(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-513961(P2020-513961A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】アクセスデバイスを使用するアクセスデバイス方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/307 20060101AFI20200424BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20200424BHJP
A61B 1/005 20060101ALI20200424BHJP
A61B 1/01 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
A61B1/307
A61B1/00 713
A61B1/005 510
A61B1/01 511
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2019-549469(P2019-549469)
(86)(22)【出願日】2018年4月6日
(85)【翻訳文提出日】2019年9月20日
(86)【国際出願番号】US2018026566
(87)【国際公開番号】WO2018187751
(87)【国際公開日】20181011
(31)【優先権主張番号】62/482,337
(32)【優先日】2017年4月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/552,819
(32)【優先日】2017年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】ハラー ティモシー ピー
(72)【発明者】
【氏名】ロング ジュニア ジェリー ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】ターニー ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターズ サラ
(72)【発明者】
【氏名】モールトン デレク
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ ピーター ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ノーディフ アダム ペリー
(72)【発明者】
【氏名】ウォン エリック
(72)【発明者】
【氏名】デグラーフ キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘラ マーク アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ドナテリ ダリル クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ラウニヤール ニラジ プラサード
(72)【発明者】
【氏名】グレイブス メリッサ
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA15
4C161CC06
4C161DD02
4C161GG24
(57)【要約】
態様により、医療デバイスは、側壁を有する細長部材を含む。側壁は、管腔を定める。管腔は、非円形断面形状を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁を有する細長部材であって、該側壁が管腔を定め、該管腔が非円形断面形状を有する前記細長部材、
を含むことを特徴とする医療デバイス。
【請求項2】
前記管腔は、第1のサイズを有する第1の直径と第2のサイズを有する第2の直径とを有し、該第1のサイズは、該第2のサイズと異なっており、該第1の直径は、該第2の直径に対して実質的に垂直に配置されることを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記管腔は、第1のサイズを有する第1の直径と第2のサイズを有する第2の直径とを有し、該第1のサイズは、該第2のサイズと異なっており、該第1の直径は、該第2の直径に対して実質的に垂直に配置され、かつそれと交差することを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含むことを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、前記細長部材の長手軸と平行に該側壁の該内面に沿って延びることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、該側壁の第1の末端部分から該側壁の第2の末端部分まで該側壁の該内面に沿って延びることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、医療機器を管腔内に保持するのを補助するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、医療機器を該管腔の第1の側面部分に沿って保持するのを補助するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記側壁は、第1の位置決め部材と第2の位置決め部材を含み、該第1の位置決め部材は、該側壁によって定められた前記管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該第1の位置決め部材から離間され、かつその遠位に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記側壁は、第1の位置決め部材と第2の位置決め部材を含み、該第1の位置決め部材は、該側壁によって定められた前記管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該第1の位置決め部材から離間され、かつそれに隣接するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項12】
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通している前記側面ポート、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項13】
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通しており、該側面ポートが、該側面ポートによって定められた該管腔内に配置されたバルブを含み、該バルブが、該側面ポートによって定められた該管腔内の物質の流れを調整するように構成された前記側面ポート、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項14】
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通している前記側面ポートと、
前記側面ポートに結合された回収部材であって、該側面ポートによって定められた前記管腔を通過する物質を回収するように構成された前記回収部材と、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記細長部材に結合されたハンドル部材、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項16】
側壁を有する細長部材であって、該側壁が管腔を定め、該管腔が非円形断面形状を有する前記細長部材、
を含むことを特徴とする医療デバイス。
【請求項17】
前記管腔は、第1のサイズを有する第1の直径と第2のサイズを有する第2の直径とを有し、該第1のサイズは、該第2のサイズと異なっており、該第1の直径は、該第2の直径に対して実質的に垂直に配置されることを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記管腔は、第1のサイズを有する第1の直径と第2のサイズを有する第2の直径とを有し、該第1のサイズは、該第2のサイズと異なっており、該第1の直径は、該第2の直径に対して実質的に垂直に配置され、かつそれと交差することを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含むことを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置されることを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項21】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、前記細長部材の長手軸と平行に該側壁の該内面に沿って延びることを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項22】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、該側壁の第1の末端部分から該側壁の第2の末端部分まで該側壁の該内面に沿って延びることを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項23】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、医療機器を管腔内に保持するのを補助するように構成されることを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項24】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、医療機器を該管腔の第1の側面部分に沿って保持するのを補助するように構成されることを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項25】
前記側壁は、第1の位置決め部材と第2の位置決め部材を含み、該第1の位置決め部材は、該側壁によって定められた前記管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該第1の位置決め部材から離間され、かつその遠位に配置されることを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項26】
前記側壁は、第1の位置決め部材と第2の位置決め部材を含み、該第1の位置決め部材は、該側壁によって定められた前記管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該第1の位置決め部材から離間され、かつそれに隣接するように配置されることを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項27】
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通している前記側面ポート、
を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項28】
