特表2020-510041(P2020-510041A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-510041薬理学的に活性な脂環式置換ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-510041(P2020-510041A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(54)【発明の名称】薬理学的に活性な脂環式置換ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20200306BHJP
   C07D 491/147 20060101ALI20200306BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20200306BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20200306BHJP
【FI】
   C07D487/04 144
   C07D491/147CSP
   A61K31/519
   A61P25/22
   A61P25/24
   A61P25/28
   A61P25/08
   A61P21/02
   A61P25/04
   A61P3/04
   A61P11/06
   A61P11/14
   A61P13/00
   A61P1/04
   A61P1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2019-549366(P2019-549366)
(86)(22)【出願日】2018年3月12日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月7日
(86)【国際出願番号】IB2018051599
(87)【国際公開番号】WO2018167630
(87)【国際公開日】20180920
(31)【優先権主張番号】P1700108
(32)【優先日】2017年3月13日
(33)【優先権主張国】HU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】310008859
【氏名又は名称】リヒター ゲデオン エヌワイアールティー.
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ボルザ、イシュトバーン
(72)【発明者】
【氏名】ロマーン、ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】エーレシュ、ヤーノシュ
(72)【発明者】
【氏名】ハダディ、ジュジャ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC05
4C050DD08
4C050EE03
4C050FF02
4C050FF04
4C050GG04
4C050HH01
4C050HH04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086CB22
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA23
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA70
4C086ZA81
(57)【要約】
本発明は、GABA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターとして機能する、式(I)の新規ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物に関する。本発明はまた、かかる化合物の製造方法に関する。本発明はさらに、任意に2種以上の異なる治療薬と組み合わせたかかる化合物を含む医薬組成物、およびGABA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターによって媒介および調節される疾患および状態を治療する方法におけるかかる化合物の使用に関する。本発明はまた、かかる障害の治療に有用な薬剤の製造方法を提供する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物;
【化1】
[式中、
およびRは、独立して、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルから選択され;
は、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、シアノ基であり;
は、C1〜6アルキルであり;
は、1個または複数個のハロゲン原子で場合により置換されていてもよいC1〜6アルキル、C3〜5シクロアルキル;C3〜5シクロアルキルC1〜6アルキル、ジアルキルアミノ、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ基、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロフラニルC1〜6アルキル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピラニルC1〜6アルキルであり;
またはRおよびRは一緒になって、置換されていないか、もしくは1個以上のC1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、ハロC1〜3アルキル、C1〜3アルキルカルボニルで置換されている3〜7員飽和環を形成し、ここで、環員は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン原子またはC1〜6アルキル、ヒドロキシル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルまたはアミノ基である]
またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物。
【請求項2】
およびRは、独立して、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルから選択され;
は、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、シアノ基であり;
は、C1〜6アルキルであり;
は、1個または複数個のハロゲン原子で場合により置換されていてもよいC1〜6アルキル、C3〜5シクロアルキル;C3〜5シクロアルキルC1〜6アルキル、ジアルキルアミノ、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ基、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロフラニルC1〜6アルキル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピラニルC1〜6アルキルであり;
は、水素、ハロゲン原子またはC1〜6アルキル、ヒドロキシル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルまたはアミノ基である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物。
【請求項3】
およびRは、独立して、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルから選択され;
は、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、シアノ基であり;
は、C1〜6アルキルであり;
およびRは一緒になって、置換されていないか、もしくは1個以上のC1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、ハロC1〜3アルキル、C1〜3アルキルカルボニルで置換されている3〜7員飽和環を形成し、ここで、環員は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン原子またはC1〜6アルキル、ヒドロキシル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルまたはアミノ基である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物。
【請求項4】
は、メチルであり;Rは、イソプロピルまたはC1〜6アルコキシC1〜6アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
以下の群:
(3S)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−(プロパン−2−イル)ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−メチル−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−プロピルピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−プロピルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−(フルオロメチル)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−3−(フルオロメチル)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−メチル−1−[(8S)−8−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン−9−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−メチル−1−[(8R)−8−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン−9−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−3−メチル−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−3−エチル−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−エチル−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−(プロパン−2−イル)ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−1−[3−フルオロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[3−フルオロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−3−エチル−1−[3−フルオロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−エチル−1−[3−フルオロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−1−{3−フルオロ−6−メトキシ−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−{3−フルオロ−6−メトキシ−5−メチル−2−[トランス−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−3−エチル−1−{6−メトキシ−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−エチル−1−{6−メトキシ−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−1−{3−フルオロ−6−メトキシ−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−{3−フルオロ−6−メトキシ−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−3−エチル−1−{3−フルオロ−6−メトキシ−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−エチル−1−{3−フルオロ−6−メトキシ−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−{6−エチル−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−エチル−1−{6−エチル−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル}ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−1−[2−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