特表2020-510159(P2020-510159A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-510159向上した耐フラッタ性を備えるスナバ化翼
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-510159(P2020-510159A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(54)【発明の名称】向上した耐フラッタ性を備えるスナバ化翼
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/22 20060101AFI20200306BHJP
【FI】
   F01D5/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-550196(P2019-550196)
(86)(22)【出願日】2018年2月26日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月11日
(86)【国際出願番号】US2018019707
(87)【国際公開番号】WO2018169668
(87)【国際公開日】20180920
(31)【優先権主張番号】62/470,446
(32)【優先日】2017年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517298149
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユークン・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】チン−パン・リー
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202DA06
(57)【要約】
ターボ機械のための翼付き回転システム(10)は、回転翼円板(12)に備え付けられた翼(14)の列を備える。各々の翼(14)は、ミッドスパンのスナバ(30)を伴う翼型(16)を備える。翼(14)の列は、翼(14)の第1のセット(H)と第2のセット(L)とを備える。第2のセット(L)の翼(14)は、第1のセット(H)の翼(14)と、それぞれのセット(H、L)に特有であるスナバ(30)の形状によって区別される。具体的には、第2のセット(L)のスナバ(30)は、第1のセット(H)のスナバ(30)のスパン方向高さと異なるスパン方向高さにおいてそれぞれの翼型(16)に取り付けられる。それによって、第2のセット(L)における翼(14)の固有振動数は第1のセット(H)における翼(14)の固有振動数から所定の大きさで異なる。第1のセット(H)の翼(14)と第2のセット(L)の翼(14)とは、翼(14)のフラッタを安定化させるために離調する周波数を提供するために、翼(14)の列において交互に位置決めされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械のための翼付き回転翼システム(10)であって、
回転翼円板(12)に備え付けられた翼(14)の周方向の列を備え、各々の翼(14)は、
付根部分(18)から翼型先端(20)へと径方向に沿ってスパン方向に延びた翼型(16)と、
前記翼型(16)のミッドスパン領域において前記翼型(16)に取り付けられた周方向に延びたスナバ(30)と、
を備え、
動作中に、隣接した翼(14)のスナバ(30)は周方向に当接し、
翼(14)の前記列は翼(14)の第1のセット(H)と翼(14)の第2のセット(L)とを備え、前記第2のセット(L)の前記翼(14)は、前記第1のセット(H)の前記翼(14)から、それぞれの前記セット(H、L)に特有である前記スナバ(30)の形状によって区別され、
前記第2のセット(L)の前記スナバ(30)は、前記第1のセット(H)の前記スナバ(30)のスパン方向高さと異なったスパン方向高さにおいてそれぞれの前記翼型(16)に取り付けられ、それによって、前記第2のセット(L)における翼(14)の固有振動数は前記第1のセット(H)における翼(14)の固有振動数から所定の大きさだけ異なっており、
前記第1のセット(H)の翼(14)と前記第2のセット(L)の翼(14)とは、前記翼(14)のフラッタを安定化させるために離調する周波数を提供するために、翼(14)の前記列内において交互に位置決めされている、翼付き回転翼システム(10)。
【請求項2】
前記第1のセット(H)における前記翼型(16)と前記第2のセット(L)における前記翼型(16)とは、回転軸(22)の周りに略同一の断面形状を有する、請求項1に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項3】
