特表2020-508464(P2020-508464A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-508464(P2020-508464A)
(43)【公表日】2020年3月19日
(54)【発明の名称】海中ケーブルのモニタリング
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20200101AFI20200225BHJP
【FI】
   G01R31/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-546372(P2019-546372)
(86)(22)【出願日】2018年2月9日
(85)【翻訳文提出日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】GB2018050366
(87)【国際公開番号】WO2018154275
(87)【国際公開日】20180830
(31)【優先権主張番号】1703051.1
(32)【優先日】2017年2月24日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】512297505
【氏名又は名称】オプタセンス・ホールデイングス・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴッドフリー,アレステア
【テーマコード(参考)】
2G033
【Fターム(参考)】
2G033AA02
2G033AB01
2G033AC08
2G033AD18
2G033AD30
2G033AF04
2G033AG13
2G033AG14
(57)【要約】
本出願は、海中ケーブル(100)、例えば海中電力ケーブルまたは遠隔通信ケーブルをモニタする方法および装置に関し、特にこのようなケーブルのための埋設状態の決定に関する。方法は、分布型光ファイバセンシングを実施するためにインテロゲータユニット(108)を使用してセンシング光ファイバ(107)にインテロゲートすることを含む。センシング光ファイバ(107)は海中ケーブル(100)の経路に沿って配備され、いくつかの場合では、海中ケーブルの一部を形成することができる。センシングファイバ(107)の少なくとも1つのセンシング部分からのそれぞれの測定信号の周波数スペクトルは、水面波(109)による、埋設状態を決定するための圧力変動(ΔP(t))に対応している。任意の埋設されていない区間(106)で検出される圧力変動の高周波成分は、埋設された区間(105)で減衰する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中ケーブルをモニタする方法であって、
海中ケーブルの経路に沿って配備されるセンシング光ファイバ上で、分布型光ファイバセンシングを実施して、センシング光ファイバの複数の長手方向のセンシング部分の各々からの測定信号を提供することと、
少なくとも1つのセンシング部分に対して、水面波による圧力変動に対応するそれぞれの測定信号の周波数スペクトルを解析して、そのセンシング部分に関する埋設状態を決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
測定信号の周波数スペクトルを解析することが、異なる周波数における測定信号の相対的な減衰のインディケーションを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
測定信号の周波数スペクトルを解析することが、周波数スペクトルを、知られている埋設状態に対する少なくとも1つの基準周波数スペクトルに対して比較することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
測定信号の周波数スペクトルを解析することが、1つのセンシング部分に関する周波数スペクトルを、異なるセンシング部分に関する周波数スペクトルに対して比較して、2つのセンシング部分に関する相対的な埋設状態を決定することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
測定信号の周波数スペクトルを解析することが、第1の周波数におけるまたは第1の周波数帯域内の測定信号のエネルギーまたは振幅と、第2の異なる周波数または周波数帯域における測定信号のエネルギーまたは振幅とを比較することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
測定信号の周波数スペクトルを解析することが、第1の周波数または第1の周波数帯域における信号エネルギーと、第2の周波数または第2の周波数帯域における信号エネルギーとの間の比率に対応するスペクトルパラメータに対する値を決定することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記スペクトルパラメータを、知られている埋設状態に対する少なくとも1つの基準値に対して比較することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
異なる埋設状態に対する複数の基準値のうちのどの基準値に、前記スペクトルパラメータが最も緊密に対応するかを決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スペクトルパラメータを、別の異なるセンシング部分に関する測定信号に対する対応するスペクトルパラメータに対して比較すること、および2つのセンシング部分に関する相対的な埋設状態を決定することを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の周波数または第1の周波数帯域が、低周波数帯域内である周波数または周波数の帯域であり、第2の周波数または第2の周波数帯域が、高周波数帯域内である周波数または周波数の範囲である、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の周波数が0.1Hz以下である、請求項5から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第2の周波数が0.1Hz以上である、請求項5から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
海中ケーブルが海底電力ケーブルである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
センシング光ファイバが海中ケーブルの一部を形成する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
海中ケーブルをモニタするための装置であって、
海中ケーブルの経路に沿って配備されたセンシング光ファイバにインテロゲートして、センシング光ファイバの複数の長手方向のセンシング部分の各々からの測定信号を提供する、分布型光ファイバインテロゲータユニットと、
