特表2019-537748(P2019-537748A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-537748三次元画像化可能な顕微鏡及び画像化方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-537748(P2019-537748A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】三次元画像化可能な顕微鏡及び画像化方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/26 20060101AFI20191129BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20191129BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20191129BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20191129BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   G02B21/26
   G02B21/06
   G02B21/36
   G01N21/65
   G01N21/64 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-522949(P2019-522949)
(86)(22)【出願日】2016年12月6日
(85)【翻訳文提出日】2019年6月25日
(86)【国際出願番号】CN2016108705
(87)【国際公開番号】WO2018076463
(87)【国際公開日】20180503
(31)【優先権主張番号】201610951388.2
(32)【優先日】2016年10月26日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】505383316
【氏名又は名称】中国科学技▲術▼大学
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】祝 清源
(72)【発明者】
【氏名】畢 国強
(72)【発明者】
【氏名】王 浩
(72)【発明者】
【氏名】劉 北明
(72)【発明者】
【氏名】丁 露鋒
(72)【発明者】
【氏名】楊 朝宇
(72)【発明者】
【氏名】楊 倩如
(72)【発明者】
【氏名】畢 達生
(72)【発明者】
【氏名】辛 ▲チィ▼
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043EA01
2G043EA03
2G043FA01
2G043FA02
2G043LA03
2H052AA07
2H052AA09
2H052AC09
2H052AC16
2H052AD18
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】
三次元画像化可能な顕微鏡は、励起主軸方向に沿って試料の検出すべき領域(11)内で検出可能なコントラストを生成するための、少なくとも1つの励起装置(1)と、検出主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で生成されたコントラストを検出するための、少なくとも1つの検出装置(2)と、試料と励起装置及び検出装置との相対運動を発生させるための、少なくとも1つの移動手段と、を含み、相対運動の方向は、励起主軸方向に平行も垂直もせず、相対運動の方向は、検出主軸方向に平行も垂直もしない。本発明は、三次元画像化における画像化中断を低減し、試料を移動しながら画像化を中断せずに行い、画像化の中断が必須な視野変換を低減させるとともに、画像化するときに試料の運動によるブレを除去し、収差を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で検出可能なコントラストを生成するための、少なくとも1つの励起装置と、
検出主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で生成されたコントラストを検出するための、少なくとも1つの検出装置と、
試料と前記励起装置及び前記検出装置との相対運動を発生させるための、少なくとも1つの移動手段と、
を含み、
前記相対運動の方向は、前記励起主軸方向に平行も垂直もせず、前記相対運動の方向は、前記検出主軸方向に平行も垂直もしない、三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項2】
前記検出装置の有効検出領域において、画像化する立体画素の各々に対応する試料単位は、所定時間以内においてのみ前記励起装置に励起され、前記所定時間内において、前記相対運動による変位は前記顕微鏡の解像度の要求を超えない、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項3】
前記試料が位置する環境において透明な物質が充填され、前記透明な物質と、その時の前記試料とは、屈折率が略同一である、請求項1又は2に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項4】
前記励起装置は、1つ又は複数の発光ダイオード、連続波レーザ、パルスレーザの組み合わせにより、光源を励起する、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項5】
前記検出可能なコントラストは、蛍光、弾性散乱光、ラマン散乱、SHG、THG、誘導ラマン散乱等の信号の1種又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項6】
前記励起装置は、パルス時間が前記所定時間以内のパルスを用い、光学シート照明の方法により試料を励起する、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項7】
