(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-501636(P2020-501636A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(54)【発明の名称】核磁気共鳴法によって画像を撮影するためのダイポールアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20191220BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20191220BHJP
G01R 33/34 20060101ALI20191220BHJP
【FI】
A61B5/055 350
A61B5/055 355
G01N24/00 570Y
G01N24/00 560D
G01R33/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-525792(P2019-525792)
(86)(22)【出願日】2017年11月24日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月29日
(86)【国際出願番号】DE2017000402
(87)【国際公開番号】WO2018108193
(87)【国際公開日】20180621
(31)【優先権主張番号】102016014978.7
(32)【優先日】2016年12月15日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】フェルダー・イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ホン・スクミン
(72)【発明者】
【氏名】シャー・ナディム・ヨーニ
(72)【発明者】
【氏名】マギル・アルトゥル・ヴィリアム
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA20
4C096AB34
4C096AB42
4C096AB45
4C096AB46
4C096AD10
4C096CA62
4C096CC01
4C096CC07
4C096CC08
4C096CC14
4C096CC16
4C096FB01
(57)【要約】
本発明は、核磁気共鳴法を用いた画像を撮影するためのダイポールアンテナ装置に関する。本発明によれば、ダイポールアンテナ装置が提供される。
少なくとも二つのダイポールアンテナの場合のダイポールアンテナ装置は、電気的ではなく機械的に相互に接続されており、ダイポールアンテナが交差箇所で交差し、当該交差箇所から延在するダイポールアンテナアームを形成し、当該ダイポールアンテナアームが半空間内に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つのダイポールアンテナが、電気的ではなく機械的に相互に接続されているダイポールアンテナ装置において、
前記ダイポールアンテナが、交差箇所で交差し、この交差箇所から延在する複数のダイポールアンテナアームを形成し、これらの複数のダイポールアンテナアームが、半空間内に配置されていることを特徴とするダイポールアンテナ装置。
【請求項2】
3〜16個のダイポールアンテナを具備することを特徴とする請求項1に記載のダイポールアンテナ装置。
【請求項3】
前記複数のダイポールアンテナの湾曲部分が、半円形を描くか又は楕円形の一部を描くことを特徴とする請求項1又は2に記載のダイポールアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数のダイポールアンテナは、それらの中心で交差することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイポールアンテナ装置。
【請求項5】
前記複数のダイポールアンテナアームは、これらのダイポールアンテナが存在する前記半空間内に円柱体又は円錐体の複数の縦材を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイポールアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数のダイポールアンテナは、キャパシタンス又はインダクタンスを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のダイポールアンテナ装置。
【請求項7】
前記ダイポールアンテナ装置は、シールドキャップを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のダイポールアンテナ装置。
【請求項8】
前記シールドキャップは、前記複数のダイポールアンテナの交差箇所に取付けられていることを特徴とする請求項7に記載のダイポールアンテナ装置。
【請求項9】
前記シールドキャップは、前記ダイポールアンテナ装置の、発電機に接続されている給電点に取付けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のダイポールアンテナ装置。
【請求項10】
少なくとも一つの表面コイルが、少なくとも一つのダイポールアンテナアームに配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のダイポールアンテナ装置。
【請求項11】
