(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-537510(P2019-537510A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】キレート精密ろ過膜の製造方法、再生方法及び応用
(51)【国際特許分類】
B01D 69/00 20060101AFI20191129BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20191129BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20191129BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20191129BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20191129BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20191129BHJP
B01J 45/00 20060101ALI20191129BHJP
B01J 49/20 20170101ALI20191129BHJP
B01J 49/50 20170101ALI20191129BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20191129BHJP
C08J 9/26 20060101ALI20191129BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/06
B01D71/34
B01D71/40
C02F1/42 H
B01J45/00
B01J49/20
B01J49/50
B01D65/06
C08J9/26 102
C08J9/36CEW
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-546956(P2019-546956)
(86)(22)【出願日】2017年6月15日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月14日
(86)【国際出願番号】CN2017088453
(87)【国際公開番号】WO2018129859
(87)【国際公開日】20180719
(31)【優先権主張番号】201710029589.1
(32)【優先日】2017年1月16日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(72)【発明者】
【氏名】リウ フーチャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン イェンホン
(72)【発明者】
【氏名】ソン リ
(72)【発明者】
【氏名】ズャオ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ チャンチン
(72)【発明者】
【氏名】リン チェン
(72)【発明者】
【氏名】リ アイミン
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4F074
【Fターム(参考)】
4D006GA07
4D006KC16
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4F074DA43
(57)【要約】
本発明は、重金属廃水処理の分野に属し、特に、キレート精密ろ過膜の製造方法、再生方法及び応用に関する。本発明の主な技術的特徴は、熱誘起相分離法(TIPS)によりポリビニリデンフルオリド(PVDF)キャスティング液を平膜に製造し、次いでアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液でPVDF膜を脱フッ素した後、グリシジルメタクリレート(GMA)をグラフトモノマーとして炭素鎖を延長させ、最後、メラミン及びGMAを用いて求核置換反応を行って重金属をトラップして濃縮する大透過量、高容量のキレート精密ろ過膜を製作することである。当該キレート精密ろ過膜は、製造プロセスが簡単でコストが低く、且つ親水性が良好であり、耐汚染性能に優れたとともに、重金属イオンに対して速度が速くて容量が大きいなどの優れたトラップ性能を持ち、重金属廃水の高効率の清浄処理を実現できる。本発明は、重工業からの廃水だけでなく、工業団地からの総合的廃水、生化学的排水及び汚染された表流水、地下水等に適用されており、適用範囲が広い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A. リアクターに溶媒70〜90部を加えて、さらにポロゲン4〜22部及びポリビニリデンフルオリド6〜16部を加え、完全に溶解させるまで撹拌してキャスティング液を得、反応温度を50〜100℃に制御するようにキャスティング液をリアクターに1〜44h撹拌して反応させ、静置して脱泡した後、熱誘起相分離法によりダイヤフラムを形成し、ダイヤフラムを蒸留水に投入して1〜3h浸漬し、最後、乾燥させてポリビニリデンフルオリドPVDF平膜を製作するポリビニリデンフルオリド平膜の製造工程と、
B. ステップAで製作したポリビニリデンフルオリド平膜をリアクターに加え、低濃度のアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:20〜1:50とし、温度を10〜100℃に制御し、1〜25h反応させた後、洗浄して乾燥させる脱フッ素工程と、
C. ステップBで脱フッ素した後の膜をリアクターに加え、濃度が0.5〜5%のグリシジルメタクリレートの溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:20〜1:50とし、開始剤及び重合禁止剤を加え、温度を10〜80℃に制御し、1〜25h反応させた後、洗浄して乾燥させるグリシジルメタクリレートのグラフト工程と、
