(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-513006(P2020-513006A)
(43)【公表日】2020年4月30日
(54)【発明の名称】アファチニブジマレアートの新規形態
(51)【国際特許分類】
C07D 405/12 20060101AFI20200403BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20200403BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20200403BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20200403BHJP
【FI】
C07D405/12CSP
A61K31/517
A61P35/00
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-554766(P2019-554766)
(86)(22)【出願日】2018年4月6日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月29日
(86)【国際出願番号】US2018026383
(87)【国際公開番号】WO2018187643
(87)【国際公開日】20181011
(31)【優先権主張番号】62/482,546
(32)【優先日】2017年4月6日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, ロナルド
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB08
4C063CC73
4C063DD31
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC46
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB26
(57)【要約】
本開示は、形態Zと命名された、約2から3個の水の分子アファチニブジマレアートの結晶質水和形態、同形態を含む薬学的組成物、患者を治療するためのその使用方法、及びその調製のための方法を目的とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形態Zと命名された、約2から3個の水の分子を有するアファチニブジマレアートの結晶質水和形態。
【請求項2】
2θを単位として約11.1、約10.7及び約6.6にX線粉末回折ピークを含む、請求項1に記載の形態Z。
【請求項3】
2θを単位として約5.3、約5.8 及び約21.6に一又は複数のX線粉末回折ピークをさらに含む、請求項2に記載の形態Z。
【請求項4】
2θを単位として約25.4、約10.3及び約20.9に一又は複数のX線粉末回折ピークをさらに含む、請求項3に記載の形態Z。
【請求項5】
オングストロームを単位として約8.0、約8.3及び約13.4にd間隔で一又は複数のX線粉末回折ピークを含む、請求項1に記載の形態Z。
【請求項6】
オングストロームを単位として約16.8、約15.2及び約4.1にd間隔で一又は複数のX線粉末回折ピークをさらに含む、請求項5に記載の形態Z。
【請求項7】
オングストロームを単位として約3.5、約8.6及び約4.3にd間隔で一又は複数のX線粉末回折ピークをさらに含む、請求項6に記載の形態Z。
【請求項8】
示差走査熱量測定によって測定される、約95.5℃での吸熱事象を特徴とする、請求項1に記載の形態Z。
【請求項9】
示差走査熱量測定によって測定される、約128.3℃での吸熱事象を特徴とする、請求項1に記載の形態Z。
【請求項10】
請求項1に記載の形態Z及び薬学的に許容される賦形剤の薬学的有効量を含む薬学的組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の薬学的製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、患者の疾患を治療する方法。
【請求項12】
疾患が肺がんである、請求項12に記載の疾患を治療する方法。
【請求項13】
アファチニブジマレアートを、2−ブタノール及び水に曝露して形態Zを得ることを含む、請求項1に記載の形態Zを作製する方法。
【請求項14】
アファチニブ遊離塩基及び2−ブタノールを含む溶液を、マレイン酸の水溶液に曝露して形態Zを得ることを含む、請求項1に記載の形態Zを作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アファチニブジマレアートの新規形態と、同形態を調製するための方法とに関する。本開示はまた、アファチニブジマレアートの新規形態を含む薬学的組成物と、アファチニブジマレアートの新規形態を用いて疾患を治療するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
