特表2020-514014(P2020-514014A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-514014(P2020-514014A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】NOx吸着体触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20200424BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20200424BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20200424BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200424BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20200424BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
   B01J23/63 A
   B01J37/03 AZAB
   B01J37/02 101D
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/10 A
   F01N3/08 B
   F01N3/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-531943(P2019-531943)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(85)【翻訳文提出日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】GB2017053756
(87)【国際公開番号】WO2018109485
(87)【国際公開日】20180621
(31)【優先権主張番号】1621343.1
(32)【優先日】2016年12月15日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー, ガイ
(72)【発明者】
【氏名】プリッツヴァルト−シュテーグマン, ユリアン
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169FB30
4G169FC08
4G169ZA19A
4G169ZA19B
(57)【要約】
リーンNOトラップ触媒及び、内燃機関のための排気処理システムにおけるその使用が開示されている。リーンNOトラップ触媒は、第1の層と第2の層とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)1種以上の貴金属、第1の無機酸化物、及び任意選択的に促進剤を含む第1の層;並びに
ii)1種以上の白金族金属、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、及び第2の無機酸化物を含む第2の層
を含むリーンNOトラップ触媒であって、第1の層が酸素吸蔵能(OSC)材料を実質的に含まない、リーンNOトラップ触媒。
【請求項2】
前記第1の酸素吸蔵能(OSC)材料が、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア−ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ−セリア−ジルコニア混合酸化物から成る群より選択される、請求項1に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項3】
第1の酸素吸蔵能(OSC)材料がバルクセリアを含む、請求項2に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項4】
1種以上の貴金属が、パラジウム、白金、ロジウム、銀、金、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項5】
1種以上の貴金属が白金とパラジウムの混合物又は合金である、請求項1から4のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項6】
白金対パラジウムの比が、w/wベースで1:1−10:1である、請求項5に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項7】
白金対パラジウムの比が、w/wベースで約2:1である、請求項5又は6に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項8】
1種以上の貴金属が第1の無機酸化物上に担持されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項9】
第1の無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、チタニア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物から成る群より選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項10】
第1の無機酸化物がアルミナ、シリカ−アルミナ又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、請求項1から9のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項11】
第1の無機酸化物がシリカ−アルミナである、請求項1から10のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項12】
促進剤がマンガン、ビスマス、又は第1のアルカリ若しくはアルカリ土類金属を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項13】
促進剤が第1のアルカリ又はアルカリ土類金属を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項14】
第1のアルカリ又はアルカリ土類金属がバリウムである、請求項13に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項15】
第1の層が炭化水素吸収材料をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項16】
炭化水素吸収材料がモレキュラーシーブである、請求項15に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項17】
モレキュラーシーブがゼオライトである、請求項16に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項18】
ゼオライトがベータゼオライトである、請求項17に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項19】
前記1種以上の白金族金属が、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1から18のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項20】
前記1種以上の白金族金属が白金とパラジウムの混合物又は合金である、請求項1から19のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項21】
白金対パラジウムの比が、w/wベースで2:1−12:1である、請求項20に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項22】
白金対パラジウムの比が、w/wベースで約5:1である、請求項20又は21に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項23】
第2の層が第2のアルカリ若しくはアルカリ土類金属、ネオジム又はランタン(lanathanum)を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項24】
第2のアルカリ若しくはアルカリ土類金属、ネオジム又はランタンが0.1−10重量%の量で第2の層中に存在する、請求項23に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項25】