D. ステップCで製作した膜をリアクターに加え、濃度が0.1〜5.0%のメラミン溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:20〜1:50とし、温度を10〜120℃に制御し、1〜36h反応させた後、洗浄して乾燥させるメラミン変性工程と、
を含むことを特徴とするキレート精密ろ過膜の製造方法。
【請求項2】
前記ステップAにおける溶媒は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、トリメチロールプロパン、フタル酸ジメチル、リン酸トリエチルのうちのいずれかの一つであることを特徴とする請求項1に記載のキレート精密ろ過膜の製造方法。
【請求項3】
前記ステップAにおけるポロゲンは、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンのうちのいずれかの一つであることを特徴とする請求項2に記載のキレート精密ろ過膜の製造方法。
【請求項4】
前記ステップBにおけるアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液の質量分率は、0.5〜5%であることを特徴とする請求項3に記載のキレート精密ろ過膜の製造方法。
【請求項5】
前記ステップCにおけるグリシジルメタクリレート溶液の溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール及びトルエンのうちのいずれかの一つであることを特徴とする請求項4に記載のキレート精密ろ過膜の製造方法。
【請求項6】
前記ステップCにおける開始剤は、2,2-アゾイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、ベンゾイルパーオキサイドのうちのいずれかの一つであり、濃度が0.01〜0.05‰であることを特徴とする請求項5に記載のキレート精密ろ過膜の製造方法。
【請求項7】
前記ステップCにおける重合禁止剤は、メチルハイドロキノン、p-ヒドロキシアニソール、2-tert-ブチルヒドロキノンのうちのいずれかの一つであり、濃度が0.01〜0.05‰であることを特徴とする請求項6に記載のキレート精密ろ過膜の製造方法。
【請求項8】
重金属を吸着するキレート精密ろ過膜を0.001〜1.0Mの塩酸、硝酸又は硫酸溶液に1〜72h浸漬してから、脱イオン水で1〜72h浸漬して洗浄するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のキレート精密ろ過膜の製造方法で製造されたキレート精密ろ過膜の再生方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のキレート精密ろ過膜の製造方法で製造されたキレート精密ろ過膜の水中の重金属の除去用としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属廃水処理の分野に属し、具体的に、キレート精密ろ過膜の製造方法、再生方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
工業化過程の高速化に伴って、大量の重金属含有廃水(銅、ニッケル、鉛、クロム、水銀、カドニウムなど)は、効果的な処理が困難になり、標準に達成して排出又はリサイクルすることができない。重金属類汚染物は、弊害が大きく、生分解及び代謝できず、ひいては水生生態系に深刻な弊害をもたらし、水系に入った後、堆積や物理化学的反応等により堆積物を汚染しやすい。国内外の関連水環境品質基準には、いずれも重金属類汚染物に対して厳格な排出限度値が提出されている。重金属含有廃水のルーチンの処理方法は、主に凝集沈殿法、吸着法、イオン交換法、膜分離法及びその集積プロセスを含む。凝集沈殿法は、大量の薬剤を投与する必要があり、運転費用が高く、二次汚染が深刻である。吸着法は、大量の吸着剤を消費し、規模化応用が困難である。イオン交換法は、耐汚染性能が悪く、処理コストが高い。膜分離法は、分離効率が高く、分離速度が速く、設備が簡単であり、回収しやすいなどの利点があり、近年、水処理分野において大きく注目されているが、膜の耐汚染性能が悪く、投資コストが高いなどの欠点もある。
【0003】
国内外の文献の調査研究によると、現在、重金属含有廃水処理における膜の検討及び開発は、主に限外ろ過膜又はナノろ過膜の変性に集中することが示される。限外ろ過膜及びナノろ過膜は、いずれも孔径篩分原理により重金属イオンをトラップすることができるが、このような膜は、実際の応用時、透過量が小さく、耐汚染性能が悪いなどの欠点がある。多くの膜材料において、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)は、耐衝撃性、耐摩耗性及び耐カット性という力学的性能に優れた膜材料であり、しかもその変性膜の材料により透過量を低減させることなく、吸着、トラップなどの作用により重金属イオンの除去を強化することかできる。出願公開日が2011年2月2日である中国特許第CN 201010533375.6号には、ポリマーと、粉末状のアニオン、カチオン交換樹脂とを混練して溶解した後、平膜及び中空繊維膜を製作する、飲用水中の重金属イオンを効果的に除去する膜吸着剤及びその製造方法が開示されている。当該膜は、製造過程が簡単であるが、膜透過量が低く吸着量が低い。出願公開日が2013年10月11日である中国特許出願第201310479299.9号には、重金属イオンを吸着する複合平膜の製造方法及び製品が開示されている。当該方法は、タンニン酸で水洗・酸洗されたパリゴルスカイトを変性した後、ポリビニリデンフルオリドと複合して製作することを含む。しかし、当該変性膜の親水性が悪く、且つ、PVDF膜よりも純水透過量が著しく低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の商用精密ろ過膜がメンブレンバイオリアクターに限定されることが多く、その変性製品による重金属廃水処理において、変性過程が煩雑であり、改善効果が悪く、純水透過量が低く、耐汚染性能が悪いという技術課題を解決し、重金属をトラップして濃縮する大透過量、高容量のキレート精密ろ過膜の製造方法、再生方法及び応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の方法は、
