特表2020-515683(P2020-515683A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-515683マイクロフィブリル化セルロースフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-515683(P2020-515683A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】マイクロフィブリル化セルロースフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/26 20060101AFI20200501BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20200501BHJP
   D21H 17/66 20060101ALI20200501BHJP
【FI】
   C08J9/26 101
   C08J9/26CEP
   D21H11/18
   D21H17/66
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-553225(P2019-553225)
(86)(22)【出願日】2018年3月22日
(85)【翻訳文提出日】2019年10月30日
(86)【国際出願番号】EP2018057289
(87)【国際公開番号】WO2018177878
(87)【国際公開日】20181004
(31)【優先権主張番号】17163804.2
(32)【優先日】2017年3月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】513013182
【氏名又は名称】ボレガード アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】ソイディンサロ,オットー
【テーマコード(参考)】
4F074
4L055
【Fターム(参考)】
4F074AA02
4F074AE04
4F074CB03
4F074CB14
4F074CB27
4F074CC28Z
4F074DA36
4F074DA37
4F074DA47
4F074DA59
4L055AA02
4L055AF46
4L055AG04
4L055AG07
4L055EA03
4L055EA16
4L055EA19
4L055EA25
4L055EA32
4L055FA22
(57)【要約】
本発明は、マイクロフィブリル化セルロース(「MFC」)を含むかまたは本質的にそれからなる多孔質のフォーム材料に関する。これらの多孔質のフォーム材料は軽量であり、具体的な用途に合わせて形成され得る。本発明は本発明に係る多孔質フォーム材料を製造するためのプロセスにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質のマイクロフィブリル化セルロース系材料の製造方法であって、少なくとも次のステップ:
(i)均質な混合物がもたらされるように、マイクロフィブリル化セルロースの所定量を、溶媒、好ましくは水中において、少なくとも1つの水溶性の塩の所定量と一緒に混合するステップ;
(ii)(i)の混合物を所望の形状となし、この混合物をオーブンによって、好ましくは80℃以上において、より好ましくは105℃以上において乾燥させるステップ(第1の乾燥ステップ);
(iii)ステップ(ii)の完了後に、ステップ(ii)の乾燥させられた材料を溶媒、好ましくは水中に浸漬し、よって、ステップ(i)において添加された塩の95%以上、好ましくは99.5%を浸出するステップ;
(v)ステップ(iii)の完了後に、ステップ(iii)からのこの混合物をオーブンによって、好ましくは80℃以上において、より好ましくは105℃以上において乾燥させ(第2の乾燥ステップ)、多孔質の塩不含材料をもたらすステップ、
を含む、多孔質のマイクロフィブリル化セルロース系材料の製造方法。
【請求項2】
塩の水への溶解度が、温度を20℃から100℃まで変化させるときに、25%未満、好ましくは15%未満、さらに好ましくは10%未満だけ変化するという特徴を塩が有し、
この水溶性の塩が、20℃において、15g/100mlから100g/100mlまで、好ましくは25g/100mlから75g/100mlまでの水への溶解度を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法全体が凍結乾燥のステップを含まず、および/または、方法全体が、水以外のいずれかの溶媒の使用も、細孔形成剤として機能するいずれかの他の薬品化合物の使用も含まない、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
