特表2020-502495(P2020-502495A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-502495二次元ガスクロマトグラフィーを使用して組成物の石油モデルを形成するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-502495(P2020-502495A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(54)【発明の名称】二次元ガスクロマトグラフィーを使用して組成物の石油モデルを形成するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20191220BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20191220BHJP
   G01N 30/46 20060101ALI20191220BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20191220BHJP
   G01N 30/78 20060101ALI20191220BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20191220BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20191220BHJP
   G01N 30/68 20060101ALI20191220BHJP
   G01N 30/70 20060101ALI20191220BHJP
【FI】
   G01N30/88 M
   G01N30/02 Z
   G01N30/46 A
   G01N30/86 F
   G01N30/86 M
   G01N30/78
   G01N30/72 A
   G01N30/74 Z
   G01N30/68
   G01N30/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2019-526512(P2019-526512)
(86)(22)【出願日】2017年10月3日
(85)【翻訳文提出日】2019年7月16日
(86)【国際出願番号】US2017054855
(87)【国際公開番号】WO2018093472
(87)【国際公開日】20180524
(31)【優先権主張番号】62/423,860
(32)【優先日】2016年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】フランク・チェン−ユー・ワン
(72)【発明者】
【氏名】チャンヨプ・ペク
(72)【発明者】
【氏名】クアンナン・チアン
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・エックス・ケリー
(57)【要約】
石油試料用組成物のモデルを形成する方法は、少なくとも1つの検出器と連結した二次元ガスクロマトグラフに石油試料を供給することを含むことが可能である。クロマトグラフは、第1および第2のカラムを有することが可能である。クロマトグラフは、それぞれ、第1および第2のカラムに相当する第1および第2ディメンジョン保持時間を表す、それぞれの検出器のデータを出力するように適応させることが可能である。石油試料に基づく、それぞれの検出器の第1および第2ディメンジョン保持時間を表すデータは、クロマトグラフから入手可能である。石油試料の分子成分は、少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1および第2ディメンジョン保持時間に基づいて識別することが可能である。石油試料の識別された分子成分は、少なくとも一部において、石油試料の組成物のモデルを形成するためのそれぞれの検出器の第1および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークに基づいて定量することが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油試料のための組成物のモデルを形成する方法であって、
少なくとも1つの検出器と連結された二次元ガスクロマトグラフに石油試料を供給することであって、前記二次元ガスクロマトグラフが、前記石油試料を分析するための第1のカラムおよび第2のカラムを有し、前記少なくとも1つの検出器が、前記第1のカラムにおいて検出された前記石油試料の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された前記石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを出力するように適応される、前記供給することと;
前記少なくとも1つの検出器のそれぞれから、前記第1のカラムにおいて検出された前記石油試料の1種以上の分子成分の前記第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、前記第2のカラムにおいて検出された前記石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得ることと;
少なくとも一部において、それぞれの検出器の前記第1ディメンジョン保持時間および前記第2ディメンジョン保持時間のデータに基づいて、前記石油試料の分子成分を識別することと;
少なくとも一部において、それぞれの検出器の前記第1ディメンジョン保持時間および前記第2ディメンジョン保持時間の積分ピークに基づいて、前記石油試料の組成物のモデルを形成するために、前記石油試料の前記識別された分子成分を定量することと;
少なくとも一部において、前記石油試料の組成物の前記モデルに基づき、前記石油試料の少なくとも1つの推定バルク特性を決定することと;
前記石油試料の少なくとも1つの実測バルク特性を測定することと;
少なくとも一部において、前記少なくとも1つの推定バルク特性および前記少なくとも1つの実測バルク特性を比較することに基づき、前記石油試料の組成物のモデルを整合させることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1ディメンジョン保持時間が、前記石油試料の分子成分のサイズまたは沸点の少なくとも1つに相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2ディメンジョン保持時間が、前記石油試料の分子成分の極性に相当する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの検出器が、マス・スペクトロメーター(MS)、フレーム・イオニゼーション・ディテクター(FID)、サルファー・ケミルミネセンス・ディテクター(SCD)、ナイトロジェン・ケミルミネセンス・ディテクター(NCD)、アトミック・エミッション・ディテクター(AED)、フレーム・フォトメトリック・ディテクター(FPD)、エレクトロン・キャプチャー・ディテクター(ECD)またはナイトロジェン・ホスホラス・ディテクター(NPD)の少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの検出器が、複数の検出器を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの検出器が、マス・スペクトロメーター(MS)、フレーム・イオニゼーション・ディテクター(FID)、サルファー・ケミルミネセンス・ディテクター(SCD)、ナイトロジェン・ケミルミネセンス・ディテクター(NCD)、アトミック・エミッション・ディテクター(AED)、フレーム・フォトメトリック・ディテクター(FPD)、エレクトロン・キャプチャー・ディテクター(ECD)またはナイトロジェン・ホスホラス・ディテクター(NPD)の少なくとも2つである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の検出器が、並列に連結されている、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一部において、前記石油試料の組成物の整合モデルに基づいて、精製プロセスを調整することをさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの推定バルク特性が、推定の蒸留収率および分布、推定の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量、または推定のアメリカ石油協会(API)比重の少なくとも1つを含み、前記少なくとも1つの実測バルク特性が、実測の蒸留収率および分布、実測の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量、または実測のアメリカ石油協会(API)比重の少なくとも1つを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記石油試料の組成物のモデルの前記分子成分に基づいて、テンプレートを作成することと;
前記二次元ガスクロマトグラフに第2の石油試料を供給することと;
前記少なくとも1つの検出器のそれぞれから、前記第1のカラムにおいて検出された前記第2の石油試料の1種以上の分子成分の前記第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、前記第2のカラムにおいて検出された前記第2の石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得ることと;
少なくとも一部において、前記テンプレートと、それぞれの検出器の前記第1ディメンジョン保持時間のデータと、それぞれの検出器の前記第2ディメンジョン保持時間のデータとに基づいて、前記第2の石油試料の分子成分を識別することと;
少なくとも一部において、前記テンプレートと、それぞれの検出器の前記第1ディメンジョン保持時間および前記第2ディメンジョン保持時間の積分ピークとに基づいて、前記第2の石油試料の組成物の第2のモデルを形成するために、前記第2の石油試料の前記識別された分子成分を定量することと;
前記第2の石油試料の組成物の第2のモデルを形成することと
をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1ディメンジョン保持時間が、前記第2の石油試料の分子成分のサイズまたは沸点の少なくとも1つに相当する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2ディメンジョン保持時間が、前記第2の石油試料の分子成分の極性に相当する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
石油試料の組成物のモデルを形成するためのシステムであり、
二次元ガスクロマトグラフであって、第1のカラムおよび第2のカラムを有する二次元ガスクロマトグラフと;
前記二次元ガスクロマトグラフに連結した少なくとも1つの検出器であって、前記少なくとも1つの検出器が、前記第1のカラムにおいて検出された前記石油試料の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、前記第2のカラムにおいて検出された前記石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを出力するように適応される、少なくとも1つの検出器と;
前記二次元ガスクロマトグラフに石油試料を供給するように適応された注入器と;
前記二次元ガスクロマトグラフに連結された制御器であって、該制御器が、
前記少なくとも1つの検出器から、前記第1のカラムにおいて検出された前記石油試料の1種以上の分子成分の前記第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、前記第2のカラムにおいて検出された前記石油試料の1種以上の分子成分の前記第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得るように;
少なくとも一部において、それぞれの検出器の前記第1ディメンジョン保持時間および前記第2ディメンジョン保持時間のデータに基づいて、前記石油試料の分子成分を識別するように;
少なくとも一部において、それぞれの検出器の前記第1ディメンジョン保持時間および前記第2ディメンジョン保持時間の積分ピークに基づいて、前記石油試料の組成物のモデルを形成するために、前記石油試料の前記識別された分子成分を定量するように、
適応された制御器と
を含む、システム。
【請求項14】
