(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-512519(P2020-512519A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ及びヒートポンプの運転方法
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20200331BHJP
F25B 1/053 20060101ALI20200331BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20200331BHJP
【FI】
F25B1/00 101H
F25B1/00 101E
F25B1/053 B
F25B43/00 R
F25B1/00 321Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-551521(P2019-551521)
(86)(22)【出願日】2018年3月28日
(85)【翻訳文提出日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2018057956
(87)【国際公開番号】WO2018178169
(87)【国際公開日】20181004
(31)【優先権主張番号】102017205484.0
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517298149
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ライシヒ
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン・ライスナー
(57)【要約】
本発明は、流体回路(21、28)を有するヒートポンプ(12、26)に関するものであり、前記流体回路は、少なくとも1つの蒸発器(10)と、下流に続く圧縮機ユニット(7)と、下流に続く少なくとも1つの凝縮器(8)と、下流に続く膨張ユニット(9)と、少なくとも1つのバイパス弁(43)を有する第1のバイパス導管(42)とを含んでいるので、圧縮機ユニット(7)の下流かつ凝縮器(8)の上流における流体回路は、蒸発器(10)の下流かつ圧縮機ユニット(7)の上流における流体回路と、流体的に接続可能である。ヒートポンプは、低い熱源出力の方向において拡大された部分負荷運転の領域を有している。このために、ヒートポンプは、貫流量を調量するための手段(46)を有する第2のバイパス導管(45)を含んでおり、第2のバイパス導管を用いて、流体の液相が、第1のバイパス導管(42)に導入可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体回路(21、28)を有するヒートポンプ(12、26)であって、前記流体回路は、熱源(4)の熱エネルギーを流体(2)に伝達するための少なくとも1つの蒸発器(10)と、下流に続く前記流体を圧縮するための圧縮機ユニット(7)と、前記熱源(4)よりも高い温度レベルにおいて前記流体の熱エネルギーをヒートシンク(20)に放出するための、下流に続く少なくとも1つの凝縮器(8)と、前記流体を膨張させるための、下流に続く膨張ユニット(9)と、少なくとも1つのバイパス弁(43)を有する第1のバイパス導管(42)と、を含んでおり、それによって、前記圧縮機ユニット(7)の下流かつ前記凝縮器(8)の上流における流体回路は、前記蒸発器(10)の下流かつ前記圧縮機ユニット(7)の上流における流体回路と、流体的に接続可能である、ヒートポンプにおいて、
貫流量を調量するための手段(46)を有する第2のバイパス導管(45)が設けられており、前記第2のバイパス導管を用いて、前記流体の液相が、前記第1のバイパス導管(42)に、及び/又は、前記蒸発器の下流かつ前記圧縮機ユニット(7)の上流において、前記流体回路に導入可能であることを特徴とするヒートポンプ(12、26)。
【請求項2】
前記圧縮機ユニット(7)が、少なくとも1つの圧縮機(7a、7b)を含んでおり、前記圧縮機(7a、7b)が、ターボ圧縮機であることを特徴とする、請求項1に記載のヒートポンプ(12、26)。
【請求項3】
前記膨張ユニット(9)が、少なくとも2つの一列に接続された膨張装置(9a、9b)を含んでおり、気相及び液相を分離するための分離器(30)が、両方の前記膨張装置(9a、9b)の間に接続されており、前記第2のバイパス導管(45)が、液相の集合のために構成された前記分離器(30)の領域と、流体的に接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒートポンプ(12、26)。
【請求項4】
前記第2のバイパス導管(45)が、前記蒸発器の動作中にオーバーフローされる領域(49)と流体的に接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒートポンプ(12、26)。
【請求項5】
前記ヒートポンプが、前記蒸発器から流れる流体(2)を熱交換器(32)で過熱するための手段(34)を含んでおり、前記熱交換器は、前記膨張ユニット(9)に流入する前の、前記凝縮器(8)から流れる流体を、前記圧縮機ユニット(7)に流入する前の、前記蒸発器(10)から流れる流体と、熱的に接続するように構成されており、
前記第1のバイパス導管(42)は、前記熱交換器(32)の下流で前記流体回路(28)に合流し、かつ、
前記第2のバイパス導管(45)は、前記第1のバイパス導管に合流するか、又は同様に前記熱交換器の下流において前記流体回路に合流することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のヒートポンプ(12、26)。
【請求項6】
