(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-515505(P2020-515505A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】シリコン材料のダイヤモンドワイヤー切断時に副生したシリコンスラッジを利用してシリコン含有製品を製造する方法、装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
C01B 33/021 20060101AFI20200501BHJP
C01B 33/037 20060101ALI20200501BHJP
C01B 33/06 20060101ALI20200501BHJP
C01B 33/107 20060101ALI20200501BHJP
C01B 33/113 20060101ALI20200501BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20200501BHJP
【FI】
C01B33/021
C01B33/037
C01B33/06
C01B33/107 Z
C01B33/113 A
B01J3/00 A
B01J3/00 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2020-502752(P2020-502752)
(86)(22)【出願日】2018年3月27日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月27日
(86)【国際出願番号】CN2018080710
(87)【国際公開番号】WO2018177294
(87)【国際公開日】20181004
(31)【優先権主張番号】201710206493.8
(32)【優先日】2017年3月27日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201710361112.3
(32)【優先日】2017年5月5日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519350111
【氏名又は名称】シュウ,キシー
【氏名又は名称原語表記】CHU,Xi
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,キシー
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA12
4G072AA14
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4G072RR11
4G072RR12
4G072RR13
4G072RR15
4G072RR23
(57)【要約】
本出願は、シリコン材料のダイヤモンドワイヤー切断時に副生したシリコンスラッジを利用してシリコン含有製品を製造する方法、装置及びシステムを提供する。本出願による方法は、おもにシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジの顆粒表面に酸化被膜を有する特性を利用し、酸化被膜とその内部の酸化被膜と隣接するシリコン単体とを不均化反応させて亜酸化ケイ素を生成し、酸化被膜を気態で除去する。これによって、シリコンを金属、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスと物理・化学的反応でき、高い付加価値を有するシリコン含有の工業製品を生成することができるので、シリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジは、大規模、高効率、省エネ、連続、低コストに、完全に再利用することを実現した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じた廃液に対して固液分離を行い、その中の揮発成分を除去して、乾燥された粉末状、顆粒状又は塊状に形成された固体のシリコンスラッジを得るステップaと、
本発明の前記方法に基づいて前記固体のシリコンスラッジで物理的反応及び化学的反応を行って付加価値を有するシリコン含有製品を生成するステップbと
を含むことを特徴とするシリコンの切断時に生じた廃液から分離した固体のシリコンスラグを回収、再利用する方法。
【請求項2】
液体を分離し乾燥されたダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジの顆粒の表面における二酸化ケイ素とその内部のシリコン単体との不均化反応によって、亜酸化ケイ素を生成、排出し、さらに化学的反応及び物理的反応によって、シリコン単体、シリコン合金及びシランを生成することを可能にするとともに、亜酸化ケイ素を生成することを特徴とするシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジを回収、再利用する方法。
【請求項3】
前記乾燥が110〜230℃で行われ、
乾燥に使用される設備は、気流乾燥、噴霧乾燥、流動床乾燥、スピンフラッシュ乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、冷凍乾燥、衝撃乾燥、衝突噴流乾燥、過熱乾燥、パルス燃焼式乾燥及びヒートポンプ乾燥の1つ又はこれらの組み合わせであることが好ましいことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シリコン含有製品は、シリコン単体、高純度シリコン、シリコン合金、亜酸化ケイ素、ハロゲンシラン及び有機ケイ素のモノマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記不均化反応は、高温且つ真空又は不活性気体の雰囲気で行われ、反応の温度が1200〜1800℃であり、反応の圧力が0.001〜100MPaであり、
シリコン単体、シリコン合金及びハロシランを生成する反応が前記不均化反応と同時に又は前記不均化反応の後に行われることが好ましい
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記物理的反応は、表面酸化被膜を除去する途中又は除去したあとに得られたシリコン粉体の顆粒を溶融、集中してシリコン単体を生成し、又はその他の金属と反応して合金を生成する反応であり、前記物理的反応が高温で行われ、
反応の温度が500〜1800℃であり、反応の圧力が0.001〜100Mpaであることが好ましい
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記化学的反応は、一酸化炭素とシリコンスラッジにおける遷移金属でカルボニル化反応を行うことによって金属不純物を除去することをさらに含み、前記カルボニル化反応が高温、高圧で行われ、
反応の温度が50〜240℃であり、反応の圧力が0.01〜100MPaであることが好ましい
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記化学的反応は、シリコンスラッジの表面酸化被膜が除去されたシリコン単体の粉体の顆粒とハロゲン又はハロゲン化水素とを気化反応させてハロゲンシランと有機ケイ素のモノマーを生成することをさらに含み、
ハロゲンシランがSiHxL4-xであり、ここで、L=F、Cl、Br及びIであり、X=0、1、2、3、4であり、
前記気化反応が、高温、高圧で触媒とともに行われ、
反応の温度が200〜1400℃であり、反応の圧力が0.01〜100MPaであることが好ましく、
前記シリコン単体が、不均化反応によってシリコンスラッジから生成されたものであり、
カルボニル化反応により生成されるものであることが好ましく、
反応工程が連続的な製造により行われるであることがさらに好ましい
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
反応に係る加熱は、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、直接アーク加熱、電子ビーム加熱、プラズマ加熱、反応による加熱及び燃焼加熱の1つ又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
シリコンスラッジの顆粒の表面における二酸化ケイ素とその内部のシリコン単体とを不均化反応させ、亜酸化ケイ素を生成、排出することを特徴とするシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジを回収、再利用する方法。
【請求項11】
温度制御設備が設置される気化反応を行うための反応器と、
ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスを反応器に導入するための吸気システムと、
気化反応により生成された気体を反応器から導出し、凝縮させて収集するための生成物収集システムとを有し、
前記反応器が、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床であることが好ましい
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシリコンの切断時に生じた廃液から分離した固体のシリコンスラグを回収、再利用する方法を実現するための装置。
【請求項12】
乾燥システムと、反応器原料供給システムと、加熱システムと、反応器システムと、亜酸化ケイ素収集システムと、シリコン単体又はシリコン合金の収集システムとを有し、
ハロゲンとの気化反応を行う反応器は、温度制御設備を備え、
前記反応器が、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床であることが好ましく、
ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスを気化反応を行うための反応器に導入し、該反応器に温度制御設備が設置され、
前記反応器が、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床であることが好ましく、
ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスを反応器に導入する吸気システムと、気化反応により生成された気体を反応器から導出し、凝縮させて収集する生成物収集システムとをさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジを回収、再利用する方法を実現するためのシステム。
【請求項13】
シリコンの切断時に生じた廃液に対して固液分離を行い、乾燥した固体のシリコンスラグを生成するステップ1と、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により前記固体のシリコンスラグを回収、再利用するステップ2とを含み、
ステップ1は、
連続的に稼働する分離設備で、切断時に生じた廃液に対して固液分離を行い、ウェット状態のシリコン粉体の沈殿物と液体との2部分を得ることと、
ウェット状態のシリコン粉体の沈殿物を洗浄容器内に入れ、切断時に高温で形成された酸化ケイ素被膜を除去するように、予め調製された酸洗液を加えて1〜24時間の酸洗を行い、酸洗後のシリコン粉体を純水で中性のpHまでリンスし、リンスした後のシリコン粉体が、沈殿、遠心分離又は外圧濾過により半乾燥のシリコン粉体になることと、
真空乾燥設備で半乾燥シリコン粉体に対して乾燥処理を行い、乾燥した固体のシリコンスラグを得ることと
を行うことが好ましい
ことを特徴とするシリコンの切断時に生じた廃液を回収、再利用する方法。
【請求項14】
シリコン単体、酸化不十分のシリコン及び二酸化ケイ素に対して酸化反応、還元反応を行わせること、又は二酸化ケイ素を加えることによって、亜酸化ケイ素を生成するための理想の配合となる前駆体を得て、高温で昇華させて亜酸化ケイ素を生成することを特徴とする亜酸化ケイ素を製造する方法。
【請求項15】
a)1つの顆粒の異なる部位に亜酸化ケイ素を生成するためのシリコン単体と二酸化ケイ素とを有する単一の前駆体を用い、具体的に、シリコン単体、酸化不完全のシリコン又は二酸化ケイ素に対して酸化反応、還元反応を行わせることによって、亜酸化ケイ素を生成するためのシリコン単体と二酸化ケイ素とを1対1に近いのモル比に調整した単一原料を用いて、酸化ケイ素と、酸化ケイ素と隣接するシリコン単体とが高温で不均化反応により亜酸化ケイ素SiOxを生成し、昇華させて収集し、
b)直接に固態反応により固体の亜酸化ケイ素を得て、
c)亜酸化ケイ素の応用の一つは、リチウムイオン電池用負極材料の前駆体として、気相の形態でリチウムイオン電池用負極に加えることができる
ことを特徴とする亜酸化ケイ素を製造する方法。
【請求項16】
シリコン単体と二酸化ケイ素とに対して高温、高圧で酸化反応又は還元反応を行わせることによって、シリコン単体と二酸化ケイ素のモル比を略1:1に調整して前駆体を得て、前記前駆体を不均化反応させて亜酸化ケイ素を生成し、
亜酸化ケイ素を生成するとき、高温で不均化反応により酸化ケイ素と、酸化ケイ素と隣接するシリコン単体とを反応させて亜酸化ケイ素を生成して、亜酸化ケイ素を昇華させて収集するステップを含むことが好ましく、
亜酸化ケイ素を生成するとき、前駆体を密閉の空間において高温、高圧で反応させて固体の亜酸化ケイ素を生成するステップを含むことが好ましく、
高温で不均化反応により、酸化ケイ素と、酸化ケイ素隣接するシリコン単体とを反応させて気態の亜酸化ケイ素を生成し、該気態の亜酸化ケイ素を低温状態の電池の負極材料と接触させて亜酸化ケイ素を前記電池の負極材料の隙間及び/又は表面に付着させることが好ましい
ことを特徴とする亜酸化ケイ素を製造する方法。
【請求項17】
前記亜酸化ケイ素の成分は、SiOxであり、X=0.5〜1.5となることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
亜酸化ケイ素の前駆体を合成するとき、反応の温度が500〜2000℃であり、反応の圧力が0.01〜100Mpaであり、反応の雰囲気が酸化又は還元であり、
前記前駆体によりSiOxを合成する反応は、
反応の温度が500〜2000℃であり、反応の圧力が0.001〜100MPaであり、
(a)真空での反応の圧力が0.001〜0.1MPaであり、
(b)不活性気体での反応の圧力が0.001〜1MPaであり、
(c)高圧で一酸化ケイ素とシリコン単体とにより固体の亜酸化ケイ素を生成するとき、反応の圧力が1〜100MPaである