前記表面コイルの断面が、ダイポールアンテナアームを前記断面に投影させることによって対称軸に沿って分割されることを特徴とする請求項10に記載のダイポールアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴法によって画像を撮影するためのダイポールアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法(MRT)の場合、典型的にはプロトンの共鳴吸収が測定される。補足情報を得るため、核種Xの励起中にイメージング法によって生成される画像も撮影される。核種Xは、水素原子核とは異なるNMR活性核種である。これらは当業者に知られている。例えば、23Na核又は31P核が使用される。核種Xによる吸収は、大抵は核種Hによる吸収から時間的に分離される。多くの場合、核種Xの測定は、水素原子核の測定に対する補足的な情報を生成する。核種X測定を提供する追加の情報に関する例は、代謝情報又は細胞の生存に関する情報である。しかしながら、MRTにおける核種X信号は、プロトン信号よりも著しく低い。それ故に、1H測定が、核種X測定を改善するために頻繁に実施される。プロトンチャネルと組み合わせた測定に関する例は、スカウト画像及びB0シミングである。現在、MRTは、医学において0.25T〜4Tの磁界強度を使用する機器で通常運転される。臨床現場用の7Tの磁界強度を用いた機器が開発中である。しかしながら、原則的に全ての磁場強度が使用可能であるが、場合によっては運転のために特別な許可を必要とする。
【0003】
組合せX/1H測定を実行するため、二重又は三重同調のMRTコイル配置の構成についていくつかの方法が知られている。この場合、一つの問題は、プロトンのデカップリング及びコイルのX核種共鳴である。このため、様々な方法及び装置が既知である。
【0004】
ウエーブトラップを用いたコイルの一つのデカップリング、例えば、大部分が交互の脚部上にある受動的なウエーブトラップを含む二重同調の鳥かご型共振器は、非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3の刊行物に記載されている。
【0005】
PINダイオードを用いた一つのデカップリング、例えば交互に同調をはずされる二つの独立したRFコイルが、非特許文献4の刊行物において周知である。
【0006】
デカップリングの幾何学形状、例えば“バタフライコイル”及び中心に配置する表面コイルは、非特許文献5及び非特許文献6の刊行物に記載されている。
【0007】
一つの別の解決策は、共振器構造、例えば、補足的な終端リングを含む鳥かご型共振器を、非特許文献7のように変更させられている。
【0008】
ダイポール及びモノポールアンテナは、二重同調システムにおいて表面コイルを含む組み合わせで使用される。消滅する結合された磁束は、両方の導体配置の磁場に基づいた結果のように、表面コイルの中央に配置される。(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)。その結果、モノ/ダイポール及び表面コイルの間のこのデカップリングメカニズムは、さらに幾何学形状のデカップリングに起因する。
【0009】
幾何学的なデカップリングに及ぶ全ての方法は、その他の単一周波数のコイルから成る共振回路内に追加の構成要素を導入することを必要とする。その結果、さらなる損失が伴う。当該さらなる損失は、HFコイルの品質を低下させるので、吸収されたMR信号におけるSN比が低下する。同時に、製造コストが、より高い部品コストとウエーブトラップ又は調整ユニットの面倒な調整とによって上昇する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Shen GX, Wu J f., Boada FE, Thulborn KR. Experimentally verified, theoretical design of dual−tuned, low−pass birdcage radiofrequency resonators for magnetic resonance imaging and magnetic resonance spectroscopy of human brain at 3.0 Tesla. Magn. Reson. Med. 1999;41:268-275. doi: 10.1002/(SICI)1522−2594(199902)41:2<268::AID−MRM9>3.0.CO;2−G
【非特許文献2】Meyerspeer M, Roig ES, Gruetter R, Magill AW. An improved trap design for decoupling multinuclear RF coils. Magn. Reson. Med. 2013:n/a-n/a. doi: 10.1002/mrm.24931
【非特許文献3】Dabirzadeh A, McDougall MP. Trap design for insertable second‐nuclei radiofrequency coils for magnetic resonance imaging and spectroscopy. Concepts Magn. Reson. Part B Magn. Reson. Eng. 2009;35B:121-132. doi: 10.1002/cmr.b.20139.
【非特許文献4】Ha S, Hamamura MJ, Nalcioglu O, Muftuler LT. A PIN diode controlled dual−tuned MRI RF coil and phased array for multi nuclear imaging. Phys. Med. Biol. 2010;55:2589-2600. doi: 10.1088/0031−9155/55/9/011
【非特許文献5】Bottomley PA, Hardy CJ, Roemer PB, Mueller OM. Proton−decoupled, overhauser−enhanced, spatially localized carbon−13 spectroscopy in humans. Magn. Reson. Med. 1989;12:348-363. doi: 10.1002/mrm.1910120307.