ヒートポンプを運転するための方法であって、流体が連続的に流体回路内で誘導され、その際に、熱エネルギーが、熱源から蒸発器内の流体に伝達され、前記流体は、少なくとも部分的に蒸発し(VS5)、次に、前記流体は圧縮され(VS7、VS8)、次に、前記熱源よりも高い温度レベルで熱エネルギーをヒートシンクに放出するために、少なくとも部分的に液化され(VS9)、次に、冷却するために膨張させられ(VS10、VS12)、部分負荷運転において、圧縮後かつ液化前の流体回路から、前記流体の第1の部分流が、第1のバイパス導管を通じて分岐し、前記蒸発器の下流かつ圧縮前の流体回路に再び供給される方法において、
部分負荷運転において、前記流体回路から、部分的な液化の後かつ前記蒸発器の上流において、第2のバイパス導管を通じて、液体である第2の部分流が分岐しており、圧縮前の前記第1の部分流と混合されることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記第1の部分流と前記第2の部分流との比が、前記流体が、圧縮の開始時、圧縮の間、及び、圧縮の終了時に、少なくとも飽和して、過熱されるまで蒸気状態であるように、設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の部分流と前記第2の部分流との比が、圧縮の終了時に、材料又はガスに依存する最高温度が超過されないように、設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の部分流及び前記第2の部分流の体積流量が、圧縮機の動作点に依存する最小体積流量を下回ることがないように、設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御されることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
液体の部分流が、前記第1のバイパス導管(42)に誘導され、及び/又は、前記蒸発器(10)の下流かつ圧縮前に、前記流体回路に誘導されることを特徴とする、請求項6又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒートポンプ(12、26)が、その凝縮曲線(18)が、温度エントロピー線図(23、24)において、概ねプラスの傾きを有する高温流体を用いて運転され、前記流体回路の熱エネルギーが、液化の後かつ膨張の前に、前記蒸発器の下流かつ圧縮前に、前記流体に伝達され、それによって前記流体は、圧縮の開始時、圧縮の間、及び、圧縮の後で、過熱されており(VS6)、部分負荷運転において、前記第1の部分流又は代替的に両方の部分流は、熱エネルギーの伝達後に、前記流体回路に供給されることを特徴とする、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
膨張が、少なくとも2つの膨張ステップにおいて行われ、少なくとも2つの膨張ステップの間で、前記流体の気相が、前記流体の液相から分離され(VS11)、液体の部分流は、前記液相から分岐することを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液体の部分流が、前記蒸発器のオーバーフローされる領域から分岐することを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体が循環する流体回路を有するヒートポンプに関する。流体回路は、熱源の熱エネルギーを流体に伝達するための少なくとも1つの蒸発器と、下流に続く、流体を圧縮するための圧縮機ユニットと、熱源よりも高い温度レベルにおいて流体の熱エネルギーをヒートシンクに放出するための、下流に続く少なくとも1つの凝縮器と、流体を膨張させるための、下流に続く膨張ユニットとを含んでいる。ヒートポンプは、さらに、少なくとも1つのバイパス弁を有する第1のバイパス導管を含んでいるので、圧縮機ユニットの下流かつ凝縮器の上流における流体回路は、蒸発器の下流かつ圧縮機ユニットの上流における流体回路と、流体的に接続可能である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ヒートポンプの運転方法にも関しており、当該方法においては、流体が連続的に流体回路内で誘導され、その際に、熱エネルギーが、熱源から蒸発器内の流体に伝達され、当該流体は、少なくとも部分的に蒸発し、その後で圧縮される。次に、当該流体は、熱源よりも高い温度レベルで熱エネルギーをヒートシンクに放出するために、少なくとも部分的に液化され、その後で、冷却するために膨張させられ、部分負荷運転において、圧縮後かつ液化前の流体回路から、流体の第1の部分流は、第1のバイパス導管を通じて分岐し、蒸発器の下流かつ圧縮前の流体回路に再び供給される。
【0003】
ヒートポンプ内では、ヒートポンプの流体回路内で動作方向において循環する流体の蒸発によって、熱的エネルギー、すなわち熱が、熱源によって吸収され、ヒートシンクに放出される。その際、吸収された熱的エネルギーを有する流体は、圧縮機を用いて、その圧力レベルが上昇させられた後、蒸発温度よりも高い液化温度で液化される。流体を、回路の終端において、初期状態に戻すために、当該流体は膨張し、それによって、その温度は再び低下する。
【0004】
ヒートポンプの効率は、成績係数(英語ではCOP)を用いて測定され、当該成績係数は、最良の場合でも、カルノーサイクルの相関的な効率によって与えられている。成績係数は、便益の費用に対する比率に対応する。ヒートポンプが、ヒートシンクを温めるために用いられる場合、これは、圧縮機の仕事量W
mechで割った、ヒートシンクに放出された熱量Q
warmに対応する。流体の蒸発温度と液化温度との間における値の差(温度変化)が大きければ大きいほど、ヒートポンプの効率は低くなる。
【0005】
