特表2020-513810(P2020-513810A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-513810クロマチンアクセシビリティ及び心筋細胞の再生を誘発する、Hippoエフェクターである優性活性Yap
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-513810(P2020-513810A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】クロマチンアクセシビリティ及び心筋細胞の再生を誘発する、Hippoエフェクターである優性活性Yap
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20200424BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200424BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20200424BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20200424BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20200424BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20200424BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20200424BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20200424BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20200424BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20200424BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20200424BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20200424BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
   C12N15/12ZNA
   C12N5/10
   A61P21/04
   A61P9/00
   A61P27/02
   A61P27/16
   A61P9/06
   A61P9/04
   A61P9/10
   A61P9/12
   A61K35/34
   A61K35/30
   A61L27/38
   A61L27/38 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2019-550762(P2019-550762)
(86)(22)【出願日】2018年3月14日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月11日
(86)【国際出願番号】US2018022496
(87)【国際公開番号】WO2018170172
(87)【国際公開日】20180920
(31)【優先権主張番号】62/471,204
(32)【優先日】2017年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
3.Igepal
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モンロー、タナー
(72)【発明者】
【氏名】リーチ、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、ジェームズ、エフ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C081AB18
4C081BA12
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA13
4C087MA17
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA24
4C087MA28
4C087MA31
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA56
4C087MA57
4C087MA58
4C087MA59
4C087MA60
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZA34
4C087ZA36
4C087ZA37
4C087ZA42
4C087ZA45
4C087ZA94
(57)【要約】
本開示は、1つ以上の突然変異型Yap変異体を有する既存細胞から細胞または組織を作製する方法を包含する。具体的な実施形態では、本開示は、分裂して新たな心筋細胞を生じさせる1つ以上の突然変異型Yap変異体による既存心筋細胞の治療に関する。具体的な事例では、突然変異型Yap変異体は、Yapの1個、2個、3個、4個、5個、6個、またはそれ以上のセリンに、セリンからアラニンへの置換を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の突然変異型Yap変異体を個体に供給する工程を含む、個体において細胞を再生する方法。
【請求項2】
再生される前記細胞が、心筋細胞、網膜細胞、または耳の有毛細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記突然変異型変異体が、セリンに1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
2個、3個、4個、5個、6個、7個、またはそれ以上のアミノ酸置換がセリンに存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Latsキナーゼによりリン酸化されるセリンに、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換が存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上のアミノ酸置換がアラニンへの置換である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記突然変異型Yap変異体がK265R突然変異を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記個体が、心臓病態、網膜病態、または耳の病態を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記個体における前記心臓病態により、前記個体が心筋細胞の再生を必要とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記個体の心臓が心筋細胞のアポトーシス、ネクローシス、及び/またはオートファジーを有する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記心臓病態が、心臓疾患、心筋症、心臓弁の問題、心膜炎、不整脈、心停止、先天性心障害、心不全、心疾患、心毒性、うっ血性心不全、虚血性心疾患、急性心筋梗塞、心房細動、冠動脈疾患、虚血性心疾患、心臓弁膜症、高血圧性心疾患、及び不整脈からなる群から選択される、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記個体がデュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記個体に組成物が複数回供給される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が前記個体の全身に供給される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が前記個体の局所に供給される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記突然変異型Yap変異体をin vitroで細胞に曝露させて、in vitro由来細胞を作製する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
有効量の前記in vitro由来細胞を前記個体に供給する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
病態の追加療法を前記個体に提供する、請求項5〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
個体の医学的病態を治療する方法であって、治療有効量の突然変異型Yap変異体を前記個体に供給する工程を含む、前記方法。
【請求項20】
前記突然変異型Yap変異体が、セリンに1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
2個、3個、4個、5個、6個、7個、またはそれ以上のアミノ酸置換がセリンに存在する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
Latsキナーゼによりリン酸化されるセリンに、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換が存在する、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
セリンに5つのアミノ酸置換が存在する、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
1つ以上のアミノ酸置換がアラニンへの置換である、請求項19〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記突然変異型Yap変異体がK265R突然変異を含む、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記医学的病態が心臓病態である、請求項19〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記個体における前記心臓病態により、前記個体が心筋細胞の再生を必要とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記個体の心臓が心筋細胞のアポトーシス、ネクローシス、及び/またはオートファジーを有する、請求項19〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記医学的病態が、心臓疾患、心筋症、心臓弁の問題、心膜炎、不整脈、心停止、先天性心障害、心不全、心疾患、心毒性、うっ血性心不全、虚血性心疾患、急性心筋梗塞、心房細動、冠動脈疾患、虚血性心疾患、心臓弁膜症、高血圧性心疾患、及び不整脈からなる群から選択される心臓病態である、請求項19〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記個体がデュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する、請求項19〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記個体に前記組成物が複数回供給される、請求項19〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が前記個体の全身に供給される、請求項19〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が前記個体の局所に供給される、請求項19〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記突然変異型Yap変異体をin vitroで細胞に曝露させて、in vitro由来細胞を作製する、請求項19〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
有効量の前記in vitro由来細胞を前記個体に供給する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記医学的病態の追加療法を前記個体に提供する、請求項19〜35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年3月14日出願の米国仮特許出願第62/471,204号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府支援の研究または開発に関する声明)
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)により授与されたHL127717に基づく政府支援を受けて実施された。政府は本発明において、ある一定の権利を有する。
【0003】
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、生化学、心臓学、及び医学の分野に関連する。
【背景技術】
【0004】
完全なヒト心筋細胞の供給は生後1か月以内に確立され、成人の心筋細胞は年間約1%の割合で再生されることが、C14年代測定実験で示された。成体マウスの心筋細胞も同様に再生率が低い。Hippo経路は進化的に保存されたキナーゼカスケードであり、Large Tumor Suppressor(Lats)1および2キナーゼによる転写コアクチベーターYapのリン酸化及び阻害をもたらす。Hippo経路の構成要素を出生後に除去すると、セリン(S)からアラニン(A)への単一の突然変異をもつ活性型Yapを発現できるように、CMの再生を適度に増加させることができる4〜7
【0005】
Lats1/2は、5つの共通するNDR(核Dbf2関連)キナーゼファミリーモチーフHXRXXSのS残基のリン酸化によりYapを阻害する。in vitroレポーターアッセイでは、Hippo阻害の多くはS127のリン酸化(ヒトにおいてはS127、マウスにおいてはS112)によるものであるが、Yapの阻害には他のSリン酸化事象も寄与することが示されている
【0006】
本開示は、心臓修復を含めた心筋細胞再生の技術分野で長年にわたり切望されたニーズを満たす。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態には、例えば心臓、網膜、中枢神経系のニューロン、及び耳の有毛細胞におけるものを含めた、あらゆる種類の組織再生のための方法及び組成物を含む。本開示の実施形態には、ヒト、イヌ、ネコ、ウマなどの哺乳動物個体における1つ以上の病態の治療に対するものを含めた、細胞の再生に関連する方法及び組成物を含む。本開示の実施形態には、細胞を再生することを必要とする1つ以上の個体において細胞を再生するための方法及び組成物を含む。個体は、細胞再生を必要とする何らかの種類の病態を有する場合があるか、あるいはその病態に罹患しやすい、または罹患のリスクがある。具体的な実施形態では、哺乳動物個体における1つ以上の病態の治療に対するものを含めた、心筋細胞、網膜細胞、中枢神経系のニューロン、または耳(内耳または外耳を含む)の有毛細胞の再生に関連する方法及び組成物が提供される。網膜での具体的な事例では、ミュラーグリア細胞にYap突然変異体を曝露させ、それによりこの細胞を網膜のニューロンへと分化させる。心筋細胞の再生の事例では、個体は心臓の病態を有しているか、またはそのリスクがある場合がある。個体は、個人歴及び/または家族歴、喫煙者、肥満または過体重であるために、またはそれらの組み合わせなどのために、心臓病態のリスクが生じる場合がある。
【0008】