ことを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
高温昇華、不均化反応による亜酸化ケイ素の生成、気化、溶融に係る加熱は、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、直接アーク加熱、電子ビーム加熱、プラズマ加熱、反応による加熱及び燃焼加熱の少なくとも1種であることを特徴とする請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記亜酸化ケイ素の堆積が収集反応器で行われ、前記収集反応器は、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床の1つ又はこれらの組み合わせであり、
気態の酸化ケイが棒状、板状又は顆粒状のものの表面に堆積し、リチウムイオン負極材料の顆粒の内部に浸入、含浸することが好ましく、
シリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じた廃液から分離した固体に乾燥したシリコン粉体であることが好ましく、
気体を凝結して顆粒状となる亜酸化ケイ素、又は気態の亜酸化ケイ素を直接にリチウムイオン電池用負極材料に混入してシリコン含有の高容量の負極材料を形成することを特徴とする請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
亜酸化ケイ素の前駆体の製造ユニットと、
坩堝を加熱する温度制御設備が設置され、且つ不均化反応により亜酸化ケイ素を生成する反応器と、
不均化反応により生成された気態の亜酸化ケイ素を反応器から導出し、凝縮させて収集する生成物収集システムと、を備え、
前記反応器が、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床であることが好ましく、
収集システムは、真空下の板状、棒状及び顆粒状の床の1つ又はそれらの組み合わせである
ことを特徴とする請求項14〜20のいずれか1項に記載の亜酸化ケイ素を製造する方法を実現するための装置。
【請求項22】
亜酸化ケイ素の前駆体の製造ユニットと、
坩堝を加熱する温度制御設備が設置され、且つ不均化反応により亜酸化ケイ素を生成する反応器と、
不均化反応により生成された気態の亜酸化ケイ素を反応器から導出し、凝縮させて収集する生成物収集システムと、を備え、
収集システムは、真空下の板状、棒状及び顆粒状の床の1つ又はそれらの組み合わせである
ことを特徴とする請求項14〜21のいずれか1項に記載の亜酸化ケイ素を製造する方法を実現するための装置。
【請求項23】
前記の亜酸化ケイ素を収集する真空下の板状、棒状のシステムは、中空の構造を有し、冷却媒質が導入されていることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記の亜酸化ケイ素を収集する真空下の顆粒状床は、顆粒を頂部へ搬送する過程において冷却させることを特徴とする請求項22又は23に記載の装置。
【請求項25】
前記の固体の廃棄物質に含まれる金属は、一酸化炭素とカルボニル化反応して金属カルボニル気体を生成して除去され、金属カルボニルが遷移金属に変換されて効率的に利用されることを特徴とするドライ法で金属を含む固体の廃棄物を回収、処理する方法。
【請求項26】
遷移金属の不純物を含む汚染物と一酸化炭素との反応は、高温、高圧で触媒とともに行われ、
高温、高圧で行われることが好ましく、
反応の温度が50〜240℃であり、反応の圧力が0.01〜100MPaであることが好ましいことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2017年03月27日に中国専利局に提出された、出願番号がCN201710206493.8であり、名称が「シリコン材料のダイヤモンドワイヤー切断時に副生したシリコンスラッジを回収、再利用する方法及び装置」である中国特許出願に基づいて優先権を主張し、そのすべての内容が参照により本出願に組み込まれる。さらに、本出願は、2017年05月05日に中国専利局に提出された、出願番号がCN201710361112.3であり、名称が「亜酸化ケイ素を製造する反応器、方法及びそれにより製造されるリチウムイオン電池用負極材料」である中国特許出願に基づいて優先権を主張し、そのすべての内容が参照により本出願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本出願は、シリコン材料の切断時にロスとなったシリコンを回収、再利用することに関し、殊に、シリコン材料のダイヤモンドワイヤー切断時に副生したシリコンスラッジを利用してシリコン含有製品を製造する方法、装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
高純度シリコン材料を利用して引き上げられた単結晶インゴットをスライスしてなるウェハは、半導体集積回路や太陽電池に適用することができる。技術の発展に伴って、シリコンウェハがますます薄くなり、特に、太陽電池用のシリコンウェハの薄さが、既に切断用のダイヤモンドワイヤーの直径並みになっている。
【0004】
しかしながら、ダイヤモンドワイヤー切断によりシリコンウェハを製造する際、シリコン原料のロスが発生し、ロスとなったシリコンが、微粉に磨り潰され、ダイヤモンドワイヤーの摩耗屑とともに、切削液に混入される。また、切断時の局部温度が非常に高いので、切断時に生じたシリコン粉体の顆粒の表面に二酸化ケイ素の酸化被膜が形成されている。したがって、切削液には、有用なシリコン粉体以外、微細で性質が異なる、粉砕されたダイヤモンド、ダイヤモンド顆粒を切断用ワイヤーに固着するための樹脂、ニッケル基合金及び切断用ワイヤーのワイヤー屑も混入されている。これらの不純物が、全成分に対して千分のいくつかしか占めしないほど少なく、これに対して二酸化ケイ素に被覆されたシリコン粉体が99%以上を占め、そのうちシリコン粉体におけるシリコン単体が85%以上を占めているものの、その中から有用なシリコンを分離するのが依然として困難である。
【発明の概要】
【0005】
従来技術におけるシリコン原料のダイヤモンドワイヤー切断工程は、プロセスが長く、過程が複雑で、エネルギ消耗が高く、歩留まりが低い等の欠点を有する。これに対して、本出願は、シリコンスラッジの顆粒(Si)の表面に切断時に生じた厚い酸化被膜(SiO
2)が形成された特徴を利用し、真空又は非酸化の雰囲気において不均化反応で、表面酸化被膜と、その内部の表面酸化被膜と接するシリコン単体とを互いに反応させ、生成した亜酸化ケイ素を昇華させてシリコン顆粒の表面から脱離させることによって、表面酸化被膜を除去する目的を達する。さらに、シリコンスラッジと金属、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスとの物理・化学的反応によって、シリコンスラッジをシリコン単体、シリコン合金及びハロシラン等に変換することが可能になり、付加価値の高いシリコン含有工業製品を製造することができる。また、価値のより高く、多分野に適用できる亜酸化ケイ素が生成される。したがって、酸洗を行うこと、還元剤を加えること等でシリコン表面酸化被膜を除去する従来の方法の、コストが高く、環境を汚染し、シリコン材料を浪費する等の欠点を解決した。
【0006】
該方法は、従来のように密度の相違を利用してシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジからシリコン粉体を分離、回収する手段を選ばなく、従来のシリコンの切断時に生じたシリコンスラッジにおけるシリコン粉体が酸化されていない又は完全酸化されたとの2つの間違い認識を正し、シリコンの切断時に生じたシリコンスラッジを反応原料としてシリコン含有製品を製造するので、プロセスが短く、エネルギ消耗が低く、分離が完全で、利用率が高い効果を達した。また、シリコン原料のダイヤモンドワイヤー切断時に副生したシリコンスラッジの効率的な利用と亜酸化ケイ素の量産とを有機的に結んだので、シリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジを、大量、高効率、省エネ、連続的及び低コストに完全に再利用することを実現した。
【0007】
本出願のカルボニル化反応によりシリコンスラッジにおける金属不純物を除去することに大きな意義がある。現在の工業生産において、工業汚泥の形態で存在する大量な遷移金属であるCo、Ni、Cr等の排出物が生成され、遷移金属が土壌に浸入すればひどい環境汚染を引き起こすことがあり、いかにこれらの遷移金属による汚染を解消することが環境保護の難題となっている。従来、酸洗で除去されているので、コストが高く、環境汚染になりやすく、遷移金属の浪費にもなる。当該問題に対し、本出願は、これらの金属をカルボニル化することができる原理を利用することで、遷移金属をドライ法で回収する目的及び完全に再利用する効果を実現した。当該方法は、金属不純物を含む固体の危険廃棄物を効果的に回収、処理、変換することができるほか、汚染された土壌を修復することができ、工業排出物に含まれる遷移金属が環境を汚染し浪費される問題を解決した、新たなエコな処理方法である。
【0008】
亜酸化ケイ素の合成及び収集が気相から固相になるプロセスであり、従来、高純度シリコンと高純度二酸化ケイ素を研磨することにより亜酸化ケイ素の前駆体を形成し、そして高温による不均化反応で亜酸化ケイ素を昇華させて、反応器の下流管に堆積させて収集する方法を利用している。しかし、反応時間の経過にしたがって、管の内径がますます小さくなり、内壁の表面積もますます小さくなるので、収集効率が低くなり、反応を中断せざるを得ず、効率がとても低い。本出願の場合、生成された気態の亜酸化ケイ素を、中空で冷却媒質を流す管状又は板状の収集体、或いは流動する顆粒状収集体を備える収集システムに導入(負圧による吸入)することによって収集を行う。亜酸化ケイ素が収集体の外面に堆積し、時間の経過にしたがって、堆積表面積がますます大きく、堆積度がますます高くなる。収集体における堆積物が多くなる場合、堆積を中止させ(又は、大きな顆粒を取り出し、小さな顆粒を入れる)、製品を取り出して引き続き収集をすることができる。制限がないので、大面積、連続の製造方法(
図6、
図7を参照)を実現することができ、製造効率を大幅に向上させ、製造コストを低減させた。
【0009】
本出願は、さらに前記方法を実現するために使用する反応器設備/装置/システム、亜酸化ケイ素材料の唯一前駆体(原料)を生成する方法、上記の亜酸化ケイ素材料を収集する装置、上記の亜酸化ケイ素材料を収集する装置の応用を提供する。
【0010】
従来、亜酸化ケイ素を製造する場合、高純度シリコンと高純度二酸化ケイ素を研磨、混合し、そして高温による不均化反応により製造していた。顆粒同士の接する箇所で反応して製造された亜酸化ケイ素が揮発すれば、二酸化ケイ素とシリコン顆粒とが接触しないようになり、更なる反応ができなくなるので、コストが高く、反応が不完全である。本出願は、シリコン顆粒(Si)の表面酸化被膜(SiO
2)をコントロールし、そして、真空又は不活性気体の雰囲気で不均化反応により、表面酸化被膜と、その内部の表面酸化被膜と密接するシリコン単体(又は内
部の二酸化ケイ素と外部のシリコン単体)とを互いに反応させ、生成された亜酸化ケイ素を昇華させてシリコン顆粒の表面から脱離させる。ここで、シリコン顆粒(Si)の表面酸化被膜(SiO
2)をコントロールすることは、シリコンの酸化をコントロールすることであってもよく、中間酸化物であるケイ素酸化物の還元をコントロールすることであってもよく、前駆体におけるシリコン単体のモル比が二酸化ケイ素のモル比と近いようにコントロールすればよい。このようにして、合成前駆体(原料)が1種だけあればよく、従来のように高純度二酸化ケイ素とシリコンを混合する必要がない。
【0011】
本出願は、ドライ法で遷移金属不純物を除去するカルボニル化反応に係る方法及び装置を提供することを目的とする。
【0012】
現在の工業生産において、工業汚泥の形態で存在する大量な遷移金属Co、Ni、Cr等の排出物が生成され、遷移金属が土壌に浸入すればさらにひどい環境汚染を引き起こすことがあり、これらの遷移金属による汚染を解消することが環境保護の難題となっている。本出願は、これらの金属をカルボニル化することができる特性を利用し、カルボニル化反応で工業汚泥における遷移金属を処理することにより、ドライ法で回収する目的及び完全に再利用する効果を実現した、新たなエコな処理方法である。
【0013】
上記の目的を達せるため、一局面として、本出願に係るシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジを回収、再利用する方法は、シリコンスラッジの顆粒表面の二酸化ケイ素とその内部のシリコン単体とを不均化反応させ、亜酸化ケイ素を生成、排出することを特徴とする。
【0014】
さらに、本出願によるシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時の切削液から分離された固体のシリコンスラッジを回収、再利用する方法は、以下のステップを含む
【0015】
ステップ1
シリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じた廃液に対して固液分離を行い、その中の揮発成分を除去し、乾燥した粉状、顆粒状又は塊状の固体のシリコンスラッジ(普段、外圧濾過、乾燥されたシリコンスラッジをシリコン粉体ともいう。該ステップが必要な技術的特徴ではなく、外注により実現してもよい)を得る。
【0016】
具体的に、固体のシリコンスラッジに対して固液分離と乾燥を行い、その中の揮発成分を30%より少ないようにする。好ましくは、10%より少ないようにし、より好ましくは、1%より少ないようにする。乾燥設備により半乾燥シリコン粉体に対して乾燥処理を行い、乾燥処理の温度が230℃になると、切削液における揮発物質が完全に揮発することが可能になり、乾燥した固体のシリコンスラッジを得ることができる。
【0017】
固液分離
ダイヤモンドワイヤー切断時に生じた廃液における大きな回収価値があるものは、おもにシリコン粉体であり、固液分離により固体状のものを回収する必要がある。従来、固体を得るため、廃液に対して固液分離を行う必要があり、固液分離の方法として、従来技術の如何なる実行可能な方法であってもよい。
【0018】