第2のアルカリ又はアルカリ土類金属がバリウムである、請求項23又は24に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項26】
第2の無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、ランタナ、シリカ、チタニア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物から成る群より選択される、請求項1から25のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項27】
第2の無機酸化物がアルミナ、ランタナ/アルミナ複合酸化物又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、請求項1から26のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項28】
第2の無機酸化物がランタナ/アルミナ複合酸化物である、請求項1から27のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項29】
軸方向長さLを有する金属又はセラミック基材をさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項30】
基材がフロースルーモノリス又はフィルターモノリスである、請求項29に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項31】
第1の層が金属又はセラミック基材上に直接堆積される、請求項29又は請求項30に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項32】
第2の層が第1の層上に堆積される、請求項1から31のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項33】
第1の層及び/又は第2の層が押出成形されて、フロースルー又はフィルター基材を形成する、請求項1から28のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒と、内燃機関とを含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排気処理システム。
【請求項35】
内燃機関がディーゼルエンジンである、請求項34に記載の排気処理システム。
【請求項36】
選択式触媒還元触媒システム、パティキュレート・フィルター、選択式触媒還元フィルターシステム、受動的NO吸着体、三元触媒システム、又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項34又は請求項35に記載の排気処理システム。
【請求項37】
内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、排気ガスを、請求項1から33のいずれか一項に記載のリーンNOトラップ触媒又は請求項34から36のいずれか一項に記載の排気処理システムと接触させることを含む、方法。
【請求項38】
排気ガスが約150−300℃の温度である、請求項37に記載の、内燃機関からの排気ガスを処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンNOトラップ触媒、内燃機関からの排気ガスを処理する方法、及びリーンNOトラップ触媒を備えた内燃機関のための排出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、政府の法規制の対象である窒素酸化物(「NOx」)、一酸化炭素、及び未燃焼炭化水素を含む多種多様な汚染物質を含有する排気ガスを発生させる。ますます厳しい国及び地方の法令により、そのようなディーゼル又はガソリンエンジンから排出され得る汚染物質の量は減少してきている。排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広範に利用されており、典型的には、排出制御システムがその作動温度(典型的には200℃以上)に到達すると、非常に高い効率を実現する。しかし、このようなシステムは、その作動温度以下(「コールドスタート」時)では比較的非効率である。
【0003】
排気ガスをクリーンにするために利用される排ガス処理成分の1つは、NO吸着体触媒(又は「NOトラップ」)である。No吸着体触媒は、NOをリーン排気条件下で吸着し、吸着したNOをリッチ条件下で放出し、放出したNOを還元してNを生成する装置である。NO吸着体触媒は、NOの吸蔵のためのNO吸着剤と、酸化/還元触媒とを典型的に含む。
【0004】
NO吸着成分は、アルカリ土類金属、アルカリ金属、希土類金属又はこれらの組み合わせを典型的に含む。これらの金属は、酸化物の形態で典型的に見出される。酸化/還元触媒は典型的に、1種以上の貴金属、好ましくは白金、パラジウム及び/又はロジウムである。通常、酸化機能を果たすために白金が含められ、還元機能を果たすためにロジウムが含められる。酸化/還元触媒とNO吸着剤は典型的には、排気システムにおける使用のための無機酸化物など、担体材料上に担持される。
【0005】
NO吸着体触媒は、3つの機能を果たす。第1に、酸化触媒の存在下で酸化窒素が酸素と反応して、NOを生成する。第2に、NO吸着剤によって、NOが無機硝酸塩の形態で吸着される(例えば、BaO又はBaCOがNO吸着剤上でBa(NOに変換される)。最後に、エンジンがリッチ条件下で作動する場合、吸蔵された無機硝酸塩は分解してNO又はNOを生成し、これがその後、還元触媒の存在下で一酸化炭素、水素及び/又は炭化水素との反応によって(或いはNH又はNCO中間体を介して)還元されてNを生成する。通常、窒素酸化物は、熱の存在下では窒素、二酸化炭素及び水に、排気流内では一酸化炭素と炭化水素に変換される。
【0006】
PCT国際出願国際公開第2004/076829号は、SCR触媒の上流に配置されたNO吸蔵触媒を含む排ガス浄化システムを開示している。そのNO吸蔵触媒は、少なくとも1種の白金族金属(Pt、Pd、Rh又はIr)でコーティング又は活性化されている少なくとも1種のアルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含む。特に好ましいNO吸蔵触媒には白金でコーティングされた酸化セリウムと、それに加えて、酸化アルミニウムをベースとする担体上の酸化触媒とての白金が含まれることが教示されている。EP第1027919号は、アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、チタニア及び/又はランタナ等の多孔性担体材料と、少なくとも0.1重量%の貴金属(Pt、Pd及び/又はRh)とを含むNO吸着性材料を開示している。アルミナに担持された白金が例示されている。
【0007】
さらに、米国特許第5656244号及び第5800793号には、NO吸蔵/放出触媒と三元触媒とを組み合わせたシステムが記載されている。NO吸着剤はアルミナ、ムライト、コーディエライト又は炭化ケイ素に担持されている他の金属に加えて、クロム、銅、ニッケル、マンガン、モリブデン又はコバルトの酸化物を含むことが教示されている。
【0008】
PCT国際出願国際公開第2009/158453号には、アルカリ土類元素などのNO捕捉成分を含有する少なくとも1つの層と、セリアを含有し、アルカリ土類元素を実質的に含まない別の層とを含むリーンNOトラップ触媒が記載されている。この構成は、LNTの低温(例えば約250℃未満)性能を向上させることを意図している。
【0009】
米国特許出願公開第2015/0336085号には、担体上の少なくとも2種の触媒活性コーティングから成る窒素酸化物吸蔵触媒が記載されている。下側コーティングは、酸化セリウム、並びに白金及び/又はパラジウムを含有する。下側コーティングの上に施される上側コーティングは、アルカリ土類金属化合物、混合酸化物、並びに白金及びパラジウムを含有する。この窒素酸化物吸蔵触媒は、リーンバーンエンジン(例えばディーゼルエンジン)からの排気ガス中のNOの、200から500℃の間の温度での変換に特に適しているといわれている。
【0010】
どのような自動車システム及びプロセスでも、排ガス処理システムのさらなる改善を達成することが望ましい。本発明者らは、改善されたCO及び/又はHC転化率に加えて、改善されたNox吸蔵及び変換特性を有する新しいリーンNOトラップ触媒を発見した。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様では、
i)1種以上の貴金属、第1の無機酸化物、及び任意選択的に促進剤を含む第1の層;並びに