理想的には、質量流量、温度レベル、及び、熱源の時間的な利用可能性は、略一定であり、それによって、一定であり続けるヒートポンプの効率及び出力を利用することができる。ヒートポンプが、産業プロセスからの廃熱で運転される場合は、3つのパラメータの変動が生じ得る。これらの場合には、減少したパラメータにおいて、ヒートポンプを部分負荷で運転することが必要になり、それによって、熱源の可能な限り多くの熱量を利用することができる。熱源出力が低下している時間内は、蒸発した流体の、減少した体積流量が蒸発器から流れる。ヒートポンプの圧縮機ユニットが、変位原則に従うピストン圧縮機又はスクリュー圧縮機を含む場合、先行技術に係るこのようなヒートポンプは、部分負荷運転において、例えば圧縮機の回転数の調整によって、蒸発した流体の減少した体積流量に適応する。しかしながら、産業プロセスからの廃熱を用いるために、ヒートポンプは、しばしば、流れの原理に従う圧縮機械として、ターボ圧縮機を含んでいる。周波数変換器を用いた回転数制御による、ターボ圧縮機の運転の、蒸発器から流れる気体状流体の減少した体積流量への適応は、限られた部分負荷領域(体積流量の約90%まで)でのみ可能である。回転数がさらに減少する場合、ターボ圧縮機の圧縮側における流れの分解が生じ、ターボ圧縮機においていわゆるサージが生じる可能性がある。これは回避されるべきであるので、当該体積流量は、圧縮機の動作点に依存する最小体積流量を下回らない。ターボ圧縮機の運転を、蒸発器から流れる減少した体積流量に適応させるために、ターボ圧縮機に、入口案内翼(IGV)の位置調節が可能な迎角を設けることも知られている。入口案内翼の位置調節によって、体積流量は、圧力比が一定である場合に、体積流量の約70%にまで絞られ得る。さらに、ヒートポンプの運転を、蒸発器から流れる流体の減少した体積流量に適応させるために、少なくとも1つのバイパス弁を有するバイパス導管を配置し、それによって、圧縮機ユニットの下流かつ凝縮器の上流における流体回路を、蒸発器の下流かつ圧縮機ユニットの上流における流体回路と、流体的に接続可能にすることが知られている。バイパス弁を用いて、圧縮機ユニットを通って流れる体積流量が調整される。もっとも、バイパス導管を通って流れる部分流によって、吸引ガス(圧縮機ユニットの流入領域における流体)の温度も上昇し、従って、圧縮ガス(圧縮機ユニットの出口における流体)の温度も上昇する。流体自体に関しても(臨界温度を超えた熱分解ゆえに)、圧縮機の材料に関しても(熱応力ゆえに)、温度の上限が存在する。これらの温度の上限は、流体及び材料によって異なる可能性があり、両方の温度の内、低い方は、流体流のバイパス導管を通って流れる部分を限定し、それによって、低い熱源出力の方向における、ヒートポンプの部分負荷運転の領域も限定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭に挙げた種類のヒートポンプ、及び、当該ヒートポンプの運転方法について記載することにあり、当該ヒートポンプ/方法においては、ヒートポンプが、低い熱源出力の方向に拡大された部分負荷運転の領域を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題は、冒頭に挙げた種類のヒートポンプにおいては、貫流量を調量するための手段を有する第2のバイパス導管が含まれていることによって解決され、第2のバイパス導管を用いて、流体の液相が、第1のバイパス導管に、及び/又は、蒸発器の下流かつ圧縮機ユニットの上流で、流体回路に導入可能である。
【0008】
本発明に係るヒートポンプは、本発明に係る方法で用いるように構成されている。ヒートポンプの部分負荷運転では、第2のバイパス導管を通って流れる流体が、第1のバイパス導管を通って流れる流体と混合され、その際に蒸発する。液相の混合によって、第1の部分流の温度が、圧縮ガス温度から、より低い混合温度まで低下する。第2のバイパス導管を通じて分岐した第2の部分流は、本来は、分岐せずに蒸発器内に誘導される可能性があるものではあるが、本発明によると、熱源を用いずとも、第1の部分流を用いて蒸発する。混合は、好ましくは、第2のバイパス導管が第1のバイパス導管に合流することによって、第1のバイパス導管内部で行われる。混合は、しかしまた、両方のバイパス導管が、当該領域において、流体回路に合流し、そこで部分流が、圧縮機ユニットに流入する前に互いに混合されることによって、蒸発器の下流かつ圧縮機ユニットの上流における流体回路内部でも行われ得る。代替的な変型例は、特に、流体回路が蒸発器の下流において、迂回路を通じて圧縮機まで延在しており、対応する長い区間が、流体回路の当該領域において、両方の部分流を混合するために利用できる場合に考えられ得る。
【0009】
両方のバイパス導管は、部分負荷運転に関して、第1のバイパス導管の場合には少なくとも1つの弁を、第2のバイパス導管の場合には貫流量を調量するための手段を含んでいる。第2のバイパス導管の貫流量を調量するための手段は、例えばポンプ及び/又は弁であり得る。弁又はポンプは、調整可能及び/又は開ループ制御可能及び/又は閉ループ制御可能であり、例えば、ヒートポンプを含むヒートポンプ設備の開ループ制御装置/閉ループ制御装置によって、開ループ制御及び/又は閉ループ制御可能である。
【0010】
体積流量と、その互いに対する比とは、ヒートポンプの部分負荷運転において、互いに対して選択可能であり、それによって、流体は、圧縮の開始時、圧縮の間、及び、圧縮の終了時に、少なくとも飽和しており、過熱されるまで蒸気状態にある。これは、ターボ圧縮機を用いる際の、圧縮機におけるウォーターハンマーを回避する。体積流量と、その互いに対する比とは、ヒートポンプの部分負荷運転において、互いに対して選択され得るので、圧縮の終了時に、材料又はガスに依存する最高温度を超過することはない。これは、流体の分解を回避し、高すぎる温度による圧縮機ユニットにおける材料の損傷を防止する。ヒートポンプの本発明に基づく構成によって、ヒートポンプは、部分負荷運転において、より大きい体積流量で運転可能であり、従って、特に、少なくとも1つのターボ圧縮機を有するヒートポンプにおける部分負荷領域の拡大に適している。ターボ圧縮機の場合、ターボ圧縮機の各動作点における、十分に大きい体積流量に留意すべきであり、当該体積流量は、圧縮機の圧縮側に向かう流れが分解しないためには、動作点に依存する最小体積流量を下回らない方がよい。ヒートポンプが、その出力が著しく変動し、一時的に特に低い値を示し得るような熱源で運転される場合、本発明の実施例によると、開ループ制御/閉ループ制御ユニットを設けてもよく、当該制御ユニットは、部分負荷運転において、バイパス導管を通る体積流量と、両方の部分流の互いに対する比とを設定かつ監視し、それによって、材料又はガスに依存する最高温度が、圧縮の終了時に超過されることはなく、ヒートポンプは、熱源の出力が低すぎる場合に停止される。本発明のさらなる実施例によると、ヒートポンプの部分負荷運転において、この圧縮機の回転数の設定及び/又は回転数の開ループ制御及び/又は回転数の閉ループ制御との組み合わせが行われ得る。ターボ圧縮機の場合は、代替的又は付加的に、ガイドベーンの迎角の設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御との組み合わせが行われ得る。
