特表2020-508832(P2020-508832A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-508832(P2020-508832A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】塞栓捕捉センタリング装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/01 20060101AFI20200303BHJP
【FI】
   A61F2/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-567518(P2019-567518)
(86)(22)【出願日】2018年4月4日
(85)【翻訳文提出日】2019年8月28日
(86)【国際出願番号】US2018026004
(87)【国際公開番号】WO2018187413
(87)【国際公開日】20181011
(31)【優先権主張番号】62/481,729
(32)【優先日】2017年4月5日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マクゴーワン、ロジャー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィードマン、アレクサンダー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート、ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイバーコスト、パトリック エイ.
(72)【発明者】
【氏名】オストルート、ティモシー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】サンドゥ、グルプリート エス
(72)【発明者】
【氏名】スプーン、ダニエル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】テフト、ブランドン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM36
4C160MM37
(57)【要約】
いくつかの態様では、本発明は、患者内の導管内で医療器具をセンタリングするための、自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置に関する。センタリング装置は、(a)細長シャフト、(b)開放遠位端、及びフレア状遠位部を有する中央ルーメンを形成する内面を有する自己拡張型センタリング部材であって、遠位から近位方向に流れて開放遠位端部によって受け入れられる流体が、中央ルーメンのフレア状遠位部に沿って近位方向に流れ、その後センタリング部材の近位部で1つ以上の開口を通って中央ルーメンから出るように構成されたセンタリング部材と、(c)センタリング部材の開放遠位端によって受け入れられた流体をろ過するように構成されたフィルタ材料と、を備える。本発明の他の態様は、こうしたセンタリング装置を用いるシステム及び方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内の導管内において医療器具をセンタリングするための自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置であって、
細長シャフトと、
(i)開放遠位端を有するフレア状遠位部、(ii)前記細長シャフトに取り付けられた近位部、(iii)外面、及び(iv)フレア状遠位部を有する中央ルーメンを形成する内面を有する自己拡張型のセンタリング部材であって、前記センタリング部材の前記開放遠位端によって受け入れられて遠位から近位方向に流れる流体が、前記中央ルーメンの前記フレア状遠位部に沿って近位に向かって流れ、その後前記中央ルーメンから前記センタリング部材の前記近位部の1つ以上の開口を通って出るように構成された、前記センタリング部材と、
前記センタリング部材の前記開放遠位端によって受け入れられた前記流体をろ過するように構成されたフィルタ材料と、
を備える、自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項2】
前記センタリング部材は、フレア状フレームと、前記フレア状フレームの遠位部に被さるカバー材料とを備え、前記カバー材料が、前記カバー材料を通る血液の通過を阻止するように構成された、請求項1に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項3】
前記フレア状フレームは、複数の花弁状フレームセグメントを備える、請求項2に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項4】
前記フィルタ材料が、前記センタリング部材の前記近位部の前記1つ以上の開口に位置決めされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項5】
前記フィルタ材料が、前記センタリング部材の前記近位部の前記1つ以上の開口の下流に位置決めされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項6】
前記フィルタ材料が前記センタリング部材の遠位端から延び、前記センタリング部材の前記外面に折り重なって前記外面を近位側で包み込み、かつ、前記センタリング部材の前記近位部で、前記1つ以上の開口に近接している位置において前記装置に取り付けられる、請求項5に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項7】
前記センタリング部材が、フレア状フレームと、前記フレア状フレームの遠位部に被さるカバー材料とを備え、前記カバー材料が、前記カバー材料を通る血液の通過を阻止するように構成されており、(i)前記フィルタ材料が、孔が形成されている前記カバー材料の延長部であるか、又は(ii)前記フィルタ材料が前記カバー材料とは異なる材料である、請求項6に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項8】
前記センタリング部材に取り付けられるとともに、前記センタリング部材の前記近位部の前記1つ以上の開口から出る前記流体を捕捉する1つ以上の口を有する、1つ以上のフィルタポーチを備える、請求項5に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項9】
前記1つ以上のフィルタポーチの各々がテザーに取り付けられているか、又は前記1つ以上のフィルタポーチの各々が前記細長シャフトの軸に沿って摺動する部材に取り付けられているか、又は前記1つ以上のフィルタポーチの各々が、前記細長シャフトに取り付けられている、請求項8に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項10】
