特表2020-516711(P2020-516711A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-516711(P2020-516711A)
(43)【公表日】2020年6月11日
(54)【発明の名称】繊維強化のための添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20200515BHJP
   D01F 6/18 20060101ALI20200515BHJP
   D01F 6/14 20060101ALI20200515BHJP
   C08K 5/092 20060101ALI20200515BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20200515BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20200515BHJP
【FI】
   C08L101/02
   D01F6/18
   D01F6/14
   C08K5/092
   C08L97/00
   C08K3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2019-554803(P2019-554803)
(86)(22)【出願日】2018年4月6日
(85)【翻訳文提出日】2019年12月4日
(86)【国際出願番号】US2018026495
(87)【国際公開番号】WO2018187710
(87)【国際公開日】20181011
(31)【優先権主張番号】62/483,204
(32)【優先日】2017年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】516015266
【氏名又は名称】ノース カロライナ ステイト ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】フォード エリッカ
(72)【発明者】
【氏名】ルー チュンホン
(72)【発明者】
【氏名】ブラックウェル チャールズ
【テーマコード(参考)】
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AH002
4J002BE021
4J002BG101
4J002DA017
4J002EF066
4J002EG056
4J002FD017
4J002FD202
4J002FD206
4J002GK01
4J002GK02
4L035AA04
4L035BB04
4L035BB05
4L035BB12
4L035BB15
4L035BB72
4L035BB81
4L035EE08
4L035EE09
4L035JJ03
4L035JJ11
4L035LB01
(57)【要約】
ポリマー及びグルカル酸などのアルダル酸を包含する組成物を開示する。組成物は、ポリビニルアルコール及びグルカル酸を包含し得る。組成物は、ポリアクリロニトリル及びグルカル酸も包含し得る。加えて、組成物はリグニンをさらに包含し得る。組成物を包含する繊維、繊維の作成方法、及び繊維の使用もまた開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヒドロキシル基又はニトリル基を有するポリマー、及び
アルダル酸又はその塩
を含む、組成物。
【請求項2】
前記アルダル酸がグルカル酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、前記複数のヒドロキシル基又はニトリル基により置換された、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、式(I)
(I)
であって、
LがC0~3アルキレンであり、
Xが−OH又はニトリルであり、
nが1から1000であり、及び
mが100から100,000である、
繰り返し単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、複数のヒドロキシル基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーが、前記複数のヒドロキシル基により置換された、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、式(II)
(II)
であって、
nが1から1000であり、及び
mが100から100,000である、
繰り返し単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアルコール共重合体、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ポリビニルアルコール及びグルカル酸又はその塩から本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、ポリビニルアルコール及びグルカル酸又はその塩からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリマーが、複数のニトリル基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマーが、前記複数のニトリル基により置換された、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリマーが、式(III)
(III)
であって、
nが1から1000であり、及び
mが100から100,000である、
繰り返し単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマーが、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル誘導体、ポリアクリロニトリル共重合体、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリアクリロニトリル共重合体が、アクリロニトリル並びにアクリル酸、イタコン酸、及びアクリレートからなる群から選択されるもう一つのポリマーの共重合体である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、ポリアクリロニトリル及びグルカル酸又はその塩から本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、ポリアクリロニトリル及びグルカル酸又はその塩からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリマーが、約100kDaから約400kDaの分子量を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリマーを、前記組成物の約30質量%から約99.9質量%で含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記グルカル酸又はその塩を、前記組成物の約0.01質量%から約10質量%で含む、請求項2から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリマー及び前記グルカル酸を、約5/1から約10,000/1(ポリマー/グルカル酸)の質量比で含む、請求項2から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
添加剤をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記添加剤が、リグニン、カーボンナノチューブ、ナノフィラー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
リグニンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物の約0.1質量%から約50質量%でリグニンを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記グルカル酸が、グルカル酸のアンモニウム塩である、請求項2から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1から17又は24のいずれか一項に記載の組成物を含む、繊維。
【請求項28】
約10μmから約50μmの平均直径を有する、請求項27に記載の繊維。
【請求項29】
5g/denよりも大きいテナシティを有する、請求項27に記載の繊維。
【請求項30】
250g/denよりも大きい比弾性率を有する、請求項27に記載の繊維。
【請求項31】
500MPaよりも大きい引張強度を有する、請求項27に記載の繊維。
【請求項32】
15デニールよりも小さい線密度を有する、請求項27に記載の繊維。
【請求項33】
前記繊維が、メルトブローン、スパンボンド、又はゲル紡糸されている、請求項27に記載の繊維。
【請求項34】
請求項27に記載の繊維を含む、コンクリート添加剤。
【請求項35】
請求項27に記載の繊維を含む、繊維製品。
【請求項36】
前記製品が、紡績糸、布、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、ゲル紡糸ウェブ、サーモボンドウェブ、水流交絡ウェブ、不織布、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の繊維製品。
【請求項37】
繊維の作成方法であって、
複数のヒドロキシル基及び/又はニトリル基を有するポリマー並びにアルダル酸又はその塩を、第1の溶媒中に溶解して、溶液を供給する工程、
前記溶液を加熱する工程、
前記溶液を、第2の溶媒を含む第1の浴に押し出して、ゲル紡糸繊維を供給する工程、
前記ゲル紡糸繊維を熟成させて、熟成ゲル紡糸繊維を供給する工程、及び
前記熟成ゲル紡糸繊維を、シリコーンオイルを含む第2の浴を通って延伸して、繊維を供給する工程
を含む、方法。
【請求項38】
前記アルダル酸が、約0.01質量/体積%から約5質量/体積%で前記溶液中に存在する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリマーが、約60質量/体積%から約99.9質量/体積%で前記溶液中に存在する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の溶媒が、DMSO、水、尿素又はそれらの組み合わせを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の溶媒が、メタノール、アセトン、イソプロパノール、水又はそれらの組み合わせを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記熟成ゲル紡糸繊維を延伸する工程が、第1から第4段階を包含する、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記アルダル酸がグルカル酸である、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年4月7日に出願された米国仮特許出願第62/483,204の優先権を主張し、これは参照により全体としてここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリマーベースの繊維は、衣料品からコンクリート補強材に至るまで、多くの用途に広く使用されている。しかしながら、増加した強度を有するポリマーベースの繊維(例えば、高性能繊維)の生産コストは挑戦を残しており、したがって高性能の特徴を有するが、より経済的なコストで生産可能な繊維へのニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様においては、複数のヒドロキシル基又はニトリル基を有するポリマー、及びアルダル酸又はその塩を含む組成物が開示される。
他の態様においては、複数のヒドロキシル基又はニトリル基を有するポリマー、及びグルカル酸又はその塩を含む組成物が開示される。
他の態様においては、複数のヒドロキシル基を有するポリマー、及びグルカル酸又はその塩を含む組成物が開示される。
他の態様においては、複数のニトリル基を有するポリマー、及びグルカル酸又はその塩を含む組成物が開示される。
【0004】
他の態様においては、複数のヒドロキシル基又はニトリル基を有するポリマー、及びアルダル酸又はその塩を含む組成物を包含する繊維が開示される。
他の態様においては、複数のヒドロキシル基又はニトリル基を有するポリマー、及びグルカル酸又はその塩を含む組成物を包含する繊維が開示される。
他の態様においては、複数のヒドロキシル基を有するポリマー、及びグルカル酸又はその塩を含む組成物を包含する繊維が開示される。
他の態様においては、複数のニトリル基を有するポリマー、及びグルカル酸又はその塩を含む組成物を包含する繊維が開示される。
【0005】
他の態様においては、繊維の作成方法であって、複数のヒドロキシル基及び/又はニトリル基を有するポリマー並びにアルダル酸又はその塩を、第1の溶媒中に溶解して、溶液を供給する工程、溶液を加熱する工程、溶液を、第2の溶媒を含む第1の浴に押し出して、ゲル紡糸繊維を供給する工程、ゲル紡糸繊維を熟成させて、熟成ゲル紡糸繊維を供給する工程、及び熟成ゲル紡糸繊維を、シリコーンオイルを含む第2の浴を通って延伸して、繊維を供給する工程を含む方法が開示される。
【0006】
他の態様においては、繊維の作成方法であって、複数のヒドロキシル基及び/又はニトリル基を有するポリマー並びにグルカル酸又はその塩を、第1の溶媒中に溶解して、溶液を供給する工程、溶液を加熱する工程、溶液を、第2の溶媒を含む第1の浴に押し出して、ゲル紡糸繊維を供給する工程、ゲル紡糸繊維を熟成させて、熟成ゲル紡糸繊維を供給する工程、及び熟成ゲル紡糸繊維を、シリコーンオイルを含む第2の浴を通って延伸して、繊維を供給する工程を含む方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、開示された組成物及びその繊維を提供するために使用可能なゲル紡糸方法の概略図である。概略図は、5つの段階、即ち、紡糸されたままの(as−spun)ゲルの形成(第1段階)、ゲル繊維の熟成(第2段階)、ゲル繊維の低温延伸(第3段階)、低温延伸ゲル繊維の調整(第4段階)及び繊維の多段式熱延伸(第5段階)を示す。