マイクロフィブリル化セルロースの量、すなわち溶媒中のマイクロフィブリル化セルロース繊維/フィブリルの量(「固形分含量」)が、(i)の混合物中の溶媒の質量に対する質量基準で、1%から30%まで、好ましくは2%から20%まで、好ましくは4%から15%までである、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(i)の混合物中に存在する塩とその混合物中のMFCの固形分含量との質量比が500:1から1:1まで、好ましくは100:1から5:1まで、さらに好ましくは50:1から5:1までの範囲である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(i)の混合物中に存在する塩が、5μmから5mmまで、好ましくは5μmから500μmまで、さらに好ましくは10μmから250μmまでの平均粒子サイズを有する粒子の形態で存在し、好ましくは、前記塩の少なくとも一部、好ましくは、ステップ(i)において添加/混合される塩の全質量に対して50質量%以上、好ましくは75質量%以上の塩が、ステップ(i)および(ii)の間にこれらの粒子の形態に留まる、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
マイクロフィブリル化セルロース(「MFC」)を含むかまたは本質的にそれからなる固体多孔質材料、好ましくは多孔質のフォーム材料であって、
この固体多孔質材料が:
多孔質材料の全質量に対して、それぞれ質量基準で85%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上のマイクロフィブリル化セルロースを含み、前記マイクロフィブリル化セルロースは、マイクロフィブリル化セルロースを形成している繊維/フィブリルの長さがマイクロメートル領域であり、マイクロフィブリル化セルロースを作り上げている繊維/フィブリルの直径がナノメートル領域であるという特徴を有し、;
体積あたりの質量として測定される密度が、1から1000kg/mまで、好ましくは10から500kg/mまで、さらに好ましくは10から200kg/mまで、または5から50kg/mまでである、
という特徴を有する、 マイクロフィブリル化セルロース(「MFC」)を含むかまたは本質的にそれからなる固体多孔質材料、好ましくは多孔質のフォーム材料。
【請求項8】
室温において水中に浸漬されたときに、乾燥状態の質量の3倍(3g/g)以上、好ましくは乾燥状態の質量の7倍(7g/g)以上、さらに好ましくは乾燥状態の質量の15倍(15g/g)以上の量の水を吸収するという特徴をさらに有する、
請求項7に記載の固体多孔質材料。
【請求項9】
絶縁、建設、家具、輸送装置における、もしくはスポーツ用具における、またはフィラー材料としての;あるいは
毒性化合物、金属、または色素を水または溶媒から吸収するための;あるいは
例えば薬物放出、インプラント、細胞培養などの医療分野における;あるいは
例えば持続的な放出のために使用可能な、低可溶性の化合物、有機溶媒可溶性化合物、金属(銀、パラジウムなど)、および活性化合物(医薬有効成分、ペスティサイド、殺菌剤など)を含有する材料を作出するための、あるいは
膜または薄型フィルムにおける、特にフィルター材料としての、
請求項7または8に記載の多孔質材料あるいは請求項1〜6のいずれか1項によって得られ得る多孔質材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフィブリル化セルロース(「MFC」)を含むかまたは本質的にそれからなる多孔質材料に関する。これらの多孔質材料は軽量であり、具体的な用途、特にポリウレタン(PU)フォームが普通に用いられる用途にとって有用であるように作り上げることができる。
【0002】
本発明は、本発明に係る多孔質材料、特に多孔質フォーム材料を作るためのプロセスにも関する。
【0003】
本発明に係る「マイクロフィブリル化セルロース」(MFC)は、セルロース繊維の比表面の増大およびサイズの縮減を横断面(直径)および/または長さの点でもたらす機械的処理に付されたセルロース繊維に関すると理解されるべきであり、好ましくは、前記サイズ縮減は、ナノメートル範囲の直径およびマイクロメートル範囲の長さを有する「フィブリル」に至る。
【0004】
マイクロフィブリル化セルロースを産生するための出発製品であるセルロース(典型的には「セルロースパルプ」として存在する)中には、個別化および「分離」したセルロース「フィブリル」のいずれかの、または少なくとも有意なもしくはさらには顕著な部分は見出され得ない。木材繊維中のセルロースはフィブリルの集合体である。セルロース(パルプ)中では、基本フィブリル同士が集合してマイクロフィブリルになり、これらはさらに集合してより大きいフィブリル束になり、最終的にはセルロース性の繊維になる。典型的には、木材系繊維の直径は10〜50μmの範囲である(これらの繊維の長さはさらに大きい)。セルロース繊維がマイクロフィブリル化されるときには、nmからμmの横断面寸法および長さを有する「遊離」したフィブリルの不均質混合物がもたらされ得る。フィブリルとフィブリルの束は、もたらされるマイクロフィブリル化セルロース中において共存し得る。