具体的な実施形態では、方法及び組成物は、1つ以上のYap突然変異体に関連する。ある特定の実施形態では、1つ以上のYap突然変異体は、関連する医学的病態の改善につながる、細胞(心筋細胞、網膜細胞、中枢神経系のニューロン、または耳の有毛細胞を含む)再生を促進する活性を有する。代替的実施形態では、1つ以上のYap突然変異体は、医学的病態は改善するが、細胞再生を検出可能に促進しない。しかしながら、具体的な実施形態では、1つ以上のYap突然変異体は、クロマチンの全体的な再編成を刺激して細胞再生を促進する。具体的な事例では、突然変異体は1個、2個、3個、4個、5個、6個、またはそれ以上のアミノ酸置換を有するYap突然変異体である。置換はセリンに対してであってもなくてもよく、場合によってはアミノ酸のセリンのアラニンへの置換である。特定の態様では、一例として、Latsキナーゼでの主要なリン酸化部位に、セリンからアラニンへの5つの置換を有する突然変異体Yap5SAは、成体心筋細胞においてクロマチンの全体的な再編成を刺激して心筋細胞の再生を促進する。そのようなYap突然変異体または他のYap突然変異体を、網膜細胞または有毛細胞の再生の促進にも類似的に使用することができる。Yap突然変異体は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとして個体に提供することができる。
【0009】
上記は、以降の本発明の詳細な説明をよりよく理解できるように、本発明の特徴及び技術的利点をかなり大まかに概説したものである。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴及び利点を以下に説明する。開示される概念及び具体的な実施形態は、本発明の同じ目的を実施するために、それらに変更を加えるか、または他の構造を設計するための基礎として容易に利用できることが当業者には理解されるはずである。また、そのような等価な構造が、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないことも当業者には認識されているはずである。本発明の特徴であると考えられる新規の特徴は、その構成及び動作方法の両方に関して、さらなる目的及び利点も合わせ、添付の図面と関連付けて考察すると、以下の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、各図は例示及び説明のみを目的として提供され、本発明の限定を規定する意図はないことを明確に理解されるべきである。
【0010】
本発明をより完全に理解するために、ここで添付の図面と併せて下記の説明が考慮される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1A〜1E。Yap5SA導入遺伝子の設計及び発現。図1A.(上)条件付きYap5SA対立遺伝子の構造。(下)下線のセリン残基がアラニンに変異している過剰発現されたYap変異体のヒトタンパク質配列。図1B.発達期の心臓にGFP発現を有する代表的なe9.5 Tg(Jojo_Flag::Yap5SA)5JFMマウス。図1C.P0新生児から採取した対照及びトランスジェニック心臓でのGFP蛍光の画像。図1D.(左上)成体CMでYap5SAを発現させるための生殖及び誘導戦略。(左下)FlagYap5SA発現を示すウェスタンブロット。左側に分子量マーカーを示す。(右)ウェスタンブロットによるYap発現の定量化を平均+/−SEMとして示す。n=3マウス/遺伝子型。図1E.抗Yap抗体及びDAPIで染色された、単離した対照及びYap5SA OE心筋細胞の免疫蛍光画像。(右)平均+/−SEMとして示されるYap免疫蛍光の核/サイトゾル比の定量化。分散分析とBonferroniの事後検定による全統計。対照n=3(心臓)、60(細胞)。Yap5SA n=3(心臓)、67(細胞)。
図2図2A〜2J。Yap5SA OEマウスの求心性心不全及び死亡。図2A.対照(n=8)及びYap5SA OE(n=7)マウスを表すカプランマイヤー生存分析。Mantel−Cox検定により算出された統計。図2B.対照及び瀕死状態のYap5SA心臓から得たマッソンのトリクローム染色(7日目)。図2C.4回目のタモキシフェン注射の前及び1日後での同じ動物の左心室の代表的なBモード画像。図2D〜2E.収縮期(図2D)及び拡張期(図2E)における左心室後自由壁の厚さ。図2D〜2Eは、平均+/−SEMとして示され(注射前Yap5SA n=7、注射前対照n=6、注射後Yap5SA n=10、注射後対照n=9)、分散分析とBonferroniの事後検定により統計を算出した。図2F.4回目のタモキシフェン注射の前及び1日後での対照及びYap5SA OE心臓の代表的なMモード心エコー検査。図2G.収縮終期の左心室腔直径。図2H.拡張終期の左心室腔直径。図2I.内径短縮率。図2J.駆出率。図2G〜2Jのデータは、平均+/−SEMとして示され(注射前Yap5SA n=4、注射前対照n=3、注射後Yap5SA n=7、注射後対照n=7)、分散分析とBonferroniの事後検定により統計を算出した。
図3図3A〜3K.分化した心筋細胞の増殖。図3A.単離CMの面積を示すヒストグラム。n=3マウス/群。約100細胞/心臓。図3B.異なる組織深度でのLVの切片及び面積、n=6/群。平均+/−SEM。*はP<0.05を示す。図3C.LV容積。図3D.LV腔容積n=6/群。平均+/−SEM。図3E.LVの重量と体重との比(n=6/条件)。平均+/−SEM。図3F.(左)LVの筋細胞数。(n=5/群)平均+/− SEM。(右)PCM1(+)CM核(黄色の矢印で例を示した)。図3G.CM核形成。6心臓/群。400〜500CM/心臓。平均+/−SEM。図3H.(左)EdUを含むCMの例。(右)誘導/EdU標識戦略及びEdU取り込みの定量化。平均+/−SEM。n=4心臓/群。200〜300CM/心臓。図3I.代表的なAuroraB染色切片(陽性細胞を黄色の矢印で示した)。(右)AuroraB(+)CMの定量化。平均+/−SEM。n=3マウス/群。200〜300CM/心臓。図3J.PHH3染色切片の例(陽性細胞を黄色の矢印で示した)。(右)PHH3(+)CMの定量化。平均+/−SEM。n=3マウス/群。200〜300CM/心臓。図3A〜3Jは、分散分析とBonferroniの事後検定による統計である。図3A〜3Jは、タモキシフェンプロトコルの2日後のマウスによるものである。図3K.異なる時点での1回の低用量タモキシフェン投与後のYap5SA OE lacz(+)CMの数をlog2形式(左)及び生データ(右)で示す。平均+/−SEM。N(t)=lacz(+)細胞数/心筋層面積。t=時間(日)。tD=倍加時間。n=3マウス/時点。log2変換後の線形フィットR2=0.96。
図4図4A〜4G。CM増殖遺伝子プログラムのエピジェネティックな活性化。図4A.(上)CM核濃縮プロトコル。(左下)対照と比較したYap5SA RNA−seqのボルケーノプロット。1,352個の遺伝子が上昇、748個が下降(調整P値<0.1)。(右下)対照と比較したYap5SA ATAC−seqのボルケーノプロット。Yap5SAの大幅なlog倍数変化により、16,189個のピークが上昇、13,353個が下降。2試料/遺伝子型。図9に再現性。図4B.(左)Yap5SAが濃縮した上位のATAC−seqモチーフ。(右)すべてのTEADモチーフピークのヌクレオソームシグナル。これを0〜1に標準化した(図4C)。以下のエンハンサーとプロモーターの比率:遺伝子間ATAC−seqピークの合計(図12);Yap5SAが濃縮した遺伝子間ATAC−seqピーク;及びYap5SA ChIP−Seqピーク。*P<0.001、対照の比率と比較した、カイ二乗検定、イエーツの補正。図4D.対照またはYap5SA OE CMそれぞれの上位ATAC−seqピーク(調整済みp≦0.035)を中心とした、発達期及び成体の心臓からのH3K27Ac断片のカバレッジ。nは調査したピークの数。図4E.(左)Yap5SA上方制御ATAC−seqピーク(調整p値<1e−5)及びYap5SA ChIP−seqピーク(HOMERのピークスコアカットオフが20)に対応する、高信頼度のYap5SA OE上方制御遺伝子(RNA−seq調整p値<0.01)。(右)カテゴリーごとの高度に濃縮されたGO期。図4F.Yap5SA上方制御遺伝子にわたるATAC−seqシグナル(TはTEADモチーフの目印;YはYap ChIP−seqピークの目印)。図4G.Yap5SA上方制御遺伝子のプロモーターにおけるChIP−seq及びATAC−seqシグナル。プロモーターのChip−seqピークを緑色の矢印で示した。
図5図5A〜5F.Yap5SA OE筋細胞は正常な生理機能をもち、導入遺伝子を発現しないCMに結合する。図5A.タモキシフェン前後の対照及びYap5SA OEマウスからの代表的なECGトレース。T波の逆転を示す。図5B.(上)T波逆転したマウスの割合。*P=.0286(フィッシャーの正確確率検定)。(下)T波の曲線下の相対面積。平均+/−SEM。分散分析とBonferroniの事後検定により算出した統計。対照n=3、Yap5SA n=4。図5C.β−ガラクトシダーゼ(淡青緑)及びコネキシン43(赤)の免疫染色は、再結合したβ−gal(+)CMと、再結合しなかったCM(染色なし、黒)とのギャップジャンクションによる結合を示している。黄色の矢印は、Yap5SA OE CMをもつシンシチウムのβ−gal(−)CMを示す。挿入図は拡大図である。図5D.(左)サルコメア短縮の代表的なプロット。(中)安静時のCMサルコメア長。平均で示す。(右)サルコメア短縮率。図5E〜5F.平均+/−SEMとして示す。統計的差異なし、対照n=5動物、27細胞。Yap5SA OE n=5動物、31細胞。分散分析とBonferroniの事後検定。
図6図6A〜6C.細胞周期段階のフローサイトメトリー分析。図6A.DAPIで染色した、対照心臓及びYap5SA OE心臓から単離された心臓核のフローサイトメトリーから得た代表的なヒストグラム。円グラフの対照n=4、Yap5SA OE n=4。円グラフのデータは平均を示す。P値は、分散分析後にBonferroniの事後検定をして算出した。P<.05をアスタリスクで示す。図6B.Aで参照したFACSによるCM DNA含量から得た代表的なドットプロット。図6C.FACS DNA含量分析、平均及びSEM、n=4/遺伝子型。分散分析後にBonferroniの事後検定をして算出した統計。
図7】Yap5SA OE CMの細胞アポトーシスの増加は認められない。TUNEL染色は、対照心臓とYap5SA OE心臓との間に有意差を示していない(n=4心臓/遺伝子型)。ペアワイズ分散分析後にBonferroniの事後検定をして算出した統計を平均+/−SEMで示す。
図8】Yap 5SA OE心臓には線維化が認められない。ピクロシリウスレッド染色は、Yap5SA OE心臓も対照も線維化表現型をもたないことを示している。比較のために線維性損傷のある代表的な心臓も示す。
図9】シーケンシングの品質管理。(上)両方のATAC−seqセットに高再現性。(下)RNA−seqセット間に高再現性。示された各実験からのリードを、正規化された対数変換で変換し、散布図として表し、複製データセットの関係を示した。注:データセットの試料は一致している(例:対照−1 ATAC−seqと対照−1核RNAは同じ生物学的試料に由来する)。
図10A】Yap5SA OE心臓での上方制御遺伝子及び下方制御遺伝子の遺伝子オントロジー分析(p<0.01)。
図10B】RNA−seqから選択した遺伝子のヒートマップ
図11図11A〜11B.Yap5SAは、無益な負のフィードバックループを誘発する。図11A.RNA−seqで示されたYap5SA OE CMで上方制御される遺伝子の経路濃縮分析。強調表示はHippo経路である。(経路分析はg:Profilerを用いて実施)図11B.(左)Yap5SA OE心臓における内因性Yapリン酸化の増加を示すウェスタンブロット。(右)平均+/−SEMとして示される、バンド強度の定量化(対照n=4、Yap5SA OE n=3、分散分析とBonferroniの事後検定によるP<.01)。
図12図12A〜12B.TSSに対する遺伝子間ATAC−seqピークの幾何学ドットプロット。図12A.両方の遺伝子型にわたる、遺伝子間ATAC−seqピークのTSSまでの距離の合計(対照:34738ピーク;Yap5SA OE:40,333ピーク)。図12B.上方制御された遺伝子間ATAC−seq及びChIP−seqピークのTSSまでの距離。
図13図13A.1〜13A.3及び図13B〜13D.高信頼度のYap5SA標的(図13A1〜13A3)(左)クロマチンがすでに開いている領域でYap5SAによって直接上方制御された97個の遺伝子のリスト。(中)新たなオープンクロマチンと上方制御されたRNAをもつ106個の遺伝子のリスト。(右)オープンクロマチンが増加した、Yap5SAによって直接上方制御された76個の遺伝子のリスト。図B.Aのリストで最も濃縮がみられた遺伝子オントロジー期。図C.オープンクロマチンの増加を示す76個のYap標的遺伝子のTSSを中心としたATAC−seqリード及びRNA−seqリードの平均。図C.オープンクロマチンの増加を示す76個のYap標的遺伝子に対応するATAC−seqピークを中心としたH3K27Ac CHIP−seq断片のカバレッジ
図14図14A〜14C.心筋細胞増殖を活性化するYap5SAのモデル。図14A.ある特定の事例では、Yapが標的遺伝子のオープンプロモーターに直接結合し、転写を増加させる。そのようなプロセスでは、新たなオープンクロマチンのリードは生じない。図14B.主に、Yap5SAはエンハンサー領域に結合し、標的遺伝子のゲノム近傍を開く、SWI/SNF複合体などのクロマチンリモデリング因子を動員する。次に、Yap自体または他の転写因子が自由に転写を促進する。図14C.(左パネル)これら2つの直接的な活性化スキームの間に、Yap5SAは次の3つのプロセスによって増殖を促進する:1.Kruppel様因子、E2F転写因子、サイクリン、及びPolo様キナーゼを介した細胞周期の活性化。2.フォルミン、プロテインキナーゼCイオタ、Ect2、Incenp、及びEphexin4による細胞骨格の再配列及び細胞質分裂の促進。3.プロテインキナーゼD1、Alcam、及びDisabled homolog 2などの胎児の心臓発達に関連する遺伝子の再出現。(右パネル)これら3つのプロセスは、最小限のまたは有害な機能を独立して有する。簡略化のため、色で示す直接のChIP−seq標的のみが左パネルに含まれている。右パネルには、直接的な上方制御遺伝子に加え、色で示す間接的に(上方または下方)制御された転写物(図4A及び図4Dに従って含まれる遺伝子)を含む。
図15図15A〜15B.Yap K265RはWT Yapよりも安定性が低い。図15A.20ug/mlシクロヘキシミドで0時間、2時間、4時間、及び6時間処理し、0.5%NP40溶解緩衝液で回収した、WT P19細胞及びYapK265R突然変異を有するP19細胞(番号13)。示されている抗体をイムノブロットした。図15B.P19細胞、及びYapK265R突然変異を有する2つの異なるP19コロニーからの溶解物を示されている抗体でイムノブロット分析した。
図16】Yap突然変異体タンパク質の安定性の決定を実証する。20ug/mlシクロヘキシミドで0時間、2時間、4時間、及び8時間処理し、0.5%NP40溶解緩衝液で回収した、WT P19細胞及びYapK265R突然変異を有するP19細胞。示されている抗体をイムノブロットした。
図17図17A〜17B.Yap突然変異体タンパク質の安定性の決定。図17A.20ug/mlシクロヘキシミドで0時間、2時間、4時間、及び8時間処理し、0.5%NP40溶解緩衝液で回収した、WT P19細胞及びYapK265R突然変異を有するP19細胞(番号11)。示されている抗体をイムノブロットした。図17B.Yapの相対量をデンシトメトリーで定量化し、GAPDHで標準化してプロットした。
図18図18A〜18C.Yap突然変異体タンパク質の代謝回転率の決定。図18A.20uM/ml Mg132で0時間、1時間、2時間、及び4時間処理し、0.5%NP40溶解緩衝液で回収した、WT P19細胞及びYapK265R突然変異を有するP19細胞(番号11)。示されている抗体をイムノブロットした。図18B及び図18C.Yap及びβ−カテニンの相対量をデンシトメトリーで定量化し、GAPDHで標準化してプロットした。
図19図19A〜19D.Yap突然変異体タンパク質の核局在化の決定。図19A及び19B.2.0×10個の細胞を10cm皿に播種し、18時間後に細胞を回収し、分画してウェスタンブロット分析を行った。図19C及び図19D.Yapの相対量をデンシトメトリーで定量化し、HDAC2(核画分の場合)またはGAPDH(サイトゾル画分の場合)で標準化してプロットした。