前記励起装置は、パルスレーザ、パルス作動の発光ダイオード、又は異なる方法で変調された連続光源の組み合わせである、請求項6に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項8】
前記励起装置と前記検出装置とは同期的に作動する、請求項6に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項9】
前記励起装置は、1つ又は複数のシリンドリカルミラー、シリンドリカルレンズ、変形ミラー、透過型位相素子、反射型位相素子を含むことによって、前記光学シート照明を形成する、請求項6に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項10】
前記励起装置は、検出領域内において前記検出装置の検出方向に略垂直な励起光束を少なくとも1つ発生する、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項11】
前記励起装置は、前記励起光束を走査移動させることができる走査手段を少なくとも1つ含む、請求項10に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項12】
前記励起光束は、検出領域内で光束方向に沿った光束半径の変化が3倍を超えない、請求項11に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項13】
前記走査手段は、1つ又は複数の走査ガルバノミラー、共振走査鏡、回転多面鏡、音響光学変調器の組み合わせを含む、請求項11に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項14】
前記検出装置は、マトリックス状の感光素子を画像化素子としたものであり、前記画像化素子は前記走査手段と同期的に作動する、請求項11に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項15】
前記検出装置は、前記走査手段と同期的に作動する走査解除手段を含み、さらにアレイ又はマトリックス状の感光素子を画像化素子としたものである、請求項11に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項16】
前記励起装置は、1つの励起光束を複数の励起光束に分割するための光束分割手段を1つ含む、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項17】
前記光束分割手段は、1つ又は複数のレンズアレイ、反射鏡アレイ、ハーフミラーアレイの組み合わせを含むか、あるいは、固定又は変調可能なフェーズフィルタ又はデジタルマイクロミラーアレイを含む、請求項16に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項18】
前記励起装置及び前記検出装置は走査型共焦点画像化の構造を構成する、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項19】
少なくとも1つの励起装置を利用して、励起主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で検出可能なコントラストを生成すること、及び
少なくとも1つの検出装置を利用して、検出主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で生成されたコントラストを検出すること(前記検出装置と前記励起装置とは、素子を共用するのが排除されない)、
を含み、
前記試料と前記励起装置、前記検出装置との相対運動の方向は、前記励起主軸方向に平行も垂直もせず、前記相対運動の方向は、前記検出主軸方向に平行も垂直もしない、三次元顕微画像化方法。
【請求項20】
デコンボリューション等の方法により前記相対運動によるブレを除去することをさらに含む、請求項19に記載の三次元顕微画像化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像化顕微鏡及び顕微画像化方法に関し、特に、生物学及び医学を主たる応用分野としたハイスループットの三次元デジタル画像化顕微鏡及びハイスループットの三次元デジタル顕微画像化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元デジタル画像化は、現代の顕微画像化の重要な内容の1つである。解像度を低下させることなくより多くの試料を非破壊的に画像化することは、三次元顕微画像化方法の重要な目標である。
【0003】
一般に、三次元デジタル画像化は、何らかのコントラスト応答(例えば、蛍光)を発生させる方法により試料を検出(励起)し、何らかの方法でこれらのコントラストを記録し(光電変換してデジタル化する)、さらに検出すべき領域内の各々の立体単位のコントラストをデジタル化した立体画素を最終出力とする。これをもって、立体画素の数(すなわち、試料の検出すべき領域の体積/立体画素の対応する体積(所望の解像度により決められる))、及びデジタル化の速度は、三次元デジタル画像化速度の1つの上限を決める。しかしながら、従来技術の画像化速度は、この限界に遥かに及ばない。例として、従来の主たる画像化装置の400メガピクセル/秒のデジタル化(16bit)速度で0.5立方センチメートルのマウスの脳を画像化する場合に、三次元立体画素が1×1×1ミクロン単位(細胞内解像)に対応するデジタル画像化速度の上限は、1250秒、約21分間であり、立体画素が5×5×5ミクロン単位(細胞体解像)に対応する場合は、所要時間はただ10秒である。従来技術において、サブミクロンの解像度のマウスの脳の画像化速度は、典型的に3日であり(Gong, H. et al. Nat. Commun. 7:12142、2016)、細胞体解像の最新結果は約2時間である(Li Ye, et al., Cell, 165(7), 16 June 2016,)。従来技術において、励起及び記録の速度はボトルネックになっていない。この差を引き起こす重要な原因の1つは、従来技術では画像化過程において、画像化中断を避けることができず、有効画像化時間が短縮されてしまうことである。