A. リアクターに溶媒70〜90部を加えて、さらにポロゲン4〜22部及びポリビニリデンフルオリド6〜16部を加え、完全に溶解させるまで撹拌してキャスティング液を得、反応温度を50〜100℃に制御するようにキャスティング液をリアクターに1〜44h撹拌して反応させ、静置して脱泡した後、熱誘起相分離法によりダイヤフラムを形成し、ダイヤフラムを蒸留水に投入して1〜3h浸漬し、最後、乾燥させてポリビニリデンフルオリドPVDF平膜を製作するポリビニリデンフルオリド平膜の製造工程と、
B. ステップAで製作したポリビニリデンフルオリド平膜をリアクターに加え、低濃度のアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:20〜1:50とし、温度を10〜100℃に制御し、1〜25h反応させた後、洗浄して乾燥させる脱フッ素工程と、
C. ステップBで脱フッ素した後の膜をリアクターに加え、濃度が0.5〜5%のグリシジルメタクリレートの溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:20〜1:50とし、開始剤及び重合禁止剤を加え、温度を10〜80℃に制御し、1〜25h反応させた後、洗浄して乾燥させるグリシジルメタクリレートのグラフト工程と、
D. ステップCで製作した膜をリアクターに加え、濃度が0.1〜5.0%のメラミン溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:20〜1:50とし、温度を10〜120℃に制御し、1〜36h反応させた後、洗浄して乾燥させるメラミン変性工程と、
を含む。
【0006】
前記キレート精密ろ過膜の製造方法において、ステップAにおける溶媒は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、トリメチロールプロパン、フタル酸ジメチル、リン酸トリエチルのうちのいずれかの一つであることが好ましい。
前記キレート精密ろ過膜の製造方法において、ステップAにおけるポロゲンは、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンのうちのいずれかの一つであることが好ましい。
【0007】
前記キレート精密ろ過膜の製造方法において、ステップBにおけるアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液の質量分率は、0.5〜5%であることが好ましい。
前記キレート精密ろ過膜の製造方法において、ステップCにおけるグリシジルメタクリレート溶液の溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール及びトルエンのうちのいずれかの一つであることが好ましい。
【0008】
前記キレート精密ろ過膜の製造方法において、ステップCにおける開始剤は、2,2-アゾイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、ベンゾイルパーオキサイドのうちのいずれかの一つであり、濃度が0.01〜0.05‰であることが好ましい。
前記キレート精密ろ過膜の製造方法において、ステップCにおける重合禁止剤は、メチルハイドロキノン、p-ヒドロキシアニソール、2-tert-ブチルヒドロキノンのうちのいずれかの一つであり、濃度が0.01〜0.05‰であることが好ましい。
【0009】
重金属を吸着するキレート精密ろ過膜を0.001〜1.0Mの塩酸、硝酸又は硫酸溶液に1〜72h浸漬してから、脱イオン水で1〜72h浸漬して洗浄するステップを含み、キレート精密ろ過膜の重金属に対する吸着能力を回復できる、キレート精密ろ過膜の製造方法で製造されたキレート精密ろ過膜の再生方法。
【0010】
本発明におけるキレート精密ろ過膜の製造方法で製造されたキレート精密ろ過膜は、水中の重金属の除去に有用である。ポリアミン類変性環境機能材料は、重金属イオンに対して優れた除去特性を持ち、吸着量が大きく且つ耐塩性が良好である。ポリアミン変性後のPVDF膜は、ポリアミン機能基と重金属イオンの配位作用により除去効果を強めることができる。また、ポリアミン変性後のPVDF膜は、親水性が良好であり、機能基の配位作用及び膜孔のトラップ作用を同時に発揮し、トラップレートを向上させ、濃縮能力を強めることができる。したがって、当該膜は、重工業からの廃水、工業団地からの総合的廃水及び汚染された表流水、地下水中の重金属の効率的な除去に広く適用することができる。
【0011】
従来技術と比較して、本発明の技術方案の利点は、以下のとおりである。
(1) アルカリ性過マンガン酸カリウムでPVDF膜を脱フッ素し、グリシジルメタクリレートを表面にグラフトした後、メラミンによる求核置換で変性グラフトしてPVDF平膜を製造し、PVDF膜を表面変性処理することにより、膜本体の構造及び機械的強度を確保する前提で、膜表面の機能基の含有量及び膜の孔径の大きさを効果的に制御し、変性後のPVDF精密ろ過膜は、透過量が同種の変性製品よりも大きく、PVDF膜の応用範囲を拡大する。
【0012】
(2) 膜変性に必要な原料が簡単で入手しやすく、コストが低く、製造過程が簡便であり、工業化生産に適する。
【0013】
