(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-513720(P2020-513720A)
(43)【公表日】2020年5月14日
(54)【発明の名称】ギアモータ、対応するワイパーシステム及び対応する制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 6/16 20160101AFI20200417BHJP
B60S 1/08 20060101ALI20200417BHJP
H02K 29/08 20060101ALI20200417BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20200417BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20200417BHJP
【FI】
H02P6/16
B60S1/08 Z
H02K29/08
H02K7/116
H02K11/215
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-527207(P2019-527207)
(86)(22)【出願日】2017年11月6日
(85)【翻訳文提出日】2019年7月12日
(86)【国際出願番号】EP2017078360
(87)【国際公開番号】WO2018091302
(87)【国際公開日】20180524
(31)【優先権主張番号】1661258
(32)【優先日】2016年11月21日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ−ルイ、エラーダ
【テーマコード(参考)】
3D025
5H019
5H560
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
3D025AE02
3D025AE57
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB19
5H019BB23
5H019CC03
5H560BB04
5H560BB07
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5H560DA19
5H560EB01
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5H560RR03
5H560TT15
5H607BB01
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5H607DD19
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5H611BB08
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
5H611UA01
(57)【要約】
本発明は、‐ロータ(15)と、‐前記ロータ(15)に電磁的に磁場を発生させるためのコイル(17)を有するステータ(13)と、を含む‐ブラシレスDC電気モータ(103)と、‐前記ステータ(13)に対する前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)と、‐前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)により決定された前記ロータ(15)の角度位置に応じて、前記電磁励磁コイル(17)に給電するための制御信号を生成するように構成された制御ユニット(21)と、‐一側において前記電気モータ(103)の前記ロータ(15)に連結されるとともに、他側において特にワイパーシステムである外部機構に連結されることが意図された出力シャフト(109)に連結された減速ギア機構(104)であって、所定の減速比を有する減速ギア機構(104)と、を備える、特にワイパーシステム用のギアモータ(101)において、前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)は、前記ロータ(15)とともに回転する制御磁石(29、29a、29b)に対応する少なくとも1つのホール効果センサ(27、27a、27b)を備え、前記ギアモータ(101)は、前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)に接続された処理ユニット(26)であって、前記減速ギア機構(104)の前記所定の減速比を考慮して決定された前記ロータ(15)の角度位置に基づいて、前記出力シャフト(109)の角度位置を決定するように構成された処理ユニット(26)を更に備えるギアモータ(101)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐ロータ(15)と、
‐前記ロータ(15)に電磁的に磁場を発生させるためのコイル(17)を有するステータ(13)と、を備える
‐ブラシレスDC電気モータ(103)と、
‐前記ステータ(13)に対する前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)と、
‐前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)により決定された前記ロータ(15)の角度位置に応じて、前記電磁励磁コイル(17)に給電するための制御信号を生成するように構成された制御ユニット(21)と、
‐一側において前記電気モータ(103)の前記ロータ(15)に連結されるとともに、他側において特にワイパーシステムである外部機構に連結されることが意図された出力シャフト(109)に連結された減速ギア機構(104)であって、所定の減速比を有する減速ギア機構(104)と、
を備える、特にワイパーシステム用のギアモータ(101)であって、
前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)は、前記ロータ(15)に連動して回転する制御磁石(29、29a、29b)に対応する少なくとも1つのホール効果センサ(27、27a、27b)を備え、
前記ギアモータ(101)は、前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)に接続された処理ユニット(26)であって、前記減速ギア機構(104)の前記所定の減速比を考慮して決定された前記ロータ(15)の角度位置に基づいて、前記出力シャフト(109)の角度位置を決定するように構成された処理ユニット(26)を更に備える、
ギアモータ(101)。
【請求項2】
