(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
抗原に対する条件的親和性を有する抗体が、本明細書で提供される。抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性は、低分子薬剤によって変更され得る。条件的親和性を有する抗体は、がんおよび他の疾患を処置するために、単独でまたは他の治療薬と組み合わせて、治療的に使用され得る。
高い薬剤濃度が、低い薬剤濃度よりも少なくとも約2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍または1000倍高い、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
VH領域が、配列番号43、116または117に示されるアミノ酸配列を含むCDR1および配列番号44または118に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体。
抗体の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、ポリヌクレオチドの少なくとも第1のポリヌクレオチドが、高い薬剤濃度下よりも低い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(VH)をコードし、
a.抗体が、VHおよび軽鎖可変領域(VL)を含み;
b.薬剤が低分子である
ライブラリー。
抗体の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、ポリヌクレオチドの少なくとも第1のポリヌクレオチドが、低い薬剤濃度下よりも高い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(VH)をコードし、
a.抗体が、VHおよび軽鎖可変領域(VL)を含み;
b.薬剤が低分子である
ライブラリー。
請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体の少なくともVH領域、VL領域、またはVH領域およびVL領域の両方をコードする単離された核酸、または請求項18から20のいずれか一項に記載のライブラリーの単離されたポリヌクレオチド。
重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、高い薬剤濃度下よりも低い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する単鎖Fvドメイン(scFv);
膜貫通ドメイン;ならびに
細胞内シグナル伝達ドメイン
を含むポリペプチドをコードする単離された核酸であって、薬剤が低分子である、単離された核酸。
重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、低い薬剤濃度下よりも高い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する単鎖Fvドメイン(scFv);
膜貫通ドメイン;ならびに
細胞内シグナル伝達ドメイン
を含むポリペプチドをコードする単離された核酸であって、薬剤が低分子である、単離された核酸。
条件的親和性を有する抗体を産生する方法であって、抗体が産生される条件下で、請求項26に記載の細胞株または請求項28に記載の宿主細胞を培養するステップ、および抗体を回収するステップを含む方法。
対象において障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体または請求項30もしくは31に記載のリンパ球を投与するステップを含む方法。
対象に低分子薬剤を投与するステップをさらに含み、低分子薬剤が、対象において抗原に対する抗体、またはポリペプチドのscFvの親和性に影響する、請求項32に記載の方法。
抗原に対する抗体の親和性が、10μMの低分子薬剤ありまたはなしで、10mM Hepes pH7.4、150mM NaCl、0.05%Tween−20(HBST+)中37℃で表面プラズモン共鳴ベースのバイオセンサーで測定され、任意選択により、低分子薬剤がメトトレキサートである、請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体、請求項18から20のいずれか一項に記載のライブラリー、請求項21から25のいずれか一項に記載の単離された核酸、または請求項32から33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、抗原に対する条件的親和性を有する改善された抗体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
抗原に対する抗体の親和性が環境条件によって影響されるように、抗原への結合について条件的親和性を有する抗体が、本明細書で提供される。環境条件は、例えば、低分子薬剤の濃度であり得る。環境条件に依存して抗原に対する異なる親和性を有する本明細書で記載される抗体は、「条件的親和性を有する(with)」抗体、「条件的親和性を有する(having)」抗体などと本明細書で呼ばれ得る。
【0007】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体はまた、低分子薬剤に特異的に結合し得る。従って、一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、i)抗原およびii)低分子薬剤の両方に結合することが可能であり得、抗体への低分子薬剤の結合は、その抗原に対する抗体の親和性に影響し得る。
【0008】
本明細書で提供される抗原に対する条件的親和性を有する抗体は、種々の目的のために有用であり得る。
【0009】
一例では、低分子薬剤の高い濃度条件の存在下で抗原に対するより大きい親和性を有する抗体は、抗体を低分子薬剤の高い濃度条件に曝露させることによって、抗原に結合するように「活性化され」得る(即ち、抗体は、低分子薬剤によってオンにされ得る「オンのスイッチ」を有効に有する)。一部の実施形態では、低分子薬剤は、対象に投与され得る薬物であり得、対象への薬物の投与は、対象において低分子薬剤の高い濃度条件を生じ得る。対象に、低分子薬剤の低い濃度条件と比較して低分子薬剤の高い濃度条件の存在下で抗原に対するより大きい親和性を有する本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体もまた投与される場合、対象における低分子薬剤の高い濃度条件が存在すると(例えば、対象への低分子薬剤の投与によって引き起こされる)、条件的親和性を有する抗体は、その抗体が低分子薬剤の低い濃度条件にある場合よりも、その抗原に対するより大きい親和性を有するようになる。従って、すぐ上に記載した状況では、対象への低分子薬剤の投与は、対象における抗原への抗体の結合の増加を引き起こし得る。この方法では、抗体は、対象への低分子薬剤の投与によって、抗原に結合するように効率的に「活性化され」または「オンにされ」得る。これは、例えば、特定の選択された時点で/特定の選択された条件下でのみ対象において抗体を抗原に結合させることが望ましい場合、およびその抗原への抗体結合を開始または増加させることが望ましい場合に、有用であり得る。
【0010】
別の例では、低分子薬剤の高い濃度条件の存在下で抗原に対するより低い親和性を有する抗体は、抗体を低分子薬剤の高い濃度条件に曝露させることによって、抗原に結合しないように「非活性化され」/「阻害され」得る(即ち、抗体は、低分子薬剤によってオフにされ得る「オフのスイッチ」を有効に有する)。一部の実施形態では、低分子薬剤は、対象に投与され得る薬物であり得、対象への薬物の投与は、対象において低分子薬剤の高い濃度条件を生じ得る。対象に、低分子薬剤の高い濃度条件と比較して低分子薬剤の高い濃度条件の存在下で抗原に対するより低い親和性を有する本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体もまた投与される場合、対象における低分子薬剤の高い濃度条件が存在すると(例えば、対象への低分子薬剤の投与によって引き起こされる)、条件的親和性を有する抗体は、その抗体が低分子薬剤の低い濃度条件にある場合よりも、その抗原に対するより低い親和性を有するようになる。従って、すぐ上に記載した状況では、対象への低分子薬剤の投与は、対象における抗原への抗体の結合の減少を引き起こし得る。この方法では、抗体は、対象への低分子薬剤の投与によって、抗原に結合しないように効率的に「非活性化され」/「オフにされ」得る。これは、例えば、特定の選択された時点で/特定の選択された条件下でのみ対象において抗体をその抗原に結合させることが望ましい場合、および抗原に抗体が結合することを停止または減少させることが望ましい場合に、有用であり得る。
【0011】
一部の実施形態では、高い薬剤濃度条件下よりも低い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;抗体が、VHまたはVL内に薬剤結合モチーフを含み;薬剤が低分子である抗体が、本明細書で提供される。
【0012】
一部の実施形態では、低い薬剤濃度条件下よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;抗体が、VHまたはVL内に薬剤結合モチーフを含み;薬剤が低分子である抗体が、本明細書で提供される。
【0013】
一部の実施形態では、高い薬剤濃度条件下よりも低い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;薬剤が低分子である抗体が、本明細書で提供される。
【0014】
一部の実施形態では、低い薬剤濃度条件下よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;薬剤が低分子である抗体が、本明細書で提供される。
【0015】
一部の実施形態では、高い低分子薬剤濃度下よりも低い低分子薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、a)抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、配列番号1に示される部分的VH配列のCDR1およびCDR2を含み;b)低分子薬剤がメトトレキサートである抗体が、本明細書で提供される。任意選択により、VHは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。任意選択により、VHは、配列番号166に示されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
一部の実施形態では、低い薬剤濃度下よりも高い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、a)抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、配列番号1に示される部分的VH配列のCDR1およびCDR2を含み;b)低分子薬剤がメトトレキサートである抗体が、本明細書で提供される。任意選択により、VHは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。任意選択により、VHは、配列番号166に示されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
一部の実施形態では、高い薬剤濃度下よりも低い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、a)抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、配列番号3、7、9、13、15、17、19、21、23、25、27、29、33、35、37、39、41、119、121、123、125、127、133または135のいずれか1つに示されるVH配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み;b)低分子薬剤がメトトレキサートである抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、高い薬剤濃度下よりも低い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、a)抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、配列番号3、7、9、13、15、17、19、21、23、25、27、29、33、35、37、39、41、119、121、123、125、127、133または135のいずれか1つに示されるVH配列を含み;b)低分子薬剤がメトトレキサートである抗体が、本明細書で提供される。
【0018】
一部の実施形態では、低い薬剤濃度下よりも高い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、a)抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、配列番号31に示されるVH配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み;b)低分子薬剤がメトトレキサートである抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、低い薬剤濃度下よりも高い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体であって、a)抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、配列番号31に示されるVH配列を含み;b)低分子薬剤がメトトレキサートである抗体が、本明細書で提供される。
【0019】
一部の実施形態では、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む条件的親和性を有する抗体であって、本明細書の表3または表6に提供されるクローンのVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3、ならびに表3または表6に提供される同じそれぞれのクローンのVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、VHおよびVLを含む条件的親和性を有する抗体であって、本明細書の表3または表6に提供されるクローンのVH配列、および表3または表6に提供される同じそれぞれのクローンのVL配列を含む抗体が、本明細書で提供される。
【0020】
一部の実施形態では、VHおよびVLを含む条件的親和性を有する抗体であって、以下のうちいずれか1つが当てはまる抗体が、本明細書で提供される:VHが、配列番号3に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号4に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号7に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号8に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号9に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号10に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号13に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号14に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号15に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号16に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号17に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号18に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号19に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号20に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号21に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号22に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号23に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号24に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号25に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号26に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号27に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号28に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号29に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号30に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号31に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号32に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号33に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号34に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号35に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号36に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号37に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号38に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号39に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号40に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号41に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号42に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号119に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号120に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号121に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号122に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号123に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号124に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号125に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号126に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号127に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号128に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;VHが、配列番号133に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号134に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む;またはVHが、配列番号135に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VLが、配列番号136に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む。
【0021】
一部の実施形態では、VHおよびVLを含む条件的親和性を有する抗体であって、以下のうちいずれか1つが当てはまる抗体が、本明細書で提供される:VHが、配列番号3に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号4に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号7に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号8に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号9に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号10に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号13に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号14に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号15に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号16に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号17に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号18に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号19に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号20に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号21に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号22に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号23に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号24に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号25に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号26に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号27に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号28に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号29に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号30に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号31に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号32に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号33に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号34に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号35に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号36に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号37に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号38に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号39に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号40に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号41に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号42に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号119に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号120に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号121に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号122に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号123に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号124に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号125に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号126に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号127に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号128に示されるVL配列を含む;VHが、配列番号133に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号134に示されるVL配列を含む;またはVHが、配列番号135に示されるVH配列を含み、VLが、配列番号136に示されるVL配列を含む。
【0022】
高い薬剤濃度条件下よりも低い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体が関与する本明細書で提供される実施形態では、任意選択により、[高い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のK
D]/[低い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のK
D]の比は、2、3、4、8、10、16もしくはそれ以上よりも高い、またはそれらの間の範囲である。任意選択により、[高い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のk
off]/[低い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のk
off]の比は、2、3、4、8、10、16もしくはそれ以上よりも高い、またはそれらの間の範囲である。任意選択により、[高い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のK
D]/[低い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のK
D]の比は、20、30、40もしくは100またはそれ以上よりも高い、あるいはそれらの間の範囲である。任意選択により、[高い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のk
off]/[低い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のk
off]の比は、20、30、40もしくは100またはそれ以上よりも高い、あるいはそれらの間の範囲である。任意選択により、低い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約0.01nM〜約100nMのK
Dを有する。任意選択により、低い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約0.1nM〜約10nMのK
Dを有する。任意選択により、低い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約1nM〜約500nMのK
Dを有する。任意選択により、低い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約50nM〜約250nMのK
Dを有する。任意選択により、低い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約1×10E
−4s
−1〜約1×10E
−1s
−1のk
offを有する。任意選択により、低い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約1×10E
−3s
−1〜約1×10E
−1s
−1のk
offを有する。任意選択により、pH7.4、25℃および0μMの低分子薬剤での抗原への抗体の結合は、約0.1nM〜約10nMのK
Dを有するが、pH7.4、25℃および10μMまたはそれよりも高い濃度の低分子薬剤での同じ抗原への同じ抗体の結合は、約100nM〜約1μMのK
Dを有する。任意選択により、pH7.4、25℃および10μM濃度の低分子薬剤での抗原への抗体の結合のK
Dは、pH7.4、25℃および0μMの低分子薬剤での同じ抗原への同じ抗体の結合のK
Dよりも、少なくとも2、3、4、5、10、15または20倍大きい。
【0023】
低い薬剤濃度条件下よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体が関与する本明細書で提供される実施形態では、任意選択により、[低い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のK
D]/[高い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のK
D]の比は、2、3、4、8、10、16もしくはそれ以上よりも高い、またはそれらの間の範囲である。任意選択により、[低い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のk
off]/[高い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のk
off]の比は、2、3、4、8、10、16もしくはそれ以上よりも高い、またはそれらの間の範囲である。任意選択により、[低い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のK
D]/[高い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のK
D]の比は、20、30、40もしくは100またはそれ以上よりも高い、あるいはそれらの間の範囲である。任意選択により、[低い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のk
off]/[高い薬剤濃度で25℃での抗体−抗原結合のk
off]の比は、20、30、40もしくは100またはそれ以上よりも高い、あるいはそれらの間の範囲である。任意選択により、高い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約0.01nM〜約100nMのK
Dを有する。任意選択により、高い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約0.1nM〜約10nMのK
Dを有する。任意選択により、高い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約1nM〜約500nMのK
Dを有する。任意選択により、高い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約50nM〜約250nMのK
Dを有する。任意選択により、高い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約1×10E
−4s
−1〜約1×10E
−1s
−1のk
offを有する。任意選択により、高い薬剤濃度条件下で25℃での抗原への抗体の結合は、約1×10E
−3s
−1〜約1×10E
−1s
−1のk
offを有する。任意選択により、pH7.4、25℃および10μMまたはそれよりも高い濃度の低分子薬剤での抗原への抗体の結合は、約0.1nM〜約10nMのK
Dを有するが、pH7.4、25℃および0μM濃度の低分子薬剤での同じ抗原への同じ抗体の結合は、約100nM〜約1μMのK
Dを有する。任意選択により、pH7.4、25℃および0μM濃度の低分子薬剤での抗原への抗体の結合のK
Dは、pH7.4、25℃および10μMの低分子薬剤での同じ抗原への同じ抗体の結合のK
Dよりも、少なくとも2、3、4、5、10、15または20倍大きい。
【0024】
一部の実施形態では、VHおよびVLを含む本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、VHまたはVL領域内に薬剤結合モチーフを含む。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VH内にある。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VL内にある。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VH CDR1、VH CDR2またはVH CDR3のうち少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VH CDR1およびVH CDR2を含む。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VL CDR1、VL CDR2またはVL CDR3のうち少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VL CDR1およびVL CDR2を含む。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む。
【0025】
低い薬剤濃度および高い薬剤濃度が関与する本明細書で提供される実施形態では、任意選択により、低い薬剤濃度は約0nM〜約0.1nMであり、高い薬剤濃度は約1nM〜約500nMである。任意選択により、低い薬剤濃度は約0nM〜約0.1nMであり、高い薬剤濃度は約1nM〜約500μMである。任意選択により、低い薬剤濃度は約0nM〜約10nMであり、高い薬剤濃度は約50nM〜約500nMである。任意選択により、低い薬剤濃度は約0nM〜約1nMであり、高い薬剤濃度は約100nM〜約100mMである。任意選択により、低い薬剤濃度は約0nM〜約1μMであり、高い薬剤濃度は約100μM〜約10mMである。任意選択により、高い薬剤濃度は、低い薬剤濃度よりも少なくとも約2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍または1000倍高い。任意選択により、低い薬剤濃度は、薬剤の血清濃度である。任意選択により、高い薬剤濃度は、薬剤の血清濃度である。
【0026】
薬剤結合モチーフを含む条件的親和性を有する抗体が関与する本明細書で提供される実施形態では、任意選択により、薬剤結合モチーフは、抗体のVH CDR1およびVH CDR2内に位置する。
【0027】
低分子薬剤が関与する本明細書で提供される実施形態では、任意選択により、薬剤は、葉酸、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の阻害剤、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、アビラテロン、クリゾチニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ、ソニデギブ、エベロリムス、タモキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、ラパチニブ、レトロゾール、エムタンシン、パルボシクリブ、ziv−アフリベルセプト、レゴラフェニブ、イマチニブメシル酸塩、ランレオチド酢酸塩、スニチニブ、アリトレチノイン、パゾパニブ、テムシロリムス、アキシチニブ、トレチノイン、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、イブルチニブ、イデラリシブ、ゲフィチニブ、アファチニブ二マレイン酸塩、セリチニブ、デニロイキンジフチトクス、ボリノスタット、ロミデプシン、ベキサロテン、ボルテゾミブ、プララトレキサート、レナリドミド、ベリノスタット、ベムラフェニブ、トラメチニブ、ダブラフェニブ、カルフィルゾミブ、レナリドミド、ポマリドミド、パノビノスタット、ルキソリチニブリン酸塩、カボザンチニブまたはレンバチニブメシル酸塩である。任意選択により、DHFRの阻害剤は、メトトレキサート、アミノプテリン、またはそれらのバリアントである。
【0028】
任意選択により、本明細書で提供される低分子薬剤は、メトトレキサートである。
【0029】
一部の実施形態では、低分子薬剤の高い濃度条件が、対象において構成的にまたは定期的に存在するように、対象に低分子薬剤が別途投与されない場合であっても、条件的親和性を有する抗体が対象において薬剤の高い濃度条件にあるように、低分子薬剤は、対象において天然に存在し得る。
【0030】
一部の実施形態では、対象における条件的親和性を有する抗体が、対象における特定の環境中で薬剤の高い濃度条件にあるように、低分子薬剤は、対象における限局性の環境中(例えば、組織微小環境、例えば、腫瘍微小環境中)に高い濃度条件で存在し得る。この方法では、条件的親和性を有する抗体は、対象における他の位置/環境中よりも、(例えば、特定の環境中の薬剤の濃度に、および抗原に対する抗体の親和性に対する低分子薬剤の影響に依存して)対象における特定の環境中で、より高い親和性またはより低い親和性で抗原に結合し得る。
【0031】
一部の実施形態では、低分子薬剤は、対象中にもヒト中にも天然に存在しない。
【0032】
一部の実施形態では、抗体の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、抗体の少なくとも1つが、高い薬剤濃度条件下よりも低い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合し、抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;抗体が、VHまたはVL内に薬剤結合モチーフを含み;薬剤が低分子であるライブラリーが、本明細書で提供される。
【0033】
一部の実施形態では、抗体の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、抗体の少なくとも1つが、低い薬剤濃度条件下よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合し、抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;抗体が、VHまたはVL内に薬剤結合モチーフを含み;薬剤が低分子であるライブラリーが、本明細書で提供される。
【0034】
一部の実施形態では、抗体の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、抗体の少なくとも1つが、高い薬剤濃度条件下よりも低い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合し、抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;薬剤が低分子であるライブラリーが、本明細書で提供される。
【0035】
一部の実施形態では、抗体の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、抗体の少なくとも1つが、低い薬剤濃度条件下よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合し、抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;薬剤が低分子であるライブラリーが、本明細書で提供される。
【0036】
一部の実施形態では、抗体の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、これらのポリヌクレオチドの少なくとも第1のポリヌクレオチドが、高い薬剤濃度下よりも低い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(VH)をコードし、a)抗体が、VHおよび軽鎖可変領域(VL)を含み;b)薬剤が低分子であるライブラリーが、本明細書で提供される。任意選択により、低い薬剤濃度は約0nM〜約1nMであり、高い薬剤濃度は約5nM〜約100mMである。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、配列番号1に示される部分的VH配列のCDR1およびCDR2を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、配列番号43、116または117に示されるアミノ酸配列を含むCDR1および配列番号44または118に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、アミノ酸配列Cys−Ala−Alaを含むフレームワーク領域3(FR3)を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、配列番号166に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、これらのポリヌクレオチドの第2のポリヌクレオチドは、配列番号1に示される部分的VH配列のCDR1およびCDR2を含むVH領域をコードする。任意選択により、第2のポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、第2のポリヌクレオチドは、配列番号166に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは各々、CDR3配列を含むVH領域をコードし、第1のポリヌクレオチドによってコードされるVH CDR3配列は、第2のポリヌクレオチドによってコードされるVH CDR3配列とは異なる。任意選択により、薬剤はメトトレキサートである。
【0037】
