特表2019-537535(P2019-537535A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-537535ステアリングホイールの手動操作を検出するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-537535(P2019-537535A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】ステアリングホイールの手動操作を検出するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20191129BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   B62D1/06
   B62D5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-521466(P2019-521466)
(86)(22)【出願日】2017年11月7日
(85)【翻訳文提出日】2019年4月22日
(86)【国際出願番号】DE2017200117
(87)【国際公開番号】WO2018161980
(87)【国際公開日】20180913
(31)【優先権主張番号】102017203735.0
(32)【優先日】2017年3月7日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】A201700139
(32)【優先日】2017年3月7日
(33)【優先権主張国】RO
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ラファイラ・ラズヴァン
(72)【発明者】
【氏名】グロス・マリアン・ゲオルゲ
【テーマコード(参考)】
3D030
3D333
【Fターム(参考)】
3D030DC27
3D333CB02
3D333CC28
(57)【要約】
本発明は、ステアリングホイールのステアリングホイール・トルク(T)を測定するためのトルクセンサ(3);ステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度(ω)を測定するための角速度センサ(4);並びに、ドライバーによってかけられたドライバー・トルク(T)を、測定されたステアリングホイール・トルク(T)と角速度(ω)に依存して算出し、該算出されたドライバー・トルク(T)を、該ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために閾値(θtol)と比較される操舵角成分(θ)を割り出すためにフィルタリングする計算ユニット(5)を用いるドライバーによるステアリングホイールの手動操作を検出するための装置(1)及び方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を備えていることを特徴とするドライバーによるステアリングホイールの手動操作を検出するための装置(1):
(a)ステアリングホイールのステアリングホイール・トルク(T)を測定するためのトルクセンサ(3);
(b)ステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度(ω)を測定するための角速度センサ(4);並びに、
(c)ドライバーによってかけられたドライバー・トルク(T)を、測定されたステアリングホイール・トルク(T)と角速度(ω)に依存して算出し、該算出されたドライバー・トルク(T)を、該ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために閾値(θtol)と比較される操舵角成分(θ)を割り出すためにフィルタリングする計算ユニット(5)。
【請求項2】
該計算ユニット(5)が、該トルクセンサ(3)の角速度を割り出すために、トルクセンサ(3)によって測定されたステアリングホイール・トルク(T)をフィルタリングする第一フィルタ(5A)を包含していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該計算ユニット(5)が、角速度合計を生成するために、割り出されたトルクセンサ(3)の角速度を、角速度センサ(4)によって測定されたステアリングコラムの角速度(ω)に加算する合計器(5B)を包含していることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
該計算ユニット(5)が、合計器(5B)によって作成された角速度合計を、ドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバートルク(T)を算出するためにフィルタリングする第二フィルタ(5C)を包含していることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
該計算ユニット(5)が、操舵角成分(θ)を割り出すために、ドライバー・トルク(T)をフィルタリングする第三フィルタ(5D)を包含していることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
該計算ユニット(5)が、割り出された操舵角成分(θ)と、閾値(θtol)を、ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために比較するコンパレータ(5E)を包含していることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
該計算ユニット(5)のフィルタ(5A, 5C, 5D)が、ローパスフィルタであることを特徴とする請求項2から6のうち何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
該計算ユニット(5)のコンパレータ(5E)が、ステアリングホイールが、ドライバーによって手動操作されているか否かを示すフラッグ(F)をセットすることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
コンパレータ(5E)によってセットされたフラッグ(F)が、制御ユニットによって、ドライバーへの警告、及び/或いは、自動化された車両介入の禁止のために評価されることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
