特表2020-513230(P2020-513230A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-513230水和状態イメージングを用いた粒子の内容物の定量的測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-513230(P2020-513230A)
(43)【公表日】2020年5月14日
(54)【発明の名称】水和状態イメージングを用いた粒子の内容物の定量的測定方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20200417BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20200417BHJP
【FI】
   C12Q1/02
   C12M1/34 D
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-556994(P2018-556994)
(86)(22)【出願日】2018年1月25日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月27日
(86)【国際出願番号】US2018015263
(87)【国際公開番号】WO2018160298
(87)【国際公開日】20180907
(31)【優先権主張番号】62/465,981
(32)【優先日】2017年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】507339869
【氏名又は名称】インテリジェント ヴァイルス イメージング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】マシュー コロンブ−デルサック
(72)【発明者】
【氏名】ラース ハーグ
(72)【発明者】
【氏名】リカード ノードストローム
(72)【発明者】
【氏名】マルティン リネル
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB13
4B029BB15
4B029CC01
4B029FA04
4B029FA10
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ10
4B063QQ79
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
CryoTEM等の水和状態イメージングを用いて粒子の内容物を定量的に測定する方法である。ウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子の試料(100)を提供する。好ましくは、試料(100)を低温で急速に低温液体に凍結する。低温の間に、凍結試料中の各VLPの粒子内容物をCryoTEMイメージング装置で観察する。VLPの粒子内容物の量を測定し、VLPが中空であるか否かを評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージングを用いて粒子の内容物を定量的に測定する方法であって、
ウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子の試料(100)を提供し、
前記試料(100)を調製して天然の未染色の水和状態に維持し、
前記試料中の各VLP又は各ウイルス粒子の粒子内容物をイメージング装置で観察し、且つ
前記粒子内容物の量を測定して、前記VLP又はウイルス粒子が中空(104)、密実(102)、又は不明瞭(106)のいずれであるかを評価すること
を含む、方法。
【請求項2】
画像において粒子を自動又は手動で検出し、下限サイズよりも小さい粒子及び上限サイズよりも大きい粒子を削除するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
VLP又はウイルス粒子を表示し、前記画像へとVLP又はウイルス粒子を双方向に削除又は追加すること更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
粒子シェルと粒子コアとの間に明確な境界がなく、内部密度を有する粒子を密実粒子に分類するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
明確な外側シェルと僅かな内部密度とを有する粒子を中空粒子に分離するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
低温透過型電子顕微鏡法を用いて前記VLPの粒子内容物を決定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の粒子内容物を決定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子を含むAAV粒子を密実粒子(102)に分離するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
