【実施例】
【0204】
[実施例1]
実施例1は、プラスミノーゲンがシスプラチンによる腎損傷の修復を促進することに関するものである。
8〜9週齢の健康なオスC57マウスを10匹取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群及びプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつである。群分けが完了した後に、10mg/Kg体重で一回経腹腔でシスプラチンを注射し
[33]、化学療法損傷モデルを構築した。モデル構築が完了した後にプラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを同じ方法で投与した。実験開始当日を0日目として体重を測ってから群分けし、一日目からシスプラチンを腹腔注射してモデル構築を行い、モデル構築後3時間以内にプラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、投与期間は7日間である。8日目にマウスを殺処分し、腎臓を取って10%中性フルマリン固定液において24〜48時間固定を行った。固定後の腎臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに浸水してから一回水洗いした。クエン酸で30分間修復し、室温にて10分間冷却してから水でやさしく洗い流した。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、ヤギ抗マウスIgM(HRP)抗体(Abcam)を滴加して室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。段階的に脱水してから透徹にし封入させ、切片を顕微鏡下で200倍にて観察した。
IgM抗体は、アポトーシス細胞及び壊死細胞の排除において重要な役割を果たし、組織器官損傷の局所的IgM抗体のレベルは、損傷の程度と正比例に相関している
[29,30]。よって、検出した組織器官の局所的IgM抗体のレベルは該組織器官の損傷状況を反映することができる。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図1B)のIgM陽性発現は、溶媒PBS投与対照群(
図1A)より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(
図1C)。これは、プラスミノーゲンが腎損傷の修復を促進できることを示している。
【0205】
[実施例2]
実施例2は、プラスミノーゲンがシスプラチン化学療法損傷モデルマウスの腎線維症を軽減することに関するものである。
8〜9週齢の健康なオスC57マウスを10匹取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群及びプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつである。群分けが完了した後に、化学療法損傷モデルを構築し、10mg/Kg体重で一回経腹腔でシスプラチンを注射した
[33]。モデル構築が完了した後にプラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。実験開始当日を0日目として体重を測ってから群分けし、一日目からシスプラチンを腹腔注射してモデル構築を行い、モデル構築後3時間以内にプラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、投与期間は7日間である。8日目にマウスを殺処分し、腎臓を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに浸水してから一回水洗いした。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、ウサギ抗マウスIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を滴加して室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングさせてからTBSで1回洗った。段階的に脱水してから透徹にし封入させ、切片を顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、溶媒PBS投与対照群(
図2A)の腎臓IV型コラーゲンの陽性発現はプラスミノーゲン投与群(
図2B)より明らかに高い。これは、プラスミノーゲンがシスプラチンによる損傷モデルマウスの腎線維症を軽減できることを示している。
【0206】
[実施例3]
実施例3は、プラスミノーゲンが慢性腎損傷モデルの腎臓に対する保護作用に関するものである。
8〜9週齢のPLG
+/+マウス20匹、及びPLG
−/−マウス6匹を取り、PLG
+/+マウスをランダムに二つの群に分け、それぞれプラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群10匹ずつとした。プラスミノーゲン投与群、溶媒PBS投与対照群、及びPLG
−/−マウスに毎日0.25%のプリン飼料(南通トロフィー)を給餌し、慢性腎損傷モデルを構築した
[26]。モデル構築した当日を1日目として投薬を始めた。プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、モデル構築投薬を10日間連続し、PLG
−/−マウスは処置しなかった。11日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに浸水してヘマトキシリン及びエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍(
図3A、B、C)、400倍(1D)にて観察した。
その結果、PLG
−/−マウスの腎臓(
図3C、3D)病変が最も重度であり、大量の膿キャスト(矢印に示される)、少量のプリン結晶(三角で表記されている)、大面積の腎尿細管萎縮、及び扁平上皮細胞が観察される。PLG