【0005】
本開示において記載されるマイクロフィブリル化セルロース(「MFC」)においては、従来の光学顕微鏡法の手法によって、例えば40×の倍率で、個別のフィブリルまたはフィブリル束が同定および容易に判別され得る。
【背景技術】
【0006】
セルロース系材料は、種々の形態で、例えばシートまたは粉末として、かつ種々の用途のために提供され得る。総体的には、軽量の多孔質のセルロース系材料、例えばエアロゲルには、例えば絶縁用途で、例えばポリウレタンフォームに代替するために用いられ得る一般的なニーズが存在する。
【0007】
マイクロフィブリル化セルロース(とりわけ「網状化」セルロース、または「超微細」セルロース、または「セルロースナノフィブリル」としてもまた公知)はセルロース系産物であり、例えば特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載されている。特許文献2(「ターバック」)に従うと、マイクロフィブリル化セルロースは、特許文献2に開示されている機械的処理に付されていないセルロース産物と比べて独特な特性を有する。特に、これらの文書に記載されているマイクロフィブリル化セルロースは、縮減された長さスケール(直径、繊維長)、改善された保水性、および調整可能な粘弾性特性を有する。さらに改善された特性および/または具体的な用途のために作り上げられた特性を有するMFCは、とりわけ特許文献4および特許文献5から公知である。
【0008】
改質セルロース、特にサイズ改質セルロースは、原則的には、フォーム用途への使用が公知である。従来技術では、セルロースエアロゲルの製造は、コスト高でありかつ時間がかかる凍結乾燥によって主に達成される。また、多孔度および細孔サイズのコントロールも限定されており、一般的に、潜在的に危険な溶媒混合物の使用が必要となる。例えば、特許文献6には、セルロースを水酸化ナトリウム/尿素中に分散させること、次に溶媒交換および凍結乾燥による、多糖エアロゲルの製造を記載されている。
【0009】
非特許文献1は、塩化ナトリウム(NaCl)溶液からの凍結乾燥によって得られる乾燥した再分散可能なナノフィブリル状セルロースを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4481077号明細書
【特許文献2】米国特許第4374702号明細書
【特許文献3】米国特許第4341807号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/091942号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2015/180844号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2014/178797号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ミスーム(Missoum),K.,ブラス(Bras),J.,ベルガシェム(Belgachem),M−N.著,バイオマクロモレキュールズ(Biomacromolecules)2012年,第13巻,p.4118−4125
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、凍結乾燥を要求しない、および/または潜在的に危険な材料の使用を要求しない(もしくは最小化する)、ならびに/あるいは上で例示的に論じられている当分野の多孔質のセルロース系材料の欠点を回避する(または最小化する)、マイクロフィブリル化セルロース系多孔質材料、特にフォーム材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本発明者は、マイクロフィブリル化セルロース(MFC)懸濁液(水中)から、所定のサイズの水溶性の塩粒子を前記懸濁液に追加して細孔形成を助けることの手法によって軽量の多孔質のセルロース構造を産生すること、それから、従来のオーブン乾燥、次に、乾燥およびキュアリングさせられたマイクロフィブリル化セルロースフォームから水溶性の塩を浸出することによって多孔質構造を安定化することが可能であるということを見出した。
【0014】
フォームの細孔サイズおよび多孔度(密度)は水溶性の塩または化合物、特に塩の粒子を追加することによってコントロールされることができ、温度を20℃から100℃まで変化させるときに、それらの水への溶解度は25%未満、好ましくは15%未満、さらに好ましくは10%未満だけ変化する。かかる塩の1つの好適な例は塩化ナトリウム(NaCl)である。