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通しており、該側面ポートが、該側面ポートによって定められた該管腔内に配置されたバルブを含み、該バルブが、該側面ポートによって定められた該管腔内の物質の流れを調整するように構成された前記側面ポート、
を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項29】
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通している前記側面ポートと、
前記側面ポートに結合された回収部材であって、該側面ポートによって定められた前記管腔を通過する物質を回収するように構成された前記回収部材と、
を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項30】
前記細長部材に結合されたハンドル部材、
を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項31】
側壁を有する細長部材であって、該側壁が、非円形断面形状を有する管腔を定め、該側壁が、該管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材が、医療機器を管腔内に保持するのを補助するように構成された配置された前記細長部材と、
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通しており、該側面ポートが、該側面ポートによって定められた該管腔内に配置されたバルブを含み、該バルブが、該側面ポートによって定められた該管腔内の物質の流れを調整するように構成された前記側面ポートと、
前記側面ポートに結合された回収部材であって、該側面ポートによって定められた前記管腔を通過する物質を回収するように構成された前記回収部材と、
を含むことを特徴とする医療デバイス。
【請求項32】
前記細長部材に結合されたハンドル部材、
を更に含むことを特徴とする請求項31に記載の医療デバイス。
【請求項33】
医療デバイスを使用する方法であって、
前記医療デバイスを患者の体内に挿入する段階であって、該医療デバイスが、非円形断面を有する管腔を有する細長部材を含む前記挿入する段階と、
前記医療デバイスによって定められた前記管腔内に医療機器を挿入する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
前記医療機器を挿入する前記段階は、該医療機器を前記医療デバイスによって定められた前記管腔内に該医療機器が該管腔の一方の側に沿って配置されるように挿入する段階を含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記医療デバイスは、該医療デバイスによって定められた前記管腔内に配置された位置決め部材を含み、前記医療機器を挿入する前記段階は、該医療機器を該医療デバイスによって定められた該管腔内に該医療機器の少なくとも一部分が該位置決め部材と前記側壁の内面との間に配置されるように挿入する段階を含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2017年4月6日出願の「スコープ洗浄のモデル化及び関連のシステム及び方法(Modeling of Scope Irrigation and Related Systems and Methods)」という名称の米国仮特許出願第62/482,337号及び2017年8月31日出願の「Access Device and Methods of Using the Same(アクセスデバイス及びそれを使用する方法)」という名称の米国仮特許出願第62/552,819号に対する優先権を主張する2018年4月5日出願の「アクセスデバイスを使用するアクセスデバイス方法(ACCESS DEVICE METHODS OF USING THE SAME)」という名称の米国非仮特許出願第15/946,389号の継続出願であってそれに対する優先権を主張するものであり、これらの各々の開示は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本出願はまた、2017年4月6日出願の「スコープ洗浄のモデル化及び関連のシステム及び方法(Modeling of Scope Irrigation and Related Systems and Methods)」という名称の米国仮特許出願第62/482,337号に対する優先権を主張するものであり、その開示は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0003】
本出願はまた、2017年8月31日出願の「アクセスデバイス及びそれを使用する方法(Access Device and Methods of Using the Same)」という名称の米国仮特許出願第62/552,819号に対する優先権を主張するものであり、その開示は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0004】
本発明の開示は、一般的に医療デバイスに関し、より具体的には、改善された流体力学を含むアクセスデバイス又はシースのような医療デバイスに関する。本発明の開示はまた、一般的にモデル化及び関連のシステム及び方法に関する。より具体的には、本発明の開示は、スコープ洗浄のモデル化及び関連のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0005】
様々な医療手順は、アクセスデバイス又はアクセスシースを用いて実施される。例えば、アクセスデバイス又はアクセスシースは、腎臓結石治療手順(腎結石症)のような手順において使用することができる。
【0006】
アクセスデバイス又はアクセスシースを使用する一部の手順では、医師が手順を可視化する又は見ることが必要である又は有益である場合がある。改善された可視性は、医師が手順を実施するのを容易にする又は簡単にすることができる。一部の手順では、可視性は、流体の量(体積)を増し、かつ流体の圧力(流量)を高めることによって改善することができる。しかし、一部の場合には、高い体内の腎内圧は、有害な副作用を引き起こす場合がある。例えば、高い腎内圧は、腎盂静脈逆流及びそれに続く敗血症のような治療後合併症の高いリスクを引き起こす場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K.F.Riley、M.P.Hobson、及びS.J. Bence著「物理学及び工学のための数学的方法(Mathematical Methods for Physics and Engineering)」、Cambridge University Press、英国ケンブリッジ、2006年
【非特許文献2】William T.Snyder及びGerald A.Goldstein著「偏心環帯内の完全発達層流の解析(An analysis of fully developed laminar flow in an eccentric annulus)」、AIChE Journal、11(3):462〜467ページ、1965年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、医療手順中に可視性を考慮するアクセスデバイス又はアクセスシースのようなデバイスを提供することが望ましいと考えられる。可視性を改善する及び/又は流体流れを最適化して腎内圧のような体内圧を制限又は低減するアクセスデバイス又はアクセスシースのようなデバイスを提供するも望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
態様により、医療デバイスは、側壁を有する細長部材を含む。側壁は、管腔を定める。管腔は、非円形断面形状を有する。一部の実施形態では、医療デバイスは、尿管鏡手順中に用いられるスコープのようなスコープである場合がある。
【0010】
一部の実施形態では、管腔は、第1のサイズを有する第1の直径と、第2のサイズを有する第2の直径とを有し、第1のサイズは、第2のサイズと異なっており、第1の直径は、第2の直径に対して実質的に垂直に配置される。
【0011】
一部の実施形態では、管腔は、第1のサイズを有する第1の直径と、第2のサイズを有する第2の直径とを有し、第1のサイズは、第2のサイズと異なっており、第1の直径は、第2の直径に対して実質的に垂直に配置され、かつそれと交差する。
【0012】
一部の実施形態では、側壁は、管腔を定める内面と、内面に対向して配置された外面とを含む。
【0013】
一部の実施形態では、側壁は、管腔を定める内面と、内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、側壁の内面上に配置される。
【0014】
一部の実施形態では、側壁は、管腔を定める内面と、内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、側壁の内面上に配置され、位置決め部材は、細長部材の長手軸に対して平行に側壁の内面に沿って延びる。
【0015】
一部の実施形態では、側壁は、管腔を定める内面と、内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、側壁の内面上に配置され、位置決め部材は、側壁の第1の末端部分から側壁の第2の末端部分まで側壁の内面に沿って延びる。
【0016】
一部の実施形態では、側壁は、管腔を定める内面と、内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、側壁の内面上に配置され、位置決め部材は、医療機器を管腔内に保持するのを補助するように構成される。
【0017】
一部の実施形態では、側壁は、管腔を定める内面と、内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、側壁の内面上に配置され、位置決め部材は、医療機器を管腔の第1の側面部分に沿って保持するのを補助するように構成される。
【0018】
一部の実施形態では、側壁は、側壁によって定められた管腔内に配置された第1の位置決め部材と、管腔内に配置された第2の位置決め部材とを含み、第2の位置決め部材は、第1の位置決め部材から離間してその遠位に配置される。
【0019】
一部の実施形態では、側壁は、側壁によって定められた管腔内に配置された第1の位置決め部材と、管腔内に配置された第2の位置決め部材とを含み、第2の位置決め部材は、第1の位置決め部材から離間してそれに隣接するように配置される。
【0020】
一部の実施形態では、デバイスは、管腔を定める側面ポートを含み、側面ポートの管腔は、側壁によって定められた管腔と流体連通している。
【0021】
一部の実施形態では、デバイスは、管腔を定める側面ポートを含み、側面ポートの管腔は、側壁によって定められた管腔と流体連通しており、側面ポートは、側面ポートによって定められた管腔内に配置されたバルブを含み、バルブは、側面ポートによって定められた管腔内の物質の流れを調整するように構成される。
【0022】
