(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-515824(P2020-515824A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】陽電子を弱く吸収する物体の陽電子−放射体−密度分布を二次元的に撮像する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20200501BHJP
G01T 1/00 20060101ALI20200501BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20200501BHJP
G01T 1/29 20060101ALI20200501BHJP
【FI】
G01N23/046
G01T1/00 B
G01T1/20 G
G01T1/29 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-546218(P2019-546218)
(86)(22)【出願日】2018年3月6日
(85)【翻訳文提出日】2019年8月23日
(86)【国際出願番号】DE2018000055
(87)【国際公開番号】WO2018184610
(87)【国際公開日】20181011
(31)【優先権主張番号】102017003353.6
(32)【優先日】2017年4月6日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】シャインス・ユルゲン
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001BA11
2G001CA02
2G001CA08
2G001DA01
2G001DA09
2G001HA13
2G001HA14
2G001KA01
2G001LA01
2G001MA05
2G001SA06
2G188AA25
2G188AA27
2G188BB04
2G188BB07
2G188CC10
2G188EE29
2G188EE36
2G188EE39
(57)【要約】
【課題】検査物体内で放射される陽電子のわずかな消滅確率での検査物体における陽電子−放射体の二次元的な量的な密度分布を可能とする方法及び装置を提供する。
【解決手段】検査されるべき物体における陽電子−放射体−密度分布を二次元的に撮像する方法であって、前記検査されるべき物体が陽電子放射体を含んでいる、前記方法において、前記陽電子放射体を含む前記検査されるべき物体が磁場内に位置決めされ、前記検査されるべき物体を離れる陽電子が磁場の経過に従い、陽電子吸収装置へ当接し、該陽電子吸収装置が、同様に磁場内に位置決めされているとともに、陽電子との相互作用において前記陽電子吸収装置における陽電子の当接点の局所化を可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査されるべき物体における陽電子−放射体−密度分布を二次元的に撮像する方法であって、前記検査されるべき物体が陽電子放射体を含んでいる、前記方法において、
前記陽電子放射体を含む前記検査されるべき物体が磁場内に位置決めされ、前記検査されるべき物体を離れる陽電子が磁場の経過に従い、陽電子吸収装置へ当接し、該陽電子吸収装置が、同様に磁場内に位置決めされているとともに、陽電子との相互作用において前記陽電子吸収装置における陽電子の当接点の局所化を可能とすることを特徴とする方法。
【請求項2】
平坦な陽電子吸収装置、又は他の幾何形状、例えば中空体の形状の陽電子吸収装置が用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記当接点の局所化が、画像版における陽電子の当接点の状態変化としての箇所情報のメモリによって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
陽電子吸収装置として、イオン化により陽電子を直接的に確認する、箇所解像性の電子的な検出器が用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
陽電子を吸収して陽電子をそれぞれ1つの電子と共に消滅させる材料から成る陽電子吸収装置が用いられ、PET機器によって記録される、それぞれ511keVの2つのγ量子が生じることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
アルミニウム、チタン、銅、金、ガラス、合成樹脂又はプレキシガラスから成る陽電子吸収スクリーンあるいは陽電子吸収プレートが用いられることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの陽電子吸収スクリーンが、陽電子の導入平面に関して相前後して配置されることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