一部の実施形態では、抗体の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、これらのポリヌクレオチドの少なくとも第1のポリヌクレオチドが、低い薬剤濃度下よりも高い薬剤濃度下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(VH)をコードし、a)抗体が、VHおよび軽鎖可変領域(VL)を含み;b)薬剤が低分子であるライブラリーが、本明細書で提供される。任意選択により、低い薬剤濃度は約0nM〜約1nMであり、高い薬剤濃度は約5nM〜約100mMである。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、配列番号1に示される部分的VH配列のCDR1およびCDR2を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、配列番号43、116または117に示されるアミノ酸配列を含むCDR1および配列番号44または118に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、アミノ酸配列Cys−Ala−Alaを含むフレームワーク領域3(FR3)を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドは、配列番号166に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、これらのポリヌクレオチドの第2のポリヌクレオチドは、配列番号1に示される部分的VH配列のCDR1およびCDR2を含むVH領域をコードする。任意選択により、第2のポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、第2のポリヌクレオチドは、配列番号166に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは各々、CDR3配列を含むVH領域をコードし、第1のポリヌクレオチドによってコードされるVH CDR3配列は、第2のポリヌクレオチドによってコードされるVH CDR3配列とは異なる。任意選択により、薬剤はメトトレキサートである。
【0038】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体のいずれかの、少なくとも1つまたは複数のVH CDRもしくはVL CDR、VH領域、VL領域、またはVH領域およびVL領域の両方をコードする単離された核酸が、本明細書で提供される。本明細書で提供されるライブラリーの単離された核酸もまた、本明細書で提供される。
【0039】
一部の実施形態では、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、高い薬剤濃度条件下よりも低い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する単鎖Fvドメイン(scFv);膜貫通ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドをコードする単離された核酸であって、薬剤が低分子である単離された核酸が、本明細書で提供される。任意選択により、scFvは、VHまたはVL内に薬剤結合モチーフを含む。
【0040】
一部の実施形態では、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、低い薬剤濃度条件下よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する単鎖Fvドメイン(scFv);膜貫通ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドをコードする単離された核酸であって、薬剤が低分子である単離された核酸が、本明細書で提供される。任意選択により、scFvは、VHまたはVL内に薬剤結合モチーフを含む。
【0041】
重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む単鎖Fvドメイン(scFv);膜貫通ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドをコードする核酸が関与する本明細書で提供される実施形態では、scFvは、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の特徴のいずれかを有し得る。任意選択により、膜貫通ドメインは、CD8、CD28、4−1BB、CD3、CD4、CD8、FcγRI、NKG2D、FcεRIγ、ICOS、CTLA−4、PD−1またはVISTAの膜貫通ドメインを含む。任意選択により、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3、4−1BB、CD28、ICOS、4−1BB、OX40のシグナル伝達ドメイン、またはCTLA−4、PD−1もしくはVISTAの阻害性シグナル伝達ドメインを含む。任意選択により、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび4−1BBシグナル伝達ドメインを含む。
【0042】
重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む単鎖Fvドメイン(scFv);膜貫通ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドをコードする核酸が関与する本明細書で提供される実施形態では、任意選択により、VH領域は、配列番号1に示される部分的VH配列のCDR1およびCDR2を含む。任意選択により、VH領域は、配列番号43、116または117に示されるアミノ酸配列を含むCDR1および配列番号44または118に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含む。任意選択により、VH領域は、アミノ酸配列Cys−Ala−Alaを含むフレームワーク領域3(FR3)を含む。任意選択により、VH領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。任意選択により、VH領域は、配列番号166に示されるアミノ酸配列を含む。任意選択により、VH領域は、本明細書の表3または表6に提供されるクローンのVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む。任意選択により、VH領域は、本明細書の表3または表6に提供されるクローンのVH配列を含む。任意選択により、VH領域は、配列番号3、7、9、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、119、121、123、125、127、133または135のいずれかに示されるVH配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。任意選択により、VH領域は、配列番号3、7、9、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、119、121、123、125、127、133または135のいずれかに示されるVH配列を含む。任意選択により、抗体は、本明細書の表3または表6に提供されるクローンのVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3、ならびに表3または表6に提供される同じそれぞれのクローンのVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む。任意選択により、抗体は、本明細書の表3または表6に提供されるクローンのVH配列、および表3または表6に提供される同じそれぞれのクローンのVL配列を含む。
【0043】
本明細書で記載される単離された核酸のいずれかによってコードされるポリペプチドであって、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む単鎖Fvドメイン(scFv);膜貫通ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドもまた、本明細書で提供される。
【0044】
一部の実施形態では、条件的抗原結合親和性を有する抗体であって、a)抗体が、i)抗原およびii)低分子薬剤の両方に特異的に結合し得;b)抗体が、少なくともi)抗原単独、またはii)抗原および低分子に同時に、特異的に結合し得;c)抗体が抗原および低分子に同時に結合した場合よりも、抗体が抗原単独に結合した場合に、抗体がより高い親和性で抗原に結合する、抗体が、本明細書で提供される。任意選択により、抗体は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、抗体は、VH領域において低分子に特異的に結合する。任意選択により、[高い薬剤濃度条件での抗体−抗原相互作用のK
D]の[低い薬剤濃度条件での抗体−抗原相互作用のK
D]に対する比は、2、3、4、5、8、10、16、20、30、40もしくは100またはそれ以上よりも高い、あるいはそれらの間の範囲である。任意選択により、[高い薬剤濃度条件での抗体−抗原相互作用のK
D]の[低い薬剤濃度条件での抗体−抗原相互作用のK
D]に対する比は、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、16、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000であり、または1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400もしくは500のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000のいずれかとの間の範囲であり、第2の値は第1の値よりも大きい。
【0045】
一部の実施形態では、条件的抗原結合親和性を有する抗体であって、a)抗体が、i)抗原およびii)低分子薬剤の両方に特異的に結合し得;b)抗体が、少なくともi)抗原単独、またはii)抗原および低分子に同時に、特異的に結合し得;c)抗体が抗原単独に結合した場合よりも、抗体が抗原および低分子に同時に結合した場合に、抗体がより高い親和性で抗原に特異的に結合する、抗体が、本明細書で提供される。任意選択により、抗体は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、抗体は、VH領域において低分子に特異的に結合する。任意選択により、[低い薬剤濃度条件での抗体−抗原相互作用のK
D]の[高い薬剤濃度条件での抗体−抗原相互作用のK
D]に対する比は、2、3、4、5、8、10、16、20、30、40もしくは100またはそれ以上よりも高い、あるいはそれらの間の範囲である。任意選択により、[低い薬剤濃度条件での抗体−抗原相互作用のK
D]の[高い薬剤濃度条件での抗体−抗原相互作用のK
D]に対する比は、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、16、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000であり、または1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400もしくは500のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000のいずれかとの間の範囲であり、第2の値は第1の値よりも大きい。
【0046】
一部の実施形態では、条件的抗原結合親和性を有する抗体であって、a)抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;b)抗体が、i)抗原およびii)低分子薬剤の両方に特異的に結合し得;c)抗体が、i)抗原単独、ii)低分子薬剤単独、またはiii)抗原および低分子に同時に、特異的に結合し得;d)抗体が抗原および低分子薬剤に同時に結合した場合よりも、抗体が抗原単独に結合した場合に、抗体がより高い親和性で抗原に結合する、抗体が、本明細書で提供される。任意選択により、抗原は、抗体上の第1の位置に結合し、低分子薬剤は、抗体上の第2の位置に結合する。任意選択により、抗体上の第1の位置および抗体上の第2の位置は、重複しない。任意選択により、抗体上の第1の位置および抗体上の第2の位置は、少なくとも部分的に重複する。任意選択により、抗体は、VH領域において低分子薬剤に特異的に結合する。
【0047】
一部の実施形態では、条件的抗原結合親和性を有する抗体であって、a)抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み;b)抗体が、i)抗原およびii)低分子薬剤の両方に特異的に結合し得;c)抗体が、i)抗原単独、ii)低分子薬剤単独、またはiii)抗原および低分子に同時に、特異的に結合し得;d)抗体が抗原および低分子薬剤に同時に結合した場合よりも、抗体が抗原単独に結合した場合に、抗体がより低い親和性で抗原に結合する、抗体が、本明細書で提供される。任意選択により、抗原は、抗体上の第1の位置に結合し、低分子薬剤は、抗体上の第2の位置に結合する。任意選択により、抗体上の第1の位置および抗体上の第2の位置は、重複しない。任意選択により、抗体上の第1の位置および抗体上の第2の位置は、少なくとも部分的に重複する。任意選択により、抗体は、VH領域において低分子薬剤に特異的に結合する。
【0048】
一部の実施形態では、VH領域を含み、抗体の親和性が低分子薬剤の濃度によってモジュレートされる、および/または低分子薬剤に特異的に結合する、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体では、VH領域は、配列番号1に示される部分的VH配列のCDR1およびCDR2を含む。任意選択により、低分子薬剤は、配列番号1に示される部分的VH配列のCDR1およびCDR2を含む位置において、抗体に特異的に結合する。任意選択により、VH領域は、配列番号43、116または117に示されるアミノ酸配列を含むCDR1および配列番号44または118に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含む。任意選択により、低分子薬剤は、配列番号43、116または117に示されるアミノ酸配列を含むCDR1および配列番号44または118に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含む位置において、抗体に特異的に結合する。任意選択により、VH領域は、アミノ酸配列Cys−Ala−Alaを含むフレームワーク領域3(FR3)を含む。任意選択により、低分子薬剤は、アミノ酸配列Cys−Ala−Alaを含むVH FR3を含む位置において、抗体に特異的に結合する。任意選択により、VH領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。任意選択により、低分子薬剤は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むVH領域を含む位置において、抗体に特異的に結合する。任意選択により、VH領域は、配列番号3、7、9、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、119、121、123、125、127、133または135のいずれかに示されるVH配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。任意選択により、VH領域は、配列番号3、7、9、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、119、121、123、125、127、133または135のいずれかに示されるVH配列を含む。任意選択により、VH領域は、配列番号166に示されるVH配列を含む。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体を産生するまたは含む単離された細胞株、宿主細胞またはハイブリドーマが、本明細書で提供される。
【0050】
一部の実施形態では、本明細書で提供される単離された核酸を含む組換え発現ベクターが、本明細書で提供される。本明細書で提供される発現ベクターを含む宿主細胞もまた、提供される。任意選択により、抗体の重鎖および軽鎖は、別々のベクター上にコードされる。任意選択により、抗体の重鎖および軽鎖は、同じベクター上にコードされる。
【0051】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体を産生する方法であって、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を組換え産生する細胞株を培養するステップであって、抗体が産生される、ステップ;および抗体を回収するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0052】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物が、本明細書で提供される。本明細書で提供される医薬組成物を含むキットもまた、提供される。
【0053】
一部の実施形態では、本明細書で提供される核酸によってコードされるポリペプチド、例えば、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、高い薬剤濃度条件下よりも低い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する単鎖Fvドメイン(scFv);膜貫通ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含むリンパ球であって、薬剤が低分子であるリンパ球が、本明細書で提供される。任意選択により、scFvは、VHまたはVL内に薬剤結合モチーフを含む。任意選択により、リンパ球はT細胞である。
【0054】
一部の実施形態では、本明細書で提供される核酸によってコードされるポリペプチド、例えば、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、低い薬剤濃度条件下よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する単鎖Fvドメイン(scFv);膜貫通ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含むリンパ球であって、薬剤が低分子であるリンパ球が、本明細書で提供される。任意選択により、scFvは、VHまたはVL内に薬剤結合モチーフを含む。任意選択により、リンパ球はT細胞である。
【0055】
一部の実施形態では、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含むscFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)を含むリンパ球であって、scFvが、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の任意の特性を有するリンパ球が、本明細書で提供される。任意選択により、リンパ球はT細胞である。
【0056】
一部の実施形態では、対象において障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、条件的親和性を有する抗体、または重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含むscFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)を含むリンパ球を投与するステップを含み、scFvが、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の任意の特性を有する方法が、本明細書で提供される。任意選択により、この方法は、対象に低分子薬剤を投与するステップをさらに含み、低分子薬剤は、対象において抗原に対する抗体、またはポリペプチドのscFvの親和性に影響する。任意選択により、低分子薬剤は、抗体またはリンパ球が対象に投与される前に、それと約同時に、またはその後に投与され得る。
【0057】
一部の実施形態では、対象において障害を処置する方法であって、a)第1の時点において、対象に、有効量の本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を投与するステップであって、抗体が、高い薬剤濃度条件下よりも低い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する、ステップ、およびb)第2の時点において、対象に低分子薬剤を投与するステップであって、薬剤が、抗原に対する抗体の親和性を低減させる、ステップを含む方法が、本明細書で提供される。任意選択により、対象に低分子薬剤を投与するステップは、対象において、抗原に特異的に結合する抗体から生じる生理学的影響を低減させる。
【0058】
一部の実施形態では、対象において障害を処置する方法であって、a)第1の時点において、対象に、有効量の本明細書で提供されるリンパ球を投与するステップであって、リンパ球が、本明細書で提供される核酸によってコードされるポリペプチドを含み、ポリペプチドが、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、高い薬剤濃度条件下よりも低い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する単鎖Fvドメイン(scFv);膜貫通ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを含み;薬剤が低分子である、ステップ、ならびにb)第2の時点において、対象に低分子薬剤を投与するステップであって、低分子薬剤が、抗原に対するscFvの親和性を低減させる、ステップを含む方法が、本明細書で提供される。任意選択により、対象に低分子薬剤を投与するステップは、対象において、抗原に特異的に結合するscFvから生じる生理学的影響を低減させる。
【0059】
一部の実施形態では、対象において障害を処置する方法であって、対象に、i)有効量の本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体であって、低い薬剤濃度条件下よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する抗体、およびii)抗体に特異的に結合する低分子薬剤を投与するステップを含む方法が、本明細書で提供される。任意選択により、抗体は、低分子薬剤が対象に投与される前に、対象に投与される。
【0060】
一部の実施形態では、対象において障害を処置する方法であって、対象に、i)有効量の本明細書で提供されるリンパ球であって、リンパ球が、本明細書で提供される核酸によってコードされるポリペプチドを含み、ポリペプチドが、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、低い薬剤濃度条件下よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する単鎖Fvドメイン(scFv);膜貫通ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを含み、scFvが、VHまたはVL内に薬剤結合モチーフを含み;薬剤が低分子である、リンパ球、ならびにii)リンパ球のポリペプチドのscFvに特異的に結合する低分子薬剤を投与するステップを含む方法が、本明細書で提供される。任意選択により、リンパ球は、低分子薬剤が対象に投与される前に、対象に投与される。任意選択により、リンパ球は、低分子薬剤が対象に投与されるのと約同時に、またはその後に、対象に投与される。
【0061】
第1の時点および第2の時点が関与する本明細書で提供される方法では、典型的には、第2の時点は、第1の時点の後の時点である(例えば、第2の時点は、例えば、第1の時点の1、2、4、6、12または24時間後であり得る)。
【0062】
一部の実施形態では、抗原に対する本明細書で提供される抗体の親和性は、抗体が低い濃度の低分子薬剤中にある場合と比較して、抗体が高い濃度の低分子薬剤中にある場合に増加する。かかる実施形態では、抗体への低分子薬剤の結合は、抗原に対する抗体の親和性を増加させる。例えば、一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、10マイクロモル濃度またはそれよりも高い濃度の低分子薬剤におけるその抗原に対する抗体の親和性が、0マイクロモル濃度の低分子薬剤におけるその抗原に対する抗体の親和性よりも大きいような、その抗原に対する条件的親和性を有する。言い換えると、一部の例では、0マイクロモル濃度の低分子薬剤におけるK
Dまたはk
offの、10マイクロモル濃度の低分子薬剤におけるK
Dまたはk
offに対する比(即ち、0マイクロモル濃度の低分子薬剤における抗体−抗原K
Dまたはk
off/10マイクロモル濃度の低分子薬剤における抗体−抗原K
Dまたはk
offの比)は、2、3、4、8、10、16、20、30、40、50および/もしくは100よりも高い、またはそれらの間の範囲である。
【0063】
他の実施形態では、抗原に対する本明細書で提供される抗体の親和性は、抗体が低い濃度の低分子薬剤中にある場合と比較して、抗体が高い濃度の低分子薬剤中にある場合に減少する。かかる実施形態では、抗体への低分子薬剤の結合は、抗原に対する抗体の親和性を減少させる。例えば、一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、0マイクロモル濃度の低分子薬剤におけるその抗原に対する抗体の親和性が、10マイクロモル濃度またはそれよりも高い濃度の低分子薬剤におけるその抗原に対する抗体の親和性よりも大きいような、その抗原への結合について条件的親和性を有する。言い換えると、例として、10マイクロモル濃度の低分子薬剤におけるK
Dまたはk
offの、0マイクロモル濃度の低分子薬剤におけるK
Dまたはk
offに対する比(即ち、10マイクロモル濃度の低分子薬剤における抗体−抗原K
Dまたはk
off/0マイクロモル濃度の低分子薬剤における抗体−抗原K
Dまたはk
offの比)は、2、3、4、8、10、16、20、30、40、50および/もしくは100よりも高い、またはそれらの間の範囲である。
【0064】
一部の実施形態では、K
Dまたはk
offは、25℃または37℃で測定され得る。同様に、25℃で測定を実施することが関与する本明細書で提供される任意の実施形態は、あるいは、37℃または他の適切な温度で測定を実施することを含み得る。
【0065】
一部の実施形態では、k
offは、約1×10E
−5s
−1〜約1s
−1の間の任意の値について決定され得る。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体の抗原は、BCMA、TIM3、CD19、CD33、EGFR、HER2、TNFアルファ、TNFベータ(リンホトキシン−アルファ)またはCD123であり得る。
【0067】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、VH領域およびVL領域を含み得、抗体のVH領域中の位置において低分子薬剤に結合し得、VH領域およびVL領域の組み合わせによって形成される位置において抗原に結合し得る(即ち、抗原結合位置は、VH領域とVL領域との間の界面にあり得る)。
【0068】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体を生成する方法であって、A)複数のFabクローンをコードする遺伝子ライブラリーを取得するステップであって、Fabが各々、i)目的の低分子薬剤に特異的に結合するVHH抗体由来のCDR1、CDR2またはCDR3のうち少なくとも1つをコードする重鎖、およびii)軽鎖を含む、ステップ;B)目的の抗原に結合するクローンについてライブラリーをスクリーニングするステップ;C)目的の低分子薬剤の濃度に依存して目的の抗原に対する異なる親和性を有するクローンについて、B)で同定されたクローンのうち少なくとも一部をスクリーニングするステップを含む方法が、本明細書で提供される。任意選択により、重鎖は、目的の低分子薬剤に特異的に結合するVHH抗体由来の少なくともCDR1およびCDR2をコードする。
【0069】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体であって、その抗原に対する抗体の親和性が、低分子薬剤メトトレキサートの濃度によって影響され、抗体のVH FR3領域の最後の3つのアミノ酸が、システイン−アラニン−アラニンの連続的順序である抗体が、本明細書で提供される。
【0070】
一部の実施形態では、VHおよびVL領域を含む条件的親和性を有する抗体であって、VHおよびVL領域が、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の少なくとも1、2、3、4、5つ、または6つ全てのCDRを集合的に含む抗体が、本明細書で提供される。
【0071】
治療有効量の、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のいずれか、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のいずれかを組換え産生する宿主細胞、および本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のいずれかをコードする単離された核酸を含む医薬組成物もまた、本明細書で提供される。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体であり得る。一部の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、ヒトIgG
1、IgG
2、IgG
2Δa、IgG
3、IgG
4、IgG
4Δb、IgG
4Δc、IgG
4 S228P、IgG
4Δb S228PおよびIgG
4Δc S228Pサブクラスの抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgG4アイソタイプの抗体であり、S228Pなど、安定化されたヒンジを含む。
【0073】
別の態様では、対象において状態を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書で記載される医薬組成物、および任意選択により低分子薬剤を投与するステップを含む方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、状態はがんである。一部の実施形態では、がんは、胃(gastric)がん、肉腫、リンパ腫、白血病、頭頸部がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃(stomach)がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、神経膠腫、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛癌、結腸がん、口腔がん、皮膚がんおよび黒色腫からなる群から選択される。一部の実施形態では、対象は、局所進行性もしくは転移性黒色腫、頭頸部扁平上皮がん(SCHNC)、卵巣癌、肉腫、または再発性もしくは難治性古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を有する以前に処置された成人患者である。一部の実施形態では、がんは、白金抵抗性および/もしくは白金難治性がん、例えば、白金抵抗性および/もしくは難治性卵巣がん、白金抵抗性および/もしくは難治性乳がん、または白金抵抗性および/もしくは難治性肺がんなどであり得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約3.0mg/kgまたは約10mg/kgの投薬量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、7、14、21または28日毎に1回投与される。一部の実施形態では、抗体は、静脈内または皮下投与される。
【0074】
腫瘍を有する対象において腫瘍の成長または進行を阻害する方法であって、対象に、有効量の本明細書で記載される医薬組成物、および任意選択により低分子薬剤を投与するステップを含む方法もまた、本明細書で提供される。
【0075】
一部の実施形態では、対象においてがん細胞の転移を阻害または予防する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書で記載される医薬組成物、および任意選択により低分子薬剤を投与するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、対象において非経口投与され得る。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0077】
医薬の製造における、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のいずれかの使用もまた、提供される。任意選択により、医薬は、それを必要とする対象におけるがんの処置のため、または腫瘍の成長もしくは進行を阻害するためのものである。
【0078】
それを必要とする対象におけるがんの処置における、または腫瘍の成長もしくは進行を阻害するための使用のための、条件的親和性を有する抗体もまた提供される。一部の実施形態では、がんは、例えば限定なしに、胃(gastric)がん、肉腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、頭頸部がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃(stomach)がん、甲状腺がん、肺がん(例えば、非小細胞肺癌を含む)、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、神経膠腫、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛癌、結腸がん、口腔がん、皮膚がんおよび黒色腫である。
【0079】
条件的親和性を有する抗体が関与する本明細書で提供される任意の実施形態では、任意選択により、抗原に対する抗体の親和性は、10μMの低分子薬剤ありまたはなしで、10mM Hepes pH7.4、150mM NaCl、0.05%Tween−20(HBST+)中25℃または37℃で表面プラズモン共鳴ベースのバイオセンサーで測定され得る。任意選択により、低分子薬剤はメトトレキサートである。
【0080】
1つの実施形態、態様または選択肢の上記特色のいずれかは、当業者に理解されるように、文脈が他を示さない限り、別の実施形態、態様または選択肢の上記異なる特色と組み合わされ得る。
【発明を実施するための形態】
【0082】
定義
本発明をより容易に理解できるように、特定の技術用語および科学用語が以下に具体的に定義される。本明細書の他の箇所で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての他の技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0083】
用語「単離された分子」は、その起源または誘導の供給源によって分子(ここで、分子は、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体である)を指すを指す場合、(1)そのネイティブ状態でそれに付随する天然に関連する構成成分と関連しない、(2)同じ供給源、例えば、種、それが発現される細胞、ライブラリーなどからの他の分子を実質的に含まない、(3)異なる種由来の細胞によって発現される、または(4)天然に存在しない。従って、化学的に合成された、またはそれが天然に起源する系とは異なる細胞系において発現される分子は、その天然に関連する構成成分から「単離される」。分子はまた、当該分野で周知の精製技術を使用する単離によって、天然に関連する構成成分を実質的に含まなくされ得る。分子の純度または均一性は、当該分野で周知のいくつかの手段によってアッセイされ得る。例えば、ポリペプチドサンプルの純度は、当該分野で周知の技術を使用してポリペプチドを可視化するために、ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲルの染色を使用してアッセイされ得る。特定の目的のために、より高い分解能が、HPLCまたは精製のための当該分野で周知の他の手段を使用することによって提供され得る。
【0084】
「低分子薬剤」は、一般には3000ダルトン未満の多原子低分子を指す。本明細書で使用する場合、「低分子薬剤」は、単一原子イオン、例えば、H
+、Ca
2+またはMg
2+イオンを含まない。本明細書で使用する場合、「低分子薬剤」は、上述の2つの文で定義されたような低分子薬剤であって、出発/元の低分子薬剤の1つまたは複数の特性を改善するために(例えば、溶液または対象における増加した溶解度または安定性、増加した半減期などを有するように)化学的に改変されており、改変の結果として、低分子薬剤の質量が3000ダルトンを超える低分子薬剤をさらに含む。例えば、低分子薬剤は、低分子薬剤の1つまたは複数の特性を改善する別の分子に共有結合的に連結され得(本明細書で「コンジュゲート分子」とも呼ばれる)、低分子薬剤+共有結合的に連結された分子の組み合わせは、3000ダルトンを超える質量を有し得る。従って、「低分子薬剤」は、本明細書で使用する場合、この段落の最初の2つの文で定義されたような「低分子薬剤」であって、例えば、PEG化によって改変されており、改変の結果として、「低分子薬剤」が(例えば、付加されたPEGに起因して)3000ダルトンを超える質量を有する低分子薬剤をさらに含む。言い換えると、本明細書で提供される「低分子薬剤」は、その「低分子薬剤」が、抗原に対する本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の親和性に影響し得る元の/出発構造を有し、その元の/出発構造が、溶液または対象における低分子薬剤の1つまたは複数の特性を改善するために(例えば、コンジュゲート分子の付加によって)改変されている場合、3000ダルトンを超える質量を有し得る。例えば、本明細書で提供される「低分子薬剤」は、メトトレキサート(454ダルトン)である(一部の例では、未改変のメトトレキサート分子は、抗原に対する本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の親和性に影響し得る);「低分子薬剤」の定義には、例えばPEG化によって、メトトレキサートの1つまたは複数の特性を改善するように改変されたメトトレキサート分子もまた含まれる。この例を続けると、PEG化されたメトトレキサートの質量が3000ダルトンを超える場合であっても、PEG化されたメトトレキサートは、本明細書で提供される「低分子薬剤」の定義に含まれる。
【0085】
「薬剤」に対する本明細書での言及は、文脈が明らかに他を示さない限り、「低分子薬剤」を指す。
【0086】
「薬剤濃度条件」は、本明細書で提供される低分子薬剤の濃度を指す。「薬剤濃度条件」は、例えば、低分子薬剤のmM、μMもしくはnM濃度で、または任意の他の適切な単位で定義され得る。薬剤の「濃度」に対する本明細書での言及は、「濃度条件」と相互交換可能に使用され得る。
【0087】
「高い」および「低い」薬剤濃度条件は、比較されている2つ以上の条件間での相対的濃度を指し、濃度の絶対値を指さない(値を用いて別途定義されない限り)。例えば、「高い濃度条件」および「低い濃度条件」などが、本明細書で提供される低分子薬剤の濃度に関して比較されている場合、より高い濃度の低分子薬剤が、「低い濃度条件」中よりも「高い濃度条件」中に存在することを理解すべきである。しかし、「高い濃度条件」は、特定の濃度値を指さず、第1の低分子薬剤の「高い濃度条件」は、第2の低分子薬剤の「高い濃度条件」とは異なる濃度絶対値を反映し得る。同様に、特定の低分子薬剤について、「高い濃度条件」と「低い濃度条件」との間の差異は、目的の抗体によっても変動し得る。
【0088】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、標的、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどに特異的に結合することが可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、この用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけではなく、他に特定しない限り、特異的結合についてインタクトな抗体と競合するその任意の抗原結合部分、抗原結合部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成もまた包含する。抗原結合部分には、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fd、Fv、ドメイン抗体(dAb、例えば、サメおよびラクダ科抗体)、相補性決定領域(CDR)を含む断片、単鎖可変断片抗体(scFv)、マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、イントラボディ(intrabody)、ディアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、v−NARおよびbis−scFv、ならびにそのポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部分を含むポリペプチド、が含まれる。抗体には、任意のクラス、例えば、IgG、IgAまたはIgM(またはそのサブクラス)の抗体が含まれ、抗体は、任意の特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスに割当てられ得る。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1およびIgA
2へとさらに分割され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成は、周知である。
【0089】
抗体の「抗原」に対する本明細書での言及は、その抗体が特異的に結合する抗原を指す。抗体の「抗原」は、その抗体の「同族抗原」などとも呼ばれ得る。
【0090】
抗体の「可変領域」は、単独または組み合わせでの、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。当該分野で公知のように、重鎖および軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としても公知の3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。特に、CDR領域の外側(即ち、フレームワーク領域中)のアミノ酸残基において置換を有する、対象可変領域のバリアントが所望される場合、適切なアミノ酸置換、好ましくは保存的アミノ酸置換は、対象可変領域を、その対象可変領域と同じカノニカルクラスのCDR1およびCDR2配列を含む他の抗体の可変領域と比較することによって同定され得る(ChothiaおよびLesk、J Mol Biol 196(4):901〜917、1987)。
【0091】
ある特定の実施形態では、CDRの明確な描写および抗体の結合部位を構成する残基の同定は、抗体の構造を解析することおよび/または抗体−リガンド複合体の構造を解析することによって達成される。ある特定の実施形態では、それは、当業者に公知の種々の技術のいずれか、例えば、X線結晶解析によって達成され得る。ある特定の実施形態では、分析の種々の方法が、CDR領域を同定または近似するために使用され得る。ある特定の実施形態では、分析の種々の方法が、CDR領域を同定または近似するために使用され得る。かかる方法の例には、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、接触定義およびコンフォメーション定義が含まれるがこれらに限定されない。
【0092】
Kabat定義は、抗体中の残基を番号付けするための標準であり、典型的には、CDR領域を同定するために使用される。例えば、JohnsonおよびWu、2000、Nucleic Acids Res.、28:214〜8を参照のこと。Chothia定義は、Kabat定義と類似しているが、Chothia定義は、特定の構造的ループ領域の位置を考慮に入れる。例えば、Chothiaら、1986、J.Mol.Biol.、196:901〜17;Chothiaら、1989、Nature、342:877〜83を参照のこと。AbM定義は、抗体構造をモデル化するOxford Molecular Groupによって作成されたコンピュータープログラムの一体的スイートを使用する。例えば、Martinら、1989、Proc Natl Acad Sci(USA)、86:9268〜9272;「AbM