前記第2のセット(L)における前記翼型(16)の自由長さ(re2)が、前記第1のセット(H)における前記翼型(16)の自由長さ(re1)より大きく、
翼型(16)の前記自由長さ(re1、re2)は、前記翼型先端(20)と、関連した前記スナバ(30)を伴った前記翼型(16)の取り付け点(34)と、の間の径方向の距離として定められている、請求項1に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項4】
各々のスナバ(30)は、それぞれの前記翼型(16)の圧力側(2)から延びた圧力側スナバ部分(30a)と、それぞれの前記翼型(16)の吸引側(4)から延びた吸引側スナバ部分(30b)と、を備え、
前記第2のセット(L)における前記スナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、翼の前記列の隣接した翼(14)のスナバ(30)が一定の径方向高さ(rr)において直面するように、前記第1のセット(H)における前記スナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)と異なって方向付けられている、請求項3に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項5】
前記第1のセット(H)おける各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から径方向内向きに延びており、
前記第2のセット(L)における各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から径方向外向きに延びている、請求項4に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項6】
前記第1のセット(H)および前記第2のセット(L)の各々における各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、線形の輪郭に沿って前記取り付け点(34)から径方向内向きまたは外向きに延びている、請求項5に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項7】
前記第1のセット(H)における各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から径方向内向きに湾曲されており、
前記第2のセット(L)における各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から径方向外向きに湾曲されている、請求項5に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項8】
前記第1のセット(H)における前記スナバ(30)と前記第2のセット(L)における前記スナバ(30)とは、同じ平均径方向厚さを有する、請求項1に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項9】
ターボ機械における翼の列のための翼(14)であって、
付根部分(18)から翼型先端(20)へと径方向に沿ってスパン方向に延びた翼型(16)と、
前記翼型のミッドスパン領域において前記翼型(16)に取り付けられた周方向に延びたスナバ(30)と、
を備え、
前記翼(14)は、前記列における翼(14)の第1のセット(H)および翼(14)の第2のセット(L)と同一となるように設計され、
前記第2のセット(L)の前記翼(14)は、前記第1のセット(H)の前記翼(14)から、それぞれの前記セット(H、L)に特有である前記スナバ(30)の形状によって区別され、
前記第2のセット(L)の前記スナバ(30)は、前記第1のセット(H)の前記スナバ(30)のスパン方向高さと異なったスパン方向高さにおいてそれぞれの前記翼型(16)に取り付けられ、それによって、前記第2のセット(L)における翼(14)の固有振動数は前記第1のセット(H)における翼(14)の固有振動数から所定の大きさだけ異なっており、
前記第1のセット(H)の翼(14)と前記第2のセット(L)の翼(14)とは、前記翼(14)のフラッタを安定化させるために離調した周波数を提供するために、翼(14)の前記列内において交互に位置決めされている、翼(14)。
【請求項10】
前記スナバ(30)は、前記翼型(16)の圧力側(2)から延びた圧力側スナバ部分(30a)と、前記翼型(16)の吸引側(4)から延びた吸引側スナバ部分(30b)とを備え、
前記スナバの前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記翼型(16)の取り付け点(34)から前記スナバ(30)へと径方向外向きに延びている、請求項9に記載の翼(14)。
