特表2020-506173(P2020-506173A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-506173クロノスタキス・ロゼアを用いる収穫後処理の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-506173(P2020-506173A)
(43)【公表日】2020年2月27日
(54)【発明の名称】クロノスタキス・ロゼアを用いる収穫後処理の方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/00 20200101AFI20200131BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20200131BHJP
   A01N 63/20 20200101ALI20200131BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20200131BHJP
【FI】
   A01N63/00 F
   A01P3/00
   A01N63/02 P
   C12N1/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-538605(P2019-538605)
(86)(22)【出願日】2018年1月18日
(85)【翻訳文提出日】2019年9月3日
(86)【国際出願番号】EP2018051153
(87)【国際公開番号】WO2018134280
(87)【国際公開日】20180726
(31)【優先権主張番号】17152236.0
(32)【優先日】2017年1月19日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517180394
【氏名又は名称】ダンスター フェルマン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】サンチェ,ジャン−マルク
(72)【発明者】
【氏名】コール,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラノア,ベルタン
(72)【発明者】
【氏名】モレル,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ロガルスカ,セルマ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B065AA57X
4B065AC20
4B065BD12
4B065BD50
4B065CA47
4H011AA03
4H011BB23
4H011CA04
4H011CB15
4H011DA15
4H011DE15
(57)【要約】
本発明は、収穫後の損傷又は腐敗を軽減するため、収穫農産物に適用することができる新たな収穫後処理の方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護するため、植物病原菌により引き起こされる収穫産物の収穫後腐敗を防止もしくは軽減するため、又は収穫産物上の植物病原菌を制御するために、無処理コントロールと比べて、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護し、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗を軽減し、又は貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するのに効果的な量のクロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与することを含む収穫後処理の方法。
【請求項2】
前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含む、請求項1に記載の収穫後処理の方法。
【請求項3】
前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵することをさらに含む、請求項1に記載の収穫後処理の方法。
【請求項4】
前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含む、請求項3に記載の収穫後処理の方法。
【請求項5】
前記クロノスタキス・ロゼアがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータである、請求項1から4のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項6】
前記クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446である、請求項5に記載の収穫後処理の方法。
【請求項7】
前記収穫産物が果実又は野菜である、請求項1から6のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項8】
前記収穫産物が果実である、請求項7に記載の収穫後処理の方法。
【請求項9】
前記果実が核果又は柑橘類果実である、請求項8に記載の収穫後処理の方法。
【請求項10】
前記核果がモモ、ネクタリン、プラム、アンズ、又はサクランボである、請求項9に記載の収穫後処理の方法。
【請求項11】
前記柑橘類果実がクレメンタイン、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンダリン、オレンジ、又はタンジェリンである、請求項9に記載の収穫後処理の方法。
【請求項12】
前記収穫産物の収穫後腐敗が、ペニシリウム属種、アルテルナリア属種、リゾプス属種、ボトリチス属種、モニリニア属種、又はそれらの組合せにより引き起こされる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項13】
前記収穫産物の収穫後腐敗が、ペニシリウム属種又はモニリニア属種により引き起こされる、請求項12に記載の収穫後処理の方法。
【請求項14】
前記核果の収穫後腐敗が、モニリニア属種により引き起こされる、請求項13に記載の収穫後処理の方法。
【請求項15】
前記柑橘類果実の収穫後腐敗が、ペニシリウム属種により引き起こされる、請求項13に記載の収穫後処理の方法。
【請求項16】
前記柑橘類果実の収穫後腐敗が、ペニシリウム・ディギタータム又はペニシリウム・イタリカムにより引き起こされる、請求項15に記載の収穫後処理の方法。
【請求項17】
前記クロノスタキス・ロゼアの培養物、真菌胞子、又は配合物に、農業上許容されるキャリアが結合された、請求項1から16のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項18】
前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は、収穫産物に、約10〜1012cfu/ml、約10〜1011cfu/ml、約10〜1010cfu/ml、又は約10〜10cfu/mlの濃度で施与される、請求項1から17のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項19】
前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は乾燥配合物であり、収穫産物に、約10〜1012cfu/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度で施与される、請求項1から17のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項20】
モニリニア属種により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護するため、モニリニア属種により引き起こされる収穫産物の収穫後腐敗を防止もしくは軽減するため、又は収穫産物上のモニリニア属種を制御するために、無処理コントロールと比べて、モニリニア属種により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護し、モニリニア属種により引き起こされる収穫後腐敗を軽減し、又は貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するのに効果的な量のクロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与することを含む収穫後処理の方法。
【請求項21】