【発明を実施するための形態】
【0012】
長年にわたる特許法の慣例に従って、「a」及び「an」という語は、特許請求の範囲を含め、構成している用語と合わせて本明細書で使用される場合、「1つ以上」を意味する。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つ以上の要素、方法ステップ、及び/または方法からなるか、または本質的になる場合がある。本明細書に記載の任意の方法または組成物は、本明細書に記載の任意の他の方法または組成物と関連付けて実施できると考えられる。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「約」または「ほぼ」とは、定量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さが、基準とする定量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して、30%、25%、20%、25%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%程度変動することを意味する。特定の実施形態では、用語「約」または「ほぼ」が数値に先行する場合、上下15%、10%、5%、または1%の範囲の値を示す。
【0014】
本明細書全体を通して、文脈上、特に必要がない限り、語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」は、指定されたステップもしくは要素、またはステップ群もしくは要素群を包含するが、いかなる他のステップもしくは要素、またはステップ群もしくは要素群も除外しないことを意味するものと理解されよう。「からなる」とは、語句「からなる」に続くものはすべて含むこと、かつそれに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要または必須であり、他の要素はいっさい存在し得ないことを示す。「から本質的になる」とは、語句の後ろに列挙された任意の要素に加え、列挙された要素に関して本開示で指定された挙動または作用を妨害しないか、またはそれらに寄与しない他の要素に限って含むことを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素は必要または必須であることを示すが、他の要素は任意選択ではなく、かつ列挙された要素の挙動または作用に影響を及ぼすかどうかに応じて存在する場合もあれば存在しない場合もあることを示す。
【0015】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある特定の実施形態」、「追加実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、またはそれらの組み合わせに対する言及は、その実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所に出現する前述の語句が、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性を、1つ以上の実施形態において好適な任意の方法で組み合わせてもよい。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、「治療有効用量」または「有効用量」と同義語であり、それを必要とする個体において医師が求める生物学的応答または臨床的応答を誘発するであろうYap突然変異体タンパク質またはポリペプチドの量を指す。非限定的な例として、有効量は、細胞または組織を再生するのに十分な量である。
【0017】
I.Yap突然変異体の例
本開示の実施形態は、Yapの1つ以上の突然変異体、ならびに臨床目的及び/または研究目的でのそれらの使用を含む。突然変異体(複数可)は、例えば以下:アミノ酸の置換(複数可);欠失(複数可);挿入(複数可);それらの組み合わせなどの1つ以上を含み得る。具体的な実施形態では、Yapの1つ以上のアミノ酸が、別の1つ以上のアミノ酸で置換されている。1つ以上の特定の突然変異を用いて、突然変異体Yapの生物学的活性を減少させることができる。そのような突然変異を別の突然変異と組み合わせて、同じ突然変異型Yapタンパク質に使用する場合もあればしない場合もある。本開示に包含される任意の突然変異型Yapタンパク質は非天然であってもよい。Yap突然変異体に関連する任意のタンパク質またはDNAは、自然界から単離されたものでもよい。
【0018】
Yap突然変異体タンパク質は、タンパク質中の1つ以上のセリンに置換を有してもよい。具体的な事例では、Latsキナーゼの主要なリン酸化部位である1個、2個、3個、4個、または5個のセリンが置換される。どのセリンも他のどのアミノ酸でも置換できるが、具体的な事例ではアラニンで置換される。
【0019】
本明細書で使用される場合、具体的な実施形態では、突然変異型ヒトYap変異体は、少なくとも以下のこの野生型配列で下線が引かれたセリンの1つに突然変異を含む。これらの下線が引かれたセリン残基は、Latsによってリン酸化されることが公知であるか、またはリン酸化されると予測されるものである。(配列番号1):
【0020】
上記の配列内の1つ以上のセリンに対する1つ以上の突然変異に加えて、またはその代わりに、セリンに対してではない1つ以上の突然変異が配列内に存在してもよい。そのような突然変異は、アミノ酸の置換(保存的であるかどうかを問わない)、欠失、及び/または逆位などであり得る。具体的な実施形態では、突然変異型のYapは、単一のアミノ酸置換として、5つの突然変異をそれぞれセリンに有する。具体的な事例では、1つ以上のセリンがアラニンに突然変異されるが、セリン(複数可)は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、システイン、グルタミン、グリシン、プロリン、チロシン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸などの異なるアミノ酸に突然変異されていてもよい。いずれの場合も、単一の突然変異体Yapタンパク質において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のセリンが変異していてもよい。
【0021】
突然変異体Yapタンパク質の一例は以下の通りである(下線はセリンがアラニンで置換された部位を示し、太字はLats認識配列を示す)。
【0022】
配列番号2には、Flagタグなどの任意の型のタグは含まれない。
【0023】
Flagタグを有するYap突然変異体タンパク質の一例(配列番号3)は以下の通りである:
【0024】
Yap突然変異体タンパク質をコードするDNAの一例(配列番号4)は以下の通りである:
【0025】
いくつかの実施形態では、Yap突然変異体は1つ以上の突然変異を有することで、そのような1つ以上の突然変異がない場合に比べ安定性が低い。
【0026】
一実施形態では、Yap突然変異体は265位に突然変異を有し、265位がリジンなどである(ヒトでは280位のリジン)。具体的な実施形態では、265位のリジン(ヒトでは280位)が、任意の他のアミノ酸であり得る別のアミノ酸に突然変異されるが、具体的な事例では、この突然変異はK265Rであり、これはヒト配列における280位のリジンと同様である。
【0027】
本開示は、突然変異型Yap変異体を含む、タンパク質及びそれをコードする核酸を包含する。場合によっては、突然変異体Yapタンパク質(複数可)はポリペプチド形態で送達され、場合によっては、突然変異体Yapタンパク質(複数可)はタンパク質をコードするポリヌクレオチドとして送達される。ポリヌクレオチド形態で送達される場合、ポリヌクレオチドは、好適なベクターに発現構築物を含んでいてもよい。ベクターは、非ウイルス性またはウイルス性などの任意の好適な種類のものであり得る。ベクターが非ウイルス性である場合、ベクターはプラスミドまたはRNAの線状配列であり得る。ベクターがウイルス性である場合、ベクターはアデノウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴、レトロウイルスなどであり得る。発現構築物中のプロモーターによって制御される場合、プロモーターは、例えば構成的、誘導性、または組織特異的であり得る。特定の実施形態では、突然変異型Yap変異体は、アデノ随伴ウイルス構築物で、または修飾RNAとして送達される
【0028】
II.使用方法の例
本開示の実施形態には、少なくとも心臓、網膜、及び耳の有毛細胞におけるものを含めた、対象となる組織での組織再生の方法を含む。特定の実施形態では、細胞再生または組織再生の必要性がある個体に、有効量の1つ以上の突然変異型Yap変異体を提供する。
【0029】
成体哺乳動物の心筋細胞(CM)の再生は非効率的である。損傷したCMは増殖できず、代わりに倍数性を増加させる核内倍加を活性化する。結果として、心臓はヒトの主たる死因である機能不全を起こしやすい。特定の実施形態では、本発明者らは、Hippo阻害の影響を受けない成体CMにおいて、Yap5SAと呼ぶHippoエフェクターYap型を発現させた。Yap5SAは、倍加時間33時間でのCMの増殖、心室壁の肥厚、15%を超えるCMでの有糸分裂の再開を誘発した。クロマチンアクセシビリティのゲノムワイド特性解析により、Yap5SAが遠位エンハンサーの開放と強力な有糸分裂遺伝子プログラムの発現を促進することが明らかになった。本明細書で明らかにされた、CM増殖を促進する遺伝子及びエンハンサーは、心臓再生の刺激に有用である。したがって、本開示の実施形態には、Hippo経路を標的とすることによるものを含めた、心筋細胞の再生のための方法及び組成物を含む。特定の実施形態では、心筋細胞再生の必要性がある個体に、有効量の1つ以上の突然変異型Yap変異体を提供する。ある特定の実施形態では、個体の望ましい場所で細胞を再生する方法があり、これには、有効量のYap突然変異体タンパク質(複数可)及び/またはYap突然変異体タンパク質をコードするポリヌクレオチド(複数可)をその場所に送達するステップを含む。
【0030】
特定の実施形態では、治療有効量の1つ以上の突然変異型Yap変異体を個体に送達することにより、医学的病態を治療する方法がある。任意の医学的病態の少なくとも1つの症状を、1つ以上の突然変異体Yapタンパク質(複数可)及び/またはそれをコードする核酸(複数可)を投与して改善することができる。
【0031】
本開示のある特定の実施形態は、治療有効量の1つ以上の突然変異型Yap変異体を個体に提供することにより、個体において心筋細胞を再生する方法を含む。少なくともいくつかの場合、突然変異型変異体は、セリンに1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のアミノ酸置換を含むが、この置換はアラニンへの置換であってもなくてもよい。突然変異型Yapに他のセリン以外の突然変異が含まれていてもよい。ある特定の方法は、心筋細胞の再生を必要とする1つ以上の個体、例えば心臓に損傷があるか、または心臓への損傷リスクがある個体に実施することができる。個体は、心筋細胞の再生を必要とする損傷した心筋組織を有する場合がある。特定の実施形態では、1つ以上の突然変異型Yapタンパク質及び/またはそれをコードする核酸(複数可)の投与により、個体の既存の心筋細胞から心筋細胞の再生を生じさせる。
【0032】
本開示の実施形態は、例えば心筋の再生及び心筋の虚血性傷害の回復のための方法及び/または組成物を含む。特定の実施形態では、例えば急性虚血性傷害などの心臓病態を有していた哺乳動物の心臓に存在する成体心臓前駆細胞または心筋細胞の増殖を刺激する方法がある。ある特定の実施形態では、そのような方法は、1つ以上の突然変異型Yap変異体を含む組成物を用いて、個体に実行される。
【0033】
本開示の実施形態は、1つ以上の心臓病態の治療及び/または予防に関連する方法及び/または組成物を対象とする。本開示の実施形態は、心筋組織などの筋組織を含む組織の再生に関連する。ある特定の実施形態は、心臓病態の逆転(またはその少なくとも1つの症状の改善)に関連し、心臓病態には、少なくとも心臓疾患、心筋症、心臓弁の問題、心膜炎、不整脈、心停止、先天性心障害、心不全、心疾患、心毒性、うっ血性心不全、虚血性心疾患、急性心筋梗塞、心房細動、冠動脈疾患、虚血性心疾患、心臓弁膜症、高血圧性心疾患、及び不整脈が含まれる。冠動脈疾患(冠動脈性心疾患及び虚血性心疾患としても知られる);心筋症(心筋の疾患);心不全;肺性心;心律動異常;炎症性心疾患;心内膜炎;炎症性心肥大;心筋炎;心臓弁膜症;脳血管疾患;末梢動脈疾患;先天性心疾患;及びリウマチ性心疾患などの、特定の種類の心血管疾患を治療または予防することができる。特定的であるが例示的に示される本開示の実施形態には、少なくとも、1)うっ血性心不全;2)心室リモデリングまたは心筋梗塞の動脈瘤の予防;及び/または3)心筋症の用途を含む。具体的な実施形態では、本開示の方法及び組成物は、確定された心臓病態の逆転、または心臓病態の予防、または発症の遅延、または重症度の軽減に十分である心筋細胞の再生を提供する。
【0034】
心筋症の事例では、(アドリアマイシンのような)化学療法薬またはモノクローナル抗体などの薬剤によって病態が誘発される場合がある10、11。心筋症は、虚血性または非虚血性の心筋症であり得る。心筋症は、長期の高血圧、心臓弁の問題、以前の心臓発作による心臓組織の損傷、慢性の高心拍数、代謝障害、栄養不良、妊娠、アルコール乱用、薬物乱用、化学療法薬、ウイルス感染、ヘモクロマトーシス、遺伝的病態、コレステロール値の上昇、肺高血圧症、またはそれらの組み合わせによって引き起こされる場合がある。
【0035】
本開示の特定の態様は、組織内のある特定の細胞の増殖、細胞死(アポトーシス)の阻害、及び/または分化を目的とした、ある特定の組織へのYap突然変異体のポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、またはそれらの混合物の送達に関連する。組織はどの種類であってもよいが、具体的な事例では、心臓組織、網膜組織、または耳の有毛細胞を含む筋組織である。特定の実施形態では、本開示の方法及び組成物は、既存の成体心筋細胞の再生を可能にする。場合によっては、本発明の組成物(複数可)の送達により、病理学的リモデリングに対して細胞はより抵抗性になり、初期損傷以降のさらなる損傷が阻止される。
【0036】
本開示の実施形態には、細胞(心筋細胞を含む筋細胞など)及び/または組織(心臓組織を含む)の再生を刺激する1つ以上のYap突然変異体ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチドの送達を含む。そのような実施形態の特定の態様は、1つ以上の心臓関連の医学的病態の逆転をもたらす。そのような実施形態のある特定の態様は、心臓関連の医学的病態、眼の医学的病態、または耳の医学的病態などの医学的病態の少なくとも1つの症状の改善をもたらす。
【0037】
具体的な実施形態では、Yap突然変異体のポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、またはそれらの混合物は、例えば心臓組織などの筋組織を含めた、対象となる特定の組織を標的とする。
【0038】
場合によっては、本開示の方法及び組成物は、1つ以上の心臓関連の医学的病態の予防、または1つ以上の心臓関連の医学的病態の発症の遅延、または1つ以上の心臓関連の医学的病態の1つ以上の症状の程度の軽減のために使用される。特定の事例では、そのような予防、発症の遅延、または1つ以上の症状の程度の軽減は、心臓関連の医学的病態のリスクがある個体において起こる。例示的な危険因子には、年齢、性別(男性、ただし女性にも発生する)、高血圧、高血清コレステロール値、喫煙、過度のアルコール消費、糖消費、家族歴、肥満、運動不足、心理社会的要因、糖尿病(真性)、過体重、遺伝的素因、及び/または大気汚染への曝露のうち1つ以上が含まれる。
【0039】
治療される任意の個体は、成人、青年、小児、幼児であってよく、または子宮内で処置される場合もある。
【0040】
