(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-501338(P2020-501338A)
(43)【公表日】2020年1月16日
(54)【発明の名称】導電性フレークで強化された、ポリマー安定化電極用組成物、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/86 20130101AFI20191213BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20191213BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20191213BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20191213BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20191213BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20191213BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20191213BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20191213BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20191213BHJP
H01M 4/1397 20100101ALI20191213BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20191213BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20191213BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20191213BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20191213BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20191213BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20191213BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20191213BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20191213BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20191213BHJP
【FI】
H01G11/86
H01M4/66 A
H01M4/74 C
H01M4/64 A
H01M4/04 Z
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/136
H01M4/139
H01M4/1397
H01M4/62 Z
H01M4/88 K
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/90 Z
H01M4/90 X
H01M4/96 M
H01G11/30
H01G11/42
H01G11/38
H01G11/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-521430(P2019-521430)
(86)(22)【出願日】2017年10月11日
(85)【翻訳文提出日】2019年6月14日
(86)【国際出願番号】CA2017000221
(87)【国際公開番号】WO2018076098
(87)【国際公開日】20180503
(31)【優先権主張番号】62/414,212
(32)【優先日】2016年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519139697
【氏名又は名称】アドベン インダストリーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ADVEN INDUSTRIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シアオティエン
(72)【発明者】
【氏名】ツォイ,シンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェイシン
(72)【発明者】
【氏名】リィウ,シアオジン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H018
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB02
5E078AB06
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5E078BA30
5E078BA42
5E078BA44
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5H050GA08
5H050GA10
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5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
高い引張強度と低い電気抵抗とを有する電極フィルムが、ポリマー安定化粒子電極を強化するために、導電性フレークを用いることによって製造される。新規な組成物及び低エネルギー方法が、本発明に開示されている。本方法は、粒子材料及びフィブリル化可能ポリマーを導電性フレークと混合及び撹拌してペーストにすること、ポリマーをフィブリル化すること、前記ペーストを押出及びロール圧縮して自己支持電極フィルムにすること、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極としての使用に適した電極フィルムの製造方法であって、
以下の各工程
(a)以下を含む組成物を撹拌して予備フィブリル化ペーストを調製する工程、
(i)60重量%よりも多い活性粒子、
(ii)15重量%以下の少なくとも1種のフィブリル化可能ポリマーバインダ、