TM,A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies」、Oxford、UK;Oxford Molecular,Ltd.を参照のこと。AbM定義は、PROTEINS、Structure,Function and Genetics Suppl.、3:194〜198中でSamudralaら、1999、「Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach」によって記載されるものなどの、知識データベースおよびab initio法の組み合わせを使用して、一次配列から抗体の三次構造をモデル化する。接触定義は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づく。例えば、MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、5:732〜45を参照のこと。CDRの「コンフォメーション定義」と本明細書で呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基として同定され得る。例えば、Makabeら、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156〜1166を参照のこと。なお他のCDR境界定義は、上記アプローチのうち1つに厳格に従わない場合があるにもかかわらずKabat CDRの少なくとも一部分と重複するが、それらは、特定の残基または残基の群が抗原結合に顕著に影響しないという予測または実験的知見の観点から短縮または延長することもできる。本明細書で使用する場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当該分野で公知の任意のアプローチによって定義されたCDRを指し得る。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されたCDRを利用し得る。1つよりも多いCDRを含む任意の所与の実施形態について、CDRは、Kabat、Chothia、拡張型、AbM、接触、および/またはコンフォメーション定義のいずれかに従って定義され得る。
【0093】
当該分野で公知のように、抗体の「定常領域」は、単独または組み合わせてのいずれかの、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
【0094】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から取得される抗体を指し、即ち、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る可能な天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。修飾語「モノクローナル」は、抗体の特徴を、抗体の実質的に均一な集団から取得されるものとして示し、任意の特定の方法による抗体の産生を要求すると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、1975、Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得、または米国特許第4,816,567号に記載されるような組換えDNA法によって作製され得る。モノクローナル抗体は、例えば、McCaffertyら、1990、Nature 348:552〜554に記載される技術を使用して生成されたファージライブラリーから単離することもできる。本明細書で使用する場合、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最低限の配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)
2または抗体の他の抗原結合性サブ配列)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。好ましくは、ヒト化抗体は、レシピエントのCDR由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種、例えば、マウス、ラットまたはウサギのCDR(ドナー抗体)由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも、インポートされたCDRまたはフレームワーク配列中にも見出されないが、抗体の性能をさらに精緻化および最適化するために含まれる残基を含み得る。
【0095】
「ヒト抗体」は、本明細書で開示されるように、ヒトによって産生された抗体および/またはヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に排除する。
【0096】
用語「キメラ抗体」は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指すことを意図する。
【0097】
用語「エピトープ」は、抗体の抗原結合領域のうち1つまたは複数において抗体が認識および結合することが可能な分子/抗原の部分を指す。エピトープは、分子の表面基、例えば、アミノ酸または糖側鎖からなり、特定の三次元の構造的特徴ならびに特定の荷電特徴を有する場合が多い。一部の実施形態では、エピトープは、タンパク質エピトープであり得る。タンパク質エピトープは、線状またはコンフォメーションであり得る。線状エピトープでは、タンパク質と相互作用性分子(例えば、抗体)との間の相互作用の点の全てが、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状に存在する。「非線状エピトープ」または「コンフォメーションエピトープ」は、エピトープに対して特異的な抗体が結合する抗原性タンパク質内の非連続なポリペプチド(またはアミノ酸)を含む。用語「抗原性エピトープ」は、本明細書で使用する場合、当該分野で周知の任意の方法、例えば、従来のイムノアッセイによって決定される、抗体が特異的に結合できる抗原の一部分として定義される。抗原上の所望のエピトープが決定されると、例えば、本明細書に記載される技術を使用して、そのエピトープに対する抗体を生成することが可能である。あるいは、発見プロセスの間に、抗体の生成および特徴付けが、望ましいエピトープについての情報を明らかにし得る。次いで、この情報から、同じエピトープへの結合について抗体を競合的にスクリーニングすることが可能である。これを達成するためのアプローチは、抗原への結合について互いに競合または交差競合する抗体を見出すための競合および交差競合研究を実施することである。
【0098】
用語「アゴニスト」は、別の分子の生物学的活性または影響を促進する(即ち、誘導する、引き起こす、増強するまたは増加させる)物質を指す。用語アゴニストは、受容体に結合する物質、例えば、抗体、およびそれに結合することなしに(例えば、会合したタンパク質を活性化することによって)受容体機能を促進する物質を包含する。
【0099】
用語「アンタゴニスト」または「阻害剤」は、受容体などの別の分子の生物学的活性または影響を防止、遮断、阻害、中和または低減する物質を指す。
【0100】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸の鎖を指すために、本明細書で相互交換可能に使用される。この鎖は、直鎖でも分岐鎖でもよく、改変されたアミノ酸を含み得、および/または非アミノ酸によって中断され得る。これらの用語は、天然にまたは介入によって改変されたアミノ酸鎖;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは改変、例えば、標識化構成成分とのコンジュゲーションもまた包含する。例えば、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)ならびに当該分野で公知の他の改変を含むポリペプチドもまた、この定義に含まれる。ポリペプチドは、単一の鎖として、または会合した鎖として存在し得ることが理解される。
【0101】
当該分野で公知のように、「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で相互交換可能に使用される場合、任意の長さのヌクレオチドの鎖を指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変されたヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによって鎖中に取り込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、改変されたヌクレオチド、例えば、メチル化されたヌクレオチドおよびそれらのアナログを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、鎖のアセンブリの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、標識化構成成分とのコンジュゲーションによって、重合後にさらに改変され得る。他の型の改変には、例えば、「キャップ」、アナログによる、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間改変、例えば、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート(phosphoamidate)、カルバメートなど)および荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるものなど、ペンダント部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)などを含むもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)によるもの、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属(oxidative metal)など)を含むもの、アルキル化薬を含むもの、改変された連結によるもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、ならびに未改変の形態のポリヌクレオチド(複数可)が含まれる。さらに、糖中に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置き換えられ得、標準的な保護基によって保護され得、もしくはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を準備するために活性化され得、または固体支持体にコンジュゲートされ得る。5’および3’末端のOHは、リン酸化され得、または1〜20炭素原子のアミンもしくは有機キャップ基部分で置換され得る。他のヒドロキシルはまた、標準的な保護基へと誘導体化され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環式糖アナログ、アルファ−またはベータ−アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログおよび無塩基ヌクレオシド(abasic nucleoside)アナログ、例えば、メチルリボシドを含む、当該分野で一般に公知の類似の形態のリボースまたはデオキシリボース糖もまた含み得る。1つまたは複数のホスホジエステル連結は、代替的連結基によって置き換えられ得る。これらの代替的連結基には、ホスフェートが、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR
2(「アミデート(amidate)」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH
2(「ホルムアセタール(formacetal)」)によって置き換えられた実施形態が含まれるがこれらに限定されず、式中、各RまたはR’は独立して、H、またはエーテル(−O−)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジル(araldyl)を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1〜20C)である。ポリヌクレオチド中の全ての連結が同一である必要はない。前述の説明は、RNAおよびDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに当てはまる。
【0102】
一部の実施形態では、抗体は、実施例2で本明細書に開示される方法によって測定した場合、抗体と抗原との間の平衡解離定数が、例えば、10000nM以下、2000nM以下、1000nM以下、200nM以下、または20nM以下である場合、抗原「と相互作用する」とみなされ得る。
【0103】
抗原に「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書で相互交換可能に使用される)抗体は、当該分野で十分理解される用語であり、かかる特異的または優先的結合を決定するための方法もまた、当該分野で周知である。分子は、それが代替的な細胞または物質と反応または会合する場合よりも、特定の細胞または物質と、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、および/またはより大きい親和性で反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体は、それが他の物質に結合する場合よりも、より大きい親和性、結合力で、より迅速に、および/またはより長い持続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、特定のエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、それが他のエピトープに結合する場合よりも、より大きい親和性、結合力で、より迅速に、および/またはより長い持続時間で、このエピトープに結合する抗体である。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)が、第2の標的に特異的または優先的に結合してもしなくてもよいこともまた理解される。このように、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的結合を必ずしも必要としない(それを含み得るが)。一般に、必ずではないが、結合に対する言及は、優先的結合を意味する。さらに、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、例えば、低分子薬剤の濃度に依存して、異なる親和性で抗原に「特異的に結合し」得る。
【0104】
本明細書で使用する場合、「実質的に純粋」は、少なくとも50%純粋(即ち、混入物を含まない)、より好ましくは、少なくとも90%純粋、より好ましくは、少なくとも95%純粋、なおより好ましくは、少なくとも98%純粋、最も好ましくは、少なくとも99%純粋である材料を指す。
【0105】
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチド挿入物の取り込みのためのベクター(複数可)のレシピエントであり得るまたはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、この子孫は、天然の、偶発的なまたは計画的な変異に起因して、元の親細胞に対して(形態学的にまたはゲノムDNA補完的に)必ずしも完全に同一でない場合がある。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチド(複数可)でトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0106】
当該分野で公知のように、用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域またはバリアントFc領域であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位におけるアミノ酸残基からまたはPro230位におけるアミノ酸残基から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域中の残基の番号付けは、Kabatと同様EUインデックスのものである。Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメインCH2およびCH3を含む。当該分野で公知のように、Fc領域は、ダイマーまたはモノマー形態で存在し得る。
【0107】
用語「競合する」は、抗体に関して本明細書で使用する場合、第1の抗体のその同族エピトープとの結合の結果が、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下で検出可能に減少されるように、第1の抗体が、第2の抗体の結合と十分に類似した様式でエピトープに結合することを意味する。第2の抗体のそのエピトープへの結合もまた、第1の抗体の存在下で検出可能に減少される別の可能性もあり得るが、必ずしも当てはまらない。即ち、第1の抗体は、第2の抗体のそのエピトープへの結合を阻害できるが、第2の抗体は、第1の抗体のそのそれぞれのエピトープへの結合を阻害しない。しかし、各々の抗体が、同じ程度までであれ、より高い程度までであれ、より低い程度までであれ、他方の抗体のその同族エピトープまたはリガンドとの結合を検出可能に阻害する場合、これらの抗体は、そのそれぞれのエピトープ(複数可)の結合について互いと「交差競合する」と言われる。競合性抗体および交差競合性抗体は共に、本発明によって包含される。かかる競合または交差競合が生じる機構(例えば、立体障害、コンフォメーション変化、または共通のエピトープへの結合、またはそれらの部分)にかからわず、当業者は、本明細書で提供される教示に基づいて、かかる競合性抗体および/または交差競合性抗体が包含され、本明細書で開示される方法にとって有用であり得ることを理解する。
【0108】
「機能的Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害;ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節などが含まれる。かかるエフェクター機能は、一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、かかる抗体エフェクター機能を評価するための当該分野で公知の種々のアッセイを使用して評価され得る。
【0109】
「ネイティブ配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸改変によってネイティブ配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含むが、ネイティブ配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能をなおも保持する。
【0110】
本明細書で使用する場合、「処置」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、以下のうち1つまたは複数が含まれるがこれらに限定されない:新生物性もしくはがん性細胞の増殖を低減させること(または新生物性もしくはがん性細胞を破壊すること)、新生物性細胞の転移を阻害すること、腫瘍のサイズを収縮もしくは減少させること、がんの寛解、がんから生じる症状を減少させること、がんに罹患している人の生活の質を増加させること、がんを処置するために必要とされる他の薬物療法の用量を減少させること、がんの進行を遅延させること、がんを治癒すること、および/またはがんを有する患者の生存を延長させること。他の有益なまたは所望の臨床結果には、例えば、心血管疾患の処置(例えば、糖タンパク質IIb/IIIaまたはPCSK9を阻害することによる);自己免疫疾患の処置(例えば、TNF−アルファまたはCD11aを阻害することによる);または黄斑変性症の処置(例えば、VEGF−Aを阻害することによる)など、抗体によって媒介され得る任意の臨床結果が含まれる。
【0111】
「軽快させる」は、(例えば、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を提供しないこと、または対照抗体を提供することと比較した)1つまたは複数の症状の和らげまたは改善を意味する。「軽快させる」は、症状の持続時間における短縮または低減も含む。
【0112】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物または医薬組成物の「有効投薬量」または「有効量」は、任意の1つまたは複数の有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。より具体的な態様では、有効量は、処置されている対象の疾患の症状を予防、軽減もしくは軽快させる、および/または処置されている対象の生存を延長する。予防的使用について、有益なまたは所望の結果には、疾患の発達の間に存在する、疾患、その合併症および中間の病理学的表現型の生化学的、組織学的および/または挙動的症状を含め、疾患のリスクを排除もしくは低減させること、疾患の重症度を和らげること、または疾患の発症を遅延させることが含まれる。治療的使用について、有益なまたは所望の結果には、例えば、例えば限定なしに、胃(gastric)がん、肉腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃(stomach)がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、神経膠腫、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛癌、結腸がん、口腔がん、皮膚がんおよび黒色腫が含まれるがんなどの疾患の1つまたは複数の症状を低減させること、疾患を処置するために必要とされる他の薬物療法の用量を減少させること、別の薬物療法の効果を増強すること、ならびに/または患者におけるがんの進行を遅延させることなどの臨床結果が含まれる。有効投薬量は、1回または複数の投与で投与され得る。本発明の目的のために、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、直接的または間接的に予防的処置または治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床的文脈で理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。従って、「有効投薬量」は、1つまたは複数の治療剤を投与するという観点から検討され得、単一の薬剤は、1つまたは複数の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合、有効量で与えられたとみなされ得る。
【0113】
「個体」、「患者」または「対象」は、例えば、ヒトおよび他の哺乳動物、例えば、サル、類人猿、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットを含め、治療が所望される、もしくは臨床試験、疫学的研究に参加している、または対照として使用される、任意の単一の生物である。
【0114】
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、1つまたは複数の目的の遺伝子(複数可)または配列(複数可)を送達し、好ましくは、宿主細胞においてそれを発現させることが可能な構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と関連したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、ならびに特定の真核生物細胞、例えば産生細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0115】
本明細書で使用する場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現制御配列は、プロモーター、例えば、構成的もしくは誘導性プロモーター、またはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結される。
【0116】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」は、活性成分と組み合わせた場合に、その成分が生物学的活性を保持することを可能にし、対象の免疫系と非反応性である、任意の材料を含む。例には、標準的な薬学的担体のいずれか、例えば、リン酸緩衝溶液、水、エマルジョン、例えば、油/水エマルジョン、および種々の型の湿潤剤が含まれるがこれらに限定されない。エアロゾルまたは非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝溶液(PBS)または生理(0.9%)食塩水である。かかる担体を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990;およびRemington、The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing、2000を参照のこと)。
【0117】
用語「k
on」または「k
a」は、本明細書で使用する場合、抗原への抗体の会合についての速度定数を指す。
【0118】
用語「k
off」または「k
d」は、本明細書で使用する場合、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての速度定数を指す。
【0119】
用語「K
D」は、本明細書で使用する場合、抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を指す。
【0120】
K
Dおよび他の比率を決定するための、会合および解離速度定数、それぞれk
onおよびk
offの決定は、捕捉試薬を介してセンサー表面上に低いキャパシティで固定化されたリガンドに結合することに関して分析物が一価である条件下で、分析物/リガンド相互作用を特徴付けるために、例えば表面プラズモン共鳴ベースのバイオセンサーを使用して行われ得る。分析は、例えば、Karlssonら、Anal.Biochem 349、136〜147、2006に記載される動的力価決定方法論を使用して、または、マルチサイクル速度論分析を使用して実施され得る。所与のアッセイのために使用されるセンサーチップ、捕捉試薬およびアッセイ緩衝液は、Myszka、J.Mol.Recognit 12、279〜284、1999の推奨に従って、センサー表面上へのリガンドの安定な捕捉を与え、表面への分析物の非特異的結合を最小化し、動的分析に適切な分析物結合応答を与えるように選択される。分析物/リガンド相互作用当たりの分析物結合応答は、MyszkaおよびMortonら、Biophys.Chem 64、127〜137(1997)に記載されるように、二重参照され、グローバルパラメーターとしてk
a、k
dおよびR
maxを用いる1:1 Langmuir「質量輸送限定モデル(mass transport limited model)」にフィッティングされる。平衡解離定数K
Dは、動的速度定数の比、K
D=k
off/k
onから推定される。かかる決定は、好ましくは、25℃または37℃で行われる。
【0121】
本明細書での「約」値またはパラメーターに対する言及は、その値またはパラメーター自体、ならびにそのパラメーターについて述べられた数値を10%下回るまたは上回るほどの大きさであり得る値またはパラメーターに関する実施形態を含む(および記述する)。例えば、「約5mg/kg」の用量には、5mg/kgが含まれ、4.5mg/kgと5.5mg/kgとの間の任意の値も含まれる。用語「約」が、期間(年、月、週、日など)に関して使用される場合、用語「約」は、その期間プラスまたはマイナス次の下位期間の1つの量(例えば、約1年は、11〜13カ月を意味し;約6カ月は、6カ月プラスまたはマイナス1週間を意味し;約1週間は、6〜8日を意味する、など)、または示された値の10パーセント以内の、いずれか大きい方を意味する。
【0122】
用語「免疫応答」は、宿主哺乳動物の免疫系による特定の物質(例えば、抗原または免疫原)に対する任意の検出可能な応答、例えば、自然免疫応答(例えば、Toll受容体シグナル伝達カスケードの活性化)、細胞媒介性免疫応答(例えば、T細胞、例えば抗原特異的T細胞、および免疫系の非特異的細胞によって媒介される応答)、および体液性免疫応答(例えば、B細胞によって媒介される応答、例えば、抗体の生成、ならびに血漿、リンパおよび/または組織液中への抗体の分泌)を指す。
【0123】
用語「免疫原性」は、単独でも担体に連結された場合でも、アジュバントの存在下または非存在下で、物質が、特定の抗原に対する免疫応答を引き起こす、惹起する、刺激するもしくは誘導する能力、または特定の抗原に対する既存の免疫応答を改善、増強、増加もしくは延長させる能力を指す。
【0124】
用語「真皮内投与」または「真皮内投与される」は、ヒトを含む哺乳動物に物質を投与することに関して、哺乳動物の皮膚の真皮層中への物質の送達を指す。哺乳動物の皮膚は、表皮層、真皮層および皮下層から構成される。表皮は、皮膚の外層である。皮膚の中間層である真皮は、神経終末、汗腺および油(皮脂)腺、毛包、ならびに血管を含む。皮下層は、より大きい血管および神経を収容する脂肪および結合組織で構成される。真皮内投与とは対照的に、「皮下投与」は、皮下層中への物質の投与を指し、「外用投与」は、皮膚の表面上への物質の投与を指す。
【0125】
用語「新生物性障害」は、細胞が、異常に高い制御されない速度で増殖し、この速度が、周囲の正常組織の速度を超え、その速度と協調されない、状態を指す。これは通常、「腫瘍」として公知の固形の病変または塊を生じる。この用語は、良性および悪性の新生物性障害を包含する。用語「悪性新生物性障害」は、本開示で用語「がん」と相互交換可能に使用され、身体中の他の位置に腫瘍細胞が広がる能力(「転移」として公知)を特徴とする新生物性障害を指す。用語「良性新生物性障害」は、腫瘍細胞が転移する能力を欠く新生物性障害を指す。
【0126】
用語「予防すること(preventing)」または「予防する(prevent)」は、(a)障害が発生しないようにすること、または(b)障害の発症もしくは障害の症状の発症を遅延させることを指す。
【0127】
用語「腫瘍関連抗原」または「TAA」は、腫瘍細胞によって特異的に発現される、または同じ組織型の非腫瘍細胞によって発現される頻度もしくは密度よりも、腫瘍細胞によってより高い頻度もしくは密度で発現される、抗原を指す。腫瘍関連抗原は、宿主によって通常は発現されない抗原であり得る;これらは、宿主によって通常発現される分子の、変異した、トランケートされた、ミスフォールディングした、もしくは他の形で異常な顕在化であり得る;これらは、通常発現されるが異常に高いレベルで発現される分子と同一であり得る;またはこれらは、異常である状況もしくは環境において発現され得る。腫瘍関連抗原は、例えば、タンパク質もしくはタンパク質断片、複雑な炭水化物、ガングリオシド、ハプテン、核酸、またはこれらもしくは他の生物学的分子の任意の組み合わせであり得る。
【0128】
実施形態が「含む」という言葉を用いて本明細書に記載される場合には、「〜からなる」および/または「〜から本質的になる」の用語で記載される他の点では類似の実施形態もまた提供されることが理解される。
【0129】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または選択肢の他のグループ分けの観点から記載される場合、本発明は、全体として列挙された群全体だけでなく、その群の各メンバーを個々に、および主群の全ての可能な下位群、群メンバーのうち1つまたは複数が存在しない主群もまた包含する。本発明は、特許請求された発明中の任意の群メンバーのうち1つまたは複数の明示的な排除も想定する。
【0130】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。本明細書および特許請求の範囲を通じて、単語「含む(comprise)」またはバリエーション、例えば、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」は、述べられた整数または整数の群を含むが、任意の他の整数または整数の群を排除しないことを意味すると理解される。文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。用語「例えば(e.g.)」または「例えば(for example)」の後の任意の例(複数可)は、徹底的でも限定的でもない意味である。用語「または」は、複数の選択肢のリストに関して使用される場合(例えば、「A、BまたはC」)、文脈が明らかに他を示さない限り、それらの選択肢のうち任意の1つまたは複数を含むと解釈するものとする。
【0131】
例示的な方法および材料が本明細書に記載されるが、本明細書に記載される方法および材料と類似または等価な方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用され得る。材料、方法および例は、例示に過ぎず、限定を意図しない。
【0132】
条件的親和性を有する抗体
抗原への結合について条件的親和性を有する抗体が、本明細書で提供される。抗原に対する本明細書で提供される抗体の親和性は、低分子薬剤の濃度条件によって影響され得る。理論によって束縛されないが、抗原に対する抗体の親和性が低分子薬剤によって影響されるように、低分子薬剤は、本明細書で提供される抗体と相互作用し得、抗体の1つまたは複数のCDRのコンフォメーションに影響し得る。一部の実施形態では、抗体と低分子薬剤との相互作用の際に、抗原に対する抗体の親和性が増加するように、低分子薬剤は、抗体の構造を変更し得る。他の実施形態では、抗体と低分子薬剤との相互作用の際に、抗原に対する抗体の親和性が減少するように、低分子薬剤は、抗体の構造を変更し得る。
【0133】
一部の実施形態では、抗体が低い薬剤濃度条件にある場合と比較して、抗体が高い薬剤濃度条件にある場合に抗原に対するより大きい親和性を有する抗体が、本明細書で提供される。かかる抗体は、抗体が低い薬剤濃度条件にある場合に、抗原に対するより低い親和性を有する。この型の抗体は、低分子薬剤によってオンにされ得る「オンのスイッチ」を有効に有すると特徴付けられ得る。言い換えると、低分子薬剤は、抗原に対する抗体の親和性を増加させる。
【0134】
他の実施形態では、抗体が低い薬剤濃度条件にある場合と比較して、抗体が高い薬剤濃度条件にある場合に抗原に対するより低い親和性を有する抗体が、本明細書で提供される。かかる抗体は、抗体が低い薬剤濃度条件にある場合に、抗原に対するより大きい親和性を有する。この型の抗体は、低分子薬剤によってオフにされ得る「オフのスイッチ」を有効に有すると特徴付けられ得る。言い換えると、低分子薬剤は、抗原に対する抗体の親和性を減少させる。
【0135】
本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、抗体について本明細書の他の箇所で提供される任意の一般的特徴を有し得る。例えば、条件的親和性を有する抗体は、重鎖可変領域(「VH」)および軽鎖可変領域(「VL」)を含み得る。
【0136】
低分子薬剤は、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体と、種々の方法で相互作用し得る。例えば、低分子薬剤は、抗体に特異的に結合し得る。
【0137】
一部の実施形態では、低分子薬剤は、抗体の抗原結合位置とは別の抗体中の位置において、抗体に特異的に結合し得る。かかる状況では、例えば、抗体の抗原結合位置は、VH領域およびVL領域の組み合わせによって生成される構造によって形成され得るが(例えば、抗原は、VH領域とVL領域との間の界面において結合し得る)、低分子薬剤は、全体的にVHまたはVL領域内にある、それぞれVHまたはVL領域の抗原結合部分とは別の位置において、抗体に特異的に結合し得る(例えば、低分子薬剤が結合できる、VH領域の抗原結合部分とは別の、VH領域中の「ポケット」が存在し得る;あるいは、この型の「ポケット」は、VL領域中に存在し得る)。典型的には、抗体の抗原結合位置と重複しない、条件的親和性を有する抗体中の位置に低分子薬剤が結合する、本明細書で提供される実施形態では、低分子薬剤と条件的親和性を有する抗体との相互作用は、抗体中の少なくとも1つのCDRのコンフォメーションを変更し、それによって、抗原に対する抗体の親和性を変更する。
【0138】
一部の実施形態では、低分子薬剤は、抗体の抗原結合位置と同じまたはそれと少なくとも部分的に重複する抗体中の位置において、抗体に特異的に結合し得る。この状況では、低分子薬剤への結合に関与する抗体のアミノ酸の少なくとも一部は、抗原への結合に関与する。これらの状況では、抗体への低分子薬剤の結合は、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性に、種々の方法で影響する。例えば、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合は、抗体中の少なくとも1つのCDRのコンフォメーションを変更し得、それによって、抗原に対する抗体の親和性を変更し得る。別の例では、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合は、抗体中のCDRのコンフォメーションを変更しない場合があるが、代わりに、抗体への抗原の結合に立体的または静電気的に影響し(例えば、低分子薬剤は、抗体への抗原の結合を立体的に障害し得る)、それによって、抗原に対する抗体の親和性を変更する。別の例では、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合は、i)抗体中の1つまたは複数のCDRのコンフォメーションを変更し得、かつii)抗体への抗原の結合に立体的または静電気的に影響し得、抗原に対する抗体の親和性は、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合によって引き起こされるこれら両方の型の変化によって影響される。低分子薬剤は、例えば、低分子薬剤が抗原よりも高い濃度である場合、または低分子薬剤が、抗原が抗体に結合する場合よりも高い親和性でその抗体に結合する場合、抗体中の抗原結合位置と重複する抗体中の位置に結合し得る。
【0139】
一部の実施形態では、低分子薬剤は、条件的親和性を有する抗体と一過的に相互作用し得、かかる一過的相互作用は、抗体のコンフォメーションに影響する。
【0140】
一部の実施形態では、低分子薬剤が結合し得る「モチーフ」が、条件的親和性を有する抗体中に存在し得る。例えば、モチーフは、低分子薬剤が結合し得る抗体中の上記位置のいずれか中にあり得る。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VHおよびVL領域を含む抗体のVHまたはVL領域中にあり得る。モチーフには、抗体のポリペプチドの一次構造中の連続アミノ酸(例えば、VH内の連続アミノ酸)が関与し得、またはモチーフには、抗体の一次構造中では連続的な順序ではないが、抗体の二次もしくは三次構造に起因して抗体内で互いに近傍にあるアミノ酸が関与し得る。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体内の薬剤結合モチーフは、抗体のVH領域内にあり得る。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、抗体のVH領域のCDR1、CDR2もしくはCDR3、またはそれらの任意の組み合わせ(例えば、CDR2のみ、CDR1およびCDR2の組み合わせ、またはCDR1、CDR2およびCDR3の組み合わせ)を含み得る。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフには、VH領域のCDRの一部分が関与し得る(例えば、VH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3の一部分が、薬剤への結合に関与し得る)。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、抗体のVH CDR1およびVH CDR2を含む。一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、1つまたは複数のCDRおよび1つまたは複数のフレームワーク領域(FR)の組み合わせを含み得る。
【0141】
一部の実施形態では、薬剤結合モチーフは、VHおよびVL領域を含む条件的親和性を有する抗体のVH領域中にあり得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、アミノ酸配列:QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASRRSSRSWAMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGRLKYYADSVKGRFTISRDNAEYLVYLQMNSLRAEDTAVYYCAA(配列番号1)を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、配列番号1のCDR1およびCDR2のアミノ酸配列を含み得、このCDR1およびCDR2は、本明細書で提供される任意のCDR定義(例えば、Kabat、Chothiaなど)に従って定義される。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、アミノ酸配列CAAを含むFR3を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、アミノ酸配列YLVY(配列番号165)を含むFR3を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1および配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2、およびアミノ酸配列CAAを含むFR3領域を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2、ならびにアミノ酸配列CAAおよびYLVY(配列番号165)を含むFR3領域を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%または50%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、配列番号1の配列の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、VH領域中の薬剤結合モチーフは、配列番号1の配列またはそのバリアント配列の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含み得、このバリアント配列は、配列番号1中の元の配列と比較して、連続するアミノ酸配列中に1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含み、連続する配列中のアミノ酸の25%以下が、元の配列と比較して置換されている。従って、例えば、配列番号1またはそのバリアント由来の20連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列について、バリアントの連続する配列は、20連続するアミノ酸中に最大5つの保存的アミノ酸置換を含み得る(20の25%は5である)。
【0142】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、アミノ酸配列:QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASRRSSRSWAMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGRLKYYADSVKGRFTISRDNAEYLVYLQMNSLRAEDTAVYYCAA(配列番号1)を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、配列番号1のCDR1およびCDR2のアミノ酸配列を含み得、このCDR1およびCDR2は、本明細書で提供される任意のCDR定義(例えば、Kabat、Chothiaなど)に従って定義される。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、アミノ酸配列CAAを含むFR3を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、アミノ酸配列YLVY(配列番号165)を含むFR3を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1および配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2、およびアミノ酸配列CAAを含むFR3領域を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2、ならびにアミノ酸配列CAAおよびYLVY(配列番号165)を含むFR3領域を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%または50%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、配列番号1の配列の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域は、配列番号1の配列またはそのバリアント配列の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含み得、このバリアント配列は、配列番号1中の元の配列と比較して、連続するアミノ酸配列中に1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含み、連続する配列中のアミノ酸の25%以下が、元の配列と比較して置換されている。