開口部を有するマスクの形態を有する少なくとも1つの陽電子吸収スクリーンが用いられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
0.1〜10mmの厚さの陽電子吸収スクリーンが用いられることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
超解像度方法が適用されることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記検査されるべき物体及び陽電子吸収スクリーンが、互いに相対的に変位されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記検査されるべき物体が2つの陽電子吸収装置の間に位置決めされ、前記検査されるべき物体の両側の画像が撮像されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記陽電子吸収装置が磁場の不均等な範囲に位置決めされることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記検査されるべき物体が磁場の均等な範囲に位置決めされることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
磁石を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法を実行する装置において、
前記磁石の磁場に陽電子吸収装置が位置決めされており、該陽電子吸収装置が、
a)画像版における状態変化により、陽電子の当接点についての箇所情報をメモリする画像版と、
b)電子的な検出器と、
c)陽電子を吸収し、当該陽電子をそれぞれ電子と共に消滅させる陽電子吸収スクリーンと
のグループから成る構成要素であることを特徴とする装置。
【請求項16】
態様a)による前記画像版が、写真乾板、結晶マトリクス又はユーロピウム原子でコーティングされたプレートであることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
消滅により生じるγ量子を検出するPET検出器システムが、態様c)による陽電子吸収スクリーンに割り当てられていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
少なくとも2つの陽電子吸収スクリーンが前記磁石の磁場に配置されていることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
少なくとも1つの陽電子吸収スクリーンが、開口部を有するマスクの形態を有していることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽電子を弱く(減衰して)吸収する物体の陽電子−放射体−密度分布を二次元的に撮像する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、これまで陽電子−放射−断層撮影法[PET]によって、一般的で三次元的な撮像方法として代表され(非特許文献1)、当該撮像方法は、特に、生体力学的な(生体内の)物質交換プロセスを定量化するために用いることが可能である。例えば前臨床の研究、ヒト向けの医療、神経科学及び植物の物質交換過程の研究において種々の応用分野が見いだされる。このために、応用分野に応じて、非常に異なる構造の多数の商用の、又は非商用のPETスキャナが存在する。わずかな空間解像度(分解能)(典型的には2〜5mm)の、物理技術によるPETを用いた代謝情報と、空間的に非常に良好な解像度(典型的には1mm未満)での磁気共鳴断層撮影法[MRT]を用いた形態学的な、あるいは構造上の情報との間の最適な協働を得るために、最新の開発として、MR/PETハイブリッド検出器システムが用いられる(非特許文献2)。
【0003】
さらに、陽電子減衰断層撮影法が存在し、当該陽電子減す断層撮影法では、検査物体が、その陽電子吸収特性あるいは陽電子消滅特性について、明確な陽電子源の平行な陽電子ビームによって特徴付けられることが可能である(特許文献1)。このために、一般的にMR/PETハイブリッドスキャナについて当てはまるように、軸方向にPETスキャナへ向けられた均等で強い磁場が必要となる。
【0004】
PET手法による、物体の、基礎となる陽電子−放射体−密度分布の正確な定量化可能性は、できる限り全ての放射された陽電子が現実の放射箇所の直接的な周囲で消滅により逆向きへ飛行する511keVの2つのガンマ量子へ転換され、そして、PETスキャナによってトレース可能であることが前提となっている。このとき、ガンマ量子はほぼ妨げられずに検査物体から到達することができる一方、陽電子は材料において放射箇所と消滅箇所の間の極端にわずかな距離のみを進めばよいことが利用される。陽電子の平均的な自由ストローク長さは、周囲の電子−密度分布と、様々な同位体について異なる放射された陽電子の運動エネルギーとに強く依存する。