図2図2は、ポリビニルアルコール(PVA)ゲル中のグルカレート塩1(GA1)と呼ばれるグルカレート塩(▲)及びグルカレート塩2(GA2)と呼ばれるグルカレート塩(●)のゲル融解点を示すプロットである。
図3図3は、グルカレートが、(a):グルカレート塩なしで、及び(b):グルカレート塩とともに、どのように結晶性PVAドメインと相互作用すると仮定されるかを示す図である。
図4図4は、GA2/PVAの完全延伸繊維の(a)0.0%(b)0.8%(c)1.6%(d)3%GA2を示す一連の画像である。
図5A図5A〜Dは、GA/PVA繊維の機械的特性、即ち、GA1(▲)及びGA2(●)の図5A:引張強度、図5B:ヤング率、図5C:靭性、並びに図5D:歪みを示すプロットである。
図5B図5A〜Dは、GA/PVA繊維の機械的特性、即ち、GA1(▲)及びGA2(●)の図5A:引張強度、図5B:ヤング率、図5C:靭性、並びに図5D:歪みを示すプロットである。
図5C図5A〜Dは、GA/PVA繊維の機械的特性、即ち、GA1(▲)及びGA2(●)の図5A:引張強度、図5B:ヤング率、図5C:靭性、並びに図5D:歪みを示すプロットである。
図5D図5A〜Dは、GA/PVA繊維の機械的特性、即ち、GA1(▲)及びGA2(●)の図5A:引張強度、図5B:ヤング率、図5C:靭性、並びに図5D:歪みを示すプロットである。
図6図6は、(a)純粋PVA、並びに(b)0.8%GA2及び(c)1.6%GA1のグルカレートを含むPVAの繊維破壊の先端を示す一連の画像であり、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてx1:低解像度、x2:高解像度で撮像した。
図7A図7A〜Bは、0〜3%GA2でのGA2/PVA繊維のIR吸収スペクトルを示すプロットである。図7A:3750〜1000cm-1及び図7B:1250〜800cm-1
図7B図7A〜Bは、0〜3%GA2でのGA2/PVA繊維のIR吸収スペクトルを示すプロットである。図7A:3750〜1000cm-1及び図7B:1250〜800cm-1
図8図8は、繊維軸に平行(||又は0°)及び垂直(⊥又は90°)な0.8%GA2繊維の、偏光ラマンスペクトルを示すプロットである。
図9A図9A〜Cは、最大で30%のリグニン、並びに0%(▲)及び0.8%(●)GA2含有量のポリマーを含有するリグニン/GA/PVA繊維の機械的特性を示すプロットである。図9A:引張強度、図9B:ヤング率、図9C:靭性。
図9B図9A〜Cは、最大で30%のリグニン、並びに0%(▲)及び0.8%(●)GA2含有量のポリマーを含有するリグニン/GA/PVA繊維の機械的特性を示すプロットである。図9A:引張強度、図9B:ヤング率、図9C:靭性。
図9C図9A〜Cは、最大で30%のリグニン、並びに0%(▲)及び0.8%(●)GA2含有量のポリマーを含有するリグニン/GA/PVA繊維の機械的特性を示すプロットである。図9A:引張強度、図9B:ヤング率、図9C:靭性。
図10A図10A〜Bは、リグニン/PVA繊維の破壊先端を示す一連の画像である。図10A:5%リグニン―(a)及び30%リグニン―(b1、b2)。図10B:5%リグニン―(a1、a2)又は30%リグニン―(b1、b2)で0.8%GA2を有するリグニン/GA/PVA繊維であり、SEMを用いてx1:低解像度、x2:高解像度で撮像した。
図10B図10A〜Bは、リグニン/PVA繊維の破壊先端を示す一連の画像である。図10A:5%リグニン―(a)及び30%リグニン―(b1、b2)。図10B:5%リグニン―(a1、a2)又は30%リグニン―(b1、b2)で0.8%GA2を有するリグニン/GA/PVA繊維であり、SEMを用いてx1:低解像度、x2:高解像度で撮像した。
図11A図11A〜Bは、図11A:3750〜1000cm-1図11B:1250〜800cm-1の間のリグニン、GA2粉末及び修飾PVA繊維のIR吸収スペクトルを示すプロットである。サンプルの指定は、延伸繊維の(リグニン対PVA)/(グルカレート対PVA)の比率を表す。
図11B図11A〜Bは、図11A:3750〜1000cm-1図11B:1250〜800cm-1の間のリグニン、GA2粉末及び修飾PVA繊維のIR吸収スペクトルを示すプロットである。サンプルの指定は、延伸繊維の(リグニン対PVA)/(グルカレート対PVA)の比率を表す。
図12A図12A〜Bは、繊維軸に平行(||又は0°)及び垂直(⊥又は90°)な30/0.8のリグニン/GA2/PVA繊維内の、図12A:リグニン及び図12B:PVAポリマー鎖の配向の、偏光ラマンスペクトルを示すプロットである。
図12B図12A〜Bは、繊維軸に平行(||又は0°)及び垂直(⊥又は90°)な30/0.8のリグニン/GA2/PVA繊維内の、図12A:リグニン及び図12B:PVAポリマー鎖の配向の、偏光ラマンスペクトルを示すプロットである。
図13A図13A〜Bは、図13A:対照リグニン/メタノール溶液―挿入図は207nmでの検量線を示す―及び図13B:リグニン/GA2/PVA繊維をメタノールに浸した後のリグニン濃度のUV−visスペクトルを示すプロットである。
図13B図13A〜Bは、図13A:対照リグニン/メタノール溶液―挿入図は207nmでの検量線を示す―及び図13B:リグニン/GA2/PVA繊維をメタノールに浸した後のリグニン濃度のUV−visスペクトルを示すプロットである。
図14A図14A〜Fは、x1:25及びx2:85℃の水につけた後の、図14A:0/0、図14B:0/0.8、図14C:5/0、図14D:5/0.8、図14E:30/0、及び図14F:30/0.8の(リグニン対ポリマー)/(GA2対ポリマー)比を有する修飾PVA繊維の共焦点顕微鏡写真を示す一連の画像である。
図14B図14A〜Fは、x1:25及びx2:85℃の水につけた後の、図14A:0/0、図14B:0/0.8、図14C:5/0、図14D:5/0.8、図14E:30/0、及び図14F:30/0.8の(リグニン対ポリマー)/(GA2対ポリマー)比を有する修飾PVA繊維の共焦点顕微鏡写真を示す一連の画像である。
図14C図14A〜Fは、x1:25及びx2:85℃の水につけた後の、図14A:0/0、図14B:0/0.8、図14C:5/0、図14D:5/0.8、図14E:30/0、及び図14F:30/0.8の(リグニン対ポリマー)/(GA2対ポリマー)比を有する修飾PVA繊維の共焦点顕微鏡写真を示す一連の画像である。
図14D図14A〜Fは、x1:25及びx2:85℃の水につけた後の、図14A:0/0、図14B:0/0.8、図14C:5/0、図14D:5/0.8、図14E:30/0、及び図14F:30/0.8の(リグニン対ポリマー)/(GA2対ポリマー)比を有する修飾PVA繊維の共焦点顕微鏡写真を示す一連の画像である。
図14E図14A〜Fは、x1:25及びx2:85℃の水につけた後の、図14A:0/0、図14B:0/0.8、図14C:5/0、図14D:5/0.8、図14E:30/0、及び図14F:30/0.8の(リグニン対ポリマー)/(GA2対ポリマー)比を有する修飾PVA繊維の共焦点顕微鏡写真を示す一連の画像である。
図14F図14A〜Fは、x1:25及びx2:85℃の水につけた後の、図14A:0/0、図14B:0/0.8、図14C:5/0、図14D:5/0.8、図14E:30/0、及び図14F:30/0.8の(リグニン対ポリマー)/(GA2対ポリマー)比を有する修飾PVA繊維の共焦点顕微鏡写真を示す一連の画像である。
図15図15は、純粋なメタノール、純粋PVA繊維を含有した後のメタノール、及び0.8%GA2のGA/PVAを含有した後のメタノールのUV−visスペクトルを示すプロットである。
図16A図16A〜Bは、図16A:GA1及び図16B:GA2の熱重量分析(TGA)を示すプロットである。サンプルを、20mL/minの窒素パージ下で、10℃/minの加熱速度で測定した。
図16B図16A〜Bは、図16A:GA1及び図16B:GA2の熱重量分析(TGA)を示すプロットである。サンプルを、20mL/minの窒素パージ下で、10℃/minの加熱速度で測定した。
図17図17は、完全に延伸された繊維である、30/0のリグニン/GA2及び30/0.8のリグニン/GA2の、広角X線散乱回折図(WAXD)を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.定義
他に定義しない限り、ここで使用するすべての技術的及び科学的用語は、当技術分野の通常の技術を有する者に一般に理解される意味と同一の意味を有する。矛盾する場合には、定義を含み本文献が支配する。好ましい方法及び材料を以下に記載するが、ここに記載する方法及び材料と類似又は同等のものを、本発明の実行又は試験において使用することができる。ここで言及するすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参照により全体としてここに組み込まれる。ここに開示する材料、方法、及び例は単に説明的であり、限定的であることを意図していない。
【0009】
ここで使用するように、用語「含む(comprise(s))」「包含する(include(s))、「有している(having)」、「有する(has)」、「可能である(can)」、「含有する(contain(s))」、又はそれらの変形は、追加の行為又は構造の可能性を排除しない、無制限の移行句、用語、又は単語である。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明確に規定しない限り、複数の参照を包含する。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、ここに提示される実施形態又は要素を「含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」他の実施形態も企図する。
【0010】
ここでの数値範囲の列挙のため、それらの間に介在する各数値は、同程度の精度で明示的に企図される。例えば、6〜9の範囲では、6及び9に加えて数字7及び8が企図され、かつ範囲6.0〜7.0では、数字6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が明示的に企図される。
【0011】
量に関連して使用される修飾語句「約」は、述べられた値を包含し、かつ文脈によって規定される意味を有する(例えば、少なくとも特定の量の測定に関連する誤差の程度を包含する)。修飾語句「約」はまた、2つの終点の絶対値により定義される範囲を開示するとみなされるべきである。例えば、「約2から約4」という表現はまた、範囲「2から4」を開示する。用語「約」は、示された数のプラス側又はマイナス側10%を指し得る。例えば、「約10%」は、9%から11%の範囲を示唆し得、かつ「約1」は0.9〜1.1を意味し得る。丸めなど、「約」の他の意味は文脈から明らかであり得、例えば「約1」は0.5から1.4もまた意味し得る。
【0012】
特定の官能基及び化学用語の定義は、以下により詳細に記載される。本開示の目的として、化学元素は、the Periodic Table of the Elements、CAS version、Handbook of Chemistry and Physics、第75版、裏表紙に従って特定され、かつ特定の官能基は、そこに記載されるように一般的に定義される。さらに、有機化学の一般原則は特定の機能的部分及び反応性と同様に、Organic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito,1999、Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley&Sons, Inc.,New York,2001、Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers, Inc.,New York,1989、Carruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge, 1987、に記載され、これらの各々の全体の内容は、参照により全体としてここに組み込まれる。
【0013】
ここで使用される用語「アルキレン」は、1個から50個の炭素原子、例えば2個から5個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖炭化水素から誘導される二価基を指す。アルキレンの代表的な例は、限定されないが、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、及び−CH2CH2CH2CH2CH2−を包含する。用語「Cy〜Czアルケニル」は、y個からz個の炭素原子からの直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味する。
【0014】
ここで使用される用語「アルキル」は、1個から30個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖の、飽和炭化水素鎖を指す。用語「低級アルキル」又は「C1〜C6アルキル」は、1個から6個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味する。用語「C37分岐アルキル」は、3個から7個の炭素原子を含有する分岐鎖炭化水素を意味する。用語「C14アルキル」は、1個から4個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味する。用語「C6〜C30アルキル」は、6個から30個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味する。用語「C12〜C18アルキル」は、12個から18個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味する。アルキルの代表的な例は、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシルを包含する。
【0015】
ここで使用される用語「ヒドロキシル」は、−OH基を意味する。
用語「置換される」は、1以上の非水素置換基によってさらに置換され得る基を指す。置換基は、限定されないが、ハロゲン、=O、=S、シアノ、アジド、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、トリアゾリル、アルキルスルフィニル、−COOH、アルキルカルボニル(例えば、アシル)、アミド(例えば、C(O)NH2)、カルバメート(例えば、O(O)NH2)、及びシリル(例えば、トリアルキルシリル)を包含する。
