特表2020-518508(P2020-518508A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-518508(P2020-518508A)
(43)【公表日】2020年6月25日
(54)【発明の名称】カバー装置及びスラスタ
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/42 20060101AFI20200529BHJP
   B63H 5/16 20060101ALI20200529BHJP
   B63H 1/12 20060101ALI20200529BHJP
【FI】
   B63H25/42 S
   B63H5/16 E
   B63H1/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-560269(P2019-560269)
(86)(22)【出願日】2018年4月27日
(85)【翻訳文提出日】2019年12月25日
(86)【国際出願番号】EP2018060919
(87)【国際公開番号】WO2018202583
(87)【国際公開日】20181108
(31)【優先権主張番号】102017207344.6
(32)【優先日】2017年5月2日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517070958
【氏名又は名称】エス・ケイ・エフ マリーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SKF Marine GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・シュパルデル
(72)【発明者】
【氏名】フランク・アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】カイ・ダンネベルク
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ライトロフ
(57)【要約】
本発明は、船舶の船体における水中にある開口部、特にスラスタの横断方向チャネルの開口部を少なくとも部分的に閉鎖するためのカバー装置に関する。本発明によれば、カバー装置が、少なくとも2つの中空チャンバリップを含む少なくとも1つの体積可変の中空チャンバリップ組立体を含み、少なくとも2つの中空チャンバリップが、流体、特に空気の供給又は除去によって膨張状態又は収縮状態にシフト可能である。体積可変の又は膨らますことが可能なカバー装置の結果として、カバー装置のより信頼性があると同時に、メンテナンス作業が少ないことがもたらされる。さらに、本発明は、主題として、スラスタ、特に船首スラスタ又は船尾スラスタを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(12)の船体(10)における水中にある開口部(16,22,90)、特にスラスタ(26)の横断方向チャネル(24)の開口部(22,90)を少なくとも部分的に閉鎖するためのカバー装置(20,110)であって、
前記カバー装置(20,110)が、少なくとも2つの中空チャンバリップ(401,402,403,404,405)と、少なくとも1つの浮力体(50)と、を含む体積可変の中空チャンバリップ組立体(400)を含み、少なくとも1つの中空チャンバリップ(401,402,403,404,405)が、流体の供給又は除去によって体積可変であり、それにより、前記中空チャンバリップ組立体(400)が、膨張状態又は収縮状態にシフト可能であることを特徴とするカバー装置(20,110)。
【請求項2】
前記中空チャンバリップ組立体(400)が、少なくとも1つの可撓性を有しかつ高張力強度の成形要素(94,96,98)を含むことを特徴とする請求項1に記載のカバー装置(20,110)。
【請求項3】
前記中空チャンバリップ(401,402,403,404,405)が、流体密封しかつ可撓性を有する表面構造(52)を有して構築されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー装置(20,110)。
【請求項4】
前記開口部(16,22,90)が、前記中空チャンバリップ組立体(400)の前記膨張状態では本質的に完全に閉鎖され、前記収縮状態では本質的に完全にブロック解除されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のカバー装置(20,110)。
【請求項5】
少なくとも2つの中空チャンバリップ(401,402,403,404,405)が、前記流体を供給及び/又は排出するための末端部(441,442,443,444,445)をそれぞれ含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のカバー装置(20,110)。
【請求項6】
前記少なくとも2つの中空チャンバリップ(401,402,403,404,405)が、前記中空チャンバリップ(401,402,403,404,405)の末端部(441,442,443,444,445)を介して互いに独立して、流体で充填しかつ/又は空にすることができることを特徴とする請求項5に記載のカバー装置(20,110)。
【請求項7】
小さい流れ抵抗を有する隣接要素(70)、特に格子(68)が、少なくとも部分的に前記開口部(16,22,90)内に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のカバー装置(20,110)。
【請求項8】