【0005】
この作用機構により、対応する消滅過程を引き起こすことなく、広範囲の、同時にわずかな体積及び/又はわずかな材料密度を有する物体に関連する、検査物体からの陽電子の飛び出しについての高い確率が得られる。例えば生物学的な材料の薄い断片又は薄い厚さの生物学的な材料、例えば葉又は臓器部分、例えば脳の薄い断片において問題が生じる。飛び出る陽電子は、PET手法によって直接的なトレースから離れ、その結果、ここで、基本的に、現実の陽電子−放射体−密度分布の系統的な過小評価に至る。断層撮影的に再構成された陽電子−放射体−密度分布を補正するための陽電子の飛び出し確率の評価は困難である。なぜなら、この確率は、正確な電子密度分布及び検査物体の現実の陽電子−放射体−密度分布に非常に敏感に依存するためである。ただし、両分布は、利用可能なPETスキャナの制限された解像度によって、不十分にのみ特徴付けられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第2016/0116614号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Positron Emission Tomography:Basic Sciences, edited by D.L.Bailey, D.W.Townsend, P.E.Valk, M.N.Maisey, Springer, 2005, ISBN 1852337982
【非特許文献2】S. Vandenberghe, P.K.Marsden, PET−MRI: a review of challenges and solutions in the development of integrated multimodality imaging,Physics in Medicine and Biology, 2015, Vol.60, No.4Feb 21;60(4):R115−54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、検査物体内で放射される陽電子のわずかな消滅確率での検査物体における陽電子−放射体の二次元的な量的な密度分布を可能とする方法及び装置を提供することにある。このとき、得られる画像は、断層撮影的な再構成方法なしにも生成されることが可能であるべきである。
【0009】
検査物体内でわずかなe
+e
−消滅確率を有する検査物体のために、PET手法に比べて改善された陽電子−放射体の分布の定量化を可能とする方法が提供されるべきである。方法及び装置は、特に同時にわずかな体積を有する広範囲の物体及び/又はわずかな材料密度を有する物体のために用いられるべきであり、このとき、検査物体の陽電子−放射体−密度分布についてのより正確な結果を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1及び同等の請求項の前提部分に基づき、課題は、本発明により、請求項1及び同等の請求項の特徴部分によって解決される。
【0011】
本発明による方法及び装置により、検査物体内で放射される陽電子のわずかな消滅確率での検査物体における陽電子−放射体の二次元的な量的な密度分布を測定することが可能である。このとき、得られる画像は、断層撮影的な再構成方法なしにも生成されることが可能である。検査物体内でわずかなe
+e
−消滅確率を有する検査物体のために、PET手法に比べて改善された陽電子−放射体の分布の定量化を可能とする方法が提供される。方法及び装置は、特に同時にわずかな体積を有する広範囲の物体及び/又はわずかな材料密度を有する物体のために、検査物体の陽電子−放射体−密度分布の、冒頭に挙げた方法に比べて高められた精度を提供する。
【0012】
本発明の有利な発展形成は、各従属請求項に記載されている。
【0013】
以下に、本発明を、これを制限的に解釈することなく一般的な形態で説明する。
【0014】
検査されるべき物体、特に弱い陽電子を吸収する物体について、物体における陽電子−放射体−密度分布が、本発明により、投影の形態で二次元的な画像として生成される。
【0015】
検査されるべき物体として、基本的にはいかなる物体も使用可能であるが、特に検査物体内で放射される陽電子のわずかな消滅確率を有する検査物体を用いることができる。これは、特に、同時にわずかな体積を有する広範囲の物体及び/又はわずかな材料密度の物体、特に生物学的な材料、例えば葉、又は臓器部分、例えば脳の薄い断片であり得る。
【0016】
陽電子−放射体は、測定前若しくは測定中に、検査されるべき物体へ負荷されるか、又は測定前若しくは測定中に、例えば物質交換プロセスによってアクティブに収容される。陽電子−放射体として、例えば