【0015】
要求される可溶性プロファイル(特に、温度の関数としての可溶性のわずかな変化)は重要である。なぜなら、多孔質構造を作出またはその形成を容易化するためには、特に従来のオーブン乾燥の間に支配的である高い温度において、粒子の形態の塩が、溶媒、特に水とのMFCの混合物中に存在しなければならない一方で、それを水中に溶解することによって塩がフォームから容易に浸出され得るためには、室温までの冷却のときに可溶性は有意に減少すべきではないからである。例えば、NaClは室温(20℃)では36g/100mlの溶解度を有し、100℃では39g/100mlまで軽度にのみ増大する。
【0016】
下でより詳細に記載される通り、フォームの密度はMFCの量に対して相対的に塩の量を変えることによってコントロールされ得る一方で、細孔サイズは塩粒子のサイズを変えることによって好適にコントロールされ得る。
【0017】
本発明の実施形態において、フォーム中の細孔は閉塞した細孔であり、それらのサイズは、例えば顕微鏡法分析の手法によって、バルクのフォーム材料の断面カットによって決定され得る。他の実施形態においては、特に塩含量が高いときには、ますますより多くの細孔が開放された細孔であり得るか、またはそれになり得る。
【0018】
本発明によれば、密度は、既知のフォーム本体の質量とその本体の体積との比として決定され、これは例えば単純な幾何学計算から得られる。
【0019】
本発明の第1の態様によれば、本発明に係るMFC系多孔質材料は、少なくとも次のステップを含む方法によって得られるかまたは得られ得る:
(i)均質な混合物がもたらされるように、マイクロフィブリル化セルロースの所定量を、溶媒、好ましくは水中において、少なくとも1つの水溶性の塩の所定量と一緒に混合するステップ;
(ii)(i)の混合物を所望の形状に至らしめること、およびこの混合物をオーブンによって乾燥まで好ましくは80℃以上において、より好ましくは105℃以上において乾燥させるステップ(第1の乾燥ステップ);
(iii)ステップ(ii)の完了後に、ステップ(ii)の乾燥させられた材料を溶媒、好ましくは水中に浸漬し、それゆえに、ステップ(i)において追加された塩の少なくとも95%、好ましくは99.5%を浸出するステップ;
(iv)ステップ(iii)の完了後に、ステップ(iii)からのこの混合物をオーブンによって乾燥まで好ましくは80℃以上において、より好ましくは105℃以上において乾燥させ(第2の乾燥ステップ)、多孔質の塩不含材料をもたらすステップ。
【0020】
好ましい実施形態において、総体的な方法は凍結乾燥のステップを含まない。
【0021】
好ましい実施形態において、総体的な方法は、水以外のいずれかの溶媒の使用も、細孔形成剤として機能するいずれかの他の薬品化合物の使用も含まない。
【0022】
本発明に従う方法は、追加のステップを、ステップ(i)[前処理または下準備ステップ]の前、ステップ(i)、(ii)、(iii)、および(iv)のいずれかもしくは全ての間、ならびに/またはステップ(iv)[後処理ステップ(単数もしくは複数)]の後の、いずれにも含み得る。
【0023】
ステップ(iv)から得られるかまたは得られ得る多孔質材料は、水中に戻されたときに(顕著に、または有意にすら)離解しない。さらにその上、外部からかけられる大規模な力の使用(ホモジナイゼーションなど)なしには、多孔質の固体構造をMFCゲルに逆変換することは可能ではない。
【0024】
好ましくは、マイクロフィブリル化セルロースの量、すなわち溶媒中のマイクロフィブリル化セルロース繊維/フィブリルの量(「固形分含量」)は、(i)の混合物中の溶媒全体の質量に対して、それぞれ質量基準で1%から30%まで、好ましくは2%から20%まで、好ましくは4%から15%までである。
【0025】
好ましい実施形態において、(i)の混合物中に存在する塩とその混合物中のMFCの固形分含量との質量比は、500:1から1:1までの、好ましくは100:1から5:1までの、さらに好ましくは50:1から5:1までの範囲である。例示として、下で論じられている例4では、60gのMFCが10%の固形分含量で用いられる(6gの「乾燥した」MFCをもたらす)一方で、60gの塩が用いられ、10:1の質量比をもたらす。例5では、この比は20:1である。
【0026】
理論によって拘束されようとするものではないが、総体的には、塩含量が低すぎる場合には、十分ではない細孔が形成されて、典型的なフォーム用途にとっては高密度すぎる材料をもたらす一方で、多量すぎる塩が用いられる場合には、多すぎる細孔が形成され、フォームは構造的に不安定になり得るということが考えられる。
【0027】
塩の好適な量(MFCの量に対して相対的に)は主にフォームの所望の密度によって導かれるであろう。
【0028】