【0011】
本発明の有利な態様は、後続の説明部分及び従属請求項において記載され、当該態様の特徴は、個別に、及び、任意の組み合わせにおいて適用され得る。
【0012】
本発明に係るヒートポンプにおいて、有利には、圧縮機ユニットが少なくとも1つの圧縮機を含み、当該圧縮機はターボ圧縮機であることを規定することが可能である。
【0013】
本発明の当該態様は、特に、500kWを超える出力範囲において産業利用されるヒートポンプに適している。本発明によると、ヒートポンプの部分負荷運転において、バイパス導管を通る、先行技術よりも大きい体積流量が可能になるので、少なくとも1つのターボ圧縮機を有する本発明に係るヒートポンプでは、より低い熱源出力の場合に初めて、動作点に依存する最小体積流量が、もはや維持できなくなる。
【0014】
有利には、本発明に係るヒートポンプにおいて、膨張ユニットが、少なくとも2つの一列に接続された膨張装置を含んでいること、気相及び液相を分離するための分離器が、両方の膨張装置の間に接続されていること、第2のバイパス導管が、液相の集合のために構成された分離器の領域と、流体的に接続されていることを規定することができる。
【0015】
膨張装置は、絞り弁であり得る。絞り弁は、流路の狭窄部を有しているので、流体は、狭窄した部分を貫流する間に、圧力の減少によって膨張する。絞り弁の横断面は、調整可能であってよい。両方の膨張装置の間に配置された分離器は、分離した気相が少なくとも部分的に、2つの圧縮ステップの間で、流体回路に供給されることによって、ヒートポンプの効率の改善に資するものである。本発明に係る態様によると、第2のバイパス導管は、液相の集合のために構成された分離器の領域と流体的に接続されている。分離器は、気相及び液相を分離するための圧力タンクを含み得る。圧力タンク内では、上側領域に、流体の気相が集中し、当該領域では、気体状の流体が、供給管を通じて、少なくとも1つの圧縮機によって吸引され得る。第2のバイパス導管は、例えば、圧力タンクの下側領域から分岐し得る。
【0016】
本発明のさらなる有利な態様は、第2のバイパス導管が、蒸発器の動作中にオーバーフローされる領域と流体的に接続されていることを規定し得る。
【0017】
本発明の当該態様は、分離器を有さないヒートポンプにも適している。
【0018】
有利には、さらに、ヒートポンプが、蒸発器から流れる流体を熱交換器で過熱するための手段を含んでおり、当該熱交換器は、膨張ユニットに流入する前の、凝縮器から流れる流体を、圧縮機ユニットに流入する前の、蒸発器から流れる流体と、熱的に接続するように構成されており、第1のバイパス導管が、熱交換器の下流で流体回路に、及び、第2のバイパス導管が、第1のバイパス導管に、又は、同じく熱交換器の下流において流体回路に合流することを規定することができる。
【0019】
本発明の当該態様は、温度エントロピー線図において、凝縮曲線のプラスの傾きを有する高温流体の使用を可能にする。流体の圧縮の間(全負荷においても部分負荷においても)に、液滴の形成及びそれに伴う圧縮機ユニット内での液滴の打撃による損傷が生じる流体の状態領域に達しないように、当該流体は、圧縮機ユニットに流入する前に過熱されなければならない。過熱の程度は、全負荷運転に関する熱交換器の面積を用いて、設定され得る。両方のバイパス導管は、例えば熱交換器の出口領域において、流体回路に合流してもよい。ヒートポンプの運転の始動段階に関しては、外部のエネルギー供給部を有する熱源が接続されていてよく、当該熱源は、熱を流体に伝達するために、流体回路において、熱交換器の下流かつ圧縮機ユニットの上流に配置され、構成されている。
【0020】
本発明のさらなる課題は、ヒートポンプを運転するための冒頭に挙げた種類の方法について記載することにあり、当該方法によって、低い熱源出力の方向に拡大された部分負荷運転の領域が可能である。
【0021】
本発明によると、本課題は、冒頭に挙げた種類のヒートポンプの運転方法において、液体の部分流が、部分的な液化の後、かつ、蒸発器の上流において、第2のバイパス導管を通じて、流体回路から分岐し、圧縮の前に、第1の部分流と混合されることによって解決される。ヒートポンプの部分負荷運転において、第2のバイパス導管を通って流れる流体は、第1のバイパス導管を通って流れる流体と混合され、その際に蒸発する。液相との混合によって、第1の部分流の温度は、圧縮ガス温度から、より低い混合温度まで低下する。第2のバイパス導管を通じて分岐する第2の部分流は、本来は、分岐せずに蒸発器内に誘導される可能性があるものではあるが、本発明によると、熱源を用いずとも、第1の部分流を用いて蒸発する。混合は、好ましくは、第1のバイパス導管内部で行われる。そのために、例えば第2のバイパス導管が第1のバイパス導管に合流することによって、液体の部分流が第1のバイパス導管に誘導され得る。混合は、しかしまた付加的又は代替的に、液体の部分流が付加的又は代替的に、蒸発器の下流かつ圧縮前に、流体回路に誘導されることによって、例えば、第2のバイパス導管が、付加的又は代替的に、当該領域において流体回路に合流することによって、流体回路内部において、蒸発器の下流かつ流体の圧縮前にも行われ得る。
【0022】
