特表2020-517256(P2020-517256A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-517256(P2020-517256A)
(43)【公表日】2020年6月18日
(54)【発明の名称】多重特異性分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20200522BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20200522BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20200522BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20200522BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20200522BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20200522BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20200522BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20200522BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20200522BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200522BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20200522BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200522BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20200522BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200522BHJP
【FI】
   C12N15/13
   C07K16/46ZNA
   C07K16/28
   C07K16/30
   C07K16/40
   C12N15/63 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P21/08
   A61K39/395 N
   A61K39/395 T
   A61P37/02
   A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】121
(21)【出願番号】特願2019-556886(P2019-556886)
(86)(22)【出願日】2018年4月19日
(85)【翻訳文提出日】2019年12月11日
(86)【国際出願番号】US2018028315
(87)【国際公開番号】WO2018195283
(87)【国際公開日】20181025
(31)【優先権主張番号】62/487,061
(32)【優先日】2017年4月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518336259
【氏名又は名称】エルスター セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッシュ,ブライアン・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】マイオッコ,ステファニー・ジェー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA05
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB50
4C085CC02
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
腫瘍関連マクロファージ(TAM)または骨髄由来抑制細胞(MDSC)を標的とする多重特異性分子、およびその使用方法が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された多重特異性、例えば、二重特異性分子であって、
(i)第1の免疫抑制性骨髄細胞(IMC)結合部分(例えば、第1の腫瘍関連マクロファージ(TAM)結合部分;または第1の骨髄由来抑制細胞(MDSC)結合部分)(例えば、抗体分子)、および
(ii)第2のIMC結合部分(例えば、第2のTAM結合部分;または第2のMDSC結合部分)(例えば、抗体分子)であって、前記第1および前記第2のIMC(例えば、TAMまたはMDSC)結合部分が異なり、前記第1および前記第2のIMC(例えば、TAMまたはMDSC)結合部分が異なるエピトープに結合してもよく、前記第1および前記第2のIMC(例えば、TAMまたはMDSC)結合部分が異なる抗原に結合してもよい第2のIMC結合部分
を含む多重特異性分子。
【請求項2】
前記第1のIMC結合部分が第1のMDSC結合部分であり、前記第2のIMC結合部分は第2のMDSC結合部分である、請求項1に記載の多重特異性分子。
【請求項3】
前記第1のIMC結合部分が第1のTAM結合部分であり、前記第2のIMC結合部分は第2のTAM結合部分である、請求項1に記載の多重特異性分子。
【請求項4】
前記第1のTAM結合部分がCSF1R、CCR2、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1に結合し、また、前記第2のTAM結合部分は、CCR2、CSF1R、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1に結合する、請求項3に記載の多重特異性分子。
【請求項5】
前記第1のTAM結合部分がCSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1(例えば、ヒトCSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1)に結合し、前記第2のTAM結合部分が、CCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1(例えば、ヒトCCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1)に結合する、請求項4に記載の多重特異性分子。
【請求項6】
前記第1のTAM結合部分がCSF1Rに結合し、前記第2のTAM結合部分がCCR2に結合する、請求項4に記載の多重特異性分子。
【請求項7】
前記第1のTAM結合部分がCSF1Rに結合し、前記第2のTAM結合部分がCXCR2に結合する、請求項4に記載の多重特異性分子。
【請求項8】
前記第1のTAM結合部分がCCR2に結合し、前記第2のTAM結合部分がCXCR2に結合する、請求項4に記載の多重特異性分子。
【請求項9】
前記第1のTAM結合部分がCSF1Rに結合し、前記第2のTAM結合部分がPD−L1に結合する、請求項4に記載の多重特異性分子。
【請求項10】
前記第1のTAM結合部分が、約10nM未満、より典型的には10〜100pMの解離定数でCSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1に結合し、また、前記第2のTAM結合部分は、約10nM未満、より典型的には10〜100pMの解離定数でCCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1に結合する、請求項3〜9のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項11】
前記第1のTAM結合部分が、CSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1の立体構造または線形エピトープに結合し、また前記第2のTAM結合部分は、CCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1のコンフォメーショナルエピトープまたは線形エピトープに結合する、請求項3〜10のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項12】
前記多重特異性分子が少なくとも2つの非隣接ポリペプチド鎖を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項13】
前記第1のIMC結合部分が第1の抗IMC抗体分子を含み、および/または前記第2のIMC結合部分が第2の抗IMC抗体分子を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項14】
前記第1の抗IMC抗体分子および前記第2の抗IMC抗体分子が、独立して、完全な抗体(例えば、少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な重鎖、および少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な軽鎖を含む抗体)、または抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、単一ドメイン抗体、またはダイアボディ(dAb))である、請求項13に記載の多重特異性分子。
【請求項15】
前記第1の抗IMC抗体分子および/または前記第2の抗IMC抗体分子が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4、またはその断片から選択される重鎖定常領域を含む、請求項13または14に記載の多重特異性分子。
【請求項16】
前記第1の抗IMC抗体分子および/または前記第2の抗IMC抗体分子が、カッパまたはラムダの軽鎖定常領域またはその断片から選択される軽鎖定常領域を含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項17】
前記第1の抗IMC抗体分子がカッパ軽鎖定常領域またはその断片を含み、前記第2の抗IMC抗体分子がラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項18】
前記第1の抗IMC抗体分子がラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含み、前記第2の抗IMC抗体分子がカッパ軽鎖定常領域またはその断片を含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項19】
前記第1の抗IMC抗体分子および前記第2の抗IMC抗体分子が共通の軽鎖可変領域を有する、請求項13〜15のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項20】
IgG1、IgG2、およびIgG4の前記重鎖定常領域、より具体的にはヒトIgG1、IgG2またはIgG4の前記重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域(例えば、Fc領域)をさらに含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項21】
前記重鎖定常領域(例えば、Fc領域)が、前記第1の抗IMC抗体分子および前記第2の抗IMC抗体分子の一方または両方に連結、例えば、共有結合している、請求項20に記載の多重特異性分子。
【請求項22】
前記重鎖定常領域(例えば、Fc領域)が、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能の1つまたは複数を増加または減少させる1つまたは複数の変異を含む、請求項20または21に記載の多重特異性分子。
【請求項23】
前記第1の抗IMC抗体分子が第1の重鎖定常領域(例えば、第1のFc領域)を含み、前記第2の抗IMC抗体分子が第2の重鎖定常領域(例えば、第2のFc領域)を含み、前記第1の重鎖定常領域は、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、前記第1の重鎖定常領域および前記第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を増加させる1つまたは複数の変異を含み、および/または前記第2の重鎖定常領域は、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、前記第2の重鎖定常領域および前記第1の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を増加させる1つ以上の突然変異を含む、請求項13〜22のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項24】
前記第1および前記第2の重鎖定常領域(例えば、第1および第2のFc領域)は、一対の空洞突起(「ノブインホール」)、静電気の相互作用、または鎖交換の1つ以上を含み、例えば、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、より多量のヘテロ多量体:ホモ多量体が形成されるようにする、請求項23に記載の多重特異性分子。
【請求項25】
前記第1および/または前記第2の重鎖定常領域(例えば、第1および/または第2のFc領域、例えば、第1および/または第2のIgG1 Fc領域)が、Eu番号付けシステムに基づいて番号付けされた、347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、397、398、399、405、407、または409の1つまたは複数から選択された位置でのアミノ酸置換を含む、請求項23または24に記載の多重特異性分子。
【請求項26】
前記第1および/または第2の重鎖定常領域(例えば、第1および/または第2のFc領域、例えば、第1および/または第2のIgG1 Fc領域)が、Eu番号付けシステムに基づいて番号付けされた、T366S、L368A、Y407V、またはY349C(例えば、空洞またはホールに対応)、T366WまたはS354C(例えば、突起またはノブに対応)、またはそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含む、請求項23〜25のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項27】
リンカー、例えば、前記第1の抗IMC抗体分子および前記第2の抗IMC抗体分子、前記第1の抗IMC抗体分子および前記重鎖定常領域(例えば、前記Fc領域)、または前記第2の抗IMC抗体分子および前記重鎖定常領域(例えば、前記Fc領域)のうちの1つまたは複数の間のリンカーをさらに含む、請求項1〜26のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項28】
前記リンカーが、切断可能なリンカー、切断不可能なリンカー、ペプチドリンカー、柔軟なリンカー、剛直なリンカー、らせんリンカー、または非らせんリンカーから選択される、請求項27に記載の多重特異性分子。
【請求項29】
前記リンカーがペプチドリンカーである、請求項28に記載の多重特異性分子。
【請求項30】
前記ペプチドリンカーがGlyおよびSerを含む、請求項29に記載の多重特異性分子。
【請求項31】
前記重鎖定常領域(例えば、Fc領域)が抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する、請求項20〜30のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項32】
前記第1または前記第2のIMC結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号48、配列番号66、または配列番号69の重鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号48、配列番号66、または配列番号69のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または、配列番号50、配列番号67、配列番号70の前記軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号50、配列番号67、または配列番号70からのCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む、請求項1〜31のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項33】
CSF1Rに結合する前記抗体分子が、配列番号48、配列番号66、または配列番号69の前記重鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号48、配列番号66、または配列番号69のアミノ酸配列に95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号50、配列番号67、または配列番号70の前記軽鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または配列番号50、配列番号67、または配列番号70の前記アミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む、請求項32に記載の多重特異性分子。
【請求項34】
前記第1または前記第2のIMC結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号44、配列番号54、配列番号59、配列番号62、配列番号64の重鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号44、配列番号54、配列番号59、配列番号62、配列番号64のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または、配列番号45、配列番号57、配列番号60、配列番号63、配列番号65の前記軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号45、配列番号57、配列番号60、配列番号63、配列番号65からのCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項35】
CCR2に結合する前記抗体分子が、配列番号44、配列番号54、配列番号59、配列番号62、配列番号64の前記重鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号44、配列番号54、配列番号59、配列番号62、配列番号64のアミノ酸配列に95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号45、配列番号57、配列番号60、配列番号63、配列番号65の前記軽鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または配列番号45、配列番号57、配列番号60、配列番号63、配列番号65の前記アミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む、請求項34に記載の多重特異性分子。
【請求項36】
前記第1または前記第2のIMC結合部分がPD−L1に結合する抗体分子であり、配列番号109、配列番号111、または配列番号113の重鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号109、配列番号111、または配列番号113のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または、配列番号110、配列番号112、または配列番号114の前記軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号110、配列番号112、または配列番号114からのCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項37】
PD−L1に結合する前記抗体分子が、配列番号109、配列番号111、または配列番号113の前記重鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号109、配列番号111、または配列番号113のアミノ酸配列に95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号110、配列番号112、または配列番号114の前記軽鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または配列番号110、配列番号112、または配列番号114の前記アミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む、請求項36に記載の多重特異性分子。
【請求項38】
(i)前記第1のIMC結合部分は、第1の抗原(例えば、CSF1R、CCR2、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1)に一価で結合し、および/または
(ii)前記第2のIMC結合部分は、第2の抗原(例えば、CCR2、CSF1R、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1)に一価で結合し、
前記第1の抗原は前記第2の抗原とは異なる、請求項1〜37のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項39】
(i)前記多重特異性分子は、第1の抗原(例えば、CSF1R、CCR2、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1)に一価で結合し、および/または
(ii)前記多重特異性分子は、第2の抗原(例えば、CCR2、CSF1R、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1)に一価で結合し、
前記第1の抗原は前記第2の抗原とは異なる、請求項1〜38のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項40】
(i)前記多重特異性分子は、第2抗原の存在下で第1抗原を阻害し、細胞が細胞表面で前記第1抗原と前記第2抗原の両方を発現する場合、前記多重特異性分子は、細胞内の前記第1抗原の活性を、例えば、少なくとも40、50、60、70、80、または90%減少させてもよく、および/または
(ii)前記多重特異性分子は、前記第2抗原の非存在下で前記第1抗原を阻害しないか、実質的に阻害せず、前記多重特異性分子は、前記細胞が前記細胞表面で前記第2抗原ではなく前記第1抗原を発現する場合、前記第1抗原の活性を低下させない、または前記第1抗原の活性を2、4、6、8、10、または15%以上低下させなくてもよい、請求項1〜39のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項41】
(i)前記多重特異性分子は、第1抗原の存在下で第2抗原を阻害し、細胞が細胞表面で前記第2抗原と前記第1抗原の両方を発現する場合、前記多重特異性分子は、細胞内の前記第2抗原の活性を、例えば、少なくとも40、50、60、70、80、または90%減少させてもよく、および/または
(ii)前記多重特異性分子は、前記第1抗原の非存在下で前記第2抗原を阻害しないか、実質的に阻害せず、前記多重特異性分子は、細胞が細胞表面で前記第2抗原ではなく前記第1抗原を発現する場合、前記第2抗原の活性を低下させない、または前記第2抗原の活性を2、4、6、8、10、または15%以上低下させなくてもよい、請求項1〜40のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項42】
1つ以上の追加の結合部分(例えば、第3の結合部分、第4の結合部分(例えば、三重特異性または四重特異性分子)を含む、請求項1〜41のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項43】
第3のTAM結合部分(例えば、抗体分子)を含む、請求項3〜42のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項44】
前記第3のTAM結合部分が前記第1および前記第2のTAM結合部分と異なる、請求項43に記載の多重特異性分子。
【請求項45】
前記第1のTAM結合部分がヒトCSF1Rに結合し、前記第2のTAM結合部分がヒトCCR2に結合し、前記第3のTAM結合部分がCXCR2に結合する、請求項43に記載の多重特異性分子。
【請求項46】
前記多重特異性分子が、腫瘍標的化部分である第3結合部分(例えば、抗体分子)を含む、請求項42に記載の多重特異性分子。
【請求項47】
前記腫瘍標的化部分が、PD−L1、メソセリン、CD47、ガングロシド2(GD2)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PMSA)、前立腺特異的抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、ロンキナーゼ、c−Met、未成熟ラミニン受容体、TAG−72、BING−4、カルシウム活性化クロライドチャネル2、サイクリンB1、9D7、Ep−CAM、EphA3、Her2/neu、テロメラーゼ、SAP−1、サバイビン、NY−ESO−1/LAGE−1、PRAME、SSX−2、メラン−A/MART−1、Gp100/pmel17、チロシナーゼ、TRP−1/−2、MC1R、β−カテニン、BRCA1/2、CDK4、CML66、フィブロネクチン、p53、Ras、TGF−Β受容体、AFP、ETA、MAGE、MUC−1、CA−125、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、β−カテニン、CDK4、CDC27、CD47、αアクチニン−4、TRP1/gp75、TRP2、gp100、Melan−A/MART1、ガングリオシド、WT1、EphA3、上皮成長因子受容体(EGFR)、CD20、MART−2、MART−1、MUC1、MUC2、MUM1、MUM2、MUM3、NA88−1、NPM、OA1、OGT、RCC、RUI1、RUI2、SAGE、TRG、TRP1、TSTA、葉酸受容体アルファ、L1−CAM、CAIX、EGFRvIII、gpA33、GD3、GM2、VEGFR、インテグリン(インテグリンアルファVbeta3、インテグリンアルファ5Beta1)、炭水化物(Le)、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、またはRANKLに結合する、請求項46に記載の多重特異性分子。
【請求項48】
二重特異性分子である、
(i)前記第1のTAM結合部分(例えば、第1のTAM抗原、例えば、CSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1に結合する結合部分)は、第1および第2の非隣接ポリペプチドを含み、
(ii)前記第2のTAM結合部分(例えば、第2のTAM抗原、例えば、CCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1に結合する結合部分)は、第3および第4の非隣接ポリペプチドを含み、
(a)前記第1のポリペプチドは、例えば、N−C配向において、リンカーを介して、前記第1および前記第3のポリペプチドの間の関連を促進する第1のドメイン(例えば、第1のFc領域)に結合してもよい第1のVH、第1のCH1を含み、
(b)前記第2のポリペプチドは、例えば、前記N−C配向において、第1のVLおよび第1のCLを含み、
(c)前記第3のポリペプチドは、例えば、前記N−C配向において、リンカーを介して、前記第1および前記第3のポリペプチドの間の関連を促進する第2のドメイン(例えば、第2のFc領域)に結合してもよい第2のVH、第2のCH1を含み、
(d)前記第4のポリペプチドは、例えば、前記N−C配向において、第2のVLおよび第2のCLを含む、請求項4に記載の多重特異性分子。
【請求項49】
前記第1および前記第2のドメイン(例えば、第1および第2のFc領域)がホモまたはヘテロ二量体を形成する、請求項48に記載の多重特異性分子。
【請求項50】
(i)抗CSF1R結合部分(例えば、抗CSF1R抗体分子)、および
(ii)抗CCR2結合部分(例えば、抗CCR2抗体分子)
を含む、単離された多重特異性、例えば、二重特異性分子。
【請求項51】
多重特異性分子であって、
以下の特性の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、またはそれ以上)
(i)前記多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞、またはCSF1R陰性、CCR2陽性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する、例えば、前記多重特異性分子の前記CSF1R陽性、CCR2陽性細胞への前記結合は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定されたとき、例えば、図1に関して実施例2に記載された方法を使用して測定されたとき、前記CSF1R陽性、CCR2陰性細胞、前記CSF1R陰性、CCR2陽性細胞への前記多重特異性分子の前記結合よりも少なくとも2、4、6、8、10、15、20、または25倍強い、
(ii)前記多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する、例えば、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に結合するための前記多重特異性分子のEC50は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図1に関して実施例2に記載の方法を使用して測定したときに、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞への結合に関する前記多重特異性分子のEC50の60、50、40、30、20、または10%以下である、
(iii)前記多重特異性分子は、CSF1R陰性、CCR2陽性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する、例えば、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に結合するための前記多重特異性分子のEC50は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図1に関して実施例2に記載の方法を使用して測定したときに、CSF1R陰性、CCR2陽性細胞への結合に関する前記多重特異性分子のEC50の50、40、30、20、10、または5%以下である、
(iv)前記多重特異性分子は、T細胞、NK細胞、好中球、組織常在マクロファージ(クッパー細胞など)、またはランゲルハンス細胞などと比較して、腫瘍関連マクロファージ(TAM)または骨髄由来抑制細胞(MDSC)に優先的に結合する、例えば、TAMまたはMDSCへの前記多重特異性分子の結合は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図5に関して実施例6に記載の方法を使用して測定したときに、前記多重特異性分子のT細胞、NK細胞、好中球、組織常在マクロファージ(クッパー細胞など)、またはランゲルハンス細胞の前記結合よりも少なくとも2、4、6、8、10、15、20、または25倍強い、
(v)前記多重特異性分子は、単球移動、例えば、単球走化性タンパク質1(MCP1)誘発単球移動を阻害し、例えば、トランスウェルプレート移動アッセイを使用して測定した場合、例えば、図2に関して実施例3に記載された方法を使用して測定されるとき、MCP1誘発単球移動を少なくとも40、50、60、または70%減少させる、
(vi)前記多重特異性分子は、マクロファージの増殖、例えば、骨髄由来マクロファージ、例えば、骨髄由来マクロファージのCSF−1誘導性の増殖を阻害し、例えば、骨髄由来マクロファージのCSF−1誘導性の増殖を、例えば、細胞増殖MTTアッセイを使用して測定した場合、例えば、図3Bに関して実施例4に記載の方法を使用して測定した場合、少なくとも50、60、70、または80%減少させる、
(vii)前記多重特異性分子は、単球、例えば、骨髄由来単球の前記分化、例えば、骨髄由来単球のCSF−1誘導性の分化を阻害しない、または実質的に阻害しない、例えば、骨髄由来単球のCSF−1誘導性の分化を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図4に関して実施例5に記載の方法を使用して測定した場合、2、4、6、8、または10%以上減少させない、
(viii)前記多重特異性分子は、抑制性骨髄細胞、例えばTAMまたはMDSCを枯渇させる、例えば、抑制性骨髄細胞、例えばTAMまたはMDSCの数を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定された場合、例えば、図6に関して実施例7に記載された方法を使用して測定されたときin vivoで少なくとも80、85、90、95、99、または99.5%減少させる、
(ix)前記多重特異性分子は、組織に存在するマクロファージ、例えば、クッパー細胞を枯渇させない、または実質的に枯渇させない、例えば、組織に存在するマクロファージ、例えば、クッパー細胞の数を、例えば、免疫組織化学分析を使用して測定した場合、例えば、図7Bおよび7Dに関して実施例8に記載の方法を使用して測定したときin vivoで4、6、8、10、または15%以上減少させない、
(x)前記多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞のCSF−1依存性細胞生存を阻害しない、または実質的に阻害しない、例えば、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞のCSF−1依存性細胞生存を、例えば、細胞生存率MTTアッセイを使用して測定した場合、例えば、図8Aに関して実施例9に記載の方法を使用して測定した場合、5、10、または15%以上減少させない、
(xi)前記多重特異性分子は、in vivoでのCD8+T細胞腫瘍浸潤を増加させる、例えば、腫瘍のCD3+T細胞の%CD8+T細胞を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図9に関して実施例10に記載された方法を使用して測定されるときに、少なくとも1.5、2、または2.5倍増加させる、
(xii)前記多重特異性分子は、in vivoで腫瘍のTreg頻度を低下させる、例えば、フローサイトメトリー分析を用いて測定する場合、例えば、図10Aに関して実施例11に記載されている方法を用いて測定するとき、腫瘍のTreg頻度を少なくとも15、20、25、または30%低下させる、
(xiii)前記多重特異性分子は、in vivoでの腫瘍の前記CD8+T細胞/Treg比を増加させる、例えば、腫瘍のCD8+T細胞/Treg比を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定される場合、例えば、図10Bに関して実施例11に記載された方法を使用して測定されるときに、少なくとも2.5、3、3.5、4、または4.5倍増加させる、または
(xiv)前記多重特異性分子は、例えば、図11Aおよび11Bに関して実施例12に記載の方法を用いて測定されるときに、腫瘍の増殖を減らすおよび/または腫瘍を有する動物の生存を増加させる、
を有する、請求項50に記載の多重特異性分子。
【請求項52】
前記抗CSF1R結合部分および前記抗CCR2結合部分が、独立して、完全な抗体(例えば、少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な重鎖、および少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な軽鎖を含む抗体)、または抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、単一ドメイン抗体、またはダイアボディ(dAb))である、請求項50または51に記載の多重特異性分子。
【請求項53】
前記抗CSF1R結合部分および/または抗CCR2結合部分が、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4、またはその断片から選択される重鎖定常領域を含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項54】
前記抗CSF1R結合部分および/または前記抗CCR2結合部分が、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)を媒介できる重鎖定常領域を含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項55】
前記抗CSF1R結合部分が第1の重鎖定常領域(例えば、第1のFc領域)を含み、前記抗CCR2結合部分が第2の重鎖定常領域(例えば、第2のFc領域)を含み、前記第1の重鎖定常領域は、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、前記第1の重鎖定常領域および前記第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を増加させる1つまたは複数の変異を含み、および/または前記第2の重鎖定常領域は、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、前記第2の重鎖定常領域および前記第1の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を増加させる1つ以上の突然変異を含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項56】
前記抗CSF1R結合部分および/または抗CCR2結合部分が、カッパまたはラムダの軽鎖定常領域、またはその断片から選択される軽鎖定常領域を含む、請求項50〜55のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項57】
前記抗CSF1R結合部分がカッパ軽鎖定常領域またはその断片を含み、前記抗CCR2結合部分がラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含む、請求項50〜55のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項58】
前記抗CSF1R結合部分がラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含み、前記抗CCR2結合部分がカッパ軽鎖定常領域またはその断片を含む、請求項50〜55のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項59】
前記抗CSF1R結合部分および前記抗CCR2結合部分が共通の軽鎖可変領域を有する、請求項50〜55のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項60】
IgG1、IgG2、およびIgG4の前記重鎖定常領域、より具体的にはヒトIgG1、IgG2またはIgG4の前記重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域(例えば、Fc領域)をさらに含む、請求項50〜59のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項61】
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)を媒介できる重鎖定常領域をさらに含む、請求項50〜59のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項62】
抗CSF1R抗体分子および抗CCR2抗体分子を含み、
(i)前記抗CSF1R抗体分子は第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチドは第1軽鎖可変領域(VL)および第1軽鎖定常領域(CL)を含み、前記第2ポリペプチドは第1重鎖可変領域(VH)、第1重鎖定常領域1(CH1)を含み、また第1のCH2および第1のCH3を含んでもよく、
(ii)前記抗CCR2抗体分子は第3ポリペプチドおよび第4ポリペプチドを含み、前記第3ポリペプチドは第2VLおよび第2CLを含み、前記第4ポリペプチドは第2VH、第2CH1を含み、また第2CH2および第2のCH3を含んでもよい、請求項50〜61のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項63】
(i)前記抗CSF1R抗体分子がCSF1Rに一価で結合する、および/または
(ii)前記抗CCR2抗体分子はCCR2に一価で結合する、
請求項50〜62のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項64】
前記多重特異性分子がCSF1Rに一価で結合する、および/またはCCR2に一価で結合する、請求項50〜63のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項65】
前記多重特異性分子がCSF1Rに一価で結合し、CCR2に一価で結合する、請求項50〜63のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項66】
(i)前記多重特異性分子は、CCR2の存在下でCSF1Rを阻害し、前記多重特異性分子は、細胞内のCSF1Rの活性(例えば、CSF1Rシグナル伝達、例えば、CSF1誘導CSF1Rシグナル伝達)を、例えば、少なくとも40、50、60、70、80、または90%、前記細胞が前記細胞表面でCSF1RとCCR2の両方を発現する場合、減少させてもよく、および/または
(ii)前記多重特異性分子は、CCR2の非存在下でCSF1Rを阻害しないか、実質的に阻害せず、前記多重特異性分子は、前記細胞が前記細胞表面でCCR2ではなくCSF1Rを発現する場合、CSF1R(例えば、CSF1Rシグナル伝達、例えば、CSF1誘導CSF1Rシグナル伝達)の活性を低下させない、またはCSF1Rの活性を2、4、6、8、10、または15%以上低下させなくてもよい、請求項50〜65のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項67】
(i)前記多重特異性分子は、CSF1Rの存在下でCCR2を阻害し、前記多重特異性分子は、細胞内のCCR2の活性を、例えば、少なくとも40、50、60、70、80、または90%、前記細胞が前記細胞表面でCCR2とCSF1Rの両方を発現する場合、減少させてもよく、および/または
(ii)前記多重特異性分子は、CSF1Rの非存在下でCCR2を阻害しないか、実質的に阻害せず、前記多重特異性分子は、前記細胞が前記細胞表面でCSF1RではなくCCR2を発現する場合、CCR2の活性を低下させない、またはCCR2の活性を2、4、6、8、10、または15%以上低下させなくてもよい、請求項50〜66のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項68】
(i)単球、例えば、炎症性単球、例えば、Ly6CHi CCR2+CX3CR1Lo炎症性単球の輸送を媒介する分子に結合する第1の結合部分であって、前記第1の結合部分はCCR2に結合していてもよい第1の結合部分、および
(ii)炎症組織での単球および/またはマクロファージの前記成熟および/または生存を媒介する分子に結合する第2の結合部分であって、前記第2の結合部分はCSF1Rに結合していてもよい第2の結合部分
を含む、単離された多重特異性、例えば、二重特異性分子。
【請求項69】
(i)炎症性単球の腫瘍への動員を減少させる第1の結合部分であって、CCR2に結合および/または阻害していてもよい第1の結合部分、および
(ii)腫瘍微小環境内の単球および/またはマクロファージの成熟および/または生存を低減する第2の結合部分であって、CSF1Rに結合および/または阻害していてもよい第2の結合部分
を含む、単離された多重特異性、例えば、二重特異性分子。
【請求項70】
1つ以上の追加の結合部分(例えば、第3の結合部分、第4の結合部分(例えば、三重特異性または四重特異性分子)を含み、前記第3の結合部分が第3のIMC結合部分または腫瘍標的化部分であってよい、請求項50〜69のいずれか1項に記載の多重特異性分子。
【請求項71】
請求項1〜70のいずれか1項に記載の多重特異性分子(例えば、抗体)をコードする、単離された核酸分子。
【請求項72】
請求項71に記載の核酸分子を含む、発現ベクターなどのベクター。
【請求項73】
請求項71に記載の核酸分子または請求項72に記載のベクターを含む、宿主細胞などの細胞。
【請求項74】
適切な条件下、例えば、遺伝子発現および/またはヘテロ二量体化に適した条件下で、請求項73に記載の前記細胞、例えば、宿主細胞を培養することを含む、請求項1〜70のいずれか1項に記載の多重特異性分子を作製、例えば、製造する方法。
【請求項75】
請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子と、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤とを含む、医薬組成物。
【請求項76】
