特表2020-513239(P2020-513239A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特表2020513239-水素の製造 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-513239(P2020-513239A)
(43)【公表日】2020年5月14日
(54)【発明の名称】水素の製造
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/40 20060101AFI20200417BHJP
   C25B 1/04 20060101ALI20200417BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20200417BHJP
   C12P 3/00 20060101ALI20200417BHJP
【FI】
   C12P7/40
   C25B1/04
   C25B1/26 A
   C12P3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-527534(P2019-527534)
(86)(22)【出願日】2017年12月22日
(11)【特許番号】特許第6667050号(P6667050)
(45)【特許公報発行日】2020年3月18日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月17日
(86)【国際出願番号】AU2017051451
(87)【国際公開番号】WO2018126292
(87)【国際公開日】20180712
(31)【優先権主張番号】2017900006
(32)【優先日】2017年1月3日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519177611
【氏名又は名称】シー − ナージー プロプライエタリ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス、ジェイソン スコット
【テーマコード(参考)】
4B064
4K021
【Fターム(参考)】
4B064AA01
4B064AA03
4B064AD02
4B064AD08
4B064AD11
4B064BJ04
4B064CA01
4B064CC01
4B064CD02
4B064CD09
4B064DA20
4K021AA01
4K021AA03
4K021BA03
4K021BA10
4K021BB02
(57)【要約】
海水からカルボン酸化合物を製造する方法が開示される。この方法は、糖の異化作用が起こり得るような十分な期間、所定量の糖と海水とを混合し、それによってカルボン酸化合物を製造することを含む。このカルボン酸化合物を含む溶液は、とりわけ水素を製造するために電気分解され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水からカルボン酸化合物を製造する方法であって、
この方法は、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合することを含み、それによってカルボン酸化合物を製造する、
上記方法。
【請求項2】
前記所定量の糖が、海水1L当たり約50g未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定量の糖が、海水1L当たり約25g未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記十分な期間が約50時間より長い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記十分な期間が、約70〜90時間の範囲内であり、72〜84時間を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記糖が単糖類または二糖類を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マルトースのうちの1つまたは複数を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記異化作用が、解糖作用、果糖分解作用、または類似の代謝経路を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記異化作用が、いったん混合物のpHが約5になると終了するように制御される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記異化作用が、いったん混合物のpHが約3〜5の範囲内になると終了するように制御される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記異化作用が、カルボン酸−ピルビン酸または類似のアルファ−ケト酸、ベータ−ケト酸またはガンマ−ケト酸を製造するように行われる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水素を製造するように、前記の異化作用を受けた混合物を電気分解にかけることをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
海水から水素を製造する方法であって、
この方法は、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合し、それによってカルボン酸化合物を製造すること、および
水素を製造するように、このカルボン酸化合物を含む異化作用を受けた混合物を電気分解にかけることを含む、
上記方法。
【請求項14】
請求項2〜11のいずれか1項に特定されている事項(これらの請求項が引用する請求項1に特定されている事項を除く)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって製造される水素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素の製造方法に関するものであるが、この方法は水素の製造に限定されない。より具体的には、海水から前駆体化合物を製造する方法が開示されている。前駆体化合物を含む溶液を電気分解して、とりわけ水素を製造することができる。
