特表2020-512997(P2020-512997A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-512997(P2020-512997A)
(43)【公表日】2020年4月30日
(54)【発明の名称】局所用ドキシサイクリン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/65 20060101AFI20200403BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20200403BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20200403BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20200403BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20200403BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200403BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200403BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20200403BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20200403BHJP
【FI】
   A61K31/65
   A61K47/06
   A61K47/44
   A61K47/14
   A61K9/16
   A61K47/10
   A61K9/08
   A61K47/40
   A61K9/107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-554631(P2019-554631)
(86)(22)【出願日】2018年4月3日
(85)【翻訳文提出日】2019年10月30日
(86)【国際出願番号】EP2018058447
(87)【国際公開番号】WO2018185078
(87)【国際公開日】20181011
(31)【優先権主張番号】1752853
(32)【優先日】2017年4月3日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】512271505
【氏名又は名称】オルス、ファルマ
【氏名又は名称原語表記】HORUS PHARMA
(71)【出願人】
【識別番号】596096180
【氏名又は名称】ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ
(71)【出願人】
【識別番号】305023584
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ド・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィック
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】デュバル、マリオン
(72)【発明者】
【氏名】ブルジョワ、サンドリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】フェシ、アテム
(72)【発明者】
【氏名】クラレ、マルティーヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA13
4C076AA17
4C076AA29
4C076BB24
4C076BB31
4C076CC10
4C076CC18
4C076CC31
4C076CC47
4C076DD34
4C076DD46
4C076EE39
4C076EE55
4C076FF36
4C076FF65
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA29
4C086MA05
4C086MA55
4C086MA58
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA10
4C086ZA33
4C086ZA89
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、特に眼および瞼への、局所適用のための、ドキシサイクリンを含む新規の医薬組成物に関する。本発明は、皮膚および粘膜の細菌感染の治療における使用のためのこの局所用組成物にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドキシサイクリンの局所適用のための無水医薬組成物であって、
a) ペトロラタムのみまたはラノリンが加えられたペトロラタムから選択される半固体疎水性材料a1)からなる、局所適用にとって好適な無水ビヒクルであって、場合により、パラフィン、C〜C12脂肪酸の飽和ジエステルまたはトリエステルから選択される液体疎水性材料a2)と混合された、無水ビヒクルと、
b) b1)20μm以下の粒子サイズを有する微粉化された粉末の固体形態およびb2)無水ポリオール中における溶液の形態から選択される、前記皮膚または粘膜への適用にとって好適な形態のドキシサイクリンと