前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)は、前記ロータ(15)に連動して回転する制御磁石(29、29a、29b)にそれぞれ対応する2つのホール効果センサ(27a、27b)を備える、
請求項1に記載のギアモータ(101)。
【請求項3】
前記制御磁石(29、29a、29b)は、前記ブラシレスDC電気モータ(103)の前記ロータ(15)の複数対の磁極の数より多い数の複数対の極を備える、
請求項1又は2に記載のギアモータ(101)。
【請求項4】
前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)は、前記電気モータ(103)の前記ロータ(15)の複数対の磁極の数の3倍に等しい数の複数対の極を備える制御磁石(29)に対応する単一のホール効果センサ(27)を備え、
前記制御磁石(29)の前記極は、前記電気モータ(103)の前記ロータ(15)の前記磁極と同位相になるように構成され、これにより、前記ホール効果センサ(27)の状態変化が、前記制御ユニット(21)により生成される前記電磁励磁コイル(17)に給電するための制御信号の状態変化と同期する、
請求項1と組み合わせた請求項3に記載のギアモータ(101)。
【請求項5】
前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)は、前記電気モータ(103)の前記ロータ(15)の複数対の磁極の数の3倍に等しい数の複数対の極を備える制御磁石(29)に対応する2つのホール効果センサ(27a、27b)を備え、
前記2つのセンサ(27a、27b)は、30°の角度だけオフセットしており、
前記制御磁石(29)の前記ロータ(15)の磁極は、前記ロータ(15)の前記磁極と同位相になるように構成され、これにより、前記ホール効果センサ(27a、27b)のうちの一方の状態変化が、前記制御ユニット(21)により生成される前記電磁励磁コイル(17)に給電するための制御信号の状態変化と同期する、
請求項3に記載のギアモータ(101)。
【請求項6】
前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)は、2つのホール効果センサ(27a、27b)を備え、
前記第1ホール効果センサ(27a)は、前記電気モータ(103)の前記ロータ(15)の複数対の磁極の数の3倍に等しい数の複数対の極を備える第1制御磁石(29a)に対応し、
前記第2ホール効果センサ(27b)は、前記電気モータ(103)の前記ロータ(15)の複数対の磁極の数の9倍に等しい数の複数対の極を備える第2制御磁石(29b)に対応し、
前記第1制御磁石(29)の前記極は、前記電気モータ(103)の前記ロータ(15)の前記磁極と同位相になるように構成され、これにより、前記第1ホール効果センサ(27a)の状態変化が、前記制御ユニット(21)により生成される前記電磁励磁コイル(17)に給電するための制御信号の状態変化と同期し、
前記第2ホール効果センサ(27b)と前記第2制御磁石(29b)とは、前記第1ホール効果センサ(27a)の状態変化が、前記第2ホール効果センサ(27b)の2つの状態変化の間で時間的に中間において生じるように構成される、
請求項3に記載のギアモータ(101)。
【請求項7】
前記ステータ(13)に対する前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)は、
‐所定閾値未満の前記ロータの回転速度については、前記単数又は複数のホール効果センサ(27、27a、27b)からの信号に基づいて、前記ロータ(15)の角度位置を決定するように構成されるとともに、
‐前記所定閾値以上の前記ロータ(15)の回転速度については、前記電磁励磁コイル(17)から生じた逆起電力の測定値に基づいて、前記ロータ(15)の角度位置を決定するように構成される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のギアモータ(101)。
【請求項8】
前記ロータ(15)の角度位置を決定するように、少なくとも1つの給電されていない電磁励磁コイル(17)の逆起電力が測定されて、前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)に送信され、
前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)は、前記逆起電力の測定値を、前記ロータ(15)の所定位置に対応する所定閾値と比較するように構成される、
請求項7に記載のギアモータ(101)。
【請求項9】
前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置は、前記単数又は複数のホール効果センサ(27、27a、27b)から生じた角度測定値を、前記電磁励磁コイル(17)の前記逆起電力の測定値に基づいて補正し、これにより、前記単数又は複数のホール効果センサ(27、27a、27b)を、前記逆起電力の測定値に基づいて較正する、
請求項7又は8に記載のギアモータ(101)。
【請求項10】
前記ギアモータ(101)は、前記出力シャフト(109)に連動して回転する出力磁石(129)と称される追加の磁石と、前記出力磁石(129)に対応する出力センサ(127a、127b)と称される少なくとも1つの追加のホール効果センサと、を更に備え、
前記少なくとも1つの出力センサ(127a、127b)が、前記出力シャフト(109)に連結されることが意図された前記外部機構の第1当接位置に対応する前記出力磁石(129)の第1位置と、前記出力シャフトに連結されることが意図された前記外部機構の第2当接位置に対応する前記出力磁石(129)の第2位置とを検出するように、前記少なくとも1つの出力センサ(127a、127b)と前記出力磁石(129)とは構成され、
前記少なくとも1つの出力センサ(127a、127b)は、前記制御ユニット(21)に接続され、
前記制御ユニット(21)は、前記少なくとも1つの出力センサ(127a、127b)からの信号に同様に応じて制御信号を生成するように構成される、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のギアモータ(101)。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のギアモータ(101)を備える、特に自動車両用のワイパーシステム。
【請求項12】
特にワイパーシステム用のギアモータ(101)の電気モータ(103)を制御する方法であって、
前記ギアモータ(101)は、
‐ロータ(15)と、