[2−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−1−[2−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−エチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[2−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−エチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[2−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−5,6−ジエチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−メチル−1−{2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン−9−イル}ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−メチル−1−{5−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−2,6,7−トリアザトリシクロ[7.5.0.03,7]テトラデカ−1,3,5,8−テトラエン−8−イル}ピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−3−メチル−1−{5−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−11−オキサ−2,6,7−トリアザトリシクロ[7.4.0.03,7]トリデカ−1,3,5,8−テトラエン−8−イル}ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−3−メチル−1−{5−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−12−オキサ−2,6,7−トリアザトリシクロ[7.4.0.03,7]トリデカ−1,3,5,8−テトラエン−8−イル}ピペリジン−3−カルボン酸
(3S)−1−[3−シアノ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[3−シアノ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[2−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−3−フルオロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
(3R)−1−[6−(2−メトキシエチル)−5−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸
から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の式(I)の化合物を調製する方法において、
工程1)式(II)のカルボン酸エステル誘導体または式(III)のカルボン酸塩化物誘導体:
【化2】
[式中、RおよびRは、前記式(I)の化合物について上で定義したものを意味する]
を、式(IV):
【化3】
[式中、Rは、前記式(I)の化合物について上で定義したものを意味する]
のアセトニトリル誘導体と反応させ、次いで、
工程2)こうして得られた式(V):
【化4】
のアシルアセトニトリル誘導体を、
2a)ヒドラジン水和物と反応させて式(VI):
【化5】
[式中、R、Rは、上で定義したものを意味し、Rは、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル基である]
の化合物を提供するか、または
2b)オルトギ酸トリメチルと反応させて式(XIV):
【化6】
[式中、R、Rは、上で定義したものを意味し、Rは、シアノ基である]のマロノニトリル誘導体を提供し、この誘導体をヒドラジン水和物と反応させて式(VI):
【化7】
の化合物を提供し、次いで、
工程3)2a)または2b)に記載される前記工程に従って得られた前記式(VI)[式中、R、R、Rの意味は、前記式(I)について上に記載している]の化合物を、式(VII):
【化8】
[式中、RおよびRは、前記式(I)について上で定義したものを意味する]
のアシル酢酸エステル誘導体と反応させ、次いで、
工程4)こうして得られた式(VIII):
【化9】
[式中、R、R、R、RおよびRは、前記式(I)について上で定義したものを意味する]
の化合物を塩素化して式(IX):
【化10】
[式中、R、R、R、RおよびRは、前記式(I)について上で定義したものを意味する]
のクロロ誘導体を得て、
工程5)後者を、
5c)式(X):
【化11】
[式中、Rは、前記式(I)について上で定義したものを意味する]
のニペコチン酸誘導体と反応させ、得られた前記式(I)の誘導体およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩を、所定の場合、新しい置換基の導入および/または既存の置換基の修飾または除去によって前記式(I)の他の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩に変換することができ、または
5d)式(XI):
【化12】
[式中、Rは、前記式(I)について上で定義したものを意味する]
のそのアルカリ金属塩と反応させ、得られた前記式(I)の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩を、場合により、新しい置換基の導入および/または既存の置換基の修飾または除去によって前記式(I)の他の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩に変換することができ、または
5e)式(XII):
【化13】
[式中、Rは、前記式(I)について上で定義したものを意味する]
のニペコチン酸エステル誘導体と反応させて式(XIII):
【化14】
[式中、R、R、R、R、RおよびRは、前記式(I)について上で定義したものを意味する]
のエステル誘導体を提供し、最終的に後者を強塩基または強酸で鹸化し、得られた前記式(I)の誘導体およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩を、場合により、新しい置換基の導入および/または既存の置換基の修飾または除去によって前記式(I)の他の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩に変換することができる、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
有効成分として請求項1に記載の治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物と1つ以上の治療効果のある共薬剤とを含む、組み合わせ物。
【請求項9】
有効成分として請求項1に記載の治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物ならびにその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩と薬学的に許容される賦形剤とを混合することを特徴とする、GABA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター効果を有する医薬組成物の製造方法。
【請求項10】
GABA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターとして使用するための、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物。
【請求項11】
GABA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター活性に関連する障害の治療または予防に使用するための、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物。
【請求項12】
請求項11に記載の使用のための、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物であって、ここで、障害は、精神障害(不安、パニック障害、心的外傷後障害、うつ病、統合失調症など)、神経発達障害(自閉症スペクトラム障害、強迫性障害、脆弱X症候群など)、認知障害、てんかん、痙縮、骨格筋硬直、脊髄損傷、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳性麻痺、本態性振戦、疼痛(神経障害性疼痛、内臓痛、変形性関節症)、薬物乱用(コカイン、ニコチン、アルコール)、肥満、過食、喘息、咳、尿失禁、胃食道逆流症、一過性下部食道括約筋弛緩、過敏性腸症候群の群から選択される、化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の有効量の式(I)の化合物および光学対掌体またはラセミ体および/もしくはその塩をそのままでまたは治療対象の哺乳類に医薬品として通常適用される薬学的に許容される助剤などと組み合わせて投与することを特徴とする、GABA受容体のポジティブアロステリック調節を必要とする障害の治療および/または予防方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、ここで、障害は、精神障害(不安、パニック障害、心的外傷後障害、うつ病、統合失調症など)、神経発達障害(自閉症スペクトラム障害、強迫性障害、脆弱X症候群など)、認知障害、てんかん、痙縮、骨格筋硬直、脊髄損傷、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳性麻痺、本態性振戦、疼痛(神経障害性疼痛、内臓痛、変形性関節症)、薬物乱用(コカイン、ニコチン、アルコール)、肥満、過食、喘息、咳、尿失禁、胃食道逆流症、一過性下部食道括約筋弛緩、過敏性腸症候群の群から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GABA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターとして機能する、式(I)の新規ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物に関する。本発明はまた、かかる化合物の製造方法に関する。本発明はさらに、任意に2種以上の異なる治療薬と組み合わせたかかる化合物を含む医薬組成物、およびGABA受容体ポジティブアロステリックメカニズムによって媒介および調節される疾患および状態を治療する方法におけるかかる化合物の使用に関する。本発明はまた、かかる障害の治療に有用な薬剤の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
γ−アミノ酪酸(GABA)は、中枢神経系の主要な抑制性神経伝達物質であり、神経活動の調節に重要な役割を果たす。該物質がその作用を発揮するのは、3つの受容体系、関連するイオンチャネル型GABAおよびGABA受容体、ならびに別個の代謝型GABA受容体を介してである(Hill and Bowery,Nature 1981,290,149−152)。後者のGABA受容体は、哺乳類の中枢神経系内に広く分布しており、異なる脳領域で様々な発現レベルを示す(Bovery et al,Neuroscience 1987,20,365−385)。GABA受容体は、シナプス前後の両方に見出すことができ、神経伝達の微調整に重要な役割を果たす。たいていのGABA受容体は、シナプス前終末の端部またはグルタミン酸作動性ボタンの反対側の樹状突起スパインのいずれかで興奮性シナプスの周囲に密集する(Ulrich and Bettler,Curr.Opin.Neurobiol.2007,17,298−303)。
【0003】
GABA受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)のファミリー3(C)に属し、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)、カルシウム感知受容体、味覚受容体および多数のオーファン受容体とともに、mGluRsに最高で約30%の相同性を示す(Bettler et al,Physiol.Rev.2004,84,835−867)。GABA受容体は、2つの類似した、とはいえ異なるサブユニットB1とB2から構成されるヘテロダイマーである。B1サブユニットは、複数のスプライシングバリアントを有し、2つ(B1aおよびB1b)だけが明確な生理学的意義を有する。これらのアイソフォームは、受容体の細胞内局在を調整する2つのSushi motifを含む細胞外ドメインのみが異なる(Vigot et al,Neuron 2006,50,589−601;Biermann et al、J.Neurosci.2010,30,1385−1394)。B1サブユニットは、内因性神経伝達物質リガンドGABAならびに他のオルソステリックアゴニスト(バクロフェン、SKF97541など)およびアンタゴニスト(ファクロフェン、サクロフェンなど)にも結合する。B2サブユニットは、Gタンパク質活性化を介した細胞内シグナル伝達の要因であり、アロステリックモジュレーターに結合すると考えられている(Binet et al,J.Biol.Chem.2004,279,29085−29091;Dupuis et al,Mol.Pharmacol.2006,70,2027−2036)。ノバルティス社のGABAポジティブアロステリックモジュレーター化合物CGP7930およびGS39783の作用部位は、B2サブユニットのヘプタヘリックス膜貫通ドメインである;他の関連のないポジティブアロステリックモジュレーターケモタイプの正確な結合部位は知られていない。
