(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-537764(P2019-537764A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】多変量データ内の異常の検出
(51)【国際特許分類】
G06F 17/18 20060101AFI20191129BHJP
G06F 16/909 20190101ALI20191129BHJP
G06F 16/26 20190101ALI20191129BHJP
G06Q 10/00 20120101ALI20191129BHJP
【FI】
G06F17/18 Z
G06F16/909
G06F16/26
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2019-512303(P2019-512303)
(86)(22)【出願日】2017年8月31日
(85)【翻訳文提出日】2019年4月3日
(86)【国際出願番号】US2017049749
(87)【国際公開番号】WO2018045241
(87)【国際公開日】20180308
(31)【優先権主張番号】62/382,629
(32)【優先日】2016年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/367,012
(32)【優先日】2016年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FIREWIRE
(71)【出願人】
【識別番号】519067792
【氏名又は名称】アップテイク テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィネス,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ホレル,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リ,ツオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツォーク,ジェームス
【テーマコード(参考)】
5B056
5L049
【Fターム(参考)】
5B056BB64
5B056BB81
5L049CC15
(57)【要約】
本明細書では、アセットからの信号データ及び/又は他のデータ等、アセット関連データソースから受信した多変量データ内の異常を検出するシステム、デバイス及び方法を開示する。一例によると、プラットフォームは元の座標空間内のアセットから多変量データを受信し、比較的より少ない次元数を有する変換後の座標空間に元の座標空間内のデータを変換できる。加えて、プラットフォームは変換後の座標空間内のデータを標準化し、標準化したデータと、通常のアセット動作を反映した訓練データを介して事前に定義された閾値の組との間の比較に基づいて標準化したデータを修正できる。その後、プラットフォームは修正したデータを元の座標空間に逆変換し、異常を検出する分析を実行できる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューティングデバイスであって、
ネットワークインタフェースと、
少なくとも1つのプロセッサと、
非一時的コンピュータ可読媒体と、
前記非一時的コンピュータ可読媒体上に格納されたプログラム命令とを備え、前記プログラム命令は前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたとき、コンピューティングデバイスに作用し、
アセットから前記ネットワークインタフェースを介して、データに含まれる変数の数と等しい次元数を有する元の座標空間内の多変量データを受信し、
前記受信した多変量データを前記元の座標空間から、前記元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に変換し、
前記変換後の座標空間内の前記データを標準化し、
閾値の組に基づいて前記変換後の座標空間内の前記標準化したデータを修正し、前記閾値の組は通常のアセット動作を反映した訓練データに基づいて定義され、
前記修正したデータを前記変換後の座標空間から前記元の座標空間に逆変換し、
前記元の座標空間内の前記逆変換したデータを分析し異常を識別する、コンピューティングデバイス。
【請求項2】
前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、前記受信した多変量データを前記元の座標空間から、前記元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に変換する前記プログラム命令は、コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
前記元の座標空間内の前記受信した多変量データに主成分分析(PCA)を適用するプログラム命令を備え、前記PCAを適用することは、
前記受信した多変量データ内の多様性を記述する主成分の組を識別し、
前記主成分の組に基づいて、前記元の座標空間内の前記受信した多変量データを前記変換後の座標空間に線形変換し、前記変換後の座標空間の各次元は前記主成分の組に属する主成分に対応する、請求項1に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項3】
前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、前記元の座標空間内の前記逆変換し修正したデータを分析し異常を識別する前記閾値の組は、前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
前記受信した多変量データと、前記元の座標空間内の前記逆変換し修正したデータとを比較し、
前記受信した多変量データと前記逆変換し修正したデータとの間の少なくとも1つの変数値内の統計的に有意な相違を識別するプログラム命令を備える、請求項1に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項4】
前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、前記変換後の座標空間内の前記データを標準化する前記プログラム命令は、前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
前記変換後の座標空間内の前記データを再スケーリングし、前記再スケーリングしたデータは前記変換後の座標空間の原点を中心とし標準正規分布に従うプログラム命令を備える、請求項1に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項5】
コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、前記閾値の組に基づいて前記変換後の座標空間内の前記標準化したデータを修正する前記プログラム命令は、前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
前記変換後の座標空間内の各次元に対する所定の標準化したデータ点の値と、その次元に対して定義された閾値とを比較し、
1つ以上の前記標準化したデータ点の値がその変数に対する前記定義された閾値を超えるかどうかを決定するプログラム命令を備える、請求項1に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項6】
前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、前記閾値の組に基づいて前記変換後の座標空間内の前記標準化したデータを修正する前記プログラム命令は、前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
定義された閾値を超える1つ以上の次元の値を有する前記変換後の座標空間内の標準化したデータ点を識別し、
定義された閾値と等しくなるまで、前記1つ以上の次元の値の少なくとも1つの大きさを低減するプログラム命令を備える、請求項1に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項7】
前記1つ以上の次元の値を低減することはベクトル収縮及び成分収縮の少なくとも1つ以上に基づく、請求項6に記載のコンピューティングデバイス。
【請求項8】
その上に格納され、コンピューティングシステムに作用して実行可能な非一時的コンピュータ可読媒体であって、
受信した多変量データを元の座標空間から、前記元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に変換し、
前記変換後の座標空間内の前記データを標準化し、
閾値の組に基づいて前記変換後の座標空間内の前記標準化したデータを修正し、前記閾値の組は通常のアセット動作を反映した訓練データに基づいて定義され、
前記修正したデータを前記変換後の座標空間から前記元の座標空間に逆変換し、
前記元の座標空間内の前記逆変換したデータを分析し異常を識別する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項9】
前記コンピューティングシステムに作用して実行可能であり、前記受信した多変量データを前記元の座標空間から、前記元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に変換する前記プログラム命令は、コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
前記元の座標空間内の前記受信した多変量データに主成分分析(PCA)を適用し、前記PCAを適用することは、
前記受信した多変量データ内の多様性を記述する主成分の組を識別することと、
前記主成分の組に基づいて、前記元の座標空間内の前記受信した多変量データを前記変換後の座標空間に線形変換し、前記変換後の座標空間の各次元は前記主成分の組に属する主成分に対応することと、を含むプログラム命令を備える、請求項8に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記コンピューティングシステムに作用して実行可能であり、前記元の座標空間内の前記逆変換し修正したデータを分析し異常を識別する前記閾値の組は、前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
前記受信した多変量データと、前記元の座標空間内の前記逆変換し修正したデータとを比較し、
前記受信した多変量データと、前記逆変換し修正したデータとの間の少なくとも1つの変数値内の統計的に有意な相違を識別するプログラム命令を備える、請求項8に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記コンピューティングシステムに作用して実行可能であり、前記変換後の座標空間内の前記データを標準化する前記プログラム命令は、前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
前記変換後の座標空間内の前記データを再スケーリングし、前記再スケーリングしたデータは前記変換後の座標空間の原点を中心とし標準正規分布に追従するプログラム命令を備える、請求項8に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
コンピューティングシステムに作用して実行可能であり、前記閾値の組に基づいて前記変換後の座標空間内の前記標準化したデータを修正する前記プログラム命令は、前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
前記変換後の座標空間内の各次元に対する所定の標準化したデータ点の値と、その次元に対して定義された閾値とを比較し、
1つ以上の前記標準化したデータ点の値がその変数に対する前記定義された閾値を超えるかどうかを決定するプログラム命令を備える、請求項8に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記コンピューティングシステムに作用して実行可能であり、前記閾値の組に基づいて前記変換後の座標空間内の前記標準化したデータを修正する前記プログラム命令は、前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
定義された閾値を超える1つ以上の次元の値を有する前記変換後の座標空間内の標準化したデータ点を識別し、
定義された閾値と等しくなるまで、前記1つ以上の次元の値の少なくとも1つの大きさを低減するプログラム命令を備える、請求項8に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記1つ以上の次元の値を低減することはベクトル収縮及び成分収縮の少なくとも1つ以上に基づく、請求項13に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
コンピュータ実行方法であって、
アセットからネットワークインタフェースを介して、データに含まれる変数の数と等しい次元数を有する元の座標空間内の多変量データを受信することと、
前記受信した多変量データを前記元の座標空間から、前記元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に変換することと、
前記変換後の座標空間内の前記データを標準化することと、
閾値の組に基づいて前記変換後の座標空間内の前記標準化したデータを修正し、前記閾値の組は通常のアセット動作を反映した訓練データに基づいて定義されることと、
前記修正したデータを前記変換後の座標空間から前記元の座標空間に逆変換することと、
前記元の座標空間内の前記逆変換したデータを分析し異常を識別することと、を備える方法。
【請求項16】
前記受信した多変量データを前記元の座標空間から、前記元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に変換することは更に、
前記元の座標空間内の前記受信した多変量データに主成分分析(PCA)を適用することを備え、前記PCAを適用することは、
前記受信した多変量データ内の多様性を記述する主成分の組を識別することと、
前記主成分の組に基づいて、前記元の座標空間内の前記受信した多変量データを前記変換後の座標空間に線形変換し、前記変換後の座標空間の各次元は前記主成分の組に属する主成分に対応することと、
を備える、請求項15に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項17】
前記元の座標空間内の前記逆変換し修正したデータを分析し異常を識別する前記閾値の組は更に、
前記受信した多変量データと、前記元の座標空間内の前記逆変換し修正したデータとを比較することと、
前記受信した多変量データと、前記逆変換し修正したデータとの間の少なくとも1つの変数値内の統計的に有意な相違を識別することと、