‐前記ロータ(15)に電磁的に磁場を発生させるためのコイル(17)を有するステータ(13)と、を備える
‐ブラシレスDC電気モータ(103)と、
‐一側において前記電気モータ(103)の前記ロータ(15)に連結されるとともに、他側において特にワイパーシステムである外部機構に連結されることが意図された出力シャフト(109)に連結される減速ギア機構(104)であって、所定の減速比を有する減速ギア機構(104)と、
‐前記ロータ(15)に連動して回転する制御磁石(29、29a、29b)に対応する少なくとも1つのホール効果センサ(27、27a、27b)を備える、前記ステータ(13)に対する前記ロータ(15)の角度位置を決定するための装置(25)と、
を備え、
前記方法は、
(a)所定閾値未満の前記ロータの回転速度については:
‐前記単数又は複数のホール効果センサ(27、27a、27b)から生じた信号に基づいて、前記ロータ(15)の角度位置が決定される工程と、
(b)前記所定閾値以上の前記ロータの回転速度については、
‐前記電磁励磁コイル(17)から生じた逆起電力の測定値に基づいて、前記ロータ(15)の角度位置が決定される工程と、
‐前記工程において決定された前記ロータ(15)の角度位置に応じて、前記電磁励磁コイル(17)に給電するための制御信号が生成される工程と、
‐前記工程において決定された前記ロータ(15)の角度位置に基づいて、且つ前記減速ギア機構(104)の前記所定減速比を考慮して、前記出力シャフト(109)の角度位置が決定される工程と、
を備える、ギアモータ(101)の電気モータ(103)を制御する方法。
【請求項13】
前記ロータ(15)を電磁的に励磁するための前記コイル(17)から生じた逆起電力の測定値に基づいて、前記単数又は複数のホール効果センサ(27、27a、27b)の角度測定値が補正される、
請求項12に記載のギアモータ(101)の電気モータ(103)を制御する方法。
【請求項14】
前記ギアモータ(101)は、前記減速ギア機構(104)の前記出力シャフト(109)に配置された出力磁石(129)と称される追加の磁石と、前記出力磁石(129)に対応する少なくとも1つの追加のホール効果センサ(127a、127b)と、を更に備え、
前記少なくとも1つの出力センサ(127a、127b)が、前記出力シャフト(109)が前記出力シャフト(109)に連結されることが意図された前記外部機構の第1当接位置に対応する第1位置にあるとき、前記出力磁石(129)の第1位置を検出するとともに、前記出力シャフト(109)が前記出力シャフト(109)に連結されることが意図された前記外部機構の第2当接位置に対応する第2位置にあるとき、前記出力磁石(129)の第2位置を検出するように、前記少なくとも1つの出力センサ(127a、127b)と前記少なくとも1つの出力磁石(129)とは構成され、
前記電磁励磁コイル(17)に給電するための制御信号を生成する工程は、前記少なくとも1つの出力センサ(127a、127b)からの信号に同様に応じて実施される、
請求項12又は13に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギアモータ、特に自動車両のワイパーシステム用のギアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ギアモータは、本質的に減速ギア機構に連結された電気モータからなり、その機能は、大きな回転伝達トルクを得るためにその速度を減速することである。
【0003】
種々のタイプの電気モータがギアモータに使用され得るが、中でもブラシレスDC電気モータは、長寿命、嵩のなさ、低燃費、並びに低い騒音レベル等の多くの利点を有する。
【0004】
しかしながら、ブラシを有するモータに比較して、当該電気モータの制御は複雑である。なぜならば、この制御を良好に機能させるためには、ブラシレスDC電気モータのロータの角度位置を正確に把握する必要があるからである。
【0005】
実際には、このような電気モータは、ステータに配置される電磁励磁コイル(electromagnetic excitation coil)を備える。電磁励磁コイルには、インバータを介して交流電流が供給され、これによりロータに配置された永久磁石を駆動することが可能となる。
【0006】
所望のロータ駆動を得るように最適な瞬間にインバータのスイッチを切り替え得る、したがって電磁コイルへの給電を切り換え得るためには、状態切替時に、ロータの位置を少なくともセグメント別に数ヵ所で正確に知る必要がある(一般的に、台形励磁(trapezoidal excitation)の場合、ロータの各回転で6回の切替)。
【0007】
図1aは、従来技術による3つホール効果センサを含む電気モータのロータに関する角度検出装置を示す図である。
図1aから理解されるように、H1、H2及びH3で示される3つのホール効果センサが、DC電気モータに取り付けられた例えば環状磁石である制御磁石の周囲のステータSTに配置される。DC電気モータの単一の軸Xを
図1において示す。制御磁石ACは2つの極を備え、S極はSで、N極がNで示されている。
【0008】
3つのホール効果センサH1、H2、及びH3は、120°の角度を以て分散配置され、これにより、ロータの60°の回転角に対応するサイクル毎の電磁励磁コイルの6つの切替の瞬間(時点)を得るようになっている。
【0009】
図1bは、その上部に、ホール効果センサH1、H2及びH3からの信号を表し、その下部に、ロータの360°サイクルにおける電磁励磁コイルへの電力供給信号を表す。当該サイクルは、上下方向の点線で画定された60°の6つのステップに分割されている。
【0010】
センサH3からの高信号とセンサH1及びH2からの低信号に対応する0から60°までの1で示される第1ステップにおいて、電流は位相Aから位相Bに切り替わる(位相Aに対応する信号は1であり、位相Bに対応する信号は−1であり、位相Cに対応する信号は0である)。
【0011】
センサH3及びH3からの高信号とセンサH1からの低信号に対応する60°から120°までの2で示される第2ステップにおいて、電流は位相Aから位相Cに切り替わる(位相Aに対応する信号は1であり、位相Bに対応する信号0であり、位相Cに対応する信号は−1である)。
【0012】
センサH2からの高信号とセンサH1及びH3からの低信号に対応する120°から180°までの3で示される第3ステップにおいて、電流は位相Bから位相Cに切り替わる(位相Bに対応する信号は1であり、位相Aに対応する信号は0であり、位相Cに対応する信号は−1である)。
【0013】
