特表2020-507085(P2020-507085A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-507085(P2020-507085A)
(43)【公表日】2020年3月5日
(54)【発明の名称】放射線窓
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20200207BHJP
【FI】
   G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-559402(P2019-559402)
(86)(22)【出願日】2018年1月17日
(85)【翻訳文提出日】2019年9月12日
(86)【国際出願番号】FI2018050034
(87)【国際公開番号】WO2018134480
(87)【国際公開日】20180726
(31)【優先権主張番号】20175037
(32)【優先日】2017年1月18日
(33)【優先権主張国】FI
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519249033
【氏名又は名称】オックスフォード インストゥルメンツ テクノロジーズ オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】チェクロブ,ニコライ
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA27
2G188BB03
2G188BB15
2G188DD09
2G188DD11
2G188DD17
2G188DD30
2G188DD42
2G188DD43
2G188DD44
(57)【要約】
本発明の一例示的態様によれば、第1の側にマスクを含む第1のシリコンウエハを形成するステップと、第1のシリコンウエハの第1の側に第2のシリコンウエハを貼り付けるステップと、一方のウエハをエッチングして、反対側のシリコンウエハに堆積された窓層の一部を露出させ、窓層を支持するそのマスクによって定義される構造を残すステップと、を含む方法が提供される。
【選択図】2E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側にマスクを含む第1のシリコンウエハを形成するステップと、
前記第1のシリコンウエハの前記第1の側に第2のシリコンウエハを貼り付けるステップと、
前記ウエハのうちの一方をエッチングして、反対側のシリコンウエハに堆積された窓層の一部を露出させ、前記窓層を支持する前記マスクによって定義される構造を残すステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記窓層は、前記シリコンウエハのうちの一方のウエハの貼り付けられていない側に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構造は、前記シリコンウエハのうちの一方のウエハのシリコンから形成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マスクの少なくとも一部を除去するステップを更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記窓層の、前記構造に面していない側に少なくとも1つの表面層を堆積させるステップを更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの表面層はアルミニウム層を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの表面層はグラフェン層を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のシリコンウエハを貼り付ける前記ステップの前に、前記第1のシリコンウエハの前記シリコンの一部が、前記マスクに従って前記第1の側からエッチングされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記窓層と前記第2のシリコンウエハとの間にエッチングストッパ層が設けられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エッチングストッパ層は少なくとも一部が除去される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第3のシリコンウエハが与えられて、前記窓層に貼り付けられ、前記第3のシリコンウエハの上に第2のマスクが設けられ、前記第3のシリコンウエハが前記第2のマスクに従ってエッチングされて、前記窓層の上に第2の構造が形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