【0004】
GABA受容体の主なシナプス効果は、神経伝達物質放出のシナプス前遮断(GABAならびにグルタミン酸)およびシナプス後過分極である(Gassmann and Bettler,in Handbook of Contemporary Neuropharmacology 2007)。これらの効果は、それぞれシナプス前カルシウム流入の抑制とシナプス後内向き整流カリウム(GIRK)チャネルの刺激との結果である。イオンチャネル機能は、G/Gタンパク質のβγサブユニットの活性化を通じて膜局在的に媒介される。これらに加えて、GABA受容体は、アデニル酸シクラーゼを抑制してシナプス小胞の動員を遅らせる同じGタンパク質のαサブユニットを介してシグナルも送る(Chalifoux and Carter,Curr.Opin.Neurobiol.2011,21,339−442)。これらの高速細胞イベントの他に、GABA受容体は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼを含む細胞質キナーゼも調整し、それによって長期的にシナプス可塑性に影響を与える。
【0005】
行動レベルでのGABA受容体の生理学的意義をより理解しやすくするために、B1、B1a、B1bおよびB2サブユニットに選択的に変異を持つノックアウトマウスが生成されていた。B1サブユニットを持たないマウスは、探索的な状況(明暗ボックス、階段アッセイ)で不安の増加、パニックの増加、自発性発作、痛覚過敏、過運動、および記憶障害を示した(Schuler et al,Neuron 2001,31,47−58)。GABA2サブユニットを発現しないマウスは、B1サブユニットノックアウトと同様に行動する;これらの動物は過度に不安がり、自発性発作活動、痛覚過敏、過運動、および記憶障害を示す(Mombereau et al,Eur.J.Pharmacol.2004,497,119−120;Mombereau et al,Neuroreport 2005,16,307−310;Gassmann et al,J.Neurosci.2004,24,6086−6097)。上記に基づいて、GABA受容体系は、顕性行動の様々な側面に影響を及ぼす神経興奮性の調整に一般的な役割を果たすとされる。
【0006】
唯一承認され、商品化されている選択的GABA受容体リガンドは、オルソステリックアゴニストのラセミ体バクロフェンである。バクロフェンは、脳性麻痺、多発性硬化症、および脊髄損傷に関連する痙縮を軽減するために使用される中枢作用性筋弛緩薬として承認された。これらの用途の他に、バクロフェンは、喘息、疼通、肥満、過食症、薬物およびアルコール乱用、不安、心的外傷後ストレス障害、咳、炎症、胃食道逆流および尿失禁を含む状態を治療するのに潜在的な治療効果をもたらす可能性がある(例えば、Breslow et al,Am.J.Psychiatry 1989,146,353−356;Drake et al,Ann.Pharmacother.2003,37,1177−1181;Leggio et al,CNS Neurol.Disord.Drug Targets 2010,9,33−44)。バクロフェンは多くの治療適応において有益な可能性を秘めているが、残念ながら、血液脳関門透過不良、治療域の狭さ、受容体脱感作、主な効果に対する耐性の発生、および使用終了時の取出しを含む様々な望ましくない特性も有している(Vacher and Bettler,Curr.Drug Targets CNS Neurol.Disord.2003,2,248−259; Ross et al,Neurocrit.Care 2011,14,103−108; Keegan et al,Neuropharmacology 2015,95,492−502)。
【0007】
アロステリック調節は、オルソステリックリガンドの望ましくない特性を持たずにGPCRを選択的に刺激する代替方法である(Conn et al,Nat Rev 2009,8,41−54;Wang et al,J.Pharmacol.Exp.Ther.2009,331,340−348)。アロステリックモジュレーターは、内因性(オルソステリック)リガンドの結合部位とは異なる部位で受容体に結合し、主にアゴニストが受容体にも結合している場合に効果的である。これは、有効性の時間的および空間的パターンに影響を及ぼし、該パターンはまた生物がアロステリック刺激に与える行動および適応反応に影響を与える。オルソステリックアゴニズムとは対照的に、ターゲットのアロステリック調節は、副作用、脱感作および耐性の発生が少ないことが期待される。実際、前臨床モデルのGABA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターGS39783については、この化合物が好ましい副作用プロファイルを有し(Cryan et al,J.Pharmacol.Exp.Ther.2004,310,952−963)、受容体の脱感作を防ぐことができ(Gjoni and Urwyler,Neuropharmacology 2008,55:1293−1299)、慢性投与において耐性が発生しないことが示されていた(Mombereau et al,Neuropsychopharmacology 2004,29,1050−1062)。これらの結果は、GABA受容体のポジティブアロステリックモジュレーターが、バクロフェンなどのオルソステリックリガンドの望ましくない特性を持たない有用な新規化学物質であり得ることを示唆している。
【0008】
いくつかの特許および特許出願には、異なる化学構造を有するポジティブアロステリックGABAモジュレーターが記載されている。GABA受容体のポジティブアロステリックモジュレーターとしてのピリミジン誘導体は、国際公開第2005/094828号および国際公開第2006/136442号に開示されている。GABA受容体のポジティブアロステリックモジュレーターとしてのチエノ[3,2−b]ピリミジン誘導体および[1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン誘導体は、国際公開第2015/056771号(米国特許出願公開第2015/0111876号明細書)に開示されている。
【0009】
Faghih et al.による最近の特許出願(米国特許出願公開第2016/0304527号明細書)は、[35S]GTPγS結合によって測定されたGABA受容体でのin vitroポジティブアロステリック活性を有するピラゾロ−ピリミジンを記載している。
【化1】
【0010】
Faghih et al.には、高いマイクロモル結合能を有する脂環式置換化合物が1つだけ実証されており(例7−1)、他の例示された化合物はアリール置換されており、マイクロモルまたはサブマイクロモルの結合能しか示していない。予期せぬことに、本発明においては、シクロヘキシル部分を有する化合物が、同様のアッセイパラダイムで測定されたナノモルまたはサブナノモルの効力を示すことが見出された。
【化2】
【0011】
Faghih et al.の発明は、3個または4個の炭素原子を含むリンカー(L1)を組み込むことでin vitro効力が増加することを記載している。1個または2個の炭素原子を含むリンカーを有する例示されたアリール置換化合物のほとんどは、マイクロモルまたはサブマイクロモルの結合効力のみを示す(例1−1)。しかしながら、3個または4個の炭素原子を含むリンカーを持つ例示された化合物(例3−1;例5−1)のみがナノモル効力に達する。予期せぬことに、本発明では、リンカーを全く持たない化合物はナノモルまたはサブナノモルの効力を示すことが見出された。
【化3】
【0012】
Faghih et al.におけるアゼチジンカルボン酸(例8−10)またはニペコチン酸アミド(例1−19)部分を含む例示された化合物は、高いマイクロモル効力のみを示している。予期せぬことに、本発明では、単純なニペコチン酸部分を有する化合物がナノモルまたはサブナノモルの効力を示すことが見出された。これらの化合物は、酸性ニペコチン酸部分を持っているにもかかわらず代謝的に安定しており、予期せぬことに脳に浸透する(薬物分子の脳浸透の原理は、以下に要約されている:Kerns et al.Drug−like Properties:Concepts,Structure Design and Methods Chapter:Blood−Brain Barrier pages 122−136“Figure 10.12:Acids poorly penetrate the BBB(Blood Brain Barrier)(CNS−)”)。
【0013】
上記のin vitroの利点は、発明の選択された化合物が自閉症スペクトラム障害の中核症状を再現する出生前バルプロ酸疾患モデルにおいて行動上の大きな利益になるという予期せぬ発見によってさらに強化される。したがって、本発明者らは、この化合物がヒトの自閉症スペクトラム障害の中核症状の治療に治療的可能性を有することを示した。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、シクロヘキシル−ピラゾロ−ピリミジン骨格を有するニペコチン酸誘導体を開示する。これらの化合物は主にナノモルの効力を示し、特定の場合にはサブナノモルの効力範囲にさえ達することが見出された。酸性ニペコチン酸部分を有しているにもかかわらず、これらの化合物は、酸性ニペコチン酸部分を持っているにもかかわらず代謝的に安定しており、予期せぬことに脳に浸透する(薬物分子の脳浸透の原理は、以下に要約されている:Kerns et al.Drug−like Properties:Concepts,Structure Design and Methods Chapter:Blood−Brain Barrier pages 122−136)。ピラゾロピリミジンコアと付加されたシクロヘキシル環との間に炭素リンカーを有しないこれらの化合物は、ナノモルの効力を示す。ピラゾロ−ピリミジン骨格の6位のアルキル置換基(米国特許出願公開第20160304527号明細書のR3)は、in vitroで少なくとも2桁分の効力を増加させることが予期せぬことに確かめられた。我々の化合物は、in vivoアッセイにおいて低経口投与(1mg/kg)で大きな効果量(80〜100%に達する)を示す。
【0015】
我々は、精神障害、神経発達障害、神経障害および他の中枢神経系障害ならびに周辺状態の治療にも独自の役割を提供するGABA受容体に高い親和性を有するピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体のクラスを特定し、ここで、GABA受容体の刺激は治療効果を提供することができる。
【0016】
我々は、脳浸透剤である新規化合物を特定した。本発明は、GABA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターである化合物およびその合成に関する。本発明の化合物は、精神障害、神経発達障害、神経障害および他の中枢神経系障害ならびに周辺状態の治療にも有用であり、ここで、GABA受容体の刺激は治療効果を提供することができる。
【0017】
本発明は、式(I)のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体;
【化4】
[式中、
およびRは、独立して、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルから選択され;
は、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、シアノ基であり;
は、C1〜6アルキルであり;
は、1個または複数個のハロゲン原子で場合により置換されていてもよいC1〜6アルキル、C3〜5シクロアルキル;C3〜5シクロアルキルC1〜6アルキル、ジアルキルアミノ、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ基、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロフラニルC1〜6アルキル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピラニルC1〜6アルキルであり;