ii)1種以上の白金族金属、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、及び第2の無機酸化物を含む第2の層
を含むリーンNOトラップ触媒が提供され、ここで第1の層は、酸素吸蔵能(OSC)材料を実質的に含まない。
【0012】
本発明の第2の態様では、前述のリーンNOトラップ触媒と、内燃機関とを含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排気処理システムが提供される。
【0013】
本発明の第3の態様では、排気ガスを前述のリーンNOトラップ触媒又は排気処理システムと接触させることを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明がより十分に理解され得るように、単なる実例として、添付の図面に即して下記の実施例を提供する。
図1】失活状態及び活性化状態の比較触媒1及び触媒2の累積NO汚染物質排出量に関するMVEG−B評価である。
図2】失活状態及び活性化状態の比較触媒1及び触媒2の累積CO汚染物質排出量に関するMVEG−B評価である。
図3】失活状態及び活性化状態の比較触媒1及び触媒2の累積HC汚染物質排出量に関するMVEG−B評価である。;
図4】失活状態及び活性化状態の比較触媒1及び触媒2のSCATライトオフ(Light−Off)評価である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
「ウオッシュコート」という用語は、当該技術分野ではよく知られており、通常は触媒の製造中に基材に塗布される接着性コーティングを指す。
【0016】
本明細書で用いられる頭字語「PGM」とは、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、一般に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から成る群より選択される金属、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム及び白金から成る群より選択される金属を指す。一般に、用語「PGM」とは、好ましくはロジウム、白金及びパラジウムから成る群より選択される金属を指す。
【0017】
本明細書で使用される「貴金属」という用語は、一般に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金及び金から成る群より選択される金属を指す。一般に、「貴金属」という用語は、好ましくはロジウム、白金、パラジウム及び金から成る群より選択された金属を指す。
【0018】
本明細書で用いられる「混合酸化物」という用語は通常、当該技術分野で従来から知られているような、酸化物の単相混合物を指す。本明細書で用いられる「複合酸化物」という用語は通常、当該技術分野で従来から知られているような、二相以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0019】
用語「促進剤」は、化学反応、例えば触媒化学反応を促進又は増強するのに有効な物質を意味する。そのような化学反応の例には、限定されないが、COと炭化水素の酸化、NOからNOへの酸化、及びNOからN又はNHへの還元が含まれる。
【0020】
材料に関して本明細書で用いられる「実質的に含まない」という表現は、材料が少量、例えば≦5重量%、好ましくは≦2重量%、さらに好ましくは≦1重量%で存在し得ることを意味する。表現「〜を実質的に含まない」は、表現「〜を含まない」を包含する。
【0021】
本明細書で用いられる「充填量」という用語は、重量基準でg/ftを単位にした測定値をいう。
【0022】
第1の態様において、本発明は、
i)1種以上の貴金属、第1の無機酸化物、及び任意選択的に促進剤を含む第1の層;並びに
ii)1種以上の白金族金属、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、及び第2の無機酸化物を含む第2の層
を含むリーンNOトラップ触媒であって、第1の層が酸素吸蔵能(OSC)材料を実質的に含まないリーンNOトラップ触媒を含む。
【0023】
「実質的に含まない」とは、OSC材料が少量、例えば≦5重量%、好ましくは≦2重量%、さらに好ましくは≦1重量%で存在し得ることを意味する。
【0024】
1種以上の貴金属は、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、銀、金、及びこれらの混合物から成る群より選択される。特に好ましくは、1種以上の貴金属は白金とパラジウムの混合物又は合金であり、ここで白金対パラジウムの比は、好ましくは1:1から10:1(w/wベース)であり、特に好ましくは約2:1(w/wベース)である。
【0025】
1種以上の貴金属は通常、第1の無機酸化物と接触している。好ましくは、1種以上の貴金属は、第1の無機酸化物に担持されている。
【0026】
第1の無機酸化物は好ましくは、第2、3、4、5、13及び14族元素の酸化物である。第1の無機酸化物は好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、チタニア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物から成る群より選択される。第1の無機酸化物は特に好ましくは、アルミナ、シリカ−アルミナ、セリア又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第1の無機酸化物の1つは、アルミナ又はシリカ−アルミナ、特にシリカ−アルミナである。
【0027】
好ましい第1の無機酸化物は、10−1500m/gの範囲内の表面積、0.1−4mL/gの範囲内の細孔容積、及び約10−1000オングストロームの細孔径を好ましくは有する。80m/gを超える表面積を有する高表面積無機酸化物、例えば高表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい第1の無機酸化物には、マグネシア/アルミナ複合酸化物が含まれ、これは、任意選択的にセリウム含有成分(例えばセリア)をさらに含む。そのような場合セリアは、マグネシア/アルミナ複合酸化物の表面に、例えばコーティングとして存在し得る。
【0028】
促進剤は、マンガン、ビスマス、又は第1のアルカリ若しくはアルカリ土類金属を含み得る。好ましくは、促進剤は、第1のアルカリ又はアルカリ土類金属を含む。特に好ましくは、促進剤は、第1のアルカリ又はアルカリ土類金属を含むときは、マンガン又はビスマスを含まない。
【0029】
促進剤は、存在する場合、組成物の重量%で表して、好ましくは0.1−10重量%、さらに好ましくは0.5−5重量%、例えば約3−4重量%である。
【0030】
促進剤が第1のアルカリ又はアルカリ土類金属である場合、第1のアルカリ又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウムである。バリウムは、好ましくはCeO−BaCO複合材料として存在する。当該材料は、当該技術分野で知られている任意の方法、例えば初期湿潤含浸(incipient wetness impregnation)又は噴霧乾燥により実現することができる。
【0031】
促進剤は好ましくは、第1の無機酸化物上に堆積している。
【0032】
第1の層は、酸化層、例えば炭化水素をCO及び/若しくはCOに酸化するのに適した、並びに/又はNOをNOに酸化するのに適したディーゼル用酸化触媒(DOC)層として機能し得る。第1の層は、好ましくはリーンDOC層である。
【0033】
第1の層は、炭化水素吸収材料をさらに含んでもよい。
【0034】
炭化水素吸収(adsorbing)材料は、典型的にはモレキュラーシーブ(例えばアルミノシリケートゼオライト、又はSAPOなどのアイソタイプ)、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ニオビア、活性炭、多孔質グラファイト、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される。炭化水素吸収(adsorbing)材料は、好ましくはゼオライトである。適切なゼオライトの例には、方沸石、チャバザイト、エリオナイト、ナトロライト、モルデナイト、スティルバイト及び濁沸石(laumantite)等の天然ゼオライトと、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、X型ゼオライト、L型ゼオライト、エリオナイト、モルデナイト、ベータ型ゼオライト及びZSM−5等の合成ゼオライトとが含まれる。炭化水素吸収材料は、好ましくはゼオライト、特に好ましくはベータ型ゼオライトである。
【0035】