前記フィルタ材料は、前記センタリング部材と共に自己拡張し、かつ、前記センタリング部材の直径よりも大きい直径を有する拡張型ループ構造体によって支持され、かつ、前記センタリング部材の前記開放遠位端の長手方向位置とほぼ同じ長手方向位置で支持されている、請求項5に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項11】
前記拡張型ループ構造体が、当該拡張型ループ構造体と前記センタリング部材の前記遠位端との間に延びる1つ以上の構造部材によって支持されているか、又は前記拡張型ループ構造体が、当該拡張型ループ構造体と前記細長シャフトとの間に延びる1つ以上の構造部材によって支持されている、請求項10に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項12】
前記フィルタ材料が、前記拡張型ループに取り付けられる口を有し、前記口を、前記細長シャフトが前記センタリング部材に近接する位置で通過する、フィルタバッグの形態である、請求項10に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項13】
前記フィルタ材料が、前記センタリング部材に近接する位置で前記細長シャフトに取り付けられている拡張フレームに取り付けられている、請求項5に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項14】
前記拡張フレームが、前記センタリング部材よりも大きい直径を有する、請求項13に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置。
【請求項15】
システムであって、(a)請求項1〜14のいずれか一項に記載の自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置と、(b)ルーメンを有するガイドカテーテルと、(c)ガイドワイヤと、を備え、前記自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置は、前記ガイドカテーテルの前記ルーメン内を通って前進するために薄型形態に圧縮されるとともに前記ガイドカテーテルの前記ルーメンから排出されると拡張形態に自己拡張するように構成されており、さらに、前記ガイドワイヤが、前記自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置の前記細長シャフトのルーメンを通って前進させるように構成された、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管の治療及び診断のための装置及び方法に関する。例えば、本発明は、カテーテルが自らを血流の流れと位置合わせし、それにより、カテーテルからガイドワイヤ又は他の細長い装置が、流れの方向に逆らって、心臓弁の弁口又は身体内の他の任意の通路内を通って前進することを支援すると共に、このような処置の過程で発生し得る塞栓に対する保護を提供できる、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁狭窄とは、心臓の弁が狭くなっている(狭窄)状態である。弁狭窄があると、弁尖を形成する組織が硬くなり、弁の開口が狭くなり、その開口を通って流れる血液の量が減少する。狭窄が軽度であれば、全体的な心拍出量は正常なままである。しかし、弁が重度に狭窄している場合、心拍出量の減少及び心機能の悪化につながり得る。
【0003】
例えば、僧帽弁狭窄は、僧帽弁が異常に狭くなっていることであり、その結果、左心房から左心室への血流が制限される。心房内腔は、圧力が上昇するにつれて拡大し得る。次いで、血液及び体液が肺組織に集まり(肺水腫)、呼吸をするのが困難になり得る。僧帽弁狭窄症は、数ある問題の中でもとりわけ、重度な息切れを生じさせ得る。
【0004】
別の例として、大動脈弁狭窄症は、心臓の大動脈弁が狭くなると生じる。大動脈弁がこのように閉塞されると、心臓は、身体に血液を送り出すため、より激しく動く必要がある。最終的には、この余計な仕事により、心臓が送り出すことが可能な血液の量が制限され、心筋が弱まり得る。圧力が上昇すると、左心房が拡大し、血液及び体液が肺組織に集まり(肺水腫)、呼吸が困難になり得る。軽度から中程度の大動脈弁狭窄症の症状は、投薬により緩和可能である。しかし、重度の大動脈弁狭窄症を治療する唯一の方法は手術である。
【0005】
大動脈弁を修復するか、又は置換する治療法としては、バルーン弁形成術(弁膜切開術)、外科的大動脈弁置換術、及び経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)が挙げられる。TAVRは、大動脈弁を、大腿動脈を介して(経大腿)又は心臓の左心室尖を介して(経心尖)送達される人工弁と置換することを伴う。
【0006】
狭窄大動脈弁に対してTAVR、弁形成術、又は血行動態検査を行うときに困難であり得る工程は、重度の狭窄大動脈弁にガイドワイヤ、カテーテル、又は他の細長い医療機器を逆行性通過させて左心室にアクセスすることである。弁はまた、多くの場合、著しく石灰化している。現状の診療は、弁口を貫通するまで、ガイドワイヤを用いて狭窄弁を繰り返しプロービングすることを伴い得る。長期にわたりプロービングを行うと、少量の石灰化デブリ及びアテロームが弁表面から脱落するリスクが増大し得、また卒中をもたらし得る。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、弁狭窄などの心臓病の治療のための装置、システム及び方法を提供する。例えば、本発明は、ガイドカテーテルが自らを血流の流れと位置合わせし、それによって、ガイドカテーテルからガイドワイヤ又は他の細長い装置が、血流方向に逆らって、心臓弁又は他の弁口を通って前進することを支援し、それと同時に処置により生じる意図しない塞栓形成のリスクを低下させられる装置、システム及び方法を提供する。
【0008】
本明細書で提供される装置及び方法は、ガイドカテーテルを弁口と位置合わせし、このような処置の過程で放出され得る塞栓を捕捉することによって、心臓カテーテル法処置中の時間及び費用を節約するように適合されている。その結果、本明細書で提供される装置及び方法は、例えば、こうした処置の全体的なコストを低下させ、こうした処置中の患者及び医師への放射線被曝を減少し、またこうした処置中における血栓塞栓性脳卒中のリスクを低下させる。装置及び方法は、TAVR処置、並びに大動脈弁を通過する必要がある場合の他の外科的処置及び診断調査に使用できる。本明細書に提供される装置及び方法は、大動脈弁狭窄症の治療に加え、僧帽弁周囲漏出、並びに流体の流れを発見しその流体の流れに逆らって通過させる必要がある他の任意の瘻孔及び開口に対する用途を有する。
【0009】