またはRおよびRは一緒になって、置換されていないか、もしくは1個以上のC1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、ハロC1〜3アルキル、C1〜3アルキルカルボニルで置換されている3〜7員飽和環を形成し、ここで、環員は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン原子またはC1〜6アルキル、ヒドロキシル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルまたはアミノ基である]
またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物に関する。
【0018】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物を含む医薬組成物に関する。
【0019】
本発明はさらに、式(I)の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくはその塩の合成、それを含む医薬組成物、およびこれらの化合物を含む薬剤の化学的および薬剤的な製造、ならびにこれらの化合物による治療方法に関し、該方法は、精神障害、神経発達障害、神経障害およびその他の中枢神経系障害ならびに周辺状態を患っている−ヒトを含む−治療対象哺乳類に、本発明の式(I)の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくはその塩の有効量をそのままでまたは薬剤として投与することを意味し、GABA受容体の刺激は治療効果を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、式(I)のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体;
【化5】
[式中、
およびRは、独立して、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルから選択され;
は、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル、シアノ基であり;
は、C1〜6アルキルであり;
は、1個または複数個のハロゲン原子で場合により置換されていてもよいC1〜6アルキル、C3〜5シクロアルキル;C3〜5シクロアルキルC1〜6アルキル、ジアルキルアミノ、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ基、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロフラニルC1〜6アルキル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピラニルC1〜6アルキルであり;
またはRおよびRは一緒になって、置換されていないか、もしくは1個以上のC1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、ハロC1〜3アルキル、C1〜3アルキルカルボニルで置換されている3〜7員飽和環を形成し、ここで、環員は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン原子またはC1〜6アルキル、ヒドロキシル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキルまたはアミノ基である]
またはその薬学的に許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、プロドラッグ、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和物および水和物に関する。
【0021】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を指す。
【0022】
本明細書において使用される「C1〜6アルキル」という用語は、これらに限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ノルマル基およびイソプロピル基ならびに異なるブチル基を含む1〜6個の炭素原子を含む分枝鎖または直鎖アルキル基を指す。
【0023】
本明細書において使用される「C3〜シクロアルキル」という用語は、それぞれ3〜5個の炭素の炭素環式基を指す;例えば、シクロプロピル、シクロブチルおよびシクロペンチル。
【0024】
本明細書において使用される「C1〜アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して結合した1〜4個の炭素原子を含む分岐鎖または直鎖アルキル基を指し、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、およびt−ブトキシを含むが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において使用される「C1〜アルキルチオ」という用語は、硫黄原子を介して結合した1〜6個の炭素原子を含む分枝鎖または直鎖アルキル基を指し、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、i−プロピルチオおよびt−ブチルチオを含むが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書において使用される「哺乳類」という用語は、「哺乳類」に属する任意の動物を指し、ヒトを含むが、これに限定されない。
【0027】
「塩」という用語は、酸を適切な有機塩基または無機塩基と反応させることによって一般に調製される本発明の化合物の非毒性の塩基付加塩を意味する。
【0028】
式(I)の化合物のあらゆる立体異性体、幾何異性体および互変異性形態(2つ以上のタイプの異性を示す化合物およびそれらの1つ以上の混合物を含む)が、本発明の範囲内に含まれる。
【0029】
個々のエナンチオマーの調製/分離のための従来の技術には、光学的に純粋な適切な前駆体からのキラル合成、または、例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用したラセミ体(または塩もしくは誘導体のラセミ体)の分離が含まれる。
【0030】
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の調製に有用であり、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではない成分を表し、獣医学的使用だけでなくヒトの薬学的使用にも許容されるものを含む。
【0031】
「医薬組成物」という用語は、本発明の化合物と、薬学的に許容される補助材料、例えば希釈剤または担体などの他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、対象への化合物の投与を促進する。
【0032】
「賦形剤」という用語は、細胞または組織への化合物の組み込みを促進する化合物を定義する。
【0033】
本明細書において使用される「治療」という用語は、GABA受容体ポジティブアロステリックメカニズムによって媒介および調節される疾患および状態に関連する症状を軽減、緩和または排除するための効果的な治療の使用を意味する。
【0034】
本発明の更なる態様として、式(I)の化合物の合成が提供される。
【0035】
本発明による化合物を、以下に記載される合成経路およびスキームに沿って合成した。
【0036】
したがって、本発明の式(I)の化合物は、以下の経路の1つによって合成することができる:
【化6】
【0037】
工程1) 式(II)のカルボン酸エステル誘導体または式(III)のカルボン酸塩化物誘導体
【化7】
[式中、RおよびRの意味は、式(I)の化合物について上に記載している]を、式(IV)
【化8】
[式中、Rの意味は、式(I)の化合物について上に記載している]のアセトニトリル誘導体と反応させ、次いで、
工程2)こうして得られた式(V)
【化9】
のアシルアセトニトリル誘導体を、
2a)ヒドラジン水和物と反応させて式(VI)
【化10】
[式中、R、Rの意味は、上に記載しており、Rは、水素、ハロゲン原子、C1〜6アルキル基である]の化合物を提供するか、または
2b)オルトギ酸トリメチルと反応させて式(XIV)
【化11】
[式中、R、Rの意味は、上に記載しており、Rは、シアノ基である]のマロノニトリル誘導体を提供し、この誘導体をヒドラジン水和物と反応させて式(VI)
【化12】
の化合物を提供し、次いで、
工程3)2a)または2b)に記載される工程に従って得られた式(VI)[式中、R、R、Rの意味は、式(I)について上に記載している]の化合物を、式(VII)
【化13】
[式中、RおよびRの意味は、式(I)について上に記載している]のアシル酢酸エステル誘導体と反応させ、次いで、
工程4)こうして得られた式(VIII)
【化14】
[式中、R、R、R、RおよびRの意味は、式(I)について上に記載している]を塩素化して式(IX)
【化15】
[式中、R、R、R、RおよびRの意味は、式(I)について上に記載している]のクロロ誘導体を得て、
工程5)後者を、
5c)式(X)
【化16】
[式中、Rの意味は、式(I)について上に記載している]のニペコチン酸誘導体と反応させ、得られた式(I)の誘導体およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩を、所定の場合、新しい置換基の導入および/または既存の置換基の修飾または除去によって式(I)の他の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩に変換することができ、または
5d)式(XI)
【化17】
[式中、Rの意味は、式(I)について上に記載している]のそのアルカリ金属塩と反応させ、得られた式(I)の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩を、所定の場合、新しい置換基の導入および/または既存の置換基の修飾または除去によって式(I)の他の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩に変換することができ、または
5e)式(XII)
【化18】
[式中、Rの意味は、式(I)について上に記載している]のニペコチン酸エステル誘導体と反応させて式(XIII)
【化19】
[式中、R、R、R、R、RおよびRの意味は、式(I)について上に記載している]のエステル誘導体を提供し、最終的に後者を強塩基または強酸で鹸化し、得られた式(I)の誘導体およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩を、場合により、新しい置換基の導入および/または既存の置換基の修飾または除去によって式(I)の他の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩に変換することができる。
【0038】
アシルアセトニトリル誘導体(V)の合成は、種々の経路で行うことができる:
経路a):
a)式(II)のカルボン酸エステル誘導体と式(IV)のアセトニトリル誘導体との反応は、適切な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中で、好ましくは強塩基、例えばn−ブチルリチウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドの存在下で行うことが好ましい。反応は、−78℃〜室温の範囲の温度で行う。必要な反応時間は1〜16時間である。反応に続けて薄層クロマトグラフィーを行う。水と塩酸(pH約2〜3)または飽和塩化アンモニウム溶液を加えて反応を停止させる。適切な有機溶媒を用いた抽出によってか、または濾過によって、該有機溶媒を除去した後に生成物(V)を単離する。
b)式(III)のカルボン酸塩化物誘導体と式(IV)のアセトニトリル誘導体との反応は、適切な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中で、好ましくは強塩基、例えばn−ブチルリチウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドの存在下で行うことが好ましい。反応は、−78℃〜室温の範囲の温度で行う。必要な反応時間は1〜16時間である。反応に続けて薄層クロマトグラフィーを行う。水と塩酸(pH約2〜3)または飽和塩化アンモニウム溶液を加えて反応を停止させる。適切な有機溶媒を用いた抽出によってか、または濾過によって、該有機溶媒を除去した後に生成物(V)を単離する。
【0039】
式(V)のアシルニトリル誘導体とヒドラジン水和物との式(VI)のピラゾール誘導体への環化縮合反応は、適切な溶媒、例えばエタノール中で行うことが好ましい。反応は、溶媒の沸点で行うことが好ましい。必要な反応時間は1〜6時間である。反応に続けて薄層クロマトグラフィーを行なう。反応混合物の後処理は、以下の経路で行うことができる:
a)反応混合物を水で希釈し、生成物を濾過または適切な有機溶媒を用いた抽出によって単離し、所定の場合、結晶化またはカラムクロマトグラフィーによって精製する。