以下のステップを有することを特徴とするドライバーによるステアリングホイールの手動操作を検出するための方法:
(a)ステアリングホイールのステアリングホイール・トルク(T)を測定するステップ(S1);
(b)ステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度(ω)を測定するステップ(S2);
(c)ドライバーによってステアリングホイールにかけられたドライバー・トルク(T)を、ステアリングコラムに接続されているステアリングホイールの測定されたトルク(T)、及び、測定された角速度(ω)に依存して算出するステップ(S3);
(d)ドライバー・トルク(T)に起因する操舵角成分(θ)を割り出すために、算出されたドライバー・トルク(T)をフィルタリングするステップ(S4);並びに、
(e)割出された操舵角成分(θ)を、ステアリングホイールが、ドライバーによって手動操作されているか否かを認識するための閾値と比較するステップ(S5)。
【請求項11】
トルクセンサ(3)によって測定されたステアリングホイール・トルク(T)が、該トルクセンサ(3)の角速度を割り出すために、フィルタリングされることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
トルクセンサ(3)の割り出された角速度が、ステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの測定された角速度(ω)に、角速度合計を生成するために加算されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該合計器によって生成された角速度合計が、ドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバー・トルク(T)を算出するために、フィルタリングされることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ドライバー・トルク(T)が、操舵角成分(θ)を割り出すためにフィルタリングされることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために、割り出された操舵角成分(θ)が、閾値(θtol)と、比較されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールの手動操作を検出するための、特に好ましくはドライバー・アシスタント・システム用の、装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングホイールは、単なる制御エレメントから、煩雑な要求事項が課せられる安全部品へと発展した。一般的に、「ハンド・オン/オフ検出」(hands on/off detection)と言う定義は、「ドライバーの手が、ステアリングホイールのステアリングホイールリムに乗っているか否かを検出すること」として解釈されている。快適性の向上と言う観点の他、この検出では、車両運転手の負担軽減も考慮されている。
【0003】
基本的に、「Hands on/Hands off」検出システムを実現するには、二通りの方法がある。一つ目は、ドライバーの手が、ステアリングホイールを触っているか、或いは、握っているかを割り出すために、容量型センサをステアリングホイールに取り付ける方法である。二つ目は、ステアリングホイールのステアリングホイール・トルクを測定するためのトルクセンサを設け、このセンサから出力されるステアリングホイールトルク・シグナルを、ドライバーによってステアリングホイールが、操舵されているか否かを割り出すために分析する方法である。
【0004】
ステアリングホイールの手動操作を検出するために容量型センサを設ける方法は、比較的高コストであり、よって、車両の量産には、向いていない。一方、ステアリングホイールの手動操作を検出するために測定されたトルクシグナルを分析する方法は、比較的難しいチャレンジである。トルクセンサが出力するシグナルは、特に、車両が、路面の穴などの上を走った場合や自律走行を作動させ、車両が操舵を担当している時は、比較的大きく上下に変動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明の課題は、堅牢且つステアリングホイールの手動操作を確実に検出する、ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を検出するための装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明の請求項1記載の特徴を有する装置によって達成される。
【0007】
それによれば、本発明は、以下を包含するドライバーによるステアリングホイールの手動操作を検出するための装置が提供される:
ステアリングホイールのステアリングホイール・トルクを測定するためのトルクセンサ、
ステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度を測定するための角速度センサ、並びに、
ドライバーによってかけられたドライバー・トルクを、測定されたステアリングホイール・トルクと角速度に依存して算出し、該算出されたドライバー・トルクを、該ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために閾値と比較される操舵角成分を割り出すためにフィルタリングする計算ユニット。
【0008】
本発明に係る検出手段のある可能な実施形態においては、該計算ユニットは、トルクセンサによって測定されたステアリングホイール・トルクを、トルクセンサの角速度を割り出すためにフィルタリングする第一フィルタを有している。
【0009】
本発明に係る検出手段の更なる可能な実施形態においては、該計算ユニットは、角速度合計を生成するために、割り出されたトルクセンサの角速度を、角速度センサによって測定されたステアリングコラムの角速度に加算する合計器を有している。
【0010】
本発明に係る検出手段の更なる可能な実施形態においては、該計算ユニットは、該合計器が生成した角速度合計を、ドライバーがハンドルにかけているドライバー・トルクの計算のためにフィルタリングする第二フィルタを有している。