前記収縮状態では、前記少なくとも1つの中空チャンバリップ組立体(400)が、保管空間(42)内に完全に収容可能であり、前記膨張状態では、前記中空チャンバリップ組立体(400)の自由端(54)が、締りばめ様式で、少なくとも部分的に凹部(92)内に収容可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のカバー装置(20,110)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの浮力体(50)が、前記中空チャンバリップ組立体(400)の自由端(54)の領域に配置され、水よりも小さい密度を有し、前記浮力体(50)が、前記中空チャンバリップ組立体(400)における前記膨張状態と前記収縮状態との間の移行をサポートする浮力を有するように構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のカバー装置(20,110)。
【請求項10】
船舶(12)用のスラスタ(26)、特に船首スラスタ又は船尾スラスタ(34)であって、前記スラスタ(26)の横断方向チャネル(24)の少なくとも1つの開口部(22,90)を覆うために請求項1から9のいずれか一項に記載のカバー装置(22,110)を少なくとも1つ含むことを特徴とするスラスタ(26)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の船体における水中にある開口部、特にスラスタの横断方向チャネルの開口部を少なくとも部分的に閉鎖するためのカバー装置に関する。加えて、本発明は、主題として、スラスタ、特に船首スラスタ又は船尾スラスタを有する。
【背景技術】
【0002】
現代の旅客船又は貨物船は、一般的に、水中にあるさまざまな開口部を有する。このような開口部は、例えば、航路の水から冷却水を吸い込むため、かつ加熱された冷却水を船の航路の水に再導入するために働く。さらに、船の操縦性を改善するために、例えば、スラスタが、船首領域及び/又は船尾領域に設けられ得る。有利な流れ条件及び天候条件により、スラスタは、特に船の横断方向の移動のために、ドッキング操縦においてタグボートのコストが集中する使用を不要にすることができる。しかしながら、このようなスラスタは、船首領域又は船尾領域において水線よりも下方で船の船体を完全に貫通する横断方向チャネルを必要とし、それにより、2つの広範囲の両側の開口部が生じる。
【0003】
横断方向チャネルの端部側の開口部に起因して、水に乱流が生じ、これが、船の通常の駆動動作時に船体の流れ抵抗の増大につながる。次に、最近では許容できない燃費の増大が、そこからもたらされる。高い重要性は、20ノットの範囲まで落ちることがある、貨物船及び旅客船のしばしば高い移動速度に起因して、この事実と関連している。
【0004】
通常の駆動動作時に船の船体の流れ抵抗を低減するために、円形のバタフライバルブが、例えばスラスタの横断方向チャネルの開口部を閉鎖するために公知である。船の通常の駆動動作時に、横断方向チャネルの2つの両側の開口部の一方の領域にそれぞれ配置されたバタフライバルブの回転に起因して、開口部は、船体の外側スキンとほぼ同一面上で閉鎖することができる。船の操縦動作時には、バタフライバルブは、90°だけそれらバタフライバルブの長手方向中心軸周りで回転することによって、開放される。完全に開放された状態では、バタフライバルブは、横断方向チャネルの長手方向と平行に向けられ、このため、スラスタの駆動プロペラによって発生された水の流れが、それらバタフライバルブの材料厚さが横断方向チャネルの直径に対して小さいことに起因して大きく妨げられずに、バタフライバルブを通過することができる。
【0005】
しかしながら、このようなバタフライバルブの長年の経験が、特にそれらバタフライバルブの支持ポイントであって、一般的に開口部において直径方向に配置されている、支持ポイントが、スラスタのプロペラ後流、外部の流れの力及び波の衝撃に起因して、高い機械的負荷にさらされることを示している。さらに、バタフライバルブの支持ポイントは、航路の腐食性の水に永久的にさらされている。極端な例では、全ての影響を与える要因が、それら自体で又は互いに組み合わせて、このようなバタフライバルブの完全な破損につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、船舶の船体における水中にある開口部のための、メンテナンスが少なくかつ信頼性のあるカバー装置を規定することである。加えて、本発明の目的は、できるだけメンテナンスの少ない、船舶のためのスラスタを規定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、まず、請求項1の特徴を有するカバー装置によって達成される。
【0008】
カバー装置が、少なくとも2つの中空チャンバリップと、少なくとも1つの浮力体と、を含む少なくとも1つの体積可変の中空チャンバリップ組立体を含み、少なくとも1つの中空チャンバリップ組立体が、流体、特に空気の供給又は除去によって膨張状態又は収縮状態にシフト可能であるので、カバー装置における大いに摩耗がなくかつメンテンナンスが少ない設計がもたらされ、これが、特に支持ポイント又はヒンジポイントなくもたらされる。結果として、故障のない動作が、腐食媒体、特に海水内でもたらされる。膨張状態では、導入された流体又は媒体の高圧は、中空チャンバリップ組立体の十分な寸法的安定性を保証し、従って通常の駆動動作時に船の船体における開口部の信頼性のある閉鎖を保証する。カバー装置は、好ましくは、一般的に船上で常に利用可能に保たれる流体として、圧縮空気により、又は通常の大気圧(1013hPa)よりも高い圧力下にある空気により駆動される。例えば水、海水又はオイルといった他の流体が、流体として使用され得る。円形の断面幾何学形状を有する開口部の場合、膨張状態では、中空チャンバリップ組立体は、およそ半楕円タイプ又は舌状タイプの形状を有することができる。あるいは、円形の断面幾何学形状を有する開口部の場合、膨張状態では、中空チャンバリップ組立体は、およそ矩形又は正方形の形状を有することができる。全て又は個々の中空チャンバリップは、好ましくは、中空チャンバリップ組立体を膨張状態又は収縮状態にシフトさせるために、膨張状態及び収縮状態に導かれ得る。個々の中空チャンバリップからの中空チャンバリップ組立体の設計において、開放プロセス及び閉鎖プロセス中に外部の干渉影響に対して非常にロバストであることが有利である。単一の中空チャンバリップが破損したとしても、中空チャンバリップ組立体は、なおも膨張状態又は収縮状態にシフトされ得る。
