特表2020-509011(P2020-509011A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-509011エリスロポエチン由来ペプチドの細胞損傷防止に対する効果を介した活用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-509011(P2020-509011A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】エリスロポエチン由来ペプチドの細胞損傷防止に対する効果を介した活用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/505 20060101AFI20200303BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20200303BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20200303BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20200303BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20200303BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200303BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20200303BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20200303BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20200303BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20200303BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20200303BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20200303BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20200303BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20200303BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20200303BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20200303BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20200303BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20200303BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20200303BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20200303BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20200303BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20200303BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20200303BHJP
【FI】
   C07K14/505
   C07K14/00ZNA
   C07K7/08
   C07K7/06
   C12N15/85 Z
   C12N5/10
   C12N15/86 Z
   C12N15/861 Z
   C12N15/864 100Z
   C12N15/867 Z
   C12N15/869 Z
   C12N7/01
   A61P9/00
   A61P25/16
   A61P25/28
   A61P25/02
   A61P25/14
   A61K38/16
   A61K35/76
   A61K35/761
   A61K35/763
   A61K35/12
   A61K48/00
   C12N15/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-546386(P2019-546386)
(86)(22)【出願日】2018年2月27日
(85)【翻訳文提出日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】KR2018002396
(87)【国際公開番号】WO2018155997
(87)【国際公開日】20180830
(31)【優先権主張番号】10-2017-0025370
(32)【優先日】2017年2月27日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.witepsol
(71)【出願人】
【識別番号】515168374
【氏名又は名称】テグ キョンブク インスティトゥート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン チェイル
(72)【発明者】
【氏名】ユ スンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー チャンホーン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー ドックホ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA97X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA23
4C084NA13
4C084ZA02
4C084ZA15
4C084ZA16
4C084ZA36
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA13
4C087ZA02