−/−マウスと比べ、溶媒PBS投与対照群のマウスの腎(
図3A)損傷は軽い。糸球体萎縮及び腎尿細管の壊死は依然として深刻であるが、明らかなプリン結晶は見られず、膿キャストも比較的に軽い。プラスミノーゲン投与群のマウス(
図3B)の腎尿細管の萎縮面積は、PBS投与対照群より小さく、腎尿細管の拡張も軽く、膿キャストは発見していない。これは、プラスミノーゲンが慢性腎損傷モデルマウスの腎損傷を修復できることを示している。
【0207】
[実施例4]
実施例4は、プラスミノーゲンが慢性腎損傷モデルの腎線維症を修復することに関するものである。
8〜9週齢のPLG
+/+マウス12匹、及びPLG
−/−マウス6匹を取り、PLG
+/+マウスをランダムに二つの群に分け、それぞれプラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群6匹ずつとした。慢性腎損傷モデルの構築方法は実施例1と同様である。モデル構築した当日を1日目として投薬を始めた。プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、モデル構築投薬を10日間連続し、PLG
−/−マウスは処置しなかった。11日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせてから1回水洗い、0.1%シリウスレッドで60分間染色させた後、流水で洗い、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で洗い、1%塩酸エタノール及びアンモニア水で分別させてブルーイングさせ、流水で洗い、乾燥させてから封入し、切片を顕微鏡下で200倍にて観察した。
シリウスレッド染色は、コラーゲンを長期的に染色することができ、病理学的切片の特殊染色法として、シリウスレッド染色はコラーゲン組織を特異的に表示することができる。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図4B)と溶媒PBS投与対照群(
図4A)のコラーゲン沈着はPLG
−/−群(
図4C)より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(
図4D)ことは示されている。また、プラスミノーゲン投与群のコラーゲン沈着は、溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが慢性腎損傷モデルマウスの腎線維症を修復する過程において肝心な役割を果たすことを示している。
【0208】
[実施例5]
実施例5は、プラスミノーゲンが慢性腎損傷マウスの腎臓アポトーシス抑制タンパク質Bcl−2の発現を促進することに関するものである。
8〜9週齢のオスPLG
+/+マウス18匹を取り、ランダムに三つの群に分け、それぞれブランク対照群、プラスミノーゲン投与群、及び溶媒PBS投与対照群で、各群6匹ずつとした。慢性腎損傷モデルの構築方法は実施例1と同様である。モデル構築した当日を1日目として投薬を始めた。ブランク対照群に通常の維持食を給餌した。プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、モデル構築投薬を10日間連続し、ブランク対照群マウスは処置しなかった。モデル構築投薬を始めた日を1日目として、11日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせてから1回水洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、ウサギ抗マウスBcl−2抗体(Abcam)を滴加して4℃で終夜インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。アルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
Bcl−2は細胞アポトーシス抑制タンパク質であり、アポトーシス刺激因子により発現が低くなる
[27,28]。Bcl−2免疫組織化学的結果によって、プラスミノーゲン投与群(
図5C)の腎臓Bcl−2の陽性着色は溶媒PBS投与対照群(
図5B)より明らかに深く、しかもブランク対照群(
図5A)のBcl−2の陽性着色の程度に近いことは示されている。これは、プラスミノーゲンが慢性腎損傷モデルマウスの腎細胞アポトーシス抑制分子Bcl−2の発現を促進でき、それによって慢性腎損傷マウスの腎組織細胞をアポトーシスから保護することに寄与できることを示している。
【0209】
[実施例6]
実施例6は、プラスミノーゲンが慢性腎損傷マウスの腎臓の局所損傷を改善することに関するものである。
8〜9週齢のオスPLG
+/+マウス18匹を取り、ランダムに三つの群に分け、それぞれブランク対照群、プラスミノーゲン投与群、及び溶媒PBS投与対照群で、各群6匹ずつとした。慢性腎損傷モデルの構築方法は実施例1と同様である。モデル構築した当日を1日目として投薬を始めた。ブランク対照群に通常の維持食を給餌した。プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、モデル構築投薬を10日間連続し、ブランク対照群マウスは処置しなかった。11日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせてから1回水洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)を滴加して室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。段階的に脱水させて透徹にして封入させ、切片を顕微鏡下で200倍にて観察した。
IgM抗体は、アポトーシス細胞及び壊死細胞の排除において重要な役割を果たし、組織器官損傷の局所IgM抗体のレベルは、損傷の程度と正比例に相関している
