特表2020-500057(P2020-500057A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-500057血管グラフト、その製造方法、およびそれを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-500057(P2020-500057A)
(43)【公表日】2020年1月9日
(54)【発明の名称】血管グラフト、その製造方法、およびそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/06 20130101AFI20191206BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20191206BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20191206BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20191206BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20191206BHJP
【FI】
   A61F2/06
   A61L27/50 300
   A61L27/38
   A61L27/40
   A61L27/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-523697(P2019-523697)
(86)(22)【出願日】2017年11月7日
(85)【翻訳文提出日】2019年7月5日
(86)【国際出願番号】IB2017056967
(87)【国際公開番号】WO2018083683
(87)【国際公開日】20180511
(31)【優先権主張番号】62/418,402
(32)【優先日】2016年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500360769
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】517036013
【氏名又は名称】シャークレット テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マギン,チェルシー・マリー
(72)【発明者】
【氏名】ブレンナン,アンソニー・ビー
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB13
4C081BA12
4C081BA14
4C081BA16
4C081CA29
4C081CD12
4C081CD34
4C081DA03
4C081DA12
4C081DC04
4C081EA02
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC02
4C097CC03
4C097DD15
4C097EE19
4C097MM04
(57)【要約】
【解決手段】 ここに開示されるのは血管グラフトを製造する方法であり、複数の離隔フィーチャーを含み、これらの離隔フィーチャーが複数にグループ分けされて配置され、離隔フィーチャーのグループ分けが、第1の方向から見たときには蛇行経路を画定するように互いに配置されたテクスチャード加工面を有するコア上に、第1の細胞型の細胞を配置し、細胞を成長させて、コアのテクスチャード加工面の凹凸反転イメージであるテクスチャード加工内面を有する一次細胞播種構築物を形成し、一次細胞播種構築物を第2の細胞型と接触させて二次細胞播種構築物を形成し、コアを取り除いて血管グラフトとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管グラフトを製造する方法であって、
複数の離隔フィーチャーを含み、これらの離隔フィーチャーが複数にグループ分けされて配置され、前記離隔フィーチャーのグループ分けが、第1の方向から見たときには蛇行経路を画定するように互いに配置されたテクスチャード加工面を有するコア上に、第1の細胞型の細胞を配置し、
細胞を成長させて、前記コアのテクスチャード加工面の凹凸反転イメージであるテクスチャード加工内面を有する一次細胞播種構築物を形成し、
前記一次細胞播種構築物を第2の細胞型と接触させて二次細胞播種構築物を形成し、
前記コアを取り除いて前記血管グラフトとする
ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記第1の細胞型は上皮細胞を含み、前記第2の細胞型が平滑筋細胞、上皮細胞、マクロファージ、線維芽細胞、またはそれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記テクスチャード加工面がパターンを含み、前記パターンの長手方向軸が前記コアの長手方向軸と平行である、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記コアは、膨らませることのできる袋、または生分解性ポリマーを含む、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記離隔フィーチャーは各々が3μm超から100μm未満の幅を有し、前記離隔フィーチャーの各々の間隔は3μm超〜100μm未満である、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記コアは、そのコアの体積の収縮を容易にする温度制御流体を伝達するように動作可能な通路を含む、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記離隔フィーチャーのグループ分けは、第2の方向から見たときに線形経路を画定するように配置されている、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の血管グラフトの製造方法において、前記複数の離隔フィーチャーは、表面から外向きに突出し、あるいは表面内に突出している、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記血管グラフトを脱細胞化することをさらに含む、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記一次細胞播種構築物および/または前記二次細胞播種構築物は、2つ以上の層を備える、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記コアおよび前記一次細胞播種構築物が生体適合性である、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記一次細胞播種構築物および前記二次細胞播種構築物は、それぞれが1または複数の細胞型を含む、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記1の細胞型および前記第2の細胞型が互いに異なり、内皮細胞、内皮前駆細胞、平滑筋細胞、マクロファージ、線維芽細胞、またはそれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記第1の細胞型と前記第2の細胞型とが同じである、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の血管グラフトの製造方法において、前記第1の細胞型と前記第2の細胞型とが互いに異なる、ことを特徴とする血管グラフトの製造方法。
【請求項16】
複数の離隔フィーチャーを含み、これらの離隔フィーチャーが複数にグループ分けされて配置され、前記離隔フィーチャーのグループ分けが、第1の方向から見たときには蛇行経路を画定するように互いに配置されたテクスチャーを内面に有する一次細胞播種構造物と、
前記一次細胞播種構築物上に配置された二次細胞播種構築物と
を備える血管グラフト。
【請求項17】
請求項16に記載の血管グラフトにおいて、前記一次細胞播種構築物が2以上の層を有する、ことを特徴とする血管グラフト。
【請求項18】
請求項16に記載の血管グラフトにおいて、細胞外マトリクスをさらに備えることを特徴とする血管グラフト。
【請求項19】
請求項18に記載の血管グラフトにおいて、前記細胞外マトリクスが、前記一次細胞播種構築物の細胞型とは異なる細胞型を含む、ことを特徴とする血管グラフト。
【請求項20】
請求項18に記載の血管グラフトにおいて、前記細胞外マトリクスが無細胞組織培養材料である、ことを特徴とする血管グラフト。
【請求項21】
請求項16に記載の血管グラフトにおいて、前記血管グラフトは断面が管状であり、前記テクスチャード加工面がパターンを含み、前記パターンの長手方向軸が前記血管グラフトの長手方向軸と平行である、ことを特徴とする血管グラフト。
【請求項22】
請求項16に記載の血管グラフトにおいて、前記血管グラフトが2以上の層を含み、この2以上の層のうちの最外層がヒドロゲル、コラーゲン、またはそれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする血管グラフト。
【請求項23】
複数の離隔フィーチャーを含み、これらの離隔フィーチャーが複数にグループ分けされて配置され、前記離隔フィーチャーのグループ分けが、第1の方向から見たときには蛇行経路を画定するように互いに配置されたテクスチャーを内面に有する一次細胞播種構造物と、前記一次細胞播種構築物上に配置された二次細胞播種構築物とを備える血管グラフトを、生体の体内に配置する
ことを特徴とする血管グラフトの使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年11月7日出願の米国仮出願番号第62/418,402号に基づく優先権を主張し、その全内容は参照によりここに組み入れられる。
【0002】
