特表2020-502261(P2020-502261A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-502261抗IL23特異的抗体で乾癬を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-502261(P2020-502261A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(54)【発明の名称】抗IL23特異的抗体で乾癬を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20191220BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20191220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20191220BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20191220BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20191220BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20191220BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20191220BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20191220BHJP
【FI】
   A61K39/395 DZNA
   A61P17/06
   A61P43/00 111
   A61K39/395 N
   A61K45/00
   A61K47/22
   A61K47/26
   A61P43/00 121
   A61K31/519
   C07K16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】115
(21)【出願番号】特願2019-547228(P2019-547228)
(86)(22)【出願日】2017年11月15日
(85)【翻訳文提出日】2019年7月3日
(86)【国際出願番号】US2017061715
(87)【国際公開番号】WO2018093841
(87)【国際公開日】20180524
(31)【優先権主張番号】62/422,891
(32)【優先日】2016年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フィッツジェラルド,デニス
(72)【発明者】
【氏名】シーガル,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】イェイルディング,ニューマン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA72
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB29
4C076BB30
4C076BB31
4C076CC20
4C076DD60
4C076DD67
4C076EE23
4C076FF05
4C076FF12
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF61
4C076FF63
4C084AA19
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA23
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4C084MA31
4C084MA32
4C084MA35
4C084MA37
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4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
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4C084ZC752
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB33
4C085BB34
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4C085BB36
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4C085BB41
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4C085GG03
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4C085GG06
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4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA31
4C086MA32
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA60
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4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA02
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
IL−12/23p40抗体で以前に治療され不十分反応者であると判定された患者において、IL−23特異的抗体、例えば、グセルクマブを安全かつ有効な量で投与することにより、乾癬を治療する方法であって、患者は、初回治療後16、24、32、40及び48週目に測定されるPASI75、PASI90、PASI100、又はIGA0若しくは1のスコアを達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−12/23p40に対する抗体で治療され、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定された患者における乾癬を治療する方法であって、
IL−12/23p40抗体で治療された患者が不十分反応者であるかどうかを測定することと、
前記測定工程から、患者が、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定することと、
IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定された前記患者に、安全かつ有効な量の抗IL−23特異的抗体を投与することと、を含み、前記抗IL−23特異的抗体が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域が、
配列番号50の軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)アミノ酸配列と、
配列番号56のCDRL2アミノ酸配列と、
配列番号73のCDRL3アミノ酸配列と、を含み、
前記重鎖可変領域が、
配列番号5の重鎖相補性決定領域1(CDRH1)アミノ酸配列と、
配列番号20のCDRH2アミノ酸配列と、
配列番号44のCDRH3アミノ酸配列と、を含む、方法。
【請求項2】
前記乾癬が排除されていないか、ほとんど排除されていないことを測定することによって、前記患者を、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IL−12/23p40抗体がウステキヌマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
IL−12/23p40抗体で治療された患者が不十分反応者であるかどうかを測定する前記工程が、前記患者におけるIGA、PGA、又はPASIスコアのうちの1つ以上を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2以上のIGA及び/若しくはPGAスコア、又は75未満のPASIスコアによって、前記患者を、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗IL−23特異的抗体を、初回用量で、初回用量の4週間後、及び4週目での用量後8週間毎に投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、前記抗IL−23特異的抗体に対する反応者であり、PASI75以上、PASI90以上、PASI100以上、又はPGA 0若しくは1のスコア、又はIGAの少なくとも2の改善を有するものとして同定される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記PASI90、PASI100又はIGA 0若しくは1のスコア、又はIGAの少なくとも2の改善が、初回治療の16、20、又は28週間後に測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗IL−23特異的抗体が皮下投与されるグセルクマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗IL−23特異的抗体が、頭皮、爪、手、及び足からなる群から選択される患者の部位において乾癬を治療するのに安全かつ有効である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗IL−23特異的抗体が、医薬組成物の、100mg/mLの抗体と、7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL−ヒスチジン一塩酸塩一水和物と、0.053%(w/v)のポリソルベート80と、を含む組成物中にあり、希釈剤は標準状態の水である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記抗IL−23特異的抗体を25mg〜200mgの用量で投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗IL−23特異的抗体を100mgの用量で投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
乾癬を治療するために使用される1つ以上の追加の薬剤を前記患者に投与することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記追加の薬剤が、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、メトトレキサート(MTX)、抗B細胞表面マーカー抗体、抗CD20抗体、リツキシマブ、TNF阻害剤、コルチコステロイド、及び共刺激調節剤からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗IL−23特異的抗体が、前記患者における乾癬の症状を軽減させるか、臨床的反応を誘発するか、臨床的寛解を誘発若しくは維持するか、疾患の進行を阻害するか、又は前記患者における疾患の合併症を阻害するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
IL−12/23p40に対する抗体で治療され、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定された患者における乾癬を治療する方法であって、
IL−12/23p40抗体で治療された患者が不十分反応者であるかどうかを測定することと、
前記測定工程から、患者が、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定することと、
IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定された前記患者に、安全かつ有効な量の抗IL−23特異的抗体を投与することと、を含み、前記抗体が、配列番号116のアミノ酸配列の軽鎖可変領域と、配列番号106のアミノ酸配列の重鎖可変領域とを含む、方法。
【請求項18】
前記乾癬が排除されていないか、ほとんど排除されていないことを測定することによって、前記患者を、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記IL−12/23p40抗体がウステキヌマブである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
IL−12/23p40抗体で治療された患者が不十分反応者であるかどうかを測定する前記工程が、前記患者におけるIGA、PGA、又はPASIスコアのうちの1つ以上を測定することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
2以上のIGA及び/若しくはPGAスコア、又は75未満のPASIスコアによって、前記患者を、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗IL−23特異的抗体を、初回用量で、初回用量の4週間後、及び4週目での用量後8週間毎に投与する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、前記抗IL−23特異的抗体に対する反応者であり、PASI75以上、PASI90以上、PASI100以上、又はIGA 0若しくは1のスコア、又はIGAの少なくとも2の改善を有するものとして同定される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記PASI90、PASI100又はIGA 0若しくは1、又はIGAの少なくとも2のスコアの改善が、初回治療の16、20、又は28週間後に測定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗IL−23特異的抗体が皮下投与されるグセルクマブである、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記抗IL−23特異的抗体が、頭皮、爪、手、及び足からなる群から選択される患者の部位において乾癬を治療するのに安全かつ有効である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗IL−23特異的抗体が、医薬組成物の、100mg/mLの抗体と、7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL−ヒスチジン一塩酸塩一水和物と、0.053%(w/v)のポリソルベート80と、を含む組成物中にあり、希釈剤は標準状態の水である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記抗IL−23特異的抗体を25mg〜200mgの用量で投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗IL−23特異的抗体を100mgの用量で投与する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
乾癬を治療するために使用される1つ以上の追加の薬剤を前記患者に投与することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記追加の薬剤が、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、メトトレキサート(MTX)、抗B細胞表面マーカー抗体、抗CD20抗体、リツキシマブ、TNF阻害剤、コルチコステロイド、及び共刺激調節剤からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗IL−23特異的抗体が、前記患者における乾癬の症状を軽減させるか、臨床的反応を誘発するか、臨床的寛解を誘発若しくは維持するか、疾患の進行を阻害するか、又は前記患者における疾患の合併症を阻害するのに有効である、請求項17に記載の方法。
【請求項33】
IL−12/23p40に対する抗体で治療され、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定された患者における乾癬を治療する方法であって、
IL−12/23p40抗体で治療された患者が不十分反応者であるかどうかを測定することと、
前記測定工程から、患者が、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定することと、
IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定された前記患者に、安全かつ有効な量の抗IL−23特異的抗体を、100mgの用量で投与し、初回用量で、初回用量の4週間後、及び4週目での用量後8週間毎に投与することと、を含み、
前記抗IL−23特異的抗体が、配列番号116のアミノ酸配列の軽鎖可変領域と、配列番号106のアミノ酸配列の重鎖可変領域とを含み、医薬組成物の、100mg/mLの抗体と、7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL−ヒスチジン一塩酸塩一水和物と、0.053%(w/v)のポリソルベート80と、を含む組成物中にあり、希釈剤は標準状態の水である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトIL−23タンパク質に結合する抗体で乾癬を治療するための方法に関する。具体的には、本発明は抗IL−23特異的抗体、及び、乾癬に罹患している患者にとって安全かつ有効である、抗体の特定の医薬組成物、例えば、グセルクマブを、IL−12/23p40抗体療法に対する不十分反応者である患者に、投与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン(Interleukin、IL)−12は、2つのジスルフィド結合グリコシル化タンパク質サブユニット(それらのおおよその分子量のためにp35及びp40と表記される)から構成される、分泌されるヘテロ二量体サイトカインである。IL−12は主に抗原提示細胞によって産生され、T細胞又はナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞の表面上に発現される2鎖受容体複合体に結合することによって細胞性免疫を促進する。IL−12受容体β−1(IL−12Rβ1)鎖は、IL−12のp40サブユニットに結合し、IL−12とその受容体との間の一次相互作用をもたらす。しかしながら、細胞内シグナル伝達(例えば、STAT4リン酸化)及び受容体保有細胞の活性化を付与するのは、第2のレセプター鎖IL−12Rβ2のIL−12p35ライゲーションである(Presky et al,1996)。抗原提示と並行するIL−12シグナル伝達は、インターフェロンγ(IFNγ)産生を特徴とするTヘルパー1(Th1)表現型に向けてT細胞分化を引き起こすと考えられる(Trinchieri,2003)。γTh1細胞は、いくつかの細胞内病原体に対する免疫を促進し、補結抗体アイソタイプを生成し、腫瘍免疫監視に寄与すると考えられる。これにより、IL−12は、宿主防御免疫機構にとって重要な構成要素であると考えられる。
【0003】
IL−12のp40タンパク質サブユニットはまた、p19と表記される別個のタンパク質サブユニットと会合して、新たなサイトカインIL−23を形成し得ることが発見された(Oppman et al,2000)。IL−23も2鎖受容体複合体を通してシグナル伝達する。p40サブユニットは、IL−12とIL−23との間で共有されるため、IL−12Rβ1鎖はIL−12とIL−23との間でも共有される。しかしながら、IL−23特異的細胞内シグナル伝達(例えば、STAT3リン酸化)及びその後のT細胞によるIL−17産生を付与するのは、IL−23受容体複合体IL−23Rの第2の構成要素のIL−23p19ライゲーションである(Parham et al,2002;Aggarwal et al.2003)。最近の研究は、IL−23の生物学的機能とIL−12の生物学的機能は、これら2つのサイトカイン間の構造的類似性にもかかわらず、異なることを示した(Langrish et al,2005)。
【0004】
抗体によるIL−12の中和が、乾癬、多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)、関節リウマチ、炎症性腸疾患、インスリン依存性(1型)真性糖尿病、及びブドウ膜炎の動物モデルの治療において有効であるため、IL−12及びTh1細胞集団の異常な制御は、多くの免疫媒介性疾患に関連付けられている(Leonard et al,1995、Hong et al,1999、Malfait et al,1998、Davidson et al,1998)。しかしながら、これらの研究は共有p40サブユニットを標的としたため、IL−12及びIL−23の両方がインビボで中和された。したがって、IL−12又はIL−23が疾患を媒介していたかどうか、あるいは疾患の抑制を達成するために両サイトカインが阻害される必要があるかは明らかではない。最近の研究は、IL−23阻害が抗IL−12p40戦略と同等の利益を提供し得ることを、IL−23p19欠損マウス又はIL−23の特異的抗体中和により確認した(Cua et al,2003、Murphy et al,2003、Benson et al 2004)。したがって、免疫介在性疾患におけるIL−23の特異的な役割に関する証拠が増加している。IL−12経路を阻害することなくIL−23を中和することは、重要な宿主防御免疫機構に限定された影響を有する免疫媒介疾患の有効な療法を提供することができる。これは、現在の治療選択肢に対して有意な改善を表すであろう。
【0005】
乾癬は、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis、PsA)、うつ病、心血管疾患、高血圧、肥満、糖尿病、代謝症候群、及びクローン病などの重大な共存症を伴う一般的な慢性免疫媒介性皮膚疾患である。尋常性乾癬は、この疾患の最も一般的な形態であり、白銀色の鱗屑で覆われた境界が明確な紅斑性病変を示す。斑は、掻痒性、有痛であり、外観を損ないかつ不具にすることが多く、かなりの割合の乾癬患者が手/爪、顔、足、及び生殖器上に斑を有する。したがって、乾癬は、健康関連の生活の質(HRQoL)にかなりの程度まで悪影響を及ぼし、物理的な皮膚症状を越えて日常活動に干渉する物理的及び心理社会的負担を強要することを含む。例えば、乾癬は、家族、配偶者、社会、及び仕事関係に悪影響を及ぼし、高いうつ病の発生率及び自殺傾向の増加に関連付けられている。
【0006】
乾癬病変の組織学的特徴付けにより、異常なケラチノサイト増殖及び分化に起因する表皮の肥厚、並びにCD3+Tリンパ球及び樹状細胞の皮膚浸潤及び共局在化が明らかにされている。乾癬の疫学は十分に定義されていないが、遺伝子及びタンパク質分析は、IL−12、IL−23、及びそれらの下流分子が乾癬病変において過剰発現され、一部は乾癬疾患の重症性と相関し得ることを示した。乾癬の治療に使用されるいくつかの療法は、それらの有効性に寄与すると推測されるIL−12及びIL−23のレベルを調節する。Th1及びTh17細胞は、血管拡張因子、化学誘因物質の産生、及び内皮細胞上の接着分子の発現を誘導するエフェクターサイトカインを産生し得、そしてこれが今度は、単球及び好中球の動員、T細胞浸潤、血管新生、並びにケラチノサイトの活性化及び過形成を促進する。活性化ケラチノサイトは、好中球、単球、T細胞、及び樹状細胞輸送を促進する化学誘引物質因子を産生することができ、したがって、炎症及びケラチノサイト過剰増殖の周期が確立される。
【0007】
乾癬の病因の解明は、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン(IL)−12及びIL−23の両方、並びに直近ではIL−17及びIL−23単独を標的とする、有効な生物学的治療をもたらした(グセルクマブを使用する第1相及び第2相臨床試験を含む)。IL−12/23抗体ウステキヌマブは、中等症から重症の尋常性乾癬の治療において、米国、欧州、日本、及び世界中の他の多くの国で承認されている。0及び4週目、次いで12週間に1回皮下注射により投与されたウステキヌマブは、乾癬の検証された有効性ツールである乾癬の面積及び重症度の指標(Psoriasis Area and Severity Index)によって評価したとき、迅速かつ持続的な臨床応答を示した。ウステキヌマブとTNF拮抗薬エタネルセプトとを比較した第3相試験は、ウステキヌマブの有効性が、中等症から重症の乾癬を有する患者において、12週間の期間にわたってエタネルセプトよりも優れていることを示した。加えて、報告された有害事象は比較的軽度であり、この事象の大部分は、鼻咽頭炎及び上気道感染症などの軽度な感染症に対する感受性を含む。12週間の治療にわたるプラシーボ治療患者と比較したとき、ウステキヌマブ治療患者における感染率は高くなく、また、より低いウステキヌマブ用量に対して高いウステキヌマブ用量に関連して増加しなかった。また、重篤な感染症、心血管事象、注射部位反応、及び悪性腫瘍の割合は低かった。
【0008】
グセルクマブ(CNTO1959としても知られる)は、IL−23のp19サブユニットに結合し、Tヘルパー(Th)17細胞の末端分化に必要とされるIL−23の細胞内及び下流シグナル伝達を阻害する完全ヒトIgG1ラムダモノクローナル抗体である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、IL−12/23p40に対する抗体(例えば、ウステキヌマブ)で治療され、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定された患者における乾癬を治療する方法であって、IL−12/23p40抗体で治療された患者が不十分反応者であるかどうかを測定することと、測定工程から、患者が、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定することと、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定された患者に、抗IL−23特異的抗体(IL−23p19抗体とも呼ばれる)、例えば、グセルクマブを、安全かつ有効な量で、患者に、皮下投与することと、を含む、方法に関する。
【0010】
更に、本発明の方法は、患者におけるIGA又はPASIスコアを測定することによって、IL−12/23p40抗体で治療された患者が不十分反応者であるかどうかを測定することを含み、2以上のIGAスコア(又はPGAスコア)によって、又は治療前のベースラインPASIスコアと比較して75%未満のPASIスコア改善によって、患者を、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者であると判定する。あるいは、IL−12/23p40抗体治療に対する不十分反応者は、乾癬が排除されていないか又はほとんど排除されていない患者であり、排除されたか又はほとんど排除された患者は、PGA/IGAスコアが0又は1である。本発明の方法の別の態様では、IL−23に特異的な抗体は、初回用量で、初回用量の4週間後、及び4週目での用量後8週間毎に投与し、患者は、IL−23に特異的な抗体に対する反応者であり、最初の治療の16、20又は28週後に測定して、PASI75以上、PASI90以上、PASI100以上、又はPGA0若しくは1のスコア、又はIGAの少なくとも2の改善を有するものとして同定される。この方法では、IL−23に特異的な抗体(例えば、グセクルマブ)は、皮下投与し、患者の部位において乾癬を治療するのに安全かつ有効であり、頭皮、爪、手及び足からなる群から選択される特定の部位を治療するために投与してもよく、IL−23に特異的な抗体を、25mg〜200mgの用量で投与し、IL−23に特異的な抗体を、50mg又は100mgの用量で投与する。
【0011】
別の態様では、本発明の方法で使用される組成物は、約1.0μg/ml〜約1000mg/ml、特に50mg又は100mgの量の抗IL−23特異的抗体を含む医薬組成物を含む。好ましい実施形態では、抗IL−23特異的抗体は、医薬組成物の、100mg/mLのグセルクマブ、7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL−ヒスチジン一塩酸塩一水和物、0.053%(w/v)のポリソルベート80であり、希釈剤は標準状態の水である。
【0012】
本発明の別の態様では、医薬組成物は、(i)配列番号5、配列番号20、及び配列番号44の重鎖CDRアミノ酸配列と、(ii)配列番号50、配列番号56、及び配列番号73の軽鎖CDRアミノ酸配列とを含むグセルクマブCDR配列を有する、単離された、医薬組成物の、100mg/mLの抗IL23特異的抗体と、7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL−ヒスチジン一塩酸塩一水和物と、0.053%(w/v)のポリソルベート80とを含み、希釈剤は標準状態の水である。
【0013】
本発明の方法の別の態様は、医薬組成物を投与することを含み、医薬組成物は、配列番号106のグセルクマブ重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号116のグセルクマブ軽鎖可変領域アミノ酸配列とを有する、単離された、医薬組成物の、100mg/mLの抗IL−23特異的抗体と、7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL−ヒスチジン一塩酸塩一水和物と、0.053%(w/v)のポリソルベート80とを含み、希釈剤は標準状態の水である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】有害事象(adverse event、AE)フローチャートからの患者の内訳を示す。
図2】A〜Dは、16週目から52週目まででIGA0又は1、及び16週目と比較してIGA≧2グレードの改善(図2A)、PASI75(図2B)、PASI90(図2C)、及びPASI100(図2D)の反応を達成した、無作為割り付けされた患者の割合を示す。IGA=治験医師による全般的評価、PASI75/90/100、測定された乾癬の面積及び重症度の指標における≧75%/90%/100%の改善。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用するとき、乾癬の治療方法は、単離された、組換え及び/又は合成抗IL−23特異的ヒト抗体並びに診断及び治療組成物の投与、方法、並びにデバイスを含む。
【0016】