【0016】
2.組成物
ここで開示されるのは、ポリマー及びグルカル酸などのアルダル酸又はその塩を含む組成物である。組成物は、部分的にはアルダル酸を包含することによる有利な特性を有し、これにより組成物は、高性能繊維としてのそれらの使用を包含する多くの異なる用途に有用となる。
【0017】
A.ポリマー
組成物は、複数のヒドロキシル基又はニトリル基を有するポリマーを包含し得る。ポリマーは、複数のヒドロキシル基又はニトリル基により置換された、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)を包含し得る。他の実施形態においては、ポリマーは、複数のヒドロキシル基又はニトリル基により置換された、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンである。一部の実施形態においては、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンは、任意でヒドロキシル基又はニトリル基以外の他の置換基により置換され得る。
【0018】
一部の実施形態においては、ポリマーは、式(I)の繰り返し単位を包含し得、
(I)
LがC0~3アルキレンであり、Xが−OH又はニトリルであり、nが1から1000であり、及びmが100から100,000である。
一部の実施形態においては、LはC0~1である。
一部の実施形態においては、nは1から100である。一部の実施形態においては、nは1から25である。一部の実施形態においては、nは1である。
一部の実施形態においては、mは500から100,000である。一部の実施形態においては、mは1,000から10,000である。一部の実施形態においては、mは1,000から5,000である。
【0019】
ポリマーは、約100kDaから約400kDa、例えば約100kDaから約200kDa又は約200kDaから約300kDaの分子量を有し得る。一部の実施形態においては、複数のヒドロキシル基を有するポリマーは、約100kDaから約200kDaの分子量を有する。一部の実施形態においては、複数のニトリル基を有するポリマーは、約200kDaから約300kDaの分子量を有する。
組成物は、組成物の約30質量%から約99.9質量%、例えば組成物の約60質量%から約99.9質量%、約75質量%から約99質量%、又は約80質量%から約99質量%のポリマーを包含し得る。
さらに、ポリマーは変化する立体規則性を有し得る。例えば、ポリマーはアタクチック、イソタクチック、又はシンジオタクチックであり得る。
【0020】
i)複数のヒドロキシル基を有するポリマー
一部の実施形態においては、ポリマーは複数のヒドロキシル基を有する。ポリマーは、複数のヒドロキシル基により置換された直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンを包含し得る。他の実施形態においては、ポリマーは複数のヒドロキシル基により置換された直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンである。一部の実施形態においては、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンは、任意でヒドロキシル基以外の他の置換基により置換される。
【0021】
一部の実施形態においては、ポリマーは、式(II)の繰り返し単位を包含し得、
(II)
nが1から1000であり、及びmが100から100,000である。
一部の実施形態においては、nは1から100である。一部の実施形態においては、nは1である。
一部の実施形態においては、mは100から10,000である。一部の実施形態においては、mは1,000から5,000である。
【0022】
一部の実施形態においては、ポリマーはポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアルコール共重合体、又はそれらの組み合わせを含む。ポリビニルアルコール誘導体は、ポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール共重合体から誘導されるポリマーを指し、これは化学置換により修飾されるが、それでもここに開示する組成物中でポリマーが有用であるような特性を維持する。例えば、ポリビニルアルコール誘導体は、参照によりここに組み込まれる、Awadaら、Appl.Sci.(2015)5,840−850及びUS2004/0054069に記載されているように、ポリビニルアルコールの1以上のヒドロキシル基が交互の官能性(alternate functionalities)(例えば、アジド、アミン、シリル)に変換されるポリマーを包含し得る。ポリビニルアルコール共重合体の例は、限定されないが、ポリ(ビニルアルコール−共エチレン)共重合体、ポリ(ビニルアルコール−共プロピレン)共重合体、及びポリ(ビニルアルコール−共酢酸ビニル)共重合体を包含する。ポリビニルアルコール共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体(alternating copolymers)、グラフト共重合体、又はそれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態においては、ポリマーはポリビニルアルコールである。
【0023】
ポリビニルアルコールは、様々な程度の加水分解を有し得る。例えば、ポリビニルアルコールは、約80%から約99.9%加水分解され、例えば約85%から約99.9%、約85%から約90%、又は約95%から約99.9%加水分解される。一部の実施形態においては、ポリビニルアルコールは、99%を超える加水分解、98%を超える加水分解、95%を超える加水分解、90%を超える加水分解、85%を超える加水分解、又は80%を超える加水分解を受け得る。さらに、ポリビニルアルコールは、合成方法に依存して、アセチル含有量(例えば、ポリ酢酸ビニル)のような少量の不純物を包含し得る。例えば、ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールの5質量%よりも小さい、4質量%よりも小さい、3質量%よりも小さい、2質量%よりも小さい、1質量%よりも小さい、0.9質量%よりも小さい、0.5質量%よりも小さい、又は0.1質量%よりも小さい不純物を包含し得る。
【0024】
一部の実施形態においては、ポリマーは、低分子量ポリビニルアルコール又は高分子量ポリビニルアルコールである。例えば、低分子量ポリビニルアルコールは、100kDaよりも小さい分子量、例えば約2000の程度又は重合度を有する約89kDaから約98kDaを有するポリビニルアルコールを指す。高分子量ポリビニルアルコールは、500kDaよりも大きい分子量、例えば約18,000の程度又は重合度を有する約774kDaを有するポリビニルアルコールを指す。一部の実施形態においては、ポリマーは、約99%が加水分解された、約146kDaから約186kDaの分子量を有するポリビニルアルコールである。
【0025】
一部の実施形態においては、組成物は、ポリビニルアルコール及びグルカル酸又はその塩から本質的になる。他の実施形態においては、組成物は、ポリビニルアルコール及びグルカル酸又はその塩からなる。これらの実施形態においては、ポリビニルアルコール及びグルカル酸は、ここに論じる少量の不純物をそれぞれ包含し得る。
【0026】
ii)複数のニトリル基を有するポリマー
一部の実施形態においては、ポリマーは複数のニトリル基を有する。ポリマーは、複数のニトリル基により置換された直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンを包含し得る。他の実施形態においては、ポリマーは、複数のニトリル基により置換された直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンである。一部の実施形態においては、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンは、任意でニトリル基以外の他の置換基により置換される。
【0027】
一部の実施形態においては、ポリマーは、式(III)の繰り返し単位を包含し得、
(III)
nが1から1000であり、及びmが100から100,000である。
一部の実施形態においては、nは1から100である。一部の実施形態においては、nは1である。
一部の実施形態においては、mは100から10,000である。一部の実施形態においては、mは1,000から5,000である。
【0028】
一部の実施形態においては、ポリマーは、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル誘導体、ポリアクリロニトリル共重合体、又はそれらの組み合わせを含む。ポリアクリロニトリル誘導体は、ポリアクリロニトリル又はポリアクリロニトリル共重合体から誘導されるポリマーを指し、これは化学置換により修飾されるが、それでもここに開示する組成物中でポリマーが有用であるような特性を維持する。例えば、ポリアクリロニトリル誘導体は、ポリアクリロニトリルの1以上のニトリル基が交互の官能性に変換されるポリマーを包含し得る。一部の実施形態においては、ポリマーは、ポリアクリロニトリル並びにアクリル酸、イタコン酸、及びアクリレートからなる群から選択されるもう一つのポリマーのポリアクリロニトリル共重合体である。ポリアクリロニトリル共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、又はそれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態においては、ポリマーはポリアクリロニトリルである。一部の実施形態においては、ポリマーは、約200kDaから約300kDaの分子量を有するポリアクリロニトリルである。
【0029】
さらに、ポリアクリロニトリルは、合成方法に依存して、少量の不純物を包含し得る。例えば、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルの5質量%よりも小さい、4質量%よりも小さい、3質量%よりも小さい、2質量%よりも小さい、1質量%よりも小さい、0.9質量%よりも小さい、0.5質量%よりも小さい、又は0.1質量%よりも小さい不純物を包含し得る。
【0030】
一部の実施形態においては、組成物は、ポリアクリロニトリル及びグルカル酸又はその塩から本質的になる。他の実施形態においては、組成物は、ポリアクリロニトリル及びグルカル酸又はその塩からなる。これらの実施形態においては、ポリアクリロニトリル及びグルカル酸は、ここに論じる少量の不純物をそれぞれ包含し得る。
【0031】
B.アルダル酸
上記のように、組成物はアルダル酸又はその塩を包含する。アルダル酸は、糖の末端ヒドロキシル基及びカルボニル基が末端カルボン酸で置換された糖酸のグループであり、かつ式HOOC−(CHOH)n−COOHで特徴づけることができる。アルダル酸の例は、グルカル酸、酒石酸、ガラクタル酸、キシラル酸、リバル酸、アラビナル酸、リバル酸、リキサル酸、マンナル酸、及びイダル酸を包含する。アルダル酸(及びその塩)の以下の記載は、上記のようなポリマーのいずれの組み合わせにも適用することができる。
【0032】
アルダル酸のキラリティーは、組成物及びその繊維に影響を及ぼし得る。例えば、一部の実施形態においては、アルダル酸のキラリティーは、アルダル酸の融解温度及び/又は劣化温度に影響し得る。アルダル酸の融解温度及び/又は劣化温度は、アルダル酸を包含する繊維を提供するのに使用可能な延伸温度に影響する可能性があり、これは最終的に繊維の機械的性能に影響を与え得る。
【0033】
組成物は、アルダル酸を、組成物の約0.01質量%から約10質量%、例えば組成物の約0.01質量%から約8質量%、又は約0.8質量%から約5質量%で包含し得る。
組成物は、ポリマー及びアルダル酸を、約5/1から約10,000/1(ポリマー/アルダル酸)、例えば約10/1から約200/1、又は約20/1から約80/1の質量比で包含し得る。
【0034】
i)グルカル酸
代表的な実施形態においては、アルダル酸は、グルカル酸又はその塩である。グルカル酸(及びその塩)の以下の記載は、上記のようなポリマーのいずれの組み合わせにも適用することができる。グルカル酸は、グルカル酸の二酸形態、グルカル酸のラクトン形態(例えば、1,4−ラクトン及び3,6−ラクトン)、又はそれらの組み合わせを包含し得る。
【0035】
グルカル酸は塩であってもよく、かつ完全に中和され、又は部分的に中和され得る。グルカル酸塩の対イオンは、限定されないが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、亜鉛、リチウム、及びそれらの組み合わせを包含し得る。例えば、グルカル酸は、モノアンモニウム塩、ジアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、又はそれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態においては、グルカル酸は、グルカル酸のアンモニウム塩である。
【0036】
グルカル酸は、
であり得る。
【0037】
他の実施形態においては、グルカル酸は式(IV)であり得、
(IV)、
+は水素、ナトリウム、カリウム、N(R14、亜鉛、リチウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、及びR1はそれぞれ独立して水素及びアルキルからなる群から選択される。
【0038】
一部の実施形態においては、R1はそれぞれ独立して水素及びC1〜C10アルキルからなる群から選択される。N(R14の例は、限定されないが、アンモニウム、モノ(アルキル)アンモニウム、ジ(アルキル)アンモニウム及びテトラ(アルキル)アンモニウムを包含する。
【0039】
一部の実施形態においては、グルカル酸は、


される。
【0040】
