特表2020-512368(P2020-512368A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-512368シヌクレイノパチーを治療するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-512368(P2020-512368A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(54)【発明の名称】シヌクレイノパチーを治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20200331BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20200331BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20200331BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20200331BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20200331BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20200331BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20200331BHJP
【FI】
   A61K39/395 N
   A61K39/395 D
   A61P25/16
   A61P25/28
   A61P25/00
   A61P25/02 103
   C12N15/13ZNA
   C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2019-553442(P2019-553442)
(86)(22)【出願日】2018年3月30日
(85)【翻訳文提出日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】IB2018052236
(87)【国際公開番号】WO2018178950
(87)【国際公開日】20181004
(31)【優先権主張番号】62/479,818
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/528,790
(32)【優先日】2017年7月5日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】513083820
【氏名又は名称】バイオジェン インターナショナル ニューロサイエンス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ペナー, ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】ムラリダラン, クマール カンダディ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA11
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG02
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、部分的には、α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片の投与計画、及びシヌクレイノパチーの治療におけるそれらの使用に関する。これらの投与計画は、シヌクレイノパチー、例えば、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病のレビー小体変異型(LBVAD)、純粋自律神経不全症(PAF)、多系統萎縮症(MSA)、及び1型脳内鉄沈着神経変性症(NBIA−I)の治療において用途を見出す。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シヌクレイノパチーの治療をそれを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記ヒト対象に抗α−シヌクレイン抗体を、前記ヒト対象の体重1kgあたり、3mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、45mg/kg、または90mg/kgの用量で静脈内投与することを包含し、ここで前記抗α−シヌクレイン抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:
(a)前記VHは、VH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:
VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;
VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;そして
VH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;そして
(b)前記VLは、VL−CDRを含み、ここで:
VL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;
VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;そして
VL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる、前記方法。
【請求項2】
前記シヌクレイノパチーがパーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病のレビー小体変異型(LBVAD)、多系統萎縮症(MSA)、純粋自律神経不全症(PAF)、または1型脳内鉄沈着神経変性症(NBIA−I)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シヌクレイノパチーがパーキンソン病である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着の処置をそれを必要とするヒト対象において行う方法であって、抗α−シヌクレイン抗体を、前記ヒト対象の体重1kgあたり、3mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、45mg/kg、または90mg/kgという用量で前記ヒト対象に静脈内投与することを包含し、ここで前記抗α−シヌクレイン抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:
(a)前記VHは、VH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:
VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;
VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;そして
VH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;そして
(b)前記VLは、VL−CDRを含み、ここで:
VL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;
VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;そして
VL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる、前記方法。
【請求項5】
前記ヒト対象が、中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着を有すると特定されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記VHが、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記VLが、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記VHが配列番号8に記載のアミノ酸配列からなり、前記VLが配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体がヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体がヒトラムダ軽鎖定常領域を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号10に記載のアミノ酸配列からなり、かつ前記軽鎖が配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗α−シヌクレイン抗体が、4週間ごと、3週間ごと、2週間ごと、または毎週投与される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗α−シヌクレイン抗体の体重1kgあたり3mgが、4週間ごとに投与される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗α−シヌクレイン抗体の体重1kgあたり5mgが4週間ごとに投与される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗α−シヌクレイン抗体の体重1kgあたり15mgが4週間ごとに投与される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗α−シヌクレイン抗体の体重1kgあたり45mgが4週間ごとに投与される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗α−シヌクレイン抗体の体重1kgあたり90mgが4週間ごとに投与される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒト対象が、少なくとも2用量の前記抗α−シヌクレイン抗体を投与される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト対象が、少なくとも12用量の前記抗α−シヌクレイン抗体を投与される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
薬学的に許容される担体と一緒に、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、または6750mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体を含む滅菌組成物であって、前記抗α−シヌクレイン抗体が、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:
(a)前記VHは、VH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:
VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;
VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;そして
VH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;そして
(b)前記VLは、VL−CDRを含み、ここで:
VL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;
VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;そして
VL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる、前記滅菌組成物。
【請求項21】
前記滅菌組成物がバイアルで提供される、請求項20に記載の滅菌組成物。
【請求項22】
前記滅菌組成物が、前記抗α−シヌクレイン抗体の静脈内投与に適合したシリンジまたはポンプで提供される、請求項20記載の滅菌組成物。
【請求項23】
前記VHが、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる、請求項20〜22のいずれか1項に記載の滅菌組成物。
【請求項24】
前記VLが配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる、請求項20〜22のいずれか1項に記載の滅菌組成物。
【請求項25】
前記VHが配列番号8に記載のアミノ酸配列からなり、前記VLが配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる、請求項20〜22のいずれか1項に記載の滅菌組成物。
【請求項26】
前記抗体がヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項20〜25のいずれか1項に記載の滅菌組成物。
【請求項27】
前記抗体がヒトラムダ軽鎖定常領域を含む、請求項20〜25のいずれか1項に記載の滅菌組成物。
【請求項28】
前記抗体が重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号10に記載のアミノ酸配列からなり、前記軽鎖が配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる、請求項20〜22のいずれか1項に記載の滅菌組成物。
【請求項29】
シヌクレイノパチーの治療をそれを必要とするヒト対象において行う方法であって、請求項20〜28のいずれか1項に記載の滅菌組成物からの抗α−シヌクレイン抗体の固定用量を前記ヒト対象に静脈内投与することを包含する、前記方法。
【請求項30】