いくつかの一般的な態様では、本発明は、患者内の導管内において医療器具をセンタリングするための自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置を特徴とする。塞栓捕捉センタリング装置は、(a)細長シャフトと、(b)自己拡張型センタリング部材であって(i)開放遠位端を有するフレア状遠位部、(ii)細長シャフトに取り付けられた近位部、(iii)外面、及び(iv)フレア状遠位部を有する中央ルーメンを形成する内面、を有し、遠位から近位方向に流れてセンタリング部材の開放遠位端によって受け入れられる流体が、ルーメンのフレア状遠位部に沿って近位方向に流れ、その後センタリング部材の近位部にある1つ以上の開口を通って中央ルーメンから出るように構成された、センタリング部材と、(c)フィルタ材料であって、センタリング部材の開放遠位端によって受け入れられた流体をろ過するように構成された、フィルタ材料、を備える。
【0010】
上記の態様と併せて使用され得るいくつかの実施形態では、センタリング部材は、フレア状フレームと、フレア状フレームの遠位部に被さるカバー材料とを備え得、カバー材料は、カバー材料内から血液が通過するのを堰き止めるように構成される。
【0011】
上記態様及び実施形態のいずれかと併せて使用され得るいくつかの実施形態では、フレア状フレームは、複数の花弁状フレームセグメントを備え得る。
上記態様及び実施形態のいずれかと併せて使用され得るいくつかの実施形態では、フィルタ材料は、センタリング部材の近位部の1つ以上の開口に被さって配置され得る。
【0012】
上記態様及び実施形態のいずれかと併せて使用され得るいくつかの実施形態では、フィルタ材料は、センタリング部材の近位部の1つ以上の開口の下流に配置される。
上記態様及び実施形態のいずれかと併せて使用され得るいくつかの実施形態では、フィルタ材料は、センタリング部材の近位部の1つ以上の開口の下流に配置され得、さらにフィルタ材料は、遠位端から延び、センタリング部材の外面に折り重なってこれを近位側で包み込み、センタリング部材の近位部の1つ以上の開口に近接する位置において装置に取り付けられ得る。これらの実施形態のいくつかにおいては、センタリング部材は、フレア状フレームと、フレア状フレームの遠位部上に配置され、カバー材料を通る血液の通過を阻止するように構成されたカバー材料とを備え得、この場合フィルタ材料は、例えばカバー材料の延長部であり得る(例えばカバー材料に孔が形成されている場合)、又はフィルタ材料は、カバー材料とは異なる材料であり得る。
【0013】
上記態様及び実施形態のいずれかと併せて使用され得るいくつかの実施形態では、フィルタ材料は、センタリング部材の近位部の1つ以上の開口の下流に配置され得、装置は、1つ以上のフィルタポーチを備え得、該1つ以上のフィルタポーチは、センタリング部材に取り付けられるとともにセンタリング部材の近位部にある1つ以上の開口から出る流体を捕捉する1つ以上の口を有する。これらの実施形態のうちの特定のものにおいて、1つ以上のフィルタポーチは、テザーに取り付けられ得、又は1つ以上のフィルタポーチは、細長シャフトの軸に沿って摺動する部材に取り付けられ得、又は1つ以上のフィルタポーチは、細長シャフトに取り付けられ得る。
【0014】
上記態様及び実施形態のいずれかと併せて使用され得るいくつかの実施形態では、フィルタ材料は、センタリング部材の近位部の1つ以上の開口の下流に配置され得、フィルタ材料は、拡張型ループ構造体によって支持され得、この拡張型ループ構造体は、センタリング部材と共に自己拡張し、センタリング部材の直径よりも大きい直径を有し、かつ、センタリングの開放遠位端の長手方向位置とほぼ同じ長手方向位置で支持される。これらの実施形態のいくつかにおいて、フィルタ材料は、ループに取り付けられる口を有し、該口を、細長シャフトがセンタリング部材に近接する位置で通過する、フィルタバッグの形態であり得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、例えば(a)拡張型ループ構造体は、拡張型ループ構造体とセンタリング部材の遠位端との間に延びる1つ以上の構造部材によって支持され得、又は(b)拡張型ループ構造体は、拡張型ループ構造体と細長シャフトとの間に延びる1つ以上の構造部材によって支持され得る。
【0015】
上記態様及び実施形態のいずれかと併せて使用され得るいくつかの実施形態では、フィルタ材料は、センタリング部材の近位部の1つ以上の開口の下流に配置され得、またフィルタ材料は、センタリング部材に近接する位置で細長シャフトに取り付けられている拡張式フレームに取り付けられ得る。これらの実施形態の特定のものにおいて、拡張式フレームは、センタリング部材よりも大きい直径であり得る。
【0016】
他の一般的な態様では、本発明は、ヒトの患者を治療するためのシステムを特徴とする。本システムは、(a)上記態様及び実施形態のいずれかによる自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置と、(b)ルーメンを有するガイドカテーテルと、(c)ガイドワイヤとを備え、自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置は、ガイドカテーテルのルーメン内を通って前進するため薄型形態に圧縮されかつガイドカテーテルのルーメンから排出されるときは拡張式構成に自己拡張するよう構成され、またガイドワイヤは、自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置の細長シャフトのルーメン内を通って前進するように構成される。
【0017】
他の一般的な態様では、本発明は、こうしたシステムを使用して、ヒトの患者を治療又は診断するための方法を特徴とする。本方法は、(a)ガイドカテーテルを患者に挿入することと、及びガイドカテーテルを患者内の標的部位に導くことと、(c)自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置をガイドカテーテルのルーメンの遠位端から出現させることであって、自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置がガイドカテーテルルーメンから出現するときに自己拡張式塞栓捕捉センタリング装置が薄型形態から拡張形態に再変遷される、出現させることと、(d)ガイドワイヤを自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置の細長シャフトのルーメンの遠位端から出現させることと、を含み得る。
【0018】
このような方法は、例えば、センタリング装置を流体の流れの源にセンタリングし、ガイドワイヤをセンタリング装置から出現させて、流体の流れに逆らって通過させ、同時に、この処置により生じる意図しない塞栓を捕獲するためのメカニズムを提供することが望ましい任意の処置において使用され得る。
【0019】
本発明の様々な態様及び実施形態の詳細は、以下の説明及び添付の図面に記載されている。本発明の他の特徴及び利点は、説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本明細書で提供されるいくつかの実施形態による、大動脈弁の弁口内にガイドワイヤを通すために塞栓捕捉センタリング装置を使用してカテーテル法を受けているヒトの心臓の部分断面を示す概略図。