突然変異体Yapタンパク質(複数可)及び/またはそれをコードする核酸(複数可)の個体への送達は、全身的であっても局所的であってもよい。具体的な例では、Yap突然変異体タンパク質またはポリヌクレオチドの使用法に従って、in vitro由来の心筋細胞が個体に送達される。他の事例では、Yap突然変異体タンパク質またはポリヌクレオチドは心臓内にin vivo送達される。これは、例えば、Yapを使用して、患者由来(または非患者由来)の人工多能性幹細胞由来の心筋細胞(または胚性幹細胞由来の心筋細胞)を培養で拡張した後、患者に移植すること;またはYapを使用して、幹細胞由来の心筋細胞を拡張した後、小分子駆動プロモーターを使用して患者に移植するか、もしくは幹細胞由来の心筋細胞に操作を加える他のYap誘導スキームを用いることにより機能させることができる。
【0041】
本明細書に包含される治療を受ける個体は、例えば心臓の医学的病態を含め、医学的病態と診断されていてもいなくてもよい。個体は、例えば以前の診断がなくても心臓の医学的病態を有する1つ以上の症状を示していてもいなくてもよい。
【0042】
III.医薬製剤
本発明の医薬組成物は、有効量の1つ以上のYap突然変異体タンパク質及び/またはそれをコードするポリヌクレオチド、または薬学的に許容される担体に溶解もしくは分散された追加薬剤を含む。語句「薬学的または薬理学的に許容される」とは、例えばヒトなどの動物に必要に応じて投与したときに、副作用、アレルギー反応、または他の有害反応を生じさせない分子実体及び組成物を指す。少なくとも1つのYap突然変異体タンパク質及び/またはそれをコードするポリヌクレオチド、または追加活性成分を含有する医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれるRemington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.Lippincott Williams and Wilkins,2005により例示されているように、本開示に照らして当業者に公知であろう。さらに、動物(例えばヒト)投与の場合、製剤はFDA生物基準局が要求する無菌性、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たす必要があるものと理解される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、当業者に公知であろうような、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素、同様の材料、及びそれらの組み合わせを含む(例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289−1329を参照)。任意の従来の担体が活性成分と適合しない場合を除いて、医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0044】
Yap突然変異体タンパク質及び/またはそれをコードするポリヌクレオチドは、固体、液体、またはエアロゾルの形態で投与されるかどうか、及び注射のような投与経路の場合に滅菌性である必要があるかどうかに応じて、種類の異なる担体を含み得る。本発明は、当業者に公知であろうような、静脈内に、皮内に、経皮に、髄腔内に、動脈内に、腹腔内に、鼻腔内に、膣内に、直腸内に、局所に、筋肉内に、皮下に、粘膜に、口腔に、局所に、局部に、吸入(例えばエアロゾル吸入)、注射、注入、連続注入、標的細胞を直接浸漬させる局所灌流により、カテーテルを介して、洗浄を介して、クリームで、脂質組成物(例えばリポソーム)で、または他の方法もしくは前述の任意の組み合わせにより投与することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990を参照)。
【0045】
Yap突然変異体タンパク質及び/またはそれをコードするポリヌクレオチドは、遊離塩基、中性、または塩形態で組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩、例えばタンパク質組成物の遊離アミノ基で形成されるもの、または例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸、もしくは酢酸、シュウ酸、酒石酸、もしくはマンデル酸のような有機酸で形成されるものを含む。遊離カルボキシル基で形成される塩を、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化第二鉄などの無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、もしくはプロカインのような有機塩基から誘導することもできる。製剤化されると、溶液は投与製剤に適合する方法で、かつ治療に有効であるような量で投与される。製剤は、注射溶液、もしくは肺への送達のためのエアロゾルなどの非経口投与用に製剤化された剤形、または薬物放出カプセルなどのような栄養投与用に製剤化された剤形など、さまざまな剤形で容易に投与される。
【0046】
さらに、本発明によれば、投与に適した本発明の組成物は、不活性希釈剤を含むかまたは含まない薬学的に許容される担体で提供される。担体は吸収可能でなければならず、これには液体、半固体(すなわちペースト)、または固体の担体を含む。任意の従来の媒体、薬剤、希釈剤、または担体がレシピエントにとって、またはそこに含有される組成物の治療効果にとって有害である場合を除き、本発明の方法を実施する際に使用する投与可能な組成物におけるその使用は適切である。担体または希釈剤の例としては、脂肪、油、水、生理食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充填剤など、またはそれらの組み合わせが挙げられる。組成物はまた、1つ以上の成分の酸化を遅らせるために様々な抗酸化剤を含んでもよい。さらに、微生物の作用の防止は、さまざまな抗菌剤及び抗真菌剤などの防腐剤によってもたらすことができ、これにはパラベン(例えばメチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0047】
本開示によれば、組成物は、任意の便利なかつ実用的な方法、すなわち溶解、懸濁、乳化、混合、被包化、吸収などによって担体と混合される。そのような手順は、当業者には慣例となっている。
【0048】
本開示の具体的な実施形態では、組成物は、半固体担体または固体担体と混合されるか、または完全に混和される。混和は、粉砕などの任意の便利な方法で実施することができる。治療活性の損失、すなわち胃での変性から組成物を保護するために、混和プロセスに安定剤を加えることもできる。組成物に使用する安定剤の例として、緩衝液、グリシン及びリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどの炭水化物が挙げられる。
【0049】
さらなる実施形態では、本発明は、Yap突然変異体タンパク質及び/またはそれをコードするポリヌクレオチド、1つ以上の脂質、及び水性溶媒を含む、医薬脂質ビヒクル組成物の使用に関連する場合がある。本明細書で使用される場合、用語「脂質」は、特性上、水に不溶性であり、有機溶媒で抽出可能である広範囲にわたる物質のいずれかを含むものと規定されることになる。この広範なクラスの化合物は当業者に周知されており、また用語「脂質」が本明細書で使用される場合、任意の特定の構造に限定されない。例として、長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体を含有する化合物が挙げられる。脂質は、天然であっても合成(すなわち人間が設計または作製したもの)であってもよい。ただし、脂質は通常、生物学的物質である。生物学的脂質は当技術分野で周知されており、例えば中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテル及びエステル結合脂肪酸を有する脂質、ならびに重合可能な脂質、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。当然ながら、本明細書に具体的に記載されるもの以外の、当業者が脂質と認識している化合物も、本発明の組成物及び方法に包含される。
【0050】
当業者は、脂質ビヒクルに組成物を分散させるために使用できる技術の範囲を熟知しているであろう。例えば、Yap突然変異体タンパク質及び/またはそれをコードするポリヌクレオチドを、脂質を含有する溶液に分散する、脂質で溶解する、脂質で乳化する、脂質と混和する、脂質と混合する、脂質と共有結合させる、脂質に懸濁液として含有する、ミセルもしくはリポソームと含有するもしくは複合体化する、またはそれ以外の当業者に公知の任意の手段により脂質もしくは脂質構造と会合することができる。分散により、リポソームが形成されてもされなくてもよい。
【0051】
動物患者に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、体重、病態の重症度、治療される疾患の種類、過去または同時期の治療介入、患者の特発性疾患、及び投与経路などの物理的及び生理学的要因によって決定することができる。投与量及び投与経路に応じて、好ましい投与量及び/または有効量の投与回数を、対象の反応に従って変更してもよい。いずれの場合も、投与を担当する医師が、組成物中の活性成分(複数可)の濃度及び個々の対象の適切な用量(複数可)を決定することになる。
【0052】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の実施形態では、活性化合物は、例えば単位重量の約2%〜約75%、または約25%〜約60%、及びそれ以内で推論可能な任意の範囲を含み得る。必然的に、各治療上有用な組成物中の活性化合物(複数可)の量は、化合物の任意の所与の単位用量において適切な投与量が得られるような方法で調製することができる。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品の有効期間などの要因、ならびに他の薬理学的考慮事項は、そのような医薬製剤を調製する当業者が検討することになり、したがって様々な投与量及び治療レジメンが望ましい場合がある。
【0053】
他の非限定的な例において、用量はまた、投与あたり約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重〜約1000mg/kg/体重またはそれ以上、及びそれ以内で推論可能な任意の範囲を含み得る。本明細書に列挙される数から推論可能な範囲の非限定的な例では、上記の数値に基づいて、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重〜約500ミリグラム/kg/体重などの範囲を投与することができる。
【0054】
A.栄養組成物及び製剤
本発明の好ましい実施形態では、Yap突然変異体タンパク質及び/またはそれをコードするポリヌクレオチドは、栄養経路を介して投与されるように製剤化される。栄養経路には、組成物が消化管と直接接触する可能性のあるすべての投与経路が含まれる。具体的には、本明細書に開示される医薬組成物は、口腔、頬側、直腸、または舌下に投与することができる。したがって、これらの組成物は、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体と製剤化することも、硬質または軟質のシェルゼラチンカプセルに封入することも、錠剤に圧縮することも、食事の食物とともに直接摂取することもできる。
【0055】
ある特定の実施形態では、活性化合物を賦形剤と混合して、経口摂取用錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用することができる12、13(米国特許第5,641,515号;同第5,580,579号及び同第5,792,451号。それぞれ、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる)。錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセルなどはまた、以下を含有してもよい:例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチン、またはそれらの組み合わせなどの結合剤;例えばリン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、またはそれらの組み合わせなどの賦形剤;例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、またはそれらの組み合わせなどの崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;例えばスクロース、ラクトース、サッカリン、またはそれらの組み合わせなどの甘味剤;例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、チェリー香料、オレンジ香料などの香味剤。投与単位剤形がカプセル剤である場合、上記の種類の材料に加えて液体担体を含有してもよい。コーティング剤として、またはそれ以外で投与単位の物理的形態を変更する、他の様々な材料が存在していてもよい。例えば錠剤、丸剤、またはカプセルを、セラック、糖、またはその両方でコーティングしてもよい。剤形がカプセル剤である場合、上記の種類の材料に加えて液体担体などの担体を含有してもよい。ゼラチンカプセル、錠剤、または丸剤は腸溶性コーティングされていてもよい。腸溶性コーティングは、pHが酸性である胃または上腸での組成物の変性を防止する。例えば米国特許第5,629,001号を参照のこと。小腸に到達すると、小腸内の塩基性pHによりコーティングが溶解されて、組成物が放出され、特殊な細胞、例えば腸管上皮細胞及びパイエル板M細胞による吸収が可能になる。エリキシルのシロップは、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、色素、及びチェリー香料またはオレンジ香料などの香味剤を含有してもよい。当然ながら、任意の投与単位剤形の調製に使用される任意の材料は、薬学的に純粋であり、使用量において実質的に非毒性であるべきである。さらに活性化合物は、徐放性の調製物及び製剤に配合されていてもよい。
【0056】
経口投与の場合、その代わりに本発明の組成物は、洗口剤、歯磨剤、バッカル錠、経口スプレー、または舌下経口投与製剤の形態で1種以上の賦形剤と混合されていてもよい。例えば、洗口剤は、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)などの適切な溶媒に、必要量の活性成分を配合して調製することができる。あるいは、活性成分を、ホウ酸ナトリウム、グリセリン、及び重炭酸カリウムを含有するものなどの経口溶液に配合しても、または歯磨剤に分散させても、または水、結合剤、研磨剤、香味剤、発泡剤、及び湿潤剤を含み得る組成物に治療有効量で添加してもよい。あるいは、組成物を、舌下に置くか、またはその他の方法で口腔内で溶解できるような錠剤または溶液形態にしてもよい。
【0057】
他の栄養投与様式に適した追加の製剤として坐剤が挙げられる。坐剤は、直腸に挿入するためのさまざまな重量及び形状である、通常は薬用の固体剤形である。挿入後、坐剤は体腔液で軟化、融解、または溶解する。一般に、坐剤の場合の従来の担体には、例えばポリアルキレングリコール、トリグリセリド、またはそれらの組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、坐剤は、例えば約0.5%〜約10%、好ましくは約1%〜約2%の範囲の活性成分を含有する混合物から形成され得る。
【0058】
B.非経口組成物及び製剤
さらなる実施形態では、Yap突然変異体タンパク質及び/またはそれをコードするポリヌクレオチドは、非経口経路を介して投与することができる。本明細書で使用される場合、用語「非経口」には、消化管を経由しない経路を含む。具体的には、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下、または腹腔内に投与できるが、これらに限定されない。米国特許第6,7537,514号、同第6,613,308号、同第5,466,468号、同第5,543,158号;同第5,641,515号;及び同第5,399,363号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる)。