を含んでなることを特徴とする、無水医薬組成物。
【請求項2】
前記ドキシサイクリンが、ドキシサイクリンヒクラートおよびドキシサイクリン一水和物から選択されるドキシサイクリン塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ドキシサイクリンが、微粉化された粉末の固体形態b1)であり、かつ液体疎水性材料と半固体疎水性材料との質量比が、50/50から10/90の範囲である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記無水ポリオール中における溶液のドキシサイクリンの濃度が、前記溶液b2)の総質量に対して、0.001質量%から3質量%の範囲である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
無水ポリオール中における前記溶液b2)が、1種または複数種のシクロデキストリンを含む、請求項1または4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶液b2)が、
−0.03%(m/m)から2.0%(m/m)のドキシサイクリンヒクラートと、
−0%(m/m)から4.4%(m/m)のシクロデキストリンと、
−93.6%(m/m)から99.97%(m/m)のポリオールと
を含むものである、請求項1、4、または5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
親油性物質中親水性物質型(H/L)エマルションであり、前記ポリオール中ドキシサイクリン溶液b2)が、前記無水ビヒクルによって囲まれる小球体を形成する、請求項1または4〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ポリオール溶液b2)の前記小球体が、50μm以下のサイズを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ポリオール溶液b2)の前記小球体が、20μmから30μmの間のサイズを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ドキシサイクリンが、無水ポリオール中における溶液の前記形態であり、パラフィンとペトロラタムとの質量比が、50/50から0/100の範囲である、請求項1または4〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ドキシサイクリン含有量が、0.001%(m/m)から1%(m/m)の間である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ドキシサイクリン含有量が、0.01%(m/m)から0.1%(m/m)の間である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記粘膜または皮膚の細菌感染、特に、麦粒腫、感染性結膜炎、感染性角膜炎、眼瞼炎、マイボーム腺機能不全、虹彩炎(前眼部ぶどう膜炎)、管炎、および酒さ、の治療における使用のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
パッケージング、およびドキシサイクリンの実質的な分解なしでの数か月の貯蔵のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、当該組成物が、局所適用のために当該組成物を送達するために、好適な医薬品用容器にパッケージされてなるものである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に眼および瞼への、局所適用のための、ドキシサイクリンを含む新規の医薬組成物に関する。本発明は、皮膚および粘膜の細菌感染の治療における使用のためのこの局所用組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
ドキシサイクリンは、経口投与に適合された医薬組成物、実質的に、ドキシサイクリンの様々な投与量を伴う様々な形態の錠剤、において主に経口投与されるテトラサイクリン系抗生物質である。静脈内注入としての投与にとって好適な液体形態も存在する。当該有効成分は、ヒクレート(hyclate)または一水和物として使用される。
【0003】
主に、そのような組成物中の有効成分の安定性および保存性の問題から、市販の製剤で、当該製造物の局所投与にとって好適なものはない。実際に、局所適用にとって好適な医薬組成物は、6か月またはさらに最長2年までの貯蔵において当該製造物がほとんど分解されないような(通常、5%未満)、それらの保存に関する厳しい仕様を満たさなければならない。しかしながら、ドキシサイクリンは水との接触において分解し、このことは、従来の局所製剤の形態での使用に対してドキシサイクリンを不適当にしている。
【0004】