本発明は、血管グラフト、その製造方法、およびそれを含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床的に入手可能な小径血管グラフト(移植片)は、最善のグラフトの取り組みおよび治癒に望ましい適切な特性を有しているものではない。現在の標準は、小径グラフトとして、伏在静脈および内胸動脈などの自家移植血管を使用している。しかしながら、このアプローチは、入手可能性およびドナー部位の病的状態などにより制限され、失敗率はこの10年で約50%に留まっている。したがって、これは、理想的な治療法とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US7143709B2(Brennan他)
【特許文献2】US9016221B2(Brennan他)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bioengineered human acellular vessels for dialysis access in patients with end−stage renal disease: two phase 2 single−arm trials, Lawson JH, Glickman MH, et. al., 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合成グラフトは、大径(15〜35mm)および中径(7〜14ミリメートル)の動脈では成功を収めているが、小径血管(<6mm)では開存率が低いことがわかっており、それらの合成グラフトを用いた血管再生も、一般には実行可能ではない。血栓症および内膜過形成がグラフト不全の一般的な原因であり、その両者とも、グラフトの内腔を裏打ちする内皮細胞が存在しないことの結果として起こる。感染症がグラフト不全のもうひとつの一般的な原因であり、合成グラフトおよび同種グラフトで最も頻繁に発生している。同種グラフトはまた、死体からの組織利用可能性において、ばらつきの問題がある。したがって、血管の流れを迅速に再確立し、内皮化を促進し、免疫応答を引き起こさない小径の血管グラフトを製造することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示されるのは、血管グラフトの製造方法である。この方法では、まず、テクスチャード加工面を有するコア上に、第1の細胞型の細胞を配置する。テクスチャード加工面は、複数の離隔されたフィーチャー(模様などの特徴のあるパターン、以下、「離隔されたフィーチャー」を「離隔フィーチャー」という)を有し、これらの離隔フィーチャーが、複数のグループに分けて配置される。離隔フィーチャーのグループ分けは、互いが、第1の方向から見たときに蛇行経路を画定するように配置される。続いて、コア上に配置された細胞を成長させ、一次細胞播種構築物を形成する。ここで、一次細胞播種構築物は、コアのテクスチャード加工面の凹凸反転であるテクスチャード加工内面を有する。次に、一次細胞播種構築物を第二の細胞型と接触させて、二次細胞播種構築物を形成する。コアを除去して、血管グラフトとする。
【0008】
ここではまた、血管グラフトを開示する。この血管グラフトは、内面にテクスチャーを有する一次細胞播種構築物と、この一次細胞播種構築物上に配置された二次細胞播種構築物とを備える。テクスチャーは複数の離隔フィーチャーを含み、これらの離隔フィーチャーが、複数のグループに分けて配置される。離隔フィーチャーのグループ分けは、互いが、第1の方向から見たときに蛇行経路を画定するように配置される。
【0009】
ここではまた、血管グラフトの使用方法を開示する。この方法では、内面にテクスチャーを有する一次細胞播種構築物と、この一次細胞播種構築物上に配置された二次細胞播種構築物とを備える血管グラフトを、生体の体内に配置する。ここで、テクスチャーは、複数の離隔フィーチャーを含み、これらの離隔フィーチャーが、複数のグループに分けて配置される。離隔フィーチャーのグループ分けは、互いが、第1の方向から見たときに蛇行経路を画定するように配置される。二次細胞播種構築物は、生体の体内で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、テクスチャード加工コア上に血管グラフトを製造する方法を示す。
図2A図2Aは、コアの表面上のひとつのタイプのテクスチャーを示す。
図2B図2Bは、コアの表面上のひとつのタイプのテクスチャーを示す。
図2C図2Cは、コアの表面上のひとつのタイプのテクスチャーを示す。
図2D図2Dは、コアの表面上のひとつのタイプのテクスチャーを示す。
図3図3は、所与の領域内の細胞により覆われたコアの静的流れに対する平均面積を示す。
図4図4は、所与の領域内の細胞により覆われたコアの層流に対する平均面積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
線維芽細胞とは、細胞の一種であり、細胞外マトリクスとコラーゲンを合成して動物組織に対する構造的枠組み(間質)を提供する細胞である。
【0012】
脱細胞化とは、生医学工学において使用されるプロセスであり、組織の細胞外マトリクス(ECM)を、元の組織のECM骨格を残して、そこにある細胞から単離することである。単離されたECMは、人工臓器および組織再生で使用することができる。
【0013】
細胞外とは、「細胞の外側」を意味し、無細胞とは、「細胞を含まない」ことを意味する。
【0014】
ここで開示されるのは、5mmから35mmの直径を有する血管グラフトを合成して製造する方法である。この方法は、テクスチャード加工コア(ここでは、「基材」ともいう)上に、複数の細胞を配置することを含み、これらの細胞が培養されて、グラフト(ここでは、「構築物」ともいう)を形成する。一実施形態では、グラフトは、細胞外マトリクスで形成された無細胞組織培養材料である。グラフトは、単層でもよく、ひとつの層が他の層の上に配置された多層を含んでもよい。
【0015】
細胞培養とは、制御された条件下、一般には通常の環境とは異なる条件下で、細胞が成長するプロセスである。実用的には、「細胞培養」という用語は、多細胞真核生物に由来する細胞、特に動物細胞、の培養をいう。培養細胞は、コアのテクスチャーによって決定づけられるパターンで成長することができる。典型的な実施形態では、培養される細胞の第1層を内皮細胞とすることができ、第2層を平滑筋細胞とすることができる。線維芽細胞も、この構造に取り込むことができる。これらの細胞はすべて、天然の血管に存在し、適切な細胞外マトリクス成分を蓄積する。本発明の血管グラフトは、テクスチャード加工マイクロパターンを利用してプロセスを加速することにより、内皮化の欠如による移植不全の問題を是正することを目的とするものである。テクスチャード加工マイクロパターンは、SHARKLET(登録商標)マイクロパターンと呼ばれ、図3Aに詳細に示されており、以下で説明する。
【0016】
ここで開示されるのは、脱細胞化された組織培養構築物を製造する方法であり、生体適合材料を含むコアを、第1の細胞型(例えば、上皮細胞、筋肉細胞など)を含む第1の懸濁液と接触させる。第1の細胞型の細胞は、コアに付着してそれを覆い、それによって、一次細胞播種構築物を形成する。次いで、この一次細胞播種構築物を、第1の細胞型を含む組織の成長に適した環境に第1の成長期間にわたり維持して、一次組織培養構築物を形成する。一実施形態では、第1の細胞型は上皮細胞を含む。
【0017】
コアは、特定の方向への細胞成長を可能にするようにテクスチャード加工が施されており、これが、組織培養構築物の強度を向上させるのを助け、一次細胞型によって沈着した細胞外マトリクスのタンパク質にパターンを転写する。別の実施形態では、一次細胞播種構築物を、この一次細胞播種構築物に接着してそれに順応する第2の細胞型(例えば、上皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞、マクロファージなど)を含む第2の懸濁液に接触させ、一次細胞播種構築物(第1の細胞型の細胞を含む)と二次細胞播種構築物(第2の細胞型の細胞を含む)とを含む多層細胞播種構築物を形成することができる。この二次細胞播種構築物を、第2の細胞型の成長に適した環境中で、第2の成長期間にわたり維持して、二次組織培養構築物を形成する。第1の細胞型は、第2の細胞型と同じでも異なっていてもよい。一次細胞播種構築物および/または二次組織培養構築物は、必要に応じて脱細胞化することができる。
【0018】
二次組織培養構築物の形成は、生物の身体の内部または外部で行うことができる。この構築物を動脈または静脈内に配置するとき、構築物の外面にシールを付け加え、動脈を流れる体液の漏れを防ぐことができる。例えば、線維芽細胞および内皮細胞などの平滑筋細胞が、一次細胞播種構築物または二次組織培養構築物のいずれかに使用される。二次組織培養構築物の形成を生物の体内で行う場合、コアを生分解性材料により作ることができる。これにより、生分解性コアが体内で分解する一方で、一次細胞播種構築物に第二の細胞型を播種することができる。生分解性コアを体内に埋め込む前に部分的に中空とし、生体液が灌流するようにすることもできる。
【0019】
この方法は、この技術を、幹細胞、前駆細胞および患者特異的な人工多能性幹細胞を含む多種多様な細胞型と共に使用することができる、という点で有利である。一実施形態では、このステップをバイオリアクター内で行ない、生体内で見られる温度、栄養素および流動環境を含む生理学的条件を再現する。
【0020】
上記のように、培養される細胞は、除去可能なコア上に、第1の懸濁液を介して配置される。コアは、マンドレルとも呼ばれ、その外面にはテクスチャード加工が施されている。図1は、培養されるべき細胞104が配置された除去可能なコア102を示す。一実施形態では、コアは多孔質ではない。別の実施形態では、コアは多孔質である。除去可能なコアは、一般に、適切な量の細胞成長がその表面上で達成された後に除去可能な材料により製造される。細胞成長は、一次細胞播種構築物(グラフトともいう)の形成をもたらす。コア102は、その外面にはテクスチャード加工が施されている。テクスチャード加工は、一次細胞播種構築物における細胞成長を促す鋳型として役立つ。コア102はまた、所望のレベルの細胞成長が生じたら、一次細胞播種構築物から分離することもできる。コア102は、使い捨てコア(すなわち、一度だけ使用され、その後廃棄される)でもよく、再使用可能(すなわち、複数回使用することができる)でもよい。コアの除去は、一次細胞播種構築物を損傷しないように行うことが好ましい。
【0021】