センサH1及びH2からの高信号とセンサH3からの低信号に対応する180°から240°までの第4ステップにおいて、電流は位相Bから位相Aに切り替わる(位相Bに対応する信号は1であり、位相Cに対応する信号は0であり、位相Aに対応する信号は−1である)。
【0014】
センサH1からの高信号とセンサH2及びH3からの低信号に対応する240°から300°までの第5ステップにおいて、電流は位相Cから位相Aに切り替わる(位相Cに対応する信号は1であり、位相Bに対応する信号は0であり、位相Aに対応する信号は−1である)。
【0015】
センサH1及びH3からの高信号とセンサH2からの低信号に対応する300°から360°までの第6ステップにおいて、電流は位相Cから位相Bに切り替わる(位相Cに対応する信号は1であり、位相Aに対応する信号は0であり、位相Bに対応する信号は−1である)。
【0016】
したがって、3つのホール効果センサH1、H2及びH3を使用することにより、電磁励磁コイルの6つの切替の変化の瞬間に対応するロータの6つの位置を正確に決定することが可能になる。
【0017】
このような解決策は、電気モータの制御に必要なセンサの個数が多いため、費用がかかるように思われる。
【0018】
必要なセンサの個数を削減するように、ロータ位置の決定に、ステータの励磁コイルの逆起電力の決定に基づくセンサレス法(sensorless method)を利用することも知られている。
【0019】
しかしながら、このような解決策には、ロータの回転速度と逆起電力が測定され、且つ切替の瞬間を制御するのに使用され得るのに十分になるまで、同期モードでブラシレスDC電気モータを始動することが必要である。
【0020】
現在、このような同期モードでの始動は、始動時の負荷が小さい適用であって比較的知られている適用(例えばファンの制御用)に対してのみ可能である。したがって、この解決策は、始動時に高い負荷と力の両方を必要とするか、或いはほぼゼロの負荷(例えば濡れている窓ガラス)又は高い負荷(例えば氷や雪で動きにくいワイパー)で始動され得る自動車両のワイパーシステム用ギアモータには適用できないことが理解される。
【0021】
更に、関連する問題は、電気モータ及び特にその回転方向に適用される制御を確定し得るようにワイパーシステムが装着された減速ギア機構の出力シャフトの位置をいかに決定するかということである。この目的のために、減速ギア機構の出力シャフトに配置された追加のセンサ、例えばアナログ角度センサを使用することが知られている。このようなセンサのコストも高く、ギアモータのコストが全体的に増加する。
【発明の概要】
【0022】
したがって、本発明の目的は、ギアモータの全体的なコストを低減可能としつつ、ワイパーシステムを効果的に制御し且つ良好に動作させることを可能にする解決策を提供することである。
【0023】
この目的のために、本発明は、
‐ロータと、
‐前記ロータに電磁的に磁場を発生させるためのコイルを有するステータと、を備える
‐ブラシレスDC電気モータと、
‐前記ステータに対する前記ロータの角度位置を決定するための装置と、
‐前記ロータの角度位置を決定するための装置により決定された前記ロータの角度位置に応じて、前記電磁励磁コイルに給電するための制御信号を生成するように構成された制御ユニットと、
‐一側において前記電気モータの前記ロータに連結されるとともに、他側において特にワイパーシステムである外部機構に連結されることが意図された出力シャフトに連結された減速ギア機構であって、所定の減速比を有する減速ギア機構と、
を備える、特にワイパーシステム用のギアモータであって、
前記ロータの角度位置を決定するための装置は、前記ロータに連動して回転する制御磁石に対応する少なくとも1つのホール効果センサを備え、
前記ギアモータは、前記ロータの角度位置を決定するための装置に接続された処理ユニットであって、前記減速ギア機構の前記所定の減速比を考慮して決定された前記ロータの角度位置に基づいて、前記出力シャフトの角度位置を決定するように構成された処理ユニットを更に備える、
ギアモータ、に関する。
【0024】
ロータの角度位置から出力シャフトの角度位置を決定することにより、前記出力シャフトに正確な位置センサを設けなくてもよくなる。
【0025】
本発明の別の態様によれば、前記ロータの角度位置を決定するための装置は、前記ロータに連動して回転する制御磁石にそれぞれ対応する2つのホール効果センサを備える。
【0026】
2つのホール効果センサを使用することにより、ロータの回転方向を決定することが可能になる。
【0027】
本発明の補足的な態様によれば、前記制御磁石は、前記ブラシレスDC電気モータの前記ロータの複数対の磁極の数より多い数の複数対の極を備える。
【0028】
本発明の追加の態様によれば、前記ロータの角度位置を決定するための装置は、前記電気モータの前記ロータの複数対の磁極の数の3倍に等しい数の複数対の極を備える制御磁石に対応する単一のホール効果センサを備え、前記制御磁石の前記極は、前記電気モータの前記ロータの前記磁極と同位相になるように構成され、これにより、前記ホール効果センサの状態変化が、前記制御ユニットにより生成される前記電磁励磁コイルに給電するための制御信号の状態変化と同期する。
【0029】
このような構成により、単一のホール効果センサで電気モータを駆動することが可能になる。
【0030】
本発明の別の態様によれば、前記ロータの角度位置を決定するための装置は、前記電気モータの前記ロータの複数対の磁極の数の3倍に等しい数の複数対の極を備える制御磁石に対応する2つのホール効果センサを備え、前記2つのセンサは、30°の角度だけオフセットしており、前記制御磁石の前記ロータの磁極は、前記ロータの前記磁極と同位相になるように構成され、これにより、前記ホール効果センサのうちの一方の状態変化が、前記制御ユニットにより生成される前記電磁励磁コイルに給電するための制御信号の状態変化と同期する。
【0031】
本発明の補足的な態様によれば、前記ロータの角度位置を決定するための装置は、2つのホール効果センサを備え、前記第1ホール効果センサは、前記電気モータの前記ロータの複数対の磁極の数の3倍に等しい数の複数対の極を備える第1制御磁石に対応し、前記第2ホール効果センサは、前記電気モータの前記ロータの複数対の磁極の数の9倍に等しい数の複数対の極を備える第2制御磁石に対応し、前記第1制御磁石の前記極は、前記電気モータの前記ロータの前記磁極と同位相になるように構成され、これにより、前記第1ホール効果センサの状態変化が、前記制御ユニットにより生成される前記電磁励磁コイルに給電するための制御信号の状態変化と同期し、前記第2ホール効果センサと前記第2制御磁石とは、前記第1ホール効果センサの状態変化が、前記第2ホール効果センサの2つの状態変化の間で時間的に中間において生じるように構成される。
