(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-512275(P2020-512275A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(54)【発明の名称】アクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/353 20060101AFI20200331BHJP
C07C 53/08 20060101ALI20200331BHJP
C07C 57/04 20060101ALI20200331BHJP
C07C 67/343 20060101ALI20200331BHJP
C07C 69/14 20060101ALI20200331BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20200331BHJP
C07C 51/09 20060101ALI20200331BHJP
C07C 31/08 20060101ALI20200331BHJP
C07C 31/10 20060101ALI20200331BHJP
C07C 29/147 20060101ALI20200331BHJP
B01J 29/18 20060101ALI20200331BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20200331BHJP
B01J 29/24 20060101ALI20200331BHJP
B01J 29/65 20060101ALI20200331BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20200331BHJP
B01J 29/08 20060101ALI20200331BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20200331BHJP
【FI】
C07C51/353
C07C53/08
C07C57/04
C07C67/343
C07C69/14
C07C69/54 Z
C07C51/09
C07C31/08
C07C31/10
C07C29/147
B01J29/18 Z
B01J29/40 Z
B01J29/24 Z
B01J29/65 Z
B01J29/70 Z
B01J29/08 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-527815(P2019-527815)
(86)(22)【出願日】2016年11月25日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月23日
(86)【国際出願番号】CN2016107284
(87)【国際公開番号】WO2018094691
(87)【国際公開日】20180531
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石 磊
(72)【発明者】
【氏名】劉 中民
(72)【発明者】
【氏名】倪 友明
(72)【発明者】
【氏名】朱 文良
(72)【発明者】
【氏名】劉 勇
(72)【発明者】
【氏名】劉 紅超
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA02B
4G169BA06B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC17A
4G169BC17B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC32A
4G169BC32B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169CB25
4G169CB74
4G169CB75
4G169DA06
4G169DA08
4G169FC04
4G169FC05
4G169ZA03B
4G169ZA06A
4G169ZA06B
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA13A
4G169ZA13B
4G169ZA19B
4G169ZA32A
4G169ZA32B
4G169ZB03
4G169ZC04
4G169ZD01
4G169ZD03
4G169ZD04
4G169ZD05
4G169ZE05
4G169ZF02A
4G169ZF05
4H006AA02
4H006AC25
4H006AC46
4H006AC48
4H006BA71
4H006BB61
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC37
4H006BN10
4H006BS10
4H006DA12
4H006DA15
4H006DA25
4H006DA35
4H006DA50
4H039CA21
4H039CA60
4H039CA65
4H039CA66
4H039CB10
4H039CB20
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、メチラール及び一酸化炭素を含有する原料ガスを、固体酸触媒を通過させ、反応温度が180〜400℃、反応圧力が0.1〜15.0MPa、メチラールの仕込み空間速度が0.05〜10.0h