[29,30]。よって、検出した組織器官の局所IgM抗体のレベルは該組織器官の損傷程度を反映することができる。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図6C)マウスの腎臓IgMの陽性着色は溶媒PBS投与対照群(
図6B)より浅く、しかも範囲は対照群より小さく、着色はブランク対照マウス(
図6A)に非常に近いことは示されている。これは、プラスミノーゲンの注射後、糸球体損傷が明らかに改善されており、プラスミノーゲンが慢性腎損傷マウスの腎損傷に対して顕著な修復効果を持っていることを示している。
【0210】
[実施例7]
実施例7は、プラスミノーゲンが慢性腎損傷マウスの腎臓フィブリンの発現を減少することに関するものである。
8〜9週齢のPLG
+/+マウス12匹、及びPLG
−/−マウス6匹を取り、PLG
+/+マウスをランダムに二つの群に分け、それぞれプラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群6匹ずつとした。慢性腎損傷モデルの構築方法は実施例1と同様である。モデル構築した当日を1日目として投薬を始めた。モデル構築と投薬期間は4日間であり、ブランク対照群に通常の維持食を給餌した。プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、PLG
−/−マウスは処置しなかった。5日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせてから1回水洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、ウサギ抗マウスBcl−2抗体(Abcam)を滴加して4℃で終夜インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。段階的に脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、生体の損傷に対する応答反応として、フィブリノーゲンはフィブリンに加水分解されて損傷部位に沈着する
[31,32]。そのため、損傷局所のフィブリンのレベルを損傷程度の一つの指標とすることができる。
その結果、溶媒PBS投与対照群(
図7A)の腎フィブリンの陽性着色はプラスミノーゲン投与群マウス(
図7B)より深く、しかもPLG
−/−群(
図7C)の着色は溶媒PBS投与対照群より深いことは示されている。これは、プラスミノーゲンが一定の程度で腎臓組織の損傷を修復できることを示している。
【0211】
[実施例8]
実施例8は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの腎線維症を軽減することに関するものである。
24〜25週齢のオスdb/dbマウス10匹を取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつとした。実験開始当日を0日目として体重を測ってから群分けし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、31日間連続して投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。プラスミノーゲンを31日間投与した後にマウスを殺処分して腎臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせてから1回水洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、IVコラーゲンのウサギポリクローナル抗体(Abcam)を滴加して4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗った。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。段階的に脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
糖尿病性腎症は糖尿病の慢性合併症であり、糸球体硬化症及び腎間質性線維症はその典型的な病理学的変化である
[34]。本発明実験の結果によって、プラスミノーゲン投与群(
図8B)のIVコラーゲン陽性着色は溶媒PBS投与対照群(
図8A)より明らかに浅いことは示されている。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの腎線維症を軽減できることを示している。
【0212】
[実施例9]
実施例9は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの腎線維症を軽減することに関するものである。
26週齢のオスdb/dbマウス10匹を取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつとした。実験開始当日を0日目として体重を測ってから群分けし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、35日間連続して投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。36日目にマウスを殺処分して腎臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから重クロム酸カリウム溶液に終夜置いた。鉄ヘマトキシリンで3〜5分間染色して流水で流した。1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水で1秒処理してから水で洗った。ポンソー酸性マゼンタ溶液にて8分間染色し、水中で素早く濯いだ。1%リンモリブデン酸水溶液で約2分間処理し、アニリンブルー溶液にて6分間複染色した。1%氷酢酸で約1分間濯いだ。無水エタノールで脱水させてキシレンで透徹にしてから封入し、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
マッソン(Masson)染色は組織の線維症を示すことができる。その結果、溶媒PBS投与対照群(