対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする前記対象に請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子を投与することを含み、前記多重特異性分子は前記癌を治療するのに有効な量で投与される方法。
【請求項77】
対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする前記対象に請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子を投与することを含み、前記多重特異性分子はTAMの数(例えば、前記対象の腫瘍内または腫瘍付近のTAMの数)を減らすのに有効な量で投与され、TAMの前記増殖(例えば、前記対象の腫瘍内または腫瘍付近のTAMの前記増殖)、または前記対象の腫瘍へのマクロファージ浸潤を減少または阻害する方法。
【請求項78】
TAMの集団の一部を減少させることにより対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする前記対象に請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子を投与することを含み、前記多重特異性分子は前記TAMの集団の一部を阻害または枯渇させるのに有効な量で投与される方法。
【請求項79】
対象(例えば、固形腫瘍などの癌を有する対象)のTAMの集団の一部の前記増殖を低減させる方法であって、それを必要とする前記対象に請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子を投与することを含み、前記多重特異性分子は前記TAMの集団の一部の増殖を低減させるのに有効な量で投与される方法。
【請求項80】
癌(例えば、腫瘍)を有する対象においてTAMの集団の一部を阻害または枯渇させる方法であって、前記対象に請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子を投与することを含み、前記多重特異性分子は腫瘍浸潤マクロファージの数を減らすのに有効な量で投与され、腫瘍浸潤マクロファージの前記増殖を阻害する、または腫瘍へのマクロファージ浸潤を減少する方法。
【請求項81】
前記癌が固形腫瘍癌または転移性病変である、請求項76〜80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記固形腫瘍癌が、膵臓癌(例えば、膵臓腺癌)、乳癌、結腸直腸癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌)、皮膚癌(例えば、黒色腫)、卵巣癌、肝臓癌、または脳癌(神経膠腫など)の1つまたは複数である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記癌がTAMを含むものとして特徴付けられる、TAMの存在に関連する、TAMが前記癌(例えば、腫瘍)の一部であるおよび/または一部を形成する、またはTAMが前記固形腫瘍内またはその近くで検出されている、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記対象の前記癌(例えば、腫瘍)の中または近くにTAMの存在を同定することを含む、請求項76〜83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記TAMがCXCR2およびCCR2、CCR2およびCSF1R、CSF1RおよびCXCR2、またはCCR2、CXCR2、およびCSF1Rを発現する、請求項77〜84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
第2の治療処置を施すことをさらに含む、請求項76〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記第2の治療処置は、治療薬(例えば、化学療法剤、生物学的薬剤、ホルモン療法)、放射線、または手術を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記治療薬が、化学療法剤、または生物学的薬剤から選択される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記治療薬がチェックポイント阻害剤である、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記チェックポイント阻害剤が、抗CTLA4抗体、抗PD1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブまたはピジリズマブ)、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、抗TIM3抗体、抗LAG3抗体、抗CD160抗体、抗2B4抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体、抗B7−H3(CD276)抗体、抗B7−H4(VTCN1)抗体、抗HVEM(TNFRSF14またはCD270)抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗MHCクラスI抗体、抗MHCクラスII抗体、抗GAL9抗体、抗VISTA抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗LAIR1抗体、および抗A2aR抗体からなる群から選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする前記対象に請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子を投与することを含み、前記多重特異性分子はMDSCの数(例えば、前記対象の腫瘍内または腫瘍付近のMDSCの数)を減らすのに有効な量で投与され、MDSCの前記増殖(例えば、前記対象の腫瘍内または腫瘍付近のMDSCの前記増殖)、または前記対象の腫瘍へのMDSC浸潤を減少または阻害する方法。
【請求項92】
MDSCの集団の一部を減少させることにより対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする前記対象に請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子を投与することを含み、前記多重特異性分子は前記MDSCの集団の一部を阻害または枯渇させるのに有効な量で投与される方法。
【請求項93】
対象(例えば、固形腫瘍などの癌を有する対象)のMDSCの集団の一部の前記増殖を低減させる方法であって、それを必要とする前記対象に請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子を投与することを含み、前記多重特異性分子は前記MDSCの集団の一部の増殖を低減させるのに有効な量で投与される方法。
【請求項94】
癌(例えば、腫瘍)を有する対象においてMDSCの集団の一部を阻害または枯渇させる方法であって、前記対象に請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子を投与することを含み、前記多重特異性分子はMDSCの数を減らすのに有効な量で投与され、MDSCの前記増殖を阻害する、またはMDSC浸潤を減少する方法。
【請求項95】
前記癌が固形腫瘍癌または転移性病変である、請求項91〜94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記固形腫瘍癌が、膵臓癌(例えば、膵臓腺癌)、乳癌、結腸直腸癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌)、皮膚癌(例えば、黒色腫)、卵巣癌、肝臓癌、または脳癌(神経膠腫など)の1つまたは複数である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記癌がMDSCを含むものとして特徴付けられる、MDSCの存在に関連する、MDSCが前記癌(例えば、腫瘍)の一部であるおよび/または一部を形成する、またはMDSCが前記固形腫瘍内またはその近くで検出されている、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記対象の前記癌(例えば、腫瘍)の中または近くにMDSCの存在を同定することを含む、請求項91〜97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
第2の治療処置を施すことをさらに含む、請求項91〜98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記第2の治療処置は、治療薬(例えば、化学療法剤、生物学的薬剤、ホルモン療法)、放射線、または手術を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記治療薬が、化学療法剤、または生物学的薬剤から選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記治療薬がチェックポイント阻害剤である、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記チェックポイント阻害剤が、抗CTLA4抗体、抗PD1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブまたはピジリズマブ)、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、抗TIM3抗体、抗LAG3抗体、抗CD160抗体、抗2B4抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体、抗B7−H3(CD276)抗体、抗B7−H4(VTCN1)抗体、抗HVEM(TNFRSF14またはCD270)抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗MHCクラスI抗体、抗MHCクラスII抗体、抗GAL9抗体、抗VISTA抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗LAIR1抗体、および抗A2aR抗体からなる群から選択される、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
請求項1〜70のいずれか1項に記載の前記多重特異性分子の有効量を前記対象に投与し、それにより線維性疾患または線維性障害を治療することを含む、それを必要とする対象の線維性疾患または障害を治療する方法。
【請求項105】
前記線維性疾患または障害が、肺、肝臓、心臓または脈管構造、腎臓、膵臓、皮膚、胃腸管、骨髄または造血組織、神経系、眼、またはそれらの組み合わせの線維性疾患または障害である、請求項104記載の方法。
【請求項106】
前記線維性疾患または障害が肺線維症(例えば、特発性肺線維症(IPF))または肝線維症(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))である、請求項104に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2017年4月19日に出願された米国係属番号62/487061の優先権を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2018年4月18日に作成されたASCIIコピーは、E2070−7005WO_SL.txtという名前で、サイズは158,210バイトである。
【背景技術】
【0003】
腫瘍関連マクロファージ(TAM)または骨髄由来抑制細胞(MDSC)を標的とする多重特異性分子、およびその使用方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、とりわけ、(i)第1の免疫抑制性骨髄細胞(IMC)結合部分(例えば、第1の腫瘍関連マクロファージ(TAM)結合部分;または第1の骨髄由来抑制細胞(MDSC)結合部分)(例えば、抗体分子);および(ii)第2のIMC結合部分(例えば、第1のTAM結合部分;または第2のMDSC結合部分)(例えば、抗体分子)であって、第1および第2のIMC(例えば、TAMまたはMDSC)結合部分が異なる、第2のIMC結合部分、を含む新規の多重特異性分子に関する。理論に拘束されることなく、本明細書に開示される多重特異性分子は、TAMおよび/またはMDSCを枯渇させると予想される。したがって、本明細書では、とりわけ、前述の部分を含む多重特異性分子(例えば、多重特異性抗体分子)、それをコードする核酸、前述の分子を産生する方法、および前述の分子を使用して癌を治療する方法が提供される。
【0005】
一態様では、本明細書で、(i)第1の免疫抑制性骨髄細胞(IMC)結合部分(例えば、第1の腫瘍関連マクロファージ(TAM)結合部分;または第1の骨髄由来抑制細胞(MDSC)結合部分)(例えば、抗体分子);および(ii)第2のIMC結合部分(例えば、第2のTAM結合部分;または第2のMDSC結合部分)(例えば、抗体分子)であって、第1および第2のIMC(例えば、TAMまたはMDSC)結合部分が異なる第2のIMC結合部分を含む多重特異性分子、例えば、二重特異性分子が提供される。一部の実施形態では、第1および第2のIMC(例えば、TAMまたはMDSC)結合部分は、異なるエピトープに結合する。一部の実施形態では、第1および第2のIMC(例えば、TAMまたはMDSC)結合部分は、異なる抗原に結合する。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1のIMC結合部分は第1のMDSC結合部分であり、第2のIMC結合部分は第2のMDSC結合部分である。一部の実施形態では、第1のIMC結合部分は第1のTAM結合部分であり、第2のIMC結合部分は第2のTAM結合部分である。一部の実施形態では、第1のTAM結合部分は、CSF1R、CCR2、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1に結合し、また、第2のTAM結合部分は、CCR2、CSF1R、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1に結合する。いくつかの実施形態では、第1のTAM結合部分はCSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1(例えば、ヒトCSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1)に結合し、第2のTAM結合部分が、CCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1(例えば、ヒトCCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1)に結合する。いくつかの実施形態では、第1のTAM結合部分はCSF1Rに結合し、第2のTAM結合部分はCCR2に結合する。いくつかの実施形態では、第1のTAM結合部分はCSF1Rに結合し、第2のTAM結合部分はCXCR2に結合する。いくつかの実施形態では、第1のTAM結合部分はCCR2に結合し、第2のTAM結合部分はCXCR2に結合する。いくつかの実施形態では、第1のTAM結合部分はCSF1Rに結合し、第2のTAM結合部分はPD−L1に結合する。いくつかの実施形態では、第1のTAM結合部分はCCR2に結合し、第2のTAM結合部分はPD−L1に結合する。いくつかの実施形態では、第1のTAM結合部分はCXCR2に結合し、第2のTAM結合部分はPD−L1に結合する。
【0007】
一部の実施形態では、第1のTAM結合部分は、約10nM未満、より典型的には10〜100pMの解離定数でCSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1に結合し、また、第2のTAM結合部分は、約10nM未満、より一般的には10〜100pMの解離定数でCCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1に結合する。一部の実施形態では、第1のTAM結合部分が、CSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1の立体構造または線形エピトープに結合し、また第2のTAM結合部分は、CCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1の立体構造または線形エピトープに結合する。
【0008】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、少なくとも2つの非隣接ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1のIMC結合部分が第1の抗IMC抗体分子を含み、および/または第2のIMC結合部分が第2の抗IMC抗体分子を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗IMC抗体分子および第2の抗IMC抗体分子が、独立して、完全な抗体(例えば、少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な重鎖、および少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な軽鎖を含む抗体)、または抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、単一ドメイン抗体、またはダイアボディ(dAb))である。
【0009】
いくつかの態様において、第1の抗IMC抗体分子および/または第2の抗IMC抗体分子が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4、またはその断片から選択される重鎖定常領域を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の抗IMC抗体分子および/または第2の抗IMC抗体分子が、カッパまたはラムダの軽鎖定常領域またはその断片から選択される軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗IMC抗体分子がカッパ軽鎖定常領域またはその断片を含み、第2の抗IMC抗体分子がラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗IMC抗体分子がラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含み、第2の抗IMC抗体分子がカッパ軽鎖定常領域またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗IMC抗体分子および第2の抗IMC抗体分子が共通の軽鎖可変領域を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、IgG1、IgG2、およびIgG4の重鎖定常領域、より具体的にはヒトIgG1、IgG2またはIgG4の重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域(例えば、Fc領域)をさらに含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域(例えば、Fc領域)が、第1の抗IMC抗体分子および第2の抗IMC抗体分子の一方または両方に連結、例えば、共有結合している。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域(例えば、Fc領域)は、Fc受容体結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補完機能の1つまたは複数を増加または減少させるため、変更する、例えば、変異する。いくつかの実施形態では、第1および第2の重鎖定常領域の界面(例えば、Fc領域)は、例えば、遺伝子操作されていない界面と比較して、二量体化を増加または減少させるように、変更する、例えば、変異する。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域(例えば、Fc領域)の二量体化は、一対の空洞突起(「ノブインホール」)、静電気の相互作用、または鎖交換の1つ以上を含む第1および第2のFc領域のFc界面を提供することにより強化され、例えば、遺伝子操作されていない界面と比較して、より多量のヘテロ多量体:ホモ多量体が形成されるようにする。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域(例えば、Fc領域)は、例えば、Eu番号付けシステムに基づいて番号付けされた、ヒトIgG1のFc領域の347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、397、398、399、405、407、または409のうちの1つまたは複数から選択される位置に、アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域(例えば、Fc領域)は、Eu番号付けシステムに基づいて番号付けされた、T366S、L368A、またはY407V(例えば、空洞またはホールに対応する)、またはT366W(例えば、突起またはノブに対応する)、またはその組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、重鎖定常領域(例えば、Fc領域)が、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能の1つまたは複数を増加または減少させる1つまたは複数の変異を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗IMC抗体分子が第1の重鎖定常領域(例えば、第1のFc領域)を含み、第2の抗IMC抗体分子が第2の重鎖定常領域(例えば、第2のFc領域)を含み、第1の重鎖定常領域は、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を増加させる1つまたは複数の変異を含み、および/または第2の重鎖定常領域は、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、第2の重鎖定常領域および第1の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を増加させる1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2の重鎖定常領域(例えば、第1および第2のFc領域)は、一対の空洞突起(「ノブインホール」)、静電気の相互作用、または鎖交換の1つ以上を含み、例えば、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、より多量のヘテロ多量体:ホモ多量体が形成されるようにする。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の重鎖定常領域(例えば、第1および/または第2のFc領域、例えば、第1および/または第2のIgG1 Fc領域)が、Eu番号付けシステムに基づいて番号付けされた、347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、397、398、399、405、407、または409の1つまたは複数から選択された位置でのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の重鎖定常領域(例えば、第1および/または第2のFc領域、例えば、第1および/または第2のIgG1 Fc領域)が、Eu番号付けシステムに基づいて番号付けされた、T366S、L368A、Y407V、またはY349C(例えば、空洞またはホールに対応)、T366WまたはS354C(例えば、突起またはノブに対応)、またはそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、リンカー、例えば、第1の抗IMC抗体分子および第2の抗IMC抗体分子、第1の抗IMC抗体分子および重鎖定常領域(例えば、Fc領域)、または第2の抗IMC抗体分子および重鎖定常領域のうちの1つまたは複数の間のリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカー、切断不可能なリンカー、ペプチドリンカー、柔軟なリンカー、剛直なリンカー、らせんリンカー、または非らせんリンカーから選択される。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの態様において、ペプチドリンカーはGlyおよびSerを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、重鎖定常領域(例えば、Fc領域)は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘導する。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1または第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号48、配列番号66、または配列番号69の重鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号48、配列番号66、または配列番号69のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または、配列番号50、配列番号67、配列番号70の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号50、配列番号67、または配列番号70からのCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。いくつかの実施形態では、CSF1Rに結合する抗体分子は、配列番号48、配列番号66、または配列番号69の重鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号48、配列番号66、または配列番号69のアミノ酸配列に95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号50、配列番号67、または配列番号70の軽鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または配列番号50、配列番号67、または配列番号70のアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1または第2のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号44、配列番号54、配列番号59、配列番号62、配列番号64の重鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号44、配列番号54、配列番号59、配列番号62、配列番号64のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または、配列番号45、配列番号57、配列番号60、配列番号63、配列番号65の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号45、配列番号57、配列番号60、配列番号63、配列番号65からのCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。いくつかの実施形態では、CCR2に結合する抗体分子が、配列番号44、配列番号54、配列番号59、配列番号62、配列番号64の重鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号44、配列番号54、配列番号59、配列番号62、配列番号64のアミノ酸配列に95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号45、配列番号57、配列番号60、配列番号63、配列番号65の軽鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または配列番号45、配列番号57、配列番号60、配列番号63、配列番号65のアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0017】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号44の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号44のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;および/または、配列番号45の軽鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号45のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;また第2のTAM結合部分は、CSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号48の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号48のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または配列番号50の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号50のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。
【0018】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号54の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号54のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;および/また、は、配列番号57の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号57のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;また第2のTAM結合部分は、CSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号66の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号66のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または配列番号67の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号67のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。
【0019】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号54の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号54のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;および/または、配列番号57、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号57のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDRを含み;また第2のTAM結合部分は、CSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号69の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号69のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または配列番号70の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号70のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。
【0020】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号59の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号59のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;および/または、配列番号60の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号60のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;また第2のTAM結合部分は、CSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号66の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号66のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または配列番号67の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号67のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。
【0021】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号59の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号59のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;および/または、配列番号60の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号60のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;また第2のTAM結合部分は、CSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号69の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号69のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または配列番号70の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号70のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。
【0022】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号62の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号62のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;および/または、配列番号63の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号63のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;また第2のTAM結合部分は、CSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号66の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号66のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または配列番号67の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号67のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。
【0023】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号62の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号62のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;および/または、配列番号63の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号63のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;また第2のTAM結合部分は、CSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号69の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号69のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または配列番号70の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号70のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。
【0024】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号64の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号64のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;および/または、配列番号65の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号65のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;また第2のTAM結合部分は、CSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号66の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号66のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または配列番号67の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号67のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。
【0025】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号64の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号64のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;および/または、配列番号65の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号65のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み;また第2のTAM結合部分は、CSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号69の重鎖可変領域配列からの1、2または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号69のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または配列番号70の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号70のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。
【0026】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号44の重鎖可変領域配列、または配列番号44のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号45の軽鎖可変領域配列、または配列番号45に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない);および第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号48の重鎖可変領域配列、または配列番号48のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み;および/または配列番号50の軽鎖可変領域配列、または配列番号50のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0027】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号54の重鎖可変領域配列、または配列番号54のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号57の軽鎖可変領域配列、または配列番号57に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない);および第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号66の重鎖可変領域配列、または配列番号66のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み;および/または配列番号67の軽鎖可変領域配列、または配列番号67のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0028】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号54の重鎖可変領域配列、または配列番号54のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号57の軽鎖可変領域配列、または配列番号57に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない);および第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号69の重鎖可変領域配列、または配列番号69のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み;および/または配列番号70の軽鎖可変領域配列、または配列番号70のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0029】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号59の重鎖可変領域配列、または配列番号59のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号60の軽鎖可変領域配列、または配列番号60に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない);および第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号66の重鎖可変領域配列、または配列番号66のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み;および/または配列番号67の軽鎖可変領域配列、または配列番号67のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0030】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号59の重鎖可変領域配列、または配列番号59のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号60の軽鎖可変領域配列、または配列番号60に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない);および第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号69の重鎖可変領域配列、または配列番号69のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み;および/または配列番号70の軽鎖可変領域配列、または配列番号70のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0031】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号62の重鎖可変領域配列、または配列番号62のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号63の軽鎖可変領域配列、または配列番号63に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない);および第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号66の重鎖可変領域配列、または配列番号66のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み;および/または配列番号67の軽鎖可変領域配列、または配列番号67のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0032】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号62の重鎖可変領域配列、または配列番号62のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号63の軽鎖可変領域配列、または配列番号63に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない);および第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号69の重鎖可変領域配列、または配列番号69のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み;および/または配列番号70の軽鎖可変領域配列、または配列番号70のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0033】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号64の重鎖可変領域配列、または配列番号64のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号65の軽鎖可変領域配列、または配列番号65に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない);および第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号66の重鎖可変領域配列、または配列番号66のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み;および/または配列番号67の軽鎖可変領域配列、または配列番号67のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0034】