【0032】
本発明の追加の態様によれば、前記ステータに対する前記ロータの角度位置を決定するための装置は、
‐所定閾値未満の前記ロータの回転速度については、前記単数又は複数のホール効果センサからの信号に基づいて、前記ロータの角度位置を決定するように構成されるとともに、
‐前記所定閾値以上の前記ロータの回転速度については、前記電磁励磁コイルから生じた逆起電力の測定値に基づいて、前記ロータの角度位置を決定するように構成される。
【0033】
逆起電力を利用することにより、ロータの位置決定の精度を向上させることが可能になる。
【0034】
本発明の別の態様によれば、前記ロータの角度位置を決定するように、少なくとも1つの給電されていない電磁励磁コイルの逆起電力が測定されて、前記ロータの角度位置を決定するための装置に送信され、前記ロータの角度位置を決定するための装置は、前記逆起電力の測定値を、前記ロータの所定位置に対応する所定閾値と比較するように構成される。
【0035】
本発明の補足的な態様によれば、前記ロータの角度位置を決定するための装置は、前記単数又は複数のホール効果センサから生じた角度測定値を、前記電磁励磁コイルの前記逆起電力の測定値に基づいて補正し、これにより、前記単数又は複数のホール効果センサを、前記逆起電力の測定値に基づいて較正する。
【0036】
本発明の追加の態様によれば、前記ギアモータは、前記出力シャフトに連動して回転する出力磁石と称される追加の磁石と、前記出力磁石に対応する出力センサと称される少なくとも1つの追加のホール効果センサと、を更に備え、前記少なくとも1つの出力センサが、前記出力シャフトに連結されることが意図された前記外部機構の第1当接位置に対応する前記出力磁石の第1位置と、前記出力シャフトに連結されることが意図された前記外部機構の第2当接位置に対応する前記出力磁石の第2位置とを検出するように、前記少なくとも1つの出力センサと前記出力磁石とは構成され、前記少なくとも1つの出力センサは、前記制御ユニットに接続され、前記制御ユニットは、前記少なくとも1つの出力センサからの信号に同様に応じて制御信号を生成するように構成される。
【0037】
また、本発明は、上述のギアモータを備える、特に自動車両用のワイパーシステムに関する。
【0038】
また、本発明は、
特にワイパーシステム用のギアモータの電気モータを制御する方法であって、
前記ギアモータは、
‐ロータと、
‐前記ロータに電磁的に磁場を発生させるためのコイルを有するステータと、を備える
‐ブラシレスDC電気モータと、
‐一側において前記電気モータの前記ロータに連結されるとともに、他側において特にワイパーシステムである外部機構に連結されることが意図された出力シャフトに連結される減速ギア機構であって、所定の減速比を有する減速ギア機構と、
‐前記ロータに連動して回転する制御磁石に対応する少なくとも1つのホール効果センサを備える、前記ステータに対する前記ロータの角度位置を決定するための装置と、
を備え、
前記方法は、
(a)所定閾値未満の前記ロータの回転速度については:
‐前記単数又は複数のホール効果センサから生じた信号に基づいて、前記ロータの角度位置が決定される工程と、
(b)前記所定閾値以上の前記ロータの回転速度については、
‐前記電磁励磁コイルから生じた逆起電力の測定値に基づいて、前記ロータの角度位置が決定される工程と、
‐前記工程において決定された前記ロータの角度位置に応じて、前記電磁励磁コイルに給電するための制御信号が生成される工程と、
‐前記工程において決定された前記ロータの角度位置に基づいて、且つ前記減速ギア機構の前記所定減速比を考慮して、前記出力シャフトの角度位置が決定される工程と、
を備える、ギアモータの電気モータを制御する方法、に関する。
【0039】
本発明の別の態様によれば、前記ロータに電磁的に磁場を発生させるための前記コイルから生じた逆起電力の測定値に基づいて、前記単数又は複数のホール効果センサの角度測定値が補正される。
【0040】
本発明の補足的な態様によれば、前記ギアモータは、前記減速ギア機構の前記出力シャフトに配置された出力磁石と称される追加の磁石と、前記出力磁石に対応する少なくとも1つの追加のホール効果センサと、を更に備え、前記少なくとも1つの出力センサが、前記出力シャフトが前記出力シャフトに連結されることが意図された前記外部機構の第1当接位置に対応する第1位置にあるとき、前記出力磁石の第1位置を検出するとともに、前記出力シャフトが前記出力シャフトに連結されることが意図された前記外部機構の第2当接位置に対応する第2位置にあるとき、前記出力磁石の第2位置を検出するように、前記少なくとも1つの出力センサと前記少なくとも1つの出力磁石とは構成され、前記電磁励磁コイルに給電するための制御信号を生成する工程は、前記少なくとも1つの出力センサからの信号に同様に応じて実施される。
【0041】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照しつつ例示として非制限的な態様でなされる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1a】従来技術による3つのホール効果センサを備えた電気モータのロータのための角度検出装置。
【
図1b】
図1aのセンサにより供給される信号及び電気モータの電磁励磁コイルの制御信号を示す図。
【
図4】第1実施形態による制御磁石に対応するホール効果センサを示す図。
【
図5】ロータの角度位置及び電磁励磁コイルの制御信号に応じて
図4のホール効果センサにより供給される信号のグラフ。
【
図6】第2の実施形態による制御磁石に対応する2つのホール効果センサを示す図。
【
図7】ロータの角度位置及び電磁励磁コイルの制御信号に応じて
図6のホール効果センサにより供給される信号のグラフ。
【
図8a】第3実施形態による第1制御磁石に対応する第1ホール効果センサを示す図。
【
図8b】第3実施形態による第2制御磁石に対応する第2ホール効果センサを示す図。
【
図8c】第1及び第2制御磁石に対応する第1及び第2ホール効果センサと、それらのロータの軸に対する配置を示す概略図。
【
図9】ロータの角度位置及び電磁励磁コイルの制御信号に応じて
図8のホール効果センサにより供給される信号のグラフ。
【
図10】窓ガラス上のワイパーアームの当接位置を示す図。
【
図11a】或る位置において歯付きホイールのレベルに配置された2つのホール効果センサを備える減速ギア機構を示す図。
【
図11b】別の位置において歯付きホイールのレベルに配置された2つのホール効果センサを備える減速ギア機構を示す図。
【