グルカル酸は、生合成方法を介して供給され得る。例えば、グルカル酸は、微生物発酵を介して供給され得る。したがって、グルカル酸は、経済的にやさしい方法で供給され得る。他の実施形態においては、グルカル酸は、酸化剤(例えば、硝酸)を用いた糖(例えば、グルコース)の酸化を介して供給され得る。
【0041】
グルカル酸の供給方法に応じて、一定の純度を有し得る。例えば、グルカル酸は、グルカル酸の約0.1質量%から約10質量%、例えばグルカル酸の約0.1質量%から約5質量%又は約0.1質量%から約1質量%の不純物を包含し得る。不純物は、限定されないが、アルミニウム、ホウ素、カルシウム、鉄、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、及びリンを包含する。一部の実施形態においては、グルカル酸は、カリウム及び/又はナトリウムの不純物を有するグルカル酸モノアンモニウムを包含する。
【0042】
一部の実施形態においては、グルカル酸は、二酸形態及びラクトン形態の組み合わせとして供給される。例えば、グルカル酸(又はその塩)は、グルカル酸の約60質量%から約99.9質量%の二酸形態を包含し、残りはラクトン形態であり得る。さらに、グルカル酸は、グルカル酸の約60質量%から約99.9質量%のラクトン形態を包含し、残りは二酸形態であり得る。二酸及びラクトンの組み合わせを包含する実施形態は、上で列挙した不純物もまた包含し得る。グルカル酸に包含される各形態の(質量)パーセントは、グルカル酸のpH及び/又は組成物に応じて変動し得る。
【0043】
組成物は、組成物の約0.01質量%から約10質量%、例えば組成物の約0.01質量%から約8質量%又は約0.8質量%から約5質量%のグルカル酸を包含し得る。
組成物は、約5/1から約10,000/1(ポリマー/グルカル酸)の質量比、例えば約10/1から約200/1又は約20/1から約80/1のポリマー及びグルカル酸を包含し得る。
【0044】
C.添加剤
組成物は、組成物に一定の特徴を与え得る添加剤をさらに包含し得る。添加剤は、リグニン、カーボンナノチューブ、ナノフィラー又はそれらの組み合わせを包含する。組成物は、組成物の約0.1質量%から約50質量%、例えば組成物の約1質量%から約25質量%、約5質量%から約30質量%、約5質量%から約20質量%の添加剤を包含し得る。さらに、組成物は、約0.5/1から約20/1の質量比(添加剤/グルカル酸)、例えば約1/1から約10/1、又は約2/1から約4/1の添加剤及びグルカル酸を包含し得る。
【0045】
一部の実施形態においては、組成物はリグニンをさらに包含する。組成物は、組成物の約0.1質量%から約50質量%、例えば組成物の約1質量%から約25質量%、約1質量%から約30質量%、又は約5質量%から約30質量%のリグニンを包含し得る。さらに、組成物は、約0.5/1から約20/1の質量比(リグニン/グルカル酸)、例えば約1/1から約10/1又は約2/1から約4/1のリグニン及びグルカル酸を包含し得る。リグニンを包含する組成物は、組成物の10質量%未満の相分離、例えば9質量%未満の、8質量%未満の、7質量%未満の、6質量%未満の、5質量%未満の、4質量%未満の、3質量%未満の、2質量%未満の、又は1質量%未満の相分離を有し得る。さらに、リグニンを包含する組成物は、組成物の異なる領域へのリグニンの配置を有し得る。例えば、リグニンも包含する組成物を含む繊維は、繊維の表面にリグニンが配置され、グルカル酸及びポリマーが繊維の芯に配置され得る。
【0046】
リグニンは、様々な形態で使用され得る。例えば、リグニンは水成の松材おがくずペーストとして供給され得る。さらに、溶液として供給されるリグニンは、pH4、pH3、又はpH2などの酸性pHを有し得る。一部の実施形態においては、様々な程度の有機溶媒への可溶性を有するリグニンとして供給され、それはリグニンの様々な分子量に起因し得る。一部の実施形態においては、リグニンは溶媒(例えば、アセトン)に溶解し、その後濾過して不溶性リグニン分画を除去することにより精製され得る。これはリグニンを包含する繊維の延伸性を改善し得る(例えば、より高い繊維伸縮及び/又は延伸中のより少ない破損)。
【0047】
さらに、リグニンは、リグニンの供給方法に応じて、少量の不純物を包含し得る。例えば、リグニンの5質量%未満の、4質量%未満の、3質量%未満の、2質量%未満の、1質量%未満の、0.9質量%未満の、0.5質量%未満の、又は0.1質量%未満の不純物を包含し得る。リグニンに関連する不純物は、限定されないが、灰及びヘミセルロースを包含し得る。
【0048】
一部の実施形態においては、組成物は、ポリビニルアルコール、グルカル酸又はその塩、及びリグニンから本質的になる。他の実施形態においては、組成物は、ポリビニルアルコール、グルカル酸又はその塩、及びリグニンからなる。これらの実施形態においては、ポリビニルアルコール、グルカル酸及びリグニンは、それぞれ少量の上で列挙した不純物を包含し得る。
【0049】
一部の実施形態においては、組成物は、ポリアクリロニトリル、グルカル酸又はその塩、及びリグニンから本質的になる。他の実施形態においては、組成物は、ポリアクリロニトリル、グルカル酸又はその塩、及びリグニンからなる。これらの実施形態においては、ポリアクリロニトリル、グルカル酸及びリグニンは、それぞれ少量の上で列挙した不純物を包含し得る。
【0050】
組成物を包含する繊維
組成物は、繊維の一部として包含され得、かつ一部の実施形態においては、組成物は繊維である。上記したようにポリマー及びグルカル酸のようなアルダル酸を包含する繊維は、高強度の繊維を利用する多数の技術に対して当該繊維を有利にする、独特の特性を有する。特定の理論に拘束されることなく、アルダル酸が繊維の伸縮工程中のポリマー鎖の流れを可塑化し、最終的に繊維強度を高めるという仮説が立てられている。例えば、繊維強化は加工中の鎖の滑りによって引き起こされる可能性があり、これにより繊維の延伸比、繊維の微細構造における分子/鎖の配列が可能になり、かつ繊維の線密度を低下させることができる。繊維は、メルトブローン、スパンボンド、及び/又はゲル紡糸工程などの、多数の異なる工程を通して供給することができる。したがって、繊維はメルトブローン繊維、スパンボンド繊維、及び/又はゲル紡糸繊維であり得る。繊維の供給方法に応じて、繊維の直径は変動し得る。例えば、繊維は、約10μmから約50μm、例えば約18μmから約40μm又は約20μmから約40μmの直径を有し得る。
【0051】
一般的に、ポリマー、アルダル酸(例えば、グルカル酸)、及び添加剤(例えば、リグニン)に関する組成物の質量パーセント及び質量比は、繊維の質量パーセントに適用することができる。簡潔にするために、ここでは繰り返さない。
【0052】
ポリマーとアルダル酸の組み合わせに一部起因して、繊維は増加したテナシティを有し得る。繊維は、約3g/denから約5g/denのテナシティを有し得る。繊維は、5g/denよりも大きい、6g/denよりも大きい、7g/denよりも大きい、8g/denよりも大きい、又は9g/denよりも大きいテナシティを有し得る。さらに、ポリマー及びアルダル酸を包含する繊維は、(同一の分子量の)同一のポリマーを包含するがアルダル酸を有しない繊維に比べて、増加したテナシティを有し得る。例えば、繊維は、(同一の分子量の)同一のポリマーを包含するがアルダル酸を有しない繊維の、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍のテナシティを有し得る。
【0053】
繊維は、約200g/denから約1200g/denの比弾性率を有し得る。繊維は、230g/denよりも大きい、250g/denよりも大きい、300g/denよりも大きい、350g/denよりも大きい、400g/denよりも大きい、450g/denよりも大きい比弾性率を有し得る。
【0054】
繊維は、約150MPaから約2000MPaの引張強度を有し得る。繊維は、500MPaよりも大きい、550MPaよりも大きい、600MPaよりも大きい、650MPaよりも大きい、700MPaよりも大きい、750MPaよりも大きい、800MPaよりも大きい、900MPaよりも大きい、又は1000MPaよりも大きい比弾性率を有し得る。
【0055】
繊維は、約3デニールから約30デニール、例えば約3デニールから約20デニール又は約3デニールから約15デニールの線密度を有し得る。繊維は、17デニール未満の、16デニール未満の、15デニール未満の、14デニール未満の、13デニール未満の、12デニール未満の、11デニール未満の、10デニール未満の、9デニール未満の、8デニール未満の、7デニール未満の、又は6デニール未満の線密度を有し得る。
【0056】
i.繊維の作成方法
上で論じたように、繊維は多数の異なる技術を介して供給することができる。代表的な実施形態においては、繊維はゲル紡糸法により供給される。ゲル紡糸法は、複数のヒドロキシル基及び/又はニトリル基並びにアルダル酸又はその塩を有するポリマーを、第1の溶媒中に溶解して、溶液を供給する工程を包含し得る。代表的な実施形態においては、アルダル酸はグルカル酸である。さらに、リグニンのような添加剤が、溶液に添加され得る。上記のポリマー、アルダル酸及びグルカル酸、並びに添加剤の記載は、ここに記載の方法に適用することができる。
【0057】
第1の溶媒はポリマー及びアルダル酸、並びに任意の他の成分(例えば、リグニン)を溶解する任意の適した溶媒であり得る。第1の溶媒は、DMSO、水、尿素、又はそれらの組み合わせを包含し得る。一部の実施形態においては、第1の溶媒は、DMSO/水の異なる体積分率の、DMSO及び水の混合物である。例えば、第1の溶媒は、約80%v/vのDMSO及び20%v/vの水を包含し得る。
【0058】
ポリマー及びアルダル酸は、溶液中に様々な量で存在する。例えば、ポリマーは、約60%から約99.9%の質量/体積で溶液中に存在し得る。さらに、アルダル酸は、約0.01%から約5%で溶液中に存在し得る。リグニンのような添加剤が存在する実施形態においては、添加剤は約0.1%から約5%の質量/体積で溶液中に存在し得る。
【0059】
次いで溶液を、約1分から約1時間などの期間、約70℃から約110℃の温度に加熱することができる。溶液を一定期間加熱した後、それを加圧下の開口部を通って第2の溶媒を含む第1の浴に押し出して、ゲル紡糸繊維を供給することができる。開口部の直径及び加えられる圧力は、所望の繊維の種類に応じて変動し得る。例えば、開口部は、約0.69mmの内径を有する19ゲージの針を介して供給することができる。開口部と第1の浴との間の空隙は、約1mmから約10mm、例えば約2mmから約8mm又は約2mmから約7mmであり得る。
【0060】
さらに、第2の溶媒は溶液の温度よりも低温(例えば、0℃、−10℃、−20℃、−25℃、又は−35℃)であってもよく、かつ異なる溶媒を包含していてもよい。一部の実施形態においては、第2の溶媒は、約−35℃から約0℃の温度である。第2の溶媒は、メタノール、アセトン、イソプロパノール、水又はそれらの組み合わせを包含し得る。一部の実施形態においては、第2の溶媒は、−25℃であり、かつメタノール及びアセトンの混合物を包含する。第1の浴中で凝固した後、ゲル紡糸繊維を、回転巻取機に集めることができる。
【0061】
ゲル紡糸が供給されると、第1の浴と同一又は類似の溶媒を包含するが、第1の浴よりも高い温度(例えば、0℃よりも高い)の第3の浴内でゲル紡糸を熟成させ、熟成したゲル紡糸繊維を供給することができる。ゲル紡糸繊維は、約1時間から約48時間、熟成させることができる。一部の実施形態においては、ゲル紡糸繊維を第3の浴内で、5℃で24時間熟成させる。この工程を通して、ゲル紡糸繊維繊維(及び熟成ゲル紡糸繊維)を、ポリマーゲルと呼ぶこともできる。
【0062】
熟成ゲル紡糸繊維を、シリコーンオイルを含む第2の浴を通って延伸し、開示する繊維を供給することができる。アルダル酸(例えば、グルカル酸)又はその塩の添加は、第2の浴内のポリマーを加工して、改善された特性を有する繊維にするのを助けることができる。例えば、アルダル酸の存在は、融解温度を下げることによりポリマーゲル繊維の熱特性に影響を与える可能性があり、その結果、より高い延伸比が得られる可能性がある。延伸は、約90℃から約240℃などの高温で、第1から第4段階で実行することができる。
【0063】
一部の実施形態においては、延伸を4段階で実行する。延伸の第1段階を、約90℃から約140℃の温度で実行することができる。延伸の第2段階を、約145℃から約190℃の温度で実行することができる。延伸の第3段階を、約190℃から約205℃の温度で実行することができる。延伸の第4段階を、約200℃から約240℃の温度で実行することができる。
【0064】
様々な流量及び延伸比を、開示する方法に使用することができる。例えば、方法は、約0.1メートル/分(m/min)から約20m/minの流量を包含し得る。さらに、方法は、約1から約20の延伸比を包含し得る。一部の実施形態においては、方法は、約25から約160、例えば約30から約150又は約35から約85の総延伸比を有し得る。ここで使用するように、「総延伸比」は、シリコーンオイルを含む第2の浴で実行される各延伸段階の、累積的延伸比を指す。
【0065】
一部の実施形態においては、熟成ゲル紡糸繊維は、周囲条件で実行される延伸工程を受けることができ、これは冷延伸とも呼ぶことができる。これは、典型的にはシリコーンオイル浴を通して延伸する前に実行する。冷延伸を受ける繊維は、シリコーンオイルを通して延伸する前に、第4の浴内で調整を受けることもできる。この第4の浴内での繊維の調整は、シリコーンオイル中で延伸する前に繊維を整列させるのを助ける。第4の浴は、第3の浴と同一又は類似の溶媒を包含し得る。
【0066】
ゲル紡糸技術の例は、ACS Sustainable Chemistry Engineeringの、“Effect of the Coagulation Bath on the Structure and Mechanical Properties of Gel−Spun Lignin/Poly(vinyl alcohol) Fibers,”2017に見いだされ、これは参照により全体として組み込まれ、さらに以下の実施例で詳述される。
【0067】
ii.繊維の使用