本発明の実施形態において、ステップ(i)の混合物中に存在する塩は、5μmから5mmまで、好ましくは5μmから500μmまで、さらに好ましくは10μmから250μmまでの平均粒子サイズ(シンパテックRODOSによるレーザー回折によって測定されるD50)を有する粒子の形態で存在する。塩粒子サイズの選択肢は所望の細孔サイズによって主に導かれるであろう。
【0029】
本発明の実施形態においては、塩の少なくとも部分、好ましくは、ステップ(i)において追加/混合される塩の総体的な質量に対して相対的に塩の50質量%よりも多く、好ましくは75質量%よりも多くが、ステップ(i)および(ii)の間にこれらの粒子の形態に留まる。
【0030】
本発明に従うと、ステップ(i)においては、水溶性であるいずれかの塩が用いられ得る。好ましい実施形態において、温度を20℃から100℃まで変化させるときに、塩の水への溶解度は25%未満、好ましくは15%未満、さらに好ましくは10%未満だけ変化する。
【0031】
好ましい実施形態において、水溶性の塩は、20℃において、5g/100ml以上、好ましくは15g/100ml以上、さらに好ましくは25g/100ml以上の水への溶解度を有し、一方で、同時に、高すぎない溶解度、すなわち好ましくは500g/100ml未満、好ましくは250g/100ml未満、さらに好ましくは100g/100ml未満の溶解度を有する。本発明に係る水溶性の塩は、15g/100mlから100g/100mlまで、さらに好ましくは25g/100mlから75g/100mlまでの溶解度を有する一方で、同時に、かつ上で開示されている全ての範囲および値について、温度を20℃から100℃まで変化させるときに、塩の水への溶解度は25%未満、好ましくは15%未満、さらに好ましくは10%未満だけ変化するということが特に好ましい。
【0032】
例えば、本発明者は、マイクロフィブリル化セルロースフォームの形成が、塩としての塩化ナトリウムによっては十分に行われるが、塩化カルシウム(20℃では60g/100mlだが、100℃では160g/100mlの溶解度を有する)によっては満足に行われないことを見出した。
【0033】
ステップ(i)の均質な混合物またはステップ(iii)の生成物から溶媒、特に水を取り除くために、オーブンが凍結乾燥のステップを用いず、温度の上昇を用いる以外は、ステップ(ii)および/またはステップ(iv)に用いられるオーブンについて、なんらの限定も存在しない。高温空気の強制循環有りまたは無しの従来のオーブン、例えばコンベクションオーブンが好ましい。乾燥ステップは、不活性雰囲気において、および/または大気圧よりも減圧下(真空を包含する)において実行され得る。
【0034】
第2の態様に従うと、本発明は、マイクロフィブリル化セルロース(「MFC」)を含むかまたは本質的にそれからなる固体多孔質材料に関し、この固体多孔質材料は:
多孔質材料の総体的な質量に対して相対的に、それぞれ質量によって85%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上のマイクロフィブリル化セルロースを含むこと(前記マイクロフィブリル化セルロースは、マイクロフィブリル化セルロースを作り上げている繊維/フィブリルの長さがマイクロメートル範囲であり、マイクロフィブリル化セルロースを作り上げている繊維/フィブリルの直径がナノメートル範囲であるという特徴を有する);
1〜1000kg/m、好ましくは10〜500kg/m、さらに好ましくは10〜200kg/m、または5〜50kg/mである、体積あたりの質量の比として測定される密度、
によって特徴付けられる。
【0035】
本発明の実施形態において、固体多孔質材料は、室温において水中に浸漬されたときに、乾燥状態のその質量の少なくとも3倍(3g/g)、好ましくは乾燥状態の質量の少なくとも7倍(7g/g)、さらに好ましくは乾燥状態の質量の少なくとも15倍(15g/g)の量の水を吸収する特徴をさらに有する。
【0036】
測定時間が5分間であり、サンプルサイズが2cm×2cmであったことを除くと、吸水量はASTMのD570に記載されている通り測定された。
【0037】
本発明に係る固体多孔質材料はフォーム材料としての特徴を有する。本発明の意図する「フォーム」は、IUPACによって提供されている定義に従うと、体積において大きい割合の気体が気泡の形態で固体中に分散されている分散体であるという特徴を有し得る(IUPAC,1972年,31,577:物理化学の量および単位に関する記号および術語の手引き(Manual of Symbols and Terminology for Physicochemical Quantities andUnits),付録II:コロイドおよび表面化学に関する定義、術語、および記号(Definitions, Terminology and Symbols in Colloid and Surface Chemistry),606ページを見よ)。