支持構造上の連続的な窓層であって、前記支持構造は前記窓層の第1の側にあって第2の側にはない、前記窓層を含み、
前記窓層は前記第2の側において連続的に露出しており、前記窓層は前記第1の側において一部が露出しており、
前記支持構造は、第1のシリコン層及び第2のシリコン層を含み、前記第1のシリコン層と前記第2のシリコン層との間にマスク層を含む、
放射線窓構造。
【請求項13】
前記マスク層は、前記第2のシリコン層の前記第1の側の露出部分を覆う、請求項12に記載の放射線窓構造。
【請求項14】
前記窓層は、前記第2の側に少なくとも1つのアルミニウム表面層が設けられる、請求項12に記載の放射線窓構造。
【請求項15】
前記窓層は、前記第2の側に少なくとも1つのグラフェン表面層が設けられる、請求項12に記載の放射線窓構造。
【請求項16】
前記マスク層は、前記第2のシリコン層の前記第1の側の露出部分から除去されている、請求項12〜15のいずれか一項に記載の放射線窓構造。
【請求項17】
前記窓層は、シリコン窒化物、Al、AlN、SiO、SiC、TiO、TiN、金属炭素窒化物、グラフェン、パイロライトカーボン、及びポリマーのうちの少なくとも1つの材料で構成される、請求項12〜16のいずれか一項に記載の放射線窓構造。
【請求項18】
前記窓層は単一平面内に置かれている、請求項11〜16のいずれか一項に記載の放射線窓構造。
【請求項19】
シリコン酸化物層をその上に含む第1のシリコンウエハを形成するステップと、
前記第1のシリコンウエハに第2のシリコンウエハを貼り付けるステップであって、前記第2のシリコンウエハの上に窓層が堆積され、前記シリコン酸化物層はキャビティを含み、前記窓層は、前記貼り付けるステップの結果として、前記キャビティに挿入される、前記貼り付けるステップと、
前記第1のシリコンウエハを貫通するエッチングを行って前記窓層を露出させ、マスクに従って前記第2のシリコンウエハを貫通するエッチングを行って前記窓層の支持構造を構築するステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記第2のシリコンウエハを貫通する前記エッチングによって前記窓層の一部が露出する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記窓層の一方の側に表面層を堆積させるステップを更に含む、請求項19〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記表面層はアルミニウム層を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記表面層はグラフェン層を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線などの放射線に対して少なくとも部分的に透明な窓構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線測定装置は、入射放射線に対する検出装置の応答を測定することによって動作する。例えば、X線カメラが、X線を受け、その強度を、2次元電荷結合素子(CCD)アレイ上の位置の関数として測定することが可能である。一方では、スペクトロメータが、入射放射線のスペクトル特性を測定するように構成されることが可能であり、例えば、天体物理学的赤方偏移を測定するように、或いは、元素の特徴的発光ピークを識別して試料の元素組成を分析するように構成されることが可能である。
【0003】
軟X線、即ち、例えば、エネルギが約1keVを下回るX線を測定する場合、放射線を検出器まで到達させることには幾つかの課題がある。例えば、空気が軟X線を散乱させ、多くの物質が軟X線を吸収する為、放射線が最も具合よく検出器まで運ばれるのは真空を通してであり、その場合、検出器は真空中に配置されてよい。
【0004】
大気環境中で動作させる場合には、放射線の分析の為に検出器が配置されてよい真空中に軟X線を通す為に、適切な窓が配置されてよい。そのような窓は、理想的には、軟X線に対して透明であり、構造的に耐久性があり、検出器を保護する為に空気に対して不透過性であろう。
【0005】
透明度は、窓の厚さを薄くすることにより、高めることが可能である。例えば、ベリリウム窓が使用されてきており、その場合、窓が薄いほど、入射放射線の、窓を通り抜ける割合が大きくなる。一方、実生活環境では、窓は薄いほど壊れやすい。
【0006】
