(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-537685(P2019-537685A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】高い動的密度範囲の熱サイクル・エンジン
(51)【国際特許分類】
F02G 1/053 20060101AFI20191129BHJP
F01B 7/16 20060101ALI20191129BHJP
F01B 11/08 20060101ALI20191129BHJP
F01B 11/04 20060101ALI20191129BHJP
F02G 1/043 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
F02G1/053 A
F01B7/16
F01B11/08
F01B11/04
F02G1/043 A
F02G1/053 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-527145(P2019-527145)
(86)(22)【出願日】2017年11月8日
(85)【翻訳文提出日】2019年7月11日
(86)【国際出願番号】US2017060722
(87)【国際公開番号】WO2018093641
(87)【国際公開日】20180524
(31)【優先権主張番号】62/424,494
(32)【優先日】2016年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519173598
【氏名又は名称】シュミット、ジョシュア、エム.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ジョシュア、エム.
(57)【要約】
複数の閉ループ熱交換器を利用するエンジン。このエンジンは、ピストン・アセンブリの所与のチャンバに対して専用の、第1の熱交換器を用いる。この交換器は、加熱及び冷却の両方をチャンバに提供し、ピストンのストロークにおいてチャンバの容積を変化させるよう構成される。第2の交換器は同様に、ピストンのストロークにおいてチャンバの容積の変化を対応して促進させるために、ピストンの反対側における別のチャンバに加熱及び冷却の両方を提供するよう構成される。この特有の構成によって、一般に作動CO
2流体であるチャンバ内の作動物質が、熱サイクルの実質的な期間中、超臨界状態に効果的に維持できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積を調整するための第1のチャンバを伴う閉液圧ループにおける、第1の熱交換器と、
容積を調整するための第2のチャンバを伴う閉液圧ループにおける、第2の熱交換器と
を備え、各チャンバの容積は他方のチャンバの容積に依存する、熱サイクル・エンジン。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記閉ループを占有する作動物質との表面相互作用を促進するよう管板構成である、請求項1に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項3】
前記第1のチャンバを画定する第1のヘッド部、及び前記第2のチャンバを画定する第2のヘッド部を有するピストンを含む、対向ピストン・アセンブリを更に備える、請求項1に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項4】
前記ピストンは、前記第1及び前記第2のチャンバの容積が変化する際に、非圧縮性作動流体を作動出力まで加圧して循環させるために、前記2つのヘッド部の間に少なくとも1つの中間チャンバを更に備える、請求項3に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項5】
前記ピストン・アセンブリによって液圧的に駆動されるモータを更に備える、請求項3に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項6】
ポンプ、圧縮器、発電機、及び前記モータで駆動される動力源装置、のうちの1つを更に備える、請求項5に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項7】