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA36
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045CA42
4H045DA13
4H045EA24
4H045FA33
(57)【要約】
当該ペプチドは、従来の天然ヒトエリスロポエチンに比べて簡単な構造を有するので、組織・血管保護膜通過が容易であり、細胞の保護活性において優秀な生理活性を有し、生産コストが少ししかかからず、経済的な長所があり、細胞増殖副作用がなく、当該エリスロポエチン由来ペプチドを有効成分として含む薬学的組成物は、脳卒中、神経系の機械的損傷または虚血性損傷、心筋梗塞、網膜損傷及び糖尿病など細胞損傷関連疾患の予防または治療、及び細胞損傷防止用薬学的組成物に有用に使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1ないし25で構成された群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列で記載されるペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、エリスロポエチンタンパク質配列から由来したことを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドは、エリスロポエチン受容体に結合することを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、アルファヘリックス構造を形成することを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドは、細胞保護活性を示すことを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドは、細胞増殖副作用がないことを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載のペプチド、前記ペプチドを暗号化する1以上のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターを含む宿主細胞を有効成分として含む退行性神経疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項8】
前記退行性神経疾患は、脳卒中、中風、心筋梗塞、痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、ピック病及びクロイツフェルト・ヤコブ病によって構成された群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項7に記載の退行性神経疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項9】
前記宿主細胞は、HEK−293E細胞、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、BHK(baby hamster kidney)細胞、NIH−3T3細胞、HEK−293T細胞またはCOS−7細胞であることを特徴とする請求項7に記載の退行性神経疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項10】
前記ベクターは、線形DNA、プラスミドDNAまたは組み換えウイルス性ベクターであることを特徴とする請求項7に記載の退行性神経疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項11】
前記組み換えウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ付属ウイルス、単純ヘルペスウイルス及びレンチウイルスから構成される群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項10に記載の退行性神経疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のペプチド、前記ペプチドを暗号化する1以上のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターを含む宿主細胞を有効成分として含む組成物を投与する段階を含む退行性神経疾患の予防または治療のための方法。
【請求項13】
退行性神経疾患の予防剤または治療剤の製造のための請求項に記載のペプチド、前記ペプチドを暗号化する1以上のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターを含む宿主細胞を有効成分として含む組成物の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年2月27日に出願された大韓民国特許出願第10−2017−0025370号を優先権として主張し、前記明細書全体は、本出願の参考文献である。
細胞増殖副作用を除去したエリスロポエチン(EPO:erythropoietin)由来ペプチド、及び前記ペプチドを含む退行性神経疾患の予防用または治療用の薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生存中、ヒトは、人体に有害な刺激に絶えず露出され、その露出に反応し、自身の体を保護する。有害な刺激には、低酸素症、感染、機械的な刺激のような多様な刺激があり、そのような刺激に反応する防御メカニズムは、細胞単位から存在する。刺激反応して示される防御メカニズムとして、分泌される多様なサイトカインは、刺激に露出されて異常が生じた細胞を死滅させたり、正常細胞の死滅を防止したりしながら、個体を保護する役割を行う。
【0003】
エリスロポエチンは、分子量が約30,000である糖蛋白質であり、赤血球を作る細胞の分化を促進し、赤血球の数を増やし、貧血の予防改善に効果がある血液造成サイトカインである。このタンパク質は、赤血球前駆細胞の受容体に接合することによって作用を始め、細胞内において、カルシウムイオンの増加、DNA生合成の増加、及びヘモグロビン生成刺激などを誘発する。従って、エリスロポエチンを、腎臓病患者の貧血、未成熟児の貧血、甲状腺機能亢進欠損(hypothyroidism)による貧血、栄養失調による貧血、慢性腎不全による貧血、手術による貧血のように、貧血を治療する薬剤としても使用される。
【0004】