図2】本発明による塞栓捕捉センタリング装置において、通常の大動脈弁と比較して、増強されたセンタリング力を提供する、狭窄した大動脈弁及びその下流の流れ勾配を示す概略図。
図3】本発明による塞栓捕捉センタリング装置において、狭窄大動脈弁と比較して、減少したセンタリング力を提供する、通常の大動脈弁及びその下流の流れ勾配を示す概略図。
図4】本発明の一実施形態による、塞栓捕捉センタリング装置の概略図。
図5】本発明の別の実施形態による、塞栓捕捉センタリング装置の概略図。
図6A】本発明の一実施形態による、塞栓捕捉センタリング装置の概略図。
図6B】本発明の一実施形態による、塞栓捕捉センタリング装置の概略図。
図6C】本発明の一実施形態による、塞栓捕捉センタリング装置の概略図。
図7】本発明のさらなる一実施形態による、塞栓捕捉センタリング装置の概略図。
図8】本発明のさらなる一実施形態による、塞栓捕捉センタリング装置の概略図。
図9】本発明のさらなる一実施形態による、塞栓捕捉センタリング装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、カテーテル(例えば6Frガイドカテーテルなどのガイドカテーテル)が自らを弁口から流れる血流と位置合わせし、それによってガイドカテーテルを通るガイドワイヤ又は他の細長い装置を導く補助をし、同時に、このような処置の過程で発生し得る塞栓を捕捉する、装置及び方法を提供する。
【0022】
図1を参照して、ガイドカテーテル120を用いたカテーテル法を受けているヒトの心臓10の部分断面図の概略図が示されている。ガイドカテーテル120は、大動脈弁14の弁口からガイドワイヤ130を通す目的で大動脈弓12内に描かれている。心臓10のこの領域内の血流は、左心室16から大動脈弓12へのものである。したがって、ガイドカテーテル120は、左心室16から大動脈弓12に流れる血液の流れに逆らい、上流にガイドワイヤ130を挿入しようとしている。
【0023】
ガイドワイヤを使用して心臓弁を通過するプロセスは、様々な心臓治療及び診断処置におけるステップとして実行される。例えばTAVR処置、弁形成術、狭窄弁に関する血行動態検査、左心室アブレーション、及び心臓弁の弁口を通したガイドワイヤの配置を含む、他の種類の処置があげられる。弁口を通したガイドワイヤの配置を伴う他の用途としては、大動脈弁処置に加え、僧帽弁周囲漏出治療処置(又は大動脈弁周囲漏出)、及びヒトの心臓又は身体の任意の部位における瘻孔を伴う他の治療処置が挙げられる。
【0024】
大動脈弁14に、ガイドカテーテル120が大動脈弓12を経由して接近し得る。場合によっては、ガイドカテーテル120を患者の大腿動脈に経皮的に挿入し、患者の大動脈に導くことができる。大動脈から、ガイドカテーテル120は、大動脈弓12に導くことができる。他の場合には、大動脈弓12に、ガイドカテーテル120によって、患者の橈骨動脈を介してアクセスできる。他の大動脈弓12アクセス技術もまた想定される。図示した実施形態では、ガイドカテーテル120がその遠位端部分で概ね直線状であるが、いくつかの実施形態では、ガイドの遠位端に対してガイドカテーテル120の遠位端部分が傾斜し得る(例えば終端角度を有する)。ガイドカテーテル120の遠位端が大動脈弁14よりも上の位置にある状態で、ガイドワイヤ130を突出できる。ガイドワイヤ130を突出させる目的は、大動脈弁14の弁口を通してガイドワイヤ130を挿入するためである。
【0025】
図1の装置は、塞栓捕捉センタリング装置100をさらに備える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、ガイドカテーテル120が患者に挿入され、患者の体内にある間、塞栓捕捉装置100を薄型送達形態に折り畳み、ガイドカテーテル120内に収容可能である。ガイドカテーテル120の遠位先端が、図示のように大動脈弁14よりも上の位置などの標的部位に達すると、塞栓捕捉センタリング装置100をガイドカテーテル120から前進させることができる。様々な実施形態では、図示のように、塞栓捕捉センタリング装置100は、薄型送達形態から拡張形態へと再変遷するよう、自己拡張型であり、フレア形状を有するセンタリング部材を備える。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ130は、塞栓捕捉センタリング装置100のルーメンを通して突出される。
【0026】
塞栓捕捉センタリング装置100が流体流路内に配置されている場合、塞栓捕捉センタリング装置100のセンタリング部材の形状により、塞栓捕捉センタリング装置100が、自らを流体流路内でセンタリングするようになる。本明細書でさらに説明するとおり、塞栓捕捉センタリング装置100のセンタリング部材のフレア形状は、例えば、流体のジェット流(例えばここでは大動脈弁14の弁口を通って流れる血液)を受け入れる、又は捕捉するように構成される。
【0027】
図2からより明白に分かるとおり、大動脈弁14の弁口から流れる血流のジェット流が塞栓捕捉センタリング装置100の内側面に接触すると、血流のジェット流によって送達される衝撃力が、塞栓捕捉センタリング装置100をジェット流に向かって横方向に駆動させ、これにより、流体のジェット流が、塞栓捕捉センタリング装置100の中心又はその近くに捕捉されるようになる。例えば図2に示すような、狭窄大動脈弁から発せられる狭い流体の流れのジェット(狭窄弁は健康な弁と比べて同じ量の流体を受ける弁口が小さくなるため)を有することによって生じる増幅効果は、例えば図3に概略的に示すような、健康な大動脈弁から発せられる広い領域における流体の流れの効果との比較を通して確認できる。
【0028】
塞栓捕捉センタリング装置100がガイドカテーテル120の遠位端に配置されているので、塞栓捕捉センタリング装置100が大動脈弁14の弁口から来る流体の流れの中心にある場合、ガイドカテーテル120もまた、この流体の流れにセンタリングされる。このようにして、塞栓捕捉センタリング装置100は、ガイドカテーテル120の長手方向軸を大動脈弁14の弁口と位置合わせさせる。したがって、ガイドワイヤ130がガイドカテーテル120から突出すると、ガイドワイヤ130は大動脈弁14の弁口の真中により近くなるよう位置合わせされ、それによって大動脈弁14を通るガイドワイヤ130の通過が改善される。
【0029】
