特表2020-509573(P2020-509573A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビクトリア リンク リミテッドの特許一覧

特表2020-509573希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法
<>
  • 特表2020509573-希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法 図000003
  • 特表2020509573-希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法 図000004
  • 特表2020509573-希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法 図000005
  • 特表2020509573-希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法 図000006
  • 特表2020509573-希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法 図000007
  • 特表2020509573-希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法 図000008
  • 特表2020509573-希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法 図000009
  • 特表2020509573-希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-509573(P2020-509573A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】希土類窒化物構造体およびデバイスならびに不動態化キャッピングを除去するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/20 20060101AFI20200303BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20200303BHJP
   H01L 29/15 20060101ALI20200303BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20200303BHJP
   H01F 10/193 20060101ALI20200303BHJP
【FI】
   H01L29/20
   H01L29/06 601S
   H01L21/20
   H01F10/193
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-530428(P2019-530428)
(86)(22)【出願日】2017年12月7日
(85)【翻訳文提出日】2019年7月31日
(86)【国際出願番号】IB2017057718
(87)【国際公開番号】WO2018104899
(87)【国際公開日】20180614
(31)【優先権主張番号】16202663.7
(32)【優先日】2016年12月7日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】513123399
【氏名又は名称】ビクトリア リンク リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ナタリ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ジョン・ラック
(72)【発明者】
【氏名】ハリー・ジョセフ・トロダール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・ロス・ペン・チョン・チャン
【テーマコード(参考)】
5E049
5F152
【Fターム(参考)】
5E049AB10
5E049AC05
5E049CC01
5F152LL09
5F152MM18
5F152NN03
5F152NP09
5F152NQ09
(57)【要約】
本発明は、希土類窒化物材料、および希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピングを含む構造体またはデバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 希土類窒化物材料(3)、および
− 該希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピング(5)
を含む構造体またはデバイス(1)であって、該除去可能な不動態化キャッピング(5)は、サマリウム、ユウロピウム、ツリウム、アンチモン、ビスマス、亜鉛、ヒ素、銀、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、鉛、ナトリウム、もしくはテルルを含むもしくはそれからなる;またはインジウムだけからなる、前記構造体またはデバイス。
【請求項2】
キャッピング(5)は、エピタキシャルキャッピング層であり、またはキャッピング(5)は、多結晶もしくは非晶質キャッピング層である、請求項1に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項3】
希土類窒化物材料(3)は、以下の群:窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)から選択される希土類窒化物を含むもしくはそれからなり;
かつ/または希土類窒化物材料(3)は、以下の群:窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)から選択された任意の2種以上の希土類窒化物の希土類窒化物合金を含むもしくはそれからなる、
請求項1または2に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項4】
希土類窒化物材料(3)は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはラジウムである少なくとも1種の元素がドープされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項5】
