特表2019-537654(P2019-537654A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニーの特許一覧

特表2019-537654エンジンの燃焼を制御するための燃料組成物
<>
  • 特表2019537654-エンジンの燃焼を制御するための燃料組成物 図000008
  • 特表2019537654-エンジンの燃焼を制御するための燃料組成物 図000009
  • 特表2019537654-エンジンの燃焼を制御するための燃料組成物 図000010
  • 特表2019537654-エンジンの燃焼を制御するための燃料組成物 図000011
  • 特表2019537654-エンジンの燃焼を制御するための燃料組成物 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-537654(P2019-537654A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】エンジンの燃焼を制御するための燃料組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/06 20060101AFI20191129BHJP
【FI】
   C10L1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-525797(P2019-525797)
(86)(22)【出願日】2017年10月20日
(85)【翻訳文提出日】2019年7月11日
(86)【国際出願番号】US2017057612
(87)【国際公開番号】WO2018093530
(87)【国際公開日】20180524
(31)【優先権主張番号】62/422,085
(32)【優先日】2016年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ダブリュー・ボーランド
(72)【発明者】
【氏名】ジーシェン・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・サルビ
(72)【発明者】
【氏名】シャメル・マーチャント
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・ダブリュー・クロウリー
(57)【要約】
火花点火エンジンおよび/または圧縮点火エンジンにおいて改善された燃焼特性(組成物のリサーチオクタン価に対して改善された燃焼特性)を有し得るナフサ沸点範囲組成物を提供する。この改善された燃焼特性は、直鎖プロピル基(R−CH−CH−CH−R)を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計量を制御することによって達成され得る。このような直鎖プロピル基に関して、Rは、任意の都合のよいC基に相当することができ、これは、パラフィンまたはイソパラフィンにおいて現れ得るものである。Rは、水素原子に相当することができ、直鎖プロピル基を、末端n−プロピル基にするものである;または、Rは、任意の都合のよいC基に相当することができ、パラフィンまたはイソパラフィンにおいて現れ得るものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約80〜約110のリサーチオクタン価(RON)を有するナフサ沸点範囲燃料組成物であって、n−パラフィンおよびイソパラフィンを含み、n−パラフィンおよびイソパラフィンは、直鎖プロピル基を含み、n−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%が、燃料組成物の全重量に基づいて、(−1.273×RON+151.8)よりも大きい、燃料組成物。
【請求項2】
少なくとも約10℃のT5蒸留点および約233℃以下のT95蒸留点を有する、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項3】
約82〜約98のRONを有する、請求項1または2に記載の燃料組成物。
【請求項4】
約88〜約101のRONを有する、請求項1または2に記載の燃料組成物。
【請求項5】
燃料組成物の感度(RON−MON)が、約5.0〜約18.0である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料組成物。
【請求項6】
ナフサ沸点範囲組成物の製造方法であって、
第1のナフサ沸点範囲組成物に改質剤組成物を添加することによって、改質ナフサ沸点範囲組成物を形成することを含み、第1のナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約75のリサーチオクタン価(RON)を有し、改質ナフサ沸点範囲組成物は、約75〜約110のRONを有し、
改質ナフサ沸点範囲組成物の点火遅れは、第1のナフサ沸点範囲組成物の点火遅れよりも、少なくとも1.0ミリ秒大きく、
第1のナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、第1のナフサ沸点範囲組成物の全重量に基づいて、(−1.273×RON+147.8)未満であり、
改質ナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、改質ナフサ沸点範囲組成物の全重量に基づいて、(−1.273×RON+147.8)よりも大きい、
方法。
【請求項7】
改質ナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、(−1.273×RON+151.8)よりも大きい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
改質ナフサ沸点範囲組成物のRONは、第1のナフサ沸点範囲組成物のRONと比べて、5.0以下異なる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
第1のナフサ沸点範囲組成物は、約82〜約98のRONを有する;または
改質ナフサ沸点範囲組成物は、約82〜約98のRONを有する;または
その組合せ
である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第1のナフサ沸点範囲組成物は、約88〜約101のRONを有する;または
改質ナフサ沸点範囲組成物は、約88〜約101のRONを有する;または
その組合せ
である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
改質ナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約5重量%のナフテンを含む;または
改質ナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約5重量%の芳香族を含む;または
その組合せ
である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
第1のナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約10℃のT5蒸留点および約233℃以下のT95蒸留点を有する、または
改質ナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約10℃のT5蒸留点および約233℃以下のT95蒸留点を有する、または
その組合せ
である、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
点火遅れは、ASTM D7668に記載の方法に従って、596℃での一定体積燃焼の間に形成されるdP/dt曲線における初期局所最大として定義される、請求項6〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項6〜13のいずれか1項に従って製造される、改質ナフサ沸点範囲組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