遺伝子を含まないAAV粒子を中空粒子(104)に分離するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料にイオン性液体を加えて前記VLPを水和状態に維持することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
液体試料ホルダーを用いて水和液体状態の前記試料をイメージングすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CryoTEM(低温透過型電子顕微鏡法)等の水和状態イメージング法を用いた粒子の内容物の定量的測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製薬業界では、ウイルス様粒子(VLP)、及び野生型(wt)又は改変型ウイルス、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子が、遺伝子送達用担体として広く用いられている。一般に、VLP又は複製欠損AAVは、実際のウイルス粒子とは対照的に複製/繁殖することができず、遺伝子送達用担体としてしばしば好まれる。遺伝物質であるこれらの内容物の評価は、処理効率に直接関係するため、最も重要である。ウイルス様粒子(VLP)及びAAV粒子の内容物を評価するために、一般に様々な方法が用いられている。1つの方法は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)の別名でも知られるリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応である。歴史的に、VLP及びAAV粒子の内容物を視覚化するための基準となる直交直接法(orthogonal direct method)として、ネガティブ染色透過型電子顕微鏡法(nsTEM)が用いられてきた。その理由の1つは、nsTEMは高速且つ簡便で、良好な解像度を提供するため、VLP及びAAV粒子を実際に見ることができるからである。別の理由は、nsTEは正確で、粒子の内容物を決定する良好な方法であると考えられてきたからである。しかしながら、nsTEMは、VLP、AAV粒子、及びwtウイルス粒子の内容物の評価に関しては、信頼性が低く、堅固でなく、誤りでさえあるとするような固有の性質を有することが近年見出された。
【0003】
nsTEMでは、コントラストを向上させ、粒子を保護するために、試料をグリッドに塗布する前又は後に、染料を試料に塗布する。nsTEMの欠点の1つは、染料が粒子を覆い、必ずしも粒子に浸透しないことである。これにより、粒子の内容物を直接自然のまま観察することができなくなる。即ち、染料により、nsTEMにおける粒子の内容物の分析は間接的な方法となる。言い換えれば、染料は、粒子のシェルに開口部がある場合、例えば、粒子が破壊されている場合にだけ粒子に入り込み、粒子の内部を表すコントラストを作り出す。また、染料は、試料の形態に悪影響を及ぼす可能性があり、驚くべきことに、ブロッティングステップ(濾紙を用いてアクセス液を除去する)及び染色液のpHが低いことが原因で、しばしば粒子が空間的、局所的に調製の影響を受けることが認められた。予想外にも、染料層の厚みを調製作業で十分に制御することはできず、染料が比較的薄い領域では、粒子が十分に保護されないことが見出された。中空粒子(empty particle)は、例え無傷であっても、その形状が染色及びブロッティング作業の影響を受ける場合があることが判明している。調製作業により、粒子の最上部のシェルに、染料が集まり得る凹み又は陥入が生じる可能性がある。これは中空粒子でより生じ易く、それは、その際に内容物が形状の維持を助けることがないためである。これにより、顕微鏡では粒子は中空に見えるのに対し、染料が比較的厚い領域では、粒子の形状は無傷であり、中空粒子と無傷の密実粒子(filled particle)との間に明らかな違いがない。このことが、分析を困難且つ信頼性の低いものにしている。
【0004】
nsTEMでは、粒子が明るい外縁と暗い内部とを有するように見える場合、通常、当該粒子は中空と見なされ、分類され、数えられる。論理的根拠としては、中空粒子は一旦グリッドに塗布されると崩壊し、染料が空洞部分を満たすことが挙げられる。密実粒子(full particle)は、明るい円盤のように見える粒子であり、中心に僅かにより明るい部分を有する。論理的根拠としては、粒子が密実であるため、調製中に崩壊せず、そのため中空部分を有しないことが挙げられる。明確に分類することができない粒子が大部分であることがしばしばある。それらはいわゆる不確定粒子(uncertain particle)である。
【0005】
別の問題として、中空粒子は、調製中に崩壊しないと、密実であるように見える一方、密実粒子は、局所レベルでの高い機械的拘束が原因で崩壊すると、崩壊して中空に見える可能性があることが挙げられる。本発明の重要な洞察は、nsTEMを使用する方法では、多数の偽陽性及び偽陰性が生じ易いことを認識することである。
【0006】