一部の実施形態では、デバイスは、管腔を定める側面ポートであって、側面ポートの管腔が側壁によって定められた管腔と流体連通している上記側面ポートと、側面ポートに結合された回収部材であって、側面ポートによって定められた管腔を通過する物質を回収するように構成された上記回収部材とを含む。
【0023】
一部の実施形態では、デバイスは、細長部材に結合されたハンドル部材を含む。
【0024】
別の態様により、医療デバイスは、側壁を有する細長部材であって、側壁が管腔を定め、管腔が非円形断面形状を有し、側壁が、管腔を定める内面と内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、側壁の内面上に配置され、位置決め部材が、医療機器を管腔内に保持するのを補助するように構成された上記細長部材と、管腔を定める側面ポートであって、側面ポートの管腔が、側壁によって定められた管腔と流体連通しており、側面ポートが、側面ポートによって定められた管腔内に配置されたバルブを含み、バルブが、側面ポートによって定められた管腔内の物質の流れを調整するように構成された上記側面ポートと、側面ポートに結合された回収部材であって、側面ポートによって定められた管腔を通過する物質を回収するように構成された上記回収部材とを含む。
【0025】
一部の実施形態では、デバイスは、細長部材に結合されたハンドル部材を含む。
【0026】
別の態様により、医療デバイスを使用する方法は、非円形断面を有する管腔を有する細長部材を含む医療デバイスを患者の体内に挿入する段階と、医療デバイスによって定められた管腔内に医療機器を挿入する段階とを含む。
【0027】
一部の実施形態では、医療機器を挿入する段階は、医療機器が管腔の一方の側に沿って配置されるように医療機器を医療デバイスによって定められた管腔の中に又はそれを通して挿入する段階を含む。
【0028】
一部の実施形態では、医療デバイスは、医療デバイスによって定められた管腔内に配置された位置決め部材を含み、医療機器を挿入する段階は、医療機器の少なくとも一部分が位置決め部材と側壁の内面間に配置されるように医療機器を医療デバイスによって定められた管腔の中に挿入する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態による医療デバイスの概略図である。
【
図2】実施形態による医療デバイスの上面図である。
【
図6】実施形態による医療デバイスの断面図である。
【
図7】実施形態による医療デバイスの上面図である。
【
図8】実施形態による医療デバイスの上面図である。
【
図11】湾曲スコープを通る流れを例示する図である。
【
図12】スコープ及びツールの異なる断面形状の流量を例示する図である。
【
図13】グラフィカルユーザインターフェースを例示する図である。
【
図14】作業ツールサイズの増大に伴う体積流量の変化を描くプロットを示す図である。
【
図15】式(6)をその上で解くための幾何学形状を例示する図である。
【
図16】直交座標で両方共x軸上に中心を置いて双曲座標に変換されるより大きい円内のより小さい円の変換を例示する概略図である。
【
図18】外円が(0,0)を中心とするようにドメインがシフトされたr
1=0.03、r
2=0.06、及び0.01から0.99まで変化するφに対する流速プロファイルを例示する図である。
【
図19A】オフセットモデルから生じた体積流量を例示する図である。
【
図19B】オフセットモデルから生じた体積流量を例示する図である。
【
図20】内側楕円及び外側楕円の偏心度が同一であり、従って、以下の
図20の数式である直交座標内でその上で求解する幾何学形状の図である。
【
図21】以下の
図21の数式1であり、以下の
図21の数式2が、内側楕円(それが円に変換された後の)をその中心が
~x軸上に位置するように回転させなければならない角度を与える変換された幾何学形状の図である。
【
図27】2つの異なるφ値に対して体積流量を偏心度eの関数として例示する図である。
【
図28】2つの異なるφ値に対して体積流量を偏心度eの関数として例示する図である。
【
図29】φ=0.99に対してθ
eの関数とした体積流量の図である。
【
図30A】θ
e=0に対する体積流量をe及びφの関数として例示する図である。
【
図30B】θ
e=0に対する体積流量をe及びφの関数として例示する図である。
【
図31】ツールの断面積が増加する時にφ=0.99及びθ
e=0に対して予測される最大偏心度値を例示する図である。
【
図32】r
1=0.03、r
2=0.06、及び0.01から0.99まで変化するφに対する流速プロファイルを例示する図である。
【
図33】e=0.8、θ
e=0、及び0.01から0.99まで変化するφに対する楕円速度プロファイルを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図20の数式は
図21の数式1は
図21の数式2は
本明細書において詳細な実施形態を開示する。しかし、開示する実施形態は、様々な形態に具現化することができる例に過ぎないことは理解される。従って、本明細書で開示する特定の構造及び機能的詳細は、限定的なものと解釈すべきではなく、特許請求の範囲に対する基礎、及びこれらの実施形態を事実上あらゆる詳細な構造で様々に使用する当業者に教示するための代表例な基礎として解釈されたい。更に、本明細書で使用する用語及び表現は、限定的であることを意図したものではなく、本発明の理解可能な説明を提示することを意図したものである。
【0031】
本明細書で使用する場合に、用語「a」又は「an」は、1又は1よりも多いとして定められる。本明細書で使用する場合に、用語「別の」は、少なくとも第2又は第3以上として定められる。本明細書で使用する場合に、用語「含む」及び/又は「有する」は、含むとして定められる(すなわち、開放移行)。
【0032】
以下では患者という用語は、本出願で開示する医療デバイス又は方法から恩恵を得る個人に対して使用する場合がある。例えば、患者は、本発明によって開示する医療デバイス又は方法による手術を受ける身体を有する個人とすることができる。例えば、一部の態様では、患者は、ヒト女性、ヒト男性、又はいずれかの他の哺乳動物とすることができる。
【0033】
本出願の以下の本文において議論する様々なデバイス、装置、及び構成要素に関連して説明する近位及び遠位という用語は、基準点を用いて参照される。本明細書で使用する基準点は、オペレータの視点である。オペレータは、手順を実施し、本発明において説明する医療デバイスを作動させることができる外科医、看護師、医師、及び技師などである場合がある。近位という用語は、外科手順中にオペレータにより近い又は最も近い区域又は部分を指す。遠位という用語は、オペレータからより遠い又は最も遠い区域又は部分を指す。
【0034】
図1は、本発明の実施形態による医療デバイス100の概略図である。医療デバイス100は、外科手順において使用することができる。例えば、一部の実施形態では、医療デバイス100は、更に別の医療手順に向けてアクセス又はポートを作り出すために患者の体内に配置することができる。より具体的には、一部の実施形態では、医療デバイス100は、医療デバイス100の遠位末端部分が患者の体内に配置され、医療デバイス100の近位末端部分が患者の身体から延びるように患者の体内に配置することができる。一部の実施形態では、追加の医療手順を実施するために医療デバイス100を通じて患者の体内に追加の又は二次的な医療デバイス又は医療機器を挿入することができる。
【0035】
図示の実施形態では、医療デバイス100は、細長部材110を含む。細長部材110は、第1又は近位の末端部分112と第2又は遠位の末端部分114とを含む。細長部材は、第1又は近位の末端部分112から第2又は遠位の末端部分114まで延びる管腔を定める。一部の実施形態では、細長部材110は側壁120を含む。一部のそのような実施形態では、側壁120は管腔を定める。
【0036】
一部の実施形態では、細長部材110は線形、又は実質的に直線又は線形である。他の実施形態では、細長部材110は、湾曲するか又は可撓性であり、曲線を形成する又は湾曲部分を有することができる。一部の実施形態では、細長部材110又は側壁120は、非円形断面形状を有することができる。例えば、細長部材110又は側壁120は、卵形又は長円形の断面形状を有することができる。一部のそのような実施形態では、管腔内の流体の流れは、増加又は最適化することができる。
【0037】
他の実施形態では、細長部材110又は側壁120は、丸形又は円形の断面形状を有することができる。更に他の実施形態では、細長部材110又は側壁120は、正方形、長方形、三角形、又はいずれかの他の形状のような異なる断面形状を有する。
【0038】
医療デバイス100は、位置決め部材140を更に含む。位置決め部材140は、二次医療デバイス又は別の医療機器を管腔内に保持するのを補助するように構成される。例えば、一部の実施形態では、位置決め部材140は、二次的な医療デバイス又は医療機器を管腔内の定位置に保持するのを補助するように構成される。特に、位置決め部材140は、二次的な医療デバイス又は医療機器をデバイス100の管腔の一方の側に沿って又は一部分に沿って保持するのを補助するように構成される。一部のそのような実施形態では、流体は、二次的な医療デバイス又は医療機器が占有していない管腔の部分に沿って又はその内部を流れることができる。
【0039】
一部の実施形態では、位置決め部材140は管腔内に配置される。例えば、一部の実施形態では、位置決め部材140は、側壁120の内面に結合される。一部の実施形態では、位置決め部材140は、細長部材110又は側壁120に接着剤又は他の結合機構を通じて結合される。他の実施形態では、位置決め部材140は、細長部材110又は側壁120と一体的に形成される。
【0040】
下記でより詳細に説明するように、一部の実施形態では、位置決め部材140は、細長部材110又は側壁120の長手軸に沿って延びる。一部の実施形態では、位置決め部材140は、第1又は近位の末端部分112から第2又は遠位の末端部分114まで延びる。一部の実施形態では、医療デバイス100は、1よりも多い位置決め部材を含む。例えば、一部の実施形態では、医療デバイス100は、細長部材の近位末端部分に配置された第1の位置決め部材と、細長部材の中間部分又は遠位末端部分に配置された第2の位置決め部材とを含むことができる。別の実施形態では、医療デバイス100は、細長部材の近位末端部分に配置された第1の位置決め部材と、細長部材の近位末端部分にある第1の位置決め部材に隣接して配置された第2の位置決め部材とを含むことができる。更に他の実施形態では、医療デバイス100は、2よりも多い位置決め部材を含む。
【0041】
図示の実施形態では、医療デバイス100は、側面ポート160を含む。側面ポート160は管腔を定める。側面ポート160は、側面ポート160の管腔が細長部材110又は側壁120によって定められた管腔と流体連通しているように、細長部材110又は側壁120に結合される。側面ポート160は、細長部材110又は側壁120によって定められた管腔内に流体を流し込む又はそこから流体を受け入れるように構成される。
【0042】