【背景技術】
【0002】
海水は、バクテリア、ウイルス、原生生物、および古細菌等の他の単細胞微生物などの多数の固有の微生物を含む。例えば、海水は、多くは少数しか存在しないが、万を超えるほどの微生物(すなわち、20,000種を超える)を含み得ることが理解される。
【0003】
細菌と古細菌は、細胞核を持たない単細胞生物(原核生物)である。それらは、海水のカラムの至る所、ならびに海底堆積物の表面およびその内部に見られる。バクテリアと古細菌は、それぞれいくつかの代謝経路を持っている。
【0004】
海水中の微生物の中には、好気性(酸素を必要とする)のものもあれば、嫌気性(酸素を必要としない)のものもある。
【0005】
背景技術および従来技術への言及は、背景技術および従来技術が、オーストラリアまたは他のいかなる国においても、当該技術分野における共通の一般的知識の一部を形成することを承認するものではないことを理解されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示されているのは、海水から前駆体化合物をカルボン酸の形態で製造する方法である。前駆体化合物を含む溶液を電気分解して水素を製造することができる。言い換えれば、驚くべきことに、海水から水素を容易に製造できることが発見された。知られているように、水素は、それが燃料電池等に使用されるときなどに再生可能燃料を形成することができる。さらに、二次ガス、すなわち塩素も製造され得ることが見出された。塩素ガスも商業的価値がある。他の化合物をこの方法によって製造することができ、少なくとも部分的に脱塩された水も同様である。
【0007】
本方法は、所定量の砂糖を海水と混合することを含む。得られた混合物の混合は、糖の異化作用が起こり得るように十分な期間維持することができる。糖の異化作用が起こるとき、カルボン酸化合物が製造され得る。カルボン酸は、前駆体化合物を形成することができ、この前駆体化合物は任意選択で電気分解されて水素を製造することができる。
【0008】
驚くべきことに、海水中に見いだされる固有の細菌および古細菌は、代謝経路を介して(例えば、嫌気的に)糖をカルボン酸などに転化するために利用できることが分かった。製造されるカルボン酸は、ピルビン酸もしくは同様のアルファ−ケト酸、またはベータもしくはガンマ−ケト酸であり得る。後述するように、代謝経路が促進されると、追加の酸が製造される可能性がある。
【0009】
これに関して、糖の異化作用がさらに促進される場合、エタン酸(酢酸)およびメタン酸(ギ酸)などの化合物を含む追加の化合物を製造することができることが分かった。これらの化合物を電気分解してさらに水素を製造することもできる。さらに、電気分解からの残留溶液は、エタノエートおよびメタノエートアニオンのような溶液中のイオンを含むことがあり、それは例えばエタノールおよびメタノールを回収するために還元することができる。
【0010】
有利には、異化作用によって製造される様々なイオン(ピルビン酸塩、酢酸塩など)は水に非常に溶けやすく、そのため電気分解中に電解質として機能する。したがって、これらの様々なイオンは、塩化ナトリウムなどの電解質(すなわち海水塩)に取って代わるように機能し、電気分解を促進し、そうして電気分解の段階中に消費される。
【0011】
本方法は、電気分解による水素抽出を増強するためにpHレベルを最適化することを含み得る。例えば、酸濃度を最大にすることができ、それは電気分解による水素抽出の効率を高めることができる(例えば、5程度までのpHではなく3程度までのpHで水素を抽出することがより効率的であり得る)。
【0012】
一実施形態では、所定量の糖は海水1リットル当たり約50g未満の糖であり得る。例えば、所定量の糖は、最適には海水1リットルあたり約25gであり得る。約50g/Lを超える糖を添加することができるが、追加のカルボン酸化合物は製造されないことが観察されている。これは、この糖を異化(代謝)させるための固有細菌の制限能力に起因している。
【0013】
典型的には、塩分、温度、圧力、微生物種およびそれらの濃度などの(しかしこれらに限定されない)要因を考慮に入れて、糖対(海水)塩の理想的な比率が達成されることが求められる。糖の塩に対する最適濃度が達成される場合、これは、海水を淡水化するなどのために、電気分解中に十分なナトリウムおよび塩素の除去をもたらし得る。
【0014】
一実施形態では、十分な期間は約50時間を超えてもよい。これは、異化作用の外部的に適用された触媒作用がないと仮定している。例えば、海水中での固有細菌のインキュベーションは、以下の手段によって加速されてよい:加熱によって、ならびに/または糖分解微生物の濃度を増加させることによって、ならびに/または、糖の濃度および消費量の対応する増大を伴って、異化微生物の濃度を増大させることによって、ならびに/または、異化微生物の選択的「育種」(“breeding”)によって、等々。微生物は、例えば、最初に海水を濃縮段階(例えば、蒸発;逆浸透または他の膜プロセス、例えばそこから塩水画分を除去することなど)にかけることによって濃縮することができる。
【0015】
一実施形態では(例えば、異化作用の外部的に適用された触媒作用がまったくない場合)、十分な期間は約70〜90時間の範囲であり得る。より具体的かつ最適には、十分な期間は約72〜84時間の範囲内であり得る。
【0016】
一実施形態では、糖は単糖類または二糖類を含み得る。他の炭水化物も考えられる。例えば、糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどのうちの1種以上を含み得る。
【0017】
一実施形態では、異化作用は、解糖作用、果糖分解作用または類似の代謝経路を含み得る。誘発または促進される異化作用の種類は、例えば、ピルビン酸、類似のアルファ−ケト酸、またはベータ−もしくはガンマ−ケト酸などのカルボン酸、あるいは炭酸、ギ酸、酢酸などのさらに単純なカルボン酸等を製造することである。
【0018】