希土類窒化物材料(3)は、少なくとも一層または複数の連続層を含み、該少なくとも一層または多層は、希土類窒化物および/または希土類窒化物の合金を含むまたはそれからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項6】
基材(9)またはテンプレート(7)をさらに含み、希土類窒化物材料(3)は、該基材(9)もしくはテンプレート(7)上に配置され、または該基材もしくはテンプレートと直接接触している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項7】
基材(9)またはテンプレート(7)、ならびに該基材(9)またはテンプレート(11)と希土類窒化物材料(3)の間に配置された少なくとも1種の追加の光学または電気的に活性な層をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項8】
除去可能な不動態化キャッピング(5)を含む希土類窒化物構造体(1)または希土類窒化物デバイス(1)を製造するための方法であって、
− 希土類窒化物材料(3)を提供する工程;および
− 該希土類窒化物材料(3)を不動態化するための除去可能なキャッピング(5)を堆積させる工程
を含み;該除去可能な不動態化キャッピング(5)は、サマリウム、ユウロピウム、ツリウム、アンチモン、ビスマス、亜鉛、ヒ素、銀、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、鉛、ナトリウム、もしくはテルルを含むもしくはそれからなり;またはインジウムだけからなる、前記方法。
【請求項9】
希土類窒化物材料(3)を不動態化するためのキャッピング(5)を除去するための方法であって、
− 希土類窒化物材料(3)および該希土類窒化物材料(3)を不動態化するための除去可能なキャッピング(5)を含む構造体またはデバイス(1)を形成する工程;ならびに
− 真空下における蒸発または昇華によって該キャッピング(5)を除去する工程
を含み;該除去可能な不動態化キャッピング(5)は、サマリウム、ユウロピウム、ツリウム、アンチモン、ビスマス、亜鉛、ヒ素、銀、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、鉛、ナトリウム、もしくはテルルを含むもしくはそれからなり;またはインジウムだけからなる、前記方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によって製造される構造体。
【請求項11】
請求項10に記載の構造体を含むデバイス。
【請求項12】
− 希土類窒化物材料(3)、および
− 該希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピング(5)
を含む構造体またはデバイス(1)であって、該キャッピング(5)は、600℃未満および200℃超の温度、1×10−4トールもしくは1.33×l0−2Paの圧力での真空下における蒸発または昇華によって除去可能な金属系キャッピングである、前記構造体またはデバイス。
【請求項13】
キャッピング(5)は、希土類窒化物材料(3)の電気および/または光学特性を改変することなく除去可能である、請求項12に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項14】
キャッピング(5)は、希土類窒化物材料(3)のバルク構造特性を改変することなく除去可能である、請求項1、12および13のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項15】
キャッピング(5)は、希土類窒化物材料(3)の格子定数の1%未満、または0.5%未満、または0.1%未満または0.05%未満の変化をもたらすために除去可能である、請求項1、12および13のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項16】
キャッピング(5)は、蒸発/昇華温度が600°C未満または500°C未満である金属系キャッピングである、請求項12〜15のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項17】
除去可能な不動態化キャッピング(5)は、サマリウム、ユウロピウム、ツリウム、アンチモン、ビスマス、亜鉛、ヒ素、銀、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、鉛、ナトリウム、もしくはテルルを含むもしくはそれからなり;またはインジウムだけからなる、請求項12〜16のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項18】
キャッピング(5)は、エピタキシャルキャッピング層であり、またはキャッピング(5)は、多結晶もしくは非晶質キャッピング層である、請求項12〜17のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項19】
希土類窒化物材料(3)は、以下の群:窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)から選択される希土類窒化物を含むもしくはそれからなり;
かつ/または希土類窒化物材料(3)は、以下の群:窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)から選択された任意の2種以上の希土類窒化物の希土類窒化物合金を含むもしくはそれからなる、
請求項12〜18のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項20】
希土類窒化物材料(3)は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはラジウムである少なくとも1種の元素がドープされている、請求項12〜19のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項21】
希土類窒化物材料(3)は、少なくとも一層または複数の連続層を含み、該少なくとも一層または多層が、希土類窒化物および/または希土類窒化物の合金を含むまたはそれからなる、請求項12〜20のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項22】
基材(9)またはテンプレート(7)をさらに含み、希土類窒化物材料(3)は、該基材(9)もしくはテンプレート(7)上に配置され、または該基材もしくはテンプレートと直接接触している、請求項12〜21のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項23】
