特表2019-537549(P2019-537549A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-537549(P2019-537549A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】アビバクタム中間体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20191129BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20191129BHJP
   A61K 31/439 20060101ALN20191129BHJP
【FI】
   C07D471/08
   A61P31/04
   A61K31/439
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-503234(P2019-503234)
(86)(22)【出願日】2018年3月6日
(85)【翻訳文提出日】2019年1月21日
(86)【国際出願番号】CN2018078070
(87)【国際公開番号】WO2019075984
(87)【国際公開日】20190425
(31)【優先権主張番号】201710968060.6
(32)【優先日】2017年10月18日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519016251
【氏名又は名称】新発薬業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】戚 聿新
(72)【発明者】
【氏名】李 新発
(72)【発明者】
【氏名】王 保林
(72)【発明者】
【氏名】屈 虎
(72)【発明者】
【氏名】徐 欣
(72)【発明者】
【氏名】鞠 立柱
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA09
4C065BB06
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH08
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL03
4C065LL04
4C065PP01
4C065QQ02
4C065QQ05
4C086AA04
4C086CB05
4C086ZB35
(57)【要約】
アビバクタム中間体の調製方法、具体的には({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)の調製方法に関する。5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(III)を原料とし、式IVで示されるアミノ化物とアミド化反応させて式V化合物を調製し、得られた化合物Vをカルボニル化試薬により環状尿素化して式VI化合物を得、触媒水素化分解によりベンジル又は置換化ベンジルを脱し、三酸化硫黄錯化合物により硫酸エステル化し、テトラブチルアンモニウム塩化して最終生成物(II)を得る。本発明に係る方法は反応条件が制御されやすく、操作性が高く、プロセスが簡潔であり、コストが低く、副産物が少なく、反応する原子は経済性が高く、得られる生成物(II)は純度も収率も高い。【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリAが存在する溶媒Aの中で、下記の式III化合物が式IVで示されるアミノ化物とアミド化反応し、式V化合物を得る工程(1)と、
【化1】
(式III化合物に示されるRはC1−6脂肪族基又はアルキル化フェニルである;好ましくは、前記Rはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、ベンジル、オルト−メチルベンジル、パラ−メチルベンジルからなる群より選ばれた1種であり、 式IV化合物に示されるR’は水素、オルト−メトキシ、オルト−メチル、パラ−メトキシ又はパラ−メチルからなる群より選ばれた1種であり、 式V化合物に示されるR’は式IV化合物に示されるR’と同じである。) アルカリBが存在する溶媒Bの中で、下記の式V化合物をカルボニル化試薬により環状尿素化させて式VI化合物を得るという工程(2)と、
【化2】
(式VI化合物に示されるR’は式IV化合物に示されるR’と同じである。) アルカリCが存在する溶媒Cの中で、式VI化合物を触媒水素化分解によりベンジル又は置換化ベンジルを脱し、三酸化硫黄錯化合物により硫酸エステル化して生成物を得、次にテトラブチルアンモニウム塩化させて下記の式II化合物を調製して得るという工程(3)と、
【化3】
を含む ことを特徴とするアビバクタム中間体の調製方法。
【請求項2】
工程(1)において、前記溶媒Aはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メトキシシクロペンタン又はトルエンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の混合物であり、 工程(1)において、前記溶媒Aと式III化合物との質量比が4〜20:1であり、 好ましくは、工程(1)において、前記アルカリAは無機アルカリ又は有機アルカリであり、前記無機アルカリは炭酸カリウムと炭酸ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種の混合物であり、前記有機アルカリはジベンジルアミンであり、工程(1)において、前記アルカリAと式III化合物とのモル比が2.0〜5.0:1である 請求項1に記載のアビバクタム中間体の調製方法。
【請求項3】
工程(1)において、式IVで示されるアミノ化物はジベンジルアミン、ジ(オルト−メトキシ)ベンジルアミン、ジ(パラ−メトキシ)ベンジルアミン、ジ(オルト−メチル)ベンジルアミン、ジ(パラ−メチル)ベンジルアミンからなる群より選ばれた1種であり、 好ましくは、工程(1)において、式IVで示されるアミノ化物と式III化合物とのモル比が1〜4:1である 請求項1に記載のアビバクタム中間体の調製方法。