前記シヌクレイノパチーが、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病のレビー小体変異型(LBVAD)、多系統萎縮症(MSA)、純粋自律神経不全症(PAF)、または1型脳内鉄沈着神経変性症(NBIA−I)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記シヌクレイノパチーがパーキンソン病である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着の処置をそれを必要とするヒト対象において行う方法であって、請求項20〜28のいずれか1項に記載の滅菌組成物から固定用量の前記抗α−シヌクレイン抗体を前記ヒト対象に静脈内投与することを包含する、前記方法。
【請求項33】
前記ヒト対象が、中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着を有すると特定されている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗α−シヌクレイン抗体が4週間ごと、3週間ごと、2週間ごと、または毎週投与される、請求項29〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、または6750mgという固定用量が4週間ごとに投与される、請求項29〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒト対象が、少なくとも2用量の前記抗α−シヌクレイン抗体を投与される、請求項29〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒト対象が、少なくとも12用量の前記抗α−シヌクレイン抗体を投与される、請求項29〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
シヌクレイノパチーの治療をそれを必要とするヒト対象において行う方法であって、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、または6750mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体を前記ヒト対象に静脈内投与することを包含し、前記抗α−シヌクレイン抗体は免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:
(a)前記VHは、VH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:
VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;
VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;そして
VH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;そして
(b)前記VLは、VL−CDRを含み、ここで:
VL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;
VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;そして
VL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる、前記方法。
【請求項39】
前記シヌクレイノパチーが、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病のレビー小体変異型(LBVAD)、多系統萎縮症(MSA)、純粋自律神経不全症(PAF)、または1型脳内鉄沈着神経変性症(NBIA−I)である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記シヌクレイノパチーがパーキンソン病である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着の処置をそれを必要とするヒト対象において行う方法であって、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、または6750mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体を前記ヒト対象に静脈内投与することを包含し、前記抗α−シヌクレイン抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:
(a)前記VHは、VH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:
VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;
VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;そして
VH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;そして
(b)前記VLは、VL−CDRを含み、ここで:
VL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;
VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;そして
VL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる、前記方法。
【請求項42】
前記ヒト対象が、中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着を有すると特定されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記VHが、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる、請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記VLが配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる、請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記VHが配列番号8に記載のアミノ酸配列からなり、前記VLが配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる、請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体がヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項38〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体がヒトラムダ軽鎖定常領域を含む、請求項38〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体が重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号10に記載のアミノ酸配列からなり、前記軽鎖が配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる、請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記抗α−シヌクレイン抗体が4週間ごと、3週間ごと、2週間ごと、または毎週投与される、請求項38〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
250mgという固定用量の前記抗α−シヌクレイン抗体の固定用量を含む、請求項20〜28のいずれか1項に記載の滅菌組成物。
【請求項51】
1250mgという固定用量の前記抗α−シヌクレイン抗体を含む、請求項20〜28のいずれか1項に記載の滅菌組成物。
【請求項52】
3500mgという固定用量の前記抗α−シヌクレイン抗体を含む、請求項20〜28のいずれか1項に記載の滅菌組成物。
【請求項53】
前記固定用量が250mgの前記抗α−シヌクレイン抗体である、請求項29〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記固定用量が1250mgの前記抗α−シヌクレイン抗体である、請求項29〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記固定用量が3500mgの前記抗α−シヌクレイン抗体である、請求項29〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記方法が、250mgという固定用量の前記抗α−シヌクレイン抗体を前記ヒト対象に静脈内投与することを包含する、請求項38〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記方法が、1250mgという固定用量の前記抗α−シヌクレイン抗体を前記ヒト対象に静脈内投与することを包含する、請求項38〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記方法が、3500mgという固定用量の前記抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する、請求項38〜49のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年3月31日出願の米国仮特許出願第62/479,818号、及び2017年7月5日出願の米国仮特許出願第62/528,790号の優先権の利益を主張しており、その両方の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本出願は、一般に、抗α−シヌクレイン抗体の臨床使用のための投与計画に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
タンパク質のミスフォールディング及び凝集は、多くの神経変性疾患(例:シヌクレイノパチー(synucleinopathy))の病理学的側面である。α−シヌクレインの凝集体は、パーキンソン病(PD)に関連するレビー小体及びレビー神経突起の主要成分である。天然に展開されたタンパク質であるα−シヌクレインは、オリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルなど、さまざまな凝集形態をとることができる。小さなオリゴマー凝集体は、特に毒性があることが示されている。
【0004】
シヌクレイノパチーの患者の増加を処置するために、α−シヌクレインに対する治療抗体及びそのような抗α−シヌクレイン抗体の臨床使用のための適切な投与計画が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本開示は、部分的には、α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片の投与計画、及びシヌクレイノパチーの治療におけるそれらの使用に関する。
【0006】
一態様では、シヌクレイノパチーの治療をそれを必要とするヒト対象において行う方法が提供される。この方法は、ヒト対象の体重1kgあたり3mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、45mg/kg、90mg/kg、または135mg/kgという用量で抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する。抗α−シヌクレイン抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:VHはVH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;かつVH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;かつVLはVL−CDRを含み、ここで:VL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;かつVL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる。
【0007】
この態様のいくつかの実施形態では、シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病のレビー小体変異型(LBVAD)、多系統萎縮症(MSA)、純粋自律神経不全症(PAF)、または1型脳内鉄沈着神経変性症(NBIA−I)である。特定の実施形態では、シヌクレイノパチーはパーキンソン病(PD)である。場合によっては、PDは軽度のPDである。他の例では、PDは中程度のPDである。
【0008】
別の態様では、本開示は、中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着の処置をそれを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。この方法は、抗α−シヌクレイン抗体を、ヒト対象の体重1kgあたり3mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、45mg/kg、90mg/kg、または135mg/kgという用量でヒト対象に静脈内投与することを包含する。抗α−シヌクレイン抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:VHはVH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;かつVH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;そしてVLはVL−CDRを含み、ここでVL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;かつVL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる。
【0009】