基材(9)またはテンプレート(7)、ならびに該基材(9)またはテンプレート(11)と希土類窒化物材料(3)の間に配置された少なくとも1種の追加の光学または電気的に活性な層をさらに含む、請求項12〜20のいずれか1項に記載の構造体またはデバイス(1)。
【請求項24】
除去可能な不動態化キャッピング(5)を含む希土類窒化物構造体(1)または希土類窒化物デバイス(1)を製造するための方法であって、
− 希土類窒化物材料(3)を提供する工程;および
− 該希土類窒化物材料(3)を不動態化するための除去可能なキャッピング(5)を堆積させる工程
を含み;該キャッピング(5)は、該希土類窒化物材料(3)の電気および/もしくは光学特性を改変することなく除去可能であり;または該キャッピング(5)は、該希土類窒化物材料(3)の格子定数の1%未満、もしくは0.5%未満、もしくは0.1%未満もしくは0.05%未満の変化をもたらすために除去可能である、前記方法。
【請求項25】
除去可能な不動態化キャッピング(5)は、サマリウム、ユウロピウム、ツリウム、アンチモン、ビスマス、亜鉛、ヒ素、銀、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、鉛、ナトリウム、もしくはテルルを含むもしくはそれからなり;またはインジウムだけからなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
希土類窒化物材料(3)を不動態化するためのキャッピング(5)を除去するための方法であって、
− 希土類窒化物材料(3)および該希土類窒化物材料(3)を不動態化するための除去可能なキャッピング(5)を含む構造体またはデバイス(1)を形成する工程であり;該キャッピング(5)は、該希土類窒化物材料(3)の電気および/もしくは光学特性を改変することなく除去可能であり;または、該キャッピング(5)は、該希土類窒化物材料(3)の格子定数の1%未満、もしくは0.5%未満、もしくは0.1%未満もしくは0.05%未満の変化をもたらすために除去可能である、前記工程、ならびに
− 真空下における蒸発または昇華によって該キャッピング(5)を除去する工程
を含む、前記方法。
【請求項27】
除去可能な不動態化キャッピング(5)は、サマリウム、ユウロピウム、ツリウム、アンチモン、ビスマス、亜鉛、ヒ素、銀、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、鉛、ナトリウム、もしくはテルルを含むもしくはそれからなり;またはインジウムだけからなる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項26または27に記載の方法によって製造される構造体。
【請求項29】
請求項28に記載の構造体を含むデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体の内容が本明細書に参照によって組み込まれる、2016年12月7日出願の欧州特許出願第16202663.7号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、希土類窒化物構造体およびデバイスの分野、ならびに除去可能な不動態化キャッピングを含む希土類窒化物構造体または希土類窒化物デバイスを製造するための方法、希土類窒化物材料を不動態化するためのキャッピングを除去するための方法ならびにこれらの方法によって製造される構造体およびこのような構造体を含むデバイスに関する
【背景技術】
【0003】
希土類は、57(La)から71(Lu)の原子番号を有しており、4f軌道が満たされている元素:すなわち、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびルテチウム(Lu)を含む。
【0004】
それらは原子配置[Xe]6s4fを有し、nがCeについて1(Laについて0)からLuについて14まで変化し、ほとんどの系列が追加の5d電子を有している。それらの最も一般的なイオン電荷状態は、3+であり、4f準位はフェルミエネルギーに及ぶ。
【0005】
それらは最低限よりも多く充填されたf殻電子軌道を有する唯一の安定した元素であり、結果として、それらは最大のスピンおよび軌道モーメントを有する元素である。
【0006】
秩序固体では、それらは最も強力な強磁性材料に寄与し、強い永久磁石を必要とする技術においてそれらの実用性を確実にした寄与である。
【0007】
それらの名前にかかわらず、それらは、安定核同位体を有していないプロメチウムを除いて、決して珍しくない。
【0008】
希土類窒化物は、1960年代に最初に研究され、そのとき技術開発がランタニド系列の化学的に類似した要素を分離する際に直面する問題を克服した。希土類窒化物は、ほとんど全て強磁性であり、成長条件に強く依存して系列全体にわたって、また坑電界で強く変化する磁性状態を有する。
【0009】
希土類窒化物は、ほとんど全て典型的に1eV程度の光学的バンドギャップを有する半導体である。希土類窒化物は、ほとんど全て強磁性半導体である。
【0010】
希土類窒化物は、スピントロ二クス、赤外線(IR)検出器、およびIII族窒化物半導体化合物への接点などの多様な用途において見込みがある。例えば、希土類窒化物は、スピンフィルタージョセフソン接合、磁気トンネル接合および電界効果トランジスタ構造体の製造において使用されている。
【0011】
希土類窒化物は、しかしながら、分解および酸化する傾向がある。これを克服するために、基材上の希土類窒化物の薄膜は、一般に、周囲雰囲気との反応を避けるために有効なキャッピング層で不動態化されている。
【0012】
一連の多結晶または非晶質キャッピング層は、過去に首尾よく試され、文献に報告されており(非特許文献1)、W、Cr、Cu、TaN、NbNなどの金属層と、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、GaN、AlNおよびMgFなどの絶縁膜を含む。
【0013】
多結晶AlNおよびGaNは、光学的測定を可能にするそれらの透明性、それらの成長の容易さ、および時間の経過に伴う良好な化学安定性に帰することができる最も一般的に使用されるキャッピング層である。
【0014】
特許文献1、特許文献2および特許文献3は、周囲雰囲気との反応を避けるために、希土類窒化物の薄膜のためのキャッピング層を開示している。
【0015】
