(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-504416(P2020-504416A)
(43)【公表日】2020年2月6日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、それを含む電極、及び該電極を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20200110BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20200110BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20200110BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-512596(P2018-512596)
(86)(22)【出願日】2017年11月7日
(85)【翻訳文提出日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】KR2017012536
(87)【国際公開番号】WO2019078399
(87)【国際公開日】20190425
(31)【優先権主張番号】10-2017-0136614
(32)【優先日】2017年10月20日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフィル・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒョク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ス・マ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA17
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
化学式Li
xP
yNi
1−a−bCo
aA
bO
2で表示されるリチウム二次電池用単結晶正極活物質が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示されるリチウム二次電池用単結晶正極活物質:
LixPyNi1−a−bCoaAbO2 化学式1
前記化学式1で、
0.98≦x≦1.02、0≦y≦0.007、0<a≦0.2及び0≦b≦0.3であり、
前記Aは、Mn、Al、Mg及びVのうちから選択された1種以上の元素である。
【請求項2】
前記単結晶正極活物質は、層状構造を有することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記単結晶正極活物質は、単一粒子であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記単結晶正極活物質の平均粒径は、1.5μm超過18μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記Aは、Mn、Al、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記AがMnを含み、bが0<b≦0.3であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記AがAlを含み、bが0<b≦0.05であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記yは、0<y≦0.007であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
前記yが0を超える場合、前記P原子は、単結晶の層状構造において、四面体サイトに位置することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項10】
前記yが0を超える場合、前記P原子は、単結晶の層状構造内部に存在することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項11】
リチウム供給源及び遷移金属供給源を含む混合物を準備する段階と、
前記混合物を酸化雰囲気下で混合し、リチウム遷移金属含有混合物を得る混合段階と、
前記リチウム遷移金属含有混合物を熱処理し、単結晶リチウム遷移金属複合酸化物を得る熱処理段階と、を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記混合段階において、前記混合物は、機械的混合法によって混合することを特徴とする請求項11に記載のリチウム二次電池用単結晶正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記混合物は、リン供給源をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のリチウム二次電池用単結晶正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記熱処理段階は、第1熱処理段階及び第2熱処理段階を含むことを特徴とする請求項11に記載のリチウム二次電池用単結晶正極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記第1熱処理段階での熱処理温度は、前記第2熱処理段階での熱処理温度より高いことを特徴とする請求項14に記載のリチウム二次電池用単結晶正極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記第1熱処理段階での熱処理時間は、前記第2熱処理段階での熱処理時間より短いことを特徴とする請求項14に記載のリチウム二次電池用単結晶正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記単結晶リチウム遷移金属複合酸化物は、単一粒子であり、
前記単結晶は、層状構造を有することを特徴とする請求項11に記載のリチウム二次電池用単結晶正極活物質の製造方法。
【請求項18】
前記単結晶リチウム遷移金属複合酸化物の平均粒径は、1.5μm超過20μm以下であることを特徴とする請求項11に記載のリチウム二次電池用単結晶正極活物質の製造方法。
【請求項19】
請求項1ないし10のうちいずれか1項に記載の単結晶正極活物質を含む正極。
【請求項20】
請求項19に記載の正極と、
負極と、
電解質と、を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、それを含む電極、及び前記電極を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、1991年Sony社によって商用化された後、携帯電話、タブレットPC(personal computer)のような小型電子装置から、電気自動車、エネルギー保存システムのような中大型電子装置に至るまで、多様な分野で需要が急増している。特に、中大型電子装置に適用するためのリチウム二次電池は、高いエネルギー密度を有さなければならない。現在、商用化された正極活物質である単結晶タイプLiCoO