当該方法の本発明に基づく構成によって、ヒートポンプは、部分負荷運転において、より大きい体積流量で運転可能であり、従って、特に少なくとも1つのターボ圧縮機を有するヒートポンプにおける部分負荷領域の拡大に適している。ターボ圧縮機の場合、ターボ圧縮機の各動作点における、十分に大きい体積流量に留意する必要があり、当該体積流量は、圧縮機の圧縮側に向かう流れが分解しないためには動作点に依存する最小体積流量を下回らない方がよい。
【0023】
ヒートポンプの部分負荷運転において、第1の部分流と第2の部分流との比を、流体が、圧縮の開始時、圧縮の間、及び、圧縮の終了時に、少なくとも飽和して、過熱されるまで蒸気状態にあるように設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御することも、有利であると見なされ得る。
【0024】
本発明の当該態様は、特に少なくとも1つのターボ圧縮機を有するヒートポンプにおいて、圧縮機内の液体による損傷を防止する。部分負荷運転において、第1の部分流と第2の部分流との比を設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御するために、第1のバイパス導管において、少なくとも1つの弁を設けることが可能であり、第2のバイパス導管において、例えばポンプ及び/又は弁等の、貫流量を調量するための手段を設けることが可能である。弁又はポンプは、設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御することが可能であり、例えば開ループ制御/閉ループ制御装置を用いて、開ループ制御及び/又は閉ループ制御可能である。体積流量の設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御は、本発明の実施例によると、圧縮機の回転数の設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御と組み合わせて行われ得る。ターボ圧縮機の場合、当該実施例によると、付加的に、ガイドベーンの迎角の設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御との組み合わせを行うことが可能である。
【0025】
ヒートポンプの部分負荷運転において、第1の部分流と第2の部分流との比を、材料又はガスに依存する最高温度が、圧縮の終了時に超過されないように設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御することも、有利であると見なされ得る。
【0026】
本発明の当該態様は、熱源を有するヒートポンプの運転に適しており、当該熱源の出力は著しく変動し、一時的に、ヒートポンプの運転領域の境界領域におけるヒートポンプの運転を必要とする。当該態様は、流体の分解を防止し、圧縮に用いられる少なくとも1つの圧縮機における、高すぎる温度による材料の損傷を防止する。
【0027】
有利には、さらに、部分負荷運転において、第1の部分流及び第2の部分流の体積流量が、圧縮機の動作点に依存する最小体積流量を下回らないように設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御されることを規定することができる。
【0028】
本発明の当該態様は、特に、少なくとも1つのターボ圧縮機を有するヒートポンプを使用する際に、当該方法を実施するために適している。
【0029】
液体の部分流が第1のバイパス導管に誘導されること、及び/又は、蒸発器の下流かつ圧縮前に、流体回路に誘導されることも、有利であると見なされ得る。
【0030】
本発明の当該態様は、第1のバイパス導管内部及び/又は蒸発器の下流かつ圧縮前の流体回路内部における両方の部分流の混合を可能にする。
【0031】
混合は、好ましくは第1のバイパス導管内で行われる。そのために、液体の部分流が、例えば第2のバイパス導管が第1のバイパス導管に合流することによって、第1のバイパス導管に誘導され得る。混合は、しかしまた付加的又は代替的に、液体の部分流が付加的又は代替的に、蒸発器の下流かつ圧縮前に、流体回路に誘導されることによって、例えば、第2のバイパス導管が、付加的又は代替的に、当該領域において流体回路に合流することによって、蒸発器の下流かつ流体の圧縮前の流体回路内部においても行われ得る。
【0032】
本発明のさらなる有利な態様が規定できるところによると、ヒートポンプは、その凝縮曲線が、温度エントロピー線図において、概ねプラスの傾きを有する高温流体を用いて運転され、流体回路の熱エネルギーが、液化の後かつ膨張の前に、蒸発器の下流かつ圧縮前に、流体に伝達されるので、当該流体は、圧縮の開始時、圧縮の間、及び、圧縮の後で、過熱されており、部分負荷運転において、第1の部分流又は代替的に両方の部分流は、熱エネルギーの伝達後に、流体回路に供給される。
【0033】
本発明の有利な態様は、高温流体を用いたヒートポンプの運転を可能にし、当該高温流体は、このような凝縮曲線の傾きを有しており、従って、圧縮機における損傷を回避するためには、圧縮の前に過熱されなければならない。熱エネルギーの伝達は、熱交換器を用いて行われ得る。熱交換器の面積の設定によって、過熱の程度が調整される。例えば、過熱の程度は、全負荷においても部分負荷においても、圧縮後の流体が、凝縮曲線に対する安全距離(温度差)を守っている状態にあるように選択され得る。
【0034】
さらに、有利なことに、膨張が少なくとも2つの膨張ステップにおいて行われることを規定することが可能であり、少なくとも2つの膨張ステップの間に、流体の気相が、流体の液相から分離され、液体の部分流は、液相から分岐する。
【0035】
2つの膨張ステップの間に行われる気相の液相からの分離は、分離した気相が少なくとも部分的に、2つの圧縮ステップの間に流体回路に供給されることによって、ヒートポンプの効率の改善に資するものである。本発明に係る態様によると、他の場合には完全に蒸発器に供給されるであろう、分離した液相は、部分的に第2のバイパス導管を通じて、第2の部分流として分岐する。
【0036】
液体の部分流が、蒸発器のオーバーフローされる領域から分岐することも、有利であると見なされ得る。