【請求項4】
工程(1)において、前記アミド化反応の温度が0〜100℃であり、好ましくは、前記アミド化反応の温度が30〜80℃である 請求項1に記載のアビバクタム中間体の調製方法。
【請求項5】
工程(2)において、前記溶媒Bはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メトキシシクロペンタン、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール又はトルエンからなる群より選ばれる1種又は2種の混合物であり、工程(2)において、前記溶媒Bと式V化合物との質量比が4〜27:1であり、 好ましくは、工程(2)において、前記アルカリBは有機アルカリであり、工程(2)において、前記アルカリBと式V化合物とのモル比が2〜6:1である 請求項1に記載のアビバクタム中間体の調製方法。
【請求項6】
工程(2)において、前記カルボニル化試薬と式V化合物とのモル比が0.3〜3:1である 請求項1に記載のアビバクタム中間体の調製方法。
【請求項7】
工程(2)において、前記カルボニル化試薬はトリホスゲン、ジホスゲン、カルボニルジイミダゾール、二炭酸ジ−tert−ブチルからなる群より選ばれた1種であり、 好ましくは、前記トリホスゲンと式V化合物とのモル比が0.3〜1.5:1であり、前記ジホスゲンと式V化合物とのモル比が0.5〜2.0:1であり、前記カルボニルジイミダゾール又は二炭酸ジ−tert−ブチルと式V化合物とのモル比が1.0〜3.0:1である 請求項1に記載のアビバクタム中間体の調製方法。
【請求項8】
工程(2)において、前記環状尿素化の反応温度が−20〜100℃であり、好ましくは、前記環状尿素化の反応温度が10〜40℃である 請求項1に記載のアビバクタム中間体の調製方法。
【請求項9】
工程(3)において、前記溶媒Cはイソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、水からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であり、 工程(3)において、前記溶媒Cと式VI化合物との質量比が4〜20:1であり、 好ましくは、工程(3)において、前記アルカリCは有機アルカリであり、工程(3)において、前記アルカリCと式VI化合物とのモル比が0.1〜0.3:1であり、 好ましくは、工程(3)において、前記触媒水素化分解の触媒はパラジウムの質量含有量が5%であるパラジウム−カーボン又はパラジウムの質量含有量が10%であるパラジウム−カーボンであり、前記パラジウム−カーボンにおける含水量が5〜55wt%であり、工程(3)において、前記触媒水素分解の触媒の質量は式VI化合物の質量の1.0〜20.0%であり、前記触媒水素化分解の際に用いされる水素ガスの圧力が0.05〜0.30Mpaであり、 好ましくは、工程(3)において、前記三酸化硫黄錯化合物は三酸化硫黄トリメチルアミン、三酸化硫黄ピリジン、三酸化硫黄トリエチルアミンからなる群より選ばれる1種であり、工程(3)において、三酸化硫黄錯化合物と式VI化合物とのモル比が1.0〜2.0:1であり、 好ましくは、工程(3)において、前記テトラブチルアンモニウム塩化するためのテトラブチルアンモニウム源はテトラブチル水酸化アンモニウム又はテトラブチル酢酸アンモニウムであり、工程(3)において、前記テトラブチルアンモニウム塩化するためのテトラブチルアンモニウム源と式VI化合物とのモル比が0.8〜1.2:1である 請求項1に記載のアビバクタム中間体の調製方法。
【請求項10】
工程(3)において、前記触媒水素化分解の反応温度と硫酸エステル化の反応温度はいずれも−10〜60℃であり、好ましくは、前記触媒水素化分解の反応温度と硫酸エステル化の反応温度はいずれも10〜40℃であるり、 好ましくは、工程(3)において、前記テトラブチルアンモニウム塩化の反応温度は0〜50℃であり、さらに好ましくは、前記テトラブチルアンモニウム塩化の反応温度は10〜30℃である 請求項1に記載のアビバクタム中間体の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アビバクタム中間体の調製方法、具体的に({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩の簡便な調製方法に関し、医薬生化学の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
アビバクタムはジアザビシクロオクタノン化合物の非β−ラクタム系抑制剤に属する。アビバクタムはA型(ESBLとKPCを含む)とC型のβ−ラクタマーゼを抑制することができる。アビバクタムは各種のセファロスポリンとカルバペネム系抗生物質とともに用いる場合、広域スペクトル抗菌活性を有し、特に、基質特異性拡張型β−ラクタマーゼを含む大腸菌とクレブス肺炎桿菌、過剰なAmpC酵素を含む大腸菌及びAmpCと基質特異性拡張型β−ラクタマーゼを同時に含む大腸菌に対する活性が顕著である。アビバクタム(I)はCAS番号が1192491−61−4であり、化学名が[(1R,2S,5R)−2−(アミノカルボニル)−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタ−6−イル]硫酸ナトリウムであり、構造式が下記の式Iのように示される。
【0003】
【化1】
【0004】
特許文献1〜7には、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(III)を原料とし、それぞれアミド化が先で環状尿素化が後とする反応経路又は環状尿素化が先でアミド化が後とする反応経路により(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドを調製し、次にパラジウム−カーボンの触媒水素化分解によりベンジルを脱し、三酸化硫黄錯化合物により硫酸エステル化し、アンモニウム塩化し、イオン交換によりアビバクタム(I)を調製することが開示され、反応経路1に示される。