−1、メチラールの体積パーセント含有量が0.1〜95%である条件下、高変換率及び選択率でアクリル酸及びアクリル酸メチルを生成する、アクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチラール及び一酸化炭素を含有する原料ガスを、分子篩触媒が担持された反応器によって反応し、主たる生成物であるアクリル酸と、アクリル酸メチル、酢酸メチル及び酢酸とを生成する、アクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項2】
前記反応が、180〜400℃の反応温度及び0.1〜15.0MPaの反応圧力で行われ、かつ前記原料ガス中のメチラールの重量空間速度が0.05〜10.0h−1であり、前記原料ガス中のメチラールの体積パーセント含有量が0.1〜95%である、請求項1に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項3】
前記分子篩触媒は、ZSM−35分子篩、ZSM−5分子篩、MORモルデナイト分子篩、及びEMT分子篩からなる群より選ばれるいずれか1種又はその組み合わせから選択される、請求項1に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項4】
対応するカルボン酸を生産するために前記方法により生成されたエステル類をさらに加水分解し、前記加水分解は、対応するアクリル酸を生産するために前記アクリル酸メチルを加水分解することと、対応する酢酸を生産するために前記酢酸メチルを加水分解することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
対応するアルコールを生産するために前記方法により生成されたエステル類及びカルボン酸類をさらに水素化し、前記水素化は、対応するプロパノールを生産するために前記アクリル酸メチル及びアクリル酸を水素化することと、対応するエタノールを生産するために酢酸メチル及び酢酸を水素化することとを含む、請求項4に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項6】
前記分子篩触媒中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=3〜100である、請求項3に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項7】
前記ZSM−35分子篩中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=20〜50であり、
前記ZSM−5分子篩中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=20〜60であり、
前記モルデナイト中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=10〜30であり、および
前記EMTゼオライト中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=5〜20である、請求項3又は6に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項8】
前記分子篩は、熱処理、水熱処理、無機酸処理、有機酸処理、F−処理及びキレート処理又は気−固相脱アルミニウム補充シリコン処理により得られる、請求項3に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項9】
前記分子篩触媒は、ガリウム、鉄、銅、及び銀からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含み、導入方法としては、insitu合成、金属イオン交換又は含浸担持を含み、かつ、金属の含有量は、金属単体で、触媒総重量に対して0.01〜10.0wt%である、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記金属の含有量は、触媒の総重量に対して0.05〜1.0wt%である、請求項9に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項11】
前記分子篩触媒は接着剤を含有し、前記接着剤が酸化アルミニウム、シリカ、及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれるいずれか1種又は2種以上であり、かつ接着剤の含有量は触媒総重量に対して0〜70wt%である、請求項1に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項12】
前記反応温度が220〜300℃である、請求項2に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項13】
前記反応圧力が5〜10MPaである、請求項2に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項14】