【0004】
従来の画像化技術は、通常、以下のような方法を用いる。まず、画像化方向(すなわち、検出主軸方向、通常、z方向と呼ばれる)に垂直な1つの平面を画像化する(1スポットずつ画像化してもよいし、視野の一部/全体を同時に画像化してもよく、走査型共焦点(scanning confocal)又は光学シート(SPIMであるが、LSMと略称されることもある)画像化が例として挙げられる)。z方向において、解像度の要求に応じて相対運動し、1つの新しい平面に到達する。この過程は約10ミリ秒が必要とされる。新しい平面を画像化する。z方向において試料がカバーされるまで以上の運動及び画像化を繰り返し、1つの視野内の三次元画像化を完成し、その後、zに垂直な方向において1つの新しい視野へ移動し、この過程は約数百ミリ秒が必要とされる。zに垂直な方向においても試料がカバーされるまで以上の運動及び画像化を繰り返し、試料の三次元画像化を完成する。以上の過程は、画像化中断の過程を大量に含み、毎回の移動自体は時間がかかり、画像化を継続するためにはさらに起動、停止による振動が消失するのを待つ必要があるので、長時間の画像化中断が発生してしまう。試料の体積が大きく、解像度の要求が高い場合、上述した画像化中断の回数が3乗で増大し、画像化の効率がひどく影響される。一部の技術は、電気フォーカスレンズ等の方法により画像化中断の時間を低減したが、z方向のみに適用され、かつサイズが大きく制限されるので、三次元デジタル画像化のスループットが部分的に改善されるに過ぎない。
【0005】
図1Aから図1Gは、従来技術において三次元画像化を実現するために一般に用いられる方法を示している。まず、図1Aに示すように、画像化方向(すなわち、検出主軸方向であり、通常、z方向と称される)に垂直な1つの平面を画像化する(1スポットずつ画像化してもよいし、視野の一部/全体を同時に画像化してもよく、走査型共焦点(scanning confocal)又は光学シート(SPIMであるが、LSMとも略称される)画像化が例として挙げられる)。z方向において解像度の要求に応じて相対運動し、図1Bのように1つの新しい画像化位置に到達する。画像化位置での画像化を図1Cに示す。図1Dに示すように、z方向に試料がカバーされるまで以上の運動及び画像化を繰返し、1つの視野内の三次元画像化を完成する。その後、図1Eに示すようにzに垂直な方向において1つの新しい視野へ移動する。当該視野での三次元画像化を図1Fに示す。図1Gに示すように、zに垂直な方向においても試料がカバーされるまで以上の運動及び画像化を繰り返し、試料の三次元画像化を完成する。以上の過程は大量の画像化中断の過程を含み、毎回の移動自体は時間がかかり、画像化を継続するためには、さらに起動及び停止による振動が消失するのを待つ必要があるので、長時間の画像化中断が発生してしまう。発明者は、上述した画像化中断が移動に関連することを見出した。複数回の局部画像化を組み合わせて全体画像化とした三次元画像化技術において、試料及び検出のある形の相対移動が必要であるが、全ての相対運動において画像化中断が要求されることはない。従来の三次元画像化に含まれる相対運動は、2種類に分けられ、すなわち、第1種の運動は、単一の視野内の三次元画像化過程において異なる面の画像化のために、毎回のデータ読み取りの間に発生する小さい相対移動である(通常、数ミクロン以下である)。第2種の運動は、視野変換過程において発生する大きい相対移動である(通常、百ミクロン以上である)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gong, H. et al. High−throughput dual−colour precision imaging for brain−wide connectome with cytoarchitectonic landmarks at the cellular level. Nat. Commun. 7:12142、 doi: 10.1038/ncomms12142 (2016)。
【非特許文献2】Li Ye, et al. Wiring and Molecular Features of Prefrontal Ensembles Representing Distinct Experiences, Cell, Volume 165, Issue 7, 16 June 2016, Pages 1776−1788, ISSN 0092−8674,http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.05.010。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が主に解決しようとする技術課題は、有効画像化時間を改善することでハイスループットの三次元デジタル顕微画像化が実現可能な三次元デジタル画像化顕微鏡及び三次元デジタル顕微画像化方法を提供することである。
【0008】
上述した技術課題を解決するために、本発明の一態様によれば、励起主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で検出可能なコントラストを生成するための、少なくとも1つの励起装置と、検出主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で生成されたコントラストを検出するための、少なくとも1つの検出装置と、試料と前記励起装置及び前記検出装置との相対運動を発生させるための、少なくとも1つの移動手段と、を含み、前記相対運動の方向は、前記励起主軸方向に平行も垂直もせず、前記相対運動の方向は、前記検出主軸方向に平行も垂直もしない、三次元画像化可能な顕微鏡を提供する。試料の1つの三次元領域を画像化する全過程において、画像化も前記相対運動も中断しない特徴を有し、かつ、前記相対運動の方向は、励起主軸方向又は検出主軸方向に平行も垂直もしない。ここで、相対運動の方向についての選択は、画像化の中断が必須な視野変換を低減することに寄与する。
【0009】
画像化するときの前記相対運動は等速であり、且つほぼ中断しない特徴を有するため、速度変化又は起動、中断による不規則な振れが除去される。尚存在可能な運動によるブレは、簡単で一致しているので、デコンボリューション等の方法により便利に算出、除去することができる。