しかしながら、例えば電子構造体のためのシンクロトロン系測定および形態キャラクタリゼーションのための表面科学ツールを含む、種々の基本的なキャラクタリゼーション技術のために真空中で除去できるキャッピング層の要求がある。
【0016】
自身のスピントロニクスまたは光エレクトロニクスデバイスを続いて形成したいと願う顧客または利用者による希土類窒化物薄膜または構造体のその後の使用の要求もある。これには、例えば、後続の希土類窒化物薄膜、III族窒化物薄膜、トポロジカル絶縁体層、およびナノファブリケーションの側面(パターン形成、エッチング、接触堆積)の成長が含まれる。
【0017】
しかしながら、特許文献1、特許文献2および特許文献3で言及されているものを含めた、上述のキャッピング層の除去は、下にある希土類窒化物材料の著しく望ましくない構造および表面改質または下にある希土類窒化物材料の電気および/もしくは光学特性の改変を生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開WO 2015/152736号
【特許文献2】国際公開WO 2015/152737号
【特許文献3】米国特許US2016/181093号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】「Rare−earth mononitrides」、Prog. Mater. Sci.、58巻、8号、1316〜1360頁、2013年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
結果として、基本的なキャラクタリゼーションは、しばしば非常に限られた関心事である。それはさらに希土類窒化物薄膜または構造体の後続の使用を著しく制限する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本開示の一態様は、上記問題を克服する構造体またはデバイスを提供することである。
【0022】
構造体またはデバイスは、好ましくは希土類窒化物材料、および希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピングを含む。除去可能な不動態化キャッピングは、サマリウム、ユウロピウム、ツリウム、アンチモン、ビスマス、亜鉛、ヒ素、銀、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、鉛、ナトリウム、もしくはテルルを含むもしくはそれからなり;またはインジウムだけからなる。
【0023】
構造体またはデバイスは、好ましくは希土類窒化物材料、および希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピングを含む。キャッピングは、希土類窒化物材料の電気および/または光学特性を改変することなく除去可能である、除去可能なキャッピングである。
【0024】
本開示の別の態様によれば、構造体またはデバイスは、好ましくは希土類窒化物材料、および希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピングを含む。キャッピングは、600℃未満および200℃超の温度、1×10−4トールもしくは1.33×l0−2Paの圧力での真空下、または500℃未満および100℃超の温度、1×10−8トールもしくは1.33×l0−6Paの圧力での真空下における蒸発または昇華によって除去可能な金属系キャッピングである。
【0025】
本開示の別の態様によれば、構造体またはデバイスは、好ましくは希土類窒化物材料、および希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピングを含む。キャッピングは、希土類窒化物材料のバルク構造特性またはバルク特性を改変することなく除去可能である。
【0026】
本開示の別の態様によれば、構造体またはデバイスは、好ましくは希土類窒化物材料、および希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピングを含む。キャッピングは、希土類窒化物材料の格子定数の1%未満、または0.5%未満、または0.1%未満または0.05%未満の変化をもたらすために除去可能である。
【0027】
本開示のやはり別の態様によれば、キャッピングは、希土類窒化物材料のバルク構造特性を改変することなく除去可能である。
【0028】
本開示のさらに別の態様によれば、除去可能な不動態化キャッピングは、サマリウム、ユウロピウム、ツリウム、アンチモン、ビスマス、亜鉛、ヒ素、銀、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、鉛、ナトリウム、もしくはテルルを含むもしくはそれからなり;またはインジウムだけからなる。
【0029】
一実施形態では、キャッピングは、エピタキシャルキャッピング層である。
【0030】
別の実施形態では、キャッピングは、多結晶または非晶質キャッピング層である。
【0031】
本開示の別の態様によれば、希土類窒化物材料は、以下の群:窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)から選択された希土類窒化物を含むもしくはそれからなり;
かつ/または希土類窒化物材料は、以下の群:窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)から選択された任意の2種以上の希土類窒化物の希土類窒化物合金を含むもしくはそれからなる。
【0032】
本開示のさらに別の態様によれば、希土類窒化物材料は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはラジウムである少なくとも1種の元素がドープされている。
【0033】
本開示の別の態様によれば、希土類窒化物材料は、少なくとも一層または複数の連続層、希土類窒化物および/または希土類窒化物の合金を含むまたはそれからなる少なくとも一層または多層を含む。
【0034】
一実施形態では、構造体またはデバイスは、基材またはテンプレートを含み、希土類窒化物材料は、基材もしくはテンプレート上に配置され、または基材またはテンプレートと直接接触している。
【0035】
別の実施形態では、構造体またはデバイスは、基材またはテンプレート、ならびに基材またはテンプレートと希土類窒化物材料の間に配置された少なくとも1種の追加の光学または電気的に活性な層を含む。
【0036】
本開示のさらに別の態様によれば、除去可能な不動態化キャッピングを含む希土類窒化物構造体または希土類窒化物デバイスを製造するための方法が提供されている。この方法は、