2(LCO)は、量産が容易であるという長所があるが、主な原料として使用されるコバルトは、高価である。
【0003】
最近では、中大型電子装置に適用するための二次電池用正極活物質として、LCOのような構造を有するLiNi
xCo
yMn
zO
2(NCM)及びLiNi
xCo
yAl
zO
2(NCA)のようなNi系正極活物質が使用されている。前記Ni系正極活物質は、高価のコバルトのうち一部をニッケルで代替することによって費用が節減され、ニッケルの導入を介して、可逆容量を増加させることができる。
【0004】
現在、Ni系正極活物質は、共沈法で合成した前駆体を使用し、リチウムソースと混合した後、固相に合成する方法である。しかし、既存共沈法によって合成されたNi系正極活物質は、小さい一次粒子が塊になっている二次粒子形態で存在し、長期間の充/放電過程において、二次粒子内部に微細亀裂(micro−crack)が形成される。それは、新たな界面露出を引き起こし、界面において、電解液との副反応が加速化され、ガス発生及び電解液枯渇などにより、バッテリ性能劣化が引き起こされる。また、高エネルギー密度具現のために、電極密度の上昇(>3.3g/cc)が要求されるが、それは、二次粒子の崩壊を誘発し、電解液との副反応による電解液枯渇につながり、結果として、初期寿命低下をもたらす。
【0005】
結局、既存の共沈法で合成した二次粒子形態のNi系正極活物質が高エネルギー密度を特性を有するには、限界がある。また、Ni系正極活物質表面に存在する過量の残留リチウム化合物(LiOH、Li
2CO
3)は、充/放電時、二酸化炭素ガスを発生させ、それは、バッテリの安定性に、かなり大きい影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一側面は、残留リチウム含量の減少、高エネルギー密度、及び長寿命特性を有する新規の単結晶ニッケルリッチ(Ni−rich)正極活物質を提供することである。
他の一側面は、前記正極活物質を含む高い電極密度を有する正極を提供することである。
さらに他の一側面は、前記正極を含み、長寿命及び高容量を有するリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面によれば、下記化学式1で表示されるリチウム二次電池用単結晶正極活物質が提供される:
Li
xP
yNi
1−a−bCo
aA
bO
2 化学式1
前記化学式1中、
0.98≦x≦1.02、0≦y≦0.007、0<a≦0.2及び0≦b≦0.3であり、
前記Aは、Mn、Al、Mg、Fe、Cu、Zn、Cr及びVのうちから選択された1種以上の元素である。
【0008】
本実施例において、前記単結晶正極活物質は、層状構造を有することができる。
【0009】
本実施例において、前記単結晶正極活物質は、単一粒子でもある。
【0010】
本実施例において、前記単結晶正極活物質の平均粒径は、1.5μm超過18μm以下でもある。
【0011】
本実施例において、前記Aは、Mn、Al、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0012】
本実施例において、前記AがMnであり、bが0<b≦0.3でもある。
【0013】
本実施例において、前記AがAlであり、bが0<b≦0.05でもある。
【0014】
本実施例において、前記yが0を超える場合、前記P原子は、単結晶において、四面体サイトに位置することができる。
【0015】
本実施例において、前記yが0を超える場合、前記P原子は、単結晶粒子の内部に存在することができる。
【0016】
他の側面によれば、リチウム供給源及び遷移金属供給源を含む混合物を準備する段階と、
前記混合物を酸化雰囲気下で混合し、リチウム遷移金属含有混合物を得る混合段階と、
前記リチウム遷移金属含有混合物を熱処理し、単結晶リチウム遷移金属複合酸化物を得る熱処理段階と、を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
【0017】
本実施例において、前記混合段階において、前記混合物は、機械的混合法によって混合される。
【0018】
本実施例において、前記混合物は、リン供給源をさらに含んでもよい。
【0019】
本実施例において、前記熱処理段階は、第1熱処理段階及び第2熱処理段階を含んでもよい。
【0020】
本実施例において、前記第1熱処理段階での熱処理温度は、前記第2熱処理段階での熱処理温度よりも高い。
【0021】
本実施例において、前記第1熱処理段階での熱処理時間は、前記第2熱処理段階での熱処理時間よりも短い。
【0022】
本実施例において、前記単結晶リチウム遷移金属複合酸化物は、単一粒子であり、前記単結晶は、層状構造を有することができる。
【0023】
本実施例において、前記単結晶リチウム遷移金属複合酸化物の平均粒径は、1.5μm超過18μm以下でもある。
【0024】
他の側面によれば、前記単結晶正極活物質を含む正極が提供される。
【0025】
さらに他の側面によれば、前記正極と、負極と、電解質と、を含むリチウム二次電池架提供される。
【発明の効果】
【0026】
一側面による単結晶タイプニッケルリッチ(Ni−rich)正極活物質をリチウム二次電池の正極に採用することにより、従来の多結晶型または二次粒子形状の正極活物質に比べ、20%ほど増加された体積当容量(mAh/cc)を具現することができる。
【0027】
それだけではなく、一側面による単結晶タイプニッケルリッチ正極活物質の構造内で空いている正四面体サイトにP原子を置換することにより、相安定性確保及び残留リチウム低減を介して、バッテリの安定性改善及び寿命特性向上をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来の二次粒子形状NCM622の極板密度3.6g/ccでの60℃寿命評価結果を示すグラフである。
【
図2】二次粒子形状NCM622の極板密度3.6g/ccでの電気化学評価前後の極板断面SEM(scanning electron microscope)イメージを示す図面である。
【
図3】従来の二次粒子形状のNi系正極活物質、及び仕事具現例で製造された単結晶タイプNi系正極活物質を比較して示した図面である。
【
図4】製造例1ないし5、及び製造例11及び12の正極活物質粒子のSEMイメージ、HR−TEM(high resolution transmission electron microscope)イメージ及び電子回折パターンを示す図面である。
【
図5】製造例1ないし5で得た正極活物質の粒度分布結果を示す図面である。
【
図6】粒径が1μm及び4μmと異なるNCM811の充電及び放電の曲線グラフを示す図面である。
【
図7】粒径が1μm及び4μmと異なるNCM811の表面に係わるSEMイメージを示す図面である。
【
図8】製造例3及び製造例10で得た正極活物質に対するXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)分析結果を示す図面である。