【0010】
好ましくは、前記検出装置の有効検出領域において、画像化する立体画素の各々に対応する試料単位は、所定時間以内においてのみ前記励起装置に励起され、前記所定時間内において、前記相対運動による変位は前記顕微鏡の解像度の要求を超えない。このようにして、前記相対運動による運動ブレを無視することができる。
【0011】
好ましくは、前記試料が位置する環境において透明な物質が充填され、前記透明な物質と、その時の前記試料とは、屈折率が略同一である。
【0012】
好ましくは、前記励起装置は、1つ又は複数の発光ダイオード、連続波レーザ、パルスレーザの組み合わせにより、光源を励起する。
【0013】
好ましくは、前記検出可能なコントラストは、蛍光、弾性散乱光、ラマン散乱、SHG、THG、誘導ラマン散乱等の信号の1種又はそれらの組み合わせである。
【0014】
好ましくは、前記励起装置は、パルス時間が前記所定時間以内のパルスを用い、光学シート照明の方法により試料を励起する。
【0015】
好ましくは、前記励起装置は、パルスレーザ、パルス作動の発光ダイオード、又は異なる方法で変調された連続光源の組み合わせである。
【0016】
好ましくは、前記励起装置と前記検出装置とは同期的に作動する。
【0017】
好ましくは、前記励起装置は、1つ又は複数のシリンドリカルミラー、シリンドリカルレンズ 、変形ミラー、透過型位相素子、反射型位相素子を含むことによって、前記光学シート照明を形成する。
【0018】
好ましくは、前記励起装置は、検出領域内において前記検出装置の検出方向に略垂直な励起光束を少なくとも1つ発生する。
【0019】
好ましくは、前記励起装置は、前記励起光束を走査移動させることができる走査手段を少なくとも1つ含む。
【0020】
好ましくは、前記励起光束は、検出領域内で光束方向に沿った光束半径の変化が3倍を超えない。
【0021】
好ましくは、前記走査手段は、1つ又は複数の走査ガルバノミラー、共振走査鏡、回転多面鏡、音響光学変調器の組み合わせを含む。
【0022】
好ましくは、前記検出装置は、マトリックス状の感光素子を画像化素子としたものであり、前記画像化素子は前記走査手段と同期的に作動する。
【0023】
好ましくは、前記検出装置は、前記走査手段と同期的に作動する走査解除手段を含み、さらにアレイ又はマトリックス状の感光素子を画像化素子としたものである。
【0024】
好ましくは、前記励起装置は、1つの励起光束を複数の励起光束に分割するための光束分割手段を1つ含む。
【0025】
好ましくは、前記光束分割手段は、1つ又は複数のレンズアレイ、反射鏡アレイ、ハーフミラーアレイの組み合わせを含むか、あるいは、固定又は変調可能なフェーズフィルタ又はデジタルマイクロミラーアレイを含む。
【0026】
好ましくは、前記励起装置及び前記検出装置は走査型共焦点画像化の構造を構成する。
【0027】
本発明は、少なくとも1つの励起装置を利用して、励起主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で検出可能なコントラストを生成すること、及び少なくとも1つの検出装置を利用して、検出主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で生成されたコントラストを検出すること(前記検出装置と前記励起装置とは、素子を共用するのが排除されない)、を含み、前記試料と、前記励起装置、前記検出装置との相対運動の方向は、前記励起主軸方向に平行も垂直もせず、前記相対運動の方向は、前記検出主軸方向に平行も垂直もしない、三次元顕微画像化方法をさらに提供する。
【0028】
本発明は、好ましくはデコンボリューション等の方法により運動によるブレを除去することである。
【0029】
本発明が提供する上記の装置及び方法によれば、本発明の利点及び有益な効果は、三次元画像化における画像化中断を低減し(試料を移動しながら画像化を中断せずに行い、画像化の中断が必須な視野変換を低減することを含む)、同時に、画像化するときの試料運動によるブレを除去し、生じた収差を改善することを含む。従来技術に比べると、本発明が提供する装置及び方法は、同等の解像度条件下において、三次元画像化のスループットを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】従来技術における三次元画像化を実現するために一般に用いられる方法を示す。
図1B】従来技術における三次元画像化を実現するために一般に用いられる方法を示す。
図1C】従来技術における三次元画像化を実現するために一般に用いられる方法を示す。
図1D】従来技術における三次元画像化を実現するために一般に用いられる方法を示す。
図1E】従来技術における三次元画像化を実現するために一般に用いられる方法を示す。
図1F】従来技術における三次元画像化を実現するために一般に用いられる方法を示す。
図1G】従来技術における三次元画像化を実現するために一般に用いられる方法を示す。
図2A】本発明の三次元画像化の原理を示す。
図2B】本発明の三次元画像化の原理を示す。
図2C】本発明の三次元画像化の原理を示す。
図3】本発明の1つの応用例として一台の三次元画像化顕微鏡の原理図を示す。
図4図3に示すシステムが採集したマウスの脳の蛍光画像化の実例を示し、その中、(a)は厚さが数百ミクロンの脳のスライスの画像化結果を三次元に再構成した冠状断面図を示し、(b)は脳のスライスの局所範囲内でのニューロン細胞体及び樹状突起の微細構造を示し、(c)はある画像化面内で捕獲したニューロン軸索等の細胞の微細構造を示す。
図5】本発明のもう1つの応用例としてもう一台の三次元画像化顕微鏡の原理図を示す。
図6】本発明の又もう1つの応用例として又もう一台の三次元画像化顕微鏡の原理図を示す。
図7A】デコンボリューション算法により運動ブレを除去して画像の品質を改善する説明であり、静止時に撮影したナノ蛍光ビーズである。
図7B】デコンボリューション算法により運動ブレを除去して画像の品質を改善する説明であり、1ミリメートル/秒で運動するときに10ミリ秒露光する場合である。