前記第1ディメンジョン保持時間が、前記石油試料の分子成分のサイズまたは沸点の少なくとも1つに相当する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2ディメンジョン保持時間が、前記石油試料の分子成分の極性に相当する、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの検出器が、マス・スペクトロメーター(MS)、フレーム・イオニゼーション・ディテクター(FID)、サルファー・ケミルミネセンス・ディテクター(SCD)、ナイトロジェン・ケミルミネセンス・ディテクター(NCD)、アトミック・エミッション・ディテクター(AED)、フレーム・フォトメトリック・ディテクター(FPD)、エレクトロン・キャプチャー・ディテクター(ECD)またはナイトロジェン・ホスホラス・ディテクター(NPD)の少なくとも1つである、請求項13、14または15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの検出器が、複数の検出器を含む、請求項13、14、15または16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の検出器が、並列に連結されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記制御器が、少なくとも一部において、前記石油試料の組成物のモデルに基づき、前記石油試料の少なくとも1つの推定バルク特性を決定するように、さらに適応される、請求項13〜18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記制御器が、少なくとも一部において、前記少なくとも1つの推定バルク特性および前記少なくとも1つの実測バルク特性を比較することに基づき、前記石油試料の組成物のモデルを整合させるように、さらに適応される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記制御器が、少なくとも一部において、前記石油試料の組成物の整合モデルに基づいて、精製プロセスを調整するように、さらに適応される、請求項13〜20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの推定バルク特性が、推定の蒸留収率および分布、推定の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量、または推定のアメリカ石油協会(API)比重の少なくとも1つを含み、
前記少なくとも1つの実測バルク特性が、実測の蒸留収率および分布、実測の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量、または実測のアメリカ石油協会(API)比重の少なくとも1つを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記制御器が、
前記石油試料の組成物のモデルの分子成分に基づいて、テンプレートを作成するように;
前記少なくとも1つの検出器のそれぞれから、前記第1のカラムにおいて検出された前記第2の石油試料の1種以上の分子成分の前記第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、前記第2のカラムにおいて検出された前記第2の石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得るように;
少なくとも一部において、前記テンプレートと、それぞれの検出器の前記第1ディメンジョン保持時間のデータと、それぞれの検出器の前記第2ディメンジョン保持時間のデータとに基づいて、前記第2の石油試料の分子成分を識別するように;
少なくとも一部において、前記テンプレートと、それぞれの検出器の前記第1ディメンジョン保持時間および前記第2ディメンジョン保持時間の積分ピークとに基づいて、前記第2の石油試料の組成物の第2のモデルを形成するために、前記第2の石油試料の前記識別された分子成分を定量するように;
前記第2の石油試料の組成物の第2のモデルを形成するように、
さらに適応される、請求項13〜22のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(分野)
本明細書において開示される対象(又は主題(subject matter))は、二次元ガスクロマトグラフィー(又は2ディメンジョン・ガスクロマトグラフィー(two-dimensional gas chromatography))を使用して組成物(又はコンポジション(composition))のモデル(又は型(model))を形成(又は製造)することを含めて、組成物のモデル、例えば、石油試料(又はぺトロール・サンプル(petroleum sample))の組成物のモデルを形成(又は製造)するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
石油および関連製品は、内燃機関用の燃料、機械の可動部用の潤滑油、ならびに電気および熱を発生させるためのオイルなどの広範囲の工業的用途を有することが可能である。炭化水素混合物(例えば、石油またはその精製製品)の燃焼によって、エネルギーを発生させることが可能である。潤滑油は、作業間の摩擦を減少させることが可能である。炭化水素精製およびアップグレードプロセスを管理するために、そのようなプロセスをシミュレートおよび/またはモデル化すること、ならびに作動上の可変性の変化による影響を理解し、かつ予測することは有利となる可能性がある。
【0003】
組成物のモデルを製造するために、炭化水素混合物の分子組成を識別および定量することが可能である。例えば、1000°F未満の温度に対する特定の技術によって、ハイ・ディテイルド炭化水素分析(High Detailed Hydrocarbon Analysis)(HDHA)のフレームワークにおいて石油組成および構造を決定することが可能である。ナフサ範囲の分子(例えば、炭素数C4〜C12)は、高解像度ガスクロマトグラフィー・パラフィン・イソパラフィン・オレフィン・ナフサおよび芳香族(Gas Chromatography Paraffins,Isoparaffins,Olefins,Naphtha and Aromatics)(GC−PIONA)法によって測定することが可能である。(例えば、直鎖パラフィンに対して)ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出(Gas Chromatography Flame Ionization Detection)(GC−FID)および(例えば、パラフィン、ナフタレン、1〜3員環芳香族の塊状物に対して)臨界超過流体クロマトグラフィー(SFC)と組み合わせた、ガスクロマトグラフィー電界イオン化高解像度タイム−オブ−フライト質量分析(Gas Chromatography Field Ionization High Resolution Time−of−Flight Mass Spectrometry)(GC−FI−TOF MS)によって、蒸留物を特徴づけることが可能である。減圧軽油(Vacuum Gas Oil)に関する分析技術としては、(例えば、シリカゲル(Silica Gel)およびリングクラス(Ring Class)に対して)多次元液体クロマトグラフィー(LC)分離と、それに続く、低または高解像度質量分析を含むことが可能である。(減圧残油と呼ばれることもある)減圧残渣は、溶解性および化学的分離と組み合わせた、超高解像度質量分析によって特徴づけることができる。さらに、分離された留分において、種々のバルク特性測定を実行することが可能である。
【0004】
組成物のモデルは、分析情報の整合(又はリコンシリエーション(reconciliation))によって発達させることが可能である。例示の目的のためであって、制限されないが、参照によって全体として本明細書に組み込まれる、2006年11月14日出願の共同所有の特許文献1には、組成物の石油モデルを構築するためのGC−FI−TOF MS、SFCおよびGCの使用が記載されている。さらに、参照によって全体として本明細書に組み込まれる、2011年6月24日出願の共同所有の特許文献2は、特許文献3として公開されており、組成物の重質石油モデルを決定するためのFTICR−MS(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析)およびクロマトグラフィック分離の使用が記載されている。同様に、例えば、制限されないが、参照によって全体として本明細書に組み込まれる、2011年2月4日出願の共同所有の特許文献4には、シミュレーション蒸留を実行するための二次元ガスクロマトグラフィー(2DGCまたはGCxGC)の使用が記載されている。参照によって全体として本明細書に組み込まれる、2012年11月6日出願の共同所有の特許文献5には、C対H比を決定するための2DGCの使用が記載されている。参照によって全体として本明細書に組み込まれる、2103年10月23日出願の共同所有の特許文献6には、化合物の改善された特徴決定のため、GC−電界イオン化タイム−オブ−フライト質量分析(GC−FI−TOF MS)および水素炎イオン化検出器(2DGC FID)を備えた二次元ガスクロマトグラフィー(2DGC)を使用する、石油または他の炭化水素試料の並列分析が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,598,487号明細書
【特許文献2】米国特許出願第13/167,816号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012−0153139号明細書
【特許文献4】米国特許第9,176,102号明細書
【特許文献5】米国特許第9,038,435号明細書
【特許文献6】米国特許第9,417,220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、適時に、かつ効率的な様式で、複雑な炭化水素混合物の成分を分離および定量するための単一技術または方法はない。そのようなものとして、複雑な炭化水素混合物を分離および定量して、そのような炭化水素混合物の組成物のモデルを製造するためのより効率的な技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
開示された対象(又は主題)の目的および利点は、以下の説明から示されて、明らかとなり、また、開示された対象の実施によって習得されるであろう。開示された対象の追加の利点は、これについて記載された説明および特許請求の範囲ならびに添付の図面において特に指摘された方法およびシステムによって実現および達成されるであろう。
【0008】
これらおよび他の利点を達成するために、そして開示された対象の目的に従って、実施され、かつ包括的に記載されるように、石油試料のための組成物のモデルを形成(又は製造)する方法が開示される。この方法には、少なくとも1つの検出器に連結された二次元ガスクロマトグラフに石油試料を供給(又は提供)することが含まれる。二次元ガスクロマトグラフは、第1のカラムおよび第2のカラムを有することが可能である。この方法には、少なくとも1つの検出器と連結された二次元ガスクロマトグラフに石油試料を供給することが含まれる。二次元ガスクロマトグラフは、石油試料を分析するための第1のカラムおよび第2のカラムを有する。少なくとも1つの検出器は、第1のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の(ための)第1ディメンジョン保持時間(又は第1寸法保持時間又は第1保持時間又は1次保持時間又はファースト・ディメンジョン・リテンション・タイム(first dimension retention time))を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の(ための)第2ディメンジョン保持時間(又は第2寸法保持時間又は第2保持時間又は2次保持時間又はセカンド・ディメンジョン・リテンション・タイム(second dimension retention time))を表すデータとを出力するように適応(又は適合)される。第1ディメンジョン保持時間は、石油試料の分子成分のサイズ(又は径又は大きさ)または沸点の少なくとも1つに相当(又は対応)すると考えられる。第2ディメンジョン保持時間は、石油試料の分子成分の極性に相当(又は対応)すると考えられる。
【0009】
この方法は、それぞれの検出器から、第1のカラムにおいて検出された石油試料の分子成分の(ための)第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された石油試料の分子成分の(ための)第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得ることをさらに含む。
この方法は、