一実施形態では、異化作用は、いったん混合物のpHが約5未満になると終了するように制御することができる。これに関して、いったん混合物のpHが約3〜5の範囲内になると、異化作用が終了するように制御してよい。例えば、異化溶液へのバシラスまたは類似の細菌の導入により、酢酸(エタン酸)のような酸の形成がもたらされ、pH約3に近いより低いpHを得ることができる(次いで、この約3以下に低下したpHの溶液に対して電気分解による水素抽出を行ってよい)。
【0019】
やはり、このpH範囲は、異化作用の他の外部適用触媒作用(例えば、加熱;異化微生物および糖の濃度の増加;微生物の選択的「育種」など)がないと仮定している。そのような外部から適用される触媒作用では、さらに低いpH範囲(例えば、pH2〜4)に達することがある。
【0020】
この方法は、水素を製造するために、異化混合物を電気分解にかけることをさらに含み得る。電気分解には、例えば、様々な供給源を介して生成され得るような再生可能な電力を用いてよい(例えば、太陽光発電および/または太陽熱などの太陽エネルギー、地熱、風、波、潮汐など)。
【0021】
海水から水素を製造する方法もまた本明細書に開示される。この方法は、糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合することを含み、それによってカルボン酸化合物が製造される。この方法はまた、カルボン酸化合物を含む異化混合物を電気分解にかけて水素を製造することを含む。この方法は、それ以外の点について、上記のとおりであってもよい。
【0022】
本方法によって製造される(例えば、電気分解段階の陰極で製造される)水素は、捕捉されて製品として販売され得る。
【0023】
塩素ガスも電気分解段階の陽極で製造され得る。これはまた、捕捉されて製品として販売され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
次に、添付の図面を参照しながら、非限定的な実施形態を単なる例として説明する。
図1図1は、本明細書に開示される方法の様々な実施形態を例示する概略流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特定の実施形態の詳細な説明
以下の詳細な説明では、詳細な説明の一部をなす添付の図面を参照する。詳細な説明に記載され、図面に示され、特許請求の範囲にて明らかにされた例示的な実施形態は、限定的であることを意図しない。提示した主題の本質または範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を加えることができる。本明細書で一般的に説明し図面に例示する本開示の諸態様は、種々の異なる構成で配置、置換、組み合わせ、分離、および設計することができ、そのすべてが本開示で考慮されている。
【0026】
まず図1を参照すると、海水12から水素を製造するための方法10が概略流れ図として示されている。以下に説明されるように、方法10は、海水が供給される局所的条件に適合させることができ、それにより任意の段階(例えば14および22)を選択的に追加することができる。
【0027】
方法10の第1段階18は、カルボン酸(典型的にはピルビン酸)の形態の前駆体化合物を含む酸性溶液20を製造する。ピルビン酸の平衡式は以下の通りである。
CHCOCOOH(aq) ←→ H(aq) + CHCOCOO(aq)
【0028】
方法10の第2段階では、カルボン酸化合物を含む酸性溶液を電気分解段階24で電気分解して、陰極で水素ガスを製造し、陽極で塩素ガスを製造する。半反応式は、次のとおりである。
2H(aq) + 2e → H2(g)
2Cl(aq) → Cl2(g) + 2e
【0029】
残りの「廃棄」(“discard”)溶液26(すなわち、電気分解後)は、ナトリウムNa(aq)カチオンと共にピルビン酸CHCOCOO(aq)アニオンを含む。廃棄流26は、海水代謝の副産物も含む。ナトリウムおよびピルビン酸イオンは今や溶液中に存在するので、この方法は(すなわち水素および塩素イオンを除去することによって)ピルビン酸ナトリウムを効果的に製造した。このピルビン酸ナトリウムは、別に回収することができる。同様に、代謝プロセスを継続させるおよび/または促進させる場合には、代謝酸種の相(phases:フェイズ)の各々についての様々なナトリウム化合物(酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウムなどを含む)を製造および回収することができる。
【0030】
方法10は、水素が海水から(すなわち海水と糖との単純な組み合わせから)製造され得ることを確認し認識している。知られているように、水素は再生可能燃料であり、燃料電池などに使用することができる。
【0031】
単純な場合では、方法10は、大気温度および圧力で運転される連続撹拌タンク反応器18中で所定量の糖16を海水源12と混合することを包含する。また、温度および圧力の変動がこのプロセス段階において触媒として作用し得ることも分かっている。
【0032】
得られた混合物は、海水中に見いだされる固有の細菌および古細菌によって糖が摂取されることに起因して糖の異化作用(すなわち代謝作用)が起こり得るように十分な期間攪拌される。反応器18に添加された糖が受ける特定の代謝経路(例えば解糖作用)の結果として、前駆体カルボン酸化合物が最終的に製造される(典型的にはピルビン酸であるが、他のアルファ−ケト酸および/またはベータ−もしくはガンマ−ケト酸が製造され得る)。これは、得られた溶液20が酸性であり、典型的には約pH5で、pH4〜5の範囲にあることを意味する。
【0033】
単純な場合では、カルボン酸化合物を含む溶液20は、次いで電気分解段階24に直接送られ、そこで溶液は1つ以上のセル内で電気分解される。溶液20の酸性度のために、水素ガスが陰極で製造され、塩素ガスが陽極で製造されうる。製造された水素ガスと塩素ガスはそれぞれ捕捉され、製品として個別に販売される。電気分解段階のための電気は、太陽エネルギー(太陽光発電および/または太陽熱)、地熱、風、波、潮汐などの再生可能な供給源からのものであり得る。
【0034】
方法10は、海水中に見いだされる固有の細菌および古細菌を認識し利用して、嫌気的代謝経路を介して糖をカルボン酸化合物に変換する。典型的には、代謝経路は解糖作用または類似経路であり、そして典型的には製造されるカルボン酸はピルビン酸であるが、上述のように、他のアルファ−ケト酸および/またはベータ−もしくはガンマ−ケト酸が製造され得る。