前記原料ガス中のメチラールの重量空間速度が0.3〜2.0h−1である、請求項2に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項15】
前記原料ガス中のメチラールの体積パーセント含有量が0.5〜30%である、請求項2に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項16】
前記原料ガス中に、メチラール、及び一酸化炭素以外に、さらに水素ガス及び不活性ガスを含み、一酸化炭素の体積含有量が50〜95%であり、水素ガスの体積含有量が0〜50%であり、不活性ガスの体積含有量が0〜50%であり、かつ不活性ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、二酸化炭素、メタン及びエタンのうちのいずれか1種又はその組み合わせを含む、請求項1に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【請求項17】
前記反応器は、固定床反応器、流動床反応器又は槽型反応器である、請求項1に記載のアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、固体酸触媒分野に属し、具体的には、メチラール及び一酸化炭素を反応原料としてアクリル酸及びアクリル酸メチルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸(英名:Acrylic acid)は、最も簡単な不飽和カルボン酸である。高純度のアクリル酸は特別な臭気を持ち、かつ極めて強い腐食性を有する。アクリル酸は重要な化工原料であり、各種の化学薬品の合成及び樹脂の生産に広く使用されている。アクリル酸及びアクリル酸エステル工業は、現在、世界中の石油化工生産分野の重要な構成部分となっている。
【0003】
アクリル酸の合成方法は、主に、下記1)〜10)が挙げられる。1)クロルヒドリン法:クロルヒドリン及びシアン化ナトリウムを反応原料として、アルカリ触媒の存在下、まず、シアノエタノールを生成し、シアノエタノールを、硫酸の存在下、脱水してアクリロニトリルを得、アクリロニトリルをさらに加水分解又はアルコール分解して、アクリル酸又はアクリル酸エステルを得る。2)シアノエタノール法:この方法はクロルヒドリン法から発展されてきた方法であり、ただ、シアノエタノールの合成方法が異なるだけであり、エチレンオキシドを青酸の作用下、開環反応して生成する。3)高圧Reppe及び改良Reppe法:アセチレン、一酸化炭素及び水を、触媒としてのニッケル塩又は銅塩の作用により、粗製アクリル酸を生成し、さらに異なるアルコールとエステル化反応して、アクリル酸エステルを生成する。4)アルケノン法:ビニルケトン(アセトン及び酢酸を原料として製造されたもの)を無水ホルムアルデヒドと反応してβ−プロピオラクトンを生成し、β−プロピオラクトンを熱リン酸と接触させて異性化してアクリル酸を生成する。5)ホルムアルデヒド−酢酸法:ホルムアルデヒドを酢酸とアルドール縮合反応し、アクリル酸を直接に生成する。6)アクリロニトリル加水分解法。7)エチレン法:エチレンを貴金属触媒の存在下、一酸化炭素及び酸素ガスと酸化的カルボニル化反応し、アクリル酸を生成する。8)プロピレン直接酸化法:さらに一段及び二段直接酸化法に分けられ、二段酸化法の第一段階において、プロピレンを酸化してアクロレインを生成し、第二段階において、アクロレインをさらに酸化してアクリル酸を生成する。9)プロパン酸化法:プロパンを原料として、金属酸化物を触媒として、プロパンを直接酸化してアクリル酸を得る。10)エチレンオキシド法:一酸化炭素をエチレンオキシドに直接挿入し、すなわち、エチレンオキシドをカルボニル化反応し、プロピオン酸を生成する。上記10種類のアクリル酸生産方法のうち、クロルヒドリン法、シアノエタノール法、Reppe法及びアルケノン法は、効率が低く、毒性が高いので、工業的コストが高く、徐々に廃止されている。エチレン法、プロパン法及びエチレンオキシド法は、触媒安定性及び選択率並びに触媒プロセスがまだ未熟であり、未だに大規模の生産が報告されなかった。プロピレン酸化法だけが現在の世界中のアクリル酸の大規模生産に用いられる唯一の方法となっている。
【0004】
プロピレン酸化法は、最初に1969年、UCC社によりアメリカで初めての生産装置セットが建設され、その後、1970年、日本触媒化学株式会社(MCC)、1973年、日本三菱化学株式会社(NSKK)、及び1973年、アメリカセラニーズ(Celanese)社により相次いでプロピレン酸化法でアクリル酸を生産する生産装置が建設された。世界中、現在では、プロピレン酸化法によりアクリル酸を生産するプロセス技術を持つ会社はいずれもプロピレン二段酸化法プロセスを用いている。
【0005】
したがって、安価な原料から高い変換率及び選択率でアクリル酸及びアクリル酸メチルを生成する製造方法の開発は重要な意義を有する。
【発明の概要】
【0006】
本出願の目的は、安価なメチラール(DMM)及び一酸化炭素を反応原料として、固体酸を触媒として、高選択率でアクリル酸及びアクリル酸メチルを生成する、アクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法を提供することにある。