【0059】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、水中でヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混和して調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、ならびに油中で分散液を調製することもできる。通常の保管条件及び使用条件下では、これらの調製物に微生物の増殖を防止する防腐剤が含有される。注射使用に適した医薬形態には、滅菌水溶液または分散液、及び滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む(米国特許第5,466,468号、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる)。いかなる場合にも、形態は滅菌性でなければならず、注射しやすい程度に流動性でなければならない。形態は製造条件及び保管条件下で安定していなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(すなわちグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、及び/または植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、必要な粒子サイズの維持(分散液の場合)、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの、様々な抗菌剤及び抗真菌剤によってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンといった吸収遅延剤を組成物に使用することによりもたらすことができる。
【0060】
例えば水溶液での非経口投与の場合、必要に応じて溶液を適切に緩衝液処理し、液体希釈剤を最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張にする必要がある。このような特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、及び腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用可能である滅菌水性媒体は、本開示の観点から当業者には公知であろう。例えば1回の投与量を等張NaCl溶液に溶解して、皮下注射液を追加するか、または予定する注入部位に注入することができる(例えば、”Remington’s Pharmaceutical Sciences” 15th Edition,ページ1035−1038及び1570−1580を参照)。必然的に、治療される対象の病態に応じて投与量に多少の変動が生じることになる。いずれの場合も、投与を担当する者が、個々の対象に適した用量を決定することになる。さらに、ヒト投与の場合、製剤はFDA生物基準局が要求する無菌性、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たす必要がある。
【0061】
滅菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した様々な他の成分とともに適切な溶媒に配合した後、濾過滅菌することにより調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌活性成分を、基礎分散媒と、上記に列挙したもののうち必要とされる他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに配合することにより調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に加え任意の追加の目的成分である粉末を、それらの事前に滅菌濾過した溶液から得る真空乾燥及び凍結乾燥技術である。粉末化組成物は、安定剤の有無にかかわらず、例えば水または生理食塩水などの液体担体と混合される。
【0062】
C.多種多様な医薬組成物及び製剤
本発明の他の好ましい実施形態では、活性化合物Yap突然変異体タンパク質及び/またはそれをコードするポリヌクレオチドを、例えば局所(すなわち経皮)投与、粘膜投与(鼻腔内、膣内など)、及び/または吸入といった多種多様な経路を介する投与用に製剤化することができる。
【0063】
局所投与用の医薬組成物には、軟膏、ペースト、クリーム、または粉末など、薬用塗布用に製剤化された活性化合物を含み得る。軟膏には、局所塗布用のあらゆる油性、吸着性、エマルジョン、及び水溶性ベースの組成物が含まれ、対してクリーム及びローションは、エマルジョン基剤のみを含むそのような組成物である。局所投与される医薬品には、皮膚からの活性成分の吸着を促進する浸透促進剤が含有される場合がある。好適な浸透促進剤として、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン、及びラウロカプラムが挙げられる。局所塗布用の組成物の可能な基剤として、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリーム、及びワセリン、ならびに任意の他の好適な吸収性、エマルジョン、または水溶性の軟膏基剤が挙げられる。局所製剤はまた、活性成分を保存し、均一な混合物を提供するために必要とされる乳化剤、ゲル化剤、及び抗菌性防腐剤を含んでもよい。本発明の経皮投与は、「パッチ」の使用も含み得る。例えばパッチは、1つ以上の活性物質を所定の速度で、かつ一定期間にわたって持続的に供給することができる。
【0064】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、点眼剤、鼻腔内スプレー、吸入剤、及び/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達される場合がある。経鼻エアロゾルスプレーによる組成物の肺への直接送達方法は、例えば米国特許第5,756,353号及び同第5,804,212号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる)に記載されている。同様に、鼻腔内微粒子樹脂14及びリゾホスファチジル−グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる)を使用した薬物の送達もまた製薬業界では周知されている。同様に、ポリテトラフルオロエチレン担持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達が、米国特許第5,780,045号(その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる)に記載されている。
【0065】
エアロゾルという用語は、微粉化固体の液体粒子が液化ガスまたは加圧ガス噴射剤中に分散されたコロイド系を指す。吸入用の本発明の典型的なエアロゾルは、液体噴射剤中または液体噴射剤と好適な溶媒との混合物中の活性成分の懸濁液からなる。好適な噴射剤として、炭化水素及び炭化水素エーテルが挙げられる。好適な容器は、噴射剤の加圧要件に応じて異なることになる。エアロゾルの投与は、対象の年齢、体重、ならびに症状の重症度及び反応に応じて異なることになる。
【0066】
IV.本開示のキット
本明細書に記載のいずれの組成物も、キットに含むことができる。非限定的な例において、突然変異体Yapポリペプチド及び/またはポリヌクレオチド(またはその生成のためのオリゴヌクレオチド)をキットに含むことができる。
【0067】
水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかでキットの成分をパッケージ化してもよい。キットの収容手段には一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、注射器、または他の収容手段を含み、その中に成分を入れることができ、好ましくは好適にアリコートできるものである。キットに複数の成分が存在する場合、キットは一般に、追加成分を個別に入れることができる第2、第3、または他の追加容器も含むことになる。ただし、1つのバイアルに成分の様々な組み合わせが含まれる場合がある。本開示のキットはまた、典型的には、市販用に厳重に密閉して1つ以上の組成物を収容するための手段を含むと考えられる。そのような容器には、その中に目的とするバイアルが保持される、射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器を含み得る。
【0068】
組成物は注射可能な組成物に製剤化される場合がある。その場合、収容手段はそれ自体が注射器、ピペット、及び/または他の同様の器具であり得、そこから製剤を身体の感染領域に適用する、動物に注射する、及び/またはさらにキットの他の成分に加える及び/またはそれと混合することもできる。ただし、キットの成分が乾燥粉末(複数可)として提供されてもよい。試薬及び/または成分が乾燥粉末として提供される場合、好適な溶媒の添加により粉末を再構成することができる。溶媒を別の収容手段で提供することも想定される。
【0069】
本開示のキットはまた、典型的には、市販用に厳重に密閉したバイアルを収容するための手段を含むと考えられ、例えば、その中に目的とするバイアルが保持される、射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器などである。
【0070】
特定の実施形態では、キットは、個体が心臓関連の医学的病態を有することを判断するための試薬及び/またはツールを含む。いくつかの実施形態では、キットは、心臓関連の医学的病態の1つ以上の追加療法、例えばACE阻害剤、アルドステロン阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB);ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、コレステロール低下薬、ジゴキシン、利尿薬、強心剤療法、カリウム、マグネシウム、血管拡張剤、抗凝固薬、アスピリン、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために記載する。以下に示す実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技術を代表するものであり、したがってその実施にとって好ましい形態を構成するとみなし得ることを当業者は理解されたい。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された具体的な実施形態に多数の変更を加えることができ、それでもなお本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができるものと理解されたい。
【0072】
(実施例1)
(優性活性型YAPはクロマチンアクセシビリティ及び心筋細胞の再生を誘発する)
YapS127A突然変異がLats依存性Yap阻害をすべて説明できるわけではないことを特性から明らかにし、かつHippo活性をもたない心臓をモデリングするために、5つすべてのLats1/2リン酸化部位をAに突然変異させたYap5SAを条件付きで過剰発現するトランスジェニックマウス系統を作製した
【0073】
CAG駆動型誘導性Yap5SA導入遺伝子には、LoxPに挟まれたSTOPとeGFPがあり、その後ろにFlagタグ付きYap5SA及びIRES LacZを含んでいた(図1A)。この導入遺伝子は、組換え前の胚及び出生後の心臓にeGFP発現を誘導した(図1B図1C)。本発明者らは、Yap5SAマウスをタモキシフェン誘導性心筋細胞特異的CreドライバーであるαMyHC−Cre−ERT2(図1D15と交配させて、Yap5SA過剰発現(OE)マウスを作製した。タモキシフェンを4日間連続して注入(40μg/g)することにより、成体CMに組換えを誘導した。成体心臓抽出物に対するウェスタンブロットは、Yap5SA OE心臓においてYapレベルが5倍に増加することを示した(図1D)。免疫蛍光試験により、Yap5SA OE CMのサイトゾルに対するYapの核濃縮は2.5倍であることが明らかになった。対照CMは、サイトゾルと核の両方にYapを発現した(図1E)。
【0074】
Yap5SA OEマウスは、最後のタモキシフェン注射の72時間後に死亡した(図2A)。組織学により、左心室壁の厚さが増加するとともに、左心室腔が筋肉でほぼ閉塞されていることが明らかになった(図2B)。タモキシフェンの注入前と注入から1日後の心エコー検査では、in vivoでのYap5SA OE心臓の心室壁の肥厚、心腔サイズの縮小、及び駆出率の増加を示した(図2C〜2J及び複数の動画)。この表現型は、タモキシフェン後の対照αMHC−merCremerマウスにおける心毒性心室拡張とは対照的である16
【0075】
不整脈を監視するために、遠隔測定装置を同腹子対照及びYap5SAOEマウスに埋め込んだ。Yap5SA OEマウスでは不整脈の検出はなく、むしろ試験したすべてのαMyHC−Cre−ERT2マウスに観察されたタモキシフェン誘発性不整脈(T波逆転)を防いだ(図5A、5B;n=3)。さらに、コネキシン43免疫蛍光(図5C)によって示されるように、Yap5SAを発現する(β−ガラクトシダーゼ陽性)心筋細胞はギャップジャンクションによって対照CMと結合しており、Yap5SAを発現するCMが野生型CMと電気的に結合することが示唆された。最後のタモキシフェン注射の24時間後に心筋細胞を単離し、個々の細胞レベルでCMの収縮性を調べた。タモキシフェン投与対照CMと比較して、Yap5SA OE CMは小さかったが、安静時サルコメア長及び電場刺激に対する収縮性は同様であった(図3A図5D)。
【0076】
立体解析によってCM数を決定するために、拡張期に固定した心臓を、タモキシフェン注射の2日後に、心尖から大動脈へ7μm刻みで切片化し、本発明者らが自ら、左心室面積を異なる組織深度で測定した。左心室面積を心臓内の位置の関数としてプロットし、曲線下面積を積分することにより、基準となる左心室の容積を算出した。CMを明確に識別することは困難な可能性があるため、本発明者らは中心体周辺物質1(PCM−1)マーカーを使用して、左心室のCM核を識別した。Yap5SA OEの心臓は、対照の心臓と比較して、左心室壁面積が増加し、心筋の容積が増加し、心腔の容積が減少した(図3B〜3D)。Yap5SA OE心臓は、体重に対する左心室の重量比も増加した(図3E)。
【0077】
左心室CMの総数を評価するために、本発明者らは、PCM−1陽性CM核の密度を、対照(72,100+/−2300CM核/mm^3)及びYap5SA OE心臓(70,600+/−1300CM核/mm^3)において算出した1、17。CM核の密度は、Alkassらの最近のマウス立体解析データと一致していた(図1Bを参照17)。CM数を得るために、本発明者らは、CM密度に総心臓容積を乗じ、CMの核形成について補正した(以下を参照)1、17。Yap5SA OEの左心室は、対照と比較してCM数が大幅に増加した(対照:1,880,000+/−78,000対Yap5SA:2,680,000+/−54,000;分散分析とBonferoniの事後分析p<.0001;図3F)。対照のCM数データも以前に公開されたマウスのデータと一致している18
【0078】
フローサイトメトリーにより、単離されたPCM−1陽性CM核のDNA含量を定量化すると、Yap5SA OE CMは4N核でわずかな増加を示したが、4Nを超える核に有糸分裂カタストロフのモデル19で見られるようなDNA含量の増加はなかった(図6)。G2/Mの2倍体細胞は、4N DNA含量が4倍体細胞と同じであるため、Yap5SAの4N核の増加が高倍数化ではなく正常な細胞周期進行によることをデータは示唆している20。単離したCMでCM核の数を測定したところ、Yap5SA OE心臓において単核CMの増加はあったが、二核CMに変化はなかった(図3G)。また、Yap5SA心臓では、核が4つのCMの比率が減少しており、非生産的な核分裂が少ないことを示唆した(図3G)。
【0079】