本明細書で使用するとき、「抗IL−23特異的抗体」、「抗IL−23抗体」、「抗体部分」、又は「抗体断片」及び/若しくは「抗体変異体」等は、本発明の抗体の中に組み込むことができる、重鎖若しくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)若しくはそのリガンド結合部分、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域、又はこれらの任意の部分、あるいはIL−23受容体又は結合タンパク質の少なくとも一部分などであるがこれらに限定されない、免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む、任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含む。このような抗体は任意選択的に、更に特異的なリガンドに影響を及ぼし、限定するものではないが、例えばこのような抗体は、インビトロ、インサイチュ及び/又はインビボで、少なくとも1つのIL−23活性若しくは結合、又はIL−23受容体活性若しくは結合を、調節、低減、増大、拮抗、促進、軽減、緩和、遮断、阻害、無効化及び/又は干渉する。非限定的な例として、本発明の好適な抗IL−23抗体、特定された部分又は変異体は、少なくとも1つのIL−23分子又はその特定された部分、変異体若しくはドメインに結合することができる。好適な抗IL−23抗体、特異的部分、又は変異体はまた、任意選択的に、RNA、DNA、又はタンパク質合成、IL−23放出、IL−23受容体シグナル伝達、薄膜IL−23切断、IL−23活性、IL−23産生及び/又は合成などであるがこれらに限定されない、少なくとも1つのIL−23活性又は機能にも影響を及ぼすことができる。
【0017】
用語「抗体」は、更に、抗体、その消化断片、特定部分及び変異体を包含することを意図し、これには抗体模倣薬が挙げられ、あるいは抗体の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分若しくはその特定断片若しくは一部を含み、単鎖抗体及びその断片が挙げられる。機能断片として、哺乳類のIL−23に結合する抗原結合断片が挙げられる。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)、及びF(ab’)(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元、及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的技術による)断片が挙げられるがこれらに限定されない、IL−23又はその部分に結合できる抗体断片が、本発明に包含される(例えば、上記のColligan,Immunologyを参照されたい)。
【0018】
このような断片は、当該技術分野において既知であるような、及び/又は本明細書に記載のような、酵素的切断、合成又は組換え技術により生成できる。抗体はまた、1つ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を用いて、種々の切断型で生成できる。例えば、F(ab’)重鎖部分をコード化する遺伝子の組み合わせは、重鎖のC1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコード化するDNA配列を含むよう設計することができる。抗体の様々な部分を従来の技術により化学的に結合でき、又は遺伝子工学技術を用いて隣接タンパク質(contiguous protein)として調製できる。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「ヒト抗体」は、実質的にタンパク質の全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、C、Cドメイン(例えば、C1、C2、C3)、ヒンジ(V、V))が軽微な配列の変化又は変異だけで実質的にヒトにおいて非免疫原性である抗体を指す。「ヒト抗体」はまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来するか、又は厳密に一致する抗体であってもよい。ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダム若しくは部位特異的突然変異誘発により、又はインビボにおける体細胞突然変異により導入された突然変異)を含んでもよい。多くの場合、これは、ヒト抗体がヒトにおいて実質的に非免疫原性であることを意味する。ヒト抗体は、それらのアミノ酸配列の類似性に基づいたグループに分類されている。したがって、配列類似性検索を使用して、類似の直鎖配列を有する抗体がヒト抗体を作り出すためのテンプレートとして選択され得る。同様に、霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジー等)、げっ歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター等)及び他の哺乳類を指定された抗体は、かかる種、亜属、属、亜科、及び科の特異的抗体を示す。更に、キメラ抗体は、上記の任意の組み合わせを含み得る。このような変化又は変異は、任意選択的に、また好ましくは、非改変抗体に比べて、ヒト又は他の種における免疫原性を保持するか又は低下させる。したがって、ヒト抗体は、キメラ又はヒト化抗体とは異なる。
【0020】
ヒト抗体は、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現することができる非ヒト動物、又は原核若しくは真核細胞により生成され得ることが指摘される。その上、ヒト抗体が単鎖抗体である場合、天然のヒト抗体では見られないリンカーペプチドを含み得る。例えば、Fvは、重鎖の可変領域及び軽鎖の可変領域を接続する2〜約8個のグリシン又はその他のアミノ酸残基などのリンカーペプチドを含み得る。このようなリンカーペプチドはヒト由来のものとみなされる。
【0021】
また、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル、好ましくはヒト又はヒト化抗体である、二重特異的、異種特異的、異種結合性、又は類似の抗体を使用してもよい。この場合、結合特異性のうち一方は少なくとも1つのIL−23タンパク質に対するものであり、他方は任意の他の抗原に対するものである。二重特異的抗体の製造方法は、当該技術分野において既知である。従来、二重特異的抗体の組換え体生成は、2種の免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づくが、ここで2本の重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello、Nature、305:537(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の可能な混合物を生成し、これらのうち1種のみが正しい二重特異的構造を有する。正しい分子の精製(通常アフィニティクロマトグラフィー工程により行われる)はかなり面倒であり、生成物の収率は低い。類似する手順が、例えば、国際公開第93/08829号、米国特許第6,210,668号、同第6,193,967号、同第6,132,992号、同第6,106,833号、同第6,060,285号、同第6,037,453号、同第6,010,902号、同第5,989,530号、同第5,959,084号、同第5,959,083号、同第5,932,448号、同第5,833,985号、同第5,821,333号、同第5,807,706号、同第5,643,759号、同第5,601,819号、同第5,582,996号、同第5,496,549号、同第4,676,980号、国際公開第91/00360号、国際公開第92/00373号、欧州特許第03089号、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)に開示されており、これらの各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0022】
本発明の方法及び組成物において有用である抗IL−23特異的抗体(IL−23特異的抗体とも称される)(又はIL−23に対する抗体)は、IL−23への高親和性結合、並びに任意選択的かつ好ましくは低毒性を有することを、任意選択的に特徴とし得る。具体的には、可変領域、定常領域、及びフレームワークなどの個々の構成要素が、個々に及び/又は集合的に、任意選択的にまた好ましくは低い免疫原性を有する、本発明の抗体、その特定された断片、又は変異体が本発明において有用である。本発明で使用することができる抗体は、任意選択的に、症状の測定可能な緩和並びに低い及び/又は許容できる毒性を備えて、長期間患者を治療する能力によって特徴付けられる。低い若しくは許容できる免疫原性、及び/又は高い親和性、並びにその他の好適な特性は、得られる治療結果に寄与することができる。「低い免疫原性」は、本明細書では、治療される患者の約75%未満、若しくは好ましくは約50%未満で有意にHAHA、HACA若しくはHAMA応答が増加する、及び/又は治療される患者において低い力価(二重抗原酵素イムノアッセイで測定したとき約300未満、好ましくは約100未満)が増加することとして定義される(Elliott et al.,Lancet 344:1125−1127(1994)、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。「低い免疫原性」は、治療期間中の推奨療法経過の間、推奨用量で治療される患者の25%未満、好ましくは治療される患者の10%未満で発生するとき、抗IL−23抗体で治療される患者における抗IL−23抗体に対する滴定レベルの抗体の発生率としても定義することができる。
【0023】
用語「有効性」及び「有効な」とは、用量、投与レジメン、治療又は方法の文脈において本明細書で使用するとき、特定の用量、投与、治療レジメンの有効性を意味する。有効性は、本発明の薬剤に応答した、疾患の経過中の変化に基づいて測定され得る。例えば、本発明の抗IL−23特異的抗体(例えば、抗IL−23特異抗体グセルクマブ)は、治療される障害の重篤度を反映する少なくとも1つの指標において改善、好ましくは持続的な改善を引き起こすのに十分な量及び時間で、対象に対して投与される。その治療の量及び時間が十分であるかどうかを判定するために、対象の病気、疾患又は病状の程度を反映する様々な指標が評価され得る。そのような指標には例えば、疾患重篤度、症状、又は対象となっている障害の発現についての、臨床的に認識されている指標が含まれる。改善度は全体的に医師により判定され、医師はこの判定を、徴候、症状、生検、又は他の検査結果に基づいて行うことができ、また対象に対して行うアンケート、例えば所与の疾患に関して開発された生活の質に関するアンケートなどを採用することもできる。例えば、本発明の抗IL−23特異的抗体は、乾癬に関連する患者の状態の改善を達成するために投与され得る。この改善は、疾患活性指標の改善、臨床症状の寛解、又は疾患活性の任意の他の測定によって示すことができる。疾患のいくつかのこのような指標は、治験医師による全般的評価(IGA)、医師による全般的評価(PGA)、又は乾癬の面積及び重症度の指標(PASI)のPASIスコアである。IGA、PGA、又はPASIスコアが確立され、乾癬の疾患活性指標が検証された。追加の尺度は、頭皮特異的IGA(ss−IGA)、指爪の医師による全般的評価(f−PGA)、爪乾癬の面積及び重症度の指標(NAPSI)、及び手/足のPGA(hf−PGA)である。
【0024】
用語「安全」とは、それが本発明の抗IL−23特異的抗体(例えば、抗IL−23特異的抗体グセルクマブ)を用いた用量、投与レジメン、治療又は方法に関する場合、臨床試験の段階、例えば第3相試験に基づいて標準的治療又は他の対照薬と比較した、治療緊急有害事象(AE又はTEAEと呼ばれる)の許容可能な頻度及び/又は許容可能な重症度に関する好ましいリスク対効果比を指す。有害事象とは、医薬品を投与された患者における好ましくない医療上の出来事である。特に、本発明の抗IL−23特異的抗体による用量、投与レジメン又は治療に関連する安全性は、有害事象が抗IL−23特異的抗体の使用による可能性がある、可能性が高い、又は非常に高いと考えられる場合、抗体の投与に関連する有害事象の許容される頻度及び/又は許容される重症度を指す。
【0025】
有用性
本発明の単離された核酸は、少なくとも1つの抗IL−23抗体又はその特定の変異体の産生に使用することができ、これは、乾癬の症状を、診断、監視、調節、治療、緩和、その発生率を予防、又はその低減を助けるために、細胞、組織、器官又は動物(哺乳動物及びヒトを含む)を測定するために又はそれらに作用するために使用することができる。
【0026】
かかる方法は、症状、作用、又は機序のかかる調節、治療、緩和、予防、若しくは低減を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に、少なくとも1つの抗IL−23抗体を含む組成物又は医薬組成物を有効な量で投与することを含み得る。有効量は、本明細書に記載のように、又は関連分野で公知のように、公知の方法を用いて行い決定するとき、単回(例えば、ボーラス)、複数回、若しくは持続投与あたり約0.001〜500mg/kgの量、又は単回、複数回、若しくは持続投与あたり血清濃度が0.01〜5000μg/mLの血清濃度を達成する量、又はこの中の任意の有効範囲若しくは値を含んでよい。
【0027】
引用
本明細書で引用する全ての刊行物又は特許は、具体的に指定されるか否かにかかわらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、本発明の時点での現況技術を示し、かつ/又は本発明の説明及び使用可能性を提供する。刊行物は、任意の科学刊行物若しくは特許公報、又は全ての記録された電子若しくは印刷型式を含む、任意の媒体形式で利用可能なその他の任意の情報を指す。以下の文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる:Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,NY,NY(1987−2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,Inc.,NY(1994−2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley&Sons,NY,NY,(1997−2001)。
【0028】
本発明の抗体−産生及び作製
本発明の方法に使用される少なくとも1つの抗IL−23は、任意選択的に、当該技術分野において周知の細胞株、混合細胞株、不死化細胞、又は不死化細胞のクローン集団によって産生することができる。例えば、Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,NY,NY(1987−2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,Inc.,NY(1994−2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley&Sons,NY,NY,(1997−2001)を参照されたく、各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
好ましい抗IL−23抗体は、配列番号106の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号116の軽鎖可変領域アミノ酸配列とを有し、かつ配列番号5、配列番号20、及び配列番号44の重鎖CDRアミノ酸配列と、配列番号50、配列番号56、及び配列番号73の軽鎖CDRアミノ酸配列とを有するグセルクマブ(CNTO1959とも称される)である。他の抗IL−23抗体は本明細書に列挙される配列を有し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,935,344号に記載されている。
【0030】
ヒトIL−23タンパク質又はその断片に特異的なヒト抗体は、単離されたIL−23タンパク質及び/又はそれらの一部(合成ペプチドなどの合成分子を含む)などの適切な免疫原性抗原に対して生じ得る。他の特定の又は一般的な哺乳類抗体も同様に生じ得る。免疫原性抗原の調製及びモノクローナル抗体の生成は、任意の好適な技術を使用して行うことができる。
【0031】
1つのアプローチでは、適切な不死細胞株(例えば、限定されないが、Sp2/0、Sp2/0−AG14、NSO、NS1、NS2、AE−1、L.5、L243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2 SA5、U937、MLA144、ACT IV、MOLT4、DA−1、JURKAT、WEHI、K−562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL−60、MLA144、NAMALWA、NEURO 2Aなどの骨髄腫細胞株、又はヘテロミローマス、その融合産物、又はそれに由来する任意の細胞若しくは融合細胞、又は当該技術分野において既知の任意の他の好適な細胞株)(例えば、www.atcc.org、www.lifetech.comなどを参照されたい)を、限定されないが、単離された又はクローン化された脾臓、末梢血、リンパ、扁桃腺、又は他の免疫若しくはB細胞含有細胞などの抗体産生細胞、あるいは内因性又は異種核酸として、組換え若しくは内因性、ウイルス、細菌、藻、原核生物、両生類、昆虫、爬虫類、魚、哺乳類、げっ歯類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ヒツジ、霊長類、真核生物、ゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNA若しくはRNA、葉緑体DNA若しくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、単一、二重若しくは三重鎖、ハイブリダイズなど、又はそれらの任意の組み合わせとしてのいずれかで、重鎖又は軽鎖の定常若しくは可変、又はフレームワーク若しくはCDR配列を発現する任意の他の細胞と融合することによりハイブリドーマを産生する。例えば、上記のAusubel及びColligan,Immunology chapter 2を参照されたく、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
抗体産生細胞はまた、目的の抗原で免疫化されたヒト又は他の好適な動物の末梢血、又は好ましくは脾臓若しくはリンパ節から得ることもできる。任意のその他の好適な宿主細胞も、本発明の抗体、特定された断片又はその変異体をコード化する異種若しくは内因性の核酸を発現するために使用され得る。融合細胞(ハイブリドーマ)又は組換え細胞は、選択的培養条件又はその他の好適な既知の方法を使用して単離され、限界希釈若しくは細胞選別又はその他の既知の方法によってクローニングされ得る。所望の特異性を有する抗体を生成する細胞は、好適なアッセイ(例えばELISA)によって選択することができる。
【0033】
ペプチド又はタンパク質ライブラリから組換え抗体を選択する(例えば、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなどのディスプレイライブラリであるがこれに限定されない、例えば、Cambridge antibody Technologies,Cambridgeshire,UK、MorphoSys,Martinsreid/Planegg,DE、Biovation,Aberdeen,Scotland,UK、BioInvent,Lund,Sweden、Dyax Corp.,Enzon,Affymax/Biosite、Xoma,Berkeley,CA、Ixsys。例えば、欧州特許第368,684号、国際出願PCT/GB91/01134号、国際出願PCT/GB92/01755号、国際出願PCT/GB92/002240号、国際出願PCT/GB92/00883号、国際出願PCT/GB93/00605号、米国特許出願公開第08/350260号(5/12/94)、国際出願PCT/GB94/01422号、国際出願PCT/GB94/02662号、国際出願PCT/GB97/01835号、(CAT/MRC)、国際公開第90/14443号、国際公開第90/14424号、国際公開第90/14430号、国際出願PCT/US94/1234号、国際公開第92/18619号、国際公開第96/07754号、(Scripps)、国際公開第96/13583号、国際公開第97/08320号(MorphoSys)、国際公開第95/16027号(BioInvent)、国際公開第88/06630号、国際公開第90/3809号(Dyax)、米国特許第4,704,692号(Enzon)、国際出願PCT/US91/02989号、国際公開第89/06283号、欧州特許第371 998号、欧州特許第550 400号、(Xoma)、欧州特許第229 046号、国際出願PCT/US91/07149号、又は確率論的に生成されるペプチド若しくはタンパク質−米国特許第5723323号、同第5763192号、同第5814476号、同第5817483号、同第5824514号、同第5976862号、国際公開第86/05803号、欧州特許第590 689号(Ixsys、Applied Molecular Evolution(AME)の前身、各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)か、又は当該技術分野において既知であり、かつ/又は本明細書に記載される、ヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物の免疫化に依存する(例えば、SCIDマウス、Nguyen et al.,Microbiol.Immunol.41:901−907(1997)、Sandhu et al.,Crit.Rev.Biotechnol.16:95−118(1996)、Eren et al.,Immunol.93:154−161(1998)、各々は、参照により全体が組み込まれる、並びに関連する特許及び出願)方法を含むがこれらに限定されない、必要な特異性の抗体を生成又は単離する他の好適な方法を使用することができる。かかる技術には、リボソームディスプレイ(Haneset al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:4937−4942(May 1997)、Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:14130−14135(Nov.1998))、単一細胞抗体生成技術(例えば、選択リンパ球抗体方法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wen et al.,J.Immunol.17:887−892(1987)、Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843−7848(1996))、ゲルマイクロドロップレット(gel microdroplet)、及びフローサイトメトリー(Powell et al.,Biotechnol.8:333−337(1990)、One Cell Systems,Cambridge,MA、Gray et al.,J.Imm.Meth.182:155−163(1995)、Kenny et al.,Bio/Technol.13:787−790(1995)、B細胞選択物(Steenbakkers et al.,Molec.Biol.Reports 19:125−134(1994)、Jonak et al.,Progress Biotech,Vol.5,In Vitro Immunization in Hybridoma Technology,Borrebaeck,ed.,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,Netherlands(1988))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
非ヒト抗体又はヒト抗体を工学的処理又はヒト化するための方法も同様に使用でき、当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化又は工学的処理された抗体は、非ヒト、例えば、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、又は他の哺乳動物の供給源からの1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変、定常、又は他のドメインから採取される残基に置き換えられる。
【0035】
既知のヒトIg配列が開示されており、例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi、www.ncbi.nih.gov/igblast、www.atcc.org/phage/hdb.html、www.mrc−cpe.cam.ac.uk/ALIGNMENTS.php、www.kabatdatabase.com/top.html、ftp.ncbi.nih.gov/repository/kabat、www.sciquest.com/、www.abcam.com/、www.antibodyresource.com/onlinecomp.html、www.public.iastate.edu/〜pedro/research_tools.html、www.whfreeman.com/immunology/CH05/kuby05.htm、www.hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab/、www.path.cam.ac.uk/〜mrc7/mikeimages.html、mcb.harvard.edu/BioLinks/Immunology.html、www.immunologylink.com、pathbox.wustl.edu/〜hcenter/index.html、www.appliedbiosystems.com、www.nal.usda.gov/awic/pubs/antibody、www.m.ehime−u.ac.jp/〜yasuhito/Elisa.html、www.biodesign.com、www.cancerresearchuk.org、www.biotech.ufl.edu、www.isac−net.org、baserv.uci.kun.nl/〜jraats/links1.html、www.recab.uni−hd.de/immuno.bme.nwu.edu、www.mrc−cpe.cam.ac.uk、www.ibt.unam.mx/vir/V_mice.html、http://www.bioinf.org.uk/abs、antibody.bath.ac.uk、www.unizh.ch、www.cryst.bbk.ac.uk/〜ubcg07s、www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.html、www.path.cam.ac.uk/〜mrc7/humanisation/TAHHP.html、www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.html、www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html、www.jerini.de、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.Health(1983)であり、各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0036】
このようなインポートされた配列は、免疫原性を減少させるため、あるいは、当該技術分野において既知のように、結合、親和性、オン速度、オフ速度、結合活性、特異性、半減期、又はその他の適切な任意の特性を低減、増強又は改変するために使用することができる。一般的に、CDR残基は抗原結合に対する影響において、直接的かつ最も実質的に関与している。したがって、可変及び定常領域の非ヒト配列がヒト又は他のアミノ酸に置き換えられ得る一方で、非ヒト又はヒトCDR配列の一部又は全てが維持される。
【0037】
抗体は、任意選択的に、ヒト化されるか、又はヒト抗体は、抗原に対する高い親和性及び他の有利な生物学的特性を保持したまま工学的処理され得る。この目的を達成するために、任意選択的に、ヒト化(又はヒト)抗体を、親及びヒト化配列の3次元モデルを使用した、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製することが可能である。3次元免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補の免疫グロブリン配列について、可能性の高い3次元立体構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補の免疫グロブリン配列の機能における残基の役割として可能性の高いものの分析、即ち候補の免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原(複数可)に対する親和性の増加など、望ましい抗体特性が達成されるように、コンセンサス及びインポート配列から、フレームワーク(FR)残基を選択し組み合せることができる。
【0038】
加えて、本発明の方法に使用されるヒトIL−23特異的抗体は、ヒト生殖系列軽鎖フレームワークを含み得る。特定の実施形態では、軽鎖生殖系列配列は、A1、A10、A11、A14、A17、A18、A19、A2、A20、A23、A26、A27、A3、A30、A5、A7、B2、B3、L1、L10、L11、L12、L14、L15、L16、L18、L19、L2、L20、L22、L23、L24、L25、L4/18a、L5、L6、L8、L9、O1、O11、O12、O14、O18、O2、O4、及びO8を含むが、これらに限定されないヒトVK配列から選択される。ある特定の実施形態では、軽鎖ヒト生殖系列フレームワークは、V1−11、V1−13、V1−16、V1−17、V1−18、V1−19、V1−2、V1−20、V1−22、V1−3、V1−4、V1−5、V1−7、V1−9、V2−1、V2−11、V2−13、V2−14、V2−15、V2−17、V2−19、V2−6、V2−7、V2−8、V3−2、V3−3、V3−4、V4−1、V4−2、V4−3、V4−4、V4−6、V5−1、V5−2、V5−4、及びV5−6から選択される。
【0039】
他の実施形態では、本発明の方法に使用されるヒトIL−23特異的抗体は、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワークを含み得る。特定の実施形態では、この重鎖ヒト生殖系列フレームワークは、VH1−18、VH1−2、VH1−24、VH1−3、VH1−45、VH1−46、VH1−58、VH1−69、VH1−8、VH2−26、VH2−5、VH2−70、VH3−11、VH3−13、VH3−15、VH3−16、VH3−20、VH3−21、VH3−23、VH3−30、VH3−33、VH3−35、VH3−38、VH3−43、VH3−48、VH3−49、VH3−53、VH3−64、VH3−66、VH3−7、VH3−72、VH3−73、VH3−74、VH3−9、VH4−28、VH4−31、VH4−34、VH4−39、VH4−4、VH4−59、VH4−61、VH5−51、VH6−1、及びVH7−81から選択される。