少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間のデータに基づいて、石油試料の分子成分を識別(又は同定)することと、
少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークに基づいて、上記石油試料の識別された分子成分を定量して、石油試料の組成物のモデルを形成(又は製造)することと
をさらに含む。
【0010】
さらに、この方法は、少なくとも一部において、石油試料の組成物のモデルに基づき、石油試料の少なくとも1つの推定バルク特性を決定することを含む。少なくとも1つの推定バルク特性としては、推定の蒸留収率および分布、推定の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量、または推定のアメリカ石油協会(American Petroleum Institute)(API)比重の少なくとも1つが含まれ得、そして、少なくとも1つの実測バルク特性は、実測の蒸留収率および分布、実測の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量、または実測のアメリカ石油協会(API)比重の少なくとも1つを含む。
【0011】
この方法は、
石油試料の少なくとも1つの実測バルク特性を測定することと、
少なくとも一部において、少なくとも1つの推定バルク特性および少なくとも1つの実測バルク特性を比較することに基づき、石油試料の組成物のモデルを整合させる(又は整合する)こと(reconciling)と
をさらに含む。
【0012】
この方法は、石油試料の組成物のモデルの分子成分に基づいて、テンプレートを作成することをさらに含み得る。この方法は、二次元ガスクロマトグラフに第2の石油試料を供給(又は提供)し、そして少なくとも1つの検出器のそれぞれから、第1のカラムにおいて検出された第2の石油試料の1種以上の分子成分の(ための)第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された第2の石油試料の1種以上の分子成分の(ための)第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得ることによって、追加の(又はさらなる)石油試料に関する組成物の追加モデルを作成することをさらに含み得る。この方法は、
少なくとも一部において、テンプレートと、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間のデータと、それぞれの検出器の第2ディメンジョン保持時間のデータとに基づいて、第2の石油試料の分子成分を識別(又は同定)することと、
少なくとも一部において、テンプレートと、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークとに基づいて、第2の石油試料の識別された分子成分を定量して、第2の石油試料の組成物の第2のモデルを形成(又は製造)することと
をさらに含む。上記の方法論は、追加の試料に相当(又は対応)する組成物の追加のモデルを作成するために、追加の石油試料によって繰り返されてもよいと考えられる。
【0013】
本発明の別の態様によると、石油試料の組成物のモデルを形成(又は製造)するためのシステムも開示される。このシステムは、二次元ガスクロマトグラフを含む。二次元ガスクロマトグラフは、石油試料を分析するための第1のカラムおよび第2のカラムを有する。
【0014】
このシステムは、二次元ガスクロマトグラフに連結した少なくとも1つの検出器をさらに含む。少なくとも1つの検出器は、第1のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを出力するように適応(又は適合)される。例示の目的のためであって、制限されないが、少なくとも1つの検出器は、マス・スペクトロメーター(MS)、フレーム・イオニゼーション・ディテクター(FID)、サルファー・ケミルミネセンス・ディテクター(SCD)、ナイトロジェン・ケミルミネセンス・ディテクター(NCD)、アトミック・エミッション・ディテクター(AED)、フレーム・フォトメトリック・ディテクター(FPD)、エレクトロン・キャプチャー・ディテクター(ECD)またはナイトロジェン・ホスホラス・ディテクター(NPD)の少なくとも1つであり得る。少なくとも1つの検出器が、複数の検出器を含むと考えられる。複数の検出器は、単一分析(又はシングル・アナリシス)において、分子組成および特性を決定するために、パラレル(又は並列的)またはシリアル(又は直列的又は連続的)に連結されてよい。
【0015】
また、このシステムは、二次元ガスクロマトグラフに石油試料を供給(又は提供)するように適応(又は適合)された注入器(又はインジェクター)を含む。
【0016】
このシステムは、二次元ガスクロマトグラフおよび少なくとも1つの検出器に連結された制御器をさらに含む。この制御器は、少なくとも1つの検出器から、第1のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得るように適応(又は適合)される。
この制御器は、
少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間のデータに基づいて、石油試料の分子成分を識別(又は同定)するように、そして、
少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークに基づいて、石油試料の識別された分子成分を定量して、石油試料の組成物のモデルを製造するように、
さらに適応(又は適合)される。
この制御器は、
少なくとも一部において、石油試料の組成物のモデルに基づき、石油試料の少なくとも1つの推定バルク特性を決定するように、そして、
少なくとも一部において、少なくとも1つの推定バルク特性および少なくとも1つの実測バルク特性を比較することに基づき、石油試料の組成物のモデルを整合させる(又は整合する)ように、
さらに適応(又は適合)される。
【0017】
制御器は、石油試料の組成物のモデルの分子成分に基づいてテンプレートを作成するようにさらに適応(又は適合)されると考えられる。このテンプレートは、追加の石油試料の組成物の追加のモデルを作成するために使用されてよい。これを達成するためには、制御器は、少なくとも1つの検出器のそれぞれから、第1のカラムにおいて検出された追加の石油試料の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された追加の石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得るように適応(又は適合)される。
制御器は、
少なくとも一部において、テンプレートと、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間のデータと、それぞれの検出器の第2ディメンジョン保持時間のデータとに基づいて、追加の石油試料の分子成分を識別(又は同定)するように、そして、
少なくとも一部において、テンプレートと、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークとに基づいて、追加の石油試料の識別された分子成分を定量して、追加の石油試料の組成物の第2のモデルを形成(又は製造)するように、
適応(又は適合)される。
さらに、または代わりに、制御器は、少なくとも一部において、石油試料の組成物のモデルに基づいて、精製プロセスを調整するように、さらに適応(又は適合)されることが可能である。
【0018】
第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の校正(又は補正又はキャリブレーション(calibration))は、ユニークなテンプレートが複数の検出器から得られるデータに適用されることが可能であるように、モデル化合物の使用によって、実行され得ることが考えられる。
【0019】
第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の校正は、ユニークなテンプレートが異なる時間および位置において、ならびに異なる人物(又はヒト)および計測(機器)によって得られるデータに適用されることが可能であるように、モデル化合物の使用によって、実行され得ることが考えられる。
【0020】
1つの検出器によって(例えば、質量分析によって)検出されたシグナルが、テンプレートのアプローチ(又は手段)を使用して、別の検出器によって(例えば、FID、NCD、SCDなどによって)、シグナルに標準化され得ることが考えられる。
【0021】
上記の一般的な説明および次の詳細な説明の両方は例示のためであって、そして請求される開示された対象のさらなる説明を提供するように意図されることは理解されるはずである。
【0022】
本明細書の一部に含まれ、かつそれを構成する添付の図面は、開示された対象を説明するため、そしてそのさらなる理解を提供するために含まれる。説明と一緒に、図面は開示された対象の原理を説明するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】開示された対象の例示的な実施形態による代表的なシステムを例示する図である。
図2A】開示された対象の例示的な実施形態によって実施される代表的な方法を例示するフローチャートである。
図2B】開示された対象の例示的な実施形態によって実施される代表的な方法を例示するフローチャートである。
図2C】開示された対象の例示的な実施形態によって実施される代表的な方法を例示するフローチャートである。
図3A】開示された対象の例示的な実施形態による代表的な原油試料の二次元ガスクロマトグラフィーデータを例示するグラフの例示的イメージであって、原油試料の典型的なGCxGCクロマトグラフを例示する。
図3B】開示された対象の例示的な実施形態による代表的な原油試料の二次元ガスクロマトグラフィーデータを例示するグラフの例示的イメージであって、GCイメージプログラムを使用する自動成分検出を例示する。
図3C】開示された対象の例示的な実施形態による代表的な原油試料の二次元ガスクロマトグラフィーデータを例示するグラフの例示的イメージであって、GCイメージプログラムを使用する自動ピークベース面積を例示する。
図3D】開示された対象の例示的な実施形態による代表的な原油試料の二次元ガスクロマトグラフィーデータを例示するグラフの例示的イメージであって、原油試料の手作業ピークベースの説明を例示する。
図4A】開示された対象の例示的な実施形態による代表的な中質蒸留精製流試料の二次元ガスクロマトグラフィーデータを例示するグラフの例示的イメージであって、炭素原子発光線におけるAED検出器による試料流の典型的なGCxGCクロマトグラフを例示する。
図4B】開示された対象の例示的な実施形態による代表的な中質蒸留精製流試料の二次元ガスクロマトグラフィーデータを例示するグラフの例示的イメージであって、硫黄原子発光線におけるAED検出器による試料流の典型的なGCxGCクロマトグラフを例示する。
図4C】開示された対象の例示的な実施形態による代表的な中質蒸留精製流試料の二次元ガスクロマトグラフィーデータを例示するグラフの例示的イメージであって、窒素原子発光線におけるAED検出器による試料流の典型的なGCxGCクロマトグラフを例示する。
図5】開示された対象の例示的な実施形態による代表的なコンピュータシステムのさらなる詳細を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本開示中、開示された対象の種々の例示的な実施形態が詳細に参照される。その例示的な実施形態は、添付の図面によって例示される。開示された対象の構造および相当する作動方法は、システムの詳細な説明と関連して記載されるであろう。
【0025】
本明細書に提供されるシステムおよび方法は、組成物のモデルを製造するために使用することが可能である。開示された対象は、特に、二次元ガスクロマトグラフィーを使用して、石油試料の組成物のモデルを製造するために適切である。本明細書において開示された対象は、原油および精製流の両方に応用を有する。本明細書において開示された対象と関連して、「石油」という用語の使用は、原油、精製流および石油化学プロセス流を含むように意図される。
【0026】
添付の図面では、類似の参照番号が別個の図面を通して同一または機能的に類似する要素を参照する。さらに種々の実施形態を例示し、かつ開示された対象による全ての種々の原理および利点を説明する。説明および例示の目的のためであって、制限されないが、開示された対象によって組成物のモデルを製造するシステムおよび方法の例示的な実施形態が図1〜5に示される。本明細書において開示された対象は、石油試料の組成物のモデルを製造するシステムおよび方法を使用することに関して記載されているが、当業者は、開示された対象が例示的な実施形態に制限されないことを認識するであろう。例えば、組成物のモデルを製造するためのシステム、方法およびメディアは、多種多様な設定で使用可能であり、例えば、実験室、製造施設、精製所または試料の組成物のモデルを発達させるために適切な他のいずれかの設定の材料試料のための組成物のモデルが挙げられる。