本発明の一実施形態による、軸Aを有する塞栓捕捉センタリング装置400のより詳細な図を図4に概略的に示す。塞栓捕捉センタリング装置400は、(a)長手方向軸A、遠位端116d、及びガイドワイヤ、カテーテル、又は他の細長い装置がその中を通るように構成されたルーメンを有する細長シャフト116、及び(b)フレア状センタリング部材であって(i)細長シャフト116に取り付けられた近位部110p、(ii)開放遠位端110oを有する遠位部110d、(iii)センタリング部材110の少なくとも遠位部110dにおいて、直径が遠位方向から近位方向に向かって減少する中心軸ルーメン、を有する、フレア状センタリング部材、を備える。図示の特定の実施形態では、センタリング部材110は、1つ以上のフィラメント状要素から形成されたフレア状フレーム112を備える。血液などの流体の通過を堰き止める(例えば非多孔質材料から形成された)カバー材料114は、センタリング部材110の遠位部110dにおいてフレーム112を覆う。フィルタ材料119は、特定の最小サイズを有する血液中の粒子を除いて、血液の通過を可能とする開口(例えば、他の可能な孔径の中でもとりわけ、50ミクロン〜200ミクロンの範囲内の孔径を有する孔)を有し、センタリング部材110の近位部110pにおいてフレーム112を覆っている。
【0030】
カバー材料114が流体の流れを堰き止めるので、流体は、開放遠位端110oを介してセンタリング部材110の中央ルーメンに入り、センタリング部材110の近位部110pに到達するまでセンタリング部材110の遠位部110dの長手方向にわたって中央ルーメン内に留まる。これにより流体は、フィルタ材料119の開口を通ることができ、それによって軸方向のルーメンから漏れ出し、下流に流れ続ける。このデザインの結果として、センタリング部材の軸方向ルーメンに入る流体は、下流に進む前にろ過される。このデザインの結果として、センタリング部材110は、軸方向ルーメンに流れる流体のジェット流により、自ら自己センタリングを行う傾向もある。したがって、本発明による塞栓捕捉センタリング装置100をガイドカテーテル120(例えば図1参照)と共に使用すると、塞栓捕捉センタリング装置100のセンタリング部材110は、カテーテル120を、大動脈弁14の弁口を通る血流など、狭い弁口を通る血流に対して、センタリングできる。カテーテル120が大動脈弁14に対してセンタリングされている場合、ガイドワイヤ130を、大動脈弁14の弁口通過成功の可能性が高くなった状態で、前進させることができる。さらに、センタリング部材110内を通る血液は、ガイドワイヤ130が弁口を通る間に放出される塞栓など、特定のサイズ以上のいかなる粒子も血液から除去されるよう、ろ過される(例えば塞栓は、他の可能な孔径の中でもとりわけ、50ミクロン〜200ミクロンの範囲の径の孔を有するフィルタ材料によって捕捉され得る)。
【0031】
比較的少ない試行で通過処置が成功したと仮定しても、例えば、最初の通過試行時にガイドワイヤ130が大動脈弁14の弁口を通過するがゆえに、塞栓が弁から外れて下流に移動し得る臨床的リスクが依然として存在する。大動脈弓12は頸動脈に非常に近接しているせいで脳卒中のリスクが高まるため、これは大動脈弓12において特に問題含みである。さらに、TAVR対象者は、多くの場合、大動脈弁14の著しい石灰化を伴う大動脈弁狭窄症の臨床例を有しており、大動脈弁14から石灰化塞栓が脱落するリスクが高まる。センタリング部材110にフィルタ材料119を用いることによって、フィルタ材料119の開口よりも大きい塞栓が捕捉され、脳卒中のリスクが減少する。
【0032】
センタリング部材110の遠位端110eの直径の範囲は、様々な使用方法のバリエーション及び身体の大きさに適合するよう、様々に想定されている。例えば、いくつかの実施形態では、センタリング部材110の遠位端110eは、直径約5ミリメートル〜40ミリメートル、直径約10ミリメートル〜35ミリメートル、直径約15ミリメートル〜30ミリメートル、又は直径約20ミリメートル〜25ミリメートルの範囲である。遠位端110eのセンタリング部材110について、他の直径も企図される。
【0033】
図4及び本明細書の随所に示すセンタリング部材110は実質的に円錐台形状を有しているが、センタリング部材110には、ベル形状、ピラミッド形状(例えば3、4、5、6、7、8、9、10面以上を有する)などの円錐台形状に加えて、様々なフレア形状を用いることができる。
【0034】
本発明と併せて使用するためのフレア状フレーム112は、単一の材料片(例えば単一のフィラメント構造又は所望のフレア形状に拡張され、フレア形状を自然な構成にするためにヒートセットされたレーザカットチューブの形態)から形成され得るか、又は例えば溶接、接着剤、機械的手段などによって形作られ、共に保持されてフレア状フレーム112を形成する、複数のフレームセグメント112s(例えばワイヤ、フィラメント、リボンなどの細いストランド)から形成され得る。
【0035】
フレーム112は、とりわけ、ニチノール(NiTi合金)(例えば超弾性ニチノール)、ステンレス鋼、チタン、及びエルジロイ(Eigiloy)(Co−Cr−Ni合金)など、様々な金属及び金属合金から形成され得る。フレーム112はまた、様々なポリマーから形成されてもよい。
【0036】
一般に、フレーム112は、カテーテルのルーメン内に収まるように折り畳み可能である。フレーム112は、カテーテルからの展開時に、示されるように、放射状に自己拡張してフレア状の非拘束形態にできる。こうした例では、フレーム112は、例えば超弾性ニチノール(NiTi)材料などの形状記憶合金、又は形状記憶ポリマーなどの形状記憶材料で構成され得る。
【0037】
図4(並びに以下の図5図9)に示す特定の実施形態では、フレーム112は、装置の軸Aの周囲に位置付けられた一連の花弁状フレームセグメント112s(例えば3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の花弁状フレームセグメント112s)から構成される。花弁状フレームセグメント112sは、ガイドカテーテル120内に収容する目的で、折り畳まれるよう構成される。ガイドカテーテル120から出た際、花弁状フレームセグメント112sは、全体的に広がった形状に開くよう、特に図示のとおり概ね円錐台形状、とりわけベル形状又は他の漏斗形状を作り出すように開くよう、構成される。様々な実施形態では、花弁状フレームセグメント112sは、花弁の折畳み性及び拡張性を促進する形状記憶材料から構成される。花弁状フレームセグメント112sは、好適な材料の細いストランド(例えばワイヤ、フィラメント、リボンなど)から形成される。様々な実施形態では、拡張時に、花弁状フレームセグメント112sが互いに重なる。こうした実施形態では、(a)カバー材料114がフレーム112を覆っている遠位部110dにおいては、カバー材料114により、ほぼ三角形の開口を覆うことができ、(b)フィルタ材料がフレーム112を覆っている近位部110pにおいては、フィルタ材料119は、花弁状フレームセグメント112sを形成するフィラメント間のほぼ三角形及び四辺形の開口をほぼ覆い得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、フレーム112は、放射線不透過性マーカ、バンド、又は放射線不透過性充填材料などの1つ以上の視覚化マーカ(図示せず)を含み得る。放射線不透過性マーカは、臨床医がインサイチュ(in situ)でのX線撮影によりセンタリング部材110を視覚化することを支援するものであり、これにより臨床医が、患者の解剖学的構造に対して、所望のとおり装置を配向することを可能にする。