【
図9】製造例10で得た正極活物質に対するSTEM(scanning transmission electron. microscopy)イメージ及びEDS(energy dispersive X−ray spectrometer)分析結果を示す図面である。
【
図10】実施例1ないし5、及び比較例1及び2に対する充電及び放電の曲線グラフを示すグラフである。
【
図11】実施例3、及び実施例6ないし10に対する充電及び放電の曲線グラフを示すグラフである。
【
図12】実施例3、実施例6ないし10、並びに比較例1及び2に対する充放電回数による比容量曲線を示すグラフである。
【
図13】実施例3の3.6g/ccでの電気化学評価前の極板断面SEMイメージを示す図面である。
【
図14】実施例3の3.6g/ccでの常温80サイクル後の極板断面SEMイメージを示す図面である。
【
図15】例示的な具現例によるリチウム電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下で説明する本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるが、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかし、それらは、本創意的思想を特定実施形態について限定するものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むと理解されなければならない。
【0030】
以下で使用される用語は、ただ、特定実施例について説明するために使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わが存在するということを示すものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されなければならない。
【0031】
図面において、さまざまな層及び領域を明確に表現するために、厚みを拡大したり縮小したりして示した。明細書全体を通じて、類似部分については、同一図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板などの部分が、他の部分の「上に」または「上部に」あるというとき、それは、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0032】
以下において、例示的な具現例による複合正極活物質、及び前記複合正極活物質を採用した正極を含んだリチウム二次電池についての説明に先立ち、従来の共沈法で合成したNi系二次電池用正極活物質について、
図1及び
図2を参照して簡略に説明する。
【0033】
既存共沈法で合成したNi系二次電池用正極活物質は、小粒子が塊になっている二次粒子形状を有する。それは、電極圧延時、二次粒子の崩壊を誘発し、電極密度を上昇させるのに限界がある。既存二次粒子形状のNi系二次電池用正極活物質の最大合剤密度は、3.6g/ccであるが、該電極密度で、ほとんどの二次粒子崩壊が発生し、充/放電時、電解液との副反応によって寿命劣化を誘発する。それは、結局、ハーフセル電気化学評価時、初期寿命の急落を誘発し、体積当たりエネルギー密度上昇に限界を示す。NCM622は、3.6g/ccの電極密度で、60℃40サイクル後、可逆容量の急落が起こるということが分かる(
図1参照)。
図2を参照すれば、3.6g/ccの二次粒子形状LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2(NCM622)において、電極圧延だけで二次粒子の形状が崩壊され、小粒子に分かれることが分かる。さらに、60℃での200サイクル充/放電後、二次粒子形状NCM622の極板断面を見れば、全ての粒子の崩壊が起こるということが分かる。それは、電極圧延によって生成された粒子崩壊、及び電気化学的に形成される粒子崩壊は、新たな活性界面の露出により、持続的な充/放電時、電解液副反応の加速化、及びガス発生により、バッテリ寿命及び安定性の劣化の大きい原因として作用するということを意味する。
【0034】
以下では、前記従来の共沈法で製造したNi系正極活物質の問題点を解決した単結晶正極活物質について詳細に説明する。
一具現例によるリチウム二次電池用単結晶正極活物質は、下記化学式1でも表示される:
Li
xP
yNi
1−a−bCo
aA
bO
2 化学式1
前記化学式1で、
0.98≦x≦1.02、0≦y≦0.007、0<a≦0.2及び0≦b≦0.3であり、
前記Aは、Mn、Al、Mg、Ti及びVのうちから選択された1種以上の元素である。
【0035】
一具現例によれば、前記Aは、Mn、Al、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0036】
例えば、前記Aは、Mnを含み、0<b≦0.3でもある。例えば、前記Aは、Alを含み、0<b≦0.05でもある。
【0037】
図3から分かるように、前記化学式1で表示される単結晶正極活物質は、層状構造の単一相を有することができる。前記単結晶正極活物質が単一相を有することにより、活物質として使用することができる構造的に安定した領域が増えるので、高容量特性を有する。
また、前記正極活物質は、単一粒子でもある。言い換えれば、前記正極活物質は、微小粒子が凝集された二次粒子の構造形態を有さない。
【0038】
前記正極活物質が単一粒子の形態を有することにより、高電極密度においても、粒子崩れを防止することができる。従って、正極活物質の高エネルギー密度の具現が可能になる。
【0039】
前記正極活物質の平均粒径(D
50)は、1.5μm超過18μm以下でもある。前記正極活物質の平均粒径は、前記範囲に限定されるものではなく、前記範囲内に属する任意の2地点を選択して表現される全ての範囲を含む。前記正極活物質の平均粒径が前記範囲に属する場合、所定体積当たりエネルギー密度を具現することができる。
【0040】
前記正極活物質の平均粒径が18μmを超える場合、充放電容量の急激な低下をもたらし、1.5μm以下である場合、所望する体積当たりエネルギー密度を得難い。
【0041】
一具現例による正極活物質は、リン(P)をドーピング元素として少量含んでもよい。かような正極活物質は、下記化学式2でも表示される。
Li
xP
yNi
1−a−bCo
aA
bO
2 化学式2
前記化学式1で、
0.98≦x≦1.02、0<y≦0.007、0<a≦0.2及び0≦b≦0.3であり、
前記Aは、Mn、Al、Mg、Fe、Cu、Zn、Cr及びVのうちから選択された1種以上の元素である。
【0042】
前記化学式2で表示される正極活物質は、ニッケル系単結晶単一粒子正極活物質の結晶構造内において、他の元素を置換するのではなく、空いている正四面体サイトに、P元素がドーピングされた構造を有する。従って、P元素のドーピングは、LiまたはNi、Coのような遷移金属の化学量論値に影響を与えない。結果として、化学式2で表示される単結晶ニッケル系正極活物質は、P元素の導入を介して、化学量論的に外れた組成を有することができる。