【0037】
本発明の当該態様は、分離器を有さないヒートポンプの運転にも適している。
【0038】
本発明のさらなる適切な態様及び利点は、図面を用いた本発明の実施例の説明の対象であり、同じ参照符号は、機能が同じ部材を示している。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】先行技術に係るヒートポンプの流体回路を概略的に示した図である。
【
図2】先行技術に係るヒートポンプの、
図1に示した流体循環の間における状態の推移を記した、流体R134aの温度エントロピー線図を概略的に示した図である。
【
図3】概ねプラスの傾きを有する凝縮曲線、及び、記入された、先行技術に係るヒートポンプの
図1に示された流体回路を通る際の流体の状態推移と共に、流体の温度エントロピー線図を概略的に示した図である。
【
図4】本発明の第1の実施例に係るヒートポンプの流体回路を概略的に示した図である。
【
図5】本発明の第3の実施例に係る方法のフローチャートを概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、先行技術に係るヒートポンプ12の流体回路21を概略的に示している。流体2は、流れ方向11において、ヒートポンプ12を通るように搬送される。蒸発器10は、熱源4の熱エネルギーを吸収して流体を蒸発させるので、当該流体は蒸気状態1をとる。この蒸気状態1において、流体2は、圧縮機7aを含む圧縮機ユニット7に流入し、圧縮状態3に圧縮される。圧縮状態3において、当該流体は、凝縮器8に流入し、ヒートシンク20に熱エネルギーを放出し、凝縮状態5に移行し、最終的に、膨張ユニット9において、膨張装置9aによって膨張する。その結果、流体2は、膨張状態6をとり、当該状態において再び、蒸発器10に供給される。すなわち、当該流体は、ヒートポンプ12の運転中、継続して、流れ方向11に沿って、ヒートポンプ12を通るように搬送され、蒸発器10内で蒸発する際に、熱源4の熱を吸収し、凝縮器8内での液化の間に、熱源4の温度レベルよりも高い温度レベルで、熱エネルギーをヒートシンク20に放出する。
【0041】
図2は、温度エントロピー線
図23を示しており、当該図面は、図の平面において右に向かって、すなわちx座標上にエントロピー14を示し、図の平面において上に向かって、すなわちy座標上に温度13を示している。温度エントロピー線
図23は、凝縮曲線18、沸騰曲線19と、流体の様々な凝集状態とを示している。凝縮曲線18は、気相15と二相領域16との境界を形成しており、二相領域16では、流体は、液体の状態でも気体の状態でも存在している。沸騰曲線19は、二相領域16と液相17との境界を形成している。図示された温度エントロピー線
図23は、概ねマイナスの傾きを有する、流体の凝縮曲線18を示している。
【0042】
同じく
図2には、流体が、
図1に示された先行技術に係るヒートポンプの流体回路を通過する際の、流体の様々な熱力学的状態が概略的に示されている。蒸気状態1から出発して、流れの方向11に沿って、圧縮によって、圧縮状態3が得られる。圧縮状態3は、気相15内にあり、それゆえ、圧縮機7aは、ターボ圧縮機として設計される場合、流体内の液滴形成に続く液体の打撃による損傷を受けないであろう。各状態の間の図示された接続線は、
図2及び
図3において、直線状の接続線として示されているが、この理想的な推移から逸脱することも可能である。圧縮状態3から出発して、凝縮器8によって、沸騰曲線上にある凝縮状態5が生じる。凝縮状態5から出発して、流体の膨張装置9aの通過によって、膨張状態6が得られ、次に、蒸発器10内のエネルギー供給によって、再び流体の蒸気状態1が得られる。これをもって、ヒートポンプ12の回路が閉じられている。
【0043】
図3は、
図2と同様に、温度エントロピー線
図24を示しているが、別の流体に関するものである。流体の沸騰曲線19及び凝縮曲線18の推移は、著しく張り出した二相領域16を囲んでいるので、凝縮曲線18は概ねプラスの傾きを有している。このような流体が、
図1に示された先行技術に係るヒートポンプの流体回路で循環する場合、圧縮状態3は、二相領域16内にある。その結果、ターボ圧縮機の場合、圧縮機7a内で、液体の打撃による損傷が生じ得る。
【0044】
図4は、本発明の第1の実施例に係るヒートポンプ26の流体回路28を概略的に示している。流体回路28内で、流れの方向において、蒸発器10に続いて、2つの圧縮機7a、7bを有する圧縮機ユニット7が配置されている。圧縮機7a及び7bは、一列に配置されており、ターボ圧縮機として構成され得る。圧縮機ユニット7の下流において、流体回路28は、凝縮器8と、後続の2つの一列に配置された膨張装置9a、9bを有する膨張ユニット9とを含んでいる。膨張装置9a及び/又は9bは、絞り弁として、又は、例えば膨張弁として構成され得る。ヒートポンプ26の流体回路28は、さらに、蒸発器10から流れ出る流体の過熱のために、熱交換器32を有する手段34を含んでいる。熱交換器32は、膨張ユニット9に流入する前の、凝縮器8から流れる流体を、圧縮機ユニット7に流入する前の、蒸発器10から流れる流体と熱的に接続するように構成されている。付加的に、気相と液相とを分離するための分離器30が、両方の膨張装置9a及び9bの間に接続されており、両方の圧縮機7a及び7bの間で流体回路28に合流する気相導入管36を有している。始動段階の間に、蒸発器10から流れる流体の十分な過熱を保証するために、手段34は付加的に、外部のエネルギー源40で加熱可能である、接続可能な加熱装置38を含んでいる。部分負荷で運転するために、ヒートポンプ26は、バイパス弁43を有する第1のバイパス導管42と、第2のバイパス導管45とを含んでいるので、圧縮機ユニット7の下流かつ凝縮器8の上流における流体回路28は、蒸発器10の下流かつ圧縮機ユニット7の上流における流体回路28と流体的に接続されている。第2のバイパス導管は、弁47として構成された、貫流量を調量するための手段46を含んでいる。第2のバイパス導管45は、分離器30から分岐し、第1のバイパス導管42に合流するので、第2のバイパス導管45を用いて、分離器30から分岐した流体の液相は、第1のバイパス導管42に導入され得る。