少なくとも1つのセンシング部分に対して、水面波による圧力変動に対応するそれぞれの測定信号の周波数スペクトルを解析して、そのセンシング部分に関する埋設状態を決定するように構成された解析器と
を備える、装置。
【請求項16】
解析器が、異なる周波数における測定信号の相対的な減衰のインディケーションを決定するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
解析器が、周波数スペクトルを、知られている埋設状態に対する少なくとも1つの基準周波数スペクトルに対して比較するように構成される、請求項15または請求項16に記載の装置。
【請求項18】
解析器が、1つのセンシング部分に関する周波数スペクトルを、異なるセンシング部分に関する周波数スペクトルに対して比較して、2つのセンシング部分に関する相対的な埋設状態を決定するように構成される、請求項15から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
解析器が、第1の周波数におけるまたは第1の周波数帯域内の測定信号のエネルギーまたは振幅と、第2の異なる周波数または周波数帯域における測定信号のエネルギーまたは振幅とを比較するように構成される、請求項15から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
解析器が、第1の周波数または第1の周波数帯域における信号エネルギーと、第2の周波数または第2の周波数帯域における信号エネルギーとの間の比率に対応するスペクトルパラメータに対する値を決定するように構成される、請求項15から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
解析器が、前記スペクトルパラメータを、知られている埋設状態に対する少なくとも1つの基準値に対して比較するように構成される、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
解析器が、異なる埋設状態に対する複数の基準値のうちのどの基準値に、前記スペクトルパラメータが最も緊密に対応するかを決定するように構成される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
解析器が、前記スペクトルパラメータを、別の異なるセンシング部分に関する測定信号に対する対応するスペクトルパラメータに対して比較するように構成され、2つのセンシング部分に関する相対的な埋設状態を決定するように構成される、請求項20から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記分布型光ファイバインテロゲータユニットに接続されたセンシング光ファイバを備える、請求項15から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記センシングファイバが海中ケーブルの一部に結合されるか、あるいは海中ケーブルの一部を形成する、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
海中ケーブルが海底電力ケーブルである、請求項25に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、海中ケーブル、例えば電力ケーブルまたは遠隔通信ケーブルをモニタする、詳細には海洋底に埋設して配備されるこのようなケーブルの状態をモニタするための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力伝送および/または通信伝送のために海中ケーブルまたは海底ケーブルが使用される様々な用途が存在している。
【0003】
特定の用途の1つは電力伝送のためのものである。長距離にわたる電力伝送の場合、通常、電力損失を小さくするために、適切な送電線上で高い電圧が使用される。陸上の郊外地域では、電力の伝送には、通常、架空送電線を使用した高電圧AC配電が使用されている。地上から十分な高さで互いに十分に間隔を隔てて様々な送電線が垂下されて、電気絶縁を提供する、すなわち周囲空気が絶縁体として作用する。
【0004】
しかしながらこのよう架空送電線は、広大な水域を横切る電力の伝送には適切ではなく、したがって海中ケーブル(海底ケーブルとも呼ばれる)が使用される。海中ケーブルの使用は、オフショア発電、例えばオフショア風力発電所などの人気の高まりにつれて、ますます興味深くなっている。
【0005】
海中で使用するための電力ケーブルは、通常、少なくとも1つの導体、例えば個々の交流位相のための導体を備えており、これは、必要な電圧のために適しており、ケーブルのための適切な絶縁および外装/保護によって取り囲まれている。使用中、電力ケーブルの導体は、例えば数百キロボルトのオーダーの極めて高い電圧を運ぶことができる。したがって良好な品質の絶縁が要求され、また、ケーブルは実質的に欠陥がないことが重要である。
【0006】
海底電力ケーブルは、いくつかの場合では、使用中に損傷し、あるいは歪むことがある。ケーブルが損傷し、あるいは激しく歪むと、これは絶縁を劣化させ、および/または導体および絶縁の位置決めを歪ませることになり、したがって動作電圧がケーブルに印加された状態での使用中に絶縁不良が生じ得る。これは、ケーブルの導体間、あるいは導体と環境すなわち地球との間の高電圧放電の原因になり、重大な故障電流、例えばアークをもたらすことになり得る。このような故障は、ケーブルの関連する部分の壊滅的な故障の原因になり、潜在的にケーブルの爆発的な故障をもたらすことになり得る。
【0007】
使用中に海底ケーブルが損傷し、あるいは歪むことになる様々な様式が存在している。海底でのケーブルの動きは、外側の層の摩耗あるいはすり減りによるケーブルの損傷の原因になり、あるいは海底の特定の特徴の周囲におけるケーブルの著しい変形をもたらし、導体の内部配置を乱すことになり得る。また、ケーブルは、船舶/ボートアンカーまたはトロール船の網などとの相互作用によっても損傷し得る。例えば内部の流れによるケーブルの周囲の海水の流れは、渦誘導振動(Vortex induced vibration:VIV)として知られているファイバの振動を誘導し得る。VIVが長く続くと、電力ケーブルの疲労をもたらし/電力ケーブルの疲労を加速し、したがって故障を加速し得る。
【0008】
これらの問題を回避するために、海中ケーブルは、通常、海底すなわち海洋底の沈殿物中に埋設し配備され得る。これはケーブルの動きを防止し、したがって重大な剥離またはねじれから保護し、また、アンカー/トロール船の網などとの相互作用からケーブルを隔離することになる。
【0009】