前記モータと前記ピストン・アセンブリとの間のタイミングを調整するために、前記モータと前記ピストン・アセンブリとの間で液圧的に連結されたマニホールドを更に備える、請求項5に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項8】
前記ピストンが動かないときに、作動流体の流れをモータに提供するため、及び前記ピストンのストロークを補完的に促進するよう圧力を供給するために、前記マニホールドに液圧的に接続されたアキュムレータを更に備える、請求項7に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項9】
前記対向ピストン・アセンブリは、第1の対向ピストン・アセンブリであり、前記エンジンは、前記第1及び前記第2の熱交換器のうちの一方における閉ループ内の別のチャンバを伴う第2のピストン・アセンブリを更に備える、請求項3に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項10】
前記第1及び前記第2のチャンバのうちの一方の容積を増加させるよう、前記第1及び第2の交換器のうちの一方に熱を供給するための、高温流体タンクを更に備える、請求項1に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項11】
前記タンクの流体は、約150°F〜200°Fの水であり、そのため熱は、余熱、地熱、又は太陽熱のうちの1つから利用できる、請求項10に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項12】
前記第1及び前記第2のチャンバのうちの一方の容積を減少させるよう、前記第1及び第2の交換器のうちの一方を冷却するための、低温流体タンクを更に備える、請求項1に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項13】
前記タンクの流体は、室温の水、及び蒸発によって冷却された水のうちの1つである、請求項12に記載の熱サイクル・エンジン。
【請求項14】
エンジンから仕事を得る方法であって、
第1のチャンバの容積を増加させるために、前記第1のチャンバを伴う閉ループにおける第1の熱交換器を加熱することと、
第2のチャンバの容積を減少させるために、前記第2のチャンバを伴う閉ループにおける第2の熱交換器を冷却することと
を含み、前記冷却は前記加熱中に生じ、各チャンバの容積が他方の容積に依存する、方法。
【請求項15】
前記チャンバを画定するピストン・アセンブリ内のピストンを、前記加熱中及び前記冷却中に、前記第1のチャンバから離して前記第2のチャンバに向けて動かすことを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のチャンバ内の圧力を減少させるために、前記第1の熱交換器を冷却することと、
前記第1の熱交換器の前記冷却中に、前記第2のチャンバ内の圧力を増加させるために、前記第2の熱交換器を加熱することと、
前記第1のチャンバの前記冷却中、及び前記第2のチャンバの前記加熱中に、前記ピストンを前記第1のチャンバに向けて、且つ前記第2のチャンバから離すよう動かすことと
を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ピストンの動きを用いてモータに動力を供給することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記チャンバの容積は、前記加熱及び前記冷却の各々の実質的な期間中に、超臨界流体で占有される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
エンジンから動力を得る方法であって、
前記エンジンの少なくとも1つのピストンを、熱力学的に調整された作動物質を含む第1及び第2のチャンバの間で、往復運動させることと、
前記ピストンを、前記第1のチャンバから離し、且つ前記第2のチャンバに向けて動かすために、前記第1のチャンバ内の熱力学的に調整された前記作動物質を加熱することと、
前記ピストンを前記第1のチャンバから離す動きを促進させるために、前記第1のチャンバ内を加熱する間に、前記第2のチャンバ内の熱力学的に調整された前記作動物質を冷却することと、