窓の耐久性を高める為には、窓を機械的格子で支持してよく、或いは、窓を支持構造で挟んでよい。支持構造は、窓材料の一部を覆い、一部を露出させる、クモの巣状の支持構造の形態を取ってよい。支持構造によって窓材料が露出する部分では、窓は入射放射線に対して最大限に透明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。従属請求項において幾つかの特定の実施形態が定義される。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、方法が提供され、方法は、第1の側にマスクを含む第1のシリコンウエハを形成するステップと、第1のシリコンウエハの第1の側に第2のシリコンウエハを貼り付けるステップと、一方のウエハをエッチングして、反対側のシリコンウエハに堆積された窓層の一部を露出させ、窓層を支持するそのマスクによって定義される構造を残すステップと、を含む。
【0010】
第1の態様の様々な実施形態は、以下の箇条書きリストのうちの少なくとも1つの特徴を含んでよい。
・窓層は、一方のシリコンウエハの貼り付けられていない側に堆積される
・構造は、一方のシリコンウエハのシリコンから形成される
・窓層は、第2のシリコンウエハの貼り付けられていない側に堆積される
・構造は、第2のシリコンウエハのシリコンから形成される
・方法は更に、マスクの少なくとも一部を除去するステップを含む
・方法は更に、窓層の、構造に面していない側に少なくとも1つの表面層を堆積させるステップを含む
・少なくとも1つの表面層はアルミニウム層を含む
・少なくとも1つの表面層はグラフェン層を含む
・第2のシリコンウエハを貼り付けるステップの前に、第1のシリコンウエハのシリコンの一部が、マスクに従って第1の側からエッチングされる
・窓層と第2のシリコンウエハとの間にエッチングストッパ層が設けられる
・エッチングストッパ層は少なくとも一部が除去される
・第3のシリコンウエハが与えられて、窓層に貼り付けられ、第3のシリコンウエハの上に第2のマスクが設けられ、第3のシリコンウエハが第2のマスクに従ってエッチングされて、窓層の上に第2の構造が形成される
【0011】
本発明の第2の態様によれば、放射線窓構造が提供され、放射線窓構造は、支持構造上の連続的な窓層であって、支持構造は窓層の第1の側にあって第2の側にはない、窓層を含み、窓層は第2の側において連続的に露出しており、窓層は第1の側において一部が露出している。
【0012】
第2の態様の様々な実施形態は、以下の箇条書きリストのうちの少なくとも1つの特徴を含んでよい。
・窓層は、第2の側に少なくとも1つの表面層が設けられる
・少なくとも1つの表面層はアルミニウム層を含む
・少なくとも1つの表面層はグラフェン層を含む
・支持構造はシリコンで構成される
・窓層は、シリコン窒化物、Al、AlN、SiO、SiC、TiO、TiN、金属炭素窒化物、グラフェン、パイロライトカーボン、及びポリマーのうちの少なくとも1つの材料で構成される
・窓層は、単一平面内に置かれている
【0013】
本発明の第3の態様によれば、方法が提供され、方法は、キャビティを含むシリコン酸化物層をその上に含む第1のシリコンウエハを形成するステップと、第1のシリコンウエハに第2のシリコンウエハを貼り付けるステップであって、第2のシリコンウエハの上に窓層が堆積され、それによって、窓層がキャビティに挿入される、貼り付けるステップと、第1のシリコンウエハを貫通するエッチングを行って窓層を露出させ、マスクに従って第2のシリコンウエハを貫通するエッチングを行って窓層の支持構造を構築するステップと、を含む。
【0014】
第3の態様の様々な実施形態は、以下の箇条書きリストのうちの少なくとも1つの特徴を含んでよい。
・第2のシリコンウエハによって窓層の一部が露出する
・方法は更に、窓層の一方の側に表面層を堆積させるステップを含む
・表面層は、窓層の、支持構造に面していない側に堆積される
・表面層はアルミニウム層を含む
・表面層はグラフェン層を含む
【0015】
本発明の第4の態様によれば、方法が提供され、方法は、シリコン酸化物層が埋め込まれたシリコンウエハを形成するステップと、埋め込まれたシリコン酸化物層をエッチングストッパとして使用して、シリコンウエハの第1の側からエッチングするステップと、シリコンウエハ内の、エッチングによって形成されたキャビティの中に窓層を堆積させるステップと、シリコンウエハの第2の側からエッチングして、窓層の上に支持構造を構築するステップと、を含む。
【0016】
第4の態様の様々な実施形態は、以下の箇条書きリストのうちの少なくとも1つの特徴を含んでよい。
・窓層は、シリコン窒化物、Al、AlN、SiO、TiO、TiN、金属炭素窒化物、グラフェン、パイロライトカーボン、及びポリマーのうちの少なくとも1つの材料で構成される
・方法は更に、シリコンウエハの第2の側に層を堆積させ、その層を、支持構造の形状を定義するマスクにパターニングするステップを含む
・この層はシリコン窒化物層を含む