【0043】
前記化学式2で表示される正極活物質は、Pが0.007モル%以下にもドーピングされる。
【0044】
一具現例によれば、前記P元素は、単結晶の層状構造において、四面体サイトに位置することができる。前記四面体サイトは、前記単結晶の層状構造において、空いているサイトでもある。前記P元素が空いている四面体サイトに位置することにより、残留リチウム量が低減する。理論に拘束されるものではないが、Pが結晶構造内で空いている正四面体サイトに部分的に置換されることにより、高温での第1熱処理段階において、結晶構造内酸素欠陥形成によるLi放出を抑制させることにより、残留リチウムを低減させることができる。放出されたLiは、高温において、空気中のCO
2及び水分と反応し、残留リチウム化合物を形成させることができる。しかし、構造内で空いている正四面体サイトに存在するPは、正極構造内酸素骨格(framework)を安定化させることにより、高温での酸素欠陥形成抑制を介して、残留リチウムを低減させることができる。
【0045】
前記P元素を含んだ正極活物質の残留リチウムは、水溶性残留リチウム(Li
2CO
3及びLiOH)であり、Pを含んでいない正極活物質の残留リチウム量100を基準に、20%ないし60%減少している。
【0046】
正極活物質の残留リチウム含量は、Metrohm社の888 Titrando装備を利用し、滴定法(0.1M HCl使用)を介して確認した。
【0047】
一具現例によれば、前記P元素は、単結晶内部に存在することができる。例えば、前記P元素は、単結晶正極活物質表面には存在せず、単結晶正極活物質の内部に存在することができる。
【0048】
前記P元素が単結晶内部の四面体サイトに位置することにより、充放電によるリチウムイオンのインターカレーション/デインターカレーション時に相転移を緩和し、正極活物質の相安定性に寄与する。
【0049】
以下、一側面によるリチウム二次電池用単結晶正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
【0050】
一側面によるリチウム二次電池用単結晶正極活物質の製造方法は、リチウム供給源及び遷移金属供給源を含む混合物を準備する段階と、前記混合物を酸化雰囲気下で混合し、リチウム遷移金属含有混合物を得る混合段階と、前記リチウム遷移金属含有混合物を熱処理し、単結晶リチウム遷移金属複合酸化物を得る熱処理段階と、を含んでもよい。
【0051】
一具現例によれば、前記リチウム供給源は、LiOHまたはLi
2CO
3でもあるが、それらに限定されるものではなく、リチウム元素を供給することができる多様なリチウム含有化合物が含まれる。
【0052】
一具現例によれば、前記遷移金属供給源は、Ni、Co、Mn、Al、Mg及びVの酸化物または水酸化物のうちから選択された1種以上の化合物でもある。
【0053】
一具現例によれば、前記混合段階において、前記混合物は、機械的混合法によって混合される。
【0054】
機械的混合とは、機械的力を加え、混合する物質を粉砕して混合し、均一な混合物を形成するものである。機械的混合は、例えば、化学的に不活性であるビード(beads)を利用するボールミル(ball mill)、遊星ミル(planetary mill)、撹拌ボールミル(stirred ball mill)、振動ミル(vibrating mill)のような混合装置を利用しても行われる。このとき、混合効果を極大化するために、エタノールのようなアルコール、ステアリン酸のような高級脂肪酸を選択的に少量添加することができる。
【0055】
前記機械的混合は、酸化雰囲気で行われるが、それは、遷移金属供給源(例えば、Ni化合物)において、遷移金属の還元を防ぎ、活物質の構造的安定性を具現するためのものである。
【0056】
一具現例によれば、前記混合物は、リン供給源をさらに含んでもよい。例えば、前記リン供給源は、NH
4HPO
4でもあるが、もされるのではなく、リン元素を提供することができるリン含有化合物をいずれも含む。
【0057】
一具現例によれば、前記熱処理段階は、第1熱処理段階及び第2熱処理段階を含んでもよい。前記第1熱処理段階及び第2熱処理段階は、連続的に遂行されるか、あるいは第1熱処理段階後に休息期を有することができる。また、前記第1熱処理段階及び第2熱処理段階は、同一チャンバ内でもなされ、互いに異なるチャンバ内でもなされる。
【0058】
一具現例によれば、前記第1熱処理段階での熱処理温度は、前記第2熱処理段階での熱処理温度よりも高い。
【0059】
例えば、前記第1熱処理段階での熱処理温度は、850℃ないし1,200℃、860℃ないし1,200℃、870℃ないし1,200℃、880℃ないし1,200℃、890℃ないし1,200℃、または900℃ないし1,200℃でもあるが、それらに限定されるものではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0060】
例えば、前記第2熱処理段階の熱処理温度は、700℃ないし850℃、710℃ないし850℃、720℃ないし850℃、730℃ないし850℃、740℃ないし850℃、750℃ないし850℃、700℃ないし840℃、700℃ないし830℃、700℃ないし820℃、700℃ないし810℃、または700℃ないし800℃でもあるが、それらに限定されるものではなく、前記範囲内に任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0061】
一具現例によれば、前記第1熱処理段階での熱処理時間は、前記第2熱処理段階での熱処理時間よりも短い。
【0062】
例えば、前記第1熱処理段階で熱処理時間は、3時間ないし5時間、4時間ないし5時間、または3時間ないし4時間でもあるが、それらに限定されるものではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0063】
例えば、前記第2熱処理段階において熱処理時間は、10時間ないし20時間、10時間ないし15時間でもあるが、それらに限定されるものではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0064】
一具現例によれば、前記第1熱処理段階は、850℃ないし1,200℃の熱処理温度において、3ないし5時間熱処理する段階を含んでもよい。
【0065】
一具現例によれば、前記第2熱処理段階は、700℃ないし850℃の熱処理温度において、10ないし20時間熱処理する段階を含んでもよい。
【0066】
前記第1熱処理段階では、リチウム遷移金属含有混合物が、層状構造の正極活物質を形成すると同時に、粒子成長を誘発し、単結晶の形状をなさしめる。前記第1熱処理段階においては、二次粒子形状のリチウム遷移金属含有混合物内のそれぞれの一次粒子が急激に成長し、粒子間応力に耐えることができなくなることにより、一次粒子の内部が出つつ互いに融合され、二次電池用単結晶正極活物質が形成されたのである。前記第2熱処理段階においては、第1熱処理段階において、さらに低い温度で熱処理を長期間行うことにより、第1熱処理段階で生成された層状構造の結晶度が高くなる。第1熱処理段階及び第2熱処理段階を介して、単一相、単結晶、単一粒子のニッケル系正極活物質が得られる。
