(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-519030(P2020-519030A)
(43)【公表日】2020年6月25日
(54)【発明の名称】多波長ガスレーザを調整するための外部の光フィードバック要素
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20200529BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20200529BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
H01S3/00 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-561131(P2019-561131)
(86)(22)【出願日】2018年5月9日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月6日
(86)【国際出願番号】US2018031758
(87)【国際公開番号】WO2018208887
(87)【国際公開日】20181115
(31)【優先権主張番号】62/504,811
(32)【優先日】2017年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】504250923
【氏名又は名称】ノヴァンタ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】リマノヴィック,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ベテル,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ホイーラー,ロス
(72)【発明者】
【氏名】ケルシュ,パトリック
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AD05
5F172NN23
5F172NN25
5F172NP03
5F172NP04
5F172NP16
5F172NP18
5F172NR05
5F172NR06
5F172ZA02
(57)【要約】
【解決手段】複数の波長を有するガスレーザ(102) の出力ビームを調整するための外部の光フィードバック要素(108) は、ガスレーザ(102) の内部光共振器の外側で出力ビーム(106) のビーム経路上に配置された部分的に反射する光学素子(108) と、光学素子を支持して、ビーム経路に対して光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を調節するステージ(114) とを備えている。出力ビーム(106) は光学素子(108) で部分的に反射してガスレーザ(102) の内部光共振器に戻され、強度は複数の波長に応じて異なり、光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を変えることにより調節される。強度の調節により、ガスレーザの内部光共振器への出力ビームの可変なフィードバックが提供され、ガスレーザの選択的な出力波長が単一ライン又は複数ラインで同時的にもたらされる。この構成により、市販のCO
2レーザ自体に変更を加えることなく、回折格子のような波長選択素子を有する結合空洞を所与のガスレーザ共振器に加えることにより、市販のCO
2 レーザの波長を制御することが可能になり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長を有するガスレーザの出力ビームを調整するための外部の光フィードバック要素であって、
前記ガスレーザの内部光共振器の外側で出力ビームのビーム経路上に配置された部分的に反射する光学素子と、
前記光学素子を支持して、出力ビームのビーム経路に対して前記光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を調節するステージと
を備えており、
出力ビームは前記光学素子で部分的に反射して、前記ビーム経路を介して前記ガスレーザの内部光共振器に戻され、
反射出力ビームの強度は前記複数の波長に応じて異なり、
前記複数の波長毎の反射出力ビームの強度は、前記光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を変えることにより調節され、
選択された波長で前記ガスレーザの出力ビームを増強する前記ガスレーザの内部光共振器に前記出力ビームが戻される波長が、前記強度の調節により選択されることを特徴とする外部の光フィードバック要素。
【請求項2】
透明な光学素子が、波長に応じて変わる反射率を与える誘電体被膜と共に使用されることを特徴とする請求項1に記載の外部の光フィードバック要素。
【請求項3】
前記ガスレーザは二酸化炭素レーザであり、
前記ガスレーザの出力ビームの複数の波長が8.5 μmと11.2μmとの間にあることを特徴とする請求項1に記載の外部の光フィードバック要素。
【請求項4】
前記ガスレーザの出力ビームを透過ビーム経路及び反射ビーム経路に分割するビームスプリッタを更に備えており、
前記ステージによって支持されている前記光学素子は前記反射ビーム経路上に配置されており、