【0005】
【化2】
反応経路1
【0006】
1、アミド化が先で環状尿素化が後とする方法については、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(III)がアンモニアガスのメタノール溶液又はアンモニア水のアルコール溶液とアミド化し、(2S,5R)−5−ベンジルオキシアミノピペリジン−2−ホルムアミドを得、9−フルオレニルクロロギ酸メチル(FMОC−Cl)又は二炭酸ジ−tert−ブチルによりピペリジン環のアミノを保護し、カルボニルジイミダゾールがベンジルオキシアミンとカルボニル化反応し、ジエチルアミンでピペリジン環の保護剤を脱し、環状尿素化して総収率が61.2〜89.1%である(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドを得る。
【0007】
この方法はアミド化した後でアミド基が残り、環状尿素化反応への要求が高く、安価で且つ入手しやすいトリホスゲン又はジホスゲンの使用が不可能であり、トリホスゲン又はジホスゲンの作用にてアミド基が脱水してシアノ基が生じやすく、副産物の含有量が高く、精製するのが難しいからである。反応経路2に示される。
【0008】
【化3】
反応経路2
【0009】
高選択性のカルボニルジイミダゾールを環状尿素化試薬として用いるとしても、9−フルオレニルクロロギ酸メチル又は二炭酸ジ−tert−ブチルを用いてピペリジン環のアミノ基を保護する必要がある。そうしないと、カルボニルイミダゾールは二つのアミノ(ピペリジン環におけるアミノ及びベンジルオキシアミノにおけるアミノ)の反応活性に似ているため、二つの窒素原子にイミダゾールカルボニルが導入され且つモル比が約1:1である二つの誘導体が生じるが、ピペリジン環におけるイミダゾールカルボニルは優先してそのオルト位に存在するホルムアミド基と反応するため、目標生成物が得られず、製品収率が50%未満である。反応経路3に示される。
【0010】
【化4】
反応経路3
【0011】
用いられる保護剤である9−フルオレニルクロロギ酸メチル又は二炭酸ジ−tert−ブチルは価格が高いだけでなく、9−フルオレニルクロロギ酸メチルと二炭酸ジ−tert−ブチルはカルボニル基を一つのみ供給するため、反応する原子は経済性が劣り、操作手順が煩雑である。
【0012】
2、環状尿素化が先でアミド化が後とする方法については、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(III)を環状尿素化試薬(トリホスゲン−有機アルカリ、カルボニルジイミダゾール又は他のカルボニル化試薬)により環状尿素化し、水酸化リチウム水溶液などの塩基性条件下にてエステル基への加水分解により(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ギ酸を得、トリメチル塩化アセチル又は他の試薬によりカルボキシル基を酸無水物に活性化させ、アンモニア水によりアミド化して総収率が34.5〜65.5%である(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドを得る。環状尿素化されて得られる(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ギ酸ベンジルは活性が低く、アンモニアガスのメタノール溶液を直接に用いてアミド化することが不可能であるため、カルボキシル基になるようにエステル基を加水分解してからカルボキシル基を酸無水物に活性化させない限り、その後有効にアミド化することができず、操作手順も多い。
【0013】
したがって、上述した方法はいずれもアビバクタム中間体、即ち({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)の簡便な工業的な製造に有利ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】CN103649051A
【特許文献2】CN105294690A
【特許文献3】CN106866668A
【特許文献4】WО2012086241
【特許文献5】US8148540
【特許文献6】US9284273
【特許文献7】US9567335
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
先行技術における上記問題点に鑑み、本発明はアビバクタム中間体、即ち({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)に関する簡便な調製方法を提供するものである。当該方法は反応条件が制御されやすく、操作性が高く、プロセスが簡潔であり、コストが低く、副産物が少なく、反応する原子は経済性が高く、得られる生成物(II)は純度も収率も高い。得られる生成物(II)を利用してイオン交換によりアビバクタム(I)を調製することができる。
【0016】
本明細書で用いられる用語「式II化合物」は、アビバクタム中間体、即ち({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩を指し、その構造式に示される「−Bu4」はテトラブチルを指す。
【0017】
本明細書で用いられる用語「式III化合物」は、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩を指し、そのうち式中に示される「−Bn」はベンジルを指す。
【0018】
本明細書で用いられる用語「式V化合物」は、N,N−ジ(置換化)ベンジル−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミドを指し、そのうち式中に示される「−Bn」はベンジルを指す。
【0019】
本明細書で用いられる用語「式VI化合物」は、N,N−ジ(置換化)ベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドを指し、そのうち式中に示される「−Bn」はベンジルを指す。
【0020】
