特表2020-508970(P2020-508970A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-508970チモシンベータ−4を有効成分として含有する安定化外用剤
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  • 特表2020508970-チモシンベータ−4を有効成分として含有する安定化外用剤 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-508970(P2020-508970A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】チモシンベータ−4を有効成分として含有する安定化外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20200303BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20200303BHJP
   A61P 17/02 20060101ALN20200303BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20200303BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20200303BHJP
【FI】
   A61K38/22ZNA
   A61K47/02
   A61K47/18
   A61K47/26
   A61K47/10
   A61K47/32
   A61K47/38
   A61K9/06
   A61K9/10
   A61K9/08
   A61K9/12
   A61K38/19
   A61P17/02
   A61P29/00
   C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-539863(P2019-539863)
(86)(22)【出願日】2017年8月4日
(85)【翻訳文提出日】2019年7月22日
(86)【国際出願番号】KR2017008442
(87)【国際公開番号】WO2018159906
(87)【国際公開日】20180907
(31)【優先権主張番号】10-2017-0027706
(32)【優先日】2017年3月3日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】517143274
【氏名又は名称】ジー−トゥリー・ビーエヌティ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】G−TREEBNT CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ジュンウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ギョンスン
(72)【発明者】
【氏名】イ・シヨン
(72)【発明者】
【氏名】オム・テフム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA94
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC18
4C076CC19
4C076DD26Z
4C076DD38
4C076DD49
4C076DD67
4C076EE06G
4C076EE09G
4C076EE32G
4C076FF16
4C076FF17
4C076FF31
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF61
4C076FF63
4C076GG41
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA25
4C084DA07
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA27
4C084MA28
4C084NA03
4C084NA12
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB111
4C084ZB112
(57)【要約】
本発明は、チモシンベータ-4を有効成分として含有する安定化外用剤に関し、さらに詳しくは、生物学的活性および安定性が改善された治療上有効なTβ4を有する外用剤に関する。この改良により、本発明の外用剤は、Tβ4の生物活性を維持し、酸化反応に起因するTβ4スルホキシドの生成、および凝集に起因する多量体の生成を最小限に抑えることができ、安定した状態のTβ4を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チモシンベータ4(Tβ4)、Tβ4の生物活性を有するTβ4アイソフォーム、その類似体、その誘導体、Tβ4の生物活性を有するTβ4のN末端変異体、Tβ4の生物活性を有するTβ4のC末端変異体、配列番号:2によって表されるLKKTETまたはその保存的変異体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリペプチド;緩衝剤としてのリン酸塩;添加剤;および増粘剤、ここで、添加剤は、EDTA二ナトリウム二水和物、トレハロース、プロピレングリコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ならびに増粘剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される;を含む外用剤。