炭化水素吸収材料(例えばゼオライト、さらに好ましくはベータ型ゼオライト)は、第1の層中に10−30重量%、特に好ましくは15−20重量%の量で存在し得る。
【0036】
1種以上の白金族金属(PGM)は、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物から選択される。特に好ましくは、1種以上の白金族金属は白金とパラジウムの混合物又は合金であり、ここで白金対パラジウムの比は、好ましくは2:1から12:1(w/wベース)であり、特に好ましくは約5:1(w/wベース)である。
【0037】
リーンNOトラップ触媒は、好ましくは0.1−10重量パーセントのPGM、さらに好ましくは0.5−5重量パーセントのPGM、最も好ましくは1−3重量パーセントのPGMを含む。
【0038】
第1のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア−ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ−セリア−ジルコニア混合酸化物から成る群より選択される。第1のOSC材料は、バルクセリアを好ましくは含む。さらに、第1のOSC材料は、NO吸蔵材料として、及び/又は1種以上の貴金属のための担体材料として機能することができる。
【0039】
第2の層は、第2のアルカリ若しくはアルカリ土類金属、ネオジム又はランタンをさらに含んでもよい。第2のアルカリ若しくはアルカリ土類金属、ネオジム又はランタンは、第1のOSC材料上に堆積されていてもよい。あるいは又はさらに、第2のアルカリ若しくはアルカリ土類金属、ネオジム又はランタンは、第2の無機酸化物上に堆積されていてもよい。すなわち、いくつかの実施態様では、第2のアルカリ若しくはアルカリ土類金属、ネオジム又はランタンは、第1のOSC材料と第2の無機酸化物の両方に堆積されて、すなわち存在していてよい。
【0040】
第2のアルカリ又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウムである。バリウムは、存在する場合、No吸蔵材料として含まれ、すなわち第2の層はNO吸蔵材料であり得る。促進剤は、存在する場合、組成物の重量%で表して、好ましくは0.1−10重量%、さらに好ましくは0.5−5重量%、例えば約4.5重量%のバリウムの量で存在する。
【0041】
バリウムは、好ましくはCeO−BaCO複合材料として存在する。当該材料は、当該技術分野で知られている任意の方法、例えば初期湿潤含浸又は噴霧乾燥により実現することができる。したがって、OSCとバリウムは、一緒にNO吸蔵材料を形成することができる。
【0042】
第2の無機酸化物は好ましくは、第2、3、4、5、13及び14族元素の酸化物である。第2の無機酸化物は好ましくは、アルミナ、マグネシア、ランタナ、シリカ、チタニア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物から成る群より選択される。第2の無機酸化物は特に好ましくは、アルミナ、ランタナ/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい無機酸化物の1つは、ランタナ/アルミナ複合酸化物又はマグネシア/アルミナ複合酸化物、特に好ましくはランタナ/アルミナ複合酸化物である。
【0043】
第2の無機酸化物は、1種以上の白金族金属及び/又は第2のアルカリ若しくはアルカリ土類金属であるネオジム若しくはランタンのための担体材料であり得る。
【0044】
好ましい第2の無機酸化物は、10−1500m/gの範囲内の表面積、0.1−4mL/gの範囲内の細孔容積、及び約10−1000オングストロームの細孔径を好ましくは有する。80m/gを超える表面積を有する高表面積無機酸化物、例えば高表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい第2の無機酸化物には、マグネシア/アルミナ複合酸化物が含まれ、これは、任意選択的にセリウム含有成分(例えばセリア)をさらに含む。そのような場合セリアは、マグネシア/アルミナ複合酸化物の表面に、例えばコーティングとして存在し得る。
【0045】
本発明のリーンNOトラップ触媒は、当業者に知られているさらなる成分を含んでもよい。本発明の組成物は、例えば少なくとも1種のバインダー及び/又は少なくとも1種の界面活性剤をさらに含み得る。バインダーが存在する場合、分散性アルミナバインダーが好ましい。
【0046】
本発明のリーンNOトラップ触媒は、好ましくは、軸方向長さL.を有する金属又はセラミック基材をさらに含み得る。好ましくは、基材は、フロースルーモノリス又はフィルターモノリスであるが、好ましくはフロースルーモノリス基材である。
【0047】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と、第1の面との間の長手方向を画定する第2の面とを有する。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延在する複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に延在し、複数の内面(例えば各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面及び第2の面にそれぞれ開口部を有する。疑義を避けるために、フロースルーモノリス基材は、ウォールフローフィルターではない。
【0048】
通常、第1の面は基材の入口端にあり、第2の面は基材の出口端にある。
【0049】
チャネルは、一定の幅であってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0050】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は1平方インチ当たり100から500チャネル、好ましくは200から400チャネルを有する。例えば、第1の面上で、開いた第1のチャネルと閉じた第2のチャネルの密度は、1平方インチ当たり200から400チャネルである。チャネルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形又はその他の多角形の断面を有し得る。
【0051】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体としても機能する。モノリス基材を形成するのに適した材料は、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウム等のセラミック様材料、又は多孔質耐火金属材料を含む。このような材料及び多孔質モノリス基材の製造におけるこれらの使用は、当該技術分野でよく知られている。
【0052】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一成分(すなわち単一のブリック)であることに留意すべきである。それにもかかわらず、排気処理システムを形成するとき、使用されるモノリスは、本明細書に記載されるように複数のチャネルを一緒に接着することによって、又は複数のより小さなモノリスを一緒に接着することによって形成され得る。そのような技術は、当該技術分野においてよく知られており、排気処理システムの適切なケーシング及び構成も同様である。
【0053】
リーンNOトラップ触媒がセラミック基材を含む実施態様において、セラミック基材は、任意の適切な耐火材料、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート及びメタロアルミノシリケート(コーディエライト及びスポジュメンなど)又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製され得る。コーディエライト、マグネシウムアルミノシリケート及び炭化ケイ素が特に好ましい。
【0054】
リーンNOトラップ触媒が金属基材を含む実施態様において、金属基材は、チタン及びステンレス鋼、並びに、鉄、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムをその他の微量金属に加えて含有するフェライト合金等、任意の適切な金属、特に耐熱性の金属及び金属合金で作製され得る。
【0055】
本発明のリーンNOトラップ触媒は、任意の適切な手段によって調製され得る。例えば、第1の層は、1種以上の貴金属と、第1の無機酸化物と、存在する場合には任意選択の促進剤とを任意の順序で混合することによって調製され得る。添加の方法及び順序は特に重要とは考えられていない。例えば、第1の層の各成分は、他の任意の1又は複数の成分に同時に添加されてもよく、または任意の順序で順次添加されてもよい。第1の層の各成分は、含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、沈殿等によって、又は当該技術分野で一般的に知られている他の任意の手段によって第1の層の他の任意の成分に加えることができる。