文献において報告されるドキシサイクリンの唯一の局所適用は、非常に特異的な疾患のための大量の抗生物質を含む即時的な形態である。例えば、ロシア特許第2095065号では、ハンセン病患者の潰瘍および熱傷の治療のための、1%を超えるドキシサイクリン含有量の即時的な局所用組成物について開示されている。米国特許出願公開第2006/0172982号では、感染症および炎症(アレルギー、風邪など)を治療および予防するための、10%超から50%までのドキシサイクリンを伴う組成物について開示されている。中国特許出願公開第10653817号には、70μmを超える粒径を有する粉末形態での、2%超から20%超までのドキシサイクリンを伴う組成物が記載されている。これらの高いレベルは、貯蔵寿命の短い即時的な製剤によく合致しており、高含有量は、有効成分の損失を補うために機能する。
【0005】
本発明は、経時において安定な局所用ドキシサイクリン組成物による粘膜および皮膚の細菌感染の治療のための新規の溶液剤を可能にする。
【発明の概要】
【0006】
ドキシサイクリンの安定性の問題を解決するために、本発明は、
a)ペトロラタムのみまたはラノリンが加えられたペトロラタムから選択される半固体疎水性材料a1)からなる局所適用にとって好適な無水ビヒクルであって、場合により、パラフィン、C〜C12脂肪酸の飽和ジエステルまたはトリエステルから選択される液体疎水性材料a2)と混合された、無水ビヒクルと、
b)皮膚または粘膜への適用にとって好適な形態のドキシサイクリンと
を含むことを特徴とする、ドキシサイクリンの局所適用のための無水医薬組成物に関する。
【0007】
好ましくは、皮膚または粘膜への適用にとって好適な形態のドキシサイクリンは、ドキシサイクリンヒクラートおよびドキシサイクリン一水和物、好ましくはドキシサイクリンヒクラート、から選択されるドキシサイクリン塩である。
【0008】
ドキシサイクリン、特に、ヒクレートまたは一水和物、優先的にはヒクレート、は、b1)粉末状または微粉化された固体形態であり得るか、あるいは、b2)好ましくは、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、メチレングリコール、および200から1500の分子量を有するポリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物から選択される、室温(15℃〜25℃)において液体形態の無水ポリオール中における溶液、であり得る。
【0009】
ドキシサイクリン、特にヒクレート、の濃度は、0.001%(m/m)から1%(m/m)の間、好ましくは0.005%(m/m)から0.5%(m/m)の間、より優先的には0.01%(m/m)から0.1%(m/m)の間である。
【0010】
本発明は、粘膜および皮膚の細菌感染の治療における使用のためのこの局所用組成物にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】25℃および40℃における、時間の関数としての水溶液中の0.1%のドキシサイクリンヒクラートの安定性曲線を示す。
図2】25℃における、時間の関数としてのシクロデキストリンの有無におけるグリセロール溶液中の0.1%のドキシサイクリンヒクラートの安定性曲線を示す。
図3】25℃における、時間の関数としてのシクロデキストリンの存在下での0.1%のドキシサイクリンヒクラートの無水製剤の安定性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明による組成物は、医薬組成物、すなわち、ヒトまたは動物に投与されることを目的としている組成物であり、したがって、これらの組成物の設計および調製のための国際的に認められた健康要件(health requirement)を満たしている。特に、賦形剤、それらの使用、および分析方法は、製薬分野、特に薬局方、例えば、有効な、ヨーロッパ薬局方(Ph.Eur.)、米国薬局方協会(USP)、および日本薬局方(JP)など、における要求事項に従う企業の技能者に既知である。
【0013】
本発明による組成物は、有効成分の分解のリスクを抑制するために、無水組成物である。このために、当該組成物の成分は無水であり、すなわち、有効なヨーロッパ薬局方によって示される測定方法、例えば、カールフィッシャー法など、により測定した場合、0.5%未満、好ましくは0.2%未満の残留水分含量を有する。
【0014】
本発明による組成物は、局所適用にとって、すなわち、皮膚および/または粘膜への直接適用にとって好適である。特に、本発明による組成物は、眼科用組成物であり、眼、眼粘膜への適用、または眼の付近、瞼への適用を目的としており、その場合、当該製造物は、眼および眼粘膜に移動することができる。眼科用組成物に対して、微生物汚染および/または副作用、例えば、眼および眼粘膜の脆弱性に起因する眼刺激性など、のリスクを避けるために、賦形剤の選択、それらの品質、および調製方法に対して、特別な注意が払われる。
【0015】
本発明による組成物は、局所用医薬組成物、特に眼科用組成物、のための従来の容器、特にチューブまたはバイアル瓶、におけるパッケージングにとっても好適である。当該パッケージングは、単回用量または複数回用量使用にとって好適であり、場合によっては適用される量を投薬する手段を伴うかまたは伴わない。パッケージング後、本発明による組成物は、ドキシサイクリンの実質的な分解なしに、数か月間貯蔵することができる。
【0016】
半固体疎水性材料a1)は、有利には、単独の、または当業者にとって通例の割合においてラノリンを加えた、ワセリンまたは黄色ワセリンとしても知られるペトロラタムからから選択される。ペトロラタム/ラノリン混合物は、ラノワセリン(lanovaseline)とも呼ばれ、当該ラノワセリンにおいて、ラノリンは、混合物の総重量の50%まで、概して20%から30%の範囲において存在し得る。