前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含む、請求項20に記載の収穫後処理の方法。
【請求項22】
前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵することをさらに含む、請求項20に記載の収穫後処理の方法。
【請求項23】
前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含む、請求項22に記載の収穫後処理の方法。
【請求項24】
前記クロノスタキス・ロゼアがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータである、請求項20から23のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項25】
前記クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446である、請求項24に記載した収穫後処理の方法。
【請求項26】
前記収穫産物が果実又は野菜である、請求項20から25のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項27】
前記収穫産物が果実である、請求項25に記載の収穫後処理の方法。
【請求項28】
前記果実が核果である、請求項27に記載の収穫後処理の方法。
【請求項29】
前記核果がモモ、ネクタリン、プラム、アンズ、又はサクランボである、請求項28に記載した収穫後処理の方法。
【請求項30】
前記クロノスタキス・ロゼアの培養物、真菌胞子、又は配合物に、農業上許容されるキャリアが結合された、請求項20から29のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項31】
前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は、収穫産物に、約10〜1012cfu/ml、約10〜1011cfu/ml、約10〜1010cfu/ml、又は約10〜10cfu/mlの濃度で施与される、請求項20から30のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項32】
前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は乾燥配合物であり、収穫産物に、約10〜1012cfu/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度で施与される、請求項20から30のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項33】
ペニシリウム属種により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護するため、ペニシリウム属種により引き起こされる収穫産物の収穫後腐敗を防止もしくは軽減するため、又は収穫産物上のペニシリウム属種を制御するために、無処理コントロールと比べて、ペニシリウム属種により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護し、ペニシリウム属種により引き起こされる収穫後腐敗を軽減し、又は貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するのに効果的な量のクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を、収穫産物に施与することを含む収穫後処理の方法。
【請求項34】
前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を、収穫産物に施与した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含む、請求項33に記載の収穫後処理の方法。
【請求項35】
前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を、収穫産物に施与した後、前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵することをさらに含む、請求項33に記載の収穫後処理の方法。
【請求項36】
前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵した後、前記収穫産物を室温条件で貯蔵することをさらに含む、請求項35に記載の収穫後処理の方法。
【請求項37】
前記クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446である、請求項33から36のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項38】
前記収穫産物が果実である、請求項37に記載の収穫後処理の方法。
【請求項39】
前記果実が柑橘類果実である、請求項38に記載の収穫後処理の方法。
【請求項40】
前記柑橘類果実がクレメンタイン、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンダリン、オレンジ、又はタンジェリンである、請求項39に記載の収穫後処理の方法。
【請求項41】
前記クロノスタキス・ロゼアの培養物、真菌胞子、又は配合物に、農業上許容されるキャリアが結合された、請求項33から40のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項42】
前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は、収穫産物に、約10〜1012cfu/ml、約10〜1011cfu/ml、約10〜1010cfu/ml、又は約10〜10cfu/mlの濃度で施与される、請求項33から41のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項43】
前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は乾燥配合物であり、収穫産物に、約10〜1012cfu/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度で施与される、請求項33から41のいずれか1項に記載の収穫後処理の方法。
【請求項44】
無処理コントロールと比べて、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護し、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗を軽減し、又は貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するのに効果的な量のクロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物の使用。
【請求項45】
前記クロノスタキス・ロゼアがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータである、請求項44の使用。
【請求項46】
前記クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446である、請求項45の使用。
【請求項47】
前記収穫産物が果実である、請求項44から46のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
前記果実が核果又は柑橘類果実である、請求項47の使用。
【請求項49】
前記核果がモモ、ネクタリン、プラム、アンズ、又はサクランボである、請求項48の使用。
【請求項50】
前記柑橘類果実がクレメンタイン、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンダリン、オレンジ、又はタンジェリンである、請求項49の使用。
【請求項51】
前記収穫産物の収穫後腐敗が、ペニシリウム属種、アルテルナリア属種、リゾプス属種、ボトリチス属種、モニリニア属種、又はそれらの組合せにより引き起こされる、請求項44から50の使用。
【請求項52】
前記収穫産物の収穫後腐敗が、ペニシリウム属種又はモニリニア属種により引き起こされる、請求項51の使用。
【請求項53】
前記核果の収穫後腐敗が、モニリニア属種により引き起こされる、請求項51の使用。
【請求項54】
前記柑橘類果実の収穫後腐敗が、ペニシリウム属種により引き起こされる、請求項51の使用。