【0007】
前記方法では、メチラール及び一酸化炭素を含有する原料ガスを、分子篩触媒が担持された反応器によって反応し、主たる生成物であるアクリル酸と、アクリル酸メチル、酢酸メチル及び酢酸とを生成する。分離により、酢酸、酢酸メチル、アクリル酸及びアクリル酸メチルをそれぞれ得ることができる。
【0008】
本発明の幾つかの好ましい実施態様によれば、前記反応が、180〜400℃の反応温度及び0.1〜15.0MPaの反応圧力で行われ、かつ前記原料ガス中のメチラールの重量空間速度が0.05〜10.0h
−1であり、前記原料ガス中のメチラールの体積パーセント含有量が0.1〜95%である。
【0009】
本出願において、メチラールを一酸化炭素と反応し、酢酸、酢酸メチル、アクリル酸及びアクリル酸メチルを生成する反応過程を下記のように示す。
【0010】
1)メチラールを固体酸(分子篩ポアチャンネル内)のH−プロトン酸と反応させ、固体酸(分子篩)により吸着活性化されたメトキシメチル類物質を生成しながら、メタノールを生成する。
【0012】
2)生成したメタノールを固体酸(分子篩ポアチャンネル内)が過量のH−プロトン酸と反応させ、分子篩により吸着活性化されたメチル類物質及び水を生成する。
【0014】
3)COは、固体酸(分子篩)により吸着活性化されたメトキシメチル類物質に直接挿入し、メトキシアセチル類物質を生成することができる。
【0016】
同時に、
4)COは、固体酸(分子篩)により吸着活性化されたメチル類物質に直接挿入し、アセチル類物質を生成することもできる。
【0018】
5)固体酸(分子篩)により吸着活性化されたメトキシメチルは、メチラールと自己不均化反応し、分子篩により吸着活性化されたジメトキシメチル類物質及びジメチルエーテルを生成することができる。
【0020】
6)固体酸(分子篩)により吸着活性化されたジメトキシメチル類物質は、水の作用により、ジメチルエーテル、ホルムアルデヒド、及び空いている固体酸(分子篩)酸点を生成することができる;
【0022】
7)固体酸(分子篩)により吸着されたメトキシアセチル類物質は、メチラールとメチルエーテル化反応し、メトキシ酢酸メチル及び分子篩により吸着されたメトキシメチル類物質を生成することができ、また、ジメチルエーテルとメチルエーテル化反応し、メトキシ酢酸メチル及び分子篩により吸着されたメトキシ類物質を生成することもでき、同時に、分子篩により吸着されたメトキシアセチル類物質は、さらに水と反応して、メトキシ酢酸及び空いている固体酸(分子篩)酸点を生成することもできる(後ろの2つの反応は経路が類似し、図示を省略する)。
【0024】
同様に
8)固体酸(分子篩)により吸着活性化されたメチル類物質は、ジメチルエーテルとメチルエーテル化反応して、酢酸メチル及び分子篩により吸着されたメトキシ類物質を生成することもでき、メチラールとメチルエーテル化反応して、酢酸メチル及び分子篩により吸着されたメトキシメチル類物質することができ、同時に、分子篩により吸着されたアセチル類物質は、さらに、水又はメタノールと反応して、酢酸及び空いている分子篩酸点又は吸着されたメチル類物質を生成することもできる(後ろの2つの反応は経路が類似し、図示を省略する)。
【0026】
9)生成された酢酸又は酢酸メチルは、ホルムアルデヒドとアルドール縮合反応して、アクリル酸及びアクリル酸メチルを生成することができる。
【0027】
上述した反応メカニズムに基づき、熱力学及び動力学要因により、異なる温度及び圧力反応条件並びに異なる割合の原料組成等の条件を制御することによって、生成物の生成を指向的制御して、以下の方程式に伴って行うことができる。理想の条件下、生成物中のアクリル酸の総炭素選択率が60%であり、酢酸の総炭素選択率が40%であり、そしてその他の副生物を生成しない。単一反応原料であるメチラールで生成物の選択率を計算すると、アクリル酸の炭素選択率が50%であり、酢酸の炭素選択率が50%である。
【0028】
C
3H
8O
2(メチラール)+2CO=C
3H
4O
2(アクリル酸)+ C
2H
4O
2(酢酸)
実際の反応において、酢酸メチルの加水分解反応が徹底的ではないため、生成物のうち、一部のアクリル酸メチル及び酢酸メチルが生成される。
【0029】
前記反応生成物中、アクリル酸の質量パーセント含有量が0.1〜70%であり、アクリル酸メチルの質量パーセント含有量が0.1〜30%であり、酢酸の質量パーセント含有量が0.1〜60%であり、酢酸メチルの質量パーセント含有量が0.1〜40%である。
【0030】
前記分子篩触媒は、ZSM−35分子篩、ZSM−5分子篩、MORモルデナイト分子篩、EMT分子篩からなる群より選ばれるいずれか1種又はその組み合わせから選択される。
【0031】
対応するカルボン酸を生産するために前記方法により生成されたエステル類をさらに加水分解し、前記加水分解は、対応するアクリル酸を生産するために前記アクリル酸メチルを加水分解することと、対応する酢酸を生産するために前記酢酸メチルを加水分解することと、を含む。
【0032】
対応するアルコールを生産するために前記方法により生成されたエステル類及びカルボン酸類をさらに水素化し、前記水素化は、対応するプロパノールを生産するために前記アクリル酸メチル及びアクリル酸を水素化することと、対応するエタノールを生産するために酢酸メチル及び酢酸を水素化することとを含む。