18F、
15O、
11Cあるいは例えば
11CO
2のようなこれら核種を含み、公知の手法で物体内へ入れられ得る化合物を用いることが可能である。検査されるべき物体があらかじめその中立状態において陽電子−放射体を含んでいる場合には、当該陽電子−放射体を追加的に加える必要はない。
【0017】
検査に用いられる物体は、陽電子−放射体を含んでいる。
【0018】
本発明によれば、磁場が生成される。好ましくは、特性、特に磁場の経過が既知であるか、又は算出(検出)されることが可能である。
【0019】
磁場は、当然、均等な範囲及び不均等な範囲を有している。
【0020】
均一な範囲では、すなわち一定の磁場強度の範囲では、磁場線が所定の方向へ平行に延びる。均等な磁場の概念は、当業者に知られている。
【0021】
磁場の不均等な範囲、したがって、空間的に異なる磁場強度の範囲は、磁場の周縁範囲であり得る。ここで、磁場線は、互いに離れるように、又は互いへ向かって延びる。これにより、本発明の意味合いでは、当業者が均等な磁場とは理解しない磁場範囲が意図されている。
【0022】
磁場は、コイルによって、例えば電磁石によって、あるいは永久磁石によっても生成されることが可能である。
【0023】
このとき、磁場強度は、いかなる値であってもよいが、例えば0.5〜21テスラ、特に3〜11テスラの範囲にあり得る。
【0024】
本発明によれば、検査されるべき物体は磁場内へもたらされ、その結果、検査物体から出る陽電子が磁場線に沿ってスパイラル経路で延びる。本発明によれば、放射される陽電子がローレンツ力に基づき当該磁場の磁場線に沿ってスパイラル経路で移動する磁場が利用される。対応して、理想的に平行に延びる磁場線を有する均等な磁場範囲も、また不均等な磁場範囲、すなわち、例えば主に均等な磁場の周縁範囲も利用することができ、このとき、どの装置によって磁場が生成されるかは重要でない。磁場線経過のみが分かっている必要があるか、又は算出され得る。磁場線経過が分かっている限り、放射される陽電子の飛行経路も、直接的に既知であるとともに、外挿によって一義的に放射箇所までたどることが可能であり、これは、トラッキング手法と呼ばれる。これは、当業者に知られている。
【0025】
磁場強度が大きくなればなるほど、磁場線に沿った陽電子の経路が狭くなるとともに、画像がよりシャープとなり、すなわち、スパイラル経路のジャイロ半径が、本発明にとって好都合な形態で、磁場強度の増大に伴って小さくなる。
【0026】
検査されるべき物体は、磁場の均等な範囲において、また磁場の不均等な範囲においても配置されることが可能である。検査されるべき物体から出る陽電子が磁場内で前進することのみが重要である。そして、検査物体から出る陽電子は、スパイラル経路において磁場線に沿って移動する。
【0027】
特に好ましくは、平坦な検査物体が、その表面において磁場線にできる限り垂直に延びる。しかし、減算(除外)され得る、正確に垂直な配置からの差異も存在し得る。
【0028】
本発明によれば、磁場における陽電子吸収装置は、検査されるべき物体から出る、磁場に従う陽電子を吸収することができるように位置決めされる。このとき、陽電子吸収装置は、検査物体の多数の点又は全ての点がそれぞれ一義的な磁場線に結び付けられ、多数の、又は全ての当該磁場線が更なる延長においてそれぞれ陽電子吸収装置との少なくとも1つの交点を有するように位置決めされる。このようにして、陽電子吸収装置における多数の点又は全ての点は、物体の点に一義的に結び付けられ得るとともに、既知の磁場線経過においてトラッキング手法に対応して割り当てられることが可能である。
【0029】
陽電子吸収装置として、相互作用の箇所が特定されることができ、その結果、陽電子吸収装置における陽電子の当接点の局所化が可能となるように陽電子と相互作用するいかなる物理的な物体も用いることができる。
【0030】
一実施形態では、陽電子吸収装置は、当接点において、陽電子との相互作用に際して当接点の箇所情報を状態変化としてメモリする、例えば変色する画像版(記憶プレート;記録プレート)である。このとき、画像版として、例えば、蛍光イメージングの原理により陽電子を直接的に検出する、写真乾板、結晶マトリクス又は例えばユーロピウム原子でコーティングされたプレートを用いることが可能である。蛍光イメージングでは、e
+e
−消滅過程及びこのとき放射されるγ量子にかかわらず、陽電子当接点の局所化がなされる。このとき、画像版において当接する陽電子の状態変化の統合が時間にわたってなされる。
【0031】