・方法は更に、窓層を、第1の側が連続的に露出し、第2の側が部分的に露出するように完成させるステップを含む
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の少なくとも幾つかの実施形態で動作可能なシステムの一例を示す図である。
図2A】乃至
図2E】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による製造工程の一例を示す図である。
図3A】乃至
図3E図2A〜2Eの工程の変形体を示す図である。
図4A】乃至
図4E】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による製造工程の一例を示す図である。
図5A】乃至
図5E】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による製造工程の一例を示す図である。
図6】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による方法のフローグラフである。
図7】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による方法のフローグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
放射線窓は、その所望の特性を強化する層が表面に有利に堆積されてよく、そのような特性として、例えば、ガス不透過性、光学特性、又はスペクトル選択性があってよい。そのような層の設置を容易にする為に、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による放射線窓に支持構造が与えられ、この支持構造は、一方の側で放射線窓の構造的ロバストネスを強化し、他方の側でそれらの層を強化する。放射線窓の、それらの層の側は、連続的且つ高品質の層の作成を容易にするために、ロバストネスを強化する支持構造がないままにされてよい。そのような層の例として、アルミニウム、グラフェン、Al、SiO、SiC、窒化膜(AlN等)、シリコン窒化物、BN、TiN、金属炭素窒化物(TiAlCN等)、パイロライトカーボン、ポリマー(ポリイミド等)などがある。
【0019】
図1は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態で動作可能なシステムの一例を示す。図示されたシステムはX線蛍光に関するが、本発明はこれに限定されず、むしろ、本発明に従って構築される窓は、より広い分野で応用されてもよい。
【0020】
図1は分析装置110を示しており、これはX線検出器120を含む。X線検出器120は、この例では、入射X線のスペクトル特性を測定するように構成されて、例えば、特徴的発光に基づく元素組成分析を可能にする。
【0021】
図1の構成の運用時には、一次X線源140からの一次X線102が試料130に照射され、これによって試料130に含まれる物質が刺激されて二次X線放射線103が蛍光放射され、そのスペクトル特性の少なくとも一部がX線検出器120において測定される。
【0022】
X線検出器120は窓領域115を含み、窓領域115は、X線をX線検出器120内に通すように構成されている。図1の下部に窓領域115の拡大図115Eが示されており、そこでは、分析装置110の外側ハウジングにあるギャップが示されている。ギャップ内に、窓層117が配置された開口部が設けられており、これは、空気が分析装置110の外側から分析装置110の内側に流入するのを防ぐとともに、(例えば軟X線等の)X線が分析装置110に入ることを可能にしており、それによって、これらのX線がX線検出器120において分析されることが可能である。窓層117は、例えば、シリコン窒化物で構成されてよい。窓層117の材料の別の例は、Al、AlN、SiO、SiC、TiO、シリコン窒化物、TiN、金属炭素窒化物(TiAlCN等)、グラフェン、パイロライトカーボン、ポリマー(ポリイミド等)などで構成されてよく、或いはこれらを含んでよい。幾つかの実施形態では、窓領域115は、X線検出器120に配置される代わりに分析装置110のハウジングに配置されてよい。
【0023】
窓層117は、一方の側が支持構造119によって支持されている。支持構造119は、図ではX線検出器120の内側に面する、窓層117の内側に示されているが、実施形態によっては、外側に面する側にあってもよい。支持構造119は、幾つかの実施形態では、一方の側にあって他方の側になくてよく、言い換えると、支持構造119は、窓層117の一方の側に限定されなくてよい。例えば、支持構造119はシリコンで構成されてよい。
【0024】