図11c】別の位置において歯付きホイールのレベルに配置された2つのホール効果センサを備える減速ギア機構を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
全ての図において、同一の要素には同じ参照符号が付される。
【0044】
以下の実施形態は一例である。説明では単数又は複数の実施形態について言及するが、それは各参照が同じ実施形態に関連すること、又は特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを必ずしも意味しない。異なる実施形態の単純な特徴は、他の実施形態を提供するために組み合わせられ得る、又は交換され得る。
【0045】
以下の説明では、例えば、第1要素又は第2要素、第1パラメータ及び第2パラメータ、更には第1基準又は第2基準のように、いくつかの要素又はパラメータに順番が付されことがある。これは、類似しているが同一ではない要素、パラメータ、又は基準を指定する。このような順番付けは、或る要素、パラメータ、又は基準の他のものに対する優先順位を意味するものではなく、このような順番は本説明の範囲から逸脱することなく容易に交換され得る。このような順番は、例えば特定の基準を評価するための時間に沿った順序を意味するものでもない。
【0046】
図2は、自動車両のワイパーシステムを設けることが意図されたギアモータ101の一例を示す。
【0047】
ギアモータ101は、ケーシング102を備える。ケーシング102には、所定の減速比、例えば典型的には1/69の減速比を有する減速ギア機構104に連結された電気モータ103が装着されている。
【0048】
減速ギア機構104は、電気モータ103により回転駆動されるウォームスクリュー107と、歯付きホイール108とを備える。歯付きホイール108は、ウォームスクリュー107の回転軸に対して実質的に直角の軸上で回転移動可能に装着された出力シャフト109に取り付けられる。
【0049】
減速ギア機構104は、出力シャフト109が電気モータ103によって間接的に回転駆動され得るように、ウォームスクリュー107が歯付きホイール108と噛み合うことで協働するように配置される。
【0050】
一般的に、出力シャフト109は、直接的に又は連結システムを介してワイパーアームに連結されており、ワイパーアームには窓ガラスワイパーが固定されている。
【0051】
本発明の文脈において、電気モータ103はブラシレスDC電気モータである。
【0052】
横方向断面における概略図である
図3aに示すように、電気モータ103は、円筒形のステータ13を備え、その中心にロータ15が収容されている。
【0053】
ロータ15は、電気モータ103の中心軸Xを中心として回転移動可能に装着され、永久磁石16を備える。永久磁石16の磁極が、N極に対してN、S極に対してSで表されている。しかしながら、本発明は、一対の磁極を備えるロータ15の永久磁石16に限定されず、より多くの対の磁極を備える永久磁石にも及ぶ。
【0054】
ステータ13は、ロータ15の周囲に配置された電磁励磁コイル17を備える。電磁励磁コイル17は、ステータ13の外周に均等に分散配置されている。ここでは、電気モータ103は、位相がA、B、Cで示される三相モータである。6つの電磁励磁コイル17(2つのコイルが1つの位相を形成するように対応付けられている)が存在し、これらは星型又はY型配置に従って結合されている。
【0055】
異なる個数の電磁励磁コイル17、及び異なる配置構成、例えばデルタ配置構成も使用可能であることが明らかである。
【0056】
図3bに示されるように、電磁励磁コイル17は、制御ユニット21によって管理されるインバータ19により給電され得る。
【0057】
インバータ19は、例えば、ステータ13のそれぞれの位相A、B及びCに給電することが意図された、B1、B2及びB3で示される3つの分岐を備える。
【0058】
各分岐B1、B2又はB3は2つのスイッチ23を備え、その切替は対応する位相A、B又はCの電磁励磁コイル17の給電又は非給電を駆動する。
【0059】
図3cにおいて1乃至6の番号が付された矢印によって表される一連の6つの切替ステップを得るように、インバータ19のスイッチ23は制御ユニット21により駆動される。
【0060】
第1ステップ1は、位相Aから位相Bへの電流の切替に対応し、第2ステップ2は位相Cから位相Bへの電流の切替に対応し、第3ステップ3は位相Cから位相Aへの電流の切替に対応し、第4ステップ4は位相Bから位相Aへの電流の切替に対応し、第5ステップ5は位相Bから位相Cへの電流の切替に対応し、第6ステップ6は位相Aから位相Cへの電流の切替に対応する。
【0061】
6つの切替ステップは、永久磁石16がモータの一対の極と呼ばれる単独対の磁極を含む場合には、電気的な360°回転、すなわちロータ15の完全な360°回転に対応する。2対の磁極を含む永久磁石16の場合、電気的360°回転に対応する6つの切替ステップは、ロータ15の180°の回転に対応する。そして3対の磁極を含む永久磁石16の場合、電気的360°回転に対応する6つの切替ステップは、ロータ15の120°回転に対応する。したがって、或る切替から別の切替への移行は、ロータ15の電気的な60°角度による回転毎に生じる。
【0062】
各ステップにおいて、電流は2つの位相で切り替わり、三番目の位相はフローティング電位になる。6つの切替ステップのシーケンスは、ロータ15を回転駆動し得るステータ13のレベルでの回転磁界の生成を可能にする。
【0063】
6ステップの切替方式は、120°位相通電(120° phase conduction)、及び60°非励磁(60° non-excitation)で最もよく知られているが、本発明はこの単独の切替方式に限定されず、他のタイプの切替、例えば、180°又は中間位相通電、又は正弦波のプログレッションに亘り得る通電中の異なる励磁配分に及ぶ。
【0064】
また、電気モータ103は、制御ユニット21が異なる切替の瞬間を決定し、これによりインバータ19のスイッチ23を制御し得るように、制御ユニット21に接続されたロータの角度位置を決定する装置25(
図3b参照)を備える。
【0065】
ロータの角度位置を決定するための装置25は、ロータ15に連動して回転する制御磁石に対応する少なくとも1つのホール効果センサに基づいて、ステータ13に対するロータ15の位置を決定するように構成される。
【0066】
次に、ロータ15の正当に決定された角度位置は、ロータ15の角度位置を決定するための装置25により制御ユニット21に送信され、これにより、インバータ19の切替の瞬間が決定され得る。
【0067】