この態様のいくつかの実施形態では、ヒト対象は、中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着を有すると特定されている。特定の場合、ヒト対象は、ポジトロン放出断層撮影(PET)、単一光子放出断層撮影(SPECT)、近赤外(NIR)光学イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)、ドーパミントランスポーターイメージング、または黒質超音波検査を含む方法によるα−シヌクレインのインビボイメージング(例えば、脳内)によって特定される。他の場合、ヒト対象は、抗α−シヌクレイン抗体の対象への末梢投与後に対象から得られた血液、血漿、または脳脊髄液(CSF)試料中のα−シヌクレインのレベルをアッセイすること、及び、参照標準に対して対象中のα−シヌクレインのアッセイされたレベルを比較することであって、ここで、血液、血漿、またはCSF試料中のα−シヌクレインのレベルと参照標準のα−シヌクレインのレベルとの間の差または類似性が、対象の脳におけるα−シヌクレインのレベルと相関することにより特定される。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、シヌクレイノパチーの症状を有することにより特定されている。
【0010】
この態様のいくつかの実施形態では、ヒト対象は、パーキンソン病を発症するリスクがある(例えば、SNCA、LRRK2、Parkin、PINK1、DJ1、ATP13A2、PLA2G6、FBXO7、UCHL1、GIGYF2、HTRA2、またはEIF4G1遺伝子の突然変異などの遺伝的危険因子を有する対象に起因して)か、またはヒト対象は、前駆パーキンソン病を有する(例えば、対象は、嗅覚障害、レム行動障害、脂漏性皮膚病などのパーキンソン病の将来の発症に関連する症状もしくは症状のクラスター、及び/または特定の自律神経症状、例としては、限定するものではないが、起立性低血圧、男性のインポテンス、及び/または膀胱制御障害を有する)。
【0011】
これらの実施形態は、上記の両方の態様に適用される。特定の実施形態では、VHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、VLは、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、VHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなり、VLは、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、この抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトラムダ軽鎖定常領域を含む。特定の実施形態では、抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトラムダ軽鎖定常領域を含む。さらに他の実施形態では、この抗体は重鎖及び軽鎖を含み、この重鎖は、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなり、この軽鎖は、配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、4週間ごと、3週間ごと、2週間ごと、または毎週投与される。いくつかの実施形態では、1kgあたり1mgの抗α−シヌクレイン抗体が4週間ごとまたは毎月投与される。いくつかの実施形態では、1kgあたり3mgの抗α−シヌクレイン抗体が4週間ごとまたは毎月投与される。いくつかの実施形態では、1kgあたり5mgの抗α−シヌクレイン抗体が4週間ごとまたは毎月投与される。いくつかの実施形態では、1kgあたり15mgの抗α−シヌクレイン抗体が4週間ごとまたは毎月投与される。いくつかの実施形態では、1kgあたり45mgの抗α−シヌクレイン抗体が4週間ごとまたは毎月投与される。いくつかの実施形態では、1kgあたり90mgの抗α−シヌクレイン抗体が4週間ごとまたは毎月投与される。いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体を1kgあたり135mgが4週間ごとまたは毎月投与される。特定の実施形態では、ヒト対象に少なくとも2用量の抗α−シヌクレイン抗体が投与される。特定の実施形態では、ヒト対象に少なくとも4用量の抗α−シヌクレイン抗体が投与される。特定の実施形態では、ヒト対象には、少なくとも6用量の抗α−シヌクレイン抗体が投与される。特定の実施形態では、ヒト対象には、少なくとも8用量の抗α−シヌクレイン抗体が投与される。特定の実施形態では、ヒト対象には、少なくとも10用量の抗α−シヌクレイン抗体が投与される。特定の実施形態では、ヒト対象には、少なくとも12用量の抗α−シヌクレイン抗体が投与される。上記の投薬レジメンの特定の実施形態では、ヒト対象には、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年、またはそれ以上、抗α−シヌクレイン抗体が投与される。
【0012】
第3の態様では、本開示は、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、6750mg、または9450mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体と薬学的に許容される担体とを含む滅菌組成物を提供する。抗α−シヌクレイン抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:VHはVH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;かつVH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;そしてVLはVL−CDR1を含み、ここで:VL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;かつVL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる。場合によっては、固定用量は、250mg、1250mg、及び/または3500mgの抗α−シヌクレイン抗体である。
【0013】
この態様の特定の実施形態では、滅菌組成物は、バイアルで提供される。他の実施形態では、滅菌組成物は、抗α−シヌクレイン抗体の静脈内投与に適合したシリンジまたはポンプで提供される。特定の実施形態では、VHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、VLは、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、VHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなり、VLは、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、この抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトラムダ軽鎖定常領域を含む。特定の実施形態では、この抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトラムダ軽鎖定常領域を含む。さらに他の実施形態では、この抗体は重鎖及び軽鎖を含み、この重鎖は、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなり、この軽鎖は、配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、滅菌組成物は、250mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体を含む。いくつかの実施形態では、この滅菌組成物は、1250mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体を含む。他の実施形態では、滅菌組成物は、3500mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体を含む。
【0014】
第4の態様において、特徴とされるのは、シヌクレイノパチーの治療をそれを必要とするヒト対象において行う方法である。この方法は、上記の第3の態様の滅菌組成物からの抗α−シヌクレイン抗体の固定用量をヒト対象に静脈内投与することを包含する。
【0015】
この態様の特定の実施形態では、シヌクレイノパチーは、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病のレビー小体変異型(LBVAD)、多系統萎縮症(MSA)、純粋自律神経不全症(PAF)、または1型脳内鉄沈着神経変性症(NBIA−A)である。特定の実施形態では、シヌクレイノパチーはパーキンソン病である。特定の場合には、PDは軽度のPDである。その他の場合、PDは中程度のPDである。いくつかの実施形態では、固定用量は、250mgの抗α−シヌクレイン抗体である。いくつかの実施形態では、固定用量は1250mgの抗α−シヌクレイン抗体である。いくつかの実施形態では、固定用量は3500mgの抗α−シヌクレイン抗体である。
【0016】
第5の態様では、本開示は、中枢神経系におけるαシヌクレインの異常な蓄積または沈着の処置をそれを必要とするヒト対象において行う方法に関する。この方法は、上記の第3の態様の滅菌組成物からの抗α−シヌクレイン抗体の固定用量をヒト対象に静脈内投与することを包含する。
【0017】
特定の実施形態では、ヒト対象は、中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着を有すると特定されている。特定の場合、ヒト対象は、ポジトロン放出断層撮影(PET)、単一光子放出断層撮影(SPECT)、近赤外(NIR)光学イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)、ドーパミントランスポーターイメージング、または黒質超音波検査を含む方法によるα−シヌクレインのインビボイメージング(例えば、脳内)によって識別される。他の場合には、ヒト対象は、抗α−シヌクレイン抗体の対象への末梢投与後に対象から得られた血液または血漿試料中のα−シヌクレインのレベルをアッセイすること、及び対象中のα−シヌクレインのアッセイされたレベルを参照標準と比較することであって、ここでこの血液または血漿試料中のα−シヌクレインのレベルと参照標準中のα−シヌクレインとの間の差または類似性が、対象の脳内のα−シヌクレインのレベルと相関することにより特定される。いくつかの実施形態では、この固定用量は、250mgの抗α−シヌクレイン抗体である。いくつかの態様において、この固定用量は1250mgの抗α−シヌクレイン抗体である。いくつかの態様において、この固定用量は3500mgの抗α−シヌクレイン抗体である。
【0018】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、パーキンソン病を発症するリスクがある(例えば、SNCA、LRRK2、Parkin、PINK1、DJ1、ATP13A2、PLA2G6、FBXO7、UCHL1、GIGYF2、HTRA2、またはEIF4G1遺伝子の突然変異などの遺伝的危険因子を有する対象に起因する)か、またはヒト対象は、前駆パーキンソン病がある(例えば、この対象は、嗅覚障害、レム行動障害、脂漏性皮膚病、及び/または特定の自律神経症状、例としては、限定するものではないが、起立性低血圧、男性のインポテンス、及び/または膀胱制御障害などのパーキンソン病の将来の発症に関連する症状または症状のクラスターを有する)。
【0019】
これらの実施形態は、上述の第4及び第5の態様に適用される。いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、4週間ごと、3週間ごと、2週間ごと、または毎週投与される。いくつかの実施形態では、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、6750mg、または9450mgという固定用量が4週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、250mgという固定用量が4週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、1250mgという固定用量が4週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、3500mgという固定用量が4週間ごとに投与される。特定の実施形態では、ヒト対象に少なくとも2用量の抗α−シヌクレイン抗体を投与する。特定の実施形態では、ヒト対象に少なくとも4用量の抗α−シヌクレイン抗体を投与する。特定の実施形態では、ヒト対象に、少なくとも6用量の抗α−シヌクレイン抗体を投与する。特定の実施形態では、ヒト対象に、少なくとも8用量の抗α−シヌクレイン抗体を投与する。特定の実施形態では、ヒト対象に、少なくとも10用量の抗α−シヌクレイン抗体を投与する。特定の実施形態では、ヒト対象に、少なくとも12用量の抗α−シヌクレイン抗体を投与する。
【0020】
第6の態様では、本開示は、シヌクレイノパチーの治療をそれを必要とするヒト対象において行う方法を提供する。この方法は、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、6750mg、または9450mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する。抗α−シヌクレイン抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:VHはVH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;かつVH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;そしてVLは、VL−CDRを含み、ここで:VL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;かつVL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる。
