(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
PS標的化抗体で治療可能な癌患者を特定および治療するための、特にバビツキシマブおよびバビツキシマブ併用療法を使用して癌患者を特定および治療するための、驚くべき新たな方法およびキットが開示される。本方法およびキットは、β2−糖タンパク質1(β2GPI)、特に機能性β2GPIの定義された範囲の治療前血中濃度が、より良好な治療結果を有する患者を正確に予測する指標として作用するという驚くべき発見に基づく。
患者において癌を治療する方法における使用のためのバビツキシマブであって、機能性β2−糖タンパク質1(β2GPI)が、前記患者の血液試料中に200μg/ml以上の濃度で存在し、前記機能性β2GPIが、ホスファチジルセリン(PS)およびバビツキシマブの両方に結合し、バビツキシマブが、第1の抗癌剤であり、前記方法が、少なくとも第2の抗癌剤を投与することをさらに含む、方法。
前記患者が、卵巣癌、胃癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、乳癌、食道癌、悪性神経膠腫、膠芽腫、前立腺癌、黒色腫、頭頸部癌、腎細胞癌、膀胱癌、膵臓癌、または肺癌を有する、請求項1または2に記載の使用のためのバビツキシマブ。
前記免疫チェックポイント抗体が、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、デュルバルマブ、またはアテゾリズマブである、請求項5に記載の使用のためのバビツキシマブ。
第1の抗癌剤および少なくとも第2の抗癌剤で治療可能な癌患者を診断する方法であって、前記第1の抗癌剤が、バビツキシマブであり、前記方法が、前記患者の血液試料中の機能性β2−糖タンパク質1(β2GPI)の濃度を測定することを含み、前記機能性β2GPIの血中濃度が200μg/ml以上である場合、前記患者がバビツキシマブおよび前記少なくとも第2の抗癌剤で治療可能であると決定され、前記機能性β2GPIが、ホスファチジルセリン(PS)およびバビツキシマブの両方に結合する、方法。
ヒト患者において癌を治療するための方法であって、第1および少なくとも第2の抗癌剤を前記患者に投与することを含み、前記第1の抗癌剤が、バビツキシマブであり、前記患者が、200μg/ml以上の機能性β2−糖タンパク質1(β2GPI)の治療前血中濃度を有し、前記機能性β2GPIが、ホスファチジルセリン(PS)およびバビツキシマブの両方に結合する、方法。
前記患者が、卵巣癌、胃癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、乳癌、食道癌、悪性神経膠腫、膠芽腫、前立腺癌、黒色腫、頭頸部癌、腎細胞癌、膀胱癌、膵臓癌、または肺癌を有する、請求項14〜22のいずれか1項に記載の方法。
機能性β2GPIの血中濃度が200μg/ml〜290μg/mlである場合、前記患者がバビツキシマブおよび少なくとも第2の抗癌剤で治療可能であると決定される、請求項14または15に記載の方法。
機能性β2−糖タンパク質1(β2GPI)を測定する方法であって、前記機能性β2GPIが、ホスファチジルセリン(PS)およびバビツキシマブの両方に結合し、前記方法が、
(a)ELISAプレートをホスファチジルセリン(PS)でコーティングして、PSコーティングELISAプレートを調製することと、
(b)バビツキシマブ、およびβ2GPIを含有することが疑われる生物学的試料を、前記試料中のβ2GPIを前記バビツキシマブおよび前記PSコーティングELISAプレートの両方に結合させるのに有効な条件下で、前記PSコーティングELISAプレートに添加することと、
(c)前記PSコーティングELISAプレートへのバビツキシマブおよびβ2GPIの前記結合を検出し、それによって前記試料中の前記機能性β2GPIを測定することと、を含む、前記方法。
前記バビツキシマブが、検出可能なシグナルを生成する検出可能な物質に結合しており、前記PSコーティングELISAプレートへのバビツキシマブおよびβ2GPIの結合が、前記検出可能なシグナルの検出および測定によって検出および測定される、請求項34〜38のいずれか1項に記載の方法。
β2GPIを含有する前記試料の添加前に、前記バビツキシマブが前記PSコーティングELISAプレートに添加される、請求項34〜39のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
現代では、患者の疾患リスクおよび/または予測される奏効などの要因に基づいて、個々の患者に合わせて治療を調整することにますます重点が置かれている。この概念は一般に、「個別化医療」として説明することができる。特定の治療法の有効性に寄与する異なる構成要素についてのより深い理解は、患者を層別化するための基礎を提供し、それによって連続した患者集団について治療結果を改善することができる。本発明は、バビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用する免疫療法を最適化するための新たなバイオマーカーを提供することによる、そのような線に沿った進歩となる。
【0033】
A.治療標的としてのホスファチジルセリン
ホスファチジルセリン(PS)は、上流免疫チェックポイントとして機能し、宿主の免疫応答を調節する、高度に免疫抑制性の分子である。したがって、PSは、癌およびウイルス感染症を含む様々な疾患に関与している。したがって、PS標的化抗体の形態にある免疫療法剤は、癌を含むこれらの疾患に対する新たな治療の選択肢を提供する。
【0034】
より詳細には、正常細胞において、PSは、原形質膜の内側リーフレットに分離されるが、様々な病態において、特に癌およびウイルス感染症において、罹患した異常細胞内で原形質膜の外側リーフレットに対して外在化される。癌の文脈において、PSの外在化を引き起こす環境ストレス要因のいくつかは、低酸素/再酸素負荷、酸化ストレス、および特定のサイトカインへの曝露である。PSの外在化はまた、細胞死および免疫食細胞クリアランスの条件下でも生じる(Birgeら、2016)。その後、PSが、免疫細胞上のPS受容体(例えば、TIM3およびTIM4、BAI1、スタビリン(stabilin)2、ならびにRAGE)によって、任意でいくつかの架橋タンパク質のうちの1つ以上を介して認識および結合されることで、PSは、免疫抑制を誘導および維持する。腫瘍微小環境内では、PSは、腫瘍血管内皮細胞、腫瘍細胞、および腫瘍由来のエキソソームの表面上に曝露され、免疫抑制のプロセスが重複しているため、抗腫瘍および炎症反応の発生が予防されている。
【0035】
曝露されたPSは、瀕死の細胞の認識およびクリアランスを促進し、免疫抑制性サイトカイン(例えば、TGF−βおよびIL−10)の放出を引き起こし、炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF−αおよびIL−12)の産生を阻害する、食作用シグナルである。PSはまた、マクロファージを免疫抑制性M2表現型に偏らせ、樹状細胞(DC)の成熟およびDCが抗原を提示する能力を阻害する一方で、DCを刺激して、T細胞耐性を促進する免疫抑制性メディエーターを分泌させる。要約すると、PSは、免疫抑制された腫瘍微小環境の誘導および維持における中心的要因である。
【0036】
B.PS標的化抗体
腫瘍微小環境内でPS曝露が腫瘍進行を促進する傾向のために、PS標的化抗体を使用して、免疫細胞上の特定の受容体へのPSの結合を遮断することによって、効果的な癌療法を提供することができる(Yinら、2013)。下記に例証されるように、いくつかのそのようなPS標的化抗体が、治療薬として開発されている。「PS標的化抗体」の群には、抗体がPSに直接結合するか、またはPSと強固な結合複合体を形成するのに血清タンパク質を必要とするかどうかに関わらず、インビトロでPSに操作可能に結合し、インビボで病態時に曝露されるPS(特に腫瘍細胞上および腫瘍血管上のPS)を特異的に局在化させ、それに結合する、全ての抗体が含まれる。そのような「直接的」および「間接的」PS標的化抗体は、以下により詳細に記載される。
【0037】
B1.バビツキシマブ
PS標的化抗体の前臨床潜在性を評価するために生成された初期のモノクローナル抗体は、3G4、IgG
3 mAbと呼ばれる抗体である(実施例I;Ranら、2005;Huangら、2005)。3G4抗体を分泌する雑種細胞株の試料をアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)に寄託し、ATCC受入番号PTA4545を与えた。寄託した雑種細胞の入手可能性は、いかなる政府の権限の下でもその特許法に従って付与された権利に違反して本発明を実施するための認可として解釈されるべきではない。
【0038】
バビツキシマブは、マウス可変(抗原結合)領域がヒト抗体定常領域に操作可能に結合している、3G4マウス抗体のヒトキメラバージョンである(実施例III、C)。バビツキシマブファミリーの抗体は、多数の米国特許、例えば、米国特許第7,247,303号および米国特許第7,572,448号に詳細に記載されており、バビツキシマブは、ATCC PTA4545として寄託された抗体のヒトキメラ形態を調製することによって再構築することができる。抗体のかなりの部分がヒト起源のものであるため、バビツキシマブは、患者に投与したときの免疫原性が低い。
【0039】
3G4およびバビツキシマブ抗体は、血清の存在下で、アニオン性リン脂質、特にPSに強く結合するが、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、およびカルジオリピン(CL)にも強く結合する(Ranら、2005)。これらのアニオン性リン脂質のうち、PSは、生理学的および病理学的に最も関連性がある。3G4およびバビツキシマブは、血清の存在に関わらず、中性リン脂質、ホスファチジルコリン(PC)、スフィンゴミエリン(SM)、またはホスファチジルエタノールアミン(PE)に対して検出可能な結合を呈さない。
【0040】
当初、3G4およびバビツキシマブ抗体は、PSに直接結合すると考えられていたが、PS結合は、β2−糖タンパク質1(β2GPI)として特定される血清タンパク質によって媒介されることが後に決定された(実施例IV;Lusterら、2006)。実際に、精製β2GPI、およびELISAに典型的に使用される10%の血清中に単に存在することによって提供されるβ2GPIを含む、β2GPIの存在下で実行される酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)において、3G4およびバビツキシマブはPSに強く結合する。
【0041】
アポリポタンパク質Hとしても知られるβ2GPIは、5つのドメイン、I、II、III、IV、およびV(1、2、3、4、および5)を有し、ドメイン構造は、哺乳動物にわたって保存されている。β2GPIは、三次構造としてそれら5つの識別可能なドメイン内に折り畳まれ、閉じた円形構造または開いたJ字形もしくはフック構造を有し得る。β2GPIは、酵素プラスミンでの切断などによって、Lys317/Thr318切断部位で、ドメインVが「ニック」されていない限り(これは、PS結合を破壊する)、そのC末端ドメインであるドメインV内の正電荷領域を通して、アニオン性リン脂質、特にPSに結合する(Huntら、1993;Hunt&Krilis、1994)。3G4およびバビツキシマブ抗体は、β2GPIのドメインIIに結合する。これは、治療抗体としての3G4およびバビツキシマブの安全性を強化するが、これは、β2GPIに結合する特定の他の抗体が病理学に関連付けられているが、それらの抗体はβ2GPIのドメインIに結合するためである。
【0042】
PSへの3G4およびバビツキシマブ抗体の高親和性結合は、抗体とβ2GPIとの二価相互作用を必要とする(実施例IV、
図8)。そのような抗体が不在である場合、β2GPIは、アニオン性リン脂質、特にPSに低い親和性をもってしか結合しない。これは、3G4およびバビツキシマブが、高親和性複合体としてβ2GPIの存在下でPSに結合し、PSへのβ2GPIの結合を1μMから1 nMへと調節することを示す研究において定量化されている。
【0043】
PSへの3G4およびバビツキシマブ抗体のβ2GPI依存性結合を、
図8に描写する。バビツキシマブファミリーの抗体は、β2GPIのドメインIIに結合する。述べた通り、バビツキシマブはβ2GPIのドメインIIに結合するため、それは、β2GPIのドメインIに結合する抗体が存在する抗リン脂質抗体症候群に関連するものなどの副作用とは無関係である(de Laatら、2005;de Laatら、2006;Ioannouら、2007)。抗体とβ2GPIとの高親和性二価相互作用は、PSが細胞表面上および細胞膜上で外在化される場合を含む、PSへの結果として生じる高親和性結合を調和させる。
【0044】
3G4およびバビツキシマブ抗体は、β2GPIに結合するが、それらは、インビボで病態時に曝露されるPSを特異的に局在化させ、それに結合するため、「PS標的化抗体」と呼ばれる。PSは、健康な正常細胞の内側で維持され、病態時にのみ細胞表面上に曝露されるため、インビボでの抗体局在化は、PSに特異的であるだけでなく、PSがマーカーである疾患、特に癌、ならびにウイルス感染症および特定の他の病理学にも特異的である。
【0045】
図8はまた、PSに結合するβ2GPI依存性抗体が、インビトロでもインビボと同じであるため、ELISAが治療法の正確なモデルであることも示す。特に、プレートがPSでコーティングされ、ELISAが血清の存在下で実行されるELISAにおいて、3G4、バビツキシマブなどの抗体は、PSと安定した結合複合体を形成することができる。したがって、ELISAアッセイは、治療中のインビボの状態を模倣し、ここで、PSは、腫瘍微小環境内の細胞またはウイルス感染細胞などの疾患環境内の細胞上にのみ特有に曝露される。ELISAと同様に、3G4およびバビツキシマブ抗体が曝露されたPSに遭遇するとき、それらは血液中に存在するβ2GPIと安定した結合複合体を形成することができる。PSがELISAウェル上にあるか、または罹患した細胞上にあるかに関わらず、抗体−β2GPI複合体は、モノマーβ2GPI、すなわち、PS標的化抗体を有しないβ2GPIに対するよりも、PSに対して1,000倍超高い親和性を有する。
【0046】
B2.11.31などの直接PS結合抗体
バビツキシマブなどの間接PS結合抗体またはPS標的化抗体に加えて、PS標的化抗体のファミリー全体は、PSに直接結合する抗体、すなわち、直接PS結合抗体または直接PS標的化抗体を含む。そのような「直接PS結合抗体」(または「直接PS標的化抗体」)は、PSに対して機能的に特異的であるだけでなく、(間接結合抗体と同様に)インビトロおよびインビボでPSを標的化し、それに結合もする抗体であるが、インビトロ結合アッセイにおいてすら、PSと強固な結合複合体を形成するのにβ2GPIなどの血清タンパク質は必要としない抗体である。
【0047】
そのような直接PS結合抗体の特定の一例は、9D2と呼ばれるマウスモノクローナル抗体である(Ranら、2002)。9D2抗体は、腫瘍血管を局在化させ、インビボで抗腫瘍効果を発揮することが示されている(Ranら、2002)。直接PS結合抗体の別の例は、11.31と呼ばれる完全ヒト抗体(PGN632)である。11.31抗体もまた、インビボで(例えば、MDA−MB−435乳癌異種移植片を保有するマウスにおいて)抗腫瘍効果を発揮することが示されており、印象的な抗ウイルス効果を示す(Moodyら、2010;米国特許第7,455,833号)。
【0048】
したがって、直接PS結合抗体は、PSがマーカーである様々な疾患、特に癌およびウイルス感染症を治療する上で有用である。しかしながら、そのような直接結合PS標的化抗体での治療を最適化するためのバイオマーカーは、典型的には、本発明におけるようにβ2GPIなどの血清タンパク質には依存せず、他の要因に依存するであろう。直接結合抗体の有用なバイオマーカーは、PS標的化抗体の免疫バイオマーカーを含む。
【0049】
B3.1N11などの他のβ2GPI依存性PS標的化抗体
本発明の好ましい実施形態は、PS標的化抗体ファミリーの他の部分、つまり間接PS結合抗体に関する。本明細書で使用される場合、「間接PS結合抗体」または「間接PS標的化抗体」は、PSに対して機能的に特異的であり、インビトロでPSに操作可能に結合し、インビボでPSを標的化し、それに結合する抗体であるが、PSと強固な結合複合体を形成するのに血清タンパク質を必要とする抗体である。本発明は、特に、間接PS結合抗体または間接PS標的化抗体、すなわち、β2GPI依存性PS結合抗体またはβ2GPI依存性PS標的化抗体のサブセットに関する。本明細書で使用される場合、「β2GPI依存性PS結合抗体」または「β2GPI依存性PS標的化抗体」は、PSに対して機能的に特異的であり、インビトロでPSに操作可能に結合し、インビボでPSを標的化する、すなわち、β2GPIを含有する血清または精製された血清の存在下で実行されるアッセイにおいてインビトロでPSに結合する抗体であるが、PSと強固な結合複合体を形成するのに血清タンパク質β2GPIを必要とする抗体である。上記のように、そのような抗体の例には、マウス抗体3G4およびキメラ抗体バビツキシマブが含まれる。
【0050】
β2GPI依存性PS標的化抗体の他の現在好ましい例は、1N11(PGN635)および1G15と呼ばれる完全ヒト抗体、好ましくは1N11抗体である。撮像および治療法を含む、1N11抗体、およびそのマウスキメラバージョンを使用するいくつかの研究が記載されている(Gongら、2013;Freimarkら、2016;Grayら、2016a)。1N11抗体のPS結合特性を、
図15に示す。1N11をファージ提示法によって生成し、血清の存在下でのみ(またはβ2GP1の存在下でのみ)PSへの結合についてのアッセイを使用して選択した。
図15に示されるように、当業者は、そのような研究を通例的に実行して、更なるPS標的化抗体およびβ2GPI依存性PS標的化抗体を調製し、単離することができる。
【0051】
C.広範な治療経験
上記に考察されるPS生物学から予測されるように、PSからのシグナルは、免疫細胞が腫瘍を認識し、それと戦う能力を阻害する。バビツキシマブおよび関連抗体は、PSとその受容体との関与を遮断することによって、および代替免疫活性化シグナルを送ることによって、このPS媒介免疫抑制シグナル伝達を無効化する。したがって、PS標的化抗体は、腫瘍内での免疫細胞の機能を転換させ、免疫活性化および抗腫瘍免疫応答の複数の徴候をもたらすことが示されている。
【0052】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、腫瘍微小環境内の免疫細胞を多局所的に再プログラミングして、免疫活性化を支持することによって、PS媒介免疫抑制のこの遮断を達成する(Yinら、2013)。したがって、バビツキシマブおよび関連抗体は、腫瘍微小環境内の免疫耐性を破壊する。抗体媒介PS遮断は、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)、形質転換増殖因子−ベータ(TGFβ)、およびインターロイキン−10(IL−10)のレベルを低減させ、インターフェロンガンマ(IFNγ)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNFα)、およびインターロイキン−12(IL−12)などの炎症誘発性サイトカインのレベルを増加させる。このPS遮断はまた、MDSCおよび腫瘍関連マクロファージ(TAM)を優勢なM2から優勢なM1表現型へと再び偏らせ、樹状細胞(DC)の成熟を促進し、細胞傷害性T細胞を活性化し、強力な適応抗腫瘍T細胞免疫を誘導する(Yinら、2013)。
【0053】
バビツキシマブおよび関連抗体はまた、自然免疫、すなわち、NK細胞およびM1マクロファージも活性化する。重要なことに、これらの抗体はまた、PSを特有に曝露する既存の腫瘍血管の選択的停止も引き起こし(Ranら、2005;米国特許第7,572,448)、この活性は、腫瘍浸潤性M1マクロファージおよびNK細胞によって媒介される抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を含む。このような腫瘍血管の破壊は、腫瘍細胞の破壊をもたらす。免疫療法および血管標的化のこれらの二重機構、特にADCC作用は、バビツキシマブが免疫活性化または従来の抗増殖化学療法に耐性のある腫瘍に対して有効であり得ることを意味する。
【0054】
他の免疫療法と同様に、PS標的化抗体の抗腫瘍効果は、併用療法で使用される場合に増加する。バビツキシマブおよび関連抗体と共に使用するための薬剤の一群は、放射線および/または化学療法剤などの、腫瘍微小環境内でのPSの曝露を増加させる薬剤および/または条件である(米国特許第7,422,738号、米国特許第8,486,391号、米国特許第7,572,448号)。したがって、抗腫瘍効果の増強は、ドセタキセルとの併用での乳腺腫瘍(Huangら、2005)および前立腺癌(Yinら、2013)の治療、ゲムシタビンとの併用での膵臓腫瘍の治療(Beckら、2006)、放射線との併用での肺癌(Heら、2007)および神経膠芽腫(Heら、2009)の治療、変異腫瘍抑制因子p53を再活性化するPRIMA−1との併用での進行性乳腺腫瘍の治療(Liangら、2011)、アデノウイルスとの併用でのアデノウイルスの腫瘍脈管構造への再標的化(Hoggら、2011)、シスプラチンとの併用での手術後の肺癌再発の治療(Judyら、2012)、ならびにソラフェニブとの併用での肝細胞癌の治療(Chengら、2016)において前臨床的に実証されている。
【0055】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体と共に使用するための別の薬剤の群は、他のIO剤である。PSは上流免疫チェックポイントであるため、バビツキシマブの作用機構は利用可能な治療剤に対して相補的である。したがって、CTLA−4、PD−1、およびPD−L1に対する抗体の形態の他のチェックポイント阻害剤との併用において、バビツキシマブファミリーの抗体について、印象的な併用療法が前臨床的に示されている(Freimarkら、2016;Grayら、2016a)。生存期間の増加を含むそのような抗腫瘍活性は、PD−1遮断単独との比較での、腫瘍内活性化CD8T細胞の増加、PD−L1発現に関連したM2マクロファージおよびMDSCの低減、ならびに脾臓内の腫瘍反応性T細胞の増加に関連付けられた。
【0056】
したがって、これらのような前臨床結果は、バビツキシマブファミリーのPS標的化抗体がPS媒介免疫抑制を逆転させ、治療的に有効な適応抗腫瘍免疫を開始することを確認する。したがって、下流免疫チェックポイントの遮断と併用したバビツキシマブでの治療は、奏効の結果、期間、およびレベルを有意に改善する、頑強かつ長期にわたる抗腫瘍免疫をもたらす(Freimarkら、2016;Grayら、2016a)。
【0057】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体の有利な安全性プロファイルを考慮して、これらの抗体はまた、放射線、化学療法剤(「化学放射線療法」)、および/または免疫療法との三種併用、ならび2つの免疫療法剤との三種併用を含む、三種併用療法において効果的に併用することができる。近年、PS、PD−1、およびLAG−3を標的化する抗体を使用する三種併用について、印象的な結果が示された(Grayら、2016b)。
【0058】
そのような前臨床データに立脚して、バビツキシマブは、主に他の適応症に承認された治療薬と併用して、800人超の患者を対象とした臨床研究において評価されている。様々な抗ウイルス研究および抗腫瘍研究が、治療活性を示している。広範な前臨床試験およびヒトにおける薬物動態プロファイル(実施例VI;Gerberら、2011;Digumartiら、2014も参照されたい)に基づいて、静脈内(IV)投与した3mg/kgの用量のバビツキシマブが、肺癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、結腸直腸癌、および腎臓癌を有する患者を含む腫瘍学のほとんどの臨床研究において決定され、選択された。現在、バビツキシマブについて、HER2陰性転移性乳癌を有する患者におけるパクリタキセル(Chalasaniら、2015)、進行性非小細胞肺癌(NSCLC)におけるパクリタキセル−カルボプラチン(Digumartiら、2014)、肝細胞癌におけるソラフェニブ(Chengら、2016)、および以前に治療された進行性非扁平上皮NSCLCにおけるドセタキセル(Gerberら、2016)との併用で、有望な臨床的抗腫瘍結果が発表されている。
【0059】
要約すると、第I相および第II相臨床研究からの結果は、バビツキシマブの臨床的に有意義な治療効果を実証した。今では、PS標的化抗体を使用して様々な疾患の治療に成功したことを示すかなりの量の研究があるが、現在まで、そのような治療法のための既知のバイオマーカーは存在しない。PS標的化抗体を用いた臨床経験は主に、バビツキシマブなどのβ2GPI依存性PS標的化抗体に基づいている。治療を最適化するためのバイオマーカーが最も必要とされているのは、それらの抗体である。そのようなバイオマーカー(複数可)を定量化するための高感度かつ迅速な方法と共に、バビツキシマブ治療のための1つ以上の循環バイオマーカーを特定することができれば、これは重要な発展であり、患者選択を促進して、治療結果を改善するための低侵襲試験(複数可)を提供する。
【0060】
D.PS標的化抗体のためのバイオマーカー
癌治療薬の分野において、バイオマーカーは、治療に対する奏効に影響を与える特定の患者の特徴を特定する上でますます重要な役割を果たしている。これは、標的化癌治療、ならびにより近年ではPD−1およびPD−L1阻害剤を含むチェックポイント阻害剤について歴史的に見られてきた。
【0061】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体での治療に重要なバイオマーカーが、分析されている。本明細書で使用される場合、「バビツキシマブバイオマーカー」は、治療法の少なくとも一部分として、PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブを含む治療法での治療による臨床的利益を改善するために、患者または患者集団を選択する上で、単独で、または2つ以上もしくは複数のバイオマーカーのうちの1つとして使用するためのバイオマーカーである。したがって、β2GPIを含むそのようなバビツキシマブバイオマーカーは、治療前に、患者、患者集団、または亜集団が、PS標的化抗体(好ましくはバビツキシマブ)を含む併用療法を含む、PS標的化抗体(好ましくはバビツキシマブ)を含む治療から恩恵を受ける可能性があるかどうかを予測するための方法において使用することができる。
【0062】
バビツキシマブ含有治療レジメンによる臨床的利益を改善するために、最も適切な患者集団を特定するための多重マーカー符号もまた考慮されている。これらの分析において特定された第1のバイオマーカーは、β2GPIである(節E、節F)。全体として、特定されたバイオマーカーのパターンは、臨床開発および治療を誘導するためのバビツキシマブ「符号」である。
【0063】
バビツキシマブバイオマーカーの一部分として、バビツキシマブ免疫バイオマーカーが分析されている。そのようなデータは、免疫系を「プライミング」する、すなわち、抗腫瘍免疫応答を増幅するためのバビツキシマブの使用を支持する。これに関して、腫瘍がT細胞および他の免疫細胞によってどれほど深く浸潤されているかに応じて、腫瘍を「熱」から「冷」までの尺度に配置することができることが現在既知である。免疫浸潤のレベル(「熱」)は、免疫系が腫瘍を認識し、それに関与しているかどうかを反映する。「熱」である腫瘍を有する患者はより良好な予後を有し、「冷」の腫瘍では、再発の可能性がはるかに高くなる。重要なことに、バビツキシマブは、冷の腫瘍に正の影響を与え、それらを(他のチェックポイント阻害剤を含むものを用いて)より治療しやすくすることができることが決定されている。したがって、バビツキシマブ免疫バイオマーカーは、バビツキシマブ療法のために患者を選択することだけでなく、バビツキシマブおよび併用療法のための知的に選択された薬剤での治療のために患者を特定することにおいても、追加の用途を有する。
【0064】
D1.試料
β2GPI以外のバイオマーカー(節E)について、本発明を使用して、バイオマーカーのうちの1つ以上を含有するか、または含有することが疑われる任意の生物学的試料(糞便を含む、動物、対象、または患者由来の任意の組織試料または生検を含む)を試験することができる。生物学的組織試料由来の清澄化された溶解物が使用されてもよい。しかしながら、本発明は、好ましくは天然の体液と共に使用され、したがって、「液体生検」とも呼ばれる低侵襲または非侵襲技術を使用して得られた生物学的試料に対して実行され得る試験を提供する。これは、典型的には結果を得るのに時間がかかり、それら自体に健康上のリスクを引き起こし得る、生検などのより厳密な技術よりも有利である。
【0065】
1つ以上のバイオマーカーを含有するか、または含有することが疑われる体液(生体液)の例には、血液、尿、腹水(ascites)、脳および脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、鼻汁、骨髄吸引液、関節液または滑液、眼房水、羊水、卵胞液、耳垢、母乳(初乳を含む)、気管支肺胞洗浄液、精液、精漿(前立腺液を含む)、カウパー液または射精前液、腟液(female ejaculate)、汗、涙、嚢胞液、胸水および腹水(peritoneal fluid)または洗浄液、心膜液、リンパ液、粥状液、胆汁、肝臓灌流液、間質液、月経、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、水様便(stool water)、糞便液(faecal fluid)、膵液、副鼻腔からの洗浄液、体腔、気管支肺吸引液、または他の洗浄液が含まれる。生物学的試料にはまた、胎児または母体起源のものであり得る、胚盤胞腔(blastocyl cavity)、臍帯血、または母体循環も含まれ得る。
【0066】
試験するのに好ましい体液の例は、血液、尿、および腹水、特に卵巣癌を有するか、またはそれを有することが疑われる動物、対象、または患者由来の腹水である。尿試料が使用される場合、それは好ましくは、例えば、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、精巣癌、尿道癌、および陰茎癌などの泌尿器系、泌尿生殖器系、および生殖器系の癌に関連して使用される。β2GPIと同様に、他のバイオマーカーのうちの1つ以上の検出および定量化は、好ましくは末梢血試料、好ましくは血漿、および最も好ましくは血清から実行される。
【0067】
D2.PS陽性エキソソーム
近年、エキソソームは癌に関連して注目を集めている。エキソソームは、インビボおよびインビトロで全ての細胞によって恒常的に放出される、40〜50から100ナノメートル(nm)のサイズの膜由来小胞である。エキソソームは、細胞間の情報交換において重要な役割を果たし、多くの生理学的および病理学的プロセスに影響を与える、生物学的に活性な分子シャトルである。癌において、エキソソーム機能は、癌細胞と、転移拡散のためのいわゆる「転移ニッチ」をプライミングする腫瘍間質との間の癌遺伝子の伝達を含む(Anら、2015)。
【0068】
エキソソーム形成に関与する複数の細胞内融合事象のために、細胞外に放出されたエキソソームの管腔内容物およびプロテオミクスプロファイルは、起源細胞のものに酷似している。したがって、腫瘍由来エキソソーム(「腫瘍エキソソーム」)は、それらが由来する癌細胞を反映するプロファイルを有する。実際に、起源細胞由来のサイトゾル(特に核酸)および原形質膜構成成分の存在は、循環エキソソームがバイオマーカー分析のための親細胞の特性を反映する容易に入手可能な代用物であることを意味する。
【0069】
正常細胞由来のエキソソームとは対照的に、腫瘍エキソソームは、それらの表面上にPSを有することを特徴とする。したがって、PS陽性腫瘍エキソソームを、癌の診断に使用することができる。固相アッセイを使用して、体液試料中のPS陽性腫瘍エキソソームを検出および定量化することによって癌を診断するための、新たな改善された方法、組成物、およびキットが近年報告された。そのような技術は、各々2016年6月9日に出願された米国特許出願第15/177,747号およびPCT特許出願第PCT/US16/036629号に記載されている。
【0070】
PSは高度に免疫抑制性であるため、PS陽性腫瘍エキソソームの放出は、腫瘍が免疫抑制環境を促進する別の手段である。したがって、治療前のPS陽性腫瘍エキソソームのレベルは、任意の癌治療のための治療法に対する奏効の予測マーカーとして使用することが提案されている。明らかに、PS標的化抗体は、疾患微小環境内でPSに結合する必要がある。したがって、治療前のPS陽性腫瘍エキソソームのレベルの測定は、バビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用する治療法に対する奏効の予測バイオマーカーとしての使用に特に説得力がある。
【0071】
したがって、米国第15/177,747号およびPCT出願第PCT/US16/036629号にあるものなどの方法は、本発明のバイオマーカー試験の一部分として使用することができる。β2GPIの現在の定量化および/または他のバビツキシマブバイオマーカーとのそれらの併用は、例えば、予測分析全体の感度を増強するために、特定の実施形態において好ましくあり得る。
【0072】
E.バイオマーカーとしてのβ2GPI
それを否定する広範なデータ(例えば、実施例V)にも関わらず、本発明者らは、治療前のレベルのβ2GPIを、バイオマーカーとして、またはバイオマーカーのパネルの一部分として使用して、バビツキシマブおよび関連抗体を使用する治療法の治療結果を予測することができるかどうかを調査することを決定した。
【0073】
β2GPIは、遊離のものとリポタンパク質に関連するものとの両方が見出される、豊富な血漿(血清)糖タンパク質である。マウス、ラット、イヌ、ウシ、チンパンジー、およびヒトを含む、様々な哺乳動物種由来のβ2GPIのDNAおよびアミノ酸配列が既知である(Steinkassererら、1991)。例示的な参考までに、ヒトβ2GPIアミノ酸配列は、受入番号1C1ZAとして提供されている。β2GPIはグリコシル化されており、50kDaのタンパク質として通例的に報告されている(実施例IV、A4、B3;McNeilら、1990の
図3;Balasubramanianら、1998の
図1;Lusterら、2006の
図1Dもまた参照されたい)。β2GPIは数十年間研究されているものの、β2GPIの正確な生理学的役割は未知のままである(Prakasam&Thiagarajan、2012)。実際に、β2GPIを欠損したノックアウトマウスの見かけ上健康な生活は、その役割が重要ではないことを示している(Shengら、2011)。
【0074】
驚くべきことに、治療前のβ2GPI、特に機能性β2GPIの血中濃度が、バビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用する治療法に対する奏功を予測するためのバイオマーカーとして有効であることが決定された。実際に、PSと、バビツキシマブなどのPS標的化抗体との両方に結合するβ2GPIを意味する「機能性」β2GPIのレベルは、バビツキシマブに対する応答のためのバイオマーカーとして単独で有用である。
【0075】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体に対する応答のバイオマーカーとして治療前のβ2GPIレベルを単独で使用する本発明の実施形態において、それらのβ2GPIレベルは共に数値的に定義され、本明細書に定義される「機能性」β2GPIを検出できるアッセイにおいて測定される。しかしながら、バビツキシマブなどのPS標的化抗体に対する応答の2つ以上または複数のバイオマーカーのうちの1つとして治療前のβ2GPIレベルを使用する本発明の実施形態において、β2GPIレベルはそれほど厳密に数値的に定義される必要はなく、機能性β2GPIのアッセイにおいて単独で測定される必要はない。
【0076】
したがって、バビツキシマブ含有療法のための二重または多重マーカー符号の一部分としてのβ2GPIレベルは、「β2GPI高」対「β2GPI低」であり得、VeriStrat(登録商標)良好(VS良好)およびVS不良、ならびに「熱」または「冷」腫瘍などの説明と同様である。バビツキシマブなどのPS標的化抗体での治療には、「β2GPI高」を有する患者が選択されるべきである。この文脈において、「β2GPI高」であるβ2GPIのレベルは、約180、190、200、210、220、230、240、250、または260μg/ml以上、好ましくは約200μg/ml以上のβ2GPI(全β2GPI、または好ましくは機能性β2GPIのいずれか)の治療前レベルである。したがって、「β2GPI高」は、約180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、または320μg/mlに等しいβ2GPI、(全β2GPI、または好ましくは機能性β2GPIのいずれか)の治療前レベルを含む。
【0077】
本発明はまた、機能性β2GPIを検出することができるアッセイにおいて測定される、特定の数値的に定義された量および範囲の機能性β2GPIに関するバイオマーカーも提供する。最も好ましい実施形態において、本発明は、200μg/ml以上の機能性β2GPIの治療前レベルに基づく患者の選択および治療に関する(実施例XVII、
図18Aおよび
図18B、実施例XVIII、実施例XX)。これは、約200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、または320μg/mlに等しい治療前レベルの機能性β2GPIを含み得る。
【0078】
実施例XVII、実施例XVIII、および実施例XXのデータによって例証されるように、β2GPIデータが利用可能である全ての臨床試験において、バビツキシマブは、200μg/ml以上の機能性β2GPIを有する患者で全生存期間を改善した。結果を表Aに要約し、表中、治療欄は、引用された薬剤を併用した、列挙された適応症のバビツキシマブ治療を指す。加えて、バビツキシマブおよび後続IOで治療したNSCLC患者(実施例XX)では、200μg/ml以上の機能性β2GPIがプラセボよりもバビツキシマブの生存期間にとって有利であることが示された(バビツキシマブではmOSに到達しなかったのに対して、プラセボでは12.3ヶ月;p=0.002、
図27)が、200以上のβ2GPI群および200未満のβ2GPI群におけるバビツキシマブ治療患者間の比較は、mOSがいずれの群についてもまだ到達されていないため、未だ行うことができない。
【表1】
【0079】
200μg/ml以上の広く適用可能なレベルのβ2GPIと同様に、本発明の特定の現在好ましい実施形態は、特にNSCLCを治療するための、200〜290μg/mlの範囲内の機能性β2GPIの治療前レベルに基づく患者の選択および治療に関する(実施例XVII、表14Aおよび表14Bを比較されたい)。これはまた、200〜270、200〜280、200〜290、200〜300、200〜310、200〜320、210〜270、210〜280、210〜290、210〜300、210〜310、および210〜320μg/mlなどの範囲内の機能性β2GPIの治療前レベルも含み、210〜270、210〜280、210〜290、200〜280、および200〜290が現在好ましい。
【0080】
更なる実施形態において、本発明は、低い数として約190、200、210、または220μg/mlのうちのいずれか1つから、高い数として約260、270、280、290、300、310、または320μg/mlのうちのいずれか1つまでの範囲内の機能性β2GPIの治療前レベルに基づく患者の選択および治療に関する。これらの範囲には以下、
約190〜260、190〜270、190〜280、190〜290、190〜300、190〜310、および190〜320;
約200〜260、200〜270、200〜280、200〜290、200〜300、200〜310、および200〜320;
約210〜260、210〜270、210〜280、210〜290、210〜300、210〜310、および210〜320;
約220〜260、220〜270、220〜280、220〜290、220〜320、220〜310、および220〜320の全てが含まれ、その中でも約210〜270、210〜280、210〜290、200〜280、および200〜290μg/mlの範囲が好ましい。
【0081】
200μg/ml以上の機能性β2GPIの治療前レベルに基づく、患者の最も好ましくかつ一般的に適用可能な選択および治療に加えて、任意の特定の治療または併用治療のために上記の数または範囲のうちのいずれか1つ以上のどれが選択されようと、治療前レベルのβ2GPI、好ましくは機能性β2GPIのバイオマーカーとしての、またはバイオマーカーのパネルの一部分としての使用は、PSがマーカーである広範囲の疾患(特に癌およびウイルス感染症であるが、細胞内寄生体の感染症でもある)を有する患者の選択、ならびに単独で、または好ましくは任意の併用療法でのいずれかで、PS標的化抗体を使用するそれらの治療に適用される。
