特表2020-514714(P2020-514714A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-514714水素を含みうるガスの燃焼特性を推定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-514714(P2020-514714A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】水素を含みうるガスの燃焼特性を推定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/22 20060101AFI20200424BHJP
   G01F 1/34 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
   G01N33/22 E
   G01F1/34 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-535340(P2019-535340)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(85)【翻訳文提出日】2019年8月26日
(86)【国際出願番号】FR2017053613
(87)【国際公開番号】WO2018122490
(87)【国際公開日】20180705
(31)【優先権主張番号】1663468
(32)【優先日】2016年12月28日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517022108
【氏名又は名称】エンジー
【氏名又は名称原語表記】ENGIE
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】ウルリアック,マテュー
(72)【発明者】
【氏名】カペラ,サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ラントワン,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】マンジュー,ナウシャド
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA04
2F030CC11
2F030CE09
2F030CE22
(57)【要約】
【解決手段】燃料ガスのグループに属する燃料ガスの少なくとも1つの燃焼特性を推定する方法であって、少なくとも1つの特性は、ウォッベ指数又は高位発熱量であり、方法は、
・燃料ガスの少なくとも2つの流動特性を測定すること(E01)と、
・燃料ガスに含まれている水素の含有量XH2を測定すること(E02)と、
・少なくとも1つの特性ΞGN/H2は、次の経験的アフィン関係を用いて推定されること(E03)と、
を含む、方法。
【数1】

ここで、
α,β,及びγは、燃料ガスのグループに関する所定の係数である。Yは、燃料ガスの少なくとも2つの流動特性の測定値から生成される燃料ガスの物理特性を表す変数である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスのグループに属する燃料ガスの少なくとも1つの燃焼特性を推定する方法であって、前記少なくとも1つの特性は、ウォッベ指数又は高位発熱量であり、前記方法は、
・前記燃料ガスの少なくとも2つの流動特性を測定すること(E01)と、
・前記燃料ガスに含まれている水素の含有量XH2を測定すること(E02)と、
・前記少なくとも1つの特性ΞGN/H2は、次の経験的なアフィン関係を用いて推定されること(E03)と、
を含む、方法。
【数1】
ここで、
α,β,及びγは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、
Yは、前記燃料ガスの前記少なくとも2つの流動特性の測定値から生成される前記燃料ガスの物理特性を表す変数である。
【請求項2】
前記係数α,β,及びγは、入力として前記水素の含有量XH2に関する前記測定値を有し、出力として前記係数α,β,及びγを提供する表から読み取られた係数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表は、前記係数α,β,及びγを、前記水素の含有量XH2に関して1%の幅を有する複数の数値範囲と関連付ける、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記係数α,β,及びγの値は、前記物理特性を表す前記Yの値及び前記燃焼特性が知られている、前記燃料ガスのグループの既知のガスに関するデータセットから得られる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記燃料ガスのグループの既知のガスに関する前記データセットから、燃焼特性と物理特性を表すYに関する値とをランダムに生成することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウォッベ指数及び前記高位発熱量は、2つの経験的なアフィン関係を用いて推定される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記推定されたウォッベ指数及び前記推定された高位発熱量から前記燃料ガスの密度を推定することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料ガスの前記燃焼特性を調節すること、又は、燃料ガスの前記燃焼特性と、推定された空気の化学量論的な体積もしくは前記推定された特性に対応する推定された燃焼性指数とを調節することを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記燃料ガスの前記少なくとも1つの燃焼特性は、前記ウォッベ指数IWGN/H2を含み、前記燃料ガスの少なくとも2つの流動特性の前記測定は、流体狭窄部を通る音速流の状態にある前記燃料ガスの質量流量を測定すること(E12)を含み、前記測定は、前記狭窄部の上流で測定された絶対圧力及び前記狭窄部の上流で測定された絶対温度で行われ、
前記方法は、測定された基準ガスの絶対圧力及び測定された基準ガスの絶対温度で、前記流体狭窄部を通る音速流の状態にある基準ガスの質量流量の測定が行われる校正手順(E11)をさらに含み、
前記ウォッベ指数IWGN/H2を推定する(E14)ために使用される前記経験的なアフィン関係は、次の式で記述される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【数2】
【数3】
ここで、
mes,2は、測定された前記燃料ガスの前記質量流量であり、
mesは、測定された前記燃料ガスの前記絶対圧力であり、
mesは、測定された前記燃料ガスの前記絶対温度であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記質量流量であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記絶対圧力であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記絶対温度であり、
D,E,及びFは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、前記係数α,β,及びγに対応する。
【請求項10】
前記燃料ガスの前記ウォッベ指数が推定され、前記方法は、前記燃料ガスの前記密度を測定すること、及び前記推定されたウォッベ指数と測定された前記ガスの密度とから前記高位発熱量を推定すること、をさらに含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記燃料ガスの前記少なくとも1つの燃焼特性は、前記高位発熱量PCSGN/H2を含み、
前記燃料ガスの少なくとも2つの流動特性の前記測定は、
・圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある前記燃料ガスの前記質量流量を測定(E22)し、前記測定は、前記燃料ガスの粘度及び基準ガスの粘度に依存すること、
・圧力降下を生じさせる前記装置の下流で、熱式質量流量計を用いて前記燃料ガスの前記質量流量を測定(E23)し、前記測定は、前記燃料ガスの比熱容量及び前記基準ガスの前記粘度に依存すること、