改善された点火特性を有する燃料組成物、およびそのような燃料組成物の製造方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
燃焼の開始が燃焼室中への火花(又はスパーク)の導入によって実質的に制御されるように、十分な点火遅れ(又はイグニッション・ディレイ(ignition delay))をもたらす燃料を用いて作動させた場合、火花点火エンジン(又はスパーク・イグニッション・エンジン(spark ignition engine))は改善された(又は向上した)作動を有することが可能である。エンジンに対して十分な点火遅れを有さない燃料は、エンジン内での「ノッキング(knocking)」を引き起こす可能性があり、その場合、エンジン内の燃焼の少なくとも一部は、燃焼室中への火花の導入に依存しない。
【0003】
従来から、火花点火エンジン(又はスパーク・イグニッション・エンジン)用の燃料は、オクタン価(又はオクタン・レーティング(octane rating))の使用に基づいて特徴づけられている(又はキャラクテリゼーション)。燃料のオクタン価を特徴づけるための一般的な方法は、組成物のリサーチオクタン価(又はリサーチ・オクタン・ナンバー(Research Octane Number))(RON)およびモーターオクタン価(又はモーター・オクタン・ナンバー(Motor Octane Number))(MON)の平均(RON+MON/2)を使用することである。この種類のオクタン価は、従来の火花点火エンジンを作動させる際の「ノッキング」挙動の可能性を決定するために使用することが可能である。
【0004】
火花点火エンジン用燃料の別の種類の特徴(又はキャラクテリゼーション)の決定は、(RON−MON)として定義される燃料の感度(又はセンシティビティ(sensitivity))である。所与のRON値においてより長い点火遅れ(又はイグニッション・ディレイ)を有する燃料を選択するためのいくつかの従来方法は、より低い感度の値を有する燃料の選択を伴うものであった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
種々の態様において、ナフサ沸点範囲燃料組成物が提供される。当該燃料組成物は、少なくとも約80のリサーチオクタン価(RON)を有することが可能であり、そして、ナフサ沸点範囲燃料組成物の全重量に基づいて、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンのある(特定の)合計重量%(又は総重量%(combined wt%))を含むことが可能である。いくつかの態様において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、(−1.273×RON+135.6)未満であることが可能である。他の態様において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、(−1.273×RON+151.8)よりも大きいことが可能である。任意選択的に、燃料組成物は、少なくとも約10℃のT5蒸留点および約233℃以下のT95蒸留点を有する。任意選択的に、燃料組成物は、約80〜約99、または約75〜約105、または約88〜約101のRONを有することが可能である。任意選択的に、燃料組成物は、約5.0〜約12.0、または約8.0〜約18.0、または約5.0〜約10.0の感度(又はセンシティビティ(sensitivity))(RON−MON)を有することが可能である。
【0006】
種々の態様において、ナフサ沸点範囲組成物の製造方法が提供される。当該方法は、第1のナフサ沸点範囲組成物に改質剤組成物を添加することによって、改質ナフサ沸点範囲組成物を形成することを含むことが可能であり、第1のナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約80のリサーチオクタン価(RON)を有する。任意選択的に、改質ナフサ沸点範囲組成物は、第1のナフサ沸点範囲組成物のRONと比べて、5.0以下(または3.0以下、または1.0以下)(だけ)異なるRONを有することが可能である。任意選択的に、改質ナフサ沸点範囲組成物の点火遅れは、第1のナフサ沸点範囲組成物の点火遅れよりも、少なくとも1.0ミリ秒(だけ)大きい(又は長い)ことが可能である。いくつかの態様において、第1のナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、(−1.273×RON+139.6)よりも大きいことが可能であり、そして、改質ナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、(−1.273×RON+139.6)未満、または(−1.273×RON+135.6)未満であることが可能である。他の態様において、第1のナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、(−1.273×RON+147.8)未満であることが可能であり、そして、改質ナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、(−1.273×RON+147.8)よりも大きいことが可能であるか、または(−1.273×RON+151.8)よりも大きいことが可能である。任意選択的に、第1のナフサ沸点範囲組成物は、約80〜約99、または約82〜約98、または約84〜約96のRONを有することが可能である。さらに、または代わりに、改質ナフサ沸点範囲組成物は、任意選択的に、約75〜約105、または約88〜約101のRONを有することが可能である。任意選択的に、第1のナフサ沸点範囲組成物および/または改質ナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約10℃のT5蒸留点および約233℃以下のT95蒸留点、または少なくとも約15℃のT5および約215℃以下のT95、または少なくとも約15℃のT5および約204℃以下のT95を有することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】イソオクタンに関して、ASTM D7668に従って点火遅れを決定するための圧力対時間曲線を示す。
図2】イソオクタンに関して、初期放熱に基づいて点火遅れを決定するためのdP/dt曲線を示す。
図3】種々の燃料組成物に関して、リサーチオクタン価と、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量との間の相互関係を示す。
図4】種々の燃料組成物に関して、リサーチオクタン価と、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量との間の相互関係を示す。
図5】種々の燃料組成物に関して、リサーチオクタン価と、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量との間の相互関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(詳細な説明)
(概要)
いくつかの態様において、火花点火エンジンにおいて改善された(又は向上した)燃焼特性(又はコンバスション・プロパティ(combustion properties))(組成物のリサーチオクタン価に対して改善された燃焼特性)を有し得るナフサ沸点範囲組成物(又はナフサ・ボイリング・レンジ・コンポジション(naphtha boiling range composition))を提供する。他の態様において、圧縮点火エンジン(又はコンプレッション・イグニッション・エンジン(compression ignition engine))において、改善された(又は向上した)燃焼特性(組成物のリサーチオクタン価に対して改善された燃焼特性)を有し得るナフサ沸点範囲組成物を提供する。両種のナフサ沸点範囲組成物に関する改善された(又は向上した)燃焼特性は、直鎖プロピル基(R−CH−CH−CH−R)を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計量(又は総合計量(total combined amount))を制御(又は調整又は調節又はコントロール(control))することによって達成され得る。このような直鎖プロピル基に関して、Rは、任意の都合のよいC基に相当(又は対応)することができ、これは、パラフィンまたはイソパラフィンにおいて現れ(存在し)得るものである。Rは、水素原子に相当(又は対応)することができ、これは、直鎖プロピル基を末端n−プロピル基にするものである;または、Rは、任意の都合のよいC基に相当(又は対応)することができ、これは、パラフィンまたはイソパラフィンにおいて現れ(存在し)得るものである。