【0009】
有利なさらなる発展に従って、中空チャンバリップ組立体が、少なくとも1つの、可撓性を有するか又は柔軟なかつ高引張強度の成形要素を含むことが規定される。それにより、最大膨張状態に達すると、中空チャンバリップ組立体は、規定された形状を与えられ、この形状は、一般的に、バルーン状の幾何学形状から逸脱し、例えばマット状になり得る。ここで、成形要素は、中空チャンバリップ組立体の外部又は内部に配置され得る。成形要素が個々の中空チャンバリップの内部にそれぞれ配置された設計は、特に好ましい。これら成形要素は、細線タイプで構成され、膨張状態でのそれぞれの中空チャンバリップの断面を決定する。個々の中空チャンバリップのサイズ及び断面は、中空チャンバリップ組立体に対する中空チャンバリップの配置に応じて、ここでは異なることができる。従って、例えば、中空チャンバリップ組立体の固定端の領域での中空チャンバリップは、中空チャンバリップ組立体の自由端の領域での中空チャンバリップよりも大きい断面を有することができる。さらに、固定端の領域での中空チャンバリップは、鉛直方向よりも水平方向においてより大きい延在範囲を有することができ、自由端の領域での中空チャンバリップは、水平方向よりも鉛直方向においてより大きい延在範囲を有することができる。
【0010】
中空チャンバリップ組立体又は中空チャンバリップは、好ましくは、流体密封しかつ可撓性を有する表面構造を有して形成される。これは、流体の供給又は除去によって、中空チャンバリップを実質的に設計変更することを可能にする。表面構造は、例えば、可撓性を有しかつ可能であれば弾性を有するフィルム、又は別の流体密封し、可能であればゴム入りの織物材料であって、その材料厚さが、その表面延在範囲に対して小さい、ゴム入り織物材料である。あるいは、個々の中空チャンバリップは、スペーサ布から製造され、それぞれの中空チャンバの形状を決定する細線が、中空チャンバリップの内部に配置されている。ここで、個々の中空チャンバリップは、中空チャンバリップ組立体がプレートの形状で生じるように、例えば長手方向延在範囲に沿って互いに接続される。膨張状態での中空チャンバリップ組立体の望ましい形状は、それぞれの中空チャンバリップの互いに対する対応する配置及び変化によって達成される。
【0011】
さらなる一発展によれば、開口部は、中空チャンバリップ組立体の膨張状態では本質的に完全に閉鎖され、収縮状態では本質的に完全にブロック解除される。それにより、船舶、特に船の通常の駆動動作時には、開口部は、事実上完全に閉鎖され、このため、水中での船体の流れ抵抗の増大が、最大限まで排除される。
【0012】
少なくとも1つの双安定バネ要素が、好ましくは、少なくとも部分的に中空チャンバリップ組立体の自由端の領域に配置されている。弾性を有しかつさらに双安定である要素に起因して、中空チャンバリップ組立体の収縮状態と膨張状態との間の変化は、サポートされる。中空チャンバリップ組立体の自由端は、膨張状態では、海の底に面する下側開口部セクションに本質的に沿って延在し、収縮状態では、理想的な場合、海の底から離れるように向けられた上側開口部セクションと同一面上で終端する。双安定バネ要素は、例えばゴムを使用して、プラスチックを使用して、金属を使用して、特にバネ鋼を使用して、又は述べた材料の組み合わせを使用して形成され得る。
【0013】
中空チャンバリップ組立体における膨張状態から収縮状態への間の変化及び中空チャンバリップ組立体における収縮状態から膨張状態への間の変化は、好ましくは、双安定バネ要素に起因して迅速に行われる。結果として、開口部がカバー装置によって部分的にのみ閉鎖されるか又はブロック解除される中間状態は、迅速に横断される。従って、スラスタのプロペラによる中空チャンバリップの表面構造の一部の吸い込みは、信頼性をもって回避される。
【0014】
好ましくは、少なくとも2つの中空チャンバリップは、流体を供給及び/又は排出するための末端部をそれぞれ備える。全ての中空チャンバリップは、好ましくは、個別の末端部をそれぞれ備える。しかしながら、2つ以上の個々の中空チャンバリップが、単一の末端部がこれらチャンバに対して充填しかつ空にするのに十分なように、互いに流体接続されることもできる。
【0015】
好ましい例示的な一実施形態は、少なくとも2つの中空チャンバリップが、それら中空チャンバリップの末端部を介して互いに独立して流体で充填されかつ/又は空にされ得ることを規定する。好ましくは、少なくとも2つの中空チャンバリップが、それら中空チャンバリップの末端部を介して、互いに時間的に独立して流体で充填されかつ/又は空にされることが規定される。少なくとも2つの中空チャンバリップが、好ましくは、それら中空チャンバリップの末端部を介して、異なる流体で充填されかつ/又は空にされ得る。
【0016】
さらなる一発展では、小さい流れ抵抗を有する隣接要素、特に格子が、少なくとも部分的に開口部内に配置される。それにより、膨張状態において、横断方向チャネルの延在方向での中空チャンバリップ組立体の少なくとも一方の側に作用する側方支持が、保証される。この隣接要素は、例えば格子、有孔金属プレートなどを使用して実現され得る。中空チャンバリップ組立体は、好ましくは、内部から横断方向チャネルの内側の隣接要素に当接する。
【0017】