(iii)15重量%以下の球状導電性粒子、及び、
(iv)10重量%以下の導電性フレーク、
(b)前記ペーストを押出して押出成形物にする工程、並びに、
(c)前記押出成形物をロール圧縮して電極フィルムを製造する工程。
を含み、押出及びロール圧縮は、フィブリル化可能ポリマーバインダのフィブリル化に寄与する、製造方法。
【請求項2】
前記活性粒子は、活性炭粒子、硫黄含浸活性炭粒子、リチウム−酸素含有化合物、安定化金属リチウム粉体、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、金属窒化物粒子、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性粒子の粒子サイズが1〜50ミクロンの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活性粒子の粒子サイズが5〜20ミクロンの範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィブリル化可能ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、コポリマー、各種ポリマーブレンド、天然又は合成ゴム、ポリアミド、ポリウレタン、液状樹脂、シリコン、エラストマーポリマー、オレフィンポリマー、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性粒子が球状導電性粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記球状導電性粒子は、カーボンブラック粒子、スーパーPカーボン粒子、スーパーC65カーボン粒子、及び、これらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記球状導電性粒子は、1ミクロン未満の粒子サイズを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記球状導電性粒子は、0.01ミクロン未満から0.1ミクロンの範囲の粒子サイズを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記導電性フレークは、金属フレーク、好ましくは、アルミニウムフレーク、黒鉛フレーク、グラフェン、膨張黒鉛フレーク、導電性ポリマーフレーク、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記導電性フレークは、1〜40ミクロンの範囲の直径を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記導電性フレークは、5〜20ミクロンの範囲の直径を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記導電性フレークの厚さは、0.001ミクロンから5ミクロンの範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記導電性フレークの厚さは、1ミクロン未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物に液体潤滑剤を添加する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記液体潤滑剤は、前記組成物中の他の成分の重量に対して5倍以下の割合で添加される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記液体潤滑剤は、水、高沸点溶媒、消泡剤、分散助剤、ピロリドンミネラルスピリット、ケトン類、界面活性剤、ナフサ、アセテート類、アルコール類、グリコール類、トルエン、アセトン、クロロホルム、キシレン、アイソパー(登録商標)、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記撹拌の工程は、前記組成物にせん断力を加えることができる撹拌機内で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記撹拌機は、ボールミル、ジェットミル、ピンミル、衝撃粉砕機、ハンマーミル、機械的撹拌機、クラッシャー、及び、グラインダーからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フィブリル化処理された組成物を押出す工程及びロール圧縮する工程は、室温で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記フィブリル化処理された組成物を押出す工程及びロール圧縮する工程は、フィブリル化可能ポリマーの軟化点に相当する温度及び圧力で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記電極フィルムは、0.04kg/mm2よりも高い引張強度を有する、請求項1の方法。
【請求項23】
前記電極フィルムは、0.09kg/mm2よりも高い引張強度を有する、請求項22の方法。
【請求項24】
集電体上に前記電極フィルムをプレスして、エネルギー貯蔵装置において使用される電極を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記集電体は、金属箔、合金箔、金属メッシュ、合金メッシュ、導電性カーボンクロス、エッチングされた金属箔、及び、被覆金属箔からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記金属箔及び前記合金箔は、アルミニウム箔、銅箔、及び、チタン箔からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記金属メッシュ及び前記合金メッシュは、アルミニウムメッシュ、銅メッシュ、及び、チタンメッシュからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記エッチングされた金属箔は、エッチングされたアルミニウム箔、エッチングされた銅箔、及び、エッチングされたチタン箔からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
被覆金属箔は、炭素被覆金属箔、及び、接着フィルム被覆金属箔からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記装置は、エネルギー貯蔵装置、フィルタ、及び、触媒担体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記エネルギー貯蔵装置は、電気二重層キャパシタ、リチウム−硫黄電池、リチウム−イオン電池、リチウム−イオンキャパシタ、燃料電池、及び、水素貯蔵装置からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