【0009】
組成物のオクタン価を特徴づけるための一般的な方法は、組成物のリサーチオクタン価(Research Octane Number)(RON)およびモーターオクタン価(Motor Octane Number)(MON)の平均を使用することである。この種類のオクタン価は、従来の火花点火エンジンの作動時の「ノッキング」挙動の可能性を決定するために使用することができる。本明細書および以下の請求の範囲において、オクタン価は、(RON+MON)/2として定義される。ここで、RONはリサーチオクタン価であり、かつMONはモーターオクタン価である。リサーチオクタン価(Research Octane Number)(RON)は、ASTM D2699に従って決定される。モーターオクタン価(Motor Octane Number)(MON)は、ASTM D2700に従って決定される。
【0010】
ナフサ沸点範囲組成物のこの種類の特徴決定は、従来の火花点火エンジンのためには適切であるが、所与のリサーチオクタン価において改善されたノック抵抗を有するナフサ沸点範囲燃料組成物を識別するためには、別の特徴決定法が有価となる可能性があることが予想外に見出された。特に、別の特徴決定法は、組成物のリサーチオクタン価に対して予想外に長い点火遅れを有するナフサ沸点範囲燃料組成物の識別を可能にする。そのような増加したノック抵抗を有するナフサ沸点範囲組成物は、例えば、典型的な火花点火エンジンよりも高温および/または高圧において作動させる火花点火エンジンにおける使用に有利となる可能性がある。ターボチャージ火花点火エンジンおよび小型化火花点火エンジンは、従来の火花点火エンジンより高温および/または高圧において作動させることが可能である火花点火エンジンの例である。さらに、別の特徴決定法は、リサーチオクタン価に対して減少された、または最小化された点火遅れを有するナフサ沸点範囲燃料組成物を識別するために使用することも可能である。そのようなナフサ沸点範囲組成物は、圧縮点火に基づいて作動させる先進的燃焼エンジンにおける使用に有利となる可能性がある。先進的燃焼エンジンの例としては、限定されないが、予混合圧縮点火(homogenous charge compression ignition)(HCCI)エンジンおよび予混合気圧縮点火(pre−mixed charge compression ignition)(PCCI)エンジンが挙げられる。
【0011】
内部燃焼エンジンは、典型的に、2種のエンジンの1種に相当するものとして特徴決定することが可能である。火花点火内部燃焼エンジンにおいて、燃料および空気の混合物は、圧縮のみに基づく空気/燃料混合物の点火または燃焼を引き起こすことなく圧縮される。次いで、火花は、所望のタイミングにおいて燃焼を開始するために、空気燃料混合物中に導入される。火花点火内部燃焼エンジンにおいて使用するための燃料は、しばしば、オクタン価に基づいて特徴決定される。オクタン価は、圧縮のみに基づいた燃焼に抵抗する燃料の能力の基準である。オクタン価は、所与の燃料による使用に対して、いずれの種類のエンジンタイミングが適切であり得るかを示すため、火花点火エンジンに関する有価な情報である。
【0012】
典型的な他の種類のエンジンは、圧縮点火エンジンである。圧縮点火において、空気および燃料の混合物は、圧縮されたシリンダー中に供給される。十分量の圧縮が生じると、空気および燃料の混合物は燃焼する。このような燃焼は、空気/燃料混合物を点火するために別個の火花を導入することを必要とせずに生じる。圧縮点火エンジン用の燃料は、セタン価に基づいて特徴決定されることが可能である。セタン価は、燃料がいかに迅速に点火するかを示す基準である。ほとんどの従来の圧縮点火エンジンは、燃料として灯油および/またはディーゼル沸点範囲組成物を使用する。しかしながら、HCCIおよびPCCIエンジンなどの、いくつかの圧縮点火エンジンでは、燃料としてナフサ沸点範囲組成物を使用することが可能である。
【0013】
オクタン価(又はオクタン・レーティング(octane rating))(RONなど)や、セタン価(又はセタン・レーティング(cetane rating))またはセタン価(又はセタン・ナンバー(cetane number))は、両方とも燃料組成物の点火遅れのいくつかの指標を提供することが可能な値である。オクタン価は、典型的に、点火遅れの増加が望ましい火花点火エンジンに関して使用される。燃焼プロセスのピークがエンジンのストロークサイクルに対して望ましいか、または最適である瞬間に生じない場合、火花点火において「ノッキング」が生じる。典型的に、これは、火花および/または火花によって開始される燃焼前線に遭遇する前の一部の燃料/空気混合物燃焼によるものである可能性がある。増加した点火遅れを有する燃料組成物は、火花点火エンジンにおいて使用される場合、増加したノック抵抗を有する燃料組成物に相当することが可能である。セタン価は、典型的に、減少した点火遅れが有利となる可能性のある圧縮点火エンジンに使用される。圧縮点火において、温度および圧力の十分な組合せが圧縮ストロークの間、燃料室中に存在する場合、燃料/空気混合物は燃焼する。減少した点火遅れを有する燃料組成物は、温度およびと圧力のそれほど重度ではない組合せの下で点火することが可能である。
【0014】
RONは、典型的に、ナフサ沸点範囲燃料組成物を特徴決定するために使用されるが、RONは、燃料組成物の点火遅れと部分的にのみ関連づけられることが発見されている。RONおよびMONの平均も、部分的にのみ関連づけられる。結果として、燃料のノック抵抗および/または点火遅れは、RONに基づいて十分に特徴決定されない。さらに予想外であることに、点火遅れとの改善された関連性は、直鎖プロピル基を有する組成物中のn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量パーセントと組み合わせて、RONを使用することに基づいて提供されることが可能であることが発見された。
【0015】
火花点火エンジンにおける使用が意図された燃料に関して、予想外であることに、方程式(1)を満たす燃料組成物が、燃料組成物のRONに対して増加したノック抵抗(および/または増加した点火遅れ)を提供することが可能であることが発見された。
(1)直鎖プロピル基を有する(n−パラフィン+イソパラフィン)の重量%<−1.273×RON+135.6
【0016】
方程式(1)における重量%は、(ナフサ沸点範囲)燃料組成物の全重量に基づくものである。いくつかの態様において、方程式(1)における関係は、いずれの都合のよいRONおよび/またはいずれの都合のよい(RON+MON)/2の値を有するナフサ沸点範囲組成物/燃料組成物に関しても満たされることが可能である。特に、方程式(1)における関係は、約80〜約105、または約80〜約101、または約80〜99、または約88〜約101のRONを有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。他の態様において、方程式(1)における関係は、101以下、または100以下、または99以下、または98以下、または97以下、または96以下、または95以下、および/または少なくとも80、または少なくとも82、または少なくとも84、または少なくとも85、または少なくとも86、または少なくとも87、または少なくとも88のRONを有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。特に、方程式(1)における関係は、約88〜約101、または約80〜約101、または約82〜約100、または約84〜約98のRONを有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。さらに、あるいは代わりに、方程式(1)における関係は、99以下、または98以下、または97以下、または96以下、または95以下、および/または少なくとも80、または少なくとも82、または少なくとも84、または少なくとも85、または少なくとも86、または少なくとも87、または少なくとも88の(RON+MON)/2の値を有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。特に、方程式(1)における関係は、約80〜約99、または約82〜約98、または約84〜約96の(RON+MON)/2の値を有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。