別の実施形態(ここでは示されていない)において、一次細胞播種構築物がその上に配置されたコアを、第2の細胞型(例えば、上皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞、マクロファージ等)を含む第2の懸濁液に接触させ、一次細胞播種構築物(第1の細胞型の細胞を含む)と二次細胞播種構築物(第2の細胞型の細胞を含む)とを含む多層細胞播種構築物を形成することができる。この二次細胞播種構築物を、第2の細胞型の成長に適した環境中で、第2の成長期間にわたり維持して、二次組織培養構築物を形成する。次いで、二次組織培養構築物を脱細胞化し、その後それをコアから除去する。次いで、二次組織培養構築物を血管グラフトとして使用し、生物の体内に位置する導管内または導管上に移植することができる。
【0022】
一実施形態において、再利用可能なコア102として入口ポートのある袋状のものを用い、その入口ポートを通して加圧流体を充填して、それを膨らませることができる。袋は一般に、加圧流体によって膨らますことができるエラストマーから製造される。加圧流体は、気体または液体である。袋の外面はテクスチャード加工が施されており、細胞の培養中にテクスチャーの寸法を(袋の膨らみの量を変えることによって)変えることができる。コアとして膨らむ袋を使用することによって、異なる直径の一次細胞播種構築物を製造することができ、あるいは、一次細胞播種構築物が形成され始めた後に直径を変えることもできる。
【0023】
袋を所望のレベルまで膨らませた後、所望の細胞を(懸濁液の形態で)それと接触させて、細胞成長を促進することができる。細胞成長は、適切な条件下で、反応器中で生じさせることができまる。細胞の培養が完了し、一次細胞播種構築物が形成されると、加圧流体を袋から除去して有用なグラフトを残し、そのグラフトを、将来の使用のために貯蔵し、あるいは生物の体に移すことができる。
【0024】
袋は、代替的に、適切な磁界または電界を受けて凝固する磁気流動学流体または電気流動学流体で充填することもできる。一次細胞播種構築物を形成した後、印加される磁界または電界を反転させてコアを緩め、一次細胞播種構築物を取り出すことができる。典型的な実施形態では、膨らんだ時の袋は、円筒形または円錐形の断面形状を有する。
【0025】
コアでの使用に適するエラストマーは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム、ポリ(スチレン)−ブロック−ポリ(ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル)−ブロック−ポリ(スチレン)−ブロック−ポリ(ブタジエン)(ABS)、ポリクロロプレン、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンエラストマー(ポリシロキサン)、フルオロシリコーンエラストマー、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム(EPR)、エチレン−酢酸ビニルエラストマーなど、またはそれらの組み合わせである。典型的なエラストマーは、限定された膨潤性を有するヒドロゲルを含み、細胞培養物への栄養素の送達を容易にする。
【0026】
別の実施形態では、コア102は、グラフトの製造中に膨張しない固体ポリマーブロックから製造することができる。固体ブロックポリマーとして、有機ポリマーを用いることができる。コアに使用される有機ポリマーは、多種多様な熱可塑性ポリマー、熱可塑性ポリマーの混合物、熱硬化性ポリマー、または熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーとの混合物から選択することができる。有機ポリマーは、ポリマー、コポリマー、ターポリマー、または前述の有機ポリマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせの混合物でもよい。有機ポリマーはまた、オリゴマー、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、交互ブロックコポリマー、ランダムポリマー、ランダムコポリマー、ランダムブロックコポリマー、グラフトコポリマー、スターブロックコポリマー、デンドリマー、またはデンドリマーなど、またはそれらの組み合わせ、でもよい。
【0027】
有機ポリマーの例としては、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリアリルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリ無水物、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホン酸塩、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリウレア、ポリホスファゼン、ポリシラザン、スチレンアクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど、またはそれらの組み合わせ、が挙げられる。
【0028】
ポリマー組成物での使用に適する熱硬化性ポリマーの例には、エポキシポリマー、不飽和ポリエステルポリマー、ポリイミドポリマー、ビスマレイミドポリマー、ビスマレイミドトリアジンポリマー、シアネートエステルポリマー、ビニルポリマー、ベンゾオキサジンポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー、アクリル、アルキド、フェノール−ホルムアルデヒドポリマー、ノボラック、レゾール、メラミン−ホルムアルデヒドポリマー、尿素−ホルムアルデヒドポリマー、ヒドロキシメチルフラン、イソシアネート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、不飽和ポリエステルイミドなど、またはそれらの組み合わせ、が含まれる。
【0029】
熱可塑性ポリマーの混合物の例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリ塩化ビニル、ポリフェニレン−エーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ナイロン、ポリスルホン/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート/熱可塑性ウレタン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマーアロイ、ナイロン/エラストマー、ポリエステル/エラストマー、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、アセタール/エラストマー、スチレン−無水マレイン酸/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルイミドポリエチレン/ナイロン、ポリエチレン/ポリアセタールなどが含まれる。
【0030】
コア102で使用される前述のポリマーは、コア内に通路を含むことができ、この通路を通して、冷水、液体窒素、液体二酸化炭素などの温度制御流体を輸送することができる。このような冷却剤を使用して、グラフトが製造された後に、コア102の直径を縮小させることができる。コア直径の減少を使用して、グラフトをコア102から取り出すことができる。一実施形態では、温度制御流体が、温度を制御すると共に、細胞へ栄養素を供給することができる。
【0031】
別の実施形態では、コア102が、生分解性ポリマーを含むことができる。パターンまたは基材に使用することができるポリマーとして、生分解性材料がある。生分解性ポリマーの適切な例としては、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸とポリカプロラクトンとのコポリマー(PCL−PLGAコポリマー)、ポリヒドロキシブチレート−バレレート(PHBV)、ポリオルトエステル(POE)、ポリエチレンオキシド−ブチレンテレフタレート(PEO−PBTP)、ポリ−D,L−乳酸−p−ジオキサノン−ポリエチレングリコールブロックコポリマー(PLA−DX−PEG)など、またはこれらの生分解性ポリマーの少なくとも1種を含む組み合せ、が挙げられる。コア102が生分解するので、製造後のグラフト104を取り出すことができる。ここで列挙した(コアに使用するための)いくつかのポリマーは、生体適合性ではないが、表面の親水性を増大させることによって、生体適合性にすることができる。これは、表面をプラズマ処理すること、電子ビームまたはX線で表面を処理すること、ヒドロゲルなどで表面を処理すること、またはそれらの組み合わせによって行うことができる。
【0032】
コア102の外面に配置されたパターン、すなわちテクスチャーは、複数の離隔フィーチャーを含み、これらフィーチャーは、複数にグループ分けされて配置される。フィーチャーのグループ分けは、互いに、第1の方向から見たときに蛇行経路を画定するように行われる。また、他の方向から見たときには、フィーチャーのグループ分けが線形経路を画定するように配置される。複数の離隔フィーチャーは、表面から外向きに突出していてもよく、または表面内に突出していてもよい。一実施形態では、複数の離隔フィーチャーが、表面と同じ化学組成を有する。別の実施形態では、複数の離隔フィーチャーが、表面とは異なる化学組成を有する。
【0033】
隣接するフィーチャー間の間隔である第1フィーチャー間隔の平均は、表面の少なくとも一部において、1μmから100μmの間であり、上述した複数の離隔フィーチャーの並びが周期関数によって表される。ここで留意すべきは、複数のフィーチャーは、個々には分離されており、互いに接触してはいないことである。
【0034】
別の実施形態では、テクスチャーのトポグラフィーが、1〜50、好ましくは1.5〜40の平均粗さ係数(R)を提供する。上述のように、パターンは、蛇行経路によって、隣接するパターンから分離される。蛇行経路は、周期関数で表すことができる。周期関数は、蛇行経路が異なれば、異なっていてよい。一実施形態では、パターンが、2以上の周期関数によって表される蛇行経路によって、互いに分離される。周期関数は、正弦波を含むことができる。典型的な実施形態では、周期関数が、2以上の正弦波を含む。