窓層117及び支持構造119は、図1ではわずかに離れていて、間に隙間があるように示されているが、これは図解の明確さの為である。本発明の実際の実施形態では、窓層117は支持構造119に貼り付けられてよく、例えば、支持構造119が構築されているウエハに付着することによって貼り付けられてよい。支持構造119は、例えば、エッチングによって構築されてよい。
【0025】
支持構造119は、その上で窓層117を支持することに適する形態及び形状を取ってよく、これは大気圧に耐える為であり、例えば、X線検出器120の内側が低圧、即ち、実際には真空又は近真空に保たれている場合に大気圧に耐える為である。例えば、支持構造119は、窓層117を覆い隠しすぎることなく窓層117を支持する為に、正方形又は長方形のレイアウトであってよく、或いはクモの巣状であってよい。
【0026】
概して、支持構造119は、窓層117に貼り付けられて、窓層117の一部を覆い隠し、一部を露出させる。詳細には、窓層117のうちの支持構造119に接触している部分が支持構造119によって覆い隠される。即ち、それらの場所では、窓層117を通り抜けるX線の一部が、支持構造119によって、X線検出器120への到達を阻止される。窓層117のうちの支持構造119に接触していない部分では、窓層117を透過するX線がX線検出器120までまっすぐ進むことが可能である。窓層117のうちの、支持構造119に接触していて支持構造119に覆い隠されている部分が広いほど、窓層117に対する支持が強力であり、窓層117を通って入ってくるX線に対する支持構造119の影響が大きい。従って、支持構造119の強度は、窓層117の透過率と、窓層117及び支持構造119で構成される放射線窓構造の強度とのトレードオフであると見なされてよい。概して、窓層117は、支持構造が第2の側にあれば、第1の側が完全に露出し、第2の側が部分的に露出することが可能である。即ち、窓層117は、完全に露出することによって、或いは連続的に露出することによって、連続的に露出している側では窓層117の有効利用される領域が支持構造によって覆い隠されない形で露出する。
【0027】
窓層117は、本質的に連続的であってよい。即ち、窓層117は、例えば、支持構造に応じて遮られることがない。連続層は、単一平面内に置かれているという意味で平坦であってよい。
【0028】
窓層117は、ナノメートル領域の薄さであってよく、一方、サイズにおいては、数ミリメートル又は数センチメートルのオーダーの開口部を覆って延びてよい。
【0029】
窓層117は、例えば、支持構造119に面していない側に、少なくとも1つの補助層を有してよい。補助層の例として、アルミニウム薄層及びグラフェン層がある。アルミニウム層は、窓層117からの可視光の入射を少なくとも部分的に阻止することが可能である。一方、グラフェンは、(例えば、シリコン窒化物で作られた場合の)窓層117の、気体分子(空気等)が窓層117を透過するのを阻止する能力を高めることが可能である。窓層117の一方の側に支持構造がない場合には、そのような補助層の貼り付けがより容易になり、結果として得られる層の欠陥がより少なくなる。これにより、各層がそれぞれの目的においてよりよく機能するという有利な技術的効果が得られる。補助層は、表面層と呼ばれることもある。
【0030】
図2A〜2Eは、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による製造工程の一例を示す。工程は図2Aの状態から始まり、そこではシリコンウエハ210が形成され、これは、少なくとも第1のシリコン酸化物層214と、任意選択で、第2のシリコン酸化物層212とを含む。
【0031】
図2Bに示された状態まで工程が進むと、支持構造の形状を定義するマスクの裏に、第1のシリコン酸化物層214が、その一部を除去されることによりパターニングされて残っている。このパターンは、第1のシリコン酸化物層214を完全に貫通しなくてもよい。幾つかの実施形態では、より深い構造を生成する為に、シリコンウエハは酸化前にもパターニングされる。
【0032】
図2Cに示された状態まで工程が進むと、マスク層214の上に第2のシリコンウエハ220が貼り付けられている。第2のシリコンウエハ220の上に窓層222が堆積され、窓層222は、例えば、シリコン窒化物を含んでよい。第1のシリコンウエハ210の反対側に、任意選択のシリコン窒化物層216が堆積されてよい。第2のシリコン酸化物層212が存在する場合、これは、図2Cに示された状態に達する前に除去されてよい。
【0033】