海底オペレーションの困難性のため、ケーブルは、通常、比較的浅い深さまで埋設され得る。配備後、経時的に、海底における様々な流れによって海底の物質が移動し、そのために、海中ケーブルの一部が露出されることになり得、これは自由スパンニング(free−spanning)と呼ばれることもある。露出したケーブルの部分すなわち自由スパンニングには、上で考察した損傷および故障の危険が必然的に伴う。このような壊滅的な故障は、ケーブルの損傷した区間が修理され得るまで電力の伝送を停止させなければならないことになる。海中ケーブルの損傷した区間を見出し、そのケーブルを修理することは、複雑で、費用の掛かる仕事であり、また、通常、ケーブル自体も極めて高価な構成要素である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】英国特許出願公開第2442745号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/137022号
【特許文献3】国際公開第2012/137021号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって海中ケーブルの埋設状態をモニタして、例えばいつケーブルの一部が露出したか、すなわちもはや海底中に埋設されていないことを決定し、それにより損傷が生じる前に補修アクションを取ることができることが望ましい。
【0012】
他の海中ケーブル、例えば広大な水域に及ぶ遠隔通信ケーブルにも同様の問題が存在している。
【0013】
したがって本発明の実施形態は、海中電力ケーブルをモニタするための方法および装置に関している。
【0014】
本発明によれば、海中ケーブルをモニタする方法であって、海中ケーブルの経路に沿って配備されるセンシング光ファイバ上で、分布型光ファイバセンシングを実施して、センシング光ファイバの複数の長手方向のセンシング部分の各々からの測定信号を提供することと、少なくとも1つのセンシング部分に対して、水面波による圧力変動に対応するそれぞれの測定信号の周波数スペクトルを解析して、そのセンシング部分に関する埋設状態を決定することとを含む、方法が提供される。
【0015】
測定信号の周波数スペクトルを解析することは、異なる周波数における測定信号の相対的な減衰のインディケーションを決定することを含むことができる。測定信号の周波数スペクトルは、その周波数スペクトルを、知られている埋設状態に対する少なくとも1つの基準周波数スペクトルに対して比較されることができ、および/または1つのセンシング部分に関する周波数スペクトルは、2つの検知部分に関する相対埋没状態を決定するために、異なるセンシング部分に関する周波数スペクトルに対して比較されることができる。いくつかの場合では、第1の周波数におけるまたは第1の周波数帯域内の測定信号のエネルギーまたは振幅が、第2の異なる周波数または周波数帯域における測定信号のエネルギーまたは振幅に対して比較される。
【0016】
方法は、第1の周波数または第1の周波数帯域における信号エネルギーと、第2の周波数または第2の周波数帯域における信号エネルギーとの間の比率に対応するスペクトルパラメータに対する値を決定することができる。スペクトルパラメータは、知られている埋設状態に対する少なくとも1つの基準値に対して比較され得る。方法は、異なる埋設状態に対する複数の基準値のうちのどの基準値に、前記スペクトルパラメータが最も緊密に対応するかを決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、スペクトルパラメータは、2つのセンシング部分に関する相対的な埋設状態を決定するために、別の異なるセンシング部分に関する測定信号に対する対応するスペクトルパラメータに対して比較され得る。
【0017】
第1の周波数または第1の周波数帯域は、低周波数帯域内である周波数または周波数の帯域であってもよい。第2の周波数または第2の周波数帯域は、高周波数帯域内である周波数または周波数の範囲であってもよい。第1の周波数は0.1Hz以下であってもよい。第2の周波数は0.1Hz以上であってもよい。海中ケーブルは海底電力ケーブルであってもよい。センシング光ファイバは、いくつかの実施態様では、海中ケーブルの一部を形成することができる。
【0018】
別の態様では、海中ケーブルをモニタするための装置であって、センシング光ファイバの複数の長手方向のセンシング部分の各々からの測定信号を提供するために海中ケーブルの経路に沿って配備されたセンシング光ファイバにインテロゲート(interrogate)するための分布型光ファイバインテロゲータユニットと、少なくとも1つのセンシング部分に対して、そのセンシング部分に関する埋設状態を決定するために、水面波による圧力変動に対応するそれぞれの測定信号の周波数スペクトルを解析するように構成された解析器とを備える、装置が提供される。
【0019】
解析器は、上で説明した方法の任意の変形形態を実装するように構成され得る。
【0020】
さらなる理解を促進するために、以下、様々な実施形態について、添付の図面を参照してほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】海底電力ケーブルをモニタする実施形態を示す図である。
図2】レイリー後方散乱分布型光ファイバセンサを示す図である。
図3】光ファイバを備えた電力ケーブルの一例を示す図である。
図4a】海中センシングファイバを使用して獲得された例示的データを示すグラフである。
図4b】海中センシングファイバを使用して獲得された例示的データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態は、海中ケーブルをモニタして海中ケーブルの埋設状態をモニタするための方法および装置に関している。実施形態は、センシングファイバに作用する動的歪みをモニタし、動的歪みの周波数スペクトルを解析するために、海中ケーブルの経路に沿って配備されたセンシング光ファイバを備えた光ファイバ分布型センシングを使用して、海中ケーブルの埋設状態を決定することに関している。
【0023】
図1は、実施形態による海中ケーブルのモニタリングを示す。言及したように、海中ケーブルのための1つの特定の応用分野は、例えば図1に示されているように、ウインドファームなどのオフショア発電現場から水域を横切って電力を運ぶ用途である。図2は、この例ではオフショアプラットフォーム上に配置され得る第1の発電所101が、複数の風力タービン102などの局所的な電力源に接続され得ることを示している。第1の発電所101は、風力タービンから電力を受け取ることができ、また、いくつかの場合では、オンショア発電所103へ電力ケーブル100を介して伝送するために電圧を高電圧に変換することができる。電力ケーブル100は、海底に沿って海岸まで走るように配備され得る。この風力発電所例などの例では、第1の発電所201は、海岸から数キロメートルまたは数十キロメートルであってもよい。
【0024】
上で言及したように、電力ケーブル100は、海底すなわち海洋底104に降下することができ、また、海洋底の沈殿物中に埋設されるように配備され得る。電力ケーブル100を埋設させることが、使用中における電力ケーブルの移動を防止し、したがってケーブルの変形あるいはすり減り/摩耗損傷の危険を回避し、また、電力ケーブル100の寿命に影響を及ぼし得る渦誘導振動(VIV)も防止する。