【0035】
方法10は、単糖類(例えば、グルコース、ガラクトースおよびフルクトース)ならびに二糖類(例えば、ラクトース、マルトースおよびスクロース)などの一連の糖類とともに展開することができる。方法10は、他の産業からのこれらの糖の廃棄形態を利用することができる。結果として生じる代謝経路が、溶液中に電気分解処理および水素製造に適した酸を製造するという条件で、他の炭水化物の使用も可能であり得る。
【0036】
単純な場合では、カルボン酸を製造するため固有の細菌および古細菌によって誘発されるように混合段階18に添加される糖16の量は、海水1リットル当たり約50g未満の糖であり得ることが見出された。最適には、海水1Lあたり25g程度にすることができる。約50g/Lを超える糖を混合段階18に添加することができるが、追加のカルボン酸は製造されないことが観察される。これは、この糖を代謝するための固有細菌の制限能力に起因している。さらに、この消費レベルは海水源によって変わる可能性があることにも留意されたい。
【0037】
単純な場合では、海水と糖は混合段階18で約50時間より長い期間混合される。典型的な混合期間は、約70〜90時間の範囲内であり、そして最適には、約72〜84時間の範囲内である。この時間を過ぎると、追加のカルボン酸はほとんどまたは全く製造されないことに留意されたい。
【0038】
単純な場合では、混合段階18で行われる代謝は、混合物のpHがいったん約5になると制御することができる(すなわち終了させることができる)。より典型的には約4〜5の範囲内である。
【0039】
上記の方法の単純なシナリオの変形形態では、糖と混合する前に、海水を前処理することができる(任意選択の段階14によって示される)。そのような前処理は、以下のうちの1つ以上を含むことができる:
− 海水から不純物を除去するために海水を濾過する(例えば、マイクロ濾過または膜濾過などによる);
− 混合段階18に供給する前に、または混合段階18内で海水を加熱する(例えば、太陽光または地熱発電所などからの熱交換による);
− 溶液、特に海水中の固有細菌および古細菌を含む溶液を濃縮する(例えば、蒸発、微生物刺激、微生物の供給などによる選択的「育種」、それらの水画分を除去するための逆浸透など)。
【0040】
上記の方法の単純なシナリオのさらなる変形形態では、混合段階18の後、溶液を電気分解の前に後処理することができる(任意選択の段階22で示される)。そのような後処理は、廃棄流26Aを生じさせることがあり、また、濾過(例えば、代謝作用の老廃物を分離して除去するため)、加熱、濃縮等の1つまたは複数を含み得る。
【0041】
上記の方法の単純なシナリオのさらに別の変形形態では、後処理段階22の後、溶液の一部または全部を電気分解の前に追加の代謝作用にかけることができる(任意選択の段階30で示す)。このような追加の代謝作用30は、生成された中間体化合物、例えばピルビン酸、乳酸などの代謝破壊を単純カルボン酸類にまで拡張するための、さらなる細菌(例えば、バシラス)の添加および/またはより長い滞留時間を含み得る。このような追加の代謝作用30は、一連の保持タンク中で行うことができ、それらの各々は、以下のうちの1つまたは複数によってさらに触媒作用を受けることができる:加熱;異化微生物および糖の濃度の増加;微生物の選択的「育種」等。
【0042】
追加の代謝作用30は、最終的な酸(例えば、エタン酸などの単純な酸)を製造することができる。このような酸を含有する溶液は次に電気分解24に通すことができ、そこでそれは電気分解されて水素ガス、塩素ガスなどを製造することができる。電気分解溶液を廃棄するのではなく、これを化合物回収段階に送ることができる。そこで、単純な酸アニオン(例えばエタノアートイオン)は、(例えば膜分離により)分離し、還元し、次いで回収することができる(例えばエタノールとして)。
【0043】
このような処理段階は、方法10において個別にまたは集合的に用いることができる。このような各処理段階は、上述した単純な場合と比較して、混合段階18の代謝過程の外部的に適用される触媒作用と見なすことができる。ひいては、電気分解や水素などの製造を向上させることができる。
【0044】
固有の細菌や古細菌の濃度を上げたり、他の細菌を加えたりすると、それに応じて糖分の濃度と消費量を増やすことができる。これは、カルボン酸などの酸製造の増加、溶液のpH範囲の低下(例えばpH2〜4)、理想的には、水素製造の増加(例えば容量および/または速度)をもたらす可能性がある。
【0045】
糖が受ける異化(代謝)経路は、解糖作用、果糖分解作用または類似の代謝経路を含み得る。上述のように、糖および異化経路の種類は、ピルビン酸などのアルファ−ケトカルボン酸または類似物を製造するようなものであり、任意選択でベータ−またはガンマ−ケト酸を製造することができ、あるいは進行させると単純カルボン酸および他の酸(例えば、炭酸、ギ酸(メタン酸)、酢酸(エタン酸)など)を製造できる。
【実施例】
【0046】
オーストラリア西部のCarnarvonで多数の実験手順が実施され、海水試料をFascine Inletから得た。実験手順の結果を確認するために、試料を独立した試験機関によっても試験した。
【0047】
実験手順の間、反応時間、pH、流体流れの体積、ならびに水素および塩素ガスの製造量がそうであったように、反応性細菌の濃度が変動したことが分かった。
【0048】
実験手順は、グルコースおよびフルクトースからなる二糖類分子である、単純な生のテーブルシュガー−スクロースC122211を用いて行われた。様々な単糖類および二糖類を含む、すべての形態の糖がスクロースの代わりになり得ることが分かった。
【0049】
例1
連続的に攪拌されている混合タンク内で、スクロースと海水とを、およそ25g/Lの適当な比率で混合し、溶液中に完全に溶解することを観察した。多濃度のスクロースを試験したところ、その領域の海水中の微生物のレベルには約25g/Lまでが最適であることがわかった。海水は8〜9の範囲の初期pHを有し、得られた混合溶液は約8〜9の初期pHを有すると測定された。
【0050】