更に、ギアモータ101は処理ユニット26も備える。処理ユニット26は、ロータ15の角度位置を決定するための装置25及び制御ユニット21に接続されるとともに、減速ギア機構104の所定の減速比を考慮して決定されたロータ15の角度に基づいて出力シャフト109の角度位置を決定するように構成されている。次いで、ロータ15に適用される回転速度が決定するように、特に、ワイパーアームが当接位置に到達したため電気モータ103の回転方向を逆にすべき瞬間を決定するように、出力シャフト109の角度位置は、制御ユニット21によって使用される。
【0068】
1)インバータ19の切替の瞬間の決定
A)第1実施形態:単一のホール効果センサ
図4及び5を参照すると、第1実施形態によれば、電気モータ103は、単一のホール効果センサ27を備えている。この単一のセンサ27は、ロータ15の角度位置を決定するための装置25により使用される。これにより、特に、低回転速度、すなわち所定の閾値未満、例えば電気モータ103の最大速度の10%未満の速度について、ロータ15の位置が決定される。これは、ブラシレスDC電気モータ103の始動段階に関する。
【0069】
所定の閾値以上の回転速度について、すなわち始動段階の後に、ロータ15の角度位置を決定するための装置25は、ロータ15の角度位置を、電磁励磁コイル17で測定された逆起電力に基づいて決定し得る。
【0070】
逆起電力は、給電されていないコイル17で測定される。例えば、
図3cのステップ1の場合、電流が位相Aから位相Bに伝達され、これにより逆起電力が位相Cに対応する電磁励磁コイル17で測定される。続いて、逆起電力の測定値は、ロータ15の角度位置を決定するための装置25に送信される。
【0071】
次いで、ロータ15の角度位置を決定するための装置25は、逆起電力の測定値を、ロータ15の所定の位置に対応する所定の閾値と比較する。例えば、対称電源の場合、切替の瞬間は、給電されていない電磁励磁コイル17の端子における逆起電力の電圧値のゼロ交差(正レベルから負レベルへの遷移、又はその逆の遷移)に対応する。
【0072】
また、測定された逆起電力を使用して、ホール効果センサ27を補正し、更には較正することが可能である。
【0073】
変形例によれば、所定の閾値以上の回転速度であっても、ホール効果センサ27により供給される信号に基づいて決定されたロータ15の位置を利用し続けることが可能である。
【0074】
ホール効果センサ27は、ステータ13のレベルに配置され、
図4に示すようにロータ15に連動して回転する制御磁石29に対応する。
【0075】
制御磁石29は、ロータ15の磁極の数の3倍に等しい数の磁極を有する。したがって、本例において、制御磁石29の磁極数は、N極についてN1、N2及びN3で示され、S極についてS1、S2及びS3で示される6つの磁極である。制御磁石29の各磁極は、60°の角度セグメントを占める。
【0076】
制御磁石29の6つの磁極を理由として、ホール効果センサ27は、60°毎にロータの正確な角度位置を検出することができる。したがって、
図5のグラフに示すように、電気モータ103は、単一のホール効果センサ27により供給される信号の状態変化が、インバータ19の切替変化に一致するように構成される。
【0077】
実際に、
図5は、その上部に、ロータ15の角度位置αに応じてホール効果センサ27から生じた信号hを示す。
【0078】
電磁励磁コイル17の切替周期に一致する6つのステップも、
図5の下部に示される。
【0079】
ホール効果センサ27から生じた信号hの状態変化により、インバータ19の切替変化が適用されなければならない瞬間を決定することができる。
【0080】
B)第2実施形態:第1構成による2つのホール効果センサ27a及び27b
図6及び7に示す第2実施形態によれば、電気モータ103は、磁極の数がロータの磁極の数の3倍に等しい1つの制御磁石29であって、第1実施形態の制御磁石29と同様の制御磁石29に対応する2つのホール効果センサ27a及び27bを備えている。
【0081】
したがって、本例において、制御磁石29の極の数は、
図6に示すように6つの磁極である。2つのホール効果センサ27a、27bは、例えば、ロータ15の周囲に配置される。2つのホール効果センサ27a及び27bから生じた信号が、電気的90°の角度だけオフセットされるように、すなわち、3対の磁極を備える制御磁石29の場合には30°オフセットされるように、2つのホール効果センサ27a、27bは角度位置だけオフセットされる。
【0082】
電気モータ103は、その他の点では第1実施形態と同様であり、ここでは動作の違いのみを説明する。
【0083】
図7のグラフに示すように、電気モータ103は、2つのホール効果センサ27a、27bのうちの一方、例えばセンサ27bにより供給される信号の状態変化が、インバータ19の切替変化に一致するように構成される。
【0084】
したがって、30°に配置された2つのホール効果センサ27a及び27bにより、ロータ15の位置を検出することが30°毎に可能になる。
【0085】
電磁励磁コイル17の切替周期に一致する6つのステップも
図7の下部に示されている。
【0086】
したがって、ホール効果センサのうちの一方、例えばセンサ27bにより、第1実施形態のようにインバータ19の切替の変化の瞬間を供給することが可能になり、他方のホール効果センサ、例えばセンサ27aにより、ロータ15の回転方向を得ることが可能になる。
【0087】
測定された逆起電力は、ロータ15の位置を決定し、且つホール効果センサ27a及び27bを補正及び/又は較正するために使用され得る。
【0088】
C)第3実施形態:第2構成による2つのホール効果センサ27a及び27b
図8a、8b及び9に示す第3実施形態によれば、電気モータ103は、モータの磁対の数の9倍に等しい数の磁極対を含む第1制御磁石29aに対応する第1ホール効果センサ27aと、電気モータ103の磁対の数の3倍に等しい数の磁極対の数を含む第2制御磁石29bに対応する第2ホール効果センサ27bを備える。本例において、第1制御磁石29aの極数は、
図8aに示すように、N極についてN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8及びN9で示され、S極についてS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8及びS9で示される18個の磁極である。第1制御磁石29aの各磁極は、20°の角度セグメントを占める。
図8aに示すように、第2制御磁石29bの極数は、N極についてN1、N2及びN3で示され、S極についてS1、S2及びS3で示される6つの磁極である。第2制御磁石29bの各磁極は、60°の角度セグメントを占める。第1制御磁石29a、29bは、ロータ15に連動して回転し、