【0021】
特定の実施形態では、シヌクレイノパチーは、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病のレビー小体変異型(LBVAD)、多系統萎縮症(MSA)、純粋自律神経不全症(PAF)、または1型脳内鉄沈着神経変性症(NBIA−I)である。特定の実施形態では、シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)である。場合によっては、PDは軽度のPDである。その他の場合、PDは中程度のPDである。いくつかの実施形態では、この方法は、250mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、1250mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、3500mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する。
【0022】
第7の態様では、本開示は、中枢神経系におけるαシヌクレインの異常な蓄積または沈着の処置をそれを必要とするヒト対象において行う方法を提供する。この方法は、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、6750mg、または9450mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する。抗α−シヌクレイン抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:VHはVH相補性決定領域(VH−CDR)を含み、ここで:VH−CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基からなり;VH−CDR2は、配列番号2のアミノ酸残基からなり;かつVH−CDR3は、配列番号3のアミノ酸残基からなり;そしてVLはVL−CDRを含み、ここで:VL−CDR1は、配列番号4のアミノ酸残基からなり;VL−CDR2は、配列番号5のアミノ酸残基からなり;かつVL−CDR3は、配列番号6のアミノ酸残基からなる。
【0023】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着を有するとして特定されるか、または特定されている。特定の場合、ヒト対象は、ポジトロン放出断層撮影(PET)、単一光子放出断層撮影(SPECT)、近赤外(NIR)光学イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)、ドーパミントランスポーターイメージング、または黒質超音波検査を含む方法によるα−シヌクレインのインビボイメージング(例えば、脳内)によって特定される。他の場合、ヒト対象は、抗α−シヌクレイン抗体の対象への末梢投与後に対象から得られた血液または血漿試料中のα−シヌクレインのレベルをアッセイすること、及び対象のα−シヌクレインのアッセイされたレベルを参照標準に対して比較することであって、ここで、血液または血漿試料中のα−シヌクレインのレベルと参照標準中のα−シヌクレインのレベルとの差または類似性が、対象の脳のα−シヌクレインのレベルと相関することにより特定されるか、または特定されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、パーキンソン病を発症するリスクがある(例えば、SNCA、LRRK2、Parkin、PINK1、DJ1、ATP13A2、PLA2G6、FBXO7、UCHL1、GIGYF2、HTRA2、またはEIF4G1遺伝子の突然変異などの遺伝的危険因子を有する対象に起因する)か、またはヒト対象には、前駆パーキンソン病がある(例えば、この対象は、嗅覚障害、レム行動障害、脂漏性皮膚病、及び/または特定の自律神経症状、例としては、限定するものではないが、起立性低血圧、男性のインポテンス、及び/または膀胱制御障害などのパーキンソン病の将来の発症に関連する症状または症状のクラスターを有する)。いくつかの実施形態では、この方法は、250mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、1250mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、3500mgという固定用量の抗α−シヌクレイン抗体をヒト対象に静脈内投与することを包含する。
【0025】
これらの実施形態は、上述の第6及び第7の態様の両方に適用される。特定の実施形態では、VHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、VLは、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、VHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなり、VLは、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、この抗体は、ヒトラムダ軽鎖定常領域を含む。特定の実施形態では、抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトラムダ軽鎖定常領域を含む。さらに他の実施形態では、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、この重鎖は、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなり、この軽鎖は、配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、毎月、4週間ごと、3週間ごと、2週間ごと、または毎週投与される。
【0026】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法及び材料を、本発明の実施または試験に使用してもよいが、例示的な方法及び材料を以下に記載する。本明細書に言及されている全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれている。矛盾する場合、定義を含む本出願が支配する。材料、方法、及び実施例は説明のみを目的としており、限定することを意図したものではない。
【0027】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、個々のヒト対象におけるBIIB054の血清濃度(ng/ml)を示すグラフである。このグラフの各曲線は、異なるヒトの対象に対応している。
図2図2は、指定された時間における各用量レベルの患者について計算された平均血清プロファイルを示すグラフである。x軸から最も遠い曲線は135mg/kgに相当する;次が90mg/kg;次が45mg/kg;次が15mg/kg;次が5mg/kgであり;x軸に最も近い曲線は1mg/kgに相当する。
図3図3は、AUCの用量依存性(1〜135mg/kgの用量範囲)を示すグラフである。
図4図4は、Cmaxの用量依存性(1〜135mg/kgの用量範囲)を示すグラフである。
図5図5は、間質液(ISF)中のBIIB054濃度対α−シヌクレイン標的結合の割合についての用量反応範囲を示すグラフである。
図6図6は、3、15、及び45mg/kg用量のCSF濃度対時間を示すグラフである。
図7図7は、3回の投与についてシミュレーションされたCSF濃度−時間プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本開示は、抗α−シヌクレイン抗体及びそのα−シヌクレイン結合断片の投与計画、及びシヌクレイノパチー(例えば、α−シヌクレインの凝集に関連する障害、例えば、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病のレビー小体変異型(AD)、純粋自律神経不全症(PAF)、多系統萎縮症(MSA)、及び1型脳内鉄沈着神経変性症(NBIA−I))の治療におけるそれらの使用を特徴とする。
【0030】
α−シヌクレイン
シヌクレインは、主に神経組織及び特定の腫瘍で発現する小さな可溶性タンパク質である。このファミリーには、α−シヌクレイン、β−シヌクレイン、及びγ−シヌクレインという3つの公知のタンパク質が含まれている。全てのシヌクレインは、交換可能なアポリポタンパク質のクラスA2脂質結合ドメインと類似性のある、高度に保存されたαらせん脂質結合モチーフを共有している。シヌクレインファミリーのメンバーは、脊椎動物の外側には見られないが、植物の「後期胚に豊富な」タンパク質と構造的に類似している場合がある。α−及びβ−シヌクレインタンパク質は、主に脳組織で見られ、主にシナプス前終末で見られる。γ−シヌクレインタンパク質は、主に末梢神経系及び網膜に見られるが、乳房腫瘍での発現は腫瘍進行のマーカーである。シヌクレインタンパク質のいずれについても正常な細胞機能は決定されていないが、一部のデータは膜の安定性及び/または代謝回転の調節における役割を示唆している。α−シヌクレインの突然変異は、早発性パーキンソン病のまれな家族症例に関連しており、タンパク質はパーキンソン病、アルツハイマー病、及び他のいくつかの神経変性疾患で異常に蓄積する。
【0031】
α−シヌクレインは元々、ヒトの脳でアルツハイマー病(AD)プラークの非β−アミロイド成分(NAC)の前駆体タンパク質として特定された:例えば、Ueda et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90(1993)、1282−1286。ADアミロイドの非Aβ成分(NACP)の前駆体とも呼ばれるαシヌクレインは、140アミノ酸のタンパク質である。α−シヌクレインは、その本来の形でランダムコイルとして存在する;ただし、pH、分子密集、重金属含有量、及びドーパミンレベルの変化は全て、タンパク質の立体構造に影響を与える。オリゴマー、プロトフィブリル、原繊維、及び凝集部分への立体構造の変化は、タンパク質の毒性を調節すると考えられている。増大しつつある証拠によって、ドーパミン付加α−シヌクレインが非付加タンパク質と比較して原線維形成までの時間経過が速いことが示されている。さらに、α−シヌクレインの過剰発現の背景にあるドーパミンは有毒である。
【0032】
本明細書では、「α−シヌクレイン」という用語は、α−シヌクレインの全てのタイプ及び形態(例えば、α−シヌクレインの天然単量体形態、α−シヌクレインの他の配座異性体、例えば、ドーパミンキノン(DAQ)に結合されたα−シヌクレイン、及びαシヌクレインのオリゴマーまたは凝集体)を総称して指すために使用される。
【0033】
ヒトα−シヌクレインのタンパク質配列を以下に示す:
MDVFMKGLSKAKEGVVAAAEKTKQGVAEAAGKTKEGVLYVGSKTKEGVVHGVATVAEKTKEQVTNVGGAVVTGVTAVAQKTVEGAGSIAAATGFVKKDQLGKNEEGAPQEGILEDMPVDPDNEAYEMPSEEGYQDYEPEA(配列番号12)。例えば、Ueda et al.,同上;GenBank swissprot:遺伝子座SYUA_HUMAN、アクセッション番号P37840を参照のこと。
【0034】
抗α−シヌクレイン抗体
本明細書に記載の組成物及び方法で使用される、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、α−シヌクレインに結合するが、β−シヌクレイン及び/またはγ−シヌクレインには結合しない。したがって、α−、β−、及びγ−シヌクレインタンパク質は、非常に相同性の高いタンパク質であるが、本明細書に記載の抗α−シヌクレイン抗体またはα−シヌクレイン結合断片は、α−シヌクレインに特異的である。これらの抗体は、α−シヌクレインのN末端領域に結合する。具体的には、これらの抗体は、配列番号12のアミノ酸4〜15(すなわち、FMKGLSKAKEGV(配列番号13))内のエピトープに結合し、配列番号12の位置10のリジンは、β−及びγシヌクレインタンパク質よりもα−シヌクレインについて本明細書に開示される抗体の特異性に重要な役割を果たす。さらに、本明細書に開示される抗体は、生理学的ヒトα−シヌクレイン単量体よりもヒトα−シヌクレインのオリゴマー及び原線維などのヒトα−シヌクレインの病理学的凝集体に優先的に結合する。ある場合には、これらの抗体は、ヒトα−シヌクレインのA30P、E46K、及びA53T変異型に高い親和性で結合し得る。
【0035】
一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法で使用される、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、BIIB054と呼ばれる抗体の3つの重鎖可変ドメイン相補性決定領域(CDR)を含む。
【0036】
BIIB054は、本明細書に記載の組成物及び方法で使用され得る例示的な抗α−シヌクレイン抗体である。BIIB054は、神経障害または精神障害に関連する臨床徴候及び症状のない健康な高齢対象のコホートからインフォームドコンセントの下で得られたBリンパ球から、特定及びクローニングされた完全ヒトIgG1/λモノクローナル抗体である。BIIB054は、α−シヌクレインのN末端(配列番号12のアミノ酸4〜10:FMKGLSK(配列番号14))領域にサブナノモルの親和性で結合する。見かけの結合親和性は、多価結合により、オリゴマー/フィブリル種の方がα−シヌクレインのモノマー種よりも高くなっている。重要なことに、BIIB054は、シヌクレインファミリーの他の高度に相同なメンバー、例えば、神経保護作用であり得るβ−シヌクレインには結合しない。免疫組織化学は、ヒトパーキンソン病患者及びヒトα−シヌクレイントランスジェニックマウス脳組織の両方で、BIIB054のレビー小体及びレビー神経突起への特異的(オフターゲットなし)結合を示している。α−シヌクレインを過剰発現するトランスジェニックマウスでは、BIIB054の腹腔内投与により、免疫組織学的及び生化学的方法で評価される脳内の薬物レベルが測定可能になり、BIIB054が血液脳関門を通過することが示されている。