一実施形態では、第1のTAM結合部分がCCR2に結合する抗体分子であり、配列番号64の重鎖可変領域配列、または配列番号64のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号65の軽鎖可変領域配列、または配列番号65に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない);および第2のTAM結合部分がCSF1Rに結合する抗体分子であり、配列番号69の重鎖可変領域配列、または配列番号69のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み;および/または配列番号70の軽鎖可変領域配列、または配列番号70のアミノ酸配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1または第2のTAM結合部分がPD−L1に結合する抗体分子であり、配列番号109、配列番号111、または配列番号113の重鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号109、配列番号111、または配列番号113のCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含み、および/または、配列番号110、配列番号112、配列番号114の軽鎖可変領域配列からの1、2、または3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号110、配列番号112、または配列番号114からのCDRからの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、2つ、3つまたは4つ以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さないCDRを含む。いくつかの実施形態では、PD−L1に結合する抗体分子は、配列番号109、配列番号111、または配列番号113の重鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号109、配列番号111、または配列番号113のアミノ酸配列に95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含み、および/または配列番号110、配列番号112、または配列番号114の軽鎖可変領域配列、または実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、95%〜99.9%同一、または配列番号110、配列番号112、または配列番号114のアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸変化を有するが、5、10または15以上の変化(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保存的置換)を有さない)を含む。
【0036】
一部の実施形態では、(i)第1のIMC結合部分は、第1の抗原(CSF1R、CCR2、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1)に一価で結合し、および/または(ii)第2のIMC結合部分は、第2の抗原(CCR2、CSF1R、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1)に一価で結合し、第1の抗原は第2の抗原とは異なる。
【0037】
いくつかの実施形態では、(i)多重特異性分子は、第1の抗原(例えば、CSF1R、CCR2、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1)に一価で結合し、および/または(ii)多重特異性分子は、第2の抗原(CCR2、CSF1R、CXCR2、CD86、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、葉酸受容体ベータ、またはPD−L1)に一価で結合し、第1の抗原は第2の抗原とは異なる。
【0038】
いくつかの実施形態では、(i)多重特異性分子は、第2抗原の存在下で第1抗原を阻害し、多重特異性分子は、細胞内の第1抗原の活性を、例えば、少なくとも40、50、60、70、80、または90%、細胞が細胞表面で第1抗原と第2抗原の両方を発現する場合、減少させてもよく、および/または(ii)多重特異性分子は、第2抗原の非存在下で第1抗原を阻害しないか、実質的に阻害せず、多重特異性分子は、細胞が細胞表面で第2抗原ではなく第1抗原を発現する場合、第1抗原の活性を低下させない、または第1抗原の活性を2、4、6、8、10、または15%以上低下させなくてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、(i)多重特異性分子は、第1抗原の存在下で第2抗原を阻害し、多重特異性分子は、細胞内の第2抗原の活性を、例えば、少なくとも40、50、60、70、80、または90%、細胞が細胞表面で第1抗原と第2抗原の両方を発現する場合、減少させてもよく、および/または(ii)多重特異性分子は、第1抗原の非存在下で第2抗原を阻害しないか、実質的に阻害せず、多重特異性分子は、細胞が細胞表面で第1抗原ではなく第2抗原を発現する場合、第2抗原の活性を低下させない、または第2抗原の活性を2、4、6、8、10、または15%以上低下させなくてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、多重特異性分子は、1つ以上の追加の結合部分(例えば、第3の結合部分、第4の結合部分(例えば、三重特異性または四重特異性分子)をさらに含む。いくつかの実施形態において、多重特異性分子は、1つ以上の追加の結合部分(例えば、第3の結合部分、第4の結合部分(例えば、三重特異性または四重特異性分子)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は第3のTAM結合部分(例えば、抗体分子)を含み、第3のTAM結合部分は第1および第2のTAM結合部分とは異なる。いくつかの実施形態では、第1のTAM結合部分はヒトCSF1Rに結合し、第2のTAM結合部分はヒトCCR2に結合し、第3のTAM結合部分はCXCR2に結合する。
【0041】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、腫瘍標的化部分である第3の結合部分(例えば、抗体分子)を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍標的化部分が、PD−L1、メソセリン、CD47、ガングロシド2(GD2)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PMSA)、前立腺特異的抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、ロンキナーゼ、c−Met、未成熟ラミニン受容体、TAG−72、BING−4、カルシウム活性化クロライドチャネル2、サイクリンB1、9D7、Ep−CAM、EphA3、Her2/neu、テロメラーゼ、SAP−1、サバイビン、NY−ESO−1/LAGE−1、PRAME、SSX−2、メラン−A/MART−1、Gp100/pmel17、チロシナーゼ、TRP−1/−2、MC1R、β−カテニン、BRCA1/2、CDK4、CML66、フィブロネクチン、p53、Ras、TGF−Β受容体、AFP、ETA、MAGE、MUC−1、CA−125、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、β−カテニン、CDK4、CDC27、CD47、αアクチニン−4、TRP1/gp75、TRP2、gp100、Melan−A/MART1、ガングリオシド、WT1、EphA3、上皮成長因子受容体(EGFR)、CD20、MART−2、MART−1、MUC1、MUC2、MUM1、MUM2、MUM3、NA88−1、NPM、OA1、OGT、RCC、RUI1、RUI2、SAGE、TRG、TRP1、TSTA、葉酸受容体アルファ、L1−CAM、CAIX、EGFRvIII、gpA33、GD3、GM2、VEGFR、インテグリン(インテグリンアルファVbeta3、インテグリンアルファ5Beta1)、炭水化物(Le)、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、またはRANKLに結合する。
【0042】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、第1および第2の非隣接ポリペプチドを含む二重特異性分子であり:(i)第1のポリペプチドは例えば、N−C配向において、リンカーを介して、第1および第2のポリペプチドの間の関連を促進する第1のドメイン(例えば、第1の免疫グロブリン定常ドメイン(例えば、本明細書に記載の第1のFc分子)に結合してもよい、例えば、第1のTAM抗原、例えば、CSF1R、CCR2、CXCR2、またはPD−L1などの第1のTAM抗原などに結合する第1のTAM結合部分(例えば、抗体分子(例えば、第1の抗原ドメインの第1の部分、例えば、Fab分子の第1のVH−CH1)を含み、(ii)第2のポリペプチドは例えば、N−C配向において、リンカーを介して、第1および第2のポリペプチドの間の関連を促進する第2のドメイン(例えば、第2の免疫グロブリン定常ドメイン(例えば、本明細書に記載の第2のFc分子)に結合してもよい、第2のTAM結合部分(例えば、CCR2、CSF1R、CXCR2、またはPD−L1などの第2のTAM抗原などに結合するscFvなどの抗体分子)を含み、(iii)第3のポリペプチドは、例えば、N−C配向において、第1のTAM抗原に結合する第1の抗原ドメインの第2の部分、例えば、Fabの第1のVL−CLを含み、例えば、第3のポリペプチドは、第1のポリペプチドに非共有結合的に結合し;(iv)第4のポリペプチドは、例えば、N−C配向において、第2抗原ドメインの第2部分、例えば、第2TAM抗原に結合するFabの第2VL−CLを含み、例えば、第4のポリペプチドは、第2のポリペプチドに非共有結合的に結合する。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチドはホモまたはヘテロ二量体である。
【0043】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は二重特異性分子であり:
(i)第1のTAM結合部分(例えば、第1のTAM抗原、例えば、CSF1R、CCR2、またはCXCR2に結合する結合部分)は、第1および第2の非隣接ポリペプチドを含み、
(ii)第2のTAM結合部分(例えば、第2のTAM抗原、例えば、CSF1R、CCR2、またはCXCR2に結合する結合部分)は、第3および第4の非隣接ポリペプチドを含み、
(a)第1のポリペプチドは、例えば、N−C配向において、リンカーを介して、第1および第3のポリペプチドの間の関連を促進する第1のドメイン(例えば、第1のFc領域)に結合してもよい第1のVH、第1のCH1を含み、
(b)第2のポリペプチドは、例えば、N−C配向において、第1のVLおよび第1のCLを含み、
(c)第3のポリペプチドは、例えば、N−C配向において、リンカーを介して、第1および第3のポリペプチドの間の関連を促進する第2のドメイン(例えば、第2のFc領域)に結合してもよい第2のVH、第2のCH1を含み、
(d)第4のポリペプチドは、例えば、N−C配向において、第2のVLおよび第2のCLを含む。一部の実施形態では、第1および第2ドメイン(例えば、第1および第2Fc領域)は、ホモまたはヘテロダイマーを形成する。
【0044】
一態様において、本発明は、(i)抗CSF1R結合部分(例えば、抗CSF1R抗体分子)、および(ii)抗CCR2結合部分(例えば、抗CCR2抗体分子)を含む、単離された多重特異性、例えば、二重特異性分子を提供する。理論に縛られることを望まないが、抗CSF1R/抗CCR2多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞、またはCSF1R陰性CCR2陽性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する可能性がある。例示的なCSF1R陽性CCR2陽性細胞には、腫瘍関連マクロファージ(TAM)および骨髄由来抑制細胞(MDSC)が含まれるが、これらに限定されない。例示的なCSF1R陽性、CCR2陰性細胞には、組織常在性マクロファージ(例えば、クッパー細胞)、およびランゲルハンス細胞が含まれるが、これらに限定されない。例示的なCSF1R陰性、CCR2陽性細胞には、T細胞(例えば、活性化T細胞、例えば、活性化CD4+および/またはCD8+T細胞)、NK細胞、および好中球が含まれるが、これらに限定されない。理論に拘束されることを望まないが、抗CSF1R/抗CCR2多重特異性分子は、CSF1R陽性CCR2陰性細胞(例えば、組織内マクロファージ(例えば、クッパー細胞)、またはランゲルハンス細胞)、またはCSF1R陰性、CCR2陽性細胞(例えば、活性化T細胞またはNK細胞)と比較して、CSF1R陽性CCR2陽性細胞(例えば、腫瘍形成促進性TAMまたはMDSC)に優先的に結合する可能性がある。
【0045】
いくつかの実施形態では、抗CSF1R/抗CCR2多重特異性分子は、標的細胞に結合すると、標的細胞の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発し得る。いくつかの実施形態では、抗CSF1R/抗CCR2多重特異性分子は、腫瘍微小環境(例えば、TAMまたはMDSC)中の免疫抑制性骨髄細胞に優先的に結合し、その数を減少させる一方で、恒常性骨髄細胞(例えば、組織常在性マクロファージ(例えば、クッパー細胞))および他の抗腫瘍免疫細胞(例えば、活性化T細胞およびNK細胞)を残す。恒常性骨髄細胞の枯渇は、抗CSF1R抗体療法を受けている患者の有害事象の一部を担っている可能性がある。
【0046】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、以下の特性のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、またはそれ以上)を有する:
(i)多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞、またはCSF1R陰性、CCR2陽性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する、例えば、多重特異性分子のCSF1R陽性、CCR2陽性細胞への結合は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定されたとき、例えば、図1に関して実施例2に記載された方法を使用して測定されたとき、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞、CSF1R陰性、CCR2陽性細胞への多重特異性分子の結合よりも少なくとも2、4、6、8、10、15、20、または25倍強い;
(ii)多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する、例えば、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に結合するための多重特異性分子のEC50は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図1に関して実施例2に記載の方法を使用して測定したときに、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞への結合に関する多重特異性分子のEC50の60、50、40、30、20、または10%以下である;
(iii)多重特異性分子は、CSF1R陰性、CCR2陽性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する、例えば、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に結合するための多重特異性分子のEC50は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図1に関して実施例2に記載の方法を使用して測定したときに、CSF1R陰性、CCR2陽性細胞への結合に関する多重特異性分子のEC50の50、40、30、20、10、または5%以下である;
(iv)多重特異性分子は、T細胞、NK細胞、好中球、組織常在マクロファージ(クッパー細胞など)、またはランゲルハンス細胞などと比較して、腫瘍関連マクロファージ(TAM)または骨髄由来抑制細胞(MDSC)に優先的に結合する、例えば、TAMまたはMDSCへの多重特異性分子の結合は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図5に関して実施例6に記載の方法を使用して測定したときに、多重特異性分子のT細胞、NK細胞、好中球、組織常在マクロファージ(クッパー細胞など)、またはランゲルハンス細胞の結合よりも少なくとも2、4、6、8、10、15、20、または25倍強い;
(v)多重特異性分子は、単球移動、例えば、単球走化性タンパク質1(MCP1)誘発単球移動を阻害する、例えば、トランスウェルプレート移動アッセイを使用して測定した場合、例えば、図2に関して実施例3に記載された方法を使用して測定されるとき、単球走化性タンパク質1誘発単球移動を少なくとも40、50、60、または70%減少させる;
(vi)多重特異性分子は、マクロファージの増殖、例えば、骨髄由来マクロファージ、例えば、骨髄由来マクロファージのCSF−1誘導性の増殖を阻害し、例えば、骨髄由来マクロファージのCSF−1誘導性の増殖を、例えば、細胞増殖MTTアッセイを使用して測定した場合、例えば、図3Bに関して実施例4に記載の方法を使用して測定した場合、少なくとも50、60、70、または80%減少させる;
(vii)多重特異性分子は、単球、例えば、骨髄由来単球の分化、例えば、骨髄由来単球のCSF−1誘導性の分化を阻害しない、または実質的に阻害しない、例えば、骨髄由来単球のCSF−1誘導性の分化を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図4に関して実施例5に記載の方法を使用して測定した場合、2、4、6、8、または10%以上減少させない;
(viii)多重特異性分子は、TAMまたはMDSCなどの抑制性骨髄細胞を枯渇させる、例えば、TAMまたはMDSCなどの抑制性骨髄細胞の数を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定された場合、例えば、図6に関して実施例7に記載された方法を使用して測定されたときin vivoで少なくとも80、85、90、95、99、または99.5%減少させる;
(ix)多重特異性分子は、組織に存在するマクロファージ、例えば、クッパー細胞を枯渇させない、または実質的に枯渇させない、例えば、組織に存在するマクロファージ、例えば、クッパー細胞の数を、例えば、免疫組織化学分析を使用して測定した場合、例えば、図7Bおよび7Dに関して実施例8に記載の方法を使用して測定したときin vivoで4、6、8、10、または15%以上減少させない;
(x)多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞のCSF−1依存性細胞生存を阻害しない、または実質的に阻害しない、例えば、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞のCSF−1依存性細胞生存を、例えば、細胞生存率MTTアッセイを使用して測定した場合、例えば、図8Aに関して実施例9に記載の方法を使用して測定した場合、5、10、または15%以上減少させない;
(xi)多重特異性分子は、in vivoでのCD8+T細胞腫瘍浸潤を増加させる、例えば、腫瘍のCD3+T細胞の%CD8+T細胞を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図9に関して実施例10に記載された方法を使用して測定されるときに、少なくとも1.5、2、または2.5倍増加させる;
(xii)多重特異性分子は、in vivoで腫瘍のTreg頻度を低下させる、例えば、フローサイトメトリー分析を用いて測定する場合、例えば、図10Aに関して実施例11に記載されている方法を用いて測定するとき、腫瘍のTreg頻度を少なくとも15、20、25、または30%低下させる;
(xiii)多重特異性分子は、in vivoでの腫瘍のCD8+T細胞/Treg比を増加させる。例えば、腫瘍のCD8+T細胞/Treg比を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定される場合、例えば、図10Bに関して実施例11に記載された方法を使用して測定されるときに、少なくとも2.5、3、3.5、4、または4.5倍増加させる;または
(xiv)多重特異性分子は、例えば、図11Aおよび11Bに関して実施例12に記載の方法を用いて測定されるときに、腫瘍の増殖を減らすおよび/または腫瘍を有する動物の生存を増加させる。
【0047】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞、またはCSF1R陰性、CCR2陽性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する、例えば、多重特異性分子のCSF1R陽性、CCR2陽性細胞への結合は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定されたとき、例えば、図1に関して実施例2に記載された方法を使用して測定されたとき、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞、CSF1R陰性、CCR2陽性細胞への多重特異性分子の結合よりも少なくとも2、4、6、8、10、15、20、または25倍強い。
【0048】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する、例えば、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に結合するための多重特異性分子のEC50は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図1に関して実施例2に記載の方法を使用して測定したときに、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞への結合に関する多重特異性分子のEC50の60、50、40、30、20、または10%以下である。
【0049】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、CSF1R陰性、CCR2陽性細胞と比較して、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に優先的に結合する、例えば、CSF1R陽性、CCR2陽性細胞に結合するための多重特異性分子のEC50は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図1に関して実施例2に記載の方法を使用して測定したときに、CSF1R陰性、CCR2陽性細胞への結合に関する多重特異性分子のEC50の50、40、30、20、10、または5%以下である。
【0050】
いくつかの実施形態において、多重特異性分子は、T細胞、NK細胞、好中球、組織常在マクロファージ(クッパー細胞など)、またはランゲルハンス細胞などと比較して、腫瘍関連マクロファージ(TAM)または骨髄由来抑制細胞(MDSC)に優先的に結合する、例えば、TAMまたはMDSCへの多重特異性分子の結合は、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図5に関して実施例6に記載の方法を使用して測定したときに、多重特異性分子のT細胞、NK細胞、好中球、組織常在マクロファージ(クッパー細胞など)、またはランゲルハンス細胞の結合よりも少なくとも2、4、6、8、10、15、20、または25倍強い。
【0051】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、単球移動、例えば、単球走化性タンパク質1(MCP1)誘発単球移動を阻害する、例えば、トランスウェルプレート移動アッセイを使用して測定した場合、例えば、図2に関して実施例3に記載された方法を使用して測定されるとき、単球走化性タンパク質1誘発単球移動を少なくとも40、50、60、または70%減少させる。
【0052】
いくつかの実施形態において、多重特異性分子は、マクロファージの増殖、例えば、骨髄由来マクロファージ、例えば、骨髄由来マクロファージのCSF−1誘導性の増殖を阻害し、例えば、骨髄由来マクロファージのCSF−1誘導性の増殖を、例えば、細胞増殖MTTアッセイを使用して測定した場合、例えば、図3Bに関して実施例4に記載の方法を使用して測定した場合、少なくとも50、60、70、または80%減少させる。
【0053】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、単球、例えば、骨髄由来単球の分化、例えば、骨髄由来単球のCSF−1誘導性の分化を阻害しない、または実質的に阻害しない、例えば、骨髄由来単球のCSF−1誘導性の分化を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図4に関して実施例5に記載の方法を使用して測定した場合、2、4、6、8、または10%以上減少させない。
【0054】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、TAMまたはMDSCなどの抑制性骨髄細胞を枯渇させる、例えば、TAMまたはMDSCなどの抑制性骨髄細胞の数を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定された場合、例えば、図6に関して実施例7に記載された方法を使用して測定されたときin vivoで少なくとも80、85、90、95、99、または99.5%減少させる。
【0055】
いくつかの実施形態において、多重特異性分子は、組織に存在するマクロファージ、例えば、クッパー細胞を枯渇させない、または実質的に枯渇させない、例えば、組織に存在するマクロファージ、例えば、クッパー細胞の数を、例えば、免疫組織化学分析を使用して測定した場合、例えば、図7Bおよび7Dに関して実施例8に記載の方法を使用して測定したときin vivoで4、6、8、10、または15%以上減少させない。
【0056】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞のCSF−1依存性細胞生存を阻害しない、または実質的に阻害しない、例えば、CSF1R陽性、CCR2陰性細胞のCSF−1依存性細胞生存を、例えば、細胞生存率MTTアッセイを使用して測定した場合、例えば、図8Aに関して実施例9に記載の方法を使用して測定した場合、5、10、または15%以上減少させない。
【0057】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、in vivoでのCD8+T細胞腫瘍浸潤を増加させる、例えば、腫瘍のCD3+T細胞の%CD8+T細胞を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定した場合、例えば、図9に関して実施例10に記載された方法を使用して測定されるときに、少なくとも1.5、2、または2.5倍増加させる。
【0058】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、in vivoで腫瘍のTreg頻度を低下させる、例えば、フローサイトメトリー分析を用いて測定する場合、例えば、図10Aに関して実施例11に記載されている方法を用いて測定するとき、腫瘍のTreg頻度を少なくとも15、20、25、または30%低下させる。
【0059】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、in vivoでの腫瘍のCD8+T細胞/Treg比を増加させる。例えば、腫瘍のCD8+T細胞/Treg比を、例えば、フローサイトメトリー分析を使用して測定される場合、例えば、図10Bに関して実施例11に記載された方法を使用して測定されるときに、少なくとも2.5、3、3.5、4、または4.5倍増加させる。
【0060】
いくつかの実施形態において、多重特異性分子は、例えば、図11Aおよび11Bに関して実施例12に記載の方法を用いて測定されるときに、腫瘍の増殖を減らすおよび/または腫瘍を有する動物の生存を増加させる。
【0061】
いくつかの実施形態では、抗CSF1R結合部分および抗CCR2結合部分が、独立して、完全な抗体(例えば、少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な重鎖、および少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な軽鎖を含む抗体)、または抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、単一ドメイン抗体、またはダイアボディ(dAb))である。いくつかの実施形態では、抗CSF1R結合部分および/または抗CCR2結合部分が、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4、またはその断片から選択される重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗CSF1R結合部分および/または抗CCR2結合部分が、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)を媒介できる重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗CSF1R結合部分が第1の重鎖定常領域(例えば、第1のFc領域)を含み、抗CCR2結合部分が第2の重鎖定常領域(例えば、第2のFc領域)を含み、第1の重鎖定常領域は、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を増加させる1つまたは複数の変異を含み、および/または第2の重鎖定常領域は、天然に存在する重鎖定常領域と比較して、第2の重鎖定常領域および第1の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を増加させる1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、抗CSF1R結合部分および/または抗CCR2結合部分が、カッパまたはラムダの軽鎖定常領域、またはその断片から選択される軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗CSF1R結合部分がカッパ軽鎖定常領域またはその断片を含み、抗CCR2結合部分がラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、抗CSF1R結合部分がラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含み、抗CCR2結合部分がカッパ軽鎖定常領域またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、抗CSF1R結合部分および抗CCR2結合部分が共通の軽鎖可変領域を有する。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、IgG1、IgG2、およびIgG4の重鎖定常領域、より具体的にはヒトIgG1、IgG2またはIgG4の重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域(例えば、Fc領域)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)を媒介できる重鎖定常領域をさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、抗CSF1R抗体分子および抗CCR2抗体分子を含み、
(i)抗CSF1R抗体分子は第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドは第1軽鎖可変領域(VL)および第1軽鎖定常領域(CL)を含み、第2ポリペプチドは第1重鎖可変領域(VH)、第1重鎖定常領域1(CH1)を含み、また第1のCH2および第1のCH3を含んでもよく、
(ii)抗CCR2抗体分子は第3ポリペプチドおよび第4ポリペプチドを含み、第3ポリペプチドは第2VLおよび第2CLを含み、第4ポリペプチドは第2VH、第2CH1を含み、また第2CH2および第2のCH3を含んでもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、(i)抗CSF1R抗体分子はCSF1Rに一価で結合し、および/または(ii)抗CCR2抗体分子はCCR2に一価で結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、CSF1Rに一価で結合し、および/またはCCR2に一価で結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性分子はCSF1Rに一価で結合し、CCR2に一価で結合する。
【0064】
いくつかの実施形態では、
(i)多重特異性分子は、CCR2の存在下でCSF1Rを阻害し、多重特異性分子は、細胞内のCSF1Rの活性(例えば、CSF1Rシグナル伝達、例えば、CSF1誘導CSF1Rシグナル伝達)を、例えば、少なくとも40、50、60、70、80、または90%、細胞が細胞表面でCSF1RとCCR2の両方を発現する場合、減少させてもよく、および/または
(ii)多重特異性分子は、CCR2の非存在下でCSF1Rを阻害しないか、実質的に阻害せず、多重特異性分子は、細胞が細胞表面でCCR2ではなくCSF1Rを発現する場合、CSF1R(例えば、CSF1Rシグナル伝達、例えば、CSF1誘導CSF1Rシグナル伝達)の活性を低下させない、またはCSF1Rの活性を2、4、6、8、10、または15%以上低下させなくてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、
(i)多重特異性分子は、CSF1Rの存在下でCCR2を阻害し、多重特異性分子は、細胞内のCCR2の活性を、例えば、少なくとも40、50、60、70、80、または90%、細胞が細胞表面でCCR2とCSF1Rの両方を発現する場合、減少させてもよく、および/または
(ii)多重特異性分子は、CSF1Rの非存在下でCCR2を阻害しないか、実質的に阻害せず、多重特異性分子は、細胞が細胞表面でCSF1RではなくCCR2を発現する場合、CCR2の活性を低下させない、またはCCR2の活性を2、4、6、8、10、または15%以上低下させなくてもよい。
【0066】
一態様では、本発明は、
(i)単球、例えば、炎症性単球、例えば、Ly6CHi CCR2+CX3CR1Lo炎症性単球の輸送を媒介する分子に結合する第1の結合部分であって、第1の結合部分はCCR2に結合していてもよい第1の結合部分、および
(ii)炎症組織での単球および/またはマクロファージの成熟および/または生存を媒介する分子に結合する第2の結合部分であって、CSF1Rに結合していてもよい第2の結合部分
を含む、単離された多重特異性、例えば、二重特異性分子を提供する。
【0067】
一態様では、本発明は、
(i)炎症性単球の腫瘍への動員を減少させる第1の結合部分であって、CCR2に結合および/または阻害していてもよい第1の結合部分、および
(ii)腫瘍微小環境内の単球および/またはマクロファージの成熟および/または生存を低減する第2の結合部分であって、CSF1Rに結合および/または阻害していてもよい第2の結合部分
を含む、単離された多重特異性、例えば、二重特異性分子を提供する。
【0068】
一態様において、本発明は、(i)抗CSF1R結合部分(例えば、抗CSF1R抗体分子)、および(ii)抗PD−L1結合部分(例えば、抗PD−L1抗体分子)を含む、単離された多重特異性、例えば、二重特異性分子を提供する。
【0069】
前述の態様および実施形態のいくつかの実施形態では、多重特異性分子は、1つ以上の追加の結合部分(例えば、第3の結合部分、第4の結合部分(例えば、三重特異性または四重特異性分子)をさらに含み、第3の結合部分が第3のIMC結合部分または腫瘍標的化部分であってよい。いくつかの態様において、腫瘍標的化部分は、国際公開第2017165464号、例えば、国際公開第2017165464号の108〜118ページに開示されている腫瘍標的化部分であり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
前述の態様および実施形態のいくつかの実施形態では、多重特異性分子はさらに、T細胞エンゲージャー、NK細胞エンゲージャー、B細胞エンゲージャー、樹状細胞エンゲージャー、またはマクロファージ細胞エンゲージャーから選択される免疫細胞エンゲージャーを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、国際公開第2017165464号、例えば、国際公開第2017165464号の119〜131ページに開示されている免疫細胞エンゲージャーであり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの実施形態において、免疫細胞エンゲージャーは、免疫細胞、例えば、エフェクター細胞に結合し、活性化する。いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、免疫細胞、例えば、エフェクター細胞に結合するが、活性化しない。
【0071】
いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、T細胞エンゲージャー、例えば、T細胞への結合および活性化を媒介するT細胞エンゲージャー、またはT細胞への結合を媒介するが活性化はしないT細胞エンゲージャーである。いくつかの実施形態では、T細胞エンゲージャーはCD3、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRζ、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40、4−1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2またはCD226に結合する、例えば、T細胞エンゲージャーは抗CD3抗体分子である。
【0072】
いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、NK細胞エンゲージャー、例えば、NK細胞への結合および活性化を媒介するNK細胞エンゲージャー、またはNK細胞への結合を媒介するが活性化はしないNK細胞エンゲージャーである。いくつかの実施形態では、NK細胞エンゲージャーは、抗体分子、例えば、NKp30、NKp40、NKp44、NKp46、NKG2D、DNAM1、DAP10、CD16(例えば、CD16a、CD16b、またはその両方)、CRTAM、CD27、PSGL1、CD96、CD100(SEMA4D)、NKp80、CD244(別名SLAMF4または2B4)、SLAMF6、SLAMF7、KIR2DS2、KIR2DS4、KIR3DS1、KIR2DS3、KIR2DS5、KIR2DS1、CD94、NKG2C、NKG2E、またはCD160に結合する(例えば、活性化する)抗原結合ドメイン、またはリガンドから選択される。
【0073】
いくつかの実施形態において、免疫細胞エンゲージャーは、B細胞エンゲージャー、例えば、CD40L、OX40L、またはCD70リガンド、またはOX40、CD40またはCD70に結合する抗体分子である。いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーはマクロファージ細胞エンゲージャー、例えば、CD2アゴニスト;CD40L;OX40L;OX40、CD40またはCD70に結合する抗体分子;Toll様受容体(TLR)のアゴニスト(例えば、TLR4、例えば、構成的に活性なTLR4(caTLR4)またはTLR9アゴニスト);CD47;またはSTINGアゴニストである。
【0074】
いくつかの実施形態において、免疫細胞エンゲージャーは、樹状細胞エンゲージャー、例えば、CD2アゴニスト、OX40抗体、OX40L、41BBアゴニスト、Toll様受容体アゴニストまたはその断片(例えば、TLR4、例えば、構成的にアクティブTLR4(caTLR4))、CD47アゴニスト、またはSTINGアゴニストである。
【0075】
前述の態様および実施形態のいくつかの実施形態では、多重特異性分子はサイトカイン分子をさらに含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン分子は、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン−21(IL−21)、またはインターフェロンガンマ、またはその断片もしくは変異体、または前述のサイトカインのいずれかの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、サイトカイン分子は、国際公開第2017165464号、例えば、国際公開第2017165464号の108〜118ページに開示されているサイトカイン分子であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
前述の態様および実施形態のいくつかの実施形態では、多重特異性分子は間質修飾部分をさらに含む。いくつかの実施形態において、間質修飾部分は、間質または細胞外マトリックス(ECM)成分のレベルまたは産生を減少させる;腫瘍の線維化を減少させる;間質性腫瘍輸送を増加させる;腫瘍灌流を改善する;腫瘍の微小血管を拡大する;腫瘍の間質液圧(IFP)を減少させる;または、癌治療薬または細胞治療薬などの薬剤の腫瘍または腫瘍血管系への浸透または拡散を減少または増強する、のうちの1つ以上を引き起こす:。いくつかの実施形態において、間質修飾部分は、国際公開第2017165464号、例えば、国際公開第2017165464号の131〜136ページに開示されている間質修飾部分であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、先行する請求項のいずれか1つの多重特異性分子(例えば、抗体)をコードする単離された核酸分子である。
【0078】
別の態様では、本明細書に記載の多重特異性分子のいずれかをコードするヌクレオチド配列、またはそれと実質的に相同な(例えば、少なくとも95%から99.9%同一)ヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子が本明細書で提供される。
【0079】
別の態様では、本明細書に記載の核酸分子の1つまたは複数を含むベクター、例えば、発現ベクターが本明細書で提供される。
【0080】
別の態様では、本明細書に記載の核酸分子または本明細書に記載のベクターを含む細胞、例えば、宿主細胞が本明細書で提供される。
【0081】