【0035】
別の実施形態では、複数の異なる蛇行経路がそれぞれ複数の周期関数によって表されるとき、それぞれの周期関数が、固定位相差によって分離される。さらに別の実施形態では、複数の異なる蛇行経路が複数の周期関数によって表されるとき、それぞれの周期関数が、可変位相差によって分離されてもよい。
【0036】
一実施形態では、複数の離隔フィーチャーが、実質的に平坦な上面を有する。別の実施形態では、多要素の台地状層(プラトー層)が表面の一部の上に配置され、このプラトー層の要素間の離隔距離が、第2フィーチャー間隔となる。第2フィーチャー間隔は、第1フィーチャーと比較すると、かなり異なる。
【0037】
一実施形態では、パターンが、基礎物品上に配置されたコーティング層を含む。言い換えれば、コーティング層がパターンを含み、基礎物品上に配置される。
【0038】
一実施形態では、フィーチャーは互いに分離されており、平均フィーチャー間隔は約1nmから約500μmである。そのトポグラフィーは、少なくとも1つの周期関数を用いて、数値的に表現可能である。この周期関数は、離隔フィーチャーの複数のパターン間に実質的に位置する経路によって表すことができる。
【0039】
一実施形態では、第1フィーチャー間隔は、表面の少なくとも一部分において、0.5〜5μmである。別の実施形態では、第1フィーチャー間隔が、前記表面の少なくとも一部において、15〜60μmである。上記のように、周期関数は2つの異なる正弦波を含む。一実施形態では、そのトポロジーが、サメ皮のトポロジー(例えばSharklet)に似ている。別の実施形態では、パターンは表面の一部に配置された少なくとも1つの多要素プラトー層を含み、プラトー層の要素間の間隔距離が第2フィーチャー間隔となる。第2フィーチャー間隔は、第1フィーチャー間隔と比較すると、かなり異なる。
【0040】
一実施形態では、2つの隣接するグループによって共有されるフィーチャーの合計が、奇数となる。別の実施形態では、2つの隣接するグループ分けによって共有されるフィーチャーの合計が、偶数となる。
【0041】
所与のパターン内のフィーチャーの数は、奇数でも偶数でもよい。一実施形態では、所与のパターン内のフィーチャーの総数が奇数である場合、共有フィーチャーの数は一般に奇数である。別の実施形態では、所与のパターン内のフィーチャーの総数が偶数である場合、所与のパターン内のフィーチャーの数は偶数である。テクスチャーまたはパターンは、コア上にエンボス加工されてもよい。
【0042】
テクスチャーまたはパターンは、異なる幾何学的形状を有するフィーチャーを含むことができる。図2B図2Cおよび図2Dは、円、円の一部(例えば、半円、4分の1円)、三角形などを含むフィーチャーを示す。
【0043】
一実施形態では、ユークリッド幾何学によって記述される幾何学的形状を有する離隔フィーチャーの組み合わせを生成するように、繰り返し単位を、隣接する繰り返し単位と組み合わせることができる。図2Cおよび2Dに見られるように、それぞれの繰り返し単位を組み合わせて、異なる幾何学形状を生成することができる。例えば、図2Dにおいて、繰り返し単位を隣接する単一の繰り返し単位と組み合わせて、菱形の幾何学形状を生成することができる。同様に、3つ以上の隣接繰り返し単位を組み合わせて菱面体晶を生成することができ、6つの繰り返し単位を組み合わせて六角形を生成することができる。したがって、繰り返し単位を組み合わせて、その幾何学的形状がユークリッド幾何学によって記述できる構造を生成することができる。
【0044】
一実施形態では、離隔フィーチャーは、非ユークリッド幾何学によって記述することができる不規則な形状を有することができる。非ユークリッド幾何学は、一般に、分数乗(例えば1.34乗、2.75乗、3.53乗など)でべき乗される離隔フィーチャーの特徴的な寸法にその大きさが直接的に比例するような構造を記述するために使用される。非ユークリッド幾何学によって記述することができる幾何学的形状の例には、フラクタルや他の不規則な形状の離隔フィーチャーが含まれる。
【0045】
一実施形態では、幾何学的形状がユークリッド幾何学によって記述される離隔フィーチャーを組み合わせて、幾何学的形状が非ユークリッド幾何学によって記述されるフィーチャーを生成することができる。言い換えれば、フィーチャーのグループ化は、膨張対称性をもつことができる。フラクタル次元は、フィーチャーが配置される表面に対して垂直に測定することができ、また、フィーチャーが配置される表面に対して平行に測定することもできる。フラクタル次元は、トポロジー間のギャップとして測られる。
【0046】
一実施形態では、フラクタル次元が、フィーチャーが配置される表面と平行に測定された平面で、約1.00から約3.00、具体的には約1.25から約2.25、より具体的には約1.35から約1.85の分数べき乗を有することができる。別の実施形態では、フラクタル次元が、フィーチャーが配置される表面に垂直に測定された平面で、約1.00から約3.00、具体的には約1.25から約2.25、より具体的には約1.35から約1.85の分数べき乗を有することができる。
【0047】
さらに別の実施形態では、フラクタル次元は、フィーチャーが配置される表面と垂直に測定された平面で、約3.00から約4.00、具体的には約3.25から約3.95、より具体的には約3.35から約3.85の、分数べき乗を有することができる。言い換えれば、蛇行経路または各フィーチャー表面は、パターンのフィーチャーと類似したフィーチャーで(より小さなスケールではあるが)テクスチャー化され、蛇行経路自体の中に、マイクロ蛇行経路およびナノ蛇行経路が作成される。
【0048】
さらに別の実施形態では、離隔フィーチャーが、その上にフィーチャーが配置されている表面に対して垂直な方向に、複数のフラクタル次元を有することができる。離隔フィーチャーは、フィーチャーが配置されている表面に平行な方向に、2以上のフラクタル次元、具体的には3以上の次元、さらに具体的には4以上の次元を有するように配置されてもよい。
【0049】
後述するように、蛇行経路は、正弦関数、スプライン関数、多項式関数などによって定義される。蛇行経路は、一般に、離隔フィーチャーの複数のグループ分けの間に存在し、時には、ひとつのフィーチャーの存在または2つのフィーチャーの間の接触によって、中断されることがある。蛇行経路と離隔フィーチャーとの交差の頻度は、周期的でも非周期的でもよい。一実施形態では、蛇行経路は、それに対して周期性を有することができる。別の実施形態では、蛇行経路は非周期的である。一実施形態では、2以上の別々の蛇行経路は決して互い交差することがない。
【0050】
蛇行経路は、蛇行経路に障害物として作用するフィーチャーを迂回する場合、パターンが配置される表面の全長を超える長さを有することができる。2つの隣接パターンの2つの隣接フィーチャー間で測定される蛇行経路の幅は、約10nmから約500μm、具体的には約20nmから約300μm、さらには約50nmから約100μm、より具体的には約100nmから約10μmである。
【0051】
離隔フィーチャーは、それらの間に、直線状の経路またはチャンネルを有している。一実施形態では、離隔フィーチャーは、それらの間に、複数の直線経路または複数のチャネルを有することができる。
【0052】
離隔フィーチャーは、周期的でも非周期的でもよい。上述のように、離隔フィーチャーは、異なる寸法(サイズ)を有することができる。離隔フューチャーの平均サイズは、ナノスケール(例えば100nm未満)または約100nm以上とすることができる。一実施形態では、離隔フィーチャーは、1nmから500μm、具体的には約10nmから約200μm、より具体的には約50nmから約100μmの平均寸法を有することができる。
【0053】
別の実施形態では、離隔フィーチャー間の平均周期を、約1nmから約500μmとすることができる。一実施形態では、離隔フィーチャー間の周期を、約2、5、10、20、50、100または200nmとすることができる。別の実施形態では、離隔フィーチャー間の平均周期を、約2、5、10、20、50、100、または200nmとすることができる。他の実施形態では、周期を、約0.1、0.2、0.5、1、5、10、20、50、100、200、300、400、または450μmとすることができる。さらに別の実施形態では、平均周期を、約0.1、0.2、0.5、1、5、10、20、50、100、200、300、400または450μmとすることができる。
【0054】
一実施形態では、離隔フィーチャーは、1nmから500μm、具体的には約10nmから約200μm、より具体的には、約50nmから約100μmの寸法を有することができる。
【0055】
一実施形態では、パターンの各フィーチャーは、異なる幾何学形状(例えばサイズまたは形状)を有する少なくとも1つのフィーチャーを有する。パターンのフィーチューは単一の要素である。パターンの各フィーチャーは、そのフィーチャーとは異なる幾何学形状を有する少なくとも2、3、4、5、または6つの隣接フィーチャーを有する。一実施形態では、パターンを形成する少なくとも2以上の異なるフィーチャーがある。別の実施形態では、パターンを形成する少なくとも3以上の異なるフィーチャーがある。さらに別の実施形態では、パターンを形成する少なくとも4以上の異なるフィーチャーがある。さらに別の実施形態では、パターンを形成する少なくとも5以上の異なるフィーチャーがある。
【0056】
別の実施形態では、各パターンは、異なるサイズまたは形状を有する少なくとも1以上の隣接パターンを有する。言い換えれば、第1のパターンは、第2の隣接するパターンを有することができ、そのパターンは、第1のパターンと同じフィーチャーを含む一方で、第1のパターンとは異なる形状を有することができる。さらに別の実施形態では、各パターンは、異なるサイズまたは形状を有する少なくとも2以上の隣接パターンを有する。さらに別の実施形態では、各パターンは、異なるサイズまたは形状を有する少なくとも3以上の隣接パターンを有する。さらに別の実施形態では、各パターンは、異なるサイズまたは形状を有する少なくとも4以上の隣接パターンを有する。
【0057】