電極としての使用に適した電極フィルムであって、
(a)60重量%よりも多い活性粒子、
(b)15重量%以下の少なくとも1種のフィブリル化可能ポリマーバインダ、
(c)15重量%以下の球状導電性粒子、及び、
(d)10重量%以下の導電性フレーク、
を含む、電極フィルム。
【請求項33】
前記活性粒子は、活性炭粒子、硫黄−含浸活性炭粒子、リチウム−酸素含有化合物、安定化金属リチウム粉体、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、金属窒化物粒子、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32の電極フィルム。
【請求項34】
前記活性粒子の粒子サイズが1〜50ミクロンの範囲である、請求項32に記載の電極フィルム。
【請求項35】
前記活性粒子の粒子サイズが5〜20ミクロンの範囲である、請求項34に記載の電極フィルム。
【請求項36】
前記フィブリル化可能ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、コポリマー、各種ポリマーブレンド、天然又は合成ゴム、ポリアミド、ポリウレタン、液状樹脂、シリコン、エラストマーポリマー、オレフィンポリマー、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の電極フィルム。
【請求項37】
前記導電性粒子が球状導電性粒子である、請求項32に記載の電極フィルム。
【請求項38】
前記球状導電性粒子は、カーボンブラック粒子、スーパーPカーボン粒子、スーパーC65カーボン粒子、及び、これらの組合せからなる群から選択される、請求項37に記載の電極フィルム。
【請求項39】
前記球状導電性粒子は、1ミクロン未満の粒子サイズを有する、請求項38の電極フィルム。
【請求項40】
前記球状導電性粒子は、0.01ミクロン未満から0.1ミクロンの範囲の粒子サイズを有する、請求項39の電極フィルム。
【請求項41】
前記導電性フレークは、金属フレーク、好ましくは、アルミニウムフレーク、黒鉛フレーク、グラフェン、膨張黒鉛フレーク、導電性ポリマーフレーク、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の電極フィルム。
【請求項42】
前記導電性フレークは、1〜40ミクロンの範囲の直径を有する、請求項41に記載の電極フィルム。
【請求項43】
前記導電性フレークは、5〜20ミクロンの範囲の直径を有する、請求項42に記載の電極フィルム。
【請求項44】
前記導電性フレークの厚さは、0.001ミクロンから5ミクロンの範囲である、請求項42に記載の電極フィルム。
【請求項45】
前記導電性フレークの厚さは、1ミクロン未満である、請求項44に記載の電極フィルム。
【請求項46】
前記電極フィルムは、0.04kg/mm2よりも高い引張強度を有する、請求項32に記載の電極フィルム。
【請求項47】
前記電極フィルムは、0.09kg/mm2よりも高い引張強度を有する、請求項46に記載の電極フィルム。
【請求項48】
前記電極フィルムは、集電体上にプレスされて、エネルギー貯蔵装置において使用される電極を形成している、請求項32の電極フィルム。
【請求項49】
前記集電体は、金属箔、合金箔、金属メッシュ、合金メッシュ、導電性カーボンクロス、エッチングされた金属箔、及び、被覆金属箔からなる群から選択される、請求項48に記載の電極フィルム。
【請求項50】
前記金属箔及び前記合金箔は、アルミニウム箔、銅箔、及び、チタン箔からなる群から選択される、請求項49に記載の電極フィルム。
【請求項51】
前記金属メッシュ及び前記合金メッシュは、アルミニウムメッシュ、銅メッシュ、及び、チタンメッシュからなる群から選択される、請求項49に記載の電極フィルム。
【請求項52】
前記エッチングされた金属箔は、エッチングされたアルミニウム箔、エッチングされた銅箔、及び、エッチングされたチタン箔からなる群から選択される、請求項49に記載の電極フィルム。
【請求項53】
被覆金属箔は、炭素被覆金属箔、及び、接着フィルム被覆金属箔からなる群から選択される、請求項49に記載の電極フィルム。
【請求項54】
前記装置は、エネルギー貯蔵装置、フィルタ、及び、触媒担体からなる群から選択される、請求項32に記載の電極フィルム。
【請求項55】
前記エネルギー貯蔵装置は、電気二重層キャパシタ、リチウム−硫黄電池、リチウム−イオン電池、リチウム−イオンキャパシタ、燃料電池、及び、水素貯蔵装置からなる群から選択される、請求項48に記載の電極フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、ポリマーで安定化された粒子電極を強化するための組成物と、特にエネルギー貯蔵装置における、そのような組成物及び電極の低エネルギー製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
近代的な技術に電力を供給するために使用されるエネルギー貯蔵装置は、多数あり、キャパシタ(例えば、電気二重層キャパシタやリチウム−イオンキャパシタ)、電池(例えば、リチウム−イオン電池、及びリチウム−硫黄電池)、燃料電池、水素貯蔵装置などが挙げられる。ウルトラキャパシタやスーパーキャパシタとも称される電気二重層キャパシタ(EDLC)は、従来のキャパシタよりも、単位体積及び単位重量当たり、より多くのエネルギーを貯蔵することができるエネルギー貯蔵装置である。リチウムイオン電池は、非常に高いエネルギー密度を有するが、EDLCと比較して、はるかに小さい電力密度及び短いサイクル寿命を有する。リチウムイオンキャパシタは、EDLCとリチウムイオン電池とのハイブリッド構造を有する。装置の各タイプは、同じ又は異なる活性材料から作製することができる正極及び負極に関連付けられる。このような電極を作製する組成物及び方法は、様々な用途のために構築された装置の性能及びコストにとって、重要である。
【0003】
現在一般的に利用される電極の製造技術は、電極フィルムを製造するために、スラリーコーティング、及び/又は、ペースト押出プロセスを含む。両方のプロセスは、電極フィルムを形成するために、典型的にはポリマー又は樹脂を含むバインダと、活性物質の粒子と、導電性材料の粒子とを組み合わせることを含む。バインダは、得られる電極フィルムの内部において、又は、電極フィルムが付着された集電体(典型的にはAl箔やCu箔)と電極フィルムとの間において、結合をもたらす。
