(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-506658(P2020-506658A)
(43)【公表日】2020年2月27日
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
H02P 29/028 20160101AFI20200131BHJP
A61M 1/10 20060101ALI20200131BHJP
H02P 25/16 20060101ALI20200131BHJP
【FI】
H02P29/028
A61M1/10 111
H02P25/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-542475(P2019-542475)
(86)(22)【出願日】2018年2月5日
(85)【翻訳文提出日】2019年8月5日
(86)【国際出願番号】EP2018052797
(87)【国際公開番号】WO2018146045
(87)【国際公開日】20180816
(31)【優先権主張番号】17155078.3
(32)【優先日】2017年2月7日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】マルツコルン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】コルティカ マルティン
(72)【発明者】
【氏名】モーゼル クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4C077
5H501
5H505
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD10
4C077FF04
4C077KK30
5H501AA05
5H501BB08
5H501DD04
5H501GG05
5H501GG06
5H501HA01
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5H501LL24
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5H505AA01
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5H505GG05
5H505HA01
5H505HB02
5H505HB05
5H505LL22
5H505LL25
5H505LL56
5H505MM12
5H505MM13
(57)【要約】
血液ポンプを駆動する電気モーターを含む、心臓の心室への経皮的挿入に用いる血液ポンプであって、当該電気モーターは、少なくとも3個のモーター巻線部を含み、各モーター巻線部は、各々のモーター巻線部端に接続された2本の別々の相供給線を介して電源に個別に接続可能である。血液ポンプの電気モーターを駆動および制御するモーターコントローラであって、当該モーターコントローラは、血液ポンプの電気モーターの各モーター巻線部の対応する相供給線駆動部を含んでいて、当該相供給線駆動部は、対応する2本の相供給線を介して対応するモーター巻線部と接続されている。血液ポンプおよびモーターコントローラを含む血液ポンプシステム。血液ポンプのモーター巻線部への電力供給を制御する制御方法であって、本方法は、複数のモーター巻線部のうち1個の故障を検出するステップと、不良モーター巻線部を検出した場合、不良モーター巻線部の対応する相供給線駆動部をスイッチオフして、残りのモーター巻線部により電気モーターを引き続き動作させるか、代替的に、不良モーター巻線部の駆動パラメータを調整した上で全てのモーター巻線部により電気モーターを引き続き動作させるステップを含んでいる。経皮的挿入に用いる血液ポンプを駆動する電気モーター内における少なくとも3個の独立したモーター巻線部の使用法であって、当該モーター巻線部が、当該少なくとも3個のモーター巻線部のうち1個のモーター巻線部端の各々に接続された2本の別々の対応する相供給線を介して対応する電源に個別に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液ポンプ(50)を駆動する電気モーター(51)を含み、前記電気モーター(51;51−2)が、少なくとも3個のモーター巻線部(Lu,Lv,Lw)を含んでいて、各モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)が、各々のモーター巻線部端(LuE1,LuE2;LvE1,LvE2;LwE1,LwE2)に接続された別々の相供給線(Lu1,Lu2;Lv1,Lv2;Lw1,Lw2)を介して電源に個別に接続されるように配置および構成されている血液ポンプ(50)。
【請求項2】
前記電気モーター(51;51−2)が永久磁石励起同期モーターである、請求項1に記載の血液ポンプ(50)。
【請求項3】
前記電気モーター(51;51−2)が3個のモーター巻線部(Lu,Lv,Lw)を含み、各モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)が対応する相供給線(Lu1,Lu2;Lv1,Lv2;Lw1,Lw2)に接続されている。請求項1または2に記載の血液ポンプ(50)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液ポンプ(50)の電気モーター(51;51−2)を駆動および制御するモーターコントローラ(100)であって、各モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)に対し、前記対応する相供給線(Lu1,Lu2;Lv1,Lv2;Lw1,Lw2)を介して前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)のうち1個と接続された、対応する相供給線駆動部(DH1,DH2,DH3;DL1,DL2,DL3)を含んでいるモーターコントローラ(100)。