【0017】
いくつかの別の態様において、火花点火エンジン用のナフサ沸点範囲燃料組成物に関して、より詳細な規格を提供することが可能である。そのような別の態様において、(ナフサ沸点範囲組成物/燃料組成物の全重量に対する重量%に基づく)一連の不等式は、組成物のRON値次第で使用可能である。一連の不等式は表1に明示される。この一連の不等式によって定義される形状は図4に示される。表1によって明示される形状は、一般に、RONが増加すると、直鎖プロピル基を有するn−パラフィンおよびイソパラフィンのより低い重量%が導かれるが、97.9〜99.5のRON値に関して、重量%は、RONが増加すると一時的に増加することに留意されたい。
【0018】
【表1】
【0019】
圧縮点火エンジンにおける使用が意図された燃料に関して、予想外であることに、方程式(2)を満たす燃料組成物が、燃料組成物のRONに対して減少した点火遅れを提供することが可能であることが発見された。
(2)直鎖プロピル基を有する(n−パラフィン+イソパラフィン)の重量%>−1.273×RON+151.8
【0020】
方程式(2)において、重量%は、ナフサ沸点範囲組成物/燃料組成物の全重量に基づくものである。いくつかの態様において、方程式(2)における関係は、いずれの都合のよいRONおよび/またはいずれの都合のよい(RON+MON)/2の値を有する燃料組成物に関しても満たされることが可能である。特に、方程式(2)における関係は、約75〜約110、または約78〜約105、または約80〜100、または約88〜約101のRONを有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。他の態様において、方程式(2)における関係は、99以下、または98以下、または97以下、または96以下、または95以下、および/または少なくとも75、または少なくとも77、または少なくとも78、または少なくとも80、または少なくとも82、または少なくとも84、または少なくとも85、または少なくとも86、または少なくとも87、または少なくとも88のRONを有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。特に、方程式(2)における関係は、約80〜約99、または約78〜約98、または約75〜約96のRONを有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。さらに、あるいは代わりに、方程式(2)における関係は、99以下、または98以下、または97以下、または96以下、または95以下、および/または少なくとも75、または少なくとも77、または少なくとも78、または少なくとも80、または少なくとも82、または少なくとも84、または少なくとも85、または少なくとも86、または少なくとも87、または少なくとも88の(RON+MON)/2の値を有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。特に、方程式(2)における関係は、約80〜約99、または約78〜約98、または約75〜約96の(RON+MON)/2の値を有する燃料組成物に関して満たされることが可能である。
【0021】
いくつかの別の態様において、圧縮点火エンジン用のナフサ沸点範囲燃料組成物に関して、より詳細な規格を提供することが可能である。そのような別の態様において、(ナフサ沸点範囲組成物/燃料組成物の全重量に対する重量%に基づく)一連の不等式は、組成物のRON値次第で使用可能である。一連の不等式は表2に明示される。この一連の不等式によって定義される形状は図4に示される。表2によって明示される形状は、一般に、RONが増加すると、直鎖プロピル基を有するn−パラフィンおよびイソパラフィンのより低い重量%が導かれるが、88.3〜89.4のRON値に関して、重量%は、RONが増加すると一時的に増加することに留意されたい。
【0022】
【表2】
【0023】
また、燃料組成物の感度は、燃料組成物のMONとRONとの間の差に基づいて定義される。いくつかの態様において、燃料組成物の感度は、約18.0未満、または約15.0未満、または約12.0未満、または約10.0未満、または約9.0未満であることが可能である。他の態様において、感度は、少なくとも約2.0、または少なくとも約5.0、または少なくとも約6.0、または少なくとも約7.0、または少なくとも約8.0であることが可能である。特に、感度は、約5.0〜約15.0、または約8.0〜約18.0、または約5.0〜約12.0、または約5.0〜約10.0であることが可能である。
【0024】
任意選択的に、方程式(1)または方程式(2)のいずれかを満たす燃料組成物は、少なくとも5重量%のナフテン、または少なくとも10重量%のナフテンを含むことが可能であるか;あるいは方程式(1)または方程式(2)のいずれかを満たす燃料組成物は、少なくとも5重量%の芳香族、または少なくとも10重量%の芳香族を含むことが可能であるか;あるいはその組合せである。本明細書および以下の請求の範囲において、ナフテンおよび/または芳香族の量は、ASTM D5443に従って決定することができる。
【0025】
本明細書において、ナフサ沸点範囲は、約50°F(約10℃、ペンタン異性体の最低沸点にほぼ相当する)〜450°F(約233℃)として定義される。実務的な理由のため、炭化水素のような留分の分留(または他の沸点ベースの分離)の間、本明細書に記載の方法に従って形成された燃料留分は、上記値に相当する初期/最終沸点を有することとは対照的に、上記値に相当するT5またはT95蒸留点を有し得ることに留意すべきである。ナフサ沸点範囲未満の沸点を有する化合物(C4−)をライトエンドと呼ぶことができる。いくつかの態様において、ナフサ沸点範囲燃料組成物は、約419°F(約215℃)、または約400°F(約204℃)未満、または約380°F(約193℃)未満、または約360°F(約182℃)未満の最終沸点および/またはT95蒸留点などのより低い最終沸点および/またはT95蒸留点を有することが可能である。任意選択的に、ナフサ沸点範囲燃料組成物は、少なくとも約15℃、または少なくとも約20℃、または少なくとも約30℃のT5蒸留点などのより高いT5蒸留点を有することが可能である。特に、ナフサ沸点範囲燃料組成物は、少なくとも約10℃のT5および約233℃未満のT95;または少なくとも約15℃のT5および約215℃未満のT95;または少なくとも約15℃のT5および約204℃未満のT95に相当するT5〜T95蒸留点を有することが可能である。本明細書および以下の請求の範囲において、沸点(分留重量沸点を含む)を決定するためにASTM D2887が使用されるべきである。
【0026】
以下の請求の範囲において、他に指定されない限り、全ての重量%値は、ナフサ沸点範囲組成物/燃料組成物の全重量に対する重量%に相当する。
【0027】
点火遅れの決定:オクタン価および組成分析
従来から、燃料の点火遅れおよび/またはノッキング抵抗は、リサーチオクタン価(RON)、またはリサーチオクタン価およびモーターオクタン価(MON)の平均などの燃料のオクタン価と関連づけられると考えられている。予想外であることに、点火遅れに関する優秀な相関特性は、RONと組成分析とを、特に、直鎖プロピル基を有する組成物中の化合物の重量%とを組み合わせることによって提供することができることが決定された。