【0011】
本発明に係る検出手段の更なる可能な実施形態においては、該計算ユニットは、ドライバー・トルクを、操舵角成分を割り出すためにフィルタリングする第三フィルタを有している。
【0012】
本発明に係る検出手段の更なる可能な実施形態においては、該計算ユニットは、割り出された操舵角成分と閾値を、ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために比較するコンパレータを有している。
【0013】
本発明に係る検出手段のある可能な実施形態においては、該計算ユニットのフィルタは、ローパスフィルタである。
【0014】
本発明に係る検出手段の更なる可能な実施形態においては、該計算ユニットのコンパレータは、ステアリングホイールが、ドライバーによって手動操作されているか否かを示すフラッグをセットする。
【0015】
本発明に係る検出手段の更なる可能な実施形態においては、コンパレータによってセットされたフラッグは、制御ユニットによって、ドライバーへの警告、及び/或いは、自動化された車両介入の禁止のために評価される。
【0016】
本発明は更に、その更なるアスペクトによれば、特許請求項10に記載されている特徴を有するドライバーによるステアリングホイールの手動操作を検出するための方法も提供する。
【0017】
それによれば、本発明は、以下のステップを有するドライバーによるステアリングホイールの手動操作を検出するための方法を提供する:
ステアリングホイールのステアリングホイール・トルクを測定するステップ;
ステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度を測定するステップ;
ドライバーによってステアリングホイールにかけられたドライバー・トルクを、ステアリングコラムに接続されているステアリングホイールの測定されたトルク、及び、測定された角速度に依存して算出するステップ;
ドライバー・トルクに起因する操舵角成分を割り出すために、算出されたドライバー・トルクをフィルタリングするステップ、並びに、
割出された操舵角成分を、ステアリングホイールが、ドライバーによって手動操作されているか否かを認識するための閾値と比較するステップ。
【0018】
本発明に係る方法のある可能な実施形態においては、トルクセンサによって測定されたステアリングホイール・トルクが、トルクセンサの角速度を割り出すためにフィルタリングされる。
【0019】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、トルクセンサの割り出された角速度は、ステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの測定された角速度に、角速度合計を生成するために加算される。
【0020】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、生成された角速度合計は、ドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバー・トルクを算出するためにフィルタリングされる。
【0021】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、ドライバー・トルクは、操舵角成分を割り出すためにフィルタリングされる。
【0022】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、割り出された操舵角成分が閾値と、ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために比較される。
【0023】
以下、本発明に係る検出手段、並びに、本発明に係る検出方法の可能な実施形態を、添付されている図を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る検出手段の実施形態を示すためのブロック図。
図2】本発明に係る検出手段の更なる実施形態を示すためのブロック回路図。
図3】本発明に係る検出方法の実施形態を示すためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示されているブロック図は、ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を検出するための装置1の実施例を示している。該検出手段1は、出力側において車両の制御ユニット2と接続されている。
【0026】
該検出手段1は、示されている実施例では、車両のステアリングホイールの操舵トルクを測定するための少なくとも一つのトルクセンサ3を包含している。更に、該検出手段1は、ステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度を測定するための少なくとも一つの角速度センサ4も包含している。該双方のセンサ3, 4は、該検出手段1の計算ユニット5に接続されている。該計算ユニット5は、ドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバー・トルクを、トルクセンサ3によって測定されたステアリングホイール・トルクに依存して、且つ、角速度センサ4によって測定された角速度に依存して算出する。続いて、この算出されたドライバー・トルクは、計算ユニット5の操舵角成分を割り出すためのユニットによってフィルタリングされ、該操舵角成分は、ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために、例えば、計算ユニット5のコンパレータによって、閾値と比較される。
【0027】
図2に示されているブロック回路図は、検出手段1に包含されている計算ユニット5のある一つの実施例を示している。図2からも明らかなように、該計算ユニット5は、トルクセンサ3によって測定されたステアリングホイール・トルクを、該トルクセンサ3の角速度を割り出すためにフィルタリングする第一フィルタ5Aを包含している。この第一フィルタ5Aは、例えば、ローパスフィルタであることができる。
【0028】
該計算ユニット5は、更に、角速度合計を生成するために、割り出されたトルクセンサ3の角速度を、角速度センサ4によって測定されたステアリングコラムの角速度に加算する合計器5Bも有している。