【請求項2】
添加剤が、EDTA二ナトリウム二水和物、プロピレングリコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、増粘剤が、カルボキシメチルセルロースである、請求項1に記載の外用剤。
【請求項3】
ポリペプチドが、0.001〜100 mg/mlの濃度で含まれる、請求項1に記載の外用剤。
【請求項4】
添加剤が、0.01〜100 mg/mlの濃度で含まれる、請求項1に記載の外用剤。
【請求項5】
添加剤が、EDTA二ナトリウム二水和物を含み、EDTA二ナトリウム二水和物が、0.05〜2.00 mg/mlの濃度で含まれる、請求項4に記載の外用剤。
【請求項6】
添加剤が、トレハロースを含み、トレハロースが、1〜50 mg/mlの濃度で含まれる、請求項4に記載の外用剤。
【請求項7】
添加剤が、プロピレングリコールを含み、プロピレングリコールが、1〜100 mg/mlの濃度で含まれる、請求項4に記載の外用剤。
【請求項8】
増粘剤が、1〜100 mg/mlの濃度で含まれる、請求項1に記載の外用剤。
【請求項9】
増粘剤が、ポリビニルアルコールを含み、ポリビニルアルコールが、1〜40 mg/mlの濃度で含まれる、請求項8に記載の外用剤。
【請求項10】
増粘剤が、カルボキシメチルセルロースを含み、カルボキシメチルセルロースが、1〜50 mg/mlの濃度で含まれる、請求項8に記載の外用剤。
【請求項11】
増粘剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、1〜100 mg/mlの濃度で含まれる、請求項8に記載の外用剤。
【請求項12】
増粘剤が、カルボマーを含み、カルボマーが、2〜35 mg/mlの濃度で含まれる、請求項8に記載の外用剤。
【請求項13】
外用剤のpHが、5〜6の範囲である、請求項1に記載の外用剤。
【請求項14】
外用剤の粘度(cP)が、25℃にて3〜100,000の範囲である、請求項1に記載の外用剤。
【請求項15】
外用剤が、ゲル、クリーム、ペースト、軟膏、リニメント、ローション、ヒドロゲルまたはエアロゾルの形態に製剤される、請求項1〜14のいずれか1つに記載の外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チモシンベータ4(Tβ4)を有効成分として含有する安定化外用剤に関する。より具体的には、本発明は、Tβ4の安定性および生物学的活性が改善された治療上有効な外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
配列番号:3で表されるチモシンベータ4(Tβ4)は、N末端でアセチル化されている43個のアミノ酸を有するペプチドである。それは、さまざまな組織や細胞型に見られる天然のペプチドである。Tβ4は、もともとカラムクロマトグラフィーとゲル濾過によってウシ胸腺から単離された(Lowら、Proc. Nati. Acad. Sci. USA、78:1162-1166(1981))。Tβ4は、1 x 10-5〜5.6 x 10-1のモル濃度でヒトの組織および細胞型の大部分に存在し、そして特に血小板、マクロファージおよび白血球に高濃度で存在する。
【0003】
円二色性研究によって同定されたように、Tβ4分子は、二次構造を有さず、非常に動的で、非構造化かつ柔軟な立体配座を有する。しかしながら、そのLKKTET(アミノ酸残基17-22)がG-アクチンと相互作用するとき、そのような相互作用が、構造化N-およびC末端ヘリックスの形成を誘導する。また、Tβ4分子の他の部分は、さまざまなアクチンサブドメインに結合する。Tβ4は、1:1の比率または伸長した立体配座でGアクチンに結合する。立体障害のために、塩誘導アクチン重合は阻止される。Tβ4は、真核細胞における主要なアクチン隔離分子である。したがって、それは、アクチン単量体の大きなプールを維持することによってアクチン細胞骨格の動態を調節するアクチンフィラメントの組み立ておよび分解を調節する。
【0004】
また、Tβ4は、創傷治癒および抗炎症性の両方の性質を有する。より具体的には、Tβ4は、ケラチノサイトおよび内皮細胞の遊走、コラーゲン沈着、および脈管形成を促進することによってその治療効果を示すことが期待される。
【0005】