好ましい一実施形態の場合には、収縮状態において、少なくとも1つの中空チャンバリップ組立体が、保管空間内に完全に収容可能であり、膨張状態において、中空チャンバリップ組立体の自由端が、締りばめ方式で少なくとも部分的に凹部内に収容可能である。保管空間によって、収縮状態において中空チャンバリップ組立体が開口部の断面から完全に後退することと、流れ抵抗の関連する増大がスラスタの動作時に生じないことと、が保証される。凹部に起因して、中空チャンバリップ組立体の膨張状態における中空チャンバリップ組立体の自由端の追加的な位置固定が保証され、これが、カバー装置のシール機能のさらなる改善につながる。好ましくは矩形の凹部が、通常、開口部の下側開口部セクションの下部ポイントの領域に設けられる。説明の文脈において、“下部ポイント”との用語は、海の底の最も近くにある仮想のポイント又はスラスタの下側開口部の半円形の断面幾何学形状の“下側”の頂点を意味すると理解される。
【0018】
少なくとも1つの浮力体が、好ましくは、中空チャンバリップ組立体の自由端の領域に配置され、水よりも小さい密度を有する。海の底又は海底から離れるように向けられた又は重力に対抗して作用する、浮力体の浮力に起因して、中空チャンバリップ組立体における膨張状態と収縮状態との間の移行がサポートされる。浮力体は、例えば、トーラスセクションの形状を有することができる。さらに、複数の浮力体が、中空チャンバリップの自由端にわたって分配されて設けられ、好ましくは互いに対して均一に離間され得る。浮力体の特に有利な一設計は、中空チャンバリップ、好ましくは中空チャンバリップ組立体の自由端を形成する中空チャンバリップが、浮力体を表すことを規定する。ここで、中空チャンバリップ組立体の膨張状態では、浮力体を形成する中空チャンバリップが、好ましくは圧縮空気で充填される。他の中空チャンバリップを空にすることにより、浮力体を形成する中空チャンバリップは、その浮力に起因して、他の中空チャンバリップを上方に押し、選択的には空にすることを追加的にサポートすることができる。他の中空チャンバリップも、圧縮空気で充填され得るが、例えば流体として周囲の海水を提供することも考えられる。これは、流体の浮力が充填中に必ずしも反対に作用することがないという利点を有する。個々の中空チャンバリップは、好ましくは、例えば、時間的に独立してシフトされ、充填され、かつ空にされ、これが、充填すること及び空にすることをサポートすることができる。従って、浮力体を形成する中空チャンバリップは、好ましくは最後に充填されかつ/又は最後に空にされ得る。さらに、中空チャンバリップ組立体は、個々の中空チャンバリップを充填する間及び/又は空にする間、予め決定されたシーケンスによってさまざまな最終位置に導かれ得る。中空チャンバリップとしての浮力体の一設計では、さらに追加の浮力体が省略され得る。
【0019】
加えて、上述した目的は、請求項10に従うスラスタ、特に船首スラスタ又は船尾スラスタによって達成される。
【0020】
船舶のためのスラスタが、請求項1から9のいずれか一項による少なくとも1つのカバー装置を含むので、船舶のためのスラスタであって、概して2つの開口部を含む横断方向チャネルが、信頼性のありかつメンテナンスの少ない方式で、閉鎖可能かつ再びブロック解除可能である、スラスタが提供される。それにより、通常の駆動動作時には、流れ抵抗を最小化するために、開口部は完全に閉鎖され、操縦動作時には、アクティブなスラスタが完全にブロック解除される。スラスタは、例えば船首スラスタ又は船尾スラスタとして実現され得る。それにより、本発明のカバー装置は、頻繁に破損する傾向がある破損しやすい機械的なヒンジポイント又は支持ポイントなくもたらされる。さらに、例えば駆動部又はモータといった破損しやすい機械的駆動構成要素は、カバー装置の動作に必要ではない。
【0021】
図では、同一の構造的要素は、同一の参照符号を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】完全な収縮状態にあるカバー装置を含む、船舶の船体におけるスラスタの水中にある開口部の平面図を示す。
図2】完全な膨張状態にある図1のカバー装置の概略平面図を示す。
図3図1及び図2のカバー装置並びにさらなるカバー装置を含むスラスタを通る長手方向断面図を示す。
図4】完全な収縮状態にある本発明のカバー装置を含む、船舶の船体におけるスラスタの水中にある開口部の平面図を示す。
図5】完全な膨張状態にある図4のカバー装置の概略平面図を示す。
図6】完全な収縮状態にある、さらなる本発明のカバー装置及びさらなるカバー装置を含むスラスタを通る長手方向断面図を示す。
図7】完全な膨張状態にある図6のカバー装置を含むスラスタを通る長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、完全な収縮状態にあるカバー装置を含む船舶の船体におけるスラスタの水中にある開口部の平面図を示す。
【0024】
本実施形態では例示的に船として形成された船舶12の船体10には、水14中にある開口部16が、円形の断面幾何学形状を有して配置され、この開口部16は、本発明のカバー装置20を使用して、時に閉鎖可能である。開口部16は、本実施形態では、単に例として、スラスタ26の横断方向チャネル24の右舷又は港側開口部22として構成され、この横断方向チャネル24は、船体10を完全に貫通する。スラスタ26は、プロペラ30を回転駆動するための駆動ユニット28を含み、これにより、船体10の長手方向軸32に対して横断方向に延在する横断方向チャネル24内に、より容易な操縦のための強力な水の流れを発生させる。本実施形態では、スラスタ26は、例えば船首スラスタ又は船尾スラスタ34として構成されている。カバー装置20を使用する原理では、船舶の船体における水中にある任意の開口部が閉鎖され得る。
【0025】