【請求項5】
各々の相供給線駆動部(DH1,DH2,DH3;DL1,DL2,DL3)が、対応するモーター巻線部(Lu,Lv,Lw)に供給される電力を協調制御すべく切り替え可能に構成された2個の対応するハーフブリッジ装置により実装されている、請求項4に記載のモーターコントローラ(100)。
【請求項6】
対応するモーター巻線部(Lu,Lv,Lw)を通って流れる電流(Iu,Iv,Iw)の実際の値を測定する各々の相電流測定部(Ru,Rv,Rw)と、
全てのモーター巻線部(Lu,Lv,Lw)を通って流れる全電流(Itotal)の実際の値を測定する全電流測定部(Rtotal)と、
駆動されていないモーター巻線部(Lu,Lv,Lw)に対する、各々の誘導された 逆起電力CEMFを測定すべく構成された各々の測定部のうち少なくとも1個を更に含んでいる、請求項4または5に記載のモーターコントローラ(100)。
【請求項7】
電気モーター(51;51−2)を動作させるべく、好適には前記電気モーター(51;51−2)の回転速度、前記電気モーター(51;51−2)の回転方向、および前記電気モーター(51;51−2)により生じるトルクのうち少なくとも一つを駆動および制御すべく前記相供給線駆動部(DH1,DH2,DH3;DL1,DL2,DL3)を制御すべく構成された制御部(120)を含んでいる、請求項4〜6のいずれか1項に記載のモーターコントローラ(100)。
【請求項8】
前記制御部(120)が、前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)のうち1個の故障を検出すべく構成されていて、不良モーター巻線部を検出した場合、
前記不良モーター巻線部の対応する相供給線駆動部(DH1,DH2,DH3;DL1,DL2,DL3)をスイッチオフして、残りのモーター巻線により前記電気モーター(51;51−2)を引き続き動作させるか、または
前記不良モーター巻線部のパラメータを調整した上で全てのモーター巻線により前記電気モーター(51;51−2)を引き続き動作させるべく構成されている、請求項7に記載のモーターコントローラ(100)。
【請求項9】
前記不良モーター巻線部が特定されるのは、前記モーター巻線部の導線、または前記モーター巻線部の対応する相供給線(Lu1,Lu2;Lv1,Lv2;Lw1,Lw2)の断線、前記モーター巻線部から前記電気モーター(51)の筐体への漏電、および前記モーター巻線部の巻線間の短絡のうち少なくとも一つが生じた場合であり、前記制御部(120)が更に、前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)を通って流れる各々の実電流(Iu,Iv,Iw)、または前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)の実際の電圧の比較のうち少なくとも一つに基づいて、前記不良モーター巻線部を検出すべく構成されている、請求項7に記載のモーターコントローラ(100)。
【請求項10】
前記モーター巻線部の故障が、前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)のうち2個の導線間の短絡により特定され、
前記制御部(120)が、前記2個の不良モーター巻線部を通って流れる実電流(Iu,Iv,Iw)の比較に基づいて、前記2個の不良モーター巻線部を検出すべく構成されていて、
前記制御部(120)が、前記2個の不良モーター巻線部のうち1個を、対応する前記相供給駆動部(DH1,DH2,DH3;DL1,DL2,DL3)をスイッチオフすべき不良モーター巻線部として判定すべく構成されている、請求項7に記載のモーターコントローラ(100)。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液ポンプ(50)および請求項4〜10のいずれか1項に記載のモーターコントローラ(100)を含む血液ポンプシステム。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液ポンプ(50)のモーター巻線部(Lu,Lv,Lw)への電力供給を制御する制御方法であって、
(i)前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)のうち1個の故障を検出するステップと、
(ii)不良モーター巻線部を検出した場合、
前記不良モーター巻線部の対応する相供給線駆動部(DH1,DH2,DH3;DL1,DL2,DL3)をスイッチオフして、残りのモーター巻線の相供給線駆動部(DH1,DH2,DH3;DL1,DL2,DL3)を制御することにより前記電気モーター(51;51−2)を引き続き動作させ、または代替的に、
前記不良モーター巻線部の駆動パラメータを調整した上で全てのモーター巻線(Lu,Lv,Lw)により前記電気モーター(51;51−2)を引き続き動作させるステップを含む方法。
【請求項13】
前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)のうち1個の故障を検出するステップが、
(a)前記不良モーター巻線部の導線、または前記不良モーター巻線部の対応する相供給線(Lu1,Lu2;Lv1,Lv2;Lw1,Lw2)の断線、