本明細書で用いられる化合物の番号は構造式の番号と完全に一致しており、いずれも同じ化合物を指す。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願に係る発明は以下のとおりである。 アルカリAが存在する溶媒Aの中で、式III化合物が式IVで示されるアミノ化物とアミド化反応し、式V化合物を得るという工程(1)と、
【0022】
【化5】
【0023】
(そのうち、式III化合物に示されるRはC1−6脂肪族基又はアルキル化フェニルである;好ましくは、前記Rはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、ベンジル、オルト−メチルベンジル、パラ−メチルベンジルからなる群より選ばれた1種であり、 式IV化合物に示されるR’は水素、オルト−メトキシ、オルト−メチル、パラ−メトキシ又はパラ−メチルからなる群より選ばれた1種であり、 式V化合物に示されるR’は式IV化合物に示されるR’と同じである。)
【0024】
アルカリBが存在する溶媒Bの中で、式V化合物をカルボニル化試薬により環状尿素化させて式VI化合物を得るという工程(2)と、
【0025】
【化6】
【0026】
(そのうち、式VI化合物に示されるR’は式IV化合物に示されるR’と同じである。)
【0027】
アルカリCが存在する溶媒Cの中で、式VI化合物を触媒水素化分解によりベンジル又は置換化ベンジルを脱し、三酸化硫黄錯化合物により硫酸エステル化して生成物を得、次にテトラブチルアンモニウム塩化させて式II化合物を調製して得るという工程(3)と、
【0028】
【化7】
【0029】
を含む、アビバクタム中間体の調製方法。
【0030】
好ましくは、工程(1)において、前記溶媒Aはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メトキシシクロペンタン又はトルエンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の混合物である。
【0031】
好ましくは、工程(1)において、前記溶媒Aと式III化合物との質量比が4〜20:1である。
【0032】
好ましくは、工程(1)において、前記アルカリAは無機アルカリ又は有機アルカリであり、好ましくは、前記無機アルカリは炭酸カリウムと炭酸ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種の混合物であり、前記有機アルカリはジベンジルアミンである。
【0033】
好ましくは、工程(1)において、前記アルカリAと式III化合物とのモル比が2.0〜5.0:1である。
【0034】
好ましくは、工程(1)において、式IVで示されるアミノ化物はジベンジルアミン、ジ(オルト−メトキシ)ベンジルアミン、ジ(パラ−メトキシ)ベンジルアミン、ジ(オルト−メチル)ベンジルアミン、ジ(パラ−メチル)ベンジルアミンからなる群より選ばれた1種である。
【0035】
好ましくは、工程(1)において、式IVで示されるアミノ化物と式III化合物とのモル比が1〜4:1である。
【0036】
好ましくは、工程(1)において、前記アミド化反応の温度が0〜100℃であり、好ましくは、前記アミド化反応の温度が30〜80℃である。反応時間が1〜8時間である。
【0037】
好ましくは、工程(2)において、前記溶媒Bはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メトキシシクロペンタン、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール又はトルエンからなる群より選ばれた1種又は2種の混合物である。
【0038】
好ましくは、工程(2)において、前記溶媒Bと式V化合物との質量比が4〜27:1である。
【0039】
好ましくは、工程(2)において、前記アルカリBは有機アルカリであり、好ましくは、前記有機アルカリはトリエチルアミン又はトリn−ブチルアミンである。
【0040】
好ましくは、工程(2)において、前記アルカリBと式V化合物とのモル比が2〜6:1である。
【0041】
好ましくは、工程(2)において、前記カルボニル化試薬と式V化合物とのモル比が0.3〜3:1である。
【0042】
好ましくは、工程(2)において、前記カルボニル化試薬はトリホスゲン、ジホスゲン、カルボニルジイミダゾール、二炭酸ジ−tert−ブチルからなる群より選ばれた1種である。
【0043】
好ましくは、前記トリホスゲンと式V化合物とのモル比が0.3〜1.5:1であり、前記ジホスゲンと式V化合物とのモル比が0.5〜2.0:1であり、前記カルボニルジイミダゾール又は二炭酸ジ−tert−ブチルと式V化合物とのモル比が1.0〜3.0:1である。
【0044】
好ましくは、工程(2)において、前記環状尿素化の反応温度が−20〜100℃であり、好ましくは、前記環状尿素化の反応温度が10〜40℃である。反応時間が4〜10時間である。
【0045】
好ましくは、工程(3)において、前記溶媒Cはイソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、水からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物である。
【0046】
好ましくは、工程(3)において、前記溶媒Cと式VI化合物との質量比が4〜20:1である。
【0047】
好ましくは、工程(3)において、前記アルカリCは有機アルカリであり、好ましくは、前記有機アルカリはトリエチルアミンである。
【0048】
好ましくは、工程(3)において、前記アルカリCと式VI化合物とのモル比が0.1〜0.3:1である。
【0049】
好ましくは、工程(3)において、前記触媒水素化分解の触媒はパラジウムの質量含有量が5%であるパラジウム−カーボン又はパラジウムの質量含有量が10%であるパラジウム−カーボンであり、前記パラジウム−カーボンにおける含水量が5〜55wt%である。
【0050】
好ましくは、工程(3)において、前記触媒水素化分解の触媒の質量は式VI化合物の質量の1.0〜20.0%であり、前記触媒水素化分解の際に用いされる水素ガスの圧力が0.05〜0.30Mpaである。