【0143】
任意選択により、配列番号1のアミノ酸配列は、「部分的VH配列」などと呼ばれ得、一部の実施形態などでは、配列番号1は、VH領域の一部分であり、配列番号1は、VH CDR1およびVH CDR2配列を含む。
【0144】
一部の実施形態では、抗体の薬剤結合モチーフにおける低分子薬剤の結合は、抗体の1つまたは複数のCDRにおけるコンフォメーション変化を生じ得る。低分子の結合から生じる1つまたは複数のCDRのコンフォメーション変化は、抗原に対する抗体の親和性における変化を生じ得る。理論によって束縛されないが、低分子薬剤は、この機構に従って、抗原に対する本明細書で提供される抗体の親和性を変更し得る。
【0145】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体への低分子薬剤の結合は、抗体への結合について抗原と競合する競合相手として機能することによって、抗原に対する抗体の親和性を減少させ得る。かかる実施形態では、任意選択により、低分子薬剤は、抗体の1つまたは複数のCDRのコンフォメーションを必ずしも変更しないが、抗体−抗原相互作用を妨害することによって、抗原に対する抗体の親和性をなおも低減させ得る。一部の実施形態では、低分子薬剤は、i)抗体−抗原相互作用を物理的に妨害すること、およびii)抗体の1つまたは複数のCDRのコンフォメーションを変更すること、のうち一方または両方によって、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性を減少させ得る。
【0146】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体への低分子薬剤の結合は、抗原への抗体の結合を立体的または静電気的に補助することによって、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る(例えば、抗体は、抗体が低分子薬剤に結合していない場合と比較して、抗体が低分子薬剤にも結合している場合、抗原とより多くの接触を有し得る)。かかる実施形態では、任意選択により、低分子薬剤は、抗体の1つまたは複数のCDRのコンフォメーションを必ずしも変更しないが、例えば、抗体−抗原相互作用を促進する電荷または構造を提供することによって、抗原に対する抗体の親和性をなおも増加させ得る。一部の実施形態では、低分子薬剤は、i)抗体−抗原相互作用を立体的または静電気的に促進すること、およびii)抗体の1つまたは複数のCDRのコンフォメーションを変更すること、のうち一方または両方によって、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性を増加させ得る。
【0147】
図1は、本明細書で提供される条件的親和性を有する例示的な抗体および条件の模式図を提供する。
図1では、星形は低分子薬剤を示し、Y形は抗体(2つの重鎖および2つの軽鎖を有する)を示し、丸形は抗原を示す。左側のパネルは、抗体が低い薬剤濃度条件にある場合と比較して、抗体が高い薬剤濃度条件にある場合に抗原に対するより大きい親和性を有する抗体を示す(抗体「A」)。特に、左側のパネルは、1)低分子薬剤に結合した場合/高い薬剤濃度条件にある場合(「A条件1」)およびii)低分子薬剤に結合していない場合/低い薬剤濃度条件にある場合(「A条件2」)の、この型の抗体を示す。
図1に示されるように、抗体Aが低分子薬剤に結合した場合/高い薬剤濃度条件にある場合、それは、抗原に対する高い親和性を有する。また
図1に示されるように、抗体Aが低分子薬剤に結合していない場合/低い薬剤濃度条件にある場合、それは、抗原に対する低い親和性を有する。
図1の右側のパネルは、抗体が高い薬剤濃度条件にある場合と比較して、抗体が低い薬剤濃度条件にある場合に抗原に対するより大きい親和性を有する抗体を示す(抗体「B」)。特に、右側のパネルは、1)低分子薬剤に結合した場合/高い薬剤濃度条件にある場合(「B条件1」)およびii)低分子薬剤に結合していない場合/低い薬剤濃度条件にある場合(「B条件2」)の、この型の抗体を示す。
図1に示されるように、抗体Bが低分子薬剤に結合した場合/高い薬剤濃度条件にある場合、それは、抗原に対する低い親和性を有する。また
図1に示されるように、抗体Bが低分子薬剤に結合していない場合/低い薬剤濃度条件にある場合、それは、抗原に対する高い親和性を有する。
図1にさらに示されるように、一部の実施形態では、低分子薬剤は、抗体の重鎖中の位置において、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体に結合し得る。
【0148】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、単一ドメイン抗体(例えば、VHH断片)であり得、この単一ドメインは、抗原および低分子薬剤の両方に対する親和性を有し、低分子薬剤は、抗原に対する抗体の親和性に影響する。任意選択により、単一ドメイン抗体は、本明細書で提供されるVH領域の配列のいずれかを含み得る、または本明細書で提供されるVH領域の特徴のいずれかを有し得る。
【0149】
本明細書で提供される低分子薬剤は、種々の異なる化学的クラスのものであり得る。典型的には、低分子薬剤は、(例えば、水素結合を介した)低分子薬剤とタンパク質との相互作用を促進する官能基を含む有機分子である。低分子薬剤は、例えば、1つまたは複数のアミン、カルボニル、ヒドロキシル、スルフヒドリルまたはカルボキシル基を含み得る。一部の実施形態では、低分子薬剤は、葉酸、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の阻害剤(例えば、メトトレキサートまたはアミノプテリン)、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、アビラテロン、クリゾチニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ、ソニデギブ、エベロリムス、タモキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、ラパチニブ、レトロゾール、エムタンシン、パルボシクリブ、ziv−アフリベルセプト、レゴラフェニブ、イマチニブメシル酸塩、ランレオチド酢酸塩、スニチニブ、アリトレチノイン、パゾパニブ、テムシロリムス、アキシチニブ、トレチノイン、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、イブルチニブ、イデラリシブ、ゲフィチニブ、アファチニブ二マレイン酸塩、セリチニブ、デニロイキンジフチトクス、ボリノスタット、ロミデプシン、ベキサロテン、ボルテゾミブ、プララトレキサート、ロメトレキソール(lometrexol)、AG2034、GW1843、ピリトレキシム、タロトレキシン(talotrexin)、ノラトレキセド(nolatrexed)、プレビトレキセド(plevitrexed)、BGC945、レナリモディエ、ベリノスタット、ベムラフェニブ、トラメチニブ、ダブラフェニブ、カルフィルゾミブ、レナリドミド、ポマリドミド、パノビノスタット、ルキソリチニブリン酸塩、カボザンチニブ、レンバチニブメシル酸塩、またはそれらの塩(例えば、薬学的に許容できる塩)、アミド、エステルもしくはそのバリアントであり得る。低分子薬剤は、例えば、外用、経腸または非経口(例えば、静脈内、筋肉内またはくも膜下腔内)経路によって、対象に提供され得る。
【0150】
一部の実施形態では、低分子薬剤は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の阻害剤である。DHFRは、ジヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に還元する酵素である。テトラヒドロ葉酸は、細胞増殖のために必要とされる種々の分子、例えば、プリンおよびチミジル酸の合成のために細胞において必要とされ、従って、DHFRの阻害は、細胞の増殖(growth)および増殖(proliferation)の障害を生じる。従って、DHFRの阻害剤は、抗細胞増殖剤および抗がん剤として有用である。特定のDHFR阻害剤は、特異的細菌DHFRタンパク質(哺乳動物DHFRではなく)を選択的に阻害し、従って、抗細菌薬剤として有用である。一部の実施形態では、DHFR阻害剤は、細菌DHFR阻害剤である。例示的な細菌DHFR阻害剤には、アジトプリム(aditoprim)、ブロジモプリム、イクラプリム、テトロキソプリム(tetroxoprim)およびトリメトプリムが含まれる。
【0151】
一部の実施形態では、DHFR阻害剤は、哺乳動物DHFR阻害剤である。例示的な哺乳動物DHFR阻害剤には、アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、ラルチトレキセドおよびトリメトレキサートが含まれる。
【0152】
一部の実施形態では、低分子薬剤は、メトトレキサートである。メトトレキサートは、IUPAC/組織名(2S)−2−[(4−{[(2,4−ジアミノプテリジン−6−イル)メチル](メチル)アミノ}ベンゾイル)アミノ]ペンタン二酸、化学式C
20H
22N
8O
5を有し、PubChem CID#126941によって同定され得る。メトトレキサートは、DHFRの競合的阻害剤であり、高い親和性でDHFRに結合する。一部の実施形態では、メトトレキサートは、メトトレキサートの薬学的に許容できる塩(例えば、二ナトリウム塩)として製剤化され得る。
【0153】
一部の実施形態では、低分子薬剤は、対象中には天然に存在しなくてもよい(即ち、低分子薬剤は、対象によって合成されず、対象の食餌の通常の構成成分ではない)。例えば、MTXは、ヒト中には天然に存在しない。
【0154】
一部の実施形態では、本明細書で提供される低分子薬剤は、別の分子(他の分子は、本明細書で「コンジュゲート分子」と呼ばれてもよい)に連結されて、低分子薬剤の改善された特性(例えば、より高い溶解度、改善された安定性など)を生じるように、化学的に改変され得る。本明細書で提供される低分子薬剤が別の分子に連結される実施形態では、コンジュゲート分子は、本明細書で提供される条件的親和性を有する対応する抗体には特異的に結合しない(即ち、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤−コンジュゲート分子組み合わせの結合は、コンジュゲート分子ではなく低分子薬剤によって媒介される)。一部の実施形態では、コンジュゲート分子への低分子薬剤の連結は、抗原に対する条件的親和性を有する対応する抗体の親和性に影響する際の低分子薬剤の有効性をさらに改善し得る。例えば、一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合が抗原に対する抗体の親和性を低減させる場合、その低分子薬剤がコンジュゲート分子(例えば、PEG)に化学的に連結される場合、化学的に改変されたバージョンの低分子薬剤は、未改変のバージョンの低分子薬剤よりも、抗原に対する抗体の親和性を低減させる際により有効であり得る。別の例では、一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合が抗原に対する抗体の親和性を増加させる場合、その低分子薬剤が、コンジュゲート分子(例えば、PEG)に化学的に連結される場合、化学的に改変されたバージョンの低分子薬剤は、未改変のバージョンの低分子薬剤よりも、抗原に対する抗体の親和性を増加させる際により有効であり得る。低分子薬剤と共に使用され得る例示的なコンジュゲート分子には、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグルタミン酸、ビオチン、PAS(Pro、AlaおよびSer)アミノ酸配列、短いペプチド(例えば、10アミノ酸以下、5アミノ酸以下または3アミノ酸以下を含むペプチド)、またはFc断片が含まれる。特定の低分子薬剤(例えば、MTX)に対する本明細書での言及は、文脈が明らかに他を示さない限り、コンジュゲート分子に連結されたその低分子薬剤を含む(例えば、「MTX」に対する本明細書での言及は、例えば、未改変のMTXならびにコンジュゲート分子に連結されたMTXを含む)。
【0155】
理論によって束縛されないが、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性を低減させる低分子薬剤は、一部の実施形態では、以下の機構に従って、低分子薬剤が未改変である場合よりも、低分子薬剤がコンジュゲート分子に連結される場合に、抗原に対する抗体の親和性を低減させる際により有効であり得る:低分子薬剤は、抗体に結合することによって、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性を低減させ得、その際、抗体中の1つまたは複数のCDRの位置に影響し得る;再配置されたCDRを有する抗体は、抗原に対する低減された親和性を有し得る。その同じ低分子薬剤がコンジュゲート分子に連結される場合、低分子薬剤はなおも、条件的親和性を有する抗体に結合し得、抗体中のCDRの位置に対して同じ影響を引き起こし得、さらに、コンジュゲート分子は、抗体−抗原相互作用に対する妨害を提供し得る(例えば、低分子薬剤−コンジュゲート分子が、条件的親和性を有する抗体に結合する場合、コンジュゲート分子は、立体障害を起こし得る、または抗体−抗原相互作用を妨害する帯電を提供し得る)。
【0156】
理論によって束縛されないが、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性を増加させる低分子薬剤は、一部の実施形態では、以下の機構に従って、低分子薬剤が未改変である場合よりも、低分子薬剤がコンジュゲート分子に連結される場合に、抗原に対する抗体の親和性を増加させる際により有効であり得る:低分子薬剤は、抗体に結合することによって、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性を増加させ得、その際、抗体中の1つまたは複数のCDRの位置に影響し得る;再配置されたCDRを有する抗体は、抗原に対する増加した親和性を有し得る。その同じ低分子薬剤がコンジュゲート分子に連結される場合、低分子薬剤はなおも、条件的親和性を有する抗体に結合し得、抗体中のCDRの位置に対して同じ影響を引き起こし得、さらに、コンジュゲート分子は、抗体−抗原相互作用をさらに促進する1つまたは複数の影響を提供し得る(例えば、低分子薬剤−コンジュゲート分子が条件的親和性を有する抗体に結合する場合、コンジュゲート分子は、立体的に促進し得る、または抗体−抗原相互作用を増加させる帯電を提供し得る)。
【0157】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原について、25℃での、A)高い薬剤濃度条件での抗体−抗原K
Dの、B)低い薬剤濃度条件での抗体−抗原K
Dに対する比(即ち、高い薬剤濃度条件での抗体−抗原K
D/低い薬剤濃度条件での抗体−抗原K
D)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、16、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000であり、または1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400もしくは500のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000のいずれかとの間の範囲であり、第2の値は第1の値よりも大きい。かかる状況では、高い薬剤濃度条件でのK
Dは、低い薬剤濃度条件でのK
Dよりも大きい数である。より高いK
D数はより低い抗体−抗原親和性を示すので、これらの状況では、抗体は、低い薬剤濃度条件にある場合と比較して、高い薬剤濃度条件にある場合にその抗原に対するより低い親和性を有する。従って、これらの状況では、薬剤は、その抗原に対する抗体の親和性を効率的に低減させる(即ち、薬剤は、抗体において「オフのスイッチ」を効率的に活性化する)。
【0158】
同様に、本明細書で提供される抗体およびその抗原について、一部の実施形態では、25℃での、A)高い薬剤濃度条件での抗体−抗原k
offの、B)低い薬剤濃度条件での抗体−抗原k
offに対する比(即ち、高い薬剤濃度条件での抗体−抗原k
off/低い薬剤濃度条件での抗体−抗原k
off)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、16、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000であり、または1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400もしくは500のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000のいずれかとの間の範囲であり、第2の値は第1の値よりも大きい。
【0159】
抗体が、低い薬剤濃度条件にある場合と比較して、高い薬剤濃度条件にある場合にその抗原に対するより低い親和性を有する本明細書で提供される実施形態では、低い薬剤条件下で25℃での抗体−抗原相互作用のK
Dは、例えば、500μM、200μM、100μM、50μM、20μM、10μM、5μM、2μM、1μM、500nM、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、500pM、200pM、100pM、50pM、20pM、10nM、5pM、2pMもしくは1pMのいずれか未満、0.01nMと100nMとの間、0.1nMと10nMとの間、または1pM、2pM、5pM、10pM、20pM、50pM、100pM、200pM、500pM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μMもしくは500μMのいずれかと2pM、5pM、10pM、20pM、50pM、100pM、200pM、500pM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μM、500μMもしくは800μMのいずれかとの間であり得、第2の値は第1の値よりも大きい。抗体が、低い薬剤濃度条件にある場合と比較して、高い薬剤濃度条件にある場合にその抗原に対するより低い親和性を有する本明細書で提供される実施形態では、低い薬剤濃度条件下で25℃での抗体−抗原相互作用のk
offは、例えば、1×10E
−1s
−1、1×10E
−2s
−1、1×10E
−3s
−1もしくは1×10E
−4s
−1のいずれか未満、1×10E
−4s
−1と1×10E
−1s
−1との間、1×10E
−3s
−1と1×10E
−1s
−1との間、1×10E
−2s
−1と1×10E
−1s
−1との間、1×10E
−4s
−1と1×10E
−3s
−1との間、1×10E
−4s
−1と1×10E
−2s
−1との間、または1×10E
−3s
−1と1×10E
−2s
−1との間であり得る。
【0160】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原について、25℃での、A)低い薬剤濃度条件での抗体−抗原K
Dの、B)高い薬剤濃度条件での抗体−抗原K
Dに対する比(即ち、低い薬剤濃度条件での抗体−抗原K
D/高い薬剤濃度条件での抗体−抗原K
D)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、16、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000である、または1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400もしくは500のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000のいずれかとの間の範囲であり、第2の値は第1の値よりも大きい。かかる状況では、低い薬剤濃度条件でのK
Dは、高い薬剤濃度条件でのK
Dよりも大きい数である。より高いK
D数はより低い抗体−抗原親和性を示すので、これらの状況では、抗体は、高い薬剤濃度条件にある場合と比較して、低い薬剤濃度条件にある場合にその抗原に対するより低い親和性を有する。従って、これらの状況では、薬剤は、その抗原に対する抗体の親和性を効率的に増加させる(即ち、薬剤は、抗体において「オンのスイッチ」を効率的に活性化する)。
【0161】
同様に、本明細書で提供される抗体およびその抗原について、一部の実施形態では、25℃での、A)低い薬剤濃度条件での抗体−抗原k
offの、B)高い薬剤濃度条件での抗体−抗原k
offに対する比(即ち、低い薬剤濃度条件での抗体−抗原k
off/高い薬剤濃度条件での抗体−抗原k
off)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、16、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000である、または1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400もしくは500のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500もしくは1000のいずれかとの間の範囲であり、第2の値は第1の値よりも大きい。
【0162】
抗体が、高い薬剤濃度条件にある場合と比較して、低い薬剤濃度条件にある場合にその抗原に対するより低い親和性を有する本明細書で提供される実施形態では、高い薬剤条件下で25℃での抗体−抗原相互作用のK
Dは、例えば、500μM、200μM、100μM、50μM、20μM、10μM、5μM、2μM、1μM、500nM、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、500pM、200pM、100pM、50pM、20pM、10nM、5pM、2pMもしくは1pMのいずれか未満、0.01nMと100nMとの間、0.1nMと10nMとの間、または1pM、2pM、5pM、10pM、20pM、50pM、100pM、200pM、500pM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μMもしくは500μMのいずれかと2pM、5pM、10pM、20pM、50pM、100pM、200pM、500pM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μM、500μMもしくは800μMのいずれかとの間であり得、第2の値は第1の値よりも大きい。抗体が、高い薬剤濃度条件にある場合と比較して、低い薬剤濃度条件にある場合にその抗原に対するより低い親和性を有する本明細書で提供される実施形態では、高い薬剤濃度条件下で25℃での抗体−抗原相互作用のk
offは、例えば、1×10E
−1s
−1、1×10E
−2s
−1、1×10E
−3s
−1もしくは1×10E
−4s
−1のいずれか未満、1×10E
−4s
−1と1×10E
−1s
−1との間、1×10E
−3s
−1と1×10E
−1s
−1との間、1×10E
−2s
−1と1×10E
−1s
−1との間、1×10E
−4s
−1と1×10E
−3s
−1との間、1×10E
−4s
−1と1×10E
−2s
−1との間、または1×10E
−3s
−1と1×10E
−2s
−1との間であり得る。
【0163】
一部の実施形態では、本明細書で提供される「低い薬剤濃度」は、1mM、500μM、200μM、100μM、50μM、20μM、10μM、5μM、2μM、1μM、500nM、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、500pM、200pM、100pM、50pM、20pM、10nM、5pM、2pMもしくは1pMのいずれか未満、または0pMと1mM、500μM、200μM、100μM、50μM、20μM、10μM、5μM、2μM、1μM、500nM、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、500pM、200pM、100pM、50pM、20pM、10nM、5pM、2pMもしくは1pMのいずれかとの間である。例えば、一部の実施形態では、低い薬剤濃度は、約0nM〜約0.1nMまたは約0nM〜約10nMである。
【0164】
一部の実施形態では、本明細書で提供される「高い薬剤濃度」は、500mM、100mM、10mM、1mM、500μM、200μM、100μM、50μM、20μM、10μM、5μM、2μM、1μM、500nM、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、500pM、200pM、100pM、50pM、20pM、10nM、5pM、2pMもしくは1pMのいずれかよりも高い、または1pM、2pM、5pM、10pM、20pM、50pM、100pM、200pM、500pM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μM、500μM、1mM、10mM、100mMもしくは500mMのいずれかと2pM、5pM、10pM、20pM、50pM、100pM、200pM、500pM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μM、500μM、800μM、1mM、10mM、100mM、500mMもしくは1Mのいずれかとの間であり、第2の値は第1の値よりも大きい。例えば、一部の実施形態では、高い薬剤濃度は、約1nM〜約500nMまたは約50nM〜約500nMである。
【0165】
一部の実施形態では、薬剤はメトトレキサートであり、高い薬剤濃度は、約5μM、10μM、15μM、20μM、25μM、50μM、100μM、500μM、1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mM、100mM、200mM、500mM、1Mまたはそれ以上のいずれかであり、低い薬剤濃度は、約500μM、100μM、50μM、20μM、10μM、5μM、2μM、1μM、0.5μM、0.1μMまたはそれ以下のいずれかであり(例えば、低い薬剤濃度は、0μMであり得る)、高い薬剤濃度は、低い薬剤濃度よりも高い。一部の実施形態では、薬剤はメトトレキサートであり、A)高い薬剤濃度条件は、1μM、5μM、10μM、15μM、20μM、25μM、50μM、100μM、500μM、1mM、2mM、5mM、10mM、20mMまたは50mMのいずれかと5μM、10μM、15μM、20μM、25μM、50μM、100μM、500μM、1mM、2mM、5mM、10mMもしくは20mM、50mM、100mM、200mM、500mMまたは1Mのいずれかとの間であり、第2の値は第1の値よりも大きく、B)低い薬剤濃度条件は、10mM、1mM、500μM、100μM、50μM、20μM、5μM、2μM、1μM、0.5μMまたは0.1μMのいずれかと100μM、50μM、20μM、5μM、2μM、1μM、0.5μM、0.1μMもしくは0μMのいずれかとの間であり、第2の値は第1の値よりも小さく、高い薬剤濃度範囲全体は、低い薬剤濃度範囲全体よりも大きい。
【0166】
一部の実施形態では、本明細書で提供される低分子薬剤について、「低い薬剤濃度」および「高い薬剤濃度」は、任意の値であり得、高い薬剤濃度/低い薬剤濃度の比は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200もしくは500であり、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100もしくは200のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200もしくは500のいずれかとの間であり、第2の値は第1の値よりも大きい。高い薬剤濃度/低い薬剤濃度の比が、例えば「4」である場合、高い薬剤濃度と低い薬剤濃度との間の関連性は、高い薬剤濃度が低い薬剤濃度よりも4倍(4×)大きいとも記載され得る。他の比の値も、同じ方法で記載され得る。同様に、一部の実施形態では、「低い薬剤濃度」および「高い薬剤濃度」が範囲で提供される場合、最大の高い薬剤濃度値/最大の低い薬剤濃度値の比は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200もしくは500である、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100もしくは200のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200もしくは500のいずれかとの間であり、第2の値は第1の値よりも大きい。一部の実施形態では、「低い薬剤濃度」および「高い薬剤濃度」が範囲で提供される場合、最小の高い薬剤濃度値/最小の低い薬剤濃度値の比は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200もしくは500である、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100もしくは200のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200もしくは500のいずれかとの間であり、第2の値は第1の値よりも大きい。一部の実施形態では、「低い薬剤濃度」および「高い薬剤濃度」が範囲で提供される場合、最小の高い薬剤濃度値/最大の低い薬剤濃度値の比は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200もしくは500である、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100もしくは200のいずれかと2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200もしくは500のいずれかとの間であり、第2の値は第1の値よりも大きい。
【0167】
一部の実施形態では、「低い薬剤濃度条件」または「高い薬剤濃度条件」に対する本明細書での言及のいずれかは、低い薬剤濃度値もしくは高い薬剤濃度値のいずれか、または本明細書で提供されるかかる濃度条件間の比を含み得る。
【0168】
本明細書で提供される薬剤の濃度は、例えば、目的の任意の溶液または懸濁物、例えば、in vitro反応混合物または体液、例えば、血清、血漿、全血、唾液もしくは尿など中の、低分子薬剤の濃度を指し得る。従って、低分子薬剤の「高い薬剤濃度」および「低い薬剤濃度」に対する言及は、例えば、低分子薬剤の異なる血清濃度を指し得る。
【0169】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、低分子薬剤に特異的に結合し得る。一部の実施形態では、25℃での抗体−低分子相互作用のK
Dは、500μM、200μM、100μM、50μM、20μM、10μM、5μM、2μM、1μM、500nM、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、500pM、200pM、100pM、50pM、20pM、10nM、5pM、2pMもしくは1pMのいずれか未満、0.01nMと100nMとの間、0.1nMと10nMとの間、または1pM、2pM、5pM、10pM、20pM、50pM、100pM、200pM、500pM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μMもしくは500μMのいずれかと2pM、5pM、10pM、20pM、50pM、100pM、200pM、500pM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μM、500μMもしくは800μMのいずれかとの間であり、第2の値は第1の値よりも大きい。
【0170】
一部の実施形態では、相対的に低い濃度の低分子薬剤のみが、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性に影響するのに必要であるように、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体に対して比較的高い親和性(即ち、低いK
D値)を有する低分子薬剤を使用することが望ましい。これは、例えば、低分子薬剤および条件的親和性を有する抗体が対象に投与され、低分子薬剤が対象にとって毒性である場合に、望まれ得る。
【0171】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体もまた特異的に結合する抗原に対してよりも、低分子薬剤に対してより大きい親和性を有し得る。他の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体もまた特異的に結合する抗原に対してよりも、低分子薬剤に対してより低い親和性を有し得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体、抗原および薬剤が高い薬剤濃度条件にある場合、抗体もまた特異的に結合する抗原に対してよりも、低分子薬剤に対してより大きい親和性を有するが、抗体、抗原および薬剤が低い薬剤濃度条件にある場合、抗原に対してよりも、低分子薬剤に対してより低い親和性を有する。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体、抗原および薬剤が低い薬剤濃度条件にある場合、抗体もまた特異的に結合する抗原に対してよりも、低分子薬剤に対してより大きい親和性を有するが、抗体、抗原および薬剤が高い薬剤濃度条件にある場合、抗原に対してよりも、低分子薬剤に対してより低い親和性を有する。一部の実施形態では、低分子薬剤に対する本明細書で提供される抗体の親和性は、低分子薬剤の濃度に依存して実質的に変化しない−即ち、低分子に対する抗体の親和性は、高い薬剤濃度条件および低い薬剤濃度条件の両方の下で約同じであり得る。従って、低分子薬剤に対する抗体の親和性が抗原に対するその抗体の親和性と比較される本明細書で提供される実施形態では、一部の状況では、抗原に対する抗体の親和性は、薬剤の濃度によって変動し得るが、低分子薬剤に対する抗体の親和性は、薬剤の濃度によって変動しない。
【0172】
本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、任意の時系列で、低分子薬剤の抗原に対する異なる濃度に曝露され得る。例えば、一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は抗原に対する抗体の親和性に影響する低分子薬剤に曝露される前に、抗体が結合する抗原に曝露され得る。従って、例えば、低分子薬剤の高い濃度条件で抗原に対するより高い親和性を有する抗体の場合、抗体が低分子薬剤の低い濃度条件で抗原に最初に曝露される場合、抗体は、抗原に結合しない(または低い親和性でのみ結合する)。次いで、低分子薬剤の濃度が増加するように、低分子薬剤が、条件的親和性を有する抗体および抗原を含む環境中に導入される場合、抗原に対する抗体の親和性は増加し得る。他の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、抗体が抗原に曝露される前に、低分子薬剤の高い濃度条件に曝露され得る。
【0173】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、低分子薬剤に最初に結合し得、次いで、低分子薬剤への結合後に(低分子薬剤に結合したままで)、抗原に結合し得る。かかる実施形態では、一般に、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合は、抗体−抗原相互作用の親和性を増加させる。しかし、上記実施形態の一部の場合には、条件的親和性を有する条件的抗体への低分子薬剤の結合は、抗体−抗原相互作用の親和性を減少させる。
【0174】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、抗原に最初に結合し得、次いで、抗原への結合後に、低分子薬剤に結合し得る。かかる実施形態では、一般に、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合は、抗体−抗原相互作用の親和性を減少させる。しかし、上記実施形態の一部の場合には、条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合は、抗体−抗原相互作用の親和性を増加させる。
【0175】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、VH領域中にアミノ酸配列Cys−Ala−Ala(「CAA」)を含み得る。一部の実施形態では、CAA配列は、VH領域の3番目のフレームワーク領域(「FR3」)であり得る(Kabat定義およびChothia定義の両方に従う)。一部の実施形態では、CAA配列は、VH FR3の最後の3つのアミノ酸である。一部の実施形態では、CAA配列は、抗体が低分子薬剤に結合するのに、および/または低分子薬剤がその抗原に対する抗体の親和性に影響するのに、重要であり得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、それがVH FR3中にアミノ酸配列CAAを含まない場合よりも、それがVH FR3中にアミノ酸配列CAAを含む場合に、低分子薬剤に対するより大きい親和性を有する。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、およびVH FR3中の配列CAAの組み合わせは、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合に関与し得る。一部の実施形態では、抗体がVH FR3中に配列CAAを含まない場合よりも、抗体がVH FR3中に配列CAAを含む場合に、メトトレキサートが抗体により容易に結合するように、VH FR3中のアミノ酸配列CAAは、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤メトトレキサートの結合に重要である。
【0176】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、VH領域中にアミノ酸配列Tyr−Leu−Val−Tyr(「YLVY」;配列番号165)を含み得る。一部の実施形態では、YLVY配列は、VH領域の3番目のフレームワーク領域(「FR3」)であり得る(Kabat定義およびChothia定義の両方に従う)。一部の実施形態では、YLVY配列は、抗体が低分子薬剤に結合するのに、および/または低分子薬剤がその抗原に対する抗体の親和性に影響するのに、重要であり得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、それがVH FR3中にアミノ酸配列YLVYを含まない場合よりも、それがVH FR3中にアミノ酸配列YLVYを含む場合に、低分子薬剤に対するより大きい親和性を有する。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、およびVH FR3中の配列YLVYの組み合わせは、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤の結合に関与し得る。一部の実施形態では、抗体がVH FR3中に配列YLVYを含まない場合よりも、抗体がVH FR3中に配列YLVYを含む場合に、メトトレキサートが抗体により容易に結合するように、VH FR3中のアミノ酸配列YLVYは、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体への低分子薬剤メトトレキサートの結合に重要である。
【0177】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、VH領域中にアミノ酸配列CAAおよびYLVY(配列番号165)を含み得る。一部の実施形態では、CAA配列およびYLVY配列は共に、VH FR3領域中にあり得る。CAAおよびYLVY配列は、VH FR3領域のアミノ酸配列中で他のアミノ酸によって分離され得、またはこれらは連続していてもよい。CAAおよびYLVY配列は、VH FR3領域のアミノ酸配列中いずれの順序でもよい。
【0178】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体であって、本明細書の実施例のセクションで提供されるクローンの少なくとも1つのCDR、任意選択により全てのCDR(例えば、例えば、本明細書の実施例2または実施例3で提供されるクローンのVH CDR1、2および3ならびにVL CDR1、2および3)を含む抗体、またはそのバリアントが、本明細書で提供される。
【0179】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体VH領域は、配列番号166に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0180】
条件的親和性を有する抗体のCDR部分もまた、本明細書で提供される。CDR領域の決定は、当業者の技術範囲内に十分に入る。一部の実施形態では、CDRは、KabatおよびChothiaのCDRの組み合わせであり得る(「組み合わせ型CDR」または「拡張型CDR」とも呼ばれる)ことが理解される。本明細書でCDRの「コンフォメーション定義」と呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基として同定され得る。例えば、Makabeら、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156〜1166を参照のこと。一般に、「コンフォメーションCDR」は、抗体が特異的抗原に結合するのに適切なループ構造を維持するために束縛されるKabat CDRおよびVernierゾーン中の残基位置を含む。コンフォメーションCDRの決定は、当業者の技術範囲内に十分に入る。一部の実施形態では、CDRは、Kabat CDRである。他の実施形態では、CDRは、Chothia CDRである。他の実施形態では、CDRは、拡張型、AbM、コンフォメーションまたは接触CDRである。言い換えると、1つよりも多いCDRを有する実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、拡張型、AbM、コンフォメーション、接触CDRまたはそれらの組み合わせのいずれかであり得る。
【0181】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、本明細書で提供される実施例に示される任意のクローンの3つの重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、本明細書で提供される実施例に示される任意のクローンの3つの軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、本明細書で提供される実施例に示される任意のクローンの3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRを含む。
【0182】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、哺乳動物細胞上の抗原に特異的に結合し得る。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、がん細胞上の抗原に特異的に結合し得る。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、抗原、例えば、PD−1、PD−L1、CTLA−4、LAG−3、B7−H3、B7−H4、B7−DC(PD−L2)、B7−H5、B7−H6、B7−H8、B7−H2、B7−1、B7−2、ICOS、ICOS−L、TIGIT、CD2、CD47、CD80、CD86、CD48、CD58、CD226、CD155、CD112、LAIR1、2B4、BTLA、CD160、TIM1、TIM−3、TIM4、VISTA(PD−H1)、OX40、OX40L、GITR、GITRL、CD70、CD27、4−1BB、4−BBL、DR3、TL1A、CD40、CD40L、CD30、CD30L、LIGHT、HVEM、SLAM(SLAMF1、CD150)、SLAMF2(CD48)、SLAMF3(CD229)、SLAMF4(2B4、CD244)、SLAMF5(CD84)、SLAMF6(NTB−A)、SLAMCF7(CS1)、SLAMF8(BLAME)、SLAMF9(CD2F)、CD28、CEACAM1(CD66a)、CEACAM3、CEACAM4、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM7、CEACAM8、CEACAM1−3AS CEACAM3C2、CEACAM1−15、PSG1−11、CEACAM1−4C1、CEACAM1−4S、CEACAM1−4L、IDO、TDO、CCR2、CD39−CD73−アデノシン経路(A2AR)、BTKs、TIKs、CXCR2、CCR4、CCR8、CCR5、VEGF経路、CSF−1、または自然免疫応答モジュレーターに特異的に結合し得る。