【0056】
第2の層は、1種以上の白金族金属と、第1のOSC材料と、第2の無機酸化物と、存在する場合には第2のアルカリ若しくはアルカリ土類金属、ネオジム又はランタンを任意の順序で混合することによって調製できる。添加の方法及び順序は特に重要とは考えられていない。例えば、第2の層の各成分は、他の任意の1又は複数の成分に同時に添加されてもよく、または任意の順序で順次添加されてもよい。第2の層の各成分は、含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、沈殿等によって、又は当該技術分野で一般的に知られている他の任意の手段によって第2の層の他の任意の成分に加えることができる。
【0057】
好ましくは、前述のリーンNOトラップ触媒は、ウオッシュコート手順を用いてリーンNOトラップ触媒を基材上に堆積させることによって調製される。ウオッシュコート手順を用いてリーンNOトラップ触媒を調製するための代表的な方法を以下に記載する。下記の方法は本発明の様々な実施態様に応じて変更可能であることが理解されよう。
【0058】
ウオッシュコートは好ましくは、適切な溶媒中、好ましくは水中で、前述のリーンNOトラップ触媒の成分の微細粒子を最初にスラリー化して、スラリーを形成することによって実施される。スラリーは、好ましくは5−70重量パーセントの固体、さらに好ましくは10−50重量パーセントの固形分を含有する。好ましくは、スラリーを形成する前に、実質的に全ての固体粒子が平均直径で20ミクロン未満の粒径を有することを確実にするために、粒子は粉砕される(milled)か又は別の粉砕(comminution)プロセスに供される。安定剤、バインダー、界面活性剤又は促進剤等の追加の成分も、水溶性若しくは水分散性化合物又は錯体の混合物として、スラリー内に取り込まれ得る。
【0059】
その後、リーンNOトラップ触媒の所望の充填量が基材上に堆積されるように、基材をスラリーで1回以上コーティングすることができる。
【0060】
好ましくは、第1の層は、金属又はセラミック基材上に直接担持/堆積される。「上に直接」とは、第1の層と金属又はセラミック基材との間に介在層又は下地層が存在しないことを意味する。
【0061】
第2の層は、好ましくは第1の層の上に堆積される。第2の層は、特に好ましくは第1の層の上に直接堆積される。「上に直接」とは、第2の層と第1の層との間に介在層又は下地層が存在しないことを意味する。
【0062】
したがって、本発明の好ましいリーンNOトラップ触媒では、第1の層は金属又はセラミック基材上に直接堆積され、第2の層は第1の層上に堆積される。このようなリーンNOxトラップ触媒は、二層リーンNOトラップであると考えられる。
【0063】
第1の層及び/又は第2の層は、好ましくは基材の軸方向長さLの少なくとも50%、さらに好ましくは基材の軸方向長さLの少なくとも70%、特に好ましくは基材の軸方向長さLの少なくとも80%に堆積される。
【0064】
本発明の特に好ましいリーンNOトラップ触媒では、第1の層は、基材の軸方向長さLの少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%に堆積され、第2の層は、基材の軸方向長さLの少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%に堆積される。したがって、本発明の特に好ましいいくつかのリーンNOトラップ触媒では、第1の層が基材の軸方向長さLの少なくとも50%に堆積され、第2の層が基材の軸方向長さLの少なくとも95%に堆積される。
【0065】
好ましくは、リーンNOトラップ触媒は、基材と、その基材上の少なくとも1つの層とを含む。好ましくは、その少なくとも1つの層は、前述のような第1の層を含む。これは、上記のウオッシュコート手順により製造することができる。No吸着体触媒組成物の1つの層に、前述の第2の層などの1つ以上の追加の層を付加することができる。
【0066】
あるいは、第1の層及び/又は第2の層を押し出して、フロースルー又はフィルター基材を形成してもよい。そのような場合、リーンNOトラップ触媒は、前述のように第1の層及び/又は第2の層を含む押出リーンNOトラップ触媒である。
【0067】
本発明のさらなる態様は、前述のリーンNOトラップ触媒と、内燃機関とを含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排気処理システムである。好ましいシステムでは、内燃機関は、ディーゼルエンジン、好ましくは軽量ディーゼルエンジンである。リーンNOトラップ触媒は、密結合位置(close-coupled position)又は床下位置に配置することができる。
【0068】
排気処理システムは典型的には、排出制御装置をさらに含む。
【0069】
排出制御装置は好ましくは、リーンNOトラップ触媒の下流にある。
【0070】
排出制御装置の例としては、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、リーンNOトラップ(LNT)、リーンNO触媒(LNC)、選択式触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル用酸化触媒(DOC)、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)、選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)、コールドスタート触媒(dCSCTM)、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。このような排出制御装置は、当該技術分野でよく知られている。
【0071】
前述の排出制御装置のいくつかは、濾過基材を有する。濾過基材を有する排出制御装置は、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、キャタライズド・スートフィルター(CSF)、及び選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒から成る群より選択され得る。
【0072】
排気処理システムは、リーンNOトラップ(LNT)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、選択式触媒還元(SCR)触媒、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)、選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらの2つ以上の組み合わせから成る群より選択される排出制御装置を備えることが好ましい。さらに好ましくは、排出制御装置は、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、選択式触媒還元(SCR)触媒、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)、選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらの2つ以上の組み合わせから成る群より選択される。さらにより好ましくは、排出制御装置は、選択式触媒還元(SCR)触媒又は選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒である。
【0073】
本発明の排気処理システムは、SCR触媒又はSCRFTM触媒を備える場合、窒素系還元剤(例えばアンモニア)又は尿素若しくはギ酸アンモニウムなどのアンモニア前駆体、好ましくは尿素を、リーンNOトラップ触媒の下流及びSCR触媒又はSCRFTM触媒の上流で排気ガスに噴射するためのインジェクターをさらに備えていてもよい。
【0074】
このようなインジェクターは、窒素系還元剤前駆体の供給源(例えばタンク)に流体連結することができる。排気ガス中への前駆体のバルブ制御された投与量は、適切にプログラミングされたエンジン管理手段及び排気ガスの組成をモニタリングするセンサーによって得られる閉ループ又は開ループフィードバックによって調整され得る。
【0075】
アンモニアはまた、カルバミン酸アンモニウム(固体)を加熱することによって生成され得、生成されたアンモニアは排気ガス中に噴射することができる。
【0076】