b)反応混合物を真空で蒸発させ、粗生成物をさらに精製することなく次の工程で使用する。
【0040】
経路b):
式(III)のカルボン酸塩化物誘導体とマロノニトリルとの反応は、適切な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中で、好ましくは塩基、例えばトリエチルアミンの存在下で行うことが好ましい。反応は、0℃〜室温の範囲の温度で行う。必要な反応時間は1〜16時間である。反応に続けて薄層クロマトグラフィーを行う。水を加えて反応を停止させる。適切な有機溶媒を用いた抽出によって生成物(V)を単離する。
【0041】
式(V)のアシルマロノニトリル誘導体のオルトギ酸トリメチルによるO−メチル化は、沸点で行うことが好ましい。必要な反応時間は1〜16時間である。反応に続けて薄層クロマトグラフィーを行う。カラムクロマトグラフィーによって生成物(XIV)を精製する。
【0042】
式(XIV)のO−メチル化アシルニトリル誘導体とヒドラジン水和物との式(VI)のピラゾール誘導体への環化縮合反応は、適切な溶媒、例えばエタノール中で行うことが好ましい。反応は、室温で行うことが好ましい。必要な反応時間は1〜6時間である。反応に続けて薄層クロマトグラフィーを行う。反応混合物を水で希釈し、適切な有機溶媒で抽出することによって生成物を単離する。
【0043】
式(VI)の1H−ピラゾール−5−アミン誘導体と式(VII)のアセト酢酸エステル誘導体との環化縮合反応は、適切な溶媒、例えばトルエン中で、ディーン・スターク水分離器を使用して触媒量のp−トルエンスルホン酸を加えて行うことが好ましい。反応は、溶媒の沸点で行うことが好ましい。必要な反応時間は1〜16時間である。反応に続けて薄層クロマトグラフィーを行う。濾過によって生成物(VIII)を単離する。
【0044】
式(VIII)のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体の塩素化は、適切な溶媒、例えばトルエン中で、適切な塩素化剤、例えばオキシ塩化リンを使用して、トリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンを加えて行うことができる。反応は、溶媒の沸点で行うことが好ましい。必要な反応時間は24〜48時間である。反応に続けて薄層クロマトグラフィーを行う。反応混合物を炭酸水素ナトリウム溶液と砕氷に注ぐ。分解した反応混合物を濾過し、適切な有機溶媒を用いた抽出によって生成物を濾液から単離し、所定の場合、結晶化またはカラムクロマトグラフィーによって精製する。カラムクロマトグラフィーは、吸着剤としてKieselgel 60および異なる溶媒系、例えば溶離液としてのn−ヘキサン/酢酸エチル、トルエン/メタノール、クロロホルム/メタノールまたはトルエン/アセトンを使用して順相で行う。
【0045】
式(X)または(XII)のニペコチン酸誘導体と式(IX)のクロロ誘導体とのN−アリール化反応は、適切な溶媒、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン中で行う。反応は、80℃〜140℃で行うことが好ましい。式(X)または(XII)の適切なアミンは、塩基としてまたは無機酸と形成された塩として、アミンの遊離に必要な塩基、例えば炭酸セシウムまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下で、そのようにして得られた溶液に加えるか、または無機塩基、例えば式(XI)のカリウム塩と形成される。反応に続いて薄層クロマトグラフィーを行う。必要な反応時間は3〜20時間である。反応混合物の後処理は、種々の方法で行うことができる。
【0046】
N−アリール化生成物が式(I)の酸誘導体であり、反応混合物が懸濁液である場合、無機塩を濾別し、濾液を水で希釈し、酢酸で酸性化する。生成物は、濾過または適切な有機溶媒を用いた抽出によって単離し、所定の場合、結晶化またはカラムクロマトグラフィーによって精製する。反応混合物が溶液の場合、水で希釈し、酢酸で酸性化する。生成物は、濾過または適切な有機溶媒を用いた抽出によって単離し、所定の場合、結晶化またはカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0047】
N−アリール化生成物が式(XIII)のエステル誘導体である場合、反応混合物は真空で蒸発する。生成物は、結晶化または適切な有機溶媒を用いた抽出によって単離し、所定の場合、再結晶化またはカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0048】
式(XIII)のカルボン酸エステル誘導体の式(I)のカルボン酸誘導体への加水分解は、適切な強無機塩基、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウムを用いて、または適切な強無機酸、例えば塩酸を用いて行うことができる。反応は、室温〜100℃の間で行うことが好ましい。反応に続けて薄層クロマトグラフィーを行う。必要な反応時間は1〜20時間である。反応混合物を水で希釈し、酢酸で酸性化する。生成物は、濾過または適切な有機溶媒を用いた抽出によって単離し、所定の場合、結晶化またはカラムクロマトグラフィーによって精製する。生成物の構造は、NMRおよび質量分析によって決定する。
【0049】
式(X)および(XII)のニペコチン酸誘導体のほとんどは、市販されているか、または種々の既知の方法で合成することができる。式(XII)のいくつかの新しいニペコチン酸誘導体の合成については、中間セクションで記載している。
【0050】
本発明の化合物およびその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩は、そのままでまたは適切に医薬組成物の形態で使用することができる。
【0051】
本発明はまた、GABA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター活性に関連する特定の障害の治療のための、有効成分として式(I)の化合物またはその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩を含む医薬組成物に関する。
【0052】
本化合物は、2つ以上の異なる治療薬(例えば、最も好ましくは抗精神病薬および精神刺激薬;および好ましくは抗うつ薬、抗不安薬、降圧薬、抗けいれん薬、鎮静薬および麻薬)と組み合わせて対象に共投与してもよい。
【0053】
適切な投与経路には、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、経皮投与または経腸投与;筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、髄内注射、ならびに関節内注射、脊髄内注射、直接脳室内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射および点眼投与を含む非経口投与が含まれ得る。
【0054】
あるいは、例えば、しばしばデポー製剤または徐放製剤において、腎臓域または心臓域に直接化合物を注射することにより、全身よりも局所的に化合物を投与してもよい。さらに、標的薬物送達システム、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームにおいて薬物を投与してもよい。リポソームは臓器を標的とし、臓器によって選択的に取り込まれるであろう。
【0055】
医薬組成物は、様々な経路および剤形を通じて投与することができる。本発明の化合物は、単回投与または反復投与のいずれかで、単独でまたは薬学的に許容される担体と組み合わせて投与してもよい。治療効果を発揮するために必要な投与量は、広い範囲内で変化してよく、疾患の病期、状態および治療対象患者の体重、ならびに有効成分に対する患者の感受性、投与経路および毎日の治療回数に応じて、特定の各ケースの個々の要件に適合されるであろう。
【0056】
単純な投与のために、医薬組成物が1回、またはその数倍またはその半分、三分の1もしくは四分の1で投与される量の有効成分を含む投与単位を含む場合に適切である。そのような投与単位は、例えば錠剤であって、必要な量の有効成分を正確に投与するために、該錠剤を半分または四分の一にすることを促進する溝を使って粉末化することができる。
【0057】
本発明による有効成分を含む医薬組成物は、通常、単一投与単位中に0.01〜500mgの有効成分を含む。もちろん、有効成分の量が上で定義された上限または下限を超える組成物も中にはある。
【0058】
本発明の更なる態様として、式(I)の化合物またはその光学対掌体またはラセミ体および/もしくは塩を含む薬剤の医薬製造が提供される。
【0059】
本発明の医薬組成物は、種々の医薬剤形、例えば、これらに限定されないが、錠剤(例えば、口腔錠、舌下錠、発泡錠、咀嚼剤、口腔崩壊状、凍結乾燥錠)、カプセル剤、薬用ドロップ、トローチ剤、丸薬、口腔内分散性フィルム、顆粒、粉末のような固体経口剤形;溶液、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、経口ドロップなどの液体経口剤形;静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射のような非経口剤形;点眼薬、半固形眼用製剤、経皮剤形、坐剤、直腸カプセル、直腸溶液、乳剤および懸濁剤などのような他の剤形として製剤化することができる。
【0060】
一実施形態において、本発明は、小児用を特に目的とした医薬剤形、例えば、これらに限定されないが、溶液、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤、懸濁剤として再構成するための粉末、分散性錠または発泡錠、咀嚼錠、口腔内崩壊錠、錠剤またはコーティング錠、散剤経口粉末または顆粒、カプセル剤に関する。
【0061】
本発明の医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、乳化、懸濁、封入、凍結乾燥、押出、積層、フィルムキャスティング、造粒、粉砕、カプセル化、糖衣錠製造または錠剤化方法によって、それ自体公知の方法で製造することができる。
【0062】
したがって、本発明に従って使用するための医薬組成物は、薬学的に使用可能な製剤への活性化合物の加工を促進する賦形剤および助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の方法で製剤化することができる。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。周知の技術、担体および賦形剤のいずれも、当該技術分野において適切かつ理解されているように使用することができる。
【0063】
剤形の調製に適した賦形剤は、以下のカテゴリー、例えば、これらに限定されないが、錠剤およびカプセル充填剤、錠剤およびカプセル結合剤、放出調節剤、崩壊剤、流動促進剤、滑沢剤、甘味料、矯味剤、着香剤、コーティング剤、界面活性剤、酸化防止剤、緩衝剤、錯化剤、乳化剤、凍結乾燥助剤、マイクロカプセル化剤、軟膏基剤、浸透促進剤、可溶化剤、溶媒、坐剤基剤、懸濁化剤から選択することができる。
【0064】
一実施形態において、本発明は、有効成分の可溶性、溶解、浸透、吸着または生物学的利用能を改善することができる特定の賦形剤、例えば、これらに限定されないが、親水性ポリマー、ホットメルト押出賦形剤、界面活性剤、緩衝剤、錯化剤、乳化剤、凍結乾燥助剤、超崩壊剤、マイクロカプセル化剤、浸透促進剤、可溶化剤、共溶媒、懸濁化剤の使用に関する。
【0065】
上記の成分および種々の製造経路は単なる代表例である。当該技術分野で周知の他の材料だけでなく処理技術なども使用することができる。
【0066】
本化合物は、精神障害、神経発達障害、神経障害およびその他の中枢神経系障害ならびに周辺状態の治療に有効であり、ここで、GABA受容体の刺激が治療効果をもたらし得る。
【0067】
生物学的活性
ラット皮質膜におけるin vitro[35S]GTPγS結合アッセイ
新鮮に採取したラットの脳の皮質を氷冷表面で解剖し、50mM Tris、5mM MgCl、1mM EDTA(pH=7.6)を含む氷冷緩衝液中で直ちにガラスDounceホモジナイザーでホモジナイズした。組織ホモジネートを4℃で15分間、40000gで遠心分離した。膜ペレットを同じ緩衝液に再懸濁し、膜を振盪水浴中で30℃にて10分間インキュベートして内因性GABAを除去した。ホモジネートを同じ条件下で再び遠心分離した。最終ペレットを、50mM Tris、100mM NaCl、7mM MgCl、1mM EDTAおよび1mM ジチオトレイトール(DTT)を含む氷冷緩衝液(pH=7.6)に再懸濁して20mgの組織重量/mlの濃度にし、使用するまで−70℃で凍結した。アッセイは、50mM Tris(pH=7.4)、100mM NaCl、7mM MgCl、1mM EDTAおよび1mM DTTを含む緩衝液中で行った。各アッセイチューブには、GDP150μL(最終濃度50μMで)、リガンド100μLおよび膜懸濁液125μL(組織250μg/チューブ)が含まれていた。アッセイチューブを30℃で10分間プレインキュベートして平衡を確保した。非特異的結合は10μM GTPγSの存在下で決定した;基礎結合は緩衝液のみの存在下で決定した。チューブに容量25μLの50pM [35S]GTPγSを添加した後、膜を30℃でさらに60分間インキュベートした。Packard社製ハーベスターを使用して、Packard社製UniFilter GF/Bを介した急速濾過によってアッセイを終了し、氷冷緩衝液1mlにより4回洗浄した。フィルターを40℃で1時間乾燥させた後、40μL Microscint(Packard社)をフィルターに加え、TopCount NXTによってフィルターの放射能を決定した(PerkinElmer,Waltham,MA;Alper and Nelson,Eur.J.Pharmacol.1998,343,303−312;Rinken et al,Biochem.Pharmacol.1999,57,155−162)。こうして収集されたデータを使用して、各化合物のPAM EC50値を主要なin vitro活性エンドポイントとして決定した。