を含み、
前記高位発熱量PCSGN/H2を推定する(E25)ために使用される前記経験的なアフィン関係は、次の式で記述される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【数4】

【数5】
ここで、
Zは、変数Yに対応する変数であり、
mes,1は、測定された圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある前記燃料ガスの前記質量流量であり、
mes,2は、圧力降下を生じさせる前記装置の下流で測定された前記燃料ガスの前記質量流量であり、
A,B,及びCは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、前記係数α,β,及びγに対応する。
【請求項12】
燃料ガスのグループに属する燃料ガスの少なくとも1つの燃焼特性を推定するための装置であって、前記少なくとも1つの特性は、ウォッベ指数又は高位発熱量であり、前記装置は、
・前記燃料ガスの少なくとも2つの流動特性を測定するための少なくとも2つのモジュール(3a,3b)と、
・前記燃料ガスに含まれている水素の含有量XH2を測定するためのモジュール(4)と、
・次の経験的なアフィン関係を用いて前記少なくとも1つの特性ΞGN/H2を推定するように構成されたモジュール(5)と、
を含む、装置。
【数6】
ここで、
α,β,及びγは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、
Yは、前記燃料ガスの前記少なくとも2つの流動特性の測定値から生成される前記燃料ガスの物理特性を表す変数である。
【請求項13】
前記燃料ガスの前記少なくとも1つの燃焼特性は、前記ウォッベ指数IWGN/H2を含み、前記装置は、
・前記燃料ガスの流れを受け入れるための入口(11)、
・基準ガスの流れを受け入れるための入口(12)、
・前記燃料ガスの前記流れ又は前記基準ガスの前記流れを管(13)に導くためのセレクタ及び案内モジュール(31,35)、
・流体狭窄部(32)、及び、
・前記流体狭窄部を通る音速流の状態にある前記燃料ガスの質量流量を測定するためのモジュール(33)であって、前記狭窄部の上流で絶対圧力を測定するためのサブモジュール、及び前記狭窄部の上流で絶対温度を測定するためのサブモジュール、を含むモジュール(33)、
を備え、
前記ウォッベ指数IWGN/H2を推定するために使用される前記経験的なアフィン関係は、次の式で記述される、請求項12に記載の装置。
【数7】
【数8】
ここで、
mes,2は、測定された前記燃料ガスの前記質量流量であり、
mesは、測定された前記燃料ガスの前記絶対圧力であり、
mesは、測定された前記燃料ガスの前記絶対温度であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記質量流量であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記絶対圧力であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記絶対温度であり、
D,E,及びFは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、前記係数α,β,及びγに対応する。
【請求項14】
前記装置は、前記燃料ガスの前記ウォッベ指数を推定するのに適しており、前記装置は、前記燃料ガスの密度を測定するためのモジュールをさらに備え、前記少なくとも1つの特性を推定するために構成されている前記モジュール(5)は、さらに、前記推定されたウォッベ指数及び前記ガスの測定された前記密度から、前記高位熱容量を推定するように構成されている、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記燃料ガスの前記少なくとも1つの燃焼特性は、前記高位発熱量PCSGN/H2を含み、前記装置は、
・前記燃料ガスの流れを受け入れるための入口(111)、
・圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある前記燃料ガスの前記質量流量を測定するためのモジュール(132)であって、前記測定は、前記燃料ガスの粘度及び基準ガスの粘度に依存するモジュール(132)、及び、
・圧力降下を生じさせる前記装置の下流で、熱式質量流量計を用いて前記燃料ガスの前記質量流量を測定するためのモジュール(133)であって、前記測定は、前記燃料ガスの比熱容量及び基準ガスの熱容量に依存するモジュール(133)、
を備え、
前記高位発熱量PCSGN/H2を推定するために使用される前記経験的なアフィン関係は、次の式で記述される、請求項12又は13に記載の方法。
【数9】
【数10】
ここで、
Zは、変数Yに対応する変数であり、
mes,1は、測定された圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある前記燃料ガスの前記質量流量であり、
mes,2は、圧力降下を生じさせる前記装置の下流で測定された前記燃料ガスの前記質量流量であり、
A,B,及びCは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、前記係数α,β,及びγに対応する。
【請求項16】
前記経験的なアフィン関係を用いて、前記少なくとも1つの特性ΞGN/H2を推定するために構成されている前記モジュールは、さらに、空気の化学量論的な体積又は燃焼性指数を推定するように構成されている、請求項12から15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記燃料ガスの前記燃焼特性を調節するためのモジュール、又は、燃料ガスの前記燃焼特性と、推定された空気の化学量論的な体積もしくは前記推定された特性に対応する推定された燃焼性指数とを調節するためのモジュールをさらに備える、請求項12から16のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスのグループの一部を形成する燃料ガスの燃焼特性を推定する一般分野に関し、少なくとも1つの特性は、ウォッベ指数又は高位発熱量である。
【背景技術】
【0002】
本発明の特定の用途は、水素を含有する燃料ガス、例えば、体積で0%から20%の範囲にある水素の量を含有する燃料ガスの燃焼特性を推定することにある。
【0003】
再生可能資源は、断続的かつエネルギーの必要量と相関関係がないように使用することがあるため、再生可能エネルギー源を使用する際には、エネルギーを貯蔵するための手段の使用が必要となることがある。このことは、特に、太陽光発電、又は、風力タービンを用いた発電の場合に適用される。
【0004】
再生可能エネルギー源からのエネルギーを貯蔵するための手段として、水の電気分解によって得られる水素を使用することが提案されている。
【0005】
この方法で生成される水素は、次いで貯蔵庫、例えば、地下に貯蔵でき、又は、天然ガス供給網に導入することもできる。得られるガスは、したがって、0%から20%の範囲で水素を含みうる。
【0006】
比重の平方根に対する燃料ガスの発熱量の比率であるウォッベ指数(キロワット時毎ノルマル立方メートル(kWh/Nm3))、及び高位発熱量(kWh/Nm3)は、家庭的利用であろうと産業的利用であろうと、ガスバーナーの燃焼の設定に影響を与える2つの主な燃料の特徴的な数値である。
【0007】
ガスの用途の種類、及び使用される測定手段(流量が吸引発生手段によって測定されるかどうか)に応じて、これら2つのパラメータのうちの一方又は他方が考慮に入れられる。
【0008】
一例として、一定の供給圧力で供給されるインジェクタ(例えば、クックトップ又はリボンバーナー)の場合、供給される出力は、圧力、インジェクタの貫通部、水頭損失、及び燃料のウォッベ指数に依存する。
【0009】
質量又は体積の流量計が利用できる適用例では、供給される出力は、測定された流速及び発熱量に依存する。
【0010】
特に、バーナーによって供給される熱量は、ウォッベ指数又は高位発熱量(PCS)のいずれかに比例する。同様に、ヨーロッパで流通している、水素を含まない天然ガスの場合、化学量論での燃焼を得るために必要な空気の量は、燃料ガスのこれらの特性のうちの一方又は他方に依存する。
【0011】