【0029】
該計算ユニット5は、更に、合計器5Bによって作成された角速度合計を、ドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバー・トルクを算出するためにフィルタリングする第二フィルタ5Cも包含している。該第二フィルタ5Cも、例えば、ローパスフィルタであることができる。第二フィルタ5Cのアウトプット・シグナルは、ドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバー・トルクTである。このドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバー・トルクTは、操舵角成分を割り出すために、第三フィルタ5Dによって更にフィルタリングされる。該第三フィルタ5Dも、例えば、ローパスフィルタであることができる。
【0030】
更に、該示されている実施例の計算ユニット5は、割り出された操舵角成分θと、閾値θtolを、ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために比較するコンパレータ5Eも包含している。ある可能な実施形態においては、該計算ユニット5のコンパレータ5Eは、ステアリングホイールが、ドライバーによって手動操作されているか否かを示すフラッグFをセットする。該計算ユニット5のコンパレータ5EによってセットされたフラッグFは、ある可能な実施形態においては、ドライバーへの警告の実施のために、及び/或いは、自動化された車両介入の禁止のために受信されたフラッグを評価する制御ユニット2に、供給されることができる。ここで言う「自動化された車両介入」とは、例えば、車両の操縦、乃至、加速のことである。これらは、生成されたフラッグFに依存して、オン乃至オフされることができる。
【0031】
図3は、ドライバーによるステアリングホイールの手動操作を検出するための本発明に係る方法のある実施例を描写するためのフローチャートを示している。図3に示されている実施例では、発明に係る検出方法は、本質的に、五つのメイン・ステップを包含している。
【0032】
第一ステップS1では、ステアリングホイールのステアリングホイール・トルクが測定される。
【0033】
更なるステップS2では、ステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度が、測定される。
【0034】
第三ステップS3では、ドライバーによってステアリングホイールにかけられたドライバー・トルクTが、ステアリングコラムに接続されているステアリングホイールの測定されたトルクT、及び、測定された角速度ωに依存して算出される。
【0035】
更なるステップS4では、算出されたドライバー・トルクTが、ドライバー・トルクTに起因する操舵角成分θを割り出すためにフィルタリングされる。
【0036】
更なるステップS5では、ステップS4において割り出された操舵角成分θが、ステアリングホイールが、ドライバーによって手動操作されているか否かを認識するために、閾値θtolと比較される。
【0037】
ステップS1におけるステアリングホイールのステアリングホイール・トルクTの測定は、図1, 2に示されているごとく、例えば、そのために設けられたトルクセンサ3によって実施できる。
【0038】
ステップS2におけるステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度ωの測定も、図1,2に示されているごとく、適宜なセンサ、即ち、角速度センサ4によって実施できる。
【0039】
ステップS3,S4,S5は、図2に係る実施例に示されているごとく、一つの計算ユニット5によって実施できる。
【0040】
第一ステップS1においてトルクセンサ3によって測定されたステアリングホイール・トルクTは、ある可能な実施形態においては、トルクセンサ3の角速度を割り出すために先ずフィルタリングされることができる。これは、例えば、図2に示されている計算ユニット5の第一フィルタ5Aによって実施される。続いて、トルクセンサ3の割り出された角速度は、角速度合計を生成するために、ステップS2において測定されたステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度ωに加算される。これは、例えば、図2に示されている計算ユニット5の合計器5Bによって実施される。該合計器によって生成された角速度合計は、続いて、ドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバー・トルクTを算出するために、フィルタリングされることができる。これは、例えば、図2に示されている計算ユニットの第二フィルタ5Cによって実施される。その後、生成されたドライバー・トルクは、操舵角成分θを割り出すために、フィルタリングされる。これは、例えば、図2に示されている第三フィルタ5Dによって実施される。最後に、ステップS5において、割り出された操舵角成分θが、予め与えられている閾値θtolに、ステップS5においてドライバーによるステアリングホイールの手動操作を認識するために、比較される。
【0041】
本発明に係る方法によれば、ステアリングホイールの手動操作の検出は、ドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバー・トルクを基に実施される。これは、システムダイナミクスを描写するトランスファ・ファンクション、乃至、伝達関数を用いて実施されることができる。本発明に係る検出方法は、ある可能な実施形態においては、計算ユニット5によって実行されるアルゴリズムを用いて実施されることができる。この検出アルゴリズムは、ある可能な実施形態においては、以下の様に、実装されることができる。
【0042】
トルクセンサによるステアリングホイール・トルクTの測定;
角速度センサによるステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度ωの測定;
ステアリングホイールにかけられたドライバー・トルクTの推定値を得るための伝達関数の使用;
操舵角成分θを得るための第二伝達関数による推定されたドライバー・トルクTのフィルタリング;
if |θ|≦θtol then
「hand off」が検出された;
else 「hands on」が確認された。
End if.