を備える、請求項15に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項18】
前記変換後の座標空間内の前記データを標準化することは更に、
前記変換後の座標空間内の前記データを再スケーリングし、前記再スケーリングしたデータは前記変換後の座標空間の原点を中心とし、標準正規分布に追従することを備える、請求項15に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項19】
前記閾値の組に基づいて前記変換後の座標空間内の前記標準化したデータを修正することは更に、
前記変換後の座標空間内の各次元に対する所定の標準化したデータ点の値と、その次元に対して定義された閾値とを比較することと、
1つ以上の前記標準化したデータ点の値がその変数に対する前記定義された閾値を超えるかどうかを決定することと、
を備える、請求項15に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項20】
前記閾値の組に基づいて前記変換後の座標空間内の前記標準化したデータを修正することは、前記コンピューティングデバイスに作用して実行可能であり、
定義された閾値を超える1つ以上の次元の値を有する前記変換後の座標空間内の標準化したデータ点を識別し、
定義された閾値と等しくなるまで前記1つ以上の次元の値の少なくとも1つの大きさを低減するプログラム命令を備える、請求項15に記載のコンピュータ実行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、全体として参照によって本明細書に組み込まれる米国仮特許出願番号62/382,629、出願日2016年9月1日、発明の名称「多変量データ内の異常の検出」に対しての優先権を主張する。また、本出願は、全体として参照によって本明細書に組み込まれる米国非仮出願番号15/367,012、出願日2016年12月1日、発明の名称「多変量データ内の異常の検出」に対しての優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
現在、機械(本明細書では「アセット(asset、有用物)」とも呼ばれる)は多くの産業のいたるところにある。貨物を国々に搬送する機関車から作物を収穫する農機具まで、アセットは日常生活において重要な役割を果たす。アセットが果たす役割の増大のために、動作中のアセットを監視し分析することもますます望まれるようになっている。これを容易にするために、アセットの属性を監視し、アセットにおける異常状態を検出する機構が開発されている。例えば、アセットを監視する1つの方式は一般に、アセット全体に分散させた様々なセンサ及び/又はアクチュエータを含み、それらはアセットの動作状態を監視し、アセットの動作を反映した信号をオンアセットコンピュータに提供する。1つの代表的な例として、アセットが機関車である場合、センサ及び/又はアクチュエータは、他の例の中でも、温度、圧力、液面、電圧及び/又は速度等のパラメータを監視できる。1つ以上のセンサ及び/又はアクチュエータによって出力された信号が所定の値に到達した場合、オンアセットコンピュータは続いて、「フォルトコード」等の異常状態インジケータを生成でき、それは異常状態がアセット内に発生したことの指示である。オンアセットコンピュータは、アセットの停止、再開等、アセットにおいて発生可能な他のイベントを示すデータの監視、検出及び生成を行うように構成することもできる。
【0003】
オンアセットコンピュータは、信号データ、異常状態インジケータ、及び/又はアセットイベントインジケータ等の動作データを含むアセットの属性を反映したデータを、更に分析するためにリモート位置に送信するように構成することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動作中のアセットの監視及び分析に興味がある組織はアセットデータプラットフォームを展開でき、それは様々な種類のアセット関連データを受信し分析するように構成される。例えば、アセットデータプラットフォームは、アセット動作データ、アセット構成データ、アセット位置データ等、アセットの属性を示すデータを受信し分析するように構成できる。別の例として、データ分析プラットフォームは、検査、保守及び/又は修理に関するデータ等、アセット整備データを受信し分析するように構成できる。更に別の例として、データ分析プラットフォームは、気象データ、交通データ等、アセット動作に関する外部データを受信し分析するように構成できる。データ分析プラットフォームは、様々な他の種類のアセット関連データを同様に受信し分析することもできる。
【0005】
アセットデータプラットフォームは、様々な異なるソースからこのアセット関連データを受信できる。一例として、データ分析プラットフォームはアセット自体からアセット関連データを受信することができる。別の例として、アセットデータプラットフォームはアセット関連データを既に受信した及び/又は生成したいくつかの他のプラットフォーム又はシステム(例えば、組織の既存のプラットフォーム)からアセット関連データを受信することができる。更に別の例として、アセットデータプラットフォームは、例えば、アセット整備データレポジトリ、交通データプロバイダ及び/又は気象データプロバイダ等、外部データソースからアセット関連データを受信することができる。アセットデータプラットフォームは、様々な他のソースから同様にアセット関連データを受信することもできる。
【0006】
動作中、データソースで問題が発生し、アセットデータプラットフォームによって受信されるデータ内に異常をもたらす可能性がある。例えば、故障した又は誤動作中の特定のセンサ及び/又はアクチュエータ等、所定のアセットで問題が生じ、所定のアセットから受信したデータ内に異常をもたらす可能性がある。更に、これらの異常は、不要なアラートや不正確な予測等、アセットデータプラットフォームにおいて不要な影響を生じさせる可能性がある。従って、アセットデータプラットフォームはアセット関連データソースから受信したデータ上で異常検出を実行することが一般に望ましい。
【0007】
アセットデータプラットフォームによって受信される所定のアセット関連データは、本質的に多変量であってもよい。例えば、アセットは一般にセンサ及び/又はアクチュエータの組を含み、それぞれ(1)エンジン温度、燃料液面高さ、R.P.M等、アセットの動作中のそれぞれの変数(例えば、パラメータ)を監視し、(2)監視した変数の時系列の信号値を出力し、ここでこのような各値はその値が測定された時点に対応する。従って、アセットの信号データは時系列の多変量データの形態を取ってもよく、ここで時系列内の個々のデータ点はそれぞれの時点でアセットのセンサ及び/又はアクチュエータによって測定された信号値の組を備える(加えて、アセット及び/又はアセットデータプラットフォームはアセットの信号データから他の変数を抽出してもよく、その場合、これらの抽出した変数は多変量データに含まれてもよい)。この点では、アセットによって監視されている変数の組は元の座標空間の異なる次元として考えてもよい。しかし、多くのこれらの変数は相関性があってもよく、多変量データ内の異常の検出をより困難にする可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、アセットから受信した信号データ及び/又は他のデータ等、アセット関連データソースから受信した多変量データ内の異常を検出する改善されたシステム、デバイス及び方法を開示する。本開示に従って、アセットデータプラットフォームは異常検出処理を実行するように構成でき、(1)データに含まれる変数の数と等しい次元数を有する元の座標空間内の多変量データ(例えば、アセットからのデータ)を受信することと、(2)元の座標空間から、元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に、受信した多変量データを変換(又は「射影」)することと、(3)変換後の座標空間内のデータを標準化することと、(4)標準化したデータと閾値の組との間の比較に基づいて、変換後の座標空間内の標準化したデータを修正し、それらの閾値は通常のアセットの動作を反映した訓練データに基づいて定義されることと、(5)修正したデータを変換後の座標空間から元の座標空間に逆変換(又は射影)することと、(6)元の座標空間内の変換後のデータを分析し異常を識別することとを一般に含む。この開示された異常検出処理は様々な形態を取り、様々な態様で実施できる。
【0009】
一例の実施形態によると、アセットデータプラットフォームは、データに含まれる変数の数と等しい次元数を有する元の座標空間内のアセットからの信号データ及び/又は他のデータ等の多変量データを受信できる。この受信した多変量データは「観測データ」とも呼ばれる。観測データを受信した後、アセットデータプラットフォームは、元の座標空間内のデータを標準化すること等によって、変換後の座標空間に射影する前に受信した観測データを必要に応じて事前に処理することもできる。
【0010】
続いて、アセットデータプラットフォームは、主成分分析(PCA)等の技術を用いて元の座標空間から変換後の座標空間に観測データを変換でき、その技術は線形変換の処理に基づき、相関性がある変数値を有する元のデータの組から新しい相関のない変数(主成分(PC)と呼ばれる)を生成できる。これを実現するために、変換は、観測データに関連した元の座標空間に属する(例えば、変数に対応する)次元を、データ内の多様性の「隠れた」原因を表すのに十分なより少ない数のPCに縮退できる。例えば、観測データ点が多数の変数値を含み、従って多くの次元数を備えた元の座標空間を占有する場合、元の観測データにPCAを適用することで、縮退させた次元数を含む変換後の座標空間にそのデータを変換でき、変換後の観測データは上記のPCの形態を取る縮退させた数の変数値を備える。
【0011】
観測データを変換後の座標空間に変換した後、アセットデータプラットフォームは変換後の観測データを標準化できる。この標準化は様々な形態を取ることができる。一例によると、標準化は標準正規分布(例えば、平均0、標準偏差1を有する)に追従するようにデータを基本的に再スケーリングするzスコア標準化を含んでもよい。このような標準化の結果として、データは変換後の座標空間の原点を中心とすることができる。標準化は他の形態を同様に取ることもできる。
【0012】
変換後の座標空間内の変換後の観測データを標準化した後、アセットデータプラットフォームは標準化したデータを閾値の組と比較でき、それらの閾値は通常のアセット動作を反映した訓練データに基づいて定義される。好ましい実施形態では、この閾値の組は変換後の座標空間内の各変数のそれぞれの閾値を備えてもよく、ここで各変数の閾値は通常のアセット動作中の変数の最大期待値を表す。しかし、閾値の組は他の形態を同様に取ることもできる。アセットデータプラットフォームは、様々な態様の訓練データに基づいてこの閾値の組を定義できる。
【0013】
一実施形態では、訓練データに基づいて変換後の座標空間の閾値の組を定義する機能は、(1)上記のものと同様に(例えば、PCAを用いて)元の座標空間から変換後の座標空間に訓練データを変換することと、(2)上記のものと同様に変換後の座標空間内の変換後の訓練データを標準化することと、(3)変換後の座標空間内の各変数に対して、標準化した訓練データ値の標準偏差を用いて変換後の座標空間内の変数の最大期待値を決定することとを含んでもよい。この点では、閾値の組は変換後の座標空間の原点を中心とする多次元閉形状(例えば、円、楕円等)の境界を実質的に定義できる。閾値の組は同様の他の態様で定義することもできる。
【0014】
アセットデータプラットフォームは、標準化した観測データと閾値の組との間の比較を様々な態様で実行できる。好ましい例では、アセットデータプラットフォームは変換後の座標空間内の各変数の観測データ点の値と、その変数の定義された閾値とを比較し、そのデータ点の値が定義された閾値を超えるかどうかを決定できる。しかし、アセットデータプラットフォームは他の態様で同様にこの比較を実行することもできる。
【0015】
標準化した観測データと閾値の組との間の比較に基づいて、アセットデータプラットフォームは続いて、変換後の座標空間内の標準化した観測データを修正できる。例えば、観測データ点が変数の定義された閾値を超える変換後の座標空間内の少なくとも1つの変数値を備えることをアセットデータプラットフォームが比較に基づいて決定した場合、アセットデータプラットフォームは観測データ点を修正し、少なくとも1つの変数値がもはや定義された閾値を超えないようにできる。言い換えると、アセットデータプラットフォームは1つ以上の観測データ点の値を「収縮」させ、そのデータ点が閾値の組によって囲まれた多次元閉形状内(又は少なくともそれにより近く)にあるようにできる。アセットデータプラットフォームは様々な態様でこの修正を実行できる。
【0016】
一実施形態では、アセットデータプラットフォームは定義された閾値を超える任意の変数値を定義された閾値と置換することで、変換後の座標空間内の観測データ点を変数毎に修正できる。例えば、所定のデータ点が変換後の座標空間内の定義された閾値を超える2つの変数を備える場合、アセットデータプラットフォームはこのような各変数の値をその変数の定義された閾値と置換し、それらの2つの変数値の大きさの低減をもたらす。
【0017】
別の実施形態では、アセットデータプラットフォームは、調整された態様で複数のデータ点の値を修正することで、変換後の座標空間内の観測データ点を修正できる。例えば、変換後の座標空間内の所定の点が変換後の座標空間内の閾値の組によって取り囲まれた多次元閉形状の外に位置することが決定された場合、アセットデータプラットフォームは変数値の所定の点の組を修正し、そのデータ点が変換後の座標空間内の多次元閉形状上の最も近い点に移動されるようにできる。アセットデータプラットフォームは、他の態様で同様に変換後の座標空間内の観測データ点を修正できる。
【0018】
変換後の座標空間内の観測データを修正した後、アセットデータプラットフォームは修正した観測データを変換後の座標空間から元の座標空間に逆変換するように構成できる。実際、変換後の座標空間内で修正され、続いてこの態様で元の座標空間に射影された観測データ点は、元の座標空間内の受信した観測データとは有意に異なる少なくとも1つの変数値を有してもよい。言い換えると、元の座標空間内の少なくとも1つの次元において、変換前の観測データ点と変換後の観測データ点との間には「ギャップ」があってもよく、それは異常を示してもよい。
【0019】
修正した観測データを逆変換した後、アセットデータプラットフォームはこのようなデータの後処理を行うように構成することもできる。
【0020】