【0004】
スラリーコーティングプロセスでは、液体潤滑剤(典型的には有機、水性、又は水性及び有機溶媒の混合物)は、バインダ、活性粒子、及び導電性粒子を含む得られた湿潤スラリーの中でバインダを溶解するために使用される。ドクターブレード又はスロットダイによって、集電体上に湿潤スラリーをコーティングして、その後、溶媒を蒸発させて除去し、フィルムを乾燥する。しかしながら、このようなスラリーコーティング電極フィルムは、剛直な多孔質構造を有しており、集電体から、亀裂又は粒子破砕の影響を受けやすい。従って、その電極フィルムは、長期間にわたってはほとんど使用されず、電極のエネルギー、出力、サイクル寿命、及び、製造における調和を悪化させる。加えて、電極フィルムの厚さが減少するにつれて、均質な層を得ることがますます困難になり、これによって、高コストのプロセス、巨大な資本投資、及び、高度な品質制御を要することとなる。電極フィルムを作製するスラリー法は、さらに、集電体への塗布の容易さの点、また、強度の点で望ましい、剛直で自己支持できる電極フィルムを製造することができない。
【0005】
亀裂や粒子破砕に対する電極の抵抗を向上させるべく、自己支持電極フィルムの製造のために、ペースト押出法が採用されてきた。自己支持フィルムにおいて、活性粒子(例えば、EDLCにおける活性炭粒子)は、フィブリル化可能ポリマーバインダ(典型的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))によって、モノリスへとまとめられる。押し出された電極フィルムを形成する従来技術のペースト押出プロセスでは、液体潤滑剤の存在下において、また、せん断条件下において、乾燥状態、又は、より典型的には湿潤状態のいずれか1つで、バインダと活性粒子とがともに撹拌される。液体潤滑剤としては、炭化水素、消泡剤、界面活性剤、高沸点溶媒、分散助剤、水、トルエン、キシレン、アルコール類、グリコール類、ケトン類、ナフサ、アセテート類、ピロリドン、及び、アイソパー(登録商標)が挙げられる。得られた材料は、生地のような特性を有し、これにより、材料は、押出シートを形成するためにバインダがフィブリル化される押出装置に、導入されることが可能である。押出シートは、電極フィルムを製造するために、電極となる集電体上にプレスされる前に、加熱下及び圧力下で、何度もカレンダー加工又はロール圧縮され得る。
【0006】
ペースト押出プロセスにおいて、フィブリル化可能ポリマー、例えばPTFEなどの特にフルオロポリマーは、粒子安定剤として広い範囲で使用されてきた。フィブリル化可能ポリマー及び活性粒子の混合物に、せん断力を適用することは、フィブリル化可能ポリマーをフィブリル化し、また、粒子をまとめる相互接続のクモの巣状の自己支持フィルムを形成することに寄与する。ポリマー安定化電極フィルムは非常に柔軟である。
【0007】
フィルムを集電体に取り付けると、得られた電極は、亀裂や粒子破砕に対して高い耐性を有する。しかしながら、自己支持電極フィルム自体は、製造中に曲がりやすいものの、本質的に柔らかく、集電体への付着の前に、容易に破れるか又は破断する。従って、他の製品への製造、処理、取り扱い、及び組み立てを容易にするために、ペースト押出電極製造プロセスにおける、電極フィルムの引張強度を向上させることが望ましい。
【0008】
従来技術では、焼結は、PTFEと活性粒子との間の結合を強めるために使用される。焼結ペーストは、その後、引き伸ばされ、電極フィルムとなる(米国特許第4,194,040号、米国特許第3,864,124号、及び米国特許4,862,328号)。他の従来技術では、第2のポリマーが、PTFE活性粒子系に添加され、三成分系(米国特許6,127,474号)を形成する。第2ポリマーは、より強力な繊維を形成し、一次粒子自体の焼結の必要性がなくとも、元のシステムを強化する。両方の場合において、撹拌、押出、及びロール圧縮プロセスで組成物を軟化させ押出可能の状態とするために、十分な加熱が必要となる。加えて、これらの第2ポリマーは、非導電性材料である。第2ポリマーを多量に加えると、典型的には7重量%以上を加えると、電極フィルムの導電率が著しく犠牲となってしまう。さらに、加熱下で第2ポリマーをプレスすると、第2ポリマーは、活性粒子の表面をブロックする延伸フィルム/クロスを形成する傾向があり、これにより、部分的に活性粒子を不活性化させ、電極全体又は装置の性能が犠牲になる。
【0009】
従来技術においては、乾燥バインダ及び乾燥活性粒子が撹拌され、処理用の潤滑剤を添加することなく、高温でペーストを形成する(米国特許7,295,423号)。しかしながら、このプロセスは、温度の正確な制御、比較的高い温度、押出及び熱ロール圧縮時の比較的高い圧力を必要とし、かなり複雑でエネルギーを多く消費するプロセスにつながる原因となる。
【0010】
加熱すると、通常、ポリマーが軟化し、そのため、(押出工程及びロール圧縮工程における)フィブリル化プロセスが容易になる。従って、温度は、ポリマー軟化点よりも高い必要がある。使用されるポリマーの種類に応じて、温度は、通常、100℃から300℃の範囲で異なる(米国特許第6,127,474号 及び米国特許7,295,423号)。焼結の方法において(米国特許第4,194,040号、米国特許3,864,124号、及び米国特許4,862,328号)、使用される温度は、ポリマーを溶融させるために十分に高く、典型的には300℃よりも高い。
【0011】
産業界において、フィブリル化プロセス又は押出及びロール圧縮プロセスにおいて、温度を正確に制御することは困難である。なぜなら、押出機又はロールは、金属又は合金からなり、非常に容易に熱を放散するからである。これに対処すべく、非加熱ロールよりも、はるかに高価な加熱ロールが使用されている。
【0012】
大気条件においてロール圧縮や押出中に必要とされる高温を維持することは、高エネルギー消費につながる。
【0013】
従って、依然として、当該技術分野では、ペースト押出電極製造プロセスを使用する改良された組成物及び方法であって、ポリマーで安定化された良好な導電性を示す活性粒子電極フィルムを強化する、組成物及び方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、ペースト押出電極製造プロセスを使用して、安定化された粒子の電極フィルムを形成するための、導電性フレークを使用した、新規組成物、及び、低エネルギー消費方法に関する。