【0040】
特定の実施形態では、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域は、フレームワーク領域、又はフレームワーク領域の少なくとも一部(例えば、FR2及びFR3などの2又は3つの小領域)を含む。ある特定の実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3、又はFRL4は、完全ヒトである。他の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3、又はFRH4は、完全ヒトである。一部の実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3、又はFRL4は、生殖系列配列(例えば、ヒト生殖系列)であるか、又は特定のフレームワークのためのヒトコンセンサス配列(上述の既知のヒトIg配列の供給源で容易に入手可能である)を含む。他の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3、又はFRH4は、生殖系列配列(例えば、ヒト生殖系列)であるか、又は特定のフレームワークのためのヒトコンセンサス配列を含む。好ましい実施形態では、フレームワーク領域は、完全ヒトフレームワーク領域である。
【0041】
本発明の抗体のヒト化又は工学的処理は、Winter(Jones et al.,Nature 321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988))、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987),Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5723323号、同第5976862号、同第5824514号、同第5817483号、同第5814476号、同第5763192号、同第5723323号、同第5,766886号、同第5714352号、同第6204023号、同第6180370号、同第5693762号、同第5530101号、同第5585089号、同第5225539号、同第4816567号、国際出願PCT/:US98/16280号、US96/18978号、US91/09630号、US91/05939号、US94/01234号、GB89/01334号、GB91/01134号、GB92/01755号、国際公開第90/14443号、国際公開第90/14424号、国際公開第90/14430号、欧州特許第229246号(各々、参照により全体が明細書に組み込まれ、その中に引用される文献を含む)に記載されるものなどであるがこれらに限定されない、任意の既知の方法を使用して行うことができる。
【0042】
所定の実施形態において、抗体は、改変された(例えば、変異した)Fc領域を含む。例えば、いくつかの実施形態において、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を低減又は増進するために改変されている。いくつかの実施形態において、Fc領域は、IgM、IgA、IgG、IgE、又は他のアイソタイプから選択されるアイソタイプである。あるいは、又は加えて、アミノ酸修飾と、IL−23結合分子のFc領域のC1q結合及び/又は補体依存性細胞毒性機能を変更する1つ以上の更なるアミノ酸修飾とを組み合わせることが有用であり得る。特定の目的の出発ポリペプチドは、C1qに結合するものであってよく、補体依存性細胞毒性(CDC)を示す。既存のC1q結合活性を有し、任意選択的に更にCDCを介在する能力を有するポリペプチドは、これらの活性のうちの1つ又は両方が増進するように、修飾されてもよい。C1qを改変する、かつ/又はその補体依存性細胞傷害機能を修飾するアミノ酸修飾は、例えば、国際公開第0042072号に記載され、参照により組み入れる。
【0043】
上記に開示されるように、例えば、C1q結合及び/又はFcγR結合を修飾し、それにより、補体依存性細胞毒性(CDC)活性及び/又は抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)活性を変化させることによって、変更されたエフェクター機能を有する本発明のヒトIL−23特異的抗体のFc領域を設計することができる。γ「エフェクター機能」は、(例えば、対象における)生物活性を活性化又は低減させる役割を果たす。エフェクター機能の例として、これらに限定されるものではないが、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)のダウンレギュレーションなどが挙げられる。かかるエフェクター機能は、Fc領域が、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合することを必要とする場合があり、多種多用な試験法(例えば、Fc結合アッセイ、ADCCアッセイ、CDCアッセイなど)を使用して評価することができる。
【0044】
例えば、改善されたC1q結合及び改善されたFcγRIII結合を有する(例えば、改善されたADCC活性及び改善されたCDC活性の両方を有する)ヒトIL−23(又は抗IL−23)抗体の変異体Fc領域を生成することができる。γあるいは、エフェクター機能を低減又は除去することが所望される場合、変異Fc領域は、低減されたCDC活性及び/又は低減されたADCC活性で遺伝子を操作することができる。他の実施形態において、これらの活性の1つだけが増大されてもよく、任意選択的に、同時に他の活性が低減されてもよい(例えば、改善されたADCC活性と低減されたCDC活性を有するFc領域変異体、及びこの逆のFc領域変異体を生成するため)。
【0045】
Fc変異は、新生児Fc受容体(FcRn)との相互作用を改変し、それらの薬物動態特性を改善するように遺伝子を操作して、導入することもできる。FcRnへの結合を改善したヒトFc変異体の収集は、説明されている(Shields et al.,(2001).High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for FcγRI,FcγRII、FcγRIII,and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the FCγR、J.Biol.Chem.276:6591−6604)。
【0046】
別のタイプのアミノ酸置換は、ヒトIL−23特異的抗体のFc領域のグリコシル化パターンを改変するように働く。Fc領域のグリコシル化は、典型的に、N連鎖又はO連鎖のいずれかである。N連鎖とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付着を言う。O連鎖グリコシル化は、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンも使用される可能性があるが、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの糖類、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの1つの付着を言う。アスパラギン側鎖ペプチド配列への炭水化物部分の酵素的付着のための認識配列は、アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニンであり、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である。このため、ポリペプチド中のこれらのペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位をもたらす。
【0047】
グリコシル化パターンは、例えば、ポリペプチドに見出される1つ以上のグリコシル化部位(複数可)を欠失させること、及び/又はポリペプチドに存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加することによって変更され得る。ヒトIL−23特異的抗体のFc領域へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列の1つ以上を含むようにアミノ酸配列を改変することによって首尾よく達成される(N連鎖グリコシル化部位の場合)。例示的なグリコシル化変異体は、重鎖の残基Asn297のアミノ酸置換を有する。この改変は、本来のポリペプチドの配列への1つ以上のセリン又はスレオニン残基の付加、又は置換によって行われてもよい(O連鎖グリコシル化部位の場合)。加えて、Asn 297をAlaに変更すると、グリコシル化部位の1つを除去することができる。
【0048】
特定の実施形態において、本発明のヒトIL−23特異的抗体は、GnT IIIがG1cNAcをヒトIL−23抗体に付加するように、ベータ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT III)を発現する細胞において発現される。かかる様式で抗体を産生するための方法は、国際公開第9954342号、国際公開第03011878号、特許公報20030003097A1、及びUmana et al.,Nature Biotechnology,17:176−180,Feb.1999に提供されており、これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる。
【0049】
抗IL−23抗体はまた、任意選択的に、本明細書に記載及び/又は当該技術分野において既知であるように、ヒト抗体のレパートリーを生成することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、非ヒト霊長類など)の免疫化により生じる場合もある。ヒト抗IL−23抗体を産生する細胞は、本明細書に記載の方法のような好適な方法を使用して、かかる動物から単離し、不死化してもよい。
【0050】
ヒト抗原に結合するヒト抗体のレパートリーを生成することができるトランスジェニックマウスは、既知の方法によって生成することができる(例えば、これらに限定されないが、Lonbergらに発行された米国特許第5,770,428号、同第5,569,825号、同第5,545,806号、同第5,625,126号、同第5,625,825号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、及び同第5,789,650号、Jakobovitsらの国際公開第98/50433号、Jakobovitsらの国際公開第98/24893号、Lonbergらの国際公開第98/24884号、Lonbergらの国際公開第97/13852号、Lonbergらの国際公開第94/25585号、Kucherlapateらの国際公開第96/34096号、Kucherlapateらの欧州特許第0463 151(B1)号、Kucherlapateらの欧州特許第0710 719(A1)号、Suraniらの米国特許第5,545,807号、Bruggemannらの国際公開第90/04036号、Bruggemannらの欧州特許第0438 474(B1)号、Lonbergらの欧州特許第0814 259(A2)号、Lonbergらのイギリス特許第2 272 440(A)号、Lonberg et al.Nature 368:856−859(1994)、Taylor et al.,Int.Immunol.6(4)579−591(1994)、Green et al,Nature Genetics 7:13−21(1994)、Mendez et al.,Nature Genetics 15:146−156(1997)、Taylor et al.,Nucleic Acids Research 20(23):6287−6295(1992)、Tuaillon et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90(8)3720−3724(1993)、Lonberg et al.,Int Rev Immunol 13(1):65−93(1995)、及びFishwald et al.,Nat Biotechnol 14(7):845−851(1996)、これらはそれぞれ、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。一般に、これらのマウスは、機能的に再配列された、又は機能的な再配列を受けることができる少なくとも1つのヒト免疫グロブリン遺伝子座からのDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。このようなマウスの内因性免疫グロブリン遺伝子座を分断又は欠失させて、内因性遺伝子によりコード化されている抗体を産生する動物の能力を除去することができる。
【0051】
類似のタンパク質又は断片への特異的結合についての抗体のスクリーニングは、ペプチドディスプレイライブラリを使用して首尾よく達成することができる。この方法は、望ましい機能又は構造を持つ個々の構成要素についてペプチドの大規模コレクションをスクリーニングすることを含む。ペプチド表示ライブラリの抗体スクリーニングは当該技術分野において周知である。ディスプレイされたペプチド配列の長さは、3〜5000個以上のアミノ酸であり、頻繁には5〜100個のアミノ酸長、多くは約8〜25個のアミノ酸長であり得る。ペプチドライブラリを作成する直接的化学合成方法に加えて、いくつかの組換えDNA方法も記述されている。1つのタイプには、バクテリオファージ又は細胞の、表面上のペプチド配列のディスプレイが関与している。各バクテリオファージ又は細胞は、特定のディスプレイされたペプチド配列をコード化するヌクレオチド配列を含有する。このような方法は、国際公開第91/17271号、同第91/18980号、同第91/19818号、及び同第93/08278号に記載されている。
【0052】
ペプチドのライブラリを作成するための他のシステムは、インビトロ化学合成及び組換え方法の両方の局面を有する。国際公開第92/05258号、同第92/14843号、及び同第96/19256号を参照されたい。また、米国特許第5,658,754号及び同第5,643,768号も参照されたい。ペプチドディスプレイライブラリ、ベクター、及びスクリーニングキットは、Invitrogen(Carlsbad,CA)及びCambridge Antibody Technologies(Cambridgeshire,UK)のような供給元から市販されている。例えば、Enzonに譲渡された米国特許第4704692号、同第4939666号、同第4946778号、同第5260203号、同第5455030号、同第5518889号、同第5534621号、同第5656730号、同第5763733号、同第5767260号、同第5856456号、Dyaxに譲渡された同第5223409号、同第5403484号、同第5571698号、同第5837500号、Affymaxに譲渡された同第5427908号、同第5580717号、Cambridge antibody Technologiesに譲渡された同第5885793号、Genentechに譲渡された同第5750373号、Xomaに譲渡された同第5618920号、同第5595898号、同第5576195号、同第5698435号、同第5693493号、同第5698417号、Colligan(上記)、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたく、上記特許及び刊行物の各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
本発明の方法に使用される抗体はまた、かかる抗体を乳中に産生するヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギなどのトランスジェニック動物又は哺乳動物を提供するために、核酸をコード化する少なくとも1つの抗IL−23抗体を使用して調製することもできる。かかる動物は、既知の方法を使用して提供することができる。例えば、これらに限定されないが、米国特許第5,827,690号、同第5,849,992号、同第4,873,316号、同第5,849,992号、同第5,994,616号、同第5,565,362号、同第5,304,489号などを参照されたい(それらの各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0054】
本発明の方法に使用される抗体は、植物部分又はそれから培養された細胞において、かかる抗体、特定された部分、又は変異体を産生するトランスジェニック植物及び培養された植物細胞(例えば、タバコ及びトウモロコシであるが、これらに限定されない)を提供するために、少なくとも1つの抗IL−23抗体コード化核酸を使用して更に調製することができる。非限定的な例として、例えば、誘導プロモーターを使用して、組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉をうまく使用して大量の組換えタンパク質が提供されてきた。例えば、Cramer et al.,Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95−118(1999)及びその中で引用される文献を参照されたい。また、トランスジェニックトウモロコシは、他の組換え系において生成されるか、又は天然源から精製されるタンパク質に等しい生物学的活性を有する、商業生成レベルで哺乳類タンパク質を発現するために使用されてきた。例えば、Hood et al.,Adv.Exp.Med.Biol.464:127−147(1999)及びその中で引用される文献を参照されたい。抗体はまた、タバコ種子及びポテト塊茎を含む、一本鎖抗体(scFv)などの抗体断片を含むトランスジェニック植物種子からも大量に生成されてきた。例えば、Conrad et al.,Plant Mol.Biol.38:101−109(1998)及びその中で引用される文献を参照されたい。したがって、本発明の抗体はまた、既知の方法に従って、トランスジェニック植物を使用して生成することもできる。例えば、Fischer et al.,Biotechnol.Appl.Biochem.30:99−108(Oct.,1999),Ma et al.,Trends Biotechnol.13:522−7(1995)、Ma et al.,Plant Physiol.109:341−6(1995)、Whitelam et al.,Biochem.Soc.Trans.22:940−944(1994)、及びその中で引用される文献も参照されたい。上記文献の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
本発明の方法に使用される抗体は、広範囲にわたる親和性(K)でヒトIL−23に結合することができる。好ましい実施形態では、ヒトmAbは、任意選択的に、高い親和性でヒトIL−23に結合することができる。例えば、ヒトmAbは、ヒトIL−23に約10−7M以下、例えば0.1〜9.9(又はその中の任意の範囲若しくは値)X10−7、10−8、10−9、10−10、10−11、10−12、10−13又はその中の任意の範囲若しくは値など(但しこれらに限定されない)のKで結合することができる。
【0056】
抗原に対する抗体の親和性又は結合活性は、任意の好適な方法を用いて実験的に決定することができる。(例えば、Berzofsky,et al.,「Antibody−Antigen Interactions,」In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,NY(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,NY(1992)、及び本明細書に記載される方法を参照されたい。)特定の抗体抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定された場合に異なり得る。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、K、K、K)の測定は、好ましくは、抗体及び抗原の標準化溶液、並びに本明細書で記載される緩衝剤などの標準化緩衝剤を用いて行われる。
【0057】
核酸分子
本明細書に開示される他の配列の中でも、例えば、本明細書に記載される軽鎖若しくは重鎖可変又はCDR領域のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸の少なくとも70〜100%をコード化するヌクレオチド配列、特定された断片、変異体若しくはそれらのコンセンサス配列、又はこれらの配列のうちの少なくとも1つを含む寄託ベクターなどの本明細書に提供される情報を使用して、少なくとも1つの抗IL−23抗体をコード化する本発明の核酸分子は、本明細書に記載されるか、又は当該技術において既知の方法を使用して得ることができる。
【0058】
本発明の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNA若しくは任意の他の形態のようなRNAの形態、又はクローニングにより得られる若しくは合成的に生成されるcDNA及びゲノムDNAが挙げられるがこれらに限定されないDNAの形態、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。DNAは、3本鎖、2本鎖若しくは1本鎖、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。DNA又はRNAの少なくとも1本の鎖の任意の部分は、センス鎖としても知られるコード鎖であってもよいし、又はアンチセンス鎖と呼ばれる、非コード鎖であってもよい。
【0059】
本発明の方法に使用される単離された核酸分子は、任意選択的に1つ以上のイントロンを有するオープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)、例えば、限定されないが、少なくとも1つの重鎖若しくは軽鎖のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3などの、少なくとも1つのCDRの少なくとも1つの特定された部分を含む核酸分子、抗IL−23抗体又は可変領域のコード配列を含む核酸分子、並びに上述の核酸分子とは実質的に異なるが、遺伝子コードの縮重により、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知である少なくとも1つの抗IL−23抗体をなおコード化するヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み得る。当然のことながら、遺伝コードは、当該技術分野において周知である。したがって、当業者には、本発明の方法に使用される特異的な抗IL−23抗体をコードする、このような変性核酸変異体を生成することは、日常的であるだろう。例えば、上記のAusubelらを参照されたく、かかる核酸変異体は、本発明に含まれる。単離された核酸分子の非限定的な例としては、それぞれ、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3をコード化する核酸が挙げられる。
【0060】
本明細書に記載されるように、抗IL−23抗体をコード化する核酸を含む核酸分子としては、それ自体で抗体断片のアミノ酸配列をコード化するもの、全抗体若しくはその一部のコード配列、抗体、断片若しくは部分のコード配列、並びに追加の配列、例えば、少なくとも1つのイントロンなど、前述の追加のコード配列を伴って、又は伴わずに、非コード5’及び3’配列、例えば、スプライシング及びポリアデニル化シグナル(例えば、mRNAのリボソーム結合及び安定性)を含む、転写、mRNAプロセシングにおいて役割を果たす転写された非翻訳配列を含むがこれに限定されない追加の非コード配列と共に、少なくとも1つのシグナルリーダー若しくは融合ペプチドのコード配列、更なるアミノ酸、例えば、更なる機能性を提供するアミノ酸をコード化する追加のコード配列を挙げることができるが、これらに限定されない。したがって、抗体をコード化する配列は、抗体断片又は部分を含む融合された抗体の精製を促進するペプチドをコード化する配列などのマーカー配列に融合させることができる。
【0061】
本明細書に記載のポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド
本発明の方法は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドに対して、選択的なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする単離された核酸を使用する。したがって、本実施形態のポリヌクレオチドは、このようなポリヌクレオチドを含む核酸を単離、検出、及び/又は定量化するために使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドを使用して、蓄積されたライブラリにおける部分又は完全長クローンを同定、単離、又は増幅することができる。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、単離された、又はそうでなければヒト若しくは哺乳類の核酸ライブラリからのcDNAに相補的な、ゲノム配列又はcDNA配列である。
【0062】
好ましくは、cDNAライブラリは完全長配列の少なくとも80%、好ましくは完全長配列の少なくとも85%又は90%、より好ましくは完全長配列の少なくとも95%を含む。cDNAライブラリは、稀な配列の発現量を増大させるために正規化してよい。相補的な配列に対して低減した配列同一性を持つ配列と共に使用される、ストリンジェンシーが低度又は中度のハイブリダイゼーション条件が典型的であるが、排他的ではない。ストリンジェンシーが中度及び高度の条件は、任意選択的に、より高い同一性を持つ配列に対して使用することができる。低ストリンジェンシー条件は、約70%の配列同一性を持つ配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、オーソロガス又はパラロガス配列を同定するために利用できる。
【0063】
任意選択的に、ポリヌクレオチドは、抗体の少なくとも一部をコードする。ポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコード化するポリヌクレオチドに対する選択的ハイブリダイゼーションに利用することができる核酸配列を包含する。例えば、上記のAusubel、上記のColliganを参照されたく、各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0064】
核酸の構築
単離された核酸は、当該技術分野において周知のように、(a)組換え方法、(b)合成技術、(c)精製技術、及び/又はこれらの組み合わせを使用して作製することができる。
【0065】
核酸は、本発明のポリヌクレオチドに加えて、首尾よく配列を含むことができる。例えば、1つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含むマルチクローニングサイトを核酸に挿入して、ポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。また、翻訳可能な配列を挿入して、本発明の翻訳されたポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。例えば、ヘキサヒスチジンマーカー配列は、本発明のタンパク質を精製するための便利な手段を提供する。本発明の核酸(コード配列を除く)は、任意選択的に、本発明のポリヌクレオチドのクローニング及び/又は発現のためのベクター、アダプター、又はリンカーである。
【0066】
追加の配列をかかるクローニング及び/又は発現配列に付加して、クローニング及び/又は発現におけるそれらの機能を最適化し、ポリヌクレオチドの単離に役立てることができるか、又は細胞へのポリヌクレオチドの導入を改善することができる。クローン化ベクター、発現ベクター、アダプター、及びリンカーの使用は、当該技術分野において周知である。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照のこと。)
【0067】
核酸を構築するための組換え方法
RNA、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらの任意の組み合わせなどの単離された核酸組成物は、当業者に既知の任意の数のクローニング方法を用いて生物源から得ることができる。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドに対して厳しい条件下で選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが、cDNA又はゲノムDNAライブラリ内の望ましい配列を同定するために使用される。RNAの単離、並びにcDNA及びゲノムライブラリの構築は、当業者には周知である。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい。)
【0068】
核酸のスクリーニング及び単離方法
本明細書に開示されているものなど、本発明の方法に使用されるポリヌクレオチドの配列に基づいたプローブを使用して、cDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることができる。プローブを使用して、同じ又は異なる生体内の相同遺伝子を単離するため、ゲノムDNA又はcDNA配列にハイブリダイズさせることができる。当業者であれば、アッセイに様々な度合のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを用いることができ、ハイブリダイゼーション又は洗浄媒質のいずれかが厳しい可能性があることは明らかであろう。ハイブリダイゼーションのための条件が厳しくなるにつれて、二重鎖形成が生じるために、プローブと標的との間の相補性の程度が大きくなるはずである。ストリンジェンシーの程度は、温度、イオン強度、pH、及びホルムアミドなどの部分的変性溶媒の存在のうちの、1つ以上によって制御することができる。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、例えば、0%〜50%の範囲内でのホルムアミド濃度の操作により反応溶液の極性を変えることにより首尾よく変更される。検出可能な結合のために必要な相補性(配列同一性)の程度は、ハイブリダイゼーション媒質及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーに従って変化する。相補性の程度は、最適には100%、又は70〜100%、又はその中の任意の範囲若しくは値である。しかしながら、プローブ及びプライマー内のわずかな配列変動は、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーを低下させることで補償できるということを理解すべきである。