【0067】
一具現例によれば、前記製造方法によって製造された単結晶リチウム遷移金属複合酸化物は、単一粒子であり、前記単結晶は、層状構造を有することができる。また、前記単結晶リチウム遷移金属複合酸化物の平均粒径は、1.5μm超過18μm以下でもある。
【0068】
また、一側面による単結晶正極活物質の製造方法において、原料混合物にリン含有化合物をさらに含めることにより、単結晶構造内に空いている正四面体のサイトに、Pが部分的を置換された正極活物質を得ることができ、それを介して、充/放電時、相転移抑制を介して、バッテリ安定性確保及び長寿命を達成している。
【0069】
他の側面によれば、前述の正極活物質を含む正極が提供される。
【0070】
さらに他の側面によれば、前記正極と、負極と、電解質と、を含むリチウム二次電池が提供される。
【0071】
前記正極、及びそれを含むリチウム二次電池は、次のような方法によっても製造される。
まず、正極が準備される。
【0072】
例えば、前述の正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。前記正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされ、正極板が製造される。代案としては、前記正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、正極板が製造される。前記正極は、前述のところで列挙された形態に限定されるものではなく、前記形態以外の形態でもある。
【0073】
前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;炭素ナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物などが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で導電材として使用されるものであるならば、いずれも使用される。
【0074】
前記バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、その混合物、金属塩、またはスチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも使用される。さらに他のバインダの例としては、前述ポリマーのリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩Na塩、
前記溶媒としては、N−メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されるものであるならば、いずれも使用される。
【0075】
前記正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、前記導電材、バインダ及び溶媒のうち1以上が省略される。
【0077】
例えば、負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒を混合し、負極活物質組成物が準備される。前記負極活物質組成物が、3μm厚ないし500μm厚を有する金属集電体上に直接コーティングされて乾燥され、負極板が製造される。代案としては、前記負極活物質組成物が、別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、負極板が製造される。
【0078】
前記負極集電体は、当該電池に、化学的変化を誘発せず、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅、ニッケル、銅の表面に、カーボンで表面処理したものが使用される。
【0079】
前記負極活物質は、当該技術分野において、リチウム電池の負極活物質として使用されるものであるならば、いずれも可能である。例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群のうち選択された1以上を含んでもよい。
【0080】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、SbSi−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などでもある。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、SeまたはTeでもある。
【0081】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などでもある。
【0082】
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO
2、SiO
x(0<x<2)などでもある。
【0083】
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物でもある。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形またはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛でもあり、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾフェーズピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどでもある。
【0084】
負極活物質組成物において、導電材、バインダ及び溶媒は、前記正極活物質組成物の場合と同一のものを使用することができる。
【0085】
前記負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、前記導電材、バインダ及び溶媒のうち1以上が省略される。
【0086】
次に、前記正極と負極との間に挿入されるセパレータが準備される。
【0087】
前記セパレータは、リチウム電池で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。電解質のイオン移動に対して、低抵抗でありながら、電解液含浸能にすぐれるものが使用される。前記セパレータは、単一膜または多層膜でもあり、例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせ物のうちから選択されたものであり、不織布であっても織布であってもよい。また、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータのような混合多層膜が使用されもする。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能にすぐれるセパレータが使用されもする。例えば、前記セパレータは、下記方法によっても製造される。