【0039】
図4に示される実施形態、並びに本明細書に記載の他の実施形態(例えば以下の図5〜9を参照されたい)に採用されるカバー材料114は、流体(例えば心臓弁の弁口から出てくる血液)の流れに対する障壁として作用し得るあらゆる可撓性の生体適合性材料から作られ得る。こうしたカバー材料は、これらに限定されるものではないが、ポリマーフィルム及び布地、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PIPE)及び延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などのフルオロポリマー、ナイロン及びポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX)などのポリアミド、ポリ(p−キシリレン)ポリマーなどの化学蒸着ポリオキシイエンポリマー(パリレン)、シリコーンなどのポリシロキサン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、例えばポリエーテルポリウレタン、ポリイソブチレン−ポリウレタン、ポリウレタン−シリコーンコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HFP)などのポリウレタン、ポリイソブチレン−ポリスチレンブロックコポリマー、例えばポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロックコポリマー(SiBS)などのポリイソブチレンコポリマー、並びに金属フィルム、又は前述の材料の組み合わせを挙げることができる。
【0040】
図4に示される実施形態、並びに本明細書に記載の他の実施形態(例えば以下の図5図9を参照されたい)で採用されるフィルタ材料119は、材料を多孔質にするような様式で形成され得るか、又は処理され得、それによって微粒子のろ過を可能にする、あらゆる可撓性の生体適合性材料から作製され得る。潜在的に有害である塞栓を捕捉するのに好適である孔径は、例えば、他の可能な孔径の中でもとりわけ、50ミクロン〜200ミクロンの範囲であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、フィルタ材料119は、ePTFE又は別のポリマーから構成され得、約50%の多孔度を有する約100μmのレーザ穿孔を有し得る。フィルタ材料として使用するための具体的な材料の例としては、カバー材料としての使用のため直前に記載したものから選択されるポリマーが挙げられる。
【0041】
図4、並びに本明細書に記載の他の実施形態(例えば以下の図5図9を参照されたい)では、カバー材料114及びフィルタ材料119は、さまざまな技術を用いて、フレーム112及びセグメント112sなどの構造部材に取り付け得る。例えば、いくつかの実施形態では、カバー材料114及び/又はフィルタ材料119は、構造部材に縫合されてもよい。いくつかの実施形態では、カバー材料114及び/又はフィルタ材料119を構造部材に接着剤により接着させ得、いくつかの実施形態では、構造部材をカバー材料114の層間に挟み得、フィルタ材料119の層間に挟み得、又はカバー材料114の層とフィルタ材料119の層との間に挟み得る。いくつかの実施形態では、こうした取り付け方法の組み合わせが使用される。
【0042】
なお、図4及び本明細書の随所(例えば図5図9)に示されているセンタリング部材110は、フレーム112及びカバー材料114から形成されているが、センタリング部材は必ずしもそのように構成される必要がないことに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、センタリング部材110全体が弾性材料などの可撓性自己拡張材料から構築されてもよく、これは送達のため管状構造に折り畳み可能であり、その後ぱっと開いて、流体を受け入れるため遠位端で広がっており、かつ、この流体の流出を可能とするため近位端に開口を有する軸方向ルーメンを有する、構造体を形成する。いくつかのこうした実施形態では、センタリング部材110は、装置の折畳み性及び拡張性を促進するプリーツ及び/又はヒンジを備え得る。
【0043】
図4では、フィルタ材料119は、センタリング装置110の近位部110pに用いているが、他の実施形態では、フィルタ材料119は、塞栓捕捉センタリング装置100の他の部分に配置し得る。
【0044】
こうした塞栓捕捉センタリング装置500の一実施形態が、図5に概略的に示されている。図4と同様に、図5の塞栓捕捉センタリング装置110は、遠位端116dを有する細長シャフト116と、細長シャフト116に取り付けられた近位部110pを有するフレア状センタリング部材110と、開放遠位端110oを有する遠位部110dとを備える。より具体的には、図示の実施形態では、センタリング部材110は、カラー112cによって細長シャフト116に取り付けられたフレア状フレーム112と、センタリング部材110の遠位部110dにおいてフレーム112を覆っているカバー材料114とを備える。センタリング部材110はまた、少なくともセンタリング部材110の遠位部110d内で、その直径が遠位から近位方向に減少する中心軸方向ルーメン110lも備える。
【0045】
図4とは異なり、図5の塞栓捕捉センタリング装置500では、フィルタ材料119は、センタリング部材110の遠位端110eから延びており、センタリング部材110の外面110sに折り重なってこれを近位側で包み込み、センタリング部材110の近位部110pにおけるフレーム112の要素間の開口に近接している位置において細長シャフト116に取り付けられる。本明細書の随所にあるとおり、フィルタ材料119は、特定の最小サイズを有する血液中の微粒子(例えば、他の可能な孔径の中でもとりわけ、50ミクロン〜200ミクロンの範囲の径の孔を有するフィルタ材料によって捕捉された微粒子)を除いて、血液を通過させることができる複数の開口を有する。いくつかの実施形態では、フィルタ材料119はカバー材料114の延長部であり得、その場合、材料に粒子のろ過特性を付与するため、その材料のフィルタ材料119に対応する領域内に開口が形成され得る。いくつかの実施形態では、フィルタ材料119は、カバー材料114とは異なる材料で形成され得、センタリング部材110の遠位端110eでフレーム112、カバー材料114、又はその両方に取り付けられ得る。
【0046】