【0033】
前記分子篩触媒中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=3〜100であることが好ましい。
【0034】
前記ZSM−35分子篩中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=20〜50であることが好ましい。
【0035】
前記ZSM−5分子篩中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=20〜60であることが好ましい。
【0036】
前記モルデナイト中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=10〜30であることが好ましい。
【0037】
前記EMTゼオライト中、ケイ素とアルミニウムとの原子比は、Si/Al=5〜20であることが好ましい。
【0038】
前記分子篩は、熱処理、水熱処理、無機酸処理、有機酸処理、F
−処理及びキレート処理又は気−固相脱アルミニウム補充シリコン処理により得ることができる。
【0039】
前記異なるトポロジー構造の分子篩は、ガリウム、鉄、銅、銀からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含み、導入方法としては、insitu合成、金属イオン交換又は含浸担持を含み、かつ、金属の含有量は、金属単体で、触媒総重量に対して0.01〜10.0wt%である。
【0040】
前記金属の含有量は、触媒総重量に対して0.05〜1.0wt%であることが好ましい。
【0041】
異なるトポロジー構造を含む分子篩触媒は接着剤を含有し、接着剤が酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウムからなる群より選ばれるいずれか1種又は2種以上であり、かつ接着剤の含有量は触媒総重量に対して0〜70wt%である。
【0042】
前記反応温度は、220〜300℃であることが好ましい。
【0043】
前記反応圧力は、5〜10MPaであることが好ましい。
【0044】
前記原料中のメチラールの重量空間速度は0.3〜2.0h
−1であることが好ましい。
【0045】
前記原料中のメチラールの体積パーセント含有量は、0.5〜30%であることが好ましい。
【0046】
前記原料ガス中に、メチラール、一酸化炭素、水素ガス及び不活性ガスを含み、そのうち、一酸化炭素の体積含有量が50〜95%であり、水素ガスの体積含有量が0〜50%であり、不活性ガスの体積含有量が0〜50%である。不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、二酸化炭素、メタン及びエタンのうちのいずれか1種又はその組み合わせを含む。
【0047】
前記反応器は、固定床反応器、流動床反応器又は槽型反応器である。
【0048】
本出願は、下記1)〜2)の有益な効果を奏することができる。
【0049】
1)本出願が提供する方法によれば、安価なメチラール及び一酸化炭素を反応原料として、高選択率でアクリル酸及びアクリル酸メチルを合成し、酢酸メチル及び酢酸を副生する。
【0050】
2)本出願が提供する方法によれば、生成物は酢酸、酢酸メチル、アクリル酸及びアクリル酸メチルであり、かつ、常圧条件で、4種の生成物の沸点が大きく相違し、極めて分離しやすいので、低エネルギー消耗、低コストで高付加価値のアクリル酸及びアクリル酸メチルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】実施例1において、H−MOR分子篩上に、総圧が5.0MPa、CO分圧が2.5MPa、DMM分圧が1.25×10
−2MPaである場合、原料DMMの変換率及び生成物の選択率が温度に伴って変化する図である。
【
図2】実施例3において、H−MOR分子篩上に、反応総圧の、生成物である酢酸及びアクリル酸の選択率への影響が反応温度に伴って変化する関係の図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、具体的な実施例を参照しながら、本出願をさらに説明する。これら実施例は本出願の範囲を制限するものではなく、単に本出願を説明するためのものであると理解されうるであろう。
【0053】
特に説明がない限り、本出願の実施例における原料及び触媒はいずれも市販から購入される。
【0054】
本出願の実施例における分析方法は以下の通りである。
【0055】
原料及び生成物は、アジレント社のAgilent 7890Aガスクロマトグラフィーを用い、アジレント社のFFAPキャピラリーカラムにより検出する。
【0056】
本出願の一実施形態は、固定床反応器を用い、触媒の充填質量を0.5〜3.0g、反応温度を180〜350℃、反応圧力を0.1〜10MPaにした。原料メチラールは、2種類の仕込方式を用いて反応器に導入される。
【0057】
1つは、一酸化炭素により、異なる水浴温度(0〜50℃)の条件でメチラールの飽和蒸気を運んで固定床反応器に導入され、異なる体積含有量のメチラール原料ガスを得ることができる。異なる温度条件で原料エチレングリコールジメチルエーテルの飽和蒸気圧の計算方法は式IIに示されている。