【0015】
本発明は、(a)導電性フレークと、活性粒子と、少なくとも1種のフィブリル化可能ポリマーと、球状導電性炭素粒子とを混合及び撹拌して、ペーストを調製すること、(b)前記ペーストを押出して押出成形物にすること、(c)カレンダー加工又はロールに前記押出成形物を供して、自己支持電極フィルムを製造すること、を備える。好ましい実施形態では、前記プロセスは、工程(b)の前にペーストを調製すべく、導電性フレークと、活性粒子と、少なくとも1種のフィブリル化可能ポリマーと、球状導電性炭素粒子とを、液体潤滑剤中で混合及び撹拌することをさらに備える。
【0016】
電極フィルムの引張強度は、フレーク寸法とフレーク濃度とに応じて、少なくとも30%から16倍(1600%)増加する。強化されたフィルム構造は、加熱の必要性なく又は最低限の加熱によって、電極フィルムを他の製品へ容易に製造する、処理する、取り扱う、及び、組み立てることを可能にし得る。導電性フレークによって提供される三次元導電性マトリックスは、電気抵抗を70%を超えて減少させる。
【0017】
本発明の他の態様は、本発明の様々な実施形態が例示によって示されまた説明された以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかとなるであろうことが、理解されるべきである。理解されるように、本発明は他の異なる実施形態のために可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、様々な他の点で変更が可能である。従って、図面及び詳細な説明は、本質的に例示であって、限定ではないとみなされるべきである。
【0018】
簡単に上述した本発明のさらなる詳細な説明は、本発明の具体的な実施形態の以下の図面を参照することによって参照される。図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示し、従って、その範囲を限定するものと考えるべきではない。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、いくつかの例では、特定の機能をより明確に描写するために、比率が誇張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、ポリマー安定化電極フィルムを作るための本発明の方法のフロープロセス図である。
【
図2】
図2は、本発明の好ましい電極フィルムの構造の代表例の拡大された概略平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の別の好ましい電極フィルムの構造の代表例の拡大された概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
以下の説明及び本明細書に記載された実施形態は、本発明の様々な態様の原理の特定の実施形態の一例又は複数例の説明の手段として提供される。これらの例は、種々の局面において、原理及び本発明の説明の目的のために、限定されることなく提供される。
【0021】
(定義)
本明細書で使用される電極フィルムは、集電体に付着されることなく、少なくとも活性粒子と1種以上のバインダとを含むペーストから押出及びプレスされた自己支持フィルムを指す。本明細書で使用される集電体との用語は、導電性の高い箔を指し、例えば、電極フィルムからの電子を伝導するために使用されるAl、Cu、Tiなどの箔を指す。本明細書で使用される電極との用語は、集電体上に取り付けられた電極フィルムのシートを指す。本明細書で使用される活性粒子との用語は、電極を形成している粉体又は粒子の形態の活性材料を指す。例えば、EDLCにおいて、活性粒子は、活性炭粒子であり得る。別の例として、リチウム−硫黄電池において、活性粒子は、硫黄含浸活性炭粒子であってもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、フィブリル化可能ポリマーとの用語は、長い繊維へとせん断され得るあらゆるポリマーを指す。球状導電性粒子は、電極にのみ導電性を付加する粒子であって、典型的には球状粒子であるとみなされる。
【0023】
(導電性フレークで強化された、ポリマー安定化電極フィルムの作製方法)
本発明は、導電性フレークを使用する新規組成物及び低エネルギー消費方法に関し、ペースト押出電極製造プロセス中に三次元導電性マトリックスを形成しつつ、ポリマー安定化粒子電極フィルムを強化するものである。
【0024】
本発明の組成物及び方法は、加熱が不要又は最小の加熱で、30%から1600%の間で、電極フィルムの引張強度を改善することがわかる。導電性フレークによって提供される三次元導電性マトリックスは、得られた電極の電気抵抗を70%を超えて低減させると考えられる。
【0025】
本発明の方法の一実施形態は、(a)導電性フレークと、活性粒子と、少なくとも1種のフィブリル化可能ポリマーと、球状導電性粒子とを混合及び撹拌して、ペーストを調製すること、(b)前記ペーストを押出して押出成形物にすること、(c)カレンダー加工又はロールに前記押出成形物を供して、自己支持電極フィルムを製造すること、を備える。好ましい実施形態では、前記プロセスは、工程(b)の前に、液体潤滑剤と、(a)の他の成分とを混合及び撹拌して、ペーストを調製することをさらに備える。
【0026】
本発明のペースト押出電極製造プロセスの一実施形態が、
図1に記載されている。ステップ1において、活性粒子101と、少なくとも1種のフィブリル化可能ポリマー102と、導電性粒子103とが、導電性フレーク104と共に混合され、組成物100が調製される。好ましい実施形態では、混合及び撹拌プロセスを容易にすべく、液体潤滑剤105が組成物100に添加され、混合物111を調製する。混合物111は、混合及び撹拌110されて、予備フィブリルペースト112が調製される。
【0027】
活性粒子101は、粉体又は粒子の状態の活性材料である。前記組成物100中の活性粒子の濃度は、重量パーセント(重量%)で60%から99%の範囲であり、好ましくは、80重量%から90重量%の範囲である。活性粒子は、1〜50ミクロンの間の粒子サイズを有してもよく、好ましくは5〜20ミクロンの範囲内である。適切な活性粒子101としては、これらに限定されないが、活性炭粒子、硫黄含浸活性炭粒子、リチウム−酸素含有化合物、安定化金属リチウム粉体、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、金属窒化物粒子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
