特表2020-510217(P2020-510217A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-510217差動プローブ、検査装置ならびに製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-510217(P2020-510217A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(54)【発明の名称】差動プローブ、検査装置ならびに製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/83 20060101AFI20200306BHJP
【FI】
   G01N27/83
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-551356(P2019-551356)
(86)(22)【出願日】2018年4月4日
(85)【翻訳文提出日】2019年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2018058536
(87)【国際公開番号】WO2018189000
(87)【国際公開日】20181018
(31)【優先権主張番号】102017107708.1
(32)【優先日】2017年4月10日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】594144670
【氏名又は名称】プリューフテヒニーク ディーター ブッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】フックスロッホ,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ペータース,ユルゲン
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB22
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053CA18
2G053DB02
2G053DB03
(57)【要約】
差動プローブ(7,19)が第1のハーフプローブ(8,20)と第2のハーフプローブ(9,21)を有していて、それらのハーフプローブが、第1のハーフプローブ(8,20)の第1のコンダクタループ(11,12,13)と第2のハーフプローブ(9,21)の第2のコンダクタループ(15,16,17)とからなる少なくとも1個のコンダクタループ対を備え、前記コンダクタループ対の第1のコンダクタループ(11,12,13)と第2のコンダクタループ(15,16,17)が相互に鏡像対称に形成され、それらの第1のコンダクタループ(11,12,13)と第2のコンダクタループ(15,16,17)が鏡面の各側に配置されてその鏡面と平行に方向づけられるような第1のコンダクタループと第2のコンダクタループの鏡像対称の配置において、前記第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが同様に鏡面に対して平行な偏移方向で相互に偏移して配置され、その際第1のコンダクタループ(11,12,13)と第2のコンダクタループ(15,16,17)が前記鏡面に対して垂直方向において部分的に重複する。差動プローブ(7,19)を製造するために、第1のコンダクタループ(11,12,13)を平型の基板(22)の第1のセクタ(23)内に形成し、第2のコンダクタループ(15,16,17)は、完成した差動プローブ(7,19)における第1のコンダクタループ(11,12,13)に対する第2のコンダクタループ(15,16,17)の偏移に相当する、基板(22)の第2のセクタ(24)内の位置に形成し、その際第2のコンダクタループ(15,16,17)を完成した第2のハーフプローブ(9,21)中におけるそれら第2のコンダクタループの方向性に対して偏移方向と平行な回転軸周りで180°回転させた方向性を有するように形成する。基板(22)を分割して第1のセクタ(23)と第2のセクタ(24)を相互に分離する。続いて第2のセクタ(24)を第1のセクタ(23)と隣接して配置し、その際に第2のコンダクタループ(15,16,17)が完成した第2のハーフプローブ(9,21)中におけるそれらの第2のコンダクタループの方向性を有するように配置し、さらに第1のセクタ(23)と第2のセクタ(24)を相互に結合する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハーフプローブ(8,20)と第2のハーフプローブ(9,21)を有する差動プローブであって、それらのハーフプローブが、