別の態様では、本明細書で提供される細胞、例えば、宿主細胞を、適切な条件下、例えば、遺伝子発現および/またはヘテロ二量化に適した条件下で培養することを含む、本明細書に記載の多重特異性分子を作製、例えば、製造する方法が提供される。
【0082】
別の態様において、本明細書に記載される多重特異性分子および薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0083】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、過剰増殖性障害、癌、線維性障害または状態、炎症性障害または状態、または自己免疫障害を治療する方法である。一実施形態において、障害は、過剰増殖性障害、例えば、過剰増殖性結合組織障害(例えば、過剰増殖性線維性疾患)である。一実施形態において、線維性(例えば、過剰増殖性線維性)疾患は、多系統性または臓器特異的である。例示的な線維性疾患には、多体系性(例えば、全身性硬化症、多病巣性線維硬化症、骨髄移植レシピエントにおける強皮腫移植片対宿主病、腎性全身性線維症、強皮症)、および臓器特異的障害(例えば、肺、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、皮膚およびその他の臓器の線維症)が含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態において、線維性疾患は、肝線維症(例えば、肝硬変、NASH、および本明細書に記載の他の状態)、肺線維症(例えば、IPF)、腎線維症、または骨髄の線維症(例えば、骨髄線維症)から選択される。
【0084】
別の態様において、対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載の多重特異性分子を投与することを含み、多重特異性分子は癌を治療するのに有効な量で投与される方法が、本明細書に提供される。
【0085】
別の態様では、対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載の多重特異性分子を投与することを含み、多重特異性分子はTAMの数(例えば、対象の腫瘍内または腫瘍付近のTAMの数)を減らすのに有効な量で投与され、TAMの増殖(例えば、対象の腫瘍内または腫瘍付近のTAMの増殖)、または対象の腫瘍へのマクロファージ浸潤を減少または阻害する方法が本明細書で提供される。
【0086】
別の態様において、TAMの集団の一部を減少させることにより対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載の多重特異性分子を投与することを含み、多重特異性分子はTAMの集団の一部を阻害または枯渇させるのに有効な量で投与される方法が本明細書に提供される。
【0087】
別の態様において、対象(例えば、固形腫瘍などの癌を有する対象)のTAMの集団の一部の増殖を低減させる方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載の多重特異性分子を投与することを含み、多重特異性分子はTAMの集団の一部の増殖を低減させるのに有効な量で投与される方法が本明細書で提供される。
【0088】
別の態様において、癌(例えば、腫瘍)を有する対象においてTAMの集団の一部を阻害または枯渇させる方法であって、対象に本明細書に記載の多重特異性分子を投与することを含み、多重特異性分子は腫瘍浸潤マクロファージの数を減らすのに有効な量で投与され、腫瘍浸潤マクロファージの増殖を阻害する、または腫瘍へのマクロファージ浸潤を減少する方法が本明細書に提供される。
【0089】
いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍癌または転移病変である。いくつかの実施形態において、固形腫瘍癌は、膵臓癌(例えば、膵臓腺癌)、乳癌、結腸直腸癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌)、皮膚癌(例えば、黒色腫)、卵巣癌、肝臓癌、または脳癌(神経膠腫など)の1つまたは複数である。いくつかの実施形態では、癌は、癌がTAMを含むものとして特徴付けられる、TAMの存在に関連する、TAMが癌(例えば、腫瘍)の一部であるおよび/または一部を形成する、またはTAMが固形腫瘍内またはその近くで検出されている。
【0090】
いくつかの実施形態では、方法は、対象の癌(例えば、腫瘍)の中または近くにTAMの存在を特定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、TAMは、CXCR2およびCCR2、CCR2およびCSF1R、CSF1RおよびCXCR2、またはCCR2、CXCR2、およびCSF1Rを発現する。
【0091】
いくつかの実施形態では、方法は、第2の治療処置を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の治療処置は、治療薬(例えば、化学療法薬、生物学的薬剤、ホルモン療法)、放射線、または手術を含む。いくつかの実施形態では、治療薬は、化学療法剤、または生物学的薬剤から選択される。いくつかの実施形態では、治療薬はチェックポイント阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤が、抗CTLA4抗体、抗PD1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブまたはピジリズマブ)、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、抗TIM3抗体、抗LAG3抗体、抗CD160抗体、抗2B4抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体、抗B7−H3(CD276)抗体、抗B7−H4(VTCN1)抗体、抗HVEM(TNFRSF14またはCD270)抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗MHCクラスI抗体、抗MHCクラスII抗体、抗GAL9抗体、抗VISTA抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗LAIR1抗体、および抗A2aR抗体からなる群から選択される。
【0092】
別の態様では、対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載の多重特異性分子を投与することを含み、多重特異性分子はMDSCの数(例えば、対象の腫瘍内または腫瘍付近のMDSCの数)を減らすのに有効な量で投与され、MDSCの増殖(例えば、対象の腫瘍内または腫瘍付近のMDSCの数)、または対象の腫瘍へのMDSC浸潤を減少または阻害する方法が本明細書で提供される。
【0093】
別の態様において、MDSCの集団の一部を減少させることにより対象の癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載の多重特異性分子を投与することを含み、多重特異性分子はMDSCの集団の一部を阻害または枯渇させるのに有効な量で投与される方法が本明細書に提供される。
【0094】
別の態様において、対象(例えば、固形腫瘍などの癌を有する対象)のMDSCの集団の一部の増殖を低減させる方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載の多重特異性分子を投与することを含み、多重特異性分子はMDSCの集団の一部の増殖を低減させるのに有効な量で投与される方法が本明細書で提供される。
【0095】
別の態様では、癌(例えば、腫瘍)を有する対象においてMDSCの集団の一部を阻害または枯渇させる方法であって、対象に本明細書に記載の多重特異性分子を投与することを含み、多重特異性分子はMDSCの数を減らすのに有効な量で投与され、MDSCの増殖を阻害する、またはMDSC浸潤を減少する方法が本明細書で提供される。
【0096】
いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍癌または転移病変である。いくつかの実施形態において、固形腫瘍癌は、膵臓癌(例えば、膵臓腺癌)、乳癌、結腸直腸癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌)、皮膚癌(例えば、黒色腫)、卵巣癌、肝臓癌、または脳癌(神経膠腫など)の1つまたは複数である。いくつかの実施形態では、癌がMDSCを含むものとして特徴付けられる、MDSCの存在に関連する、MDSCが癌(例えば、腫瘍)の一部であるおよび/または一部を形成する、またはMDSCが固形腫瘍内またはその近くで検出されている。いくつかの実施形態では、方法は、対象の癌(例えば、腫瘍)の中または近くのMDSCの存在を識別することをさらに含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、方法は、第2の治療処置を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の治療処置は、治療薬(例えば、化学療法薬、生物学的薬剤、ホルモン療法)、放射線、または手術を含む。いくつかの実施形態では、治療薬は、化学療法剤、または生物学的薬剤から選択される。いくつかの実施形態では、治療薬はチェックポイント阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤が、抗CTLA4抗体、抗PD1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブまたはピジリズマブ)、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、抗TIM3抗体、抗LAG3抗体、抗CD160抗体、抗2B4抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体、抗B7−H3(CD276)抗体、抗B7−H4(VTCN1)抗体、抗HVEM(TNFRSF14またはCD270)抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗MHCクラスI抗体、抗MHCクラスII抗体、抗GAL9抗体、抗VISTA抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗LAIR1抗体、および抗A2aR抗体からなる群から選択される。
【0098】
一態様において、本明細書に記載の多重特異性分子の有効量を対象に投与し、それにより線維性疾患または線維性障害を治療することを含む、それを必要とする対象の線維性疾患または障害を治療する方法が明細書に提供される。いくつかの実施形態では、線維性疾患または障害が、肺、肝臓、心臓または脈管構造、腎臓、膵臓、皮膚、胃腸管、骨髄または造血組織、神経系、眼、またはそれらの組み合わせの線維性疾患または障害である。一部の実施形態において、線維性疾患または障害が肺線維症(例えば、特発性肺線維症(IPF))または肝線維症(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))である。
【0099】
いくつかの実施形態では、線維性状態の治療は、組織線維症の形成または沈着の1つまたは複数を低減または抑制すること;線維性病変のサイズ、細胞性(例えば、線維芽細胞または免疫細胞数)、組成または細胞の含有物を減少させること;線維性病変のコラーゲンまたはヒドロキシプロリン含有量を減らすこと;線維形成タンパク質の発現または活性を低下させること;炎症反応に関連する線維症を軽減させること;線維症に関連する体重減少を減少させること;または生存率を高めることを含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、線維性疾患または障害は原発性線維症である。一実施形態では、線維性疾患または障害は特発性である。他の実施形態において、線維性疾患または障害は、疾患(例えば、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、悪性疾患または癌性疾患、および/または結合疾患);毒素;傷害(例えば、環境ハザード(例えば、アスベスト、石炭粉、多環芳香族炭化水素)、喫煙の煙、傷);医学的治療(例えば、外科的切開、化学療法または放射線)、またはそれらの組み合わせに関連する(例えば、続発する)。
【0101】
一態様において、本明細書に記載の多重特異性分子の有効量を対象に投与し、それにより肝疾患または障害を治療することを含む、それを必要とする対象の肝疾患または障害を治療する方法が明細書に提供される。いくつかの実施形態において、肝疾患または肝障害は、肝の機能または生理に影響を及ぼす線維性障害または結合組織障害である。一実施形態では、線維性障害または結合組織障害は、全身性(全身に影響を及ぼす)、多臓器、または臓器特異的(例えば、肝臓特異的)であり得る。線維性肝障害の例には、肝線維症(肝の線維症)、肝硬変、および細胞外マトリックスタンパク質の蓄積に関連する任意の障害、例えば、肝臓のコラーゲン、肝臓の瘢痕、および/または異常な肝血管が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、肝疾患または障害は肝硬変である。肝硬変は(修復プロセスの結果として)再生結節を伴う肝線維症の最終段階であると考えられ、通常、肝血管系の歪みを伴う。他の実施形態では、肝疾患または障害は肝臓癌である。肝癌の例には、肝癌の例には、肝細胞癌(HCC)、原発性肝細胞癌、肝癌、線維層癌、限局性結節性過形成、胆管肉腫、肝内胆管癌、血管肉腫または血管肉腫、肝腺腫、肝血管腫、肝過誤腫、肝芽腫、乳児良性血管内皮腫、肝臓の混合腫瘍、間葉組織の腫瘍、肝臓の肉腫が含まれるが、これらに限定されない。肝臓癌は、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、腎臓癌または腎癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、直腸癌、皮膚癌(例えば、黒色腫)、胃癌(胃腸癌を含む)、および子宮癌などの非肝癌の転移とも関連している場合がある。一実施形態において、肝疾患または肝障害はHCCである。特定の実施形態では、肝臓の疾患または障害は、肝臓の炎症または損傷;ウイルス(例えば、慢性ウイルス)感染(例えば、B型肝炎、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス(デルタ型肝炎ウイルス)、E型肝炎ウイルス、エプスタインバーアデノウイルス、またはサイトメガロウイルス;または住血吸虫症などの寄生虫感染);アルコール依存症;脂肪肝疾患;代謝障害(例えば、ヘマクロマトーシス、糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症、ガラクトース血症、またはグリコーゲン蓄積症);自己免疫障害(例えば、自己免疫性肝炎(AIH)、自己免疫性肝疾患、ルポイド肝炎、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、強皮症、または全身性硬化症);炎症性肝障害(例えば、脂肪性肝炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患);遺伝性または先天性肝疾患(例えば、ウィルソン病、ギルバート病、バイラー症候群、グリーンランド・エスキモー家族性胆汁うっ滞、ゼルウィガー症候群、アラジール症候群(ALGS)、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)、アルファ1アンチトリプシン欠乏症、嚢胞性線維症小児肝硬変、または遺伝性ヘモクロマトーシス);および肝傷害(例えば、薬物毒性、アルコール依存症、虚血、栄養失調、または身体的外傷)を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の傷害によって引き起こされる。一実施形態において、肝疾患または肝障害は、脂肪肝(またはFLD)、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性
脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性脂肪性肝炎、単純脂肪症、ライ症候群、および肝細胞における脂質の異常保持に関連するいずれかの障害が含まれる。
【0102】
一態様において、本明細書に記載の多重特異性分子の有効量を対象に投与し、それにより炎症性障害または状態を治療することを含む、それを必要とする対象の炎症性障害を治療する方法が明細書に提供される。一実施形態では、炎症性障害または状態は、腎臓の炎症性障害または状態である。一実施形態では、炎症性障害または状態はループス腎炎である。
【0103】
特に説明がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は例示的なものにすぎず、限定的であることを意図しない。
【0104】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】フロー分析で決定された、mCCR2(丸)、mCSF1R(四角)、またはmCCR2とmCSF1Rの両方(三角)を発現する一時的にトランスフェクトされたExpiCHO細胞への濃度の増加したUniTI−01のin vitro結合である。図1では、パーセント蛍光(%)が試験された抗体濃度に対してプロットされている。
図2】トランスウェル細胞培養システムにおける骨髄由来単球のMCP−1依存性細胞移動に対するアイソタイプコントロール(mIgG2a)、抗マウスCCR2モノクローナル抗体(aCCR2)またはUniTI−01の濃度の増加の効果である。
図3A】in vitroでの骨髄由来単球のマクロファージへのmCSF−1依存性分化および増殖に対する、濃度が増加したUniTI−01、抗マウスCSF1Rモノクローナル抗体(aCSF1R)、またはアイソタイプコントロール(mIgG2a)の効果である。図3Aは、mCSF1の存在下での細胞培養の0日目または4日目での抗CCR2抗体および抗CSF1R抗体による骨髄細胞の染色を示す一対のフローサイトメトリープロットである。
図3B】in vitroでの骨髄由来単球のマクロファージへのmCSF−1依存性分化および増殖に対する、濃度が増加したUniTI−01、抗マウスCSF1Rモノクローナル抗体(aCSF1R)、またはアイソタイプコントロール(mIgG2a)の効果である。図3Bでは、試験された各条件について増殖%がプロットされている。すべての抗体を15μg/mlでテストした。
図4】骨髄由来の単球のmCSF−1依存性分化および増殖に対する、UniTI−01、抗マウスCSF1Rモノクローナル抗体(aCSF1R)、またはアイソタイプコントロール(mIgG2a)の効果であるすべての抗体を15μg/mlでテストした。
図5】フロー分析により決定された、漸増する濃度のUniTI−01の原発腫瘍内M−MDSCおよびM2様マクロファージへのin vitro結合である。図5は、UniTI−01を使用したCD206+マクロファージ、M−MDSC、好中球、またはCD3+T細胞の染色を示すヒストグラムのパネルである。
図6】EMT6およびMC38同系腫瘍モデルにおける腫瘍内骨髄細胞集団に対するUniTI−01のin vivo投与の効果である。
図7A】EMT6同系腫瘍モデルにおけるクッパー細胞に対するUniTI−01のin vivo投与の効果である。図7Aおよび7Bは、それぞれ抗体F4/80で染色された腫瘍および肝臓組織の免疫組織化学グラフである。
図7B】EMT6同系腫瘍モデルにおけるクッパー細胞に対するUniTI−01のin vivo投与の効果である。図7Aおよび7Bは、それぞれ抗体F4/80で染色された腫瘍および肝臓組織の免疫組織化学グラフである。
図7C】それぞれ腫瘍および肝臓組織のF4/80陽性領域の%を示すグラフである。
図7D】それぞれ腫瘍および肝臓組織のF4/80陽性領域の%を示すグラフである。
図8A】in vitroでのCCR2陰性NFS−60細胞におけるCSF−1依存性細胞生存に対するUniTI−01の効果である。図8Aでは、細胞生存率は、抗CCR2/抗CSF1R二重特異性抗体UniTI−01、二価の単一特異性抗CSF1R抗体(aCSF1R)、または一価の単一特異性抗CSF1R抗体(単一−aCSF1R)のためテストされた抗体濃度をプロットしている。
図8B】in vitroでのCCR2陰性NFS−60細胞におけるCSF−1依存性細胞生存に対するUniTI−01の効果である。図8Bは、抗CCR2抗体および抗CSF1R抗体によるNFS−60細胞の染色、またはアイソタイプ対照抗体によるNFS−60細胞の染色を示す一対のフローサイトメトリープロットである。
図9】EMT6モデルの腫瘍におけるCD8+T細胞浸潤に対するUniTI−01のin vivo投与の効果である。図9は、示された治療下の腫瘍におけるCD3+T細胞中の%CD8+T細胞を示すグラフである。
図10A】MC38モデルの腫瘍におけるTreg頻度に対するUniTI−01のin vivo投与の効果である。図10Aは、示された治療下の腫瘍中のCD4+T細胞中の%FOXP3+細胞を示すグラフである。
図10B】MC38モデルの腫瘍におけるTreg頻度に対するUniTI−01のin vivo投与の効果である。図10Bでは、腫瘍におけるCD8+T細胞/Treg比が各治療についてプロットされている。
図11A】UniTI−01は、EMT6腫瘍モデルにおいて抗PDL1抗体と組み合わせて治療した場合の抗腫瘍効果、腫瘍退縮および生存率の向上を示す。図11Aは、各治療の腫瘍体積を示すグラフのパネルである。
図11B】UniTI−01は、EMT6腫瘍モデルにおいて抗PDL1抗体と組み合わせて治療した場合の抗腫瘍効果、腫瘍退縮および生存率の向上を示す。図11Bは、示された治療下での生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0106】
TAMは循環単球に由来し、腫瘍への補充は腫瘍由来の走化性因子によって促進される。TAMは、B細胞およびT細胞の活性化の阻害、腫瘍関連抗原提示の阻害、細胞傷害性顆粒放出の阻害、血管新生の増加、広範な成長因子および血管新生促進因子の分泌などの応答を引き起こすことにより、腫瘍細胞の増殖と転移を促進できる(例えば、Liu et al Cellular&Molecular Immunology(2015)12,1−4;およびNoy,Roy et al Immunity,Volume41,Issue1,49−61;およびQuatromoni et al.Am J Transl Res.2012;4(4):376−389を参照)。その結果、TAMの数が多い多くの腫瘍は、腫瘍成長率、局所増殖、遠隔転移が増加している。したがって、TAMを枯渇させるか、その活性を阻害する治療法は有用であろう。
【0107】
特定の用語を以下に定義する。
【0108】
本明細書で使用される場合、親配列の「変異体」という用語は、親配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する配列、またはその断片を指す。いくつかの実施形態では、変異体は機能的変異体である。
【0109】
本明細書で使用されるとき、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的対象の1つまたは複数、例えば、少なくとも1つを指す。本明細書で「含む(comprising)」という用語と組み合わせて使用される場合の「a」または「an」という語の使用は、「1つ」を意味する場合があるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」「1つまたは1つより多い」の意味とも一致する。
【0110】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」は、一般に、測定の性質または精度を考慮して、測定された量の許容できる程度の誤差を意味する。例示的な誤差の程度は、与えられた値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0111】
本明細書で使用される場合、「抗体分子」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域配列を含むタンパク質、例えば、免疫グロブリン鎖またはその断片を指す。抗体分子には、抗体(例えば、全長の抗体)および抗体断片が含まれる。実施形態では、抗体分子は、全長の抗体の抗原結合断片または機能的断片、または全長の免疫グロブリン鎖を含む。例えば、全長の抗体は、天然に存在するか、正常な免疫グロブリン遺伝子断片の組換えプロセスによって形成される免疫グロブリン(Ig)分子(例えば、IgG抗体)である。実施形態では、抗体分子とは、抗体断片などの免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な抗原結合部分を指す。抗体断片、例えば、機能的断片は、抗体の一部、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、F(ab)、可変断片(Fv)、ドメイン抗体(dAb)、または単一鎖可変断片(scFv)である。機能的抗体断片は、無傷の(例えば、全長の)抗体によって認識されるものと同じ抗原に結合する。「抗体断片」または「機能的断片」という用語にはまた、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、または軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカー(「scFvタンパク質」)によって接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子などの可変領域からなる単離された断片も含まれる。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fc断片または単一アミノ酸残基などの抗原結合活性を持たない抗体の部分を含まない。例示的な抗体分子には、全長の抗体および抗体断片、例えば、dAb(ドメイン抗体)、単鎖、Fab、Fab’、およびF(ab’)断片、および単鎖可変断片(scFv)が含まれる。
【0112】
本明細書で使用する場合、「免疫グロブリン可変領域配列」とは、免疫グロブリン可変領域の構造を形成できるアミノ酸配列を指す。例えば、配列は、天然に存在する可変領域のアミノ酸配列のすべてまたは一部を含んでもよい。例えば、配列は、1つ、2つ、またはそれ以上のNまたはC末端アミノ酸を含んでも含まなくてもよく、またはタンパク質構造の形成に適合する他の変化を含んでもよい。
【0113】
実施形態では、抗体分子は単一特異性であり、例えば、単一のエピトープに対する結合特異性を含む。いくつかの実施形態では、抗体分子は多重特異性であり、例えば、複数の免疫グロブリン可変領域配列を含み、第1の免疫グロブリン可変領域配列は第1のエピトープに対する結合特異性を有し、第2の免疫グロブリン可変領域配列は第2のエピトープに対する結合特異性を有する。いくつかの実施形態では、抗体分子は二重特異性抗体分子である。本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体分子」は、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)のエピトープおよび/または抗原に対して特異性を有する抗体分子を指す。
【0114】
本明細書で使用される場合、「抗原」(Ag)は、例えば、特定の免疫細胞の活性化および/または抗体の生成を含む、免疫応答を引き起こすことができる分子を指す。ほとんどすべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原になり得る。抗原は、ゲノム組換えまたはDNAから誘導することもできる。例えば、免疫応答を誘発できるタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含むいずれかのDNAは、「抗原」をコードする。実施形態において、抗原は、遺伝子の全長のヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はなく、また、抗原はまったく遺伝子によってコードされる必要もない。実施形態において、抗原は、合成され得るか、生物学的サンプル、例えば、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞、または他の生物学的成分を有する流体に由来し得る。本明細書で使用される場合、「腫瘍抗原」または交換可能に、「癌の抗原」は、癌、例えば、免疫応答を引き起こすことができる癌細胞または腫瘍微小環境に存在するまたは関連するいずれかの分子を含む。本明細書で使用される場合、「免疫細胞抗原」は、免疫応答を誘発することができる免疫細胞に存在するか、免疫細胞と関連するいずれかの分子を含む。
【0115】
抗体分子の「抗原結合部位」または「結合部分」とは、抗原の結合に関与する抗体分子の一部、例えば、免疫グロブリン(Ig)分子を指す。実施形態では、抗原結合部位は、重鎖(H)および軽鎖(L)の可変(V)領域のアミノ酸残基によって形成される。超可変領域と呼ばれる重鎖と軽鎖の可変領域内の高度に発散する3つのストレッチは、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存された隣接しているストレッチの間に配置される。FRは、免疫グロブリンの超可変領域の間、およびそれに隣接して自然に見られるアミノ酸配列である。実施形態では、抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域と重鎖の3つの超可変領域は、3次元空間で互いに対して配置されて、抗原結合表面を形成し、これは、結合した抗原の3次元表面に相補的である。重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。フレームワーク領域とCDRは、例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242、およびChothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901−917に定義され、記述されている。各可変鎖(例えば、可変重鎖および可変軽鎖)は、通常、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4というアミノ酸の順に配列されている。
【0116】
本明細書で使用される場合、「癌」は、あらゆる種類の発癌プロセスおよび/または癌性増殖を包含することができる。実施形態では、癌には、原発腫瘍ならびに転移組織または悪性に形質転換された細胞、組織、または臓器が含まれる。実施形態では、癌は、癌のすべての組織病理学および病期、例えば、侵襲性/重症度の病期を包含する。実施形態では、癌には再発性癌および/または抵抗性癌が含まれる。「癌」と「腫瘍」という用語は互換的に使用できる。例えば、両方の用語は固形腫瘍と液体腫瘍を包含する。本明細書で使用される場合、「癌」または「腫瘍」という用語には、前癌性ならびに悪性の癌および腫瘍が含まれる。
【0117】
本発明の組成物および方法は、特定の配列、またはそれと実質的に同一または類似の配列、例えば、特定の配列と少なくとも85%、90%、95%以上の配列を有するポリペプチドおよび核酸を包含する。アミノ酸配列の文脈において、「実質的に同一」という用語は、本明細書において、第1および第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメインおよび/または共通の機能的活性を有することができるよう、第2のアミノ酸配列の位置合わせされたアミノ酸残基とi)同一またはii)その保存的置換である十分または最小数のアミノ酸残基を含む第1のアミノ酸を指す。例えば、参照配列、例えば、本明細書で提供される配列と少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する共通の構造ドメインを含むアミノ酸配列がある。
【0118】
ヌクレオチド配列の文脈において、「実質的に同一」という用語は、本明細書において、第1および第2のヌクレオチド配列が、共通の機能的活性を有するポリペプチドをコードするか、共通の構造的ポリペプチドドメインまたは共通の機能的ポリペプチド活性をコードするように、第2の核酸配列の整列したヌクレオチドと同一である十分なまたは最小数のヌクレオチドを含む第1の核酸配列を指すために使用される。例えば、参照配列、例えば、本明細書で提供される配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するヌクレオチド配列がある。
【0119】
配列間の相同性または配列同一性の計算(これらの用語は本明細書では互換的に使用される)は、次のように実行される。
【0120】
2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列の同一性率を決定するために、配列は最適な比較目的のために整列される(例えば、ギャップは最適な配列のために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入することができ、非相同配列は比較のために無視できる)。好ましい実施形態では、比較のために整列された参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列の位置が、第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、分子はその位置で同一である(本明細書で使用する場合、アミノ酸または核酸の「同一性」はアミノ酸または核酸の「相同性」と同等である)。
【0121】
2つの配列間の同一性率は、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要があるギャップの数と各ギャップの長さを考慮して、シーケンスによって共有される同じ位置の数の関数である。
【0122】
2つの配列間の配列の比較および同一性率の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性率は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれたNeedleman and Wunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444−453)のアルゴリズム(http://www.gcg.comで入手可能)を使用して決定され、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイトと、1、2、3、4、5、または6の長さウェイトを使用する。さらに別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性率は、NWSgapdna.CMPマトリックスおよびギャップウェイト40、50、60、70、または80、長さウェイト1、2、3、4、5、または6を使用して、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムを使用して、決定される。特に好ましいパラメータのセット(および特に指定のない限り使用されるべきパラメータ)は、ギャップペナルティ12、ギャップ拡張ペナルティ4、フレームシフトギャップペナルティ5のブロッサム62スコアリングマトリックスである。
【0123】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間の同一性率は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Miller((1989)CABIOS,4:11−17)のアルゴリズムを使用して決定でき、PAM120ウェイト残余表、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を用いる。
【0124】
本明細書に記載の核酸およびタンパク質配列は、例えば、「他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために、公開データベースに対して検索を実行するための「クエリ配列」として使用できる。そのような検索は、Altschul、et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実行できる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、語の長さ=12で実施して、本発明の核酸(例えば、配列番号1)分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、語の長さ=3で実行して、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較のためにギャップのあるアラインメントを取得するには、Gapped BLASTは、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記載されているように、利用できる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0125】
本発明の分子は、追加の保存的または非必須アミノ酸置換を有してもよく、それらはその機能に実質的な影響を及ぼさないことが理解される。
【0126】
「アミノ酸」という用語は、アミノ官能性と酸官能性の両方を含み、天然アミノ酸のポリマーに含まれることができる、天然または合成のすべての分子を包含することを意図している。例示的なアミノ酸には、天然アミノ酸;その類似体、誘導体および同族体;変異体側鎖を有するアミノ酸類似体;および前述のいずれかのすべての立体異性体が含まれる。本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語には、D−またはL−光学異性体およびペプチド模倣物の両方が含まれる。
【0127】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のアミノ酸が含まれる。
【0128】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」(単鎖の場合)は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、線状でも分岐していてもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。この用語には、修飾されたアミノ酸ポリマーも含まれる。例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合などの他の操作が挙げられる。ポリペプチドは、天然源から単離することができ、真核生物または原核生物の宿主から組換え技術により産生することができ、または合成手順の産物であり得る。
【0129】
用語「核酸」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、または「ポリヌクレオチド配列」、および「ポリヌクレオチド」は互換的に使用される。それらは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかの長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得、一本鎖の場合、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断される場合がある。ポリヌクレオチドは、標識成分との結合などにより、重合後にさらに修飾されてもよい。核酸は、組換えポリヌクレオチド、またはゲノム、cDNA、半合成、または合成起源のポリヌクレオチドであってもよく、これらは自然には存在しないか、非天然配列で別のポリヌクレオチドに結合している。
【0130】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、その元の環境または自然環境(例えば、自然に発生する場合は自然環境)から除去されている材料を指す。例えば、生きている動物に存在する天然のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、自然のシステムに共存する材料の一部またはすべてから人間の介入によって分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、および/またはそのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であり得、そのようなベクターまたは組成物はそれが自然に見出される環境の一部ではないという点で依然として単離され得る。
【0131】
本明細書で使用する場合、「免疫抑制性骨髄細胞」または「IMC」という用語は、一般に、免疫抑制を促進する骨髄系統の細胞(例えば、腫瘍微小環境で)を指す(例えば、T細胞活性化の阻害、T細胞生存の阻害、制御性T細胞の誘導および募集の促進による)。免疫抑制性骨髄細胞には、例えば、腫瘍関連マクロファージ(TAM)および骨髄由来抑制細胞(MDSC)が含まれる。
【0132】
本明細書で使用する場合、「腫瘍関連マクロファージ」または「TAM」という用語は、一般に、癌、例えば、腫瘍の微小環境に存在するマクロファージを指す。
【0133】
本明細書で使用する場合、「TAMを減らす」という用語は一般に、TAMの数を減らすことを指す。減らすことは、(例えば、本明細書に記載の多重特異性分子の投与前のTAMの数と比較して(例えば、本明細書に記載の多重特異性分子の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上の投与の前に))腫瘍または腫瘍の近くのTAMの数を減らすことを含む。減らすことは、(例えば、本明細書に記載の多重特異性分子の投与前のTAMの数と比較して(例えば、本明細書に記載の多重特異性分子の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上の投与の前に))TAMの数を減らす(例えば、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、すべて、または実質的に)ことを含む。
【0134】
本明細書で使用される場合、「骨髄由来抑制細胞」または「MDSC」という用語は、一般に、免疫抑制を促進することができ、一般にCD33、CD11bおよびCD45を発現する骨髄由来の細胞を指す。MDSCの様々な亜集団が定義されている。例えば、単球MDSC(M−MDSC)は一般にCD14およびCD124の発現とHLA−DRの低発現に関連している。いくつかの実施形態では、MDSC集団はMO−MDSC集団である。多形核MDSC(PMN−MDSC)は、CD15、CD66b、およびCD124の発現に関連しており、HLA−DRの発現関連していない。未熟MDSC(I−MDSC)は、CD117およびCD34の発現に関連しており、LINおよびHLA−DRの発現には関連していない。例えば、Ugel et al.(2015)JCI Vol 125(9)、page 3365を参照されたい。
【0135】
本明細書で使用される場合、「CSF1R陽性、CCR2陽性細胞」という用語は、細胞表面でCSF1RとCCR2の両方を発現する細胞を指す。「CSF1R陽性、CCR2陰性細胞」という用語は、細胞表面でCCR2ではなくCSF1Rを発現している細胞を指す。「CSF1R陰性、CCR2陽性細胞」という用語は、細胞表面にCSF1RではなくCCR2を発現している細胞を指す。
【0136】
本明細書で使用する場合、結合部分、例えば、抗体分子は、結合部分、例えば、抗体分子が標的上の単一のエピトープに結合する場合、標的に一価に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、標的に対して1つのみの抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態において、結合部分の1分子は、標的の1分子のみに結合することができる。
【0137】
本明細書で使用される場合、結合部分、例えば、抗体分子は、結合部分、例えば、抗体分子が標的上の2つのエピトープに結合する場合、標的に二価的に結合する。一部の実施形態では、2つのエピトープは同一である。いくつかの実施形態では、2つのエピトープは異なる。いくつかの実施形態では、結合部分は、標的に対する2つの抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態において、結合部分の1つの分子は、標的の2つの分子に結合することができる。
【0138】
本発明の様々な態様を以下でさらに詳細に説明する。追加の定義は、本明細書全体に記載されている。
【0139】
抗原
本開示のTAM標的化抗原には、例えば、CSF1R、CCR2、CXCR2、CD68、CD163、CX3CR1、MARCO、CD204、CD52、および葉酸受容体ベータが含まれる。抗原を標的化するTAMの例示的なアミノ酸配列は、本明細書で提供される。
【0140】
CSF1R
CSF1R(マクロファージコロニー刺激因子1受容体としても知られている)は、CSF1およびIL34の細胞表面受容体として作用するチロシンプロテインキナーゼであり、造血前駆細胞、特にマクロファージや単球などの単核食細胞の生存、増殖、分化の調節に重要な役割を果たす。CSF1Rは、IL34およびCSF1に応答して炎症性ケモカインの放出を促進し、それによって自然免疫および炎症プロセスで重要な役割を果たす。例示的なCSF1R未成熟アミノ酸配列は、配列番号87および88で提供される。
【0141】
CSF1R未熟アミノ酸配列アイソフォーム1(識別子:P07333−1):