化学名(2E)−N−[4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−[(3S)−オキソラン−3−イル]オキシ)キノキサゾリン−6−イル]−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エナミド、又は代替的にN−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[[(3S)−テトラヒドロ−3−フラニル]オキシ]−6−キナゾリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2 ブテンアミドを有するアファチニブは、抗新生物活性を有する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)上皮増殖因子受容体(ErbB;EGFR)ファミリーの、経口で生体利用可能な阻害剤である。アファチニブは以下の構造を有する。
【0003】
アファチニブは、商品名GILOTRIF
TMで
市販されており、以下の構造を有するアファチニブジマレアートである。
GILOTRIF
TMは、FDA承認試験により検出される上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン19欠失又はエクソン21(L858R)置換変異を有する腫瘍を持つ、転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の第一選択治療に適応されている。
【0004】
アファチニブ及びその塩の結晶形態は、国際公開第2005037824号、同第2012/121764号、同第2013/052157号、同第2015/103456号、同第2016/027243号、同第2016/001844号、同第2016/051380号、及び同第2016/079313号に記載されている。国際公開第2005037824号に記載されているアファチニブジマレアートの形態Aは、40℃、75% RH条件下において、11日目までに完全に水和種に変化する。アファチニブ及びその塩の複数の異なる結晶形態が生じることで、別個の結晶構造と、融点、熱挙動のような物理的特性を有する様々な多形体がもたらされる。化合物の多形形態は、所望の特性、例えば扱い易さ、処理の容易さ、製剤化の容易さ、貯蔵安定性、精製の容易さ、改善された溶解又はバイオアベイラビリティ、又は別の望ましい多形形態への変換を容易にする形態を有するという点で重要である。したがって、アファチニブジマレアートの新規の多形形態は、所望の特性を有する化合物を提供するうえで有用である。少なくともこれら理由のために、アファチニブジマレアートの新しい多形形態に対する需要が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、約2から3個の水の分子を有するアファチニブジマレアートの、新規の結晶質水和形態を目的としており、この形態を本明細書で形態Zという。本発明はさらに、形態Zの調製のための方法を目的としている。本発明はまた、形態Zを含む薬学的組成物と、形態Zを用いて疾患を治療するための方法とを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】2θの単位で表された形態Zの代表的なXRPDパターンを示している。
【
図2】形態Zの代表的な示差走査熱量測定(「DSC」)及び熱重量分析(「TGA」)のグラフである。
【
図3】形態Zの代表的なプロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、約2から3個の水の分子を有するアファチニブジマレアートの新規の結晶質水和形態(本明細書では形態Zと呼ぶ);前記形態を有する薬学的組成物、その調製方法、及び治療が必要な生理的状態を有する患者を治療するためのその使用を目的とするものであり、これらについて以下に詳述する。
【0008】
特に断らない限り、本明細書において使用される用語「約」及び「概ね」は、特定の固体形態の特徴を明らかにするために提供される数値又は値の範囲(例えば融解、脱水、脱溶媒和又はガラス転移事象を含む、例えばDSC又はTGAの熱的事象を説明する特定の温度又は温度範囲;例えば温度又は湿度の関数としての質量変化といった質量変化;例えば質量又はパーセンテージを単位とする、溶媒又は水含有量;或いは、例えばIR分光法若しくはラマン分光法又はXRPDによる分析におけるピーク位置)は、その値又は値の範囲が、その特定の固体形態を依然として説明しながら、当業者が妥当とみなす程度だけ逸脱していてもよいことを示す。
【0009】
特に断らない限り、本明細書において使用される用語「薬学的組成物」は、形態Z及び薬学的に許容される添加物の薬学的有効量を包含することを意図している。本明細書において使用される用語「薬学的組成物」には、錠剤、ピル、粉末、液体、懸濁液、エマルション、顆粒、カプセル、坐薬又は注射薬といった薬学的組成物が含まれる。
【0010】
特に断らない限り、本明細書において使用される用語「結晶質」及び本明細書において使用される関連用語は、化合物、物質、修飾、材料、成分又は生成物を説明するために使用されるとき、特に断らない限り、その化合物、物質、修飾、材料、成分又は生成物が、X線回折によって決定されると実質的に結晶質であることを意味する。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition, Lippincott, Williams and Wilkins, Baltimore, Md. (2005); The United States Pharmacopeia, 23rd ed., 1843-1844 (1995)を参照されたい。
【0011】