【0037】
いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、BIIB054の3つの軽鎖可変ドメインCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、BIIB054の3つの重鎖可変ドメインCDRを含む。さらに他の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、BIIB054の3つの重鎖可変ドメインCDR、及び3つの軽鎖可変ドメインCDRを含む。CDRは、当該技術分野における任意のCDR定義、例えば、Kabat、Chothia、AbysisからのChothia、強化されたChothia/AbMの定義に基づくか、または接触定義に基づくことができる。BIIB054のCDR配列を以下の表1に示す。
【表1】
【0038】
いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、配列番号1または、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH CDR1と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH CDR2と;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むか、またはからなるVH CDR3とを含む。いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVL CDR1と、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVL CDR2と、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVL CDR3とを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、配列番号1または配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVH CDR1と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVH CDR2と;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVH CDR3と;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVL CDR1と、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVL CDR2と、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVL CDR3と、を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、BIIB054の可変重鎖(VH)を含むか、またはそれからなる。BIIB054のVHは以下のアミノ酸配列を有する(VH−CDRは下線付き)。
【化1】
(配列番号8)
【0041】
いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、BIIB054の可変軽鎖(VL)を含むか、またはそれからなる。BIIB054のVLは以下のアミノ酸配列を有する(VL−CDRは下線付き):
【化2】
(配列番号9)
【0042】
以下に列挙される成熟重鎖(配列番号:10)及び成熟軽鎖(配列番号:11)からなる抗体は、本明細書で使用されるように「BIIB054」と呼ばれる。
成熟BIIB054重鎖(HC):
【化3】
(配列番号10)
成熟BIIB054軽鎖(LC):
【化4】
(配列番号11)
【0043】
上記のVH、VL、HC、及びLC配列では、Kabatの定義に基づくCDR1、2、及び3に下線が引かれている。VH及びHCの斜体の太字の配列は、強化されたChothia/AbM定義に基づいた、CDR1に見出される追加のN末端配列である。
【0044】
本明細書に開示される方法及び組成物の特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するVHを含む。本明細書に開示される方法及び組成物の特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するVLを含む。本明細書に開示される方法及び組成物の特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号9に記載されているアミノ酸配列を有するVLを含む。本明細書に開示される方法及び組成物の特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。本明細書に開示される方法及び組成物の特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。本明細書に開示される方法及び組成物の他の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、α−シヌクレインに選択的に結合し、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるか、または少なくとも1〜5個のアミノ酸残基が異なるが、配列番号10よりも40、30、20、15、または10残基少ないHCを含む。一実施形態では、6つのCDRは、BIIB054の6つのCDRと同一であり、フレームワーク領域に対して任意の置換が行われる。
【0046】
いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、α−シヌクレインに選択的に結合し、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるか、または少なくとも1〜5個のアミノ酸残基が異なるが、配列番号11よりも40、30、20、15、または10残基少ないLCを含む。一実施形態では、6つのCDRは、BIIB054の6つのCDRと同一であり、フレームワーク領域に対して任意の置換が行われる。
【0047】
特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体はIgG抗体である。特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgEから選択される重鎖定常領域を有する。一実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、IgG1アイソタイプのものである。別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、IgG2アイソタイプのものである。さらに別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、IgG3アイソタイプのものである。さらなる実施形態において、抗α−シヌクレイン抗体は、例えば、ヒトカッパまたはヒトラムダの軽鎖から選択される軽鎖定常領域を有する。特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、IgG1/ヒトラムダ抗体である。
【0048】
いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、全長(全体)抗体または実質的に全長である。このタンパク質は、少なくとも1つ、及び好ましくは2つの完全な重鎖、及び少なくとも1つ、及び好ましくは2つの完全な軽鎖を含み得る。いくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、α−シヌクレイン結合断片である。場合によっては、α−シヌクレイン結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Facb、Fv、単鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、またはダイアボディである。
【0049】
本明細書に開示される抗体の重鎖及び軽鎖はまた、シグナル配列を含んでもよい。シグナル配列は、当該技術分野で公知の配列、例えば、MDMRVPAQLLGLLLLWFPGSRC(配列番号15)またはMDMRVPAQLLGLLLLWLPGARC(配列番号16)から選択され得る。
【0050】
BIIB054などの抗体、またはそのα−シヌクレイン結合断片は、例えば、列挙されたアミノ酸配列をコードする合成遺伝子を調製及び発現させることによって作製してもよいし、またはヒト生殖細胞系遺伝子を変異させて、列挙されたアミノ酸をコードする遺伝子を提供することによって、作製してもよい。さらに、この抗体及び他の抗α−シヌクレイン抗体は、例えば、以下の方法の1つ以上を使用して産生され得る。
【0051】
抗体の生産方法
抗α−シヌクレイン抗体またはα−シヌクレイン結合断片は、細菌で産生されてもよいし、または真核細胞で産生されてもよい。一部の抗体、例えば、Fabは、細菌細胞、例えば、E.coli細胞で産生され得る。抗体は、形質転換された細胞株(例えば、CHO、293E、COS)などの真核細胞でも産生される。さらに、抗体(例えば、scFv)は、Pichia(例えば、Powers et al.、J Immunol Methods.251:123−35(2001)、Hanseula、またはSaccharomycesなどの酵母細胞で発現されてもよい。目的の抗体を産生するために、抗体をコードするポリヌクレオチド(複数可)を構築し、1つ以上の発現ベクターに導入して、次いで適切な宿主細胞で発現させる。発現を改善するために、軽鎖及び重鎖遺伝子のヌクレオチド配列は、アミノ酸配列を変更せずに(または最小限の変更−重鎖または軽鎖のC末端残基の除去など)再コードされ得る。潜在的な再コードの領域には、翻訳開始、コドン使用、及び可能性のある、意図しないmRNAスプライシングに関連する領域が含まれる。本明細書に記載のα−シヌクレイン抗体のVH及び/またはVL、HC及び/またはLCを含む抗α−シヌクレイン抗体をコードするポリヌクレオチドは、当業者によって容易に想定されるであろう。
【0052】
BIIB054軽鎖をコードする例示的なDNA配列を以下に示す(小文字のヌクレオチドは、天然の軽鎖シグナルペプチド(核酸構築物に含まれる場合も含まれない場合もある)をコードする;成熟したN末端は、67位置で開始する核酸で始まる。
1 atg gac atg cgg gtg ccc gcc cag ctg ctg ggc ctg ctg ctg ctg tgg ctc cct ggc gcc aga tgt
67 AGC TAC GAG CTG ACC CAG CCC CCC AGC GTC AGC GTC AGC CCC GGC CAG ACC GCC AGG ATC ACC TGC
133 AGC GGC GAG GCC CTG CCC ATG CAG TTC GCC CAC TGG TAC CAA CAG AGG CCA GGC AAG GCC CCA GTG
199 ATC GTG GTG TAC AAA GAC AGT GAG AGA CCC TCA GGT GTC CCT GAG CGA TTC TCT GGC TCC TCT TCC
265 GGG ACA ACA GCC ACC TTG ACC ATC ACT GGA GTC CAG GCA GAA GAT GAG GCT GAC TAT TAC TGC CAG
331 TCT CCA GAC AGC ACT AAC ACT TAT GAA GTC TTC GGC GGA GGG ACC AAG CTG ACC GTC CTG AGT CAG
397 CCC AAG GCT GCC CCC TCC GTC ACT CTG TTC CCT CCC TCC TCC GAG GAA CTT CAA GCC AAC AAG GCC
463 ACA CTG GTC TGT CTC ATC AGT GAC TTC TAC CCT GGA GCC GTG ACA GTG GCC TGG AAG GCA GAT AGC
529 AGC CCC GTC AAG GCT GGA GTG GAG ACC ACC ACA CCC TCC AAA CAA AGC AAC AAC AAA TAC GCT GCC
595 AGC AGC TAC CTG AGC CTG ACA CCT GAG CAG TGG AAG TCC CAC AGA AGC TAC AGC TGC CAG GTC ACC
661 CAT GAA GGG AGC ACC GTG GAG AAG ACA GTG GCC CCT ACA GAA TGT TCA TAG (配列番号17)
【0053】
BIIB054重鎖をコードする例示的なDNA配列を以下に示す(小文字のヌクレオチドは、天然の軽鎖シグナルペプチド(核酸構築物に含まれていても含まれていなくてもよい)をコードする;成熟したN末端は、67位置で開始する核酸で始まる):
1 atg gac atg cgg gtg ccc gcc cag ctg ctg ggc ctg ctg ctg ctg tgg ttc ccc ggc tct cgg tgc
67 GAG GTG CAG CTG GTG GAG TCC GGG GGA GGT CTG GTC GAG CCT GGG GGG TCC CTG AGA CTC TCC TGT
133 GCA GTC TCC GGA TTC GAT TTC GAA AAA GCC TGG ATG AGT TGG GTC CGC CAG GCT CCA GGG CAG GGG
199 CTG CAG TGG GTT GCC CGG ATC AAG AGC ACA GCT GAT GGT GGG ACA ACA AGC TAC GCC GCC CCC GTG
265 GAA GGC AGA TTC ATC ATC TCA AGA GAT GAT TCC AGA AAC ATG CTT TAT CTG CAA ATG AAC AGT CTG