この工程の変形体として、第2のシリコンウエハ220に酸化物層が設けられてもよく、この酸化物層がパターニングされてマスクが形成される。その後、第1のシリコンウエハ210が第2のシリコンウエハ220に貼り付けられて、マスクが覆われてよい。その後、第1のシリコンウエハ210は、後述のようにエッチングされてよい。第2のシリコンウエハ220上にマスクを設けることには、貼り付け誤差がエッチングに影響しないという利点がある。
【0034】
図2Dに示された状態まで工程が進むと、第1のシリコンウエハ210がエッチングされてマスク214が露出しており、一部では、マスク214でマスクされた第2のシリコンウエハ220が露出している。
【0035】
図2Eに示された状態まで工程が進むと、エッチングが続行されて、窓層222の一部が、第1のシリコンウエハ210の側で露出する。この工程では、第2のシリコンウエハ220から支持構造が構築され、これは窓層222を支持する。任意選択で、その後の段階では、マスク214から露出したシリコン酸化物が除去されてよい。
【0036】
従って、全体として、図2A〜2Eの工程では、第1のシリコンウエハ210にマスク214が与えられ、第2のシリコンウエハ220が第1のシリコンウエハ210の第1の側に貼り付けられて、それらのウエハの間にマスク214が残り、その後、第1のシリコンウエハ210及び第2のシリコンウエハ220が、第1の側と異なる第2の側からエッチングされて、窓層222の一部が露出する。それによって、窓層222の第2の側に、第2のシリコンウエハ220から支持構造が形成される。
【0037】
上述の工程の一修正形態として、第2のシリコンウエハ220と窓層222との間に犠牲的エッチングストッパ層、例えば、1マイクロメートルのPECVD SiO又は多層構造が設けられてよく、これは、損傷しやすい場合がある窓層222を、工程のシリコンエッチング段階での化学的且つ/又は機械的ストレスの間に保護する為である。
【0038】
図3A〜3Eは、図2A〜2Eの工程の変形体を示す。同様の番号付けは同様の工程を指す。図3A図2Aに対応する。
【0039】
図3B図2Bの状態に対応し、異なるのは、後で他方の側からエッチングしやすくするために、マスク214を使用して、第1のシリコンウエハ210の一部がエッチングされていることである。結果として得られるキャビティが、図3Bに参照符号310で示されている。図2Cに示された状態まで進んだ場合と同様に、図3Cに示された状態まで進むと、マスク層214の上に第2のシリコンウエハ220が貼り付けられている。第2のシリコンウエハ220の上に窓層222が堆積され、窓層222は、例えば、シリコン窒化物を含んでよい。第1のシリコンウエハ210の反対側に、任意選択のシリコン窒化物層216が堆積されてよい。第2のシリコン酸化物層212が存在する場合、これは、図2Cに示された状態に達する前に除去されてよい。
【0040】
図3Dの段階では、第1のシリコンウエハ210の多量のシリコンが残っていて、マスク214の一部を覆っている。これは、キャビティ310が先に形成されたことによる。残っているシリコンは、図3Dに参照符号320で示されている。このシリコンは、工程の後続の段階で除去されてよい。
【0041】
従って、全体として、図3A〜3Eの工程では、第1のシリコンウエハ210が第1の側からエッチングされ、第2のシリコンウエハ220が第1のシリコンウエハ210の第1の側に貼り付けられて、それらのウエハの間にマスク214が残り、その後、第1のシリコンウエハ210及び第2のシリコンウエハ220が、第1の側と異なる第2の側からエッチングされて、窓層222の一部が露出する。それによって、窓層222の第2の側に、第2のシリコンウエハ220から支持構造が形成される。
【0042】
図2A〜2E又は図3A〜3Eの工程の別の修正形態として、窓層222の他方の側に第2の支持構造が構築されてよい。第2の支持構造があると、窓層222に更なる層を堆積させることがより困難になる可能性があるが、窓層222の両側に支持構造があることにより、結果として得られる窓構造が格段に強固になる。そのような構造は、図2A〜2E又は図3A〜3Eに関連して上述されたように構築されてよく、窓層222の他方の側に更なる第3のシリコンウエハが貼り付けられ、第3のシリコンウエハの上にシリコン酸化物層が与えられ、これがパターニングされて第2のマスクが生成され、その後のエッチングにより、第2のマスクによる第2の支持構造が形成され、その上側からも窓層222の一部が露出する。他方の支持構造は、図2A〜2E又は図3A〜3Eに関連して上述されたように生成されてよい。
【0043】
図4A〜4Eは、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による製造工程の一例を示す。図4A及び4Bでは、第1のシリコンウエハ410に、第1のシリコン酸化物層414と、任意選択で第2のシリコン酸化物層412とが取り付けられている。第1のシリコン酸化物層は、その中にキャビティが形成されるように働く。第2のシリコンウエハ420の上に窓層422が堆積され、窓層422は、例えば、シリコン窒化物を含んでよい。