一実施形態では、パターンの長手方向軸X−X′はコア102の長手方向軸と平行である。これは、図2Aに見られる。パターンの縦軸X−X′は、パターンを2等分し、パターンの0または1要素のいずれかと交差する線である。
【0058】
上述したパターン化コア102は、血管細胞を培養して一次細胞播種構築物を形成するために使用される。一実施形態では、細胞の複数の層をパターン化コア102の外面上で培養して、一次細胞播種構築物を形成することができる。典型的な実施形態において、培養される細胞の第1層を内皮細胞とし、第2層を平滑筋細胞とすることができる。線維芽細胞もこの構造に取り込むことができる。これらの細胞はすべて天然の血管に存在し、適切な細胞外マトリクス成分を蓄積する。この技術は、幹細胞、前駆細胞および患者特異的な人工多能性幹細胞を含む多種多様な細胞型と共に使用することができる。
【0059】
細胞を血管グラフトに培養する工程は、通常はバイオリアクター内で行われ、生体内で見られる温度、栄養素および流動環境を含む生理学的条件を再現する。細胞外マトリクス成分の沈着、および組織の形成が行われて細胞がコンフルエント状態に成長した後に、非特許文献1に記載の方法を用いて、血管を脱細胞化し、コアの表面によって付与されたマイクロパターン化構造を保存するために、細胞外マトリクス材料を架橋してもよい。コアが生分解性である場合は、分解を促進するが無細胞組織構造を破壊しない溶液にさらすことによって、二次組織培養構築物を除去することができる。
【0060】
一実施形態では、コアの外面は、コアの上に配置されたヒドロゲルの薄層を有することができる。ヒドロゲルは、数nmから数μmの厚さを有することができる。一実施形態では、ヒドロゲルは、2〜500nmの厚さを有することができる。ヒドロゲルは、細胞成長を促進するための生物学的マーカーを含むことができる。生物学的マーカーは一般に、何らかの生物学的状態または状況の測定可能な指標を指す。この用語はまた、その検出が生物の存在を示す物質を指すために使用されることもある。
【0061】
ヒドロゲルがコアの表面上に配置された後、コアを第1の細胞型を含む懸濁液に浸して一次細胞播種構築物を形成し、次に、第2の細胞型を含む第2の懸濁液に浸して二次細胞播種構築物を形成する。次に、コアを除去して、血管グラフトを残すことができる。そして、この血管グラフトが、脱細胞化および使用に供される。
【0062】
ヒドロゲルの例としては、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシアルキルセルロース(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなど)、またはそれらの組み合わせがある。
【0063】
一次細胞播種構築物は、その内面に、テクスチャーの凹凸反転イメージを有する。パターンは上述した通りであり、いくつかのさらなる詳細を以下で説明するが、簡潔のために、主要な詳細については繰り返しての説明はしない。言い換えれば、グラフトの表面は、離隔フィーチャー間の平均周期が約1nmから約500μmのテクスチャーを有する。一実施形態では、離隔フィーチャー間の周期は、約2、5、10、20、50、100または200nmである。別の実施形態では、離隔フィーチャー間の平均周期は、約2、5、10、20、50、100、または200nmである。別の実施形態では、周期は、約0.1、0.2、0.5、1、5、10、20、50、100、200、300、400、または450μmである。さらに別の実施形態では、平均周期は、約0.1、0.2、0.5、1、5、10、20、50、100、200、300、400または450μmである。
【0064】
一実施形態では、離隔フィーチャーが、1nmから500μm、具体的には約10nmから約200μm、より具体的には約50nmから約100μmの寸法を有する。
【0065】
一実施形態では、パターンの各フィーチャーは、異なる幾何学形状(例えばサイズまたは形状)を有する少なくとも1つの隣接フィーチャーを有する。パターンのフィーチャーは、単一の要素である。パターンの各フィーチャーには、このフィーチャーとは幾何学形状の異なる少なくとも2、3、4、5、または6個の隣接フィーチャーがある。一実施形態では、パターンを形成する少なくとも2以上の異なるフィーチャーがある。別の実施形態では、パターンを形成する少なくとも3以上の異なるフィーチャーがある。さらに別の実施形態では、パターンを形成する少なくとも4以上の異なるフィーチャーがある。さらに別の実施形態では、パターンを形成する少なくとも5以上の異なるフィーチャーがある。
【0066】
別の実施形態では、一次細胞播種構築物内(そして最終的には血管グラフト内)の各パターンが、異なるサイズまたは形状を有する少なくとも1以上の隣接パターンを有する。言い換えれば、第1のパターンは第2の隣接するパターンを有することができ、その隣接するパターンは、第1のパターンと同じフィーチャーを含む一方で、第1のパターンとは異なる形状を有することができる。さらに別の実施形態では、各パターンが、異なるサイズまたは形状を有する少なくとも2つ以上の隣接パターンを有する。さらに別の実施形態では、各パターンが、異なるサイズまたは形状を有する少なくとも3以上の隣接パターンを有する。さらに別の実施形態では、各パターンが、異なるサイズまたは形状を有する少なくとも4以上の隣接パターンを有する。
【0067】
さらに別の実施形態では、テクスチャーのトポグラフィーが、1〜50の平均粗さ係数(R)を提供する。上述のように、一次細胞播種構築物内のパターンは、蛇行経路によって隣接パターンから分離されている。蛇行経路は周期関数で表すことができる。周期関数は蛇行経路が異なれば異なる。一実施形態では、グラフト内のパターンが、2以上の周期関数によって表される蛇行経路によって、互いに分離される。周期関数は、正弦波を含むことができる。典型的な実施形態では、周期関数が2以上の正弦波を含む。
【0068】
別の実施形態では、複数の異なる蛇行経路がそれぞれ複数の周期関数によって表されるとき、それぞれの周期関数が、固定位相差によって分離される。さらに別の実施形態では、複数の異なる蛇行経路がそれぞれ複数の周期関数によって表されるとき、それぞれの周期関数が、可変位相差によって分離される。
【0069】
一実施形態では、一次細胞播種構築物内の複数の離隔フィーチャーが、実質的に平坦な上面を有する。別の実施形態では、多要素プラトー層が表面の一部分の上に配置され、このプラトー層の要素間の離隔距離が、第2フィーチャー間隔となる。第2フィーチャー間隔は、第1フィーチャーと比較すると、かなり異なる。
【0070】
製造される組織培養構築物に意図される機能に応じて、一次細胞播種構築物を製造するために多数の異なる細胞型またはそれらの組み合わせを使用することができる。一次細胞播種構築物の脱細胞化を、コアの除去の前または後に行い、基底膜を形成する。脱細胞化は、酸、アルカリ処理、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、またはそれらの組み合わせを用いて行われる。
【0071】
イオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が、ECMに大きな損傷を与えずに細胞を溶解するのに効果が高いことから、一般的に使用される。界面活性剤が効果的に作用して、細胞膜を溶解し、内容物をさらなる分解にさらす。SDSが細胞膜を溶解した後、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼが遺伝的内容物を分解し、一方、細胞の他の成分は可溶化され、マトリクスから洗い流される。SDSは、ECM構造をわずかに崩壊させる傾向があるものの、一般的に使用されている。アルカリ処理および酸処理が、核酸を分解し細胞質内封入体を可溶化することができることから、SDS処理と効果的に併用される。
【0072】
有用な非イオン性洗剤はTriton X−100であり、これは、脂質間および脂質とタンパク質との間の相互作用を破壊するその能力のために人気がある。Triton X−100は、タンパク質間相互作用を妨害することがなく、ECMを損なうことなく維持するのに都合が良い。EDTAは、カルシウムを結合するキレート剤であり、これは、タンパク質が互いに相互作用するのに有用な成分である。カルシウムを利用できないようにすることによって、EDTAは、細胞間の内在性タンパク質が互いに結合するのを防ぐ。EDTAは、しばしば、組織内の隣接する細胞の内在性タンパク質間の既存の結合を切断するプロテアーゼとして作用する酵素であるトリプシンと共に使用される。EDTA−トリプシンの組み合わせは、組織の脱細胞化に有用である。
【0073】
酵素はまた、脱細胞化処理で使用され、隣接するタンパク質を介して細胞に作用する核酸と他の細胞成分の間の結合および相互作用を切断することができる。リパーゼ、サーモリシン、ガラクトシダーゼ、ヌクレアーゼ、およびトリプシンがすべて、細胞の除去に使用される。細胞を界面活性剤、酸、物理的圧力などで溶解した後、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼで遺伝物質の分解を開始することができる。エンドヌクレアーゼは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を配列の途中で切断する。エンドヌクレアーゼであるベンゾアーゼが、多数の小さな核フラグメントを生成し、それらがさらに分解され、ECM骨格から除去される。エキソヌクレアーゼは、DNA配列の末端で作用し、ホスホジエステル結合を切断し、核酸配列をさらに分解する。
【0074】
トリプシンなどの酵素が、タンパク質間の相互作用を切断するプロテアーゼとして作用する。トリプシンは、ECMのコラーゲンおよびエラスチン繊維に悪影響を及ぼす可能性があるが、時間的制約のある方法でそれを使用することで、細胞外繊維にそれが引き起こす可能性のあるあらゆる損傷を制御する。ディスパーゼが細胞の望ましくない凝集を防ぐために使用され、これが、ECM骨格からの細胞の分離を促進するのに有益である。ディスパーゼは、肺組織再生における肺のような薄い組織の表面で、最も効果的である。組織の深部細胞をディスパーゼでうまく除去するために、機械的攪拌がしばしばプロセスに含まれる。
【0075】