【0045】
代替的に、第2のバイパス導管45は、分離器ではなく、オーバーフローされる領域49から分岐していてもよい。この、第2のバイパス導管の代替的な進路は、図面には示されていない。
【0046】
部分負荷運転において、バイパス導管を通って流れる部分流の比は、貫流量を調量するための手段の弁を用いて、流体が、圧縮の開始時(蒸気状態1b)、圧縮の間(圧縮状態3a及び3b)、及び、圧縮の終了時(圧縮状態3c)に、少なくとも飽和して、過熱されるまで蒸気状態にあり、材料又はガスに依存する最高温度が、圧縮の終了時(圧縮状態3c)に超過されないように、設定及び/又は開ループ制御及び/又は閉ループ制御され得る。
【0047】
図1に示された流体回路とは異なり、本発明に係るヒートポンプ26は、より低い熱源出力におけるヒートポンプの運転を可能にする。付加的に、図示された実施例は、凝縮曲線のプラスの傾きを有する高温流体を、高い成績係数と結びつけて使用することを可能にする。
【0048】
図5は、フローチャートにおいて、本発明に係る方法の実施例を概略的に示しており、ヒートポンプを運転するための準備段階の方法ステップVS1では、圧力エンタルピー線図において概ねプラスの傾きを示す凝縮曲線を有する流体が選択され、使用される。
準備段階の方法ステップVS2では、流体回路内の流体の過熱は、例えば熱交換器面積の設計を通じて、圧縮機の終点における凝縮曲線に対する距離が、少なくとも10K、特に10Kから20Kになるように選択される。
【0049】
準備段階の方法ステップVS3では、開ループ制御/閉ループ制御ユニットに、部分負荷運転に関するデータが伝送され、特に圧縮ガスの最高温度が守られ、圧縮機ユニット内の動作点に依存する最小体積流量が守られる。
【0050】
ヒートポンプの運転の始動段階である方法ステップVS4では、流体の過熱のために、加熱装置が接続される。方法ステップVS5では、熱エネルギーが、熱源から、蒸発器内の流体に伝達され、当該流体は、少なくとも部分的に蒸発する。方法ステップVS6では、流体は、熱エネルギーの伝達後、かつ、圧縮の前に加熱され、その際、凝縮器を離れた流体の熱エネルギーが、膨張の前に取り除かれ、蒸発器を離れた流体に、圧縮の前に伝達される。
【0051】
方法ステップVS7では、流体は、第1の圧縮ステップにおいて圧縮される。
【0052】
方法ステップVS8では、圧縮された流体が、第2の圧縮ステップにおいて圧縮される。
【0053】
方法ステップVS9では、流体は、熱源よりも高い温度レベルにおいて熱エネルギーをヒートシンクに放出するために、少なくとも部分的に液化される。方法ステップVS10では、流体は、第1の膨張ステップにおいて冷却するために膨張する。方法ステップVS11では、流体の気相が、流体の液相から分離し、気体状の流体が、少なくとも部分的に、少なくとも2つの圧縮ステップの間の流体に供給される。方法ステップVS12では、流体が、第2の膨張ステップにおいて膨張し、新たに蒸発器に供給されると共に、ヒートポンプの流体回路内を循環する流体は、連続的に、方法ステップVS5からVS12を通過する。ヒートポンプが、部分負荷運転で運転される場合、付加的に、連続して、方法ステップVS13及びVS14が繰り返される。方法ステップVS13では、流体回路から、圧縮後かつ液化前に、流体の第1の部分流が、第1のバイパス導管を通じて分岐し、蒸発器の下流かつ圧縮前に、流体回路に再び供給され、液体である第2の部分流は、部分的な液化の後かつ蒸発器の上流で、第2のバイパス導管を通じて、流体回路から分岐し、第1の部分流と混合される。さらに、蒸気状態1aにおける実際の体積流量、圧縮状態3cにおける実際の温度、及び、蒸気状態1bにおける実際の体積流量に応じて、両方のバイパス導管を通る体積流量及び互いに対する比は、流体が、圧縮の開始時、圧縮の間及び圧縮の終了時に、少なくとも飽和して、過熱されるまで蒸気状態にあり、最高温度が、圧縮の終了時に超過されず、圧縮機の動作点に依存する最小体積流量を下回ることがないように制御される。方法ステップVS14においては、方法ステップVS13の全ての条件が実際に守られ得るかが調べられる。守ることができない場合、方法ステップVS15において、ヒートポンプは、熱源の低すぎる出力ゆえに停止される。守ることができる場合には、方法ステップVS13が繰り返される。
【符号の説明】
【0054】
1、1a、1b 蒸気状態
2 流体
3、3a、3b、3c 圧縮状態
4 熱源
5 凝縮状態
6 膨張状態
7 圧縮機ユニット
7a、7b 圧縮機
8 凝縮器
9 膨張ユニット
9a、9b 膨張装置
10 蒸発器
11 流れ方向
12 ヒートポンプ
13 温度
14 エントロピー
15 気相
16 二相領域
17 液相
18 凝縮曲線
19 沸騰曲線
20 ヒートシンク
21 流体回路
23、24 温度エントロピー線図
26 ヒートポンプ
28 流体回路
30 分離器
32 熱交換器
34 手段
36 気相導入管
38 加熱装置
40 エネルギー源
42 第1のバイパス導管
43 バイパス弁
45 第2のバイパス導管
46 手段
47 弁
49 オーバーフローされる領域
【手続補正書】
【提出日】2019年11月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体回路(21、28)を有するヒートポンプ(12、26)であって、前記流体回路は、熱源(4)の熱エネルギーを流体(2)に伝達するための少なくとも1つの蒸発器(10)と、下流に続く前記流体を圧縮するための圧縮機ユニット(7)と、前記熱源(4)よりも高い温度レベルにおいて前記流体の熱エネルギーをヒートシンク(20)に放出するための、下流に続く少なくとも1つの凝縮器(8)と、前記流体を膨張させるための、下流に続く膨張ユニット(9)と、少なくとも1つのバイパス弁(43)を有する第1のバイパス導管(42)と、を含んでおり、それによって、前記圧縮機ユニット(7)の下流かつ前記凝縮器(8)の上流における流体回路は、前記蒸発器(10)の下流かつ前記圧縮機ユニット(7)の上流における流体回路と、流体的に接続可能である、ヒートポンプにおいて、