粒子の内容物を定量化するためのより良好でより信頼性の高い方法が必要とされている。本発明の方法は、VLP、AAV、及びwtウイルスの内容物を良好な堅固性、正確性、反復性、及び特異性をもって評価することができる信頼性の高い方法である。より具体的には、低温透過型電子顕微鏡法(CryoTEM)を用いる等して、VLP、AAV、及びwtウイルス粒子をそれらの天然の水和状態でイメージングすることにより、それらの内容物を定量的に特性評価する方法である。また、イオン性液体を用いてTEMイメージング用の試料を調製すること、又は、液体試料用の特別な試料ホルダーを用いること(液体TEM又はin situ TEMと称する場合がある)により、分析を確実に行うことができることが見出された。イオン性液体の調製方法は、イオン性液体の添加により粒子を水和状態に保つため、コントラストを向上させるために染料を用いる必要がないという点で、CryoTEMと似ている。しかしながら、粒子の構造を維持するために、少量の染料又は化学物質を有利に添加してもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法は、上記の課題に対する解決策を提供する。より詳細には、本方法は、イメージングを用いて粒子の内容物を定量的に測定する方法である。ウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子の試料を提供する。試料を調製して水和状態に維持する。試料中の各VLP又は各ウイルス粒子の粒子内容物をメージング装置で観察する。粒子の内容物の量を測定して、VLP又はウイルス粒子が中空(104)、密実(102)、又は不明瞭(106)のいずれであるかを評価する。より詳細には、本方法は、CryoTEM等の水和状態イメージング法を用いて粒子の粒子内容物を定量的に測定する方法である。ウイルス又はウイルス様粒子(VLP)、例えば、AAV粒子、又はウイルス粒子の試料を提供する。試料を、水和状態に維持するように調製する。これは、幾つかの方法で行うことができる。好適な実施形態におけるCryoTEMでは、試料を低温(cryogenic temperature)で急速に低温液体(cryogenic liquid)に凍結する。低温の間に、凍結試料中の各VLPの粒子内容物をCryoTEMイメージング装置で観察する。別の水和状態イメージング法では、イメージングは、TEMイメージング装置にて低温ではない温度で、液体試料ホルダーを用いることにより、又は調製時に試料にイオン性液体を加えることにより、実施する。粒子の内容物の測定値を求めて、VLPが中空であるか否かを評価する。
【0008】
代替の実施形態において、本方法は、更に、画像において粒子を自動又は手動で検出し、検出した粒子をディスプレイ上に表示し、下限サイズよりも小さい粒子及び上限サイズよりも大きい粒子を自動又は手動で削除するステップを含む。また、初めに粒子を表示することなく、画像に粒子を自動又は手動で除去又は追加することも可能である。また、VLP又はウイルス粒子を表示し、画像へとVLP又はウイルス粒子を双方向に削除又は追加することも可能である。
【0009】
別の代替の実施形態において、本方法は、更に、粒子シェルと粒子コアとの間に明確な境界がなく、内部密度を有する粒子を密実粒子として自動又は手動で分類するステップを含む。
【0010】
更に別の代替の実施形態において、本方法は、更に、明確な外側シェルと僅かな内部密度とを有する粒子を中空粒子として自動又は手動で分類するステップを含む。
【0011】
代替の実施形態において、本方法は、更に、低温透過型電子顕微鏡法を用いてVLPの粒子内容物を決定するステップを含む。
【0012】
別の代替の実施形態において、本方法は、更に、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の粒子内容物を決定するステップを含む。
【0013】
更に別の代替の実施形態において、本方法は、更に、AAV粒子を遺伝子送達用の担体として用いるステップを含む。
【0014】
代替の実施形態において、本方法は、更に、遺伝子の1つ又は複数のコピーを含むAAV粒子を密実粒子に分離するステップを含む。
【0015】
更に別の代替の実施形態において、本方法は、更に、遺伝子を含まないAAV粒子を中空粒子に分離するステップを含む。
【0016】
別の実施形態において、本方法は、更に、試料にイオン性液体を加えてVLPを水和状態に維持することを含む。
【0017】
別の実施形態において、本方法は、更に、液体試料ホルダーを用いて、天然、液体、及び水和状態のVLP粒子をイメージングすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、CryoTEMで観察したAAV試料の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、CryoTEM等の水和状態イメージング法を用いて、VLP、AAV粒子、及びwtウイルス粒子の内部の内容物の程度を評価し、定量的に測定する方法に関する。粒子の内容物の測定は、粒子がどの程度密実又は中空であるかに対応した計量(数値)とすることができる。それは、例えば、粒子内部の全体的な明度、又は粒子のシェル上の明度で正規化された明度の測定とすることができる。それはまた、粒子内のどれだけの領域が明るいか又は暗いかの測定とすることができる。
【0020】
上記のとおり、本発明の重要な側面は、nsTEは、グリッド上で画像化されたときの粒子の外観が以下のようないくつかのパラメータに依存するという事実により、密実/中空粒子の評価/分析に適さないということを認識及び発見したことである。