Tβ4が治療薬として十分な治療効果を発揮するためには、その生物学的活性が長期間にわたって維持されるべきであるが、純度および均質性もまた維持されるべきである。しかしながら、Tβ4はポリペプチドであるので、化学的および物理的変化は、室温だけでなく冷蔵条件下でも長期保存中に起こる。これは、その生物学的活性および治療効果の低下、ならびにその分解生成物の生成を引き起こし、それは、Tβ4を含有する医薬製剤の調製を妨げる。
【0006】
これに関連して、タンパク質の分解経路は、化学的不安定性と物理的不安定性の2つの主要なカテゴリーに分類することができる。化学的不安定性は、新しい分解生成物を形成する脱アミノ化反応、またはペプチド結合の形成もしくは開裂によるタンパク質構造の改変を含むプロセスを意味する。物理的不安定性は、共有結合的修飾を含まない、変性、凝集および沈殿などを意味する(Manningら、Pharmaceutical Research、6:903-917(1989);Tallan Stain、Journal of Biological Chemistry。200:507-514(1953))。
【0007】
Tβ4の化学分解経路では、その構成アミノ酸のうち、メチオニンが酸化されてスルホキシドを形成する不純物が注目されるべきである。Tβ4スルホキシドは文献((Eur. J. Biochem. 223、345-350(1994)、Nature Medicine 5(12)、1424(1999))に報告されており、そして、Tβ4スルホキシドは、アクチン重合または抗炎症作用におけるTβ4の挙動とは異なる挙動を示すことが報告されている。したがって、Tβ4の保存中に形成されるTβ4スルホキシドは、薬理学的活性の変化を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、Tβ4を安定した状態で長期にわたり一定の薬理活性を維持できるようにするための研究を行う一方で、Tβ4を有効成分として含有し、その変性を最小化することができる製剤を調製することにより本発明を完成させた。
【0009】
したがって、本発明の目的は、Tβ4を含む安定性が改善された外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的問題を解決するために、本発明の1つの態様は、チモシンベータ4(Tβ4)、Tβ4の生物活性を有するTβ4アイソフォーム、その類似体、その誘導体、Tβ4の生物活性を有するTβ4のN末端変異体、Tβ4の生物活性を有するTβ4のC末端変異体、配列番号:2によって表されるLKKTETまたはその保存的変異体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリペプチド;緩衝剤としてのリン酸塩;添加剤;および増粘剤、ここで、添加剤は、EDTA二ナトリウム二水和物、トレハロース、プロピレングリコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ならびに増粘剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される;を含む外用剤を提供することができる。
【0011】
また、本発明のもう1つの態様では、外用剤は、ゲル、クリーム、ペースト、軟膏、リニメント、ローション、ヒドロゲルまたはエアロゾルの形態に製剤されうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による製剤は、チモシンβ4、緩衝剤としてリン酸塩、特定の濃度の添加剤および増粘剤を含むことによって、Tβ4の生物学的活性を維持し、酸化によるTβ4スルホキシドおよび凝集による多量体の生成を最小限に抑えることによって、安定状態のTβ4を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】pHによる、本発明の外用剤のTβ4の安定性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の1つの態様は、チモシンベータ4(Tβ4)、Tβ4の生物活性を有するTβ4アイソフォーム、その類似体、その誘導体、Tβ4の生物活性を有するTβ4のN末端変異体、Tβ4の生物活性を有するTβ4のC末端変異体、配列番号:2によって表されるLKKTETまたはその保存的変異体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリペプチド;緩衝剤としてのリン酸塩;添加剤;および増粘剤、ここで、添加剤は、EDTA二ナトリウム二水和物、トレハロース、プロピレングリコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ならびに増粘剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される;を含む外用剤を提供することができる。
【0015】
最も好ましくは、外用剤は、EDTA二ナトリウム二水和物、プロピレングリコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤、ならびに増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを含みうる。