前記加熱中及び前記冷却中の実質的な期間中に、熱力学的に調整された前記作動物質を、超臨界流体及び過熱ガスのうちの1つとして各チャンバ内に維持することと
を含む、方法。
【請求項20】
前記ピストンが動かないときに作動流体の流れをモータに提供するため、及び前記ピストンのストロークを補完的に促進するよう圧力を供給するために、アキュムレータ及びマニホールドのうちの一方を用いることを更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
数年来、異なる熱力学の原理によって駆動されるエンジンから、仕事又は動力を得るための取り組みが、始められている。例えば、「スターリング」又は「有機ランキン」サイクル(ORC:Organic Rankine Cycle)に依存する機器から電力を生成するための技術が開発されている。残念ながらこれらの技術は、一般に、高温の条件がなければ効果がなく、非効率である。例えば、低い加熱源すなわち水の沸点を下回る加熱源では、ほとんど効果がない。
【0002】
例として、しばしばORCエンジン製造者は、170°F程度の低い入力加熱温度での動作を可能にするシステムを提供する。したがって例えば、より容易に液体からガス状態に変化し得る冷媒が、タービン又はタービンなどの技術がガスの空気圧を変換して生産的な仕事を生成するときに、利用され得る。しかし、一般的に大幅に減少した出力となるため、仕事は非常に経済性が低くなる。これは部分的に、ORCに使用される作動流体の特性、並びに作動流体から仕事を抽出する機械の範囲及び効率機能のためである。
【0003】
低品位熱を使用可能な仕事に変換するための代替の技術も、全体的に非効率又は非生産的である。本明細書で使用する用語「低品位熱」は、平均海面における水の沸点を下回る熱のことである。それに関わらず、これらの技術のほとんどは、有機ランキン熱力学サイクルに基づいており、これらの技術は、液体からガスへ変換させ、サイクル毎に2つの相を再び変化させて戻すことを含む。これらは、「サーマル・ニューマチック熱エンジン」と考えられる。
【0004】
上述のORCエンジンは、低沸点の液体をガス状態に変換し、ガス又はガスと液体との混合物を、タービンなどのデバイスを通して流し、回転運動を生じさせる。上述の非効率性以外に、このようなエンジンは約5000rpm以上の回転速度で動作する。次にガス混合物は冷却されて液体状態に戻され、再利用前に再び相を変化させる。非効率性を除外してもなお、このような速度及び頻繁な相変化は、ジェット・エンジンと同様にかなりの騒音を発生させる。
【0005】
試行された別の技術は、「サーマル・ハイドローリック熱エンジン」として知られている。この技術は、相対的に高い膨張率を有し得る液体に加える熱の使用を含む。しかし実際には、大多数の液体は熱してもほとんど膨張せず、冷却してもほとんど収縮しない。したがって実用において、このようなエンジンは、主に、液体において十分な膨張量、並びに十分に迅速な膨張及び収縮を実現することが困難であることから、商業化の成功を成すことに失敗している。これは、このようなエンジンの経済的な実行可能性を限定する。更に、利用されたとしても、このようなエンジンは、特定の環境の狭い設定における使用にのみ有用である。これは、異なる使用に対する有効な変更という観点から、全体的に融通性がないためである。実際、エンジンが効果的に利用され得る状況においてさえ、広範な試行及び誤差が全体的に必要とされる。これは部分的に、熱の導入並びに除去による液体の膨張及び収縮に主に依存することに関する、本質的な制限によるものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
通常は超臨界流体である作動物質の、容積が変化するチャンバまでの流れを調節することによって、エンジンから仕事を得る方法。この方法は、チャンバの容積を増加させるために、チャンバと液圧連通する熱交換器を用いて作動物質を熱することを含む。熱交換器は、チャンバの容積を減少させるために、作動物質を冷却するためにも利用される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】仕事を提供するための、高い動的密度範囲の熱サイクル・エンジンの、実施例の上面図である。
【
図2A】
図1の熱サイクル・エンジンの側面図である。
【
図3】