第1のハーフプローブ(8,20)の第1のコンダクタループ(11,12,13)と第2のハーフプローブ(9,21)の第2のコンダクタループ(15,16,17)とからなる少なくとも1個のコンダクタループ対を備え、
前記コンダクタループ対の第1のコンダクタループ(11,12,13)と第2のコンダクタループ(15,16,17)が相互に鏡像対称に形成され、それらの第1のコンダクタループ(11,12,13)と第2のコンダクタループ(15,16,17)が鏡面の各側に配置されてその鏡面と平行に方向づけられるような第1のコンダクタループと第2のコンダクタループの鏡像対称の配置において、前記第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが同様に鏡面に対して平行な偏移方向で相互に偏移して配置され、
その際第1のコンダクタループ(11,12,13)と第2のコンダクタループ(15,16,17)が前記鏡面に対して垂直方向において部分的に重複してなる差動プローブ(7,19)。
【請求項2】
複数のコンダクタループ対を備え、その際全ての第1のコンダクタループ(11,12,13)が相互に整列し、また全ての第2のコンダクタループ(15,16,17)も相互に整列する請求項1記載の差動プローブ(7,19)。
【請求項3】
第1のコンダクタループ(11,12,13)と第2のコンダクタループ(15,16,17)が、直線状でかつ偏移方向と平行に形成された導体片をそれぞれ備える請求項1または2記載の差動プローブ(7,19)。
【請求項4】
第1のコンダクタループ(11,12,13)によって囲繞される第1の面と第2のコンダクタループ(15,16,17)によって囲繞される第2の面が鏡面に対して垂直方向において部分的に重複または解離する請求項1ないし3のいずれか記載の差動プローブ(7,19)。
【請求項5】
少なくとも1個の請求項1ないし4のいずれかに記載の差動プローブ(7,19)を備えた検査装置であって、被検体(6)のための少なくとも1個の挿通口(3)を設け、その挿通口の周囲で前記差動プローブ(7,19)が回転可能であり、差動プローブ(7,19)の回転中に前記挿通口(3)の中央軸が実質的に鏡面と平行にあるいは鏡面内に延在する検査装置(1)。
【請求項6】
2個あるいはそれ以上の差動プローブ(7,19)を実質的に均等な角度間隔をおいて挿通口(3)の周囲に配置してなる請求項5記載の検査装置(1)。
【請求項7】
少なくとも2個の差動プローブ(7,19)を摺動方向に沿って隣接して配置してなる請求項5または6記載の検査装置(1)。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれかに記載の差動プローブ(7,19)を製造する方法であって、
第1のコンダクタループ(11,12,13)を平型の基板(22)の第1のセクタ(23)内に形成し、
第2のコンダクタループ(15,16,17)は、完成した差動プローブ(7,19)における第1のコンダクタループ(11,12,13)に対する第2のコンダクタループ(15,16,17)の偏移に相当する、基板(22)の第2のセクタ(24)内の位置に形成し、その際第2のコンダクタループ(15,16,17)を完成した第2のハーフプローブ(9,21)中におけるそれら第2のコンダクタループの方向性に対して偏移方向と平行な回転軸周りで180°回転させた方向性を有するように形成し、
基板(22)を分割して第1のセクタ(23)と第2のセクタ(24)を相互に分離し、
第2のセクタ(24)を第1のセクタ(23)と隣接して配置し、その際に第2のコンダクタループ(15,16,17)が完成した第2のハーフプローブ(9,21)中におけるそれらの第2のコンダクタループの方向性を有するように配置し、
第1のセクタ(23)と第2のセクタ(24)を相互に結合してなる方法。
【請求項9】
第1のセクタ(23)内に別の差動プローブの第1のコンダクタループあるいは第2のコンダクタループを追加的に形成し、それに従って第2のセクタ内に前記別の差動プローブのもう一方のコンダクタループ、すなわち第2のコンダクタループあるいは第1のコンダクタループを形成してなる請求項8記載の方法。
【請求項10】