最近、エリスロポエチンは、貧血治療を越え、神経系損傷を治療することができる薬剤とされている。神経系の損傷において、エリスロポエチンは、組織保護能を示し、急性心筋梗塞動物モデルにおいても、組織損傷を減らす効果を示している。
【0005】
しかし、エリスロポエチンの貧血治療効果と神経系細胞及び組織の保護能との裏面に、エリスロポエチンを人体に投与したとき、赤血球の増加と、血小板活性度の上昇が示されるということが明らかにされ、そのような副作用により、エリスロポエチンの組織保護能が相殺されてしまうという問題点が提起されている。従って、赤血球増加や血小板活性を刺激せずにも、組織保護能を維持する無シアル酸エリスロポエチン(asialo EPO)、カルバミル化エリスロポエチン(carbamylated EPO)、EPOtris、EPObisのように、エリスロポエチンの変形、またはエリスロポエチンの一部構造を利用したペプチドに係わる研究が進められている。
【0006】
そのように、エリスロポエチンは、貧血治療、神経系細胞または組織の保護能、及び心筋保護能が知られている。該エリスロポエチンは、活性が非常に高いタンパク質ではあるが、生産コストが高く、エリスロポエチンを末梢血管内に投与する場合、一部標的臓器に存在する組織・血管保護膜(tissue-blood barrier)などにより、標的臓器に輸送がなされず、薬物伝達に困難が伴う。従って、生産コストがあまりかからず、生体組織での輸送が円滑であって効果的なヒトエリスロポエチンの代替物質が要求されている。
【0007】
そのために、本発明者らは、天然ヒトエリスロポエチンの細胞または組織の保護能を維持しながら、副作用である細胞増殖を誘導せず、天然エリスロポエチンに比べて生産コストが少ししかかからず、身体内に存在する組織・血管保護膜の通過が容易であるヒトエリスロポエチン由来ペプチドを製造することにより、本発明完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一様相は、配列番号1ないし25で構成された群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列で記載されるペプチドを提供するものである。
【0009】
他の様相は、前記ペプチド、前記ペプチドを暗号化する1以上のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターを含む宿主細胞を有効成分として含む退行性神経疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供するものである。
【0010】
他の様相は、前記ペプチド、前記ペプチドを暗号化する1以上のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターを含む宿主細胞を有効成分として含む組成物を投与することを含む退行性神経疾患の予防または治療のための方法を提供するものである。
【0011】
他の様相は、退行性神経疾患の予防剤または治療剤の製造のための前記ペプチド、前記ペプチドを暗号化する1以上のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターを含む宿主細胞を有効成分として含む組成物の用途を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一様相は、配列番号1ないし25で構成された群から選択されるいずれか1以上のアミノ酸配列で記載されるペプチドを提供する。
【発明の効果】
【0013】
一様相によるペプチドは、従来の天然ヒトエリスロポエチンに比べ、簡単な構造を有するので、組織・血管保護膜(tissue-blood barrier)の通過が容易であり、細胞の保護活性において優秀な生理活性を有し、生産コストが少ししかかからず、経済的な長所がある。また、細胞増殖副作用がなく、一様相のエリスロポエチン由来ペプチドを有効成分として含む薬学的組成物は、脳卒中、神経系の機械的損傷または虚血性損傷、心筋梗塞、網膜損傷及び糖尿病のような細胞損傷関連疾患の予防または治療、及び細胞損傷防止用薬学的組成物として、有用に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】エリスロポエチン由来ペプチドがエリスロポエチン受容体に作用することができるか否かということを調べるために、SPR技法を介し、ML6−1、ML4−1、ML2−1及びML3−1の結合強度を確認したグラフである。
図1B】エリスロポエチン由来ペプチドがエリスロポエチン受容体に作用することができるか否かということを調べるために、SPR技法を介し、ML1−1、ML8−1、ML7−1及びML5−1の結合強度を確認したグラフである。
図1C】エリスロポエチン由来ペプチドがエリスロポエチン受容体に作用することができるか否かということを調べるために、SPR技法を介し、ML1、ML1−H1、ML1−H2及びML1−H3の結合強度を確認したグラフである。
図1D】エリスロポエチン由来ペプチドがエリスロポエチン受容体に作用することができるか否かということを調べるために、SPR技法を介し、ML1、ML1−C1、ML1−C2及びML1−C3の結合強度を確認したグラフである。
図2A】エリスロポエチン由来ペプチド処理を介し、過酸化水素によって活性酸素が増加された細胞において、細胞保護効果を確認したグラフであり、ML1−1、ML4−1、ML6−1及びML8−1の処理を介した効果を確認したグラフである。
図2B】エリスロポエチン由来ペプチド処理を介し、過酸化水素によって活性酸素が増加された細胞において、細胞保護効果を確認したグラフであり、ML2−1、ML3−1、ML5−1及びML7−1の処理を介した効果を確認したグラフである。 図2A及び図2Bにおいて、control(NGF):対照群であり、神経成長因子(NGF)を処理した細胞;N.C:過酸化水素処理した細胞;NGF(25ng/ml):過酸化水素処理後、神経成長因子を処理した細胞;EPO(1IU):過酸化水素処理後、天然エリスロポエチンを1IU/ml処理した実験群;0.25pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド0.25pM処理した実験群;1pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド1pM処理した実験群;2pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド2pM処理した実験群;4pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド4pM処理した実験群;である。