【0028】
本明細書において、点火遅れは、Houston,TexasのPAC,LPから入手可能であるCetane ID 510一定体積燃焼室を使用して決定された。簡単に、潜在的な燃料組成物の試験の間、規定圧力において燃焼室に空気を充てんすることができる。次いで、燃料室中の空気を、試験のための所望の設定点温度まで加熱することができる。燃料が燃料室中に導入されるまで、燃料室を実質的に一定温度/一定圧力に保持することができる。次いで、注入のための所望の燃料量に相当する時間量などの、あらかじめ決められた時間量で、燃料を燃料室中に注入することができる。燃料の注入後、分析器によって、時間の関数として圧力を測定することができる。注入の間に燃焼が開始することは可能であるが、典型的に、燃料の注入完了後まで燃焼は開始しない。
【0029】
本明細書において、596℃〜640℃において種々の試料に対して点火遅れが決定された。通常、点火遅れは、ASTM D7668の方法に基づいて算出することができる。しかしながら、ASTM D7668の点火遅れは、圧力が、注入時の圧力より0.02Mpa高くなるまで増加するのに必要な時間に基づく点火遅れを決定するためのものである。この種類の点火遅れは、ディーゼルエンジン中の燃料特性の特徴決定に関する。火花点火エンジンに関して、より適切な基準は、dP/dt曲線における初期最大に達することに関する遅れに相当する、初期放熱点火遅れであることが可能である。以下の請求の範囲において、「点火遅れ」という記載は、dP/dt曲線における初期局所最大によって決定される初期放熱に対するこのような点火遅れを意味する。dP/dt曲線の所望の特徴が局所最大であるため、dP/dt曲線と関連する単位は、いずれかの都合のよい単位であることが可能である。都合のよい単位は、MPaでの圧力およびミリ秒での時間を使用することであることが可能である。
【0030】
ASTM D7668における点火遅れと、本明細書で使用された、測定された点火遅れとの間の差をさらに説明するために、図1に、Cetane ID 510を使用して決定されたイソオクタンの典型的な圧力対時間曲線の例を示す。図1中の曲線は、約600℃の温度において生じ、そして600℃におけるイソオクタンの圧力対時間曲線を表す。図1において圧力がバールで示されることに留意されたいが、1バール=0.1MPaであることは理解される。ASTM D7668の方法において、点火遅れは、圧力が、注入圧力より0.02Mpa(0.2バール)高くなるまで増加するのに必要な時間として算出されるであろう。図1に示されるように、圧力が、注入圧力より0.02Mpa高くなるまで増加する前に、圧力のわずかな増加がしばしば起こる。ASTM D7668の方法では、600℃においてイソオクタンに関して算出された点火遅れは、15回の注入実行における平均点火遅れに基づき、9.18ミリ秒であった。
【0031】
ASTM D7668の方法とは対照的に、本明細書に報告される点火遅れは、圧力対時間の導関数における初期最大を表す初期放熱に関する点火遅れに相当し、これは、dP/dt曲線の局所最大と呼ぶこともできる。図2は、15回のイソオクタン注入実行に関する平均dP/dt曲線の一部を示す。図1に関して、15回のイソオクタン注入実行に関する圧力はバールで測定され、そして時間はミリ秒で測定された。図2に示された曲線は、0〜25ミリ秒の時間に相当する。図2に基づき、初期放熱に関する点火遅れは9.06ミリ秒である。点火遅れを決定するための2つの別個の方法によって、イソオクタンに関しては同様の値が提供されるが、ナフサ沸点範囲試料のいくつかの種類に関しては、点火遅れを決定するための別個の方法によって、有意に異なる値が導かれる可能性がある。
【0032】
表3に、種々のナフサ沸点範囲組成物に関する様々な組成および特徴データを示す。表3には、オクタン価データ、ならびにそれぞれの組成物中の直鎖プロピル基を有する化合物の含有量と関連する組成データが含まれる。それぞれの組成物に関して、表3には、RON、MON、AKI([RON+MON]/2として算出される)、感度(RON−MONとして算出される)、直鎖プロピル基を有するn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量パーセント、ならびに上記の燃焼の間の初期放熱時間を使用する点火遅れの定義に基づく(596℃および640℃における)2つの測定された点火遅れ値が含まれる。表3のC3+濃度値は、表3に列挙されたそれぞれのナフサ沸点範囲組成物において実行された測定に基づいて得られたものである。
【0033】
【表3】
【0034】
表3中の最初の3列は、約90のRONを有する燃料組成物に相当する。表3中の第1列は、10重量%のエタノールを含有するレギュラー無鉛燃料のデータに相当する。(表3中の全ての重量%は、燃料の全重量に対する重量%に相当する。)第2列および第3列は、20重量%〜40重量%のメチルシクロペンタンと組み合わせたレギュラー無鉛燃料の混合物に相当する(すなわち、最終組成物は、80重量%の無鉛/20重量%のメチルシクロペンタン、または60重量%の無鉛/40重量%のメチルシクロペンタンである)。メチルシクロペンタンが約90のRONを有し、かつシクロアルカンである(したがって、直鎖プロピル基を有するn−パラフィンまたはイソパラフィンではない)ことは留意されるべきである。結果として、表3の最初の3列に相当する組成物は、それぞれ、約90のRON値、約81のMON値および約85または86のAKI値を有する。
【0035】
表3中の3つの組成物の第2の群は、10重量%のエタノールを含有するプレミアム無鉛燃料に相当する。レギュラー無鉛組成物と同様に、第1の組成物は、プレミアム無鉛燃料のみに相当し、第2の組成物は、プレミアム無鉛燃料およびメチルシクロペンタンの80重量%:20重量%混合物に相当し、そして第3の組成物は、プレミアム無鉛燃料およびメチルシクロペンタンの60重量%:40重量%混合物に相当する。表3に示されるように、プレミアム無鉛燃料のより高いRON値のため、メチルシクロペンタンの添加によって混合物のRON値が減少する。
【0036】
表3のデータは、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計数をどの程度減少させるかによって、増加した点火遅れを導くことができるのかを示す。組成物のRON値がほぼ一定である表3の最初の3列に関して、メチルシクロペンタンの添加量を増加させることによって、両点火遅れ温度において、増加した点火遅れを有するレギュラー無鉛燃料組成物が得られる。従来のオクタン試験(RON、MONおよび/またはAKI)では、3つの燃料組成物に関して点火遅れは実質的に同様であることが示唆されるが、40重量%のメチルシクロペンタンを含むレギュラー無鉛燃料混合物に関して、点火遅れは、レギュラー無鉛燃料単独の場合と比較して、両点火遅れ温度において少なくとも30%増加している。これは、所与のRONにおいて直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計濃度を制御することによって、ナフサ沸点範囲組成物の点火遅れおよび/またはノック抵抗の改善された制御を提供することができるという発見の予想外の特性を実証する。表3の第2の3列は、類似の結果を示す。特に、プレミアム無鉛燃料へのメチルシクロペンタンの添加が、より低いRON値をもたらすが、メチルシクロペンタンを含む混合物は、予想外により長い点火遅れを有する。従来は、より低いRON値がより低い点火遅れと関連することが予想されていた。
【0037】
改善された火花点火および圧縮点火燃料
上記の表3は、RONと、直鎖プロピル基を有するn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量との組合せを使用することによって、RONおよび/またはMONに基づく予測と比較して、燃料の点火遅れを予測する優れた方法が提供可能であることを実証する。驚くべきことに、従来の火花点火燃料組成物は、RONと、直鎖プロピル基を有する化合物の含有量とに基づき、特性上同様であると特徴決定することができることも決定された。
【0038】