天然ガスの輸送及び流通のためのヨーロッパのネットワークは、ますます網目状になり、様々な供給元によって供給されている。そのため、天然ガスの特性(中でもウォッベ指数及びPCS)は、したがって、ネットワークの任意の点で、無視できない程度で(±5%以上)時間とともに変化しうることに留意するべきである。
【0012】
そのため、ガラス製造、セラミック、発電、石灰、及び冶金産業で行われるような産業的過程は、これらの変化に対して敏感である。結果として、燃焼を最適化するために、燃焼を調節するための具体的な解決策を利用することが必要である。この種類の調節を実行するために、ウォッベ指数又は高位発熱量を測定することが可能である。
【0013】
天然ガスの場合、単純に、堅牢に、そして正確にこれらのパラメータを測定するための技術的な解決策がある。しかし、水素が燃料中に存在するときには、そのような解決策は不十分である。水素の体積が1%を超えると、これらのパラメータの測定における誤差が大幅に増加し、測定が再現可能となる保証はない。
【0014】
さらに、産業用の機器、さらには家庭用の機器でさえ、非常に小さい割合であっても、水素の添加に対して敏感でありうる。
【0015】
結果として、ガラス製造又は冶金工程のような高感度での使用だけでなく、ネットワークの操作者が利用者に供給されるガス燃料の燃焼特性を局所的に管理できるように、これらの新規な燃料の主要な燃焼パラメータを継続的な方法で定量できる新規な測定装置が必要である。
【0016】
ウォッベ指数及び発熱量を測定又は推定するための方法が提案されている。
【0017】
具体的に、おそらくゼロでない割合の水素を含む天然ガスのウォッベ指数及び/又は発熱量を測定するために使用されうる装置の4つのグループがある。
・熱量測定(発熱量用):測定は、制御された量のガスを燃焼させることを含む。その後、放出されるエネルギーは、(ガス又は水の)熱交換器を横切る入力/出力の温度差によって定量される。精度は10%のオーダー(すなわち、1.1kWh/Nm3)である。しかし、各測定は約10分かかる。その技術は、次第に使われなくなっている。
・燃焼測定(ウォッベ指数用):測定は、空気/ガスの混合物を燃焼させることを含む。燃焼生成物における酸素の含有量は、ジルコニアプローブによって測定される。残留している酸素の含有量は、燃焼性指数と相関しており、それ自体は、天然ガスに関して、ウォッベ指数と相関している。この種類の装置は、約15,000ユーロかかる。この種類の機器は、水素の含有量が低い混合物について作動する(体積で5%を超える水素の含有量に対しては、ウォッベ指数は、もはや燃焼性指数と直線的に比例しない)。この技術の欠点は、5%のオーダー(すなわち、0.75kWh/Nm3)と精度が低いこと、及び相当なメンテナンスを要すること(混合物の燃焼が起こるオーブンの高温による劣化)である。
・気相クロマトグラフィー(ウォッベ指数用及び発熱量用):この技術は、気体混合物から分子を分離するのに役立つ。ウォッベ指数及び発熱量は、ガスの組成に関する情報に基づいて計算されうる。高出力での燃料の燃焼機器(例えば、ガスタービン)の場合、気相クロマトグラフィーは、一般に、熱量測定及び燃焼測定に取って代わる。これらの測定装置の精度はよりよく、0.5%のオーダー(すなわち、ウォッベ指数に関して0.08kWh/Nm3)である。機器が水素分子を分離できる特定のセンサを備えているならば、この種類の機器は天然ガスと水素との混合物についても作動しうる。気相クロマトグラフィーの主な欠点は、昨今の改善が考慮されたとしても、費用である(費用はおそらく20,000ユーロから50,000ユーロの範囲にありうる)。さらに、最善の状況でも、気相クロマトグラフィー機器の応答時間は1分のオーダーである。したがって、測定されるガスと燃料の燃焼機器(例えば、バーナー)によって実際に使用されているガスとの間で不一致がありうる。
・相関装置(ウォッベ指数用又は高位発熱量用):ウォッベ指数又は高位発熱量と相関する1つ又は複数の物理的な数値がそのような装置で測定される。コンピュータによって実行される相関関係は、次に、ウォッベ指数又はPCSを推定するのに使用される。この種類の装置は、ヨーロッパで流通している種類の天然ガスに関して、1%以下の精度を得ることを可能にする。この種類の技術の利点は、応答速度(瞬時)、費用(10,000ユーロから20,000ユーロの範囲)、堅牢性、及びメンテナンスの削減である。それにもかかわらず、市販の装置は、天然ガスと水素との混合物について作動しない。実際の天然ガス(純粋なメタンではない)が体積で水素を数パーセント含むと、誤差は劇的に増加する。
【0018】
最新技術に含まれる文献EP 1 346 215には、相関関係によってウォッベ指数を測定するための装置が記載されている。
【0019】
文献US 4 384 792も知られており、これには、相関関係によってガス燃料のウォッベ指数を測定し調節するための装置、及びウォッベ指数を調節することが記載されている。
【0020】
文献US 6 244 097も知られており、これには、相関関係によってガス燃料の発熱量を測定するための装置が開示されている。
【0021】
最後に、既知の文献DE 4 118 781には、相関関係によってガス燃料の発熱量及びウォッベ指数を測定するための装置が開示されている。
【0022】
それらの文献に開示されている解決策は、相関装置の欠点を有する。特に、それらの精度は非常に低いので、調査対象の燃料ガスが水素を含むと、それらは使用に適さない。
【0023】
さらに、上記したように、天然ガスと水素との混合物について作動できる他の装置は、特に高価であり、このことは、それらの用途を、主要な産業グループに設置されうる種類の高出力の機器に限定する。
【0024】
本発明は、特に、これらの欠点の少なくともいくつかを軽減することを目的とする。
【発明の概要】
【0025】
本発明は、燃料ガスのグループに属する燃料ガスの少なくとも1つの燃焼特性を推定する方法を提案することによってこの要求を満たし、前記少なくとも1つの特性は、ウォッベ指数又は高位発熱量であり、前記方法は、
・前記燃料ガスの少なくとも2つの流動特性を測定することと、
・前記燃料ガスに含まれている水素の含有量XH2を測定することと、
・前記少なくとも1つの特性ΞGN/H2は、次の経験的なアフィン関係を用いて推定されることと、
を含む。
【0026】
【数1】
【0027】
ここで、
α,β,及びγは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、
Yは、前記燃料ガスの前記少なくとも2つの流動特性の測定値から生成される前記燃料ガスの物理特性を表す変数である。
【0028】
この方法は、したがって、相関型の方法に関連し、この方法は、したがって、簡単かつ安価に実施されうる。この方法により、結果を極めて迅速に得ることが可能となる。
【0029】
本発明は、従来技術の方法とは異なり、燃料ガスにおける水素の含有量を考慮に入れている。
【0030】
本発明は、0%から20%の範囲の水素の体積含有量を有する燃料ガスに適用できることに留意するべきである。
【0031】
本発明者らは、高位発熱量及びウォッベ指数の両方を推定するために同じ形式の経験的なアフィン関係を使用することが可能であることを見出した。
【0032】
参考として、測定されているのが高位発熱量であるかウォッベ指数であるかに応じて、燃料ガスの様々な異なる流動特性が測定されうる。言い換えれば、変数Yは、測定されているのが高位発熱量であるかウォッベ指数であるかに応じて異なる形式を有していてもよい。
【0033】
さらに、係数α,β,及びγは、定数である必要はなく、それらは、測定されているのが高位発熱量であるかウォッベ指数であるかに応じて、異なっていてもよい。
【0034】
燃料ガスの流動特性は、流動手段において測定された特性であること、及び、それらは、流量、温度、又は圧力を含む群から選択されてもよいことに留意するべきである。
【0035】
変数Yは、ガスの物理特性を表す。参考として、変数Yは、燃料ガスの粘度、その比熱容量(単位重量当たりの)、又はその密度などの1つ又は複数の物理特性と関連付けられていてもよい。変数Yがこれらの物理特性を表し、又は変数Yがこれらの物理特性に関連付けられていることは、これらの物理特性を関連付けている数学関数の形式でそれを記述できることを意味する。これらの特性は変数Yを生成するために使用されるので、変数Yは、物理特性を関連付けている数学関数の形式、及び、燃料ガスの流動特性を関連付けている数学関数の形式の両方で記述されていてもよい。特に、流動特性の測定の特定の種類に関して、複数のそのような測定を燃料ガスの流れの物理特性と関連付けることが可能である。