特に断らない限り、本明細書において使用される用語「賦形剤」は、薬学的に許容される有機又は無機の担体物質を指す。賦形剤は、有効な活性成分を含有する製剤の嵩を増やす目的で(したがって「増量剤」「充填剤」又は「希釈剤」と呼ばれることがある)、又は薬物の吸収率又は溶解度を高めるなど、最終剤形中の活性成分に治療効果の増進を付与することを意図して含まれる、医薬の活性成分と共に配合された天然又は合成の物質とすることができる。賦形剤は、予想貯蔵寿命期間中の変性を防止するなどin vitroでの安定性を補助することに加えて、粉末の流動性又は非接着性を高めるなどにより活性物質の取り扱いを補助するために、製造過程においても有用でありうる。
【0012】
特に断らない限り、本明細書において使用される用語「患者」は、治療、観察又は実験の対象である動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。好ましくは、患者は、治療及び/又は予防される疾患又は障害の少なくとも一つの症候を経験している及び/又は呈している。さらに、患者は、治療及び/予防される障害、疾患又は状態のいずれの症候も呈していなくともよいが、医師、臨床医又はその他の医療専門家によって前記障害、疾患又は状態を生じるリスクがあるとみなされている。
【0013】
特に断らない限り、本明細書において使用される用語「多形体」、「多形形態」又は本明細書中の関連用語は、二つ以上の形態で存在することのできる分子の結晶形又はその塩を指し、結果として分子又はその塩の様々な構成又はコンホメーションを指す。多形体の結晶格子中のイオン
【0014】
特に断らない限り、本明細書において使用される用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、疾患又は障害の根絶又は改善、或いは疾患又は障害に関連付けられる一又は複数の症候の根絶又は改善を指す。一部の実施態様では、これら用語は、疾患又は障害の拡大又は悪化を、そのような疾患又は障害を有する患者への一又は複数の治療剤の投与の結果として最小化することを指す。いくつかの実施態様では、これら用語は、特定の疾患の症候の開始後に、他の追加的活性剤を伴って又は伴わずに、本明細書に提供される化合物を投与することを指す。アファチニブジマレアートは、上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン19欠失又はエクソン21(L858R)置換変異を有する腫瘍を持つ、転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の第一選択治療に適応されている。アファチニブジマレアートは、白金ベースの化学療法後に進行する転移性扁平NSCLCを有する患者の治療にも適応されている。GILOTRIF
TMは、40mgの錠剤、30mgの錠剤及び20mgの錠剤として入手可能である。推奨されるGILOTRIF
TMの容量は、一日一回経口で40mgである。重度の腎臓機能障害を有する患者に推奨される用量(推定糸球体濾過速度[eGFR*]15から29mL/分/1.73m
2)は、一日一回経口で30mgである。
【0015】
結晶及びアモルファス形態を特徴づける技術には、限定されないが、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、X線粉末回折測定(XRPD)、プロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)及び光学顕微鏡検査が含まれる。
【0016】
DSCデータが、TA Instruments Q10 DSCを用いて収集された。凡そ、サンプル(2−8mg)は、密封されてはいないが蓋をされたハーメチックなアロジン処理アルミニウムサンプルパンの中に置かれ、約50mL/分の窒素パージ下で約30から約300℃まで約10℃/分の速度で走査された。
【0017】
TGAデータが、TA Instruments TGA Q500を用いて収集された。凡そ、サンプル(5−10mg)は、開放式のタール前のアルミニウムサンプルパンの中に置かれ、約60mL/分での窒素パージを用いて、約25から約300℃まで約10℃/分の速度で走査された。
【0018】
XRPDパターンが、Cu Kα照射源(λ=1.54Å)、9ポジションサンプルホルダー及びLYNXEYE超高速検出器を備えたBruker D8 Advanceを用いて取得された。サンプルは、分析のために、ゼロバックグラウンドのシリコンプレートホルダー上に置かれた。当業者であれば、°2θ値及び相対強度値が、測定データに対してピーク検索を行うことにより生成されること、及びd間隔値が、ブラッグの式を使用して前記機器により°2θ値から計算されることを認識するであろう。当業者であればさらに、測定されたピークの相対強度は、例えば使用される試料の調製、配向及び装置によって変化しうることを認識するであろう。
【0019】
1H−NMRデータが、TopSpinソフトウェアを備えたBruker Avance 300MHz NMRを用いて収集された。サンプルは、0.05%(v/v)のテトラメチルシラン(TMS)を含む重水素化ジメチルスルホキシド中に化合物を溶解することにより調製された。スペクトルは常温で収集された。走査回数は、
1H−NMRについて16であった。
【0020】
形態Zは、独特の結晶相である。形態Zは、オフホワイトの固体物質である。形態Zは、約2から3個の水の分子を含む種である。形態Zは、水への曝露下で安定である。