【請求項55】
前記柑橘類果実の収穫後腐敗が、ペニシリウム・ディギタータム又はペニシリウム・イタリカムにより引き起こされる、請求項54の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病原菌から収穫産物を保護するため、収穫産物の収穫後の微生物腐敗を防止もしくは軽減するため、及び/又は収穫産物における生物学的侵襲を制御又は抑制するための収穫後処理の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物病原菌は、作物収量に対して大きな制約となる。畑の農作物の生長を損なうことに加えて、いくつかの植物病原菌はまた、収穫産物上に持ち越し汚染をし、これは貯蔵中の産物の重大な損傷及び腐敗をもたらしうる。実際、収穫後の病原菌の大部分は、収穫中又はそれに続く処理中に生じる傷を通じて作物を汚染する。作物の貯蔵中の収穫後の損失は、例えば、水分の喪失、葉の老化、再生長及び腐敗によって引き起こされ、後者は真菌及び細菌の病原菌により引き起こされる。世界の作物の約25%が収穫後の病害(例えば、微生物腐敗)により失われていると見積もられており、そのうち真菌による腐敗は圧倒的に最も重要な原因である。
【0003】
いくつかの合成化学化合物は、収穫産物の収穫後の損害を防ぐために使用できることが知られている。しかしながら、既知のとおり、殺虫剤はヒト及び環境に対し危険な効果をもたらす。とりわけ殺虫剤の収穫後の使用に対しては、厳しい規制が課せられている。化学製品の使用は、それらのヒトの健康及び環境に対する有害効果により減少しているため、合成化学残留物がない果実の生産は、収穫後の損失を少なくするための代わりの収穫後処理を見出すための原動力になっている。
【0004】
リンゴ、アンズ、サクランボ、柑橘類、ブドウ、ネクタリン、モモ、ナシ、トウガラシ、プラム、ジャガイモ、イチゴ、及びトマトを含む各種の貯蔵野菜及び果実に対し、枯草菌、シュードモナス・セパシア、シュードモナス・シリンガエ、シュードモナス・フルオレッセンス、エンテロバクター・アエロゲネス、エンテロバクター・クロアカ及びデバリオマイセス・ハンセニイのような微生物アンタゴニストによる収穫後の真菌病原菌の生物学的制御について記されている(Wilson & Wisniewski, 1989)。したがって、拮抗微生物の使用は、とりわけ収穫産物の主要な収穫後の腐敗を制御するため、有効で、危険ではない対策として提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延ばすために、収穫産物上の植物病原菌の成長を防止、遅延、抑制又は制御する新規で代替の生物学的収穫後処理の方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延ばす又は増やすために、真菌クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)の使用に関する。本発明は、収穫後の損傷又は腐敗を減らすための収穫農産物に適用しうる収穫後処理の方法に関する。
【0007】
第1の態様においては、本発明は、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護するため、植物病原菌により引き起こされる収穫産物の収穫後腐敗を防止もしくは軽減するため、又は収穫産物上の植物病原菌を制御するために、無処理コントロールと比べて、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護し、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗を軽減し、又は貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するのに効果的な量のクロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与することを含む収穫後処理の方法である。1つの実施態様においては、前記収穫後処理の方法は、前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含むことができる。さらに他の実施態様においては、前記収穫後処理の方法は、前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵することをさらに含むことができる。さらに他の実施態様においては、前記収穫後処理の方法は、前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含むことができる。1つの実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータであり、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446でありうる。さらなる実施態様においては、前記収穫産物は果実又は野菜である。さらに他の実施態様においては、前記収穫産物は果実である。1つの実施態様においては、前記果実は核果又は柑橘類果実である。前記核果はモモ、ネクタリン、プラム、アンズ、又はサクランボでありうる。前記柑橘類果実はクレメンタイン、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンダリン、オレンジ、又はタンジェリンでありうる。1つの実施態様においては、前記収穫産物の収穫後腐敗は、ペニシリウム属種、アルテルナリア属種、リゾプス属種、ボトリチス属種、モニリニア属種、又はそれらの組合せにより引き起こされる。さらに他の実施態様においては、前記収穫産物の収穫後腐敗はペニシリウム属種又はモニリニア属種により引き起こされる。さらに他の実施態様においては、前記核果の収穫後腐敗は、モニリニア属種により引き起こされ、前記柑橘類果実の収穫後腐敗は、ペニシリウム属種により引き起こされる。1つの実施態様においては、前記柑橘類果実の収穫後腐敗が、ペニシリウム・ディギタータム又はペニシリウム・イタリカムにより引き起こされる。さらなる実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物、真菌胞子、又は配合物に、農業上許容されるキャリアが結合されうる。さらに他の実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は、収穫産物に、約10〜1012cfu/ml、約10〜1011cfu/ml、約10〜1010cfu/ml、又は約10〜10cfu/mlの濃度で施与されうる。さらに他の実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は乾燥配合物であり、収穫産物に約10〜1012cfu/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度で施与される。
【0008】
第2の態様においては、本発明は、モニリニア属種により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護するため、モニリニア属種により引き起こされる収穫産物の収穫後腐敗を防止もしくは軽減するため、又は収穫産物上のモニリニア属種を制御するために、無処理コントロールと比べて、モニリニア属種により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護し、モニリニア属種により引き起こされる収穫後腐敗を軽減し、又は貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するのに効果的な量のクロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与することを含む収穫後処理の方法である。1つの実施態様においては、前記収穫後処理の方法は、前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含むことができる。さらに他の実施態様においては、前記収穫後処理の方法は、前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵することをさらに含むことができる。さらに他の実施態様においては、前記収穫後処理の方法は、前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含むことができる。