【0082】
F.β2GPIのアッセイ
β2GPIの治療前レベルは、バビツキシマブおよび関連抗体のバイオマーカーであるため、β2GPIのアッセイに関して以下の指針が提供される。本発明はまた、機能性β2GPIを定量化するための特定の好ましいアッセイも提供する(節G)。
【0083】
F1.β2GPI試料
血清タンパク質として、β2GPIは、下記のように末梢血(血漿、血清)試料中での検出に理想的である。しかしながら、PSが関与する様々な病態生理学的条件下で、β2GPIはインビボで内皮細胞に局在化することが研究により示唆されている(Agostinisら、2011)。したがって、全範囲の生物学的試料(節D1)が潜在的にはβ2GPI検出に使用され得る。
【0084】
それにも関わらず、末梢血、血漿、および血清試料が、全β2GPIであるか機能性β2GPIであるかに関わらず、β2GPIの検出および定量化に特に好ましい(節G)。全血が使用されてもよい(赤血球、白血球、血小板、タンパク質、および血漿)。好ましくは、赤血球および白血球の沈殿後に残る液体である血漿が使用される。血漿は、フィブリノーゲンおよび他の凝固因子を含有するため、放置すると凝固する傾向がある。凝固しにくい血漿が入手可能であり、これが好ましく、また無血小板血漿が使用されてもよい。最も好ましくは、血清が、β2GPIの検出および定量に使用される。血清は凝固因子を有せず、主にフィブリノーゲンを有しない血漿であるため、血清は放置しても凝固しない。動物およびヒトの血清が診断目的で通例的に使用されており、調製技術は広く知られている。β2GPI試験用の血清試料を調製するための例示的な方法を本明細書に示す(実施例XV、A)。
【0085】
本発明の利点は、試験を、生物学的試料、好ましくは血液、血漿、または血清に対して直接実行することができることである。感度のために、β2GPIは、いかなる事前の富化または濃縮もせずに(しかし、これは排除されない)容易に検出することができる。試験試料、好ましくは血清試料は、新鮮なものでも、事前に凍結され、その後解凍されたものでもよい。実施例XV、実施例XVI、実施例XVII、および実施例XVIIIは、β2GPIが−70℃での長期保存に対して安定であることを示す。低音貯蔵管もしくはバイアルおよび/または全体的なタンパク質分解を制限するためのプロテアーゼ阻害剤の使用などの、凍結、保存、および/または解凍の業界標準の技術を使用するのが好ましい。
【0086】
F2.β2GPIアッセイの範囲
それが「機能性」β2GPIであるかどうかに関係なく、β2GPIを測定するためのアッセイ(すなわち、「全」β2GPIのためのアッセイ)の幅は、治療前β2GPIレベルがバビツキシマブの2つ以上のバイオマーカーのうちの唯一のものとして使用される本発明の実施形態との使用に適用可能である。β2GPIのレベルがバビツキシマブのバイオマーカーとして単独で使用される場合、節Gに記載されるように、「機能性」β2GPIアッセイが使用されるべきである。
【0087】
全β2GPIレベルは、当該技術分野において既知である多くのインビトロ結合アッセイおよびキットのうちの任意の1つ以上を使用して検出および好ましくは定量化することができる。好適な結合アッセイとしては、例えば、免疫ブロット、ウエスタンブロット、ドットブロット、RIA、免疫組織化学、蛍光活性化細胞選別(FACS)、免疫沈降、親和性クロマトグラフィーなどが挙げられる。典型的には固相結合アッセイが好ましいが、β2GPIを検出するための様々な他の方法が文献に記載されており、それらのいずれを使用してもよい。例えば、β2GPIレベルは、放射状免疫拡散によって正確に決定することができる。実際に、放射状免疫拡散は、1960年代後半からより現代までβ2GPIの定量化に使用されてきた(例えば、Balasubramanianら、1998)。ウエスタンブロット、免疫電気泳動、およびオクタロニー二重免疫拡散(Takeuchiら、2000)と同様に、等電点電気泳動(IEF)およびそれに続く免疫ブロットもまた、β2GPIの定量化に使用することができる(Kambohら、1988)。
【0088】
F3.固相β2GPI結合アッセイ
β2GPIの多数の高感度固相結合アッセイが当該技術分野において既知であり、全β2GPIは、好ましくはそのようなアッセイのうちの1つ以上を使用して検出および定量される。そのようなアッセイの好ましい一例は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)としてのものである。修飾捕捉ELISA(例えば、Mehdiら、1999)および競合ELISA(例えば、Balasubramanianら、1998)を含む、全β2GPIに特異的な様々なELISAが文献に報告されている。診断用ラベルに添付されているものを含む、市販の抗β2GPI抗体と同様に、全β2GPIをアッセイするための多数の市販のキットが利用可能である。任意のそのようなキットまたは抗体を使用して、全β2GPIを検出および定量することができる。例えば、US Biologicalの抗β2GPI抗体が、本明細書において比較アッセイで使用される(実施例XVI、A10、B2)。
【0089】
一般論として、全β2GPIのためのELISAは、1つ以上の抗β2GPI抗体を使用する。抗体技術は非常に進歩しているが、市販のキットおよび市販の抗β2GPI抗体はしばしばポリクローナル抗β2GPI抗体を使用し、それらはそのような実施形態における使用に完全に好適である。全β2GPIのための例示的なアッセイにおいて、抗β2GPI抗体は96ウェルプラスチックプレートなどの固体表面に吸着され、β2GPI(この場合「抗原」)を含有することが疑われる生物学的試料と共にインキュベートされる。結合したβ2GPI(抗原)は、検出可能な物質、すなわち、検出および定量化可能である色または蛍光などの検出可能なシグナルを生成する物質で直接的または間接的に標識された二次結合剤を使用して検出される。好ましくは、二次結合剤は、検出可能な物質で標識されている抗β2GPI抗体である。
【0090】
全β2GPIのためのそのようなELISAは、実施例XVI、A10、B2に例証され、固体支持体および検出可能な物質などの多くの一般的な構成要素およびステップもまた、本発明の機能性β2GPIアッセイに関して以下により完全に記載される(節G)。したがって、特定の試薬またはステップが機能性β2GPIアッセイでの使用にのみ適用されることが明らかでない限り、全β2GPIを検出するためのアッセイでのそれらの適用が本明細書において企図される。
【0091】
G.機能性β2GPIのための好ましいELISA
より良い結果を予測するためのバイオマーカーの臨床試験結果を分析するための様々な市販のアッセイおよび研究ツールが利用可能であるが、いずれもバビツキシマブなどのPS標的化抗体に特有に適用可能であることは知られていなかった。低レベルおよび/または変動するレベルの血清β2GPIがバビツキシマブの治療結果に有意な影響を及ぼさない(実施例V、
図19)ことを示す、広範な前臨床モデル化および有意な先行臨床経験にも関わらず、第III相試験の患者におけるβ2GPI濃度の分析(実施例XIV)が模索された。
【0092】
しかしながら、全β2GPIとは対照的に、PSに結合し得るβ2GPIを特異的に検出するための信頼できる定量的なβ2GPIアッセイは、入手することができなかった。そのようなアッセイは、特にβ2GPIの一部分(「全」β2GPI)がニック入りβ2GPIとして存在し、それがPSに結合できず、したがって疾患部位で抗体結合を媒介できないことが周知であるため、バイオマーカーに適用される最も正確な測定に必要である。さらに、PSにだけでなく、バビツキシマブなどのPS標的化抗体にも結合し得るβ2GPIを特異的に検出するためのいかなるアッセイも著しく欠如していた。これは、例えば、他の有意義な変化(特に、ドメインIIにおける、またはそれに影響を与える突然変異および/またはニックもしくは切断)を有するβ2GPIが検出されていた可能性を除外するための最高の忠実度のバイオマーカー測定にとって特に重要であるが、これは、いかなるそのようなβ2GPI変化も、治療活性に必要とされる抗体:β2GPI:PS複合体の形成を減少または無効化するためである。
【0093】
したがって、第III相試験(実施例XIV)の患者を含む、バビツキシマブなどのPS標的化抗体で治療した(または治療される予定の)患者においてβ2GPI濃度の最適な分析を実行するには、まず新たなアッセイを発明する必要があった。本出願は、血漿および血清などのヒト血液試料中の機能性(活性)β2GPIの量を検出および定量化する目的に特有に適合した、そのような有利なアッセイを開示し、このアッセイは、PSと、バビツキシマブなどのPS標的化抗体との両方に結合し得るβ2GPIのレベルを決定することができる。
【0094】
機能性β2GPIのためのそのようなアッセイを使用することによって、本発明は、バビツキシマブおよび関連PS標的化抗体での治療に対する奏効の単一のバイオマーカーとして使用するための定義されたレベルの治療前β2GPIを提供する。特に、200μg/ml以上の機能性β2GPI(実施例XVII、
図18Aおよび
図18B、実施例XVIII、実施例XX)は、200〜290μg/mlの範囲内の機能性β2GPIによって例証されるように、バビツキシマブでの治療に対する奏効を広く予測する(実施例XVII、表14Aおよび表14Bを比較されたい)。本発明によって提供される機能性β2GPIのための好ましいELISAは、実施例XVIの詳細な教示によって例証され、また以下により完全に記載される。
【0095】
G1.アッセイ方法
一般論として、機能性β2GPIのためのELISAなどの固相アッセイは、PSと、バビツキシマブなどのPS標的化抗体との両方を使用し、それらのうちの少なくとも一方は、固体支持体に操作可能に関連付けられている、かつ/またはそれらのうちの少なくとも一方は、検出可能な物質で直接的もしくは間接的に標識されている。全ての結合形式が使用され得る。例えば、PS標的化抗体を固体支持体に吸着させ、PSを検出可能な物質で標識してもよい。検出可能な物質で標識されるPSなどの多くの脂質が当該技術分野において既知であり、それらのいずれが使用されてもよい。しかしながら、簡略化のために、現在好ましい実施形態は、PSが96ウェルプラスチックプレートなどの固体表面に吸着されているものである。これは、バビツキシマブまたは1N11などのPS標的化抗体が、好ましくは抗体に結合した直接標識である検出可能な物質で標識され得ることを意味する。
【0096】
これらのアッセイにおいて、ELISAプレート(またはそのウェル)などのPSコーティング固体支持体は、バビツキシマブまたは1N11などのPS標的化抗体、およびβ2GPIを含有することが疑われる生物学的試料と共にインキュベートされる。概念的には、PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ、およびβ2GPI試料が、PSコーティング固体支持体またはプレート上で「同時インキュベート」されることが重要である。科学的には、β2GPIが(インタクトな)ドメインVを介してPSに結合し、その後にプレートに結合したβ2GPIのドメインIIに結合するバビツキシマブが続くか、またはバビツキシマブが溶液中でβ2GPIのドメインIIに結合し、その後にプレート上のPSに結合する(インタクトなドメインVを有する)複合体化したバビツキシマブ/β2GPIが続くかのいずれかであり得る。両方の結合事象はインキュベーション時間中に生じるため、同時インキュベーションは全てのそのような結合機構を包含する。
【0097】
PSコーティング支持体上でPS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ、およびβ2GPI試料を「同時インキュベートすること」は、「有効な結合条件」下、すなわち、「β2GPIが、試料中のPS標的化抗体およびPSコーティング支持体の両方に結合するのを可能にするのに有効な条件下および時間」で一緒にインキュベートすることを意味する。「結合」は、「特異的結合」、すなわち、通常の洗浄によっては除去されない結合を可能にするのに有効な条件下かつ時間を意味する。したがって、バビツキシマブを使用する場合、有効な結合条件は、PSのβ2GPIのインタクトな(ニックのない)ドメインVへの結合およびバビツキシマブのβ2GPIのドメインIIへの結合を可能にする。バビツキシマブ以外のPS標的化抗体を使用する場合、有効な結合条件は、PSのβ2GPIのインタクトな(ニックのない)ドメインVへの結合、およびPS標的化抗体のβ2GPIへのドメインV以外のドメインでの結合(好ましくはドメインIおよびIIを接合するヒンジ領域への、ならびに最も好ましくはβ2GPIのドメインIIへの結合)を可能にする。
【0098】
PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ、およびβ2GPI試料がPSコーティング固体支持体またはプレート上で同時インキュベートされる限り、本発明のアッセイはいくつかの異なる形式を含む。例えば、PS標的化抗体、およびβ2GPIを含有することが疑われる試料は、実質的に同時にPSコーティング支持体に添加されてもよい。好ましくは、PS標的化抗体、およびβ2GPIを含有することが疑われる試料は、連続的に、すなわち、時間間隔を置いてPSコーティング支持体に添加される。
【0099】
連続アッセイ結合ステップを実施する上で、ELISAウェルなどのPSコーティング固体支持体は、まずβ2GPIを含有することが疑われる生物学的試料と共にインキュベートされ、その後、PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブと共に同時インキュベートされてもよい。上記のアッセイは、事前調製されたPSコーティング支持体を利用することができ、その場合、アッセイは、以下(または以下のステップ)、
(a)β2GPIのインタクトなドメインVを介して生物学的試料中のβ2GPIをPSコーティング支持体に結合させるのに有効な条件下で、β2GPIを含有することが疑われる生物学的試料をPSコーティング支持体に添加し、それによってPSおよびβ2GPIコーティング支持体を調製するステップと、
(b)ドメインV以外のβ2GPIドメインへの抗体結合によってPS標的化抗体をPSおよびβ2GPIコーティング支持体に結合させるのに、好ましくはβ2GPIドメインIIへの抗体結合によってバビツキシマブをPSおよびβ2GPIコーティング支持体に結合させるのに有効な条件下で、PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブをPSおよびβ2GPIコーティング支持体に添加するステップと、
(c)PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブのPSおよびβ2GPIコーティング支持体への結合を検出し、それによって生物学的試料中の機能性β2GPIを測定するステップと、を含む。
【0100】
しかしながら、連続アッセイ結合ステップを実行する上で、PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ、および最も好ましくは検出可能に標識されたバビツキシマブは、最初にPSコーティング固体支持体に適用され、その後β2GPIを含有することが疑われる生物学的試料と共に同時インキュベートされる。そのようなアッセイまたは一連のステップは、技術的な理由で、例えば、ピペッティング中の相互汚染を回避するために好ましい。そのような好ましいアッセイは、以下(または以下のステップ)、
(a)固体支持体をPSでコーティングして、PSコーティング支持体を調製するステップと、
(b)PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ、および最も好ましくは検出可能に標識されたバビツキシマブを、PSコーティング支持体に添加して、抗体で覆われたPSコーティング支持体を調製するステップと、
(c)生物学的試料中のβ2GPIを抗体で覆われたPSコーティング支持体に結合させるのに有効な条件下で、すなわち、β2GPIのインタクトなドメインVを介したβ2GPIのPSコーティング支持体への結合によって、およびドメインV以外のβ2GPIドメインを介したβ2GPIのPS標的化抗体への結合によって、好ましくはβ2GPIドメインIIを介したβ2GPIのバビツキシマブへの結合によって、本質的に洗浄することなく、β2GPIを含有することが疑われる生物学的試料を抗体で覆われたPSコーティング支持体に添加するステップと、
(d)PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ(最も好ましくは検出可能に標識されたバビツキシマブ)、およびβ2GPIのPSコーティング支持体への結合を検出し、それによって生物学的試料中の機能性β2GPIを測定するステップと、を含む。
【0101】
このアッセイはまた、事前調製されたPSコーティング支持体を利用してもよく、その場合、アッセイは以下(または以下のステップ)、
(a)PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ、および最も好ましくは検出可能に標識されたバビツキシマブをPSコーティング支持体に添加して、抗体で覆われたPSコーティング支持体を調製するステップと、
(b)生物学的試料中のβ2GPIを抗体で覆われたPSコーティング支持体に結合させるのに有効な条件下で、すなわち、β2GPIのインタクトなドメインVを介したβ2GPIのPSコーティング支持体への結合によって、およびドメインV以外のβ2GPIドメインを介したβ2GPIのPS標的化抗体への結合によって、好ましくはβ2GPIドメインIIを介したβ2GPIのバビツキシマブへの結合によって、本質的に洗浄することなく、β2GPIを含有することが疑われる生物学的試料を抗体で覆われたPSコーティング支持体に添加するステップと、
(c)PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ(最も好ましくは検出可能に標識されたバビツキシマブ)、およびβ2GPIのPSコーティング支持体への結合を検出し、それによって生物学的試料中の機能性β2GPIを測定するステップと、を含む。
【0102】
PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ、および最も好ましくは検出可能に標識されたバビツキシマブが、最初にPSコーティング固体支持体に適用され、その後β2GPIを含有することが疑われる生物学的試料と共に同時インキュベートされる連続結合ステップを有する好ましいアッセイは、簡潔には、以下(または以下のステップ)、
(a)固体支持体をPSでコーティングして、PSコーティング支持体を調製するステップと、
(b)試料中のβ2GPIをPS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブと、PSコーティング支持体との両方に結合させるのに有効な条件下で、PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ、および最も好ましくは検出可能に標識されたバビツキシマブ、ならびにβ2GPIを含有することが疑われる生物学的試料を、PSコーティング支持体に添加するステップであって、好ましくは、PS標的化抗体がβ2GPIを含有する試料の添加前にPSコーティング支持体に添加され、それらが一緒に同時インキュベートされる、ステップと、
(c)PS標的化抗体およびβ2GPIのPSコーティング支持体への結合を検出し、それによって試料中の機能性β2GPIを測定するステップと、を含む。
【0103】
繰り返すが、アッセイは事前調製されたPSコーティング支持体を利用してもよく、その場合、アッセイは、以下(または以下のステップ)、
(a)試料中のβ2GPIをPS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブと、PSコーティング支持体との両方に結合させるのに有効な条件下で、PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブ、および最も好ましくは検出可能に標識されたバビツキシマブ、ならびにβ2GPIを含有することが疑われる生物学的試料を、PSコーティング支持体に添加するステップであって、好ましくは、PS標的化抗体がβ2GPIを含有する試料の添加前にPSコーティング支持体に添加され、それらが一緒に同時インキュベートされる、ステップと、
(b)PS標的化抗体およびβ2GPIのPSコーティング支持体への結合を検出し、それによって試料中の機能性β2GPIを測定するステップと、を含む。
【0104】
結合したPS標的化抗体およびβ2GPI(抗原)は、少なくともPS標的化抗体の形態、好ましくはバビツキシマブまたは1N11の形態の少なくとも1つの二次結合剤を使用して検出され、これは、検出可能な物質で直接的または間接的に標識される。非標識PS標的化抗体は、PS標的化抗体に結合し、かつ検出可能な物質で直接標識されている三次結合剤、好ましくは別の抗体との関連で使用され得る。そのような三次結合抗体は当該技術分野において周知であり、例えば、PS標的化抗体のFc部分に特異的に結合する。
【0105】
簡略化のために、現在好ましい実施形態は、PS標的化抗体、好ましくはバビツキシマブが、それ自体検出可能な物質に直接結合しているものである。検出可能な物質は、色または蛍光などの検出および測定または定量化され得る検出可能なシグナルを生成する物質である。例示的な検出可能な物質は、酵素の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)であり、HRPは、基質3,3’5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)を切断して、450nmで検出および測定される色付きシグナルを生成する。典型的には、シグナルから測定される結合材料の量は、標準曲線などの「基準シグナル」のレベルと比較される。必要に応じて、標準曲線は、全てのアッセイにおいて複製されてもよい。
【0106】
これらのアッセイの全ての形式において、最終的に検出される唯一のβ2GPIは、PSおよびPS標的化抗体の両方に結合することができるβ2GPI、すなわち、通例的な洗浄によって全体的には除去されないβ2GPIである。したがって、これらのアッセイは、臨床治療に最も関連する形態の治療前β2GPI、すなわち、投与された抗体、好ましくはバビツキシマブ、および好ましくは腫瘍の微小環境内の疾患部位に曝露されたPSと結合複合体を形成するように「機能する」β2GPIの検出に特有に適している。したがって、これらのアッセイの使用は、バビツキシマブ療法での改善された治療結果のための患者の選択において有利である。
【0107】
本発明によって提供される機能性β2GPIアッセイはまた、単純で再現性があり、高感度で費用効果が高く、かつ低侵襲技術によって得られる生物学的試料、特に血液(血清および血漿)試料と共に使用するのに理想的である。アッセイの迅速な性質は、バイオマーカー試験を素早く実行し、治療決定を適時に行い、実施することができるという重要な利点を提供する。しかしながら、本発明によって提供される機能性β2GPIを定量化するための新たなアッセイは、単にバビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用する治療法でバイオマーカーとして使用するためのβ2GPIの測定における使用のみに限定されない。β2GPIは、基礎的および指向的前臨床研究および臨床研究において重要な分子であるため、これらのアッセイは、任意の1つ以上のそのような実施形態において(例えば、ノックアウトマウス、またはヒトにおける抗リン脂質抗体症候群(APS)に関連する実施形態など)機能性β2GPIを測定するために使用することができる。
【0108】
G2.固体支持体
本発明の固相結合アッセイは、典型的には、結合構築物を(コーティングまたは結合のための少なくとも1つの表面を有する)固体支持体または基質と操作可能に会合させることを必要とする。本明細書で使用される場合、「結合構築物」は、バイオマーカーの検出に有用な構成成分に結合する構築物を含む。β2GPIバイオマーカーに関連して、結合構築物は、抗β2GPI抗体、PS、およびバビツキシマブなどのPS標的化抗体を含む。
【0109】
そのような固体支持体または基質としては、例えば、プレート、ビーズ、および繊維が挙げられる。本発明の好ましい実施形態において、固体支持体または基質は、標準的な96ウェルプレートなどのマルチウェルプレートである。固体支持体または基質は、Sepharose、ラテックス、ガラス、ポリスチレン、ポリビニル、ニトロセルロース、シリコン、シリカ、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの任意の好適な材料から製造することができる。結合構築物は、支持体または基質の少なくとも1つの表面を結合構築物と効率的に接触させることによって、固体支持体または基質と操作可能に会合されている。好ましくは、結合構築物は、固体支持体または基質の少なくとも1つの表面に固定化される。結合構築物はまた、コーティングされたスライドガラス上に印刷され、バイオマーカーアレイまたはマイクロアレイにおいて使用されてもよい。非接触印刷および接触印刷の両方を使用して、そのようなマイクロアレイを調製することができ、接触印刷が好ましい。
【0110】
G3.検出可能な物質
好適な検出可能な物質としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、およびウレアーゼなどの酵素が挙げられる。西洋ワサビペルオキシダーゼ検出系は、例えば、発色基質テトラメチルベンジジン(TMB)と共に使用することができ、これは、過酸化水素の存在下、450nmで検出可能な可溶性生成物をもたらす。他の好都合な酵素結合系としては、例えば、アルカリホスファターゼ検出系が挙げられ、これを発色基質p−ニトロフェニルリン酸と共に使用して、405nmで容易に検出可能な可溶性生成物を得ることができる。同様に、β−ガラクトシダーゼ検出系を発色基質O−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)と共に使用して、410nmで検出可能な可溶性生成物を得ることができ、またはウレアーゼ検出系をウレア−ブロモクレゾールパープルなどの基質と共に使用することができる。
【0111】
検出可能な物質の更なる例としては、化学発光標識および蛍光検出用の標識が挙げられる。有用な蛍光色素としては、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)、フルオレセイン、Hoechst3325S、R−フィコシアニン、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、ローダミン、テキサスレッド、およびリサミンが挙げられる。フルオレセインもしくはローダミン標識抗体もしくはアネキシン、および/またはフルオレセインもしくはローダミン標識二次抗体が使用されてもよい。同位体もまた検出方法において有用であり得、その部分およびアッセイは当該技術分野において周知である。
【0112】
検出可能な物質は検出可能なシグナルを生成し、その後、これは検出および好ましくは定量化される。検出可能なシグナルは、例えば、発色基質から色を検出するための分光光度計、放射線を検出するための放射線計数器(
125I検出用ガンマ計数器など)、または特定の波長の光の存在下で蛍光を検出するための蛍光光度計を使用して分析することができる。酵素結合アッセイを使用する場合、検出可能なシグナルの定量分析は、分光光度計を使用して実行することができる。
【0113】
G4.キット
本発明はまた、診断的、予後的、および予測的治療キットを含む一連のバイオマーカーに基づくキットを提供する。バイオマーカーキットは、典型的には、本明細書に教示されるバイオマーカーの検出に有用な結合構築物のうちの1つ以上を含むだろう。β2GPIバイオマーカーに関連するキットは一般に、抗β2GPI抗体、PS、およびPS標的化抗体(バビツキシマブなど)などの少なくとも第1のβ2GPI結合構築物を含むだろう。
【0114】
他のキットは、バイオマーカー検出のための結合構築物と、選択された患者の治療に使用するための少なくとも第1の治療剤、例えば、バビツキシマブもしくは1N11などのPS標的化抗体、またはその免疫複合体との両方を含む。そのようなキットは、PS標的化抗体との併用治療に使用するための少なくとも第2または第3の異なる治療剤をさらに含み得る。例えば、1つ以上の化学療法剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、免疫療法剤、および/または抗ウイルス剤である。
【0115】
一般に、キットは、少なくとも第1の好適な容器(または容器手段)内に述べられる構成成分を含有するだろう。容器は一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ、または他の容器もしくは容器手段を含み、その中に所望の薬剤を入れ、好ましくは好適にアリコートする。キットはまた、典型的には、個々のバイアル瓶などを送達のために厳重に閉じ込めて収容するための手段、例えば、所望のバイアル瓶および他の装置を入れて保持する射出または吹込成形プラスチック容器を含む。
【0116】
キットの構成成分は、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかに含有され得る。試薬または構成成分が乾燥粉末として提供されるとき、粉末は、好適な溶媒の添加によって再構成され得る。溶媒はまた、キット内の別の容器内に提供されてもよい。任意の治療構成成分は、好ましくは薬学的に許容される製剤中にあるか、またはそのまま再構成する準備ができている。キットはまた、動物または患者に治療剤を投与するための手段、例えば、1つ以上の針もしくはシリンジ、または点眼器、ピペット、または動物に製剤を注入するか、もしくは身体の患部に適用することができる他の同様の装置を含有し得る。
【0117】
キットは、好ましくは所望の各構成成分または薬剤、特にバイオマーカー検出および診断用構成成分のための異なる容器を有するだろう。しかしながら、併用療法での使用のために、キットは、モル当量の組み合わせで、または他の構成成分を超える1つの構成成分と共に、事前混合された2つ以上の治療薬を含有する1つの容器を含み得る。キットは、完全に共役した形態の事前標識された抗体、またはキットの使用者によって共役される別々の標識部分を、好ましくは結合についての説明書と共に含み得る。免疫検出のために、PSなどの1つ以上の構成成分が、既にマイクロタイタープレートのウェルなどの固体支持体に結合されていてもよい。
【0118】
キットはまた、好ましくは、例えば、併用療法における使用を含む、定量化、前臨床的、臨床的、および/または獣医学的実施形態における使用のための書面上または電子的な説明書も含むだろう。バイオマーカーに基づくため、キットは、好ましくは、検出アッセイのための標準曲線を準備するために使用され得るように、標識の有無に関わらず、好適にアリコートされた生物学的組成物などの制御剤をさらに含むだろう。
【0119】
G5.チップおよびナノアッセイ形式
全β2GPIおよび/または機能性β2GPIを含む固相およびELISA型バイオマーカーアッセイは、必要に応じて自動化またはロボットで実行することができ、複数の試料からのシグナルを同時に検出することができる。本発明の文脈ではないが、一般にバイオマーカーを検出および定量化するために、そのような様々なアッセイ形式が使用されてきた。例えば、「チップ」と呼ばれるナノプラズモンセンサーおよびマイクロ流体デバイスが記載され、癌患者の循環バイオマーカーのオンチップ単離、定量化、および特徴付けに使用されている。したがって、本発明の特異性を依然として維持しながら、本アッセイは、そのようなマイクロ流体、チップ、ナノ技術、および他の合理化かつ自動化されたアッセイを使用して達成することができる。
【0120】
予測方法およびバイオマーカー誘導治療法に加えて、本発明はまた、コンピュータに基づくハードウェアおよび試験も提供する。本発明のそのようなコンピュータに基づく実施形態は、全β2GPIおよび/または機能性β2GPIのものを含む1つ以上の実験室バイオマーカー試験を読み取るように構成されたインターフェース、ならびにそのようなバイオマーカー試験からのデータを分析し、好ましくは分析されたデータを確立されたデータセット(試験データセットおよび対照データセットを含む)と比較するコンピュータを含む。本発明のコンピュータで実装される実施形態は、好ましくは、メモリストレージ、出力機能、および出力に基づいて治療法を誘導するように構成された命令を含む。
【0121】
H.疾患の治療
本発明は、動物およびヒトを選択し、バビツキシマブなどのPS標的化抗体での治療を最適化するためのバイオマーカー方法、組成物、およびキットを提供するため、動物、対象、および患者(ヒト患者を含む)に関する以下の指針が、バイオマーカー検出および選択された集団の治療に適用される。
【0122】
H1.動物、対象、および患者
本発明は、ヒト対象および患者に最も直接的に適用可能であるため、ヒトの選択および治療が最も好ましい実施形態である。それにも関わらず、種を超えたバイオマーカーの共通性および保存は、本発明がヒト以外の動物にも適用可能であることを意味する。動物の中では、哺乳動物が好ましく、最も好ましくは、家庭用ペット、競走馬、および人間が消費するための食物を直接的(例えば、肉)または間接的(例えば、牛乳)に生産する動物などの価値ある貴重な動物であるが、実験動物もまた含まれる。したがって、本発明は、臨床的、獣医学的、および研究的用途を含む。したがって、ヒトに加えて、本発明は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、イノシシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー、バイソン、ラマ、シカ、ヘラジカ、および他の大型動物、ならびに子牛および子羊を含むそれらの幼若動物に適用され、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、霊長類(サルなど)、および他の実験動物に適用される。
【0123】
H2.抗体用量
バビツキシマブなどのPS標的化抗体の「治療有効」量または用量は、そのような治療を必要とする動物、好ましくはヒト患者に投与したとき(併用療法の一部分として投与したときを含む)に有益な治療効果を発揮する量または用量である。例えば、治療的に有効な抗癌投与量は、癌を有する動物、好ましくはヒト患者に投与したとき(併用癌療法の一部分として投与したときを含む)に有益な抗癌効果を発揮する量または用量である。治療的に有効な抗ウイルス用量は、ウイルス感染症または疾患を有する動物、好ましくはヒト患者に投与したとき(併用ウイルス療法の一部分として投与したときを含む)に有益な抗ウイルス効果を発揮する量または用量である。
【0124】
「有益な抗癌効果」は、腫瘍脈管構造血栓症および/または破壊、腫瘍壊死、腫瘍退縮、および腫瘍寛解(治癒までを含む)を含む、任意の一貫して検出可能な抗腫瘍および抗癌効果を含む。有益な抗癌効果の臨床的尺度としては、例えば、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、およびCR+PRを含む全奏効率(ORR)の改善;腫瘍進行までの時間(TTP);奏効期間(DORまたはDR);ならびに該当する場合、個々の患者、患者集団、および亜集団における無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)、および全生存期間(OS)(全生存期間の中央値(mOS)を含む)の改善または拡大が挙げられる。
【0125】
「有益な抗ウイルス効果」は、ウイルス感染、複製、成熟、繁殖、および放出、ならびに/または更なる細胞(宿主細胞)もしくは組織の進行中の感染またはそれらへの拡散の阻害を含む、任意の一貫して検出可能な抗ウイルス効果を含む。有益な抗ウイルス効果の臨床的尺度としては、例えば、早期のウイルス学的応答、ウイルス量の低減およびウイルスのクリアランス、ならびにウイルス感染症によって引き起こされる症状の改善が挙げられる。
【0126】
有益な治療効果、特に抗癌効果は、特に中期または長期的には治療的ではない可能性があるが、それは治療の有用性を無効化するものではないことが理解される。これに関して、しかしまた一般に、「有益な」治療効果、抗癌効果、および抗ウイルス効果はまた、比較的および/または適度の治療効果も含むが、いずれか1つ以上の安全性の尺度における改善を伴う。「有益な」治療効果についての別の考慮事項は、バビツキシマブなどのPS標的化抗体が、疾患または腫瘍をさらに治療処置しやすくし得るために、その後の治療が全体的に改善された効果をもたらし得るという事実である。
【0127】
バビツキシマブまたは1N11などのPS標的化抗体の治療有効用量は、動物モデルからのデータを含む広範囲のデータを試用して現在容易に決定可能であるが、特に、本明細書に詳述され、文献に公開されるものなどの臨床研究に基づく。一般に、静脈内(IV)投与され、mg/kgで引用されるバビツキシマブなどのPS標的化抗体の有効用量範囲は、約0.1から約13〜15、好ましくは約0.1から約6〜10、好ましくは、約0.3〜約6、より好ましくは、約0.5〜約6、より好ましくは、約1〜約6、より好ましくは、約0.5〜約3、または約3〜約6、より好ましくは、約1〜約3である。静脈内投与され、mg/kgで引用されるバビツキシマブなどのPS標的化抗体の例示的な有効用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、および約15、好ましくは約0.1、0.3、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、および約6、より好ましくは約2または3、ならびに最も好ましくは約3mg/kgである。
【0128】
臨床治療のために、特に全ての腫瘍学的適応症のために静脈内(IV)投与される3mg/kgのバビツキシマブの現在好ましい用量は、広範な安全性データと共に、広範な前臨床および臨床データ、ならびに特にヒトにおける薬物動態プロファイル(実施例VI)に基づいて推奨される。それにも関わらず、0.3mg/kgでの臨床的抗ウイルス活性を含む、一連の用量が有効であることが示されている(実施例VI)。加えて、バビツキシマブは、ラットおよびサルに10mg/kg超、最大100mg/kgまでの用量で安全に投与されている。サルにおける100mg/kg用量レベルでは、バビツキシマブは、体循環中のβ2GPIを一過的に減少させたため、そのような超高用量は推奨されない。
【0129】
したがって、幅広いデータから、3mg/kgの投与量が、好ましくはあるが本発明を限定しないことは明らかである。したがって、本明細書に提示されるパラメータおよび詳細な指針を考慮して、活性または最適用量範囲および用量における更なる変形が本発明に包含されることが理解される。したがって、特定の薬剤との併用ではより低い用量がより適切であり得ること、および特に通常致命的な疾患を治療する場合には高用量が依然として許容され得ることが理解される。
【0130】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体を投与する上で、(無菌性、発熱性、純度、および一般的安全性のFDA標準に従って)薬学的に許容される組成物が動物または患者に全身投与される。静脈内注射が一般に好ましく、数時間にわたる連続注入が最も好ましい。
【0131】
用量自体を変えることに加えて、投与レジメンもまた、当業者に周知のように、治療戦略を最適化するように適合させることができる。治療されている対象の病態に応じて、投薬量および治療レジメンにおけるいくらかの変動が必要となり得る。担当医師(複数可)は、本開示を考慮して、個々の対象にとって適切な治療を決定することができるだろう。そのような最適化および調整は、当該技術分野において慣例的に実行されており、決して過度の量の実験を反映していない。
【0132】
H3.β2GPIでの補足治療
単独で、または多重バイオマーカー選択の一部分としてのいずれかで、治療前β2GPIレベルをPS標的化抗体(バビツキシマブなど)に対する応答のバイオマーカーとして使用する上で、全β2GPIまたは機能性β2GPIが測定されるかどうかに関わらず、本方法は治療のために患者のサブセットのみを選択する。
【0133】
したがって、本出願の別の実施形態は、バビツキシマブなどのPS標的化抗体と共にβ2GPIをそれらの患者に同時投与することによって、任意の非選択患者を治療適格性に回復させることである。このようにして、集団全体がPS標的化抗体で治療可能になる。例えば、200μg/ml以上の治療前レベルの機能性β2GPIに基づいて、治療のための患者を選択する上で、β2GPIレベルを少なくとも約200μg/mlに回復させるのに十分な機能性β2GPIとの併用でバビツキシマブを同時投与することによって、150μg/mlの治療前レベルの機能性β2GPIを有する患者を治療可能な群に戻すことができる。試料は、バイオマーカー分析に使用されるいずれの治療前レベルのβ2GPIにも適用される。
【0134】
I.PSがマーカーである疾患の治療
バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、PSを特異的に標的化するため、治療の第1の(および最も重要な)適応症は癌(節K)、特に固形腫瘍およびそれらの転移であるが、液性腫瘍(白血病など)およびホジキンリンパ腫もまた適応症である。