【0038】
本発明による実施形態において、疎水特性、すなわち非極性分子との優先的な相互作用および極性分子との反発的相互作用を有する多孔質材料を製造するためには、多孔質材料、特にフォームは疎水剤によってコーティングされる。
【0039】
好ましい実施形態において、疎水剤はシリコネートまたはポリマーから選択される。シリコネートはアルキルシリコネートであり得る。金属シリコネートはカリウムメチルシリコネートまたはナトリウムメチルシリコネートであり得る。ポリマーはポリエステルであり得る。ポリエステルはナイロンポリエステルであり得る。他の実施形態において、疎水剤はシラン化合物であり得る。
【0040】
好ましい実施形態において、多孔質材料はシラン化合物によって官能化され得る。シラン化合物は、アルケニル、アルキル、アルコキシ、ベンジル、アクリルオキシ、アミノ、ウレイド、スルフィド、イソシアヌレート、メルカプト、およびイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含み得る。
【0041】
シラン化合物は、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、フルオロシラン、トリクロロメチルシラン(TCMS)、トリクロロエチルシラン、トリクロロ(n−プロピル)シラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン(PMDS)、ベンジルトリクロロシラン、メチルベンジル−トリクロロシラン、トリフルオロメチルベンジルトリクロロシラン、メチルトリエトキシシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジエトキシシラン、トリス(トリメチルシロキシ)クロロシラン(トリス−TMSCl)、トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチルクロロシラン、および/またはビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルエチルジメチルクロロシランからなる群から選択され得る。
【0042】
本発明では、「疎水」という語は、分子本体または置換基が極性溶媒、特に水と、または他の極性基と相互作用する能力を一般的に指す、としてIUPAC:化学用語集(Compendium of Chemical Terminology),第2版(「ゴールドブック」),A.D.マクノート(McNaught)およびA.ウィルキンソン(Wilkinson)編,ブラックウェル・サイエンティフィック・パブリケーションズ,オックスフォード(1997年),ISBN0−9678550−9−8に定義されている用語「親水」の対義語であると理解されるであろう。
【0043】
用途
本発明による多孔質材料は考えられるいかなる形態または形状でも提供または製造することができ、例えば大きいシートとして、例えば絶縁または建設への使用のために提供される。
【0044】
一般的に、本発明によって製造される材料は、ポリウレタンフォームが用いられることが公知である用途、特に絶縁、建設、家具、輸送装置に、またはスポーツ用具に、およびフィラー材料として用いられ得る。
【0045】
本発明に係る多孔質のマイクロフィブリル化セルロース系材料は、毒性化合物、金属、または色素を水または溶媒から吸収するためにも用いられ得る。本発明の材料は、膜、薄型フィルムに、特にフィルター材料としても用いられ得る。
【0046】
さらに、本発明による多孔質のマイクロフィブリル化セルロース系材料は、医療分野、例えば薬物放出、インプラント、細胞培養などにも用いられ得る。
【0047】
本発明に係る多孔質のマイクロフィブリル化セルロース系材料は、例えば持続的な放出のために用いられるであろう、低可溶性の化合物、有機溶媒可溶性化合物、金属(銀、パラジウムなど)、および活性化合物(医薬有効成分、ペスティサイド、殺菌剤など)を含有する材料を作出するためにもまた用いられ得る。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る多孔質のマイクロフィブリル化セルロース系材料は、産業的に適応可能な方法を用いて、天然に存在しかつ再生可能な資源(セルロース、ここでは特にマイクロフィブリル化セルロース)に基づく多孔質構造の作出を低コストで可能にする。なぜなら、特に、塩または塩混合物の粒子の単純な添加によりフォームが形成され、フォームの細孔(細孔サイズ)および/または密度の調整を可能にする一方で、しかもいかなる(高価な)凍結乾燥も要求されないということが、驚くべきことに見出されたからである。また、この方法では、いかなる、または少なくとも有意な量の有害な薬品または溶媒も用いない。
【0049】