最後に、アセットデータプラットフォームは、元の座標空間内の変換後の観測データの分析を実行し異常を識別するように構成できる。例えば、アセットデータプラットフォームは、ある期間上で元の座標空間内の変換前の観測データと比べて変換後の観測データがどのようであるかを分析し、観測データ内の1つ以上の変数が異常であるように見える瞬間(例えば、変換後及び変換前の観測データの間の少なくとも1つの変数値に統計的に有意な相違が存在する瞬間)を識別できる。この分析に基づいて、アセットデータプラットフォームはこのような異常の通知を生成し、プラットフォームの所望のユーザに提示できる。アセットデータプラットフォームは、上記の処理によって生成されるデータに基づいて様々な他の機能を実行することもできる。
【0021】
上で説明したように、本明細書で提供される例は、アセットからの信号データ及び/又は他のデータ等、アセット関連データソースから受信した多変量データ内の異常を検出することに関する。一形態では、コンピューティングデバイスが提供される。コンピューティングデバイスは、少なくともネットワークインタフェース、少なくとも1つのプロセッサ、非一時的コンピュータ可読媒体、及び非一時的コンピュータ可読媒体上に格納したプログラム命令を備える。プログラム命令は少なくとも1つのプロセッサによって実行可能であり、コンピューティングデバイスに作用し、(1)データに含まれる変数の数に等しい次元数を有する元の座標空間内の多変量データを、アセットからネットワークインタフェースを介して受信し、(b)受信した多変量データを元の座標空間から、元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に変換し、(c)変換後の座標空間内のデータを標準化し、(d)閾値の組に基づいて変換後の座標空間内の標準化したデータを修正し、閾値の組は通常のアセット動作を反映した訓練データに基づいて定義され、(e)修正したデータを変換後の座標空間から元の座標空間に逆変換し、(f)元の座標空間内の逆変換したデータを分析し異常を識別する。他の形態では、非一時的コンピュータ可読媒体とコンピュータ実行方法が提供され、それはコンピューティングデバイスと同じ及び/又は実質的に同様の機能を実行する。
【0022】
好ましくは、開示された処理は多変量データ内の異常のより速く及び/又はより正確な検出をもたらすことができる。
【0023】
当業者は、以降の開示を読むことでこれらの並びに他の多くの形態を理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本例の実施形態を実現可能な一例のネットワーク構成を示す図である。
【
図2】一例のアセットを示す簡略化されたブロック図である。
【
図3】本例の異常状態インジケータ及びセンサ基準を示す概念図である。
【
図4】一例のプラットフォームを示す構造図である。
【
図5】一例のプラットフォームの機能ブロック図である。
【
図6】変換後の座標空間に対して閾値の組を定義することを示す一例のフロー図である。
【
図7】本例のプラットフォームによって獲得される訓練データを示す概念図である。
【
図8】変換後の座標空間に変換される獲得された訓練データを示す概念図である。
【
図9】変換後の座標空間内で標準化される変換後の訓練データを示す概念図である。
【
図10】変換後の座標空間内の閾値の組を示す概念図である。
【
図11】受信したアセット観測データ内の異常を検出することを示す一例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以降の開示は、添付の図面及びいくつかの例示的な状況を参照する。このような参照は説明のためだけにすぎず、従って限定することを意味しないと当業者は理解するであろう。開示されるシステム、デバイス及び方法の一部又は全ては、それぞれ本明細書で想定される様々な態様で再配置、組合せ、追加及び/又は除去することもできる。
I.本例のネットワーク構成
【0026】
ここで図面を参照すると、
図1は本例の実施形態を実現可能な一例のネットワーク構成100を示す。図のように、ネットワーク構成100はそのコアにリモートコンピューティングシステム102を含み、それはアセットデータプラットフォームとして構成でき、代表的なアセット106と108、代表的なデータソース110等の1つ以上のデータソース、及び代表的なクライアントステーション112等の一つ以上の出力システムと、通信ネットワーク104を介して通信できる。当然のことながら、ネットワーク構成は様々な他のシステムを同様に含んでもよい。
【0027】
概して、アセットデータプラットフォーム102(本明細書では「アセット状態監視システム」とも呼ばれる)は1つ以上のコンピュータシステムの形態を取ってもよく、それらはアセット関連データの受信、取込み、処理、分析、及び/又はアクセスを提供するように構成される。例えば、プラットフォームはハードウェア構成要素及びソフトウェア構成要素を有する1つ以上のサーバ(又は同様のもの)を含んでもよく、それらは本明細書で開示される機能の1つ以上を実行し、アセット関連データの受信、取込み、処理、分析、及び/又はアクセスを提供するように構成される。加えて、プラットフォームは1つ以上のユーザインタフェース構成要素を含み、プラットフォームユーザがプラットフォームとやり取りすることを可能にする。実際、これらのコンピューティングシステムは単一の物理的な位置に配置しても、複数の位置の間に分散させてもよく、システムバス、通信ネットワーク(例えば、プライベートネットワーク)又はいくつかの他の接続機構を介して通信可能なようにリンクできる。更に、プラットフォームは、他の例の中でも、TPL Dataflow又はNiFi等のデータフロー技術に従ってデータを送受信するように配置できる。プラットフォームは他の形態を同様に取ることもできる。アセットデータプラットフォーム102は、
図4を参照しながら以降で更に詳しく説明する。
【0028】
図1に示したように、アセットデータプラットフォーム102は、ネットワーク構成100内の1つ以上のアセット、データソース及び/又は出力システムと、通信ネットワーク104を介して通信を行うように構成できる。例えば、アセットデータプラットフォーム102は、通信ネットワーク104を介して、1つ以上のアセット及び/又はデータソースによって送信されたアセット関連データを受信できる。別の例として、アセットデータプラットフォーム102は、通信ネットワーク104を介してアセット関連データ及び/又はコマンドを送信し、クライアントステーション、作業指示システム、部品発注システム等の出力システムによって受信できる。アセットデータプラットフォーム102は、通信ネットワーク104を介して他の種類の通信で同様に接続することもできる。
【0029】
一般に、通信ネットワーク104は、アセットデータプラットフォーム102と、ネットワーク構成100内の1つ以上のアセット、データソース及び/又は出力システムとの間のデータの送信を容易にするように構成された1つ以上のコンピューティングシステム及びネットワーク基盤を含んでもよい。通信ネットワーク104は、1つ以上のワイドエリアネットワーク(WAN)及び/又はローカルエリアネットワーク(LAN)であってもよく、それを含んでもよく、それは有線であっても無線であってもよく、セキュアな通信をサポートしてもよい。いくつかの例では、通信ネットワーク104は、他のネットワークの中でも、1つ以上のセルラネットワーク及び/又はインターネットを含んでもよい。通信ネットワーク104は、LTE、CDMA、GSM(登録商標)、LPWAN、WiFi、Bluetooth(登録商標)、Ethernet、HTTP/S、TCP、CoAP/DTLS等の1つ以上の通信プロトコルに従って動作できる。当然のことながら、通信ネットワーク104は単一のネットワークとして示されているが、通信ネットワーク104はそれら自体が通信可能なようにリンクされた複数の別個のネットワークを含んでもよい。更に、本例の場合、通信ネットワーク104はネットワーク構成要素の間のセキュア通信を容易にできる(例えば、暗号化又は他のセキュリティ手段によって)。通信ネットワーク104は他の形態を同様に取ることもできる。
【0030】
更に、図示していないが、アセットデータプラットフォーム102と、1つ以上のアセット、データソース及び/又は出力システムとの間の通信経路は1つ以上の中間システムを含んでもよい。例えば、1つ以上のアセット及び/又はデータソースは、アセットゲートウェイ又は組織の既存のプラットフォーム(図示せず)等の1つ以上の中間システムにアセット関連データを送信でき、アセットデータプラットフォーム102は続いて、1つ以上の中間システムからアセット関連データを受信するように構成できる。別の例として、アセットデータプラットフォーム102は、ホストサーバ(図示せず)等の一つ以上の中間システムを介して出力システムと通信できる。多くの他の構成も可能である。
【0031】
一般に、アセット106と108は、1つ以上の動作(分野に基づいて定義可能)を実行するように構成した任意のデバイスの形態を取ってもよく、所定のアセットの動作及び/又は構成等、アセットの属性を示すデータを送信するように構成した装置を含んでもよい。このデータは様々な形態を取ることができ、その例は、信号データ(例えば、センサ/アクチュエータのデータ)、フォルトデータ(例えば、フォルトコード)、アセットの位置データ、アセットの識別データ等を含んでもよい。
【0032】
アセットの種類の代表的な例は、他の例の中でも、輸送機械(例えば、機関車、航空機、乗用車、セミトレーラトラック、船舶等)、産業機械(例えば、採掘装置、建設機械、処理装置、組立て装置等)、医療機械(例えば、医療用撮像装置、手術用装置、医療用監視システム、医療用研究装置等)、ユーティリティ機械(例えば、タービン、太陽光発電所等)、及び無人航空機を含んでもよい。加えて、所定の各種アセットは様々な異なる構成(例えば、ブランド、製造元、モデル、ファームウェアバージョン等)を有してもよい。
【0033】
従って、いくつかの例において、アセット106と108はそれぞれ同じ種類(例えば、他の例の中でも、機関車又は航空機の一団、風力タービンのグループ、フライス盤の集まり、又は磁気共鳴撮像(MRI)機械)であってもよく、おそらく同じ構成(例えば、同じブランド、製造元、モデル、ファームウェアバージョン等)を有してもよい。他の例では、アセット106と108は異なるアセットの種類又は異なる構成(例えば、異なるブランド、製造元、モデル及び/又はファームウェアバージョン)を有してもよい。例えば、アセット106と108は、他の多くの例の中でも、作業現場(例えば、掘削現場)又は製造施設の装置の異なる部分であってもよい。当業者には明らかなように、これらはアセットのいくつかの例にすぎず、他の多くのものも可能であり、本明細書で想定される。
【0034】
アセットの種類及び/又は構成に依存して、アセットは1つ以上のそれぞれの動作を実行するように構成した1つ以上のサブシステムを含んでもよい。例えば、輸送アセットの状況では、サブシステムは、他の多くの例の中でも、エンジン、トランスミッション、ドライブトレイン、燃料システム、バッテリシステム、排気システム、ブレーキシステム、電気システム、信号処理システム、発電機、ギアボックス、ロータ、及び油圧システムを含んでもよい。実際、アセットの複数のサブシステムは、アセットを動作させるために並列に又は順次動作できる。代表的なアセットは、
図2を参照しながら以降で更に詳しく説明する。
【0035】
一般に、データソース110は、データを収集、格納及び/又は提供するように構成した1つ以上のコンピューティングシステムであってもよく、それらを含んでもよく、データはアセットに関連するか、もしくはアセットデータプラットフォーム102によって実行される機能に関連している。例えば、データソース110は、アセットから発生する動作データ(例えば、経時的な動作データ、訓練データ等)を収集し提供することもでき、その場合、データソース110はこのようなアセット動作データの代わりのソースとして機能することもできる。別の例として、データソース110は、アセットから発生していないデータを提供するように構成でき、それは本明細書では「外部データ」とも呼ばれる。このようなデータソースは様々な形態を取ることができる。
【0036】
一実施形態において、データソース110は環境データソースの形態を取ることができ、それはアセットを動作させている環境のいくつかの特性を示すデータを提供するように構成される。環境データソースの例は、他の例の中でも、気象データサーバ、全地球的航法衛星システム(GNSS)サーバ、地図データサーバ、及び所定のエリアの自然及び人工形状に関する情報を提供する地形データサーバを含む。
【0037】
別の実施形態では、データソース110はアセット管理データソースの形態を取ることができ、それはエンティティ(例えば、他のアセット)のイベント又はステータスを示すデータを提供し、アセットの動作又は整備(例えば、アセットがいつどこで動作するか又は整備を受けるか)に影響を及ぼすこともできる。アセット管理データソースの例は、他の例の中でも、アセット上で実行される及び/又は実行するように予定されている検査、整備、保守、及び/又は修理に関する情報を提供するアセット整備サーバと、航空、水上及び/又は地上交通に関する情報を提供する交通データサーバと、特定の日付及び/又は特定の時刻におけるアセットの所望の経路及び/又は位置に関する情報を提供するアセット予定サーバと、欠陥検出器システムの近傍を通過するアセットの1つ以上の動作状態に関する情報を提供する欠陥検出器システム(「ホットボックス」検出器としても知られる)と、特定の供給者が在庫を有する部品及びその価格に関する情報を提供する部品供給者サーバとを含む。
【0038】
データソース110は他の形態を取ることもでき、その例は、他の例の中でも、液体分析の結果に関する情報を提供する液体分析サーバと、消費電力に関する情報を提供する電力網サーバとを含んでもよい。当業者には明らかなように、これらはデータソースのいくつかの例にすぎず、他の多くのものも可能である。
【0039】
実際、アセットデータプラットフォーム102は、データソースによって提供されるサービスに「署名」することでデータソース110からデータを受信することもできる。しかし、アセットデータプラットフォーム102は他の態様で同様にデータソース110からデータを受信することもできる。
【0040】
クライアントステーション112は、アセットデータプラットフォーム102にアクセスし、ユーザがそれとやり取り可能にするように構成したコンピューティングシステム又はデバイスの形態を取ることもできる。これを容易にするために、クライアントステーションは、他の構成要素の中でも、ユーザインタフェース、ネットワークインタフェース、プロセッサ、及びデータストレージ等のハードウェア構成要素を含んでもよい。加えて、クライアントステーションは、他の例の中でも、アセットデータプラットフォーム102によって提供されるウェブアプリケーションにアクセス可能なウェブブラウザ、又はアセットデータプラットフォーム102と関連したネイティブクライアントアプリケーション等、アセットデータプラットフォーム102とやり取り可能なソフトウェア構成要素と共に構成することもできる。クライアントステーションの代表的な例は、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、ネットブック、タブレット、スマートフォン、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、もしくは現在既知の又は後で開発される任意の他のこのようなデバイスを含んでもよい。