(b)前記不良モーター巻線部から前記電気モーター(51;51−2)の筐体への漏電、
(c)前記不良モーター巻線部の巻線間の短絡、
(d)前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)のうち2個の導線間の短絡、のうち少なくとも一つを検出するステップを含んでいる、請求項12に記載の制御方法。
【請求項14】
前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)のうち1個の故障を検出するステップが、
(a)前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)を通って流れる各々の実電流(Iu,Iv,Iw)、
(b)前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)における実際の電圧低下の比較、および
(c)前記不良モーター巻線部を通って流れる実電流(Iu,Iv,Iw)の比較のうち少なくとも一つに基づいている、請求項12または13に記載の制御方法。
【請求項15】
経皮的挿入に用いる血液ポンプ(50)を駆動する電気モーター(51;51−2)内における少なくとも3個の独立したモーター巻線部(Lu,Lv,Lw)の使用法であって、前記モーター巻線部(Lu,Lv,Lw)が、少なくとも3個のモーター巻線部(Lu,Lv,Lw)のうち1個の各々のモーター巻線部端(LuE1,LuE2;LvE1,LvE2;LwE1,LwE2)に接続された2本の別々の対応する相供給線(Lu1,Lu2;Lv1,Lv2;Lw1,Lw2)を介して、対応する電源(110)に個別に接続されている使用法。
【請求項16】
前記電気モーター(51;51−2)が、患者の体内に経皮的に完全に挿入されるよう構成された前記血液ポンプ(50)と一体化された要素であり、前記血液ポンプ(50)が患者に挿入された際に、前記電気モーター(51;51−2)に電力を供給して制御する前記モーターコントローラ(100)が患者の体外に配置されていて、前記電気モーター(51;51−2)に電力を供給して動作を制御するための接続部がカテーテル(10)を通して前記血液ポンプ(50)に渡される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液ポンプ(50)、請求項4〜10のいずれか1項に記載のモーターコントローラ(100)、請求項11に記載の血液ポンプシステム、請求項12〜14のいずれか1項に記載の制御方法、または請求項15に記載の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経皮的挿入用の補助人工心臓(VAD)の分野に関する。特に、本発明は経皮的に挿入可能な血液ポンプ、例えば血管内回転血液ポンプ等、VADのモーター内のモーター巻線部の回路構成、およびそのようなVADの制御並びに制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モーター巻線を有する電気モーターにより駆動されるVADが一般に知られている。経皮的に挿入可能な血液ポンプ等のVADの特定の一例として、心機能を回復するまで補助すべく数時間または数日間にわたり血管を通して心臓内に直接配置または植設すべく構成されたカテーテルを主体とする回転血液ポンプがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5911685A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米国特許第5911685A号に例示的な血管内回転血液ポンプが開示されている。しかし、電気モーターを含む他の種類のVADも存在する。
【0005】
VADを駆動する電気モーターは、VADの機能に関してVADの一つの重要な構成要素であって、患者の心臓に必要な補助を提供するものである。モーターの故障は深刻な問題を引き起こす恐れがあり、たとえVADが交換可能であっても、そのような交換により不要なリスクが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の目的は、電気モーターが故障するリスクを減らし、特に電気モーターの完全停止を回避できる、VADの改良された電気駆動方式を提供することである。
【0007】
更に、本発明の第2の目的は、モーター巻線が故障した場合でも電気モーターを引き続き動作させるべく、第1の目的を実現する改良された電気モーターのための改良された制御方法および装置を提供することである。
【0008】
上述の目的の少なくとも一つは、各々の独立請求項の特徴により実現される。更なる実施形態が各々の従属請求項により規定される。
【0009】
本発明の中核的発想は、モーター巻線間で一切回路相互接続が生じないようにする回路構成にモーター巻線が構成されているVADを駆動する電気モーター、特に血管内回転血液ポンプ等の経皮的に挿入可能な血液ポンプを用いることである。好適には、全てのモーター巻線は、別々の供給線を介して個別に動作する。有利な特徴として、電気モーターは、いずれかのモーター巻線に不具合があっても、影響を受けたモーター巻線を動作から外すか、または影響を受けたモーター巻線のパラメータを調整した上で動作させることにより、引き続き動作させることができる。例えば、いずれかのモーター巻線への相供給線のうち1本が断線しても、残りのモーター巻線により電気モーターを引き続き動作させることができる。例えば、特定の2本の巻線間に短絡が生じた場合、影響を受ける1本の巻線を動作から外して、残りのモーター巻線により電気モーターを引き続き動作させることができる。例えば、特定の1本の巻線内で短絡(例:巻間短絡)が生じた場合、影響を受ける巻線を動作から外すか、またはパラメータを調整した上で動作させて、残りのモーター巻線により電気モーターを引き続き動作させることができる。例えば、特定の巻線からポンプの筐体へ故障電流が流れた場合、影響を受ける巻線を動作から外して、残りのモーター巻線により電気モーターを引き続き動作させることができる。
