフである。CO透過係数は、初期値に対する相対値として表されている。極性官能基の導入により、MMMの耐久性が改善されることが確認された。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(C)】
図4(d)】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21(a)】
図21(b)】
図22(a)】
図22(b)】
図23
【手続補正書】
【提出日】2019年10月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性官能基を有するポリマーを含有し、4bar、298KにおけるH透過係数が20Barrer以上である、ポリマーマトリックスと、
極性官能基を有し、平均粒径が100nm以下で、前記ポリマーマトリックス中に分散したフィラーと、
を含む混合マトリックス膜を備える、複合膜。
【請求項2】
前記フィラーの前記極性官能基が、前記ポリマーの前記極性官能基と水素結合を形成できる、請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
記フィラーが、金属有機構造体粒子、ゼオライト粒子、及びシリカゲル粒子かららる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の複合膜。
【請求項4】
前記フィラーが、多面体オリゴマーシルセスキオキサン粒子を含む、請求項1又は2に記載の複合膜。
【請求項5】
前記フィラーが、有機又は無機ナノチューブ、有機又は無機ナノシート、及びナノダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の複合膜。
【請求項6】
前記フィラーの含有量が、前記混合マトリックス膜の全体質量に対して50質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項7】
前記フィラーの含有量が、前記混合マトリックス膜の全体質量に対して20質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックスの4bar、298KにおけるH透過係数が200Barrer以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項9】
前記ポリマーの前記極性官能基、又は前記フィラーの前記極性官能基のうち、一方がアミド基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種で、他方がアミド基、ニトリル基、エーテル基、カルボン酸エステル基、ケトン基、ニトロ基、及びハライド基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項10】
前記混合マトリックス膜の厚さが3.0μm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項11】
当該複合膜が多孔質基材を更に備え、前記多孔質基材上に前記混合マトリックス膜が積層されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項12】
混合ガス中の所定のガスに、請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合膜を選択的に透過させることを含み、
前記所定のガスが、炭化水素、及び、水素原子、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を含む他のガスからなる群より選ばれる少なくとも1種である、混合ガスから所定のガスを分離する方法。
【請求項13】
前記所定のガスが、H、HS、CO、CO、アルカン、アルケン、N、及びOからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。
【国際調査報告】