【非特許文献6】Adriany G, Gruetter R. A half−volume coil for efficient proton decoupling in humans at 4 tesla. J. Magn. Reson. San Diego Calif 1997 1997;125:178-184. doi: 10.1006/jmre.1997.1113
【非特許文献7】Potter W m., Wang L, McCully K k., Zhao Q. Evaluation of a new 1H/31P dual−tuned birdcage coil for 31P spectroscopy. Concepts Magn. Reson. Part B Magn. Reson. Eng. 2013;43:90-99. doi: 10.1002/cmr.b.21239
【非特許文献8】Shajan G, Mirkes C, Buckenmaier K, Hoffmann J, Pohmann R, Scheffler K. Three−layered radio frequency coil arrangement for sodium MRI of the human brain at 9.4 Tesla. Magn. Reson. Med. 2015:n/a-n/a. doi: 10.1002/mrm.25666,
【非特許文献9】Yan X, Wei L, Xue R, Zhang X. Hybrid Monopole/Loop Coil Array for Human Head MR Imaging at 7 T. Appl. Magn. Reson. 2015:1-10. doi: 10.1007/s00723−015−0656−5.
【非特許文献10】Yan X, Xue R, Zhang X. A monopole/loop dual−tuned RF coil for ultrahigh field MRI. Quant. Imaging Med. Surg. 2014;4:225-231
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、1H核磁気共鳴とX核磁気共鳴とのデカップリングを簡単に且つ安価に可能にし、この場合にHFコイルの品質に影響しない方法及び装置を提供することにある。当該方法及び当該装置は、特に4テスラ未満の臨床に関連する適用分野で適用可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の上位概念及び独立請求項を鑑みて、本発明の課題は、特許請求の範囲の特徴部に記載の特徴によって解決される。
【0013】
したがって、本発明の方法及び装置を用いることで、ダイポールアンテナと表面コイルとを使用する臨床に関連する磁場強度の場合にも、核種1Hのコイル共振周波数と核種Xのコイル共振周波数とをデカップリングすることを可能にする。この場合、使用されるHFコイルの品質が低下しない。
【0014】
本発明の好適なその他の構成は、従属請求項に記載されている。
【0015】
本発明によれば、様々な核種のMR信号を励起又は記録するために、患者の身体部分の周り、特に頭部の周りに配置され得る、ダイポールアンテナ装置が提供される。
【0016】
本発明に従い、少なくとも二つのダイポールアンテナの配置が自由に使用される。このダイポールアンテナは、MR信号を励起又は記録することのために、患者の身体部分、例えば頭部の周りに配置され得る。そのために、少なくとも二つのダイポールアンテナは機械的には結合されているが電気的には互いに結合されていないので、ある点で交差し及びある角度で相互に取り囲む。好ましくは、均等な角度で取り囲まれる。したがって、2,3,4又はそれ以上、例えば16個のダイポールアンテナがこの方法で配置され得る。配置において二つよりも複数のダイポールアンテナ場合、発生した磁場の回転偏光の改善を達成し得る。ダイポールアンテナ装置において二つよりも複数のダイポールアンテナは、例えばk空間のサブサンプルを含む高速イメージングのような平行イメージングの方法又は平行励起にも使用され得る。
【0017】
ダイポールアンテナの数は、実用的の観点によってのみ上限値に従って制限されている。例えば、患者の頭部が測定されなければならない。すると、患者の視野を限定しない配置が望ましい。例えば、二つのダイポールアンテナを90°の角度で又は三つのアンテナをそれぞれ60°の角度で配置され得る。交差箇所から延在するダイポールアンテナの部分は、ダイポールアンテナアームとして呼ばれる。ダイポールアンテナアームは、等しい又は異なる角度を含み得る。