MGPGVLLLLLVATAWHGQGIPVIEPSVPELVVKPGATVTLRCVGNGSVEWDGPPSPHWTLYSDGSSSILSTNNATFQNTGTYRCTEPGDPLGGSAAIHLYVKDPARPWNVLAQEVVVFEDQDALLPCLLTDPVLEAGVSLVRVRGRPLMRHTNYSFSPWHGFTIHRAKFIQSQDYQCSALMGGRKVMSISIRLKVQKVIPGPPALTLVPAELVRIRGEAAQIVCSASSVDVNFDVFLQHNNTKLAIPQQSDFHNNRYQKVLTLNLDQVDFQHAGNYSCVASNVQGKHSTSMFFRVVESAYLNLSSEQNLIQEVTVGEGLNLKVMVEAYPGLQGFNWTYLGPFSDHQPEPKLANATTKDTYRHTFTLSLPRLKPSEAGRYSFLARNPGGWRALTFELTLRYPPEVSVIWTFINGSGTLLCAASGYPQPNVTWLQCSGHTDRCDEAQVLQVWDDPYPEVLSQEPFHKVTVQSLLTVETLEHNQTYECRAHNSVGSGSWAFIPISAGAHTHPPDEFLFTPVVVACMSIMALLLLLLLLLLYKYKQKPKYQVRWKIIESYEGNSYTFIDPTQLPYNEKWEFPRNNLQFGKTLGAGAFGKVVEATAFGLGKEDAVLKVAVKMLKSTAHADEKEALMSELKIMSHLGQHENIVNLLGACTHGGPVLVITEYCCYGDLLNFLRRKAEAMLGPSLSPGQDPEGGVDYKNIHLEKKYVRRDSGFSSQGVDTYVEMRPVSTSSNDSFSEQDLDKEDGRPLELRDLLHFSSQVAQGMAFLASKNCIHRDVAARNVLLTNGHVAKIGDFGLARDIMNDSNYIVKGNARLPVKWMAPESIFDCVYTVQSDVWSYGILLWEIFSLGLNPYPGILVNSKFYKLVKDGYQMAQPAFAPKNIYSIMQACWALEPTHRPTFQQICSFLQEQAQEDRRERDYTNLPSSSRSGGSGSSSSELEEESSSEHLTCCEQGDIAQPLLQPNNYQFC
配列番号87
CSF1R未熟アミノ酸配列アイソフォーム2(識別子:P07333−2):
MGPGVLLLLLVATAWHGQGIPVIEPSVPELVVKPGATVTLRCVGNGSVEWDGPPSPHWTLYSDGSSSILSTNNATFQNTGTYRCTEPGDPLGGSAAIHLYVKDPARPWNVLAQEVVVFEDQDALLPCLLTDPVLEAGVSLVRVRGRPLMRHTNYSFSPWHGFTIHRAKFIQSQDYQCSALMGGRKVMSISIRLKVQKVIPGPPALTLVPAELVRIRGEAAQIVCSASSVDVNFDVFLQHNNTKLAIPQQSDFHNNRYQKVLTLNLDQVDFQHAGNYSCVASNVQGKHSTSMFFRVVGTPSPSLCPA
配列番号88
CCR2
CCR2(C−Cケモカイン受容体タイプ2とも呼ばれる)は、CCL2、CCL7、およびCCL13ケモカインのGタンパク質共役受容体である。CCR2は、単球/マクロファージおよびT細胞の動員において機能することが知られている。CCR2は単球およびT細胞の小集団で発現し、マウスとヒトでほぼ同一の発現パターンを示す(Mack et al.J Immunol 2001;166:4697−4704)。例示的なCCR2アミノ酸配列は、配列番号89および90に提供されている。
【0142】
CCR2アミノ酸配列アイソフォームA(識別子:P41597−1):
MLSTSRSRFIRNTNESGEEVTTFFDYDYGAPCHKFDVKQIGAQLLPPLYSLVFIFGFVGN
MLVVLILINCKKLKCLTDIYLLNLAISDLLFLITLPLWAHSAANEWVFGNAMCKLFTGLY
HIGYFGGIFFIILLTIDRYLAIVHAVFALKARTVTFGVVTSVITWLVAVFASVPGIIFTK
CQKEDSVYVCGPYFPRGWNNFHTIMRNILGLVLPLLIMVICYSGILKTLLRCRNEKKRHR
AVRVIFTIMIVYFLFWTPYNIVILLNTFQEFFGLSNCESTSQLDQATQVTETLGMTHCCI
NPIIYAFVGEKFRSLFHIALGCRIAPLQKPVCGGPGVRPGKNVKVTTQGLLDGRGKGKSI
GRAPEASLQDKEGA
配列番号89
CCR2アミノ酸配列アイソフォームB(識別子:P41597−2):
MLSTSRSRFIRNTNESGEEVTTFFDYDYGAPCHKFDVKQIGAQLLPPLYSLVFIFGFVGN
MLVVLILINCKKLKCLTDIYLLNLAISDLLFLITLPLWAHSAANEWVFGNAMCKLFTGLY
HIGYFGGIFFIILLTIDRYLAIVHAVFALKARTVTFGVVTSVITWLVAVFASVPGIIFTK
CQKEDSVYVCGPYFPRGWNNFHTIMRNILGLVLPLLIMVICYSGILKTLLRCRNEKKRHR
AVRVIFTIMIVYFLFWTPYNIVILLNTFQEFFGLSNCESTSQLDQATQVTETLGMTHCCI
NPIIYAFVGEKFRRYLSVFFRKHITKRFCKQCPVFYRETVDGVTSTNTPSTGEQEVSAGL
配列番号90
CXCR2
CXCR2(インターロイキン−8受容体としても知られている)は、好中球走化性因子であるIL8のGタンパク質共役受容体である。IL8の受容体への結合は、好中球の活性化を引き起こす。この応答は、ホスファチジルイノシトールカルシウムセカンドメッセンジャーシステムを活性化するGタンパク質を介して仲介される。CXCR2は、高い親和性でIL−8に結合し、またCXCL3、GRO/MGSAおよびNAP−2にも高い親和性で結合する。CXCR2は循環中の好中球に高レベルで発現し、炎症部位への移動を指示するために重要である(J Clin Invest.2012;122(9):3127−3144)。例示的なCXCR2アミノ酸配列は、配列番号91に提供されている。
【0143】
CXCR2アミノ酸配列(識別子:P25025−1):
MEDFNMESDSFEDFWKGEDLSNYSYSSTLPPFLLDAAPCEPESLEINKYFVVIIYALVFL
LSLLGNSLVMLVILYSRVGRSVTDVYLLNLALADLLFALTLPIWAASKVNGWIFGTFLCKVVSLLKEVNFYSGILLLACISVDRYLAIVHATRTLTQKRYLVKFICLSIWGLSLLLALPV
LLFRRTVYSSNVSPACYEDMGNNTANWRMLLRILPQSFGFIVPLLIMLFCYGFTLRTLFK
AHMGQKHRAMRVIFAVVLIFLLCWLPYNLVLLADTLMRTQVIQETCERRNHIDRALDATEILGILHSCLNPLIYAFIGQKFRHGLLKILAIHGLISKDSLPKDSRPSFVGSSSGHTSTTL
配列番号91
例示的な抗体
TAM抗原に結合する例示的な抗体は、本明細書の全体および以下にて提供される。例示的な抗CSF1R抗体は、本明細書、および国際公開第2009026303号;国際公開第2011123381号;国際公開第2016207312号;国際公開第2016106180号;米国特許出願公開第20160220669号;米国特許出願公開第20160326254号;国際公開第2013169264号;国際公開第2013087699号;国際公開第2011140249号;国際公開第2011131407号;国際公開第2011123381号;国際公開第2011107553号;および国際公開第2011070024号に記載され、それらのすべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例示的なCCR2抗体は、本明細書および国際公開第2013192596号;国際公開第2010021697号;国際公開第2001057226号;および国際公開第21997031949号に記載され、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれる。例示的なCXCR2抗体は、国際公開第2014170317号および米国特許出願公開第20160060347号(例えば、a)配列番号14(軽鎖)および配列番号15(重鎖);b)配列番号24(軽鎖)および配列番号25(重鎖);c)配列番号34(軽鎖)および配列番号35(重鎖);d)配列番号44(軽鎖)および配列番号45(重鎖);e)配列番号54(軽鎖)および配列番号55(重鎖);f)配列番号64(軽鎖)および配列番号65(重鎖);g)配列番号74(軽鎖)および配列番号75(重鎖);h)配列番号84(軽鎖)および配列番号85(重鎖)を参照)に記載されており、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例示的な抗CD163抗体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20120258107号(例えば、MAC2158、MAC2−48を参照)で提供される。例示的な抗CD52抗体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050152898号に記載されている。例示的な抗葉酸抗体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9522196号に記載されている。例示的な抗CD52抗体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050152898号に記載されている。例示的な抗MARCO抗体は、国際公開第2016196612号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0144】
抗体分子
一実施形態では、多重特異性分子は、第1の腫瘍関連マクロファージ(TAM)抗原に結合する抗体分子、また、第2のTAM抗原に結合する抗体分子を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のTAM抗原は、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトである。例えば、抗体分子は、TAM抗原上のエピトープ、例えば、線状または立体構造エピトープに特異的に結合する。
【0145】
一実施形態では、多重特異性分子は、第1骨髄由来抑制細胞(MDSC)抗原に結合する抗体分子、および第2のMDSC抗原に結合する抗体分子を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のMDSC抗原は、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトである。例えば、抗体分子は、MDSC抗原上のエピトープ、例えば、線形または立体構造エピトープに特異的に結合する。
【0146】
実施形態では、抗体分子は単一特異性抗体分子であり、単一のエピトープに結合する。例えば、それぞれが同じエピトープに結合する複数の免疫グロブリン可変領域配列を有する単一特異性抗体分子が挙げられる。
【0147】
実施形態では、抗体分子は多重特異性抗体分子であり、例えば、複数の免疫グロブリン可変領域配列を含み、複数の第1の免疫グロブリン可変領域配列は第1のエピトープに対する結合特異性を有し、複数の第2の免疫グロブリン可変領域配列は第2のエピトープに対する結合特異性を有する。実施形態では、第1および第2のエピトープは同じ抗原、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。実施形態では、第1および第2のエピトープは重複する。実施形態では、第1および第2のエピトープは重複しない。実施形態において、第1および第2のエピトープは、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。実施形態では、多重特異性抗体分子は、第3、第4、または第5の免疫グロブリン可変領域を含む。実施形態では、多重特異性抗体分子は、二重特異性抗体分子、三重特異性抗体分子、または四特異性抗体分子である。
【0148】
実施形態では、多重特異性抗体分子は二重特異性抗体分子である。二重特異性抗体は、2つ以下の抗原に対して特異性を持っている。二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変領域配列と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変領域配列によって特徴付けられる。実施形態では、第1および第2のエピトープは同じ抗原、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。実施形態では、第1および第2のエピトープは重複する。実施形態では、第1および第2のエピトープは重複しない。実施形態において、第1および第2のエピトープは、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列、ならびに第2のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を含む。実施形態では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体とを含む。実施形態では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体またはその断片、および第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体またはその断片を含む。実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有するscFvまたはFab、またはその断片を含み、第2のエピトープに対する結合特異性を有するscFvまたはFab、またはその断片を含む。
【0149】
実施形態では、抗体分子は、ダイアボディ、単鎖分子、および抗体の抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)、およびFv)を含む。例えば、抗体分子は、重(H)鎖可変領域配列(本明細書ではVHと略記)、および軽(L)鎖可変領域配列(本明細書ではVLと略記)を含むことができる。実施形態では、抗体分子は、重鎖および軽鎖を含むか、またはそれらからなる(本明細書では半抗体と呼ばれる)。別の例では、抗体分子は2つの重(H)鎖可変領域配列と2つの軽(L)鎖可変領域配列を含み、それによりFab、Fab’、F(ab’)、Fc、Fd、Fd’、Fv、単鎖抗体(scFvなど)、単一可変領域抗体、ダイアボディ(Dab)(二価および二重特異性)、およびキメラ(例えば、ヒト化)抗体などの2つの抗原結合部位を形成し、それは全体の抗体の修飾によって生成される可能性があり、または組換えDNA技術を使用して新たに合成されるものであり得る。これらの機能的抗体断片は、それぞれの抗原または受容体と選択的に結合する能力を保持している。抗体および抗体断片は、IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEを含むがこれらに限定されない抗体の任意のクラス、および抗体の任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)からのものであり得る。抗体分子の調製物は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体分子は、ヒト抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体、またはin vitroで生成された抗体でもあり得る。抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有することができる。抗体はまた、例えば、カッパまたはラムダから選択される軽鎖を有することができる。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書で「抗体」という用語と互換的に使用される。
【0150】
抗体分子の抗原結合断片の例には、(i)Fab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるダイアボディ(dAb)断片;(vi)ラクダ科またはラクダ化された可変領域;(vii)単一鎖Fv(scFv)、例えば、Bird et al.(1988)Science242:423−426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl Acad.Sci.USA85:5879−5883を参照);(viii)単一ドメイン抗体が含まれる。これらの抗体断片は、当業者に知られている従来の技術を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0151】
抗体分子には、無傷の分子とその機能的断片が含まれる。抗体分子の定常領域は、抗体の特性を修整するために(例えば、Fc受容体結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補完機能の1つまたは複数を増加または減少させるため)変更する、例えば、変異することができる。
【0152】
抗体分子は単一ドメイン抗体でもあり得る。単一ドメイン抗体には、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体を含めることができる。例には、これらに限定されないが、重鎖抗体、軽鎖を自然に欠く抗体、従来の4鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、遺伝子操作された抗体、および抗体に由来するもの以外の単一ドメイン足場が含まれる。単一ドメイン抗体は、当技術分野のいずれか、またはいずれかの未来の単一ドメイン抗体であり得る。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、魚、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含むがこれらに限定されない任意の種に由来し得る。本発明の別の態様によれば、単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られる天然に存在する単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体は、例えば、国際公開第9404678号に開示されている。明確にするために、天然に軽鎖を欠く重鎖抗体に由来するこの可変領域は、本明細書では、4本鎖免疫グロブリンの従来のVHと区別するVHHまたはナノボディとして知られている。そのようなVHH分子は、ラクダ科種、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコで産生された抗体に由来し得る。ラクダ科以外の他の種は、自然に軽鎖を欠く重鎖抗体を産生する可能性がある。そのようなVHHは、本発明の範囲内である。
【0153】
VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(FRまたはFW)と呼ばれるより保存された領域が散在する、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分化できる。
【0154】
フレームワーク領域とCDRの範囲は、多くの方法によって正確に定義されている(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242;Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901−917;およびOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用されるAbM定義を参照)。一般的に、例えば、Structure Analysis of Antibody Variable Domains.In:Antibody Engineering Lab Manual(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer−Verlag,Heidelberg)を参照されたい。
【0155】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」および場合、「CDR」という用語は、抗原特異性および結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域(HCDR1、HCDR2、HCDR3)には3つのCDRがあり、各軽鎖可変領域(LCDR1、LCDR2、LCDR3)には3つのCDRがある。
【0156】
所定のCDRの正確なアミノ酸配列境界は、Kabat et al.(1991),“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(“Kabat”numbering scheme),Al−Lazikani et al.,(1997)JMB273,927−948(「Chothia」番号付与スキーム)に記述されたものを含む、多くの既知のスキームのいずれかを使用して決定できる。本明細書で使用される場合、「Chothia」番号スキームに従って定義されるCDRは、「超可変ループ」とも呼ばれることがある。
【0157】
例えば、Kabatでは、重鎖可変領域(VH)のCDRアミノ酸残基には31−35(HCDR1)、50−65(HCDR2)、および95−102(HCDR3)の番号が付けられている。軽鎖可変領域(VL)のCDRアミノ酸残基には、24−34(LCDR1)、50−56(LCDR2)、および89−97(LCDR3)の番号が付けられている。Chothiaの下では、VHのCDRアミノ酸には26−32(HCDR1)、52−56(HCDR2)、および95−102(HCDR3)の番号が付けられている。VLのアミノ酸残基には、26−32(LCDR1)、50−52(LCDR2)、および91−96(LCDR3)の番号が付けられている。
【0158】
各VHおよびVLは通常、次の順序、つまりFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRと4つのFRを含む。
【0159】
抗体分子はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。
【0160】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」または場合、「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性と親和性を示す。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術によって、またはハイブリドーマ技術を使用しない方法(例えば、組換え法)によって作成できる。
【0161】
抗体は、組換えにより産生することができ、例えば、ファージディスプレイまたはコンビナトリアル方法により産生することができる。
【0162】
抗体を生成するためのファージディスプレイおよびコンビナトリアル方法は、当技術分野で知られている(例えば、Ladner et al.米国特許第5,223,409号;Kang et al.国際公開第92/18619号;Dower et al.国際公開第91/17271号;Winter et al.国際公開第92/20791号;Markland et al.国際公開第92/15679号;Breitling et al.国際公開第93/01288号;McCafferty et al.国際公開第92/01047号;Garrard et al.国際公開第92/09690号;Ladner et al.国際公開第90/02809号;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81−85;Huse et al.(1989)Science 246:1275−1281;Griffths et al.(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkins et al.(1992)J Mol Biol 226:889−896;Clackson et al.(1991)Nature 352:624−628;Gram et al.(1992)PNAS 89:3576−3580;Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboom et al.(1991)Nuc Acid Res 19:4133−4137;およびBarbas et al.(1991)PNAS 88:7978−7982、そのすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0163】
一実施形態では、抗体は完全ヒト抗体(例えば、ヒト免疫グロブリン配列から抗体を産生するように遺伝子操作されたマウスで作製された抗体)、または非ヒト抗体、例えば、げっ歯類(マウスまたはラット)、ヤギ、霊長類(サルなど)、ラクダ抗体である。好ましくは、非ヒト抗体はげっ歯類(マウスまたはラット抗体)である。げっ歯類の抗体を産生する方法は、当技術分野で公知である。
【0164】
ヒトモノクローナル抗体は、マウスのシステムではなく、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを使用して生成できる。目的の抗原で免疫したこれらのトランスジェニックマウスからの脾細胞を使用して、ヒトタンパク質からのエピトープに特異的な親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを産生する(例えば、Wood et al.国際公開第91/00906号、Kucherlapati et al.PCT刊行物国際公開第91/10741号;Lonberg et al.国際公開第92/03918号;Kay et al。国際公開第92/03917;Lonberg,N.et al.1994 Nature368:856−859;Green,L.L.et al.1994 Nature Genet.7:13−21;Morrison,S.L.et al.1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855;Bruggeman et al.1993 Year Immunol 7:33−40;Tuaillon et al.1993 PNAS90:3720−3724;Bruggeman et al.1991 Eur J Immunol21:1323−1326を参照)。
【0165】
抗体分子は、可変領域またはその一部、例えば、CDRが、非ヒト生物、例えば、ラットまたはマウスで生成されるものであり得る。キメラ、CDR移植、およびヒト化抗体は本発明の範囲内である。非ヒト生物、例えば、ラットまたはマウスで生成され、その後、例えば、可変フレームワークまたは定常領域で改変されて、ヒトの抗原性を低下させる抗体分子は、本発明の範囲内である。
【0166】
「有効ヒト」タンパク質は、中和抗体応答、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を実質的に誘発しないタンパク質である。HAMAは、例えば、慢性または再発性の疾患状態の治療など、抗体分子が繰り返し投与される場合など、多くの状況で問題になる可能性がある。HAMA応答により、血清からの抗体クリアランスが増加するため(例えば、Saleh et al.,Cancer Immunol.Immunother.,32:180−190(1990)を参照)、またアレルギー反応の可能性があるため(例えば、LoBuglio et al.,Hybridoma,5:5117−5123(1986)を参照)、抗体の繰り返し投与が無効になる可能性がある。
【0167】
キメラ抗体は、当技術分野で知られている組換えDNA技術によって産生することができる(Robinson et al.、国際特許刊行物PCT/US86/02269;Akira,et al.、欧州特許第184,187号;Taniguchi,M.,欧州特許第171,496号;Morrison et al.、欧州特許第173,494;Neuberger et al.、国際公開第86/01533号;Cabilly et al.、米国特許第4,816,567;Cabilly et al.、欧州特許第125,023号;Better et al.,(1988 Science240:1041−1043);Liu et al.(1987) PNAS84:3439−3443;Liu et al.,1987,J.Immunol.139:3521−3526;Sun et al.(1987)PNAS84:214−218;Nishimura et al.,1987,Canc.Res.47:999−1005;Wood et al.(1985)Nature 314:446−449;and Shaw et al.,1988, J.Natl Cancer Inst.80:1553−1559を参照)。
【0168】
ヒト化抗体またはCDR移植抗体は、少なくとも1つまたは2つであるが、一般に3つのレシピエントCDR(免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖)すべてがドナーCDRで置換される。抗体は、非ヒトCDRの少なくとも一部で置き換えられてもよいし、CDRの一部のみが非ヒトCDRで置き換えられてもよい。抗原への結合に必要なCDRの数を置き換えるだけである。好ましくは、ドナーはげっ歯類抗体、例えば、ラットまたはマウス抗体であり、レシピエントはヒトフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークである。通常、CDRを提供する免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供する免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。一実施形態では、ドナー免疫グロブリンは非ヒト(例えば、げっ歯類)である。アクセプターフレームワークは、天然に存在する(例えば、ヒト)フレームワークまたはコンセンサスフレームワーク、またはそれらと約85%以上、好ましくは90%、95%、99%以上同一の配列である。
【0169】
本明細書で使用される場合、「コンセンサス配列」という用語は、関連配列のファミリーの中で最も頻繁に生じるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列を指す(Winnaker,From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft,Weinheim,Germany1987を参照)。タンパク質のファミリーでは、コンセンサス配列の各位置は、ファミリーのその位置で最も頻繁に発生するアミノ酸によって占められている。2つのアミノ酸が同じ頻度で発生する場合、どちらかをコンセンサス配列に含めることができる。「コンセンサスフレームワーク」とは、コンセンサス免疫グロブリン配列のフレームワーク領域を指す。
【0170】
抗体分子は、当技術分野で公知の方法によりヒト化することができる(例えば、Morrison,S.L.,1985,Science 229:1202−1207,by Oi et al.,1986,BioTechniques4:214、およびQueen et al.による米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号および米国特許第5,693,762号、これらのすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0171】
ヒト化またはCDR移植抗体分子は、免疫グロブリン鎖の1つ、2つ、またはすべてのCDRを交換できるCDR移植またはCDR置換によって生成することができる。例えば、米国特許第5,225,539号;Jones et al.1986 Nature321:552−525;Verhoeyan et al.1988 Science239:1534;Beidler et al.1988 J.Immunol.141:4053−4060;Winter、米国特許第5,225,539号を参照されたい。これらすべての内容は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。Winterは、本発明のヒト化抗体を調製するために使用できるCDR移植法を説明している(1987年3月26日に出願された英国特許第2188638号;Winter、米国特許第5,225,539号)。その内容は参照により明示的に組み込まれる。
【0172】
また、特定のアミノ酸が置換、削除、または追加されたヒト化抗体分子も本発明の範囲内である。ドナーからアミノ酸を選択するための基準は、米国特許第5,585,089号、例えば、米国特許第5,585,089号の第12〜16列、例えば、米国特許第5,585,089号の列12〜16に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。抗体をヒト化する他の技術は、1992年12月23日公開のPadlan et al.の欧州特許第519596号に記載されている。
【0173】
抗体分子は単鎖抗体であり得る。単鎖抗体(scFV)を設計することができる(例えば、Colcher,D.et al.(1999)Ann N Y Acad Sci 880:263−80;およびReiter,Y.(1996)Clin Cancer Res2:245−52を参照されたい)。一本鎖抗体を二量体化または多量体化して、同じ標的タンパク質の異なるエピトープに対する特異性を有する多価抗体を生成することができる。
【0174】
さらに他の実施形態では、抗体分子は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEの重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域を有する。特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の(例えば、ヒト)重鎖定常領域から選択される。別の実施形態において、抗体分子は、例えば、カッパまたはラムダの(例えば、ヒト)軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域を有する。定常領域は、抗体の特性を修整するために(例えば、Fc受容体結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、および/または補完機能の1つまたは複数を増加または減少させるため)変更する、例えば、変異することができる。一実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、また、補数を修正できる。他の実施形態では、抗体はそうではない。エフェクター細胞を補充する、または補数を修正する。別の実施形態では、抗体は、Fc受容体に結合する能力が低下しているか、まったくない。例えば、それは、Fc受容体への結合をサポートしないアイソタイプまたはサブタイプ、断片または他の突然変異体であり、例えば、突然変異または欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0175】
抗体定常領域を変更する方法は、当技術分野で知られている。機能が変化した抗体、例えば、細胞上のFcRなどのエフェクターリガンドに対する親和性の変化、または補体のC1成分は、抗体の定常部分の少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる残基で置き換えることにより生成できる(例えば、欧州特許第388,151号、米国特許第5,624,821号および米国特許第5,648,260号を参照。これらのすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる)。マウスまたは他の種の免疫グロブリンに適用された場合、これらの機能を低下または排除する同様のタイプの変化を説明できる。
【0176】
抗体分子は、誘導体化するか、別の機能性分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)にリンクさせることができる。本明細書で使用される場合、「誘導体化」抗体分子は、改変されたものである。誘導体化の方法には、蛍光部分、放射性ヌクレオチド、毒素、酵素またはビオチンなどの親和性リガンドの添加が含まれるが、これらに限定されない。したがって、本発明の抗体分子は、免疫接着分子を含む、本明細書に記載の抗体の誘導体化および他の改変形態を含むことを意図している。1つまたは複数の他の分子実体に機能的に(化学結合、遺伝子融合、非共有結合または他の方法で)結合でき、例えば、別の抗体(例えば、二重特異性抗体または二重特異性抗体)、別の分子(ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグなど)と抗体または抗体実体の会合を媒介できる検出可能な薬剤、細胞障害剤、医薬品、および/またはとタンパク質またはペプチドに結合できる。
【0177】
誘導体化された抗体分子の1つのタイプは、2つ以上の抗体を架橋することによって生成される(同じタイプまたは異なるタイプの、例えば、二重特異性抗体を作成するため)。適切な架橋剤には、適切なスペーサーによって分離された2つの明確に反応性の基を有するヘテロ二官能性のもの(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)またはホモ二官能性(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)が含まれる。そのようなリンカーは、イリノイ州ロックフォードのPierce Chemical Companyから入手可能である。
【0178】
多重特異性抗体分子
実施形態では、多重特異性抗体分子は、異なる部位が異なる抗原に特異的である複数の抗原結合部位を含むことができる。実施形態では、多重特異性抗体分子は、同じ抗原上の複数の(例えば、2つ以上の)エピトープに結合することができる。実施形態において、多重特異性抗体分子は、標的細胞(例えば、癌細胞)に特異的な抗原結合部位および免疫エフェクター細胞に特異的な異なる抗原結合部位を含む。一実施形態では、多重特異性抗体分子は二重特異性抗体分子である。二重特異性抗体分子は、5つの異なる構造グループに分類できる:(i)二重特異性免疫グロブリンG(BsIgG);(ii)追加の抗原結合部分が付加されたIgG;(iii)二重特異性抗体断片;(iv)二重特異性融合タンパク質;および(v)二重特異性抗体コンジュゲートである。
【0179】
BsIgGは、各抗原に対して一価の形式である。例示的なBsIgG形式には、crossMab、DAF(2イン1)、DAF(4イン1)、DutaMab、DT−IgG、ノブインホール共通LC、ノブインホールアセンブリ、電荷対、Fabアーム交換、SEEDbody、triomab、LUZ−Y、Fcab、κλ−body、直交Fabが含まれるが、それらに限定されない。Spiess et al.Mol.Immunol.67(2015):95−106を参照されたい。例示的なBsIgGには、抗CD3アームおよび抗EpCAMアームを含むカツマキソマブ(Fresenius Biotech、Trion Pharma、Neopharm)、およびCD3およびHER2をターゲットとするertumaxomab(Neovii Biotech、Fresenius Biotech)が含まれる。いくつかの実施形態において、BsIgGは、ヘテロ二量体化のために設計された重鎖を含む。例えば、「ノブイントゥーホール」戦略、SEEDプラットフォーム、共通の重鎖(κλボディなど)、およびヘテロダイマーFc領域の使用を使用して、ヘテロ二量体化のために重鎖を設計できる。Spiess et al.Mol.Immunol.67(2015):95−106を参照されたい。BsIgGのホモダイマーの重鎖ペアリングを回避するために使用されてきた戦略には、ホールインノブ、デュオボディ、アザイメトリック、チャージペア、HA−TF、SEEDbody、および差次的なタンパク質Aアフィニティが含まれる。Idを参照されたい。BsIgGは、異なる宿主細胞における抗体成分の別個の発現、およびそれに続くBsIgGへの精製/アセンブリにより生成され得る。BsIgGは、単一の宿主細胞での抗体成分の発現によっても産生される。BsIgGは、アフィニティクロマトグラフィを使用して、例えば、タンパク質Aと連続pH溶出を使用して精製できる。
【0180】
追加の抗原結合部分が付加されたIgGは、二重特異性抗体分子のもう1つの形式である。例えば、単一特異的IgGは、例えば、重鎖または軽鎖のN末端またはC末端で、単一抗原特異的IgGに追加の抗原結合ユニットを付加することにより、二重特異性を持つように設計できる。例示的な追加の抗原結合ユニットには、単一ドメイン抗体(例えば、可変重鎖または可変軽鎖)、遺伝子操作されたタンパク質の足場、および対の抗体可変領域(例えば、単鎖可変断片または可変断片)が含まれる。Idを参照されたい。付加されるIgGの形式の例には、デュアル可変ドメインIgG(DVD−Ig)、IgG(H)−scFv、scFv−(H)IgG、IgG(L)−scFv、scFv−(L)IgG、IgG(L、H)、−Fv、IgG(H)−V、V(H)−IgG、IgG(L)−V、V(L)−IgG、KIH IgG−scFab、2scFv−IgG、IgG−2scFv、scFv4−Ig、zybody、およびDVI−IgG(4イン1)が含まれる。Spiess et al.Mol.Immunol.67(2015):95−106を参照されたい。IgG−scFvの例はMM−141(Merrimack Pharmaceuticals)で、IGF−1RおよびHER3に結合する。DVD−Igの例には、IL−1αおよびIL−1βに結合するABT−981(AbbVie)と、TNFおよびIL−17Aに結合するABT−122(AbbVie)とが含まれる。
【0181】
二重特異性抗体断片(BsAb)は、抗体定常ドメインの一部またはすべてを欠く二重特異性抗体分子の形式である。例えば、一部のBsAbにはFc領域がない。実施形態において、二重特異性抗体断片は、単一の宿主細胞におけるBsAbの効率的な発現を可能にするペプチドリンカーにより接続された重鎖および軽鎖領域を含む。例示的な二重特異性抗体断片には、ナノボディ、ナノボディ−HAS、BiTE、ダイアボディ、DART、TandAb、scDiabody、scDiabody−CH3、Diabody−CH3、トリプルボディ、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、scFv−CH3 KIH、Fab−scFv、scFv−CH−CL−scFv、F(ab’)2、F(ab’)2−scFv2、scFv−KIH、Fab−scFv−Fc、四価HCAb、scDiabody−Fc、Diabody−Fc、タンデムscFv−Fc、およびイントラボディが含まれるが、それらに限定されない。Idを参照されたい。例えば、BiTE形式はタンデムscFvで構成され、scFv構成要素はT細胞上のCD3と癌細胞上の表面抗原に結合する。
【0182】
二重特異性融合タンパク質には、例えば、追加の特異性および/または機能性を追加するために、他のタンパク質にリンクされた抗体断片が含まれる。二重特異性融合タンパク質の例は、immTACであり、これはHLA提示ペプチドを認識する親和性成熟T細胞受容体に連結された抗CD3 scFvを含む。実施形態では、ドックアンドロック(DNL)法を使用して、より高い原子価の二重特異性抗体分子を生成することができる。また、アルブミン結合タンパク質またはヒト血清アルブミンとの融合により、抗体断片の血清半減期を延長できる。Idを参照されたい。
【0183】
実施形態では、化学的コンジュゲーション、例えば、抗体および/または抗体断片の化学的コンジュゲーションを使用して、BsAb分子を作成することができる。Idを参照されたい。例示的な二重特異性抗体コンジュゲートは、低分子量の薬物が各Fabアームの単一の反応性リジンまたは抗体もしくはその断片に部位特異的にコンジュゲートされるCovXボディ形式を含む。実施形態では、コンジュゲーションは、低分子量薬物の血清半減期を改善する。例示的なCovXボディはCVX−241(NCT01004822)であり、これはVEGFまたはAng2のいずれかを阻害する2つの短いペプチドにコンジュゲートした抗体を含む。Idを参照されたい。
【0184】
抗体分子は、宿主のシステムでの、例えば、少なくとも1つまたは複数の成分の組換え発現により産生することができる。例示的な宿主のシステムには、真核細胞(例えば、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞、または昆虫細胞、例えば、SF9またはS2細胞)および原核細胞(例えば、大腸菌)が含まれる。二重特異性抗体分子は、異なる宿主細胞で成分を別々に発現させ、その後の精製/アセンブリにより生成できる。あるいは、抗体分子は、単一の宿主細胞での成分の発現により産生され得る。二重特異性抗体分子の精製は、アフィニティクロマトグラフィなどの様々な方法で、例えば、タンパク質Aと連続pH溶出を使用して行うことができる。他の実施形態では、アフィニティータグ、例えば、ヒスチジン含有タグ、mycタグ、またはストレプトアビジンタグを精製に使用することができる。
【0185】
CSF1Rを標的とする多重特異性抗体分子