【請求項11】
前記スナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、真っ直ぐな輪郭に沿って前記取り付け点(34)から径方向外向きに延びている、請求項10に記載の翼(14)。
【請求項12】
前記スナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から外向きに湾曲している、請求項10に記載の翼(14)。
【請求項13】
前記スナバ(30)は、前記翼型(16)の圧力側(2)から延びた圧力側スナバ部分(30a)と、前記翼型(16)の吸引側(4)から延びた吸引側スナバ部分(30b)と、を備え、
前記スナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記翼型(16)の取り付け点(34)から前記スナバ(30)へと径方向内向きに延びている、請求項9に記載の翼(14)。
【請求項14】
前記スナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、真っ直ぐな輪郭に沿って前記取り付け点(34)から径方向内向きに延びている、請求項13に記載の翼(14)。
【請求項15】
前記スナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から内向きに湾曲している、請求項13に記載の翼(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械における回転翼に関し、詳細には、向上した耐フラッタ性のために離調した交互の周波数を伴うスナバ化翼の列に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンなどのターボ機械は、ガスタービンエンジンのタービン区域における高温ガス経路に沿って、複数段の流れ方向付け要素を備える。各々のタービン段は、タービン区域の軸方向に沿って配置された静止した羽根の周方向の列と、回転する翼の周方向の列と、を備える。翼の各々の列は、翼が回転翼円板から高温ガス経路へと径方向外向きに延びる状態で、それぞれの回転翼円板に備え付けられ得る。翼は、翼型の付根部分から先端へと径方向に沿ってスパン方向に延びる翼型を備える。
【0003】
各々の段における典型的なタービン翼は、空気力学的および機械的に同一となるように設計される。これらの同一の翼は、翼付き回転翼システムを形成するために、回転翼円板へと一緒に組み込まれる。エンジン動作の間、翼付き回転翼システムはシステムモードにおいて振動する。この振動は、低圧タービン段においてなど、大きな翼においてより激しくなる可能性がある。モードにおける減衰の重要な発生源は、翼が振動するときに翼に作用する空気力学的な力からのものである。特定の条件の下で、モードのうちの一部における空気力学的な減衰は負になり、これは翼をフラッタさせる可能性がある。これが起こると、翼がリミットサイクルまたは破壊のいずれかに到達するまでシステムの振動応答が指数関数的に増加する傾向がある。翼がリミットサイクルに達する場合であっても、その振幅は翼をなおも高サイクル疲労させないだけの大きさであり得る。
【0004】
翼の固有振動数を増加させ、翼がフラッタする傾向を低下させるために、翼には先端シュラウドまたはスナバが設けられ得る。緩衝器と先端シュラウドとの間の違いは、先端シュラウドが翼型の先端を覆って配置される一方で、スナバは概して先端から離して配置され、典型的には翼型のミッドスパンに取り付けられる。図1は、先端シュラウド90を伴うタービン翼を示しており、一方、図2図3は、ミッドスパンのシュラウドまたはスナバ30を伴うタービン翼を示している。先端シュラウドとスナバとの両方とも同じ原理で機能する。翼型は、あらかじめ捩じれた回転翼円板に典型的には設置される。エンジン動作の間、翼型は遠心力のため捩じれを戻そうとする。翼型に取り付けられている先端シュラウドまたはスナバは、翼が特定の回転速度に達するときに環体を形成するために、翼の回転によって、隣接する先端シュラウドまたはスナバと接触する。環体は、翼の周波数を増加させる拘束を提供し、これは、フラッタしようとする翼の傾向を低下させる。
【0005】
しかしながら、翼の振動の問題により良く対処するための向上の余地が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