【0027】
図1は、原油または石油試料の組成物のモデルを製造するための開示された対象の例示的な実施形態による例示的なシステムを示す図である。システム10は、二次元ガスクロマトグラフ101を含む。二次元ガスクロマトグラフ101は、連結器115によって連結可能である第1のカラム111および第2のカラム112を有することが可能である。少なくとも1つの検出器121が二次元ガスクロマトグラフ101に連結される。検出器121は、限定されないが、本明細書に記載の通り、質量分析計(MS)、水素炎イオン化検出器(FID)、硫黄化学発光検出器(SCD)、窒素化学発光検出器(NCD)、原子放出検出器(AED)、炎光光度検出器(FPD)、電子捕獲検出器(ECD)または窒素リン検出器(NPD)の少なくとも1つを含むいずれかの適切な検出器であることが可能である。それぞれの検出器121は、第1のカラム111において検出された石油試料中の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータおよび第2のカラム112において検出された石油試料中の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータを出力する。
【0028】
システム10は、二次元ガスクロマトグラフ101に石油に試料を供給するように適応(又は適合)された注入器131をさらに含む。二次元ガスクロマトグラフ101に制御器141を連結することが可能である。制御器141は、限定されないが、本明細書に記載の通り、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、サーバまたは他のいずれかの適切なコンピュータシステムを含むいずれかの適切な制御器であることが可能である。制御器141の具体的な作動は、以下により詳細に記載される。
【0029】
本明細書において実施される通り、二次元ガスクロマトグラフ101は、限定されないが、Agilent Technologies(登録商標)から商業的に入手可能なAgilent 6890ガスクロマトグラフを含むいずれかの適切なガスクロマトグラフであることが可能である。二次元ガスクロマトグラフ101を少なくとも1つの検出器121に連結することが可能である。2つ以上の検出器121を利用して、そして検出器121が並列的または連続的に作動することが考えられる。さらに、二次元ガスクロマトグラフ101は、注入器131(例えば、スプリット/スプリットレスインレット)および2つのカラム111、112から構成されることが可能である。石油試料は、注入器131を介して二次元ガスクロマトグラフ101に注入される。カラム111、112は、限定されないが、第1次元カラム111(例えば、BPX−5、30m、内径0.25mm、1.0μm膜)および第2次元カラム112(例えば、BPX−50、2m、内径0.25mm、0.25μm膜)を含むいずれかの適切なカラムを含むことが可能である。例えば、制限されないが、両カラムは、SGE Inc.から商業的に入手可能なカラムであることが可能である。さらに、連結器115は、第1のカラム111の端部と第2のカラム112の開始との間に位置することが可能である。限定されないが、(例えば、Zoex Corp.から商業的に入手可能な)ループ状ジェット熱的変調アセンブリを含む、いずれかの適切な連結器を使用することが可能である。検出器121の設定および分析条件は、好ましくは、製造業者の規格からの推薦に従う。データ試料採取レートは100Hzであることが可能である。
【0030】
本明細書において開示された対象によるシステム10の作動および組成物の石油モデルの製造方法を図2A〜2Cに関連して記載する。図2A〜Cは、開示された対象の例示的な実施形態によって実行される組成物のモデルを製造するための代表的な方法を例示するフローチャートである。
【0031】
図2Aを参照すると、201において、少なくとも1つの検出器121を二次元ガスクロマトグラフ101に連結することが可能である。202において、石油試料を二次元ガスクロマトグラフ101に供給することが可能である。例えば、制限されないが、注入器131を介して石油試料を供給することが可能である。例えば、制限されないが、1.0μLアリコートの石油試料を300℃において50:1分割比(202)で注入することが可能である。2DGC分析用のキャリアガスは、限定されないが、ヘリウムを含むいずれかの適切なキャリアガスであることが可能である。キャリアガスは、いずれかの適切な速度において、例えば、2.0mL/分において、一定流モードで供給可能である。オーブン温度は、適切な温度であることが可能であり、かついずれかの適切な速度で上昇させることが可能であり、例えば、3.0℃/分において60℃から390℃まで上昇させることが可能である。変調期間は、いずれかの適切な変調期間、例えば、10秒であることが可能である。
【0032】
作動時に、石油試料を第1のカラム111に移動させ、そこで、試料中の種々の分子成分の第1ディメンジョン保持時間に関連するデータを得ることが可能である。第1ディメンジョン保持時間データは、分子の径または沸点に相当し得、保持時間の期間が分子の径、炭素含有量および沸点に相当する。保持時間は、その成分が二次元ガスクロマトグラフ101中の試料から溶出または分離され、かつ少なくとも1つの検出器121によって検出されるために必要な時間を示す。保持時間が短いほど、より小さい分子、より低い炭素含有量およびより低い沸点に相当する。保持時間が長いほど、より大きい分子、より高い炭素含有量およびより高い沸点に相当する。図3A〜3Dにおいて、より小さい分子は、Y軸に対してグラフの左側に位置する。より大きい分子は右側に位置する。第2ディメンジョン保持時間データは、分子の極性に相当し得、保持時間の期間が炭化水素の種類(例えば、アルカン、環式アルカン、オレフィン、単環式芳香族および多環式芳香族)を示す。アルカンは、より短い保持時間を有するが、他方、多環式芳香族は、最も長い保持時間を有する。図3A〜3Dにおいて、アルカンは、Y軸に対してグラフの下側に位置する。多環式芳香族は、Y軸に対してグラフの上側に位置する。本明細書において実施される通り、203において、石油試料に基づいて、それぞれの検出器121の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間を表すデータを二次元ガスクロマトグラフ101から得ることが可能である。本明細書において実施される通り、制御器141は、二次元ガスクロマトグラフ101および少なくとも1つの検出器121からデータを得るように適応(又は適合)させることが可能である。
【0033】
制御器141は、いずれかの適切な技術を使用してデータを得ることが可能である。例えば、制限されないが、データは、Chemstation(Agilent Technology Inc.から商業的に入手可能なソフトウェア)を使用して得ることが可能である。得られたデータを、本明細書に記載の通り、試料の成分を識別し、かつ定量するために処理することが可能である。例示の目的のためであって、制限されないが、包括的二次元ガスクロマトグラフィー(2DGCまたはGCxGC)を適用して、同時に代表的な原油試料中の単一化合物および/または化合物の群および/またはそれぞれの化合物を識別および定量することが可能である。
【0034】
さらに、本明細書において実施される通り、204において、少なくとも一部において、それぞれの検出器121の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間に基づき、石油試料の分子成分を識別することが可能である。本明細書において実施される通り、成分を識別するように制御器141を適応(又は適合)させることが可能である。
【0035】
例示の目的のためであって、制限されないが、成分を識別するために、いずれかの適切な技術を使用して、データを二次元イメージに変換することが可能である。例えば、制限されないが、(Research Systems Inc.から商業的に入手可能な)Transformを含む、意図された目的のために変更されたいずれかの適切なソフトウェアを使用して、データを処理することが可能である。
【0036】
例えば、制限されないが、図3A〜Dは、それぞれ、開示された対象によって製造された例示的なイメージを示す。それぞれのグラフは、開示された対象の例示的な実施形態によって、図1のシステムおよび/または図2A〜Cの方法による使用のための代表的な原油試料の二次元ガスクロマトグラフィーデータを例示する。例えば、図3Aは、代表的な原油試料の例示的な2DGCクロマトグラムを示す。第1ディメンジョン保持時間に相当するデータは、X軸に沿ってプロットすることが可能であり、かつ第2ディメンジョン保持時間に相当するデータは、Y軸に沿ってプロットすることが可能である。本明細書において実施される通り、第1ディメンジョン保持時間は、石油試料の分子成分の径または沸点の少なくとも1つに相当することが可能であり、かつ第2ディメンジョン保持時間は、石油試料の分子成分の極性に相当することが可能である。例えば、制限されないが、X軸に沿っての分離は、分子の径(または沸点)に依存していると見ることができる。同一化合物の分類内では、より短い保持時間は、より小さい分子、より少ない炭素含有量およびより低い沸点に相当することが可能である。より長い保持時間は、より大きい分子、より多くの炭素含有量およびより高い沸点に相当することが可能である。さらに、Y軸に沿っての分離は、極性分離に相当することが可能である。例えば、制限されないが、飽和分子(例えば、直鎖パラフィンおよびイソパラフィン)は、低い極性および短い保持時間を有することが可能である。多環式芳香族分子は、より高い極性およびより長い保持時間を有することが可能である。逆2DGC構造も試料の成分を分離するために使用することが可能である。
【0037】
例示の目的のためであって、制限されないが、2DGCによって分離された原油の成分は、それぞれの成分の相当する質量スペクトルによって識別することが可能である。したがって、検出器121として取り付けられた質量分析計を用いて、上記ステップを実行することが可能である。さらに、または代わりに、(例えばC25未満の炭素数を有する)より低沸点範囲の特定の成分を、モデル化合物またはモデル化合物の混合物を実行することによって識別することが可能である。さらに、または代わりに、分離された成分は、限定されないが、同族列と関連するHDHA分析およびクロマトグラフィックパターンを含む以前の知識および経験によって識別することが可能である。分離された成分の位置決定は手作業で実行することが可能であるか、またはいずれかの適切な技術を使用して自動的に実行することが可能である。例えば、制限されないが、分離された成分は、(GC Image,LLCから商業的に入手可能な)GC−Imageなどのいずれかの適切なデータ処理ソフトウェアによって位置決定することが可能である。例示のため、図3Bは、GC−Imageプログラムによる分離された成分の自動位置決定を示す。
【0038】
再び、図2Aを参照して、205において、石油試料の識別された分子成分は、少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークに基づいて定量されて、石油試料の組成物のモデルの製造を補助することが可能である。識別された分子成分および量を使用して、石油組成物を確立し、これは組成物のモデルを発達させるために利用される。
【0039】
例示の目的のためであって、制限されないが、分離された成分の定量分析は、クロマトグラムにおけるピーク体積を積分することによって達成することが可能である。ピークベース面積描写は、限定されないが、手作業描写、またはGC−Imageなどの適切なデータ処理ソフトウェアによる自動描写を含む、いずれかの適切な技術を使用して製造することが可能である。さらに、または代わりに、定量分析は、それぞれ参照によって全体として本明細書に組み込まれる、2007年9月25日出願の共同所有の米国特許第7,641,786号明細書および/または2007年9月25日出願の共同所有の米国特許第7,642,095号明細書に明らかにされた技術を使用して達成することが可能である。図3Cは、GC−Imageプログラムによる例示的な自動作成ピークベースの面積描写を示す。図3Dは、例示的な手作業で作成されたピークベースの面積描写を示す。
【0040】