コラゲナーゼは、ECM骨格製品が無傷コラーゲン構造を必要としない場合にのみ使用される。リパーゼは、脱細胞化皮膚グラフトが必要とされる場合に、一般的に使用される。リパーゼ酸は、真皮組織の脱細胞化で、脱脂化および高度に脂質化された細胞の間の相互作用の切断を通じて、作用する。酵素、α−ガラクトシダーゼは、細胞表面からGalエピトープ抗原を除去する際の関連処理である。
【0076】
上述のように、生成される組織培養構築物の意図される機能に応じて、多数の異なる細胞型またはそれらの組み合わせを使用して、一次細胞播種構築物を製造することができる。したがって、例えば、平滑筋細胞および内皮細胞を、筋肉、管状組織培養グラフトまたは構築物(例えば、血管、食道、腸、直腸、または尿管構築物)に用いることができ、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞および神経細胞を、これらの細胞が見出される多種多様な組織の組織培養構築物に用いることができる。より一般的には、組織培養的構築物が対応することが意図される天然の組織内に見出される任意の細胞に用いることができる。さらに、筋芽細胞または幹細胞などの前駆細胞を、組織培養構築物内でそれらの対応する分化細胞型を生成するために有利に用いることができる。
【0077】
例えば天然の動脈は、内膜、中膜および外膜の3つの層に組織化された内皮細胞、平滑筋細胞、および線維芽細胞からなる。内膜は主に内皮細胞から構成され、内皮、中間層、および内弾性板の3つの部分を有する。小動脈の媒質は、結合組織の層間に25〜40層の円周方向に配置された平滑筋線維からなり、静脈の媒質は、比較的少ない層(例えば5〜20層)の平滑筋を含む。線維芽細胞は、主に生体内の外膜に現れ、正常な内膜層または内側層の主成分ではない。したがって、血管組織培養構築物は、好ましくは、これらの細胞型のそれぞれを含むことになる。
【0078】
一実施形態では、細胞外マトリクスは、一次細胞播種構築物の細胞型とは異なる細胞型を含む。一実施形態では、細胞外マトリクスは、一次細胞播種構築物の細胞型と同一の細胞型を含む。
【0079】
一次構築物の形成において、例えば内皮細胞をパターン化コア上に直接播種して、構築物の内腔表面を作り出すことができる。好ましくは、内皮細胞を第1の期間にわたり成長させて、細胞外マトリクスタンパク質を沈着させる。細胞外マトリクスタンパク質は、コア上にパターンの形状で沈着し、一次組織培養構築物を形成する。続いて、例えば平滑筋細胞を一次細胞播種組織構築物上に播種し、これを第2の期間にわたり成長させて、二次組織培養構築物を形成する。この二次組織培養構築物に低パーセンテージの線維芽細胞を含ませて、結果として得られる構築物の強度を高めることもできる。第2の成長期間の後、内皮細胞の層を取り囲む平滑筋細胞の層(および場合により線維芽細胞)を有する二次組織培養構築物が生成される。
【0080】
好ましくは、細胞は生きているドナーから得られ、一次細胞株として培養される。特に、組織培養グラフト/構築物を生きている宿主に移植することを意図している場合、細胞は、好ましくは意図する宿主または組織適合性ドナーから採取し、それによって、組織拒絶の可能性を最小限に、または排除する。例えば、所望の細胞は、患者の生検から得られる。したがって、冠状動脈バイパス手術を受ける患者の場合には、動脈(例えば、鎖骨下、腋窩、上腕、橈骨、腸骨、尺骨、大腿骨、前部または後部脛骨)または末梢静脈(例えば、頭部、尺側皮、伏在、大腿骨)の生検を用いて、動脈平滑筋、内皮および線維芽細胞を得ることができる。あるいは、患者が例えば肝臓、膵臓、尿管、食道、腸、直腸または他の組織培養移植を必要としている場合、これらの組織の生検によって適切な細胞を得ることができる。ここで留意すべきは、必ずしも好ましいわけではないが、意図された移植には対応しないが表現型的に類似する組織または器官からの生検を使用することもできることである。例えば、動脈由来の平滑筋細胞を、静脈、食道、腸、直腸、心臓または尿管の組織培養的構築物の平滑筋層の生成に使用することができる。
【0081】
ドナーから細胞を得るためには、当該分野で公知の標準的な生検技術が使用される。簡単に説明すると、所望の組織を外科的に除去し、場合によってはプロテアーゼ(例えば、トリプシンまたはコラゲナーゼ)処理を用いて、組織を細かく刻むかまたは均質化し、解離細胞の懸濁液、または細胞の小さな凝集体を調製する。場合によっては、適切な数または密度の細胞が得られるまで、細胞を体外の標準的な細胞成長培地で培養することもできる。細胞をそのように培養して何度も継代することができるが、そのような継代はしばしば分化した表現型の喪失を引き起こすので、継代数は、5未満に制限することが好ましく、さらには3未満に制限することが好ましい。最も好ましいのは、細胞を全く継代しないことである。
【0082】
また、実験室で得られた、あるいは商業的供給源(例えば、ATTC、メリーランド州ロックビル)から購入した、定評のある細胞培養系から得られた細胞を使用することもできる。典型的には、そのような細胞系は、ある程度の分化を失っており、それゆえ、一般的には好ましくない。定評のある細胞系を用いる場合には、胎児細胞系または前駆細胞系が、一般により頑強であるため、より望ましい。このような細胞は、適切な数または密度の細胞が得られるまで、生体外の標準的細胞成長培地で成長させることができる。
【0083】
別の実施形態では、外因性遺伝子配列の導入、または内因性配列の不活性化もしくは修飾、によって遺伝的に操作されている細胞を使用することができる。例えば、遺伝子を導入して、そうでなければ宿主に存在しないかまたは欠損しているタンパク質を、細胞に生産させることができる。あるいは、エラスチンなどの希少だが天然に存在する望ましいタンパク質の生産を、播種細胞の適切な遺伝子操作によって増強することができる。宿主に移植された場合、そのような細胞を有する組織培養構築物は、そうでなければ宿主に存在しないか、正常に機能しないか、または不十分であるタンパク質の生産および送達システムとして役に立つ。例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーターを分泌する遺伝子操作された内皮細胞が、シャヤニおよびその共同研究者によって、様々な合成グラフトに播種されており(Shayani et al.(1994))、チェンは、開存性を改善するための可能な方法として、自家静脈グラフトの内皮細胞へのアデノウイルス媒介遺伝子導入の実現可能性を実証している(Chen et al.(1994))。
【0084】
あるいは、遺伝子発現の抑制を用いて、播種した細胞および組織構築物の表面上の抗原発現を改変し、それによって、細胞が外来として認識されないように宿主の免疫応答を改変することもできる。例えば、1以上のMHCタンパク質を生産することができない、または抗原ペプチドをMHC分子にロードすることができない細胞を用いて、組織拒絶の可能性を減らすことができる。そのような場合、非自己組織培養的構築物を宿主に移植するとき、免疫抑制が不要となる。
【0085】
この開示によれば、哺乳動物細胞を懸濁液から多孔質基材(例えば、一次細胞播種構築物)の上および中に播種し、好ましいことに、その細胞が比較的高密度で基材全体に均一に分布する。好ましくは、細胞懸濁液の濃度は、約1×10から5×10細胞/ml、好ましくは2×10から2×10細胞/ml、より好ましくは約5×10細胞/mlである。当然であるが、懸濁液中の細胞の最適濃度は、細胞型、凝集体を形成する細胞の傾向、細胞型の成長速度、使用される基材に対するそれらの結合親和性、および使用される基材の材料に応じて変化する。懸濁液は、細胞を損傷することがなく、あるいはそれらの結合能を損うことのない、生理学的に許容される液体(例えば、10%ウシ胎児血清を添加したDMEMなどの標準的な細胞成長培地)中で形成される。
【0086】
細胞は、いずれかの標準的な方法によって、コア上およびコア内に播種することができる。例えば、一実施形態では、一次細胞播種構築物を一定期間にわたり細胞懸濁液に浸漬することによって播種し、次いで、一次細胞播種構築物を懸濁液から取り出し、未結合細胞を洗い流す。あるいは、一次細胞播種構築物に、シリンジまたは他の無菌送達装置を用いて、細胞を播種してもよい。現時点で好ましい実施形態では、細胞懸濁液を一次細胞播種構築物上に滴下し、続いて一次細胞播種構築物を例えば回転容器内で回転させる。
【0087】
例えば、筋肉の管状組織培養構築物(例えば血管構築物)の作成で使用されるような管状一次細胞播種構築物は、細胞播種の間または後に、その内腔軸の周りに回転させて、基材の表面に細胞の均一な分布を促進することができる。細胞が結合するまでの期間が経過した後(場合によっては、細胞播種一次細胞播種構築物を成長培地中で一定期間培養し)、細胞が播種された一次細胞播種構築物を培地に浸すこともできる。
【0088】
「播種時間」、すなわち最初に哺乳動物細胞を基材と接触させてから後で培地を添加するまでの時間は、非常に多様である。播種時間は、10分から1時間以上まで、多様である。しかしながら、本発明において、特にここに記載されそして開示された親水性の合成ポリマー基材を使用するとき、10〜30分、より好ましくは約20分という、大幅に短い播種時間で、高密度の個別に播種された細胞を、細胞凝集体の形成を減らして、生成することが判明した。この播種時間は、以下に論じる「成長期間」とは区別されるべきものである。
【0089】
上述のように、本発明の基材には、多数の細胞型を含む懸濁液を播種することができる。したがって、例えば、2以上の細胞型(例えば、平滑筋細胞と線維芽細胞、または平滑筋細胞と内皮細胞)の混合物を同時に基材に播種することができ、あるいは、1以上の細胞型を最初に播種し、続いて、細胞播種した基材を成長期間に適した条件下に置く前に、1以上の追加の細胞型を播種することができる。いずれの場合も、いくつかの細胞型を1以上のステップで播種しているが、これを単一の「播種」とみなすことができる。
【0090】