【0044】
図4Cの状態まで進むと、第1のシリコンウエハ410に第2のシリコンウエハ420が貼り付けられている。この貼り付けは、例えば、酸化物だけをベースとしてよい。この貼り付けに伴って、窓層422が第1のシリコン酸化物層414のキャビティに挿入される。窓層422とキャビティの底との間には隙間が残っていてよい。更に、第2のシリコンウエハ420の上に上部シリコン酸化物層424が形成される。
【0045】
図4Dの状態まで進むと、上部シリコン酸化物層423がパターニングされて、その上に支持構造の形状が与えられ、上部シリコン酸化物層423のそれ以外の部分はマスクを形成している。上側からエッチングが行われて、窓層422の上に支持構造が構築され、その形状はマスク424によって定義される。この工程では、窓層422の一部が上側に露出しており、窓層422の非露出部分は、支持構造と接触している。更に、下側からエッチングが行われて、第1のシリコン酸化物層414が露出する。
【0046】
最後に、第1のシリコン酸化物層414が除去されて、窓層422が下方に露出し、図4Eに示された結果が得られる。結果として、窓層422は、下側が連続的に露出しており、上側が支持構造によって支持されており、窓層422の下側に少なくとも1つの層を貼り付けることが容易になっている。適切な層の例として、上述のように、アルミニウム及びグラフェンがある。
【0047】
図5A〜5Eは、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による製造工程の一例を示す。
【0048】
まず、図5Aに示された状態では、シリコン酸化物層516が埋め込まれたシリコンウエハ510が形成されており、更に、図示されるようにシリコン酸化物層512及び514が形成されている。これは、例えば、2つのウエハを互いに貼り合わせて、これらのうちの一方のウエハにあるシリコン酸化物層がそれらの間に残るようにすることによって形成可能である。更に、シリコンウエハ510が下側からエッチングされており、埋め込まれたシリコン酸化物層516がエッチングストッパとして使用されている。
【0049】
図5Bに示された状態まで工程が進むと、埋め込まれたシリコン酸化物層516がエッチングされ、その箇所が露出する。更に、シリコン酸化物層512及び514が除去される。
【0050】
図5Cに示された状態まで工程が進むと、窓層/マスク層(例えば、シリコン窒化物)が両側に堆積される。そのような層は、層520及び522として示されている。
【0051】
図5Dに示された状態まで工程が進むと、上部マスク層520が支持構造(例えば、支持格子やクモの巣構造等)の形状にパターニングされる。
【0052】
図5Eに示された状態まで工程が進むと、シリコンウエハ510が上側からエッチングされて、窓層522の一部が上側に露出する。このエッチングの結果として、シリコンウエハ510から支持構造が構築される。マスク層520は、その支持構造の上に残ってよい。
【0053】
窓層522が下側に連続的に露出している為、その上に、上述のように、1つ以上の補助層が堆積されてよい。
【0054】
図6は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による方法のフローグラフである。
【0055】
段階610は、第1の側にマスクを含む第1のシリコンウエハを形成するステップを含む。段階620は、第1のシリコンウエハの第1の側に第2のシリコンウエハを貼り付けるステップを含む。最後に、段階630は、第1のシリコンウエハの第2の側からエッチングして、第2のシリコンウエハに堆積されたシリコン窒化物層の一部を露出させ、シリコン窒化物層を支持するマスクによって定義される構造を残すステップを含む。シリコン窒化物層は、第2のシリコンウエハの貼り付けられていない側、即ち、第1のシリコンウエハに面していない側に堆積される。
【0056】
図7は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による方法のフローグラフである。
【0057】
段階710は、キャビティを含むシリコン酸化物層をその上に含む第1のシリコンウエハを形成するステップを含む。段階720は、第1のシリコンウエハに第2のシリコンウエハを貼り付けるステップであって、第2のシリコンウエハの上にシリコン窒化物層が堆積され、シリコン窒化物層は、それによってキャビティに挿入される、貼り付けるステップを含む。最後に、段階730は、第1のシリコンウエハを貫通するエッチングを行ってシリコン窒化物層を露出させ、マスクに従って第2のシリコンウエハを貫通するエッチングを行ってシリコン窒化物層の支持構造を構築するステップを含む。