1つの実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアはクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータであり、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446でありうる。さらなる実施態様においては、前記収穫産物は果実又は野菜である。さらに他の実施態様においては、前記収穫産物は果実である。1つの実施態様においては、前記果実は核果であり、モモ、ネクタリン、プラム、アンズ、又はサクランボでありうる。さらなる実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物、真菌胞子、又は配合物に、農業上許容されるキャリアが結合されうる。さらに他の実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は、収穫産物に、約10〜1012cfu/ml、約10〜1011cfu/ml、約10〜1010cfu/ml、又は約10〜10cfu/mlの濃度で施与されうる。さらに他の実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は乾燥配合物であり、収穫産物に、約10〜1012cfu/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度で施与される。
【0009】
本発明は、第3の態様は、ペニシリウム属種により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護するため、ペニシリウム属種により引き起こされる収穫産物の収穫後腐敗を防止もしくは軽減するため、又は収穫産物上のペニシリウム属種を制御するために、無処理コントロールと比べて、ペニシリウム属種により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護し、ペニシリウム属種により引き起こされる収穫後腐敗を軽減し、又は貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するのに効果的な量のクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を、収穫産物に施与することを含む収穫後処理の方法である。1つの実施態様においては、前記収穫後処理の方法は、前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含むことができる。さらに他の実施態様においては、前記収穫後処理の方法は、前記クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を収穫産物に施与した後、前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵することをさらに含むことができる。さらに他の実施態様においては、前記収穫後処理の方法は、前記収穫産物を5℃未満の温度で貯蔵した後、前記収穫産物を周囲条件の温度で貯蔵することをさらに含むことができる。1つの実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアはクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータであり、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446でありうる。さらなる実施態様においては、前記収穫産物は果実又は野菜である。さらに他の実施態様においては、前記収穫産物は果実である。さらに他の実施態様においては、前記果実は柑橘類果実であり、クレメンタイン、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンダリン、オレンジ、又はタンジェリンでありうる。さらなる実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物、真菌胞子、又は配合物に、農業上許容されるキャリアが結合されうる。さらに他の実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は、収穫産物に、約10〜1012cfu/ml、約10〜1011cfu/ml、約10〜1010cfu/ml、又は約10〜10cfu/mlの濃度で施与されうる。さらに他の実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は乾燥配合物であり、収穫産物に、約10〜1012cfu/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度で施与される。
【0010】
本発明は、第4の態様は、無処理コントロールと比べて、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護し、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗を軽減し、又は貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するのに効果的な量のクロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物の使用である。1つの実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアはクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータであり、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446でありうる。さらなる実施態様においては、前記収穫産物は果実又は野菜である。さらに他の実施態様においては、前記収穫産物は果実である。1つの実施態様においては、前記果実は核果又は柑橘類果実である。前記核果はモモ、ネクタリン、プラム、アンズ、又はサクランボでありうる。前記柑橘類果実はクレメンタイン、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンダリン、オレンジ、又はタンジェリンでありうる。1つの実施態様においては、前記収穫産物の収穫後腐敗は、ペニシリウム属種、アルテルナリア属種、リゾプス属種、ボトリチス属種、モニリニア属種、又はそれらの組合せにより引き起こされる。さらに他の実施態様においては、前記収穫産物の収穫後腐敗は、ペニシリウム属種又はモニリニア属種により引き起こされる。さらに他の実施態様においては、前記核果の収穫産物の収穫後腐敗は、モニリニア属種により引き起こされ、前記柑橘類果実の収穫後腐敗は、ペニシリウム属種により引き起こされる。1つの実施態様においては、前記柑橘類果実の収穫後腐敗は、ペニシリウム・ディギタータム又はペニシリウム・イタリカムにより引き起こされる。さらなる実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物、真菌胞子、又は配合物に、農業上許容されるキャリアが結合されうる。さらに他の実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は、収穫産物に、約10〜1012cfu/ml、約10〜1011cfu/ml、約10〜1010cfu/ml、又は約10〜10cfu/mlの濃度で施与されうる。さらに他の実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアの培養物は乾燥配合物であり、収穫産物に、約10〜1012cfu/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度で施与される。
【0011】
1つの実施態様においては、本発明は、クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を果実に施与することを含む、モニリニア属種により引き起こされる収穫後腐敗から果実を保護するための方法を提供する。さらなる実施態様においては、本発明は、クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を果実に施与することを含む、モニリニア属種により引き起こされる収穫後の果実の損傷又は腐敗を軽減するための方法を提供する。さらなる実施態様においては、本発明は、クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を果実に施与することを含む、モニリニア属種が感染した果実の収穫後の貯蔵寿命を延長するための方法を提供する。さらなる実施態様においては、前記果実は核果であり、モモ、ネクタリン、プラム、アンズ、又はサクランボでありうる。1つの実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータであり、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446でありうる。