【0041】
出力システムの他の例は、とりわけ、メカニック等へのリクエストを出力してアセットの修理を行うように構成した作業指示システム、又はアセットの部品を発注しその受領書を出力するように構成した部品発注システムを含んでもよい。
【0042】
当然のことながら、ネットワーク構成100は本明細書で説明される実施形態を実現可能なネットワークの一例である。他の多くの配置も可能であり、本明細書で想定される。例えば、他のネットワーク構成は描写されていない追加の構成要素、及び/又は描写された構成要素より多いか少ないものを含んでもよい。
II.本例のアセット
【0043】
図2を参照すると、一例のアセット200の簡略化されたブロック図が示される。
図1からのアセット106と108のいずれか又は両方はアセット200のように構成できる。図のように、アセット200は、1つ以上のサブシステム202、1つ以上のセンサ204、1つ以上のアクチュエータ205、中央処理ユニット206、データストレージ208、ネットワークインタフェース210、ユーザインタフェース212、測位ユニット214、及びおそらくローカル分析デバイス220を含んでもよく、それらの全てシステムバス、ネットワーク又は他の接続機構によって(直接的又は間接的に)通信可能なようにリンクできる。当業者には明らかなように、アセット200は図示されていない追加の構成要素、及び/又は図の構成要素より多いか少ないものを含んでもよい。
【0044】
概して、アセット200は、1つ以上の動作を実行するように構成した1つ以上の電気的、機械的及び/又は電気機械的構成要素を含んでもよい。いくつかの場合、1つ以上の構成要素は所定のサブシステム202内にグループ化できる。
【0045】
一般に、サブシステム202はアセット200の一部である関連の構成要素のグループを含んでもよい。単一のサブシステム202は1つ以上の動作を別個に実行してもよく、又は単一のサブシステムは1つ以上の他のサブシステムと共に動作し、1つ以上の動作を実行することもできる。一般に、異なる種類のアセット、及び異なるクラスの同じ種類のアセットでさえ異なるサブシステムを含んでもよい。サブシステムの代表的な例は
図1を参照しながら上で説明されている。
【0046】
上で提案したように、アセット200は、アセット200の動作状態を監視するように構成される様々なセンサ204と、アセット200又はその構成要素とやり取りし、アセット200の動作状態を監視するように構成される様々なアクチュエータ205とを備えてもよい。いくつかの場合、センサ204及び/又はアクチュエータ205の一部は特定のサブシステム202に基づいてグループ化できる。このように、センサ204及び/又はアクチュエータ205のグループは特定のサブシステム202の動作状態を監視するように構成でき、そのグループからのアクチュエータは、それらの動作状態に基づいてサブシステムの挙動を変更可能ないくつかの方法で特定のサブシステム202とやり取りするように構成できる。
【0047】
一般に、センサ204は物理的特性を検出するように構成でき、それはアセット200の1つ以上の動作状態を指示してもよく、検出した物理的特性の電気信号等の指示を提供することもできる。動作中、センサ204は、連続的に、周期的に(例えば、サンプリング周波数に基づいて)、及び/又はある起動イベントに応じて測定値を獲得するように構成できる。いくつかの例では、センサ204は測定を実行する動作パラメータを事前に構成してもよく、及び/又は中央処理ユニット206によって提供される動作パラメータ(例えば、測定値を獲得するようにセンサ204に命令するサンプリング信号)に従って測定を実行することもできる。例において、異なるセンサ204は異なる動作パラメータを有してもよい(例えば、いくつかのセンサは第1周波数に基づいてサンプリングを行い、他のセンサは異なる第2周波数に基づいてサンプリングを行ってもよい)。いずれにせよ、センサ204は、測定した物理的特性を示す電気信号を中央処理ユニット206に送信するように構成できる。センサ204は、このような信号を中央処理ユニット206に連続的に又は周期的に提供できる。
【0048】
例えば、センサ204はアセット200の位置及び/又は移動等の物理的特性を測定するように構成でき、その場合、センサは、GNSSセンサ、推測航法ベースのセンサ、加速度計、ジャイロスコープ、歩数計、磁力計等の形態を取ることもできる。本例の実施形態では、1つ以上のこのようなセンサは以降で説明される測位ユニット214と一体化させることも、別個に配置することもできる。
【0049】
加えて、様々なセンサ204はアセット200の他の動作状態を測定するように構成でき、その例は、他の例の中でも、温度、圧力、速度、加速率又は減速率、摩擦、電力使用量、スロットル位置、燃料使用量、液面、稼働時間、電圧及び電流、磁界、電界、物体の有無、構成要素の位置、及び発電を含んでもよい。当業者には明らかなように、これらはセンサが測定するように構成可能ないくつかの例の動作状態にすぎない。産業用途又は特定のアセットに依存して、追加のセンサ又はより少ないセンサを用いてもよい。
【0050】
上で提案したように、アクチュエータ205はいくつかの点でセンサ204と同様に構成できる。具体的には、アクチュエータ205は、アセット200の動作状態を示す物理的特性を検出し、センサ204と同様にその指示を提供するように構成できる。
【0051】
更に、アクチュエータ205は、アセット200、1つ以上のサブシステム202、及び/又はそのいくつかの構成要素とやり取りするように構成できる。従って、アクチュエータ205は、機械的動作(例えば、移動)を実行するか、もしくは構成要素、サブシステム又はシステムを制御するように構成されるモータ等を含んでもよい。特定の例では、アクチュエータは燃料フローを測定し、燃料フローを変更する(例えば、燃料フローを制限する)ように構成してもよく、又はアクチュエータは油圧を測定し、油圧を変更する(例えば、油圧を増減させる)ように構成することもできる。アクチュエータのやり取りの他の多くの例も可能であり、本明細書で想定される。
【0052】
一般に、中央処理ユニット206は1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラを含んでもよく、それらは汎用又は専用プロセッサ又はコントローラの形態を取ることもできる。特に、本例の実施形態では、中央処理ユニット206は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタルシグナルプロセッサ等であってもよく、それらを含んでもよい。更に、データストレージ208は、他の例の中でも、光学的、磁気的、有機的又はフラッシュメモリ等の一つ以上の非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体であってもよく、それらを含んでもよい。
【0053】
中央処理ユニット206は、データストレージ208に格納したコンピュータ可読プログラム命令を格納、アクセス及び実行し、本明細書で説明されるアセットの動作を実行するように構成できる。例えば、上で提案したように、中央処理ユニット206は、センサ204及び/又はアクチュエータ205から各センサ信号を受信するように構成できる。中央処理ユニット206は、データストレージ208にセンサ及び/又はアクチュエータのデータを格納し、後にそれにデータストレージからアクセスするように構成できる。加えて、中央処理ユニット206は、アセットの構成を反映したデータ(モデル番号、アセット寿命、インストールしたソフトウェアバージョン等)へのアクセス及び/又はその生成を行うように構成できる。
【0054】
中央処理ユニット206は、受信したセンサ及び/又はアクチュエータ信号が、フォルトデータの形態であるフォルトコード等、任意の異常状態インジケータを起動するかどうかを決定することもできる。例えば、中央処理ユニット206は、異常状態ルールをデータストレージ208に格納するように構成でき、各ルールは特定の異常状態を表す所定の異常状態インジケータと、異常状態インジケータを起動する各トリガ基準とを含んでいる。つまり、各異常状態インジケータは、異常状態インジケータを起動する前に満たさなければならない1つ以上のセンサ及び/又はアクチュエータの測定値に対応する。実際、アセット200に異常状態ルールを事前にプログラムしてもよく、及び/又は新しい異常状態ルールを受信してもよく、又はアセットデータプラットフォーム102等のコンピュータシステムから既存のルールへの更新を受信してもよい。
【0055】
任意のイベントにおいて、中央処理ユニット206は受信したセンサ及び/又はアクチュエータ信号が任意の異常状態インジケータを起動するかどうかを決定するように構成できる。つまり、中央処理ユニット206は受信したセンサ及び/又はアクチュエータ信号が任意のトリガ基準を満たすかどうかを決定できる。このような決定が肯定的な場合、中央処理ユニット206は異常状態データを生成し、続いてアセットのネットワークインタフェース210に作用し、アセットデータプラットフォーム102に異常状態データを送信し、及び/又はアセットのユーザインタフェース212に作用し、視覚的及び/又は聴覚的警告等の異常状態の指示を出力できる。加えて、中央処理ユニット206は起動された異常状態インジケータの発生をデータストレージ208に、おそらくタイムスタンプと共に記録できる。
【0056】
図3は、本例の異常状態インジケータ及びアセットそれぞれのトリガ基準の概念図を示す。特に、
図3は本例のフォルトコードの概念図を示す。図のように、表300はセンサA、アクチュエータB及びセンサCにそれぞれ対応する列302、304及び306と、フォルトコード1、2及び3にそれぞれ対応する行308、310及び312を含む。続いて、エントリ314は所定のフォルトコードに対応するセンサ基準(例えば、センサ閾値)を指定する。
【0057】
例えば、フォルトコード1はセンサAが135回転数/分(RPM)より大きな回転測定値を検出し、センサCが摂氏65度(65℃)より大きな測定値を検出したときに起動され、フォルトコード2はアクチュエータBが1000ボルト(V)より高い電圧測定値を検出し、センサCが55℃より低い温度測定値を検出したときに起動され、フォルトコード3はセンサAが100RPMより大きな回転測定値を検出し、アクチュエータBが750Vより高い電圧測定値を検出し、センサCが60℃より高い温度測定値を検出したときに起動されるであろう。当業者には明らかなように、
図3は例示的な目的で説明のためだけに提供され、他の多くのフォルトコード及び/又はトリガ基準も可能であり、本明細書で想定される。
【0058】
図2に戻ると、中央処理ユニット206は様々な追加の機能を実行し、アセット200の動作の管理及び/又は制御を同様に行うように構成できる。例えば、中央処理ユニット206はサブシステム202及び/又はアクチュエータ205に命令信号を提供するように構成され、サブシステム202及び/又はアクチュエータ205に作用し、スロットル位置の修正等のいくつかの動作を実行できる。加えて、中央処理ユニット206はセンサ204及び/又はアクチュエータ205からのデータを処理する速度を修正するように構成でき、又は中央処理ユニット206はセンサ204及び/又はアクチュエータ205に命令信号を提供するように構成され、センサ204及び/又はアクチュエータ205に作用し、例えば、サンプリング速度を修正することもできる。更に、中央処理ユニット206は、サブシステム202、センサ204、アクチュエータ205、ネットワークインタフェース210、ユーザインタフェース212及び/又は測位ユニット214から信号を受信し、このような信号に基づいて動作を発生させるように構成できる。更になお、中央処理ユニット206は診断デバイス等のコンピューティングデバイスから信号を受信するように構成され、診断デバイスは中央処理ユニット206に作用し、データストレージ208に格納された診断ルールに従って1つ以上の診断ツールを実行できる。中央処理ユニット206の他の機能は以降で説明する。
【0059】
ネットワークインタフェース210は、アセット200と、通信ネットワーク104に接続された様々なネットワーク構成要素との間に通信を実現するように構成できる。例えば、ネットワークインタフェース210は通信ネットワーク104との無線通信を容易にするように構成でき、従って様々な無線信号を送受信するアンテナ構造及び関連の装置の形態を取ることもできる。他の例も同様に可能である。実際、ネットワークインタフェース210は、上記の任意のもの等であるがそれらには限定されない通信プロトコルに従って構成できる。
【0060】
ユーザインタフェース212はアセット200とのユーザインタラクションを容易にするように構成でき、アセット200に作用し、ユーザインタラクションに応じた動作の実行を容易にするように構成することもできる。ユーザインタフェース212の例は、他の例の中でも、タッチ感知インタフェース、機械的インタフェース(例えば、レバー、ボタン、ホイール、ダイヤル、キーボード等)、及び他の入力インタフェース(例えば、マイクロフォン)を含む。いくつかの場合、ユーザインタフェース212は、表示画面、スピーカ、ヘッドフォンジャック等の出力部品への接続を含んでもよく、それを提供することもできる。
【0061】
測位ユニット214は一般に、地球空間的場所/位置及び/又はナビゲーションに関連した機能の実行を容易にするように構成できる。より詳細には、測位ユニット214は、GNSS技術(例えば、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou等)、三角測量技術等の1つ以上の測位技術を介して、アセット200の場所/位置の決定及び/又はアセット200の移動の追跡を容易にするように構成できる。従って、測位ユニット214は、1つ以上の特定の測位技術に従って構成される1つ以上のセンサ及び/又はレシーバを含んでもよい。
【0062】
本例の実施形態において、測位ユニット214は、アセット200が他のシステム及び/又はデバイス(例えば、アセットデータプラットフォーム102)に位置データを提供可能にし、位置データはアセット200の位置を示し、他の形態の中でも、GPS座標の形態を取ってもよい。いくつかの実施形態において、アセット200は、連続的に、周期的に、トリガに基づいて又はいくつかの他の態様で、他のシステムに位置データを提供できる。更に、アセット200は他のアセット関連データと別個に又はそれらと共に(例えば、動作データと共に)位置データを提供できる。
【0063】