一態様において、本明細書に開示されるのは、CSF1R結合部分を含む多重特異性抗体分子である。一部の実施形態では、CSF1R結合部分は、抗CSF1R抗体分子を含む。例示的な抗CSF1R抗体分子配列は、国際公開第2009026303号;国際公開第2011123381号;国際公開第2016207312号;国際公開第2016106180号;米国特許出願公開第20160220669号;米国特許出願公開第20160326254号;国際公開第2013169264号;国際公開第2013087699号;国際公開第2011140249号;国際公開第2011131407号;国際公開第2011123381号;国際公開第2011107553号;および国際公開第2011070024号に記載され、それらのすべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、CSF1R結合部分は、CDR(例えば、1、2、3、4、5、または6つすべてのCDR)、VH、VL、エマクトズマブの重鎖または軽鎖配列、またはそれらと実質的に同一の配列(例えば、少なくとも95%同一、例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸の変更を有するが、5、10または15以下の変更(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保守的な置換)を有する)を含む。いくつかの実施形態では、CSF1R結合部分は、CDR(例えば、1、2、3、4、5、または6つすべてのCDR)、VH、VL、カビラリズマブの重鎖または軽鎖配列、またはそれらと実質的に同一の配列(例えば、少なくとも95%同一、例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸の変更を有するが、5、10または15以下の変更(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保守的な置換)を有する)を含む。いくつかの実施形態では、CSF1R結合部分は、CDR(例えば、1、2、3、4、5、または6つすべてのCDR)、VH、VL、AMG820の重鎖または軽鎖配列、またはそれらと実質的に同一の配列(例えば、少なくとも95%同一、例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸の変更を有するが、5、10または15以下の変更(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保守的な置換)を有する)を含む。いくつかの実施形態では、CSF1R結合部分は、CDR(例えば、1、2、3、4、5、または6つすべてのCDR)、VH、VL、IMC−CS4の重鎖または軽鎖配列、またはそれらと実質的に同一の配列(例えば、少なくとも95%同一、例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸の変更を有するが、5、10または15以下の変更(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保守的な置換)を有する)を含む。いくつかの実施形態では、CSF1R結合部分は、表8に開示されるVHまたはVLアミノ酸配列、表8に開示されるVHまたはVLアミノ酸配列のCDR、またはそれと実質的に同一の配列を含む。
【表1】
【0186】
CCR2を標的とする多重特異性抗体分子
一態様では、本明細書に開示されるのは、CCR2結合部分を含む多重特異性抗体分子である。例示的なCCR2抗体は、本明細書および国際公開第2013192596号;国際公開第2010021697号;国際公開第2001057226号;および国際公開第21997031949号に記載され、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、CCR2結合部分は、CDR(例えば、1、2、3、4、5、または6つすべてのCDR)、VH、VL、プロザリズマブの重鎖または軽鎖配列、またはそれと実質的に同一の配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸の変更を有するが、5、10または15以下の変更(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保守的な置換)を有する)を含む。いくつかの実施形態では、CCR2結合部分は、表9に開示されるVHまたはVLアミノ酸配列、表9に開示されるVHまたはVLアミノ酸配列のCDR、またはそれと実質的に同一の配列を含む。
【表2】
【0187】
PD−L1を標的とする多重特異性抗体分子
一態様において、本明細書に開示されるのは、PD−L1結合部分を含む多重特異性抗体分子である。いくつかの態様において、PD−L1結合部分は抗PD−L1抗体分子を含む。例示的な抗PD−L1抗体分子配列は、国際公開第2013079174号、国際公開第2010077634号、国際公開第2007/005874号、および米国特許出願公開第20120039906号に記載されており、これらのすべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、PD−L1結合部分は、CDR(例えば、1、2、3、4、5、または6つすべてのCDR)、VH、VL、デュルバルマブの重鎖または軽鎖配列、またはそれと実質的に同一の配列(例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸の変更を有するが、5、10または15以下の変更(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保守的な置換)を有する)を含む。いくつかの実施形態では、PD−L1結合部分は、CDR(例えば、1、2、3、4、5、または6つすべてのCDR)、VH、VL、アテゾリズマブの重鎖または軽鎖配列、またはそれらと実質的に同一の配列(例えば、少なくとも95%同一、例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸の変更を有するが、5、10または15以下の変更(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保守的な置換)を有する)を含む。いくつかの実施形態では、PD−L1結合部分は、CDR(例えば、1、2、3、4、5、または6つすべてのCDR)、VH、VL、アベルマブの重鎖または軽鎖配列、またはそれらと実質的に同一の配列(例えば、少なくとも95%同一、例えば、95%から99.9%同一、または少なくとも1つのアミノ酸の変更を有するが、5、10または15以下の変更(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば、保守的な置換)を有する)を含む。いくつかの実施形態では、PD−L1結合部分は、表10に開示されるVHまたはVLアミノ酸配列、表10に開示されるVHまたはVLアミノ酸配列のCDR、またはそれと実質的に同一の配列を含む。
【表3】
【0188】
CDRグラフト足場
実施形態では、抗体分子はCDRグラフト足場ドメインである。実施形態では、足場ドメインは、フィブロネクチンドメイン、例えば、フィブロネクチンIII型ドメインに基づいている。フィブロネクチンIII型(Fn3)ドメインの全体的な折り畳みは、最小機能性抗体断片、抗体重鎖の可変領域の折り畳みと密接に関連している。Fn3の端部には3つのループがある。BC、DEおよびFGループの位置は、抗体のVHドメインのCDR1、2および3の位置にほぼ対応している。Fn3にはジスルフィド結合がない。したがって、抗体およびそれらの断片とは異なり、Fn3は還元条件下で安定している(例えば、国際公開第98/56915号、国際公開第01/64942号、国際公開第00/34784号を参照)。Fn3ドメインは、例えば、本明細書に記載の抗原/マーカー/細胞に結合するドメインを選択するために、(例えば、本明細書に記載のCDRまたは超可変ループを使用して)改変または変化させることができる。
【0189】
実施形態では、足場ドメイン、例えば、折り畳みドメインは、抗体、例えば、モノクローナル抗体の重鎖可変領域から3つのβ鎖を削除することにより作成された「ミニボディ」足場に基づいている(例えば、Tramontano et al.,1994,J Mol.Recognit.7:9;およびMartin et al.,1994,EMBO J.13:5303−5309を参照)。「ミニボディ」を使用して、2つの超可変ループを提示できる。実施形態において、足場ドメインは、V様ドメイン(例えば、Coia et al.、国際公開第99/45110号を参照)または、74残基、2つのジスルフィド結合によって一緒に保持された6本鎖ベータシートサンドイッチであるテンダミスタチン由来のドメインである(例えば、McConnell and Hoess,1995,J Mol.Biol.250:460を参照)。例えば、テンダミスタチンのループは、例えば、本明細書に記載のマーカー/抗原/細胞に結合するドメインを選択するために、(例えば、CDRまたは超可変ループを使用して)改変または変更することができる。別の例示的な足場ドメインは、CTLA−4の細胞外ドメインに由来するベータサンドイッチ構造である(例えば、国際公開第00/60070号を参照)。
【0190】
他の例示的な足場ドメインには、T細胞受容体、MHCタンパク質;細胞外ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型の繰り返し、EGFの繰り返し);プロテアーゼ阻害剤(例えば、クニッツドメイン、エコチン、BPTIなど);TPRの繰り返し;トリフォイル構造;ジンクフィンガードメイン;DNA結合タンパク質;特に単量体DNA結合タンパク質;RNA結合タンパク質;酵素、例えば、プロテアーゼ(特に不活性化されたプロテアーゼ)、RNase;シャペロン、例えば、チオレドキシン、および熱ショックタンパク質;および細胞内シグナル伝達ドメイン(SH2およびSH3ドメインなど)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20040009530号および米国特許出願公開第7,501,121号を参照されたい。
【0191】
実施形態では、足場ドメインは、例えば、以下の基準のうちの1つ以上によって評価および選択される:(1)アミノ酸配列、(2)いくつかの相同ドメインの配列、(3)3次元構造、および/または(4)pH、温度、塩分、有機溶媒、酸化剤濃度の範囲にわたる安定性データ。実施形態では、足場ドメインは、小さく安定したタンパク質ドメイン、例えば、100、70、50、40、または30アミノ酸未満のタンパク質である。ドメインは、1つまたは複数のジスルフィド結合を含んでもよく、または金属、例えば、亜鉛をキレート化してもよい。
【0192】
本明細書で定義される多機能性分子の例示的な構造を以下に説明する。例示的な構造については、Weidle U et al.(2013)The Intriguing Options of Multispecific Antibody Formats for Treatment of Cancer.Cancer Genomics&Proteomics 10:1−18(2013);およびSpiess C et al.(2015)Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.Molecular Immunology 67:95−106にてさらに記載されており、それぞれの完全な内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0193】
ヘテロ二量化抗体分子
ヘテロ二量体化された二重特異性抗体は、天然のIgG構造に基づいており、2つの結合アームは異なる抗原を認識する。定義された一価(および同時)の抗原の結合を可能にするIgG由来のフォーマットは、軽鎖の誤対合を最小限に抑える技術(例えば、共通の軽鎖)と組み合わせた強制重鎖ヘテロ二量化によって生成される。強制重鎖ヘテロ二量体化は、例えば、ノブインホールOR鎖交換操作ドメイン(SEED)を使用して取得できる。
【0194】
ノブインホール
米国特許第5,731,116号、米国特許第7,476,724号、およびRidgway,J.et al.(1996)Prot.Engineering9(7):617−621に記載されているノブインホールには、(1)1つまたは両方の抗体のCH3ドメインをヘテロ二量体化を促進するべく変異させること;および(2)ヘテロ二量体化を促進する条件下で変異抗体を組み合わせることが関与している。「ノブ」または「突起」は通常、親抗体の小さなアミノ酸をより大きなアミノ酸(例えば、T366YまたはT366W)で置き換えることによって作成される。「ホール」または「空洞」は、親抗体のより大きな残基を、Eu番号付けシステムに基づいて番号付けされたより小さなアミノ酸(例えば、Y407T、T366S、L368Aおよび/またはY407V)で置き換えることによって作成される。
【0195】
鎖交換操作ドメイン(SEED)
SEEDは、IgG1とIgAの間の配列交換に基づいて、優先的にヘテロ二量体化する同一ではない鎖を作成する。SEED CH3ドメインのヒトIgAおよびIgGからの交互配列は、AGおよびGAと呼ばれる2つの非対称であるが相補的なドメインを生成する。SEED設計により、AGおよびGA SEED CH3ドメインのホモダイマー化を避ける一方で、AG/GAヘテロダイマーの効率的な生成が可能になる。
【0196】
共通の軽鎖とCrossMab
二重特異性IgGの均質な調製物を生成するには、軽鎖の誤対合を避ける必要がある。これを達成する1つの方法は、共通の軽鎖の原理を使用することである。つまり、1つの軽鎖を共有するがまだ特異性のある2つのバインダーを組み合わせる。別の選択肢として、CrossMabテクノロジーがある。これは、二重特異性抗体の半分のFabのCH1およびCLドメインを交換することにより、非特異的なL鎖の誤対合を回避する。このような交差変異体は結合特異性と親和性を保持するが、2つのアームを非常に異なるものにし、L鎖の誤対合を防ぐ。
【0197】
抗体ベースの融合
抗体のNまたはC末端に付加された追加の結合実体を含む様々な形式を生成できる。単鎖またはジスルフィド安定化FvまたはFabとのこれらの融合により、各抗原に対して二価の結合特異性を持つ四価分子が生成される。scFvとscFabとIgGの組み合わせにより、3つ以上の異なる抗原を認識できる分子の生産が可能になる。
【0198】
抗体−Fab融合
抗体−Fab融合体は、第1の標的に対する従来の抗体と、抗体の重鎖のC末端に融合する第2の標的に対するFabを含む二重特異性抗体である。通常、抗体とFabには共通の軽鎖がある。抗体融合は、(1)標的融合のDNA配列を遺伝子操作し、(2)融合タンパク質を発現するために標的DNAを適切な宿主細胞にトランスフェクトすることにより生成できる。Coloma,J.et al.(1997)Nature Biotech15:159に記載されているように、抗体とscFvの融合は、CH3ドメインのC末端とscFvのN末端の間の(Gly)−Serリンカーによってリンクされているようである。
【0199】
抗体−scFvの融合
抗体−scFvの融合は、従来の抗体と、抗体の重鎖のC末端に融合する独自の特異性のscFvを含む二重特異性抗体である。scFvは、直接またはリンカーペプチドを介してscFvの重鎖を介してC末端に融合できる。抗体融合は、(1)標的融合のDNA配列を遺伝子操作し、(2)融合タンパク質を発現するために標的DNAを適切な宿主細胞にトランスフェクトすることにより生成できる。Coloma,J.et al.(1997)Nature Biotech15:159に記載されているように、抗体とscFvの融合は、CH3ドメインのC末端とscFvのN末端の間の(Gly)−Serリンカーによってリンクされているようである。
【0200】
可変ドメイン免疫グロブリンDVD
関連する形式はデュアル可変ドメイン免疫グロブリン(DVD)で、これは短いリンカー配列によってVドメインのN末端に第2の特異性のあるVHおよびVLドメインで構成されている。
【0201】
Fc含有実体(ミニ抗体)
ミニ抗体としても知られるFc含有実体は、scFvを定常重領域ドメイン3のC末端(CH3−scFv)および/または特異性の異なる抗体のヒンジ領域(scFv−ヒンジ−Fc)に融合することにより生成できる。IgGのCH3ドメインのC末端に融合したジスルフィド安定化可変領域(ペプチドリンカーなし)を有する三価の実体も作成できる。
【0202】
Fcの少ない二重特異性
Fcの少ない二重特異性は、一般的にFc含有実体よりもサイズが小さいという特徴がある。このクラスの一般的な二重特異性には、Fab−scFv2およびFab−scFv分子が含まれる。このクラスには、例えば、BiTE(二重特異性T細胞誘導剤)、ダイアボディ、TandAbs(四価タンデム抗体)、およびDART(二重親和性リターゲティング分子)も含まれる。BiTEは、柔軟なリンカーペプチドを介して2つのscFvを融合することによって作成される。ダイアボディは、2つの異なる抗体の2つのVHおよび2つのVLドメインで構成されている。別の鎖上の相補的ドメインのみとの相互作用は、VHおよびVLドメインとのみの対合を可能にする短いリンカーペプチドでドメインを結合することにより達成される。第2のバインダーのVLに連結された第1のバインダーのVHは、第1の抗体のVLに連結された第2の抗体のVHと共発現される。TandAbs分子は、分子内ペアリングを妨げる方向にある4つの抗体可変H鎖とL鎖からなるタンパク質の機能的二量化によって生成される。DARTは、ダイアボディの設計コンセプトと同様の設計コンセプトを適用するジスルフィド結合によって安定化される実体である。
【0203】
カッパ/ラムダ形式
ラムダ軽鎖ポリペプチドおよびカッパ軽鎖ポリペプチドを含む多重特異性分子(例えば、多重特異性抗体分子)は、ヘテロ二量体化を可能にするために使用できる。ラムダ軽鎖ポリペプチドおよびカッパ軽鎖ポリペプチドを含む二重特異性抗体分子を生成する方法は、2017年9月22日に出願されたPCT/US2017/53053に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0204】
実施形態では、多重特異性分子は、多重特異性抗体分子、例えば、2つの結合特異性を含む抗体分子、例えば、二重特異性抗体分子を含む。多重特異性抗体分子には以下が含まれる:
第1のエピトープに特異的なラムダ軽鎖ポリペプチド1(LLCP1);
第1のエピトープに特異的な重鎖ポリペプチド1(HCP1);
第2のエピトープに特異的なカッパ軽鎖ポリペプチド2(KLCP2);および
第2のエピトープに特異的な重鎖ポリペプチド2(HCP2)。
【0205】
「ラムダ軽鎖ポリペプチド1(LLCP1)」は、その用語が本明細書で使用される場合、同族重鎖可変領域と組み合わされたときにそのエピトープとHCP1との複合体への特異的結合を媒介できるように、十分な軽鎖(LC)配列を含むポリペプチドを指す。実施形態では、CH1領域のすべてまたは断片を含む。実施形態において、LLCP1は、LC−CDR1、LC−CDR2、LC−CDR3、FR1、FR2、FR3、FR4、およびCH1、またはそのエピトープおよびHCP1との複合体の特異的結合を媒介するのに十分な配列を含む。LLCP1は、そのHCP1とともに、第1のエピトープに特異性を提供する(一方、KLCP2は、そのHCP2とともに、第2のエピトープに特異性を提供する)。本明細書の他の場所で説明されているように、LLCP1はHCP2よりもHCP1に対してより高い親和性を有する。
【0206】
「カッパ軽鎖ポリペプチド2(KLCP2)」は、その用語が本明細書で使用される場合、同族重鎖可変領域と組み合わされたときにそのエピトープとHCP2との複合体への特異的結合を媒介できるように、十分な軽鎖(LC)配列を含むポリペプチドを指す。実施形態では、それは、CH1領域のすべてまたは断片を含む。実施形態では、KLCP2は、LC−CDR1、LC−CDR2、LC−CDR3、FR1、FR2、FR3、FR4、およびCH1、またはそのエピトープおよびHCP2との複合体の特異的結合を媒介するのに十分な配列を含む。KLCP2は、そのHCP2と一緒に、第2のエピトープに特異性を提供する(一方、LLCP1は、そのHCP1と一緒に、第1のエピトープに特異性を提供する)。
【0207】
「重鎖ポリペプチド1(HCP1)」は、その用語が本明細書で使用される場合、同族LLCP1と組み合わせたときにそのエピトープとHCP1との複合体への特異的結合を媒介できるように、十分な重鎖(HC)配列、例えば、HC可変領域配列を含むポリペプチドを指す。実施形態では、それは、CH1領域のすべてまたは断片を含む。実施形態では、それは、CH2および/またはCH3領域のすべてまたは断片を含む。実施形態では、HCP1は、HC−CDR1、HC−CDR2、HC−CDR3、FR1、FR2、FR3、FR4、CH1、CH2、およびCH3、またはそれらからの十分な配列を含み、(i)そのエピトープおよびLLCP1との複合体の特異的結合を媒介し、(ii)KLCP2とは対照的にLLCP1に対して、本明細書で説明するように、優先的に複合化し、(iii)本明細書に記載されるように、HCP1の別の分子とは対照的に、HCP2に優先的に複合化する。HCP1は、そのLLCP1とともに、第1のエピトープに特異性を提供する(一方、KLCP2は、そのHCP2とともに、第2のエピトープに特異性を提供する)。
【0208】
「重鎖ポリペプチド2(HCP2)」は、その用語が本明細書で使用される場合、同族LLCP1と組み合わせたときにそのエピトープとHCP1との複合体への特異的結合を媒介できるように、十分な重鎖(HC)配列、例えば、HC可変領域配列を含むポリペプチドを指す。実施形態では、それは、CH1領域のすべてまたは断片を含む。実施形態では、それはCH2および/またはCH3領域のすべてまたは断片を含む。実施形態では、HCP1は、HC−CDR1、HC−CDR2、HC−CDR3、FR1、FR2、FR3、FR4、CH1、CH2、およびCH3、またはそれらからの十分な配列を含み、(i)そのエピトープおよびKLCP2との複合体の特異的結合を媒介し、(ii)LLCP1とは対照的にKLCP2に対して、本明細書で説明するように、優先的に複合化し、(iii)本明細書に記載されるように、HCP2の別の分子とは対照的に、HCP1に優先的に複合化する。HCP2はKLCP2と一緒に、第2のエピトープに特異性を提供する(一方、LLCP1は、そのHCP1と一緒に、第1のエピトープに特異性を提供する)。
【0209】
本明細書に開示される多重特異性抗体分子のいくつかの実施形態では:
LLCP1は、HCP2よりも、HCP1に対して高い親和性を持っている。および/または
KLCP2は、HCP1よりも、HCP2に対して高い親和性を持っている。
【0210】
実施形態において、HCP1に対するLLCP1の親和性は、HCP2に対する親和性よりも十分に大きいため、例えば、pH7の水性緩衝液、またはpH7の生理食塩水、または生理学的条件下などの所定の条件下で、多重特異性抗体分子の分子の少なくとも75%、80、90、95、98、99、99.5、または99.9%が、LLCP1と複合体を形成した、またはHCP1と結合している。
【0211】
本明細書に開示される多重特異性抗体分子のいくつかの実施形態では:
HCP1は、HCP1の第2の分子よりも、HCP2に対して高い親和性を持っている。および/または
HCP2は、HCP2の第2の分子よりも、HCP1に対して高い親和性を持っている。
【0212】
実施形態において、HCP2に対するHCP1の親和性は、HCP1の第2分子に対する親和性よりも十分に大きいため、例えば、pH7の水性緩衝液、またはpH7の生理食塩水、または生理学的条件下などの所定の条件下で、多重特異性抗体分子の分子の少なくとも75%、80、90、95、98、99、99.5、または99.9%が、HCP1と複合体を形成した、またはHCP2と結合している。
【0213】
別の態様において、本明細書に開示されるのは、多重特異性抗体分子を作成または生産する方法である。方法には、
(i)第1の重鎖ポリペプチド(例えば、第1の重鎖可変領域(第1のVH)、第1のCH1、第1の重鎖定常領域(例えば、第1のCH2、第1のCH3、または両方)の1つ、2つ、3つまたはすべてを含む重鎖ポリペプチド)を提供する;
(ii)第2の重鎖ポリペプチド(例えば、第2の重鎖可変領域(第2のVH)、第2のCH1、第2の重鎖定常領域(例えば、第2のCH2、第2のCH3、または両方)の1つ、2つ、3つまたはすべてを含む重鎖ポリペプチド)を提供する;
(iii)第1の重鎖ポリペプチド(例えば、第1のVH)と優先的に結合するラムダ鎖ポリペプチド(例えば、ラムダ軽可変領域(VLλ)、ラムダ軽定常鎖(VLλ)、または両方)を提供する;および
(iv)第2の重鎖ポリペプチド(例えば、第2のVH)と優先的に結合するカッパ鎖ポリペプチド(例えば、ラムダ軽可変領域(VLκ)、ラムダ軽定常鎖(VLκ)、またはその両方)を提供すること、
が、(i)〜(iv)が関連する条件下で含まれる。
【0214】
実施形態では、第1および第2の重鎖ポリペプチドは、ヘテロ二量体化を促進するFc界面を形成する。
【0215】
実施形態では、(i)〜(iv)(例えば、(i)〜(iv)をコードする核酸)は、単一の細胞、例えば、単一の哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞に導入される。実施形態では、(i)〜(iv)は細胞内で発現される。
【0216】
実施形態では、(i)〜(iv)(例えば、(i)〜(iv)をコードする核酸)は、異なる細胞、例えば、異なる哺乳動物細胞、例えば、2つ以上のCHO細胞に導入される。実施形態では、(i)〜(iv)は細胞内で発現される。
【0217】
一実施形態では、この方法は、例えば、ラムダおよび/またはカッパ特異的精製、例えば、アフィニティクロマトグラフィを使用して、細胞発現抗体分子を精製することをさらに含む。
【0218】
実施形態では、方法は、細胞発現された多重特異性抗体分子を評価することをさらに含む。例えば、精製された細胞発現多重特異性抗体分子は、質量分析を含む当技術分野で知られている技術によって分析することができる。一実施形態において、精製された細胞発現抗体分子は切断され、例えば、パパインで消化されて、Fab部分を生じ、質量分析を使用して評価される。
【0219】
実施形態において、この方法は、例えば、少なくとも75%、80、90、95、98、99、99.5、または99.9%の高収率で、正確に対合したカッパ/ラムダ多重特異性、例えば、二重特異性抗体分子を生成する。
【0220】
他の実施形態では、多重特異性、例えば、二重特異性抗体分子は、
(i)第1の重鎖ポリペプチド(HCP1)(例えば、第1重鎖可変領域(第1のVH)、第1のCH1、第1の重鎖定常領域の1つ、2つ、3つ、またはすべてを含む重鎖ポリペプチド(例えば、第1CH2、第1CH3、または両方))、例えば、HCP1は第1のエピトープに結合する;
(ii)第2の重鎖ポリペプチド(HCP2)(例えば、第2の重鎖可変領域(第2のVH)、第2のCH1、第2の重鎖定常領域の1、2、3またはすべてを含む重鎖ポリペプチド(例えば、第2のCH2、第2のCH3、または両方))、例えば、HCP2は第2のエピトープに結合する;
(iii)第1重鎖ポリペプチド(例えば、第1VH)と永続的に結合するラムダ軽鎖ポリペプチド(LLCP1)(例えば、ラムダ軽可変領域(VLl)、ラムダ軽定常鎖(VLl)、またはその両方)、例えば、LLCP1は第1のエピトープに結合する、および
(iv)第2重鎖ポリペプチド(例えば、第2VH)と永続的に結合するカッパ軽鎖ポリペプチド(KLCP2)(例えば、ラムダ軽可変領域(VLk)、ラムダ軽定常鎖(VLk)、またはその両方)、例えば、KLCP2が第2のエピトープに結合する場合
を含む。
【0221】
実施形態では、第1および第2の重鎖ポリペプチドは、ヘテロ二量体化を促進するFc界面を形成する。実施形態において、多重特異性抗体分子は、Fc定常、CH2−CH3ドメイン(ノブ改変を有する)に接続された第1の重鎖可変領域にヘテロ二量体化されたハイブリッドVLl−CLlを含む第1結合特異性、およびFc定常、CH2−CH3ドメイン(ホールの改変を有する)に接続された第2の重鎖可変領域にヘテロ二量体化されたハイブリッドVLk−CLk含む第2結合特異性を有する。
【0222】
非隣接ポリペプチドを含む多重特異性分子
一実施形態では、多重特異性分子は単一のポリペプチド鎖ではない。
【0223】
一実施形態では、抗体分子は、2つの完全な重鎖と2つの完全な軽鎖を含む。一実施形態では、少なくとも2つまたは少なくとも3つの非隣接ポリペプチド鎖を有する多重特異性分子は、例えば、本書に記載されているような、少なくとも2つの非隣接ポリペプチド鎖に第1および第2の重鎖定常領域(例えば、第1および第2のFc領域)を含む。
【0224】
実施形態において、多重特異性分子は二重特異性または二機能性分子であり、第1および第2のポリペプチド(i)および(ii)は隣接しておらず、例えば、2つの別個のポリペプチド鎖である。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチド(i)および(ii)は、例えば、Eu番号付けシステムに基づいて番号付けされた、ヒトIgG1のFc領域の347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、397、398、399、405、407、または409のうちの1つまたは複数から選択される位置に、対のアミノ酸置換を含む。例えば、第1の重鎖定常領域(例えば、第1のFc領域)は、T366S、L368A、またはY407V(例えば、空洞またはホールに対応する)から選択されるアミノ酸置換を含むことができ、第2の重鎖定常領域(例えば、第2のFc領域)は、Eu番号付けシステムに基づいて番号付けされたT366W(例えば、突起またはノブに対応する)を含む。一部の実施形態では、第1および第2のポリペプチドは、ヘテロ二量体の第1および第2のFc領域の第1および第2のメンバーである。
【0225】
一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、NからCまでの以下の構成を有する:
(a)リンカーを介して第1重鎖定常領域に接続されていてもよい第1抗原、例えば、CSF1Rに結合されるFab分子の第1VH−CH1などの第1の抗原ドメインの第1部分(例えば、CH3領域に接続されたCH2)(例えば、第1のFc領域);(b)リンカーを介して第2重鎖定常領域に接続されていてもよい第2抗原、例えば、CCR2またはCXCR2に結合されるFab分子の第2VH−CH1などの第2の抗原ドメインの第1部分(例えば、CH3領域に接続されたCH2)(例えば、第1のFc領域);(c)NからCまで次の構成を有する第3ポリペプチド:第1抗原ドメインの第2部分、例えば、Fabの第1VL−CL、ここでVLはカッパサブタイプであり、第1抗原に結合する、例えば、CSF1R(例えば、第1のVH−CH1によって結合された同じ抗原);(d)第4のポリペプチドは、NからCまでの以下の構成を有する:第2の抗原ドメインの第2の部分、例えば、Fabの第2のVL−CLドメイン、ここでLがラムダサブタイプであり、第2の抗原、例えば、癌抗原、例えば、CCR2またはCXCR2(例えば、第2のVH−CH1により結合された同じ抗原)に結合する。
【0226】
実施形態において、第1の重鎖定常領域(例えば、第1のCH2−CH3領域)は、例えば、本明細書に記載されるように、突起またはノブを含む。実施形態において、第2の重鎖定常領域(例えば、第2のCH2−CH3領域)は、空洞またはホールを含む。実施形態では、第1および第2の重鎖定常領域は、二重特異性分子のヘテロ二量体化を促進する。
【0227】
核酸
本発明はまた、本明細書に記載のように、抗体分子の重鎖および軽鎖可変領域およびCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を特徴とする。例えば、本発明は、本明細書に開示される抗体分子の1つ以上から選択される抗体分子の重鎖および軽鎖可変領域をそれぞれコードする第1および第2の核酸を特徴とする。核酸は、本明細書の表に記載されているヌクレオチド配列、またはそれと実質的に同一の配列(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%またはそれ以上同一の配列、または本明細書の表に示された配列から3、6、15、30、または45ヌクレオチド以下異なる配列)を含むことができる。
【0228】
特定の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの少なくとも1、2、または3つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列、またはそれに実質的に相同な配列(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の配列、および/または1つ以上の置換、例えば、保存された置換を有する配列)を含むことができる。他の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域からの少なくとも1、2、または3つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列、またはそれに実質的に相同な配列(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の配列、および/または1つ以上の置換、例えば、保存された置換を有する配列)を含むことができる。さらに別の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの少なくとも1、2、3、4、5、または6つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列、またはそれに実質的に相同な配列(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の配列、および/または1つ以上の置換、例えば、保存された置換を有する配列)を含むことができる。
【0229】
特定の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のヌクレオチド配列を有する重鎖可変領域からの少なくとも1、2、または3つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列を含むことができ、配列は実質的に相同である(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の配列、および/または本明細書に記載のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる配列である)。別の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のヌクレオチド配列を有する軽鎖可変領域からの少なくとも1、2、または3つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列を含むことができ、または配列は実質的に相同である(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の配列、および/または本明細書に記載のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる配列である)。さらに別の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のヌクレオチド配列を有する軽鎖可変領域からの少なくとも1、2、3、4、5、または6つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列を含むことができ、または配列は実質的に相同である(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の配列、および/または本明細書に記載のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる配列である)。
【0230】
別の態様において、本願は、本明細書に記載の核酸を含む宿主細胞およびベクターを特徴とする。核酸は、本明細書で以下により詳細に記載されるように、同じ宿主細胞または別個の宿主細胞に存在する単一ベクターまたは別個のベクターに存在してもよい。
【0231】
ベクター
本明細書にさらに記載されるのは、本明細書に記載される抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むベクターである。一実施形態では、ベクターは、本明細書に記載の抗体分子をコードするヌクレオチドを含む。一実施形態では、ベクターは本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む。ベクターには、ウイルス、プラスミド、コスミド、ラムダファージまたは酵母人工染色体(YAC)が含まれるが、これらに限定されない。
【0232】
多数のベクターシステムを使用できる。例えば、あるクラスのベクターは、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(ラウス肉腫ウイルス、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウイルスなどの動物のウイルスに由来するDNA要素を利用する。別のクラスのベクターは、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、フラビウイルスなどのRNAウイルスに由来するRNA要素を利用する。
【0233】
さらに、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたは複数のマーカーを導入することにより、DNAを染色体に安定して組み込んだ細胞を選択することができる。マーカーは、例えば、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質)、または銅などの重金属に対する耐性などを提供し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接リンクされるか、同時形質転換によって同じ細胞に導入される。mRNAの最適な合成には、追加の要素も必要になる場合がある。これらの要素には、スプライスシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサー、および終結シグナルが含まれる場合がある。
【0234】
発現ベクターまたは構築物を含むDNA配列が発現のために調製されると、発現ベクターは適切な宿主細胞にトランスフェクトまたは導入され得る。これを達成するために、例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、遺伝子銃、脂質ベースのトランスフェクションまたは他の従来の技法などの様々な技法を使用することができる。プロトプラスト融合の場合、細胞を培地で増殖させ、適切な活性についてスクリーニングする。結果として生じるトランスフェクトされた細胞を培養し、産生された抗体分子を回収する方法および条件は、当業者に知られており、本説明に基づいて、使用される特定の発現ベクターおよび哺乳動物宿主細胞に応じて、変更または最適化することができる。
【0235】
細胞
別の態様において、本願は、本明細書に記載の核酸を含む宿主細胞およびベクターを特徴とする。核酸は、同じ宿主細胞または別個の宿主細胞に存在する単一ベクターまたは別個のベクターに存在してもよい。宿主細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、または原核細胞、例えば、大腸菌であり得る。例えば、哺乳動物細胞は、培養細胞または細胞株であり得る。例示的な哺乳動物細胞には、リンパ球細胞系(例えば、NSO)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS細胞、卵母細胞細胞、およびトランスジェニック動物由来の細胞、例えば、乳腺上皮細胞が含まれる。
【0236】
本発明はまた、本明細書に記載の抗体分子をコードする核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0237】
一実施形態では、宿主細胞は、抗体分子をコードする核酸を含むように遺伝子操作される。
【0238】
一実施形態において、宿主細胞は、発現カセットを使用することにより遺伝子操作される。「発現カセット」という語句は、ヌクレオチド配列を指し、これは、そのような配列と適合する宿主における遺伝子の発現に影響を与えることができる。そのようなカセットは、プロモーター、イントロンを伴うまたは伴わないオープンリーディングフレーム、および終結シグナルを含み得る。例えば、誘導性プロモーターなど、発現をもたらすのに必要または有用な追加の因子も使用できる。
【0239】
本発明は、本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0240】
細胞は、真核細胞、細菌細胞、昆虫細胞、またはヒト細胞であり得るが、これらに限定されない。適切な真核細胞には、Vero細胞、HeLa細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞およびMDCKII細胞が含まれるが、これらに限定されない。適切な昆虫細胞には、Sf9細胞が含まれるが、これに限定されない。
【0241】
使用および併用療法
本明細書に記載の多重特異性分子は、単独で、または第2の治療法または第2の治療薬と組み合わせて、過剰増殖性障害、癌、または線維性障害を治療するために使用できる。
【0242】

本明細書に記載の方法は、例えば、本明細書に記載の医薬組成物を使用して、本明細書に記載の多重特異性分子を使用することにより、対象の癌を治療することを含む。また、対象の癌の症状を軽減または改善する方法、ならびに癌の増殖を阻害するおよび/または1つまたは複数の癌細胞を死滅させる方法も提供される。実施形態では、本明細書に記載の方法は、腫瘍のサイズを小さくする、および/または本明細書に記載の、または本明細書に記載の医薬組成物を投与された対象の癌細胞の数を減少させる。
【0243】
実施形態では、癌は血液癌である。実施形態では、血液癌は白血病またはリンパ腫である。本明細書で使用される場合、「血液癌」は、造血またはリンパ組織の腫瘍、例えば、血液、骨髄、またはリンパ節に影響を及ぼす腫瘍を指す。例示的な血液悪性腫瘍には、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、急性単球性白血病(AMoL)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、または大顆粒リンパ球性白血病、リンパ腫(例えば、AIDS関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫(例えば、古典的ホジキンリンパ腫または結節リンパ球優勢ホジキンリンパ腫)、菌状息肉腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球大細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、またはマントル細胞リンパ腫)またはT細胞非ホジキンリンパ腫(菌状息肉腫、未分化大細胞リンパ腫、または前駆Tリンパ芽球性リンパ腫))、原発性中枢神経系リンパ腫、セザリー症候群、ワルデンストロームマクログロブリン血症)、慢性骨髄増殖性新生物、ランゲルハンス細胞組織球症、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、または骨髄異形成/骨髄増殖性新生物が含まれるが、これらに限定されない。
【0244】
実施形態では、癌は固形癌である。例示的な固形癌には、卵巣癌、直腸癌、胃癌、精巣癌、肛門領域の癌、子宮癌、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、小腸癌、食道癌、黒色腫、カポジ肉腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮癌、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、類表皮癌、子宮頸部扁平上皮癌、卵管癌、子宮内膜癌、膣の癌、軟部組織の肉腫、尿道の癌、外陰部の癌、陰茎の癌、膀胱の癌、腎臓または尿管の癌、腎盂癌、脊椎軸腫瘍、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、前述の癌の転移病変、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0245】
特定の実施形態では、癌は上皮性、間葉性または血液悪性腫瘍である。特定の実施形態において、治療される癌は、固形腫瘍(例えば、カルチノイド、癌腫または肉腫)、軟部組織腫瘍(例えば、ヘム悪性腫瘍)、および転移病変、例えば、本明細書に開示される癌のいずれかの転移病変である。一実施形態では、治療される癌は、線維性または線維形成性固形腫瘍、例えば、限られた腫瘍灌流、圧迫血管、線維性腫瘍間質、または間質液圧の増加のうちの1つ以上を有する腫瘍である。一実施形態では、固形腫瘍は、膵臓(例えば、膵臓腺癌または膵管腺癌)、乳房、結腸、結腸直腸、肺(例えば、小細胞肺癌(SCLC)または非小細胞肺癌(NSCLC))、皮膚、卵巣、肝臓の癌、食道癌、子宮内膜癌、胃癌、頭頸部癌、腎臓、または前立腺癌の1つまたは複数から選択される。
【0246】
癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。そのような癌のより具体的な例は以下に記載されており、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、小細胞肺癌を含む肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌といった胃癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓の癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓の癌、肛門癌、陰茎癌、ならびに頭頸部癌を含む。「癌」という用語には、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、元の悪性腫瘍または腫瘍の部位以外の対象の体内の部位に細胞が移動していないもの)および二次悪性細胞または腫瘍(例えば、転移から生じるもの、悪性細胞または腫瘍細胞の、元の腫瘍の部位とは異なる二次部位への移動)が含まれる。