米国における多数の商用の無鉛ガソリン中の直鎖プロピル基(R−CH−CH−CH−R)を含有するn−パラフィンおよびイソパラフィンの分布は、2009年にウェブドメイン「IP.com」において発表された詳細な化学組成から決定された。このデータは、2008年1月〜7月に収集された590種のランダムに選択された無鉛ガソリン試料における組成分析および標準燃料特性からなった。データのサブセットは、石油会社の合弁企業が後援する、Southwest Research Instituteの毎月の燃料品質のガソリン調査からであった。590種のガソリン試料の組成分析の結果は、IPCOM000186445D〜IPCOM000187360DのIP.com発行番号として発表された。平均的な特性および組成のデータ要約は、発行番号IPCOM000186444Dで発表された。データの記載は、発行番号IPCOM000186443Dで発表された。それぞれのガソリン試料に関して、発表されたファイルには、最高610種の個々の化合物を識別する、ASTM D6729−04の100メートルキャピラリー高解像度ガスクロマトグラフィーによる火花点火エンジン中の個々の成分の決定のための標準試験法(Standard Test Method for Determination of Individual Components in Spark Ignition Engine Fuels by 100 Meter Capillary High Resolution Gas Chromatography)からの組成分析が含まれる。識別される個々の化合物に基づき、R−CH−CH−CH−R基を含有するn−パラフィンおよびイソパラフィン化合物が決定され、そして化合物の重量%が合計され、それぞれの燃料中のR−CH−CH−CH−R基を有するn−パラフィンおよびイソパラフィンの全重量%が決定された。次いで、全590種のガソリン試料に関して、R−CH−CH−CH−R基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィン化合物の重量%に対するRONの散布図を作成した。n−パラフィンおよびイソパラフィン中の直鎖プロピル基の合計重量%に対するRONの散布図を図3に示す。590種のガソリン試料は、図3中の小さい点に相当する。図3には、表3に提供された燃料組成物も示されており、これは、正方形で示されている。図3に示されるように、表3の第2列、第3列、第5列および第6列からの組成物は、枠の底縁部より下に位置する。第5列からの組成物も、枠の底縁部に近いことに留意されたい。
【0039】
図3に示される散布図に基づき、驚くべきことに、無鉛燃料組成物が、RONと、末端プロピル基を有するn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%との間の関係に関して互いに非常に類似しているということが発見された。図3に示されるように、全ての無鉛燃料組成物が図3に示される枠の内部に存在する。図3の枠の底部線131は、上記方程式(1)に相当する。図3の枠の底部線131より下に位置する直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量を有する組成物は、予想外であることに、RON値に対して長い点火遅れを有することが可能である。表3の第2列、第3列、第5列および第6列の組成物は、図3の枠の底部線より下に位置する組成物を表す。そのような組成物は、火花点火エンジンでの使用に有利となる可能性がある。同様に、図3の枠の上部線133は、上記方程式(2)に相当する。図3の枠の上部線133より上に位置する直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量を有する組成物は、予想外であることに、RON値に対して短い点火遅れを有することが可能である。そのような組成物は、圧縮点火エンジンでの使用に有利となる可能性がある。
【0040】
方程式(1)および(2)は、図3に示されるように、直鎖プロピル基を有するパラフィンの従来の量を有する燃料組成物を定義するための1つの選択肢を提供する。図4は、そのような燃料組成物を定義するための別の選択肢を提供する。図4において、図3で示される枠に加えて、商用の燃料組成物に対して第2の不規則な境界形状が示される。この第2の不規則な境界形状は、表1(形状の底部部分)および表2(形状の上部部分)に明示された組成範囲に相当する。
【0041】
図3の枠は、ガソリンのランダムな選択からの590種の従来の燃料組成物の全てを含むが、燃料組成物の大多数は、実際に枠の中心付近に位置することに留意すべきである。図5には、図3からのデータ点および枠が示されるが、より小さい枠を画定するための2つの追加的な線が加えられている。追加された底部線171および追加された上部線173は、従来のガソリン組成物の約90%を含む枠を画定する。より小さい枠の底部線171は、方程式(3)に相当し、より小さい枠の上部線173は、方程式(4)に相当する。
(3)直鎖プロピル基を有する(n−パラフィン+イソパラフィン)の重量%<−1.273×RON+139.6
(4)直鎖プロピル基を有する(n−パラフィン+イソパラフィン)の重量%>−1.273×RON+147.8
【0042】
方程式(3)および(4)において、重量%は、(ナフサ沸点範囲)燃料組成物の全重量に基づくものである。方程式(3)は、約80〜約105のRON値に対して使用されることが可能である方程式(1)とは対照的に、約75〜約109、または約80〜約109のRON値に対して使用されることが可能であることに留意すべきである。方程式(4)は、約75〜約110、または約80〜約110、または約75〜約105、または約80〜約105のRON値に対して使用されることが可能であることに留意すべきである。いくつかの態様において、燃料組成物のRONに対して増加した点火遅れを有する燃料組成物は、初期燃料組成物と、組成物の所望のRON値を維持しながら、燃料組成物中の直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量を減少させることが可能である1種またはそれ以上の改質剤組成物とを混合することによって形成することが可能である。直鎖プロピル基を含むパラフィンおよび/またはイソパラフィンの含有量を減少させるために燃料組成に添加される改質剤組成物に含まれることが可能である化合物の例としては、限定されないが、芳香族化合物、シクロアルカン、イソブタン、メチル置換ブタンおよびイソオクタンが含まれる。いくつかの好ましい態様において、改質剤組成物は、初期燃料組成物のRONとは5.0未満、または3.0未満、または1.0未満異なるRON値を有する改質燃料を製造しながらも、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量を減少させることが可能である。いくつかの好ましい態様において、改質剤組成物は、初期燃料組成物のRONとは5.0未満、または3.0未満、または1.0未満異なるRON値を有するブレンド燃料を製造しながらも、初期燃料組成物の点火遅れに対して、少なくとも約1.0ミリ秒、または少なくとも約2.0ミリ秒ほど改質燃料の点火遅れを増加させることが可能である。点火遅れは、本明細書に記載されるように、初期放熱点火遅れ(dP/dt曲線中の局所最大)に基づいて決定することが可能である。いくつかの態様において、結果として生じる改質燃料組成物は、RON値と、方程式(1)を満たす直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%との組合せを有することが可能である。いくつかの態様において、結果として生じる改質燃料組成物は、RON値と、方程式(3)を満たす直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%との組合せを有することが可能である。
【0043】