【0068】
表1には、[35S]GTPγS結合アッセイにおいて測定された本発明の化合物がリストされている。
【表1】
【0069】
成体ラットにおけるフットショック誘発超音波発声(USV)
ストレスの多い条件下では、成体ラットは、様々な薬理学的治療によって低減することができる22kHzの超音波を放出する(De Vry et al,Eur.J.Pharmacol.1993,249,331−339;Sanchez,Eur.J.Pharmacol.2003,463,133−143)。以前の未発表の実験では、GABA受容体リガンドがストレッサーとしての電気的フットショックによって誘発される発声を抑制することが示されていた。したがって、成体ラットのフットショック誘発発声パラダイムを使用して中枢作用性GABA受容体リガンドの有効性を評価した。行動測定をオスのウィスターラット(200〜250g、Toxicoop、ハンガリー)で行った。ラットは、市販のペレットラットフードおよび水道水に自由にアクセスすることができる状態で温度と光で制御された実験動物飼育ユニット(22±2℃、12時間の明/暗サイクル、午前6:00に点灯)においてワイヤーグリッド上部を備えたプラスチックケージに4匹ずつのグループで飼育した。調査は、Gedeon Richter Plcの地方倫理委員会によって承認され、実験手順のための実験動物の管理と使用に関する欧州指令2010/63/EUに厳密に準拠して行い、動物の数と苦痛を最小限に抑えるためのあらゆる努力を払った。超音波の放射を誘発するために、動物に30秒間(6回のショック、1秒、各0.8mA、ショック間の間隔10秒)の馴化期間の後に、音減衰ショックチャンバー(Experimetria、40×40×80cm)内でフットショックを与えた。調査化合物を蒸留水中の固体分散製剤に1mg/kgの用量でショック1時間前に経口投与した。発声をメトリス社製ソノトラックシステムにより最後のフットショックの直後に10分間測定し、発声の合計時間を記録した。並行賦形剤処置動物の発声を対照値とみなし、各化合物について抑制パーセントを計算した。治療と行動測定の約75分後に、iv vivo活性に関連する曝露を測定するために、血液と脳のサンプルを採取した。
【0070】
表2には、USVアッセイにおいて測定された本発明の化合物がリストされている。表3には、本発明の化合物の血漿および脳レベルがリストされている。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
自閉症スペクトラム障害(ASD)の出生前バルプロ酸モデル
出生前バルプロ酸モデルは優れた構成概念妥当性と表面的妥当性とを備えているため、広く受け入れられているASDの疾患モデルである(Christensen et al,JAMA 2013,309,1696−1703;Roullet et al,Neurotox.Teratol.2013,36,45−56)。この方法では、妊娠12.5日目に、交配期を合わせたメスのウィスターラット(Harlan UK)にバルプロ酸(VPA、600mg/kg、腹腔内投与)を単回投与した。出生後59日目の試験時まで、標準実験室条件に従ってオスの子孫を飼育した。動物を4匹ずつ従来のケージで飼育し、食料と水が自由に利用可能な状態で12時間の標準明/暗サイクル(07.30〜19.30)で22〜24℃に維持した。治験薬治療後、出生後59日目に社会的嗜好アッセイで子孫を行動的に調べた。社会的嗜好テストは、げっ歯類の自閉症の行動を評価するための非常に受け入れられているアッセイである(Nadler et al,Genes Brain Behav.2007,3,303−314;Bambini−Junior et al,Brain Res.2011,1408,8−16)。簡単に言えば、このアッセイでは、試験動物は、標的の同種体なしで、分割穿孔壁または同様の領域によって分離された同種体を調査することが可能である。自閉症の動物(例えば出生前にバルプロ酸に曝露されたラット)は、試験セッション中に社会調査にほとんど時間を費やさない。
【0074】
本発明者らは、予期せぬことに、ASDのコア症状を再現する本前臨床疾患モデルにおいて0.01〜3mg/kgの範囲の経口用量で選択される本発明の化合物が行動上の大きな利益になるということを見出した。したがって、本発明者らは、これらの化合物がヒトのASDの中核症状の治療に治療的可能性を有し得ることを示した。
【実施例】
【0075】
本発明は、以下の実施例でさらに定義される。実施例は例示のみを目的として与えられていることを理解すべきである。上記の議論および実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確かめることができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明を様々な使用および条件に適合させるために様々な変更および修正を行うことができる。結果として、本発明は、本明細書で以下に記載される例示的な実施例によって制限されるのではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0076】
一般に、式(I)の化合物は、当業者の一般的な知識により、かつ/または以下の実施例および/または中間セクションに記載される方法を使用して調製することができる。溶媒、温度、圧力および他の反応条件は、当業者によって容易に選択され得る。出発物質は市販されており、かつ/または当業者によって容易に調製される。
【0077】
「ラセミ体の3−アルキルピペリジン−カルボン酸エチルエステルの光学異性体の分離方法」という見出しで本出願と同時に提出された我々の特許出願は、特定の出発物質の調製を開示している。
【0078】
本発明を、以下の非限定的な実施例により説明する。
【0079】
【化20】
3−メチルピペリジン−3−カルボン酸エチル
【0080】
a)1−tert−ブチル3−エチル3−メチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラート
窒素下で、300mLの乾燥テトラヒドロフラン中22.96g(89mmol)の1−tert−ブチル3−エチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラートの溶液に、テトラヒドロフラン溶液(100mmol)中100mLの1Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミドを(−78)℃〜(−65)℃で滴下した。添加後、混合物を−78℃で20分間撹拌し、6.6mL(106mmol)のヨードメタンを滴下した。そのようにして得られた混合物を室温まで温め、この温度で18時間撹拌した。200mLの飽和塩化アンモニウム溶液(pH約8)と300mLの水を加えることによって反応を停止させた。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残渣を、酢酸エチルおよびシクロヘキサン(1:4)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーに付して24.2g(95%)の表題化合物を油として得た。
【0081】
b)3−メチルピペリジン−3−カルボン酸エチル
酢酸エチル中50mlの2.5M塩酸の溶液に、24.2g(84.8mmol)の1−tert−ブチル3−エチル3−メチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラートを加えた。反応混合物を20℃で3時間撹拌し、次いで100mLのジエチルエーテルを加えた。沈殿した結晶を濾別し、ジエチルエーテルで洗浄して16.28g(97%)の表題化合物を得た。
【0082】
【化21】
3−エチルピペリジン−3−カルボン酸エチル
【0083】
a)1−tert−ブチル3−エチル3−エチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラート
表題化合物は、中間体1aに記載の方法に従って、1−tert−ブチル3−エチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラートとヨードエタンから調製する。
【0084】
b)3−エチルピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩
表題化合物は、中間体1bに記載の方法に従って、1−tert−ブチル3−エチル3−エチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラートから調製する。
【0085】
【化22】
3−(プロパン−2−イル)ピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩
【0086】
a)1−tert−ブチル3−エチル3−(プロパン−2−イル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシラート
表題化合物は、中間体1aに記載の方法に従って、1−tert−ブチル3−エチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラートと2−ヨードプロパンから調製する。
【0087】
b)3−(プロパン−2−イル)ピペリジン−3−カルボン酸エチル
表題化合物は、中間体1bに記載の方法に従って、1−tert−ブチル3−エチル3−(プロパン−2−イル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシラートから調製する。
【0088】
【化23】
3−プロピルピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩
【0089】
a)1−tert−ブチル3−エチル3−プロピルピペリジン−1,3−ジカルボキシラート
窒素下で、120mLの乾燥テトラヒドロフラン中10g(38.86mmol)の1−tert−ブチル3−エチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラートの溶液に、42mLの1Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミドテトラヒドロフラン溶液(42mmol)を(−78)℃〜(−65)℃で滴下した。添加後、混合物を−78℃で20分間撹拌し、3.9mL(39.7mmol)の1−ヨードプロパンを滴下した。そのようにして得られた混合物を室温まで温め、この温度で18時間撹拌した。200mLの飽和塩化アンモニウム溶液(pH約8)と300mLの水を加えることによって反応を停止させた。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残渣を、酢酸エチルおよびシクロヘキサン(1:4)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーに付して表題化合物を油として得た。粗生成物は、次の工程で使用する。
【0090】
b)3−プロピルピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩
上記で得られた1−tert−ブチル3−エチル3−プロピルピペリジン−1,3−ジカルボキシラートに、酢酸エチル中20mlの2.5M塩酸を加えた。反応混合物を20℃で3時間撹拌し、次いで真空で濃縮して11.85gの表題化合物を油として得た。
【0091】
【化24】
3−(フルオロメチル)ピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩
【0092】
a)1−tert−ブチル3−エチル3−(ヒドロキシメチル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシラート
表題化合物は、中間体1aに記載の方法に従って、1−tert−ブチル3−エチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラートとパラホルムアルデヒドから調製する。
【0093】