本発明は、例示的であることのみが意図される添付の図を参照して、より詳細に以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明によるフォーム材料の写真を示す[多孔質ディスク(5.84g)、例4]。
図2】本発明によるフォーム材料の写真を示す[多孔質ディスク(4.76g)、例5]。
図3】本発明によらない乾燥させられたMFC系材料の写真を示す(例8)。
図4】本発明による材料および本発明によらない材料について吸収量の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
MFCを作るプロセスにおいて、元のセルロースパルプ中に存在する繊維束が十分に離解され、その結果、もたらされる繊維/フィブリルの平均直径がナノメートル範囲であり、そのため、元のセルロース材料の利用可能な表面と比べて、総体的なセルロース系材料のより多くの表面が作出されている限り、本発明に係る多孔質材料を作るためには、原則的に、いずれかの型のマイクロフィブリル化セルロース(MFC)が用いられ得る。MFCは、上の「背景技術」の項において具体的に引用されている先行技術を包含する当分野において記載されているプロセスのいずれかに従って調製され得る。
【0052】
MFCを調製するために用いられるセルロースの由来
本発明では、セルロース、ゆえにマイクロフィブリル化セルロースの由来について、具体的な制約はない。原則的には、セルロースマイクロフィブリルの原材料は、いずれかのセルロース性の材料、特に木材、一年生植物、綿、亜麻、藁、ラミー、バガス(サトウキビから)、好適な藻類、ジュート、テンサイ、柑橘果実、食品加工産業もしくはエネルギー作物からの廃材、またはバクテリア由来もしくは動物由来、例えば被嚢類からのセルロースであり得る。
【0053】
好ましい実施形態においては、木材系材料が、硬材もしくは軟材、または両方(混合物として)のいずれも原材料として用いられる。さらに好ましくは、軟材が、1つの種類または異なる軟材型の混合物いずれも原材料として用いられる。純度が比較的高いので、マイクロフィブリル化バクテリアセルロースもまた好ましい。
【0054】
改質(誘導体化)および非改質(未誘導体化)セルロース/MFC
原則として、本発明におけるマイクロフィブリル化セルロースはその官能基に関し未改質であってもよく、あるいは物理的改質もしくは化学的改質されていてもよく、または両方であってもよい。
【0055】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態においては、マイクロフィブリル化セルロースは改質されず、特にTEMPO酸化されない。なぜなら、マイクロフィブリル化セルロースが改質、特にTEMPOプロセスに従って酸化された場合には、塩粒子の細孔形成効果が低減されるおそれがあるからである。
【0056】
セルロースマイクロフィブリルの表面の化学的改質は、セルロースマイクロフィブリルの表面官能基、より具体的にはヒドロキシル官能基の種々の可能な反応によって行われることができ、好ましくは、酸化、シリル化反応、エーテル化反応、イソシアネートによる縮合、アルキレンオキシドによるアルコキシル化反応、またはグリシジル誘導体による縮合もしくは置換反応による。化学的改質は解繊ステップの前または後に行われ得る。
【0057】
原則として、セルロースマイクロフィブリルは、物理的経路によって改質されていてもよく、マイクロフィブリルの表面における吸着、または噴霧、またはコーティング、またはカプセル化のいずれでもよい。好ましい改質マイクロフィブリルは少なくとも1つの化合物の物理吸着によって得られ得る。MFCは両親媒性化合物(界面活性剤)との会合によってもまた改質され得る。
【0058】
しかしながら、好ましい実施形態においては、マイクロフィブリル化セルロースは物理的改質されない。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、ステップ(i)に用いられるマイクロフィブリル化セルロースは、少なくとも次のステップを含むプロセスによって調製される:
(a)セルロースパルプを少なくとも1つの機械的前処理ステップに付すステップ;
(b)ステップ(a)の機械的に前処理されたセルロースパルプをホモジナイズステップに付し、これにより、ステップ(a)の機械的に前処理されたセルロースパルプ中に存在するセルロース繊維と比べて低減された長さおよび直径のフィブリルおよびフィブリル束をもたらし、前記ステップ(b)がマイクロフィブリル化セルロースをもたらすステップ;
ここでホモジナイズステップ(b)は、ステップ(a)からのセルロースパルプを圧縮することとセルロースパルプを圧力降下に付すこととを含む。
【0060】
好ましくは、機械的前処理ステップはリファイニングステップであるか、またはそれを含む。機械的前処理の目的は、細胞壁のアクセス性を増大させるため、すなわち表面積を増大させるために、セルロースパルプを「叩解」することである。