図2C】エリスロポエチン由来ペプチド処理を介し、過酸化水素によって活性酸素が増加された細胞において、細胞保護効果を確認したグラフであり、ML1、ML1−H1、ML1−H2及びML1−H3の処理を介した効果を確認したグラフである。
図2D】エリスロポエチン由来ペプチド処理を介し、過酸化水素によって活性酸素が増加された細胞において、細胞保護効果を確認したグラフであり、ML1、ML1−C1、ML1−C2及びML1−C3の処理を介した効果を確認したグラフである。 図2C及び図2Dにおいて、control(NGF):対照群であり、神経成長因子(NGF)を処理した細胞;N.C:過酸化水素処理した細胞;NGF(25ng/ml):過酸化水素処理後、神経成長因子を処理した細胞;EPO(1IU):過酸化水素処理後、天然エリスロポエチンを1IU/ml処理した実験群;0.25pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド0.25pM処理した実験群;1pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド1pM処理した実験群;2pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド2pM処理した実験群;10pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド10pM処理した実験群;及び100pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド100pM処理した実験群;である。
図3A】エリスロポエチン由来ML1ペプチドの一部配列変形ペプチド(ML1−L2、ML1−K2及びML1−R2)の細胞保護効果を確認したグラフであり、分化されたPC12細胞における細胞保護効果を確認したグラフである。
図3B】エリスロポエチン由来ML1ペプチドの一部配列変形ペプチド(ML1−L2、ML1−K2及びML1−R2)の細胞保護効果を確認したグラフであり、ヒトSH−SY5Y細胞における細胞保護効果を確認したグラフである。 図3A及び図3Bにおいて、control:対照群であり、何も処理していない細胞;None:過酸化水素処理した細胞;NGF(25ng/mL):陽性対照群であり、過酸化水素処理後、神経成長因子(NGF)を処理した細胞;EPO(1IU/mL):過酸化水素処理後、天然エリスロポエチンを1IU/ml処理した実験群;Scr:陰性対照群であり、過酸化水素処理後、Scr(scrambled)ペプチド1pM処理した実験群;0.1pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド0.1pM処理した実験群;1pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド1pM処理した実験群;50pM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド50pM処理した実験群;及び0.5nM:過酸化水素処理後、本発明のペプチド0.5nM処理した実験群;である。
図4】エリスロポエチン由来ML1ペプチドの一部配列変形ペプチド(ML1−L2、ML1−K2及びML1−R2)の細胞増殖率を確認したグラフである: 図4において、control:対照群であり、何も処理していない細胞;Scr:陰性対照群であり、過酸化水素処理後、Scr(scrambled)ペプチド1pM処理した実験群;1pM:本発明のペプチド1pM処理した実験群;50pM:本発明のペプチド50pM処理した実験群;0.5nM:本発明のペプチド0.5nM処理した実験群;0.5IU/mLEPO:天然エリスロポエチンを0.5IU/ml処理した実験群;1IU/mLEPO:天然エリスロポエチンを1IU/ml処理した実験群;及び10IU/mLEPO:天然エリスロポエチンを10IU/ml処理した実験群である。
図5】エリスロポエチン由来ペプチド及び一部配列変形ペプチドの細胞増殖効果を確認したグラフである。
図6】一具体例のエリスロポエチン受容体(EPOR)及びエリスロポエチン(EPD)の結合体構造及び結合ターゲット地域を図示した図面である。
図7】一具体例のアミノ酸配列の置換過程を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一様相は、配列番号1ないし25で構成された群から選択されるいずれか1以上のアミノ酸配列で記載されるペプチドを提供する。
【0016】
前記ペプチドは、エリスロポエチン(EPO:erythropoietin)タンパク質配列から由来したことを特徴とし、前記ペプチドは、エリスロポエチン受容体(EPOR)に結合することができ、アルファヘリックス構造を形成することができる。
【0017】
前記ペプチドは、細胞保護活性を示し、細胞増殖副作用がないことを特徴とする。
【0018】
一具体例のペプチドは、エリスロポエチン受容体のターゲット地域1(site 1)またはターゲット地域2(site 2)に結合することができる。
【0019】
エリスロポエチン受容体(EPOR)には、2個のターゲット地域があり、これを介して、エリスロポエチン(EPO)と結合体をなす。先行研究を介して、2個の結合ターゲット地域のうちターゲット地域1(site 1)は、強い結合をなし(KD=〜1nM)、ターゲット地域2(site 2)は、弱い結合(KD=〜1μM)をなす(図6参照)。
【0020】
エリスロポエチン受容体(EPOR)には、2個のターゲット地域があり、これを介して、エリスロポエチン(EPO)と結合体をなす。先行研究を介して、2個の結合ターゲット地域のうちターゲット地域1(site 1)は、強い結合をなし(KD=〜1nM)、ターゲット地域2(site 2)は、弱い結合(KD=〜1μM)をなす(図6参照)。本発明において、ターゲットにするターゲット地域は、弱い結合サイトであり、エリスロポエチン受容体と、本発明のペプチドとの弱い結合は、本来エリスロポエチンがその受容体と結合しながら誘導される副作用(増殖作用)を防止可能とする。エリスロポエチン受容体において重要なアミノ酸配列は、Arg103、Ser104、Leu105、Leu108及びArg110と知られており、この部分と直接結合を行うエリスロポエチンの配列を基準にターゲット地域を設定した。
【0021】