したがって、ここで使用される「一次細胞播種構築物」は、少なくとも1つの細胞型、場合によっては1以上の細胞型、を用いて最初の播種を受けているが、成長期間に適した条件下にはまだ置かれていない基材である。最初の成長期間中、一次細胞播種構築物の細胞は、成長および繁殖して、「一次組織培養構築物」を生成する。この状態では、細胞がコンフルエントに達していてもよく、達していなくてもよい。次いで、この一次組織操作構築物に、もう一度、1以上の細胞型を含む1以上の懸濁液を播種して、「二次細胞播種構築物」を形成する。この二次細胞播種構築物を適切な条件で第2成長期間にわたり維持し、この間に第2の播種からの細胞が成長および再生する。得られる構築物を、ここでは「二次組織培養構築物」という。このようにして、いくつかの異なる組織層を、コアの除去前に、コア上に配置することができる。
【0091】
したがって、例えば血管組織培養構築物は、平滑筋細胞を管状多孔質基材の外面上に播種して一次細胞播種構築物を形成し、これを第1の成長期間にわたって維持して一次組織培養構築物を形成し、次いで、この構築物に内腔(および場合によっては外側)表面に内皮細胞(および場合によっては線維芽細胞)を播種して二次細胞播種構築物を形成し、これを適切な条件下で第2の成長期間にわたり維持して、二次組織培養構築物を形成する。同様に、種々の細胞層または混合物を含むどのような数の追加構築物(三次など)でも、本発明により培養することができる(例えば、血管組織培養構築物を、例えば肝細胞が播種されたより大きな基材に挿入することによって、最終的に、血管化肝組織培養構築物を形成する)。このようにして、異なる細胞物質のいくつかの層を、コアから取り出す前に、構築物上に配置することができる。
【0092】
一実施形態では、一次細胞播種が、内皮細胞を含む第1の細胞型から形成され、二次細胞播種構築物が、内皮細胞、平滑筋、線維芽細胞およびマクロファージの少なくとも1つを含む第2の細胞型から形成される。
【0093】
一実施形態では、脱細胞化を伴うまたは伴わない「一次細胞播種構築物」が、静脈または動脈の一部を置換するために、移植または埋め込まれる。シールを構築物の端部に取り付けて、流体の漏れを防ぐことができる。シールは、一定期間後にどのような悪影響を及ぼすこともなく分解する生分解性材料を含むことができる。この構築物は、現在は動脈または静脈内にあり、内腔(および場合によっては外側)表面に内皮細胞(および場合によっては線維芽細胞)を播種して二次細胞播種構築物を形成し、これを適切な条件下で第2の成長期間にわたり維持して、二次組織培養構築物を静脈または動脈上の位置に形成する。一実施形態では、二次細胞播種構築物が、平滑筋細胞を含む細胞外マトリクスを備える。この細胞外マトリクスは、血管グラフトの総体積に基づいて、構築物の体積の大部分を形成する。
【0094】
別の実施形態では、多層組織培養構築物の最外層は、生体内で使用される部位へのグラフトの取り扱いおよび輸送に適している。したがって、多層組織培養構築物の最外層は、頑丈で多用途であることが望ましい。20〜60℃の高温に耐えることができ、輸送や取り扱い中の衝撃や損傷から他の組織を保護することができる。一実施形態では、多層構築物の最外層は、コラーゲン、ポリ乳酸、またはそれらの組み合わせを含む。
【0095】
培養中の細胞に適した成長条件および培地は、この技術分野において周知である。細胞培養培地は、典型的には必須栄養素を含むが、場合により、特定の細胞型の成長および分化のためにカスタマイズされた追加的要素(例えば、成長因子、塩およびミネラル)も含むことができる。例えば、「標準細胞成長培地」には、ダルベッコ改変イーグルス培地(DMEM)低グルコース、1〜10mg/lピルビン酸およびグルタミンに、10〜20%ウシ胎児血清(FBS)または10〜20%ウシ血清(CS)および100U/mlペニシリンを添加したものがある。他の標準培地として、イーグル基礎培地、最小必須培地、マッコイ5A培地など、好ましくは上記のように添加されたもの、がある(例えば、カンザス州レネクサのジェーアールエイチ・バイオサイエンス社、ニューヨーク州グランドアイランドのギブコ・ビーアールエル社、ミズーリ州セントルイスのシグマケミカル社から市販されている)。
【0096】
本発明の方法で使用するために、標準的な細胞成長培地に関するいくつかの変形が開発された。特に、平滑筋細胞を成長させる場合、ストレプトマイシンの含有は避けるべきであることがわかった。この一般的に使用される抗生剤は、本発明であれば拍動力のような、外部から加えられる物理的な力に応答して、所望の表現型の発生を阻害する傾向があるからである。さらに、通常は頑丈なコラーゲン性細胞外マトリクスを生産する細胞を成長させるために、「増強細胞成長培地」が開発された。この「増強細胞成長培地」は、標準の細胞成長培地を含み、上述のように、1〜10mM、好ましくは5mMのHEPES緩衝剤;0.01〜0.1g/l、好ましくは0.02〜0.06g/lのビタミンC;0.01〜0.1g/l、好ましくは0.02〜0.06g/lのプロリン;0.01〜0.1g/l、好ましくは0.02〜0.06g/lのグリシン;0.01〜0.1g/l、好ましくは0.02〜0.06g/lのアラニン;および0.5〜5.0μg/l、好ましくは1.0〜3.0μg/lの銅塩(例えば、CuSO)が添加される。ビタミンCは、37℃の培地中で半減期がわずか6〜8時間なので、ビタミンCを毎日補給して、細胞によるコラーゲン合成を促進することが望ましい。さらに、プロリン、グリシン、およびアラニンを過剰に供給して、コラーゲンやエラスチンなどの他の細胞外マトリクスタンパク質の合成のために、これらのアミノ酸を適切な量だけ提供する。銅イオンはエラスチン合成に必要な補助因子であり、したがって、銅イオン源(例えば、CuSO)は、エラスチンに富む組織を成長させるのに使用される培地に含まれるのが好ましい。内皮細胞の成長のためには、FBSよりもCSを使用することが好ましい。さらに、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)、血管内皮細胞由来成長因子(VEGF)などの成長因子を適切な濃度(すなわち、1〜10ng/ml)で使用し、細胞成長または分化、または細胞外マトリクスタンパク質の分泌、を増強することができる。
【0097】
細胞は、5〜15%または好ましくは10%のCOおよび90〜100%または好ましくは100%の湿度の雰囲気中、細胞の起源の種または意図する宿主の体温または体温付近(すなわち、体温±5℃、好ましくは±2℃)の培地で、無菌条件下で培養される。したがって、例えば、ヒト細胞は、32〜43℃、より好ましくは35〜39℃、最も好ましくは37℃で培養される。細胞生存率は、この技術分野において公知の標準的な方法(例えば、トリパンブルー排除)によって、または基材への細胞付着および基材上での増殖の程度を測定することによって、判定することができる。体外での細胞接着および生存率の定量的評価はまた、走査型電子顕微鏡、組織学、および放射性同位元素(例えば、3Hチミジン)を用いて、この分野で公知の方法によって評価される。
【0098】
細胞と基材および/または細胞どうしの付着をさらに増強するために、種々のタンパク質または成長因子が提供される。例えば、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、またはラミニンを、基材または成長する構築物に提供し、細胞接着を促進することができる。したがって、ポリ無水物基質などの材料上にコラーゲンを重層し、肝細胞などの細胞の接着を増加させることができる。同様に、基質または構築物に、基板内に直接組み込まれるか、さもなければ成長している細胞に(例えば、細胞培養培地への添加により)接触させられる、AFGF、bFGF、PDGF、TGF−β、VEGF、および他の血管形成および/または生物活性化合物などの成長因子を含浸させることもできる。複数の成長因子が、内皮細胞および平滑筋細胞に対するそれらの分裂促進効果について研究されている(D′Amore and Smith(1993))。例えば、aFGF、bFGF、PDGFは、平滑筋細胞増殖を刺激し、その一方、bFGFおよびVEGFは、大動脈内皮細胞成長を刺激することがわかった。塩基性FGFおよびVEGFはまた、内皮下細胞外マトリクスおよび基底膜に結合することが示されており、そして強力な血管新生因子である(Edelman他(1991);Rogelj他(1989))。
【0099】
血管グラフトは、包装され滅菌されて、外科医に提供される。グラフトは、外科医によって適切な長さにトリミングされる。この技術によって、種々の径のグラフトを製造することができる。次いで、グラフトを外科医によって挿入し、そして縫合糸によって定位置に保持することができる。
【0100】
一実施形態では、血管グラフトに、病害防止特性、抗炎症特性などを付与することができる生物学的活性剤を充填することができる。血管グラフトは担体として作用し、生物学的活性剤は、それが動脈または静脈のような血管に移植された後に、血管グラフトから徐々に放出される。一実施形態では、血管グラフトにその長さに沿った切り込みを入れ、血管瘤に配置して動脈瘤による体積膨張を減少させることができる。
【0101】
血管グラフトが生物学的活性剤で浸潤されている(すなわち、共有結合されていない)場合、薬物コーティングからの生物学的活性剤の放出は、拡散制御される。血管グラフトは、血管グラフトの総重量に基づいて5〜90重量%、好ましくは20〜75重量%、より好ましくは30〜65重量%の量の生物学的活性剤を含むことが一般に望ましい。
【0102】
生物学的活性剤は、血管グラフトへの表面コーティングとして添加されるか、あるいは血管グラフトの細胞外マトリクス中に分散される。表面コーティングが使用されるとき、生物学的活性剤の放出は、界面で制御される。薬物コーティングは、フィーチャーの表面上にのみ配置されてもよく、あるいは蛇行経路の表面上に配置されてもよい。
【0103】
血管グラフトには、種々のタイプの生物学的活性剤を使用することができる。血管グラフトは、治療学的および薬学的な生物学的活性剤を送達するために使用される。このような生物学的活性剤は、抗鎮痛剤、抗不整脈剤、抗菌剤、抗コリン剤、抗凝固剤、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗利尿薬、抗真菌薬、降圧薬、抗炎症薬、抗マラリア薬、抗新生物薬、抗向知薬、抗パーキンソン薬、抗レトロウイルス薬、抗結核薬、鎮咳剤、抗潰瘍剤、抗ウイルス剤など、またはこれら治療学的および薬学的な生物学的活性剤の少なくとも1つを含む組み合わせ、を含む。