【0247】
癌または悪性腫瘍の他の例には、急性小児リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発)肝細胞癌、成人(原発)肝癌、成人急性リンパ球性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキン病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ球性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝癌、成人軟部組織肉腫、エイズ関連リンパ腫、エイズ関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳癌、腎盂および尿管癌、中枢神経系(原発)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、脳星状細胞腫、子宮頸癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝臓癌、小児期急性リンパ芽球性白血病、小児期急性骨髄性白血病、小児脳幹グリオーマ、小児小脳星細胞腫、小児脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部および視覚経路リンパ腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児原発性肝癌、小児横紋筋肉腫、小児軟部組織肉腫、小児視覚経路および視床下部神経膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、膵臓内分泌膵島細胞癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連腫瘍、外分泌膵癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、女性乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、有毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌、膵島細胞膵癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇および口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖性疾患、マクログロブリン血症、男性乳癌、悪性腫瘍、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、転移性潜在性扁平上皮頸部癌、転移性原発扁平上皮癌、転移性扁平上皮癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/血漿細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、潜在性原発性転移性扁平上皮頸部癌、中咽頭癌、骨/悪性線維肉腫、骨肉腫/骨肉腫線維性組織球腫、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性腫瘍、膵臓癌、パラプロテイン血症、紫斑病、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂および尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性および松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣腫瘍、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行上皮細胞癌、移行性腎盂および尿管癌、絨毛腫瘍、尿管および腎盂癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚経路および視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンストロームのマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、および上記の臓器系に存在する腫瘍以外の他のいずれかの過増殖性疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0248】
他の実施形態において、上記および本明細書に記載の多重特異性分子は、過剰増殖性障害、例えば、過剰増殖性結合組織障害(例えば、過剰増殖性線維性疾患)を治療するために使用される。一実施形態では、過剰増殖性線維性疾患は、全身性または臓器特異的である。例示的な過剰増殖性線維性疾患には、多体系性(例えば、全身性硬化症、多病巣性線維硬化症、骨髄移植レシピエントにおける強皮腫移植片対宿主病、腎性全身性線維症、強皮症)、および臓器特異的障害(例えば、眼、肺、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、皮膚およびその他の臓器の線維症)が含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態では、障害は肝硬変または結核から選択される。他の実施形態において、障害はハンセン病である。
【0249】
実施形態において、多重特異性分子(または医薬組成物)は、治療または予防される疾患に適切な方法で投与される。投与の量と頻度は、患者の状態、患者の病気の種類と重症度などの要因によって決まる。適切な投与量は、臨床治験によって決定される場合がある。例えば、「有効量」または「治療量」が示される場合、投与される医薬組成物(または多重特異性分子)の正確な量は、腫瘍の大きさ、感染または転移、の程度年齢、体重、および対象の状態の個人差を考慮して医師が決定できる。実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、10〜10細胞/kg体重、例えば、10〜10細胞/kg体重の用量で投与することができ、それらの範囲内のすべての整数値を含む。実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、これらの用量で複数回投与することができる。実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、免疫療法に記載される注入技術を使用して投与され得る(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988を参照)。
【0250】
実施形態では、多重特異性分子または医薬組成物は、対象に非経口投与される。実施形態では、細胞は、静脈内、皮下、腫瘍内、結節内、筋肉内、皮内、または腹腔内にて対象に投与される。実施形態では、細胞は、腫瘍またはリンパ節に直接投与、例えば、注射される。実施形態では、細胞は、輸液(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988に記載されているように)または静脈内プッシュとして投与される。実施形態では、細胞は注射可能なデポー製剤として投与される。
【0251】
実施形態では、対象は哺乳動物である。実施形態では、対象は、ヒト、サル、ブタ、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラット、またはマウスである。実施形態では、対象はヒトである。実施形態において、対象は、例えば、18歳未満、例えば、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1歳、またはそれ未満の年齢の小児対象である。実施形態において、対象は、例えば、少なくとも18歳、例えば、少なくとも19、20、21、22、23、24、25、25〜30歳、30〜35歳、35〜40歳、40〜50歳、50〜60歳、60〜70歳、70〜80歳、または80〜90歳などの成人である。
【0252】
肝臓の状態または障害
本発明はまた、本明細書に記載の多重特異性分子または医薬組成物を使用して肝臓の状態または障害を治療する方法を提供する。
【0253】
本明細書で使用される場合、「肝臓障害療法」は、本明細書に記載の肝臓障害を治療または予防するために使用される療法または治療薬を指し、したがって、肝癌療法および他の肝障害療法、例えば、線維性肝障害、脂肪肝疾患、肝炎症障害、自己免疫性肝疾患、および遺伝病、アルコール依存症、薬物毒性、感染、または傷害によって引き起こされる肝障害の療法を包含する。
【0254】
肝癌の例には、肝細胞癌(HCC)、原発性肝細胞癌、肝癌、線維層癌、限局性結節性過形成、胆管肉腫、肝内胆管癌、血管肉腫または血管肉腫、肝腺腫、肝血管腫、肝過誤腫、肝芽腫、乳児良性血管内皮腫、肝臓の混合腫瘍、間葉組織の腫瘍、肝臓の肉腫が含まれる。肝臓に転移する可能性のある癌の例には、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、腎臓癌または腎癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、直腸癌、皮膚癌(例えば、黒色腫)、胃癌(胃腸癌を含む)、および子宮癌が含まれる。
【0255】
実施形態では、肝臓障害は、肝臓の機能または生理に影響を及ぼす線維性障害または結合組織障害である。一実施形態では、線維性障害または結合組織障害は、全身性(全身に影響を及ぼす)、多臓器、または臓器特異的(例えば、肝臓特異的)であり得る。線維性肝障害の例には、肝線維症(肝の線維症)、肝硬変、および細胞外マトリックスタンパク質の蓄積に関連する任意の障害、例えば、肝臓のコラーゲン、肝臓の瘢痕、および/または異常な肝血管が含まれる。肝線維症は、肝臓の炎症または損傷によって引き起こされ、コラーゲンを含む細胞外マトリックスタンパク質および肝臓の瘢痕組織の蓄積を引き起こす。肝硬変は、肝線維症の最終段階であり、(修復プロセスの結果として)再生結節を伴い、肝血管系の歪みを伴う。肝線維症は、慢性ウイルス感染症(B型肝炎、C型肝炎など)、アルコール依存症、脂肪肝疾患によって最も一般的に引き起こされる。
【0256】
脂肪肝疾患の例には、脂肪肝(またはFLD)、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性脂肪性肝炎、単純脂肪症、ライ症候群、および肝細胞における脂質の異常保持に関連するいずれかの障害が含まれる。
【0257】
一実施形態では、肝疾患はNASHである。
【0258】
代謝障害は肝臓にも影響を及ぼし、肝臓障害を引き起こす可能性がある。肝臓の代謝障害または肝臓に影響を与える例には、ヘマクロマトーシス、糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症、ガラクトース血症、およびグリコーゲン蓄積症が含まれる。
【0259】
肝臓の自己免疫疾患または肝臓に影響を及ぼす疾患には、全身性疾患または肝臓以外の臓器に主に影響を与えるが、肝細胞または肝機能に二次的な影響を与える疾患が含まれる。そのような自己免疫障害の例には、自己免疫性肝炎(AIH)、自己免疫性肝疾患、ループ状肝炎、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、強皮症、および全身性硬化症が含まれる。
【0260】
線維性疾患または障害
別の態様では、本発明は、対象の線維性状態または線維性障害を治療または予防する方法を特徴とする。この方法は、多重特異分子を、単一薬剤として、または別の薬剤または治療様式と組み合わせて、それを必要とする対象に、対象の線維性状態を減少または阻害するのに十分な量で投与することを含む。
【0261】
特定の実施形態では、線維症の低減、または線維性状態の治療は、組織線維症の形成または沈着の1つまたは複数を低減または抑制すること;線維性病変のサイズ、細胞性(例えば、線維芽細胞または免疫細胞数)、組成または細胞の含有物を減少させること;線維性病変のコラーゲンまたはヒドロキシプロリン含有量を減らすこと;線維形成タンパク質の発現または活性を低下させること;炎症反応に関連する線維症を軽減させること;線維症に関連する体重減少を減少させること;または生存率を高めることを含む。
【0262】
特定の実施形態では、線維性状態は原発性線維症である。一実施形態では、線維性状態は特発性である。他の実施形態において、線維性状態は、疾患(例えば、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、悪性疾患または癌性疾患、および/または結合疾患);毒素;傷害(例えば、環境ハザード(例えば、アスベスト、石炭粉、多環芳香族炭化水素)、喫煙の煙、傷);医学的治療(例えば、外科的切開、化学療法または放射線)、またはそれらの組み合わせに関連する(例えば、続発する)。
【0263】
特定の実施形態では、線維性状態は、肺の線維性状態、肝臓の線維性状態(例えば、本明細書に記載)、心臓または血管系の線維性状態、腎臓の線維性状態、皮膚の線維性状態、胃腸管の線維性状態、骨髄または造血組織の線維性状態、神経系の線維性状態、眼の線維性状態、またはそれらの組み合わせである。
【0264】
特定の実施形態では、線維性状態は肺の線維性状態である。特定の実施形態では、肺の線維性状態は、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、通常の間質性肺炎(UIP)、間質性肺疾患、潜在性線維化肺胞炎(CFA)、気管支拡張症、および強皮症の肺疾患の1つまたは複数から選択される。一実施形態では、肺の線維症は、疾患、毒素、傷害、医学的治療、またはそれらの組み合わせに続発する。例えば、肺の線維症は、石綿肺や珪肺などの疾患のプロセス;職業上の危険;環境汚染物質;喫煙;自己免疫性結合組織障害(例えば、関節リウマチ、強皮症、全身性エリテマトーデス(SLE));サルコイドーシスなどの結合組織障害;感染性疾患、例えば、感染症、特に慢性感染症;放射線療法、薬物療法、例えば、化学療法を含むがこれらに限定されない医学的治療(ブレオマイシン、メトトレキサート、アミオダロン、ブスルファン、および/またはニトロフラントインによる治療など)のうちの1つまたは複数に関連している可能性がある(例えば、続発する)。一実施形態では、本発明の方法で治療される肺の線維性状態は、癌治療、例えば、癌(例えば、ブレオマイシンによる扁平上皮癌、精巣癌、ホジキン病の治療)に関連する(例えば、続発する)。一実施形態では、肺の線維性状態は、自己免疫結合組織障害(例えば、強皮症またはループス、例えば、SLE)に関連している。
【0265】
肺線維症は、石綿肺や珪肺などの疾患のプロセスの二次的な影響として発生する可能性があり、環境汚染物質への暴露が職業上の危険である炭鉱労働者、船舶労働者、サンドブラスターなどの特定の職業でより一般的であることが知られている(Green,FH et al.(2007)Toxicol Pathol.35:136−47)。肺線維症に寄与する他の要因には、喫煙、および関節リウマチ、強皮症、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫結合組織障害が含まれる(Leslie,KO et al.(2007)Semin Respir Crit Care Med.28:369−78;Swigris, JJ et al.(2008)Chest.133:271−80;and Antoniou,KM et al.(2008)Curr Opin Rheumatol.20:686−91)。サルコイドーシスなどの他の結合組織障害には、疾患の一部として肺線維症が含められ(Paramothayan,S et al.(2008)Respir Med.102:1−9)、肺の感染性疾患は、長期的な感染症の結果として線維症、特に慢性感染症を引き起こす可能性がある。
【0266】
肺線維症は、特定の医学的治療、特に胸部への放射線療法、ブレオマイシン、メトトレキサート、アミオダロン、ブスルファン、ニトロフラントインなどの特定の薬の副作用になる可能性もある(Catane,R et al.(1979)Int J Radiat Oncol Biol Phys.5:1513−8;Zisman,DA et al.(2001)Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis.18:243−52;Rakita,L et al.(1983)Am Heart J.106:906−16;Twohig,KJ et al.(1990)Clin Chest Med.11:31−54;およびWitten CM.(1989)Arch Phys Med Rehabil.70:55−7)。他の実施形態において、特発性肺線維症は、明確な原因因子または疾患を特定できない場合に発生する可能性がある。これらの肺線維症の場合、遺伝因子が重要な役割を果たす可能性がある(Steele,MP et al.(2007)Respiration 74:601−8;Brass,DM et al.(2007)Proc Am Thorac Soc.4:92−100、およびdu Bois RM.(2006)Semin Respir Crit Care Med.27:581−8)。
【0267】
他の実施形態では、肺線維症には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸促迫症候群、強皮症、胸膜線維症、慢性喘息、急性肺症候群、アミロイドーシス、気管支肺異形成、カプラン病、ドレスラー症候群、組織球症X、特発性肺血腫症、リンパ管筋腫症、僧帽弁狭窄症、多発性筋炎、肺水腫、肺高血圧症(例えば、特発性肺高血圧症(IPH))、塵肺症、放射線療法(例えば、放射線誘発線維症)、リウマチ性疾患、シェイバー病、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、熱帯性肺好酸球増加症、結節性硬化症、ウェーバー・クリスチャン病、ウェゲナー肉芽腫症、ホイップル病、または毒素または刺激物への暴露(例えば、アミオダロン、ブレオマイシン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムフェニコール、ヘキサメトニウム、メトトレキサート、メチセルギド、ミトマイシンC、ニトロフラントイン、ペニシラミン、ペプロマイシン、およびプラクトロール;タルクまたは粉塵、例えば、石炭粉塵、シリカの吸入)などの医薬的な薬物に関連する肺線維症が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、肺線維症は、肺の炎症性障害、例えば、喘息、および/またはCOPDに関連している。
【0268】
特定の実施形態では、線維性状態は肝臓の線維性状態である。特定の実施形態では、肝臓の線維性状態は、脂肪肝疾患、脂肪症(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性肝硬変(PBC))、肝硬変、アルコール誘発性肝線維症、胆管損傷、胆管線維症、または胆管障害の1つまたは複数から選択される。他の実施形態において、肝線維症または肝線維症には、アルコール依存症、ウイルス感染症、例えば、肝炎(例えば、C型肝炎、B型肝炎またはD型肝炎)、自己免疫性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、進行性の巨大線維症、毒素または刺激物への暴露(例えば、アルコール、医薬品、環境毒素)に関連する肝線維症が含まれるが、これらに限定されない。肝臓の状態および障害の追加の例は、本明細書で提供される「肝臓の状態または障害」と題されたセクションで提供される。
【0269】
特定の実施形態では、線維性状態は腎臓の線維性状態である。特定の実施形態では、腎臓の線維性状態は、腎線維症(例えば、慢性腎線維症)、傷害/線維症に関連する腎症(例えば、糖尿病に関連する慢性腎症(例えば、糖尿病性腎症))、ループス、腎臓の強皮症、糸球体腎炎、限局性糸球体硬化症、ヒト慢性腎疾患(CKD)に伴うIgA腎症腎線維症、慢性進行性腎症(CPN)、尿細管間質性線維症、尿管閉塞、慢性尿毒症、慢性間質性腎炎、放射線腎症、糸球体硬化症、進行性糸球体腎症(PGN)、内皮/血栓性微小血管障害、HIV関連腎症、または毒素、刺激物、または化学療法剤への暴露に関連する線維症の1つ以上から選択される。一実施形態では、腎臓の線維性状態は腎臓の強皮症である。いくつかの実施形態において、腎臓の線維性状態は、移植腎症、糖尿病性腎症、ループス腎炎、限局性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内皮/血栓性微小血管障害、腎臓の強皮症、HIV関連腎症(HIVVAN)、または毒素、刺激物、化学療法剤への暴露である。
【0270】
特定の実施形態では、線維性状態は、骨髄または造血組織の線維性状態である。特定の実施形態では、骨髄の線維性状態は、原発性骨髄線維症(本明細書では無造血骨髄化生または慢性特発性骨髄線維症とも呼ばれる)などの骨髄の慢性骨髄増殖性新生物の固有の特徴である。他の実施形態において、骨髄線維症は、悪性状態またはクローン増殖性疾患によって引き起こされる状態に関連する(例えば、続発する)。他の実施形態において、骨髄線維症は、血液疾患(例えば、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、骨髄異形成、有毛細胞白血病、リンパ腫(例えば、ホジキンまたは非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫または慢性骨髄性白血病(CML)の1つまたは複数から選択される血液学的障害)に関連している。さらに他の実施形態において、骨髄線維症は、非血液学的障害(例えば、骨髄への固形腫瘍転移から選択される非血液学的障害、自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織障害、または多発性筋炎)、感染症(結核、ハンセン病など)、またはビタミンD欠乏に伴う二次性副甲状腺機能亢進症に関連する(例えば、続発する)。いくつかの実施形態では、線維性状態は特発性または薬物誘発性の骨髄線維症である。いくつかの実施形態では、骨髄または造血組織の線維性状態は、全身性エリテマトーデスまたは強皮症に関連している。
【0271】
他の実施形態において、線維性状態は、ハンセン病または結核に関連している。
【0272】
特定の実施形態において、線維性状態は、骨髄の線維性状態である。特定の実施形態において、骨髄の線維性状態は、骨髄線維症(例えば、原発性骨髄線維症(PMF))、骨髄化生、慢性特発性骨髄線維症、または原発性骨髄線維症である。他の実施形態では、骨髄線維症は、有毛細胞白血病、リンパ腫、または多発性骨髄腫の1つまたは複数から選択される血液学的障害に関連している。
【0273】
他の実施形態において、骨髄線維症は、本態性血小板血症(ET)、真性赤血球増加症(PV)、肥満細胞症、慢性好酸球性白血病、慢性好中球性白血病、または他のMPNから選択される1つまたは複数の骨髄増殖性腫瘍(MPN)に関連している。
【0274】
一実施形態では、線維性状態は原発性骨髄線維症である。原発性骨髄線維症(PMF)(文献では特発性骨髄性化生およびAgnogenic骨髄性化生とも呼ばれる)は、多能性造血前駆細胞のクローン障害である(Abdel−Wahab,O.et al.(2009)Annu.Rev.Med.60:233−45;Varicchio,L.et al.(2009)Expert Rev.Hematol.2(3):315−334;Agrawal,M.et al.(2010)Cancer 1−15)にてレビュー)。
【0275】
特定の実施形態において、線維性状態は、心臓の線維性状態である。特定の実施形態では、心臓の線維性状態は、心筋線維症(例えば、放射線心筋炎に関連する心筋線維症、外科手術合併症(例えば、心筋術後線維症)、感染性疾患(例えば、シャーガス病、細菌、旋毛虫症または真菌性心筋炎));肉芽腫性の代謝性貯蔵障害(例えば、心筋症、ヘモクロマトーシス);発達障害(例えば、心内膜線維弾性症);動脈硬化、または毒素または刺激物への暴露(例えば、薬物誘発性心筋症、薬物誘発性心毒性、アルコール性心筋症、コバルト中毒または暴露)である。特定の実施形態において、心筋線維症は、心臓組織の炎症性障害(例えば、心筋サルコイドーシス)に関連している。いくつかの実施形態では、線維性状態は、心筋梗塞に関連する線維性状態である。いくつかの実施形態では、線維性状態は、うっ血性心不全に関連する線維性状態である。
【0276】
いくつかの実施形態において、線維性状態は、強皮症またはループスから選択される自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデスに関連している。
【0277】
いくつかの実施形態において、線維性状態は全身性である。いくつかの実施形態では、線維性状態は、全身性硬化症(例えば、限局性全身性硬化症、びまん性全身性硬化症、または全身性硬化症のサイン強皮症)、腎性全身性線維症、嚢胞性線維症、慢性移植片対宿主病、またはアテローム性動脈硬化症である。
【0278】
いくつかの実施形態では、線維症は強皮症である。いくつかの実施形態において、強皮症は、限局性、例えば、形態または線形強皮症である。いくつかの実施形態では、状態は、全身性硬化症、例えば、限定された全身性硬化症、びまん性全身性硬化症、または全身性硬化症のサイン強皮症である。
【0279】
他の実施形態では、線維性状態は、筋肉、腱、軟骨、皮膚(例えば、皮膚表皮または内皮)、心臓組織、血管組織(例えば、動脈、静脈)、膵臓組織、肺組織、肝臓組織、腎臓組織、子宮組織、卵巣組織、神経組織、精巣組織、腹膜組織、結腸、小腸、胆道、腸、骨髄、造血組織、または眼(例えば、網膜)組織のうちの1つ以上から選択される組織に影響を及ぼす。
【0280】
いくつかの実施形態では、線維性状態は眼の線維性状態である。いくつかの実施形態では、線維性状態は、緑内障、黄斑変性症(例えば、加齢黄斑変性症)、黄斑浮腫(例えば、糖尿病性黄斑浮腫)、網膜症(例えば、糖尿病性網膜症)、またはドライアイ疾患である。
【0281】
特定の実施形態において、線維性状態は、皮膚の線維性状態である。特定の実施形態では、皮膚の線維状態は、皮膚線維症(例えば、肥厚性瘢痕、ケロイド)、強皮症、腎性全身性線維症(例えば、重度の腎不全の患者における、ガドリニウムへの暴露後に生じる(MRIの造影剤として頻繁に使用される)、およびケロイドの1つまたは複数から選択される。
【0282】
特定の実施形態において、線維性状態は、胃腸管の線維性状態である。特定の実施形態では、線維性状態は、強皮症に関連する線維症;および放射線誘発腸線維症;バレット食道や慢性胃炎などの前腸の炎症性疾患に関連する線維症、および/または炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病などの後腸の炎症性疾患に関連する線維症の1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、胃腸管の線維性状態は強皮症に関連する線維症である。
【0283】
一実施形態では、線維性状態は慢性線維性状態または障害である。特定の実施形態では、線維性状態は炎症性状態または障害に関連している。
【0284】
いくつかの実施形態において、線維症および/または炎症状態は、骨髄炎、例えば、慢性骨髄炎である。
【0285】
いくつかの実施形態では、線維症はアミロイドーシスである。特定の実施形態では、アミロイドーシスは慢性骨髄炎に関連している。
【0286】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の組成物は、1つ以上の他の治療薬と組み合わせて投与される。例示的な治療薬には、抗線維症薬、コルチコステロイド、抗炎症薬、免疫抑制薬、化学療法薬、代謝拮抗薬、および免疫調節薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0287】
肝線維症の治療のための(1または複数の)組成物と組み合わせて使用するのに適した治療薬の例には、アデホビルジピボキシル、カンデサルタン、コルヒチン、結合ATG、ミコフェノール酸モフェチル、およびタクロリムス、シクロスポリンマイクロエマルジョンおよびタクロリムスの組み合わせ、エラストメトリー、エベロリムス、FG−3019、Fuzheng Huayu、GI262570、グリチルリチン(グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリシン、L−システイン一塩酸塩)、インターフェロンガンマ−1b、イルベサルタン、ロサルタン、オルティプラズ、ORAL IMPACT(登録商標)、ペグインターフェロンアルファ−2a、ペグインターフェロン2aおよびリバビリンの組み合わせ、ペグインターフェロンアルファ−2b(SCH 54031)、ペグインターフェロンアルファ−2bおよびリバビリンの組み合わせ、プラジカンテル、プラゾシン、ラルテグラビル、リバビリン(REBETOL(登録商標)、SCH 18908)、リトナビルブーストプロテアーゼ阻害剤、ペントキシフィリン、タクロリムス、タウロウルソデオキシコール酸、トコフェロール、ウルソジオール、ワルファリン、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0288】
併用療法
本明細書で開示される多重特異性分子は、第2の治療薬または処置と組み合わせて使用することができる。
【0289】
実施形態において、多重特異性分子および第2の治療薬または処置は、対象が癌と診断された後、例えば、癌が対象から除去される前に投与/実施される。実施形態において、多重特異性分子および第2の治療薬または処置は、同時にまたは同時発生的に投与/実施される。例えば、第2の治療の実施が開始されたとき、1つの治療の実施はまだ行われている。例えば、治療の実施に重複がある。他の実施形態では、多重特異性分子および第2の治療薬または処置は、連続的に投与/実施される。例えば、1つの治療の提供は、他の治療の提供が始まる前に停止する。
【0290】
実施形態では、併用療法は、いずれかの薬剤単独での単独療法よりも効果的な治療につながり得る。実施形態において、第1および第2の治療の併用は、第1または第2の治療単独よりも効果的である(例えば、症状および/または癌細胞の大幅な減少をもたらす)。実施形態において、併用療法は、単剤療法として投与される場合に同様の効果を達成するために通常必要とされる第1または第2の治療の用量と比較して、より低い用量の第1または第2の治療の利用を可能にする。実施形態では、併用療法は、部分的に相加的効果、完全に相加的効果、または相加的効果よりも大きい。
【0291】
一実施形態において、多重特異性分子は、療法、例えば、癌の治療法(例えば、抗癌剤、免疫療法、光線力学療法(PDT)、手術および/または放射線の1つまたは複数)と組み合わせて投与される。用語「化学療法剤(chemotherapeutic)」、「化学療法剤(chemotherapeutic agent)」、および「抗癌剤」は、本明細書で互換的に使用される。多重特異性分子の投与および治療、例えば、癌の治療は、連続的(重複ありまたはなし)または同時であり得る。多重特異性分子の投与は、治療過程(例えば、癌治療)の間、継続的または断続的であり得る。本明細書に記載の特定の療法は、癌および非癌性疾患の治療に使用することができる。例えば、本明細書に記載の方法および組成物(例えば、Agostinis,P.et al.(2011)CA Cancer J.Clin.61:250−281でレビュー)を使用して、癌性および非癌性状態(結核など)でPDTの有効性を高めることができる。
【0292】
抗癌療法
他の実施形態において、多重特異性分子は、低分子量の化学療法剤と組み合わせて投与される。例示的な低分子量の化学療法剤には、13−シス−レチノイン酸(イソトレチノイン、ACCUTANE(登録商標))、2−CdA(2−クロロデオキシアデノシン、クラドリビン、LEUSTATIN(商標))、5−アザシチジン(アザシチジン、VIDAZA(登録商標))、5−フルオロウラシル(5−FU、フルオロウラシル、ADRUCIL(登録商標))、6−メルカプトプリン(6−MP、メルカプトプリン、PURINETHOL(登録商標))、6−TG(6−チオグアニン、チオグアニン、チオグアニンタブロイド(登録商標))、アブラキサン(パクリタキセルタンパク質−結合)、アクチノマイシン−D(ダクチノマイシン、COSMEGEN(登録商標))、アリトレチノイン(PANRETIN(登録商標))、オールトランスレチノイン酸(ATRA、トレチノイン、VESANOID(登録商標))、アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン、HMM、HEXALEN(登録商標))、アメトプテリン(メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、MTX、TREXALL(商標)、RHEUMATREX(登録商標))、アミフォスチン(ETHYOL(登録商標))、アラビノシルシトシン(Ara−C、シタラビン、CYTOSAR−U(登録商標))、三酸化ヒ素(TRISENOX(登録商標))、アスパラギナーゼ(エルウィニアL−アスパラギナーゼ、L−アスパラギナーゼ、ELSPAR(登録商標)、KIDROLASE(登録商標))、BCNU(カルムスチン、BiCNU(登録商標))、ベンダムスチン(TREANDA(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))、ブレオマイシン(BLENOXANE(登録商標))、ブスルファン(BUSULFEX)(登録商標)、MYLERAN(登録商標))、カルシウムロイコボリン(シトロボラムファクター、フォリン酸、ロイコボリン)、カンプトテシン−11(CPT−11、イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、カルボプラチン(PARAPLATIN(登録商標))、カルムスチンウエハー(prolifeprospan 20 with carmustine implant、GLIADEL(登録商標)ウェーハ)、CCI−779(テムシロリムス、TORISEL(登録商標))、CCNU(ロムスチン、CeeNU)、CDDP(シスプラチン、PLATINOL(登録商標)、PLATINOL−AQ(登録商標))、クロラムブシル(ロイケラン)、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標))、ダカルバジン(DIC、DTIC、イミダゾールカルボキサミド、DTIC−DOME(登録商標))、ダウノマイシン(ダウノルビシン、ダウノルビシン塩酸塩、ルビドマイシンハイドロクロライド、セルビジン(登録商標))、デシタビン(DACOGEN(登録商標))、デキサゾキサン(ZINECARD(登録商標))、DHAD(ミトキサントロン、NOVANTRONE(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、RUBEX(登録商標))、エピルビシン(ELLENCE(商標))、エストラムスチン(EMCYT(登録商標))、エトポシド(VP−16、リン酸エトポシド、TOPOSAR(登録商標)、VEPESID(登録商標)、ETOPOPHOS(登録商標))、フロクスウリジン(FUDR(登録商標))、フルダラビン(FLUDARA(登録商標))、フルオロウラシル(クリーム)(CARAC(商標)、EFUDEX(登録商標)、FLUOROPLEX(登録商標))、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、ヒドロキシ尿素(HYDREA(登録商標)、DROXIA(商標)、MYLOCEL(商標))、idarubicin(IDAMYCIN(登録商標))、ifosfamide(IFEX(登録商標))、ixabepilone(IXEMPRA(商標))、LCR(leurocristine、vincristine、VCR、ONCOVIN(登録商標)、VINCASAR PFS(登録商標))、L−PAM(L−サルコリシン、メルファラン、フェニルアラニンマスタード、ALKERAN(登録商標))、メクロレタミン(塩酸メクロレタミン、ムスチン、ナイトロジェンマスタード、MUSTARGEN(登録商標))、メスナ(MESNEX(商標))、マイトマイシン(マイトマイシン−C、MTC、MUTAMYCIN(登録商標))、ネララビン(ARRANON(登録商標))、オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ONXAL(商標))、ペガスパルガーゼ(PEG−L−アスパラギナーゼ、ONCOSPAR(登録商標))、PEMETREXED(ALIMTA(登録商標))、ペントスタチン(NIPENT(登録商標))、プロカルバジン(MATULANE(登録商標))、ストレプトゾシン(ZANOSAR(登録商標))、テモゾロミド(TEMODAR(登録商標))、テニポシド(VM−26、VUMON(登録商標))、TESPA(チオホスホアミド、チオテパ、TSPA、THIOPLEX(登録商標))、トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、ビンブラスチン(硫酸ビンブラスチン、ビンカロイコブラスチン、VLB、ALKABAN−AQ(登録商標)、VELBAN(登録商標))、ビノレルビン(酒石酸ビノレルビン、NAVELBINE(登録商標))、およびボリノスタット(ZOLINZA(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0293】
別の実施形態では、多重特異性分子は生物製剤と組み合わせて投与される。癌の治療に有用な生物製剤は当技術分野で知られており、本発明の結合分子は、例えば、そのような知られている生物製剤と組み合わせて投与することができる。例えば、FDAは乳癌の治療のために次の生物学的製剤を承認している:ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ、ジェネンテック社、サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州;HER2陽性乳癌で抗腫瘍活性を有するヒト化モノクローナル抗体);FASLODEX(登録商標)(フルベストラント、AstraZeneca Pharmaceuticals、LP、デラウェア州ウィルミントン;乳癌の治療に使用されるエストロゲン受容体拮抗薬);ARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール、AstraZeneca Pharmaceuticals、LP;エストロゲンの生成に必要な酵素であるアロマターゼをブロックする非ステロイド性アロマターゼ阻害剤);アロマシン(登録商標)(エキセメスタン、ファイザー社、ニューヨーク州、ニューヨーク州;乳癌の治療に使用される不可逆的なステロイド性アロマターゼ不活性化剤);FEMARA(登録商標)(レトロゾール、ノバルティスファーマシューティカルズ、イーストハノーバー、ニュージャージー州;FDAにより乳癌の治療が承認された非ステロイドアロマターゼ阻害剤);およびNOLVADEX(登録商標)(タモキシフェン、AstraZeneca Pharmaceuticals、LP;FDAにより乳癌の治療が承認された非ステロイド性抗エストロゲン剤)。本発明の結合分子と組み合わせることができる他の生物製剤には、以下が含まれる:アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ、ジェネンテック社。血管新生を阻害するように設計された最初のFDA承認療法);およびZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン、Biogen Idec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州;B細胞リンパ腫の治療のために現在承認されている放射性標識モノクローナル抗体)。
【0294】
さらに、FDAは結腸直腸癌の治療のために以下の生物製剤を承認した:アバスチン(登録商標);ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ、ImClone Systems Inc.、ニューヨーク州、ニューヨーク、およびブリストル・マイヤーズスクイブ、ニューヨーク州、ニューヨーク;上皮成長因子受容体(EGFR)に対するモノクローナル抗体);GLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ;プロテインキナーゼ阻害剤);エルガミソール(登録商標)(レバミゾール塩酸塩、Janssen Pharmaceutica Products、
LP、タイタスビル、ニュージャージー州;デュークスのステージC結腸癌患者の外科的切除後の5−フルオロウラシルとの併用するアジュバント療法として1990年にFDAにより承認された免疫調節薬)。
【0295】
肺癌の治療のための例示的な生物製剤には、タルセバ(登録商標)(エルロチニブHCL、OSI Pharmaceuticals Inc.、ニューヨーク州メルビル、ヒト上皮成長因子受容体1(HER1)経路を標的とするように設計された小分子)が含まれる。
【0296】
多発性骨髄腫の治療のための例示的な生物学的製剤には、ベルケイド(登録商標)ベルケイド(ボルテゾミブ、ミレニアムファーマシューティカルズ、ケンブリッジマサチューセッツ、プロテアソーム阻害剤)が含まれる。追加の生物学的製剤には、サリドミド(登録商標)(サリドマイド、クレジーンコーポレーション、ウォーレン、ニュージャージー州;免疫調節剤であり、骨髄腫細胞の成長と生存を阻害する能力、および抗血管新生を含む複数の作用があるようである)が含まれる。
【0297】
追加の例示的な癌治療用抗体には、3F8、アバゴボマブ、アデカツマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴル、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標)、MABCAMPATH(登録商標))、アルテモマブペンテテート(HYBRI−CEAKER(登録商標))、アナツモマブマフェナトックス、アンルキンズマブ(IMA−638)、アポリズマブ、アルシツモマブ(CEA−SCAN(登録商標))、バビツキシマブ、ベクツモマブ(LYMPHOSCAN(登録商標))、ベリムマブ(BENLYSTA(登録商標)、LYMPHOSTAT−B(登録商標))、ベシレソマブ(SCINTIMUN(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、ビバツズマブセスタンシン、blinatumomab、ブレンツキシマブの丸薬、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド(PROSTASCINT(登録商標))、カツマキソマブ(REMOVAB(登録商標))、CC49、セツキシマブ(C225、アービタックス(登録商標))、シタツズマブボガトックス、シクスツムマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、デセツズマブ、デノスマブ(PROLIA(登録商標))、デツモマブ、ecromeximab、エドコロマブ(PANOREX(登録商標))、エロツズマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エルツマキソマブ(REXOMUN(登録商標))、エタラシズマブ、ファルレツズマブ、フィギツムマブ、フレソリムマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブオゾガミシン(MYLOTARG(登録商標))、ギレンツキシマブ、グレンバツムマブベドチン、ブリツモマブ(ブリツモマブチウキセタン、ゼバリン(登録商標))、ゴボマブ(INDIMACIS−125(登録商標))、インテツムマブ、ニツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、ラベツズマブ(CEA−CIDE(登録商標))、レキサタムマブ、ルズズマブ、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミトモマブ、ナコロマブタフェナトックス、ナプツモマブエスタフェナトックス、ネシツムマブ、ニモツズマブ(THERACIM(登録商標)、THERALOC(登録商標))、ノフェツモマブメルペンタン(VERLUMA(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、オララタム、オポルトツマブモナトックス、オレゴボマブ(OVAREX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ペムツモマブ(THERAGYN(登録商標))、パーツズマブ(OMNITARG(登録商標))、ピンツモマブ、プリツムマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、リロツムマブ、リツキシマブ(MABTHERA(登録商標)、リツキサン(登録商標))、ロバツムマブ、satumomab pendetide、シブロツズマブ、siltuximab、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン(AFP−CIDE(登録商標))、タプリツモマブパプトックス、テナツモマブ、TGN1412、チシリムマブ(トレメリムマブ)、チガツズマブ、TNX−650、トシツモマブ(BEXXAR(登録商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ベルツズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ(HUMASPECT(登録商標))、ザルツムマブ(HUMAX−EGFR(登録商標))、およびザノリムマブ(HUMAX−CD4(登録商標))が含まれるが、それらに限定されない。
【0298】