本発明者らは、Yap5SA誘導後の2日間に、EdUを飲料水で適宜供給して、単離CMのEdUを染色し、非損傷成体CMにおけるS期進入を試験した(図3H)。以前の観察と同様に、非損傷対照CMへのEdUの取り込みは検出されなかった(図3H。対照的に、Yap5SA OE CMのうち約16%はEdU陽性であった(図3H)。さらに、Yap5SA CMは有糸分裂マーカーを発現し、Yap5SA CMの約11%がAurkb陽性、6%がPHH3陽性であった(図3I〜3J)。CMの倍加時間(t)を算出するために、1回の低用量タモキシフェンで低頻度の組換えを誘導し、異なる時点でLacZ陽性CMを計数した。本発明者らは、対数式に変換した後、Yap5SA OE CMでは、tが1.37日であることを見出した(図3K)。重要な点として、Yap5SAはCMアポトーシスまたは間質性線維症を誘発しなかった(図7図8)。合わせて、データによると、Yap5SAは新しいCMの発生とともに成体CMの増殖を誘発することを示している。
【0080】
成体CM再生に関連してYap5SA標的遺伝子に対する考察を得るために、タモキシフェン注射の48時間後にCM特異的核のRNA−seqを実施した21、22。Yap5SA CMにおいて、合計1,352個の遺伝子が大幅に上方制御され、748個が下方制御された(調整p値<0.01)(図4A図9)。無作為の遺伝子オントロジー分析により、遺伝子発現の変化が増殖性CM表現型と一致することが明らかになった(図10A)。上方制御された転写産物には、セントロメア遺伝子Cenpe及びCenpf、ならびにサイクリンCcnd1及びCcna2が含まれていた。他の遺伝子には、細胞骨格のリモデリング及び細胞増殖を促進する、Rhoファミリーのグアニンヌクレオチド交換因子であるDock2が含まれていた23。下方制御された遺伝子には、分化したCM表現型の特徴であるミオシン及びイオンチャネルをコードする遺伝子が含まれていた(図10B)。興味深いことに、Hippo経路遺伝子は、Yap5SA CMで最も顕著に増加した転写産物の1つであった(図11)。コアHippo経路遺伝子Lats2及びKibra(Wwc1)は、Yap阻害因子Crb2、Amot、及びVgll2〜4をコードする遺伝子と同様に上方制御された(図10B図11)。
【0081】
Yap5SA OE CMのクロマチンランドスケープを調べるために、PCM−1単離CM核で、トランスポザーゼの接近可能なクロマチン(ATAC)−seqについてアッセイを実施した24。合計して、Yap5SA CMにおいて16,189個のピークがアクセシビリティの増加を示したが、対照CMと比較してATACピークは13,353個減少した(図4A図9)。de novoモチーフの発見により、Yap5SA OE CMにおいて、新たに明らかになったATACピークのうち上位3つの濃縮モチーフすべてが、周知のYapインタラクター25である転写因子TEAD(図4B)に属していることが明らかになった。他の濃縮モチーフは、以前のYap ChIP−seqデータと一致するAP−1要素と、病理学的心臓リモデリングを防止する役割を有するAtf3であった26〜28。Nucleo−ATACアルゴリズムを適用して、TEAD DNA結合モチーフに対するクロマチンの開放状態を示し、TEADモチーフでのヌクレオソームの除去を見出した。これは転写因子占有率の増加と一致していた29図4B)。
【0082】
遺伝子間ATACピークを、直近の転写開始部位(TSS)に対してプロットすると、対照とYap5SA OE CM両方においてプロモーター領域(TSSから1kb未満)及び遠位遺伝子座(10kb超)で構成される二峰性分布があった(図12A)。Yap5SA OE CMにおいて、上方制御された、新たに接近可能なATACのピーク(調整p値<1e−5)は、推定エンハンサー内の主に遠位に位置していた24。同様に、活発に転写される遺伝子にマップするATACピークも遠位領域に濃縮された(図4C図12B)。以前の研究により、Yap−Tead結合部位は、活性クロマチンのマーカーであるH3K27Acに濃縮されることが明らかになった。ATAC−seqデータと、発達中及び成体の心臓からの既存のH3K27Ac ChIP−seqデータとの比較により、Yap5SA OE CMからのATAC−seqピーク(調整p値≦0.035)が胚H3K27Acクロマチンマークに濃縮されていることが明らかになった。対照的に、対照CMからのATAC−seqピーク(調整p値≦0.035)は、成体H3K27Acクロマチンマークに濃縮を示した30図4D)。これらのデータは、Yap5SAが発生促進因子に対するクロマチンアクセシビリティを促進したことを示唆している。
【0083】
Yap5SA Flagエピトープに対する抗体を使用してChIP−seqを実施し、Yap5SA結合クロマチンを沈降させた。ATAC−seqデータと一貫して、Yap5SAのChIP−seqにより、Yap5SAが約6.3対1の比で遠位エンハンサー領域に優先的に結合したことが明らかになった(図4C26、31。Yapはまた、接近可能なプロモーターと結合し、通常はサイレントな遺伝子の転写を正に制御した31
【0084】
Yap5SA CMにおいて転写的に上方制御された遺伝子をYap5SA ChIP−seqデータと比較すると、173個の遺伝子がYap5SAの直接標的遺伝子であった。Yap5SAの直接標的遺伝子座のうち、76個の遺伝子座はまた、ATAC−seqによって決定されたようにクロマチンアクセシビリティが増加したが、他のYap5SA標的遺伝子座はオープンクロマチンシグネチャーを既に有していた(図4E図13A)。各遺伝子のTSSを中心とした周辺1kb域のRNA−seqとATAC−seq両方の平均断片深度をプロットして、これらの遺伝子座での高いプロモーターアクセシビリティ及び転写増加のパターンを明らかにした(図13C)。
【0085】
Yap5SAによって直接制御される76個の遺伝子の中にはHippo経路の構成要素があり、これはYapが負のフィードバックループを直接活性化してCMの増殖を妨げることを示している(図4G図11A〜11B)。Hippo経路遺伝子は、Lats2、Vgll2、Vgll3、及びWwc1を含んでいた8、32図4F図13A)。ウェスタンブロットにより、内因性の低分子量Yapが、Hippo活性の上方制御を示す、セリン112のリン酸化を増加させたことが明らかになった(図11)。Yap5SAが直接制御する他の遺伝子には、Pkciなどの有糸分裂及び細胞質分裂遺伝子を含んでいた33。接近可能なYap5SA標的の主要カテゴリーは、エンドソーム選別構成要素をコードする遺伝子であった。このカテゴリーには、レトロマー構成要素をコードするSnx2、Snx7を含んでいた。エンドサイトーシスアダプタータンパク質をコードするDab2はWnt阻害因子として機能するが、Wntリガンドのエンドソーム輸送にはWlsが不可欠である34、35図13A1〜13A3、図13B)。
【0086】
Nectin1、Plekha7、Mtss1、及びCtnnd1などの、アドヘレンスジャンクションのアセンブリを促進する遺伝子もYap5SAの接近可能な標的であり、新しいCMが機能的に心臓に統合されるという知見をさらに裏づけた36。アクチン細胞骨格を制御する複数の遺伝子も、Yap5SAの接近可能な標的に見いだされた。Ephexin及びPak3は、Rho活性の増強にとって重要なタンパク質をコードする。他の遺伝子は、コードアクチン核形成因子をコードするCobl、及び創傷治癒中のストレスファイバーの形成に重要であるCnn3などである(図13A1〜13A3、図13B)。
【0087】
図14Cに、細胞周期に直接関与する、Yap5SAによって差次的に制御される遺伝子をまとめるとともに、成体の心筋細胞での細胞周期の開始について記述された、または試みられた以前の文献をまとめる。キー(記号)は、RNA−seqによって決定される、Yap5SA心筋細胞で差次的に上方または下方に制御される遺伝子;Yap5SAクロマチン免疫沈降と、それに続くシーケンシングによって決定されるYap5SAの直接的な標的である遺伝子(すなわちChIP−seq(+));及びトランスポザーゼが接近可能なクロマチンについてのアッセイで決定される、対照の心筋細胞ではエピジェネティックに抑制されたが、Yap5SAの存在下では抑制されない遺伝子(すなわち、ATAC−seq(上方))を示す。
【0088】
この知見は、分化したCMの増殖能力が、遠位制御要素の除去によって効果的に妨害されることを明らかにしている。Yap5SAを過剰発現させることにより、Yapが有糸分裂を介した進行を促進する遺伝的プログラムを活性化できることを確認した。重要な点として、Yap5SA標的遺伝子には、細胞周期遺伝子が含まれるが、生産的な細胞分裂に重要であるエンドソーム選別タンパク質をコードする遺伝子も含まれる。
【0089】
本発明者らによって作成された動画は、タモキシフェン投与前のYap5SA OE心臓、ならびに同じ心臓であるがタモキシフェン投与の1日後及び4日後の短軸Bモード心エコー検査を示す。また、動画は、最後のタモキシフェン投与の2日後、及びその動物が死亡する24時間前の、Yap5SA OE心臓の短軸Bモード心エコー検査を示している。心室腔は縮小した。タモキシフェン前のYap5SA OE心臓、ならびに同じ心臓であるがタモキシフェン2日後、及びさらに5日後の長軸Bモード心エコー検査。心筋層の肥厚が明らかであった。
【0090】
(補足資料)
(材料及び方法)
(実験用動物)
マウス試験は、Baylor College of Medicineの施設内動物管理使用委員会に従って実施された。本発明者らは、例として、Kunliang Guan(Addgeneプラスミド番号27371)由来のpCMV−flag YAP2 5SAを利用して、CAG−loxP−eGFP−Stop−loxP−IRES−βGal発現構築物にクローニングした。この構築物は、5つの標準的なLats依存性リン酸化モチーフに、アラニンに変異された8つのセリン残基(S61A、S109A、S127A、S128A、S131A、S163A、S164A、S381A)をもつヒトYap変異体をコードする。導入遺伝子をコードする線状DNA(図1A)をFVB/Nマウス由来受精卵母細胞へ前核注入した後、これを偽妊娠ICRマウスに移植することで、Yap5SA OE(Tg(Jojo−Flag::Yap5SA)5JFM)マウスを作製した。C57B1/6のバックグラウンドが保持された、ホモ接合αMyHC−Cre−ERT2マウスと単交配を実施した。対照動物はすべて同腹仔または同齢の同胞であった。尾部皮膚におけるeGFP発現、及びPCRジェノタイピングの両方により、視覚的に遺伝子型を決定した(F:AAGCCTTGACTTGAGGTTAG(配列番号5)、R:CGTCATCGTCTTTGTAGTCC;配列番号6)。成体実験はすべて、7〜10週齢の雌雄マウスで実施した。Creのタモキシフェン誘導は、Heallenらによる以前の刊行物と同様に、腹腔内注射(40mg/kg)、4日間毎日)で行った。
【0091】
(超音波心エコー検査)
Mモード及びBモード心エコー検査は、VisualSonics 770システムの30MHxスキャンヘッド(RMV7007B)を使用して、Baylor College of Medicine Mouse Phenotyping Coreの確立されたプロトコルに従って実施した。
【0092】
(1細胞の形態学的及び生理学的測定)
4回目のタモキシフェン注射の翌日、他の箇所に記載されているような、コラゲナーゼA(Roche)の逆行性灌流により心筋細胞を単離した37。細胞の一部を固定し(10%ホルマリン、10分)、細胞サイズを定量化した。この定量化は、プレーティングした細胞の静止画像を撮影して(Nikon Eclipse 80i顕微鏡、Nikon DSFi1カメラに装備)、これをimageJ(NIH,Bethesda,MD,USA)でアウトライン処理し、CM 2Dプロファイル領域を定量化することにより行った。画像を定量化する者には、遺伝子型を知らせなかった。IonOptix Myocyte Calcium and Contractility Recording System(IonOptix,Westwood,MA)を使用して、生理学的ライブイメージングを実施した。1.8mM Ca2+を含有するタイロード溶液(HEPES緩衝処理、pH7.4)中で心筋細胞を平板培養し、(組換え後)GFPが非存在または最小であるものを選別し、MyoPacer(IonOptix,Westwood,MA)を使用して20V/cmで電界刺激した。2分間、1Hzのペーシングプロトコルの最後20秒間、Ionoptix IonWizardソフトウェアを使用してサルコメア周期のフーリエ変換によりサルコメアの短縮を定量化した。
【0093】
(光学マッピング)
マウスをイソフルランで麻酔して手術レベルの麻酔下にし、ヘパリンを腹腔内に注射(100単位)した後、頸部を脱臼する。次に、心臓を摘出し、酸素添加した(95%O、5%CO)冷タイロード溶液で洗浄した。次に、大動脈に21ゲージのカニューレを挿入した。カニューレ挿入後、大動脈圧を80〜120mmHgに維持して、心臓にタイロード溶液を逆行性に灌流させた。電極(Harvard Apparatus,MA,USA)を右心房の表面に配置し、PowerLab 26T(AD Instruments,Sydney,Australia)によって生成されたペーシング刺激(10Hz、12Hz、及び14Hz)を与えた。収縮アーチファクトを除去するために、心臓にブレビスタチン(Sigma−Aldrich、B0560−5mg、DMSO中2.5mg/mlを50ul)を供給した。次に本発明者らは、電圧感受性色素であるジ−4−ANEPS(Invitrogen、D−1199、DMSO中2.5mg/mlを20ul)で心臓を灌流した。励起にはLEDライトを使用した(波長:530nm)。Vmを示す蛍光発光をロングパスフィルターで処理し(>590nm、590FG05−50、Andover Corporation Optical Filter)、MiCAMO CMOSカメラ(SciMedia,CA,USA)で測定した。実験中、LabChartを使用して体表面ECG(ADInstruments)をモニターした。伝導速度及び活性化マップをRhythmソフトウェアで算出した38
【0094】
(組織学、免疫蛍光、凍結切片、及びEdUイメージング)
新たに摘出した胚及び出生後心臓を、Zeiss AxioCam Hrcを搭載したZeiss SteREO Discovery.V12で内因性蛍光について解析し、画像化した。固定のため、心停止用の20mM KCl−PBSで心臓を逆行性に灌流した後、10%中性緩衝ホルマリンを灌流させ、その後パラフィンで包埋した。7ミクロンの横断切片に切断し、帯電したポリリジンスライド(Denville UltraClear Plus、白色つや消し加工)にマウントした。一部はマッソンのトリクローム染色で染色し、一部はピクロシリウスレッドで染色した。免疫組織化学は、最初に切片を脱パラフィンし、再水和した後、抗原賦活化して実施した。切片をブロッキング(PBS中10%ロバ血清、0.1%tween−20)し、さらに一晩(個別、順次)染色した後、イメージングした(一次:抗CX43、Sigmaウサギ1:200;抗β−gal、Abcamニワトリ1:200)(二次:標準的な蛍光色素コンジュゲートLife technologies Alexa抗体)。核はDAPIで染色した。DeadEnd Fluorometric TUNELシステム(Promega)を使用して、パラフィン包埋組織にTUNEL染色を実施した。画像を定量化する者には、遺伝子型を知らせなかった。イメージングはすべて、Baylor College of MedicineのOptical Imaging and Vital Micorscopy coreにて、Zeiss LSM 780共焦点顕微鏡で実施した。
【0095】
凍結切片を切断する際は、心臓を抽出して、30%スクロース、20mM KCl−PBSで灌流し、次いでTissue−Tek(登録商標)O.C.T.化合物に入れた後、ドライアイスで凍結した。次に16ミクロンの切片を切り出し、スライドガラスにマウントした。免疫蛍光染色の際は、切片を42℃に温めてから−20℃のアセトン中に20分間静置した後、ロバ血清でブロッキングすることにより抗原賦活化を実施し、次に、一次抗体(PHH3、ウサギCell Signalin1:400;AuroraB、ウサギAbcam1:200;cTnT、マウスThermo1:200)と4℃で一晩、続いて、二次(Life Technologies Alexa抗ウサギ;抗マウスVector Labsビオチン化1:200、続いてLife Technologies Streptavidin−Alexa)抗体と室温にて30分間、インキュベートした。核はDAPIで染色した。画像を定量化する者には、遺伝子型を知らせなかった。イメージングはすべて、Baylor College of MedicineのOptical Imaging and Vital Microscopy coreにて、Zeiss LSM 780共焦点顕微鏡で実施した。