分離されたあと、固体に一定量の液体の残留があるので、それに対して洗浄を行う。洗浄が終わったら、固体に対して乾燥して、シリコンを精製させる。シリコン含有の固体を分離するには、静置法、オーバーフロー法及びフロート法を利用することが可能である。
【0019】
効果的に固液分離を行うため、遠心機及び吸引濾過で効果的に分離を行う。液態フロート法は、精密濾過、膜分離、吸引濾過法がある。
【0020】
乾燥
不純物除去と固液分離を行って得られた固体の主要成分がおもにシリコンとなる。さらなる乾燥により、後の反応に対する水分の影響が避けられる。乾燥は、常用の乾燥設備を利用して行われる。例えば、気流乾燥、噴霧乾燥、流動床乾燥、スピンフラッシュ乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、冷凍乾燥、衝撃乾燥、衝突噴流乾燥、過熱乾燥、パルス燃焼式乾燥及びヒートポンプ乾燥等の1つ又はこれらの組み合わせを利用することが可能である。乾燥は、造粒の前に行われてもよく、造粒により成形した後に行われても良い。
【0021】
ステップ2
本出願の上記の方法に基づいて前記乾燥後の固体のシリコンスラッジに対して加熱し、物理的又は化学的反応を行って付加価値があるシリコン含有製品を生成する。
【0022】
乾燥後のシリコンスラッジをそのまま反応の主要原料とし、シリコン顆粒の表面酸化被膜と、その内部の表面酸化被膜と隣接するシリコンとを互いに不均化反応させることによって、亜酸化ケイ素を生成し、さらに昇華させて除去したあと、相応の物理・化学的反応を行い、シリコン含有製品を得る。例えば、シリコン単体、特に高純度シリコン、シリコン合金を生成したり、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスと反応させて、ハロシラン又はシラン及び有機ケイ素のモノマー等を生成したりし、反応工程が連続的な製造により行われるであることが好ましい。
【0023】
表面酸化被膜の除去及びシリコン単体、シリコン合金の製造は、おもに物理的加熱により行われる。
【0024】
ここで、前記固体のシリコンスラッジは、シリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じた廃液を直接濾過又は遠心分離して得た固体スラグであってもよく、固体スラグに対してさらに酸洗による鉄の除去、アルカリによる表面の酸化ケイ素の除去等を行って回収した残りのシリコンスラッジであってもよく、又はシリコン切削液をサイクロン遠心等で分離して得た有用な大きな粒からなるシリコンのケーキであってもよい。
【0025】
前記のシリコン単体と高純度シリコンは、それぞれシリコンを95%以上と99.95%以上含有する固体である。
【0026】
前記のシリコン合金は、ケイ素と少なくとも1種のその他の金属を含む多元合金であり、例えばシリコン−アルミニウム合金、シリコン−マグネシウム合金、シリコン−アルミニウム−マグネシウム合金、シリコン−鉄合金、シリコン−カルシウム合金、シリコン−リチウム合金、シリコン−バリウム合金、シリコン−チタン合金等が挙げられる。
【0027】
前記ハロゲンガスは、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス又はヨウ素ガスが挙げられ、塩素ガスを使用することが好ましい。
【0028】
前記ハロゲン化水素ガスは、フッ化水素ガス、塩化水素ガス、臭化水素ガス又はヨウ化水素ガスが挙げられ、塩化水素ガスを使用することが好ましい。
【0029】
前記ハロシランは、シランの水素原子の一部又は全部がハロゲンで置換された物質を指している。
【0030】
前記有機ケイ素のモノマーは、通常、モノメチルシラン、ジメチルシランを指している。
【0031】
上記の加熱方法は、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、直接アーク加熱、電子ビーム加熱、プラズマ加熱、反応による加熱及び燃焼加熱の1つ又はこれらの組み合わせであってもよく、上記反応に必要の温度に達せばよい。
【0032】
前記亜酸化ケイ素は、SiO
x(x=0.1〜1.9、0.5〜1.5、0.8〜1.2、0.9〜1.1)である。
【0033】
(各シリコン製品の具体的な製造方法)
1、副産物のシリコン単体の生成
乾燥後のシリコンスラッジにシリコンを85%以上含み、シリコン顆粒の表面酸化被膜を加え、その合計が全体の99%を占めしている。有用なシリコン粉体以外、微細で性質が異なる、粉砕されたダイヤモンド、ダイヤモンド顆粒を金属切断用ワイヤーに固着するためのニッケル基合金及び切断用ワイヤーのワイヤ屑も混入されており、そして切削液における添加剤等がある。
図1は、本出願における乾燥されたシリコンスラッジの形態を示すものである。
図1(a)がシリコンスラッジ成分の模式図であり、
図1(b)と
図1(c)がそれぞれ実施例1〜4における乾燥されたシリコンスラッジの反応前の走査電子顕微鏡写真(
図1(b))とX線回折パターン(
図1(c))である。
【0034】
シリコンスラッジにおけるシリコン粉体について、その表面の酸化反応に対する認識に限界があるうえ、効果的に酸化の程度を定量的に測定する方法がなかった。傾向の1つとして、シリコン粉体の表面に酸化が発生していないので、シリコン粉体を熔解し又はその他の化学物と反応させて有用な物質を生成することが可能であると認識されているが、明らかに適当ではない。より一般的には、酸化被膜が存在していると認識されているので、各種の化学方法、例えば酸洗、アルカリ洗により表面の二酸化ケイ素を除去することに取り組んでいる。しかし、これらの方法により、コストを増加させ、表面の価値のある酸化被膜を浪費したのみならず、二次汚染も引き起こした。一方、顆粒の形状が異なるため、酸化被膜もそれぞれ異なるので、酸洗、アルカリ洗による除去を制御することが難しい。過剰な除去が避けられなく、酸化被膜が除去されたが、内部のシリコンも消耗され、大きな浪費にもなった。
【0035】
本出願は、乾燥されたシリコンスラッジにおけるシリコン粉体の顆粒の表面の二酸化ケイ素被膜と内部のシリコン単体とが隣接していることを考慮し、シリコン単体と二酸化ケイ素とを高温で不均化反応させて亜酸化ケイ素を生成して分離する原理を利用して、シリコン粉体の顆粒表面の二酸化ケイ素を除去する目的を達した。したがって、シリコンスラッジからのシリコン単体、シリコン合金及びハロシラン有機ケイ素のモノマーの製造を可能にしたうえ、コストを減少させたとともに高付加価値を備える亜酸化ケイ素を生成することができる。
【0036】
不均化反応の工程において、温度が1000℃に到達したときに少量の亜酸化ケイ素が分離し、温度が1375℃に到達したとき、不均化反応が顕著になる。シリコンの融点が1410℃であり、温度が高ければ高いほど反応が速くなるが、1702℃を超えると亜酸化ケイ素が溶融する。
【0037】
(1)シリコン単体の製造方法
真空又は不活性気体の雰囲気でシリコン粉体を1000℃以上に加熱したとき、真空又は不活性気体の保護で、シリコン粉体の顆粒の表面に被覆される二酸化ケイ素が内部のシリコンと反応し、すべての二酸化ケイ素が完全に反応するまで亜酸化ケイ素が生成されて、揮発し除去される。シリコンスラッジにおけるシリコン粉体の表面の二酸化ケイ素が内部のシリコン単体の量より少ないので、二酸化ケイ素が完全に反応した後シリコン単体が残される。
【0038】
連続的な製造を行うように、
図3に示すように、溶融したシリコンの底部からシリコン粉体を加える。これによって、シリコン粉体の表面の二酸化ケイ素が溶融したシリコンと反応して亜酸化ケイ素を生成してシリコン溶融体から分離し、残ったシリコン単体が溶融してシリコン溶融体に入る。
【0039】
ハロゲンとの化学的反応を実施するためにシリコン単体の微粉だけを要する場合、
図3に示すように、不均化反応の温度をシリコンの融点である1410℃の以下に制御すればよい。このようにして、シリコン粉体を得ることができ、シリコン塊を製造してさらに粉砕する必要がない。
【0040】
(2)高純度シリコンの製造方法
上記の工程において、ダイヤモンドワイヤーからのニッケルと鉄だけがシリコン溶融体に残され、その他の不純物が気化されたので、高純度シリコンの製造について、原料であるシリコンスラッジにおけるニッケルと鉄等の金属を除去する必要がある。従来技術でもこの点が気づかれ、シリコンスラッジを乾燥する前、複雑な多数回の酸洗を行う方法によりその中の金属成分を除去するようにしていたが、汚染が発生するとともにシリコン自体も消耗される。
【0041】
本出願は、ドライ法で金属除去を行い、乾燥後のシリコンスラッジにおけるニッケルと鉄等の金属をカルボニル化反応させ、すなわち、ニッケル及び鉄と一酸化炭素とを80〜120℃、10〜100MPaの雰囲気で反応させてカルボニルニッケル気体を生成して分離するようにする。また、カルボニルニッケルをニッケル金属に還元して再生することもできるので、汚染を減少できるとともにシリコンスラッジにおけるニッケルと鉄等の金属を回収、再利用することができる。
【0042】
したがって、金属を予め除去したシリコン粉体を得ることで、高純度シリコンを製造することができる(後記を参照)。
【0043】
2、シリコン含有合金の製造方法
上記の工程において、原料であるシリコンスラッジにおけるシリコンの含有量、二酸化ケイ素の含有量、及び生成されるシリコン合金(例えば、シリコン−アルミニウム合金、シリコン−マグネシウム合金、シリコン−鉄合金、シリコン−マンガン合金、シリコン−カルシウム合金等の合金)の成分(合金によってシリコンと金属の比例が異なる。また、同一合金、例えば同一のシリコン−アルミニウム合金でも、広い成分範囲があり、異なる成分によって、合金の融点がそれぞれ異なり、相図により決められることである)に基づいて、原料に加えるアルミニウム又はその他の金属の必要な量を算出することが可能である。このようにして、シリコン粉体及びアルミニウムをシリコン溶融体に加えると、二酸化ケイ素と一部のシリコンとが反応して亜酸化ケイ素が生成され分離し、残ったシリコンとアルミニウムとが液態のシリコン−アルミニウム合金を形成して排出される。
【0044】
3、酸化被膜を除去して得たシリコン粉体とハロゲンとの反応によるハロシランの製造
本出願は、シリコン顆粒の表面における、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスと反応できない酸化被膜を除去し、表面に酸化被膜がないシリコン粉体を得て、このようなシリコン粉体をハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスと反応させる。これによって、ハロシラン、有機ケイ素のモノマー及びシランを生成することができる。
【0045】
該工程によりプロセスが簡単化され、シリコンの最終の応用と直接つながり、プロセスが短く、エネルギ消耗が低く、分離が完全で、利用率が高い効果を達した。特に、シリコン顆粒の表面酸化被膜を除去する反応で、多結晶シリコン及び有機ケイ素のモノマーの製造に安価な原料を提供することができる。有機ケイ素のモノマーは、一般的にモノメチルシランとジメチルシランを含む。
【0046】
上記の工程において溶融されて冷却されたシリコン塊を粉砕した後に、ハロゲンシランを生成する反応を行っても良い。
【0047】
Si+2Cl
2−−−SiCl
4
Si+HCl−−−SiHCl
3+H
2
Si+SiCl
4+H
2−−−2SiHCl
3+HCl
【0048】
ハロゲン原子を含む有機ケイ素のモノマーは、一般式がR
nSiX
4〜nであり、ここで、Rが例えばメチル基、エチル基等の炭化水素官能基であり、XがF、Cl、Br、Iであり、相応の有機シランは、有機フッ素シラン、有機塩素シラン、臭素シラン及びヨウ素シランである。前記ハロゲンガスは、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス又はヨウ素ガスである。前記ハロゲン化水素ガスは、フッ化水素ガス、塩化水素ガス、臭化水素ガス又はヨウ化水素ガスである。
【0049】
高温、高圧で触媒が存在する場合、固体のシリコンスラッジとハロゲンガス、ハロゲン化水素ガスと接触して反応する速度がとても速いので、本出願において反応時間を特に限定しない。全体の反応時間を、反応材料、通気速度に応じて適当に調整することができる。通常、生成されたハロシラン又はシランの生成物が反応器から導出された後に凝縮により収集され、凝縮生成物が増やさなくなると観察したとき、反応を停止させればよい(又は固体のシリコンスラッジが完全に反応したと観察したとき、反応を停止させる)。
【0050】
本出願の通常の操作において、反応気体と固体のシリコンスラッジとの接触時間が0.01s〜1000sであるように制御することができる。
【0051】
気化反応の条件を以下のように制御する。反応の温度を200〜1400℃、反応の圧力を0.01〜100Mpaに制御する。さらに、反応の温度を300〜1100℃、反応の圧力を0.1〜10Mpaに制御することが好ましい。
【0052】
前記気化反応は、2つの温度段階で行われ、まず低温の300〜350℃で反応し、そして500〜900℃で反応することが好ましい。前記低温反応段階でハロゲン化水素ガスを導入し、高温反応段階でハロゲン化水素ガス及び/又はハロゲンガスを導入することがさらに好ましい。
【0053】
前記触媒は、金属、合金、各種の金属化合物を含む。
前記触媒の活性成分は、以下の物質から1種又は多種を選ぶことが好ましい。
a)貴金属、特にパラジウム、白金、ロジウム、レニウム、ルテニウム及びこれらの合金。
b)遷移金属、特にニッケル、銅、コバルト、鉄、及びこれらの合金。
c)アルカリ金属、特にナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びこれらの合金。
d)希土類金属。
e)金属塩、金属酸化物。
f)金属水素化物。
【0054】
触媒の活性成分は、コバルト、銅、塩化ニッケル、塩化銅、塩化コバルトからの1種又は多種であることが好ましく、コバルト及び/又は塩化コバルトであることがさらに好ましい。触媒は、おもに反応を速めるために用いられるものであり、その用量を固体のシリコンスラッジの重量の0.1%〜30%にすることが一般である。
【0055】
4、亜酸化ケイ素の製造
亜酸化ケイ素(SiO
x)は、重要な電子材料、光学材料であり、またリチウムイオン電池用負極の添加剤として用いられる。
【0056】