【0051】
好ましくは、工程(3)において、前記三酸化硫黄錯化合物は三酸化硫黄トリメチルアミン、三酸化硫黄ピリジン、三酸化硫黄トリエチルアミンからなる群より選ばれた1種である。
【0052】
好ましくは、工程(3)において、三酸化硫黄錯化合物と式VI化合物とのモル比が1.0〜2.0:1である。
【0053】
好ましくは、工程(3)において、前記テトラブチルアンモニウム塩化するためのテトラブチルアンモニウム源はテトラブチル水酸化アンモニウム又はテトラブチル酢酸アンモニウムである。
【0054】
好ましくは、工程(3)において、前記テトラブチルアンモニウム塩化するためのテトラブチルアンモニウム源と式VI化合物とのモル比が0.8〜1.2:1である。
【0055】
好ましくは、工程(3)において、前記触媒水素化分解の反応温度と硫酸エステル化の反応温度はいずれも−10〜60℃であり、好ましくは、前記触媒水素化分解の反応温度と硫酸エステル化の反応温度はいずれも10〜40℃である。前記触媒水素化分解、硫酸エステル化は「ワンポット方法」と称される反応である。
【0056】
好ましくは、工程(3)において、前記触媒水素化分解の反応時間と硫酸エステル化の反応時間はいずれも1〜6時間である。
【0057】
好ましくは、工程(3)において、前記テトラブチルアンモニウム塩化の反応温度は0〜50℃であり、好ましくは、前記テトラブチルアンモニウム塩化の反応温度は10〜30℃である。
【0058】
好ましくは、工程(3)において、前記テトラブチルアンモニウム塩化の反応時間は1〜15時間であり、好ましくは、前記テトラブチルアンモニウム塩化の反応時間は2〜4時間である。
【0059】
本発明において、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(III)を原料として式IVで示されるアミノ化物とアミド化によりN,N−ジ(置換化)ベンジル−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V)を調製し、得られる化合物Vをカルボニル化試薬により環状尿素化させてN,N−ジ(置換化)ベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI)を得、触媒水素化分解によりベンジル又は置換化ベンジルを脱し、三酸化硫黄錯化合物により硫酸エステル化し、テトラブチルアンモニウム塩化して({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)を調製し(反応経路4を参照)、得られるIIを利用してイオン交換によりアビバクタム(I)を調製することができる。
【0060】
【化8】
反応経路4
【発明の効果】
【0061】
1、本発明において、得られるN,N−ジ(置換化)ベンジル−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V)の安定性が高く、反応設計からみれば、その2−位に接続するホルムアミドの副反応を回避し、ピペリジン環への保護が不要であり、安価で且つ入手しやすいカルボニル化試薬を直接に用いて環状尿素化することができ、反応条件が制御されやすく、操作性が高く、プロセスが簡潔であり、反応する原子は経済性が高く、コストが低い。
【0062】
2、また、驚くことには、N,N−ジ(置換化)ベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI)への水素化分解反応活性が好適であるため、系の中で水素化分解による生成物である(2S,5R)−6−ヒドロキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドの積み重ねを少なくする。水素化分解による生成物が生じると、すぐに硫酸エステル化が進むことが可能なだけでなく、得られる生成物(II)は純度も収率も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、これらの実施例に限定されていない。 特に断らない限り、実施例で記載される「%」はいずれも質量百分率を意味するものとする。
【0064】
市場から購入できる(済南勤思薬業公司から購入できる)、原料である5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(III)は白い粉末の固体であり、光学純度が99.6%である。
【0065】
液体クロマトグラフにより反応工程と製品の純度をモニターし、キラルカラム(ES−OVS、150mm×4.6mm、アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies))が配置される液体クロマトグラフにより光学純度(面積比%)を検測し、収率とe.e%値を算出する。
【0066】
<実施例1:N,N−ジベンジル−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V1)の調製> 攪拌機と温度計が配置される500mLの四つ口フラスコにテトラヒドロフラン250g、炭酸カリウム28.0g、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸ベンジルシュウ酸塩(III)43.0g(0.1モル)、ジベンジルアミン30g(0.15モル)を加え、40〜45℃にて5時間攪拌しながら反応させる。20〜25℃まで冷却し、ろ過し、それぞれ30gの濾過ケークをテトラヒドロフランで2回洗浄する。有機相を合わせて、蒸留によりテトラヒドロフランを回収し、残り物にメチルt−ブチルエーテル40gを加え、叩解して洗浄し、ろ過して液相純度が99.92%で且つ収率が95.8%であるN,N−ジベンジル−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド41.1gを得る。 得られる製品の核磁気共鳴データは1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:1.12(1H,q),1.29(1H,q),1.86(2H,d),2.29(1H,t),2.76(1H,m),2.95(1H,d),3.18(1H,d),4.62(4H,s),4.83(2H,s),6.50(1H,d),7.28−7.47(15H,m)である。