海水中の固有微生物は、細胞呼吸の正常な機能として、エネルギーのためにスクロースを嫌気的に処理したことが分かった。微生物がスクロース分子を分解するために使用した特定の代謝経路は解糖作用であり、分子は最終的に分解されて一般化学式:RCOOH(Rは分子の残りの部分)のカルボン酸を形成した。スクロースの場合、解糖作用により、ピルビン酸CHCOCOOH(aq)を形成することが分かったが、溶液のpHの低下は約5までであり、典型的には約4〜5までの範囲内であった。
【0051】
実験手順は周囲温度および圧力で行われ、そのような温度および圧力では、解糖作用は50時間より長くかかり、典型的には5以下のpHを生成するのに約72〜84時間かかったことが明らかになった。いくらかの残留反応が依然として起こることが観察されたが、周囲温度および圧力条件下で(すなわち、外部から適用されたいかなる触媒作用もない場合)pHが4未満に低下せず、そのような残留反応ははるかに遅いことが観察された。
【0052】
得られた溶液を電気分解セルに通し、そこで通常の(周囲温度および圧力)条件下で電気分解にかけた。電池は、陰極(−ve)で水素ガスおよび陽極(+ve)で塩素ガスを製造した。
【0053】
ガス製造のおおよその比率は、およそ7部の水素ガスに対しておよそ0.8部の塩素ガスであることが分かった。試験はまた、塩素溶液(Cl(aq))が生成されず、水酸化ナトリウム(NaOH(aq))または塩化ナトリウム(NaCl(aq))の存在が廃棄溶液中に明白ではなかったことを示した。
【0054】
電気分解後の溶液中に残った残留イオンは、ナトリウムNa(aq)カチオンと共にピルビン酸CHCOCOO(aq)アニオンであったことが理解された。このような解決策は、規制当局の承認を条件として、海への再放出に適していることが分かった。あるいは、溶液をさらに処理して、酸をエタン酸およびメタン酸などの単純な酸に分解し、これらをさらに電気分解することが可能であった。得られたアニオンを分離して対応するアルコールを回収することができた。
【0055】
例2
未処理海水の試料を独立した試験実験室に供給した。この実験室は、試料の導電率、塩分、pHおよびピルビン酸含有量を以下のように分析するように指示された:代謝に供される前;代謝後;そして電気分解の後。実験室はまた、海水を代謝に供するように指示された(上述のとおり)。
【0056】
これに関して、未処理海水の1Lの試料に25gの生のサトウキビ糖を添加し、そして4日間にわたって代謝作用を起こさせた。
【0057】
導電率、塩分濃度およびpHは、「pHメーターによる水中のiPH1WASE pH」(“iPH1WASE pH in water by pH meter”)を用いて、実験室により試験した。ピルビン酸含有量は、「K−PYRUVメガザイムピルビン酸試験キット」(“K−PYRUV Megazyme Pyruvic Acid test kit”)を用いて試験した。次に、代謝作用を受けた溶液をホフマン装置で電気分解にかけ、そこで12Vの電池を用いて電気分解した。結果を以下の表にまとめる。
【0058】
【表1】
【0059】
観察
試料のpHは初期値から、そして代謝作用および電気分解のそれぞれの間に低下した。pHが低下し続け、溶液中の糖および酸の更なる代謝作用を示していることが分かった。このように、追加量の水素イオンが水素ガスとして電気分解による回収に利用可能になった。
【0060】
従って、この方法は酸の相(フェイズ)の各々で複数の水素抽出相を提供し、それによって多数の異なる中間化合物を製造することが分かった。エタノールの抽出が達成されるまでこれらの相は進行した。さらに、これらの生成物(例えば、水素、脱塩水、塩素、エタノール、様々なナトリウム化合物など)の各々は、元の糖および海水供給原料の処理を通じて生成され得ることが、さらに分かった。
【0061】
加工条件が変化するにつれて(例えば、海水パラメータの変化と共に)、それに応じて最適なプロセス変数が調整されたこと(例えば、代謝作用および電気分解条件ならびに添加剤など)が、さらに分かった。
【0062】
試料の導電率は、初期値から、そして代謝作用および電気分解のそれぞれの間にごくわずかに低下した。したがって、継続的な代謝作用は、溶液が電気分解される能力に影響を及ぼさなかった。しかしながら、試料の塩分が低下したことも分かったが、これは、この方法が(例えば、淡水化プロセスの一部として)淡水化を補助することも可能であったことを示した。この点に関して、この方法は従来の脱塩プロセスと共に使用することができ、それによって、電気分解の廃棄溶液26、26Aおよび/または段階35からの溶液が従来の脱塩プロセスへの供給溶液を形成し得ることが分かった。
【0063】
代謝作用によって製造されたピルビン酸は、3を超える係数で上昇すると測定された。電気分解の前後に測定されたピルビン酸の量は、0.025g/Lから0.029g/Lへとわずかに増加したことが分かるであろう。溶液から水素が抽出されるにつれて(すなわち、水素ガスとして)、加水分解が溶液中の残りのピルビン酸ナトリウムと水との間で起こり、それによってピルビン酸ナトリウムおよび/または水分子が水素イオンを供与したと仮定される(すなわちピルビン酸の増加として示された/検出された)。ピルビン酸のわずかな増加に寄与した可能性がある他のプロセス変数には、温度変動および/または水体積の減少が含まれていたことも分かった。さらに、ナトリウムはいくつかの代謝経路において水素ポンプとして作用し得、これもまたH+濃度、したがってピルビン酸読み取りに影響を及ぼし得ることが分かった。
【0064】
このように、実験室の試験により、前駆体カルボン酸(ピルビン酸)の製造が確認された。また、実験室の試験により、この溶液を電気分解して水素ガスを製造することができたことが確認された。
【0065】
例3
未処理海水のさらなる試料を独立した試験実験室に供給し、この実験室は海水を代謝作用に供するように指示された(すなわち上述のように)。実験室はまた、電気分解によって製造された水素ガスを測定するように指示された。これに関して、未処理海水の1Lの試料に25gの生のサトウキビ糖を添加し、そして4日間にわたって代謝作用を起こさせた。この間にpHを測定したところ、8.07から4.36に低下したことが観察されたが、これは代謝作用が進行したことを示す。