【0088】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合し、セパレータ組成物が準備される。前記セパレータ組成物が、電極上部に直接コーティングされて乾燥され、セパレータが形成される。または、前記セパレータ組成物が、支持体上にキャスティングされて乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極上部にラミネーションされ、セパレータが形成される。
【0089】
前記セパレータ製造に使用される高分子樹脂は、特別に限定されるものではなく、電極板の結合材に使用される物質であるならば、いずれも使用される。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの混合物などが使用されもする。
【0091】
例えば、前記電解質は、有機電解液でもある。また、前記電解質は、固体でもある。例えば、ボロン酸化物、リチウム酸窒化物などでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で固体電解質として使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。前記固体電解質は、スパッタリングなどの方法で、前記負極上に形成される。
【0092】
例えば、有機電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造されもする。
【0093】
前記有機溶媒は、当該技術分野において、有機溶媒として使用されるものであるならば、いずれも使用される。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロロラクトンなどのエステル類;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類などがある。それらを、単独で、あるいは複数個組み合わせて使用することができる。例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合した溶媒を使用することができる。
【0094】
また、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどの重合体電解質に電解液を含浸させたゲル状重合体電解質や、LiI、Li
3N、Li
xGe
yP
zS
α、Li
xGe
yP
zS
αX
δ(X=F、Cl、Br)などの無機固体電解質を使用することができる。
【0095】
前記リチウム塩も、当該技術分野でリチウム塩として使用されるものであるならば、いずれも使用される。例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ただし、x、yは、自然数である)、LiCl、LiI、またはそれらの混合物などである。
【0096】
図9から分かるように、前記リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。前述の正極3、負極2及びセパレータ4が巻き取られたり、折り畳まれたりして電池ケース5に収容される。次に、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6に密封され、リチウム電池1が完成される。前記電池ケース5は、円筒状、角形、薄膜型などでもある。例えば、前記リチウム電池1は、薄膜型電池でもある。前記リチウム電池1は、リチウムイオン電池でもある。
【0097】
前記正極及び負極の間にセパレータが配置され、電池構造体が形成される。前記電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0098】
また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、かような電池パックが高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などに使用される。
【0099】
また、前記リチウム電池は、寿命特性及び高率特性にすぐれるので、電気車両(EV)にも使用される。例えば、プラグインハイブリッド車両(PHEV:plug−in hybrid electric vehicle)などのハイブリッド車両に使用されもする。また、多量の電力保存が要求される分野にも使用される。例えば、電気自転車、電動工具などに使用されもする。
【0100】
[実施例]
(正極活物質の製造)
製造例1
100gのNi
0.5Co
0.2Mn
0.3(OH)
2と、40.7gのLi
2CO
3とを約15分機械的に混合する。混合した粉末を、1150℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、単結晶タイプLiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2(NCM523)を得た。
【0101】
製造例2
100gのNi
0.6Co
0.2Mn
0.2(OH)
2と、40.8gのLi
2CO
3とを約15分機械的に混合する。混合した粉末をAlumina crucibleにローディングした後、1100℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、単結晶タイプLiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2(NCM622)を得た。
【0102】
製造例3
100gのNi
0.8Co
0.1Mn
0.1(OH)
2と、40.6gのLi
2CO
3とを約15分機械的に混合する。混合した粉末をAlumina crucibleにローディングした後、970℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、単結晶タイプLiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2(NCM811)を得た。
【0103】
製造例4
100gのNi
0.8Co
0.15Al
0.05(OH)
2と、40.8gのLi
2CO
3とを約15分機械的に混合する。混合した粉末をAlumina crucibleにローディングした後、920℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、単結晶タイプLiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2(NCA)を得た。
【0104】
製造例5
100gのNi
0.9Co
0.1(OH)
2と、40.4gのLi
2CO
3とを約15分機械的に混合する。混合した粉末をAlumina crucibleにローディングした後、880℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、LiNi