【0010】
本発明の第1の態様は、例えば血管内適用等の経皮的挿入に用いる血液ポンプを提供する。血液ポンプは、当該血液ポンプを駆動する電気モーターを含んでいる。電気モーターは、少なくとも3個のモーター巻線部を含んでいる。各モーター巻線部は、1本が2個のモーター巻線部端の一方に接続され、他の1本がモーター巻線端の他方に接続されている2本の対応する別々の相供給線を介して電源に個別に接続されるように配置および構成されている。
【0011】
特定のモーター巻線部は、対応する少なくとも1本のモーター巻線を含むが、特定の1本の巻線だけに限定されない。すなわち、モーター巻線部は複数の巻線を含んでいてよい。特に、1個のモーター巻線部が、互いに平行に接続された複数のモーター巻線を含んでいてよい。例えば、1個のモーター巻線部が多層巻線を含み、異なる層に複数の巻線が実装され、且つ平行に接続されてモーター巻線部を形成していてよい。例えば、1本の巻線が、異なる層に配置されていて、平行に接続されて各モーター巻線部を形成する2本の平行に接続された巻線を含んでいてよい。
【0012】
好適には、電気モーターは同期モーターである。最も好適には、モーターは、永久磁石励起同期モーター、すなわち永久磁石を含むローターを含むモーターである。
【0013】
好適には、電気モーターは、少なくとも3個のモーター巻線部、および各モーターの巻線部に対応する2本の相供給線を含んでいる。特定の実施形態において、電気モーターは、3個のモーター巻線部を含み、対応するモーター巻線部端の各々が対応する1本の相供給線に接続されている。
【0014】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による血液ポンプの電気モーターを駆動および制御するモーターコントローラを提供する。モーターコントローラは、各モーター巻線部に対応する切り替え可能な相供給線駆動部を含んでいる。各々の切り替え可能な相供給線駆動部は、対応する2本の相供給線を介してモーター巻線部のうち1個と接続されている。
【0015】
好適には、相供給線駆動部は、各モーター巻線部に供給される電力を協調制御すべく切り替え可能な2個のハーフブリッジ部により実装される。
【0016】
好適には、モーターコントローラは、対応するモーター巻線部を通って流れる電流の実際の値を測定する各々の相電流測定部、全てのモーター巻線部を通って流れる全電流の実際の値を測定する全電流測定部、および逆起電力CEMFとも呼ばれる、各々の誘導された逆電磁力BEMF、すなわち各モーター巻線部が駆動されない、換言すれば各モーター巻線部が電源から切り離された瞬間での各モーター巻線部の電圧を測定すべく構成された各々の測定部のうち少なくとも1個を含んでいる。
【0017】
好適には、モーターコントローラは、相供給線駆動部を制御すべく当該駆動部に動作可能に接続されていて、電気モーターの回転速度、電気モーターの回転方向、および電気モーターにより生じるトルクのうち少なくとも一つを駆動および制御すべく構成された制御部を含んでいる。
【0018】
好適には、制御部は、複数のモーター巻線部のうち1個の故障を検出すべく構成されている。更に、制御部は、不良モーター巻線部を検出した場合、不良モーター巻線部の対応する相供給線駆動部をスイッチオフして、残りのモーター巻線により電気モーターを引き続き動作させるべく構成されている。代替的に、制御部は、パラメータを調整した上で不良モーター巻線部を引き続き駆動して、全てのモーター巻線により電気モーターを引き続き動作させるべく構成されていてよい。すなわち、血液ポンプは、残りのモーター巻線部単独で、または駆動パラメータを調整した上で不良モーター巻線部を動作させた全てのモーター巻線部により、動作状態に保つことができる。
【0019】
好適には、モーター巻線部が不良と判定されるのは、
(a)モーター巻線部の導線、またはモーター巻線部の対応する相供給線のうち少なくとも1本の断線、
(b)モーター巻線部から電気モーターの筐体への漏電、
(c)モーター巻線部の巻線間の短絡
のうち少なくとも一つが生じた場合である。
【0020】
好適には、制御部は、当該モーター巻線部または複数のモーター巻線部を通って流れる各々の実電流、および当該モーター巻線部または複数のモーター巻線部の実際の電圧の比較のうち少なくとも一つに基づいて、不良モーター巻線部、すなわち上述の故障(a)〜(c)の一つを検出すべく構成されている。
【0021】
代替的に、モーター巻線部の故障は、2個のモーター巻線部の導線間の短絡を含み、結果的に2個のモーター巻線部の不良を引き起こす場合がある。好適には、制御部は、2個の不良モーター巻線部を通って流れる実電流の比較に基づいて、2個の不良モーター巻線部を検出すべく構成されている。好適には、そのような2個の不良巻線部がある場合、制御部は、2個の不良モーター巻線部のうち1個が、対応する相供給線駆動部をスイッチオフすべき、またはパラメータを調整した上で動作させるべき不良モーター巻線部であると判定すべく構成されている。
【0022】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様による血液ポンプおよび本発明の第2の態様によるモーターコントローラを含む血液ポンプシステムを提供する。