前記ステージは、前記反射ビーム経路に対して前記光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を調節し、
前記出力ビームは前記光学素子で部分的に反射して、前記反射ビーム経路、前記ビームスプリッタ及び前記ビーム経路を介して前記ガスレーザの内部光共振器に戻されることを特徴とする請求項1に記載の外部の光フィードバック要素。
【請求項5】
前記反射ビーム経路上にミラーを更に備えており、
前記光学素子を通って透過する出力ビームの一部が反射して前記反射ビーム経路に戻ることを特徴とする請求項4に記載の外部の光フィードバック要素。
【請求項6】
複数の波長を有するガスレーザの出力ビームを調整する方法であって、
ステージによって支持されて前記ガスレーザの内部光共振器の外側で出力ビームのビーム経路上に配置された部分的に反射する光学素子を準備し、
反射出力ビームの強度を前記複数の波長に応じて変え、
出力ビームのビーム経路に対して前記光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を調節することにより、前記複数の波長毎の反射出力ビームの強度を調節し、前記強度の調節により、出力ビームが前記ガスレーザの内部光共振器に戻される波長を選択し、
選択された波長の反射出力ビームを前記ガスレーザの内部光共振器に戻し、
選択された波長で前記ガスレーザの出力ビームを増強することを特徴とする方法。
【請求項7】
前記光学素子は、波長に応じて変わる反射率を与える誘電体被膜を有していることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステージは、出力ビームのビーム経路に対して前記光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を調節することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ガスレーザの出力ビームをビームスプリッタによって透過ビーム経路及び反射ビーム経路に分割し、
前記ステージによって支持されている前記光学素子は前記反射ビーム経路上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記光学素子を通って透過する出力ビームの一部をミラーで反射させて前記反射ビーム経路に戻すことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数の波長を有するガスレーザの出力ビームを調整するための外部の光フィードバック要素であって、
前記ガスレーザの内部光共振器の外側で出力ビームのビーム経路上に配置された部分的に反射する光学素子と、
波長依存性光学素子と、
前記ビーム経路上に配置された第2の部分的に反射する光学素子と、
特定の波長帯域を受けるべく夫々離隔した一連の検出器と、
前記波長依存性光学素子及び前記一連の検出器に連結された制御部と
を備えており、
前記出力ビームは、前記光学素子で部分的に反射し、前記波長依存性光学素子を介して前記第2の部分的に反射する光学素子に送られ、前記第2の部分的に反射する光学素子は、前記出力ビームの一部を前記ガスレーザに再帰反射して前記出力ビームの一部を前記一連の検出器に送り、
前記ガスレーザが特定の波長帯域のいずれかで作動可能であるように安定して制御され得る波長を、前記ガスレーザに戻る反射出力ビームが有するように、前記制御部は前記波長依存性光学素子を調節することを特徴とする外部の光フィードバック要素。
【請求項12】
前記特定の波長帯域は8.5 μmと11.2μmとの間にあることを特徴とする請求項11に記載の外部の光フィードバック要素。
【請求項13】
前記特定の波長帯域は、9.3 μm、9.6 μm、10.2μm及び10.6μmから成る群から選択されていることを特徴とする請求項11に記載の外部の光フィードバック要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ガスレーザの出力波長を調節するための外部の光フィードバック要素に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
二酸化炭素(CO
2) ガスレーザでは、CO
2分子内の緻密な振動回転遷移によって、8.5 μmと11.2μmとの間の放射波長が可能になる。単一波長の動作及び複数の帯域での同時的なレーザ発振を観察することができる。工業用のCO
2レーザの放射波長は、典型的には約10.6μm、10.2μm、9.6 μm又は9.3 μm(同位体で標識された
18O を使用する場合には9.4 μm)のいずれかに合わせられる。多くの工業用途又は医療用途では、マーキング、切断又は溶接のような最適な材料処理のためにCO
2レーザの出力波長を該当する材料の吸収特性と一致させることが必要である。
【0003】
CO
2 レーザの出力ビームを調整して、ひいては多波長CO
2 レーザを提供するための既存の技術には、回折格子、エタロン、吸収フィルタ、複屈折チューナ及び誘電体被膜のような波長選択素子が含まれる。レーザの内部光共振器への光学素子の挿入が、これらの用途に共通する。
【0004】