− 希土類窒化物材料を提供する工程;および
− 希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピングを堆積させる工程
を含み;キャッピングは、希土類窒化物材料の電気および/または光学特性を改変することなく除去可能である。
【0037】
本開示の別の態様によれば、希土類窒化物材料を不動態化するためのキャッピングを除去するための方法が提供されている。この方法は、
− 希土類窒化物材料および希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピングを含む構造体またはデバイスを形成する工程であり;キャッピングは、希土類窒化物材料の電気および/または光学特性を改変することなく除去可能である、前記工程;ならびに
− 真空下における蒸発または昇華によってキャッピングを除去する工程
を含む。
【0038】
本開示の別の態様によれば、本発明は、上記方法によって製造される構造体およびこのような構造体を含むデバイスに関する。
【0039】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点ならびにそれらを実現する方法は、より明らかになるはずであり、本発明自体は、本発明のいくつかの好ましい実施形態を示す添付図面を参照して以下の説明の研究から最も理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1a】本発明の一態様に基づく例示的な構造体またはデバイスを概略的に示す図である。
図1b】本発明の別の例示的な態様に基づく別の例示的な構造体またはデバイスを概略的に示す図である。
図2】(a)Sm<1−210>方向、(b)Sm<1−100>方向に沿ったRHEEDパターンを示す図である。
図3】それぞれAlNおよびGdN層の(10−12)および(002)反射に沿った(10−12)Sm反射の非対称φ−スキャンを示す図である。
図4】本発明の一態様に基づく例示的な構造体またはデバイスを概略的に示す図である。
図5】Sm/GdN/AlN/Si(111)を含むアズグロウン(as-grown)構造体(下側曲線)およびSmキャッピング層が除去されたSm/GdN/AlN/Si(111)を含む初期構造体から形成された構造体であって、GaNキャッピング層で再キャップされた構造体(上側曲線)のω−2θスキャンを示す図である。
図6a】Sm/GdN/AlN/Si(111)を含むアズグロウン構造体(実線の曲線)およびSmキャッピング層が除去されたSm/GdN/AlN/Si(111)を含む初期構造体から形成された構造体であって、GaNキャッピング層で再キャップされた構造体(破線の曲線)の250エルステッドの印加磁場下での面内磁場−冷却(FC)磁化を示す図である。
図6b】Sm/GdN/AlN/Si(111)を含むアズグロウン構造体およびSmキャッピング層が除去されたSm/GdN/AlN/Si(111)を含む初期構造体から形成された構造体であって、GaNキャッピング層で再キャップされた構造体の5Kにおける磁場依存磁化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書において、可能ならば、図に共通の同一の要素を示すために、同一の参照符号が用いられる。
【0042】
図1aは、一実施形態に基づく例示的な構造体またはデバイス1を概略的に示す。構造体またはデバイス1は、希土類窒化物(REN)材料3、および希土類窒化物材料3を不動態化するための除去可能なキャッピング5を含む。図1aでは、希土類窒化物(REN)材料3は、例えばGdNであり、除去可能なキャッピング5は、Smキャッピングである。
【0043】
例示的に図示した構造体1は、基材9および堆積層11を含むテンプレート7をさらに含む。希土類窒化物材料3は、テンプレート9の堆積層11上に配置され、テンプレート7の堆積層11と直接接触している。
【0044】
テンプレート7は、基材9に置き換えることができる。希土類窒化物材料3はしたがって、代わりに基材9上に配置または堆積され、基材9と直接接触している。
【0045】
キャッピング5は、希土類窒化物材料3の電気および/または光学特性を(実質的に)変化または改変することなく希土類窒化物材料3から除去することができる。
【0046】
その上、キャッピング5は、希土類窒化物材料3が構造的に変化または改変することなく、すなわち、希土類窒化物材料3のバルク特性またはバルク構造特性を(実質的に)変化または改変することなく、希土類窒化物材料3から除去することができる。
【0047】
例えば、キャッピング層または材料5を除去する前の希土類窒化物材料または層3の格子定数(例えば、面外格子定数)は、キャッピング層または材料5を除去した後の希土類窒化物材料または層3の格子定数と比較したとき、1%未満、または0.5%未満、または0.1%未満または0.05%未満の変化を受ける。
【0048】
例えば、本開示に基づくキャッピング材料または層5が除去された後、希土類窒化物材料または層3を周囲雰囲気に曝露することなく除去後の格子定数を測定する。
【0049】
例えば、本開示に基づくキャッピング5材料または層の除去後、新しいキャッピング層または材料(または任意の材料もしくは層を曝露された希土類窒化物材料もしくは層3の上に生成して周囲雰囲気から保護する)を曝露された希土類窒化物材料または層3上に再度生成させた後に格子定数を測定する。代替キャッピング層または材料は、希土類窒化物材料または層3に適した任意のキャッピング層または材料であってよい。例えば、新しくキャッピングした希土類窒化物材料または層3を周囲雰囲気に曝露した後、格子定数を測定することができる。
【0050】
格子定数(例えば、面外格子定数)は、例えば、ω−2θスキャンを使用してX線回折によって測定される。
【0051】
希土類窒化物材料3のバルク特性は、キャッピング5が希土類窒化物材料3から除去されても変化しない。
【0052】
キャッピング5は、例えば、超高真空を含む真空下における蒸発または昇華によって除去することができる。
【0053】
除去可能な不動態化キャッピングまたはキャッピング層5は、サマリウム、もしくはユウロピウム、もしくはツリウム、もしくはアンチモン、もしくはビスマス、もしくは亜鉛、もしくはヒ素、もしくは銀、もしくはストロンチウム、もしくはカドミウム、もしくはカルシウム、もしくは鉛、もしくはナトリウム、もしくはテルルを含むもしくはそれだけからなり;またはインジウムだけからなる。
【0054】