【0018】
本発明によれば、ダイポールアンテナは少なくとも1つの屈曲を具備する。この屈曲は、半空間に配置されているダイポールアンテナアームをめぐらすため及び例えば半円形、楕円形の一部又は先端でもある他の円形の幾何学形状を形成する。同様に、ダイポールアンテナは、少なくとも2つの屈曲を含み得、この屈曲は一方向に湾曲した多角形を表す。例えば、ダイポールアンテナは90°〜95°の二つの湾曲部を備え得、又は例えば60°〜65°の三つの湾曲部を備え得る。少なくとも二つの湾曲部の場合は、これらは同じ大きさである必要はないが、対称性から同等の角度が好ましい。
【0019】
全ての実施形態に関して、交差箇所に取り付けられたダイポールアンテナは、ダイポールアンテナアームを有し、患者の身体部分例えば頭部を、一つの面が開放されている鳥かご型に収容し得るような遮蔽物を反映するように配置されていなければならない。
【0020】
配置のダイポールアンテナは好ましくはそれらの中心で幾何学的に交差する。
【0021】
好ましくは、ダイポールアンテナの交差箇所がダイポールアンテナの中心にあるように、全てのダイポールアンテナアームは等しい長さであるが、個々のアームは他のアームと比べて長くても短くてもよい。
【0022】
好ましい実施形態では、半空間には縦材があり、ダイポールアンテナアームは半空間に形成する。その際、円柱の概念は、数学的な意味で平行し相対する状態であり及び円形状の平面図に又は他の円形の平面図に位置していると理解されることである。
【0023】
別の実施形態では、ダイポールアンテナアームは円錐の縦材を複製し得る。例えば、円錐形若しくは切頭円錐形は、45°〜120°の間の角度を取り囲む。角度の決定は、実用的な基準に沿う。患者の身体部分例えば頭部は、それを使用して収容され得なければならないし、その上、本発明によるダイポールアンテナは、MR装置に適合するように寸法を測って大きさを決められなければならない。
【0024】
更なる実施形態では、釣鐘型のダイポールアンテナを形成し得る。
【0025】
ダイポールアンテナのアーム若しくはダイポールアンテナアームは、共振周波数は、受信するための放射線に対して生成されているように、キャパシタンス又はインダクタンスを含む。したがって、ダイポールアンテナは、1H核又は他の核種の共振周波数に設定され得る。共振周波数のキャパシタンス又はインダクタンスの導入は、当業者に知られており、日常的に実施され得る。
【0026】
好ましい実施形態では、ダイポールアンテナは、遮蔽キャップを使用する。この遮蔽キャップは、実施のためにダイポールアンテナの交差箇所及び/又はダイポールアームに取付けられている。給電点で控えめな高電場が発生するので、有利には、遮蔽キャップが給電点に取付けられている。遮蔽キャップは、ダイポールアンテナの湾曲部の内面にあり得る。
【0027】
給電点は、電線を介して発電機に接続されている1つのダイポールアンテナの点である。各ダイポールアンテナは、ダイポールアンテナの任意の箇所にあり得る1つの給電点を必要とする。能動的又は受動的な整合回路が、当該給電点と当該発電機との間に接続され得る。
【0028】
好ましくは、遮蔽キャップは、開口部なし及び貫通なしで閉鎖されている。これは、ダイポールアンテナ要素の給電点に集中した電場が検査対象に対して遮蔽されるという利点がある。これにより、検査対象の加熱/SARの減少をもたらす。遮蔽キャップは、控えめな電場からのSARの減少をもたらし、この電場は、MRコイルの場合に平均励起電力の制限をもたらす。これは適用可能なMRTシーケンスに関する適用領域を制限し、及びしばしばより長い測定時間をもたらす。
【0029】
代替的な実施形態では、遮蔽キャップは、MRTにおける渦電流効果を抑制するために開口部又は凹部もまた有し得る。
【0030】
好ましくは、遮蔽キャップは、ダイポールアンテナの給電点のために中心対称に固定されている。その結果、ダイポールアンテナの給電点から、好ましくは一様な半径で電場の遮蔽が行われる。
【0031】
遮蔽キャップは、球体片、楕円形、好ましくは丸みを帯びた形状又は同一でない幾何学形状を備え得る。
【0032】
遮蔽キャップは、控えめな電界が覆われ及び電気的な渦電界が弱まるという、利点がある。
【0033】
一つのさらに好ましい実施形態には、核種Xの共振周波数に調整されている表面コイルを含む本発明によるダイポールアンテナが結合される。
【0034】