カバー装置20は、とりわけ、体積可変の、およそ袋状の中空チャンバリップ40を備え、中空チャンバリップ40は、図1で描かれた完全な“収縮状態”において、船体10の領域の保管空間42内に完全に収容され、このため、開口部22は、完全にブロック解除されており、作動されたスラスタ26により、横断方向チャネル24内での水の流れの損失が事実上排除される。
【0026】
チューブ状接続部44を介して、好ましくは圧縮空気48又は別のガスである流体46は、中空チャンバリップ40に供給されるか、又は中空チャンバリップ40から排出されもしくは中空チャンバリップ40から離れるように吸い込まれる。圧縮空気48の十分な供給によって、中空チャンバリップ40は、いわゆる“膨張状態”、すなわち完全に膨張させられた状態(特に図2参照)にシフトさせられる一方で、中空チャンバリップ40は、圧縮空気48のできるだけ完全な吸い出しによって、図1で示されるいわゆる“収縮状態”にシフト可能である。
【0027】
“膨張状態”から“収縮状態”への移行をサポートするために、浮力体50が、中空チャンバリップ40内に統合されており、この浮力体の密度は、水の密度よりも顕著に小さい。中空チャンバリップ40は、流体密封し、折り曲げ可能であり、かつできるだけ可撓性を有し、可能であれば弾性を有する表面構造52を有して構築されている。浮力体50は、本実施形態では、例示的に、中空チャンバリップ40の自由端54の領域内に配置され、かつ中空チャンバリップの外部に配置されている。自由端54から離れるように向けられている、中空チャンバリップ40の固定端56は、保管空間42の頂部側カバー58の領域で取り付けられている。中空チャンバリップ40の表面構造52は、例えば、選択的に繊維強化された、高強度プラスチックフィルム又はエラストマーフィルムである。
【0028】
さらに、中空チャンバリップは、双安定バネ要素60、例えば厚い壁とされたプラスチックマットを含み、このプラスチックマットは、図1で描かれた“収縮状態”において、海の底62又は海底から離れるように面する上側開口部セクション64に本質的に沿って延在する。本質的に半円形の断面幾何学形状を有する1つの双安定バネ要素60は、中空チャンバリップ40における“収縮状態”と“膨張状態”との間の各変化が、移行なく、又は“クリッカー原理”の様式でできるだけ迅速に行われることを可能にするために働き、これにより、中間状態を回避する。海の底62に向けられた下側開口部セクション66は、周方向側で、上側開口部セクション64に接続している。本実施形態では、上側開口部セクション64及び下側開口部セクション66双方は、およそ半シリンダ状の形状をそれぞれ有し、これら半シリンダ状の形状は、横断方向チャネル24のおよそ円形の断面幾何学形状をともに形成する。
【0029】
加えて、本実施形態では、例示的に格子68として構成された隣接要素70が設けられ、隣接要素70は、中空チャンバリップ40の完全に膨張させられた状態又は膨張状態において中空チャンバリップ40のための一側の側方ガイドとして働くように設けられる。あるいは、図1では描かれていない、格子68に対して平行に離間して延在するさらなる格子が設けられ、このため、中空チャンバリップ40の膨張状態(特に図2参照)であって、船舶又は船の通常の駆動動作時に、横断方向チャネル24の開口部22を閉鎖するために通常設定される、膨張状態では、双方の格子の間の中空チャンバリップ40の特に信頼性のある2つの側でのガイドが保証される。
【0030】
図2は、完全な“膨張状態”にある図1のカバー装置の概略平面図を示す。
【0031】
“膨張状態”では、中空チャンバリップ40の自由端54又は双安定バネ要素60は、下側開口部セクション66の領域内に延在し、それにより、スラスタ26の開口部22は、事実上完全に閉鎖され、通常の駆動動作時には、船舶12の船体10の流れ抵抗の顕著な増大はもたらされない。“膨張状態”では、浮力体50は、下側開口部セクション66の下部ポイント80の領域に配置される。
【0032】
本実施形態では、舌状の中空チャンバリップ40が、一側において格子68上で支持されている。中空チャンバリップ40における“収縮状態”(特に図1参照)から図2で示される“膨張状態”への変化は、接続部44を介して中空チャンバリップ40の袋タイプの表面構造52に圧縮空気48を供給することによって行われ、結果として、中空チャンバリップ40は、完全な“膨張状態”に達するまで膨らむ。
【0033】
“収縮状態”から“膨張状態”への移行により、双安定バネ要素50は、図2で示される位置へ、急に又は移行のない様式で跳ね、これは、収縮状態におけるバネ要素60の延在に対して鏡対称であり、最適なシール効果を保証するために、理想的なケースでは、バネ要素60又は中空チャンバリップ40の半円形の自由端54が、スラスタ26の開口部22の下側開口部セクション66の領域において完全に隣接する。
【0034】
図3は、図1図2のカバー装置及びさらなるカバー装置を含むスラスタを通る長手方向断面図を示す。
【0035】
スラスタ26は、水14中で船舶12の船体10を完全に貫通する横断方向チャネル24を備える。およそ中空シリンダ状の横断方向チャネル24は、開口部22と、船体10において開口部22の反対側に組み込まれたさらなる開口部90と、を含む。海の底62は、船舶12の船体10の下方で離間している。少なくとも部分的に横断方向チャネル24の外部に配置された駆動ユニット28を含むプロペラ30は、スラスタ26の横断方向チャネル24内に配置されている。
【0036】
横断方向チャネル24の開口部22は、図3では“膨張状態”で見られるカバー装置20によって完全に閉鎖されるか又は覆われる。接続部44を介して内部又は外部に絶えずガイドされる圧縮空気48を使用することで、中空チャンバリップ40の“膨張状態”の永久的な維持が、船舶12の通常の駆動動作時に可能である。
【0037】