ローカル分析デバイス220は一般に、アセット200に関連したデータを受信し分析するように構成され、このような分析に基づいて、アセット200において1つ以上の動作を発生させてもよい。例えば、ローカル分析デバイス220はアセット200の動作データ(例えば、センサ204及び/又はアクチュエータ205によって生成される信号データ)を受信し、このようなデータに基づいて、中央処理ユニット206、センサ204及び/又はアクチュエータ205に命令を提供し、アセット200に動作を実行させてもよい。別の例では、ローカル分析デバイス220は測位ユニット214から位置データを受信し、このようなデータに基づいて、アセット200の予測モデル及び/又はワークフローを処理する方法を修正できる。他の例の分析及び対応する動作も可能である。
【0064】
これらの動作のいくつかを容易にするために、ローカル分析デバイス220は1つ以上のアセットインタフェースを含んでもよく、それらは1つ以上のアセットのオンボードシステムにローカル分析デバイス220を結合するように構成される。例えば、
図2に示したように、ローカル分析デバイス220はアセットの中央処理ユニット206へのインタフェースを有し、ローカル分析デバイス220は中央処理ユニット206からデータ(例えば、センサ204及び/又はアクチュエータ205によって生成され、中央処理ユニット206に送信される動作データ、又は測位ユニット214によって生成される位置データ)を受信し、続いて中央処理ユニット206に命令を提供できる。このように、ローカル分析デバイス220は、アセット200の他のオンボードシステム(例えば、センサ204及び/又はアクチュエータ205)と間接的にやり取りし、中央処理ユニット206を介してそこからデータを受信できる。加えて又は代わりに、
図2に示したように、ローカル分析デバイス220は1つ以上のセンサ204及び/又はアクチュエータ205へのインタフェースを有することができ、ローカル分析デバイス220はセンサ204及び/又はアクチュエータ205と直接通信可能であってもよい。ローカル分析デバイス220は他の態様で同様にアセット200のオンボードシステムとやり取りしてもよく、それは図示されていない1つ以上の中間システムによって
図2に示したインタフェースを容易にする可能性を含んでいる。
【0065】
実際、ローカル分析デバイス220はアセット200に予測モデル及び対応するワークフローの実行等、そうでない場合に他のオンアセット構成要素では実行できない可能性がある高度な分析及び関連の動作をローカルに実行可能にする。従って、ローカル分析デバイス220は、追加の処理能力及び/又はインテリジェンスをアセット200に提供することに役立つことができる。
【0066】
当然のことながら、ローカル分析デバイス220はアセット200に作用し、予測モデルに関連していない動作を実行するように構成してもよい。例えば、ローカル分析デバイス220は、アセットデータプラットフォーム102又は出力システム112等のリモートソースからデータを受信し、受信したデータに基づいて、アセット200に1つ以上の動作を実行させることができる。1つの特定の例は、リモートソースからアセット200のファームウェアアップデートを受信し、続いてアセット200にそのファームウェアを更新させるローカル分析デバイス220を含んでもよい。別の特定の例は、リモートソースから診断命令を受信し、続いてアセット200に作用し、受信した命令に従ってローカル診断ツールを実行するローカル分析デバイス220を含んでもよい。他の多くの例も可能である。
【0067】
図のように、上で説明した1つ以上のアセットインタフェースに加えて、ローカル分析デバイス220は、処理ユニット222、データストレージ224、及びネットワークインタフェース226を含み、それらは全てシステムバス、ネットワーク又は他の接続機構によって通信可能なようにリンクできる。処理ユニット222は、中央処理ユニット206に対して上で説明した任意の構成要素を含んでもよい。更に、データストレージ224は1つ以上の非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体であってもよく、それを含んでもよく、上で説明したコンピュータ可読ストレージ媒体の任意の形態を取ることができる。
【0068】
処理ユニット222は、データストレージ224に格納されたコンピュータ可読プログラム命令を格納、アクセス及び実行するように構成され、本明細書で説明したローカル分析デバイスの動作を実行できる。例えば、処理ユニット222は、センサ204及び/又はアクチュエータ205によって生成されるそれぞれのセンサ及び/又はアクチュエータ信号を受信するように構成でき、このような信号に基づいて予測モデル及び対応するワークフローを実行することもできる。他の機能は以降で説明する。
【0069】
ネットワークインタフェース226は、上で説明したネットワークインタフェースと同じであっても同様であってもよい。実際、ネットワークインタフェース226は、ローカル分析デバイス220とアセットデータプラットフォーム102の間の通信を容易にできる。
【0070】
いくつかの例の実施形態において、ローカル分析デバイス220は、ユーザインタフェース212と同様であってもよいユーザインタフェースを含んでもよく、及び/又はそれと通信することもできる。実際、ユーザインタフェースはローカル分析デバイス220(及びアセット200)から離れて配置できる。他の例も可能である。
【0071】
図2は1つ以上のアセットインタフェースを介してその関連のアセット(例えば、アセット200)に物理的に及び通信可能なように結合したローカル分析デバイス220を示しているが、当然のことながら、これは常にそういう場合ではなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ローカル分析デバイス220はその関連のアセットに物理的に結合されていなくてもよく、代わりにアセット200から離れて配置されてもよい。このような実施形態の一例では、ローカル分析デバイス220はアセット200に無線的に通信可能なように結合できる。他の配置及び構成も可能である。
【0072】
ローカル分析デバイスの構成及び動作に関してより詳細には、全体として参照によって本明細書に組み込まれる米国出願番号14/963,207を参照のこと。
【0073】
当業者には明らかなように、
図2に示したアセット200はアセットの簡略化された表現の一例にすぎず、他の多くのものも可能である。例えば、他のアセットは描写されていない追加の構成要素、及び/又は描写された構成要素より多いか少ないものを含んでもよい。更に、所定のアセットは複数の別個のアセットを含んでもよく、それらは所定のアセットの動作の実行するように協調して動作させる。他の例も可能である。
III.本例のプラットフォーム
【0074】
図4は、一例のデータアセットプラットフォーム400に含まれてもよいいくつかの構成要素を構造的な視点から示す簡略化されたブロック図である。上での説明に沿って、データアセットプラットフォーム400は1つ以上のコンピュータシステム(例えば、1つ以上のサーバ)を一般に備えてもよく、これらの1つ以上のコンピュータシステムは、少なくともプロセッサ402、データストレージ404、ネットワークインタフェース406、及びおそらくユーザインタフェース410を共に含み、それらは全て、システムバス、ネットワーク、又は他の接続機構等の通信リンク408によって通信可能なようにリンクできる。
【0075】
プロセッサ402は1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラを含んでもよく、それらは汎用又は専用プロセッサ又はコントローラの形態を取ることもできる。特に、本例の実施形態では、処理ユニット402は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタルシグナルプロセッサ等を含んでもよい。
【0076】
更に、データストレージ404は1つ以上の非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体を備えてもよく、それらの例は、ランダムアクセスメモリ、レジスタ、キャッシュ等の揮発性ストレージ媒体と、リードオンリメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ、光学ストレージデバイス等の不揮発性ストレージ媒体とを含んでもよい。
【0077】
図4に示したように、データストレージ404は、プラットフォーム400が本明細書で開示される機能を実行可能にするソフトウェア構成要素を備えてもよい。これらのソフトウェア構成要素は、プロセッサ402によって実行可能なプログラム命令の形態を一般に取ってもよく、アプリケーション、ソフトウェア開発キット、ツールセット等の中に共に配置できる。加えて、データストレージ404は1つ以上のデータベースを備えてもよく、それらはプラットフォームによって実行される機能に関連したデータを格納するように配置され、それらの例は、とりわけ、時系列データベース、文書データベース、関係データベース(例えば、MySQL)、キー値データベース、及びグラフデータベースを含んでいる。1つ以上のデータベースはポリグロットストレージを実現することもできる。
【0078】
ネットワークインタフェース406は、アセット106と108、データソース110、及びクライアントステーション112等、通信ネットワーク104を介してプラットフォーム400と様々なネットワーク構成要素との間の無線及び/又は有線通信を容易にするように構成できる。従って、ネットワークインタフェース406は、これらの機能を実行する任意の適切な形態を取ってもよく、それらの例は、Ethernetインタフェース、シリアルバスインタフェース(例えば、Firewire、USB2.0等)、無線通信を容易にするように調整したチップセットとアンテナ、並びに/もしくは有線及び/又は無線通信を実現する任意の他のインタフェースを含んでもよい。ネットワークインタフェース406は、様々な異なる種類のネットワーク接続をサポートする複数のネットワークインタフェースを含んでもよく、それらのいくつかの例は、Hadoop、FTP、関係データベース、OSI PI等の高頻度データ、XML等のバッチデータ、及びBase64を含んでもよい。他の構成も同様に可能である。
【0079】
本例のデータアセットプラットフォーム400は更にユーザインタフェース410をサポートし、それはプラットフォーム400とのユーザインタラクションを容易にするように構成され、ユーザインタラクションに応じた動作をプラットフォーム400に容易に実行させるように構成することもできる。このユーザインタフェース410は様々な入力構成要素への接続を含んでもよく、それを提供することもでき、それらの例は、タッチ感知インタフェース、機械的インタフェース(例えば、レバー、ボタン、ホイール、ダイヤル、キーボード等)、及び他の入力インタフェース(例えば、マイクロフォン)を含む。加えて、ユーザインタフェース410は様々な出力構成要素への接続を含んでもよく、それを提供することもでき、それらの例は、表示画面、スピーカ、ヘッドフォンジャック等を含んでもよい。他の構成も同様に可能であり、それは本例のプラットフォームに通信可能なように結合されたクライアントステーション内でユーザインタフェース410を具現化する可能性を含んでいる。
【0080】
ここで
図5を参照すると、別の簡略化されたブロック図を提供し、一例のプラットフォーム500に含まれてもよいいくつかの構成要素を機能的な視点から示す。例えば、図のように、本例のプラットフォーム500はデータ取込みシステム502とデータ分析システム504を含んでもよく、それぞれ特定の機能を実行するように構成されるハードウェア及びソフトウェアの組合せを備えている。プラットフォーム500は複数のデータベース506を含んでもよく、それらはデータ取込みシステム502とデータ分析システム504の1つ以上の内部に含まれる、及び/又はそうでなければそれらに結合される。実際、これらの機能システムは単一のコンピュータシステム上に実現してもよく、複数のコンピュータシステム全体に分散させてもよい。
【0081】
データ取込みシステム502はアセット関連データを受信するように一般に機能し、続いて受信したデータの少なくとも一部をデータ分析システム504に提供できる。従って、データ取込みシステム502は様々なソースからアセット関連データを受信するように構成でき、その例は、アセット、アセット関連データソース、又は組織の既存のプラットフォーム/システムを含んでもよい。データ取込みシステム502によって受信されるデータは様々な形態を取ることができ、その例は、アナログ信号、データストリーム、及び/又はネットワークパケットを含んでもよい。更に、いくつかの例では、データ取込みシステム502は、NiFiレシーバ等の所定のデータフロー技術に従って構成できる。
【0082】
いくつかの実施形態において、データ取込みシステム502が所定のソース(例えば、アセット、組織の既存のプラットフォーム/システム、外部のアセット関連データソース等)からデータを受信する前に、そのソースはデータエージェント508を備えてもよい。一般に、データエージェント508はソフトウェア構成要素であってもよく、所定のデータソースにおいてアセット関連データにアクセスするように機能し、適切なフォーマットでデータを配置し、続いてプラットフォーム500へのそのデータの送信を容易にし、データ取込みシステム502によって受信できる。従って、データエージェント508は所定のソースに作用し、他の例の中でも、圧縮及び/又は解凍、暗号化及び/又は復号化、アナログデジタル及び/又はデジタルアナログ変換、フィルタ処理、増幅、及び/又はデータマッピング等の動作を実行できる。しかし、他の実施形態では、所定のデータソースは、データエージェントの補助なしで、アセット関連データのアクセス、フォーマット及び/又は本例のプラットフォーム500への送信を可能にしてもよい。
【0083】
データ取込みシステム502によって受信されるアセット関連データは様々な形態を取ることができる。一例として、アセット関連データは動作中のアセットの属性に関連したデータを含んでもよく、それはアセット自体又は外部ソースに由来してもよい。このアセット属性データは、信号データ(例えば、センサ及び/又はアクチュエータのデータ)、フォルトデータ、アセット位置データ、気象データ、ホットボックスのデータ等のアセット動作データを含んでもよい。加えて、アセット属性データは、アセットのブランド、製造元、モデル、寿命、ソフトウェアバージョン等のアセット構成データを含んでもよい。別の例として、アセット関連データは、ソース識別子、タイムスタンプ(例えば、情報を獲得した日付及び/又は時刻)及び情報を獲得した位置の識別子(例えば、GPS座標)等、アセット関連データの出所に関する所定の属性を含んでもよい。例えば、一意的な識別子(例えば、コンピュータが生成した英字、数字、英数字等の識別子)を各アセット及びおそらく各センサ及びアクチュエータに割り当ててもよく、データが由来するアセット、センサ又はアクチュエータを識別するように動作可能であってもよい。これらの属性は、他の例の中でも、信号署名又はメタデータの形態でもたらしてもよい。データ取込みシステム502によって受信されるアセット関連データは同様に他の形態を取ることもできる。
【0084】