331 AAA ACT GAA GAC ACA GCC GTC TAT TAT TGT ACA TCA GCC CAC TGG GGC CAG GGA ACC CTG GTC ACC
397 GTC TCC TCT GCC TCC ACC AAG GGC CCA TCC GTC TTC CCT CTG GCA CCC TCC TCC AAA AGC ACC TCT
463 GGG GGC ACA GCC GCC CTG GGC TGC CTG GTC AAG GAC TAC TTC CCC GAA CCT GTG ACC GTC TCC TGG
529 AAC TCA GGC GCC CTG ACC AGC GGC GTG CAC ACC TTC CCT GCT GTC CTG CAA TCC TCC GGA CTC TAC
595 TCC CTC TCT TCC GTG GTG ACC GTG CCC TCC AGC AGC TTG GGC ACC CAG ACC TAC ATC TGC AAC GTG
661 AAT CAC AAG CCC AGC AAC ACC AAG GTG GAC AAG AGA GTT GAG CCC AAA TCT TGT GAC AAA ACT CAC
727 ACA TGC CCA CCC TGC CCA GCA CCT GAA CTC CTG GGG GGA CCC TCA GTC TTC CTC TTC CCC CCA AAA
793 CCC AAG GAC ACC CTC ATG ATC TCC CGG ACC CCT GAG GTC ACA TGC GTG GTG GTG GAC GTG AGC CAC
859 GAA GAC CCT GAG GTC AAG TTC AAC TGG TAT GTT GAC GGC GTG GAG GTC CAT AAT GCC AAG ACA AAG
925 CCT CGG GAG GAG CAG TAC AAC AGC ACC TAC CGC GTG GTC AGC GTC CTC ACC GTC CTG CAC CAA GAC
991 TGG CTG AAT GGC AAG GAG TAC AAG TGC AAG GTC TCC AAC AAA GCC CTC CCA GCC CCC ATC GAG AAA
1057 ACC ATC TCC AAA GCC AAA GGG CAG CCC CGA GAA CCA CAG GTG TAC ACC CTG CCC CCA TCC CGG GAG
1123 GAG ATG ACC AAG AAC CAA GTC AGC CTG ACC TGC CTG GTC AAA GGC TTC TAT CCC AGC GAC ATC GCC
1189 GTG GAG TGG GAG AGC AAT GGG CAG CCT GAG AAC AAC TAC AAG ACC ACA CCT CCC GTG CTG GAC TCC
1255 GAC GGC TCC TTC TTC CTC TAT TCC AAA CTC ACC GTG GAC AAG AGC AGG TGG CAG CAG GGG AAC GTC
1321 TTC TCA TGC TCC GTG ATG CAT GAG GCT CTG CAC AAC CAC TAC ACC CAG AAG AGC CTC TCC CTG TCC
1387 CCT GGT TGA (配列番号18)
【0054】
標準的な分子生物学技術を使用して、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、抗体を回収する。
【0055】
抗α−シヌクレイン抗体またはα−シヌクレイン結合断片を、細菌細胞(例えば、E.coli)で発現させる場合、発現ベクターは、細菌細胞でベクターの増幅を可能にする特性を持つ必要がある。さらに、JM109、DH5α、HB101、またはXL1−BlueなどのE.coliを宿主として使用する場合、ベクターには、E.coliでの効率的な発現を可能にするプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Ward et al.,341:544−546(1989)、araBプロモーター(Better et al.,Science,240:1041−1043(1988))、またはT7プロモーターが必要である。このようなベクターの例としては、例えば、M13シリーズのベクター、pUC−シリーズベクター、pBR322、pBluescript、pCR−Script、pGEX−5X−1(Pharmacia)、「QIAexpress system」(QIAGEN)、pEGFP、及びpET(この発現ベクターを使用する場合、宿主は、好ましくは、T7 RNAポリメラーゼを発現するBL21である)が挙げられる。この発現ベクターは、抗体分泌のためのシグナル配列を含んでもよい。E.coliのペリプラズムへの産生のために、pelBシグナル配列(Lei et al.,J.Bacteriol.,169:4379(1987))を、抗体分泌のためのシグナル配列として使用してもよい。細菌の発現には、塩化カルシウム法またはエレクトロポレーション法を使用して、発現ベクターを細菌細胞に導入してもよい。
【0056】
CHO、COS、NIH3T3細胞などの動物細胞で抗体を発現させる場合、発現ベクターには、これらの細胞での発現に必要なプロモーター、例えば、SV40プロモーター(Mulligan et al.,Nature,277:108(1979))(例えば、初期シミアンウイルス40プロモーター)、MMLV−LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushima et al.,Nucleic Acids Res.,18:5322(1990))、またはCMVプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス早初期プロモーター)が挙げられる。免疫グロブリンまたはそのドメインをコードする核酸配列に加えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞内のベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択可能なマーカー遺伝子などの追加の配列を保持し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号及び第5,179,017号を参照のこと)。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。選択可能なマーカーを持つベクターの例としては、pMAM、pDR2、pBK−RSV、pBK−CMV、pOPRSV、及びpOP13が挙げられる。
【0057】
一実施形態では、抗体は哺乳動物細胞で産生される。抗体を発現するための哺乳動物宿主細胞の例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub及びChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載され、例えば、Kaufman及びSharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されているDHFR選択マーカーとともに使用されるdhfrCHO細胞)、ヒト胎児腎臓293細胞(例えば、293、293E、293T)、COS細胞、NIH3T3細胞、リンパ球系細胞株、例えば、NS0骨髄腫細胞及びSP2細胞、ならびにトランスジェニック動物、例えば、トランスジェニック哺乳動物由来の細胞が挙げられる。例えば、細胞は乳腺上皮細胞である。特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、CHO−DG44I細胞である。
【0058】
抗体発現の例示的な系では、抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)の抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによりdhfrCHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内で、抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子はそれぞれ、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなどのSV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する)に対して作動可能に連結され、遺伝子の高レベルの転写を駆動する。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を使用して、ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞の選択を可能にするDHFR遺伝子も運ぶ。選択された形質転換体宿主細胞は、抗体の重鎖及び軽鎖の発現を可能にするために培養され、その抗体は培養培地から回収される。
【0059】
抗体はトランスジェニック動物によっても産生される。例えば、米国特許第5,849,992号は、トランスジェニック哺乳動物の乳腺で抗体を発現させる方法を記載している。乳特異的プロモーター、目的の抗体をコードする核酸、及び分泌のためのシグナル配列を含む導入遺伝子が構築される。そのようなトランスジェニック哺乳動物の雌によって産生される乳には、そこに分泌された目的の抗体が含まれる。抗体は、乳から精製してもよいし、一部の用途では直接使用されてもよい。本明細書に記載の核酸の1つ以上を含む動物も提供される。
【0060】
本開示の抗体は、宿主細胞の内側または外側(培地など)から単離されて、実質的に純粋かつ均質な抗体として精製され得る。抗体の精製に一般的に使用される単離及び精製の方法は、抗体の単離及び精製に使用されてもよく、なんら特定の方法に限定されるものではない。抗体は、例えば、カラムクロマトグラフィー、ろ過、限外ろ過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動、透析、及び再結晶化を適切に選択して組み合わせることにより、単離及び精製され得る。クロマトグラフィーとしては、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、及び吸着クロマトグラフィーが挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual.Ed Daniel R.Marshak et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1996)。クロマトグラフィーは、HPLC及びFPLCなどの液相クロマトグラフィーを使用して実行され得る。アフィニティークロマトグラフィーに使用されるカラムとしては、プロテインAカラム及びプロテインGカラムが挙げられる。プロテインAカラムを使用するカラムの例としては、Hyper D、POROS、及びSepharose FF(GE Healthcare Biosciences)が挙げられる。本開示はまた、これらの精製方法を使用して高度に精製された抗体も包含する。
【0061】
投与量
抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)は、異なる用量で対象、例えば、ヒト対象に投与されてもよい。抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)は、固定用量(すなわち、患者の体重に依存しない)として投与されてもよく、またはmg/kg用量(すなわち、対象の体重に基づいて変化する用量)で投与されてもよい。本明細書で使用される単位剤形または「固定用量」とは、治療される対象の単位用量として適した物理的に別個の単位を指す;各ユニットには、対象の所望の治療濃度を達成するために計算された抗体の所定量が含まれている。用量の形態(例えば、重量あたりまたは固定)に関係なく、抗α−シヌクレイン抗体は、必要な薬学的担体と組み合わせて、及び必要に応じて別の治療剤と組み合わせて投与される。単回投与または複数回投与を行ってもよい。治療は数日、数週間、数ヶ月、1年、さらには数年続く場合がある。治療は、抗α−シヌクレイン抗体が1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて投与される併用療法の一部であってもよい。
【0062】
一実施形態では、本明細書に記載の適応症を治療するための抗α−シヌクレイン抗体の投与量は、対象の体重あたり1mg/kgである。別の実施形態では、本明細書に記載の適応症を治療するための抗α−シヌクレイン抗体の投与量は、対象の体重あたり3mg/kgである。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の適応症を治療するための抗α−シヌクレイン抗体の投与量は、対象の体重あたり5mg/kgである。さらなる実施形態では、本明細書に記載の適応症を治療するための抗α−シヌクレイン抗体の投与量は、対象の体重あたり15mg/kgである。別の実施形態では、本明細書に記載の適応症を治療するための抗α−シヌクレイン抗体の投与量は、対象の体重あたり45mg/kgである。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の適応症を治療するための抗α−シヌクレイン抗体の投与量は、対象の体重あたり90mg/kgである。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の適応症を治療するための抗α−シヌクレイン抗体の投与量は、対象の体重あたり135mg/kgである。これらの用量は、薬学的に許容される担体及び/または有益な賦形剤(複数可)と一緒に滅菌組成物の形態で投与用に調製され得る。
【0063】