【0104】
他の適切な治療的および薬学的に生物学的活性剤の例として、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)などの天然物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ペニシリンV、ペニシリンG、アンピシリン、アモキシシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、デメクロサイクリン、エリスロマイシン、アミノグリコシド系抗生物質、ポリペプチド系抗生物質、ナイスタチン、グリセオフルビン、およびイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン、ミトラマイシンおよびミトマイシン、酵素(L−アスパラギナーゼ:L−アスパラギンを全身的に代謝し、自身でアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を奪う)、G(GP)IIb/IIIa阻害剤およびビトロネクチン受容体拮抗薬のような抗血小板薬、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミドおよびその類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)のような抗増殖性/抗有糸分裂性アルキル化剤、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン(BCNU))および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼネス−ダカルバジニン(DTIC)、葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤、ピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル、フロキスリジン、シタラビン)、プリン類似体および関連阻害剤(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン{クラッドンビン})、白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド、ホルモン(例えば、エストロゲン)、抗凝固剤(例えば、ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビン阻害剤)、線維素溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化剤、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、抗移動薬、抗分泌薬(例えば、ブレベルジン)、抗炎症剤:副腎皮質ステロイド(例えば、コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾロン、6a−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾン)、非ステロイド剤(例えば、アスピリンなどのサリチル酸誘導体、アセトミノフェン、インドールおよびインデン酢酸(例えば、インドメタシン、スリンダク、エトダラク)、ヘテロアリル酢酸(例えば、トルメチン、ジクロフェナック、ケトロラク)、アリールプロピオン酸(例えば、イブプロフェンおよび誘導体)、アントラニル酸(例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸)、エノール酸(例えば、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェントラゾン)、ナブメトン、金化合物(例えば、オーラノフィン、オーロチオグルコース、金ナトリウムチオマラート)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス(FK−506))、シロリムス(例えば、ラパマイシン、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、アンジオテンシン受容体拮抗薬、硝酸などの血管新生剤酸化物供与体、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせ、細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤、および成長因子受容体シグナル伝達キナーゼ阻害剤、レテノイド、サイクリン/CDK阻害剤、HMG補酵素レダクターゼ阻害剤(スタチン)またはプロテアーゼ阻害剤がある。生物学的活性剤には、癌阻害剤も含まれる。
【0105】
ここで詳述される方法は、グラフトを成長させるために使用される足場のサイズに応じて、グラフトを任意の直径になるようにカスタマイズすることができる、という点で有利である。Sharklet パターンが付与されたマンドレルは、パターン化ロッドからの除去を必要とせずに血管グラフトの管腔表面にテクスチャーを付与するタイミングで分解するように調整された生分解性材料から作られる。
【0106】
ここで詳述される方法および血管グラフトは、以下の実施例によって例示される。
【実施例1】
【0107】
滑らか(SM)でマイクロパターン(+1.7SK2×2、+1.2SK10×5、おび+11.4SK50×50)が付与されたサンプルを、ポリジメチルシロキサンエラストマー(ダウコーニング社製Xiameter RTV−4234−T2;PDMSe)を凹凸反転シリコンウェハ金型に流し込み、表面をシラン処理したガラススライドに接着することによって作成した。
【0108】
ここで採用される命名法(例えば、+1.7SK2×2)は、以下のように解読される。+1.7は、μm単位での基部表面上のテクスチャーの高さを示し、SKは、特許文献1、2に記載されたシャークレットパターンを表す。1.7の前の負号(−)は、テクスチャーが基部表面の下にあることを表す。SK2x2の最初の「2」は、パターン内の各フィーチャーの幅を表し、2番目の「2」は、パターン内のフィーチャー間の間隔をμmで表す。
【0109】
上述のPDMSeサンプルを、フィーチャーの長軸がスライドガラスの長軸に整列するように流し込んだ。すべてのサンプルをフィブロネクチン(15μg/ml)およびコラーゲン(200μg/ml)で処理し、細胞付着を容易にし、ECM組成を模倣した。
【0110】
修正スクラッチ創傷アッセイを用いて、細胞遊走を調べた。簡単に説明すると、SM PDMSe短冊(3mm×25mm)をサンプルの中心に沿って配置し、人為的に傷を付けた領域を作成した。ヒト冠状動脈内皮細胞(HCAEC;ATCC)を3×10細胞/cmで全体に播種し、完全血管内皮成長培地(血管細胞基礎培地、2%FBS、5ng/mlのrhVEGF、5ng/mlのrhEGF、5ng/mlのrhFGF、15ng/mlのrhIGF−1、10mMのL−グルタミン、0.75ユニット/mLの硫酸ヘパリン、1μg/mlのヒドロコルチゾン、50μg/mlのアスコルビン酸、および50U/mlのペニシリン/ストレプトミオシン)で維持した。約80%の集密度になったところでPDMSe短冊を除去し、細胞が空のパターン化領域を遊走できるようにした。次いで、サンプルを、静的実験(図3)のために完全血管内皮成長培地内に3日間置き、あるいは層流実験(図4)のため、平行平板フローチャンバー(グリコテック社31−010)に置いて5ダイン/cmの剪断力を24時間加えた。次いで、サンプルを、製造元の指示に従ってCellTracker(登録商標)オレンジで染色し、4%パラホルムアルデヒドで室温固定した。創傷部の蛍光顕微鏡画像を撮影し、この領域内の細胞で覆われた平均面積を、ImageJソフトウェアを使用して計算した。
【0111】
静的遊走からの結果は、3つのパターンすべてが、滑らかな細胞と比較して、細胞遊走を有意に改善したことを示した(ダネットの検定、図3)。+10SK50×50の微細パターンは、最高レベルの増加した遊走をもたらした(40%、p=0.01)。層流下で実施されたアッセイは、様々なSharkletマイクロパターンについて、面積被覆率の差を明らかにした(図4)。+1.5SK10×5および+10SK50×50の両方が、平滑と比較して有意に細胞遊走を増加させ、それぞれ139%、p=0.05および181%、p=0.01であった。
【0112】
さらに、パターンの個々のフィーチャー間の間隔がより大きく、個々のフィーチャー幅がより広いテクスチャーは、静的成長条件下でよりも層流条件下で、より大きな表面被覆率を生み出すことが分かる。したがって、例えば、幅が3μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μmで、平均フィーチャー間隔が3μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上のフィーチャーが、幅が3μm以下、2μm以下、および平均フィーチャー間隔が3μm以下、さらには2μmのフィーチャーと比較した場合、静的および流動の両方の成長条件下でのセル成長により、より大きな表面被覆率を生み出す。
【0113】
細胞物質の成長を成功させるための個々のフィーチャーの上限間隔は、100μm以下、100μm以下、90μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下および30μm以下、個々のフィーチャーの幅は、100μm以下、90μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下および30μm以下、である。個々のフィーチャーの高さは、0.5〜15μm、好ましくは2〜12μm、好ましくは3〜10μmである。
【0114】
本発明をその好ましい特定の実施形態と併せて説明してきたが、以上の説明および実施例は、例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲内での別の側面、利点および修正は、本発明が属する分野の当業者であれば明らかである。

図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
【国際調査報告】