図7C】デコンボリューション算法により運動ブレを除去して画像の品質を改善する説明であり、デコンボリューション処理後の結果である。
図8】本発明の顕微鏡及び画像化方法において、連続光源を用いて走査方式により運動ブレを抑制する原理を説明する図である。
図9】本発明の顕微鏡及び画像化方法において、屈折率マッチングを用いて本発明の顕微鏡が採集した画像の品質を改善することを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の発明内容において、発明者は、上述した第1種の運動において画像化を中断することなく、第2種の運動の存在を最大限に低減することにより、有効画像化時間を増加し、画像化スループットを高めることができる装置及び方法を提供する。
【0032】
本発明の中心となる内容は、不要な画像化中断の低減であり、この内容に対応する一連の技術組み合わせを用い、その基本的な内容は、試料を移動しながらほとんど画像化を中断せずに行い、画像化の中断が必須な視野変換を低減させ、画像化するときの試料運動によるブレを除去し、生じた収差等を改善することである。
【0033】
上述した技術課題を解決するために、本発明の一態様によれば、励起主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で検出可能なコントラストを生成するための、少なくとも1つの励起装置を含む三次元画像化可能な顕微鏡を提供する。前記顕微鏡は、検出主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で生成されたコントラストを検出するための、少なくとも1つの検出装置をさらに含み、前記検出装置と前記励起装置とは、素子を共用することを排除しない。前記顕微鏡は、試料と前記励起装置及び検出装置との相対運動を発生させるための、少なくとも1つの移動手段をさらに含む。試料の1つの三次元領域を画像化する全過程において、画像化も前記相対運動も中断しない特徴を有し、かつ、前記相対運動の方向は、励起主軸方向又は検出主軸方向に平行も垂直もしない。ここで、相対運動の方向の選択は、画像化の中断が必須な視野変換を低減させることに寄与する。
【0034】
画像化するときの前記相対運動が等速であり且つほぼ中断しない特徴を有するため、速度変化又は起動、中断による不規則な振れを除去することができる。尚存在可能な運動によるブレは簡単で一致しているので、デコンボリューション等の方法により便利に算出、除去することができる。
【0035】
さらに、本発明は、前記検出装置の有効検出領域において、画像化する立体画素の各々に対応する試料単位が所定時間以内においてのみ前記励起装置に励起され、前記所定時間内において、前記相対運動による変位が前記顕微鏡の解像度の要求を超えないという技術的態様を用いてもよい。このようにして、前記相対運動による運動ブレを無視することができる。
【0036】
さらに、本発明は、画像化するときに、前記試料が位置する環境において透明な物質が充填され、前記透明な物質と、そのときの前記試料とは、屈折率がほぼ同一であるという技術的態様を用いてもよい。
【0037】
前記励起装置は、1つ又は複数の発光ダイオード、連続波レーザ、パルスレーザの組み合わせを励起光源として用いてもよい。前記検出可能なコントラストは、蛍光、弾性散乱光、ラマン散乱、SHG、THG、誘導ラマン散乱等の信号の1種又は組み合わせである。前記検出装置は、CCD、CMOS感光素子、フォトダイオード(PD)(アバランシェフォトダイオード(APD)を含む)、及び光電子増倍管で構成されたスポット、アレイ、又はマトリックス状の素子のうちの1種又はそれらの組み合わせを感光素子として用いる。
【0038】
前記励起装置は、パルス時間が前記所定時間を超えないパルスを用い、光学シート照明の方法により試料を励起してもよい。かつ、前記検出装置は、CCD、CMOSカメラのようなマトリックス状の感光素子を画像化素子としてもよい。
【0039】
前記励起装置は、前記光学シート照明を形成するために、1つ又は複数のシリンドリカルミラー、シリンドリカルレンズ 、変形ミラー、透過型位相素子、反射型位相素子を含んでもよい。
【0040】
前記パルス光源は、1つ又は複数のパルスレーザ、パルス作動の発光ダイオード、又は異なる方法で変調された連続光源の組み合わせを含んでもよい。かつ、前記パルス光源は、前記画像化素子と同期的に作動することができる。
【0041】
本発明の1つの実施形態において、前記励起装置は、前記検出装置の検出方向に略垂直な励起光束を少なくとも1つ発生させ、前記励起装置は、少なくとも1つの走査手段を含み、該走査手段は前記励起光束を走査移動させることができる。
【0042】
好ましくは、前記励起光束は、検出領域内において光束方向に沿った光束半径の変化が3倍を超えない。
【0043】
前記走査手段の1つの実施形態において、1つ又は複数の走査ガルバノミラー(galvanometer scanner)、共振走査鏡、回転多面鏡、音響光学変調器の組み合わせを含む。
【0044】
もう1つの実施形態において、前記検出装置は、CCD、CMOSカメラのようなマトリックス状の感光素子を画像化素子としたものであり、前記画像化素子は、前記走査手段と同期的に作動する。前記検出装置は、前記走査手段と同期的に作動する走査解除手段を含み、さらに、LEDアレイ、CCD、CMOSカメラのようなアレイ又はマトリックス状の感光素子を画像化素子としてもよい。
【0045】
本発明によれば、前記励起装置は、1つの励起光束を複数の励起光束に分割するための光束分割手段を1つ含んでもよい。前記光束分割手段は、1つ又は複数のレンズアレイ、反射鏡アレイ、ハーフミラーアレイの組み合わせを含んでもよいし、固定又は変調可能なフェーズフィルタあるいはデジタルマイクロミラーアレイ(DMD)を含んでもよい。
【0046】
1つの実施形態において、前記励起装置及び前記検出装置は、走査型共焦点画像化の構造を構成する。
【0047】