図1の熱サイクル・エンジンにおけるエンジンのレイアウトを概略で示す図である。
【
図4A】
図1のエンジンの対向ピストン・アセンブリの、実施例の概略図である。
【
図4B】
図4Aのピストン・アセンブリの膨張及び圧縮の輪郭に基づいて出力された仕事を提供する、熱サイクルの実施例を表わすグラフである。
【
図5A】
図1のエンジンの管板熱交換器の、実施例の一部の概略図である。
【
図5B】
図5Aの管板熱交換器の、六角形構成の正面図である。
【
図6A】
図4Aの対向ピストン・アセンブリの、動作中の経時的な運動シーケンスを示す概略図である。
【
図6B】
図4Aの対向ピストン・アセンブリの、動作中の経時的な運動シーケンスを示す概略図である。
【
図6C】
図4Aの対向ピストン・アセンブリの、動作中の経時的な運動シーケンスを示す概略図である。
【
図6D】
図4Aの対向ピストン・アセンブリの、動作中の経時的な運動シーケンスを示す概略図である。
【
図6E】
図4Aの対向ピストン・アセンブリの、動作中の経時的な運動シーケンスを示す概略図である。
【
図7】閉ループ専用の熱交換器を利用する熱サイクル・エンジンを用いる実施例を要約する、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、本開示の理解を提供するための多くの詳細が記載される。しかし説明する実施例は、これらの特定の詳細がなくても実施され得ることを、当業者は理解されたい。更に、多くの変形又は変更が用いられてよく、それらは具体的に説明する実施例によって考察される。
【0009】
本明細書で詳述される実施例は、閉ループ又は容器内において超臨界流体の形態である作動物質の膨張及び収縮を制御する、特有の方法に向けられる。特に、作動物質のこの膨張及び収縮は、最終的に生産的な仕事を生成するためにピストンを動かすよう使用される。発電機に装着されたモータによって動力を生成するとき、エンジンは約50rpm未満の「低」回転速度を提示し得る。更に、本明細書で詳述される実施例は、相変化を防止してよく、そのために、より熱力学的に本質的に有効であり、適切な作動流体は200°Fを下回る入力温度を使用して効果的に動作し得る。実際、実施例は150°Fを下回る入力熱によって、僅かに効率を落として動作するよう容易に適合され得る。また、ほとんど音もなく動作する。しかし他の実施例において、代替の温度範囲及び異なる回転速度が、ある程度の流体の相変化の許容と共に利用され得る。流体を含むチャンバの加熱及び冷却の両方が、同じ熱交換器によって調節される限り、明らかな利益が実現され得る。
【0010】
次に
図1に
図3を加えて参照すると、熱サイクル・エンジン100の実施例の上面図が示される。エンジン100がスキッド・フレーム150上に提供され、ここで多くのエンジン構成要素は、モジュラー形式で確実に保持される。上記で言及したように、ピストン・アセンブリ105の一方のみの側と液圧連通する専用の熱交換器110、120が提供される(
図2のピストン205も参照)。すなわち、
図3の概略図で示すように、流体の閉じたリザーバが、熱交換器110とピストン・アセンブリ105の一方の側におけるチャンバとの間で、専用ライン309を通して循環され得る。同様に、流体の別の閉じたリザーバが、他の熱交換器120とピストン・アセンブリ105の反対側におけるチャンバとの間で、別の専用ライン308を通して循環され得る。
【0011】
他のエンジン構成要素は、
図1の上面図を参照して識別される。例えば、ピストンのストロークに追加の力を周期的に提供するために、マニホールド125の弁を用いて同期的に働き得る、液圧アキュムレータ180に留意されたい。液圧リザーバ175も識別される。
図3を加えて参照すると、このリザーバ175は高温流体タンク390又は低温流体タンク375として役立ち得る(又は供給し得る)。具体的には、ポンプ160を使用して、タンク390及び関連する加熱源350から高温水を循環させ、ピストン・アセンブリ105内のピストンのストローク位置に従った適切な時間で、適切な熱交換器(110又は120)を加熱し得る。記載したように、1つの実施例において、この水は約150°F〜約200°Fであってよい。
【0012】
同様に、別のポンプ(