【0058】
ln(p
1*/p
2*)=-Δ
vapH
m/8.3145×(1/T
1-1/T
2) 式II
式中、p
1*及びp
2*はそれぞれ異なる温度(T
1、T
2)におけるメチラールの飽和蒸気圧を表す。メチラールのモル蒸発エンタルピーΔ
vapH
m=43.99KJ/mol、沸点42.3℃が既知であり、このように任意温度におけるメチラールの飽和蒸気圧を算出することができる。飽和蒸気圧により、単位時間当たり、反応器に入った原料メチラールの物質量を算出することができる。
【0059】
もう1つは、恒流ポンプにより液状の原料メチラールを0.1〜10mL/minの流速で固定床反応器内に直接ポンピングすることであり、この方式において、反応器に入って触媒と接触する原料ガス中、メチラールの体積含有量が0.1%〜100%である。
【0060】
本出願の実施例において変換率、選択率を下記のように算出する。
【0061】
メチラールの変換率=[(仕込んだ原料中のメチラールのモル数)−(排出物中のメチラールのモル数)]÷(仕込んだ原料中のメチラールのモル数)×(100%)
アクリル酸の選択率=2/3(排出物中のアクリル酸の炭素原子モル数)÷[(仕込んだ原料中のメチラールの炭素原子モル数)−(排出物中のメチラールの炭素原子モル数)]×(100%)
【0062】
アクリル酸メチルの選択率=3/4(排出物中のアクリル酸メチルの炭素原子モル数)÷[(仕込んだ原料中のメチラールの炭素原子モル数)−(排出物中のメチラールの炭素原子モル数)]×(100%)
【0063】
酢酸の選択率=1/2(排出物中の酢酸の炭素原子モル数)÷[(仕込んだ原料中のメチラールの炭素原子モル数)−(排出物中のメチラールの炭素原子モル数)]×(100%)
【0064】
酢酸メチルの選択率=2/3(排出物中の酢酸メチルの炭素原子モル数)÷[(仕込んだ原料中のメチラールの炭素原子モル数)−(排出物中のメチラールの炭素原子モル数)]×(100%)
【0065】
触媒の製造
H−モルデナイト触媒
アルミニウム原子モル比が5、6.5、25、50の焼成されたNa−モルデナイトゼオライト分子篩 100gをそれぞれ0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し(2時間/回)、脱イオン水で洗浄、乾燥し、550℃で4時間焼成し、プレスして20〜40メッシュの触媒を作製した。
【0066】
Ga−モルデナイト触媒
焼成されたガリウム含有Na−モルデナイト(ケイ素/アルミニウム原子モル比が5)ゼオライト分子篩 100gを0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し(2時間/回)、脱イオン水で洗浄、乾燥し、550℃で4時間焼成し、プレスして20〜40メッシュの触媒を作製した。
【0067】
Fe−モルデナイト触媒
焼成された鉄含有Na−モルデナイトゼオライト分子篩(ケイ素/アルミニウム原子モル比が6.5)100gを0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し(2時間/回)、脱イオン水で洗浄、乾燥し、550℃で4時間焼成し、プレスして20〜40メッシュの触媒を作製した。
【0068】
担持型M/H−モルデナイト触媒
等体積含浸法を用いて担持型触媒を作製する。Fe(NO
3)
3 4.32g、Cu(NO
3)
2・3H
2O 4.32g、AgNO
3・3H
2O 3.04gをそれぞれ18mlの脱イオン水に溶解して相応的な硝酸塩水溶液を調製した。ケイ素/アルミニウム比が25のH−モルデナイト ゼオライト分子篩 20gを硝酸鉄水溶液に放置し、24時間静置し、得られた試料を120℃オーブン内で12時間乾燥し、乾燥後の試料をマッフル炉内に放置し、2℃/minの昇温速度で550℃に昇温し、4h焼成して、触媒を作製した。
【0069】
イオン交換型M−モルデナイト触媒
H−モルデナイト 20g及び0.15mol硝酸鉄水溶液300mlをフラスコに放置し、80℃、冷却還流の条件下、2時間撹拌処理し、固液比を1:15にした。ろ過分離して、脱イオン水で洗浄し、上記のステップを2回繰り返し、120℃で12時間乾燥し、乾燥後の試料をマッフル炉内に放置し、2℃/minの昇温速度で550℃に昇温し、4h焼成し、触媒を得た。
【0070】
H−モルデナイト触媒成形
ケイ素/アルミニウム原子モル比が6.5のNa−モルデナイト 80g、擬ベーマイト 28gを10%希硝酸と均一に混合してから押出成形、焼成した後、0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し(2時間/回)、脱イオン水で洗浄、乾燥し、550℃で4時間焼成し、触媒を作製した。
【0071】
ケイ素/アルミニウム原子モル比が4のNa−モルデナイト 80g、酸化マグネシウム 20gを10%希硝酸と均一に混合してから押出成形、焼成した後、0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し(2時間/回)、脱イオン水で洗浄、乾燥し、550℃で4時間焼成し、触媒を作製した。
【0072】