例えば、制限されないが、以下の表1には、代表的な原油試料に対する定量分析の結果が含まれる。分子は、例えば、化合物の分類および炭素数に基づいて分類されることが可能である。モデルの詳細のレベルは、必要に応じて、または所望であれば調整されることが可能である。例えば、成分のモデルは、それぞれの分子を表すことが可能である。さらに、または代わりに、モデルは、炭素数および化合物の分類に基づき、異性体に分類されるように構成されることが可能である。それぞれの列は、異なる炭化水素の種類を表す。一番下の列は、試料に存在するそれぞれの化合物の分類の全重量パーセントを表す。
【0041】
【表1】
【0042】
本明細書において実施される通り、少なくとも1つの検出器121が複数の検出器121を含むことが可能である。さらに、複数の検出器121は、二次元ガスクロマトグラフ101と並列に連結されることが可能である。これに関して、適切な検出器121を使用して、2DGC分析によって、他の分子を識別および定量することが可能である。例えば、制限されないが、本明細書に記載の通り、それぞれ、SCD、NCDまたはAEDを使用して、2DGC分析によって、硫黄含有分子、窒素含有分子およびそれらまたは他のヘテロ原子を含有する分子を識別および定量することが可能である。例えば、識別および定量分析は、本明細書に記載の通り、FIDデータと同一様式で繰り返すことが可能である。したがって、FID、SCD、NCDおよびAED検出器121を並列に使用して、例えば、SCD、NCDおよびAEDをFID上に積み重ねることによって、炭化水素およびヘテロ原子を同時に検出することが可能である。識別された分子成分および量を使用して、石油組成物を確立し、これは組成物のモデルを発達させるために利用される。次いで、炭化水素組成物、硫黄組成物、窒素組成物および他のヘテロ原子組成物と組み合わせることによって組成物が得られる。次いで、全組成物を100%に標準化する。
【0043】
例示の目的のためであって、制限されないが、石油中のそれぞれの分子の定量は、少なくとも一部において、種々の検出システムを用いた2DGC技術によって測定された実験データに基づくことが可能である。種々の検出システムは、本明細書に記載の通り、同時測定を達成するために並列に連結することが可能である。代わりに、連続的に測定を実行するために、検出システムを異なる様式で連結することが可能である。本明細書において実施される通り、一般的な成分の識別/定量のために質量分析(MS)検出器が使用可能であり、かつ特定の原子(例えば、S、N、O)を含有する化合物の識別/定量のためにSCD、NCDおよびAEDが使用可能である。さらに、石油試料の分子成分の識別は、周知の化合物のクロマトグラフィックパターンおよび物理的特性の傾向に基づき、モデル化合物分析、ハイ・ディテイルド炭化水素分析および外挿によって補助することが可能である。さらに、そして本明細書において実施される通り、定量分析に関して、一般的な炭化水素分子定量のために水素炎イオン化検出器(FID)が使用可能であり、硫黄定量のためにSCDが使用可能であり、窒素定量のためにNCDが使用可能であり、かつ特定の原子を含有する化合物の定量のためにAEDが使用可能である。さらに、本明細書において実施される通り、複数の検出システムからの2DGC組成データを組み合わせて、組成物の詳細なモデルを製造することが可能である(例えば、FID+MS+SCD+NCD+AED)。組成データに加えて、多数の重要なバルク特性、例えば、本明細書に記載の通り、シミュレーション蒸留(SIMDIS);アメリカ石油協会(API)比重;および炭素、水素、硫黄、窒素、酸素のバルク量(CHSNO);ならびに全芳香族炭素含有量を、独自の技術によって組成物のモデルから推定することが可能であり、かつ測定することが可能であり、これらは目標量として機能することが可能である。本明細書に記載の通り、2DGCによって決定された組成物のモデルから推定される平均バルク特性は、整合(又はリコンシリエーション(reconciliation))と呼ぶことが可能な組成物のモデルを数学的に調整することによって測定された目標量に適合することが可能である。
【0044】
例示の目的のためであって、制限されないが、図4A、4Bおよび4Cは、それぞれ、開示された対象によって製造されたグラフの例示的なイメージである。本明細書において開示された対象は、原油試料の範囲を越える応用を有し;むしろ、本明細書において開示された対象は、精製および石油化学流の組成物のモデルを分析および発達させるために使用されることが可能であると考えられる。それぞれのグラフは、開示された対象の例示的な実施形態による図1のシステムおよび/または図2A〜Cの方法によって使用するための代表的な精製流試料(例えば、中質蒸留精製流)の二次元ガスクロマトグラフィーデータを例示する。例えば、図4Aは、炭素原子発光線(496nm)に設定されたAED検出器121を使用する中質蒸留精製流の例示的な2DGCクロマトグラムを示す。例示の目的のためであって、制限されないが、中質蒸留精製流の組成物を実証するために、包括的2DGCを使用することができる。組成物のモデルは、その中質蒸留精製流の単一化合物、化合物の群および/または全化合物に対して製造することが可能である。例えば、制限されないが、二次元ガスクロマトグラフ101は、注入器131(例えば、スプリット/スプリットレスインレット)および2つのカラム111、112から構成されるAgilent 6890ガスクロマトグラフであることが可能である。AED121を二次元ガスクロマトグラフ101に連結することが可能である。二次元ガスクロマトグラフ101は、第1次元カラム111(例えば、BPX−5、30m、内径0.25mm、1.0μm膜)および第2次元カラム112(例えば、BPX−50、2m、内径0.25mm、0.25μm膜)を含むことが可能である。これらは、両方とも、SGE Inc.から商業的に入手可能である。本明細書に記載の通り、連結器115は、ループ状ジェット熱的変調アセンブリであることが可能である。AED121は、いずれかの適切なAED(例えば、Joined Analytics System Inc.から商業的に入手可能なAED)であることが可能である。AED121の設定および分析条件は、製造業者の規格からの推薦に相当することが可能である。例示の目的のため、炭素発光線(496nm)、硫黄発光線(181nm)および窒素発光線(174nm)をデータ作成のために選択することが可能である。データ試料採取レートは10Hzであることが可能である。
【0045】
1.0μLアリコートの中質蒸留精製流試料(例えば、商用ディーゼル燃料試料)を300℃において25:1の分割比で注入することが可能である。キャリアガスは、2.0mL/分の一定流モードのヘリウムであることが可能である。オーブン温度は、3.0℃/分の上昇速度において、60℃から300℃まで上昇させることが可能である。変調期間は10秒であることが可能である。データ収集は、Chemstationを使用して完了させることが可能である。本明細書に記載の通り、さらに試料の成分を識別および定量するために、得られたデータを処理することが可能である。識別のために、変換ソフトウェアによって処理されるようにデータを二次元イメージへと変換することが可能である。本明細書に記載の通り、データ処理プログラムを定量分析のために使用することが可能である。
【0046】
図4Aを参照して、X軸に沿っての分離は、本明細書に記載の通り、同一化合物の分類内では、分子の径に依存していると見ることができる。Y軸に沿っての分離は、上記の通り、極性分離でることが可能である。識別された分子成分および量を使用して、石油組成物を確立し、これは組成物のモデルを発達させるために利用される。
【0047】
さらに、硫黄含有分子の検出は、本明細書に記載の通り、並列的または連続的に実行可能である。例えば、制限されないが、硫黄を検出するために、検出器121は、SCD、硫黄原子発光線に設定されたAED、またはFPDなどの元素特異的検出能力を処理する他のいずれかの適切な検出器の間にあることが可能である。図4Bは、硫黄原子発光線(181nm)におけるAED検出器による代表的な中質蒸留精製流試料の例示的な2DGCクロマトグラムである。
【0048】
さらに、本明細書において実施される通り、硫黄含有分子の検出と同様に、窒素含有分子は、NCD、窒素原子発光線に設定されたAED、またはNPDなどの元素特異的検出能力を処理する他のいずれかの適切な検出器を使用して検出可能である。図4Cは、窒素原子発光線(174nm)におけるAED検出器による代表的な中質蒸留精製流試料の例示的な2DGCクロマトグラムである。次いで、炭化水素組成物、硫黄組成物、窒素組成物および他のヘテロ原子組成物と組み合わせることによって組成物が得られる。次いで、全組成物を100%に標準化する。
【0049】
本明細書に記載の通り、試料中の分子成分を識別および定量するために、得られた2DGCデータを処理することが可能である。さらに、この中質蒸留精製流試料の組成物のモデルは、原油の組成物の構成モデルと同一であることが可能である。識別された分子成分および量を使用して、石油組成物を確立し、これは組成物のモデルを発達させるために利用される。次いで、炭化水素組成物、硫黄組成物、窒素組成物および他のヘテロ原子組成物と組み合わせることによって組成物が得られる。次いで、全組成物を100%に標準化する。
【0050】
本明細書において実施される通り、組成物のモデルは、上記の複数の検出システムからの2DGCデータに基づいて識別および定量された成分から製造可能である。例示の目的のためであって、制限されないが、成分は、分子構造と関連するユニークな数の組合せによって組み合わせられ、かつインデックスを付けられることが可能である。例えば、Structural Oriented Lumping(SOL)のフレームワークにおいて構造を作成することが可能である。さらに、または代わりに、構造は、SMILES(単純化された分子インプットライン−エントリーシステム(simplified molecular−input line−entry system)などの他の構造コードに基づくことが可能である。さらに、本明細書において実施される通り、全ての検出器から組み合わせられた成分を100%に標準化させることが可能である。
【0051】
図2Bを参照すると、211において、少なくとも一部において、石油試料の組成物の初期モデルに基づき、石油試料の少なくとも1つの推定バルク特性を決定することが可能である。例えば、制限されないが、推定バルク特性は、少なくとも1つの推定蒸留収率および分布または推定C−H−S−N−O含有量であることが可能である。推定API比重も、周知の組成物比重の相関を使用して算出される。バルク特性およびAPI比重の推定に加えて、これらの特性は独自の技術によっても決定される。212において、石油試料の少なくとも1つの実測バルク特性を測定することが可能である。例えば、制限されないが、測定されたバルク特性は、少なくとも1つの実測蒸留収率および分布、あるいは実測C−H−S−N−O含有量または実測API比重を含むことが可能である。
【0052】
さらに、213において、石油試料の組成物の初期モデルは、少なくとも一部において、少なくとも1つの推定バルク特性および少なくとも1つの実測バルク特性の比較に基づいて整合させる(又は整合する)ことが可能である。例えば、制限されないが、本明細書に記載の通り、平均実測特性を、2DGC測定から得られる相当する推定バルク特性と比較して、実測特性を有する組成物のモデルを整合させる(又は整合する)ことが可能である。バルク特性および組成物が212において測定されたものと適合するように、石油組成物を調整するために数学的アルゴリズムを適用する。結果として得られる調整された組成物の初期モデルは、石油試料の組成物の整合モデル(reconciled model)である。さらに、または代わりに、整合のための数学的プロセスは、(上記の参照によって組み込まれる)米国特許第7,598,487号明細書に記載のプロセスであることが可能である。次いで、本明細書に記載の通り、組成物の整合モデルを使用することが可能である。
【0053】
さらに、そして本明細書において実施される通り、214において、少なくとも一部において、石油試料の組成物のモデルに基づいて、精製プロセスを調整することが可能である。さらに、または代わりに、少なくとも一部において、石油試料の組成物の整合モデルに基づいて、精製プロセスを調整することが可能である。例えば、石油試料の組成物のモデルは、原油蒸留または触媒分解などの精製ユニットのリアルタイム最適化のため、あるいは精製原料の粗原料購入の最適化に使用可能である。
【0054】
図2Cを参照すると、221において、上記の通り、石油試料の組成物のモデルに基づきテンプレートを作成することが可能である。テンプレートは、他の石油試料の組成物のモデルを発達させるために利用されてもよい。例示の目的のためであって、制限されないが、第1の石油試料からの組成物のモデルを、他の石油試料のマスター組成物テンプレートとして使用することが可能である。特定の既知の原油として試料を識別するか、または組成物の新規モデルを発達させるべきかどうかを決定するために、以前に作成された組成物のモデルに対して、新規試料を迅速に照合することができるように、種々の試料の組成物の複数のモデルを有することが望ましい。テンプレートは、モデル化合物または他の適切な手段の使用によって、測定値または特性に基づいて構成され得ることが考えられる。