【0066】
次に、代謝作用を受けた溶液をホフマン装置で電気分解にかけ、そこで12Vの電池を用いて電気分解した。陰極で製造された水素ガスは、「ガスクロマトグラフィー/熱伝導率検出/フレームイオン化検出(GC/TCD/FID)によるORG512」(“ORG512 by Gas Chromatography/Thermal Conductivity Detection/Flame Ionisation Detection (GC/TCD/FID)”)の方法論を用いて、実験室によって捕捉され測定された。結果を以下の表にまとめる。
【0067】
【表2】
【0068】
観察
結果は、高いレベルの純度(>95%)の水素が代謝作用を受けた海水の電気分解によって製造されていたことを示した。
【0069】
例4
未処理海水のさらなる試料を独立した試験実験室に供給し、この実験室は海水を代謝作用に供するように指示された(上述のように)。実験室はまた、電気分解によって製造された水素ガスおよび塩素ガスのそれぞれを測定するように指示された。これに関して、未処理海水の1Lの試料に25gの生のサトウキビ糖を添加し、そして4日間にわたって代謝作用を起こさせた。この間にpHを測定したところ、約8までから5未満に低下することが観察されたが、これもまた、代謝作用が進行したことを示している。
【0070】
代謝作用を受けた溶液を、ホフマン装置で再び電気分解にかけ、そこで12Vの電池を用いて電気分解した。陰極で製造された水素ガスは、「ガスクロマトグラフィー/熱伝導率検出/フレームイオン化検出(GC/TCD/FID)によるORG512」(“ORG512 by Gas Chromatography/Thermal Conductivity Detection/Flame Ionisation Detection (GC/TCD/FID)”)の方法論を用いて、実験室によって捕捉され測定された。陰極で製造された塩素ガスは、「VRAEモニターによるガスのORG173分析」(“ORG173 analysis of gas by VRAE monitor”)方法論を用いて、実験室によって捕獲され測定された。結果を以下の表に要約する。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
観察
結果から、非常に高レベルの純度(>99%)の水素が、代謝作用を受けた海水の電気分解によって、そして有意な速度(2時間後に45.4mL)で製造されていたことが確認された。さらに、海水中に存在する塩素の量が比較的少ないため、水素よりはるかに遅い速度ではあるが塩素が製造されていた。このような結果から、海水から水素と塩素をそれぞれ商業的に製造できたことが確認された。
【0074】
例5
代謝作用によって製造された溶液のpHをさらに下げるために次の試験を行った。この試験では、添加されたバチルス又はその類似物を用いて追加の微生物種を導入することによって溶液のpHを下げた。これにより、電気分解前の溶液pHは約3以下になった。数種の細菌を採用することができ、いくつかのそのような細菌が、ピルビン酸塩を乳酸塩に、そして最終的にエタノエートに代謝することができる(すなわちエタノールの製造が可能になる)ことが分かった。
【0075】
水素イオンのすべての増加は、水分子を分割するなどの従来からの方法を上回って本方法の効率を大幅に改善した。さらに、低pH環境は水素製造にとってより好ましいことが観察された。この方法は発酵を利用しなかったので、例えばピルビン酸などのカルボン酸の製造に有利であったが、例えば乳酸および類似の酸の製造には有利でなかった。
【0076】
このように、これらの実験では、糖の代謝作用を促進すると同時に水素製造(体積と速度)を増大させるために、多くの技術を展開可能であったことが確認された。上述のように、脱塩水、塩素、エタノール、様々なナトリウム化合物(ピルビン酸ナトリウム、エタン酸ナトリウム)などを含む様々な他の製品も製造された。
【0077】
本開示の本質または範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して種々の変形および修正を加えることができる。
【0078】
以下の特許請求の範囲およびこれまでの説明において、文脈上、明示的な表現または必要な暗示によって必要とされる場合を除き、「含む」(“comprise”)という語または「含む」(“comprises”)もしくは「含む」(“comprising”)などの変形は、包括的な意味で用いられ、すなわち、これらは、記載された特徴の存在を特定するが、様々な実施形態においてさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。
図1
【手続補正書】
【提出日】2018年5月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水から水素を製造する方法であって、
この方法は、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合、それによってカルボン酸化合物を製造すること、および
このカルボン酸化合物を含む異化作用を受けた混合物を電気分解段階に通し、そこで、この異化作用を受けた混合物は電気分解に供され、それにより水素を製造すること
を含む
上記方法。
【請求項2】