従来の亜酸化ケイ素を製造する方法は、以下のとおりである。シリコン単体と二酸化ケイ素とを同モル比で混合させ、そしてミクロン級の粉末(粒が小さいほど小さければ混合が均一になり、互いに密接すればするほど反応に有利になる)に研磨する。さらに、負圧(又は不活性気体)で1000℃以上の温度まで加熱して不均化反応を行う。温度が高ければ高いほど反応が速くなる。このようにして形成した亜酸化ケイ素が蒸気の形態で分離し、圧力及び温度が低いところに導出されて固体の亜酸化ケイ素に凝固する。ここで、xが必ず1となるとは限らない。
SiO
2+Si−−−SiO
x
【0057】
従来の工程は、原料コストが高く、研磨に大量のエネルギが消耗され、均一に混合するのが困難である。そして、亜酸化ケイ素が反応器の下流管内に堆積し、管の内壁の表面積がますます小さくなるので、収集効率が低くなっている。また、製造された材料をナノメートル級微粉に研磨したことによって、リチウムイオン電池用負極の炭素材料に添加したり、実際に応用したりすることが可能となる。したがって、コストが高く、市場で普及するのが難しい。
【0058】
本出願による亜酸化ケイ素の製造方法は、シリコン単体と二酸化ケイ素とに対して高温、高圧で酸化反応又は還元反応を行わせることによって、シリコン単体と二酸化ケイ素のモル比を略1:1に調整して前駆体を得て、前記前駆体を不均化反応させて亜酸化ケイ素を生成する。亜酸化ケイ素を生成するとき、高温で不均化反応により酸化ケイ素と、酸化ケイ素と隣接するシリコン単体とを反応させて亜酸化ケイ素を生成し、亜酸化ケイ素を昇華させて収集するステップを含むことが好ましい。亜酸化ケイ素を生成するとき、前駆体を密閉の空間において高温、高圧で反応させて固体の亜酸化ケイ素を生成するステップを含むことが好ましい。高温で不均化反応により、酸化ケイ素と、酸化ケイ素隣接するシリコン単体とを反応させて気態の亜酸化ケイ素を生成し、該気態の亜酸化ケイ素を低温状態の電池の負極材料と接触させて亜酸化ケイ素を前記電池の負極材料の隙間及び/又は表面に付着させることが好ましい。
【0059】
本出願は、亜酸化ケイ素材料の唯一前駆体(原料)を生成する方法、上記の亜酸化ケイ素材料を収集する装置、上記の亜酸化ケイ素材料を収集する装置の応用を提供する。本出願は、シリコンと二酸化ケイ素とが反応して亜酸化ケイ素を生成する原理を利用し、直接シリコンスラッジの顆粒表面の二酸化ケイ素と、その内部の二酸化ケイ素と隣接するシリコンとを反応させて、高付加価値の亜酸化ケイ素を製造する。
【0060】
亜酸化ケイ素のみを製造したい場合、原料であるシリコン粉体におけるシリコンの含有量により、ケイ素と酸素のモル比を略1:1にする(実施例1を参照)ように調整する必要がある。シリコン粉体の表面酸化被膜が少ない場合、シリコン粉体を一定期間で酸化反応させて、酸化被膜の成分を適当な範囲(モル比を略1:1にする)に制御する。逆に、二酸化ケイ素が多い場合、化学の還元反応によりモル比を略同様にする。さらに、高温(1000℃以上)で不均化反応により、亜酸化ケイ素を製造する。このようにして、すべての原料を略完全に反応させ、原料を効果的に利用することを保障できる。
【0061】
また、二酸化ケイ素又はシリコン単体を加えて原料のケイ素、酸素のモル比を調整してもよい。亜酸化ケイ素が気相で分離し、融点温度より低い温度の表面に接触すると、固体として堆積する。具体的な、酸化ケイ素の成分の確定、亜酸化ケイ素の収集方法及び設備について実施形態の部分で詳細に説明される。
【0062】
本出願による方法において、前駆体を合成するとき、原料に対して酸化反応、還元反応又は物理的成分調整を行う。前記還元剤は、水素ガス、一酸化炭素、炭素及び金属からなる群から少なくとも1種を選ぶ。還元剤は、一酸化炭素又は炭素であることが好ましい。酸化剤は、酸素ガス、水蒸気及び酸化窒素からなる群から少なくとも1種を選ぶ。
【0063】
本出願による方法において、酸化還元反応をコントロールして亜酸化ケイ素の前駆体を製造するとき、反応の温度を200〜2800℃にし(300〜2500℃、500〜2000℃、600〜1500℃、又は100〜1500℃にすることが好ましい)、反応の圧力を0.01〜100MPaにする。反応の温度を600〜1500℃にし、反応の圧力を0.1〜10MPaにすることが好ましい。純粋なシリコンが室温環境で空気における酸素と反応して保護層となる酸化ケイ素を生成することができるが、内部がさらに酸化されないように保護するためのこの保護層が数ナノメートルしかないため、比較的に厚い酸化被膜を速く形成するには、温度を上げ、酸化剤の圧力を上げる必要がある。原料に対して加圧成形を選択的に行うことが可能であり、順番が限定されない。
【0064】
本出願における前記亜酸化ケイ素の前駆体となる成分はSiO
x(X=0.1〜1.9となる。0.5〜1.5となることが好ましく、0.8〜1.2となることがさらに好ましく、0.9〜1.1となることがさらに好ましい)である。
【0065】
亜酸化ケイ素の前駆体から気態の亜酸化ケイ素を生成する反応の温度は、1000〜2800℃であり、1000〜2000℃にすることが好ましく、1325〜1500℃にすることがさらに好ましい。真空(圧力は0.1MPaより低い)又は不活性気体の雰囲気(圧力は、0.001〜10Mpaであり、0.01〜0.1MPaにすることが好ましい)で、シリコンと二酸化ケイ素とが不均化反応して亜酸化ケイ素を生成して気体に昇華させて分離する(シリコンの溶融状態で、不均化反応により形成した亜酸化ケイ素の分離も発生する。一酸化ケイ素の融点が1702℃である)。加熱方法は、如何なる直接及び間接の方法であってもよい。
【0066】
(上記の反応工程において行うことが可能なその他の操作)
(1)金属の選択的な除去
切断工程において切断用ワイヤーにおける鉄、ニッケルの金属屑が排出され、これらの金属屑が廃液に混入するので、純粋な塩素シランを生成し、反応を順調に進行させるため、これらの金属屑を除去すべきである。鉄を除去すれば、塩化反応時に塩化物が生成されることを防止できる。塩化物が塩素シランとともに精留システムに入ると、精留の難易度が上がり、塩素シランの純度が低下する。同様に、高純度シリコンを副生させる場合も、これらの金属不純物をできる限り除去すべきである。
【0067】
従来、酸洗と磁選との2種の方法がある。前者の場合、酸液が導入され、磁選の場合、鉄を除去する目的だけを達する。本出願は、磁選を用いて鉄を除去し、不純物の除去が処理の段階に行われ、このようにして、回収の過程での鉄の酸化物の生成を減少させ、反応の前に鉄の除去率を上げることができる。実験の過程において鉄が酸化したので、本出願では、選択的に磁選により鉄を除去し、そして、鉄の除去効率を上げ、カルボニル化反応法による鉄の除去の負担を低減させるため、鉄の除去を最初に行う。
【0068】
本出願では、酸洗を勧めないが、外注先からの酸洗が行われたシリコンスラッジも利用できる。上記で高純度シリコンを説明するときに記述したとおり、本出願における主要原料に含まれる金属がニッケルと鉄であるので、本出願は、カルボニル化反応によりニッケルと鉄を除去する。基本方法は、乾燥後のシリコンスラッジと一酸化炭素とを反応させて金属カルボニルを生成し、揮発させて除去することであり(
図2を参照)、ドライ法による不純物の除去に該当する。このようにして、汚染が少なく、生成された金属カルボニルが金属単体に変換されてさらに利益をもたらすことができる。この方法が金属含有の固態廃棄物の回収、再利用に適し、重要なエコ課題を解決することも可能である。該カルボニル化反応の原理は、その他の分野に広範に利用されているが、汚水における金属の処理の分野で、従来の方法より優れるというような報道がなかった。
【0069】
Ni(シリコンスラッジにおける不純物)+4CO−−−Ni(CO)
4
Ni(CO)
4−−−Ni(製品)+4CO
【0070】
(2)選択可能な押圧成形
本出願による方法において、固体の材料を粉砕して、研磨、又は造粒したあとに不均化反応させてもよい。
【0071】
具体的に、反応器の操作要求に応じて粉砕、研磨又は造粒を適当に選択することができる。本出願の具体的な実施形態は、粉砕の場合、通常、固体のシリコンスラッジを30メッシュ以下に粉砕し、研磨の場合、固体のシリコンスラッジを20マイクロメートル以下に研磨する。粉砕又は研磨の目的は、固体の材料と気体とを十分接触させてよりよく反応させることである。
【0072】
造粒の目的は、気流速度が過大で材料を吹っ飛ばすことを避けることである。シリコンスラッジと触媒を、別々で造粒してもよく、混合して造粒してもよい。造粒する場合、反応を十分に進行させるように気体と固体の材料との接触時間を適当に延ばすことができる。加圧の方法又は造粒の方法で成形する。
【0073】
選択可能な添加成形は、二酸化ケイ素SiO
2、炭素C及び金属含有の触媒を添加して、押圧成形することである。加圧の方法又は造粒の方法で成形する。
【0074】
(3)選択可能な精留
物理的分離方法により製品における異なる塩素シランが分離される(沸点の相違によって行われる)。
本出願による方法は、生成されたハロシランをさらに精留、分離する工程をさらに含む。具体的な精留、分離は、該当分野の常規操作により行うことが可能であり、本出願で説明を省略する。
【0075】
本出願の不均化反応は、放熱反応であり、反応過程において大量の熱が発生し、反応の温度を制御する必要がある(通常、反応過程において反応器を冷却させる必要がある。冷却水として水又は水蒸気を利用することができ、放出した熱が、反応前のシリコンスラッジの乾燥に利用されることが可能である。乾燥には、流動床、固定床、移動装置等を利用でき、これらによって要求される理想な効果が得られる)。蒸気がハロシランの精留、精製に利用されることができる。ハロゲン化反応によって生成された化合物は、シリコンテトラハライド、トリハロゲンシラン及びハロゲンガスを含む。これらを精留装置で容易に精製でき、物理的分離方法により製品における異なるハロシランに対して分離(沸点による)を行うことで、要求される品質と純度の塩素シラン製品を製造することができる。それらを、販売したり、ホワイトカーボン、多結晶シリコン又は有機シリコンの製造原料としたりすることができる。
【0076】
(4)反応のバランスを取るように選択可能な物質の添加
本出願による方法において、固体のシリコンスラッジの成分の相違によって、不均化反応が終わったあとに固体スラグ(触媒だけではない)が残されることがある。これらの固体スラグを次回の反応に使用される原料となるシリコンスラッジに混入してさらに反応させてもよい。又は、反応のバランスを取るように、原料となる固体のシリコンスラッジに二酸化ケイ素及び/又は炭素を添加してもよい。或いは、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスを導入すると同時に又はそのあとに、酸素ガスを導入することによって、反応した後に残留した固体スラグを減少させ、できる限りにすべての固体スラグを完全に反応させ、反応の残留物をできる限りに減少させる。
【0077】
ここで、二酸化ケイ素及び/又は炭素を添加する方法として、固体のシリコンスラッジに例えば炭化籾殻等のような生物質を混入することが可能である。二酸化ケイ素及び/又は炭素の通常の添加量を固体のシリコンスラッジの重量の1%〜30%にすることが可能である。工業生産のとき、二酸化ケイ素及び/又は炭素の具体的な添加量は、生成物の要求に応じて予め小規模の実験により特定することができる。混入された二酸化ケイ素及び/又は炭素を固体のシリコンスラッジとともに粉砕、研磨又は造粒することが可能である。還元ガスの具体的な導入量も、残留した固体スラグの量に基づいて要求に応じて特定することができる。
【0078】
(シリコンスラッジにおけるシリコンの精確含有量の測定)
本出願は、シリコンスラッジにおけるシリコンの精確含有量という課題に直面しており、長期にわたって多くの実験により、シリコンスラッジにおけるシリコンと二酸化ケイ素を精確に特定する方法を確定した。その原因は、以下のとおりである。
【0079】
1.シリコンスラッジの主要成分がケイ素と酸素であり、蛍光X線分析法又はプラズマ分光法を利用する場合、シリコンの全含有量しか得られなく、酸素の含有量に対して定量分析を行うことができない。
【0080】
2.X線光電子分光分析法を利用する場合、酸化ケイ素の情報が得られるが、シリコンの表面が酸化された場合、内部のシリコンの含有量に対して正確に分析することが困難である。また、XPSは、半定量分析に該当し、正確な定量情報を得ることができない。
【0081】
3.ケイ素と酸化ケイ素の密度の相違を利用して分析する場合、両者の密度が近く、さらに密度のデータが試料の由来に大きく影響されるので、試料におけるケイ素と酸化ケイ素の信頼できる密度数値を得ることができず、該方法が操作不可能である。
【0082】
4.X線回折法を利用してフルスペクトルフィッティング法によって、ケイ素と酸化ケイ素を量的に分析する。酸化ケイ素はアモルファス状態で形成される場合があるとともに酸化ケイ素の結晶状態が様々であるため、異なる状態の酸化ケイ素を分析できる可能性が低い。
【0083】
5.固体核磁気共鳴の方法によって該混合物を定量分析する場合、NMRの測定精度により、半定量分析なら比較的理想な結果を得ることが可能であるが、定量分析ならほぼ不可能である。
【0084】
6.多種の手段を比較した結果、重量法による分析が好ましい選択である。
主要構想として、空気において高温で試料におけるシリコンを完全に二酸化ケイ素に酸化させ、質量の増加によりシリコンの含有量を逆算する。この方法は、試料が高温で他の成分の質量変化を有しないことを前提としている。上記の分析により、熱重量測定法でシリコンと酸化ケイ素の混合物試料を分析したところ、85%のシリコンとその表面の二酸化ケイ素とが99%以上の質量を占めすという理想な結果が得られた。
【0085】
(反応装置)
本出願による上記のシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジを回収、再利用する方法を実現する装置は、以下のような構成を備える。
【0086】
乾燥システム
シリコンスラッジの粉末を乾燥してその中のすべての揮発成分を除去する。
【0087】
反応器原料供給システム
乾燥後のシリコンスラッジを反応器システムの内部に搬送して反応させる。連続の原料供給を実現するものであることが好ましく、気体による搬送又はスクリューによる搬送であることがさらに好ましい。
【0088】
加熱システム
反応器システムを、要求する反応の温度まで加熱する。加熱方法は、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、直接アーク加熱、電子ビーム加熱、プラズマ加熱、燃焼加熱等の方法の1つ又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0089】