【0096】
免疫細胞化学法標準プロトコルを用いて実施した。簡潔には、ランゲンドルフ摘出CMを10%ホルマリン中で室温にて10分間固定した。0.5%トリトン−100で20分間透過処理し、2%FBS及び2%BSAでブロッキングした後、抗体を一晩(個別、順次)インキュベートしてからイメージングした(抗Yap、ウサギNovus1:200、cTnT、マウスThermo1:200)(二次:標準的な蛍光色素コンジュゲートLife Technologies Alexa抗体)。EdU染色は、Life TechnologiesのClick−it Alexa Fluor 647イメージングキット(C10340)によるClick−itテクノロジーを用いて実施した。個々の心筋細胞に存在する実際のEdUは、共焦点zスタックによって決定した。DAPIで染色し、共焦点Zスタックにより細胞あたりの核の数を計数することにより、この単離した心筋細胞の核数を定量化した。画像を定量化する者には、遺伝子型を知らせなかった。イメージングはすべて、Zeiss LSM 780共焦点顕微鏡で実施した。
【0097】
(ウェスタンブロッティング)
HEPES、EDTA、トリトン緩衝液中の心臓をビーズでホモジナイズして、ウェスタンブロッティングを実施した。次に、溶解物に還元tris系SDS試料緩衝液(80μg/ウェル)を充填し、PVDA膜に転写し、Li−Cor Odysseyイメージングシステムを使用してイメージングした。一次抗体:Novusウサギ抗Yap(1:1000);Sigmaマウス抗M2flag(1:1000);Milliporeマウス抗GAPDH(1:5000);Cell Signaling Technologies抗P−Yap(S127−マウスホモログS112))、(1:1000)。Li−Cor蛍光二次抗体:ヤギ抗ウサギIgG、ヤギ抗マウスIgG(1:5000)。定量化はFiji(ImageJ)のゲル分析機能を使用して実施した。
【0098】
(in vivo電気生理学)
以前に記載されたように39、Yap5SA OE誘導プロトコルにわたる5日間、連続して心電図を記録した。歩行可能なマウスの腹腔に遠隔測定送信機(Data Sciences International)を埋め込んだ。s.c.電極をリード線II配置に取り付け、バージョン4.1のDataquestソフトウェアを使用して記録した。T波測定は、曲線下面積を算出することにより実施した。
【0099】
(LVサイズ及び筋細胞の総数の定量化)
左心室の心筋細胞の総数を決定するにあたり、本発明者らは、最初に心臓を切除し、それをKCl、続いて10%ホルマリンでの逆行性灌流、さらに10%ホルマリンで滴下固定して、拡張期に固定した。心臓をパラフィンで包埋し、心尖から大動脈へ7ミクロン刻みで切片化した。次に本発明者らは、顕微鏡スライド上のLV心筋層の面積を組織深度の関数としてプロットし、さらに次いでその曲線下面積を積分することにより、各心臓の左心室の容積を算出した。その容積から、1.053g/mLの筋肉密度を用いて容積を質量に変換することにより、LV重量と体重との比を算出した40。次に、さまざまな組織深度の7ミクロン切片を抗PCM1、DAPI、及びWGAで染色して、CM核、すべての核、及び細胞境界を標識した。共焦点顕微鏡を使用して各切片の厚さ全体にわたり画像化した後、本発明者らがイメージングフレーム内のPCM1(+)核の数を計数した。フレームの下端と左端の部分核は計数しなかったが、上端と右端の部分核は計数した。Zスタックは、異なる組織深度から得た切片にわたってランダムに取得した(40Zスタック/心臓)。PCM1とDAPIの両方が陽性であり、PCM1がDAPIを包囲している場合のみ、核を計数した(図3F)。CMの総数を検出するため、容積あたりの計数された核の数から、核形成密度を算出し、さらにこれを心筋層の全体容積に外挿し、次に、他の箇所に記載するように、各遺伝子型の筋細胞の平均核形成で補正した(対照:2.04核/CM;Yap5SA:1.92核/CM、図3G41。画像を定量化する者には、遺伝子型を知らせなかった。
【0100】
(フローサイトメトリーによるDNA含量分析)
心筋細胞をランゲンドルフ灌流により単離した後、10%ホルマリンで固定した。以前に記載されたように核を単離した42。細胞を懸濁し、HB緩衝液(pH7.4 15mM Tris−HCl、0.34Mスクロース、15mM NaCl、60mM KCl、0.2mM EDTA、0.2mM EGTA、プロテイナーゼ阻害剤を含む)中で、30回ダウンス型でホモジナイズした。次に、PBTB緩衝液(0.1%Triton X−100、PBS中5%BSA)中で、18−G針により15回穿刺して核を放出させた。CM特異的核を標識するため、核をPCM1抗体(1:1000、Sigma;二次:Life Technologies Alexa抗ウサギ546)とインキュベートし、DNAをDAPIで標識した。次に、核をセルソーター(BD Biosciences FACSARIA II SORP)に通し、PCM1(+)心筋細胞核のDNA含量をDAPI蛍光強度として定量化し、FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用して細胞周期段階について分析した。
【0101】
(LacZレポーター倍加時間分析)
心臓を摘出し、20mM KCl中20%グリセロールで灌流し、O.C.T.化合物に包埋し、ドライアイスで凍結した。次に、それらを16μmの切片に切断し、PBS中0.02%グルタルアルデヒドで15分間固定した。x−galとの反応を37℃で48時間進行させた。
【0102】
細胞分裂により生じる細胞数は、N(t)=N2t/tDで表すことができる。ここで、N(t)は所与の時点での細胞数であり、Nは開始時の細胞数であり、tはNからN(t)に移行するまでに要した時間量であり、tは倍加時間である。1回の低用量(10μg/g)タモキシフェンの注射を実施した後、Yap5SA OEマウスを時間依存的に屠殺した。次に、本発明者らは、心臓を切片化し、切片あたりのLacZ(+)細胞の数を定量化した。次に、その合計を切片の面積で除算した。次に、本発明者らは、これらの値のlogをプロットし、
【数1】
で表される線形関数にデータを当てはめた。N及びN(t)のデータを挿入して整列し直し、tを求めることにより、倍加時間(t)を決定した。イメージングは、Nikon DSFi1カメラを装備したNikon Eclipse 80i顕微鏡で実施した。画像を定量化する者には、どの時点かを知らせなかった。
【0103】
(ATAC−seq及びRNA−seqのためのPCM1の核単離:)
核単離は、以下の変更を加え、Mo et al.に従って実施した43。簡潔には、氷上で新鮮な心臓組織を採取し、直ちにBiogen Series PRO200(PRO Scientific)でホモジナイズした後、ダウンス型でホモジナイズした。オプティプレップ密度勾配培地(Sigma)を用いた密度勾配遠心分離により、核を単離した。30〜40%の界面から単離された核はすべて、Protein−G Dynabeads(Life technologies)で事前に清澄化した。次に、核を抗PCM1(Sigma、HPA023370)抗体及びProtein−G Dynabeadsと免疫沈降し、心筋細胞核を濃縮した21
【0104】
(ATAC−seq)
約50,000個のビーズに結合したPCM1+核をATAC−seqのインプットとして使用した。ATAC−seqライブラリーを(Buenrostro et al,2013)24に従って作成した。Illumina Nextseq装置(DNA Link)でペアエンドの2x75bpシーケンシングを実施した。デフォルトのペアエンド設定でBowtie2を使用して、リードをマウスゲノム(mm10)にマッピングした44。次に、核以外のすべてのリード、及び不適切にペアになったリードを破棄した。次に、重複したリードをpicard MarkDuplicatesで除去した。MACS2(callpeak−nomodel−broad)でピークコールを実行した。ブラックリスト領域をmm9からマウスゲノムmm10へ変換し、シーケンシング品質の低いピーク(q30超が必要)とともにこれを除去した。bedtools(multicovモジュール)を使用して、包括的なピークファイル(Yap5SA及び対照の複製物がマージされたもの)から条件ごとにリードを計数した45。ATAC−seqデータセットの分位点標準化をCQN46で実施し、オフセットをDESeq2に供給して、アクセシビリティ差を定量化した47。ヌクレオソームのコールは、NucleoATAC29で実施した。モチーフ濃縮分析は、Homer(findMotifsGenome.pl)を使用して実施した。
【0105】
(RNA−seq)
RNEasy Plus Microキット(Qiagen)を使用して、ビーズに結合したPCM1+核からRNAを回収した。カスタムのY字型アダプターを備えたStranded RNA−seq Kit with Ribo Erase(Kapa Biosystems)で核RNA−seqライブラリーを構築した。Illumina Nextseq装置(DNA Link)でRNA−seqライブラリーに対してペアエンドの2x75bpシーケンシングを実施した。STAR48を使用して、最初にリードをマウスゲノム(mm10)にマッピングした。次に、DESeq247を用いて発現差解析を実施した。Metascapeを使用して遺伝子オントロジーを実施した。g:Profiler49、50を使用してde novo経路分析を実施した。
【0106】
H3K27AcのChIP−seq
公開データ:GSM1264370、GSM1264372、GSM1264372、及びGSM1264372を、bowtie2のデフォルトパラメーターを用いてマウスゲノム(ビルドmm10)にマッピングした。マッピング後、心臓E11.5 H3K27Acの複製物GSM1264370及びGSM1264372をマージして分析した。遺伝子トラックはUCSCゲノムブラウザーを使用して表示した。
【0107】
YapのChIP−seq
心室を摘出して冷DPBSに入れ、血液を除去した後、0.1%TritonX−100を補充したPBS中で細砕した。次に、BioGen Pro200及び5mmジェネレーターで迅速にホモジナイズした。ローテーター上で1%ホルムアルデヒド中にて室温で10分間架橋させ、150mMグリシンにより室温で10分間クエンチした。細胞をペレット化し、0.1%Triton−PBSで2回すすいだ。次に、5mLの細胞溶解緩衝液(5nM Tris pH8.0、140mM NaCl、1mM EDTA、10%グリセロール、0.5%NP−40、0.25%TritonX−100、0.5%Igepal CA−630、50mM HEPES、cOmplete EDTA−Free Rocheプロテアーゼ阻害剤)中にて、氷上で20分間インキュベートすることにより溶解させた後、ダウンス型でホモジナイズした。溶解物をペレット化し、細胞溶解緩衝液に再懸濁し、超音波処理した。次に、本発明者らは細胞及び核を4℃で10分間、2kGでペレット化した後、600uL核溶解緩衝液(10mM Tris、1mM EDTA、0.5mM EGTA、0.3%SDS、完全EDTAフリーRocheプロテアーゼ阻害剤)に再懸濁し、超音波処理した。15ugにせん断したクロマチンを使用して、Flag抗体(Sigma、F1804)またはIgG(Milipore 12−371)及びプロテインG磁気ビーズ(Peirce)と、ローテーター上で、4℃で一晩ChIP処理した。ローテーター上で、4℃で5分間ビーズを洗浄し、洗浄して、脱架橋し、DNAを精製した。Kappa Library Preparation Kit(Ion Torrent、KK8301)を使用して、シーケンシングライブラリーを作成した。Ion Torrent Protonで配列決定したYAP5SA−FLAG ChIP−seqライブラリーを、Torrent SuiteアライナーTmap(0.2.3)(Life Technologies)を使用してmm10マウスゲノムアセンブリにマッピングした。3つの生物学的複製を実施し、一意にマッピングされたリードのみを保持した。複合YAP5SA ChIP−seqデータセットからピークをコールし、HOMER(findPeaks及びannotatePeaks.pl)を用いてアノテーションした。遺伝子トラックはUCSCゲノムブラウザーを使用して表示した。
【0108】
(実施例2)
YAPK265Rの安定性
本発明者らは、Yap K265R(Yapの265位アミノ酸のリジンがアルギニンへ変異したもの)ホモ接合突然変異を有する2つのP19細胞株(番号11及び番号13)を作製した。YapK265R突然変異体の半減期を確認するために、6ウェルプレート中のWT P19細胞及びP19細胞にYap K265R突然変異体(番号13)を播種した。翌日、細胞の集密度が約60%〜70%に達したら、20ug/mlシクロヘキシミド(CHX)で2時間、4時間、または6時間、細胞を処理した(DMSOで処理した細胞は0時間とする)。処理後、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、次いで0.5%NP40溶解緩衝液100ul(50mM Tris−HCL、150mM NaCl、0.5%NP40、ならびにプロテアーゼ阻害剤及びリン酸化阻害剤)で回収した。Yap、S127リン酸化を伴うYap(p−Yap)、及びβ−カテニンの発現を試験するために、細胞溶解物をウェスタンブロッティングで分析した。GAPDHの発現を内部対照として利用した(図15A)。CHXはタンパク質合成を阻害することができる。これは、処理後に新生タンパク質が補充されず、Yap、p−Yap、及びβ−カテニンのタンパク質レベルが経時的に減少するためである。WT Yapと比較して、YapK265Rはより急速に減少した。これはK265R突然変異をもつYapの安定性が低いことを意味する(図15A)。p−Yap及びβ−カテニンもまた、YapK265R突然変異体P19細胞では安定性が低い(図15A)。CHX処理しない場合、Yap及びp−Yapの基底レベルはWT P19細胞と比較してYapK265R突然変異体P19細胞でわずかに低い(図1B)。興味深いことに、β−カテニンの発現は、YapK265R突然変異をもつP19細胞で増加した(図1A及び図1B)。
【0109】
これらの試験を2回繰り返し、一貫した結果を得た(図16及び図17)。統計結果を図17Bに示す。Yapのタンパク質の代謝回転率を試験するために、プロテアソーム阻害剤であるMg132、20um/mlで細胞を処理した。分解ができないため、タンパク質レベルは経時的に増加した。YapK265R突然変異体P19細胞でのYapタンパク質の蓄積の増加は、WT Yapと比較してYapK265Rの代謝回転率が高いことを示している。言い換えれば、YapK265RはWT Yapよりも安定性が低い(図18A及び図18B)。しかしながら、β−カテニンの代謝回転率はYapK265R突然変異体細胞では変化しなかった(図18A及び図18C)。
【0110】
Yapは、核内のDNA結合パートナーと協働して遺伝子発現を制御する転写補助因子である。YapK265R突然変異体の核局在化を試験するために、P19細胞を溶解し、核画分及びサイトゾル画分を回収してウェスタンブロット分析を行った。Yapタンパク質の量は、YapK265R突然変異体細胞の核画分では少ないが、サイトゾル画分では変化しないことから、YapK265Rの核局在化が少ないことが示唆される(図19)。この実験を合計3つの複製物で2回実施した(図19A及び図19B)。統計結果を図19C及び図19Dに示す。
【0111】
