(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-514534(P2020-514534A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】ノズル構造
(51)【国際特許分類】
C23C 4/129 20160101AFI20200424BHJP
C23C 4/134 20160101ALI20200424BHJP
B05B 7/20 20060101ALI20200424BHJP
B05B 7/22 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
C23C4/129
C23C4/134
B05B7/20
B05B7/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-534269(P2019-534269)
(86)(22)【出願日】2017年12月19日
(85)【翻訳文提出日】2019年8月2日
(86)【国際出願番号】EP2017083546
(87)【国際公開番号】WO2018114952
(87)【国際公開日】20180628
(31)【優先権主張番号】102016125587.4
(32)【優先日】2016年12月23日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ラングナー シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】トラチェ リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】トマ フィロフィア−ラウラ
【テーマコード(参考)】
4F033
4K031
【Fターム(参考)】
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB09X
4F033QB12Y
4F033QB14Y
4F033QB19
4F033QD03
4F033QD15
4F033QG06
4F033QG11
4F033QG14
4F033QG20
4K031DA01
4K031DA04
4K031EA07
(57)【要約】
本発明は、粒子を含む懸濁液または前駆体溶液を溶射するためのノズル構造に関するもので、粒子または前駆体溶液によって基板上に層が形成され、バーナーチャンバ内またはプラズマトーチ内に懸濁液または前駆体溶液を供給することで粒子の加熱および加速が達成され、ノズル構造は接続部分、ホルダーおよびノズルインサートが存在する。ノズルインサートは、バーナー室の方向に又はHVOF火炎又はプラズマトーチ内に垂直に配置された管状要素と、設置状態でホルダーに形成されたシートに対向するバーナー室と反対側に配置されたフランジ状の拡大部分である端面とを有する。フランジ状の拡大部分とシートの輪郭は互いに相補的であり、その結果、フランジ状の拡大部分とシートの表面は互いに直接接触し、この領域にエンドストップとシールが形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に層を形成し、粒子が加熱および加速されるようにバーナーチャンバ内またはプラズマトーチ内に供給される、粒子を含む懸濁液または前駆体溶液が用いて溶射するためのノズル構造であって、懸濁液または前駆体溶液のフィード(4)のためのポート(1)、ホルダー(2)およびノズルインサート(3)を有して形成され、
前記ノズルインサート(3)は、バーナー室の方向に、もしくはHVOF火炎又はプラズマトーチの中に垂直に配置された管状要素(3.1)と、バーナー室の反対側に配置された端面には、取り付けられた状態で、ホルダー(2)に形成されたシートに当接しているフランジ状の拡大部分(3.2)を有し、この場合、
前記フランジ状の拡大部分(3.2)および前記シートの輪郭は、互いに相補的に形成されているので、前記フランジ状の拡大部分(3.2)および前記シートの表面は互いに直接接触し、これにより、この領域にはエンドストップとシールとが形成されるようになっている、ノズル構造。
【請求項2】
前記フランジ状の拡大部分(3.2)がポリマーから、またはポリマーを用いて形成され、前記管状要素(3.1)が金属、好ましくは不動態化された耐食ステンレス鋼から形成されることを特徴とする請求項1に記載のノズル構造。
【請求項3】
前記管状要素(3.1)と前記フランジ状の拡大部分(3.2)とが、フォームフィット、力嵌合および/または材料接合によって互いに連結されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のノズル構造。
【請求項4】
前記フランジ状の拡大部分(3.2)上に円錐形の領域があることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のノズル構造。
【請求項5】
前記ノズルインサート(3)が前記ホルダー(2)内に交換可能に固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のノズル構造。
【請求項6】
長さが異なるおよび/または内径が異なる前記管状要素(3.1)を有する前記ノズルインサート(3)を、前記ホルダー(2)に固定することができることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のノズル構造。
【請求項7】
前記管状要素(3.1)が、0.8mm、好ましくは0.25mmの最大内径を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のノズル構造。
【請求項8】