【0023】
本発明の第4の態様は、好適には本発明の第1の態様による血液ポンプのモーター巻線部への電力供給を制御する制御方法を提供する。本方法は、(i)複数のモーター巻線部のうち1個の故障を検出するステップと、(ii)不良モーター巻線部を検出した場合、第1の代替策では、不良モーター巻線部を駆動する、対応する相供給線駆動部をスイッチオフして、残りのモーター巻線の相供給線駆動部を制御することにより電気モーターを引き続き動作させ、第2の代替策では、不良モーター巻線部の駆動パラメータを調整した上で全てのモーター巻線部の相供給線駆動部を制御することにより電気モーターを引き続き動作させるステップを含んでいる。
【0024】
好適には、複数のモーター巻線部のうち1個の故障を検出するステップは、
(a)不良モーター巻線部の導線、または不良モーター巻線部の対応する相供給線の断線、
(b)不良モーター巻線部から電気モーターの筐体への漏電、
(c)不良モーター巻線部の巻線間の短絡、
(d)モーター巻線部のうち2個の導線間の短絡、のうち少なくとも一つを検出するステップを含んでいるが、これに限定されない。
【0025】
好適には、複数のモーター巻線部のうち1個の故障を検出するステップは、当該複数のモーター巻線部を通って流れる各々の実電流、当該複数のモーター巻線部における実際の電圧低下の比較、および当該複数の不良モーター巻線部を通って流れる実電流の比較のうち少なくとも一つに基づいている。
【0026】
第5の本発明の態様は、経皮的挿入に用いる血液ポンプを駆動する電気モーター内における少なくとも3個の独立したモーター巻線部の使用法に関する。各モーター巻線部は、対応するモーター巻線部の2個のモーター巻線部端の各々1個に接続された2本の別々の対応する相供給線を介して電源に個別に接続されるように配置および構成されている。
【0027】
最後に、本発明の第1の態様の血液ポンプ、本発明の第2態様のモーターコントローラ、第3の本発明の態様の血液ポンプシステム、本発明の第4の態様の制御方法、または本発明の第5の態様の使用に関して、いずれの場合も電気モーターは好適には血液ポンプと一体化された要素である。血液ポンプが患者の体内に経皮的に完全に挿入されるよう構成されているため、血液ポンプが患者に挿入された際に、血液ポンプと一体的な部分としての電気モーターも同様に挿入される。次いで、電気モーターに電力を供給して制御するモーターコントローラは好適には患者の体外に配置されている。電気モーターに電力を供給して動作を制御するための接続部だけが患者の体外から経皮的に患者の体内にカテーテルを通して血液ポンプ、および対応して電気モーターに渡される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら本発明について複数の例を用いて説明する。
【
図1】電気モーターにより駆動される経皮的挿入用VADの一例を示す概要図である。
【
図2】(a)デルタ構成、(b)星型またはY字構成、および(c)導線端が開いた構成を有する3個のモーター巻線部の回路構成図である。
【
図3】電源とモーター巻線部の3本の電源線との間の対応するスイッチを変調制御しながら、星型構成の3個のモーター巻線部を有する電気モーターをパルス駆動する原理を示す構成図である。
【
図4】経皮的挿入に用いる血液ポンプの電気モーターにおけるモーター巻線部の本明細書で提案する新たな構成の特定の一実施形態を示し、更に電気モーターの駆動段階の基本構成を示す簡素化された模式的回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に、対応するモーター巻線部を含む電気モーターにより駆動される経皮的挿入用VADの一例を示す。VADは、マイクロ軸回転血液ポンプ50、特に患者の血管を通して患者の心臓内に経皮的に挿入するカテーテルを主体とするマイクロ軸回転血液ポンプ(「以下では単に「血液ポンプ50」と呼ぶ)である。そのような血液ポンプは例えば米国特許5911685A号で公知である。
【0030】
血液ポンプ50は、血管を介して血液ポンプ50を一時的に患者の心臓の心室内へ導くことができるカテーテル10を利用する。血液ポンプ50は、カテーテル10に加えて、カテーテル管20の端に固定されたポンピング装置を含んでいる。回転ポンピング装置は、電気モーター51、および当該電気モーター51から軸距離に位置するポンプ部52を含む。送血カニューレ53が、一端でポンプ部52に接続されていて、ポンプ部52から延伸して、他端に位置する流入ケージ54を有している。流入ケージ54には柔軟で可撓性の先端55が取り付けられている。ポンプ部52は、流出開口部56を有するポンプ血管を含んでいる。更に、ポンピング装置は、電気モーター51からポンプ部52のポンプ筐体内に突出する駆動軸57を含んでいる。駆動軸57は、押圧要素としてインペラ58を駆動する。血液ポンプ50の動作中、流入ケージ54を通しい血液を吸引し、駆動軸57を介して電気モーター50により駆動される回転インペラ58により流出開口部56を通して放出することができる。
【0031】
カテーテル10のカテーテル管20を3本の線、すなわち2本の信号線28A、28B、およびポンピング装置の電気モーター51に電力を供給する電力供給線29が貫通する。信号線28A、28B、および電力供給線29の近位端でポンピング装置を制御すべく制御部(図示せず)に取り付けられている。信号線は28A、28Bは、対応するセンサヘッド30、60を各々有する血圧センサの一部である。電力供給線29は、モーター部の電気モーター51の各モーター巻線部に電力を供給する別々の相供給線を含んでいる。電気モーター51は好適には同期モーターである。例示的な一構成において、電気モーターは、駆動軸57に結合されたローター(図示せず)を駆動する3個のモーター巻線部を含んでいる。ローターは少なくとも1本の界磁巻線を含んでいてよい。代替的に、ローターは、永久磁石を含んでいて、永久磁石励起同期モーターが得られる。特定の一実施形態において、特定の1個のモーター巻線部は、異なる層に配置され且つ平行に接続された2本の平行に接続された巻線を含んでいる。