他の技術は、ビームステアリングのオプションによって組み合わせられる複数のレーザ光共振器の使用に依存している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明の一又は複数の実施形態は、複数の波長を有するガスレーザの出力ビームを調整するための外部の光フィードバック要素であって、ガスレーザの内部光共振器の外側で出力ビームのビーム経路上に配置された部分的に反射する光学素子と、光学素子を支持して、出力ビームのビーム経路に対して光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を調節するステージとを備えている外部の光フィードバック要素に関する。外部の光フィードバック要素では、出力ビームは光学素子で部分的に反射して、ビーム経路を介してガスレーザの内部光共振器に戻される。反射出力ビームの強度は複数の波長に応じて異なり、光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を変えることにより調節される。反射出力ビームの強度の調節により、ガスレーザの内部光共振器への選択されたフィードバック波長が与えられ、ガスレーザの出力波長が設定される。
【0006】
別の態様では、本発明の一又は複数の実施形態は、複数の波長を有するガスレーザの出力ビームを調整する方法であって、ステージによって支持されてガスレーザの内部光共振器の外側で出力ビームのビーム経路上に配置された部分的に反射する光学素子でガスレーザの出力ビームを反射し、反射出力ビームの強度を複数の波長に応じて変え、出力ビームのビーム経路に対して光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を調節することにより、複数の波長毎の反射出力ビームの強度を調節し、強度の調節により、出力ビームがガスレーザの内部光共振器に戻される波長を選択し、選択された波長の反射出力ビームをガスレーザの内部光共振器に戻し、選択された波長でガスレーザの出力ビームを増強する方法に関する。
【0007】
本発明の他の態様及び利点は以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。しかしながら、添付図面は、例として本発明の一又は複数の実施形態のある態様又は実施のみを示すものであり、特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0009】
【
図1】本発明の一又は複数の実施形態に係るシステムを示す概略図である。
【
図2A】本発明の一又は複数の実施形態に係る部分的に反射する光学素子の回転角の関数として記録された出力波長の実験データを示す図である。
【
図2B】本発明の一又は複数の実施形態に係る部分的に反射する光学素子の回転角の関数として記録された出力波長の実験データを示す図である。
【
図2C】本発明の一又は複数の実施形態に係る部分的に反射する光学素子の回転角の関数として記録された出力波長の実験データを示す図である。
【
図3】本発明の一又は複数の実施形態に係るシステムを示す概略図である。
【
図4】本発明の一又は複数の実施形態に係るシステムを示す概略図である。
【
図5】本発明の一又は複数の実施形態に係るシステムを示す図である。
【
図6】本発明の一又は複数の実施形態に係るフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特定の実施形態を、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。様々な図面における同一の要素は、整合性のために同一の参照番号で示されている。
【0011】
本発明の実施形態の以下の詳細な記載では、本発明のより完全な理解をもたらすべく、多くの具体的な詳細な内容が述べられている。しかしながら、本発明がこのような具体的な詳細な内容無しで実施され得ることは当業者にとって明らかである。他の例では、公知の特徴は、不必要に複雑にする記載を避けるために詳細には述べられていない。
【0012】
一般に、権利を主張する本発明の実施形態は、固定された内部光共振器を有する多波長ガスレーザからの出力ビームの波長を調整するための外部の光フィードバック要素に関する。例えば、一又は複数の実施形態に係る外部のフィードバック要素は、部分的に反射する光学素子又はミラーを誘電体被膜と共に備えている。このような外部のフィードバック要素は、1つの出力波長(単一ライン)で又は複数の波長(複数ライン)で同時的に所望の波長の出力ビームを選択的に増強するために内部光共振器へのフィードバックを提供する。フィードバックの強度は、誘電体被膜によって波長に応じて異なるように設定されてもよく、レーザからの出力ビームの経路上の部分的に反射する光学素子又はミラーの位置を変えることにより調節されてもよい。CO
2 レーザの出力波長の範囲は、8.5 μmと11.2μmとの間の一定の帯域で調整されてもよい。
【0013】
本発明の実施形態の更に詳細な内容をCO
2 レーザの例を使用して以下に説明する。この例は例示のためだけに使用される。従って、本発明の範囲はこれらの特定の用途に限定されるとみなされるべきではない。
【0014】
図1は、本発明の一又は複数の実施形態に係るシステム100 を示す概略図である。図示されているように、システム100 は、二酸化炭素を含む活性レーザ媒体が充填された内部光共振器104 を有するCO
2レーザ102 を備えている。CO