【0183】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、C末端リジンありまたはなしの全長重鎖、および全長軽鎖を含む。
【0184】
条件的親和性を有する抗体は、例えば、モノクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、単鎖(ScFv)、抗体−薬物コンジュゲート(ADC)、抗体部分を含む融合タンパク質(例えば、ドメイン抗体)、ヒト化抗体、ならびに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアントおよび共有結合的に改変された抗体を含む、必要とされる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成を包含し得る。抗体は、マウス、ラット、ヒトまたは任意の他の起源(キメラまたはヒト化抗体を含む)であり得る。一部の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0185】
本明細書で提供される抗体は、当該分野で公知の任意の方法によって作製され得る。ヒトおよびマウス抗体の産生のための一般的技術は、当該分野で公知であるおよび/または本明細書で記載される。
【0186】
抗原に対する親和性を有する抗体は、例えば、それによって抗原の生物学的活性の低減、改善または中和が検出および/または測定されるアッセイにおいて、当該分野で公知の方法を使用して同定または特徴付けされ得る。一部の実施形態では、抗原に対する親和性を有する抗体は、抗原を、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体および任意選択により低分子薬剤と共にインキュベートすること、ならびに結合および/または抗原の生物学的活性の付随する低減もしくは中和をモニタリングすることによって同定される。結合アッセイは、例えば、精製されたポリペプチド(複数可)を用いて、または抗原ポリペプチド(複数可)を天然に発現しているもしくは抗原ポリペプチド(複数可)を発現するようにトランスフェクトされた細胞(例えば、種々の株)を用いて実施され得る。一実施形態では、結合アッセイは、競合的結合アッセイであり、抗原に対する親和性を有する公知の抗体と競合する候補抗体の能力が評価される。アッセイは、ELISA形式を含む種々の形式で実施され得る。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、候補抗体を目的の抗原および任意選択により低分子薬剤と共にインキュベートし、結合をモニタリングすることによって同定される。
【0187】
本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、当該分野で公知の方法を使用して特徴付けられ得る。例えば、1つの方法は、抗体が結合するエピトープを同定すること、即ち、「エピトープマッピング」である。例えば、HarlowおよびLane、Using Antibodies、a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1999の第11章に記載されるような、抗体−抗原複合体の結晶構造を解明すること、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイおよび合成ペプチドベースのアッセイを含む、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングおよび特徴付けするための当該分野で公知の多くの方法が存在する。さらなる例では、エピトープマッピングは、条件的親和性を有する抗体が結合する配列を決定するために使用され得る。エピトープマッピングは、種々の供給源、例えば、Pepscan Systems(Edelhertweg 15、8219 PH Lelystad、The Netherlands)から市販される。エピトープは、線状エピトープであり得、即ち、アミノ酸の単一のストレッチ中に含まれ得、または単一のストレッチ中に必ずしも含まれなくてもよいアミノ酸の三次元相互作用によって形成されるコンフォメーションエピトープであり得る。変動する長さのペプチド(例えば、少なくとも4〜6アミノ酸長)が、単離または合成(例えば、組換えにより)され得、抗体との結合アッセイのために使用され得る。別の例では、条件的親和性を有する抗体が結合するエピトープは、抗原配列に由来する重複するペプチドを使用し、抗体による結合を決定することによって、体系的スクリーニングにおいて決定され得る。遺伝子断片発現アッセイによれば、抗原をコードするオープンリーディングフレームは、ランダムにまたは特異的遺伝子構築によって断片化され、抗原の発現された断片の、試験される抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えば、PCRによって産生され得、次いで、転写され得、放射性アミノ酸の存在下で、in vitroでタンパク質へと翻訳され得る。次いで、放射性標識された抗原断片への抗体の結合が、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定され得る。特定のエピトープは、ファージ粒子の表面上(ファージライブラリー)または酵母の表面上(酵母ディスプレイ)にディスプレイされるランダムペプチド配列の大きいライブラリーを使用することによっても同定され得る。あるいは、重複するペプチド断片の規定されたライブラリーが、単純な結合アッセイにおける試験抗体への結合について試験され得る。さらなる例では、抗原の変異誘発、ドメインスワッピング実験およびアラニンスキャニング変異誘発が、エピトープ結合のために必要とされる、十分な、および/または必要な残基を同定するために実施され得る。例えば、アラニンスキャニング変異誘発実験は、抗原ポリペプチドの種々の残基がアラニンで置換された変異体抗原を使用して実施され得る。変異体抗原タンパク質への抗体の結合を評価することによって、条件的親和性を有する抗体の結合にとっての特定の抗原残基の重要性が評価され得る。
【0188】
本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を特徴付けるために使用され得るなお別の方法は、条件的親和性を有する抗体が、抗原上の、他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、同じ抗原に結合することが既知の他の抗体との競合アッセイを使用することである。ELISA形式のものを含む競合アッセイが、当業者に周知である。
【0189】
ライブラリー
抗体の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、抗体の不均一集団が、少なくとも本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を含むライブラリーもまた、本明細書で提供される。典型的には、本明細書で提供されるライブラリーは、多数の異なる抗体をコードする多数の異なるポリヌクレオチドを含み、異なる抗原に対する特異性を有する抗体を含む、本明細書で提供される条件的親和性を有する複数の異なる抗体をさらにコードする。ライブラリーは、例えば、ファージディスプレイテクノロジーを使用して、調製および選択され得る。一部の実施形態では、ライブラリーは、本明細書の他の箇所に記載されるように、条件的親和性を有する任意の抗体を含み得る。
【0190】
一部の実施形態では、抗体をコードするポリヌクレオチドの多くまたは全てが、そのそれぞれがコードする抗体が目的の低分子薬剤に結合するのを可能にする配列を含む、本明細書で提供されるライブラリーが調製され得る。例えば、目的の低分子薬剤に結合する抗体は、本明細書で提供されるライブラリーの生成のための出発点として使用され得る。一部の実施形態では、目的の低分子薬剤に結合し、ライブラリーの生成のための出発点として使用される抗体は、目的の低分子に結合するVHHラクダ科抗体またはその部分(例えば、1つまたは複数のCDR)である。ライブラリーの生成の間、抗体中の、目的の低分子薬剤との相互作用にとって重要なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は保全され得るが、抗原認識に関与し得るが、抗体と目的の低分子薬剤との相互作用にとって重要でもなく必要ともされないアミノ酸をコードするヌクレオチド配列中には、可変性が導入され得る。任意選択により、VHおよびVL領域を含む抗体(例えば、Fab、scFvまたはIgG)がライブラリーから生成され得るように、目的の低分子に結合するVHHラクダ科抗体またはその部分は、VHH由来配列と抗体軽鎖との相互作用を促進するアミノ酸を取り込むようにさらに改変され得る。ライブラリー生成のためにこのアプローチに従うことによって、目的の特定の低分子薬剤に結合するが、多くの異なる抗原に対する親和性もまた有する多数の異なる抗体が、生成され得る。さらに、これらの型の配列を含むライブラリーは、目的の特定の抗原に対する親和性を有し、抗原に対する抗体の親和性が、目的の低分子薬剤の濃度条件(例えば、高い濃度または低い濃度)によって変更される抗体を同定するためにスクリーニングされ得る。一部の実施形態では、本明細書で提供されるライブラリーは、VH領域およびVL領域を有する任意の適切な形式、例えば、scFv、FabまたはIgGで、抗体をコードし得る。
【0191】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるライブラリーは、複数のポリヌクレオチド(即ち、少なくとも第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドなど)を含み得る。ライブラリーのポリヌクレオチドは、例えば、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域、VL領域、またはVH領域およびVL領域の両方をコードし得る。一部の実施形態では、ライブラリーの少なくとも第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは各々、少なくとも第1の部分および第2の部分を含み、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの各々の第1の部分は、同じヌクレオチド配列を含み、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの第2の部分は、異なるヌクレオチド配列を含む。例えば、一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列の第1の部分は、VH CDR1およびVH CDR2配列を含むポリペプチドをコードし、ポリヌクレオチド配列の第2の部分は、VH CDR3配列を含むポリペプチドをコードし、ライブラリーの第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、同じVH CDR1およびVH CDR2配列をコードするが、異なるVH CDR3配列をコードする。
【0192】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるライブラリーは、抗体のVH領域の不均一集団をコードするポリヌクレオチドを含み、ライブラリーのポリヌクレオチドは各々、配列番号1のCDR1およびCDR2のアミノ酸配列を含むVHをコードする。任意選択により、ライブラリーのポリヌクレオチドは各々、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1を含むVHをコードする。任意選択により、ライブラリーのポリヌクレオチドは各々、配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含むVHをコードする。任意選択により、ライブラリーのポリヌクレオチドは各々、アミノ酸配列CAAを含むFR3を含むVH領域をコードする。任意選択により、ライブラリーのポリヌクレオチドは各々、アミノ酸配列YLVY(配列番号165)を含むFR3を含むVH領域をコードする。任意選択により、ライブラリーのポリヌクレオチドは各々、配列番号43(RRSSRSWAMH)、配列番号116(RRSSRSW)または配列番号117(SWAMH)に示されるアミノ酸配列を含むCDR1および配列番号44(VISYDGRLKYYADSVKGRF)または配列番号118(SYDGRL)に示されるアミノ酸配列を含むCDR2を含むVHをコードする。任意選択により、ライブラリーのポリヌクレオチドは各々、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、ライブラリーのポリヌクレオチドは各々、配列番号166に示されるアミノ酸配列を含むVH領域をコードする。任意選択により、上記ライブラリーのいずれかのポリヌクレオチドは、互いに異なるCDR3配列を含むVH領域をコードする(例えば、ライブラリーのポリヌクレオチドは、例えば、全てが同じVH CDR1およびCDR2配列をコードし得るが、異なるVH CDR3配列をコードし得る)。
【0193】
本明細書で提供されるライブラリーは、例えば、全ての目的のために本明細書で参照によって組み込まれるZhai W.ら、J.Mol.Biol.412、55〜71(2011)に記載される方法によって調製され得る。一部の実施形態では、ライブラリーは、例えば、米国特許第5,223,409号;PCT出願公開番号WO92/18619;PCT出願公開番号WO91/17271;PCT出願公開番号WO92/20791;PCT出願公開番号WO92/15679;PCT出願公開番号WO93/01288;PCT出願公開番号WO92/01047;PCT出願公開番号WO92/09690;Fuchsら(1991)、Biotechnology、9:1369〜1372;Hayら、Hum.Antibod.Hybridomas、3:81〜85(1992);Huseら、Science、246:1275〜1281(1989);McCaffertyら、Nature、348:552〜554(1990);Griffithsら、EMBO J、12:725〜734(1993);Hawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889〜896(1992);Clacksonら、Nature、352:624〜628(1991);Gramら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:3576〜3580(1992);Garradら、Biotechnology、9:1373〜1377(1991);Hoogenboomら、Nuc Acid Res、19:4133〜4137(1991);およびBarbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:7978〜7982(1991)に記載される方法に従って調製またはスクリーニングされ得る。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖をコードするcDNAは、ファージライブラリーにおける産生のために、独立して供給される、またはFvアナログを形成するように連結される。
【0194】
一部の実施形態では、動物が、目的の抗原で免疫化され得、次いで、スクリーニングが、その動物由来の条件的親和性を有する抗体に対して実施されるように、遺伝子操作に適した非ヒト動物(例えば、マウス、ラット)が、目的の低分子薬剤に対する結合モチーフを含む抗体配列をコードする遺伝子を含むように遺伝子操作され得、条件的親和性を有する抗体は、目的の低分子薬剤に対する結合モチーフを含み、抗体は、目的の低分子薬剤の濃度に依存して、変動する親和性で目的の抗原に結合する。例えば、MTX結合モチーフを有する抗体のVH領域をコードする抗体遺伝子が、マウス中に操作され得る。次いで、操作されたマウスは、目的の抗原で免疫化され得、次いで、操作されたマウス由来の抗体は、目的の抗原に対するMTX濃度変動性の親和性を有する抗体についてスクリーニングされ得る。
【0195】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるプロセスに従って生物から(例えば、上記のようにマウスから)単離された抗体由来の配列は、合成配列と組み合わされ得る。例えば、上記のようにマウスから取得された条件的親和性を有する抗体由来の1つまたは複数のCDRをコードするDNA配列は、合成により誘導される1つまたは複数のCDRまたはFRと組み合わされ得る。
【0196】
一部の実施形態では、クローン性ライブラリーから条件的親和性を有する抗体を単離する方法であって、a)目的の抗原に特異的に結合するクローンについてライブラリーをスクリーニングするステップ、およびb)ステップa)で同定されたクローンを、目的の低分子薬剤の濃度に依存して目的の抗原に対する変動性の親和性を有するクローンについてスクリーニングするステップを含む方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、この方法で使用されるクローン性ライブラリーは、目的の低分子薬剤に特異的に結合する抗体配列をコードすることが公知の少なくとも一部のポリヌクレオチド配列を使用して調製される。
【0197】
一般に、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングの間に、目的のクローン由来の遺伝子材料が、当該分野で公知のおよび本明細書で提供される参考文献中に記載される標準的な技術によって、回収および操作され得る。複数ラウンドの富化は、抗原に対する抗体の親和性を、または抗原に対する抗体の親和性に対する低分子薬剤の影響について、増加させ得る。例えば、ファージディスプレイの一般的な原理は、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号;および同第6,265,150号;ならびにWinterら、Annu.Rev.Immunol.12:433〜455、1994に記載されている。
【0198】
一部の実施形態では、ファージディスプレイテクノロジー(McCaffertyら、Nature 348:552〜553、1990)は、免疫化されていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体および抗体断片をin vitroで産生するために使用され得る。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージ、例えば、M13またはfdの主要または非主要のいずれかのコートタンパク質遺伝子にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片としてディスプレイされる。糸状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能的特性に基づく選択は、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択もまた生じる。このように、ファージは、B細胞の特性の一部を模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式で実施され得る;概説については、例えば、Johnson,Kevin S.およびChiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3:564〜571、1993を参照のこと。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源が、ファージディスプレイのために使用され得る。Clacksonら、Nature 352:624〜628、1991は、免疫化されたマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さいランダムなコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。ヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーが構築され得、抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体が、Markら、J.Mol.Biol.222:581〜597、1991またはGriffithら、EMBO J.12:725〜734、1993によって記載される技術に本質的に従って単離され得る。天然の免疫応答では、抗体遺伝子は、高い比率で変異を蓄積する(体細胞超変異)。導入された変化の一部は、より高い親和性を付与し、高親和性表面免疫グロブリンをディスプレイするB細胞は、優先的に複製され、引き続く抗原チャレンジの間に分化される。この天然のプロセスは、「鎖シャッフリング」として公知の技術を使用することによって模倣され得る(Marksら、Bio/Technol.10:779〜783、1992)。この方法では、ファージディスプレイによって取得された「一次」ヒト抗体の親和性は、重鎖および軽鎖V領域遺伝子を、免疫化されていないドナーから取得されたVドメイン遺伝子の天然に存在するバリアントのレパートリー(レパートリー)で連続的に置き換えることによって、改善され得る。この技術は、pM〜nM範囲の親和性を有する抗体および抗体断片の産生を可能にする。非常に大きいファージ抗体レパートリー(「究極(mother-of-all)ライブラリー」としても公知)を作製するための戦略は、Waterhouseら、Nucl.Acids Res.21:2265〜2266、1993によって記載されている。遺伝子シャッフリングは、げっ歯類抗体からヒト抗体を誘導するためにも使用され得、このヒト抗体は、出発げっ歯類抗体と類似の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法によれば、ファージディスプレイ技術によって取得されたげっ歯類抗体の重鎖または軽鎖Vドメイン遺伝子は、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換えられて、げっ歯類−ヒトキメラを創出する。抗原に対する選択は、機能的抗原結合部位を再建することが可能なヒト可変領域の単離を生じる、即ち、エピトープが、パートナーの選択を支配する(インプリントする)。このプロセスが、残りのげっ歯類Vドメインを置き換えるために反復される場合、ヒト抗体が取得される(PCT出願公開番号WO93/06213を参照のこと)。CDR移植によるげっ歯類抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技術は、げっ歯類起源のフレームワーク残基もCDR残基も有さない完全ヒト抗体を提供する。
【0199】
キメラ抗原受容体およびCAR発現性免疫細胞
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、キメラ抗原受容体(「CAR」)中に組み込まれ得る。条件的親和性を有する抗体を含むCARをコードする核酸は、CARを発現する免疫細胞を生成するために、免疫細胞(例えば、T細胞)中に導入され得る。CARを発現するT細胞は、「CAR−T細胞」と呼ばれ得る。
【0200】
典型的には、CARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。細胞外ドメインは、少なくとも1つの抗原結合領域を含み[例えば、モノクローナル抗体の抗原結合断片、例えば、単鎖可変断片(「scFv」)]、例えば、スペーサー領域およびシグナルペプチド領域もまた含み得る。CARの抗原結合領域(本明細書でCARの「抗体」とも呼ばれる)は、一般にはscFvであるが、他の適切な抗体形態(例えば、単一ドメイン抗体)は排除されない。スペーサー領域は、例えば、抗原結合ドメインの動きを促進し得、抗原への抗原結合ドメインのアクセスを補助し得、シグナルペプチド領域は、細胞外ドメインの細胞外配向性を指示するシグナルペプチドを含み得る。シグナルペプチド領域、抗原結合領域およびスペーサー領域を含む細胞外ドメイン中で、一部の実施形態では、これらの領域は、N末端からC末端の方向で、以下のようにCARポリペプチド中で順序付けられる:シグナルペプチド領域−抗原結合領域−スペーサー領域。一部の実施形態では、細胞外ドメインは、scFvを含み得、ここで、scFvは、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のVH領域およびVL領域を含む。膜貫通ドメインは、例えば、CD8、CD28、4−1BB、CD3、CD4、CD8、FcγRI、NKG2D、FcεRIγ、ICOS、CTLA−4、PD−1またはVISTAの膜貫通ドメインを含み得る。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、活性化シグナル伝達ドメインを含み得、例えば、CD3(例えば、CD3ζ)、4−1BB、CD28、ICOSもしくはOX40の免疫受容体活性化チロシンモチーフ(「ITAM」)および/もしくはシグナル伝達ドメイン、またはそれらの組み合わせを含み得る。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、阻害性シグナル伝達ドメインを含み得、例えば、CTLA−4、PD−1もしくはVISTAの免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(「ITIM」)および/もしくはシグナル伝達ドメイン、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0201】
異種DNAを発現することが可能な任意の免疫細胞が、目的のCARを発現させることを目的として使用され得る。一部の実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、例えば限定なしに、幹細胞から誘導され得る。幹細胞は、成体幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、より特には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆体細胞、骨髄幹細胞、誘導多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞であり得る。代表的なヒト細胞は、CD34+細胞である。免疫細胞は、例えば、樹状細胞、キラー樹状細胞、肥満細胞、NK細胞、B細胞、または炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球もしくはヘルパーTリンパ球からなる群から選択されるT細胞であり得る。一部の実施形態では、細胞は、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球からなる群から誘導され得る。
【0202】
抗原へのCARの抗原結合領域の結合は、CARを含む免疫細胞を活性化し得る。具体的には、抗原へのCARの抗原結合領域の結合の後、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは活性化され、免疫細胞およびその免疫応答の活性化を生じる。細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現される免疫細胞の正常なエフェクター機能のうち少なくとも1つを活性化する能力を有する。例えば、T細胞のエフェクター機能は、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性であり得る。従って、活性化されたCAR T細胞は、例えば、本明細書で提供されるCARの条件的親和性を有する抗体によって認識される抗原を発現する細胞に対して細胞傷害活性を有し得る。
【0203】
従って、例えば、低い薬剤濃度条件よりも高い薬剤濃度条件下でより高い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体を含むCARを含むT細胞について、そのCAR T細胞が最初に低い薬剤濃度条件にあり、次いで、高い薬剤濃度条件に曝露される場合(例えば、そのCAR T細胞が対象中にある場合、対象中にベースラインの低い薬剤濃度条件が存在し、その対象に薬剤が投与され、対象において高い薬剤濃度条件をもたらす)、高い薬剤濃度へのCAR T細胞の曝露は、抗原へのCAR T細胞の結合を増加させ、抗原を発現する細胞に対するCAR T細胞の細胞傷害活性をもたらす。別の例では、より低い薬剤濃度条件よりも高い薬剤濃度条件下でより低い親和性で抗原に特異的に結合する条件的親和性を有する抗体を含むCARを含むT細胞について、そのCAR T細胞が高い薬剤濃度条件に曝露される場合(例えば、そのCAR T細胞が対象中にある場合、対象中にベースラインの低い薬剤濃度条件が存在し、その対象に薬剤が投与される)、高い薬剤濃度へのCAR T細胞の曝露は、抗原へのCAR T細胞の結合を減少させ、抗原を発現する細胞に対するCAR T細胞の細胞傷害活性を低減または停止させる。
【0204】
また、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を含むCARをコードする単離された核酸、ならびに関連のベクター[例えば、CARをコードする核酸を含むプラスミドおよびウイルス(例えば、レンチウイルス)]およびその核酸またはベクターを含む宿主細胞が、本明細書で提供される。例えば、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を含むCARを発現するCAR T細胞は、対象において状態を処置するために使用され得、この状態には、CAR T細胞によって標的化され得る抗原(例えば、悪性細胞上の抗原)が関与し、CAR T細胞を用いて抗原を条件的に標的化すること(即ち、特定の条件、例えば、高い薬剤濃度または低い薬剤濃度の下でのみ、CAR T細胞を抗原に結合させること)が有利であり得る。一例では、ある実施形態では、対象はがんを有し得、CAR T細胞を用いて対象中のがん細胞上の抗原を標的化することが有利であり得る。しかし、種々の因子(例えば、患者の健康、CAR T細胞の有効性など)を考慮すると、がん細胞上の抗原に対するCAR T細胞の親和性を制御することができること(例えば、抗原へのCAR T細胞の結合を増加または減少させること)も有利であり得る。従って、条件的親和性を有する抗体を含む本明細書で提供されるCAR T細胞が対象に提供され得、抗原へのCAR Tの結合は、低分子薬剤濃度などの条件を介して調節され得る。一部の実施形態では、薬剤は、患者に投与され得る薬物であり得る。障害(例えば、疾患)を有する対象を処置する方法であって、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体によって標的化される抗原の発現が関与する障害を有する対象を選択するステップ、および抗原に対する条件的親和性を有する抗体を含むCARを発現するCAR T細胞の治療有効量を対象に投与するステップを含む方法もまた、本明細書で提供される。
【0205】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を含むCARおよびCAR T細胞は一般に、例えば、Jacksonら、Nature Reviews Clinical Oncology、13、370〜383(2016);Mausら、Blood、123、2625〜2635(2014);Daiら、Journal of the National Cancer Institute、8巻、7号(2016);WangおよびRiviere、Molecular Therapy−Oncolytics、3、16015(2016);Liechtensteinら、Cancers(Basel)、5(3)、815〜837(2013)、およびそれらの中で提供される参考文献中に提供されるように調製され得る。一部の実施形態では、本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体を含むCARまたはCAR含有免疫細胞は、これらの特色のいずれかを有し得、全ての目的のために本明細書で参照によって組み込まれる、2016年3月30日出願の米国特許出願第15/085,317号に提供される、CARおよびCAR含有免疫細胞について記載された方法のいずれかによって調製され得る。
【0206】
図2は、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体(例えば、scFv)を含むCARを含むCAR T細胞が関与する本明細書で提供される方法の例示的な可能な特色を含む模式図を提供し、ここで、抗体は、メトトレキサートの低い濃度条件と比較して、メトトレキサートの高い濃度条件でより高い親和性で抗原に結合する(即ち、CARの抗体は、メトトレキサートによって活性化され得る「オンのスイッチ」を有効に有する)。
図2中、CARの抗体は、T細胞から突出する鎖の末端におけるV様形として示される;この鎖およびV様形は一緒になって、CARの細胞外ドメインを示す(鎖はスペーサー領域を示す)。CARの抗体は、がん細胞上に存在する抗原に対する条件的親和性を有する;
図2中、抗原は、がん細胞の外側の三角形として示される。抗原は、好ましくは目的のがん細胞上で大部分がまたは排他的に発現される任意の適切な抗原であり得る。
【0207】
本明細書で提供され、
図2にも示されるCAR T細胞の一部の実施形態では、CAR T細胞は、変異バージョンのジヒドロ葉酸レダクターゼ(「DHFR」)酵素(「変異体DHFR」)をさらに含むように操作され得、この変異体DHFRはMTX抵抗性である(即ち、MTXによって阻害されない、またはMTXによって弱くしか阻害されない)が、ジヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸へと還元するようになおも触媒的に活性である。MTX抵抗性であるが触媒的に活性でもある変異体DHFR酵素は、例えば、各々が全ての目的のために本明細書で参照によって組み込まれる、Schweitzerら、J.Biol.Chem.、264、20786〜20795(1989);ThompsonおよびFreisheim、Biochemistry、30、8124〜8130(1991);Blakleyら、Advan.Expt.Med.Biol.、338、473〜479(1993);Chunduruら、J.Biol.Chem.、269、9547〜9555(1994);Lewisら、J.Biol.Chem.、270、5057〜5064(1995);Ercikan−Abaliら、Mol.Pharmacol.、49、430〜437(1996);Thilletら、J.Biol.Chem.、263、12500〜12508(1988);Volpatoら、J.Mol.Biol.、373(3)、599〜611(2007);Ercikan−Abaliら、Cancer Res、56、4142〜4145(1996);Flasshoveら、Leukemia、9(補遺1)、S34〜S37(1995);Flasshoveら、Blood、85、566〜574(1995);ならびにJonnalagaddaら、Gene Therapy、20、853〜860(2013)に記載されている。
【0208】
図2に再度転じると、
図2に示されるCAR T細胞は、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体(例えば、scFv)を含むキメラ抗原受容体を含み、ここで、抗体は、メトトレキサートの低い濃度条件と比較して、メトトレキサートの高い濃度条件でより高い親和性で抗原に結合し、CAR T細胞は、MTX抵抗性である変異体DHFR酵素を発現するようにも操作されている。本明細書で提供される方法の一部の実施形態では、これらの特徴を有するCAR T細胞が、それを必要とする対象(例えば、がんを有する対象)に投与され得る。
図2のウインドウ「A」は、がんを有する対象へのCAR T細胞の投与後の、上記特徴を有するCAR T細胞とがん細胞との間の相互作用の模式図を示し、このとき、メトトレキサートは、対象中で低い濃度条件にある(即ち、対象中にメトトレキサートがほとんどまたは全く存在しない)。
図2のウインドウ「B」および「C」は、メトトレキサートが低い濃度である場合(ウインドウ「B」)およびメトトレキサートが高い濃度である場合(ウインドウ「C」)の、ウインドウAと同じCAR T細胞およびがん細胞を示す。
図2のウインドウ「A」とウインドウ「B」との間の矢印によって示されるように、対象への上記特徴を有するCAR T細胞の投与の際に、CAR T細胞は、対象内の複数の部位に浸潤し得る。しかし、
図2のウインドウ「A」および「B」に示されるように、MTXが対象中で低い濃度条件にある限り、CAR T細胞の条件的親和性を有する抗体は、がん細胞上の抗原に対する低い親和性を有し、従って、CAR T細胞は、がん細胞への低い結合を有するもしくは結合を有さない(またはがん細胞に対する低い細胞傷害性を有するもしくは細胞傷害性を有さない)。対照的に、
図2のウインドウ「C」に示されるように、MTXが高い濃度条件に達するようにMTXが対象に投与される場合、CAR T細胞の条件的親和性を有する抗体は、がん細胞上の抗原に対する高い親和性を有し、CAR T細胞は、がん細胞に結合し、がん細胞に対する細胞傷害効果を有する。
【0209】
図2の上記シナリオでは、対象におけるMTX濃度の増加は、対象において種々の他の影響を有し得る。例えば、MTX濃度を増加させることは、以下のうち任意の1つまたは複数を生じ得る:i)正常リンパ球に対するMTXの細胞傷害性に起因した、正常T細胞または他のリンパ球の数における減少;ii)がん細胞に対するMTXの細胞傷害性に起因した、がん細胞の減少;iii)MTXの存在下でMTX抵抗性細胞が増殖する能力に起因した、MTX抵抗性細胞(例えば、MTX抵抗性DHFRで操作されたCAR T細胞)の数における増加。従って、上記シナリオでは、例えば、がん細胞は、対象におけるMTXの濃度における増加の際に、以下の少なくとも2つの別々の機構によって死滅され得る:i)CAR T細胞ががん細胞に対してより高い細胞傷害効果を発揮するような、がん細胞に対するCAR T細胞の親和性における増加、およびii)がん細胞に対するMTXの直接的毒性。従って、MTXと併せた、
図2に記載されるようなCAR T細胞の使用は、MTX単独またはCAR T細胞単独を超えて改善された治療効果を有し得る。
【0210】
図3は、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体(例えば、scFv)を含むキメラ抗原受容体を含むCAR T細胞が関与する本明細書で提供される別の方法の例示的な可能な特色を含む模式図を提供し、ここで、抗体は、メトトレキサートの高い濃度条件と比較して、メトトレキサートの低い濃度条件でより高い親和性で抗原に結合する(即ち、CARの抗体は、メトトレキサートによってオフにされ得る「オフのスイッチ」を有効に有する)。
図3中、CARエレメントは、
図2に上記したように一般に示され(抗体が、メトトレキサートの高い濃度条件と比較して、メトトレキサートの低い濃度条件でより高い親和性で抗原に結合することを除く)、CAR T細胞は、
図2に上記したようにMTX抵抗性DHFR酵素を含む。
【0211】
従って、
図3に示されるCAR T細胞は、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体(例えば、scFv)を含むキメラ抗原受容体を含み、ここで、抗体は、メトトレキサートの高い濃度条件と比較して、メトトレキサートの低い濃度条件でより高い親和性で抗原に結合し、CAR T細胞は、MTX抵抗性である変異体DHFR酵素を発現するようにも操作されている。本明細書で提供される方法の一部の実施形態では、これらの特徴を有するCAR T細胞は、それを必要とする対象(例えば、がんを有する)に投与され得る。
図3のウインドウ「A」は、がんを有する対象へのCAR T細胞の投与後の、上記特徴を有するCAR T細胞とがん細胞との間の相互作用の模式図を示し、このとき、メトトレキサートは、対象中で低い濃度条件にある(即ち、対象中にメトトレキサートがほとんどまたは全く存在しない)。
図3のウインドウ「B」および「C」は、メトトレキサートが高い濃度である場合(ウインドウ「B」)およびメトトレキサートが低い濃度である場合(ウインドウ「C」)の、ウインドウAと同じCAR T細胞およびがん細胞を示す(メトトレキサートは、ウインドウ「A」でも低い濃度条件にある)。
図3のウインドウ「A」に示されるように、上記特徴を有するCAR T細胞が対象に最初に投与される場合(およびメトトレキサートが対象中で低い濃度条件にある場合)、CAR T細胞の条件的親和性を有する抗体は、がん細胞上の抗原に対する高い親和性を有し、従って、CAR T細胞はがん細胞に結合し、がん細胞に対する細胞傷害効果を有する(典型的には、がん細胞上の抗原へのCAR T細胞の結合は、CAR T細胞からのサイトカインの放出を促進する)。がん細胞に対するCAR T細胞の細胞傷害効果は、がん細胞を死滅させることに関して対象にとって有益な効果を生じ得るが、CAR T細胞からおよび/または他の下流の活性化された免疫細胞から放出されるサイトカインは、対象において「サイトカイン放出症候群」(放出されたサイトカインによって引き起こされる全身性炎症応答)を誘発し得、その重篤な症例は、対象にとって重症のまたは致命的な結果(「サイトカインストーム」と呼ばれる場合がある)を有し得る。従って、例えば、CAR T細胞からのサイトカインの放出を低減または停止させるために、CAR T細胞とがん細胞との相互作用を迅速に低減させる方法を有することが有益であり得る。
図3のウインドウ「A」とウインドウ「B」との間の矢印によって示されるように、対象への上記特徴を有するCAR T細胞の投与の際に、CAR T細胞は、がん細胞に結合し得、この相互作用は、対象においてサイトカイン放出症候群を生じ得る。サイトカイン放出症候群の影響を軽快させるために、
図3のウインドウ「B」に示されるように、サイトカイン放出症候群またはCAR T細胞に関する他の望ましくない影響が検出される場合、高い濃度条件が達成されるように対象にMTXが投与され得、その結果、CAR T細胞の条件的親和性を有する抗体は、がん細胞上の抗原に対する低い親和性を有し、従って、CAR T細胞は、がん細胞への低い結合を有するもしくは結合を有さない(またはがん細胞に対する低い細胞傷害性を有するもしくは細胞傷害性を有さない)。CAR T細胞のがん細胞への結合の減少の結果として、対象中のサイトカインのレベルは低下し得、対象におけるサイトカイン放出症候群は軽快され得る。
図3のウインドウ「C」に示されるように、対象中のMTXの濃度が低い濃度条件まで低下される場合、CAR T細胞は、がん細胞に再度結合し得、潜在的に、対象におけるサイトカインのレベルの増加、および対象におけるサイトカイン放出症候群を再度もたらす。しかし、対象は、サイトカイン放出症候群の症状、またはCAR T細胞活性から生じる他の影響についてモニタリングされ得、対象において、一部のCAR T細胞はがん細胞に結合するが(従って、対象において有益な効果が達成される)、一部のCAR T細胞はがん細胞に結合しない(従って、対象におけるT細胞の過剰活性の副作用/サイトカイン放出症候群が回避される)バランスが達成されるような十分な濃度のMTXが対象に投与され得る。
【0212】
図3の上記シナリオでは、対象におけるMTX濃度の増加は、対象において種々の他の影響を有し得る。例えば、MTX濃度を増加させることは、以下のうち任意の1つまたは複数を生じ得る:i)正常リンパ球に対するMTXの細胞傷害性に起因した、正常T細胞または他のリンパ球の数における減少;ii)がん細胞に対するMTXの細胞傷害性に起因した、がん細胞の減少;iii)MTXの存在下でMTX抵抗性細胞が増殖する能力に起因した、MTX抵抗性細胞(例えば、MTX抵抗性DHFRで操作されたCAR T細胞)の数における増加。
図3に関連する一部の実施形態(例えば、MTX抵抗性DHFRを含まないCAR T細胞を使用する場合)では、MTX濃度における増加は、CAR T細胞を死滅させることによって、CAR T細胞によって媒介されるサイトカイン放出症候群の影響をさらに減少させ得る。
【0213】
対象へのMTXの投与が関与する本明細書で提供される組成物および方法では、存在する場合、対象におけるMTX関連毒性が低減され得るように、任意選択により、対象に、対象におけるMTXの毒性を低減させる分子(例えば、ロイコボリン/フォリン酸)もまた投与され得る。あるいはまたはさらに、MTXが関与する本明細書で提供される組成物および方法について、一部の実施形態では、MTX誘導体が使用され得、このMTX誘導体は、抗原に対する本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の親和性に影響する能力をなおも有するが、このMTX誘導体は、MTXと比較して対象において低減された毒性を有する。