【0016】
製剤は、担体として蒸留水または脱イオン水を含んでもよく、好ましくは、蒸留水を含んでもよい。
【0017】
ポリペプチドが、チモシンベータ4であるのが最も好ましく、チモシンベータ4は、配列番号:3によって表されるアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
【0018】
本明細書で用いられる用語「チモシンベータ4」は、最初に胸腺から単離され、さまざまなタイプの組織において見出された43個のアミノ酸から構成される4.9 kDaのポリペプチドである、Tβ4とも呼ばれるタンパク質を示す。タンパク質は、内皮細胞のインビトロでの遊走および分化の間にアップレギュレートされ、そしてさまざまなチモシンTβ4アイソフォームが同定されている。
【0019】
本明細書で用いられる用語「保存的変異体」は、アミノ酸残基が、異なっているが生物学的に類似の残基によって置換されている変異体を示す。保存的変異体における置換の例として、たとえば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの疎水性残基による他の残基の置換、たとえば、アルギニンによるリシンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、またはグルタミンによるアスパラギンの置換などの極性残基による他の残基の置換が挙げられる。
【0020】
本発明のTβ4は、Tβ4の既知のアミノ酸配列と、約70%、75%または80%あるいはそれ以上の配列相同性を有することができる。本発明のTβ4は、野生型Tβ4のN末端変異体およびC末端変異体に適用することができる。さらに詳しくは、それは、配列番号:1のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその保存的変異体、配列番号:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその保存的変異体でありうる。
【0021】
Tβ4アイソフォームとして、たとえば、Tβ4ala、Tβ9、Tβ10、Tβ11、Tβ12、Tβ13、Tβ14およびTβ15が挙げられる。Tβ4と同様に、Tβ10およびTβ15アイソフォーム、ならびにTβ4スプライス変異体は、アクチンを隔離するように思われる。Tβ4、Tβ10およびTβ15、ならびに他のアイソフォームは、アミノ酸配列LKKTETを共有し、アクチンの隔離または結合の媒介に関与しているように思われる。
【0022】
Tβ4アイソフォームの活性は、アクチン重合メカニズムの調節に関連する。β-チモシンは、遊離G-アクチンを隔離することによりF-アクチンを解重合するように思われる。したがって、Tβ4がアクチン重合反応を調節する能力は、アクチンに結合する活性またはLKKTET配列を介してそれを隔離する活性に関連すると思われる。したがって、Tβ4と同様に、アミノ酸配列LKKTETを有し、アクチンに結合するか、またはアクチンを隔離するか、またはアクチン重合反応を調節する、Tβ4アイソフォームなどの他のタンパク質は、本願で説明するように、単独またはTβ4と組み合わせて使用されうる。
【0023】
外用剤は、0.001〜100 mg/ml、0.01〜10 mg/ml、または好ましくは、0.1〜5 mg/mlの濃度でそのようなポリペプチドを含みうる。
【0024】
また、外用剤は、緩衝剤としてリン酸塩を含みうる。緩衝剤は、外的影響への曝露または酸もしくは塩基の添加にもかかわらず、製剤の化学的性質を可能な限り一定に保つために含められてもよい。特に、外用剤において緩衝剤としてリン酸塩を用いることによって、酸化Tβ4およびその他の不純物の形成が最小化されうる。一方、緩衝剤として、酢酸、クエン酸、ヒスチジン、炭酸水素塩、グルコン酸塩、プロピオン酸塩またはトロメタミン(TRIS)緩衝剤などが、追加的に含まれうる。
【0025】
また、外用剤は、1:30〜2:1または1:15〜1:1の重量比で、Tβ4および緩衝剤を含んでもよい。
【0026】
外用剤の保存安定性をさらに向上させるために、EDTA二ナトリウム二水和物またはEDTA、トレハロース、プロピレングリコールなどの添加剤を含めることができ、最も好ましいのはプロピレングリコールまたはプロピレングリコールとEDTA二ナトリウム二水和物の混合物である。
【0027】
外用剤は、上記添加剤を、0.01〜100 mg/mlの濃度で含むことができ、該濃度は、添加物質の種類に応じて変化させることができる。
【0028】
特に、EDTA二ナトリウム二水和物を、0.05〜2.00 mg/ml、0.07〜1.0 mg/ml、または好ましくは、0.1〜0.5 mg/mlの濃度で含めることができる。また、トレハロースを、1〜50 mg/ml、2〜30 mg/ml、または好ましくは、5〜20 mg/mlの濃度で含めることができる。また、プロピレングリコールを、1〜100 mg/ml、2〜50 mg/ml、または好ましくは、5〜20 mg/mlの濃度で含めることができる。