【0036】
したがって、
流動特性U1の測定に関してUmes,1の記号を使用し、
流動特性U2の測定に関してUmes,2の記号を使用し、
流動特性U3の測定に関してUmes,3の記号を使用することによって、以下が与えられる。
【0037】
【数2】
【0038】
特定の実施では、前記係数α,β,及びγは、入力として前記水素の含有量XH2に関する前記測定値を有し、出力として前記係数α,β,及びγを提供する表から読み取られた係数である。
【0039】
これにより、推定されている特性のより正確な推定を行うことが可能になる。
【0040】
特定の実施では、前記表は、前記係数α,β,及びγを、前記水素の含有量XH2に関して1%の幅を有する複数の数値範囲と関連付ける。
【0041】
言い換えれば、表は、1%のオーダーの粒度を有する。
【0042】
本発明の発明者らは、これにより、許容できるレベルの複雑さで満足できる精度が得られることを見出した。
【0043】
特定の実施では、前記係数α,β,及びγの値は、前記物理特性を表す前記Yの値及び前記燃焼特性が知られている、前記燃料ガスのグループの既知のガスに関するデータセットから得られる。
【0044】
「既知のガス」の語句は、組成が知られているガス、例えば、決定された化学的性質を持つ様々な成分の割合が知られているガスを包含するべく使用される。当業者は、そのようなガスの燃焼特性を決定する方法を知っており、特に、ゼロでない量の水素を含む既知のガスを利用できる。
【0045】
特定の実施では、前記燃料ガスのグループの既知のガスに関する前記データセットから、燃焼特性と物理特性を表すYに関する値とをランダムに生成することを含む。
【0046】
特定の実施では、前記ウォッベ指数及び前記高位発熱量は、2つの経験的なアフィン関係を用いて推定される。
【0047】
したがって、この方法を1回実施すれば、これらの燃焼特性の両方を推定することが可能である。
【0048】
特定の実施では、前記方法は、前記推定されたウォッベ指数及び前記推定された高位発熱量から前記燃料ガスの密度を推定することをさらに含む。
【0049】
特定の実施では、前記方法は、前記燃料ガスの前記燃焼特性を調節すること、又は、燃料ガスの前記燃焼特性と、推定された空気の化学量論的な体積もしくは前記推定された特性に対応する推定された燃焼性指数とを調節することを含む。
【0050】
特定の実施では、前記燃料ガスの前記少なくとも1つの燃焼特性は、前記ウォッベ指数IWGN/H2を含み、前記燃料ガスの少なくとも2つの流動特性の前記測定は、流体狭窄部(例えば、オリフィス又はマイクロノズル)を通る音速流の状態にある(すなわち、音速以上の速度で)前記燃料ガスの質量流量を測定することを含み、前記測定は、前記狭窄部の上流で測定された絶対圧力及び前記狭窄部の上流で測定された絶対温度で行われ、
前記方法は、前記狭窄部の上流で測定された基準ガスの絶対圧力及び前記狭窄部の上流で測定された基準ガスの絶対温度で、前記流体狭窄部を通る音速流の状態にある基準ガス(例えば、メタン)の質量流量の測定が行われる校正手順をさらに含み、
前記ウォッベ指数IWGN/H2を推定するために使用される前記経験的なアフィン関係は、次の式で記述される。
【0051】
【数3】
【0052】
【数4】
【0053】
ここで、
mes,2は、測定された前記燃料ガスの前記質量流量であり、
mesは、測定された前記燃料ガスの前記絶対圧力であり、
mesは、測定された前記燃料ガスの前記絶対温度であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記質量流量であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記絶対圧力であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記絶対温度であり、
D,E,及びFは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、係数α,β,及びγに対応する。
【0054】
特定の実施では、前記燃料ガスの前記ウォッベ指数が推定され、前記方法は、前記燃料ガスの前記密度を測定すること、及び前記推定されたウォッベ指数と測定された前記ガスの密度とから前記高位発熱量を推定すること、をさらに含む。
【0055】
特定の実施では、前記燃料ガスの前記少なくとも1つの燃焼特性は、前記高位発熱量PCSGN/H2を含み、前記燃料ガスの少なくとも2つの流動特性の前記測定は、
・圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある前記燃料ガスの前記質量流量を測定し、前記測定は、前記燃料ガスの粘度及び基準ガス(例えば、メタン)の粘度に依存すること、
・圧力降下を生じさせる前記装置の下流で、熱式質量流量計を用いて前記燃料ガスの前記質量流量を測定し、前記測定は、前記燃料ガスの比熱容量及び基準ガスの熱容量に依存すること、
を含み、
前記高位発熱量PCSGN/H2を推定するために使用される前記経験的なアフィン関係は、次の式で記述される。
【0056】
【数5】
【0057】
【数6】
【0058】
ここで、
Zは、変数Yに対応する変数であり、
mes,1は、測定された圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある前記燃料ガスの前記質量流量であり、
mes,2は、圧力降下を生じさせる前記装置の下流で測定された前記燃料ガスの前記質量流量であり、
A,B,及びCは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、前記係数α,β,及びγに対応する。
【0059】
例えば、基準ガスの粘度に関する値及び基準ガスの熱容量に関する値を得るために、基準ガスを用いて校正工程を実行することが可能である。
【0060】
この校正工程は、特に、水素を含有するガスのような、純粋ではないガスに関して、正確な測定を行うことを可能にする。
【0061】
本発明は、また、燃料ガスのグループに属する燃料ガスの少なくとも1つの燃焼特性を推定するための装置を提供し、前記少なくとも1つの特性は、ウォッベ指数又は高位発熱量であり、前記装置は、
・前記燃料ガスの少なくとも2つの流動特性を測定するための少なくとも2つのモジュールと、
・前記燃料ガスに含まれている水素の含有量XH2を測定するためのモジュールと、
・次の経験的なアフィン関係を用いて前記少なくとも1つの特性ΞGN/H2を推定するように構成されたモジュールと、
を含む。
【0062】
【数7】
【0063】
ここで、
α,β,及びγは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、
Yは、前記燃料ガスの前記少なくとも2つの流動特性の測定値から生成される前記燃料ガスの物理特性を表す変数である。
【0064】
この装置は、上記したように、本方法の実施の全てを実行するように構成されていてもよい。
【0065】
この装置は、燃料ガスの流動特性が測定されうるように、燃料ガスが流れる流動部材を含んでいてもよいことに留意するべきである。
【0066】
特定の実施形態では、前記燃料ガスの前記少なくとも1つの燃焼特性は、前記ウォッベ指数IWGN/H2を含み、前記装置は、
・前記燃料ガスの流れを受け入れるための入口、
・基準ガスの流れを受け入れるための入口、
・前記燃料ガスの前記流れ又は前記基準ガスの前記流れを管に導くためのセレクタ及び案内モジュール、
・流体狭窄部、及び、
・前記流体狭窄部を通る音速流の状態にある前記燃料ガスの質量流量を測定するためのモジュールであって、前記狭窄部の上流で絶対圧力を測定するためのサブモジュール、及び前記狭窄部の上流で絶対温度を測定するためのサブモジュール、を含むモジュール、
を備え、
前記ウォッベ指数IWGN/H2を推定するために使用される前記経験的なアフィン関係は、次の式で記述される。
【0067】
【数8】
【0068】
【数9】
【0069】
ここで、
mes,2は、測定された前記燃料ガスの前記質量流量であり、
mesは、測定された前記燃料ガスの前記絶対圧力であり、
mesは、測定された前記燃料ガスの前記絶対温度であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記質量流量であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記絶対圧力であり、