図9A)の腎間質に軽度の線維症があり、過形成した線維症は青色である。溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群(
図9B)の腎間質線維症は明らかに減少している。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの腎線維症を低下させることができることを示している。
【0213】
[実施例10]
実施例10は、プラスミノーゲンが全身性硬化症モデルマウスの腎線維症を減少させることに関するものである。
12週齢のC57オスマウス10匹を取り、体重をはかった後にランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつとした。すべてのマウスに1mg/0.1mL/匹/日でブレオマイシンを皮下注射して全身性硬化症を誘発させ
[35]、当日からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、その日を1日目とし、21日間連続して投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。22日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、ブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにおいて、溶媒PBS投与対照群(
図10A)の腎臓コラーゲン沈着がプラスミノーゲン投与群(
図10B)より明らかに多いことは示されている。これは、プラスミノーゲンが全身性硬化症マウスの腎線維症を効果的に減少させたことを示している。
【0214】
[実施例11]
実施例11は、プラスミノーゲンが慢性腎損傷モデルマウスの腎臓機能の修復を促進することに関するものである。
8〜9週齢のPLG
+/+マウス10匹、及びPLG
−/−マウス6匹を取り、慢性腎損傷モデルの構築方法は実施例1と同様である。モデル構築の当日を1日目とし、モデル構築期間は10日間である。11日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清中の尿素窒素濃度を測定した。尿素窒素含有量は、尿素窒素検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号C013−2)を用い、該尿素窒素検出キットに記載された方法に従って測定した。
その結果、PLG
+/+群の血清における尿素窒素濃度がPLG
−/−群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(
図11)ことは示されている。これは、プラスミノーゲンが慢性腎損傷モデルマウスの腎機能を顕著に改善できることを示している。
【0215】
[実施例12]
実施例12は、プラスミノーゲンが慢性腎損傷モデルマウスの腎臓機能の修復を促進することに関するものである。
8〜9週齢のPLG
+/+マウス20匹、及びPLG
−/−マウス6匹を取り、PLG
+/+マウスをランダムに二つの群に分け、それぞれプラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群10匹ずつとした。慢性腎損傷モデルの構築方法は実施例1と同様である。モデル構築の当日を1日目としてその日から投薬し、投与期間は4日間である。プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、PLG
−/−マウスは処置しなかった。5日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清中のクレアチニン濃度を測定した。血清クレアチニン濃度は、クレアチニン検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号C011−2)を用い、該キットに記載された方法に従って測定した。
その結果、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群の血清クレアチニン濃度がPLG
−/−群マウスより明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意であることは示されている。また、プラスミノーゲン投与群の血清クレアチニン濃度は溶媒PBS投与対照群(
図12)より明らかに低い。これは、プラスミノーゲンが慢性腎損傷モデルマウスの腎機能を顕著に改善できることを示している。
【0216】
[実施例13]
実施例13は、プラスミノーゲンが急性腎損傷モデルマウスの腎臓機能の修復を促進することに関するものである。
7週齢のオスC57マウス9匹を取り、ランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群で5匹、溶媒PBS投与対照群で4匹とした。すべてのマウスに250mg/kg体重で一回経腹腔で葉酸(sigma A7876)溶液を注射し、急性腎損傷を誘発した
[36]。葉酸を0.3mоl/L NaHCO
3に溶解した。モデル構築の当日を1日目とし、その日からプラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は7日間である。8日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清中の尿素窒素濃度を測定した。尿素窒素含有量は、尿素窒素検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号C013−2)を用い、該尿素窒素検出キットに記載された方法に従って測定した。
その結果、プラスミノーゲン投与群の血清中の尿素窒素濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的な有意に近い(P=0.06)(
図13)ことは示されている。これは、プラスミノーゲンが急性腎損傷モデルマウスの腎機能を顕著に改善できることを示している。