反応器システム
出入り口を備え、シリコンスラッジを受け、加熱されることが可能で、製品を連続に排出できる容器である。流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床の1つ又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0090】
第1の製品収集システム
反応器システムから排出された亜酸化ケイ素を収集し、不均化反応により生成した気体を反応器から導出し、凝縮させて収集する生成物収集システムである。
【0091】
それを気相から固体に変換して収集する収集システムである(次の段落の詳細説明を参照)。
【0092】
第2の製品収集システム
反応器システムから排出されたシリコン単体又はシリコン合金を、溶融体又は固相粉末の形態として収集するシステムである。
【0093】
上記の装置は、シリコンスラッジにおける金属元素を除去するためのカルボニル化反応システムをさらに備えることが好ましい。カルボニル化反応システムが、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床の1つ又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0094】
図3に示すように、乾燥のシリコン粉体(と配合原料)を、ホッパー301からスクリュー原料供給装置303を介して溶解器304に入れる。溶解器304は、誘導加熱素子302を介して、その中に入ったシリコン材料を加熱、溶融して溶融体を形成させるものである。生成された気体の亜酸化ケイ素SiO
xが頂部から305を通して排出、収集される。シリコン材料を続々と加えるとともに溶融体の体積が増加し、その後、溶融体が、上部の溶融体の出口から管路306を経由して収集器307に流入する。収集器が、309を介する真空引き又は不活性気体により保護される。
【0095】
図4に示したもう1つの類似するシステムは、移動床に該当する。乾燥後のシリコンスラッジの粉末が原料供給装置401と402を介して加熱帯403に導入され、加熱帯の上部が開放されるとともに真空収集装置405と接続する。上記の反応器と異なり、この例では、加熱温度がシリコンの融点より低い。そして、シリコンスラッジの乾燥粉末が加熱帯に接近、到達する過程において、顆粒の表面酸化被膜と内部シリコン単体とが反応して生成した亜酸化ケイ素が、すべての表面酸化被膜が完全に反応するまで、開放段の上部から脱出して真空収集室05に収集される。シリコンスラッジの乾燥粉末が反応して残留したものがシリコン単体の粉体となり、シリコン単体が、シリコン粉体収集室404内に搬送される。
【0096】
装置の主な機能は、シリコンスラッジの顆粒の表面の酸化被膜を除去し、シリコン単体、シリコン合金、塩素シランへの変換を可能にし、また、亜酸化ケイ素を副生させる。
【0097】
シリコン顆粒の表面酸化被膜の除去(共通性)
酸化ケイ素とケイ素がともに存在し、顆粒の表面に酸化被膜が形成され、表面酸化被膜が内部のシリコン単体と隣接するので、酸化ケイ素とケイ素との不均化反応により亜酸化ケイ素を生成し、気相昇華により除去する。亜酸化ケイ素は、下流の低温箇所で固態の亜酸化ケイ素に再凝結する。
【0098】
不均化反応時の温度がシリコンの融点又は合金の融点よりも高い場合、
図3に示すように、生成したシリコン単体、シリコン含有合金及び亜酸化ケイ素が連続に排出される。
【0099】
不均化反応の温度がシリコンの融点よりも低い場合(
図4を参照)、残ったシリコンは、粉末の形態で存在するので、ハロゲンと反応して塩素シラン又は有機ケイ素を製造することができ、シリコンを粉砕する必要がなくなる。また、粉末の形態又は造粒後の形態でハロゲンガス又はハロゲン化水素と選択的に不均化反応し、例えばトリハロゲンシラン又はシリコンテトラハライド等のハロシランと有機ケイ素のモノマー等を生成する。
【0100】
不均化反応を行うための反応器
特に乾燥後の切断時に生じたシリコンスラッジに適用するものである。顆粒が極めて微細であるため、微粉をさらに造粒成形処理を行わなければ、直接従来の反応器を用いて製造することが困難である。
【0101】
(カルボニル化反応装置)
現在の工業生産において、工業汚泥の形態で存在する大量の遷移金属であるCo、Ni、Cr等の排出物が生成され、遷移金属が土壌に浸入すればひどい環境汚染を引き起こすことがあり、いかにこれらの遷移金属による汚染を解消することが環境保護の難題となっている。当該問題に対し、本出願は、これらの金属をカルボニル化することができる原理を利用することで、遷移金属をドライ法で回収する目的及び完全に再利用する効果を実現した。当該方法は、工業排出物に含まれる遷移金属が環境を汚染し浪費される問題を解決した、新たなエコな処理方法である。
【0102】
上記の装置は、シリコンスラッジにおける金属元素を除去するための、以下のような構成を有するカルボニル化反応システムを備えてもよい。
【0103】
反応器原料供給システム
乾燥後のシリコンスラッジを反応器システムの内部に搬送して反応させる。連続の原料供給工程を実現するものであることが好ましく、気体による高圧搬送又はスクリュー搬送により搬送されるとともに一酸化炭素を反応器に加えることがさらに好ましい。
【0104】
加熱システム
反応器システムを、要求する反応の温度まで加熱する。加熱方法は、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、直接アーク加熱、プラズマ加熱、燃焼加熱方法の1つ又はこれらの組み合わせであってもよく、反応の温度が比較的に低く、一般200℃より低いので、熱交換による加熱を利用することが好ましい。
【0105】
反応器システム
出入り口を備え、シリコンスラッジを受け、加熱されることが可能で、製品を連続に排出できる容器である。流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床であってもよい。
【0106】
製品収集システム
反応器システムが排出されたカルボニル化反応合物を収集し、反応により生成した気体を反応器から導出し、凝縮させて収集する生成物収集システムである。
【0107】
シリコン粉体が、数十マイクロメートルとなる微細のものであるため、一般の化学的反応器を利用することができない。粉末を成形すると常規反応器を利用することができるが、内部の鉄とニッケルの金属顆粒を完全に反応させることが難しい。したがって、前記反応器は、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床であることが好ましい。
【0108】
生成されたカルボニルニッケルは、下流の具体的の応用のため、微粉又は粒状で存在するニッケル単体に変換することが可能である。
【0109】
(塩素シランに係る装置)
ハロゲンの気化反応を行う反応器装置は、以下のような構成を備える。
【0110】
反応器原料供給システム
表面酸化被膜を除去して得たシリコンスラッジを反応器システムの内部に搬送して反応させる。連続の原料供給を実現するものであることが好ましく、気体による搬送又はスクリューによる搬送であることがさらに好ましい。すなわち、固体の材料(固体のシリコンスラッジ及び前記の触媒。これらの固体の材料を予め均一に混合させてもよい)を反応器内に入れ、反応器内に不均化反応に必要の気体を導入し、すなわち、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスを、気化反応を行うための反応器に導入する。
【0111】
加熱システム及び温度制御
反応器システムを、要求する反応の温度まで加熱する。加熱方法は、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、反応による加熱、プラズマ加熱、燃焼加熱方法の1つ又はこれらの組み合わせである。
【0112】
反応器システム
出入り口を備え、シリコンスラッジを受け、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスを導入して固態のシリコンスラッジの粉末と十分接触させ、加熱されることが可能で、製品を連続に排出できる容器である。流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床の1つ又はこれらの組み合わせであり、気体サイクロン(片側分散器の移動床)であることが好ましい。
【0113】
製品収集システム
反応器システムから排出された、気化反応により生成された気体を反応器から導出し、凝縮させて収集する生成物収集システムである。適宜な温度で不均化反応させ、反応の生成物(気態の)を反応器から導出して凝縮させれば、液態のハロシラン又はシランを収集して獲得できる。反応による排気が、反応器に戻されて再利用され又はアルカリ性溶液により処理して回収されることができる。
【0114】
図8に示すように、本出願のシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じた廃液から分離した固体のシリコンスラッジを回収、再利用し、ハロゲンシラン(本実験は、塩素シランだけに限る)に変換する方法を実現するための装置は、主に以下のような構成を備える。
【0115】
(1)不均化反応を行うための反応器1
該反応器に温度制御設備(図示せず)が設置されている。具体的に、該反応器は、気流床、流動床、固定床又は移動床であってもよく、固定床又は気流床であることが好ましい。原料が乾燥されて微粉になるので、従来の流動床での反応の制御が難しく、大量の未反応のシリコンスラッジが下流工程に搬送され、原料の浪費及び管路の詰まりになる。気流床を用いる場合、原料と反応気体とが十分に混合し、反応の表面が大幅に増大される。図面に示すように、反応器の中部が固体のシリコンスラッジを添加するための主反応部811であり、反応器の下部(図ではテッパー状の部分)に石英顆粒添加部812が設置され、3〜15mmの石英顆粒を添加できる。気体が下から上に向かって該石英顆粒添加部を通過する場合、該石英顆粒添加部が気体分散器として形成される。反応器の上部に、おもに気流が不安定になるときにシリコンスラッジの粉末が反応器から吹っ飛ばされることを防止するための石英ウール添加部813が設置される。反応器の底部に原料ガスの入口が設置され、頂部に生成物気体の出口が設置されている。
【0116】
(2)ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスを反応器に導入する吸気システム2
該吸気システム2は、おもに原料ガス(ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガス)を反応器の底部に設けられた原料ガスの入口を介して反応器に導入し、原料ガスが、下から上に向かって固体のシリコンスラッジを添加する主反応部に入り、固体のシリコンスラッジと反応して生成物気体(ハロシラン又はシラン)を生成するものである。図面に示した吸気システム2は、管路を介して直列に設置されるガス瓶と気体乾燥器823とを有する。図面において模式的に示した2つのガス瓶821、822は、それぞれ異なる気体を収容し、その内の1つのガス瓶が、反応する前に反応器内をパージするための、例えば窒素ガスのような不活性気体を収容するものであってもよい。複数のガス瓶が並列に設置されてもよい。水分が反応器に入ることを防止するため、気体乾燥装置823は、原料ガスに含まれる水分を吸収するための沸石を収容する容器であってもよい。
【0117】
(3)不均化反応により生成された気体を反応器から導出し、凝縮させて収集する生成物収集システム3
生成物収集システム3は、おもに管路を介して直列に設置される凝縮装置831と、液体収集装置832と、排気処理装置833とを有する。ここで、凝縮装置31は、おもに反応器1から導出された生成物気体を液体に凝縮することに用いられる。凝縮後の液体が液体収集装置832により収集され、未凝縮の排気(おもに未反応のハロゲンガス、ハロゲン化水素ガスである)が排気処理装置(おもにアルカリ性溶液を収容する容器であり、アルカリ性溶液を用いて排気における未反応のハロゲンガス、ハロゲン化水素ガスを吸収する)により処理される。排気に存在するハロゲンガス、ハロゲン化水素ガスに対する吸収を確保するため、排気処理装置が直列に複数設置されてもよい(図面において2つの排気処理装置833、834が設置されるものを示している)
【0118】
(亜酸化ケイ素に係る装置)
本出願は、高効率で亜酸化ケイ素を生成する方法及び装置をさらに提供する。上記のシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジを回収、再利用し、亜酸化ケイ素を生成、収集する方法を実現するための装置は、以下のような構成を備える。
【0119】
反応器原料供給システム
乾燥後の亜酸化ケイ素の前駆体を反応器システムの内部に搬送して反応させる。連続の原料供給を実現するものであることが好ましく、気体による搬送又はスクリューによる搬送であることがさらに好ましい。
【0120】
加熱システム
反応器システムを、要求する反応の温度まで加熱する。加熱方法は、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、直接アーク加熱、電子ビーム加熱、プラズマ加熱、燃焼加熱等の方法の1つ又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0121】
反応器システム
出入り口を備え、亜酸化ケイ素の前駆体を受け、加熱されることが可能で、製品を連続に排出できる容器である。流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床の1つ又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0122】
製品収集システム
反応器システムから排出された亜酸化ケイ素を収集し、不均化反応により生成された気体を反応器から導出し、凝縮させて収集する生成物収集システムである。
【0123】
亜酸化ケイ素の収集が気相から固相になるプロセスであり、従来、亜酸化ケイ素が反応器の下流管内で堆積し、反応時間の経過にしたがって、管の内径がますます小さくなり、内壁の表面積もますます小さくなるので、収集効率が低くなり、反応を中断せざるを得ず、効率がとても低い。本出願の場合、大面積、連続の方法(
図6と