上述のように、開示の繊維は、その有利な特性により多数の異なる用途に使用することができる。そのような用途の1つは、コンクリート/セメント添加剤としての繊維の使用であり、その場合コンクリート内で強化繊維として機能し得る。さらに、繊維は、繊維製品の1つとして包含されていてもよい。例えば、繊維は、紡績糸、布、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、ゲル紡糸ウェブ、サーモボンドウェブ、水流交路ウェブ、不織布、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される繊維製品に包含されていてもよい。
【0068】
さらに、繊維は、高性能繊維が必要とされる用途で使用されていてもよい。これらの種類の用途の例は、炭素繊維、タイヤコード、放射線遮蔽、及び繊維強化プラスチックの前駆体が包含される。
【0069】
4.実施例
本発明の組成物及び方法は、本発明の範囲の説明を意図し、限定を意図しない以下の実施例の参照によって、よりよく理解されるであろう。
【0070】
実施例1
PVA/グルカル酸繊維−I
ポリビニルアルコール(PVA、分子量146〜186kg/mol及び99%加水分解を有する、をSigma−Aldrichから購入した)。pH3の水成生松おがくずリグニンペースト(プロジェクト番号L28)は、Pure Lignin Environmental Technology(PLET)から提供された。リグニンを、弱酸加水分解処理を使用して木材パルプから抽出した。溶媒、即ちSigma−Aldrichからのジメチルスルホキシド(DMSO)並びにBDH Chemicalsからのアセトン及びメタノールを、受け取ったまま使用した。カリウム又はナトリウムの不純物を有するグルカル酸モノアンモニウムは、Kalionから提供された。グルカル酸をポリマー溶液(及び任意でリグニンを有する)に、0、0.8、1.6、3、及び5%w/vで添加した。
【0071】
PVA、PVA/グルカル酸、PVA/グルカル酸/リグニン及びリグニン/PVAの紡糸ドープを調製した。PVA粉末(10g)を、85℃で1時間絶えず攪拌しながら、100mLの80/20(v/v)のDMSO/蒸留水に溶解した。PVA粉末及びグルカル酸を、85℃で1時間絶えず攪拌しながらDMSO/蒸留水に共に溶解し、グルカル酸紡糸ドープを調製した。リグニン対ポリマーの質量比が最大50%のリグニン/PVAドープを、85℃で80/20(v/v)のDMSO/蒸留水にも溶解した。PVA及びリグニンの均一な混合物を得るために、PVAをDMSO/水に溶解し、かつリグニンを両方とも一緒に加える前にDMSOに別々に溶解した。紡糸ドープ中のPVAの最終濃度は、10g/dLだった。
【0072】
ゲル紡糸工程の概略図を図1に示し、ここで工程2及び工程4は任意である。PVAベースの紡糸ドープを、スチール製の高圧シリンジから分配した。シリンジを、19ゲージシリンジ針(内径0.69mm)を通るドープの押し出しの前に、85℃まで加熱した。その後、ドープを−25℃の凝固浴内でゲル化した。シリンジ先端から凝固浴までの距離は、3〜5mmだった。得られた紡糸されたままのゲル繊維を回転巻取機に集め、その後凝固浴に24時間浸した。90〜240℃の高温で、第1から第4段階のシリコーンオイルに繊維を通した(図1−工程5)。繊維延伸の各段階での延伸比(DR)を、
DR=V2/V1 (式1)
により計算し、ここで、V1は繊維供給巻取機の速度、V2は繊維回収巻取機の速度である。
【0073】
グルカル酸(GA)はポリビニルアルコール繊維の加工性を改善して、最大で1.6%GAにおけるより高い機械的性能を最終的に達成することが確認された。性能向上のための2%GAの制限は、分子量に依存し得る。
【0074】
繊維紡糸のための開示のゲル紡糸技術(図1参照)を使用すると、1.6%GAの添加により繊維の機械的強度が2倍よりも大きくなった(表1参照)。比弾性率の結果に基づき、繊維の剛性はかなり増加した:0%GAで114g/denから1.6%GAで427g/den。表2に見られるように、弾性率の値は高性能繊維に属する値を表す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0075】
表3中のデータの参照のため、すべては参照により全体としてここに組み込まれる:
Hearle, J.W.S., ed. High−performance Fibres. Woodhead Publishing Limited series on fibres, ed. J.E. McIntyre. 2001, The Textile Institute Woodhead Publishing Limited: Boca Raton. 329。
Nalankilli, G., Gel Spinning− A Promising Technique for the Production of High Performance Fibres. Man−Made Textiles in India, 1997. 40(6): p. 237−242。
Smith, P., P.J. Lemstra, and J.P.L. Pijpers, Tensile Strength of Highly Oriented Polyethylene. II. Effect of Molecular Weight Distribution. Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics, 1982. 20: p. 2229−2241。
【0076】
実施例2
PVA/グルカル酸繊維−II
材料及び方法
材料:アタクチックPVA(分子量146〜186kg/mol及び99%加水分解)をSigma Aldrichから購入した。2つのグルカレート塩は、Kalion株式会社から寄贈された。Kalionは、発酵ベースの工程を通してグルカル酸を生産する。タイプ1又はGA1は、イオン交換クロマトグラフィーにより精製したアンモニウム塩である。GA1は、1%未満のカリウム及びナトリウムイオンを含有していた。表4に、イオン交換クロマトグラフィーで精製したグルカル酸アンモニウムの元素分析の詳細を示す。タイプ2又はGA2は、グルカル酸のモノアンモニウム塩である。pH3の水成生松おがくずリグニンペーストは、Pure Lignin Environmental Technology(PLET)LLCから提供された。溶媒、即ちジメチルスルホキシド(Sigma AldrichからのDMSO)、アセトン及びメタノール(両方ともBDH Chemicalsから)、並びに蒸留水を、受け取ったまま使用した。
【0077】
紡糸ドープの調製:10g/dLのPVA粉末を、80/20(v/v)のDMSO/蒸留水に溶解した。ドープを、完全に溶解するまで、1時間まで攪拌した。グルカレート(GA1又はGA2)を、最大でポリマーの3%(質量/質量、w/w)までドープに添加した。
【0078】
リグニン対ポリマーの、5及び30%(w/w)でのPVA/リグニンの紡糸ドープを、参照により全体としてここに組み込まれる、Luら、ACS Sustainable Chemistry & Engineering 2017, 5 (4), 2949−2959に記載され、かつ説明された方法に従って調製した。ポリマーの0.8%のGA2を、5又は30%リグニンを含有するリグニン/PVA紡糸ドープに添加した。紡糸ドープを、85℃で1時間絶えず攪拌した。
【0079】
表4.イオン交換クロマトグラフィーにより精製したグルカル酸アンモニウムの元素分析
【表4】
【0080】
ゲル紡糸:修飾PVA繊維のゲル紡糸を、5工程で図1に説明する。工程1においては、50mLの各紡糸ドープをスチール製高圧シリンジに装填し、その後一定電圧(120V)の加熱ベルトで85℃まで加熱した。紡糸ドープを、19ゲージ(内径0.69mm)シリンジ針を通して押し出した。シリンジ先端と凝固浴との間の空隙は、3〜5mmだった。紡糸されたままのゲル繊維を凝固浴内で、−25℃で凝固させ、次いで回転巻取機に集めた。その後、紡糸されたままのゲル繊維を、凝固溶媒中で24時間熟成させた(工程2)。
【0081】
工程2:凝固のための溶媒浴組成物を、紡糸されたままのゲル繊維の熟成にも使用した。純粋メタノールを使用して、純粋なPVA及びGA/PVA紡績ドープからゲルを処理した。15/85(体積/体積、v/v)のメタノール/アセトン混合物を使用して、リグニン/GA/PVAドープからのゲルを処理した。ゲル繊維からのリグニンの分散を防ぐために溶媒混合物を処方し、凝固浴には少なくとも80%のアセトンを使用した。
【0082】
0.3%GA1/PVAドープからのゲル繊維を周囲条件で冷延伸し(工程3)、熱延伸(工程5)の前に、繊維を整列させるために24時間メタノール溶媒中で調整した(工程4)。他のゲル繊維を、ゲル繊維の熟成(工程2)の後、シリコーンオイル浴から直接的に延伸した(工程5)。延伸に各段階について、延伸比(DR)を、式1を用いて計算した。完全に延伸された繊維が得られるまで、繊維を4つの連続した段階で熱延伸した(工程5)。
【0083】
ゲル融解:GA/PVAゲルのゲル融解点を、Ryanら、The Journal of Physical Chemistry 1965, 69 (10), 3384−3400(参照により全体としてここに組み込まれる)及びLuら、ACS Sustainable Chemistry & Engineering 2017, 5 (4), 2949−2959に記載の方法に従って測定した。GA/PVAドープを、毛細管に追加した。毛細管の一端に蓋をした。蓋をした端を、ドープがゲル化するまで−25℃のメタノール浴に1分間置いた。次いで、ゲル化したポリマーの毛細管を、熱電対とともに逆さまにして試験管に入れた。試験管を、シリコーンオイルで充填されたティーレ管の中に配置した。溶解したゲルがキャピラリーの底部を流れる時の温度として定義されるゲル融点を測定するために、ティーレ管を緩やかに加熱した。
【0084】
グルカレートの熱分解:GA1及びGA2の熱分解を、Perkin ElmerのPyris1 Thermogravimetric Analyzers(TGA)により、20mL/minの窒素パージガス中で測定した。加熱率は、室温から300℃まで10℃/minであった。
【0085】
機械的試験:機械的特性を、ASTM D 3379によるMTS−Q上の10〜15本の繊維のサンプルサイズから得た。歪み速度は15mm/minであり、ゲージ長は25mmであった。断面積Aは、(式2)により繊維の線密度dから重力測定で計算した。
【0086】
延伸繊維をイソプロピルアルコール中ですすいでオイル残渣を除去した後、繊維の3mの質量を測定した。式3の体積密度ρは、複合繊維を表す。
ここで、wf1及びwf2は複合繊維中のリグニン及びグルカレートの質量分率をそれぞれ指す。PVAの密度(ρPVA)及びリグニンの密度(ρリグニン)は、1.3g/cm3という同一の値を共有する。グルカル酸の密度は、1.9g/cm3である。
各繊維の引張強度を、応力−歪み曲線の積分から計算した。これは、繊維が破損するまでに吸収されるエネルギーである。
【0087】
画像分析:機械的試験の後、繊維の破断端を60/40(w/w)の金/パラジウム混合物でスパッタコーティングした。2kVの加速電圧でのFEI Verios 460L走査型電子顕微鏡(SEM)を、イメージングに利用した。
【0088】
繊維構造分析:修飾PVA繊維、リグニン及びGA2粉末の赤外線(IR)スペクトルを、128スキャン及び4cm-1スペクトル分解能を使用して、NICOLET iS50分光光度計で取得した。PVA鎖と添加剤間の分子間及び分子内水素結合を、3345cm-1で正規化した3000〜3750cm-1の範囲のIR吸光度から分析した。3306〜3345cm-1の範囲の繊維の水素結合のピーク高さ(I(OH))を取得して、修飾PVA繊維中の水素結合の強度を比較した。1144cm-1の吸光度は、ポリマー鎖に沿った対称C−C伸縮に対応し、近接するヒドロキシル(−OH)基が分子内/分子間水素結合に関与する。IR吸収スペクトルを正規化するため、854cm-1(C−C伸縮)ピークを参照バンドとして使用した。
【0089】
ポリマーの結晶化度(Xc)は、式4で表される:
ここで、A及びBは定数である。A及びBの値は、X線回折による結晶化度の既知の値から計算される。A結晶化度、(1144+1130)/A参照、854の吸収面積を、OriginPro8ソフトウェアを使用して赤外線スペクトルから計算した。結晶PVA(1144及び1130cm-1)のコンフォメーションの参照ピークへの吸光度比(即ち、A(1144+1130)/A854)を、繊維の結晶化度の指標として使用し、かつ各繊維の相対結晶化度を比較した。
【0090】
修飾PVA繊維の分子異方性を、偏光ラマン分光法を使用して定量化した。Bayspec Normadic共焦点ラマン顕微鏡で、繊維束(〜30繊維)の軸に平行及び垂直なスペクトルを取得した。パラメーターは、10倍対物赤外線レンズ、102mWで785nmレーザー(255mWの最大値に基づく)、3秒のサンプル露出時間、及び10の取得数を包含する。ラマンスペクトルを、リグニンの分子異方性の研究のために1550cm-1で、並びにPVA主鎖及びヒドロキシル基の配向の研究のために2910cm-1で、正規化した。
【0091】
式5のラマン異方性(R)は、分子基の配向を表した:
ここで、
は、繊維軸に平行(||)又は垂直であった偏光角でのピーク強度である。繊維内のリグニン芳香族官能基のハーマンの配向係数は、式6により計算される:
ここで、ランダムに配列された分子に関してはR=1及びf=0であり、かつ完全に配列された分子に関してはR=∞及びf=1である。
【0092】
修飾PVA繊維の構造中のリグニンの配置を理解するため、繊維構造からメタノール溶媒へのリグニンの移動を、UV−vis分光法により定量的に分析した。リグニンを、85℃の20mLのメタノールに溶解して、4.2g/Lの原液を調製した。原液をさらに4つのリグニン溶液:26、53、140及び210mg/Lに希釈した。6mgの各々の修飾PVA繊維を85℃の20mLのメタノール中に24時間置き、次いで試験の前に溶液から繊維を除去した。サンプルを、0/0、0/0.8、5/0、5/0.8、30/0及び30/0.8の、(リグニン対PVA)/(GA2対PVA)の質量比に関して指定した。
【0093】