抗体の例:Yap(1:1000、Novas Biologicals、NB11O−58358);β−カテニン(1:1000、Santa Cruz、sc−7963);p−Yap(S127)(1:1000、Cell Signaling、#4911);p−Yap(S381)(1:1000、Cell Signaling、#13619);GAPDH(1:3000、Abeam、ab9485);HDAC2(1:5000、Thermo Scientific、PA1−861)
【0112】
(参考文献)
本明細書で引用するすべての特許、特許出願、及び刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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【0113】
本発明及びその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、及び改変が本明細書でなされ得るものと理解されるべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載のプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、及び工程に関する特定の実施形態に限定されることを意図しない。当業者であれば本発明の開示から容易に理解されるであろうが、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同じ結果を達成する、現存するまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、または工程を本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、または工程をその範囲内に包含することを意図する。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
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図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
2020513810000001.app
【手続補正書】
【提出日】2019年12月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2020年2月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
図1図1A〜1E。Yap5SA導入遺伝子の設計及び発現。図1A.(上)条件付きYap5SA対立遺伝子の構造。(下)下線のセリン残基がアラニンに変異している過剰発現されたYap変異体のヒトタンパク質配列。図1B.発達期の心臓にGFP発現を有する代表的なe9.5 Tg(Jojo_Flag::Yap5SA)5JFMマウス。図1C.P0新生児から採取した対照及びトランスジェニック心臓でのGFP蛍光の画像。図1D.(左上)成体CMでYap5SAを発現させるための生殖及び誘導戦略。(左下)FlagYap5SA発現を示すウェスタンブロット。左側に分子量マーカーを示す。(右)ウェスタンブロットによるYap発現の定量化を平均+/−SEMとして示す。n=3マウス/遺伝子型。図1E.抗Yap抗体及びDAPIで染色された、単離した対照及びYap5SA OE心筋細胞の免疫蛍光画像。(右)平均+/−SEMとして示されるYap免疫蛍光の核/サイトゾル比の定量化。分散分析とBonferroniの事後検定による全統計。対照n=3(心臓)、60(細胞)。Yap5SA n=3(心臓)、67(細胞)。
図2図2A〜2J。Yap5SA OEマウスの求心性心不全及び死亡。図2A.対照(n=8)及びYap5SA OE(n=7)マウスを表すカプランマイヤー生存分析。Mantel−Cox検定により算出された統計。図2B.対照及び瀕死状態のYap5SA心臓から得たマッソンのトリクローム染色(7日目)。図2C.4回目のタモキシフェン注射の前及び1日後での同じ動物の左心室の代表的なBモード画像。図2D〜2E.収縮期(図2D)及び拡張期(図2E)における左心室後自由壁の厚さ。図2D〜2Eは、平均+/−SEMとして示され(注射前Yap5SA n=7、注射前対照n=6、注射後Yap5SA n=10、注射後対照n=9)、分散分析とBonferroniの事後検定により統計を算出した。図2F.4回目のタモキシフェン注射の前及び1日後での対照及びYap5SA OE心臓の代表的なMモード心エコー検査。図2G.収縮終期の左心室腔直径。図2H.拡張終期の左心室腔直径。図2I.内径短縮率。図2J.駆出率。図2G〜2Jのデータは、平均+/−SEMとして示され(注射前Yap5SA n=4、注射前対照n=3、注射後Yap5SA n=7、注射後対照n=7)、分散分析とBonferroniの事後検定により統計を算出した。
図3図3A〜3K.分化した心筋細胞の増殖。図3A.単離CMの面積を示すヒストグラム。n=3マウス/群。約100細胞/心臓。図3B.異なる組織深度でのLVの切片及び面積、n=6/群。平均+/−SEM。*はP<0.05を示す。図3C.LV容積。図3D.LV腔容積n=6/群。平均+/−SEM。図3E.LVの重量と体重との比(n=6/条件)。平均+/−SEM。図3F.(左)LVの筋細胞数。(n=5/群)平均+/− SEM。(右)PCM1(+)CM核(黄色の矢印で例を示した)。図3G.CM核形成。6心臓/群。400〜500CM/心臓。平均+/−SEM。図3H.(左)EdUを含むCMの例。(右)誘導/EdU標識戦略及びEdU取り込みの定量化。平均+/−SEM。n=4心臓/群。200〜300CM/心臓。図3I.代表的なAuroraB染色切片(陽性細胞を黄色の矢印で示した)。(右)AuroraB(+)CMの定量化。平均+/−SEM。n=3マウス/群。200〜300CM/心臓。図3J.PHH3染色切片の例(陽性細胞を黄色の矢印で示した)。(右)PHH3(+)CMの定量化。平均+/−SEM。n=3マウス/群。200〜300CM/心臓。図3A〜3Jは、分散分析とBonferroniの事後検定による統計である。図3A〜3Jは、タモキシフェンプロトコルの2日後のマウスによるものである。図3K.異なる時点での1回の低用量タモキシフェン投与後のYap5SA OE lacz(+)CMの数をlog2形式(左)及び生データ(右)で示す。平均+/−SEM。N(t)=lacz(+)細胞数/心筋層面積。t=時間(日)。tD=倍加時間。n=3マウス/時点。log2変換後の線形フィットR2=0.96。
図4図4A〜4G。CM増殖遺伝子プログラムのエピジェネティックな活性化。図4A.(上)CM核濃縮プロトコル。(左下)対照と比較したYap5SA RNA−seqのボルケーノプロット。1,352個の遺伝子が上昇、748個が下降(調整P値<0.1)。(右下)対照と比較したYap5SA ATAC−seqのボルケーノプロット。Yap5SAの大幅なlog倍数変化により、16,189個のピークが上昇、13,353個が下降。2試料/遺伝子型。図9に再現性。図4B.(左)Yap5SAが濃縮した上位のATAC−seqモチーフ。(右)すべてのTEADモチーフピークのヌクレオソームシグナル。これを0〜1に標準化した(図4C)。以下のエンハンサーとプロモーターの比率:遺伝子間ATAC−seqピークの合計(図12);Yap5SAが濃縮した遺伝子間ATAC−seqピーク;及びYap5SA ChIP−Seqピーク。*P<0.001、対照の比率と比較した、カイ二乗検定、イエーツの補正。図4D.対照またはYap5SA OE CMそれぞれの上位ATAC−seqピーク(調整済みp≦0.035)を中心とした、発達期及び成体の心臓からのH3K27Ac断片のカバレッジ。nは調査したピークの数。図4E.(左)Yap5SA上方制御ATAC−seqピーク(調整p値<1e−5)及びYap5SA ChIP−seqピーク(HOMERのピークスコアカットオフが20)に対応する、高信頼度のYap5SA OE上方制御遺伝子(RNA−seq調整p値<0.01)。(右)カテゴリーごとの高度に濃縮されたGO期。図4F.Yap5SA上方制御遺伝子にわたるATAC−seqシグナル(TはTEADモチーフの目印;YはYap ChIP−seqピークの目印)。図4G.Yap5SA上方制御遺伝子のプロモーターにおけるChIP−seq及びATAC−seqシグナル。プロモーターのChip−seqピークを緑色の矢印で示した。
図5図5A〜5.Yap5SA OE筋細胞は正常な生理機能をもち、導入遺伝子を発現しないCMに結合する。図5A.タモキシフェン前後の対照及びYap5SA OEマウスからの代表的なECGトレース。T波の逆転を示す。図5B.(上)T波逆転したマウスの割合。*P=.0286(フィッシャーの正確確率検定)。(下)T波の曲線下の相対面積。平均+/−SEM。分散分析とBonferroniの事後検定により算出した統計。対照n=3、Yap5SA n=4。図5C.β−ガラクトシダーゼ(淡青緑)及びコネキシン43(赤)の免疫染色は、再結合したβ−gal(+)CMと、再結合しなかったCM(染色なし、黒)とのギャップジャンクションによる結合を示している。黄色の矢印は、Yap5SA OE CMをもつシンシチウムのβ−gal(−)CMを示す。挿入図は拡大図である。図5D.(左)サルコメア短縮の代表的なプロット。(中)安静時のCMサルコメア長。平均で示す。(右)サルコメア短縮率。
図6図6A〜6C.細胞周期段階のフローサイトメトリー分析。図6A.DAPIで染色した、対照心臓及びYap5SA OE心臓から単離された心臓核のフローサイトメトリーから得た代表的なヒストグラム。円グラフの対照n=4、Yap5SA OE n=4。円グラフのデータは平均を示す。P値は、分散分析後にBonferroniの事後検定をして算出した。P<.05をアスタリスクで示す。図6B.Aで参照したFACSによるCM DNA含量から得た代表的なドットプロット。図6C.FACS DNA含量分析、平均及びSEM、n=4/遺伝子型。分散分析後にBonferroniの事後検定をして算出した統計。
図7】Yap5SA OE CMの細胞アポトーシスの増加は認められない。TUNEL染色は、対照心臓とYap5SA OE心臓との間に有意差を示していない(n=4心臓/遺伝子型)。ペアワイズ分散分析後にBonferroniの事後検定をして算出した統計を平均+/−SEMで示す。
図8】Yap 5SA OE心臓には線維化が認められない。ピクロシリウスレッド染色は、Yap5SA OE心臓も対照も線維化表現型をもたないことを示している。比較のために線維性損傷のある代表的な心臓も示す。
図9】シーケンシングの品質管理。(上)両方のATAC−seqセットに高再現性。(下)RNA−seqセット間に高再現性。示された各実験からのリードを、正規化された対数変換で変換し、散布図として表し、複製データセットの関係を示した。注:データセットの試料は一致している(例:対照−1 ATAC−seqと対照−1核RNAは同じ生物学的試料に由来する)。
図10A】Yap5SA OE心臓での上方制御遺伝子及び下方制御遺伝子の遺伝子オントロジー分析(p<0.01)。
図10B】RNA−seqから選択した遺伝子のヒートマップ
図11図11A〜11B.Yap5SAは、無益な負のフィードバックループを誘発する。図11A.RNA−seqで示されたYap5SA OE CMで上方制御される遺伝子の経路濃縮分析。強調表示はHippo経路である。(経路分析はg:Profilerを用いて実施)図11B.(左)Yap5SA OE心臓における内因性Yapリン酸化の増加を示すウェスタンブロット。(右)平均+/−SEMとして示される、バンド強度の定量化(対照n=4、Yap5SA OE n=3、分散分析とBonferroniの事後検定によるP<.01)。
図12図12A〜12B.TSSに対する遺伝子間ATAC−seqピークの幾何学ドットプロット。図12A.両方の遺伝子型にわたる、遺伝子間ATAC−seqピークのTSSまでの距離の合計(対照:34738ピーク;Yap5SA OE:40,333ピーク)。図12B.上方制御された遺伝子間ATAC−seq及びChIP−seqピークのTSSまでの距離。
図13図13A.1〜13A.3及び図13B〜13D.高信頼度のYap5SA標的(図13A1〜13A3)(左)クロマチンがすでに開いている領域でYap5SAによって直接上方制御された97個の遺伝子のリスト。(中)新たなオープンクロマチンと上方制御されたRNAをもつ106個の遺伝子のリスト。(右)オープンクロマチンが増加した、Yap5SAによって直接上方制御された76個の遺伝子のリスト。図B.Aのリストで最も濃縮がみられた遺伝子オントロジー期。図C.オープンクロマチンの増加を示す76個のYap標的遺伝子のTSSを中心としたATAC−seqリード及びRNA−seqリードの平均。図C.オープンクロマチンの増加を示す76個のYap標的遺伝子に対応するATAC−seqピークを中心としたH3K27Ac CHIP−seq断片のカバレッジ
図14図14A〜14C.心筋細胞増殖を活性化するYap5SAのモデル。図14A.ある特定の事例では、Yapが標的遺伝子のオープンプロモーターに直接結合し、転写を増加させる。そのようなプロセスでは、新たなオープンクロマチンのリードは生じない。図14B.主に、Yap5SAはエンハンサー領域に結合し、標的遺伝子のゲノム近傍を開く、SWI/SNF複合体などのクロマチンリモデリング因子を動員する。次に、Yap自体または他の転写因子が自由に転写を促進する。図14C.(左パネル)これら2つの直接的な活性化スキームの間に、Yap5SAは次の3つのプロセスによって増殖を促進する:1.Kruppel様因子、E2F転写因子、サイクリン、及びPolo様キナーゼを介した細胞周期の活性化。2.フォルミン、プロテインキナーゼCイオタ、Ect2、Incenp、及びEphexin4による細胞骨格の再配列及び細胞質分裂の促進。3.プロテインキナーゼD1、Alcam、及びDisabled homolog 2などの胎児の心臓発達に関連する遺伝子の再出現。(右パネル)これら3つのプロセスは、最小限のまたは有害な機能を独立して有する。簡略化のため、色で示す直接のChIP−seq標的のみが左パネルに含まれている。右パネルには、直接的な上方制御遺伝子に加え、色で示す間接的に(上方または下方)制御された転写物(図4A及び図4Dに従って含まれる遺伝子)を含む。
図15図15A〜15B.Yap K265RはWT Yapよりも安定性が低い。図15A.20ug/mlシクロヘキシミドで0時間、2時間、4時間、及び6時間処理し、0.5%NP40溶解緩衝液で回収した、WT P19細胞及びYapK265R突然変異を有するP19細胞(番号13)。示されている抗体をイムノブロットした。図15B.P19細胞、及びYapK265R突然変異を有する2つの異なるP19コロニーからの溶解物を示されている抗体でイムノブロット分析した。
図16】Yap突然変異体タンパク質の安定性の決定を実証する。20ug/mlシクロヘキシミドで0時間、2時間、4時間、及び8時間処理し、0.5%NP40溶解緩衝液で回収した、WT P19細胞及びYapK265R突然変異を有するP19細胞。示されている抗体をイムノブロットした。
図17図17A〜17B.Yap突然変異体タンパク質の安定性の決定。図17A.20ug/mlシクロヘキシミドで0時間、2時間、4時間、及び8時間処理し、0.5%NP40溶解緩衝液で回収した、WT P19細胞及びYapK265R突然変異を有するP19細胞(番号11)。示されている抗体をイムノブロットした。図17B.Yapの相対量をデンシトメトリーで定量化し、GAPDHで標準化してプロットした。
図18図18A〜18C.Yap突然変異体タンパク質の代謝回転率の決定。図18A.20uM/ml Mg132で0時間、1時間、2時間、及び4時間処理し、0.5%NP40溶解緩衝液で回収した、WT P19細胞及びYapK265R突然変異を有するP19細胞(番号11)。示されている抗体をイムノブロットした。図18B及び図18C.Yap及びβ−カテニンの相対量をデンシトメトリーで定量化し、GAPDHで標準化してプロットした。
図19図19A〜19D.Yap突然変異体タンパク質の核局在化の決定。図19A及び19B.2.0×10個の細胞を10cm皿に播種し、18時間後に細胞を回収し、分画してウェスタンブロット分析を行った。図19C及び図19D.Yapの相対量をデンシトメトリーで定量化し、HDAC2(核画分の場合)またはGAPDH(サイトゾル画分の場合)で標準化してプロットした。
【国際調査報告】