他の一実施形態では、陽電子吸収装置として陽電子吸収スクリーンを用いることができ、当該陽電子吸収スクリーンは、検査物体から出る陽電子を吸収し、そこで陽電子がそれぞれ電子と共に消滅させる。これにより、511keVの2つのγ量子の放射に至り、当該γ量子は、PET機器によって記録される。本発明に意味合いでの陽電子吸収スクリーンは、陽電子を吸収し、陽電子をそれぞれ電子で消滅させるスクリーンと理解される。以下では、上述の補足なしに、この種の陽電子吸収装置に陽電子吸収スクリーンという用語が用いられる。これにより、生じるLOR(line of response;同時計測線)から陽電子吸収スクリーンにおける陽電子の二次元的な投影を生成することができる。これは、断層撮影的な再構成方法の必要性なしに行われることができる。
【0032】
吸収スクリーンは、基本的にいずれの材料でも構成されることができる。なぜなら、これは、基本的にいずれの材料においても行われ得るe
+e
−消滅のみに依存するためである。アルミニウム、チタン、銅、金、ガラス、合成樹脂及びプレキシガラスが特に適切であることが分かった。そして、陽電子吸収スクリーンから出るγビームは、PET機器によって検出されることが可能である。
【0033】
物体から放射される陽電子は、スパイラル経路における存在する磁場線に沿って移動し、その結果、陽電子は、最終的に、以下では当接点と呼ばれる陽電子吸収スクリーンの少なくとも1つの所定の点へ当たり、そこで目的をもって電子と共に消滅され得る。行われるいずれの消滅プロセスでも、互いに逆方向へ飛行するちょうど2つの511keVのガンマ量子が生じる。したがって、生じる各ガンマ量子対は、原因となる陽電子の軌道にかかわらず、及び磁場方向にかかわらず、以下では信号線と呼ばれる、三次元的な空間における一義的な信号線を規定するとともに、それぞれ両ガンマ量子を検出する測定装置によって算出(検出)されることが可能である。従来のいずれの陽電子放射断層撮影部が測定装置として適しており、本発明による方法のための測定装置の正確な実施形態は重要でない。検出された各信号線は、少なくとも1つの、又はちょうど1つの、陽電子吸収スクリーンとの交点を有しており、当該陽電子吸収スクリーンは、幾何学的な内挿によって演算されることができるとともに、各交点をマークする。最終的に、各陽電子−交点は、トラッキング手法によって、物体内の二次元的な投影として直接的な放射箇所に割り当てられる。これにより、断層撮影的な再構成方法を応用する必要性なしに、二次元的な陽電子−放射体−密度分布が直接得られる。
【0034】
さらに、1つの陽電子吸収スクリーンに代えて、相前後して配置された少なくとも2つの陽電子吸収スクリーンも用いることが可能である。これら陽電子吸収スクリーンは、1つの陽電子吸収スクリーンよりもわずかな層厚を有するべきである。このために、例えば、アルミニウムフィルム又は金フィルムのようなフィルムが考慮に入れられる。
【0035】
他の実施形態では、陽電子吸収装置が電子的な検出器であり得る。電子的な検出器は、箇所解像度を有する検出器として、陽電子の発生により生じる、測定された信号の箇所情報を陽電子のイオン化された作用に基づいて記録することができる。このために、例えば、更にシンチレータ材料、例えば、プラスチックシンチレータと共に古典的なPET受光器と組み合わせて用いることが可能なPhoswich検出器が考慮に入れられる。
【0036】
陽電子吸収装置は、好ましくは平面状である。しかし、陽電子吸収装置は、他の形状、例えば中空体の形状も有することが可能である。
【0037】
一実施形態では、陽電子吸収装置は、磁場における本質的に均等な部分に位置決めされる。これは、検査されるべき物体が同様に磁場における均等な部分にある場合に1:1投影の画像が直接生じるという利点を有している。
【0038】
しかし、これに代えて、陽電子吸収装置を、磁場における不均等な部分、例えば広がる範囲に設置することも可能である。これにより、陽電子が磁場における広がる範囲において互いに分離され、撮像されるべき検査物体の拡大された投影が生成されることになり、その結果、拡大に基づき、生じる画像においてより大きな画像精度が生じる。このことは、特に、PET機器と関連して陽電子吸収スクリーンが用いられる場合に有利である。なぜなら、LOR測定の制限された解像度がγビームの測定時に間隔の拡張によってより大きな分離効果を達成するためである。
【0039】
このとき、構造は、陽電子吸収装置が検査物体に対して位置しているとともにこれらの間に少なくとも1つの磁場の部分範囲が位置している形態である。好ましくは、陽電子吸収装置は、検査物体の表面に対して平行に向けられている。しかし、陽電子吸収装置は、検査されるべき物体の表面に対して傾斜していてもよい。
【0040】
さらに、検査されるべき物体が2つの陽電子吸収装置間に配置されることが可能であり、その結果、物体が各陽電子吸収装置によって2つの半球体を形成しており、当該半球体へ陽電子が放射されることができ、検査されるべき物体の両側から撮像可能である。検査されるべき物体が不均等である場合には、これにより、異なる半球体に位置する陽電子吸収装置が、検査されるべき物体における陽電子−放射体の分布の異なる画像を記録することとなり得る。