refは、測定された前記基準ガスの前記絶対温度であり、
D,E,及びFは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、前記係数α,β,及びγに対応する。
【0070】
特定の実施形態では、前記装置は、前記燃料ガスの前記ウォッベ指数を推定するのに適しており、前記装置は、前記燃料ガスの密度を測定するためのモジュールをさらに備え、前記少なくとも1つの特性を推定するために構成されている前記モジュールは、さらに、前記推定されたウォッベ指数及び前記ガスの測定された前記密度から、前記高位熱容量を推定するように構成されている。
【0071】
詳細には、高位発熱量は、測定された密度の二乗を推定されたウォッベ指数に乗ずることによって得られる。
【0072】
参考として、スイスの供給業者TRAFAGからの参照番号8774を有する密度センサを使用することが可能であることに留意するべきである。
【0073】
特定の実施形態では、前記燃料ガスの前記少なくとも1つの燃焼特性は、前記高位発熱量PCSGN/H2を含み、前記装置は、
・前記燃料ガスの流れを受け入れるための入口、
・圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある前記燃料ガスの前記質量流量を測定するためのモジュールであって、前記測定は、前記燃料ガスの粘度及び基準ガスの粘度に依存するモジュール、及び、
・圧力降下を生じさせる前記装置の下流で、熱式質量流量計を用いて前記燃料ガスの前記質量流量を測定するためのモジュールであって、前記測定は、前記燃料ガスの比熱容量及び基準ガスの熱容量に依存するモジュール、
を備え、
前記高位発熱量PCSGN/H2を推定するために使用される前記経験的なアフィン関係は、次の式で記述される。
【0074】
【数10】
【0075】
【数11】
【0076】
ここで、
Zは、変数Yに対応する変数であり、
mes,1は、測定された圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある前記燃料ガスの前記質量流量であり、
mes,2は、圧力降下を生じさせる前記装置の下流で測定された前記燃料ガスの前記質量流量であり、
A,B,及びCは、前記燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、前記係数α,β,及びγに対応する。
【0077】
特定の実施形態では、前記経験的なアフィン関係を用いて、前記少なくとも1つの特性ΞGN/H2を推定するために構成されている前記モジュールは、さらに、空気の化学量論的な体積又は燃焼性指数を推定するように構成されている。
【0078】
特定の実施形態では、前記装置は、前記燃料ガスの前記燃焼特性を調節するためのモジュール、又は、燃料ガスの前記燃焼特性と、推定された空気の化学量論的な体積もしくは前記推定された特性に対する推定された燃焼性指数とを調節するためのモジュールをさらに備える。
【0079】
この調節モジュールは、特に、例えば、空気のような追加のガスを導入するためのアクチュエータを備えていてもよい。調節は、閉ループ制御で行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して行われる以下の説明から明らかであり、添付の図面は、非限定的な特徴を有する例を示す。
【0081】
図1図1は、燃焼特性を推定する方法の一例の工程を示す図である。
図2図2は、燃焼特性を推定するための装置の一例を示す図である。
図3図3は、ウォッベ指数を推定する方法の工程の図である。
図4図4は、ウォッベ指数を推定するための装置の一例の図である。
図5図5は、高位発熱量を推定する方法の工程の図である。
図6図6は、高位発熱量を推定するための装置の一例を示す図である。
図7図7は、ウォッベ指数及び高位発熱量を推定するための装置の一例を示す図である。
図8図8は、ウォッベ指数を調節するための装置の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、燃料ガスのグループに属する燃料ガスの燃焼特性を推定するための方法及び装置について説明する。特性は、ウォッベ指数又は高位発熱量であってもよい。
【0083】
本発明は、単一の特性を推定するいずれかの方法に限定されず、ウォッベ指数及び高位発熱量を同時に推定することを含んでいてもよい。
【0084】
図1は、燃料ガスの燃焼特性を推定する方法の工程を示す図である。
【0085】
この方法は、特に、ゼロでない量の水素を含みうるガス、特に、0%から20%の範囲で水素を含む燃料ガスに適している。
【0086】
第1の工程E01において、燃料ガスの少なくとも2つの流動特性が測定される。測定対象の燃料ガスは、次に流動部材を流れ、温度、圧力、又は流量などの流動特性が、例えば、センサを用いて測定される。
【0087】
第2の工程E02において、流動ガスにおける水素の含有量が、測定され、XH2で記述される。本発明の実施及び実施形態の全てにおいて、水素の含有量は、モル分率又は体積分率であってもよいことに留意するべきである。圧力が十分に低ければ、理想気体の法則が適用されると仮定してもよく、モル分率及び体積分率が同じ値を有すると仮定してもよい。本発明の適用において、水素の含有量は、モル分率又は体積分率と同じ値を有する。この工程は、工程E01と同時に実施されてもよく、又は工程E01の前に実施されてもよく、又は工程E01の後に実施されてもよい。
【0088】
第3の工程E03において、ΞGN/H2で記述される特性は、次の経験的なアフィン関係を用いて推定される。
【0089】
【数12】
【0090】
α,β,及びγは、燃料ガスのグループに関する所定の係数である。Yは、燃料ガスの少なくとも2つの流動特性の測定値から生成される燃料ガスの物理特性を表す変数である。
【0091】
燃料ガスの少なくとも2つの流動特性の測定値は、特に、変数Yが、粘度、比熱容量(単位重量当たり)、又は密度などの燃料ガスの物理特性を表すことができるように、また、燃料ガスの流動特性の測定値に応じて表現されうるように、選択される。
【0092】
したがって、流動特性U1の測定に関してUmes,1の記号を使用し、流動特性U2の測定に関してUmes,2の記号を使用し、流動特性U3の測定に関してUmes,3の記号を使用することによって、以下が与えられる。
【0093】
【数13】
【0094】
図2は、燃料ガスのグループに属する燃料ガスの少なくとも1つの燃焼特性を推定するための装置の実施形態を示す。
【0095】
本装置は、特に、図1を参照して説明した種類の方法を実行できる。
【0096】
この例では、装置1は、例えば、ウォッベ指数又は高位発熱量を推定することが要求される燃料ガスの流れを受け入れるように構成されている流動部材2を備える。流動部材は、燃料ガスの流れを受け入れるための入口2aと、出口2bとを有する。
【0097】
装置1は、また、燃料ガスの流動特性を測定するための2つのモジュール3a及び3bを有する。
【0098】
一例として、モジュール3a及び3bは、両方とも、又はそれぞれ、流量、圧力、又は温度を測定してもよい。
【0099】
具体的には、モジュール3a及び3bは、流量、圧力、又は温度を測定するための従来型のセンサである。
【0100】
装置1は、水素の含有量XH2を測定するためのモジュール4、例えば、水素のモル百分率を送信するセンサを含む。
【0101】
モジュール3a,3b,及び4は、それらのそれぞれの測定の結果を推定モジュール5に伝えるように、推定モジュール5と通信する。推定モジュール5は、プロセッサ及びメモリ(図示しない)を有するコンピュータであってもよい。
【0102】
モジュール5は、次の経験的なアフィン関係を用いて、少なくとも1つの特性ΞGN/H2を推定するように構成されている。
【0103】
【数14】
【0104】
α,β,及びγは、燃料ガスのグループに関する所定の係数である。Yは、モジュール3a及び3bによって測定された燃料ガスの少なくとも2つの流動特性の値から生成される燃料ガスの物理特性を表す変数である。
【0105】
この目的のために、モジュール5は、メモリに格納された、所定の係数α,β,及びγについて取りうる値を有していてもよい。モジュール5は、さらに、推定を実行することを可能にするために、メモリに格納されたコンピュータプログラムの命令を有していてもよい。