【0067】
<実施例2:N,N−ジベンジル−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V1)の調製> 攪拌機と温度計が配置される500mLの四つ口フラスコに1,2−ジクロロエタン300g、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸ベンジルシュウ酸塩(III)43.0g(0.1モル)、ジベンジルアミン60g(0.30モル)を加え、50〜55℃にて4時間攪拌しながら反応させる。20〜25℃まで冷却し、ろ過し、それぞれ30gの濾過ケークを1,2−ジクロロエタンで2回洗浄する。有機相を合わせて、蒸留により1,2−ジクロロエタンを回収し、残り物にメチルt−ブチルエーテル50gを加え、叩解して洗浄し、ろ過して液相純度が99.86%で且つ収率が94.4%であるN,N−ジベンジル−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド40.5gを得る。
【0068】
<実施例3:N,N−ジ(パラ−メトキシベンジル)−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V2)の調製> 攪拌機と温度計が配置される500mLの四つ口フラスコにテトラヒドロフラン250g、炭酸カリウム28.0g、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エチルシュウ酸塩(III)37.0g(0.1モル)、ジ(パラ−メトキシ)ベンジルアミン40g(0.16モル)を加え、50〜55℃にて4時間攪拌しながら反応させる。20〜25℃まで冷却し、ろ過し、それぞれ30gの濾過ケークをテトラヒドロフランで2回洗浄する。有機相を合わせて、蒸留によりテトラヒドロフランを回収し、残り物にメチルt−ブチルエーテル40gを加え、叩解して洗浄し、ろ過して液相純度が99.93%で且つ収率が93.5%であるN,N−ジ(パラ−メトキシベンジル)−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド45.7gを得る。 得られる製品の核磁気共鳴データは1HNMR(400MHz,DMSO−d6)1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:1.15(1H,q),1.34(1H,q),1.88(2H,d),2.30(1H,t),2.90(1H,m),3.01(1H,d),3.21(1H,d),3.80(6H,s),4.46(4H,s),4.76(2H,s),6.48(1H,d),6.90(4H,d),7.25(4H,d),7.55(5H,m)である。
【0069】
<実施例4:N,N−ジ(パラ−メチルベンジル)−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V3)の調製> 攪拌機と温度計が配置される500mLの四つ口フラスコに2−メチルテトラヒドロフラン250g、炭酸カリウム30.0g、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸t−ブチルシュウ酸塩(III)39.5g(0.1モル)、ジ(パラ−メチル)ベンジルアミン40g(0.18モル)を加え、60〜65℃にて4時間攪拌しながら反応させる。20〜25℃まで冷却し、ろ過し、それぞれ30gの濾過ケークを2−メチルテトラヒドロフランで2回洗浄する。有機相を合わせて、蒸留により2−メチルテトラヒドロフランを回収し、残り物にメチルt−ブチルエーテル40gを加え、叩解して洗浄し、ろ過して液相純度が99.89%で且つ収率が95.5%であるN,N−ジ(パラ−メチルベンジル)−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド43.6gを得る。 得られる製品の核磁気共鳴データは1HNMR(400MHz,DMSO−d6)1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:1.13(1H,q),1.31(1H,q),1.85(2H,d),2.06(6H,s),2.27(1H,t),2.85(1H,m),2.91(1H,d),3.17(1H,d),4.60(4H,s),4.78(2H,s),6.54(1H,d),7.08(4H,d),7.19(4H,d),7.48(5H,m)である。 化合物V1、V2及びV3の構造式は以下のように示される。
【0070】
【化9】
【0071】
<実施例5:N,N−ジベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI1)の調製> 攪拌機と温度計が配置される1000mLの四つ口フラスコにテトラヒドロフラン250g、実施例1の方法により調製されるN,N−ジベンジル−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V1)43g(0.1モル)、トリエチルアミン50gを加え、冷却し、−10〜0℃にてトリホスゲン30g(0.1モル)とテトラヒドロフランの溶液100gを加え、10〜20℃にて8時間攪拌しながら反応させる。反応液を400gの氷水混合物に注ぎ、層化し、それぞれ100gの水層をジクロロメタンで3回抽出する。有機相を合わせて、それぞれ50gの該混合有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄し、有機相から溶媒を回収した後、残り物にメチルt−ブチルエーテル60gを加え、叩解して洗浄し、ろ過して液相純度が99.96%で且つ収率が92.5%であるN,N−ジベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド42.1gを得る。 得られる製品の核磁気共鳴データは1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:1.65(2H,m),1.84(1H,br),2.06(1H,m),2.90(2H,s),3.62(1H,s),3.68(1H,d),4.58(4H,s),4.93(2H,dd),7.28−7.47(15H,m)である。