図示の実施形態では、側面ポート160はバルブ162を含む。バルブ162は、側面ポート160によって定められた管腔内に配置される。バルブ162は、側面ポート160によって定められた管腔を通る流体流れを調整又は制御するのを補助するように構成される。一部の実施形態では、バルブ162は、停止コック又は停止バルブである。他の実施形態では、バルブ162は異なるタイプのバルブである。
【0043】
図示の実施形態では、医療デバイス100は、回収部材180を含む。回収部材180は、側面ポート160に結合される。回収部材180は、側面ポート160の管腔を通って又はその内部を流れる流体の中に廃棄された物質を回収するように構成される。例えば、回収部材180は、患者の身体から側面ポート160の管腔を通って流れる腎臓結石又はその破片を回収するように構成される。
【0044】
図示の実施形態では、医療デバイス100は、ハンドル部材又はハンドル部分190を含む。ハンドル部材又はハンドル部分190は、細長部材110又は側壁120に結合される。ハンドル部材又はハンドル部分190は、患者の体内に医療デバイス100を配置するために又は医療デバイス100の使用中に医師又は他の医療実務者によって把持されるように構成される。
【0045】
使用時に、医療デバイス100は、患者の体内に挿入することができる。一部の実施形態では、医療デバイス100は、細長部材110の第2又は遠位の末端部分114が患者の体内に配置され、細長部材110の第1又は近位の末端部分112が患者の体外に配置される(又は患者の身体から延びる)ように患者の体内に挿入することができる。例えば、一部の実施形態では、医療デバイス100は、第2又は遠位の末端部分114が患者の腎臓又は尿管内に配置されるように患者の体内に配置することができる。他の実施形態では、医療デバイス100は、第2又は遠位の末端部分114が患者の体内の異なる部位に配置されるように患者の体内に配置される。
【0046】
医療デバイス100が患者の体内に配置された状態で、細長部材110によって定められた管腔を通して他の医療デバイス又は医療機器を患者の体内に挿入することができる。例えば、一部の実施形態では、他の医療デバイス又は医療機器は、他の医療デバイス又は医療機器が管腔の一方の側に沿って配置されるように、細長部材110又は側壁120によって定められた管腔の中に挿入することができる。従って、そのような他の又は二次的な医療デバイスが患者の体内に配置された状態で、そのようなデバイスを用いて追加の医療手順を実施することができる。一部の実施形態では、他の医療デバイス又は医療機器はスコープである。他の実施形態では、医療機器は、別のタイプの医療デバイスである。
【0047】
図2は、実施形態による医療デバイス200の上面図である。
図3〜
図5は、医療デバイス200の断面図である。
【0048】
医療デバイス200は、外科手順において使用することができる。例えば、一部の実施形態では、医療デバイス200は、追加の医療手順に向けてアクセス又はポートを作り出すために患者の体内に配置することができる。より具体的には、一部の実施形態では、医療デバイス200は、医療デバイス200の遠位末端部分が患者の体内に配置され、医療デバイス200の近位末端部分が患者の身体から延びるように患者の体内に配置することができる。一部の実施形態では、追加の医療手順を実施するために医療デバイス200を通じて患者の体内に追加の又は二次的な医療デバイス又は医療機器を挿入することができる。
【0049】
図示の実施形態では、医療デバイス200は、細長部材210を含む。細長部材210は、第1又は近位の末端部分212と第2又は遠位の末端部分214とを含む。細長部材は、第1又は近位の末端部分212から第2又は遠位の末端部分214まで延びる管腔216を定める。
【0050】
図示の実施形態では、細長部材210は側壁220を含む。側壁220は、内面222と外面224を含む。内面222は、外面224に対向するように配置される。内面222は管腔216を定める。
【0051】
一部の実施形態では、細長部材210は、線形である又は実質的に直線又は線形である。他の実施形態では、細長部材210は、湾曲している又は可撓性であり、曲線を形成する又は湾曲部分を有することができる。
【0052】
図示の実施形態では、細長部材210又は側壁220は、非円形断面形状を有することができる。細長部材210又は側壁220は、卵形又は長円形の断面形状を有することができる。特に、
図3に最も明確に例示するように、細長部材210又は側壁220は様々なサイズの内径を有する。直径D1は第1のサイズのものであり、直径D2は、第1のサイズとは異なる第2のサイズのものである。図示の実施形態では、直径D1は、直径D2に対して垂直又は実質的に垂直に配置される。他の実施形態では、直径は、互いに対して垂直に配置されない。図示の実施形態では、管腔216内の流体の流れを増加又は最適化することができる。一部の実施形態では、D1とD2間のサイズ差は約0.33mmである。例えば、一部の実施形態では、D1とD2間のサイズ差は0.25mmと.08mm間にある。他の実施形態では、D1とD2間のサイズ差は0.25mmよりも小さい。更に他の実施形態では、D1とD2間のサイズ差は0.5mmよりも大きい。一部の実施形態では、垂直方向の直径は約0.34cmであり、水平方向の直径は約0.39cmである。他の実施形態では、垂直方向の直径は約0.30cmと0.40cm間にあり、水平方向の直径は約0.35cmと0.45cm間にある。
【0053】
他の実施形態では、細長部材又は側壁は、丸形又は円形の断面形状を有することができる。更に他の実施形態では、細長部材又は側壁は、正方形、長方形、三角形、又はいずれかの他の形状のような異なる断面形状を有する。
【0054】
医療デバイス200は、位置決め部材240を更に含む。位置決め部材240は、二次医療デバイス又は別の医療機器を管腔内に保持するのを補助するように構成される。例えば、一部の実施形態では、位置決め部材240は、二次的な医療デバイス又は医療機器を管腔内の定位置に保持するのを補助するように構成される。図示の実施形態では、医療デバイスは第2の位置決め部材241を更に含む。第2の位置決め部材241は、位置決め部材240と構造的及び機能的に同様である。従って、位置決め部材240のみを詳細に議論することにする。
【0055】
図4に最も明確に例示するように、位置決め部材240は、二次的な医療デバイス又は医療機器MIを管腔216の一方の側S1に沿って又は一部分に沿って保持するのを補助するように構成される。一部のそのような実施形態では、流体は、二次的な医療デバイス又は医療機器MIが占有していない管腔216の部分である第2の側S2に沿って又はその内部を流れることができる。特に、二次医療デバイスMIが管腔216内に配置される時に、二次医療デバイスMIと医療デバイス200は、同軸関係で配置されない。言い換えれば、二次医療デバイスMIの長手軸LA2は、細長部材210又は側壁220の長手軸LA1からオフセットされる。
【0056】
図示の実施形態では、位置決め部材240は、管腔216内に配置される。例えば、位置決め部材240は、側壁220の内面222に結合することができる。一部の実施形態では、位置決め部材240は、細長部材210又は側壁220に接着剤又は他の機構を通じて結合される。他の実施形態では、位置決め部材240は、細長部材210又は側壁220と一体的に形成される。
【0057】
図5に最も明確に例示するように、図示の実施形態では、位置決め部材240は、細長部材210又は側壁220の長手軸LA1に沿って延びる。位置決め部材240は、第1又は近位の末端部分212から第2又は遠位の末端部分214まで延びる。
【0058】
図6に例示するように、別の実施形態では、位置決め部材1240A、1240B、及び1240Cは、細長部材又は側壁に沿う様々な場所に配置される。図示の実施形態では、2つ一組の位置決め部材1240Aが、細長部材又は側壁の近位末端部分又はその近くに配置される。これらの位置決め部材1240Aは、互いに隣接するように配置される。特に、これらの位置決め部材1240Aは、細長部材又は側壁の長手軸に沿う同じ長手場所に配置されるが、互いに周方向に離間される。
【0059】
位置決め部材1240Bは、細長部材又は側壁の中間セクションに配置される。位置決め部材1240Cは、細長部材又は側壁の遠位末端部分に配置される。
【0060】
図示の実施形態では、医療デバイス200は、側面ポート260を含む。側面ポート260は管腔264を定める。側面ポート260は、側面ポート260の管腔264が細長部材210又は側壁220によって定められた管腔216と流体連通しているように細長部材210又は側壁220に結合される。側面ポート260は、細長部材210又は側壁220によって定められた管腔216内に流体を流し込む又はそこから流体を受け入れるように構成される。
【0061】
一部の実施形態では、管腔216内への流体の流し入れ及び管腔216からの流体の受け入れを容易にするために側面ポート260に流体サプライ又は流体真空源を結合することができる。
【0062】
図示の実施形態では、側面ポート260はバルブ262を含む。バルブ262は、側面ポート260によって定められた管腔264内に配置される。バルブ262は、側面ポート260によって定められた管腔264を通る流体流れを調整又は制御するのを補助するように構成される。図示の実施形態では、バルブ262は停止コック又は停止バルブである。他の実施形態では、バルブ262は異なるタイプのバルブである。
【0063】
図示の実施形態では、医療デバイス200は、回収部材280を含む。回収部材280は、側面ポート260に結合される。回収部材280は、側面ポート260の管腔264を通って又はその内部を流れる流体の中に廃棄された物質を回収するように構成される。例えば、回収部材280は、患者の身体から側面ポート260の管腔264を通って流れる腎臓結石又はその破片を回収するように構成される。
【0064】
図示の実施形態では、医療デバイス200は、ハンドル部材又はハンドル部分290を含む。ハンドル部材又はハンドル部分290は、細長部材210又は側壁220に結合される。ハンドル部材又はハンドル部分290は、患者の体内に医療デバイス200を配置するために又は医療デバイス200の使用中に医師又は他の医療実務者によって把持されるように構成される。
【0065】
使用時に、医療デバイス200は、患者の体内に挿入することができる。一部の実施形態では、医療デバイス200は、細長部材210の第2又は遠位の末端部分214が患者の体内に配置され、細長部材210の第1又は近位の末端部分212が患者の体外に配置される(又は患者の身体から延びる)ように患者の体内に挿入することができる。例えば、一部の実施形態では、医療デバイス200は、第2又は遠位の末端部分214が患者の腎臓又は尿管内に配置されるように患者の体内に配置することができる。他の実施形態では、医療デバイス200は、第2又は遠位の末端部分214が患者の体内の異なる部位に配置されるように患者の体内に配置される。
【0066】
医療デバイス200が患者の体内に配置された状態で、細長部材210によって定められた管腔を通して他の医療デバイス又は医療機器を患者の体内に挿入することができる。例えば、一部の実施形態では、他の医療デバイス又は医療機器は、他の医療デバイス又は医療機器が管腔の一方の側に沿って配置されるように細長部材210又は側壁220によって定められた管腔の中に挿入することができる。従って、そのような他の又は二次的な医療デバイスが患者の体内に配置された状態で、そのようなデバイスを用いて追加の医療手順を実施することができる。一部の実施形態では、他の医療デバイス又は医療機器はスコープである。他の実施形態では、医療機器は、別のタイプの医療デバイスである。