貫流量を調量するための手段(46)を有する第2のバイパス導管(45)が設けられており、
前記第2のバイパス導管を用いて、前記流体の液相の、前記第1のバイパス導管(42)への導入と、前記流体の液相の、前記蒸発器の下流かつ前記圧縮機ユニット(7)の上流における、前記流体回路への導入と、の少なくとも1つが可能であることを特徴とするヒートポンプ(12、26)。
【請求項2】
前記圧縮機ユニット(7)が、少なくとも1つの圧縮機(7a、7b)を含んでおり、前記圧縮機(7a、7b)が、ターボ圧縮機であることを特徴とする、請求項1に記載のヒートポンプ(12、26)。
【請求項3】
前記膨張ユニット(9)が、少なくとも2つの一列に接続された膨張装置(9a、9b)を含んでおり、気相及び液相を分離するための分離器(30)が、両方の前記膨張装置(9a、9b)の間に接続されており、前記第2のバイパス導管(45)が、液相の集合のために構成された前記分離器(30)の領域と、流体的に接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒートポンプ(12、26)。
【請求項4】
前記第2のバイパス導管(45)が、前記蒸発器の動作中にオーバーフローされる領域(49)と流体的に接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒートポンプ(12、26)。
【請求項5】
前記ヒートポンプが、前記蒸発器から流れる流体(2)を熱交換器(32)で過熱するための手段(34)を含んでおり、前記熱交換器は、前記膨張ユニット(9)に流入する前の、前記凝縮器(8)から流れる流体を、前記圧縮機ユニット(7)に流入する前の、前記蒸発器(10)から流れる流体と、熱的に接続するように構成されており、
前記第1のバイパス導管(42)は、前記熱交換器(32)の下流で前記流体回路(28)に合流し、かつ、
前記第2のバイパス導管(45)は、前記第1のバイパス導管に合流するか、又は前記熱交換器の下流において前記流体回路に合流することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のヒートポンプ(12、26)。
【請求項6】
ヒートポンプを運転するための方法であって、流体が連続的に流体回路内で誘導され、流体が連続的に流体回路内で誘導される際に、熱エネルギーが、熱源から蒸発器内の流体に伝達され、前記流体は、少なくとも部分的に蒸発し(VS5)、次に、前記流体は圧縮され(VS7、VS8)、次に、前記熱源よりも高い温度レベルで熱エネルギーをヒートシンクに放出するために、少なくとも部分的に液化され(VS9)、次に、冷却するために膨張させられ(VS10、VS12)、部分負荷運転において、圧縮後かつ液化前の流体回路から、前記流体の第1の部分流が、第1のバイパス導管を通じて分岐し、前記蒸発器の下流かつ圧縮前の流体回路に再び供給される方法において、
部分負荷運転において、前記流体回路から、部分的な液化の後かつ前記蒸発器の上流において、第2のバイパス導管を通じて、液体である第2の部分流が分岐しており、圧縮前の前記第1の部分流と混合されることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記流体が、圧縮の開始時、圧縮の間、及び、圧縮の終了時に、少なくとも飽和して、過熱されるまで蒸気状態であるように、前記第1の部分流と前記第2の部分流との比の、設定と開ループ制御と閉ループ制御との少なくとも1つが行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
圧縮の終了時に、材料又はガスに依存する最高温度が超過されないように、前記第1の部分流と前記第2の部分流との比の、設定と開ループ制御と閉ループ制御との少なくとも1つが行われることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
圧縮機の動作点に依存する最小体積流量を下回ることがないように、前記第1の部分流及び前記第2の部分流の体積流量の、設定と開ループ制御と閉ループ制御との少なくとも1つが行われることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
液体の部分流の前記第1のバイパス導管(42)への誘導と、前記蒸発器(10)の下流かつ圧縮前における液体の部分流の前記流体回路への誘導と、の少なくとも1つが行われることを特徴とする、請求項6又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒートポンプ(12、26)は、前記ヒートポンプ(12、26)の凝縮曲線(18)が、温度エントロピー線図(23、24)において、プラスの傾きを有する高温流体を用いて運転され、前記流体回路の熱エネルギーが、液化の後かつ膨張の前に、前記蒸発器の下流かつ圧縮前に、前記流体に伝達され、それによって前記流体は、圧縮の開始時、圧縮の間、及び、圧縮の後で、過熱されており(VS6)、部分負荷運転において、前記第1の部分流又は代替的に両方の部分流は、熱エネルギーの伝達後に、前記流体回路に供給されることを特徴とする、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
膨張が、少なくとも2つの膨張ステップにおいて行われ、少なくとも2つの前記膨張ステップの間で、前記流体の気相が、前記流体の液相から分離され(VS11)、液体の部分流は、前記液相から分岐することを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液体の部分流が、前記蒸発器のオーバーフローされる領域から分岐することを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】