【0025】
また、電力ケーブル100を埋設させることは、アンカー、トロール船の網などによる電力ケーブル100に対する望ましくない干渉の危険も回避する。図1は、電力ケーブルの第1の区間105が海底104中に埋設されていることを示している。
【0026】
しかしながら配備の後に、海底における様々な流れによって沈殿物が移動し、そのために電力ケーブル100の少なくとも一部が露出することになり得る。図1は、電力ケーブル100の露出した区間106を示している。海中ケーブルの自由に浮動する部分は、自由スパンニングである、と言われ、VIV、すり減り損傷、変形の危険、およびアンカー/漁網などとの相互作用の危険にさらされ得る。
【0027】
したがって電力ケーブル100の埋設状態をモニタすることができ、また、埋設された電力ケーブル100の何らかの部分が露出したかどうかを決定することができることが望ましい。
【0028】
図1の実施形態では、電力ケーブルの埋設状態のモニタリングを提供するために、光ファイバ107が電力ケーブル100の少なくとも一部の長さに沿って配備されている。光ファイバ107は、動的歪みに対する分布型光ファイバセンシングを提供するために、一方の端部がインテロゲータユニット108に接続されている。図1は、センシングファイバと呼ばれ得る光ファイバ107は、陸上のインテロゲータユニットに接続されていることを示しており、また、明確にするためにセンシングファイバのほんの一部のみを示している。しかしながらインテロゲータユニット108は、他の実施形態では、オフショアプラットフォーム上に配備されるか、または何らかの浮動する構造体上に支持されるか、あるいは何らかの防水ハウジング中で水中に沈められ得ることは認識されよう。センシングファイバは、海底104に沿って延在し、また、この例では電力ケーブルの少なくとも区間105まで延在している電力ケーブルの経路に沿って走るように配備される。いくつかの実施形態では、センシングファイバ107は電力ケーブルの外側に結合され得るが、いくつかの実施形態では、センシングファイバ107は、センシング光ファイバが電力ケーブルに作用する歪みに対してセンシティブである方法で、電力ケーブル100の一部として形成される。
【0029】
以下でより詳細に説明されるように、しばしば分布型音響センシング(DAS)と呼ばれる、動的歪みのための分布型光ファイバセンシングは、光ファイバ107がセンシングファイバとして配備され、また、インテロゲータユニット108による光放射を使用してインテロゲートされる、知られている技法である。環境的刺激、特にファイバに作用している動的歪みを決定するために、インテロゲーティング(interrogating)放射に応答した光ファイバ内からの後方散乱が検出され、解析される。インテロゲーティング放射を適切に選択し、適切に解析することにより、センシングファイバは、長手方向の複数の離散部分に効果的に分割され得る。したがってセンシングファイバの長さに沿った長手方向の複数の離散部分の各々における動的歪みが独立して決定され得る。
【0030】
本発明の実施形態は、水域上の表面波が静水圧の対応する変化をもたらし、これが、センシングファイバに作用している動的歪みとして検出され得る、という事実を利用している。これらの歪みは、様々な要因に依存する表面波に関連する周波数スペクトルを有することになる。静水圧の変動は、水域における極めて深い深さまで経験されることができ、海底においても経験されることができる。したがって海底における海水中に配備されるセンシングファイバは、特定の周波数プロファイルを有する動的歪みとして検出されることになる圧力変動を経験することになる。また、静水圧の変動は、海底の沈殿物を介しても伝達されることになり、したがって埋設されたケーブルによっても経験されることになる。しかしながら海底を介した圧力変動の伝達には圧力変動を減衰させる傾向があり、また、この減衰は、より高い周波数の方がより低い周波数よりもより強く減衰することになる点で、周波数に対して非線形であり得る。
【0031】
したがって1つ以上の長手方向のセンシング部分においてセンシングファイバによって検出された周波数スペクトル、特により低い周波数成分に対して比較したより高い周波数成分における相対パワーを調査することにより、センシングファイバのそのセンシング部分が埋設されているか否かのインディケーションが決定され得る。センシングファイバが電力ケーブルと同じ場所に配置されると、これは、その位置における電力ケーブルが埋設されているか否かのインディケーションをも提供する。いくつかの実施形態では、解析は、センシングファイバ、延いては電力ケーブルがどの程度深く埋設されているかのインディケーションを決定することも可能である。
【0032】
図1に戻って参照すると、水域の表面109に表面波が生じている。よく理解されているように、表面波は、すべての広大な水域に、気象条件(例えば風、大気圧、温度など)、流れ、潮汐効果を含む様々な異なるプロセスから生じ得る。表面波は、事実上、経時的に変動する、例えば高さの変動ΔH(t)を有する、海底の任意の所与の点の上方に延在する海水の高さをもたらす。表面波は、気象条件ならびに可能性としてあらゆる関連する局所的な地理学に依存し得る周波数スペクトルを有し得る。これは、事実上、経時的に、海底の任意の点の上方の海水の量の変動、延いては海水によって海底に加えられる静水圧の変化ΔP(t)(または海底のその点の上方の水域における任意の深さにおける圧力の対応する変化)をもたらす。
【0033】
したがって海底におけるこの圧力変動ΔP(t)は、表面波の周波数に対応する周波数スペクトルを有しており、また、周波数スペクトルにわたる相対エネルギーは、海水の深さが深くなるにつれて同じ波形を維持する傾向がある。すなわち第2のより低い周波数と比較した第1のより高い周波数におけるエネルギーの割合は、海水の第1の深さおよび第2の異なる深さの両方において実質的に同じである。言い換えると、表面波により誘導された圧力変動による第1の深さに対する周波数に対する圧力変動のエネルギー/振幅のプロットは、第2の深さにおける対応するプロットと同じ相対波形を有することが期待されることになる。同じ最大振幅に正規化されると、2つのプロットは実質的に一致することが期待されることになる。
【0034】
したがって海底におけるこの圧力変動ΔP(t)は、電力ケーブル100および同じ場所に配置されたセンシングファイバの自由スパンニング区間106に加えられる圧力変動をもたらすことになり、これは、検出可能な動的歪み変動をもたらすことになる。
【0035】