いくつかの態様において、燃料組成物のRONに対して減少した点火遅れを有する燃料組成物は、初期燃料組成物と、組成物の所望のRON値を維持しながら、燃料組成物中の直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量を減少させることが可能である1種またはそれ以上の改質剤組成物とを混合することによって形成することが可能である。直鎖プロピル基を含むパラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量を増加させるために燃料組成に添加される改質剤組成物に含まれることが可能である化合物の例としては、限定されないが、4個以上の炭素を有するn−パラフィン、および直鎖プロピル基を含むイソパラフィン(例えば、2−メチルペンタン)が含まれる。いくつかの好ましい態様において、改質剤組成物は、初期燃料組成物のRONとは5未満、または3未満、または1未満異なるRON値を有するブレンド燃料を製造しながらも、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計含有量を増加させることが可能である。いくつかの好ましい態様において、改質剤組成物は、初期燃料組成物のRONとは5.0未満、または3.0未満、または1.0未満異なるRON値を有するブレンド燃料を製造しながらも、初期燃料組成物の点火遅れに対して、少なくとも約1.0ミリ秒、または少なくとも約2.0ミリ秒ほどブレンド燃料の点火遅れを減少させることが可能である。点火遅れは、本明細書に記載されるように、初期放熱点火遅れ(dP/dt曲線中の局所最大)に基づいて決定することが可能である。いくつかの態様において、結果として生じる改質燃料組成物は、RON値と、方程式(2)を満たす直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%との組合せを有することが可能である。いくつかの態様において、結果として生じる改質燃料組成物は、RON値と、方程式(4)を満たす直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%との組合せを有することが可能である。
【0044】
追加の例
種々のガソリン試料が開発され、分析され、そしてエンジン試験で試験されて、オクタンおよび組成物に対する点火遅れおよびノック抵抗が決定された。ガソリン試料に関しての詳細を表4に示す。最初の2種の試料は、約10体積%のエタノールを含有するレギュラー無鉛ガソリン(RUL2)および約10体積%のエタノールを含有するプレミアム無鉛ガソリン(PUL2)に相当した。燃料1は、約45体積%のRUL2と、約55体積%の、シクロアルカンおよび燃料1が約10体積%のエタノールを含有するような十分なエタノールの混合物とのブレンドに相当した。燃料2は、表4に示された組成物を達成するための、約50体積%のPUL2と、シクロアルカン、芳香族およびエタノールの混合物とのブレンドに相当した。したがって、燃料1および2は、それぞれ、RUL2またはPUL2に対して直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの減少した重量パーセントを有する組成物に相当した。燃料3は、表4に示された組成物を達成するための、RUL2と、イソパラフィンおよびエタノールの混合物とのブレンドに相当した。イソパラフィンは、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの重量パーセントがRUL2に対して増加するように十分な量の直鎖プロピル基を含んでいた。燃料4は、表4に示された組成物を達成するための、PUL2と、イソパラフィンおよびエタノールの混合物とのブレンドに相当した。イソパラフィンは、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの重量パーセントがPUL2に対して増加するように十分な量の直鎖プロピル基を含んでいた。
【0045】
【表4】
【0046】
表4からのガソリン試料をCetane ID 510(CID)機器において試験し、596℃および640℃における点火遅れを測定した。Ford EcoBoost GTDI 2.0L 4気筒エンジンを使用するエンジン試験においても試料を試験した。エンジンは、ディレクションインジェクション(direction injection)によってターボチャージされた。45℃の空気取入れ口温度で、3000rpmにおいて、全負荷条件において点火火花スイープを行なうことによって、それらのノック抵抗に関して燃料を試験した。空気取入れ口温度を増加させ、ノックに関するエンジン条件をより厳しくさせた。それぞれの燃料に関して、ノック限界火花タイミングは、それぞれの火花タイミングにおけるノックの頻度を測定することによって決定された。適切な燃料特性を有するCID試験およびエンジン試験の結果を表5に要約する。
【0047】
【表5】
【0048】
表5に示されるように、PUL2の11.8°に対してRUL2の9°の点火タイミングアドバンス値によって示されるように、プレミアム無鉛(PUL2)は、レギュラー無鉛(RUL2)よりノック抵抗性であった。PUL2試料は、より高いRON、直鎖プロピル基を含有するn−パラフィンおよびイソパラフィンのより低い重量%、ならびにより長い点火遅れも有した。
【0049】
シクロアルカンおよび/または芳香族の重量パーセントを増加させること(したがって、直鎖プロピル基を含有するn−パラフィンおよびイソパラフィンの重量パーセントを減少させること)による燃料の改質によって、予想外に増加したノック抵抗および/またはより長い点火遅れを有する燃料が得られた。RUL2の改質によって、予想外であることに、PUL2のRONよりも約4長いRONを燃料1が有するにもかかわらず、PUL2に匹敵するノック抵抗を有する燃料1が得られた。燃料1は、本明細書に記載される種々の実施形態による燃料組成物に、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの十分低い合計重量パーセントを有したことに留意されたい。同様に、PUL2の改質によって、予想外であることに、増加したノック抵抗および/またはより長い点火遅れを有するが、PUL2と同様のRONを有する燃料2が得られた。燃料2は、本明細書に記載される種々の実施形態による燃料組成物に相当するように、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの十分低い合計重量パーセントを有したことに留意されたい。
【0050】
直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量パーセントが増加するようにRUL2を改質することによって、燃料3が得られた。燃料1とは対照的に、燃料3を製造するためのRUL2の改質によって、RUL2に匹敵する点火遅れを有するが、より高いノック抵抗を有する組成物が得られた。燃料3を得るための改質によって、なお従来のガソリンの範囲内にある組成物が得られたことに留意されたい。同様に、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量パーセントが増加するようにRUL2を改質することによって(燃料4)、PUL2に匹敵する点火遅れおよび匹敵するノック抵抗を有する組成物が得られた。燃料4も、従来のガソリンの範囲内にある組成物に相当する。
【0051】
追加の実施形態
実施形態1
約80〜約105のリサーチオクタン価(又はリサーチ・オクタン・ナンバー(research ontane number))(RON)を有するナフサ沸点範囲燃料組成物(又はナフサ・ボイリング・レンジ・フューエル・コンポジション(naphtha boiling range fuel composition))であって、n−パラフィンおよびイソパラフィンを含み、n−パラフィンおよびイソパラフィンは、直鎖プロピル基を含み、n−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%が、燃料組成物の全重量に基づいて、(−1.273×RON+135.6)未満である、燃料組成物。
【0052】
実施形態2
約80〜約110のリサーチオクタン価(RON)を有するナフサ沸点範囲燃料組成物であって、n−パラフィンおよびイソパラフィンを含み、n−パラフィンおよびイソパラフィンは、直鎖プロピル基を含み、n−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%が、燃料組成物の全重量に基づいて、(−1.273×RON+151.8)よりも大きい、燃料組成物。