このため、好ましくは表面コイルの断面が、ダイポールアンテナアームを当該表面コイルの断面に投影させることによって対称軸に沿って分割されるように、当該表面コイルは、ダイポールアンテナに設置されている。これにより、それぞれのダイポールアンテナと表面コイルとがデカップル(分離)される。
【0035】
ダイポールアンテナアームの長さに沿って、一つ又は複数の表面コイルが配置され得る。 複数の表面コイルは、核種X測定のためにチャンネル数を増すので、例えば、SN比の向上のため受信時に利用され得る。
【0036】
好ましくは、全てのダイポールアンテナアームは少なくとも一つのコイルを有する。これは、円周に沿って核種X表面コイルの間に間隙が生じないという利点を持つ。そのような間隙は、低い局所感度を呈する領域、即ちこの領域内のSN比を悪化させる。
【0037】
表面コイルは、キャパシタンスを有する。その共振周波数が、当該キャパシタンスによって設定され得る。当該共振周波数の設定は、当業者に周知である。
【0038】
一実施形態では、すべての表面コイルは、測定される特定の核種Xに適合する同一の共振周波数に設定されている。
【0039】
別の実施形態では、別の表面コイルの場合のキャパシタンスが、別の共振周波数を有するように異なって配置され得る。この実施形態の場合、異なる核種Xの信号は、同時に測定され得る。しかしながら、この場合、大抵核種X要素の余分なデカップリングは、例えばウエーブトラップ又はPINダイオードからの提供によって互いに必要である。
【0040】
表は、アンテナの物理データを示す。
【0041】
表1は、同じ入力電力及び最大ローカル(10g)SARの場合の平均B1+磁場を、従来技術による鳥かご型コイル並びに本発明による遮蔽キャップを含む及び含まないダイポールアンテナのための配置につき、受容電力1Wに規格化した。
【0042】
表2は、ダイポールアンテナと表面コイルの間のデカップリングである。
【0043】
更に、図は、本発明によるダイポールアンテナ装置の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図2】技術状態と比較したその効率を含む表面コイルを除いたダイポールアンテナ装置である。
【
図3】二つの別の幾何学的の配置における遮蔽キャップとコイルを含む本発明のダイポールアンテナ装置である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1では、四つのダイポールアンテナアーム2,2a,2b,2cを有するダイポールアンテナ装置1が図示されており、この配置の場合、ダイポールアンテナアーム2,2a,2b,2cがキャパシタンス/インダクタンス3,3a,3b,3c,・・・,3eをそれぞれ持っている。ダイポールアンテナアームは、ダイポールアンテナ4,5からの領域の給電点6にあり、ダイポールアンテナ7の接続のための手段によって電気的に絶縁で互いに固定されている。湾曲部には、シールドキャップ8がある。
【0046】
図2の欄a)に、付属のB1効率の図を含む鳥かご型コイルを示す。欄b)は、遮蔽キャップとそのB1効率との比較を含む本発明によるダイポールアンテナ装置を示す。欄c)は、遮蔽キャップを除いたダイポールアンテナ装置に対する同等の図を示す。
【0047】
図3では、同じ装置の特徴は、同じ参照番号を有する。
【0048】
欄a)は、シールドキャップ8を含むダイポールアンテナ装置1を示す。ダイポールアンテナアーム2,2a,・・・は、容量3,3aを有する。ダイポールアンテナ装置1に、表面コイル9,9a,・・・がダイポールアンテナアーム2,2aによって中央で分割されるように配置されている。コイルは、容量10,10a,・・・を同様に有する。
【0049】
欄b)は、欄a)と同様に、同一の参照番号を含む同等の配置を示すが、コイル9,9a,・・・はダイポールアンテナアーム2、2aの屈曲に複製されている。
【0050】
以下には、本発明が実例で説明されるが、これは限定的に解釈される必要はない。
【0051】
幾何学的にデカップルした配置が提案される(
図1)。湾曲の構成に基づいて、ダイポールアンテナは、200MHzの場合に幾何学的の基本周波数を備える。固有振動数は、ダイポール構造に挿入される集中したコイルを用いて、臨床での磁場強度に調整され得る。さらに、二つの垂直のダイポールアンテナを含む構成は、直角位相運転を可能にする。ここに示す実施例において二つのダイポールアンテナの間の絶縁は、34dBである。