また、海底104の表面における圧力変動ΔP(t)は、海底中への少なくとも特定の深さまで、海底内すなわち海底の沈殿物内における圧力変動をももたらすことになる。上で言及したように、海底の物質には、周波数に対して非線形方式で圧力変動を減衰させる傾向があり、また、より高い周波数をより強く減衰させることになり、この減衰は、海底中への深さが深くなるほど大きくなる。したがって電力ケーブル100の埋設された区間105も圧力変動ΔP’(t)を経時的に経験することになり、これは、海底の表面における圧力変動ΔP(t)の減衰バージョンであり得る。実際には、埋設された電力ケーブルにおける圧力変動は、海底中への深さに依存する、周波数に対して非線形である伝達関数によって変換される、海底の表面における圧力変動に基づくことになる。したがってファイバの埋設された区間におけるセンシングファイバ107も動的歪みを経験することになるが、周波数スペクトルにわたる相対エネルギーは異なることになる。
【0036】
インテロゲータユニット108は、センシング光ファイバ107の複数のセンシング部分の各々毎に、そのセンシング部分に作用している動的歪みを示す測定信号を提供することになる。これらの測定信号は、センシング部分からの測定信号に対する周波数スペクトルを解析し、それにより埋設状態を決定するために処理され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、周波数スペクトルの解析は、第1の周波数におけるまたは第1の周波数帯域内の測定信号のエネルギーまたは振幅と、第2の異なる周波数または周波数帯域における測定信号のエネルギーまたは振幅の比較を含むことができる。好都合には、第1の周波数または第1の周波数帯域は、低周波数帯域内である周波数または周波数の帯域、すなわち水面波からの静水圧の変動によるものであることが期待され得る周波数のより低い端へ向かう周波数または周波数の帯域であってもよい。いくつかの場合では、第1の周波数は、0.1Hzのオーダー以下、または0.05Hzのオーダー以下の周波数であってもよい。好都合には、第2の周波数または第2の周波数帯域は、高周波数帯域内である周波数または周波数の範囲、すなわち水面波からの静水圧の変動によるものであることが期待され得る、また、分布型光ファイバセンサによって検出され得る周波数の範囲内である周波数のより高い端へ向かう周波数または周波数の範囲であってもよい。いくつかの場合では、第2の周波数は、0.1Hzのオーダー以上、または0.15Hzのオーダー以上の周波数であってもよい。
【0038】
上で言及したように、海底による圧力変動の減衰は、より高い周波数に対する減衰の方がより低い周波数に対する減衰より大きくなることになる。第1の低周波数帯域における振幅のエネルギーと、第2のより高い周波数帯域におけるエネルギーとを比較することにより、減衰の程度が決定され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、処理は、第1の周波数または第1の周波数帯域における振幅と、第2の周波数または第2の周波数帯域における振幅との間の比率に対応するスペクトルパラメータのための値、例えばスペクトルパラメータ値R=A1/A2を決定することができ、A1は第1の周波数における振幅、または第1の周波数帯域に対する平均振幅であり、また、A2は第2の周波数における振幅、または第2の周波数帯域に対する平均振幅である。このスペクトルパラメータRは、異なる周波数帯域内の測定信号の相対エネルギーのインディケーションとして使用され得る。
【0040】
いくつかの場合では、ケーブル100の自由スパンニング区間106に配置されたセンシングファイバ107の第1のセンシング部分は、開放水域に対する期待される値または値の範囲内のスペクトルパラメータRを有する第1の周波数スペクトルを提供することになることが期待され得る。所与の埋設状態に対する少なくとも1つの基準スペクトルパラメータ値、例えば特定の埋設深さで埋設されたセンシングファイバに対する期待される値または値の範囲も存在し得る。これらの期待されるスペクトルパラメータRは、例えば理論的な値またはモデル化された値および/または範囲を含むことが可能であり、あるいは履歴測定データに基づくことも可能である。所与のセンシング部分に関するスペクトルパラメータ値が決定され、特定の条件に対する知られている期待される値に対して比較され得る。したがって開放水域に対する期待される範囲内であるスペクトルパラメータ値Rは、関連するセンシング部分が電力ケーブルの自由スパンニング区間内に配置されていることを示すことができる。海底中の特定の埋設深さに対する期待される値と一致するスペクトルパラメータ値は、その深さで埋設されていることが決定され得る。スペクトルパラメータ値がより高い周波数でより大きい減衰を示している場合、それは、埋設のより深い深さを示すことができ、一方、開放水域に対する期待範囲外であるが、第1の埋設深さにおいて期待される周波数の高さより低い高さの周波数での減衰を示すスペクトルパラメータ値Rは、埋設されてはいるが、より浅い深さで埋設されていることが決定され得る。したがって方法は、異なる埋設状態に対する複数の基準値のうちのどの基準値に、前記スペクトルパラメータが最も緊密に対応するかを決定することを含むことができる。
【0041】
したがって、通常、所与のセンシング部分に関する周波数スペクトルは、減衰の相対程度、延いては基準周波数スペクトルと比較した相対的な埋設深さを決定するために、少なくとも1つの知られている、または期待される基準周波数スペクトルと比較され得る。この比較は、上で議論したスペクトルパラメータ値Rなどの1つ以上のパラメータの比較によるものであってもよいが、周波数スペクトルを比較して相対的な減衰の予測値を決定する他の方法が存在し得る。
【0042】
追加または別法として、いくつかの実施形態では、周波数スペクトルの解析は、1つのセンシング部分からの測定信号の周波数スペクトルと、別の異なるセンシング部分からの測定信号の周波数スペクトルとの比較を含むことができる。
【0043】
例えば電力ケーブル100の区間105における第1のセンシング部分が海底中に埋設される場合を考察する。このセンシング部分は、減衰された圧力変動ΔP’(t)を経験することになり、したがって第1のセンシング部分からの測定信号は、第1の周波数スペクトルに対応することになる。電力ケーブルの区間105にやはり配置され、やはり地中に埋設された第2のセンシング部分は、埋設深さのために減衰の程度が増した減衰された圧力変動をやはり経験することになる。第2の区間が概ね同じ深さで埋設されている場合、第2のセンシング部分からの周波数スペクトルは、第1のセンシング部分からの周波数スペクトルと、おそらくは実質的に同じになる。
【0044】
次に、電力ケーブル100の、露出している、すなわち自由スパンニングである区間106内に配置されるセンシングファイバ107の第3のセンシング部分を考察する。この点では、センシングファイバに作用する圧力変動は、海底における実質的に非減衰の圧力変動ΔP(t)である。これは、全体的にエネルギーがより大きい、また、より高い周波数における相対エネルギーもおそらくはより大きい周波数スペクトルを示す、そのような第3のセンシング部分からの測定信号をもたらすことになる。