手短には、本発明の態様は、向上した耐フラッタ性のために離調した交互の周波数を伴うスナバ化翼に向けられている。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、ターボ機械のための翼付き回転翼システムが提供される。翼付き回転翼システムは、回転翼円板に備え付けられた翼の周方向の列を備える。各々の翼は、付根部分から翼型先端へと径方向に沿ってスパン方向に延びる翼型と、翼型のミッドスパン領域において翼型に取り付けられる周方向に延びるスナバと、を備える。動作中、隣接する翼のスナバは周方向で当接する。翼の列は翼の第1のセットと翼の第2のセットとを備える。第2のセットの翼は、第1のセットの翼から、それぞれのセットに特有であるスナバの形状によって区別され、第2のセットのスナバは、第1のセットのスナバのスパン方向高さと異なるスパン方向高さにおいてそれぞれの翼型に取り付けられる。それによって、第2のセットにおける翼の固有振動数は第1のセットにおける翼の固有振動数から所定の大きさで異なる。第1のセットの翼と第2のセットの翼とは、翼のフラッタを安定化させるために離調した周波数を提供するために、翼の列において交互に位置決めされる。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、翼が、ターボ機械における翼の列のために提供される。翼は、付根部分から翼型先端へと径方向に沿ってスパン方向に延びる翼型と、翼型のミッドスパン領域において翼型に取り付けられる周方向に延びるスナバと、を備える。翼は、列における翼の第1のセットおよび翼の第2のセットと同一となるように設計される。第2のセットの翼は、第1のセットの翼から、それぞれのセットに特有であるスナバの形状によって区別され、第2のセットのスナバは、第1のセットのスナバのスパン方向高さと異なるスパン方向高さにおいて、それぞれの翼型に取り付けられる。それによって、第2のセットにおける翼の固有振動数は、第1のセットにおける翼の固有振動数から所定の大きさで異なる。第1のセットの翼と第2のセットの翼とは、翼のフラッタを安定化させるために離調した周波数を提供するために、翼の列において交互に位置決めされる。
【0009】
本発明は、図の助けによってより詳細に示されている。図は、好ましい構成を示しており、本発明の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】先端シュラウドを伴う回転する翼の列を示す図である。
図2】スナバを伴う回転する翼の列を示す図である。
図3】スナバが翼の翼型のミッドスパンに取り付けられている個々の翼の斜視図である。
図4】本発明の例の実施形態による交互に離調されたスナバを有する翼付き回転翼システムの軸方向から見た概略図である。
図5】本発明の別の例の実施形態による交互に離調されたスナバを有する翼付き回転翼システムの軸方向から見た概略図である。
図6】タービン翼の列における交互の離調を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい実施形態の以下の詳細な記載において、好ましい実施形態の一部を形成し、図示によって、限定としてではなく、本発明が実施され得る特定の実施形態が示されている添付の図面が参照される。他の実施形態が利用されてもよいことと、本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更が行われてもよいこととは、理解されるものである。
【0012】
図面では、方向Aは、タービンエンジンの軸と平行な軸方向を示しているが、方向RおよびCは、タービンエンジンの前記軸に対する径方向および周方向をそれぞれ示している。
【0013】
本発明の図示されている実施形態は、ガスタービンエンジンのタービン区域におけるスナバ化タービン翼に向けられている。しかしながら、本明細書では実施形態は単なる例示である。代替で、例えば限定されることなく、本発明の態様は、航空機ガスタービンエンジンの圧縮機区域の入口においてファン翼に組み込まれてもよい。
【0014】
交互の周波数離調はシステムモードを歪めさせることができることが見出されており、そのため、結果的に生じる新たな離調したシステムモードは安定し、つまりすべ正の空気力学的な減衰を有する。そのため、特定の大きさの所定の交互の離調を伴う翼を設計できることは、望ましい。交互の離調は、周方向において周期的な様態で高周波数と低周波数との間で交互である翼を翼列において有することで、翼において実施され得る。これまで、翼の交互の離調は、翼列における交互の翼において翼型の質量および/または形状を変更することで実施されてきた。
【0015】