図7)を利用し、製造効率を大幅に向上させ、製造コストを低減させた。内部が冷却される管(又は平板)の外部又は流動の顆粒の表面に堆積するので、表面積が増大しつつあり、制限がなく、堆積効率がますます高くなる。
【0124】
図6に示すように、亜酸化ケイ素の前駆体が反応器に搬送され、下から上に向かって固体の前駆体を添加する主反応部を通過し、加熱されて気態の亜酸化ケイ素が生成されて、堆積チャンバーに入る。そして、板状、棒状の収集体に堆積する。収集体の中部に冷却媒質を選択的に導入して温度を下げ、熱エネルギーを導出して乾燥に用いることが可能である。
【0125】
反応の温度を制御する(反応過程において、通常、反応器を冷却する必要がある)。冷却水として、水又は水蒸気を利用することが可能であり、導出された熱を反応前のシリコンスラッジの乾燥に用いることができる。乾燥は、流動床、固定床、移動床等を利用することができ、これらによって、要求する理想な乾燥効果が得られる。
【0126】
図6に示すように、粉末を塊状の亜酸化ケイ素の前駆体にプレスして、さらに粒度が3〜10mmとなる亜酸化ケイ素の前駆体顆粒600に粉砕する。亜酸化ケイ素の前駆体顆粒又は粉末600がダブルロックホッパー601を介して反応器に添加され、さらに坩堝603に落ちる。坩堝を加熱素子602により1400℃まで加熱し、昇華した亜酸化ケイ素607が坩堝から排出されて収集チャンバー604に到達し、管状収集体606の表面(扁平状又はその他の形状であってもよい)に堆積するようになる。管状収集体606は、中空であり、内部に冷却水608を流通して冷却を行うものである。亜酸化ケイ素の収集体での堆積が多くなるとき、堆積を止め、製品を取り出して、再び設備を組み合わせて製造を続ける。
【0127】
図7(a)と
図7(b)は、本出願における顆粒堆積システム装置を示すものである。上記の
図6に示したすべてのシステム以外、顆粒の循環搬送、分散、収集、篩分、種製造に係るシステムをさらに備える。
【0128】
図7(a)に示すように、亜酸化ケイ素の前駆体顆粒700がダブルロックホッパー701を介して反応器に添加され、さらに坩堝703に落ちる。坩堝を加熱素子702により1000℃以上に加熱し、昇華した亜酸化ケイ素707が坩堝から排出されて収集チャンバーに到達し、顆粒状の亜酸化ケイ素収集体708の表面に堆積するようになる。705が真空出口であり、真空出口705の左側に階段状のルーバー型通気ストッパー(
図7(a)に図示せず、
図7(b)を参照)をさらに有する。706は、顆粒循環器であり、顆粒を底部の貯蔵部から頂部まで搬送して、さらに底部に搬送し、中断せずに循環させるためのものである。反応器チャンバー内において、顆粒の表面と気態の亜酸化ケイ素とが十分に接触し、粒度が増しつつである。顆粒循環器006と頂部との間に、大きな顆粒が分離され排出されて、小さな顆粒が頂部まで搬送されて反応器内で継続に循環させて、増大させる篩分装置(図示せず)をさらに備える。システムの安定作動を保障するように、システムにおける小さな顆粒が過剰に少なくなるとき、新たな比較的に小さい顆粒である種を添加する。該システムは、すべての気相から固相への材料堆積の工程に適用できるとともに、従来の例えば流動床における分散器の詰まり、加熱の困難、顆粒サイズの制限等の欠点を解決した。
【0129】
図7(b)は、本出願の気体分散器なしの顆粒反応器をさらに示し、それが階段状のルーバー型通気ストッパーを有する。該ストッパーは、頂部からの顆粒を受け、ストッパーで下に向かって移動させ、自由落下のように快速に落ちることがなく、顆粒の反応器内での滞在時間を増やし、堆積効率を向上させるものである。また、顆粒サイズに対する制限がなく、従来の例えば流動床における顆粒が流動気流の速度に制限されることを避け、従来の方法で製造できない大きな顆粒を製造できる。
【0130】
反応器の材質
反応器の材質は、機械強度を満たすとともに汚染が発生しない材料を選択し、製造する材料と同一又は合わせて汚染が発生しない材料を内部に内張りしてもよい。亜酸化ケイ素を製造するとき、石英、高純度単結晶シリコン、多結晶シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を用い、高純度多結晶シリコンを製造するとき、高純度単結晶シリコン、多結晶シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を用い、カルボニルニッケルの玉を製造するとき、金属ニッケル又はステンレスを用いる。
【0131】
気体(気相)分散器
すべての気−固間の反応は、如何に分散器を介して気体と固体、特に顆粒の表面とを効果的且つ十分に接触させることに直面しなければならない。分散器の表面は、最初に気体と接触し最初に堆積が発生する収集体表面となる。したがって、分散器の通気孔で必ず詰まりが発生し、長時間の流通を保つことが困難である。本出願の反応器は、分散器なしの気固反応器であり、気体が分散器を介せず固体の顆粒と直接接触するので、従来の方法におけるこのような欠点を解決した。
【0132】
循環システム
気体による搬送、真空搬送、機械搬送等の如何なる従来の方法を利用することが可能である。
【0133】
熱管理
気固反応において必ず大量の熱の排出と吸収が伴い、これらの熱が堆積の界面で発生するので、反応界面の熱を如何に効果的に管理し、如何に反応に必要な温度まで快速且つ効果的に昇温することが、工業の応用上最もの難題となっている。上記の従来の加熱、冷却方法以外、本出願は、前記のストッパーにおいて中空の構造に冷却媒質を導入することで冷却させることによって、亜酸化ケイ素のような物質の高温蒸気から固体の顆粒への変換の効率を向上させる。一方、常規の外部での事前加熱(冷却)以外、抵抗加熱によりストッパー(例えば、その自身が導電性を備える)を直接加熱して顆粒の表面温度を上げる目的を達するものを提供した。顆粒材料自身が反応環境で導電性を備えれば、顆粒流の両側に電極をつけて電流で加熱してもよい。
【0134】
本発明のまとめ
本出願によるシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジを回収、再利用する方法は、液体を分離して乾燥されたダイヤモンドワイヤー切断時に生じたされたシリコンスラッジを化学、物理的反応させてシリコン含有製品を生成することを特徴とする。
【0135】
この方法の特徴は、前記の乾燥は、230℃下で気体揮発物がなく、用いられる設備が、気流乾燥、噴霧乾燥、流動床乾燥、スピンフラッシュ乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、冷凍乾燥、衝撃乾燥、衝突噴流乾燥、過熱乾燥、パルス燃焼式乾燥及びヒートポンプ乾燥の1つ又はこれらの組み合わせである。
【0136】
(1)前記のシリコン含有製品は、シリコン単体、高純度シリコン、シリコン合金、亜酸化ケイ素、ハロゲンシラン及び有機ケイ素のモノマーである。
【0137】
(2)前記の化学的反応は、シリコンスラッジの顆粒表面の二酸化ケイ素とその内部のシリコン単体との不均化反応によって、亜酸化ケイ素を生成、排出し、更なる化学的反応及び物理的反応によって、シリコン単体、シリコン合金及びシランを生成することを可能にするとともに、亜酸化ケイ素を生成する。化学物理的反応とは、化学的反応と物理的反応を指している。ここで、不均化反応の温度がシリコンの融点より低いとき、シリコン単体が粉末になる。前記不均化反応(表面酸化被膜が、その内部の表面酸化被膜と密接するシリコン単体と反応し、生成された亜酸化ケイ素が昇華してシリコン顆粒の表面から脱離する)が高温且つ真空又は不活性気体の雰囲気で行われ、反応の温度が1200〜1800℃であり、反応の圧力が0.01〜0.1MPaである。
【0138】
(3)前記の物理的反応は、表面酸化被膜が除去されたシリコン粉体の顆粒の溶融、集中に係る反応、又はその他の金属と合金を形成する反応である。前記物理的反応(シリコン自身が溶融するか、又はその他の金属と合金を形成する)が高温で行われる。反応の温度が500〜1800℃であり、反応の圧力が0.001〜100Mpaである。
【0139】
(4)前記の化学的反応は、カルボニル化反応をさらに含み、一酸化炭素とシリコンスラッジにおける遷移金属とのカルボニル化反応で金属不純物を除去する。前記カルボニル化反応(シリコンにおける遷移金属不純物と一酸化炭素との反応)は、高温、高圧で行われる。反応の温度が50〜240℃であり、反応の圧力が0.01〜100MPaである。
【0140】
(5)前記の化学的反応は、シリコンスラッジの粉末の表面酸化被膜が除去されたシリコン単体の顆粒とハロゲン又はハロゲン化水素とが気化反応してハロゲンシラン及び有機ケイ素のモノマーを生成することをさらに含む。ハロゲンシランは、SiH
xL
4−xであり、L=F、Cl、Br及びI、X=0、1、2、3、4である。前記気化反応(シリコンとハロゲン及び水素ガスとの反応であり、前記ハロゲンガスがフッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス又はヨウ素ガスであり、前記ハロゲン化水素ガスがフッ化水素ガス、塩化水素ガス、臭化水素ガス又はヨウ化水素ガスである)は、高温、高圧で触媒とともに行われるものである。反応の温度が200〜1400℃であり、反応の圧力が0.01〜100Mpaである。前記のシリコン単体は、シリコンスラッジを不均化反応させることにより得られたものであり、カルボニル化反応して生成されるものであることが好ましく、反応工程が連続的な製造により行われることが好ましい。
【0141】
(6)前記のシリコン合金は、ケイ素と少なくとも1種のその他の金属とを含む多元合金であり、シリコン−アルミニウム合金、シリコン−マグネシウム合金、シリコン−鉄合金、シリコン−カルシウム合金、シリコン−リチウム合金、シリコン−バリウム合金、シリコン−アルミニウム合金、シリコン−チタン合金を含み、不均化反応により生成されたシリコン単体と合金元素とを溶融して得られたものである。合金元素とシリコンスラッジとを同時に反応器に入れ、不均化反応と溶融を同時に行うことが好ましい。
【0142】
(7)反応過程における加熱方法は、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、直接アーク加熱、電子ビーム加熱、プラズマ加熱、反応による加熱及び燃焼加熱方法の1つ又はこれらの組み合わせである。
【0143】
(8)本出願による請求項1に係るシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたシリコンスラッジを回収、再利用する方法を実現するためのシステムは、乾燥システム、反応器原料供給システム、加熱システム、反応器システム、亜酸化ケイ素収集システム、シリコン単体又はシリコン合金の収集システムを備える。
【0144】
ハロゲンとの気化反応を行う反応器には、温度制御設備が設置されている。前記反応器は、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床であることが好ましい。ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスを気化反応するための反応器に導入する。該反応器に温度制御設備が設置されている
【0145】
前記反応器は、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床であることが好ましい。
【0146】
ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスを反応器の吸気システムに導入し、気化反応により生成された気体を反応器から導出し、凝縮させて収集する生成物収集システムをさらに備える。
【0147】
本出願による亜酸化ケイ素を生成する方法は、a)1つの顆粒の異なる部位に亜酸化ケイ素を生成するためのシリコン単体と二酸化ケイ素とを有する単一の前駆体を用い、具体的に、シリコン単体、酸化不完全のシリコン又は二酸化ケイ素に対して酸化反応、還元反応を行わせることによって、亜酸化ケイ素を生成するためのシリコン単体と二酸化ケイ素とを1対1に近いモル比に調整した単一原料を用いて、酸化ケイ素と、酸化ケイ素と隣接するシリコン単体とが高温で不均化反応により亜酸化ケイ素SiO
xを生成し、昇華させて収集し、b)直接に固態反応により固体の亜酸化ケイ素を得ることを特徴とする。亜酸化ケイ素の応用の一つは、リチウムイオン電池用負極材料の前駆体とする。ここで、前記亜酸化ケイ素の成分は、SiO
x(X=0.1〜1.9となり、0.5〜1.5となることが好ましく、0.8〜1.2となることがさらに好ましく、0.9〜1.1となることがさらに好ましい)である。ここで、SiO
xの前駆体を合成するとき、反応の温度が200〜2800℃であり、300〜2500℃であることが好ましく、500〜2000℃であることがさらに好ましく、600〜1700℃であることがさらに好ましい。反応の圧力が、0.01〜100Mpaであり、0.1〜10Mpaであることが好ましく、0.1〜11Mpaであることがさらに好ましい。反応の雰囲気は、酸化又は還元である。
【0148】
前記前駆体によりSiO
xを合成する反応条件は以下のとおりである。
反応の温度は、200〜2800℃であり、300〜2500℃であることが好ましく、500〜2000℃であることがさらに好ましく、600〜1700℃であることがさらに好ましい。圧力が0.0001〜100MPaである。
【0149】
(a)真空の雰囲気における反応の圧力は、0.01〜100MPaであり、1000Pa未満となることがさらに好ましく、100Pa未満となることがさらに好ましく、10Pa未満となることがさらに好ましく、1.0Pa未満となることがさらに好ましく、0.1Pa未満となることがさらに好ましい。
【0150】
(b)不活性気体の雰囲気における反応の圧力は、0.001〜10MPaであり、0.01〜10MPaであることが好ましい。
【0151】
(c)高圧で一酸化ケイ素とシリコン単体との反応により固体の亜酸化ケイ素が生成され、反応の圧力が、0.1〜100MPaであり、1〜100Mpaであることがさらに好ましい。
【0152】
前記の方法及びシステムにおいて、高温昇華(不均化反応)による亜酸化ケイ素の生成及び気化、溶融反応に係る工程の加熱は、抵抗加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、直接アーク加熱、電子ビーム加熱、プラズマ加熱、反応による加熱、燃焼加熱等の方法を利用する。
【0153】