インジェクターの代わりに又はインジェクターに加えて、アンモニアが、in situで(例えばSCR触媒又はSCRFTM触媒の上流に配置されたLNTのリッチ再生の間に)生成され得る。よって、排気処理システムは、排気ガスを炭化水素で富化するためのエンジン管理手段をさらに備えていてもよい。
【0077】
SCR触媒又はSCRFTM触媒は、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタニド及び第VIII族遷移金属(例えばFe)のうち少なくとも1つから成る群より選択される金属を含んでいてもよく、この金属は耐火性酸化物又はモレキュラーシーブに担持される。金属は、好ましくはCe、Fe、Cu及びこれらの任意の2つ以上の組み合わせから選択され、さらに好ましくは金属はFe又はCuである。
【0078】
SCR触媒又はSCRFTM触媒用の耐火性酸化物は、Al、TiO、CeO、SiO、ZrO、及びこれらの2つ以上を含む混合酸化物から成る群より選択され得る。非ゼオライト触媒はまた、タングステン酸化物(例えばV/WO/TiO、WO/CeZrO、WO/ZrO又はFe/WO/ZrO)も含み得る。
【0079】
SCR触媒、SCRFTM触媒又はこれらのウオッシュコートが少なくとも1種類のモレキュラーシーブ、例えばアルミノシリケートゼオライト又はSAPOなどを含む場合が特に好ましい。少なくとも1種類のモレキュラーシーブは、小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブであり得る。本明細書において「小細孔モレキュラーシーブ」とは、CHAなど、最大環サイズ8を有するモレキュラーシーブを意味し;本明細書において「中細孔モレキュラーシーブ」とは、ZSM−5など、最大環サイズ10を有するモレキュラーシーブを意味し;本明細書において「大細孔モレキュラーシーブ」とは、ベータなど、最大環サイズ12を有するモレキュラーシーブを意味する。小細孔モレキュラーシーブはSCR触媒における使用にとって潜在的に有利である。
【0080】
本発明の排気処理システムにおいて、SCR触媒又はSCRFTM触媒にとって好ましいモレキュラーシーブは、AEI、ZSM−5、ZSM−20、ZSM−34を含むERI、モルデナイト、フェリエライト、ベータを含むBEA、Y、CHA、Nu−3を含むLEV、MCM−22、及びEU−1(好ましくはAEI又はCHA)から成る群より選択され、約10対約50、例えば約15対約40のシリカ対アルミナの比を有する合成アルミノシリケートゼオライトモレキュラーシーブである。
【0081】
第1の排気処理システムの実施態様において、排気処理システムは、本発明のリーンNOトラップ触媒及びキャタライズド・スートフィルター(CSF)を備える。典型的には、リーンNOトラップ触媒の後にキャタライズド・スート・フィルター(CSF)が続く(例えば、リーンNOトラップ触媒がCSFの上流にある)。よって、例えば、リーンNOトラップ触媒の出口はキャタライズド・スートフィルターの入口に接続されている。
【0082】
第2の排気処理システムの実施態様は、本発明のリーンNOトラップ触媒、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)、及び選択式触媒還元(SCR)触媒を備える排気処理システムに関する。
【0083】
典型的には、リーンNOトラップ触媒の後にキャタライズド・スート・フィルター(CSF)が続く(例えば、リーンNOトラップ触媒がCSFの上流にある)。典型的には、キャタライズド・スート・フィルターの後に選択式触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、キャタライズド・スート・フィルターがSCR触媒の上流にある)。窒素系還元剤のインジェクターは、キャタライズド・スートフィルター(CSF)と選択式触媒還元(SCR)触媒の間に配置してもよい。よって、キャタライズド・スートフィルター(CSF)の後に窒素系還元剤のインジェクターが続いてもよく(例えば、CSFがインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に選択式触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクターがSCR触媒の上流にある)。
【0084】
第3の排気処理システムの実施態様において、排気処理システムは、本発明のリーンNOトラップ触媒、選択式触媒還元(SCR)触媒、及びキャタライズド・スート・フィルター(CSF)又はディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)のいずれかを備える。
【0085】
第3の排気処理システムの実施態様では、典型的には本発明のリーンNOトラップ触媒の後に選択式触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、リーンNOトラップ触媒がSCR触媒の上流にある)。窒素還元剤のインジェクターは、酸化触媒と選択式触媒還元(SCR)触媒との間に配置されてもよい。よって、触媒化モノリス基材の後に窒素系還元剤のインジェクターが続いてもよく(例えば、触媒化モノリス基材がインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に選択式触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクターがSCR触媒の上流にある)。選択式触媒還元(SCR)触媒の後に、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)又はディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)が続く(例えば、SCR触媒がCSF又はDPFの上流にある)。
【0086】
第4の排気処理システムの実施態様は、本発明のリーンNOトラップ触媒と、選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒とを含む。本発明のリーンNOトラップ触媒の後に、典型的に選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒が続く(例えば、リーンNOトラップ触媒がSCRFTM触媒の上流にある)。
【0087】
窒素系還元剤のインジェクターは、リーンNOトラップ触媒と選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒との間に配置してもよい。よって、リーンNOトラップ触媒の後に窒素系還元剤のインジェクターが続いてもよく(例えば、リーンNOトラップ触媒がインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクターがSCRFTM触媒の上流にある)。
【0088】
排気処理システムが、上述の第2から第4の排気システムの実施態様のような選択式触媒還元(SCR)触媒又は選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒を含む場合、ASCは、SCR触媒又はSCRFTM触媒の下流に(すなわち別個のモノリス基材として)配置することができ、又はさらに好ましくは、SCR触媒を含むモノリス基材の下流端若しくは終端のゾーンをASCのための担体として使用することができる。
【0089】
本発明の別の態様は、車両に関する。該車両は、内燃機関、好ましくはディーゼルエンジンを備える。内燃機関、好ましくはディーゼルエンジンは、本発明の排気処理システムに連結されている。
【0090】
ディーゼルエンジンは、≦50ppmの硫黄、より好ましくは≦15ppmの硫黄、例えば≦10ppmの硫黄、さらにより好ましくは≦5ppmの硫黄を含む燃料、好ましくはディーゼル燃料で動作するよう構成又は適合されている。
【0091】
車両は、米国又は欧州の法律で規定されているような軽量ディーゼル車両(LDV)であり得る。軽量ディーゼル車は、典型的には<2840kgの重量、さらに好ましくは<2610kgの重量を有する。米国では、軽量ディーゼル車両(LDV)とは、≦8500ポンド(米国ポンド)の総重量を有するディーゼル車両を指す。欧州では、軽量ディーゼル車両(LDV)という用語は、(i)運転席の他に8席以下の座席を備え、5トン以下の最大質量を有する乗用車、及び(ii)12トン以下の最大質量を有する貨物輸送車両を指す。
【0092】
あるいは、車両は、米国の法律で規定されているような、>8500ポンド(米国ポンド)の総重量を有するディーゼル車などの大型ディーゼル車両(HDV)であってもよい。
【0093】