双安定バネ要素60及び浮力体50は、中空チャンバリップ40の自由端54の領域に配置されている。図3では透視図で示されかつ格子68として実現された隣接要素70に起因して、中空チャンバリップ40は、この中空チャンバリップ40が、常に船舶12の船体10と同一面上で終端し、通常の駆動動作時に、開口部22の信頼性のある閉鎖が保証されるように、位置固定を経験する。
【0038】
中空チャンバリップ40の位置固定をさらに最適化するために、下部ポイント80の領域での下側開口部セクション66では開口部22の内部に、少なくとも1つの、例えば矩形の凹部92、又は船の長手方向軸に平行に延在する“溝”もしくは“トラフ”が設けられ、“膨張状態”において中空チャンバリップ40の自由端54は、少なくとも部分的に、矩形の凹部92又は“溝”もしくは“トラフ”内に締りばめ方式で収容可能であるか、又は部分的に矩形の凹部92又は“溝”もしくは“トラフ”内に導入可能である。
【0039】
中空チャンバリップ40内には、3つの、例えばバンドタイプ又はストリップタイプの成形要素94,96,98が、図3では単に例として設けられている。これら成形要素94,96,98は、顕著な圧縮力なく引張力を支持することができ、十分に規定された、例えばマットタイプの形状又はマットレスタイプの形状を、膨張状態にある中空チャンバリップ40に与えるために働く。成形要素94,96は、好ましくは横断方向チャネル24とおよそ平行に延在する一方で、個々の成形要素98は、図3では、横断方向チャネル24に対しておよそ85°だけ傾斜した角度αで延在する。成形要素98は、例えば、双安定バネ要素60と、保管空間42内に頂部側で固定された、中空チャンバリップ40の固定端56と、の間に配置され得る。成形要素94,96及び98は、例えば高引張強度を有する織物バンドを使用して構築することができる。あるいは、成形要素94,96及び98は、中空チャンバリップ40と同じ表面構造52からなることができ、図3ではストリップ状に構成され得る。
【0040】
スラスタ26の横断方向チャネル24の第2開口部90は、さらなるカバー装置110を使用して閉鎖可能である。開口部90のためのカバー装置110は、カバー装置20に対して鏡対称で実現されるが、カバー装置20に対して、図3では“収縮状態”で配置されている。その他の点では、カバー装置110の構造的設計及び機能は、カバー装置20の構造的設計及び機能に対応し、このため、この点では、内容の繰り返しを避けるために、カバー装置20の説明が参照される(特に図1図2参照)。カバー装置20の中空コームリップ40は、必ずしも下方に、すなわち下側開口部セクション66に向かってテーパに設計される必要はない。他方のカバー装置10についても同様である。
【0041】
図4は、完全な収縮状態にある別のカバー装置を含む、船舶の船体のスラスタの水中にある開口部の平面図を示す。図1に対して、1つのみの中空チャンバリップ40が、ここで中空チャンバリップ組立体として設けられているのではなく、中空チャンバリップ組立体400が、5つの個別の中空チャンバリップ401,402,403,404,405を含む。図4から図7のさらなる説明では、図1から図3に対する差異のみが説明される。
【0042】
カバー装置20は、とりわけ、体積可変の中空チャンバリップ組立体400を備え、体積可変の中空チャンバリップ組立体400は、図4で描かれる完全な“収縮状態”では、船体の領域における保管空間42内に完全に収容され、このため、開口部22は、完全にブロック解除され、作動されたスラスタにより、横断方向チャネル内での水の流れの損失が事実上排除される。5つの個別の中空チャンバリップ401,402,403,404,405は、全て、それらの完全な“収縮状態”で描かれており、それにより、中空チャンバリップ組立体400も、その完全な“収縮状態”で描かれている。5つの個別の中空チャンバリップ401,402,403,404,405は、本質的にホースタイプに構成された個別の末端部441,442,443,444,445をそれぞれ含み、端部側でチューブ状であり、末端部441,442,443,444,445を介して、好ましくは圧縮空気又は別のガスである流体が、個々の中空チャンバリップ401,402,403,404,405に供給されるか、又は個々の中空チャンバリップ401,402,403,404,405から排出されるかもしくは吸い込まれる。全ての中空チャンバリップの末端部441,442,443,444,445は、末端部441,442,443,444,445が“膨張状態”及び“収縮状態”双方において開口部の外側にあるように、中空チャンバリップ401,402,403,404,405上に配置されている。このために、中空チャンバリップ組立体400の固定端56を形成する、中空チャンバリップ401の末端部441は、中空チャンバリップ401の中央に配置されている。他の中空チャンバの末端部442,443,444及び445は、設置空間を最適化する方式で、中空チャンバリップ402,403,404及び405の側方端部で左側及び右側で交互に配置され、ホースタイプの可撓性中間部品によって中空チャンバリップにそれぞれ接続されている。
【0043】
全ての中空チャンバリップ401,402,403,404,405内に圧縮空気を十分に供給することによって、中空チャンバリップ組立体400は、いわゆる“膨張状態”、すなわち完全に膨張した状態(特に図5参照)にシフトされる一方で、中空チャンバリップ組立体400は、全ての中空チャンバリップ401,402,403,404,405から圧縮空気をできるだけ完全に吸い出すこと又は排出することによって、図4で示されるいわゆる“収縮状態”にシフト可能である。
【0044】