また、亜酸化ケイ素の堆積が収集反応器で行われ、前記収集反応器は、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床の1つ又はこれらの組み合わせである。気態の酸化ケイが棒状、板状又は顆粒の表面に凝結する。リチウムイオン負極材料の顆粒の内部に浸入、含浸することができることが好ましい。シリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じた廃液から分離した固体に乾燥したシリコン粉体であることが好ましい。気体を凝結して顆粒状となる亜酸化ケイ素、又は気態の亜酸化ケイ素を直接にリチウムイオン電池用負極材料に混入してシリコン含有の高容量の負極材料を形成することがさらに好ましい。
【0154】
本出願による上記の亜酸化ケイ素を製造する方法を実現するための装置は、
亜酸化ケイ素の前駆体の製造ユニットと、
坩堝を加熱する温度制御設備が設置され、且つ不均化反応により亜酸化ケイ素を生成するための反応器と、
不均化反応により生成された気態の亜酸化ケイ素を反応器から導出し、凝結させて収集する生成物収集システムと、を備え、
前記反応器が、流動床、希薄相気流床、噴流層、固定床又は移動床であることが好ましく、
収集システムは、真空下の板状、棒状、及び顆粒状の床の1つ又はこれらの組み合わせである。
前記亜酸化ケイ素を収集する真空下の板状、棒状のシステムが、中空の構造を有し、冷却媒質が導入される。請求項10に記載の前記亜酸化ケイ素を収集する真空下の顆粒状床において、顆粒が頂部へ搬送される過程で冷却される。
【0155】
本出願による気固反応器は、反応気体の入口側に気体分散器が設けられなく、気体が固体媒質の表面と直接接触することを特徴とする。
【0156】
本出願によるドライ法で金属を含有する固体廃棄物を回収、処理する方法は、前記固体廃棄物における金属が、一酸化炭素とカルボニル化反応して気態の金属カルボニルを生成することにより除去され、金属カルボニルを用いてさらに遷移金属に変換させることにより効果的に利用できることを特徴とする。前記カルボニル化反応は、(遷移金属である不純物を含む汚染物と一酸化炭素との反応)高温、高圧で触媒とともに行われることを特徴とする。反応の温度が50〜240℃であり、反応の圧力が0.01〜100MPaである。
【0157】
本出願の有益な効果
1、カルボニル化反応の原理を利用し遷移金属を除去する方法によって金属不純物を除去するので、大量の酸、アルカリ等による腐蝕及び環境にやさしくない化学物の使用、酸洗によるシリコンの損失が避けられ、シリコンスラッジの高純度シリコンへの変換を可能にし、塩素シランの製造に寄与する。
【0158】
2、シリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じた液体から回収したシリコンスラッジを、分離、乾燥したあとに直接不均化反応を行い、シリコン単体と亜酸化ケイ素を生成する方法は、以下のような課題を解決できた。
【0159】
(0)シリコンスラッジの、シリコン単体、シリコン含有合金、塩素シランへの製造、変換を可能にし、酸洗によりシリコン表面の酸化ケイ素を処理してシリコン単体を得るときの環境汚染及び酸洗によるシリコンの浪費が避けられた。
【0160】
(1)従来、高純度シリコンと高純度酸化ケイ素とを反応させるので、コストが高く、反応の不十分の問題があり、これに対して、本発明は、廃棄物を効果的に回収、再利用でき、コストが低い効果が得られる。また、本出願によって、高付加価値の亜酸化ケイ素が得られるとともに、酸洗によりシリコン表面の酸化ケイ素を処理してシリコン単体を得るときの環境汚染及び酸洗によるシリコンの浪費が避けられた。
【0161】
(2)亜酸化ケイ素だけを製造する場合、不均化反応において、酸化還元反応によりシリコン単体のモル比が二酸化ケイ素のモル比と近いように調整されることによって、完全に反応させて亜酸化ケイ素を生成し、シリコンスラッジにおけるシリコンを回収、再利用する目的及び高付加価値の酸化ケイ素を生成する目的を達した。
【0162】
3、気化反応
従来、シリコンと不純物の分離工程において、不純物の性質がシリコンの性質と近いので、分離が困難である。本出願によって、シリコン(Si)と固体の不純物を特に分離しなく、直接回収したシリコンスラッジを原料とし、不均化反応により酸化被膜を除去したあと、直接ハロゲンガス等と反応させるので、手間を省く。
本発明における装置システム全体は、要求に応じて連続操作ができ、従来技術の間欠操作、原料の大量損失、浪費及び実際の応用に合わない問題を解決した。
【0163】
4、シリコンスラッジにおけるシリコンと二酸化ケイ素を精確に特定する方法となり、シリコンスラッジにおけるシリコンを簡単に特定できる。
【0164】
5、真空と無酸素の雰囲気で反応するので、疎な構造であり比較的に厚い不均一の表面酸化被膜を有するシリコン微粉が加熱過程において容易に酸化される問題を解決した。
【0165】
6、気相堆積
亜酸化ケイ素の収集装置内に、亜酸化ケイ素を堆積させるための中空の管状収集体又は顆粒状収集体が設置されるので、従来の亜酸化ケイ素が反応器の下流管に堆積し、反応時間の経過にしたがって、管の内径がますます小さくなり、内壁の表面積もますます小さくなり、収集効率が低くなり、反応を中断せざるを得ず、効率がとても低い問題を解決し、不均化反応を連続に行わせ、亜酸化ケイ素を高効率で収集できる。
本出願は、分散器なしの気固反応器を用いるので、気−固反応における詰まり、加熱の問題、汚染、顆粒サイズ等の問題を解決した。
【0166】
7、気態の亜酸化ケイ素をリチウムイオン電池用負極材料に直接に堆積させ、製造コストを低減でき、均一に分布できる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【
図1】本出願における乾燥されたシリコンスラッジの形態、構成を示すものである。(a)がシリコンスラッジの成分模式図であり、(b)と(c)がそれぞれ実施例1〜4における乾燥されたシリコンスラッジの反応前の走査電子顕微鏡写真とX線回折パターンである。
【
図2】本出願の具体的な実施形態の工程フロー図である。
【
図3】本出願の具体的な実施形態のシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じた固体のシリコンスラッジの顆粒の表面酸化被膜を除去してシリコン単体(溶融体から塊状へ)を製造するとともに亜酸化ケイ素を収集する方法を実現するための装置の構成模式図である。
【
図4】本出願の具体的な実施形態のシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたスラリーから分離した固体のシリコンスラッジの顆粒の表面酸化被膜を除去してシリコン単体(粉体)を製造するとともに亜酸化ケイ素を収集する方法を実現するための装置の構成模式図である。
【
図5】本出願の具体的な実施形態のシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたスラリーを回収、再利用し、シリコンスラッジにおける遷移金属を除去するカルボニル化方法を示す模式図である。
【
図6】本出願の具体的な実施形態の生成した亜酸化ケイ素を塊状で収集することを実現するための分散器なしの気固堆積装置の構成模式図である。
【
図7】(a)は本出願の具体的な実施形態の生成した亜酸化ケイ素を連続に顆粒状で収集することを実現するための分散器なしの気固堆積装置の構成模式図、(b)はその局部構成模式図である。
【
図8】本出願の具体的な実施形態のシリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じたスラリーを連続に回収、再利用し、分離した固体のシリコンスラッジに対する不均化反応により塩素シランを生成することを実現するための装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0168】
以下、図面及び具体的な実施例を参照して本出願の技術案をさらに説明し、ステップが少なく、プロセスが短く、分離が完全で、副生物が有用である等の利点を備える。これらの実施例は、本出願を限定するものではない。
【0169】
本出願による方法は、おもにダイヤモンドワイヤーによりシリコンを切断し、固液分離することによって得られたシリコンスラッジを回収、再利用することに関わる。ここで、シリコンのダイヤモンドワイヤー切断時に生じた廃液に対する固液分離は、如何なる従来の技術を利用して行われることが可能である。得られたシリコンスラッジが乾燥されたあと、シリコン単体、亜酸化ケイ素、シリコン合金及び塩素シランを生成することに用いられる。
【0170】
(実施例1 シリコンスラッジ原料の製造及びシリコン含有量の測定)
シリコンスラッジ料は、黒灰色を呈し、おもにシリコン粉体を含み、液体が10〜30%を占める。5kgの該シリコンスラッジ原料を石英坩堝内に置いてオーブンに入れ、揮発して匂いする気体を生成しなくなるまで、110℃で24時間乾燥させ、大きな塊状のシリコンスラッジを得た。さらに、塊状のシリコンスラッジを粉砕して、シリコンスラッジが100メッシュ以下になるとともに重量が低減しないまで230℃で乾燥し続け、3943グラムの乾燥されたシリコンスラッジを得た。以下、すべての実験において当該方法で得られたシリコンスラッジを原料とする。
【0171】
図1(b)と
図1(c)は、それぞれ実施例1〜4における乾燥されたシリコンスラッジの反応前の走査電子顕微鏡写真(
図1(b))とX線回折パターン(
図1(c))である。これらの図から分かるように、シリコン以外にその他の結晶材料がなく、シリコン顆粒の表面の酸化ケイ素が非晶質であり、回折ピークがない。
【0172】
まず、熱重量測定法によりシリコンと酸化ケイ素の含有量に対して定量分析を行い、主要な構想は、空気雰囲気において高温で試料におけるシリコンを二酸化ケイ素に完全に酸化させ、質量の増加に基づいてシリコンの含有量を逆算する。上記の分析により、熱重量測定法でシリコンと酸化ケイ素の混合物試料を分析したところ、85%のシリコンとその表面の二酸化ケイ素とが99%以上の質量を占めすという理想な結果が得られた。具体的に、5g乾燥後のシリコンスラッジを150mm×150mmの石英トレーに広げ、全てのシリコン粉体が白色の二酸化ケイ素(反応が不完全時に略黄色の成分がある)に変換されるまでマッフル炉により1100℃で12時間以上加熱し、加熱後の白色の二酸化ケイ素の粉末を計量して原料と比較することにより、シリコンの含有量を算出する。下記の実験により酸化反応における動的変化が提供され、温度と時間に対する操作に対して参照になる。
【0173】
実験用計器が日本島津製作所の示差熱・熱重量分析装置(DTG−60H)を用い、実験の雰囲気が空気雰囲気となり、流速が50mL/minとなり、実験用坩堝が50uLの開口の酸化アルミニウム坩堝であり、坩堝内に5.0mgの乾燥したシリコン粉体を入れた。まず、温度スキャンにより実験の温度範囲を特定し、温度の設定について、10℃/minの加熱速度で室温から1400℃まで加熱し、試料が500℃以上になると、重量増加の現象が現れることが観察され、該過程がシリコン単体が二酸化ケイ素に酸化される過程である。520〜1400℃の範囲で、試料の重量増加が80.7%となる。試料におけるシリコンを二酸化ケイ素に完全に酸化させるため、1000℃以上で定温を保つべきである。このため、1050℃で999分の定温の熱重量測定の実験を行った。1050℃での実験過程における試料の重量増加が100%となり、該過程がシリコン単体が二酸化ケイ素に酸化される過程である。実験前の試料が深い茶色を呈するが、実験後の試料が白色になり、シリコンが完全に二酸化ケイ素になったことがわかった。理論上、Si+O
2→SiO
2の反応において、重量増加が32/28*100%=114.3%となるが、本実験において、重量増加が100%となり、試料におけるシリコンの含有量が、100/114.3*100%=87.5%となる。上記の分析により、熱重量測定法を利用してシリコンと酸化ケイ素の混合物に対して定量分析を行うことができる。
【0174】
(実施例2)
実施例1により得られた乾燥したシリコンスラッジ原料2000グラムを2000mlの黒鉛坩堝に入れ、坩堝を真空誘導溶解炉(中国上海辰華)に入れ、まず、10
-3tor以下に真空引きを行い、そして高純度アルゴンを導入して1500℃まで加熱した。加熱過程において亜酸化ケイ素が生成され揮発し、亜酸化ケイ素の揮発がなくなるまで透明窓からシリコンが溶融したと観察した後、自然冷却し、シリコン結晶が1400グラム(坩堝内に残留して分離できない部分も含む)となり、一部が坩堝に残留して取り出すことができなく、坩堝の重量が30グラム増加した。シリコン結晶の外観構造が多結晶シリコンに近く、成分の分析について表1から確認できる。また、本実験は、亜酸化ケイ素を収集する専用の装置が用意されなく、そして、一部の酸化ケイ素が完全に反応していない。真空誘導溶解炉の蓋からわずか5グラムの試料が取り出され、そのケイ素−酸素成分について表2から確認できる。
【0175】
(実施例3)
図3に示すように、200リットルの黒鉛坩堝が内蔵される500KWの工業溶解炉を利用し、頂部に黒鉛蓋があり、12フィートの石英管を介して、直径が120センチ、高さが2メートルである外部のステンレスタンクと接続される。また、ステンレスタンク内の負圧(0.7〜0.9atm)を保つように、ルーツブロアと接続されている。また、外部から水道水をかけて冷却を行う。
【0176】
まず、25キログラムの乾燥のシリコン粉体を黒鉛坩堝に入れ(シリコン粉体の密度が低いので、顆粒の粒度の分布によることである。一般的に0.6〜1.2g/ccとなり、シリコン単体の密度である2.3よりはるかに小さく、これに対して、溶融体のシリコンの密度がシリコン単体の密度より大きく、2.56となる)、誘導加熱素子2設備を起動させ、2時間内に坩堝を1500〜1600℃になるまで加熱した。亜酸化ケイ素の分離がなくなった場合、加熱を停止し、そして、125kgの乾燥したシリコン粉体を5回に分けて坩堝に加え、最後に約45〜50リットルのシリコン溶融体を形成した。
【0177】