一度繊維を入れた純粋メタノール、希釈リグニン溶液及びメタノール溶液を、Agilent TechnologiesのCary 300 ultraviolet visible (UV−vis)分光光度計により分析した。バックグラウンドスペクトルを、図15に示す。スキャン速度600nm/minで200〜300nmの範囲で3回繰り返してスキャンした。リグニンの芳香族基は、波長λ=207nmで最大の吸光度を有する。207nmの測定吸光度でのリグニン濃度の直線検量線(OriginPro8による式7)を使用して、繊維からメタノールに分散したリグニンを定量した。式7においては、Yは207nmの吸光度を指し、かつXはメタノール中のリグニン濃度である。適合係数はR2=0.97であった。
【0094】
水溶解:水溶解研究を使用して、複合繊維の耐水性を調査した。0/0、0/0.8、5/0、5/0.8、30/0及び30/0.8の、(リグニン対PVA)/(GA2対PVA)に指定した、3mgの修飾PVA繊維を、水の20mLバイアルに置いた。バイアルを、ホットプレート上で25から85℃まで緩やかに加熱した。LEXT OSL4000 3D測定レーザー共焦点顕微鏡を使用して、浸水後の繊維をイメージングした。
【0095】
結果及び議論
ゲル紡糸PVA繊維内のグルカレートの抗可塑化挙動
GA/PVAゲルの溶解:添加剤は結晶性ポリマーの構造に影響を与える可能性があり、これは溶解温度の変化によって証明される。ゲル構造は、不完全な三次元ネットワークを安定化する半結晶接合部を含む。したがって、添加剤はPVAゲル溶解温度にも影響を与えると予想されている。ゲル溶解温度及びPVAゲル構造へのグルカレート塩の効果を、それぞれ図2及び図3に示す。0〜3%GA1の添加により、PVAゲルのゲル溶解温度が101℃から72℃に低下した。同様に、0〜3%GA2により、PVAゲル溶解温度が101℃から86℃に低下した。グルカレート塩によるゲル溶解温度の低下は、PVAゲルのポリマーに富んだ半結晶性ドメイン内にグルカレート塩が存在することを意味している。小分子であるため、グルカレート塩はPVA鎖間の水素結合を破壊し、それによりPVAゲルのゲル溶解温度を低下させると想定されている。3%グルカレートでは、混合塩の形態は、モノアンモニウム塩の形態よりも結晶性ゲルを破壊するように思われる。ゲル構造及び溶解におけるこの変化は、次の章で論じるように、その後繊維の延伸のパラメーターに影響を与える可能性がある。
【0096】
PVA繊維延伸パラメーターへのグルカレートの効果:グルカレートの延伸工程への影響を、表4に要約した。GA1の添加により、ゲル繊維の紡糸時の(as−spun)延伸比が増加し、ポリマー鎖間のより高い柔軟性が示唆された。3%GA1では、ゲル繊維は60℃より高い温度では延伸不可能であった。したがって、最初にゲル繊維を延伸し、かつ熱延伸の前にポリマー鎖を配列させるために、冷延伸を利用した。GA1により修飾されたPVAは、純粋なPVA繊維で得られたものよりも高い第1〜第4段階の延伸比をもたらした。1.6%までのGA1を有するGA1/PVAの総延伸比は、21から60倍に増加した。3%GA1では、総延伸比はわずか37倍であった。グルカレート修飾PVA繊維(直径28〜35μm)は、純粋なPVA(52μm)よりも細かった。
【0097】
0.8〜3%GA2では、GA1でも観察されるように、PVA繊維は純粋なPVA繊維よりも高い紡糸時の延伸比を有していた。3%GA1を有する紡糸されたままのゲル繊維とは対照的に、3%GA2を有するゲル繊維を95℃で最初に延伸し、冷延伸を必要としなかった。1.6〜3%GA2ゲル繊維の第1段階の延伸は、純粋PVAの延伸よりも5℃低かった。しかしながら、1.6〜3%GA1繊維の場合はそうではなかった。図2は、1.6%GA2繊維の溶解温度が、1.6%GA1繊維の溶解温度よりも低いことを示した。3%では、GA1/PVAゲルがGA2/PVAゲルと比べてかなり低い溶解温度を有していた。3%GA1の冷延伸は、ポリマー鎖の配列/パッキングを促進し、かつ第1段階の延伸温度を115℃に上げた。0〜1.6%GA2繊維の総延伸比は21から76倍に増加し、かつ3%GA2では61倍に減少した。GA2/PVA繊維は、純粋PVA繊維(52μm)と比較してより細い繊維(28及び29μm)であった。
【0098】
第2〜第3段階からのGA1/PVA又はGA2/PVAの処理温度は、純粋PVAに使用される温度よりも高かった。グルカレート修飾PVA繊維の紡糸時及び第1段階の延伸比が高いことにより、ポリマーの配列及びパッキングの程度が高くなった。これによりGA/PVA繊維の高い第2〜第3段階の延伸温度がもたらされ、この温度でポリマーが加熱されかつさらに延伸された。
【0099】
要約すると、ゲル紡糸PVA中のグルカレートは、ゲル繊維の溶解温度を下げることによりゲル繊維の熱特性に大きく影響した。純粋PVAゲル繊維の結晶相内の鎖の密なパッキングとは対照的に、GA/PVAゲル繊維は、結晶ポリマーの鎖の間に挿入されたグルカレートを有すると仮定されている(図3に示すように)。ゲル繊維内のグルカレートの存在により、最終的に紡糸されたままの延伸繊維の分子運動性が増加した。ゲル繊維の溶解温度は、繊維の延伸温度にわずかに影響した。GA2≧1.6%では、純粋PVAの紡糸されたままのゲル繊維の第1段階の延伸を、100℃ではなく95℃で行った。
【0100】
純粋PVA繊維と比較して、GA/PVA繊維の総延伸比は純粋PVA繊維のものよりも高かった。グルカレートが、ますます高い温度での熱延伸により鎖の運動性を高めた。結晶性PVA内のグルカレートの統合は、PVAの結晶緩和温度に影響を与え、これによりますます高い温度におけるPVAの運動性が付与されると仮定されている。PVAの連続延伸により、PVAの結晶緩和温度が徐々に上昇する。得られたGA/PVA繊維は、一般的に、高い総延伸比の値により延伸後の純粋PVA繊維よりも細い。
【表5】
【0101】
GA/PVA繊維の観察において:熱延伸の複数の段階の後、いくつかの繊維はより暗く見えた。GA2≧1.6%において、図4は、繊維の色の変化を示す。グルカレートの熱分解を、これらの外観の変化の理解を助けるために、TGAにより調査した。グルカレート塩の分解の開始は、GA1では200℃、GA2では210℃であった(図16A及び図16B)。第3及び第4段階の延伸温度は、この範囲の熱処理と一致した(表5の200〜215℃)。繊維をシリコーンオイル中で5〜8秒間延伸すると、グルカレートヒドロキシル基(−OH)の脱水により、その骨格に沿って炭素−炭素二重結合(C=C)が生じた。IRスペクトルは、1000cm-1の二重結合による吸収を示していた。添加剤分解により、GA2≧1.6%を有するGA/PVA繊維の褐変が現に引き起こされた。グルカレート塩がPVAゲルの溶解及びゲル繊維の熱延伸に影響を与えたため、熱延伸繊維の機械的性能の結果を研究した。
【0102】
ゲル紡糸GA/PVA繊維の機械的特性:純粋PVA繊維は0.34GPaの引張強度、21GPaのヤング率、及び2J/gの靭性を有していたが、0.8〜3%のグルカレート塩の繊維は純粋PVA繊維よりも強かった。最も強いGA1/PVA繊維は、1.1GPaの引張強度、49GPaのヤング率、及び16J/gの靭性であった。GA2/PVA繊維の中でも、最高の弾性率の値は1.6%GA2で得られた42GPaであり、最高引張強度は0.8%GA2での1.4GPaであり、0.8%のGA2では靭性は35J/gであり、これはケブラー(少なくとも33J/g)に匹敵する。他の繊維の歪み値は3.5〜5%の範囲である一方で、0.8%GA2繊維は8.1%の歪みを有していた。1.6%GA2では、ヤング率は42GPaであった。最大3%の添加剤のグルカレート塩は、0.88GPaの引張強度及び23GPaのヤング率の市販の高強度KuralonTM PVAステープルファイバーよりも優れた機械的特性をもたらした。
【0103】
グルカレート塩は、抗可塑化によりPVAの機械的特性を向上させ、最終的に繊維延伸比及び繊度を増加させた。一方で、グルカレートの含有量が1.6%を超える繊維は、低グルカレート含有量(>0%)の繊維よりも低い機械的特性を示した。図4に示すように、GA≧1.6%を有する繊維間のグルカレート分解が視覚的に観察された。繊維の分子構造及び異方性に対するグルカレートの抗可塑性の効果をよりよく理解するために、分光法を利用した。
【0104】
純粋PVA及びグルカレート繊維(0%グルカレート、1.6%GA1/PVA、及び0.8%GA2/PVAで最も高い機械的特性を有する)の破断端を図6に示した。すべての繊維は、延性破壊を示した。カーボンナノチューブ(CNTs)フィラーを添加して強化された高強度、高弾性率の繊維の中で、PVAフィブリルが生じ、これは繊維軸に沿って高度に配列されたポリマーを示す。しかしながら、これらのGA/PVA繊維の間に明らかな繊維状の微細構造は観察されなかった。これは、グルカレート塩が、結晶化をテンプレートとする結晶性フィラーよりも可塑化添加剤のように振る舞うことをさらに示唆している。
【0105】
PVA繊維構造へのグルカレートの効果:GA2/PVA繊維は高い機械的性能の値を算出したため、PVA結晶化に対するグルカレート含有量の効果をIR分光法により調査した。図7Bに示すように、結晶性ポリマーについて1144cm-1に単一のピークを有していた。純粋PVA繊維とは対照的に、GA2≧0.8%の繊維は1130cm-1にピークを持ち、1144cm-1のピークを支えていた。イソタクチックPVAのIRスペクトルは、より支配的な1145cm-1のピークに沿って1160cm-1に小さな肩を示し、結晶性ポリマーの2つの立体構造を示している。この研究では、アタクチックPVAをスピンした。したがって、1130cm-1の形成はPVA内で結晶化したグルカル酸の結果であり、一方で純粋PVAの結晶化は1144cm-1で発生した。ヨウ化カリウム(potassium iodine)添加後のPVA結晶の計算論的モデルが報告されている。純粋PVA結晶とは対照的に、ヨウ素塩はPVAポリマー鎖の相互作用を破壊し、ユニットセル結晶を拡大した。1130cm-1のピークは、拡張PVA,抗可塑グルカレートを添加した結晶構造を示している。結晶形態のこの明らかな変化は、グルカレートの存在下でのPVA結晶化を分析するためのWAXDとは対照的なIR分光法の使用を支持している。IR分析法の優先性は、リグニン/GA/PVA繊維のさらなる議論で支持されている。結晶形態及び繊維の結晶化度の両方を説明する指標を、表6に示す。0〜3%のGA2を追加することにより、結晶化度指数が2.1から2.7に増加し、全体的に抗可塑剤によるPVAの結晶化度の増加を示唆している。
【0106】
グルカレート塩の抗可塑化挙動をさらに確認するため、IR分光法を用いてGA2とPVAの間の分子間相互作用を分析した(図7A)。PVAヒドロキシル基間の水素結合は、純粋PVA繊維の3345cm-1を中心とするピークにより表される。グルカレートの添加により、バンドは低周波数側にシフトし、PVAとグルカレートの間の分子間水素結合を示している。0.8%GA2では、水素結合の間の最も強い相互作用が、3296cm-1の吸収ピークにより表される。より高いGA2含有量では、−OHピークは、1.6%GA2では3310cm-1に、及び3%GA2では3306cm-1にシフトした。一般的に、IPスペクトルにより、グルカレート塩がPVA結合を破壊することが確認された。結果として、GA/PVA繊維は高い延伸温度においてより延伸可能であった(表5)。完全に延伸された繊維は、抗可塑化に起因してより高い総延伸比へと延伸された。添加剤/ポリマーの接着及び延伸された繊維間の結晶化度が、繊維の高機械的性能に貢献した。
【0107】
表6は、水素結合ピークの正規化した高さを列挙する(図7Aから、3345≧I(OH)≧3296)。低いグルカレート含有量(GA2≦1.6%)では、繊維からのI(OH)値は類似している。しかし、GAが長鎖PVAの分子間及び分子内結合を破壊したため、I(OH)値はGA2の添加により低下した。繊維中の3.0%GA2含有量では、より低いI(OH)値が観察された。挿入されたグルカレートの脱水(図4において分子分解及び繊維の褐変により証明されるように)も、水素結合の減少を引き起こした。
【0108】
以下の事象は、グルカレート分解の追加の指標である。GA≧1.6%を含有する繊維のIRスペクトルは、−CH2基の1445cm-1でのピークに課される鋭いピーク(−CH3基について1430cm-1で)を有していた(図7A)。〜1000cm-1の小さなピーク(図7Bにおいて、−CH=CH−の脂肪族屈曲に割り当てられる)が、GA≧1.6%を含有する繊維間に出現した。劣化した添加剤とポリマーとの間に架橋が発生し、−CH2を表す領域で1430cm-1に鋭いピーク(−CH3)が発生する可能性がある。架橋は、GA≧1.6%を含有する繊維の機械的性能の低下を引き起こし得る。
【表6】
【0109】
偏光ラマン分光法を用いて、PVA鎖配列を研究した。ラマン異方性は、最大で3%GA2を含有する繊維間の、2910cm-1のC−H伸縮ピーク及び3210cm-1ピークのPVAの−OH伸縮(図8)について測定した(図7)。分子異方性(R)は、純粋な繊維と比較して3%GAで減少した。−OH伸縮のR値は、GA含有量が3%まで増加したため、C−H伸縮と同じ傾向に従った。C−H及び−OH基の最高R値は、0.8%GA2で観察された。パラメーターは、0%GA2でRC-H=1.6から0.8%GA2でRC-H=2.8に、及び0%GA2でR-OH=1.1から0.8%GA2でR-OH=1.7に増加した。PVA鎖の骨格は、0.8%GA2を添加した場合に、繊維の軸に沿って配向された。
【表7】
【0110】
GA2/PVA繊維間のPVA配向の傾向は、図7AのI(OH)の水素結合の変化とよく一致する。したがって、水素結合は、PVAのヒドロキシル基及びその主鎖の配向を助けた。FordらのMacromolecular Chemistry and Physics 2012、213(6)、617−626(これは、参照により全体として本明細書に組み込まれる)で報告されているように、PVA結晶構造の配向は、そのペンダントヒドロキシル基の分子配列に影響を及ぼす唯一の要因ではない。添加剤及び分子内結合は、延伸繊維内の分子配列に影響する。結晶性PVA及びそのペンダントヒドロキシル基のより良い配列は、水素結合によって達成された。グルカレートはPVAの結晶構造及びPVA鎖間の水素結合に影響したため、PVAの主鎖及びそのヒドロキシル基の配列はGA2の取り込みの影響を受けた。その後、PVAヒドロキシル基の配列は、特に0.8%GA2で、繊維の機械的性能に影響を及ぼした(図5A図5D)。0.8%GA2では、PVAヒドロキシル基が最も配向し、かつ繊維の引張強度が報告された最高値であった(1.4GPa)。
【0111】