【0069】
RNA又はDNAの増幅方法は当該技術分野において周知であり、本明細書で紹介する教示及び指針に基づいて、過度の実験なしに、本発明に従って使用可能である。
【0070】
DNA又はRNA増幅の既知の方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)及び関連する増幅プロセス(例えば、Mullisらの米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号、Taborらの同第4,795,699号及び同第4,921,794号、Innisの同第5,142,033号、Wilsonらの同第5,122,464号、Innisの同第5,091,310号、Gyllenstenらの同第5,066,584号、Gelfandらの同第4,889,818号、Silverらの同第4,994,370号、Biswasの同第4,766,067号、Ringoldの同第4,656,134号を参照されたい)、及び二本鎖DNA合成のためのテンプレートとして標的配列に対してアンチセンスRNAを使用するRNA媒介増幅(Malekらの米国特許第5,130,238号、商標名NASBAを持つ)が挙げられるが、これらに限定されない(これらの文献の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい。)
【0071】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、ゲノムDNA又はcDNAライブラリから直接、本発明の方法に使用されるポリヌクレオチド及び関連する遺伝子の配列を増幅することができる。PCR及びその他のインビトロ増幅方法はまた、例えば、発現すべきタンパク質をコード化する核酸配列をクローニングする、サンプル中の所望のmRNAの存在を検出するため、核酸の配列決定のため、又はその他の目的のためのプローブとして用いるための核酸を作製するのに有用であり得る。インビトロ増幅方法によって当業者を導くのに十分な技術の例は、上記のBerger、上記のSambrook及び上記のAusubel並びにMullisら米国特許第4,683,202号(1987)、及びInnis,et al.,PCR Protocols A Guide to Methods and Applications,Eds.,Academic Press Inc,San Diego,CA(1990)に見られる。ゲノムPCR増幅用の市販キットは当該技術分野において既知である。例えば、Advantage−GC Genomic PCR Kit(Clontech)を参照されたい。加えて、例えば、T4遺伝子32タンパク質(Boehringer Mannheim)を用いて、長いPCR産物の収率を改善することができる。
【0072】
核酸を構築するための合成方法
本発明の方法に使用される単離された核酸はまた、既知の方法による直接化学合成によっても調製可能である(例えば、上記のAusubelらを参照されたい)。化学合成は、一般に、相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、又は1本鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼとの重合によって、2本鎖DNAに変換可能な1本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。当業者であれば、DNAの化学合成は約100以上の塩基の配列に限定され得るものの、より長い配列は、より短い配列の連結反応によって得ることができることを認識するであろう。
【0073】
組換え発現カセット
本発明は核酸を含む組換え発現カセットを使用する。核酸配列、例えば本発明の方法に使用される抗体をコード化するcDNA又はゲノム配列を使用して、少なくとも1つの所望の宿主細胞に導入することができる組換え発現カセットを構築することができる。組換え発現カセットは、典型的には、意図される宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を導く、転写開始調節配列に操作可能に連結される、ポリヌクレオチドを含む。異種及び非異種(すなわち、内因性)プロモーターの両方を利用して、核酸の発現を導くことができる。
【0074】
一部の実施形態では、プロモーター、エンハンサー、又は他の要素として機能する単離された核酸を、ポリヌクレオチドの発現を上方又は下方調節するために、本発明のポリヌクレオチドの非異種形の適切な位置(上流、下流、又はイントロン内)に導入することができる。例えば、インビボ又はインビトロで、突然変異、欠失及び/又は置換により、内因性プロモーターを変えることができる。
【0075】
ベクター及び宿主細胞
本発明は、単離された核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子工学処理される宿主細胞、及び当該技術分野において周知である組換え技術による少なくとも1つの抗IL−23抗体の産生にも関する。例えば、上記のSambrookら、上記のAusubelらを参照されたく、各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0076】
ポリヌクレオチドは、任意選択的に、宿主の増殖についての選択マーカーを含有するベクターに結合することができる。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物内、又は荷電脂質との複合体内に導入される。ベクターがウイルスである場合は、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでこれをパッケージングし、その後、宿主細胞内に形質導入することができる。
【0077】
DNA挿入物は、適切なプロモーターに機能的に連結されるべきである。発現コンストラクトは、転写開始部位、転写終結部位、及び転写された領域内では翻訳のためのリボソーム結合部位を更に含む。構築により発現する成熟した転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるべきmRNAの最後に適切に位置する開始及び終止コドン(例えば、UAA、UGA、又はUAG)で始まる翻訳を含み、哺乳類又は真核生物細胞の発現ではUAA及びUAGが好ましい。
【0078】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含むが、これは任意である。かかるマーカーは、例えば、真核細胞培養のためのメトトレキサート(methotrexate、MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase、DHFR、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、同第4,656,134号、同第4,956,288号、同第5,149,636号、同第5,179,017号、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、マイコフェノール酸又はグルタミンシンセターゼ(glutamine synthetase、GS、米国特許第5,122,464号、同第5,770,359号、同第5,827,739号)抵抗性遺伝子、並びに大腸菌及びその他の細菌又は原核生物における培養のためのテトラサイクリン又はアンピシリン抵抗性遺伝子を含むが、これらに限定されない(上記特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。上記の宿主細胞に対して適切な培養培地及び条件は、当該技術分野において既知である。適切なベクターは、当事者にとって容易に明白となるであろう。宿主細胞へのベクターコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染又は他の既知の方法により影響を受け得る。かかる方法については、上記のSambrook、第1~4章及び第16~18章、上記のAusubel、第1、9、13、15、16章など、当該技術分野において記載されている。
【0079】
本発明の方法に使用される少なくとも1つの抗体は、融合タンパク質などの修飾された形態で発現され得、分泌シグナルだけでなく、追加の異種機能領域も含み得る。例えば、追加アミノ酸の領域、特に荷電アミノ酸を抗体のN末端に追加して、精製中又は後続の処理及び保存中に、宿主細胞における安定性及び持続性を改善することができる。また、ペプチド部分を本発明の抗体に追加して、精製を促進することもできる。抗体又は少なくとも1つのその断片の最終調製前に、かかる領域を除去することができる。かかる方法は、上記のSambrook、第17.29〜17.42章及び第18.1〜18.74章、上記のAusubel、第16、17及び18章など、多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0080】
当業者であれば、本発明の方法に使用されるタンパク質をコード化する核酸の発現に利用可能な多数の発現系について精通している。あるいは、核酸は、抗体をコード化する内因性DNAを含有する宿主細胞内で、(操作により)オン切換えすることにより、宿主細胞中で発現させることができる。このような方法は、米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号、及び同第5,733,761号に記載されているように、当該技術分野において周知であり、これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
抗体、その特定された部分又は変異体の産生にとって有用な細胞培養の一例は哺乳動物細胞である。哺乳類細胞系は、単層の細胞の形を取ることが多いが、哺乳類細胞の懸濁液又はバイオリアクターも使用可能である。無傷なグリコシル化タンパク質を発現可能ないくつかの好適な宿主細胞株が当該技術分野において開発されており、これにはCOS−1(例えばATCC CRL 1650)、COS−7(例えばATCC CRL−1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL−10)、CHO(例えばATCC CRL1610)及びBSC−1(例えばATCC CRL−26)細胞株、Cos−7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0−Ag14、293細胞、HeLa細胞などが挙げられ、これらは例えば、American Type Culture Collection,Manassas,Va(www.atcc.org)から容易に入手できる。好ましい宿主細胞には、骨髄腫及びリンパ腫細胞などのリンパ系起源の細胞が挙げられる。特に好ましい宿主細胞はP3X63Ag8.653細胞(ATCC登録番号CRL−1580)及びSP2/0−Ag14細胞(ATCC登録番号CRL−1851)である。特に好ましい実施形態では、組換え細胞は、P3X63Ab8.653又はSP2/0−Ag14細胞である。
【0082】
これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモーター(例えば、後期又は初期SV40プロモーター、CMVプロモーター(米国特許第5,168,062号、同第5,385,839号)、HSV tkプロモーター、pgk(ホスホグリセレートキナーゼ)プロモーター、EF−1αプロモーター(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモーター、エンハンサー、及び/又はリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えば、SV40ラージT Agポリ付加部位)、並びに転写終結配列などのプロセシング情報部位などであるがこれらに限定されない、発現制御配列のうちの1つ以上を含み得る。例えば、上記のAusubelら、上記のSambrookらを参照されたい。本発明の核酸又はタンパク質の生成に有用なその他の細胞は既知であり、並びに/あるいは例えば、American Type Culture Collectionの細胞株及びハイブリドーマのカタログ(www.atcc.org)又はその他の既知の若しくは商業的供給源から入手可能である。
【0083】
真核宿主細胞が利用されるとき、典型的には、ベクター内にポリアデニル化又は転写終結配列が組み込まれる。終結配列の一例は、ウシ成長ホルモン遺伝子からのポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシングのための配列も、同様に含むことができる。スプライシング配列の一例は、SV40由来のVP1イントロンである(Sprague,et al.,J.Virol.45:773−781(1983))。加えて、当該技術分野において既知であるように、宿主細胞内の複製を制御するための遺伝子配列をベクター内に組み込むことができる。
【0084】
抗体の精製
抗IL−23抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが挙げられるがこれらに限定されない、周知の方法により、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を精製に利用することもできる。例えば、Colligan、Current Protocols in Immunology又はCurrent Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY(1997−2001)の、例えば、第1、4、6、8、9、10章を参照されたく、それぞれは参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0085】
本発明の方法に使用される抗体には、天然に精製された産物、化学合成手順の産物、並びに例えば、酵母、高等植物、昆虫、及び哺乳類細胞を含む、真核宿主から組換え技法により産生された産物が含まれる。組換え産物手順に利用される宿主に応じて、抗体は、グリコシル化されてもグリコシル化されなくてもよいが、グリコシル化されるのが好ましい。かかる方法は、上記のSambrook、セクション17.37−17.42、上記のAusubel、第10、12、13、16、18、及び20章、上記のColligan,Protein Science、第12〜14章などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されており、全てが参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
抗IL−23抗体
本発明による抗IL−23抗体は、抗体に組み込むことができる、免疫グロブリン分子の少なくとも一部、例えば、限定されないが、少なくとも1つのリガンド結合部分(ligand binding portion、LBP)、例えば、限定されないが、重鎖若しくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部分、重鎖又は軽鎖可変領域、フレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3、FR4、又はそれらの断片、更に任意選択的に、少なくとも1つの置換、挿入、又は欠失を含む)、重鎖又は軽鎖定常領域(例えば、少なくとも1のC1、ヒンジ1、ヒンジ2、ヒンジ3、ヒンジ4、C2、若しくはC3、又はそれらの断片、更に任意選択的に、少なくとも1つの置換、挿入、又は欠失を含む)、又はそれらの任意の部分を含む任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含む。抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、ラット、げっ歯類、霊長類、又はそれらの任意の組み合わせなどであるがこれらに限定されない、任意の哺乳動物を含むか、又はそれに由来し得る。
【0087】
本発明の方法に使用される単離された抗体は、任意の好適なポリヌクレオチドによってコードされる、本明細書に開示される抗体のアミノ酸配列、又は任意の単離又は調製された抗体を含む。好ましくは、ヒト抗体又は抗原結合断片は、ヒトIL−23に結合し、それにより、タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を部分的又は実質的に中和する。少なくとも1つのIL−23タンパク質又は断片の少なくとも1つの生物学的活性を部分的に又は好ましくは実質的に中和する、抗体、又はその特定された部分若しくは変異体は、タンパク質又は断片に結合し、それによりIL−23受容体へのIL−23の結合を介して、又は他のIL−23依存性若しくは媒介型機序を介して、媒介される活性を阻害することができる。本明細書で使用するとき、「中和抗体」という用語は、アッセイに応じて、約20〜120%、好ましくは少なくとも約10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%又はそれ以上、IL−23依存性活性を阻害できる抗体を指す。IL−23依存性活性を阻害する抗IL−23抗体の能力は、好ましくは、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知の、少なくとも1つの好適なIL−23タンパク質又は受容体アッセイによって評価される。ヒト抗体は、任意のクラス(IgG、IgA、IgM、IgE、IgD等)又はアイソタイプのものであってもよく、カッパ又はラムダ軽鎖を含み得る。一実施形態では、ヒト抗体は、IgG重鎖又は規定された断片、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4(例えば、γ1、γ2、γ3、γ4)のうちの少なくとも1つのアイソタイプを含む。このタイプの抗体は、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知の、少なくとも1つのヒト軽鎖(例えば、IgG、IgA、及びIgM)導入遺伝子を含む、トランスジェニックマウス又は他のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を利用することによって調製することができる。別の実施形態において、抗IL−23ヒト抗体は、IgG1重鎖と、IgG1軽鎖とを含む。
【0088】
抗体は、少なくとも1つのIL−23タンパク質、サブユニット、断片、部分、又はそれらの任意の組み合わせに特異的な少なくとも1つの特定されたエピトープに結合する。この少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の少なくとも一部分を含む少なくとも1つの抗体結合領域を含むことが可能であり、このエピトープは好ましくは、タンパク質の少なくとも1つの細胞外、可溶性、親水性、外部、又は細胞質部分から構成されている。
【0089】
一般に、ヒト抗体又は抗原結合断片は、少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)又は少なくとも1つの重鎖可変領域の変異体、及び少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)又は少なくとも1つの軽鎖可変領域の変異体を含む抗原結合領域を含む。CDR配列は、ヒト生殖細胞系列配列に由来しても、生殖細胞系列配列に厳密に一致してもよい。例えば、元の非ヒトCDRに由来する合成ライブラリからのCDRを使用することができる。これらのCDRは、元の非ヒト配列からの保存的置換の組み込みによって形成され得る。別の特定の実施形態では、抗体又は抗原結合部分又は変異体は、対応するCDR1、2及び/又は3のアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖CDR(すなわち、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3)の少なくとも一部を含む抗原結合領域を有することができる。
【0090】
かかる抗体は、組換えDNA技術の従来技術を使用して抗体をコード化する(すなわち、1つ以上の)核酸分子を調製し発現させることによって、又は任意のその他の適切な方法を使用することによって、従来技術を使用して抗体の様々な部分(例えば、CDR、フレームワーク)を一緒に化学的に結合させることにより調製できる。
【0091】
抗IL−23特異的抗体は、画定されたアミノ酸配列を有する重鎖又は軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、好ましい実施形態では、抗IL−23抗体は、任意選択的に配列番号106のアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖可変領域、及び/又は任意選択的に配列番号116のアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含む。ヒトIL−23に結合し、画定された重鎖又は軽鎖可変領域を含む抗体は、当該技術分野で既知及び/又は本明細書に記載の、ファージディスプレイ(Katsube,Y.,et al.,Int J Mol.Med,1(5):863−868(1998))又はトランスジェニック動物を採用する方法など、好適な方法を使用して調製することができる。例えば、機能的に再配列されたヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子と、機能的な再配列を受けることが可能なヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子座からのDNAを含む導入遺伝子と、を含むトランスジェニックマウスを、ヒトIL−23又はその断片で免疫化して抗体の生成を誘発することができる。所望する場合、抗体生成細胞を単離することができ、本明細書に記載されるように、かつ/又は当該技術分野において既知であるように、ハイブリドーマ又はその他の不死化抗体生成細胞を調製することができる。あるいは、抗体、特定された部分又は変異体は、好適な宿主細胞内で、コード核酸又はその一部分を使用して発現させることができる。
【0092】
本発明はまた、本明細書に記載されるアミノ酸配列と実質的に同じである配列内のアミノ酸を含む抗体、抗原結合断片、免疫グロブリン鎖及びCDRにも関する。好ましくは、かかる抗体又は抗原結合断片及びかかる鎖若しくはCDRを含む抗体は、高い親和性(例えば、Kが約10−9M以下)で、ヒトIL−23に結合することができる。本明細書に記載されている配列と実質的に同じであるアミノ酸配列には、保存的アミノ酸置換、並びにアミノ酸欠失及び/又は挿入を含む配列が挙げられる。保存的アミノ酸置換は、第1のアミノ酸のものに類似する化学的及び/又は物理的特性(例えば、電荷、構造、極性、疎水性/親水性)を持つ第2のアミノ酸で、第1のアミノ酸を置換することを指す。保存的置換は、限定されないが、1個のアミノ酸を、以下の群内の別のアミノ酸で置き換えることを含む:リジン(K)、アルギニン(R)、及びヒスチジン(H);アスパラギン酸塩(D)及びグルタミン酸塩(E);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)、K、R、H、D、及びE;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、及びグリシン(G);F、W、及びY;C、S、及びT。
【0093】
アミノ酸コード
本発明の抗IL−23抗体を構成するアミノ酸は、略されることが多い。アミノ酸表記は、その1文字コード、その3文字コード、名称、又は3つのヌクレオチドのコドン(複数可)によりアミノ酸を表記することにより示すことができ、当該技術分野においてよく理解されている(Alberts,B.,et al.,Molecular Biology of The Cell,Third Ed.,Garland Publishing,Inc.,New York,1994を参照されたい)。
【0094】
【表1】
【0095】
本発明の方法に使用される抗IL−23抗体は、本明細書で特定されるように、自然突然変異又はヒトによる操作のいずれかによる、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を含み得る。
【0096】
当業者が行い得るアミノ酸置換の数は、上記のものを含む数多くの要因に基づく。一般的に言えば、所与の抗IL−23抗体、断片又は変異体のアミノ酸置換、挿入又は欠失の数は、本明細書で特定されるように、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、例えば、1〜30又はこの中の任意の範囲若しくは値を超えない。
【0097】
機能上不可欠である抗IL−23特異的抗体内のアミノ酸は、部位特異的突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発などの、当該技術分野において既知の方法により同定することができる(例えば、上記のAusubel、Chapters 8,15;Cunningham and Wells,Science 244:1081−1085(1989))。後者の手順では、分子内の各残基毎に1つのアラニン置換変異が導入される。次いで、得られた置換変異分子は、例えば、限定されるものではないが、少なくとも1つのIL−23中和活性などの生物活性について、試験される。抗体結合にとってきわめて重要である部位もまた、結晶化、核磁気共鳴又は光親和性標識などの構造分析によって同定することができる(Smith,et al.,J.Mol.Biol.224:899−904(1992)及びde Vos,et al.,Science 255:306−312(1992))。
【0098】
抗IL−23抗体は、配列番号5、20、44、50、56、及び73のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸のうちの5個〜全てから選択される、少なくとも1つの部分、配列、又は組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0099】
IL−23抗体又は特定の部分若しくは変異体としては、上記配列番号の少なくとも3〜5個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5〜17個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5〜10個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5〜11個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5〜7個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5〜9個の隣接アミノ酸から選択される少なくとも1つの部分、配列、又は組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0100】
抗IL−23抗体は、更に任意選択的に、上記配列番号5、17、10、11、7、9、119、又は108個の隣接アミノ酸の70〜100%の少なくとも1つのポリペプチドを含むことができる。一実施形態では、免疫グロブリン鎖、又はその一部分(例えば、可変領域、CDR)のアミノ酸配列は、上記配列番号のうちの少なくとも1つの対応する鎖のアミノ酸配列と、約70〜100%の同一性(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)を有する。例えば、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、上記配列番号と比較することができ、又は重鎖CDR3のアミノ酸配列を、上記配列番号と比較することができる。好ましくは、70〜100%のアミノ酸同一性(すなわち、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)は、当該技術分野において既知であるように、適切なコンピュータアルゴリズムを用いて決定される。
【0101】
当該技術分野において既知のように「同一性」は、配列を比較することにより判定される、2つ以上のポリペプチド配列間又は2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、「同一性」はまた、そのような配列の糸の間の一致によって決定されるような、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」及び「類似性」は、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991、並びにCarillo,H.,and Lipman,D.,Siam J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない、既知の方法によって容易に算出することができる。加えて、同一性の割合に関する値は、Vector NTI Suite 8.0(Informax,Frederick,MD)の構成要素であるAlignXのセッティングのデフォルトを用いて作成される、アミノ酸及びヌクレオチド配列アラインメントから得ることができる。
【0102】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大一致が得られるように設計される。同一性及び類似性を決定するための方法は、公的に入手可能なンピュータプログラムにおいて成文化されている。2つの配列間の同一性及び類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Atschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.215:403−410(1990))を含むが、これらに限定されない。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他の供給源(BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBINLM NIH Bethesda,Md.20894:Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)から公的に入手可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用され得る。
【0103】
ポリペプチド配列比較のための好ましいパラメータは、以下を含む:(1)アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol Biol.48:443−453(1970)Comparison matrix:BLOSSUM62 from Hentikoff and Hentikoff,Proc.Natl.Acad.Sci,USA.89:10915−10919(1992)、
ギャップペナルティ:12