前記ホルダー(2)が冷却可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のノズル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁液または前駆体溶液を用いて溶射するためのノズル構造に関する。この場合、基板上に層を形成することができる粒子を含む懸濁液は、バーナーチャンバ内または出現する火炎/プラズマジェットの中に供給される。懸濁液は液体と粒子で形成される。使用され得る粒子は金属および/またはセラミック粒子であり、その平均粒径d
50は5μmまでのナノ/サブミクロンの範囲であり得る。懸濁液ではなく、前駆体溶液を注入することができる。
【背景技術】
【0002】
バーナーチャンバ内では、粒子は、燃料の酸化による高速酸素−燃料(HVOF)プロセスを使用して、気体または液体燃料により加熱および加速されることができる。懸濁液を形成した液体は蒸発、熱分解または酸化される。
【0003】
大気圧プラズマ溶射(APS:atmospheric plasma spraying)法では、懸濁液をプラズマトーチに供給する。そこで懸濁液を蒸発させ、得られた粒子を加熱する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
懸濁液を供給するために、ノズルが使用され、これらは特に500μm未満の小さい内径で問題を引き起こす。したがって、ノズル開口部から出る懸濁液ジェット、特にフルジェットの形態で、適切な持続可能なジェット形状を達成することは不可能である。結果として、個々の液滴の分離および噴流の崩壊が起こり得る。
【0005】
懸濁液が流れるノズル孔の製造方法の結果として、ジェット運動の方向の所望の所定の軸方向からの角度のずれが生じる。懸濁液ジェットがノズルボアから出る軸方向もまた徐々に又は絶えず変化することができ、その結果「ダンスシング(dancing)」ジェットはバーナーチャンバ内又はプラズマトーチ内を通過する。
【0006】
例えば、汚染物質がノズルボア内に沈殿した場合、またはそこに隆起部が形成された場合、体積流量の減少および/または懸濁液がノズルボアを通ってそこから流出する速度の増加も起こり得る。
【0007】
これらの欠点は実質的に製造上の理由で生じる。通常、ノズル孔は機械加工工程中の穿孔または浸食によって作られる。ここで、浸食は、特に小さい内径に対して好ましい。しかしながら、いずれにせよ、内径および均質な円筒形状の所望のおよび要求される寸法精度を維持することは不可能である。ノズル孔の入口および出口開口部の領域において、ここで特別な問題が生じる。尾根が形成され得る。
【0008】
特に不利な点は、製造のための比較的高いコストであり、それは通常のそして望ましい小さい内径および高いアスペクト比(内径に対する長さの比)の場合に必要とされる。
【0009】
ノズルボア内の堆積物は、仮に除去することができるとしても、多大な努力を払うことによってのみ除去することができる。
【0010】
ジェット形成における誤差は、溶射によって製造されたコーティングの結果に悪影響を及ぼす。
【0011】
したがって、本発明の目的は、溶射中に懸濁液を供給する可能な方法を特定することであり、それによって品質を改善することができ、同時にコストを下げそして柔軟性を増大させることができる。
【0012】
本発明によれば、この目的は請求項1の特徴を有するノズル構造によって達成される。本発明の有利な構成および発展形態は従属請求項に記載の特徴によって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による、基板上に層を形成し、粒子が加熱および加速されるためにバーナーチャンバ内またはプラズマトーチ内に供給される、粒子を含む懸濁液または前駆体溶液を用いた溶射のためのノズル構造は、懸濁液または前駆体溶液のフィードのためのポート、ホルダーおよびノズルインサートを有して形成される。以下の文章では、フィードを懸濁フィードとして参照する。
【0014】
ノズルインサートは、バーナー室の方向に、又は、HVOF火炎又はプラズマトーチ内に垂直に配置された管状要素と、バーナー室の反対側に配置された端面にフランジ状の拡大部分を有し、取り付けられた状態で、ホルダーに形成されたシートに当接する。フランジ状の拡大部分およびシートの輪郭は、互いに相補的に形成されているので、フランジ状の拡大部分およびシートの表面は互いに直接接触し、これにより、この領域にはエンドストップとシールが形成されるようになっている。
【0015】
前駆体溶液としては、例えば、水または有機溶媒、例えばエタノール、イソプロパノールまたはブタノールに溶解した無機塩または有機金属化合物を使用することができる。
【0016】
特に、ラインまたはホースによって懸濁液フィードがポートから放たれた後、ノズルインサートは対応する開口部を通してホルダーに挿入され、そしてフランジ状の拡大部分がシートに押し上げられる。懸濁液フィードが取り付けられた後、ノズル構造は意図した通りに使用することができる。ここで、ノズルインサートを新しい又は異なるノズルインサートと交換することができることは明らかである。交換は磨耗のためであるか、または懸濁液の供給条件が変更されることが意図されているときに実行されてもよい。この場合、新しいまたは異なるノズルインサートは、管状要素の変更された内径および/または管状要素の変更された長さを有することができる。
【0017】
この場合のフランジ状の拡大部分は、ノズルインサートにおいて同じ幾何学的設計および寸法を有する。
【0018】
管状要素とフランジ状の拡大部分は、有利には、力嵌合、フォームフィットおよび/または材料接合で互いに接続されている2つの個々の部分であるべきである。この場合、接続部は、例えば、接着、はんだ付け、溶接および/または圧入によって製造することができる。
【0019】
管状要素は、所望の長さに切断された管状半製品の一部であり得る。そのような半製品は、それ自体既知の製造方法を用いて費用効果的に製造することができる。