【0029】
また、外用剤は、上述の添加剤のうち、プロピレングリコールおよびEDTA二ナトリウム二水和物を、500:1〜1:1、300:1〜2:1、250:1〜20:1または100:1〜50:1の重量比で含んでもよい。また、外用剤は、プロピレングリコールおよびトレハロースを、20:1〜1:20、10:1〜1:10または3:1〜1:3の重量比で含んでもよい。また、外用剤は、トレハロースおよびEDTA二ナトリウム二水和物を、100:1〜1:1、50:1〜2:1、25:1〜5:1または20:1〜10:1の重量比で含んでもよい。
【0030】
一方、増粘剤を、外用剤の粘度を調節するため、および酸化酸β4およびその他の不純物の形成を最小化するために含めてもよい。増粘剤の例として、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、およびカルボマーなどを挙げることができ、これらのうち、カルボキシメチルセルロースが最も好ましい。
【0031】
外用剤は、上記増粘剤を1〜100 mg/mlの濃度で含んでもよく、その濃度は、増粘剤の種類により異なる。
【0032】
特に、ポリビニルアルコールを、1〜40 mg/ml、2〜30 mg/ml、または好ましくは、5〜20 mg/mlの濃度で含めることができる。また、カルボキシメチルセルロースを、1〜50 mg/ml、5〜40 mg/ml、または好ましくは、10〜30 mg/mlの濃度で含めることができる。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、1〜100 mg/ml、10〜100 mg/ml、または好ましくは、50〜100 mg/mlの濃度で含めることができる。また、カルボマーを、2〜35 mg/ml、5〜30 mg/ml、または好ましくは、10〜30 mg/mlの濃度で含めることができる。
【0033】
また、添加剤および増粘剤を、個別的または一緒に含めることができ、添加剤および増粘剤を、1:500〜1:1、1:300〜2:1、または1:250〜3:1の重量比で含めることができる。
【0034】
また、Tβ4安定性のために、外用剤が、添加剤としてプロピレングリコールおよびEDTA二ナトリウム二水和物、ならびに増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを含むのが好ましい。ここで、添加剤および増粘剤が、1:300〜1:2の重量比で含まれるのが好ましい。
【0035】
一方、外用剤は、少量の保存剤を含んでもよく、たとえば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン、クロロブタノールもしくはベンジルアルコールなどのアルコール、またはグアニジン誘導体であってもよく、パラベンが好ましい。
【0036】
外用剤のpHは、4〜7、4.5〜6.5、または5〜6の範囲でありうる。Tβ4スルホキシドの形成を最小化するために、pHが5〜6の範囲であるのが好ましく、5.5〜6.0の範囲であるのが最も好ましい。
【0037】
また、外用剤の粘度(cP)は、25℃にて3〜100,000の範囲であってもよく、Tβ4の安定性を維持しながら、剤形に応じてこの範囲内に調節されうる。
【0038】
外用剤の製剤は、ゲル、クリーム、ペースト、軟膏、リニメント、ローション、ヒドロゲルまたはエアロゾルでありうる。
【0039】
本発明の外用剤は、表皮損傷などの皮膚創傷の治療を必要とする対象、これらに限定されないが、たとえば、哺乳動物、より具体的には、ヒトに適用可能である。
【0040】
さらに、本発明は、皮膚の炎症または潰瘍を治療する方法であって、対象の皮膚に外用剤を投与することを含む方法を提供する。炎症または潰瘍の具体例としては、褥瘡、足部潰瘍、表皮水疱症、口腔粘膜炎、化膿性汗腺炎などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明は、皮膚の炎症または潰瘍を治療する方法であって、対象の皮膚組織内に外用剤を接触させることを含む方法を提供する。具体的には、本発明の治療方法は、直接適用によって、外用剤を含むゲル、クリーム、ペースト、軟膏、リニメント、ローション、ヒドロゲルまたはエアロゾルを皮膚組織に接触させることを含む。
【0042】
外用剤は、他の治療剤と併用して、同時にまたは連続して投与されてもよく、そして、適当な分割用量で一定期間数回投与されてもよい。具体的には、外用剤は、1週間に1回から1日に2回の間の頻度で投与することができる。
【0043】
本発明の外用剤は、経皮投与されることが好ましく、非経口投与、鼻腔内投与、粘膜投与のいずれでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
さらに、本発明は、創閉鎖および組織再生を通して皮膚損傷を治療する方法であって、対象の皮膚に外用剤を塗布することを含む方法を提供する。
【0045】