【0045】
したがって第3のセンシング部分からの周波数スペクトルと第1のセンシング部分からの周波数スペクトルとを比較することは、第3のセンシング部分に関する周波数スペクトル全体にわたって、全体でより大きいエネルギーが存在することを明らかにし、特にスペクトルのより低い周波数部分に対する、スペクトルのより高い周波数部分におけるエネルギーが、はるかに大きいことを明らかにする。
【0046】
いくつかの実施形態では、2つのセンシング部分からの周波数スペクトルの比較は、周波数スペクトルの少なくとも1つのパラメータ、例えば上で考察したように、スペクトルの低周波数成分の、スペクトルのより高い周波数成分に対する比率(またはその逆)を示すスペクトルパラメータ値Rの比較を含むことができる。例えばケーブル100の自由スパンニング区間106における第3のセンシング部分に関する第1の周波数と第2の周波数の比率は、電力ケーブル100の埋設された区間105における第1のセンシング部分に関する対応する比率より、高い周波数における著しくより大きいエネルギーを示すことになる。
【0047】
例えばスペクトルパラメータ値Rを導出するために使用される第1の周波数または周波数帯域および第2の周波数または周波数帯域での、低周波数成分および高周波数成分は、所定の周波数においてであってもよい。所定の周波数は、この方法で埋設状態を示すために最も有用な周波数として選択され得る。所定の周波数は、ある範囲の埋設深さおよび/または沈殿物のタイプおよび/またはモデル化からのデータに基づくことも可能である。しかしながらいくつかの場合では、スペクトルパラメータ値Rを導出するために使用される第1の周波数または周波数帯域および第2の周波数または周波数帯域は、1つ以上のセンシング部分から獲得された周波数スペクトルに基づいて選択することができ、すなわちデータ自体に基づいて、その考察中のデータのために最も適した周波数が選択され得る。
【0048】
例えば2つのセンシング部分からの周波数スペクトルが比較された場合、その周波数スペクトルのうちの一方または両方、あるいは結合された周波数スペクトルにおける最も大きい信号振幅に対応する周波数が第1の周波数として識別され得る。両方のスペクトルに重要な信号が存在する最も高い周波数が第2の周波数として識別され、また、このような第1の周波数および第2の周波数における振幅の比率としてスペクトルパラメータ値Rが導出され得る。
【0049】
また、追加または別法として、最も大きい信号成分、すなわちピーク振幅の絶対値も、埋設状態を決定するために使用され得る有用な情報である。自由スパンニングである海中ケーブルの場合、振幅は、通常、ケーブルの横移動が期待されることになるため、埋設されたケーブルの場合より大きくなる。
【0050】
波スペクトルすなわち表面波の周波数は、波をもたらす条件、例えば遠くの嵐のため、経時的に変動することになることは理解されよう。表面波の周波数は、その波が、より少ない高周波数成分を有する傾向がある、より遠くから移動してきた波と共に、どれだけ遠くから移動してきたかに依存し得る。したがってセンシングケーブルのセンシング部分の周波数スペクトルを処理することにより、実際に獲得された周波数スペクトルの高い部分および低い部分の相対エネルギーを調査することができる。したがって複数のセンシング部分に関する比率を比較することにより、異なる埋設状態を示すことができる、1つ以上のセンシング部分に関するあらゆる有意な相違または特異性が識別され得る。
【0051】
比較的開水域、例えば岸辺または海岸線からある程度離れた水域では、表面波は、比較的広い面積にわたって同じ全体的な周波数広がりを有し得ることが期待され得る。したがってケーブルが同じ深さまで埋設されている場合、この広い面積にわたるセンシングファイバのすべてのセンシング部分からの周波数スペクトルは、実質的に同じであることが期待されることになる。
【0052】
海岸に近づくと、ケーブルの異なる部分における表面波は異なる周波数を有することができ、したがって異なる検出された周波数スペクトルをもたらすことになる。このような場合、互いに比較的接近している、例えば数百メートルのオーダーで接近しているセンシング部分からの周波数スペクトルのみを比較することが場合によっては好ましい。それでも依然として、何らかの特異性を識別するために、著しい数のセンシング部分を相ともなって考慮することができる。
【0053】
したがって本発明の実施形態は、分布型光ファイバセンシング、特にコヒーレントレイリー後方散乱に基づく分布型光ファイバセンシングを使用して、センシングファイバに作用する、表面波による圧力変動によって生じる動的歪みを検出している。
【0054】
分布型光ファイバセンシングは、光ファイバがセンシングファイバとして配備され、また、光放射を使用してインテロゲートされる知られている技法である。ファイバに作用している環境的刺激を決定するために、インテロゲーティング放射に応答した光ファイバ内からの後方散乱が検出され、解析される。インテロゲーティング放射を適切に選択し、適切に解析することにより、センシングファイバは、長手方向の複数の離散部分に事実上分割され得る。
【0055】
本発明の実施形態に使用されているこのようなセンサの1つの特定の形態は、コヒーレントインテロゲーティング放射を使用し、ファイバ内からの、光ファイバにおける固有の散乱サイトによるレイリー散乱を経験するすべてのこのような放射を検出している。後方散乱を解析して、ファイバに作用する環境刺激によって生じる、光ファイバに作用するあらゆる動的歪みが決定され得る。このようなセンシングは、入射圧力波またはファイバの他の機械的振動によって生じる動的歪みを検出するために使用されるとき、分布型音響センシング(DAS)と呼ばれ得る。したがって本発明の実施形態は、コヒーレントレイリー散乱に基づくDASの原理を使用することができる。
【0056】
図2は、このような分布型光ファイバセンサ200の原理を示す。上で言及したように、センシング光ファイバ107の長さは、その一方の端部がインテロゲータユニット108に取外し可能に接続されている。インテロゲータ108からの出力は、いくつかの実施形態では、インテロゲータと同じ場所に配置するか、またはインテロゲータの中に統合することができ、あるいはインテロゲータから離れていてもよい信号プロセッサ201に引き渡され得る。任意選択で、信号プロセッサと同じ場所に配置することができ、あるいは信号プロセッサから離れていてもよく、また、実際には適切に専用化されたPCによって実現され得るユーザインタフェース/グラフィカルディスプレイ202も存在し得る。センシングファイバ107は数キロメートルの長さであってもよく、また、例えば40kmまで、または40kmを超える長さであってもよい。
【0057】