少なくとも1種のフィブリル化可能ポリマー102は、前記組成物100に、約0.1重量%から15重量%の量で含まれ、好ましくは3重量%から10重量%の量で含まれる。フィブリル化可能ポリマーは、粒子安定化剤として使用され、押出成形120及びロール圧縮130の後に、活性粒子101と導電性粒子103とがまとまったクモの巣状マトリックスを形成し、電極フィルムを形成する。フィブリル化可能ポリマー102としては、限定されず、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、コポリマー、各種のポリマーブレンド、天然又は合成ゴム、ポリアミド、ポリウレタン、液状樹脂、シリコン、エラストマーポリマー、オレフィンポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
球状導電性粒子103は、1ミクロン未満の粒子サイズを有してもよく、典型的には0.01ミクロンから0.1ミクロンの範囲の粒子サイズを有する。サブミクロンの導電性粒子103は、好ましくは球状炭素粒子であり、これらに限定されないが、カーボンブラック粒子、スーパーPカーボン粒子、スーパーC65炭素粒子、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。前記組成物100中のサブミクロンの球状導電性粒子の濃度は、0.1重量%から15重量%の範囲であってもよく、好ましくは1重量%から10重量%の範囲である。
【0030】
ここで、
図1における導電性フレーク104を参照すると、本発明の組成物に用いられる導電性フレークは、金属フレークを含み、好ましくは、アルミニウムフレーク、黒鉛フレーク、グラフェン、膨張黒鉛フレーク、導電性ポリマーフレーク、及び、これらの組み合わせを含む。前記組成物100に導電性フレークを、0.01重量%から10重量%添加すること、好ましくは0.1重量%から5重量%添加することによって、驚くべきことに、電極フィルム131の引張強度が顕著に増加したことが、本発明者らによって指摘された。実施例1〜9に示されるように、導電性フレークなしで作ったときの同様の組成物は、典型的には、約0.03kg/mm
2の引張強度を有し、一方で、導電性フレークを有する本フィルムは、0.04kg/mm
2よりも大きい引張強度を有し、より頻繁には0.05kg/mm
2から0.5kg/mm
2までの引張強度を有することが示されている。
【0031】
引張強度の増加は、フレークの寸法に影響される。本発明の目的のために使用される導電性フレークは、1〜40ミクロンの範囲の直径を有し、好ましくは5〜20ミクロンの範囲の直径を有する。導電性フレークの厚さは、0.001ミクロンから5ミクロンの範囲であり、最も好ましい厚さは、1ミクロン未満である。本明細書の後述の実施例1及び4に示すように、導電性フレークの直径を6ミクロンから15ミクロンへ増加させると、100ミクロン厚の電極フィルムの引張強度が80%高まることがわかる。フレークの形状は、より好ましくは平板であり、押出120及びロール圧縮130プロセス中において、フィブリル化可能なポリマーのせん断を微視的に促進して高める。これによって、導電性フレークを添加しないものよりも、より強いポリマーマトリックスを生じることとなる。さらに、導電性フレークとポリマー繊維との間に密着した結合が観察され、これによってマトリックス全体の強度が同様に増加する。
【0032】
一方で、導電性フレークの直径をさらに大きくすると、電極フィルムに含まれる導電性フレークの減少量に起因して、得られた電極フィルムの引張強度が減少することがわかる(実施例5)。引張強度の増加も、フレーク濃度に影響される。実施例1及び2にも示されるように、導電性フレークの重量%を2重量%から5重量%へ増加させると、電極フィルムの引張強度が増加する。
【0033】
サブミクロンの球状導電性粒子103は、押出120及びロール圧縮130中に、フィブリル化ポリマー繊維に付着することになり、フィブリル化方向及びロール圧縮方向沿って、導電性を与えることになる。しかしながら、これら導電性粒子103は、好ましくは球状であり小さい(サブミクロン)ため、電極フィルムの導電率は、フィルムの厚さにわたって制限され得る。ミクロンサイズの導電性フレークとフィブリル化ポリマー繊維との間の強い密着性は、フィルムの長手方向に沿って、特に電極フィルムの厚さ方向に沿って、有利に大きな導電経路を形成し、それによって、導電性フレークを介して、フィルムの厚さにわたって、導電性粒子を接続する三次元導電性マトリックスが形成される。これにより、同様に得られた電極フィルム131の電気抵抗が低下し、その結果、電極全体の電気抵抗が低下する。実施例10〜11において、150ミクロン厚の電極フィルムから作られた80ファラド電気二重層キャパシタの電気抵抗は、5重量%の導電性フレークが組成物に添加されると、70%を超えて減少する。
【0034】
導電性フレークの添加によって、驚くべきことに、自己支持フィルムの強度が向上することも示された。リチウム−イオン電池を作るいくつかのスラリー法は、導電率を向上させるために、黒鉛フレークを用いているが、スラリー法においてフィルム強度の必要性や需要はなかった。
【0035】
組成物100を、導電性の自己支持電極フィルム131へ作り上げる方法は、水又は他の液体潤滑剤105の存在下、且つ、せん断条件下において、乾燥状態、又はより典型的には湿潤状態のいずれか1つで、組成物100の成分を混合及び撹拌110することを含む。この方法は、その後、加熱の必要なく、又は、最小限の加熱によって、押出プロセス120及びカレンダー加工若しくはロール圧縮プロセス130によって、撹拌されて予備フィブリル化されたペースト112を、電極フィルム131に処理することを含む。
図1に示すように、ステップ2において、前記予備フィブリルペースト112は、押し出されて120、押出成形物121になり、好ましくは、押出シートの形態となる。ステップ3において、前記押出成形物121は、複数回カレンダー加工又はロール圧縮130され、自己支持電極フィルム131を形成する。
【0036】
好ましい実施形態では、撹拌プロセス110中における予備フィブリル化を補助するために、また、押出120及びロール圧縮130の処理におけるフィブリル化を補助するために、液体潤滑剤105を前記組成物100に添加する。本発明の好ましい液体潤滑剤105としては、これらに限定されないが、水、高沸点溶剤、消泡剤、分散助剤、ピロリドンミネラルスピリット、ケトン類、界面活性剤、ナフサ、アセテート類、アルコール類、グリコール類、トルエン、アセトン、クロロホルム、キシレン、アイソパー(登録商標)、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0037】