【0067】
図7は、別の実施形態による医療デバイス300の一部分の上面図である。この実施形態では、側面ポート360は、細長部材310又は側壁320の近位末端部分又はその近くで細長部材310又は側壁320に結合される。
【0068】
図8は、別の実施形態による医療デバイス400の上面図である。上記の実施形態と同様に、医療デバイス400は、非円形断面を有する細長部材410又は側壁420を含む。医療デバイス400は、細長部材410又は側壁420によって定められた管腔内に配置された1又は複数の位置決め部材を更に含む。
【0069】
図示の実施形態では、医療デバイス400は、ハブ492を更に含む。ハブ492は、細長部材410又は側壁420によって定められた管腔の中に挿入される二次的な医療デバイス又は医療機器に係合するように構成される。ハブ492は、二次的な医療デバイス又は医療機器がハブ492に取り外し可能に結合されるようにそのような医療デバイス又は医療機器に係合するように構成することができる。一部の実施形態では、ハブ492は、ハブ492に二次的な医療デバイス又は医療機器を取り外し可能に結合するためにこれらの医療デバイス又は医療機器に係合するように構成されたラッチ又はラッチシステムを含むことができる。
【0070】
図示の実施形態では、細長部材410又は側壁420は、捩れに抵抗するように構成することができる。例えば、一部の実施形態では、細長部材410又は側壁420は、ステンレス鋼コイルのようなコイルで補強されたシースを含むことができる。更に、一部の実施形態では、細長部材410又は側壁の外面は、親水性コーティングのようなコーティングを含むことができる。コーティングは、患者の体内へのデバイスの挿入又は配置を容易にするように構成することができる。
【0071】
図示の実施形態では、医療デバイス400は放射線不透過性マーカ494を含む。患者の体内へのデバイス400の配置を確認するために蛍光透視法によって放射線不透過性マーカ494を観察することができる。
【0072】
図示の実施形態では、医療デバイス400は、先細先端部分496を含む。一部の実施形態では、先細先端部分496は、細長部材410の他の部分よりも硬質又は剛性のものとすることができる。例えば、先細先端部分496は、細長部材410の残りの部分を形成する物質とは異なる硬度計値の材料で形成することができる。一部の実施形態では、先細先端は、患者の体内へのデバイス400の配置を容易にするように構成される。更に、先細先端は、患者の体内へのデバイスの挿入中に患者への外傷を低減することができる。
【0073】
一部の実施形態では、患者の体内へのデバイスの配置又は挿入を容易にするために内側閉塞器499を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、内側閉塞器499は、デバイス400の管腔の中に挿入してデバイス400の配置中にデバイスに支持を提供するために使用することができる管状部材である。デバイス400が体内に配置された状態で、内側閉塞器499は、デバイス400及び患者の身体から取り出すことができる。一部の実施形態では、内側閉塞器499は円形断面を有する。他の実施形態では、内側閉塞器499は、異なる形状の断面を有する。
【0074】
図9は、本発明の実施形態による方法500の流れ図である。510では、医療デバイスが患者の体内に挿入される。一部の実施形態では、医療デバイスは、デバイスの遠位末端部分が患者の体内に配置され、近位末端部分が体外に配置されるように患者の体内に挿入される。例えば、一部の実施形態では、デバイスは、遠位末端部分が患者の腎臓又は尿管内に配置されるように患者の体内に配置することができる。
【0075】
520では、二次的な医療デバイス又は医療機器が、医療デバイスによって定められた管腔を通して患者の体内に挿入される。一部の実施形態では、二次的な医療デバイス又は医療機器は、二次的な医療デバイス又は医療機器が管腔の一方の側面部分に又はそれに沿って配置されるように管腔の中に挿入される。一部の実施形態では、二次的な医療デバイス又は医療機器はスコープである。他の実施形態では、そのような医療デバイス又は医療機器は、別のタイプの医療手順のためのデバイスである。
【0076】
一部の実施形態では、尿路疾患及び尿管狭窄を診断及び治療するために尿管鏡検査を実施することができる。一部の手順では、尿管鏡検査は、腎臓結石を除去するための外科手順である。一部の尿管鏡手順では、オペレータの視野を明瞭にするためにかつ尿管を開くために洗浄又は連続洗浄が用いられる。従って、可視化に向けて洗浄を最適化することを有益とすることができる。一部の課題は、ツールが患者内に挿入される時の洗浄の低下、高い腎臓圧、結石の後方突進、並びに流量を制御及び維持することの難しさを含む。
【0077】
一部の場合に、数学モデル化を用いて洗浄流れに対するパラメータ(スコープのサイズ及び形状、ツールのサイズ及び形状、及び洗浄設定のような)の影響を決定し、数学モデルを実験によって検証し、かつモデルを用いて洗浄を最適化することができる。このモデル化を用いてかつ作業ツール又は二次ツールを有するスコープを用いて、直線又は線形のスコープ、偏向されたスコープの流れ効果(位置及び断面形状の効果等)を解析することができる。
【0078】
尿管鏡のような本明細書で説明する医療デバイスは、尿路異常の診断及び治療を実施することができるように尿路を通して逆行挿入することができる。本明細書で説明するように、例示的な医療デバイス又は尿管鏡は、シャフトに結合されたハンドルを有することができる。
【0079】
ハンドルは、尿管鏡を握持して制御するのに適するあらゆる形状を有することができる。シャフトの近位端は、ハンドルの遠位端に結合される。尿管鏡は、シャフトの遠位端を1又は2以上の平面に沿って偏向させるためのステアリング機構を含むことができる。シャフトは、シャフトの近位端と遠位端間に延びる少なくとも1つの作業チャネルを含む。一部の例では、シャフトは、カメラ又は他の撮像デバイス、光源、及び/又は他のセンサのような1又は2以上の電子構成要素を含むことができる。これに加えて又はこれに代えて、シャフトは、光送出及び/又はステアリング制御部材のための管腔を含むことができる。
【0080】
ハンドルは、電気接続とデータを転送すること及び/又は光源に給電することのような機能とを容易にするためのへそ状ハブ又はコネクタを含むこともできる。それに加えて、ハンドルは、少なくとも1つのポート(例えばT字形又はY字形のルアーポート接続)を含むことができる。ポートは、洗浄流体及び/又は吸引流体の1又は2以上のサプライに流体結合することができる。従って、可視化を支援するために及び/又は尿管を開くために、洗浄流体をポートを通じて作業チャネルに入れ、そこを通してシャフトの遠位端から出すように給送(例えばポンプ輸送)することができる。ポートは、シャフトの作業チャネル内への二次医療デバイスの進入を可能にするために二次医療デバイスの挿入部分(例えばシャフト)を受け入れることもできる。医療デバイスの遠位端は、シャフトの遠位端から延ばして出し、かつその中に引っ込めることができる。医療デバイスの遠位端は、例えば、生検鉗子、把持鉗子、バスケット、スネア、プローブ、はさみ、回収デバイス、レーザ、及び/又は例えば腎臓結石を除去するのに適するいずれかの他のツールを含むことができる。
【0081】
例示的尿管鏡及び例示的医療デバイスの態様を上記で説明し、かつ下記で説明する。上述したように、図のうちのいくつかは、とりわけ尿管鏡洗浄の数学モデル化を例示している。そのような数学モデル化を下記において詳細に説明する。一部の実施形態では、モデル化は、尿管鏡洗浄を正確かつ精密に制御するために使用することができるデータを提供する。例えば、モデル化は、ユーザが尿管鏡を設計、選択、及び/又は作動させるのを補助することができる尿管鏡設計に関してのデータ(例えば、作業チャネルの断面積、作業チャネルの断面形状、シャフトの曲率、シャフトの材料特性、作業チャネルの面特性、及び/又は作業チャネルを通る洗浄流体の流れに影響を与える可能性があるいずれかの他の態様を含むデータ)、及び/又はユーザが、尿管鏡内における使用に向けて医療デバイスを設計、選択、及び/又は作動させるのを補助することができる医療デバイス設計に関してのデータ(例えば、医療デバイスの挿入部分の断面積、挿入部分の断面形状、挿入部分の材料特性、挿入部分の外面特性、作業チャネル内における挿入部分の位置/向き、作業チャネルを通る洗浄流体の流れに影響を与える可能性があるいずれかの他の態様を含むデータ)を提供することができる。これに加えて又はこれに代えて、モデル化は、所望の洗浄流体流れレベル(例えば、最適な流速、流量、体積流量、又は所望の範囲内にあるこれらのもの)がターゲット部位に供給されることを保証するためにどの程度の量の洗浄流体が作業チャネルを通って流れているかをユーザが決定するのを補助することができるデータを提供することができる。これらのデータに基づいて、ユーザ及び/又は制御システムは、所望の洗浄流体流れレベルに到達するようにポンプ又は他の流体サプライの作動パラメータを設定/調節すること、作業チャネルの態様を加減すること、及び/又は医療デバイスの態様を加減することができる。尿管鏡は、例としてヒステロスコープ、子宮鏡、気管支鏡、膀胱鏡、内視鏡、結腸鏡、及び同様のデバイスを含む他のタイプのデバイスと置き換えることができる。
【0082】
図10は、スコープを通る流れ又は流体流れを例示している。より高い水頭高さでは、より大きい偏差がある。
図11は、湾曲スコープを通る流れ又は流体流れを例示している。流量は、曲率と共に若干減少する。
図12は、スコープ及びツールの異なる断面形状の流量を例示している。
【0083】
モデル化は、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、スマート電話、及び同様のものを含むいずれかの適切なコンピューティングシステムによって実施することができる。コンピューティングシステムは、モデル化に基づいて流体サプライの作動パラメータを設定/調節するために流体サプライと作動的通信状態にあるものとすることができる。コンピューティングシステムが、尿管鏡及び/又は医療デバイスを自動的に(例えばRFID、バーコード走査等によって)又は別途に識別するための1又は2以上の入力デバイスを含むことができ、受信した入力に基づいてモデル化を実施し、更に他のアクションをとる(例えば、流体流れを設定/調節する、警告を発する、又はいずれかの他の適切なタスクを実施する)ことができることも考えられている。これに加えて又はこれに代えて、モデル化における使用に向けたデータを受信するために及び/又はデータをユーザに伝達するために、
図10に例示しているグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を使用することができる。
【0085】