【0055】
222において、本明細書に記載の通り、第2の石油試料が二次元ガスクロマトグラフ101に供給される。223において、上記の通り、二次元ガスクロマトグラフ101から、第2の石油試料に基づき、それぞれの検出器121の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間を表すデータを得ることが可能である。
【0056】
224において、第2の石油試料の分子成分は、少なくとも一部において、テンプレート、ならびにそれぞれの検出器121の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間に相当するデータに基づいて識別されることが可能である。例えば、制限されないが、本明細書に記載の通り、第2の石油試料が、第1の石油試料と共通の少なくとも1種の成分を含有する場合、その成分はテンプレートに基づいて識別することが可能であり、他の技術によってその成分を識別するプロセスを省略することが可能である。
【0057】
225において、第2の石油試料の識別された分子成分は、本明細書に記載の通り、少なくとも一部において、テンプレート、ならびにそれぞれの検出器121の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークに基づいて定量することが可能であり、第2の石油試料の組成物の第2の初期のモデルを製造することが可能である。例えば、制限されないが、本明細書に記載の通り、第2の石油試料が、第1の石油試料と共通の少なくとも1種の成分を含有する場合、その成分はテンプレートに基づいて識別および定量することが可能であり、他の技術によってその成分を識別および定量するプロセスを省略することが可能である。この方法論は、組成物の追加のモデルを発達させるために、追加の石油試料に対して繰り返されることが可能である。
【0058】
本明細書に記載のシステムおよび技術は、コンピュータシステムにおいて実行可能である。例としてであり、制限されないが、図5に示されるように、アーキテクチャを有するコンピュータシステム600は、メモリ603などの1つ以上の触知可能であり非一時的な、コンピュータによって読み取り可能なメディアに取り入れられたソフトウェアを実行するプロセッサ601の結果として、機能性を提供することが可能である。本開示の種々の実施形態を実施するソフトウェアは、メモリ603において貯蔵されることが可能であり、かつプロセッサ601によって実行されることが可能である。特定の要求に従って、コンピュータによって読み取り可能なメディアは、1つ以上のメモリデバイスを含むことが可能である。メモリ603は、マスストレージデバイス635などの1つ以上の他のコンピュータによって読み取り可能なメディアから、あるいはコミュニケーションインタフェース620を介して1つ以上の他のソースからソフトウェアを読み込むことが可能である。ソフトウェアは、プロセッサ601が、メモリ603に貯蔵されたデータ構造の定義およびソフトウェアによって定義されたプロセスによるそのようなデータ構造の修正を含めて、本明細書に記載の特定のプロセスまたは特定のプロセスの特定の部分を実行するようにさせることが可能である。例示的なインプットデバイス633は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス(例えば、マウス)、タッチパネルディスプレイ、マイクロホンおよびボイスコントロールインターフェース、またはインプットインターフェース623と連結したユーザーインプットを捕捉して、プロセッサ601にデータおよび/またはユーザーインプットを提供するための同等のものであることが可能である。例示的なアウトプットデバイス634は、例えば、プロセッサ601にユーザーインターフェース、ビジュアルコンテンツおよび/またはオーディオコンテンツを提供するためにアウトプットインターフェース623と連結したディスプレイ(例えば、モニター)またはスピーカーであることが可能である。さらに、または代わりに、コンピュータシステム600は、ビデオインターフェース622に連結したディスプレイ632にテキストまたはグラフィックデータを送ることによって、ユーザーに表示を提供することが可能である。さらに、上記構成要素のいずれかは、コンピュータシステム600のコミュニケーションインターフェース620を連結したコンピュータネットワーク630を介してプロセッサ601にデータを提供するか、またはプロセッサ601からデータを受け取ることが可能である。加えて、または代わりに、コンピュータシステムは、本明細書に記載の特定のプロセスまたは特定のプロセスの特定の部分を実行するためのソフトウェアの代わりに、またはソフトウェアと一緒に作動可能である、回路内にハードワイヤードされたか、または他の様式で実行されたロジックの結果として機能性を提供することが可能である。ソフトウェアまたは実行可能な命令という記載は、ロジックを含むことが可能であり、適切である場合、逆もある。コンピュータによって読み取り可能なメディアという記載は、(集積回路(IC)などの)回路貯蔵ソフトウェアまたは実行のための実行可能な命令、実行のためのロジックを実行する回路、または適切である場合、両方を含むことが可能である。本開示は、ハードウェアおよびソフトウェアのいずれの適切な組合せも含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、プロセッサ601は、コンピュータプログラムを構成するものなどの、命令を実行するためのハードウェアを含む。一例としてであって、制限されないが、命令を実行するために、プロセッサ601は、内部レジスタ、内部キャッシュ602、メモリ603またはストレージ608から命令を検索する(または取出す)こと;それらをデコードおよび実行すること;次いで、内部レジスタ、内部キャッシュ602、メモリ603またはストレージ608に1つ以上の結果を書き込むことが可能である。特定の実施形態において、プロセッサ601は、データ、命令またはアドレスのための1つ以上の内部キャッシュ602を含むことが可能である。本開示は、適切である場合、いずれかの適切な内部キャッシュのいずれかの適切な数を含むプロセッサ601を考察する。一例としてであって、制限されないが、プロセッサ601は、1つ以上の命令キャッシュ602、1つ以上のデータキャッシュ602、および1つ以上の変換索引バッファー(TLB)を含むことが可能である。命令キャッシュ602内の命令は、メモリ603またはストレージ608内の命令のコピーであることが可能であり、かつ命令キャッシュ602は、プロセッサ601によるそれらの命令の検索を加速することが可能である。データキャッシュ602内のデータは、作動するプロセッサ601における命令実行のためのメモリ603またはストレージ608内のデータのコピー;プロセッサ601における次の命令実行によるアクセス、またはメモリ603またはストレージ608への書き込みのためのプロセッサ601において実行された以前の命令の結果;あるいは他の適切なデータをであることが可能である。データキャッシュ602は、プロセッサ601による読み込みまたは書き込み作動を加速することが可能である。TLBは、プロセッサ601の仮想アドレス変換を加速することが可能である。いくつかの実施形態において、プロセッサ601は、データ、命令またはアドレスのための1つ以上の内部レジスタを含むことが可能である。本開示は、適切である場合、いずれかの適切な内部レジスタのいずれかの適切な数を含むプロセッサ601を考察する。適切である場合、プロセッサ601は、1つ以上の演算ロジックユニット(ALU)を含むことが可能であるか;マルチコアプロセッサであることが可能であるか;あるいは1つ以上のプロセッサ601を含むことが可能である。本開示は特定のプロセッサを記載し、かつ例示しているが、本開示は、いずれの適切なプロセッサも考察する。
【0060】
いくつかの実施形態において、メモリ603は、プロセッサ601が実行する命令、またはプロセッサ601が作動するデータを貯蔵するためのメインメモリを含む。一例としてであって、制限されないが、コンピュータシステム600は、ストレージ608または別のソース(例えば、別のコンピュータシステム600など)からメモリ603まで命令をロードすることが可能である。次いで、プロセッサ601は、メモリ603から内部レジスタまたは内部キャッシュ602まで命令をロードすることが可能である。命令を実行するために、プロセッサ601は、内部レジスタまたは内部キャッシュ602から命令を検索し、そしてそれらをデコードすることが可能である。命令の実行の間または後に、プロセッサ601は、内部レジスタまたは内部キャッシュメモリ602に(中間または最終結果であることが可能である)1つ以上の結果を書き込むことが可能である。次いで、プロセッサ601は、それらの結果の1つ以上をメモリ603に書き込むことが可能である。いくつかの実施形態において、プロセッサ601は、(ストレージ608または他とは対照的に)1つ以上の内部レジスタまたは内部キャッシュ中の、あるいはメモリ603中の命令のみを実行し、かつ(ストレージ608または他とは対照的に)1つ以上の内部レジスタまたは内部キャッシュ中の、あるいはメモリ603中のデータにおいてのみ作動する。(それぞれ、アドレスバスおよびデータバスを含むことが可能である)1つ以上のメモリバスによって、プロセッサ601をメモリ603に連結することが可能である。バス640は、下記の通り、1つ以上のメモリバスを含むことが可能である。特定の実施形態において、1つ以上のメモリ管理ユニット(MMU)がプロセッサ601とメモリ603との間に位置し、かつプロセッサ601によって求められるメモリ603へのアクセスを促進する。いくつかの実施形態において、メモリ603は、ランダムアクセスメモリ(RAM)を含む。このRAMは、適切である場合、揮発性メモリであることが可能である。適切である場合、このRAMは、ダイナミックRAM(DRAM)またはスタティックRAM(SRAM)であることが可能である。さらに、適切である場合、このRAMは、シングルポートまたはマルチポートRAMであることが可能である。本開示は、いずれの適切なRAMも考察する。メモリ603は、適切である場合、1つ以上のメモリ604を含むことが可能である。本開示は特定のメモリを記載および例示しているが、本開示は、いずれの適切なメモリも考察する。
【0061】
いくつかの実施形態において、ストレージ608は、データまたは命令用のマスストレージを含む。一例としてであって、制限されないが、ストレージ608は、ハードディスクドライブ(HDD)、フロッピーディスクドライブ、フラッシュメモリ、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープまたはユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus)(USB)ドライブあるいはこれらの2つ以上の組合せを含むことが可能である。ストレージ608は、適切である場合、リムーバブルまたはノンリムーバブル(または固定された)メディアを含むことが可能である。ストレージ608は、適切である場合、コンピュータシステム600の内部または外部であることが可能である。いくつかの実施形態において、ストレージ608は、非揮発性ソリッドステートメモリである。いくつかの実施形態において、ストレージ608は、リードオンリーメモリ(ROM)を含む。適切である場合は、このROMは、マスクプログラムドROM、プログラマブルROM(PROM)、消去可能型PROM(EPROM)、電気的消去可能型PROM(EEPROM)、電気的書替可能型ROM(EAROM)またはフラッシュメモリあるいはこれらの2つ以上の組合せであることが可能である。本開示は、いずれの適切な物理的形態を有するマスストレージ608も考察する。ストレージ608は、適切である場合、プロセッサ601とストレージ608との間の通信を促進する1つ以上のストレージコントロールユニットを含むことが可能である。適切である場合、ストレージ608は、1つまたは以上のメモリ608を含むことが可能である。本開示は特定のストレージを記載および例示しているが、本開示は、いずれの適切なストレージも考察する。
【0062】