ギャップ長ペナルティ:4
これらのパラメータで有用なプログラムは、Genetics Computer Group,Madison Wisからの「ギャップ」プログラムとして公的に入手可能である。前述のパラメータは、ペプチド配列比較のためのデフォルトパラメータ(末端ギャップに関してペナルティがないのと同様に)である。
【0104】
ポリヌクレオチド比較のための好ましいパラメータとしては、以下が挙げられる:
(1)アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol Biol.48:443−453(1970)
比較マトリックス:一致=+10、ミスマッチ=0
ギャップペナルティ:50
ギャップ長ペナルティ:3
Genetics Computer Group,Madison Wisからの「ギャップ」プログラムとして入手可能。これらは、核酸配列比較のデフォルトパラメータである。
【0105】
例として、ポリヌクレオチド配列は、他の配列と同一であり得る、つまり、100%同一であるか、又は参照配列と比較してある特定の整数までのヌクレオチド変更を含み得る。かかる変更は、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、置換(転移及び転換を含む)、又は挿入からなる群から選択され、変更は、参照ヌクレオチド配列の5’若しくは3’末端位置で、又はこれらの末端位置の間のどこで生じてもよく、参照配列のヌクレオチド間に個々に、又は参照配列内の1つ以上の隣接基のいずれかにおいて点在してもよい。ヌクレオチド変更の数は、配列中のヌクレオチドの総数に、対応する同一性パーセントの数値パーセント(100で割ったもの)を乗じ、その積を配列中のヌクレオチドの総数から差し引くこと、又は、
n.sub.n.ltorsim.x.sub.n−(x.sub.n.y)によって決定され、
式中、n.sub.nはヌクレオチド変更の数であり、x.sub.nは配列中のヌクレオチドの総数であり、yは、例えば、70%に対しては0.70、80%に対しては0.80、85%に対しては0.85、90%に対しては0.90、95%に対しては0.95などであり、x.sub.nとyとの任意の整数ではない積は、x.sub.nから差し引く前に最も近い整数に切り捨てる。
【0106】
上記配列番号をコード化するポリヌクレオチド配列の変更は、このコード配列中にナンセンス、ミスセンス、又はフレームシフト突然変異を作り出し、それにより、かかる変更後にポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを変更することができる。同様に、ポリペプチド配列は、上記配列番号の参照配列と同一であり得る、つまり、100%同一であるか、又は同一率が100%未満であるように、参照配列と比較してある特定の整数までのアミノ酸変更を含み得る。かかる変更は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的及び非保存的置換を含む)、又は挿入からなる群から選択され、変更は、参照ポリペプチド配列のアミノ若しくはカルボキシ末端位置で、又はこれらの末端位置の間のどこで生じてもよく、参照配列のアミノ酸間に個々に、又は参照配列内の1つ以上の隣接基のいずれかにおいて点在してもよい。所与の同一性%についてのアミノ酸変更の数は、上記配列番号中のアミノ酸の総数に、対応する同一性パーセントの数値パーセント(100で割ったもの)を乗じ、その積を上記配列番号中のアミノ酸の総数から差し引くこと、又は、
n.sub.a.ltorsim.x.sub.a−(x.sub.a.y)によって決定され、
式中、n.sub.aはアミノ酸変更の数であり、x.sub.aは上記配列番号中のアミノ酸の総数であり、yは、例えば、70%に対しては0.70、80%に対しては0.80、85%に対しては0.85などであり、x.sub.aとyとの任意の整数ではない積は、x.sub.aから差し引く前に最も近い整数に切り捨てる。
【0107】
例示的な重鎖及び軽鎖可変領域の配列、並びにそれらの部分は、上記配列番号に示される。本発明の抗体又はその特定された変異体は、本発明の抗体からの任意の数の隣接アミノ酸残基を含み得、その数は、抗IL−23抗体における隣接残基数の10〜100%からなる整数の群から選択される。任意選択的に、隣接アミノ酸のこの部分列は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、又はそれ以上のアミノ酸長、又はその中の任意の範囲若しくは値である。更に、かかる部分列の数は、少なくとも2、3、4、又は5などの、1〜20からなる群から選択される任意の整数であり得る。
【0108】
当業者には明らかとなるように、本発明には、本発明の少なくとも1つの生物活性抗体が含まれている。生物活性抗体は、天然(非合成)、内因性、又は関連する、及び既知の抗体のものの、少なくとも20%、30%、又は40%、及び好ましくは少なくとも50%、60%、又は70%、及び最も好ましくは少なくとも80%、90%、又は95%〜100%以上(限定されないが、比活性の最大10倍を含む)の比活性を有する。酵素活性及び基質特異性のアッセイ及び定量測定の方法は、当業者にとって周知である。
【0109】
別の態様では、本発明は、有機部分の共有結合により修飾される、本明細書に記載されるヒト抗体及び抗原結合断片に関する。かかる修飾は、改善された薬物動態特性(例えば、増大した、インビボでの血清半減期)を有する抗体又は抗原結合断片を生成することができる。有機部分は、直鎖又は分枝鎖親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であることができる。特定の実施形態では、親水性ポリマー基は、分子量が約800〜約120,000ダルトンであって、ポリアルカングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマー又はポリビニルピロリドンであり得、また、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基は、約8〜約40の炭素原子を含み得る。
【0110】
修飾された抗体及び抗原結合断片は、直接的又は間接的に抗体に共有結合される、1つ以上の有機部分を含み得る。本発明の抗体又は抗原結合断片に結合される各有機部分は、独立して、親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であり得る。本明細書で使用するとき、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸及びジカルボン酸を含む。本明細書で使用するとき、「親水性ポリマー基」という用語は、オクタンよりも水に対する溶解度が高い有機ポリマーを意味する。例えば、ポリリシンは、オクタンよりも水に対する溶解度が高い。よって、ポリリシンの共有結合により修飾された抗体は、本発明に包含される。本発明の抗体を修飾する適切な親水性ポリマーは、直線状又は分岐状であり得、例えば、ポリアルカングリコール(例えば、PEG、モノメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)、PPGなど)、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸など)、ポリアルカンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、及びポリビニルピロリドンを含む。好ましくは、本発明の抗体を修飾する親水性ポリマーは、個別の分子体として、約800〜約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG5000及びPEG20,000を使用することができ、下付き文字は、ポリマーの平均分子量(ダルトン)である。親水性ポリマー基は、1〜約6個のアルキル基、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基で置換することができる。脂肪酸又は脂肪酸エステル基で置換される親水性ポリマー類は、適切な方法を利用することによって調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーを、脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボン酸塩に連結させることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボン酸塩(例えば、N,N−カルボニルジイミダゾールで活性化されている)をポリマー上のヒドロキシル基に連結させることができる。
【0111】
本発明の抗体を修飾するために好適な脂肪酸及び脂肪酸エステルは、飽和されてもよいし、又は1つ以上の不飽和単位を含有してもよい。本発明の抗体を修飾するのに好適な脂肪酸としては、例えば、n−ドデカン酸塩(C12、ラウリン酸塩)、n−テトラデカン酸塩(C14、ミリスチン酸塩)、n−オクタデカン酸塩(C18、ステアリン酸塩)、n−エイコサン酸塩(C20、アラキジン酸塩)、n−ドコサン酸塩(C22、ベヘン酸)、n−トリアコンタン酸塩(C30)、n−テトラコンタン酸塩(C40)、シス−Δ9−オクタデカン酸塩(C18、オレイン酸塩)、全てのシス−Δ5,8,11,14−エイコサテトラエン酸塩(C20、アラキドン酸塩)、オクタンジオン酸、テトラデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ドコサンジオン酸などが挙げられる。好適な脂肪酸エステルは、直鎖又は分枝鎖の低級アルキル基を含む、ジカルボン酸のモノエステルを含む。低級アルキル基は、1〜約12個、好ましくは1〜約6個の炭素原子を含んでよい。
【0112】
修飾されたヒト抗体及び抗原結合断片は、1つ以上の修飾剤と反応させるなど、好適な方法を使用して調製することができる。本明細書で使用されるとき、用語「修飾剤」は、活性化基を含む適切な有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を意味する。「活性化基」とは、適切な条件下で第2の化学基と反応し、これにより修飾剤と第2の化学基との間に共有結合を形成することのできる、化学部分又は官能基である。例えば、アミン反応性活性化基としては、トシル酸、メシル酸、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)などの求電子性基、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル(NHS)などが挙げられる。チオール類と反応可能な活性化基としては、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロ安息香酸チオール(TNB−チオール)などが挙げられる。アルデヒド官能基は、アミン−又はヒドラジド−含有分子と連結することができ、また、アジド基は、三価リン基と反応してホスホルアミデート又はホスホルイミド結合を形成することができる。分子中に活性化基を導入するための好適な方法が、当該技術分野において既知である(例えば、Hermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)を参照されたい)。活性化基は、有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接的に、又はリンカー部分、例えば二価のC〜C12基(ここで、1つ以上の炭素原子は酸素、窒素、又は硫黄などのヘテロ原子で置換され得る)を介して、結合することができる。好適なリンカー部分は、例えば、テトラエチレングリコール、−(CH−、−NH−(CH−NH−、−(CH−NH−及び−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−NH−を含む。リンカー部分を含む修飾剤は、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で、モノ−Boc−アルキルジアミン(例えば、モノ−Boc−エチレンジアミン、モノ−Boc−ジアミノへキサン)を脂肪酸と反応させることにより、遊離アミンと脂肪酸カルボキシレートとの間のアミド結合を形成することによって生成可能である。Boc保護基を、トリフルオロ酢酸(TFA)処理により生成物から除去し、記載されているように別のカルボン酸塩にカップリングできる一級アミンを露出させることができ、又はこれを無水マレイン酸と反応させ、得られる生成物を環化させて脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を生成することができる(例えば、参照により教示の全体が本明細書に組み込まれる、Thompsonらの国際公開第92/16221号を参照されたい)。
【0113】
修飾された抗体は、ヒト抗体又は抗原結合断片を修飾剤と反応させることによって産生することができる。例えば、有機部分は、アミン反応性修飾剤、例えば、PEGのNHSエステルを採用することによって、非部位特異的方法で抗体に結合させることができる。抗体又は抗原結合断片のジスルフィド結合(例えば鎖内ジスルフィド結合)を還元することによって、修飾されたヒト抗体又は抗原結合断片を調製することもできる。このとき、還元された抗体又は抗原結合断片をチオール反応性修飾剤と反応させて、本発明の修飾された抗体を生産することが可能である。本発明の抗体の特定の部位に結合される有機部分を含む修飾されたヒト抗体及び抗原結合断片は、逆タンパク質分解(Fisch et al.,Bioconjugate Chem.,3:147−153(1992)、Werlen et al.,Bioconjugate Chem.,5:411−417(1994)、Kumaran et al.,Protein Sci.6(10):2233−2241(1997)、Itoh et al.,Bioorg.Chem.,24(1):59−68(1996)、Capellas et al.,Biotechnol.Bioeng.,56(4):456−463(1997))及びHermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)に記載される方法などの好適な方法を使用して調製することができる。
【0114】
本発明の方法はまた、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知であるように、非自然発生組成物、混合物、又は形態で提供される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ以上の抗IL−23抗体を含む、抗IL23抗体組成物をも使用する。かかる組成物は、上記配列の隣接アミノ酸の70〜100%、又はその特定される断片、ドメイン、若しくは変異体から成る群から選択される抗IL−23抗体のアミノ酸配列の、少なくとも1つ又は2つの完全長、C及び/若しくはN末端欠失変異体、ドメイン、断片、又は特定された変異体を含む非自然発生組成物を含む。好ましい抗IL23抗体組成物は、例えば、上記配列番号の70〜100%の、本明細書に記載される抗IL23抗体配列、又はその特定された断片、ドメイン、若しくは変異体の、少なくとも1つのCDR又はLBP含有部分として、少なくとも1つ又は2つの完全長、断片、ドメイン、又は変異体を含む。更に好ましい組成物は、例えば、上記配列番号などの70〜100%、又はその特定された断片、ドメイン、若しくは変異体のうちの少なくとも1つを40〜99%含む。かかる組成物の百分率は、当該技術分野において既知であるように、又は本明細書に記載されるように、重量、容量、濃度、容量モル濃度、あるいは液体若しくは乾燥溶液、混合物、懸濁液、エマルション、粒子、粉末、又はコロイドとしての容量モル濃度によるものである。
【0115】
更なる治療活性成分を含む抗体組成物
本発明の方法に使用される抗体組成物は、任意選択的に更に、抗感染症薬、心血管(cardiovascular、CV)系作用薬、中枢神経系(central nervous system、CNS)薬、自律神経系(autonomic nervous system、ANS)薬、気道薬、消化(gastrointestinal、GI)管作用薬、ホルモン薬、体液又は電解質平衡薬、血液作用薬、抗腫瘍薬、免疫調節薬、眼、耳又は鼻用薬、局所作用薬、栄養薬などのうち、少なくとも1つから選択される、少なくとも1つの化合物又はタンパク質を有効量含むことができる。かかる薬剤は、本明細書に示されるそれぞれの製剤、適応症、用量、及び投与を含めて、当該技術分野では周知である(例えば、Nursing 2001 Handbook of Drugs,21st edition,Springhouse Corp.,Springhouse,PA,2001、Health Professional’s Drug Guide 2001,ed.,Shannon,Wilson,Stang,Prentice−Hall,Inc,Upper Saddle River,NJ、Pharmcotherapy Handbook,Wells et al.,Appleton&Lange,Stamford,CTを参照されたく、それぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0116】
本発明の方法の抗体と組み合わせることができる薬剤の例として、抗感染薬は、殺アメーバ薬又は少なくとも1種の抗原虫薬、駆虫薬、抗真菌薬、抗マラリア薬、抗結核薬又は少なくとも1種の抗らい菌薬、アミノグリコシド、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、スルホンアミド、フルオロキノロン、抗ウイルス薬、マクロライド抗感染薬、及び種々の抗感染薬から選択される少なくとも1種であり得る。ホルモン薬は、コルチコステロイド、アンドロゲン、又は少なくとも1種のアナボリックステロイド、エストロゲン、又は少なくとも1種のプロゲスチン、ゴナドトロピン、抗糖尿病薬、又は少なくとも1種のグルカゴン、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン拮抗薬、下垂体ホルモン、及び副甲状腺様薬から選択される少なくとも1種であり得る。少なくとも1種のセファロスポリンは、セファクロル、セファドロキシル、セファゾリンナトリウム、セフジニル、塩酸セフェピム、セフィキシム、セフメタゾールナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォタキシムナトリウム、セフォテタン二ナトリウム、セフォキシチンナトリウム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシムナトリウム、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシムアキセチル、セフロキシムナトリウム、塩酸セファレキシン、セファレキシン一水和物、セフラジン、及びロラカルベフから選択される少なくとも1種であり得る。
【0117】
少なくとも1種のコルチコステロイド(coricosteroid)は、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン又はリン酸ベタメタゾンナトリウム、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸コルチゾン、デキサメサゾン、酢酸デキサメサゾン、リン酸デキサメサゾンナトリウム、酢酸フルドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、シピオン酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、及び二酢酸トリアムシノロンから選択される少なくとも1種であり得る。少なくとも1種のアンドロゲン又はタンパク質同化ステロイド薬は、ダナゾール、フルオキシメステロン、メチルテストステロン、デカン酸ナンドロロン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、テストステロン、シピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、及びテストステロン経皮剤から選択される少なくとも1種であり得る。
【0118】
少なくとも1種の免疫抑制剤は、アザチオプリン、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ、リンパ球免疫グロブリン、ムロモナブ−CD3、ミコフェノール酸モフェチル、塩酸ミコフェノール酸モフェチル、シロリムス、及びタクロリムスから選択される少なくとも1種であり得る。
【0119】
少なくとも1種の局所抗感染薬は、アシクロビル、アンホテリシンB、アゼライン酸クリーム、バシトラシン、硝酸ブトコナゾール、リン酸クリンダマイシン、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、エリスロマイシン、硫酸ゲンタマイシン、ケトコナゾール、酢酸マフェニド、メトロニダゾール(局所)、硝酸ミコナゾール、ムピロシン、塩酸ナフチフィン、硫酸ネオマイシン、ニトロフラゾン、ナイスタチン、スルファジアジン銀、塩酸テルビナフィン、テルコナゾール、塩酸テトラサイクリン、チオコナゾール、及びトルナフテートから選択される少なくとも1種であり得る。少なくとも1種の疥癬殺虫剤若しくは殺シラミ薬は、クロタミトン、リンデン、ペルメトリン、及びピレトリンから選択される少なくとも1種であり得る。少なくとも1種の局所コルチコステロイドは、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメサゾン、リン酸デキサメサゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド(halcionide)、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フロ酸モメタゾン、及びトリアムシノロンアセトニドから選択される少なくとも1種であり得る。(例えば、Nursing 2001 Drug Handbookの1098〜1136頁を参照されたい。)
【0120】
抗IL−23抗体組成物は、かかる調節、処置、又は治療を必要とする細胞、組織、器官、動物、又は患者に接触されるか又は投与される少なくとも1つの抗IL−23抗体を含み、任意選択的に更に、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、限定されないが、TNF化学若しくはタンパク質拮抗薬、TNFモノクローナル若しくはポリクローナル抗体又は断片、可溶性TNF受容体(例えば、p55、p70、又はp85)又は断片、その融合ポリペプチド、又は小分子TNF拮抗薬、例えば、TNF結合タンパク質I若しくはII(TBP−1又はTBP−II)、ネレリモンマブ(nerelimonmab)、インフリキシマブ、エタネルセプト(eternacept)、CDP−571、CDP−870、アフェリモマブ、レネルセピトなど)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、レフルノミド、スルファサラジン)、免疫付与剤、免疫グロブリン、免疫抑制剤(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、サイトカイン又はサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1種を含む、任意の好適かつ有効量の組成物又は医薬組成物のうちの少なくとも1種を更に含むことができる。かかるサイトカインの非制限的な例としては、IL−1〜IL−23など(例えば、IL−1、IL−2等)のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。適切な投与量は、当該技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000)、PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,CA(2000)を参照されたく、これらの各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0121】
本発明の方法に使用される抗IL−23抗体化合物、組成物、又は混合物は更に、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどであるがこれらに限定されない、任意の好適な助剤のうちの少なくとも1つを含み得る。薬学的に許容できる助剤が好ましい。かかる滅菌溶液を調製する非限定的な例及びその方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、Gennaro,Ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(Easton,PA),1990などであるが、これに限定されない。当該技術分野において周知である、又は本明細書に記載されるように、抗IL−23抗体、断片、又は変異体組成物の投与方法、溶解度、及び/又は安定性に好適な薬学的に許容できる担体は、日常的に選択することができる。
【0122】
本組成物において有用な薬学的賦形剤及び添加剤は、これらに限定されないが、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質及び炭水化物(例えば、単糖類、二糖、三糖、四糖、及びオリゴ糖を含む糖類、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖、並びに多糖類又は糖ポリマー)を含み、これらは、単独で又は組み合わせて存在してよく、単独で又は組み合わせて1〜99.99重量%又は容量%含まれる。例示的なタンパク質賦形剤には、ヒト血清アルブミン(HSA)などの血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝能においても機能し得る代表的なアミノ酸/抗体構成要素には、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。好ましいアミノ酸の1つはグリシンである。
【0123】
本発明において使用に好適な炭水化物賦形剤として、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類、乳糖、ショ糖、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン類などの多糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。本発明で使用するのに好ましい炭水化物賦形剤は、マンニトール、トレハロース、及びラフィノースである。
【0124】
抗IL−23抗体組成物はまた、緩衝剤又はpH調整剤を含むこともでき、典型的には、緩衝剤は、有機酸又は塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、又はフタル酸の塩などの有機酸塩、トリス、トロメタミン塩酸塩、又はリン酸緩衝剤が挙げられる。本組成物における使用に適した緩衝剤は、クエン酸などの有機酸塩である。
【0125】
加えて、抗IL−23抗体組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20」及び「TWEEN80」などのポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、及びキレート剤(例えば、EDTA)などのポリマー賦形剤/添加剤を含み得る。β
【0126】
本発明による抗IL−23抗体、部分又は変異体組成物における使用に適したこれら及び追加の既知の薬学的賦形剤及び/又は添加剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」、19th ed.,Williams&Williams,(1995)、及び「Physician’s Desk Reference」、52nd ed,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)に列挙されており、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。好ましい担体又は賦形剤材料は、炭水化物(例えば、単糖類及びアルジトール類)並びに緩衝剤(例えば、クエン酸塩)又は高分子試薬である。例示的な担体分子はムコ多糖、ヒアルロン酸であり、これらは関節内送達に有用であり得る。
【0127】
製剤
上述したとおり、本発明は、好ましくは、生理食塩水又は選択された塩を含むリン酸塩緩衝剤である安定した製剤、並びに保存剤を含有する保存溶液及び製剤、並びに薬学的に許容できる製剤中に少なくとも1つの抗IL23抗体を含む薬学的又は獣医学的用途に好適な多用途保存製剤を提供する。保存製剤は、水性希釈剤中に、少なくとも1つの既知の、すなわち少なくとも1つのフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から任意に選択される保存剤を含有する。当該技術分野において既知であるように、0.001〜5%、又は0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又はその中の任意の範囲若しくは値などであるがこれらに限定されない、その中の任意の範囲若しくは値の、任意の好適な濃度又は混合物が使用され得る。非限定的な例としては、保存剤無添加、0.1〜2%m−クレゾール(例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.9、1.0%)、0.1〜3%のベンジルアルコール(例えば、0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001〜0.5%のチメロサール(例えば、0.005、0.01)、0.001〜2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005〜1.0%のアルキルパラベン(複数可)(例えば、0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)などが挙げられる。
【0128】
上述のとおり、本発明の方法は、包装材と、任意選択的に水性希釈剤中に処方された緩衝剤及び/又は保存剤を伴う少なくとも1つの抗IL−23特異的抗体の溶液を含む少なくとも1つのバイアルと、を含む製品を使用し、この包装材は、かかる溶液を1、2、3、4、5、6、9、12、18、20、24、30、36、40、48、54、60、66、72時間以上にわたり保持することができることを記したラベルを含む。本発明は、包装材と、凍結乾燥された抗IL−23特異的抗体を含む第1のバイアルと、処方された緩衝剤又は保存剤の水性希釈剤を含む第2のバイアルと、を含む製品を更に使用し、この包装材は、抗IL−23特異的抗体を水性希釈剤でもどして、24時間以上にわたって保持することができる溶液を形成するように患者に指示するラベルを含む。
【0129】
本発明により使用される抗IL−23特異的抗体は、本明細書に記載されるか又は当該技術分野において既知の、哺乳類細胞又はトランスジェニック調製物から産生することを含む組換え手段により産生され得るか、又は他の生物源から精製され得る。