【0135】
正常で健康な細胞では、PSは細胞膜の内側に維持されており、結合に利用することはできない。疾患細胞のみが細胞膜の外側に曝露されたPSを有し、これらは特に腫瘍微小環境内にある細胞であるが、瀕死の細胞、異常細胞、不適切に活性化された細胞、感染した細胞、および病原性生物自体でもある。癌において、腫瘍微小環境内でのPS曝露は「免疫抑制」であり、これは身体が癌と適切に戦うことができないことを意味する。PSを遮断することによって、バビツキシマブはPS媒介免疫抑制を無効化し、身体が腫瘍を攻撃するのを助ける。
【0136】
腫瘍微小環境内にある細胞、特に腫瘍内(およびウイルスに感染した細胞およびウイルス内)の血管を覆う細胞において、PSは比較的安定したマーカーであり、これはそれが治療の理想的な標的であることを意味する。多くの細胞死が存在する疾患において、PSはまた細胞の外側にも曝露され、これは、バビツキシマブが、増加した細胞死または不適切な細胞死が生じる様々な疾患(そのような病態は、例えば、癌および心臓発作を含む)の診断において、ならびに特に「撮像」(すなわち、インビボ診断)のためにも使用され得ることを意味する(撮像については下記を参照されたい)。
【0137】
宿主細胞にPSを外在化させる主な病原体は、ウイルスである(節J)。実際に、エンベロープウイルスの侵入および感染の増強剤としてのPSおよびPS受容体の役割は現在十分に立証されており、広範囲のウイルスに適用される。さらに、PSとウイルスとの関係は、エンベロープウイルスに限定されず、非エンベロープウイルスにも及ぶ。特に、ウイルスに感染した細胞から放出される「PS脂質小胞」が、エンテロウイルスの効率的な一括感染を可能にすることが既知である(Chenら、2015)。
【0138】
癌およびウイルス感染症に加えて、広範囲の疾患および病原性感染症は、PSを健康な細胞内のその内部位置から弾き出して、細胞の外側に曝露させ、これは、バビツキシマブなどのPS標的化抗体がそれらの細胞および病原体に局所化し、有益な効果を発揮し得ることを意味する。まとめると、これらは「PSがマーカーである疾患および障害」である。
【0139】
癌、ウイルス性および病原性感染症以外で、PSがマーカーである顕著な疾患および障害としては、(凝固しやすい)血栓形成促進性血管を有する疾患および障害、ならびに異常な血管新生に関与するものを含む、異常な脈管構造(血管)に関与する疾患を含む。血管新生は、既存の血管から新たな血管が形成されるプロセスであり、新たな血管の発達は、PSを必要とする内皮細胞芽の形成から始まる(Weihuaら、2005)。異常な血管新生は、多くの疾患、特に癌に関与している。それらの異常な脈管構造を考慮して、バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、良性前立腺肥大症(BPH)などの(悪性とは対照的に)良性腫瘍、聴神経腫瘍、神経線維腫、トラコーマ、肉芽腫(化膿性肉芽腫およびサルコイドーシス(サルコイド)を含む)、髄膜腫、アンジオーマ、血管腫、ならびに全身型血管腫である血管腫症を治療することができる。
【0140】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体で治療することができる異常な脈管構造に直接関連する病態としては、血管形成術後の再狭窄、静脈閉塞、動脈閉塞、および閉塞性頸動脈または閉塞性疾患を含む血管再狭窄(血管の狭小化);ベーチェット病(眼疾患でもある)、結節性多発動脈炎(結節性汎動脈炎またはPAN)、およびウェゲナー肉芽腫症(WG)またはサルコイドーシス(多発性血管炎を伴う肉芽腫症、GPA)を含む血管炎(炎症によって血管が破壊される障害);動静脈奇形(AVM)および動静脈瘻;鼻出血(鼻血);血管癒着;ならびに過粘稠度症候群が挙げられる。
【0141】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、異常な脈管構造とのそれらの関連のために、関節リウマチおよび変形性関節症などの関節疾患、滑膜炎、血友病性関節、およびパジェット病;乾癬、皮膚炎、強皮症(全身性硬化症またはCREST症候群)、弾性線維性仮性黄色腫(PXE、Gronblad−Strandberg症候群として知られる)、酒さ、スティーブンス−ジョンソン症候群またはスティーブンス−ジョンソン病(PXE、酒さ、およびスティーブンス−ジョンソン症候群はまた眼疾患でもある)類天疱瘡、肥厚性瘢痕、およびケロイドなどの皮膚疾患;オスラー−ウェーバー(またはオスラー−ランデュ−ウェーバー)症候群またはオスラー−ウェーバー(またはオスラー−ランデュ−ウェーバー)病(遺伝性出血性末梢血管拡張症、HHTとしても知られる)を含む臨床的に重要な疾患を治療することができる。
【0142】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体で治療される異常な脈管構造に関与する疾患の特に重要な例は、眼の血管新生疾患である。これらの疾患は、網膜、脈絡膜、および/または角膜などの眼の構造への新たな血管の浸潤を特徴とする。それらは失明の最も一般的な原因であり、約20の眼疾患に関与している。最も一般的な眼の血管新生疾患は、(増殖性)糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症(AMD)を含む黄斑変性症、未熟児網膜症(ROPまたはテリー症候群、以前は後水晶体線維増殖症RLFとして知られていた)、血管新生緑内障、角膜移植血管新生、および角膜移植後拒絶反応である。脈絡膜血管新生(CNV)は、進行性AMDを有する患者における重度の視力喪失の症例の90%を占め、直接および間接PS標的化抗体の両方を含むPS標的化抗体で効果的に治療されている(Liら、2015)。
【0143】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体で治療することができる網膜/脈絡膜血管新生に関連する他の疾患には、梅毒性眼感染症、マイコバクテリア性眼感染、および/または網膜炎もしくは脈絡膜炎を引き起こす他の眼感染症;硝子体炎および周辺部ぶどう膜炎を含むぶどう膜炎(虹彩毛様体炎);エールス病、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、ベスト病(卵黄様黄斑変性症)、シュタルガルト病、眼の外傷、およびレーザー後合併症が含まれる。
【0144】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体で治療することができる角膜血管新生に特に関連する更なる疾患としては、アトピー性角膜炎、上輪部角結膜炎、乾燥翼状片角膜炎、および辺縁性表皮剥離どの、角膜炎(角膜のみが炎症する)および結膜炎(結膜のみが炎症する)を含むあらゆる形態の角結膜炎;フィレクテヌローシス(phylectenulosis);モーレン潰瘍;化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、ヘルペス感染症、ならびに眼の外傷およびコンタクトレンズの過剰装着が挙げられる。
【0145】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体で治療することができる他の眼疾患としては、強膜炎、ルベオーシス(虹彩の血管新生)、隅角血管新生(NVA)、および糖尿病に関連するかどうかに関わらず、線維血管または線維組織の異常増殖によって引き起こされる疾患(全ての形態の増殖性硝子体網膜症(PVR)を含む)が挙げられる。
【0146】
内皮細胞芽の形成にはPSが必要であるため、新たな血管の発達にもまたPSが必要である(Weihuaら、2005)。このプロセスはまた、特定の正常な生理学的事象、特に創傷治癒および再生にも関与し、排卵および受精後の胞胚の着床において重要である。したがって、バビツキシマブを使用するこのプロセスの予防は、無月経を誘発する(生殖年齢の女性における月経期間の不在)、排卵を遮断する、かつ/または胞胚による着床を防止する、すなわち避妊薬として使用することができる。創傷治癒において、過剰な修復または線維増殖は、外科手順の有害な副作用である可能性があり、癒着は、手術の頻繁な合併症であり、これは小腸閉塞などの問題をもたらし得る。これらもまた、バビツキシマブなどのPS標的化抗体によって治療することができる。
【0147】
慢性炎症もまた、異常かつ病理学的な脈管構造に関与する。特に、潰瘍性大腸炎およびクローン病などの慢性炎症性疾患の状態は、炎症組織への新たな血管の内部成長と共に組織学的変化を示す。したがって、それらの疾患もまた、バビツキシマブなどのPS標的化抗体によって治療することができる。
【0148】
宿主細胞がPSを曝露する、ならびに/またはPS陽性細胞外微小胞およびエキソソームが立証されている、いくつかの他の疾患および障害が既知である。例えば、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血とも呼ばれる)および鎌状赤血球クリーゼでは、赤血球の30〜40%が時期尚早に老化し、PS陽性(「鎌状赤血球」)であるのに対して、健康な人々ではこれは約1%に過ぎない。PS陽性鎌状赤血球は循環したままであり、内皮に付着し、それらの曝露されたPSは凝血塊増殖の原因となる凝固カスケードの開始のためのプラットフォームとして作用する(Kennedyら、2015)。
【0149】
PSはまたアテローム動脈硬化症においても発現され、PS陽性細胞外微小胞はアテローム硬化性プラークから放出される(Mallatら、1999)。PS陽性である血管内腔内に形成されたプラークもまた、血管新生刺激活性を有することが示されている。ヒト冠状動脈アテローム性硬化症の進行における、および閉塞性冠状動脈疾患における再開通プロセスにおける、VEGFなどの血管新生マーカーの病態生理学的有意性についての特別な証拠が存在する。したがって、バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、アテローム性動脈硬化症および閉塞性冠状動脈疾患のための効果的な治療を提供する。
【0150】
1型および2型糖尿病患者はいずれも、アネキシンV陽性であることによって示されるように、PS陽性の細胞外微小胞を有する(Sabatierら、2002)。アルツハイマー病において、脳のエキソソームは、PSと、この疾患の病原体であるアミロイドβ−ペプチド(Aβ)とを含有する(Yuyamaら、2012)。PSおよびPS陽性細胞外微小胞もまた敗血症(敗血症性ショック)に関与しており、それらは敗血症誘導微小血管機能不全および免疫抑制のマーカーおよびメディエーターである(Souzaら、2015)。
【0151】
身体自身のリン脂質に対して抗体が産生される自己免疫性障害である、抗リン脂質抗体症候群(APS)および全身性エリテマトーデス(SLEまたはループス)は、流産および血小板減少症(低血小板数)などの凝固障害に関連付けられている。したがって、これらの患者における抗リン脂質抗体は、血栓症を引き起こす病原性抗体である。しかしながら、バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、いかなるそのような副作用も呈することなくPSを標的化する。したがって、バビツキシマブはまた、抗リン脂質抗体症候群、関連疾患、およびその合併症も治療することができる。特に、バビツキシマブは、APS患者において病原性抗体と拮抗または競合する可能性があり、したがって病原性抗体を体内のそれらのリン脂質−タンパク質標的から退ける。
【0152】
病原性感染症に関して、例えば、リーシュマニア症を引き起こす寄生原虫であるLeishmania amazonensis(Zandbergenら、2006;Wanderleyら、2009;Wanderleyら、2013)、マラリアを引き起こすPlasmodium falciparum(Eda&Sherman、2002;Pattanapanyasatら、2010)、およびトリパノソーマ症を引き起こす寄生原虫であるTrypanosoma cruzi(DaMattaら、2007)などの細胞内寄生体は全て、PS曝露をもたらす。同様に、トキソプラズマ症を引き起こすToxoplasma gondii(Seabraら、2004)と同様に、住血吸虫症を引き起こす寄生扁形動物であるSchistosomaもまたPSを曝露する(van der Kleijら、2002)。
【0153】
PS曝露はまた、それぞれペストおよび野兎病を引き起こすYersinia pestisおよびFrancisella tularensisなどの細胞内細菌性病原体による感染後の細胞外表面上でも示されている(Lonsdaleら、2011)。リステリア症を引き起こすListeria monocytogenesもまた、感染した宿主細胞からの細胞外表面のPSを有する膜由来小胞の放出を促進する(Czuczmanら、2014)。同様に、髄膜炎を引き起こす病原体であるNeisseria meningitidisに感染した内皮細胞は、細胞表面へのPS転位を呈する(Schubert−Unkmeirら、2007)。マクロファージにおいて細胞内複製し、結核(TB)を引き起こすMycobacterium tuberculosisへの感染は、結核病変の好中球におけるPS外在化と関連付けられている(Francisら、2014)。同様に、レジオネラ症を引き起こす通性的な細胞内寄生体であるLegionella pneumophilaは、ヒト単球においてPS外在化を誘導する(Hageleら、1998)。
【0154】
したがって、上記に詳述した通性的な細胞内寄生体に共通するPS外在化は、それぞれブルセラ症、ならびに腸チフス、パラチフス、および食中毒などの疾病などを引き起こす、BrucellaおよびSalmonellaなどの他のそのような病原体について生じる可能性がある。これはまた、性感染性クラミジア感染症を引き起こすChlamydia菌種などの偏性的な細胞内寄生体による感染症についても立証されており、PS外在化は病態形成にとって重要であり、感染した上皮細胞、内皮細胞、顆粒球細胞、および単球細胞上で示されている(Goth&Stephens、2001)。トラコーマを引き起こすChlamydia trachomatisもまた治療することができる(上記も参照されたい)。
【0155】
実際に、宿主細胞上のPS外在化は、現在、様々な細菌および病原体への感染に応答する一般に認識されている現象である(Wandlerら、2010)。これは、胃上皮細胞に侵入し(Petersen&Krogfelt、2003)、胃潰瘍を引き起こすHelicobacter pyloriをさらに含む。H.pyloriが胃上皮細胞と直接接触を持つと、それは宿主の原形質膜の外小葉へのPS外面化を誘導する(Murata−Kamiyaら、2010)。PSはまた、梅毒を引き起こすTreponema pallidumにも存在する。南アメリカで見られる細菌性感染症であるバルトネラ症は、バビツキシマブで治療することができるが、これは、特にバルトネラ症が血管内皮細胞の増殖を特徴とする慢性期をもたらし、癌治療において明らかに示されるバビツキシマブの作用機構のうちの1つが血管内皮細胞を破壊することであるためである。
【0156】
インビボ診断に関して、バビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用して、前述の疾患、障害、および感染症のいずれかを撮像すること、最も好ましくは血管新生化腫瘍を撮像することができる(Jenneweinら、2008;Marconescu&Thorpe、2008;Sahaら、2010;Stafford&Thorpe、2011;Gongら、2013;Staffordら、2013;米国特許第7,790,860号)。バビツキシマブはまた、深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、心房細動、人工心臓血管材料の問題、脳卒中(脳血管障害(CVA)または脳血管発作(CVI)などの、特に心臓内また心臓付近の血管血栓症の撮像にも使用することができる。バビツキシマブなどのPS標的化抗体はまた、例えば、膿瘍、再狭窄、関節炎などの病態にある、ならびに動脈血栓症、冠動脈血栓、静脈血栓症、および脳血栓症などの止血障害にある、活性化血小板の撮像にも使用することができる。
【0157】
したがって、バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、PSが立証されたマーカーである上記全ての疾患および障害を治療および/または診断するのに好適である。
【0158】
J.ウイルス感染症の治療
宿主細胞にPSを外在化させる主な病原体は、ウイルスである。PSの存在は、ウイルスおよびウイルスに感染した細胞の表面上で実証されており、かつ/またはArenaviridae、Bunyaviridae、Flaviviridae、Filoviridae、Herpesviridae、Orthomyxoviridae、Paramyxoviridae、Poxviridae、Retroviridae、およびRhabdoviridaeを含む広範囲のウイルスファミリーによる感染症にとって重要であることが示されている(各々2015年2月27日に出願された米国特許出願第14/634,607号ならびにPCT特許出願第PCT/US15/18183号の表2Aおよび表2Bもまた参照されたい)。加えて、ウイルスおよびウイルスに感染した細胞上でのそのようなPS曝露は単に偶発的なものではなく、ウイルス感染症において重要な役割を有することを実証するデータが提示されている(米国特許出願第14/634,607号の表2Cおよび表2D、米国特許第7,906,115号、WO2015/131153A1もまた参照されたい)。これは、インビトロおよびインビボの両方で、多様なウイルスファミリーによる感染症を阻害するためのPS標的化抗体の使用によって示されている。
【0159】
PSとウイルス感染症との間の関係もまた、現在文献に詳しく立証されている(例えば、米国特許第7,906,115号;Soaresら、2008;Mercer and Helenius、2008;Moodyら、2010;Morizonoら、2011;Meertensら、2012;Best、2013;Bhattacharyyaら、2013;Jemielityら、2013;Moller−Tank&Maury、2014;Birgeら、2016)。これは、エンベロープウイルスの侵入および感染の増強剤としてのPSおよびPS受容体の役割を含む(例えば、Moller−Tank&Maury、2014の表1を参照されたい)。PSと、ウイルス感染症と、エキソソームなどの細胞外微小胞との関係もまた近年ますます明らかになってきており(Meckes&Raab−Traub、2011;Simsら、2014)、また広範囲のウイルスに適用されている(例えば、Walkerら、2009;Meckesら、2010;Izquierdo−Userosら、2010;Meckes&Raab−Traub、2011)。
【0160】
さらに、PSとウイルスとの関係は、エンベロープウイルスに限定されず、非エンベロープウイルスにも及ぶ(Claysonら、1989;Chenら、2015)。特に、「PS脂質小胞」(本質的にはエキソソーム)を示し、PS小胞がエンテロウイルスの効率的な一括感染を可能にすることを示すデータを添付する、Chenら、2015によるCell論文の表紙の図を参照されたい。特定の機構によって拘束されるものではないが、以下の理論的根拠は、PSがエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスの両方による感染症に関与していることを説明する。
【0161】
全てのウイルスは、宿主細胞からの成熟ビリオンの時間を計った排出を調整して、新たな宿主細胞の感染の成功を確実にする。エンベロープウイルスは、宿主細胞原形質膜を利用して、子孫ビリオンの次の宿主細胞への効率的な侵入を媒介するウイルスタンパク質を埋め込む。PSは、ウイルス放出前にウイルスに感染した細胞の外側に見られ、エンベロープウイルスは、宿主細胞からの排出時にPSをウイルスエンベロープに組み込む。
【0162】
エンベロープをそれらの成熟ビリオンに組み込まないウイルスは、他の機構によって宿主細胞を離れる。非エンベロープウイルスが細胞から新たなビリオンを放出するために使用するいくつかの戦略には、細胞溶解が含まれ、これは感染した細胞(T細胞またはマクロファージ)に対する宿主免疫応答によって直接的に、または宿主細胞タンパク質合成または細胞構造に対する直接的なウイルスの活性のために引き起こされ得る。細胞構造を変化させて細胞溶解を誘導するウイルスの一例は、アデノウイルスである。アデノウイルスは、感染中後半に、フィラメントネットワークおよびタンパク質合成を破壊することによって細胞の構造的統合性を変化させるいくつかのタンパク質を発現する。いくつかの非エンベロープウイルスは、いかなる細胞変性効果もなく、非破壊的機構を介してそれらの子孫ウイルスを放出することができる。ポリオウイルスは急速に(約8時間)細胞溶解を誘導するが、それはまた、新たな宿主細胞を感染させることができるPS脂質小胞内の細胞からも放出される。PS小胞内のポリオウイルス粒子は、HeLa細胞および初代マクロファージを感染させる上でPS小胞から除去されるウイルス粒子よりも効率的であり、アネキシンVによる小胞の遮断は、用量に依存した様式で感染した細胞からの小胞を阻害し、これは、PS脂質がポリオウイルス感染症の補助因子であることを示唆している。ポリオウイルスに加えて、コクサッキーウイルスB3およびライノウイルス粒子もまたPS脂質小胞内に放出され(Chenら、2015)、これは、細胞を溶解することなく成熟粒子を選択的に放出するためにエンテロウイルスによって利用される共通の機構を示している。
【0163】
SV40に関して、SV40もまた上記の種類のPS−脂質小胞内の細胞から放出される可能性がある。例えば、細胞変性効果の誘導前にSV40粒子の細胞からの放出が見られ得ることが報告されている(Claysonら、1989)。また、SV40ビリオンは、感染の48時間後に平滑な細胞質小胞内で観察され、SV40粒子の放出は、脂質膜にわたるカチオン輸送を遮断することによって細胞内タンパク質輸送を遮断するナトリウムイオン透過孔である、モネンシンによって阻害された。
【0164】
また、多くのウイルスは、効率的に複製するための環境を作り出すために宿主細胞の活性化を誘導する必要がある。ウイルス活性化剤または非ウイルス活性化剤のいずれかによる細胞活性化は、PS転位を活性化する細胞内カルシウム(Ca
2+)の上昇をもたらす。したがって、バビツキシマブなどのPS標的化抗体の潜在的な作用機構としては、細胞活性化に必要とされるタンパク質またはウイルス放出を媒介するそれらの能力との干渉、PS媒介免疫抑制の逆転、および免疫クリアランス機構による感染した細胞またはウイルスのクリアランスが挙げられる。
【0165】
インビボウイルスモデルは、PS標的化抗体で治療したウイルスに感染した動物の生存期間の増加を実証する。バビツキシマブなどのPS標的化抗体がそのような抗ウイルス特性を発揮することが示されている潜在的な機構には、1)ウイルス粒子への結合、2)感染した細胞への結合、3)ウイルス複製の阻害、および4)PSに結合する免疫抑制細胞受容体を遮断することによる免疫応答の増強が含まれる。HIV−1モデルにおけるデータは、ウイルスに感染したマクロファージによって産生されたビリオンが、マクロファージのHIV−1感染の補助因子としての役割を果たす、上昇したレベルのPSを有することを実証する。PS標的化抗体でHIV−1上のPSを遮断することは、細胞間相互作用を予防し、ウイルス標的細胞融合を遮断し得る。結果はまた、バビツキシマブがピチンデウイルス粒子に結合し、ピチンデウイルスに感染したモルモットの治療が抗ピチンデ抗体および細胞応答の両方の発生を増強することも示している。
【0166】
全体として、バビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用するエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスを含む全てのウイルス感染症の治療は、そのような治療に関して本開示を補足する米国特許第7,611,704号および米国特許第7,906,115号に教示されている。特に、これら特許の表H、表J、および表Gは、バビツキシマブなどのPS標的化抗体との併用療法において使用することができる一般的な抗ウイルス薬(表G)と共に、動物およびヒトにおけるウイルス感染症および関連疾患の治療(表H、表J)を例証している。
【0167】
K.癌の治療
本出願の広範な節は、バビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用して腫瘍および癌を治療することに関する。聴神経腫、聴神経腫瘍、神経線維腫、トラコーマ、化膿性肉芽腫およびBPHなどの良性腫瘍の治療が含まれる。悪性腫瘍の治療が好ましい。本明細書で使用される場合、「腫瘍(複数可)および癌(複数可)」は、別段明確に述べられない限り、悪性腫瘍を示すことが意図される。
【0168】
白血病およびリンパ腫などの血液由来腫瘍、ならびに骨髄の様々な急性または慢性新生物疾患の治療が包含される。好ましくは、治療される腫瘍は、血管新生が活性である腫瘍および血栓形成促進性血管を有する腫瘍を含む、固形腫瘍または血管新生化腫瘍である。「固形」および「血管新生化」腫瘍は、血管構成成分を有する、すなわち、腫瘍細胞への酸素および栄養素の提供に腫瘍血管を必要とする腫瘍である。
【0169】
原発性または転移性であるかに関わらず、乳癌、卵巣癌、胸部癌、肺癌、肝臓癌(肝細胞癌、HCC)、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、脳癌(神経膠腫および神経膠芽腫)、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、耳下腺癌、食道癌、喉頭癌、甲状腺癌、胃腸癌、胃癌、腎臓癌(腎細胞癌、RCC)、胆道癌、膀胱癌、精巣癌、ならびに黒色腫、メルケル細胞癌、および血液悪性腫瘍だけでなく、細胞腫(扁平上皮癌および非扁平上皮癌、小細胞癌および非小細胞癌)、腺癌、および神経芽腫も含む他の癌によって例証される、全ての癌が含まれる。特定の実施形態において、本発明は特に、非小細胞肺癌(NSCLC)、あるいは乳癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、直腸癌、もしくは卵巣癌、または黒色腫に適用される。特に、本発明は、非扁平上皮NSCLCなどのNSCLCに適用される。
【0170】
公開された文献に加えて、バビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用する全ての癌の治療がいくつかの米国特許に教示されている。例えば、米国特許第6,406,693号、同第7,422,738号、同第8,486,391号、同第7,247,303号、および同第7,572,448号であり、これらは全てそのような治療に関して本開示を補足する。治療的に有効な抗癌量に関する上記の考察もまた参照されたい(節H2)。バビツキシマブなどのPS標的化抗体の作用機序は、全ての固形腫瘍において実質的にまたは完全に同じであるため、本発明は、腫瘍細胞自体の特定の表現型または遺伝子型に関わらず、全ての固形腫瘍の治療に広く適用可能であることが理解される。
【0171】
L.併用療法
本出願の多くの節、公開された文献、およびいくつかの米国特許もまた、併用療法においてバビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用して癌を治療することに関する(例えば、米国特許第7,422,738号、米国特許第8,486,391号、米国特許第7,572,448号)。
【0172】
したがって、バイオマーカーおよび治療方法は、動物または患者が呈する特定の疾患または障害、特に癌およびウイルス感染症ならびにウイルス疾患の治療において一般に用いられる任意の他の方法と併用することができる。所与の治療アプローチ自体が患者の病態に有害であることが既知ではなく、PS標的化抗体療法に有意に反作用しない限り、それと本発明との併用が企図される。非悪性疾患のための併用療法もまた企図される。
【0173】
癌治療に関して、本発明は、外科手術、化学療法、放射線療法、サイトカイン療法、抗血管新生などのような古典的なアプローチ、および免疫腫瘍(IO)剤などのより新しいアプローチと併用して使用することができる。したがって、本発明は、バビツキシマブなどのPS標的化抗体が手術もしくは放射線治療と同時に、その前に、もしくはその後に使用されるか、または従来の化学療法剤もしくは放射線療法剤、サイトカイン、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、標的化療法、IO剤などと共に、その前に、もしくはその後に患者に投与される、バイオマーカーおよび併用療法を提供する。
【0174】
手術に関して、任意の外科介入が本発明との併用で実施され得る。放射線療法に関連して、γ線照射、X線、UV照射、マイクロ波、およびさらには電子放出などの、腫瘍細胞内で局所的にDNA損傷を誘導するための任意の機構が企図される。腫瘍細胞への放射性同位体の指向的送達もまた企図され、これは標的化抗体または他の標的化手段との関連で使用され得る。
【0175】
癌治療における物質の併用の一般的な使用法は、周知である。1つ以上の薬剤を、バビツキシマブなどのPS標的化抗体と併用して使用する場合、併用した結果が、各治療を別々に実行したときに観察される効果の相加である必要はない。少なくとも相加効果が一般には望ましいが、単一療法のうちの1つを超える任意の治療効果または利益の増加(例えば、副作用の低減)は価値があるだろう。また、併用治療が相乗効果を呈する特別な必要はないが、これは可能かつ有利である。
【0176】
本明細書で使用される場合、本発明で使用される「一次治療剤」または「第1の抗癌剤」は、バビツキシマブなどのPS標的化抗体である。本明細書で使用される場合、「二次もしくは三次治療剤」または「少なくとも第2もしくは第3の抗癌剤」は、第2または第3の異なる治療剤、抗癌剤、または抗ウイルス剤、すなわち、一次治療剤「以外の」治療剤、抗癌剤、または抗ウイルス剤である。本発明の併用療法において、任意の二次または三次治療剤を使用することができる。また、二次または三次治療剤、「第2もしくは第3の抗癌剤」、または「第2もしくは第3の抗ウイルス剤」は、本開示の指針および当業者の知識に従って、相加効果、相加効果を超える効果、および潜在的には相乗効果を達成する目的で選択され得る。
【0177】
併用療法、抗腫瘍療法、または抗ウイルス療法を実施するためには、動物または患者に、バビツキシマブなどのPS標的化抗体を、動物または患者内でそれらの併用治療作用、抗癌作用、または抗ウイルス作用をもたらすのに有効な様式で、別のもの、すなわち、第2または第3の異なる治療剤、抗癌剤、または抗ウイルス剤と併用して投与するだけでよい。したがって、薬剤は、疾患部位(例えば、腫瘍、腫瘍環境、もしくは腫瘍微小環境)内でのそれらの組み合わせでの存在をもたらすのに、かつ/または動物もしくは患者内でそれらの併用治療作用を発揮するのに、好ましくは動物もしくは患者の免疫系に対するそれらの併用治療作用を発揮するのに有効な量および有効な期間で提供される。この目的を達成するために、一次治療剤および第2または第3の異なる治療剤は、単一の組成物で、または異なる投与経路を使用して2つもしくは3つの異なる組成物として、実質的に同時に投与され得る。
【0178】
あるいは、バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、例えば、数分から数週間または数ヶ月の範囲の間隔だけ、第2または第3の異なる治療剤、抗癌剤、または抗ウイルス剤に先行しても、後続してもよい。一次治療剤および第2または第3の異なる治療剤が動物または患者に別々に適用される特定の実施形態において、各薬剤が依然として有利な併用効果を発揮することができるように、各送達時の間に不動作期間が存在しないことを確実にする。バビツキシマブによる今日までの臨床経験を含む標準的な実施から、1週間または2週間は、バビツキシマブの投与と第2または第3の異なる治療剤の投与との間の不動作期間ではない。実際に、約1週間の間隔が好ましくあり得る。
【0179】
さらに、1つの好ましい併用腫瘍療法は、動物または患者に、実質的に同時にまたは好ましくは数週間の間隔で、第2の異なる抗癌剤と併用してバビツキシマブなどのPS標的化抗体を投与し、その後、後続する時間に第3の異なる抗癌剤を投与し、後続する有効な時間(数ヶ月など)にわたって第3の異なる抗癌剤の定期的投与を続けることに関する。
【0180】
別々に時間を計った併用療法のための二次または三次治療剤が、本明細書で考察され、当該技術分野において既知であるものを含む特定の基準に基づいて選択され得る。しかしながら、前後の投与のために1つ以上の第2または第3の異なる治療剤を選択することが好ましくても、これは必要に応じて、実質的な同時投与におけるそれらの使用を排除しない。
【0181】
癌に関して、一次治療剤の「前に」投与するために選択され、増加した効果および潜在的には相乗効果を達成するように設計される第2または第3の異なる抗癌剤は、腫瘍微小環境内でPSの発現を誘導する薬剤を含む。例えば、局在化したカルシウム産生を刺激する、PSを原形質膜の外表面に移動させる膜輸送体を活性化させる、腫瘍内皮を損傷させる、アポトーシス前変化を引き起こす、かつ/または腫瘍内皮または腫瘍細胞内のアポトーシスを誘導する薬剤は一般に、PS発現の増加をもたらすだろう。そのような薬剤の例は、ドセタキセルおよびパクリタキセルである。その後、PSは、バビツキシマブなどのPS標的化抗体を使用して標的化され得、それにより全体的な治療効果を増幅し、また宿主エフェクター(補体、ADCC、抗体媒介食作用、CDC)を介した攻撃を増加させる。
【0182】
腫瘍血管内には存在するが、正常な静止血管内には存在しないような、血管新生、リモデリング、または活性化内皮細胞に対する選択性を有する薬物もまた、腫瘍微小環境内でのPSの曝露を選択的に引き起こすために使用することができる。そのような薬剤の例は、コンブレタスタチンおよびドセタキセルである。これもまた、抗体結合の増加および宿主エフェクター機構の開始の増強をもたらすだろう。
【0183】
一次治療剤に「後続して」投与するために選択され、増加した効果および潜在的には相乗効果を達成するように設計される、第2または第3の異なる抗癌剤は、一次治療剤の効果から利益を得る薬剤を含む。バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、腫瘍壊死を引き起こす。したがって、後続投与に有効な第2または第3の異なる抗癌剤には、転移を阻害する抗血管新生剤、壊死腫瘍細胞を標的化する薬剤(インビボで悪性細胞から利用可能になる細胞内抗原に特異的な抗体など)(米国特許第5,019,368号、同第5,882,626号)、末梢で生存し得るあらゆる腫瘍細胞を攻撃する化学療法剤および抗腫瘍細胞免疫複合体が含まれる。下記のように、バビツキシマブなどのPS標的化抗体に後続して投与するための現在最も好ましい第2または第3の異なる抗癌剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。
【0184】
状態によっては、治療期間を大幅に延長することが望ましい場合があり、数日間(2、3、4、5、6、もしくは7)、数週間(1、2、3、4、5、6、7、もしくは8)、または数ヶ月間(1、2、3、4、5、6、7、もしくは8)がそれぞれの投与間に経過する。これは、ある治療が腫瘍を実質的に破壊することを意図し、別の治療が微小転移もしくは腫瘍の再成長の予防および/または腫瘍に対する宿主応答の刺激もしくは補助(抗血管新生剤もしくは免疫チェックポイント阻害剤)を意図する状況において有利である。しかしながら、効果的な創傷治癒を可能にするために、抗血管新生剤は手術後の慎重な時期に投与されるべきである。その後、抗血管新生剤は、患者の生涯にわたって投与され得る。
【0185】
一次治療剤または第2もしくは第3の異なる治療剤のいずれかの複数回投与を利用することもまた、想定される。一次治療剤および第2もしくは第3の異なる治療剤は、1日置きもしくは1週間置きに互換的に投与されてもよく、または一連の1つの薬剤治療が与えられ、その後に一連の他の治療(複数可)が与えられてもよい。いずれにしても、併用療法を使用して治療効果を達成するためには、投与時間に関わらず、治療効果を発揮するのに有効な併用量で2つ以上の薬剤を送達することが必要である。
【0186】
L1.化学療法
実質的に同時に投与されようと、連続的に投与されようと、バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、1つ以上の化学療法剤または化学療法薬と併用して投与することができる。化学療法薬は、増殖中の腫瘍細胞を死滅させ、治療全体によって生じる壊死領域を増強することができる。したがって、薬物は、本発明の一次治療剤の作用を増強することができる。
【0187】
ほとんどの癌化学療法薬は、分裂中の酸素化細胞に対して選択的である。それらは併用療法において利点を有するが、これは化学療法薬が一次治療剤とは異なる標的に作用し、より完全な抗腫瘍効果をもたらすためである。例えば、化学療法薬は、腫瘍末梢において急速に分裂する酸素化腫瘍細胞に対して選択的に活性である。腫瘍末梢における高酸素化血管新生血管に選択的である抗血管新生薬もまた、併用に有効だろう。
【0188】
腫瘍血管内で血栓の形成を誘導することによって、本発明の一次治療剤はまた、腫瘍内に薬物を保持または捕捉することにより化学療法薬の作用を増強することができる。したがって、化学療法剤は腫瘍内に保持される一方で、残りの薬物は身体から除去される。したがって、腫瘍細胞はより長期間にわたってより高濃度の薬物に曝露される。腫瘍内への薬物のこの閉じ込めは薬物の用量の低減を可能にし、治療をより安全かつより効果的にする。
【0189】
本発明において併用するための更なる薬物は、一次治療剤の作用によって薬物に対して「感作」された細胞に作用するものであるため、その抗腫瘍効果を達成するのに必要とされる第2の薬物の用量は低減される。例えば、これは、第2の薬物の作用の腫瘍構成成分が腫瘍血管に発揮され、本発明の抗体または薬剤が細胞を薬物に対して感作する場合に生じ得る。これは、本発明の一次治療剤が、直接的にまたはサイトカイン放出の刺激を通して、腫瘍細胞を第2の薬物に対して感作する場合にも同様である。
【0190】
併用療法に好適な他の第2または第3の抗癌剤は、例えば、免疫系の免疫抑制構成成分の活性を選択的に阻害することによって、宿主エフェクター細胞の活性を増強するものである。そのような薬剤は、それらの機構の一部分としてエフェクター細胞による攻撃を刺激する本発明の一次治療剤を、より積極的に機能させることができる。そのような薬剤の例は、ドセタキセルおよび免疫チェックポイント阻害剤である。
【0191】
一次治療剤の正確な作用機構(複数可)についての理解は、本発明の治療の実施に必要ではないが、そのような機構に関するデータおよび道理にかなった推論を使用して、本発明において併用するための特定の第2または第3の抗癌剤を選択することができる。転じて、選択された併用療法の有効性は、元のデータおよび提案された作用機構を支持し、また併用療法を実施するための第2または第3の抗癌剤の好ましいカテゴリーをもたらす。
【0192】
アポトーシスを誘導する薬物が、併用療法に使用されてもよい。例えば、ドセタキセルは、微小管への結合および細胞有糸分裂の破壊によってアポトーシスを誘導し、したがってPS曝露を誘導する(Hotchkissら、2002)。腫瘍血管を覆う内皮細胞および腫瘍細胞の、無症状濃度のドセタキセルによる治療は、細胞表面でのPS発現を誘導することが既知である。
【0193】
バビツキシマブなどのPS標的化抗体の抗腫瘍効果には、ADCC、CDCなどの免疫エフェクター機能のFcドメイン媒介増大、サイトカイン産生の刺激、およびそのような機構の組み合わせが含まれる。これはまたドセタキセルにも関連するが、それは、他の研究が、乳癌患者のドセタキセルでの治療が血清IFNγ、IL−2、IL−6、およびGM−CSFサイトカインレベルの増加をもたらし、ナチュラルキラー(NK)細胞およびリンホカイン活性化キラー細胞(LAK)細胞の活性を増強することによってこれらの患者における抗腫瘍免疫応答を増大することを示しているためである。
【0194】
したがって、ドセタキセルは、投与された抗体のPS発現および結合の両方を誘導し、また抗腫瘍効果を媒介する免疫エフェクターの活性も増強する。前述の考慮事項に基づいて、抗体とドセタキセルとの併用は、下記のように、免疫チェックポイント阻害剤とも併用されるか、または免疫チェックポイント阻害剤による治療が続く場合に特に好ましい実施形態である。
【0195】
したがって、ドセタキセルおよびアポトーシスを誘導する他の化学療法剤は、本発明の併用療法に使用するための特定の好ましい薬剤である。ドセタキセルなどのアポトーシスを誘導する化学療法薬との併用は、腫瘍脈管構造内皮細胞および腫瘍細胞区画を相乗的に攻撃し、治療効力の有意な増強だけでなく、毒性の低下ももたらす。これらの併用は、乳癌治療、特にドセタキセルを使用するメトロノーム化学療法とPS標的化抗体との併用での使用が企図される。
【0196】