除去可能な不動態化キャッピング5は、したがって、サマリウムキャッピング、ユウロピウムキャッピング、ツリウムキャッピング、単独でインジウムキャッピング、アンチモンキャッピング、ビスマスキャッピング、亜鉛キャッピング、ヒ素キャッピング、銀キャッピング、ストロンチウムキャッピング、カドミウムキャッピング、カルシウムキャッピング、鉛キャッピング、ナトリウムキャッピング、またはテルルキャッピングである。
【0055】
キャッピングまたはキャッピング層5は、例えば、好ましくは低い蒸発/昇華温度(蒸発/昇華の開始が始まる温度を意味する)を有する金属系キャッピングまたはキャッピング層(ZnOまたはGaNなどの非二元でも三元でもない合金)である。例えば、キャッピングに加えた圧力が(約)1×10−4トールもしくは1.33×l0−2Paにおいて600℃未満および200℃超、または(約)1×10−8トールもしくは1.33×l0−6Paの圧力において500℃未満および100℃超である。
【0056】
キャッピング層5は、ドープされた希土類窒化物材料または希土類窒化物材料を含むエピタキシャルであってもよい。キャッピング層5は、ドープされた希土類窒化物材料または希土類窒化物材料を含む多結晶、または非晶質であってもよい。
【0057】
キャッピング5は、したがってエピタキシャルキャッピング層または多結晶もしくは非晶質キャッピング層であってよい。
【0058】
キャッピングまたはキャッピング層の厚さは、好ましくは約1〜200nm、例えば、120〜150nmまたは約40〜50nmである。それはできるだけ薄いことが好ましいが、厚さが200nm超でも技術的に機能するはずである。
【0059】
希土類窒化物は、例えば、窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、および窒化ルテチウム(LuN)、ならびにそれらの任意の2種以上の合金からなる群から選択される。
【0060】
希土類窒化物材料3は、以下の群:窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)から選択される希土類窒化物を含むまたはそれだけからなっていてよい。
【0061】
希土類窒化物材料3は、窒化ランタン(LaN)、または窒化プラセオジム(PrN)、または窒化ネオジム(NdN)、または窒化サマリウム(SmN)、または窒化ユウロピウム(EuN)、または窒化ガドリニウム(GdN)、または窒化テルビウム(TbN)、または窒化ジスプロシウム(DyN)、または窒化ホルミウム(HoN)、または窒化エルビウム(ErN)、または窒化ツリウム(TmN)、または窒化イッテルビウム(YbN)、または窒化ルテチウム(LuN)を含むまたはそれだけからなっていてよい。
【0062】
希土類窒化物材料3は、以下の群:窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)から選択された任意の2種以上の希土類窒化物の希土類窒化物合金を追加として含んでいてよい。
【0063】
希土類窒化物材料3は、以下の群:窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)から選択された任意の2種以上の希土類窒化物の希土類窒化物合金を代わりに含むまたはそれだけからなっていてよい。
【0064】
希土類窒化物材料3は、任意の2種以上の希土類窒化物、窒化ランタン(LaN)、または窒化プラセオジム(PrN)、または窒化ネオジム(NdN)、または窒化サマリウム(SmN)、または窒化ユウロピウム(EuN)、または窒化ガドリニウム(GdN)、または窒化テルビウム(TbN)、または窒化ジスプロシウム(DyN)、または窒化ホルミウム(HoN)、または窒化エルビウム(ErN)、または窒化ツリウム(TmN)、または窒化イッテルビウム(YbN)、または窒化ルテチウム(LuN)の希土類窒化物合金を追加として含んでいてよい。
【0065】
希土類窒化物材料3は、任意の2種以上の希土類窒化物、窒化ランタン(LaN)、または窒化プラセオジム(PrN)、または窒化ネオジム(NdN)、または窒化サマリウム(SmN)、または窒化ユウロピウム(EuN)、または窒化ガドリニウム(GdN)、または窒化テルビウム(TbN)、または窒化ジスプロシウム(DyN)、または窒化ホルミウム(HoN)、または窒化エルビウム(ErN)、または窒化ツリウム(TmN)、または窒化イッテルビウム(YbN)、または窒化ルテチウム(LuN)の希土類窒化物合金を代わりに含むまたはそれだけからなっていてよい。
【0066】
希土類窒化物材料3は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムからなる周期表のII列/属からの化学元素がドープされていてよい。
【0067】
希土類窒化物材料3は、例えば希土類窒化物層または合金の1つまたはそれ以上の連続層でできていてよい。
【0068】
希土類窒化物材料またはドープされた希土類窒化物材料は、薄膜である。膜の厚さは、通常約1〜2000nmである。
【0069】
希土類窒化物材料3は、少なくとも一層または複数の連続層を含むまたはそれからなっていてよい。
【0070】
少なくとも一層または多層は、希土類窒化物および/または希土類窒化物の合金を含むまたはそれからなり、したがって希土類窒化物層であり、場合によりドープされた希土類窒化物層であってよい。
【0071】
希土類窒化物材料3は、例えばキャッピング層5がその上に直接堆積または配置される超格子であってよい。
【0072】
ドープされたまたはドープされていない希土類窒化物材料3は、エピタキシャル層であってよい。あるいは、ドープされたまたはドープされていない希土類窒化物材料3は、多結晶または非晶質層であってよい。
【0073】
構造体またはデバイス1は、エピタキシャル構造体もしくはデバイス、多結晶構造体もしくはデバイスまたは非晶質構造体もしくはデバイスであってよい。構造体またはデバイス1は、多層構造体もしくは多層デバイスであってよく、またエピタキシャル多層構造体もしくは多層デバイス、多結晶多層構造体もしくは多層デバイスまたは非晶質多層構造体もしくは多層デバイスであってもよい。
【0074】
しかしながら、構造体1は、図1の例示された実施形態に限定されず、多くの種類の異なる材料、例えばヘテロ構造から作る、またはさらに含むことができ、その上の上層がキャッピング層5を必要とする希土類窒化物材料3である。例えば、希土類窒化物を含むまたは含まない、異なる材料の1つもしくはそれ以上の層または材料は、テンプレート7または基材9と希土類窒化物層または希土類窒化物材料3の間に存在する。
【0075】