一実施例において、本発明者らは、公知された固相合成(solid phase peptide synthesis)技術により、天然エリスロポエチンの一部ターゲット地域からペプチドを合成し、ペプチドそれぞれの具体的な特性を確認した(表1及び2参照)。また、前記ML1基本配列のうち一部「LHVDKAVSGLRSLTTL」を利用し、両末端のアミノ酸を変化させたペプチドを作製した(表7参照)。
【0022】
本発明者らは、本発明のペプチドが、エリスロポエチン受容体に結合することにより、作用が可能であるということを確認した(図1、表8及び表9参照)。本発明者らは、本発明で作製したエリスロポエチン由来ペプチドが、天然エリスロポエチンのように安定したアルファヘリックスを形成することを確認した。
【0023】
本発明者らは、本発明で作製したエリスロポエチン由来ペプチドの処理を介し、過酸化水素で活性酸素増加を誘導したストレス状況において、細胞を保護することを確認した(図2及び3参照)。本発明者らは、本発明で作製したエリスロポエチン由来ペプチドの処理を介し、過酸化水素で活性酸素増加を誘導したストレス状況において、ミトコンドリア活性阻害を抑制することを確認した(図3参照)。本発明者らは、本発明で作製したペプチド(ML1−L2、ML1−K2及びML1−R2)は、細胞増殖副作用がないことを確認した(図4参照)。
【0024】
従って、本発明のペプチドは、エリスロポエチン受容体に結合が可能であり、細胞死滅を抑制し、細胞増殖副作用がないので、エリスロポエチンの代わりをすることができ、退行性神経疾患の予防または治療にも有用に使用される。
【0025】
一様相は、配列番号1ないし25で構成された群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列で記載されるペプチド、前記ペプチドを暗号化する1以上のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターを含む宿主細胞を有効成分として含む退行性神経疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0026】
前記組成物は、細胞保護活性を示し、細胞増殖副作用がないことを特徴とする。
【0027】
前記退行性神経疾患は、脳卒中、中風、心筋梗塞、痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、ピック(Pick)病及びクロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeld−Jakob)病によって構成された群からも選択される。
【0028】
前記宿主細胞は、HEK−293E細胞、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、BHK(baby hamster kidney)細胞、NIH−3T3細胞、HEK−293T細胞またはCOS−7細胞でもある。
【0029】
前記ベクターは、線形DNA、プラスミドDNAまたは組み換えウイルス性ベクターでもあり、前記組み換えウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ付属ウイルス、単純ヘルペスウイルス及びレンチウイルスから構成される群からも選択される。
【0030】
前記組成物の治療的に有効な量は、さまざまな要素、例えば、投与方法、目的部位、患者の状態などによっても異なる。従って、人体に使用するとき、投与量は、安全性及び効率性を共に考慮し、適正量に決定されなければならない。動物実験を介して決定された有効量からヒトに使用される量を推定することも可能である。有効量の決定時に考慮するそのような事項は、例えば、Hardman and Limbird, eds., Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th ed. (2001), Pergamon Press; 及びE. W. Martin ed., Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed. (1990), Mack Publishing Co. に記述されている。
【0031】
前記組成物は、また生物学的製剤に一般的に使用される担体、希釈剤、賦形剤、または2以上のそれらの組み合わせを含んでもよい。薬剤学的に許容可能な担体は、組成物の生体内伝達に適するものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、Merck Index, 13th ed., Merck & Co. Inc. に記載された化合物、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デクストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、及びそれら成分のうち1成分以上を混合して利用することができ、必要により、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤のような他の通常添加剤を添加することができる。
【0032】
また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加して添加し、水溶液・懸濁液・乳濁液のような注入用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。さらに、当分野の適正な方法、またはRemington's Pharmaceutical Science (Mack Publishing Company, Easton PA, 18th, 1990) に開示されている方法を利用し、各疾患により、または成分により、望ましく製剤化される。
【0033】
前記組成物に追加して、同一または類似した機能を示す有効成分を1種以上含んでもよい。前記組成物は、組成物総重量に対し、前記タンパク質を0.0001ないし10重量%、望ましくは、0.001ないし1重量%を含む。
【0034】
前記組成物は、目的とする方法により、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所への適用)したり経口投与することができ、投与量は、患者の体重・年齢・性別・健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、及び疾患の重症度などにより、その範囲が多様である。前記組成物の1日投与量は、0.0001〜10mg/mlであり、望ましくは、0.0001〜5mg/mlであり、1日1回ないし数回に分けて投与することがさらに望ましい。