【0041】
別の一実施形態では、検査物体と陽電子吸収スクリーンの間に開口部を有する別の陽電子吸収スクリーンを配置することができ、当該別の陽電子吸収スクリーンはマスクとして機能し、当該別の陽電子吸収スクリーンによって陽電子流の一部が導入され、当該別の陽電子吸収スクリーンがその側でその特定された構成部分e
+e
−において消滅するように作用する。これにより、画像の解像度が超解像度の手法によって改善されることができることとなる。加えて、陽電子吸収スクリーンに対する物体のコントロールされた相対変位により、すなわち複数の異なる位置での測定により、超解像度方法を用いた画像解像度の更なる改善を達成することが可能である。このとき、検査されるべき物体及び陽電子吸収スクリーンは、磁場に対して垂直又は本質的に垂直である、互いに対して平行に配置された平面において互いに向かって変位する。このとき、好ましくは物体が変位する。このとき、物体の変位は、陽電子吸収スクリーンに対して同一のままの間隔である場合に物体が占める平面に対して水平及び/又は垂直になされる。より単純な一実施形態では、超解像度方法は、陽電子吸収スクリーンに対する物体の相対変位なしに行われることが可能である。超解像度の方法は、当業者に知られている。
【0042】
全ての実施形態では、一時的に連続する撮影も行うことができ、その結果、陽電子密度分布の一時的な変化を撮影することが可能である。そして、動的な変化を測定することが可能である。
【0043】
当該方法は、大気圧に対して低減された圧力又は真空においても実行されることが可能である。これは、陽電子吸収装置へのストローク区間において陽電子がよりわずかに消滅されるという利点を有している。
【0044】
本発明による方法を実行するために、陽電子吸収装置及び磁石の構造で構成された装置が提供される。このとき、検査されるべき物体及び陽電子吸収装置は、磁石の既知の磁場又は算出可能な磁場に位置している。
【0045】
磁石は、永久磁石又は電流が供給されるコイルであり得る。
【0046】
陽電子吸収装置は、当接点において、陽電子との相互作用に際して当接点の箇所情報を状態変化によってメモリする、例えば変色する画像版であり得る。このとき、画像版として、例えば、蛍光イメージングの原理により陽電子を直接的に検出する、写真乾板、結晶マトリクス又は例えばユーロピウム原子でコーティングされたプレートを用いることが可能である。蛍光イメージングでは、e
+e
−消滅過程及びこのとき放射されるγ量子にかかわらず、陽電子当接点の局所化がなされる。このとき、画像版において当接する陽電子の状態変化の統合が時間にわたってなされる。
【0047】
陽電子吸収装置として、電子的な検出器が考慮に入れられる。電子的な検出器は、陽電子の発生により生じる、測定された信号の箇所情報を陽電子のイオン化された作用に基づいて記録することができる。このために、例えば、更にシンチレータ材料、例えば、プラスチックシンチレータと共に古典的なPET受光器と組み合わせて用いることが可能なPhoswich検出器が考慮に入れられる。
【0048】
陽電子吸収装置として、陽電子を吸収し、当該陽電子をそれぞれ電子と共に消滅させて511keVの2つのγ量子を生じさせる陽電子吸収スクリーン又は陽電子吸収プレートも用いることができる。
【0049】
PET機器が511keVのガンマ量子を記録するために用いられ、当該PET機器は、γ量子を検出することができるように配置されている。
【0050】
陽電子吸収スクリーン又は陽電子吸収プレートは、アルミニウム、チタン、銅、金のような材料や、合成樹脂、ガラス又はプレキシガラスのような他の材料から、これら材料に限定されることなく構成されることができる。
【0051】
少なくとも2つの陽電子吸収スクリーン又は陽電子吸収プレートを検査されるべき物体に関して相前後して配置することが可能である。
【0052】
一実施形態では、検査されるべき物体は、2つの陽電子吸収装置間に位置決めされることができ、その結果、物体の両側を撮像することが可能である。
【0053】
陽電子吸収スクリーン又は陽電子吸収プレートの厚さは、例えば0.1〜10mmであり得る。選択された厚さは、材料ごとに異なっていてよい。
【0054】
検査されるべき物体と陽電子吸収スクリーンの間には、開口部を有するマスクを設けることが可能である。
【0055】
以下に、本発明を、制限的に解釈することなく図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図2】本発明による方法と比較する撮像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1には、本発明による方法を実行するための装置が図示されている。当該