図2は、鳥かご型コイル及び湾曲した2チャネルダイポールアンテナとこれらのB1+磁場分布のシミュレーションモデルとを示す。表1は、同一の入力電力を含む励起の場合の脳全体の平均B1+磁場及び対応する局所(10g)SAR値を記載する。湾曲したダイポールアンテナは、脳全体の似たような平均B1+磁場を提供する。その場合、最大B1+は、脳の上方部分へより集中する。
【0052】
最適化された実施形態は、ダイポールアンテナを核種X共鳴に調整された表面コイルと組み合わせる。構成は、
図3に示す。表2は、ダイポールアンテナと表面コイルの間の絶縁を示す。最大カップリングは、−27dBである。二つの配置の幾何学的なデカップリングは、容易に実現可能であり、及び要求の高いウエーブトラップを必要としない。1HシステムとXシステムは、双方同時に直角位相で運転し得る。デカップリングのための更なる(損失のある)構成要素を回路に挿入する必要がないので、個々のシステムの本質的なSNRの低下が生じない。さらに、配置はデカップリング実験にも同様に利用される。
【0053】
さらに好ましい実施形態は、ダイポールアンテナの給電点の下方で、この給電点で生成される控えめな電場の周囲を遮蔽するシールドキャップを使用する。表1は、局所SAR値に基づく遮蔽効果を明示する。湾曲したダイポールアンテナは、局所最大SAR1.95W/kgを発生する。遮蔽キャップは、この値を1.65W/kgに制限する。導電性材料を含む電場からの遮蔽は、MRTコイル構成において周知である。この好ましい実施形態では、遮蔽は、ダイポール給電点の下方の強いB1+ピークの抑制による局所SARの制限及びB1+磁場を均質化するという二つの目的に役立つ。遮蔽上の渦電流は、遮蔽のスリット及び高周波電流回路を閉じるための容量の使用によって制限され得る。
【0054】
本発明の主な特徴は、臨床現場の場合でダイポール構造の利用を可能にする湾曲したダイポールアンテナである。従来のストレート型ダイポールは、その長さにより4T以下では使用され得ない。同時に、提案された方法でのダイポールアンテナの湾曲部は、ダイポールの対称性の磁場を使用不能にしない。この結果、追加のMRTコイルを含む幾何学的なデカップリングのままであることが可能である。好ましい実施形態は、少なくとも2つのダイポールアンテナの使用を直角位相に運転するために達成することである。ストレート型のダイポールアンテナには、円柱の円周上の少なくとも四つの要素が、円柱の中で円偏光を達成することが必要とされることに留意されたい(8)。標準の鳥かご型コイルと比較したダイポールアンテナの給電点における高いSARは、簡単にコイルに吸収され得る導電性の遮蔽キャップの使用によって制限され得る。この遮蔽キャップは、患者の目や耳へのアクセスを妨害しない。この場合、例えば機能的なMRI測定の間で必要不可欠である。
【0055】
湾曲したダイポールの両端部に一つずつ表面構造を追加すると、別の核種を用いたMRTのために最適である幾何学的にデカップリングの構成になる。製造を容易にし、及びSNRを最適化するこの構成では、ウエーブトラップが不要である。4つの表面コイルを含む提案された構成は、機能的MRI装置(ヘッドホン、ゴーグルなど)の使用のための十分なスペースを提供する。これは複合PET−MR測定のために同様に理想的に適しており、ガンマ線のための吸収性の高い金属構造は少ない空間領域でしか発生しないので、1H及びXコイルシステムの制御は、PET装置の視野外で行うことができる。
【0056】
二重同調4T1H/31Pコイルシステムを構成した。直角位相で運転される長さ60cmの二つの湾曲したダイポールは、160MHzに調整されている。ダイポールアンテナの調整は、コイルを用いて給電点で行われる。二つのダイポールの間の直角位相絶縁は、34dBに達する。ダイポール給電点における控えめの電場は、均一形状の金属ディスク(遮蔽キャップ)で遮蔽されている。プロトン鳥かご型コイルと遮蔽されたダイポールアンテナ構造のB1+可能出力は、同程度の大きさである。局所SARは、湾曲したダイポールアンテナの場合に鳥かご型コイルと比較してわずかに高いが、それらの値は、法律で定められたSAR限界内でさらに安全な利用を可能にする。
【0057】
ダイポールアンテナ構造は、4T(64MHz)の場合に31P周波数に調整させられている四つの表面コイルと組み合わせられる(
図3)。表面コイルは、互いに誘導的にデカップリングさせられている。プロトン及び31P核の間の平均デカップリングは、160MHzの場合に49dB及び64MHzの場合に−8dB(表2)である。31P核表面コイルのSNRは、ダイポールアンテナを除いて同じサイズ配置のSNRと一緒に同一である。
【国際調査報告】