【0035】
前記ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドを含むベクターの場合、0.05ないし500mgを含むことが望ましく、0.1ないし300mgを含むことがさらに望ましく、本発明のペプチドの暗号化は、ポリヌクレオチドを含む組み換えウイルスの場合、10〜1012IU(10ないし1010PFU)含むのが望ましく、10ないし1010IUを含むことがさらに望ましいが、それに限定されるものではない。
【0036】
また、前記ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドを含む細胞の場合、10個ないし10個を含んでもよく、例えば、10個ないし10個、10個ないし10個、または10個ないし10個でもある。
【0037】
また、前記ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドを含むベクター、または細胞を有効成分として含む組成物の有効用量は、体重1kg当たりベクターの場合には、0.05ないし12.5mg/kg、組み換えウイルスの場合には、10ないし1011ウイルス粒子(10ないし10IU)/kg、細胞の場合には、10ないし10細胞/kgであり、望ましくは、ベクターの場合には、0.1ないし10mg/kg、組み換えウイルスの場合には、10ないし1010粒子(10ないし10IU)/kg、細胞の場合には、10ないし10細胞/kgであり、1日2回ないし3回投与される。前記のような組成は、必ずしもそれらに限定されるものではなくて、患者の状態、及び神経疾患の発病程度によっても変わる。
【0038】
前記組成物は、薬学的組成物の製造に一般的に使用される適切な担体、賦形剤及び希釈制をさらに含んでもよい。前記組成物は、非経口投与することができ、非経口投与時、皮膚外用または腹腔内の注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸部内注射の注入方式を選択することが望ましいが、それらに限定されるものではない。
【0039】
前記組成物は、それぞれ通常方法により、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形態に剤形化しても使用される。前記組成物に含まれてもよい担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を有することができる。製剤化する場合には、一般的に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤のような希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁液剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用される。坐剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴ−ル、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリンジ、グリセロゼラテンなどが使用される。
【0040】
一様相は、前記ペプチド、前記ペプチドを暗号化する1以上のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターを含む宿主細胞を有効成分として含む組成物を投与する段階を含む退行性神経疾患の予防または治療のための方法を提供する。
【0041】
前記組成物の望ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び投与期間によって異なるが、当業者により、適切に選択されるのである。しかし、望ましい効果のために、前記組成物は、1日0.0001ないし1g/kgであり、望ましくは、0.001ないし200mg/kgで投与することが望ましいが、それらに限定されるものではない。前記投与は、1日に1回投与することもで、数回に分けて投与することもできる。ただし、前記投与量は、いかなる面においても、本発明の範囲を限定するものではない。また、前記治療剤は、鼠、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路で投与することができる。投与の全方式は、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)の注射によって投与することができる。
【0042】
一様相は、退行性神経疾患の予防剤または治療剤の製造のための前記ペプチド、前記ペプチドを暗号化する1以上のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記ベクターを含む宿主細胞を有効成分として含む組成物の用途を提供する。
【0043】
本発明のペプチドは、エリスロポエチン受容体に結合が可能であり、細胞死滅を抑制し、細胞増殖副作用がないので、エリスロポエチンの代わりをすることができ、退行性神経疾患の予防または治療にも有用に使用される。
【0044】
以下、本発明の理解の一助とするために、望ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をさらに容易に理解するために提供されるものであるのみ、下記実施例により、本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
実施例1.エリスロポエチン由来ペプチドの合成
本発明のエリスロポエチン由来ペプチドは、従来公知された固相合成(solid phase peptide synthesis)技術により、単量体に合成した(Peptron, Daejeon, 韓国)。
具体的には、天然エリスロポエチン受容体のターゲット地域(site 2)の配列において、重要なアミノ酸配列(Arg103、Ser104、Leu105、Leu108及びArg110)に結合することができるエリスロポエチン由来ペプチドを合成し、前記ペプチドそれぞれの具体的な特性を確認した。前記合成されたペプチドの濃度を測定するために、液体クロマトグラフィ/質量選択検出器(liquid chromatography/mass selective detector)(HP 1100 series)を利用した。純度測定は、高性能液体クロマトグラフィ(SHIMADZU prominence HPLC)分析によって行われた(>95%純度)。エリスロポエチン由来ペプチドを下記表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