要約すると、グルカレート塩は、ゲル紡糸PVAのための効果的な抗可塑剤である。グルカレート塩はより高い濃度でゲル溶解温度を低下させたが、添加剤は、純粋PVA繊維と比較して繊維の延伸比及び完全に延伸された繊維の機械的性能を増加させた。ポリマーの結晶性、分子間接着、水素結合に関与するヒドロキシル基の濃度、及び繊維内の分子基の配向は、PVA繊維内のグルカレートにより強化された。しかしながら、GA≧1.6%では、グルカレートの脱水により分子鎖間の水素結合が減少し、同時に非共有結合の架橋剤としても作用し、最終的にグルカレート繊維の機械的特性が低下した。
【0112】
ゲル紡糸リグニン/PVA繊維の機械的性能に対するグルカレートの効果
前述から、0.8%GA2繊維は、グルカレートとPVAとの間の最高の分子間接着度、最高の引張強度、及び最高の靭性値を有していた。GA2≧1.6%で機械的性能の値が減少したため、リグニン/GA/PVA繊維は0.8%のGA2及び最大で30%のリグニンを含有していた。リグニン/GA/PVA繊維の機械的性能、構造特性、及び耐湿性を分析した。
【0113】
リグニン/GA2/PVA繊維の延伸:表8は、リグニン/GA2/PVA繊維のための紡糸パラメーターを要約する。純粋PVA繊維と比較して、0.8%GA2及び5%リグニンを有する繊維は、より大きな延伸比でより細く延伸された。しかし、添加剤GA2単体で、加工はより高い延伸比及び細い繊維に導かれた。5%リグニン繊維の第2〜第4段階の延伸温度は、0.8%GA2の添加後に低下した。リグニンの非存在下ではグルカレートはPVA鎖の滑りを促進したが、5%リグニンベースの繊維の総延伸比にはほとんど影響しなかった。
【0114】
30%リグニン繊維の中で、紡糸時の延伸比は、繊維中に0.8%GA2の添加後により高かった。第2〜第4段階では、0.8%GA2で延伸温度はより低かった。総延伸比は25から45倍に増加した。したがって、グルカレートは、30%リグニンベース繊維中で鎖の運動性を強化した。
【表8】
【0115】
リグニン/GA/PVA繊維の機械的特性:PVA繊維の機械的性能に対するリグニン及びGA2の影響を、図9A図9Cに示す。5%リグニンは、機械的強度の最高値を示した:引張強度1.1GPa、ヤング率36GPa、及び靭性17J/g。30%リグニン配列は比較的強くなかった:引張強度0.77GPa、ヤング率32GPa、及び靭性10J/g。20%を超えるリグニンでは、より低い繊維結晶化度、ランダムリグニン配列、及びリグニン凝集体が繊維構造で発生し得る。
【0116】
各リグニン濃度において、機械的性能に対する0.8%GA2の効果を測定した。5%リグニンでは、0.8%GA2で引張強度及び靭性のわずかな低下が観察された。0.8%GA2を5%リグニン繊維に添加しても、繊維の延伸比はそれ以上増加しなかった。30%リグニン繊維の総延伸比は25から45倍に増加したが、引張強度及び弾性率は0.8%GA2の影響を受けなかった(引張強度は0.82GPa、ヤング率は34GPa、及び靭性は14J/gであった)。リグニンとグルカレートの適合性がPVA繊維の特性に影響を与えた可能性があるため、繊維のマクロ構造を研究した。
【0117】
リグニン/GA/PVA繊維の形態学:機械的試験後の繊維手法(facture)先端のSEM画像を図10A及び図10Bに示した。リグニン/PVA繊維の両方(図10Aにおける)は、図6のGA/PVA繊維とは異なり、原繊維のマクロ構造を有していた。原繊維の形態学は、30%リグニンの繊維に見られる凝集体にもかかわらず、高い延伸比及びリグニン修飾PVAによるものであった(図10A)。高リグニン濃度では、リグニンはゲル構造のポリマーの少ないドメインに存在し、これは完全に延伸された繊維全体に分散するのにほとんど役立たなかった。したがって、30%リグニンでは、繊維は5%リグニンほど強くなかった。0.8%GA2をリグニン/PVAに添加すると、表面が粗い繊維が得られた(図10B)。繊維内にミクロボイドが観察された。グルカレートとリグニン及びPVAの間の適合性は低かったが、機械的性能は低下しなかった。
【0118】
リグニン/GA/PVA繊維内の分子挙動に対するグルカレートの効果:3000〜3700cm-1の範囲の修飾PVA繊維のIRスペクトルは、分子間接着への洞察を提供する。図11Aは、GA2(3385cm-1)、リグニン(3384cm-1)、及び純粋PVA繊維(3345cm-1)内の水素結合を示す。リグニン/PVA繊維の中で、水素結合の吸収ピークは、純粋PVAの3345cm-1から、5%リグニン繊維の3333cm-1及び30%リグニンの3342cm-1にシフトした。この挙動は、5%リグニンでのPVAとリグニンの間の分子間引力が大きいことを示していた。0%リグニンと0.8%GA2では、水素結合の吸収ピークは3296cm-1を中心とした。GA及びリグニンの両方が存在する場合、ヒドロキシル基のピークはより高い周波数、即ち5%リグニンでは3299cm-1に、及び30%リグニンでは3313cm-1にシフトした。リグニン含有繊維の中で、グルカレートが存在する場合には水素結合が強くなった。一般に、グルカレートは、サイズが小さくかつ極性官能基であることにより、分子間接着を強化した。
【0119】
GA2のIR吸収(図11A)は、3200cm-1のカルボン酸−OH基、〜1700cm-1のカルボニル基(C=O)、及び〜1300cm-1のカルボキシレート(COO-)伸縮を示す。しかしながら、これらのピークの強度は、リグニン/GA/PVA繊維をIRスペクトル中で観測するのに十分な強さではなかった。すべての修飾PVA繊維は、1445cm-1に−CH2基を有していた。リグニン/GA2/PVA繊維の中で、5/0.8及び30/0.8の(リグニン対PVA)/(GA2対PVA)繊維のスペクトルは、より広い1445cm-1のピークに課される1430cm-1に鋭いピークを有していた。−CH=CH−の脂肪族屈曲を表す、〜1000cm-1の小さいピークが出現した(図11B)。1430cm-1のこの出現はグルカレートの分子間脱水と、200℃を超える温度での延伸後の繊維内の架橋を示している。
【0120】
リグニン/GA2/PVA繊維の中で、GA2は、1130cm-1で新しい結晶形態を誘発し、これは、1144cm-1での純粋PVAの結晶形態と一緒に発生した(図11B)。5/0.8リグニン/GA2/PVA繊維の1130cm-1でのピークは、1144cm-1ピークよりも強かった。30/0.8リグニン/GA2/PVA繊維の1130cm-1でのピークは、顕著なピークであり、一方で1144cm-1のピークは肩のように減少した。これは、新しい結晶構造が、リグニン/GA2/PVA繊維のPVA結晶領域内にグルカレートが包含されていることによることを示唆している。新しいPVA結晶形態(グルカレートを包含する)は、X線回折図によると、純粋PVAと区別できなかった。図17は、30/0リグニン/GA2/PVA及び30/0.8リグニン/GA2/PVA繊維のX線回折図を示す。
【0121】
リグニン/GA2/PVA繊維の中で、PVAはリグニンよりもグルカレートに対する親和性が高く(図7A及び図11A)、したがってGAはリグニンよりも優先してPVAの結晶ドメイン内に存在する。表9に、繊維の結晶化度の指標を示す。0.8%GA2を添加すると、5%リグニン繊維の結晶化度指数は3.0から2.2に減少し、一方で30リグニン繊維では2.5から2.6にわずかに増加した。この傾向は、図9A図9Cに示す機械的特性によく一致した。
【0122】
水素結合ピークの正規化された高さ(図11Aから、3345≧I(OH)≧3296)を表9に列挙する。5%リグニン繊維では、GA2の添加によりI(OH)値が増加した。PVAのGAに対する親和性により、水素結合の増加がもたらされた。30%リグニン繊維のI(OH)の値は、5%リグニン繊維の値よりも低かった。これは、GA2の添加後も30%リグニン繊維で変化しない。GA2はPVAで水素結合に関与するが、215℃の高い延伸温度でのグルカレートの脱水は、30%リグニン繊維内の近接するPVA鎖/モノマーユニット間の水素結合に悪影響を与え得る。
【0123】
熱延伸繊維の結晶構造に基づいて、グルカレートは、PVAゲル繊維のポリマーリッチドメイン内のリグニンを排除し得る。グルカレートに対するPVAの優先により、溶媒が豊富なドメインに多くのリグニンが存在し得る。したがって、リグニンはPVA繊維の大部分から溶媒が除外されているため、延伸中にリグニンが繊維の外表面に向かって移動した。この挙動を、繊維の化学分析を用いて調査した。
【表9】
【0124】
リグニン/GA/PVA繊維の分子異方性に対するグルカレートの効果:30/0.8リグニン/GA2繊維におけるリグニン及びPVA鎖配列の偏光ラマンスペクトルを図12A及び図12Bに示す。〜1550cm-1のピークはフェノールの面内伸縮に割り当てられ、〜1650cm-1のピークはリグニン構造中の共役C=C結合に割り当てられた(図12A)。2910cm-1でのC−H伸縮及びPVA骨格に沿った3210cm-1での−OH基に加えて、図12Bは脂肪族リグニン−OH基に関係する〜3090cm-1ピークを示している。修飾PVA繊維のラマン配向パラメーターを表10に示した。5%リグニン繊維の中で、GA2を添加しても、脂肪族リグニン−OH基、PVAのC−H及び−OH基のR値は増加しなかった。繊維内のリグニンの配向は低いままで、リグニンフェノール基についてはf=0.12であった。総延伸比は変化しないため、グルカレートは5%リグニン/PVA繊維の紡糸を効果的に可塑化しなかった(表8)。
【0125】
30%リグニン繊維の中で、リグニン/GA2/PVA繊維の繊維軸に沿ったPVA及びリグニンの配列を表すすべての官能基について、分子異方性Rがわずかに増加した。リグニン芳香環の配向係数fは、0.08から0.11までわずかに増加した。グルカレートの添加により、30%リグニン繊維の総延伸比が25倍から45倍に増加し(表8)、PVA結晶の新しい構造の形成がもたらされた(図11B)。したがって、30/0.8リグニン/GA2/PVA繊維の機械的性能は、PVA/リグニンからのGA/PVA間の相分離にもかかわらず、30%リグニン繊維よりもわずかに高かった(図10B)。
【表10】
【0126】
リグニン/GA/PVA繊維中のリグニンの位置の決定:リグニンが、ほとんどがリグニン/GA/PVA繊維の外表面に沿って存在するという仮説を試験するため、定量的化学分析を実行した。最大で210mg/Lの対照リグニン/メタノール溶液のUV−vis分光法を図13Aに示す。リグニンの芳香族官能基は、207nmに吸収ピークを有する。207nmでの検量線は、リグニン濃度と吸光度の直線関係を示す。純粋PVA及び0.8%GAベースの繊維をメタノールに浸したところ、対応する溶液は200〜300nmの間で吸収しなかった(図15)。したがって、207nmのピーク吸光度は、メタノール中のリグニンの存在のみによるものである。繊維から除去されたリグニンのUV−visスペクトルを、図13Bに示す。リグニンベースの繊維の中で、0.8%GA2を組み込むことにより高い吸光度が得られ、これは繊維からメタノールへより多くのリグニンが移動したことを示している。リグニン/PVA繊維とリグニン/GA2/PVA繊維を比較した場合、繊維からのリグニンの分散は5%リグニン繊維で13.0から13.4mg/Lにわずかに増加したが、30%リグニン繊維の中では20.0から49.6mg/Lに劇的に増加した(表11)。PVAはメタノールに不溶であるため、繊維コア内のリグニン又はPVAに十分に統合されたリグニンは、繊維表面のリグニンよりもアクセスしにくいであろう。30%リグニンのリグニン/PVAからよりもリグニン/GA/PVA繊維のからのリグニンの分散が高いことは、PVAがリグニンよりもGA2に対する親和性が高いことを確証する。このデータは、リグニン/GA/PVA繊維のマクロ構造間で観察された相分離をさらに結論付ける。
【表11】
【0127】
室温及び高温での修飾PVA繊維の耐水性を、共焦点顕微鏡で観察した(図14A図14F)。すべての繊維は、25℃の水に浸した後も無傷のままであった。85℃の水中で、純粋PVA繊維は収縮及びいくらかの溶解を示した(図14A)。85℃の水中に0.8%GA2の部分的な溶解が観察されたが(図14B)、繊維構造は純粋PVA繊維のものよりも無傷であった。PVAとグルカレートの間の強力な分子接着により、繊維の溶解が妨げられた。
【0128】
5%リグニンでは、0及び0.8%GA2を有するリグニン/GA2/PVA繊維は85℃の水中で無傷の繊維構造を示した(図14C及び図14D)。両方の繊維には、直径を横切って小さな膨張があった。30%リグニンでは、85℃の水中に浸したリグニン/PVA繊維は、膨張しかつゲル状に見えた(図14E及び図14F)。30%リグニンでは、グルカレートを欠く繊維は、0.8%GA2を含む繊維より膨張した。リグニン/グルカレート/PVA繊維では、グルカレートはPVAと強く相互作用し、繊維表面に沿ってより多くのリグニンを残した。両方とも30%リグニンを含有する場合、リグニン/PVAに比べてリグニン/グルカレート/PVA繊維の構造を膨潤させる水が少なかった。修飾PVA繊維内の耐水性リグニンは、植物構造におけるリグニンに役割と同様に機能し、半結晶セルロース構造の内層を水の浸透から保護すると考えられている。
【0129】
ポリマーに対する可塑剤対抗可塑剤の挙動:表12は、ポリマーの加工及び特性に対する添加剤の効果を要約している。グリセロール、ソルビトール、及び尿素のようなバイオベースの可塑剤を使用して、ポリマーの溶解温度を下げることによりポリマーの溶解加工を促進した。可塑剤によりポリマーの結合力が破壊され、さらに可塑化ポリマーの構造的及び機械的性能が低下する。一方で、ヨウ素、リグニン、及びグルカレートのような添加剤を溶液紡糸ポリマーに組み込むと、繊維が効果的に強化される。可塑剤とは対照的に、これらの添加剤はポリマーとより強い分子相互作用を形成し、かつより高い機械的特性の性能を支持する構造強化をもたらした。ヨウ素とは対照的に、リグニン及びグルカレートは繊維の延伸温度を上昇させ、これはポリマーの結晶緩和温度の影響を受ける。動的機械熱分析PVA/単層カーボンナノチューブ複合繊維によると、SWNTは、ナノコンポジットの結晶緩和温度を純粋繊維に比べて高める。したがって、グルカレートは、PVAの結晶緩和温度を高めることができるバイオベースの抗可塑剤であることが発見された。
【表12】
【0130】