併用療法のための例示的な化学療法剤は、米国特許第7,572,448号および米国特許第9,421,256号に記載されており(例えば、米国特許第7,572,448号の表Dおよび米国特許第9,421,256号の表Cに列挙されるもの)、例えば、ペメトレキセド、テモゾロミド、タモキシフェン、エルロチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、パクリタキセル、カルボプラチン、ゲムシタビン、およびドセタキセルなどである。例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、およびベバシズマブなどの他の治療抗体もまた使用することができる。当該技術分野において既知であるそれらの化学療法剤、抗体、および他の薬物の各々は例示的であり、限定的ではない。治療される病態に応じて、投薬量の変動が生じ得る。治療する医師は、個々の対象にとって適切な用量を決定することができるだろう。特定の好ましい実施形態において、ドセタキセルは、60mg/m
2の出発用量で投与されるドセタキセル、または75mg/m
2の量で患者に投与されるドセタキセルとして使用される。
【0197】
M.免疫療法(IO)の併用
効果的な免疫療法に対する課題は、自然または適応免疫活性化を阻害する複数の経路を克服することである。PD−1免疫チェックポイントは、主要な免疫抑制経路として特定されており、化学療法よりも毒性が少ない癌免疫療法のための有望な標的として浮上している。それは、活性化した腫瘍特異的T細胞を消耗させ、それらの殺腫瘍活性を弱めるように機能する。PD−1は、ナイーブT細胞、B細胞、マクロファージ、DC、および単球には不在であるが、それらの活性化対応物には高度に発現される。特に、腫瘍および関連骨髄細胞は、PD−1経路を利用して、PD−L1発現の上方制御を通して自然および適応免疫耐性を生成する。機構的研究は、これらの免疫チェックポイントの遮断が、新規または既存の抗腫瘍免疫応答が存在するときに最も有効であることを示している。残念なことに、腫瘍微小環境を支配するPSおよび他の免疫抑制因子の曝露のために、既存の腫瘍特異的免疫活性は癌患者において限定的である。
【0198】
複数の癌型において、PD−1シグナル伝達を遮断する薬剤による持続的な抗腫瘍免疫応答が観察されているが、あるサブセットの患者のみが応答しており、結果的に満たされない重要な医学的必要性が残っている。特に、腫瘍微小環境内で低レベルのPD−1およびPD−L1(免疫抑制およびT細胞活性化の欠如のバイオマーカー)を発現する患者は、チェックポイント遮断療法に対する応答性が低いようである。免疫活性化の観察は、バビツキシマブなどのPS標的化抗体が、抗PD−1/PD−L1および他のチェックポイント療法から利益を得ることができる患者の割合を増加させ得ることを示している。
【0199】
本明細書に提示されるのは、バビツキシマブおよび免疫療法で治療したヒト患者が、有意義な生存優位性を有することを初めて示す臨床データである。特に、実施例XIXの結果は、バビツキシマブ(およびドセタキセル)、その後に後続免疫療法(「SACT−IO」)で治療した患者が、プラセボ(ドセタキセル単独)、その後に免疫療法で治療した患者と比較して、統計的に有意でより良好な全生存期間を有することを実証する。後続IOを受けるバビツキシマブ患者のmOSはまだ到達されていないため、生存期間の延長は統計的に有意であり(p=0.006)、さらにより印象的であった(実施例XIX、
図26、表16)。したがって、バビツキシマブは実際に、ヒト患者において免疫療法剤の活性を増強する。
【0200】
したがって、実施例XIXのデータによって例証されるように、本発明の重要な実施形態は、免疫療法剤または免疫腫瘍(IO)剤との併用での、バビツキシマブなどのPS標的化抗体による癌患者の治療である。併用療法のための例示的な免疫療法剤は、2016年10月11日に出願された仮出願第62/406,727号の表C、ならびに2017年4月3日に出願された仮出願第62/480,994号、および2017年5月17日に出願された仮出願第62/507,580号の各々の表Dに列挙されており、このうちNK細胞療法およびCAR−T療法との併用が現在好ましい。
【0201】
IO剤の特定の好ましい例は、2017年4月3日に出願された仮出願第62/480,994号および2017年5月17日に出願された仮出願第62/507,580号の各々の表Eに記載されているものなどの、臨床治療またはヒト臨床試験、好ましくは後期臨床試験において承認されているものである。2017年4月3日に出願された仮出願第62/480,994号および2017年5月17日に出願された仮出願第62/507,580号の各々の表Eの詳細によって例証されるように、使用のための用量および治療のための適応症は当業者に周知である。例えば、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、腎細胞癌(RCC)、古典的ホジキン(Hodgkin)リンパ腫、頭頸部の扁平上皮癌(頭頸部癌)、膀胱癌、小細胞肺癌、脳癌(悪性神経膠腫、未分化星状細胞腫(AA)、および多形神経膠芽腫(GBM)など)、肝細胞癌(HCC)、食道癌、胃癌、中皮腫、および骨髄腫の治療には2週間毎に240mgまたは3mg/kgのニボルマブ;黒色腫、NSCLC、古典的ホジキンリンパ腫、頭頸部癌、胃癌、乳癌、膀胱癌、全固形腫瘍、結腸直腸癌、RCC、多発性骨髄腫、食道癌、およびHCCの治療には3週間毎に200mgまたは2mg/kgのペムブロリズマブ;膀胱癌、NSCLC、RCC、結腸直腸癌、前立腺癌、黒色腫、乳癌、卵巣癌、および小細胞肺癌の治療には3週間毎に1200mgのアテゾリズマブ;転移性メルケル細胞癌、NSCLC、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、RCC、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫、および頭頸部癌の治療には2週間毎に10mgのアベルマブ;ならびにNSCLC、頭頸部癌、膀胱癌、および小細胞肺癌の治療には2週間毎に10mg/kgのデュルバルマブ(MEDI4736)である。
【0202】
他の好適なIO剤は、切除不能または転移性黒色腫の治療には3週間毎に3mg/kgまたは10mg/kgのイピリムマブ;黒色腫の治療には3ヶ月毎に15mg/kgのトレメリムマブ;NSCLCの治療にはREGN2810;黒色腫の治療にはPDR001;NSCLCの治療にはラコツモマブ;進行性固形腫瘍の治療にはMEDI0562およびGSK3174998;黒色腫の治療にはウレルマブ;DLBCLの治療にはウトミルマブ;ならびに固形腫瘍の治療にはBMS−986016、LAG525、JNJ−61610588、TSR−022、MBG453、MEDI1873、およびINCAGN01876の各々である。
【0203】
実施例XIXのデータによって直接支持されるように、バビツキシマブなどのPS標的化抗体との併用療法に特に好ましいIO剤は、本明細書において「免疫チェックポイント抗体」とも呼ばれる「チェックポイント阻害剤」である。好適な「免疫チェックポイント抗体」としては、CD28、OX40、および/またはGITRなどの活性化免疫チェックポイント、受容体、または分子に結合するアゴニスト(活性化)抗体、ならびにPD−1、PD−L1、CTLA−4、TIM−3、および/またはLAG−3などの阻害免疫チェックポイント、受容体、または分子に結合する拮抗(遮断)抗体が挙げられる。そのような遮断抗体は慣例的に「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、これもまた本明細書で使用される。いくつかのそのような抗体はまた、臨床治療または後期臨床試験に承認されているものとして、2017年4月3日に出願された仮出願第62/480,994号および2017年5月17日に出願された仮出願第62/507,580号の各々の表Eにも記載されている。
【0204】
免疫チェックポイント抗体(免疫チェックポイント阻害剤)の現在最も好ましい例は、「CTLA−4、PD−1、またはPD−L1に結合する遮断抗体」である。CTLA−4、PD−1、またはPD−L1に結合するいくつかのそのような遮断抗体、ならびにそれらの選択、調製、および使用のための機能アッセイを含む方法は、表Bに記載されるように、当業者に周知である。これらには、イピリムマブおよびトレメリムマブなどのCTLA−4に対する遮断抗体;ニボルマブ(Brahmerら、2015)、REGN2810、およびペンブロリズマブ(Garonら、2015)などのPD−1に対する遮断抗体;デュルバルマブ(MEDI4736)およびアテゾリズマブ(Fehrenbacherら、2016)などのPD−L1に対する遮断抗体;ならびに「IOダブレット」として知られる、そのような抗体のうちのいずれか1つ以上の組み合わせが含まれる。これらのうち、トレメリムマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、およびアテゾリズマブが現在好ましい。トレメリムマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、およびアテゾリズマブの主な米国特許はそれぞれ、米国特許第6,682,736号、米国特許第8,008,449号、米国特許第8,779,108号、および米国特許第8,217,149号である。
【0205】
表Bに加えて、抗CTLA−4抗体の他の好適な例は、米国特許第6,207,156号に記載されているものであり、この特許は特に、寄託された雑種細胞に由来する定義された抗体から選択されるCDR(CDR3、CDR2、またはCDR1)を含む、抗CTLA−4抗体に関する。
【0206】
表Bに加えて、抗PD−L1抗体の他の好適な例は、米国特許第8,168,179号に記載されているもの(この特許は特に、化学療法の併用を含む、ヒト抗PD−L1抗体によるPD−L1過剰発現癌の治療に関する)、米国特許第9,402,899号(この特許は特に、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体を含む、PD−L1に対する抗体による腫瘍の治療に関する)に記載されているもの、米国特許第9,439,962号に記載されているもの(この特許は特に、抗PD−L1抗体および化学療法による癌の治療に関する)である。これらの抗PD−L1抗体組成物および方法は、Ono Pharmaceuticalsおよび共同研究者らによって開発中のものを含む。
【0207】
PD−L1に対する更なる好適な抗体は、米国特許第7,943,743号、同第9,580,505号、および同第9,580,507号のもの、それらのキット(米国特許第9,580,507号)、ならびにそれらの抗体をコードする核酸(米国特許第8,383,796号)である。そのような抗体はPD−L1に結合し、結合について基準抗体と競合するか、VHおよびVL遺伝子によって定義されるか、あるいは定義された配列の重鎖および軽鎖CDR3(米国特許第7,943,743号)もしくは重鎖CDR3(米国特許第8,383,796号)またはそれらの保存的修飾によって定義されるか、あるいは基準抗体に対して90%または95%の配列同一性を有する。これらの抗PD−L1抗体はまた、定義された定量的(結合親和性を含む)特性および定性的特性を有するもの、免疫複合体、ならびに二重特異性抗体を含む。免疫応答を増強する上で、そのような抗体、ならびに定義された定量的(結合親和性を含む)特性および定性的特性を有するもの(単鎖形式の抗体および単離されたCDRの抗体にある抗体を含む)を使用する方法がさらに含まれる(米国特許第9,102,725号)。米国特許第9,102,725号にあるように、免疫応答の増強を使用して、癌または感染症(ウイルス、細菌、真菌、または寄生体による病原性感染症など)を治療することができる。これらの抗PD−L1抗体組成物および方法は、BMS936559の製品を含む。
【0208】
PD−L1に対する更なる好適な抗体は、米国特許出願第2016/0009805号にあるものであり、この特許は、定義されたCDR配列の抗体および競合抗体を含む、PD−L1上の特定のエピトープに対する抗体;核酸、ベクター、宿主細胞、免疫複合体;検出、診断、予後、およびバイオマーカー方法;ならびに治療方法に関する。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
* * *
【0209】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示されている技術は、本発明の実施において十分に機能することが発明者によって発見された技術を表しており、したがってその実施のための好ましい様式を構成すると見なされ得ることが、当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態において多くの変更を行い、依然として同様または類似の結果を得ることができることを理解するべきである。
【0210】
実施例I
3G4抗体の生成
本実施例は、3G4と呼ばれるマウスPS標的化抗体の免疫化プロトコル、生成、および初期特徴付けを記載する。
【0211】
アニオン性リン脂質、主にPSをより強い免疫原として免疫系に提示するために、それらを細胞の文脈において、特にPS陽性細胞として製剤化した。他の膜構成成分によって囲まれた、膜に曝露されたPSは、抗体を産生させるためのより良好な立体構造を有する。その意図は、PSを発現する自己細胞で免疫適格動物を免疫化することであり、ここで動物は全ての自己表面抗原に対する抗体を産生するのではなく、外的要素として膜に曝露されたPSを認識する。
【0212】
マウス内皮腫細胞bEnd.3(不死化マウス(BALB/c株)内皮細胞)を、10%のCO
2のインキュベーター内、9ml/500mlのHEPES緩衝液を有する10%のDMEM中で培養した。所望の数の細胞が得られるまで、bEnd.3細胞をT175 TCフラスコ内で増殖させた。典型的には、約70〜80%の培養密度の各フラスコは、約3×10
6個の細胞を有し、各マウスは、1×10
6〜20×10
6個の細胞、最大で1×10
7個の細胞を受ける。
【0213】
bEnd.3細胞を37℃で1または2時間、50μM〜200μMの過酸化水素で処理して、免疫化前にアニオン性リン脂質、特にPSを曝露させた。H
2O
2のストックは、[9.8M]、30体積%であった。これを1:1000に希釈し、その後、0.4mlを40mlの培地を有するT175 TCフラスコに添加して、H
2O
2の最終濃度を100μMとした。細胞を37℃で1時間維持した。採取するために、培地中の全てのBSAまたは血清タンパク質を除去する目的で、細胞を温かいリン酸緩衝食塩水(PBS)+10mMのEDTAで3回洗浄した。細胞を穏やかなトリプシン処理で除去し、洗浄し、1000rpmで5分間遠心分離した。上清を吸引し、細胞を添加剤なしで適切な体積になるようにDMEM中に再懸濁し(各マウスは200μl中約1×10
7個の細胞を受けた)、氷上に維持した。
【0214】
このようにして処理した細胞を、1mlのシリンジおよび23ゲージの針を使用して、BALB/cマウスの腹腔内に注射した(200μlの細胞懸濁液)。まず、マウスを3〜4週間の間隔で3〜7回免疫化した。2回目の追加免疫から始めて、各追加免疫の10日後にマウスを出血させることによって、免疫血清を収集した。PS抗体の血清力価をELISAによって試験した。
【0215】
自己PS陽性細胞によるこれらの免疫化は、自己抗体の非制限的な産生はもたらさず、PSと反応性の抗体の産生、主に他のアニオン性リン脂質との併用でPSと反応性の抗体の産生に限定されていた。PSなどのアニオン性リン脂質と反応性の抗体の力価が非常に高いマウスを得た。マウスは、いかなる毒性の徴候も示さなかった。
【0216】
更なる免疫化において、様々なマウスを過酸化水素処理したbEnd.3細胞で3回免疫化し、血清を初回免疫の54日後に試験した。血清中のPSと反応性のIgG抗体を、抗マウスIgG、Fc特異的二次抗体で検出した(血清中のIgM抗体を、抗マウスIgG mu特異的二次抗体で検出した)。この免疫化プロトコルを使用して、PSと反応性のIgGおよびIgM抗体を有するいくつかの有効な抗血清を得、そのうちIgG抗体を有する抗血清が一般により有効であった。
【0217】
典型的には、PSに対する所望の抗血清のIgG力価が200,000超に達しているが、PC力価が50,000未満であったときに融合を実行して、モノクローナル抗体を生成した。免疫化した動物の脾細胞を骨髄腫パートナーP3X63AG8.653細胞(ATCC、Rockville,MD)と融合させることによって、雑種細胞を得た。
【0218】
腫瘍治療に有用なモノクローナル抗体を調製するためのこの技術の重要な一態様は、アニオン性リン脂質に結合するが、中性リン脂質には結合しない抗体を選択するためのスクリーニングに関与する選択戦略であった。別の重要な態様は、血清の不在下でも血清の存在下と同様に強くPSコーティングプレートに結合する抗体を選択することであった。これは、PSとβ2GPIとの複合体などの、PSと血清タンパク質との複合体を認識する抗体を排除する目的で実行した。
【0219】
PSと反応性のモノクローナル抗体を単離するための戦略は、抗マウスIgG、Fcガンマ特異的二次抗体を使用して、PSコーティングプレート上の雑種細胞上清をスクリーニングすることに関与した。まず、4つのリン脂質(PS、ホスファチジルセリン;PE、ホスファチジルエタノールアミン;CL、カルジオリピン;およびPC、ホスファチジルコリン)、ならびにbEnd3細胞に対してスクリーニングを実行した。中性リン脂質であるPCと反応性のクローンを廃棄し、bEnd3細胞と非反応性のクローンも同様に廃棄した。PSに対して高い結合を有するクローンを選択した。第1に、PSのみの反応性またはPSに対する強い選択性を有するウェルをサブクローニングし、第2に、他のアニオン性リン脂質への結合と組み合わせてPS反応性を呈するウェルをサブクローニングした。
【0220】
選択された各雑種細胞のアイソタイプを決定した。IgGクラスの抗体は、典型的により高い親和性、インビボでのより低いクリアランス速度、ならびに精製、修飾、および取り扱いの単純さを含む、IgMよりも多数の利点を有するため、それらの生成が特に所望された。均質なIgGアイソタイプを有するウェルに焦点を合わせるために、IgMまたは異なるIgの混合物を含有するウェルを廃棄するか、または再クローニングした。高度に陽性のクローンのサブクローニングを、3〜4回反復した。
【0221】
最初に「F3−G4」と呼ばれ、3G4として再度命名された、有利なマウスIgG抗体(IgG
3κ)を選択した。3G4抗体を、血清の存在下および不在下でELISAにおいてPSへの結合について試験し、最初に「血清非依存性」、すなわち、血清の不在下でPSに結合する抗体として特徴付けた。
【0222】
PSまたは他のリン脂質への結合を試験するために使用した以下の「標準ELISA」を使用して、3G4抗体を研究した。リン脂質抗原(PS抗原、2.5mlの瓶中P−6641が25mg 10mg/ml(溶媒は95:5のクロロホルム:MeOH))原液をアリコートし、−30℃で気密容器内に保存する。好ましい96ウェルプレートは、Dynatech U bottom Immulon1(Dynatech Labsより、カタログ番号011−010−3550)である。
【0223】
使用した標準遮断緩衝液は、PBS中に溶解した10%のウシ血清であった。一次抗体は、試験試料であった。二次抗体は、ヤギ抗マウスIgG−HRPであった。発色溶液は、10mlの0.2MのNa
2PO
4、10mlの0.1Mのクエン酸、1個の10mgのOPD錠剤、および10μLの過酸化水素であった。停止溶液は、0.18MのH
2SO
4であった。
【0224】
プロトコルは、以下のようにPSで96ウェルプレートをコーティングすることを伴った:PS原液を、n−ヘキサン中に10μg/mlになるまで希釈し、よく混合した。50μlを各ウェルに添加し、1時間蒸発させた。200μlの10%の血清を(遮断緩衝液として)各ウェルに添加し、覆いをし、室温で2時間または4℃で一晩維持した。プレートをPBSで3回洗浄した。一次抗体(遮断緩衝液中に希釈)を添加し、37℃で2時間インキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄した。1ウェル当たり100μlの二次抗体(典型的にはヤギ抗マウスIgG−HRP)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄した。ウェルの各々に100μlの発色溶液を添加することによってELISAを発色させ、10分間発色させ、その後、各プレートに100μlの停止溶液を添加し、光学濃度を490nmで読み取った。
【0225】
3G4抗体が、従来の抗体と比較して改善されたPSに対する相対的親和性を有すること、ならびに3G4抗体が、PS、CL、PI(ホスファチジルイノシトール)、PA(ホスファチジン酸)、およびPG(ホスファチジルグリセロール)に結合することを決定した。腫瘍内で差次的に発現されるPSを標的化するためのモデルと一致して、3G4抗体は、中性リン脂質、PC、およびSMとは反応しなかった。
【0226】
標準的なタンパク質A手順を使用して、3G4抗体を、培養した雑種の上清から見た目が均質になるまで精製した。簡潔には、生理学的pHの3G4抗体を含有する試料を、タンパク質Aカラムに適用し、IgGが固定化タンパク質Aに結合するように緩徐に通過させた。カラムを洗浄緩衝液で洗浄して、非結合血清構成成分を除去した。3G4抗体を、酸性溶出緩衝液(約pH2.8)を使用してカラムから溶出させ、その後、溶出した抗体を含有する画分を中和または透析して、生理学的pHに戻した。血清の不在下で実行されたELISAにおいてPSへの結合について、この高度に精製された3G4抗体を試験する上で、依然として、3G4はPSに直接、すなわち、血清または血清タンパク質なしで結合すると考えられた。
【0227】
実施例II
3G4抗体の前臨床抗腫瘍効果
この実施例において、同系および異種腫瘍モデルにおける3G4抗体の抗腫瘍効果のいくつかを示す初期前臨床経験を例証するためのデータを提供する。
【0228】
動物腫瘍研究のためのプロトコル
3G4の効果を、まず同系および異種腫瘍モデルにおいて検査した。動物腫瘍治療研究のための一般的なプロトコルは、以下の通りである。
【0229】
動物は、Charles Rivers Laboratoriesから得た。マウスは、生後4〜5週間の雌のC.B−17SCIDまたはFox Chase SCIDマウスであった。マウスは、無菌取り扱いによって、オートクレーブケージ内に収容し、無菌の食物および水を与えた。全ての手順は、層流フード内で実行した。マウスを1週間順応させ、その後、耳にタグ付けし、尾静脈から血液試料(約75〜100μl)を採取して、ELISAによって漏出を確認した。漏出ELISA試験に不合格であったマウスは、試験手順には使用しなかった。耳のタグ付けおよび血液試料除去の2〜3日後に、腫瘍細胞をマウスの乳房脂肪パッド(MFP)に同所注射するか、または右側腹部に皮下注射した。
【0230】
同所モデルでは、0.1mlのDMEM中、1×10
7個の細胞を、典型的には麻酔したマウスのMFPに注射した。0.075mlのマウスカクテルを腹腔内注射して、マウスを麻酔した。マウスカクテルは、5mlのケタミン(100mg/ml)、2.5mlのキシラジン(20mg/ml)、1mlのアセプロマジン(10mg/ml)、11mlの無菌水である。投薬量は、30分間にわたり腹腔内経路を介して、体重20〜30グラム当たり0.1mlであった。
【0231】
マウスに麻酔をかけた後(趾/足をつまんでも応答がないことによって測定される)、マウスをその左側を下にして置き、頭のすぐ後ろおよび右前腕の周り/背中の領域を70%のエタノールで拭いた。右前腕(側方胸部)のすぐ後ろに2〜3mmの切開を入れたところ、皮弁を上げたときに白っぽい脂肪パッドが現れた。1mlのシリンジおよび27ゲージの針を使用して、0.1mlの細胞を脂肪パッドに注射したところ、脂肪パッド内に小疱が生じた。切開部を、9mmの無菌創傷クリップを使用して閉じた。マウスをそのケージに戻し、それが麻酔から目覚め、動けるようになるまで観察した。手術後の健康状態を決定し、何らかの苦痛の徴候が観察された場合には、動物に飲料水中のアセトアミノフェン(0.24mg/ml)+コデイン(0.024mg/ml)を与えた。1週間後に創傷クリップを除去した。この方法は、細胞が皮下領域ではなく選択された部位に正確に配置されるように使用した。腫瘍は14〜15日間で約200μlの体積(長さ×幅×重量)であり、生着率は本質的に100%であった。
【0232】
皮下モデルでは、マウスに典型的には0.2ml中1×10
7個の細胞を注射した。マウスには麻酔をかけなかったが、マウスの皮膚をしっかりと握って拘束し、右側腹部を曝露させた。23ゲージの針を有する1mlのシリンジを使用して、マウスの皮膚のすぐ下に200μl中1×10
7個の細胞を注射したところ、小疱が見られた。注射部位からの少量の漏出を観察することは珍しくはなかった。この漏出を低減するために、皮下注射から針を引き抜くときにねじり運動を使用した。腫瘍体積を、長さ×幅×高さによって測定した。
【0233】
灌流プロトコルでは、マウスに0.2mlの生理食塩水中1000Uのヘパリンを静脈内注射した。その後、マウスに0.1mlのマウスカクテルを腹腔内注射することによって、マウスを鎮静させた。マウスが十分に鎮静した後(趾/足をつまんでも反射がないことによって測定される)、胸腔を開いて、心臓および肺を曝露させる。管および灌流ポンプに取り付けた30ゲージの針を、左心室に挿入した。血液が滴り落ちるように、右心室を切り取った。生理食塩水を、毎分1mlの速度で12分間ポンピングした。灌流の終了時に、針および管を取り除いた。免疫組織化学または病理学のいずれかの更なる研究のために、組織を取り除いた。
【0234】
ノンパラメトリック検定(マン−ホイットニーの順位和検定)を使用して、腫瘍成長速度の差を統計的有意性について試験した。
【0235】
B.腫瘍治療結果
同系モデルでは、Meth Aマウスの線維肉腫腫瘍細胞をBALB/cマウスと共に使用した。異種モデルでは、ヒトMDA−MB−231乳房腫瘍細胞またはMDA−MB−435細胞をSCIDマウスの乳房脂肪パッドに播種した。別の異種モデルでは、細胞を注入し、治療前に腫瘍を500mm
3超のサイズまで成長させることによって、大型ヒトホジキンリンパ腫L540異種移植片を確立した。対照抗体(BBG3と呼ばれる、Babesia bovis抗原に対するマウスIgG
3κ抗体、ATCCから23.8.34.24として得られる雑種細胞から分泌;HB−10113)とは対照的に、腫瘍保有マウス(1群当たり8〜10匹の動物)には見た目が均質になるまで精製した100μgの3G4抗体を腹腔内注射した。治療を1週間に3回反復した。腫瘍測定のために、動物を1週間に2回または3回監視した。
【0236】
同系腫瘍および異種腫瘍の両方の成長は、3G4抗体での治療によって効果的に阻害された(P<0.05)。研究終了時に、対照マウスとは対照的に、3G4治療マウスにおける腫瘍成長の平均低減は、MDA−MB−435では65%(
図1A)、MDA−MB−231では75%(
図1B)、Meth Aでは90%(
図1C)、およびL540では50%(
図1D)であった。アイソタイプが一致した対照抗体であるBBG3で治療した対照マウスでは、腫瘍成長の遅延は生じなかった。同系Meth A腫瘍細胞の治療は特に成功した。壊死に耐性があることが既知である大型L540腫瘍を保有するマウスにおいてさえ、3G4抗体治療は対照と比較して腫瘍成長を阻害した。3G4抗体で治療したマウスでは、毒性は観察されなかった。
【0237】
したがって、要約すると、3G4抗体は、毒性の証拠なしに、腫瘍血管損傷、局在性血栓症、腫瘍壊死、および腫瘍成長の遅延を引き起こした。
【0238】
実施例III
キメラ3G4抗体バビツキシマブの生成
本実施例は、合わせて6つの相補性決定領域(CDR)を含む3G4抗体の重鎖および軽鎖可変領域の全配列を提供し、現在バビツキシマブと呼ばれているマウス−ヒトキメラ抗体(ch3G4)を含む3G4抗体のキメラバージョンの生成を記載する。
【0239】
A.3G4抗体の配列
3G4抗体可変領域の元の配列を、3G4抗体を産生する雑種細胞からRACEによって得、その配列を検証した。3G4抗体の重鎖可変領域(Vh)の核酸配列およびアミノ酸配列は、米国特許第7,572,448号の
図18Aに示される。重鎖可変領域の配列は、Kabatによって予測可能な位置にVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を包含する(Kabatら、1991)。核酸配列内のBstEII部位を好都合な部位として使用して、例えば、ヒト定常領域への移植に使用するための機能性マウス可変領域を調製することができる。
【0240】
実際に、3G4−2BVH配列は、Lonza pEEベクターを使用してBstEII部位のヒトγ1定常領域に移植されている。結果として生じる生成物はマウスリーダー配列を含有し、そのVHは米国特許第7,572,448号の
図18Aに示される様式でヒトCH1配列に接合される。
【0241】
3G4抗体の軽鎖可変領域(Vκ)の核酸配列およびアミノ酸配列は、米国特許第7,572,448号の
図18Bに示される。軽鎖可変領域配列は、Kabatによって予測可能な位置にVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を包含する(Kabatら、1991)。核酸配列内のBbsI部位を好都合な部位として使用して、例えば、ヒト定常領域への移植に使用するための機能性マウス可変領域を調製することができる。
【0242】
実際に、3G4−2BVL配列は、Lonza pEEベクターを使用してBbsI部位のヒトκ定常領域に移植されている。結果として生じる生成物はマウスリーダー配列を含有し、そのVLは米国特許第7,572,448号の
図18Bに示される様式でヒトCL1配列内に接合される。
【0243】
B.マウスキメラ抗体2aG4の生成
直下に記載のように、マウス3G4抗体のヒトキメラ(ch3G4)は、ヒトIgG
1アイソタイプ(hIgG
1)である。ch3G4のマウスIgGホモログは、IgG
2aアイソタイプ(mIgG
2a)に対応する。この構築物を作製し、試験したところ、元のマウスIgG
3抗体と本質的に同じように挙動することが示された。
【0244】
簡潔には、3G4軽鎖コード配列を、3G4雑種細胞の細胞株から単離した全RNAからRT−PCRによって増幅した。RT−PCRプライマーは、Lonza発現ベクターであるpEE12.4ベクターへのクローニングのために、増幅断片が増幅産物の両端にXmaIおよびEcoRI制限酵素部位を含有するように設計した。3G4重鎖可変領域を、3G4雑種細胞の細胞株から単離した全RNAからRT−PCRによって増幅した。プライマーは、Lonza発現ベクターであるpEE6.4ベクターへのクローニングのために、増幅断片が増幅産物の両端にHindIIIおよびXmaI制限酵素部位を含有するように設計した。
【0245】
マウスIgG2a定常領域を、プラスミドベクターからPCRによって増幅した。PCRプライマーは、pEE6.4+3G4VHベクターへのクローニングのために、増幅産物の両端にBstIIおよびEcoRI制限酵素部位を有するように設計した。BstEII部位は、上流の3G4のVH可変領域配列とインフレームになるように設計した。重鎖および軽鎖構築物を、両方のベクターをSalIおよびNotIで切断することによって単一の二重遺伝子ベクター(12.4 3G4 IgG2a)に組み合わせた。重鎖および軽鎖コード領域を、配列決定によって検証した。
【0246】
12.4 3G4 IgG2aベクターを、電気穿孔によってNS0細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション後、NS0細胞を希釈し、グルタミンを欠如する培地中で96ウェルプレートにプレーティングした。(陽性選択のためのグルタミンシンターゼ遺伝子を含有する)構築物でトランスフェクトした細胞のみが、グルタミンの不在下で成長することができる。実施例Iの標準的なELISAを使用して、トランスフェクタントを特定し、抗体分泌についてスクリーニングし、最高量の抗体を分泌するそれらのトランスフェクタントを大型培養物中で成長させて、精製抗体を生成した。
【0247】
結果として生じる2aG4抗体を見た目が均質になるまで精製し、3G4抗体と本質的に同じ親和性および結合プロファイルを有することが示された。
【0248】
C.ヒトキメラ抗体ch3G4(バビツキシマブ)の生成
マウス可変領域およびヒト定常領域を含有するキメラ構築物を生成し(ch3G4)、元のマウス抗体と本質的に同じ特徴を有することが示された。
【0249】
マウス3G4抗体を、ヒト−マウスキメラ抗体に変換した。マウスV
Hをクローニングし、Lonza 2BVHベクターのBstEII部位のヒトγ
1定常領域上に移植した。マウスV
Kをクローニングし、Lonza 2BVLベクターのBbsI部位のヒトK定常領域上に移植した。配列を検証した。全構築物をCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させ、抗体を精製した。これは、現在バビツキシマブと呼ばれる抗体である。
【0250】
実施例Iの標準的なELISAを使用して、結果として生じるch3G4は、少なくともマウス3G4と同程度にリン脂質コーティングELISAプレートに結合した。キメラ3G4の、リン脂質PS、PA、CL、PI、およびPGへのインビトロ結合プロファイルは、3G4と同じであることが示された。無関係な特異性の対照抗体では結合は観察されなかったため、結合は抗原特異的であった。インビボでは、ch3G4は腫瘍血管内皮に局在化すること、ならびに広範囲の研究において抗腫瘍効果および抗ウイルス効果を発揮することもまた示された。
【0251】
しかしながら、キメラ3G4構築物を無血清条件下でCHO細胞内に発現させ、精製抗体を血清の不在下でELISAにおいてPSへの結合について試験した場合、PSへの結合は失われた。
【0252】
実施例IV
3G4抗体およびバビツキシマブは、β2GPIに依存した様式でPSを標的化する
この実施例は、元の雑種細胞由来の3G4抗体と、CHO細胞内で発現されたキメラ抗体とのPS結合プロファイルにおける見かけ上の矛盾を解決するためのデータを提供する。そうすることで、本実施例は、3G4抗体とPSとの間の相互作用が血漿タンパク質β2−糖タンパク質I(β2GPI)に依存することを実証する。
【0253】
A.材料および方法
1.材料
ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)およびトリプシン/EDTAは、Mediatech,Inc.(Herndon,VA)から得た。ウシ胎児血清(FBS)、正常ヒト血清、正常ラット血清、および正常マウス血清は、Biomeda(Foster City,CA)から得た。新鮮なヒト血漿は、Carter Blood Care(Dallas,TX)から得た。無血清雑種細胞培地、Synthechol NS0補助剤、L−α−ホスファチジルセリン(PS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、および鶏卵白由来の卵白アルブミン(OVA)は、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO)から得た。DEAEセルロース、ヘパリン−Sepharose、およびHybond−P膜は、Amersham Biosciences(Buckinghamshire,UK)から得た。1−パルミトイル−2−ヒドロキシ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン[リゾホスファチジルコリン(LPC)]は、Avanti Polar Lipids(Alabaster,AL)から得た。96ウェルのImmulon−1BおよびImmulon−2HBマイクロタイタープレートは、Thermo Lab Systems(Franklin,MA)から得た。トリス−HCl勾配SDS−PAGEゲルおよびOpti−4CN基質キットは、Biorad(Hercules,CA)から得た。8ウェルガラスチャンバースライドは、BD Biosciences(Bedford,MA)から得た。
【0254】
2.抗体
アニオン性リン脂質PSに結合するように生成された3G4マウスモノクローナル抗体は、実施例Iに記載されている抗体である。3G4を最初に雑種細胞上清中で産生させた(実施例I、実施例II)。3G4をマウスIgG2aアイソタイプにも変換し(実施例III、B)、NS0マウス骨髄腫細胞株内でも産生させた。NS0細胞を、10%のFBSを補充したDMEM中またはSynthechol NS0補助剤を有する無血清雑種細胞培地中で培養した。3G4のヒトキメラバージョン(ch3G4、バビツキシマブ)を生成し(実施例III、C)、無血清条件下でCHO細胞から抗体を産生させた。
【0255】
マウス抗ヒトβ2GPI(抗β2GPIまたはα−β2GPI)mAbは、US Biological(Swampscott,MA)から得た。C44を分泌する雑種細胞、コルヒチン特異的マウスIgG2a mAbは、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から得、3G4および抗β2GPIの対照として使用した。リツキシマブ(ヒトIgG1キメラmAb)を、ch3G4の対照として使用した。全ての二次抗体は、Jackson Immunoresearch Labs(West Grove,PA)から得た。
【0256】
3.抗体断片の調製
3G4 F(ab’)
2は、プロテアーゼペプシンと共にインキュベートすることによって生成した。3G4 Fabおよび対照Fab 7H11(抗アデノウイルス)は、プロテアーゼパパインと共にインキュベートすることによって生成した。全ての抗体切断生成物をFPLCによって精製し、SDS−PAGEによって検証した。
【0257】
4.ヒト血漿からのβ2GPIの精製
本実施例において使用するためのヒトβ2GPI(hβ2GPI)は、本質的に以前に記載されているように(Polzら、1980;Wurmら、1984)ヒト血漿から精製した。簡潔には、過塩素酸(70%)を、1.57体積%の最終濃度になるまでプールした血漿に添加した。沈殿物を廃棄し、上清を飽和Na
2CO
3でpH7.5に調整し、その後に50mMのトリス(pH8.0)に対する広範な透析を続けた。この材料を、50mMのトリス(pH8.0)で平衡化したDEAEセルロースカラムに適用して、混入物を除去した。その後、DEAEカラム通過画分を、50mMのトリス(pH8.0)で平衡化したヘパリン−Sepharose親和性カラムに適用し、結合したタンパク質を、1.0MのNaClを使用して溶出させた。最後に、β2GPI調製物をPBSに対して透析し、タンパク質A/Gによってさらに精製して、混入IgGを除去した。最終調製物は、非還元SDS/PAGEおよびCoomassie(登録商標)染色によって示されるように、50kDaで均質なバンドを含有した。
【0258】
5.β2GPIおよびβ2GPIドメインの構築および発現
純粋な組み換え完全長および欠失型のβ2GPIを生成するために、酵母シャトル発現ベクターpPIC6αA(Invitrogen)および宿主株Mut
+X−33(Invitrogen)を使用した。発現ベクターは、アルコール(メタノール)オキシダーゼ遺伝子(AOX1)の5’プロモーター配列および3’転写終結配列を含有する。このベクターはまた、AOX1プロモーターの下流に酵母α接合因子シグナル配列も有し、これに外的cDNAを融合させて、組み換え異種タンパク質を培地に分泌させることができる。P.pastorisにおける発現は、哺乳動物細胞内のものに類似したグリコシル化およびジスルフィド結合形成を提供する。
【0259】
発現構築物を生成するために、Lusterら、2006および米国特許第8,956,616号に記載されるように、ヒトβ2GPI cDNAを使用して以下の5つの発現構築物、その同族シグナルペプチドを有しないβ2GPI cDNAの全コード領域(ドメインI−V);ドメインI欠失(ドメインII−V);ドメインIおよびII欠失(ドメインIII−V);ドメインI、II、およびIII欠失(ドメインIV−V);ならびにドメインVのみ(ドメインI、II、III、およびIV欠失)を作製した。共通の3’プライマーを、全ての断片のPCRに使用した。
【0260】
PCR増幅断片を、α接合因子シグナル配列のすぐ下流のpPICαAのEcoR1制限部位とXbaI制限部位との間にインフレームで挿入した。各断片の末端に停止コドンを導入して、組み換えタンパク質がc−mycエピトープまたはC末端のHisタグに融合するのを予防した。プラスミド構築物を、100μg/mlのブラスチシジンの存在下、E.coli中で増殖させ、制限分析およびヌクレオチド配列決定によって検証した。上記の5つの構築物によって発現された組み換えタンパク質は、グリコシル化前にそれぞれ約36、29、24、16、および9kDaのタンパク質をコードしていた。
【0261】
発現クローンの形質転換およびスクリーニングのために、組み換えプラスミド構築物を制限酵素SacIで直線化し、精製し、10μgを使用して、スフェロプラスト法(Invitrogen)によって宿主株X−33を形質転換した。400μg/mlのブラスチシジンを含有するYPD(酵母抽出物ペプトンデキストロース培地)プレート上で、これらの構築物の各々の形質転換体を4日間選択した。これらの構築物の各々のいくつかのクローンを、400μg/mlのブラスチシジンを有するYPDプレート上に再度画線付けして、真の組み込み体を決定した。その後、各構築物の10のクローンを、最小デキストロース(MD)プレートおよび最小メタノール(MM)プレート上に画線付けした。その後、MDプレートおよびMMプレート上の両方で同様に良好に成長する各構築物の5つのクローンを、24、48、72、96、および120時間、液体MD培地およびMM培地中で成長させた。各時点での各クローンの上清およびペレットを、抗ヒトβ2GPIポリクローナル抗体を使用してウエスタンブロットによって分析した。上清中で最高のタンパク質発現を示したクローンを、大規模な調製にさらに使用した。