好ましい一実施形態では、本発明の組成物100は、活性粒子として80重量%から85重量%の6ミクロンの活性炭活性粒子210と、フィブリル化可能ポリマーとして5重量%から10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)220と、球状導電性粒子として5重量%から10重量%のスーパーPカーボン粒子230と、導電性フレークとして2重量%から5重量%黒鉛フレーク240とを含む。エタノールは、好ましい液体潤滑剤として使用することができる。電極フィルムに混合物111を組み入れるとき、撹拌110、押出し120、又はロール圧縮130の処理中に加熱する必要がなく、これにより、単純化された低エネルギー消費のペースト押出電極製造プロセスが達成される。
【0038】
産業界においては、ペーストを電極に容易に処理又は加工するために、電極フィルムは、0.01kg/mm
2よりも大きい、好ましくは0.03kg/mm
2よりも大きい引張強度を有することが望ましい。
図2に示すように、構造201に導電性フレーク240を添加することによって、本組成物からの本発明の電極フィルムの引張強度は、0.04kg/mm
2以上の引張強度の値を示し、ほとんどの実験的試験において、0.09kg/mm
2を超える(実施例1〜7を参照)。
【0039】
別の好ましい実施形態において、組成物は、活性粒子310として80重量%から85重量%の6ミクロン活性炭、フィブリル化可能ポリマーとして3重量%から5重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)320及び2重量%から3重量%のポリエチレン321と、球状導電性粒子として5重量から10重量%のスーパーPカーボン粒子330と、導電性フレークとして2重量%から5重量%の黒鉛フレーク340と、を含む。トルエン又はアセトンが液体潤滑剤105として使用される。この混合物111を電極フィルムに組み入れるとき、撹拌110、押出し120、又はロール圧縮130プロセスにおいて、加熱する必要はない。
【0040】
従って、本発明の方法は、焼結するため、又は、他のバインダを添加して加熱するために必要とされるよりも、比較的低いエネルギー消費量も示す。本発明のほとんどの態様において、加熱は必要とされず、加熱が使用される場合には、撹拌工程に限定され、加熱を制限でき制御できる密封チャンバのような閉じた環境において行うことができる。これは、過剰な熱を必要とし限られた加熱制御を提供する、押出工程及びロール圧縮工程における事前加熱とは対照的である。
【0041】
しかしながら、代替の実施形態においては、
図3に示し、また、実施例8〜9に記載するように、押出120及びロール圧縮130プロセス中で最小限の熱量を加えることは、電極フィルムの最終構造301における引張強度を、例えば0.36kg/mm
2から50kg/mm
2へを高めることができる。
【0042】
本発明は、ペースト押出電極製造プロセス中に三次元導電性マトリックスを形成しつつ、ポリマー安定化粒子電極を強化するために、導電性フレークを使用する新規組成物及び低エネルギー消費方法を提供する。本発明は、必要な引張強度を達成するために使用される熱量と第2ポリマーとを制限する一方で、電極全体又は装置全体の性能を維持する。
【0043】
再び
図1に示すように、撹拌プロセス110は、典型的には、前記混合物111にせん断力を与えることができる撹拌機で行われる。撹拌機の例としては、これらに限定されないが、ボールミル、ジェットミル、ピンミル、衝撃粉砕、ハンマーミル、機械的撹拌機、破砕機、及びグラインダーが挙げられる。
【0044】
本発明は、各種用途の電極を形成するために、集電体に自己支持電極フィルム131をプレスすることをさらに含んでもよい。集電体は、これらに限定されないが、アルミニウム箔、銅箔、チタン箔等の金属箔又は合金箔;アルミニウムメッシュ、銅メッシュ、チタンメッシュ等の金属メッシュ又は合金メッシュ;導電性カーボンクロス、エッチングされた金属箔、及び被覆金属箔を含み得る。エッチングされたアルミニウム箔などのエッチングされた集電体は、集電体への電極フィルム131の密着性を高めるために使用されてもよい。接着フィルムの薄層は、密着性を増加させ、電極フィルム131と集電体との界面抵抗を低減するために、集電体上にコーティングされてもよい。接着フィルムは、市販の製品であってもよい(Acheson Colloids社、1600 Washington Ave.,Port Huron、ミシガン州48060、電話:1−800−984−5581 によって商品名「Electrodag(登録商標)EEB−012」で販売)。接着フィルムは、10ミクロン未満の厚さを有する炭素被膜とすることもできる。
【0045】
エネルギー貯蔵装置における電極フィルム131への応用に加え、含有される活性粒子の種類に影響されるこれらの自己支持フィルム131は、ガスフィルター、触媒担持体、液体分離、及び水処理といった、より速い吸収、脱着、又は反応速度が要求される用途において、又は、材料のより良い使用及び小型化が要望される用途においても使用され得る。
【実施例】
【0046】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明する。
【0047】
(実施例1)
活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)8重量%のスーパーPカーボン粒子; 4)2重量%の黒鉛フレーク(直径6ミクロン)を含む。
成分1)−4)の総重量の5倍のエタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
電極フィルムの得られた引張強度は、0.05kg/mm
2である。
【0048】
(実施例2)
活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)5重量%のスーパーPカーボン粒子; 4)5重量%の黒鉛フレーク(直径6ミクロン)を含む。
成分1)−4)の総重量の5倍のエタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
電極フィルムの得られた引張強度は、0.09kg/mm
2である。
【0049】
(比較例3)