データ取込みシステム502はアセット関連データ上で様々な事前処理機能を実行するように構成され、クリーン、最新、正確、有用等であるデータをデータ分析システム504に提供しようとすることもできる。
【0085】
例えば、データ取込みシステム502は、受信したデータを定義されたデータ構造にマッピングし、これらのデータ構造にマッピングできない任意のデータを場合によっては遮断することもできる。別の例として、データ取込みシステム502は、受信したデータの信頼性(又は「健全性」)にアクセスし、任意の所定の信頼性のないデータを遮断する等、この信頼性に基づいて所定のアクションを取ることもできる。更に別の例として、データ取込みシステム502は、任意のデータがそのプラットフォームによって既に受信されていることを識別し、続いてこのようなデータを無視又は遮断することによって、受信したデータの「重複除去を行う」こともできる。更に別の例として、データ取込みシステム502は、受信したデータがプラットフォームのデータベース506に既に格納されているデータに関連していること(例えば、同じデータの異なるバージョン)を決定し、続いて受信したデータと格納済みのデータを共に1つのデータ構造又はレコードに併合することもできる。別の例として、データ取込みシステム502は受信したデータに基づいて行われるアクション(例えば、CRUDアクション)を識別し、続いて識別したアクションを(例えば、HTTPヘッダを介して)データ分析システム504に通知できる。更に別の例として、データ取込みシステム502は受信したデータを特定のデータカテゴリに分割できる(例えば、異なるデータカテゴリを異なるキューに配置することによって)。他の機能を実行することもできる。
【0086】
いくつかの実施形態では、データエージェント508はこれらの事前処理機能の所定のものと共に実行することも、それを支援することもできる。1つの可能な例として、データ取込みシステム502ではなくデータエージェント508によって、全体として又は部分的にデータマッピング機能を実行することができる。他の例も同様に可能である。
【0087】
データ取込みシステム502は更に、受信したアセット関連データを1つ以上のデータベース506に格納するように構成され、後で検索することもできる。例えば、データ取込みシステム502はデータエージェント508から受信した生データを格納し、更に上記の1つ以上の事前処理機能から得られるデータを格納することもできる。上での説明に沿って、データ取込みシステム502がこのデータを格納するデータベースは様々な形態を取ることができ、その例は、とりわけ、時系列データベース、文書データベース、関係データベース(例えば、MySQL)、キー値データベース、及びグラフデータベースを含んでいる。更に、データベースはポリグロットストレージを実現することもできる。例えば、データ取込みシステム502は受信したアセット関連データのペイロードを第1種類のデータベース(例えば、時系列又は文書データベース)に格納し、受信したアセット関連データの対応するメタデータをより高速に検索できる第2種類のデータベース(例えば、関係データベース)に格納できる。このような例では、続いてメタデータは、そのメタデータに関係する他のデータベースに格納されたアセット関連データにリンク又は関連付けられてもよい。データ取込みシステム502によって用いられるデータベース506は同様の他の形態を取ることもできる。
【0088】
図のように、データ取込みシステム502は続いてデータ分析システム504に通信可能なように結合することもできる。データ取込みシステム502とデータ分析システム504の間のこのインタフェースは様々な形態を取ることができる。例えば、データ取込みシステム502はAPIを介してデータ分析システム504に通信可能なように結合できる。他のインタフェース技術も同様に可能である。
【0089】
一実施形態において、データ取込みシステム502は、(1)信号データ、(2)イベントデータ、及び(3)アセット構成データという3つの一般的なカテゴリに分かれるデータをデータ分析システム504に提供できる。信号データは一般に、アセットにおいてセンサ及び/又はアクチュエータによって取得される測定値を表現する生データ、集計データ、又は抽出データの形態を取ることもできる。イベントデータは一般に、フォルト等のアセット動作に関するイベント、及び/又はアセットから受信したインジケータ(例えば、フォルトコード等)に対応する他のアセットイベント、検査イベント、整備イベント、修理イベント、液体イベント、気象イベント等を識別するデータの形態を取ることもできる。続いて、アセット構成情報は、アセット識別子(例えば、シリアル番号、モデル番号、モデル年等)、インストールされたソフトウェアバージョン等のアセット構成に関する情報を含んでもよい。データ分析システム504に提供されるデータは他のデータを含んでもよく、同様に他の形態を取ることもできる。
【0090】
データ分析システム504は一般に、データ取込みシステム502からデータを受信し、そのデータを分析し、続いてそのデータに基づいて様々なアクションを取るように一般に機能できる。これらのアクションは様々な形態を取ることもできる。
【0091】
一例として、データ分析システム504は(例えば、クライアントステーションから受信したリクエストに基づいて)クライアントステーションに出力される所定のデータを識別し、続いてこのデータをクライアントステーションに提供できる。別の例として、データ分析システム504は、所定のデータが事前に定義されたルールを満たすことを決定し、続いて新しいイベントデータの生成、又はクライアントステーションを介したユーザへの通知の提供等、この決定に応じて所定のアクションを取ることもできる。別の例として、データ分析システム504は受信したデータを用いてアセット動作に関連した予測モデルを訓練及び/又は実行し、データ分析システム504は続いて予測モデルの出力に基づいて所定のアクションを取ることもできる。更に別の例として、データ分析システム504はAPIを介して外部アクセスに利用可能な所定のデータを作成することもできる。
【0092】
これらの機能の1つ以上を容易にするために、データ分析システム504は、クライアントステーションによってアクセス及び表示可能なユーザインタフェースを提供(又は「駆動」)するように構成できる。このユーザインタフェースは様々な形態を取ることもできる。一例として、ユーザインタフェースはウェブアプリケーションを介して提供でき、それはクライアントステーションによって表示可能な1つ以上のウェブページを一般に備え、ユーザに情報を提示し、ユーザ入力を獲得することもできる。別の例として、ユーザインタフェースはネイティブクライアントアプリケーションを介して提供され、それはクライアントステーションにインストールされその上で実行するが、データ分析システム504によって「駆動」される。データ分析システム504によって提供されるユーザインタフェースは同様に他の形態を取ることもできる。
【0093】
このようなデータに基づいて可能なアクションを取るために受信したデータを分析することに加えて、データ分析システム504は受信したデータを1つ以上のデータベース506に格納するように構成することもできる。例えば、データ分析システム504は受信したデータを所定のデータベースに格納でき、そのデータベースはプラットフォームユーザにアセット関連データを提供する主データベースとして機能する。
【0094】
いくつかの実施形態において、データ分析システム504はソフトウェア開発キット(SDK)をサポートし、プラットフォームの構築、カスタマイズ及びそれへの別の機能の追加を行うこともできる。このようなSDKは、プラットフォームのハードコードされた機能上でプラットフォームの機能のカスタマイズを可能にしてもよい。
【0095】
データ分析システム504は様々な他の機能を同様に実行することもできる。データ分析システム504によって実行されるいくつかの機能は以降で更に詳しく説明する。
【0096】
当業者には明らかなように、
図4〜
図5に示した本例のプラットフォームは、プラットフォームに含まれてもよい構成要素の簡略化された表現の一例にすぎず、他の多くのものも可能である。例えば、他のプラットフォームは描写されていない追加の構成要素、及び/又は描写された構成要素より多いか少ないものを含んでもよい。更に、所定のプラットフォームは、所定のプラットフォームの動作の実行と協調して動作させる複数の別個のプラットフォームを含んでもよい。他の例も可能である。
IV.本例の動作
【0097】
ここで、
図1に示した本例のネットワーク構成100の動作を以降で更に詳しく説明する。これらの動作のいくつかの記述に役立つようにフロー図を参照し、実行可能な動作の組合せを記述できる。いくつかの場合、各ブロックは、プロセッサによって実行可能な命令を含むプログラムコードのモジュール又は一部を表現し、処理内の特定の論理機能又はステップを実行できる。プログラムコードは、非一時的コンピュータ可読媒体等、任意の種類のコンピュータ可読媒体上に格納できる。他の場合、各ブロックは、処理内の特定の論理機能又はステップを実行するように配線された回路を表現することもできる。更に、フロー図に示したブロックは、特定の実施形態に基づいて異なる順番で再配置しても、より少ないブロックに組み合わせても、追加のブロックに分離しても、及び/又は除去することもできる。
【0098】
以降の説明は、アセット106等の単一のデータソースがアセットデータプラットフォーム102にデータを提供し、続いて1つ以上の機能を実行する例を参照できる。当然のことながら、これは簡略化及び説明のためだけに行われ、限定することを意味しない。実際、アセットデータプラットフォーム102は一般に、複数のソースからおそらく同時にデータを受信し、このような受信した集計データに基づいて動作を実行する。
A.動作データの収集
【0099】
上記のように、代表的なアセット106と108はそれぞれ様々な形態を取り、複数の動作を実行するように構成できる。非限定的な例において、アセット106は米国全体に貨物を運搬可能な機関車の形態を取ってもよい。輸送中、アセット106のセンサ及び/又はアクチュエータは、アセット106の1つ以上の動作状態を反映したデータを獲得できる。センサ及び/又はアクチュエータは、アセット106の処理ユニットにデータを送信できる。
【0100】
処理ユニットは、センサ及び/又はアクチュエータからデータを受信するように構成できる。実際、処理ユニットは、複数のセンサ及び/又は複数のアクチュエータから同時に又は順次、信号データを受信できる。上で説明したように、このデータの受信中、処理ユニットは、そのデータが、任意の異常状態インジケータ、もしくはフォルトコード等のフォルトと呼ばれるものを起動するトリガ基準を満たすかどうかを決定するように構成でき、それは異常状態がアセット内で発生したことの指示として機能するフォルトデータである。1つ以上の異常状態インジケータが起動されたことを処理ユニットが決定した場合、処理ユニットは、ユーザインタフェースを介して起動されたインジケータの指示を出力する等、1つ以上のローカルな動作を実行するように構成できる。処理ユニットは、センサ及び/又はアクチュエータから受信した信号データから他のデータ(例えば、このようなデータの集計値)を抽出するように構成でき、この抽出したデータは信号データに含まれてもよい。
【0101】
アセット106は続いて、アセット106のネットワークインタフェース及び通信ネットワーク104を介して、アセット動作データ及び/又はアセット構成データ等のアセット属性データをアセットデータプラットフォーム102に送信できる。動作中、アセット106は連続的に、周期的に及び/又はトリガイベント(例えば、異常状態)に応じて、アセットデータプラットフォーム102にアセット属性データを送信できる。具体的には、アセット106は特定に頻度に基づいて(例えば、毎日、毎時、15分毎、毎分、毎秒1回等)周期的にアセット属性データを送信してもよく、又はアセット106は動作データの連続的な実時間フィードを送信するように構成することもできる。加えて又は代わりに、アセット106は、センサ及び/又はアクチュエータの測定値が任意の異常状態インジケータのトリガ基準をいつ満たすか等、所定のトリガに基づいてアセット属性データを送信するように構成することもできる。アセット106は、他の態様で同様にアセット属性データを送信することもできる。
【0102】
実際、アセット106のアセット動作データは、信号データ(例えば、センサ及び/又はアクチュエータのデータ)、フォルトデータ、及び/又は他のアセットイベントデータ(例えば、アセット停止、再開、診断動作、液体検査、修理等)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アセット106は単一のデータストリームでデータを提供するように構成してもよく、他の実施形態では、アセット106は複数の別個のデータストリームで動作データを提供するように構成してもよい。例えば、アセット106は、第1データストリームの信号データと、第2データストリームのフォルトデータとをアセットデータプラットフォーム102に提供できる。別の例として、アセット106は、アセット106上のそれぞれのセンサ及び/又はアクチュエータ用の別個のデータストリームをアセットデータプラットフォーム102に提供できる。他の可能性も存在する。
【0103】
信号データは様々な形態を取ってもよい。例えば、ある時点では、センサデータ(又はアクチュエータのデータ)はアセット106の各センサ(又はアクチュエータ)で獲得された測定値を含んでもよい。別の時点では、センサデータ(又はアクチュエータのデータ)はアセット106のセンサ(又はアクチュエータ)の一部で獲得された測定値を含んでもよい。
【0104】
具体的には、信号データは起動された所定の異常状態インジケータに関連してセンサ及び/又はアクチュエータで獲得された測定値を含んでもよい。例えば、起動されたフォルトコードが
図3のフォルトコード1である場合、センサデータはセンサAとCで獲得された生の測定値を含んでもよい。加えて又は代わりに、データは起動されたフォルトコードに直接関連していない1つ以上のセンサ又はアクチュエータで獲得された測定値を含んでもよい。最後の例から続けると、データはアクチュエータB及び/又は他のセンサ又はアクチュエータで獲得された測定値を更に含んでもよい。いくつかの例では、アセット106は分析システム108によって提供されたフォルトコードルール又は命令に基づいて、動作データ内の特定のセンサデータを含んでもよく、例えば、アクチュエータBが測定しているものと、第1の場所でフォルトコード1を起動させたものとの間に相関があることが決定されてもよい。他の例も可能である。
【0105】
更になお、データは所望の特定に時刻に基づいて、所望の各センサ及び/又はアクチュエータからの1つ以上のセンサ及び/又はアクチュエータ測定値を含んでもよく、それらは複数のファクタに基づいて選択できる。いくつかの例では、所望の特定の時刻はサンプリング速度に基づいてもよい。他の例では、所望の特定の時刻はフォルトが検出された時刻に基づいてもよい。