センシングファイバは、ファイバブラッググレーティングなどの慎重に導入される反射サイトを必要とすることなく、遠隔通信用途に常習的に使用されているような標準の未修正のシングルモード光ファイバであってもよい。センシングを提供するために未修正の長さの標準の光ファイバを使用する能力は、容易に入手することができる低コストファイバが使用され得ることを意味する。しかしながらいくつかの実施形態では、光ファイバは、入射振動に対してとりわけセンシティブであるように製造されたファイバ構造を備えることができる。光ファイバは、通常、恐らくは光ファイバの束の一部として、ケーブル構造体で光ファイバを収容することによって保護されることになる。
【0058】
使用中、センシングファイバ107は、モニタされるべき関心のある領域に配備され、この領域は、本発明においては、例えば電力ケーブル100または遠隔通信ケーブルなどの海中ケーブルの経路に沿っている。センシングファイバは電力ケーブルとは別個であってもよく、また、概ね電力ケーブルの長さに沿って走るように配置される。例えば別個のセンシング光ファイバケーブルは、電力ケーブルと並んで走るように配置され、例えば電力ケーブルの外側に取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、センシングファイバは、電力ケーブル構造体の一部を形成することができ、また、例えば電力ケーブル中に既に存在している光ファイバを備えることができる。
【0059】
動作中、インテロゲータ108は、インテロゲーティング放射と呼ばれることになるコヒーレント電磁放射をセンシングファイバ中に放出する。センシングファイバは、例えば光放射のパルスで繰り返しインテロゲートされ得る。いくつかの実施形態では、光放射の単一のパルスが個々のインテロゲーションのために使用され得るが、いくつかの実施形態では複数のパルスを使用することができ、その場合、光パルスは、GB2442745に説明されているような周波数パターン、あるいはWO2012/137022に説明されているような光特性を有することができ、これらの内容は、引用により本明細書に組み込まれている。本明細書において使用されているように、「光(optical)」という用語は可視スペクトルに限定されず、また、光放射は、赤外線放射および紫外線放射を含むことに留意されたい。また、「光(light)」に対するすべての参照も、それに応じて解釈されたい。
【0060】
したがってインテロゲータは少なくとも1つのレーザ203を有することができ、また、光パルスをつくるための少なくとも1つの光変調器204を備えることができる。また、インテロゲータは、ファイバ107内の固有散乱サイトから後方散乱されるレイリーである放射を検出するように配置された少なくとも1つの光検出器205をも備えている。光検出器からの信号は、ファイバに作用している攪乱を表す測定信号を提供するために、インテロゲータユニットの処理モジュール206によって処理され得る。
【0061】
レイリー後方散乱の現象により、結果としてファイバ中に放出されたインテロゲーティング光放射の一部が反射してインテロゲータへ戻る。インテロゲーティング放射はコヒーレントであるため、任意の瞬間にインテロゲータで受け取られるレイリー後方散乱は、ファイバ中の特定の位置においてセンシングファイバ内に生成された後方散乱の干渉信号である。このレイリー後方散乱は、インテロゲーティング放射と光ファイバ内に存在する固有散乱サイトとの間の相互作用によって生成されることに留意されたい。したがってセンシング機能は、センシングファイバ全体にわたって効果的に分布され得る(戻りは、ファイバの個々のセンシング部分からの結果を提供するために時間ビンの中で処理されるが)。したがってこのようなセンサは、センシングが全体に分布され、また、ファイバ自体に固有であるため、分布型光ファイバセンサと呼ばれる。これは、センシング機能が典型的にはポイントセンサとして画定された領域に提供される、ファイバブラッググレーティング(FBG)または同様の慎重に導入された外在的反射サイトを有するファイバを使用したセンサとは対照的である。
【0062】
処理は、インテロゲーティング放射を放出した後の時間に基づいて、検出された後方散乱を一連の時間ビンに効果的に分割する。したがって個々の時間ビンは、センシングファイバに沿って異なる距離を隔てて配置された異なる長手方向のセンシング部分に対応し得る。
【0063】
光ファイバの任意の所与のセンシング部分に対して検出器で受け取られる後方散乱放射は、ファイバのその部分内の固有サイトの分布に依存することになり、それは本質的ランダムである。したがって1つの長手方向のセンシング部分から次の長手方向のセンシング部分までの後方散乱は、ランダムな様式で変動することになる。しかしながらセンシングファイバのその区間に作用する環境刺激が存在しない場合、1つの特定のセンシング部分から受け取られる後方散乱信号は、1つのインテロゲーションから次のインテロゲーションまで同じであることになる(インテロゲーティング放射の特性は変動しないと仮定して)。しかしながらセンシングファイバの所与の部分に対する、このようなセンシング部分の有効光路の変化をもたらすあらゆる攪乱は、散乱サイトの相対分布を変え、また、その区間からの干渉信号を変動させることになる。
【0064】
したがって処理は、センシングファイバの複数のセンシング部分の各々からの後方散乱を解析して、インテロゲーションとインテロゲーションの間の後方散乱の変動を検出することができ、また、このような変動をファイバに作用している攪乱のインディケーションとして使用することができる。
【0065】
いくつかの実施形態、とりわけインテロゲーション毎に2つの空間的に分離されたパルスを使用している実施形態では、処理は、所与のセンシング部分から光検出器で受け取った干渉信号に対する位相値(または干渉信号の復調されたバージョン)を決定することができる。したがってプロセッサモジュールは、戻った信号を例えば光パルス間の任意の周波数差に基づいて復調することができる。インテロゲータは、例えばGB2442745またはWO2012/137022に説明されているように、あるいはWO2012/137021に説明されているように動作することができる。また、プロセッサモジュールは、位相アンラップアルゴリズムを適用することも可能である。
【0066】
ファイバに作用する、有効光路長の変化をもたらす動的攪乱または変化は、したがって光ファイバの複数のセンシング部分の各々において検出され得ることは、したがって明らかであろう。
【0067】
このような変化は、例えば入射圧力波による光ファイバに対する機械的攪乱による動的歪みであってもよい。したがって分布型光ファイバセンサは、センシングファイバのセンシング部分に作用する音響攪乱を示す測定信号を生成する分布型音響センサとして動作することができる。本明細書において使用される場合、音響(acoustic)という用語は、任意のタイプの圧力波、または光ファイバに対して生成される変動する歪みを意味するものとして解釈されるべきであり、また、疑問を回避するために、音響という用語は、本明細書においては機械的振動を含むべく使用されることになることに留意されたい。