−染料の厚み(グリッド全体で様々である)
−試料が乾燥する程度(グリッド全体で様々である);及び
−粒子の完全性(粒子が受ける機械的応力の局所的な変化に起因して、染色工程及び調製工程に影響される又は影響されない可能性がある)
【0021】
染料の厚みは、粒子の外観に影響するため、結果にも影響する。染料の厚みはグリッド全体で様々であり、これを確実に制御することはできない。例えば、染料が比較的薄いと、調製の際に粒子が物理的力により晒されることになり、中には陥没するものも出てくる結果、染料が粒子の内部に浸透することなく空洞に含まれる。粒子の空洞内に染料が残っていると、染料で満たされた中空粒子の外観とよく似た外観となる。そのため、粒子の内容物の分析は、染料が厚い領域又は薄い領域のどちらの領域の粒子が画像化及び分析されるのかに大きく依存する。nsTEを用いると、染料が粒子上に不均一に分布する結果、実際には有しないにもかかわらず、粒子が様々な量の内容物を有するように見えることがしばしばある。これは、これまで認識されていなかった洞察である。
【0022】
代わりにCryoTEMを用いることにより、粒子の外観が染料の不均一な分布によって不都合な影響を受ける可能性がないことから(染料を使用しないため)、CryoTEMが本発明の内容物の分析に非常に効果的となる観察領域の全ての領域において、粒子は同じように見える傾向にある。言い換えると、内容物の分析にCryoTEMを用いるのは、nsTEMと比較してより複雑であるが、より正確な結果が得られるという利点は、より面倒なCryoTEM技術を用いるという欠点に勝ることが予想外にも見出された。本発明の方法によれば、CryoTEMにおいて、薄い炭素膜で被覆された親水化された銅グリッドに少量の試料を沈着させる。次に、濾紙を用いて過剰の試料を吸い取る。続いて、グリッドを、迅速に、且つ試料が乾燥する前に、粒子の試料が瞬間的に凍結される低温液体に漬ける。急速凍結により、天然の(即ち、未染色の)水和型に近い非晶質氷に試料(sample/specimen)を埋め込むことができ、その結果、粒子は染色の影響を受けないため、試料中のどこでも正しい外観を有する。次に、試料を全工程で低温に保つ一方、透過型電子顕微鏡に挿入し、観察する。本発明の方法の利点の1つは、内部の特徴を見る可能性がある未変性の粒子を、直接見ることができるようにすることである。これにより、粒子が中空であるか否かをより正確に評価することができる。CryoTEMにおいて、中空粒子は僅かな内部密度を有する円盤のように見える。1つの説明としては、CryoTEMを用いて粒子の内部を見ることができ、中空粒子は内部密度が低いということである。密実粒子は、暗い均一な円盤のように見える。この場合も、CryoTEMを用いて粒子の内部を見ることができ、内部に遺伝物質を含む密実粒子は、均一な内部密度を有する。
【実施例】
【0023】
以下は、本発明の方法を実施するためのCryoTEMの使用方法の具体例である。
【0024】
グリッドの調製
初めに、400メッシュ銅(Cu)グリッド等の適切なグリッドを親水化した。これは、グリッドをグロー放電することにより行った。より詳細には、炭素膜で被覆された銅グリッドをグロー放電器内に設置した。チャンバ内の圧力が約0.5mbarになるまで減圧した。約20mA等の電流を約1分間流した。次いで、圧力を周囲圧力まで上昇させた。グリッドを除去し、グロー放電器をオフにした。
【0025】
グリッドの凍結
プランジ凍結装置の電源を入れた。試料室を所望の温度及び湿度に平衡化した。試料室内のブロット紙を換えた。冷却ステーション内のエタン浴を準備した。グロー放電したばかりのグリッドをピンセットに装着した。凍結工程を開始した。約3μLの試料をグリッドに沈着させた。約10秒間の待ち時間の後、グリッドを濾紙で拭き、プランジ凍結した。グリッドをクライオ(cryo)グリッドボックス内に移し、液体窒素中で保存した。エタン及び液体窒素を安全に気化(thaw)させ、プランジ凍結装置の電源を切った。
【0026】
グリッドの移動
クライオグリッドボックスを、保存場所から、クライオホルダー予備ポンプを挿入して液体窒素で予備冷却したクライオワークステーションに移した。グリッドを、クライオホルダー上のグリッドスロットに移した。クライオホルダーをCryoTEMに挿入し、液体窒素容器を充填した。
【0027】
グリッドのイメージング
グリッドのイメージングステップでは、製造業者が記載したプロトコルに従って顕微鏡が正しく配置されていること、及び、カメラからのブランク画像がフラットであることを確認するのが重要であった。(グリッドのイメージングステップは自動で行ってもよく、操作者が画像を取得するために顕微鏡の前に座っている必要なしに、自動で画像を取得するものであることが理解されるべきである。適切な領域が見つかるまでグリッドをスクリーニングする。)次に、約600〜1000nmの視野で倍率を設定した。焦点0を見つけ、顕微鏡を約6μmの僅かなデフォーカスに設定した。このデフォーカスステップは、オートフォーカス及びデフォーカス機能を有する顕微鏡において手動又は自動で行うことができた。画像を取得し、近くの領域に移動させた。画像取得ステップを、所望数の画像を取得するまで繰り返した。