2 レーザ102 は、ビーム経路106 に沿ってレーザビームを発する。光学素子108 が、光学的に平坦か又は湾曲した部分的に透明な基板110 及び誘電体被膜112 を有している。誘電体被膜112 は、基板110 のいずれかの側又は両側に設けられてもよい。光学素子108 は、ビーム経路106 上に配置されて、手動又は自動のステージ114 によって支持されてもよい。光学素子108 の回転、垂直傾斜角及び水平傾斜角はステージ114 によって調節されてもよい。
【0015】
ビーム経路106 上の光ビームは、光学素子108 を通って部分的に透過して、光学素子108 の誘電体被膜112 で部分的に反射してもよい。部分的に反射した光ビームは、ビーム経路106 を介してフィードバックとしてレーザ102 の内部光共振器104 に送られる。様々な波長の反射光ビームの強度は誘電体被膜の特性によって決められてもよい。一又は複数の実施形態では、誘電体被膜は10.6μmで(例えば99.5%より高い)最大伝導率を有し、波長の低下と共に反射率を増加させ(例えば9.3 μmで25%まで最大伝導率を減少させ)てもよい。
【0016】
更に、ある波長での誘電体被膜の反射率は、ビーム経路106 に対して光学素子108 の回転、垂直傾斜角及び水平傾斜角を変化させることにより変えられてもよい。フィードバックの波長に対応するCO
2 分子内の振動回転遷移が高められる。従って、光学素子108 を回転させる及び/又は傾斜させることにより、高められるべきレーザ102 の出力波長を選択し、ひいてはレーザ102 の出力ビームを調整してもよい。
【0017】
図2A、
図2B及び
図2Cは、光学素子108 の回転角の関数として記録されたシステム100 の出力波長の実験データを示す。使用されるレーザ102 は、400WのパルスCO
2 レーザ(例えばビーム調整ユニット無しのSynrad社製のPulstar シリーズのP400レーザ)であった。光学素子108 の回転角及び方向を光学素子取付台によって手動で変えた。スペクトロメータの示度の画像が
図2A、
図2B及び
図2Cに示されている。
図2A、
図2B及び
図2Cは、光学素子108 の回転角の変化に応じて、波長が約9.3 μm、10.2μm又は10.6μmに可逆的に調整可能であったことを示している。当業者は、関連するレーザの様々な材料及び条件を仮定すると、様々な他の波長が得られてもよいことを理解する。
【0018】
図3は、本発明の一又は複数の実施形態に係るシステム300 を示す概略図である。図示されているように、システム300 は、二酸化炭素を含む活性レーザ媒体が充填された内部光共振器104 を有するCO
2レーザ102 を備えている。CO
2 レーザ102 は、ビーム経路106 に沿ってレーザビームを発する。ビーム経路106 上の光ビームは、ビームスプリッタ316 によって透過ビーム経路318 及び反射ビーム経路320 に分割される。光学素子108 が、光学的に平坦で部分的に透明な基板110 及び誘電体被膜112 を有している。光学素子108 は、反射ビーム経路320 上に配置されて、手動又は自動のステージ114 によって支持されてもよい。光学素子108 の回転、垂直傾斜角及び水平傾斜角はステージ114 によって調節されてもよい。光学素子108 で反射した光ビームは、反射ビーム経路320 、ビームスプリッタ316 及びビーム経路106 を介してフィードバックとしてレーザ102 の内部光共振器104 に送られる。様々な波長の反射光ビームの強度は誘電体被膜の特性によって決められてもよい。
【0019】
更に、ある波長での誘電体被膜の反射率は、反射ビーム経路320 に対して光学素子108 の回転、垂直傾斜角及び水平傾斜角を変化させることにより変えられてもよい。フィードバックの波長に対応するCO
2 分子内の振動回転遷移又は帯域が高められる。従って、光学素子108 を回転させる及び/又は傾斜させることにより、高められるべきレーザ102 の出力波長を選択し、ひいてはレーザ102 の出力ビームを調整してもよい。
【0020】
図4は、本発明の一又は複数の実施形態に係るシステム400 を示す概略図である。図示されているように、システム400 は、二酸化炭素を含む活性レーザ媒体が充填された内部光共振器104 を有するCO
2レーザ102 を備えている。CO
2 レーザ102 は、ビーム経路106 に沿ってレーザビームを発する。ビーム経路106 上の光ビームは、ビームスプリッタ316 によって透過ビーム経路318 及び反射ビーム経路320 に分割される。光学素子108 が、光学的に平坦で部分的に透明な基板110 及び誘電体被膜112 を有している。光学素子108 は、反射ビーム経路320 上に配置されて、手動又は自動のステージ114 によって支持されてもよい。光学素子108 の回転、垂直傾斜角及び水平傾斜角はステージ114 によって調節されてもよい。光学素子108 で反射した光ビームは、反射ビーム経路320 、ビームスプリッタ316 及びビーム経路106 を介してフィードバックとしてレーザ102 の内部光共振器104 に送られる。光学素子108 を通って透過した反射ビーム経路320 上の光ビームの一部は、ミラー422 で反射して反射ビーム経路320 に戻される。
【0021】