図1では見えない)を使用して、低温流体タンク375及び冷却源325から適切な熱交換器(110又は120)まで適切な時間で、低温水を循環させてよい。1つの実施例において、低温水は、おそらくは隣接する水から、ほぼ室温に保たれた水のことである。すなわち、能動的に水を冷却するよう過度のエネルギーを消費する必要性はない。しかし他の実施例において、蒸発冷却器が利用され得る。
【0013】
特に
図3、加えて
図4Aを参照すると、第1の熱交換器105を加熱するタイミングが第2の熱交換器120を冷却するタイミングと一致すること、及びその逆であることは、留意することが重要である。したがって、ピストン・アセンブリ105内の圧力が第1のチャンバ455で増加すると、反対側の第2のチャンバ457内では同時に圧力は減少する。それによってピストン400のストローク(例えば
図4Aで表わすように下向き方向に)を高める。当然ながらストロークの終点においてプロセスは逆転され、第2の熱交換器120が加熱され、第1の熱交換器110が冷却され、第2のチャンバ457がより高い圧力になるようにチャンバ455、457の差圧が逆転し、ピストン400が反対方向に(例えば
図4Aに示されるように上向きに)ストロークされる。
【0014】
図3に戻ると、各熱交換器110、120には、ピストン・アセンブリ105まで延びる個々の専用ライン307、308が装着されることが想起される。具体的には、
図4Aを加えて参照すると、第1の熱交換器110から延びる専用ライン307は、アセンブリ105の第1のチャンバ455と流体連通する。代替として、第2の熱交換器120からの専用ライン308は、第2のチャンバ457と流体連通する。このように、2つの別個の閉ループの液圧システムに、容積及び圧力が減少する方向に、且つ容積及び圧力が増加する方向から離れるよう、継続的に周期的にストロークする
図4Aのピストン400が提供される。しかし、チャンバと熱交換器との間(例えば455/110及び457/120)のこれらの液圧ループは、閉じられたままである。すなわち、高温水タンク375又は低温水タンク390から熱交換器110、120へ循環する流体は、言及した閉ループの液圧システムとは混合されない。代わりに、加熱された水が所与の交換器に入ると、適切に選択された作動流体がそこから急速に外側に膨張し、低温水が入ると、作動流体は熱交換器の中に急速に収縮して戻る。この温度調整した流体は、水又は閉ループ・システム内とは異なるタイプの他の流体であってもよいことに留意されたい。対照的に、閉ループ・システムは、以下で説明する特有の膨張特性により、超臨界二酸化炭素(CO
2)を作動流体として利用し得る。
【0015】
説明した熱力学サイクルは、特有の効率であってよく、200°Fを下回る入力温度を効果的に利用する。実際、このサイクルは、効率を実質的に低減させることなく150°Fを下回る温度で動作するよう適合され得る。その結果、エンジン100は、多くの利用可能な加熱源の利点を柔軟的に利用し得る。例えば有用な仕事が、地熱、太陽熱、又は他の関連のないシステムの動作からの余熱など、低品位加熱源から最終的に得ることができる。これによって、過去には、冷たすぎて事実上経済的価値がないと考えられていた多くの加熱源の、効果的且つ経済的な利用を可能にする。
【0016】
以下で更に詳述するように、閉ループ内の作動流体がCO
2であるとき、それを超臨界又は過熱ガス状態に維持することは、困難ではない。その結果、圧力を増加させて上述のようにピストン運動を駆動するために、加熱の適用は容積を増加させ、大幅な膨張を実現する。更に、作動流体を冷却する適用は、より小さい容積となるよう促し、それによって、加熱したチャンバから反対側のチャンバに適用されるピストン運動を更に促進する。以下で更に詳述するように、この熱サイクルは、作動流体が相変化をサイクルのかなりの期間の間妨げることができる場合、特に効率的である。
【0017】
次に
図2Aを参照すると、
図1の熱サイクル・エンジン100の側面図が示される。この図において、いくつかの追加のエンジン構成要素が確認できる。例えばフレームは、初めに示したピストン・アセンブリ105、並びに以下で更に説明するように、出力を効果的に倍増させるための、別のピストン・アセンブリ205を収容する。それによって、例えば熱交換器110は、1つのアセンブリ105のチャンバ455並びに別のアセンブリ205の別のチャンバ(再び
図4A参照)を含む閉ループを調節し得る。これらのラインと共に、多くの追加のピストン・アセンブリが、必要に応じてエンジンに追加され得る。それに関わらず、示された実施例においてピストン・アセンブリ105、205が、おそらくは以下で更に説明する弁の追加の働きを伴って、同時発生で循環し得る。