【0021】
本開示は、形態Zを含む薬学的組成物も包含する。形態Zを含む薬学的組成物は、国際公開第2009/147238号及び同第2011/003853号に従って調製することができ、これら特許文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0022】
本開示は、疾患の治療を必要とする患者に対して形態Zを含む薬学的組成物を投与することにより疾患を治療する方法を提供する。アファチニブジマレアートは、上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン19欠失又はエクソン21(L858R)置換変異を有する腫瘍を持つ、転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の第一選択治療に適応されている。アファチニブジマレアートは、白金ベースの化学療法後に進行する転移性扁平NSCLCを有する患者の治療にも適応されている。
【0023】
薬学的組成物の投薬量は、広範囲にわたって変化しうる。投与される最適な投薬量及び投薬レジメンは、当業者であれば容易に決定することができ、また投与様式、調製の強度、及び疾患状態の進行によって変動するであろう。加えて、患者の性別、年齢、体重、食事、身体活動度、投与時期、及び合併症を含む、治療される特定の患者に関連付けられる因子により、投薬量及び/又はレジメンを調節する必要が生じるであろう。アファチニブジマレアートは、商品名GILOTRIF
TMで市販されており、40mgの錠剤、30mgの錠剤及び20mgの錠剤として入手可能である。推奨されるGILOTRIF
TMの用量は、一日一回経口で40mgである。重度の腎臓障害を有する患者に推奨される用量は、一日一回経口で30mgである。
【実施例】
【0024】
本発明による形態Zは、アファチニブ又はアファチニブジマレアートから直接的に又は間接的に調製されうる。以下の実施例1−4は、形態Zの調製の実施態様を提供する。
【0025】
実施例1
形態Zの調製
約90mgのアファチニブジマレアート及び約1mLの2−ブタノールが、約48時間スラリー化される。約100 μLの水が前記スラリーに約25℃で加えられる。オフホワイトの沈殿物が形成される。乾燥させたこの物質が分析され、形態Zと同定される。
【0026】
実施例2
形態Zの調製
約325mgのアファチニブマレイン酸塩及び約6mLの2−ブタノールが、約2時間スラリー化される。約1mLの水が前記スラリーに約25℃で加えられる。小さなアリコートが除去され、形態Zと同定される。残りのスラリーは約21日間撹拌される。単離し、乾燥させたこの物質が分析されて、アファチニブの形態Zと同定される。
【0027】
実施例3
形態Zの調製
約225mgのアファチニブ遊離塩基が約15mlの2−ブタノールに加えられ、アファチニブ遊離塩基溶液が形成される。約113mgのマレイン酸が約1mLの水に加えられ、マレイン酸の水溶液が作製される。マレイン酸の水溶液がアファチニブ遊離塩基溶液に約25℃で加えられる。約20分後、オフホワイトの沈殿物が形成される。約48時間後、乾燥させたこの物質が分析され、形態Zと同定される。
【0028】
実施例4
形態Zの調製
約225mgのアファチニブ遊離塩基が約11mlの2−ブタノールに加えられ、アファチニブ遊離塩基溶液が形成される。約113mgのマレイン酸が約1mLの水に加えられ、マレイン酸の水溶液が形成される。マレイン酸の水溶液がアファチニブ遊離塩基溶液に約25℃で加えられる。一晩でオフホワイトの沈殿物が形成される。約48時間後、乾燥させたこの物質が分析され、形態Zと同定される。
【0029】
形態Zは、周囲条件(約25℃、>90% RH)での水蒸気への曝露下において約3日間にわたって安定であり、約40℃、75% RHで19日間にわたり安定である。国際公開第2005037824号に記載されているアファチニブジマレアートの形態Aは、40℃、75% RH条件下において、11日目までに完全に水和種に変化する。したがって、形態Zは、アファチニブジマレアートの形態Aよりも安定である。
【0030】
形態Zは、XRPDパターンのピーク及び/又はd間隔の値によって特徴づけられる。形態ZのXRPDパターンのピーク及びd間隔の値の平均を、以下の表1に示す。
図1は、実施例4に従って作製された形態Zの代表的なサンプルの代表的なXPRDパターンである。
【0031】
表1−形態Zディフラクトグラムの平均ピークのリスト
【0032】
実施例4に従って作製した形態ZのDSCサーモグラム及びTGAのグラフである
図2は、約95.5℃及び約128.3℃における熱的事象と、約100℃に加熱したときの約6.4%の重量減少を示している。
【0033】
図3は、実施例4に従って作製された形態Zの、代表的なプロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)のグラフである。
【0034】
上記実施例は、本開示の理解を助けるために記載されたものであり、特許請求の範囲に記載される本開示をいかなる意味でも限定することを意図せず、またそのように解釈されるべきではない。本明細書では一部の特定の実施態様を参照して例示及び記載をしたが、本開示は示された詳細に限定されることを意図しておらず、本開示の精神から逸脱せずにその様々な修正を行うことが可能である。
【国際調査報告】