【0032】
血液ポンプ50はマイクロ軸回転血液ポンプであり、「マイクロ」は心室に至る血管を介して血液ポンプを心臓の心室内に経皮的に挿入できるように充分サイズが小さいことを示す。これはまた、血液ポンプ50を経皮的挿入用の「血管内」血液ポンプとして定義する。「軸」は、ポンプ部52を駆動する電気モーター51の配置が軸構成に配置されていることを示す。「回転」は、ポンプ機能が、回転電気モーター51により駆動されるトラスト要素、例えばインペラの回動動作に基づいていることを意味する。
【0033】
好適には、且つ
図1に示すように、電気モーター51は、患者の体内に経皮的に完全に挿入されるように構成された血液ポンプ50の一要素である。通常、血液ポンプ50は、例えば患者の心臓の心室に至る血管を介して患者の体内に挿入される。上述のように、血液ポンプ50は、血管を通して血液ポンプ50の挿入を実行できる、且つ電気モーター51に電力を供給して制御すべく電力供給線29を通すことができるカテーテル10を利用する。すなわち、電気モーター51に電力を供給して制御するモーターコントローラ(例:
図4の100)は患者の体外に位置している。従って、モーター51に電力を供給して動作を制御する接続部(例:29)だけがカテーテル10内を貫通する。これは、駆動電気モーターは患者の体外にあってよい一方で、ポンプ部だけが患者の体内に挿入されるようにカテーテル内を通された回転駆動導線を介して駆動される血液ポンプとは全く異なる。この場合、不良電気モーターの交換をより容易に行うことができる。
【0034】
図2に、
図1の血液ポンプ50の電気モーター51の各回路構成を示す。例えば、電気モーターは、3個のモーター巻線部Lu、Lv、Lwを含んでいる。
図2(a)において、モーター巻線部Lu、Lv、Lwは、デルタ回路構成で接続されている。
図2(b)において、モーター巻線部Lu、Lv、Lwは星型またはY字回路構成で接続されている。
【0035】
図2(c)に、一般に「開放端巻線」構成と呼ばれる、開いた配線端を有する構成のモーター巻線部Lu、Lv、Lwを示す。図示する構成は、3個のモーター巻線部Lu、Lv、Lwのいずれも他の2個のモーター巻線部との間の回路相互接続が意図されていない、という事実により特徴付けられる。本構成において、3個のモーター巻線部Lu、Lv、Lwのいずれも他のモーター巻線部から独立に電力供給を受けることができる。
【0036】
特定のモーター巻線部が少なくとも1本の特定のモーター巻線を含んでいるが、1本の巻線に限定されない点に注意されたい。モーター巻線部は、複数の巻線モーターを含んでいてよい。特に、モーター巻線部は、平行に接続されてモーター巻線部を形成する複数のモーター巻線を含んでいてよい。例えば、1個のモーター巻線部が2本の平行に接続された巻線を含んでいてよい。異なる巻線が異なる層に配置されていてよく、且つモーター巻線部の端を形成する各配線端に平行に接続されていてよい。
【0037】
図3に、各々が2個の電力供給ノードUs、Ugの一方に、且つ各々が対応する1個のモーター巻線部Lu、Lv、Lwに電力供給する3本の電力供給線L1、L2、L3のうち1本だけに接続されている、対応するスイッチの対Su1およびSu2、Sv1およびSv2、Sw1およびSw2のパルス幅変調制御により、
図2(b)の構成の3個のモーター巻線部Lu、Lv、Lwを有する電気モーター51−1を駆動する従前方式を示す。
【0038】
電気モーター51−1は、米国特許第5911685A号で公知のマイクロ軸回転血液ポンプに用いられるモーター巻線構成を含んでいる。3個のモーター巻線部Lu、Lv、Lwは互いに一方の端が星型ノードのSNに接続されているのに対し、各モーター巻線部の他方の端は各々、対応する電力供給線L1、L2、L3のうち1本を介して、各々が2個の半導体スイッチ、例えばスイッチの対Su1およびSu2、Sv1およびSv2、Sw1およびSw2として図示する電力MOSFETを含む3個のハーフブリッジH1、H2、H3の各々に対応する各中間ノードMN1、MN2、MN3に接続されている。3個のハーフブリッジH1、H2、H3の各々が、制御部1により制御される各々の相供給線駆動部を画定する。3個のハーフブリッジH1、H2、H3、すなわち相供給線駆動部は1個の駆動部DUに組み込まれていても、または当該駆動部DUにより実装されていてもよい。
【0039】
ハーフブリッジH1、H2、H3の各々は、各スイッチの対Su1およびSu2、Sv1およびSv2、Sw1およびSw2をパルス幅変調により、特定のモーター巻線部Lu、Lv、Lwを駆動する電圧の波形が、他の2本のモーター巻線を駆動する各電圧の波形のいずれとも120°の位相差を有するように制御すべく構成された制御部1により制御される。
【0040】
ハーフブリッジH1、H2、H3は各々、供給電圧Usおよび基準電圧Ug(例:接地電圧)も提供する制御部1に接続されている。1個のハーフブリッジH1、H2、H3のスイッチの各々の制御を、
図3に制御部1から各スイッチの対Su1およびSu2、Sv1およびSv2、Sw1およびSw2への対応する矢印で示す。各ハーフブリッジH1、H2、H3を切替えることにより、対応するモーター巻線部Lu、Lv、Lwに供給される各電流が切替えられる結果、特定のモーター巻線部により生じる磁場が対応して変化する。これにより、モーター巻線部は、モーター51−1のローター(図示せず)を動作させる回転磁場を発生させる。励起界磁巻線を含むローターが対応して回転を強いられる。