【0262】
組み換えタンパク質の大規模な精製のために、Invitrogenによって推奨されている培養条件を使用して組み換えタンパク質を生成した。各クローンの出発培養物を、30℃で激しく振盪しながら5mlの緩衝最小グリセロール複合体培地(BMGY)中で一晩培養した。細胞を収集し、25mlのBMGYを播種するのに使用し、2日間成長させた。その後、25mlの培養物に由来する細胞を使用して、1Lの緩衝最小メタノール複合体(BMMY)培地(1.0%のメタノール)に播種した。30℃で激しく振盪しながら4日間培養を続け、100%のメタノールを24時間毎に添加して(1.0%の最終濃度)、タンパク質発現を維持した。培地を遠心分離(4000×g、15分間)によって清澄化し、上清を50mMのトリス緩衝液中、4℃で2日間透析してから、50mMのトリス緩衝液で平衡化したDEAE−Sephacelカラムに適用した。通過画分溶液を収集し、ヘパリン−Sepharoseカラムに適用した。β2GPIを、1MのNaClでヘパリン−Sepharoseカラムから溶出させ、50mMのトリス緩衝液に対して透析し、Amicon濃縮器を使用して濃縮し、ウエスタンブロットによって分析した。各タンパク質のN末端を配列決定して、α因子リーダー配列の切断を確認した。タンパク質収量は、10mg/L(完全長β2GPI)から25mg/L(β2GPIドメインV)まで変動した。
【0263】
6.「ニック入り」hβ2GPIの調製
本実施例において上記のように、ヒト血漿から精製したインタクトなhβ2GPIからニック入りhβ2GPIを調製した。hβ2GPIをプラスミンコーティングビーズと共に37℃で17時間インキュベートした。ビーズを遠心分離によって除去し、切断されたタンパク質を含有する上清を回収した。精製された生成物のウエスタンブロットは、ニック入りβ2GPI調製物がプラスミンを含まず、プラスミン自己タンパク質分解産物を含有しない(抗プラスミン抗体または抗アンジオスタチン抗体との反応性がない)ことを示した。N末端配列分析により、β2GPIのN末端に対応する2つのN末端、およびLys317/Thr318切断部位で生成された1つの新たな配列が明らかになった。
【0264】
7.PS ELISA
実施例Iの標準的なELISAを、以下の変更を加えて適合させた。PSコーティングImmunlon 1Bマイクロタイタープレートを、1重量体積%のOVA中で一晩遮断した。翌日、血清含有上清または無血清上清から精製した3G4の段階2倍希釈液を、13.33nMの初期濃度から調製した。希釈は、1%のOVAまたはウシ、ヒト、ラット、またはマウス由来の10%の非加熱不活性化血清中で実行した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、3G4の結合を検出した。全てのELISA研究を、少なくとも3回実行した。
【0265】
8.抗hβ2GPI ELISA
以下の変更を加えて、上記のようにアッセイを実行した。hβ2GPI、ニック入りhβ2GPI、または組み換えhβ2GPIペプチドを、10μg/mlの濃度で96ウェルのImmunlon 2HBマイクロタイタープレート上に一晩コーティングした。その後、1%のOVA中、室温でプレートを1時間遮断した。3G4、ch3G4、または抗β2GPIを、1%のOVA中で13.33nMの初期濃度まで希釈し、段階2倍希釈液を調製した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、抗体結合を検出した。全てのELISA研究を、少なくとも3回実行した。
【0266】
9.ウエスタンブロット
タンパク質試料を、非還元SDS試料緩衝液中で95℃まで5分間加熱した。その後、試料をトリス−HClの4〜15%の勾配SDS−PAGEゲル上に充填し、Mini Protean II装置(Biorad)を使用して分離した。分離したタンパク質をPVDF膜に移し、3重量体積%のBSA中で一晩遮断した。膜を、3%のBSA中1μg/mlに希釈した抗β2GPI、3G4、または対照マウスIgGで探索し、徹底的に洗浄し、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgGと共にインキュベートした。膜を、Opti−4CN基質キットを使用して発色させた。
【0267】
10.内皮細胞上のPS曝露の誘導および検出
成体ウシ大動脈内皮(ABAE)細胞を、10%のFBSおよび2mMのL−グルタミンを補充したDMEM中で維持した。ABAE細胞を、0.25%のトリプシン/0.02%のEDTAへの短時間の曝露によって亜集密培養物から除去し、8ウェルチャンバースライドに1ウェル当たり2×10
4個の細胞で播種した。一晩培養した後、細胞をPBSで穏やかに洗浄し、200μMのリゾホスファチジルコリン(LPC)で処理して、PS曝露を誘導した。LPC処理は、10%のFBS中または10%の正常マウス血清(MS)中のいずれかで、37℃で30分間、3G4、ch3G4、または対照IgGの存在下で実行した。LPC処理を10%のMSで実行した場合、3G4/ch3G4はMS中ではPSに結合することができないため、hβ2GPIを補助因子として添加した(本実施例の以下の結果を参照されたい)。
【0268】
免疫蛍光染色によって、PS曝露を決定した。細胞をPBS中で徹底的に洗浄し、4重量体積%のパラホルムアルデヒド中に固定し、ビオチン共役抗マウス二次抗体と共にインキュベートした。次に、細胞をFITC共役ストレプトアビジン(Jackson Immunoresearch)と共にインキュベートして、抗体結合を検出した。その後、細胞をPBS中0.1%のTriton−X100で透過処理し、テキサスレッド共役ファロイジン(Molecular Probes、Eugene,OR)および4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、Molecular Probes)で対比染色した。Nikon顕微鏡に取り付けたCoolsnapデジタルカメラ(Photometrics、Tucson,AZ)を使用して画像をキャプチャし、MetaVueソフトウェア(Universal Imaging Corporation、Downingtown,PA)で処理した。
【0269】
11.ABAE細胞への抗体結合の定量化
画像中の点灯ピクセル数を定量化することができるMetaVue画像分析ソフトウェアを使用して、抗体結合の面積を決定した。FITC蛍光の画像を使用して、抗体結合を定量化した。対応するDAPI蛍光画像を使用して、視野内に存在する細胞数についてFITC画像を正規化した。小さいFITC/DAPI比は小さい抗体結合面積を示す一方で、大きいFITC/DAPI比は大きい結合面積を示す。FITC/DAPI比を使用して、選択された条件下での抗体結合の基礎量に対する抗体結合面積の増加または減少を決定した。各分析には、200倍の倍率の5枚の画像を使用した。データを、標準偏差との平均相対FITC/DAPI比として分析する。
【0270】
B.結果
全体として、以下のデータは、3G4(およびバビツキシマブ)抗体とPSとの間の相互作用が、血漿タンパク質β2GPIに依存することを実証している。3G4は、一般にβ2GPIドメインIを認識する、抗リン脂質抗体症候群(APS)を有する患者から単離された病原性抗体とは関連しないドメインIIでβ2GPIに結合することが示されている。このデータは、PS陽性細胞への結合を含むPS結合の増強に二価3G4/β2GPI複合体が必要とされ、これは3G4Fab’断片がこの活性を有しないためであることを示している。
【0271】
1.3G4は、PSコーティングマイクロタイタープレートへの結合に血清因子を必要とする
血清含有培地(SCM)または無血清培地(SFM)から精製した3G4抗体は、10%のFBS中で段階希釈を実行すると、PSコーティングマイクロタイタープレートに結合する(
図2A、実線)。対照的に、(ウシ血清タンパク質を欠如する)1%のOVA中で段階希釈を実行すると、SFMから精製した3G4は、もはやPSには結合しない(
図2A、破線、■)。この発見は、ウシ血清中に存在する因子が3G4とPSの間の相互作用を媒介することを示している。
【0272】
興味深いことに、1%のOVA中で段階希釈を実行すると、SCMから精製した3G4は依然としてPSに結合する(
図2A、破線、▲)。明らかに、血清含有培地由来の血清タンパク質は3G4とPSとの間の相互作用を媒介している。これは、SCM中で成長させた3G4を精製したとしても、精製抗体中に存在し得る低レベルの血清タンパク質が依然としてPS結合を支持するのに十分であることを示している。
【0273】
これらの発見を考慮して、SFMから精製した3G4を使用して下記の研究を実行した。
【0274】
2.異なる種由来の血清中のPSへの3G4の結合
他の哺乳動物種由来の血清が3G4抗体とPSとの間の相互作用を媒介し得るかどうかを決定するために、10%のマウス、ラット、ヒト、または他の血清中で3G4の段階希釈を実行した。3G4抗体は、ウシ血清の存在下でとほぼ同様に、ラットおよびヒト血清の存在下でPSに結合した(
図2B)。しかしながら、3G4は、マウス血清の存在下ではPSに結合しなかった(
図2B)。関連研究において、3G4は、ハムスター、フェレット、モルモット、ウサギ、およびサル血清の存在下でPSに結合した。したがって、3G4によって認識される血清タンパク質エピトープは、マウスを除いて試験した全ての哺乳動物種の間で保存されている。
【0275】
3.3G4は、血清糖タンパク質β2GPIに結合する
1990年代初期には、多くのいわゆる抗リン脂質(aPL)抗体がリン脂質を直接認識せず、代わりに血清タンパク質に結合し、それが転じてリン脂質に対する親和性を有することが示された(Galliら、1990;McNeilら、1990)。したがって、アニオン性リン脂質と相互作用することが既知であるヒト血清タンパク質のパネルを、3G4抗体との反応性についてスクリーニングした。
【0276】
例えば、ヒトβ2GPI(hβ2GPI)をマイクロタイタープレート上にコーティングし、マウス抗ヒトβ2GPI抗体(抗β2GPI)、3G4抗体、または無関係の特異性を有する対照マウスIgG2a(対照mIgG)と共にインキュベートした。予想通り、抗β2GPIはhβ2GPIに結合したが、対照mIgGは結合しなかった(
図3)。3G4抗体もまた、hβ2GPIコーティングプレートに強く結合した(
図3)。
【0277】
β2GPIが3G4抗体によって認識される唯一の血清タンパク質であるかどうかを決定するために、精製hβ2GPIおよび10%のヒト血清をSDS−PAGEゲル上に流し、免疫ブロット用の膜支持体に移した。3G4は、ヒト血清中で50kDaの精製hβ2GPIおよび類似サイズの単一のバンドを検出した。重要なことに、3G4免疫ブロットは、抗β2GPI抗体を使用して生成したブロットと実質的に同一であった。対照mIgG抗体は、いかなるタンパク質も検出しなかった。
【0278】
アニオン性リン脂質と相互作用することが既知である他のヒト血清タンパク質を試験して、ELISAにおいて3G4抗体との反応性の欠如を確認した。等量の特定のタンパク質をマイクロタイタープレート上にコーティングし、1%のOVA中で遮断し、3G4抗体の段階希釈物と共にインキュベートした。プレートを徹底的に洗浄し、抗体結合をペルオキシダーゼ標識二次検出抗体で検出した。全ての研究は、予想通りに機能した陽性および陰性対照抗体を含んだ。免疫ブロットおよびELISA研究の結果は、陽性がβ2GPI、陰性がアネキシンV、第XII因子、キニノーゲン(低または高分子量)、酸化LDL、タンパク質C、タンパク質S、プロトロンビン、および組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である。まとめると、これらのデータは、3G4抗体が血清タンパク質β2GPIに結合することを示している。
【0279】
4.3G4は、ドメインIIでβ2GPIに結合する
β2GPIは5つのドメインを有し、そのうち第5のドメインはPSなどのアニオン性リン脂質への結合に関与している。β2GPIのどのドメインが3G4抗体によって認識されるかを決定するために、異なるドメイン構造を有する組み換えヒトβ2GPI構築物を生成し、組み換え完全長hβ2GPIと共に試験した。これらのドメイン構築物は、N末端からの連続短縮化によって作製されたため、転じて、以下のようにN末端ドメインの各々を欠如している。組み換え完全長hβ2GPIはドメインI−Vを含有し、ドメインIが欠失しているhβ2GPIはドメインII−Vを含有し、ドメインIおよびIIが欠失しているhβ2GPIはドメインIII−Vを含有し、ドメインI、II、およびIIIが欠失しているhβ2GPIはドメインIV−Vを含有し、ドメインI、II、III、およびIVが欠失しているhβ2GPIはドメインVのみを含有する。
【0280】
等量の完全長hβ2GPIおよび上記のhβ2GPIドメイン構築物の各々を、マイクロタイタープレート上にコーティングし、3G4抗体の段階希釈物と共にインキュベートした。この研究は、β2GPIのドメインIIを含有するhβ2GPI構築物(ドメインI−VおよびドメインII−V)のみが3G4によって検出されることを示した(
図4)。ドメインIが欠失すると、3G4はドメインII−Vに同様に良好に結合した(
図4)。したがって、3G4抗体はドメインIIでβ2GPIに結合する。
【0281】
APS患者から単離した病原性抗体について既知である情報を考慮すると、3G4抗体がドメインIIでβ2GPIに結合するという発見は重要である。APS患者から単離した病原性抗β2GPI抗体は一般に、β2GPIのドメインIを認識する(de Laatら、2005)。ドメインIIを認識するAPS患者由来の抗β2GPI抗体は、しばしば病原性ではない。このことは、様々な動物モデルにおいて、および広範な臨床経験において実行される毒性学的研究(本明細書に記載されているものなど)後の3G4に関連する毒性の欠如を説明する可能性が高い。
【0282】
5.曝露されたPSを有する細胞への3G4およびβ2GPIの共結合
より生理学的な条件下で上記の発見を検証するために、生細胞結合アッセイを開発した。このアッセイは、膜破壊剤リゾホスファチジルコリン(LPC)で処理して、PS破壊を誘発した後の細胞膜表面への抗体結合を検出および測定する。
【0283】
このアッセイでは、ABAE細胞を、200μMのLPCの存在下または不在下で、DMEM+10%のFBS中の3G4抗体または対照mIgGと共に30分間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、固定し、蛍光マーカーで染色して、細胞表面への抗体の結合を視覚化した。3G4またmIgG結合のピクセル面積は、MetaVueソフトウェアを使用して定量化した。全ての値は、LPC処理されていない細胞への3G4の結合に対するものであり、これを1に設定した。
【0284】
3G4抗体を通常の条件下でABAE細胞培地に添加した場合、細胞への結合は観察されなかった。しかしながら、ABAE細胞をLPCの存在下で3G4と共にインキュベートした場合、3G4抗体結合の多数のピンポイントが容易に検出可能である。LPCは、一時的な膜の歪みを誘導することが既知であり(Kogureら、2003)、これは膜の非対称性の喪失およびPSの曝露を引き起こす可能性が高い。
【0285】
定量化は、3G4抗体結合の面積がLPC処理時に500倍超増加する一方で、対照mIgGの結合は検出不能なままであることを示した。類似した結果が以前に得られており、その時には3G4およびPS結合分子アネキシンVが、H
2O
2でのPS曝露の誘導後に内皮細胞に結合することが示された(Ranら、2005;米国特許第8,486,391号)。LPC処理したABAE細胞は、膜不透過性色素であるヨウ化プロピジウムまたはDAPIによって染色されず、これは、3G4が原形質膜の内小葉ではなく細胞膜上のPSと結合することを示した。
【0286】
3G4抗体が曝露されたPSを有する細胞に結合するのに、β2GPIが必要であることを確認するために、10%のFBSではなく10%のマウス血清を含有する培地中で生細胞結合アッセイを実行して、ウシβ2GPIからの干渉を予防した。上記に実証されるように、3G4抗体は、マウス血清の存在下ではPSに結合しない。さらに、3G4抗体は、免疫ブロットによって10%のマウス血清中のいかなるタンパク質も検出せず、これは、3G4がマウスβ2GPIを認識しないことを示した。
【0287】
この研究のために、ヒトキメラ3G4抗体(ch3G4)を使用して、マウス血清中に存在するマウスIgGの検出によって引き起こされるバックグラウンドを予防した。ABAE細胞を、10%のマウス血清およびLPCの存在下でch3G4と共にインキュベートした場合、抗体結合は検出されなかった(
図5)。対照的に、結合反応への精製hβ2GPIの添加はch3G4の広範な結合を支持し(
図5)、これは、ch3G4抗体結合がhβ2GPIに依存することを実証した。全ての状況において、ch3G4結合はLPC処理に依存し、無関係な特異性の対照ヒトIgGを使用した場合、結合は検出されなかった。
【0288】
興味深いことに、ABAE細胞を10%のマウス血清およびLPCの存在下でhβ2GPIと共にインキュベートし、徹底的に洗浄し、その後ch3G4抗体と共にインキュベートして、hβ2GPIの結合を検出した場合、非常に少ないch3G4結合が検出された(
図5)。この発見は、hβ2GPIがch3G4抗体の不在下では曝露されたPSを有する細胞に結合しないことを示し、これは、β2GPIが生理学的条件下でPS膜表面に対して低い親和性を有するという報告と一貫している(Willemsら、1996;Beversら、2004;Beversら、2005)。まとめると、これらのデータは、曝露されたPSを有するABAE細胞に結合するには、ch3G4抗体およびhβ2GPIが同時に存在しなければならないことを示し、これは、ch3G4抗体がPSに対するβ2GPIの親和性を増強することを示唆する。
【0289】
6.β2GPIの脂質結合領域が、3G4の共結合に必要とされる
β2GPIの脂質結合領域が、曝露されたPSを有する細胞へのβ2GPIならびに3G4抗体およびch3G4抗体の共結合に必要であることを確認するために、「ニック入り」hβ2GPIを使用して生細胞結合アッセイを実行した。ニック入りhβ2GPIは、ドメインVの脂質結合領域内のプラスミン媒介切断のために、PSに結合することができない(Huntら、1993;Hunt&Krilis、1994)。
【0290】
LPCの不在下でABAE細胞をch3G4抗体およびhβ2GPIまたはニック入りhβ2GPIと共にインキュベートした場合、ch3G4結合は検出されない(
図6A)。LPCの存在下では、hβ2GPIは曝露されたPSを有するABAE細胞へのch3G4の結合を媒介することができるが、ニック入りhβ2GPIは結合を媒介することができない(
図6A)。等量のタンパク質がマイクロタイタープレート上にコーティングされている場合には、ch3G4はニック入りhβ2GPIおよびhβ2GPIに結合するため、生細胞アッセイにおける結合の欠如は、ch3G4抗体がニック入りhβ2GPIに結合できないことによるものではない(
図6B)。これらの発見は、ch3G4/hβ2GPI複合体が、hβ2GPIドメインVの脂質結合領域を通してABAE細胞上に曝露されたPSを検出することを実証する。
【0291】
7.抗体二価性が、β2GPIの共結合に必要とされる
上記に提示されたデータは、3G4抗体が、アニオン性リン脂質に対するβ2GPIの結合活性を増強することによってPSを検出することを示唆する。曝露されたPSを有する細胞への3G4/β2GPIの結合に、二価性が必要とされるかどうかを決定するために、3G4 F(ab’)
2および3G4 Fab’モノマーを生成し、インタクトな3G4抗体による生細胞結合アッセイに使用した。予想通り、インタクトな3G4抗体は、LPC処理したABAE細胞に結合したが、未処理の細胞には結合しなかった。等濃度の3G4 F(ab’)
2もまた、LPC処理したABAE細胞に結合した(
図7A)が、3G4 Fab’の結合は無視できるものであった(
図7A)。3G4と比較して、3G4 F(ab’)
2の結合の明らかな減少が検出されたが、これは、3G4 F(ab’)
2上に欠損しているFcエピトープに対するポリクローナル二次抗体の結合の喪失によるものである可能性が高い。マイクロタイタープレート上にコーティングされたβ2GPIに結合するのに必要とされる濃度よりも1,000倍高い2μMの濃度ですら、3G4 Fab’の結合はABAE細胞上では検出できなかった。
【0292】
さらに、3G4 Fab’は濃度に依存した様式でLPC処理したABAE細胞へのch3G4/β2GPIの結合を阻害したが(
図7B)、無関係な特異性の対照Fab’は阻害しなかった。3G4 Fab’がch3G4結合を阻害する能力は、3G4 Fab’がβ2GPIに結合することができること、およびモノマー3G4 Fab’/β2GPI複合体が曝露されたPSを有する細胞に結合することができないことを確認する。これらのデータは、二価の3G4/β2GPI複合体が、細胞表面上に曝露されたPSに結合するのに必要とされることを示す。
【0293】
要約すると、
図4に示されるように、3G4抗体はドメインIIでβ2GPIに結合し、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、β2GPIドメインVの脂質結合領域が、細胞上に曝露されたPSへの3G4(およびch3G4)ならびにβ2GPIの共結合に必要とされる。加えて、
図7Aおよび
図7Bに実証されるように、抗体二価性が、曝露されたPSへの3G4(およびch3G4)ならびにβ2GPIのそのような共結合に必要とされる。したがって、活性化内皮細胞、腫瘍血管内皮細胞および腫瘍細胞、ならびにウイルス感染細胞で生じるものなどの、膜の外面上に曝露されたPSへの抗体およびβ2GPIの共結合のモデルを提示する(
図8)。
【0294】
実施例V
バビツキシマブとβ2GPIとの間の相互作用の前臨床モデリング
本実施例は、バビツキシマブファミリーの抗体β2GPIとPS間との相互作用に関する前臨床データを提供する。全体として、データは、ヒト集団における典型的な量を著しく下回る比較的低レベルのβ2GPIが、PSへのバビツキシマブの有効な結合に十分であることを示している。
【0295】
A.低β2GPIはマウスにおける抗腫瘍効果を支持する
マウス3G4抗体の初期の開発では、標準的なタンパク質A手順を使用して、培養雑種細胞の上清から抗体を見た目が均質になるまで精製した(実施例I)。マウスにおける初期の研究において、この精製抗体は、いくつかのモデルにおいて抗腫瘍効果を発揮することが示された(実施例II)。
【0296】
3G4抗体がPS結合にβ2GPIを必要とすること(実施例IV)、およびマウスを除いて全ての種のβ2GPIがPS結合を支持すること(
図2B)を決定した後、実施例IIの抗腫瘍効果が3G4抗体の効力の過小評価であると推論した。すなわち、
図1A、
図1B、
図1C、および
図1Dにおける3G4抗体の抗腫瘍効果は、タンパク質Aカラムを通して3G4抗体と共精製された可能性がある低レベルのウシβ2GPIによってのみ支持される。基本的に、送達されるタンパク質の大部分は純粋な3G4抗体であったが、低レベルのウシβ2GPIがマウスに同時投与されたはずである(雑種細胞の培養に使用された10%のウシ胎児血清(FBS)に由来)。したがって、これらの初期データは、3G4抗体がインビボで腫瘍成長を阻害するには、高レベルのβ2GPIが必要ではないことを示唆している。
【0297】
IgGに対する親和性に基づいて抗体を精製するタンパク質Aカラムを使用して、3G4抗体を見た目が均質になるまで精製した。培養培地由来のβ2GPIが、精製中に3G4抗体から分離した更なる理由が存在する。第一に、3G4抗体に対するβ2GPIの親和性は低い(かつタンパク質Aと3G4との間の親和性よりも小さい)ため、β2GPIは充填および洗浄の間に3G4から分離した可能性がある。第二に、(タンパク質Aから3G4抗体を分離するための)低pH溶出ステップは、3G4に複合体化したβ2GPIを除去した可能性がある。また、主要抗体ピークにおける溶出したタンパク質の収集時に、より小さいβ2GPIタンパク質が収集されなかった可能性がある。それにも関わらず、
図9Aおよび
図9Bに示されるように、マウスに送達された見かけ上純粋な3G4抗体のうちの10〜20%が、実際には3G4−β2GPI複合体の形態にあったという仮説的な立場を取ったとしても、そのようなレベルのウシβ2GPIは、絶対的にも抗体との比較でも、依然として非常に低い。
【0298】
より詳細には、3G4抗体を10%のFBS中の雑種細胞から産生した。1リットル体積は、典型的には10mg/Lの3G4抗体を産生するだろう。FBSが200μg/mlのウシβ2GPI(ヒト血清中のヒトβ2GPIのレベルと同様)を含有すると仮定すると、10%のFBSは20μg/mlのウシβ2GPIを含む。収集時に、1リットルの雑種細胞上清は、10mgの3G4抗体および最大20mgのウシβ2GPI(20μg/ml×1000=20mg)を含有するだろう。タンパク質Aでの精製時、得られた材料は10mgのタンパク質を含有するだろう。3G4純度を80〜90%と仮定すると、残りの10〜20%は3G4:β2GPI「複合体」であり、ここで1つの抗体は2つのβ2GPIに結合している(3G4−2×β2GPI)。
【0299】
マウスにそのようなタンパク質を100μg投与した。90%の純度では、投与された100μgのタンパク質のうち90μgが純粋な3G4であり、10μgの3G4−2×β2GPI複合体を有する。抗体の分子量(MW)を145kDとし、β2GPIのMWを50kDとすると(実施例IV、A4、B3;McNeilら、1990;Lusterら、2006)、複合体中の各抗体について2つのβ2GPIでは、重量比は約3:2である(正確には59.2%の抗体および40.8%の抗体)。したがって、10μgの複合体のうち、約6μgが3G4であり、4μgがβ2GPIである(正確には5.92μgの3G4、4.08μgがβ2GPIである)。
【0300】
マウスの血液の体積は、2mlである。純粋な3G4抗体は、マウス1匹当たり90μg、または45μg/mlで存在する。約3:2の比で、マウス1匹当たり10μgの複合体は、約6μgの3G4および約4μgのβ2GPI(3μg/mlの3G4および2μg/mlのβ2GPI)を含有する。抗体結合が可能な2μg/mlのβ2GPIでは、これはヒト血清中の平均β2GPIレベルの約1%であり、依然として抗腫瘍活性を支持した(
図1A、
図1B、
図1C、および
図1D)。
【0301】
マウスにおける2μg/mlのβ2GPIは、0.04μMに相当する。3G4に関しては、投与された3G4−2×β2GPI複合体由来の3μg/mlの3G4を45μg/mlの純粋な3G4に添加し、48μg/mlの3G4抗体が存在する。これは、0.33μMの抗体に相当する。90%の純度の出発点で、0.04μMのβ2GPIおよび0.33μMの3G4抗体では、これは0.12のβ2GPI対抗体のモル比である(
図9A)。80%の純度の出発点でさえ、同じ計算は、β2GPIのインビボ濃度が4μg/ml(0.08μM)であることを示し、インビボ抗体濃度は46μg/ml(0.32μM)である。これは、依然としてわずか0.25のβ2GPI対抗体のモル比である(
図9B)。抗体調製物の高感度ウエスタンブロット(その後ゲル上のβ2GPIバンドを特定することができる)を含む後続研究は、3G4抗体が常に少なくとも80〜90%の純度であることを確認した。したがって、0.12〜0.25のβ2GPI対抗体のモル比のこれらの計算は、3G4抗体を使用する初期のマウスデータが高レベルのβ2GPIが抗腫瘍活性には必要ないことを示すという当初の説明に定量的視点を加える。
【0302】
B.低β2GPIは細胞結合を支持する
細胞上のPSへの3G4−β2GPI複合体の結合に必要とされるβ2GPIレベルを分析するための第1の研究において、ABAE細胞をLPCで処理して、PS曝露を誘導し(実施例IV)、その後40nMの精製ヒトβ2GPIおよび様々な濃度のch3G4抗体(バビツキシマブ)と共にインキュベートした。相対ch3G4結合は、320pMから80nMのch3G4の見かけ上のピークまで濃度に依存した様式で増加し、これは2:1の抗体対β2GPI比である(
図10)。表1に示されるように(抗体のMW、145kD;ヒトβ2GPIのMW、50kD)、この研究における見かけ上のピーク結合は、0.5のβ2GPI対抗体のモル比に対応する。
【表3】
【0303】
ch3G4の濃度と曝露されたPSを有する細胞への結合との間の釣鐘形の関係(
図10)は、膜表面上の二価のch3G42×β2GPI複合体の形成をさらに支持し、一価のch3G4−β2GPI複合体が非常に高い抗体濃度で形成されることを示唆する。そのような濃度では、一価(非結合)複合体と二価(結合)複合体との間の競合が、細胞に結合したch3G42×β2GPI複合体の量の減少を引き起こした(「フック効果」としても知られる)と考えられる。
【0304】
この研究における最大の相対結合は、80nMの抗体濃度で生じ、これはわずか0.5のβ2GPI対抗体比である(
図10、表1)。これは、
図8に示される二価相互作用の予測よりも低い比であるが、雑種細胞から精製された3G4抗体によるマウスの治療について上記に報告された比と一般に一致する。しかしながら、この研究において、細胞上のPSの正確な密度は既知ではない。より重要なことに、試験したch3G4濃度において、飽和結合(プラトー)は観察されず、20〜80nMおよび80〜320nMのch3G4濃度での更なる試験が有益であるだろう。それでもなお、そのような中間試験がなくても、0.125、0.5、および2の間のβ2GPI対抗体のモル比で、最適な抗体結合が生じると結論付けることができる。これらのインビトロ数は、β2GPI対抗体のモル比が抗体純度に応じて0.12〜0.25であった、雑種細胞精製3G4抗体を使用するインビボ治療について上記に報告したものと良好に一致する。したがって、この第1のインビトロ研究はまた、低レベルのβ2GPIが、曝露されたPSを有する細胞へのバビツキシマブの結合を効果的に支持することも示す。
【0305】
低β2GPIはPS結合を支持する
以後の研究において、PSへの2aG4抗体の結合(実施例III)を、様々な濃度のヒトβ2GPIの存在下でELISAにおいて試験した。
【0306】
一定量の2aG4抗体および増加量のヒトβ2GPIを含有する溶液を調製した。簡潔には、62.5ng/ml(0.4nM)の2aG4を、卵白アルブミンの0.0032、0.016、0.08、0.4、2、10、または50nMのヒトβ2GPIに添加した。異なる2aG4−β2GPI混合物をPSマイクロタイタープレートに添加し、分子を37℃で1〜2時間結合させた。未結合分子は、PBSで洗浄することによって除去した。二次抗体は、結合緩衝液中のHRP結合抗ヒトIgGであった。プレートを37℃で1時間放置してから、PBSで5回洗浄することによって未結合抗体を除去した。TMB基質を100μlの体積で各ウェルに添加し、室温で15分間放置して、比色反応を生じさせた。100μlの2MのH
2SO
4を添加することによって、反応を停止させた。停止溶液を添加してから30分以内に、吸光度(光学密度、OD)を450nmの波長でプレート分光計によって読み取り、SoftMax Proソフトウェアを使用して分析した(β2GPIを有しない対照の平均ODを、試験試料の平均ODから減算することを含む)。
【0307】
この研究は、PSへの2aG4抗体の結合が、約1のβ2GPI対抗体のモル比でプラトーになり始め、ここでは両方の分子が約0.4nMで存在することを示した(
図11)。より正確には、表2に示されるように(抗体のMW、145kD;ヒトβ2GPIのMW、50kD)、0.93のβ2GPI対抗体のモル比は、PSでコーティングされたプレートへの抗体結合を支持するのに有効である。
【表4】
【0308】
上記の第1のインビトロ研究の観察を延長し、この研究は、PSへの抗体結合が、低いβ2GPI対抗体のモル比で既に飽和に到達し、その後プラトーに到達することを示した(50nMのβ2GPI でPS結合のわずかな喪失が観察され(
図11)、これはELISAアッセイ形式において一般的に検出される典型的な飽和効果に関連する可能性が高い)。本研究では、β2GPI対抗体の有効モル比は、約1(0.93)であった。β2GPI対抗体の比を5超に増加させても、結合の改善はもたらされなかった(
図11、表2)。
【0309】
卵白アルブミン中、様々な濃度のヒトβ2GPIの存在下で、ELISAにおいてバビツキシマブのPSへの結合を試験する一連の関連研究を実行した。バビツキシマブ滴定およびβ2GPI滴定の両方を実行した。これらの研究もまた、0.5μg/mlまでの濃度を含む低レベルのβ2GPIが、PSでコーティングされたプレートに結合する上での様々な抗体濃度を支持するのに有効であることを示した。
【0310】
D.希釈ヒト血清中での抗体結合および活性
別の一連の研究を実行して、様々な希釈度のヒト血清中でのPSに対するバビツキシマブの結合および機能を試験した。これらには、ELISAにおけるPSへの結合、PS陽性細胞を使用するFACS分析、およびNFAT代替ADCCバイオアッセイの形式の機能アッセイが含まれた。
【0311】
1.ELISA
ELISAを実行して、様々なパーセンテージの6つの異なる個々のヒト血清試料中でのPSへのバビツキシマブの結合を試験した。異なるヒト血清(BioReclamationIVT、North Americaより)をPBS中に希釈して、0.1%までの様々な範囲の%のヒト血清を調製した。2μg/mlのバビツキシマブ−HRP(実施例XVI、A3)を、各%のヒト血清溶液に添加した。異なるバビツキシマブ−HRP混合物をPSマイクロタイタープレートに添加し、37℃で1〜2時間結合させた。プレートをPBSで洗浄した。TMB基質を100μlの体積で各ウェルに添加し、室温で15分間放置して、比色反応を生じさせた。100μlの2MのH
2SO
4を添加することによって、反応を停止させた。停止溶液を添加してから30分以内に、吸光度を450nmの波長でプレート分光計によって読み取り、SoftMax Proソフトウェアを使用して分析した。
【0312】
2.FACS
PS陽性細胞(エトポシド処理したHT1080細胞)へのバビツキシマブの結合を、ウシβ2GPIの供給源として異なるパーセンテージのFBSを使用して試験し、フローサイトメトリーとしても知られる蛍光標識細胞分取(FACS)によって測定した。
【0313】
PBS溶液中の異なるパーセンテージのFBSを作製し、10μg/mlのバビツキシマブを各溶液に添加した。細胞表面へのPS曝露を誘導するために、HT1080細胞を50μMのエトポシドで18時間処理した。その後、細胞を異なるバビツキシマブのパーセンテージのFBS溶液と共にインキュベートし、続いてバビツキシマブに対する二次抗体と共にインキュベートして、フローサイトメトリーを介して細胞に結合した抗体を可視化した。陰性対照には、PSを表面上に曝露させないエトポシドで処理していない細胞、およびFBSを欠如するPBS溶液が含まれた。
【0314】
3.NFAT
活性化T細胞の核因子(NFAT)は、免疫応答において重要であることが示されている転写因子のファミリーに適用される一般名である。NFATシグナル伝達経路およびNFAT応答エレメント(NFAT−RE)が、培養細胞内のNFATシグナル伝達経路を監視するためのアッセイおよび市販のキットの開発に使用されてきた。
【0315】
バビツキシマブ抗体ファミリーと共に使用するためのNFATバイオアッセイが、開発されている(Larsonら、2013)。細胞表面上にFcγRIIIa−V158受容体を発現するように操作されたジャーカット細胞(Promega)もまた、複数のNFAT−REを含有する最小のTATAプロモーターの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を含有する遺伝要素でトランスフェクトされていた。これらは、PS陽性標的細胞と共培養されるNFATエフェクター細胞である。バビツキシマブなどのPS標的化抗体は、標的細胞の表面上のPSに結合する。その後、PS標的化抗体のFc領域は、NFATエフェクター細胞上のFcγRIIIa−V158受容体に結合し、NFAT経路を通したシグナル伝達が引き起こされる。NFATはNFAT−REに結合し、定量化できるルシフェラーゼ発現を活性化する。したがって、このNFATアッセイは、バビツキシマブおよび他のPS標的化抗体の代替ADCCバイオアッセイである。
【0316】
4.結果
上記のELISAアッセイの例示的な結果を
図12に提示し、これもまた、低レベルのβ2GPIを有する希釈ヒト血清が抗体結合を効果的に支持することを示す。精製β2GPIを使用する上記PS ELISA(
図11)と同様に、50%および100%のヒト血清でPS結合のいくらかの喪失が存在し、これは、特に未希釈の血清を使用する場合に、ELISAアッセイ形式において一般的に検出される典型的な飽和効果に関連する。そのような効果はFACSアッセイでは観察されず、曝露されたPSを有する細胞へのバビツキシマブの結合は、50%、75%、および100%のウシ胎児血清中で本質的に同じであることが示された。
【0317】
図12から、ELISAにおけるPSへのバビツキシマブの結合は、約1%のヒト血清でプラトーになり始めたことが理解され得る。正常なヒト血清は、平均して200μg/mlのβ2GPIを含有する(Steinkassererら、1991;Mehdiら、1999;Miyakisら、2004)ため、1%のヒト血清は、約2μg/mlまたは0.04μMのβ2GPIを含有する。
図12は、PSへのバビツキシマブの結合が、この濃度のβ2GPIで既に飽和状態にあることを示す。表3に示されるように(抗体のMW、145kD;β2GPIのMW、50kD)、ELISAにおける1%のヒト血清は、2.86のβ2GPI対抗体のモル比に対応する。これは一般に、細胞表面上でPSと安定した複合体を形成するために、バビツキシマブの各分子が、β2GPIの2つの分子に結合する必要があるという理論的根拠と一致する(
図8)。
【表5】
【0318】
図12に示されるように、0.5%のヒト血清でさえ、PSへのバビツキシマブの結合は特に血清試料13番についてプラトーに接近しており、これは1.43のβ2GPI対抗体のモル比に対応する(表3)。NFAT代替ADCCバイオアッセイの結果はまた、この一般的な範囲内のβ2GPI対抗体のモル比が、バビツキシマブ機能を支持するのに効果的であることも示した。例えば、この研究は、バビツキシマブ活性の最適比を特定するようには設計されていないが、1.9の(ウシ)β2GPI対抗体のモル比は、NFATアッセイにおいてバビツキシマブ活性を効果的に支持することが示された。
【0319】
要約すると、本実施例は、0.12〜2.86ほど低いβ2GPI対抗体のモル比が、PSおよびPS陽性細胞への抗体結合を支持し、機能アッセイにおける活性を促進し、マウスの腫瘍の効果的な治療を可能にすることを示す。上記の全てのデータを考慮し、予防的アプローチを採ると、バビツキシマブの結合および機能を最大化するためには、β2GPI対抗体のモル比は約2.86であるべきだが(表3)、それは約3より高い必要はないことが推定された。
【0320】
実施例VI
臨床研究におけるバビツキシマブの薬物動態
この実施例は、PSがマーカーである疾患、特に癌およびウイルス感染症を有するヒト対象に投与したときのバビツキシマブの薬物動態に関する。臨床経験は、上記のように、前臨床モデリングと一致することが示されている。
【0321】
A.初期第I相研究
第I相多施設非盲検用量漸増研究を実行して、難治性進行性固形腫瘍を有する26人の患者に静脈内投与(バビツキシマブ単独療法)した場合のバビツキシマブの安全性、耐容性、および薬物動態(PK)を評価した。2つの投薬スケジュールで、4つの連続的な用量漸増コホート(毎週0.1、0.3、1、または3mg/kgのバビツキシマブ)に患者を登録した。0.1mg/kgおよび0.3mg/kgのコホートでは、患者は0、28、35、および42日目にバビツキシマブを受け、1mg/kgおよび3mg/kgのコホートでは、0、7、14、および21日目に患者にバビツキシマブを投与した。
【0322】
前臨床モデル(実施例V)および他の患者集団における経験に基づいて、1週間に3mg/kgの上限用量を選択した。実施例IIの研究に続く広範な動物モデル研究において、1週間に3回の0.5mg/kgの抗体用量で最大有効性が達成され、治療の過程を通じて、48時間の半減期および2μg/mlの模擬平均血液濃度で5.5μg/mlのC
maxがもたらされた。そのような用量を超えると、PS陽性細胞へのバビツキシマブの結合がインビトロで飽和する濃度の観察に基づいて、バビツキシマブによるPS結合は飽和することが推定された(実施例V)。
【0323】