【0072】
<実施例6:N,N−ジベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI1)の調製> 攪拌機と温度計が配置される500mLの四つ口フラスコにテトラヒドロフラン60g、実施例1の方法により調製されるN,N−ジベンジル−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V1)4.3g(0.01モル)、トリn−ブチルアミン5.0gを加え、冷却し、−10〜0℃にてジホスゲン3.0g(0.015モル)とテトラヒドロフランの溶液20gを加え、10〜20℃にて8時間攪拌しながら反応させる。反応液を200gの氷水混合物に注ぎ、層化し、それぞれ50gの水層をジクロロメタンで3回抽出する。有機相を合わせて、飽和塩化ナトリウム溶液を用いて毎回に20gで2回洗浄し、得られた有機相から溶媒を回収した後、残り物にメチルt−ブチルエーテル20gを加え、叩解して洗浄し、ろ過して液相純度が99.9%で且つ収率が91.2%であるN,N−ジベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド4.15gを得る。
【0073】
<実施例7:N,N−ジ(パラ−メトキシ)ジベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI2)の調製> 攪拌機と温度計が配置される500mLの四つ口フラスコにジクロロメタン100g、実施例3で調製されるN,N−ジ(パラ−メトキシベンジル)−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V2)4.9g(0.01モル)、トリn−ブチルアミン5.0gを加え、冷却し、−10〜0℃にてトリホスゲン3.0g(0.01モル)とジクロロメタンの溶液20gを加え、10〜20℃にて8時間攪拌しながら反応させる。反応液を200gの氷水混合物に注ぎ、層化し、それぞれ50gの水層をジクロロメタンで3回抽出する。有機相を合わせて、飽和塩化ナトリウム溶液を用いて毎回に20gで2回洗浄し、得られた有機相から溶媒を回収した後、残り物にメチルt−ブチルエーテル20gを加え、叩解して洗浄し、ろ過して液相純度が99.92%で且つ収率が92.2%であるN,N−ジベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド4.75gを得る。 得られる製品の核磁気共鳴データは1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:1.60(2H,m),1.81(1H,br),2.02(1H,m),2.88(2H,s),3.59(1H,s),3.62(1H,d),3.78(6H,s),4.55(4H,s),4.85(2H,dd),6.82(4H,d),7.16(4H,d),7.47(5H,m)である。
【0074】
<実施例8:N,N−ジ(パラ−メチル)ジベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI3)の調製> 攪拌機と温度計が配置される500mLの四つ口フラスコにジクロロメタン100g、実施例4で調製されるN,N−ジ(パラ−メチルベンジル)−5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ホルムアミド(V3)4.6g(0.01モル)、トリエチルアミン4.0gを加え、冷却し、0〜10℃にてトリホスゲン3.0g(0.01モル)とジクロロメタンの溶液20gを加え、20〜30℃にて6時間攪拌する。反応液を200gの氷水混合物に注ぎ、層化し、それぞれ50gの水層をジクロロメタンで3回抽出する。有機相を合わせて、飽和塩化ナトリウム溶液を用いて毎回に2gで2回洗浄し、得られた有機相から溶媒を回収した後、残り物にメチルt−ブチルエーテル20gを加え、叩解して洗浄し、ろ過して液相純度が99.96%で且つ収率が92.5%であるN,N−(パラ−メチル)ジベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド4.47gを得る。 得られる製品の核磁気共鳴データは1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:1.63(2H,m),1.85(1H,br),2.05(1H,m),2.10(6H,s),2.91(2H,s),3.62(1H,s),3.68(1H,d),3.83(6H,s),4.61(4H,s),4.88(2H,dd),6.84(4H,d),7.19(4H,d),7.51(5H,m)である。 化合物VI1、VI2及びVI3の構造式は以下のように示される。
【0075】
【化10】
【0076】
<実施例9:({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)の調製> ステンレス製反応釜の中にイソプロパノール14g、水17g、実施例5で調製して得られるN,N−ジベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI1)4.9g(0.01モル)、三酸化硫黄トリメチルアミン1.56g(0.0112モル)、トリエチルアミン0.2g(0.002モル)、パラジウムの質量含有量が10%であるパラジウム−カーボン(水含有量が55wt%である)0.11gを加える。釜を閉じた後、窒素ガスで保護する。水素ガスの圧力が0.07〜0.13MPaに維持されるように水素ガスを中断して通気させ、原料VI1が完全に反応するまで(この時圧力が高くなる)室温にて1時間保温する。窒素ガスで取り替えた後、室温にて継続して1.5時間保温する。酢酸0.16g(0.0026モル)を加えて中和した後、ろ過によりパラジウム−カーボンを除去し、水8.6gを用いて濾過ケークを洗浄する。酢酸n−ブチル26mlを用いて濾過液を洗浄し、分層して水相を取る。