例えば、構造体またはデバイス1は、スピン−発光ダイオード(LED)であってよく、ここでLED活性部分または部位はGaN系であってよく、スピン注入部位3は、窒化ガドリニウム層3から作るまたは窒化ガドリニウムを含むことができる。LED活性部分または部位(1つまたはそれ以上の層を含み得る)は、例えばテンプレート7または基材9とスピン注入部位3の間に存在する。キャッピング層5は、スピン注入部位3を被覆し、または層もしくは材料3と直接接触している。
【0076】
構造体またはデバイス1は、したがって、少なくとも1つの追加の光学もしくは電気的に活性な層(複数可)または基材もしくはテンプレートと希土類窒化物材料3の間に配置された部位を含んでいてもよい。
【0077】
あるいは、構造体またはデバイス1は、図1bに示すとおり、REN材料または層(複数可)3/非REN材料または層(複数可)15/REN材料または層(複数可)17を含むまたはそれからなる三層超格子であり得る。このような三層超格子は、例えば、ジョセフソン接合または磁気トンネル接合を形成する。
【0078】
キャッピング5は、希土類窒化物材料層上に堆積したキャッピング層であってもよい。
【0079】
上記実施例は、非限定的な例であり、本発明は、上にキャッピング層5が堆積または形成されている希土類窒化物材料3を含むまたはそれからなる任意の構造体またはデバイス1に関することを理解されよう。
【0080】
除去可能な不動態化キャッピング5を含む希土類窒化物構造体1または希土類窒化物デバイス1を製造するための方法には、希土類窒化物材料3を提供する工程および希土類窒化物材料3を不動態化するための除去可能なキャッピング5を堆積させる工程が含まれる。
【0081】
例示的な一実施形態によれば、エピタキシャルサマリウム(Sm)膜5でキャップされたエピタキシャル窒化ガドリニウム(GdN)膜3は、従来のGdおよびSm蒸発セルを備えた分子線エピタキシーシステムで成長させた。
【0082】
受入れたままのGdおよびSm固体装入物の純度は3Nであった。GdNの成長のために使用した窒素前駆体は、純粋な分子窒素(N)ガスであった。Nの純度は、少なくとも4Nであった。エピタキシャルSm膜5でキャップしたエピタキシャルGdN 3の成長は、(111)面に沿って配向した脱酸素したシリコン基材9上に成長した厚さ100nm〜200nmのAlNバッファー層11上で実施された。
【0083】
GdN膜3は、約60nm/時の成長速度および1×10−4トールの窒素の分圧下で、650〜700℃の基材温度で成長した。GdN膜3の厚さは、約30nmである。GdN膜は、空気中での分解を回避するために、厚さ80nmのエピタキシャルSm層でキャップされた。Sm層5は、室温、通常約30℃の温度で、約150nm/hの堆積速度で成長させた。成長中の圧力は、1×10−7トールと測定された。層の厚さは、走査型電子顕微鏡およびX線反射率を含む組合せたex−situ測定によって決定された。
【0084】
この実施例においてキャッピング層が周囲温度で堆積するが、あるいは高温で堆積させることができる。高温の値は、材料によって決まる。
【0085】
上記実施例におけるREN層3は、エピタキシャルであるが、しかしながら、層3は、この成長プロセスを使用しても多結晶または非晶質にすることができる。
【0086】
多結晶または非晶質REN層は、例えば、室温または約400℃未満の温度で堆積させると得ることができる。多結晶または非晶質REN層は、例えば、多結晶もしくは非晶質基材またはテンプレート上に堆積させると得ることができる。後続のキャッピング層成長は、非晶質または多結晶キャッピング層をもたらすことになる。
【0087】
好ましくは、キャッピング層5は、金属系層である。エピタキシャル成長は次いで、金属吸着原子の表面拡散が大きいため、室温で実施される。
【0088】
上記実施例は、Smキャッピングに関する。上述された他のキャッピング層材料は、当業者に既知の真空および超高真空技術を使用して堆積させることができる。適当な技術には、パルスレーザー蒸着(PLD)およびDC/RFマグネトロンスパッタリングを含む物理蒸着(PVD)、熱蒸発、および分子線エピタキシー(MBE)があるが、それだけには限定されない。それだけには限らないが、有機金属化学気相成長(MOCVD)を含む他の技術も使用することができる。キャッピング層供給源は、成長表面に気体原子または分子をもたらすことができる物質である。成長速度は、通常約1μm/h以下である。
【0089】
図1aは、サマリウム5のエピタキシャル層が基材またはテンプレート上のGdN 3のエピタキシャル層上に堆積されており、AlNバッファー層11がシリコン9上に堆積されている構造体を示す概略断面図である。
【0090】
Sm層5のエピタキシャル特性の状態/品質は、反射高エネルギー回折(RHEED)およびX線回折の非対称φ−スキャンによって表価される。図2は、(a)Sm<1−210>方向に沿ってRHEEDパターンを示し、(b)Sm<1−100>および図3は、それぞれAlNおよびGdN層の(10−12)および(002)反射に沿った(102)Sm反射の非対称φ−スキャンを示す。測定は、周囲温度で実施する。それらの測定から推測されるエピタキシャル関係は、Sm(0001)||GdN(111)||AlN(0001)およびSm<1−210>||AlN<1−210>である。
【0091】
X線回折の非対称φ−スキャンは、分子線エピタキシーシステムから試料を取り出した後にex−situで行なった。試料の一部は、次いで、キャッピング層5を除去するために、分子線エピタキシーシステムに再導入した。
【0092】
希土類窒化物材料3を不動態化するためのキャッピング5を除去するための方法には、希土類窒化物材料および希土類窒化物材料を不動態化するための除去可能なキャッピング5を含む構造体またはデバイスを形成する工程および例えば超高真空を含む真空下での蒸発または昇華によってキャッピング5を除去する工程が含まれる。
【0093】
例示的な一実施形態によれば、Smエピタキシャルキャッピング層5は、超高真空環境内で試料を加熱することによって除去された。試料は、均一に加熱される。真空系またはチャンバー中の圧力は、通常約5×10−8トールであった。試料は、500〜550℃の温度で約45分間加熱した。
【0094】
この具体例における真空系中の圧力は、通常約5×10−8トールであった。真空系中の圧力は、好ましくは約10−3トール以下、またはより好ましくは10−5トール以下である。試料は、室温まで冷まして、代替ガリウム窒化物(GaN)キャッピング層5bを露出した/残りのGdN層3上に堆積させる。多結晶GaNキャッピング層5bは、厚さが40nmである。新しい構造体1bは、図4に概略的に示す。