セクタ(23,24)に基準穴(25)を設け、それによってセクタ(23,24)を相互に位置合せ可能にしてなる請求項8または9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1のハーフプローブの第1のコンダクタループと第2のハーフプローブの第2のコンダクタループとからなる少なくとも一対のコンダクタループを備えた、第1のハーフプローブと第2のハーフプローブを有する差動プローブに係り、また本発明は特に被検体あるいは半製品を亀裂および空洞等の不良について検査するための差動プローブに関する。また本発明は、少なくとも1個の同種の差動プローブを備えていて被検体のための少なくとも1個の挿通口を設置し、その挿通口の周囲で前記差動プローブが回転可能である検査装置に関する。本発明はさらに、ハーフプローブのコンダクタループを基板上に形成する差動プローブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
渦流方法あるいは漏れ磁束方法を利用して半製品を亀裂および空洞等の不良について検査するために、回転システムとして形成された検査装置あるいは検査機器が使用される。その種の回転システムにおいて、回転可能な装置の回転ヘッド上にプローブ装置が設置される。回転ヘッドをその上に配置されたプローブ装置ごと回転させることによって、長形の被検体を回転ヘッドの中央挿通口を介して摺動させる間にプローブ装置が被検体に対してネジ形の軌道で移動する。被検体の不良箇所に起因する磁界変化を検出可能にするため、渦流方法のために設けられるプローブ装置のプローブが被検体表面から所定の距離あるいは可能な限り近接して存在する必要がある。一方漏れ磁束方法の場合は、プローブが被検体に接触してその表面を擦る。
【0003】
プローブ全体が完全に覆われている場合は、欠陥によって最大の信号が発信される。欠陥が短小であるかあるいはプローブが部分的にしか覆われていない場合はより小さなエラー信号が形成される。測定中に被検体が直線動作してその間回転ヘッドが被検体の周りを回転するため、最小欠陥長、すなわち検出されるものとして被検体内に存在することができる欠陥の最小の長さは、測定中の回転数ならびに被検体の推進速度あるいは直線動作速度に依存する。その種の回転システムの効率を改善するとともに被検体の移動速度を高め、加えてより短い不良箇所の長さからなる欠陥も記録可能にするために、個別のプローブに代えて前後して配置された複数のプローブからなるプローブシステムを使用することが知られている。その際信号送信機による障害を削減するためにプローブを差動プローブとして構成することが好適である。
【0004】
例えば、米国特許出願公開第2010/0312494号(A1)明細書ならびに欧州特許出願公開第1600769号(A1)明細書により、渦流方法に使用することができる差動プローブが知られている。その差動プローブはいずれも面で接するコンダクタループを有する隣接して配置された2個のハーフプローブをそれぞれ備え、その際接触する面が同一平面内あるいは平行する平面内に配置される。
【0005】
さらに、米国特許出願公開第2011/0057629号(A1)明細書により、積層された回路基板構造とその上に形成あるいはプリントされてコンダクタループとして構成された導体経路が知られている。積層することによって、導体経路に接する面が相互に整列した配列で存在する。そのように積層された基板とその上に形成されたコンダクタループによって、例えば2個のコイルをそれぞれ異なった巻線方向で形成することができる。従って両方のコイルによって1個の差動プローブの2個のハーフプローブが形成され、その際基板のコアによって差動プローブの固有の作用範囲を提供するためのハーフプローブ間の所要の距離が保持される。両方のハーフプローブを基板のコアと圧着した後に完成した差動プローブが得られる。
【0006】
短縮された長さを有する差動プローブを適宜に組み合わせることによって回転システムあるいは検査装置の最小欠陥長を縮小することが知られている。例えば差動プローブの長さを半減させかつ2本の隣接する差動プローブを並列に接続する場合、被検体の欠陥が検出されるために半分の長さのプローブを覆えば充分になる。それによって回転システムあるいは検査装置の最小欠陥長を半分にすることができる。しかしながら、そのように相互接続された差動プローブ内には非能動の差動プローブの内部抵抗が分圧器として生じ、従って差動プローブによって発信される信号レベルも半減する。従ってその種の並列に接続された差動プローブは、並列に接続される両方の差動プローブに相当する長さの単一の差動プローブと同様な特性を示し、その特性を補正するための高コストな電子回路が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、同等な最小欠陥長を維持するとともに判定精度を低下させることなく被検体の直線動作速度を高めることができる、簡便に製造可能な差動プローブと、その種の差動プローブを有する検査装置と、さらにその種の差動プローブの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、請求項1の特徴を有する差動プローブと、請求項5の特徴を有する検査装置と、請求項8の特徴を有する方法によって解決される。好適な実施形態が従属請求項の対象である。