【0012】
1つの実施態様においては、本発明は、クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を果実に施与することを含む、ペニシリウム属種により引き起こされる収穫後腐敗から果実を保護するための方法を提供する。さらなる実施態様においては、本発明は、クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を果実に施与することを含む、ペニシリウム属種により引き起こされる収穫後の果実の損傷又は腐敗を軽減するための方法を提供する。さらなる実施態様においては、本発明は、クロノスタキス・ロゼアの単離培養物、真菌胞子、又は配合物を果実に施与することを含む、ペニシリウム属種が感染した果実の収穫後の貯蔵寿命を延長するための方法を提供する。さらなる実施態様においては、前記果実は柑橘類果実であり、クレメンタイン、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンダリン、オレンジ、又はタンジェリンでありうる。1つの実施態様においては、前記クロノスタキス・ロゼアがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータであり、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446でありうる。1つの実施態様においては、ペニシリウム属種は、ペニシリウム・ディギタータム及びペニシリウム・イタリカムでありうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
こうして本発明について一般的に述べたが、添付図面が参照され、図示により好ましい実施態様を示す。
【0014】
図1図1は、収穫後貯蔵中に腐敗したモモの品種「Sandine」の割合を示し、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータで処理したモモとコントロールを比較する。
図2図2は、収穫後貯蔵中に腐敗したモモの品種「Western Red」の割合を示し、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータで処理したモモとコントロールを比較する。
図3図3は、アッセイのため収穫された、収穫後処理(水、J1446及び無処理コントロール)の適用前のモモの品種「Sandine」の損傷の原因である真菌の属の分布を示す。
図4図4は、アッセイのため収穫された、収穫後処理(水、J1446及び無処理コントロール)の適用前のモモの品種「Western Red」の損傷の原因である真菌の属の分布を示す。
図5図5は、20〜22℃で貯蔵中の腐敗したネクタリン(収穫後処理後の冷蔵なし)の累積率に対する異なる収穫後処理の方法の効果を示す。
図6図6は、20〜22℃で貯蔵中の腐敗したネクタリン(収穫後処理後の冷蔵あり)の累積率に対する異なる収穫後処理の方法の効果を示す。
図7図7は、アッセイのため収穫された、収穫後処理(M1からM7)の適用前のネクタリンの損傷の原因である真菌の属の分布を示す。
図8図8は、腐敗したプラム(収穫後処理後の冷蔵なし)の累積率に対する異なる収穫後処理の方法の効果を示す。
図9図9は、腐敗したプラム(収穫後処理後の冷蔵あり)の累積率に対する異なる収穫後処理の方法の効果を示す。
図10図10は、ペニシリウム・ディギタータムにより引き起こされた陽性病害症状をもつ、接種された創傷部の割合を示す。
図11図11は、ペニシリウム・イタリカムにより引き起こされた陽性病害症状をもつ、接種された創傷部の割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護するために効果的な量のクロノスタキス・ロゼアの培養物を収穫産物に施与することを含む収穫後処理の方法を提供する。クロノスタキス・ロゼアは、広範囲に分布する、土壌伝播性の腐生菌である。この真菌は、各種の土壌伝播性及び葉状の植物病原菌に対する生物学的制御剤として知られる。真菌クロノスタキス・ロゼアは、収穫産物上の植物病原菌を防止、妨害又は抑制する特性を有し、その結果、収穫植物の収穫後処理に使用しうることを発見した。クロノスタキス・ロゼアは、植物病原菌との競合阻害を通じて収穫後の損傷、腐敗又は腐朽を軽減するために、農産物に施与しうることを示した。また、本発明は、貯蔵農産物の収穫後の貯蔵寿命を延長又は増加させるための、クロノスタキス・ロゼアの使用に関する。
【0016】
ここで使用される「効果的な量」とは、有益な又は所望する結果をもたらすのに十分な量をいう。
【0017】
本明細書の文脈においては、前記生物学的制御剤は、真菌クロノスタキス・ロゼアである。あらゆる種又は株のクロノスタキス・ロゼアを本開示方法において使用することができる。実際、多くのクロノスタキス・ロゼアの単離物は数種の植物病原真菌に対する非常に効率的なアンタゴニストである。生物学的制御剤クロノスタキス・ロゼアは、土壌に広く存在するアンタゴニスティックな植物病原真菌であり、一連の抗菌性代謝物を産生することができる。さらなる実施態様においては、クロノスタキス・ロゼアは、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータである。さらなる実施態様においては、該真菌はクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446である。この株はブダペスト条約に従い1994年5月19日にDSM寄託機関に寄託されており、受託番号DSM9212である。クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446は、PRESTOP(登録商標、Lallemand(Verdera, Finland))として商業的に入手可能である。
【0018】
本開示における真菌クロノスタキス・ロゼアは、任意の適切な公知方法を従い、液体懸濁液又は乾燥粉末として配合される。生物学的に純粋な培養物、懸濁液又は配合物(限定されないが分生子、菌糸断片及び胞子を含む)は、収穫産物に約10〜1012cfu(「コロニー形成単位」)/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度で施与される。クロノスタキス・ロゼアは、収穫産物に、液体懸濁液において約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×1010、約1×1011、約1×1012、約1×1013cfu/ml又は1×1013cfu/mlより多い濃度で施与される。また、クロノスタキス・ロゼアは、収穫産物に、乾燥配合物(限定されないが分生子、菌糸断片及び胞子を含む)において約10〜1012cfu/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度で施与することができる。また、クロノスタキス・ロゼアは、収穫産物に、乾燥配合物において約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×1010、約1×1011、約1×1012、約1×1013cfu/ml又は1×1013cfu/gより多い濃度で施与することができる。最適な量は、作物種及び植物病原菌に応じて変更することができ、当業者によって容易に決定することができる。
【0019】
本開示に係る真菌の培養物、懸濁液又は配合物は、熟練した当業者に知られている任意の手段で収穫産物に接触させることにより施与することができる。ここに使用される用語「接触させる」とは、本開示に係る外因性の組成物の液体又は固体(粉末等)の形態と収穫産物を近接させることを意味する。このような方法の例には、限定されないが、ディッピング、浸漬、スプレー、噴霧(ミスティング)、フォギング、コーティング、ダスティング又はソーキングの施与方法が含まれる。施与の形態及び方法は、収穫産物上への生物学的制御剤の最良で均一な分布を確実にするため、意図する目的によって完全に決まる。水を含む施与形態は、乳剤、水添加したペースト又は水和剤から調製することができる。また生物学的制御剤、湿潤剤、粘着剤、分散剤又は乳化剤及び可能ならば溶剤及び油で構成される濃縮物を調製することも可能であり、このような濃縮物は水で希釈するのに適している。本開示に係る真菌の培養物、懸濁液又は配合物は、収穫産物に、単回又は複数回の暴露として、又は異なる時期の暴露として施与される。