その結果、図5の装置では、遠位から近位方向に流れてセンタリング部材110の開放遠位端110oによって受け入れられる流体は、センタリング部材110の遠位部110dにおいて中央ルーメン110lの一部分に沿って近位方向に流れ、その後センタリング部材110の近位部110p内のフレーム112の要素の間の開口112o内を通って中央ルーメン110lから出る。開口110o内を通った後、流体は、フィルタ材料119を通り、それによって、存在し得る特定の最小サイズの塞栓(例えば、他の可能な孔径の中でもとりわけ、50ミクロン〜200ミクロンの範囲の孔径の孔を有するフィルタ材料によって捕捉された塞栓)を除去する。なお、同じ流れ条件のもとで同じフィルタ材料を用いた場合は、図5のセンタリング部材110内を通る流体の流れは、図4のセンタリング部材110内を通る流体の流れよりも大きくてもよいことに留意されたい。これは、図5におけるフィルタ材料119において、流体が流れることの可能な面積が、図4よりも実質的に大きいためである。
【0047】
フィルタ材料119を配置するための様々な追加的構成もまた想定される。例えば図6Aを参照して、細長シャフト116と、細長シャフト116に取り付けられた近位部を有するフレア状センタリング部材110と、開放遠位端を有する遠位部とを含む塞栓捕捉センタリング装置600aが概略的に示されている。フレア状センタリング装置600aは、センタリング装置600aの開放遠位端におけるとある直径から、センタリング装置600aの開放遠位端に近接している位置におけるより小さい直径へ向かって先細状である、中央ルーメンを備え、また、図示した実施形態では、細長シャフト116に取り付けられてカラー112cで終端しているフレア状フレーム112を備え、カラー112cは、フレア状フレーム112と細長シャフト116との間の移行部を示している。フレア状フレーム112の最近位部は、細長シャフト116と平行であり得る。いくつかの実施形態では、例えば細長シャフト116と平行であるフレア状フレーム112の近位部の長さの少なくとも一部に延びる、またいくつかの実施形態ではその全長にわたって延びる、保持カラーが提供され得、これにより、細長シャフト116に対するフレア状フレーム112の近位端の保持が強化される。フレア状センタリング装置600aは、センタリング部材110の遠位部においてフレーム112を覆っているカバー材料114をさらに備える。
【0048】
図6Aのフィルタ材料は、1つ以上のフィルタポーチ119に具体化されており、該フィルタポーチ119は、センタリング部材110の全周にわたってセンタリング部材110に取り付けられている。センタリング部材110の開放遠位端110dによって受け入れられ、遠位から近位の方向に流れる流体は、フレーム112の要素間の開口112o内を通ってセンタリング部材110の中央ルーメンを出て、センタリング部材110の中央ルーメンの一部分に沿って近位方向に流れ、その後1つ以上のフィルタポーチ119内に入るようになり、これにより、1つ以上のポーチ119が、図示のとおり、ある程度外方向に膨らむ。それにより、存在し得る特定の最小サイズの塞栓(例えば、他の可能な孔径の中でもとりわけ、50ミクロン〜200ミクロンの範囲の径の孔を有するフィルタ材料によって捕捉される塞栓)は、フィルタポーチ119を形成するフィルタ材料を通るときに除去される。なお、図6Aの1つ以上のフィルタポーチ119は断面図で示されており、斜線部はフィルタポーチ119の中空内部を表していることに留意されたい。装置600aが単一のフィルタポーチ119を備える実施形態において、ポーチ119は、中空リング、すなわち「ドーナツ」形態である。ポーチ119は、装置600aの軸を中心として360°延びており、かつ、装置600aの軸を中心として360°延びるスロット119sを有する。該スロット119sは、ポーチ119の内部とセンタリング部材110の近位部との間に流体連通をもたらし、これによってセンタリング部材110の近位部のフレーム112の要素間の開口112o内を通って流出する全ての流体が、フィルタポーチ119内を通り、その後装置600aから出るようになる。
【0049】
図6Aの1つ以上のフィルタポーチ119の近位端(複数可)は、自由に浮遊しているが、図6B及び図6Cでは、1つ以上のフィルタポーチ119の近位端は、ある程度拘束されている。図6Bは、塞栓捕捉センタリング装置600bを示しており、1つ以上のテザー117が各1つ以上のフィルタポーチ119の近位端に取り付けられている点を除いて、図6Aのものに似てている。医療処置の間、テザー117(複数可)は、ガイドカテーテル(図示せず)内から身体の外側まで近位方向に延びており、このテザー117(複数可)は、臨床医によって操作され得る。このようにして、医療処置終了後、捕捉された微粒子を含む1つ以上のフィルタポーチ119は、テザー117(複数可)によって引き込まれ、センタリング部材110に先立ってガイドカテーテルに入ることができる。
【0050】
図6Cを参照して、同図に示す塞栓捕捉センタリング装置110は、各1つ以上のフィルタポーチ119の近位端が、細長シャフト116の長さの一部分に沿って摺動可能である摺動式部材119r(図示の実施形態ではリングの形態)に取り付けられていることを除き、図6Aのものと似ている。医療処置の間、摺動式部材119rにより、ガイドカテーテル(図示せず)をセンタリング部材600cの近位端まで(すなわち、図示の実施形態ではカラー112cまで)摺動させることができ、そのようにしてセンタリング部材600cを支持する。
【0051】
図7を参照して、同図には塞栓捕捉センタリング装置700が示されており、塞栓捕捉センタリング装置700は、細長シャフト116と、細長シャフト116に取り付けられた近位部を有するフレア状センタリング部材110と、開放遠位端110oを有する遠位部とを含む。フレア状センタリング部材110は、中央ルーメンを含み、該中央ルーメンは、センタリング部材110の開放遠位端における直径からセンタリング部材110の開放遠位端に近接している位置におけるより小さい直径に向かって先細状である。また、図示する実施形態では、(a)カラー112cによって細長シャフト116に取り付けられたフレア状フレーム112と、(b)センタリング部材110の遠位部110dでフレーム112を覆っているカバー材料114の一領域とを含む。
【0052】
図7のフィルタ材料は、拡張型ループ構造体115に取り付けられた口を有する単一のフィルタバッグ119(断面図で示されている)の形態であり、フレーム112の遠位端112dを拡張させた直径よりも大きい拡張直径を有する(したがってセンタリング部材110の拡張させた直径よりも大きい拡張直径を有する)。拡張型ループ構造体115は、センタリング部材110の遠位端110dの軸とほぼ同じである装置の軸Aに沿った長手方向位置で、拡張型ループ構造体115とフレーム112の遠位端112d(図示の実施形態では、フレーム112を形成している花弁状フレームセグメントの先端)の間に延びる一連の支持部材115sによって支持されている。これらの実施形態における拡張型ループ構造体115及び支持部材115sは、フレーム112の延長部であり、したがって、必要に応じて単一の部品又は別々の部品で作製できる。このデザインでは、遠位から近位方向に流れてセンタリング部材110の開放遠位端110oによって受け入れられる流体は、センタリング部材110の中央ルーメンの一部分に沿って近位方向に流れ、その後センタリング部材110の中央ルーメンからフレーム112の開口112o内を通って出て、フィルタバッグ119内に入る。加えて流体は、遠位から近位方向に流れてループ構造体115とセンタリング部材110の開放遠位端110oとの間の開口115o内で受け入れられ、近位方向に、かつ、直接フィルタバッグ119内に流れる。存在し得る特定の最小サイズの塞栓(例えば、他の可能な孔径の中でもとりわけ、50ミクロン〜200ミクロンの範囲の径の孔を有するフィルタ材料によって捕捉される塞栓)は、フィルタバッグ119を形成しているフィルタ材料を通るときに除去される。