また、本発明は、少なくとも1つの励起装置を利用して、励起主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で検出可能なコントラストを生成すること、少なくとも1つの検出装置を利用して、検出主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で生成されたコントラストを検出すること(前記検出装置と前記励起装置とは、素子を共用するのが排除されない)、及び少なくとも1つの移動手段を利用して、試料と前記励起装置及び検出装置との相対運動を発生させることを含む、三次元顕微画像化方法をさらに提供する。試料の1つの三次元領域を画像化する全過程において、画像化も前記相対運動も中断しない特徴を有し、かつ前記相対運動の方向は、励起主軸方向又は検出主軸方向に平行も垂直もしない。
【0048】
図2A図2Cは、本発明の三次元画像化の原理を示す。図2A図2Cに示すように、画像化と同時に、試料と画像化システムは、継続的な等速運動を維持し、運動方向が画像化方向に平行も重合もせず、図2Aは運動方向と画像化方向とが45°の角度をなす例を示す。図2B及び図2Cに示すように、本発明は、大きいサイズの試料に対して、中断せずに新しい位置を画像化し続けて、最後に、試料の三次元画像化を完成させる。
【0049】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施例を説明する。
【0050】
本発明の1つの応用実施例として、図3は一台の三次元画像化顕微鏡を示し、厚さ300ミクロンの試料に対して、解像度が1ミクロンであることが要求される。画像化におけるコントラストは蛍光を例とする。例として、蛍光コントラストは、488ミクロンのレーザによりGFP等の蛍光蛋白質を励起することにより提供される。励起装置1及び検出装置2は、対称的で多重化の構造を用いることができ、すなわち、両側のいずれも励起及び検出の機能を含む。例えば、網掛け部分の素子を外せば、左側が励起装置のみに簡略化され、右側が検出装置のみとなる。励起装置1と検出装置2とは互いに光路の主軸が垂直し、水平面(机上面又は地面)と45°の角度をなす。試料台3が水平面に平行し、試料を載置して試料を画像化位置に移動させる。画像化するときに試料は連続的に水平運動する。励起装置1及び検出装置2の最先端は対物レンズ10(Olympus UMPLFLN 20XW)であり、開口数が0.5、作動距離が3.5ミリメートルである。励起光4は、488ミクロンのレーザが用いられ、望遠鏡又は開口絞り(図示しない)を経て、パワー調節、ビーム径調節され、走査ガルバノミラー5に入射し、対物レンズ10の後に、検出方向に垂直な平面において走査する線形の励起光を発生する。リレーレンズ6、7は、走査ガルバノミラー5を対物レンズ10の後側焦点面に共役させる。反射鏡8、9は、走査線をねじり回し、空間的にコンパクトにするためである。ただし、網掛け部分の素子を含むシステムにおいて、反射鏡9は、長波長側の光を通過させるダイクロイックミラー(dichroic mirror)である必要がある。励起装置1は、励起光束を試料内の符号11に示すような位置に集光し、蛍光を励起する。励起装置1は、有効開口数が0.03〜0.04であり、集光された励起光束のウエスト半径の、最細部の近傍約420ミクロンの範囲内での変化が2倍を超えないことを保証する。検出装置2は、符号11に示す位置を画像化し、その主な素子が対物レンズ12、鏡筒レンズ13(焦点距離125ミリメートル)及びカメラ14(Hamamatsu Flash4.0sCMOSカメラ)である。カメラの画素数が2048×2048、画素のサイズが6.5×6.5ミクロン、全幅フレームレートが100Hz、すなわち、10ミリ秒/フレームである。ガルバノミラー5は、片方向の10ミリ秒の鋸歯状波で同期的に走査する。試料台3の移動速度が100ミクロン/秒、すなわち、1ミクロン/フレームである。運動によるブレが1/200未満であり、無視できる。試料は、屈折率1.45を目標としてマッチングを行い、選択可能なマッチング溶液はHistoDenzを含む。前記システムは、1×1センチメートルの試料に対し、解像度が1ミクロンの三次元画像化を完成するには約16分間が必要とされ、マウスの全脳の蛍光画像化を完成する時間は約5〜6時間であり、従来技術より明らかに優れている。図4の(a)−(c)〜は、前記システムが採集したマウスの脳の蛍光画像化の実例を示し、そのうち、図4の(a)は、1つの厚さが数百ミクロンの脳のスライスの画像化結果を三次元に再構成した冠状断面図を示し、(b)は、脳のスライスの局所範囲内でのニューロン細胞体及び樹状突起の微細構造を示し、(c)は、ある画像化面内で捕獲したニューロン軸索等の細胞精細構造を示す。
【0051】
もう1つの実施例において、図5に示すように、図3と類似する構造を用いているが、パルス光源を用いて光学シートの方法により照明する。ただし、パルス光源4は、作動周波数が30〜100Hzのナノ秒窒素分子/色素レーザが例として用いられ、望遠鏡又は開口絞り(図示しない)を経て、パワー調節、ビーム径調節され、矩形光束を形成し、シリンドリカルミラー5に入射する。シリンドリカルミラーの焦点距離は、100ミリメートルであってもよく、柱面が励起装置1及び検出装置2の光路主軸により画定された平面に垂直する。他の素子は図3に示すシステムと同様である。カメラ撮像がパルス光源と同期的に行われる。作動周波数が100Hzの場合には、システムの三次元画像化能力は図5に示すシステムと同様である。
【0052】
もう1つの実施例において、図6に示すように、多光子走査画像化の構造を用いた。励起装置1及び検出装置2は先端部分の素子を共用する。励起装置1(及び検出装置2)の光路主軸と机上面(地面)の垂直方向とは45°の角度をなす。試料台3は机上面に平行し、試料を載置して試料を画像化位置に移動させる。画像化するときに試料が連続的に水平運動する。励起装置1及び検出装置2の最先端は対物レンズ10(Olympus UMPLFLN 20XW)であり、開口数が0.5、作動距離が3.5ミリメートルである。多光子励起光を発生可能なパルス励起光4は、一般に、フェムト秒レーザ又はピコ秒レーザであり、望遠鏡又は開口絞り(図示しない)を経て、パワー調節、ビーム径調節され、二次元走査手段5に入射し、対物レンズ10の後に、検出方向に垂直な平面において走査するスポット状励起を発生させる。リレーレンズ6、7は、ガルバノミラー5を対物レンズ10の後側焦点面に共役させるためである。反射鏡8、9は走査線をねじり回し、空間的にコンパクトにするためである。ただし、反射鏡9は、長波長側の光を通過させるダイクロイックミラー(dichroic mirror)である。励起装置1の有効開口数が0.5である。励起装置1は、試料内の符号11に示すような位置で励起を発生する。検出装置2は、符号11に示す位置を画像化し、その主な素子は図5に示すシステムと類似する。本システムは、速度よりも信号対雑音比の要求が高い場合に適用される。