チャネル内に位置付けられた作業ツールを有する子宮鏡を通る洗浄流れに注目する。この設定のモデル化は、ツールが作業チャネル内に同心状に位置すると仮定し、それによって洗浄流体バッグの高さによって発生する静水圧水頭によって駆動される簡単な環状ポアズイユ流れモデルが起案される。このモデルは次式の形式をとる。
【0087】
前式中のQは、体積流量であり、r
oは、作業チャネルの半径であり、r
iは、作業ツールであり、h及びLは、それぞれ食塩水バッグの高さ及びスコープの長さであり、p及びμは、それぞれ洗浄流体の密度及び粘性である。数学モデルから得られた予測値をウェットラボデータと比較すると、2つの曲線の間に不一致が存在する可能性があり、その例を
図11に示している。
図11は、作業ツールサイズの増大に伴う体積流量の変化を描くプロット図を例示している。
【0088】
一部の事例では、数学モデルである式(1)は、実測流量を過小予測する。実測データの過小予測は、ツールが作業チャネル内に同心状に位置するという仮定から生じる可能性がある。ここで、このオフセットの効果を理解するために作業ツールがチャネル内に偏心状に位置することを可能にすることによって初期仮定を再考する。
【0090】
式(1)によって与えられる簡単な式を導出するために、環帯内の定常一方向流れに注目する。ここで、式(1)の簡単な導出を思い出すべきである。
【0092】
非圧縮性流体に対するナビエ−ストークス方程式は、次式で与えられる。
【0095】
前式中のu=(u
x,u
y,u
z)は、x方向、y方向、及びz方向の流れを表し、ρ及びμは、洗浄流体の密度及び粘性である。
【0097】
一部のシステムは定常状態システムである。そのようなシステムでは、時間への依存性はなく、従って、式(3)における時間微分を無視することができる。更に、流れがスコープの軸方向u
zに沿う一方向のものであり、従って、u
x=u
y=0であると仮定する。従って、ナビエ−ストークス方程式は次式になる。
【0100】
同じく∂p/∂x=∂p/∂y=0である。式(5)は、次式の形式で書かれる。
【0102】
左辺がx及びyに依存せず、右辺がzに依存しないことがわかる(該当する偏微分がゼロであることから)。従って、圧力勾配dp/dzは一定であるべきである。表記の簡略化のために以後u:=u
zと表記することにする。
【0104】
作業ツールの断面と作業チャネルの断面を両方共にx軸上に中心を置く一対の偏心円としてモデル化することから始める。作業ツールの半径をr
iと表記し(内側)、作業チャネルの半径をr
oと表記し(外側)、r
i<r
oであることに注意されたい。ツール及びチャネルの対応する中心座標をそれぞれ(w
i,0)及び(w
o,0)と設定する。一般性を損なうことなく、w
i<w
oと仮定することにし、従って、内円の中心は、外円の中心の左にシフトされる。従って、作業ツールの外面と作業チャネルの内面の両方に対してノンスリップ条件を課すことによって次式の境界条件が与えられる。
【0107】
ここで、(x―w)
2+y
2=r
2が(w,0)を中心とする半径rの円に対する式であることを思い出すべきである。
【0109】
上記で環状流れ解(1)を得るために式(6)を解く時に、内円と外円の同心性から生じる幾何学形状の回転対称性からもたらされる極座標系を利用した。
【0110】
図15は、式(6)をその上で解くことを目指す幾何学形状を例示している。ここで、ドメインΩは、内円と外円(それぞれツールと作業チャネル)の間の空間を表す
【0111】
次に、
図15に描いているドメインΩの上で式(6)を解くことを目指す。それを行うために、直交座標に次式によって関係付けられる双曲座標系(η,ξ)を利用する。
【0114】
ここで、一定ηの線がx軸上に中心を置くオフセット円を表し、一定ξの線がy軸上に中心を置くオフセット円に対応することを示すことにする。上記のドメイン内の内円及び外円がx軸上に中心を置き、従って、一定η値に対応することになると仮定する。ξ座標値は0から2πまで変化し、極座標における角座標と同様に振る舞う。
【0116】
双曲座標において
図15のもののような円形境界線を表すために、まず、直交座標において(w,0)を中心とする半径rの円の一般式に注目する。
【0120】
直交座標及び双曲座標に対する表現を扱うために、まずcosξに関して式(9)を解いて次式を得る。
【0122】
更に式(9)を式(10)で除することによって次式が得られる。
【0124】
更にsinξに関して解いて次式が得られる。
【0126】
次に恒等式sin
2ξ+cos
2ξ=1の範囲内で表現(13)及び(14)を利用して次式が求められる。
【0127】
x
2 + y
2 + c
2 = 2xc coth η
(15)
【0128】
こうして、式(15)を式(12)と比較することで、円の中心の座標が次式で与えられることが直ぐにわかる。
【0130】
再度、式(15)を式(12)と関係付けてw
2−r
2=c
2が更に得られる。従って、式(16)を用いて書き直し、次式を得ることができる。
【0132】
従って、一定ηの線は、直交座標において(c cothη,0)を中心とする半径c/sinhηの円を表す。上記のドメイン内の内円及び外円に対して、次式が成り立つような一定ηの値、すなわち、n
i及びn
oそれぞれを導入する。
【0135】
図16は、直交座標において両方共にx軸上に中心を置くより大きい円内のより小さい円の双曲座標への変換を例示する概略図である。
【0136】
ここで、式(17)から、大きい半径の円が小さいη値に対応し、従って、η
o<η
iが成り立つことがわかることに注意されたい。定義式(18)及び(19)から次式が成り立つ。
【0137】
c = r
i| sinh η
i| = r
o| sinh η
o|
(20)
【0138】
従って、上記ドメインΩは、η
o≦η≦η
i及び0≦ξ≦2πに対応し、直交座標から双曲座標へのこのドメイン変換を
図16に図式的に描いている。次に、d=w
o−w
iと表記することにし、
図15にそのように標記している2つの中心の間の距離に注目する。値η
i、η
oを>0に限定し、従って、sinhη
i、sinhη
oを>0に限定することで、式(16)を用いて次式が得られる。
【0139】
d=r
ocoshη
o−r
icoshη
i
(21)
【0140】
式(20)及び(21)を恒等式cosh
2η
o−sinh
2η
o=1と共に用いて次式が得られる。
【0142】
同様に、恒等式cosh
2η
i−sinh
2η
i=1と共に用いて次式が得られる。
【0144】
以下のように無次元パラメータを定める。
【0147】
式(22)及び(23)を以下に続く式のように表すことができる。
【0150】
これらの式によって、η
i及びη
oに関しての円の幾何学特性に対する表現が得られる。
【0152】
次に、作業チャネル内でツールをオフセットする効果を双曲座標を用いて解析する。ここでは作業ツール及びチャネルの断面を円形と見なし、この解析を次の節で楕円形幾何学形状へと拡張することにする。
【0154】
次に、定常一方向流れ(6)に対する式を双曲座標で表すことにする。そうするために、まず(η,ξ)に対して次式で特徴付けることができる(x,y)空間内の任意点の位置に注目する。
【0156】
双曲座標のような曲線座標系においてスカラー場のラプラシアンを表すために、スケール因子h
η=|∂r/∂η|、h
ξ=|∂r/∂ξ|、及びh
z=|∂r/∂z|を定め、次式を使用する。
【0158】
この式は式(1)において導出されたものである。双曲座標系では、これらのスケール因子は次式のように計算される。
【0160】
従って、式(29)によって与えられたオペレータ変換式を当て嵌めて、支配的方程式(6)は次式となる。
【0162】
前式中のdp/dzは、一定圧力勾配であることを思い出すべきである。
【0164】
次に、双曲座標ではノンスリップ境界条件が次式として与えられる。
【0165】
η=n
i,η
oに対してu(η,ξ)=0
(32)
【0166】
ここで、ξに対して2つの追加の境界条件を必要とし、x軸に沿う対称線に起因して次式の条件下でドメインサイズを0≦ξ≦πへと縮小することができる。
【0168】
この式は、所望の対称速度プロファイルを考慮するものである。
【0169】
4.3 方程式の求解:有限差分スキーム
【0170】
式(31)を数値的に解くために、まず
図17に示している長方形(η,ξ)ドメインを離散化する。具体例として、η、(n
n)、及びξ(n
ξ)における点の個数を5として選んだ。対応する空間間隔h
η及びh
ξは、h
η=(η
i−η
o)/(n
η−1)及びh
ξ=π/(n
ξ−1)として算出する。
図17は、ドメインの離散化の概略図である。
【0171】
続いて、線形システムを構築するために有限差分によって式(31)内の偏微分を近似する。中心差分近似を用いて、式(31)を次式によって近似することができる。
【0174】
前式中のU
i,jは、
の数値近似である。このドメイン離散化を
図17に例示している。式(34)の全体に
を乗じることによって、次式が得られる。
【0177】
この式は、次式の形式の線形システムとして表すことができる。
【0179】
前式中、
である。次式を直接課すことによってノンスリップ境界条件(32)を当て嵌める。
【0181】
更に、次式を用いて対称境界条件(33)を近似する。
【0183】
ここで、式(38)は、1階微分への片側近似から得られる。それによって
図17の内点に関して求解することだけが残り、従って、Aは、式(35)の左辺によって与えられる係数を含むN×Nの五重対角行列(N=n
nn
ξ−2n
n−2n
ξ+4)であり、ベクトルbは、i=2,・・・,n
η−1、j=2,・・・,n
ξ−1に対する式(35)の右辺の値を含む。
【0185】
偏心環帯内の完全発達流れを表す式(31)に対する解析解を[2]において次式として示す。
【0187】
前式に対して以下に続く式が成り立つ。
【0192】
従って、無限和への近似を用いてこの解析解を我々の数値解と比較し、結果を検証することができる。
【0194】
前節で説明した線形システムを構築した後に、Au=bを離散点での速度に関して解く。対応する(η,ξ)値を直交(x,y)に変換して戻した後に、結果として得られる速度プロファイルをプロットすることができる。この速度プロファイルを連続カラーマップとして示すために、式がそれに関して解かれたx値及びy値からなるグリッドにわたって解を線形内挿するMATLABのgriddata機能を実施する。ここで、結果として得られたドメイン内の流速分布上でオフセットパラメータφを変化させる効果に注目する。
図18は、r
1=0.03、r
2=0.06、及び0.01から0.99まで変化するφに対する流速プロファイルを例示している。外円が(0,0)を中心とするようにドメインをシフトさせた。
【0195】
図15から、得られる最大速度がφの増大に伴って上昇することがわかる。直感的には、この上昇は、ゼロ速度が存在する2つの境界線の間で流れが発達するためのより大きい領域を与える最大距離の増大と相関する。無限和の50項を用いた解析解(39)を用いて生成した速度プロファイルは、数値結果との良好な定性的一致を示す。
【0197】
体積流量Qは、速度をドメインにわたって積分することによって算出される。従って、次式が得られる。
【0199】