【0020】
本開示における真菌のアンタゴニストは、室温条件で貯蔵された(±20℃)、収穫産物に対して、例えば、果実に対して効果的である。本開示の真菌のアンタゴニストは、5℃未満の温度で貯蔵された収穫産物に対しても使用することができる。真菌は理論的には収穫、格付け、出荷の工程の間、又は貯蔵の初期段階の間のいつでも施与することができる。もちろん、収穫した果実又は野菜は、傷が生じ、及び真菌病原体が存在するときは、より感染しやすい。それゆえ、損傷と真菌組成物での処理の間の遅延が長くなるほど、病原菌が収穫産物を感染する可能性が大きくなる。
【0021】
真菌の培養物、懸濁液又は配合物は、収穫後、収穫産物の表面に、任意の公知の農業上許容されるアジュバント、キャリア又はバインダーの製剤とともに施与することができる。農業上許容されるアジュバント、キャリア又はバインダーは、商業的に入手可能であり、ヒトの消費に対し安全でなければならない。微生物も液体培養培地とともに懸濁液で施与することができる。また組成物は、微生物の有効性を高めるために、界面活性剤や湿潤剤等の慣用的な添加物を含むことができる。統合的なアプローチとして、収穫産物はまた、本開示の収穫後処理による収穫産物の処理前又は処理後に、当業者に一般に知られている他の抗真菌性及び/又は抗菌性の組成物と処理することができる。
【0022】
本発明に係る収穫後処理は、果実(限定されないが、核果又はソフトフルーツ又は柑橘類果実等)、野菜、花又は堅果類等の各種の収穫産物上の真菌を制御するのに重要である。実際に、ここに使用される用語「収穫産物」は、果実、野菜、堅果類、切花等の植物に由来する全ての収穫物、作物を指す。さらなる実施態様においては、本発明の収穫後処理は、各種の収穫産物、例えば、限定されるものではないが、リンゴ、アンズ、バナナ、ブルーベリー、カンタロープ、ニンジン、クレメンタイン、サクランボ、クランベリー、キュウリ、エンダイブ、ガーリック、グレープフルーツ、カキ、キウイ、ブドウ、レモン、ライム、レタス、マンダリン、マンゴ、メロン、マッシュルーム、ナシ、ネクタリン、タマネギ、オレンジ、パパイヤ、モモ、セイヨウナシ、コショウ、パイナップル、プラム、プルーン、カボチャ、ラズベリー、イチゴ、タンジェリン、トマト又はスイカ等の植物病原菌を制御するのに特に重要である。1つの特定の実施態様においては、収穫産物は核果である。さらなる実施態様においては、核果はモモ、ネクタリン、プラム、アンズ、又はサクランボである。複数の態様においては、収穫産物は柑橘類果実であり、例えば、クレメンタイン、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンダリン、オレンジ又はタンジェリンでありうる。
【0023】
本発明の収穫後処理の方法は、植物病原菌を制御するのに適している。本発明の収穫後処理の方法は、真菌の植物病原菌を制御するのに適している。さらなる実施態様においては、本発明の収穫後処理の方法は、以下の真菌:コレトトリカム属種、フザリウム属種、アルテルナリア属種、ボトリチス属種、モニリニア属種(モニリア属種)、ラシオディプロディア属種、ホモプシス属種、ボトリオスフェリア属種、バーティシリウム属種、ゲオトリクム属種、フィトフトラ属種、セプトリア属種、ケカビ属種、ヴェンテュリア属種、リゾプス属種、グロメレラ属種、キンカクキン属種、セラトシスチス属種、ペニシリウム属種、グレオスポリウム属種、フィリクテナ属種、シリンドロカルポン属種、ステムフィリウム属種、ファシジオピクニス属種、チエラビオプシス属種、アスペルギルス属種、ネクトリア属種、又はそれらの組合せにより引き起こされる収穫後の損傷又は収穫後の腐敗を生物学的に制御又は軽減するのに適している。1つの特定の実施態様においては、本発明の収穫後処理の方法は、ペニシリウム属種、アルテルナリア属種、リゾプス属種、ボトリチス属種、モニリニア属種、又はそれらの組合せにより引き起こされる収穫後の損傷を制御、軽減又は減少するのに適している。さらなる実施態様においては、本発明の収穫後処理の方法は、モニリニア属種、より詳しくは、モニリニア・フルクチコラ又はモニリニア・ラクサにより引き起こされる収穫後の損傷又は収穫後の腐敗を制御、軽減又は減少するのに適している。より詳しくは、本発明の収穫後処理の方法は、モニリニア属種、例えば、モニリニア・フルクチコラ又はモニリニア・ラクサにより引き起こされる腐敗から核果を保護するために使用しうる。また本発明の収穫後処理の方法は、ペニシリウム属種、例えば、ペニシリウム・ディギタータム又はペニシリウム・イタリカムにより引き起こされる収穫後の損傷又は収穫後の腐敗を制御、軽減又は減少するのに使用しうる。1つの実施態様においては、本発明の収穫後処理の方法は、例えば、ペニシリウム・イタリカム又はペニシリウム・ディギタータムにより引き起こされる腐敗から柑橘類果実を保護するために使用しうる。
【0024】
以下の実施例は、本発明についてさらに記載し、規定するのに役立つが、本発明をいかなる形でも限定するものではない。
【実施例】
【0025】
実施例1:モモの収穫後の病害に対するクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータの有効性
この研究の目的は、収穫後のモモの病害の管理、収穫したモモの収穫後の腐敗防止、及び収穫したモモの収穫後の損失軽減に対する、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータの効果を評価することである。
【0026】
果実:
モモ(「Sandine」及び「Western Red」)を商業果樹園(Integrated Fruit Production(IFP)を使用)から硬くて熟したステージで摘み取り、4℃で2日以内貯蔵した。
【0027】
アンタゴニスト/生物学的制御剤:
ペトリ皿内のPDA(ポテト デキストロース 寒天)に、約10〜10cfu/ml含む一滴の胞子懸濁液を各皿の培地に配置し、セルスプレッダーで該滴を寒天表面上に広げることにより、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446の胞子を接種した。分散した胞子は、25℃で大量に胞子を形成するたくさんのコロニーを惹起し、通常8日後に胞子を採取した。
【0028】
果実への接種:
モモはトレーに配置した(トレー当たり22個のモモ)。トレー当たり各処理の1反復試験区を用いて、処理ごと及び種類ごとに4反復試験区の44個のモモとした。無処理果実(すなわち、Integrated Fruit Productionを介した生産果実)及び水で処理した果実をネガティブコントロールとして使用した。
【0029】
収穫後の処理のため、前記果実に約10cfu/mlのクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446の懸濁液を両面に流出するように(トレー当たり15ml)スプレーした。モモは空気乾燥させ、22℃でインキュベートした。果実感染の割合は48時間ごとに30日間測定した。
【0030】
統計的解析:
データはStatBox Proを使用して統計的解析を行った。分散の分析は、一般線形モデル手法によりアークサイン平方根変換データに基づいて行った。平均離隔はStudent NewmanとKeuls testを用いて行った。
【0031】
結果及び結論:
結果は、図1に示すように、収穫後のモモにクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446を接種した場合、コントロールに比べて、腐敗した収穫モモ「Sandine」の割合が有意に減少したことを明確に立証した。
【0032】
図2に示した結果は、収穫モモの品種「Western Red」に対する腐敗発生率を表しており、このモモの品種は、品種「Sandine」よりも収穫後の腐敗を受けにくいことを示している。クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータJ1446を用いた収穫後処理は、腐敗の兆候を遅延させるが、真菌処理は、コントロールに比べて、腐敗を有意に軽減しなかった。
【0033】
解析後及び図3、4に示されているように、両方の品種のモモへの損傷は、収穫後処理の前では、以下の真菌:モニリニア属種、リゾプス属種、ペニシリウム属種、アルテルナリア属種、及びボトリチス属種により引き起こされた。収穫後処理を行ったとき、モニリニア属種が腐敗果実と関係する主な真菌であることが分かった。