図1から図3に示される、“膨張状態”から“収縮状態”への移行をサポートする個別の浮力体50が、図4から図7の例示的な実施形態では省略されている。図4から図7では、浮力体は、中空チャンバリップ組立体400の自由端54を形成する中空チャンバリップ405によって形成されている。このために、中空チャンバリップ405は、その末端部445を介して圧縮空気で作用可能であり、中空チャンバリップ組立体400の“膨張状態”から“収縮状態”への移行により、好ましくは中空チャンバリップ401,402,403,404,405の最後として、中空チャンバリップ405は、完全に空にされるか、又は“収縮状態”に導かれる。従って、空気で充填された中空チャンバリップ405は、浮力体を表し、空になった高いチャンバリップ401,402,403,404を保管空間42内に上昇させる。しかしながら、個別の浮力体が、サポートする方式で中空チャンバリップ405内又は中空チャンバリップ405上に追加的に配置され得る。しかしながら、中空チャンバリップ401又は選択的にさらなる中空チャンバリップが1つの以上の浮力体を表すように、個別の浮力体が完全に省略されてもよい。例えば、上から下へ中空チャンバリップを連続的に空にすることにより、全てのさらに下方の中空チャンバリップが、それら中空チャンバリップよりも上方にある中空チャンバリップのための浮力体を表す。
【0045】
図1から図3に示される、“膨張状態”から“収縮状態”への移行をサポートするバネ要素60が、図4から図7の例示的な実施形態では省略されている。
【0046】
図5は、完全な“膨張状態”にある図4のカバー装置の概略平面図を示す。
【0047】
“膨張状態”では、中空チャンバリップ405によって形成された、中空チャンバリップ組立体400の自由端54は、下側開口部セクションの領域内に延在し、それにより、スラスタの開口部22は、事実上完全に閉鎖され、通常の駆動動作時には、船舶の船体の流れ抵抗の顕著な増大は生じない。“膨張状態”では、中空チャンバリップ405によって形成された浮力体は、下側開口部セクションの下部ポイントの領域に配置される。
【0048】
中空チャンバリップ組立体400における“収縮状態(特に図4参照)”から図5で示される“膨張状態”への変化は、末端部441,442,443,444,445を介してホースタイプの中空チャンバリップ401,402,403,404,405内に圧縮空気を供給することによって行われ、結果として、中空チャンバリップ401,402,403,404,405は、完全な“膨張状態”に達するまで膨らむ。原理的には、上側のホースタイプ中空チャンバリップ401、402,403,404は、流体として海水で充填されてもよく、浮力体としての中空チャンバリップ405のみが、圧縮空気で充填され、これによりカバー装置20の機能を表してもよい。
【0049】
図6は、完全な収縮状態にある本発明のさらなるカバー装置及びさらなるカバー装置を含むスラスタを通る長手方向断面図を示す。
【0050】
スラスタ26は、水14中で船舶12の船体10を完全に貫通する横断方向チャネル24を備える。およそ中空シリンダ状の横断方向チャネル24は、開口部22と、船体10において開口部22の反対側に組み込まれたさらなる開口部90と、を含む。海の底は、船舶12の船体10の下方で離間している。少なくとも部分的に横断方向チャネル24の外部に配置された駆動ユニット28を含むプロペラ30は、スラスタ26の横断方向チャネル24内に配置されている。
【0051】
横断方向チャネル24の開口部22及び90のための2つのカバー装置20及び110は、互いに対して鏡対称となるように構成され、“収縮状態”にある。カバー装置20及び110は、本質的に中空チャンバリップ401,402,403,404,405からなり、中空チャンバリップ401,402,403,404,405は、異なる体積を収容することができ、“収縮状態”では保管空間42内で異なる体積を必要とする。中空チャンバリップ401,402,403,404,405は、個別の末端部を介して圧縮空気によりそれぞれ充填可能であり、図6では、最も上方の中空チャンバリップ401の末端部441のみが示されている。
【0052】
図7は、完全な膨張状態にある図6のカバー装置を含むスラスタを通る長手方向断面図を示す。
【0053】
横断方向チャネル24の開口部22は、図7において“膨張状態”で見られるカバー装置20によって、完全に閉鎖されるか又は覆われている。連続的に供給されるか又は再注入された圧縮空気48を使用することで、中空チャンバリップ組立体400を形成する中空チャンバリップ401,402,403,404,405の“膨張状態”の永久的なメンテナンスが、船舶12の通常の駆動動作時に可能である。
【0054】
中空チャンバリップ組立体400の自由端54の領域での中空チャンバリップ405は、浮力体50を形成する。図7では透視図で示されかつ格子68として実現された隣接要素に起因して、中空チャンバリップ401,402,403,404,405は、これら中空チャンバリップ401,402,403,404,405が、常に船舶12の船体10と同一面上で終端し、通常の駆動動作時には、開口部22の信頼性のある閉鎖が保証されるように、側方の位置固定を経験する。中空チャンバリップ401,402,403,404,405は、一方の側において、横断方向チャネル24の内部で格子68と当接する。
【0055】
開口部22の内部での中空チャンバリップ組立体400の位置固定をさらに最適化するために、下部ポイントの領域での下側開口部セクション66では、少なくとも1つの、例えば矩形の凹部92、又は船の長手方向軸に平行に延在する“溝”もしくは“トラフ”が設けられ、“膨張状態”において中空チャンバリップ400の自由端54を形成する最も下方の中空チャンバリップ445は、少なくとも部分的に、矩形の凹部92又は“溝”もしくは“トラフ”内に締りばめ方式で収容可能であるか、又は矩形の凹部92又は“溝”もしくは“トラフ”内に導入可能である。
【0056】