【0130】
抗IL−23特異的抗体の範囲は、湿式/乾式系の場合、もどすときに約1.0μg/ml〜約1000mg/mlの濃度が得られる量で含まれるが、より低い濃度及び高い濃度でも作業可能であり、意図される送達ビヒクルに依存し、例えば溶液製剤では、経皮パッチ、肺、経粘膜、又は浸透圧性若しくはマイクロポンプ方法とは異なる。
【0131】
好ましくは、水性希釈剤は任意選択的に、薬学的に許容できる保存剤を更に含む。好ましい保存剤には、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール又はこれらの混合物からなる群から選択されるものが含まれる。製剤中で使用される保存剤の濃度は、抗菌効果を生み出すのに十分な濃度である。このような濃度は選択された保存剤によって異なり、当業者により容易に決定される。
【0132】
他の賦形剤、例えば、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、及び保存剤エンハンサーは、任意選択的にかつ好ましくは希釈剤に添加することができる。グリセリンなどの等張剤が、既知の濃度で一般に使用される。好ましくは、生理学的に耐容性の緩衝剤を添加して、改善されたpH制御を提供する。製剤は、約pH4〜約pH10、及び好ましくは約pH5〜約pH9の範囲、及び最も好ましくは約6.0〜約8.0の範囲などの、広範囲のpH範囲を対象にすることができる。好ましくは、本発明の処方は、約6.8〜約7.8のpHを有する。好適な緩衝剤には、リン酸緩衝剤を含み、最も好ましくは、リン酸ナトリウム、特にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。
【0133】
他の添加剤、例えばTween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、及びPEG(ポリエチレングリコール)などの、薬学的に許容できる可溶化剤、又はポリソルベート20若しくは80又はポロキサマー184若しくは188、Pluronic(登録商標)polylsなどの非イオン性界面活性剤、その他のブロックコポリマー、並びにEDTA及びEGTAなどのキレート剤を製剤又は組成物に任意に添加することで、凝集を低減させることができる。(登録商標)これらの添加物は、製剤を投与するためにポンプ又はプラスチック容器が使用される場合に特に有用である。薬学的に許容できる界面活性剤の存在により、タンパク質が凝集する傾向が軽減される。
【0134】
製剤は、少なくとも1つの抗IL−23特異的抗体と、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール又はこれらの混合物からなる群から選択される保存剤と、を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより、調製することができる。少なくとも1つの抗IL−23特異的抗体と保存剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、緩衝溶液中の一定量の少なくとも1つの抗IL−23特異的抗体を、所望の濃度のタンパク質及び保存剤を提供するために十分な量の緩衝溶液中で所望の保存剤と組み合わせる。このプロセスの変化形態は、当業者によって認識されるであろう。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0135】
製剤は、透明な溶液として、又は水、保存剤及び/若しくは賦形剤、好ましくはリン酸塩緩衝剤及び/若しくは生理食塩水、並びに選択された塩を水性希釈剤中に含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された抗IL−23特異的抗体のバイアルを含む併用バイアル(dual vial)として、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とする併用バイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供することができる。
【0136】
本製品は、即時から24時間以上の範囲の期間にわたる投与に有用である。したがって、本発明により特許請求される製品は、患者に大きな利益を提供する。本発明の製剤は、約2℃〜約40℃の温度で任意選択的に安全に保管し、タンパク質の生物学的活性を長期間保持することができ、したがって包装ラベルは、溶液が6、12、18、24、36、48、72、又は96時間以上の期間にわたって保持及び/又は使用できることを示すことができる。保存されている希釈剤を使用する場合には、このようなラベルに最高1〜12か月、半年、1年半及び/又は2年までの使用を含むことができる。
【0137】
抗IL−23特異的抗体の溶液は、少なくとも1つの抗体を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより調製することができる。混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な希釈剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質、及び任意選択的に保存剤又は緩衝剤を提供するのに十分な量で組み合わせる。このプロセスの変化形態は、当業者によって認識されるであろう。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0138】
特許請求される製品は、透明な溶液として、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL−23特異的抗体のバイアルを含む併用バイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とする併用バイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供する。
【0139】
特許請求される製品は、透明な溶液、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL−23特異的抗体のバイアルを含む併用バイアルを、薬局、診療所、又はその他のかかる機関及び施設に提供することによって、患者に対し間接的に提供することができる。この場合の透明溶液は最高1リットル又は更にはそれ以上の容量であってよく、この大きな容器からより少量の少なくとも1つの抗体溶液を1回又は複数回取り出してより小さなバイアルに移し、かつ薬局又は診療所により顧客及び/又は患者に提供できる。
【0140】
単一バイアル系を含む承認済みデバイスとしては、BD Pens、BD Autojector(登録商標)、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B−D(登録商標)Pen、AutoPen(登録商標)、及びOptiPen(登録商標)、GenotropinPen(登録商標)、Genotronorm Pen(登録商標)、Humatro Pen(登録商標)、Reco−Pen(登録商標)、Roferon Pen(登録商標)、Biojector(登録商標)、Iject(登録商標)、J−tip Needle−Free Injector(登録商標)、Intraject(登録商標)、Medi−Ject(登録商標)、Smartject(登録商標)などの溶液送達用のペン型インジェクタデバイス(例えば、Becton Dickensen(Franklin Lakes、NJ、www.bectondickenson.com)、Disetronic(Burgdorf、Switzerland、www.disetronic.com)、Bioject,Portland,Oregon(www.bioject.com)、National Medical Products,Weston Medical(Peterborough,UK,www.weston−medical.com)、Medi−Ject Corp(Minneapolis,MN,www.mediject.com)によって製造又は開発されている)、及び類似の好適なデバイスが挙げられる。併用バイアル系を含む承認済みデバイスとしては、HumatroPen(登録商標)などの、もどした溶液を送達するためのカートリッジ内で凍結乾燥された薬剤をもどすためのペン型インジェクタシステムが挙げられる。好適な他のデバイスの例としては、予め充填された注射器、自動注射器、針なし注射器、及び針なしIV注入セットが挙げられる。
【0141】
製品は、包装材を含み得る。包装材は、規制当局によって必要とされる情報に加えて、製品を使用できる条件を提供する。本発明の包装材は、該当する場合、少なくとも1つの抗IL−23抗体を水性希釈剤でもどして溶液を形成し、2〜24時間以上の期間にわたって、この溶液を湿式/乾式の2つのバイアル製品に使用する、という指示を患者に提供する。単一バイアルの溶液製品、予め充填された注射器、又は自動注射器の場合、ラベルは、かかる溶液が2〜24時間以上の期間にわたって使用できることを示す。製品は、ヒト用医薬製品用途に有用である。
【0142】
本発明の方法に使用される製剤は、抗IL−23抗体及び選択された緩衝剤、好ましくは生理食塩水又は選択された塩を含有するリン酸塩緩衝剤を混合することを含むプロセスにより、調製することができる。抗IL−23抗体と緩衝剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質及び緩衝剤を提供するのに十分な量の水中で所望の緩衝剤と組み合わせる。このプロセスの変化形態は、当業者によって認識されるであろう。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0143】
本発明の方法は、ヒト又は動物患者に投与するのに有用かつ許容できる種々の製剤を含む医薬組成物を提供する。かかる医薬組成物は、希釈剤として「標準状態」の水、及び当該者に周知の日常的な方法を使用して調製される。例えば、ヒスチジン及びヒスチジン一塩酸塩水和物などの緩衝構成要素が最初に提供され、続いて適切な非最終容量の「標準状態」の水希釈剤、ショ糖、及びポリソルベート80が添加され得る。次いで、単離された抗体を添加することができる。最後に、水を希釈剤として使用する「標準状態」条件の下で、医薬組成物の容量を所望の最終容量に調整する。当業者は、医薬組成物の調製に適したいくつかの他の方法を認識する。
【0144】
医薬組成物は、水の容量単位当たりの示される質量の各構成成分を含むか、又は「標準状態」の示されるpHを有する水溶液又は懸濁液であってよい。本明細書で使用されるとき、「標準状態」という用語は、25℃+/−2℃の温度及び1気圧の圧力を意味する。「標準状態」という用語は、当該技術分野では、単一技術分野が認識する一連の温度又は圧力を指すように使用されないが、代わりに参照「標準状態」条件下の特定の組成物を含む溶液又は懸濁液を説明するために使用される温度及び圧力を特定する参照状態である。これは、溶液の容量が一部温度及び圧力の関数であるためである。当業者は、本明細書に開示されるものと同等の医薬組成物が他の温度及び圧力で製造され得ることを認識する。かかる医薬組成物が本明細書に開示されるものと同等であるかは、上記に定義された「標準状態」条件下(例えば、25℃+/−2℃及び1気圧の圧力)で決定されるべきである。
【0145】
重要なことに、かかる医薬組成物は、医薬組成物の単位容積当たり「約」ある特定の値(例えば、「約0.53mgのL−ヒスチジン」)の構成要素質量を含有するか、又は約ある特定の値のpH値を有し得る。医薬組成物中に存在する構成要素質量又はpH値は、単離された抗体が医薬組成物に存在するか、又は単離された抗体が医薬組成物から除去された後(例えば、希釈により)に、医薬組成物中に存在する単離された抗体がペプチド鎖に結合することができる場合の、「約」所与の数値である。つまり、構成要素の質量値又はpH値などの値は、単離された抗体を医薬組成物に配置した後に単離された抗体の結合活性が維持され、検出可能であるときの、「約」所定の数値である。
【0146】
競合結合分析を行って、IL−23特異的mAbが類似の若しくは異なるエピトープに結合し、かつ/又は互いに競合するかを決定する。ELISAプレート上にAbを個々にコーティングする。競合するmAbを添加し、続いてビオチン化hrIL−23を添加する。陽性対照には、コーティングに同じmAbを競合mAb(「自己競合」)として使用してもよい。IL−23結合は、ストレプトアビジンを使用して検出される。これらの結果は、mAbがIL−23上の類似の又は部分的に重複するエピトープを認識するかどうかを示す。
【0147】
本発明の方法の一態様は、医薬組成物を患者に投与する。
【0148】
医薬組成物の一実施形態では、単離された抗体濃度は、1mLの医薬組成物当たり約77〜約104mgである。医薬組成物の別の実施形態では、pHは約5.5〜約6.5である。
【0149】
安定又は保存製剤は、透明な溶液として、又は水性希釈剤中に保存剤若しくは緩衝剤及び賦形剤を含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL−23抗体のバイアルを含む併用バイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とする併用バイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供する。
【0150】
抗IL−23抗体を安定化するその他の処方又は方法は、抗体を含む凍結乾燥粉末の透明溶液以外のものであってよい。非透明溶液としては微粒子懸濁液を含む処方があり、このような微粒子は、ミクロスフェア、微小粒子、ナノ粒子、ナノスフェア、又はリポソームとして様々に知られる種々の大きさの構造内に、抗IL−23抗体を含有する組成物である。活性薬剤を含有するこうした比較的均質な本質的に球状の微粒子処方は、米国特許第4,589,330号に教示されるとおり、活性薬剤及びポリマーを含有する水相と非水相とを接触させ、次いで非水相を蒸発させて水相からの粒子の合体を引き起こすことにより形成することができる。多孔性微小粒子は、米国特許第4,818,542号に教示されるとおり、連続溶媒中に分散された活性薬剤とポリマーとを含有する第1相を使用し、凍結乾燥又は希釈−抽出−沈殿により懸濁液からこの溶媒を除去することで調製することができる。こうした調製に好ましいポリマーは、ゼラチン寒天、デンプン、アラビノガラクタン、アルブミン、コラーゲン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド−L(−)ラクチドポリ(エプシロン−カプロラクトン、ポリ(エプシロン−カプロラクトン−CO−乳酸)、ポリ(エプシロン−カプロラクトン−CO−グリコール酸)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリ(アルキル−2−シアノアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(2−ヒドロキシエチルDL−アスパルトアミド)、ポリ(エステル尿素)、ポリ(L−フェニルアラニン/エチレングリコール/1,6−ジイソシアナトヘキサン)及びポリ(メチルメタクリレート)からなる群から選択される、天然又は合成のコポリマー又はポリマーである。特に好ましいポリマーは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド−L(−)ラクチドポリ(エプシロン−カプロラクトン)、ポリ(エプシロン−カプロラクトン−CO−乳酸)、及びポリ(エプシロン−カプロラクトン−CO−グリコール酸)などのポリエステルである。ポリマー及び/又は活性物質を溶解させるのに有用な溶媒としては水、ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、へキサン、ベンゼン、又はヘキサフルオロアセトンセスキ水和物がある。活性物質を含有する相を第2相に分散させるプロセスには、この第1相をノズル内のオリフィスに圧力で強制的に通過させて液滴形成に作用する工程を含むことができる。
【0151】
乾燥粉末処方は、例えば、噴霧乾燥法、又は蒸発による溶媒抽出法、若しくは水性又は非水性溶媒を除去するための1つ以上の工程が後続する結晶性組成物の沈殿による溶媒抽出法などの、凍結乾燥以外のプロセスの結果として得てもよい。噴霧乾燥抗体製剤の調製は、米国特許第6,019,968号に教示される。抗体ベースの乾燥粉末組成物は、抗体の溶液又はスラリーを、及び任意選択的に、呼吸用乾燥粉末を提供するための条件下で溶媒中の、賦形剤を、噴霧乾燥させることによって生産できる。溶媒には、容易に乾燥可能な、例えば水及びエタノールなどの極性化合物が挙げられる。抗体の安定性は、酸素不在下、例えば窒素ブランケット下において噴霧乾燥手順を実施すること、又は乾燥用気体として窒素を使用することにより増強させることができる。別の比較的乾燥した処方は、国際公開第9916419号中で教示されているような、典型的にヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む懸濁培地中に分散した、複数の有孔微細構造の分散物である。安定化された分散物は、定量吸入器を用いて患者の肺に投与できる。噴霧乾燥された薬剤の商業的製造において有用な機器は、Buchi Ltd.又はNiro Corp.により製造されている。
【0152】
本明細書に記載される安定若しくは保存製剤又は溶液のいずれかの抗IL−23抗体は、当該技術分野において周知のように、SC若しくはIM注射、経皮、経肺、経粘膜、埋め込み、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ又は当該技術分野において周知であり当業者により理解されるその他の手段などの様々な送達方法を介して、本発明により患者に投与することができる。
【0153】
治療適用
本発明はまた、当該技術分野において既知又は本明細書に記載のように、少なくとも1つの本発明のIL−23抗体を用いて、例えば、細胞、組織、器官、動物、又は患者に、治療有効量のIL−23特異的抗体を投与又は接触させて、細胞、組織、器官、動物、又は患者における乾癬を調節又は治療するための方法をも提供する。
【0154】
本発明のいずれの方法も、かかる調節、処置、又は治療を必要としている細胞、組織、器官、動物、又は患者に、抗IL−23抗体を含む組成物又は医薬組成物を有効量で投与することを含み得る。かかる方法は、任意選択的に、かかる疾患又は障害の治療のための同時投与又は併用療法を更に含むことができ、ここで、この少なくとも1つの抗IL−23抗体、その特定部分、又は変異体を投与することは、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、限定されないが、化学物質性若しくはタンパク質性TNF拮抗薬、TNFモノクローナル若しくはポリクローナル抗体若しくは断片、可溶性TNF受容体(例えば、p55、p70、又はp85)若しくは断片、その融合ポリペプチド、又は低分子TNF拮抗薬、例えば、TNF結合タンパク質I又はII(TBP−1又はTBP−II)、ネレリモンマブ、インフリキシマブ、エタネルセピト(eternacept)(Enbrel(商標))、アダリムマブ(Humira(商標))、CDP−571、CDP−870、アフェリモマブ、レネルセピトなど)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン)、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroid anti-inflammatory drug、NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬(例えば、アミノグリコシド、抗真菌薬、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬、カルバペナム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他抗菌薬)、乾癬治療薬、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺剤、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐剤、抗腫瘍薬、緩下剤、抗凝固薬、エリスロポエチン(例えば、エポエチンアルファ)、フィルグラスチム(例えば、G−CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM−CSF、Leukine)、免疫付与剤、免疫グロブリン、免疫抑制剤(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳剤、毛様体筋麻痺薬、アルキル化剤、代謝拮抗薬、分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、交感神経刺激薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、ぜんそく治療薬、ベータ作用薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン若しくは類似体、ドルナーゼアルファ(Pulmozyme)、サイトカイン若しくはサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つを、前に、同時に、及び/又は後に投与することを更に含む。適切な投与量は、当該技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000)、PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,CA(2000)、Nursing 2001 Handbook of Drugs,21st edition,Springhouse Corp.,Springhouse,PA,2001、Health Professional’s Drug Guide 2001,ed.,Shannon,Wilson,Stang,Prentice−Hall,Inc,Upper Saddle River,NJ,を参照されたく、これらの参考文献の各々は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0155】
治療処置
典型的には、乾癬の処置は、組成物中に含有される活性剤の比活性に応じ、平均して、合計、1回の投与あたり患者の体重1kgあたり少なくとも約0.01〜500ミリグラムの範囲の抗IL−23抗体、及び好ましくは、単回又は複数回投与あたり患者の体重1kgあたり少なくとも約0.1〜100ミリグラムの範囲の抗体の、抗IL−23抗体組成物の有効量又は用量を投与することにより影響を受ける。あるいは、有効な血清濃度は、単回又は複数回投与あたり0.1〜5000μg/mlの血清濃度を含み得る。μ適切な投与量は、医療実践者には既知であり、当然のことながら、具体的な疾患状態、投与される組成物の比活性、及び処置を受けている具体的な患者に依存する。場合によっては、望ましい治療量を得るために、反復投与、即ち、特定の監視された量又は定量の反復個別投与を提供することが必要となる場合があり、この場合、個別投与は、望ましい日用量又は作用が得られるまで繰り返される。
【0156】
好ましい用量は、任意選択的に、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び/若しくは100〜500mg/kg/投与、又はその任意の範囲、値若しくは分画を含むか、あるいは単回若しくは複数回投与あたり0.1、0.5、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、1.9、2.0、2.5、2.9、3.0、3.5、3.9、4.0、4.5、4.9、5.0、5.5、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、20、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14.0、14.5、4.9、5.0、5.5.、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、12、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14、14.5、15、15.5、15.9、16、16.5、16.9、17、17.5、17.9、18、18.5、18.9、19、19.5、19.9、20、20.5、20.9、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、96、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、及び/若しくは5000μg/mlの血清濃度、又はその任意の範囲、値若しくは分画を得るように含み得る。μ
【0157】
あるいは、投与される用量は、特定の薬剤の薬物動態特徴並びにその投与方法及び経路、レシピエントの年齢、健康及び体重、症状の性質及び程度、同時処置の種類、処置頻度、並びに所望の作用などの既知の因子により異なり得る。活性成分の投与量は、通常、体重1キログラムあたり約0.1〜100ミリグラムであり得る。通常、0.1〜50、好ましくは0.1〜10ミリグラム/キログラム/投与、又は徐放性形態が、望ましい結果を得るために有効である。
【0158】
非限定的な例として、ヒト又は動物の処置は、単回、注入、又は反復投与を使用して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39若しくは40日目のうちの少なくとも1日に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51若しくは52週目のうちの少なくとも1週に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20年目のうちの少なくとも1年に、又はこれらの任意の組み合わせで、1日あたり0.1〜100mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/kgの、本発明の少なくとも1つの抗体の1回又は周期的な投与量として提供され得る。
【0159】
体内投与に適した剤形(組成物)は、一般に、1単位又は容器あたり約0.001ミリグラム〜約500ミリグラムの活性成分を含む。これらの医薬組成物において、活性成分は、組成物の総重量に基づいて、通常、約0.5〜99.999重量%の量で存在する。
【0160】
非経口投与には、抗体は、薬学的に許容できる非経口ビヒクルと合わせて、又は別個に提供される、溶液、懸濁液、エマルション、粒子、粉末、若しくは凍結乾燥粉末として、製剤化され得る。かかるビヒクルの例は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液及び1〜10%ヒト血清アルブミンである。リポソーム及び固定油などの非水性ビヒクルを使用することもできる。ビヒクル又は凍結乾燥粉末は、等張性及び化学安定性を維持する添加剤(例えば、等張性に関しては塩化ナトリウム、マンニトール;化学安定性に関しては緩衝剤及び保存剤)を含有することができる。製剤は、既知の又は適切な技術によって滅菌される。
【0161】
適切な薬学的担体は、この分野での標準的参考テキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciences,A.Osolの最新版の中で記載されている。
【0162】
代替的投与
抗IL−23抗体の薬学的に有効な量を投与するために、本発明に従って、多くの既知の及び開発された方式を使用することができる。以下の記述では経肺投与が使用されているが、本発明に従ってその他の投与方式を使用して、適切な結果を得てもよい。本発明のIL−23特異的抗体は、担体中で、溶液、エマルション、コロイド若しくは懸濁液として、又は乾燥粉末として、吸入によるか、又は本明細書に記載される若しくは当該技術分野において既知である他の方法による投与に適した様々なデバイス及び方法のいずれかを使用して、送達することができる。
【0163】
非経口処方及び投与
非経口投与用処方は、一般的な賦形剤として滅菌水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物性油、水素化ナフタレンなどを含有してよい。注射用の水性又は油性懸濁液は、既知の方法に従って、適切な乳化剤又は加湿剤及び懸濁剤を使用することによって調製可能である。注射剤は、例えば水溶液、無菌注射液又は溶媒中懸濁液などの非毒性の非経口投与可能な希釈剤であってよい。使用可能なビヒクル又は溶媒としては、水、リンゲル液、等張生理食塩水などが可能であり、通常の溶媒又は懸濁溶媒としては、無菌の不揮発性油を使用することができる。これらの目的では、天然又は合成若しくは半合成の、脂肪油又は脂肪酸、天然又は合成若しくは半合成の、モノグリセリド又はジグリセリド又はトリグリセリドを含む、あらゆる種類の不揮発性油及び脂肪酸を使用することができる。非経口投与は当該技術分野において既知であり、従来の注射手段、米国特許第5,851,198号に記載されているようなガス加圧式無針注入デバイス、及び米国特許第5,839,446号に記載されているようなレーザー穿孔機デバイスが挙げられるが、これらに限定されず、これらは参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0164】
代替的送達
本発明は更に、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮手段による抗IL−23抗体の投与に関する。抗IL−23抗体組成物は、非経口(皮下、筋肉内又は静脈内)又は任意のその他の投与、特に、液体溶液若しくは懸濁液の形態で使用するために、特に、クリーム及び座薬などであるがこれらに限定されない半固体形態で、膣若しくは直腸の投与における使用のために、錠剤若しくはカプセルなどであるがこれらに限定されない形態で、口腔若しくは舌下投与用に、あるいは粉末、点鼻薬若しくはエアロゾル、又はある特定の薬剤などであるがこれらに限定されない形態で、鼻腔内に、あるいは皮膚構造を改変するか、又は経皮パッチ中の薬剤濃度を増加させるかのいずれかのために、ジメチルスルホキシドなどの化学的促進剤を用いて(Junginger,et al.In「Drug Permeation Enhancement;」Hsieh,D.S.,Eds.,pp.59−90(Marcel Dekker,Inc.New York 1994、参照により全体が本明細書に組み込まれる)、又はタンパク質及びペプチドを含有する製剤の皮膚への適用(国際公開第98/53847号)、又はエレクトロポレーションなどの一過性の輸送経路を作り出すための、若しくはイオントフォレシスなどの皮膚を通して荷電薬剤の移動度を増加させるための電界の適用、又は超音波導入などの超音波の適用(米国特許第4,309,989号及び同第4,767,402号)を可能にする酸化剤を用いて、ゲル、軟膏、ローション、懸濁液若しくはパッチ送達系などであるが、これらに限定されない形態で、経皮的に、調製することができる(上記の刊行物及び特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0165】