【0106】
特に、フォルトが検出された時刻に基づいて、データは所望の各センサ及び/又はアクチュエータ(例えば、検出されたフォルトに直接的及び間接的に関連したセンサ及び/又はアクチュエータ)からの1つ以上のそれぞれのセンサ及び/又はアクチュエータ測定値を含んでもよい。1つ以上の測定値は、特定の数の測定値、又は検出されたフォルトの時刻の前後の特定の持続期間に基づいてもよい。
【0107】
例えば、アセットが
図3のフォルトコード2を起動するフォルトを検出した場合、所望のセンサ及びアクチュエータはアクチュエータBとセンサCであってもよい。1つ以上の測定値は、フォルトが検出された時刻、フォルト検出時刻の直前、フォルト検出時刻の直後、及び/又はそれらのある組合せで、アクチュエータBとセンサCで獲得された測定値のそれぞれの組を含んでもよい。
【0108】
信号データと同様に、フォルトデータは様々な形態を取ってもよい。一般に、フォルトデータは、アセット106で発生可能な全ての他の種類のフォルトから、アセット106で発生した特定の種類のフォルトを一意的に識別するように動作可能なインジケータを含んでもよく、その形態を取ってもよい。このインジケータは、フォルトコードとも呼ばれ、英字、数字又は英数字の識別子の形態を取ってもよく、他の例の中でも、「エンジンの過熱」又は「燃料切れ」等、フォルトの種類を記述する文字列の形態を取ってもよい。加えて、フォルトデータはフォルト発生に関する他の情報を含んでもよく、それは、他の例の中でも、フォルトがいつ発生したか(例えば、タイムスタンプ)及びフォルトがどこで発生したか(例えば、GPSデータ)の指示を含んでいる。他の種類のイベント(例えば、整備イベント)に関するデータも同様の形態を取ることができる。
【0109】
更に、アセット構成データは様々な形態を同様に取ることができる。一般に、アセット構成データはアセット「について」の情報に関する。一例では、アセット構成データは、モデル番号、モデル年(例えば、アセット寿命)等、データアセット識別情報を含んでもよい。一方、別の例では、アセットデータはアセットの特定の過去及び/又は現在の構成に直接関係する。例えば、アセット属性情報は、他の可能性の中でも、アセットに対して市場変更が行われた後、どのソフトウェアバージョンがインストールされたか及び/又はアセット上で実行中であるかを示してもよい。
【0110】
アセットデータプラットフォーム102、特に、アセットデータプラットフォーム102のデータ取込みシステムは、1つ以上のアセット及び/又はデータソースからアセット属性データを受信するように構成できる。データ取込みシステムは、受信したデータの少なくとも一部を取り込み、受信したデータに対して1つ以上の動作を実行し、アセットデータプラットフォーム102のデータ分析システムにデータを中継するように構成できる。更に、データ分析システムは受信したデータを分析し、このような分析に基づいて1つ以上の動作を実行できる。
B.多変量アセットデータ内の異常の検出
【0111】
上記のように、アセットデータプラットフォーム102は異常検出処理を実行するように構成でき、その処理は一般に(1)データ内の変数の数と等しい次元数を有する元の座標空間内の本明細書では「観測データ」とも呼ばれる多変量データ(例えば、アセットからの信号データ及び/又は他のデータ)を受信することと、(2)受信した多変量データを元の座標空間から、元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に変換(又は「射影」)することと、(3)変換後の座標空間内のデータを標準化することと、(4)標準化したデータと閾値の組との間に比較に基づいて、変換後の座標空間内の標準化したデータを修正し、その閾値は通常のアセット動作を反映した訓練データに基づいて定義されることと、(5)修正後のデータを変換後の座標空間から元の座標空間に逆変換(又は射影)することと、(6)元の座標空間内の変換後のデータを分析し異常を識別することとを含む。
【0112】
本例の実施形態では、受信した多変量データ内の異常の検出を容易にする上記の処理は、訓練データに基づいて定義された閾値の組に基づいてもよい。この点では、アセットデータプラットフォームは訓練フェーズを実行するように構成され、定義された閾値の組を出力できる。訓練フェーズから出力された閾値は続いて、受信した多変量データ内の異常を検出する処理に利用できる。
【0113】
ここで
図6を参照すると、通常のアセット動作を反映した訓練データを用いて、変換後の座標空間に対して閾値の組を定義する1つの可能な例の方法600を示す一例のフロー図が提供される。一般に、方法600を介して定義された閾値の組は、以降で更に詳しく説明する本例の方法1100を実行する際にアセットデータプラットフォーム102によって利用され、アセットデータプラットフォーム102によってアセットから受信された多変量データに対応する値を修正できる。例示のため、本例の方法600はアセットデータプラットフォーム102によって実行されるように説明されるが、本例の方法は他のデバイス及び/又はシステムによって実行することもできる。当業者には明らかなように、フロー
図600は簡略化及び説明のために提供され、動作の他の多くの組合せを利用して多変量データ内の異常の識別を容易にできる。
【0114】
ブロック602において、アセットデータプラットフォーム102は、通常のアセット動作を反映した(例えば、異常を含まない)訓練データを獲得できる。例えば、訓練データはアセットの動作に関連した履歴上の時系列の多変量データの形態と取ることができ、それはアセット関連データソース(例えば、現場のアセット)から受信することも、アセットデータプラットフォーム102によって生成することもできる。実際、アセットデータプラットフォーム102は、格納された履歴データの組を(例えば、アセットの種類及び/又はそのアセットに由来する履歴データに基づいて)選択し、選択された組に含まれるデータ点の分布の分析を実行することで訓練データの選択された組を決定できる。この点では、アセットデータプラットフォーム102は変数毎に履歴データの組を分析し、通常のアセット動作を反映したデータ値の範囲を識別できる。訓練データは様々な他の態様で獲得することもできる。
【0115】
図7は、アセットデータプラットフォーム102によって使用可能な時系列の多変量訓練データの代表例を示すプロット700の組である。図のように、プロット700の組は代表的な変数プロット702等の変数プロットの組を示し、それぞれ水平軸(つまり、704)上に時系列内の複数の測定値を有し、垂直軸(つまり、706)上に各測定値の大きさを有する。1つの代表例では、アセットデータプラットフォーム102によって受信される時系列の多変量訓練データは、所定のアセットにおける各センサ/アクチュエータの出力にそれぞれ対応するプロットの組と考えてもよい。例えば、各訓練変数は、水平軸上に時系列内の各測定値のシーケンス番号を示し、垂直軸上に各測定値の大きさを示すことで、変数の時系列の測定値を表現するプロット横座標上に観察できる。この意味では、訓練データは測定値の行列として表現してもよく、複数の行はそれぞれ特定の時点に対応し、複数の列はそれぞれ異なる変数に対応する。上での説明に沿って、このような行列の各行は続いて、行列内の各列に次元(つまり、多変量訓練データ内の各変数)を有する元の座標空間内の各データ点(つまり、信号測定値の各組)と見なしてもよい。
【0116】
訓練データを獲得した後、ブロック602において、アセットデータプラットフォーム102は
図11のブロック1102を参照しながら以降で更に詳しく説明するものと同様に、訓練データ上で事前処理機能(例えば、データ補完)を実行できる。
【0117】
ブロック604において、アセットデータプラットフォーム102は元の座標空間から、元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に訓練データを変換できる。アセットデータプラットフォーム102は様々な態様でこの変換を実行できる。
【0118】
一例によると、アセットデータプラットフォーム102は、主成分分析(PCA)を用いて元の座標空間から変換後の座標空間に訓練データを変換できる。一般に、PCAは線形変換の処理に基づき、相関性がある変数値を有する元のデータの組から、新しい相関のない変数(主成分(PC)と呼ばれる)を生成できる。言い換えると、PCAはデータを共分散のないPCの組に変換することで元の座標空間内の多変量データの共分散を除去し、ここでPC内の分散は元の座標空間内の分散と共分散を「説明している」。
【0119】
これを実現するために、線形変換は、データ内の多様性の「隠れた」原因を表現するのに十分なより少ない数のPCに、訓練データに関連した元の座標空間に属する(例えば、変数に対応する)次元を実質的に縮退できる。例えば、訓練データ点が多くの次元数を含む場合、元の訓練データにPCAを適用すると、縮退させた次元数を含む変換後の座標空間にそのデータを変換でき、変換後の訓練データは上記のPCの形態を取る縮退させた数の変数値を備える。
【0120】
例えば、上記のように、それぞれの訓練データは各変数に対してそれぞれの次元を有する元の座標空間内で表現される多変量データ点の時系列と考えてもよい。本例の実施形態では、元の座標空間内で表現される訓練データ点にPCAを適用することで、元の座標空間より比較的少ない次元数を有する変換後の座標空間をもたらし、このような各次元はそれぞれのPCに対応する。
【0121】
実際、PCAの適用時にアセットデータプラットフォーム102によって用いられる数学的な変換は、第1PCA次元が訓練データ内の最大量の分散を表現し、次に続く各PCA次元が第1PCA次元と直交し、比較的小さな量の分散を表現するように定義できる。次に続く各PCA次元が小さな量の分散を表現するという事実によって、アセットデータプラットフォーム102はPCAを介して、それぞれPCA次元に対応する限定された数の決定されたPCに焦点を合わせ、非ランダム効果による訓練データ内の分散を十分に評価できる。この点では、所定の組の訓練データに対してアセットデータプラットフォーム102によって選択されたPCA次元数は、ユーザ設定及び/又は嗜好、及び/又はいくつかの他の態様に基づいて自動的にアセットデータプラットフォーム102によって決定できる。
【0122】
変換後の座標空間に対して元の座標空間の次元を縮退させた結果として、変換後の訓練データ点は、元の座標空間内の訓練データ点に対してより少ない変数値(例えば、行列内により少ない列)をそれぞれ含んでもよい。
【0123】
上記の例では、アセットデータプラットフォーム102は、カーネルPCA、ロバストPCA及びスパースPCAを含む現在既知の又は後に開発されるPCAに関連した任意の変形形態を用いて、元の座標空間から変換後の座標空間に訓練データを変換できる。別の例では、アセットデータプラットフォーム102は、部分的最小二乗判別分析、部分最小二乗パスモデリング、及び潜在構造への直交射影を含む部分最小二乗及びその変形形態として知られる座標変換技術を用いて、元の座標空間から変換後の座標空間に訓練データを変換できる。アセットデータプラットフォーム102は、他の技術を用いて同様に元の座標空間から変換後の座標空間に訓練データを変換することもできる。
【0124】
図8は、
図7の獲得した訓練データを変換後の座標空間に変換する概念図を示す。図のように、
図8は、3つのPCA次元(例えば、802、804、806)及び原点810に対してプロットした変換後の訓練データ点808を有する変換後の座標空間800を示す。
【0125】
ブロック606において、アセットデータプラットフォーム102は、変換後の座標空間内の変換後の訓練データを標準化できる。
図9は、
図8の変換後の訓練データを変換後の座標空間内で標準化する概念図を示す。一般に、標準化の処理は、データセットの平均をその組の各値から減算してデータを中心に合わせ、差をデータの標準偏差で割ってデータを再スケーリングすることによる数学的処理を説明するために用いられる。この種の標準化はzスコア標準化として知られる。各PCA次元の中央値又はモードを減算してデータを中心に合わせる、又は各PCA次元の範囲又は95パーセンタイルで割ってデータを再スケーリングする等、他の統計的特性を用いて変換後のデータを標準化することもできる。このような標準化の結果として、変換後の訓練データ点が変換後の座標空間の原点を中心とするように、各変換後の訓練データ点の変数を更新できる。
【0126】
図のように、
図9は、原点810を中心とする変換後の座標空間800内で標準化した変換後の訓練データ902を示す。
【0127】
ブロック608において、変換後の座標空間内の各変数に対して、アセットデータプラットフォーム102はその変数の標準化した訓練データ値の分布を分析し、変換後の座標空間の変数の最大期待値を(例えば、その変数の標準化した訓練データ値の標準偏差に基づいて)決定できる。この点では、閾値の組は、変換後の座標空間の原点を中心とする多次元閉形状(例えば、円、楕円等)の境界を実質的に定義できる。
【0128】
図10は、
図9の標準化した変換後の訓練データ902に基づいて定義された閾値の組の概念図を示す。図のように、閾値の組は楕円1002として表現され、変換後の座標空間の原点810を中心とする境界を実質的に定義する。
【0129】
図6に戻ると、ブロック610において、アセットデータプラットフォーム102は閾値の組を格納し、変換後の座標空間内の観測データと将来比較できる。
【0130】
アセットデータプラットフォーム102が事前処理の一部として元の座標空間内の観測データを修正するように構成される実施形態では、アセットデータプラットフォーム102は、ブロック602で獲得した訓練データに基づいて、元の座標空間内の変数用の閾値を定義するように構成することもできる。例えば、一実施形態において、アセットデータプラットフォーム102は、元の座標空間内の各変数に対応する訓練データ値の分布を分析し、続いてこのような各変数に対して最小及び/又は最大予測値(例えば、閾値)を決定できる。この決定は訓練データ値の分布に関連した様々なメトリクスに基づき、その例は、他の可能性の中でも標準偏差と平均を含んでもよい。アセットデータプラットフォーム102は、他の態様で同様に元の座標空間内の変数用の閾値を定義することもできる。
【0131】
図11は、アセット関連データソースから受信した多変量データ内の異常を検出する1つの可能な例の方法1100を示す一例のフロー図である。例示のために、本例の方法1100はアセットデータプラットフォーム102によって実行されるように説明されるが、本例の方法は他のデバイス及び/又はシステムによって実行することもできる。当業者には明らかなように、フロー
図1100は簡略化及び説明のために提供され、他の多くの動作の組合せを利用して、多変量アセット関連データ内の異常の識別を容易にできる。
【0132】