【0053】
もう1つの実施例において、図3又は図6に示すシステムと類似する装置において、励起光4が走査手段5に入る前に、1つの光束分割手段を挿入することができる。当該光束分割手段は、1つの励起光束を複数の励起光束に分割して、画像化位置11の範囲内における異なるサブ領域を同時に励起することにより、全体の走査速度を向上させることができる。
【0054】
もう1つの実施例において、図6に示すシステムと類似し、顕微画像化分野の専門家によく知られているように、その検出装置は、その他のタイプの高速検出器、例えば、フォトダイオード(PD)(アバランシェフォトダイオード(APD)を含む)、光電子増倍管等を用いることができる。
【0055】
もう1つの実施例において、図6に示すシステムと類似し、顕微画像化分野の専門家によく知られているように、励起装置1及び検出装置2が共用する先端部分素子は、対物レンズから走査手段まで含み、その後、分離されている検出部分において試料と共役する位置に共焦点ピンホールを更に設けることにより、共焦点走査型画像化の構造を構成することができる。
【0056】
さらにもう1つの実施例において、前述した各システムと類似し、顕微画像化分野の専門家によく知られているように、励起装置が用いた励起光源は、1つ又は複数の発光ダイオード、連続波レーザ、パルスレーザの組み合わせであってもよく、画像化におけるコントラストは、蛍光、弾性散乱光、ラマン散乱、SHG、THG、誘導ラマン散乱等の信号の1種又は組み合わせであってもよい。
【0057】
上述した実施例において、検出方向はいずれも相対運動方向と45°の角度をなす場合のみを挙げたが、その他の応用において、前記角度は、必要に応じて適切に選択することができ、主に、選択された対物レンズの接触角に適応したものである。例えば、解像度の要求がより高いシステムにおいて、開口数がより大きい対物レンズを選択し、それに応じて前記角度を55°〜65°を選択することができる。同様に、相対運動の形式も直線に制限されない。例えば、円周運動は、もう1つの好適な形式とすることもできる。
【0058】
画像化するときに運動が存在し、採集した画像は運動によるブレを有する場合がある。ここでは、運動モードが簡単で一定であるため、1種の解決案として、本発明は、運動ブレを除去する一般的な算法を用いて撮像した画像の品質を効果的に改善することができる。図7Aは静止時に撮像したナノ蛍光ビーズであり、図7Bは1ミリメートル/秒の速度で運動するときに10ミリ秒露光する場合の撮像である。図からわかるように、明らかであるが一致する運動ブレが見られる。デコンボリューション処理により画像の詳細を効果的に復元することができ、その結果を図7Cに示す。もう1つの解決案として、励起時間を制限する方法を用いて運動ブレを抑制することもできる。この場合、特に重要なポイントは、試料中の各々のスポットの励起時間内における運動が解像度の要求に対して無視できるのを保証することである。簡単に言えば、励起時間*運動速度の値は、最小解像度よりも著しく小さければよい。もし解像度要求が1ミクロン、運動速度が1ミリメートル/秒であれば、励起時間が1ミリ秒未満であることが要求される。パルス幅が適切なパルス光源は、この要求を直接に満たすことができる。連続光源は、適切なスイッチング変調により照明に用いられてもよいが、より高い効率のために、連続光源は、走査方式によりスポットに対する短時間励起を実現することもできる。図8に示す例において、顕微鏡の視野は、画像化カメラを参考にして、幅が2000ピクセルである。それに応じて、線形の励起光の幅が約10ピクセルである。励起光が0.01秒内で全視野を走査したとき、1ピクセル毎の実際に励起される時間が約0.01秒/2000*10、すなわち、50マイクロ秒に過ぎない。
【0059】
他方、試料が位置する空間(励起光が励起装置から離れ、試料に入るまでの経路、及び信号光が試料から離れ、検出装置に入るまでの経路を含む)に、屈折率の差が存在すれば、厚い試料は透明性を失う恐れがある。同時に、画像化に大きい収差が生じる恐れがある。良い信号対雑音比及び解像度を得るために、本発明は、前記経路において、透明化/屈折率の均一化処理を行うように提案する。図9は、処理前後の効果の比較を示している。
【0060】
上述した具体的な実施例は、本発明の目的、技術的態様及び有益な効果をさらに詳しく説明したが、上述したものは本発明の具体的な実施例であることに過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、本発明の精神及び範囲内で行われた変形、均等物、改良等の全ても本発明の保護範囲に含まれると理解されるであろう。
【符号の説明】
【0061】
図3において)
1 励起装置
2 検出装置
3 試料台
4 励起光源
5 走査ガルバノミラー
6 リレーレンズ
7 リレーレンズ
8 反射鏡
9 反射鏡又はダイクロイックミラー
10 対物レンズ
11 試料内励起,検出領域
12 対物レンズ
13 鏡筒レンズ
14 カメラ
図5において)
1 励起装置
2 検出装置
3 試料台
4 励起光源
5 シリンドリカルミラー
10 対物レンズ
11 試料内励起,検出領域
12 対物レンズ
13 鏡筒レンズ
14 カメラ
図6において)
1 励起装置
2 検出装置
3 試料台
4 励起光源
5 二次元走査手段
6 リレーレンズ
7 リレーレンズ
8 反射鏡
9 ダイクロイックミラー
10 対物レンズ
11 試料内励起,検出領域
12 鏡筒レンズ
13 カメラ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2019年6月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で検出可能なコントラストを生成するための、少なくとも1つの励起装置と、