(3) 膜の機能基の配位作用及び膜孔のトラップ作用により、浄水過程における多重効用の相乗作用を発揮し、重金属の効率的な除去を実現することができる。工業団地からの総合的廃水及び汚染された表流水、地下水中の重金属の除去において良好な応用見込みがある。
【0014】
(4) 表面変性法は、機能基を化学結合で膜表面と結合し、物理的混練法と比較して、膜本体の機械性能を確保する前提で、より高い安定性を有する。重金属を吸着するキレート精密ろ過膜は、通常の酸溶液により有効な再生を行うことができ、再生後の平膜は、再生後に、異なる重金属に対して相変わらず良好な除去性能を持ち、リサイクルが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の内容をさらに解釈するために、実施例と組み合わせて本発明を詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の使用範囲を制限するものではない。
【0016】
実施例1
(1) PVDF平膜の製造:リアクターにN,N-ジメチルアセトアミド76gを加え、さらに分子量400のポリエチレングリコール9g及びポリビニリデンフルオリドPVDF15gを加え、完全に溶解するまで撹拌してキャスティング液を得、キャスティング液をリアクターに12h撹拌して反応させ、温度を80℃に制御してから、静置して脱泡した後、TIPS相転換法で成膜し、ダイヤフラムを形成した後、ダイヤフラムを蒸留水に1h浸入し、乾燥させた後、ポリビニリデンフルオリドPVDF平膜を製作した。
【0017】
(2) 脱フッ素:ステップ(1)で製作されたPVDF膜をリアクターに加え、リアクターに1%のアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:20とし、温度を80℃に制御し、4h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0018】
(3) グリシジルメタクリレートのグラフト:ステップ(2)で製作された膜をリアクターに加え、リアクターに濃度2%のグリシジルメタクリレートのメタノール溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:50とし、2,2-アゾイソブチロニトリル及びp-ヒドロキシアニソールを加え、濃度をそれぞれ0.01‰及び0.05‰に制御し、温度を65℃に制御し、5h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0019】
(4) メラミンのアンモニア化:リアクターに濃度0.25%のメラミン溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:25とし、ステップ(3)で製作された膜をリアクターに加え、温度を70℃に制御し、8h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0020】
(5) 前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を25℃に制御し、膜差圧0.2MPaで30minプリプレスして測定したところ、純水透過量が646L・m
-2・h
-1であった。
【0021】
実施例2
(1) PVDF平膜の製造:リアクターにリン酸トリエチル80gを加え、さらに分子量8000のポリビニルピロリドン4g及びポリビニリデンフルオリドPVDF16gを加え、完全に溶解するまで撹拌してキャスティング液を得、キャスティング液をリアクターに44h撹拌して反応させ、温度を100℃に制御してから、静置して脱泡した後、TIPS相転換法で成膜し、ダイヤフラムを形成した後、ダイヤフラムを蒸留水に3h浸入し、乾燥させた後、ポリビニリデンフルオリドPVDF平膜を製作した。
【0022】
(2) 脱フッ素:ステップ(1)で製作されたPVDF膜をリアクターに加え、リアクターに0.5%のアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:35とし、温度を10℃に制御し、1h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0023】
(3) グリシジルメタクリレートのグラフト:ステップ(2)で製作された膜をリアクターに加え、リアクターに濃度0.5%のグリシジルメタクリレートのびトルエン溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:25とし、過硫酸カリウム及びメチルハイドロキノンを加え、濃度をそれぞれ0.02‰及び0.01‰に制御し、温度を80℃に制御し、1h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0024】
(4) メラミンのアンモニア化:リアクターに濃度0.1%のメラミン溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:50とし、ステップ(3)で製作された膜をリアクターに加え、温度を100℃に制御し、36h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0025】
(5) 前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を25℃に制御し、膜差圧0.1MPaで30minプリプレスして測定したところ、純水透過量が597L・m
-2・h
-1であった。
【0026】
実施例3
(1) PVDF平膜の製造:リアクターにトリメチロールプロパン70gを加え、さらに分子量500のポリエチレングリコール22g及びポリビニリデンフルオリドPVDF8gを加え、完全に溶解するまで撹拌してキャスティング液を得、キャスティング液をリアクターに1h撹拌して反応させ、温度を50℃に制御してから、静置して脱泡した後、TIPS相転換法で成膜し、ダイヤフラムを形成した後、ダイヤフラムを蒸留水に2h浸入し、乾燥させた後、ポリビニリデンフルオリドPVDF平膜を製作した。