研究前、0、1、2、4、7、10、14日目、および21〜70日目までの7日毎に、0.1および0.3mg/kgの用量コホートの患者から試料を収集した。研究前、0、1、2、4、7、14、21、22、23、25日目、および28〜56日目までの7日毎に、1および3mg/kgの用量コホートの患者から、試料を収集した。バビツキシマブ血中レベルを、有効なELISAによって決定した。
【0324】
表4は、最大濃度(C
max)、クリアランス(CL)、半減期(t
1/2)、およびゼロから無限までの血漿濃度−時間曲線下面積(AUC
inf)を含む、この第I相試験における単回投与(0日目)および複数回投与(21日目)後のバビツキシマブの平均(変動係数、CV)PKパラメータの要約を提示する。
【表6】
【0325】
表4に示されるように、単回投与後、バビツキシマブの平均半減期は37.2〜43.9時間の範囲であることが決定された。0日目に、最大血清濃度(T
max)に到達したときの投与後の時間の中央値で、平均最大血清濃度(C
max)は、2.11〜56.4μg/ml(用量依存)の範囲であった(値は2.04〜3.73時間の範囲)。3mg/kgで投与したバビツキシマブでは、最大血清濃度は56.4μg/mlであった。研究全体では、バビツキシマブ半減期は37〜47時間の範囲であった。この研究では、最大許容用量には到達しなかった。
【0326】
バビツキシマブは、直線的な単回用量(0日目)および複数回用量(21または42日目)のPK特徴を呈した(
図13)。バビツキシマブは、複数回用量投与後に明らかな蓄積または時間依存的なPKの差は呈さなかった。要約すると、この研究は、バビツキシマブが1週間に最大3mg/kgまでの範囲の用量で良好に許容され、薬物動態が毎週の投薬レジメンを支持することを示した。特に、1mg/kgの用量では、バビツキシマブ濃度は6日間、前臨床モデルに基づいて予測される治療閾値である2μg/mlを超えたままであり、3mg/kgの用量では、バビツキシマブ濃度は7日間、この2μg/mlを超えたままであることが決定された(
図13)。したがって、1週間に3mg/kgの用量を腫瘍学における将来の使用のために選択した。
【0327】
B.更なる薬物動態学的研究
上記の第I相試験に加えて、ここでは、単回投与、1週間1回または1週間に2回の注入(60〜90分間)として投与されるバビツキシマブのPKを、癌またはウイルス感染症を有する患者におけるいくつかの他の臨床研究にわたって、120人超の患者で評価した。バビツキシマブは、0.1〜6mg/kgの範囲の用量で直線的な単回用量および複数回用量のPK特徴を呈することが確認され、バビツキシマブの明らかな蓄積または時間依存的なPKの差の証拠はなかった。中央値T
maxは、注入終了後の最初の2〜3時間以内に生じることが示された。血清バビツキシマブ濃度は、見かけ上、単一指数関数的または双指数関数的な一次様式で低下する。観察された場合、より急速な分布相は本質的に6時間以内に完了し、最終排出半減期は約1〜2日(21.9〜46.8時間)である。
【0328】
1.ウイルス感染症におけるPK
バビツキシマブのPK特徴は、HIVの有無に関わらず、HCVに慢性的に感染した患者において試験されたように、癌および慢性ウイルス感染症を有する患者において一般に類似している。
【0329】
第I相非盲検単一施設用量漸増研究は、HCVに慢性的に感染した患者におけるバビツキシマブの単回静脈内注入を評価した(実施例VII、A)。表5に示されるように、観察されたバビツキシマブ濃度は、PKモデリングデータの予測値と非常に一貫していることが見出された。
【表7】
【0330】
慢性HCV患者における対応する第Ib相多施設非盲検非無作為化漸増反復用量研究において、PKデータの分析は、全ての用量レベルにおいて、0日目に直線的な単回用量PK特徴を、および10日目に直線的な複数回用量特徴を示し、2週間の投薬後、バビツキシマブの蓄積または時間依存的なPKの差の証拠はなかった。
【0331】
慢性HCVおよびHIVに同時感染した患者における第Ib相研究(実施例VII、C)において、バビツキシマブは、0.3〜6mg/kgの範囲の用量での1週間に1回の投与後、0日目に直線的な単回用量PK特徴を、および49日目に直線的な複数回用量PK特徴を呈した。バビツキシマブは、8週間にわたる1週間に1回の複数回投与後、時間依存的なPKの差または蓄積は呈さなかった。
【0332】
2.併用療法におけるPK
重要なことに、バビツキシマブおよび他の薬物(特に化学療法剤)を併用して投与した場合、いずれの薬物にも臨床的に関連する薬物動態学的相互作用は見られなかった。これには、バビツキシマブおよびドセタキセルを併用して投与した場合も含まれる。
【0333】
これに関して、第Ib相多施設非盲検非無作為化研究はまず、難治性進行性固形腫瘍を有する患者において、ゲムシタビン、パクリタキセル+カルボプラチン、またはドセタキセルと併用した場合の3mg/kgのバビツキシマブの1週間に1回の静脈内投与の安全性、耐容性、およびPKを評価した。単回用量(0日目)または複数回用量のバビツキシマブ投与(21日目)後に、3つの治療群間のいかなる測定可能なパラメータにも有意差は存在しないことが決定された。C
maxおよびAUCの評価は、8週間にわたって1週間に1回の複数回用量投与後に、バビツキシマブの蓄積がないことを示した。
【0334】
治療歴を有する局所進行性または転移性の非扁平上皮NSCLC患者においてバビツキシマブ+ドセタキセルを評価する、第II相無作為化二重盲検プラセボ対照研究(実施例XIII)において、全研究集団のサブセット(1群当たり6人の患者)はまた、バビツキシマブとドセタキセルとの間の薬物間相互作用を調査するためのPK下位研究にも参加した。周期1および2の指定された時点で、これらの患者に対して追加の採血を実行した。ドセタキセルありのバビツキシマブについて、臨床的に関連する薬物動態学的な薬物間相互作用は観察されなかった。加えて、ドセタキセルは、バビツキシマブの投与の有無に関わらず、類似した薬物動態学的特徴を呈した。したがって、これらの患者において、ドセタキセルありのバビツキシマブについて、臨床的に関連する薬物動態学的な薬物間相互作用は観察されなかった。
【0335】
実施例VII
バビツキシマブを使用する、患者におけるウイルス感染症の治療
この例では、リバビリンとの併用でのバビツキシマブを含む、ビツキシマブを使用する、患者におけるウイルス感染症の治療における臨床経験のいくつかを例証するためのデータが提示されている。選択された臨床用量では、バビツキシマブの投与が、ヒト対象のβ2GPIレベルを認識できるほどには低減させないことを示すためのデータもまた提示されている。
【0336】
A.HCV患者における第I相研究
C型肝炎ウイルス(HCV)に慢性的に感染した患者における、第I相非盲検用量漸増研究および第Ib相非盲検漸増反復用量研究で、まずバビツキシマブを評価した。これらの研究は、バビツキシマブの安全性、耐容性、PKプロファイル、ウイルス動態、最大許容用量(MTD)、および最大有効量(MED)に関するものであった。0.1、0.3、1、3、および6mg/kgの用量を第I相(30人の患者、6人の患者の連続コホート)において投与し、0.3、1、3、および6mg/kgの用量を第Ib相(24人の患者、6人の患者の4つのコホート)において投与した。
【0337】
HCV患者における第I相および第Ib相の研究では、全ての用量レベルのバビツキシマブが良好に許容された。第I相では、抗ウイルス活性を示唆するウイルス量の一過的な低減が、全ての用量レベルで観察された。第Ib相では、0.3、1、および6mg/kgの用量のバビツキシマブによる治療後にウイルス量がわずかに減少し、これらの減少はしばしば一過的なものであったが、各コホートの少なくとも1人の患者において、ウイルス量の持続的な減少があった。特に、3mg/kgのバビツキシマブの用量では、HCVの一貫した減少が研究治療および経過観察を通して実証された。
【0338】
B.バビツキシマブはβ2GPIを枯渇させない
上記の第Ib相研究はまた、患者におけるβ2GPIのレベルを測定して、バビツキシマブの投与がこれらのヒト対象におけるβ2GPIレベルを変化させたかどうかを決定した。結果を
図14に描写する。1mg/kgのバビツキシマブを受けている患者において、β2GPIレベルは実質的に変化がなかった。3mg/kgのバビツキシマブを受けている患者において、β2GPIの血清レベルの一過的な低減(20〜25%)が観察された。しかしながら、そのような低減は、用量前レベルから統計的に有意には変化していなかった(
図14)。実際に、3mg/kgのバビツキシマブ用量では、β2GPIレベルは正常範囲内に留まり、24時間以内に治療前レベルに戻った。対照的に、6mg/kgのバビツキシマブを受けている患者において、β2GPIは有意に低減した(p<0.02)(
図14)。6mg/kgの用量では、β2GPIレベルは治療前レベルと比較して、ほぼ正常範囲の下限まで40%低下した。それにも関わらず、6mg/kgのバビツキシマブで治療したヒト対象においてさえ、β2GPIは3日以内にベースラインレベルに回復した。
【0339】
したがって、これらのデータは、ヒトにおける使用のための3mg/kg用量のバビツキシマブの選択を確認した。この用量は、バビツキシマブおよびβ2GPIが、血漿β2GPIレベルを枯渇させることなく、バビツキシマブ−β2GPI複合体が形成され、疾患部位の細胞上に曝露されたPSに結合するのを可能にするのに有効な濃度で共に存在する、最大用量であることが決定された。しかしながら、このデータはまた、バビツキシマブ治療中のいかなるβ2GPIの低減も一過的なものに過ぎないこと、およびβ2GPIレベルが3日以内に回復することも示している。
【0340】
C.HCV−HIV患者における第I相研究
別個の第Ib相多施設非盲検無作為化用量漸増反復用量研究を実行して、慢性HCV(HCV遺伝子型1の大部分)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)に同時感染した患者においてバビツキシマブを評価した。主な目的は、安全性、耐容性、PKプロファイル、ウイルス動態、MTD、および/またはMEDを決定することであった。この研究は、約16週間にわたって16回の訪問予定を伴った。バビツキシマブを、以下の用量、0.3mg/kg(6人の患者)、1mg/kg(6人の患者)、3mg/kg(9人の患者)、および6mg/kg(6人の患者)で患者の連続コホートに投与した。患者は、8週間にわたって毎週静脈内にバビツキシマブを受けた。コホート内の全ての患者が、重篤有害事象(SAE)として分類される血栓の事象なく最初の4週間の投薬を完了した後に、用量漸増を進めた。
【0341】
ベースラインHCVウイルス量の中央値は6.76log
10であり、HIVのベースライン中央値は3.99log
10であった。研究中の特定の時点で、HCVおよびHIVの血漿ウイルス量を測定した。全ての用量レベルにおいてバビツキシマブで治療した場合、各治療群の何人かの患者は、一過的な抗ウイルス活性を呈した(ベースラインから0.5log
10以上のHCVおよび/またはHIVウイルス量の最大低減)。
【0342】
D.HCV患者における第II相研究
第II相多施設無作為化活性対照研究を実行して、慢性HCV(遺伝子型1)感染症の初期治療のための、リバビリンとの併用でのバビツキシマブを評価した。主要評価項目は、研究12週目に早期ウイルス学的応答(EVR)を示した患者の割合であり、EVRは、HCV RNAレベルの2−log
10国際単位(IU)以上の低減と定義された。安全性は、副次的評価項目に含まれた。
【0343】
患者は、最長28日間のスクリーニング/洗い流し期間、その後(1:1:1の比の)ランダム化を受けて、全て1日2回の経口リバビリン1000mg(体重75kg未満)または1200mg(体重75kg以上)と共に、1週間に0.3または3mg/kgのバビツキシマブ注入または12週間のペグ化インターフェロンアルファ−2a(ペグ化インターフェロン、PEG−IFNα−2aとも称される)の皮下注射を受けた。12週間後にEVRを示した患者は、最大48週間経過までペグ化インターフェロン+リバビリンでの研究外治療を受けた。
【0344】
平均年齢39.1歳の合計66人の患者(男性38人、女性28人)をこの研究に登録した。22人の患者は各々、0.3mg/kgのバビツキシマブ、3mg/kgのバビツキシマブ、およびペグ化インターフェロンを受けた。受けた0.3および3mg/kgのバビツキシマブ用量の中央値は各々12回の用量であり、平均治療期間はそれぞれ78および75日間であった。
【0345】
この研究では、バビツキシマブ+リバビリンで治療した一部の患者で、12週間にわたって徐々にウイルス低減が見られた。興味深いことに、より高い用量の3mg/kgのバビツキシマブとは対照的に、より低い用量のバビツキシマブ(0.3mg/kg)で治療した患者において、2倍の人数の患者でEVRが見られた。(18%対9%)。いずれの用量でも、ペグ化インターフェロンを受けた患者ではEVR率はバビツキシマブを受けた患者よりも高かったが、バビツキシマブはより好ましい安全性プロファイルを示し、いずれのバビツキシマブ含有群と比較しても、ペグ化インターフェロン群のほぼ2倍の患者がAEを報告した。
【0346】
実施例VIII
バビツキシマブおよびパクリタキセルによる乳癌患者の治療
臨床癌治療に目を向けると、本実施例は、タキサン、パクリタキセルと併用してバビツキシマブを使用する、HER2陰性転移性乳癌を有する患者の治療からのデータを提供する。
【0347】
単一施設研究者主導研究では、14人のHER2陰性転移性乳癌を有する患者が、4週間周期で1、8、および15日目に投与されるパクリタキセル(80mg/m
2)との併用で1週間に1回3mg/kgのバビツキシマブを受けた。骨痛、疲労、頭痛、および好中球減少が、最も一般的な有害事象(AE)であった。対処可能な注入関連反応が、バビツキシマブに関連する最も一般的なAEであった。バビツキシマブは、血栓形成性の増加の証拠は示さなかった。治療は85%の全奏効率(ORR)をもたらし、2人の患者が完全奏効を示し、無増悪生存期間(PFS)中央値は7.3ヶ月(95%のCI:2.8、10.8)であった。
【0348】
要約すると、この研究は、パクリタキセルと併用したバビツキシマブが、転移性乳癌を有する患者の治療に良好に許容され、臨床奏効率(RR)およびPFSに関して有望な結果が観察されることを示した。
【0349】
実施例IX
バビツキシマブおよびパクリタキセル−カルボプラチンによる乳癌患者の治療
この例は、ホルモンまたはHER2の状態に制限されない、局所進行性または転移性乳癌を有する患者における、バビツキシマブ+パクリタキセルおよびカルボプラチンの安全性および有効性を評価する、第II相非盲検単一群研究の結果を報告する。
【0350】
この第II相研究は、Simonの2段階設計を利用した。15人の患者を段階Aに登録し、試験を段階Bにおいてさらに31人の患者に拡大し、合計46人の患者とした。主な目的は、完全奏効(CR)+部分奏効(PR)、つまりCR+PRとして定義される全奏効率(ORR)を決定することであった。副次的目的には、腫瘍進行までの時間、奏効期間(DORまたはDR)、全生存期間(OS)、および安全性が含まれた。
【0351】
最大6周期まで、28日間周期の1、8、および、15日目にカルボプラチン(AUC=2の用量)およびパクリタキセル100mg/m
2と併用して、疾患進行まで1週間に1回バビツキシマブ(3mg/kg)を与えた。46人の患者のうち16人(34.8%)が、治療未経験者であった。
【0352】
最も一般的なグレード4の治療下で発現した有害事象(TEAE)は、好中球減少(12人の患者、26.1%)であり、これはこの研究で使用される化学療法で治療した患者において予想される発生率である。最も一般的なグレード3 のTEAEは、白血球減少(11人の患者、23.9%)、好中球減少(9人の患者、19.6%)、および貧血(5人の患者、10.9%)であった。これらもまた、この研究で使用される化学療法で治療した患者において予想される発生率である。
【0353】
固形腫瘍効果判定基準(RECIST)に従う客観的奏効は、46人中34人の患者(73.9%)において生じ、46人中5人の患者(10.9%)はCRが有し、29人の患者(63.0%)がPRを有した。平均奏効期間(DOR)は3.7ヶ月(95%の信頼区間 [CI]:3.1、5.8)であり、PFS中央値は6.9ヶ月(95%のCI:5.6、7.7)であった。研究終了時に、OS中央値は23.2ヶ月であることが決定された(95のCI:「決定せず」まで553日)。これらの結果は、特に併用療法において、現在進行中のバビツキシマブの開発にとって非常に有望である。
【0354】
実施例X
バビツキシマブおよびドセタキセルによる乳癌患者の治療
本実施例は、今度は局所進行性または転移性乳癌を有する患者におけるドセタキセルとの併用での、バビツキシマブの安全性および有効性を評価する、別の第II相非盲検単一群研究の結果を報告する。
【0355】
この試験はまた、Simonの2段階設計を利用する第II相多施設試験でもあった。15人の患者を段階Aに登録し、試験を段階Bにおいてさらに31人の患者に拡大し、合計46人の患者とした。主な目的は、ORR(CR+PR)を決定することであった。副次的目的には、腫瘍進行までの時間、DOR、OS、および安全性が含まれた。
【0356】
最大6周期まで、4週間の計画周期の1、8、および、15日目に与えられるドセタキセル(35mg/m
2)と併用して、進行まで1週間に1回バビツキシマブ(3mg/kg)を与えた。全ての患者は、1つの事前化学療法レジメンを受けた。報告された最も一般的なTEAEのうち、疲労、頭痛、腰痛、および高血圧のみがグレード3以上であった。
【0357】
この研究では、46人の患者のうち28人(60.9%)に客観的奏効が生じることが決定され、46人の患者のうち5人(10.9%)がCRを有し、46人の患者のうち23人(50.0%)がPRを有した。DOR中央値は6.1ヶ月(95%のCI:5.7、7.5)であり、PFS中央値は7.4ヶ月(95%のCI:6.1、9.1)であった。最終分析時点で、OS中央値は約20.7ヶ月であった(95%のCI:「決定せず」まで16.1ヶ月)。これらのデータは、ドセタキセルとの併用療法を含む、バビツキシマブの更なる開発に対する強力な支持を提供する。
【0358】
実施例XI
バビツキシマブおよびソラフェニブによる肝癌患者の治療
この実施例では、ソラフェニブと併用してバビツキシマブを使用する、進行肝細胞癌(HCC)を有する患者の治療からのデータを提示する。
【0359】
進行肝細胞癌(HCC)におけるバビツキシマブおよびソラフェニブの第II相単一施設研究を実行した。患者は、放射線学的進行まで、1週間に1回3mg/kgのバビツキシマブを静脈内(IV)に、および400mgのソラフェニブを経口で1日に2回(PO BID)受けた。副次的評価項目には、全生存期間(OS)、疾患特異的生存期間、4ヶ月無増悪生存期間、安全性、および奏効率が含まれた。この研究には、38人の患者を集めた。
【0360】
本研究の6人の患者からの関連橋渡しデータでは、複数の前臨床癌モデルにおいて関連PS標的化抗体について示されたものと類似して、評価した患者の半数が、1周期のバビツキシマブ治療後に抗腫瘍免疫細胞の増加を有することが決定された。加えて、免疫応答の増加はより長期間にわたって研究治療を続けた患者に関連付けられ、これは臨床的に有意義な抗腫瘍免疫応答を示唆した。評価した6人の患者のうち3人は腫瘍微小環境内への活性化抗腫瘍T細胞(CD8)の浸潤の増加を有し、これは疾患進行までの期間の延長と相関していた。加えて、これらの応答する患者は、治療開始前により低レベルのPD−1陽性細胞(T細胞活性化および疾患成績の確立されたマーカーである)を最初に示し、続いてバビツキシマブ治療後に測定可能な上昇を示した。
【0361】
臨床的には、グレード4または5の有害事象は記録されなかった。最も一般的な全グレードの事象は、下痢(32%)、疲労(26%)、および食欲不振(24%)であった。OS中央値(mOS)は6.2ヶ月であった。2人の患者が部分奏効を達成し、4ヶ月PFSは61%であった。
【0362】
これらの結果は、他のチェックポイント免疫療法で見られた自己免疫有害事象の徴候なく、進行HCCを有する患者においてバビツキシマブおよびソラフェニブが良好に許容されることを実証した。進行までの時間、疾患制御率、および4ヶ月無増悪生存期間の臨床成績は、高い大血管浸潤率を含む彼らの好ましくない疾患生物学のために、非常に不良な予後を有する多数の前治療歴を有するこの患者コホートにおいて特に有望である。
【0363】
実施例XII
バビツキシマブおよびゲムシタビンによる膵臓癌患者の治療
本実施例では、バビツキシマブと併用してゲムシタビンを使用する、治療歴のないIV期膵臓癌を有する患者の治療のデータを提示する。
【0364】
この研究(PPHM1002)は、治療歴のないIV期膵臓癌を有する患者において、バビツキシマブと併用して、または併用せずに投与した時のゲビシタビンを評価するための第II相無作為化非盲検研究である。主な目的は、治療群間での患者のOSを比較することであった。副次的目的には、PFS、ORR、DR、および安全性を比較することが含まれた。
【0365】
登録された患者を1:1の比で無作為化して、ゲムシタビン単独、または1週間に1回の3mg/kgのバビツキシマブとの併用でのゲムシタビンの研究治療を受けさせた。ゲムシタビン(1000mg/m
2)を、疾患進行または許容できない毒性があるまで、各28日周期(4週間)の1、8、および15日目に与えた。合計70人の患者をこの研究に登録した。一般に、患者集団は非常に広範な疾患負荷量を有しており、これが両治療群において奏効を低減させている可能性がある。
【0366】
バビツキシマブ+ゲムシタビン治療群の最も一般的なTEAEは、悪心(44.1%)、貧血(35.3%)、ならびに疲労、便秘、および食欲不振(各々患者の32.4%に発生)であった。ゲムシタビンのみに無作為化した3人(9.1%)の患者は、グレード5(致命的)の事象(突然死[1人]、肝膿瘍[1人]、および心停止[1人])を有した。ゲムシタビン+バビツキシマブ群では、グレード5(致命的)の事象は発生しなかった。
【0367】
ほとんどの有効性評価項目は治療群間で同等であったが、バビツキシマブおよびゲムシタビン群では、1年時点で数値的に高い奏効率および生存確率が存在した。研究終了時、全生存期間中央値(95%のCI)は、ゲムシタビン単独治療群で5.2(4.0〜6.3)ヶ月、バビツキシマブ+ゲムシタビン治療群で5.6(4.7〜7.0)ヶ月であった。バビツキシマブの追加に対するこれらの結果は、非常に広範な疾患負荷量を有するこの患者集団において特に有望である。
【0368】
実施例XIVの第III相試験、および機能性β2GPIレベルが治療結果と相関することを示す実施例XVIIの機能性β2GPI分析後、本第II相試験からの保存試料もまた、機能性β2GPIについて試験した。実施例XVIIIに報告されるように、これらの分析の結果は、機能性β2GPIのレベルがバビツキシマブ治療の成功のためのバイオマーカーであるという発見を強化する。
【0369】
実施例XIII
NSCLC患者におけるバビツキシマブおよびドセタキセルの第II相試験
第I相および単一群第II相実験を基にして、本実施例は、治療歴を有するIIIb/IV期非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)を有する患者においてバビツキシマブ+ドセタキセルを試験する、第II相試験に関する。
【0370】
この研究(PPHM0902)は、治療歴を有する局所進行性または転移性の非扁平上皮NSCLCを有する患者においてバビツキシマブ+ドセタキセルを評価する、第II相無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。この研究の主な目的は、治療群間のORR(CR+PR)を比較することであった。副次的目的には、PFS、DR、OS、安全性、およびPKを比較することが含まれた。
【0371】
患者を1:1:1の比で無作為化して、ドセタキセル+プラセボ、ドセタキセル+1mg/kgのバビツキシマブ、またはドセタキセル+3mg/kgのバビツキシマブを受けさせた。ドセタキセル75mg/m
2を、最大6周期まで各21日周期の1日目に与え、プラセボまたは割り当てられた用量のバビツキシマブを1週間に1回投与した。進行または毒性があるまで、患者は、1週間に1回割り当てられた盲検治療(プラセボ、1mg/kgのバビツキシマブ、または3mg/kgのバビツキシマブ)を受け続けた。
【0372】
全研究集団のサブセット(1群当たり6人の患者)が、バビツキシマブとドセタキセルとの間の薬物間相互作用を調査するためのPK下位研究に参加した。周期1および2の特定の時点で、これらの患者に対して追加の採血を実行した。
【0373】
平均年齢60.0歳の合計121人の患者(男性76人および女性45人)をこの研究に登録した。独立データモニタリング委員会(IDMC)では、ORRの主要評価項目に到達したため、研究治療の非盲検化が推奨されることが決定され、この会議後に研究治療を非盲検化した。加えて、安全性の懸念または問題は、IDMCによって特定されなかった。
【0374】
研究の非盲検化後、プラセボ群および1mg/kg群に関与する、包装および標識業者による標識の誤りが発見された。調査要約を食品医薬品局(FDA)に提出し、プラセボまたは1mg/kgのバビツキシマブを投薬した患者のデータをプールして、探索分析および3mg/kgのバビツキシマブ群に対する比較のための複合対照群を形成した。
【0375】
全体として、毒性グレードによる治療群間のAEの発生率に有意差は観察されなかった。治療群間でSAEに顕著な差は観察されなかった。複合対照群の3人の患者(3.8%)およびドセタキセルありの3mg/kgのバビツキシマブ群の2人の患者(5.0%)は、グレード5(致命的)の事象を有した。致命的事象を有する複合対照患者には、1人の敗血症を有する患者、1人の脳血管発作を有する患者、および1人の肺炎および偽敗血症の両方を経験する患者が含まれた。3mg/kgのバビツキシマブ+ドセタキセル群では、1人の患者がバビツキシマブとは無関係の致命的な敗血症を有し、1人の患者が同様にバビツキシマブとは無関係の老衰事象を有した。
【0376】
有効性評価項目の要約を表6に提示し、この中で分析は治療意図(ITT)集団および中央判定データに基づいている。全ての評価項目(ORR、PFS、およびOS)は、複合対照群(プラセボまたは1mg/kgのバビツキシマブ)と比較して、3mg/kgのバビツキシマブが優位に向かう傾向を実証した。複合群と比較して、3mg/kgのバビツキシマブのORRは約50%高かった。PFS中央値は、複合群と3mg/kgのバビツキシマブ群との間で類似していたが、3mg/kgのバビツキシマブを受けた患者のOS中央値は約60%長かった。特に、複合群の患者のmOSがわずか7.3ヶ月であるのに対して、3mg/kgのバビツキシマブ+ドセタキセルで治療した患者は11.7ヶ月のmOSを有した(HR=0.66)。
【表8】
【0377】
実施例XIVの第III相試験、および機能性β2GPIレベルが治療結果と相関することを示した実施例XVIIにおける機能性β2GPIの分析に続いて、本第II相試験からの保存試料もまた、機能性β2GPIについて試験した。実施例XVIIIに記載されているこれらの分析の結果は、機能性β2GPIのレベルがバビツキシマブ治療の成功のためのバイオマーカーであることをさらに確認する。
【0378】
実施例XIV
NSCLC患者におけるバビツキシマブおよびドセタキセルの第III相試験
前の実施例において報告されるように、第I相および第II相研究の全体的な結果は、バビツキシマブの臨床的に有意義な治療効果を実証した。そのような結果、特に上記の二重盲検第II相試験に基づいて、第III相試験を行い、本実施例は第III相試験および得られたデータを記載する。
【0379】
第III相試験(PPHM1202)は、治療歴を有するIIIb/IV期非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)患者における、バビツキシマブ+ドセタキセルの無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験であった。この世界的な二重盲検第III相試験は、2012年に開始された。選択基準は、プラチナ−ダブレット化学療法を進行した(既知のEGFRまたはALK突然変異の場合、適切な標的化療法を進行したはずである)IIIb/IV期の非扁平上皮NSCLCを有する患者のものである(ECOG PS0−1および以前の免疫療法を許容)。この試験には、597人のそのような患者を1:1の比で集めて、進行または毒性があるまで、最大6周期の21日周期のドセタキセル(75mg/m
2)を毎週3mg/kgのバビツキシマブ(バビツキシマブ+ドセタキセル)またはプラセボ(ドセタキセル単独)と併用して受けさせた。主要評価項目は、全生存期間(OS)であり、副次的評価項目は、客観的奏効率(独立中央判定、ICR)、無増悪生存期間(ICR)、安全性、PK、生活の質(LCSS)、および免疫相関を含む探索バイオマーカーである。選択された患者のベースライン特徴を表7に示し、表中の「プラセボ」欄はドセタキセル単独で治療した患者を指し、「バビツキシマブ」欄はバビツキシマブ+ドセタキセルで治療した患者を指す。
【表9】
【0380】
A.安全性
標的とするOS事象の70%に到達したため、OS中央値(mOS)を評価した(下記を参照されたい)。研究全体を通して、安全性プロファイルは群間で一般に類似していることが決定された。治療および安全性の要約が近年発表されている(Palmeroら、2017)。その中で報告されているように、バビツキシマブおよびドセタキセルの併用の安全性プロファイルは、プラセボ+ドセタキセルの併用に類似している。グレード3以上の有害事象は、バビツキシマブ+ドセタキセル群の患者のうち68%に、およびドセタキセル単独群の患者の60%に発生した。15%超の患者において報告される治療関連AEが近年報告された(Palmeroら、2017)。加えて、治療関連グレード3/4の発熱性好中球減少症は、ドセタキセル単独(5%)よりもバビツキシマブ+ドセタキセル(8%)でわずかに高かった。表7のベースライン特徴におけるドセタキセル単独(プラセボ、n= 300)で治療した患者数は、ITT集団に基づいていること、すなわち、全ての無作為化患者を含む一方で、Palmeroら、2017において発表されるドセタキセル単独(プラセボ、n=299)で治療した患者数は、安全性集団に基づいていること、すなわち、治療を受けた全ての無作為化患者を含むことに留意されたい。
【0381】
B.有効性
標的とするOS事象の70%に到達したため、バビツキシマブ+ドセタキセル群の297人の患者におけるmOSは10.7ヶ月(95%の信頼区間[CI]、8.6〜11.5)であり、ドセタキセル単独群の300人の患者におけるmOSは10.8ヶ月(95%のCI、9.2〜12.6)であった(死亡ハザード比(HR)、1.10(0.89、1.37))。無増悪生存期間(PFS)もまた、標的とするOS事象の70%に到達した時点で2群において類似しており、PFS中央値はバビツキシマブ+ドセタキセル群で4.1ヶ月、ドセタキセル単独群で3.9ヶ月であった。その後の免疫療法は、本研究の患者のうち約15%が受け、バビツキシマブ+ドセタキセル群とドセタキセル単独群との間で均等に分布していた(実施例XIXを参照されたい)。
【0382】
最後の患者を無作為化してから12ヶ月間の経過観察が経過し、かつ標的とするOS事象の約85%に到達し、OS中央値は、バビツキシマブ+ドセタキセル群の297人の患者で10.5ヶ月(95%の信頼区間[CI]、8.4〜11.9)、およびドセタキセル単独群の300人の患者で10.9ヶ月(95%のCI、9.2〜12.1)であった(HR、1.06;P=0.533)。この段階でのPFSは、バビツキシマブ+ドセタキセル群で4.2ヶ月(95%のCI、3.9〜4.6)、およびドセタキセル単独群で4.1ヶ月(95%のCI、3.2〜4.8)であった(HR、1.02;P=0.876)。この段階でのORRは、バビツキシマブ+ドセタキセル群で15%であったのに対し、ドセタキセル単独群では11%であった(オッズ比0.7、P=0.15)。
【0383】
この段階での有効性分析(ITT)を表8に列挙し、ここで、P値は両側層別コクラン−マンテル−ヘンツェル厳密法に基づく。層別因子には、病期(IIIB対IV)、地理上の地域(北米、欧州、その他の地域)、以前の維持療法および/または標的化療法(あり対なし)が含まれる。
【表10】
【0384】
OS中央値のこれらの結果は、実施例XIIIに上記の第II相データおよび研究の検出力に使用した仮定mOSとは予想外に異なり、これらのうち後者は、バビツキシマブ+ドセタキセルでは9.1ヶ月のmOSであり、ドセタキセル単独では7.0ヶ月のmOSであった(9.1対7.0ヶ月のmOSを仮定して、80%の検出力および片側2.5%の有意水準を提供する473のOS事象;HR 0.77)。
【0385】
後ろ向きVeriStrat(登録商標)プロテオミクス試験は、バビツキシマブ+ドセタキセル群の80%およびドセタキセル単独群の84%においてVS良好サインを実証した(実施例XV)。治療歴を有する非扁平上皮NSCLCを有する患者におけるこの第III相試験は、バビツキシマブ+ドセタキセル群における優れたOSという主な目的は満たさなかったが、この結果は、特にドセタキセル単独群において、全体的に予想よりも高い割合のVS良好サインによって影響された可能性がある。
【0386】
実施例XV
バビツキシマブの第III相試験の初期バイオマーカー分析
上記の第III相試験に関連して、バビツキシマブ含有治療レジメンから最大の利益を得る患者について、1つ以上のバイオマーカー、またはバイオマーカーのパターン(バビツキシマブの「符号」)を特定する目的で、バイオマーカー分析を実行した。本実施例は、後の研究に適用される試料収集技術に関し、最初のプロテオミクス符号分析を記載する。
【0387】
A.試料収集
第III相試験を設計し、患者の血液試料の収集のためにインフォームドコンセントを得た。患者の血液検体は、適切な静脈切開技術を使用して得た。止血帯を静脈穿刺部位の7〜10cm上に置いたが、予備的な静脈選択のための止血帯の適用は1分を超えないようにした。患者に自らの拳を握らずに閉じさせ、中心から周辺への円運動を使用して、70%のイソプロピルアルコールパッドで静脈穿刺部位を洗浄し、風乾させた。
【0388】
21ゲージの針を使用して、患者の血液を5.0mlの金蓋血清分離管(SST)に収集した。血液が流れ始めた後できるだけ早く止血帯を取り外し、管を完全に充填させた。収集後直ちに管を5回反転させ、少なくとも30分間凝固させた。血清を分離するために、収集後30〜60分以内に管を1,000〜1,300gで15分間遠心分離した。ピペットを使用して、約1.25mlの血清を3.6mlのクリオバイアル管2本に移し、それらの試料を凍結した。
【0389】
凍結したバイアルを検体袋に入れ、しっかりと密封した。ドライアイス輸送箱の底部にドライアイスを層状に重ね、この箱に検体袋を入れた。箱が一杯になるまでドライアイスを添加し、蓋を所定の位置に固定し、試料を−70℃で保存するために中央実験室に輸送した。
【0390】
中央実験室は、試料を解凍することによって部分アリコートのためのバイアルを準備した。ピペットを使用して、血清の少なくとも250μlを2mlの自然蓋クリオバイアル管4本に移し、−70℃で再凍結した。同じ輸送指示を反復し、部分アリコートした試料を、試験用バイオマーカーのためにドライアイス上で凍結した状態で試験室に輸送した。
【0391】
B.VeriStrat(登録商標)分析
癌の多次元特徴を理解することは、患者選択および治療計画にとって重要である。VeriStrat(登録商標)試験は、進行NSCLCを有する患者のための、血液に基づく市販の予測的および予後的プロテオミクス試験である。予後的であることに加えて、VeriStratは、単剤治療の選択肢から選択する場合の差次的な治療利益を予測する。VeriStratは、第III相試験の患者試料に対して後ろ向きに実行した。
【0392】
より侵襲性の疾患と相関するVeriStrat(VS)不良(VS−P)、またはより好ましい予後と相関するVS良好(VS−G)として患者を分類する質量分析を使用して、第III相試験の患者の治療前血清試料をタンパク質発現について試験した。カプランマイヤー統計法を使用して、OSをVeriStratサブグループによって分析した。
【0393】
VeriStrat分類は、597人の無作為化患者のうち569人の患者について入手可能であった。バビツキシマブ+ドセタキセル群では、80%がVS良好、20%がVS不良であった。ドセタキセル単独群では、84%がVS良好、16%がVS不良であった。したがって、第III相試験では、VeriStratの良好/不良サインは治療群間でほぼ均衡が取れていた。
【0394】
全生存期間中央値(mOS)は、全VS良好では11.5ヶ月(95%の信頼区間[CI]、10.6〜12.9)であり、全VS不良では5.7ヶ月(95%のCI、4.2〜7.2)であった(p<0.0001)。HR OS(VS良好対VS不良)0.49(95%のCI 0.37〜0.64);p<0.001。これらのVeriStrat結果は、PROSE試験(Gregorcら、2014)ならびにPFSおよびOSの全体的な予後と一致している。
【0395】
VS良好患者のうち、バビツキシマブ+ドセタキセル群のmOSは11.2ヶ月(95%のCI、10.2〜12.8)であり、ドセタキセル単独群では11.8ヶ月(95%のCI、10.4〜13.5)である(p=0.38)。VS不良患者のうち、バビツキシマブ+ドセタキセル群のmOSは5.8ヶ月(95%のCI、5.0〜11.3)であり、ドセタキセル単独群では4.7ヶ月(95%のCI、3.4〜7.2)である(p=0.27)。この群の患者に対する治療選択肢が限定されていることを考慮すると、バビツキシマブがVS不良患者においてOSを改善する能力は重要である。
【0396】
結論として、第III相試験のVeriStrat結果は、PFSおよびOSについて全体的な予後であるが、バビツキシマブ治療応答の予測はできない。ドセタキセル群での予想外のOS結果は、VeriStrat良好患者の比較的高い全体的割合によって影響を受けた可能性がある。特に、この第III相試験におけるVeriStrat良好患者のパーセンテージ(80%超)は以前に報告されたもの(約67%)よりも高く、これは患者が全体的に良好な予後を有したことを示し、したがって、ドセタキセル群の予想よりも良好な性能を部分的に説明する。
【0397】
前述のVeristrat分析とは別に、特にバビツキシマブについて別個のプロテオミクスアプローチもまた探求した。広範な質量分析および相関分析を実行して、バビツキシマブの追加から利益を得る患者のサブグループを特定することができる可能性のある試験を調査したが、そのような遺伝子セットの富化分析は、臨床的利益に関連するいかなるマーカーの特定ももたらさなかったため、更なる研究および可能性のある新たなアプローチに対する必要性を強調した。
【0398】
実施例XVI
機能性β2GPIのアッセイ
本実施例は、流体試料中の機能性(活性)β2GPIの検出のために明確に設計されたβ2GPIアッセイの開発に関する。この試験方法は、機能性β2GPI(PSおよびバビツキシマブの両方に結合することができるβ2GPIを意味する)を検出および定量化するように特有に適合している。したがって、本実施例は、バビツキシマブ治療に関連して更なる有意義なバイオマーカー分析に必要とされる、以前は利用できなかった手段を提供する。
【0399】
A.材料および方法
1.材料および装置
以下の特定の材料および装置をアッセイにおいて使用して、本実施例の節B1およびB2に提示される結果を生成した。材料:96ウェルの培地結合平底プレート(Greiner BioOne、カタログ番号655001)、96ウェルの非結合丸底プレート(Costar、カタログ番号3605)、ヘキサン(Sigma、カタログ番号32293)、PS抗原(Sigma、カタログ番号P6641)、卵白アルブミン(Sigma、カタログ番号A5503)、発色基質、テトラメチルベンジジン(TMB)(KPL、カタログ番号50−76−00)、2MのH
2SO
4(Fisher、カタログ番号SA818−4)、プレートカバー(Fisher 015−027−11)、接着プレート密封機(VWR232701)、試薬リザーバー(VistaLabカタログ番号3054−1000)。1.5mlの微量遠心管、50mlの円錐管、および15mlの円錐管もまた利用した。
【0400】
装置:ボルテックス(Scientific Industries)、タイマー(VWR62344−64)、10〜1000μlのピペッター(Rainin)、100〜300μlの多チャネルピペッター(Rainin)、450および650nmのプレートリーダー(EN1835)。秤、撹拌棒、および37℃のインキュベーターもまた利用した。このアッセイにはSoftMax(登録商標)Proソフトウェアを使用した。
【0401】
2.緩衝液および技術
洗浄緩衝液は1×リン酸緩衝食塩水(PBS)であり、遮断緩衝液は1×PBS中2%の卵白アルブミンである。
【0402】
アッセイ全体を通して、大量(例えば、500μl以上)で作業するときは、減法ピペッティングを利用した。全量の希釈剤を最初にピペッティングした。追加の試薬を添加する前に、等量の希釈剤を除去した。潜在的に危険な蒸気は全て、ドラフト内で取り扱った。
【0403】
3.バビツキシマブ−HRP