【0041】
ハーフブリッジH1、H2、H3(相供給線駆動部)のスイッチの対Su1およびSu2、Sv1およびSv2、Sw1およびSw2の対応する制御により、電気モーター51−1の回転方向および回転速度、並びに電気モーター51−1により生じるトルクの制御が可能になる。例えば、
図1に示す公知の血液ポンプ50において、3個のモーター巻線部Lu、Lv、Lwを有する同期モーター51は星型構成で動作する。従って、カテーテル管20を貫通する
図1に示す供給線29は、各モーター巻線部に電力を供給する3個の相供給線L1、L2およびL3を含んでいる。
【0042】
図4に、
図1に示すような経皮的挿入用の血液ポンプの電気モーター51−2のモーター巻線部の本明細書で提案する新規の構成の特定の一実施形態を示す。更に、電気モーター51−2の駆動段階の基本構成の簡素化された模式的回路図を
図4に示す。
【0043】
上述および
図1に示すように、電気モーター51−2は血液ポンプ50と一体化された一要素である。従って、血液ポンプ50と共に、電気モーター51−2も経皮的に患者の体内に完全に挿入される。また上述のように、血液ポンプ50は、血管を通して血液ポンプ50が挿入され、且つ電気モーター51−2に電力を供給して制御すべく電力供給線29が導かれるカテーテル10に基づいている。電力供給線29は、6個の別々の相供給線Lw1、Lv1、およびLu1、Lw2、Lv2、およびLu2(以下に詳述する)を含んでいる。電気モーター51−2に電力を供給して制御するモーターコントローラ100は特に、患者の体外に配置される。換言すれば、モーター51−2に電力を供給して動作制御するための接続部はカテーテル10内を貫通する。
【0044】
電気モーター51−2は、3個のモーター巻線部Lu、Lv、Lwを含んでいる。3個よりも多くのモーター巻線部を用いてもよい点に注意されたい。各モーター巻線部Lu、Lv、Lwは個別に各モーター巻線部の両端LwE1およびLwE2、LvE1およびLvE2、LuE1およびLuE2で、1個の別々の相供給線Lw1、Lv1、およびLu1、Lw2、Lv2、およびLu2に接続されている。特定の1個のモーター巻線部Lu、Lv、Lwの2本の相供給線の各々が、対応する1個のハーフブリッジ回路DH1、DH2、DH3、DL1、DL2、DL3に接続されている。各ハーフブリッジ回路DH1、DH2、DH3、DL1、DL2、DL3は、
図3との関係で述べたように、対応する2個の半導体スイッチの対SwH1およびSwH2、SvH1およびSvH2、SuH1およびSuH2、SwL1およびSwL2、SvL1およびSvL2、SuL1およびSuL2を含んでいる。
【0045】
例えば、モーター巻線部Lwに関して、第1の巻線部端LwE1は第1相供給線Lw1を介してハーフブリッジ回路DH1の中間ノードMNH1に接続されているのに対し、第2の巻線端LwE2は第2相供給線Lw2を介して対応する第2のハーフブリッジ回路DL1の中間ノードMNL1に接続されている。2個のハーフブリッジ回路DH1、DL1の各々は2個の半導体スイッチの対SwH1およびSwH2、SwL1およびSwL2を含んでいる。2個のハーフブリッジ回路DH1、DL1は共にモーター巻線部Lwの相供給線駆動部を画定する。同じことが他のハーフブリッジおよびモーター巻線部にも当てはまる。
【0046】
図3に示す構成と比較して、
図4の電気モーター51−2は、原理的に2個の駆動部DU1、DU2を含むモーターコントローラ100により駆動および制御される。2個の駆動部DU1、DU2の各々は、モーター巻線部Lu、Lv、Lwの各々の第1の巻線部端に接続されている。特定の実装例において、例えば、駆動部DU1、DU2はTexas Instruments社のDRV8312型3相パルス幅変調駆動部等の集積回路(IC)により実装されていてよい。
【0047】
特定の1個のモーター巻線部Lw、Lv、Luを通過する実電流Iv、Iu、Iwを測定すべく、駆動部DU1、DU2は対応するモーター巻線部Lw、Lv、Luと原理的に直列に接続された各電流測定部IM1、IM2、IM3に接続されている。例えば、特定の1個のモーター巻線部Lw、Lv、Luを通過する実電流は、シャント抵抗器等の電流検出素子における電圧低下に対応して判定することができる。
図4に示す実施形態において、電流検出部IM1、IM2、IM3は、対応するシャント抵抗器Rw、Rv、Ruにより実装されている。
【0048】
上記に対応するように、モーターコントローラ100は、巻線全てのモーター部Lw、Lv、Luを通過する全電流の測定部ITMを含んでいる。全電流測定部ITMは、電流検出素子を含んでいて、原理的にモーター巻線部自体として互いに平行に接続された全ての相供給線の共通ノードと直列に接続されている。全電流の電流検出部ITMはシャント抵抗器Rtotalにより実装されていて、その電圧低下は測定可能であって全電流Itotalに比例している。
【0049】
更に、制御部120は、個別のモーター巻線部Lw、Lv、Luの各々に対する実電流Iv、Iu、Iwおよび全てのモーター巻線部Lw、Lv、Luを通過する全電流Itotalの測定値を受信するための検出入力を含んでいる。更に、制御部120は、駆動部DU1、DU2を介して供給される実際の電圧を受電する電力供給部110に動作可能に接続されている。
【0050】