エリスロポエチン由来ペプチドML1−1,ML2−1,ML3−1,ML4−1,ML5−1,ML6−1,ML7−1及びML8−1に対し、疎水性(hydrophodicity)、電荷(charge)及び等電点(pI:isoelectric point)を計算し、下記表2に示した。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例2.一部配列を利用したエリスロポエチン由来ペプチド(1)
シーケンス変化実験のために、エリスロポエチンとその受容体との結合模型は、既知の結合構造(Protein Data Bank ID:1EER)を基にした。知られたアミノ酸の特性を基に、エリスロポエチン由来ペプチドのアミノ酸を置換した。アミノ酸側鎖の極性により、4種(1.非極性あるいは疎水性、2.中性、3.負電荷、4.正電荷)に分類される。そのように、非極性(疎水性)、中性、負電荷または正電荷を帯びるアミノ酸の情報を利用し、既存のアミノ酸配列を置換して−、各特性の変化を誘導した。
ML1ペプチドの一部配列を変化させたペプチド、及びそれらの特徴を下記表3及び表4に示した。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
実施例3.一部配列を利用したエリスロポエチン由来ペプチド(2)
前記実施例2と同一ML1基本配列を利用し、ペプチドの一部アミノ酸を置換した。このとき、既存のエリスロポエチンとその受容体との結合模型を基に置換されたアミノ酸が、既存の結合形態(タンパク質間距離)またはタンパク質構造)を害しないようにした。図7は、アミノ酸配列置換の例示を示したものであり、アラニン(Ala)をアルギニン(Arg)に置換する場合、既存の結合を妨害することになるので、セリン(Ser)に置換してこそ結合邪魔をなくすことができる。
ML1ペプチドの電荷を変化させたペプチド、及びそれらの特徴を、下記表5及び表6に示した。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
実施例4.一部配列を利用したエリスロポエチン由来ペプチド(3)
前記ML1基本配列のうち一部「LHVDKAVSGLRSLTTL」を利用し、次の表7のように、両末端のアミノ酸を変化させたペプチドを作製した。
【0056】
【表7】
【0057】
[試験例]
エリスロポエチン由来ペプチドのエリスロポエチン受容体(EPOR)に対する結合親和度(binding affinity)確認
前記実施例1ないし3で作製したエリスロポエチン由来ペプチドが、ターゲット地域を有するエリスロポエチン受容体に結合して作用することができるか否かということを確認するために、SPR(surface Plasmon resonance)技法を利用し、結合強度を確認した。SPR技法は、光学的原理を利用し、特定の標識なしに、リアルタイムで、生体分子(biomolecules)間の相互作用を測定することにより、2分子間の親和力及び動力学(kinetics)、すなわち、Ka(association rate)及びKd(dissociation rate)を分析するシステムである。
【0058】
具体的には、リアルタイムSPR分析は、Reichert SPR Biosensor SR 7500C 装置(Reichert Inc., NY, 米国) を使用して行った。受容体マウスEPORキメラタンパク質(Soluble mouse EPOR chimera protein)(R&D Systems,Minneapolis,MN、米国)は、製造社のマニュアルにより、アミンカップリングキット(BR−1000−50、GE Healthcare、米国)を利用したアミンカップリング手続きにより、カルボキシメチル化されたデキストランマトリックスがコーティングされたチップ(BR−1005−39,Pharmacia Biosensor AB)上に共有結合させた。本発明の5,2.5及び1.25μMのそれぞれのペプチドサンプル、並びに混合した(scrambled)ペプチドは、5μl/分の流速で流し、実験を独立して2回反復遂行した。信号の正常化(normalize)のために、DMSOを5μl/分で流し、それぞれの結合サイクル後、センサチップは、25mMの酢酸を、20μl/分で注入することによって再生した。
【0059】
その結果、図1に示されているように、一具体例のエリスロポエチン由来ペプチド濃度により、結果値が上昇することにより、ターゲット地域を有するエリスロポエチン受容体に結合することにより、作用が可能であるということを確認した(図1)。また、表8及び9に示されているように、一具体例のエリスロポエチン由来ペプチドは、既存に知られた結合親和度(〜1μM)と類似して示されることを確認した。
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
すなわち、一具体例によるペプチドは、エリスロポエチン結合サイト(binding site)に由来したものであり、エリスロポエチン受容体に対する結合親和度が存在することを確認することができる。
【0063】
エリスロポエチン由来ペプチドの二次アルファヘリックス形成確認
本発明者らは、前記実施例1で合成したエリスロポエチン由来ペプチドが、天然エリスロポエチンのように安定したアルファヘリックス(螺旋)を形成するか否かということを調べた。
【0064】
その結果、前記実施例1で合成したエリスロポエチン由来ペプチドは、天然エリスロポエチンのような安定した二次アルファヘリックスを形成することを確認することができた。
【0065】
エリスロポエチン由来ペプチドの細胞保護効果確認(1)
前記実施例1ないし3で作製したエリスロポエチン由来ペプチドが、細胞保護効果を示すか否かということを確認するために、過酸化水素(H)で活性酸素増加を誘導したストレス状況において、細胞生存力(cell viability)を確認した。
【0066】