バビツキシマブ抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に共役させて、アッセイに使用するためのバビツキシマブ−HRP検出剤を調製した。EZ−Link(登録商標)Plus活性化ペルオキシダーゼ(Thermo Scientific、カタログ番号31487)を使用し、その後pH7.2で活性化ペルオキシダーゼを抗体に共役させるための手順(製造者により提供)を続けて、共役を実行した。簡潔には、1mgのバビツキシマブをPBS(pH7.2)中で1mg/mlまで希釈した。これを1mgの凍結乾燥EZ−Link Plus活性化ペルオキシダーゼに添加して、再構成した。再構成直後に、10μlの5Mのシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液を反応物に添加し、室温で1時間インキュベートした。インキュベーションの完了後、20μlの反応停止緩衝液を添加し、室温で15分間インキュベートした。共役バビツキシマブ−HRP(1mg/ml)を4℃で最大4週間保存した。
【0404】
4.コーティング
ELISAプレートを以下のようにPS抗原でコーティングした。5μg/mlのPS抗原を調製し、送風機がオフの状態のドラフト内で6mlのヘキサン中に希釈した。12チャンネルピペットを使用して、50μlのPS溶液を各ウェルに添加した。ドラフトの送風機を再びオンにし、ヘキサンを30〜45分間、典型的には30分間蒸発させた。
【0405】
5.遮断
PSコーティングELISAプレートを以下のように遮断した。1プレート当たり100mlの遮断緩衝液(1×PBS中2%の卵白アルブミン)を調製した。12チャンネルピペットを使用して、200μlの遮断緩衝液を各ウェルに添加した。遮断されたELISAプレートを、37℃で120分間(±10分間、これによるアッセイ性能の変化はなかった)インキュベートした。
【0406】
6.試料調製
アッセイ用の標準物、陽性対照、および試料調製を下記のように実行した。
【0407】
陽性対照のためのβ2GPI標準物は、0.2Mのグリシン、0.15MのNaClの緩衝液(pH7.4)中、Haematologic Technologies,Inc.(HTI、カタログ番号B2Gl−0001−C、1.0mg/ml)から得た。β2GPIのバイアルを解凍し、標準物および陽性対照調製を以下のように実行した。
10μg/mlのβ2GPIサブストックAを1ml、遮断緩衝液中で調製し、
サブストックAから100μlを減法ピペッティングすることによって、1,000ng/mlのβ2GPIサブストックBを1ml、遮断緩衝液中で調製し、
サブストックBから250μlを減法ピペッティングすることによって、250ng/mlのβ2GPI標準物を1ml、遮断緩衝液中で調製し、
減法ピペッティングを使用して、表9に従って1000ng/mlのサブストックから200ng/ml、75ng/ml、30ng/ml、および5ng/mlの対照試料を調製した。
【表11】
【0408】
未知試料を試験のために以下のように調製した。1:4000および1:8000の最終希釈度で未知試料を遮断緩衝液中で調製し、1:100の希釈度の未知試料を最初に調製し、1:40の希釈度を1:100の希釈度から調製して1:4000の希釈度を達成し、1:80の希釈度を1:100の希釈度から調製して1:8000の希釈度を達成した。
【0409】
非結合プレートの調製を以下のように実行した。75μlの遮断緩衝液を行B〜Hの列1〜3に添加し、250ng/mlの標準物150μlを列1〜3、行Aに添加し、多チャネルピペットを使用して、列1〜3の75μlを列Aから列Gまで段階希釈し、75μlの陽性対照および試料を指定のウェルに添加し、75μlの遮断緩衝液を全ての空のウェルに添加した。プレート設定を表10に示す。
【表12】
【0410】
7.検出
遮断終了前に、300ng/mlのバビツキシマブ−HRPを6ml、遮断緩衝液中で調製した。250μlを各ウェルにピペッティングすることによって、アッセイプレートを1×PBSで洗浄し、これをさらに2回反復した。プレート洗浄機を使用してもよく、その場合、プレートを1×PBSで1回洗浄する。プレートができるだけ乾燥していることを確実にした。
【0411】
300ng/mlのバビツキシマブ−HRPを50μl、アッセイプレートの全ウェルに添加した。非結合プレートの対応する各ウェルから、50μlを添加した。アッセイプレートおよび非結合プレートをこのように使用することは、非結合プレートからβ2GPIを含有する試料を添加する前に、検出可能に標識されたバビツキシマブを最初にPSコーティングアッセイプレートに添加することを意味する。この順序は、ピペッティング中の交差汚染を回避する。バビツキシマブ−HRPおよびβ2GPIを含有する試料をプレート上で共にインキュベートし、インキュベーションを37℃で90分間実行した。
【0412】
8.発色
TMBペルオキシダーゼ基質およびTMBペルオキシダーゼ溶液Bを、使用の少なくとも1時間前に冷蔵庫から取り出した。250μlを各ウェルにピペッティングすることによって、アッセイプレートを1×PBSで洗浄し、これをさらに2回反復した。プレート洗浄機を使用してもよく、その場合、プレートを1×PBSで1回洗浄する。プレートができるだけ乾燥していることを確実にした。
【0413】
6mlのTMBペルオキシダーゼ基質を6mlのTMB溶液Bと混合することによって、12mlのTMB混合物を調製した。100μlのTMB溶液をアッセイプレートの各ウェルに添加し、5〜6分間発色させた。アッセイプレートの各ウェルに2MのH
2SO
4を100μl添加することによって、発色を停止させた。アッセイプレートを読み取り、反応停止後30分以内に450nmで光学密度(OD)を決定した。アッセイデータの印刷物を提供するSoftMaxProプレートデータおよび分析テンプレートと併用して、マイクロプレートリーダーを使用した。
【0414】
9.ニック入りβ2GPIの調製
ヒト血漿および組み換えヒトβ2GPIから精製したβ2GPIの試料を両方ともプラスミンで処理(酵素加水分解)して、ニック入りβ2GPIの大部分を含有する試料を調製した。ニック入りβ2GPIは、初期研究では均質になるまで精製しなかったが、ニック入りβ2GPIは、ニックのない、すなわち「インタクトな」β2GPIを超えて存在することが決定された。
【0415】
10.全β2GPIのためのアッセイ
使用した抗体に関する製造者の仕様に基づいて、全β2GPIを検出するアッセイを設計した。これは、US Biologicalから市販されている抗体を使用するアッセイであり、このアッセイでは、プレートをβ2GPIに対する捕捉抗体でコーティングし、検出抗体として抗β2GPI −HRP共役体を使用して、全ての結合β2GPIを検出する。抗体カタログ番号は、捕捉抗体、US Biological 番号A2299−81A、親和性精製抗β2GPIおよび検出抗体、US Biological番号A2299−81B、ペルオキシダーゼ共役抗β2GPIである。
【0416】
捕捉抗体の1:100の希釈物を、炭酸塩緩衝液(50mMの重炭酸ナトリウム)中にpH9.6で調製した。100μlをELISAプレートの各ウェルに添加し、室温でインキュベートした。Tween−20を含有する1×PBS緩衝液でプレートを洗浄し、その後1%のBSAを含有する1ウェル当たり200μlのアッセイ希釈剤で遮断し、37℃でインキュベートした。精製β2GPIを使用して、アッセイ希釈剤中500ng/mlから始まる2倍希釈標準曲線を準備した。試料をアッセイ希釈剤中で希釈して、標準曲線の直線領域内の濃度を達成した。遮断インキュベーション後、プレートを洗浄し、続いて1ウェル当たり100μlの標準曲線および試料を2連または3連で添加した。標準曲線および試料の添加後、プレートを37℃でインキュベートした。検出抗体を、アッセイ希釈剤で1:400に希釈した。試料および標準曲線のインキュベート後、プレートを洗浄し、続いて1ウェル当たり100μlの検出抗体を添加した。プレートを37℃でインキュベートした。二次抗体のインキュベーション後、プレートを洗浄し、その後TMBで発色させた。450nmでプレートをプレートリーダーで読み取り、試料濃度を標準曲線から決定した。
【0417】
B.結果
1.機能性β2GPIとニック入りβ2GPIとの区別
ヒト血漿から精製したβ2GPI(「ヒト」)または組み換え発現後のβ2GPI(「組み換え」)をプラスミンで処理して、PSに結合しない、プラスミン切断された(ニック入り)β2GPIの大部分を含有するβ2GPI試験試料を調製した。本アッセイ(表11B)において、かつ市販の捕捉抗体および検出抗体を使用して全β2GPIを検出するように設計したアッセイ(表11A)を使用して、これらの試料を、無プラスミン(インタクトな)β2GPI、および各々の50:50混合物と共に試験した。結果を以下に示す。
【表13】
【表14】
【0418】
市販の抗体を使用するいわゆる「全β2GPIアッセイ」(表11A)および本発明の「機能性β2GPIアッセイ」(表11B)は両方とも、類似した濃度のβ2GPI(141ng/mlおよび136ng/ml)が読み取られることがまず理解され得る。全β2GPIアッセイを使用しても、プラスミン処理した組み換えβ2GPIを検出する上で本質的な違いはなく、ヒト血漿からのプラスミン処理したβ2GPIの量が増加するにつれて、中程度の検出の低減のみが存在した(141から104ng/ml)。対照的に、機能性β2GPIアッセイを使用すると、組み換えまたは血漿由来のプラスミン処理したβ2GPIの量の増加は、有意な結合の低減をもたらす(136から33ng/ml)。
【0419】
したがって、アッセイの設計と一貫して、これらの結果は、本アッセイが、ニック入りβ2GPIとは対照的に、機能性β2GPI(すなわち、PSおよびバビツキシマブの両方に結合するβ2GPI)を効果的に検出することができることを示す。これにより、本発明の機能性β2GPIアッセイは、PSに結合するβ2GPIと一緒に(PSに結合しない)ニック入りβ2GPIも検出する市販のアッセイキット(および市販の抗β2GPI抗体を使用するアッセイ)から区別される。
【0420】
2.機能性β2GPIの定量化
アッセイは、流体試料中の機能性β2GPI(PSおよびバビツキシマブの両方に結合するβ2GPIである)の量を決定に成功することができる。このアッセイは現在、再現性があるβ2GPI標準曲線を準備するために慣例的に実行されている。これに関して、4パラメータロジスティック適合が使用され、これは非線形回帰分析に使用される統計的等式である。4パラメータ適合式は、
【数1】
であり、式中、
Aは、X軸の低い値に対する漸近線(すなわち、曲線の平坦部分)に対応するY値であり、
Bは、曲線の中心にある漸近線から、曲線がいかに素早く推移するかを説明する係数であり、一般に勾配係数と呼ばれ、
Cは、AとDとの中間点に対応するX値であり、一般にEC50と呼ばれ、
Dは、X軸の高い値に対する漸近線に対応するY値である。
【0421】
機能性β2GPIの標準曲線の代表例を、
図16に示す。そのような標準曲線から、血漿または血清試料などのヒト血液試料中の機能性β2GPIの濃度を決定することができる。主に正確さのためではあるが、また試料調製の経済性のためにも、標準曲線はng/ml(ナノグラム/ml)で準備される。正常なヒト集団におけるβ2GPIの平均レベルは約200μg/ml(マイクログラム/ml)であるため(Mehdiら、1999;Miyakisら、2004)、標準曲線は試験試料がアッセイでの分析前に希釈されるという期待の下で準備される。希釈した血漿または血清試験試料をアッセイにかけ、その後、希釈係数を調整することによって患者のβ2GPI濃度を計算することができる。
【0422】
このアッセイは現在、上記の第III相試験の患者における機能性β2GPIのレベルを決定するために使用されており、その結果を、以下の実施例XVII、ならびに実施例XVIIIおよび実施例XXに提示する。
【0423】
3.代替的な同等のアッセイ構成要素およびステップ
本実施例の節A1〜A8に記載される特定の材料、装置、およびアッセイステップに加えて、機能性β2GPIを検出および定量化するためのアッセイの概念から逸脱することなく、構成要素および方法ステップにおける変形がなされ、実行され得る。以下の結果は、関連薬剤が節A1〜A8に記載される薬剤に取って代わり得ること、および本質的に同じ結果が達成されることを示す。
【0424】
特定の好ましいELISAプレートは、脂質吸着に最適化されたものであり、これは上記の節A1のELISAプレートに取って代わるように使用することができる。脂質吸着に最適化されたELISAプレートが既知であり、それはより良好な脂質(PS)結合を提供する表面化学を有する。1つのそのようなELISAプレートは、新たなアッセイ形式で使用されているThermoFisher PolySorp(登録商標)プレートである。
【0425】
上記の節A4のヘキサンに基づくPSコーティング方法には、好ましくは、(ヘキサンの使用を回避することによって)ユーザに特定の安全性利益を提供することができるイソプロパノールに基づくPSコーティング方法が取って代わってもよい。新たなアッセイ形式において、コーティング緩衝液としてイソプロパノールを使用する際には、イソプロパノール中に希釈した10μg/mlのPS抗原を使用してELISAプレートをPS抗原でコーティングし、インキュベーション時間は90分間である。
【0426】
有効なβ2GPI較正曲線を生成するために、β2GPIを得る任意の既知の方法を用いることができる。例えば、HTI(上記の節A6)などの商業販売会社から購入されるものである。明確で再現性のある較正制御のために、代替的なβ2GPI調製物もまた開発され得る。1つのそのような好ましい方法は、CHO細胞内でβ2GPIを発現させ、発現されたβ2GPIを精製することである。
【0427】
CHO細胞由来のβ2GPIの好ましい精製は、混入物を除去し、清澄化された採取物が0.2μmのフィルタを通過することを可能にする、採取物の清澄化、クロマチン抽出ステップ;清澄化された採取物を緩衝液交換し、体積を増加させずに、その伝導率を低下させるための、タンジェント流濾過(TFF)システムの使用;更なる混入物を除去するための、アニオン流スルーモードにおけるCapto Adhereステップ;凝集物および他の混入物を除去し、溶出液を濃縮し、任意の緩衝液交換を促進するための、Nuvia(商標)Sを使用する強カチオンステップ;ならびに任意で、精製β2GPIを緩衝液交換し、濃縮するための、TFFシステムの使用を含む。β2GPIはこのように発現および精製され、新たなアッセイ形式において使用されている。
【0428】
上記の節A3に加えて、特定の好ましいバビツキシマブ−HRP検出剤は、2つの一般に使用されている非専売の架橋剤であるSMCC(スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)またはSATA(N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート)のいずれかを使用して架橋された共役体である。他の好ましいバビツキシマブ−HRP検出剤は、HRPの数がバビツキシマブ抗体の数を超える共役体、特に2:1または3:1のHRP:バビツキシマブ比をもたらし、本質的に遊離(非共役)抗体を有しないものである。そのようなコンジュゲートは、S−300サイズ分類カラムによって精製されて、未反応の反応構成成分が除去される。これらの成分および特性の各々を有するバビツキシマブ−HRP検出剤は、Columbia Biosciences、4985 Winchester Blvd.,Frederick,Maryland,21703から得られ、新たなアッセイ形式において600ng/mlで使用されている。
【0429】
特に技術的な理由から、上記の代替的な構成要素およびアッセイステップのうちの1つ以上が好ましいが、全てのそのような代替物の併用でさえも、本実施例(すなわち、節A1〜A8)において最初に記載したアッセイと本質的に同じ結果をもたらす機能性β2GPIが提供される。そのような比較結果を以下の表12に示し、この表は、San Diego Blood Bankから得た4つの無作為ヒト試料(ドナー)を使用して、2つの異なるアッセイ形式で測定される機能性β2GPIレベルを提示する。
【表15】
【0430】
実施例XVII
バビツキシマブ第III相試験におけるβ2GPIバイオマーカー分析
上記の機能性β2GPIアッセイを利用して、本実施例は、実施例XIVの第III相試験の患者における治療前の機能性β2GPIのレベルを報告する。機能性β2GPIのレベルを治療結果と相関させることによって、本実施例はまた、バビツキシマブおよびドセタキセルならびに他の併用療法で治療したNSCLC患者におけるものなどの、バビツキシマブ治療の成功のためのバイオマーカーとしての機能性β2GPIにも関する。
【0431】
A.患者における機能性β2GPIレベル
上記の第III相試験には597人の患者を集めた。第III相試験における患者の血液試料の収集は、実施例XV、Aに記載されている。本分析の時点で、機能性β2GPIが評価可能な592の患者試料が存在した。これらの592人の患者の血液試料の部分アリコートを、直前の実施例に記載されるアッセイを使用して機能性β2GPIについて試験した。
【0432】
μg/mlでの治療前の機能性β2GPIのレベルおよび統計の要約を表13に示し、表中、「バビツキシマブ」列はバビツキシマブ+ドセタキセルで治療した患者を指し、「プラセボ」列はドセタキセル単独で治療した患者を指す。
【表16】
【0433】
治療前の機能性β2GPIのレベルは0.5〜402μg/mlの範囲であり、全ての患者の機能性β2GPIの分布を
図17Aおよび
図17Bに示す。バビツキシマブ+ドセタキセルで治療した患者において、機能性β2GPIは、
図17Cに示されるように、22〜365μg/mlの範囲であった。ドセタキセル単独で治療した患者における機能性β2GPIの分布を
図17Dに示し、これはこの研究の全範囲を網羅する(0.5〜402μg/ml)。
【0434】
各治療群(202および195μg/ml)について、ならびに研究全体(198μg/ml)について、治療前の機能性β2GPIのレベルは文献に報告されている200μg/mlの平均と一貫している(20mg/dlはMehdiら、1999によって、および200mg/lはMiyakisら、2004によって)。
【0435】
200μg/ml以上の治療前の機能性β2GPIレベルを有する患者のパーセンテージは、バビツキシマブ+ドセタキセルで治療した患者では56%、およびドセタキセル単独で治療した患者では49%であることが決定された。
【0436】
B.単一カットオフのβ2GPIバイオマーカー分析
バビツキシマブ+ドセタキセル療法を受けている患者における応答の予測因子としての機能性β2GPIを評価するために実行したサブグループ分析は、生存期間の延長に対する強い傾向を実証した。
【0437】
まず単一カットオフ法を使用して、患者のβ2GPIデータを評価した。このように最適なカットオフを探索する上で、ステップ1は、バビツキシマブ+ドセタキセル群の患者について、高β2GPI群対低β2GPI群のOS分離または有意なOS分離を探索することであり、ステップ2は、それらの高β2GPI患者について、バビツキシマブ+ドセタキセル群対ドセタキセル単独群(プラセボ)のOS分離または有意なOS分離を探索することである。
【0438】
評価可能な578人の患者に単一カットオフ法を適用することによる、可能性のあるバイオマーカーとしての機能性β2GPIの初期分析は、驚くべきことに、高β2GPIを有する患者において、バビツキシマブ+ドセタキセル群の167人の患者ではmOSが11.9ヶ月(95%のCI、9.0〜14.7)であり、ドセタキセル単独群の141人の患者では9.4ヶ月(95%のCI、7.7〜11.7)(死亡HR、0.77;P=0.1)であることを示した。これらの初期分析において、「高β2GPI」は、200μg/ml以上(≧200μg/ml)の機能性β2GPIの治療前レベルと定義される。これらの分析は単一カットオフに基づいているため、「高β2GPI」を有しない患者は、200μg/ml未満(<200μg/ml)の機能性β2GPIを有する。
【0439】
その後、単一カットオフ分析を評価可能な592人の患者に拡大した。統計的に有意ではないが、これらの分析もまた、患者が200μg/ml以上の機能性β2GPIの治療前レベルを有するときに、バビツキシマブ+ドセタキセル群において生存期間が延長する驚くべき傾向を実証した。これらの結果は、
図18Aおよび
図18Bにおいて、200μg/ml以上の機能性β2GPIについて、カプランマイヤー生存曲線によって表される。評価可能な592人の患者のうち、
図18Aは、バビツキシマブで治療した患者について、200μg/ml以上の機能性β2GPIを有する者(167人の患者)が11.4ヶ月のmOSを有したのに対し、200μg/ml未満の「低β2GPI」を有する127人の患者ではmOSが9.8ヶ月に過ぎなかったことを示す(死亡HR、0.76;P=0.054、CI(0.58、1.01))。
図18Bに示されるように、無作為化患者のうちの約52%となる200μg/ml以上の機能性β2GPIの治療前レベルを有する患者において、バビツキシマブ+ドセタキセル群の167人の患者におけるmOSは11.4ヶ月(95%のCI、8.4〜16.6)であり、ドセタキセル単独群の146人の患者におけるmOSは10.2ヶ月(95%のCI、8.5〜11.9)であった(死亡HR、0.82;P=0.134、CI(0.63、1.06))。
【0440】
C.2カットオフのβ2GPIバイオマーカー分析
上記の単一カットオフ分析後に、2カットオフ法を使用して、592人の評価可能な患者におけるデータをさらに分析した(Klein&Moeschberger、2003)。2カットオフ法において、ステップ1は、バビツキシマブ(+ドセタキセル)で治療した患者の「範囲内」対「範囲外」のOSの有意な分離を検索することであり、ステップ2は、「範囲内」の患者のバビツキシマブ群対プラセボ群の有意なOS分離を探索することである。
【0441】
592人の評価可能な患者における2カットオフ法を使用するこれらのサブグループ分析は、各々が200μg/ml以上の機能性β2GPIで始まるバビツキシマブの生存利益を示す、いくつかの統計的に有意な範囲の機能性β2GPIを生成し、したがって、200μg/ml以上の機能性β2GPIの治療前レベルがバビツキシマブでの治療に有益であるという初期の驚くべき発見を確認した。特に、2カットオフ法は、210〜270、210〜280、210〜290、200〜280、および200〜290μg/mlの範囲の各々にある機能性β2GPIの治療前レベルが、ドセタキセル単独で治療した患者に対して、バビツキシマブ+ドセタキセルで治療した患者の全生存期間における利益の統計的に有意な予測因子であることを示した。210〜270、210〜280、210〜290、200〜280、および200〜290μg/mlの機能性β2GPI範囲についてのこれらの結果を、表14Aおよび表14Bに示す。
【表17】
【表18】
【0442】
表14Aの結果をまとめると、210〜270、210〜280、210〜290、200〜280、および200〜290μg/mlの機能性β2GPIの範囲の各々は、1未満のハザード比および生存期間の改善を表す統計的に有意なP値を有する。表14Bは、当然、それらの述べられる範囲外の機能性β2GPIを有する患者が、1超のハザード比および生存期間の悪化(または死亡率の増加)を表す統計的に有意なP値を有するという点において反対を示す。例えば、無作為化患者の約49%となる治療前のβ2GPIレベルが200〜290μg/mlの患者は、バビツキシマブ(+ドセタキセル)で治療した場合に11.4ヶ月のmOSを有したのに対して、同じ範囲のβ2GPIレベルを有する対照群の患者では、10.1ヶ月であった。10.1ヶ月に対する11.4ヶ月のこの増加は、mOSの統計的に有意な改善を反映している(HR0.76、P=0.049)。
【0443】
200μg/ml以上の機能性β2GPIの治療前レベルが、バビツキシマブ治療時に生存期間が延長する傾向を示すという示唆は文献には存在せず、210〜270、210〜280、210〜290、200〜280、および200〜290μg/mlの機能性β2GPIの治療前レベルが、バビツキシマブで治療した患者の全生存期間における利益を予測するという示唆も存在しない。実際に、バビツキシマブの有意な以前の臨床経験には、そのような結果を示唆するものは何もない。さらに、そのような発見は、広範な前臨床モデリングからのデータと非常に矛盾しており、これは、様々なレベルの血清β2GPIがバビツキシマブの治療結果に有意な影響を及ぼさないことを示した。特に、臨床前の経験は、むしろ約10〜20から50〜60μg/ml程度などの非常に低いレベルの血清β2GPIが、バビツキシマブの結合および活性を支持するのに十分であることを示した(実施例V)。
【0444】
特に、異なるアッセイを使用して、実施例Vは、0.12〜0.25(
図1A、
図1B、
図1C、および
図1Dと共に、
図9Aおよび
図9B)、0.125、0.5〜2(
図10)、0.93(
図11)、ならびに1.43〜2.86(
図12)のβ2GPI対抗体のモル比が、PSへのバビツキシマブの結合を支持する上で有効であることを示す。バビツキシマブが約2.86のβ2GPI対抗体のモル比で有効であることを示す前臨床データ(表3)を含む、いくつかの異なる結合および機能試験システムを考慮すると、β2GPI対抗体のモル比は3を超える必要はない。本第III相試験において3mg/kgの用量のバビツキシマブを使用すると、そのような比は60μg/ml未満のβ2GPIレベルで達成される(
図19)。参考のために、第III相試験のβ2GPIの量、抗体の量、および相当するβ2GPI−抗体比を表15に示し、表中、N=定義された各増分内の機能性β2GPIレベルを有する患者数(592人の評価可能な患者から)である。
【表19】
【0445】
表15および
図17Aをモデリングに使用したデータ(表1、表2、および表3)と比較すると、第III相試験の大多数の患者は、バビツキシマブがその最大血中濃度である(56.4μg/mlのCmax;実施例VI;Gerberら、2011)場合ですら、バビツキシマブ結合を飽和させるのに十分過ぎるほどである(2.86以上)、すなわち、60μg/mlまたは1.2μM(表15、
図19)から始まる、β2GPI対抗体モル比に一致する機能性β2GPIのレベルを有していたことが理解され得る。実際に、592人の評価可能な患者のうち4人(0.68%)が、60μg/ml未満の機能性β2GPIの治療前レベルを有していた。さらに、機能性β2GPIのレベルが増加する(これは試験における大多数の患者に当てはまる)場合、β2GPI対バビツキシマブのモル比は2または3よりはるかに高く、200μg/mlで10を超える。以前の前臨床モデリングまたは臨床経験では、そのようなβ2GPIレベルまたは比がバビツキシマブ療法に有益であることを指摘するものは何もなかった。むしろ、
図19に示されるように、前臨床データは、約10μg/ml以下から始まる低レベルの血清β2GPI(5μg/mlのβ2GPIは0.257のβ2GPI:抗体モル比を有する)、および約60μg/mlでも簡単に、バビツキシマブの結合および活性を支持するのに十分であることを示した(実施例V)。
【0446】
予想外ではあったが、バビツキシマブの成績についての可能性のあるバイオマーカーとしての、機能性β2GPIの治療前レベルについてのこれらの詳細な分析は、非常に有望である。したがって、患者における機能性β2GPIの治療前濃度を測定することは、バビツキシマブ療法に対する応答を予測するための、すなわち、バビツキシマブでの治療から利益を得る可能性がより高いか、または最も可能性が高い患者を選択するための戦略を提供する。これは、特にNSCLCにおいて、ドセタキセルと共にバビツキシマブを使用した場合に最初に観察された。しかしながら、機能性β2GPIおよびPSを有する複合体中でのバビツキシマブ結合の機構、および全体的なバビツキシマブの免疫活性化機構は、全てのバビツキシマブ療法に共通しているため、したがって、200μg/ml以上の機能性β2GPIの治療前レベルに基づく患者の選択は、これが治療結果を改善するという根拠の十分な期待の下でバビツキシマブを使用する全ての将来の試験および治療法に含めることができる。実際に、これを支持する更なる証拠が実施例XVIIIおよび実施例XXに提供されている。
【0447】
実施例XVIII
更なるバビツキシマブ臨床試験におけるβ2GPIバイオマーカー分析
実施例XVIIにおけるバビツキシマブ治療の成功のバイオマーカーとしての機能性β2GPIの特定に続いて、本実施例は、機能性β2GPIアッセイの使用を、より初期のバビツキシマブ臨床試験の試料に拡大する。以下の結果は、同じレベルの機能性β2GPIがバビツキシマブの成功した治療結果とも相関することを示し、したがって、機能性β2GPIがバビツキシマブのバイオマーカーとして確認される。
【0448】
A.実施例XIIIの第II相試験
実施例XIIIのNSCLC第II相試験(PPHM0902)の試料を、実施例XVIの機能性β2GPIアッセイを使用して試験した。機能性β2GPIの治療前レベルが評価可能な119人の患者の試料があり、そのうち40人の患者がバビツキシマブ3mg/kg群におり、79人の患者が複合対照群(プラセボまたは1mg/kgのバビツキシマブ)にいた。
【0449】
機能性β2GPIの治療前レベルは、全患者について0.5〜266μg/mlの範囲であった(
図20A)。バビツキシマブ3mg/kg+ドセタキセルで治療した患者では、機能性β2GPIは0.5〜266μg/mlの範囲であった(
図20B)。複合対照群の患者における機能性β2GPIの分布は0.5〜257.4μg/mlであった(
図20C)。各治療群(バビツキシマブ3mg/kgでは169.4μg/ml、および複合対照群では171.8μg/ml)について、ならびに研究全体(171.0μg/ml)について、機能性β2GPIの治療前レベルは文献に報告されている平均と一貫している。
【0450】
200μg/ml以上(≧200μg/ml)の機能性β2GPIの治療前レベルとして定義される、「高β2GPI」のカットオフを使用して、バビツキシマブ 3mg/kg群では、200μg/ml以上のβ2GPIが全生存期間の増加と共に増加する傾向がある(
図21Aおよび
図21B)が、他方の群ではそのような傾向はない(
図21C)と決定した。例えば、3mg/kgのバビツキシマブで治療した患者について、200μg/ml以上の機能性β2GPIを有する者は16.8ヶ月のmOSを有したのに対して、200μg/ml未満の「低β2GPI」ではわずか9.4ヶ月であった(
図21A)。また、200μg/ml以上の機能性β2GPIを有する患者において、3mg/kgのバビツキシマブで治療した患者の16.8ヶ月のmOSは、複合対照群の患者のわずか8.7ヶ月のmOSを超えていた(
図21B)。
図21Aおよび
図21Bの各々における曲線の明確な分離を、
図21Cの上重ね曲線と対比されたい(複合対照群の200μg/ml以上のβ2GPIを200μg/ml未満のβ2GPIと比較)。
【0451】
B.実施例XIIの第II相試験
実施例XIIの第II相膵臓癌試験の試料(PPHM1002)を、実施例XVIの機能性β2GPIアッセイを使用して試験した。機能性β2GPIの治療前レベルが評価可能な31の患者試料があった。機能性β2GPIの治療前レベルは、全患者について82.5〜343.2μg/mlの範囲であった(
図22)。これら31人の患者について、治療前の機能性β2GPIの平均レベル(219.2μg/ml)は文献に報告されている平均と一貫していた。
【0452】
試料サイズが小さく、かつ疾患が非常に侵襲性はであるが、200μg/ml以上(≧200μg/ml)の機能性β2GPIの「高β2GPI」のカットオフを使用して、バビツキシマブについて、200μg/ml以上のβ2GPIが全生存期間の増加と共に増加する傾向があることを決定した。200μg/ml以上の機能性β2GPIを有するバビツキシマブで治療した患者は、7.4ヶ月のmOSを有したのに対して、200μg/ml未満の「低β2GPI」では5.3ヶ月であった(
図23)。
【0453】
C.NSCLCにおけるバビツキシマブおよびパクリタキセル/カルボプラチンの第II相試験
バビツキシマブ併用または非併用のパクリタキセル/カルボプラチンの無作為化非盲検第II相試験(PPHM1001)を、治療歴のない局所進行または転移性非扁平上皮NSCLCを有する患者において実行した。この試験の試料を、実施例XVIの機能性β2GPIアッセイを使用して試験した。機能性β2GPIの治療前レベルが評価可能な84の患者試料があり、そのうち44人の患者がバビツキシマブ群に、40人の患者がパクリタキセル/カルボプラチン群にいた。
【0454】
機能性β2GPIの治療前レベルは、全患者について0.5〜326μg/mlの範囲であった(
図24A)。バビツキシマブで治療した患者内では、機能性β2GPIは0.5〜326μg/mlの範囲であった(
図24B)。パクリタキセル/カルボプラチン群の患者における機能性β2GPIは、88.8〜292.7μg/mlの範囲であった(
図24C)。各治療群(バビツキシマブでは187.9μg/ml、パクリタキセル/カルボプラチン群では186.4μg/ml)について、および研究全体(187.2μg/ml)について、機能性β2GPIの治療前レベルは、ここでもまた文献に報告されている平均と一貫している。
【0455】
200μg/ml以上(≧200μg/ml)の機能性β2GPIの治療前レベルであるものと同じ「高β2GPI」のカットオフを使用して、200μg/ml以上のβ2GPIは、ここでもまたバビツキシマブ群においては全生存期間の増加と共に増加する傾向があるが、対照(パクリタキセル/カルボプラチン)群ではそのような傾向はないと決定した。例えば、バビツキシマブで治療した患者では、200μg/ml以上の機能性β2GPIを有する患者は17.0ヶ月のmOSを有したのに対して、200μg/ml未満の「低β2GPI」では14.2ヶ月であった(
図25A)。また、200μg/ml以上の機能性β2GPIを有する患者では、バビツキシマブで治療した患者の17.0ヶ月のmOSは、対照群の患者のわずか13.2ヶ月のmOSを超えた(
図25B)。
図25Aおよび
図25B、特に
図25Aにおける曲線の分離を、対照群の患者についてβ2GPIが200μg/ml未満の場合により長期間生存する傾向が存在する
図25Cと対比されたい。
【0456】
結論として、4つの別個の臨床試験からの実施例XVIIおよび実施例XVIIIのデータは、機能性β2GPIレベルが治療結果と相関し、したがって機能性β2GPIレベルをバビツキシマブ治療の成功のバイオマーカーとして確認することを一貫して示している。
【0457】
実施例XIX
後続免疫療法との併用におけるバビツキシマブの生存期間
実施例XIVの第III相試験の初期の分析は、ドセタキセル単独群と比較して、バビツキシマブ+ドセタキセル群において優れたOSを示さなかったが、バビツキシマブ治療に対する治療的利益の他の可能性のある指標を特定する目的で、進行中の研究を実行した。本実施例は、バビツキシマブおよびドセタキセル、その後に後続免疫療法(SACT−IO)で治療した患者は、ドセタキセル単独、その後に免疫療法で治療した患者とは対照的に、統計的に有意なより良好なmOSを有することを示す。
【0458】
バビツキシマブおよびドセタキセル、またはドセタキセル単独のいずれかによる治療の後、患者の約15%(597人中93人)が、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を使用する後続免疫腫(IO)療法(SACT−IO)の形態で後続抗癌療法(SACT)を受けた。これらの93人の患者は、治療群間で等しく均衡が取れており、46人の患者がバビツキシマブおよびドセタキセルによる前治療を受け、47人の患者がドセタキセル単独による前治療を受けた。
【0459】
驚くべきことに、後続IOで治療した場合、プラセボとは対照的に、バビツキシマブでの前治療を受ける患者では、mOSの劇的な増加が存在することが決定された(
図26)。特に、後続IOを受ける患者について、バビツキシマブおよびドセタキセル群では依然としてmOSには到達していない(95%のCI、15.2〜該当せず)一方で、ドセタキセル単独群では12.6ヶ月(95%のCI、10.4〜17.8) ; HR=0.46およびp=0.006であった(
図26、表16)。後続IOを受けなかった患者では、mOSは、バビツキシマブおよびドセタキセル群で9.2ヶ月、ならびにドセタキセル単独群で10.2ヶ月;HR=1.16およびp=0.172であった。
【表20】
【0460】
後続IO群において、「第1の後続IO」の特定の免疫療法剤もまた特定した。バビツキシマブ(およびドセタキセル)ならびに後続IOで治療した46人の患者において、免疫療法剤を表17に示し、それらは全て、CTLA−4、PD−1、またはPD−L1に結合する遮断抗体の形態のチェックポイント阻害剤抗体(免疫チェックポイント阻害剤)である。特に、使用した遮断抗体は、CTLA−4に結合する遮断抗体であるトレメリムマブ、PD−1に結合する遮断抗体であるニボルマブ、およびPD−L1に結合する遮断抗体であるデュルバルマブ(MEDI4736)であった。要約すると、46人中42人のバビツキシマブ患者は後続してニボルマブを受け、2人はデュルバルマブ単独療法を受け、2人はトレメリムマブ+デュルバルマブを受けた(表17)。
【表21】
【0461】
4人の患者が2回以上のIO剤を受けたこと、すなわち、彼らの「第1の後続IO」療法自体が「IO併用」、すなわち、第1および第2のチェックポイント阻害剤抗体であったことに留意されたい。したがって、「ITT」(治療意図)分析では、バビツキシマブで治療した46人の患者が第1の後続IOを受けたが、表17では48の後続IO剤が存在する。これは、2人の患者が「IOダブレット」を受けたためである。全体として、4人の患者が2回以上の後続IOを受け、これらの各々がMEDI4736(デュルバルマブ)およびトレメリムマブのダブレットを受けた。これら4人の対象のうち、2人はバビツキシマブ群であり、2人はプラセボ群であった。
【0462】
後続IOを受ける93人の患者において、ドセタキセル単独(プラセボ)の治療歴のある患者もまた、トレメリムマブ、ニボルマブ、またはデュルバルマブ(MEDI4736)を受けた。加えて、プラセボ群の2人の患者がペムブロリズマブ(以前のMK−3475)を受け、プラセボ群の1人の患者がREGN2810を受け、これらはどちらもPD−1に結合する遮断抗体である。全体として、プラセボ群の47人の患者における第1の後続IOは、トレメリムマブ(3人)、ニボルマブ(40人)、デュルバルマブ(3人)、ペンブロリズマブ(2人)、およびREGN2810(1人)であり、これは47人の患者において合計49の薬剤であり、2人の患者がデュルバルマブ(MEDI4736)−トレメリムマブのIOダブレットを受けた。すなわち、対照群の47人中40人の患者が後続してニボルマブを受け、 1人がデュルバルマブ単独療法を受け、1人がトレメリムマブ単独療法を受け、2人がトレメリムマブ+デュルバルマブを受け、2人がペンブロリズマブを受け、1人がREGN2810を受けた。
【0463】
図26は、無作為化からの時間に関して、後続IO前のバビツキシマブによる初期治療の生存利益を示す。後続IO前の初期バビツキシマブ治療の生存利益は、第1の後続IO治療からの時間として測定したときにさらにより顕著である。この文脈において、後続IOを受ける患者について、バビツキシマブおよびドセタキセル群(95%のCI、10.2〜該当せず)ではmOSには依然として到達していない一方で、ドセタキセル単独群ではわずか6.2ヶ月(95%のCI、3.9〜8.7);HR=0.42およびp=0.002であった。
【0464】
結論として、本実施例のデータは初めて、バビツキシマブがヒト患者において免疫療法剤の活性を増強することを示している。したがって、これらの結果は、免疫療法剤、特に免疫チェックポイント阻害剤との併用でのバビツキシマブによる癌患者の進行中および将来の治療を強く支持する。
【0465】
実施例XX
バビツキシマブおよび後続免疫療法のβ2GPIバイオマーカー分析
実施例XIXに示されるように、バビツキシマブ(+ドセタキセル)および後続IOで治療した患者は、ドセタキセル単独および後続IOで治療した患者よりも著しく良好なmOSを有する。本実施例は、バビツキシマブバイオマーカーとしての機能性β2GPIの使用をさらに確認し、これは、同じレベルの機能性β2GPIが免疫療法との併用でのバビツキシマブによる治療の成功とも相関することを示す。
【0466】
実施例XVIのアッセイを使用すると、200μg/ml以上の機能性β2GPIレベルは、第III相試験を含むバビツキシマブ治療の成功と相関することが示される(実施例XVII)。200μg/ml以上(≧200μg/ml)の機能性β2GPIの治療前レベルであるものと同じ「高β2GPI」のカットオフに基づいて、200μg/ml以上のβ2GPIは、バビツキシマブおよび後続IOで治療した患者では全生存期間の増加と相関するが、後続IOを受けた対照患者では相関しないことを再度決定した。
【0467】
特に、200μg/ml以上の機能性β2GPIを有する患者について、バビツキシマブおよび後続IOで治療した患者ではmOSには未だ到達していない一方で、ドセタキセルおよび後続IOで治療した患者ではmOSは12.3ヶ月(10.2〜17.6)であった(
図27、p=0.002)。実施例XVIIのデータによって予測されるように、後続IOなしの患者では、対照(9.2ヶ月)と比較して、バビツキシマブで治療した患者(10.5ヶ月)において200μg/ml以上のβ2GPIは依然として全生存期間の増加と共に増加する傾向があったが、曲線の分離は、後続IO患者について観察されたほどは顕著ではない(