【0217】
[実施例14]
実施例14は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎脂肪沈着を低減することに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し
[37,38]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。また、同じ週齢のオスC57マウスを5匹取ってブランク対照群とし、実験期間中に通常の維持食を給餌した。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロールを測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度と体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は30日間である。31日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
オイルレッドO染色は脂質沈着を示し、脂質沈着の程度を反映することができる
[37]。その結果、プラスミノーゲン投与群(
図14C)マウスの腎脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図14B)より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(
図14D)。また、プラスミノーゲン投与群の脂質沈着レベルはブランク対照群マウス(
図14A)に似ている。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの腎臓における脂肪の沈着を低減でき、それによって脂肪沈着による腎損傷を減少させることができることを示している。
【0218】
[実施例15]
実施例15は、プラスミノーゲンが葉酸急性腎損傷モデルマウスの腎損傷を改善することに関するものである。
7週齢のオスC57マウス15匹を取り、ランダムに三つの群に分け、ブランク対照群で3匹、プラスミノーゲン投与群で7匹、溶媒PBS投与対照群で5匹とした。プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群マウスに250mg/kg体重で一回経腹腔で葉酸(sigma A7876)溶液を注射し、急性腎損傷モデルを誘発し
[36]、ブランク対照群に一回経腹腔で同じ体積のNaHCO
3溶液を注射した。葉酸を0.3mоl/L NaHCO
3に溶解した。モデル構築の当日を1日目とし、その日からプラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈により投与し、投与期間は7日間である。8日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに浸水してヘマトキシリン及びエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、ブランク対照群(
図15A)の腎臓核は円形または楕円形であり、細胞質は赤色に染色され、糸球体及び腎尿細管は正常な形態を呈する。溶媒PBS投与対照群(
図15B)では腎に大部分の腎尿細管上皮細胞が扁平化し(太い矢印に表記される)、刷子縁が剥がれ、一部の核濃縮が観察され、一部の腎尿細管のみにわずかに染色された細胞質が呈され、一部の腎尿細管には膿キャスト(細い矢印に表記される)も見えられ、糸球体及び腎間質性に軽度の炎症細胞浸潤が示されている。溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群(
図15C)の腎尿細管拡張及び上皮細胞扁平化は明らかに改善され、腎尿細管細胞質の大部分は赤色に染色され、膿キャストは見られていない。これは、プラスミノーゲンが葉酸によって誘発された急性腎損傷を改善できることを示している。
【0219】
[実施例16]
実施例16は、プラスミノーゲンが葉酸急性腎損傷モデルマウスの腎臓Bcl−2の発現を促進することに関するものである。
7週齢のオスC57マウス12匹を取り、ランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群で7匹、溶媒PBS投与対照群で5匹とした。すべてのマウスに250mg/kg体重で一回経腹腔で葉酸(sigma A7876)溶液を注射し、急性腎損傷を誘発した
[36]。葉酸を0.3mоl/L NaHCO
3に溶解した。モデル構築の当日を1日目とし、その日からプラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は7日間である。8日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、ウサギ抗マウスBcl−2抗体(Abcam)を滴加して4℃で終夜インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。アルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
Bcl−2免疫組織化学的結果によって、プラスミノーゲン投与群(
図16B)の腎臓Bcl−2の陽性着色は溶媒PBS投与対照群(
図16A)より明らかに深く、しかもその差が統計学的に有意である(
図16C)ことは示されている。これは、プラスミノーゲンが急性腎損傷モデルマウスの腎細胞アポトーシス抑制タンパクBcl−2の発現を促進でき、それによって急性腎損傷マウスの腎組織細胞をアポトーシスから保護することに寄与できることを示している。
【0220】
[実施例17]
実施例17は、プラスミノーゲンが葉酸による急性腎損傷モデルマウスの腎損傷を低減することに関するものである。