本発明を全般的に記述したことから、同様物は、実例として提供されるが制限することを意図していない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。更に、本発明の詳細は、以下の非限定例によって例示される。本明細書の全ての引用の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0166】
実施例1:1年を通して治療された患者における、グセルクマブ(GUS)と抗TNFα抗体アダリムマブ(ADA)及びプラセボ(PBO)との有効性及び安全性の比較。
【0167】
以前の研究からの所見を確認するために、2つの中枢となる第III相臨床試験:VOYAGE1及びVOYAGE2を実施した。1年にわたって継続して治療された乾癬患者において、グセルクマブを、広範に使用されているTNF−α阻害剤であるアダリムマブ、及びプラセボと比較する、VOYAGE1からの有効性、安全性、及び患者報告アウトカム(PRO)所見が報告された。更に、VOYAGE2として知られる追加の試験(実施例2に記載)においては、24週間連続して治療された乾癬患者において、グセルクマブと、アダリムマブ及びプラセボとを比較し、28週間の治療後に始まる無作為化離脱期間も含まれる。
【0168】
VOYAGE1の材料/方法の概要:VOYAGE1は、第3相、無作為化、二重盲検、プラセボ・実薬比較対照臨床試験である。適格患者(18歳以上の年齢)は、6ヶ月以上の尋常性乾癬、≧3の治験医師による包括的評価[IGA]スコア、≧12の乾癬の面積及び重症度の指標[PASI]スコア、及び≧10%の体表面積病変を有し、全身治療又は光線療法の候補者であった。ベースラインにおいて、837人の患者を、0/4/12週目にPBOを投与後、16/20週目にGUS100mgに切り替え、その後q8wkで44週を通じて投与する群(n=174)、0/4/12週目にGUS100mgを投与し、その後q8wkで44週を通じて投与する群(n=329)、又は、0週目にADAを80mg、1週目に40mgを投与し、その後40mgをq2wkで47週を通じて投与する群(n=334)のいずれかに無作為割り付けした。複合主要評価項目は、16週目に排除された/最小の疾患(IGA0/1)及びPASIスコアにおける90%の改善(PASI90)を達成するPBO患者に対するGUS患者の割合であった。他の評価項目には、16/24/48週目におけるIGA0/1、IGA0、PASI90、及びPASI100、並びに24/48週目の健康関連の生活の質に及ぼす感染の影響がないことを示す、0/1スコアの皮膚の状態に関するアンケート(DLQI0/1)を達成するADA患者に対するGUS患者の割合が含まれていた。安全性は48週間にわたって監視した。
【0169】
VOYAGE1の結果の概要:16週目において、PBO群の患者に対してGUS群の有意に高い(p<0.001)割合の患者が、IGA0/1(85.1%対6.9%)及びPASI90(73.3%対2.9%))を達成した。16週目にIGA0/1を達成する患者の割合(85.1%対65.9%)及びPASI90を達成する患者の割合(73.3%対49.7%)を基準とすると、GUSはまたADAよりも優れていた(p<0.001)。同様に、有意に高い(p<0.001)割合の患者が、24週目に、それぞれADAに対比してGUSに対する奏効を達成した:IGA0(52.6%対29.3%)、IGA0/1(84.2%対61.7%)、PASI100(44.4%対24.9%)、及びPASI90(80.2%対53.0%)。48週目での対応する奏効率は、IGA0(50.5%対25.7%)、IGA0/1(80.5%対55.4%)、PASI100(47.4%対23.4%)、及びPASI90(76.3%対47.9%)であって、全てp<0.001であった。GUS対ADA群の患者の中で0/1のDLQIスコアを有する患者の割合は、24週目に60.9%対39.5%、48週目に62.5%対38.9%(両方ともp<0.001)であった。48週間で、GUS及びADA患者のそれぞれ73.9%及び74.5%において有害事象が生じ、重篤な有害事象発生率は、GUS及びADA群についても同様であった(4.9%対4.5%)。重篤な感染症は、2人のGUS患者及び3人のADA患者において発生した。2例の悪性腫瘍(前立腺及び乳房)が、GUS群で発生した。各実薬治療群において、1例の心筋梗塞が生じた。
【0170】
VOYAGE1の結論のまとめ:GUSは、中等症から重症の乾癬を治療する際にADAよりも優れており、治療の1年にわたって良好に忍容された。
【0171】
背景:グセルクマブ、インターロイキン−23(IL−23)ブロッカーは、第II相臨床試験において中等症から重症の乾癬を治療する際に、アダリムマブよりも優れていた。
【0172】
目的:1年にわたって治療された乾癬患者において、グセルクマブの有効性及び安全性を、アダリムマブ及びプラセボと比較するためのものである。
【0173】
方法:患者を、0/4/12週目にグセルクマブ100mgを投与し、その後q8wkで投与する群(n=329)、0/4/16週目にプラセボを投与後、16/20週目にグセルクマブ100mgに切り替え、その後q8wkで投与する群(n=174)、又は、0週目にアダリムマブ80mg、1週目に40mgを投与し、その後40mgをq2wkで投与する群(n=334)に無作為割り付けした。医師報告アウトカム(治験医師による全般的評価[IGA]スコア、乾癬の面積と重症度の指標[PASI])、患者報告アウトカム(PRO、皮膚の状態に関するアンケート[DLQI]、乾癬の症状及び徴候に関する日誌[PSSD])、及び安全性を、48週間にわたって評価した。
【0174】
結果:グセルクマブは、16週目にプラセボよりも優れていた(p<0.001)(85.1%対6.9%[IGA0/1]及び73.3%対2.9%[PASI90])。グセルクマブはまた、IGA0/1及びPASI90について、16週目で(85.1%対65.9%、73.3%対49.7%)、24週目で(84.2%対61.7%、80.2%対53.0%)、及び48週目で(80.5%対55.4%、76.3%対47.9%)、アダリムマブと対比して優れていた(p<0.001)。更に、グセルクマブは、48週間にわたってPROを有意に改善させた。有害事象発生率は、48週間にわたって治療間で同等であった。
【0175】
制限事項:分析は、48週間に限定された。
【0176】
結論:グセルクマブは、アダリムマブと比較して優れた有効性を示し、乾癬患者において1年にわたって十分に忍容されている。
【0177】
材料及び方法
患者
臨床試験は、中等症から重症の尋常性乾癬(すなわち、治験医師による全般的評価[IGA]スコアが≧3、乾癬の面積及び重症度の指標[PASI]が≧12、及び体表面積[BSA]病変が≧10%)を少なくとも6ヶ月間有する18歳以上の年齢の患者であり、全身療法又は光線療法の候補者である患者を登録した。患者は、重度の、進行性の、若しくは制御されていない医学的状態の履歴又は現在の徴候を有したか、又は5年以内に非黒色腫皮膚癌(NMSC)を除く、現在の悪性疾患又はその履歴を有した場合、不適格であった。活動性結核(TB)の履歴又は症状を有する患者は除外した。患者は、以前にグセルクマブ又はアダリムマブを受けた場合、3ヶ月以内に他の抗TNF−α療法を受けた場合、α6ヶ月以内にIL−12/23、IL−17、又はIL−23を標的とする他の治療を受けた場合、あるいは4週間以内に任意の全身性免疫抑制剤(例えば、メトトレキサート)又は光線療法を受けた場合には、参加できなかった。
【0178】
実験計画
VOYAGE1は、104の世界中の施設で実施された(2014年12月〜2016年4月)、第III相、無作為化、二重盲検、プラセボ及び実薬比較対照臨床試験である。本試験は、グセルクマブをアダリムマブと比較する実薬比較期間(0〜48週)、及びプラセボ対照期間(0〜16週)を含み、その後プラセボ患者をクロスオーバーさせて48週間にわたってグセルクマブを受けるようにさせた。患者を、ベースラインで、グセルクマブ100mgを、0、4、12週目に投与し、それ以降8週間毎に44週を通じて投与する群、0、4、12週目にプラセボを投与し、続いてグセルクマブ100mgを16、20週目に投与し、それ以降8週間毎に44週にわたって投与する群、又は、0週目にアダリムマブ80mg、1週目に40mgを投与し、それ以降40mgを2週間毎に47週にわたって投与する群に、2:1:2の比で無作為割り付けした。盲検を維持するために、釣り合うプラセボを利用した。治験審査委員会又は倫理委員会は、参加治験施設において治験実施計画書を承認し、試験開始前に、患者は書面によるインフォームドコンセントを提出した。
【0179】
評価
有効性を、IGA、PASI、頭皮特異的IGA(ss−IGA)、指爪の医師による全般的評価(f−PGA)、爪乾癬の面積及び重症度の指標(NAPSI)、及び手/足のPGA(hf−PGA)を使用して評価した。患者報告アウトカムを、皮膚の状態に関するアンケート(DLQI)及び乾癬の症状及び徴候に関する日誌(PSSD)を利用して評価した。安全性モニタリングには、有害事象(AE)及び実験室試験の収集が含まれた。
【0180】
高感度かつ薬剤耐性のある電気化学発光免疫測定法を使用して、抗体対グセルクマブを検出し、感度は、グセルクマブフリーの血清中で3.1ng/mLであり、平均トラフ血清グセルクマブレベルを超える最大3.125μg/mLのグセルクマブ濃度の血清では15ng/mLであった。
【0181】
統計分析:
複合主要評価項目は、プラセボと比較してグセルクマブ群において、16週目での排除若しくは最小の疾患(IGA0/1)のIGAスコアの達成及びPASI反応における90%の改善(PASI90)を達成する患者の割合であった。主な副次的評価項目も測定した。全ての無作為割り付けされた患者は、主要及び選択された副次的有効性分析に含まれ、無作為化治療群によってデータを分析した。主要及び主な副次的分析を、固定順序法で試験して、多重性を制御した。
【0182】
複合主要評価項目及び2値主副次的評価項目を、プールされた治験責任者サイトによって層別化されたコクラン−マンテル−ヘンツェル(Cochran-Mantel-Haenszel、CMH)カイ二乗検定を使用して分析した。約750人の患者のサンプルサイズでは、優位差を検出する検定力は、両方の複合評価項目に対して>99%であった。分散分析モデルを使用して、連続反応パラメータを、共変量としてプールされた治験責任者サイトと比較した。全ての統計的試験を両側(α=0.05)で実施した。
【0183】
有効性の欠如、又は乾癬の悪化のAEのために試験薬を中断した患者、又はプロトコルで禁止された乾癬治療を開始した患者は、2値の評価項目について不十分反応者とみなされ、連続評価項目のために持ち越されたベースライン値を有した。欠測値を有する他の患者は、2値の評価項目に対して不十分な反応者とみなされ(不十分反応者として補完する方法)、連続評価項目(及び全てのPSSD評価項目)について、最後に観測された値で補完した。
【0184】
安全性分析には、試験薬の少なくとも1回の投与を受けた全ての患者が含まれ、実際の治療によってまとめた。グセルクマブに対して抗体を有する患者の割合を、生物学的製剤を少なくとも1回投与された者についてまとめた。
【0185】
結果
ベースラインにおいて、837人の患者を、プラセボ(n=174)、グセルクマブ(n=329)、又はアダリムマブ(n=334)に無作為割り付けした。全体として、48週間で、プラセボ、グセルクマブ、及びアダリムマブ群のそれぞれで、患者の6.9%、8.5%、及び15.6%が治療を中断した。人口統計的及び疾患特性は、ベースラインでの治療群にわたって同等であった。
【0186】
臨床反応
グセルクマブは、複合主要評価項目及び主な副次的評価項目全てに対してプラセボ及び/又はアダリムマブの両方よりも優れていた(全て、p<0.001)。プラセボと比較して、グセルクマブ群の有意に高い割合の患者が、16週目にIGA0/1(6.9%対85.1%)及びPASI90(2.9%対73.3%)を達成した。加えて、PASIにおける少なくとも75%の改善(PASI75)並びにIGA0及びPASI100を達成する割合は、16週目にプラセボに対してグセルクマブで有意に高かった。グセルクマブは、16週目にIGA0/1(85.1%対65.9%)、PASI90(73.3%対49.7%)、及びPASI75(91.2%対73.1%)を達成する患者の割合によって測定されるように、アダリムマブよりも優れていた。アダリムマブと比較したグセルクマブに対する有意に良好な反応は、24週目(IGA0[52.6%対29.3%]、IGA0/1[84.2%対61.7%]、及びPASI90[80.2%対53.0%])並びに48週目で(それぞれ、50.5%対25.7%、80.5%対55.4%、及び76.3%対47.9%)維持された。加えて、グセルクマブを受けた患者のより高い割合は、48週目にアダリムマブと比較してより高いPASI分類で反応を達成した。16週目でグセルクマブ開始後、プラセボクロスオーバー群における患者は、グセルクマブ群で観察されたものと同様の反応を達成した。
【0187】
局所乾癬尺度
局所乾癬を、ss−IGA、f−PGA、NAPSI、及びhf−PGA評価に基づいて評価した。グセルクマブ群におけるss−IGA0/1(不在/非常に軽度の頭皮乾癬)を達成する患者の割合は、16週目のプラセボと比較して有意に高く(83.4%対14.5%、p<0.001)、アダリムマブに対してグセルクマブへの有意な良好な反応が、24週目(p<0.001)及び48週目(p=0.045)で観察された。f−PGA0/1(排除/最小)を達成する患者の割合及びNAPSIにおける改善率は、16週目においてプラセボに対してグセルクマブで有意に高かった(p<0.001)。f−PGA反応は24週目で同等であったが、グセルクマブは、48週目にはアダリムマブよりも優れていた(p=0.038)。グセルクマブによるNAPSIにおける平均改善率は、16週目でプラセボよりも有意に高く(p<0.001)、かつ24週目及び48週目でのグセルクマブとアダリムマブとの間で同等であった。最後に、hf−PGA0/1(排除/ほぼ排除)を達成した患者の割合は、16週目でプラセボに対してグセルクマブが有意に高く、グセルクマブに対する反応は、24週目及び48週目でアダリムマブよりも優れていた(p<0.001)。
【0188】
健康関連の生活の質の尺度
16週目に、DLQIにおけるベースラインからの改善は、DLQI0/1(HRQoLに及ぼす乾癬の影響なし)を達成する患者の割合と同様に、プラセボと比較してグセルクマブ群において有意に大きかった(平均変化、−0.6対−11.2)(両方共にp<0.001)。24週目及び48週目では、DLQIにおけるベースラインからの改善及びDLQI0/1を達成する患者の割合は、アダリムマブに対してグセルクマブで有意に高かった(p<0.001)。
【0189】
16週目に、PSSD症状スコアにおけるベースラインからの改善は、プラセボに対してグセルクマブで有意に高く(平均変化、−3.0対−41.9)、PSSD徴候スコアの平均変化は、グセルクマブについて同様に良好であった(両方共にp<0.001)。同様に、24週目及び48週目に、グセルクマブ群におけるPSSD症状及び徴候スコアの平均変化は、アダリムマブ群におけるものよりも有意に大きかった(p<0.001)。グセルクマブ及びアダリムマブによってPSSD症状スコア=0を達成する患者の割合は、それぞれ、24週目で36.3%及び21.6%であって、グセルクマブに対する有意に良好な反応は、48週目においても持続された(p<0.001)。24週目及び48週目においてPSSD徴候スコア=0を達成する患者の割合(p<0.001)について、同様の結果が観察された。
【0190】
安全性アウトカム
プラセボ対照期間(0〜16週)の間、少なくとも1つのAEを有する患者の割合は治療群にわたって同等であり、最も一般的に報告されている事象は、全ての3つの群において鼻咽頭炎及び上気道感染症であった。重篤なAE(SAE)及び試験薬の中断をもたらすAEは、各治療に対してあまり頻繁には発生せず、かつ同様の割合の患者で発生した。全体的な感染症及び抗生物質治療を必要とする感染症の発生率は、治療群にわたって同等であった。アダリムマブ群では2人の患者が重篤な感染症(両方とも蜂巣炎)を経験した。1例のNMSC(すなわち、基底細胞癌[BCC])がグセルクマブ群で報告され、他の悪性腫瘍はいずれの群においても発生しなかった。1例の心筋梗塞(すなわち、主要有害心血管事象[MACE])が、16週間を通じて各実薬治療群において発生した。
【0191】
48週間にわたって報告されたAEの種類及びパターンは、プラセボ対照期間中に報告されたものと同様であった。少なくとも1つのAE、中断をもたらすAE、又はSAEを有する患者の割合は、グセルクマブ及びアダリムマブ群において同様であった。16〜48週の間に、重篤な感染症は、グセルクマブ群の2人の患者(すなわち、1人の蜂巣炎及びもう1人の術後創傷感染症を伴う大腿膿瘍)、及びアダリムマブ群の2例(すなわち、1例が腹部膿瘍であり、もう1例が早期に報告された腹壁蜂巣炎を有する患者の致命的結果に至ったブドウ球菌性肺炎であった)で報告された。全体的な感染症及び抗生物質治療を必要とする感染症は、治療群にわたって同率に発生した。試験中に、活動性結核又は日和見感染症のAEは報告されなかった。2例の追加のNMSC(すなわち、それぞれグセルクマブ及びアダリムマブ群内内で1例ずつのBCC)及び2例の悪性腫瘍(すなわち、グセルクマブ群の前立腺癌及び乳癌)が、48週間で報告された。16週後に追加のMACEは発生しなかった。1例の自殺未遂が、アダリムマブ患者において報告された。カンジダ症及び好中球減少症の発生率は低く、グセルクマブ群とプラセボ群との間で同等であり(データは図示せず)、クローン病の事象は48週間には報告されなかった。
【0192】
48週間を通じて、ISRを有する患者の割合(2.2%対9.0%)及びISRに関連する注射の割合(0.5%対1.2%)は、アダリムマブと比較してグセルクマブで低く、ほとんどのISRは軽度であるとみなされた。臨床検査値異常発生率は低く、群間の差は認められなかった(データは図示せず)。グセルクマブに対する抗体を、44週間を通じて、26人/492人の患者(5.3%)で検出し、力価は、全体的に低かった(81%≦1:320)。抗体の発生と、有効性の低下又はISRの発生のいずれかとの間に明らかな関連性は観察されなかった(データは図示せず)。
【0193】
考察
VOYAGE1試験における所見は、以下の実施例2に記載されているVOYAGE2の結果と共に、グセルクマブ100mgの2回の注射(0週目及び4週目)並びに8週毎の維持療法が、中等症から重症の感染を効果的に治療することを確認した。グセルクマブは、2つの厳密な評価項目(IGA0/1及びPASI90)を使用して、16週目においてかなりの差でプラセボよりも優れていた。グセルクマブの作用の開始は急速であって、プラセボと比較して、2週目の早期に有意な反応の証拠を伴った。グセルクマブはまた、広く使用されかつ非常に有効な皮下TNF−α阻害剤であるアダリムマブよりも、IGA0/1、PASI90、及びPASI75の16週目の評価項目においても優れていた。奏効率は、グセルクマブによって16週を超えて向上し続けた。24週目及び48週目に、グセルクマブ群の全ての患者のおよそ半分が完全な排除(IGA0)を達成し、これは乾癬患者にとって最適なHRQoLに関連する。全変化に基づく、又はHRQoLに及ぼす最小の影響/影響がないこと、又は乾癬の症状若しくは徴候がないことを示す患者報告アウトカムの評価項目(PSSD及びDLQI)は、16週目でプラセボよりも優れた、かつ24週目及び48週目でアダリムマブよりも優れたグセルクマブの反応を実証した。
【0194】
本試験は、乾癬を治療するのに困難である身体の複数の部位を評価し、グセルクマブは、厳密な評価項目に基づく全ての部位において非常に有効であった。グセルクマブは、16週目にプラセボよりも優れており、24/48週目のアダリムマブよりも優れており、少なくとも75%のグセルクマブ治療患者における頭皮及び手/足の乾癬の完全又はほぼ完全な排除を示す。排除/最小指爪乾癬(f−PGA0/1)を有する患者の割合と、NAPSIにおける平均改善率との両方に基づいて、グセルクマブは、16週目にプラセボよりも優れていた。爪反応は、24週目及び48週目での実薬治療と同等であって、グセルクマブは、48週目にf−PGA0/1に関してアダリムマブよりも優れていた(75%対62%)。
【0195】
AE、SAE、及び臨床検査値異常の発生率及び種類は、16週を通じてグセルクマブとプラセボ群との間で、及び48週を通じてグセルクマブとアダリムマブ群との間でほぼ同等であった。重篤な感染症、悪性腫瘍、及びMACEの発生率は、治療群にわたって低かった。好中球減少症又はカンジダ症の発生率における顕著な差は、グセルクマブと対照群との間で観察されなかった。クローン病のAEはいずれの治療群においても生じず、1例の自殺未遂がアダリムマブ群で報告された。ISRを有する患者の注射の回数及び割合は、グセルクマブと比較して、アダリムマブでより高かった。この試験のサイズ及び持続時間は、稀な事象又は長い潜伏期間を有するものの評価を可能にしない場合があるが、長期にわたる治療は、進行中の試験の延長において評価されるであろう。
【0196】
VOYAGE1は、乾癬の病因におけるIL−23の役割を確認する。TNF−α阻害剤は多くの疾患において有効であり、TNF−αは、通常の全身性炎症及び免疫学的プロセスに関与する。IL−23経路の選択的標的化は、TNF−α遮断薬と比較した場合に、良好な安全性プロファイルを維持しながら、より高度な有効性を有する、乾癬により特異的なサイトカイン阻害を提供する。IL−23は、Th17細胞分化及び生存の重要な駆動体であり、IL−17Aの上流調節因子、乾癬の病因に関与する中心となる炎症性エフェクターサイトカインである。更に、IL−23は、他の細胞型による他のTh17サイトカイン(例えば、IL−22)の産生を刺激し、これには、先天性リンパ系細胞型3(ILC3)細胞及びγδT細胞が挙げられる。したがって、IL−23の阻害は、IL−17A、IL−22、及び他の細胞型の下流産生を阻止する。多くのIL−17A産生細胞は、生存のためにIL−23に依存するため、IL−23の阻害は、これらの病原性細胞の数を減少させ得る。これが効果の長い持続時間を説明し、抗TNF−α及び抗IL−17剤の両方と比較して、グセルクマブの便利な投与間隔を可能にし得る。
【0197】
この所見は、VOYAGE2からのものと共に、乾癬におけるアダリムマブと比較したグセルクマブの優れた有効性、頭皮、爪、及び手/足の局所疾患における有効性、並びに明確な安全性プロファイルを実証する。関連する治療、ウステキヌマブ(IL−12及びIL−23の両方を阻止する)に関して報告された長期安全性の所見を再確認することを考慮すれば、1年を通じた良好な安全性プロファイルは予想外ではない。試験の延長は、グセルクマブの有効性及び安全性を検討し続け、ウステキヌマブの試験に基づいて長期のIL−23遮断の理解を増大させるであろう。
【0198】
実施例2:VOYAGE2の結果
グセルクマブの治療可能性を確認するために、第3相VOYAGE1及びVOYAGE2試験は、プラセボ及びアダリムマブに対するグセルクマブの有効性及び安全性を評価した。VOYAGE1では1年間の継続治療を評価し、VOYAGE2では24週間の継続治療を評価し、28週間を超えた継続的維持療法の有効性と安全性も無作為化離脱アプローチを用いて評価した。加えて、VOYAGE2は、アダリムマブからグセルクマブへの移行を評価し、生物学的製剤を切り替える患者について臨床的に関連する情報を提供する。
【0199】
材料及び方法
患者
中等症から重症の尋常性型乾癬を有する成人(18歳以上の年齢)が適格であった。主要な組み入れ/除外基準は、上記VOYAGE1にまとめている。治験実施計画書は、各施設において治験審査委員会によって承認され、書面によるインフォームドコンセントが全ての患者によって提供された。
【0200】
実験計画
VOYAGE2は、2014年11月から2016年6月の間に世界中の115の施設で実施された、第3相、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ及びアダリムマブ比較対照試験(NCT02207244)であった。本試験は、プラセボ対照期間(0週〜16週)、実薬比較対照期間(0週〜28週)、及び無作為化離脱及び再治療期間(28週〜72週)から構成された。本明細書では、48週を通じた試験結果を提示する。患者を、ベースラインで、グセルクマブ100mgを、0、4、12、及び20週目に投与する群、プラセボを0、4、12週目に投与し、次いでグセルクマブを16週及び20週目に投与する群、又は、アダリムマブ80mgを0週目に、40mgを1週目に投与し、それ以降2週間毎に(q2W)23週を通じて投与する群に、2:1:1の比で無作為割り付けした。
【0201】
28週目に、乾癬の面積及び重症度の指標におけるベースラインからの90%を達成するグセルクマブ治療患者(PASI90、反応者)を、グセルクマブ又はプラセボに1:1の比で再無作為割り付けした。この試験において、不十分反応者は、治療からPASI90を達成しないと定義された。28週目のPASI反応における≧50%の喪失時に、患者をグセルクマブで再処置し、4週間後に別の用量を投与し、次いで以降q8wに投与した。グセルクマブの非反応者は、グセルクマブ治療を継続した。プラセボ→28週目のグセルクマブ非反応者は、グセルクマブのq8wを継続したが、反応者は、28週目から開始してプラセボのq8wを受けた。28週のPASI反応における≧50%の喪失時に、患者をグセルクマブで再治療し、続いて4週間後に別の用量を投与し、次いで以降q8wに投与した。アドリムマブ非反応者は、28週目にグセルクマブを開始し、4週間後に別の用量を投与し、次いで以降q8wに投与した。アダリムマブ反応者はプラセボを受け、28週のPASI反応における≧50%の喪失時に、グセルクマブ投与を開始し、4週間後に別の用量を投与し、次いで以降q8Wに投与した。盲検を維持するために、グセルクマブ及びアダリムマブのプラセボの両方を必要に応じて投与した。
【0202】
有効性及び安全性評価
有効性を、24週を通じて評価し、安全性を28週を通じて評価した。全身性及び局所性乾癬、患者報告アウトカム、及び安全評価を含む重要な有効性は、VOYAGE1試験において詳細に説明されている。加えて、本試験では、医学アウトカム試験36項目ショートフォーム(SF−36)をこの試験で評価した。
【0203】
試験評価項目
複合主要評価項目は、グセルクマブとプラセボ群とを比較して、16週目に排除された(0)又は最小の(1)のIGAスコアを達成する患者の割合、及び16週目にPASI90の反応を達成する患者の割合であった。主な副次的評価項目も測定した。頭皮、指の爪、及び手/足を評価する局所性乾癬評価項目は、他の箇所で詳細に記載されている。
【0204】
統計分析
全ての無作為割り付けされた患者は、その割り当てられた治療群に従って、主要分析及びいくつかの副次的分析に含められた。主副次的評価項目の治療離脱に対する維持投与量を評価するために、第2の無作為割り付けを受け、28週後にPASI評価を行った全ての患者を分析に含めた。
【0205】
複合主要評価項目及び2値主副次的評価項目を、治験責任医師の施設によって層別化されたコクラン−マンテル−ヘンツェル(CMH)カイ二乗検定を使用して分析した(α=0.05)。分散分析モデルを使用して、連続反応パラメータを、共変量としてサイトと比較した。PASI90反応の喪失までの時間について、サイトによって層別化されたログランク検定を使用した。
【0206】
有効性の欠如、又は乾癬の悪化のAEにより試験治療を中断した患者、又は乾癬を改善することができるプロトコル禁止薬剤/療法を開始した患者は、治療失敗とみなされた。16週より前に治療失敗基準を満たした患者、及び16週目の評価に戻らない患者は、16週の主要評価項目に対する非反応者とみなされた。プラセボに無作為割り付けされた患者の場合、16週目/16週後にグセルクマブを受けるようにクロスオーバーする患者のみが、16週後の有効性分析に含まれた。
【0207】
全体的な第一種過誤率を制御するために、主要な分析及び主副次的分析を固定された順序で試験し、第1の主副次的評価項目は、複合主要評価項目が満たされた場合にのみ試験され、後続する評価項目(複数可)は、順序内の先行する評価項目が満たされた場合にのみ試験された。
【0208】
安全性分析には、試験薬の少なくとも1回の投与を受けた全ての患者が含まれた。有害事象及び重篤な有害事象(SAE)を、受容した治療に従ってグループ分けした。グセルクマブに対する抗体を分析した。
【0209】
結果
患者の内訳及びベースラインの人口統計的特性
全1279人の患者をスクリーニングし、992人を、グセルクマブ(n=496)、プラセボ(n=248)、又はアダリムマブ(n=248)を受ける群に2:1:1に無作為に割り付けした(図2)。全体として、患者の9.7%(96/992)は、48週を通じて試験薬を中断した(グセルクマブ:7.9%、プラセボ:11.7%、アダリムマブ:11.3%)。ベースライン人口統計的及び疾患特性は、群間で概ね同等であった。
【0210】
有効性
グセルクマブは、複合主要評価項目及び全ての主副次的評価項目に対してプラセボ及び/又はアダリムマブの両方よりも優れていた(全て、p<0.001)。
【0211】
プラセボ対照期間(0〜16週)
16週目に、グセルクマブ患者の有意に大きい割合は、プラセボ患者と比較して、排除された(0)又は最小の(1)IGAを達成し(84.1%対8.5%、p<0.001)、及びPASI90反応を達成した(70.0%対2.4%、p<0.001)(複合主要評価項目)。有意に高いPASI改善率は、プラセボ患者に対してグセルクマブで2週目ほどの早期において観察された(p<0.001)。加えて、16週目には、プラセボ患者と比較して、有意に高い割合のグセルクマブ患者が、PASI75及びPASI100反応を達成した。グセルクマブ患者は、16週目に、プラセボと比較して、ss−IGA、f−PGA、NAPSI、及びhf−PGAを含む全ての局在性乾癬アウトカム評価においてより大きな改善を達成した。VOYAGE1と同様に、グセルクマブは、SF−36に加えて、皮膚の状態に関するアンケート(DLQI)及び乾癬の症状及び徴候に関する日誌(PSSD)を含む全ての患者報告アウトカムにおいて、16週目にプラセボよりも優れていた。
【0212】
実薬比較期間(0〜24週)
グセルクマブ群の有意に大きい割合の患者が、16週目にIGA0/1、PASI90、及びPASI75の反応を達成した。24週目に、アダリムマブ患者に対してグセルクマブにおいて、IGA0(51.5%対31.5%)、IGA0/1(83.5%対64.9%)、PASI90(75.2%対54.8%)、及びPASI100(44.2%対26.6%)に関して有意に高い奏効率が維持された。VOYAGE1と一致して、同等であったf−PGA0/1及びNAPSIにおける改善率を除いて、局在性乾癬疾患スコアにおけるより大きな改善が、アダリムマブ患者と比べてグセルクマブ患者において24週目に観察された。24週目に、DLQI0/1、PSSD症状及び徴候スコアにおける平均変化を達成する患者の割合、0のPSSD症状スコア及び0の徴候スコアを達成する患者の割合は、アダリムマブ群よりもグセルクマブ群において有意に大きかった(p<0.001)。