本発明のさらなる態様は、排気ガスを前述のリーンNOトラップ触媒又は前述の排気処理システムと接触させることを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法である。好ましい方法では、該排気ガスは、リッチガス混合物である。さらなる好ましい方法では、排気ガスは、リッチガス混合物とリーンガス混合物との間を循環する。
【0094】
内燃機関からの排気ガスを処理するいくつかの好ましい方法では、排気ガスは、約150−300℃の温度である。
【0095】
内燃機関からの排気ガスを処理するさらに好ましい方法では、排気ガスは、前述のリーンNOトラップ触媒に加えて、1つ以上のさらなる排出制御装置に接触している。1つ又は複数の排出制御装置は好ましくは、リーンNOトラップ触媒の下流にある。
【0096】
さらなる排出制御装置の例としては、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、リーンNOトラップ(LNT)、リーンNO触媒(LNC)、選択式触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル用酸化触媒(DOC)、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)、選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)、コールドスタート触媒(dCSCTM)、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。このような排出制御装置は、当該技術分野でよく知られている。
【0097】
前述の排出制御装置のいくつかは、濾過基材を有する。濾過基材を有する排出制御装置は、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)、及び選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒から成る群より選択され得る。
【0098】
方法は、リーンNOトラップ(LNT)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、選択式触媒還元(SCR)触媒、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)、選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらの2つ以上の組み合わせから成る群より選択される排出制御装置と排気ガスとを接触させることを含むのが好ましい。さらに好ましくは、排出制御装置は、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、選択式触媒還元(SCR)触媒、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)、選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらの2つ以上の組み合わせから成る群より選択される。さらにより好ましくは、排出制御装置は、選択式触媒還元(SCR)触媒又は選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒である。
【0099】
本発明の方法が排気ガスをSCR触媒又はSCRFTM触媒と接触させることを含む場合、その方法は、リーンNOトラップ触媒の下流及びSCR触媒又はSCRFTM触媒の上流での窒素系還元剤(例えばアンモニア)又は尿素若しくはギ酸アンモニウムなどのアンモニア前駆体、好ましくは尿素の排気ガスへの噴射をさら含んでもよい。
【0100】
このような噴射は、インジェクターによって実施することができる。インジェクターは、窒素系還元剤前駆体の供給源(例えばタンク)に流体連結することができる。排気ガス中への前駆体のバルブ制御された投与量は、適切にプログラミングされたエンジン管理手段及び排気ガスの組成をモニタリングするセンサーによって得られる閉ループ又は開ループフィードバックによって調整され得る。
【0101】
アンモニアはまた、カルバミン酸アンモニウム(固体)を加熱することによって生成され得、生成されたアンモニアは排気ガス中に噴射することができる。
【0102】
インジェクターの代わりに又はインジェクターに加えて、アンモニアが、in situで(例えばSCR触媒又はSCRFTM触媒の上流に配置されたLNTのリッチ再生の間に)生成され得る。よって、この方法は、炭化水素による排気ガスの富化を含む。
【0103】
SCR触媒又はSCRFTM触媒は、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタニド及び第VIII族遷移金属(例えばFe)のうちの少なくとも1つから成る群より選択される金属を含んでいてもよく、この金属は耐火性酸化物又はモレキュラーシーブに担持される。金属は、好ましくはCe、Fe、Cu及びこれらの任意の2つ以上の組み合わせから選択され、さらに好ましくは金属はFe又はCuである。
【0104】
SCR触媒又はSCRFTM触媒用の耐火性酸化物は、Al、TiO、CeO、SiO、ZrO、及びこれらの2つ以上を含む混合酸化物から成る群より選択され得る。非ゼオライト触媒はまた、タングステン酸化物(例えばV/WO/TiO、WO/CeZrO、WO/ZrO又はFe/WO/ZrO)も含み得る。
【0105】
SCR触媒、SCRFTM触媒又はこれらのウオッシュコートが少なくとも1種類のモレキュラーシーブ、例えばアルミノシリケートゼオライト又はSAPOなどを含む場合が特に好ましい。少なくとも1種類のモレキュラーシーブは、小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブであり得る。本明細書において「小細孔モレキュラーシーブ」とは、CHAなど、最大環サイズ8を有するモレキュラーシーブを意味し;本明細書において「中細孔モレキュラーシーブ」とは、ZSM−5など、最大環サイズ10を有するモレキュラーシーブを意味し;本明細書において「大細孔モレキュラーシーブ」とは、ベータなど、最大環サイズ12を有するモレキュラーシーブを意味する。小細孔モレキュラーシーブはSCR触媒における使用にとって潜在的に有利である。
【0106】
本発明の排気ガスを処理する方法において、SCR触媒又はSCRFTM触媒にとって好ましいモレキュラーシーブは、AEI、ZSM−5、ZSM−20、ZSM−34を含むERI、モルデナイト、フェリエライト、ベータを含むBEA、Y、CHA、Nu−3を含むLEV、MCM−22、及びEU−1(好ましくはAEI又はCHA)から成る群より選択され、約10対約50、例えば15対約40のシリカ対アルミナの比を有する合成アルミノシリケートゼオライトモレキュラーシーブである。
【0107】
第1の実施態様において、この方法は、排気ガスを本発明のリーンNOトラップ触媒及びキャタライズド・スート・フィルター(CSF)と接触させることを含む。典型的には、リーンNOトラップ触媒の後にキャタライズド・スート・フィルター(CSF)が続く(例えば、リーンNOトラップ触媒がCSFの上流にある)。よって、例えば、リーンNOトラップ触媒の出口はキャタライズド・スート・フィルターの入口に接続されている。
【0108】
本方法の第2の実施態様は、排気ガスを本発明のリーンNOトラップ触媒、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)、及び選択式触媒還元(SCR)触媒と接触させることを含む方法に関する。
【0109】
典型的には、リーンNOトラップ触媒の後にキャタライズド・スート・フィルター(CSF)が続く(例えば、リーンNOトラップ触媒がCSFの上流にある)。典型的には、キャタライズド・スート・フィルターの後に選択式触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、キャタライズド・スート・フィルターがSCR触媒の上流にある)。窒素系還元剤のインジェクターは、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)と選択式触媒還元(SCR)触媒の間に配置してもよい。よって、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)の後に窒素系還元剤のインジェクターが続いてもよく(例えば、CSFがインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に選択式触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクターがSCR触媒の上流にある)。
【0110】