本発明の実施形態は、翼列における翼のセットのためにスナバの形状を変更するという原理に基づかれており、そのため、翼の前記セットは離調させられ、翼列における翼のうちの残りのものに対して異なる周波数を有する。スナバ形状を変更することは、スナバの径方向(スパン方向)の場所を変更することを伴い得る。図4図5に描写されている図示された実施形態によれば、回転翼円板12に備え付けられた翼14の周方向の列が、翼14の第1のセットHと翼14の第2のセットLとを備え得る。翼14の第1のセットHおよび第2のセットLにおける翼型16は、回転軸22の周りに本質的に同一の断面形状を有し得る。つまり、翼型の断面の形と、翼弦の回転軸22との角度と、が翼14の第1のセットHおよび第2のセットLにわたって略一定であり得る。さらに、図示されている実施形態の状況では、翼列の各々の翼14が、翼14を回転翼円板12に備え付けるために、本質的に同一のモミの木状の取付部(翼付根)を有することが仮定され得る。第2のセットLの翼14は、第1のセットHの翼14から、それぞれのセットHまたはLに特有であるスナバ30の形状によって区別される。具体的には、第2のセットLのスナバ30は、第1のセットHのスナバ30のスパン方向または径方向の高さと異なるスパン方向または径方向の高さにおいて、それぞれの翼型16に取り付けられており、これは、スナバ取り付け点34から翼型先端20までの翼型16の自由長さを変化させ得る。それによって、第2のセットLにおける翼14の固有振動数は第1のセットHにおける翼14の固有振動数から所定の大きさで異なる。図示されている例では、第2のセットLにおける翼14は離調させられ、第1のセットHの翼14より低い周波数を有する。第1のセットHの翼14と第2のセットLの翼14とは、翼14のフラッタを安定化させるために離調する周波数を提供するために、翼列において交互に配置され得る。
【0016】
本明細書の文脈において、スナバは、翼の翼型のミッドスパン領域に取り付けられるシュラウドであると理解される。ミッドスパン領域は、翼型の付根と先端との間に位置付けられる任意の領域であると理解できる。例示の実施形態では、ミッドスパンのスナバは、付根から測定されるとして、翼型のスパンの40〜70%の間に位置付けられ得る。
【0017】
ここで図4を参照すると、翼付き回転翼システム10の一部分が本発明の一実施形態により図示されている。翼付き回転翼システム10は、回転翼円板12に備え付けられた翼14の周方向の列を備える。各々の翼14は、付根部分18から翼型先端20へと径方向に沿ってスパン方向に延びる翼型16を備える。当業者には知られているように、翼型16は、前縁6および後縁(図示略)において結合される概して凹状の圧力側2と概して凸状の吸引側4とを備え得る。翼型16の径方向内側端は、プラットフォーム24において付根18に結合されている。図示されている実施形態では、付根18はモミの木の形を有し、回転翼円板12内の対応する形とされたスロット26へと嵌め込まれる。翼の固有振動数を増加させ、フラッタする傾向を低下させるために、翼14には、翼型16のミッドスパン領域において翼型16に取り付けられた周方向に延びるスナバ30が設けられ得る。翼列における隣接する翼14のプラットフォーム24は、高温ガスの内部流路境界を形成するために互いと当接しており、翼型16は流路と交差して径方向外向きに延びている。
【0018】
各々のスナバ30は、それぞれの翼型16の圧力側2から圧力側スナバ縁42へと延びる圧力側スナバ部分30aと、それぞれの翼型16の吸引側4から吸引側スナバ縁44へと延びる吸引側スナバ部分30bと、を備える。各々の翼の翼型16は、そのスパン方向の軸の周りで捩じられ得る。エンジン動作の間、翼14は回転軸22の周りを回転し、それによって、遠心力および空気力学的力は、各々のスナバ30の圧力側スナバ縁42が隣接するスナバ30の吸引側スナバ縁44に当接して環体を形成するように、翼列における各々の翼型16の捩じれを戻す。隣接するスナバ30同士の間の当接する接触は、翼の捩じれの戻しを制限し、動作の間に翼の正確な方向付けを確立するのを助ける。スナバの環体は、翼の周波数を増加させる拘束を提供し、これは、フラッタしようとする翼の傾向を低下させる。
【0019】
図示されている実施形態では、スナバ30の形状は、翼列における翼のセットLが翼列における残りの翼Hに対して離調されるように、翼の前記セットLについて変更されてもよい。この実施形態では、これは、第1のセットHの翼14に対して、第2のセットLの翼14について、翼型16とスナバ30との取り付け点34を径方向においてより低い高さに移動することで達成される。図示されているように、第1のセットHの各々の翼14は、両側において第2のセットLの隣り合う翼14と隣接している。隣接する翼14同士の間の取り付け点34の位置のずれはΔrとして描写されている。結果として、第2のセットLにおける翼型16の自由長さre2は第1のセットHの翼型16の自由長さre1より大きい。翼型16の自由長さは、関連するスナバ30を伴う翼型16の翼型先端20と取り付け点34との間の径方向の距離として定められてもよい。隣接する翼型16の自由長さにおける差のため、第2の列Lにおける翼14は第1のセットHにおける翼14より若干小さい周波数を有する。付根から翼型先端までの全体の径方向高さrは、各々の翼型16について、翼の第1のセットおよび第2のセットにわたって典型的には一定である。