【0053】
実施形態3
少なくとも約10℃のT5蒸留点(T5 distillation point)および約233℃以下のT95蒸留点(T95 distillation point)、または少なくとも約15℃のT5および約215℃以下のT95、または少なくとも約15℃のT5および約204℃以下のT95を有する、上記実施形態のいずれかの燃料組成物。
【0054】
実施形態4
約80〜約99、または約82〜約98、または約84〜約96、または約88〜約101のRONを有する、上記実施形態のいずれかの燃料組成物。
【0055】
実施形態5
燃料組成物の感度(RON−MON)は、約2.0〜約18.0、または約5.0〜約12.0、または約5.0〜約10.0、または約8.0〜約18.0である、上記実施形態のいずれかの燃料組成物。
【0056】
実施形態6
燃料組成物が、
少なくとも約5重量%のナフテン、または少なくとも約10重量%のナフテン(又はナフテン類(naphthenes))を含む;または、
改質ナフサ沸点範囲組成物(又はモディファイド・ナフサ・ボイリング・レンジ・コンポジション(modified naphtha boiling range composition))が、少なくとも約5重量%の芳香族(又は芳香族化合物又はアロマティクス(aromatics))、または少なくとも約10重量%の芳香族を含む;または、
その組合せ
である、上記実施形態のいずれかの燃料組成物。
【0057】
実施形態7
ナフサ沸点範囲組成物の製造方法であって、第1のナフサ沸点範囲組成物に改質剤組成物(又はモディファイヤ・コンポジション(modifier composition))を添加することによって、改質ナフサ沸点範囲組成物(又はモディファイド・ナフサ・ボイリング・レンジ・コンポジション(modified naphtha boiling range composition))を形成(又は調製又は製造)することを含み、第1のナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約80のリサーチオクタン価(RON)を有し、
改質ナフサ沸点範囲組成物の点火遅れ(又はイグニッション・ディレイ(ignition delay))は、第1のナフサ沸点範囲組成物の点火遅れよりも、少なくとも約1.0ミリ秒(または少なくとも約2.0ミリ秒)(だけ)大きく、
第1のナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、第1のナフサ沸点範囲組成物の全重量に基づいて、(−1.273×RON+139.6)よりも大きく、
改質ナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、改質ナフサ沸点範囲組成物の全重量に基づいて、(−1.273×RON+139.6)未満である、
方法。
【0058】
実施形態8
直鎖プロピル基(鎖)を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、(−1.273×RON+135.6)未満であり、
改質ナフサ沸点範囲組成物は、約80〜約105のRONを有する、
実施形態7の方法。
【0059】
実施形態9
ナフサ沸点範囲組成物の製造方法であって、第1のナフサ沸点範囲組成物に改質剤組成物(又はモディファイヤ・コンポジション(modifier composition))を添加することによって、改質ナフサ沸点範囲組成物(又はモディファイド・ナフサ・ボイリング・レンジ・コンポジション(modified naphtha boiling range composition))を形成(又は調製又は製造)することを含み、第1のナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約80のリサーチオクタン価(RON)を有し、
改質ナフサ沸点範囲組成物の点火遅れは、第1のナフサ沸点範囲組成物の点火遅れよりも、少なくとも約1.0ミリ秒(または少なくとも約2.0ミリ秒)(だけ)大きく、
第1のナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、第1のナフサ沸点範囲組成物の全重量に基づいて、(−1.273×RON+147.8)未満であり、
改質ナフサ沸点範囲組成物において、直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、改質ナフサ沸点範囲組成物の全重量に基づいて、(−1.273×RON+147.8)よりも大きい、
方法。
【0060】
実施形態10
直鎖プロピル基を含むn−パラフィンおよびイソパラフィンの合計重量%は、(−1.273×RON+151.8)よりも大きい、実施形態9の方法。
【0061】
実施形態11
改質ナフサ沸点範囲組成物のRONは、第1のナフサ沸点範囲組成物のRONと比べて、5.0以下、または3.0以下、または1.0以下(だけ)異なる、実施形態7〜10のいずれかの方法。
【0062】
実施形態12
第1のナフサ沸点範囲組成物は、
約80〜約99、または約82〜約98、または約84〜約96、または約75〜約105、または約88〜約101のRONを有する;または
改質ナフサ沸点範囲組成物は、約80〜約99、または約82〜約98、または約84〜約96、または約75〜約105、または約88〜約101のRONを有する;または、
その組合せ
である、実施形態7〜11のいずれかの方法。
【0063】
実施形態13
改質ナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約5重量%のナフテン、または少なくとも約10重量%のナフテンを含む;または
改質ナフサ沸点範囲組成物は、少なくとも約5重量%の芳香族、または少なくとも約10重量%の芳香族を含む;または
その組合せ
である、実施形態7〜12のいずれかの方法。
【0064】
実施形態14
第1のナフサ沸点範囲組成物および/または改質ナフサ沸点範囲組成物は、
少なくとも約10℃のT5蒸留点および約233℃以下のT95蒸留点、または
少なくとも約15℃のT5および約215℃以下のT95、または
少なくとも約15℃のT5および約204℃以下のT95
を有する、実施形態7〜13のいずれかの方法。
【0065】
実施形態15
実施形態7〜14のいずれかに従って製造(又は形成)される、改質ナフサ沸点範囲組成物。
【0066】
実施形態16
点火遅れが、ASTM D7668に記載の方法に従って、596℃での一定体積燃焼(又はコンスタント・ボリューム・コンバスション(constant volume combustion))の間に形成される(又は生じる)dP/dt曲線(又はdP/dtカーブ(dP/dt curve))における初期局所最大(又はイニシャル・ローカル・マキシマム(initial local maximum))として規定(又は定義)される、実施形態7〜14のいずれかの方法。
【0067】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙される場合、いずれの下限からいずれの上限までも考慮される。本発明の例示的実施形態が詳細に記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な他の変更が当業者に明らかであり、かつ当業者が容易に変更可能であることは理解されるであろう。したがって、本明細書に添付された請求の範囲は、本明細書に記載された実施例および説明に限定されるように意図されておらず、むしろ請求の範囲は、本発明が関連する当業者によってその等価物として処理されるであろう全ての特徴を含めて、本発明に存在する特許可能な新規性の特徴を含むものとして解釈される。
【0068】
本発明は、多数の実施形態および具体的な実施例を参照することによって上記に記載されている。上記の詳細な説明を考慮して、当業者は多くの変形を考えるであろう。全てのそのような明らかな変形は、添付の請求項の全ての意図された範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】