更に、対応する電圧測定もまた、駆動部DU1内の各中間ノードMNH1、MNH2、およびMNH3および/または駆動部DU2内のMNL1、MNK2、MNL3で、各モーター巻線部が現在駆動されていない、すなわち対応するハーフブリッジのスイッチのいずれかが開いている場合に、各モーター巻線部で誘導された反電磁力CEMF、すなわち電圧を測定すべく実行される。
【0051】
更に、制御部120からハーフブリッジDH1、DH2、DH3、DL1、DL2、DL3の各半導体スイッチまで当該ハーフブリッジを制御する出力制御線が延びている。
【0052】
図面を簡単に保つため
図4で電流検出線および制御線を模式的にしか示していない点に注意されたい。例えば、モーター巻線Lw内の実電流Iwの測定値の制御部120への入力を表す矢印がシャント抵抗器Rwを有する電流測定部IM1から制御部120まで描かれている。同様に、制御部120から駆動部DU2内のハーフブリッジDL1の半導体スイッチSwL2までの矢印は、スイッチSwL2の動作が他のスイッチと同様に制御部120の制御下にあることを示す。
【0053】
原理的に、電気モーター51−2の回転方向、回転速度、および発生したモータートルクの制御は
図3に示す構成の制御と同様である。しかし、本明細書で提案する構成はいくつかの特定の利点をもたらす。
【0054】
第1に、制御部120は、モーター巻線部Lu、Lv、Lwのいずれかの故障を検出すべく構成されている。特定のモーター巻線部が不良であると検出されたならば、検出された不良モーター巻線部に基づいて、制御部120は、不良モーター巻線部に接続されている対応ハーフブリッジDH1、DH2、DH3、DL1、DL2、DL3をスイッチオフすべく構成されている。各モーター巻線部Lu、Lv、Lwの個別の制御に起因して、電気モーター51−2は更に、残りのモーター巻線部だけにより代替的に、特に対応する残りのハーフブリッジを制御することにより、または全てのモーター巻線部により制御および動作することができ、不良モーター巻線部の駆動パラメータが調整される。
【0055】
有利な特徴として、後述の回路故障のうち少なくとも1個を検出することにより不良モーター巻線部を特定することができる。
【0056】
例えば、モーター巻線部の導線、またはモーター巻線部の対応する相供給線に断線が生じ得るが、これは特定のモーター巻線部の故障に対応している。
【0057】
例えば、複数のモーター巻線部の一つにおける絶縁不良に起因して、モーター巻線と電気モーター51−2の筐体と間で漏電が生じ得る。
【0058】
例えば、特定のモーター巻線部の巻線間が短絡した結果、対応するモーター巻線部のインダクタンスが低下し、この場合も不良モーター巻線部を特定する。
【0059】
上述の故障のケースの全てにおいて、制御部120は、複数のモーター巻線部を通って流れる各々の実電流の測定および/またはモーター巻線部での実際の電圧低下の比較に基づいて各々の不良モーター巻線部を検出すべく構成されている。
【0060】
更に、例えば、2個のモーター巻線部の導線間の短絡によりモーター巻線部の故障を特定することができる。制御部120はまた、例えばモーター巻線部を通って流れる実電流との比較に基づいて、そのような2個の不良モーター巻線部を検出すべく構成されている。そのような故障のケースにおいて、制御部120は、2個の不良モーター巻線部のうち1個を不良モーター巻線部として特定して、対応するハーフブリッジDH1およびDL1、DH2およびDL2、またはDH3およびDL3を切替える、および/またはパラメータを調整した上で対応するハーフブリッジを動作させるべく構成されている。従って、上述のように、残りのモーター部により電気モーター51−2を引き続き動作させることができる。
【0061】
心臓の心室への皮下挿入に用いる血液ポンプの場合、本明細書に記述した血液ポンプを駆動する電気モーターのモーター巻線部のエラー耐性構成および動作により、血液ポンプの完全停止が患者にもたらすリスクが低下する。更に、新品と交換すべく血液ポンプを患者から取り外すことにより生じるリスクも同様に低下する。
【0062】
最後に、本開示は、血液ポンプを駆動する電気モーターを含み、電気モーターが少なくとも3個のモーター巻線部を含んでいて、各モーター巻線部が、各モーター巻線部端に接続された2本の別々の相供給線を介して電源に個別に接続可能である経皮的挿入および/または血管内適用のための新規の血液ポンプを提案する。
【0063】
更に、本開示は、モーターコントローラが血液ポンプの電気モーター各モーター巻線部の対応する相供給線駆動部を含んでいて、当該相供給線駆動部が対応する2本の相供給線を介して対応するモーター巻線部に接続されている、血液ポンプの電気モーターを駆動および制御するモーターコントローラを提案する。
【0064】
更に、本開示は、血液ポンプおよびモーターコントローラを含む、対応する血液ポンプシステムを提案する。
【0065】
更に、本開示は、血液ポンプのモーター巻線部への電力供給を制御する、対応する制御方法を提案するものであり、本方法は、複数のモーター巻線部のうち1個の故障を検出し、不良モーター巻線部が検出された場合、不良モーター巻線部の対応する相供給線駆動部をスイッチオフし、残りのモーター巻線の相供給線駆動部を制御することにより電気モーターを引き続き動作させる、または代替的に、不良モーター巻線部の駆動パラメータを調整済み駆動パラメータとして全てのモーター巻線部を引き続き動作させるステップを含んでいる。
【0066】
最後に、本開示は、血液ポンプの経皮的挿入および/または血管内適用のための血液ポンプを駆動する電気モーターに少なくとも3個の独立したモーター巻線であって、少なくとも3個のモーター巻線のうち1個の各モーター巻線端に接続された、対応する2本の別々の相供給線を介して対応する電源に個別に接続されているモーター巻線を使用することを提案する。
【国際調査報告】