【0009】
本発明に係る差動プローブによれば、コンダクタループ対の第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが相互に鏡像対称に形成され、それらの第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが鏡面の各側に配置されてその鏡面と平行に方向づけられるような前記第1のコンダクタループと第2のコンダクタループの鏡像対称の配置において、前記第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが同様に鏡面に対して平行な偏移方向で相互に偏移して配置され、その際前記第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが前記鏡面に対して垂直方向において部分的に重複する。特に、鏡面の各側に配置された第1および第2のハーフプローブあるいは第1および第2のコンダクタループを、さらに鏡面に対して垂直方向においても相互に偏移させて配置するか、あるいは両方のコンダクタループの間に存在する鏡面からそれぞれ離間させることができる。そのため、第1のコンダクタループによって囲繞されるあるいは仕切られる第1の面と第2のコンダクタループによって囲繞されるあるいは仕切られる第2の面が相互に平行であるかあるいは鏡面に対して平行に方向づけられる。両方のコンダクタループと特に両方のハーフプローブを鏡面に対して平行な偏移方向で偏移させて配置することにより、差動プローブによって覆われる被検体あるいは被検材料上の面積が拡大される。その際差動プローブの差動効果は維持され、その差動プローブの第1および第2のハーフプローブあるいは第1および第2のコンダクタループがいわゆる差動回路として動作可能である。
【0010】
極一般的に、本発明に係る差動プローブは渦流方法ならびに漏れ磁束方法のいずれを使用する検査にも適用可能である。さらに、第1および第2のコンダクタループを同一のあるいは異なった材料から製造し、また導電性にすることができる。加えて、第1のコンダクタループおよび第2のコンダクタループが第1の面および第2の面を完全にあるいは極部分的に仕切るかあるいは囲繞することができる。
【0011】
差動プローブが複数のコンダクタループ対を備え、その際全ての第1のコンダクタループが相互に整列し、また全ての第2のコンダクタループも相互に整列することが好適である。その際コンダクタループ対のそれぞれが、第1のハーフプローブの第1のコンダクタループと、その第1のコンダクタループと鏡像対称に形成された第2のハーフプローブの第2のコンダクタループを備える。複数の第1のコンダクタループと複数の第2のコンダクタループが、いずれもコイル状に異なったあるいは逆向きの巻線方向で相互に結合されるかあるいは相互に導電性に結合されることが好適である。この方式によって、この実施形態によれば第1のハーフプローブと第2のハーフプローブが異なって巻線されたコイルのように作用する。
【0012】
第1および第2のコンダクタループは原則的に任意の形状、例えば円形、楕円形、正方形、長方形とすることができるが、好適にはそれらの第1および第2のコンダクタループを長方形にする。第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが、直線状でかつ偏移方向と平行に形成された導体片をそれぞれ備えることが極めて好適である。差動プローブの動作中において前記の直線状でかつ偏移方向と平行に形成された導体片が被検体あるいは被検材料の方を指向することが有効である。差動プローブを渦流方法において使用する場合は導体片が被検体表面あるいは被検体から離間し、一方漏れ磁束方法において差動プローブを使用する場合は導体片が被検体表面に接触する。
【0013】
差動プローブにおいて、第1のコンダクタループによって囲繞される第1の面と第2のコンダクタループによって囲繞される第2の面が鏡面に対して垂直方向において部分的に重複または解離することができる。好適には、第1の面と第2の面が鏡面に対して垂直方向において重複しなくなる、すなわち解離するまで、第1および第2のコンダクタループあるいは第1および第2のハーフプローブを、偏移方向において相互に偏移させる。ここで、鏡面に対して垂直方向において相互に重複する第1および第2のコンダクタループの部分あるいは領域が、各コンダクタループの相関する領域を形成する。例えば両方のハーフプローブをそのハーフプローブの全長にわたって相互に離間方向あるいは偏移方向に偏移させる場合、第1の面と第2の面が解離し、それによって被検体の直線動作速度を倍増させることができる。しかしながら、第1の面と第2の面が鏡面に対して垂直方向において重複する限り、言い換えると解離しない限り、鏡面に対して垂直方向において相互に重複する第1および第2のコンダクタループの部分あるいは領域が、各コンダクタループの複数の相関しない領域をそれぞれ形成する。