【0095】
例示的な実施形態におけるキャッピング層5は、空気に曝露された後に除去される。しかしながら、これは、真空下または不活性ガスの雰囲気下で維持された構造体1で実施することができる。
【0096】
キャッピング層5は、高温で除去される。温度は、考慮される材料の蒸発/昇華の温度またはより高い温度に対応する。選択された蒸発/昇華値の温度は、チャンバー内の圧力の関数であることに留意されたい。
【0097】
キャッピング層は、真空または超高真空系中で生じる蒸発または昇華によって除去される。真空系中の圧力は、通常約10−3トール以下である。
【0098】
除去プロセスは、有利には、下層にある希土類窒化物材料または層3の構造または電気または光学特性を改変しない。
【0099】
上記実施例は、Smキャッピングの除去に関する。前述の他の金属系キャッピングの除去も、蒸発/昇華プロセスによって行なわれる。キャッピング層は、構造体を加熱することによって除去される。
【0100】
全ての場合において(Smを含む)、例えば、600℃未満および200℃超の温度で(約1×10−4トールもしくは1.33×l0−2Paの圧力をキャッピングに加えて、または500℃未満および100℃超の温度で、(約)1×10−8トールもしくは1.33×l0−6Paの圧力で、構造の加熱が実施される。
【0101】
本発明はまた、上記の除去方法によって製造されるキャッピングレス構造体に関し、構造体またはデバイスが、このキャッピングレス構造上にさらなる層を堆積することによって製造される。
【0102】
図5は、Sm/GdN/AlN/Si(111)を含むアズグロウン構造体1(下側曲線)およびSmキャッピング層5が除去され、GaNキャッピング層で再キャップされたSm/GdN/AlN/Si(111)を含む初期構造体から形成された構造体(上側曲線)のω−2θスキャンを示す。Smが除去された構造体のω−2θスキャンは、サマリウムに関連するどんなピークおよび反射も示さない。さらに、(111)GdN反射の半値全幅(FWHM)および角度位置は、蒸発プロセスの前後で比較可能である。
【0103】
初期Smキャッピング層5を有し、次いでGaNキャッピング層を有する希土類窒化物材料GdNの面外格子定数(層の表面に対して垂直な方法に沿った格子定数)は、ブラッグ−ブレンターノ条件内で従来のω−2θスキャンを使用して得られた図5の測定されたX線回折データを使用して決定された。Smキャッピング層を除去する前に、GdNについて決定または抽出された格子定数は、c=0.498560nmであり、再キャップされたGaNキャッピング層で除去した後は、c=0.498377nm、または−0.04%ほど低い変化であり、除去プロセスが希土類窒化物材料GdNの構造パラメーターを(有意に)変化させなかったことを強調している。
【0104】
ω−2θスキャンは、例えば、対称的ブラッグ−ブレンターノ幾何学的配置において、回折X線が(2θ)で検出される角度が入射角の速度(ω)の2倍で変化するプロセスとして説明することができる(散乱ベクトルが常に試料表面に垂直に向くように)。ω−2θまたは2θ−ωは、データがどの角度に対してプロットされているかを特定し;図5は、2θ−ωとしてプロットされている。
【0105】
データを得るために使用した機器は、動作電圧45kVおよび電流40mAでCuKα放射線を使用したPANalytical Xpert Pro回折計である。
【0106】
測定値は、室温、例えば、(約)20℃で得られる。
【0107】
ブラッグの法則を使用して結晶構造内で、回折ピークの角度位置により、平行平面間の距離、したがって格子定数が決定する。この決定の詳細は、例えば、Theory of X−Ray Diffraction in Crystals by William H. Zachariasen、Dover Publications、1995年で見つけることができる。
【0108】
例えば、ピーク中心は、格子定数を決定するのに使用され、例えば偽フォークト関数のようなピークモデルとデータをあてはめることによって得られる。
【0109】
図6aおよび図6bに示した磁化曲線は、Sm/GdN/AlN/Si(111)を含むアズグロウン構造体1におけるGdN層3の磁気特性が、Smキャッピング層5が除去され、GaNキャッピング層で再キャップされたSm/GdN/AlN/Si(111)を含む初期構造体から形成された構造体のものと実質的に同じであることを裏付ける。
【0110】
図6(a)は、Sm/GdN/AlN/Si(111)を含むアズグロウン構造体(実線の曲線)およびSmキャッピング層が除去され、GaNキャッピング層で再キャップされたSm/GdN/AlN/Si(111)を含む初期構造体から形成された構造体(破線の曲線)の250エルステッドの印加磁場下での面内磁場−冷却(FC)磁化を示す。キュリー温度は、GdN薄膜に従って、約70Kである。
【0111】
図6(b)は、Sm/GdN/AlN/Si(111)を含むアズグロウン構造体およびSmキャッピング層が除去され、GaNキャッピング層で再キャップされたSm/GdN/AlN/Si(111)を含む初期構造体から形成された構造体の5Kにおける磁場依存磁化を示す。磁気モーメントは、ガドリニウムイオン当たり約6.5ボーア磁子であり、GdN膜に従って、坑電界は約250エルステッドである。
【0112】
本明細書に記載のデバイス、方法および技術の種々の態様は、単独で使用しても、組み合わせて使用しても、または前述の詳細に記載されている実施形態において具体的に議論していない種々の構成で使用してもよく、したがって、前述の説明または図面記載されている要素の詳細および構成への適用に限定されない。例えば、一実施形態で説明した態様は、他の実施形態で説明した態様と任意の方法で組み合わせることができる。本発明をある特定の好ましい実施形態に関して開示してきたが、本発明の領域および範囲から逸脱することなく、説明した実施形態およびその均等物について多くの変更、修正、および変化が可能である。特に、任意の一実施形態の特徴は、任意の他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。したがって、本発明は上記の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の文言に従って、最も広範な合理的解釈を提供するものとする。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
【国際調査報告】