【0017】
本発明の好ましい実施形態により、当該半固体疎水性材料a1)は、ワセリンである。
【0018】
当該液体疎水性材料a2)は、パラフィン、C〜C12脂肪酸のジエステルまたはトリエステル、ならびにそれらの混合物および誘導体から選択される。調剤において使用されるこれらの製品は、当業者に周知である。脂肪酸の飽和ジエステルまたはトリエステルは、ヒドロキシルが脂肪酸でエステル化された、ジオールまたはトリオールのエステルである。特に、中鎖トリグリセリド(MCT)、例えば、グリセリンおよびカプリン酸トリエステルおよびカプリル酸トリエステルなど、特にMiglyol(登録商標)810または812あるいはLabrafac(登録商標)Lipophileの名前で市販されているもの、が挙げられ得る。合成製品、例えば、Labrasol(登録商標)の名前で市販されているポリオキシエチレンC〜C12脂肪酸エステルなど、も挙げられ得る。
【0019】
本発明の特定の実施形態により、当該液体疎水性材料a2)は、パラフィンである。
【0020】
液体疎水性材料と半固体疎水性材料との質量比は、好ましくは、50/50から0/100の範囲である。当該混合物中における液体疎水性材料a2)の含有量は、最終組成物に対して求められる特性、特にその粘度および使い易さによって変わるであろうし、したがって、例えば、皮膚または粘膜への適用が求められるかどうか、または当該組成物が皮膚または粘膜と接触状態に維持されなければならない時間によって変わるであろう。
【0021】
当業者は、使用されるであろうドキシサイクリンの形態も考慮して、液体疎水性材料a2)の含有量を決定することができるであろう。好ましくは、当該ドキシサイクリンは、ドキシサイクリンヒクラートおよびドキシサイクリン一水和物、好ましくはドキシサイクリンヒクラート、から選択されるドキシサイクリン塩の形態である。
【0022】
本発明の第一実施形態により、当該ドキシサイクリン、特にドキシサイクリンヒクラートは、眼軟膏剤にとって好適なサイズの固体粒子b1)の形態である。有利には、当該粒子サイズは、20μm以下である。この粒子サイズは、ヨーロッパ薬局方に記載される有効な粒子分析の一般的方法、例えば、レーザー回折粒径分析など、に従って測定される。当該組成物中における微粒子形態のドキシサイクリン、特にヒクレート、の最終濃度は、0.001%(m/m)から1%(m/m)の間、好ましくは0.005%(m/m)から0.5%(m/m)の間、より優先的には0.01%(m/m)から0.1%(m/m)の間である。
【0023】
この場合、局所適用にとって好適な無水ビヒクルは、有利には、50/50から10/90の範囲の質量比の液体疎水性材料/半固体疎水性材料の混合物からなるであろう。
【0024】
本発明の第二実施形態により、当該ドキシサイクリン、特にドキシサイクリンヒクラートは、無水ポリオール中における溶液b2)の形態である。当該薬局方に記載のこれらの無水ポリオールは、有利には、グリセロール、プロピレングリコール、200から1500の範囲の分子量を有するポリエチレングリコール、およびそれらの混合物から選択される。
【0025】
200から1500の分子量を有する当該ポリエチレングリコールは、有利には、マクロゴール400、600、および1500から選択される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態により、当該ポリオールはグリセロールである。
【0027】
好ましくは、当該ポリオール中におけるドキシサイクリン、特にドキシサイクリンヒクラートの濃度は、当該溶液の総質量に対して0.001質量%から3.0質量%の範囲である。
【0028】
当該ポリオール中におけるドキシサイクリン、特にドキシサイクリンヒクラート、の溶液は、1種または複数種のシクロデキストリンも含み得る。薬局方に記載のシクロデキストリンは、当業者に周知である。特に、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが挙げられ得る。
【0029】
この場合、当該ポリオール中におけるシクロデキストリンの濃度は、有利には、当該溶液の総質量に対して0.01%質量から4.4質量%の範囲であり得る。
【0030】
本発明の特定の実施形態により、当該溶液は、
−0.03%(m/m)から2.0%(m/m)のドキシサイクリン、特に、ドキシサイクリンヒクラート、
−0%(m/m)から4.4%(m/m)のシクロデキストリン、および
−93.6%(m/m)から99.97%(m/m)のポリオール
を含む。
【0031】
より詳しくは、当該ドキシサイクリン、特にドキシサイクリンヒクラート、シクロデキストリン、およびポリオールの合計は、当該溶液の100質量%を表し、すなわち、当該溶液は、ドキシサイクリンと、ポリオールと、必要であればシクロデキストリンとのみからなる。
【0032】
そのような溶液は、溶液調製の一般的な方法に従って調製される。
【0033】
ドキシサイクリン、特にドキシサイクリンヒクラートは、完全に溶解するまで磁気撹拌しながら、ポリオールに加えられる。結果として得られる混合物は透明である。
【0034】
シクロデキストリン、特にドキシサイクリンヒクラートおよびシクロデキストリンの調製は、以下の条件下において実施される:
−シクロデキストリンをポリオールに加え、1時間から5時間、好ましくは2時間から4時間、磁気撹拌する。
−次いで、ドキシサイクリンを当該混合物に加え、16時間から20時間、磁気撹拌する。
−結果として得られた混合物は透明である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態により、当該組成物は、「親油性物質中親水性物質型(hydrophile in lipophile:H/L)」エマルションであり、ポリオール中におけるドキシサイクリン(b)、特にドキシサイクリンヒクラートの当該溶液は、無水ビヒクル(a)によって囲まれた小球を形成する。ポリオール溶液の小球体は、50μm以下、有利には20μmから30μmの間のサイズを有する。
【0036】
特にエマルション形態の、本発明による局所用組成物における、無水ポリオール中における溶液形態のドキシサイクリン、特にヒクレートの最終濃度は、0.001%(m/m)から1%(m/m)の間、好ましくは0.005%(m/m)から0.5%(m/m)の間、より優先的には0.01%(m/m)から0.1%(m/m)の間である。
【0037】
本発明は、特に医薬組成物としての、または医薬組成物の調製のための、より詳しくは上記および下記において説明されるようなH/Lエマルションの形態の局所用組成物の調製のための、中間体組成物としての、そのようなものとして以前に定義されたポリオール中におけるドキシサイクリンの溶液にも関する。
【0038】
有利には、本発明による組成物は、防腐剤無添加の組成物である。病原菌による汚染を防ぐために局所用組成物(医薬品、化粧品など)において一般的に使用される防腐剤は、当業者に周知であり、そのような防腐剤として、第四級アンモニウム、特に塩化ベンザルコニウム、アルキル−ジメチル−ベンジルアンモニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、臭化ベンゾドデシニウム(benzododecinium bromide)、塩化ベンゼトニウム、塩化セタルコニウム、水銀防腐剤、例えば、硝酸フェニル水銀/酢酸フェニル水銀/ホウ酸フェニル水銀、チオメルサールなど、アルコール防腐剤、例えば、エタノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルエチルアルコールなど、カルボン酸、例えば、ソルビン酸など、フェノール、特にメチル/プロピルパラベン、アミジン、例えば、グルコン酸クロルヘキシジンなど、および/または少なくとも1種の他の防腐剤との組み合わせにおけるキレート化剤、例えば、EDTAなど、が挙げられる。
【0039】
本発明により、「防腐剤無添加」は、「防腐剤無添加」の表示に合うように、そのような防腐剤を実質的に含まない組成物を意味する。その防腐剤含有量は、10ppm以下、より詳しくは1ppm以下、優先的には0ppmに等しく、その組成物に防腐剤は含まれない。
【0040】
防腐剤の不在下において、当該組成物は、微生物(例えば、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、肺炎球菌(pneumococci)、エンテロコッカス・フェカーリス(Streptococcus faecalis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、肺炎かん菌(Klebsiella pneumoniae)、モラクセラ属(Moraxella)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、大腸菌(Escherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae))による汚染を避けるためおよび防ぐために、その調製およびパッケージングの際に特殊な処理を受けなければならない。これらの処理および手順は、当業者にとって周知である。この意味において、本発明による防腐剤無添加の組成物は、任意の特定の注意を示すことなく、または本発明による組成物、特に眼科用組成物、の無菌特性を得るためのプロセスのステップを説明することなく得られる、同じ成分を含む簡素な組成物と区別される。
【0041】
特に、本発明は、以下の局所用組成物に関する。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
本発明による組成物の調製は、当業者に既知の一般的な方法により実施され、特に、無菌の防腐剤無添加の組成物を調製するためおよびそれらをパッケージングするために注意が必要とされる。
【0046】
本発明はさらに、ドキシサイクリンの実質的な分解なしに、局所適用のためおよび数か月の貯蔵のために当該組成物を送達するための適切な医薬品用容器でのパッケージングのための、本発明による組成物の使用にも関する。
【0047】
本発明は、粘膜または皮膚、特に瞼および/または眼粘膜、の細菌感染の治療における使用のための、上記において定義される組成物に関する。
【0048】
本発明はさらに、粘膜または皮膚、特に瞼および/または眼粘膜、の細菌感染を治療するための方法であって、本発明による組成物の適切な量が、感染部位および/またはその付近に適用され、ならびに作用することができる、方法にも関する。当該適用は、必要であれば、有利には、当該感染の症状が無くなるまで繰り返されるであろう。