【0014】
差動プローブの回転中に挿通口の中央軸が実質的に鏡面と平行にあるいは鏡面内に延在するような方式で、本発明に係る検査装置内に差動プローブが配置される。従って、差動プローブ、またはその差動プローブの第1および第2のハーフプローブあるいは第1および第2のコンダクタループが、被検体の動作方向に対して直角になる。その種の検査装置は、特に漏れ磁束方法による検査に適する。第1および第2のコンダクタループが鏡面の各側に配置されるため、一方でそれらが被検体の動作方向に対して垂直方向において相互に偏移し、さらに第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが鏡面の各側に配置されてそれらの第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが前記鏡面と平行に方向づけられるような構成において前記第1のコンダクタループと第2のコンダクタループが前記鏡面に対して平行な偏移方向で相互に偏移して配置されるため、前記第1のコンダクタループと第2のコンダクタループはさらに被検体の動作方向において偏移して配置される。その際第1の面と第2の面がそれら相互間ならびに鏡面に対してのいずれにおいても平行に方向づけられる。
【0015】
被検体のより大きな表面を覆いそれによって被検体の移動速度を高めるために、検査装置に複数の差動プローブを設けることができる。その検査装置において特に、2個あるいはそれ以上の差動プローブを実質的に均等な角度間隔をおいて挿通口の周囲に配置することができる。
【0016】
さらに、摺動方向あるいは中央軸に平行な線に沿って少なくとも2個の差動プローブを隣接して配置する検査装置も好適である。その種の差動プローブの配置によっても、より大きな被検体の面積が差動プローブによって覆われるため、被検体の移動速度が高められる。
【0017】
本発明に係る差動プローブの製造方法によれば、第1および第2のコンダクタループの両方を同一の基板上の適宜なセクタ上に形成し得ることが好適である。それによって、周知の差動プローブにおいて支持材の許容誤差と製造プロセスに起因して生じる不良電圧を防止することができる。また、同じ理由からプローブの感度が不要に変化することと欠陥がどの位置で差動プローブを通過するかによって異なった出力値が生成されることである、周知の差動プローブにおいて生じる問題も、本発明に係る方法によって製造される差動プローブによって回避することができる。
【0018】
本発明に係る方法によれば、簡便な構造を有するにもかかわらず被検体の回転速度を高める必要なく最低欠陥長の大幅な短縮を可能にする差動プローブを製造することができる。最低欠陥長あるいはそれより長い欠陥は、差動プローブ内のいずれの位置においても同じ感度で検出される。それによって評価ソフトウェア内のエラー閾値を一義的に設定することができる。さらに、差動プローブの製造に際しての製造公差が最小化される。
【0019】
両方のセクタの間に追加的に材料が挿入されることによって差動プローブの作用幅に影響が及ぼされる可能性がある。セクタを相互に接着することができる。勿論、第1および第2のコンダクタループの間の電気接続を直接的に両者の間の機械的な接続として使用することが好適である。作用幅が小さい場合は、例えばセクタを直接相互に接合させ、はんだを使用して電気接続を形成することができる。そのように形成される結合によってセクタが相互に固定される。より大きな作用幅の場合は、はんだ付けの前に追加的に機械的な要素を挿入することができる。単純な形式によれば、コンダクタループ間の結合にケーブルが挿入され、それが電気的な接続と同時に機械的な安定性を提供するよう機能する。
【0020】
さらに、第1のセクタ内に別の差動プローブの第1のコンダクタループあるいは第2のコンダクタループを形成し、それに従って第2のセクタ内に前記別の差動プローブのもう一方のコンダクタループ、すなわち第2のコンダクタループあるいは第1のコンダクタループを形成することが好適である。その方式によって基板の製造誤差を平均化することができる。並列接続された2個の従来の製造方式による差動プローブを有するシステムの場合、片方の差動プローブが機能停止しても残った差動プローブが継続してノイズフロアを維持するため、機能停止を即座に検出することはできない。他方、この本発明に係る方法の実施形態に従って差動プローブを形成すれば、片方の差動プローブの機能停止を評価ソフトウェアによって検知することができる。中断による機能停止の場合は全信号が欠落する。それに対して短絡による機能停止の場合は、プローブの差動動作と形成される信号から明確に誤りであると検知することができる。