【0043】
アルゴリズムの上記の実装例においては、閾値θtolは、許容パラメータである。これは、数値計算において発生するノイズを考慮するために設けられている。理想的には、この許容パラメータは、θtol=0[rad]である。現実における実装では、この許容パラメータθtolは、望まれている検出精度に依存して設定される。
【0044】
該計算ユニット5は、図2に示されている実施形態では、三つのフィルタ5A, 5C, 5Dを包含している。これらのフィルタは、好ましくは、ローパスフィルタである。ある可能な実施形態においては、これらは、受動的デジタルローパスフィルタである。
【0045】
本発明に係るハンド検出方法は、電動式操舵システムの動的挙動を基にしている。
【0046】
この動的挙動は、以下の様に表されることができる:
【0047】
【数1】
【0048】
式中:
θは、ステアリングコラムの角度、
θは、電動モータの角度、
は、電動モータの電流、
は、操舵システムにかかる道路からの応力、並びに、
は、ドライバーによるトルクを、示している。
【0049】
尚、等式(1), (2)において示されているパラメータは、以下の通りである:
【0050】
は、ステアリングコラムの慣性モーメント、
は、ステアリングコラムの減衰係数、
は、ステアリングコラムの硬さ、
は、ステアリングコラムの摩擦、
Nは、電動モータのギヤ比、
は、ステアリングコラムの半径、
は、電動モータのトルク定数、
eqは、電動モータの慣性と制御システムの質量からなるEPSシステムの下の部分の等価慣性、
eqは、電動モータの粘性減衰と操舵システムの粘性減衰からなるEPSシステムの下の部分の等価減衰ファクタ、
eqは、タイヤのクッション率とステアリングコラムの硬さからなるEPSシステムの下の部分の等価硬さ、
は、電動モータ摩擦係数である。
【0051】
上記の等式(1)は、ステアリングホイールと操舵センサを有するステアリングコラムの上の部分のダイナミクスを描写している。第二等式(2)は、モータとラックのダイナミクスを組み合わせるものである。コラム摩擦成分を無視した場合、等式(1)は、以下の様に書き換えられることができる:
【0052】
【数2】
【0053】
ラプラス変換を使用した場合、等式(3)は、以下の様に書き換えられることができる:
【0054】
【数3】
【0055】
等式(4)を基にすると、ステアリングコラムのダイナミクスは、以下の伝達関数によって描写することができる:
【0056】
【数4】
【0057】
尚式中、ステアリングコラム角度θは、出力値、電動モータ角θとドライバーによってかけられたトルクTが、双方の入力値であり、これらは、ステアリングコラム角度θに影響を与える。
【0058】
等式(5)によれば、二つの異なる角成分を観察することができる。一つの角成分は、電動モータ角θより、得られる、即ち:
【0059】
【数5】
【0060】
他の角成分は、ドライバー・トルクTから得られる:
【0061】
【数6】
【0062】
等式(2)から認識できる様に、電動モータ角は、二つの入力値、即ち、操舵コントローラが、ドライバー操舵サポート、或いは、自律的走行に必要なトルクを発生させるために使用する電動モータ電流i、並びに、道路とタイヤの間の接触によって発生される力を表す、道路、乃至、地面からの応力Fに依存している。車両が自動的に操縦されている場合、或いは、操舵輪が道路のポットホールを超える時に、電動モータ角が影響を受ける。これは、該角成分θを、ステアリングホイール角θに加算し、角成分θには、影響を与えない。この様にすることで、道路のポットホールや凹凸、並びに、自動的な操舵マヌーバが、電動モータ角θが、ステアリングホイール角に影響を与える。
【0063】
等式(5), (6)並びに(7)によれば、自動的な操舵マヌーバ、或いは、道路の応力がある場合に、操舵トルク測定において認識できる影響、乃至、効果を、電動モータトルクθによって、誘導される、乃至、発生する角成分のみを分析することによって、分離することが可能になる。
【0064】