ブロック1102において、アセットデータプラットフォーム102は、そのデータに含まれる変数の数と等しい次元数を有する元の座標空間内で、アセット関連データソースから多変量データを受信できる。この受信したデータは本明細書では「観測データ」とも呼ばれ、様々な形態を取ることができる。本例の実施形態では、代表的なアセット106等のアセットはセンサ及び/又はアクチュエータの組を含んでもよく、それぞれアセットの動作中に各変数(例えば、パラメータ)を監視し、監視した変数の時系列の信号値を出力するように機能し、各値はその値が測定された時点に対応する。例えば、センサ及び/又はアクチュエータは、多くの他の例の中でも、エンジン温度、液面、R.P.M等の変数を監視できる。従って、アセットの信号データは時系列の多変量データの形態を取ってもよく、時系列内のそれぞれのデータ点は各時点にアセットのセンサ及び/又はアクチュエータによって測定された信号値の組を備える。(加えて、アセット106及び/又はアセットデータプラットフォーム102はアセットの信号データから他の変数を抽出でき、その場合、これらの抽出した変数は多変量データに含まれてもよい)。実際、多変量観測データ内の異なる各変数は、そのデータ点に対する元の座標空間内の異なる次元と考えてもよい。
【0133】
1つの代表例として、アセットデータプラットフォーム102によって受信された時系列の多変量観測は、所定のアセットにおける各センサ/アクチュエータの出力にそれぞれ対応するプロットの組と考えてもよい。例えば、各観測変数は、水平軸上に時系列内の各測定値のシーケンス番号を示し、垂直軸上に各測定値の大きさを示すことで、変数の時系列の測定値を表現するプロット横座標上に観察できる。この意味では、観測データは測定値の行列として表現してもよく、複数の行はそれぞれ特定の時点に対応し、複数の列はそれぞれ異なる変数に対応する。上での説明に沿って、このような行列の各行は続いて、行列内の各列に次元を有する元の座標空間内の各データ点(つまり、信号測定値の各組)と見なしてもよい(つまり、多変量データ内の各変数)。
【0134】
アセットデータプラットフォーム102は、他の可能性の中でも、連続的(例えば、「実時間」又はほぼ実時間で)、周期的に、又は「バッチ」で等、様々な態様で上記の観測データを受信できる。アセットデータプラットフォーム102がアセット関連データソースからデータを受信する方法は、他のファクタの中でも、データソースの種類及び/又は構成に依存してもよい。いずれにせよ、アセットデータプラットフォーム102は、異常検出の実行に用いるデータストレージ404に関連したデータベース等、第1データベース内に受信したデータを格納できる。
【0135】
ブロック1102において観測データを受信した後、アセットデータプラットフォーム102は、元の座標空間内で表現された観測データ上で所定の事前処理機能を実行することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、アセットデータプラットフォーム102は、元の座標空間内の変数に対して定義された閾値に適合しない元の座標空間内の所定の値を修正(又は補完)できる。このような実施形態に従って上記のように、アセットデータプラットフォーム102は、通常のアセット動作を反映した訓練データに基づいて、元の座標空間内の各変数に対して1つ以上の閾値(例えば、最小及び/又は最大期待値)を定義できる。更に、アセットデータプラットフォーム102は、元の座標空間内の変数に対して定義された閾値と、受信した観測データの値(事前処理前又は事前処理後のいずれか)を比較し、続いて定義された閾値に適合しない任意の変数値を修正(又は補完)するように構成できる。例えば、アセットデータプラットフォーム102は、各閾値の上又は下にある任意の変数値をその閾値と置換できる。アセットデータプラットフォーム102は、他の態様で同様に閾値の比較に基づいて、受信した観測データの値を修正できる。例えば、1つ以上の受信した観測データの値が欠けている、又は「非数値」、つまりNaNと表現されている場合、アセットデータプラットフォーム102は、対応する信号の平均又は中央値で欠損値を補充(又は補完)できる。
【0136】
一般に、ブロック1102で受信され、元の座標空間内で表現される観測データは相関性のある変数に対応する値を含み、異常の検出を困難にする可能性がある。観測データ内の多様性の強調を容易にするために、アセットデータプラットフォーム102は座標変換技術を用いて、元の座標空間内で表現された相関性のある変数から相関性のない変数を生成できる。
【0137】
ブロック1104において、アセットデータプラットフォーム102は、
図6のブロック604を参照しながら上で説明したように、次元縮退技術であるPCA技術を利用する等によって、元の座標空間から、元の座標空間より少ない次元を有する変換後の座標空間に観測データを変換(又は「射影」)できる。
【0138】
変換後の座標空間に対して元の座標空間の次元を縮退させた結果として、変換後の観測データ点は、元の座標空間内の観測したデータ点に対してより少ない変数値(例えば、行列内のより少ない列)をそれぞれ含んでもよい。
【0139】
ブロック1106において、アセットデータプラットフォーム102は、
図6のブロック606を参照しながら上で説明したものと同様に変換後の座標空間内の変換後の観測データを標準化できる。つまり、アセットデータプラットフォーム102は、標準化した変換後の観測データが変換後の座標空間の原点を中心とするように、変換後の観測データ上でzスコア標準化を実行できる。
【0140】
ブロック1108において、アセットデータプラットフォーム102は、通常のアセット動作を反映した訓練データに基づいて定義される閾値の組と標準化した観測データとを比較できる。この閾値の組は様々な形態を取り、様々な態様で定義できる。
【0141】
好ましい実施形態において、この閾値の組は変換後の座標空間内の選択された各変数(例えば、各PC)に対してそれぞれの閾値を備えてもよく、各変数の閾値は通常のアセット動作中の変数の最大期待値を表現する。しかし、閾値の組は他の形態を同様にとってもよい。例えば、いくつかの場合、訓練データに基づいて定義される閾値の組は、所定の変換後の座標空間に存在する選択された変数の全てより少ないものに対応する閾値を含んでもよい。他の例では、変換後の座標空間内の所定の変数の閾値は、最大値ではなく変換後の訓練データの測定値と関連付けすることもできる。例えば、閾値は変換後の訓練データの分布の95又は99パーセンタイルと関連付けすることもできる。別の例として、閾値は、変換後の訓練データの最大値の2倍又は1.5倍等、最大値にある定数を乗算したものに設定することもできる。
【0142】
一例では、閾値の組は変換後の座標空間内の多次元閉形状(例えば、円、楕円等)として観察でき、それは変換後の座標空間の原点を中心とする境界を実質的に定義する。
【0143】
アセットデータプラットフォーム102は、様々な態様で閾値の組と標準化した変換後の観測データとの比較を実行できる。好ましい実施形態では、アセットデータプラットフォーム102は変換後の座標空間内のそれぞれの変数(例えば、各PC)に対する所定の標準化した観測データ点の値と、その各変数に対して定義された閾値とを比較し、データ点の値が定義された閾値を超えるかどうかを決定できる。しかし、アセットデータプラットフォーム102は他の態様で同様に比較を実行することもできる。
【0144】
ブロック110において、アセットデータプラットフォーム102は、標準化した観測データと閾値の組との間の比較に基づいて、変換後の座標空間内の標準化した観測データを修正できる。例えば、アセットデータプラットフォーム102が比較に基づいて、標準化した変換後の観測データ点がその変数に対して定義された閾値を超える変換後の座標空間内の少なくとも1つの変数値(例えば、PC値)を備えることを決定した場合、アセットデータプラットフォーム102は観測データ点を修正し、少なくとも1つの変数値が定義された閾値をもはや超えないようにできる。言い換えると、アセットデータプラットフォーム102は1つ以上の標準化した観測データ点の値を「収縮」するように構成でき、そのデータ点が閾値の組によって囲まれた多次元閉形状により近づく(おそらくその内部になる)ようにする。
【0145】
一実施形態において、アセットデータプラットフォーム102は、その変数に対して定義された閾値と、定義された閾値を超える任意の変数値とを置換することで、変数毎に(PC毎に)標準化した変換後の観測データ点を修正できる。例えば、所定のデータ点が変換後の座標空間内の定義された閾値を超える2つの変数値を備える場合、アセットデータプラットフォーム102はその変数に対して定義された閾値と、このようなそれぞれの変数の値を置換し、それらの2つの変数値の大きさの低減をもたらすことができる。この実施形態は「成分収縮」とも呼ばれる。
【0146】
図12は成分収縮の例の概念図を示す。図のように、元の観測データ点は、(Z
1,obs,Z
2,obs,Z
3,obs)として示される3つのPCA変数の値から構成できる。更に、図のように、2つのこれらの値(Z
1,obsとZ
2,obs)は閾値の組で定義された境界の外側にある。このデータ点に成分収縮を適用することは、これらの変数の閾値とこれらの2つの値を置換することを含み、それによって値(Z
1,shrink,Z
2,shrink,Z
3,obs)を有する修正したデータ点をもたらすことができる。
【0147】
別の実施形態では、アセットデータプラットフォーム102は、調整された態様で複数のデータ点の値を修正することで、変換後の座標空間内の観測データ点を修正できる。例えば、変換後の座標空間内の所定のデータ点が変換後の座標空間内の閾値の組に囲まれた多次元閉形状の外側にあると決定された場合、アセットデータプラットフォーム102は、そのデータ点が境界に最も近い点に実質的に移動されるように変数値の所定の点の組を修正できる。この実施形態は「ベクトル収縮」とも呼ばれ得る。
【0148】
図13は、ベクトル収縮の例の概略図を示す。図のように、元の観測データ点は、(Z
1,obs,Z
2,obs,Z
3,obs)として示される3つのPCA変数の値から再び構成できる。更に、図のように、2つのこれらの値(Z
1,obsとZ
2,obs)は閾値の組で定義された境界の外側にある。このデータ点にベクトル収縮を適用することは、データ点が境界を越えるPCA次元(ここでは第1及び第2PCA次元)から構成された座標空間を識別することと、観測データ点から原点までその空間内で直線を描画することと、続いてこの直線が境界と交差する位置までデータ点を移動させ、値(Z
1,shrink,Z
2,shrink,Z
3,obs)を有する修正したデータ点をもたらすこととを含んでもよい。この例では、図のように、Z
1,shrinkとZ
2,shrinkの値は閾値より小さくてもよい。
【0149】
アセットデータプラットフォーム102は、他の態様で同様に変換後の座標空間内の観測データ点を修正できる。
【0150】
好ましい実施形態では、アセットデータプラットフォーム102は、アセットデータプラットフォーム102が事前処理中に元の座標空間内の観測データを修正(又は補完)するように構成されているかどうかにかかわらず、ブロック1110において変換後の座標空間内の観測データを修正するように構成されるであろう。しかし、いくつかの代わりの実施形態では、事前処理中に元の座標空間内の観測データを修正するように構成されたアセットデータプラットフォーム102は続いてブロック1110をスキップし、変換後の座標空間内の観測データを更には修正しないであろう。言い換えると、アセットデータプラットフォーム102は、任意の組合せで元の座標空間の修正と変換後の座標空間の修正とを実施するように構成できる。
【0151】
ブロック1112において、アセットデータプラットフォーム102は、修正した観測データを変換後の座標空間から元の座標空間に逆変換(又は射影)できる。実際、変換後の座標空間内で修正され、続いて上記のように元の座標空間に射影された観測データ点は、元の座標空間内の受信した観測データとは有意に異なる少なくとも1つの変数値を有してもよい。つまり、元の座標空間の少なくとも1つの次元内の変換前の観測データ点と変換後の観測点との間に「ギャップ」が存在し、異常を示してもよい。
【0152】
修正した観測データを逆変換した後、アセットデータプラットフォーム102は、いくつかの場合、観測データ上で所定の後処理機能を実行することもできる。例えば、アセットデータプラットフォーム102は逆変換したデータを「規格化せず」、最初に受信した観測データとこのようなデータを順に、実質的に比較することもできる。アセットデータプラットフォーム102は様々な他の後処理機能を実行することもできる。
【0153】
ブロック1114において、アセットデータプラットフォーム102は、元の座標空間内の変換後の観測データを分析し異常を識別できる。例えば、観測データ内の1つ以上の変数が異常であるように見える場合(例えば、変換後及び変換前の観測データの間の少なくとも1つの変数値に統計的に有意な相違が存在する場合)を識別するために、アセットデータプラットフォーム102は異常検出テストを適用し、変換後の観測データが所定の期間上で元の座標空間内の変換前の観測データ(例えば、受信した観測データ)と比べてどのようであるかを分析することができる。
【0154】
更に、アセットデータプラットフォーム102は、受信した観測データ、変換後の観測データ、及び異常検出テスト結果を分析する診断及び予測方法を利用して、異常な挙動が装置の故障を示すかどうかを決定できる。このような診断及び予測方法は、時系列外挿、エキスパートルール、及び機械学習技術を含むがそれらには限定されない。
【0155】
更に、アセットデータプラットフォーム102はこの識別に基づいて様々な機能を実行できる。一例として、アセットデータプラットフォーム102は識別した異常の通知を生成でき、それは代表的なクライアントステーション112等において、ユーザに視覚的に及び/又は聴覚的に提示できる。別の例として、アセットデータプラットフォーム102は、異常を識別したアセットデータを破棄するように構成でき、この信頼性がない可能性があるデータが他の目的(例えば、ユーザへの提示、訓練又はモデルの実行等)でアセットデータプラットフォーム102によって用いられないようにする。アセットデータプラットフォーム102は、異常のその識別に基づいて同様に他の機能を実行することもできる。
【0156】
本明細書で開示された技術はアセット関連データ内の異常を検出するアセットデータプラットフォームの状況で説明してきたが、当然のことながら、開示された概念を用いて、様々な他の状況で同様に異常を検出することもできる。
V.結論
【0157】
開示された革新の本例の実施形態を上で説明してきた。しかし、本発明の真の範囲及び精神から逸脱することなく説明された実施形態に変更及び修正を行えることも当業者には理解でき、それらは請求項によって定義されるであろう。
【0158】
更に、本明細書で説明された例が「人間」、「オペレータ」、「ユーザ」又は他のエンティティ等の行為者によって実行又は開始された動作を含む範囲において、これは例及び説明の目的にすぎない。請求項の文言で明示的に記載されない限り、請求項はこのような行為者によるアクションを必要とすると解釈されるべきではない。
【国際調査報告】