【0077】
予めテトラブチル酢酸アンモニウム3.68g(0.0122モル)と酢酸0.06g(0.001モル)を水6.5gに溶解させてテトラブチル酢酸アンモニウム溶液を調製する。前記テトラブチル酢酸アンモニウム溶液の70wt%を前記洗浄されて分層した水相に加え、室温にて1〜2時間塩化する。ジクロロメタン26mlで有機相を抽出し、分層して有機相を取る。有機相に残った30wt%のテトラブチル酢酸アンモニウム溶液を加え、室温にて1〜2時間塩化する。次にジクロロメタン9mlで抽出する。有機相を合わせて20mlまで濃縮した後、メチルイソブチルケトン50mlを加える。40mlまで濃縮して0℃まで冷却する。吸引濾過して、メチルイソブチルケトン10mlで濾過ケークを洗浄する。真空乾燥して最終に液相純度が99.3%で且つ収率が88.7%である({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)4.5gを得る。 得られる製品の核磁気共鳴データは1HNMR(400 MHz, CDCl3) δ:1.00 (12H, t), 1.45(8H, m), 1.67 (9H, m), 1.87 (1H, m), 2.16 (1H, m), 2.37 (1H,dd), 2.87 (1H, d), 3.31 (9H,m), 3.91 (1H, d), 4.33 (1H, s), 5.87 (1H, s), 6.69 (1H,s)である。
【0078】
<実施例10:({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)の調製> 水素化反応釜の中にイソプロパノール16g、水20g、実施例7で調製して得られるN,N−ジ(パラ−メトキシ)ベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI2)4.9g(0.01モル)、三酸化硫黄トリメチルアミン1.56g(0.0112モル)、トリエチルアミン0.2g(0.002モル)、パラジウムの質量含有量が10%であるパラジウム−カーボン(水含有量が55wt%である)0.12gを加える。釜を閉じた後、窒素ガスで保護する。水素ガスの圧力が0.07〜0.13MPaに維持されるように水素ガスを中断して通気させ、原料VI2が完全に反応するまで(この時圧力が高くなる)室温にて1時間保温する。窒素ガスで取り替えた後、室温にて継続して1.5時間保温する。酢酸0.16g(0.0026モル)を加えて中和した後、ろ過によりパラジウム−カーボンを除去し、水10gを用いて濾過ケークを洗浄する。酢酸n−ブチル30mlを用いて濾過液を洗浄し、分層して水相を取る。
【0079】
予めテトラブチル酢酸アンモニウム3.68g(0.0122モル)と酢酸0.06g(0.001モル)を水7.5gに溶解させてテトラブチル酢酸アンモニウム溶液を調製する。前記テトラブチル酢酸アンモニウム溶液の70wt%を前記洗浄されて分層した水相に加え、室温にて1〜2時間塩化する。ジクロロメタン30mlで有機相を抽出し、分層して有機相を取る。有機相に残った30wt%のテトラブチル酢酸アンモニウム溶液を加え、室温にて1〜2時間塩化する。次にジクロロメタン9mlで抽出する。有機相を合わせて20mlまで濃縮した後、メチルイソブチルケトン50mlを加える。40mlまで濃縮して0℃まで冷却する。吸引濾過し、メチルイソブチルケトン10mlで濾過ケークを洗浄する。真空乾燥して最終に液相純度が99.1%で且つ収率が92.7%である({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)4.7gを得る。
【0080】
<実施例11:({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)の調製> ステンレス製反応釜の中にイソプロパノール15g、水18g、実施例8で調製して得られるN,N−ジ(パラ−メチル)ベンジル−(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI3)4.6g(0.01モル)、三酸化硫黄トリメチルアミン1.56g(0.0112モル)、トリエチルアミン0.2g(0.002モル)、パラジウムの質量含有量が10%であるパラジウム−カーボン(水含有量が55wt%である)0.11gを加える。釜を閉じた後、窒素ガスで保護する。水素ガスの圧力が0.07〜0.13MPaに維持されるように水素ガスを中断して通気させ、原料VI3が完全に反応するまで(この時圧力が高くなる)室温にて1時間保温する。窒素ガスで取り替えた後、室温にて継続して1.5時間保温する。酢酸0.16g(0.0026モル)を加えて中和した後、ろ過によりパラジウム−カーボンを除去し、水8.6gを用いて濾過ケークを洗浄する。酢酸n−ブチル26mlを用いて濾過液を洗浄し、分層して水相を取る。
【0081】
予めテトラブチル酢酸アンモニウム3.68g(0.0122モル)と酢酸0.06g(0.001モル)を水6.5gに溶解させてテトラブチル酢酸アンモニウム溶液を調製する。前記テトラブチル酢酸アンモニウム溶液の70wt%を前記洗浄されて分層した水相に加え、室温にて1〜2時間塩化する。ジクロロメタン26mlで有機相を抽出し、分層して有機相を取る。有機相に残った30wt%のテトラブチル酢酸アンモニウム溶液を加え、室温にて1〜2時間塩化する。次にジクロロメタン9mlで抽出する。有機相を合わせて20mlまで濃縮した後、メチルイソブチルケトン50mlを加える。40mlまで濃縮して0℃まで冷却する。吸引濾過して、メチルイソブチルケトン10mlで濾過ケークを洗浄する。真空乾燥して最終に液相純度が99.4%で且つ収率が86.8%である({[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニル)テトラブチルアンモニウム塩(II)4.4gを得る。
【国際調査報告】