前記所定量の糖が、海水1L当たり約50g未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定量の糖が、海水1L当たり約25g未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記十分な期間が約50時間より長い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記十分な期間が、約70〜90時間の範囲内であり、72〜84時間を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記糖が単糖類または二糖類を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マルトースのうちの1つまたは複数を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記異化作用が、解糖作用、果糖分解作用、または類似の代謝経路を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記異化作用が、いったん混合物のpHが約5になると終了するように制御される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記異化作用が、いったん混合物のpHが約3〜5の範囲内になると終了するように制御される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記異化作用が、カルボン酸−ピルビン酸または類似のアルファ−ケト酸、ベータ−ケト酸またはガンマ−ケト酸を製造するように行われる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって製造される水素。
【請求項13】
海水から複数種のカルボン酸化合物を製造する方法であって、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合することを含み、複数種のカルボン酸化合物が各異化相で製造されるように前記異化作用が制御されている、上記方法。
【請求項14】
第1の相でピルビン酸を製造するように前記異化作用が行われ、かつ、さらなる酸をそれぞれ製造するように1つまたは2以上の追加の各異化相が行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エタン酸およびメタン酸をそれぞれ製造するように、2つの追加の各異化相が行われる、請求項14に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2019年5月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水から水素を製造する方法であって、
この方法は、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合し、それによってカルボン酸化合物を製造すること、および
このカルボン酸化合物を含む異化作用を受けた混合物を電気分解段階に通し、そこで、この異化作用を受けた混合物は電気分解に供され、それにより水素を製造すること
を含む、
上記方法。
【請求項2】
前記所定量の糖が、海水1L当たり50g未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定量の糖が、海水1L当たり25g未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記十分な期間が50時間より長い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記十分な期間が、70〜90時間の範囲内であり、72〜84時間を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記糖が単糖類または二糖類を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マルトースのうちの1つまたは複数を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記異化作用が、解糖作用、果糖分解作用、または類似の代謝経路を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記異化作用が、いったん混合物のpHが5になると終了するように制御される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記異化作用が、いったん混合物のpHが3〜5の範囲内になると終了するように制御される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記異化作用が、カルボン酸−ピルビン酸または類似のアルファ−ケト酸、ベータ−ケト酸またはガンマ−ケト酸を製造するように行われる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
塩素ガスも電気分解段階の陽極で製造され得る。これはまた、捕捉されて製品として販売され得る。
他の記載と重複するが、本発明を以下に示す。
[発明A1]
海水からカルボン酸化合物を製造する方法であって、
この方法は、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合することを含み、それによってカルボン酸化合物を製造する、
上記方法。
[発明A2]
前記所定量の糖が、海水1L当たり約50g未満である、発明A1に記載の方法。
[発明A3]
前記所定量の糖が、海水1L当たり約25g未満である、発明A1またはA2に記載の方法。
[発明A4]
前記十分な期間が約50時間より長い、発明A1〜A3のいずれか1項に記載の方法。
[発明A5]
前記十分な期間が、約70〜90時間の範囲内であり、72〜84時間を含む、発明A1〜A4のいずれか1項に記載の方法。
[発明A6]
前記糖が単糖類または二糖類を含む、発明A1〜A5のいずれか1項に記載の方法。
[発明A7]
前記糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マルトースのうちの1つまたは複数を含む、発明A6に記載の方法。
[発明A8]
前記異化作用が、解糖作用、果糖分解作用、または類似の代謝経路を含む、発明A1からA7のいずれか1項に記載の方法。
[発明A9]
前記異化作用が、いったん混合物のpHが約5になると終了するように制御される、発明A1〜A8のいずれか1項に記載の方法。
[発明A10]
前記異化作用が、いったん混合物のpHが約3〜5の範囲内になると終了するように制御される、発明A1〜A9のいずれか1項に記載の方法。
[発明A11]
前記異化作用が、カルボン酸−ピルビン酸または類似のアルファ−ケト酸、ベータ−ケト酸またはガンマ−ケト酸を製造するように行われる、発明A1〜A10のいずれか1項に記載の方法。
[発明A12]