更に、ある波長での誘電体被膜の反射率は、反射ビーム経路320 に対して光学素子108 の回転、垂直傾斜角及び水平傾斜角を変化させることにより変えられてもよい。フィードバックの波長に対応するCO
2 分子内の振動回転遷移が高められる。従って、光学素子108 を回転させる及び/又は傾斜させることにより、高められるべきレーザ102 の出力波長を選択して、ひいてはレーザ102 の出力ビームを調整してもよい。
【0022】
図5は、更なる実施形態のシステム500 を示し、このシステム500 によって、レーザの出力波長を安定させて、波長を迅速な時間規模で調節することができる。図示されているように、システム500 は、二酸化炭素を含む活性レーザ媒体が充填された内部光共振器104 を有するCO
2レーザ102 を備えている。CO
2 レーザ102 は、ビーム経路106 に沿ってレーザビームを発する。ビーム経路106 上の光ビームは、ビームスプリッタ316 によって透過ビーム経路318 及び反射ビーム経路320 に分割される。反射ビーム320 は、波長に応じて様々な角度でビーム550a〜ビーム550dを伝導する波長依存性光学素子(WDOD) 510を通過する。WDODは、能動素子であってもよく、又は受動素子であってもよく、例えば、音響光学変調器又は電気光学変調器又は回折格子のような回折光学素子であってもよい。
【0023】
ビーム550aは、9.2 μm帯域に対応する波長のレーザビームになり、ビーム550bは、9.6 μm帯域に対応する波長のレーザビームになり、ビーム550cは、10.2μm帯域に対応する波長のレーザビームになり、ビーム550dは、10.6μm帯域に対応する波長のレーザビームになる。CO
2 レーザガスの同位体混合物、例えばC12O18、C13O16、C13O16、C14O16、C14O18などが使用される場合、波長帯域は変わる。ビーム550a〜ビーム550dは、平坦か又は湾曲した部分的に反射する光学素子520 まで通過し、ビームの一部は、反射ビーム経路320 に沿って再帰反射し、ビームスプリッタ316 に反射してレーザに戻り、光学素子520 を通って透過するこのビームの他の部分は4つの検出器540 の内の1つに当たる。当業者は、使用される厳密な構成に応じて、光学素子520 を通って透過するビームが4つの検出器540 の内の2以上に当たるか、又は4つの検出器540 の内のいずれにも当たらないことを理解する。
【0024】
これらの検出器540 からの信号は560 を介して制御部530 に送信される。その後、制御部530 は、信号をフィードバックループ570 を介してWDOD 510に戻す。制御部530 は、検出器540 、WDOD 510及びフィードバックループ570 と共に、レーザシステムによって生じる各波長で波長及び必要に応じてエネルギーの両方の制御を可能にする。これらの波長は、通常可能な、例えば約1〜5マイクロセカンドより十分短い時間枠で調節可能である。
【0025】
図1、
図3、
図4及び
図5は一又は複数の実施形態に係る特定の構成又は配置を示しているが、他の構成又は配置が、本発明の範囲から逸脱することなく採用されてもよい。
【0026】
図6は、本発明の一又は複数の実施形態に係るフローチャートを示す。この詳細な説明の利点を有する当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の要素によってステップを実行してもよいことを理解する。本発明の一又は複数の実施形態では、
図6に示されているステップの一又は複数を省略してもよく、繰り返してもよく、及び/又は
図6に示されている順序とは異なる順序で実行してもよい。従って、本発明の範囲は、
図6に示されているステップの特定の配列に限定されるとみなされるべきではない。
【0027】
最初に、ステップ610 で、ステージに支持されてガスレーザの内部光共振器の外側で出力ビームのビーム経路上に配置された部分的に反射する光学素子でガスレーザの出力ビームを反射する。光学素子は、波長に応じて変わる反射率を与える誘電体被膜を有してもよい。ステージは、出力ビームのビーム経路に対して光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を調節してもよい。
【0028】
出力ビームのビーム経路は透過ビーム経路及び反射ビーム経路に分割されてもよい。光学素子及びステージは反射ビーム経路に配置されてもよい。更に、光学素子を通って透過する出力ビームの一部がミラーで反射して反射ビーム経路に戻されてもよい。
【0029】
ステップ620 で、光学素子で反射した出力ビームの強度を波長に応じて変える。
【0030】
ステップ630 で、出力ビームのビーム経路に対して光学素子の回転、水平傾斜角及び垂直傾斜角を変えることにより、複数の波長毎の反射出力ビームの強度を調節する。従って、出力ビームがガスレーザの内部光共振器に戻される波長が選択される。
【0031】
ステップ640 で、選択された波長の反射出力ビームをガスレーザの内部光共振器に戻す。従って、選択された波長のガスレーザの出力ビームは増強される。
【0032】
本発明が限られた数の実施形態に関して記載されているが、この開示の利点を有する当業者は、本明細書に開示されているような本発明の範囲から逸脱せず他の実施形態が考案され得ると理解する。従って、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】