ケイ素/アルミニウム原子モル比が4のNa−モルデナイト 80g、シリカゾル 50gを10%希硝酸と均一に混合してから押出成形、焼成した後、0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し(2時間/回)、脱イオン水で洗浄、乾燥し、550℃で4時間焼成し、触媒を作製した。
【0073】
H−ZSM−35触媒
ケイ素/アルミニウム原子モル比が20、35、50の焼成されたNa−ZSM−35分子篩 100gをそれぞれ0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し(2時間/回)、脱イオン水で洗浄、乾燥し、550℃で4時間焼成し、プレスして20〜40メッシュの触媒を作製した。
【0074】
H−ZSM−5触媒
ケイ素/アルミニウム原子モル比が20、40、60の焼成されたNa−ZSM−5分子篩100gをそれぞれ0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し(2時間/回)、脱イオン水で洗浄、乾燥し、550℃で4時間焼成し、プレスして20〜40メッシュの触媒を作製した。
【0075】
H−EMT触媒
ケイ素/アルミニウム原子モル比が5、10、20の合成されたH−EMT分子篩をそれぞれプレスして20〜40メッシュの触媒を作製した。
【0076】
実施例1
ケイ素/アルミニウム比Si/Al=6.5のH−MOR分子篩を40MPaの圧力で押圧し、20〜40メッシュに粉砕して、触媒を得た。0.4gの触媒を固定床反応器内に充填し、前処理を行った。触媒の前処理条件は、N
2流速が30mL/minであり、25℃から150min経過して500℃に昇温し、500℃の条件で180min維持されることである。
【0077】
反応ガスは、3経路のガスからなり、総流速が100mL/minに保証され、原料メチラールは、水浴温度30℃の条件で、COにより10mL/minの流速で反応器内に持ち込まれる。もう1経路の純粋COの流速がそれぞれ0mL/min、10mL/min、40mL/min、90mL/minであり、第3経路のN
2ガスの流速がそれぞれ90mL/min、80mL/min、50mL/min、0mL/minであり、反応総圧力が5.0MPaであった。反応温度は、190℃になってから300min維持され、その後、5min以内に200℃に昇温し、さらに300min維持され、その後、5min以内に210℃に昇温し、上記の規則に従い、270℃に昇温して300min維持されたまで、10℃昇温したたびに300min維持された。原料DMMの分圧が約1.25×10
−2MPa(0.0125atm)であり、総COの分圧が0.5、1.0、2.5及び5.0MPaに近似する。
【0078】
COの分圧が2.5MPaである場合、原料DMMの変換率及び生成物の選択率の温度に伴って変化する図を
図1に示している。
図1から、H−MOR(Si/Al=6.5)触媒上に、反応温度が190℃を超えた場合、原料DMMの変換率が100%に近いことがわかった。主に5種の生成物が生成され、それぞれジメチルエーテル(DME)、酢酸メチル(MAc)、酢酸(AA)、アクリル酸メチル(MA)及びアクリル酸(CA)である。生成物ジメチルエーテル及び酢酸メチルの選択率は、反応温度の上昇に伴って徐々に低下し、反応温度が240℃に達した場合、ほとんどジメチルエーテルを生成しない。反応温度が270℃に達した場合、酢酸メチルの選択率が40%に低下した。反応温度が200℃を超えた場合、生成物中に少量のアクリル酸が生成され、その選択率が反応温度の上昇に伴って上昇し、反応温度が270℃に達した場合、最高選択率が35%に達した。生成物アクリル酸メチルは、アクリル酸の生成に伴って現れ、その選択率がずっと3%程度で安定している。生成物酢酸の選択率も反応温度の上昇に伴って徐々に増加するが、その変化が明らかではなく、その選択率は、初期の190℃での10%から、270℃での23%に上昇した。
【0079】
表1は、原料DMMの分圧が1.25×10
−2MPa(0.0125atm)、COの分圧が0.5、1.0及び5.0MPaである場合、生成物が反応温度に伴って変化する分布状況を示す。表1から、全ての条件下でも、原料DMMが100%の変換率に近く、COの分圧の上昇に伴い、同一反応温度で、生成物アクリル酸の選択率が高いことがわかった。COの分圧が5.0MPaである場合、240℃の条件下、アクリル酸の選択率が既に37%に達した。COの分圧の、酢酸の選択率への影響が小さく、酢酸の選択率がほぼ20〜25%で安定している。
【0080】
実施例2
ケイ素/アルミニウム比Si/Al=6.5のH−MOR分子篩を40MPaの圧力で押圧し、20〜40メッシュに粉砕して、触媒を得た。0.4gの触媒を固定床反応器内に充填し、前処理を行った。触媒の前処理条件は、N
2の流速が30mL/minであり、25℃から150min経過して500℃に昇温し、500℃の条件で180min維持されることである。
【0081】