皮膚損傷の治療方法の特定の投与方法および経路は、皮膚の炎症または潰瘍の治療方法において上述したものと同じである。
【0046】
さらに、本発明は、
皮膚の炎症および潰瘍の予防または治療における使用のための、活性成分としてチモシンベータ4を含む外用剤の使用を提供する。
【0047】
さらに、本発明は、皮膚損傷の予防または治療における使用のための、活性成分としてチモシンベータ4を含む外用剤の使用を提供する。
【0048】
発明の実施の形態
以下、好ましい実施態様をさらなる説明のために提供する。しかしながら、以下の実施例は、説明の目的のためだけに与えられ、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0049】
実験例1:pHによるTβ4安定性の確認
pHによるTβ4安定性の確認のための実験を、60℃にて6日間行った。pH値2、3、6、7、および8には、50mM緩衝液として、リン酸塩を使用した。pH4および5には、酢酸塩を使用し、一方、pH9には、重炭酸ナトリウムを使用した。各緩衝液中に約0.2 mg/mLのTβ4が含まれるようにサンプルを調製し、次いで、いくつかをオートクレーブ処理した。各サンプル中の残留Tβ4を測定し、結果を図1に示す。図1に示されるように、Tβ4安定性が最も良好であるpH範囲は、pH5〜6であることを見出すことができる。
【0050】
実験例2:緩衝剤の種類によるTβ4安定性の比較
1 mg/mlの濃度で、下記表1に示された30 mMの緩衝液のそれぞれに、Tβ4を溶解し、次いで、40℃にて1週間保存した。次いで、逆相HPLCを用いて、Tβ4含有量の変化および不純物についてのピーク総量を測定した。初期サンプルと40℃にて7日間保存したサンプルのピーク面積を、標準のピーク面積と比較することによってTβ4含有量を測定し、減少率を(初期含有量−1週間後の含有量)÷初期含有量の百分率(%)として示した。
【0051】
HPLC分析中に示された全てのピーク面積に基づいて、メチオニン酸化物のピーク面積を百分率(%)として比較することにより、Tβ4酸化物(メチオニン酸化化合物)を測定した。増加率を、(1週間後の酸化物の面積(%)−酸化物の初期面積(%))÷酸化物の初期面積(%)の比として示した。
【0052】
HPLC分析中に示された全てのピーク面積に基づいて、Tβ4のものを除いたピークの面積を百分率(%)として比較することにより、総不純物を測定した。増加率を、(1週間後の総不純物の面積(%)−総不純物の初期面積(%))÷不純物の初期面積(%)の比として示した。
【0053】
【表1】
*各実験に用いた試薬の供給源は以下の通りである。
リン酸ナトリウム二塩基二水和物:シグマ-アルドリッチ、カタログ番号:71662
リン酸ナトリウム一塩基一水和物:シグマ、カタログ番号:S3522
ヒスチジン:VWR、カタログ番号:JT2080-5
クエン酸一水和物:シグマ-アルドリッチ、カタログ番号:C1909
クエン酸三ナトリウム二水和物:シグマ-アルドリッチ、カタログ番号:S4641
【0054】
表1に示されるように、Tβ4酸化物は、より低いpH(酸性)で、より増加する傾向があった。緩衝剤としてのリン酸がTβ4の安定性を維持しうることが確認された。
【0055】
実験例3:添加剤の種類によるTβ4安定性の比較
1 mg/mlの濃度で、10 mMのリン酸緩衝液に、Tβ4を溶解し、次いで、その中に、表2に示される含有量で添加剤を溶解する。各溶液中の初期状態(0日目)の不純物を、逆相HPLCを用いて測定し、次いで、40℃にて1週間保存した各溶液の不純物を、逆相HPLCを用いて測定した。
【0056】
添加剤は、最も低い添加剤濃度でのTβ4への影響を調べるために、外用剤に一般的に使用される濃度範囲のうち可能な限り低い濃度で使用された。
【0057】
HPLC分析中に示された全てのピーク面積に基づいて、Tβ4のものを除いたピークの面積を百分率(%)として比較することにより、総不純物を測定した。増加率を、(1週間後の総不純物の面積(%)−総不純物の初期面積(%))÷不純物の初期面積(%)の比として示した。
【0058】
【表2】
*各実験に用いた試薬の供給源は以下の通りである。
プロピレングリコール:アルドリッチ、カタログ番号:W294004
トレハロース:シグマ-アルドリッチ、カタログ番号:T9449
PEG(ポリエチレングリコール)40-ステアレート:TCI、カタログ番号:P0721
PEG 400:メルク、カタログ番号:807485
HPβCD:(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン:アルドリッチ、カタログ番号:332607
Tween 20:クローダ・インターナショナル・パブリック・リミテッド・カンパニー、製品コード:SD40271
EDTA 2Na:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物:シグマ、カタログ番号:E6635
【0059】