【0020】
フランジ状の拡大部分は、有利にはポリマーから、またはポリマーを用いて形成することができ、管状要素は金属、好ましくは不動態化ステンレス鋼から形成することができる。この場合、フランジ状の拡大部分は、完全にポリマーから形成することができる。しかしながら、ポリマーで形成されたコーティングのみがフランジ状の拡大部分の領域に存在すること、またはポリマーとの複合材料がそれに使用されることも可能である。ポリマーの特性の結果として、シールは改善され得る。さらに、金属−ポリマー複合材料として形成されたノズルインサートの製造は、フランジ状の拡大部分をプラスチック射出成形によって管状要素上に容易に成形することができるという点で容易に達成することができる。
【0021】
有利には、フランジ状の拡大部分の上に円錐形の領域が存在することができ、円錐形の領域は好ましくは設置状態でホルダーのシートを支える。ホルダーの内側およびシートの領域に形成された円筒形領域は、その寸法および幾何学的設計が円錐形領域から離れたフランジ状の幅広部分の外部輪郭に一致したときにノズルインサートの案内機能を果たすことができる。
【0022】
管状要素は、最大内径0.8mm、好ましくは0.25mmを有するべきである。
【0023】
ホルダーを冷却することができるときにも有益である。この目的のために、冷却のための(気体または液体)流体が流れることができるダクトが、ホルダー内に、またはホルダーとノズルインサートとの間に形成され得る。
【0024】
ホルダーの内壁と管状要素の外壁との間には、半径方向を囲む間隙があってもよく、それによって断熱効果が達成され得る。この領域には環状要素があってもよく、その中にボアが形成され、それを通して管状要素が案内されてもよい。この場合、環状要素が管状要素の案内および半径方向固定の機能を果たすことができるように、このボアの内径は管状要素の外径と一致しなければならない。環状要素は、この目的のために、熱伝導率が低い材料からなるべきである。
【0025】
本発明を用いると、ノズルインサートについて、1ユーロ未満の単価を達成することができる。別のまたは磨耗したノズルインサートと交換するのは素早く簡単である。特に、管状要素は、それぞれ所望の幾何学的設計および寸法を維持することができるように、高い一定の寸法精度で利用可能にすることができる。
【0026】
その結果、溶射プロセスにおける、非常に容易に再現可能で信頼性のある懸濁液の供給を達成することができる。単に対応する方法でホルダーを設計することによって、ノズルインサートは、異なる製造業者からのバーナー(スプレーガン)に、そして異なる方法で実行することができる溶射プロセスのために使用することができる。
【0027】
ノズルインサートの適切な選択を通して、これは特に管状要素の内径およびその長さに関連して、溶射プロセスへの異なる供給条件を必要に応じて考慮に入れることができる。
【0028】
懸濁液を噴霧するためのガスの供給を統合することも可能である。その結果、非常に小さな液滴の形態(スプレー形態)で管状要素から出た後、懸濁液を加熱することができ、その過程で液体を蒸発または酸化させ、粒子を加熱し、そしてコーティングされている基材の表面の方向に加速させることができる。
【0029】
以下の文章において、本発明を実施例によってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明によるノズル構造の一例を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この場合、
図1にはごく一部しか示されていない懸濁液フィード4がポート1に固定されている。ポート1は、ユニオンナットとの従来の接続部とすることができる。ポート1は、内側が中空のホルダー2上にある。
【0032】
ポート1と懸濁液フィード4との間の接続を分離した後、ノズルインサート3を、ホルダー2におけるポート1の領域で開口している側から導入し、ホルダー2の内側に形成されたシート(seat)まで導入することができる。
【0033】
ノズルインサート3には管状要素3.1が形成され、その上に、端面がホルダー内部の方向に向けられたフランジ状の拡大部分3.2が形成されている。フランジ状の拡大部分3.2における、出口開口の方向に向けられた端面は、円錐状に形成されている。ホルダー2内のシートは、対応して相補的に円錐状に形成された領域を有する。少なくともそこでは、シートの表面とフランジ状の拡大部分の表面とは互いに直接接触している。先の領域に隣接するポート1の方の領域は、ホルダー2内で中空の円筒として形成され、およびノズルインサート3のフランジ状の拡大部分3.2で円筒の外側面として形成されることができ、そして、ホルダー2内におけるノズルインサート3の縦方向のガイドを形成する。
【0034】
管状要素3.1は、この例では長さ9mm、内径0.25mm、外径0.52mmを有する。それはステンレス鋼製の管状半製品から所望の長さに切断する方法によって得られた。
【0035】
その端面の一方において、フランジ状の拡大部分3.2は、それ自体公知の方法でプラスチック射出成形によって形成され、その過程で、管状部材3.1に、少なくとも力嵌合および/または材料接合で接続される。フランジ状の拡大部分3.2は、プラスチック射出成形によって加工することができる実在のあらゆる所望のポリマーで形成することができる。
【0036】
図1に示す例では、管状要素3.1は、バーナー室(図示せず)の方向または溶射によって被覆される基材の方向において追加の内部中空シース5が存在している。シース5は、ホルダー2の構成部品であってもよいし、または、例えば、ねじ結合によってホルダー2に別個の要素として固定されてもよい。シース5は、特に、管状要素3.1に対する保護機能を果たすことができる。
【国際調査報告】