【0106】
一例として、コンピュータプログラムは、モジュール3a及び3bによって測定された値から変数Yを計算するための命令と、上記の定義された関数を用いて特性ΞGN/H2を計算するための命令と、を含んでいてもよい。
【0107】
任意には、装置1は、少なくとも1つの特性を調節するために、推定モジュール5によって制御されるアクチュエータ6を含んでいてもよい。一例として、アクチュエータ6は圧縮空気のインジェクタであってもよい。
【0108】
図3及び4を参照して、燃料ガスのウォッベ指数IWGN/H2を推定する方法及び実施形態が説明される。
【0109】
図3は、燃料ガスのウォッベ指数IWGN/H2を推定する方法の工程を示す。
【0110】
この方法は、流体狭窄部(例えば、オリフィス又はマイクロノズル)を通る音速流の状態にある基準ガス(例えば、メタン)の質量流量の測定が、測定された基準ガスの絶対圧力及び測定された基準ガスの絶対温度で行われる校正の第1工程E11を含む。
【0111】
第2の工程E12では、流体狭窄部を通って音速流の状態にある燃料ガスの質量流量の測定が行われる。この測定は、狭窄部の上流で測定された絶対圧力及び狭窄部の上流で測定された絶対温度で行われる。
【0112】
工程E13では、水素の含有量XH2が測定される。
【0113】
工程E11からE13は、任意の可能な順番で実行されてもよい。特に、E12及びE13は、同時に実行されてもよい。
【0114】
工程E14では、ウォッベ指数IWGN/H2は、以下に記述された経験的なアフィン関係によって推定される。
【0115】
【数15】
【0116】
【数16】
【0117】
mes,2は、測定された燃料ガスの質量流量である。Pmesは、測定された燃料ガスの絶対圧力である。Tmesは、測定された燃料ガスの絶対温度である。Qrefは、測定された基準ガスの質量流量である。Prefは、測定された基準ガスの絶対圧力である。Trefは、測定された基準ガスの絶対温度である。D,E,及びFは、燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、係数α,β,及びγに対応する。
【0118】
工程E11及びE12を実行するために、形状が知られているオリフィス又はマイクロノズルなどの流体狭窄部が使用される。
【0119】
流体狭窄部のいずれかの側で、次の測定が行われる。流体狭窄部の上流で絶対温度及び絶対圧力が測定される。流体狭窄部の下流で質量流量が測定される(例えば、熱式質量流量計を用いて)。
【0120】
具体的に、それは、装置を通るQvnで記述される標準体積流量を2つの異なる方法で測定することに対応する。
【0121】
特に、流れが音速であるため、以下が適用される。
【0122】
【数17】
【0123】
kは、オリフィスの形状の特徴によって定まる定数である。p及びTは、オリフィスの上流におけるガスの絶対圧力及び絶対温度である。dは、ガスの密度である。
【0124】
さらに、熱式質量流量計を使用することによって、以下が得られる。
【0125】
【数18】
【0126】
vn,mes,2は、工程E12で、熱式質量流量計によって測定された測定値である。Cは、空気の特性と比較されたガスの物理特性(例えば、その比熱容量、その粘度、その熱伝導率)の差を考慮した補正係数である。
【0127】
既知の組成のガスに対して、以下が適用される。
【0128】
【数19】
【0129】
iは、成分iの体積分率である。Ciは、成分iに関する補正係数である。この係数は、熱式質量流量計に関連付けられたテーブルから読み取られうる。
【0130】
校正工程E11は、正確に知られている組成の基準ガス(好ましくは、純粋なメタン)を装置に供給する工程である。
【0131】
工程E11の校正手順で得られた値を使用する2つの流量の関係の間の方程式は、したがって、次のように記述されうる。
【0132】
【数20】
【0133】
そして、燃料ガスの測定が行われる工程E12の測定手順において、以下が適用される。
【0134】
【数21】
【0135】
E14での測定を用いて、水素の含有量XH2(例えば、体積値で)も判明する。
【0136】
上記の方程式において、唯一判明していない2つのパラメータは、C及び密度dであることに留意するべきである。したがって、C及び密度dに関連付けられた変数Yを表すために、パラメータkを除くことが可能である。
【0137】
具体的に、以下が適用される。
【0138】
【数22】
【0139】
Yは、燃料ガスの物理特性を表す変数である。測定値からYを書き換えることが可能である。これらの測定値(Qmes,2,p,及びT)は、測定された流動特性U1に関してUmes,1と記述され、測定された流動特性U2に関してUmes,2と記述され、及び、測定された流動特性U3に関してUmes,3と記述されうる。したがって、以下が与えられる。
【0140】
【数23】
【0141】
mes,1=Pmes
mes,2=Qmes,2、及び、
mes,3=Tmesである。
【0142】
最終的に、以下が適用される。
【0143】
【数24】
【0144】
変数Yのこの定義は、その変数Yを有する経験的なアフィン関係において使用されうる。そして、それは、以下の形式で記述される。
【0145】
【数25】
【0146】
D,E,及びFは、燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、図1及び2を参照して説明した係数α,β,及びγに対応する。
【0147】
係数D,E,及びFは、既知のガスの組成、例えば、国又は地域のネットワークにおける天然ガスの組成から得られうる。一例として、ヨーロッパで流通し、当業者によく知られている高い発熱量を有するガスに関する既知の組成を使用することが可能である。
【0148】
これらの既知の組成から、様々な化合物のモル分率に関する限定値を規定することが可能である。例えば、ガス中の化学種Kのモル分率に関する表記XKを使用することによって、以下の種類の既知の組成を持つことが可能である。
【0149】
【数26】
【0150】
今日のガス組成には、水素がないことに留意するべきである。
【0151】
これらの考えうる範囲は、ウォッベ指数(又は高位発熱量でさえ)を決定することが可能であるガスの組成を、ランダムに生成させることを可能にする。したがって、10,000種類のガスが生成されうる。
【0152】
ランダムに生成された各ガスに対して、0%から20%のモル分率の範囲のランダムな量の水素を加えることが可能である。また、これらのランダムに生成されたガスに関して、ウォッベ指数を決定することが可能である。
【0153】
ランダムに生成された組成から、変数Yに関連する値を推定することも可能である。最小二乗法を適用することによって、係数D,E,及びFに関する値を得ることが可能である。
【0154】
【数27】
【0155】
これらの結果は、基準ガスとしてメタンを使用することによって得られた。
【0156】
0%から20%の範囲にある水素のモル分率に関して、ウォッベ指数の推定における誤差は、常に、1.4%未満であるとともに、誤差は、ランダムに得られた10,000種類のガスの98%において、1%未満であることに留意するべきである。
【0157】
あるいは、係数が定数ではなく、モル分率としての水素の含有量に依存する相関関係を使用することが可能である。
【0158】
経験的なアフィン関係は次のように書き換えられてもよい。
【0159】
【数28】
【0160】
この例では、D及びEは、水素の含有量の関数である(方程式は、XH2に依存する2つの係数のみを示すように書き換えられている。それにもかかわらず、3つの係数を有する方程式を記述することが可能である)。
【0161】
同様に、ランダムなガス組成を生成することによって、本発明者らは、幅1%の水素の濃度範囲にわたる区分において一定である関数D及びEを使用することが可能であることを見出した。
【0162】
例えば、2%から3%の水素の範囲で、D及びEは次の値をとる。
【0163】
【数29】
【0164】
ウォッベ指数の推定における誤差は、したがって、10,000種類のランダムガスの95%について、常に1%未満であることに留意するべきである。
【0165】
図4は、図3を参照して説明された方法を実施できる、ウォッベ指数を推定するための装置を示す。
【0166】
この装置10は、燃料ガスG1を受け入れるための入口11、及び、基準ガスG2(典型的にはメタン)を受け入れるための入口12を有する。