図1において、符号1によってPET受光器1a,1bを有するPET検出器システムが示されている。左側には、磁場B0が符号2で示されており、当該磁場は、PET検出器システム1へ延在している。磁場2には、被検査物体3が位置している。放射される陽電子4a,4bが被検査物体3から発出され、当該陽電子4a,4bは、陽電子吸収スクリーン5へ当たる。陽電子吸収スクリーン5における陽電子の当接点は、符号5a,5bを有している。当接点5a,5bからガンマ量子対6a,6bが発出され、当該ガンマ量子対は、PET受光器1a,1bへ当たる。
【0058】
図2には、部分図a)、b)及びc)を有する、陽電子密度分布についての2D画像が示されている。
【0059】
部分図a)には、カラーで示され、また、陽電子放射体としての
18F−マーカを有するカラーの特徴部の全面にわたって負荷を受けた画像が図示されており、陽電子放射体は、カラーの特徴部と同一の面及び輪郭(外形)を描写している。
【0060】
部分図b)には、部分図a)による陽電子−放射体−分布を用いた場合の平坦な吸収スクリーンにおいてPET検出器システムによって測定されたLORの内挿による、本発明による方法の算出された画像が示されている。
【0061】
部分図c)には、PET検出器システム1によって測定されたガンマ量子対の断層撮影的な再構成が図示されており、ガンマ量子対は、陽電子吸収スクリーン5において、当接点5a,5bの箇所で生じ、部分図a)による陽電子−放射体−分布を用いる場合に測定された。
【0062】
例:
以下に、本発明を、これを制限的に解釈することなく例示的に説明する。
【0063】
磁場が存在する場合に作用する(正に帯電した陽電子についての)ローレンツ力F=q(v×B)により飛び出る陽電子が磁場線に沿った所定のジャイロ半径Rを有するスパイラル経路へ強制されるという効果が利用される。ジャイロ半径は、磁場の強さと、磁場の方向に対する陽電子のインパルス、すなわち放射方向及び飛行速度とに依存する。例えば、同位体
18F及び3テスラの磁場強度(磁束密度)について0.5mmの平均ジャイロ半径が生じる。均等な磁場(B0−場)の場合には、その後、全ての陽電子がB0−場ベクトルに対して平行にその放射箇所から前方へ移動し、その結果、(検査物体から空間的に分離された)局所化された陽電子は、(三次元的な座標における)その放射箇所についての直接的な情報を、二次元的な投影としてのB0−場ベクトルに対して垂直な平面において含んでいる。そして、適切に多くの陽電子の三次元的な座標(x,y,z)の形態での局所化により、B0−場ベクトルに対して垂直な平面への算出された座標の投影によって直接的に二次元的な陽電子−放射体−密度分布が得られる。陽電子は、磁場の存在なしに、各放射箇所から等方性に全ての方向へ放射され、方向情報を含んでいないため、検査物体からの放出箇所への各陽電子の外挿(推定)による「バックトラッキング」が不可能である。
【0064】
三次元的な座標(x,y,z)の形態の陽電子の局所化のために、従来の陽電子放射断層撮影部(PET−陽電子吸収装置システム)が用いられ、当該陽電子放射断層撮影部は、中央のPET−陽電子吸収装置軸線に沿った軸方向の方向付けを有する均等な磁場に位置している(
図1)。本発明の本質的な構成部材として、できる限り大きな陽電子−吸収確率(すなわち、最大の電子密度あるいは陽電子の最小の浸透深さ)を有する平坦で薄い表面(「吸収スクリーン」、英語で「screen」)が、(対)消滅プロセスの明確な強制のためにPET検出器の中央の測定場へもたらされる。つづいて、消滅プロセスから生じる511keVのガンマ量子の対が、PETスキャナによって、同時発生として記録される。それぞれ測定される同時発生は一義的な信号線に対応し、当該信号線は、それぞれ考察される検出器(受光器)の座標から導出される(
図1)。最後に、吸収スクリーンの平面とのそれぞれ記録された信号線の数学的な交点によりそれぞれ生じた陽電子の当接点が三次元的な座標(x,y,z)として得られ、体軸横断面における見いだされた座標対(x,y)により、検査物体から飛び出る陽電子−放射体−密度分布の二次元的な投影が得られ、これに基づき、行われた幾何学的な容認性及び検出器効率の補正後、吸収スクリーンを含む半球体へ放射される、全ての飛び出た陽電子の定量的で二次元的な陽電子−放射体−密度分布が得られる。このとき、検査物体が陽電子放射断層撮影部の測定場の内部又は外部にあるかは重要でない。
【0065】
飛び出た陽電子が両半球体において検出されるべき場合には、2つの吸収スクリーンを適当に用いることができ、検査物体は、両吸収スクリーンの間に位置する必要がある。
【0066】
さらに、この方法により、吸収スクリーン(あるいは両吸収スクリーン)において記録された同時発生がその時間的な順序において様々な測定時間インターバルについて独占的に二次元的な投影として表されることで、動的な物質交換プロセス、すなわち陽電子−放射体−密度分布の時間的な変化も監視することが可能である。