7週齢のオスC57マウス12匹を取り、ランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群で7匹、溶媒PBS投与対照群で5匹とした。すべてのマウスに250mg/kg体重で一回経腹腔で葉酸(sigma A7876)溶液を注射し、急性腎損傷を誘発した
[36]。葉酸を0.3mоl/L NaHCO
3溶液に溶解した。モデル構築の当日を1日目とし、その日からプラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は7日間である。8日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、ヤギ抗マウスIgM(HRP)抗体(Abcam)を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。段階的に脱水させて透徹にし、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図17B)マウスの腎臓IgMの陽性着色は溶媒PBS投与対照群(
図17A)より浅く、しかも範囲は対照群より小さいことは示されている。これは、プラスミノーゲンの注射後、腎臓IgMの発現は明らかに低下し、プラスミノーゲンが葉酸による急性腎損傷マウスの腎損傷を効果的に低減できることを示している。
【0221】
[実施例18]
実施例18は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎線維症を低減することに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し
[37,38]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。また、同じ週齢のオスC57マウスを5匹取ってブランク対照群とし、実験期間中に通常の維持食を給餌した。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロールを測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度と体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は30日間である。31日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24〜48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水して1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図18C)の腎臓コラーゲン沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図18B)より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(
図18D)。プラスミノーゲン投与群の線維症は基本的に正常レベルに回復している(
図18A)。これは、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎線維症を効果的に減少させることができることを示している。
【0222】
[実施例19]
実施例19は、プラスミノーゲンが虚血再灌流による急性腎損傷モデルマウスの腎損傷を低減することに関するものである。
7〜9週齢のオスPLG
+/+マウス9匹を取り、ランダムに三つの群に分け、偽手術群、プラスミノーゲン投与群、及び溶媒PBS投与対照群で、各群3匹ずつとした。すべてのマウスに50mg/kg体重で経腹腔でペントバルビタールナトリウムを注射して麻酔した。プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群マウスの腹部にすき間を開け、腎臓を露出させ、両側の動脈と静脈を分離し、両側の動脈と静脈を血管クランプでクリップし、クリップした後に腎臓を腹腔に移動させて創傷を45分間閉じた。時間になった後腎臓を再び露出させ、血管クランプを取り除き、腎臓の状況を観察し、再灌流を確定した後に創傷を縫合した。偽手術群では腹部にすき間を開け、虚血処理をせずに腎臓を露出させ、時間になった後に創傷を縫合した
[39]。術後、各マウスに37℃の生理食塩水1mLを経腹腔注射した。手術中に体温を36.5〜38℃に維持した。モデル構築の当日を1日目とし、その日からプラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し始め、プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、偽手術群マウスには注射処置をしなかった。投与期間は7日間である。8日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してヘマトキシリン及びエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、偽手術群(
図19A)の糸球体毛細血管は開存的であり、腎尿細管細胞質は赤色に染色され、正常な腎尿細管形態を呈する。溶媒PBS投与対照群(
図19B)の糸球体には軽度の炎症細胞浸潤(三角で表記されている)が見えられ、腎間質に大量の炎症細胞浸潤が見えられ、一部の腎尿細管に膿キャスト(細い矢印に表記される)があり、少量の腎尿細管核濃縮、大面積の上皮細胞扁平化(太い矢印に表記される)、腎尿細管の拡張が見えられる。溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群(
図19C)には、少量の腎尿細管上皮のみが扁平化しており、ほとんどの腎尿細管は正常な腎尿細管の形態に回復しており、細胞質は赤色に染色され、明らかな腎尿細管萎縮は発見されず、腎間質に軽度の炎症細胞浸潤のみがあり、偽手術群の形態に近い。これは、プラスミノーゲンが虚血再灌流による急性腎損傷モデルマウスの腎損傷を改善できることを示している。
【0223】
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