b)1−tert−ブチル3−エチル3−{[(1,1,2−トリフルオロメタンスルホニル)オキシ]メチル}ピペリジン−1,3−ジカルボキシラート
窒素下で、5mlのジクロロメタン中0.296g(1.03mmol)の3−(ヒドロキシメチル)ピペリジン−3−カルボン酸エチルと0.120ml(1.48mmol)のピリジンの撹拌溶液に、0.230ml(1.48mmol)の無水トリフルオロメタンスルホン酸を(−78)℃〜(−65)℃で滴下した。添加後、混合物を−78℃で5分間撹拌し、室温まで温め、この温度で18時間撹拌した。1M塩酸溶液の添加によって反応を停止させた。反応混合物をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して表題化合物を油として得た。粗生成物は、次の工程で使用する。
【0094】
c)1−tert−ブチル3−エチル3−(フルオロメチル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシラート
上記で得られた1−tert−ブチル3−エチル3−{[(1,1,2−トリフルオロメタンスルホニル)オキシ]メチル}ピペリジン−1,3−ジカルボキシラートを4mlのテトラヒドロフランに溶解し、テトラヒドロフラン中1.25ml(1.25mmol)の1Mテトラブチルアンモニウムフルオリドを加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残渣を酢酸エチルおよびシクロヘキサン(1:2)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーに付して0.121g(40%)の表題化合物を得た。
【0095】
d)3−(フルオロメチル)ピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩
表題化合物は、中間体1bに記載の方法に従って、1−tert−ブチル3−エチル3−(フルオロメチル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシラートから調製する。
【0096】
【化25】
3−(メトキシメチル)ピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩
【0097】
a)1−tert−ブチル3−エチル3−(メトキシメチル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシラート
表題化合物は、中間体1aに記載の方法に従って、1−tert−ブチル3−エチルピペリジン−1,3−ジカルボキシラートとクロロメチルメチルエーテルから調製する。
【0098】
b)3−(メトキシメチル)ピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩
表題化合物は、中間体1bに記載の方法に従って、1−tert−ブチル3−エチル3−(メトキシメチル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシラートから調製する。
【0099】
【化26】
3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−1H−ピラゾール−5−アミン
【0100】
a)トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸メチル
150mlのメタノール中10g(51mmol)のトランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸の溶液に、10ml(137mmol)の塩化チオニルを−10℃で滴下した。添加後、混合物を室温まで温め、この温度で16時間撹拌し、次いで真空で濃縮した。残渣を酢酸エチルと水に分配した。合わせた有機層を炭酸水素ナトリウム溶液と水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。乾燥シクロヘキサンを残渣から数回蒸発させて8.96gの表題化合物を無色の油として得た。
【0101】
b)3−オキソ−3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]プロパンニトリル
窒素下で、260mlの乾燥テトラヒドロフラン中9.1ml(174mmol)のアセトニトリルの混合物に、51mlの2.5M n−ブチルリチウムn−ヘキサン溶液(127mmol)を(−78)℃〜(−65)℃で滴下した。添加後、混合物を−78℃で1時間撹拌し、8.96g(42.6mmol)のトランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸メチルを滴下した。そのようにして得られた混合物を室温まで温め、この温度で1時間撹拌した。150mLの飽和塩化アンモニウム溶液を加えることによって反応を停止させた。テトラヒドロフランを蒸発させ、混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物は、次の工程で使用する。
【0102】
c)3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−1H−ピラゾール−5−アミン
上記で得られた3−オキソ−3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]プロパンニトリルを187mlのエタノールに溶解し、4.4ml(167mmol)のヒドラジン一水和物を加えた。不活性ガス雰囲気下で、反応混合物を16時間還流した。溶媒を真空下で除去し、乾燥トルエンを残渣から数回蒸発させて11.15gの表題化合物を黄色の油として得た。LC−MS(ESI)m/z 234.2[MH
【0103】
【化27】
3−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−1H−ピラゾール−5−アミン
【0104】
a)3−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−3−オキソプロパンニトリル
窒素下で、150mlの乾燥テトラヒドロフラン中5ml(95.7mmol)のアセトニトリルの混合物に、29mlの2.5M n−ブチルリチウムn−ヘキサン溶液(72.5mmol)を(−78)℃〜(−65)℃で滴下した。添加後、混合物を−78℃で1時間撹拌し、4.2ml(24mmol)の4,4−ジフルオロシクロヘキシル−1−カルボン酸エチルを滴下した。そのようにして得られた混合物を室温まで温め、この温度で2時間撹拌した。150mLの飽和塩化アンモニウム溶液を加えることによって反応を停止させ、混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物は、次の工程で使用する。
【0105】
b)3−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−1H−ピラゾール−5−アミン
上記で得られた3−オキソ−3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]プロパンニトリルを100mlのエタノールに溶解し、4ml(128.4mmol)のヒドラジン一水和物を加えた。不活性ガス雰囲気下で、反応混合物を16時間還流した。溶媒を真空下で除去した。残渣を酢酸エチルと水に分配した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して6.43gの表題化合物を黄色の油として得た。LC−MS(ESI)m/z 202.2[MH
【0106】
【化28】
3−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)−4−フルオロ−1H−ピラゾール−5−アミン
【0107】
表題化合物は、中間体7に記載の方法に従って、4,4−ジフルオロシクロヘキサン−1−カルボン酸とフルオロアセトニトリルから調製した。
【0108】
【化29】
4−フルオロ−3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−1H−ピラゾール−5−アミン
【0109】
a)トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキサン−1−カルボニルクロリド
5g(25.5mmol)のトランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸、100mlのジクロロメタン、5ml(68.5mmol)の塩化チオニルおよび0.1mlのジメチルホルムアミドの混合物を6時間還流した。反応混合物を真空で濃縮し、乾燥テトラヒドロフランを残渣から数回蒸発させた。粗生成物は、次の工程で使用する。
【0110】
b)2−フルオロ−3−オキソ−3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]プロパンニトリル
不活性ガス雰囲気下で、上記で得られたトランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキサン−1−カルボニルクロリドと50mlの無水テトラヒドロフラン中1.5mL(26.96mmol)のフルオロアセトニトリルの溶液に、50mL(50mmol)の1Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミドを−78℃で滴下した。添加後、混合物を−78℃で1時間撹拌した後、次いで混合物を室温まで温め、200mLの水に注いだ。混合物のpHを1M塩酸の添加によって2に調整した。混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物は、次の工程で使用する。
【0111】
c)4−フルオロ−3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−1H−ピラゾール−5−アミン
上記で得られた2−フルオロ−3−オキソ−3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]プロパンニトリルを65mlのエタノールに溶解し、4.4ml(77mmol)のヒドラジン一水和物を加えた。不活性ガス雰囲気下で、反応混合物を16時間還流した。溶媒を真空下で除去して、表題化合物を油として得た。LC−MS(ESI)m/z 252.2[MH
【0112】
【化30】
5−アミノ−3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル
【0113】
a)2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキサンカルボニル]プロパンジニトリル
15mLの無水テトラヒドロフラン中2.7g(12.58mmol)のトランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキサン−1−カルボニルクロリド(中間体10a)と1.26g(19.0mmol)のマロノニトリルの混合物に、1.77mL(50mmol)のトリエチルアミンを0℃で滴下した。添加後、混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで混合物を室温まで温め、200mLの水に注いだ。混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物は、次の工程で使用する。
【0114】
b)2−{メトキシ[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]メチリデン}プロパンジニトリル
上記で得られた2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキサンカルボニル]プロパンジニトリルに10mlのオルトギ酸トリメチルを加えた。反応混合物を16時間還流した。反応混合物を真空で濃縮し、残渣を、酢酸エチルおよびシクロヘキサン(1:1)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーに付して1.495g(46.0%)の表題化合物を油として得た。LC−MS(ESI)m/z 259.1[MH
【0115】
c)5−アミノ−3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル
上記で得られた2−{メトキシ[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]メチリデン}プロパンジニトリルを17mlのエタノールに溶解し、1.4ml(24.5mmol)のヒドラジン一水和物を加えた。反応混合物を室温で0.5時間撹拌し、水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して1.04g(69.5%)の表題化合物を得た(LC−MS(ESI)m/z 259.2[MH])。
【0116】
【化31】
7−クロロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