【0067】
測定装置の拡張された実施として、吸収スクリーンと検査物体の間にマスク、すなわち規則的な開口部を備えた追加的な吸収スクリーンを設けることが可能である。この場合、陽電子は、部分的に追加的なマスク−吸収スクリーン(セカンダリスクリーン)へ当接し、そこで、生じる消滅−ガンマ量子の対を用いて局所化され、他の部分は、マスク−吸収スクリーンの開口部を通過して飛び、閉鎖された元々の吸収スクリーン(プライマリスクリーン)において局所化され得る。このようにして、超解像度の一般的な方法に利用され得る相補的な情報を得ることが可能である。これは、PET検出器によって引き起こされる最大限達成可能な解像度に比べて画像の解像度を改善することが可能な公知の方法である。セカンダリスクリーンに対する様々な位置での検査物体の追加的な測定は、超解像度方法の範囲において画像解像度の更なる向上に貢献し得る。セカンダリスクリーンとプライマリスクリーンの特別な組合せにより、マスキングによって陽電子が失われることがなく、すなわち、マスキングは、感度を損なうことなくなされることが可能である。最後に、超解像度方法により、「超解像度」なしの陽電子放射断層撮影により定められた上限よりも改善された解像度を達成することが可能である。
【0068】
測定装置の他の実施では、陽電子放射断層撮影部は、当該陽電子放射断層撮影部がもはや磁場の均等な範囲になく、磁場線が既に広がり、適当に外部へ延びる磁場の境界範囲にあるように位置決めされることが可能である。検査物体がより大きな磁場強度の範囲に位置している場合には、陽電子は、吸収スクリーンへ当接する前に、平行な軌道の代わりに外方へ湾曲された軌道における磁場線に沿って移動する。この拡張により、陽電子は、このために拡大された距離において、隣り合う放射箇所から吸収スクリーンへ当接し、その結果、箇所のより良好な分離がなされる。このようにして、画像解像度の全般的な改善を意味する、拡大あるいはレンズ効果を達成することができる。
【0069】
本発明による二次元的な陽電子−放射体−密度分布を検出する測定器として、従来の陽電子放射断層撮影部が強い磁場において動作し得る限り、それぞれ従来の陽電子放射断層撮影部を用いることが可能である。このことは、全ての商用のMR/PETハイブリッド陽電子吸収システムに当てはまる。ここで、PET−陽電子吸収装置は、最新のPET検出器によって補足的に提供され得るガンマ量子対の飛行時間情報を必要とすることなく、又は用いることなく、各標準取得モードで動作されることが可能である。それゆえ、MR/PETハイブリッドPET検出器は、本質的な基盤を提供し、すなわち、本発明の基礎となる手法を実現することができるように、陽電子放射断層撮影部及び強い磁場を提供する。しかし、この手法は、このような機器の組合せに限定されていない。1つの、非常に容易に実行可能な変更として、吸収スクリーンにおいて生じるガンマ量子対を測定することができるように、吸収スクリーン、例えばアルミニウムプレートをPET検出器システムの中央の磁場に位置決めする必要がある(
図1)。二次元的な陽電子を評価及び生成するために、記録された信号線のみを吸収スクリーンとの対応する交点へ内挿する(信号線−内挿)必要がある(
図2(b))。これに代えて、吸収スクリーンにおける分布の断層撮影再構成(トモグラフィック復元)も可能である(
図2(c))。そのほか、検査物体がPET検出器システムの中央の磁場におけるどこかにあれば、このために、断層撮影再構成によっても検査物体の(「吸収スクリーン画像」すなわちセカンダリ画像から空間的に分離された)プライマリ画像を得ることが可能である。検査物体の三次元的なプライマリ画像は物体において吸収される陽電子の量的な値を表す一方、二次元的なセカンダリ画像は、断層撮影再構成によって、又は信号線−内挿によって生成され、検査物体から飛び出る全ての陽電子の定量化を可能とする。そして、両分布の合計において、物体の陽電子−放射体−密度分布の完全な定量化が得られる。検査物体の特性に応じて、すなわち両半球体についての二次元的な陽電子−放射体−密度分布が異なる場合には、完全な定量化を達成するために、間に検査物体を有する2つの吸収スクリーンを用いる必要がある。
【0070】
本発明による手法の正確な機能は、ジーメンス社の3TTimTrioMR/BrainPETスキャナにおいて既に論証されており、これは、3テスラの磁場強度において動作するPET/MRハイブリッド検出器システムである。
【0071】
可能な用途として、新たな手法により、植物の葉における物質交換プロセス(代謝プロセス)をよりフレキシブルかつより正確に定量化することが可能である。このようにして、植物の葉は、非接触かつ動的に測定されることができ、これは、当該形態の存在する測定手法では不可能である。特に、典型的な薄膜状の葉の構造は、新たな手法によって検出され、定量化され得る飛び出る陽電子の大きな割合を示すものである。
【国際調査報告】