反応ガスは2経路のガスからなり、総流速が100mL/minに保証され、原料メチラールの水浴温度を0℃及び30℃に制御した条件下、COにより2mL/min、5mL/min、10mL/min、25mL/min、50mL/min及び100mL/minの流速で反応器内に持ち込まれる。もう1経路の純粋COの流速がそれぞれ98mL/min、95mL/min、90mL/min、75mL/min、50mL/min、0mL/minであった。反応総圧力が5.0MPaであった。反応温度は190℃になってから300min維持され、その後、5min以内に200℃に昇温し、さらに300min維持され、その後、5min以内に210℃に昇温し、上記の規則に従い、270℃に昇温して300min維持されたまで、10℃昇温したたびに300min維持された。原料DMMの分圧がそれぞれ0.21×10
−2MPa(0.0021atm)、0.416×10
−2MPa(0.00416atm)、1.25×10
−2MPa(0.0125atm)、3.125×10
−2MPa(0.3125atm)、6.25×10
−2MPa(0.625atm)、12.5×10
−2MPa(0.125atm)であった。そのうち、原料DMMの分圧が1.25×10
−2MPa(0.0125atm)である場合の反応データを
図1に示し、その他の反応データを表2に示している。DMMの分圧が3.125×10
−2MPa未満である場合、任意の反応温度条件下でも、DMMの変換率が100%に近い。DMMの分圧が3.125×10
−2MPaを超えた場合、反応温度が上昇するにつれて、DMMの変換率が徐々に向上する。DMMの分圧が0.21×10
−2MPa、反応温度が190℃である場合、生成物が酢酸メチル及び酢酸であり、それらの選択率がそれぞれ56%及び44%であった。反応温度を上昇させると、酢酸メチル及び酢酸の選択率が段階的に低下し、アクリル酸及びアクリル酸メチルが生成するにつれて、アクリル酸の選択率が反応温度の上昇に伴って上昇した。反応温度が250℃以上である場合、アクリル酸の選択率が最大となり、48%に達し、反応温度が上昇するにつれて、ほぼ変化しない。DMMの分圧を0.416×10
−2MPaに上昇させ、反応温度が250℃を超えた場合、アクリル酸の選択率が40%程度で安定している。DMMの分圧が増加するにつれて、同様な反応温度条件下、アクリル酸の選択率が徐々に低下した。DMMの分圧が12.5×10
−2MPa、反応温度が270℃である場合、アクリル酸の選択率が4%だけであった。
【0082】
実施例3
ケイ素/アルミニウム比Si/Al=6.5のH−MOR分子篩を40MPaの圧力で押圧し、20〜40メッシュに粉砕して、触媒を得た。0.4gの触媒を固定床反応器内に充填し、前処理を行った。触媒の前処理条件は、N
2流速が30mL/minであり、25℃になってから150min経過して500℃に昇温し、500℃の条件で180min維持されることである。
【0083】
反応ガスは、2経路のガスからなり、総流速が100mL/minに保証され、原料DMMの水浴温度及びCO担持ガス流速を調整することで、COとDMMとのモル比を400:1に維持した(すなわち、クロマトグラム中の原料DMMのピーク面積が変わらないように保証する)。反応総圧力を、それぞれ1.25MPa、2.50MPa、5.0MPaとなるように調整した。反応温度を190℃になってから90min維持され、その後、5min以内に200℃に昇温し、さらに90min維持され、その後、5min以内に210℃に昇温し、上記の規則に従い、270℃に昇温して90min維持されたまで、10℃昇温したたびに90min維持された。原料DMMの変換率ならびに生成物酢酸及びアクリル酸の選択率が温度に従って変化する図を
図2に示している。COとDMMとの割合をそのまま維持し、段階的に反応総圧を向上させ、酢酸の選択率がほぼ変わらなかった。しかし、反応総圧が5.0MPaである場合、生成物アクリル酸の選択率が同一温度における総圧が1.25MPa、2.50MPaにおけるアクリル酸の選択率よりも明らかに高い。なぜなら、アルドール縮合反応は分子数が減少する反応であり、反応圧力を高めることで、反応がプラスの方向へと進行するのに有利である。
【0084】
実施例4
固定床反応器を用い、触媒の充填質量を0.1〜5.0gとし、異なるケイ素/アルミニウム比のトポロジー構造がMWW、FER、MFI、MOR、FAU、BEA分子篩(H−MCM−22、H−ZSM−35、H−ZSM−5、H−MOR、H−Y、H−Betaを含む)、金属改質されたGa−モルデナイト、Fe−モルデナイト、Cu−モルデナイト及び成形された触媒H−モルデナイト−Al
2O
3、H−モルデナイト−SiO
2、H−モルデナイト−MgOを、40MPaの圧力で押圧し、20〜40メッシュに粉砕して、触媒を得た。酸性樹脂触媒及び固体スルホン酸触媒の、反応温度が180〜350℃、反応圧力が0.1〜10MPa、原料DMMの重量空間速度が0.05〜10h
−1、体積パーセント含有量範囲が0.1〜100%である条件範囲内での反応結果を表3に示す。
【0088】
上記の説明は、本出願の幾つかの実施例に過ぎず、本出願に対して何ら制限的な意味を有するものではなく、本出願は好適な実施例で上記のように開示されているが、本出願を制限するためのものではなく、当業者であれば、本出願の技術的方案から逸脱することなく、上記開示された技術的内容によって行われたいかなる変更または修正も等価実施例と同等であり、いずれも技術的方案の範囲内に属する。
【国際調査報告】