いくつかの実施形態において、インプットインターフェース623およびアウトプットインターフェース624は、ハードウェア、ソフトウェアまたは両方を含むことが可能であり、コンピュータシステム600と1つ以上のインプットデバイス633および/またはアウトプットデバイス634との間の通信のための1つ以上のインターフェースを提供する。コンピュータシステム600は、適切である場合、これらのインプットデバイス633および/またはアウトプットデバイス634の1つ以上を含むことが可能である。これらのインプットデバイス633および/またはアウトプットデバイス634の1つ以上は、使用者とコンピュータシステム600との間の通信を可能にする。一例としてであって、制限されないが、インプットデバイス633および/またはアウトプットデバイス634としては、キーボード、キーパッド、マイクロホン、モニター、マウス、プリンター、スキャナー、スピーカー、スチールカメラ、スタイラス、タブレット、タッチスクリーン、トラックボール、ビデオカメラ、別の適切なインプットデバイス633および/またはアウトプットデバイス634、あるいはこれらの2つ以上の組合背を含むことが可能である。インプットデバイス633および/またはアウトプットデバイス634は、1つ以上のセンサーを含むことが可能である。本開示は、いずれの適切なインプットデバイス633および/またはアウトプットデバイス634、ならびにそれらのためのいずれの適切なインプットインターフェース623およびアウトプットインターフェース624も考察する。適切である場合、インプットインターフェース623およびアウトプットインターフェース624は、プロセッサ601によってこれらのインプットデバイス633および/またはアウトプットデバイス634の1つ以上がドライブされることが可能であるように、1つ以上のデバイスまたはソフトウェアドライバを含むことが可能である。インプットインターフェース623およびアウトプットインターフェース624は、適切である場合、1つ以上のインプットインターフェース623またはアウトプットインターフェース624を含むことが可能である。本開示は特定のインプットインターフェース623およびアウトプットインターフェース624を記載および例示しているが、本開示は、いずれの適切なインプットインターフェース623およびアウトプットインターフェース624も考察する。
【0063】
本明細書において具体化される通り、コミュニケーションインターフェース620は、ハードウェア、ソフトウェアまたは両方を含むことが可能であり、コンピュータシステム600と1つ以上の他のコンピュータシステム600、あるいは1つ以上のネットワークとの間の(例えば、パケットベース通信などの)通信のための1つ以上のインターフェースを提供する。一例としてであって、制限されないが、通信インターフェース620は、Ethernetまたは他のワイヤーベースネットワークによる通信のためのネットワークインターフェースコントローラ(NIC)またはネットワークアダプタ、あるいはWI−FIネットワークなどのワイヤレスネットワークによる通信のためのワイヤレスNIC(WNIC)またはワイヤレスアダプタを含むことが可能である。本開示は、そのためのいずれの適切なネットワークおよびいずれの適切な通信インターフェース620も考察する。一例としてであって、制限されないが、コンピュータシステム600は、アドホックネットワーク、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、ローカルネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)あるいは1つ以上のInternetまたはこれらの2つ以上の組合せによって通信することが可能である。これらのネットワークの1つ以上の1つ以上の部分は、有線または無線であることが可能である。一例として、コンピュータシステム600は、(例えば、BLUETOOTH WPANなどの)ワイヤレスPAN(WPAN)、WI−FIネットワーク、WI−MAXネットワーク、(例えば、Global System for Mobile Communications(GSM)ネットワークなどの)携帯電話ネットワークまたは他の適切なワイヤレスネットワークあるいはこれらの2つ以上の組合せによって通信することが可能である。コンピュータシステム600は、適切である場合、これらのネットワークのいずれのためのいずれの適切な通信インターフェース620も含むことが可能である。通信インターフェース620は、適切である場合、1つ以上の通信インターフェース620を含むことが可能である。本開示は特定の通信インターフェースを記載および例示しているが、本開示は、いずれの適切な通信インターフェースも考察する。
【0064】
いくつかの実施形態において、バス640は、ハードウェア、ソフトウェアまたは両方を含み、コンピュータシステム600の構成要素を互いに連結する。一例としてであって、制限されないが、バス640は、Accelerated Graphics Port(AGP)または他のグラフィックバス、Enhanced Industry Standard Architecture(EISA)バス、フロントサイド(front−side)バス(FSB)、HYPERTRANSPORT(HT)インタコネクト、Industry Standard Architecture(ISA)バス、INFINIBANDインタコネクト、ローピンカウント(low−pin−count)(LPC)バス、メモリバス、Micro Channel Architecture(MCA)バス、Peripheral Component Interconnect(PCI)バス、PCI−Express(PCIe)バス、シリアルアドバンスドテクノロジーアタッチメント(serial advanced technology attachment)(SATA)バス、Video Electronics Standards Association local(VLB)バスまたは他の適切なバス、あるいはこれらの2つ以上の組合せを含むことが可能である。バス640は、適切である場合、1つ以上のバス604を含むことが可能である。本開示は特定のバスを記載および例示しているが、本開示は、いずれの適切なバスまたはインタコネクトも考察する。
【0065】
本明細書中、コンピュータによって読み取り可能な非一時的ストレージメディアは、適切である場合、1つ以上の半導体ベースまたは他の集積回路(IC)(例えば、フィールド−プログラマブルゲートアレイ(FPGA)またはアプリケーションスペシフィックIC(ASIC)など)、ハードディスクドライブ(HDD)、ハイブリッドハードドライブ(HHD)、光ディスク、光ディスクドライブ(ODD)、光磁気ディスク、光磁気ドライブ、フロッピーディスケット、フロッピーディスクドライブ(FDD)、磁気テープ、ソリッドステートドライブ(SSD)、RAMドライブ、SECURE DIGITALカードまたはドライブ、他のいずれかの適切なコンピュータによって読み取り可能な非一時的ストレージメディア、またはこれらの2つ以上のいずれかの適切な組合せを含むことが可能である。コンピュータによって読み取り可能な非一時的ストレージメディアは、適切である場合、揮発性、非揮発性、または揮発性および非揮発性の組合せであることが可能である。
【0066】
本明細書において具体化される通り、このような開示された対象は、組成物の石油モデルを製造するための包括的2DGCおよび関連技術の使用を記載する。詳細な化学および分子組成は、本明細書に記載の通り、定性的および定量的に、種々の検出システムによる2DGCによって決定することが可能である。詳細な分子組成は、本明細書に記載の通り、組成物の整合モデルを製造するための他の分析測定によって得られるバルク特性および平均構造に対して整合させる(又は整合する)ことが可能である。組成物のモデルを使用して、石油試料(例えば、原油)の値を評価し、精製プロセスを調整し、そして石油の反応機構、反応動力学および特性−構造相互関係に基づき得られる製品特性および規格の前進的予測を提供することが可能である。
【0067】
他の技術(例えば、特定の質量分析、HDHAまたはLC技術)と比較して、本明細書に記載の種々の検出器と組み合わせた2DGCは、石油組成物の同時及び迅速な定性および定量の利点を提供することが可能であり、かつ2DGCは、予備スケール分離を行わずに、時間のかかるLC分離を行わずに、かつコスト低下で小試料における詳細な組成の決定を可能にする。そのような技術では、クロマトグラフ的に分離された塊にマススペクトルデータを標準化するプロセスを減少または排除することが可能である。そのような技術は、それらの作動が比較的に単純であるため、精製調整のために配置されることが可能である。2DGCは、複雑な混合物の分析のための分離技術を提供する。それによって、複雑な炭化水素混合物の分離の間に、改善されたクロマトグラフ分離、ならびに強化された感応性を提供することが可能である。2DGCを使用するこれらの進歩は、本明細書に記載の通り、複雑な炭化水素混合物の定性(すなわち、同定)および定量分析を可能にする。2DGCによって決定される詳細な組成は、バルク特性測定に対して整合させる(又は整合する)ことが可能であり、自己矛盾のない組成物の整合石油モデル(self-consistent, reconciled petroleum model of composition)が製造される。
【0068】
追加の実施形態
さらに、または代わりに、本発明は、以下の実施形態の1つ以上を含むことが可能である。
【0069】
実施形態1
石油試料(又はぺトロール・サンプル(petroleum sample))のための組成物のモデルを形成(又は製造)する方法であって、以下のこと(又は工程又はステップ):
少なくとも1つの検出器と連結された二次元ガスクロマトグラフに石油試料を供給(又は提供)することであって、二次元ガスクロマトグラフが、石油試料を分析するための第1のカラムおよび第2のカラムを有し、少なくとも1つの検出器が、第1のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分(又はモレキュラー・コンポーネント(molecular component))の第1ディメンジョン保持時間(又は第1寸法保持時間又は第1保持時間又は1次保持時間又はファースト・ディメンジョン・リテンション・タイム(first dimension retention time))を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間(又は第2寸法保持時間又は第2保持時間又は2次保持時間又はセカンド・ディメンジョン・リテンション・タイム(second dimension retention time))を表すデータとを出力するように適応(又は適合)される(adapted)、上記供給(又は提供)することと;
少なくとも1つの検出器のそれぞれから、第1のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得ることと;
少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間のデータに基づいて、石油試料の分子成分を識別(又は同定又はアイデンティファイ)すること(identifying)と;
少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークに基づいて、石油試料の組成物のモデルを形成(又は製造)するために、石油試料の識別された分子成分を定量すること(quantifying)と;
少なくとも一部において、石油試料の組成物のモデルに基づき、石油試料の少なくとも1つの推定バルク特性(又は推定のバルク・プロパティ(estimated bulk property))を決定することと;
石油試料の少なくとも1つの実測バルク特性(又は実測のバルク・プロパティ(measured bulk property))を測定することと;
少なくとも一部において、少なくとも1つの推定バルク特性および少なくとも1つの実測バルク特性を比較することに基づき、石油試料の組成物のモデルを整合させる(又は整合する)こと(又はリコンシリング(reconciling))と
を含む、方法。
【0070】
実施形態2
第1ディメンジョン保持時間が、石油試料の分子成分のサイズ(又は径又は大きさ)または沸点(又はボイリング・ポイント(boiling point))の少なくとも1つに相当(又は対応)する、実施形態1の方法。
【0071】
実施形態3
第2ディメンジョン保持時間が、石油試料の分子成分の極性(又はポラリティ(polarity))に相当(又は対応)する、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0072】
実施形態4