【0021】
さらに、セクタに基準穴を設けることが好適であり、それによってセクタを相互に位置合せ可能にする。セクタを相互に固定するために、前記基準穴に機械的な要素あるいは部品を部分的あるいは完全に貫通させることができる。
【0022】
次に、添付図面を参照しながら以下に記述する好適な実施例の説明によって、本発明についてさらに詳細に明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】検査装置を極簡略的に示した説明図である。
図2】1個の差動プローブを示した説明図である。
図3】2個の差動プローブを示した説明図である。
図4a】コンダクタループがプリントされた基板を示した説明図である。
図4b図4aの基板を分断した後隣接して配置した状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、動作方式を強調するために極めて簡略的に検査装置1が示されている。検査装置は、回転可能に支承された回転ヘッド2と挿通口3を備える。漏れ磁束測定用の2体のプローブ装置4および5が回転ヘッド2上で直径方向に配置される。図2および図3に関して詳細に後述するように、プローブ装置4および5のそれぞれが1個あるいは複数の差動プローブを備える。
【0025】
周知の漏れ磁束測定を使用して、所与の直線動作速度で挿通口3を介して推進される被検体6内の材料不良が検出される。そのため、被検体6が所与の直線動作速度で推進される間に、回転ヘッド2を所与の回転速度で回転させる。本実施例において被検体6は縦長の部材に係る。従って、プローブ装置4および5が回転ヘッド2と被検体6の間の相対動作のためにいずれもネジ形の軌道を被検体6の表面上に描き、その軌道に沿って被検体6を走査する。被検体6の直線動作速度と回転ヘッド2の回転速度を適宜に設定することによって、被検体6の表面全体をプローブ装置4および5によって走査することができる。
【0026】
図2には、プローブ装置4および5内に適用することができる差動プローブ7が示されている。差動プローブ7は第1のハーフプローブ8と第2のハーフプローブ9を備える。3枚の基板10上にそれぞれ第1のコンダクタループ11,12,13が相互に整合する方向性で形成され、それら3枚の基板からなる積層体から第1のハーフプローブ8が形成され、一方第2のハーフプローブ9も同様に3枚の基板14からなる積層体によって形成され、それらの基板14上にはそれぞれ第2のコンダクタループ15,16,17が相互に整合する方向性で形成される。その際、第2のハーフプローブ9の側もしくは内側の第1のコンダクタループ11と第1のハーフプローブ8の側もしくは内側の第2のコンダクタループ17が第1のコンダクタループ対を形成し、中央の第1のコンダクタループ12と中央の第2のコンダクタループ16が第2のコンダクタループ対を形成し、第2のハーフプローブ9と逆側もしくは外側の第1のコンダクタループ13と第1のハーフプローブ8と逆側の第2のコンダクタループ15が第3のコンダクタループ対を形成する。
【0027】
第1のコンダクタループ11,12,13のそれぞれならびに第2のコンダクタループ15,16,17のそれぞれが、開放型の四角形の形状を有するとともにいずれも対の接触端子18を備え、その接触端子によって隣接する第1のコンダクタループ11,12,13あるいは第2のコンダクタループ15,16,17との電気接触を形成することができる。その際、全ての第1のコンダクタループ11,12,13が全ての第2のコンダクタループ15,16,17と整列するような配列において、両方のハーフプローブ8および9がそれらのハーフプローブ8および9の間に配置される仮想の鏡面に関して鏡像対称に形成されるような方式で、第1のコンダクタループ11,12,13上と第2のコンダクタループ15,16,17上の接触端子18の配分が成される。この両方のハーフプローブ8および9の鏡像対称の形成によって、それぞれ異なったあるいは逆向きの巻線方向を有する2個のコイルに相当するような方式の、第1のコンダクタループ11,12,13の相互間と第2のコンダクタループ15,16,17の相互間の導体結合が可能になる。
【0028】