この積分を数値的に近似するために、台形公式を実施するMATLABのtrapzを使用することができる。
【0200】
図19Aは、作業ツールをチャネルの中心から縁部へとシフトさせることの体積流量に対する効果を例示している。この場合、r
1=0.03cm、r
2=0.06cm、h=79.5cmである。
【0201】
図19Bは、オフセットモデルの数値解及び解析解に対して作業ツールサイズの増大に伴う体積流量の変化を例示している。この変化を、実験データ並びに同心モデルと比較する。
【0202】
図16Bに示しているφが0.01から0.99まで変化する時の体積流量の増大は、
図28に示している最大速度の上昇と相関する。従って、使用パラメータに対して、作業ツールが作業チャネルの中心から縁部へとシフトされると、体積流量のおよそ130%の増加が得られる。作業ツールサイズに伴う体積流量の減少を示す
図6Aにφ=0.85に対するオフセットモデルの数値解と解析解の間の比較を示している。これらを
図11に示している実験データ及び元の同心予測に対して比較する。ツールをチャネル内でオフセットされたものと見なすこの更新された数学モデルは、同心モデルよりもかなり良好な実験予測を与えることがわかる。ここで、φ=0.85というオフセットは、実験データとの良好な合致を示すことから選んだものである。
図16Bでは、解析解(39)と有限差分スキームを解くことによって得られた数値解間の良好な一致も見られる。
【0204】
次に、作業チャネル及び作業ツールの断面形状を円形の代わりに楕円形に変更する効果に注目する。楕円の偏心度は、楕円の長軸及び短軸に関係し、従って、楕円がどの程度「潰れている」かを表す。ゼロの偏心度値は円を表し、この値が増加するにつれて、形状は、無限に長く薄い水平楕円に向かう。ツールとチャネルは、それぞれツールでは長軸及び短軸a
i及びb
i、チャネルではa
o及びb
oを有する同じ偏心度の楕円であると見なす。
図20は、このドメインを直交座標に例示している。この幾何学形状はもはや回転対称ではなく、ツールとチャネルの両方をx軸に沿って中心が置かれたものと見なすように一般化することがもはやできず、内側楕円の中心が外側チャネル内のいずれの場所にも位置することが許されることに注意されたい。しかし、簡略化のために、内側楕円の向きが維持され、すなわち、内側及び外側の幾何学形状のそれぞれの軸が平行に留まる。
【0205】
図20は、その上で求解を望む幾何学形状の直交座標におけるグラフである。ここで、内側楕円の偏心度と外側楕円の偏心度は等しく、従って、式
が成り立つ。
【0206】
所与の中心、長軸、及び短軸を有する楕円に対してこの式を用いて、
図20に示している内側楕円及び外側楕円を表す式を書くことができる。内側楕円は次式によって与えられる。
【0208】
更に外側楕円に対する式は次式となる。
【0210】
ここでは上記の支配的方程式(6)をこの変更を加えたドメイン内で有限差分を用いて解くことを目指し、従って、前と同様に双曲座標(η,ξ)における長方形yドメインとしてこの楕円形幾何学形状を表すためにそれを変換することにする。
図21に示しているものと同様の幾何学形状を得るために、これらの楕円を円に変換するように軸をスケーリングし、続いてツールの中心が新しい座標系のx軸に沿って位置するようにこの座標系を回転させる。従って、次式の変数の変更を導入する。
【0215】
式(45)は、y軸をスケーリングした後に座標を回転させる角度である。これらの新しい座標に対して、楕円を表す式は次式となる。
【0217】
この式は外側楕円に対するものであり、内側楕円に対しては次式が成り立つ。
【0219】
これらの式から、(
~x,
~y)座標系では、内側楕円及び外側楕円が両方共にx軸に沿って中心を置くそれぞれ半径a
o及びa
iの円によって表されることがわかる。この新しい幾何学形状を
図21に示しており、ここで境界線を双曲座標における一定η値として表すことができる。
【0220】
図21は、変換された幾何学形状の図である。ここで、
(楕円の中心のx座標の間の距離)及び
は、内側楕円(円に変換された後の)をその中心が
~x軸上に位置するように回転させなければならない角度を与える。
【0222】
次に、式(43)によって与えられる(
~x,
~y)に対して支配的方程式(6)を表すと次式が得られる。
【0224】
前式に対して
が成り立つ。式(48)を式(9)及び(10)によって定められる双曲座標へと変換することで以下の楕円偏微分方程式が得られる。
【0226】
前式中のα、β、γ、Δ
1、及びΔ
2は、以下に続く式によって与えられるη及びξの関数である。
【0227】
α(η,ξ)=(cosξcoshη−1)
2(cos
2θ+k
2sin
2θ)+sin
2ξ(k
2cos
2θ+sin
2θ)sinh
2η
【0228】
β(η,ξ)=(k
2−1)cos(2θ)(cosξcoshη−1)sinξsinhη
【0229】
γ(η,ξ)=(cosξcoshη−1)
2(k
2cos
2θ+sin
2θ)+sin
2ξ(cos
2θ+k
2sin
2θ)sinh
2η
【0230】
Δ
1(η,ξ)=(k
2−1)cos
2θ(cosξ−cos(2ξ)coshη)sinhη
【0231】
Δ
2(η,ξ)=(k
2−1)cos
2θsinξ(cosξcosh
2η+cosξsinh
2η−coshη)
【0233】
次に、ノンスリップ境界条件は、双曲座標において次式として与えられる。
【0234】
η=η
i,η
oに対してu(η,ξ)=0 (50)
【0235】
もはやx軸対称のドメインを持たないことから、ξに対して異なる境界条件を実施しなければならず、これらの境界条件を以下に続く式とする。
【0238】
これらの式は、ξに関連して周期2πを有するドメインの周期性を保証する。
【0240】
楕円の偏心度e、オフセットの相対量φ、及びx軸と楕円中心を接続する線間に形成される角度θeである3つのパラメータを指定することによって
図17に示している形態の楕円形幾何学形状を決定することができる。偏心度はこれらの円に対してb
i=a
i及びb
o=a
o=aoであることからe=0であるような次式によって与えられる。
【0242】
オフセットパラメータφは、次式として定められる。
【0244】
図22に示しているように、前式中のd
eは、ツールの中心とチャネルの中心間の距離であり、
及び
は、それぞれ角度θ
eにおける内側楕円及び外側楕円の半径である。
【0245】
図22は、ドメインの概略図である。φ、e、及びθ
eを指定し、これらを用いてθを決定する。
【0246】
φ(楕円が、2つの楕円中心を接続する線に沿って同心からシフトされる際のこの方向に可能な最大のシフトに対する相対距離と解釈することができる)は、座標変換を通して保持され、座標の変更(43)後に双曲座標において用いられるφを表すことがわかる。e、φ、θ
e、a
i、及びa
oを用いて、楕円が円に変換された後に座標系を回転させなければならない角度であるθを決定するために使用することができるw
y及び
(
図20)を決定することができる。こうして、座標変換を実施するために、従って、この幾何学ドメイン内で式(49)を解くために必要とされる情報が得られる。
【0248】
次に、適切な境界条件(51)及び(52)が課される式(49)を数値的に解くための有限差分スキームを構築する。
【0249】
図23は、ドメインの離散化の概略図である。ここで、iの変化はηの変化を表し、jを増分することによってξが変化する。
【0250】
ηにおいてh
η=(η
i−η
o)/(n
η−1)の間隔を有し、ξにおいてh
ξ=2π/(n
ξ−1)の間隔を有し、n
η及びn
ξがこれら2つの軸に沿う離散化の個数である中心差分近似を実施する。次式の有限差分スキームが得られる。
【0252】
前式中のα、β、γ、Δ
1、及びΔ
2を(i,j)において評価する。この式を全ての点で解くために、
である時にこの式を形式Au=bの線形システムとして定式化することができる。次式が成り立つことを保証することによってノンスリップ条件を直接課す。
【0254】
更に、次式(56)の片側差分近似を用い、かつ式(57)を保証することによって周期条件を課す。
【0257】
完全なシステムは、
である9つの非ゼロ対角要素を有する疎なN×N行列を生じる。
【0259】
前節で説明した線形システムを構築した後に、離散点での速度に関してAu=bを解く。対応する(η,ξ)値を直交(x,y)に変換して戻した後に、結果として得られる速度プロファイルをプロットすることができる。この速度プロファイルを連続カラーマップとして示すために、それに関して式を解いたx値及びy値からなるグリッドにわたって解を線形内挿するMATLABのgriddata機能を実施する。ここで、断面内における流速分布に対する3つの無次元パラメータ、すなわちφ、θ
e、及びeを変化させる効果に注目する。
【0261】
ここで、チャネルの中心から縁部へとツールの場所をシフトさせることに注目する。パラメータφが、このオフセットを特徴付け、φ=0が同心楕円に対応し、φ=1が、内側楕円がチャネルの円周に接触することを表す。双曲座標の定義に起因して、φ=0は、η
i及びη
oを定める時にゼロ除算を伴うことになることから設定することができない。φ=1も、η1=η2を生じ、従って、ドメインを離散化することができないことから設定することができない。従って、この障害を回避するために、取り得る最大のシフトをφ=0.01で近似し、同心楕円をφ=0.99で近似する。
【0262】
図24は、θ
e=0、e=0.8、及び0.01から0.99まで変化するφに対する流速プロファイルを例示している。
【0263】
図24では、固定偏心度及びオフセット角度に対してφを変化させる時に、得られる最大速度が上昇することがわかる。このことは、ツールを中心から離れるように移動させることによって境界線に課されるノンスリップ条件又はゼロ速度条件の間の最大距離が最大化することからの直感的なものである。これらの速度プロファイルは、A.2に示されているCOMSOLシミュレーションとの良好な一致を示す。
【0265】
次にオフセットを最大(φ=0.99)に固定し、ツールの場所を回転させる効果を調査する。
【0266】
図25は、φ=0.99、e=0.8、及び0とπ/2間で変化するθ
eに対する流速プロファイルを例示している。
【0267】
図25は、θ
eを0からπ/2まで増大させることに対応する内側楕円を1つの位置から別の位置へと離れるように回転させることで最大速度が低下することを示している。前と同様に、このことは、内側境界線と外側境界線の間の最大距離と短縮することに対応する。
【0269】
φ=0.99、θ
e=0を固定し、eを変化させる場合に、内側楕円及び外側楕円の偏心度を変化させる効果を決定することができる。
【0270】
図26は、φ=0.99、θ
e=0、及び0(円形)から0.99まで変化するeに対する流速プロファイルを例示している。ここで、ツール及びチャネルの断面積は、それぞれπ(0.03)
2及びπ(0.06)
2に限定した。
【0271】
図26からツール及びチャネルの断面積を維持しながら偏心度を高める効果がわかる。偏心度が高まると、最大速度も上昇するように見える。しかし、偏心度を更に高めた場合に、この値は減少し始め、従って、各ツールサイズに対して流れを最大化する最適な非ゼロ偏心度値が存在することを示唆している。