【0028】
事後の画像処理及び分析
画像を保存し、Vironova Analyzer Software(VAS)等の適切な分析ソフトウェアで取り込んだ。顕微鏡に保存する画像を選択し、16ビットtiff形式等の適切なフォーマットで保存するか、又は代わりに、自動画像取得の後、自動で保存した。VASのプロジェクトに対応するフォルダを作成し、種々のノード内の全ての必要な情報を完了させた。
「顕微鏡法(Microscopy)」ノード上で右クリックし、「画像を開く(Open image(s))」を選択し、適切なファイルを選択して「開く(Open)」をクリックすることにより、当該ノードに画像を取り込んだ。
【0029】
粒子の検出及び分類
「顕微鏡法」ノードにおいて、「粒子タイプ(Particle Type)」フィールドに「VLP(cryo)」と入力した。粒子を検出する画像を選択し、それらの画像の1つの上で右クリックした。「検出実行…(Run detection...)」を選択した。以下のパラメータを入力した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
検出した粒子を、x軸を「サイズ(Size)」、y軸を「シグナル対ノイズ(Signal−To−Noise)」とした散乱プロット表示を用いて、プロットコントロール(Plot Control)上に表示した。初めに、シグナル対ノイズが0.1未満である検出粒子を選択し、削除した。
【0033】
次に、サイズが17nm未満である検出粒子及び28nm超である検出粒子を選択し、これらもまた削除した。画像をスクリーン上で視覚的に評価し、誤って不正確に検出されたAAV粒子を除去した。正しく検出された粒子を、検証ツールを用いてアクセプトした。自動検出で検出されなかったAAV粒子は、手動で囲んだ。
【0034】
より一般的には、以下の分析ステップを実施した。
1)画像において目的の粒子を、手動で又は適切な検出アルゴリズム(例えば、テンプレートマッチング、円形物体検出、領域又は境界ベースの検出方法等)を用いて、検出した;
2)各粒子のサイズ、形状、シグナル対ノイズ比の測定値に基づいて誤検出を除去した(自動で、手動で、又は両方の組合せで);且つ
3)必要に応じて、自動検出アルゴリズムを用いた場合に、検出されなかった粒子を加えた。
【0035】
粒子の分類
プロットコントロールツールバーの粒子クラス(particle class)ノードにおいて、「内容物(Content)」を選択した。全ての検出した粒子を、プロットコントロールツールバーのRDP PCAツールを用いて表示した。2つのクラスターを明確に分離するために、プロットを回転させた。一方のクラスターの粒子を選択し、対応するクラスに割り当てた。クラスは、以下のパラメータを用いて決定した。
−シェルとコアとの間に明確な境界がなく、内部密度を示すAAV粒子を、密実粒子に分類した;且つ
−明確な外側シェル及び僅かな内部密度を示すAAV粒子を、中空粒子に分類した。
【0036】
次に、もう一方のクラスターの粒子を選択し、対応するクラスに割り当てた。全ての画像を視覚的に分析して、分類を評価した。「不確定(Uncertain)」クラスを、分析者の評価と半自動分類との間で相違が見られた全ての粒子に割り当てた。
【0037】
より一般的には、以下のステップを実施した。
1)粒子内の全体の明度及び明度分布を分析することにより、粒子の内容物を測定した;且つ
2)これらの測定に基づいて粒子を分類した。これは、いくつかの方法、例えば、測定した各特徴を手動で閾値化すれば(例えば、ある明度Tfよりも暗い場合には、密実と分類し、別の明度Teよりも明るい場合には、中空と分類し、TfとTeとの間の場合には、不確定と分類する等)、実施することができた。それはまた、上記特徴の散乱プロットにおいて粒子群を特徴付けること、又は、自動/半自動クラスタリング及び分類方法を用いることを行えば、実施することができた。完全に自動化された方法では、粒子の内部密度プロファイルを検討することにより、密実粒子と中空粒子とを識別することができる。
【0038】
図1は、CryoTEMで観察した、AAV試料(100)からのVLPの典型的な画像の概略図である。試料は、単純な暗い円盤に見える密実粒子(102)を含む。
従って、粒子(102)は、例えば、医薬物質又は遺伝子が充填されている。中空粒子(104)は、遺伝子を含有又は担持していないため、低内部密度に相当する明るい内部明度を有する暗い円に見える。分類が不明瞭な粒子(106)は、密実粒子と中空粒子との間の特性を示すように見える。このようにして、分析により、医薬物質(遺伝子)を含有する粒子の量/数、及び各粒子に医薬物質又は遺伝子がどの位充填されているかの両方を決定する。粒子の中には、医薬物質が部分的にしか充填されていないものがあるのに対し、遺伝子については、粒子は、遺伝子の1つ又は複数のコピーを含むか、又は空のいずれかである。図1のスケールバー(108)は、100nmを表す。
【0039】
本発明は、好ましい組成及び実施形態に基づいて説明してきたが、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく、特定の置換及び変更がなされてもよいことが理解されるべきである。
図1
【国際調査報告】