少なくとも1つの検出器が、マス・スペクトロメーター(又は質量分析計(mass spectrometer))(MS)、フレーム・イオニゼーション・ディテクター(又は水素炎イオン化検出器(flame ionization detector))(FID)、サルファー・ケミルミネセンス・ディテクター(又は硫黄化学発光検出器(sulfur chemiluminescence detector))(SCD)、ナイトロジェン・ケミルミネセンス・ディテクター(又は窒素化学発光検出器(nitrogen chemiluminescence detector))(NCD)、アトミック・エミッション・ディテクター(又は原子放出検出器又は原子発光検出器(atomic emission detector))(AED)、フレーム・フォトメトリック・ディテクター(又は炎光光度検出器(flame photometric detector))(FPD)、エレクトロン・キャプチャー・ディテクター(又は電子捕獲検出器又は電子捕捉検出器(electron capture detector))(ECD)またはナイトロジェン・ホスホラス・ディテクター(又は窒素リン検出器(nitrogen phoshorus detector))(NPD)の少なくとも1つである、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0073】
実施形態5
少なくとも1つの検出器が、複数の検出器を含む、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0074】
実施形態6
少なくとも1つの検出器が、マス・スペクトロメーター(MS)、フレーム・イオニゼーション・ディテクター(FID)、サルファー・ケミルミネセンス・ディテクター(SCD)、ナイトロジェン・ケミルミネセンス・ディテクター(NCD)、アトミック・エミッション・ディテクター(AED)、フレーム・フォトメトリック・ディテクター(FPD)、エレクトロン・キャプチャー・ディテクター(ECD)またはナイトロジェン・ホスホラス・ディテクター(NPD)の少なくとも2つである、実施形態5の方法。
【0075】
実施形態7
複数の検出器が、並列(又はパラレル)に連結されている、実施形態5または実施形態6の方法。
【0076】
実施形態8
少なくとも一部において、石油試料の組成物の整合モデル(又は整合されたモデル(reconciled model))に基づいて、精製プロセス(又はリファイナリー・プロセス(refinery process))を調整(又はアジャスト)すること(adjusting)をさらに含む、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0077】
実施形態9
少なくとも1つの推定バルク特性が、推定(概算された(estimated))の蒸留収率(又はディスティレーション・イールド(distillation yield))および分布(又はディストリビューション(distribution))、推定の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量(又は含量(content))、または推定のアメリカ石油協会(又はアメリカン・ペトロール・インスティチュート(American Petroleum Institute))(API)比重の少なくとも1つを含み、少なくとも1つの実測バルク特性が、実測(又は測定された(measured))の蒸留収率および分布、実測の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量、または実測のアメリカ石油協会(API)比重の少なくとも1つを含む、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0078】
実施形態10
以下のこと(又は工程又はステップ):
石油試料の組成物のモデルの分子成分に基づいて、テンプレートを作成することと;
二次元ガスクロマトグラフに第2の石油試料を供給(又は提供)することと;
少なくとも1つの検出器のそれぞれから、第1のカラムにおいて検出された第2の石油試料の1種以上の分子成分の(ための)第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された第2の石油試料の1種以上の分子成分の(ための)第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得ることと;
少なくとも一部において、テンプレート(又は標準パターン(template))と、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間のデータと、それぞれの検出器の第2ディメンジョン保持時間のデータとに基づいて、第2の石油試料の分子成分を識別(又は同定又はアイデンティファイ)すること(identifying)と;
少なくとも一部において、テンプレートと、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークとに基づいて、第2の石油試料の組成物の第2のモデルを形成(又は製造)するために、第2の石油試料の識別された分子成分を定量すること(quantifying)と;
第2の石油試料の組成物の第2のモデルを形成(又は製造)することと
をさらに含む、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0079】
実施形態11
第1ディメンジョン保持時間が、第2の石油試料の分子成分のサイズ(又は径又は大きさ)または沸点の少なくとも1つに相当(又は対応)する、実施形態10の方法。
【0080】
実施形態12
第2ディメンジョン保持時間が、第2の石油試料の分子成分の極性に相当(又は対応)する、実施形態10または実施形態11の方法。
【0081】
実施形態13
石油試料の組成物のモデルを形成(又は製造)するためのシステムであり、
二次元ガスクロマトグラフであって、第1のカラムおよび第2のカラムを有する二次元ガスクロマトグラフと;
二次元ガスクロマトグラフに連結した少なくとも1つの検出器であって、上記少なくとも1つの検出器が、第1のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを出力するように適応(又は適合)される、少なくとも1つの検出器と;
二次元ガスクロマトグラフに石油試料を供給(又は提供)するように適応(又は適合)された注入器(又はインジェクター(injector))と;
二次元ガスクロマトグラフに連結された制御器(又はコントローラー(controller))であって、該制御器が、
少なくとも1つの検出器から、第1のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得るように;
少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間のデータに基づいて、石油試料の分子成分を識別(又は同定又はアイデンティファイ)する(identify)ように;
少なくとも一部において、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークに基づいて、石油試料の組成物のモデルを形成(又は製造)するために、石油試料の識別された分子成分を定量する(quantify)ように、
適応(又は適合)された(adapted)制御器と
を含む、システム。
【0082】
実施形態14
第1ディメンジョン保持時間が、石油試料の分子成分のサイズ(又は径又は大きさ)または沸点の少なくとも1つに相当(又は対応)する、実施形態13のシステム。
【0083】
実施形態15
第2ディメンジョン保持時間が、石油試料の分子成分の極性に相当(又は対応)する、実施形態13または14のいずれか1つのシステム。
【0084】
実施形態16
少なくとも1つの検出器が、マス・スペクトロメーター(MS)、フレーム・イオニゼーション・ディテクター(FID)、サルファー・ケミルミネセンス・ディテクター(SCD)、ナイトロジェン・ケミルミネセンス・ディテクター(NCD)、アトミック・エミッション・ディテクター(AED)、フレーム・フォトメトリック・ディテクター(FPD)、エレクトロン・キャプチャー・ディテクター(ECD)またはナイトロジェン・ホスホラス・ディテクター(NPD)の少なくとも1つである、実施形態13、14または15のいずれか1つのシステム。
【0085】
実施形態17
少なくとも1つの検出器が、複数の検出器を含む、実施形態13、14、15または16のいずれか1つのシステム。
【0086】
実施形態18
複数の検出器が、並列(又はパラレル)に連結されている、実施形態17のシステム。
【0087】
実施形態19
制御器が、少なくとも一部において、石油試料の組成物のモデルに基づき、石油試料の少なくとも1つの推定バルク特性を決定するように、さらに適応(又は適合)される、実施形態13,14、15、16、17または18のいずれか1つのシステム。
【0088】
実施形態20
制御器が、少なくとも一部において、少なくとも1つの推定バルク特性および少なくとも1つの実測バルク特性を比較することに基づき、石油試料の組成物のモデルを整合させる(又は整合する)ように、さらに適応(又は適合)される、実施形態19のシステム。
【0089】
実施形態21
制御器が、少なくとも一部において、石油試料の組成物の整合モデルに基づいて、精製プロセスを調整(又は調節又はアジャスト(adjust))するように、さらに適応(又は適合)される、実施形態13,14、15、16、17、18、19または20のいずれか1つのシステム。
【0090】
実施形態22
少なくとも1つの推定バルク特性が、推定の蒸留収率および分布、推定の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量、または推定のアメリカ石油協会(API)比重の少なくとも1つを含み、
少なくとも1つの実測バルク特性が、実測の蒸留収率および分布、実測の炭素−水素−硫黄−窒素−酸素(CHSNO)含有量、または実測のアメリカ石油協会(API)比重の少なくとも1つを含む、実施形態20のシステム。
【0091】
実施形態23
制御器が、
石油試料の組成物のモデルの分子成分に基づいて、テンプレートを作成するように;
少なくとも1つの検出器のそれぞれから、第1のカラムにおいて検出された第2の石油試料の1種以上の分子成分の第1ディメンジョン保持時間を表すデータと、第2のカラムにおいて検出された第2の石油試料の1種以上の分子成分の第2ディメンジョン保持時間を表すデータとを得るように;
少なくとも一部において、テンプレートと、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間のデータと、それぞれの検出器の第2ディメンジョン保持時間のデータとに基づいて、第2の石油試料の分子成分を識別(又は同定又はアイデンティファイ)する(identify)ように;
少なくとも一部において、テンプレートと、それぞれの検出器の第1ディメンジョン保持時間および第2ディメンジョン保持時間の積分ピークとに基づいて、第2の石油試料の組成物の第2のモデルを形成(又は製造)するために、第2の石油試料の識別された分子成分を定量する(quantify)ように;
第2の石油試料の組成物の第2のモデルを形成(又は製造)するように、
さらに適応(又は適合)される(adapted)、実施形態13〜22のいずれか1つのシステム。
【0092】
開示された対象は、特定の望ましい実施形態に関して本明細書に記載されるが、当業者は、その範囲から逸脱することなく、開示された対象に種々の変更および改良が実行可能であることを認識するであろう。さらに、開示された対象の一実施形態の個々の特徴が本明細書において議論されるか、または一実施形態の図面に示され、かつ他の実施形態において示されないことが可能であるが、一実施形態の個々の特徴を、別の実施形態の個々の特徴または複数の実施形態の特徴と組み合わせることが可能であることは明白である。
【0093】
以下に請求される具体的な実施形態に加えて、開示された対象は、以下に請求される従属する特徴および上記で開示された特徴のいずれかの他の可能な組合せを有する他の実施形態にも関する。そのようなものとして、従属請求項に提示され、かつ上記で開示された特定の特徴を、開示された対象がいずれかの他の可能な組合せを有する他の実施形態にも特に関するものとして認識されるように、開示された対象の範囲内の他の様式において互いに組み合わせることが可能である。したがって、開示された対象の特定の実施形態の上記記載は、説明および記載の目的のために提示される。それは網羅的であるものとして意図されず、または開示された対象を開示された実施形態に制限するように意図されない。
【0094】
開示された対象の精神または範囲から逸脱することなく、開示された対象の方法およびシステムにおいて種々の変更および変形を実行可能であることは当業者に明白であろう。したがって、開示された対象が、添付の請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にある変更および変形を含むことが意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
【国際調査報告】