【0058】
当然のことながら、開示された本発明の実施形態は、本明細書で開示された特定の構造、処理手順、又は材料に限定されず、当業者であれば理解されるであろう、その等価物まで拡張される。更に、当然のことながら、本明細書で使用された術語は、特定の実施形態の説明の為にのみ使用されており、限定的であることを意図されていない。
【0059】
本明細書を通しての一実施形態(one embodiment)又は一実施形態(an embodiment)への参照は、その実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態では(in one embodiment)」又は「一実施形態では(in an embodiment)」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。例えば、約(about)又は大体(substantially)等の語句を使用して数値が参照された場合は、厳密な数値も開示されている。
【0060】
本明細書で使用されている複数のアイテム、構造要素、組成要素、及び/又は材料は、便宜上、一般的なリストに存在してよい。しかしながら、これらのリストは、リストの各要素が別個且つ固有の要素として個別に識別されるかのように解釈されるべきである。従って、そのようなリストの個々の要素は、反対の意味で示されているのでない限り、それらが一般的なグループに存在することに基づいて、同じリストの他の任意の要素の事実上の等価物としてのみ解釈されるべきである。更に、本明細書では、本発明の様々な実施形態及び実施例は、それらの様々な構成要素に関しては代替形態と併せて参照されてよい。当然のことながら、そのような実施形態、実施例、及び代替形態は、互いの事実上の等価物として解釈されるべきではなく、本発明の別個且つ独立の表現と見なされるべきである。
【0061】
更に、記載の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされてよい。ここまでの説明では、本発明の実施形態が十分理解されるように、長さ、幅、形状等の例など、様々な具体的詳細を示されている。しかしながら、当業者であれば理解されるように、本発明は、これらの具体的詳細のうちの1つ以上がなくても、或いは、他の方法、構成要素、材料等によっても実施可能である。他の例では、よく知られている構造、材料、又は動作が詳しく図示又は説明されていないが、これは、本発明の態様が曖昧にならないようにする為である。
【0062】
上述の各実施例は、本発明の原理を1つ以上の特定用途において例示したものであるが、当業者であれば明らかなように、発明的能力を行使することなく、且つ、本発明の原理及び概念から逸脱しない限り、実施態様の形式、用法、及び細部の様々な変更が行われてよい。従って、本発明は、後述の特許請求項によって限定される場合を除いて限定されないものとする。
【0063】
本文書では「含む(to comprise)」及び「含む(to include)」という動詞は、記載されていない特徴を排除することも、記載されていない特徴も存在することを必要とすることもない開放的限定(open limitations)として使用されている。従属請求項に記載された特徴は、特に別段に明記されない限りは、相互に自由に組み合わされてよい。更に、当然のことながら、「a」又は「an」、即ち、単数形の使用は、本文書全体を通して複数性を排除しない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、例えば、軟X線測定装置などの測定装置において産業的に利用される。
【0065】
頭字語リスト
CCD 電荷結合素子
【符号の説明】
【0066】
110 分析装置
120 X線検出器
115 窓領域
115E 窓領域(拡大図)
117 窓層
119 支持構造
130 試料
140 一次X線源
102、103 一次X線、二次X線
210 第1のシリコンウエハ
212 第2のシリコン酸化物層
214 第1のシリコン酸化物層
220 第2のシリコンウエハ
222 窓層
216 シリコン窒化物層
310 キャビティ
320 残っているシリコン
410 第1のシリコンウエハ
420 第2のシリコンウエハ
422 窓層
412 第2のシリコン酸化物層
414 第1のシリコン酸化物層
424 上部シリコン酸化物層
510 シリコンウエハ
512、514 シリコン酸化物層(SiO
516 埋め込まれたシリコン酸化物層
520 マスク層
522 窓層
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
【国際調査報告】