図8bに示すように同軸状に配置されている。
【0089】
電気モータ103は、その他の点では第2実施形態と同様であり、ここでは動作の違いのみを説明する。
【0090】
例えば
図9のグラフに示すように、電気モータ103は、第2ホール効果センサ27bにより供給される信号h_bの状態変化が、インバータ19の切替変化に対応するように構成される。
【0091】
第1ホール効果センサ27a及び第1制御磁石29aは、例えば、
図9に示すように、第2ホール効果センサ27bの状態変化が第1ホール効果センサ27aの2つの状態変化の間で時間的に中間において生じるように構成される。
【0092】
したがって、第2ホール効果センサ27bにより、インバータ19の切替の変化の瞬間を供給することが可能となり、第1ホール効果センサ27aにより、ロータの回転方向を決定することが可能となる。2つのセンサ27a及び27bの組み合わせにより、10°又は20°毎にロータの位置を得ることが可能となる。
【0093】
電磁励磁コイル17の切替周期に一致する6つのステップも、
図9の下部に示されている。
【0094】
第2実施形態では、測定された逆起電力は、同じくロータ15の位置を決定し、且つホール効果センサ27a及び27bを補正及び/又は較正するために使用され得る。
【0095】
より多い又はより少ない個数の磁極を備える1つ又は2つの制御磁石29、29a、29bに対応する1つ又は2つのホール効果センサ27、27a、27bを備える他の実施形態も、本発明に関して想定され得る。ホール効果センサ27、27a、27bは、インバータ19の切替の瞬間を決定することを可能にする。
【0096】
実際には、ロータ15の角度位置を決定するための装置25、制御ユニット21及び処理ユニット26は、単一の機器、例えばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ASIC(特定用途向け集積回路)、又は当業者に公知の他の任意の適切な処理手段にまとめられ得る。
【0097】
更に、異なる実施形態について示した例は、2つの磁極及び単一の減速比を有する電気モータ103に対応するが、本発明はそのような例に限定されず、異なる個数の磁極や異なる減速比を有する他の構成に及ぶことに留意されたい。
【0098】
2)減速ギア機構104の出力シャフト109の位置の決定
上述のように、ロータの角度位置を決定するための装置25により決定されたロータ15の位置は、減速ギア機構104の出力シャフト109の位置を決定するように構成された処理ユニット26に送信される。決定は、減速ギア機構104の減速比、例えば1/69を考慮して、ロータ15の69回転が減速ギア機構104の出力シャフト109の1回転に一致するように実施される。減速ギア機構104の出力シャフト109の決定された位置により、ワイパーアーム114の位置を推定し、これにより、回転速度を減速すべき瞬間と、ワイパーアームが所望の往復運動をなすように電気モータ103の回転方向を逆にすべき瞬間を定めることが可能になる。したがって、減速ギア機構104の出力シャフト109の所定の当接位置において電気モータ103の回転方向の変化を得ることを可能にする制御信号を生成するように、処理ユニット26は制御ユニット21に結合される。
【0099】
この機構は、例えば、
図10に示すように、A及びBで示す2つの当接位置を含む。第1当接位置Aは、例えば、窓ガラス112の下端部、又はワイパーアーム114に対応する窓の下端部に近いワイパーアームの低い位置に対応する。第2当接位置Bは、例えば、ワイパーアーム114が作動しているときのワイパーアーム114の方向変化の高い位置に対応する。
【0100】
したがって、単数又は複数のホール効果センサ27、27a、27bから生じた信号に基づいて、処理ユニット26は、ロータ15により実行される回転数を決定し、そしてこれから減速比に基づいてワイパーアーム114の位置を推定することができる。
【0101】
しかしながら、特にワイパーアーム114が所定の休止位置、例えばワイパーシステムがオフにされる度に位置Aに戻されない場合、このような動作は満足のいくものではないかもしれない。実際に、ギアモータ101の電気モータ103を正しく制御し得るように、制御ユニット21は、ワイパーシステムの起動時のワイパーアーム114の位置を把握している必要がある。
【0102】
この目的のために、減速ギア機構104の出力シャフト109に回転可能に結合された出力磁石と称される単数又は複数の制御磁石に対応する出力センサと称される少なくとも1つの追加のホール効果センサを使用することが可能である。単数又は複数のセンサ及び単数又は複数の出力磁石により、例えば、当接位置を決定することが可能になる。単数又は複数の出力センサは、例えば処理ユニット26に接続される。
【0103】
図11aは、2つの出力ホール効果センサ127a及び127bと、1つの制御磁石129とを備える例示的な実施形態を示す。制御磁石129は、出力シャフト109に対応する歯付きホイール108の当接位置に配置された2つのS極S1及びS2と、2つのS極S1とS2との間に配置された1つのN極Nを備えている。
【0104】
図11b及び11cは、第1及び第2当接位置にそれぞれある歯付きホイール108をそれぞれ示す。2つのホール効果センサ127a及び127bを使用することにより、当接の存在を検出し、それが第1当接又は第2当接のいずれであるかを決定することができる。実際に、歯付きホイール108第1当接位置にある場合(
図11b)、第1出力センサ127aはS極S1に対面しており、第2出力センサ127bはN極Nに対面している。これに対し、第2当接位置の場合(
図11c)、第1出力センサ127aはN極Nに対面し、第2出力センサ127bはS極S2に対面している。したがって、S極が第1出力センサ127a又は第2出力センサ127bに検出されるかに応じて、ワイパーアームが第1当接位置にあるか第2当接位置にあるかを決定することができる。更に、ワイパーアームの動作において、処理ユニット26は、出力センサ127a、127bにより与えられる2つの当接位置の間におけるワイパーアームの位置を、上述のようにロータ15に対応する単数又は複数のホール効果センサ27、27a、27bによって決定することができる。
【0105】
このように、本発明では、限られた個数のホール効果センサ27、27a、27b、127a、127bを使用することにより、ギアモータ101を確実に駆動することができる。これらのホール効果センサ27、27a、27b、127a、127bにより、電気モータ103のロータ15の位置と、減速ギア機構104の出力シャフト109の位置との両方を決定することができる。
【国際調査報告】