【0214】
図3に関連する代替的な実施形態では、一部の実施形態では、
図3に上記したように一般に記載されるCAR T細胞[即ち、これは、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体(例えば、scFv)を含むキメラ抗原受容体を含み、ここで、抗体は、メトトレキサートの高い濃度条件と比較して、メトトレキサートの低い濃度条件でより高い親和性で抗原に結合する]は、対象中にメトトレキサートの高い濃度条件が存在する場合に、対象に投与され得る。例えば、メトトレキサートは、CAR T細胞が対象に投与される時点で対象中に既に存在し得、または対象へのCAR T細胞の投与と同時に、もしくはその直後に投与され得る。従って、この実施形態では、高い濃度のメトトレキサートが、対象へのCAR T細胞の投与の時点またはその付近で対象中に存在している場合、CAR T細胞は、対象へのCAR T細胞の初回投与の時点またはその付近では、がん細胞上の抗原に対する低い親和性を有する。次いで、対象は、例えば、CAR T細胞からの任意の有害効果についてモニタリングされ得る。CAR T細胞は抗原に対する低い親和性を有するので、これらの効果は一般に、これらの条件下で対象中に高い濃度のメトトレキサートが存在する場合、小さいはずである。次いで、CAR T細胞の初期の効果が対象にとって許容できるものである場合、対象中のメトトレキサートの濃度は、がん細胞上の抗原に対するCAR T細胞の親和性を増加させるために、(少なくともある程度まで)減少され得る。このアプローチを使用すると、CAR T細胞は、がん細胞上の抗原に対する親和性を徐々に増加させることができ得、その結果、対象におけるCAR T細胞の効果は、必要に応じて注意深く調節され得、抗原に結合しているCAR T細胞からの望ましくない影響が、回避または低減され得る。
【0215】
図2および
図3は、MTX抵抗性DHFR酵素を発現するように操作された例示的なCAR T細胞を示すが、CAR T細胞がMTX抵抗性DHFR酵素を発現しない類似のCAR T細胞実施形態もまた、本明細書で提供される。さらに、一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体が本明細書で提供され、ここで、抗原に対する抗体の親和性は、MTXと比較してT細胞に対する低減された毒性を有する、またはT細胞に対する毒性を有さないMTX誘導体によって影響される。任意選択により、かかるMTX誘導体はまた、がん細胞に対する毒性をほとんどまたは全く有さない。従って、かかるMTX誘導体は、対象のT細胞または他の細胞に対しても毒性であることなしに(または低減された毒性を有して)、抗原に対する本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の親和性に影響し得る。
【0216】
抗体の産生および改変
一部の実施形態では、目的の条件的親和性を有する抗体は、配列決定され得、次いで、ポリヌクレオチド配列が、発現または繁殖のためにベクター中にクローニングされ得る。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞でベクター中で維持され得、次いで、宿主細胞は、さらなる使用のために拡大増殖および凍結され得る。
【0217】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、抗体を「ヒト化する」ため、または抗体の親和性もしくは他の特徴を改善するための遺伝子操作に使用され得る。抗体は、例えば、イヌ、ネコ、霊長類、ウマおよびウシでの使用のためにカスタマイズすることもできる。
【0218】
モノクローナル抗体または抗体クローンをコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、単離および配列決定され得る。単離されると、DNAは、発現ベクター(例えば、PCT出願公開番号WO87/04462に開示された発現ベクター)中に配置され得、これは次いで、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得るために、免疫グロブリンタンパク質をさもなければ産生しない宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞中にトランスフェクトされる。例えば、PCT出願公開番号WO87/04462を参照のこと。DNAはまた、例えば、相同マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を用いること、Morrisonら、Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851、1984によって、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てまたは一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合的に接続することによって、改変され得る。その様式で、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。
【0219】
一部の実施形態では、完全ヒト抗体は、特異的ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用することによって取得され得る。より望ましい(例えば、完全ヒト抗体)またはよりロバストな免疫応答を生じるように設計されたトランスジェニック動物もまた、ヒト化抗体またはヒト抗体の生成のために使用され得る。かかるテクノロジーの例は、Abgenix,Inc.(Fremont、CA)のXenomouse(商標)ならびにMedarex,Inc.(Princeton、NJ)のHuMAb−Mouse(登録商標)およびTC Mouse(商標)である。抗体は、宿主動物から抗体または抗体産生細胞を最初に単離し、遺伝子配列を取得し、宿主細胞(例えば、CHO細胞)において抗体を組換え発現させるための遺伝子配列を使用することによって、組換え作製され得る。使用され得る別の方法は、植物(例えば、タバコ)またはトランスジェニック乳汁において抗体配列を発現させることである。植物または乳汁において抗体を組換え発現させるための方法は、開示されている。例えば、Peetersら、Vaccine 19:2756、2001;Lonberg,N.およびD.Huszar Int.Rev.Immunol 13:65、1995;ならびにPollock、ら、J Immunol Methods 231:147、1999を参照のこと。
【0220】
抗体断片は、抗体のタンパク質分解性もしくは他の分解によって、上記組換え法によって(即ち、単一のまたは融合ポリペプチド)、または化学的合成によって産生され得る。抗体のポリペプチド、特に、約50アミノ酸までのより短いポリペプチドは、化学的合成によって簡便に作製される。化学的合成の方法は、当該分野で公知であり、市販されている。例えば、抗体は、固相法を使用する自動ポリペプチド合成機によって産生され得る。米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第6,331,415号もまた参照のこと。
【0221】
条件的親和性を有する抗体の親和性成熟された実施形態もまた、本明細書で提供される。例えば、親和性成熟された条件的親和性を有する抗体は、当該分野で公知の手順によって、条件的親和性を有する抗体の初期バージョンから産生され得る(Marksら、1992、Bio/Technology、10:779〜783;Barbasら、1994、Proc Nat.Acad.Sci、USA 91:3809〜3813;Schierら、1995、Gene、169:147〜155;Yeltonら、1995、J.Immunol.、155:1994〜2004;Jacksonら、1995、J.Immunol.、154(7):3310〜9;Hawkinsら、1992、J.Mol.Biol.、226:889〜896;およびPCT出願公開番号WO2004/058184)。
【0222】
一部の実施形態では、以下の方法が、抗体の親和性を調整するためおよびCDRを特徴付けるために使用され得る。抗体のCDRを特徴付けるおよび/または抗体などのポリペプチドの結合親和性を変更する(例えば、改善する)1つの方法は、「ライブラリースキャニング変異誘発」と呼ばれる。一般に、ライブラリースキャニング変異誘発は、以下のように機能する。CDR中の1つまたは複数のアミノ酸位置が、当該分野で認識された方法を使用して、2種以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20種)のアミノ酸で置き換えられる。これにより、各々2以上のメンバーの複雑さを有する(全ての位置において2種以上のアミノ酸が置換される場合)、クローンの小さいライブラリーが生成される(一部の実施形態では、分析される全てのアミノ酸位置について1つ)。一般に、ライブラリーは、ネイティブ(未置換)のアミノ酸を含むクローンもまた含む。各ライブラリーからの少数のクローン、例えば、約20〜80個のクローン(ライブラリーの複雑さに依存する)は、標的ポリペプチド(または他の結合標的)に対する結合親和性についてスクリーニングされ、増加した、同じ、減少した結合を有する、または結合を有さない候補が同定される。結合親和性を決定するための方法は、当該分野で周知である。結合親和性は、例えば、結合親和性における約2倍以上の差異を検出するBiacore(商標)表面プラズモン共鳴分析、Kinexa(登録商標)バイオセンサー、シンチレーション近接アッセイ、ELISA、ORIGEN(登録商標)イムノアッセイ、蛍光クエンチング、蛍光移動、および/または酵母ディスプレイを使用して決定され得る。結合親和性は、適切なバイオアッセイを使用してスクリーニングしてもよい。
【0223】
一部の実施形態では、CDR中の全てのアミノ酸位置が、当該分野で認識された変異誘発法(その一部は本明細書で記載される)を使用して、20種全ての天然アミノ酸で置き換えられる(一部の実施形態では、一度に1つ)。これにより、各々20メンバーの複雑さを有する(全ての位置において20種全てのアミノ酸が置換される場合)、クローンの小さいライブラリーが生成される(一部の実施形態では、分析される全てのアミノ酸位置について1つ)。
【0224】
一部の実施形態では、スクリーニングされるライブラリーは、同じCDR中にあり得るまたは2つ以上のCDR中にあり得る、2つ以上の位置に置換を含む。従って、ライブラリーは、1つのCDR中の2つ以上の位置に置換を含み得る。ライブラリーは、2つ以上のCDR中の2つ以上の位置に置換を含み得る。ライブラリーは、3、4、5またはそれ以上の位置に置換を含み得、前記位置は、2、3、4、5または6個のCDR中に見出され得る。置換は、低い冗長性のコドンを使用して調製され得る。例えば、Balintら、1993、Gene 137(1):109〜18の表2を参照のこと。
【0225】
CDRは、重鎖可変領域(VH)CDR3および/または軽鎖可変領域(VL)CDR3であり得る。CDRは、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2および/またはVL CDR3のうち1つまたは複数であり得る。CDRは、Kabat CDR、Chothia CDR、拡張型CDR、AbM CDR、接触CDRまたはコンフォメーションCDRであり得る。
【0226】
改善された結合を有する候補は、配列決定され得、それによって、改善された親和性を生じるCDR置換変異体(「改善された」置換とも呼ばれる)を同定する。結合する候補もまた、配列決定され得、それによって、結合を保持するCDR置換を同定する。
【0227】
複数ラウンドのスクリーニングが実施され得る。例えば、改善された結合を有する候補(各々が、1つまたは複数のCDRの1つまたは複数の位置においてアミノ酸置換を含む)は、各改善されたCDR位置(即ち、置換変異体が改善された結合を示したCDR中のアミノ酸位置)において少なくとも元のおよび置換されたアミノ酸を含む第2のライブラリーの設計のためにも有用である。このライブラリーの調製、およびスクリーニングまたは選択は、以下でさらに議論される。
【0228】
改善された結合、同じ結合、減少した結合を有する、または結合を有さないクローンの頻度が、抗体−抗原複合体の安定性のための各アミノ酸位置の重要性に関する情報も提供する限り、ライブラリースキャニング変異誘発は、CDRを特徴付けるための手段もまた提供する。例えば、CDRの位置が、20種全てのアミノ酸に変化された場合に結合を保持する場合、その位置は、抗原結合に必要とされる可能性が低い位置として同定される。逆に、CDRの位置が、置換の小さい百分率においてのみ結合を保持する場合、その位置は、CDR機能にとって重要な位置として同定される。従って、ライブラリースキャニング変異誘発法は、多くの異なるアミノ酸(20種全てのアミノ酸を含む)に変化させることができるCDR中の位置、および変化させることができないまたは数個のアミノ酸にのみ変化させることができるCDR中の位置に関する情報を生成する。
【0229】
改善された親和性を有する候補は、その位置において改善されたアミノ酸、元のアミノ酸を含み、所望される、または所望のスクリーニングもしくは選択方法を使用して許容されるライブラリーの複雑さに依存して、その位置においてさらなる置換をさらに含み得る、第2のライブラリー中で組み合わされ得る。さらに、所望の場合、隣接アミノ酸位置が、少なくとも2種以上のアミノ酸へとランダム化され得る。隣接アミノ酸のランダム化は、変異体CDRにおけるさらなるコンフォメーション的柔軟性を許容し得、これは次に、多数の改善性変異の導入を許容し得るまたは促進し得る。このライブラリーは、スクリーニングの第1ラウンドにおいて改善された親和性を示さなかった位置においても置換を含み得る。
【0230】
第2のライブラリーは、Kinexa(商標)バイオセンサー分析を使用するスクリーニング、ならびにファージディスプレイ、酵母ディスプレイおよびリボソームディスプレイを含む、選択のための当該分野で公知の任意の方法を使用する選択を含む、当該分野で公知の任意の方法を使用して、改善されたおよび/または変更された結合親和性を有するライブラリーメンバーについてスクリーニングまたは選択される。
【0231】
上記技術は、低分子薬剤に対する本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の親和性および/または特定の低分子薬剤に対する条件的親和性を有する抗体の特異性を調整するため(例えば、単一の特定の低分子薬剤にのみ結合し、密接に関連した低分子薬剤との交差反応性をほとんどまたは全く有さない抗体について選択するため)にも使用され得る。一部の実施形態では、上記技術は、抗原に対する抗体の親和性を調整し、同時に低分子薬剤に対する抗体の特異性および/または親和性を調整するために使用され得る。
【0232】
本明細書で提供される実施形態は、実施例に提供される条件的親和性を有する抗体の可変領域およびCDRに対する改変を包含する。例えば、本明細書で提供される実施形態は、それらの特性に顕著に影響しない機能的に等価な可変領域およびCDRを含む抗体、ならびに増強または減少された活性および/または親和性を有するバリアントを含む。改変されたポリペプチドの例には、アミノ酸残基の保存的置換、機能的活性を顕著に有害に変化させないもしくはそのリガンドに対するポリペプチドの親和性を成熟(増強)させる、アミノ酸の1つもしくは複数の欠失もしくは付加、または化学的アナログの使用を有するポリペプチドが含まれる。
【0233】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100またはそれ以上の残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体またはエピトープタグに融合された抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入バリアントには、血液循環における抗体の半減期を増加させる酵素またはポリペプチドの、抗体のN末端またはC末端への融合物が含まれる。
【0234】
置換バリアントは、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されており、その位置に異なる残基が挿入されている。置換変異誘発のために最も目的とされる部位には、超可変領域が含まれるが、フレームワーク変更もまた企図される。保存的置換は、「保存的置換」の見出しの下で表1に示される。かかる置換が生物学的活性における変化を生じる場合、表1で「例示的な置換」と称される、またはアミノ酸クラスに関して以下にさらに記載される、より実質的な変化が導入され得、産物がスクリーニングされ得る。
【0236】
抗体の生物学的特性における実質的な改変は、(a)置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、β−シートもしくはらせん形コンフォメーション、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩を維持することに対するそれらの影響が顕著に異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて以下の群へと分割される:
(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)荷電なしで極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性(負に荷電した):Asp、Glu;
(4)塩基性(正に荷電した):Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;ならびに
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0237】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを、別のクラスに交換することによって行われる。
【0238】
例えば、行われ得る置換の1つの型は、抗体中の化学的に反応性であり得る1つまたは複数のシステインを、別の残基、例えば、限定なしにアラニンまたはセリンに変化させることである。例えば、非カノニカルシステインの置換が存在し得る。置換は、抗体の可変ドメインのCDRもしくはフレームワーク領域中、または定常領域中で行われ得る。一部の実施形態では、システインはカノニカルである。抗体の適切なコンフォメーションを維持することに関与しない任意のシステイン残基はまた、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防止するために、一般にはセリンで置換され得る。逆に、特に、抗体がFv断片などの抗体断片である場合、システイン結合(複数可)が、その安定性を改善するために抗体に付加され得る。
【0239】
抗体は、例えば、抗体の結合特性を変更するために、例えば、重鎖および/または軽鎖の可変ドメインにおいても改変され得る。可変領域における変化は、結合親和性および/または特異性を変更し得る。一部の実施形態では、1〜5個以下の保存的アミノ酸置換が、CDRドメイン内で行われる。他の実施形態では、1〜3個以下の保存的アミノ酸置換が、CDRドメイン内で行われる。例えば、変異は、抗原に対する抗体のK
Dを増加もしくは減少させるため、k
offを増加もしくは減少させるため、または抗体の結合特異性を変更させるために、1つまたは複数のCDR領域中で行われ得る。部位特異的変異誘発の技術は、当該分野で周知である。例えば、SambrookらおよびAusubelら、上記を参照のこと。
【0240】
改変または変異はまた、条件的親和性を有する抗体の半減期を増加させるために、フレームワーク領域または定常領域中で行われ得る。例えば、PCT出願公開番号WO00/09560を参照のこと。フレームワーク領域または定常領域中の変異はまた、抗体の免疫原性を変更させるため、別の分子への共有結合もしくは非共有結合のための部位を提供するため、または補体結合、FcR結合および抗体依存性細胞媒介性細胞傷害などの特性を変更させるために行われ得る。一部の実施形態では、1〜5個以下の保存的アミノ酸置換が、フレームワーク領域または定常領域内で行われる。他の実施形態では、1〜3個以下の保存的アミノ酸置換が、フレームワーク領域または定常領域内で行われる。本発明によれば、単一の抗体は、可変ドメインの任意の1つもしくは複数のCDRもしくはフレームワーク領域中、または定常領域中に変異を有し得る。
【0241】
改変には、グリコシル化されたおよびグリコシル化されていないポリペプチド、ならびに他の翻訳後修飾、例えば、異なる糖によるグリコシル化、アセチル化およびリン酸化などを有するポリペプチドも含まれる。抗体は、その定常領域中の保存された位置においてグリコシル化される(JefferisおよびLund、1997、Chem.Immunol.65:111〜128;WrightおよびMorrison、1997、TibTECH 15:26〜32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boydら、1996、Mol.Immunol.32:1311〜1318;WittweおよびHoward、1990、Biochem.29:4175〜4180)ならびに糖タンパク質のコンフォメーションおよび提示される三次元表面に影響し得る糖タンパク質の部分間の分子内相互作用(JefferisおよびLund、上記;WyssおよびWagner、1996、Current Opin.Biotech.7:409〜416)に影響する。オリゴ糖は、特異的認識構造に基づいて、特定の分子に所与の糖タンパク質を標的化するようにも機能し得る。抗体のグリコシル化は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に影響することも報告されている。特に、二分岐性のGlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリン調節される発現を有するCHO細胞によって産生される抗体は、改善されたADCC活性を有することが報告された(Umanaら、1999、Nature Biotech.17:176〜180)。
【0242】
改変の他の方法は、酵素的手段、酸化的置換およびキレート化が含まれるがこれらに限定されない当該分野で公知のカップリング技術を使用することを含む。改変は、例えば、イムノアッセイのための標識の結合のために使用され得る。改変されたポリペプチドは、当該分野の確立された手順を使用して作製され、当該分野で公知の標準的なアッセイを使用してスクリーニングされ得、その一部は以下および実施例に記載される。
【0243】
一部の実施形態では、Fcは、ヒトIgG
1、IgG
2、IgG
3またはヒトIgG
4であり得る。一部の実施形態では、抗体は、以下の変異を含むIgG
4の定常領域を含む(Armourら、2003、Molecular Immunology 40 585〜593):E233F234L235からP233V234A235への変異(IgG
4Δc)であって、この番号付けは、野生型IgG
4に準拠している。なお別の実施形態では、Fcは、欠失G236を有するヒトIgG
4 E233F234L235からP233V234A235(IgG
4Δb)である。一部の実施形態では、Fcは、S228からP228へのヒンジ安定化変異を含む任意のヒトIgG
4 Fc(IgG
4、IgG
4ΔbまたはIgG
4Δc)である(Aalberseら、2002、Immunology 105、9〜19)。他の実施形態では、Fcは、A330P331からS330S331への変異を含むヒトIgG
2であり得(IgG
2Δa)、ここで、アミノ酸残基は、野生型IgG
2配列に準拠して番号付けされる。Eur.J.Immunol.、1999、29:2613〜2624。
【0244】
一部の実施形態では、抗体は、ヒトFcガンマ受容体に対する増加もしくは減少した結合親和性を有し、免疫学的に不活性もしくは部分的に不活性である、例えば、補体媒介性溶解を誘発しない、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を刺激しない、またはミクログリアを活性化しない、改変された定常領域を含む;あるいは以下:補体媒介性溶解を誘発すること、ADCCを刺激すること、またはミクログリアを活性化すること、のうち任意の1つまたは複数において(未改変の抗体と比較して)低減された活性を有する。定常領域の異なる改変は、エフェクター機能の最適なレベルおよび/または組み合わせを達成するために使用され得る。例えば、Morganら、Immunology 86:319〜324、1995;Lundら、J.Immunology 157:4963〜9 157:4963〜4969、1996;Idusogieら、J.Immunology 164:4178〜4184、2000;Taoら、J.Immunology 143:2595〜2601、1989;およびJefferisら、Immunological Reviews 163:59〜76、1998を参照のこと。一部の実施形態では、定常領域は、Eur.J.Immunol.、1999、29:2613〜2624;PCT出願公開番号WO99/058572に記載されるように改変される。
【0245】
一部の実施形態では、抗体定常領域は、Fcガンマ受容体ならびに補体および免疫系との相互作用を回避するように改変され得る。かかる抗体の調製のための技術は、WO99/58572に記載されている。例えば、定常領域は、抗体がヒトにおける臨床試験および処置において使用される場合の免疫応答を回避するために、ヒト定常領域とより似るように操作され得る。例えば、米国特許第5,997,867号および同第5,866,692号を参照のこと。
【0246】
他の抗体改変には、PCT出願公開番号WO99/58572に記載されるように改変された抗体が含まれる。これらの抗体は、標的分子に対する結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域の全てまたは一部に対して実質的に相同なアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、標的の顕著な補体依存的溶解も細胞媒介性破壊も誘発することなしに、標的分子に結合することが可能である。一部の実施形態では、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbに特異的に結合することが可能である。これらは、典型的には、2つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインに由来するキメラドメインに基づく。この様式で改変された抗体は、従来の抗体治療に対する炎症反応および他の有害反応を回避するために、慢性抗体治療における使用に特に適切である。
【0247】
一部の実施形態では、抗体は、未改変の抗体と比較して、FcRnに対する増加した結合親和性および/または増加した血清半減期を有する、改変された定常領域を含む。
【0248】
「生殖系列化(germlining)」として公知のプロセスでは、VHおよびVL配列中の特定のアミノ酸は、生殖系列VHおよびVL配列中に天然に見出されるものと一致するように変異され得る。特に、VHおよびVL配列中のフレームワーク領域のアミノ酸配列は、抗体が投与される場合の免疫原性のリスクを低減させるために、生殖系列配列と一致するように変異され得る。ヒトVHおよびVL遺伝子についての生殖系列DNA配列は、当該分野で公知である(例えば、「Vbase」ヒト生殖系列配列データベースを参照のこと;Kabat,E.A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242;Tomlinsonら、1992、J.Mol.Biol.227:776〜798;およびCoxら、1994、Eur.J.Immunol.24:827〜836もまた参照のこと)。
【0249】
行われ得る別の型のアミノ酸置換は、抗体中の潜在的タンパク質分解性部位を除去することである。かかる部位は、抗体の可変ドメインのCDRもしくはフレームワーク領域中、または定常領域中に存在し得る。システイン残基の置換およびタンパク質分解性部位の除去は、抗体産物における不均一性のリスクを減少させ得、従って、その均一性を増加させ得る。別の型のアミノ酸置換は、残基の一方または両方を変更させることによって、潜在的脱アミド部位を形成するアスパラギン−グリシン対を排除することである。別の例では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体の重鎖のC末端リジンは、切断され得る。種々の実施形態では、条件的親和性を有する抗体の重鎖および軽鎖は、シグナル配列を含んでいてもよい。
【0250】
本発明のVHおよびVLセグメントをコードするDNA断片が取得されると、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を、全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作され得る。これらの操作では、VLコードまたはVHコードDNA断片は、別のタンパク質、例えば、抗体定常領域または屈曲性リンカーをコードする別のDNA断片に作動可能に連結される。用語「作動可能に連結される」は、この文脈で使用する場合、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、2つのDNA断片が接続されることを意味する意図である。
【0251】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHコードDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242を参照のこと)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって取得され得る。重鎖定常領域は、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG
1またはIgG
2定常領域である。IgG定常領域配列は、異なる個体間に存在することが公知の種々の対立遺伝子またはアロタイプ、例えば、Gm(1)、Gm(2)、Gm(3)およびGm(17)のいずれかであり得る。これらのアロタイプは、IgG1定常領域中の天然に存在するアミノ酸置換を示す。Fab断片重鎖遺伝子について、VHコードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結され得る。CH1重鎖定常領域は、重鎖遺伝子のいずれかに由来し得る。
【0252】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLコードDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242を参照のこと)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって取得され得る。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得る。カッパ定常領域は、異なる個体間に存在することが公知の種々の対立遺伝子、例えば、Inv(1)、Inv(2)およびInv(3)のいずれかであり得る。ラムダ定常領域は、3つのラムダ遺伝子のいずれかに由来し得る。
【0253】
scFv遺伝子を創出するために、VHおよびVL配列が連続する単鎖タンパク質として発現され得、VLおよびVH領域が屈曲性リンカーによって接続されるように、VHコードおよびVLコードDNA断片は、屈曲性リンカーをコードする別の断片に作動可能に連結される(例えば、Birdら、1988、Science 242:423〜426;Hustonら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜5883;McCaffertyら、1990、Nature 348:552〜554を参照のこと)。連結ペプチドの例は、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号2)であり、これは、一方の可変領域のカルボキシ末端と他方の可変領域のアミノ末端との間のおよそ3.5nmを橋渡しする。他の配列のリンカーが設計および使用されている(Birdら、1988、上記)。リンカーは次に、薬物の結合または固体支持体への結合などのさらなる機能のために改変され得る。単鎖抗体は、単一のVHおよびVLのみがは使用される場合には一価であり得、2つのVHおよびVLが使用される場合には二価であり得、または2つよりも多いVHおよびVLが使用される場合には多価であり得る。目的の異なる抗原に特異的に結合する二重特異性抗体または多価抗体が生成され得る。単鎖バリアントは、組換えまたは合成のいずれかによって産生され得る。scFvの合成的産生のために、自動合成機が使用され得る。scFvの組換え産生のために、scFvをコードするポリヌクレオチドを含む適切なプラスミドが、真核生物、例えば、酵母、植物、昆虫もしくは哺乳動物細胞、または原核生物、例えば大腸菌(E.coli)のいずれかの、適切な宿主細胞中に導入され得る。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのライゲーションなどの慣用的な操作によって作製され得る。得られたscFvは、当該分野で公知の標準的なタンパク質精製技術を使用して単離され得る。
【0254】
他の形態の単鎖抗体、例えば、ディアボディもまた包含される。ディアボディは、二価の二重特異性抗体であり、ここで、VHおよびVLは、単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによって、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を創出する(例えば、Holliger,P.ら、1993、Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444〜6448;Poljak,R.J.ら、1994、Structure 2:1121〜1123を参照のこと)。
【0255】
共有結合により接続された2つの抗体を含むヘテロコンジュゲート抗体もまた、本発明の範囲内である。かかる抗体は、望まれない細胞を免疫系細胞の標的とするため(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の処置のために(PCT出願公開番号WO91/00360およびWO92/200373;EP03089)使用されてきた。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を使用して作製され得る。適切な架橋剤および技術は、当該分野で周知であり、米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0256】
キメラまたはハイブリッド抗体もまた、架橋剤が関与するものを含む合成タンパク質化学の公知の方法を使用して、in vitroで調製され得る。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することによって構築され得る。この目的のための適切な試薬の例には、イミノチオレート(iminothiolate)およびメチル−4−メルカプトブチルイミデート(methyl-4-mercaptobutyrimidate)が含まれる。
【0257】
本明細書で提供される実施形態は、本明細書で開示される抗体由来の1つまたは複数の断片または領域を含む融合タンパク質もまた含む。一部の実施形態では、別のポリペプチドに連結された条件的親和性を有する抗体の全てまたは一部分を含む融合抗体が作製され得る。別の実施形態では、条件的親和性を有する抗体の可変ドメインのみが、ポリペプチドに連結される。別の実施形態では、条件的親和性を有する抗体のCDRのみが、ポリペプチドに連結される。別の実施形態では、条件的親和性を有する抗体のVHドメインは、第1のポリペプチドに連結されるが、条件的親和性を有する抗体のVLドメインは、VHドメインおよびVLドメインが互いに相互作用して抗原結合部位を形成できるような様式で第1のポリペプチドと関連する第2のポリペプチドに連結される。別の実施形態では、VHおよびVLドメインが互いに相互作用できるように、VHドメインは、リンカーによってVLドメインから分離される。次いで、VH−リンカー−VL抗体は、目的のポリペプチドに連結される。さらに、2つ(またはそれ以上の)単鎖抗体が互いに連結された融合抗体が創出され得る。これは、単一のポリペプチド鎖上で二価もしくは多価抗体を創出することを望む場合、または二重特異性抗体を創出することを望む場合に、有用である。
【0258】
一部の実施形態では、本明細書で提供される実施例に記載される条件的親和性を有する抗体のCDRの少なくとも10、15、20または25連続するアミノ酸を含む融合ポリペプチドが提供される。一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、本明細書で提供される実施例に記載される条件的親和性を有する抗体のVH CDR3および/またはVL CDR3を含む。本開示の目的のために、融合タンパク質は、1つまたは複数の抗体、およびネイティブ分子中ではそれが結合されてはいない別のアミノ酸配列、例えば、別の領域由来の異種配列または相同配列を含む。例示的な異種配列には、「タグ」、例えば、FLAGタグまたは6Hisタグが含まれるがこれらに限定されない。タグは当該分野で周知である。
【0259】
融合ポリペプチドは、当該分野で公知の方法によって、例えば、合成または組換えによって創出され得る。典型的には、本発明の融合タンパク質は、本明細書で記載される組換え法を使用して、それらをコードするポリヌクレオチドを調製および発現させることによって作製されるが、これらは、例えば化学的合成を含む当該分野で公知の他の手段によっても調製され得る。
【0260】
他の実施形態では、他の改変された抗体は、条件的親和性を有する抗体をコードする核酸分子を使用して調製され得る。例えば、「カッパボディ(Kappa body)」(Illら、1997、Protein Eng.10:949〜57)、「ミニボディ」(Martinら、1994、EMBO J.13:5303〜9)、「ディアボディ」(Holligerら、上記)または「ヤヌシン(Janusin)」(Trauneckerら、1991、EMBO J.10:3655〜3659およびTrauneckerら、1992、Int.J.Cancer(補遺)7:51〜52)は、本明細書の教示に従って、標準的な分子生物学的技術を使用して調製され得る。
【0261】
例えば、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である二重特異性抗体は、本明細書で開示される抗体を使用して調製され得る。二重特異性抗体を作製するための方法は、当該分野で公知である(例えば、Sureshら、1986、Methods in Enzymology 121:210を参照のこと)。例えば、二重特異性抗体または抗原結合断片は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結によって産生され得る。例えば、SongsivilaiおよびLachmann、1990、Clin.Exp.Immunol.79:315〜321、Kostelnyら、1992、J.Immunol.148:1547〜1553を参照のこと。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づいており、これら2つの重鎖は異なる特異性を有する(MillsteinおよびCuello、1983、Nature 305、537〜539)。さらに、二重特異性抗体は、「ディアボディ」または「ヤヌシン」として形成され得る。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、1つの抗原の2つの異なるエピトープに結合する。一部の実施形態では、上記改変された抗体は、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体由来の1つまたは複数の可変ドメインまたはCDR領域を使用して調製される。
【0262】
固体支持体へのカップリングを促進する薬剤(例えば、ビオチンまたはアビジン)にコンジュゲートされた(例えば連結された)抗体を含む組成物もまた、本明細書で提供される。単純化のために、これらの方法が本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体に当てはまるという理解と共に、抗体に対する言及が一般になされる。コンジュゲーションは一般に、本明細書で記載されるようにこれらの構成成分を連結することを指す。連結すること(これは一般に、これらの構成成分を、少なくとも投与のために近接して関連させて固定することである)は、いくつもの方法で達成され得る。例えば、薬剤と抗体との間の直接的反応は、他方と反応することが可能な置換基を各々が有する場合に可能である。一方の上の求核基、例えば、アミノまたはスルフヒドリル基は、他方上のカルボニル含有基、例えば、無水物もしくは酸ハライドと、または良好な脱離基(例えば、ハライド)を含むアルキル基と、反応することが可能であり得る。
【0263】
抗体は、多くの異なる担体に結合され得る。担体は、活性および/または不活性であり得る。周知の担体の例には、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、ガラス、天然のおよび改変されたセルロース、ポリアクリルアミド、アガロースならびにマグネタイトが含まれる。担体の性質は、可溶性または不溶性のいずれかであり得る。当業者は、抗体を結合するための他の適切な担体を知っており、または慣用的な実験を使用してそれを確認できる。一部の実施形態では、担体は、特定の臓器または組織型を標的化する部分を含む。
【0264】
本明細書で提供される抗体またはポリペプチドは、標識化剤、例えば、蛍光分子、放射性分子または当該分野で公知の任意の他の標識に連結され得る。シグナルを(直接的または間接的のいずれかで)一般に提供する標識は、当該分野で公知である。
【0265】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、(例えば、タンパク質精製プロセスの間に)目的の抗原を精製するために使用され得る。抗体−抗原複合体が形成されるように、第1の時点において、条件的に特異的な抗体は、目的の抗原を含む材料と共に、抗体が高い親和性で抗原に結合する条件下でインキュベートされ得る(例えば、抗体が、低い薬剤濃度条件下で高い親和性で抗原に結合する場合、この第1の時点では、抗体は、低い薬剤濃度条件で抗原と共にインキュベートされる)。任意選択により、抗体−抗原複合体は、元々抗原を含んでいた材料の残部から抗原を分離するために、適切な緩衝液で洗浄され得る。次いで、抗体−抗原複合体が解離するように、第2の時点において、抗体は、抗体が低い親和性で抗原に結合する条件に曝露され得る。
【0266】
一部の実施形態では、抗体は、ハイブリドーマテクノロジーを使用して作製され得る。ヒトを含む任意の哺乳動物対象またはそれ由来の抗体産生細胞は、ヒトを含む哺乳動物のハイブリドーマ細胞株の産生のための基礎として機能するように操作され得ることが企図される。宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは一般に、本明細書でさらに記載されるように、抗体刺激および産生のための確立された従来技術に従う。典型的には、宿主動物は、本明細書で記載されるものを含む免疫原の一定量で、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内および/または真皮内接種される。
【0267】
ハイブリドーマは、Kohler,B.およびMilstein,C.、1975、Nature 256:495〜497の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を使用して、またはBuck,D.W.ら、In Vitro、18:377〜381、1982によって改変されたように、リンパ球および不死化骨髄腫細胞から調製され得る。X63−Ag8.653、およびSalk Institute、Cell Distribution Center、San Diego、Calif.、USAからのものが含まれるがこれらに限定されない入手可能な骨髄腫株が、ハイブリダイゼーションにおいて使用され得る。一般に、この技術には、膜融合剤(fusogen)、例えば、ポリエチレングリコールを使用して、または当業者に周知の電気的手段によって、骨髄腫細胞とリンパ系細胞とを融合させることが関与する。融合後、細胞は、融合培地から分離され、ハイブリダイズしなかった親細胞を排除するために、選択的増殖培地、例えば、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地中で増殖される。血清を補充したまたは補充していない本明細書で記載される培地のいずれかが、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用され得る。細胞融合技術の別の代替法として、EBV不死化B細胞が、本明細書で提供されるモノクローナル抗体を産生するために使用され得る。ハイブリドーマまたは他の不死化B細胞は、拡大増殖され、所望によりサブクローニングされ、上清は、従来のイムノアッセイ手順(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイまたは蛍光イムノアッセイ)によって、抗免疫原活性についてアッセイされる。