【0061】
機械的前処理ステップに好ましく用いられるリファイナーは少なくとも1つの回転ディスクを含む。その中で、セルロースパルプスラリーは少なくとも1つの回転ディスクと少なくとも1つの固定ディスクとの間においてせん断力に付される。
【0062】
機械的前処理ステップに先行して、または機械的前処理ステップに加えて、セルロースパルプの酵素(前)処理は、いくつかの用途にとって好ましく、とり得る任意の追加ステップである。セルロースをマイクロフィブリル化することと関連した酵素前処理については、国際公開第2007/091942号パンフレットのそれぞれの内容が、参照によって本明細書に組み込まれる。化学的前処理を包含するいずれかの他の型の前処理もまた、本発明の範囲内である。
【0063】
(機械的)前処理ステップ後に実施されるホモジナイズステップ(b)においては、例えばPCT/欧州特許出願公開第2015/001103号明細書に記載されている通り、ステップ(a)からのセルロースパルプスラリーがホモジナイザーに少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回通される。これのそれぞれの内容が参照によってここに組み込まれる。
【実施例】
【0064】
例1:
マイクロフィブリル化セルロースの調製
本発明に従う多孔質材料を作るために用いられるMFCは商業的に利用可能であり、オウシュウトウヒ(軟材)からのセルロースパルプに基づく「Exilva−F01−V」としてBorregaard社によって市販されている。
ステップ(i)のMFCはペーストとして存在し、固形分含量10%であった。溶媒は水であった。
【0065】
例2:
セルロースフォームの調製
例1のMFC(固形分含量:10%)50gを、50gのNaCl(アルドリッチ31434N;D50粒子サイズ:400μm)と注意深く混合した。得られたペーストをディスク形状に成形し、105℃で一晩乾燥させた。次いで、乾燥したディスクを蒸留水(200ml)中に浸漬し、4時間保持した。水を3回交換し、このステップの後にディスクを105℃で一晩乾燥させ、多孔質ディスク(4.8g)が得られた。
【0066】
例3:
セルロースフォームの再分散試験
例2で得られた材料2gを198gの蒸留水と混合した。混合物をUltra−Turraxによって4min/10000rpmで混合し、再分散可能ではないことを意味する可視の相分離を有する懸濁液が得られた。
【0067】
例4:
セルロースフォームの調製
例1のMFC(固形分含量:10%)60gを、60gのNaClと注意深く混合した。ペーストを直径9cmおよび高さ1.2cmのガラスペトリ皿上に広げ、45℃で一晩、その後105℃で一晩乾燥させた。乾燥したディスクを蒸留水(250ml)中に1時間浸漬した。水を3回交換し、これの後にディスクを105℃で8時間乾燥させ、直径8.7cmおよび厚さ0.8cmの多孔質ディスク(5.84g)が得られた(図1参照)。
【0068】
例5:
セルロースフォームの調製
例1のExilva−F01−V50g(10%固形分含量)を100gのNaClと注意深く混合した。ペーストを直径9cmおよび高さ1.2cmのガラスペトリ皿上に広げ、45℃で一晩、その後105℃で一晩乾燥させた。乾燥したディスクを蒸留水(400ml)中に1時間浸漬した。水を3回交換し、この後にディスクを105℃で8時間乾燥させ、直径8.8cmおよび厚さ0.9cmの多孔質ディスク(4.76g)が得られた(図2参照)。
【0069】
例6:
セルロースフォームの水吸収
例4で得られた材料321mg(およそ2cm×2cm)を蒸留水中に浸漬した。5分後に、その小片を水から取り出し、注意深くタッピングして過剰な水を除去した。小片の質量は1.44gであった。
【0070】
例7:
セルロースフォームの水吸収
例5で得られた材料259mg(およそ2cm×2cm)を蒸留水中に浸漬した。5分後に、その小片を水から取り出し、注意深くタッピングして過剰な水を除去した。小片の質量は2.22gであった。
【0071】
例8(比較例):
セルロースフィルムの水吸収
例1のMFC10g(10%固形分含量、塩の追加なし)を40gの水と注意深く混合した。懸濁液を直径9cmおよび厚さ1.2cmのガラスペトリ皿上で乾燥させ、105℃で一晩乾燥させ、薄型フィルムが得られた。そのフィルムの小片(486mg)を蒸留水中に浸漬した。5分後に、そのフィルム小片を水から取り出し、注意深くタッピングして過剰な水を除去した。フィルムの質量は816mgであった(図3参照)。
図4は、比較例8のフィルム状材料(塩なし)(最も左側の棒)と比較した、セルロースフォーム(例4および5、左から2番目および3番目の棒、それぞれ本発明による)の吸水量を示している。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】