【0018】
上述の液圧リザーバ175、アキュムレータ180、及びマニホールド125に加えて、液圧モータ200も
図2Aで識別される。具体的には、熱サイクル・エンジン100からの仕事は、最終的にモータ200に移され、そこで仕事は、動力を生成して移送するために用いることができる。
【0019】
続けて
図2Aを参照すると、高温水及び低温水を熱交換器110(及び
図1の120)に循環させるための様々な液圧ラインも示される。更に具体的には、低温水の供給ライン280及び返送ライン220が、高温水の供給ライン260及び返送ライン240と同様に提供される。したがって、適切な温度をもたらす水のタイプは、上述のように適切な時間において適切な熱交換器110、120に循環され得る(
図1参照)。
【0020】
次に
図2Bを参照すると、エンジン100は
図2Aと比較して反対側から示される。この図において、同じ水循環ライン220、240、260、280並びに他の熱交換器120が識別される。ピストン・アセンブリ105、205も、アキュムレータ180と共に識別される。更に、上述した適切な時間に適切な熱交換器(110又は120)に高温水を循環させるために使用される高温ポンプ160、並びに適切な時間に適切な熱交換器(110、120)に低温水を循環させるために使用される低温ポンプ260が示される。
【0021】
次に
図3を参照すると、
図1、
図2A、及び
図2Bの熱サイクル・エンジン100におけるエンジンのレイアウトの概略図が示される。上述のように、このエンジン100は、特有の効率方法で、モータ200から出力される仕事を最終的に促進させる。これは、ポンプ・アセンブリ105の一方の側に独立して専用化された、熱交換器110、120の特有のシステムを利用することを含む。これは、各交換器110、120が、高温及び低温の両方のサイクルがアセンブリ105の所与の側のための同じ交換器110、120を通して扱われる閉液圧ループを画定し、且つ調節することを意味する。したがって、加熱された入力が連続して各交換器110、120に交互に適用される(例えば加熱源350及び高温水タンク390から)。同時に、低温の入力が連続して反対側の交換器110、120に交互に適用される(例えば冷却源325及び低温水タンク375から)。
【0022】
続けて
図3を参照すると、アセンブリ105内の往復ピストン400が、ピストン400の適切な往復運動及びタイミングを保証するよう、時間を調整する様々なチェック弁を収納するマニホールド125を通して、液圧オイルを循環させる(
図4A参照)。実際、マニホールド125も、表わされたアキュムレータ180と液圧連通される。アキュムレータ180は、ピストンの往復運動を促進させるため(例えばピストンのストロークの終端において)、ピストン400が動いていないときに、作動流体の流れを周期的に溜め、及び供給し、又は追加の圧力を、マニホールド125を通して供給して戻し得る。更に、モータ200自体もピストンの往復運動のタイミングをとる役割を担い得る。例えばモータ200は、おそらくは約50rpmを下回る、実質的に一定の固定速度で動作するよう構成され得る。効率的であること、及びほぼ音がしないこと以外で、このタイプの一定の固定排気量は、マニホールド125を通して、液圧的に連結されて戻され、ピストンの往復運動の速度を調整するのに更に役立ち得る。最終的に、往復運動及び出力の、非常に制御され、且つ確実に一致する方法を実現することができる。
【0023】
次に
図4Aを参照すると、
図1のエンジン100の対向ピストン・アセンブリ105の実施例の概略図が示される。この図では、チャンバ455、457の間を往復運動するアセンブリ105内のピストン400が示される。チャンバ455、457は、それら自体が作動流体を循環させる別個の閉ループ・システムの一部である。示された実施例において、作動流体はCO
2であり、一般的に以下で更に説明するような超臨界状態である。更に、ピストン400が往復運動するときに、中間ヘッド部440によって画定される中間チャンバ487は、上述のように一連の弁475及び最終的にはモータ200に向けて、液圧オイルなどの非圧縮性作動流体を循環させるために使用される。モータ200は、液圧モータ又はクランクシャフトであってもよく、上述のように弁475は、モジュラー形式でマニホールド125の中に組み込まれてもよい(