排気ガスを処理する方法の第3の実施態様において、本方法は、排気ガスを本発明のリーンNOトラップ触媒、選択式触媒還元(SCR)触媒、及びキャタライズド・スート・フィルター(CSF)又はディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)のいずれかと接触させることを含む。
【0111】
この排気ガスを処理する方法の第3の実施態様において、典型的には本発明のリーンNOトラップ触媒の後に選択式触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、リーンNOトラップ触媒がSCR触媒の上流にある)。窒素還元剤のインジェクターは、酸化触媒と選択式触媒還元(SCR)触媒との間に配置されてもよい。よって、リーンNOトラップ触媒の後に窒素系還元剤のインジェクターが続いてもよく(例えば、リーンNOトラップ触媒がインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に選択式触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクターがSCR触媒の上流にある)。選択式触媒還元(SCR)触媒の後に、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)又はディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)が続く(例えば、SCR触媒がCSF又はDPFの上流にある)。
【0112】
排気ガスを処理する方法の第4の実施態様は、本発明のリーンNOトラップ触媒と選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒と含む。本発明のリーンNOトラップ触媒の後に、典型的に選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒が続く(例えば、リーンNOトラップ触媒がSCRFTM触媒の上流にある)。
【0113】
窒素系還元剤のインジェクターは、リーンNOトラップ触媒と選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒との間に配置してもよい。よって、リーンNOトラップ触媒の後に窒素系還元剤のインジェクターが続いてもよく(例えば、リーンNOトラップ触媒がインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクターがSCRFTM触媒の上流にある)。
【0114】
排気処理システムが、上述の第2から第4の方法の実施態様のような、選択式触媒還元(SCR)触媒又は選択式触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒を含む場合、ASCは、SCR触媒又はSCRFTM触媒の下流に(すなわち別個のモノリス基材として)配置することができ、又はさらに好ましくは、SCR触媒を含むモノリス基材の下流端端若しくは終端のゾーンをASCのための担体として使用することができる。
【実施例】
【0115】
次に、以下の非限定的な実施例によって本発明を例証する。
【0116】
[材料]
特に明記しない限り、全ての材料は市販されており、既知の供給元から入手したものである。
【0117】
[触媒1(比較例)]
第1の層:
CeO−BaCO複合材料を、高表面積セリア上で酢酸バリウムを噴霧乾燥させ、続いて650℃で1時間か焼することによって形成した。
1.71g/in[Al.Ce(12.5%)](市販)を蒸留水でスラリーにし、その後d90が13−15μmになるまで粉砕した。その後、このスラリーに95g/ftのマロン酸Pt及び19g/ftの硝酸Pd溶液を添加し、均質になるまで撹拌した。Pt/Pdを[Al.Ce(12.5%)]担体上に1時間吸着させた。
その後これに3.33g/inのCeO−BaCO複合材料を加えた。得られたスラリーをウオッシュコートにし、天然増粘剤(ナトロゾール)で増粘した。
その後、このウオッシュコートを標準的なコーティング手順を用いてセラミック又は金属モノリス上にコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間か焼した。
Baが約4.3重量%(4.6mol%)で存在した。
【0118】
第2の層:
0.5g/in[Ce.Zr]をスラリーにし、5g/ftの硝酸ロジウムをそれに添加した後、その混合物のpHをアンモニアで〜7に調整することによって第2のウオッシュコートを調製した。得られたスラリーをウオッシュコートにし、天然増粘剤(ナトロゾール)で増粘した。
その後、第2のウオッシュコートを標準的なコーティング手順を用いて、先にか焼したウオッシュコートの上にコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間か焼した。
【0119】
[触媒2]
第1の層:
1.2g/in[Al.Si(5%)](市販)を蒸留水でスラリーにし、その後d90が13−15μmになるまで粉砕した。このスラリーに200g/ftのクエン酸、続いて100g/ftの酢酸バリウムを添加し、混合物を均質になるまで撹拌した。43g/ftの硝酸白金及び22g/ftの硝酸パラジウムを添加し、均質になるまで撹拌した。Pt/Pdを[Al.Si(5%)]担体上に1時間吸着させる。その後、これに0.3g/inのベータゼオライト(市販)を添加し、均質になるまで撹拌した。得られたスラリーをウオッシュコートにし、天然増粘剤(ナトロゾール)で増粘した。
その後、このウオッシュコートを標準的なコーティング手順を用いてセラミック又は金属モノリス上にコーティングし、50%のコーティング深さを目標とし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間か焼した。
【0120】
第2の層:
CeO−BaCO複合材料を、高表面積セリア上で酢酸バリウムを噴霧乾燥させ、続いて650℃で1時間か焼することによって形成した。
1.24g/in[Al.La(3%)]を蒸留水でスラリーにし、その後d90が13−15μmになるまで粉砕することによって、第2のウオッシュコートを調製した。その後、このスラリーに72.9g/ftのマロン酸Pt及び14.6g/ftの硝酸Pd溶液を添加し、均質になるまで撹拌した。Pt/Pdを[Al.La(3%)]担体上に1時間吸着させた。
その後これに3.0g/inのCeO−BaCO複合材料を加えた。得られたスラリーをウオッシュコートにし、天然増粘剤(ナトロゾール)で増粘した。
その後、このウオッシュコートを標準的なコーティング手順及び90%の目標コーティング深さを用いて、先にか焼したウオッシュコートの上にコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間か焼した。
【0121】
実験結果
10%HO、20%O及び残部Nから成るガス流中で、触媒1及び触媒2を800℃で5時間水熱熟成させた。 これらの触媒の模擬的MVEG−B排出サイクルについて、ベンチに取り付けた1.6リットルディーゼルエンジンを使用して性能試験を実施した。排出は、触媒前後で測定した。
【0122】
[実施例1]
累積NO汚染物質排出量を図1に示す。エンジンアウト(触媒の前)のNO排出量と触媒の後ろのNO排出量の差異は、触媒上で除去されたNOの量を示した。図1から分かるように、リーン−DOC下層ゾーンを含む触媒2は、リーン−DOCゾーンを含まない比較触媒1よりも、失活状態でNOを吸着する能力が大きい。
【0123】
[実施例2]
累積CO汚染物質排出量を図2に示す。エンジンアウト(触媒の前)のCO排出量と触媒の後ろのCO排出量の差異は、触媒上で除去されたCOの量を示した。図2から分かるように、リーン−DOC下層ゾーンを含む触媒2は、リーン−DOCゾーンを含まない比較触媒1よりも、失活状態及び活性化状態でCOを変換する能力が大きい。
【0124】
[実施例3]
累積HC汚染物質排出量を図3に示す。エンジンアウト(触媒の前)のHC排出量と触媒の後ろのHC排出量の差異は、触媒上で除去されたHCの量を示した。図33から分かるように、リーン−DOC下層ゾーンを含む触媒2は、リーン−DOCゾーンを含まない比較触媒1よりも、失活状態及び活性化状態でHCを変換する能力が大きかった。
【0125】
[実施例4]
10%HO、20%O及び残部Nから成るガス流中で、触媒1及び触媒2を800℃で5時間水熱熟成させた。両方の触媒をSCATライトオフ試験でテストした。試験条件を表1に示す。図4から分かるように、リーン−DOC下層ゾーンを含む触媒2は、リーン−DOCゾーンを含まない比較触媒1よりも、失活状態でCO変換のためのライトオフ温度が低かった。
表1: SCATライトオフ試験 ガス混合物及び条件
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】