【0053】
図8に示す塞栓捕捉センタリング装置800の実施形態は、拡張型ループ構造体115が、当該拡張型ループ構造体115から取り付け点Pまで延びる支持部材115mによって、センタリング部材110の遠位端110dの長手方向位置とほぼ同じ長手方向位置で支持されていることを除いて、図7と同様である。取り付け点Pは、図示のとおり細長シャフト116上に、又は例えばセンタリング部材110の近位部にあり得る。拡張型ループ115は、例えばステント様構造体(例えば精密切断管インターフェース構造体、スロット付きチューブ型構造体など)、マーカーバンド又はステンレス鋼ハイポチューブなどの金属カラー、材料の巻き付け(例えば金属ワイヤ又はポリマーワイヤ、リボン又は糸)、接着剤による接合などにより、1つ以上の支持部材115mが1つ以上の取り付け点Pに隣接しているインターフェースを介して、細長シャフト116に接続され得る。図7と同様、(a)遠位から近位方向に流れてセンタリング部材110の開放遠位端110oによって受け入れられる流体は、センタリング部材110の中央ルーメンの一部分に沿って近位方向に流れ、その後開口112o内を通ってセンタリング部材110の中央レーメンから出て、フィルタバッグ119に入る、また(b)遠位から近位方向に流れてループ構造体115とセンタリングの開放遠位端110oとの間に受け入れられる流体は、フィルタバッグ119内に近位方向に直接流れ込む。存在し得る特定の最小サイズの塞栓(例えば、他の可能な孔径の中でもとりわけ、50ミクロン〜200ミクロンの範囲の径の孔を有するフィルタ材料によって捕捉される塞栓)は、フィルタバッグ119を形成しているフィルタ材料を通るときに除去される。
【0054】
図9を参照して、塞栓捕捉センタリング装置900が示されており、塞栓捕捉センタリング装置900には、細長シャフト116、細長シャフト116に取り付けられた近位部を有するフレア状センタリング部材110、及び開放遠位端110oを有する遠位部を含む。先の実施形態と同様に、センタリング装置900は、細長シャフト116に取り付けられたフレア状フレーム112と、センタリング部材110の遠位部のフレーム112を覆っているカバー材料114の領域とを含む。しかし、図9のフィルタ材料119は、フレーム112の近位にあるフレーム113に取り付けられている。フレーム113は、図9のフレーム112のものと似たようなデザインであるが、必ずしもそうである必要はない。特定の実施形態では、装置900によって提供される塞栓防止を強化するために、フレーム113の直径は、フレーム112の直径よりも大きくあり得る。例えば、フレーム113の直径は、フレーム112の直径の50%〜200%の範囲であり得る。このデザインでは、遠位から近位の方向に流れてセンタリング部材110の開放遠位端110oによって受け入れられる流体は、センタリング部材110の中央ルーメンの一部分に沿って近位方向に流れ、その後開口112o内を通ってセンタリング部材110の中央ルーメンから出る。開口112oから出る流体が下流に進むにつれて、この流体の少なくとも一部分は、フィルタ材料119を通って流れ、存在し得る特定の最小サイズの塞栓(例えば、他の可能な孔径の中でもとりわけ、50ミクロン〜200ミクロンの範囲の径の孔を有するフィルタ材料によって捕捉される塞栓)が捕捉される。
【0055】
本明細書に記載の任意の一実施形態に関して説明した特徴の1つ以上は、本明細書に提供される他の実施形態の特徴の1つ以上と組み合わせ得ることを理解されたい。すなわち、本明細書に記載の様々な特徴を種々に組み合わせることでハイブリッドデザインを作製でき、こうしたハイブリッドデザインは本発明の範囲内である。
【0056】
前述のように、本発明による装置は、ガイドワイヤが前進する方向とは反対方向に流体が流れている弁口(心臓弁など)内を通ってカテーテルからガイドワイヤ又は他の細長い装置を前進させ、同時に、処置中に生じ得る塞栓をろ過するのに有用である。典型的な処置において、ガイドカテーテルは、臨床医によって患者に挿入される。いくつかの場合において、挿入は経皮的であり得る。いくつかの場合において、挿入は自然の身体開口又はチャネルを通してなされ得る。本発明による自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置は、カテーテルのルーメン内に薄型に収容でき、ガイドワイヤは、自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置内のルーメンを通って前進させることができる。
【0057】
使用に際し、ガイドカテーテルの遠位端は、患者の身体内の標的部位に導かれる。X線透視、MRI、又は超音波などの視覚化システムを利用して、臨床医がガイドカテーテルを所望のとおり患者内に導くことを支援できる。ガイドカテーテルの遠位端が患者の身体内の所望の部位に配置されると、臨床医は、ガイドカテーテルの遠位端から塞栓捕捉センタリング装置を配置できる。塞栓捕捉センタリング装置のセンタリング部材が、ガイドカテーテルルーメンの範囲から出ると、センタリング部材は、本明細書に記載のフレア形状に自己拡張できる。流体の流路内(心臓弁の弁口からの血流など)でガイドカテーテルによって支持されている自己拡張型塞栓捕捉センタリング装置により、センタリング部材は、ガイドカテーテルの遠位先端に向かって流れる流体の少なくとも一部分を受け入れる。センタリング部材の内面で流体が衝突することで、センタリング部材が横方向に移動し、自らを流体の流れにおいてセンタリングするようにする。流体の流れが弁口からのものであるとき、センタリング部材が横方向に動くことにより、センタリング部材が弁口に対してセンタリングされる。自己拡張塞栓捕捉センタリング装置の細長シャフトの軸が弁口でセンタリングすることで、臨床医は、細長シャフトのルーメンからガイドワイヤを突出できる。ガイドワイヤは、ルーメンから出て、弁口と位置合わせされる。このように、ガイドワイヤは、臨床医によって弁口を通って前進させられる。
図1
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図3
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図5
図6A
図6B
図6C
図7
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【国際調査報告】