図27)。バビツキシマブ治療とは対照的に、後続IOありの患者および後続IOなしの患者の両方について、対照群の患者では、β2GPIが200μg/ml未満であるときに生存期間がより長くなる傾向がある。β2GPIが200μg/ml未満である群のデータの詳細な分析は、β2GPIが200μg/ml未満である群においてバビツキシマブ(n=12)およびプラセボ(n=19)ならびに後続IOで治療した患者が比較的少数であることによって妨害される。
【0468】
したがって、これらの臨床データは、200μg/ml以上の機能性β2GPIが、免疫療法との併用での、特にトレメリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、デュルバルマブ、およびアテゾリズマブなどの免疫チェックポイント阻害剤との併用での、バビツキシマブによる治療の成功のバイオマーカーであることを示す。
* * *
【0469】
本明細書に開示および主張される組成物および方法の全ては、本開示を考慮して、過度の実験をすることなく作製および実行することができる。本発明の組成物および方法を、好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、本組成物および方法、ならびに本明細書に記載の方法のステップまたはステップの順序に変更を適用することができることは、当業者に明らかだろう。より具体的には、同じまたは類似の結果を達成しながら、化学的にも生理学的にも関連する特定の薬剤が本明細書に記載の薬剤に取って代わってもよいことは明らかだろう。当業者に明らかであるそのような類似の代替および変更は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内にあると見なされる。
【0470】
参考文献
The following references,to the extent that they provide exemplary procedural or other details supplementary to those set forth herein,are referenced.
Agostinis et al.,”In vivo distribution of β2GPI under pathophysiologic conditions”,Blood,118(15):4231−4238,2011.
An et al.,”Exosomes serve as tumour markers for personalized diagnostics owing to their important role in cancer metastasis”,J.Extracell.Vesicles,4:27522,2015; http://dx.doi.org/10.3402/jev.v4.27522.
Balasubramanian et al.,”Estimation of plasma beta−2−glycoprotein levels by competitive ELISA”,Thromb.Res.,92:91−97,1998.
Beck et al.,”Combination of a monoclonal anti−phosphatidylserine antibody with gemcitabine strongly inhibits the growth and metastasis of orthotopic pancreatic tumors in mice”,Int.J.Cancer,118:2639−2643,2006.
Best,”Viruses play dead to TAMe interferon responses”,Cell Host & Microbe,14(2):117−8,2013.
Bevers,Zwaal,Willems,”The effect of phospholipids on the formation of immune complexes between autoantibodies and β
2−glycoprotein I or prothrombin”,Clin.Immunol.,112:150−160,2004.
Bevers et al.,”Quantitative determination of the binding of β
2−glycoprotein I and prothrombin to phosphatidylserine−exposing blood platelets”,Biochem.J.,386:271−279,2005.
Bhattacharyya et al.,”Enveloped viruses disable innate immune responses in dendritic cells by direct activation of TAM receptors”,Cell Host & Microbe,14(2):136−147,2013.
Birge et al.,”Phosphatidylserine is a global immunosuppressive signal in efferocytosis,infectious disease,and cancer”,Cell Death Differ.,23(6):962−78,2016.
Brahmer et al.,”Nivolumab versus docetaxel in advanced squamous−cell non−small−cell lung cancer”,N.Engl.J.Med.,373(2):123−135,2015.
Chalasani et al.,”A Phase I Clinical Trial of Bavituximab and Paclitaxel in Patients with HER2 Negative Metastatic Breast Cancer”,Cancer Medicine,4(7):1051−1059,2015.
Chen et al.,”Phosphatidylserine Vesicles Enable Efficient En Bloc Transmission of Enteroviruses”,Cell,160:619−630,2015.
Cheng et al.,”Antibody−Mediated Blockade of Phosphatidylserine Enhances the Antitumor Effect of Sorafenib in Hepatocellular Carcinomas Xenografts”,Ann.Surg.Oncol.,5107−5,DOI 10.1245/s10434−016−5107−5,2016.
Clayson et al.,”Release of Simian Virus 40 Virions from Epithelial Cells is Polarized and Occurs without Cell Lysis”,J.Virology,63(5):2278−2288,1989.
Czuczman et al.,”Listeria monocytogenes exploits efferocytosis to promote cell−to−cell spread”,Nature,509:230−234,2014.
DaMatta et al.,”Trypanosoma cruzi exposes phosphatidylserine as an evasion mechanism”,FEMS Microbiol.Lett.,266:29−33,2007.
de Laat,Derksen,Urbanus,de Groot,”IgG antibodies that recognize epitope Gly40−Arg43 in domain I of β
2−glycoprotein I cause LAC,and their presence correlates strongly with thrombosis”,Blood,105(4):1540−5,2005.
de Laat,Derksen,van Lummel,Pennings,de Groot,”Pathogenic anti−β
2−glycoprotein I antibodies recognize domain I of β
2−glycoprotein I only after a conformational change”,Blood,107(5):1916−24,2006.
DeRose et al.,”Development of bavituximab,a vascular targeting agent with immune−modulating properties,for lung cancer treatment”,Immunotherapy,3(8):933−944,2011.
Digumarti et al.,”Bavituximab Plus Paclitaxel and Carboplatin for the Treatment of Advanced Non−Small−Cell Lung Cancer”,Lung Cancer,86:231−236,2014.
Eda & Sherman,”Cytoadherence of Malaria−Infected Red Blood Cells Involves Exposure of Phosphatidylserine”,Cell Physiol.Biochem.,12:373−384,2002.
Fehrenbacher et al.,”Atezolizumab versus docetaxel for patients with previously treated non−small−cell lung cancer(POPLAR):a multicentre,open−label,phase 2 randomised controlled trial”,The Lancet,387(10030):1837−1846,2016.
Francis et al.,”Mycobacterium tuberculosis ESAT−6 is a leukocidin causing Ca2+ influx,necrosis and neutrophil extracellular trap formation”,Cell Death and Disease,5:e1474; doi:10.1038/cddis.2014.394,2014.
Freimark et al.,”Antibody−Mediated Phosphatidylserine Blockade Enhances the Antitumor Responses to CTLA−4 and PD−1 Antibodies in Melanoma”,Cancer Immunol.Res.,4(6):531−40,2016.
Galli et al.,”Anticardiolipin antibodies(ACA) directed not to cardiolipin but to a plasma protein cofactor”,Lancet,335(8705):1544−1547,1990.
Garon et al.,”Pembrolizumab for the treatment of non−small−cell lung cancer”,N.Engl.J.Med.,372(21):2018−2028,2015.
Gerber et al.,”Phase I Safety and Pharmacokinetic Study of Bavituximab,a Chimeric Phosphatidylserine−Targeting Monoclonal Antibody,in Patients with Advanced Solid Tumors”,Clin.Cancer Res.,17(21):1−9,2011.
Gerber et al.,”Docetaxel Combined with Bavituximab in Previously Treated,Advanced Nonsquamous Non−Small−Cell Lung Cancer”,Clinical Lung Cancer,17(3):169−176,2016.
Gong et al.,”Measuring Response to Therapy by Near−Infrared Imaging of Tumors Using a Phosphatidylserine−Targeting Antibody Fragment”,Molecular Imaging,12(4):244−256,2013.
Goth & Stephens,”Rapid,Transient Phosphatidylserine Externalization Induced in Host Cells by Infection with Chlamydia spp”,Infect.Immun.,69(2):1109−1119,2001.
Gray et al.,”Phosphatidylserine−targeting antibodies augment the anti−tumorigenic activity of anti−PD−1 therapy by enhancing immune activation and downregulating pro−oncogenic factors induced by T−cell checkpoint inhibition in murine triple−negative breast cancers”,Breast Cancer Research,18(1):50,DOI 10.1186/s13058−016−0708−2,2016a.
Gray et al.,”LAG3 is an immunotherapeutic target in murine triple negative breast cancers whose activity is significantly enhanced in combination with phosphatidylserine targeting antibodies”,Poster B019,CRI−CIMT−EATI−AACR International Cancer Immunotherapy Conference,New York,NY,September 25−28,2016b.
Gregorc et al.,”Predictive value of a proteomic signature in patients with non−small−cell lung cancer treated with second−line erlotinib or chemotherapy(PROSE):a biomarker−stratified,randomised phase 3 trial”,Lancet Oncology,15(7):713−721,2014.
Hagele et al.,”Legionella pneumophila kills human phagocytes but not protozoan host cells by inducing apoptotic cell death”,FEMS Microbiol.Lett.,169(1):51−58,1998.
He et al.,”Radiation−enhanced vascular targeting of human lung cancers in mice with a monoclonal antibody that binds anionic phospholipids”,Clin.Cancer Res.,13(17):5211−5218,2007.
He et al.,”Antiphosphatidylserine antibody combined with irradiation damages tumor blood vessels and induces tumor immunity in a rat model of glioblastoma”,Clin.Cancer Res.,15(22):6871−80,2009.
Hogg et al.,”Retargeting Adenoviral Vectors to Improve Gene Transfer into Tumors”,Cancer Gene Therapy,18:275−287,2011.
Hotchkiss et al.,”Inhibition of endothelial cell function in vitro and angiogenesis in vivo by docetaxel(Taxotere):association with impaired repositioning of the microtubule organizing center”,Mol.Cancer Ther.,1(13):1191−200,2002.
Huang,Bennett,Thorpe,”A monoclonal antibody that binds anionic phospholipids on tumor blood vessels enhances the antitumor effect of docetaxel on human breast tumors in mice”,Cancer Res.,65(10):4408−4416,2005.
Hunt,Simpson,Krilis,”Identification of a region of β
2−glycoprotein I critical for lipid−binding and anticardiolipin antibody cofactor activity”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2141−2145,1993.
Hunt and Krilis,”The fifth domain of β
2−glycoprotein I contains a phospholipid−binding site(Cys281−Cys288) and a region recognized by anticardiolipin antibodies”,J.Immunol.,152:653−659,1994.
Ioannou et al.,”Binding of antiphospholipid antibodies to discontinuous epitopes on domain I of human β
2−glycoprotein I:mutation studies including residues R39 to R43”,Arthritis Rheum.,56(1):280−90,2007.
Izquierdo−Useros et al.,”HIV and mature dendritic cells:Trojan exosomes riding the Trojan horse?”,PLoS Pathog,6(3):e1000740,2010.
Jennewein et al.,”Vascular Imaging of Solid Tumors in Rats with a Radioactive Arsenic−Labeled Antibody that Binds Exposed Phosphatidylserine”,Clin.Cancer Res.,14(5):1377−1385,2008.
Jemielity et al.,”TIM−Family Proteins Promote Infection of Multiple Enveloped Viruses through Virion−Associated Phosphatidylserine”,PLoS Pathogens,9(3):e1003232; 2013.
Judy et al.,”Vascular Endothelial−Targeted Therapy Combined with Cytotoxic Chemotherapy Induces Inflammatory Intratumoral Infiltrates and Inhibits Tumor Relapses after Surgery”,Neoplasia,14:352−359,2012.
Kabat et al.,”Sequences of Proteins of Immunological Interest” 5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991,pp 647−669 in particular.
Kamboh et al.,”Genetic Studies of Human Apolipoproteins.IV.Structural Heterogeneity of Apolipoprotein H(β2−Glycoprotein I)”,Am.J.Hum.Genet.,42:452−457,1988.
Kennedy et al.,”Attenuating a sickle cell crisis with annexin V”,Medical Hypotheses,http://dx.doi.org/10.1016/j.mehy.2015.01.037,2015.
Klein & Moeschberger,”Survival Analysis.Techniques for censored and truncated data”,2
nd Edition,New York,2003(ISBN−10:038795399X; ISBN−13:978−0387953991).
Kogure et al.,”Temporary membrane distortion of vascular smooth muscle cells is responsible for their apoptosis induced by platelet−activating factor−like oxidized phospholipids and their degradation product,lysophosphatidylcholine”,Chemistry and Physics of Lipids,126:29−38,2003.
Larson et al.,”Customization,Scale−Up and Qualification of an Antibody−dependent Cell−mediated Cytotoxicity(ADCC) Bioassay”,IBC’s 23
rd International Intensive Symposium Development,Validation and Maintenance of Biological Assays Conference,Seattle,Washington,May 14−16,2013; Poster Board #7.
Li et al.,”Phosphatidylserine(PS) is Exposed in Choroidal Neovascular Endothelium:PS−Targeting Antibodies Inhibit Choroidal Angiogenesis In vivo and Ex Vivo”,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,56:7137−7145,2015.
Liang et al.,”Targeting Mutant P53 Protein and the Tumor Vasculature:An Effective Combination Therapy for Advanced Breast Tumors”,Breast Cancer Res.Treat.,125:407−420,2011.
Lonsdale et al.,”Phosphatidylserine as a Therapeutic Target for the treatment of Francisella tularensis and Yersinia pestis infections”,Chemical & Biological Defense Science & Technology Conference,2011 Las Vegas,NV Abstract W15−048.
Luster et al.,”Plasma Protein β
2−glycoprotein 1 Mediates Interaction between the Anti−tumor Monoclonal Antibody 3G4 and Anionic Phospholipids on Endothelial Cells”,J.Biol.Chem.,281(40):29863−29871,2006.
Mallat et al.,”Shed Membrane Microparticles With Procoagulant Potential in Human Atherosclerotic Plaques”,Circulation,99:348−353,1999.
Marconescu & Thorpe,”Coincident Exposure of Phsophatidylethanolamine and Anionic Phospholipids on the Surface of Irradiated Cells”,Biochemica et Biophysica Acta,1778(10):2217−2224,2008.
McNeil,Simpson,Chesterman,Krilis,”Anti−phospholipid antibodies are directed against a complex antigen that includes a lipid−binding inhibitor of coagulation:β
2−glycoprotein I(apolipoprotein H)”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87(11):4120−4124,1990.
Meckes et al.,”Human tumor virus utilizes exosomes for intercellular communication”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,107(47):20370−20375,2010.
Meckes and Raab−Traub,”Microvesicles and Viral Infection”,J.Virology,85(24):12844−12854,2011.
Mehdi et al.,”Genetic variation in the apolipoprotein H(β2−glycoprotein I) gene affects plasma apolipoprotein H concentrations”,Hum.Genet.,105:6371,1999.
Meertens et al.,”The TIM and TAM families of phosphatidylserine receptors mediate dengue virus entry”,Cell Host & Microbe,12(4):544−557,2012.
Mercer and Helenius,”Vaccinia virus uses macropinocytosis and apoptotic mimicry to enter host cells”,Science,320:531−535,2008.
Miyakis et al.,”β2−glycoprotein I − function in health and disease”,Thromb.Res.,114:335−346,2004.
Moller−Tank & Maury,”Phosphatidylserine receptors:Enhancers of enveloped virus entry and infection”,Virology,468−470(2014) 565−580,2014.
Moody et al.,”Anti−phospholipid human monoclonal antibodies inhibit CCR5−tropic HIV−1 and induce β−chemokines”,J.Exp.Med.,207(4):763−776,2010.
Morizono et al.,”The soluble serum protein Gas6 bridges virion envelope phosphatidylserine C254 to the TAM receptor tyrosine kinase Axl to mediate viral entry”,Cell Host Microbe,9:286−298.2011.
Murata−Kamiya et al.,”Helicobacter pylori Exploits Host Membrane Phosphatidylserine for Delivery,Localization,and Pathophysiological Action of the CagA Oncoprotein”,Cell Host Microbe,7:399−411,2010.
Palmero et al.,”Final Clinical Results from SUNRISE:A Phase III,Randomized,Double−Blind,Placebo−Controlled Multicenter Trial of Bavituximab Plus Docetaxel in Patients with Previously Treated Stage IIIb/IV Nonsquamous Non−Small Cell Lung Cancer”,Annals Oncol.,28(Suppl.5):487,Abstract 1364P,2017.
Pattanapanyasat et al.,”Febrile temperature but not proinflammatory cytokines promotes phosphatidylserine expression on Plasmodium falciparum malaria−infected red blood cells during parasite maturation”,Cytometry,Part A,77A:515−523,2010.
Petersen & Krogfelt,”Helicobacter pylori:an invading microorganism?A review”,FEMS Immunol.Med.Microbiol.,36:117−126,2003.
Polz,Wurm,Kostner,”Investigations on β2−glycoprotein−I in the rat − isolation from serum and demonstration in lipoprotein density fractions”,Int.J.Biochem.,11:265−270,1980.
Prakasam and Thiagarajan,”β2−Glycoprotein I − A Protein in Search of Function”,In Antiphospholipid Syndrome,Ed.Alena Bulikova,ISBN:978−953−51−0526−8,InTech,Available from:http://www.intechopen.com/books/antiphospholipid−syndrome/beta2−glycoprotein−i−in−search−of−function,2012.
Ran et al.,”Antitumor effects of a monoclonal antibody that binds anionic phospholipids on the surface of tumor blood vessels in mice”,Clin.Cancer Res.,11:1551−1562,2005.
Sabatier et al.,”Type 1 And Type 2 Diabetic Patients Display Different Patterns of Cellular Microparticles”,Diabetes,51:2840−2845,2002.
Saha et al.,”An Orthotopic Lung Tumor Model for Image−Guided Microirradiation in Rats”,Radiat.Res.,174:62−71,2010.
Schubert−Unkmeir et al.,”Gene Expression Pattern in Human Brain Endothelial Cells in Response to Neisseria meningitidis”,Infect.Immun.,75(2):899−914,2007.
Seabra et al.,”Toxoplasma gondii exposes phosphatidylserine inducing a TGF−beta1 autocrine effect orchestrating macrophage evasion”,Biochem.Biophys.Res.Comm.,324(2):744−752,2004.
Sheng et al.,”Impaired Thrombin Generation in β2−Glycoprotein I Null Mice”,J.Biol.Chem.,276(17):13817−13821,2011.
Sims et al.,”Neural stem cell−derived exosomes mediate viral entry”,Int.J.Nanomedicine,9:4893−4897,2014.
Soares et al.,”Targeting inside−out phosphatidylserine as a therapeutic strategy for viral diseases”,Nature Medicine,14(12):1357−1362,2008.
Souza et al.,”Microparticles:markers and mediators of sepsis−induced microvascular dysfunction,immunosuppression,and AKI”,Kidney Int.,doi:10.1038/ki.2015.26,2015.
Stafford & Thorpe,”Increased Exposure of Phosphatidylethanolamine on the Surface of Tumor Vascular Endothelium”,Neoplasia,13:299−308,2011.
Stafford et al.,”Highly Specific PET Imaging of Prostate Tumors in Mice with an Iodine−124−Labeled Antibody Fragment that Targets Phosphatidylserine”,PLoS ONE,8(12):e84864,2013.
Steinkasserer et al.,”Complete nucleotide and deduced amino acid sequence of human β2−glycoprotein I”,Biochem.J.,277:387−391,1991.
Takeuchi et al.,”Coagulation and fibrinolytic activities in 2 siblings with β2−glycoprotein I deficiency”,Blood,96:1594−1595,2000.
米国特許出願第US2016/0009805号。
米国特許第5,019,368号
米国特許第5,882,626号
米国特許第7,247,303号
米国特許第7,422,738号
米国特許第7,455,833号
米国特許第7,572,448号
米国特許第7,611,704号
米国特許第7,790,860号
米国特許第7,906,115号
米国特許第8,486,391号
米国特許第8,956,616号
van der Kleij et al.,”A Novel Host−Parasite Lipid Cross−talk:schistosomal lyso−phosphatidylserine activates toll−like receptor 2 and affects immune polarization”,J.Biol.Chem.,277(50):48122−48129,2002.
Walker et al.,”Cytomegalovirus−infected human endothelial cells can stimulate allogeneic CD4+ memory T cells by releasing antigenic exosomes”’J.Immunol.,182(3):1548−1559,2009.
Wanderley et al.,”Cooperation between apoptotic and viable metacyclics enhances the pathogenesis of leishmaniasis”,PLoS One,4(5):e5733,2009.
Wanderley et al.,”Phosphatidylserine exposure on the surface of Leishmania amazonensis amastigotes modulates in vivo infection and dendritic cell function”,Parasite Immunology,35:109−119,2013.
Wandler et al.,”A Greasy Foothold for Helicobacter pylori”,Cell Host Microbe,7:338−339,2010.
Weihua et al.,”Apoptotic Cells Initiate Endothelial Cell Sprouting via Electrostatic Signaling”,Cancer Res.,65(24):11529−11535,2005.
Willems,Janssen,Pelsers et al.,”Role of divalency in the high−affinity binding of anticardiolipin antibody−β2−glycoprotein I complexes to lipid membranes”,Biochemistry,35:13833−13842,1996.
Wurm,”β2−glycoprotein−I(apolipoprotein H) interactions with phospholipid vesicles”,Int.J.Biochem.,16:511−15,1984.
Yin et al.,”Phosphatidylserine−targeting antibody induces M1 macrophage polarization and promotes myeloid−derived suppressor cell differentiation”,Cancer Immunol.Res.,1(4):256−268,2013.
Yuyama et al.,”Sphingolipid−modulated Exosome Secretion Promotes Clearance of Amyloid−β by Microglia”,J.Biol.Chem.,287(14):10977−10989,2012.
Zandbergen et al.,”Leishmania disease development depends on the presence of apoptotic promastigotes in the virulent inoculum”,Proc.Natl.Acad.Sci.U S A.,103(37):13837−13842,2006.
Zhang et al.,”Phosphatidylserine−Targeted Bimodal Liposomal Nanoparticles for in vivo Imaging of Breast Cancer in Mice”,J.Control.Release,183:114−123,2014.
Zhao et al.,”Near−Infrared Optical Imaging of Exposed Phosphatidylserine in a Mouse Glioma Model”,Translational Oncology,4:355−364,2011.
Zhou et al.,”Phosphatidylserine−Targeted Molecular Imaging of Tumor Vasculature by Magnetic Resonance Imaging”,J.Biomed.Nanotechnol.,10:1−10,2014.