表2に示されるように、プロピレングリコール、トレハロース、およびEDTA 2 Naを添加した場合、Tβ4不純物および酸化物の形成は低かった。これらの組み合わせもまた、同様の安定化効果を示した。一方、ペプチド安定化剤であると報告されているHPβCDは効果がなく、酸化型Tβ4は、PEG型添加剤(PEG 40-ステアレート、PEG 400)で急激に増加し、不純物の総量が著しく増加することがTween 20で確認された。
【0060】
実験例4:増粘剤の種類によるTβ4安定性の比較
Tβ4をpH5.5の10mMリン酸緩衝液に1 mg/mlの濃度で溶解し、次いで、表3に示す含有量の増粘剤をその中に溶解した。各溶液中の初期状態(0日目)の不純物を、逆相HPLCを用いて測定し、次いで、40℃で1週間保存した各溶液の不純物を、逆相HPLCを用いて測定した。
【0061】
HPLC分析中に示された全てのピーク面積に基づいて、Tβ4のものを除いたピークの面積を百分率(%)として比較することにより、総不純物を測定した。増加率を、(1週間後の総不純物の面積(%)−総不純物の初期面積(%))の比率として示した。
【0062】
【表3】
*各実験に用いた試薬の供給源は以下の通りである。
PVA(ポリビニルアルコール):シグマ-アルドリッチ、カタログ番号:81365
HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース):信越、製品ID:メトローズ 90SH-100000SR
CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム):アシュランド、カタログ番号:414483
カルボマーホモポリマータイプB:Mutchler Inc.、製品コード:カルボポールMutchle
ヒアルロン酸Na:Bloomage Freda Biopharma Co. Ltd.、製品コード:HA-EP1
キサンタン:CP Kelco U.S. Inc.、マテリアル#:10054521
ポリビニルピロリドン:Alfa Aesar、カタログ番号:A14315
メチルセルロース:シグマ、カタログ番号:M0512
ポリカルボフィル:Mutchler Inc.、製品コード:Noveonhler I
ジェランガム:シグマ-アルドリッチ、カタログ番号:G1910
【0063】
表3に示されるように、サンプルがポリビニルアルコール、カルボマーホモポリマータイプBなどの添加剤、ならびにHPMCおよびCMCなどのセルロース型の添加剤を含む場合、Tβ4は安定する傾向があった。一方、ポリビニルピロリドンを含むサンプルでは、Tβ4酸化物が急激に増加したが、キサンタンとポリカルボフィルを含むサンプルでは、他の添加剤を添加した場合よりも不純物の総量が有意に増加した。ジェランガムについては、HPLC分析では見つけることができない沈殿物が形成された。
【0064】
製造例1〜4:外用剤の製造
二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(またはHPMC、カルボマー)および蒸留水をステンレス鋼製容器に入れ、完全に溶解するまで撹拌した。これに、EDTA 2Na、トレハロースまたはプロピレングリコールをゆっくり加え、攪拌した。次いで、10倍希釈した塩酸溶液を用いて、pHを5.7に調整した。この溶液に、Tβ4を添加し、pHを測定して、5〜6.0の範囲にあることを確認した。容器を減圧して調製したゲル中の気泡を除去して、表4に示す組成を有する製造例に従って、外用剤を製造した。
【0065】
【表4】
【0066】
製造例1〜4の外用剤のTβ4含有量および粘度を測定して、表5に示した。
【0067】
【表5】
【0068】
全ての製造例において、粘度は、外用剤としての使用に適したレベルであったが、含有量測定の結果から、製造例2および3の製剤の含有量が製造例1および4より低いことが明らかになった。これは、Tβ4が製造された製剤から効率的に溶出されなかったという事実によると思われる。
【0069】
実験例5:外用剤の安定性の確認
製造例1および4の外用剤の安定性を確認するために、2〜8℃で周囲相対湿度、および25℃で相対湿度60%の条件下で12ヶ月にわたって安定性試験を行った。結果を表6〜9に示した。
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
表6および7に示されるように、製剤例1および4の外用剤は、2〜8℃で保存した場合に2年間医学的使用に十分安定であり続けることが見出された。特に、製剤例4の外用剤は、25℃、60%相対湿度の比較的過酷な条件下でさえも優れた安定性を有することが見出された。
【0075】
以上、本発明の実施態様について説明したが、当業者であれば、構成要素を含むこと、修正すること、削除すること、または追加することによって、添付の特許請求の範囲に示されるような本発明の真の趣旨から逸脱することなく、本発明にさまざまな修正および変更を加えることができ、そのようなことは、本発明の範囲内に包含されると言われるべきである。
図1
【配列表】
2020508970000001.app
【国際調査報告】