【0167】
装置10は、また、燃料ガスの流れ又は基準ガスの流れを管の入口13に導くためのセレクタ及び案内モジュールを有する。具体的には、セレクタ及び案内モジュールは、弁31及び弁35を含む。
【0168】
弁31及び35は、燃料ガス又は基準ガスのいずれかが管に流入するように、各端子52及び51を介してモジュール36によって制御される。
【0169】
この例では、管は、その入口13から始まって上流から下流へ:
・端子41を介してモジュール36に接続された絶対圧力センサ60、
・端子42を介してモジュール36に接続された絶対温度センサ50、
・流体狭窄部32(例えば、オリフィス又はマイクロノズル)、
・端子43を介してモジュール36に接続された熱式質量流量センサ33、及び、
・端子44を介してモジュール36に接続された、水素のモル分率を計測するためのセンサ34、
を備えている。
【0170】
モジュール36は、端子41から44で受信した信号からウォッベ指数を推定するために、上記したような経験的なアフィン関係を適用しうる。
【0171】
示された例では、モジュール36は、2つの出力端子54及び53を介して外部モジュール37、例えば、調節を実施するためのアクチュエータ、又はディスプレイと通信する。図示しない変形例では、モジュール37は、装置10に組み込まれている。
【0172】
図5及び6を参照して、燃料ガスの高位発熱量を推定する方法及び実施形態を説明する。
【0173】
図5は、燃料ガスの高位発熱量PCSGN/H2を推定する方法の工程を示す。
【0174】
工程E22において、圧力降下を生じさせる装置を通る層流において、燃料ガスの質量流量が測定される。この測定は、燃料ガスの粘度及び基準ガスの粘度に依存する。
【0175】
工程E23において、圧力降下を生じさせる装置の下流で、燃料ガスの質量流量が熱式質量流量計を用いて測定される。測定は、燃料ガスの比熱容量及び基準ガスの熱容量に依存する。
【0176】
工程E22及びE23を実行する前又は後に実行されうる工程E21では、工程E22及びE23を実行することに対応する校正工程が実行される。ただし、校正工程は、基準ガス(例えば、メタン)を用いて実行される。
【0177】
工程24もまた、モル分率として水素の含有量XH2を測定するために実施される。
【0178】
最後に、工程E25において、高位発熱量が、次の式を有する経験的なアフィン関係を用いて推定される。
【0179】
【数30】
【0180】
【数31】
【0181】
Zは、図1を参照して説明した変数Yに対応する変数である。Qmes,1は、測定された圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある燃料ガスの質量流量である。Qmes,2は、圧力降下を生じさせる装置の下流で測定された燃料ガスの質量流量である。A,B,及びCは、燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、係数α,β,及びγに対応する。
【0182】
高位発熱量(PCS)に関する次の関係は、先行文献DE 4 118 781から知られている。
【0183】
【数32】
【0184】
α及びβは所定の係数である。ρは、燃料ガスの密度である。μは、燃料ガスの粘度である。Cpは、燃料ガスの熱容量である。
【0185】
次の無次元変数Zは、次のように定義されうる。
【0186】
【数33】
【0187】
ここで、下付きのGNは、燃料ガスを示し、refは基準ガスを示す。
【0188】
高位発熱量に関する関係は、次のように書き換えることができる。
【0189】
【数34】
【0190】
Zを測定するために、2つの流量の測定が使用される。一例として、Qmes,1は、測定された圧力降下を生じさせる装置を通る層流の状態にある燃料ガスの質量流量である。ポアズイユの法則を使用することによって、この装置では、層流要素を通って、ガスの流れの圧力を降下させることが知られている。
【0191】
測定は、粘度に依存するので、特定の測定装置に関し、それは上流と下流との圧力差ΔPmesに依存する形式を持ち、Qmes,1を送信する流量計は、次式を用いて体積流量を決定しうる。
【0192】
【数35】
【0193】
ここで、K1は、幾何学的定数である。
【0194】
この例では、圧力センサ及び温度プローブが流量計に組み込まれており、それらによれば、以下のように、質量流量Qmes,1(又は通常の温度及び圧力の条件に換算された体積流量)を直接得ることができる。
【0195】
【数36】
【0196】
修正された体積流量Qmes,1の測定は、燃料ガスの粘度に依存する。
【0197】
流量Qmes,2は、熱式質量流量計を使用して測定される。質量流量Qmes,2の測定は、燃料ガスの比熱容量に依存する。
【0198】
この方法では、質量流量の2つの推定が得られ、各推定は、実際の通常の体積流量(Qvn)に対するそれぞれの誤差を示す。以下が適用される。
【0199】
【数37】
【0200】
mes,1について、誤差は、混合ガスの実際の粘度と、基準ガス(この例ではメタン)の粘度との差に関連する。
【0201】
mes,2について、誤差は、混合ガスの実際の比熱容量を密度に乗じた値と、基準ガス(この例ではメタン)の同量を密度に乗じた値との間の差に関連する。
【0202】
2つの測定された流量の比率をとることによって、変数Zが決定され、文献DE 4 118 781の相関関係は次のようになる。
【0203】
【数38】
【0204】
mes,1=Qmes,1、及び
mes,2=Qmes,2で記述される。
【0205】
以下が適用される。
【0206】
【数39】
【0207】
それにもかかわらず、本発明者らは、水素が燃料ガス中に存在すると、この関係は適用できないことを見出した。具体的には、測定誤差が非常に大きくなる。水素は、アルカンのようなガスの特性とは大きく異なる特性(粘度、比熱容量)を有する。
【0208】
その欠点を軽減するために、測定された水素の含有量XH2が使用され、以下の方程式が提案される。
【0209】
【数40】
【0210】
A,B,及びCは、燃料ガスのグループに関する所定の係数であり、それぞれ、図1及び2を参照して説明した係数α,β,及びγに対応する。
【0211】
係数A,B,及びCは、既知のガスの組成、例えば、国又は地域のネットワークにおける天然ガスの組成から得られうる。一例として、ヨーロッパで流通し、当業者によく知られている高い発熱量を有するガスに関する既知の組成を使用することが可能である。
【0212】
これらの既知の組成から、様々な化合物のモル分率に関する限定値を規定することが可能である。例えば、ガス中の化学種Kのモル分率に関する表記XKを使用することによって、以下の種類の既知の組成を持つことが可能である。
【0213】
【数41】
【0214】
今日のガス組成には、水素がないことに留意するべきである。
【0215】
これらの考えうる範囲は、高位発熱量を決定することが可能であるガスの組成を、ランダムに生成させることを可能にする。したがって、10,000種類のガスが生成されうる。
【0216】
ランダムに生成された各ガスに対して、0%から20%のモル分率の範囲のランダムな量の水素を加えることが可能である。ここでも同様に、これらのランダムに生成されたガスの高位発熱量を決定することが可能である。
【0217】
ランダムに生成された組成から、変数Zに関連する値を推定することも可能である。最小二乗法を適用することによって、係数A,B,及びCに関する値を得ることが可能である。
【0218】
【数42】
【0219】
あるいは、係数が定数ではなく、モル分率としての水素の含有量に依存する相関関係を使用することが可能である。
【0220】
経験的なアフィン関係は次のように書き換えられてもよい。
【0221】
【数43】
【0222】
この例では、A及びBは、水素の含有量の関数である(方程式は、XH2に依存する2つの係数のみを示すように書き換えられている。それにもかかわらず、3つの係数を有する等式を記述することが可能である)。
【0223】
同様に、ランダムなガス組成を生成することによって、本発明者らは、幅1%の水素の濃度範囲にわたる区分において一定である関数A及びBを使用することが可能であることを見出した。
【0224】
例えば、19%から20%の水素の範囲で、A及びBは次の値をとる。
【0225】
【数44】
【0226】
図6は、図5を参照して説明された方法を実施するのに適している、高位発熱量を推定するための装置を示す。