【0273】
計算速度プロファイルを用いて断面ドメインにわたって速度を積分することによって体積流量を算出することができる。従って、体積流量は、次式によって得られる。
【0275】
この式は、変換のヤコビアンを明示的に算出した後に次式となる。
【0277】
この積分を数値的に近似するために、台形公式を実施するMATLABのtrapzを使用することができる。
【0278】
図27及び
図28は、2つの異なるφ値に対して体積流量を偏心度の関数として例示している。
図27は、ほぼ同心の場合に対して体積流量を楕円の偏心度の関数として例示している。
図28は、最大限にシフトされた内側楕円に対して体積流量を楕円の偏心度の関数として例示している。
【0279】
図27及び
図28では、2つの異なるオフセット値に対して高まる楕円の偏心度の効果がわかる。ほぼ同心状の楕円(φ=0.01)では、体積流量は、楕円がゼロ偏心度を有する又は形状が円形の時に最大化される。大きいオフセット(φ=0.99)では、e=0.7前後の偏心度値が最大体積流量を保証する。
【0280】
図29は、φ=0.99に対するθ
eの関数としての体積流量である。
【0281】
図29では、ツールが位置θ
e=0にある時に最大体積流量が得られることがわかる。この角度がこの位置から離れるように移動すると、流量は急激に減少するが、角度がθ
e=π/2に近づく時に又はツールが作業チャネルの底面に向かって移動する時に流量の小さい増加がある。
【0282】
図30A及び
図30Bは、θ
e=0に対する体積流量をe及びφの関数として例示している。体積流量は、10個のe値と10個のφ値との100個の点で算出した。
図30Aは、θ
e=0、固定断面積に対する体積流量をφとeの両方の関数として例示している。ツール面積はπ(0.03)
2であり、チャネル面積はφ(0.06)
2である。
図30Bは、θ
e=0、固定円周に対する体積流量をφとeの両方の関数として例示している。ツール円周は2π(0.03)であり、チャネル円周は2π(0.06)である。
【0283】
図30A及び
図30Bは、体積流量に対する偏心度(e)とオフセット(φ)値の両方を変化させる(固定角度θ
e=0に対して)効果を示している。チャネル及びツールの断面積(16a)又は対応する円周(16b)のどちらかが固定された時に、最大オフセットでは、更に固定の非ゼロ偏心度に対して最大体積流量が得られることがわかる。
【0284】
図30A及び
図30Bは、θ
e=0に対する体積流量をe及びφの関数として例示している。体積流量は、10個のe値と10個のφ値との100個の点で算出した。
図30Aは、θ
e=0、固定断面積に対する体積流量をφとeの両方の関数として例示している。ツール面積はπ(0.03)
2であり、チャネル面積はφ(0.06)
2である。
図30Bは、θ
e=0、固定円周に対する体積流量をφとeの両方の関数として例示している。ツール円周は2π(0.03)であり、チャネル円周は2π(0.06)である。
【0285】
図31は、ツールの断面積が増加する時にφ=0.99及びθ
e=0に対して予測される最大偏心度値を例示している。この最大偏心度値は、100個の偏心度値と100個の断面積との10000個の点にわたって算出したものである。
【0286】
図31では、増大するツールサイズに対する最適偏心度値の推移が見られる。この図から、ツールのサイズがゼロに向かうにつれて最適偏心度もゼロに近づくことがわかる。このことは、円形の幾何学形状に対して非閉塞チャネル内の最大流量が得られることから予測されることになる。ツールのサイズが増大する時に流量を最大化するためにはツール及びチャネルをより偏心させなければならない。
【0287】
参考文献(1)K.F.Riley、M.P.Hobson、及びS.J. Bence著「物理学及び工学のための数学的方法(Mathematical Methods for Physics and Engineering)」、Cambridge University Press、英国ケンブリッジ、2006年、及び(2)William T.Snyder及びGerald A.Goldstein著「偏心環帯内の完全発達層流の解析(An analysis of fully developed laminar flow in an eccentric annulus)」、AIChE Journal、11(3):462〜467ページ、1965年が、これにより引用によって組み込まれる。
【0290】
図32は、r
1=0.03、r
2=0.06、及び0.01から0.99まで変化するφに対する流速プロファイルを例示している。外円が(0,0)を中心とするようにドメインをシフトさせた。これらは、無限和への50項近似を用いた解析解(39)から得られたものである。
【0291】
A.2 楕円形ドメイン:COMSOLシミュレーション
【0292】
図33は、e=0.8、θ
e=0、及び0.01から0.99まで変化するφに対する楕円速度プロファイルを例示している。区域は、それぞれ半径0.03及び0.06を有する円形のツール及びチャネルのものに限定される。これらは、COMSOLに対して必要されるドメイン内で支配的方程式(6)を解くことによって発生させたものである。
【0293】
上述の実施のある一定の特徴を本明細書で説明したように例示したが、当業者は、ここで多くの修正、置換、変更、及び均等物を想起するであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、全てのそのような修正及び変更を実施形態の範囲に収まるとして網羅するように意図していることは理解されるものとする。
【符号の説明】
【0294】
200 医療デバイス
210 細長部材
264 管腔
280 回収部材
MI 医療機器
【手続補正書】
【提出日】2019年9月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁を有する細長部材であって、該側壁が管腔を定め、該管腔が非円形断面形状を有する前記細長部材、
を含むことを特徴とする医療デバイス。
【請求項2】
前記管腔は、第1のサイズを有する第1の直径と第2のサイズを有する第2の直径とを有し、該第1のサイズは、該第2のサイズと異なっており、該第1の直径は、該第2の直径に対して実質的に垂直に配置されることを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記管腔は、第1のサイズを有する第1の直径と第2のサイズを有する第2の直径とを有し、該第1のサイズは、該第2のサイズと異なっており、該第1の直径は、該第2の直径に対して実質的に垂直に配置され、かつそれと交差することを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含むことを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、前記細長部材の長手軸と平行に該側壁の該内面に沿って延びることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、該側壁の第1の末端部分から該側壁の第2の末端部分まで該側壁の該内面に沿って延びることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、医療機器を管腔内に保持するのを補助するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記側壁は、前記管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材は、医療機器を該管腔の第1の側面部分に沿って保持するのを補助するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記側壁は、第1の位置決め部材と第2の位置決め部材を含み、該第1の位置決め部材は、該側壁によって定められた前記管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該第1の位置決め部材から離間され、かつその遠位に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記側壁は、第1の位置決め部材と第2の位置決め部材を含み、該第1の位置決め部材は、該側壁によって定められた前記管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該管腔内に配置され、該第2の位置決め部材は、該第1の位置決め部材から離間され、かつそれに隣接するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項12】
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通している前記側面ポート、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項13】
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通しており、該側面ポートが、該側面ポートによって定められた該管腔内に配置されたバルブを含み、該バルブが、該側面ポートによって定められた該管腔内の物質の流れを調整するように構成された前記側面ポート、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項14】
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通している前記側面ポートと、
前記側面ポートに結合された回収部材であって、該側面ポートによって定められた前記管腔を通過する物質を回収するように構成された前記回収部材と、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記細長部材に結合されたハンドル部材、
を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項16】
側壁を有する細長部材であって、該側壁が、非円形断面形状を有する管腔を定め、該側壁が、該管腔を定める内面と該内面に対向して配置された外面とを含み、位置決め部材が、該側壁の該内面上に配置され、該位置決め部材が、医療機器を管腔内に保持するのを補助するように構成された配置された前記細長部材と、
管腔を定める側面ポートであって、該側面ポートの該管腔が、前記側壁によって定められた前記管腔と流体連通しており、該側面ポートが、該側面ポートによって定められた該管腔内に配置されたバルブを含み、該バルブが、該側面ポートによって定められた該管腔内の物質の流れを調整するように構成された前記側面ポートと、
前記側面ポートに結合された回収部材であって、該側面ポートによって定められた前記管腔を通過する物質を回収するように構成された前記回収部材と、
を含むことを特徴とする医療デバイス。
【請求項17】
前記細長部材に結合されたハンドル部材、
を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の医療デバイス。
【国際調査報告】