等式(7)から明らかなように、ドライバーによってかけられたトルクが、0[N]になるや否や、ドライバーが、ステアリングホイールから手を離したことを推定できる。ドライバー・トルクの影響を、ステアリングホイール角θによって分析することにより、即ち、角成分θの振幅から、ドライバーの手が、ステアリングホイール上にあるか否かを検出する、乃至、確認することが可能である。最新の、乃至、その時点にドライバーによってかけられているトルクTを得たら直ちに、信頼性ある手動操作検出を実施することができる。
【0065】
ドライバーによってステアリングホイールにかけられているドライバー・トルクTを割り出す、乃至、推定するためには、等式(1)に示されているモデルを用いることができる。非線形的摩擦成分を無視した場合、等式は、以下のように表すことができる:
【0066】
【数7】
【0067】
等式の右側の第一項は、トルクセンサ3によって測定されたトルクを表している。これは、以下の様に表されることができる:
【0068】
【数8】
【0069】
即ち、該等式(8)は、以下の様に書き換えられることができる:
【0070】
【数9】
【0071】
ラプラス変換を用い、
【数10】
【0072】
であることを考慮した場合、トランスファ・ファンクションは、以下の様に割り出されることができる:
【0073】
【数11】
【0074】
即ち、最新、乃至、その時点のドライバー・トルクTは、等式(11)から以下の様に導き出されることができる:
【0075】
【数12】
【0076】
等式(12)の右側のトランスファ・ファンクションによって導入されるダイナミクスを相殺するためには、等式(12)に、トランスファ・ファンクションの逆数を積算することができる。ローパスフィルタを用いる場合、ドライバー・トルクTは、以下の様に表すことができる:
【0077】
【数13】
【0078】
尚式中、
【0079】
【数14】
【0080】
は、該当するフィルタの実数係数であるが、フィルタの次数は、
【0081】
【数15】
【0082】
によって表されることができる、但し、n≧m+1であるとする。
【0083】
計算ユニット5は、ドライバーが、ステアリングホイールを、彼の手で握っているか、或いは、ドライバーが、ステアリングホイールから手を放しているかを示すフラッグFを生成する。例えば、フラッグF = 0は、手が、ステアリングホイール上にあることを、フラッグF = 1は、手が、ステアリングホイールから放れたことを示している。この等式(13)に示されているフィルタは、例えば、シンプルな二次ローパスフィルタ
【0084】
【数16】
【0085】
として実装されることができる。
【0086】
本発明に係る検出方法は、その時点においてステアリングホイールにかけられているドライバー・トルクを推定、乃至、算出するための正確なモデルをベースにしている。ドライバー・トルクシグナルをステアリングホイールの角成分に転換することにより、シンプルな定量、並びに、調整、乃至、適合を実施することができる。本発明に係る方法は、ドライバーの手が、ステアリングホイール上にあるか否かを割り出すために、複雑な判断ロジックを必要としない。本発明に係る方法は、外部からの影響、特に、操舵トルクセンサの測定に作用する影響に対して非常に堅牢である。本発明に係る方法は、二つの測定シグナルのみ、即ち、測定されたステアリングホイールのステアリングホイール・トルクと、測定されたステアリングホイールに接続されているステアリングコラムの角速度のみを必要としている。これら双方の測定シグナルは、略すべての車両制御システムにおいて既に使用されている。よって、本発明に係るステアリングホイールの手動操作を検出するための装置及び方法は、ステアリングホイールの手動操作の望まれる検出を実施するために更なるセンサの取付を必要としていないと言う特別な長所を有している。よって、本発明に係る検出方法と本発明に係る検出手段1を実装するための技術的コストは、比較的、僅かである。
【0087】
検出手段1の計算ユニット5によって生成されたフラッグは、ドライバー・アシスタント・システムの他の制御ユニットに供給されることができる。フラッグに依存して、例えば、ドライバーへの警告を実施することができる。更には、特定の自動化された車両介入を、セットされているフラッグに依存して、自動的に中止させることも可能である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】