図3参照)。このように、循環する液圧オイルは、モータ200を通して移動可能な仕事を提供し得る。次にモータは、発電機を介して電力の生成に利用され得る。しかし、ポンプ、動力源、又は圧縮機も、モータによって駆動され得るか、又は液圧動力がモータに接続されずに直接使用され得る。
【0024】
示された実施例において、中間チャンバ487は、区画480、485によって仕切られる。これらは、作動流体チャンバ455、457と中間チャンバ487の液圧オイルとの間の封止緩衝として役立つ、空気で満たされた区画480、485であってもよい。弁475の開閉のタイミング、並びにモータのrpmも、この循環及びピストンの往復運動を一致させるのに役立つ。例えば、弁475は、圧力を上げて反対方向のストロークの開始を助けるように、ピストンが各ストロークの終端に近づく毎に瞬間的に閉じてよい。このようなタイミングは、電子制御器によって調整され得る。
【0025】
次に
図4Bを参照すると、
図4Aのピストン・アセンブリの膨張及び圧縮の輪郭に基づいて出力された仕事を提供する熱サイクルの、実施例を表わすグラフが示される。このタイプのグラフは、P−vグラフと称され得る。具体的には、グラフは、加熱によって加圧されたチャンバ(例えば455)を示す。ここでは、温度が約100°Fから150°Fを僅かに超えるまで上昇すると、圧力が約1200psiから約1500psiを超えるまで上昇する、(1)から(2)までの動きが確認できる。したがって、チャンバ455内の圧力はピストン・ヘッド部450に作用して、ピストン400が下向き方向に動くのに伴って容積増加をもたらす。
図4Bにおける(2)から(3)への動きが、容積増加を反映することに留意されたい。温度もまた、この点において僅かに下降することに注目されたい。しかし(3)から(4)へのより大幅な下降が、上述の熱交換技術を介して、適応させた低温の導入によってもたらされる。具体的には、(4)における温度は、(3)における150°Fより僅かに低い温度から、約100°Fを下回るまで変化する。これはまだ88°Fを上回っていることに留意されたい(これはCO
2が超臨界のままであることを保証する)。したがって、特に上述の技術に従って加熱された他のチャンバ457を考慮すると、この点における、このチャンバ455に向けたピストンの動きは促進される。実際、(4)から(1)へ戻る際の、このチャンバ455内の対応する容積減少に注目されたい。
【0026】
図4Aを加えた
図4Bの実施例において、チャンバ455内の圧力及び温度の組み合わせは、この場合はCO
2である作動流体が超臨界状態に保たれるレベルに維持される。これは、効果的な動作には必ずしも必要ではない。しかし、作動流体が、熱サイクルの実質的な期間を通して超臨界又は過熱ガス状態に保たれると、より大きい効率が得られることになる。より具体的には、作動流体が液体又は「高濃度」状態に行き来する過度な相変化を防止することによって、効率を高めることができる。更に、ここで詳述する技術及び機器の設定を用いて、「相変化ドーム」の実質的に外側全体における動作は、容易に達成できる。
【0027】
代替の作動流体のために、多くの異なる圧力及び温度範囲を利用して、サイクルの実質的な期間、流体を超臨界又は過熱ガス状態に維持し得るということに留意することが重要である。示された実施例において、CO
2は、相対的に低熱で管理可能な圧力で、これらの特性を迅速且つ容易に呈することが可能であるので、利用される。しかし、他の流体タイプがモデル化され、且つ離散化され得る。更に、様々なピストンの寸法、及び代替の許容のために確認された他の変数が、本明細書で説明した技術に従った熱サイクルを作動させるために利用され得る。
【0028】
次に
図5Aを参照すると、
図1のエンジン100の管板熱交換器110の、実施例の斜視図が示される。交換器110は堅牢な構造であり、上述及び以下で更に説明するように、熱サイクルの間に交換器110に位置付けられた急速加熱ストレッサ及び急速冷却ストレッサを取り扱うよう適応される。したがって、表わされた交換器110の一部は、連続的且つ急速な加熱及び冷却のストレスに抵抗可能な、厚い、又は二重壁の殻の中に収納され得る。この際、ステンレス鋼又は他の堅牢な材料の選択がなされ得る。