一実施形態では、本明細書に記載の適応症を治療するために、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は210mgという固定投与量である。別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は225mgという固定投与量である。別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は250mgという固定投与量である。さらに別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は350mgという固定用量である。別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は375mgという固定投与量である。さらに別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は1050mgという固定投与量である。さらなる実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は1125mgという固定投与量である。別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は1250mgという固定投与量である。別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は3150mgという固定投与量である。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の適応症を治療するために、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は3375mgという固定用量である。別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は3500mgという固定用量である。さらなる実施形態において、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は6300mgという固定投与量である。別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は、6750mgという固定投与量である。別の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体の投与量は9450mgという固定投与量である。これらの固定投与量は、薬学的に許容される担体及び/または有益な賦形剤(複数可)と一緒に滅菌組成物の形態で製剤化されてもよい。
【0064】
上記のmg/kgの用量または固定用量は各々、毎日、毎週、1週間半ごと、2週間ごと、2週間半ごと、3週間ごと、4週間、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、毎月、隔週、毎週、または毎日、医療提供者によって適切と見なされるように、対象において治療濃度が達成されるか及び/または維持されるように、少なくとも2回投与、3回投与、4回投与、5回投与、6回投与、7回投与、8回投与、9回投与、10回投与、12回投与、14回投与、16回投与、18回投与、20回投与、22回投与、24回投与またはそれ以上を含む期間にわたって、対象に対して投与され得る。
【0065】
用量は静脈内に投与される。
【0066】
例示的な投与計画を以下の表に示す:
【表A】
【0067】
医薬組成物は、特定の投与計画を使用した投与が脳脊髄液(CSF)または脳間質液(ISF)中の抗体の治療有効濃度をもたらすように、本明細書に記載の薬剤の「治療有効量」を含んでもよい。そのような有効量は、投与された薬剤の効果に基づいて決定され得る。薬剤の治療有効量はまた、個体の病状、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において化合物が所望の応答を誘発する能力などの要因に応じても異なる場合がある。治療上有効な量とはまた、組成物のなんらかの毒性または有害な効果よりも、治療的に有益な効果が上回る量でもある。
【0068】
一実施形態では、静脈内に投与される抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)は、対象(例えば、ヒト対象)のCSF及び/またはISFにおいて抗体の所望の治療濃度が達成されるように投与される。一実施形態では、抗体は、脳に入って、治療効果、例えば、凝集したα−シヌクレインへの結合及びミクログリア依存性または非依存性のクリアランス/不活性化の誘発、α−シヌクレイン凝集の低減、及び/またはα−シヌクレインのプリオン様細胞内拡散の防止によって媒介される治療効果を生み出すのに十分な濃度を達成する。
【0069】
別の実施形態では、所望の治療濃度は、対象のISF及び/またはCSF中のα−シヌクレイン凝集の少なくとも30〜50%の減少を提供及び維持し得る(1回以上の投与後)抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)の濃度に等しくてもよい。
【0070】
一実施形態では、所望の治療濃度は、対象のISFにおけるEC50である抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)濃度を達成する。
【0071】
別の実施形態では、所望の治療濃度は、対象のISF及び/またはCSFにおける凝集α−シヌクレインの50〜90%の減少を(1回以上の投与後に)提供及び維持し得る抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)濃度に等しくてもよい。
【0072】
一実施形態では、所望の治療濃度は、対象のISFにおけるEC50より高くEC90より低い抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)濃度を達成する。
【0073】
さらに別の実施形態では、所望の治療濃度は、対象のISF及び/またはCSFにおける凝集α−シヌクレインの90%超の減少を提供及び維持し得る(1回以上の投与後)抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)濃度と等しくてもよい。
【0074】
一実施形態では、所望の治療濃度は、対象のISFにおけるEC90を上回る抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)濃度を達成する。
【0075】
一実施形態では、治療上有効な用量は、所望の治療濃度を(1回以上の投与後)達成及び維持し得る抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)の用量である。
【0076】
処置の方法
本明細書に記載の抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)は、それを必要とする対象(例えば、ヒト対象)におけるシヌクレイノパチーの予防的処置及び治療的処置に使用され得る。
【0077】
シヌクレイノパチーとしては、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病のレビー小体変異型(AD)、純粋自律神経不全症(PAF)、多系統萎縮症(MSA)、及び1型脳内鉄沈着神経変性症(NBIA−I))などのαシヌクレインの凝集に関連する障害が挙げられる。
【0078】
本開示はまた、それぞれ脳及び中枢神経系におけるα−シヌクレインの異常な蓄積及び/または沈着を特徴とする神経障害を治療する方法に関し、この方法は、治療上有効な量の上記α−シヌクレイン抗体のいずれか1つをそれを必要とする対象(例えば、ヒト対象)に対して投与することを包含する。特定の実施形態では、神経障害は、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)、または多系統萎縮症(MSA)である。
【0079】
パーキンソン病とは、運動障害及び認知機能障害などのある範囲の非運動機能を特徴とする臨床症候群である。病理学的には、青斑核、迷走神経の背側運動核、縫線核、黒質緻密部、メイナート基底核及び脚橋核の顕著な細胞喪失があり、対応する神経伝達物質の減少を引き起こす。細胞損失の前には、細胞質内レビー小体(LB)の形成、及びレビー神経突起(LN)と呼ばれる肥厚した神経突起プロセスがある。LNは、扁桃体、海馬、新皮質など、古典的なLBのない領域に見出され得る。パーキンソン病の単一の原因はない。むしろ、複数の遺伝的及び環境的原因がある。これらの原因は集合的にリスクの大部分を占め、神経変性の共通の重複する経路を指し示している。α−シヌクレインは、SNCA遺伝子によってヒトにコードされる14kDaのタンパク質である。パーキンソン病の病因におけるα−シヌクレインの中心的な役割を示すいくつかの証拠がある。第一に、神経病理学的研究により、凝集したα−シヌクレインがLB及びLNのコア成分であることが示された。遺伝学的研究により、常染色体優位なパーキンソン病に関連する3つの点突然変異(A53T、A30P、及びE64K)が特定された。最近、SNCAの三重の重複および二重の重複が、パーキンソン病の攻撃的な早期発症型の患者で特定された。プロモーター領域の多型及びエピジェネティックなサイレンシングの減少がパーキンソン病のリスク増加と関連しているという点で、一見散発性のパーキンソン病とSNCA遺伝子発現の間にはリンクがある。総合すると、これらの遺伝学的研究によって、パーキンソン病におけるα−シヌクレイン機能の獲得に関する用量反応関係、及び根拠が示唆されている。α−シヌクレインの毒性は、凝集する傾向に関連しているようである。α−シヌクレインは、インビトロで凝集する傾向が高い。常染色体優性パーキンソン病に関連する点突然変異及び増殖により、α−シヌクレインが重合してオリゴマー及び高次の原繊維構造を形成する傾向が高まる。パーキンソン病の病因における中心的な役割のおかげで、α−シヌクレインを修飾するアプローチは、パーキンソン病及びその他のシヌクレイノパチーの重要な潜在的標的である。α−シヌクレインの抗体を介した除去と不活性化は、病状の凝集と拡大を軽減し、それによりパーキンソン病の臨床徴候及び症状の低下を遅らせ得る。パーキンソン病の進行を抑えるには、α−シヌクレインのタンパク質レベルをわずかに下げるだけで十分である。実際、α−シヌクレイン遺伝子の重複は、家族性パーキンソン病の早期発症につながるが、α−シヌクレインタンパク質レベルの増加は1.5倍に過ぎない。
【0080】
一実施形態では、シヌクレイノパチー、例えば、パーキンソン病の治療をそれを必要とするヒト対象において行う方法が提供される。特定の実施形態では、パーキンソン病は軽度のパーキンソン病である。他の実施形態では、パーキンソン病は中程度のパーキンソン病である。この方法は、本明細書に記載の抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)の治療上有効な量をヒト対象に投与することを包含する。特定の例において、対象は、その対象の体重1kgあたり3mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、45mg/kg、90mg/kgまたは135mg/kgという用量で抗α−シヌクレイン抗体を投与される。他の例では、対象は、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、6750mg、または9450mgという固定用量で抗α−シヌクレイン抗体を投与される。いくつかの例では、対象に少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、10回、少なくとも11回もしくは少なくとも12回、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12回投与される。静脈内投与された抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)は、脳に入り、α−シヌクレインに結合し、ミクログリア依存性または非依存性のクリアランス/不活性化を引き起こし、α−シヌクレイン凝集を低減し、及び/またはα−シヌクレインのプリオン様細胞内拡散を防ぎ得る。末梢抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)は、CNSα−シヌクレインの末梢シンクとしても作用し得る。
【0081】
別の実施形態では、本開示は、α−シヌクレインの凝集及び/または細胞内拡散を特徴とする障害を治療する方法を特徴とする。特定の実施形態では、この障害は多系統萎縮症(MSA)である。他の実施形態では、この障害はレビー小体型認知症(DLB)である。この方法は、本明細書に記載の抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)の治療上有効な量をヒト対象に投与することを包含する。特定の例では、対象は、対象の体重1kgあたり3mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、45mg/kg、90mg/kg、または135mg/kgという用量で抗α−シヌクレイン抗体を投与される。他の例では、対象は、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、6750mg、または9450mgという固定用量で抗α−シヌクレイン抗体を投与される。いくつかの例では、この対象には、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回もしくは少なくとも12回、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12回の投与で投与される。
【0082】
さらに別の実施形態では、本開示は、中枢神経系(例えば、脳)におけるαシヌクレインの異常な蓄積及び/または沈着を特徴とする状態の治療をそれを必要とするヒト対象において行う方法に関する。この方法は、本明細書に記載の抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)の治療上有効な量をヒト対象に投与することを包含する。特定の例において、この対象は、対象の体重1kgあたり3mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、45mg/kg、90mg/kg、または135mg/kgという用量で抗α−シヌクレイン抗体を投与される。他の例では、この対象は、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、6750mg、または9450mgという固定用量で抗α−シヌクレイン抗体を投与される。いくつかの例では、この対象には、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、10回、少なくとも11回もしくは少なくとも12回、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12回の投与で投与される。