【0268】
本明細書で提供される抗体を産生するハイブリドーマは、公知の手順を使用してin vitroまたはin vivoで増殖させ得る。モノクローナル抗体は、所望により、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィーおよび限外濾過によって、培養培地または体液から単離され得る。望ましくない活性は、存在する場合、例えば、固相に結合した免疫原で作られた吸着剤上に調製物を流すこと、および所望の抗体を免疫原から溶出または放出させることによって、除去され得る。
【0269】
抗原、または二機能性もしくは誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl
2もしくはR
1N=C=NR(式中、RおよびR
1は異なるアルキル基である)を使用して、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンもしくはダイズトリプシン阻害剤にコンジュゲートされた標的アミノ酸配列を含む断片による、宿主動物の免疫化は、抗体(例えば、モノクローナル抗体)の集団を生じ得る。
【0270】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本明細書で記載される抗体断片、抗原結合領域および改変された抗体、例えば、損なわれたエフェクター機能を有する抗体などを含む、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドもまた、本明細書で提供される。別の態様では、本明細書で記載されるポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法が、本明細書で提供される。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の手段によって、作製および発現され得る。従って、本発明は、ポリヌクレオチド、または本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物を含む組成物を含む。本明細書で記載されるライブラリーのいずれかをコードするポリヌクレオチドもまた提供される。任意のかかる配列に対して相補的なポリヌクレオチドもまた包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。RNA分子には、イントロンを含み一対一の様式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含まないmRNA分子が含まれる。さらなるコード配列または非コード配列が、本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよいが存在する必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持体材料に連結されてもよいが連結される必要はない。
【0271】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体(例えば、実施例に提供される)の1つまたは複数のCDRをコードするポリヌクレオチド配列が、本明細書で提供される。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞においてベクター中で維持され得、次いで、宿主細胞は、さらなる使用のために拡大増殖および凍結され得る。ベクター(発現ベクターを含む)および宿主細胞は、本明細書でさらに記載される。
【0272】
本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を発現させるために、VHおよびVL領域をコードするDNA断片が、上記方法のいずれかを使用して最初に取得され得る。種々の改変、例えば、変異、欠失および/または付加もまた、当業者に公知の標準的な方法を使用して、DNA配列中に導入され得る。例えば、変異誘発は、標準的な方法、例えば、PCR媒介性変異誘発を使用して実施され得、ここで、PCR産物が所望の変異または部位特異的変異誘発を含むように、変異したヌクレオチドがPCRプライマー中に取り込まれる。
【0273】
本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドのバリアントもまた包含される。一般に、コードされたポリペプチドの免疫反応性が元の出発分子と比較して減少されないように、ポリヌクレオチドバリアントは、1つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含み得る。コードされたポリペプチドの免疫反応性に対する影響は、一般に、本明細書で記載されるように評価され得る。バリアントは、好ましくは、本明細書で提供される抗体をコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約70%の同一性、より好ましくは、少なくとも約80%の同一性、なおより好ましくは、少なくとも約90%の同一性、最も好ましくは、少なくとも約95%の同一性を示す。
【0274】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、以下に記載されるように最大の対応を求めてアラインした場合に2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が同じである場合、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、配列類似性の局所的領域を同定および比較するために、比較ウインドウにわたって配列を比較することによって実施される。「比較ウインドウ」は、本明細書で使用する場合、少なくとも約20連続する位置、通常は30〜約75または40〜約50連続する位置のセグメントを指し、そこで、配列が、2つの配列を最適にアラインした後に、同じ数の連続する位置の参照配列に対して比較され得る。
【0275】
比較のための配列の最適なアラインメントは、デフォルトパラメーターを使用して、バイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR(登録商標),Inc.、Madison、WI)のLasergene(登録商標)スイート中のMegAlign(登録商標)プログラムを使用して実施され得る。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかのアラインメントスキームを具体化する:Dayhoff,M.O.、1978、A model of evolutionary change in proteins−Matrices for detecting distant relationships.、Dayhoff,M.O.(編)Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、Washington DC 5巻、補遺3、345〜358頁;Hein J.、1990、Unified Approach to Alignment and Phylogenes 626〜645頁 Methods in Enzymology 183巻、Academic Press,Inc.、San Diego、CA;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.、1989、CABIOS 5:151〜153;Myers,E.W.およびMuller W.、1988、CABIOS 4:11〜17;Robinson,E.D.、1971、Comb.Theor.11:105;Santou,N.、Nes,M.、1987、Mol.Biol.Evol.4:406〜425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.、1973、Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、San Francisco、CA;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726〜730。
【0276】
好ましくは、「配列同一性の百分率」は、2つの最適にアラインされた配列を、少なくとも20個の位置の比較ウインドウにわたって比較することによって決定され、このとき、比較ウインドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して、20パーセント以下、通常は5〜15パーセントまたは10〜12パーセントの付加または欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。百分率は、同一な核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定して一致した位置の数を得、一致した位置の数を参照配列中の位置の総数(即ち、ウインドウサイズ)で除算し、結果に100を乗算して配列同一性の百分率を得ることによって計算される。
【0277】
遺伝コードの縮重の結果として、本明細書で記載されるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが、当業者に理解される。それにもかかわらず、コドン用法における差異に起因して変動するポリヌクレオチドが、本発明によって具体的に企図される。
【0278】
本発明のポリヌクレオチドは、化学的合成、組換え法またはPCRを使用して取得され得る。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該分野で周知であり、本明細書で詳細に記載する必要はない。当業者は、本明細書で提供される配列および市販のDNA合成機を使用して、所望のDNA配列を産生することができる。
【0279】
組換え法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含むポリヌクレオチドが、適切なベクター中に挿入され得、このベクターは次に、本明細書でさらに議論されるように、複製および増幅に適切な宿主細胞中に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当業者に公知の任意の手段によって、宿主細胞中に挿入され得る。細胞は、直接的取込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F接合またはエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(例えば、プラスミド)として細胞内で維持され得、または宿主細胞ゲノム中に組み込まれ得る。そうして増幅されたポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法によって、宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrookら、1989を参照のこと。
【0280】
あるいは、PCRは、DNA配列の複製を可能にする。PCRテクノロジーは、当該分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction、Mullisら編、Birkauswer Press、Boston、1994に記載されている。
【0281】
RNAは、単離されたDNAを適切なベクター中で使用し、それを適切な宿主細胞中に挿入することによって取得され得る。細胞が複製し、DNAがRNAに転写されると、このRNAは次いで、例えば、Sambrookら、1989、上記に示されるような、当業者に周知の方法を使用して単離され得る。
【0282】
適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築され得、または当該分野で入手可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されるクローニングベクターは、使用が意図される宿主細胞に従って変動し得るが、有用なクローニングベクターは一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を有し得、および/またはベクターを含むクローンを選択する際に使用され得るマーカーの遺伝子を有し得る。適切な例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにシャトルベクター、例えば、pSA3およびpAT28が含まれる。これらおよび多くの他のクローニングベクターは、BioRad、StrategeneおよびInvitrogenなどの供給業者から入手可能である。
【0283】
発現ベクターがさらに提供される。発現ベクターは一般に、本発明に従うポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの一体的な一部として、宿主細胞において複製可能でなければならないことが意味される。適切な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、およびPCT出願公開番号WO87/04462に開示された発現ベクター(複数可)が含まれるがこれらに限定されない。ベクター構成成分には、一般に、以下のうち1つまたは複数が含まれ得るがこれらに限定されない:シグナル配列;複製起点;1つまたは複数のマーカー遺伝子;適切な転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーおよびターミネーター)。発現(即ち、翻訳)のために、リボソーム結合部位、翻訳開始部位および停止コドンなどの、1つまたは複数の翻訳制御エレメントもまた、通常必要とされる。
【0284】
目的のポリヌクレオチドを含むベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランまたは他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えば、ベクターが、ワクシニアウイルスなどの感染性因子である場合)を含むいくつかの適切な手段のいずれかによって、宿主細胞中に導入され得る。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入するという選択は、宿主細胞の特色に依存する場合が多い。
【0285】
本明細書で記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞もまた、提供される。異種DNAを過剰発現することが可能な任意の宿主細胞が、抗体をコードする遺伝子を単離する目的のため、または目的のポリペプチドもしくはタンパク質を発現する目的のために、使用され得る。哺乳動物宿主細胞の非限定的な例には、COS、HeLaおよびCHO細胞が含まれるがこれらに限定されない。PCT出願公開番号WO87/04462もまた参照のこと。適切な非哺乳動物宿主細胞には、原核生物(例えば、大腸菌(E.coli)または枯草菌(B.subtilis)および酵母(例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)、分裂酵母(S.pombe);またはクルイベロミセス・ラクチス(K.lactis))が含まれる。発現ベクターは、条件的親和性を有する抗体を指示するために使用され得る。一部の実施形態では、in vivoで外因性タンパク質の発現を得るための発現ベクターが使用され得る。例えば、米国特許第6,436,908号;同第6,413,942号;および同第6,376,471号を参照のこと。発現ベクターの投与には、注射、経口投与、パーティクルガンまたはカテーテル処置投与、および外用投与を含む、局所または全身投与が含まれる。
【0286】
発現ベクターまたはサブゲノムポリヌクレオチドを含む治療的組成物の標的化された送達もまた、使用され得る。受容体媒介性DNA送達技術は、例えば、Findeisら、Trends Biotechnol.、1993、11:202;Chiouら、Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer、J.A.Wolff編、1994;Wuら、J.Biol.Chem.、1988、263:621;Wuら、J.Biol.Chem.、1994、269:542;Zenkeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1990、87:3655;Wuら、J.Biol.Chem.、1991、266:338に記載されている。ポリヌクレオチドを含む治療的組成物は、遺伝子治療プロトコールにおいて、局所投与のために、約100ng〜約200mgの範囲のDNAで投与され得る。約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μgおよび約20μg〜約100μgのDNAの濃度範囲もまた、遺伝子治療プロトコールの間に使用され得る。治療的ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達され得る。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルスまたは非ウイルス起源のものであり得る(一般に、Jolly、Cancer Gene Therapy、1994、1:51;Kimura、Human Gene Therapy、1994、5:845;Connelly、Human Gene Therapy、1995、1:185;およびKaplitt、Nature Genetics、1994、6:148を参照のこと)。かかるコード配列の発現は、内因性哺乳動物プロモーターまたは異種プロモーターを使用して誘導され得る。コード配列の発現は、構成的であり得るまたは調節され得る。
【0287】
組成物
一部の実施形態では、有効量の本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体を含む医薬組成物が、本明細書で提供される。かかる組成物の例、ならびに製剤化の方法もまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、組成物は、条件的親和性を有する1つまたは複数の抗体を含む。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、条件的親和性を有する抗体はヒト化抗体である。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、所望の免疫応答、例えば、抗体媒介性溶解またはADCCを誘発することが可能な定常領域を含む。他の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、望まれないまたは望ましくない免疫応答、例えば、抗体媒介性溶解またはADCCを誘発しない定常領域を含む。
【0288】
組成物は、条件的親和性を有する1つよりも多い抗体を含み得る(例えば、1つの抗原の異なるエピトープを認識する条件的親和性を有する抗体の混合物であって、任意選択により、ここで、2つ以上または全ての抗体が、特定の低分子薬剤の濃度に依存して変動する抗原親和性を有する)ことが理解される。
【0289】
本明細書で提供される組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、薬学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤(Remington:The Science and practice of Pharmacy 第20版、2000、Lippincott Williams and Wilkins、K.E.Hoover編)をさらに含み得る。許容できる担体、賦形剤または安定剤は、その投薬量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム(octadecyldimethylbenzyl ammonium chloride);塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;グルコース、マンノースもしくはデキストランを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。
【0290】
条件的親和性を有する抗体およびその組成物はまた、薬剤の有効性を増強および/または補完するように機能する他の薬剤と併せて使用され得る、またはそれと別々に、同時にもしくは連続的に投与され得る。
【0291】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドのいずれかを含む医薬組成物を含む組成物もまた、提供される。一部の実施形態では、組成物は、本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。
【0292】
状態を予防または処置するための方法
本明細書で提供される抗体は、治療的処置方法および診断的処置方法が含まれるがこれらに限定されない種々の適用において有用である。
【0293】
一態様では、がんを処置するための方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、対象においてがんを処置する方法は、本明細書で記載される、条件的親和性を有する抗体を含む組成物(例えば、医薬組成物)または条件的親和性を有する抗体を含むリンパ球(例えば、CAR T細胞)の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。本明細書で使用する場合、がんには、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、絨毛癌、結腸がん、食道がん、胃(gastric)がん、神経膠芽腫、神経膠腫、脳腫瘍、頭頸部がん、腎臓がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、肝臓がん、子宮がん、骨がん、白血病、リンパ腫、肉腫、血液がん、甲状腺がん、胸腺がん、眼がんおよび皮膚がんが含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、対象において腫瘍の成長または進行を阻害する方法であって、本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体を含む組成物または条件的親和性を有する抗体を含むリンパ球(例えば、CAR T細胞)の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法が提供される。他の実施形態では、対象においてがん細胞の転移を阻害する方法であって、本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体のいずれかを含む組成物または条件的親和性を有する抗体を含むリンパ球(例えば、CAR T細胞)の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法が提供される。他の実施形態では、対象において腫瘍の退縮を誘導する方法であって、本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体を含む組成物または条件的親和性を有する抗体を含むリンパ球(例えば、CAR T細胞)の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0294】
別の態様では、がんを検出、診断および/またはモニタリングする方法が提供される。例えば、本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体は、検出可能な部分、例えば、画像化剤および酵素−基質標識で標識され得る。本明細書で記載される抗体は、in vivo診断アッセイ、例えば、in vivo画像化(例えば、PETまたはSPECT)または染色試薬のためにも使用され得る。
【0295】
一部の実施形態では、本明細書で記載される方法は、さらなる形態の治療で対象を処置するステップをさらに含む。一部の実施形態では、さらなる形態の治療は、化学療法、放射線、手術、ホルモン治療および/またはさらなる免疫療法が含まれるがこれらに限定されないさらなる抗がん治療である。
【0296】
本明細書で記載される全ての方法に関して、条件的親和性を有する抗体に対する言及は、抗体および1つまたは複数のさらなる薬剤を含む組成物もまた含む。これらの組成物は、例えば、当該分野で周知の低分子薬剤または適切な賦形剤、例えば、緩衝液を含む薬学的に許容できる賦形剤をさらに含み得る。本明細書で提供される方法は、単独で、または処置の他の方法と組み合わせて使用され得る。
【0297】
条件的親和性を有する抗体は、任意の適切な経路を介して対象に投与され得る。本明細書で記載される例が、利用可能な技術の限定ではなく例示を意図することは、当業者に明らかなはずである。従って、一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、公知の方法、例えば、静脈内投与に従って、例えば、ボーラスとして、または一定期間にわたる継続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、経皮、皮下、関節内、舌下、関節滑液嚢内(intrasynovial)、吹送を介する、くも膜下腔内、経口、吸入または外用経路によって、対象に投与される。投与は、全身、例えば静脈内投与、または限局性であり得る。ジェットネブライザーおよび超音波ネブライザーを含む液体製剤のための市販のネブライザーが、投与に有用である。液体製剤は、直接噴霧され得、凍結乾燥粉末は、復元後に噴霧され得る。あるいは、条件的親和性を有する抗体は、フルオロカーボン製剤および定用量吸入器を使用してエアロゾル化され得、または凍結乾燥および製粉された粉末として吸入され得る。
【0298】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、部位特異的または標的化された局所送達技術を介して投与される。部位特異的または標的化された局所送達技術の例には、条件的親和性を有する抗体の種々のインプラント可能なデポー供給源、あるいは局所送達カテーテル、例えば、注入カテーテル、留置カテーテルもしくは針カテーテル、合成グラフト、外膜ラップ(adventitial wrap)、シャントおよびステントもしくは他のインプラント可能なデバイス、部位特異的担体、直接注射、または直接適用が含まれる。例えば、PCT出願公開番号WO00/53211および米国特許第5,981,568号を参照のこと。
【0299】
条件的親和性を有する抗体の種々の製剤が投与に使用され得る。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、ストレートで投与され得る。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体および薬学的に許容できる賦形剤は、種々の製剤中にあり得る。薬学的に許容できる賦形剤は、当該分野で公知であり、薬理学的に有効な物質の投与を促進する、比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形態もしくは堅牢性を与え得、または希釈剤として作用し得る。適切な賦形剤には、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変動させるための塩、封入剤、緩衝液、ならびに皮膚浸透増強剤が含まれるがこれらに限定されない。非経口および経口(nonparenteral)薬物送達のための賦形剤ならびに製剤は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing、2000に示される。
【0300】
一部の実施形態では、これらの薬剤は、注射(例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)による投与のために製剤化される。従って、これらの薬剤は、薬学的に許容できるビヒクル、例えば、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液などと組み合わされ得る。特定の投薬レジメン、即ち、用量、タイミングおよび反復は、特定の個体およびその個体の病歴に依存し得る。
【0301】
条件的親和性を有する抗体は、注射(例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)によるものを含む任意の適切な方法を使用して投与され得る。条件的親和性を有する抗体は、本明細書で記載されるように、外用でまたは吸入を介しても投与され得る。一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体の投与のために、初回候補投薬量は、約2mg/kgであり得る。本発明の目的のために、典型的な一日投薬量は、上で述べた因子に依存して、約3μg/kgから30μg/kgまで300μg/kgまで3mg/kgまで、30mg/kgまで、100mg/kgまたはそれ以上までのいずれかの範囲であり得る。例えば、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kgおよび約25mg/kgの投薬量が使用され得る。一部の実施形態では、固定用量の条件的親和性を有する抗体が、対象に投与され得る(即ち、この用量は、対象の重量には依存しない)。状態に依存して、数日またはそれ以上にわたる反復投与について、例えば、がんに関連する症状を低減させるために、処置は、症状の所望の抑制が生じるまで、または十分な治療的レベルが達成されるまで、持続される。この治療の進行は、従来の技術およびアッセイによってモニタリングされ得る。投薬レジメン(条件的親和性を有する抗体を含む)は、経時的に変動し得る。一部の実施形態では、投薬レジメンはまた、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性に影響する対象低分子薬剤を投与することを含み得る。
【0302】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体の適切な投薬量は、使用される条件的親和性を有する抗体(またはその組成物)、処置される症状の型および重症度、薬剤が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の臨床歴および薬剤に対する応答、投与される薬剤についての患者のクリアランス速度、ならびに担当医の慎重さに依存し得る。典型的には、臨床医は、所望の結果を達成する投薬量に達するまで、条件的親和性を有する抗体および任意選択により低分子薬剤を投与する。用量および/または頻度は、処置の過程にわたって変動し得る。経験的考慮事項、例えば半減期は一般に、投薬量の決定に寄与する。例えば、ヒト免疫系と適合性の抗体、例えば、ヒト化抗体または完全ヒト抗体は、抗体の半減期を延長させるため、および宿主の免疫系によって抗体が攻撃されるのを防止するために、使用され得る。投与の頻度は、治療の過程にわたって決定および調整され得、必ずではないが一般に、症状の処置および/または抑制および/または軽快および/または遅延に基づく。あるいは、条件的親和性を有する抗体の継続的徐放性製剤が適切であり得る。徐放を達成するための種々の製剤およびデバイスは、当該分野で公知である。
【0303】
一実施形態では、条件的親和性を有する抗体の投薬量、および任意選択により対応する低分子薬剤の投薬量は、条件的親和性を有する抗体の1回または複数の投与(複数可)が与えられた個体において経験的に決定され得る。個体には、条件的親和性を有する抗体の増分投薬量が与えられ、任意選択により、増加するまたは減少する量の低分子薬剤が与えられる。有効性を評価するために、疾患の指標は以下のとおりであり得る。一部の実施形態では、対象への低分子薬剤の投与は、対象における条件的親和性を有する抗体の有効性を増加させ得る(即ち、抗原に対する抗体の親和性を増加させることによる)。他の実施形態では、対象への低分子の投与は、対象における条件的親和性を有する抗体の有効性を減少させ得る(即ち、抗原に対する抗体の親和性を減少させることによる)。
【0304】
一部の実施形態では、条件的親和性を有する抗体は、1つまたは複数のさらなる治療剤の投与と組み合わせて投与され得る。これらには、化学療法剤、ワクチン、CAR−T細胞ベースの治療、放射線療法、サイトカイン療法、ワクチン、他の免疫抑制経路の阻害剤、血管新生の阻害剤、T細胞活性化因子、代謝経路の阻害剤、mTOR阻害剤、アデノシン経路の阻害剤、インライタ、ALK阻害剤およびスニチニブが含まれるがこれらに限定されないチロシンキナーゼ阻害剤、BRAF阻害剤、エピジェネティック改変因子、Treg細胞の阻害剤および/または骨髄系由来サプレッサー細胞の阻害剤、JAK阻害剤、STAT阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、バイオ療法(biotherapeutic)剤(VEGF、VEGFR、EGFR、Her2/neu、他の増殖因子受容体、CD20、CD40、CD−40L、CTLA−4、OX−40、4−1BBおよびICOSに対する抗体が含まれるがこれらに限定されない)、免疫原性薬剤(例えば、弱毒化がん性細胞、腫瘍抗原、抗原提示細胞、例えば、腫瘍由来の抗原または核酸でパルスされた樹状細胞、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL−2、IFNα2、GM−CSF)、ならびに例えばGM−CSFであるがこれに限定されない免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞)の投与が含まれるがこれらに限定されない。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide);アルキルスルホン酸、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン(piposulfan);アジリジン、例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)およびウレドパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphoramide)およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミンおよびメチルメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビセレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログKW−2189およびCBI−TMIを含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosurea)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリチアマイシン、特にカリチアマイシンガンマ1IおよびカリチアマイシンファイI1、例えば、Agnew、Chem.Intl.Ed.Engl.、33:183〜186(1994)を参照のこと;ジネミシン(dynemicin)Aを含むジネミシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連の色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン(2-pyrrolino-doxorubicin)およびデオキシドキソルビシンを含む)、PEG化リポソームドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン(calusterone)、ドロモスタノロンプロピオン酸塩、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬(anti-adrenal)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミド(aldophosphamide)グリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトレキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルミチン(elformithine);エリプチニウム(elliptinium)酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;マイタンシノイド、例えば、マイタンシンおよびアンサマイトシン(ansamitocin);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特にT−2トキシン、ベラキュリン(verracurin)A、ロリジン(roridin)Aおよびアングイジン(anguidine));ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;パクリタキセルおよびドセタキセル(doxetaxel);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;ならびに上記のいずれかのおよび薬学的に許容できる塩、酸または誘導体が含まれる。腫瘍に対するホルモンの作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)およびトレミフェン(Fareston)を含む、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール、エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール、レトロゾールおよびアナストロゾールなど;ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリドおよびゴセレリン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容できる塩、酸または誘導体もまた含まれる。
【0305】
製剤
本明細書で提供されるように使用される条件的親和性を有する抗体の治療的製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望の程度の純度を有する抗体を、任意選択の薬学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤(Remington、The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing、2000)と混合することによって、貯蔵のために調製される。許容できる担体、賦形剤または安定剤は、使用される投薬量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;塩、例えば、塩化ナトリウム;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。
【0306】
条件的親和性を有する抗体を含むリポソームは、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985);Hwangら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 77:4030(1980);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されるような、当該分野で公知の方法によって調製され得る。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法によって生成され得る。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを得るために、規定された孔サイズのフィルターを介して押し出される。
【0307】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中またはマクロエマルジョン中に封入され得る。かかる技術は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing(2000)に開示されている。
【0308】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、フィルムまたはマイクロカプセルなどの成形物品の形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸および7エチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよびリュープロリド酢酸塩から構成される注射用ミクロスフェア)、スクロース酢酸イソ酪酸エステル(sucrose acetate isobutyrate)、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0309】
in vivo投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過メンブレンを介した濾過によって容易に達成される。条件的親和性を有する治療的抗体組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって突き刺し可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアル中に配置される。
【0310】
本明細書で提供される組成物は、単位投薬形態、例えば、経口、非経口もしくは直腸投与のため、または吸入もしくは吹送による投与のための、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁物、または坐剤中にあり得る。
【0311】
一部の実施形態では、本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体は、注射用形態(例えば、静脈内または皮下注射のため)で調製され、抗原に対する抗体の親和性に影響する低分子薬剤は、経腸投与のために(例えば、錠剤または液体形態で)調製される。
【0312】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分は、本発明の化合物またはその非毒性の薬学的に許容できる塩の均一な混合物を含む固体プレフォーミュレーション組成物を形成するために、薬学的担体、例えば、従来の錠剤化成分、例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガム、および他の薬学的希釈剤、例えば水と混合される。これらのプレフォーミュレーション組成物を均一と呼ぶ場合、それは、組成物が、等しく有効な単位投薬形態、例えば、錠剤、丸剤およびカプセルへと容易に分割できるように、活性成分が組成物全体に均等に分散されることを意味する。
【0313】
キット
本発明は、本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体のいずれかを含むキットもまた提供する。本明細書で提供されるキットは、本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体および任意選択により対応する低分子薬剤(即ち、抗原に対する抗体の親和性に影響し得る低分子薬剤)を含む1つまたは複数の容器、ならびに本明細書で記載される本発明の方法のいずれかに従う使用に関する指示書を含み得る。一般に、これらの指示書は、上記治療的処置のための、条件的親和性を有する抗体および任意選択により低分子薬剤の投与の説明を含む。一部の実施形態では、キットは、単一用量の投与単位を産生するために提供される。ある特定の実施形態では、キットは、乾燥タンパク質を有する第1の容器および水性製剤を有する第2の容器の両方を含み得る。ある特定の実施形態では、単一および複数チャンバーの事前充填シリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe))を含むキットが含まれる。一部の実施形態では、キットは、低分子薬剤を含む容器を含み得る。一部の実施形態では、低分子薬剤は、条件的親和性を有する抗体を含む容器とは別の容器中にあり得る。
【0314】
条件的親和性を有する抗体および任意選択により低分子薬剤の使用に関する指示書は、一般に、投薬量、投薬スケジュール、および意図した処置のための投与経路に関する情報(条件的親和性を有する抗体および低分子薬剤の両方に関する投薬情報を含む)を含む。容器は、単位用量、バルク包装(例えば、多用量包装)またはサブ単位用量であり得る。本発明のキット中で提供される指示書は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キット中に含まれる紙シート)上の書面による指示書であるが、機械可読指示書(例えば、磁気記憶ディスクまたは光学記憶ディスク上で運搬される指示書)もまた許容できる。