【0034】
これらの結果から、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446はモモにおいてモニリニア属種の感染の発生率及び進行速度を軽減できることが実証された。
【0035】
要約すると、収穫後処理の方法としてクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446の使用は、貯蔵中のモモ品種「Sandine」及び「Western Red」の品質をそれらの物理的特性及び官能的特性で測定したように、保持した。これらの結果は、とりわけ、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータは、病原真菌を制御し、植物病原菌により引き起こされる貯蔵病害から収穫産物を保護し、モモの収穫後の品質を維持し、及び貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するのに役に立つ代替であることを実証した。
【0036】
実施例2:クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータを使用するネクタリンの収穫後の真菌腐敗の生物学的制御
この研究の目的は、ネクタリンの収穫後の品質に関し、貯蔵状況の間に、各種の収穫後処理の方法(収穫後処理後の冷却貯蔵の有りと無しで、2つの異なる処方の生物学的制御剤)の効果を検討することであった。
【0037】
果実:
ネクタリン(種類:Nectatop;植樹年:2011;植樹間の距離及び密度:6×3m、すなわち、556本/ha)は、硬い熟したステージで摘み取り、測定し、選択し(同一のサイズ、同一の成熟レベル、損傷なし)、トレー当たり260から280の果実を詰めた。それらは2〜4℃で2〜3日間貯蔵した。
【0038】
収穫後処理:
ネクタリンをトレーに配置した(トレー当たり60個のネクタリン)。処理当たり60個のネクタリンの4反復試験区とした。無処理果実(すなわち、Integrated Fruit Productionを介した生産果実)及び水で処理した果実をネガティブコントロールとして使用した。前記トレーは、収穫後処理後の2〜4℃で5〜8日間の冷却貯蔵の有りと無しを、20〜22℃で15〜21日間、空調管理された部屋に貯蔵した。
【0039】
9つの異なる処理方法を試験して比較した。それらは表1に規定されている。
【0040】
[表1]
試験した処理方法
【0041】
本研究で使用した処理方法のタイプは以下のとおりである。
- 果樹園での収穫前処理は、750 l/haの流量で全ての敷地に対して行った。使用した製品は、Kruga(3l/ha)及びSignum(0.75kg/ha)であった。収穫前処理の適用は、良好な状況下、2017年7月7日及び21日に行った。それらは貯蔵病害の点において厳しい圧力を促すために、2つの介入に意図的に制限された。
- 以下に述べる方法に従い、M3、M4、及びM5の処理方法のために、ハンドスプレーを介した収穫後の適用を行った。
- 以下に述べる方法に従い、M6からM9の処理方法のために、ネブライザー(又は噴霧器又は霧吹き)を介した収穫後の適用を行った。
【0042】
収穫後処理のため、Prestop(登録商標、Lallemand)の2つの異なる処方を試験した。Prestop WP(登録商標)及びPrestop WG(登録商標)は、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446を含む。Prestop WG(登録商標)(1×10cfu/g)は、Prestop WP(登録商標)(1×10cfu/g)よりも10倍濃縮されている。
【0043】
各処理に対するストック溶液は、滅菌蒸留水とクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446を用いて調製し、懸濁液の量は、Prestop WG(登録商標)及びPrestop WP(登録商標)のそれぞれに対して2g/l及び20g/lと同等で施与されるように計算した。M3、M4、及びM5の処理方法のために、スプレーボトルポンプを使用して懸濁液を施与した。8個のスプレーをトレーの1つの面に使用し、全体で7.5mlとした。M6からM9の処理方法のために、ネブライザー(Atomist 1037, Hyprodis)を使用して懸濁液を施与した。果実は空気乾燥した。
【0044】
接種ステップに続いて、M1、M3、M6及びM8の処理方法で処理した果実を、20〜22℃で15〜21日間の空調管理された部屋への移動前に、2〜4℃で5〜8日間、冷蔵した。M2、M4、M5、M7及びM9の処理方法で処理した果実は、前もって冷蔵することなく、直接、20〜22℃で15〜21日間、空調管理された部屋で貯蔵した。
【0045】
病原菌の同定とともに果実感染の割合を48時間ごとに最低でも15〜21日間測定した。
【0046】
天候状況:
天候データはCIMELステーションから定常的に得た。それらは試験の間中、収集した。
【0047】
試験は果樹園にて2017年7月7日から8月7日の間行った。該日付には第2の収穫を開始し、果実を貯蔵した。この期間は特に暖かく、一般には乾燥していた。
【0048】
統計的解析:
データはStatBox Proを使用して統計的解析を行った。分散の分析は、一般線形モデル手法によりアークサイン平方根変換データに基づいて行った。平均離隔はStudent NewmanとKeuls testを用いて行った。
【0049】
結果及び結論:
収穫は5回行った。敷地からの収率は、非常に高く(59.6T/ha)、主たるサイズはAであった。収穫後処理及びモニタリングのための果実は第2の収穫の間に摘み取られた。
【0050】
M2、M4、M5、M7及びM9の処理方法で処理した果実は、収穫後処理の後に、直接、20〜22℃で15〜21日間、空調管理された部屋で貯蔵した。図5に示すように、空調管理された部屋で貯蔵したコントロール(M2)の腐敗果実の出現は早かった。すなわち、冷蔵庫から取り出した後6日目であり、収穫後処理後、果実の20%が影響を受け、12日後はほぼ果実の50%が腐敗した。気圧は試験を有効とするうえで十分であった。
【0051】
図5に示すように、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446の20〜22℃で貯蔵された収穫ネクタリンへのミスト適用(M9)又はスプレー処理(M4及びM5)は、有意に果実における腐敗の発生率及び進行を抑制又は軽減した。スプレー処理(M4及びM5)は、ミスト適用(M9)を介した処理に比べて、腐敗速度の減少に関し、生物学的制御剤のより良好な結果を示した。スプレー処理(M4及びM5)は、果実への生物学的制御剤の効果的でより均一な分布を確実なものとするように思われる。
【0052】
図6は、M1、M3、M6及びM8の処理方法で処理した腐敗ネクタリンの累積率の結果を示す。果実は、収穫後処理の後及び20〜22℃で15〜21日間空調管理された部屋で貯蔵する前に、2〜4℃で5〜8日間冷蔵した。収穫後処理の後及び空調管理された部屋で貯蔵する前に冷蔵するステップは、温度上昇及び濃縮による病原真菌のより大きな増殖を可能にした。クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446の収穫ネクタリンへのスプレー処理(M3)は、有意に腐敗果実の発生率及び進行速度を低減した。
【0053】
試験の間、定期的に感染された果実に関係する真菌を単離、同定した。
【0054】
図7に示した結果は、ネクタリンの収穫日に、果実から単離された病原真菌は、モニリニア属種、リゾプス属種、アルテルナリア属種、ペニシリウム属種、及び
ボトリチス属種であることを立証した。モニリニア属種は、腐敗果実と関係する主な真菌であることが分かった(収穫後処理を行う前)。
【0055】
これらの結果から、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446は収穫ネクタリンにおけるモニリニア属種の感染の発生率及び進行速度を軽減できることが実証された。
【0056】
実施例3:クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータを使用するプラムの収穫後の真菌腐敗の生物学的制御
この研究の目的は、プラムの収穫後の品質に関し、貯蔵状況の間に、各種の収穫後処理の方法の効果を検討することであった。
【0057】