【0020】
好ましい実施形態では、翼の列の隣接する翼14のスナバ30同士は、一定の径方向高さrrにおいて直面する。これは、隣接するスナバ30同士を径方向に対する交互の方向付けで設計することで達成できる。図示されている実施形態では、第2のセットLにおけるスナバ30の圧力側スナバ部分30aおよび吸引側スナバ部分30bは、第1のセットHにおけるスナバ30の圧力側スナバ部分30aおよび吸引側スナバ部分30bとは異なって方向付けられている。具体的には、第1のセットHにおける各々のスナバ30の圧力側スナバ部分30aおよび吸引側スナバ部分30bは、取り付け点34からそれぞれのスナバ縁42、44に向けて径方向内向きに延びている。対応するように、第2のセットLにおける各々のスナバ30の圧力側スナバ部分30aおよび吸引側スナバ部分30bは、取り付け点34からそれぞれのスナバ縁42、44に向けて径方向外向きに延びている。
【0021】
図4に示されている実施形態では、圧力側スナバ部分30aおよび吸引側スナバ部分30bは、径方向内側または外側を指して真っ直ぐに方向付けられている。つまり、第1のセットHにおける各々のスナバ30の圧力側スナバ部分30aおよび吸引側スナバ部分30bは、線形の輪郭に沿って取り付け点34から径方向内向きに延びている。対応するように、第2のセットLにおける各々のスナバ30の圧力側スナバ部分30aおよび吸引側スナバ部分30bは、線形の輪郭に沿って取り付け点34から径方向外向きに延びている。しかしながら、上記の構成は例示であり、他のスナバ形状が考慮されてもよい。例えば、図5に示された代替の実施形態では、スナバ30は、径方向外向きまたは径方向内向きに延びる湾曲した輪郭を有してもよい。この例で示されているように、第1のセットHにおける各々のスナバ30の圧力側スナバ部分30aおよび吸引側スナバ部分30bは、取り付け点34から径方向内向きに湾曲されている。対応するように、第2のセットLにおける各々のスナバ30の圧力側スナバ部分30aおよび吸引側スナバ部分30bは、取り付け点34から径方向外向きに湾曲される。図示された実施形態の各々では、第1のセットHにおけるスナバ30と第2のセットLにおけるスナバ30とは同じ平均径方向厚さを有してもよい。
【0022】
例として、効果的にフラッタを安定化させるために、スナバ形状は、製造公差を上回る約1.5〜2%の離調を達成するように変更されてもよい。図6は、40個のタービン翼の列における交互の離調をグラフで示している。ここで、奇数で番号付けされた翼は250Hzの周波数を有し、一方、偶数で番号付けされた翼は255Hzの周波数を有する。この例では、翼周波数における差は5Hzである。結果として、偶数で番号付けされた翼の周波数は、奇数で番号付けされた翼の周波数より2%大きく、つまり、離調の大きさは2%である。
【0023】
先に図示されているように、回転軸の周りでの翼型の断面形状は、高周波数の翼Hと低周波数の翼Lとの両方にとって本質的に同じである。これは、均一な翼型形状が考慮される必要があるため、最適な空気力学的効率を有するように翼型を設計することをさらに容易にする。さらに、図示された実施形態は、例えば内部冷却通路を含むといった、中空の翼型を伴う翼のために交互の離調を採用することを可能にする。中空の翼型の設計は中実の翼型の設計よりも制約される。離調されたスナバの使用は、空気力学的な効率を妥協することなく、このような中空の翼のために交互の離調を実施するための能力を提供する。
【0024】
特定の実施形態が詳細に記載されてきたが、当業者は、それらの詳細に対する様々な変更および代替が、本開示の全体の教示を考慮して開発され得ることを理解するものである。したがって、開示された具体的な配置は、単なる例示であるように、および、本発明の範囲に関する制限とならないように意味されており、本発明の範囲は、添付の請求項の全体の広がりと、その任意およびすべての等価とによって与えられる。
【符号の説明】
【0025】
2 圧力側
4 吸引側
6 前縁
10 翼付き回転翼システム
12 回転翼円板
14 翼
16 翼型
18 付根部分
20 翼型先端
22 回転軸
24 プラットフォーム
26 スロット
30 スナバ
30a 圧力側スナバ部分
30b 吸引側スナバ部分
34 取り付け点
42 圧力側スナバ縁
44 吸引側スナバ縁
90 先端シュラウド
A 軸方向
C 周方向
H 第1のセット
L 第2のセット
R 径方向
rr 一定の径方向高さ
Δr 取り付け点34の位置のずれ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2019年11月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械のための翼付き回転翼システム(10)であって、