【0315】
本発明のキットは、適切な梱包材料中にある。適切な梱包材料には、バイアル、ビン、ジャー、可撓性梱包材料(例えば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)などが含まれるがこれらに限定されない。特定のデバイス、例えば、吸入器、鼻孔投与デバイス(例えば、アトマイザー)、または注入デバイス、例えばミニポンプと組み合わせた使用のための包装もまた企図される。キットは、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって突き刺し可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。容器もまた、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって突き刺し可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。一部の実施形態では、キットは、キット中に、抗原に対する条件的親和性を有する抗体の親和性を変更し得る低分子薬剤もまた含む。
【0316】
キットは、さらなる構成成分、例えば、緩衝液および解釈情報を提供してもよい。通常、キットは、容器、および容器上または容器に関連したラベルまたは添付文書(複数可)を含む。
【0317】
米国仮特許出願第62/484,776号(2017年4月12日出願)および同第62/637,077号(2018年3月1日出願)の内容は、全ての目的のために本明細書で参照によって取り込まれる。
【0318】
一般的技術
本発明の実施は、特記しない限り、当業者の技術範囲内の、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用する。かかる技術は、文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993〜1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach (D.Catty.編、IRL Press、1988〜1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)、中で、ならびに該当する場合には、上記参考文献の引き続く版および対応するウェブサイト中で、十分に説明されている。
【実施例】
【0319】
以下の実施例は、例示目的のためにのみ提供され、本発明の範囲を限定することは決して意図しない。実際、本明細書に示され記載されるものに加えた、本発明の種々の改変は、上述の説明から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲の範囲内に入る。
【0320】
(実施例1)
メトトレキサートでモジュレートされる条件的親和性を有する抗体についてスクリーニングするためのライブラリーの生成
この実施例は、メトトレキサートでモジュレートされる親和性で抗原に結合するscFvについてスクリーニングするために使用され得る合成ヒト単鎖可変断片(scFv)ライブラリーの生成を示す。言い換えると、ライブラリーは、メトトレキサートの高い濃度または低い濃度の下で、目的の抗原に対する比較的高い親和性または比較的低い親和性を有するscFvについてスクリーニングするために使用され得、所望により、スクリーニング条件によって選択され得る。
【0321】
メトトレキサート結合抗体由来の重鎖配列(「MTX−VH」)および3つの軽鎖生殖系列フレームワークを、以前に記載された様式と類似の様式で設計および合成した合成ヒト抗体ライブラリーのための骨格として選択した[Zhai W.ら、J.Mol.Biol.412、55〜71(2011)]。簡潔に述べると、VK1−39、VK3−20およびVL1−47を、218人のドナーから取得した免疫レパートリーのメモリー区画におけるそれらの頻度、カノニカル相補性決定領域(CDR)の構造的多様性、および安定性に基づいて選択した。Protein Databank Bank(PDB)において見出される各生殖系列についての代表的な結晶構造を、免疫レパートリーデータと併せて分析して、それぞれ、抗原に対する構造的近位性および天然に観察されるアミノ酸可変性の存在量に基づいて、多様化するためのCDR位置を選択した。多様性は、MTX−VHのCDR1中にもCDR2中にも導入しなかった。独自の生殖系列特異的設計を、非冗長的なクローンに基づいて218人のドナーのレパートリー全体中に見出される天然のアミノ酸分布に基づいて軽鎖CDR1およびCDR2について生成して、クローン増殖に基づく結果への偏りを回避した。VK1−39については長さ8〜10、VK3−20については長さ8〜10、VL1−47については長さ10〜12およびMTX−VHについては長さ6〜17の、CDR3についての独自のカセットを選択したが、これらは、それぞれ、分析したレパートリー中に見出される独自の配列の89%、82%、85%および81%を占める。ライブラリーを、Slonomics DNA合成テクノロジーを使用して合成し、scFvファージミド中にクローニングし、次いで大腸菌(E.coli)中に形質転換して、1.5×10
11個の形質転換体のライブラリーを得た。
【0322】
ライブラリーのVH領域によってコードされるアミノ酸配列は、QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASRRSSR
SWAMHWVRQAPGKGLEWVA
VISYDGRLKYYADSVKGRFTISRDNAEYLVYLQMNSLRAEDTAVYYCAA
[X6〜17]WGQGTLVTVSSであり、式中、Xは任意のアミノ酸であり、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17個のいずれかの「X」アミノ酸が存在し得る(配列番号166)。また、CDR1、CDR2およびCDR3配列は、連続的な順序であり、下線(Kabat)および太字(Chothia)である。配列中に示されるように、VH領域のCDR3領域(即ち、Xアミノ酸)は、存在するアミノ酸の数、配列および型において高度に可変性である。
【0323】
(実施例2)
条件的親和性を有する抗CD33抗体の選択
この実施例は、条件的親和性を有する抗CD33抗体の選択を記載する。
【0324】
メトトレキサート(「MTX」)の存在下で減少した結合親和性を示すヒトCD33(「Siglec−3」としても公知;UniProtアクセッション番号:P20138)に対する抗体を、ライブラリーを5ラウンドのパニングに供することによって、実施例1に記載されるファージディスプレイされたライブラリーから同定した。最初の4ラウンドのパニングは、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンコートされた96ウェルプレート上に捕捉されたビオチン化CD33抗原を使用した。5ラウンド目のパニングを、ファージディスプレイされた抗体を、ニュートラアビジンコートされた96ウェルプレート上にそれらを次いで捕捉するビオチン化抗原と共にプレインキュベートすることによって、溶液中で実施した。1536個のクローンを、CD33抗原に対する4ラウンド目および5ラウンド目のパニングからランダムに選択し、それらの結合特異性を、ファージELISAによって決定した。CD33に特異的に結合したクローンを配列決定し、全ての独自のクローンを、ファージ競合ELISAに供して、10μM(マイクロモル濃度)のMTXの存在下または非存在下(即ち、0または10μMのMTX中)でそれらの結合強度を測定することによって、CD33に対するそれらの相対的親和性およびMTXに対する感受性を評価した。MTXの存在下で結合における減少を示したクローンを、scFv−Fc融合物として発現させ、10μMのMTXの存在下および非存在下でのそれらのCD33結合速度論を、バイオセンサーを使用して測定した。
【0325】
全ての結合速度論分析を、10μMのMTXありまたはなしで、10mM Hepes pH7.4、150mM NaCl、0.05%Tween−20(HBST+)中37℃で無標識Biacore表面プラズモンバイオセンサー(GE Life SciencesのBiacore T200(商標))で測定した。Biacoreデータを、Biacore T200 Evaluation Softwareで処理し、このデータを、二重参照し(Myszka、1999、J Mol Recognit 12(5):279〜284)、単純Langmuir質量輸送モデル(simple Langmuir with mass transport model)にグローバル的にフィッティングさせて、動的速度定数の比から、平衡解離定数K
Dを決定した(K
D=k
off/k
on)。一部の場合には、抗原の結合は、10μMのMTXの存在下で非常に低く(または検出不能であり)、結果として、動的速度定数は、正確に決定できなかった。これらの場合には、K
D(またはK
D限界)を、試験した最も高い分析物濃度における結合応答に基づいて、またはBiacore T200についての典型的な検出限界に基づいて推定した。
【0326】
表2は、このスクリーニングプロセスを介して同定されたCD33に対する条件的親和性を有する種々の抗CD33クローンについての動的データを提供する。表2に示されるように、例えば、2、3、4、5、10、20または50よりも大きい、10μMのMTXにおける抗体−抗原K
D/0μMのMTXにおける抗体−抗原K
Dの比を有する多数のクローンを選択した。例えば、10μMのMTXにおけるCD33に対するクローンP02_D08のK
Dは、705nMであるが、0μMのMTXでは、K
Dは100nMである。従って、10μMのMTXにおけるK
D/0μMのMTXにおけるK
Dの比は、705nM/100nMであり、約7.1と等しい。言い換えると、CD33に対するP02_D08クローンの親和性は、10μMのMTXよりも、0μMのMTXにおいて7.1倍大きい。また注目すべきことに、特定のクローンについて、10μMのMTXにおける抗体−抗原K
Dは、所与の限界よりも大きい(例えば、「>10929」)。従って、この値は、非常に弱い相互作用(限界によって記載される)または抗体−抗原結合が存在しない場合を示す。
【0327】
分析した抗CD33クローンの大部分は、0μMのMTX対10μMのMTXにおいて結合親和性における2倍未満の差異を有する;これらのクローンのほとんどは、表2に含まれない。しかし、参照目的のために、表2は、これらの型の抗CD33クローンのうち2つ(P01_C05およびP02_C02)についての動的データも含む。
【0328】
条件的親和性を有する抗CD33抗体についてのスクリーニングアッセイの間に、10μMのMTXの存在下でCD33に対する増加した親和性を有する少なくとも1つのクローンもまた同定された。このクローン(P01_B02)についての動的情報もまた、以下の表2に提供される。表2に示されるように、0μMのMTXの存在下でのP01_B02抗体−CD33相互作用のK
Dは19nMであるが、10μMのMTXの存在下では、抗体−CD33相互作用のK
Dは1.6nMである。従って、MTXありのK
D/MTXなしのK
Dの比は、約0.1である(即ち、この抗体は、0μMのMTXと比較して、10μMのMTXの存在下でCD33に対する約10倍大きい親和性を有する)。
【0329】
【表2】
【0330】
表2で言及されたクローンのVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、以下の表3に提供される。
【0331】
【表3-1】
【0332】
【表3-2】
【0333】
【表3-3】
【0334】
また、表3の条件的に特異的な抗CD33抗体のCDRおよびCDRの配列番号は、以下の表4に提供される。
【0335】
【表4-1】
【0336】
【表4-2】
【0337】
【表4-3】
【0338】
上に提供されたデータに示されるように、条件的親和性を有する複数の異なる抗CD33クローンが単離された。これらの抗CD33クローンのほとんどは、0μMのMTXの存在下と比較して、10μMのMTXの存在下でCD33に対する低減された親和性を有する。さらに、0μMのMTXの存在下と比較して、10μMのMTXの存在下でCD33に対する増加した親和性を有する、少なくとも1つの抗CD33クローンが同定された。
【0339】
(実施例3)
条件的親和性を有する抗EGFR抗体の選択
この実施例は、条件的親和性を有する抗EGFR抗体の選択を記載する。
【0340】
メトトレキサート(「MTX」)の存在下で減少した結合親和性を示すヒト上皮増殖因子受容体(「EGFR」)(UniProtアクセッション番号:P00533)に対する抗体を、ライブラリーを5ラウンドのパニングに供することによって、実施例1に記載されるファージディスプレイされたライブラリーから同定した。最初の4ラウンドのパニングは、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンコートされた96ウェルプレート上に捕捉されたビオチン化EGFR抗原を使用した。5ラウンド目のパニングを、ファージディスプレイされた抗体を、ニュートラアビジンコートされた96ウェルプレート上にそれらを次いで捕捉するビオチン化抗原と共にプレインキュベートすることによって、溶液中で実施した。1536個のクローンを、EGFR抗原に対する4ラウンド目および5ラウンド目のパニングからランダムに選択し、それらの結合特異性を、ファージELISAによって決定した。EGFRに特異的に結合したクローンを配列決定し、全ての独自のクローンを、ファージ競合ELISAに供して、10μM(マイクロモル濃度)のMTXの存在下または非存在下(即ち、0または10μMのMTX中)でそれらの結合強度を測定することによって、EGFRに対するそれらの相対的親和性およびMTXに対する感受性を評価した。MTXの存在下で結合における減少を示したクローンを、scFv−Fc融合物として発現させ、10μMのMTXの存在下および非存在下でのそれらのEGFR結合速度論を、実施例2に記載したように、バイオセンサーを使用して測定した。
【0341】
表5は、このスクリーニングプロセスを介して同定されたEGFRに対する条件的親和性を有する種々の抗EGFRクローンについての動的データを提供する。表5に示されるように、例えば、2、3、4、5または10よりも大きい、10μMのMTXにおける抗体−抗原K
D/0μMのMTXにおける抗体−抗原K
Dの比を有する多数のクローンを選択した。表5中のデータは、実施例2に上記したように解釈され得る。
【0342】
注目すべきことに、分析した抗EGFRクローンの大部分は、0μMのMTX対10μMのMTXにおいて結合親和性における2倍未満の差異を有する;これらのクローンのほとんどは、表5に含まれない。しかし、参照目的のために、表5は、これらの型の抗EGFRクローンのうち2つ(P01_B06およびP08_E05)についての動的データも含む。
【0343】
【表5】
【0344】
表5に記載されるクローンのVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、以下の表6に提供される。
【0345】
【表6-1】
【0346】
【表6-2】
【0347】
また、表6の条件的親和性を有する抗EGFR抗体のCDRおよびCDRの配列番号は、以下の表7に提供される。
【0348】
【表7-1】
【0349】
【表7-2】
【0350】
上に提供されたデータに示されるように、条件的親和性を有する複数の異なる抗EGFRクローンが単離された。これらの抗EGFRクローンのほとんどは、0μMのMTXの存在下と比較して、10μMのMTXの存在下でEGFRに対する低減された親和性を有する。
【0351】
(実施例4)
CD33特異的条件的CAR T細胞の特異的in vitro細胞傷害性、およびそれらの活性の短期阻害
この実施例は、本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体を含むCAR T細胞の標的特異性および細胞傷害性を試験し、ここで、抗体は、CAR T細胞のキメラ抗原受容体(CAR)中、scFv形式である。CARのscFvに本明細書で記載される条件的親和性を有する抗体を含むCAR T細胞は、「条件的CAR T細胞」、「条件的CAR T」などとも呼ばれ得る。
【0352】
この実施例では、異なる条件的CAR T細胞の比活性を試験し、その各々が、それぞれのCAR中に条件的親和性を有する抗CD33抗体の異なるクローンを含んだ。試験した抗CD33クローンは、P02_E11、P03_A01、P07_C04、P02_D09、P02_E08およびP03_H04であった。これらは、例えば、表2、3および4に以前に記載されている。さらに、CARのscFvにヒト化IgG1抗CD33抗体(即ち、これは条件的親和性を有する抗体ではない)を含む陽性対照CAR T細胞を調製した;この陽性対照CAR T細胞は、本明細書で「ツール」CAR T細胞と呼ばれる。形質導入されていないT細胞もまた調製した。また、上記異なる条件的CAR T細胞の各々を、2人の異なるヒトドナー由来のPBMC細胞から二連で生成した。
【0353】
2つの標的細胞株を使用して、種々の異なる条件的CAR T細胞の比活性を評価した:1)CD33発現性ヒト急性骨髄性白血病細胞株「Molm−13」[DSMZ(Braunschweig、Germany)から取得した]、および2)CD33陰性ヒト慢性骨髄性白血病細胞株「K−562」[American Type Culture Collection(Manassas、VA)から取得した]。両方の細胞株を形質導入して、GFPおよびホタルルシフェラーゼを安定に発現させた。選別された細胞(GFP陽性)を、10%熱不活性化Hyclone胎仔ウシ血清(GE Healthcare Life Sciences)を補充したRPMI 1640培地中で培養した。
【0354】
in vitro細胞傷害性アッセイを、上記各異なるT細胞について、50,000個のT細胞を100,000個の標的細胞(Molm13またはK562)と共に共培養することによって、96ウェルプレートにおいて実施した。共培養物を、100ulのRPMI 1640培地の最終体積中で、5%CO
2、37℃で48時間維持した。One−Glo Luciferase Assay System(Promega)の添加の際の標的細胞死滅を、ルミネセンスを測定すること(2103 EnVision(商標)Multilabel Plate Reader)によって評価した。
【0355】
図4は、各異なるCD33特異的CARについての平均結果を示す。グラフ中、Y軸は、%標的細胞死滅を示し、X軸は、共培養物中の標的細胞型[CD33陽性(Molm13)またはCD33陰性(K562)]を示す。図面のレジェントは、共培養物中のT細胞の型を示す。さらなる参照のために、X軸に沿って左から右の順序で、共培養物中のT細胞の型をここに列挙する:Molm13共培養物:[形質導入されていないT細胞(即ち、これは、CARを含まない)(以下に記載される「%標的細胞死滅」計算方法論に従って、値が0%であったので、これらは示されるバー/値を有さない);ツールCAR T細胞(即ち、陽性対照抗CD33);P02_E11;P03_A01;P07_C04;P02_D09;P02_E08;およびP03_H04];K562共培養物:[形質導入されていないT細胞(値が0%であったので、これらは示されるバー/値を有さない);ツールT細胞;P02_E11;P03_A01;P07_C04;P02_D09;P02_E08;およびP03_H04]。「%標的細胞死滅」は、ルミネセンス値を、形質導入されていないT細胞(即ち、これは、CARを含まず、従って、CD33発現細胞を特異的に標的化しないことが予測される)を用いた共培養物からのルミネセンス値に対して標準化することによって計算した。試験した抗CD33クローンの全てが、CD33陽性Molm13細胞に対して選択的細胞傷害性を示した。
【0356】
この実施例は、CARのscFvに本明細書で提供される条件的親和性を有する抗CD33抗体を含むCAR T細胞が、CD33陽性細胞に対する選択的細胞傷害性を示すことを実証している。
【0357】
(実施例5)
CD33特異的条件的CAR T細胞活性の短期阻害
この実施例は、メトトレキサート(MTX)の存在下および非存在下での、CD33発現標的細胞に対する、条件的親和性を有する種々の異なる抗CD33抗体を含む条件的CAR T細胞の細胞傷害性を試験する。
【0358】
この実施例で試験した抗CD33クローンは、P02_E11、P03_A01、P07_C04、P02_D09、P02_E08およびP03_H04であった。さらに、ツールCAR T細胞を、形質導入されていないT細胞と同様、実施例4に記載されるように調製した。また、上記異なる条件的CAR T細胞の各々を、2人の異なるヒトドナー由来のPBMC細胞から二連で生成した。
【0359】
このアッセイで使用した標的細胞株は、CD33を発現するMV4−11(American Type Culture Collectionから取得した)であった。実施例4に記載されるように、MV4−11細胞を形質導入して、GFPおよびホタルルシフェラーゼを安定に発現させた。
【0360】
in vitro細胞傷害性アッセイを、上記各異なるT細胞について、50,000個のT細胞を100,000個のMV4−11細胞と共に共培養することによって、96ウェルプレートにおいて実施した。さらに、共培養物の各々は、100μMのMTXまたは0μMのMTXのいずれかを含んだ。両方の条件において、MTX毒性を回避するために、1mMのロイコボリンを補充した。共培養物を、100μlのRPMI 1640培地の最終体積中で、5%CO
2、37℃で48時間維持した。標的細胞死滅を、実施例4に記載されるように評価およびプロットした。
【0361】
図5は、MTXの非存在下または100μMのMTXの存在下での、各CD33特異的CARについての平均結果を示す。グラフ中、Y軸は、%標的細胞死滅を示し、X軸は、共培養物中の異なるCAR T細胞を示す。さらに、各異なるT細胞について、2つのバーが存在する:左側:0μMのMTX、右側:100μMのMTX(図面のレジェントにも示される)。
図5に示されるように、条件的CAR T細胞の異なるクローンの全てが、MTXの非存在下と比較して、MTXの存在下で標的細胞に対する有意に低減された細胞傷害活性を示した(MTXの非存在下と比較して、MTXの存在下での標的細胞死滅における減少によって示されるとおり)。対照的に、従来のCAR T細胞(ツール)は、それらの標的溶解効率に関して、MTXの存在に対して非感受性であった。理論によって束縛されないが、MTXは、標的細胞中のCD33抗原に対する、CAR中の抗CD33抗体の親和性を低減させる(それによって、標的細胞へのCAR T細胞の結合を低減させる)ことによって、条件的CAR T細胞の細胞傷害活性を低減させると考えられる。
【0362】
従って、この実験は、CARのscFvに本明細書で提供される条件的親和性を有する抗CD33抗体を含むCAR T細胞の細胞傷害活性が、MTXによってモジュレートできることを実証している。
【0363】
(実施例6)
CD33特異的条件的CAR T細胞の親和性依存的サイトカイン分泌
この実施例は、i)CAR T細胞におけるCARまたはii)CAR T細胞におけるTCRのいずれかを介したCAR T細胞の刺激後の、条件的親和性を有する抗CD33抗体を含む条件的CAR T細胞によるサイトカインIL−2およびIFN−γの分泌のレベルを試験する。さらに、これらを、メトトレキサート(MTX)の存在下および非存在下の両方で試験した。
【0364】
この実施例で使用した抗CD33クローンは、P02_D09であった。表2に示されるように、P02_D09クローンは、MTXの存在下よりもMTXの非存在下で、CD33に対する顕著により大きい親和性(即ち、より低いK
D)を有する(即ち、MTXは、CD33に対するP02_D09の親和性を低減させる)。さらに、ツールT細胞を、形質導入されていないT細胞と同様、実施例4に記載されるように調製した。
【0365】
このアッセイで使用した標的細胞株は、実施例5に記載されるMV4−11であった。
【0366】
アッセイを、上記異なるT細胞の各々について、100,000個のT細胞を種々の他の試薬(アッセイに依存する)と共に培養することによって、96ウェルプレートにおいて実施した。共培養物の各々は、100μMのMTXまたは0μMのMTXのいずれかを含んだ。両方の条件において、MTX毒性を回避するために、1mMのロイコボリンを補充した。抗CD33 CARを介してCAR T細胞を刺激するために、100,000個のMV4−11標的細胞(これはCD33を発現する)を、T細胞と共に培養物中に含めた。TCRを介してCAR T細胞を刺激するために、T cell Activation/Expansion Beads(Miltenyi)を、T細胞と共に培養物中に含めた(即ち、標的細胞の非存在下)。T細胞培養物(TCR刺激のため)または共培養物(CAR刺激のため)を、100μlのRPMI 1640培地の最終体積中で、5%CO
2、37℃で24時間維持した。次いで、上清を収集し、凍結した。上清中のサイトカインを、製造業者の仕様書に従って、U−PLEX Th1/Th2 Comboプレート(Meso−Scale Discovery;Rockville、MD)を使用して測定した。
【0367】
図6Aおよび
図6Cに示されるように、抗CD33 CAR(ツールまたは条件的)を介したT細胞の活性化の際に、IL−2およびIFN−γの分泌レベルは、MTXの非存在下では、ツール抗CD33 CAR T細胞と条件的抗CD33 CAR T細胞との間で類似していた。しかし、MTXの存在下では、P02_D09によるサイトカイン産生は、刺激されていないT細胞(形質導入されていない)のレベルと匹敵するレベルに戻って低減されたが、分泌は、従来のCAR T細胞については高いままであった。
【0368】
図6Bおよび
図6Dに示されるように、T細胞を、CARの代わりにTCRの刺激を介してMTXの存在下で活性化した場合、CARベースの刺激によって見られた条件的CAR T細胞によるサイトカイン放出における急激な減少は、観察されなかった。これは、条件的親和性を有する抗体を含むCAR刺激された細胞による、MTXの存在下でのサイトカイン放出における低減が、MTXの毒性効果に起因するのではなく、標的タンパク質に対するCARの低減された親和性に起因するという、さらなる証拠を提供する。
【0369】
従って、この実験は、CARのscFvに本明細書で提供される条件的親和性を有する抗CD33抗体を含む条件的CAR T細胞の活性化が、MTXによってモジュレートできるという、さらなる証拠を提供する。
【0370】
(実施例7)
CD33特異的条件的CAR T細胞の親和性依存的増殖
この実施例は、CAR T細胞のi)CARまたはii)TCRのいずれかを介したCAR T細胞の刺激後の、条件的親和性を有する抗CD33抗体を含む条件的CAR T細胞の増殖能を試験する。さらに、これらを、メトトレキサート(MTX)の存在下および非存在下の両方で試験した。
【0371】
この実施例で使用した抗CD33クローンは、P02_D09であった。さらに、ツールT細胞を、形質導入されていないT細胞と同様、実施例4に記載されるように調製した。1人のPBMCドナー由来のT細胞を、この実験に使用した。
【0372】
このアッセイで使用した標的細胞株は、実施例5に記載されるMV4−11であった。
【0373】
アッセイを、上記異なるT細胞の各々について、100,000個のT細胞を種々の他の試薬(アッセイに依存する)と共に培養することによって、96ウェルプレートにおいて実施した。さらに、共培養物の各々は、100μMのMTXまたは0μMのMTXのいずれかを含んだ。両方の条件において、MTX毒性を回避するために、1mMのロイコボリンを補充した。T細胞を、実施例6と同様、CARまたはTCRによって刺激した。培養物を、100ulのRPMI 1640培地の最終体積中で、5%CO
2、37℃で7日間維持した。7日目に、細胞を収集し、123Count eBeads(Thermo Fisher Scientific)を使用してフローサイトメトリー(BD LSR II)を介して計数した。
【0374】
図7に示されるように、CAR刺激されたP02_D09 CAR T細胞の増殖能は、MTXの存在下で劇的に減少されるが、従来の(ツール)CAR T細胞は、MTXによって影響されない[円柱3(CAR刺激;MTXなし)および円柱4(CAR刺激;100μMのMTX)に示される結果を比較する](
図7中、「CD3/CD28」は、TCR刺激された細胞を指し、「CD33」は、CAR刺激された細胞を指す)。P02_D09およびツールCAR T細胞の両方について、T細胞の増殖は、TCRを介して活性化した場合にはMTXによって影響されず[円柱1(TCR刺激;MTXなし)および円柱2(TCR刺激;100μMのMTX)に示される結果を比較する]、このことは、PO2−D09のCAR刺激されたT細胞における増殖の阻害がMTX結合に起因したことを示唆している。理論によって束縛されないが、MTXは、標的細胞中のCD33抗原に対する、CAR中の抗CD33抗体の親和性を低減させる(従って、CD33抗原へのCAR T細胞の結合を低減させ、それによって、その抗原へのCAR T細胞のCARの結合の際に生じるCAR T細胞の引き続く活性化および増殖を低減させる)ことによって、条件的CAR T細胞の増殖を低減させると考えられる。
【0375】
この実験は、CARのscFvに本明細書で提供される条件的親和性を有する抗CD33抗体を含む条件的CAR T細胞の増殖を、MTXによってモジュレートできるという証拠を提供する。
【0376】
(実施例8)
MTX依存的なT細胞の活性化および増殖のフローサイトメトリー分析
この実施例は、フローサイトメトリーによって評価した、条件的親和性を有する抗CD33抗体を含む条件的CAR T細胞の活性化および増殖に対するMTXの影響を試験する。
【0377】
この実施例で使用した抗CD33クローンは、P02_D09であった。このクローンを含むCAR T細胞を、2人の異なるヒトドナー由来のPBMC細胞から二連で生成した。このアッセイで使用した標的細胞株は、実施例5に記載されるMV4−11であった。
【0378】
上記条件的CAR T細胞の活性化を評価するために、in vitro細胞傷害性アッセイを、250,000個のCAR T細胞を250,000個のMV4−11細胞ありまたはなしで共培養することによって、24ウェルプレートにおいて実施した。さらに、共培養物の各々は、100μMのMTXまたは0μMのMTXのいずれかを含んだ。全ての条件において、MTX毒性を回避するために、1mMのロイコボリンを補充した。24時間の共培養後に、細胞を収集し、CD69に対するフルオロフォアコンジュゲート抗体(Biolegend)で標識し、フローサイトメトリー(BD LSR II)によって分析した。活性化を、初期活性化マーカーCD69の検出を介して定量化した。
【0379】
上記CAR T細胞の増殖能を評価するために、細胞を、蛍光細胞内色素CellTrace Deep Red(Invitrogen)で事前標識し、その後、CAR T細胞活性化アッセイについてすぐ上に記載したように共培養した。共培養物を、5%CO
2、37℃で7日間インキュベートした。7日目に、細胞を収集し、フローサイトメトリーを介して分析した。CellTrace色素の希釈(ヒストグラム中のピークの、左方向へのシフト)を、T細胞増殖と解釈した。
【0380】
図8は、P02_D09の活性化ならびに増殖の両方が、MTXの存在下で劇的に減少されることを示している。これは、CD69(活性化)アッセイおよびCellTrace(増殖)アッセイの両方について、0μMのMTX+標的細胞共培養物のヒストグラムを100μMのMTX+標的細胞共培養物のヒストグラムと比較することによって理解できる。両方のアッセイにおいて、100μMのMTX+標的細胞共培養物のヒストグラムは、0μMのMTX+標的細胞共培養物のヒストグラムとは明確に異なり、標的細胞を含まない培養物についてのヒストグラムと似ている。これは、100μMのMTXの存在が、抗CD33抗体P02_D09を含む条件的CAR T細胞の活性化および増殖を低減させることを示し、CARのscFvに本明細書で提供される条件的親和性を有する抗体を含むCAR T細胞を、MTXによってモジュレートできることを示す、さらなるデータを提供する。
【0381】
(実施例9)
CD33特異的条件的CAR T細胞活性の可逆的阻害
この実施例は、CD33に対するCD33特異的条件的CAR T細胞の親和性が可逆的であり得ることを実証する;条件的CAR T細胞による標的細胞の活発な結合は停止され得るが、休止状態のT細胞は、培地中のMTXの濃度を変化させることによって、標的細胞を溶解するように再活性化され得る。
【0382】
この実施例で試験した抗CD33クローンは、P03_A01、P07_C04およびP02_D09であった。さらに、ツールT細胞を、形質導入されていないT細胞と同様、実施例4に記載されるように調製した。また、上記異なる条件的CAR T細胞の各々を、3人の異なるヒトドナー由来のPBMC細胞から三連で生成した。このアッセイで使用した標的細胞株は、MV4−11であった;実施例5に記載されるように、これらの細胞を形質導入して、GFPおよびホタルルシフェラーゼを安定に発現させた。
【0383】
この実験には、一連のin vitro細胞傷害性アッセイが関与し、このとき、T細胞およびMV4−11標的細胞の共培養物を、複数ラウンドの連続的細胞傷害性アッセイのために一緒にインキュベートし、MTX濃度を、異なるラウンドのアッセイにおいて変化させた。in vitro細胞傷害性アッセイを、上記各異なるT細胞について、200,000個のT細胞を200,000個のMV4−11細胞と共に共培養することによって、24ウェルプレートにおいて実施した。さらに、共培養物の各々は、
図9Aおよび
図9Cの模式図に示されるように、異なる時点において、100μMのMTXまたは0μMのMTXのいずれかを含んだ。両方の条件において、MTX毒性を回避するために、1mMのロイコボリンを補充した。アッセイの各ラウンドについて、共培養物を、500μlのRPMI 1640培地の最終体積中で、5%CO
2、37℃で48時間維持した。各ラウンドの最後に、細胞をスピンダウンし(250×g、10分間)、上清を除去し、新鮮なMV4−11細胞、ロイコボリンおよび任意選択によりMTXを含む新鮮な培地を、
図9Aおよび
図9Cに示される模式図に従って添加した。標的細胞死滅を、実施例4に記載されるように評価およびプロットした。
【0384】
図9Bおよび
図9Dは、示される異なる条件についての、各CD33特異的CARについての平均結果を示す。全体として、試験した条件的CAR Tクローンの3つ全てが、MTXの添加または除去によってモジュレートされ得る、CD33発現標的細胞に対する可逆的親和性を実証した。
【0385】
図9A〜
図9Dの異なるパネルを比較すると、
図9Aおよび
図9Cに示される模式図は、所与のラウンドについてのアッセイの開始時の共培養物中のMTX濃度を示しているが、そのアッセイからの結果は、それぞれ、
図9Bおよび
図9Dでは次のラウンド数によって示されていることに留意されたい。従って、例えば、
図9Aは、ラウンド0ではアッセイの開始時にMTXが存在しなかったことを示す;これらのアッセイからの結果は、
図9Bではラウンド1にプロットされる。次いで、このラウンドの実験を実施した後、新鮮なMV4−11細胞および他のアッセイ試薬をこれらの同じT細胞に添加し(上記のとおり)、MTXもまた共培養物に添加した(ラウンド1について
図9Aの模式図に示されるとおり)。次いで、そのラウンドの共培養物からの結果を、
図9Bではラウンド2にプロットした、など。
【0386】
第1のシナリオ(条件的親和性を有する抗体を含む活性なCAR T細胞の、「オン」から「オフ」にされる能力を試験する)(
図9Aおよび
図9B)では、標的細胞を活発に溶解している条件的CAR T細胞(即ち、ラウンド0〜1で)は、以降の2ラウンドではMTXにより、標的を認識しないように遮断され(即ち、ラウンド1〜2およびラウンド2〜3で)、このとき、条件的T細胞活性は、「形質導入されていない」T細胞に匹敵する背景レベルに戻る。試験した3つのクローンのうち、P07_C04およびP02_D09は、迅速な阻害速度を示し、P03_A01による標的溶解は、完全に阻害されるのに(即ち、標的細胞死滅が背景レベルに戻るのに)2ラウンドのMTXを必要とする。対照として、
図9Bは、ツールCAR T細胞がMTXによって阻害されないことも示している。
【0387】
第2のシナリオ(条件的親和性を有する抗体を含む不活性なCAR T細胞の、「オフ」から「オン」にされる能力を試験する)(
図9Cおよび
図9D)では、MTXと共にインキュベートされる条件的T細胞(即ち、ラウンド0〜1で)は、標的細胞を溶解しないように阻害されるが(
図9D、ラウンド1のデータポイントを参照のこと)、この阻害は、MTXを含まなかった共培養物中で条件的T細胞がインキュベートされる場合、引き続くラウンド(ラウンド1〜2およびラウンド2〜3)では軽減される(
図9D、ラウンド2およびラウンド3のデータポイントを参照のこと)。対照として、
図9Dは、ツールCAR T細胞がMTXによって阻害されないことも示している。
【0388】
従って、この実施例は、条件的CAR T細胞がMTXによって可逆的に阻害され得ることを示している。
【0389】
(実施例10)
EGFR特異的条件的CAR T細胞活性の短期阻害
この実施例は、メトトレキサート(MTX)の存在下および非存在下での、EGFR発現標的細胞に対する条件的親和性を有する種々の異なる抗EGFR抗体を含む条件的CAR T細胞の細胞傷害性を試験する。
【0390】
この実施例において試験した抗EGFRクローンは、P01_F02、P07_H08、P08_D06、P05_A11およびP15_F02であった(各々、例えば、表5、6および7に以前に記載されている)。さらに、形質導入されていないT細胞と同様、EGFR特異的ツールT細胞を調製した。
【0391】
このアッセイで使用した標的細胞株は、EGFRを発現する神経膠芽腫細胞株であるU87MG(American Type Culture Collectionから取得した)であった。実施例4のように、U87MG細胞を形質導入して、GFPおよびホタルルシフェラーゼを安定に発現させた。
【0392】
in vitro細胞傷害性アッセイを、上記各異なるT細胞について、50,000個のT細胞を100,000個のU87MG細胞と共に共培養することによって、96ウェルプレートにおいて実施した。さらに、共培養物の各々は、100μMのMTXまたは0μMのMTXのいずれかを含んだ。両方の条件において、MTX毒性を回避するために、1mMのロイコボリンを補充した。共培養物を、100ulのRPMI 1640培地の最終体積中で、5%CO
2、37℃で48時間維持した。標的細胞死滅を、実施例4に記載されるように評価およびプロットした。
【0393】
図10は、MTXの非存在下または100μMのMTXの存在下での、各EGFR特異的CARについての結果を示す。グラフ中、Y軸は、%標的細胞死滅を示し、X軸は、共培養物中の異なるEGFR特異的CAR T細胞を示す。さらに、各異なるEGFR特異的CARについて、2つのバーが存在する:左側:MTXなし、右側:100μMのMTX(図面のレジェントにも示される)。
図10に示されるように、EGFR特異的条件的CAR T細胞の異なるクローンの全てが、MTXの非存在下と比較して、MTXの存在下で標的細胞に対する有意に低減された細胞傷害活性を示した。対照的に、従来のEGFR特異的CAR T細胞(ツール)は、それらの標的溶解効率に関して、MTXによって影響されなかった。
【0394】
従って、この実験は、CARのscFvに本明細書で提供される条件的親和性を有する抗EGFR抗体を含むCAR T細胞の細胞傷害活性を、MTXによってモジュレートできることを実証している。
【0395】
(実施例11)
MTXアナログを使用したCD33特異的条件的CAR T細胞活性の短期阻害
この実施例は、メトトレキサートのグルタメート尾部において改変された異なるメトトレキサートアナログの存在下での、CD33発現標的細胞に対する条件的親和性を有する種々の異なる抗CD33抗体を含む条件的CAR T細胞の細胞傷害性を試験する。この実施例では、メトトレキサートアナログとして以下が含まれる:i)4つのグルタメート基の鎖に共有結合的に連結されたメトトレキサート(「MTX−G4」)(Moravek Chemicals、CA)およびii)ビオチン化メトトレキサート(「MTX−B」)(Carbosynth、Berkshire、UKによってカスタム合成されたもの)。
【0396】
この実施例で試験した抗CD33クローンは、P07_C04、P02_D09、P02_E08およびP03_H04であった。さらに、ツールT細胞を、形質導入されていないT細胞と同様、実施例4に記載されるように調製した。また、上記異なる条件的CAR T細胞の各々を、2人の異なるヒトドナー由来のPBMC細胞から二連で生成した。
【0397】
このアッセイで使用した標的細胞株は、CD33を発現するMV4−11(American Type Culture Collectionから取得した)であった。実施例4に記載されるように、MV4−11細胞を形質導入して、GFPおよびホタルルシフェラーゼを安定に発現させた。
【0398】
in vitro細胞傷害性アッセイを、上記各異なるT細胞について、50,000個のT細胞を100,000個のMV4−11細胞と共に共培養することによって、96ウェルプレートにおいて実施した。さらに、共培養物の各々は、以下のMTX関連条件のうち1つを含んだ:100μMのMTX、0μMのMTX、100μMのMTX−G4または100μMのMTX−B。全ての条件において、MTX毒性を回避するために、1mMのロイコボリンを補充した。共培養物を、100ulのRPMI 1640培地の最終体積中で、5%CO
2、37℃で48時間維持した。標的細胞死滅を、実施例4に記載されるように評価およびプロットした。
【0399】
図11は、MTXの非存在下、または100μMのMTX、MTX−G4もしくはMTX−Bの存在下での、各CD33特異的CARについての平均結果を示す。グラフ中、Y軸は、%標的細胞死滅を示し、X軸は、共培養物中の異なるCD33特異的CAR T細胞を示す。さらに、各異なるT細胞について、左から右に、以下の4つのバーが存在する:0μMのMTX、100μMのMTX、100μMのMTX−G4および100μMのMTX−B(図面のレジェントにも示される)(0%の標的細胞死滅を有したので、形質導入されていない細胞についてのバーは存在しない)。
図11に示されるように、条件的CAR T細胞の異なるクローンの全てが、MTXの非存在下と比較して、MTX、MTX−G4またはMTX−Bの存在下で標的細胞に対する有意に低減された細胞傷害活性を示した。対照的に、従来のCAR T細胞(ツール)は、それらの標的溶解効率に関して、MTX、MTX−G4またはMTX−Bの存在に対して非感受性であった。
【0400】
従って、この実験は、CARのscFvに本明細書で提供される条件的親和性を有する抗CD33抗体を含むCAR T細胞の細胞傷害活性を、MTX、またはポリグルタメート(MTX−G4)およびビオチン(MTX−B)を含むコンジュゲート分子に共有結合的に連結されたMTXによってモジュレートできることを実証している。
【0401】
開示された教示は、種々の適用、方法、キットおよび組成物に関して記載されてきたが、種々の変化および改変が、本明細書の教示および以下の特許請求された本発明から逸脱することなしになされ得ることが理解される。上述の実施例は、開示された教示をよりよく説明するために提供されるのであって、本明細書に提示された教示の範囲を限定する意図はない。本明細書の教示は、これらの例示的な実施形態に関連して記載されてきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数のバリエーションおよび改変が、過度の実験なしに可能であることを容易に理解する。全てのかかるバリエーションおよび改変は、本明細書の教示の範囲内である。
【0402】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用された全ての参考文献、およびそれらの中で引用された参考文献は、まだ引用されていない範囲まで、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。定義された用語、用語の用法、記載された技術などが含まれるがこれらに限定されない、組み込まれた文献および同様の資料のうち1つまたは複数が、本出願とは異なる場合または本出願と矛盾する場合には、本出願が支配する。
【0403】
上述の説明および実施例は、本発明のある特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らが企図する最良の形態を記載している。しかし、上述の詳細がいくらテキスト中に現れていても、本発明が多くの方法で実施され得、本発明が、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることが、理解される。