坩堝内のシリコン溶融体を1500℃以上に保ち、原料供給装置303(内径が2インチである石英管)により、シリコン粉末を石英管から直接坩堝の底部へ導入する。原料供給管と外部との熱交換が速いので、温度が比較的に低いシリコン粉体を加えるときに凝結しやすくなり、原料供給が困難になるため、原料供給管の下端に保温措置を取る必要がある。外部からの加熱と快速な原料供給をともに行うことこそ連続の反応を保証できる。本実験の後半、黒鉛坩堝の蓋から石英管を介して原料供給にし、詰まりの問題が避けられたが、作動停止で、一部のシリコン溶融体が酸化して亜酸化ケイ素を生成し、逃げてしまった。シリコン粉体を、100〜1000グラム/minで溶解器304(坩堝)に入れ、10リットルの溶融体のシリコンが坩堝の中部管路306から収集器307(石英坩堝)に流入したまで、計7.0時間で183kgのシリコン粉体を加えた。作動停止して24時間冷却したあと、坩堝の重量が205kg増加し、収集器307内にシリコンが34キログラム(冷却後に計量した)収容され、計239キログラムとなり、試料のシリコンの成分について表1から確認できる。
【0178】
全過程において、生成したSiO
xの気体が頂部から305を介して排出されて収集され、途中でシステムの詰まりで、作動停止して修復を行った。また、本実験は、亜酸化ケイ素を収集する専用の装置が用意されなかった。ステンレスタンクの内壁から23kgの試料が取り出され、そのケイ素−酸素成分について表2から確認できる。
【0179】
(実施例4 シリコン単体の粉体)
図4に示したシリコンスラッジの顆粒の表面酸化被膜を除去するもう1つの反応器は、シリコン単体の粉体を製造するためのものであり、移動床に該当する。乾燥後のシリコンスラッジの粉末が原料供給装置401と402を介して加熱帯403に導入され、加熱帯の上面が開放するとともに真空収集装置405(システムにおいて、内径が20mmであるT−型石英管であり、加熱炉に位置する)と接続している。上記の反応と違って、加熱温度がシリコンの融点の1410℃より低い1375℃となり、シリコンスラッジの乾燥粉末が加熱帯に接近、到達する過程において、顆粒の表面酸化被膜と内部のシリコン単体とが反応して生成した亜酸化ケイ素が、すべての表面酸化被膜が完全に反応したまで、縦管を介して開放部の上部から真空装置(0.1bar)と接続する収集室405に流入し収集され、シリコンスラッジの乾燥粉末が反応して残留したものがシリコン単体の粉体であり、シリコン単体がシリコン粉体収集室405内に搬送された。反応は、計2時間行われ、シリコン粉体を300グラム加え、収集したシリコン粉体が220グラム(反応器内に残留した部分が完全に反応したシリコン粉体として計上されていない)となる。頂部から亜酸化ケイ素を21グラム(一部が装置の内壁に付着されて完全に収集できなかった)収集した。
【0180】
(実施例5 高純度シリコン)
実施例2と同様のシリコン粉体を用い、
図5に示すように、500グラムの乾燥後のシリコン粉体を厚肉ステンレス管505(15kg)の一端から入れ、管の他端が溶接により密封された。管505を加熱管506内に入れ、管505内の空気が抽出されたあと、一端に一酸化炭素ボンベ501が接続され、その間に圧力計503とバルブ502a、502bとが接続されている。まず、管内に、10MPaになるまで一酸化炭素を導入し、バルブを閉じ、反応器を加熱して110℃に保つ。シリコンスラッジの乾燥粉末における金属ニッケル及び鉄と一酸化炭素とのカルボニル化反応が続いて進行するので、管内の圧力が、ニッケルと一酸化炭素との反応(気体のモル数が減少)の進行に従って低下しつつある。圧力が1.0MPaまで低下したとき、バルブを開け、管内に一酸化炭素を導入し、圧力が10MPaとなると、バルブを閉じる。反応の進行にしたがって、管内の圧力がまた5.0MPaまで低下したとき、上記の作業を繰り返し、反応器内の圧力に変化がなくなるまで進行させる。変化しなくなるのが、全ての遷移金属のカルボニル化反応が完了したということである。そして、反応器とボンベを分離し、反応器をガス抽出装置に移動し、反応器内の気体を放出し、金属不純物を除去した乾燥粉末を得た。金属不純物の含有量が少なく、反応器が比較的に重いので、カルボニル化反応後の試料の失った重量を精確に特定することができない。本実験により、処理後のシリコン粉体を493グラム獲得した。
【0181】
実施例2と同様な真空溶解炉を用い、黒鉛坩堝で乾燥後且つ遷移金属を除去して得たシリコンスラッジを200グラム真空溶解炉に入れ、まず、10
-3torr以下に真空引きを行い、そして高純度アルゴンを導入して1500℃まで加熱した。加熱過程において亜酸化ケイ素が生成され揮発し、透明窓からシリコンが溶融したと観察した後、自然冷却し、シリコン結晶が150グラム(坩堝の重量増加)となる。シリコン結晶の外観構造が多結晶シリコンに近い。本実施例は、カルボニル化反応により金属不純物を除去する効果を検証するためのものである。
【0182】
表1は、シリコン単体、金属を除去して得たシリコン粉体及び高純度シリコンにおける金属含有量(mg/kg)の比較表であり、型番号がICO2060である誘導結合プラズマ発光分析装置によって測定されたものである。比較試料は、中国国家非鉄金属研究総院からのものである。ニッケル(Ni)と鉄(Fe)の除去効果が顕著であることが分かった。
【0184】
実施例2は、不均化反応によりシリコン単体を得る例であり、金属が除去されていない。該不均化反応は、シリコンと二酸化ケイ素との反応である。
【0185】
実施例5(金属を除去して得たシリコン粉体)は、カルボニル化反応により金属を除去したが、不均化反応を行わなかった。該不均化反応は、シリコンと二酸化ケイ素との反応である。
【0186】
実施例5(高純度シリコン)は、カルボニル化反応により金属を除去したとともに不均化反応を行った。該不均化反応は、シリコンと二酸化ケイ素との反応である。
【0187】
mg/kgは、1キログラムの市販のシリコン切断工場から入手したシリコンスラッジ原料に含まれる金属の量を表すものである。
【0188】
(実施例6)
図6に示すように、実施例1と同様な試料Aを利用し、亜酸化ケイ素とシリコンがともに存在し、シリコンの含有量が87%となることを検出した場合、マイクロ波炉で空気雰囲気で、10kgの試料に対して800〜1000℃まで加熱すると、その重量が30〜50%増加する(シリコン単体と二酸化ケイ素のモル比が同様である場合、シリコン粉体の重量増加が45.7%となる。実験において、酸化の度合いがシリコン粉体の体積と関わり、顆粒と空気における酸素とを十分接触させる必要がある。工業化において化学工業標準操作によりさらに改善することが可能である)。得られた粉末が深い茶色を呈し、粉末を塊状に形成させ(反応において粉末が真空引きにより抽出されることを防止する)、そして粒度が3〜10mmとなる亜酸化ケイ素の前駆体の顆粒に粉砕し、亜酸化ケイ素の前駆体の顆粒又は粉末をダブルロックホッパー601を介して反応器に加え、石英坩堝603に落させる。坩堝を黒鉛加熱素子602により1350〜1400℃まで加熱し、昇華した亜酸化ケイ素607が坩堝から分離して収集チャンバー604(収集チャンバー004の負圧を保つ)に流入して管状収集体606の表面に堆積する。管状006収集体は、2対の逆U型に形成した直径8分の3インチのステンレス管であり、高さ40cmであり、間隔が20cmである。中空の内部に冷却水である水道水608を導入して冷却し、出口の水温を30℃以下に保つ。収集体に堆積された亜酸化ケイ素が多くなった場合、例えば34時間で堆積した管の外径が5cmになった場合、堆積を中断させ、製品を取り出して計量して、5.7kgの亜酸化ケイ素を得た。材料を添加して比較すると、収穫率が30%以下となっている。これは、堆積する全表面積が、特に堆積開始時に、あまりにも小さいことからである。大規模で製造するとき、複数の棒構成を用い、堆積する全表面積を上げて堆積効率を上げる目的を達することができる。
【0189】
(実施例7)
図7(a)に示すように、実施例6と同様な試料を利用し、粒度が3〜10mmとなる亜酸化ケイ素の前駆体の顆粒を製造し、ダブルロックホッパー701を介して反応器に加え、坩堝703に落させる。坩堝を黒鉛加熱素子702により1400℃まで加熱し、昇華した亜酸化ケイ素707が坩堝から分離して収集チャンバーに流入して顆粒状の亜酸化ケイ素収集体708の表面に堆積する。705が真空出口であり、真空出口705の左側にルーバー型ストッパー(
図7(b))が設置され、706が顆粒循環器である。インライン真空搬送装置(in−line vacuum、駆動源として0.3MPaアルゴン(Ar)を用いる)により顆粒を底部の貯蔵部から設備の頂部へ搬送する。
図7(b)に示すように、反応器チャンバー711は、亜酸化ケイ素入口710と出口713とを有し、内部に階段状分散器712が取り付けられている。反応器チャンバー711の底部が管路を介して真空原料供給装置716と連通し、反応器チャンバー711の頂部が顆粒分散器714と接続し、階段状分散器712と真空原料供給装置716との間の管路に顆粒篩分装置715が取り付けられている。顆粒分散器714により顆粒を階段状分散器712に均等に分布し、顆粒が底部まで移動し循環し続ける。反応器チャンバー711内において、顆粒の表面と気態の亜酸化ケイ素とが十分に接触するので、増大しつつある。実施例6と同様な条件で、亜酸化ケイ素の顆粒が重くなり、18.3kgとなり、効率が明らかに向上した。顆粒循環器706と頂部との間に篩分装置704が介在し、大きな顆粒を排出し、小さな顆粒を頂部へ搬送して反応器内で循環させ、増大させる。システムの中の小さな顆粒種が過少になるとき、システムを安定に作動させるために追加してもよい。
【0190】
実施例1における方法により実施例2〜6で生成された亜酸化ケイ素成分に対してそれぞれ分析する。表2に、各実施例における製造した亜酸化ケイ素の酸素−ケイ素比(SiO
x)が示され、使用した方法が本出願の実施例1における熱重量測定法である。酸素−ケイ素比がとても近いが、温度が高いとき、ケイ素の比例が少し高くなることが見られ、これがシリコン単体の蒸気圧が比較的に高いからである。
【0192】
(実施例8)
実施例1と同様な乾燥後のシリコン粉体3.5kg(シリコン単体で計算)と10メッシュのアルミニウム粉体30kgとのそれぞれ10%と90%の混合粉体を溶解器(アルミニウム粉体がシリコン粉体を被覆する)に入れ、700℃で反応させ、シリコン−アルミニウム合金を生成した。シリコンの含有量が9.8%となり、亜酸化ケイ素が排出されて収集されていない。
【0193】
(実施例9)
酸化被膜を除去したシリコン粉体と酸化被膜を除去していないシリコン粉体とを比較する。実施例1と同様な試料を使用する。試料(a)が乾燥だけ、試料(b)が保護ガス(アルゴン)雰囲気で100分研磨され、試料(c)が実施例4から取得されるものである。内径が50mmである石英管反応器であり、底部がテッパー状であり、中間主反応部(加熱帯)が300mmである固定床反応器(
図8を参照)を用いる。塊状の石英(3〜15mm)をテッパー状部分に充填して気体分散器を形成させる。中部の主反応部内に30グラムの乾燥されたシリコンスラッジの粉末原料(30〜100メッシュ)を入れる。気流が不安定で粉末が反応器から吹っ飛ばされることを防止するように、反応器の上部に石英ウール(実験室の小規模の実験では、生成物の気体出口を石英ウールで塞げばよい)が充填されている。反応器の生成物の気体出口に水凝縮管が接続され、凝縮管の下流に液体収集瓶が設置され、排気するとき、アルカリ洗タンクを通過させる。
【0194】
250〜300℃(設定温度が270℃である)で窒素ガス雰囲気において加熱してから、ガスを切り替えてHClガスを導入して反応させ、HClガスの流量を100ml/minに制御し、300〜350℃で2時間を経った後、反応生成物を凝縮させ収集した。試料(a)の場合、如何なる反応生成物も収集できなかったことから、酸化被膜を有するシリコンスラッジが反応しなかったことがわかった。試料(b)の場合、120グラムと130グラムの透明な液体がそれぞれ収集され、化学分析により主要成分が70%のSiHCl3であり、29.95%がSiCl
4であり、その他の不純物が0.05%未満であることがわかった。試料(c)の場合、反応器内のシリコンスラッジがほとんど消えたことから、反応過程においてほとんどのシリコンが消耗されたことがわかった。
【0195】
(実施例10)
実施例10と基本的に同様の方法、条件で形成された試料(a)、(b)及び(c)を利用し、反応気体のHClを流量が100ml/minとなるCl
2に切り替え、反応の温度を500〜900℃(700℃を設定する)に上昇させた。しかしながら、反応過程において、反応熱の発生により、実際の温度が中間段階に1100℃に達したようになる。反応時間が1時間に短縮される。試料(a)も反応したところが実施例9と異なる。これは、反応の温度が上昇した場合、試料(a)における顆粒の表面酸化被膜が、内部のシリコン単体と反応して除去され、内部のシリコン単体が塩素ガスと反応したと考えられる。試料(a)と(b)の場合、反応後の気態生成物が凝縮したあと150グラムの透明液体が収集され、試料(c)の場合173グラムが収集された。化学分析により、四塩化ケイ素(SiCl
4)の純度が99.5%以上となっている。
【0196】
(実施例11)
実施例9の条件と同様で、粉末に、シリコンスラッジの重量の10%を占める触媒であるCuCl
2を加えるところだけが異なる。気化のための気態原料は流量が100ml/minとなるHClである。凝縮した生成物に顕著な変化がなく、反応器での反応時間(加熱から凝縮装置に塩素シランの最初の凝縮滴が出現したまでの時間)が明らかに縮まり、反応が速くなり、合計の反応時間が実施例9の三分の一になった。
【0197】
上記は、本出願の好ましい実施形態にすぎず、本出願を限定するものではなく、当業者が、本出願に対して各種の変更及び変化を行うことが可能である。本出願の精神及び主旨内の、如何なる変更、均等置換、改良等が、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0198】
産業上の利用可能性
本出願は、シリコンスラッジの顆粒(Si)の表面に切断時に生じた厚い酸化被膜(SiO
2)を有する特性を利用し、生成した亜酸化ケイ素を昇華させてシリコン顆粒の表面から脱離させることにより、表面酸化被膜を除去する目的を達する。したがって、シリコン顆粒と金属、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス又は水素ガスとの物理・化学的反応によって、シリコンスラッジからシリコン単体、シリコン合金及びハロシラン等を生成することが可能になり、高付加価値のシリコン含有工業製品を製造することができる。また、価値のより高く多分野に適用できる亜酸化ケイ素が生成される。従来の酸洗、還元剤を加えること等を利用してシリコン表面酸化被膜を除去する方法の、コストが高く、環境を汚染し、シリコン材料を浪費する等の欠点を解決した。
【国際調査報告】