図7では、単に例として、2つの、例えば細線状、バンド状又はストリップ状の成形要素94が、中空チャンバリップ401の内部に設けられている。単に例として、2つの、例えば細線状、バンド状又はストリップ状の成形要素96も、中空チャンバリップ405の内部に配置されている。他の中空チャンバリップ402,403,404が、成形要素を含むことができることが理解される。さらに、中空チャンバリップ401,402,403,404,405を横断するさらなる成形要素98が、中空チャンバリップの外部に配置されている。これら成形要素94,96,98は、顕著な圧縮力なく引張力を支持することができ、十分に規定された、例えばマットタイプの形状又はマットレスタイプの形状を、膨張状態にある中空チャンバリップ組立体404に与えるために働く。成形要素94,96及び98は、例えば高引張強度を有する織物バンドを使用して構築することができる。あるいは、成形要素94,96及び98は、中空チャンバリップ401,402,403,404,405と同じ表面構造52からなることができ、ここではストリップ状に構成され得る。
【0057】
あるいは、中空チャンバリップは、スペーサ布と、適切な細線の成形要素94,96と、からなることができる。
【0058】
スラスタの横断方向チャネル24の第2開口部90は、さらなるカバー装置110によって閉鎖され、さらなるカバー装置110は、カバー装置20に対して鏡対称に構成され、“膨張状態”にもある。その他の点では、カバー装置110の構造的設計及び機能は、カバー装置20の構造的設計及び機能に対応し、このため、この点では、内容の繰り返しを回避するために、カバー装置20の説明が参照される。カバー装置20,110の中空チャンバリップ401,402,403,404,405は、図5に示されるように、同じ軸方向長さを有し、それにより、“膨張状態”では、中空チャンバリップ組立体400は、矩形又は正方形で構成される必要はなく、例えば下方に異なる長さ、すなわち中空チャンバリップ401から中空チャンバリップ405に向かって減少する長さを有することもでき、それにより、下方に、すなわち下側開口部セクションに向かってテーパに構成された中空チャンバリップ組立体400が、表され得る。
【0059】
本発明のカバー装置のそれぞれを使用してスラスタの横断方向チャネルの2つの側の開口部を閉鎖する、単に例として図1から図7に表された可能なものから逸脱して、本発明のカバー装置を使用して、船の水線よりも下方にある他の開口部が、本発明のカバー装置を使用して閉鎖可能に設計され得る。
【0060】
例えば、本実施形態では、船のスタビライザのための開口部用のカバー装置の可能性が参照され、スタビライザは、スタビライザチャンバ内に収容され、スタビライザチャンバ内で内側及び外側に回動可能な様式で配置される。カバー装置の描かれない設計の代替案は、本明細書では、1つのカバー装置が、互いから分離された2つの中空チャンバリップ組立体を含み、これら中空チャンバリップ組立体が、流体の供給又は排出によって体積可変の複数のチャンバリップをそれぞれ含み、それにより2つの中空チャンバリップ組立体が膨張状態又は収縮状態にシフト可能であるように、設計され得る。ここで、2つの中空チャンバリップ組立体は、固定端及び自由端をそれぞれ含み、固定端は、上側開口部セクション及び下側開口部セクションに配置され、中空チャンバリップによってそれぞれ表すことが可能な2つの自由端は、中空チャンバリップ組立体の充填中に開口部の中心に向かって互いに向かって移動し、膨張状態では、開口部の中心領域において互いに当接し、従って開口部を閉鎖するか、又はスタビライザの表面にそれぞれ当接し、従って開口部を閉鎖する。2つの中空チャンバリップ組立体の少なくとも上側について、自由端を形成する中空チャンバリップは、中空チャンバリップ組立体を空にする間にサポートする様式で使用され得る浮力体を形成することができる。
【0061】
実質的により狭い意味で機械的な可動構成要素、特に支持ポイント、ヒンジポイント、モータ及び駆動部なくもたらされる、体積可変の又は膨らむことが可能な中空チャンバリップ組立体の構造的にシンプルな設計に起因して、カバー装置のより寿命が長く、より信頼性があり、かつメンテナンス作業が少ないことが保証される。
【0062】
本発明は、船舶の船体における水中にある開口部、特にスラスタの横断方向チャネルの開口部を少なくとも部分的に閉鎖するためのカバー装置に関する。本発明によれば、カバー装置は、少なくとも2つの中空チャンバリップを含む少なくとも1つの体積可変の中空チャンバリップ組立体を含み、少なくとも2つの中空チャンバリップは、流体、特に空気の供給又は除去によって膨張状態又は収縮状態にシフト可能である。体積可変の又は膨らむことが可能なカバー装置の結果として、カバー装置のより信頼性があると同時にメンテナンス作業がより少ないことがもたらされる。加えて、本発明は、主題として、スラスタ、特に船首スラスタ又は船尾スラスタを有する。
【符号の説明】
【0063】
10 船体、12 船舶、14 水、16 開口部(一般的)、20 カバー装置、22 開口部(横断方向チャネル)、24 横断方向チャネル(スラスタ)、26 スラスタ、28 駆動ユニット、30 プロペラ、32 長手方向軸(船体)、34 船首スラスタ又は船尾スラスタ、40 中空チャンバリップ、42 保管空間、44 末端部、46 流体、48 圧縮空気(空気)、50 浮力体、52 表面構造、54 自由端、56 固定端、58 カバー(保管空間)、60 双安定バネ要素、62 海の底、64 上側開口部セクション、66 下側開口部セクション、68 格子、70 隣接要素、80 下部ポイント、90 開口部(横断方向チャネル)、92 凹部、94 成形要素、96 成形要素、98 成形要素、110 カバー装置、400 中空チャンバリップ組立体、401 中空チャンバリップ、402 中空チャンバリップ、403 中空チャンバリップ、404 中空チャンバリップ、405 中空チャンバリップ、441 末端部、442 末端部、443 末端部、444 末端部、445 末端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】