しかしながら図2に示されるように、全ての第1のコンダクタループ11,12,13と全ての第2のコンダクタループ15,16,17が整列する上述の配置に対して、両ハーフプローブ8および9は相互に偏移して配置される。具体的には、ハーフプローブ8および9ならびにそれらの第1のコンダクタループ11,12,13および第2のコンダクタループ15,16,17が、図2において直線矢印によって強調されている、鏡面に対して平行な方向に偏移する。第1のコンダクタループ11,12,13によって囲繞される各第1の面が相互に整列するとともに鏡面に対して平行に方向づけられ、また第2のコンダクタループ15,16,17によって囲繞される各第2の面も相互に整列するとともに鏡面に対して平行に方向づけられるが、鏡面に対して垂直方向においては第1の面と第2の面の間に重複が存在しない。両方のハーフプローブ8および9の偏移方向に対して垂直でかつ相互に対向する第1のコンダクタループ11,12,13と第2のコンダクタループ15,16,17の周囲領域のみが、鏡面に対して垂直方向において重複あるいは積層して配置される。
【0029】
プローブ装置4あるいは5のいずれかに差動プローブ7を取り付けた後、検査ヘッド2の挿通口3の回転軸と共通である中央軸が実質的に前述した仮想の鏡面内に延在する。両方のハーフプローブ8および9の偏移方向と平行な第1のコンダクタループ11,12,13と第2のコンダクタループ15,16,17の周囲部分上に接触端子18が設けられ、その際前記第1のコンダクタループ11,12,13と第2のコンダクタループ15,16,17の周囲部分は挿通口3と逆側にあり、他方この接触端子18を備えた周囲部分と逆側の周囲部分は挿通口3ならびに被検体6の方を指向する。
【0030】
差動プローブ7は、同様に構成された別の差動プローブと組み合わせてプローブ装置4および5内に設けることもできる。そのため図3には、差動プローブ7が第1のハーフプローブ20と第2のハーフプローブ21を備えて同様に構成された差動プローブ19と組み合わせて示されており、その差動プローブ19は差動プローブ7の偏移方向の延長上に隣接して配置される。
【0031】
前述した差動プローブ7、ならびに特に差動プローブ7と差動プローブ19との組み合わせは、図4aに示されるように第1の差動プローブ7の第1のハーフプローブ8および第2のハーフプローブ9のそれぞれ1個のコンダクタループと第2の差動プローブ19の第1のハーフプローブ20および第2のハーフプローブ21のそれぞれ1個のコンダクタループを同一の基板22上の適宜な位置でしかもその基板上の異なったセクタ23および24内に形成することによって、極めて簡便に製造することができる。図示された実施例において第1のハーフプローブ8の第1のコンダクタループと第2のハーフプローブ21の第2のコンダクタループが基板22の第1のセクタ23内に形成され、一方第2のハーフプローブ9の第2のコンダクタループと第1のハーフプローブ20の第1のコンダクタループは、基板22の第2のセクタ24内の、完成した差動プローブ7および19における第1のハーフプローブ8および20に対する第2のハーフプローブ9および21のコンダクタループの偏移に相当する位置に形成される。従って、第2のハーフプローブ9の第2のコンダクタループと第1のハーフプローブ20の第1のコンダクタループが第2のセクタ24の方を向いた方向性で形成され、その方向性は完成した差動プローブ7および19あるいは完成した差動プローブ7および19の組み合わせ中におけるそれらの第2のハーフプローブ9の第2のコンダクタループと第1のハーフプローブ20の第1のコンダクタループの方向性に対して偏移方向と平行な回転軸周りで180°回転させたものとなる。さらに、基板22のセクタ23および24内に基準穴25を設け、それによって後のセクタ23と24の整列を容易にする。
【0032】
基板22を分断した後セクタ23と24が相互に分離されるが、それらのセクタ23および24を隣接して配置し、その際特に第2のセクタ24上に形成されたコンダクタループが、第1のセクタ23上に形成されたコンダクタループに対して完成した差動プローブ7および19における方向性に相当するような方向性を有するようにする。その際特に、両セクタのうちの一方のセクタ23または24が、いずれも他方のセクタ23または24と異なり、分断される前の基板22内における前記一方のセクタ23または24の方向性と比べて180°回転させたものとされる。
【0033】
セクタ23と24を隣接して配置する際に基準穴25が有効である。両方のセクタ23と24の基準穴25を相互に整列させることは単にその基準穴25を介して部材を挿入することによって実行可能であり、それによってセクタ23と24を所要の方式で簡便に位置決めすることができる。続いてセクタ23と24を相互に結合するが、それは例えば接着あるいはその他の機械的な方式で実施することができる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
【国際調査報告】