果実:プラム(種類:TC SUN;植樹年:2008;植樹間の距離及び密度:4×1m)は、硬い熟したステージで摘み取り、測定し、選択し(同一のサイズ、同一の成熟レベル、損傷なし)、詰めた。モニリニア属種は、腐敗果実と関係する主な真菌であることが分かった。
【0058】
収穫後処理:
プラムをトレーに配置した(トレー当たり100個のプラム)。処理方法当たり100個のプラムの4反復試験区(トレー)とした。無処理果実(すなわち、Integrated Fruit Productionを介した生産果実)をネガティブコントロールとして使用した。前記トレーは、0〜0.5℃で48時間貯蔵した。
【0059】
6つの異なる処理方法を試験して比較した。それらは表3に規定されている。
【0060】
[表3]
試験した処理方法
【0061】
収穫後処理のため、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446を含むPrestop WG(登録商標、Lallemand)を使用した。
【0062】
Prestop WG(登録商標)のストック溶液は、滅菌蒸留水とクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446を用いて調製し、懸濁液の量は、2g/lと同等で施与されるように計算した。スプレーボトルポンプを使用して懸濁液を施与した。8個のスプレーをトレーの1つの面に使用し、全体で7.5mlとした。T4からT6の処理に対して、ネブライザー(Atomist 1037, Hyprodis)を使用して懸濁液を施与した。果実は空気乾燥した。
【0063】
接種ステップに続いて、T4からT6の処理方法で処理したプラムは、本研究が終わるまで、19℃で空調管理された部屋への移動前に、0〜0.5℃で4〜6週間冷蔵した。T1からT3の処理方法で処理した果実は、本研究が終わるまで、直接、19℃で空調管理された部屋で貯蔵した。
【0064】
病原菌の同定とともに果実感染の割合を48〜72時間ごとに5〜30日間測定した。
【0065】
統計的解析:
データはStatBox Proを使用して統計的解析を行った。分散の分析は、一般線形モデル手法によりアークサイン平方根変換データに基づいて行った。平均離隔はStudent NewmanとKeuls testを用いて行った。
【0066】
結果及び結論:
図8及び9に示した結果は、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446は病原真菌により引き起こされる腐敗、例えばモニリニア属種により引き起こされる腐敗から収穫プラムを保護することを明確に実証した。
【0067】
実施例4:柑橘類果実に対し、収穫後の腐敗病原菌ペニシリウム・ディギタータム及びペニシリウム・イタリカムに対するクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446の効果
この研究の目的は、ペニシリウム属種に非常に感染しやすいマンダリンに対し、収穫後腐敗病原菌ペニシリウム・ディギタータム及びペニシリウム・イタリカムに対するクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446の効果を評価することであった。
【0068】
試験は水で洗い、乾かした衛生的なマンダリンに対して行った。該果実はマンダリン当たり2つの穿孔を設けた。
【0069】
試験した2つの真菌種は、ペニシリウム・ディギタータム及びペニシリウム・イタリカムとし、同じ胞子懸濁液の滴定は、PDA培地(ポテト、デキストロース及び寒天)に接種した若い5〜7日の培養を使用して行い、コロニーを滅菌蒸留水に入れることにより、24℃の温度でインキュベートした。その後胞子の数をカウントし、cfu/mlで表される所望する濃度に設定した。
【0070】
上述のようにして調製したマンダリンのバッチに、1%及び2%の濃度でPrestop懸濁液を接種した。クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446(Prestop)を接種後6、18及び24時間経て、選択した2つの種の滴定された病原菌懸濁液を10cfu/mlの濃度で果実に接種した。これと並行して、コントロール試験をセットし、そこではマンダリンは滴定された病原菌懸濁液と滅菌蒸留水だけを接種した。
【0071】
全ての処理された果実は乾燥させ、プラスチックバッグに配置して高湿度を形成させた。それらは20℃の周囲温度で3〜4日間インキュベートした。インキュベーションの期間はコントロールのマンダリンが大きな腐敗の直径を呈するのに必要な時間を基に設定した。上記インキュベーションに続いて、腐敗発生率(パーセンテージ)を評価し、設けた全ての穿孔の腐敗半径を測定し、及び胞子形成の存在/不在を調べることにより結果を読み取った。
【0072】
図10は、ペニシリウム・ディギタータムの生物学的制御、図11はペニシリウム・イタリカムの生物学的制御の場合に得られた結果を示す。
【0073】
図10、11に示した結果は、試験した2つの種の病原真菌の制御、従って、果実の腐敗の制御において、アンタゴニストであるクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446の高い有効性を実証した。
【0074】
以下は開示された本発明の特定の実施態様である。
E1.植物病原菌により引き起こされる収穫後腐敗から収穫産物を保護するため、植物病原菌により引き起こされる収穫産物の収穫後微生物の腐敗を防止もしくは軽減するため、及び/又は収穫産物上の植物病原菌を制御するために効果的な量のクロノスタキス・ロゼアの培養物を収穫産物に施与することを含む収穫後処理の方法。
E2.クロノスタキス・ロゼアがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータである、E1の収穫後処理の方法。
E3.クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータJ1446である、E2の収穫後処理の方法。
E4.収穫産物が果実又は野菜である、E1からE3のいずれか1つの収穫後処理の方法。
E5.果実が核果である、E4の収穫後処理の方法。
E6.核果がモモ、ネクタリン、プラム、アンズ又はサクランボである、E5の収穫後処理の方法。
E7.植物病原菌が真菌植物病原菌である、E1からE6のいずれか1つの収穫後処理の方法。
E8.植物病原菌が、ペニシリウム属種、アルテルナリア属種、リゾプス属種、ボトリチス属種、又はモニリニア属種である、E1からE7のいずれか1つの収穫後処理の方法。
E9.クロノスタキス・ロゼアの前記培養物は、農業上許容できるキャリアと組み合わされる、E1からE8のいずれか1つの収穫後処理の方法。
E10.クロノスタキス・ロゼアの前記培養物は、約10〜1012cfu/ml、約10〜1011cfu/ml、約10〜1010cfu/ml、又は約10〜10cfu/mlの濃度である、E1からE9のいずれか1つの収穫後処理の方法。
E11.クロノスタキス・ロゼアの前記培養物は乾燥配合物であり、約10〜1012cfu/g、約10〜1011cfu/g、約10〜1010cfu/g、又は約10〜10cfu/gの濃度である、E1からE9のいずれか1つの収穫後処理の方法。
E12.貯蔵収穫産物の収穫後の貯蔵寿命を延長するためのクロノスタキス・ロゼアの使用。
E13.クロノスタキス・ロゼアがクロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータである、E12の使用。
E14.クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータが、クロノスタキス・ロゼアf.カテヌラータ株J1446である、E13の使用。
【0075】
特定の実施態様と関連付けて本発明について述べたが、さらなる改変をすることができ、この適用は、あらゆる変更、使用をカバーし、あるいは、本発明の原理に一般に従い、本発明が関与する従来技術内であり、またここに記載した必須の特徴に適用し、公知又は慣習的プラクティスの範囲内にある本発明開示からの新しい試みを含む本発明の適合、したがって添付クレームの範囲内にあるものをカバーすることを意図している。
【0076】
参照文献
Wilson, C.L., M., 1989. Biological control of postharvest disease of fruits and vegetables : an emerging technology. Annu. Rev. Phytopathol. 27, 425-441.



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】