【0083】
別の実施形態では、本開示は、中枢神経系(例えば、脳)におけるαシヌクレインの異常な蓄積及び/または沈着を低減または防止するための治療を必要とする前症候性ヒト対象を治療する方法を特徴とする。この方法は、本明細書に記載の抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)の治療上有効な量をヒト対象に投与することを包含する。特定の例において、この対象は、対象の体重1kgあたり3mg/kg、5mg/kg、15mg/kg、45mg/kg、90mg/kg、または135mg/kgという用量で抗α−シヌクレイン抗体を投与される。他の例では、対象は、210mg、225mg、250mg、350mg、375mg、1050mg、1125mg、1250mg、3150mg、3375mg、3500mg、6300mg、6750mg、または9450mgという固定用量で抗α−シヌクレイン抗体を投与される。いくつかの例では、この対象には少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回もしくは少なくとも12回、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12回の用量が投与される。
【0084】
ヒト対象は、当該技術分野で公知の任意の方法により、中枢神経系(例えば、脳)にα−シヌクレインの異常な蓄積または沈着があると特定され得る。特定の実施形態では、α−シヌクレインのレベルは、α−シヌクレインのインビボイメージング(例えば、脳内)によって評価され、これには陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放出断層撮影(SPECT)、近赤外(NIR)光学イメージング、磁気共鳴イメージング(MRI)、ドーパミントランスポーターイメージング、または黒質超音波検査を含む。これらの実施形態のいくつかでは、標識された抗α−シヌクレイン抗体(例えば、標識されたBIIB054)またはそのα−シヌクレイン結合断片がヒト対象に投与され、抗体のα−シヌクレインへの結合が評価される。α−シヌクレインのレベルは、例えば、ウエスタンブロット、免疫沈降、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、2次元ゲル電気泳動、質量分析(MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間MS(MALDI−TOF)、表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間(SELDI−TOF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、多次元液体クロマトグラフィー(LC)、それに続くタンデム質量分析(MS/MS)、及びレーザーデンシトメトリーから選択される1つ以上の技術によってα−シヌクレインを分析することを包含する、当該技術分野で公知の他の方法によっても評価され得る。特定の例において、対象の脳内のα−シヌクレインのレベルは、抗α−シヌクレイン抗体(例えば、BIIB054)またはそのα−シヌクレイン結合断片の対象への末梢投与後に対象から得られた血液または血漿試料中のα−シヌクレインのレベルをアッセイすること、及び対象のα−シヌクレインのアッセイレベルを参照標準と比較することであって、ここで血液または血漿試料中のα−シヌクレインと参照標準のα−シヌクレインとの間のレベルの差異または類似性が、対象の脳内のα−シヌクレインのレベルと相関しているにより評価され得る。
【0085】
上記の治療の方法の全てにおけるいくつかの実施形態では、ヒト対象は、パーキンソン病を発症するリスクがある(例えば、SNCA、LRRK2、Parkin、PINK1、DJ1、ATP13A2、PLA2G6、FBXO7、UCHL1、GIGYF2、HTRA2、またはEIF4G1遺伝子の突然変異などの遺伝的危険因子を有する対象に起因する)か、またはヒト対象には、前駆パーキンソン病がある(例えば、この対象は、嗅覚障害、レム行動障害、脂漏性皮膚病、及び/または特定の自律神経症状、例としては、限定するものではないが、起立性低血圧、男性のインポテンス、及び/または膀胱制御障害などのパーキンソン病の将来の発症に関連する症状または症状のクラスターを有する)。
【0086】
上記の治療方法の全てにおけるいくつかの実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはその抗原結合断片は、α−シヌクレインに選択的に結合し、(i)BIIB054のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号8)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるVHドメイン、及び/または(ii)BIIB054のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号9)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるVLドメインを含むか;あるいは、配列番号8及び/または配列番号9と少なくとも1〜5アミノ酸残基だが、40、30、20、15、または10残基未満が異なる。特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはその抗原結合断片は、BIIB054の6つのCDRと同一の6つのCDRを有し、任意の置換がフレームワーク領域に対して行われる。特定の例では、これらの抗α−シヌクレイン抗体またはα−シヌクレイン結合断片は、(i)α−シヌクレインに結合するが、β−もしくはγ−シヌクレインには有意に結合しないか;及び/または(ii)配列番号12のアミノ酸4〜15内のエピトープに選択的に結合する。特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはその抗原結合断片は、配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるVHドメイン及び配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるVLドメインを含む。
【0087】
上記の治療方法の全てにおける特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体またはそのα−シヌクレイン結合断片は、ヒトα−シヌクレインに選択的に結合し、(i)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一である重鎖、及び/または(ii)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一である軽鎖を含むか、あるいは配列番号10及び/または配列番号11から少なくとも1〜5個のアミノ酸残基だが、40、30、20、15、または10未満残基が異なる。特定の実施形態では、抗α−シヌクレイン抗体は、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。
【0088】
以下の例は、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0089】
実施例1:BIIB054の投与計画の理論的根拠
投与計画は、安全性、認容性、血清及び脳脊髄液(CSF)の薬物動態(PK)データ、凝集α−シヌクレインに対するBIIB054親和性、及び複数回投与後のシミュレートされたBIIB054 CSF濃度に基づいて選択された。
【0090】
健康な対象における、90mg/kg以下までのBIIB054の単回静脈内(IV)投与は、許容できる忍容性を示した。BIIB054の血清プロファイルを、対象で測定した。個々の対象の血清濃度(ng/ml)を示すグラフを図1に示す。平均血清プロファイルは、指定された時間における各用量レベルの患者について計算して、図2に示している。
【0091】
AUC及びCmaxによって測定されるPKパラメーターは、1mg/kg〜135mg/kgの用量範囲で用量依存的に変化することが判明した。AUCの用量依存性を図3に示し、Cmaxの用量依存性を図4に示す。
【0092】
複数回投与後のBIIB054 CSF濃度は、単回IV投与のデータに基づいて開発された集団のPKモデルに基づいてシミュレートした。
【0093】
凝集したα−シヌクレインに対するBIIB054のEC50及びEC90値は、凝集したα−シヌクレインに対する抗体のインビトロ結合定数に由来した。これらの値を使用して、間質液(ISF)のBIIB054濃度対α−シヌクレイン標的結合の割合の用量反応範囲を、プロットし、図5に示す。
【0094】
4週間ごとにIV点滴として送達される3、15、及び45mg/kgのBIIB054用量は、単回上行用量(SAD)データを使用した以下のモデリングによってサポートされる。図6は、3、15、及び45mg/kgの用量に関するCSF濃度を時間に対して示している。モデリングに基づいて以下である:
(i)大部分の対象について、CSF及び脳間質液(ISF)のEC50以上のBIIB054濃度を維持するために、4週間ごとに1回という3mg/kgのIV注入を選択した。
(ii)CSFとISFの目標をEC90以上に維持するために、4週間に1回15mg/kgのIV注入を選択し、曝露と反応の関係を明らかにするために用量を適切に分ける。
(iii)全ての対象について、CSF及びISFの目標をEC90以上に維持するために、4週間ごとに1回の45mg/kgのIV注入を選択した。
【0095】
実施例2:第2相の用量選択
この第2相試験では、患者は4週間に1回、合計13回の試験治療(250、1250、または3500mg)の静脈内(IV)注入を受ける。BIIB054の用量レベルは、健康なボランティアにおけるBIIB054の安全性、忍容性、及び薬物動態(PK)、非臨床毒性データ、インビトロで凝集したα−シヌクレインに対するBIIB054親和性、ならびに定常状態でシミュレートされたBIIB054 CSF濃度−時間プロファイルに基づいて選択された。
【0096】
インビトロの研究により、BIIB054は、α−シヌクレインの可溶型と凝集型の両方に結合し、凝集体に対する見かけの結合親和性が高いことが確認された。凝集したα−シヌクレインのBIIB054の半最大有効濃度(EC50)は、約0.25nM、EC90は約2.1nM(それぞれ0.0375μg/ml及び0.315μg/ml)と推定された。
【0097】
健康なボランティア(HV)、年齢40〜65歳、及びPDの対象における、単回の上昇用量を評価する第1相ヒト初回臨床試験が進行中である。HVは、1mg/kg〜135mg/kgのIV投与、またはプラセボを投与された。HVの血清及びCSF濃度は、集団PKモデルを使用して説明された。その後、対象の変動とHVからの残留変動の推定との間だけでなく、推定PKパラメーターを使用して、1000の血清及びCSFの定常状態プロファイルをシミュレートした。HVと標的の第2相集団との間の体重差を明らかにするために、PDMIデータベースを、PD患者の体重分布のソースとして使用した。
【0098】
CSFプロファイルのシミュレーションを、1mg/kg〜45mg/kgの複数の用量レベルで実施し、用量選択を可能にした。BIIB054のCSFと脳間質液(ISF)濃度は等しいと仮定された。BIIB054の良好な安全性プロファイルを考慮して、この研究では固定用量アプローチが実施される予定である。
【0099】
ヒト初回試験の予備血清及びCSFデータに基づくシミュレーションによって、250mgの用量で、定常状態のCSF及びISFのBIIB054濃度が、大多数の対象でEC50を超えると予測されることが示されている。これらのレベルを、対象の95%でEC90を超えて維持するように最高用量(3500mg)を選択して、BIIB054の有効性を実証する可能性を高めた。1250mgの中間用量は、CSF及びISFレベルをEC90以上に維持し、用量と用量の間の適切な分離を提供して、暴露−反応の関係を解明すると予想される。図7を参照のこと。提案された第2相の用量のシミュレーションされた定常状態トラフCSF濃度の要約統計量を表2に示す。
【表2】
【0100】
非臨床的有効性データによってまた、D−Lineシヌクレイントランスジェニックマウスでの研究に基づいて、250mgの投与量で最小限の有効性が得られると予想されることが示唆される。マウスの推定有効暴露量は、約1317日μg/mLであった。HVでのBIIB054のクリアランスは、平均で0.0052L/hまたは0.1248L/日である。したがって、投与量=Cl×AUCを使用すると、予測される平均の最小薬理学的有効用量は、約164mgである。
【0101】
全体として、3つの用量は全て、ヒトで安全であり、かつ忍容性が高いと予想される。最高の計画用量(3500mg)は、時間0から次の投与時間(AUCtau)までの濃度−時間曲線の下で平均定常状態面積をもたらし、最大観測濃度(Cmax)値は、ラットでの26週間毒性研究で有害作用レベルが観察されなかった場合に観察されたものよりも約2.3〜11倍低くなると予想される(表3)。
【表3】
【0102】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示するものであり、限定するものではない。他の態様、利点、及び修正は、添付の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2020512368000001.app
【国際調査報告】