0.9Co
0.1O
2(NC)を得た。
【0105】
製造例6
100gのNi
0.8Co
0.1Mn
0.1(OH)
2と、40.7gのLi
2CO
3、及び0.0617gのNH
4HPO
4とを約15分機械的に混合する。混合した粉末を、970℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、LiNi
0.795Co
0.101Mn
0.103P
0.0002O
2を得た。
【0106】
製造例7
100gのNi
0.8Co
0.1Mn
0.1(OH)
2と、40.7gのLi
2CO
3、及び0.123gのNH
4HPO
4とを約15分機械的に混合する。混合した粉末を、970℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、LiNi
0.794Co
0.102Mn
0.103P
0.0004O
2を得た。
【0107】
製造例8
100gのNi
0.8Co
0.1Mn
0.1(OH)
2と、40.7gのLi
2CO
3、及び0.370gのNH
4HPO
4を約15分機械的に混合する。混合した粉末を、970℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、LiNi
0.794Co
0.101Mn
0.103P
0.0016O
2を得た。
【0108】
製造例9
100gのNi
0.8Co
0.1Mn
0.1(OH)
2と、40.7gのLi
2CO
3、及び0.617gのNH
4HPO
4を約15分機械的に混合する。混合した粉末を、970℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、LiNi
0.792Co
0.101Mn
0.103P
0.003O
2を得た。
【0109】
製造例10
100gのNi
0.8Co
0.1Mn
0.1(OH)
2と、40.7gのLi
2CO
3、及び1.23gのNH
4HPO
4を約15分機械的に混合する。混合した粉末を、970℃で4時間、及び780℃で10時間焼成し、LiNi
0.79Co
0.10Mn
0.103P
0.0064O
2を得た。
【0110】
製造例11
100gのNi
0.8Co
0.1Mn
0.1(OH)
2と、45.8gのLiOHをと約15分機械的に混合した後、780℃で20時間焼成し、二次粒子形状LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2(NCM811)を得た。
【0111】
製造例12
100gのNi
0.8Co
0.15Al
0.05(OH)
2と、45.8gのLiOHとを約15分機械的に混合した後、780℃20時間焼成し、二次粒子形状LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2(NCA)を得た。
【0112】
(ハーフセルの製作)
実施例1
製造例1で得た正極活物質:導電材:バインダを94:3:3の重量比で混合し、スラリーを製造した。ここで、前記導電材としては、カーボンブラックを使用し、前記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)をN−メチル−2−ピロリドン溶媒に溶解させて使用した。
【0113】
前記スラリーをAl集電体に均一に塗布し、110℃で2時間乾燥させ、正極電極を製造した。極板のローディングレベルは、11.0mg/cm
2であり、電極密度は、3.6g/ccであった。
【0114】
前記製造された正極を作業電極として使用し、リチウムホイルを相対電極として使用し、EC/EMC/DECを3/4/3の体積比で混合した混合溶媒に、リチウム塩として、LiPF
6を1.3Mの濃度になるように添加した液体電解液を使用し、一般的に知られている工程によってCR2032ハーフセルを製作した。
【0115】
実施例2ないし10
正極活物質として、製造例2ないし10で得た正極活物質を使用したことを除いては、実施例1と同一方法でハーフセルを製作した。
【0116】
比較例1及び2
正極活物質として、製造例11及び12で得た正極活物質を使用し、実施例1と同一方法でハーフセルを製造し、ハーフセルに使用された電極の電極密度は、2.7g/ccであった。
【0117】
[評価例]
(1)正極活物質表面及び粒度の評価
図4及び
図5から分かるように、製造例11,12で得た正極活物質は、小粒子が集まっている二次粒子形状を有しており、HR−TEM(high resolution transmission electron microscope)及びED(electron diffraction)の分析時、各一次粒子の多結晶性質のために、多様な結晶方向を有したEDパターンが観測される。一方、製造例1ないし5で得た正極活物質は、単一粒子からなり、HR−TEM分析時、single grainからなっている。それは、一粒子が一方向になっているために、ED分析時、層状構造の単一パターンが観測される(zone axis:[110]
c)。また、製造例1ないし5で得た正極活物質の粒子分布は、約1.5μmないし18μmの間にある。HR−TEMは、JEM−ARM300F(JEOL)を利用し、160kVの加速電圧で分析を行い、粒度分布は、Cilas1090(Scinco)を利用して分析した。
【0118】
(2)正極活物質粒度サイズによる体積当たりエネルギー密度
熱処理条件を、910℃で4時間、及び780℃で10時間焼成することにすることを除いては、製造例3と同一方法で製造し、平均粒径が1μmであるNCM811を製造し、熱処理条件を、910℃で4時間、及び780℃で10時間焼成することにすることを除いては、製造例3と同一方法で製造し、平均粒径が4μmであるNCM811をそれぞれ製造した。かような正極活物質を利用して電極を製造した後、最大電極密度及び体積当たりエネルギー密度を測定した。その結果は、
図6及び下記表1に示す。また、各電極の表面をSEMで撮影した写真は、
図7に示す。
【0120】
前記表1から分かるように、平均粒径が1μmである場合、4μmである場合に比べ、電極密度及び体積当たりエネルギー密度が低かった。
【0121】
(3)正極活物質の結晶内におけるP含量による残留リチウム含量比較の評価
製造例3で得た正極活物質、及び製造例6ないし10で得た正極活物質に対するICP(inductively coupled plasma)分析を進め、その結果を下記表2に示した。前記ICP分析は、700−ES(Varian)を利用して分析した。また、製造例3、及び製造例6ないし10で得た正極活物質に対する残留リチウム濃度を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0124】
前記表2及び表3から分かるように、Pを含む製造例6ないし10において、残留リチウム含量が減少し、Pの含量が高くなるほど、残留リチウムの含量が少なくなるということが分かる。
【0125】