【0049】
当該組成物は、疾患、例えば、麦粒腫、感染性結膜炎、感染性角膜炎、眼瞼炎、マイボーム腺機能不全、虹彩炎(前眼部ぶどう膜炎)、管炎、および酒さなど、のために、テトラサイクリン感受性細菌、例えば、スタフィロコッカス・エピデルミディス、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、肺炎球菌、エンテロコッカス・フェカーリス、緑膿菌、セラチア・マルセッセンス、肺炎かん菌、モラクセラ属、コリネバクテリウム属、アシネトバクター属、大腸菌(E.coli)、インフルエンザ菌に起因する状態に対して、有利に使用されるであろうし、または当該方法は、それらに対して有利に実践されるであろう。
【実施例】
【0050】
材料および方法
適した分散システムを備える真空ミキサーを使用して、様々な製剤を調製する。
【0051】
分散された固体有効成分を含有する疎水性軟膏剤の形態での調製は、以下の方法に従って実施される:
−当該液体疎水性材料/半固体疎水性材料基剤を、全ての成分を混和するために70℃の水浴において混合することによって配合する。
−当該混合物の温度を45℃に下げ、当該疎水性基剤を45℃の温度のミキサーに移す。
−ドキシサイクリンヒクラートを当該ミキサーに加え、全体を80%に減圧する。
−当該配合物を45℃において700rpmで30分間撹拌し、次いで、当該混合物全体の温度を37℃に下げる。
−得られた軟膏剤をパッケージし、室温まで冷却する。
【0052】
ポリオール中における溶液の当該有効成分を含有するH/Lエマルションの形態での調製は、以下の方法に従って実施される:
−当該液体疎水性材料/半固体疎水性材料基剤(相Aと呼ぶ)を、全ての成分を混和するために75℃の水浴において混合することによって配合する。
−液体疎水性材料と半固体疎水性材料との質量比が0/100の場合、当該半固体疎水性材料は、45℃において当該ミキサーに直接加えられる。
−相Aの温度を45℃に下げ、次いで、相Aを45℃の温度のミキサーに移す。
−ドキシサイクリンヒクラートをポリオール(相Bと呼ぶ)に加え、完全に溶解するまで磁気撹拌し、次いで、当該溶液の温度を45℃に上げる。
−相Aおよび相Bが同じ温度の場合、撹拌しながら相Bを相Aに加えることにより、エマルションを形成する。
−当該エマルションを45℃において700rpmで30分間撹拌し、次いで、当該混合物全体の温度を37℃に下げる。
−結果として得られるエマルションをパッケージし、室温まで冷却する。
【0053】
ポリオール中における溶液の当該有効成分およびシクロデキストリンを含有するH/Lエマルションの形態での調製は、以下の方法に従って実施される:
−当該液体疎水性材料/半固体疎水性材料基剤(相Aと呼ぶ)を、全ての成分を混和するために75℃の水浴において混合することによって配合する。
−液体疎水性材料と半固体疎水性材料との質量比が0/100の場合、当該半固体疎水性材料は、45℃において当該ミキサーに直接加えられる。
−相Aの温度を45℃に下げ、次いで、相Aを45℃の温度のミキサーに移す。
−シクロデキストリンをポリオール(相Bと呼ぶ)に加え、磁気撹拌し、次いで、ドキシサイクリンヒクラートを相Bに加えて、全ての成分が完全に溶解するまで磁気撹拌し、当該溶液の温度を45℃に上げる。
−相Aおよび相Bが同じ温度の場合、撹拌しながら相Bを相Aに加えることにより、エマルションを形成する。
−当該エマルションを45℃において700rpmで30分間撹拌し、次いで、当該混合物全体の温度を37℃に下げる。
−結果として得られるエマルションをパッケージし、室温まで冷却する。
【0054】
製剤中の有効成分のアッセイのために、以下の抽出を実施する:
−1.0gの当該配合物を、10.0gの水において希釈し、好適な撹拌システムにより、45℃で30分間撹拌する。
−0.45μmのナイロンフィルターによるろ過後、高速液体クロマトグラフィアッセイのために、移動相の希釈を実施する。
【0055】
有効成分含有量は、以下の高速液体クロマトグラフィ法によって特定される:
−カラム:XTerra(登録商標)RP8 5μm 4.6×250mm
−移動相:
・65%の、0.13%のシュウ酸を含有する水
・22%のアセトニトリル
・13%のメタノール
−流量:1.0mL/分
【0056】
安定性試験
安定性試験は、25℃および40℃の温度において実施される。
【0057】
図1に示されるように、0.1%の水溶液中において、ドキシサイクリンは、急速に分解する。
【0058】
β−シクロデキストリンを伴うまたは伴わないグリセロール(0.1%のドキシサイクリンヒクラート)中において、本発明による組成物は、図2に示されるように、ドキシサイクリンの分解が全くないかまたはわずかな分解による(測定の誤差のマージンを考慮して)それらの高い安定性を示す。
【0059】
本発明による25℃での局所用製剤中において、図3に示されるように、0.1%のドキシサイクリンヒクラートにおける無水製剤。
【0060】
組成物の例
以下の組成物の調製のために、半固体疎水性材料として白ワセリン(ペトロラタム)が使用され、液体疎水性材料として流動パラフィンが使用される。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
図1
図2
図3
【国際調査報告】