【0227】
この装置100は、燃料ガスG1を受け入れるための入口111、及び、基準ガスG2(典型的にはメタン)を受け入れるための入口112を有する。
【0228】
装置100は、また、燃料ガスの流れ又は基準ガスの流れを管の入口113に導くためのセレクタ及び案内モジュールを有する。具体的には、セレクタ及び案内モジュールは、弁131及び弁135を含む。
【0229】
弁131及び135は、燃料ガス又は基準ガスのいずれかが管に流入するように、各端子152及び151を介してモジュール136によって制御される。
【0230】
この例では、管は、その入口113から始まって上流から下流へ:
・圧力降下を生じさせる装置を通る層流において質量流量を計測するためのセンサ132であって、測定は、燃料ガスの粘度及び基準ガスの粘度に依存し、端子142を介してモジュール136に接続されているセンサ132、
・熱式質量流量を計測するためのセンサ133であって、測定は、測定ガスの比熱容量及び基準ガスの比熱容量に依存し、端子143を介してモジュール136に接続されているセンサ133、及び、
・水素のモル分率を計測し、端子144を介してモジュール136に接続されたセンサ134、
を備えている。
【0231】
モジュール136は、端子142から144で受信した信号から高位発熱量を推定するために、上記したような経験的なアフィン関係を適用しうる。
【0232】
示された例では、モジュール136は、2つの出力端子154及び153を介して外部モジュール137、例えば、調節を実施するためのアクチュエータ、又はディスプレイと通信する。図示しない変形例では、モジュール137は、装置100に組み込まれている。
【0233】
図7は、2つの経験的なアフィン関係を用いて高位発熱量及びウォッベ指数を同時に決定できる装置の例を示す。
【0234】
この装置は、圧縮ガスのための2つの入口を有する。第1の入口1011は、ガスのグループ(例えば、フランスの規格NF EN 437に準拠した第2のグループにおける燃料ガス)に属しており、かつ水素を含んでいる燃料ガスG1を受け入れるための入口である。装置1000は、校正段階で使用される基準ガスG0のための別の入口1012を有する。
【0235】
装置1000は、また、燃料ガスG1の流れ又は基準ガスG0の流れを管の入口1013に導くためのセレクタ及び案内モジュールを有する。セレクタ及び案内モジュールは、弁1031及び弁1035を含む。
【0236】
弁1031及び1035は、燃料ガス又は基準ガスのいずれかが管に流入するように、各端子1052及び1051を介してモジュール1036によって制御される。
【0237】
管の入口1013から始まって、上流から下流へ、装置は以下を備える。
・端子1041を介してモジュール1036に接続された絶対圧力センサ1006。このセンサは、燃料ガスについて測定された値Pmes及び基準ガスについて測定された値Prefを送信する。
・端子1042を介してモジュール1036に接続された絶対温度センサ1005。このセンサは、燃料ガスについて測定された値Tmes及び基準ガスについて測定された値Trefを送信する。
・流体狭窄部1032(例えば、オリフィス又はマイクロノズル)。
・端子1043を介してモジュール1036に接続され、圧力降下を生じさせる装置を通る層流における質量流量を計測するためのセンサ。このセンサは、値Qmes,1を送信する。
・端子1046を介してモジュール1036に接続された熱式質量流量センサ1033。このセンサは、燃料ガスについて測定された値Qmes,2及び基準ガスについて測定された値Qrefを送信する。
・水素のモル分率を計測し、端子1047を介してモジュール36に接続されたセンサ1034。
・排出口1039。
【0238】
この例では、モジュール1036は、次の2つの変数を計算しうる。
【0239】
【数45】
【0240】
モジュール1036は、したがって、ウォッベ指数IWGN/H2、高位発熱量PCSGN/H2、空気の化学量論的な体積VaGN/H2、燃焼性指数BGN/H2、及び混合された燃料ガスの密度dGN/H2を決定するために次の式を使用しうる。
【0241】
【数46】
【0242】
具体的に、ウォッベ指数IW及び高位発熱量PCSに関する値から、空気の化学量論的な体積Va、燃焼性指数B、及び燃料ガス混合物の密度を決定することが可能である。
【0243】
より正確には、ヨーロッパで通常流通している天然ガス(現在、水素が含まれていない)に対して、以下が適用される。
【0244】
【数47】
【0245】
本発明者らは、水素の存在下では、値が1.162から逸脱するであろうことを見出した。
【0246】
調査対象の全ての天然ガスに対して0.3%未満の誤差で、空気の化学量論的な体積に対する高位発熱量の比率と、(既知の)水素の含有量とを関連付けることが可能である。
【0247】
言い換えれば、1%未満の誤差で水素の含有量及び推定された高位発熱量が判明することによって、空気の化学量論的な体積が判明することが可能となり、したがって、開ループ制御にて燃焼を調節することが可能となる。
【0248】
同様に、燃焼性指数に対するウォッベ指数の比率は、水素の含有量に比例して変化する。このことは、また、開ループ制御を実行することを可能にする。
【0249】
10,000種類のガスが使用される場合、燃焼性指数の推定における誤差は、ランダムな組成を含む10,000種類のガスの99.5%において1%未満であることに留意するべきである。
【0250】
ウォッベ指数の定義によれば、ウォッベ指数及び高位発熱量の両方が判明すれば、ガスの密度を決定することが可能である。
【0251】
装置1000は、端子1054でウォッベ指数の信号を、端子1055で高位発熱量の信号を、端子1056で密度の信号を、端子1057で空気の化学量論的な体積の信号を、及び端子1058で燃焼性指数の信号を送信することに留意するべきである。これらの信号は、調査対象の燃料ガス、すなわち、ガスG1に関連する。
【0252】
図8は、図4を参照して説明した装置10を利用する調節の適用例を示す。この装置は、管の2つの点、入口点201と出口点202との間に接続される。装置10は、センサ群205によって行われた測定に応じて、圧縮空気の供給モジュール203を制御する。
【0253】
この装置は、特に、ヨーロッパで流通しているガスに追加量の水素を添加した類似したガスについて、ウォッベ指数を継続的に調節できる。特に、測定が継続的又はリアルタイムで行われるため、調節を実行することが可能になる。これに対し、クロマトグラフの種類の装置でそのようなことは可能ではない。
【0254】
ウォッベ指数の測定の正確性は、1%のオーダーである。
【0255】
所望の調節を得るために、装置10のウォッベ指数に関する設定値を修正することが可能であることに留意するべきである。
【0256】
さらに、校正工程は、メタンを使用している間、自動的に実行されうる。開始段階もまた、自動的に、すなわち、操作者が介入することなく実行されうる。
【0257】
さらに、特性の1つ(例えば、ウォッベ指数)について閉ループ制御が実行され、導入される圧縮空気の流量について開ループ制御が実行されるといった、組み合わせの制御も可能である。これにより、特性に関する設定値がより厳密に満たされるように、特性の変動を特に正確な方法で考慮に入れることが可能となる。
【0258】
そのような装置は、毎時150リットル(L/h)未満の速度で天然ガスを消費してもよいことに留意するべきである。
【0259】
上記の方法及び実施形態は、熱力学的データ(Cp、粘度)を、体積分率又はモル分率での水素の含有量の測定と組み合わせることを可能にする。適切な相関関係を使用することによって、ウォッベ指数及び/又は高位発熱量を計算することが可能となる。
【0260】
気相クロマトグラフを使用することと比較して、以下が適用されることに留意するべきである。
・推定は、ほとんど瞬時に行われる(応答時間は、5秒未満でありうる)。
・推定は、安価である。
【0261】
既存の相関方法と比較して、水素が存在するにもかかわらず、良好な正確性が得られるとともに、良好な測定の堅牢性も得られる。
【0262】
最後に、燃焼を利用する装置(燃焼計又は熱量計)と比較して、本発明は、良好な堅牢性、実施の容易さ、並びに、メンテナンスが削減されること、及びメンテナンスが容易に実施できることを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】