a)5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−オール
【0117】
340mLのトルエン中11.156g(47.8mmol)の3−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−1H−ピラゾール−5−アミン(中間体7)、8ml(44.6mmol)の2−アセチル−3−メチルブタン酸エチルおよび0.32g(1.6mmol)のp−トルエンスルホン酸一水和物の混合物を20時間還流し、次いで室温まで冷却した。反応混合物を真空で濃縮し、残渣を、ジクロロメタンおよびメタノール(20:1)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーに付して12.4g(76%)の表題化合物を得た。LC−MS(ESI)m/z 342.2[MH
b)7−クロロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
12.4g(36.35mmol)の5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−オール、16.7ml(179mmol)のオキシ塩化リンおよび12.7ml(72.9mmol)のN,N−ジイソプロピルエチルアミンおよび733mlのトルエンの混合物を20時間還流した。反応混合物を20℃に冷却し、炭酸水素ナトリウム溶液と氷の混合物に注ぎ、次いで2時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して12.05g(92%)の表題化合物を得た(LC−MS(ESI)m/z 360.2[MH])。
【0118】
表4の化合物は、中間体12に記載の方法に従って、適切なアセト酢酸エステルと1H−ピラゾール−5−アミンから調製した。
【0119】
【表4】
【0120】
【化32】
(3S)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
【0121】
20mLのN−メチル−ピロリドン中0.8g(2.22mmol)の7−クロロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(中間体12)、0.5g(3.87mmol)のS−ニペコチン酸および0.7ml(4mmol)のN,N−ジイソプロピルエチルアミンの混合物を130℃で20時間加熱し、次いで冷却し、水で希釈した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残渣を、酢酸エチルおよびシクロヘキサン(1:2)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーに付して0.422g(42.0%)の表題化合物を得た(LC−MS(ESI)m/z 453.2[MH])。
【0122】
【化33】
(3S)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−(プロパン−2−イル)ピペリジン−3−カルボン酸
【0123】
15mLのジメチルスルホキシド中0.66g(2.79mmol)の(3S)−3−(プロパン−2−イル)ピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩と0.66g(5.88mmol)のカリウムtert−ブトキシドの混合物を100℃で16時間加熱した。次いで1.0g(2.77mmol)の7−クロロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(中間体12)を混合物に加え、120℃で16時間加熱した。反応混合物を冷却し、酢酸で酸性化した。沈殿した結晶を濾別し、水で洗浄した。粗生成物を、酢酸エチルおよびシクロヘキサン(2:1)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーに付して0.506g(36.8%)の表題化合物を得た(LC−MS(ESI)m/z 495.3[MH])。
【0124】
【化34】
(3R)−3−メチル−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
【0125】
a)(3R)−3−メチル−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸エチル
20mLのN−メチルピロリドン中1.0g(3.06mmol)の7−クロロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(中間体12)、0.76g(4.43mmol)の(3R)−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸エチルおよび0.8mL(4.592mmol)のN,N−ジイソプロピルエチルアミンの混合物を130℃で20時間加熱し、次いで冷却し、水で希釈した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残渣を、トルエンおよびアセトン(10:1)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーに付して1.44g(95.3%)の表題化合物を得た(LC−MS(ESI)m/z 495.3[MH])。
【0126】
b)(3R)−3−メチル−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
40mLのエタノール中1.443g(2.91mmol)の(3R)−3−メチル−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸エチルと5mLの20%水酸化ナトリウム溶液の混合物を5時間還流し、次いで冷却し、酢酸で酸性化した。反応混合物をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残渣を、酢酸エチルおよびシクロヘキサン(1:2)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーに付して0.934g(68.6%)の表題化合物を得た(LC−MS(ESI)m/z 467.3[MH])。
【0127】
【化35】
(3R)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−プロピルピペリジン−3−カルボン酸
および
(3S)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]−3−プロピルピペリジン−3−カルボン酸
【0128】
表題化合物のラセミ体は、実施例2aおよび2bに記載の方法に従って、7−クロロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(中間体12)とラセミ体の3−プロピルピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩(中間体4b)から調製した。LC−MS(ESI)m/z 495.3[MH]。キラル分取HPLC(Kromasil Cellucoat RP5μm 150×4.6mm;F=1ml/min;溶離液:A:HO+30mM AmAc B:80ACN+30mM AmAc;イソクラティック70%B t=25℃)を使用してAおよびBエナンチオマーを分離することで、エナンチオマーA(T10.464、実施例4)、およびエナンチオマーB(T11.584、実施例5)を得た。それらの絶対配置は決まっていない。
【0129】
【化36】
(3R)−3−(フルオロメチル)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
および
(3S)−3−(フルオロメチル)−1−[5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
【0130】
表題化合物のラセミ体は、実施例2aおよび2bに記載の方法に従って、7−クロロ−5−メチル−6−(プロパン−2−イル)−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(中間体12)とラセミ体の3−(フルオロメチル)ピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩(中間体5)から調製した。LC−MS(ESI)m/z 485.3[MH]。キラル分取HPLC(Lux Amylose−1 5μm 250×21.1mm;F=21ml/min;溶離液:n−ヘプタン:EtOH 80:20+0.1%TFA t=40℃)を使用してAおよびBエナンチオマーを分離することで、エナンチオマーA(T5.9、実施例6)およびエナンチオマーB(T6.7、実施例7)を得た。それらの絶対配置は決まっていない。
【0131】
【化37】
(3R)−3−メチル−1−[(8S)−8−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン−9−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
および
(3R)−3−メチル−1−[(8R)−8−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン−9−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
【0132】
a)(3R)−3−メチル−1−[(8S)−8−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン−9−イル]ピペリジン−3−カルボン酸エチル
および
(3R)−3−メチル−1−[(8R)−8−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン−9−イル]ピペリジン−3−カルボン酸エチル
表題化合物のラセミ体は、実施例2aに記載の方法に従って、ラセミ体の9−クロロ−8−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン(中間体24)と(3R)−3−メチルピペリジン−3−カルボン酸エチル塩酸塩から調製した。AおよびBジアステレオマーエステルを、ジクロロメタン−ジイソプロピルエーテル10−1で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーを使用して分離することで、ジアステレオマーAエステル(同じシステムrf=0.5のTLC)およびジアステレオマーBエステル(同じシステムrf=0.45のTLC)。
【0133】
b)(3R)−3−メチル−1−[(8S)−8−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン−9−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
および
(3R)−3−メチル−1−[(8R)−8−メチル−2−[トランス−4−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]−5H,6H,7H,8H−ピラゾロ[3,2−b]キナゾリン−9−イル]ピペリジン−3−カルボン酸
表題化合物は、実施例2bに記載の方法に従って、上記のジアステレオマーAエステル(実施例8、LC−MS(ESI)m/z 479.2[MH])とジアステレオマーBエステル(実施例9、LC−MS(ESI)m/z 479.2[MH])から調製した。それらの絶対配置は決まっていない。
【0134】
実施例10〜42は、上記の実施例と類似の方法を使用して調製し、以下の表5に例示されている。
【0135】
【表5】
【0136】
医薬組成物の調製
以下の製剤例は、本発明の代表的な医薬組成物を説明するものである。しかしながら、本発明は、以下の医薬組成物に限定されない。
【0137】
A)固体経口剤形
I.,錠剤
有効成分 0.01〜90%
充填剤 1〜99.9%
結合剤 0〜20%
崩壊剤 0〜20%
潤滑剤 0〜10%
他の特定の賦形剤 0〜50%
II.,口腔内分散性フィルム
有効成分 0.01〜90%
フィルム形成剤 1〜99.9%
可塑剤 0〜40%
他の特定の賦形剤 0〜50%
【0138】
B)液体経口剤形
III.,経口懸濁液
有効成分 0.01〜50%
液体賦形剤 10〜99.9%
湿潤剤 0〜50%
増粘剤 0〜50%
緩衝剤 適量
浸透圧剤 0〜50%
防腐剤 適量
IV.,シロップ剤
有効成分 0.01〜50%
溶媒 10〜99.9%
糖成分 1〜20%
着香剤 0〜10%
【0139】
C)非経口剤形
V.,静脈内注射
有効成分 0.01〜50%
溶媒 10〜99.9%
共溶媒 0〜99.9%
浸透圧剤 0〜50%
緩衝剤 適量
【0140】
D)他の剤形
VI.,坐剤
有効成分 0.01〜50%
坐剤基剤 1〜99.9%
界面活性剤 0〜20%
潤滑剤 0〜20%
防腐剤 適量
VII.,点眼薬
有効成分 0.01〜50%
水 0〜99.9%
溶媒 0〜99.9%
浸透圧剤 0〜20%
粘度向上剤 0〜20%
緩衝剤 適量
防腐剤 適量
【国際調査報告】