【0027】
(2) 脱フッ素:ステップ(1)で製作されたPVDF膜をリアクターに加え、リアクターに5.0%のアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:40とし、温度を75℃に制御し、25h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0028】
(3) グリシジルメタクリレートのグラフト:ステップ(2)で製作された膜をリアクターに加え、リアクターに濃度5.0%のグリシジルメタクリレートのi-プロパノール溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:20とし、過硫酸アンモニウム及び2-tert-ブチルヒドロキノンを加え、濃度をそれぞれ0.03‰及び0.02‰に制御し、温度を30℃に制御し、15h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0029】
(4) メラミンのアンモニア化:リアクターに濃度5.0%のメラミン溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:35とし、ステップ(3)で製作された膜をリアクターに加え、温度を40℃に制御し、16h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0030】
(5) 前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を25℃に制御し、膜差圧0.15MPaで1hプリプレスして測定したところ、純水透過量が597L・m-2・h-1であった。
【0031】
実施例4
(1) PVDF平膜の製造:リアクターにN-メチルピロリドン90gを加え、さらに分子量24000のポリビニルピロリドン4g及びポリビニリデンフルオリドPVDF6gを加え、完全に溶解するまで撹拌してキャスティング液を得、キャスティング液をリアクターに30h撹拌して反応させ、温度を75℃に制御してから、静置して脱泡した後、TIPS相転換法で成膜し、ダイヤフラムを形成した後、ダイヤフラムを蒸留水に2h浸入し、乾燥させた後、ポリビニリデンフルオリドPVDF平膜を製作した。
【0032】
(2) 脱フッ素:ステップ(1)で製作されたPVDF膜をリアクターに加え、リアクターに3.0%のアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:50とし、温度を100℃に制御し、15h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0033】
(3) グリシジルメタクリレートのグラフト:ステップ(2)で製作された膜をリアクターに加え、リアクターに濃度3.0%のグリシジルメタクリレートのエタノール溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:45とし、ベンゾイルパーオキサイド及びp-ヒドロキシアニソールを加え、濃度をそれぞれ0.04‰及び0.04‰に制御し、温度を40℃に制御し、20h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0034】
(4) メラミンのアンモニア化:リアクターに濃度5.0%のメラミン溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:20とし、ステップ(3)で製作された膜をリアクターに加え、温度を120℃に制御し、1h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0035】
(5) 前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を35℃に制御し、膜差圧0.15MPaで30minプリプレスして測定したところ、純水透過量が651L・m
-2・h
-1であった。
【0036】
実施例5
(1) PVDF平膜の製造:リアクターにフタル酸ジメチル85gを加え、さらに分子量400のポリエチレングリコール5g及びポリビニリデンフルオリドPVDF10gを加え、完全に溶解するまで撹拌してキャスティング液を得、キャスティング液をリアクターに24h撹拌して反応させ、温度を85℃に制御してから、静置して脱泡した後、TIPS相転換法で成膜し、ダイヤフラムを形成した後、ダイヤフラムを蒸留水に90min浸入し、乾燥させた後、ポリビニリデンフルオリドPVDF平膜を製作した。
【0037】
(2) 脱フッ素:ステップ(1)で製作されたPVDF膜をリアクターに加え、リアクターに4.5%のアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:30とし、温度を50℃に制御し、8h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0038】
(3) グリシジルメタクリレートのグラフト:ステップ(2)で製作された膜をリアクターに加え、リアクターに濃度1.8%のグリシジルメタクリレートのn-プロパノール溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:40とし、2,2-アゾイソブチロニトリル及びメチルハイドロキノンを加え、濃度をそれぞれ0.02‰及び0.03‰に制御し、温度を10℃に制御し、8h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0039】