具体的には、細胞生存力を評価するために、MTS分析(CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay, Promega, Madison, WI、米国)を使用した。PC12細胞を96ウェルプレート(ウェル当たり5x10細胞)に接種し、150μM過酸化水素(HO2)で活性酸素増加を誘導した。その後、陽性対照群として、NGF(nerve growth factor)を25ng/ml添加し、エリスロポエチン化合物1IU/ml、実施例1のペプチドをそれぞれ0.25,1,2または4pM、実施例2及び3のペプチドの場合は、0.25,12,10または100pM、実施例4のペプチドの場合は、0.1,1、50pMまたは0.5nMを添加した後、MTS溶液20μlを各ウェルに添加して3時間置いた。初期細胞数(0時間)、及び48時間後の細胞数を測定した。細胞減少によって生成された細胞内溶解性ホルマザン(formazan)は、490nmの波長で、VERSA MAXを利用し、各96ウェルプレートの吸光度を記録することによって決定された。
【0067】
その結果、図2に示されているように、エリスロポエチン由来ペプチドは、活性酸素増加による細胞死滅から細胞を保護するということを確認した(図2)。それは、天然エリスロポエチン化合物処理による細胞保護効果に類似した結果であることを確認することができる。
【0068】
エリスロポエチン由来ペプチドの細胞保護効果確認(2)
前記実施例4で作製したエリスロポエチン由来ペプチドが、細胞保護効果を示すか否かということを確認するために、過酸化水素(H)で活性酸素増加を誘導したストレス状況において、ミトコンドリアの活性(activity)を確認した。
【0069】
具体的には、PC12細胞またはヒトSH−SY5Y細胞を、96ウェルプレート(ウェル当たり5x10細胞)に接種し、150μM過酸化水素(H)で活性酸素増加を誘導した。その後、陽性対照群として、NGF(nerve growth factor)を25ng/ml添加し、エリスロポエチン化合物1IU/ml、実施例4のペプチド0.1,1,50pMまたは0.5nMを添加した。
【0070】
ミトコンドリアの活性が抑制されれば、ミトコンドラア膜電位異常によるミトコンドリア膨潤、活性酸素種、または自由ラジカルなどによる酸化的ストレスによる機能異常、遺伝的要因による機能異常、及びミトコンドリアのエネルギー生成のための酸化的リン酸化機能の欠陥による機能異常が発生する。従って、ミトコンドリア膜電位を測定することにより、活性測定を行うことができる。ミトコンドリアにTMRM(tetramethylrhodamine methyl ester)染色を施し、ミトコンドリアの膜電圧に比例し、TMRM染色レベルが上昇するので、microplate reader(excitation,485nm;emission,535nm)を介して、TMRM染色レベルを測定することにより、細胞内ミトコンドリアの膜電圧を測定した。
【0071】
その結果、図3に示されているように、エリスロポエチン由来ペプチドは、活性酸素増加によるミトコンドリア活性阻害を抑制することを確認した(図3)。それは、天然エリスロポエチン化合物処理による効果に類似した結果であるということを確認することができる。
【0072】
エリスロポエチン由来ペプチドの細胞増殖抑制効果確認(1)
前記実施例4で作製した3個のペプチド(ML1−L2、ML1−K2及びML1−R2)の細胞増殖のような副作用を確認した。
【0073】
具体的には、細胞増殖程度を確認するために、MTS分析(CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay, Promega, Madison, WI、米国)を使用した。PC12細胞を、96ウェルプレート(ウェル当たり5x10細胞)に接種し、陰性対照群としてScr(scrambled peptide)を1pM、エリスロポエチン化合物0.5,1または10IU/ml、実施例4のペプチド1、10pM、0.5nMを添加した後、MTS溶液20μlを各ウェルに添加して3時間置いた。初期細胞数(0時間)、及び48時間後細胞数を測定した。細胞減少によって生成された細胞内溶解性ホルマザンは、490nmの波長で、VERSA MAXを利用し、各96ウェルプレートの吸光度を記録することによって決定された。
【0074】
その結果、図4で示されているように、ペプチドいずれも細胞増殖率が、対照群と類似しており、細胞増殖副作用がないということを確認した。
【0075】
エリスロポエチン由来ペプチドの細胞増殖抑制効果確認(2)
前記実施例1ないし3で作製したペプチドの細胞増殖のような副作用を確認するために、細胞生存率をMTT assay法によって評価した。
【0076】
具体的には、PC12細胞株を、10%牛胎児血清(FBS,Hyclone,UT、米国)・100unit/mlペニシリン・100ug/mlストレプトマイシン(Hyclone,UT、米国)を添加したDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)培養液(Hyclone、米国)、及びRPMI1640培養液(Hyclone、UT、米国)で、5% COが供給される培養基で、37℃条件で培養した。PC12細胞株を、5X10cells/mlの密度で、96ウェル培養プレートに分注し、24時間、37℃、5% CO条件で培養した。その後、前記細胞に、実施例1ないし3で作製したペプチドを、10ng/mlの濃度にして処理し、24時間培養した。その後、5mg/ml濃度の3−[4,5−ジメチル−チアゾール]−2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド(MTT)試薬を20μlずつ添加し、2時間反応させた。反応後、200μlのジメチルスルホキシド(DMSO)(Duksan、京畿道、韓国)を添加して形成されたホルマザンをいずれも溶かした後、マイクロプレートリーダ機(microplate reader,Molecular Devices、CA、米国)を利用して570nmで吸光度を測定した。
【0077】
その結果、図5に示されているように、ペプチドいずれもの細胞増殖率が、対照群と類似しており、細胞増殖副作用がないということを確認した。
【0078】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の当業者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずにも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的ではないということが理解されなければならないのである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2020509011000001.app
【国際調査報告】