回転翼円板(12)に備え付けられた翼(14)の周方向の列を備え、各々の翼(14)は、
付根部分(18)から翼型先端(20)へと径方向に沿ってスパン方向に延びた翼型(16)と、
前記翼型(16)のミッドスパン領域において前記翼型(16)に取り付けられた周方向に延びたスナバ(30)と、
を備え、
動作中に、隣接した翼(14)のスナバ(30)は周方向に当接し、
翼(14)の前記列は翼(14)の第1のセット(H)と翼(14)の第2のセット(L)とを備え、前記第2のセット(L)の前記翼(14)は、前記第1のセット(H)の前記翼(14)から、それぞれの前記セット(H、L)に特有である前記スナバ(30)の形状によって区別され、
前記第2のセット(L)の前記スナバ(30)は、前記第1のセット(H)の前記スナバ(30)のスパン方向高さと異なったスパン方向高さにおいてそれぞれの前記翼型(16)に取り付けられ、それによって、前記第2のセット(L)における翼(14)の固有振動数は前記第1のセット(H)における翼(14)の固有振動数から所定の大きさだけ異なっており、
前記第1のセット(H)の翼(14)と前記第2のセット(L)の翼(14)とは、前記翼(14)のフラッタを安定化させるために離調する周波数を提供するために、翼(14)の前記列内において交互に位置決めされている、翼付き回転翼システム(10)。
【請求項2】
前記第1のセット(H)における前記翼型(16)と前記第2のセット(L)における前記翼型(16)とは、回転軸(22)の周りに略同一の断面形状を有する、請求項1に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項3】
前記第2のセット(L)における前記翼型(16)の自由長さ(re2)が、前記第1のセット(H)における前記翼型(16)の自由長さ(re1)より大きく、
翼型(16)の前記自由長さ(re1、re2)は、前記翼型先端(20)と、関連した前記スナバ(30)を伴った前記翼型(16)の取り付け点(34)と、の間の径方向の距離として定められている、請求項1に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項4】
各々のスナバ(30)は、それぞれの前記翼型(16)の圧力側(2)から延びた圧力側スナバ部分(30a)と、それぞれの前記翼型(16)の吸引側(4)から延びた吸引側スナバ部分(30b)と、を備え、
前記第2のセット(L)における前記スナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、翼の前記列の隣接した翼(14)のスナバ(30)が一定の径方向高さ(rr)において直面するように、前記第1のセット(H)における前記スナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)と異なって方向付けられている、請求項3に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項5】
前記第1のセット(H)おける各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から径方向内向きに延びており、
前記第2のセット(L)における各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から径方向外向きに延びている、請求項4に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項6】
前記第1のセット(H)および前記第2のセット(L)の各々における各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、線形の輪郭に沿って前記取り付け点(34)から径方向内向きまたは外向きに延びている、請求項5に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項7】
前記第1のセット(H)における各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から径方向内向きに湾曲されており、
前記第2のセット(L)における各々のスナバ(30)の前記圧力側スナバ部分(30a)および前記吸引側スナバ部分(30b)は、前記取り付け点(34)から径方向外向きに湾曲されている、請求項5に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【請求項8】
前記第1のセット(H)における前記スナバ(30)と前記第2のセット(L)における前記スナバ(30)とは、同じ平均径方向厚さを有する、請求項1に記載の翼付き回転翼システム(10)。
【国際調査報告】