検出主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で生成されたコントラストを検出するための、少なくとも1つの検出装置と、
試料と前記励起装置及び前記検出装置との相対運動を発生させるための、少なくとも1つの移動手段と、
を含み、
前記相対運動の方向は、前記励起主軸方向に平行も垂直もせず、前記相対運動の方向は、前記検出主軸方向に平行も垂直もせず、画像化するときの前記相対運動は等速であり且つ中断しない、三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項2】
前記検出装置の有効検出領域において、画像化する立体画素の各々に対応する試料単位は、所定時間以内においてのみ前記励起装置に励起され、前記所定時間内において、前記相対運動による変位は前記顕微鏡の解像度の要求を超えない、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項3】
前記試料が位置する環境において透明な物質が充填され、前記透明な物質と、その時の前記試料とは、屈折率が略同一である、請求項1又は2に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項4】
前記励起装置は、1つ又は複数の発光ダイオード、連続波レーザ、パルスレーザの組み合わせにより、光源を励起する、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項5】
前記検出可能なコントラストは、蛍光、弾性散乱光、ラマン散乱、SHG、THG、誘導ラマン散乱等の信号の1種又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項6】
前記励起装置は、パルス時間が前記所定時間以内のパルスを用い、光学シート照明の方法により試料を励起する、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項7】
前記励起装置は、パルスレーザ、パルス作動の発光ダイオード、又は異なる方法で変調された連続光源の組み合わせである、請求項6に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項8】
前記励起装置と前記検出装置とは同期的に作動する、請求項6に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項9】
前記励起装置は、1つ又は複数のシリンドリカルミラー、シリンドリカルレンズ、変形ミラー、透過型位相素子、反射型位相素子を含むことによって、前記光学シート照明を形成する、請求項6に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項10】
前記励起装置は、検出領域内において前記検出装置の検出方向に略垂直な励起光束を少なくとも1つ発生する、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項11】
前記励起装置は、前記励起光束を走査移動させることができる走査手段を少なくとも1つ含む、請求項10に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項12】
前記励起光束は、検出領域内で光束方向に沿った光束半径の変化が3倍を超えない、請求項11に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項13】
前記走査手段は、1つ又は複数の走査ガルバノミラー、共振走査鏡、回転多面鏡、音響光学変調器の組み合わせを含む、請求項11に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項14】
前記検出装置は、マトリックス状の感光素子を画像化素子としたものであり、前記画像化素子は前記走査手段と同期的に作動する、請求項11に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項15】
前記検出装置は、前記走査手段と同期的に作動する走査解除手段を含み、さらにアレイ又はマトリックス状の感光素子を画像化素子としたものである、請求項11に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項16】
前記励起装置は、1つの励起光束を複数の励起光束に分割するための光束分割手段を1つ含む、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項17】
前記光束分割手段は、1つ又は複数のレンズアレイ、反射鏡アレイ、ハーフミラーアレイの組み合わせを含むか、あるいは、固定又は変調可能なフェーズフィルタ又はデジタルマイクロミラーアレイを含む、請求項16に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項18】
前記励起装置及び前記検出装置は走査型共焦点画像化の構造を構成する、請求項1に記載の三次元画像化可能な顕微鏡。
【請求項19】
少なくとも1つの励起装置を利用して、励起主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で検出可能なコントラストを生成すること、及び
少なくとも1つの検出装置を利用して、検出主軸方向に沿って試料の検出すべき領域内で生成されたコントラストを検出すること(前記検出装置と前記励起装置とは、素子を共用するのが排除されない)、
を含み、
前記試料と前記励起装置、前記検出装置との相対運動の方向は、前記励起主軸方向に平行も垂直もせず、前記相対運動の方向は、前記検出主軸方向に平行も垂直もせず、画像化するときの前記相対運動は等速であり且つ中断しない、三次元顕微画像化方法。
【請求項20】
デコンボリューション等の方法により前記相対運動によるブレを除去することをさらに含む、請求項19に記載の三次元顕微画像化方法。
【国際調査報告】