【0213】
無作為化離脱及び再治療期間(28〜48週)
PASI90反応は、プラセボに再無作為割り付けされた反応者(離脱群)に対して、グセルクマブを継続するグセルクマブの28週の反応者(維持群)においてより良好に維持された。PASI90反応の喪失までの時間中央値は、離脱群に無作為割り付けされた患者では15.2週であった。28週目にグセルクマブから離脱した患者の中で、PASI90の奏効率は、32週目で維持群から分岐し始めた。48週を通じて、維持患者の88.6%は、離脱患者の36.8%と対比して、PASI90の反応を持続した。加えて、48週目には、臨床反応(IGA、PASI)は、離脱群よりも維持群で有意に高かった(p<0.001)。ベースラインからのDLQI及びPSSD症状若しくは徴候スコアにおける改善もまた、離脱群に対して維持群において、48週目に有意に大きかった(両方ともp<0.001)。48週を通じて、少数の患者(n=16)をグセルクマブで再治療した。
【0214】
アダリムマブ非反応者のグセルクマブへの切り替え
全体として、112人のアダリムマブ非反応者は、28週目(最後のアダリムマブ投与から5週間後)にグセルクマブを開始した。これらの患者において、PASI90(ベースラインに対して)及びPASI100の奏効率は切り替え後に増加し、48週目にそれぞれ66.1%及び28.6%に達した。
【0215】
安全
プラセボ対照期間(0〜16週)
少なくとも1つのAE、中断をもたらすAE、及びSAEを有する患者の割合は、グセルクマブとプラセボ群との間で同等であった。最も一般的に報告された事象は、鼻咽頭炎、頭痛、及び上気道感染症であった。感染症の発生率、治療を必要とする感染症、及び重篤な感染症は、群間で同様であった。悪性腫瘍又は非黒色腫皮膚癌(NMSC)は、16週を通じて報告されなかった。1つの主要な有害心血管事象(MACE)(心筋梗塞[MI])は、アダリムマブ群で発生した。グセルクマブ患者と比べて、より高い割合のアダリムマブ患者が、注射部位反応(ISR)(6.9%対2.6%)及びISRをもたらす注射部(1.5%対0.9%)を有した。全ての注射部位反応は軽度であった。
【0216】
実薬比較期間(0〜28週)
AEの種類は、プラセボ対照期間中に報告されたものと同様であった。少なくとも1つのAE、中断をもたらすAE、及びSAEを有する患者の割合は、グセルクマブとアダリムマブ群との間で同等であった。感染症及び治療を必要とする感染症もまた、グセルクマブとアダリムマブ群との間で同等であった。3例の重篤な感染症が、それぞれグセルクマブ群(気管支炎、紅斑、及び軟組織感染)及びアダリムマブ群(結核の2つの症例[1つはびまん性]、及び1つの注射部位膿瘍)で報告された。悪性腫瘍(前立腺癌)1例及びNMSC2例(1つはグセルクマブ群における扁平上皮癌[SCC]であり、1つはプラセボ→グセルクマブ群における基底細胞癌[BCC])が報告された。MACE2例(それぞれグセルクマブ群及びアダリムマブ群のそれぞれで1例ずつのMI)が報告された。
【0217】
無作為化離脱及び再治療期間(28〜48週)
28〜48週目から、AEのために中断した患者はおらず、1例の重篤な感染症(虫垂炎)が、維持群で報告された。追加の悪性腫瘍、NMSC、又はMACEは報告されなかった。16人の再治療された患者の中でAEは報告されなかった。
【0218】
48週を通じての追加の安全性
48週目を通して、1例の追加のBCC及び皮膚の1例の追加のSCCが、プラセボ→グセルクマブ群(データは図示せず)で生じた。28週〜48週の間に、1例の追加のMACE(MI)が、プラセボ→グセルクマブ患者において報告された。重篤な感染症、悪性腫瘍、又はMACEの事象は、アダリムマブ→グセルクマブ群では生じなかった。死亡、日和見感染、過敏症、又はアナフィラキシー反応は、48週を通じて発生しなかった。臨床検査値異常発生率は低く、48週を通じて治療群間で同等であった。グセルクマブに対する抗体を、48週を通じて、57人/869人(6.6%)の患者で検出し、力価は、全体的に低かった(88%≦1:160)。抗体の発生と、有効性の低下又はISRの発生のいずれかとの間に明らかな関連性は観察されなかった(データは図示せず)。
【0219】
考察
VOYAGE2は、グセルクマブが、広範な中等症から重症の乾癬集団の治療において非常に有効であることを裏付けるVOYAGE1の結果を確認する。グセルクマブは、排除された/最小のIGA及びPASI90反応の16週の複合主要評価項目においてプラセボよりも優れていた。グセルクマブはまた、排除された/最小のIGA、PASI75/90の16週の評価項目において、及び24週目までの排除されたIGA並びにPASI90/100でアダリムマブよりも優れていた。グセルクマブはまた、頭皮、爪、及び手/足を含む、困難な局在性乾癬を成功裏に治療した。治験医師により評価された改善は、VOYAGE1で評価された患者報告アウトカム(DLQI及びPSSD、乾癬の徴候及び症状を測定する、新たに検証された度量)において評価された患者報告アウトカムの改善に反映された。加えて、生活の質(QoL)(SF−36)の有意な改善が、VOYAGE2で報告された。VOYAGE1及びVOYAGE2からの組み合わされた堅牢かつ包括的な結果は、プラセボ及びアダリムマブの両方に対する優位性を示した。
【0220】
乾癬のための他の生物製剤の所見と一貫して、VOYAGE2は、維持療法が中断療法よりも優れていること、及びIL−23の遮断が乾癬の根底の機構を逆転させないことを実証した。患者が48週間にわたって治療を継続したVOYAGE1とは異なり、VOYAGE2では、28週目にPASI90の反応者を、グセルクマブを継続するか、プラセボを受けるかに無作為割り付けした。グセルクマブ治療患者は、PASI90、PASI100、及び排除されたIGAを含む反応を維持し、一方プラセボ患者では、乾癬はゆっくり再発し、QoLは低下した。離脱患者についてのPASI90反応の喪失までの時間中央値は15.2週であり、これは、中断発生率が乾癬生物製剤の1年を通じての使用で有意である(多くの場合、>50%)ことに関連している。
【0221】
グセルクマブはまた、アダリムマブ非反応者(PASI90を達成しなかった)の治療においても有効であった。患者は、最後のアダリムマブ注射の5週間後の28週目で、反応者/非反応者として分類された。グセルクマブ治療後20週目に、グセルクマブに切り替えた112人のアダリムマブ非反応者のうちの2/3が、PASI90(ベースラインに対して)を達成した。準最適な反応を有する患者が治療目的を達成する割合を決定することは、より有効な乾癬療法が市場に入り続けているため、より大きな排除を求めている患者の治療判断に有意な影響を与える可能性がある。グセルクマブのより広範な有効性の作用機序は未知であるが、乾癬において、腫瘍壊死因子−α(CD163+マクロファージ/CD11c+DCから放出される)及びIL−17A(好中球、マスト細胞、及びTh17細胞から放出される)は、ケラチノサイトに主に作用するエフェクターサイトカインである。IL−23は、T細胞及び好中球の活性化を促進し、IL−17産生を誘導するため、乾癬のための包括的なマスターサイトカインとして見ることができる。更に、IL−23はTh17及び他の先天性細胞を誘導して、IL−22(乾癬の病因に関与する別のサイトカイン)を生成する。したがって、グセルクマブなどの抗体を用いてIL−23経路を標的化することは、より高い有効性及び耐久性のある反応を提供することができる。
【0222】
本試験におけるグセルクマブの安全性プロファイルは、VOYAGE1と一貫していた。AE、SAE、及び臨床検査値異常の発生率及び種類は、16週を通じてプラセボと、及び28週を通じてアダリムマブと同等であった。48週を通じて、重篤な感染症、悪性腫瘍、及びMACEの発生率は、治療群にわたって低かった。全体として、TBの2症例があり、両方ともアダリムマブ患者において存在した。グセルクマブ治療患者において5例の悪性腫瘍があり、そのうちの4例はNMSCであった(BCCが2例及びSCCが2例)。ISRは、アダリムマブ患者でより頻繁に生じた。グセルクマブの安全性プロファイルが好ましい一方で、試験のサイズ及び持続時間は、希少事象を検出するのに不十分であった。
【0223】
VOYAGE2にはいくつかの他の制限が存在する。VOYAGE2におけるグセルクマブのアディリムマブとの比較は24週間に制限されたが、VOYAGE1は、アダリムマブとの比較を48週間に延長した。より重要なことに、48週目に、実薬療法から離脱したVOYAGE2の患者では、治療の有効性及び安全性の評価を可能にするのに十分な反応を失ったものはわずかであった。しかしながら、これらの数は、後の時点で増加する。
【0224】
結論として、VOYAGE2は、グセルクマブが、0、4週目に、及び8週毎に単回の100mgの注射の簡便な薬物投与法で投与された場合、アダリムマブよりも優れた有効性及び同等の安全性を示したVOYAGE1の結果を裏付ける。これらの結果は、グセルクマブが乾癬治療の選択肢に追加される重要なものであり得ることを示唆している。加えて、VOYAGE2は、最も高いレベルの反応を維持するためにグセルクマブによる継続療法の必要性、並びにアダリムマブからグセルクマブへの成功裏の移行の必要性に関する重要なデータを提供する。
【0225】
【表2】
【0226】
中等症から重症の尋常性乾癬患者における抗IL−23特異的抗体グセルクマブの第2相試験で観察された有効性は、グセルクマブが、ウステキヌマブ(配列番号149〜151の重鎖CDR配列、配列番号152〜154の軽鎖CDR配列、配列番号155の重鎖可変領域及び配列番号156の軽鎖可変領域を有する抗IL−12/23p40抗体)に対する反応が不十分な患者に有効であるかもしれないという仮説を導いた。したがって、NAVIGATEでは、以前にウステキヌマブに対して不十分な反応を示した、グセルクマブで治療された患者の皮膚奏効率を評価した。この問いに厳密に答えるために、非盲検ウステキヌマブ導入とそれに続く一次非反応者の無作為化による強化実験計画を採用した。
【0227】
方法の概要:この第3相無作為化二重盲検試験では、871人の患者が、0週目及び4週目に非盲検ウステキヌマブ(45mg又は90mg)の投与を受けた。16週目にウステキヌマブに対する反応が不十分であった268人の患者(治験医師による全般的評価[IGA]≧2)、排除されていないか又はほとんど排除されていない患者を、グセルクマブ100mg又はウステキヌマブ継続に無作為割り付けし(二重盲検)、16週目にIGA0/1の患者585/871人(67%)は、非盲検ウステキヌマブを継続した。主要評価項目は、28週目から40週目までに無作為割り付けされた患者がIGA0/1及び≧2グレード改善(16週目から)を達成した来院回数であった。
【0228】
結果の概要:28〜40週目に患者がIGA0/1及び≧2グレードの改善を示した平均来院回数は、無作為化ウステキヌマブ群に対比して、グセルクマブ群で有意に多かった(1.5対0.7、P<0.001)。IGA0/1及び≧2グレードの改善(16週目から)、PASI75、PASI90、及びPASI100を有する患者の割合は、52週を通じて、無作為化ウステキヌマブ群に対比してグセルクマブ群においてより大きかった。16週目以降、グセルクマブ群の64.4%及び無作為化ウステキヌマブ群の55.6%の患者は、1つ以上のAEを有した。1つ以上の重篤なAE(SAE)を有する患者の割合は、グセルクマブについて6.7%(n=9)、及びウステキヌマブについて4.5%(n=6)であった。
【0229】
結論概要:16週目までにIGAが「排除された」又は「最小」の反応を達成しなかったウステキヌマブ治療患者は、グセルクマブへの切り替えから有意な利益を得た。
【0230】
背景:インターロイキン(IL)−23/IL−17は、乾癬の病態生理学の根底にある慢性炎症を引き起こす主要経路である。ウステキヌマブは、IL−12及びIL−23を標的とするモノクローナル抗体であり、現在、尋常性乾癬患者に対して承認されている。グセルクマブは、新規抗インターロイキン23モノクローナル抗体であり、最近の2つの第3相試験において、尋常性乾癬患者において高い有効性を示した。
【0231】
患者及び方法
患者。成人(18歳以上)が、6か月以上中等症から重症の尋常性乾癬と診断され、乾癬の面積及び重症度の指標(PASI)スコアが≧12、治験医師による全般的評価(IGA)スコアが≧3、体表面積(BSA)病変が≧10%の場合に適格であり、かつ乾癬の光線療法又は全身治療の候補者であった。
【0232】
患者は、重度の、進行性の、若しくは制御されていない医学的状態を有したか、又は5年以内に(非黒色腫皮膚癌を除く)、悪性疾患又は悪性疾患の病歴を有した場合、患者は不適格であった。患者は、活動性TBの病歴又は症状がある場合、又はB型肝炎について陽性又はC型肝炎に対する抗体について血清陽性と試験された場合、除外した。患者は、初回試験薬投与の6か月以内に、グセルクマブ又はウステキヌマブ、(グセルクマブ及びウステキヌマブを除く)IL−12、IL−17、若しくはIL−23を標的とする治療薬による前治療、抗TNF療法(初回試験薬投与の3か月以内又は5半減期内)による前治療、又は全身性免疫抑制剤若しくは光線療法(初回試験薬投与の4週間以内)による前治療を受けることができなかった。
【0233】
試験デザイン。NAVIGATEは、2014年10月〜2016年5月に10か国の100施設で実施された第3相無作為化二重盲検試験であった。この試験は、16週間の非盲検期間、28週間の無作為化実薬治療期間、及び16週間のフォローアップ期間を含んでいた。全ての患者は、0週目と4週目に非盲検ウステキヌマブ(体重≦100kgの患者:45mg、体重>100kgの患者:90mg)の投与を受けた。16週目にIGA≧2(すなわち、ウステキヌマブに対する不十分な反応)の患者を、16、20週目に、それ以降8週間毎に100mgのグセルクマブに無作為割り付けし、又は16週目に、それ以降12週間毎にウステキヌマブ継続に無作為割り付けした。ベースライン体重(≦100kg対>100kg)及び試験部位によって層別化された患者を用いて、対話型ウェブ応答システムを用いて、無作為化を実施した。プラセボ注射を投与して、盲検を維持した。IGAが0又は1の患者に、16週目に、それ以降12週間毎に非盲検ウステキヌマブを投与し続けた。ウステキヌマブ注射及びグセルクマブ注射は、それぞれ40週目及び44週目に投与した。52週にわたって有効性について、及び60週目にわたって安全性について、患者を追跡した。
【0234】
この試験は、ヘルシンキ宣言及び医薬品臨床試験の実施基準の原則に従って実施した。プロトコルは各サイトの治験審査委員会/倫理委員会によって承認された。全ての患者が、試験に関連した治療を実施する前に、書面によるインフォームドコンセントを提出した。
【0235】
試験評価。IGA(排除された[0]、最小[1]、軽度[2]、中程度[3]、又は重度[4])及びPASI(0〜72の尺度、より高いスコアはより重篤な疾患を示す)を使用して、臨床的有効性を評価した。主要評価項目は、無作為割り付けされた患者(すなわち、16週目のウステキヌマブに対する反応が不十分[IGA≧2]な患者)のうち、16週目と比較して、28週目から40週目までに患者が、排除された(0)又は最小(1)のIGAスコア及び≧2グレードの改善を達成した来院回数であった。無作為割り付けされた患者間の主な副次的評価項目は、患者が28週目から40週目までに0のIGAスコアを達成した来院回数、患者が28週目から40週目までにPASIスコアの≧90%の改善(PASI90)を達成した来院回数、及び16週目と比較して、28週目に、IGAが0/1及び≧2グレードの改善を達成した患者の割合であった。患者報告アウトカム評価としては、皮膚の状態に関するアンケート(DLQI)、総合的な生活の質を評価するための皮膚科学特有の度量(スケール0〜30)、より高いスコアは、生活の質に対する疾患のより大きな影響を示す、乾癬の症状及び徴候に関する日誌(PSSD)、乾癬の症状の重症度(痒み、疼痛、刺痛、灼熱感、皮膚の張り)を測定する自記式質問票(0〜10)、過去7日間にわたる徴候(皮膚の乾燥、ひび割れ、鱗屑、脱落又は剥離、発赤、及び出血)、より高いスコアがより高い疾患重症度を示す、が挙げられる。
【0236】
60週目まで、患者を、有害事象(AE)、バイタルサイン、及び臨床検査値(化学及び血液学)について監視した。
【0237】
統計分析:主要分析及び主な副次的分析を、16週目の無作為割り付けされた患者に対して行った。無作為化治療群によってデータを分析した。有効性の欠如、又は乾癬の悪化のAEにより試験治療を中断した患者、又は乾癬を改善することができるプロトコル禁止薬剤/療法を開始した患者は、その時点からその後非反応者とみなされた。無作為割り付けされた患者についての欠測値は、カテゴリー変数の非反応として帰属させた。無作為化治療群における主要評価項目及び主な副次的評価項目を、ベースライン体重(≦100kg、>100kg)で層別化したコクラン−マンテル−ヘンツェル検定を用いて比較した。サンプルサイズ(130人の患者/治療グループ)は、0.05の有意水準(両側)で主要評価項目についてウステキヌマブとグセルクマブの治療差を検出する、約98%の検出力を持つように選択した。
【0238】
安全分析には、試験薬の1回以上の投与を受けた全ての患者が含まれ、AEを、実際に受けた治療にしたがってまとめた。
【0239】
結果
試験集団。合計872人の患者を登録し、871人が非盲検ウステキヌマブの投与を受けた。無作為化群の患者のうちのより高い割合が、以前抗TNF療法を受けたことを除いて、ベースライン人口統計的及び疾患特性は、無作為化治療群及び非無作為化治療群において全体的に同様であった(表1)。
【0240】
18人の患者が、16週目までにウステキヌマブを中止した(図1)。16週目に、268人の患者が、≧2のIGAスコアを有し、二重盲検法で100mgグセルクマブ(n=135)又はウステキヌマブ(n=133)に無作為に割り付けられた。585/871(67.2%)の患者は0/1のIGAスコアを有し、非盲検ウステキヌマブ(非無作為化群)を継続した。無作為割り付けされた患者のうち、25名(グセルクマブ、n=9[6.7%]、ウステキヌマブ、n=20[15.0%])は、16〜44週目から試験薬を中止した。非盲検ウステキヌマブを継続した17人の患者(2.9%)は、16〜40週目から治療を中止した。
【0241】
臨床的有効性。非盲検導入期間中、16週目に68.5%(589/860)の患者がIGAスコア0又は1、73.7%がPASI75、49.0%がPASI90を達成した。
【0242】
無作為割り付けされた患者の中で、グセルクマブ群は、(主要評価項目を)ウステキヌマブ群と比較すると、16週目と比較して、28週目から40週目までに患者が、0又は1のIGAスコア及び少なくとも2グレードの改善を有する平均来院回数が有意に多かった(1.5対0.7、p<0.001)(表2)。全ての主な副次的評価項目も達成された。患者がベースラインに対比してPASI90を有する平均来院回数は、28週目〜40週目では、無作為化ウステキヌマブ群よりもグセルクマブ群のほうが有意に多かった(2.2対1.1、P<0.001)。患者が28週目〜40週目に0のIGAスコアを示した平均来院回数は、無作為化ウステキヌマブ群と比較して、グセルクマブ群の患者で有意に多かった(0.9対0.4、P<0.001)。16週目と比較して、28週目に、0又は1のIGAスコア及び≧2グレードの改善を有する患者の割合は、無作為化ウステキヌマブ群(14.3%、p=0.001)よりもグセルクマブ群(31.1%)で有意に高かった(表2)。
【0243】
無作為割り付けされた患者の中で、16週目と比較して0又は1のIGAスコア及び≧2グレードの改善を有する患者の割合、及びベースラインと比較してPASI75/90/100応答を達成した患者の割合は、20週目から52週目までで、無作為化ウステキヌマブ群よりもグセルクマブ群で、一貫して数値的に高かった(図2)。グセルクマブが無作為割り付けされた患者では、16週目から奏効率が上昇し、36週目(無作為化後20週目)に最大に達した。無作為化ウステキヌマブ群における奏効率は、16週目からわずかに増加し、32週目にプラトーに達し、12週毎に周期的に反応が喪失した。両群の反応は、全体的に52週にわたって維持された(図2)。群間の反応の分離は、20週目ほどの早期(無作為化後4週目)に起こり、経時的に増加した。
【0244】
合計585人の患者(67.2%)が16週目に0又は1のIGAスコアを有し、非盲検ウステキヌマブを継続した。52週目に、これらの患者の81.1%がこの反応を維持し、42.6%が0のIGAスコアを有していた。非無作為化ウステキヌマブ群におけるほぼ全ての患者が16週目にPASI75を有し、69.7%がPASI90を有し、27.2%がPASI100を有した。これらの水準を52週にわたって維持した。
【0245】
患者報告アウトカム評価。16週目に、各無作為化群の131人の患者がDLQIスコア>1を有した(表2)。これらの患者のうち、ウステキヌマブ群と比較して、有意に高い割合のグセルクマブ群の患者が、52週目に、0又は1のDLQIスコアを有していた(38.8%対19.0%、p=0.002)。16週目にPSSD徴候スコア>0又はPSSD症状スコア>0を有していた無作為割り付けされた患者のうち、ウステキヌマブ群と比較して、有意に高い割合のグセルクマブ群の患者がそれぞれ、52週目に0のPSSD徴候スコア又は0の症状スコアを有していた(表2)。
【0246】
非盲検ウステキヌマブ導入群における有害事象(0週目〜16週目)。初期非盲検期間中に1回以上のウステキヌマブ投与を受けた871人の登録患者のうち、254人(29.2%)が16週目までに1つ以上のAEを経験した(表3)。最も一般的なAEは、鼻咽頭炎(5.4%)及び上気道感染症(3.8%)であった。11人の患者(1.3%)が1つ以上のSAEを有していた。2人の患者が重篤な感染症(肺炎及び肛門膿瘍)を報告した。悪性腫瘍は、2人の患者(両方とも基底細胞癌)で発生した。日和見的感染又は活動性TBの症例、主要な有害心血管事象又は死亡は、16週間を通じて発生しなかった。
【0247】
無作為化グセルクマブ群及びウステキヌマブ群における有害事象(16〜60週)。2つの無作為化群では、16週目から60週目までに、64.4%のグセルクマブ群の患者及び55.6%のウステキヌマブ群の患者が、少なくとも1つのAEを有した(表3)。感染症は、両方の無作為化群で最も一般的な有害事象であった(グセルクマブ、41.5%、ウステキヌマブ35.3%)。グセルクマブ群におけるAEの全体的なより高い発生率は、鼻咽頭炎及び上気道感染症のより高い発生率に関連しているように思われた。しかし、経口又は非経口抗生物質療法を必要とする感染症の割合は、無作為化群間で類似していた(グセルクマブ:15.6%、ウステキヌマブ:9.8%)。
【0248】
無作為化群では、9人(6.7%)のグセルクマブ治療患者及び6人(4.5%)のウステキヌマブ治療患者において、SAEが報告された(表3)。1つの重篤な感染症が発生した(グセルクマブ群の敗血症性関節炎)。日和見感染症又は活動性TBの症例は報告されなかった。2つの悪性腫瘍が報告された(グセルクマブ群において、膀胱の移行上皮細胞癌及び頸部の扁平上皮癌、由来不明)。3人の患者が心筋梗塞を発症した(グセルクマブ群:1人の女性、70歳、及び1人の男性、53歳、ウステキヌマブ群:1人の男性、66歳、3人の患者全員が少なくとも2つの既知の心血管危険因子を有していた。死亡は発生しなかった。注射部位反応は、16週目〜40週目で共通ではなく、重度ではなかった。アナフィラキシー又は血清病様反応又はクローン病のAEは存在しなかった。
【0249】
非盲検ウステキヌマブ継続投与群における有害事象(16週〜60週)。非無作為化ウステキヌマブ群における最も一般的なAEは、鼻咽頭炎及び上気道感染症であった(表3)。
【0250】
20人の患者(3.4%)は、16〜60週目に1つ以上のSAEを有していた。この群の5人の患者は、16週後に重篤な感染症を有し(虫垂炎、精巣上体炎、歯周炎、脊椎傍膿瘍、それぞれが1人の患者に発生した、卵管炎及び尿路感染症は、両方とも同じ患者に発生した)、日和見感染症又は活動性TBの症例はなかった。4つの悪性腫瘍、すなわち胆管癌、致死性転移性膵臓癌、基底細胞癌、及び皮膚の扁平上皮癌が生じた。1人の患者は急性心筋梗塞を有しており、この患者は、複数の既知の危険因子の病歴を有していた。1人が死亡した(前述の転移性膵臓癌患者)。注射部位反応の発生率は低く(0.3%)、どれも重度ではなかった。アナフィラキシー又は血清病様反応又はクローン病のAEは存在しなかった。
【0251】
考察
この対照第3相試験は、グセルクマブが、ウステキヌマブで最適な臨床有効性を達成しなかった中等症から重症の乾癬患者の治療に有効であることを検証する。ウステキヌマブは他の任意の治療薬と同様に、中等症から重症の乾癬の治療に非常に有効であるが、全ての患者が乾癬の排除又はほぼ完全な排除に達するわけではない。最近の研究により、IL−23を選択的に標的とするモノクローナル抗体であるグセルクマブは、中等症から重症の乾癬を有する成人において実質的な有効性を有し、ウステキヌマブと比較してより有効であり得ることが確立されている。本明細書中に記載される結果は、ウステキヌマブ不十分反応者が、グセルクマブ対継続ウステキヌマブに無作為割り付けされた場合、グセルクマブは、患者が16週目と比較して、0/1のIGAスコア及び≧2グレードの改善、排除のIGAスコア及びPASI90反応を有した28週目〜40週目の平均来院回数を含めて、測定された全評価項目にわたってウステキヌマブより優れていたことを実証した。経時的に、グセルクマブはまた、第16週目〜第52週目で、臨床的有効性を達成した患者の割合及び患者報告アウトカム評価項目においても優れていた。この集団が、非常に有効な療法であるウステキヌマブに対して不十分な反応を示したことを考慮すると、この結果は重要であり、皮膚科医にウステキヌマブからグセルクマブに切り替えるアプローチを提供する。
【0252】
STELARAの不十分反応者におけるグセルクマブの優位性を厳密に実証するために、ウステキヌマブの不十分反応者に対する強化計画を使用し、不十分反応者を確立するための、病歴よりも堅牢な方法である、厳格な評価項目を使用した。ウステキヌマブの不十分反応者も16週後に改善し続けたため、ウステキヌマブを継続するか、又はグセクルマブを開始するかのいずれかに、患者を無作為割り付けすることが必要であった。NAVIGATEで評価されたウステキヌマブ投与レジメンは、世界中のほとんどの地域で承認された投与レジメンと一致しており、したがって、用量の漸増は認められなかった。この試験では、より高い有効性に対する患者の要望と一致させて、比較的高いレベルの有効性(IGA0/1、排除されたか又はほぼ排除)を利用して、ウステキヌマブ反応者を定義した。2種類の評価項目、すなわち、患者が高度の反応を得た来院回数、及び経時的に高水準のPASI及びIGA反応を達成した患者の割合、を使用した。前者は、全ての来院における応答の一貫性を評価し、それぞれの投与レジメンから生じる2つの生物製剤の異なるピーク濃度とトラフ濃度に対処するのに役立つ。後者の評価項目である特定の来院時にIGA及びPASI反応を有する患者の割合は、より直感的に、容易に解釈される。
【0253】
使用した評価項目、反応が達成された来院回数、又は経時的に反応を達成した患者の割合にかかわらず、アウトカムは一貫してグセルクマブに対してより高い有効性を示した。無作為化群では、PASI75/90/100の奏効率は、グセルクマブ群のほうが高く、群間の分離は20週目(初回ギセルクマブ投与の4週後)に観察された。奏効率は32週目〜36週目にピークに達し、52週にわたって全体的に維持された。ウステキヌマブのような効果的な薬剤に対して不十分な反応を有していた患者集団であり、52週で50%のグセルクマブ患者が、24%のウステキヌマブ患者と比較して、PASI90に達したことを考慮すると、反応は高いものであった。ウステキヌマブによる初回反応は以前の試験と一致しており、反応は全体的に、非盲検治療期間中維持されていた。
【0254】
グセルクマブ及びウステキヌマブの安全性プロファイルは以前の試験と一致していた。無作為化対照期間中、主に鼻咽頭炎及び上気道感染症の発生率が高かったため、AEの発生率は、無作為化ウステキヌマブ群と比較してグセルクマブ群においてわずかに高かった。これらの群では重篤な感染症、過敏症反応、又はクローン病のAEは発生しておらず、経口又は非経口抗生物質を必要とする感染症の発生率は、無作為化群において同様であった。注射部位反応を有していたグセルクマブ治療患者はほとんどおらず、全員が軽度とみなされた。グセルクマブ負荷量を用いたにもかかわらず、ウステキヌマブからグセルクマブに移行した場合、SAE又は過敏性反応に関するシグナルは存在しなかった。グセルクマブの好ましい安全性プロファイルは、ウステキヌマブの明確な過去の安全性プロファイル及びウステキヌマブと比較してグセルクマブのより狭いMOAを考慮すると、驚くべきことではない。
【0255】
ウステキヌマブの不十分反応者におけるウステキヌマブと比較したグセルクマブの有効性の増加は、乾癬の病因におけるIL−23の中心的役割を更に確認し、インターロイキン−12による炎症誘発性Th1経路の活性化は、乾癬免疫病因にとって以前に考えられていたほどには重要ではないことを示唆している。ウステキヌマブと比較してグセルクマブの有効性が増加した潜在的な理由としては、より強力なIL−23の遮断、より頻繁な投与及びより高用量のグセルクマブ、及び/又はIL−12の阻害設定におけるTh17応答の増強を挙げることができる。
【0256】
試験の厳密な計画にもかかわらず、いくつかの制限がある。この試験の主要評価項目は、直感的には臨床反応に変換されない。しかし、それはIGAとPASIを用いた奏効率(皮膚科学試験における標準的な評価)によって補完されている。更に、主要評価項目は、28週目〜40週目の限られた期間を対象とした。
【0257】
結論として、対照強化計画試験では、ウセキヌマブで高い(又は十分な)反応を達成できなかった患者には、グセルクマブへの切り替えが有効な戦略であり、その移行は更なる安全性の懸念と関連しないことを実証した。
【0258】
【表3-1】
【0259】
【表3-2】
【0260】
【表4】
【0261】
【表5】
【0262】
【表6-1】
【0263】
【表6-2】
【0264】
【表6-3】
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【表6-4】
【0266】
【表6-5】
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【表6-7】
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【表6-29】
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【0300】
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【表6-44】
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【表6-45】
【0307】
【表6-46】
図1
図2
【配列表】
2020502261000001.app
【国際調査報告】