【0068】
したがって光入力のこの形態および検出の方法によれば、単一の連続光ファイバを、長手方向の離散的センシング部分に、空間的に分解することができる。すなわち1つのセンシング部分でセンスされた測定信号は、隣接する部分でセンスされた信号とは実質的に独立して提供され得る。言及したように、このようなセンサは、光ファイバ中で固有に処理された固有散乱を使用しており、したがってセンシング機能が光ファイバ全体にわたって分布しているため、完全に分布されたセンサ、すなわち固有のセンサと見なすことができる。光ファイバのセンシング部分の空間的分解は、例えば約10m程度にすることができ、これは、例えば10kmのオーダーの連続した長さのファイバの場合、光ファイバの長さに沿って1000個の独立したチャネルを提供することができることになる。
【0069】
センシング光ファイバは比較的安価であり、ファイバを本来の場所に放置するコストは著しくはないため、センシングファイバは恒久的な様態で現場に配備され得る。
【0070】
上で言及したように、本発明の実施形態では、センシングファイバは、モニタされる電力ケーブルの経路に沿って配備される。レイリー後方散乱分布型光ファイバセンサインテロゲータユニット108は、使用中のケーブルをモニタしてセンシングファイバに作用している攪乱を検出するために、特に分布型音響センシングを実施するために、例えば発電所101または発電所103においてセンシングファイバの一方の端部に接続され得る。したがって40km程度までの電力ケーブルが例えば海岸に配置され得る単一のインテロゲータによってモニタされ得る。80kmまで、またはその程度の長さの電力ケーブルの場合、電力ケーブルの個々の端部、すなわちオフショアプラットフォームおよびオンショアプラットフォームにそれぞれ1つずつ、2つのインテロゲータが配置され得る。干渉を回避するために、個々のインテロゲータは、電力ケーブル内の別個のセンシングファイバにインテロゲートすることができる。
【0071】
上で言及したように、センシングファイバは、海底ケーブル内、例えば電力ケーブル100内で実現され得る。図3は、例えば中間電圧または高電圧、すなわち数十キロボルトまたは恐らくは数百キロボルトの電圧のAC電力伝送のために使用され得るような例示的電力ケーブル100の断面を示す。
【0072】
図3は、ケーブルがAC位相毎の3つの導体301を有することができることを示したものであり、それらの各々は、例えば銅または同様の材料から形成され得る。導体は、それぞれ、XLPE(クロスカップリングポリエチレン)などのそれぞれの絶縁体303によって取り囲まれている少なくとも1つの半導電層302によって被覆されている。各々の絶縁体303は、例えば少なくとも1つの半導電性被覆層304を含むことができる1つ以上の被覆層304および305によって取り囲まれ得る。3つの導体は、すべて、それらの関連する被覆層および絶縁層と共に、例えば電力ケーブルのための保護を提供するための亜鉛めっき鋼線のブレーディングを備えることができる外装層306内に収容されている。また、電力ケーブルは、ポリプロピレンヤーンクラッディングなどの外部ジャケット層307をも有することができる。ケーブル内には、外装層306の内側に配置された複数の細長い充填剤要素を備えることができる充填剤材料308が存在し得る。これは、全体的な電力ケーブルに所望の形態を付与することができ、また、被覆された導体が電力ケーブル内の所定の場所に保持されることを保証することができ、さらには追加パディング/保護を提供することができる。
【0073】
さらに、例えば、ケーブルによってリンクされた様々な発電所間のデータ通信を可能にするために、少なくとも1つの光ファイバをケーブル内に埋め込むか、あるいは光ファイバを電力ケーブル内に配置するための能力を少なくとも提供することは当たり前のことである。したがって1つ以上の光ファイバ110、典型的には光ファイバの束を通すための少なくとも1つの光ファイバコンジット309が存在し得る。光ファイバ310のうちの1つは、センシングファイバ310として使用され得る。
【0074】
図4は、図2を参照して説明したタイプのDASセンサからのデータを示したもので、データは、海中に配備されたセンシング光ファイバへのインテロゲーションによって獲得されたものであり、センシングファイバの一部は埋設され、また、センシングファイバの一部は海底に露出しているか、または自由スパンニングしている。
【0075】
図4aは、海中の埋設されていない自由スパンニングであったセンシングファイバの第1のセンシング部分から獲得された測定信号に対する周波数スペクトルを示したものであり、一方、図4bは、海底の砂の中に約0.5mから1mまでの深さで埋設されていたセンシングファイバの第2のセンシング部分から獲得された測定信号に対する周波数スペクトルを示す。いずれの場合においても、特定の周波数における測定信号のパワー/振幅(単位はdB)は、正規化された周波数値に対してプロットされている。図4aおよび4bは、ゼロHzから約0.55Hzまでの周波数範囲にわたるプロットを示す。
【0076】
周波数スペクトルは、いずれも同じ全体パターンを示しており、また、ほぼ同じ周波数で局所的最大を示していることが分かる。図4aの周波数スペクトルは、より大きいパワーを全体的に示しており、局所的最大は、図4aでは約135dBのピークに達しており、一方、図4bにおける対応する最大は約112dBである。しかしながら、とりわけ、より高い周波数、例えば図4aでは0.15Hzより高い周波数では、図4bよりもエネルギーの著しくより大きい割合が存在していることが分かる。図4aでは、埋設されていないケーブルの場合、0.02Hz(低い周波数)における信号エネルギーは、0.12Hz(高い周波数)における信号エネルギーより約13dB小さく、一方、図4bでは、埋設されたケーブルの場合、これらの周波数における信号エネルギーの相対差は約30dBである。
【0077】
これは、センシングファイバが埋設されると、周波数スペクトル、とりわけその高周波数成分が著しく減衰することを例証しており、また、周波数スペクトルの解析を使用して埋設状態が決定され得ることを示している。
【0078】
上で言及した実施形態は、本発明を例証したものであって、本発明を制限するものではないこと、また、当業者は、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく、多くの代替実施形態を設計することができることに留意されたい。「備える」という語は、請求項に挙げられている要素またはステップ以外の要素またはステップの存在を排除するものではなく、単数形の表現は複数形を排除せず、また、単一の特徴または他のユニットは、特許請求の範囲に記載されているいくつかのユニットの機能を実行し得る。特許請求の範囲における任意の参照符号は、それらの範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
【国際調査報告】