(4) メラミンのアンモニア化:リアクターに濃度3.0%のメラミン溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:40とし、ステップ(3)で製作された膜をリアクターに加え、温度を60℃に制御し、4h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0040】
(5) 前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を25℃に制御し、膜差圧0.2MPaで1hプリプレスして測定したところ、純水透過量が574L・m
-2・h
-1であった。
【0041】
実施例6
(1) PVDF平膜の製造:リアクターにN,N-ジメチルアセトアミド75gを加え、さらに分子量10000のポリビニルピロリドン15g及びポリビニリデンフルオリドPVDF10gを加え、完全に溶解するまで撹拌してキャスティング液を得、キャスティング液をリアクターに10h撹拌して反応させ、温度を90℃に制御してから、静置して脱泡した後、TIPS相転換法で成膜し、ダイヤフラムを形成した後、ダイヤフラムを蒸留水に150min浸入し、乾燥させた後、ポリビニリデンフルオリドPVDF平膜を製作した。
【0042】
(2) 脱フッ素:ステップ(1)で製作されたPVDF膜をリアクターに加え、リアクターに2.0%のアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:25とし、温度を65℃に制御し、12h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0043】
(3) グリシジルメタクリレートのグラフト:ステップ(2)で製作された膜をリアクターに加え、リアクターに濃度4.0%のグリシジルメタクリレートのメタノール溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:35とし、過硫酸カリウム及び2-tert-ブチルヒドロキノンを加え、濃度をそれぞれ0.05‰及び0.01‰に制御し、温度を75℃に制御し、25h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0044】
(4) メラミンのアンモニア化:リアクターに濃度2.0%のメラミン溶液を加え、平膜と溶液との質量比を1:25とし、ステップ(3)で製作された膜をリアクターに加え、温度を10℃に制御し、24h反応させた後、洗浄して乾燥させた。
【0045】
(5) 前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を20℃に制御し、膜差圧0.1MPaで30minプリプレスして測定したところ、純水透過量が678L・m
-2・h
-1であった。
【0046】
実施例7
キレート精密ろ過膜の再生
実施例1で得られたキレート精密ろ過膜を、重金属イオンを動的吸着してトラップした後、濃度0.5Mの塩酸溶液に36h浸漬してから、脱イオン水で12h浸漬して中性となるまで洗浄し、吸着膜の重金属イオンに対する吸着能力を回復できた。
前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を20℃に制御し、膜差圧0.1MPaで30minプリプレスして測定したところ、純水透過量が589L・m
-2・h
-1であった。
【0047】
実施例8
キレート精密ろ過膜の再生
実施例3で得られたキレート精密ろ過膜を、重金属イオンを動的吸着してトラップした後、濃度0.001Mの硝酸溶液に72h浸漬してから、脱イオン水で1h浸漬して中性となるまで洗浄し、吸着膜の重金属イオンに対する吸着能力を回復できた。
前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を25℃に制御し、膜差圧0.2MPaで1hプリプレスして測定したところ、純水透過量が601L・m
-2・h
-1であった。
【0048】
実施例9
キレート精密ろ過膜の再生
実施例5で得られたキレート精密ろ過膜を、重金属イオンを動的吸着してトラップした後、濃度1.0Mの硫酸溶液に1h浸漬してから、脱イオン水で20h浸漬して中性となるまで洗浄し、吸着膜の重金属イオンに対する吸着能力を回復できた。
前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を30℃に制御し、膜差圧0.15MPaで30minプリプレスして測定したところ、純水透過量が558L・m
-2・h
-1であった。
【0049】
実施例10
キレート精密ろ過膜の再生
実施例6で得られたキレート精密ろ過膜を、重金属イオンを動的吸着してトラップした後、濃度0.1Mの硝酸溶液に12h浸漬してから、脱イオン水で72h浸漬して中性となるまで洗浄し、吸着膜の重金属イオンに対する吸着能力を回復できた。
前記キレート精密ろ過膜をクロスフロー膜ろ過システムに配置し、システム温度を25℃に制御し、膜差圧0.2MPaで30minプリプレスして測定したところ、純水透過量が659L・m
-2・h
-1であった。
【0050】
実施例1〜6で製作された重金属キレート精密ろ過膜の重金属吸着トラップ効果を表1に示した。よって、本発明で製作された重金属キレート精密ろ過膜は、良好な重金属廃水の治理効果を有する。
【0052】
同一のキレート精密ろ過膜の再生前後の重金属イオン吸着トラップ性能を表2に示した。よって、本発明で製作された重金属キレート精密ろ過膜は、良好な再生能力を有し、再生過程が簡便であり、産業上の応用を実現できた。
【0054】
前記実施例は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するためのものではなく、以上に基づく等価置換又は代替は、いずれも本発明の保護範囲に属することを説明しておく。
【国際調査報告】