【0029】
熱交換器は、熱サイクルのコースにわたってエネルギーの追加量及び排除量の決定要因であるので、
図1のエンジン100全体のサイズ決めは、交換器110、120のサイズ決めから開始される。
図5Aの実施例において、管板熱交換器110は、位置合せ板525、575によって所定の位置に保持された、複数のマイクロチューブ500を含む。従来の交換器とは対照的に、表わされた管板熱交換器110は、作動流体を通過させない。代わりに、交換器は作動流体を保持するリザーバとして働く。したがって、上述のように熱を適用する際に流体は急速に膨張して、多くは交換器110を離れるか、又は、冷却を適用する際に流体は急速に収縮して、交換器110のより小さい容積に戻る(例えば上述のように)。流体タイプは、このプロセスの速度に影響するだけではなく、作動流体に作用する交換器110の表面積を効果的且つ大幅に増加させる、交換器110の管状の性質にも影響する。
【0030】
特に
図5Bを参照すると、
図5Aの管板熱交換器の六角形構成の正面図が、六角形状で示される。管500の間隔は、管壁の厚さなど様々な他の変数に基づいて設定された、所定のピッチ(P)及び径(D)によって画定され得る。したがって例えば、この特定の値は、繰り返される急速な温度変化に露出され得るという点で、交換器110の所与の耐久特性を考慮すると、重要となり得る。
【0031】
次に
図6A〜
図6Eを参照すると、
図4Aの対向ピストン・アセンブリ105の概略図が、動作中の経時的な運動シーケンスと共に示される。実際、
図6Aは作動流体である超臨界CO
2を伴う
図4Aと類似しており、第1のチャンバ455内には十分な圧力が得られており、示された方向(600を参照)にピストン400をフルストローク駆動する。最終的にこれは、仕事がモータ200に導かれ得ることを意味する。本明細書の実施例で、追加のタイミング及び誘導が、弁(例えば弁475参照)を介して提供され得る。
【0032】
最初のストロークが終了すると、第2のチャンバ457は、第1のチャンバ455が冷却されるのと同時に加熱され得る(
図6B参照)。その結果、ピストン400は所定の位置に保持され、それによって更なる圧力を構築するか、又は反対方向のストロークでコースを逆転することを可能にする(矢印600参照)。最終的にピストン400は、このストロークの終端に同様に到達することになる(
図6C参照)。説明したストロークを通して、中間チャンバ487はモータ200を用いて液圧オイルを循環させ続け、システムから効果的に仕事を得ることを可能にすることに注目されたい。
【0033】
図6Dに示されるように、ピストン400が第1のチャンバ455に向けてそのストロークを終了する際に、このチャンバは、所望の圧力が得られて、ピストンが第2のチャンバ457の方向に戻るまで再び加熱されてよく、第2のチャンバ自体は、プロセスを更に促進させるために冷却される(矢印600参照)。最終的にピストン400は、
図6Eに示されるように、このストロークの終端に再び到達することになり、
図6Aにおいて占有する位置まで戻される。
【0034】
次に
図7を参照すると、閉ループ専用の熱交換器を利用する熱サイクル・エンジンを用いる実施例を要約する、フローチャートが示される。すなわち、715に表わされるように、ピストン・アセンブリのチャンバを伴う閉ループにおける、1つの熱交換器が加熱される。同時に、アセンブリの反対側のチャンバを伴う閉ループにおける、第2の熱交換器が冷却される(730参照)。このように、アセンブリのピストンは、745において記述されるように第1の方向に動かされる。次にプロセスは逆転され、760において表わされるように第1の熱交換器が冷却され、775において表わされるように第2の熱交換器が加熱される。したがって、次にピストンは反対方向に動かされる(785参照)。
【0035】
前記の説明を、現在参照されている実施例を参照して提示してきた。これらの実施例が関係する技術分野の当業者は、説明した構造及び動作方法の、代替並びに変更が、これらの実施例の趣旨及び範囲から大きく逸脱することなく実行され得ることを、理解するであろう。更に、前述の説明は、添付の図面で説明且つ示された正確な構造のみに関係するものと捉えるべきではなく、むしろ、最も広く且つ最も明白な範囲を有する以下の特許請求の範囲と一致して、特許請求の範囲を支持するものと捉えるべきである。
【国際調査報告】