また、P元素が、正極活物質いずれの部分に位置するかということを確認するために、製造例3及び製造例10の正極活物質に対してXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)分析を進め、その結果を
図8に示した。さらに、製造例10の正極活物質に対して、粒子表面をSTEM(scanning transmission electron. microscopy)を利用して確認し、その結果を
図9に示した。
【0126】
図8によれば、製造例6ないし10のICP分析結果、遷移金属の比率が製造例3と比較したとき、若干減少したことが分かり、それは、Pが遷移金属サイトに置換されたことを意味する。XPS(X−ray photoelectron spectroscopy)分析時、製造例3では、P−O結合が観測されないが、製造例10としては、PO
4結合が観測されるということが分かる。さらに、既存の先行文献によれば、Pは、構造内に置換され、部分的にPO
4骨格(framework)を形成すると知られている。それは、層状構造のリチウム二次電池用正極活物質において、リチウム及び遷移金属は、八面体の配位結合をしているサイトに位置しており、正四面体の配位結合が可能であるPは、構造内リチウム及び遷移金属サイトに位置することができず、構造内で空いている正四面体のサイトに位置するということを意味する。
【0127】
図9によれば、粒子の表面に、何らのコーティング物質も観測されず、表面構造は、層状構造によってなるということが分かる。また、白い長方形内でのEDX(energy dispersive X−ray spectrometer)分析結果から、P元素が観察されるということは、構造内に存在するということを示す。
【0128】
(4)電気化学評価
初期化成評価のために組み立てられた実施例1ないし10、並びに比較例1及び2で製作されたハーフセルを10時間休止させた後、0.1Cで4.3Vまで、定電流(CC)モードで充電した後、0.05Cに該当する電流まで、定電圧(CV)モードで充電を行った。次に、0.1Cで3.0VまでCCモードで放電を行った。常温寿命評価のために、0.5Cで4.3VまでCCモードで充電した後、0.05Cに該当する電流まで、CVモードで充電を進めた。その後、1Cで3.0VまでCCモードで放電を進め、該過程を総80回反復した。
【0129】
実施例1ないし10、並びに比較例1及び2に対して、初期化成容量及び初期クーロン効率を測定し、実施例3、実施例6ないし10、並びに比較例1及び2に対して、容量維持率を測定し、その結果を表4ないし6、及び
図10ないし12に示した。
【0133】
表4及び
図10によれば、単結晶タイプNi系リチウム二次電池用正極活物質を含んだ実施例1ないし5の初期容量は、比較例1及び2で使用した同一組成の二次粒子形状のNi系リチウム二次電池用正極活物質と類似したレベルである。
【0134】
これまでのところ報告された単結晶形状のリチウム二次電池用正極活物質は、同一組成の二次粒子形状のリチウム二次電池用正極活物質対比で、少ない初期可逆容量を具現する。それは、単結晶形状の正極素材合成時、構造内に過量のリチウムを導入することにより(Li>1.15)、高温焼成時、相安定性確保がなされずに発生するのである。本特許としては、リチウムソースのモル%を遷移金属対比で化学量論的に正確に1で投入することにより、構造的に完璧な単結晶形状のリチウム二次電池用正極活物質を製造し、同じ組成の二次粒子形状の素材と同等以上の容量を具現することができる。
【0135】
表5及び
図11によれば、製造例3の単結晶タイプリチウム二次電池用正極活物質において、極少量Pを構造内で空いている正四面体のサイトに部分的に置換させた正極活物質を含んだ実施例6ないし10において、P含量が0.0016モル%以下である場合、初期化成容量及び効率に大差が見られなかったが、0.0030モル%以上である場合、約1%ないし約5%の初期容量減少と、約1%ないし約3%の初期効率低下とが発見された。
【0136】
表6及び
図12によれば、実施例3の単結晶タイプNi系二次電池用正極活物質を含んだ二次電池は、比較例1,2の二次粒子型Ni系二次電池用正極活物質を使用した二次電池に比べ、高電極密度で評価したにもかかわらず、常温において、80サイクル後、約7%ないし約11%の高いサイクルリテンションを示す。さらに、単結晶タイプリチウム二次電池用正極活物質において、極少量Pを構造内で空いている正四面体のサイトに置換させたとき(実施例6ないし10)、置換されたPのモル重量%が増加するほど、寿命が向上するということが分かる。
【0137】
(5)単結晶タイプ正極活物質の電気化学評価前/後の極板断面評価
実施例3によって製造されたハーフセルに対する電気化学評価前/後の極板断面をSEMを介して観察し、その結果を
図13及び
図14に示す。
【0138】
図13によれば、実施例3で使用した正極は、高い電極密度(〜3.6g/cc)において、正極活物質粒子の崩壊なしに、粒子形状が良好に維持されるということが分かる。それは、電気化学評価時、粒子崩壊による新たな正極/電解液界面の露出を防ぎ、電解液副反応を抑制し、ガス発生抑制及び寿命特性の向上をなすことができるのである。従って、高電極密度(〜3.6g/cc)において、高エネルギーリチウム二次電池開発のためには、二次粒子形状の正極活物質ではない単結晶タイプ正極活物質が必須であるということを意味する。
【0139】
図14によれば、常温寿命評価後、高電極密度(〜3.6g/cc)において、実施例3で使用した正極の極板断面分析結果、サイクル前の粒子形状をそのまま維持しているということが分かる。二次粒子形状のリチウム二次電池用正極活物質において、主な劣化メカニズムとして認識される粒子内微細亀裂の形成による新たな界面の露出により、電解液副反応加速化、及び構造変化の加速化による寿命劣化が、単結晶タイプリチウム二次電池用正極活物質を導入することにより、解決されるのである。
【0140】
前述の評価例の結果を総合すれば、単結晶タイプNi系リチウム二次電池用正極活物質を介して、既存共沈法で合成した二次粒子形状のNi系リチウム二次電池用正極活物質と同等な容量を具現しながらも、それと同時に、高電極密度(〜3.6g/cc)においても、粒子崩れなしに、常温寿命特性向上をなすことができるということが分かった。かような結果は、二次粒子形状のNi系リチウム二次電池用正極活物質対比で、体積当たり容量及びエネルギー密度の側面において、多くの向上があるということを意味する。さらに、単結晶タイプNi系リチウム二次電池用正極活物質の構造内において、空いている正四面体のサイトに極少量Pを置換させることにより、残留リチウム低減及び常温寿命特性の向上をなしている。
【0141】
以上では、図面及び実施例を参照し、本発明による望ましい具現例について説明したが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で当業者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決められるものである。
【国際調査報告】