グルカレート塩が、PVA繊維のゲル紡糸を抗可塑化することが示された。また、リグニン/PVA繊維に添加されたグルカレートは、繊維の機械的性能を、特に30%リグニンでほぼ維持した。PVA繊維内のグルカレートの抗可塑化挙動は、ゲル溶解温度、加工状態、並びに繊維の構造的及び機械的特性の点から証明された。結晶緩和温度の変化により、修飾PVA繊維中でより高い延伸温度が観察された。最高の引張強度及び靭性を有する繊維が、0.8%グルカル酸モノアンモニウム塩を添加した場合に達成された。ゲル紡糸グルカレート/PVA繊維の性能の向上は、グルカレートにPVAの抗可塑化及びPVAとグルカレートの間の強い分子間接着によって引き起こされる高い繊維延伸比に起因した。3%グルカレートでは、高温処理中のグルカレートの熱劣化により、機械的性能が低下した。それにもかかわらず、グルカレート/PVA繊維の機械的強度及びヤング率は、市販のPVAステープル繊維に匹敵した。
【0131】
グルカレート及びリグニンは、個別にPVA繊維を抗可塑化し、かつPVAと強い分子相互作用を形成する。しかしながら、PVA中のグルカレート/リグニンの混合物は、マクロスケールの相分離を持つ繊維を生成した。興味深いことに、リグニン/PVA/グルカレート繊維間の相分離は、PVA繊維の機械的性能を、純粋PVA繊維の機械的性能よりも低下させなかった。PVAの全体的な結晶化度の保持(異なる形態であるが)、強力な分子間接着(グルカレート/PVA又はリグニン/PVAの間)、及び繊維軸に関するPVAの分子配向は、機械的性能の維持に起因する。相分離により、リグニンの繊維表面への滞留がもたらされた。その結果、その構造は、高温水中での繊維の溶解及び膨張を効果的に抑制した。
【0132】
実施例3
PAN/グルカル酸繊維
実施例1及び2に記載と同様の方法で、PVAをPAN及びPAN/グルカル酸(GA)繊維で置き換え、PAN/リグニン繊維及びPAN/GA/リグニン繊維をゲル紡糸により提供した。簡潔には、〜150kDaの分子量を有するPANをScientific Polymerから得た。クラフトリグニンはBioChoiceにより提供され、受け取ったままで使用した。カリウム又はナトリウムの不純物を有するグルカル酸モノアンモニウムは、Kalionから提供された。
【0133】
PAN、PAN/リグニン、PAN/GA、及びPAN/GA/リグニン繊維紡糸ドープを作成した。PAN粉末(最大で10g)を、85℃で約8から18時間絶えず攪拌しながら、50mLのDMSOに溶解した。2g/dLから10g/dLのリグニン溶液を、DMSOで少なくとも18時間超音波処理した。PANを、リグニン/DMSO溶液に溶解した。1〜5質量%のグルカル酸を含むPAN粉末を、85℃で約8時間絶えず攪拌しながら、50mLのDMSOに溶解した。紡糸ドープ中のPANの最終濃度は、約20g/dLであった。
【0134】
紡糸溶液を、2インチ(50.8mm)の19ゲージ針(内径0.69mm)を備えた高圧ステンレス鋼シリンジを使用して紡糸した。溶液を、紡糸の前に室温(〜22℃)で約2時間平衡化させた。
PAN/リグニン溶液を、針の先端から2〜8mmのギャップ距離を有する−5℃の凝固浴でゲル化した。得られた繊維をスプールに集めた。
繊維を、110〜250℃の温度で加熱されたグリセロール及び高温シリコーンオイルの複数の段階を通して延伸した。凝固浴は、メタノール、イソプロパノール、及び水を包含していた。
50/25/25のメタノール/イソプロパノール/水の凝固浴については、リグニン/PAN溶液は半透明の柔軟なゲルに変化した。最大で50%リグニンを含有するゲル繊維については、最小限のリグニンがゲル繊維から凝固浴に浸出した。
異なるPAN繊維の特徴づけを表13〜15に示し、これらを50/25/25のメタノール/イソプロパノール/水の凝固浴から調製した。グルカル酸は、PANの紡糸性を改善し、かつ細い繊維を生成するように見えた。X%のGA/PANは、グルカル酸の質量/PANの質量を指す。
【0135】
【表13】
【0136】
【表14】
【0137】
【表15】
【0138】
2%GAを含有するPAN繊維は、純粋PAN繊維の2倍よりも強い強度であった(引張強度が159MPaで)。2%GAでは、PAN/GA繊維の引張弾性率は、3.6GPaの純粋PAN繊維と比較して5.8GPaであった。
表14では、20〜30%リグニンを有する繊維は、純粋PANよりも強かった。PAN繊維の機械的強度は、純粋繊維159MPaから50%リグニン繊維の136MPaまで低下した。しかしながら、50%リグニンの引張弾性率は純粋PAN繊維よりも高いままであった。
表15では、グルカル酸(3.5%GA)は、PAN繊維の機械的性能を向上させた。50%リグニンであっても、リグニン/PAN/GA繊維は純粋PANよりも機械的に強かった(より高い引張強度及び引張弾性率を有する)。
【0139】
比較のために、PAN及びPAN複合繊維の機械的特性を以下の表16に示す。
【表16】
【0140】
[1] Tan, L.; Liu, S.; Song, K.; Chen, H.; Pan, D. Gel−Spun Polyacrylonitrile Fiber From Pregelled Spinning Solution. Polymer Engineering and Science 2010, 50, 1290.
[2] Chae, H. G.; Minus, M. L.; Rasheed, A.; Kumar, S. Stabilization and carbonization of gel spun polyacrylonitrile/single wall carbon nanotube composite fibers. Polymer 2007, 48, 3781.
[3] Liu, S.; Tan, L.; Pan, D.; Chen, Y. Gel spinning of polyacrylonitrile fibers with medium molecular weight. Polymer International 2011, 60, 453. These three reference are all incorporated by reference herein in their entirety.
【0141】
5.代表的な実施形態
完全性の理由から、本発明の種々の態様は、以下の番号が付けられた条項に記載されている。
条項1.複数のヒドロキシル基又はニトリル基を有するポリマー、及びアルダル酸又はその塩を含む、組成物。
条項2.前記アルダル酸がグルカル酸である、条項1に記載の組成物。
条項3.前記ポリマーが、前記複数のヒドロキシル基又はニトリル基により置換された、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンを含む、条項1又は条項2に記載の組成物。
条項4.前記ポリマーが、式(I)
(I)
であって、
LがC0~3アルキレンであり、Xが−OH又はニトリルであり、nが1から1000であり、及びmが100から100,000である、繰り返し単位を含む、条項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
条項5.前記ポリマーが、複数のヒドロキシル基を有する、条項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
条項6.前記ポリマーが、前記複数のヒドロキシル基により置換された、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンを含む、条項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
条項7.前記ポリマーが、式(II)
(II)
であって、
nが1から1000であり、及びmが100から100,000である、繰り返し単位を含む、条項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
条項8.前記ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアルコール共重合体、又はそれらの組み合わせを含む、条項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
条項9.前記組成物が、ポリビニルアルコール及びグルカル酸又はその塩から本質的になる、条項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
条項10.前記組成物が、ポリビニルアルコール及びグルカル酸又はその塩からなる、条項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
条項11.前記ポリマーが、複数のニトリル基を有する、条項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
条項12.前記ポリマーが、前記複数のニトリル基により置換された、直鎖又は分岐鎖のポリアルキレンを含む、条項1〜4又は11のいずれか一項に記載の組成物。
条項13.前記ポリマーが、式(III)
(III)
であって、
nが1から1000であり、及びmが100から100,000である、繰り返し単位を含む、条項1〜4又は11〜12のいずれか一項に記載の組成物。
条項14.前記ポリマーが、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル誘導体、ポリアクリロニトリル共重合体、又はそれらの組み合わせを含む、条項1〜4又は11〜13のいずれか一項に記載の組成物。
条項15.前記ポリアクリロニトリル共重合体が、アクリロニトリル並びにアクリル酸、イタコン酸、及びアクリレートからなる群から選択されるもう一つのポリマーの共重合体である、条項14に記載の組成物。
条項16.前記組成物が、ポリアクリロニトリル及びグルカル酸又はその塩から本質的になる、条項1〜4又は11〜14のいずれか一項に記載の組成物。
条項17.前記組成物が、ポリアクリロニトリル及びグルカル酸又はその塩からなる、条項1〜4、11〜14、又は16のいずれか一項に記載の組成物。
条項18.前記ポリマーが、約100kDaから約400kDaの分子量を有する、条項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
条項19.前記ポリマーを、前記組成物の約30質量%から約99.9質量%で含む、条項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
条項20.前記グルカル酸又はその塩を、前記組成物の約0.01質量%から約10質量%で含む、条項2〜19のいずれか一項に記載の組成物。
条項21.前記ポリマー及び前記グルカル酸を、約5/1から約10,000/1(ポリマー/グルカル酸)の質量比で含む、条項2〜20のいずれか一項に記載の組成物。
条項22.添加剤をさらに含む、条項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
条項23.前記添加剤が、リグニン、カーボンナノチューブ、ナノフィラー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項1〜22のいずれか一項に記載の組成物。
条項24.リグニンをさらに含む、条項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
条項25.前記組成物の約0.1質量%から約50質量%でリグニンを含む、条項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
条項26.前記グルカル酸が、グルカル酸のアンモニウム塩である、条項2〜25のいずれか一項に記載の組成物。
条項27.条項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含む、繊維。
条項28.約10μmから約50μmの平均直径を有する、条項27に記載の繊維。
条項29.5g/denよりも大きいテナシティを有する、条項27又は条項28に記載の繊維。
条項30.250g/denよりも大きい比弾性率を有する、条項27〜29のいずれか一項に記載の繊維。
条項31.500MPaよりも大きい引張強度を有する、条項27〜30のいずれか一項に記載の繊維。
条項32.15デニールよりも小さい線密度を有する、条項27〜31のいずれか一項に記載の繊維。
条項33.前記繊維が、メルトブローン、スパンボンド、又はゲル紡糸されている、条項27〜32のいずれか一項に記載の繊維。
条項34.条項27〜33のいずれか一項に記載の繊維を含む、コンクリート添加剤。
条項35.条項27〜33のいずれか一項に記載の繊維を含む、繊維製品。
条項36.前記製品が、紡績糸、布、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、ゲル紡糸ウェブ、サーモボンドウェブ、水流交絡ウェブ、不織布、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項35に記載の繊維製品。
条項37.繊維の作成方法であって、複数のヒドロキシル基及び/又はニトリル基を有するポリマー並びにアルダル酸又はその塩を、第1の溶媒中に溶解して、溶液を供給する工程、前記溶液を加熱する工程、前記溶液を、第2の溶媒を含む第1の浴に押し出して、ゲル紡糸繊維を供給する工程、前記ゲル紡糸繊維を熟成させて、熟成ゲル紡糸繊維を供給する工程、及び前記熟成ゲル紡糸繊維を、シリコーンオイルを含む第2の浴を通って延伸して、繊維を供給する工程を含む、方法。
条項38.前記アルダル酸が、約0.01質量/体積%から約5質量/体積%で前記溶液中に存在する、条項37に記載の方法。
条項39.前記ポリマーが、約60質量/体積%から約99.9質量/体積%で前記溶液中に存在する、条項37又は条項38に記載の方法。
条項40.前記第1の溶媒が、DMSO、水、尿素又はそれらの組み合わせを含む、条項37〜39のいずれか一項に記載の方法。
条項41.前記第2の溶媒が、メタノール、アセトン、イソプロパノール、水又はそれらの組み合わせを含む、条項37〜40のいずれか一項に記載の方法。
条項42.前記熟成ゲル紡糸繊維を延伸する工程が、第1から第4段階を包含する、条項37〜41のいずれか一項に記載の方法。
条項43.前記アルダル酸がグルカル酸である、条項37〜42のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15
図16A
図16B
図17
【国際調査報告】