他の実施形態では、多重特異性分子は、ウイルス性癌治療薬と組み合わせて投与される。例示的なウイルス癌治療薬には、ワクシニアウイルス(vvDD−CDSR)、癌胎児性抗原発現麻疹ウイルス、組換えワクシニアウイルス(TK−欠失プラスGM−CSF)、セネカバレーウイルス−001、ニューカッスルウイルス、コクサッキーウイルスA21、GL−ONC1、EBNA1 C末端/LMP2キメラタンパク質発現組換え修飾ワクシニアアンカラワクチン、癌胎児性抗原発現麻疹ウイルス、G207腫瘍溶解性ウイルス、p53を発現する修飾ワクシニアウイルスアンカラワクチン、OncoVEX GM−CSF修飾ヘルペスシンプレックス1ウイルス、鶏痘ウイルスワクチンベクター、組換えワクシニア前立腺特異抗原ワクチン、ヒトパピローマウイルス16/18 L1ウイルス様粒子/AS04ワクチン、MVA−EBNA1/LMP2 Inj.ワクチン、4価HPVワクチン、4価ヒトパピローマウイルス(タイプ6、11、16、18)組換えワクチン(GARDASIL(登録商標))、組換え鶏痘−CEA(6D)/TRICOMワクチン;組換えワクシニア−CEA(6D)−TRICOMワクチン、組換え修飾ワクシニアAnkara−5T4ワクチン、組換え鶏痘−TRICOMワクチン、腫瘍崩壊性ヘルペスウイルスNV1020、HPV L1 VLPワクチンV504、ヒトパピローマウイルス二価(タイプ16および18)ワクチン(CERVARIX(登録商標))、単純ヘルペスウイルスHF10、Ad5CMV−p53遺伝子、組換えワクシニアDF3/MUC1ワクチン、組換えワクシニア−MUC−1ワクチン、組換えワクシニア−TRICOMワクチン、ALVAC MART−1ワクチン、ヒトプレプロエンケファリン(NP2)を発現する複製欠損単純ヘルペスウイルスI型(HSV−1)ベクター、野生型レオウイルス、レオウイルスタイプ3ディアリング(REOLYSIN(登録商標))、腫瘍溶解性ウイルスHSV1716、Epstein−Barrウイルス標的抗原をコードする組換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベースのワクチン、組換え鶏痘前立腺特異抗原ワクチン、組換えワクシニア前立腺特異抗原ワクチン、組換えワクシニア−B7.1ワクチン、rAd−p53遺伝子、Ad5−delta24RGD、HPVワクチン580299、JX−594(チミジンキナーゼ欠失ワクシニアウイルスとGM−CSF)、HPV−16/18 L1/AS04、鶏痘ウイルスワクチンベクター、ワクシニアチロシナーゼワクチン、MEDI−517 HPV−16/18 VLP AS04ワクチン、単純ヘルペスウイルスTK99UNのチミジンキナーゼを含むアデノウイルスベクター、HspE7、FP253/フルダラビン、ALVAC(2)メラノーマ多抗原治療ワクチン、ALVAC−hB7.1、カナリア痘−hIL−12黒色腫ワクチン、Ad−REIC/Dkk−3、rAd−IFN SCH 721015、TIL−Ad−INFg、Ad−ISF35、およびコクサッキーウイルスA21(CVA21、カバタック(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0299】
他の実施形態において、多重特異性分子は、ナノ医薬品と組み合わせて投与される。例示的な癌ナノ医薬品には、ABRAXANE(登録商標)(パクリタキセル結合アルブミンナノ粒子)、CRLX101(直鎖シクロデキストリンベースのポリマーに結合したCPT)、CRLX288(ドセタキセルと生分解性ポリマーポリ(乳酸−co−グリコール酸)の結合)、シタラビンリポソーム(リポソームAra−C、DEPOCYT(商標))、ダウノルビシンリポソーム(DAUNOXOME(登録商標))、ドキソルビシンリポソーム(DOXIL(登録商標)、CAELYX(登録商標))、カプセル化ダウノルビシンクエン酸リポソーム(DAUNOXOME(登録商標))、およびPEG抗VEGFアプタマー(MACUGEN(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0300】
いくつかの実施形態において、多重特異性分子は、パクリタキセルまたはパクリタキセル製剤、例えば、タキソール(登録商標)、タンパク質結合パクリタキセル(例えば、アブラキサン(登録商標))と組み合わせて投与される。例示的なパクリタキセル製剤には、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標)、Abraxis Bioscienceが販売)ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(DHA−パクリタキセル、タキソプレキシン、Protargaが販売)、ポリグルタミン酸結合パクリタキセル(PG−パクリタキセル、パクリタキセル・ポリグルメックス、CT−2103、XYOTAX、Cell Therapeuticが販売)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)、ANG105(Angiopep−2はパクリタキセルの3つの分子に結合し、ImmunoGenにより販売)、パクリタキセル−EC−1(パクリタキセルはerbB2認識ペプチドEC−1に結合;Li et al.,Biopolymers(2007)87:225−230を参照)、およびグルコース結合パクリタキセル(例えば、2’−パクリタキセルメチル2−グルコピラノシルスクシナート、Liu et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters(2007)17:617−620を参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0301】
癌を治療するための例示的なRNAiおよびアンチセンスRNA剤には、CALAA−01、siG12D LODER(Local Drug EluteR)、およびALN−VSP02が含まれるが、これらに限定されない。
【0302】
他の癌治療薬には、サイトカイン(例えば、アルデスロイキン(IL−2、インターロイキン−2、PROLEUKIN(登録商標))、アルファインターフェロン(IFN−アルファ、インターフェロンアルファ、INTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ−2b)、ロフェロン−A(登録商標)(インターフェロンアルファ−2a))、エポエチンアルファ(PROCRIT(登録商標))、フィルグラスチム(G−CSF、顆粒球−コロニー刺激因子、NEUPOGEN(登録商標))、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、サルグラモスチム、LEUKINE(商標))、IL−11(インターロイキン−11、oprelvekin、NEUMEGA(登録商標))、インターフェロンアルファ−2b(PEGコンジュゲート)(PEGインターフェロン、PEG−INTRON(商標))、およびペグフィルグラスチム(NEULASTA(商標)))、ホルモン療法剤(例えば、アミノグルテチミド(CYTADREN(登録商標))、アナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))、ビカルタミド(CASODEX(登録商標))、エキセメスタン(アロマシン(登録商標))、フルオキシメステロン(HALOTESTIN(登録商標))、フルタミド(EULEXIN(登録商標))、フルベストラント(FASLODEX(登録商標))、ゴセレリン(ZOLADEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、リュープロリド(ELIGARD(商標)、LUPRON(登録商標)、LUPRON DEPOT(登録商標)、VIADUR(商標))、メゲストロール(酢酸メゲストロール、MEGACE(登録商標))、ニルタミド(ANANDRON(登録商標)、NILANDRON(登録商標))、オクトレオチド(酢酸オクトレオチド、サンドスタチン(登録商標)、SANDOSTATIN LAR(登録商標))、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、ロミプロスチム(NPLATE(登録商標))、タモキシフェン(NOVALDEX(登録商標))、およびトレミフェン(FARESTON(登録商標)))、ホスホリパーゼA2阻害剤(例えば、アナグレリド(AGRYLIN(登録商標)))、生物学的応答修飾因子(例えば、BCG(セラシー(登録商標)、TICE(登録商標))、およびダルベポエチンアルファ(ARANESP(登録商標)))、標的治療薬(例えば、ボルテゾミブ(ベルケイド)、ダサチニブ(SPRYCEL(商標))、デニロイキンジフチトックス(ONTAK(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、エベロリムス(AFINITOR(登録商標))、ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))、メシル酸イマチニブ(STI−571、GLEEVEC(商標))、ラパチニブ(TYKERB(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、およびSU11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)))、免疫調節薬および抗血管新生薬(例えば、CC−5013(レナリドマイド、REVLIMID(登録商標))、およびサリドマイド(THALOMID(登録商標)))、グルココルチコステロイド(例えば、コルチゾン(ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンリン酸ナトリウム、ヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウム、ALA−CORT(登録商標)、HYDROCORT ACETATE(登録商標)、リン酸ヒドロコルトンLANACORT(登録商標)、SOLU−CORTEF(登録商標))、デカドロン(デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸塩、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、DEXASONE(登録商標)、DIODEX(登録商標)、HEXADROL(登録商標)、MAXIDEX(登録商標))、メチルプレドニゾロン(6−メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、デュラロン(登録商標)、MEDRALONE(登録商標)、メドロール(登録商標)、M−PREDNISOL(登録商標)、SOLU−MEDROL(登録商標))、プレドニゾロン(DELTA−CORTEF(登録商標)、ORAPRED(登録商標)、PEDIAPRED(登録商標)、PRELONE(登録商標))、およびプレドニゾン(DELTASONE(登録商標)、LIQUID PRED(登録商標)、METICORTEN(登録商標)、ORASONE(登録商標)))、およびビスホスホネート(例えば、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、およびゾレドロン酸(ZOMETA(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0303】
いくつかの実施形態において、多重特異性分子は、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤)と組み合わせて使用される。例示的なチロシンキナーゼ阻害剤には、上皮成長因子(EGF)経路阻害剤(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤)、血管内皮成長因子(VEGF)経路阻害剤(例えば、VEGFに対する抗体、VEGFトラップ、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)阻害剤(例えば、VEGFR−1阻害剤、VEGFR−2阻害剤、VEGFR−3阻害剤)、血小板由来成長因子(PDGF)経路阻害剤(例えば、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)阻害剤(例えば、PDGFR−β阻害剤))、RAF−1阻害剤、KIT阻害剤、およびRET阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、多重特異性分子と組み合わせて使用される抗癌剤は、アキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI−606)、セジラニブ(RECENTIN(商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS−354825)、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))、イマチニブ(グリベック(登録商標)、CGP57148B、STI−571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、タイバーブ(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP−701)、ネラチニブ(HKI−272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、semaxanib(semaxinib、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、ヴァタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、ENMD−2076、PCI−32765、AC220、乳酸ドビチニブ(TKI258、CHIR−258)、BIBW 2992(TOVOK(商標))、SGX523、PF−04217903、PF−02341066、PF−299804、BMS−777607、ABT−869、MP470、BIBF 1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ−26483327、MGCD265、DCC−2036、BMS−690154、CEP−11981、チボザニブ(AV−951)、OSI−930、MM−121、XL−184、XL−647、XL228、AEE788、AG−490、AST−6、BMS−599626、CUDC−101、PD153035、ペリチニブ(EKB−569)、バンデタニブ(ザクティマ)、WZ3146、WZ4002、WZ8040、ABT−869(リニファニブ)、AEE788、AP24534(ポナチニブ)、AV−951(チボザニブ)、アキシチニブ、BAY 73−4506(レゴラフェニブ)、ブリバニブアラニネート(BMS−582664)、ブリバニブ(BMS−540215)、セジラニブ(AZD2171)、CHIR−258(ドビチニブ)、CP 673451、CYC116、E7080、Ki8751、マシチニブ(AB1010)、MGCD−265、モテサニブ二リン酸(AMG−706)、MP−470、OSI−930、パゾパニブ塩酸塩、PD173074、nソラフェニブトシレート(Bay 43−9006)、SU 5402、TSU−68(SU6668)、ヴァタラニブ、XL880(GSK1363089、EXEL−2880)からなる群から選択される。選択されたチロシンキナーゼ阻害剤は、スニチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはソラフェニブから選択される。一実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤はスニチニブである。
【0304】
一実施形態では、多重特異性分子は、抗血管新生剤、または血管ターゲティング剤または血管破壊剤のうちの1つまたは複数と組み合わせて投与される。例示的な抗血管新生剤には、VEGF阻害剤(例えば、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ);VEGF受容体阻害剤(例えば、イトラコナゾール);細胞増殖の阻害剤および/または内皮細胞の移動(例えば、カルボキシアミドトリアゾール、TNP−470);とりわけ血管新生刺激剤の阻害剤(例えば、スラミン)が含まれるが、これらに限定されない。血管標的薬(VTA)または血管破壊薬(VDA)は、中枢壊死を引き起こす癌腫瘍の血管系(血管)を損傷するように設計されている(例えば、Thorpe、P.E.(2004)Clin.Cancer Res.Vol.10:415−427にてレビュー)。VTAは低分子である場合がある。例示的な小分子VTAには、微小管不安定化薬(例えば、コンブレタスタチンA−4リン酸二ナトリウム(CA4P)、ZD6126、AVE8062、Oxi 4503);およびvadimezan(ASA404)が含まれるが、これらに限定されない。
【0305】
免疫チェックポイント阻害剤
他の実施形態において、本明細書に記載の方法は、多重特異性分子と組み合わせた免疫チェックポイント阻害剤の使用を含む。この方法は、in vivoの治療プロトコルで使用できる。
【0306】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はチェックポイント分子を阻害する。例示的なチェックポイント分子には、CTLA4、PD1、PD−L1、PD−L2、TIM3、LAG3、CD160、2B4、CD80、CD86、B7−H3(CD276)、B7−H4(VTCN1)、HVEM(TNFRSF14またはCD270)、BTLA、KIR、MHCクラスI、MHCクラスII、GAL9、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、およびA2aRが含まれるがそれらに限定されない。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPardoll.Nat.Rev.Cancer 12.4(2012):252−64を参照されたい。
【0307】
実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD−1阻害剤、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブまたはピジリズマブなどの抗PD−1抗体である。ニボルマブ(MDX−1106、MDX−1106−04、ONO−4538、またはBMS−936558とも呼ばれる)は、PD1を特異的に阻害する完全ヒトIgG4モノクローナル抗体である。例えば、米国特許第8,008,449号および国際公開第2006/121168号を参照されたい。ペンブロリズマブ(Lambrolizumab、MK−3475、MK03475、SCH−900475、またはKEYTRUDA(登録商標)とも呼ばれる、Merck)は、PD−1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である。例えば、Hamid、O.et al.(2013)New England Journal of Medicine369(2):134−44、米国特許第8,354,509号および国際公開第2009/114335号を参照されたい。ピジリズマブ(CT−011またはCure Techとも呼ばれる)は、PD1に結合するヒト化IgG1kモノクローナル抗体である。例えば、国際公開第2009/101611号を参照。一実施形態において、PD−1の阻害剤は、実質的に同一または類似の配列、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブまたはピジリズマブの配列と少なくとも85%、90%、95%以上の配列を有する抗体分子である。追加の抗PD1抗体、例えば、AMP 514(Amplimmune)は、例えば、米国特許第8,609,089号、米国特許出願公開第2010028330号、および/または米国特許出願公開第20120114649号に記載されている。
【0308】
いくつかの実施形態では、PD−1阻害剤は、イムノアドヘシン、例えば、定常領域(例えば、重鎖のFc領域)に融合されたPD−1リガンド(例えば、PD−L1またはPD−L2)の細胞外/PD−1結合部分を含むイムノアドヘシンである。実施形態では、PD−1阻害剤は、B7−H1とPD−1との間の相互作用を遮断するPD−L2 Fc融合可溶性受容体であるAMP−224(B7−DCIg、例えば、国際公開第2011/066342号および国際公開第2010/027827号に記載)である。
【0309】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD−L1阻害剤、例えば、抗体分子である。いくつかの実施形態では、PD−L1阻害剤はYW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI−4736、MSB−0010718C、またはMDX−1105である。いくつかの態様において、抗PD−L1抗体はMSB0010718C(A09−246−2とも呼ばれる、Merck Serono)であり、PD−L1に結合するモノクローナル抗体である。例示的なヒト化抗PD−L1抗体は、例えば、国際公開第2013/079174号に記載されている。一実施形態では、PD−L1阻害剤は、抗PD−L1抗体、例えば、YW243.55.S70である。YW243.55.S70抗体は、例えば、国際公開第2010/077634号に記載されている。一実施形態では、PD−L1阻害剤はMDX−1105(BMS−936559とも呼ばれる)であり、これは、例えば、国際公開第2007/005874号に記載されている。一実施形態では、PD−L1阻害剤はMDPL3280A(Genentech/Roche)であり、これはPD−L1に対するヒトFc最適化IgG1モノクローナル抗体である。例えば、米国特許第7,943,743号および米国特許出願公開第20120039906号を参照されたい。一実施形態では、PD−L1の阻害剤は、実質的に同一または類似の配列、例えば、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI−4736、MSB−0010718C、またはMDX−1105の配列と少なくとも85%、90%、95%以上の配列を有する抗体分子である。
【0310】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD−L2阻害剤、例えば、AMP−224(これは、PD1とB7−H1との間の相互作用を遮断するPD−L2 Fc融合可溶性受容体である)である。例えば、国際公開第2010/027827号および国際公開第2011/066342号を参照されたい。
【0311】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG−3阻害剤、例えば、抗LAG−3抗体分子である。実施形態では、抗LAG−3抗体はBMS−986016(BMS986016とも呼ばれる、Bristol−Myers Squibb)である。BMS−986016および他のヒト化抗LAG−3抗体は、例えば、米国特許出願公開第2011/0150892号、国際公開第2010/019570号、および国際公開第2014/008218号に記載されている。
【0312】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、米国特許第8,552,156号、国際公開第2011/155607号、欧州特許第2581113号および米国特許出願公開第2014/044728号に記載される、抗TIM3抗体分子などのTIM−3阻害剤である。
【0313】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA−4阻害剤、例えば、抗CTLA−4抗体分子である。例示的な抗CTLA4抗体には、トレメリムマブ(以前はチシリムマブとして知られているファイザー社のIgG2モノクローナル抗体、CP−675、206)、およびイピリムマブ(MDX−010とも呼ばれる、CAS No.477202−00−9)が含まれる。他の例示的な抗CTLA−4抗体は、例えば、米国特許第5,811,097号に記載されている。
【0314】
[実施例]
以下の例は例示を目的とするものであり、決して限定することを意図するものではない。
【0315】
[実施例1]
複数のαCCR2/αCSF1R二重特異性抗体分子の生成
1.プラスミドの構築
タンパク質配列をコードするDNAは、モンゴルキヌゲネズミ(Cricetulus griseus)での発現に最適化され、合成され、Gatewayクローニングを使用してpcDNA3.4−TOPO(Life Technologies A14697)にクローニングされた。すべての構築物は、Igカッパリーダー配列(ATGGAAACCGACACACTGCTGCTGTGGGTGCTGCTCTTGTGGGTGCCAGGATCTACAGGA(配列番号115)、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号116))を含んでいた。使用した核酸の配列を表1に示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【0316】
2.発現および精製
プラスミドをExpi293細胞(Life Technologies A14527)またはExpiCHO細胞(Life Technologies A29127)のいずれかに同時トランスフェクトした。トランスフェクションは、1:1のノブとホールの重鎖比および3:2の軽鎖と重鎖の比である多重特異性構築物の総DNA1mgを使用して実行された。ビオチン化が必要な場合、多重特異性構築物DNAに加えて、1リットルあたり250μgのBirAが添加された。Expi293細胞へのトランスフェクションは、直線25,000 Daポリエチレンイミン(PEI、Polysciences Inc 23966)を全DNAと3:1の比率で使用して行われた。DNAおよびPEIをそれぞれ50mLのOptiMem(Life Technologies 31985088)培地に添加し、滅菌ろ過した。DNAとPEIを10分間混合し、1.8〜2.8×10細胞/mLの細胞密度と少なくとも95%の生存率でExpi293細胞に加えた。ExpiCHOトランスフェクションは、製造元の指示に従って実行された。Expi293細胞は、トランスフェクション後5〜7日間、37℃、8%COの加湿インキュベーターで増殖させ、ExpiCHO細胞は5%COで32℃で14日間増殖させた。細胞を4500×gでの遠心分離によりペレット化し、上清を0.2μmの膜でろ過した。タンパク質A樹脂(GE 17−1279−03)をろ過した上清に加え、室温で1〜3時間インキュベートした。樹脂をカラムに詰め、3×10カラム容量のダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Life Technologies 14190−144)で洗浄した。結合タンパク質は、20mMのクエン酸、100mMのNaCl、pH2.9で、カラムから溶出した。必要に応じて、DPBSのランニングバッファを使用したSuperde×200カラムでのリガンドアフィニティおよび/またはサイズ排除クロマトグラフィを使用して、タンパク質をさらに精製した。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
[実施例2]
mCCR2のみ、mCSF1Rのみ、またはmCCR2とmCSF1Rの両方を発現する細胞へのUniTI−01結合
この例および次のいくつかの例では、表7に示す多重特異性分子#1(UniTI−01とも呼ばれる)の特性を示した。UniTI−01は、抗CCR2/抗CSF1R二重特異性抗体である。また、UniTI−01の可変領域と全長の配列を表11に示す。いくつかの例では、二重特異性抗体UniTI−01を抗CCR2二価単一特異性抗体または抗CSF1R二価単一特異性抗体と比較した。
【表11】
【0317】
ExpiCHO細胞に、製造元の指示に従って、マウスCCR2、マウスCSF1R、またはマウスCCR2とCSF1Rの両方を一時的にトランスフェクトした。簡単に言えば、トランスフェクションは、細胞密度が5.6〜6.3×10細胞/mLで、生存率が少なくとも95%のExpiCHO細胞で行われた。各トランスフェクションについて、25μgのDNAを1mLのOptiPro SFM(Gibco 12309050)で希釈し、スピンX遠心チューブフィルター(Corning 8160)を使用してろ過した。OptiPro 920μLとexpifectamine 80μLの溶液を、ろ過したDNAに加え、室温で1分間インキュベートした後、細胞に加えた。トランスフェクションの1日目に、150μLのExpiCHOエンハンサーを使用して細胞を増強した。
【0318】
トランスフェクションの2日目に、細胞を1%BSA(Sigma)を含むPBSで洗浄し、100,000細胞/ウェルで96ウェルV底プレート(Bioti×AP−0350−9CVS)をセットするために使用した。UniTI−01を連続希釈で細胞に加え、4°Cで1時間インキュベートした。プレートを1%BSAを含むPBSで2回洗浄した。二次抗体は、ヤギ抗マウスFcビオチン抗体(Invitrogenカタログ番号31805)の1:500希釈液で、4°Cで45分間細胞とインキュベートした。プレートを1%BSAを含むPBSで2回洗浄した。検出には、1.56×10−3μgのストレプトアビジン−PE(eBioscienceカタログ番号12−4317−87)をウェルごとに使用し、4℃で1時間インキュベートした。プレートをCytoFLEX S(Beckman Coulter)で読み取った。データは、PE陽性集団の蛍光強度の中央値に対し、PE陰性集団の蛍光強度の中央値として計算された。データは、総蛍光強度中央値の割合に対して正規化された。
【0319】
理論に縛られることを望まないが、UniTI−01は、CCR2またはCSF1Rのいずれかを発現する細胞と比較して、CCR2とCSF1Rの両方を発現する細胞に優先的に結合する可能性がある。二重標的結合が標的細胞に対するUniTI−01の結合力を増加させるという仮説と一致して、UniTI−01は、単一陽性細胞と比較して、CCR2およびCSF1R二重陽性細胞への結合の強化を示した(図1)。UniTI−01は、CCR2のみを発現する細胞に15nMのEC50で結合した。CSF1Rのみを発現する細胞の場合、UniTI−01のEC50は1nMであった。UniTI−01は、CCR2とCSF1Rの両方を発現した細胞に対して400pMのEC50を示した。
【0320】
[実施例3]
UniTI−01は、in vitroでの骨髄由来単球のMCP1による移動を阻害する
マウス骨髄細胞を、健康なBalb/cマウスの大腿骨から単離し、mCSF1の存在下で4日間単球に分化した。単球分化は、造血細胞のCCR2およびCSF1R発現のフローサイトメトリー分析により評価された。分化した細胞をカウントし、それぞれ異なる濃度のアイソタイプ(mIgG2a)、抗CCR2、およびUniTI−01とともに、37℃で30分間培養した。続いて、トランスウェルインサートプレートの上部チャンバーに抗体処理の細胞を追加した。これには、下部チャンバーにMCP1(CCL2)が含まれていた。トランスウェルプレートの下部チャンバーから培地を収集した後、MCP1誘導性の移動を評価し、フローサイトメトリー分析により細胞数の列挙を行った。
【0321】
抗CCR2/抗CSF1R二重特異性抗体UniTI−01は、用量依存的にトランスウェルを横切る単球のMCP1誘導移動を阻害した(図2)。3.7μM以上の用量では、単球の移動はケモカインの非存在下で観察されるレベルまで減少した(図2)。抗CCR2抗体処理でも同様の結果が得られたが、IgG2aによる細胞の処理は移動に影響しなかった(図2)。
【0322】
[実施例4]
UniTI−01はin vitroで骨髄由来マクロファージのmCSF−1依存性増殖を阻害する
マウス骨髄細胞を、健康なBalb/cマウスの大腿骨から単離し、mCSF1の存在下で4日間単球に分化した。フローサイトメトリー分析により、骨髄細胞は0日目にCCR2を感知できるほどには発現しなかったことが示された(図3A;左パネル)。しかし、mCSF1の存在下で4日間の細胞培養後、骨髄細胞の大部分が単球に分化し、CCR2およびCSF1Rの発現を示した(図3A;右パネル)。単球をカウントし、mCSF1の存在下で96ウェルプレートに播種した。UniTI−01、抗CSF1RまたはmIgG2a抗体を、mCSF1を含む細胞に加えた。37℃で72時間インキュベートした後、MTTアッセイキットの製造業者のプロトコルに従って、OD570での比色測定により、細胞増殖代謝活性を評価した。
【0323】
mCSF1は、単球のマクロファージへの分化を誘導し、顕微鏡下で長い線維芽細胞として視覚化された。UniTI−01および抗CSF1R抗体は、mCSF1の存在下でマクロファージの増殖を防止した(図3B)。
【0324】
[実施例5]
UniTI−01はin vitroでmCSF−1依存性骨髄由来単球分化を阻害しない
骨髄細胞は、ナイーブ(非腫瘍性)Balb/cマウスの大腿骨と脛骨の両方から抽出された。UniTI−01、抗CSF1RまたはmIgG2抗体は、mCSF−1を添加して単球の分化を可能にする前に、新たに単離した骨髄細胞と37℃で30分間プレインキュベートした。37℃で4日間インキュベートした後、分化した単球を識別するために細胞をフローサイトメトリー染色のために収集した。細胞を蛍光標識抗体で4℃で15分間染色した後、フローサイトメトリー分析を行った。単球は、Live、CD45+、CD11b+、Ly6C+、Ly6G−細胞としてゲーティングされる。
【0325】
骨髄前駆細胞が0日目にCCR2を有意には発現しなかったという観察と一致して(図3A)、抗CCR2/抗CSF1R二重特異性抗体UniTI−01は、細胞培養の4日後、in vitroでmCSF−1依存性骨髄由来単球分化を阻害しなかった(図4)。対照的に、抗CSF1R二価単一特異性抗体は、in vitroでmCSF−1依存性骨髄由来単球分化を有意に阻害した(図4)。
【0326】
[実施例6]
UniTI−01は、in vitroで一次腫瘍内M−MDSCおよびM2様マクロファージに特異的に結合する
B6−アルビノマウスで増殖させたLLC腫瘍を500〜800mmの体積で採取し、37℃で30分間、リベラーゼDL+Dnase Iを使用して解離し、その後GentleMacsで解離プログラムm_imptumor_01を行った。単一細胞懸濁液を70μmストレーナーでろ過し、全細胞を蛍光標識抗体で染色した。この結合試験では、Alexa Fluor 647抗体ラベリングキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して100μgのUniTI−01を標識し、Nanodropで標識抗体の濃度を判定し、示された連続希釈(5uM、1uM、0.1uM、0.01uM)が、Facsバッファで作成された。M−MDSCは生存しているCD45+CD11b+Ly6ChighLy6G−によってゲートされ、M2マクロファージは生存しているCD45+CD11b+F4/80+CD206+によってゲートされ、CD3+T細胞は生存しているCD45+CD3+によってゲートされ、好中球は生存しているCD45+CD11b+Ly6G+によってゲートされた。細胞を氷上で暗所で15分間染色し、生存率のためにゾンビバイオレットで染色し、すぐにサイトメーターで取得した。
【0327】
UniTI−01のM2マクロファージおよびM−MDSCへの濃度依存的な結合を図5に示す。
【0328】
[実施例7]
UniTI−01は、in vivoのいくつかのマウスモデルで抑制性骨髄細胞を枯渇させる
マウスにMC38結腸癌細胞株(B6アルビノマウス)またはEMT6乳癌細胞株(BALB/cマウス)を注射し、腫瘍が150−200mmの体積に達すると、同じマウスを無作為化して2つのアームにグループ分けした。1つのアームは、1、4、7、および10日目に20mg/kgの用量でip経路を介して20mg/kgでUniTI−01の治療を受け、もう1つのアームは同じスケジュールでPBS(媒体)を受けた。4回目の投与の24時間後に、フローサイトメトリー分析のために腫瘍を採取した。腫瘍を約2mmの断片に切り刻み、37℃で30分間、リベラーゼ+dnase Iで解離させた後、gentleMACで1分間の腫瘍混合プログラムを使用した。単一細胞懸濁液は、70μMフィルターでろ過して作成し、計数した。次に、細胞をフローサイトメトリー分析のために染色した。TAMは生存しているCD45+CD11b+Ly6G−Ly6C−F4/80+によってゲートされ、M−MDSCは生存しているCD45+CD11b+Ly6G−Ly6CHighによってゲートされた。それぞれの点は単一のマウスを表す。エラーバーは、個々のマウス間の平均および標準誤差を表す。統計は、スチューデントのt検定を使用して計算された。
【0329】
実施例6で観察されたM2マクロファージおよびM−MDSCへの結合と一致して、抗CCR2/抗CSF1R二重特異性抗体UniTI−01は、EMT6およびMC38同系腫瘍モデルの両方でTAMおよびM−MDSCを減少させた(図6)。
【0330】
[実施例8]
UniTI−01は腫瘍関連マクロファージを枯渇させるが、in vivoでクッパー細胞を残す
Balb/cマウスにEMT6同系乳房細胞株を注射し、腫瘍が150〜200mmの体積に達したら、無作為化して3つのアームにグループ分けした。1つのアームは20mg/kgの用量でip経路を介して20mg/kgでUniTI−01の治療を受け、第2のアームは10mg/kg抗CSF1R抗体の治療を受け、第3のアームは1、4、7および10日目にPBSを受けた。4回目の投与の24時間後、マウスを屠殺し、腫瘍と肝臓を採取し、ホルマリン固定してパラフィン包埋した。肝臓および腫瘍のマクロファージ集団を検出するために、組織切片をF4/80抗体(Cell Signaling)で免疫組織化学的に染色し、Envisionシステムで検出した。腫瘍または肝臓切片あたり約10の関心領域をImageJソフトウェアで分析した。
【0331】
理論に拘束されることを望まないが、UniTI−01は、CCR2またはCSF1Rのいずれかを発現する細胞と比較して、CCR2とCSF1Rの両方を発現する細胞に優先的に結合し、CCR2とCSF1Rの両方を発現する腫瘍関連マクロファージと比較して、CCR2を発現しない肝臓に存在するクッパー細胞などの、組織に存在するマクロファージへの影響が少ない可能性がある。
【0332】
前述のデータ(図6)と一致して、抗CCR2/抗CSF1R二重特異性抗体UniTI−01は、腫瘍関連マクロファージを著しく枯渇させた(図7Aおよび7C)。対照的に、UniTI−01は肝臓の組織常在性マクロファージをそれほど枯渇させなかった(図7Bおよび7D)が、抗CSF1R二価単一特異性抗体は両方の区画のマクロファージを有意に減少させた(図7A〜7D)。
【0333】
[実施例9]
UniTI−01はin vitroでCCR2陰性NFS−60細胞のCSF−1依存性細胞生存を阻害しない
CCR2陰性、CSF1R陽性NFS−60細胞を、UniTI−01、一価の単一特異性抗CSF1R抗体、二価の単一特異性抗CSF1R抗体、またはmIgG2抗体の存在下で、フェノールレッドを含まない培地で30日間培養した。37°Cで数分間、細胞生存のためにmCSF−1を添加した。37°Cで48時間インキュベートした後、MTTアッセイキットの製造元のプロトコルに従って、OD570での比色読み取りにより細胞生存率代謝活性を評価した。
【0334】
図8Aに示すように、抗CSF1R二価単一特異性抗体(aCSF1R)は、高抗体濃度でNFS−60細胞の生存率を著しく低下させた。対照的に、抗CCR2/抗CSF1R二重特異性抗体UniTI−01または一価単一特異性抗CSF1R抗体(モノaCSF1R)は、in vitroでCCR2陰性NFS−60細胞のCSF−1依存性細胞の生存を阻害しなかった(図8A)。理論に縛られることを望まないが、このデータは、抗CCR2/抗CSF1R二重特異性抗体UniTI−01は、抗CSF1R二価単一特異性抗体と比較して、CCR2陰性、CSF1R陽性細胞を阻害する可能性が低い場合があることを示唆している。これは、図7Bおよび7Dで説明した結果と一致している。NFS−60がCCR2を発現していないことを確認するために、PBSバッファとCSF1RおよびCCR2の蛍光標識抗体を含むBSAで4℃で20分間細胞を洗浄し、フローサイトメトリー分析を行った。図8Bに示すように、NFS−60はCSF1Rを発現したがCCR2は発現しなかった。
【0335】
[実施例10]
UniTI−01は、in vivoでEMT6腫瘍のCD8+T細胞の浸潤を促進する
Balb/cマウスにEMT6同系乳房細胞株を注射し、腫瘍が150〜200mmの体積に達したら、無作為化して3つのアームにグループ分けした。1つのアームは20mg/kgの用量でip経路を介して20mg/kgでUniTI−01の治療を受け、第2のアームは10mg/kg抗PDL1の治療を受け、第3のアームは1、4、7および10日目にPBSを受けた。4回目の投与の24時間後、マウスを屠殺し、フローサイトメトリー分析のために腫瘍を採取した。腫瘍を約2mmの断片に切り刻み、37℃で30分間、リベラーゼ+dnase Iで解離させた後、gentleMACSで1分間の腫瘍混合プログラムを使用した。単一細胞懸濁液は、70μMフィルターでろ過して作成し、計数した。次に、細胞をフローサイトメトリー分析のために染色した。CD8T細胞は、CD45およびCD3を発現した生存しているCD8細胞を染色することによりゲーティングされた。それぞれの点は、単一のマウス腫瘍を表す。エラーバーは、個々のマウス間の平均および標準誤差を表す。統計は、一元配置分散分析を使用して計算された。
【0336】
抗CCR2/抗CSF1R二重特異性抗体UniTI−01は、in vivoでEMT6腫瘍におけるCD8+T細胞浸潤を有意に増加させた(図9)。
【0337】
[実施例11]
UniTI−01は、in vivoでEMT6腫瘍のTreg頻度を低下させ、CD8T細胞/Treg比を増加させる
B6アルビノマウスにMC38同系結腸細胞株を注射し、腫瘍が150〜200mmの体積に達したら、無作為化して3つのアームにグループ分けした。1つのアームは20mg/kgの用量でip経路を介して20mg/kgでUniTI−01の治療を受け、第2のアームは10mg/kg抗PDL1の治療を受け、第3のアームは1、4、7および10日目にPBSを受けた。4回目の投与の24時間後、マウスを屠殺し、フローサイトメトリーによる免疫プロファイリングのために腫瘍を採取した。腫瘍を約2mmの断片に切り刻み、37℃で30分間、リベラーゼ+dnase Iで解離させた後、gentleMACで1分間の腫瘍混合プログラムを使用した。単一細胞懸濁液は、70μMフィルターでろ過して作成し、計数した。次に、細胞をフローサイトメトリー分析のために染色した。制御性T細胞は、生存しているCD4+Foxp3+T細胞をゲーティングすることによって分析された。さらに、CD45およびCD3を発現した生存しているCD8細胞を染色することにより、CD8T細胞をゲーティングした。それぞれの点は、単一のマウス腫瘍を表す。エラーバーは、個々のマウス間の平均および標準誤差を表す。統計は、一元配置分散分析を使用して計算された。
【0338】
UniTI−01による治療は、抗PDL1抗体による治療と比較して、腫瘍におけるTregの頻度の大幅な減少と、CD8+T細胞/Tregの比率の大幅な増加をもたらした(図10Aおよび10B)。
【0339】
[実施例12]
UniTI−01は、抗PDL1抗体と組み合わせて使用すると、抗腫瘍効果、腫瘍退縮、生存率の向上を示す
抗PDL1抗体と組み合わせたUniTI−01の腫瘍増殖阻害は、皮下マウス同系EMT6乳癌モデルでテストされた。約8週齢の雌のBALB/c(Jackson Labs)を、研究開始の3日前から順応させた。マウスはケージあたり5匹の動物を収容し、使い捨てケージはInnovive IVCマウスラックに入れられた。マウスの病原体を含まないことが以前にテストされたEMT6細胞(マウスCLEARパネル、Charles River Labs)は、BALB/cマウスの右脇腹に0.5×10細胞の密度で0日目に皮下移植された。腫瘍は、デジタルキャリパーを使用して週2回、2次元で測定および記録された。腫瘍の体積(mm)は、幅×幅×長さ×0.52という式を使用して計算された。移植後7日目の腫瘍体積測定に続いて、マウスを無作為化し、平均腫瘍体積77mmに従って4つのアームにグループ分けした。1つのアームはPBSで処理され、第2のアームは10mg/kgの用量の抗PDL1抗体で処理され、第3のアームは20mg/kgの用量でUniTI−01で処理され、第4のアームは抗PDL1抗体およびUniTI−01の併用で処理された。すべての治療はip経路で行われ、スケジュールは最大4週間の投与で週2回であった。すべての薬剤は、投与前にPBSで新たに処方された。腫瘍の体積の測定は最大80日間続けられた。腫瘍の体積のデータは、平均値±SEMとしてプロットされている。さらに、2000mmのTVの調査エンドポイントに到達する時間に基づいて生存率が記録され、カプランマイヤー曲線としてプロットされる。統計はログランク検定によって判断され、p値がプロットされる。
【0340】
図11Aおよび11Bに示されるように、UniTI−01での治療は、担癌動物の生存を改善した。UniTI−01と抗PDL1抗体を組み合わせることにより、in vivoでの抗腫瘍効果、腫瘍退縮および生存率がさらに改善された(図11Aおよび11B)。
【0341】
参照による組み込み
本明細書で言及されるすべての出版物および特許は、あたかも個々のそれぞれの出版物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、参照によりその全体が組み込まれる。
【0342】
等価物
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような同等物は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
【配列表】
2020517256000001.app
【国際調査報告】