水素を製造するように、前記の異化作用を受けた混合物を電気分解にかけることをさらに含む、発明A1〜A11のいずれか1項に記載の方法。
[発明A13]
海水から水素を製造する方法であって、
この方法は、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合し、それによってカルボン酸化合物を製造すること、および
水素を製造するように、このカルボン酸化合物を含む異化作用を受けた混合物を電気分解にかけることを含む、
上記方法。
[発明A14]
発明A2〜A11のいずれか1項に特定されている事項(これらの発明Aが引用する発明A1に特定されている事項を除く)を含む、発明AA13に記載の方法。
[発明A15]
発明A1〜A14のいずれか1項に記載の方法によって製造される水素。
さらに、他の記載と重複するが、本発明を以下に示す。
[発明B1]
海水から水素を製造する方法であって、
この方法は、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合し、それによってカルボン酸化合物を製造すること、および
このカルボン酸化合物を含む異化作用を受けた混合物を電気分解段階に通し、そこで、この異化作用を受けた混合物は電気分解に供され、それにより水素を製造すること
を含む、
上記方法。
[発明B2]
前記所定量の糖が、海水1L当たり約50g未満である、発明B1に記載の方法。
[発明B3]
前記所定量の糖が、海水1L当たり約25g未満である、発明B1またはB2に記載の方法。
[発明B4]
前記十分な期間が約50時間より長い、発明B1〜B3のいずれか1項に記載の方法。
[発明B5]
前記十分な期間が、約70〜90時間の範囲内であり、72〜84時間を含む、発明B1〜B4のいずれか1項に記載の方法。
[発明B6]
前記糖が単糖類または二糖類を含む、発明B1〜B5のいずれか1項に記載の方法。
[発明B7]
前記糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マルトースのうちの1つまたは複数を含む、発明B6に記載の方法。
[発明B8]
前記異化作用が、解糖作用、果糖分解作用、または類似の代謝経路を含む、発明B1からB7のいずれか1項に記載の方法。
[発明B9]
前記異化作用が、いったん混合物のpHが約5になると終了するように制御される、発明B1〜B8のいずれか1項に記載の方法。
[発明B10]
前記異化作用が、いったん混合物のpHが約3〜5の範囲内になると終了するように制御される、発明B1〜B9のいずれか1項に記載の方法。
[発明B11]
前記異化作用が、カルボン酸−ピルビン酸または類似のアルファ−ケト酸、ベータ−ケト酸またはガンマ−ケト酸を製造するように行われる、発明B1〜B10のいずれか1項に記載の方法。
[発明B12]
発明B1〜B11のいずれか1項に記載の方法によって製造される水素。
[発明B13]
海水から複数種のカルボン酸化合物を製造する方法であって、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合することを含み、複数種のカルボン酸化合物が各異化相で製造されるように前記異化作用が制御されている、上記方法。
[発明B14]
第1の相でピルビン酸を製造するように前記異化作用が行われ、かつ、さらなる酸をそれぞれ製造するように1つまたは2以上の追加の各異化相が行われる、発明B13に記載の方法。
[発明B15]
エタン酸およびメタン酸をそれぞれ製造するように、2つの追加の各異化相が行われる、発明B14に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2019年12月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水から水素を製造する方法であって、
この方法は、
糖の異化作用が起こり得るように十分な期間にわたって所定量の糖と海水とを混合し、それによってカルボン酸を製造すること、および
このカルボン酸を含む異化作用を受けた混合物を電気分解段階に通し、そこで、この異化作用を受けた混合物は電気分解に供され、それにより水素を製造すること
を含む、
上記方法。
【請求項2】
前記所定量の糖が、海水1L当たり50g未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定量の糖が、海水1L当たり25g未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記十分な期間が50時間より長い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記十分な期間が、70〜90時間の範囲内であ、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記十分な期間が、72〜84時間の範囲内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記糖が単糖類または二糖類を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マルトースのうちの1つまたは複数を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記異化作用が、解糖作用、果糖分解作用、または類似の代謝経路を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記異化作用が、いったん混合物のpHが5になると終了するように制御される、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記異化作用が、いったん混合物のpHが3〜5の範囲内になると終了するように制御される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ルボン酸アルファ−ケト酸、ベータ−ケト酸またはガンマ−ケト酸である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
カルボン酸がピルビン酸である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】