活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)10重量%のスーパーPカーボン粒子 を含む。導電性フレークなし。
成分1)−4)の総重量の5倍のエタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
電極フィルムの得られた引張強度は、0.03kg/mm
2である。
【0050】
(実施例4)
活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)8重量%のスーパーPカーボン粒子; 4)2重量%の黒鉛フレーク(直径15ミクロン)を含む。
成分1)−4)の総重量の5倍のエタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
電極フィルムの得られた引張強度は、0.09kg/mm
2である。
【0051】
(実施例5)
活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)8重量%のスーパーPカーボン粒子; 4)2重量%の黒鉛フレーク(直径50ミクロン)を含む。
成分1)−4)の総重量の5倍のエタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
電極フィルムの得られた引張強度は、0.04kg/mm
2である。
【0052】
(実施例6)
活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)6重量%のスーパーPカーボン粒子; 4)4重量%のグラフェン を含む。
成分1)−4)の総重量の5倍のエタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
電極フィルムの得られた引張強度は、0.10kg/mm
2である。
【0053】
(実施例7)
活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)8重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)7重量%のスーパーPカーボン粒子; 4)5重量%のアルミニウムフレーク(直径15ミクロン)を含む。
成分1)−4)の総重量の5倍のエタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
電極フィルムの得られた引張強度は、0.12kg/mm
2である。
【0054】
(実施例8)
活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)5重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)3重量%のポリエチレン; 4)8重量%のスーパーPカーボン粒子; 5)4重量%の黒鉛フレーク を含む。
成分1)−5)の総重量の5倍のトルエンを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
電極フィルムの得られた引張強度は、0.36kg/mm
2である。
【0055】
(実施例9)
活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)5重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)3重量%のポリプロピレン; 4)7重量%のスーパーPカーボン粒子; 5)5重量%のグラフェン を含む。
成分1)−5)の総重量の5倍のアセトン/エタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
最小加熱で撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる。
電極フィルムの得られた引張強度は、0.50kg/mm
2である。
【0056】
(実施例10)
活性炭電極:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)5重量%のスーパーPカーボン粒子; 4)5重量%のグラフェン を含む。
成分1)−4)の総重量の5倍のエタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、150ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
前記150ミクロン厚の電極フィルムを、電極となる接着フィルム被覆Al箔(15μm)にプレスする。
上記電極から、80ファラド電気二重層キャパシタ(EDLC)を作った。
80ファラドのEDLCの得られた電気抵抗は、7.5mΩであった。
【0057】
(比較例11)
活性炭電極:
組成物は、1)80重量%の6ミクロンの活性炭; 2)10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)10重量%のスーパーPカーボン粒子 を含む。導電性フレークなし。
成分1)−4)の総重量の5倍のエタノールを、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、150ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
前記150ミクロン厚の電極フィルムを、電極となる接着フィルム被覆Al箔(15μm)にプレスする。
上記電極から、80ファラド電気二重層キャパシタ(EDLC)を作った。
80ファラドのEDLCの得られた電気抵抗は、25mΩであった。
【0058】
(実施例12)
硫黄含浸活性炭電極フィルム:
組成物は、1)80重量%の硫黄含浸活性炭; 2)10重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE); 3)7重量%のスーパーPカーボン粒子; 5)3重量%の黒鉛フレーク を含む。
成分1)−4)の総重量の5倍の水を、混合物を調製するために、液体潤滑剤として組成物に添加した。
撹拌後、前記混合物は、ペーストになり、次に、室温で押出されてロール圧縮されて、100ミクロンの厚さの自己支持フィルムになる(加熱なし)。
自己支持フィルムの得られた引張強度は、0.10kg/mm
2である。
前記100ミクロン厚の電極フィルムを、リチウム−硫黄電池のカソードとなる接着フィルム被覆Al箔(15μm)にプレスする。
得られたカソードは、1,236mAh/g(硫黄)の高容量を示し、5mg(硫黄)/cm
2よりも大きい高負荷を有する。
【国際調査報告】